説明

半導体装置の製造方法

【課題】素子特性を劣化させることなく、しきい値電圧の低い、金属のゲート電極を有するPチャネルMOSトランジスタを備えた半導体装置を製造することを可能にする。
【解決手段】半導体領域2上にゲート絶縁膜5を形成するステップと、第1金属元素と、OH基、NO(x=1,2)基のうち少なくとも一つを含有する酸素含有金属層6をゲート絶縁膜上に形成するステップと、酸素含有金属層上に第2金属元素を含むゲート電極膜7を形成するステップと、ゲート電極膜を形成した後、酸素含有金属層の熱分解反応或いは脱水反応が生じる温度以上に加熱するステップと、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極の仕事関数が変調されたPチャネルMOSトランジスタを有する半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)トランジスタの高性能化は、これまで素子を微細化することで実現されてきた。しかし、素子の物理サイズの縮小による性能向上は限界を迎え、新材料の適用が不可避な状況にある。例えばゲート絶縁膜においては、ZrO、HfO、HfZrO、HfSiONといった、誘電率の高い絶縁膜の開発が進められている。
【0003】
またゲート電極では、シリコンの空乏層による容量を減らすため、これまで用いられたボロン、燐、または砒素を添加した多結晶シリコン電極に代わって、金属電極の使用が検討されている。しかしながら、ボロン、燐、または砒素を添加した多結晶シリコン電極のような、Siの価電子帯および伝導帯と同程度の実効仕事関数を示し、かつ半導体素子の製造プロセスに適合可能な、高耐熱性を有する金属材料は知られていない。例えばAlやTiなどの真空仕事関数の小さな材料は一般に反応性が高く、また真空仕事関数の大きな貴金属(白金など)等は原子の拡散が生じやすい。このため、これら材料を電極としてゲート絶縁膜上に形成し、ソース/ドレイン領域の不純物活性化のための高温熱処理を施すと、金属原子がゲート絶縁膜に拡散し、ゲート絶縁膜の絶縁性の低下が生じ易い。
【0004】
さらに、ボロン、燐、または砒素を添加した多結晶シリコン膜や、シリコンの価電子帯および伝導帯に近い実効仕事関数を有する金属膜を、HfOやHfSiONといった高誘電率材料の絶縁膜上に形成して高温熱処理を施すと、実効仕事関数がSiのミッドギャップに近い値に変化することが知られている。このようにゲート電極の実効仕事関数がチャネルとなるシリコンの仕事関数から外れると、トランジスタのしきい値電圧が増加して素子性能が劣化する。
【0005】
他方、酸素元素、窒素元素、ハロゲン元素は、金属元素に比べて電気陰性度が大きいため、金属を酸化、窒化、またはハロゲン化すると仕事関数が増加する。そこでイオン注入により、PMOSトランジスタの金属膜からなるゲート電極のみに酸素や窒素、ハロゲンを導入する方法が提案されている(例えば、特許文献1)。但し金属膜からなるゲート電極の仕事関数は、ゲート絶縁膜との界面近傍の金属膜の組成で決定されるため、仕事関数を大きく増加させるためには、多量の酸素、窒素、またはハロゲンを、ゲート絶縁膜との界面近傍の金属膜に導入する必要がある。しかしイオン注入では、特定領域のみに元素を導入することはできない。すなわちゲート絶縁膜との界面近傍の金属膜に酸素、窒素、またはハロゲンをイオン注入で導入すると、ゲート絶縁膜や、ゲート絶縁膜との界面から離れた位置のゲート電極にも、ある程度の酸素イオン、窒素イオン、またはハロゲンイオンが導入され、イオン注入によるゲート絶縁膜の絶縁性が低下するという問題や、金属膜からなるゲート電極の抵抗が増加するという問題が生じる。
【0006】
イオン注入以外の方法で、酸素が含有された金属ゲート電極を形成する方法として、スパッタリングで金属のゲート電極を堆積する際、スパッタリングガスに微量の酸素を添加する方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。しかし、NMOSトランジスタの金属ゲート電極としては仕事関数の小さな膜が必要とされる。従って、NMOSトランジスタ、PMOSトランジスタは共に、ゲート絶縁膜上に酸素が添加された金属膜を堆積した後、NMOSトランジスタのゲート絶縁膜上の酸素が添加された金属膜のみ剥離し、酸素が添加されていない金属膜を再堆積するか、あるいはゲート絶縁膜上に酸素が添加されていない金属膜を形成した後、PMOSトランジスタゲート絶縁膜上の金属膜を剥離し、酸素が添加された金属膜の再堆積を行う必要がある。
【0007】
しかしながら、金属膜の材料によっては、ゲート絶縁膜に対して選択的に剥離することが困難である。例えば、高耐熱性を示す材料として知られているTaCx膜は、弗化水素を含む溶液によるウェット処理や、塩素系ガスのRIE(Reactive Ion Etching)で除去することが可能であるが、これらのウェット処理、RIEを行うと、ゲート絶縁膜(SiO膜、HfO膜、HfSiON膜等)もエッチングされるという問題が起きる。
【0008】
他方、金属のゲート電極として広く検討されているTiN膜は、酸化性の高い溶液(例えば過酸化水素水など)を用いたウェット処理により、ゲート絶縁膜をあまりエッチングすることなく剥離することができる。しかしゲート絶縁膜上への金属膜の堆積は、スパッタリング成膜ではイオン照射による損傷や、金属膜を構成する元素の拡散、CVD成膜では供給ガスに含まれる不純物(塩素など)の拡散などによる絶縁膜の膜質劣化が生じやすく、金属膜の形成を複数回行うと、ゲート絶縁膜の膜質の低下が一層進行するという問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−273350号公報
