説明

半導体装置および当該半導体装置の作製方法

【課題】消費電力の増大を抑制し且つ微細化を達成した半導体装置および当該半導体装置の作製方法を提供する。また、安定した電気的特性が付与された、信頼性の高い半導体装置および当該半導体装置の作製方法を提供する。
【解決手段】酸化物半導体膜に電界で加速されたイオンを照射して、当該酸化物半導体膜の表面の平均面粗さを低減することにより、トランジスタのリーク電流の増大および消費電力の増大を抑制することができる。さらに、加熱処理を行って、酸化物半導体膜が当該酸化物半導体膜表面に垂直なc軸を有する結晶を含むように形成することにより、酸化物半導体膜の可視光や紫外光の照射による電気的特性の変化を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する発明は、半導体素子を利用した半導体装置、および当該半導体装置の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁表面を有する基板上に形成された半導体薄膜を用いてトランジスタを構成する技術が注目されている。該トランジスタは、集積回路(IC)や画像表示装置(表示装置)のような電子デバイスに広く応用されている。また、トランジスタに適用可能な半導体薄膜として、酸化物半導体等のワイドギャップ半導体を用いる技術が注目されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、In−Ga−Zn−O系酸化物で構成される、非晶質酸化物半導体膜が、薄膜トランジスタのチャネル形成領域に適用可能であることが確認されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−103957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さらなる高速化、低消費電力化そして高集積化を目指して、トランジスタは微細化の一途をたどっている。上述の酸化物半導体膜を用いたトランジスタもその例に漏れることなく、微細化を図り、高速化、低消費電力化、高集積化を達成することが求められている。
【0006】
しかし、トランジスタの微細化において、酸化物半導体膜の上面の凹凸は無視できないものである。特に、トップゲート型のトランジスタにおいては、酸化物半導体膜の上面の平坦性が低い場合、当該酸化物半導体膜の上面の凹凸によって、ゲート絶縁膜において、局所的に被覆性が低い部分が形成されてしまう恐れがある。ゲート絶縁膜に局所的に被覆性が低い部分が形成されることにより、トランジスタのリーク電流が増大し、当該トランジスタの消費電力が増大する危険性がある。そして、トランジスタの微細化が進み、ゲート絶縁膜の膜厚が薄くなるほどこの危険性は増大する。
【0007】
また、酸化物半導体膜は、可視光や紫外光が照射されることにより電気的特性が変化するおそれがあり、当該酸化物半導体膜を用いたトランジスタにとって電気的特性の変動の要因となり、半導体装置の信頼性を低下させることになる。
【0008】
そこで、開示する発明の一態様は、消費電力の増大を抑制し且つ微細化を達成した半導体装置および当該半導体装置の作製方法を提供することを課題の一とする。また、開示する発明の一態様は、安定した電気的特性が付与された、信頼性の高い半導体装置および当該半導体装置の作製方法を提供することを課題の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
開示する発明では、酸化物半導体膜に電界で加速されたイオンを照射して、当該酸化物半導体膜の表面の平均面粗さを低減する。これによって、当該酸化物半導体膜を用いたトランジスタのリーク電流の増大および消費電力の増大を抑制することができる。このとき、イオンとしては、当該酸化物半導体膜に含まれる元素と同種の元素からなるイオンを用いることが好ましく、当該酸化物半導体膜に含まれる最も原子番号の小さい元素と同種の元素からなるイオンを用いることがさらに好ましい。例えば、イオンとして酸素イオンを用いることが好ましい。さらに、開示する発明では、酸化物半導体膜に加熱処理を行って、酸化物半導体膜が当該酸化物半導体膜表面に垂直なc軸を有する結晶を含むように形成する。これによって、酸化物半導体膜の可視光や紫外光の照射による電気的特性の変化を抑制することができる。より具体的には、以下の作製方法とすることができる。
【0010】
開示する発明の一態様は、絶縁表面上に酸化物半導体膜を成膜し、酸化物半導体膜に酸素イオンを照射して、当該酸化物半導体膜の表面の平均面粗さを0.6nm以下0.1nm以上とし、酸化物半導体膜上にゲート絶縁膜を形成し、ゲート絶縁膜上に酸化物半導体膜と重畳してゲート電極を形成し、酸化物半導体膜に酸素イオンを照射した後で、酸化物半導体膜に加熱処理を行って、当該酸化物半導体膜表面に概略垂直なc軸を有する結晶を含む酸化物半導体膜を形成する半導体装置の作製方法である。
【0011】
上記において、イオン注入法を用いて酸素イオンを照射することが好ましい。また、イオンドーピング法を用いて酸素イオンを照射してもよい。また、プラズマ侵入イオン注入法を用いて酸素イオンを照射してもよい。また、酸素イオンを含むガスクラスターイオンビームを照射してもよい。
【0012】
開示する発明の他の一態様は、絶縁表面上に酸化物半導体膜を成膜し、酸化物半導体膜にフッ素イオンを照射して、当該酸化物半導体膜の表面の平均面粗さを0.6nm以下0.1nm以上とし、酸化物半導体膜上にゲート絶縁膜を形成し、ゲート絶縁膜上に酸化物半導体膜と重畳してゲート電極を形成し、酸化物半導体膜にフッ素イオンを照射した後で、酸化物半導体膜に加熱処理を行って、当該酸化物半導体膜からフッ素を脱離させ、且つ当該酸化物半導体膜表面に概略垂直なc軸を有する結晶を含む酸化物半導体膜を形成する半導体装置の作製方法である。
【0013】
上記において、イオン注入法を用いてフッ素イオンを照射することが好ましい。また、イオンドーピング法を用いてフッ素イオンを照射してもよい。また、プラズマ侵入イオン注入法を用いてフッ素イオンを照射してもよい。また、フッ素イオンを含むガスクラスターイオンビームを照射してもよい。
【0014】
開示する発明の他の一態様は、絶縁表面上に酸化物半導体膜を成膜し、酸化物半導体膜に酸素雰囲気下でプラズマ処理を行い、当該酸化物半導体膜の表面の平均面粗さを0.6nm以下0.1nm以上とし、酸化物半導体膜上にゲート絶縁膜を形成し、ゲート絶縁膜上に酸化物半導体膜と重畳してゲート電極を形成し、酸化物半導体膜に酸素雰囲気下でプラズマ処理を行った後で、酸化物半導体膜に加熱処理を行って、当該酸化物半導体膜表面に概略垂直なc軸を有する結晶を含む酸化物半導体膜を形成する半導体装置の作製方法である。
【0015】
上記において、結晶を含む酸化物半導体膜は、当該酸化物半導体膜の表面から5nmまでの深さに、当該酸化物半導体膜表面に概略垂直なc軸を有する結晶を含むことが好ましい。また、ゲート絶縁膜の膜厚を5nm以上15nm以下とすることが好ましい。
【0016】
開示する発明の他の一態様は、絶縁表面上に形成された酸化物半導体膜と、酸化物半導体膜上に形成されたゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜上に酸化物半導体膜と重畳して形成されたゲート電極と、を有し、酸化物半導体膜は、当該酸化物半導体膜の表面の平均面粗さが0.6nm以下0.1nm以上であり、且つ当該酸化物半導体膜表面に概略垂直なc軸を有する結晶を含む半導体装置である。
【0017】
上記において、結晶を含む酸化物半導体膜は、当該酸化物半導体膜の表面から5nmまでの深さに、当該酸化物半導体膜表面に概略垂直なc軸を有する結晶を含むことが好ましい。また、ゲート絶縁膜の膜厚を5nm以上15nm以下とすることが好ましい。
【0018】
なお、本明細書等において「上」や「下」の用語は、構成要素の位置関係が「直上」または「直下」であることを限定するものではない。例えば、「ゲート絶縁層上のゲート電極」の表現であれば、ゲート絶縁層とゲート電極との間に他の構成要素を含むものを除外しない。
【0019】
また、本明細書等において「電極」や「配線」という用語は、これらの構成要素を機能的に限定するものではない。例えば、「電極」は「配線」の一部として用いられることがあり、その逆もまた同様である。さらに、「電極」や「配線」という用語は、複数の「電極」や「配線」が一体となって形成されている場合なども含む。
【0020】
また、「ソース」や「ドレイン」の機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このため、本明細書においては、「ソース」や「ドレイン」という用語は、入れ替えて用いることができるものとする。
【0021】
なお、本明細書等において、「電気的に接続」には、「何らかの電気的作用を有するもの」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するもの」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に制限を受けない。
【0022】
例えば、「何らかの電気的作用を有するもの」には、電極や配線をはじめ、トランジスタなどのスイッチング素子、抵抗素子、インダクタ、キャパシタ、その他の各種機能を有する素子などが含まれる。
【0023】
なお、本明細書等において、平均面粗さ(Ra)とは、JISB0601:2001(ISO4287:1997)で定義されている算術平均粗さを、曲面に対して適用できるよう三次元に拡張したものであり、基準面から指定面までの偏差の絶対値を平均した値で表現される。
【0024】
平均面粗さ(Ra)は、指定面をZ=F(X,Y)で表すとき、基準面から指定面までの偏差の絶対値を平均した値で表現され、次の式で与えられる。
【0025】
【数1】

【0026】
ここで、指定面とは、粗さ計測の対象となる面であり、座標(X,Y,F(X,Y))(X,Y,F(X,Y))(X,Y,F(X,Y))(X,Y,F(X,Y))の4点で表される四角形の領域とする。
【0027】
また、指定面をXY平面に投影した長方形の面積をS、基準面の高さ(指定面の平均の高さ)をZとする。平均面粗さ(Ra)は原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)にて測定可能である。
【発明の効果】
【0028】
開示する発明の一態様によって、消費電力の増大を抑制し且つ微細化を達成した半導体装置および当該半導体装置の作製方法を提供することができる。また、開示する発明の一態様によって、安定した電気的特性が付与された、信頼性の高い半導体装置および当該半導体装置の作製方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一態様に係る半導体装置の作製工程を説明する断面図。
【図2】本発明の一態様に係る半導体装置の作製工程を説明する断面図。
【図3】本発明の一態様に係る半導体装置の作製工程を説明する断面図。
【図4】本発明の一態様に係る半導体装置の作製工程を説明する断面図。
【図5】本発明の一態様に係る半導体装置を説明する断面図。
【図6】本発明の一態様に係る半導体装置を示す断面図、平面図および回路図。
【図7】本発明の一態様に係る半導体装置を示す回路図。
【図8】本発明の一態様に係る半導体装置を示す回路図。
【図9】本発明の一態様に係る半導体装置を示すブロック図。
【図10】本発明の一態様に係る半導体装置を示すブロック図および回路図。
【図11】本発明の一態様に係る電子機器の外観図。
【図12】酸化物材料の構造を説明する図。
【図13】酸化物材料の構造を説明する図。
【図14】酸化物材料の構造を説明する図。
【図15】酸化物材料の構造を説明する図。
【図16】本発明の一実施例に係る試料の断面TEM像。
【図17】本発明の一実施例に係る試料の断面TEM像。
【図18】本発明の一実施例に係る試料のAFM像。
【図19】本発明の一実施例に係る試料の断面TEM像。
【図20】本発明の一実施例に係る試料のAFM像。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の実施の形態の一例について、図面を用いて以下に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態および詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する実施の形態および実施例において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。
【0031】
なお、図面等において示す各構成の、位置、大きさ、範囲などは、理解の簡単のため、実際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため、開示する発明は、必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。
【0032】
なお、本明細書等における「第1」、「第2」、「第3」などの序数は、構成要素の混同を避けるために付すものであり、数的に限定するものではないことを付記する。
【0033】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明に係る一態様として、酸化物半導体膜を用いたトランジスタおよび当該トランジスタの作製方法について図1を用いて説明する。
【0034】
図1は、半導体装置の構成の一形態である、トップゲート構造のトランジスタ100の作製工程を示す断面図である。
【0035】
以下、図1(A)乃至図1(E)を用いてトランジスタ100の作製工程について説明する。
【0036】
まず、図1(A)に示すように、基板51上に酸化物半導体膜55を形成する。酸化物半導体膜55は、基板51を加熱しながら、スパッタリング法、分子線エピタキシー法、原子層堆積法またはパルスレーザー蒸着法などを用いて形成することができる。酸化物半導体膜55の膜厚は、膜厚2nm以上200nm以下、好ましくは5nm以上100nm以下、より好ましくは5nm以上30nm以下とする。
【0037】
基板51に使用することができる基板に大きな制限はないが、絶縁表面を有することが好ましく、少なくとも、後の熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有していることが必要となる。例えば、アルミノシリケートガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラスなどのガラス基板、セラミック基板、石英基板、サファイア基板などを用いることができる。また、シリコンや炭化シリコンなどの単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウムなどの化合物半導体基板などを用いることもできる。さらには、シリコンなどの半導体基板の表面や金属材料よりなる導電性の基板の表面に絶縁層を形成したものを用いることもできる。
【0038】
なお、基板51と酸化物半導体膜55の間に下地絶縁膜を設けても良い。ここで、下地絶縁膜は、加熱により酸素の一部を放出する酸化物絶縁膜を用いて形成することが好ましい。加熱により酸素の一部が放出する酸化物絶縁膜としては、化学量論比を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜を用いることが好ましい。加熱により酸素の一部が放出する酸化物絶縁膜を下地絶縁膜に用いることで、後の工程で熱処理を行う際に酸化物半導体膜55に酸素を拡散させることができる。加熱により酸素の一部を放出する酸化物絶縁膜としては、代表的には、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化ハフニウム、酸化イットリウム等を用いることができる。このような酸素の拡散によって、下地絶縁膜上に形成される酸化物半導体膜55、および下地絶縁膜と酸化物半導体膜55との界面における酸素欠損を低減することが可能である。
【0039】
また、下地絶縁膜は、必ずしも酸素を含有させなくてもよく、窒化シリコン、窒化アルミニウムなどを用いて窒化物絶縁膜を形成してもよい。また、下地絶縁膜は、上記の酸化物絶縁膜と窒化物絶縁膜の積層構造としてもよく、その場合には窒化物絶縁膜上に酸化物絶縁膜を設けることが好ましい。下地絶縁膜として窒化物絶縁膜を用いることにより、アルカリ金属などの不純物を含むガラス基板を基板51として用いる場合、アルカリ金属などの酸化物半導体膜55への侵入を防止できる。リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属は、酸化物半導体に対して悪性の不純物であるために酸化物半導体膜中の含有量を少なくすることが好ましい。窒化物絶縁膜は、CVD法、スパッタリング法等で形成することができる。
【0040】
酸化物半導体膜55に用いる酸化物半導体としては、少なくともインジウム(In)あるいは亜鉛(Zn)を含むことが好ましい。特にInとZnを含むことが好ましい。また、該酸化物半導体を用いたトランジスタの電気特性のばらつきを減らすためのスタビライザーとして、それらに加えてガリウム(Ga)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてスズ(Sn)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてハフニウム(Hf)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてアルミニウム(Al)を有することが好ましい。
【0041】
また、他のスタビライザーとして、ランタノイドである、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)のいずれか一種あるいは複数種を有してもよい。
【0042】
本実施の形態では、酸化物半導体膜55をスパッタリング法により形成する。
【0043】
