説明

半導体装置の製造方法

【課題】低温領域でも充分な増速酸化現象が起こって大きな酸化速度が得られる熱酸化方法を提供することにある。また、低温領域で形成しても高い信頼性を有する酸化シリコン膜を成膜できる熱酸化方法を提供する。
【解決手段】本発明の基本概念は、プラズマを用いることなく、反応性の大きい酸素ラジカルを大量に生成し熱反応で酸化シリコン膜を形成することにある。具体的には、オゾン(O)を活性な他のガスと反応させることで、低温領域でも高効率にオゾン(O)を分解して酸素ラジカル(O)を大量に発生させることを特徴とする。例えば、活性なガスとしては、ハロゲン元素を含む化合物ガスなどを用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造技術に関し、特に、高信頼性を有する酸化シリコン膜を熱酸化法で形成する場合に、比較的低温で充分な膜厚の酸化シリコン膜を成膜するための技術に適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリコン(Si)半導体デバイスの微細化に伴い、各素子(各MISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)間のしきい値電圧のバラツキが増大しており、デバイスを安定動作させる上で大きな問題になっている。これは、デバイスの微細化により、例えば、各素子のしきい値電圧を調整するしきい値電圧調整用半導体領域内に含まれる不純物数が極めて少なくなり、その不純物数や分布のバラツキが、各素子のしきい電圧に大きな影響を与えるようになったことによる。すなわち、不純物数の絶対的個数が少なくなる結果、わずかな不純物数のバラツキが大きな影響を与えることになっている。従って、デバイスの微細化に伴い、素子内の不純物数のバラツキを抑制するプロセス技術の開発が強く望まれている。しきい値電圧のバラツキは、MISFETのゲート電極直下のチャネル領域に形成されるしきい値電圧調整用半導体領域に導入される不純物数(不純物濃度)のバラツキに大きな影響を受けるが、それ以外にもチャネル領域が形成されているウェルに導入されている不純物数のバラツキにも影響を受けると考えられる。
【0003】
これらの不純物数のバラツキを抑制する方法の1つは、不純物の拡散長を減少させる方法をとることである。具体的には、熱処理時間の短時間化や熱処理温度の低温化を行う方法が考えられる。特に、処理温度の高い不純物活性化プロセスや処理温度の高い熱酸化プロセスの低温化は、不純物の拡散を抑制する上で重要な課題となっている。
【0004】
まず、不純物の拡散を抑制するため、不純物の活性化をより低温で実施することが考えられるが、不純物の活性化では、熱処理温度の低温化を実施すると、活性化率が低下するという物理的な問題がある。このため、不純物の活性化では、熱処理温度自体は下げずに、熱処理時間を短くすることで、不純物の活性化率を低下させることなく不純物の拡散を抑制することが検討されている。例えば、ミリ秒単位の熱処理が可能なフラッシュランプアニールやマイクロ秒単位の熱処理が可能な炭酸ガスレーザーアニールなどが提案されている。これにより、不純物の活性化を行なうための熱処理での不純物の拡散を小さくできると考えられる。
【0005】
これに対し、熱酸化プロセスでは、酸化反応にある程度の時間が必要であるため、熱処理時間の短時間化だけでは対応できないので、熱酸化プロセスに起因した不純物の拡散を抑制するには、熱処理温度の低温化を進める必要がある。この熱処理温度の低温化を実現する一例として、例えば、“13th IEE International Conference on Advanced Thermal Processing of Semiconductor - RTP 2005”において“ENABLING SINGLE-WAFER LOW TEMPERATURE RADICAL OXIDATION”というタイトルで、その具体的方法が紹介されている(非特許文献1)。
【0006】
この非特許文献1に記載された方法は、高濃度のオゾン(O)と水素を原料ガスとする熱酸化法である。そして、加熱方法には、短時間で温度制御が可能なランプ加熱を用いている。同じ熱処理温度と酸化時間(熱処理時間)で比較した場合、高濃度のオゾンを用いる高濃度オゾン酸化法(O)は、通常の酸素を用いたドライ酸化法(O)に比べて、形成される酸化シリコン膜の膜厚が約1.5倍に増加する。さらに、非特許文献1に記載されているように、高濃度のオゾン(O)と水素(H)を原料ガスに用いて酸化処理を実施すると、ドライ酸化法によって形成される酸化シリコン膜の2倍の膜厚の酸化シリコン膜を形成できるとしている。したがって、高濃度のオゾン(O)と水素を原料ガスに使用する熱酸化法によれば、ドライ酸化法で形成される酸化シリコン膜と同じ膜厚の酸化シリコン膜を形成する場合には、ドライ酸化法よりも熱処理温度の低温化と熱処理時間の短時間化を実現できると考えられる。
【非特許文献1】Yoshitaka Yokota et all., “ ENABLING SINGLE-WAFER LOW TEMPERATURE RADICAL OXIDATION ”In 13th IEE International Conference on Advanced Thermal Processing of Semiconductor - RTP 2005 p139
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
シリコン基板中に導入したリン(P)やボロン(B)等の不純物の拡散長は、不純物の拡散係数(熱処理温度)と熱処理時間の積の平方根で決まる。すなわち、不純物の拡散を抑制する観点からは、不純物を導入した後にシリコン基板に対して実施する熱処理工程で、熱処理温度の低温化と熱処理時間の短時間化を実現することが望ましい。熱処理温度の低温化と熱処理時間の短時間化を実現することができれば、不純物の拡散を小さくでき、その結果、不純物濃度(不純物数)のバラツキを小さくできる。
【0008】
また、シリコン基板中に導入したボロン(B)が、熱処理により酸化シリコン膜へ吸い上げられる現象、いわゆるボロンの偏析現象も不純物濃度のバラツキを増加させる一因であり、素子の微細化に伴いその影響も大きくなっている。具体的に、ボロンの偏析現象について説明する。例えば、図33に示すように、MISFET(素子)は、素子分離領域STIに挟まれた活性領域に形成される。すなわち、半導体基板Sには、離間して素子分離領域STIが形成されている。この素子分離領域STIは、例えば、半導体基板Sに形成された溝に酸化シリコン膜を埋め込んだ構造(Shallow Trench Isolation)をしている。そして、素子分離領域STIで挟まれた活性領域には、p型ウェルが形成され、活性領域における半導体基板Sの表面近傍にチャネル領域CHが形成されている。チャネル領域CHから素子分離領域STIの側壁にわたって、しきい値電圧調整用半導体領域VRが形成されている。図33では、nチャネル型MISFETを対象にしているので、しきい値電圧調整用半導体領域VRにはボロンが導入されている。そして、半導体基板Sの表面上には、ゲート絶縁膜GOXが形成されており、このゲート絶縁膜GOX上にゲート電極Gが形成されている。ここで、図33は、ゲート電極のゲート長方向(ソース領域とドレイン領域で挟まれる方向)とは直交するゲート幅方向での断面を示しており、図33におけるゲート幅W1が示されている。このように図33は、ゲート幅方向の断面であるため、ソース領域およびドレイン領域は図示されない。
【0009】
以上のような構成において、熱負荷の大きな熱処理(高い熱処理温度および長い熱処理時間)が加わると、素子分離領域STIの側壁に形成されているしきい値電圧調整用半導体領域VRに導入されているボロンが素子分離領域STIの内部に吸い上げられる(矢印参照)。この結果、素子分離領域STIの側壁に形成されているしきい値電圧調整用半導体領域に含まれるボロンの濃度が低下する。この影響は、素子分離領域STIに接しているチャネル領域CHの端部でも起こり、チャネル領域CHの端部でボロンの濃度が低下する。このため、チャネル領域CHの端部でのしきい値電圧が低下する問題点が発生する。このとき、図33に示すように、MISFETのゲート幅W1が大きい場合、チャネル領域CHの端部におけるボロンの濃度低下の影響は小さい。ところが、図34に示すように、MISFETの微細化が進み、MISFETのゲート幅W2が小さくなると。チャネル領域CH全体に占めるチャネル領域CHの端部の割合が大きくなる。したがって、図34に示すように、MISFETを微細化する場合、熱処理によってチャネル領域CHの端部に導入されているボロンが素子分離領域STIの内部に吸い上げられる。いわゆるボロンの偏析現象の影響は大きくなる。つまり、ボロンの偏析現象が生じる結果、チャネル領域CHの端部でのしきい値電圧の低下がMISFETの特性に大きく影響することになるのである。このことから、MISFETを微細化するにあたって、ボロンの偏析現象を抑制する必要があることがわかる。ボロンの偏析現象を抑制するには、熱処理温度の低温化および熱処理時間の短時間化が必要である。
【0010】
酸化温度(熱処理温度)を低温化すると、半導体基板中に導入した不純物の拡散やボロンの偏析現象を小さくできるが、一般には、酸化速度も著しく低下する。酸化速度が低下することは、熱処理時間が長くなることを意味する。したがって、酸化して得られる酸化シリコン膜の膜厚スケーリングが行われない場合は、酸化温度(熱処理温度)の低温化に伴い、酸化時間(熱処理時間)が長くなるので、酸化温度(熱処理温度)を低温化しても、不純物の拡散長やボロンの偏析現象に顕著な変化は見られない。つまり、酸化温度(熱処理温度)を低温化して、不純物の濃度バラツキを抑制する場合には、酸化時間(熱処理時間)の増加をいかに抑制するかが重要となる。言い換えれば、酸化速度をどれだけ大きくすることができるかが重要となる。
【0011】
さらに、システム・オン・チップ(SOC;System on Chip)のような少量多品種のカスタム品の製造においては、処理時間の短い枚葉処理方式が主流であり、処理時間の長いバッチ方式を用いた工程をどれだけ削減させるかが製造コストの点で重要となる。しかし、例えば、厚さ20nm程度の厚い熱酸化膜(酸化シリコン膜)を高スループットで形成できる枚葉式の装置は存在しないため、バッチ方式の酸化工程を削減できないのが現実である。
【0012】
非特許文献1として示した高濃度のオゾンと水素と原料に用いる熱酸化法においては、増速酸化現象が発生するがドライ酸化の高々2倍程度であり、半導体基板中に導入した不純物濃度のバラツキを抑制する効果は非常に小さい。また、20nm程度の厚い熱酸化膜(酸化シリコン膜)を形成するには、酸化速度が小さいことから、スループットの点で適用は困難である。
【0013】
本発明の目的は、低温領域でも充分な増速酸化現象が起こって大きな酸化速度が得られる熱酸化方法を提供することにある。また、低温領域で形成しても高い信頼性を有する酸化シリコン膜を成膜できる熱酸化方法を提供することにある。
【0014】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0016】
代表的な実施の形態による半導体装置の製造方法は、 MISFETを含む半導体装置を製造する半導体装置の製造方法であって、(a)半導体基板に不純物を導入して半導体領域を形成する工程と、(b)前記(a)工程後、前記半導体基板あるいは前記半導体基板上に形成された被処理膜を熱酸化することにより酸化シリコン膜を形成する工程とを備える。このとき、前記(b)工程は、(b1)オゾンを含むガスとハロゲン元素を含む化合物ガスとを有する原料ガスを前記半導体基板上に導入する工程と、(b2)前記(b1)工程後、前記半導体基板を加熱する工程とを有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0018】