【特許文献2】特開2007−173412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このように、金属膜をゲート電極として有するMOSトランジスタでは、金属のゲート電極の仕事関数と、チャネルとなるシリコンの仕事関数とが乖離し、しきい値電圧が増加しやすい問題があり、この問題を解消するために、従来は様々の工夫がなされたが、素子特性が劣化するという問題があった。
【0011】
本発明は、上記事情を考慮してなされたものであって、素子特性を劣化させることなく、しきい値電圧の低い、金属ゲート電極を有するMOSトランジスタを備えた半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様による半導体装置の製造方法は、半導体領域上にゲート絶縁膜を形成するステップと、第1金属元素と、OH基、NO(x=1,2)基のうち少なくとも一つを含有する酸素含有金属層を前記ゲート絶縁膜上に形成するステップと、前記酸素含有金属層上に第2金属元素を含むゲート電極膜を形成するステップと、前記ゲート電極膜を形成した後、前記酸素含有金属層の熱分解反応或いは脱水反応が生じる温度以上に加熱するステップと、を備えたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の第2の態様による半導体装置の製造方法は、半導体基板に設けられたN型半導体領域およびP型半導体領域にゲート絶縁膜を形成するステップと、前記N型半導体領域の前記ゲート絶縁膜上にのみ、第1金属元素と、OH基、NO(x=1,2)基のうち少なくとも一つを含有する酸素含有金属層を形成するステップと、前記N型半導体領域の前記酸素含有金属層上および前記P型半導体領域の前記ゲート絶縁膜上に第2金属元素を含むゲート電極膜を形成するステップと、前記ゲート電極膜を形成した後、前記酸素含有金属層の熱分解反応或いは脱水反応が生じる温度以上に加熱するステップと、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、素子特性を劣化させることなく、しきい値電圧の低い、金属のゲート電極を有するMOSトランジスタを備えて半導体装置を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1実施形態によるPMOSトランジスタの製造工程を示す断面図。
【図2】第1実施形態によるPMOSトランジスタの製造工程を示す断面図。
【図3】第1実施形態によるPMOSトランジスタの製造工程を示す断面図。
【図4】第2実施形態によるPMOSトランジスタの製造工程を示す断面図。
【図5】第3実施形態によるCMOSトランジスタの製造工程を示す断面図。
【図6】第3実施形態によるCMOSトランジスタの製造工程を示す断面図。
【図7】第3実施形態によるCMOSトランジスタの製造工程を示す断面図。
【図8】第4実施形態によるCMOSトランジスタの製造工程を示す断面図。
【図9】第4実施形態によるCMOSトランジスタの製造工程を示す断面図。
【図10】第4実施形態によるCMOSトランジスタの製造工程を示す断面図。
【図11】第5実施形態によるCMOSトランジスタの製造工程を示す断面図。
【図12】第5実施形態によるCMOSトランジスタの製造工程を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の各実施形態について図面を参照しながら説明する。なお各図は模式図であり、実際の半導体装置とは異なる箇所があるが、適宜変更して適用することができる。
【0017】
なお、本発明の一実施形態においては、PMOSトランジスタまたはCMOSトランジスタ について説明するが、PMOSトランジスタまたはCMOSトランジスタが集積されたメモリ、ロジック回路、及びこれらチップ上に積載されたシステムLSIについても適用可能である。
【0018】
(概要および原理)
本発明の各実施形態を説明する前に、本発明の一実施形態による半導体装置の概要を説明する。
【0019】
後述するように、本発明の一実施形態による半導体装置は、PMOSトランジスタを備えた半導体装置であり、このPMOSトランジスタは、半導体基板のN型半導体領域に形成される。この半導体領域は、半導体基板の一部領域であってもよいし、半導体基板に形成されたウェル領域であってもよい。また、SOI(Silicon On Insulator)基板のSOI層であってもよい。この半導体領域には、離間して形成されたソース/ドレイン領域となるP型不純物領域が形成され、このソース領域とドレイン領域との間のチャネル領域となる半導体領域上にゲート絶縁膜が形成される。このゲート絶縁膜は、チャネル領域上に形成された例えば酸化シリコンからなる界面層と、この界面層上に形成された例えばHfSiONからなる高誘電体層との積層構造を有している。そして、このゲート絶縁膜上に金属のゲート電極が形成されている。
【0020】
従来のPMOSトランジスタの製造方法は、界面層と、高誘電体層との積層構造を有するゲート絶縁膜を形成した後、ゲート絶縁膜の改質を目的として、窒素などの不活性ガス、もしくは微量の酸素が添加された不活性ガス雰囲気において、高温熱処理(PDA(Post Deposition Anneal))を行い、その後、金属のゲート電極を形成するとともにゲート電極の側部に絶縁体からなるゲート側壁を形成し、それらをマスクとしてB(ボロン)のイオン注入と、活性化熱処理とを行い、ソース/ドレイン領域となるP型拡散領域を形成している。
【0021】