スパッタリング法に用いるターゲットとしては、例えば、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、二元系金属の酸化物であるIn−Zn系酸化物、Sn−Zn系酸化物、Al−Zn系酸化物、Zn−Mg系酸化物、Sn−Mg系酸化物、In−Mg系酸化物、In−Ga系酸化物、三元系金属の酸化物であるIn−Ga−Zn系酸化物(IGZOとも表記する)、In−Al−Zn系酸化物、In−Sn−Zn系酸化物、Sn−Ga−Zn系酸化物、Al−Ga−Zn系酸化物、Sn−Al−Zn系酸化物、In−Hf−Zn系酸化物、In−La−Zn系酸化物、In−Ce−Zn系酸化物、In−Pr−Zn系酸化物、In−Nd−Zn系酸化物、In−Sm−Zn系酸化物、In−Eu−Zn系酸化物、In−Gd−Zn系酸化物、In−Tb−Zn系酸化物、In−Dy−Zn系酸化物、In−Ho−Zn系酸化物、In−Er−Zn系酸化物、In−Tm−Zn系酸化物、In−Yb−Zn系酸化物、In−Lu−Zn系酸化物、四元系金属の酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn系酸化物、In−Hf−Ga−Zn系酸化物、In−Al−Ga−Zn系酸化物、In−Sn−Al−Zn系酸化物、In−Sn−Hf−Zn系酸化物、In−Hf−Al−Zn系酸化物を用いることができる。
【0044】
酸化物半導体としてIn−Ga−Zn−O系の材料を用いる場合、用いるターゲット中の金属元素の原子数比は、In:Ga:Zn=1:1:1、1:3:2、4:2:3、3:1:2、1:1:2、2:1:3、または3:1:4などとすればよい。このような原子数比のIn−Ga−Zn系酸化物やその組成の近傍の酸化物をターゲットとして用いることができる。また、ターゲットの組成比を上記のようにすることにより、多結晶または後述するCAAC(C Axis Aligned Crystal)が形成されやすくなる。
【0045】
また、酸化物半導体としてIn−Sn−Zn−O系の材料を用いる場合、用いるターゲット中の金属元素の原子数比は、In:Sn:Zn=1:1:1、2:1:3、1:2:2、または20:45:35などとすればよい。このような原子数比のIn−Sn−Zn系酸化物やその組成の近傍の酸化物をターゲットとして用いることができる。また、ターゲットの組成比を上記のようにすることにより、多結晶または後述するCAACが形成されやすくなる。
【0046】
酸化物半導体としてIn−Zn−O系の材料を用いる場合、用いるターゲット中の金属元素の原子数比は、In:Zn=50:1〜1:2(モル数比に換算するとIn:ZnO=25:1〜1:4)、好ましくはIn:Zn=20:1〜1:1(モル数比に換算するとIn:ZnO=10:1〜1:2)、さらに好ましくはIn:Zn=15:1〜1.5:1(モル数比に換算するとIn:ZnO=15:2〜3:4)とする。例えば、In−Zn−O系酸化物半導体の形成に用いるターゲットは、原子数比がIn:Zn:O=X:Y:Zのとき、Z>1.5X+Yとする。このような原子数比のIn−Zn−O系酸化物やその組成の近傍の酸化物をターゲットとして用いることができる。
【0047】
しかし、これらに限られず、必要とする半導体特性(移動度、しきい値、ばらつき等)に応じて適切な組成のものを用いればよい。また、必要とする半導体特性を得るために、キャリア密度や不純物濃度、欠陥密度、金属元素と酸素の原子数比、原子間結合距離、密度等を適切なものとすることが好ましい。
【0048】
例えば、In−Sn−Zn系酸化物では比較的容易に高い移動度が得られる。しかしながら、In−Ga−Zn系酸化物でも、バルク内欠陥密度を低減することにより移動度を上げることができる。
【0049】
なお、例えば、In、Ga、Znの原子数比がIn:Ga:Zn=a:b:c(a+b+c=1)である酸化物の組成が、原子数比がIn:Ga:Zn=A:B:C(A+B+C=1)の酸化物の組成の近傍であるとは、a、b、cが、
(a―A)+(b―B)+(c―C)≦r
を満たすことを言い、rは、例えば、0.05とすればよい。他の酸化物でも同様である。
【0050】
なお、スパッタリングガスは、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気、酸素雰囲気、希ガス及び酸素の混合ガスを適宜用いる。なお、希ガス及び酸素の混合ガスの場合、希ガスに対して酸素のガス比を高めることが好ましい。また、スパッタリングガスは、酸化物半導体膜への水素、水、水酸基、水素化物などの混入を防ぐために、水素、水、水酸基、水素化物などの不純物が十分に除去された高純度ガスを用いた雰囲気とすることが望ましい。
【0051】
スパッタリング法において、プラズマを発生させるための電源装置は、RF電源装置、AC電源装置、DC電源装置等を適宜用いることができる。
【0052】
なお、酸化物半導体膜を成膜する処理室は、リークレートを1×10−10Pa・m/秒以下とすることが好ましく、それによりスパッタリング法により成膜する際、膜中への不純物の混入を低減することができる。このように、酸化物半導体膜の成膜工程において、更に好ましくは酸化絶縁膜の成膜工程において、処理室の圧力、処理室のリークレートなどにおいて、不純物の混入を極力抑えることによって、酸化物半導体膜に含まれる水素を含む不純物の混入を低減することができる。また、酸化絶縁膜から酸化物半導体膜への水素などの不純物の拡散を低減することができる。
【0053】
なお、酸化物半導体膜55は、単結晶構造であってもよいし、非単結晶構造であってもよい。後者の場合、アモルファス構造でも、多結晶構造でもよい。また、アモルファス中に結晶性を有する部分を含む構造でも、非アモルファス構造でもよい。
【0054】
酸化物半導体膜55を非晶質構造とする場合は、酸化物半導体膜55を成膜する際に、基板の加熱を行わない、または基板温度を200℃未満、より好ましくは180℃未満として基板を加熱する。このように、酸化物半導体膜55を成膜することにより、酸化物半導体膜55を非晶質構造とすることができる。
【0055】
また、酸化物半導体膜55として、結晶化した部分を有する、CAAC−OS(C Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor)膜を用いてもよい。なお、CAAC−OS膜の詳細については後ほど説明を行う。
【0056】
酸化物半導体膜55をCAAC−OS膜とする場合は、酸化物半導体膜55を成膜する際に、基板温度が200℃を超えて700℃以下、好ましくは300℃を超えて500℃以下、より好ましくは400℃以上450℃以下となるように、基板を加熱する。このように、基板を加熱しながら酸化物半導体膜55を成膜することにより、酸化物半導体膜55をCAAC−OS膜とすることができる。
【0057】
しかしながら、このように形成された酸化物半導体膜55の表面は、平坦性が低く、凹凸が形成されているおそれがある。よって、酸化物半導体膜55を用いてトップゲート型トランジスタを作製した場合、酸化物半導体膜55上に接して形成されるゲート絶縁膜において局所的に被覆性が低い部分が形成されてしまう恐れがある。ゲート絶縁膜に局所的に被覆性が低い部分が形成されることにより、トランジスタのリーク電流が増大し、当該トランジスタの消費電力が増大する危険性がある。そして、トランジスタの微細化が進み、ゲート絶縁膜の膜厚が薄くなるほどこの危険性は増大する。
【0058】
そこで、図1(B)に示すように、酸化物半導体膜55に電界で加速されたイオン53(少なくともイオンを含めば良く、ラジカルまたは分子のいずれかを含んでいてもよい。)を照射して、酸化物半導体膜55の表面の平坦性を向上させる。ここで、酸化物半導体膜55の表面は平均面粗さが1nm未満、好ましくは0.6nm以下0.1nm以上、より好ましくは、0.5nm以下0.2nm以上となるようにする。
【0059】
イオン53としては、酸化物半導体膜55に含まれる元素と同種の元素からなるイオンを用いることが好ましく、酸化物半導体膜55に含まれる最も原子番号の小さい元素と同種の元素からなるイオンを用いることがさらに好ましい。例えば、イオン53として酸素イオンを用いれば良く、このとき酸素ラジカルまたは酸素分子が含まれていても構わない。
【0060】
なお、イオン53として酸化物半導体膜55に含まれる金属元素と同種の元素からなるイオンを用いる場合、イオン53の照射により酸化物半導体膜55に添加される金属元素を考慮して当該酸化物半導体膜55を成膜する際のターゲットの組成比を設定する必要がある。
【0061】
イオン53を照射して酸化物半導体膜55の平坦性を向上させるには、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマ侵入イオン注入法(PIII:Plasma Immersion Ion Implantation)などを用いることができる。また、イオン53を含むガスクラスターイオンビーム(GCIB:Gas Cluster Ion Beam)を照射して酸化物半導体膜55の平坦性を向上させても良い。
【0062】
本実施の形態において、イオン注入法とは、原料ガスをプラズマ化し、このプラズマに含まれるイオン種を引き出し、質量分離をして、所定の質量を有するイオン種を加速して、イオンビームとして、対象物に注入する方法である。
【0063】
また、本実施の形態において、イオンドーピング法とは、原料ガスをプラズマ化し、このプラズマに含まれるイオン種を引き出し、イオン種を質量分離せず、そのまま電界で加速して対象物に照射し、当該イオン種を構成する元素を対象物に含ませる方式を指す。
【0064】
また、本実施の形態において、プラズマ侵入イオン注入法とは、プラズマソースイオン注入法(PSII:Plasma Source Ion Implantation)またはプラズマベースイオン注入法(PBII:Plasma Based Ion Implantation)とも呼ばれる。この方法では、プラズマ中に対象物を配置して高電圧パルスを印加することにより、プラズマ中のイオンを対象物中に吸引加速する。プラズマは対象の全面を覆うように形成されるので、一方の面からだけでなく、3次元的にイオンの照射を行うことができる。
【0065】
また、ガスクラスターイオンビームとは、原子または分子などを多数集めて塊(クラスター)とし、これをイオン化して加速したものを指す。高圧のガスを真空中に噴出すると、断熱膨張により当該ガスは急激に冷却され、ガスクラスターが生成される。当該ガスクラスターをイオン化して電界をかけることでイオン化されたガスクラスターを加速させることができる。対象物に照射されたガスクラスターイオンは、基板に浅く添加される。また、一部が基板面に平行に飛散する。基板面に平行に飛散したガスクラスターイオンの一部により、基板上に形成されている凹凸を優先的に除去し、基板表面の平坦化を図ることができる。これをラテラルスパッタリング効果と呼ぶこともある。
【0066】
本実施の形態においては、イオン53として酸素イオンを用いたイオン注入法により、酸化物半導体膜55の表面の平坦性を向上させる。ここで、イオン注入法における加速電圧は5kV乃至100kVとし、ドーズ量は5.0×1014ions/cm乃至5.0×1016ions/cmとすることが好ましい。例えば、加速電圧10kV、ドーズ量1.0×1016ions/cmとすることができる。なお、イオン注入法における加速電圧やドーズ量などの条件はこれに限られるものではなく、酸化物半導体膜55の膜厚などに合わせて適宜設定すればよい。
【0067】
また、イオン53の照射による酸化物半導体膜55の平坦性の向上は、酸素雰囲気下でプラズマ処理をして行っても良い。当該プラズマ処理は、誘導結合型プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)方式、容量結合型プラズマ(CCP:Capacitively Coupled Plasma)方式、電子サイクロトン共鳴プラズマ(ECR:Electron Cyclotron Resonance)方式などで、酸素プラズマを用いて行うことが好ましい。本実施の形態では、ICP方式を用いてプラズマ処理を行うものとする。例えば、酸素流量75sccm、処理室内の圧力1.5Pa、基板温度70℃、処理時間60秒、RF電源周波数を13.56MHz、ICPパワー800W、バイアスパワー300Wとすることができる。なお、プラズマ処理の条件はこれに限られるものではなく、条件に合わせて適宜設定すればよい。
【0068】
以上の方法を用いて酸化物半導体膜55の表面の平坦性を向上させ、酸化物半導体膜55の平均面粗さを1nm未満、好ましくは0.6nm以下0.1nm以上、より好ましくは、0.5nm以下0.2nm以上となるようにする。
【0069】
このように酸化物半導体膜55の表面の平坦性を向上し、凹凸を低減することにより、酸化物半導体膜55を用いてトップゲート型トランジスタを作製した場合に、酸化物半導体膜55上に接して形成されるゲート絶縁膜において局所的に被覆性が低い部分が形成されてしまう危険性を低減することができる。これにより、トランジスタの微細化を図り、ゲート絶縁膜の膜厚を薄くしても、トランジスタのリーク電流が増大し、当該トランジスタの消費電力が増大することを防ぐことができる。つまり、消費電力の増大を抑制し且つ微細化を達成したトランジスタを作製することができる。
【0070】
また、以上の酸化物半導体膜55の表面の平坦性を向上させる方法においてイオン53として酸素イオンを用いた場合、酸化物半導体膜55に酸素イオンが添加される。これにより、酸化物半導体膜55中に酸素を供給し、酸化物半導体膜55中の酸素欠損を補填することもできる。また、酸化物半導体膜55中の格子間に酸素が含まれた場合も、後の工程で熱処理を行うことにより、当該酸素を用いて酸化物半導体膜55中の酸素欠損を補填することができる。
【0071】
また、本実施の形態においては、イオン53として酸化物半導体膜55に含まれる元素と同種の元素からなるイオンを照射して酸化物半導体膜55の平坦性を向上させたが、本実施の形態に開示する発明はこれに限られるものではなく、イオン53として酸化物半導体膜55に含まれる元素と異なる種の元素からなるイオンを照射してもよい。ただし、酸化物半導体膜55に含まれる元素と異なる種の元素は、酸化物半導体膜中において、不純物として振る舞うので、後の工程で、例えば熱処理などにより脱離させることができる元素であることが好ましい。例えば、イオン53としてフッ素イオンを照射することが好ましい。フッ素イオンの照射はイオン注入法、イオンドーピング法、プラズマ侵入イオン注入法などを用いることができる。また、フッ素イオンを含むガスクラスターイオンビームを照射して酸化物半導体膜55の平坦性を向上させても良い。また、フッ素イオンの代わりにヘリウムイオンを用いても良い。
【0072】
フッ素やヘリウムは熱処理を行うことにより、比較的容易に酸化物半導体膜55中から脱離させることができるので、酸化物半導体膜55の平坦性を向上する際に膜中に添加されても、不純物として酸化物半導体膜55中に残存することなく、脱離させることができる。
【0073】
なお、図1(A)に示す工程において、酸化物半導体膜55を単結晶構造や多結晶構造などの結晶性を有する構造とした場合、図1(B)に示すイオン53の照射で結晶性を有する構造が破壊される恐れがある。
【0074】
そこで、図1(C)に示すように、酸化物半導体膜55に熱処理を行って、膜表面に概略垂直なc軸を有する結晶を含む結晶性酸化物半導体膜59を形成する。
【0075】
当該熱処理は、250℃以上700℃以下、好ましくは400℃以上700℃以下、より好ましくは500℃以上700℃以下、さらに好ましくは550℃以上700℃以下の温度で熱処理を行う。これにより、上述のイオン53の照射により破壊された、酸化物半導体膜55の少なくとも一部を結晶化し、膜表面に概略垂直なc軸を有する結晶を含む結晶性酸化物半導体膜59を形成することができる。なお、当該熱処理は不活性ガス雰囲気下、酸素ガス雰囲気下または真空中で行うことができる。不活性ガス雰囲気としては、窒素、または希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン等)を主成分とする雰囲気であって、水、水素などが含まれない雰囲気を適用するのが望ましい。例えば、熱処理装置に導入する窒素や、ヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスの純度を、6N(99.9999%)以上、好ましくは7N(99.99999%)以上(すなわち、不純物濃度が1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とする。
【0076】
当該熱処理は、例えば、抵抗発熱体などを用いた電気炉に基板51を導入し、窒素雰囲気下、650℃、1時間の条件で行うことができる。
【0077】
また、熱処理装置は電気炉に限られず、加熱されたガスなどの媒体からの熱伝導、または熱輻射によって、被処理物を加熱する装置を用いても良い。例えば、LRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置等のRTA(Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置である。GRTA装置は、高温のガスを用いて熱処理を行う装置である。
【0078】
また、このような熱処理を行うことにより、結晶性酸化物半導体膜59中に含まれる水素原子を含む物質をさらに除去し、結晶性酸化物半導体膜59の構造を整え、エネルギーギャップ中の欠陥準位を低減することができる。このように、結晶性酸化物半導体膜59に含まれる水素や水を除去することから、当該熱処理を脱水化または脱水素化とも呼ぶこともできる。なお、脱水化または脱水素化の熱処理は、必ずしも結晶性酸化物半導体膜59を形成する熱処理と兼ねる必要はない。結晶性酸化物半導体膜59を形成する熱処理の前に行っても良いし、結晶性酸化物半導体膜59を形成した後に行っても良い。ただし、結晶性酸化物半導体膜59を形成する前に、脱水化または脱水素化を行う場合は、酸化物半導体膜55中に結晶が形成されない程度の温度で行うことが好ましい。
