説明

真空処理装置

【課題】真空処理室において高温で処理された後に搬送されるウェハを微小異物や汚染が問題にならない温度に効率良く冷却できる真空処理装置を提供する。
【解決手段】試料を収納するカセットが設置されるカセット台と、大気搬送室と、該大気搬送室から搬送された試料を収納し大気圧雰囲気もしくは真空に切り替え可能なロードロック室と、該ロードロック室に連結された真空搬送室と、真空搬送された試料を処理する真空処理室と、を備える真空処理装置において、前記大気搬送室内に配置され、前記真空処理室で処理された後の高温の試料8を冷却する冷却部を備え、該冷却部は、試料8を載置し冷却液17の流路が設けられた試料台15と、試料8の搬入口側に配置され試料台15に向かって冷却用ガス10を吹き付けるガス吹き付け管11と、試料台15を境に前記搬入口の反対側に配置され、吹き付けられた冷却用ガス10を排気する排気口12と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空処理室とカセットとの間で、被処理基板(以下、ウェハ及び基板状の試料等を含んで、単に「ウェハ」という。)を搬送する真空処理装置に関するものである。特に、真空処理室で処理された高温のウェハをクーリングステーションにて冷却した後に、カセットへ戻す真空処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスを製造する工程の中には、高温で処理を必要とする成膜工程,アッシング工程などがある。これらの工程では、高温(約100℃〜800℃)で処理されたウェハを搬送しなければならない。このため、急激な温度変化による熱応力の集中でウェハ端面やウェハ裏面への傷により、ウェハ割れが発生したり、ウェハを収容するカセットがウェハにより持ち込まれた熱で過度に加熱されてしまい、カセットから有機系の脱ガスが発生し、ウェハへ脱ガスが付着したり、極端な場合はカセットを熱変形させてしまう問題がある。
【0003】
また、処理後のウェハは通常、処理前のウェハと同じカセットの収納部であるスロットへ収納される。収納されたウェハの温度、およびウェハへの付着物によっては、ウェハ表面から反応性の高いガスが放出される。この放出されたガスが、同じカセット内部に収納されている処理前のウェハへ付着することで、表面反応や気相反応等による微小異物としてウェハ表面やウェハ裏面へ付着し、異物やパターン欠陥を発生させたり、ガスレベルでの付着でも、汚染物質であれば電気的な歩留まり低下を発生させる要因になることがあり、問題となっている。これらの問題を解決するために、高温で処理されたウェハを複数支持可能な搬送ロボットに載置したまま、冷却機構内部へ搬送し、脱ガス処理および冷却を行うことが特許文献1に開示されている。また、特許文献2には、処理前ウェハと処理後ウェハを別々のカセットに分けて収納することで処理前ウェハへの異物を抑制すること、特許文献3では、カセットの出入り口に設けたガス噴射管から処理後のウェハに不活性ガスを吹き付け、ガス置換することにより、異物付着や自然酸化膜の形成を防止することが開示されている。また、特許文献4には、高温ウェハをクローズ型カセットが熱変形しない温度まで、予備真空室での真空中と大気中の2段階で冷却することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−280370号公報
【特許文献2】特開2007−95856号公報
【特許文献3】特開2009−88437号公報
【特許文献4】特開平11−102951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、真空処理室を有する真空処理装置において、上述の先行技術を適用して真空側で、高温ウェハをカセットが熱変形しない温度まで冷却してカセットに戻す場合、冷却に時間がかかり、処理済ウェハの搬送を遅延させるため、真空処理装置の処理効率を低下させる。また、近年、半導体デバイスの更なる微細化のため、半導体デバイスに対する、異物や金属汚染などの要求値もさらに厳しくなり、50nm以下の微小な異物の低減が必須となり、同時に処理前後のウェハへの微小異物付着やガス汚染の低減,抑制,回避も重要となってきている。これらの問題点は、真空中と大気中の2段階で冷却する真空処理装置と、主に大気中で冷却する真空処理装置のどちらでも共通の課題である。