これに対して、本発明の一実施形態によるPMOSトランジスタの製造方法では、界面層と、高誘電体層との積層構造を有するゲート絶縁膜を形成した後、PDAを行い、その後、高誘電体層上に、OH、NO(x=1、2)のうち少なくとも一つと、金属元素とを含有する酸素含有金属層を形成し、その後、金属のゲート電極の形成を行う。本発明の一実施形態においては、金属のゲート電極を形成した後に、熱処理を行う。すると、酸素含有金属層に熱分解反応、或いは脱水反応が生じ、HO、NO(x=1、2)、またはOなどが酸素含有金属層から放出される。この反応によって、酸素含有金属層は酸化層に変化し、また放出されたHO、NO(x=1、2)、またはOと、金属のゲート電極とが反応し、ゲート電極とゲート絶縁膜との界面のゲート電極側に酸化金属層が形成される。その後、ゲート電極の側部に絶縁体からなるゲート側壁を形成し、ゲート電極およびゲート側壁をマスクとしてBのイオン注入と、活性化熱処理とを行い、P型不純物領域からなるソース/ドレイン領域を形成してPMOSトランジスタを作製する。
【0022】
本発明の一実施形態による製造方法で作製したPMOSトランジスタでは、金属のゲート電極とゲート絶縁膜との界面のゲート電極側に酸化金属層が形成されるため、従来の方法で製造したPMOSトランジスタに比べてゲート電極の仕事関数が大きく、トランジスタの閾値電圧が小さくなる。
【0023】
次に、本発明の実施形態を説明する。
【0024】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態によるPMOSトランジスタの製造方法について、図1(a)乃至図3を参照して説明する。
【0025】
まず、図1(a)に示すように、半導体基板1に設けられたN型シリコンのウェル領域(半導体領域)2上に、主として酸化シリコンから成る界面層5aと、HfSiONからなる高誘電体層5bとの積層構造を有するゲート絶縁膜5を形成する。続いて、半導体基板1を約150℃の温度にした後、HfSiON層5bをHfClガスに曝露し、HfClの物理吸着や分解吸着を生じさせて、HfSiON層5bの表面にHfCl(x=1〜4)吸着層を形成する。さらに、150℃の温度下で、HOガスに曝露し、下記の反応
HfCl + xHO → Hf(OH) + xHCl↑
を生じさせて、HfSiON層5bの表面に約0.5nmのHf(OH)(x=1〜4)層(酸素含有金属層)6を形成する(図1(b)参照)。
【0026】
次に、図2(a)に示すように、Ti膜の堆積を行いTi膜からなるゲート電極7を形成した後、N中で300℃、30分間の熱処理を施す。このようにして作製したPMOSキャパシタのC−V特性の測定を行い、フラットバンド電圧の絶縁膜の膜厚依存性からAl膜からなるゲート電極の実効仕事関数を算出する。すると、実効仕事関数として約4.8Vの値が得られる。このPMOSキャパシタの構造をXPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy)や、HR−RBS(High Resolution- Rutherford Backscattering Spectroscopy)で評価すると、Tiのゲート電極7とHfSiON層5bとの間に、HfO層(酸化ハフニウム層(酸化層))10とTiO層(酸化金属層)11との積層構造が形成されていることが確認される(図2(b))。このHfO層10とTiO層11との積層構造は、熱処理の際にHf(OH)層6が脱水反応を起こしてHfOとHOとが生成、さらにHOがTiと、下記の反応
Ti + xHO → TiO + xH
をすることで生じたと考えられる。
【0027】
これに対して、比較例として、HfClガスおよびHOガスのそれぞれに関する曝露処理を行わずに、Ti膜の堆積を行ったPMOSキャパシタを作成する。すなわち、この比較例のPMOSキャパシタは、本実施形態のPMOSキャパシタの製造工程において、HfCl、HOガスの曝露処理を省いて形成した構成となっている。この比較例のPMOSキャパシタでは、Tiのゲート電極の実効仕事関数を測定すると、約4.3Vである。また、この比較例のPMOSキャパシタでは、Tiのゲート電極とHfSiON層との間にTiO層は確認されていない。
【0028】
なお、比較例のPMOSキャパシタでも、大気中の水分との反応などにより、HfSiON層の表面にはある程度のOH基が存在している。しかしそのOH基の濃度はサブモノレーヤー以下と少なく、さらにHfやSiと結合しているOH基は、ほとんどが1原子あたり1乃至2個である。他方、熱処理によるOH基の脱水反応は、隣接したOH基により生じる。すなわち、下記の脱水反応となる。
2M−OH → M−O−M+H
これはOH基の濃度が高くなければ、脱水反応が生じにくいことを意味する。
【0029】
したがって、Hf(OH)の絶対量が多く、かつHf(OH)、Hf(OH)に加えてHf(OH)やHf(OH)もHfSiON層5b上に存在する本実施形態の製造方法と異なり、比較例のPMOSキャパシタの製造方法では、熱処理を行ってもほとんどOH基同士の脱水反応が生じず、生成されたHOによるゲート電極の酸化が生じないため4.3Vと小さな仕事関数を示すと考えられる。
【0030】
次に、上述した本実施形態の製造方法によって、Tiのゲート電極7を形成してN中で300℃、30分間の熱処理を行った後、ゲート電極7をゲート電極形状に加工する。そしてこの加工されたゲート電極7をマスクとして、P型不純物例えばB(ボロン)のイオン注入を行い、P型エクステンション領域13a、13bを形成する(図3)。続いて、ゲート電極7およびゲート絶縁膜5の側部に絶縁体からなるゲート側壁16を形成する。そして、ゲート電極7およびゲート側壁16をマスクとして、P型不純物例えばBのイオン注入を行い、P型エクステンション領域13a、13bよりも接合深さが深いP型不純物領域14a、14bを形成する。その後、活性化熱処理を行い、P型ソース領域12aおよびP型ドレイン領域12bを形成する。P型エクステンション領域13aおよびP型不純物領域14aがP型ソース領域12aを構成し、P型エクステンション領域13bおよびP型不純物領域14bがP型ドレイン領域12bを構成する。