【0079】
結晶性酸化物半導体膜59は、結晶性酸化物半導体膜59の表面に概略垂直なc軸を有する結晶を含み、CAAC−OS膜とも呼ばれる。なお、本明細書等において、「概略垂直」とは、厳密に垂直な場合だけでなく、例えば85°以上95°以下の範囲も含まれるものとする。
【0080】
CAAC−OS膜とは、c軸配向し、かつab面、表面または界面の方向から見て三角形状または六角形状の原子配列を有し、c軸においては、金属原子が層状または金属原子と酸素原子とが層状に配列しており、ab面(あるいは表面または界面)においては、a軸またはb軸の向きが異なる(c軸を中心に回転した)結晶を含む酸化物半導体膜のことである。
【0081】
広義に、CAAC−OSとは、非単結晶であって、そのab面に垂直な方向から見て、三角形もしくは六角形、または正三角形もしくは正六角形の原子配列を有し、かつc軸方向に垂直な方向から見て金属原子が層状または金属原子と酸素原子が層状に配列した相を含む酸化物半導体をいう。
【0082】
CAAC−OS膜は単結晶ではないが、非晶質のみから形成されているものでもない。つまり、CAAC−OS膜は非晶質相に結晶部を有する結晶−非晶質混相構造の酸化物半導体膜である、と言うこともできる。また、CAAC−OS膜は結晶化した部分(結晶部分)を含むが、1つの結晶部分と他の結晶部分の境界を明確に判別できないこともある。例えば、透過型電子顕微鏡(TEM:transmission electron microscope)による観察像では、CAAC−OS膜に含まれる非晶質部分と結晶部分との境界は明確ではない。また、TEMによってCAAC−OS膜には粒界(グレインバウンダリーともいう。)は確認できない。そのため、CAAC−OS膜は、粒界に起因する電子移動度の低下が抑制される。
【0083】
CAAC−OS膜を構成する酸素の一部は窒素で置換されてもよい。また、CAAC−OS膜を構成する個々の結晶部分のc軸は一定の方向(例えば、CAAC−OS膜が形成される基板面やCAAC−OS膜の表面や膜面、界面等に垂直な方向)に揃っていてもよい。あるいは、CAAC−OS膜を構成する個々の結晶部分のab面の法線は一定の方向(例えば、基板面、表面、膜面、界面等に垂直な方向)を向いていてもよい。
【0084】
CAAC−OS膜に含まれる結晶構造の一例について図12乃至図15を用いて詳細に説明する。なお、特に断りがない限り、図12乃至図15は上方向をc軸方向とし、c軸方向と直交する面をab面とする。なお、単に上半分、下半分という場合、ab面を境にした場合の上半分、下半分をいう。また、図12において、丸で囲まれたOは4配位のOを示し、二重丸で囲まれたOは3配位のOを示す。
【0085】
図12(A)に、1個の6配位のInと、Inに近接の6個の4配位の酸素原子(以下4配位のO)と、を有する構造を示す。ここでは、金属原子が1個に対して、近接の酸素原子のみ示した構造を小グループと呼ぶ。図12(A)の構造は、八面体構造をとるが、簡単のため平面構造で示している。なお、図12(A)の上半分および下半分にはそれぞれ3個ずつ4配位のOがある。図12(A)に示す小グループは電荷が0である。
【0086】
図12(B)に、1個の5配位のGaと、Gaに近接の3個の3配位の酸素原子(以下3配位のO)と、Gaに近接の2個の4配位のOと、を有する構造を示す。3配位のOは、いずれもab面に存在する。図12(B)の上半分および下半分にはそれぞれ1個ずつ4配位のOがある。また、Inも5配位をとるため、図12(B)に示す構造をとりうる。図12(B)に示す小グループは電荷が0である。
【0087】
図12(C)に、1個の4配位のZnと、Znに近接の4個の4配位のOと、を有する構造を示す。図12(C)の上半分には1個の4配位のOがあり、下半分には3個の4配位のOがある。または、図12(C)の上半分に3個の4配位のOがあり、下半分に1個の4配位のOがあってもよい。図12(C)に示す小グループは電荷が0である。
【0088】
図12(D)に、1個の6配位のSnと、Snに近接の6個の4配位のOと、を有する構造を示す。図12(D)の上半分には3個の4配位のOがあり、下半分には3個の4配位のOがある。図12(D)に示す小グループは電荷が+1となる。
【0089】
図12(E)に、2個のZnを含む小グループを示す。図12(E)の上半分には1個の4配位のOがあり、下半分には1個の4配位のOがある。図12(E)に示す小グループは電荷が−1となる。
【0090】
ここでは、複数の小グループの集合体を中グループと呼び、複数の中グループの集合体を大グループ(ユニットセルともいう。)と呼ぶ。
【0091】
ここで、これらの小グループ同士が結合する規則について説明する。図12(A)に示す6配位のInの上半分の3個のOは下方向にそれぞれ3個の近接Inを有し、下半分の3個のOは上方向にそれぞれ3個の近接Inを有する。図12(B)に示す5配位のGaの上半分の1個のOは下方向に1個の近接Gaを有し、下半分の1個のOは上方向に1個の近接Gaを有する。図12(C)に示す4配位のZnの上半分の1個のOは下方向に1個の近接Znを有し、下半分の3個のOは上方向にそれぞれ3個の近接Znを有する。この様に、金属原子の上方向の4配位のOの数と、そのOの下方向にある近接金属原子の数は等しく、同様に金属原子の下方向の4配位のOの数と、そのOの上方向にある近接金属原子の数は等しい。Oは4配位なので、下方向にある近接金属原子の数と、上方向にある近接金属原子の数の和は4になる。従って、金属原子の上方向にある4配位のOの数と、別の金属原子の下方向にある4配位のOの数との和が4個のとき、金属原子を有する二種の小グループ同士は結合することができる。例えば、6配位の金属原子(InまたはSn)が下半分の4配位のOを介して結合する場合、4配位のOが3個であるため、5配位の金属原子(GaまたはIn)または4配位の金属原子(Zn)のいずれかと結合することになる。
【0092】
これらの配位数を有する金属原子は、c軸方向において、4配位のOを介して結合する。また、このほかにも、層構造の合計の電荷が0となるように複数の小グループが結合して中グループを構成する。
【0093】
図13(A)に、In−Sn−Zn−O系の層構造を構成する中グループのモデル図を示す。図13(B)に、3つの中グループで構成される大グループを示す。なお、図13(C)は、図13(B)の層構造をc軸方向から観察した場合の原子配列を示す。
【0094】
図13(A)においては、簡単のため、3配位のOは省略し、4配位のOは個数のみ示し、例えば、Snの上半分および下半分にはそれぞれ3個ずつ4配位のOがあることを丸枠の3として示している。同様に、図13(A)において、Inの上半分および下半分にはそれぞれ1個ずつ4配位のOがあり、丸枠の1として示している。また、同様に、図13(A)において、下半分には1個の4配位のOがあり、上半分には3個の4配位のOがあるZnと、上半分には1個の4配位のOがあり、下半分には3個の4配位のOがあるZnとを示している。
【0095】
図13(A)において、In−Sn−Zn−O系の層構造を構成する中グループは、上から順に4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるSnが、4配位のOが1個ずつ上半分および下半分にあるInと結合し、そのInが、上半分に3個の4配位のOがあるZnと結合し、そのZnの下半分の1個の4配位のOを介して4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるInと結合し、そのInが、上半分に1個の4配位のOがあるZn2個からなる小グループと結合し、この小グループの下半分の1個の4配位のOを介して4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるSnと結合している構成である。この中グループが複数結合して大グループを構成する。
【0096】
ここで、3配位のOおよび4配位のOの場合、結合1本当たりの電荷はそれぞれ−0.667、−0.5と考えることができる。例えば、In(6配位または5配位)、Zn(4配位)、Sn(5配位または6配位)の電荷は、それぞれ+3、+2、+4である。従って、Snを含む小グループは電荷が+1となる。そのため、Snを含む層構造を形成するためには、電荷+1を打ち消す電荷−1が必要となる。電荷−1をとる構造として、図12(E)に示すように、2個のZnを含む小グループが挙げられる。例えば、Snを含む小グループが1個に対し、2個のZnを含む小グループが1個あれば、電荷が打ち消されるため、層構造の合計の電荷を0とすることができる。
【0097】
具体的には、図13(B)に示した大グループが繰り返されることで、In−Sn−Zn−O系の結晶(InSnZn)を得ることができる。なお、得られるIn−Sn−Zn−O系の層構造は、InSnZn(ZnO)(mは0または自然数。)とする組成式で表すことができる。
【0098】
また、このほかにも、四元系金属の酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn−O系酸化物や、三元系金属の酸化物であるIn−Ga−Zn−O系酸化物(IGZOとも表記する。)、In−Al−Zn−O系酸化物、Sn−Ga−Zn−O系酸化物、Al−Ga−Zn−O系酸化物、Sn−Al−Zn−O系酸化物や、In−Hf−Zn−O系酸化物、In−La−Zn−O系酸化物、In−Ce−Zn−O系酸化物、In−Pr−Zn−O系酸化物、In−Nd−Zn−O系酸化物、In−Sm−Zn−O系酸化物、In−Eu−Zn−O系酸化物、In−Gd−Zn−O系酸化物、In−Tb−Zn−O系酸化物、In−Dy−Zn−O系酸化物、In−Ho−Zn−O系酸化物、In−Er−Zn−O系酸化物、In−Tm−Zn−O系酸化物、In−Yb−Zn−O系酸化物、In−Lu−Zn−O系酸化物や、二元系金属の酸化物であるIn−Zn−O系酸化物、Sn−Zn−O系酸化物、Al−Zn−O系酸化物、Zn−Mg−O系酸化物、Sn−Mg−O系酸化物、In−Mg−O系酸化物や、In−Ga−O系酸化物、などを用いた場合も同様である。
【0099】
例えば、図14(A)に、In−Ga−Zn−O系の層構造を構成する中グループのモデル図を示す。
【0100】
図14(A)において、In−Ga−Zn−O系の層構造を構成する中グループは、上から順に4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるInが、4配位のOが1個上半分にあるZnと結合し、そのZnの下半分の3個の4配位のOを介して、4配位のOが1個ずつ上半分および下半分にあるGaと結合し、そのGaの下半分の1個の4配位のOを介して、4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるInと結合している構成である。この中グループが複数結合して大グループを構成する。
【0101】
図14(B)に3つの中グループで構成される大グループを示す。なお、図14(C)は、図14(B)の層構造をc軸方向から観察した場合の原子配列を示している。
【0102】
ここで、In(6配位または5配位)、Zn(4配位)、Ga(5配位)の電荷は、それぞれ+3、+2、+3であるため、In、ZnおよびGaのいずれかを含む小グループは、電荷が0となる。そのため、これらの小グループの組み合わせであれば中グループの合計の電荷は常に0となる。
【0103】
また、In−Ga−Zn−O系の層構造を構成する中グループは、図14(A)に示した中グループに限定されず、In、Ga、Znの配列が異なる中グループを組み合わせた大グループも取りうる。
【0104】
具体的には、図14(B)に示した大グループが繰り返されることで、In−Ga−Zn−O系の結晶を得ることができる。なお、得られるIn−Ga−Zn−O系の層構造は、InGaO(ZnO)(nは自然数。)とする組成式で表すことができる。
【0105】
n=1(InGaZnO)の場合は、例えば、図15(A)に示す結晶構造を取りうる。なお、図15(A)に示す結晶構造において、図12(B)で説明したように、Ga及びInは5配位をとるため、GaがInに置き換わった構造も取りうる。
【0106】
また、n=2(InGaZn)の場合は、例えば、図15(B)に示す結晶構造を取りうる。なお、図15(B)に示す結晶構造において、図12(B)で説明したように、Ga及びInは5配位をとるため、GaがInに置き換わった構造も取りうる。
【0107】
このようなCAACを含む結晶性酸化物半導体膜59は、好ましくは表面から2nm乃至5nm程度までの深さに、結晶性酸化物半導体膜59の表面に概略垂直なc軸を有する結晶を含む。よって、結晶性酸化物半導体膜59を用いてトップゲート型のトランジスタを形成する場合、結晶性酸化物半導体膜59の表面、つまり結晶性酸化物半導体膜59の表面に概略垂直なc軸を有する結晶を含む領域を、チャネル形成領域とすることができる。
【0108】
このように、結晶性酸化物半導体膜59の表面に概略垂直なc軸を有する結晶を含む結晶性酸化物半導体膜59は、一定以上の結晶性を有しており、全体が非晶質構造の酸化物半導体膜と比較して良好な結晶性を有するので、酸素欠損やダングリングボンド、あるいはダングリングボンドなどに結合する水素や、水、水酸基または水素化物等の水素を含む不純物が低減されている。これらの不純物は、酸化物半導体膜中でキャリアの供給源のように機能するため、当該酸化物半導体膜の電気伝導度が変動する原因となりうる。よって、これらの不純物が低減されている、結晶性酸化物半導体膜59は、電気的特性が安定しており、可視光や紫外光の照射による電気的特性の変化を抑制することができる。よって、安定した電気的特性が付与された、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0109】
さらに、上述の工程において、結晶性酸化物半導体膜59の表面の平坦性が向上されているので、当該表面に対して層状に、結晶性酸化物半導体膜59の表面に概略垂直なc軸を有する結晶が形成される。そしてc軸を有する結晶を含む結晶性酸化物半導体膜59の成長面が連続的に形成され、結晶性酸化物半導体膜59の結晶性が向上する。これに対して図1(A)に示すように表面の平坦性が低い酸化物半導体膜55の表面に対して、その表面に概略垂直なc軸を有する結晶を形成しても、凹凸の形成された表面に対して層状に結晶が形成されるので、成長面が不連続となり、酸化物半導体膜55の結晶性は低くなる。よって、表面に凹凸が形成された酸化物半導体膜55より、結晶性酸化物半導体膜59を用いたトランジスタの方が移動度の向上を図ることができる。
【0110】
なお、本実施の形態においては、酸化物半導体膜55の平坦化の直後に熱処理を行って結晶性酸化物半導体膜59の形成を行ったが、これに限られることなく、酸化物半導体膜55を平坦化した後ならば、いつ熱処理による結晶性酸化物半導体膜59の形成を行っても構わない。例えば、後述するゲート絶縁膜の形成後に行っても良いし、トランジスタ100の保護絶縁膜の形成後に行っても良い。
【0111】
また、酸化物半導体膜55を成膜する際にCAAC−OS膜としておくことで、上記熱処理によってCAAC−OS膜の結晶性酸化物半導体膜59を容易に形成することができるので、酸化物半導体膜55を成膜する段階でCAAC−OS膜としておくことが好ましい。
【0112】
また、フッ素またはヘリウムなどの酸化物半導体膜55に含まれる元素と異なる種の元素からなるイオンの照射によって酸化物半導体膜55の平坦性を向上させた場合、結晶性酸化物半導体膜59を形成する熱処理により、結晶性酸化物半導体膜59から当該元素を脱離させることができる。
【0113】
また、上記熱処理で酸化物半導体膜55を加熱した後、同じ炉に高純度の酸素ガス、高純度のNOガス、又は超乾燥エア(CRDS(キャビティリングダウンレーザー分光法)方式の露点計を用いて測定した場合の水分量が20ppm(露点換算で−55℃)以下、好ましくは1ppm以下、好ましくは10ppb以下の空気)を導入することが好ましい。特にこれらのガスには、水、水素などが含まれないことが好ましい。また、同じ炉に導入する酸素ガスまたはNOガスの純度を、6N以上好ましくは7N以上(即ち不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。酸素ガスまたはNOガスの作用によって、脱水化または脱水素化処理による不純物の排除工程で低減してしまった酸化物半導体を構成する主成分材料の一つである酸素を供給することができる。
【0114】
次に、結晶性酸化物半導体膜59を島状にエッチングし、結晶性酸化物半導体膜59に接するソース電極61aおよびドレイン電極61bを形成する。
【0115】
結晶性酸化物半導体膜59をエッチングするためのマスクは、フォトリソグラフィ工程、インクジェット法、印刷法等を適宜用いて作製することができる。また、結晶性酸化物半導体膜59のエッチングはウェットエッチングまたはドライエッチングを適宜用いることができる。
【0116】
ソース電極61aおよびドレイン電極61bは、アルミニウム、クロム、銅、タンタル、チタン、モリブデン、タングステン、マンガン、ジルコニウムから選ばれた金属元素、または上述した金属元素を成分とする合金か、上述した金属元素を組み合わせた合金などを用いて形成することができる。また、アルミニウム、チタン、タンタル、タングステン、モリブデン、クロム、ネオジム、スカンジウムから選ばれた金属元素を単数または複数組み合わせた合金膜、もしくは窒化膜を用いてもよい。また、ソース電極61aおよびドレイン電極61bは、単層構造でも、二層以上の積層構造としてもよい。例えば、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、Cu−Mg−Al合金膜上に銅膜を積層する2層構造、アルミニウム膜上にチタン膜を積層する二層構造、窒化チタン膜上にチタン膜を積層する二層構造、窒化チタン膜上にタングステン膜を積層する二層構造、窒化タンタル膜上にタングステン膜を積層する二層構造、チタン膜と、そのチタン膜上にアルミニウム膜を積層し、さらにその上にチタン膜を形成する三層構造などがある。
