説明

半導体装置及びその作製方法

【課題】信頼性の高い半導体装置を提供する。
【解決手段】ゲート電極と、ゲート電極の上に設けられたゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜
の上に設けられソース領域及びドレイン領域を含む半導体膜と、ソース領域又はドレイン
領域に電気的に接続する配線又は電極と、配線又は電極の上に設けられ第1の開口部を有
する第1の絶縁膜と、第1の絶縁膜の上に設けられ第2の開口部を有する第2の絶縁膜と
、第2の絶縁膜の上に設けられた画素電極とを有し、第1の絶縁膜は窒化シリコン膜を含
む積層の無機絶縁膜からなり、第2の絶縁膜は有機樹脂膜からなり、第2の絶縁膜の第2
の開口部の底面において、第1の絶縁膜の上面は第2の絶縁膜に覆われていない露呈した
部分を有し、第2の絶縁膜の第2の開口部の断面において、第2の絶縁膜の内壁面は凸状
の曲面を有しており、画素電極は、第1の開口部及び第2の開口部を介して配線又は電極
に電気的に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子(代表的にはトランジスタ)及びその作製方法に関するものであ
り、特に薄膜トランジスタをデバイスとして用いた表示装置の技術分野に属する。即ち、
液晶表示装置もしくはエレクトロルミネセンス表示装置等に代表される表示装置に係る技
術分野又はCMOSセンサ等に代表されるセンサに係る技術分野その他の半導体集積回路
を搭載するあらゆる半導体装置に係る技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガラス基板上に薄膜トランジスタ(TFT)を集積化してなる液晶表示装置やエ
レクトロルミネセンス(Electro Luminescence)表示装置の開発が進んでいる。これらの
表示装置は、いずれもガラス基板上に薄膜形成技術を用いて薄膜トランジスタを作り込み
、その薄膜トランジスタで構成された様々な回路上に液晶素子やエレクトロルミネセンス
(以下、単にELと略す。)素子を形成して表示装置として機能させることを特徴とした
半導体装置の一つである。
【0003】
薄膜トランジスタで構成された回路は、少なからず凹凸を形成するため、その上に液晶
素子やEL素子を形成するにあたって、有機樹脂膜等により平坦化することが一般的に行
われている。表示装置の表示部に設けられた各画素は、その内側に画素電極を有し、この
画素電極が、前掲の平坦化用有機樹脂膜に設けられたコンタクトホールを介して薄膜トラ
ンジスタに接続された構成をなしている。このような技術は、特許文献1及び特許文献2
に記載されている。
【0004】
しかしながら、本出願人の研究により以下の事実が判明した。即ち、層間絶縁膜として
樹脂膜を用い、ドライエッチング技術を用いてコンタクトホールを形成した場合、完成し
た薄膜トランジスタのしきい値電圧(Vth)が大きくばらついてしまうという事実が判
明している。例えば、図4に示すデータは、SOI基板上に形成した薄膜トランジスタの
しきい値電圧のばらつきについて、調べた結果である。図中の黒丸印は、層間絶縁膜とし
て窒化シリコン膜(SiN)とアクリル膜の積層構造を用いた場合、また図中の白抜き三
角印は、層間絶縁膜として窒化酸化シリコン膜(SiNO)と酸化窒化シリコン膜(Si
ON)の積層構造を用いた場合を示している。また、いずれの場合もコンタクトホールの
開口にはドライエッチング技術を用いている。なお、「SiNO」と「SiON」の表記
の違いは、前者は酸素よりも窒素を多く含み、後者は窒素よりも酸素を多く含むという意
味で使い分けている。
【0005】
図4のデータは、しきい値電圧のばらつきを統計処理により評価したグラフであり、横
軸にチャネル長(キャリア移動の長さ)、縦軸にVthばらつきを表している。近年、統
計処理として「四分位偏差」というものが知られている。四分位偏差とは、正規確率グラ
フにおいて、25%の値と75%の値の差であり、異常値に影響されない統計処理として
注目されている。本出願人は、この四分位偏差(25%分位偏差ともいう。)を元に、1
6%の値と84%の値の差を16%分位偏差と定義し、その値を「Vthばらつき」とし
て縦軸にプロットしている。なお、16%分位偏差は、正規確率分布で言う±σに相当す
るため、それぞれ係数をかけて±3σと見なせる値としたものをデータプロットに用いて
いる。同データを見る限り、層間絶縁膜にアクリル膜を用いたものは、ばらつきがnチャ
ネル型TFTで約4倍、pチャネル型TFTで約2倍の差が出ており、明らかにアクリル
膜を用いた方がばらつきが大きい。本出願人は、ドライエッチング時のプラズマダメージ
がアクリル膜に電荷を捕獲させ、その結果としてしきい値電圧がばらつく要因となってい
るのではないかと推測している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−56182号公報
【特許文献2】特開平10−68972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前掲の問題に鑑みてなされたものであり、有機樹脂膜を層間絶縁膜として用
いた表示装置の作製にあたって、薄膜トランジスタをそのしきい値電圧をばらつかせるこ
となく作製する技術を提供し、表示装置の動作性能の安定性の向上及び回路設計における
設計マージンの拡大を達成させることを課題とする。
また、併せて表示装置の画質の向上を達成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の手段により前掲の課題を解決することを特徴とするものである。即ち
、有機樹脂膜として感光性有機樹脂膜(好ましくは感光性アクリル膜、特にポジ型感光性
アクリル膜が望ましい。)を用い、当該感光性有機樹脂膜に第1の開口を形成した後、該
第1の開口を覆う窒化絶縁膜を形成し、改めてフォトレジスト等を用いて窒化絶縁膜に第
2の開口を形成し、有機樹脂膜を挟んで存在する上部電極と下部電極とを電気的に接続す
ることを特徴とする。なお、ポジ型感光性アクリル膜を用いる場合、通常において薄茶色
に着色しているため、第1の開口を設けた後、脱色処理(ブリーチング処理)を施して可
視光に対して透明にしておく必要がある。脱色処理は、現像後のパターン全体に対して露
光に用いた光(典型的には紫外光)を照射すれば良い。
【0009】
本発明について、図1を用いて説明する。図1(A)において、101は基板、102
は下地膜、103はソース領域、104はドレイン領域、105はチャネル形成領域であ
り、これらは下地膜102上に設けられた半導体膜を用いて構成されている。また、10
6はゲート絶縁膜、107はゲート電極、108は第1パッシベーション膜である。ここ
までは、公知の薄膜トランジスタの構造であり、各部分の材料については公知のあらゆる
材料を用いることができる。
【0010】
次に、本発明の薄膜トランジスタは、無機絶縁膜である第1パッシベーション膜108
上に層間絶縁膜109として感光性有機樹脂膜、特にポジ型の感光性アクリル膜を用いる
点に第1の特徴がある。感光性有機樹脂膜109の膜厚は、1〜4μm(好ましくは1.