低温領域でも充分な増速酸化現象が起こって大きな酸化速度が得られる熱酸化方法を提供することができる。また、低温領域で形成しても高い信頼性を有する酸化シリコン膜を成膜できる熱酸化方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
【0020】
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0021】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0022】
同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0023】
また、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
【0024】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態を説明する前に、本発明の基本概念について記述する。本発明の基本概念は、プラズマを用いることなく、反応性の大きい酸素ラジカルを大量に生成し熱反応で酸化シリコン膜を形成することにある。すなわち、プラズマを使用する場合には、プラズマ中にラジカル種だけでなくイオン種も存在している。このため、酸化シリコン膜の形成中にイオン種によるスパッタリング現象により、形成される酸化シリコン膜がダメージを受けやすくなる。このことから、プラズマを使用する方法では、形成される酸化シリコン膜にダメージが発生しやすく、信頼性の高い酸化シリコン膜を形成することが困難である。これに対し、本発明では、イオン種を含まず、反応性の大きい酸素ラジカルを使用して熱酸化を行なうことにより、信頼性の高い酸化シリコン膜を形成するものである。そして、本発明では、酸素ラジカルを大量に発生させる機構を備えることにより、低温による熱酸化法を用いても、信頼性の高い酸化シリコン膜を充分に形成することができる。
【0025】
具体的に本発明では、オゾン(O)を活性な他のガスと反応させることで、低温領域でも高効率にオゾン(O)を分解して酸素ラジカル(O)を大量に発生させることを特徴とする。例えば、活性なガスとしては、ハロゲン元素を含む化合物ガスなどを用いることができる。ハロゲン元素を含む化合物ガスとしては、例えば、水素化合物であるフッ化水素(HF)、塩化水素(HCl)や臭化水素(HBr)などが挙げられる。また、三フッ化窒素(NF)や三フッ化塩素(ClF)などのハロゲン元素を含む化合物ガスも使用することができる。
【0026】
被酸化基板(半導体基板)の加熱方法としては、ヒータ加熱方式、ランプ加熱方式あるいは誘導加熱方式などのいずれも適用可能であるが、どの加熱方式を使用するにしても、酸化シリコン膜の膜厚均一性を確保することが必要となる。具体的に、酸化シリコン膜の膜厚均一性を確保するためには、原料ガスの濃度を被酸化基板(半導体基板)の直上で均一にすることが重要となる。このため、被酸化基板(半導体基板)を加熱する加熱方式に対して、それぞれ最適な原料ガスの導入方式がある。また、ハロゲン元素を含有する化合物ガスを原料ガスの一部として用いるため、大気中の水分などが反応炉に混入しないように、加熱装置はロードロック室を備えていることが好ましい。
【0027】
本発明で使用する熱酸化法では、被酸化基板として、シリコン基板(Si基板)や炭化シリコン基板(SiC基板)が対象となる。また、本発明で使用する熱酸化法は、半導体基板上に形成された薄膜を酸化して酸化シリコン膜を形成する場合にも適用することができ、例えば、半導体基板に形成された薄膜として、多結晶シリコン膜(ポリシリコン膜)、炭化シリコン膜や窒化シリコン膜などが対象となる。ただし、これらの被酸化材料は一例であり、酸化反応が起こる材料であれば本発明による熱酸化法を適応することができる。
【0028】
本発明で重要な点は、被酸化基板(半導体基板)の加熱を行う際、反応室には予め所定の流量を有する酸化性ガスを導入していることである。ハロゲン元素を含有する化合物ガスを単独で導入して被酸化基板(半導体基板)を加熱すると、シリコン基板や炭化シリコン基板の場合は気相エッチングが発生する。すなわち、ハロゲン元素を含有する化合物ガスは、シリコン基板の表面や炭化シリコン基板の表面をエッチングする機能を有するので、ハロゲン元素を含有する化合物ガスをシリコン基板や炭化シリコン基板を配置している反応室に導入するには、そのタイミングが重要となってくる。例えば、酸化性ガスとハロゲン元素を含有する化合物ガスと同時に導入しても、酸化性ガスの分圧が小さい場合は気相エッチングが発生するので、酸化性ガスとハロゲン元素を含有する化合物ガスを同時に導入する場合も、その流量比を調整して気相エッチングが発生しないようにすることが肝要である。
【0029】
本発明では、オゾン(O)を含む酸化性ガスと、ハロゲン元素を含有する化合物ガスとを原料ガスに使用することにより、低温領域でもオゾン(O)の解離を促進して反応性豊かな酸素ラジカルを大量に発生させることを特徴とする。このように酸素ラジカルを大量に発生させることにより、酸化シリコン膜の形成が促進されるのである。すなわち、本発明は原料ガスとして、オゾン(O)を含む酸化性ガスと、ハロゲン元素を含有する化合物ガスとを使用することにより、酸化シリコン膜の形成を促進させる増速酸化現象を生じさせている。
【0030】
以下に、この増速酸化現象が発生する原理について簡単に説明する。ここでは、最も一般的なタングステンハロゲンランプ式のランプ加熱装置を用いて、シリコン基板の表面に熱酸化膜(酸化シリコン膜)を形成する例を用いて説明する。周知のように、ランプ加熱方式はシリコン基板が吸収する波長の光を照射して、シリコン基板を直接加熱する方法である。一般に、ランプ加熱方式ではシリコン基板だけが加熱され、反応室の内部は加熱されない方式が採用されている。熱酸化法を用いた酸化シリコン膜の形成には、原料ガスとして、オゾン(O)と、塩化水素(HCl)などの水素化合物ガスを所定の流量比で反応室に導入する。このとき、ランプ加熱方式でシリコン基板の加熱を行うと、シリコン基板だけが高温となる。原料ガスとして、オゾン(O)だけを使用する熱酸化法の場合は、シリコン基板近傍のオゾン(O)が熱解離して酸素(O)と酸素ラジカル(O)になる。この熱解離で発生した酸素ラジカル(O)は酸化力が非常に強く、低温においてもシリコン基板が酸化される。ただし、原料ガスにオゾン(O)だけを使用した場合は、酸素ラジカル(O)は熱解離反応によってだけ形成されるため、酸素ラジカル(O)の発生効率は小さく、通常の酸素(O)を使用したドライ酸化に比べ1.5倍程度の酸化速度しか得られない。
【0031】
これに対し、本発明では塩化水素(HCl)もシリコン基板近傍で熱解離し、水素ラジカル(H)と塩素ラジカル(Cl)が生成される。この両ラジカル(水素ラジカル(H)と塩素ラジカル(Cl))は非常に活性で、オゾン(O)と接触することでオゾン(O)を容易に分解し、大量の酸素ラジカル(O)を生成させる。特に、ハロゲン元素のラジカルは反応性が大きく、オゾン(O)と塩化水素(HCl)を同時に反応室に導入すると酸素ラジカル(O)の発生効率は著しく増加し、シリコン基板での酸化反応も非常に速くなる。
【0032】
このように、本発明では、オゾン(O)自体の熱解離によって酸素ラジカルを発生させるだけでなく、塩化水素(HCl)の熱解離によって発生した水素ラジカル(H)や塩素ラジカル(Cl)によるオゾン(O)の分解を使用することにより、酸素ラジカル(O)を大量に発生させて、シリコン基板での酸化反応を促進させているのである。つまり、オゾン(O)の分解を促進する触媒機能を有するガスを同時に用いることにより、酸化シリコン膜の形成における増速酸化現象を発生させることが、本発明の基本概念である。ここでは、触媒となるガスの熱分解とオゾン(O)との反応が被酸化材料の表面近傍で起こるようにすることが肝要である。そのためには、半導体基板の加熱方式のそれぞれに最適な原料ガスの導入方法を選択することが重要となる。
【0033】
さらに、本発明ではラジカルの生成にプラズマを用いないため、形成される酸化シリコン膜に対してプラズマダメージのない点が利点である。また、触媒ガスと反応して生成されるラジカルのエネルギー分布もプラズマ励起によって生成されるラジカルのエネルギー分布に比べて揃っているために、本発明による熱酸化法は、プラズマ酸化法に比べて均一な膜質が得られる特徴もある。
【0034】
次に、本発明の実施の形態における熱酸化法について、図面を参照しながら、詳細に説明する。図1は、本実施の形態1における熱処理装置の平面図である。そして、図2は、図1のA−A線で切断した熱処理装置の一部断面図である。図1および図2では省略しているが、図の左側に真空排気機構を有する基板搬送室が設置されており、ゲートバルブ102を介して反応室101へ半導体基板108を搬入したり搬出したりすることができるようになっている。反応室101へ搬入された半導体基板108は、半導体基板108を回転することができる保持台105にセットする構造となっている。反応室101内の圧力は大気圧から真空(〜10ミリPa)まで制御可能で、図1および図2の左側に配置されたガス導入ブロック104から酸化性ガス(オゾン(O)を含む)や塩化水素(HCl)を導入し、図1および図2の右側に示す排気バルブ103を介して、これらの酸化性ガスや塩化水素を排気する構造となっている。半導体基板108の加熱にはタングステンハロゲンランプ107(平面図(図1)では代表して1本だけを記載している)を用いており、反応室101の上部に設置された石英窓106を介して半導体基板108に光を照射して、半導体基板108の加熱を行うように構成されている。
【0035】
本実施の形態1における熱処理装置は上記のように構成されており、以下に、上述した熱処理装置を使用する本実施の形態1における熱酸化方法について説明する。
【0036】
図3は、本実施の形態1における熱酸化方法のプロセスフローの一例を示す図である。本実施の形態1で重要な点は、被酸化基板(半導体基板)の加熱を行う際、反応室101に予め所定の流量を有する酸化性ガスを導入することである。酸化性ガスは、例えば、酸素(O)とオゾン(O)を含有するガスである。以下、図1〜図3を用いてプロセスフローの詳細について説明する。
【0037】
まず、基板搬送室から反応室101に例えば、8インチのシリコン基板である半導体基板108を搬入する(S101)。本実施の形態1では、基板搬送室と反応室101に少量の窒素を流し、約20Paの圧力で半導体基板108の搬送を行っている。
【0038】
次に、窒素の導入を停止して、反応室101の圧力が10ミリPa以下になるまで真空排気を行う(S102)。続いて、90%のオゾン(O)を所定の流量で反応室101へ導入しながら(S103)、保持台105を毎分60回転の速度で回転させた後、塩化水素(HCl)を所定の流量で導入する(S104)。後で説明するが、本実施の形態1による増速酸化現象は、オゾン(O)と塩化水素(HCl)の流量比(HCl濃度)に強く依存する。したがって、酸化温度(熱処理温度)、HCl濃度および酸化時間(熱処理時間)を調整することで、所望の厚さの酸化シリコン膜を得ることができる。本実施の形態1では、まず、オゾン(O)を含む酸化性ガスを反応室101に導入した後、塩化水素(HCl)を反応室101に導入している。これは、上述したように、塩化水素(HCl)を最初に導入すると、半導体基板108の表面で気相エッチングが発生してしまうためである。この気相エッチングを抑制するため、本実施の形態1では、オゾン(O)を含む酸化性ガスを先に反応室101へ導入しているのである。
【0039】
次に、排気バルブ103の調整を行って反応室101内のガス圧力の調整を行う(S105)。反応室101のガス圧力は形成される酸化シリコン膜の膜厚均一性に大きな影響を与える。つまり、原料ガスの流速により半導体基板108の表面におけるHCl濃度分布が変化するため、反応室101内のガス圧力は、形成される酸化シリコン膜の膜厚均一性が最適になるように設定するのが好ましい。本実施の形態1では、例えば、ガス導入後の反応室101の圧力を1330Pa程度としている。
【0040】