【0117】
また、ソース電極61aおよびドレイン電極61bは、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの透光性を有する導電性材料を適用することもできる。また、上記透光性を有する導電性材料と、上記金属元素の積層構造とすることもできる。
【0118】
ソース電極61aおよびドレイン電極61bは、スパッタリング法、CVD法、蒸着法等で導電膜を形成した後、該導電膜上にマスクを形成して導電膜をエッチングして形成する。導電膜上に形成するマスクは印刷法、インクジェット法、フォトリソグラフィ法を適宜用いることができる。また、ソース電極61aおよびドレイン電極61bは、印刷法またはインクジェット法により直接形成することもできる。
【0119】
ここでは、結晶性酸化物半導体膜59および基板51上に導電膜を成膜した後、当該導電膜を所定の形状にエッチングして、結晶性酸化物半導体膜59の上面および側面の少なくとも一部と接するソース電極61aおよびドレイン電極61bを形成する。また、このとき結晶性酸化物半導体膜59のソース電極61aおよびドレイン電極61bと重畳していない領域がエッチングされて、結晶性酸化物半導体膜59が凹状に形成される場合がある。
【0120】
なお、結晶性酸化物半導体膜59上に導電膜を形成した後、多階調フォトマスクを用いて、結晶性酸化物半導体膜59および導電膜のエッチングを行って、島状の結晶性酸化物半導体膜59、ソース電極61aおよびドレイン電極61bを形成しても良い。凹凸状のマスクを形成し、当該マスクを用いて結晶性酸化物半導体膜59および導電膜をエッチングした後、アッシングにより凹凸状のマスクを分離し、当該分離されたマスクにより導電膜を選択的にエッチングすることで、島状の結晶性酸化物半導体膜59、ソース電極61aおよびドレイン電極61bを形成することができる。当該工程により、フォトマスク数およびフォトリソグラフィ工程数を削減することができる。
【0121】
次に、図1(D)に示すように、結晶性酸化物半導体膜59およびソース電極61aおよびドレイン電極61b上にゲート絶縁膜63を形成する。
【0122】
ゲート絶縁膜63は、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、または酸化ガリウムを単層でまたは積層して形成することができる。
【0123】
ここで、上述の工程において、結晶性酸化物半導体膜59の平坦性が向上されており、当該膜の平均面粗さが1nm未満、好ましくは0.6nm以下0.1nm以上、より好ましくは、0.5nm以下0.2nm以上となるようにしているので、結晶性酸化物半導体膜59を用いたトランジスタの微細化において、ゲート絶縁膜63を容易に薄くすることができる。ゲート絶縁膜63の膜厚は、5nm以上200nm以下、より好ましくは5nm以上15nm以下とするとよい。結晶性酸化物半導体膜59の平坦性が向上されているので、ゲート絶縁膜63の膜厚をこのように薄くしても、局所的に被覆性が低い部分が形成されてしまう危険性を低減することができる。これにより、トランジスタのリーク電流が増大し、当該トランジスタの消費電力が増大することを防ぐことができる。つまり、消費電力の増大を抑制し且つ微細化を達成したトランジスタを作製することができる。
【0124】
また、ゲート絶縁膜63は、酸素を含むことが好ましい。さらに、ゲート絶縁膜63は、加熱により酸素の一部が放出する酸化物絶縁膜を用いて形成することが好ましい。加熱により酸素の一部が放出する酸化物絶縁膜としては、化学量論比を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜を用いることが好ましい。酸素を含む酸化物絶縁膜としては、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、または酸化ガリウムなどを用いることができる。加熱により酸素の一部が放出する酸化物絶縁膜を用いることで、後の工程で熱処理を行う際に結晶性酸化物半導体膜59に酸素を拡散させることができ、トランジスタ100の特性を良好にすることができる。
【0125】
また、ゲート絶縁膜63として、ハフニウムシリケート(HfSiO)、窒素が添加されたハフニウムシリケート(HfSi)、窒素が添加されたハフニウムアルミネート(HfAl)、酸化ハフニウム、酸化イットリウムなどのhigh−k材料を用いることでゲートリークを低減できる。さらには、high−k材料と、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、および酸化ガリウムのいずれか一以上との積層構造とすることができる。
【0126】
次に、図1(E)に示すように、ゲート絶縁膜63上で結晶性酸化物半導体膜59と重畳するようにゲート電極65を形成する。
【0127】
ゲート電極65は、アルミニウム、クロム、銅、タンタル、チタン、モリブデン、タングステン、マンガン、ジルコニウムから選ばれた金属元素、または上述した金属元素を成分とする合金か、上述した金属元素を組み合わせた合金などを用いて形成することができる。また、アルミニウム、チタン、タンタル、タングステン、モリブデン、クロム、ネオジム、スカンジウムから選ばれた金属元素を単数または複数組み合わせた合金膜、もしくは窒化膜を用いてもよい。また、ゲート電極65は、単層構造でも、二層以上の積層構造としてもよい。例えば、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜を積層する二層構造、窒化チタン膜上にチタン膜を積層する二層構造、窒化チタン膜上にタングステン膜を積層する二層構造、窒化タンタル膜上にタングステン膜を積層する二層構造、チタン膜と、そのチタン膜上にアルミニウム膜を積層し、さらにその上にチタン膜を積層する三層構造などがある。
【0128】
また、ゲート電極65は、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの透光性を有する導電性材料を適用することもできる。また、In−Ga−Zn−O系金属酸化物をターゲットとし、窒素を含む雰囲気中でスパッタリングすることにより得られる化合物導電体を用いても良い。また、上記透光性を有する導電性材料と、上記金属元素の積層構造とすることもできる。
【0129】
さらに、図1(E)に示すように、ゲート電極65上に保護膜として絶縁膜69を形成することが好ましい。
【0130】
絶縁膜69は、ゲート絶縁膜63と同様の絶縁膜を適宜用いて形成することができる。特に、絶縁膜69としてスパッタリング法で得られる酸化アルミニウム膜、窒化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜などを形成すると、外部からの水分やアルカリ金属の侵入を防止することが可能であり、結晶性酸化物半導体膜59の不純物の含有量を低減することができる。また、絶縁膜69を構成する絶縁膜は単数で用いても良いし、複数を積層させて用いても良い。
【0131】
なお、ゲート絶縁膜63の形成の後、または絶縁膜69の形成の後、不活性ガス雰囲気下、または酸素雰囲気下で熱処理を行ってもよい。熱処理の温度は、200℃以上450℃以下とするのが好ましく、250℃以上350℃以下とするのがより好ましい。このような熱処理を行うことによって、トランジスタの電気的特性のばらつきを軽減することができる。また、ゲート絶縁膜63または絶縁膜69が酸素を含む場合、結晶性酸化物半導体膜59に酸素を供給し、該結晶性酸化物半導体膜59の酸素欠損を補填することもできる。また、絶縁膜69に酸化アルミニウム膜などが含まれる場合、当該熱処理において、酸素が絶縁膜69から脱離することを抑制できるので、より効率的に結晶性酸化物半導体膜59に酸素を供給することができる。このように、上述の熱処理には酸素を供給する効果があるため、当該熱処理を、加酸化(加酸素化)などと呼ぶこともできる。
【0132】
以上のように、脱水化または脱水素化により水素などの不純物を除去し、加酸化により酸素欠損を補填することで、i型(真性半導体)またはi型に限りなく近い結晶性酸化物半導体膜59を形成することができ、トランジスタ100のオフ電流特性を極めて優れたものとすることができる。
【0133】
なお、本実施の形態では、結晶性酸化物半導体膜59を形成してから、加酸化の熱処理を行ったが、これに限られるものではなく、当該加酸化の熱処理において、同時に結晶性酸化物半導体膜59の形成を行っても良い。
【0134】
以上の工程により、結晶性酸化物半導体膜59をチャネル形成領域に有するトランジスタ100を作製することができる。図1(E)に示すように、トランジスタ100は、絶縁表面を有する基板51上に形成された結晶性酸化物半導体膜59と、結晶性酸化物半導体膜59と接するように形成されたソース電極61aおよびドレイン電極61bと、結晶性酸化物半導体膜59上に形成されたゲート絶縁膜63と、結晶性酸化物半導体膜59と重畳してゲート絶縁膜63上に形成されたゲート電極65と、ゲート電極65上に設けられた絶縁膜69とを有する。トランジスタ100は、i型(真性半導体)またはi型に限りなく近い結晶性酸化物半導体膜59を有するため、極めて優れた特性を示す。
【0135】
以上のように、酸化物半導体膜の表面の平坦性を向上し、凹凸を低減することにより、酸化物半導体膜を用いてトップゲート型トランジスタを作製した場合に、酸化物半導体膜上に接して形成されるゲート絶縁膜において局所的に被覆性が低い部分が形成されてしまう危険性を低減することができる。これにより、トランジスタの微細化を図り、ゲート絶縁膜の膜厚を薄くしても、トランジスタのリーク電流が増大し、当該トランジスタの消費電力が増大することを防ぐことができる。つまり、消費電力の増大を抑制し且つ微細化を達成したトランジスタを作製することができる。
【0136】
さらに、膜表面に概略垂直なc軸を有する結晶を含む酸化物半導体膜は、電気的特性が安定しており、可視光や紫外光の照射による電気的特性の変化を抑制することができる。よって、安定した電気的特性が付与された、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0137】
また、酸化物半導体膜の表面の平坦性が向上されているので、当該表面に対して層状に、膜表面に概略垂直なc軸を有する結晶が形成される。そしてc軸を有する結晶を含む酸化物半導体膜の成長面が連続的に形成され、酸化物半導体膜の結晶性が向上する。これにより、当該酸化物半導体膜を用いたトランジスタの移動度の向上を図ることができる。
【0138】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0139】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1に示すトランジスタとは異なる構成のトランジスタの作製方法について図2乃至図5を用いて説明する。
【0140】
図2(A)乃至図2(E)を用いてトランジスタ110の作製工程について説明する。
【0141】
まず、図2(A)に示すように、先の実施の形態と同様に、基板51上に酸化物半導体膜55を形成する。詳細については、先の実施の形態の図1(A)に関する記載を参酌することができる。
【0142】
次に、図2(B)に示すように、先の実施の形態と同様に、酸化物半導体膜55にイオン53(少なくともイオンを含めば良く、ラジカルまたは分子のいずれかを含んでいてもよい。)を照射して、酸化物半導体膜55の表面の平坦性を向上させる。詳細については、先の実施の形態の図1(B)に関する記載を参酌することができる。
【0143】
次に、図2(C)に示すように、酸化物半導体膜55を島状にエッチングし、当該島状の酸化物半導体膜55上にゲート絶縁膜63を形成する。ここで、酸化物半導体膜55のエッチング方法およびゲート絶縁膜の形成方法については、先の実施の形態の記載を参酌することができる。
【0144】
本実施の形態では、先の実施の形態とは異なり、酸化物半導体膜55の結晶化を行う前にゲート絶縁膜63の形成を行う。もちろん先の実施の形態で示したように、ゲート絶縁膜63の形成前に酸化物半導体膜55を加熱して結晶化を行っても良い。また、先の実施の形態で示したように、脱水化または脱水素化の熱処理も適宜行えばよい。
【0145】
次に、図2(D)に示すように、ゲート絶縁膜63上に酸化物半導体膜55と重畳してゲート電極65を形成し、ゲート電極65上に絶縁膜77を形成し、絶縁膜77およびゲート電極65の側面に接してサイドウォール絶縁膜75を形成する。ゲート電極65の形成方法については、先の実施の形態の記載を参酌することができる。絶縁膜77は、ゲート電極65が他の配線と短絡するのを防止するためのものであり、ゲート絶縁膜63と同様の方法で形成することができる。
【0146】
サイドウォール絶縁膜75は、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、窒化アルミニウムなどを用いればよく、積層または単層で設ける。なお、サイドウォール絶縁膜75として、ゲート絶縁膜63と同様に、加熱により酸素の一部が脱離する酸化絶縁膜を用いて形成してもよい。
【0147】
ここで、サイドウォール絶縁膜75の形成方法について説明する。
【0148】
まず、ゲート絶縁膜63およびゲート電極65上に、後にサイドウォール絶縁膜75となる絶縁膜を形成する。絶縁膜は、スパッタリング法、CVD法等により形成する。また、当該絶縁膜の厚さは特に限定はないが、ゲート電極65の形状に応じる被覆性を考慮して、適宜選択すればよい。それから、当該絶縁膜をエッチングすることによりサイドウォール絶縁膜75を形成する。該エッチングは、異方性の高いエッチングであり、サイドウォール絶縁膜75は、絶縁膜に異方性の高いエッチング工程を行うことでセルフアラインに形成することができる。
【0149】
次に、図2(D)に示すように、ゲート絶縁膜63のゲート電極65およびサイドウォール絶縁膜75と重畳する部分以外を選択的にエッチングしてゲート絶縁膜73を形成する。ここで、エッチング方法は、ドライエッチングとしても良いし、ウェットエッチングとしても良い。また、ゲート絶縁膜73は、サイドウォール絶縁膜75の形成の際に一緒に形成しても良い。
【0150】
それから、酸化物半導体膜55の上面および側面の少なくとも一部に接するソース電極61aおよびドレイン電極61bを形成する。ソース電極61aおよびドレイン電極61bの形成方法については、先の実施の形態の記載を参酌することができる。なお、ソース電極61aおよびドレイン電極61bは、サイドウォール絶縁膜75及びゲート絶縁膜73の側面と接するように、形成されることが好ましい。即ち、ソース電極61aおよびドレイン電極61bがサイドウォール絶縁膜75上に位置し、酸化物半導体膜55の露出部を全て覆っていることが好ましい。
【0151】
次に、図2(E)に示すように、ゲート電極65、サイドウォール絶縁膜75、ソース電極61aおよびドレイン電極61b上に保護膜として絶縁膜69を形成する。絶縁膜69の形成方法については、先の実施の形態の記載を参酌することができる。
【0152】
さらに、絶縁膜69の形成後に熱処理を行って、結晶性酸化物半導体膜59を形成することができる。さらに当該熱処理により、結晶性酸化物半導体膜59に酸素を補填する加酸化の熱処理も兼ねることができる。当該熱処理については、先の実施の形態の記載を参酌することができる。
【0153】
以上の工程により、結晶性酸化物半導体膜59をチャネル形成領域に有するトランジスタ110を作製することができる。
【0154】
図3(A)乃至図3(E)を用いてトランジスタ120の作製工程について説明する。
【0155】
まず、図3(A)に示すように、先の実施の形態と同様に、基板51上に酸化物半導体膜55を形成する。詳細については、先の実施の形態の図1(A)に関する記載を参酌することができる。
【0156】
次に、図3(B)に示すように、先の実施の形態と同様に、酸化物半導体膜55にイオン53(少なくともイオンを含めば良く、ラジカルまたは分子のいずれかを含んでいてもよい。)を照射して、酸化物半導体膜55の表面の平坦性を向上させる。詳細については、先の実施の形態の図1(B)に関する記載を参酌することができる。
【0157】
次に、図3(C)に示すように、酸化物半導体膜55を島状にエッチングし、当該島状の酸化物半導体膜55上にゲート絶縁膜63を形成する。詳細については、上述の図2(C)に関する記載を参酌することができる。
【0158】
次に、図3(D)に示すように、ゲート絶縁膜63上に酸化物半導体膜55と重畳してゲート電極65を形成し、ゲート電極65上に保護膜として絶縁膜69を形成する。ゲート電極65および絶縁膜69の形成方法については、先の実施の形態の記載を参酌することができる。
【0159】
さらに、絶縁膜69の形成後に熱処理を行って、結晶性酸化物半導体膜59を形成することができる。さらに当該熱処理により、結晶性酸化物半導体膜59に酸素を補填する加酸化の熱処理も兼ねることができる。当該熱処理については、先の実施の形態の記載を参酌することができる。
【0160】
次に、図3(E)に示すように、絶縁膜69上に平坦化絶縁膜として機能する絶縁膜79を形成する。絶縁膜79は、アクリル樹脂、ポリイミド、ベンゾシクロブテン系樹脂、ポリアミド、エポキシ樹脂等の、耐熱性を有する有機絶縁材料を用いることができる。また上記有機絶縁材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)シロキサン系樹脂、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス)等を用いることができる。なお、これらの材料で形成される絶縁膜を複数積層させることで、平坦化絶縁膜を形成してもよい。
【0161】
それから、絶縁膜79、絶縁膜69およびゲート絶縁膜63に結晶性酸化物半導体膜59に達する開口を形成し、絶縁膜79上に、当該開口を介して結晶性酸化物半導体膜59に接するソース電極71aおよびドレイン電極71bを形成する。ソース電極71aおよびドレイン電極71bは、ソース電極61aおよびドレイン電極61bと同様の方法で形成でき、先の実施の形態の記載を参酌することができる。