【0031】
このように、本実施形態の製造方法を用いて、HfSiON層5bとの界面のTiのゲート電極7側にTiO層(酸化金属層)11を形成することで、PMOSトランジスタのゲート電極の実効仕事関数を増加させることができる。
【0032】
なお上述した実施形態では、HfClとHOの反応でHf(OH)を形成している。しかし、このHf(OH)は、高誘電体層5b上に、ハフニウムのアルコキシドHf(OR)(R=CH、C、C、C)の層や、ハフニウムアミドHf(N(R1R2))(R1,R2=CH、C)の層を形成し、加水分解反応などによりR、N、R1、R2を除去することにより、形成させても良い。
【0033】
以上説明したように、本実施形態によれば、素子特性を劣化させることなく、しきい値電圧の低い、金属のゲート電極を有するPチャネルMOSトランジスタを製造することができる。
【0034】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態によるPMOSトランジスタの製造方法について、図4を参照して説明する。
【0035】
まず、第1実施形態の製造方法と同様に、半導体基板1に設けられたN型シリコンのウェル領域2上に、酸化シリコンからなる界面層5aと、この界面層5a上に設けられたハフニア(HfO)からなる高誘電体層5cとの積層構造のゲート絶縁膜5を形成する(図4)。
【0036】
次に、高誘電体層5c上に、スパッタリングによってHf層を形成した。さらにこのHf層を100℃でHガスに曝露し、
Hf + (x/2)H → Hf(OH)
の反応を生じさせて、ハフニアからなる高誘電体層5cの表面に約0.5nmのHf(OH)(x=1〜4)層(酸素含有金属層)6を形成する。その後、TaC膜の堆積を行い、TaC膜からなるゲート電極7aを形成する。その後、Nガス中で300℃、30分間の熱処理を施す。このようにして作製したPMOSキャパシタのC−V特性の測定を行い、フラットバンド電圧の絶縁膜の膜厚依存性からTaC膜からなるゲート電極7aの実効仕事関数を算出する。すると、実効仕事関数として約4.7Vの値が得られる。このPMOSキャパシタの構造をXPSとHR−RBSで評価したところ、TaCのゲート電極7aと、ハフニアからなる高誘電体層5cの間に、酸化金属層11a(TaC層11a;Oは主にTaと結合)が形成されていることが確認される(図4)。このTaC層11aは、熱処理の際にHf(OH)が脱水反応を起こしてHfOとHOとが生成される。さらにこのHOが、TaC膜中の、Cよりも電気陰性度の小さなTaと、下記のような反応
TaC + yHO → TaC +yH
をすることで生じたと考えられる。
【0037】
これに対して、比較例として、Hf層の形成後、HfCl、HOガスの曝露処理を行わずに、TaC膜の堆積を行ったPMOSキャパシタを作成する。すなわち、この比較例のPMOSキャパシタは、本実施形態のPMOSキャパシタの製造工程において、Hf層形成、Hガスの曝露処理を省いて形成した構成となっている。この比較例のPMOSキャパシタでは、TaCのゲート電極の実効仕事関数を測定すると、約4.2Vである。また、この比較例のPMOSキャパシタでは、TaCのゲート電極とハフニアからなる高誘電体層との間には酸化金属層は確認されていない。
【0038】
すなわち、本実施形態の製造方法を用いて、ハフニアからなる高誘電体層5cとの界面
のゲート電極7a側に酸化金属層11aを形成することで、PMOSキャパシタのゲート電極の実効仕事関数を増加させることができる。
【0039】
次に、上述した本実施形態の製造方法によって、TaCのゲート電極7aを形成してN中で300℃、30分間の熱処理を行った後、ゲート電極7aをゲート電極形状に加工する。その後、第1実施形態で説明した製造工程を用いて、PMOSトランジスタを形成することができる。
【0040】
このように、本実施形態の製造方法を用いて、ハフニアからなる高誘電体層5cとの界面のゲート電極7a側にTaC層(酸化金属層)11aを形成することで、PMOSトランジスタのゲート電極の実効仕事関数を増加させることができる。
【0041】
なお、本実施形態の製造方法では、Hf(OH)層(酸素含有金属層)6を、Hf層とHガスの反応で形成している。しかし、このHf(OH)層は、Hf層をH水溶液やオゾン水に浸漬しても生成させることが可能である。このようにして作製したHf(OH)層も、ゲート電極材料膜の形成後に熱処理することで、ゲート絶縁膜との界面のゲート電極側に酸素を導入して酸素含有金属層を形成することにより、ゲート電極の実効仕事関数を増加させることができる。
【0042】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態によるCMOSトランジスタの製造方法について、図5(a)〜図7を参照して説明する。
【0043】
まず、図5(a)に示すように、半導体基板1に、STI(Shallow Trench Insulator)構造の素子分離層3によって分離されたN型ウェル領域2aとP型ウェル領域2bを形成する。その後、SiOからなる界面層5a、酸化ランタン層5d、HfSiONからなる高誘電体層5bを形成する。
【0044】
次に、硝酸ハフニウム水溶液をHfSiONの高誘電体層5b上に塗布し、乾燥させてHf(NO(x=1、2;y=1〜4)層(酸素含有金属層)6aをHfSiONの高誘電体層5b上に形成する(図5(b))。
