説明

半導体素子駆動装置、電力変換装置、及びモータ駆動装置、並びに半導体素子駆動方法、電力変換方法、及びモータ駆動方法

【課題】直列接続IGBT3,4の接続点7のdV/dtによる誤動作発生時に、上下アーム短絡などの事故を回避できる高信頼性IGBT駆動装置を提供する。
【解決手段】高低圧側IGBT3,4は、デッドタイムを挟み相補的にオン/オフ制御される。これらデッドタイム期間中に、高圧側IGBT3をオフさせるリセットパルスRSを、例えば、次のような要領で発生させる。(1)低圧側IGBT4のオン指令LDの直前に、(2)低圧側IGBT4のオン指令LDの直前から、このオン指令LDと重なる期間tdをもつように、(3)デッドタイムDT期間中、継続して、(4)低圧側IGBT4がオンとなる直前のデッドタイム期間中、継続して、(5)高圧側IGBT3のオン状態を観測したとき、低圧側IGBTのオン指令を無効とするように、リセットパルスを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子駆動装置、それを搭載した電力変換装置、及びモータ駆動装置、並びに半導体素子駆動方法、電力変換方法、及びモータ駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
主電源端子間に、高圧側及び低圧側半導体素子を直列に接続し、高圧側及び低圧側アームを構成した電力変換装置においては、高圧側半導体素子は、浮動電位上で駆動されることになる。このため、高圧側半導体素子の駆動回路には、絶縁された電源を使用する。また、低圧側回路から高圧側回路へ駆動信号を伝達するためにレベルシフト回路が必要となる。レベルシフト回路は、駆動信号からセットパルス及びリセットパルスを生成するパルス生成回路と、このセットパルス及びリセットパルスがそれぞれゲート入力となる2つのnMOSFETから構成されるのが普通である。このような電力変換装置には、高耐圧化、低損失化、及び高信頼性化等が望まれている。
【0003】
電力変換装置では、低圧側及び高圧側半導体素子の接続点の電位は、低圧側半導体素子の接地電位から主電源電圧まで、急激に変化する。このとき、レベルシフト回路を構成するnMOSFETのドレイン−ソース間には、寄生静電容量が存在するので、急峻な電位変動(dV/dt=大)により、レベルシフト回路を構成する2つのnMOSFETには、同時に電流が流れる。こうした電流により、高圧側制御回路に誤った信号が伝わってしまい、高圧側半導体素子が誤ってオン/オフしてしまう誤動作を発生することがある。
【0004】
特許文献1及び特許文献2には、直列接続点の急峻な電位変動を自励あるいは他励dV/dtと呼び、これらの自励あるいは他励dV/dtによるレベルシフト回路の誤動作対策を開示している。具体的には、特許文献1は、高圧側制御回路内にフィルタ回路を設け、特許文献2は、セット信号とリセット信号の差分を積分して制御信号を伝達し、誤動作を抑制することを開示している。
【0005】
【特許文献1】特開平9−172366号公報
【特許文献2】特開2005−304113号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び特許文献2に開示されているように、フィルタ等により、大きなdV/dtによる誤動作対策を施している。しかし、電力変換装置においては、様々な種類の大きなdV/dtが発生する。また、電力変換装置の高耐圧化と高出力化に伴い、発生するdV/dtは多様化する傾向にあり、高いdV/dtや、発生時間の長いdV/dt、さらには高周波の振動等が発生する。このため、前記の半導体素子駆動装置の構成では、dV/dtによる誤動作防止能力にも限界がある。また、万一、誤動作が発生した場合、それを修正する手段を持っていない。
【0007】
本発明の目的は、半導体素子駆動装置のdV/dt耐量を向上することである。
【0008】
本発明の他の目的は、万一、誤動作が発生した場合でも、上下アーム短絡等の重大な事故を防ぐことのできる半導体素子駆動装置、それを搭載した電力変換装置、及びモータ駆動装置を提供することである。
【0009】