【0162】
以上の工程により、結晶性酸化物半導体膜59をチャネル形成領域に有するトランジスタ120を作製することができる。
【0163】
図4(A)乃至図4(E)を用いてトランジスタ130の作製工程について説明する。
【0164】
まず、図4(A)に示すように、基板51上にソース電極61aおよびドレイン電極61bを形成する。ソース電極61aおよびドレイン電極61bの形成方法については、先の実施の形態の記載を参酌することができる。
【0165】
次に、図4(A)に示すように、基板51、ソース電極61aおよびドレイン電極61b上に酸化物半導体膜55を形成する。詳細については、先の実施の形態の図1(A)に関する記載を参酌することができる。
【0166】
次に、図4(B)に示すように、先の実施の形態と同様に、酸化物半導体膜55にイオン53(少なくともイオンを含めば良く、ラジカルまたは分子のいずれかを含んでいてもよい。)を照射して、酸化物半導体膜55の表面の平坦性を向上させる。詳細については、先の実施の形態の図1(B)に関する記載を参酌することができる。ここで、酸化物半導体膜55の表面は平均面粗さが1nm未満、好ましくは0.6nm以下0.1nm以上、より好ましくは、0.5nm以下0.2nm以上となるようにする。ただし、ソース電極61aまたはドレイン電極61bと重畳する、酸化物半導体膜55の段差部分については除く。
【0167】
次に、図4(C)に示すように、酸化物半導体膜55に加熱処理を行って、結晶性酸化物半導体膜59を形成する。詳細については、先の実施の形態の図1(C)に関する記載を参酌することができる。また、先の実施の形態で示したように、脱水化または脱水素化の熱処理も適宜行えばよい。
【0168】
次に、図4(D)に示すように、結晶性酸化物半導体膜59を島状にエッチングし、当該島状の結晶性酸化物半導体膜59上にゲート絶縁膜63を形成する。詳細については、上述の図2(C)に関する記載を参酌することができる。
【0169】
次に、図4(E)に示すように、ゲート絶縁膜63上に結晶性酸化物半導体膜59と重畳してゲート電極65を形成し、ゲート電極65上に保護膜として絶縁膜69を形成する。ゲート電極65および絶縁膜69の形成方法については、先の実施の形態の記載を参酌することができる。
【0170】
さらに、絶縁膜69の形成後に熱処理を行って、結晶性酸化物半導体膜59に酸素を補填する加酸化の熱処理を行う。当該熱処理については、先の実施の形態の記載を参酌することができる。
【0171】
以上の工程により、結晶性酸化物半導体膜59をチャネル形成領域に有し、結晶性酸化物半導体膜59がソース電極61aおよびドレイン電極61bの上面および側面の一部と接するトランジスタ130を作製することができる。
【0172】
また、図5(A)乃至図5(C)に示すように、結晶性酸化物半導体膜59の一部にソース領域およびドレイン領域として機能する不純物領域を形成しても良い。ソース領域およびドレイン領域として機能する不純物領域は、導電率を変化させる不純物(ドーパントとも呼ばれる)を結晶性酸化物半導体膜59に添加することにより形成される。
【0173】
図5(A)に示すトランジスタ140は、図2(E)に示すトランジスタ110において、ゲート電極65をマスクとしてドーパントを添加したものである。結晶性酸化物半導体膜59のゲート電極65と重畳する領域にチャネル形成領域59cが形成され、チャネル形成領域と隣接して、ソース領域またはドレイン領域として機能する不純物領域59aおよび不純物領域59bが形成されている。他の構造については、トランジスタ110と同様なので、そちらを参酌することができる。
【0174】
図5(B)に示すトランジスタ150は、図3(E)に示すトランジスタ120において、ゲート電極65をマスクとしてドーパントを添加したものである。結晶性酸化物半導体膜59のゲート電極65と重畳する領域にチャネル形成領域59cが形成され、チャネル形成領域と隣接して、ソース領域またはドレイン領域として機能する不純物領域59aおよび不純物領域59bが形成されている。他の構造については、トランジスタ120と同様なので、そちらを参酌することができる。
【0175】
図5(C)に示すトランジスタ160は、図4(E)に示すトランジスタ130において、ゲート電極65をマスクとしてドーパントを添加したものである。結晶性酸化物半導体膜59のゲート電極65と重畳する領域にチャネル形成領域59cが形成され、チャネル形成領域と隣接して、ソース領域またはドレイン領域として機能する不純物領域59aおよび不純物領域59bが形成されている。他の構造については、トランジスタ130と同様なので、そちらを参酌することができる。
【0176】
以上のトランジスタ140、トランジスタ150およびトランジスタ160において、ソース領域およびドレイン領域として機能する一対の不純物領域59aおよび不純物領域59bに含まれるドーパントの濃度は、好ましくは、5×1018atoms/cm以上1×1022atoms/cm以下、より好ましくは5×1018atoms/cm以上5×1020atoms/cm未満とする。
【0177】
結晶性酸化物半導体膜59にドーパントを添加する方法として、イオンドーピング法またはイオン注入法を用いることができる。また、添加するドーパントとしては、15族元素およびホウ素とし、具体的にはリン、砒素、およびアンチモンならびにホウ素のいずれかから選択される一以上とする。
【0178】
なお、ソース領域またはドレイン領域として機能する不純物領域59aおよび不純物領域59bにおいては、結晶性酸化物半導体膜59の結晶構造が壊され、非晶質状態となる場合もある。
【0179】
以上のトランジスタ140、トランジスタ150およびトランジスタ160のように、ソース領域またはドレイン領域として機能する不純物領域59aおよび不純物領域59bを設けることによって、チャネル形成領域59cの端部にかかる電界を緩和させることができるので、当該トランジスタの短チャネル効果を抑制することができる。また、ソース領域またはドレイン領域として機能する不純物領域59aおよび不純物領域59bを設け、当該領域において、ソース電極またはドレイン電極と結晶性酸化物半導体膜59とを接続することにより、接触抵抗を低減してトランジスタの電気的特性の向上を図ることができる。
【0180】
以上に示すトランジスタ110乃至トランジスタ160は、先の実施の形態に示すトランジスタ100と同様に、酸化物半導体膜の表面の平坦性を向上し、凹凸を低減することにより、酸化物半導体膜を用いてトップゲート型トランジスタを作製した場合に、酸化物半導体膜上に接して形成されるゲート絶縁膜において局所的に被覆性が低い部分が形成されてしまう危険性を低減することができる。これにより、トランジスタの微細化を図り、ゲート絶縁膜の膜厚を薄くしても、トランジスタのリーク電流が増大し、当該トランジスタの消費電力が増大することを防ぐことができる。つまり、消費電力の増大を抑制し且つ微細化を達成したトランジスタを作製することができる。
【0181】
さらに、膜表面に概略垂直なc軸を有する結晶を含む酸化物半導体膜は、電気的特性が安定しており、可視光や紫外光の照射による電気的特性の変化を抑制することができる。よって、安定した電気的特性が付与された、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0182】
また、酸化物半導体膜の表面の平坦性が向上されているので、当該表面に対して層状に、膜表面に概略垂直なc軸を有する結晶が形成される。そしてc軸を有する結晶を含む酸化物半導体膜の成長面が連続的に形成され、酸化物半導体膜の結晶性が向上する。これにより、当該酸化物半導体膜を用いたトランジスタの移動度の向上を図ることができる。
【0183】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、本実施の形態に示す他の構成、方法、または他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0184】
(実施の形態3)
本実施の形態では、先の実施の形態に示す半導体装置の作製方法を用いて形成する半導体装置の一例として、記憶媒体(メモリ素子)を示す。本実施の形態では、先の実施の形態において示す半導体装置の作製方法で形成した、酸化物半導体を用いたトランジスタと、酸化物半導体以外の材料を用いたトランジスタとを同一基板上に形成する。
【0185】
図6は、半導体装置の構成の一例である。図6(A)には、半導体装置の断面を、図6(B)には、半導体装置の平面を、それぞれ示す。ここで、図6(A)は、図6(B)のC1−C2およびD1−D2における断面に相当する。また、図6(C)には、上記半導体装置をメモリ素子として用いる場合の回路図の一例を示す。図6(A)および図6(B)に示される半導体装置は、下部に第1の半導体材料を用いたトランジスタ500を有し、上部に先の実施の形態で示したトランジスタ100を有する。なお、トランジスタ100は、第2の半導体材料として酸化物半導体を用いている。本実施の形態では、第1の半導体材料を酸化物半導体以外の半導体材料とする。酸化物半導体以外の半導体材料としては、例えば、シリコン、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、炭化シリコン、またはガリウムヒ素等を用いることができ、単結晶半導体を用いるのが好ましい。他に、有機半導体材料などを用いてもよい。このような半導体材料を用いたトランジスタは、高速動作が容易である。一方で、酸化物半導体を用いたトランジスタはオフ電流が極めて小さいという特徴を有しており、その特性により長時間の電荷保持を可能とする。
【0186】
なお、本実施の形態においては、トランジスタ100を用いて記憶媒体を構成する例を示すが、トランジスタ100に代えて、先の実施の形態で示したトランジスタ110乃至トランジスタ160等を適用可能であることは、いうまでもない。
【0187】
図6におけるトランジスタ500は、半導体材料(例えば、シリコンなど)を含む基板400に設けられたチャネル形成領域416と、チャネル形成領域416を挟むように設けられた不純物領域420と、不純物領域420に接する金属化合物領域424と、チャネル形成領域416上に設けられたゲート絶縁層408と、ゲート絶縁層408上に設けられたゲート電極410と、を有する。
【0188】
半導体材料を含む基板400は、シリコンや炭化シリコンなどの単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウムなどの化合物半導体基板、SOI基板などを適用することができる。なお、一般に「SOI基板」は、絶縁表面上にシリコン半導体膜が設けられた構成の基板をいうが、本明細書等においては、絶縁表面上にシリコン以外の材料からなる半導体膜が設けられた構成の基板も含む。つまり、「SOI基板」が有する半導体膜は、シリコン半導体膜に限定されない。また、SOI基板には、ガラス基板などの絶縁基板上に絶縁層を介して半導体膜が設けられた構成のものが含まれるものとする。
【0189】
基板400上にはトランジスタ500を囲むように素子分離絶縁層406が設けられている。なお、高集積化を実現するためには、図6(A)および図6(B)に示すようにトランジスタ500がサイドウォール絶縁層を有しない構成とすることが望ましい。一方で、トランジスタ500の特性を重視する場合には、ゲート電極410の側面にサイドウォール絶縁層を設け、不純物濃度が異なる領域を含む不純物領域420を設けても良い。
【0190】
トランジスタ500はシリコン、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、炭化シリコン、またはガリウムヒ素等を用いて作製することができる。このようなトランジスタ500は、高速動作が可能であるという特徴を有する。このため、当該トランジスタを読み出し用のトランジスタとして用いることで、情報の読み出しを高速に行うことができる。
【0191】
トランジスタ500を覆うように絶縁膜57が設けられており、絶縁膜57の上に結晶性酸化物半導体膜59が設けられる。絶縁膜57は、先の実施の形態に記載した下地絶縁膜と対応するので、作製方法については先の実施の形態の記載を参酌することができる。
【0192】
なお、化学的機械的研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)などを用いて絶縁膜57を研磨してやることで、ゲート電極410の上面を絶縁膜57上に露出させることができる。
【0193】
また、トランジスタ100は先の実施の形態で示したように、結晶性酸化物半導体膜59、ソース電極61a、ドレイン電極61b、ゲート絶縁膜63およびゲート電極65aを含み、詳細については、先の実施の形態の記載を参酌することができる。また、トランジスタ100に代表される上部のトランジスタは、先の実施の形態に記載の方法で作製することができる。
【0194】
ここで、トランジスタ100に用いられている結晶性酸化物半導体膜は一定以上の結晶性を有しており、全体が非晶質構造の酸化物半導体膜と比較して良好な結晶性を有するので、酸素欠損に代表されるような欠陥や、ダングリングボンドなどに結合する水素などの不純物が低減されている。よって、これらの不純物が低減されている、結晶性を有する結晶性酸化物半導体膜は、電気伝導度が安定しており、可視光や紫外光などの照射に対してもより電気的に安定な構造を有する。このような結晶性酸化物半導体膜をトランジスタに用いることによって、安定した電気的特性を有する、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0195】
さらに、結晶性酸化物半導体膜59の表面の平坦性が向上されているので、当該表面に対して層状に、結晶性酸化物半導体膜59の表面に概略垂直なc軸を有する結晶が形成される。そしてc軸を有する結晶を含む結晶性酸化物半導体膜59の成長面が連続的に形成され、結晶性酸化物半導体膜59の結晶性が向上する。これにより、結晶性酸化物半導体膜59を用いたトランジスタ100の移動度の向上を図ることができる。
【0196】
ここで、ソース電極61aはゲート電極410と接するように設けられるので、トランジスタ500のゲート電極410とトランジスタ100のソース電極61aとが接続される。
【0197】
また、ゲート電極65aと同じ層の配線65bを、ゲート絶縁膜63を介してソース電極61a上に設けることにより、容量素子520を形成することができる。なお、容量が不要の場合は、容量素子520を設けない構成とすることも可能である。
【0198】
また、ゲート絶縁膜63、ゲート電極65aおよび配線65b上に、絶縁膜69および絶縁層152が形成される。絶縁膜69の詳細については先の実施の形態の記載を参酌することができる。絶縁層152は、スパッタ法やCVD法などを用いて形成することができる。また、酸化シリコン、酸窒化シリコン、窒化シリコン、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化ガリウム等の無機絶縁材料を含む材料を用いて形成することができる。
【0199】
また、絶縁層152上に配線156が形成されている。配線156は、ゲート絶縁膜63絶縁膜69および絶縁層152に設けられた開口に形成された電極154を介してドレイン電極61bと電気的に接続されている。
【0200】
電極154は、例えば、開口を含む領域にPVD法やCVD法などを用いて導電膜を形成した後、エッチング処理やCMPといった方法を用いて、上記導電膜の一部を除去することにより形成することができる。
【0201】
配線156は、スパッタ法をはじめとするPVD法や、プラズマCVD法などのCVD法を用いて導電層を形成した後、当該導電層をパターニングすることによって形成される。また、配線156は、ソース電極61aおよびドレイン電極61bと同様の材料で形成することができる。
【0202】
また、本実施の形態において示す半導体装置では、トランジスタ500とトランジスタ100を重畳させることで、集積度が十分に高められた半導体装置が実現される。
【0203】
図6(C)には、上記半導体装置をメモリ素子として用いる場合の回路図の一例を示す。図6(C)において、トランジスタ100のソース電極またはドレイン電極の一方と、容量素子520の電極の一方と、トランジスタ500のゲート電極と、は電気的に接続されている。また、第1の配線(1st Line:ソース線とも呼ぶ)とトランジスタ500のソース電極とは、電気的に接続され、第2の配線(2nd Line:ビット線とも呼ぶ)とトランジスタ500のドレイン電極とは、電気的に接続されている。また、第3の配線(3rd Line:第1の信号線とも呼ぶ)とトランジスタ100のソース電極またはドレイン電極の他方とは、電気的に接続され、第4の配線(4th Line:第2の信号線とも呼ぶ)と、トランジスタ100のゲート電極とは、電気的に接続されている。そして、第5の配線(5th Line:ワード線とも呼ぶ)と、容量素子520の電極の他方は電気的に接続されている。
【0204】
酸化物半導体を用いたトランジスタ100は、オフ電流が極めて小さいという特徴を有しているため、トランジスタ100をオフ状態とすることで、トランジスタ100のソース電極またはドレイン電極の一方と、容量素子520の電極の一方と、トランジスタ500のゲート電極とが電気的に接続されたノード(以下、ノードFG)の電位を極めて長時間にわたって保持することが可能である。そして、容量素子520を有することにより、ノードFGに与えられた電荷の保持が容易になり、また、保持された情報の読み出しが容易になる。
【0205】