続いて、反応室101内のガス圧力の安定を確認した後、タングステンハロゲンランプ107に通電して半導体基板108の予備加熱を行う(S106)。予備加熱工程は必須ではないが、半導体基板108の温度を均一にするためには非常に有効である。本実施の形態1では、例えば、温度が300℃で、かつ、時間が30秒程度の予備加熱を行っている。なお、この予備加熱では、オゾン(O)によって若干(1nm以下)の酸化シリコン膜が半導体基板108に形成される。
【0041】
次に、半導体基板108の温度を所定の温度まで上昇させて、半導体基板108の酸化を行う(S107)。本実施の形態1では、半導体基板108の酸化温度を800℃、酸化時間を2分としている。続いて、タングステンハロゲンランプ107の電源とガス導入を停止した後(S108)、真空パージと窒素パージを充分に行う(S109)。最後に、保持台105の回転を停止した後、半導体基板108を反応室101から搬出する(S110)。以上のようにして、本実施の形態1における熱酸化法が実施され、例えば、半導体基板108の表面に酸化シリコン膜が形成される。
【0042】
以下、上述した熱酸化方法で半導体基板に酸化シリコン膜を形成した本実施の形態1を詳細に説明する。最初に、本実施の形態1における熱酸化法で観測される増速酸化現象について説明する。
【0043】
図4は熱処理温度(酸化温度)が800℃で、かつ、熱処理時間(酸化時間)が2分の酸化(熱処理)で得られる熱酸化膜(酸化シリコン膜)のHCl濃度依存性を示す。HCl濃度の定義は、HCl流量/(HCl流量+酸化性ガス流量)である。本実施の形態1では、酸化性ガスとしてオゾン(O)を使用した場合の試料と、酸化性ガスとして酸素(O)を使用した場合試料との結果を比較して示しており、図4の黒丸はオゾン(O)を用いた場合、図4の白丸は酸素(O)を用いた場合の結果である。
【0044】
図4に示すように、酸素(O)と塩化水素(HCl)を用いた熱酸化法では、HCl濃度を変化させても酸化シリコン膜の膜厚にほとんど変化は見られず、通常の酸素(O)だけを用いたドライ酸化とほとんど同じ結果である。これに対し、図4に示すように、オゾン(O)と塩化水素(HCl)を用いた熱酸化法では、HCl濃度の増加に伴い、酸化シリコン膜の膜厚は増加し、HCl濃度が約4.5%近傍で酸化シリコン膜の膜厚が最大となる増速酸化現象が観測されている。さらに、HCl濃度を増加すると、熱酸化して形成される酸化シリコン膜の膜厚は減少している。これは、塩素(Cl)による酸化シリコン膜のエッチングが酸化シリコン膜の形成よりも優勢になったためであり、オゾン(O)と塩化水素(HCl)を使用した熱酸化法では、HCl濃度の最適値が存在することを示している。つまり、本実施の形態1で用いる触媒ガスは、ハロゲン元素を含む化合物ガスであり、高濃度に供給しすぎると酸化シリコン膜がエッチングされ、酸化速度が逆に低下する領域が存在することがわかる。したがって、オゾン(O)とハロゲン元素を含む化合物ガスを原料ガスとする熱酸化法では、ハロゲン元素を含む化合物ガスの濃度を酸化シリコン膜の成膜速度(酸化速度)が極大値となる領域以下の濃度で用いることが重要である。例えば、図4を例に説明すると、HCl濃度が4.5%の位置で酸化シリコン膜の膜厚が極大値をとることから、HCl濃度を4.5%以下の濃度で、本実施の形態1における熱酸化法を実施することが望ましいことがわかる。
【0045】
一方、図4には示していないが、供給するオゾン(O)のオゾン濃度も増速酸化現象に大きな影響を与えることが判明している。図4に示した結果は、オゾン濃度が約90%のオゾン(O)を用いた結果であるが、オゾン濃度が低下すると急激に増速酸化現象が減少することがわかった。本実施の形態1で検討した範囲では、オゾン濃度が50%以上の濃度であると、増速酸化現象の利点が得られ、オゾン濃度が50%よりも小さいと、触媒ガスを添加する効果(利点)はほとんど見られなかった。したがって、オゾンとハロゲン元素を含む化合物ガス用いた熱酸化法では、オゾン濃度が50%以上のオゾンを用いることが好ましい。なお、図4は酸化温度(熱処理温度)が800℃で、かつ、酸化時間(熱処理時間)が2分の酸化処理を示しているが、酸化温度(熱処理温度)、酸化時間(熱処理時間)、HCl濃度を適宜選択することにより、約100nm以下の酸化シリコン膜の膜厚においては、任意に制御することができることがわかった。ここで、本明細書で、オゾン濃度という場合には、オゾンの流量/(オゾンの流量+酸素の流量)×100で定義される前記オゾンを含むガス(酸化性ガス)中のオゾン濃度を示している。
【0046】
続いて、増速酸化現象におけるハロゲン元素の影響を調べるために、酸化性ガスとハロゲン元素を含むガスの組合せを変えて、増速酸化現象の発現について詳細に調べた結果を示す。ここでは、酸化性ガスとして(1)オゾン(O)、(2)酸素(O)、(3)水(H+O)の3種類を選択し、塩素元素を含むガスとして(a)塩化水素(HCl)、(b)塩素(Cl)を用いた例を示す。酸化の条件は、酸化温度が800℃で酸化時間が2分である。増速酸化現象の発現の有無は、塩素元素を含むガスを添加しない場合の酸化シリコン膜の膜厚と塩素元素を含むガスを添加した場合の酸化シリコン膜の膜厚差が2倍以上あるか否かで定義している。図5はその結果を示す表である。図5において、○印は増速酸化現象が存在することを示しており、×印は増速酸化現象が存在しないことを示している。図5からわかるように、オゾン(O)と塩化水素(HCl)を用いた場合のみ、増速酸化現象が観測されていることがわかる。すなわち、熱酸化法で増速酸化現象を発現させるには、例えば、オゾン(O)を含む酸化性ガスと、塩化水素(HCl)とを原料ガスに使用することで実現できることがわかる。
【0047】
続いて、増速酸化現象が見られるオゾン(O)と塩化水素(HCl)の組合せにおいて、酸化温度の依存性を調べたのでこの結果について説明する。以下に示す実験の条件は、ガス流量(HCl濃度)、ガス圧力および酸化時間は一定とし、酸化温度だけを変化させている。その結果を図6に示す。図6の縦軸のSiO膜厚比は、塩化水素(HCl)を添加しない場合の酸化シリコン膜の膜厚に対する塩化水素(HCl)を添加した場合の酸化シリコン膜の膜厚比で示している。図6において、酸化シリコン膜の膜厚比が急激に大きくなる領域が、増速酸化現象の発現を示している。本実施の形態1から明らかなように参加温度が500℃〜600℃の範囲では増速酸化現象は発生しないが、700℃以上の範囲では増速酸化現象が発生していることがわかる。これは、700℃近傍で塩化水素(HCl)の熱解離が起こり、この熱解離によって発生した塩素ラジカル(Cl)や水素ラジカル(H)が、オゾン(O)を急激に分解することに起因している。すなわち、本実施の形態1で最も重要な点は、熱解離してオゾン(O)を分解する触媒作用のあるガス(例えば、塩化水素(HCl))をオゾン(O)と併用して用いること、および、低温で熱分解する触媒作用のガスを用いることである。つまり、通常の熱酸化法では、例えば、800℃以上の酸化温度にする必要があるが、本実施の形態1では、ハロゲン元素を含む化合物ガスが熱解離する温度以上であれば、増速酸化現象を発現させることができるのである。例えば、図6に示すように、触媒ガスとして塩化水素(HCl)を使用する場合、塩化水素(HCl)は約700℃程度で熱解離するので、本実施の形態1における熱酸化法によれば、700℃以上で増速酸化現象を発現させて酸化シリコン膜を充分に形成することができるのである。つまり、触媒ガスの熱解離温度が低くなればなるだけ、本実施の形態1における熱酸化法は、低温でも増速酸化現象を発現させて効率よく酸化シリコン膜を充分に形成することができるのである。
【0048】
例えば、塩化水素(HCl)の代わりにフッ化水素(HF)や臭化水素(HBr)などのハロゲン元素と水素との化合物ガスを用いても同様の効果が得られる。厳密には、塩化水素(HCl)よりも熱的に不安定な臭化水素(HBr)を用いると、より低温領域での増速酸化現象を発現させることができる。また、三フッ化窒素(NF)や三フッ化塩素(ClF)などのハロゲン元素を含む化合物ガスを用いても、分解温度に差があるものの低温領域で増速酸化現象を発現させることができることが判明している。
【0049】
なお、本実施の形態1による熱酸化法では、オゾン濃度が90%のオゾン(O)を毎分300cc〜800ccの範囲で供給しながら半導体基板の酸化処理を行なったが、酸化反応が供給律速の温度範囲であれば、当然オゾン流量の多い領域で酸化シリコン膜を形成する酸化速度は大きくなることが判明した。同様に、オゾン濃度が大きいほど酸化シリコン膜を形成する酸化速度も大きくなった。また、触媒ガスとなる塩化水素(HCl)の流量においても、塩化水素(HCl)の流量が多い領域で酸化シリコン膜を形成する酸化速度は大きくなることが判明した。
【0050】
以上のように本実施の形態1における熱酸化法について説明したが、本実施の形態1における熱酸化法を使用すると、特徴的な痕跡が酸化シリコン膜に生じる。この特徴的な現象の1つについて説明する。古くから知られている酸素(O)と塩化水素(HCl)を用いた半導体基板の酸化処理(HCl酸化という)では、形成される酸化シリコン膜中に塩素元素(Cl)が含まれる。本実施の形態1における熱酸化法でも同様に、形成される酸化シリコン膜中に塩素元素(Cl)が含まれ、酸化シリコン膜に含有される塩素濃度は、酸化処理での原料ガス雰囲気中のHCl濃度に依存する。
【0051】
図7は、各HCl濃度で酸化して形成された酸化シリコン膜中の塩素濃度を示すグラフである。図7において、酸化シリコン膜の膜厚は4nmで一定とし、全反射蛍光X線を用いて塩素(Cl)の面密度を測定して示している。図7に示すように、酸化シリコン膜中の塩素濃度は酸化雰囲気中のHCl濃度に対して線形の関係にあることがわかる。従来のHCl酸化と同じ酸化温度で、かつ、同じ塩素濃度(HCl)で形成した酸化シリコン膜で比較すると、本実施の形態1で形成した酸化シリコン膜の方が従来のHCl酸化よりも塩素元素を多く含んでいることが判明した。これは、本実施の形態1では、酸化雰囲気中の塩素元素が活性な塩素ラジカルになっていることを示しているものである。また、本実施の形態1ではオゾン(O)と塩化水素(HCl)を用いた熱酸化法の例を示しているが、例えば、フッ化水素(HF)、臭化水素(HBr)、三フッ化窒素(NF)あるいは三フッ化塩素(ClF)を用いた場合は、酸化シリコン膜の膜中や半導体基板と酸化シリコン膜の間の界面に、ハロゲン元素を含む化合物ガスの元素が含まれていた。このように、本実施の形態1を用いた熱酸化法においては、ハロゲン元素を含む化合物ガスの元素が酸化シリコン膜中に取り込まれていることに特徴がある。
【0052】
(実施の形態2)
次に、本実施の形態2について詳細に説明する。ここでは、本実施の形態2で得られる熱酸化膜(酸化シリコン膜)の膜厚均一性についての説明を行う。図1および図2に示す熱処理装置(酸化装置)を用いて、オゾン(O)と塩化水素(HCl)で熱酸化法を実施する場合、原料ガス(オゾン(O)と塩化水素(HCl)の供給方法で熱酸化膜の均一性は大きく異なる。具体的には、図1および図2に示すのガス導入ブロック104からオゾン(O)と塩化水素(HCl)を供給する場合、個々のガス導入位置と導入本数により得られる熱酸化膜(酸化シリコン膜)の膜厚は大きく変化する。
【0053】
図8は、半導体ウェハ(半導体基板)とガス導入場所の位置的な関係と、原料ガスの導入本数を示す図である。図8は、図1に示す平面図に対応するものである。図8(a)は、半導体基板(半導体ウェハ)に対し左側からオゾン(O)と塩化水素(HCl)を供給する場合を示しており、オゾン(O)を供給する導入管と塩化水素(HCl)を導入する導入管をそれぞれ1箇所ずつ設ける原料ガス供給方式を示している。一方、図8(b)は、半導体基板(半導体ウェハ)に対し左側からオゾン(O)と塩化水素(HCl)を供給する場合を示しており、塩化水素(HCl)を供給する導入管を5箇所設け、かつ、オゾン(O)を供給する導入管を4箇所設けて、それぞれの導入管を交互に配置する原料ガス供給方式を示している。本実施の形態2では、図8に示す2種類の原料ガス供給方式を用いて熱酸化法を実施し、半導体基板(半導体ウェハ)の面内における膜厚均一性を調べた。ここでは、半導体基板を毎分60回転の速度で回転させ、どちらの原料ガス供給方式においても同一条件で熱酸化法を実施した。なお、両方の原料ガス供給方式ともオゾン(O)と塩化水素(HCl)の流量は同じとしている。