本発明のさらに他の目的は、半導体素子駆動装置のdV/dt耐量の向上と、万一、誤動作が発生した場合でも、上下アーム短絡等の重大な事故を防ぐことのできる半導体素子駆動方法、それを採用する電力変換方法、及びモータ駆動方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明はその一面において、主電源端子間に2つの半導体素子を直列に接続し、前記2つの半導体素子のうち低圧側の接地電位を基準として低圧側半導体素子を駆動し、前記半導体素子の直列接続点の電位を基準電位とする高圧側駆動回路によって高圧側半導体素子を駆動し、前記低圧側半導体素子の接地電位を基準電位として、前記高圧側半導体素子のオン指令及びオフ指令となるセットパルス信号及びリセットパルス信号を生成し、前記セットパルス信号及びリセットパルス信号を、前記直列接続点の電位を基準電位とする高圧側へレベルシフトして前記高圧側駆動回路へ伝達するとともに、前記2つの半導体素子を、双方ともにオフであるデッドタイムを挟みながら相補的にオン/オフする半導体素子駆動装置または方法において、前記デッドタイム期間中に、前記リセットパルスを発生させることを特徴とする。
【0011】
本発明は他の一面において、低圧側半導体素子のオン指令の直前にリセットパルスを生成することを特徴とする。
【0012】
また、本発明は他の一面において、低圧側半導体素子のオン指令の直前から始まり、低圧側半導体素子のオン指令と重なる期間をもつリセットパルスを生成することを特徴とする。
【0013】
さらに、本発明は他の一面において、高圧側と低圧側の半導体素子が共にオフであるデッドタイム期間中、リセットパルスを出力し続けることを特徴とする。
【0014】
さらに、本発明は他の一面において、低圧側半導体素子がオンとなる直前における前記高圧側及び低圧側の半導体素子が共にオフであるデッドタイム期間中、リセットパルスを出力し続けることを特徴とする。
【0015】
さらにまた、本発明は他の一面において、高圧側半導体素子のオン状態を観測したとき、低圧側半導体素子のオン指令を無効とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の望ましい実施態様によれば、半導体素子の直列接続点のdV/dt耐量が向上し、上下アーム短絡等の事故を防止でき、高信頼化、高耐圧化を達成した半導体素子の駆動、電力変換、又はモータ駆動の方法及び装置を提供することができる。
【0017】
本発明のその他の目的と特徴は、以下に述べる実施形態の中で明らかにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【実施例1】
【0019】
図1は、本発明の実施例1による電力用半導体素子の駆動装置を使用したモータ駆動装置の全体構成図である。実際には、三相交流電力を出力して三相誘導電動機等の負荷に電力を供給する機器構成が一般的であるが、説明の便宜上1相分だけ図示している。
【0020】
主電源1及び平滑用コンデンサ2の両端に、高圧側半導体素子であるIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)3及び低圧側半導体素子であるIGBT4が直列に接続されている。IGBT3及び4には、それぞれフリーホイールダイオード5及び6が逆並列に接続されている。IGBT3と4の直列接続点7は、交流電力の出力点となり、負荷(例えば三相誘導電動機)8が接続されている。
【0021】
本実施例では、半導体スイッチング素子としてIGBTを使用したが、MOS−FETを使用しても良い。MOS−FETを使用する場合は、フリーホイールダイオード5及び6は不要となる。
【0022】
また、低圧側IGBT4は、接地電位9を基準として動作する。低圧側IGBT用の駆動回路10は、電源11から電力を供給される。駆動回路10は、通常、保護回路を含む場合が多いが、ここでは、それらの場合を含めて、単に駆動回路と表現している。
【0023】
高圧側IGBT3を駆動する駆動回路12及びRSフリップフロップ13並びにロジックフィルタ14は、絶縁された電源15により電力の供給を受ける。駆動回路12もまた、保護回路を含む場合が多く、それらの場合を含めて、単に駆動回路と表現している。ロジックフィルタ14は、セットパルス信号とリセットパルス信号の両方を受付けた時に、信号を遮断する回路であり、直列接続点7の電圧変動dV/dt等による誤動作を抑制する。
【0024】
レベルシフト回路16は、セットパルス信号伝達用のnMOS−FET17及びリセットパルス信号伝達用のnMOS−FET18、抵抗19及び20、並びにツェナーダイオード21及び22で構成されている。パルス生成回路23からセットパルスSPが出力されることによって、nMOS−FET17が導通し、抵抗20の両端に電圧降下が生じ、高圧電位側にセットパルスSP信号が伝達される。高圧電位側に伝達されたセットパルスSP信号は、ロジックフィルタ14、RSフリップフロップ13、および駆動回路12を経て、IGBT3をターンオンする。また、パルス生成回路23からリセットパルスRPが出力されると、nMOS−FET18が導通し、抵抗19の両端に電圧降下を生じ、高圧電位側にリセットパルスRP信号が伝達される。高圧電位側に伝達されたリセットパルスRP信号は、ロジックフィルタ14、RSフリップフロップ13、および駆動回路12を経て、IGBT3をターンオフする。ツェナーダイオード21及び22は、過電圧を抑制し、周辺回路を保護する。
