説明

半導体装置ならびに半導体装置の製造方法

【課題】ゲート絶縁膜上のゲート電極の仕事関数を増大させることができ、低い閾値電圧の半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置1は、基板(シリコン基板2)と、シリコン基板2上に設けられたゲート絶縁膜4と、ゲート絶縁膜4上に設けられたゲート電極(Pt含有NiSi電極19)を備え、Pt含有NiSi電極19が、ゲート絶縁膜4とPt含有NiSi電極19との接する部分に、第一金属を含む第一金属シリサイド、および第二金属を含む第二金属シリサイドまたは第二金属を含み、第二金属を含む第二金属シリサイドが、第二金属を含む第二金属シリサイド中のシリコンに対する第二金属の組成比が1より大きい金属リッチシリサイドであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置ならびに半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微細化が進む先端CMOS(相補型MOS)デバイスの開発ではポリシリコン(poly−Si)電極の空乏化による駆動電流の劣化とゲート絶縁膜の薄膜化によるゲートリーク電流の増加が問題となっている。そこで、メタルゲート電極の適用により電極の空乏化を回避すると同時に、ゲート絶縁膜に高誘電率材料を用いて物理膜厚を厚くすることでゲートリーク電流を低減する複合技術が検討されている。
【0003】
メタルゲート電極に用いる材料として、純金属や金属窒化物あるいはシリサイド材料等が検討されているが、いずれの場合においても、N型MOSFET、P型MOSFETのしきい値電圧(Vth)を適切な値に設定可能でなければならない。
【0004】
CMOSトランジスタで±0.5eV以下のVthを実現するためには、N型MOSFETでは仕事関数がSiのミッドギャップ(4.6eV)以下、望ましくは4.4eV以下の材料を、P型MOSFETでは仕事関数がSiのミッドギャップ(4.6eV)以上、望ましくは4.8eV以上の材料をゲート電極に用いる必要がある。
【0005】
これらを実現する手段として、異なる仕事関数を持った異種の金属あるいは合金をN型MOSFET、P型MOSFETの電極にそれぞれ使い分けることでトランジスタのVthを制御する方法(デュアルメタルゲート技術)が提案されている。例えば、従来例1として、非特許文献1には、図17(A)に示すような、SiO20上に形成したTa電極23とRu電極24の仕事関数はそれぞれ4.15eVと4.95eVであり、この二つの電極間で0.8eVの仕事関数変調可能であると述べられている。
【0006】
一方、poly−Si電極をNi、Hf、Wなどで完全にシリサイド化したシリサイド電極に関する技術が最近注目されている。例えば、従来例2として、非特許文献2および非特許文献3には、図17(B)に示すような、ゲート絶縁膜にSiO20を用い、ゲート電極として、PやBなどの不純物を注入したpoly−Si電極をNiで完全にシリサイド化したNiシリサイド電極(PドープNiSi電極25、BドープNiSi電極26)を用いることにより、電極の仕事関数を最大で0.5eV変調させる技術が開示されている。この技術の特徴はCMOSのソース・ドレイン拡散層9の不純物活性化のための高温熱処理を行った後にpoly−Si電極をシリサイド化することが可能であり、従来のCMOSプロセスと整合性が高いという利点がある。また、同じ文献には、ゲート絶縁膜としてSiONを用いた場合、ゲート電極として作製されたNiSiとNiSiの仕事関数がそれぞれ約4.6eV、4.45eVであることが開示されている。
【0007】
一方で、従来例3として、非特許文献4には、従来例2ではゲート絶縁膜がSiO20もしくはSiONだったのに対し、ゲート絶縁膜を高誘電率絶縁膜にして、リーク電流を低減する技術をメタルゲート技術と組み合わせる技術も重要となっており、Niシリサイド電極におけるNi組成をN型MOSFETとP型MOSFETでそれぞれ作り分けて、N型MOSFETおよびP型MOSFETに必要な仕事関数を実現する手法が開示されている。例えば、図18(A)に示すような、ゲート絶縁膜にHfSiON21を用い、ゲート電極にNi組成の異なるNiシリサイド電極(N型MOSFETにNiSiまたはNiSi電極27またはNiSi、P型MOSFETにNiSi電極28)を用いることにより、電極の仕事関数を最大で0.4eV変調させる技術が開示されている。