【0054】
図9は、両方の原料ガス供給方式で熱酸化法を実施した場合における半導体基板の面内での膜厚分布を比較した結果を示すグラフである。図8(a)に示す原料ガス供給方式で熱酸化法を実施した場合は、半導体基板の中心部にいくほど厚い酸化シリコン膜が形成される凸型の膜厚分布を示している。これに対し、図8(b)の原料ガス供給方式で熱酸化法を実施した場合は、半導体基板の端部と中心部において酸化シリコン膜の膜厚に大差はなく、半導体基板の全面にわたって均一な膜厚分布が得られていることがわかる。
【0055】
本実施の形態2における熱酸化法では、塩化水素(HCl)が熱解離して得られる塩素ラジカル(Cl)や水素ラジカル(H)がオゾン(O)と反応することにより、増速酸化現象が発現するため、塩素ラジカル(Cl)や水素ラジカル(H)の濃度が大きい領域で酸化シリコン膜が形成される酸化速度が大きくなる。図8(a)に示す原料ガス供給方式では、半導体基板(半導体ウェハ)の中央部で上述した塩素ラジカル(Cl)や水素ラジカル(H)の濃度が最大になる。このため、酸化シリコン膜の膜厚は半導体基板の中心部を最大とした凸形状分布となる。一方、図8(b)に示す原料ガス供給方式では、塩素ラジカル(Cl)や水素ラジカル(H)の濃度が半導体基板(半導体ウェハ)上で均一な濃度分布になるため、酸化シリコン膜の半導体基板における膜厚均一性は飛躍的に向上しているのである。つまり、オゾン(O)を導入する導入管と塩化水素(HCl)を導入する導入管を複数交互に設けることにより、半導体基板上でのオゾン濃度、塩素ラジカル(Cl)の濃度や水素ラジカル(H)の濃度を半導体基板上で均一にできる。この結果、半導体基板の全面において、形成される酸化シリコン膜の膜厚均一性を向上することができるのである。
【0056】
本実施の形態2では、図8(b)に示すように、オゾン(O)を供給する導入管4つと塩化水素(HCl)を供給する導入管5つの合計9箇所からの原料ガスを導入する例について説明したが、塩化水素(HCl)をアルゴン(Ar)などのキャリアガスと同時に流すことで、原料ガスの導入箇所を少なくしても、半導体基板に形成される酸化シリコン膜の膜厚均一性を確保することができることが判明した。ただし、導入箇所が5箇所以下の場合は、半導体基板に形成される酸化シリコン膜の膜厚均一性が劣化した。したがって、原料ガスの供給に関しては、少なくとも5箇所以上の場所から原料ガスを導入することが望ましいことがわかる。
【0057】
本実施の形態2では、原料ガスを半導体基板(半導体ウェハ)の片方の側壁部から、もう片方の側壁部へ流して熱酸化法を実施する例を示しているが、以下に示すようなシャワーヘッド式の原料ガスの供給方法も可能である。
【0058】
図10はヒータ加熱方式の熱処理装置(酸化装置)を示す図である。図10では省略しているが、図10の左側に基板搬送室が設置されており、ゲートバルブ202を介して反応室201へ半導体基板208を搬入あるいは搬出できるように構成されている。半導体基板208はヒータ加熱が可能なサセプタ205上に配置され、サセプタ205の対面に設置されたシャワーヘッド204から原料ガスを供給する。真空排気は排気バルブ203を介して、サセプタ205の下部から行うようになっている。
【0059】
図11はシャワーヘッド204のガス供給穴の配置を示した図である。オゾン(O)が供給されるガス供給穴204aと、触媒ガス(例えば、塩化水素(HCl))が供給されるガス供給穴204bが交互に配置されている。このように、シャワーヘッド204から原料ガス(オゾン(O)と触媒ガス)を供給して熱酸化法を実施する場合、オゾン(O)を供給するガス供給穴204aと、触媒ガスを供給するガス供給穴204bを交互に配置することにより、半導体基板上でのオゾン濃度、塩素ラジカル(Cl)の濃度や水素ラジカル(H)の濃度を半導体基板上で均一にできる。この結果、半導体基板の全面において、形成される酸化シリコン膜の膜厚均一性を向上することができるのである。
【0060】
以上のように、本実施の形態2における熱酸化法では、図1に示す構成の熱処理装置(酸化装置)や、図10に示す構成の熱処理装置(酸化装置)のどちらでも、半導体基板上にオゾン(O)を供給する経路と、例えば、塩化水素(HCl)などの触媒ガスを供給経路とを交互に複数設けることにより、半導体基板上に供給されるオゾン濃度、触媒ガス濃度を半導体基板の全面にわたって均一にできる。この結果、半導体基板の全面に形成される酸化シリコン膜の膜厚均一性を向上することができる。
【0061】
(実施の形態3)
以下、本実施の形態3における熱酸化法について図面を参照しながら詳細に説明する。本実施の形態3では、面方位の異なるシリコン単結晶基板(抵抗率=10Ω・cm)、SiC基板(4H)、不純物の異なる多結晶シリコン膜、ノンドープ多結晶SiC膜および窒化シリコン膜(Si膜)を準備し、各基板もしくは各薄膜を同一条件で酸化して得られる酸化シリコン膜の膜厚比について評価した。
【0062】
多結晶シリコン膜の形成は、ジシラン(Si)を原料ガスとする減圧CVD(Chemical Vapor Deposition)法で非晶質シリコン膜を成膜した後、熱処理によって非晶質シリコン膜を結晶化することにより形成した。リンドープ非晶質シリコン膜はジシラン(Si)とフォスフィン(PH)を用い、ボロンドープ非晶質シリコン膜はジシラン(Si)とジボラン(B)を用いている。一方、ノンドープ非晶質シリコン膜はジシラン(Si)のみで成膜している。非晶質シリコン膜中のリン(P)とボロン(B)の濃度は5×1020/cmとしている。非晶質シリコン膜の結晶化は熱処理温度を950℃、熱処理時間を2分という条件で窒素アニールにより行なった。炭化シリコン膜(SiC膜)は、モノメチルシラン(CHSiH)を原料ガスとする減圧CVD法を用いて多結晶SiC膜を形成した。窒化シリコン膜は、ジクロルシラン(DCS:SiHCl)とアンモニア(NH)を原料ガスとする減圧CVD法で成膜した。これらの薄膜はいずれもシリコン基板上に200nmの膜厚で成膜している。
【0063】
本実施の形態3では、上述した各基板や各薄膜を同一条件で酸化して得られる酸化シリコン膜の膜厚を透過型電子顕微鏡(TEM)で観測し、Si(100)基板上に形成された酸化シリコン膜の膜厚に対する膜厚比として示している。図12にその結果を示す。酸化処理の原料ガスは90%のオゾン(O)と塩化水素(HCl)を用い、HCl濃度を3.5%としている。通常の酸素(O)によるドライ酸化法やウエット酸化法によるSi基板(シリコン基板)や不純物の異なる多結晶シリコン膜の酸化処理においては、基板の面方位や不純物濃度によって形成される膜厚は大きく異なる。例えば、酸化温度が800℃のドライ酸化法で、Si(100)の単結晶シリコン基板(抵抗率=10Ω・cm)とリンドープ多結晶シリコン膜(リン濃度=5×1020/cm)の酸化処理を行った場合は、リンドープ多結晶シリコン膜上に形成される酸化シリコン膜は、Si(100)の単結晶シリコン基板上に形成される酸化シリコン膜に比べて約4倍の膜厚だけ厚く形成される。また、SiC基板(4H、SiC(0001))多結晶SiC膜、窒化シリコン膜などは、ほとんど酸化が進行せず、酸化シリコン膜が形成されない。これに対して、本実施の形態3による熱酸化法においては、上述した各基板や各薄膜に形成される酸化シリコン膜の、Si(100)の単結晶シリコン基板上に形成される酸化シリコン膜に対する膜厚比は、0.8〜1.1の範囲にあり、本実施の形態3における熱酸化法が下地の影響をほとんど受けないことが分かった。
【0064】
言い換えれば、各基板や各薄膜を同じ条件で本実施の形態3による熱酸化法を実施した場合、最も酸化シリコン膜の膜厚が薄い窒化シリコン膜上の酸化シリコン膜の膜厚を基準にすれば、図12に示す材料(下地)では、最大でも1.5倍程度しか酸化シリコン膜の膜厚差はないことが分かる。
【0065】
一般に、酸素ラジカル(O)を用いた酸化処理では、酸化して得られる酸化シリコン膜の膜厚の下地依存性が小さいことが知られており、本実施の形態3による熱酸化法も酸素ラジカル(O)によって酸化処理が進行していることを示している。
【0066】
上述したように、本実施の形態3によればシリコン基板やSiC基板を熱酸化処理してシリコン基板上やSiC基板上に酸化シリコン膜を形成する際、下地の面方位の影響を小さくできるので、パターン段差部など複数の面方位が存在する場所であっても、ほぼ均一な厚さの酸化シリコン膜を形成することができる。例えば、下地段差を有するシリコン基板やSiC基板を熱酸化処理して形成したシリコン基板/酸化シリコン膜/アルミニウム膜の積層構造からなるMIM(Metal Insulator Metal)キャパシタの絶縁耐圧を調べた結果、酸素(O)を使用する従来のドライ酸化や水蒸気(HO)を使用する従来のウエット酸化によって酸化シリコン膜を形成したMIMキャパシタに比べて、MIMキャパシタの絶縁耐圧が飛躍的に向上した。この結果は、下地の影響に依存せずに均一な膜厚の酸化シリコン膜を形成できるという本実施の形態3による熱酸化法の特徴的な性質によるものである。
【0067】
さらに、本実施の形態3における熱酸化法と従来のラジカルを用いた熱酸化法との違いは、従来のラジカルを用いた熱酸化法で形成した酸化シリコン膜中にはハロゲン元素が含まれていないのに対し、本実施の形態3における熱酸化法で形成した酸化シリコン膜中にはハロゲン元素が含まれていることである。酸化シリコン膜中にハロゲン元素が存在すると、Si−Oネットワークの一部にハロゲン元素が取り込まれるため、ハロゲン元素が多い酸化シリコン膜ほど膜密度は低下する。すなわち、同じ物理膜厚ならば、膜密度に対応して酸化シリコン膜の比誘電率も変化する。したがって、本実施の形態3においては、熱酸化処理を適用する場所や目的に応じて、酸化シリコン膜中のハロゲン元素の濃度を制御することができる。例えば、同じ物理膜厚でも酸化シリコン膜に含まれるハロゲン元素の濃度を大きくすることで、酸化シリコン膜の比誘電率が低下するので、電気的には厚い酸化シリコン膜を形成することができる。一方、電気的に薄い酸化シリコン膜(比誘電率の高い膜)が必要であれば、ハロゲン元素の濃度を小さくすることで対応することができる。このように本実施の形態3における熱酸化法では、原料ガスの一部にハロゲン元素を含む化合物ガスを使用しているので、形成される酸化シリコン膜にハロゲン元素が含まれる。このことから、原料ガスの一部を構成するハロゲン元素を含む化合物ガスの濃度を調整することにより、酸化シリコン膜に含まれるハロゲン元素の濃度を調整することができる。この結果、本実施の形態3における熱酸化法は、酸化シリコン膜を形成する場所や用途に応じて、比誘電率の異なる酸化シリコン膜を形成することができる利点を有する。
【0068】
一方、下地に依存しないで酸化シリコン膜を形成できる本実施の形態3による熱酸化法は、以下のような例にも応用することができる。図13は、本実施の形態3における熱酸化法を適用した一例を示す図である。SiC基板を用いたパワーデバイスの製造においては、SiC基板に導入した窒素などの不純物を活性化するため、1800℃程度の熱処理が必要になる。この高温の熱処理ではSiC基板からシリコン(Si)が昇華するため、図13に示すように、SiC基板301の表面は非常に大きな凹凸形状302が形成される。このSiC基板301の表面に形成された凹凸形状302を平坦化する方法の1つとして、酸素(O)を使用したドライ酸化法などを用いて、凹凸形状302が形成されているSiC基板301の表面に厚い酸化シリコン膜303を形成し(図14)、その酸化シリコン膜303をフッ酸水溶液で除去する方法が一般的である(図15)。しかし、酸素(O)を使用するドライ酸化では、酸化シリコン膜を形成する酸化速度に面方位依存性が存在するため、凹凸形状302の緩和効果が非常に小さい。すなわち、凹凸形状302には様々な面方位の面が露出しているため、通常のドライ酸化法では凹凸形状302の全体にわたって均一な酸化シリコン膜を形成しにくくなる。これに対し、本実施の形態3による熱酸化法を適用した場合、酸化シリコン膜の酸化速度(成膜速度)が下地の形状や面方位に影響を受けにくいので、凹凸形状302に対して均一な膜厚の酸化シリコン膜を形成することができる。したがって、本実施の形態3によれば、凹凸形状302の緩和効果を非常に大きくすることができる顕著な特徴を有する。さらに、本実施の形態3における熱酸化法では、酸化シリコン膜の酸化速度(成膜速度)が大きいため、スループットも向上することができる。なお、本実施の形態3では、SiC基板の例を示したが、通常のシリコン基板においても原理は同じであるので同様の効果が得られる。