5〜3μm)の範囲で選択すれば良い。そして、感光性有機樹脂膜109には第1開口部
(直径φ1で表される。)110が設けられ、感光性有機樹脂膜109の上面及び前記第
1開口部110の内壁面を覆うように無機絶縁膜である第2パッシベーション膜111が
設けられている点が第2の特徴と言える。さらに、第2パッシベーション膜111は、前
記第1開口部110の底面において、第2開口部(直径φ2で表される。)112を有し
ており、この第2開口部112と同じ径で前記第1パッシベーション膜108及びゲート
絶縁膜106にも開口部が形成されている点が第3の特徴である。即ち、第1開口部11
0の内側にゲート絶縁膜106、第1パッシベーション膜108及び第2パッシベーショ
ン膜111を含む積層体に設けられた第2開口部を有する点に特徴がある。また、ソース
電極113は、第1開口部110及び第2開口部112を介してソース領域103に接続
され、ドレイン電極114は同様にドレイン領域104に接続される。
【0011】
なお、第1パッシベーション膜108及び第2パッシベーション膜111としては、窒
化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化アルミニウム膜、窒化酸
化アルミニウム膜もしくは酸化窒化アルミニウム膜を用いることができる。また、これら
の膜を少なくとも一部に含む積層膜とすることも可能である。また、直径φ1は、2〜1
0μm(好ましくは3〜5μm)とし、直径φ2は、1〜5μm(好ましくは2〜3μm
)とすれば良い。但し、フォトリソグラフィ工程の精度によっても開口部の直径のデザイ
ンルールは変わるため、これらの数値範囲に限定する必要はない。即ち、いずれにしても
φ1>φ2の関係を満たせば良いのである。
【0012】
ここで点線で囲まれた領域115の部分についての拡大図を図1(B)に示す。図1(
B)は、第1開口部110及び第2開口部112の一部を示している。
第1開口部110は、その内壁面がなだらかな曲面を形成しており、連続的に変化する曲
率半径を有する。例えば、順番に3点の曲率半径R1、R2、R3に注目した時、それぞ
れの曲率半径の関係は、R1<R2<R3となっており、その数値は3〜30μm(代表
的には10〜15μm)となっている。また、第1開口部110の底面において、感光性
有機樹脂膜109と第1パッシベーション膜108のなす角(接触角θ)は、30°<θ
<65°(代表的には40°<θ<50°)の範囲に収まるようにする。
【0013】
このとき、図1(B)において、116で示される部分では、第1パッシベーション膜
108と第2パッシベーション膜111が密着し、感光性有機樹脂膜109を封止した状
態を構成している。このとき、密着した領域、即ち第1パッシベーション膜108と第2
パッシベーション膜111が接する領域の長さは、0.3〜3μm(好ましくは1〜2μ
m)もあれば良いが、基本的には、第1開口部110の半径が第2開口部112の半径よ
りも0.3〜3μmだけ大きければ良い。
【0014】
本発明で用いる感光性有機樹脂膜(ここではポジ型の感光性アクリル膜)は、薄膜トラ
ンジスタの形成中及び形成後においてもガス成分を発生させることがあるため、密着性の
良い無機絶縁膜同士(特に、バリア性の高い窒化シリコン膜もしくは窒化酸化シリコン膜
が好適である。)で封止しておくことは、薄膜トランジスタの上に形成する液晶素子やE
L素子の劣化を防ぐという意味においても非常に重要である。
【0015】
次に、図1に示した構造を有する薄膜トランジスタの作製方法について、図2を用いて
説明する。まず、図2(A)について説明する。基板101上に、下地膜102を形成し
、その上に島状にエッチング加工した半導体膜を形成する。そして、その上にゲート絶縁
膜106を形成し、ゲート電極107を形成し、ゲート電極107をマスクに用いて自己
整合的にソース領域103及びドレイン領域104を形成する。このとき、同時にチャネ
ル形成領域105が確定する。ソース領域103及びドレイン領域104を形成したら、
加熱処理によりソース領域103及びドレイン領域104を活性化し、さらに第1パッシ
ベーション膜108を形成した後、加熱処理により水素化処理を行う。ここまでの作製方
法は公知の技術を用いて行えば良く、薄膜トランジスタを構成する材料としては、公知の
あらゆる材料を用いることができる。次に、層間絶縁膜109として、感光性有機樹脂膜
、ここではポジ型の感光性アクリル膜を形成する。
【0016】
次に、図2(B)について説明する。感光性有機樹脂膜109を形成したら、フォトリ
ソグラフィ工程による露光処理を行い、感光性有機樹脂膜109をエッチングし、第1開
口部110を形成する。これは感光性有機樹脂膜だから可能な技術であり、また、エッチ
ング自体は現像液によるウェットエッチングであるため、前掲のプラズマダメージの如き
問題は発生しないという効果が得られる。現像液によるエッチング後は、感光性有機樹脂
膜109の脱色処理を行う。脱色処理は、露光に用いた光よりも強い光をパターン全体に
照射して行えば良い。なお、脱色処理は、露光直後、即ち焼成処理の前に行う必要がある
。焼成後は、感光性有機樹脂膜109の架橋が完了してしまうため、光照射による脱色が
不可能だからである。
【0017】
また、第1開口部110の断面形状は、図1(B)のようになり、非常になだらかな内
壁面を有する。そのため、後に形成される電極の被覆率(カバレッジ)
が極めて良好なものとなる。なお、エッチング後の焼成工程においては、樹脂中への水分
や酸素の吸着もしくは吸収を防ぐため、不活性雰囲気(窒素雰囲気、希ガス雰囲気もしく
は水素雰囲気)で加熱することが望ましい。このとき、昇温から降温に至るまで徹底して
不活性雰囲気としておくことにより、水分及び酸素の吸着(もしくは吸収)量を10pp
m以下(好ましくは1ppm以下)に抑えることが望ましい。
【0018】
次に、図2(C)について説明する。第1開口部110を形成したら、感光性有機樹脂
膜109の上面及び第1開口部110の内壁面を覆うように第2パッシベーション膜11
1を形成する。第2パッシベーション膜111は、第1パッシベーション膜108と同一
の材料としても良い。第2パッシベーション膜111の形成は、高周波放電によるスパッ
タ法を用いることが好ましい。条件としては、シリコンターゲットを用い、スパッタガス
として窒素ガスを用いれば良い。圧力は適宜設定すれば良いが、0.5〜1.0Pa、放
電電力は2.5〜3.5KW、成膜温度は室温(25℃)から250℃の範囲内とすれば
良い。そして、第2パッシベーション膜111を形成したら、フォトレジスト201を形
成する。
このフォトレジスト201は、第2パッシベーション膜111に対して第2開口部112
を形成するためのマスクである。
【0019】
次に、図2(D)について説明する。フォトレジスト201を形成したら、エッチング
処理を行って第2パッシベーション膜111、第1パッシベーション膜108及びゲート
絶縁膜106を順次エッチングし、第2開口部112を形成する。このとき、エッチング
処理は、ドライエッチング処理でもウェットエッチング処理でも良いが、第2開口部11
2の形状を良好なものとするためには、ドライエッチング処理が好ましい。本発明では、
ここでドライエッチング処理を行っても感光性有機樹脂膜109がプラズマに直接曝され
ることがないため、プラズマダメージを蓄積させてしまうような不具合が生じない。この
ように、感光性有機樹脂膜に設けられた開口部の内壁面を窒化シリコン膜等の窒化絶縁膜
で保護しながら、その開口部の底面にさらに径の小さな開口部を設ける点が本発明の特徴
の一つと言える。
【0020】
また、ドライエッチング処理により第2開口部112を形成する際、ゲート絶縁膜10
6及び第1パッシベーション膜108をエッチングすることになるが、このエッチングは
無機絶縁膜の組み合わせによって生産性を高めることが可能である。即ち、第1パッシベ
ーション膜108として窒化シリコン膜を用い、ゲート絶縁膜106として酸化窒化シリ
コン膜を用いれば、第1パッシベーション膜108のエッチングの際にはゲート絶縁膜1
06をエッチングストッパーとして機能させ、ゲート絶縁膜106のエッチングの際には
ソース領域(シリコン膜)
103をエッチングストッパーとして機能させることができる。
【0021】
例えば、ゲート絶縁膜106に酸化窒化シリコン膜、第1パッシベーション膜108に
窒化シリコン膜を用いた場合を考える。第1パッシベーション膜108として機能する窒
化シリコン膜は、四フッ化炭素(CF4)ガス、ヘリウム(He)ガス及び酸素(O2)ガ
スを用いてエッチングできるが、これらのガスはシリコン膜もエッチングしてしまう。し
かしながら、下地のゲート絶縁膜106として機能する酸化窒化シリコン膜がエッチング
ストッパーとして働くため、ソース領域103として機能するシリコン膜を消失させてし
まうことはない。また、ゲート絶縁膜(ここでは酸化窒化シリコン膜)106は、三フッ
化炭化水素(CHF3)ガスを用いることでエッチングでき、かつ、シリコン膜を殆どエ
ッチングしないので、ソース領域103をエッチングストッパーとして機能させることが
可能となる。
【0022】
次に、図2(E)について説明する。第2開口部112を形成したら、その上に金属膜