【0008】
さらに、高誘電率ゲート絶縁膜上のNiシリサイドゲート電極をベースに、仕事関数の変調幅をさらに拡大させる技術が開示されている。例えば、従来例4として、非特許文献5には、図18(B)に示すような、ゲート絶縁膜にHfO22を用い、Niシリサイドに異種の金属またはそのシリサイドを含有させたゲート電極(N型MOSFETにAlを含有したNiSi電極29、P型MOSFETにNiPtSi電極30)を用いることにより、N型MOSFETで4.2〜4.3eV、P型MOSFETで4.85eVが得られるとしている。
【非特許文献1】International electron devices meeting technical digest)2002,p.359
【非特許文献2】International electron devices meeting technical digest)2002,p.247
【非特許文献3】International electron devices meeting technical digest)2003,p.315
【非特許文献4】International electron devices meeting technical digest)2004,p.91
【非特許文献5】International electron devices meeting technical digest)2005,セッション27ペーパー6
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らは、半導体装置のゲート電極開発に従事しており、半導体装置の性能改善に関する検討を色々と行っている。我々の検討した結果、従来例4(非特許文献5)のトランジスタは、低動作電力(Low Operating Power,LOP)向けおよび低閾値電圧用途のトランジスタとしては性能不十分であることがわかった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、基板と、
前記基板上に設けられたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に設けられたゲート電極を備え、
前記ゲート電極が、前記ゲート絶縁膜と前記ゲート電極との接する部分に、第一金属を含む第一金属シリサイド、および第二金属を含む第二金属シリサイドまたは第二金属を含み、
前記第二金属を含む第二金属シリサイドが、前記第二金属を含む第二金属シリサイド中のシリコンに対する第二金属の組成比が1より大きい金属リッチシリサイドであることを特徴とする半導体装置が提供される。
【0011】
また本発明によれば、基板上に、ゲート絶縁膜を介してポリシリコン層を形成する第一の工程と、
前記ポリシリコン層をパターニングする第二の工程と、
前記ポリシリコン層上に第一金属膜および第二金属膜を含む金属層を形成し、
前記金属層を所定の温度で熱処理することにより、前記ゲート絶縁膜と前記ポリシリコン層との接する部分に、第一金属を含む第一金属シリサイド、および第二金属を含む第二金属シリサイドまたは第二金属を含むゲート電極を形成する第三の工程と、を含み、
前記第二金属を含む第二金属シリサイドが、前記第二金属を含む第二金属シリサイド中のシリコンに対する第二金属の組成比が1より大きい金属リッチシリサイドであることを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
【0012】
また本発明によれば、基板上に、ゲート絶縁膜を介してポリシリコン層を形成する第一の工程と、
前記ポリシリコン層をパターニングする第二の工程と、
前記ポリシリコン層上に第一金属膜を含む第一の金属層を形成し、
前記第一の金属層を所定の温度で熱処理することにより、前記ゲート絶縁膜と前記ポリシリコン層との接する部分に第一金属を含む第一金属シリサイドを含むゲート電極を形成する工程と、
前記第一金属膜を除去する工程と、
ハードマスクをパターンニングして前記ゲート電極上の所望の領域を露出させ、前記ゲート電極上に第二金属膜を含む第二の金属層を形成し、
前記第二の金属層を所定の温度で熱処理することにより、前記ゲート絶縁膜と前記ゲート電極との接する部分に、第二金属を含む第二金属シリサイドまたは第二金属を含むゲート電極を形成する工程と、を含み、