半導体装置に情報を記憶させる場合(書き込み)は、まず、第4の配線の電位を、トランジスタ100がオン状態となる電位にして、トランジスタ100をオン状態とする。これにより、第3の配線の電位が、ノードFGに供給され、ノードFGに所定量の電荷が蓄積される。ここでは、異なる二つの電位レベルを与える電荷(以下、ロー(Low)レベル電荷、ハイ(High)レベル電荷という)のいずれかが与えられるものとする。その後、第4の配線の電位を、トランジスタ100がオフ状態となる電位にして、トランジスタ100をオフ状態とすることにより、ノードFGが浮遊状態となるため、ノードFGには所定の電荷が保持されたままの状態となる。以上のように、ノードFGに所定量の電荷を蓄積及び保持させることで、メモリセルに情報を記憶させることができる。
【0206】
トランジスタ100のオフ電流は極めて小さいため、ノードFGに供給された電荷は長時間にわたって保持される。したがって、リフレッシュ動作が不要となるか、または、リフレッシュ動作の頻度を極めて低くすることが可能となり、消費電力を十分に低減することができる。また、電力の供給がない場合であっても、長期にわたって記憶内容を保持することが可能である。
【0207】
記憶された情報を読み出す場合(読み出し)は、第1の配線に所定の電位(定電位)を与えた状態で、第5の配線に適切な電位(読み出し電位)を与えると、ノードFGに保持された電荷量に応じて、トランジスタ500は異なる状態をとる。一般に、トランジスタ500をnチャネル型とすると、ノードFGにHighレベル電荷が保持されている場合のトランジスタ500の見かけのしきい値Vth_Hは、ノードFGにLowレベル電荷が保持されている場合のトランジスタ500の見かけのしきい値Vth_Lより低くなるためである。ここで、見かけのしきい値とは、トランジスタ500を「オン状態」とするために必要な第5の配線の電位をいうものとする。したがって、第5の配線の電位をVth_HとVth_Lの中間の電位Vとすることにより、ノードFGに保持された電荷を判別できる。例えば、書き込みにおいて、Highレベル電荷が与えられていた場合には、第5の配線の電位がV(>Vth_H)となれば、トランジスタ500は「オン状態」となる。Lowレベル電荷が与えられていた場合には、第5の配線の電位がV(<Vth_L)となっても、トランジスタ500は「オフ状態」のままである。このため、第5の配線の電位を制御して、トランジスタ500のオン状態またはオフ状態を読み出す(第2の配線の電位を読み出す)ことで、記憶された情報を読み出すことができる。
【0208】
また、記憶させた情報を書き換える場合においては、上記の書き込みによって所定量の電荷を保持したノードFGに、新たな電位を供給することで、ノードFGに新たな情報に係る電荷を保持させる。具体的には、第4の配線の電位を、トランジスタ100がオン状態となる電位にして、トランジスタ100をオン状態とする。これにより、第3の配線の電位(新たな情報に係る電位)が、ノードFGに供給され、ノードFGに所定量の電荷が蓄積される。その後、第4の配線の電位をトランジスタ100がオフ状態となる電位にして、トランジスタ100をオフ状態とすることにより、ノードFGには、新たな情報に係る電荷が保持された状態となる。すなわち、ノードFGに第1の書き込みによって所定量の電荷が保持された状態で、第1の書き込みと同様の動作(第2の書き込み)を行うことで、記憶させた情報を上書きすることが可能である。
【0209】
本実施の形態で示すトランジスタ100は、酸化物半導体膜の表面の平坦性を向上し、凹凸を低減することにより、酸化物半導体膜上に接して形成されるゲート絶縁膜において局所的に被覆性が低い部分が形成されてしまう危険性を低減することができる。これにより、トランジスタの微細化を図り、ゲート絶縁膜の膜厚を薄くしても、トランジスタのリーク電流が増大し、当該トランジスタの消費電力が増大することを防ぐことができる。つまり、消費電力の増大を抑制し且つ微細化を達成したトランジスタを作製することができる。そして、このようなトランジスタを用いることで、消費電力が少なく、単位面積あたりの記憶容量の大きい半導体装置が得られる。
【0210】
また、高純度化され、真性化された結晶性酸化物半導体膜59を用いることで、トランジスタ100のオフ電流を十分に低減することができる。さらに、膜表面に概略垂直なc軸を有する結晶を含む酸化物半導体膜は、電気的特性が安定しており、可視光や紫外光の照射による電気的特性の変化を抑制することができる。このような結晶性酸化物半導体膜59をトランジスタ100に用いることにより、安定した電気的特性が付与された、信頼性の高いトランジスタとすることができる。そして、このようなトランジスタを用いることで、極めて長期にわたり記憶内容を保持することが可能で、信頼性の高い半導体装置が得られる。
【0211】
さらに、酸化物半導体膜の表面の平坦性が向上されているので、当該表面に対して層状に、膜表面に概略垂直なc軸を有する結晶が形成される。そしてc軸を有する結晶を含む酸化物半導体膜の成長面が連続的に形成され、酸化物半導体膜の結晶性が向上する。これにより、当該酸化物半導体膜を用いたトランジスタの移動度の向上を図ることができる。このようなトランジスタを用いることで、半導体装置の高速化を図ることができる。
【0212】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0213】
(実施の形態4)
本実施の形態では、開示する発明の一態様に係る半導体装置の応用例について、図7を用いて説明する。
【0214】
図7(A)および図7(B)は、図6(A)乃至図6(C)に示す半導体装置(以下、メモリセル550とも記載する。)を複数用いて形成される半導体装置の回路図である。図7(A)は、メモリセル550が直列に接続された、いわゆるNAND型の半導体装置の回路図であり、図7(B)は、メモリセル550が並列に接続された、いわゆるNOR型の半導体装置の回路図である。
【0215】
図7(A)に示す半導体装置は、ソース線SL、ビット線BL、第1信号線S1、複数本の第2信号線S2、複数本のワード線WL、複数のメモリセル550を有する。図7(A)では、ソース線SLおよびビット線BLを1本ずつ有する構成となっているが、これに限られることなく、ソース線SLおよびビット線BLを複数本有する構成としてもよい。
【0216】
各メモリセル550において、トランジスタ500のゲート電極と、トランジスタ100のソース電極またはドレイン電極の一方と、容量素子520の電極の一方とは、電気的に接続されている。また、第1信号線S1とトランジスタ100のソース電極またはドレイン電極の他方とは、電気的に接続され、第2信号線S2と、トランジスタ100のゲート電極とは、電気的に接続されている。そして、ワード線WLと、容量素子520の電極の他方は電気的に接続されている。
【0217】
また、メモリセル550が有するトランジスタ500のソース電極は、隣接するメモリセル550のトランジスタ500のドレイン電極と電気的に接続され、メモリセル550が有するトランジスタ500のドレイン電極は、隣接するメモリセル550のトランジスタ500のソース電極と電気的に接続される。ただし、直列に接続された複数のメモリセルのうち、一方の端に設けられたメモリセル550が有するトランジスタ500のドレイン電極は、ビット線と電気的に接続される。また、直列に接続された複数のメモリセルのうち、他方の端に設けられたメモリセル550が有するトランジスタ500のソース電極は、ソース線と電気的に接続される。
【0218】
図7(A)に示す半導体装置では、行ごとの書き込み動作および読み出し動作を行う。書き込み動作は次のように行われる。書き込みを行う行の第2の信号線S2にトランジスタ100がオン状態となる電位を与え、書き込みを行う行のトランジスタ100をオン状態にする。これにより、指定した行のトランジスタ500のゲート電極に第1の信号線S1の電位が与えられ、該ゲート電極に所定の電荷が与えられる。このようにして、指定した行のメモリセルにデータを書き込むことができる。
【0219】
また、読み出し動作は次のように行われる。まず、読み出しを行う行以外のワード線WLに、トランジスタ500のゲート電極に与えられた電荷によらず、トランジスタ500がオン状態となるような電位を与え、読み出しを行う行以外のトランジスタ500をオン状態とする。それから、読み出しを行う行のワード線WLに、トランジスタ500のゲート電極が有する電荷によって、トランジスタ500のオン状態またはオフ状態が選択されるような電位(読み出し電位)を与える。そして、ソース線SLに定電位を与え、ビット線BLに接続されている読み出し回路(図示しない)を動作状態とする。ここで、ソース線SL−ビット線BL間の複数のトランジスタ500は、読み出しを行う行を除いてオン状態となっているため、ソース線SL−ビット線BL間のコンダクタンスは、読み出しを行う行のトランジスタ500の状態(オン状態またはオフ状態)によって決定される。読み出しを行う行のトランジスタ500のゲート電極が有する電荷によって、トランジスタのコンダクタンスは異なるから、それに応じて、ビット線BLの電位は異なる値をとることになる。ビット線の電位を読み出し回路によって読み出すことで、指定した行のメモリセルから情報を読み出すことができる。
【0220】
図7(B)に示す半導体装置は、ソース線SL、ビット線BL、第1信号線S1、第2信号線S2、およびワード線WLをそれぞれ複数本有し、複数のメモリセル550を有する。各トランジスタ500のゲート電極と、トランジスタ100のソース電極またはドレイン電極の一方と、容量素子520の電極の一方とは、電気的に接続されている。また、ソース線SLとトランジスタ500のソース電極とは、電気的に接続され、ビット線BLとトランジスタ500のドレイン電極とは、電気的に接続されている。また、第1信号線S1とトランジスタ100のソース電極またはドレイン電極の他方とは、電気的に接続され、第2信号線S2と、トランジスタ100のゲート電極とは、電気的に接続されている。そして、ワード線WLと、容量素子520の電極の他方は電気的に接続されている。
【0221】
図7(B)に示す半導体装置では、行ごとの書き込み動作および読み出し動作を行う。書き込み動作は、上述の図7(A)に示す半導体装置と同様の方法で行われる。読み出し動作は次のように行われる。まず、読み出しを行う行以外のワード線WLに、トランジスタ500のゲート電極に与えられた電荷によらず、トランジスタ500がオフ状態となるような電位を与え、読み出しを行う行以外のトランジスタ500をオフ状態とする。それから、読み出しを行う行のワード線WLに、トランジスタ500のゲート電極が有する電荷によって、トランジスタ500のオン状態またはオフ状態が選択されるような電位(読み出し電位)を与える。そして、ソース線SLに定電位を与え、ビット線BLに接続されている読み出し回路(図示しない)を動作状態とする。ここで、ソース線SL−ビット線BL間のコンダクタンスは、読み出しを行う行のトランジスタ500の状態(オン状態またはオフ状態)によって決定される。つまり、読み出しを行う行のトランジスタ500のゲート電極が有する電荷によって、ビット線BLの電位は異なる値をとることになる。ビット線の電位を読み出し回路によって読み出すことで、指定した行のメモリセルから情報を読み出すことができる。
【0222】
なお、上記においては、各メモリセル550に保持させる情報量を1ビットとしたが、本実施の形態に示す半導体装置の構成はこれに限られない。トランジスタ500のゲート電極に与える電位を3以上用意して、各メモリセル550が保持する情報量を増加させても良い。例えば、トランジスタ500のゲート電極にあたえる電位を4種類とする場合には、各メモリセルに2ビットの情報を保持させることができる。
【0223】
本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0224】
(実施の形態5)
本実施の形態では、先の実施の形態に示すトランジスタを用いた半導体装置の例について、図8を参照して説明する。
【0225】
図8(A)には、いわゆるDRAM(Dynamic Random Access Memory)に相当する構成の半導体装置の一例を示す。図8(A)に示すメモリセルアレイ1120は、複数のメモリセル1130がマトリクス状に配列された構成を有している。また、メモリセルアレイ1120は、m本の第1の配線、およびn本の第2の配線を有する。なお、本実施の形態においては、第1の配線をワード線WLとよび、第2の配線をビット線BLとよぶ。
【0226】
メモリセル1130は、トランジスタ1131と、容量素子1132と、から構成されている。トランジスタ1131のゲート電極は、第1の配線(ワード線WL)と接続されている。また、トランジスタ1131のソース電極またはドレイン電極の一方は、第2の配線(ビット線BL)と接続されており、トランジスタ1131のソース電極またはドレイン電極の他方は、容量素子の電極の一方と接続されている。また、容量素子の電極の他方は容量線CLと接続され、一定の電位が与えられている。トランジスタ1131には、先の実施の形態に示すトランジスタ100乃至トランジスタ160が適用される。
【0227】
先の実施の形態で示したトランジスタは、高純度化され、真性化された結晶性酸化物半導体膜59を用いることで、トランジスタのオフ電流を十分に低減することができる。さらに、膜表面に概略垂直なc軸を有する結晶を含む酸化物半導体膜は、電気的特性が安定しており、可視光や紫外光の照射による電気的特性の変化を抑制することができる。このような結晶性酸化物半導体膜59をトランジスタ1131に用いることにより、安定した電気的特性が付与された、信頼性の高いトランジスタとすることができる。そして、このようなトランジスタを用いることで、いわゆるDRAMとして認識されている図8(A)に示す半導体装置を実質的な不揮発性メモリとして使用することが可能になる。
【0228】
図8(B)には、いわゆるSRAM(Static Random Access Memory)に相当する構成の半導体装置の一例を示す。図8(B)に示すメモリセルアレイ1140は、複数のメモリセル1150がマトリクス状に配列された構成とすることができる。また、メモリセルアレイ1140は、第1の配線(ワード線WL)、第2の配線(ビット線BL)および第3の配線(反転ビット線/BL)をそれぞれ複数本有する。
【0229】
メモリセル1150は、第1のトランジスタ1151、第2のトランジスタ1152、第3のトランジスタ1153、第4のトランジスタ1154、第5のトランジスタ1155、および第6のトランジスタ1156を有している。第1のトランジスタ1151と第2のトランジスタ1152は、選択トランジスタとして機能する。また、第3のトランジスタ1153と第4のトランジスタ1154のうち、一方はnチャネル型トランジスタ(ここでは、第4のトランジスタ1154)であり、他方はpチャネル型トランジスタ(ここでは、第3のトランジスタ1153)である。つまり、第3のトランジスタ1153と第4のトランジスタ1154によってCMOS回路が構成されている。同様に、第5のトランジスタ1155と第6のトランジスタ1156によってCMOS回路が構成されている。
【0230】
第1のトランジスタ1151、第2のトランジスタ1152、第4のトランジスタ1154、第6のトランジスタ1156は、nチャネル型のトランジスタであり、先の実施の形態において示したトランジスタを適用することができる。第3のトランジスタ1153と第5のトランジスタ1155は、pチャネル型のトランジスタであり、酸化物半導体以外の材料(例えば、単結晶シリコンなど)をチャネル形成領域に用いる。
【0231】
本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0232】
(実施の形態6)
酸化物半導体をチャネル形成領域に用いたトランジスタを少なくとも一部に用いてCPU(Central Processing Unit)を構成することができる。
【0233】
図9(A)は、CPUの具体的な構成を示すブロック図である。図9(A)に示すCPUは、基板1190上に、演算回路(ALU:Arithmetic logic unit)1191、ALUコントローラ1192、インストラクションデコーダ1193、インタラプトコントローラ1194、タイミングコントローラ1195、レジスタ1196、レジスタコントローラ1197、バスインターフェース(Bus I/F)1198、書き換え可能なROM1199、およびROMインターフェース(ROM I/F)1189を有している。基板1190は、半導体基板、SOI基板、ガラス基板などを用いる。ROM1199およびROM I/F1189は、別チップに設けても良い。勿論、図9(A)に示すCPUは、その構成を簡略化して示した一例にすぎず、実際のCPUはその用途によって多種多様な構成を有している。
【0234】
Bus I/F1198を介してCPUに入力された命令は、インストラクションデコーダ1193に入力され、デコードされた後、ALUコントローラ1192、インタラプトコントローラ1194、レジスタコントローラ1197、タイミングコントローラ1195に入力される。
【0235】
ALUコントローラ1192、インタラプトコントローラ1194、レジスタコントローラ1197、タイミングコントローラ1195は、デコードされた命令に基づき、各種制御を行なう。具体的にALUコントローラ1192は、ALU1191の動作を制御するための信号を生成する。また、インタラプトコントローラ1194は、CPUのプログラム実行中に、外部の入出力装置や、周辺回路からの割り込み要求を、その優先度やマスク状態から判断し、処理する。レジスタコントローラ1197は、レジスタ1196のアドレスを生成し、CPUの状態に応じてレジスタ1196の読み出しや書き込みを行なう。
【0236】
また、タイミングコントローラ1195は、ALU1191、ALUコントローラ1192、インストラクションデコーダ1193、インタラプトコントローラ1194、およびレジスタコントローラ1197の動作のタイミングを制御する信号を生成する。例えばタイミングコントローラ1195は、基準クロック信号CLK1を元に、内部クロック信号CLK2を生成する内部クロック生成部を備えており、クロック信号CLK2を上記各種回路に供給する。
【0237】
図9(A)に示すCPUでは、レジスタ1196に、記憶素子が設けられている。レジスタ1196の記憶素子には、実施の形態3乃至実施の形態5に記載されている記憶素子を用いることができる。