を形成し、エッチングによりパターン化してソース電極113及びドレイン電極114を
形成する。これら電極を形成するために、チタン膜、窒化チタン膜、タングステン膜(合
金を含む。)、アルミニウム膜(合金を含む。)もしくはこれらの積層膜を用いれば良い

【0023】
以上のようにして、図1(A)、(B)で説明した構造の薄膜トランジスタを得ること
ができる。こうしてえた薄膜トランジスタは、感光性有機樹脂膜を有すると共に、当該感
光性有機樹脂膜が平坦化膜としても機能する。また、この感光性有機樹脂膜が窒化絶縁膜
(代表的には、窒化シリコン膜もしくは窒化酸化シリコン膜)に封止されているため、脱
ガスによる問題も生じない。
【0024】
ここで、感光性有機樹脂膜109として、特にポジ型の感光性アクリル膜が好ましいとし
た理由について以下に説明する。
【0025】
まず、図3(A)に示す写真は、非感光性アクリル膜(膜厚:約1.3μm)
に対してドライエッチング処理を施してパターン化した状態の断面SEM(走査型電子顕
微鏡)写真であり、図3(B)はその模式図である。従来のように非感光性アクリル膜に
対してドライエッチング処理を施した場合、パターン上部に曲面は殆ど形成されず、実質
的に曲率半径(R)のない上端部となる。また、パターンの下部は、テーパー角(接触角
)が約63°となっているが、この下端部においても曲面は観察されない。
【0026】
次に、図5(A)に示す写真は、ポジ型感光性アクリル膜(膜厚:約2.0μm)に対
して露光及び現像処理を施してパターン化した状態の断面SEM写真であり、図5(B)
はその模式図である。ポジ型感光性アクリル膜の断面形状については、現像液によるエッ
チング処理後において非常になだらかな曲面を有し、連続的に曲率半径(R)が変化して
いる。また、接触角も約32〜33°と小さな値が得られている。即ち、図1(B)に示
した形状そのままであり、本発明の薄膜トランジスタ及び表示装置を作製するにあたって
、非常に有用な形状と言える。勿論、接触角の値はエッチング条件や膜厚等によって変わ
るが、前掲のように30°<θ<65°を満たせば良い。
【0027】
次に、図6(A)に示す写真は、ネガ型感光性アクリル膜(膜厚:約1.4μm)に対
して露光及び現像処理を施してパターン化した状態の断面SEM写真であり、図6(B)
はその模式図である。ネガ型感光性アクリル膜の断面形状については、現像液によるエッ
チング処理後においてなだらかなS字状の曲面を形成し、パターン上端部においてはある
曲率半径(R)をもって湾曲している。また、接触角は約47°という値が得られている
。この場合、図6(B)のWで表すテール(裾)の部分の長さが問題となる。特に、微細
加工の必要なコンタクトホール(開口部)においては、このテール部分が長くなってしま
うと、コンタクトホール内で下層の電極もしくは配線が露出しない状況が発生する恐れが
あり、接触不良による断線が懸念される。ただし、このテール部分の長さ(W)が1μm
以下(好ましくは、コンタクトホールの半径未満の長さ)であれば、そのような断線の可
能性は低くなる。
【0028】
次に、図7(A)に示す写真は、ポジ型感光性ポリイミド膜(膜厚:約1.5μm)に
対して露光及び現像処理を施してパターン化した状態の断面SEM写真であり、図7(B
)はその模式図である。ポジ型感光性ポリイミド膜の断面形状については、現像液による
エッチング処理後において若干のテール部分(長さWで表される。)と湾曲した上端部を
有しているが、その曲率半径(R)は小さい。
【0029】
以上の断面形状を観察してみると、次のような考察をすることができる。コンタクトホ
ール(開口部)形成後、電極もしくは配線となる金属膜を成膜する際、スパッタ法、蒸着
法もしくはCVD法等が用いられる。薄膜を構成する材料分子は、被形成面に付着すると
安定なサイトを求めて表面を移動するが、コンタクトホールの上端部の如き鋭角をもった
形状(凸部となる形状)の部分に集まりやすいことが知られている。この傾向は、特に蒸
着法において顕著である。そのため、開口部の断面形状が図3(A)に示したような形状
であると、開口部の縁に材料分子が集中してしまうため、その部分だけ局部的に膜厚が厚
くなり、ひさし状の凸部を形成してしまう。これが後に断線(段切れ)等の不良の原因と
なるため、好ましいものではない。従って、図3(A)に示した非感光性アクリル膜及び
図7(A)に示したポジ型感光性ポリイミド膜は、被覆率(カバレッジ)の観点から不利
な材料と言える。
【0030】
また、前掲の図6(A)、図7(A)ように、コンタクトホールの下端部においてテー
ル部分が形成されるような形状は、場合によってはテール部分がコンタクトホールの底面
を覆ってしまい、接触不良を招く恐れがあるため、接触性の観点から不利な材料と言える
。勿論、テール部分の長さが1μm以下(好ましくは、コンタクトホールの半径未満の長
さ)であれば問題はない。
【0031】
以上の点より、本発明を実施するには図5(A)に示した形状をなすポジ型感光性アク
リル膜が最も好適と言える。即ち、ポジ型感光性アクリル膜を用いれば、コンタクトホー
ルの上端部において非常になだらかな曲面を有するため被覆率は全く問題なく、また、コ
ンタクトホールの下端部においては、テール部分を形成せずに30°<θ<65°を満た
す接触角をもって確実のコンタクトホールの底面が画定しているため、接触不良の問題も
生じない。本出願人は、以上の理由により、本発明を実施するにあたって、特に有機樹脂
からなる層間絶縁膜としては、ポジ型感光性アクリル膜が最も好ましい材料であると考え
ている。
【0032】
以上のように、有機樹脂膜を層間絶縁膜として用いた薄膜トランジスタを作製するにあ
たって、層間絶縁膜として感光性有機樹脂膜を用い、かつ、図1に示すコンタクト構造と
することにより、薄膜トランジスタをしきい値電圧をばらつかせることなく作製すること
が可能となり、薄膜トランジスタのみならずそれを用いた表示装置の動作性能の安定性の
向上及び回路設計における設計マージンの拡大を達成することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明により、回路設計における設計マージンの高いプロセスで、薄膜トランジスタの
しきい値電圧をばらつかせることなく表示装置の作製が可能となり、表示装置の動作性能
の安定性の向上を達成することができる。さらに、前掲の薄膜トランジスタを作製すると
同時に、特にフォトリソ工程を増やすことなく小さな面積で大きな容量を形成することが
でき、表示装置の画質の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】薄膜トランジスタの構造を示す図。
【図2】薄膜トランジスタの作製工程を示す図。
【図3】有機樹脂膜の断面構造を示すSEM写真及び模式図。
【図4】しきい値電圧のバラツキを示す図。
【図5】有機樹脂膜の断面構造を示すSEM写真及び模式図。
【図6】有機樹脂膜の断面構造を示すSEM写真及び模式図。
【図7】有機樹脂膜の断面構造を示すSEM写真及び模式図。
【図8】薄膜トランジスタの構造を示す図。
【図9】発光装置の画素構成を示す図。
【図10】発光装置の断面構造を示す図。
【図11】発光装置の断面構造を示す図。
【図12】薄膜トランジスタの構造を示す図。
【図13】液晶表示装置の画素構成を示す図。
【図14】液晶表示装置の断面構造を示す図。
【図15】発光装置の外観構成を示す図。
【図16】電気器具の具体例を示す図。
【図17】窒化シリコン膜を誘電体するMOS構造のC−V特性を示す図。
【図18】窒化シリコン膜のSIMS測定データ。
【図19】発光装置の断面構造を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
〔実施の形態1〕 本実施の形態では、図1において、第1開口部110の形成位置を
異なるものとした例について図8を用いて説明する。なお、図8(A)、(B)は、共に
第2開口部まで形成した時点における断面構造を表している。また、必要に応じて図1で
用いた符号を参考にする。
【0036】
図8(A)において、801は直径φ1の第1開口部であり、802は直径φ2の第2
開口部である。図8(A)の特徴は、第1開口部801が、ソース領域103の端部から
はみ出して設けられている点にある。感光性有機樹脂膜109は、第1パッシベーション
膜108がエッチングストッパーとなってエッチングの進行が止まるため、本実施の形態
の如き位置に形成することが可能である。また、図8(B)において、803は直径φ3
の第1開口部であり、804は直径φ2の第2開口部である。図8(B)の特徴も、第1
開口部803が、ソース領域103の側端部からはみ出して設けられている点にある。こ
の場合もまた感光性有機樹脂膜109は、第1パッシベーション膜108がエッチングス
トッパーとなってエッチングの進行が止まる。
【0037】
以上のように、層間絶縁膜として用いる感光性有機樹脂膜の下にエッチングストッパー
となり得る無機絶縁膜が存在するため、第1開口部の直径を大きくとっても何ら問題はな
く、コンタクトホールを形成する際の設計マージンを広くとることができるという意味で
非常に有用である。
【0038】
〔実施の形態2〕 本実施の形態では、本発明をEL表示装置等の発光装置に適用した