前記第二金属を含む第二金属シリサイドが、前記第二金属を含む第二金属シリサイド中のシリコンに対する第二金属の組成比が1より大きい金属リッチシリサイドであることを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
【0013】
また本発明によれば、基板上に、ゲート絶縁膜を介してポリシリコン層を形成する第一の工程と、
前記ポリシリコン層をパターニングする第二の工程と、
前記ポリシリコン層上に第一金属膜を含む第一の金属層を形成し、
前記第一の金属層を所定の温度で熱処理することにより、前記ゲート絶縁膜と前記ポリシリコン層との接する部分に、第一金属を含む第一金属シリサイドを含むゲート電極を形成する工程と、
前記第一金属膜を除去する工程と、
ハードマスクをパターンニングして前記ゲート電極上の所望の領域を露出させ、前記ゲート電極上に第二金属膜および前記第一金属膜をこの順に含む第二の金属層を形成し、
前記第二の金属層を所定の温度で熱処理することにより、前記ゲート絶縁膜と前記ゲート電極との接する部分に、第一金属を含む第一金属シリサイド、および第二金属を含む第二金属シリサイドまたは第二金属を含むゲート電極を形成する工程と、を含み、
前記第二金属を含む第二金属シリサイドが、前記第二金属を含む第二金属シリサイド中のシリコンに対する第二金属の組成比が1より大きい金属リッチシリサイドであることを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
【0014】
この発明によれば、ゲート電極中に2種類の金属を併存させることで、一方の金属がシリコンと反応し、もう一方の金属が金属のまま、または金属リッチなシリサイドとして安定的に存在できるため、仕事関数を所望の値に制御できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ゲート絶縁膜上のゲート電極の仕事関数を増大させることができ、低い閾値電圧の半導体装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明者らは、上記課題解決に向けて、半導体装置におけるメタルゲート電極の構造およびその作製方法に関して検討を重ねてきた。特にP型MOSFETにおいて低いトランジスタ閾値を実現するのが困難であると考えて、その検討を重点的に行ってきた。以下、好適な実施形態を、添付した図面を参照しつつ説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0017】
本発明者らが注目したのは、従来例4でも述べたNiシリサイドに異種の金属を含有させたゲート電極を用いる手法である。従来例4でのP型MOSFETはNiの組成が高いNiPtSi(ニッケルプラチナシリサイド)を用いている。しかしながら、従来例4の手法を用いても、特にP型MOSFETに関しては、Siのミッドギャップ(4.6eV)に対して+0.25eV、すなわち仕事関数が4.85eV程度までしか高くならないことがわかっている。この仕事関数では、未だLOPおよび低閾値電圧用途のトランジスタとしては性能不十分である。
【0018】
本発明において明らかにされる本発明者らの着眼点は、従来例4で述べられている構造では、Ptがシリサイド化されているという点である。高誘電率絶縁膜上のPtシリサイドの仕事関数の報告例はいくつか存在するが、せいぜい4.9eV程度である。すなわち、Niシリサイド中にPtシリサイドをいくら混入させても、4.9eV以上にはならないということになると考えられる。
【0019】
そこで、本発明者らは、Ptがシリサイド化されない状況を生み出すことが、Ptが本来有する5.65eVという大きな仕事関数をメタルゲート電極の仕事関数に反映するために重要であると考えた。すなわち、ゲート電極中にシリコンおよびシリサイド化可能な金属が2種類含まれており、シリサイド化可能な上記金属のうち第一金属が、第一金属を含む第一金属シリサイドとして、および第二金属(ここではPt)が、シリコンに対する第二金属の組成比が1より大きい金属リッチシリサイドである第二金属を含む第二金属シリサイドまたは第二金属として含有されている、という特徴を出せれば、大きな仕事関数が実現できることになる。
【0020】