【0069】
(実施の形態4)
次に、本実施の形態4における熱酸化法を使用した半導体装置の製造方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。本実施の形態4では、枚葉方式の酸化装置(熱処理装置)では形成することが困難な厚い熱酸化膜(酸化シリコン膜)の形成やトランジスタのゲート絶縁膜の形成に本実施の形態4における熱酸化法を適用した例を示す。
【0070】
図16〜図26は、nチャネル型MISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)の製造工程を示しており、本実施の形態4では、ゲート長(L)とゲート幅(W)をパラーメータとしたnチャネル型MISFETが同時に形成され、しきい電圧のゲート長依存性やゲート幅依存性を評価できるようにしている。
【0071】
まず、図16に示すように、ボロン(B)を1×1017/cmの濃度に設定したp型単結晶シリコンからなる半導体基板401にp型ウェル402を形成する。p型ウェル402は、例えば、イオン注入法を使用することにより、ボロン(B)などのp型不純物を半導体基板401に導入することにより形成される。
【0072】
続いて、図17に示すように、半導体基板401上に、厚さ10nmの酸化シリコン膜403と、厚さ100nmの窒化シリコン膜404を連続して形成する。ここでは、酸化シリコン膜403の形成に、酸素(O)と水素(H)を用いたISSG酸化法(In-Situ Steam Generation)を用いて、酸化温度(熱処理温度)を1000℃とし、水素濃度を33%の条件で形成する。窒化シリコン膜404はモノシラン(SiH)とアンモニア(NH)を原料ガスとする減圧CVD法を用いて、熱処理温度が700℃の条件で形成する。
【0073】
次に、図18に示すように、フォトリソグラフィ技術およびドライエッチング技術により、窒化シリコン膜404、酸化シリコン膜403および半導体基板401を順次エッチングする。これにより、半導体基板401に素子分離用のトレンチ405を形成する。トレンチ405の深さは、例えば、300nmとなっている。
【0074】
続いて、図19に示すように、本実施の形態4における熱酸化法を用いてトレンチ405の内壁に対して酸化処理を実施し、トレンチ405の内壁を含む窒化シリコン膜404上に酸化シリコン膜406を形成する。ここでは、酸化性ガスとして90%のオゾン(O)と塩化水素(HCl)を用いている。そして、酸化温度(熱処理温度)を900℃とし、HCl濃度を3.5%にする条件で、厚さ20nmの酸化シリコン膜406を形成している。
【0075】
前記実施の形態3に示すように、酸化シリコン膜の酸化速度(成膜速度)には下地の面方位依存性がほとんどないので、トレンチ405の底部や側壁およびコーナー部においても同じ膜厚の酸化シリコン膜406が形成される。また、本実施の形態4における熱酸化法によれば、窒化シリコン膜上に形成される酸化シリコン膜406の成膜速度も大きいので、窒化シリコン膜404のパターン側壁部や表面にも酸化シリコン膜406が形成される。なお、前記実施の形態1などに示すように、酸化シリコン膜406の膜中には、ハロゲン元素が含まれている。
【0076】
本実施の形態4で、半導体基板401の表面に酸化シリコン膜402を形成しているが、この酸化シリコン膜402の形成にISSG酸化法を使用している。このISSG酸化法は、一般的に短時間処理に適したランプ加熱方式を採用している。そこで、トレンチ405の内壁に形成する酸化シリコン膜406もISSG酸化法を使用することが考えられる。ところが、トレンチ405の内壁を酸化処理して酸化シリコン膜406を形成する場合、この酸化シリコン膜の厚さが20nmを超えるほど厚く形成する必要があるので、上述したISSG酸化法を用いると1000℃で3分以上の時間を要する。しかし、ISSG酸化法では、短時間処理に適したランプ加熱方式を採用していることが一般的であることから、1000℃で3分以上となる高温でかつ、長時間の酸化処理には装置の構成上、適用が困難となっている。したがって、酸化シリコン膜406のように膜厚が厚い酸化シリコン膜を形成する場合は、バッチ方式のヒータ加熱酸化法を適用する場合が多い。バッチ方式のヒータ加熱酸化法を使用する場合、高温で、かつ、熱処理時間が長時間になることから、酸化シリコン膜406よりも前の工程で形成するp型ウェル402の不純物が拡散して不純物プロファイルが変化してしまう可能性がある。すると、製造されるMISFETの電気的特性が素子ごとにばらつくなどの不都合が生じることになる。さらに、バッチ方式では、スループットが低下する問題もある。
【0077】
そこで、本実施の形態4では、20nm程度の厚い酸化シリコン膜406を形成する方法として、オゾン(O)と塩化水素(HCl)を原料ガスに使用した熱酸化法を使用している。この本実施の形態4における熱酸化法によれば、塩化水素(HCl)が熱解離して形成された塩素ラジカル(Cl)や水素ラジカル(H)による触媒作用によって、オゾンの分解が促進される。すなわち、本実施の形態4における熱酸化法によれば、オゾン(O)を分解することによって多量に酸素ラジカル(O)が生成され、増速酸化現象が生じる。増速酸化現象は、塩化水素が熱解離する温度で発生することから、上述した1000℃よりも低い温度で実現できる、そして、増速酸化現象が生じることから、酸化シリコン膜の成膜速度も速くなり、ISSG酸化法やバッチ方式のヒータ加熱酸化法などの従来技術に比べて短時間で酸化処理を行なうことができる。このように本実施の形態4における熱酸化法によれば、厚い酸化シリコン膜406を、低温で、かつ、短時間で形成することができる。このため、p型ウェル402に導入されている不純物の拡散を抑制することができるとともに、枚葉方式の酸化装置(熱処理装置)で処理ができるので、スループットの向上を図ることができる。
【0078】
続いて、図19に示すように、高密度プラズマCVD法を用いて酸化シリコン膜407を堆積し、トレンチ405内に酸化シリコン膜407を埋め込む。その後、化学的機械的研磨法(CMP:Chemical Mechanical Polishing)により酸化シリコン膜407および酸化シリコン膜406を削り、半導体基板401の表面を平坦化する。この研磨で、窒化シリコン膜404の一部も研磨される。
【0079】
次に、図20に示すように、加熱したリン酸(熱燐酸)により、パターニングされている窒化シリコン膜404を除去した後、希フッ酸水溶液で酸化シリコン膜403を除去することにより、半導体基板401の表面を露出する。ここまでの工程で、トレンチ405に酸化シリコン膜406と酸化シリコン膜407を埋め込んだ素子分離領域STIが形成される。
【0080】
続いて、図21に示すように、素子分離領域STIで分離された半導体基板401の表面近傍に、しきい電圧を所定の電圧に調整するためのボロン(B)をイオン注入する。これにより、半導体基板401の表面近傍にしきい値電圧調整用半導体領域408を形成する。そして、周知の方法で半導体基板401の洗浄を実施する。
【0081】
この後、図22に示すように、半導体基板401上に酸化シリコン膜409を形成する。このとき、試料Xでは、本実施の形態4における熱酸化法で酸化シリコン膜409を形成する。具体的には、オゾン(O)と塩化水素(HCl)を用いた熱酸化法で酸化シリコン膜409を膜厚7nmで形成する。一方、試料YではISSG酸化法を用いて酸化シリコン膜409を膜厚7nmで形成する。ここで、試料Xの酸化シリコン膜409は、700℃の温度で形成する一方、試料Yの酸化シリコン膜409は、900℃の温度で形成している。なお、試料Xと試料Yの酸化時間は同じとしている。
【0082】
続いて、酸化シリコン膜409上にリンを導入したポリシリコン膜410を形成する。ポリシリコン膜410は、例えば、CVD法を使用して形成することができる。そして、図23に示すように、パターニングしたレジスト膜をマスクにしたエッチングによりポリシリコン膜410および酸化シリコン膜409を加工して、ポリシリコン膜410よりなるゲート電極Gと酸化シリコン膜409よりなるゲート絶縁膜GOXを形成する。
【0083】
そして、図24に示すように、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法を使用することにより、ゲート電極Gに整合した浅いn型不純物拡散領域411を形成する。浅いn型不純物拡散領域411は、半導体領域である。
【0084】
次に、図25に示すように、半導体基板401上に酸化シリコン膜を形成する。酸化シリコン膜は、例えば、CVD法を使用して形成することができる。そして、酸化シリコン膜を異方性エッチングすることにより、サイドウォール412をゲート電極Gの側壁に形成する。サイドウォール412は、酸化シリコン膜の単層膜から形成するようにしたが、これに限らず、例えば、窒化シリコン膜と酸化シリコン膜の積層膜からなるサイドウォールを形成してもよい。
【0085】
続いて、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法を使用することにより、サイドウォール412に整合した深いn型不純物拡散領域413を形成する。深いn型不純物拡散領域413は、半導体領域である。この深いn型不純物拡散領域413と浅いn型不純物拡散領域411によってソース領域が形成される。同様に、深いn型不純物拡散領域413と浅いn型不純物拡散領域411によってドレイン領域が形成される。このようにソース領域とドレイン領域を浅いn型不純物拡散領域411と深いn型不純物拡散領域413で形成することにより、ソース領域およびドレイン領域をLDD(Lightly Doped Drain)構造とすることができる。
【0086】
このようにして、深いn型不純物拡散領域413を形成した後、熱処理を行なう。具体的には、炭酸ガスレーザーアニール法により、1250℃、800マイクロ秒の熱処理を行って深いn型不純物拡散領域413に導入している不純物の活性化が行なわれる。
【0087】
その後、図26に示すように、半導体基板401上にコバルト膜を形成する。このとき、ゲート電極Gに直接接するようにコバルト膜が形成される。同様に、深いn型不純物拡散領域413にもコバルト膜が直接接する。
【0088】
コバルト膜は、例えば、スパッタリング法を使用して形成することができる。そして、コバルト膜を形成した後、熱処理を施すことにより、ゲート電極Gを構成するポリシリコン膜410とコバルト膜を反応させて、コバルトシリサイド膜414を形成する。これにより、ゲート電極Gはポリシリコン膜410とコバルトシリサイド膜414の積層構造となる。コバルトシリサイド膜414は、ゲート電極Gの低抵抗化のために形成される。同様に、上述した熱処理により、深いn型不純物拡散領域413の表面においてもシリコンとコバルト膜が反応してコバルトシリサイド膜414が形成される。このため、深いn型不純物拡散領域413においても低抵抗化を図ることができる。
【0089】