例について説明する。図9において、図9(A)は、発光装置の一画素における上面図(
ただし、画素電極を形成したところまで。)であり、図9(B)はその回路図であり、図
9(C)、(D)はそれぞれA−A’もしくはB−B’における断面図に相当する図面で
ある。
【0039】
図9(A)、(B)に示すように、発光装置の表示部は、ゲート配線951、データ配
線952及び電源配線(定電圧もしくは定電流を供給する配線)953で囲まれた複数の
画素をマトリクス配置で有し、各画素にはスイッチング素子として機能するTFT(以下
、スイッチング用TFTという。)954、EL素子を発光させるための電流もしくは電
圧を供給する手段として機能するTFT(以下、駆動用TFTという。)955、容量部
956及びEL素子957が設けられている。EL素子957は、ここでは図示されてい
なが、画素電極958の上方に発光層を設けることにより形成することができる。
【0040】
なお、本実施の形態において、スイッチング用TFT954として、マルチゲート構造
のnチャネル型TFTを用い、駆動用TFT955として、pチャネル型TFTを用いて
いるが、発光装置の画素構成はこれに限定する必要はなく、公知のどのような構成に対し
ても本発明を適用できる。
【0041】
図9(C)の断面図には、nチャネル型TFT954及び容量部956が現れる。90
1は基板であり、ガラス基板、セラミック基板、石英基板、シリコン基板もしくはプラス
チック基板(プラスチックフィルムを含む。)を用いることができる。また、902は窒
化酸化シリコン膜、903は酸化窒化シリコン膜であり、積層して下地膜として機能させ
る。勿論、これらの材料に限定する必要はない。さらに、酸化窒化シリコン膜903の上
には、nチャネル型TFT954の活性層が設けられ、該活性層は、ソース領域904、
ドレイン領域905、LDD領域906a〜906d及びチャネル形成領域907a、9
07bを有し、ソース領域904とドレイン領域905の間に、二つのチャネル形成領域
及び四つのLDD領域を有している。
【0042】
また、nチャネル型TFT954の活性層は、ゲート絶縁膜908に覆われ、その上に
ゲート電極909a、909b及びゲート電極910a、910bが設けられている。ゲ
ート絶縁膜908は、本実施の形態では酸化窒化シリコン膜を用いるが、比誘電率の高い
窒化アルミニウム膜等の前掲の窒化絶縁膜を用いると、素子の占有面積を小さくできるた
め、集積度の向上に有効である。
【0043】
また、ゲート電極909a及び910aとしては、窒化タンタル膜を用い、ゲート電極
909b及び910bとしては、タングステン膜を用いる。これらの金属膜は相互に選択
比が高いため、エッチング条件を選択することにより図9(B)に示すような構造とする
ことが可能である。このエッチング条件については、本出願人による特開2001−31
3397号公報を参照すれば良い。
【0044】
また、ゲート電極を覆う第1パッシベーション膜911として窒化シリコン膜もしくは
窒化酸化シリコン膜が設けられ、その上に感光性有機樹脂膜912(本実施の形態ではポ
ジ型感光性アクリル膜を用いる。)が設けられる。さらに、感光性有機樹脂膜912には
第1開口部(図1参照)を覆うように第2パッシベーション膜913が設けられ、第1開
口部の底面において第2開口部(図1参照)
が設けられる。本実施の形態では、第2パッシベーション膜913として窒化シリコン膜
もしくは窒化酸化シリコン膜を用いる。勿論、窒化アルミニウム膜や窒化酸化アルミニウ
ム膜等の他の窒化絶縁膜を用いることも可能である。
【0045】
また、データ配線952は、第2開口部を介してソース領域904に接続され、接続配
線915は、第2開口部を介してドレイン領域905に接続される。接続配線915は、
駆動用TFT955のゲートに接続される配線である。これらデータ配線952及び接続
配線915は、アルミニウムや銅といった低抵抗な金属を主成分とする配線を他の金属膜
で挟んだ構造やこれらの金属の合金膜を用いれば良い。
【0046】
また、916は駆動用TFT955のソース領域であり、電源配線953が接続される
。この接続に係るコンタクト部は、本発明の実施により第1開口部及び第2開口部が形成
されている。さらに電源配線953は、駆動用TFT955のゲート配線917に第1パ
ッシベーション膜911及び第2パッシベーション膜913を介して対向すると共に保持
容量956aを形成している。さらに、ゲート配線917は、半導体膜918にゲート絶
縁膜908を介して対向すると共に保持容量956bを形成している。この半導体膜91
8は、電源配線953が半導体膜919に接続されているため、そこから電荷を供給され
て電極として機能する。このように、容量部956は、保持容量956a及び956bを
並列に接続した構成となるため、非常に小さな面積で大容量を得られる。さらに、特に保
持容量956aは、誘電体として比誘電率の高い窒化シリコン膜を用いているため、大き
な容量を確保できる。また、保持容量956aの誘電体は、第1パッシベーション膜91
1及び第2パッシベーション膜913の積層構造からなるため、ピンホールの発生確率が
極めて低く、信頼性の高い容量を形成することができる。
【0047】
本発明を実施する場合、従来に比べて第2開口部を形成するためにフォトリソグラフィ
工程で使用するマスク数が増加するが、そのマスク数の増加を逆に利用することにより、
本実施の形態に示すように、新たに保持容量を形成することが可能となる。この点も本発
明の大きな特徴の一つである。この本発明の特徴は、マスク増加のデメリットを補って余
りあるものであり、結果的に産業の発達に大きく寄与するものである。例えば、高精細な
画像表示を得るためには、表示部において各画素の面積に対する保持容量の相対的な占有
面積を減らし開口率を向上させることが必要であるが、そのためには保持容量の増加は極
めて有用である。
【0048】
また、図9(D)において、920は駆動用TFT955のドレイン領域であり、ドレ
イン配線921に接続される。そして、ドレイン配線921は、画素電極958に接続さ
れて画素を構成する。本実施の形態では、画素電極958として可視光に対して透明な酸
化物導電膜(代表的には、ITO膜)を用いるが、これに限定されない。
【0049】
以上の画素構成を有する発光装置において、実際にEL素子まで形成した例を図10に
示す。図10(A)は、図9(D)に示した断面に相当する図面であり、画素電極958
上に、EL素子957を形成した状態を示している。なお、図10(A)の構造とした場
合、画素電極958はEL素子957の陽極に相当する。また、本明細書において、EL
素子とは、陰極及び陽極の間にEL層を設け、該EL層に電圧を印加するもしくは電流を
注入することにより発光させる素子を指す。
【0050】
この画素電極958の端部は、感光性有機樹脂膜961で覆われ、該感光性有機樹脂膜
961は各画素を縁取るように格子状に設けられるか、又は行単位もしくは列単位でスト
ライプ状に設けられる。いずれにしても、コンタクトホール上に形成することにより凹部
を効率良く埋めることができ、全体の平坦化を兼ねることもできる。なお、本実施の形態
では、感光性有機樹脂膜(第2の感光性有機樹脂膜)961として、前掲の層間絶縁膜と
して用いた感光性有機樹脂膜(第1の感光性有機樹脂膜)912と同一の材料(本実施の
形態ではポジ型感光性アクリル膜)を用いているため、生産設備を最小限に抑えることが
できる。また、図示しないが、図6に示したS字状の断面形状となるネガ型感光性アクリ
ル膜を用いても良い。勿論、このとき開口部の上端部及び下端部における曲率半径は、3
〜30μm(代表的には10〜15μm)とすることが望ましい。また、その場合は、W
で示されるテール部分の長さを極力短くしないと開口率が低下してしまうため好ましくな
い。また、公知のレジスト材料(クロモフォアを含む高分子材料)を用いることも可能で
ある。
【0051】
また、感光性有機樹脂膜961の表面は、第3パッシベーション膜962としての窒化
絶縁膜で覆われており、これにより感光性有機樹脂膜961からの脱ガスを抑制すること
ができる。また、画素電極958上において、第3パッシベーション膜962はエッチン
グされて開口部が設けられており、該開口部において、EL層963と画素電極958が
接する。EL層963は、発光層、電荷注入層もしくは電荷輸送層といった薄膜を積層し
て構成することが一般的であるが、発光が確認されているあらゆる構造及び材料を用いる
ことができる。例えば、電子輸送層もしくはホールブロッキング層としてシリコンを含む
有機系材料であるSAlq(Alq3の3つの配位子の1つをトリフェニルシラノール構
造で置換したもの)を用いることも可能である。
【0052】
勿論、有機薄膜のみで構成する必要はなく、有機薄膜と無機薄膜を積層した構造として
も良いし、高分子薄膜であっても低分子薄膜であっても良い。また、成膜方法は、高分子
薄膜を用いるか低分子薄膜を用いるかによって異なるが、公知の方法で成膜すれば良い。
【0053】
また、EL層963の上には、陰極964が設けられ、さらにその上には最終的に第4
パッシベーション膜965としての窒化絶縁膜が設けられている。陰極964は、周期表
の1族もしくは2族に属する元素を含む金属薄膜を用いれば良いが、アルミニウムに0.