図1は、実施形態にかかる半導体装置の構成の要点を示す模式図である。半導体装置100はシリコン基板101上に形成された素子分離領域102、ゲート絶縁膜103およびゲート電極104を有しており、少なくともゲート絶縁膜103とゲート電極104との接する部分に、シリコン原子105およびシリサイド化可能な金属を2種類含んでおり、シリサイド化可能な金属のうち第一金属原子106がシリサイド化第一金属、第二金属原子107が第二金属もしくは金属リッチシリサイドとして含有されている、というものである。なお、ここでの金属リッチシリサイドとは、第二金属を含む第二金属シリサイド中のシリコンに対する第二金属の組成比が、3以上であるシリサイドが好ましい。
【0021】
また、図1の構造を得るための有効的な手法として、第二金属(Pt)および第一金属(Ni)を同時にシリコン中に拡散させて、シリサイド化過程を競合させ、そのNiがよりSiと安定にシリサイドを形成する金属であれば、たとえPtがSiと結合していてもNiが優先的にSiと結合するようになるため、Ptは第二金属として第一金属のシリサイド中に安定的に存在できるようになる、と考えた(図2(A))。またPtは、金属リッチシリサイドな第二金属を含むシリサイドとして安定的に存在できるようになる、とも考えられる。なお、より安定にシリサイドを形成する金属とは、シリサイドの生成エネルギーがより低い金属、ということになる。このシリサイドの生成エネルギーがより低い金属は、当該シリサイドの生成エネルギーがより高い金属よりも、シリサイド化しやすい。
【0022】
今回の実施形態の要点は、第一金属としてNiを用い、熱力学的に安定な状態では、Ptシリサイドよりも生成エネルギーの大きいNiのシリサイドが安定に存在し、Ptはシリサイドというよりは金属Ptとして存在するようになった、という新しい発見に基づく。そのために、本発明者らはNiおよびPtの堆積方法および熱処理の条件に関する検討を行ってきた。その結果、Siがより優先的にNiと結合する条件、すなわちSiに対するNi組成比が高く、かつシリサイド化温度がある程度高い場合、Ptがシリサイド化されず金属として存在でき、4.9eVを超える大きな仕事関数が実現できることがわかった。
【0023】
図2(B)に以下の実施形態に従って作製したPt含有Niシリサイド電極におけるPt起因のX線光電子分光スペクトルを示す。ここで見られるピークは通常のシリサイド組成であるPtSiやPt2Siとは異なり、より金属Ptに近いところに位置していることがわかる。これより、Ptがシリサイド化されていない状態もしくはPtリッチシリサイドの状態でNiシリサイド中に含有されていることがわかる。この構造は、通常のPtのみの堆積膜によるシリサイド、もしくはNiPtSiの堆積膜では得られていないものである。なお、この構造を得るためには、シリサイド化する温度を高くして、十分熱力学的に安定な状態にする必要がある。図2(B)に示したように、シリサイド化温度の上昇に伴い、結合エネルギーがより低エネルギー側にシフトしPtシリサイドからPtの結合エネルギーに近づいていくことがX線光電子分光により確かめられている。
【0024】
なお、文献Properties of Metal Silicides,IEE,1995年によると、NiSiおよびNiSi、NiSiの生成エネルギーがそれぞれ−35.6および−31.5、−20.5kcal/molであるのに対し、PtSiおよびPtSiの生成エネルギーはそれぞれ−20.7および−15.8kcal/molとなっている。すなわち、対SiのNi組成比が高いNiシリサイドでは、Ptシリサイドよりも低い生成エネルギーとなるため、より熱力学的に安定にシリサイドを形成可能となる。これにより、ゲート電極中に2種類の金属を併存させることで、一方の金属がシリコンと反応し、もう一方の金属が金属のまま、または金属リッチなシリサイドとして安定的に存在できることが分かった。我々の発見は、上記文献値からも理解できるものである。
【0025】
以下の実施形態では、上記効果を実現するための詳細を図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1において説明した構造は、いわゆるキャパシタ構造である。第1の実施形態を、図3に示すMOSFET構造の断面模式図に基づいて説明する。図3に示すMOSFET構造では、ゲート電極(Pt含有NiSi電極19)およびゲート絶縁膜4は図1におけるものと共通構造になっている。
【0026】