そして、未反応のコバルト膜は、半導体基板401上から除去される。なお、本実施の形態4では、コバルトシリサイド膜414を形成するように構成しているが、例えば、コバルトシリサイド膜414に代えてニッケルシリサイド膜やチタンシリサイド膜を形成するようにしてもよい。
【0090】
次に、半導体基板401の主面上に層間絶縁膜となる酸化シリコン膜415を形成する。この酸化シリコン膜415は、例えばTEOS(tetra ethyl ortho silicate)を原料としたCVD法を使用して形成することができる。その後、酸化シリコン膜415の表面を、例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing)法を使用して平坦化する。
【0091】
続いて、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用して、酸化シリコン膜415にコンタクトホールCNTを形成する。そして、コンタクトホールCNTの底面および内壁を含む酸化シリコン膜415上にチタン/窒化チタン膜416aを形成する。チタン/窒化チタン膜416aは、チタン膜と窒化チタン膜の積層膜から構成され、例えばスパッタリング法を使用することにより形成することができる。このチタン/窒化チタン膜416aは、例えば、後の工程で埋め込む膜の材料であるタングステンがシリコン中へ拡散するのを防止する、いわゆるバリア性を有する。
【0092】
続いて、コンタクトホールCNTを埋め込むように、半導体基板401の主面の全面にタングステン膜416bを形成する。このタングステン膜416bは、例えばCVD法を使用して形成することができる。そして、酸化シリコン膜415上に形成された不要なチタン/窒化チタン膜416aおよびタングステン膜416bを例えばCMP法を除去することにより、プラグPLGを形成することができる。
【0093】
次に、酸化シリコン膜415およびプラグPLG上にチタン/窒化チタン膜417a、銅を含有するアルミニウム膜417b、チタン/窒化チタン膜417cを順次、形成する。これらの膜は、例えばスパッタリング法を使用することにより形成することができる。続いて、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、これらの膜のパターニングを行い、配線L1を形成する。さらに、配線の上層に配線を形成するが、ここでの説明は省略する。このようにして、本実施の形態4における半導体装置を形成することができる。
【0094】
本実施の形態4で製造した試料Xと試料Yの評価を行なったところ、しきい電圧のゲート幅(W)の小さい素子で違いが見られた。ここでは、ソース電圧=0V、ドレイン電圧=1V、基板電圧=0Vとして、ドレイン電流がId=10nAとなるゲート電圧を、しきい電圧と定義している。試料Xと試料Yの同じ素子サイズのnチャネル型MISFETを、それぞれ256個測定し、しきい電圧のばらつき(5シグマ)を比較した。その結果、ISSG酸化法でゲート絶縁膜となる酸化シリコン膜409を形成した試料Yのしきい値電圧のばらつきに比べて、本実施の形態4における熱酸化法でゲート絶縁膜となる酸化シリコン膜409を形成した試料Xのばらつきは、約85%と小さくなった。これは、試料Xの方が試料Yよりも酸化シリコン膜409の酸化温度が低く、ゲート絶縁膜である酸化シリコン膜409と接しているしきい値電圧調整用半導体領域408のボロン濃度の変化が小さく、結果的に濃度ばらつきが減少したためと考えることができる。つまり、本実施の形態4における熱酸化法によれば、ゲート絶縁膜となる酸化シリコン膜409を、低温で、かつ、短時間で形成することができる。このため、酸化シリコン膜409よりも前の工程で形成されるしきい値電圧調整用半導体領域408内の不純物の拡散を抑制することができるのである。このため、しきい値電圧調整用半導体領域408における不純物の濃度ばらつきを抑制できる。
【0095】
また、トランジスタの信頼性の優劣を示すホットキャリア耐性についても試料Xと試料Yとを比較した。例えば、ホットキャリア注入効率が大きい測定用件でnチャネル型MISFETに電流を流し続け、あるゲート電圧(Vg)におけるドレイン電流(Id)の時間変化を比較した。つまり、ゲート絶縁膜にキャリアが捕獲されると次第にしきい値電圧が上昇することになる。このため、あるゲート電圧(Vg)を与えた状態で、ドレイン電流(Id)が減少していく現象を見れば、MISFETでのホットキャリア耐性を測定することができるのである。例えば、ドレイン電流(Id)の減少が少なければ、ホットキャリア耐性が良好であることがわかる一方、ドレイン電流(Id)の減少が多くなれば、ホットキャリア耐性が劣化していることがわかる。その結果、試料Xは、試料Yに比べてホットキャリア耐性が向上していることが判明した。これは、本実施の形態4においては、半導体基板401と、ゲート絶縁膜となる酸化シリコン膜409との界面に塩素元素(Cl)が存在するためである。このように、本実施の形態4においては、古くから知られている、酸素(O)と塩化水素(HCl)を用いたHCl酸化の利点でもあるホットキャリア耐性の向上も確認できた。ただし、従来のHCl酸化は、通常の酸素(O)を使用するドライ酸化と同様に、酸化シリコン膜の酸化速度(成膜速度)に基板面方位依存性が存在するが、本実施の形態4における熱酸化法はラジカル酸化法と同様に、酸化速度(成膜速度)に基板面方位依存性がない特徴も同時に有している。
【0096】
以上のように、本実施の形態4によれば熱酸化膜(酸化シリコン膜)の形成に伴う熱負荷を低減できるので、しきい電圧のばらつきを抑制することができる。また、半導体基板の界面にハロゲン元素を導入することができるので、MISFETのホットキャリア耐性も向上する。さらに、酸化速度(成膜速度)に基板面方位依存性がほとんどないので、3次元デバイスへの応用も可能である。また、本実施の形態4における熱酸化法によれば、短時間で処理することが可能であることから、バッチ方式の酸化装置ではなく、枚葉方式の酸化装置で実施することができる。したがって、本実施の形態4における熱酸化法によれば、スループット向上も図ることができる。
【0097】
なお、本実施の形態4で示した測定電圧条件や薄膜の膜厚の絶対値は一例であり、この数値をもって本発明が限定されるわけではない。
【0098】
(実施の形態5)
次に、本実施の形態5について図面を参照しながら詳細に説明する。本実施の形態5では、不揮発性メモリの1つであるMONOS型メモリトランジスタの製造に本発明を適用した例を説明する。
【0099】
絶縁膜を記憶ノードとする不揮発性メモリ(不揮発性半導体記憶装置)の代表的な例として、MONOS(Metal-Oxide-Nitride-Oxide-Semiconductor)型メモリが挙げられる。MONOS型メモリは、導電性ゲート電極(M)、酸化シリコン膜(第2電位障壁膜)(O)、窒化シリコン膜(電荷蓄積膜)(N)、酸化シリコン膜(第1電位障壁膜)(O)および半導体基板(S)の積層構造からなり、電荷保持機能を有する窒化シリコン膜にキャリア(電荷)を注入あるいは放出することで情報を記憶するものである。
【0100】
半導体基板の表面に形成される酸化シリコン膜(第1電位障壁膜)は半導体基板を熱酸化して形成し、窒化シリコン膜上の酸化シリコン膜(第2電位障壁膜)は窒化シリコン膜を熱酸化して形成する方法が一般的である。ここでは、窒化シリコン膜の下層に形成される酸化シリコン膜(第1電位障壁膜)をボトムSi酸化膜、窒化シリコン膜の上層に形成される酸化シリコン膜をトップSi酸化膜と呼称することにする。
【0101】
以下に、本実施の形態5におけるMONOS型メモリ(不揮発性半導体記憶装置)を製造する方法について説明する。
【0102】
まず、図27に示すように、前記実施の形態4で示した方法と同様の方法で、半導体基板501内にp型ウェル502を形成し、その後、半導体基板501にトレンチを形成する。そして、トレンチの内壁に第1酸化シリコン膜を形成し、この第1酸化シリコン膜を形成した後、トレンチを埋め込むように第2酸化シリコン膜を形成する。このようにして、トレンチに第1酸化シリコン膜と第2酸化シリコン膜を埋め込んだ素子分離領域STIを形成する。
【0103】
このとき、トレンチの内壁に形成される第1酸化シリコン膜は、本実施の形態4における熱酸化法で形成される。したがって、前記実施の形態4と同様に本実施の形態5では、厚い第1酸化シリコン膜を、低温で、かつ、短時間で形成することができる。このため、p型ウェル502に導入されている不純物の拡散を抑制することができるとともに、枚葉方式の酸化装置(熱処理装置)で処理ができるので、スループットの向上を図ることができる。
【0104】
次に、図27に示すように、半導体基板501の表面近傍に、しきい電圧を所定の電圧に調整するためのボロン(B)をイオン注入する。これにより、半導体基板501の表面近傍にしきい値電圧調整用半導体領域503を形成する。そして、周知の方法で半導体基板501の洗浄を実施する。
【0105】
続いて、図28に示すように、試料Xでは、オゾン(O)と塩化水素(HCl)を用いた熱酸化法でボトムSi酸化膜504を膜厚5nmで形成する。一方、試料YではISSG酸化法を用いてボトムSi酸化膜504を膜厚5nmで形成する。ここで、試料XのボトムSi酸化膜504は、700℃の温度で形成する一方、試料YのボトムSi酸化膜504は、900℃の温度で形成している。なお、試料Xと試料Yの酸化時間は同じとしている。
【0106】
次に、原料ガスにジクロルシラン(SiHCl)とアンモニア(NH)を用いた減圧CVD法により、厚さ15nmの窒化シリコン膜505をボトムSi酸化膜504上に形成する。本実施の形態5では、窒化シリコン膜505を650℃の温度で形成している。
【0107】
この後、窒化シリコン膜505上に厚さ10nmのトップSi酸化膜506を形成する。このとき、試料Xでは、オゾン(O)と塩化水素(HCl)を用いた熱酸化法でトップSi酸化膜506を形成する。一方、試料YではISSG酸化法を用いてトップSi酸化膜506を形成する。ここで、試料XのトップSi酸化膜506は、700℃の温度で形成する一方、試料YのトップSi酸化膜506は、1000℃の温度で形成している。なお、試料Xと試料Yの酸化時間は同じとしている。
【0108】
続いて、ゲート電極となるリンを導入したポリシリコン膜507を減圧CVD法で形成する。このとき、ポリシリコン膜507の形成温度は640℃としている。
【0109】
次に、図29に示すように、フォトリソグラフィ技術およびドライエッチング技術を使用することにより、ポリシリコン膜507、トップSi酸化膜506、窒化シリコン膜505およびボトムSi酸化膜504を順次ドライエッチングする。これにより、ポリシリコン膜507からなるゲート電極Gを形成し、トップSi酸化膜506からなる第2電位障壁膜VG2を形成する。さらに、窒化シリコン膜505からなる電荷蓄積膜ECを形成し、ボトムSi酸化膜504からなる第1電位障壁膜VG1を形成する。
【0110】
その後、図30に示すように、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法を使用することにより、ゲート電極Gに整合した浅いn型不純物拡散領域508を形成する。浅いn型不純物拡散領域508は、半導体領域である。
【0111】
次に、図31に示すように、半導体基板501上に酸化シリコン膜を形成する。酸化シリコン膜は、例えば、CVD法を使用して形成することができる。そして、酸化シリコン膜を異方性エッチングすることにより、サイドウォール509をゲート電極Gの側壁に形成する。サイドウォール509は、酸化シリコン膜の単層膜から形成するようにしたが、これに限らず、例えば、窒化シリコン膜と酸化シリコン膜の積層膜からなるサイドウォールを形成してもよい。
【0112】