【0025】
制御部24は、IGBT3,4に対するオン/オフ指令である制御信号CSを出力する。例えば、負荷8が三相誘導電動機であり、その速度制御を行う場合、速度指令に対する実速度の偏差に基き、IGBT3,4を含むインバータの出力電圧・出力周波数を制御して、三相誘導電動機の速度を前記速度指令に近づける。制御信号CSは、このような制御系によって得られた、IGBT3,4に対するオン/オフ指令と考えることができる。
【0026】
デッドタイム生成回路25は、制御部24からの制御信号CSを受けてデッドタイムDTを確保し、低圧側駆動信号LD及び高圧側駆動信号HDを生成する。
【0027】
本実施例では、半導体素子駆動装置、電力変換装置、並びにモータ駆動装置の高耐圧化、高出力化のために、セットパルス信号伝達用のnMOS―FET17,リセットパルス信号伝達用のnMOS―FET18,低圧側回路10,および高圧側回路を、それぞれ個別のシリコンチップとしている。また、これら個別のシリコンチップを絶縁基板上に固定し、配線を行い、樹脂でパッケージングするMCM(マルチチップモジュール)構造、もしくはSIP(System in Package)構造としている。すべての半導体回路を1つのシリコンチップで構成するSOC(System on Chip)構造としても良い。
【0028】
次に、図2を参照して、本実施例1の動作を説明する。
【0029】
図2は、本発明の実施例1によるレベルシフト動作タイミングチャートである。制御信号CSは、Highが低圧側IGBTのオン指令(高圧側IGBTのオフ指令)CS1,CS2,…であり、Lowが高圧側IGBTのオン指令(低圧側IGBTのオフ指令)である。デッドタイム生成回路25は、制御信号CSを受けて、2つのIGBTを、双方ともにオフであるデッドタイムを挟みながら相補的にオン/オフするための低圧側駆動信号LDおよび高圧側駆動信号HDを生成する。これら低圧側駆動信号LD及び高圧側駆動信号HDは、それぞれ、Highがオン指令、Lowがオフ指令であり、デッドタイムDT1〜DT4は、上下アーム短絡防止のために設けられている。
【0030】
低圧側駆動信号LDは、直接的に、低圧側駆動回路10を通して、低圧側IGBTのゲート信号となる。
【0031】
一方、高圧側では、パルス生成回路23により、高圧側駆動信号HD(必要に応じて低圧側駆動信号LDを含む)に基き、高圧側IGBTのゲート信号作成用のセットパルスSP及びリセットパルスRPを生成する。この結果、制御信号CS1,CS2の立ち下がりエッジから、デッドタイムDT2,DT4経過した後のセットパルスSP1,SP2により、高圧側IGBTがオンする。そして、リセットパルスRP1及びRP3が、制御信号CSの立ち上がりに対応した高圧側IGBT3のオフ指令となる。このとき、ターンオン遅延時間を考慮して、リセットパルスRP2及びRP4と、低圧側駆動信号LD1,LD2の立ち上がりは、短時間tdだけ重複させている。
【0032】
このように、本実施例1では、パルス生成回路23は、デッドタイムDT1,DT3期間中に、リセットパルスPR2,PR4を発生させる回路手段を備えている。また、これらリセットパルスPR2,PR4を、低圧側IGBT4のオン指令LD1,LD2の直前に生成するように構成している。さらに、低圧側IGBTのオン指令LD1,LD2の直前から始まり、低圧側IGBTのオン指令と重なる期間tdをもつリセットパルスPR2,PR4を生成するように構成している。
【0033】
これにより、デッドタイムDT1,DT3期間中に、IGBT3と4の直列接続点7の電位変動dV/dt等により、高圧側IGBT3が誤ってオンしても、上下アーム短絡を回避することができる。
【実施例2】
【0034】
次に、本発明の実施例2を、図3を参照して説明する。
【0035】
図3は、本発明の実施例2によるレベルシフト動作タイミングチャートであり、この実施例2による電力用IGBTの駆動回路を使用したモータ駆動装置や電力変換装置の全体構成は、実施例1と同じである。
【0036】