第1の実施形態の半導体装置1は、基板(シリコン基板2)と、シリコン基板2上に設けられたゲート絶縁膜4と、ゲート絶縁膜4上に設けられたゲート電極(Pt含有NiSi電極19)を備え、Pt含有NiSi電極19が、ゲート絶縁膜4とPt含有NiSi電極19との接する部分に、第一金属を含む第一金属シリサイド、および第二金属を含む第二金属シリサイドまたは第二金属を含み、第二金属を含む第二金属シリサイドが、第二金属を含む第二金属シリサイド中のシリコンに対する第二金属の組成比が1より大きい金属リッチシリサイドであることを特徴とする。上記半導体装置1は、さらにシリコン基板2上に、Pt含有NiSi電極19の両側にはシリサイド層11を上部に配したソース・ドレイン領域(ソース・ドレイン拡散層9)およびエクステンション領域(エクステンション拡散層領域7)備えることを特徴とする。また、Pt含有NiSi電極19およびゲート絶縁膜4にはゲート側壁8が設けられ、その周囲は層間絶縁膜12に囲まれている。
金属リッチシリサイドは、シリコンに対する第二金属の組成比が3以上であることが好ましい。
【0027】
また、第1の実施形態の半導体装置1の製造方法は、シリコン基板2上に、ゲート絶縁膜4を介してポリシリコン層(ポリシリコン膜5)を形成する第一の工程と、ポリシリコン膜5をパターニングする第二の工程と、ポリシリコン膜5上に第一金属膜13および第二金属膜14を含む金属層を形成し、金属層を所定の温度で熱処理することにより、ゲート絶縁膜4とポリシリコン膜5との接する部分に、第一金属を含む第一金属シリサイド、および第二金属を含む第二金属シリサイドまたは第二金属を含むゲート電極(Pt含有NiSi電極19)を形成する第三の工程と、を含み、第二金属を含む第二金属シリサイドが、第二金属を含む第二金属シリサイド中のシリコンに対する第二金属の組成比が1より大きい金属リッチシリサイドであることを特徴とする。
【0028】
さらに、上記製造方法は、第三の工程において、金属層は、第二金属膜14、および第一金属膜13がこの順に積層されてもよい。
さらに、上記製造方法は、第三の工程において、金属層は、第一金属膜13および第二金属膜14がこの順に積層されてもよい。
さらに、上記製造方法は、第三の工程において、金属層は、第一金属および第二金属から構成される合金膜16でもよく、金属層は、合金膜16および第一金属がこの順に積層されてもよい。
【0029】
図4(A)〜図5(D)は第1の実施形態に関わるMOSFET構造の作製工程を示した断面図である。本実施形態は、層間絶縁膜形成後にこれを研磨することにより平坦化すると同時に、ゲート電極上部を露出させることが可能なCMP(Chemical Mechanical Polishing)技術を用いてMOSFETを作製する。
【0030】
まず、図4(A)に示すようにシリコン基板2の表面領域にSTI(Shallow Trench Isolation)技術を用いて素子分離領域3を形成した。続いて、素子分離されたシリコン基板2表面にゲート絶縁膜4を形成した。ゲート絶縁膜4は、金属酸化物、金属酸化物、金属シリケート、および金属酸化物または金属シリケートに窒素が導入された高誘電率絶縁膜を用いる。好ましくは、ゲート絶縁膜中の金属がHfもしくはZrである。高誘電率絶縁膜が、HfまたはZrを含むことにより、ゲート絶縁膜4は、高温の熱処理に対して安定となると同時に、膜中の固定電荷の少ない膜が得られやすくなる。
【0031】
さらに、高誘電率絶縁膜のゲート電極と接する側に、HfもしくはZrを含む層を有することが好ましい。ゲート電極19とこれに接する高誘電率絶縁膜の組合せにより、MOSFETの閾値電圧が決定されるためである。この時、シリコン基板2とゲート絶縁膜との接する部分準位を減らし、高誘電率絶縁膜中の固定電荷の影響をより小さくするため、高誘電率絶縁膜とシリコン基板との接する部分にシリコン酸化膜もしくはシリコン酸窒化膜を導入しても良い。さらに好ましくは、HfSiON膜もしくはシリコン酸化膜もしくはシリコン酸窒化膜上のHfSiON膜である。
【0032】
本実施形態では、ゲート絶縁膜中のHf濃度が深さ方向で変化していて、ゲート電極19とゲート絶縁膜4との接する部分付近におけるHfの濃度が最も高く、シリコン基板2とゲート絶縁膜4との接する部分付近はシリコン熱酸化膜の組成となっているHfSiONを用いた。このようなHfSiON膜を得るために、まず、1.9nmのシリコン熱酸化膜を形成した後、0.5nmのHfをロングスロースパッタ法で堆積し、酸素雰囲気中で500℃1分→窒素雰囲気中で800℃30秒の2段階熱処理をすることによりHfを下地のシリコン酸化膜中へ固相拡散させることによりHfSiON膜を形成した。その後NH雰囲気中で900℃10分の窒化アニールを行いHfSiON膜を得た。さらに、この高誘電率絶縁膜の上部もしくは下部に、キャップ絶縁膜が形成されていてもよい。キャップ絶縁膜の具体的な材料は、Al、La、およびMgから選択される金属を含有する金属酸化物である。