続いて、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法を使用することにより、サイドウォール509に整合した深いn型不純物拡散領域510を形成する。深いn型不純物拡散領域510は、半導体領域である。この深いn型不純物拡散領域510と浅いn型不純物拡散領域508によってソース領域が形成される。同様に、深いn型不純物拡散領域510と浅いn型不純物拡散領域508によってドレイン領域が形成される。このようにソース領域とドレイン領域を浅いn型不純物拡散領域508と深いn型不純物拡散領域510で形成することにより、ソース領域およびドレイン領域をLDD(Lightly Doped Drain)構造とすることができる。
【0113】
このようにして、深いn型不純物拡散領域510を形成した後、熱処理を行なう。具体的には、炭酸ガスレーザーアニール法により、1250℃、800マイクロ秒の熱処理を行って深いn型不純物拡散領域510に導入している不純物の活性化が行なわれる。
【0114】
その後、図32に示すように、半導体基板501上にコバルト膜を形成する。このとき、ゲート電極Gに直接接するようにコバルト膜が形成される。同様に、深いn型不純物拡散領域510にもコバルト膜が直接接する。
【0115】
コバルト膜は、例えば、スパッタリング法を使用して形成することができる。そして、コバルト膜を形成した後、熱処理を施すことにより、ゲート電極Gを構成するポリシリコン膜507とコバルト膜を反応させて、コバルトシリサイド膜511を形成する。これにより、ゲート電極Gはポリシリコン膜507とコバルトシリサイド膜511の積層構造となる。コバルトシリサイド膜511は、ゲート電極Gの低抵抗化のために形成される。同様に、上述した熱処理により、深いn型不純物拡散領域510の表面においてもシリコンとコバルト膜が反応してコバルトシリサイド膜511が形成される。このため、深いn型不純物拡散領域510においても低抵抗化を図ることができる。
【0116】
そして、未反応のコバルト膜は、半導体基板501上から除去される。なお、本実施の形態5では、コバルトシリサイド膜511を形成するように構成しているが、例えば、コバルトシリサイド膜511に代えてニッケルシリサイド膜やチタンシリサイド膜を形成するようにしてもよい。
【0117】
次に、半導体基板501の主面上に層間絶縁膜となる酸化シリコン膜512を形成する。この酸化シリコン膜512は、例えばTEOS(tetra ethyl ortho silicate)を原料としたCVD法を使用して形成することができる。その後、酸化シリコン膜512の表面を、例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing)法を使用して平坦化する。
【0118】
続いて、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用して、酸化シリコン膜512にコンタクトホールCNTを形成する。そして、コンタクトホールCNTの底面および内壁を含む酸化シリコン膜512上にチタン/窒化チタン膜513aを形成する。チタン/窒化チタン膜513aは、チタン膜と窒化チタン膜の積層膜から構成され、例えばスパッタリング法を使用することにより形成することができる。このチタン/窒化チタン膜513aは、例えば、後の工程で埋め込む膜の材料であるタングステンがシリコン中へ拡散するのを防止する、いわゆるバリア性を有する。
【0119】
続いて、コンタクトホールCNTを埋め込むように、半導体基板501の主面の全面にタングステン膜513bを形成する。このタングステン膜513bは、例えばCVD法を使用して形成することができる。そして、酸化シリコン膜512上に形成された不要なチタン/窒化チタン膜513aおよびタングステン膜513bを例えばCMP法を除去することにより、プラグPLGを形成することができる。
【0120】
次に、酸化シリコン膜512およびプラグPLG上にチタン/窒化チタン膜514a、銅を含有するアルミニウム膜514b、チタン/窒化チタン膜514cを順次、形成する。これらの膜は、例えばスパッタリング法を使用することにより形成することができる。続いて、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、これらの膜のパターニングを行い、配線L1を形成する。さらに、配線の上層に配線を形成するが、ここでの説明は省略する。このようにして、本実施の形態4における半導体装置を形成することができる。
【0121】
本実施の形態5で製造した試料Xと試料Yとの評価を行なったところ、しきい電圧のゲート幅(W)の小さい素子で違いが見られた。本実施の形態5では、ソース電圧=0V、ドレイン電圧=1V、基板電圧=0Vとして、ドレイン電流IdがId=10nAとなるゲート電圧を、しきい電圧と定義している。試料Xと試料Yの同じ素子サイズのMONOS型メモリトランジスタを、それぞれ256個測定し、しきい電圧のばらつき(5シグマ)を比較した。その結果、ISSG酸化法によってボトムSi酸化膜504とトップSi酸化膜506を形成している試料Yでのしきい値電圧のばらつきに比べて、本実施の形態5における熱酸化法でボトムSi酸化膜504とトップSi酸化膜506を形成している試料Xでのしきい値電圧のばらつきは、約90%まで小さくなった。これは、試料Xの方が試料Yよりも、ボトムSi酸化膜504とトップSi酸化膜506の酸化温度が低く、ボトムSi酸化膜504と接しているしきい値電圧調整用半導体領域503のボロン濃度の変化が小さいためと考えることができる。特に、酸化速度(成膜速度)が非常に小さい窒化シリコン膜505上に形成されるトップSi酸化膜506の酸化温度の違いが大きな違いを生み出している。具体的に、通常のISSG酸化法を用いて窒化シリコン膜505上にトップSi酸化膜506を形成する場合には、耐酸化性を有する窒化シリコン膜505を酸化する必要があるため、高温で、かつ、非常に長い熱処理時間が必要となる。このため、半導体基板501に大きな熱負荷がかかり、しきい値電圧調整用半導体領域503に導入されているボロンの拡散が大きくなる。これに対し、本実施の形態5における熱酸化法では、下地に影響されることなく成膜速度の速い酸化シリコン膜を形成することができる。つまり、下地が窒化シリコン膜505であっても、低温で、かつ、短時間の熱処理によって所望の膜厚を有するトップSi酸化膜を形成することができるのである。このことから、トップSi酸化膜506を形成する際、半導体基板501に与える熱負荷を小さくすることができ、しきい値電圧調整用半導体領域503に導入されているボロンの拡散を抑制できるのである。
【0122】
また、試料Xと試料Yとの書き換え耐性を比較したところ、試料Xの方が試料Yよりも、書換え耐性が向上している。これは、前記実施の形態4で示しているように、ボトムSi酸化膜504、トップSi酸化膜506に含まれる塩素元素(Cl)が酸化シリコン膜中での電子の捕獲を抑制するためである。すなわち、本実施の形態5においては、酸化シリコン膜中の塩素元素(Cl)の濃度を制御することで、ホットキャリア耐性を向上させることが可能となる。このことから、ボトムSi酸化膜504を介して窒化シリコン膜中に電子を出し入れするMONOS型メモリトランジスタの製造に本実施の形態5における熱酸化法を適用することで、製造されたMONOS型メモリトランジスタの書き換え耐性が向上する。つまり、ホットキャリア耐性が劣化すると、ボトムSi酸化膜504中に電子が蓄積されることになる。このことは、しきい値電圧が上昇することを意味し、このしきい値電圧が上昇する結果、書き込み電流が減少して書き込み時間が長くかかるようになる。これが書き換え耐性の劣化であり、本実施の形態5では、ボトムSi酸化膜504に塩素元素(Cl)が含有されているので、ボトムSi酸化膜504に捕獲される電荷を低減できる。このようにホットキャリア耐性を向上できる結果、MONOS型メモリトランジスタの書き換え耐性が向上するのである。
【0123】
なお、酸化シリコン膜中に塩素元素(Cl)を導入する方法は、従来から用いられているHCl酸化法(酸素(O)と塩化水素(HCl)による酸化法)があるが、HCl酸化法では、耐酸化性を有する窒化シリコン膜505上に厚いトップSi酸化膜506を形成することが非常に困難である。原理的には可能であるが、常識の温度および時間内で酸化できるトップSi酸化膜の膜厚は、せいぜい3nm程度であり、本実施の形態5のように3nm以上のトップSi酸化膜506を形成することはできないと考えられる。本実施の形態5における熱酸化法では、耐酸化性を有する窒化シリコン膜505上でも充分に厚いトップSi酸化膜506を形成することが可能である。なお、MONOS型メモリトランジスタのトップSI酸化膜506の膜厚は電荷保持特性を確保するために、約3nm以上の膜厚を必要とすることが一般的であり、従来のHCl酸化法でトップSi酸化膜506を形成する方法では、事実上形成することが困難である。したがって、電荷蓄積膜となる窒化シリコン膜505上に3nm以上のトップSi酸化膜506が形成されており、かつ、このトップSi酸化膜506に塩素元素(Cl)が含有されている場合、トップSi酸化膜506は、本実施の形態5における熱酸化法で形成されているものと考えることができる。なお、本実施の形態5で示した測定電圧条件や薄膜の膜厚の絶対値は一例であり、この数値をもって本発明が限定されるわけではない。
【0124】
前記実施の形態1から本実施の形態5で説明した技術的思想により得られる代表的な効果は、以下のようなものである。例えば、酸化シリコン膜を形成する熱酸化温度を低減しても、充分な酸化速度(成膜速度)が得られるので、半導体装置の製造工程における酸化温度(熱処理温度)の低温化と熱処理時間の短時間化を図ることができる。特に、MOS型トランジスタもしくはMONOS型メモリトランジスタの製造に適用した場合は、半導体基板中に導入された不純物のばらつきが抑制され、しきい電圧のばらつきを低減することができる。また、窒化シリコン膜、SiC基板など通常の方法では、酸化速度(成膜速度)が非常に小さい材料の酸化処理に、本実施の形態における熱酸化法を適用すれば、酸化シリコン膜を形成するのに充分な酸化速度(成膜速度)が得られるため、プロセス全体の低温化および熱処理の短時間化が可能となる。さらに、厚い熱酸化膜(酸化シリコン膜)が必要なプロセスにおいても、本実施の形態によれば、熱処理の短時間化が可能となるので、枚葉方式の酸化装置(熱処理装置)でも充分なスループットが得られる。
【0125】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明は、半導体装置を製造する製造業に幅広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】本発明の実施の形態1で使用する酸化装置の平面構成を示す平面図である。
【図2】図1のA−A線で切断した一部断面図である。
【図3】実施の形態1における熱酸化法の流れを示すフローチャートである。
【図4】形成される酸化シリコン膜の成膜速度のHCl濃度依存性を示すグラフである。
【図5】増速酸化現象が生じる原料ガスの組み合わせを特定する表である。
【図6】形成される酸化シリコン膜の膜厚と酸化温度との関係を示すグラフである。
【図7】形成される酸化シリコン膜に含まれる塩素元素の密度と、原料ガスに添加される塩化水素の濃度との関係を示すグラフである。
【図8】実施の形態2における原料ガスの供給方法を示す図である。
【図9】原料ガスの供給方法の相違によって、半導体基板に形成される酸化シリコン膜の膜厚均一性に相違があることを示すグラフである。
【図10】シャワーヘッド型の酸化装置の構成を示す図である。
【図11】シャワーヘッドの構成を示す図である。
【図12】実施の形態3において、様々な下地に形成される酸化シリコン膜の膜厚を比較して示す表である。
【図13】半導体基板の表面に形成される凹凸形状を平坦化する工程を示す断面図である。
【図14】図13に続く工程を示す断面図である。
【図15】図14に続く工程を示す断面図である。