2〜1.5wt%(好ましくは0.5〜1.0wt%)のリチウムを添加した金属膜が電
荷注入性その他の点で好適である。なお、リチウムは拡散することによってTFTの動作
に害を及ぼすことが懸念されるが、本実施の形態は、第1パッシベーション911、第2
パッシベーション膜913及び第3パッシベーション膜962で完全に保護されているた
め、リチウムの拡散は気にする必要がない。
【0054】
ここで高周波放電によるスパッタ法で形成した窒化シリコン膜のリチウムに対するブロ
ッキング効果を示すデータを図17に示す。図17(A)は、高周波放電によるスパッタ
法で形成した窒化シリコン膜(RF−SP SiNと表記)を誘電体としたMOS構造の
C−V特性である。なお、「Li−dip」とは、窒化シリコン膜上にリチウムを含む溶
液をスピンコートしたという意味であり、試験のため、意図的にリチウムで汚染させたこ
とを意味する。この高周波放電によるスパッタ法で形成した窒化シリコン膜は、半径12
inchの円型Siターゲットを用い、ガス流量比をN2:Ar=20:20(sccm
)、成膜ガス圧力を0.8Pa、成膜電力を高周波電力で3kW、基板温度を200℃の
条件にて成膜したものである。高周波放電によるスパッタ法で形成した窒化シリコン膜の
組成をSIMSで測定した結果を図18及び表1に示す。図18及び表1から、窒化シリ
コン膜中には、水素が5×1020、炭素が4×1019、酸素が2×1021、アルゴンが3
×1021atoms/cm3含まれることがわかる。
【0055】
【表1】

【0056】
また、図17(B)は、比較のためプラズマCVD法で形成した窒化シリコン膜(CVD
SiNと表記)を誘電体としたMOS構造のC−V特性である。なお、図17(B)の
データは、金属電極としてアルミニウムにリチウムを添加した合金膜を用いている。これ
らに通常のBT試験を施した(具体的には、1.7MVの電圧印加に加えて±150℃で
1時間の加熱処理を行った。)結果、図17(A)に示すように、高周波放電によるスパ
ッタ法で形成した窒化シリコン膜は殆どC−V特性に変化が見られなかったのに比べ、プ
ラズマCVD法で形成した窒化シリコン膜はC−V特性に大きな変化が見られ、リチウム
による汚染が確認された。これらのデータは、高周波放電によるスパッタ法で形成した窒
化シリコン膜がリチウム拡散に対して非常に有効なブロッキング効果を有していることを
示唆している。
【0057】
さらに、第2パッシベーション膜913もしくは第3パッシベーション膜962として
窒化絶縁膜を用いることによって放熱効果を期待することができる。例えば、酸化シリコ
ン膜の熱伝導率を1とすれば、窒化シリコン膜では約5、窒化アルミニウム膜では約35
〜130というように非常に高い熱伝導率を有するため、EL素子が発熱した場合におい
ても効果的に放熱が行われ、自己発熱によるEL層963の劣化を抑制することが可能で
ある。
【0058】
なお、第3パッシベーション膜962及び第4パッシベーション膜965としては、第
1パッシベーション膜911や第2パッシベーション膜913で用いた窒化絶縁膜と同じ
材料を用いることが可能である。
【0059】
図10(A)に示した構造とした場合、EL素子から発した光は、画素電極958を透
過して基板901側から出射される。このとき、感光性有機樹脂膜912を透過すること
になるため、脱色処理を十分に行って、十分に透明にしておく必要がある。
【0060】
次に、図10(B)は、画素電極958の代わりに反射性を有する金属膜971とした
例であり、反射性を有する金属膜971としては、陽極として機能させるために白金(P
t)や金(Au)といった仕事関数の高い金属膜を用いる。また、これらの金属は、高価
であるため、アルミニウム膜やタングステン膜といった適当な金属膜上に積層し、少なく
とも最表面に白金もしくは金が露出するような画素電極としても良い。972はEL層で
あり、図10(A)の場合と同様に、発光が確認されているあらゆる構造及び材料を用い
ることができる。また、973は膜厚の薄い(好ましくは10〜50nm)金属膜であり
、陰極として機能させるために周期表の1族もしくは2族に属する元素を含む金属膜を用
いる。さらに、金属膜973に積層して酸化物導電膜(代表的にはITO膜)974を設
け、その上に第4パッシベーション膜975を設ける。
【0061】
図10(B)に示した構造とした場合、EL素子から発した光は、画素電極971で反
射され、金属膜973及び酸化物導電膜974等を透過して出射される。このとき、画素
電極971の下方は光が透過することもないため、メモリ素子や抵抗素子等を設けても良
いし、感光性有機樹脂膜912が着色されていても構わない。そのため、設計の自由度が
高く、また製造工程を簡略化することもできるため、全体として製造コストの低減に寄与
する構造と言える。
【0062】
図10(A)では、EL素子から発した光が画素電極958を透過して基板901から
出射される場合(下方出射型)、図10(B)では、EL素子から発した光が画素電極9
71で反射され、金属膜973及び酸化物導電膜974等を透過して出射する場合(上方
出射型)を示したが、EL素子から発した光が上方及び下方の両側から出射するような構
造にすることもできる。この場合、例えば、図10(B)の反射性を有する金属膜971
を透光性を有する酸化物導電膜(代表的にはITO膜)に置きかえて画素電極を形成すれ
ばよい。具体的な構造の例を図19に示す。図19において、981はITO膜などの酸
化物導電膜で形成された画素電極、982はEL層、983は膜厚の薄い(好ましくは1
0〜50nm)金属膜である。金属膜983は、陰極として機能させるために周期表の1
族もしくは2族に属する元素を含む金属膜を用いる。さらに、金属膜983に積層して酸
化物導電膜(代表的にはITO膜)984を設け、その上に第4パッシベーション膜98
5を設ける。
【0063】
〔実施の形態3〕 本実施の形態では、実施の形態2に示した発光装置において、ドレイ
ン配線921と画素電極958との接続構造を変形した例を示す。なお、基本的な構造は
図9(C)と変わらないので、本実施の形態では必要箇所のみ符号を付して説明する。
【0064】
図11(A)は、酸化物導電膜を用いて画素電極501を形成した後、ドレイン配線5
02を形成しており、画素電極501の端部を覆うようにドレイン配線502が接触した
構造となっている。この構造を形成する場合、第2開口部503を形成してから画素電極
501を形成しても良いし、画素電極501を形成してから第2開口部503を形成して
も良い。いずれにしても、ドライエッチング処理が行われたとしても常に感光性有機樹脂
膜912は第2パッシベーション膜913によってプラズマダメージから保護されるため
、薄膜トランジスタの電機特性に悪影響を与えることがない。
【0065】
次に、図11(B)は、第1パッシベーション膜911の上に無機絶縁膜でなる層間絶
縁膜504を設け、その上にドレイン配線505を設けている。それと同時に、接続配線
506を形成する。接続配線506は、下層の容量配線917に接続されている。これら
ドレイン配線505及び接続配線506は、第1開口部507を有した感光性有機樹脂膜
508に覆われ、かつ、該第1開口部507は、窒化絶縁膜でなる第2パッシベーション
膜509に覆われている。第2パッシベーション膜509は、第1開口部507の底面に
おいて第2開口部510を有し、第1開口部507及び第2開口部510を介して酸化物
導電膜でなる画素電極511とドレイン配線505が接続される。
【0066】
このとき、接続配線506上には、第2パッシベーション膜509及び画素電極511
で構成される保持容量512が形成される。図11(B)の構造とした場合、誘電体とし
て比誘電率が高い第2パッシベーション膜509のみを用いることになるため、容量値の
大きい保持容量を形成することが可能である。勿論、画素電極511と容量配線917を
一対の電極として保持容量を形成することも可能であるが、その場合、誘電体として第2
パッシベーション膜509、層間絶縁膜504及び第1パッシベーション膜911を用い
ることになるので容量値は図11(B)の構造よりも劣ってしまうことになる。
【0067】
次に、図11(C)は、図11(B)において、ドレイン配線505及び接続配線50
6を形成した後に別のパッシベーション膜として窒化絶縁膜513を設けた例である。こ
うした場合、保持容量514は、接続配線506、窒化絶縁膜513、第2パッシベーシ
ョン膜509及び画素電極511で構成されることになる。この場合、図11(B)に比
べて膜厚が厚くなった分、若干容量値は劣るが、誘電体を積層にすることでピンホールの
問題等を低減することができ、保持容量としての信頼性を高まる。
【0068】