【0033】
次に、ゲート絶縁膜4上に厚さ60nmのポリシリコン膜5と厚さ150nmのシリコン酸化膜6からなる積層膜を形成した。この積層膜を、図4(B)に示すように、リソグラフィー技術およびRIE(Reactive Ion Etching)技術を用いてゲート電極に加工し、引き続いてイオン注入を行い、エクステンション拡散層領域7をゲート電極をマスクとして自己整合的に形成した。
【0034】
さらに、図4(C)に示すように、シリコン窒化膜とシリコン酸化膜を順次堆積し、その後エッチバックすることによってゲート側壁8を形成した。この状態で再度イオン注入を行い、活性化アニールを経てソース・ドレイン拡散層9を形成した。
【0035】
次に、図4(D)に示すように、厚さ20nmの金属膜10をスパッタにより全面に堆積し、サリサイド技術により、ゲート電極及びゲート側壁膜、STIをマスクとして、ソース・ドレイン拡散層9のみに厚さ約40nmのシリサイド層11を形成した(図4(E))。このシリサイド層11はコンタクト抵抗を最も低くすることができるNiモノシリサイド(NiSi)とした。Niシリサイドの代わりにCoシリサイドやTiシリサイドを用いてもよい。
【0036】
さらに、図5(A)に示すように、CVD(Chemical Vapor Deposition)法によってシリコン酸化膜の層間絶縁膜12を形成した。この層間絶縁膜12をCMP技術によって図5(B)に示すように平坦化し、さらに、層間絶縁膜12のエッチバックを行うことでポリシリコン膜5を露出させた。
【0037】
次に、図5(C)に示すように、ゲート電極形状のポリシリコン膜5とのシリサイドを形成させるために、第二金属膜14および第一金属膜13をこの順番で堆積した。堆積手法の代表的なものとしては、スパッタあるいは化学的気相成長法などが挙げられる。この時の、第一金属膜13としては、ポリシリコン膜5とシリサイドを形成可能な金属、例えば、Ni、Hf、V、Ti、Ta、W、Co、Cr、Zr、Mo、Nb、およびこれらの合金などから選択できるが、ソース・ドレイン拡散層9にすでに形成されているシリサイド層11の抵抗値がそれ以上高くならない温度でポリシリコン膜5を完全にシリサイド化できる金属が好適である。
【0038】
一方で、第二金属としては、第一金属より大きな仕事関数を有しているものが好ましい。また第二金属のシリサイドが第一金属のシリサイドより熱力学的に安定でなく、熱処理を行うことにより第一金属膜13のシリサイド化が進行し、第二金属はより金属として存在しやすくなるような材料が好適である。つまり、第一金属が、第二金属よりシリサイド化しやすいことが好ましい。さらに、第二金属が、Ptであることが好ましいが、これに限定されない。
【0039】
本実施形態では、第一金属としてNi、第二金属としてPtを選択して検討を行った。NiとPtの組合せは、ソース・ドレイン拡散層9にすでに形成されているシリサイド層11にも用いられている材料であり、ポリシリコン膜5とのシリサイドを形成する上で比較的容易に導入できる材料であるが、本発明の趣旨を逸しない範囲で他の材料を用いることも可能である。ソース・ドレイン拡散層9にNiモノシリサイド(NiSi)層が形成されている場合は、Niダイシリサイド(NiSi)化によりソース・ドレイン拡散層9と配線とのコンタクト抵抗が高くなることを防ぐためにその後のプロセス温度を500℃以下にする必要があり、本実施形態では500℃以下でシリサイド化が十分進行するNiを用いることにした。
【0040】
また、第二金属膜14の膜厚t2は後述のように本実施形態のシリサイドゲート電極の仕事関数を決定する上で重要である。t2としては、1nm以上、30nm以下の範囲が好適である。シリサイドゲート中の第二金属の濃度はt2にほぼ比例し、t2が1nm以上、30nm以下の場合0.5%以上、15%以下である。なお、第二金属の濃度はシリサイドゲート中で均一となっていても良い。より好ましい形態として、第二金属の濃度は、ゲート電極の表面からゲート絶縁膜4とシリサイドゲート電極との接する部分に向かって高くなるまたは最大となるように傾斜的なプロファイルもしくはゲート絶縁膜4との接する部分にパイルアップするようになっていても良い。また金属リッチな第二金属を含む第二金属シリサイドの濃度も同様となることが好ましい。なお、第一金属を含む第一金属シリサイドのシリコン濃度を、第二金属を含む第二金属シリサイドのシリコンの濃度より高くすることもできる。