【0006】
本発明は、これらの問題点に鑑みてなされたもので、真空処理室において高温で処理されたウェハを微小異物や汚染が問題にならない温度まで効率良く冷却できる真空処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、複数の試料が収納されたカセットが設置されるカセット台と、前記試料を搬送する大気搬送室と、前記大気搬送室から搬送された前記試料を収納し大気雰囲気もしくは真空雰囲気に切り替え可能なロック室と、前記ロックに連結された真空搬送室と、前記真空搬送室を介して搬送された前記試料を処理する真空処理室とを備える真空処理装置において、前記大気搬送室に配置され、少なくとも1つの前記真空処理室で処理された高温の前記試料を冷却する冷却部とを備え、前記冷却部は、前記高温の試料を載置し、冷却液流路が設けられた試料台と、前記試料が搬入出される搬入口側に配置され、前記試料台に向かってガスを吹き付けるガス吹き付け管と、前記試料台を境に前記搬入口の反対側に配置され、前記ガス吹き付け管から吹き付けられたガスを排気する排気口とを具備することを特徴とする真空処理装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の構成により、真空処理室において高温で処理されたウェハを効率良く冷却できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例1に係る真空処理装置構成を示した図である。
【図2】クーリングステーション6を側面から見た断面図である。
【図3】クーリングステーション6を正面から見た断面図である。
【図4】ステージ15の構成を説明する図である。
【図5】パージポスト11の設置場所を説明する図である。
【図6】パージポスト11の形状を説明する図である。
【図7】ウェハ8の温度とウェハ8の冷却時間の相関関係の図である。
【図8】ウェハ8表面からの放出ガス濃度測定の図である。
【図9】本発明の実施例2に係る真空処理装置構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施例1]
以下、本発明の第1の実施の形態について図1〜図8を用いて説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施例1に係る真空処理装置の構成を示した図である。また、本実施例では、真空処理室でアッシング処理を行う例で説明する。
【0012】
真空処理装置は、アッシング処理を行う複数のアッシングユニット1と、真空中でアッシングユニット1へのウェハ8の搬送等を行う第一の搬送ロボット2−2を備える真空搬送室2−1と、真空搬送室2−1に接続された第一の冷却機構であるクーリングユニット3と、ウェハ8を搬入出するために大気雰囲気もしくは真空雰囲気に切り替え可能なロック室4と、ロック室4からウェハを搬入出させるための第二の搬送ロボット5−2を備えた大気搬送ユニット5−1と、大気搬送ユニット5−1に連結され、第二の冷却機構であるクーリングステーション6と、大気搬送ユニット5−1内にウェハ8が収納されるカセット7が設置されるカセット台(図示せず)とから構成されている。
【0013】
アッシングユニット1にて約300℃の高温でアッシング処理されたウェハ8は、第一の搬送ロボット2−2により、第一の冷却機構であるクーリングユニット3で約100℃に冷却される。約100℃とは90℃から110℃の温度のことである。また、クーリングユニット3での冷却温度は、大気に晒された際、ウェハ8表面に大気中の水分が付着することを抑制し、かつ約300℃に加熱されたウェハ8をカセット7に戻せる温度に冷却するための時間が長時間化することにより、アッシングユニット1の処理効率が低下することを避けるために約100℃に設定した。約100℃まで冷却されたウェハ8は、第一の搬送ロボット2−2にてクーリングユニット3からロック室4へ搬送され、大気雰囲気にパージされた後、第二の搬送ロボット5−2にて、クーリングステーション6へと搬送される。
【0014】