【0238】
図9(A)に示すCPUにおいて、レジスタコントローラ1197は、ALU1191からの指示に従い、レジスタ1196における保持動作の選択を行う。すなわち、レジスタ1196が有する記憶素子において、フリップフロップによるデータの保持を行うか、容量素子によるデータの保持を行うかを、選択する。フリップフロップによるデータの保持が選択されている場合、レジスタ1196内の記憶素子への、電源電圧の供給が行われる。容量素子におけるデータの保持が選択されている場合、容量素子へのデータの書き換えが行われ、レジスタ1196内の記憶素子への電源電圧の供給を停止することができる。
【0239】
電源停止に関しては、図9(B)または図9(C)に示すように、記憶素子群と、電源電位VDDまたは電源電位VSSの与えられているノード間に、スイッチング素子を設けることにより行うことができる。以下に図9(B)および図9(C)の回路の説明を行う。
【0240】
図9(B)および図9(C)では、記憶素子への電源電位の供給を制御するスイッチング素子に、酸化物半導体をチャネル形成領域に用いたトランジスタを含む記憶回路の構成の一例を示す。
【0241】
図9(B)に示す記憶装置は、スイッチング素子1141と、記憶素子1142を複数有する記憶素子群1143とを有している。具体的に、各記憶素子1142には、実施の形態3乃至実施の形態5に記載されている記憶素子を用いることができる。記憶素子群1143が有する各記憶素子1142には、スイッチング素子1141を介して、ハイレベルの電源電位VDDが供給されている。さらに、記憶素子群1143が有する各記憶素子1142には、信号INの電位と、ローレベルの電源電位VSSの電位が与えられている。
【0242】
図9(B)では、スイッチング素子1141として、酸化物半導体をチャネル形成領域に有するトランジスタを用いており、該トランジスタは、そのゲート電極に与えられる信号SigAによりスイッチングが制御される。
【0243】
なお、図9(B)では、スイッチング素子1141がトランジスタを一つだけ有する構成を示しているが、特に限定されず、トランジスタを複数有していても良い。スイッチング素子1141が、スイッチング素子として機能するトランジスタを複数有している場合、上記複数のトランジスタは並列に接続されていても良いし、直列に接続されていても良いし、直列と並列が組み合わされて接続されていても良い。
【0244】
また、図9(B)では、スイッチング素子1141により、記憶素子群1143が有する各記憶素子1142への、ハイレベルの電源電位VDDの供給が制御されているが、スイッチング素子1141により、ローレベルの電源電位VSSの供給が制御されていても良い。
【0245】
また、図9(C)には、記憶素子群1143が有する各記憶素子1142に、スイッチング素子1141を介して、ローレベルの電源電位VSSが供給されている、記憶装置の一例を示す。スイッチング素子1141により、記憶素子群1143が有する各記憶素子1142への、ローレベルの電源電位VSSの供給を制御することができる。
【0246】
記憶素子群と、電源電位VDDまたは電源電位VSSの与えられているノード間に、スイッチング素子を設け、一時的にCPUの動作を停止し、電源電圧の供給を停止した場合においてもデータを保持することが可能であり、消費電力の低減を行うことができる。具体的には、例えば、パーソナルコンピュータのユーザーが、キーボードなどの入力装置への情報の入力を停止している間でも、CPUの動作を停止することができ、それにより消費電力を低減することができる。
【0247】
ここでは、CPUを例に挙げて説明したが、DSP(Digital Signal Processor)、カスタムLSI、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のLSIにも応用可能である。
【0248】
本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0249】
(実施の形態7)
本実施の形態では、同一基板上に少なくとも駆動回路の一部と、画素部に配置するトランジスタを作製する例について以下に説明する。
【0250】
画素部に配置するトランジスタは、先の実施の形態に示す方法に従って形成する。また、当該トランジスタはnチャネル型とすることが容易なので、駆動回路のうち、nチャネル型TFTで構成することができる駆動回路の一部を画素部のトランジスタと同一基板上に形成する。このように、画素部や駆動回路に先の実施の形態に示すトランジスタを用いることにより、信頼性の高い表示装置を提供することができる。
【0251】
アクティブマトリクス型表示装置のブロック図の一例を図10(A)に示す。表示装置の基板600上には、画素部601、第1の走査線駆動回路602、第2の走査線駆動回路603、信号線駆動回路604を有する。画素部601には、複数の信号線が信号線駆動回路604から延伸して配置され、複数の走査線が第1の走査線駆動回路602、及び第2の走査線駆動回路603から延伸して配置されている。なお走査線と信号線との交差領域には、各々、表示素子を有する画素がマトリクス状に設けられている。また、表示装置の基板600はFPC(Flexible Printed Circuit)等の接続部を介して、タイミング制御回路(コントローラ、制御ICともいう)に接続されている。
【0252】
図10(A)では、第1の走査線駆動回路602、第2の走査線駆動回路603、信号線駆動回路604は、画素部601と同じ基板600上に形成される。そのため、外部に設ける駆動回路等の部品の数が減るので、コストの低減を図ることができる。また、基板600外部に駆動回路を設けた場合、配線を延伸させる必要が生じ、配線間の接続数が増える。同じ基板600上に駆動回路を設けた場合、その配線間の接続数を減らすことができ、信頼性の向上、又は歩留まりの向上を図ることができる。
【0253】
また、画素部の回路構成の一例を図10(B)に示す。ここでは、VA型液晶表示パネルの画素構造を示す。
【0254】
この画素構造は、一つの画素に複数の画素電極層が有り、それぞれの画素電極層にトランジスタが接続されている。各TFTは、異なるゲート信号で駆動されるように構成されている。すなわち、マルチドメイン設計された画素において、個々の画素電極層に印加する信号を、独立して制御する構成を有している。
【0255】
トランジスタ616のゲート配線612と、トランジスタ617のゲート配線613には、異なるゲート信号を与えることができるように分離されている。一方、データ線として機能するソース電極層又はドレイン電極層614は、トランジスタ616とトランジスタ617で共通に用いられている。トランジスタ616とトランジスタ617は先の実施の形態に示すトランジスタを適宜用いることができる。これにより、信頼性の高い液晶表示パネルを提供することができる。
【0256】
トランジスタ616と電気的に接続する第1の画素電極層と、トランジスタ617と電気的に接続する第2の画素電極層の形状は異なっており、スリットによって分離されている。V字型に広がる第1の画素電極層の外側を囲むように第2の画素電極層が形成されている。第1の画素電極層と第2の画素電極層に印加する電圧のタイミングを、トランジスタ616及びトランジスタ617により異ならせることで、液晶の配向を制御している。トランジスタ616はゲート配線612と接続し、トランジスタ617はゲート配線613と接続している。ゲート配線612とゲート配線613は異なるゲート信号を与えることで、トランジスタ616とトランジスタ617の動作タイミングを異ならせることができる。
【0257】
また、容量配線610と、誘電体として機能するゲート絶縁膜と、第1の画素電極層または第2の画素電極層と電気的に接続する容量電極とで保持容量を形成する。
【0258】
第1の画素電極層と液晶層と対向電極層が重なり合うことで、第1の液晶素子618が形成されている。また、第2の画素電極層と液晶層と対向電極層が重なり合うことで、第2の液晶素子619が形成されている。また、一画素に第1の液晶素子618と第2の液晶素子619が設けられたマルチドメイン構造である。
【0259】
なお、図10(B)に示す画素構成は、これに限定されない。例えば、図10(B)に示す画素に新たにスイッチ、抵抗素子、容量素子、トランジスタ、センサ、又は論理回路などを追加してもよい。
【0260】
また、画素部の回路構成の一例を図10(C)に示す。ここでは、有機EL素子を用いた表示パネルの画素構造を示す。
【0261】
有機EL素子は、発光素子に電圧を印加することにより、一対の電極から電子および正孔がそれぞれ発光性の有機化合物を含む層に注入され、電流が流れる。そして、それらキャリア(電子および正孔)が再結合することにより、発光性の有機化合物が励起状態を形成し、その励起状態が基底状態に戻る際に発光する。このようなメカニズムから、このような発光素子は、電流励起型の発光素子と呼ばれる。
【0262】
図10(C)は、半導体装置の例としてデジタル時間階調駆動を適用可能な画素構成の一例を示す図である。
【0263】
デジタル時間階調駆動を適用可能な画素の構成及び画素の動作について説明する。ここでは酸化物半導体層をチャネル形成領域に用いるnチャネル型のトランジスタを1つの画素に2つ用いる例を示す。
【0264】
画素620は、スイッチング用トランジスタ621、駆動用トランジスタ622、発光素子624及び容量素子623を有している。スイッチング用トランジスタ621は、ゲート電極層が走査線626に接続され、第1電極(ソース電極層及びドレイン電極層の一方)が信号線625に接続され、第2電極(ソース電極層及びドレイン電極層の他方)が駆動用トランジスタ622のゲート電極層に接続されている。駆動用トランジスタ622は、ゲート電極層が容量素子623を介して電源線627に接続され、第1電極が電源線627に接続され、第2電極が発光素子624の第1電極(画素電極)に接続されている。発光素子624の第2電極は共通電極628に相当する。共通電極628は、同一基板上に形成される共通電位線と電気的に接続される。
【0265】
スイッチング用トランジスタ621および駆動用トランジスタ622は先の実施の形態に示すトランジスタを適宜用いることができる。これにより、信頼性の高い有機EL素子を用いた表示パネルを提供することができる。
【0266】
なお、発光素子624の第2電極(共通電極628)には低電源電位が設定されている。なお、低電源電位とは、電源線627に設定される高電源電位を基準にして低電源電位<高電源電位を満たす電位であり、低電源電位としては例えばGND、0Vなどが設定されていても良い。この高電源電位と低電源電位との電位差を発光素子624に印加して、発光素子624に電流を流して発光素子624を発光させるため、高電源電位と低電源電位との電位差が発光素子624の順方向しきい値電圧以上となるようにそれぞれの電位を設定する。
【0267】
なお、容量素子623は駆動用トランジスタ622のゲート容量を代用して省略することも可能である。駆動用トランジスタ622のゲート容量については、チャネル形成領域とゲート電極層との間で容量が形成されていてもよい。
【0268】
ここで、電圧入力電圧駆動方式の場合には、駆動用トランジスタ622のゲート電極層には、駆動用トランジスタ622が十分にオンするか、オフするかの二つの状態となるようなビデオ信号を入力する。つまり、駆動用トランジスタ622は線形領域で動作させる。駆動用トランジスタ622は線形領域で動作させるため、電源線627の電圧よりも高い電圧を駆動用トランジスタ622のゲート電極層にかける。なお、信号線625には、(電源線電圧+駆動用トランジスタ622のVth)以上の電圧をかける。
【0269】
また、デジタル時間階調駆動に代えて、アナログ階調駆動を行う場合、信号の入力を異ならせることで、図10(C)と同じ画素構成を用いることができる。
【0270】
アナログ階調駆動を行う場合、駆動用トランジスタ622のゲート電極層に発光素子624の順方向電圧+駆動用トランジスタ622のVth以上の電圧をかける。発光素子624の順方向電圧とは、所望の輝度とする場合の電圧を指しており、少なくとも順方向しきい値電圧を含む。なお、駆動用トランジスタ622が飽和領域で動作するようなビデオ信号を入力することで、発光素子624に電流を流すことができる。駆動用トランジスタ622を飽和領域で動作させるため、電源線627の電位は、駆動用トランジスタ622のゲート電位よりも高くする。ビデオ信号をアナログとすることで、発光素子624にビデオ信号に応じた電流を流し、アナログ階調駆動を行うことができる。
【0271】
なお、図10(C)に示す画素構成は、これに限定されない。例えば、図10(C)に示す画素に新たにスイッチ、抵抗素子、容量素子、センサ、トランジスタ又は論理回路などを追加してもよい。
【0272】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0273】
(実施の形態8)
本明細書に開示する半導体装置は、さまざまな電子機器(遊技機も含む)に適用することができる。電子機器としては、例えば、テレビジョン装置(テレビ、またはテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ等のカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。上記実施の形態で説明した半導体装置を具備する電子機器の例について説明する。
【0274】
図11(A)は、携帯型の情報端末であり、本体1001、筐体1002、表示部1003a、1003bなどによって構成されている。表示部1003bはタッチパネルとなっており、表示部1003bに表示されるキーボードボタン1004を触れることで画面操作や、文字入力を行うことができる。勿論、表示部1003aをタッチパネルとして構成してもよい。先の実施の形態で示したトランジスタをスイッチング素子として液晶パネルや有機発光パネルを作製して表示部1003a、1003bに適用することにより、携帯型の情報端末の表示部の信頼性を向上させることができる。
【0275】
図11(A)に示す携帯型の情報端末は、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示する機能、カレンダー、日付又は時刻などを表示部に表示する機能、表示部に表示した情報を操作又は編集する機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、等を有することができる。また、筐体の裏面や側面に、外部接続用端子(イヤホン端子、USB端子など)、記録媒体挿入部などを備える構成としてもよい。
【0276】
また、図11(A)に示す携帯型の情報端末は、無線で情報を送受信できる構成としてもよい。無線により、電子書籍サーバから、所望の書籍データなどを購入し、ダウンロードする構成とすることも可能である。
【0277】
図11(B)は、携帯音楽プレイヤーであり、本体1021には表示部1023と、耳に装着するための固定部1022と、スピーカ、操作ボタン1024、外部メモリスロット1025等が設けられている。先の実施の形態で示したトランジスタをスイッチング素子として液晶パネルや有機発光パネルを作製して表示部1023に適用することにより、携帯音楽プレイヤーの表示部の信頼性を向上させることができる。
【0278】
さらに、図11(B)に示す携帯音楽プレイヤーにアンテナやマイク機能や無線機能を持たせ、携帯電話と連携させれば、乗用車などを運転しながらワイヤレスによるハンズフリーでの会話も可能である。
【0279】
図11(C)は、携帯電話であり、筐体1030及び筐体1031の二つの筐体で構成されている。筐体1031には、表示パネル1032、スピーカー1033、マイクロフォン1034、ポインティングデバイス1036、カメラ用レンズ1037、外部接続端子1038などを備えている。また、筐体1030には、携帯電話の充電を行う太陽電池セル1040、外部メモリスロット1041などを備えている。また、アンテナは筐体1031内部に内蔵されている。先の実施の形態で示したトランジスタを表示パネル1032に適用することにより、携帯電話の表示部の信頼性を向上させることができる。
【0280】
また、表示パネル1032はタッチパネルを備えており、図11(C)には映像表示されている複数の操作キー1035を点線で示している。なお、太陽電池セル1040で出力される電圧を各回路に必要な電圧に昇圧するための昇圧回路も実装している。
【0281】
表示パネル1032は、使用形態に応じて表示の方向が適宜変化する。また、表示パネル1032と同一面上にカメラ用レンズ1037を備えているため、テレビ電話が可能である。スピーカー1033及びマイクロフォン1034は音声通話に限らず、テレビ電話、録音、再生などが可能である。さらに、筐体1030と筐体1031は、スライドし、図11(C)のように展開している状態から重なり合った状態とすることができ、携帯に適した小型化が可能である。
【0282】
外部接続端子1038はACアダプタ及びUSBケーブルなどの各種ケーブルと接続可能であり、充電及びパーソナルコンピュータなどとのデータ通信が可能である。また、外部メモリスロット1041に記録媒体を挿入し、より大量のデータ保存及び移動に対応できる。
【0283】
また、上記機能に加えて、赤外線通信機能、テレビ受信機能などを備えたものであってもよい。
【0284】
図11(D)は、テレビジョン装置の一例を示している。テレビジョン装置1050は、筐体1051に表示部1053が組み込まれている。表示部1053により、映像を表示することが可能である。また、ここでは、CPUを内蔵したスタンド1055により筐体1051を支持した構成を示している。先の実施の形態で示したトランジスタを表示部1053に適用することにより、テレビジョン装置1050の表示部の信頼性を向上させることができる。
【0285】
テレビジョン装置1050の操作は、筐体1051が備える操作スイッチや、別体のリモコン操作機により行うことができる。また、リモコン操作機に、当該リモコン操作機から出力する情報を表示する表示部を設ける構成としてもよい。