基本的動作は実施例1と同じであるが、本実施例2では、パルス生成回路23は、デッドタイムDT2,DT4期間中で、セットパルスSP1,SP2の直前にリセットパルスRP2,RP4を生成するように構成している。
【0037】
これにより、デッドタイムDT2,DT4期間中に、誤って高圧側IGBT3がターンオンしても、これを即座にターンオフさせることができるので、高圧側IGBT3が早くオンしてしまうような事態を防止し、制御性の低下を防止することができる。
【実施例3】
【0038】
次に、本発明の実施例3を、図4を参照して説明する。
【0039】
図4は、本発明の実施例3によるレベルシフト動作タイミングチャートであり、この実施例3による電力用半導体素子の駆動回路を使用したモータ駆動装置や電力変換装置の全体構成は、実施例1と同じである。
【0040】
基本的動作は、実施例1と同じで、リセットパルスRP2及びRP5は、低圧側IGBT4がターンオンする直前に発生させ、高圧側IGBT3にオフ指令を出力する。
【0041】
これに加え、この実施例3では、リセットパルスRP3及びRP6を、セットパルスSP1,SP2の直前にも配置している。これにより、デッドタイムDT1〜DT4期間中に誤動作が発生しても、上下アーム間の短絡を防止し、かつ制御性の低下を防止することができる。
【実施例4】
【0042】
次に、本発明の実施例4を、図5を参照して説明する。
【0043】
図5は、本発明の実施例4によるレベルシフト動作タイミングチャートであり、この実施例4による電力用半導体素子の駆動回路を使用したモータ駆動装置や電力変換装置の全体構成は、実施例1と同じである。
【0044】
本実施例では、全てのデッドタイムDT1〜DT4期間中にリセットパルスRP1〜RP4を継続して出力する。これにより、デッドタイムDT期間中に、IGBT3と4の直列接続点7のdV/dt等によるレベルシフト回路16の誤動作が発生しても、ロジックフィルタ14で誤信号を遮断することができる。したがって、全てのデッドタイムDT1〜DT4期間中に誤動作が発生しても、上下アーム間の短絡を防止し、かつ制御性の低下を防止することができる。
【実施例5】
【0045】
次に、本発明の実施例5を、図6を参照して説明する。
【0046】
図6は、本発明の実施例5によるレベルシフト動作タイミングチャートであり、この実施例5による電力用半導体素子の駆動回路を使用したモータ駆動装置や電力変換装置の全体構成は、実施例1と同じである。
【0047】
本実施例では、パルス生成回路23を、低圧側IGBT4がオンとなる直前における高圧側及び低圧側のIGBT3と4が共にオフであるデッドタイムDT1,DT3期間中、リセットパルスRP1,RP2を出力し続けるように構成したものである。
【0048】
これにより、デッドタイムDT1,DT3期間中に、IGBT3と4の直列接続点7の電位変動dV/dt等により誤動作が発生した場合であっても、上下アーム短絡を防止することができる。また、実施例4と比較して消費電力の低減が可能である。
【実施例6】
【0049】
図7は、本発明の実施例6による電力用半導体素子の駆動回路を使用したモータ駆動装置の全体構成図である。実施例1と重複する説明は避ける。
【0050】
高圧側ゲート電圧観測回路26は、高圧側IGBT3と低圧側IGBT4の接続点7の電位を基準電位とし、高圧側IGBT3のゲート電圧を観測する。これにより、高圧側IGBT3のゲート電圧を設定値と比較し、高圧側IGBT3がオン状態であるか、オフ状態であるかを判定する。高圧側ゲート電圧観測回路26が出力した情報は、レベルダウン回路27により、低圧側IGBT4の接地電位9を基準とする低圧側ゲート電圧観測回路28に伝達される。レベルダウン回路27は、pMOS−FET29と、抵抗30、およびツェナーダイオード31で構成されている。高圧側ゲート電圧観測回路26の出力により、pMOS−FET29が導通し、抵抗30の両端に電圧が発生し、高圧側IGBT3のオン/オフ情報が、低圧側ゲート電圧観測回路28に伝達される。ツェナーダイオード31は、周辺回路を過電圧から保護する。
【0051】
低圧側ゲート電圧観測回路28に伝達された情報は、低圧側駆動回路10及びパルス生成回路23に入力される。
【0052】
低圧側駆動回路10は、高圧側IGBT3がオン状態であるときには、低圧側IGBT4のオン指令を遮断し、無効とする。また、パルス生成回路23は、高圧側駆動信号HDがLow(高圧側IGBT3のオフ指令)であるにもかかわらず、高圧側IGBT3がオン状態である場合には、リセットパルスRPを出力し続ける。
【0053】