【0045】
その後、図6(a)に示すように、フォトレジスト17でN型ウェル領域2a上のHf(NO(x=1、2;y=1〜4)層6aを被覆し、過酸化水素水の浸漬処理を施すことで、P型ウェル領域2bのHf(NO層6aを除去する。さらに、有機溶剤でフォトレジスト17を剥離した後、TaC膜を堆積して金属ゲート電極7aを形成する。そして、N中で300℃、30分間の熱処理を施すことでHf(NO層6aの熱分解反応を生じさせる。これらの処理により、Hf(NO層6aが酸化ハフニウム層(酸化層)10に変化すると共に、N型ウェル領域2aの高誘電体層5bと金属ゲート電極7aとの界面に、酸素や窒素が含有されたTaC層(酸化金属層)11aが形成される(図6(b))。
【0046】
さらにSiNからなるハードマスク(図示せず)を用いてドライエッチングによってゲート電極7aをゲート電極形状に加工した後、N型ウェル領域2aにBをイオン注入するとともにP型ウェル領域2bにAsをイオン注入することにより、N型ウェル領域2aにP型エクステンション領域13a、13bを形成するとともに、P型ウェル領域2bにN型エクステンション領域23a、23bを形成する。続いて、絶縁膜、例えばシリコン酸化膜を堆積し、ゲート電極7aの側部にのみ絶縁膜を残置するエッチングを行うことにより、ゲート電極7aの側部にゲート側壁16を形成する。その後、N型ウェル領域2aにBをイオン注入するとともにP型ウェル領域2bにAsをイオン注入することにより、N型ウェル領域2aにP型不純物領域14a、14bを形成するとともに、P型ウェル領域2bにN型不純物領域24a、24bを形成する。P型不純物領域14a、14bは、P型エクステンション領域13a、13bよりも接合深さが深く、N型不純物領域24a、24bは、P型エクステンション領域23a、23bよりも接合深さが深い。その後、活性化熱処理を行い、N型ウェル領域2aにP型ソース領域12aおよびP型ドレイン領域12bを形成するとともにP型ウェル領域2bにN型ソース領域22aおよびN型ドレイン領域22bを形成する。P型エクステンション領域13aおよびP型不純物領域14aがP型ソース領域12aを構成し、P型エクステンション領域13bおよびP型不純物領域14bがP型ドレイン領域12bを構成する。また、N型エクステンション領域23aおよびN型不純物領域24aがN型ソース領域22aを構成し、N型エクステンション領域23bおよびN型不純物領域24bがN型ドレイン領域22bを構成する。
【0047】
その後、層間絶縁膜30を全面に堆積し、CMPを用いて層間絶縁膜30の表面を平坦化し、図7に示す本実施形態のCMOSトランジスタを形成する。
【0048】
このようにして形成した本実施形態におけるNMOSトランジスタのゲート電極7aの実効仕事関数を測定すると、約4Vである。一般に、SiO層およびHfSiON層からなるゲート絶縁膜上に形成したTaCの実効仕事関数は約4.5Vである。しかし、本実施形態においては、SiO層(界面層)5aとHfSiON層5bと間に酸化ランラン層5dが挿入されており、この酸化ランタン層5dと、SiO層5aとの間にダイポールが形成されるため、実効仕事関数の低下が生じている。他方、本実施形態におけるPMOSトランジスタのゲート電極7aの実効仕事関数を測定すると、約5.1Vであり、NMOSトランジスタとPMOSトランジスタの閾値電圧は、共に0.2V以下である。
【0049】
比較例として、Hf(NO層6aの形成を行わなかった以外は、本実施形態と同じ製造工程を用いてCMOSトランジスタを形成する。すなわち、この比較例のCMOSトランジスタにおいては、PMOSトランジスタのHfSiON層5bとゲート電極7aとの間に、酸化ハフニウム層10と、酸素や窒素が含有されたTaC層11aとが形成されていない構成となり、NMOSトランジスタのゲートと同じ構成を有している。この比較例において、PMOSトランジスタおよびNMOSトランジスタの実効仕事関数を測定する。すると、PMOSトランジスタのゲート電極の実効仕事関数はNMOSトランジスタと同様に約4Vを示すとともに、大きな閾値電圧を示す。したがって、この比較例のCMOSトランジスタにおいては、PMOSトランジスタは適切な仕事関数を有しないものとなる。
【0050】
以上説明したように、本実施形態によれば、PMOSトランジスタの閾値電圧を低下させることができる。
【0051】
本実施形態においては、Hf(NO層6aは、硝酸ハフニウム溶液を用いて形成したが、例えばHf膜を形成し、HNO(y=2、3)水溶液に浸漬しても作製することが可能である。この方法で作製した場合、生成したHf(NO層も、電極形成後に加熱することで電極に酸素や窒素を導入して電極の実効仕事関数を増加させることができる。
【0052】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態によるCMOSトランジスタの製造方法について、図8(a)〜図10を参照して説明する。
【0053】
まず、図8(a)に示すように、半導体基板1に、STI構造の素子分離層3によって分離されたN型ウェル領域2aとP型ウェル領域2bを形成する。その後、SiOからなる界面層5aとハフニアからなる高誘電体層5cを形成し、さらに酸化ランタン層5dを堆積する。
【0054】
次に、ハフニアからなる高誘電体層5cの表面を塩化アルミニウムガスに曝露し、次いでHOガスに曝露することにより塩化物を水酸化物に変化させて、Al(OH)からなる酸素含有金属層6bを酸化ランタン層5d上に形成する(図8(b))。
【0055】