以上のように、本発明は、実施の形態2に示される構造に限定されるものではなく、層
間絶縁膜として有機樹脂膜を用いるトランジスタ構造のすべてに適用可能である。なお、
本実施の形態に示す構造において、第2パッシベーション509や窒化絶縁膜513には
、前掲の実施の形態1や実施の形態2で説明した窒化絶縁膜を用いることができる。
【0069】
〔実施の形態4〕 本実施の形態では、実施の形態1〜3において、薄膜トランジスタ
としてボトムゲート型の薄膜トランジスタ(具体的には、逆スタガ型TFT)を用いた例
を示す。即ち、実施の形態2もしくは3において、スイッチング用TFT及び駆動用TF
Tとして、逆スタガ型TFTを用いても本発明を実施することができる。
【0070】
本実施の形態について、図12を用いて説明する。図12において、301は基板、3
02はゲート電極、303はゲート絶縁膜、304はソース領域、305はドレイン領域
、306a、306bはLDD領域、307はチャネル形成領域であり、これらはゲート
電極302を覆って設けられたゲート絶縁膜303上に設けられた半導体膜を用いて構成
されている。また、308、309は無機絶縁膜であり、本実施の形態では、308は酸
化シリコン膜であり、309は窒化シリコン膜である。309は第1パッシベーション膜
として機能し、308は下層になる半導体層と窒化シリコンからなる第1パッシベーショ
ン膜309との間のバッファ層として機能する。ここまでは、公知の薄膜トランジスタの
構造であり、各部分の材料については公知のあらゆる材料を用いることができる。
【0071】
次に、第1パッシベーション膜309上には、層間絶縁膜310として感光性有機樹脂
膜、具体的にはポジ型感光性アクリル膜を設けられ、感光性有機樹脂膜310には第1開
口部(直径φ1で表される。)311が設けられている。さらに、感光性有機樹脂膜31
0の上面及び前記第1開口部311の内壁面を覆うように無機絶縁膜からなる第2パッシ
ベーション膜312が設けられ、該第2パッシベーション膜312には前記第1開口部3
11の底面において、第2開口部(直径φ2で表される。)313が設けられている。ま
た、314はソース電極、315はドレイン電極である。
【0072】
本実施の形態においても、実施の形態1と同様に、第1パッシベーション膜309及び
第2パッシベーション膜312としては、窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、酸化窒
化シリコン膜、窒化アルミニウム膜、窒化酸化アルミニウム膜もしくは酸化窒化アルミニ
ウム膜を用いることができる。また、これらの膜を少なくとも一部に含む積層膜とするこ
とも可能である。また、直径φ1は、2〜10μm(好ましくは3〜5μm)とし、直径
φ2は、1〜5μm(好ましくは2〜3μm)とすれば良く、φ1>φ2の関係を満たせ
ば良い。なお、第1開口部311の断面形状については、〔課題を解決するための手段〕
で詳細に説明したのでここでは省略するが、その内壁面がなだらかな曲面を形成し、連続
的に変化する曲率半径を有することが望ましい。具体的には、順番に3点の曲率半径R1
、R2、R3に注目した時、それぞれの曲率半径の関係は、R1<R2<R3となり、そ
の数値は3〜30μm(代表的には10〜15μm)となることが望ましい。また、第1
開口部311の底面において、感光性有機樹脂膜310と第1パッシベーション膜309
のなす角(接触角θ)が30°<θ<65°(代表的には40°<θ<50°)の範囲に
収まるようにすると良い。
【0073】
以上のように、本発明を実施するにあたって薄膜トランジスタの構造をトップゲート型
のみもしくはボトムゲート型のみに限定する必要はなく、あらゆる構造の薄膜トランジス
タに適用することができる。さらに、薄膜トランジスタに限らず、シリコンウェルを用い
て形成されたMOS構造のトランジスタに適用しても良い。
【0074】
〔実施の形態5〕 本実施の形態では、本発明を液晶表示装置に適用した例について説
明する。図13において、図13(A)は、液晶表示装置の一画素における上面図(ただ
し、画素電極を形成したところまで。)であり、図13(B)はその回路図であり、図1
3(C)、(D)はそれぞれA−A’もしくはB−B’における断面図に相当する図面で
ある。
【0075】
図13(A)、(B)に示すように、液晶表示装置の表示部は、ゲート配線851、デ
ータ配線852で囲まれた複数の画素をマトリクス配置で有し、各画素にはスイッチング
素子として機能するTFT(以下、スイッチング用TFTという。)853、容量部85
4及び液晶素子855が設けられている。図13(B)に示す回路図では、容量部854
及び液晶素子855の双方が定電位線856に接続されているが、同一電位に保持する必
要はなく、一方がコモン電位で他方がグラウンド電位(接地電位)であっても良い。また
、ここでは図示されていないが、画素電極857の上方に液晶層を設けることにより形成
することができる。なお、本実施の形態において、スイッチング用TFT853として、
マルチゲート構造のnチャネル型TFTを用いているが、pチャネル型TFTを用いても
良い。また、スイッチング用TFTのレイアウトは、実施者が適宜設定すれば良い。
【0076】
図13(C)の断面図には、スイッチング用TFT853及び容量部854が示されて
いる。801は基板であり、ガラス基板、セラミック基板、石英基板、シリコン基板もし
くはプラスチック基板(プラスチックフィルムを含む。)を用いることができる。また、
802は窒化酸化シリコン膜、803は酸化窒化シリコン膜であり、積層して下地膜とし
て機能させる。勿論、これらの材料に限定する必要はない。さらに、酸化窒化シリコン膜
803の上には、スイッチング用TFT853の活性層が設けられ、該活性層は、ソース
領域804、ドレイン領域805、LDD領域806a〜806d及びチャネル形成領域
807a、807bを有し、ソース領域804とドレイン領域805の間に、二つのチャ
ネル形成領域及び四つのLDD領域を有している。
【0077】
また、スイッチング用TFT853の活性層は、ゲート絶縁膜808に覆われ、その上
にゲート電極809a、809b及びゲート電極810a、810bが設けられている。
ゲート絶縁膜808は、本実施の形態では酸化窒化シリコン膜を用いる。また、ゲート電
極809a及び810aとしては、窒化タンタル膜を用い、ゲート電極809b及び81
0bとしては、タングステン膜を用いる。これらの金属膜は相互に選択比が高いため、エ
ッチング条件を選択することにより図13(B)に示すような構造とすることが可能であ
る。このエッチング条件については、本出願人による特開2001−313397号公報
を参照すれば良い。
【0078】
また、ゲート電極を覆う第1パッシベーション膜811として窒化シリコン膜もしくは
窒化酸化シリコン膜が設けられ、その上に感光性有機樹脂膜812(本実施の形態ではポ
ジ型感光性アクリル膜を用いる。)が設けられる。さらに、感光性有機樹脂膜812には
第1開口部(図1参照)を覆うように第2パッシベーション膜813が設けられ、第1開
口部の底面において第2開口部(図1参照)
が設けられる。本実施の形態では、第2パッシベーション膜813として窒化シリコン膜
もしくは窒化酸化シリコン膜を用いる。勿論、窒化アルミニウム膜や窒化酸化アルミニウ
ム膜等の他の窒化絶縁膜を用いることも可能である。
【0079】
また、データ配線852は、第1開口部を介してソース領域804に接続され、ドレイ
ン配線815は、第2開口部を介してドレイン領域805に接続される。ドレイン配線8
15は、容量部において保持容量を構成する電極として用いられると共に、画素電極85
7と電気的に接続される。なお、本実施の形態では、画素電極857として可視光に対し
て透明な酸化物導電膜(代表的には、ITO膜)を用いるが、これに限定されない。また
、これらデータ配線852及びドレイン配線815は、アルミニウムや銅といった低抵抗
な金属を主成分とする配線を他の金属膜で挟んだ構造やこれらの金属の合金膜を用いれば
良い。
【0080】
ドレイン配線815は、ゲート電極と同時に形成された(即ち、ゲート電極と同一面に
形成された)容量配線816に第1パッシベーション膜811及び第2パッシベーション
膜813を介して対向すると共に保持容量854aを形成している。さらに、容量配線8
16は、半導体膜817にゲート絶縁膜808を介して対向すると共に保持容量854b
を形成している。この半導体膜817は、ドレイン領域805と電気的に接続されている
ため、容量配線816に定電圧を印加することにより電極として機能する。このように、
容量部854は、保持容量854a及び854bを並列に接続した構成となるため、非常