クーリングステーション6内には、搬送されたウェハ8を収納し、冷却するためのスロット9が複数設けられている。各スロット9内には、冷媒が循環され、所望の温度に温調できる試料台であるステージ15がそれぞれ設けられている。第二の搬送ロボット5−2により搬送されたウェハ8はウェハ8が収納されていないスロット9内に収納され、ステージ15上で10〜70秒間の近接保持の状態にすることにより、30℃または常温(25℃)までウェハ8が冷却される。なお、冷却温度の30℃または常温(25℃)は、カセット7内にある処理前ウェハ8とほぼ同等の温度であり、カセット7内を処理前ウェハ8と処理後ウェハ8が混在した状態でも常に未処理のカセット7と同一環境となるようにするための温度である。また、近接保持とはウェハ8裏面とステージが接触しないように間隔を設けた状態であり、本実施例では真空吸着パッド18を設置することにより、近接保持を行った。近接保持を行うことにより、ウェハ8端面や裏面への傷を抑制できるため、ウェハ8割れを抑制できる。また、ウェハ8端面や裏面への異物及び汚染防止も可能となる。
【0015】
第二の冷却機構であるクーリングステーション6のウェハ8の搬入出口には、パージポスト11が設けられ、クーリングステーション6での冷却処理開始と共にパージポスト11からクリーンドライエアー10が各スロット9内へ吹き付けられ、パージポスト11の反対側でクーリングステーションの奥の下部に設けられた排気口12へと排気される。冷却処理開始は、ロット処理が開始される時のことであるが、ロット処理開始に限定されるものではなく、ステージ15にウェハ8が搬入された時や、アッシング処理が終了したウェハ8がロック室4に搬入された時でも良い。また、ロット処理とは、少なくとも1つのカセット7に収納されたウェハ8の全てあるいは予め処理が指定された枚数の処理を行うことである。
【0016】
その後、クーリングステーション6から大気搬送ユニット5−1内の第二の搬送ロボット5−2にて30℃または常温(25℃)まで冷却されたウェハ8が取り出され、カセット7へと収納され、ウェハ8の処理が完了する。上記の処理をカセット7内に予め収納されたウェハ8の全てのアッシング処理が終了するまで繰り返す。尚、上述した真空処理装置での冷却処理は、制御部30によって制御されている。
【0017】
上述した真空処理装置のような高温に加熱されたウェハ8を真空側と大気側での2段階の冷却により、アッシングユニット1でのアッシング処理効率を低下させることなく、急激な温度変化によるウェハ8への熱応力の集中を抑制でき、ウェハ8から持ち込まれる熱によるカセット7からの脱ガスによる汚染やカセット7の熱変形を防止できる。このため、効率的なアッシング処理と効率的な冷却処理を両立できる。
【0018】
図2,図3を用いてクーリングステーション6の構成を説明する。図2はクリーンステーション6を側面から見た断面図であり、図3はクーリングステーション6を正面から見た断面図である。クーリングステーション6は、高温で処理されたウェハを冷却するためのステージが設けられたスロット9と、ウェハから放出されるガスの除去、及び大気搬送ユニット5−1内とカセット7内へのウェハ8表面から放出される反応性の高いガスの流入防止のためのクリーンドライエアー10を噴出させるガス吹き付け管であるパージポスト11と、パージポスト11から噴出されるクリーンドライエアー10を排気させるための排気口12とから構成される。なお、クリーンドライエアー10以外に窒素ガス,アルゴンガス,ヘリウムガス等の不活性ガスを噴出させても良い。
【0019】
クーリングステーション6内に設置されるスロット9の数は、アッシングユニット1の数と同等数以上設け、アッシング処理効率及び第一の冷却機構であるクーリングユニットの冷却処理効率を低下させないような数となっている。また、それぞれのアッシングユニット1に対するスロットをそれぞれ割り当て、固定することを可能としたため、アッシングユニット1でアッシング処理され、汚染されたウェハ8が予め割り当てられたスロット以外には収納されないようにすることができる。このため、クロスコンタミネーション(
相互汚染)の防止が可能となった。本実施例では、アッシングユニット1が2つに対し、スロット9を4スロットとし、クーリングステーション6はスロット9を縦方向に重ねた構造とした。
【0020】