【図16】実施の形態4における半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図17】図16に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図18】図17に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図19】図18に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図20】図19に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図21】図20に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図22】図21に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図23】図22に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図24】図23に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図25】図24に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図26】図25に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図27】実施の形態5における半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図28】図27に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図29】図28に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図30】図29に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図31】図30に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図32】図31に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図33】本発明者らが検討した図であって、主にゲート幅が長い場合において、素子分離領域間に形成されるチャネル領域を示す断面図である。
【図34】本発明者らが検討した図であって、主にゲート幅が短い場合において、素子分離領域間に形成されるチャネル領域を示す断面図である。
【符号の説明】
【0128】
101 反応室
102 ゲートバルブ
103 排気バルブ
104 ガス導入ブロック
105 保持台
106 石英窓
107 タングステンハロゲンランプ
108 半導体基板
201 反応室
202 ゲートバルブ
203 排気バルブ
204 シャワーヘッド
204a ガス供給穴
204b ガス供給穴
205 サセプタ
208 半導体基板
301 SiC基板
302 凹凸形状
303 酸化シリコン膜
401 半導体基板
402 p型ウェル
403 酸化シリコン膜
404 窒化シリコン膜
405 トレンチ
406 酸化シリコン膜
407 酸化シリコン膜
408 しきい値電圧調整用半導体領域
409 酸化シリコン膜
410 ポリシリコン膜
411 浅いn型不純物拡散領域
412 サイドウォール
413 深いn型不純物拡散領域
414 コバルトシリサイド膜
415 酸化シリコン膜
416a チタン/窒化チタン膜
416b タングステン膜
417a チタン/窒化チタン膜
417b アルミニウム膜
417c チタン/窒化チタン膜
501 半導体基板
502 p型ウェル
503 しきい値電圧調整用半導体領域
504 ボトムSi酸化膜
505 窒化シリコン膜
506 トップSi酸化膜
507 ポリシリコン膜
508 浅いn型不純物拡散領域
509 サイドウォール
510 深いn型不純物拡散領域
511 コバルトシリサイド膜
512 酸化シリコン膜
513a チタン/窒化チタン膜
513b タングステン膜
514a チタン/窒化チタン膜
514b アルミニウム膜
514c チタン/窒化チタン膜
CH チャネル領域
EC 電荷蓄積膜
G ゲート電極
GOX ゲート絶縁膜
L1 配線
PLG プラグ
PWL p型ウェル
S 半導体基板
STI 素子分離領域
VG1 第1電位障壁膜
VG2 第2電位障壁膜
VR しきい値電圧調整用半導体領域
W1 ゲート幅
W2 ゲート幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
MISFETを含む半導体装置を製造する半導体装置の製造方法であって、
(a)半導体基板に不純物を導入して半導体領域を形成する工程と、
(b)前記(a)工程後、前記半導体基板あるいは前記半導体基板上に形成された被処理膜を熱酸化することにより酸化シリコン膜を形成する工程とを備え、
前記(b)工程は、
(b1)オゾンを含むガスとハロゲン元素を含む化合物ガスとを有する原料ガスを前記半導体基板上に導入する工程と、
(b2)前記(b1)工程後、前記半導体基板を加熱する工程とを有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置の製造方法であって、
前記(b1)工程は、前記オゾンを含むガスを前記半導体基板上に導入した後、前記ハロゲン元素を含む化合物ガスを導入することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1記載の半導体装置の製造方法であって、
前記(b2)工程は、前記ハロゲン元素を含む化合物ガスがラジカルに解離する温度以上で前記半導体基板を加熱することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1記載の半導体装置の製造方法であって、
前記ハロゲン元素を含む化合物ガスは、フッ化水素、塩化水素、臭化水素、三フッ化窒素、三フッ化塩素のいずれかを含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項1記載の半導体装置の製造方法であって、
前記オゾンを含むガスは、オゾンと酸素を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項5記載の半導体装置の製造方法であって、
オゾンの流量/(オゾンの流量+酸素の流量)×100で定義される前記オゾンを含むガス中のオゾン濃度が50%以上であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項7】
請求項1記載の半導体装置の製造方法であって、
前記原料ガス中のオゾンの流量をa、前記ハロゲン元素を含む化合物ガスの流量をb、前記原料ガス中の前記ハロゲン元素を含む化合物ガスの濃度をAとし、
A=b/(a+b)で定義する場合、
前記原料ガス中の前記ハロゲン元素を含む化合物ガスの濃度Aと、形成される前記酸化シリコン膜の膜厚との関係に基づいて、前記原料ガス中の前記ハロゲン元素を含む化合物ガスの濃度Aは、形成される前記酸化シリコン膜の膜厚の極大値に対応した値以下に設定されていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項1記載の半導体装置の製造方法であって、
前記酸化シリコン膜には、ハロゲン元素が含まれていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項8記載の半導体装置の製造方法であって、
前記ハロゲン元素は、フッ素、塩素、臭素のいずれかであることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項10】
請求項1記載の半導体装置の製造方法であって、
前記被処理膜は窒化シリコン膜であり、
前記窒化シリコン膜上に形成されている前記酸化シリコン膜の膜厚は2nm以上10nm以下であり、かつ、前記酸化シリコン膜には前記ハロゲン元素が含まれていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項11】
請求項1記載の半導体装置の製造方法であって、
前記(a)工程で形成される前記半導体領域はウェルであり、
(c)前記(a)工程後、前記半導体基板に素子分離領域を形成する工程を有し、
前記(c)工程は、
(c1)前記半導体基板の素子形成面に素子分離溝を形成する工程と、
(c2)前記(c1)工程後、前記素子分離溝の内壁を含む前記半導体基板の前記素子形成面上に第1酸化シリコン膜を形成する工程と、
(c3)前記(c2)工程後、前記素子分離溝を埋め込むように前記半導体基板の前記素子形成面上に第2酸化シリコン膜を形成する工程と、
(c4)前記(c3)工程後、前記半導体基板の前記素子形成面に形成されている前記第1絶縁膜および前記第2絶縁膜を化学的機械的研磨法で除去することにより、前記素子分離溝の内部にだけ前記第1酸化シリコン膜と前記第2酸化シリコン膜を残存させて、前記半導体基板に前記素子分離領域を形成する工程を有し、
前記(c2)工程は、前記(b)工程を実施することにより前記第1酸化シリコン膜を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項12】
請求項1記載の半導体装置の製造方法であって、
前記(a)工程で形成される前記半導体領域は、しきい値電圧調整用半導体領域であり、
(d)前記(a)工程後、前記半導体基板上にゲート絶縁膜を形成する工程と、
(e)前記ゲート絶縁膜上に第1導体膜を形成する工程と、
(f)前記第1導体膜をパターニングすることにより、ゲート電極を形成する工程と、
(g)前記ゲート電極に整合して前記半導体基板内にソース領域とドレイン領域を形成する工程とを有し、
前記(d)工程は、前記(b)工程を実施することにより前記酸化シリコン膜からなる前記ゲート絶縁膜を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項13】
請求項1記載の半導体装置の製造方法であって、
前記(a)工程で形成される前記半導体領域は、しきい値電圧調整用半導体領域であり、
(h)前記(a)工程後、前記半導体基板上に第1電位障壁膜を形成する工程と、
(i)前記(h)工程後、前記第1電位障壁膜上に電荷蓄積膜を形成する工程と、
(j)前記(i)工程後、前記電荷蓄積膜上に第2電位障壁膜を形成する工程と、
(k)前記(j)工程後、前記第2電位障壁膜上に第2導体膜を形成する工程と、
(l)前記第2導体膜をパターニングすることによりゲート電極を形成する工程と、
(m)前記ゲート電極に整合して前記半導体基板内にソース領域とドレイン領域を形成する工程とを有し、
前記(h)工程は、前記(b)工程を実施することにより前記酸化シリコン膜からなる前記第1電位障壁膜を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項14】
請求項13記載の半導体装置の製造方法であって、
前記(j)工程は、前記(b)工程を実施することにより前記酸化シリコン膜からなる前記第2電位障壁膜を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項15】
請求項14記載の半導体装置の製造方法であって、
前記(i)工程で形成される前記電荷蓄積膜は、窒化シリコン膜であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項16】
請求項15記載の半導体装置の製造方法であって、
前記(j)工程で形成される前記第2電位障壁膜は、フッ素、塩素、臭素のいずれかのハロゲン元素を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【公開番号】特開2009−272365(P2009−272365A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−119540(P2008−119540)
【出願日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【Fターム(参考)】