に小さな面積で大容量を得られる。さらに、特に保持容量854aは、誘電体として、比
誘電率の高い窒化シリコン膜を用いているため、大きな容量を確保できる。
【0081】
以上の画素構成を有する液晶表示装置において、実際に液晶素子まで形成した例を図1
4に示す。図14(A)は、図13(C)に示した断面に相当する図面であり、画素電極
857上に、液晶素子855を形成した状態を示している。ドレイン配線815上には有
機樹脂からなるスペーサ821が設けられ、その上から配向膜822が設けられている。
スペーサ821及び配向膜822の形成順序は逆でも良い。さらに、別の基板(対向基板
)823上に金属膜でなる遮光膜824、酸化物導電膜からなる対向電極825及び配向
膜826を設けて、シール材(図示せず)を用いて配向膜822と配向膜826が向かい
合うように貼り合わせる。さらに、シール材に設けられた液晶注入口から液晶827を注
入し、液晶注入口を封止して液晶表示装置が完成する。なお、スペーサ821の形成以降
の工程は、一般的な液晶のセル組み工程を適用すれば良いので、特に詳細な説明は行わな
い。
【0082】
図14(A)に示した構造とした場合、光は、対向基板823側から入射し、液晶82
7で変調されて、基板801側から出射する。このとき、透過光は、層間絶縁膜に用いた
感光性有機樹脂膜812を透過することになるため、感光性有機樹脂膜812に対して脱
色処理を十分に行って、十分に透明にしておく必要がある。
【0083】
次に、図14(B)は、画素電極857の代わりに反射性を有する金属膜からなるドレ
イン配線831をそのまま利用した例であり、反射性を有する金属膜としては、アルミニ
ウム膜(アルミニウム合金膜を含む。)もしくは少なくとも表面に銀薄膜を有した導電膜
を用いることができる。その他の図14(A)と同一の符号を付してある部分は、説明を
省略する。図14(B)に示した構造とした場合、光は、対向基板823側から入射し、
液晶827で変調されて、再び対向基板823側から出射する。このとき、ドレイン配線
831の下方は光が透過することもないため、メモリ素子や抵抗素子等を設けても良いし
、感光性有機樹脂膜812が着色されていても構わない。そのため、設計の自由度が高く
、また製造工程を簡略化することもできるため、全体として製造コストの低減に寄与する
構造と言える。
【0084】
〔実施の形態6〕 本実施の形態では、図9に示した発光装置の全体の構成について、
図15を用いて説明する。図15は、薄膜トランジスタが形成された素子基板をシーリン
グ材によって封止することによって形成された発光装置の上面図であり、図15(B)は
、図9(A)のB−B’における断面図、図15(C)は、図15(A)
のA−A’における断面図である。
【0085】
基板401上には、画素部(表示部)402、該画素部402を囲むように設けられた
データ線駆動回路403、ゲート線駆動回路404a、404b及び保護回路405が配
置され、これらを囲むようにしてシール材406が設けられている。画素部402の構造
については、図10及びその説明を参照すれば良い。
シーリング材406としては、ガラス材、金属材(代表的にはステンレス材)、セラミッ
クス材、プラスチック材(プラスチックフィルムも含む)を用いることができるが、図1
0に示したように絶縁膜のみで封止することも可能である。また、EL素子からの光の放
射方向によっては、透光性材料を用いる必要がある。
【0086】
このシール材406は、データ線駆動回路403、ゲート線駆動回路404a、404
b及び保護回路405の一部に重畳させて設けても良い。そして、該シール材406を用
いてシーリング材407が設けられ、基板401、シール材406及びシーリング材40
7によって密閉空間408が形成される。シーリング材407には予め凹部の中に吸湿剤
(酸化バリウムもしくは酸化カルシウム等)
409が設けられ、上記密閉空間408の内部において、水分や酸素等を吸着して清浄な
雰囲気に保ち、EL層の劣化を抑制する役割を果たす。この凹部は目の細かいメッシュ状
のカバー材410で覆われており、該カバー材410は、空気や水分は通し、吸湿剤40
9は通さない。なお、密閉空間408は、窒素もしくはアルゴン等の希ガスで充填してお
けばよく、不活性であれば樹脂もしくは液体で充填することも可能である。
【0087】
また、基板401上には、データ線駆動回路403及びゲート線駆動回路404a、4
04bに信号を伝達するための入力端子部411が設けられ、該入力端子部411へはF
PC(フレキシブルプリントサーキット)412を介してビデオ信号等のデータ信号が伝
達される。入力端子部411の断面は、図15(B)
の通りであり、ゲート配線もしくはデータ配線と同時に形成された配線413の上に酸化
物導電膜414を積層した構造の入力配線とFPC412側に設けられた配線415とを
、導電体416を分散させた樹脂417を用いて電気的に接続してある。なお、導電体4
16としては、球状の高分子化合物に金もしくは銀といったメッキ処理を施したものを用
いれば良い。
【0088】
また、図15(C)において、点線で囲まれた領域418の拡大図を図15(D)に示
す。保護回路405は、薄膜トランジスタ419やコンデンサ420を組み合わせて構成
すれば良く、公知の如何なる構成を用いても良い。本発明は、コンタクトホールの改善と
同時に、フォトリソ工程を増加させることなく容量形成が可能である点を特徴としており
、本実施の形態では、その特徴を活かしてコンデンサ420を形成しているのである。な
お、薄膜トランジスタ419及びコンデンサ420の構造については、図10及びその説
明を参照すれば十分に理解できるので、ここでの説明は省略する。
【0089】
本実施の形態において、保護回路405は入力端子部411とデータ線駆動回路403
との間に設けられ、両者の間に突発的なパルス信号等の静電気が入った際に、該パルス信
号を外部へ逃がす役割を果たす。その際、まず瞬間的に入る高電圧の信号をコンデンサ4
20によって鈍らせ、その他の高電圧を薄膜トランジスタや薄膜ダイオードを用いて構成
した回路によって外部へと逃がすことができる。勿論、保護回路は、他の場所、例えば画
素部402とデータ線駆動回路403との間や画素部402とゲート線駆動回路404a
、404bの間などに設けても構わない。
【0090】
以上のように、本実施の形態では、本発明を実施するにあたって、入力端子部に設けら
れた静電気対策等の保護回路に用いられるコンデンサを同時形成する例を示しており、他
の実施の形態1〜5のいずれの構成とも組み合わせて実施することが可能である。
【0091】
〔実施の形態7〕 本発明の表示装置を表示部に用いた電子機器として、ビデオカメラ
、デジタルカメラ、ゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)、ナビゲー
ションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、オーディオコンポ等)、ノート型パー
ソナルコンピュータ、ゲーム機器、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話、携
帯型ゲーム機または電子書籍等)、記録媒体を備えた画像再生装置(具体的にはDigital
Versatile Disc(DVD)等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうるディスプレイを
備えた装置)などが挙げられる。それらの電子機器の具体例を図16に示す。
【0092】
図16(A)はテレビであり、筐体2001、支持台2002、表示部2003、スピ
ーカー部2004、ビデオ入力端子2005等を含む。本発明は表示部2003に適用す
ることができる。なお、パソコン用、TV放送受信用、広告表示用などの全ての情報表示
用のテレビが含まれる。
【0093】
図16(B)はデジタルカメラであり、本体2101、表示部2102、受像部210
3、操作キー2104、外部接続ポート2105、シャッター2106等を含む。本発明
は、表示部2102に適用することができる。
【0094】
図16(C)はノート型パーソナルコンピュータであり、本体2201、筐体2202
、表示部2203、キーボード2204、外部接続ポート2205、ポインティングマウ
ス2206等を含む。本発明は、表示部2203に適用することができる。
【0095】
図16(D)はモバイルコンピュータであり、本体2301、表示部2302、スイッ
チ2303、操作キー2304、赤外線ポート2305等を含む。本発明は、表示部23
02に適用することができる。
【0096】
図16(E)は記録媒体を備えた携帯型の画像再生装置(具体的にはDVD再生装置)