なお、各スロット9はそれぞれカバー13により、スロット9毎に仕切られている。このカバー13は、スロット9内でパージポスト11から吹き付けられたクリーンドライエアー10がスロット9内に滞留しないように、ウェハ8が搬入される正面側が開口した構造となっている。このような構造により、スロット9は、空間的に他のウェハ8とは隔絶(Isolation)されている。このため、上述のクリーンドライエアー10、もしくは窒素ガス,アルゴンガス,ヘリウムガス等の不活性ガスの噴出により、ウェハ8表面から発生したガス成分が他のウェハ8へ付着しないように大気搬送ユニット5−1の外へ排出することができる。
【0021】
また、ウェハ8の受渡し回数が増えると、大気搬送ユニット5−1の第二の搬送ロボット5−2に対するウェハ8の保持位置が経時的にずれて、ウェハ8をカセット7に収納する際に、カセット7のウェハ8の搬入出口やカセット7内のスロットと接触して、異物を発生させ、ウェハ8に異物を付着させ、極端な場合はウェハ8が割れたり、チッピングしたりする可能性がある。このため、第二の搬送ロボット5−2でクーリングステーション6からウェハ8を取り出した直後にウェハ8の位置を検出して、安全にカセット7にウェハ8を収納できるかの判定をするためのセンサーを以下のように設けた。
【0022】
図2,図3に示すように、クーリングステーション6のウェハ8の搬入出口には、ウェハ8の位置をモニタするために、上側の左右の位置に投光センサー14−1,下側の左右の位置に受光センサー14−2をそれぞれ2個ずつ設置し、受光センサー14−2が遮光されることで、ウェハ8の位置を検出し、ウェハ8の位置をモニタすることにより、ウェハ8割れなどの異常を防止するようにした。また、ウェハ8の搬入出時にウェハ8のずれが発生した場合は、冷却処理を即座に停止でき、ウェハ8の割れやカセット7等へのウェハ8の接触を回避,防止することができる。また、ウェハ8の搬入出時にウェハ8のずれが発生した場合は、ウェハ8を収納するための第二の搬送ロボット5−2の動作を補正したり、アライメント機構(図示せず)でウェハ8の位置ずれを補正して対処できる。
【0023】
図4を用いてウェハ8が近接保持により載置され、ウェハ8を冷却するステージ15について説明する。
【0024】
ステージ15は、大気搬送ユニット5−1内に設置された第二の搬送ロボット5−2のウェハ8を保持する保持部(図示せず)の形状と同じ形状に切り抜かれ、ステージ15内部にはウェハ8を冷却するための冷却液流路16が図4に示すように形成されており、冷却液流路16に冷却水17、例えば常温の水が循環することにより、所望の温度に冷却される。なお、冷却液流路16に流す冷媒は、温調器(図示せず)により温調された冷媒を用いても良い。温調器の冷媒を用いた場合は、冷媒の温度を任意に設定できるために、常温の水より高速の冷却が可能となる。
【0025】
またステージ15上でのウェハ8の冷却時間は、クーリングステーション6の冷却処理用のレシピ(冷却処理条件)のパラメータとして、任意の時間を入力できる。ステージ15の形状を第二の搬送ロボット5−2のウェハ8の保持部と同じ形状にすることで、従来から多用されているプッシャー機構によるウェハ8の受け渡し動作を排除でき、第二の搬送ロボット5−2から直接ステージ15へのウェハ8の受け渡しが可能となる。これにより、真空処理装置のコスト削減やスループットの向上にも寄与できる。
【0026】
また、ステージ15へウェハ8を載置する際、従来技術ではガイドなどを設けることにより、ウェハ8ずれを回避してきたが、近年、ガイドなどへウェハ8の外周部が接触することにより、ウェハ8の外周部からの異物発生が問題となっているため、本実施例ではウェハ8の外周部とウェハ8を保持するための保持部との接触を減らすために、ウェハ8を保持するためのガイドなどを排除したステージ構造を採用した。
【0027】
このため、パージポスト11から噴出されるクリーンドライエアー10の設定流量が調整不足であった場合、ステージ15内に搬送されたウェハ8が所定の載置位置からずれる場合がある。このウェハ8のずれを防止するために、ステージ15の表面でウェハ8の載置位置には、ウェハ8を吸着するための真空吸着パッド18を設置した。
【0028】