【0286】
なお、テレビジョン装置1050は、受信機やモデムなどを備えた構成とする。受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して有線または無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)または双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
【0287】
また、テレビジョン装置1050は、外部接続端子1054や、記憶媒体再生録画部1052、外部メモリスロットを備えている。外部接続端子1054は、USBケーブルなどの各種ケーブルと接続可能であり、パーソナルコンピュータなどとのデータ通信が可能である。記憶媒体再生録画部1052では、ディスク状の記録媒体を挿入し、記録媒体に記憶されているデータの読み出し、記録媒体への書き込みが可能である。また、外部メモリスロットに差し込まれた外部メモリ1056にデータ保存されている画像や映像などを表示部1053に映し出すことも可能である。
【0288】
また、先の実施の形態で示した記憶装置を外部メモリ1056やCPUに適用することにより、消費電力が十分に低減された信頼性の高いテレビジョン装置1050とすることができる。
【0289】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【実施例】
【0290】
本実施例においては、本発明の一態様に係る半導体装置に用いられる酸化物半導体膜を成膜し、当該酸化物半導体膜を、透過型電子顕微鏡(TEM)および原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)を用いて観察した結果について説明する。
【0291】
本実施例では、ガラス基板(旭硝子社製AN100)上に膜厚300nmを狙って酸化窒化シリコン膜を成膜し、当該酸化窒化シリコン膜上に膜厚30nmを狙って酸化物半導体膜(IGZO膜)を成膜してサンプルAおよびサンプルBを作製した。
【0292】
まず、サンプルAおよびサンプルBは、CVD法を用いて酸化窒化シリコン膜を形成した。酸化窒化シリコン膜の成膜条件は、成膜ガス流量をSiH:4sccm、NO:800sccmとし、圧力40Pa、基板温度400℃、高周波(RF)電源電力150Wとした。
【0293】
それから、サンプルAおよびサンプルBは、In−Ga−Zn−O系の酸化物半導体膜をスパッタリング法を用いて成膜した。酸化物半導体膜は、In:Ga:ZnO=1:1:2[mol数比]の組成比を有するターゲットを用いて、成膜ガス流量をAr:30sccm、O:15sccm、圧力0.4Pa、基板温度400℃、高周波(RF)電源電力0.5kWとして成膜した。
【0294】
このように酸化物半導体膜を形成したサンプルAおよびサンプルBに対して、窒素雰囲気下で、加熱温度450℃、加熱時間1時間の熱処理を行った。
【0295】
さらにサンプルAについては、イオン注入法を用いて酸化物半導体膜に酸素(18O)イオンを注入した。このとき、イオン注入の条件は、加速電圧10kV、ドーズ量1.0×1016ions/cmとした。
【0296】
以上のサンプルAおよびサンプルBについて、TEMを用いて撮影した断面TEM像を図16(A)、図16(B)および図17に示す。図16(A)は、サンプルAの倍率500000倍の断面TEM像であり、図16(B)は、サンプルAの倍率4000000倍の断面TEM像であり、図17は、サンプルBの倍率4000000倍の断面TEM像である。なお本実施例において断面TEM像は、株式会社日立ハイテクノロジーズ製H−9000NARを用い、加速電圧を300kVとして撮影した。
【0297】
図16(A)および図16(B)に示すように、サンプルAの酸化物半導体膜の表面はほとんど凹凸がなく、平坦性が高い。これに対して、図17に示すように、サンプルBにおいては、酸化物半導体膜の表面に凹凸が形成されている。
【0298】
ここで、サンプルAおよびサンプルBについて、AFMを用いて撮影したAFM像を図18(A)および図18(B)に示す。図18(A)はサンプルAのAFM像であり、図18(B)は、サンプルBのAFM像である。なお本実施例においAFM像は、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製SPA−500大型ステージSPMユニットを用い、測定条件は、走査速度1.0Hz、測定面積1μm×1μmとして撮影した。
【0299】
図18(A)に示すAFM像と図18(B)に示すAFM像を比較すると、サンプルBの酸化物半導体膜表面より、サンプルAの酸化物半導体膜表面の方が平坦性が高いことが見て取れる。さらに、図18(A)および図18(B)のAFM像から平均面粗さを測定すると、サンプルA表面の平均面粗さは0.41nmであり、サンプルB表面の平均面粗さは1.08nmであった。よって、確かにサンプルAの方がサンプルBより表面の平均面粗さが低減されており、平坦性が向上されていることが分かった。
【0300】
以上より、酸化物半導体膜に酸素イオンを照射することで、当該酸化物半導体膜の表面の平均面粗さを低減し、平坦性を向上させることができることが示された。
【0301】
その一方で、図17に示すサンプルBの酸化物半導体膜は、当該酸化物半導体膜表面に垂直なc軸を有し、層状に形成されたIn−Ga−Zn−Oの結晶が観測されるが、図16(A)および図16(B)に示すサンプルAにおいては、このような層状に形成されたIn−Ga−Zn−Oの結晶は観測されない。このことから、酸化物半導体膜に酸素イオンを照射することで、層状に形成されたIn−Ga−Zn−Oの結晶の構造が破壊されてしまうことが推測される。なお、図17に示すサンプルBの酸化物半導体膜の表面近傍においては、凹凸が形成された酸化物半導体膜の表面に概略平行に層状のIn−Ga−Zn−Oの結晶が形成されている。
【0302】
そこで本実施例においては、酸素イオンの照射後に再び熱処理を行うことで、酸素イオンの照射で破壊された、層状に形成されたIn−Ga−Zn−Oの結晶が再び形成されるか検証した。
【0303】
そこで、本実施例では、ガラス基板(旭硝子社製AN100)上に膜厚300nmを狙って酸化シリコン膜を成膜し、当該酸化シリコン膜上に膜厚100nmを狙って酸化物半導体膜(IGZO膜)を成膜してサンプルCを作製した。
【0304】
まず、サンプルCはスパッタリング法を用いて酸化シリコン膜を形成した。酸化シリコン膜の成膜条件は、ターゲットを酸化シリコン(SiO)とし、成膜ガス流量をAr:25sccm、O:25sccmとし、圧力0.4Pa、基板温度100℃、高周波(RF)電源電力0.5kWとした。
【0305】
それから、サンプルCは、In−Ga−Zn−O系の酸化物半導体膜をスパッタリング法を用いて成膜した。酸化物半導体膜は、In:Ga:ZnO=1:1:2[mol数比]の組成比を有するターゲットを用いて、成膜ガス流量をAr:30sccm、O:15sccm、圧力0.4Pa、基板温度250℃、高周波(RF)電源電力1.5kWとして成膜した。
【0306】
このように酸化物半導体膜を形成したサンプルCに対して、真空雰囲気下で、加熱温度400℃、加熱時間30分の熱処理を行った。
【0307】
さらにサンプルCにイオン注入法を用いて酸化物半導体膜に酸素(18O)イオンを注入した。このとき、イオン注入の条件は、加速電圧40kV、ドーズ量1.0×1016ions/cmとした。
【0308】
それからサンプルCに、さらに窒素雰囲気下で、加熱温度650℃、加熱時間1時間の熱処理を行った。
【0309】
サンプルCについて、TEMを用いて撮影した断面TEM像を図19(A)および図19(B)に示す。図19(A)は、サンプルCの倍率500000倍の断面TEM像であり、図19(B)は、サンプルCの倍率4000000倍の断面TEM像である。
【0310】
図19(A)および図19(B)に示すように、サンプルCの酸化物半導体膜の表面はほとんど凹凸がなく、平坦性が高い。さらに図19(B)に示すように、当該酸化物半導体膜の表面から2nm乃至5nm程度の深さまで、当該酸化物半導体膜表面に垂直なc軸を有し、層状に形成されたIn−Ga−Zn−Oの結晶が観測される。
【0311】
また、図19(A)および図19(B)に示すサンプルCの酸化物半導体膜の表面近傍においては、平坦性が良好な酸化物半導体膜の表面に概略平行に層状のIn−Ga−Zn−Oの結晶が形成されている。これにより、当該酸化物半導体膜をトランジスタに用いた場合、サンプルBの酸化物半導体膜よりも、チャネル形成領域に用いられるIn−Ga−Zn−Oの結晶がチャネル方向に層状に整列しているので、トランジスタの移動度の向上を図ることができる。
【0312】
また、サンプルAと同様の方法で作製した酸化物半導体膜に、さらに窒素雰囲気下で、加熱温度650℃、加熱時間1時間の熱処理を行って作製したサンプルDのAFM像を図20に示す。
【0313】
図20に示すAFM像は、図18(A)に示すAFM像と同様に、サンプルDの酸化物半導体膜表面の平坦性が高いことが見て取れる。さらに、図20のAFM像から平均面粗さを測定すると、サンプルD表面の平均面粗さは0.31nmであり、サンプルA表面の平均面粗さより良好であった。よって、確かにサンプルDの平均面粗さが低減されており、平坦性が向上されていることが分かった。
【0314】
以上より、酸素イオンの照射後に再び熱処理を行うことで、酸素イオンの照射で破壊された、層状に形成されたIn−Ga−Zn−Oの結晶が再び形成されることが示された。さらに、層状に形成されたIn−Ga−Zn−Oの結晶が再び形成されるときに、酸素イオンの照射で向上した酸化物半導体膜の平坦性は維持されるまたはより良好になることが示された。
【0315】
このように酸素イオンを照射して当該酸化物半導体膜の表面の平均面粗さを低減することによって、当該酸化物半導体膜を用いたトランジスタにおいて、微細化を図ってゲート絶縁膜を薄膜化しても、リーク電流の増大および消費電力の増大を抑制することができる。よって、消費電力の増大を抑制し且つ微細化を達成した半導体装置を提供することができる。
【0316】
また、平均面粗さを低減した酸化物半導体膜に加熱処理を行って、酸化物半導体膜が当該酸化物半導体膜表面に垂直なc軸を有する結晶を含むように形成することができる。これにより、酸化物半導体膜の可視光や紫外光の照射による電気的特性の変化を抑制することができる。よって、安定した電気的特性が付与された、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0317】
51 基板
53 イオン
55 酸化物半導体膜
57 絶縁膜
59 結晶性酸化物半導体膜
59a 不純物領域
59b 不純物領域
59c チャネル形成領域
61a ソース電極
61b ドレイン電極
63 ゲート絶縁膜
65 ゲート電極
65a ゲート電極
65b 配線
69 絶縁膜
71a ソース電極
71b ドレイン電極
73 ゲート絶縁膜
75 サイドウォール絶縁膜
77 絶縁膜
79 絶縁膜
100 トランジスタ
110 トランジスタ
120 トランジスタ
130 トランジスタ
140 トランジスタ
150 トランジスタ
152 絶縁層
154 電極
156 配線
160 トランジスタ
400 基板
406 素子分離絶縁層
408 ゲート絶縁層
410 ゲート電極
416 チャネル形成領域
420 不純物領域
424 金属化合物領域
500 トランジスタ
520 容量素子
550 メモリセル
600 基板
601 画素部
602 走査線駆動回路
603 走査線駆動回路
604 信号線駆動回路
610 容量配線
612 ゲート配線
613 ゲート配線
614 ドレイン電極層
616 トランジスタ
617 トランジスタ
618 液晶素子
619 液晶素子
620 画素
621 スイッチング用トランジスタ
622 駆動用トランジスタ
623 容量素子
624 発光素子
625 信号線
626 走査線
627 電源線
628 共通電極
1001 本体
1002 筐体
1004 キーボードボタン
1021 本体
1022 固定部
1023 表示部
1024 操作ボタン
1025 外部メモリスロット
1030 筐体
1031 筐体
1032 表示パネル
1033 スピーカー
1034 マイクロフォン
1035 操作キー
1036 ポインティングデバイス
1037 カメラ用レンズ
1038 外部接続端子
1040 太陽電池セル
1041 外部メモリスロット
1050 テレビジョン装置
1051 筐体
1052 記憶媒体再生録画部
1053 表示部
1054 外部接続端子
1055 スタンド
1056 外部メモリ
1120 メモリセルアレイ
1130 メモリセル
1131 トランジスタ
1132 容量素子
1140 メモリセルアレイ
1141 スイッチング素子
1142 記憶素子
1143 記憶素子群
1150 メモリセル
1151 トランジスタ
1152 トランジスタ
1153 トランジスタ
1154 トランジスタ
1155 トランジスタ
1156 トランジスタ
1189 ROM I/F
1190 基板
1191 ALU
1192 ALUコントローラ
1193 インストラクションデコーダ
1194 インタラプトコントローラ
1195 タイミングコントローラ
1196 レジスタ
1197 レジスタコントローラ
1198 Bus I/F
1199 ROM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁表面上に酸化物半導体膜を成膜し、
前記酸化物半導体膜に酸素イオンを照射して、当該酸化物半導体膜の表面の平均面粗さを0.6nm以下0.1nm以上とし、
前記酸化物半導体膜上にゲート絶縁膜を形成し、
前記ゲート絶縁膜上に前記酸化物半導体膜と重畳してゲート電極を形成し、
前記酸化物半導体膜に酸素イオンを照射した後で、前記酸化物半導体膜に加熱処理を行って、当該酸化物半導体膜表面に概略垂直なc軸を有する結晶を含む酸化物半導体膜を形成する半導体装置の作製方法。
【請求項2】
請求項1において、
イオン注入法を用いて前記酸素イオンを照射する半導体装置の作製方法。
【請求項3】
請求項1において、
イオンドーピング法を用いて前記酸素イオンを照射する半導体装置の作製方法。
【請求項4】
請求項1において、
プラズマ侵入イオン注入法を用いて前記酸素イオンを照射する半導体装置の作製方法。
【請求項5】
請求項1において、
前記酸素イオンを含むガスクラスターイオンビームを照射する半導体装置の作製方法。
【請求項6】
絶縁表面上に酸化物半導体膜を成膜し、
前記酸化物半導体膜にフッ素イオンを照射して、当該酸化物半導体膜の表面の平均面粗さを0.6nm以下0.1nm以上とし、
前記酸化物半導体膜上にゲート絶縁膜を形成し、
前記ゲート絶縁膜上に前記酸化物半導体膜と重畳してゲート電極を形成し、
前記酸化物半導体膜にフッ素イオンを照射した後で、前記酸化物半導体膜に加熱処理を行って、当該酸化物半導体膜からフッ素を脱離させ、且つ当該酸化物半導体膜表面に概略垂直なc軸を有する結晶を含む酸化物半導体膜を形成する半導体装置の作製方法。
【請求項7】
請求項6において、
イオン注入法を用いて前記フッ素イオンを照射する半導体装置の作製方法。
【請求項8】
請求項6において、
イオンドーピング法を用いて前記フッ素イオンを照射する半導体装置の作製方法。
【請求項9】
請求項6において、
プラズマ侵入イオン注入法を用いて前記フッ素イオンを照射する半導体装置の作製方法。
【請求項10】
請求項6において、
前記フッ素イオンを含むガスクラスターイオンビームを照射する半導体装置の作製方法。
【請求項11】
絶縁表面上に酸化物半導体膜を成膜し、
前記酸化物半導体膜に酸素雰囲気下でプラズマ処理を行い、当該酸化物半導体膜の表面の平均面粗さを0.6nm以下0.1nm以上とし、
前記酸化物半導体膜上にゲート絶縁膜を形成し、
前記ゲート絶縁膜上に前記酸化物半導体膜と重畳してゲート電極を形成し、
前記酸化物半導体膜に酸素雰囲気下でプラズマ処理を行った後で、前記酸化物半導体膜に加熱処理を行って、当該酸化物半導体膜表面に概略垂直なc軸を有する結晶を含む酸化物半導体膜を形成する半導体装置の作製方法。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11のいずれか一において、
前記結晶を含む酸化物半導体膜は、当該酸化物半導体膜の表面から5nmまでの深さに、当該酸化物半導体膜表面に概略垂直なc軸を有する結晶を含む半導体装置の作製方法。
【請求項13】
請求項1乃至請求項12のいずれか一において、
前記ゲート絶縁膜の膜厚を5nm以上15nm以下とする半導体装置の作製方法。
【請求項14】
絶縁表面上に形成された酸化物半導体膜と、
前記酸化物半導体膜上に形成されたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に前記酸化物半導体膜と重畳して形成されたゲート電極と、を有し、
前記酸化物半導体膜は、当該酸化物半導体膜の表面の平均面粗さが0.6nm以下0.1nm以上であり、且つ当該酸化物半導体膜表面に概略垂直なc軸を有する結晶を含む半導体装置。
【請求項15】
請求項14において、
前記結晶を含む酸化物半導体膜は、当該酸化物半導体膜の表面から5nmまでの深さに、当該酸化物半導体膜表面に概略垂直なc軸を有する結晶を含む半導体装置。
【請求項16】
請求項14または請求項15において、
前記ゲート絶縁膜の膜厚を5nm以上15nm以下とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−21310(P2013−21310A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−134155(P2012−134155)
【出願日】平成24年6月13日(2012.6.13)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】