であり、本体2401、筐体2402、表示部A2403、表示部B2404、記録媒体
(DVD等)読み込み部2405、操作キー2406、スピーカー部2407等を含む。
表示部A2403は主として画像情報を表示し、表示部B2404は主として文字情報を
表示するが、本発明は表示部A、B2403、2404に適用することができる。なお、
記録媒体を備えた画像再生装置には家庭用ゲーム機器なども含まれる。
【0097】
図16(F)はゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)であり、本体
2501、表示部2502、アーム部2503を含む。本発明は、表示部2502に適用
することができる。
【0098】
図16(G)はビデオカメラであり、本体2601、表示部2602、筐体2603、
外部接続ポート2604、リモコン受信部2605、受像部2606、バッテリー260
7、音声入力部2608、操作キー2609、接眼部2610等を含む。本発明は、表示
部2602に適用することができる。
【0099】
図16(H)は携帯電話であり、本体2701、筐体2702、表示部2703、音声
入力部2704、音声出力部2705、操作キー2706、外部接続ポート2707、ア
ンテナ2708等を含む。本発明は、表示部2703に適用することができる。なお、表
示部2703は黒色の背景に白色の文字を表示することで携帯電話の消費電流を抑えるこ
とができる。
【0100】
以上の様に、本発明を実施して得た表示装置は、あらゆる電子機器の表示部として用い
ても良い。本発明により表示装置の動作性能の安定性を向上させ、かつ、回路設計におけ
る設計マージンの拡大を達成させることができるため、コストの低い表示装置を提供する
ことができ、電子機器の部品コストを低減することができる。なお、本実施の形態の電子
機器には、実施の形態1〜6に示したいずれの構成を有した表示装置を用いても良い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜トランジスタと、
前記薄膜トランジスタの上に設けられた第1窒化絶縁膜と、
前記第1窒化絶縁膜の上に設けられた感光性有機樹脂膜と、
前記感光性有機樹脂膜の上に設けられた第2窒化絶縁膜と、
前記第2窒化絶縁膜の上に設けられた電極または配線と、を有し、
前記感光性有機樹脂膜に設けられた第1開口部の内壁面が前記第2窒化絶縁膜に覆われており、
前記第1開口部の底面において前記第1窒化絶縁膜と前記第2窒化絶縁膜が接する領域を有し、
前記第1開口部の内側に、前記第1窒化絶縁膜及び前記第2窒化絶縁膜に設けられた第2開口部を有し、
前記第2開口部を介して前記薄膜トランジスタを構成する島状の半導体膜と前記電極または前記配線とが電気的に接続され、
前記感光性有機樹脂膜の表面の曲率半径は、前記第1開口部から離れるに従って連続的に長くなっていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
薄膜トランジスタと、
前記薄膜トランジスタの上に設けられた第1窒化絶縁膜と、
前記第1窒化絶縁膜の上に設けられた感光性有機樹脂膜と、
前記感光性有機樹脂膜の上に設けられた第2窒化絶縁膜と、
前記第2窒化絶縁膜の上に設けられた電極または配線と、を有し、
前記感光性有機樹脂膜に設けられた第1開口部の内壁面が前記第2窒化絶縁膜に覆われており、
前記第1開口部の底面において前記第1窒化絶縁膜と前記第2窒化絶縁膜が接する領域を有し、
前記第1開口部の内側に、前記第1窒化絶縁膜及び前記第2窒化絶縁膜に設けられた第2開口部を有し、
前記第2開口部を介して前記薄膜トランジスタを構成する島状の半導体膜と前記電極または前記配線とが電気的に接続され、
前記感光性有機樹脂膜の表面の曲率半径は、3〜30μmの範囲内で連続的に変化しており、前記第1開口部から離れるに従って連続的に長くなっていることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1または2において、前記第2窒化絶縁膜は、高周波放電によるスパッタ法で形成された窒化シリコン膜であることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一において、前記第2窒化絶縁膜の上に設けられ、前記電極または前記配線に電気的に接続されたEL素子を有し、
前記EL素子は、Liが添加された金属膜を一方の電極として有することを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3のいずれか一において、前記第2窒化絶縁膜の上に設けられ、前記電極または前記配線に電気的に接続されたEL素子を有し、
前記EL素子は、前記第2窒化絶縁膜の上に設けられ、前記電極または前記配線に電気的に接続された画素電極を有し、
前記画素電極の端部は前記感光性有機樹脂膜で覆われており、
前記感光性有機樹脂膜の表面は第3窒化絶縁膜で覆われていることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項5において、前記第3窒化絶縁膜は、高周波放電によるスパッタ法で形成された窒化シリコン膜であることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一において、
前記第1開口部の下端部における接触角(θ)は、30°<θ<65°を満たすことを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか一において、
前記第1開口部の直径φ1と、前記第2開口部の直径φ2とは、φ1>φ2の関係を満たすことを特徴とする半導体装置。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか一に記載の半導体装置を画素部に有する表示装置。
【請求項10】
請求項1乃至請求項8のいずれか一に記載の半導体装置を画素部に有する表示装置を表示部に用いたビデオカメラ、デジタルカメラ、ゴーグル型ディスプレイ、ナビゲーションシステム、音響再生装置、パーソナルコンピュータ、ゲーム機器、携帯情報端末、画像再生装置、テレビまたは携帯電話。
【請求項11】
薄膜トランジスタを覆うように第1窒化絶縁膜を形成し、
前記第1窒化絶縁膜上に感光性有機樹脂膜を形成し、
前記感光性有機樹脂膜に露光及び現像処理を施して、前記感光性有機樹脂膜に前記第1窒化絶縁膜の一部を露出する第1開口部を形成し、
前記感光性有機樹脂膜の上面及び前記第1開口部の内壁面を覆うように第2窒化絶縁膜を形成し、
前記第1窒化絶縁膜、及び前記第2窒化絶縁膜をエッチングして、前記第1開口部の内側に第2開口部を形成し、
前記第2開口部を介して前記薄膜トランジスタを構成する島状の半導体膜と電気的に接続する電極または配線を形成し、
前記感光性有機樹脂膜の表面の曲率半径は、前記第1開口部から離れるに従って連続的に長くなっていることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項12】
請求項11において、
前記感光性有機樹脂膜に前記第1開口部を形成した後に焼成処理を行い、
前記第1開口部を形成した後、前記焼成処理の前に、前記感光性有機樹脂膜の脱色処理を行うことを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項13】
請求項11または12において、前記第2窒化絶縁膜は、高周波放電によるスパッタ法で形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項14】
請求項11乃至請求項13のいずれか一において、
前記第1開口部の下端部における接触角(θ)は、30°<θ<65°を満たすことを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項15】
請求項11乃至請求項14のいずれか一において、
前記第1開口部の直径φ1と、前記第2開口部の直径φ2とは、φ1>φ2の関係を満たすことを特徴とする半導体装置の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−153890(P2010−153890A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−28349(P2010−28349)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【分割の表示】特願2009−140919(P2009−140919)の分割
【原出願日】平成15年4月9日(2003.4.9)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】