図8は、本発明の実施例6による半導体素子駆動装置の動作タイミングチャートである。
【0054】
高圧側IGBT3が誤ってオンし、そのオン状態信号HO11が発生した場合を考える。このとき、低圧側駆動回路10は、高圧側IGBT3がオン状態であることによって、低圧側駆動信号LD1を無効とし、低圧側IGBT4のオン指令を遮断する。
【0055】
また、パルス生成回路23は、高圧側駆動信号HDがLow(高圧側IGBT3のオフ指令)であるにもかかわらず、高圧側IGBT3がオン状態であり、誤ったオン状態を示す信号HO12が発生している場合には、リセットパルスRP2を出力し続ける。
【0056】
このように、この実施例6においては、両IGBT3,4の直列接続点7の電位を基準電位として、高圧側IGBT3のオン/オフ状態を監視する高圧側IGBT監視回路26と、この高圧側IGBT監視回路26が高圧側IGBT3のオン状態を観測したとき、低圧側IGBT4のオン指令LD1を無効とする回路手段を備えている。
【0057】
また、高圧側IGBT3の駆動信号HD1がオフした後にも、高圧側IGBT監視回路26が高圧側IGBT3のオン状態を観測し、誤オン状態信号HO12が生じたとき、リセットパルスRP2を継続させる回路手段を備えている。
【0058】
これにより、上下アーム短絡を防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
半導体素子駆動回路及び電力変換装置並びにモータ駆動装置としてあらゆる分野において利用可能である。例えば、産業用ロボット、鉄道、家電製品などに利用できる。特に、高耐圧化、高信頼化が要求される用途、例えば車載用の半導体素子駆動回路及び電力変換装置並びにモータ駆動装置として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施例1による電力用半導体素子の駆動装置を使用したモータ駆動装置の全体構成図。
【図2】本発明の実施例1によるレベルシフト動作タイミングチャート。
【図3】本発明の実施例2によるレベルシフト動作タイミングチャート。
【図4】本発明の実施例3によるレベルシフト動作タイミングチャート。
【図5】本発明の実施例4によるレベルシフト動作タイミングチャート。
【図6】本発明の実施例5によるレベルシフト動作タイミングチャート。
【図7】本発明の実施例6による電力用半導体素子の駆動回路を使用したモータ駆動装置の全体構成図。
【図8】本発明の実施例6によるレベルシフト動作タイミングチャート。
【符号の説明】
【0061】
1…主電源、2…平滑用コンデンサ、3…高圧側半導体素子(高圧側IGBT)、4…低圧側半導体素子(低圧側IGBT)、5,6…フリーホイールダイオード、7…半導体素子の直列接続点、8…負荷(三相誘導電動機)、9…接地電位、10…保護回路を含む低圧側駆動回路、12…保護回路を含む高圧側駆動回路、11,15…電源、13…RSフリップフロップ、14…ロジックフィルタ、16…レベルシフト回路、17…セットパルス信号伝達用のnMOS−FET、18…リセットパルス信号伝達用のnMOS−FET、19,20,30…抵抗、21,22,31…ツェナーダイオード、23…パルス生成回路、24…制御部、25…デッドタイム生成回路、26…高圧側ゲート電圧観測回路、27…レベルダウン回路、28…低圧側ゲート電圧観測回路、29…pMOS−FET。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主電源端子間に直列に接続された2つの半導体素子と、前記2つの半導体素子のうち低圧側の接地電位を基準として低圧側半導体素子を駆動する低圧側駆動回路と、前記半導体素子の直列接続点の電位を基準電位とし、高圧側半導体素子を駆動する高圧側駆動回路と、前記低圧側半導体素子の接地電位を基準電位として、前記高圧側半導体素子のオン指令及びオフ指令となるセットパルス信号及びリセットパルス信号を生成するパルス生成回路と、前記セットパルス信号及びリセットパルス信号を、前記直列接続点の電位を基準電位とする高圧側へレベルシフトし、前記高圧側駆動回路へ伝達するレベルシフト回路とを備え、前記2つの半導体素子を、双方ともにオフであるデッドタイムを挟みながら相補的にオン/オフする半導体素子駆動装置において、前記直列接続点の電位を基準電位として、前記高圧側半導体素子のオン/オフ状態を監視する高圧側半導体素子監視回路と、この高圧側半導体素子監視回路が高圧側半導体素子のオン状態を観測したとき、前記低圧側半導体素子のオン指令を無効とする回路手段を備えたことを特徴とする半導体素子駆動装置。
【請求項2】