【0041】
一方、第一金属膜13の膜厚t1は従来から知られているように本シリサイドゲート電極のシリサイド相を決定する上で重要である。さらに、本シリサイドゲート電極のシリサイド相は、後述のように本シリサイドゲート電極の仕事関数を決定する上で重要である。すなわち、第一金属膜13の膜厚t1および第二金属膜14の膜厚t2の組合せにより本シリサイドゲート電極の仕事関数が決定される。我々の検討では、t1はポリシリコン膜5の膜厚以上、より好ましくはポリシリコン膜5の膜厚の1.2倍以上に設定することが好ましい。なお、本実施形態では90nmのNi膜を堆積した。
【0042】
以上の第二金属膜14および第一金属膜13を堆積した後に、ゲート絶縁膜4上のポリシリコン膜5中に第二金属および第一金属を拡散させ、シリサイド化反応を起こさせるための熱処理を行った。この熱処理は、金属層(第二金属膜14および第一金属膜13)の酸化を防ぐため非酸化雰囲気中であることが求められると同時に、ゲート絶縁膜4上のポリシリコン膜5を全てシリサイドするために十分な拡散速度が得られ、かつソース・ドレイン拡散層9に形成されているシリサイド層11が高抵抗にならない温度で行う必要がある。
【0043】
本実施形態では、ソース・ドレイン拡散層9上に形成されているシリサイド層11と、シリサイドゲート電極上に形成するシリサイドがともにNiであることから、窒素ガス雰囲気中450℃5分とした。ソース・ドレイン拡散層9に形成されているシリサイドがCoシリサイドやTiシリサイドであれば、より高温領域、例えば800℃程度まで許容される。この熱処理過程は重要で、例えば400℃5分の場合はPtSiが形成されていたが、420℃ではPtとして存在し、より確実には450℃で熱処理することが良いということがわかった。この熱処理により、NiおよびPtがポリシリコン膜5中に拡散して行きシリサイド化反応が起こり、ゲート絶縁膜4とPt含有NiSi電極19との接する部分までポリシリコン膜5のシリサイド化が起こった。X線回折(XRD)測定によると、本シリサイド中のNi/(Ni+Si)組成比は約0.75であった(NiSi相)。
【0044】
また、このシリサイドゲート電極中のPtはシリサイド化されていない金属PtもしくはPtとシリコンの組成比が、3以上である金属リッチシリサイドの状態(PtxSiと表記したとき、x≧3)でシリサイド化されたPtとして、第一金属を含む第一金属シリサイドNiSi中に含有されていることが、図2(B)のX線光電子分光よりわかった。最後に、熱処理においてシリサイド化反応しなかった余剰のNi膜およびPt膜は硫酸過酸化水素水溶液または王水を用いてウェットエッチング除去した。
【0045】
なお、より詳細な検討により、第二金属膜14および第一金属膜13のポリシリコン膜5への導入方法は、図5(C)の方法に限らず、他の方法でも可能であることがわかった。図6(A)〜(D)に、第二金属膜14および第一金属膜13のポリシリコン膜5への導入の他の方法を示す。図6(A)には図5(C)での方法を示した。一方で、図6(B)は図6(A)の第二金属膜14および第一金属膜13の順番を変えたものである。この方法によっても、第二金属はゲート絶縁膜4との接する部分まで到達した。
【0046】
その他の手法としては、第一金属および第二金属が混合された第一金属および第二金属から構成される合金膜16を用いる方法もある。図6(C)に示したのは、ポリシリコン膜5上に合金膜16を堆積する手法、図6(D)に示したのは、ポリシリコン膜5上に合金膜16と第一金属膜13を積層する手法である。いずれの場合も、第二金属はゲート絶縁膜4との接する部分まで到達し、所望の特性を得ることができた。ただし、やはり重要なのは、シリサイド化を行う熱処理温度で、多少の熱処理温度低減効果があり、400℃程度で行うことも可能となったが、より好ましくは、420℃以上で行うことができる。
【0047】