その後、図9(a)に示すように、フォトレジスト17でN型ウェル領域2aを被覆し、アンモニア水の浸漬処理を施すことで、P型ウェル領域2bのAl(OH)層6bを除去する。酸化ランタン層5dはアルカリ性の液に溶解しないため、ハフニアの高誘電体層5c上にそのまま残留する。さらに有機溶剤でフォトレジスト17を剥離した後、TiN膜7bを形成する。そして、N中で300℃、30分間の熱処理を施すことでAlOH層6bの脱水反応を生じさせる。これらの処理により、AlOH層6bが酸化アルミニウム層(酸化層)10aに変化すると共に、N型チャネル領域2aの高誘電体層5cとTiN膜7bとの間にのみ、酸素を含むTiN層(酸化金属層)11bが形成される(図9(b)参照)。
【0056】
その後、図10に示すように、TiN膜7b上に多結晶シリコン膜7cを堆積する。その後、SiNからなるハードマスク(図示せず)を用いてドライエッチングによって、TiN膜7bおよび多結晶シリコン7cの積層構造をゲート電極形状に加工し、ゲート電極7b、7cを形成する。続いて、N型ウェル領域2aにBをイオン注入するとともにP型ウェル領域2bにAsをイオン注入することにより、N型ウェル領域2aにP型エクステンション領域13a、13bを形成するとともに、P型ウェル領域2bにN型エクステンション領域23a、23bを形成する。このとき、N型ウェル領域2aおよびP型ウェル領域2bのゲート電極7b、7cの多結晶シリコン7cにそれぞれ、BおよびAsがイオン注入される。続いて、絶縁膜、例えばシリコン酸化膜を堆積し、ゲート電極7b、7cの側部にのみ絶縁膜を残置するエッチングを行うことにより、ゲート電極7b、7cの側部にゲート側壁16を形成する。その後、N型ウェル領域2aにBをイオン注入するとともにP型ウェル領域2bにAsをイオン注入することにより、N型ウェル領域2aにP型不純物領域14a、14bを形成するとともに、P型ウェル領域2bにN型不純物領域24a、24bを形成する。このときにも、N型ウェル領域2aおよびP型ウェル領域2bのゲート電極7b、7cの多結晶シリコン7cにそれぞれ、BおよびAsがイオン注入される。P型不純物領域14a、14bは、P型エクステンション領域13a、13bよりも接合深さが深く、N型不純物領域24a、24bは、N型エクステンション領域23a、23bよりも接合深さが深い。その後、活性化熱処理を行い、N型ウェル領域2aにP型ソース領域12aおよびP型ドレイン領域12bを形成するとともにP型ウェル領域2bにN型ソース領域22aおよびN型ドレイン領域22bを形成する。P型エクステンション領域13aおよびP型不純物領域14aがP型ソース領域12aを構成し、P型エクステンション領域13bおよびP型不純物領域14bがP型ドレイン領域12bを構成する。また、N型エクステンション領域23aおよびN型不純物領域24aがN型ソース領域22aを構成し、N型エクステンション領域23bおよびN型不純物領域24bがN型ドレイン領域22bを構成する。上記、活性化熱処理によって、酸化ランタン層5dのうちの一部のランタンは、ハフニアの高誘電体層5cを通って界面層5aまで拡散する。
【0057】
その後、層間絶縁膜30を全面に堆積し、CMPを用いて層間絶縁膜30の表面を平坦化し、図10に示す本実施形態のCMOSトランジスタを形成する。
【0058】
このようにして形成した本実施形態におけるNMOSトランジスタおよびPMOSトランジスタのゲート電極7b、7cの実効仕事関数を測定すると、それぞれ約4V、約5Vであり、また両者の閾値電圧はほぼ0Vである。
【0059】
これに対して、比較例として、PMOSトランジスタにおいて、Al(OH)層の形成を行わない以外は、本実施形態と同じ製造工程を用いてCMOSトランジスタを形成する。すなわち、この比較例のCMOSトランジスタにおいては、PMOSトランジスタの高誘電体層5cと、TiN膜7bとの間に、酸化アルミニウム層(酸化層)10aと、酸化金属層11bとが形成されない構成となり、NMOSトランジスタと同じゲート構造を有することになる。この比較例のCMOSトランジスタの実効仕事関数を測定すると、PMOSトランジスタは、NMOSトランジスタと同様に約5Vを示し、大きな閾値電圧を示した。
【0060】
TiN膜の真空仕事関数は約4.5Vである。本実施形態のNMOSトランジスタのゲート電極7の実効仕事関数が約4Vである原因は、界面層5まで熱拡散したランタンが誘起するダイポールによると考えられる。他方、本実施形態のPMOSトランジスタで得られた大きな実効仕事関数は、ゲート絶縁膜との界面に形成された、酸化TiN層11bに起因すると考えられる。
【0061】
このように、本実施形態によれば、PMOSトランジスタの閾値電圧を低下させることができる。
【0062】
(第5実施形態)
本発明の第5実施形態によるCMOSトランジスタの製造方法について、図11(a)〜図12を参照して説明する。
【0063】
まず、図11(a)に示すように、半導体基板1に、STI構造の素子分離層3によって分離されたN型ウェル領域2aとP型ウェル領域2bとを形成する。その後、例えばSiOからなる界面層5aと、酸化ランタン層5dと、ハフニアからなる高誘電体層5cを形成する。続いて、フォトレジスト17でP型ウェル領域2bを被覆した後、半導体基板1を約100℃に加熱して約2MPaの高圧水蒸気雰囲気に保持したところ、HOの内部拡散とHfOとの下記反応
HfO + yHO → Hf(OH)
により、N型ウェル領域2aのハフニア(HfO)からなる高誘電体層5cの表面のみにHf(OH)x(x=1〜4)層(酸素含有金属層)6が形成される。
【0064】