試料載置部である真空吸着パッド18は、例えば、フッ素ゴム,テフロン(登録商標),ポリイミド樹脂等の樹脂系材料からなり、図4に示すようにステージ15のウェハ8の載置位置の3箇所に0.5mmの高さで設置されている。上記の真空吸着パッド18を用いた真空吸着により、パージポスト11から噴き出されたクリーンドライエアー10の流量の影響を考えなくても、ウェハ8のずれを防止することができる。また、ウェハ8裏面とステージ15との接触面積を大幅に減らすことができるため、ウェハ8裏面への異物付着や汚染を防止することができる。また、上述の真空吸着は、手動操作での吸着のONとOFFの切り替えが可能な構造とした。
【0029】
図5にパージポスト11の設置場所および図6にパージポスト11の形状について示す。
【0030】
パージポスト11は、図4に示すようにクーリングステーション6へのウェハ8の搬入出口の左右で、第二の搬送ロボット5−2によるウェハ8の搬入出動作に干渉しない位置に設置されている。また、スロット9に対し、垂直に設置されている。
【0031】
次にパージポスト11の形状について説明する。パージポスト11は中空の円筒形状からなり、スロット9の4段分の高さと同じ長さであり、クリーンドライエアー10または窒素ガス,アルゴンガス,ヘリウムガス等の不活性ガスを噴出するための噴出口19が垂直方向を長手方向とすると長手方向と周方向にそれぞれ一様に設けられている。噴出口19の配置は、前述の配置に限定されるものでなく、長手方向には、ステージ15に対向した位置近傍に、周方向は、スロット9に対面する位置に設置されても良い。また、スロット9の高さは、4段分の高さに限定されるものではなく、スロットの段数に応じた高さである。また、スロット9の段数は真空処理室(本実施例ではアッシングユニット1)の数と同数またはそれ以上である。
【0032】
噴出口19からクリーンドライエアー10または窒素ガス,アルゴンガス,ヘリウムガス等の不活性ガスを各スロット9に向けて吹き付け(パージを行い)、ウェハ8から放出
されるガスをスロット9内に滞留させることなく、クーリングステーション6のウェハ8の搬入出口の反対側で、底面に設けられた排気口12へと押し出すことにより、ウェハ8の表面上に付着していたガスを排除でき、大気搬送ユニット5−1内またはカセット7内へのウェハ8表面からの放出ガスの流入を回避,防止できる。
【0033】
また、パージポスト11からクリーンドライエアー10、もしくは窒素ガス,アルゴンガス,ヘリウムガス等の不活性ガスを噴出させることにより、ウェハ8の冷却効果を高め、かつ、パージポスト11から排気口12へ積極的にクリーンドライエアー10もしくは不活性ガスを排気処理することにより、ウェハ8から放出されるガスを排除し、大気搬送ユニット5−1へのガスの逆流、およびクーリングステーション6のスロット9内に他のスロット9のウェハ8からの脱ガス流入を抑制することで、冷却処理後のウェハ8への影響を防止することができる。また、クーリングステーション6で、ウェハ8からの脱ガスが発生しない温度まで冷却してから、ウェハ8をカセット7に戻すので、同じウェハ8のカセット7内のアッシング処理前のウェハ8への微小異物付着を抑制することができる。
【0034】
図7に本願発明である真空処理装置を用い、ウェハ8の温度と冷却時間の相関関係について検証した結果を示す。
【0035】
アッシングユニット1において、シリコンのウェハ8を用い、アッシングステージ温度300℃で酸素ガスによる放電を60秒間実施した後、クーリングユニット3にて約100℃まで冷却させ、クーリングステーション6内のステージ15へと搬送し、ウェハ8をステージ15表面へ接触させた場合と近接保持させた場合と近接保持した状態でクリーンドライエアー10を吹き付けた場合について、シリコンのウェハ8の冷却時間とウェハ8温度の相関関係を検証した。
【0036】
クーリングステーション6での冷却評価条件はステージ15の温度は25℃設定(常温
)とし、ステージ15での冷却時間は70秒とした。なお、ウェハ8をステージ15表面に接触させた冷却評価については真空吸着パッド18を取り外した状態でシリコンのウェハ8の裏面がステージ15の全体と接触するようにして冷却評価を実施した。
【0037】