主電源端子間に直列に接続された2つの半導体素子と、前記2つの半導体素子のうち低圧側の接地電位を基準として低圧側半導体素子を駆動する低圧側駆動回路と、前記半導体素子の直列接続点の電位を基準電位とし、高圧側半導体素子を駆動する高圧側駆動回路と、前記低圧側半導体素子の接地電位を基準電位として、前記高圧側半導体素子のオン指令及びオフ指令となるセットパルス信号及びリセットパルス信号を生成するパルス生成回路と、前記セットパルス信号及びリセットパルス信号を、前記直列接続点の電位を基準電位とする高圧側へレベルシフトし、前記高圧側駆動回路へ伝達するレベルシフト回路とを備え、前記2つの半導体素子を、双方ともにオフであるデッドタイムを挟みながら相補的にオン/オフする半導体素子駆動装置において、前記直列接続点の電位を基準電位として、前記高圧側半導体素子のオン/オフ状態を監視する高圧側半導体素子監視回路と、前記高圧側半導体素子の駆動信号がオフした後にも、前記高圧側半導体素子監視回路が高圧側半導体素子のオン状態を観測したとき、前記リセットパルスを継続させる回路手段を備えたことを特徴とする半導体素子駆動装置。
【請求項3】
請求項1または2において、前記高圧側半導体素子監視回路は、高圧側ゲート電圧監視回路を含み、この高圧側ゲート電圧が設定値以上であるとき、前記高圧側半導体素子のオン状態を判定する手段を備えたことを特徴とする半導体素子駆動装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかにおいて、前記パルス生成回路に対して、前記低圧側および高圧側半導体素子に対するオン/オフ指令である制御信号を与える制御部を備え、前記パルス生成回路を、前記制御信号が前記高圧側半導体素子のオフ指令であり、かつ、前記高圧側半導体素子監視回路が前記高圧側半導体素子のオン状態を観測したとき、前記リセットパルスを出力するように構成したことを特徴とする半導体素子駆動装置。
【請求項5】
主電源端子間に2つの半導体素子を直列に接続し、前記2つの半導体素子のうち低圧側の接地電位を基準として低圧側半導体素子を駆動し、前記半導体素子の直列接続点の電位を基準電位とする高圧側駆動回路によって高圧側半導体素子を駆動し、前記低圧側半導体素子の接地電位を基準電位として、前記高圧側半導体素子のオン指令及びオフ指令となるセットパルス信号及びリセットパルス信号を生成し、前記セットパルス信号及びリセットパルス信号を、前記直列接続点の電位を基準電位とする高圧側へレベルシフトし前記高圧側駆動回路へ伝達するとともに、前記2つの半導体素子を、双方ともにオフであるデッドタイムを挟みながら相補的にオン/オフする半導体素子駆動方法において、前記直列接続点の電位を基準電位として、前記高圧側半導体素子のオン/オフ状態を監視し、高圧側半導体素子のオン状態を観測したとき、前記低圧側半導体素子のオン指令を無効とすることを特徴とする半導体素子駆動方法。
【請求項6】
主電源端子間に2つの半導体素子を直列に接続し、前記2つの半導体素子のうち低圧側の接地電位を基準として低圧側半導体素子を駆動し、前記半導体素子の直列接続点の電位を基準電位とする高圧側駆動回路によって高圧側半導体素子を駆動し、前記低圧側半導体素子の接地電位を基準電位として、前記高圧側半導体素子のオン指令及びオフ指令となるセットパルス信号及びリセットパルス信号を生成し、前記セットパルス信号及びリセットパルス信号を、前記直列接続点の電位を基準電位とする高圧側へレベルシフトし前記高圧側駆動回路へ伝達するとともに、前記2つの半導体素子を、双方ともにオフであるデッドタイムを挟みながら相補的にオン/オフする半導体素子駆動方法において、前記直列接続点の電位を基準電位として、前記高圧側半導体素子のオン/オフ状態を監視し、前記高圧側半導体素子の駆動信号がオフした後にも、高圧側半導体素子のオン状態を観測したとき、前記リセットパルスを継続させることを特徴とする半導体素子駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−89417(P2009−89417A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−298916(P2008−298916)
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【分割の表示】特願2006−145031(P2006−145031)の分割
【原出願日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】