次に、有機溶剤を用いてフォトレジスト17を剥離した後、TiN膜7bを堆積して金属のゲート電極7bを形成する。そして、N中で300℃、30分間の熱処理を施すことでHf(OH)層6の熱分解反応を生じさせる。これらの処理により、Hf(OH)層6が酸化ハフニウム層(酸化層)10に変化すると共に、N型チャネル領域2aの高誘電体層5c上のゲート電極7bのみ、酸素が含有されたTiN層(酸化金属層)11bが形成される(図11(b))。
【0065】
次に、図12に示すように、SiNハードマスク(図示せず)を用いたドライエッチングによってゲート電極7bをゲート電極形状に加工した後、N型ウェル領域2aにBをイオン注入するとともにP型ウェル領域2bにAsをイオン注入することにより、N型ウェル領域2aにP型エクステンション領域13a、13bを形成するとともに、P型ウェル領域2bにN型エクステンション領域23a、23bを形成する。続いて、絶縁膜、例えばシリコン酸化膜を堆積し、ゲート電極7bの側部にのみ絶縁膜を残置するエッチングを行うことにより、ゲート電極7bの側部にゲート側壁16を形成する。その後、N型ウェル領域2aにBをイオン注入するとともにP型ウェル領域2bにAsをイオン注入することにより、N型ウェル領域2aにP型不純物領域14a、14bを形成するとともに、P型ウェル領域2bにN型不純物領域24a、24bを形成する。P型不純物領域14a、14bは、P型エクステンション領域13a、13bよりも接合深さが深く、N型不純物領域24a、24bは、P型エクステンション領域23a、23bよりも接合深さが深い。その後、活性化熱処理を行い、N型ウェル領域2aにP型ソース領域12aおよびP型ドレイン領域12bを形成するとともにP型ウェル領域2bにN型ソース領域22aおよびN型ドレイン領域22bを形成する。P型エクステンション領域13aおよびP型不純物領域14aがP型ソース領域12aを構成し、P型エクステンション領域13bおよびP型不純物領域14bがP型ドレイン領域12bを構成する。また、N型エクステンション領域23aおよびN型不純物領域24aがN型ソース領域22aを構成し、N型エクステンション領域23bおよびN型不純物領域24bがN型ドレイン領域22bを構成する。
【0066】
その後、層間絶縁膜30を全面に堆積し、CMPを用いて層間絶縁膜30の表面を平坦化し、図12に示す本実施形態のCMOSトランジスタを形成する。
【0067】
このようにして形成した本実施形態におけるNMOSトランジスタのゲート電極7bの実効仕事関数を測定すると、約4Vである。SiO層と、ハフニアからなる高誘電体層との積層構造のゲート絶縁膜上に形成したTiNの実効仕事関数は約4.4Vである。しかし、本実施形態においては、NMOSトランジスタでは、ハフニアからなる高誘電体層5cと、SiOからなる界面層5aとの間に酸化ランラン層5dを挿入しており、この酸化ランタン層5dとSiO層5aとの間にダイポールが形成されるため、実効仕事関数の低下が生じたと考えられる。
【0068】
また、本実施形態におけるPMOSトランジスタのゲート電極7bの実効仕事関数は、約5Vであり、NMOSトランジスタと、PMOSトランジスタのしきい値電圧は、共に0.2V以下である。
【0069】
これに対して、比較例として、Hf(OH)層6の形成を行わなかった以外は、本実施形態と同じ製造工程を用いてCMOSトランジスタを形成する。すなわち、この比較例のCMOSトランジスタにおいて、ハフニアからなる高誘電体層5cと、TiNからなるゲート電極7bとの間に、酸化ハフニウム層(酸化層)10および酸化金属層11bが形成されない構成となり、NMOSトランジスタと同じゲート構造を有することになる。この比較例のCMOSトランジスタの実効仕事関数を測定すると、PMOSトランジスタは、NMOSトランジスタと同様に約4Vを示し、大きな閾値電圧を示した。
【0070】
このように、本実施形態によれば、PMOSトランジスタの閾値電圧を低下させることができる。
【0071】
上述した実施形態では、Hf(OH)、Hf(NO、Al(OH)等の酸素含有金属層を高誘電体層上に形成し、脱水反応や熱分解反応を生じさせて金属のゲート電極を酸化または窒化させたが、これら以外の金属元素の水酸化物やNO含有層(ニトロシル・ニトリル化合物、硝酸エステル)を形成しても、熱処理を施すことで脱水反応や熱分解が生じ、実効仕事関数増加の効果が得られる。但し、熱処理によって、上記酸素含有金属層は、上記金属元素を含む酸化層に変化するが、ゲート絶縁膜の電気膜厚の増加を抑制するためには、上記酸化層はシリコン酸化物よりも誘電率が高いことが好ましい。Hf、Al以外で、酸化物の誘電率がシリコン酸化物よりも大きな金属元素としては、Zr、Ti、Ta、希土類元素、アルカリ土類元素などが挙げられる。
【0072】
また上述した水酸化物層やNO含有層だけではなく、SO(x=1〜3)、ΓO(Γ=Cl、Br、I;x=1=3)を含む層も、高誘電体層上に形成し、金属のゲート電極を堆積させて熱処理を行うと熱分解反応が生じ、生成した酸素による金属のゲート電極の酸化反応が起きるため、金属のゲート電極の実効仕事関数を増加させることができる。また高誘電体層は、HfSiON層やハフニア(HfO)層に限定されるものではなく、HfON、HfAlOなどのハフニウム絶縁膜や、Zr、Ti、Ta、希土類元素、アルカリ土類元素の酸化膜、酸窒化膜、シリケート膜、アルミネート膜などを用いても良い。
【0073】
またどのような金属も、酸素と結合することで仕事関数が増加するため、金属のゲート電極はTi、TaC、TaC、TiNに限定されず、任意の金属膜に対して本発明の一実施形態を適用することができる。但しゲートファーストでトランジスタを製作する場合には、ソースドレイン活性化の高温工程を経ることから、高温熱処理による膜変化や絶縁膜の絶縁性劣化を生じさせないことが電極材料には求められる。またCMOSトランジスタを作製する際、製造工程数を少なくするためにはPMOSトランジスタとNMOSトランジスタとで電極が同一である必要があり、また閾値制御の観点からは、NMOSトランジスタ用の電極には仕事関数の小さな膜を適用すべきである。