その結果、図7に示すように、ウェハ8をステージ15に接触させた場合(20)に比べ、近接保持させた場合(21)では冷却時間が長くなっている。また、近接保持させた状態でクリーンドライエアー10を吹き付けた場合(22)では、近接保持した場合(21)よりも冷却時間を改善でき、ウェハ8をステージ15に接触させた結果(20)へと近づけることができた。また、目視にてウェハ8裏面への傷を確認したが、ウェハ8裏面への傷も無いことが確認できた。この結果は、クリーンドライエアー10を吹き付けることにより、高温のウェハから発生するガスが排出され、クリーンドライエアー10の吹き付けによりウェハ8が冷却されたことによる。この検証結果により、本実施例の近接保持とクリーンドライエアー10によるパージによって、冷却性能とウェハ裏面への傷抑制が両立できることを実証できた。
【0038】
次に、上記のアッシングユニット1を用い、ウェハ8の温度によって、ウェハ8表面から放出されるガス濃度を測定した結果について説明する。
【0039】
レジストのウェハ8を使用し、アッシングユニット1にてアッシングステージ温度300℃で酸素ガスによる放電を60秒間実施した後、クーリングユニット3にて約100℃まで冷却し、カセット7内へ収納した場合と上記のようにクーリングユニットで約100℃まで冷却し、クーリングステーション6を使用して30℃以下まで冷却してカセット7内に収容した場合とのそれぞれでのカセット7内におけるレジストのウェハ8表面から放出されるガス濃度について測定を実施した。
【0040】
尚、上記の測定におけるクーリングステーション6での冷却条件の設定は、ステージ15の温度を25℃(常温)、ステージ15とウェハ8は近接保持で、冷却時間は70秒とし、パージポスト11からクリーンドライエアー10をウェハ8へ吹き付けた。
【0041】
測定の結果、図8に示すように、クーリングステーション6を使用せず、そのままカセット7内へレジストのウェハ8を収納した場合(23)では、レジストのウェハ8表面から放出されるガス濃度は高い結果となった。これに対し、クーリングステーション6内にて30℃付近まで十分に冷却を実施した場合(24)ではレジストのウェハ8表面から放出されるガス濃度は低い結果となった。
【0042】
この結果から、クーリングユニット3とクーリングステーション6を使用し、段階的にウェハ8の温度を冷却することにより、ウェハ8表面からの放出ガスやカセット7からの有機系ガスの脱ガスを抑制できる。
【0043】
次に、カセット7内でのアッシング処理前のウェハ8への50nm以下の異物付着について確認を実施した。異物評価の方法は、同一カセット7内の1から24段目にアッシングの連続処理を行うためのレジストのウェハ8を設置し、25段目に異物測定用シリコンのウェハ8を設置した。
【0044】
上述のガス濃度比較実験と同様に、1から24段目のレジストのウェハ8をアッシングユニット1において、アッシングステージ温度300℃で酸素ガスによる放電を60秒間実施し、クーリングユニット3で約100℃まで冷却した後、カセット7へ約100℃のまま収納する場合とクーリングステーション6にて30℃以下まで冷却し、カセット7へ収納する場合の2条件にて実施し、カセット7内で一定時間放置した後、25段目の異物測定用シリコンのウェハ8の異物増加数を確認した。
【0045】
その結果、クーリングステーション6で冷却を実施しない場合では、50nm以下の異物増加数3782個と多く、これに対し、クーリングステーション6で冷却を実施した場合は、50nm以下の異物増加数1061個と約3分の1まで異物を低減できた。
【0046】
この結果から、クーリングユニット3とクーリングステーション6を使用し、段階的にウェハ8の温度を冷却することにより、ウェハ8への異物付着を低減することができた。
【0047】
なお、本実施例では、真空処理室での処理は、アッシング処理の場合で説明したが、本実施例は、プラズマエッチング,CVD、上記以外の高熱処理においても有効であり、本実施例と同様な効果が得られる。
【0048】
[実施例2]
次に、本発明の第2の実施の形態に係る真空処理装置を説明する。
【0049】
第2の実施の形態に係る真空処理装置の構成は、第1の実施の形態に係る真空処理装置の構成と共通する構成を使用しているため、同様の構成の部分については、説明を省略し、同じ符号を使用する。
【0050】