【0074】
他方、一般に仕事関数の小さな金属膜は酸化されやすく、本発明の一実施形態の電極に適用すると大きな仕事関数増加が生じる。これらのことから、本発明の一実施形態を適用する金属ゲート電極としては、Ta、Nb、Ti、Hf、Zr、希土類元素やそれら合金のカーバイド、ナイトライド、シリサイド、窒化シリサイド、ボライドなどであることが好ましい。なお、Ta、Nb、Ti、Hf、Zr、希土類元素の化合物膜が高温で酸素に暴露されると、カーボンや窒素、ボロンなどよりも、電気陰性度の小さないTa、Nb、Ti、Hf、Zr、希土類元素の方が優先的に酸化され、膜の仕事関数が増加する。
【0075】
また上述した実施形態ではバルクシリコン基板上に形成する平面トランジスタについて説明したが、立体トランジスタやSOI上のトランジスタ、Si以外のチャネル(SiGe、Ge、GaAs等)上に形成したトランジスタに適用しても良い。その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々変形して適用可能である。
【符号の説明】
【0076】
1 半導体基板
2a N型ウェル領域
2b P型ウェル領域
3 素子分離層
5 ゲート絶縁膜
5a 界面層(SiO層)
5b 高誘電体層(HfSiON層)
5c 高誘電体層(ハフニア層)
5d 酸化ランタン層
6 Hf(OH)
6a Hf(NO
6b Al(OH)
7 ゲート電極(Ti膜)
7a ゲート電極(TaC膜)
7b TiN膜
7c 多結晶シリコン膜
10 HfO
10a 酸化アルミニウム層
11 酸素含有金属層(AlO層)
11a 酸素含有金属層(TaC層)
11b 酸素含有金属層(酸素が含有されたTiN層)
12a P型ソース領域
12b P型ドレイン領域
13a P型エクステンション領域
13b P型エクステンション領域
14a P型不純物領域
14b P型不純物領域
16 ゲート側壁
17 フォトレスト
22a N型ソース領域
22b N型ドレイン領域
23a N型エクステンション領域
23b N型エクステンション領域
24a N型不純物領域
24b N型不純物領域
30 層間絶縁膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体領域上にゲート絶縁膜を形成するステップと、
第1金属元素と、OH基、NO(x=1,2)基のうち少なくとも一つを含有する酸素含有金属層を前記ゲート絶縁膜上に形成するステップと、
前記酸素含有金属層上に第2金属元素を含むゲート電極膜を堆積するステップと、
前記ゲート電極膜を堆積した後、前記酸素含有金属層の熱分解反応或いは脱水反応が生じる温度以上に加熱するステップと、
を備えたことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
半導体基板に設けられたN型半導体領域およびP型半導体領域にゲート絶縁膜を形成するステップと、
前記N型半導体領域の前記ゲート絶縁膜上にのみ、第1金属元素と、OH基、NO(x=1,2)基のうち少なくとも一つを含有する酸素含有金属層を形成するステップと、
前記N型半導体領域の前記酸素含有金属層上および前記P型半導体領域の前記ゲート絶縁膜上に第2金属元素を含むゲート電極膜を形成するステップと、
前記ゲート電極膜を形成した後、前記酸素含有金属層の熱分解反応或いは脱水反応が生じる温度以上に加熱するステップと、
を備えたことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記第1金属元素は、その酸化物が、シリコン酸化物よりも誘電率が高いことを特徴とする請求項1または2記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記酸素含有金属層はOH基を含み、前記酸素含有金属層を形成するステップは、
前記第1金属元素のハロゲン化物ガスを含む雰囲気に暴露するステップと、
O雰囲気に暴露するステップと、
を備えていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記酸素含有金属層はOH基を含み、前記酸素含有金属層を形成するステップは、
前記第1金属元素を含む層を前記ゲート絶縁膜上に形成するステップと、
ガス雰囲気曝露、H水溶液浸漬、オゾン水溶液浸漬のいずれかを施すステップと、
を備えていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記ゲート絶縁膜は、最表面に前記第1金属元素と同じ金属の酸化物層を含み、
前記酸素含有金属層はOH基を含み、前記酸素含有金属層を形成するステップは、
前記酸化物層をHO雰囲気に暴露するステップ、
を備えていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記酸素含有金属層はNO(x=1,2)基を含み、前記酸素含有金属層を形成するステップは、
前記第1金属元素とNO(x=1,2)とを含む化合物の水溶液を前記ゲート絶縁膜上に塗布し、乾燥させるステップ、
を備えていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2010−206137(P2010−206137A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−53130(P2009−53130)
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】