実施例1では、クーリングユニット3とクーリングステーション6の両方を使用し、段階的にウェハ8の温度を冷却する実施例であったが、本実施例では、クーリングステーション6単独で冷却することを特徴とする。
【0051】
図9は、本実施例の真空処理装置の構成を示した図である。また、本実施例では、真空処理室でアッシング処理を行う例で説明する。
【0052】
真空処理装置は、アッシング処理を行う複数のアッシングユニット1と、真空中でアッシングユニット1へのウェハ8の搬送等を行う第一の搬送ロボット2−2を備える真空搬送室2−1と、ウェハ8を搬入出するために大気雰囲気もしくは真空雰囲気に切り替え可能なロック室4と、ロック室4からウェハを搬入出させるための第二の搬送ロボット5−2を備えた大気搬送ユニット5−1と、大気搬送ユニット5−1に連結され、冷却部であるクーリングステーション6と、大気搬送ユニット5−1内にウェハ8が収納されるカセット7が設置されるカセット台(図示せず)とから構成されている。
【0053】
アッシングユニット1にて約300℃の高温でアッシング処理されたウェハ8は、第一の搬送ロボット2−2により、ロック室4へ搬送され、大気雰囲気にパージされた後、第二の搬送ロボット5−2にて、クーリングステーション6へと搬送される。
【0054】
クーリングステーション6内には、搬送されたウェハ8を収納し、冷却するためのスロット9が複数設けられている。各スロット9内には、冷媒が循環され、所望の温度に保持できるステージ15がそれぞれ設けられている。第二の搬送ロボット5−2により搬送されたウェハ8はウェハ8が収納されていないスロット9内に収納され、ステージ15上で50〜200秒間の近接保持の状態にすることにより、30℃または常温(25℃)までウェハ8が冷却される。なお、冷却温度の30℃または常温(25℃)は、カセット7内にある処理前ウェハ8とほぼ同等の温度であり、カセット7内を処理前ウェハ8と処理後ウェハ8が混在した状態でも常に未処理のカセット7と同一環境となるようにするための温度である。また、近接保持とはウェハ8裏面とステージが接触しないように間隔を設けた状態であり、本実施例では真空吸着パッド18を設置することにより、近接保持を行った。近接保持を行うことにより、ウェハ8端面や裏面への傷を抑制できるため、ウェハ8割れを抑制できる。また、ウェハ8端面や裏面への異物及び汚染防止も可能となる。
【0055】
冷却部であるクーリングステーション6のウェハ8の搬入出口には、パージポスト11が設けられ、クーリングステーション6での冷却処理開始と共にパージポスト11からクリーンドライエアー10が各スロット9内へ吹き付けられ、パージポスト11の反対側でクーリングステーションの奥の下部に設けられた排気口12へと排気される。冷却処理開始は、ロット処理が開始される時のことであるが、ロット処理開始に限定されるものではなく、ステージ15にウェハ8が搬入された時や、アッシング処理が終了したウェハ8がロック室4に搬入された時でも良い。また、ロット処理とは、少なくとも1つのカセット7に収納されたウェハ8の全てあるいは予め処理が指定された枚数の処理を行うことである。
【0056】
その後、クーリングステーション6から大気搬送ユニット5−1内の第二の搬送ロボット5−2にて30℃または常温(25℃)まで冷却されたウェハ8が取り出され、カセット7へと収納され、ウェハ8の処理が完了する。上記の処理をカセット7内に予め収納されたウェハ8の全てのアッシング処理が終了するまで繰り返す。尚、上述した真空処理装置での冷却処理は、制御部31によって制御されている。
【0057】
上述した真空処理装置のように高温に加熱されたウェハ8をクーリングステーション6で30℃または常温(25℃)まで冷却した後にカセット7にウェハ8を収納するため、ウェハ8から持ち込まれる熱によるカセット7からの脱ガスによる汚染やカセット7の熱変形を防止できる。このため、効率的なアッシング処理と効率的な冷却処理を両立できる。また、ロック室4に冷却手段(図示せず)を設ければ、ロック室4とクーリングステーション6での2段階の冷却が可能となる。このため、クーリングステーション6のステージ15上での10〜70秒間の近接保持で、30℃または常温(25℃)までウェハ8を冷却することができるため、アッシングユニット1でのアッシング処理効率を低下させることなく、急激な温度変化によるウェハ8への熱応力の集中を抑制できる。また、本実施例のスロット9の段数は真空処理室(本実施例ではアッシングユニット1)の数と同数またはそれ以上であるが、さらにクーリングステーション6の冷却処理効率向上を図るため、スロット9の段数をカセット7に収納されるウェハ8の枚数と同数または、それ以上にしても良い。
【0058】
また、本実施例では、真空処理室がアッシング処理の例であったが、真空処理室がプラズマエッチング処理の場合、高温処理されてもウェハの温度は300℃まで上昇することはないため、アッシング処理時より、さらに冷却効果が望める。また、本実施例では、300℃のアッシング処理の例を説明したが、アッシング処理温度が300℃より低くければ低いほど、本実施例の効果は大きくなる。
【0059】
なお、本実施例では、真空処理室での処理は、アッシング処理の場合で説明したが、本実施例は、プラズマエッチング,CVD、上記以外の高熱処理においても有効であり、本実施例と同様な効果が得られる。また、本実施例の真空処理装置は、クーリングユニット3を備えていない真空処理装置のため、実施例1の真空処理装置より真空搬送室2−1に接続できる真空処理室を増やすことが可能である。このため、本実施例の真空処理装置は、実施例1の真空処理装置より、真空処理装置1台あたりのアッシング,プラズマエッチング,CVD等の高熱処理の効率を向上させることが可能となる。
【0060】
また、クーリングステーション6は、クーリングステーション6へのウェハ搬送手段とウェハを収納するカセットを載置するカセット載置手段を備えれば、他の処理装置での高温処理されたウェハを冷却するために、他の処理装置に本発明のクーリングステーション6を適用することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 アッシングユニット
2−1 真空搬送室
2−2 第一の搬送ロボット
3 クーリングユニット
4 ロック室
5−1 大気搬送ユニット
5−2 第二の搬送ロボット
6 クーリングステーション
7 カセット
8 ウェハ
9 スロット
10 クリーンドライエアー
11 パージポスト
12 排気口
13 カバー
14−1 投光センサー
14−2 受光センサー
15 ステージ
16 冷却液流路
17 冷却水
18 真空吸着パッド
19 噴出口
30,31 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の試料が収納されたカセットが設置されるカセット台と、前記試料を搬送する大気搬送室と、前記大気搬送室から搬送された前記試料を収納し大気雰囲気もしくは真空雰囲気に切り替え可能なロック室と、前記ロックに連結された真空搬送室と、前記真空搬送室を介して搬送された前記試料を処理する真空処理室とを備える真空処理装置において、
前記大気搬送室に配置され、少なくとも1つの前記真空処理室で処理された高温の前記試料を冷却する冷却部とを備え、
前記冷却部は、前記高温の試料を載置し、冷却液流路が設けられた試料台と、
前記試料が搬入出される搬入口側に配置され、前記試料台に向かってガスを吹き付けるガス吹き付け管と、前記試料台を境に前記搬入口の反対側に配置され、前記ガス吹き付け管から吹き付けられたガスを排気する排気口とを具備することを特徴とする真空処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の真空処理装置において、
前記冷却部へ前記試料を搬入出させる搬送ロボットを備え、
前記試料台は前記搬送ロボットの前記試料を保持する保持部と同形状にくり抜かれた箇所と、前記搬送ロボットによって搬入された試料を載置する試料載置部とを有し、
前記冷却部は、前記高温の試料を前記ステージに近接保持しながら冷却することを特徴とする真空処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−138540(P2012−138540A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291535(P2010−291535)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】