なお、上記の工程を通して、シリサイド電極の剥離はまったく観察されなかった。以上のような工程を経ることにより、図5(D)に示すような、Pt含有NiSi電極19を備えるMOSFET構造が形成された。
【0048】
ここで、本実施形態の半導体装置1は、ゲート電極(Pt含有NiSi電極19)を備えるトランジスタ(図示せず)であって、Pt含有NiSi電極19中の第一金属を含む第一金属シリサイドと、第二金属を含む第二金属シリサイドおよび第二金属との組成比が異なる、2つのトランジスタを有する半導体装置とすることができる。
これにより、第二金属膜14および第一金属膜13の膜厚を調整して、上記組成比を変えることで、ポリシリコン膜5の膜厚を実質的に変えずに、同一工程で、2つのPt含有NiSi電極19の仕事関数を異なるように制御することできる。上記半導体装置1は、PチャネルトランジスタまたはNチャネルトランジスタであることが好ましい。
【0049】
以上のような工程で形成されたPt含有NiSi電極19を備えるMOSFET構造では、P型MOSFETに適した特性が得られた。図7は本実施形態を用いてPt膜厚を制御し、ゲート絶縁膜4に高誘電率材料であるHfSiON膜を採用したCMOSトランジスタのC−V特性から得られた仕事関数を示したものである。
【0050】
図7に示すように、Pt膜厚を増加させると、仕事関数が増加していくことがわかる。Pt含有NiSi電極19を備えるP型MOSFETのドレイン電流のゲート電圧依存性は良好で、Ptを含有しないNiSiに対して0.1V以上低い閾値電圧が実現された。また、正孔移動度の測定により、poly−Si/SiOの組み合わせによるトランジスタと同等の値が得られることもわかっている。以上より本実施形態で示したPt含有NiSi電極19とHfSiONゲート絶縁膜(ゲート絶縁膜4)を組み合わせることで優れたP型MOSFET特性を得ることができる。
【0051】
なお、相補型MOSFETとして必要なもう片方のN型MOSFETのゲート電極としては、NiSi(4.4eVの仕事関数)、NiSi(4.5eVの仕事関数)等が、本実施形態によるP型MOSFET用のPt含有NiSiとシリサイドの主金属(Ni)を同じにするため有効である。なお、NiSi、NiSiとチャネルに対する窒素イオン注入(1E15cm−2程度)を組み合わせることにより、低い閾値電圧要求に対応したN型MOSFETが形成可能である。以上より、製造コストを比較的低く抑えつつ、高性能で高信頼な相補型MOSFETを得ることができた。
【0052】
(第2の実施形態)
第2の実施形態での最終的な構造は、図3に示した本発明にかかる第1の実施形態であるMOSFET構造と同じものになる。ただし、その作製工程が異なり、より素子の作製が容易となっているのが特徴である。
【0053】
第2の実施形態の半導体装置1の製造方法は、第三の工程において、金属層は、第一金属膜13、第二金属膜14、および第一金属膜(2層目の第一金属膜15)がこの順に積層されてもよい。
【0054】
図8(A)〜(E)から図9(A)〜(D)は第2の実施形態に関わるMOSFET構造の作製工程を示した断面図である。本実施形態は、層間絶縁膜形成後にこれを研磨することにより平坦化すると同時に、ゲート電極上部を露出させることが可能なCMP(Chemical Mechanical Polishing)技術を用いてMOSFETを作製する。
【0055】
図8(A)〜(E)から図9(A)〜(B)までの工程は、図4(A)〜(E)から図5(A)〜(B)とまったく同様で、第1の実施形態で説明した通りの工程で、図9(B)に示すように、CVD(Chemical Vapor Deposition)法によって形成したシリコン酸化膜の層間絶縁膜12をCMP技術によって平坦化し、さらに、層間絶縁膜12のエッチバックを行うことでポリシリコン膜5を露出させた。
【0056】
次に、図9(C)に示すように、ゲート電極形状のポリシリコン膜5とのシリサイドを形成させるために、第一金属膜13、第二金属膜14および2層目の第一金属膜15をこの順番で堆積した。堆積手法の代表的なものとしては、スパッタあるいは化学的気相成長法などが挙げられる。この時の、第一金属膜13および2層目の第一金属膜15としては、ポリシリコン膜5とシリサイドを形成可能な金属、例えば、Ni、Hf、V、Ti、Ta、W、Co、Cr、Zr、Mo、Nbやそれらの合金などから選択できるが、ソース・ドレイン拡散層9にすでに形成されているシリサイド層11の抵抗値がそれ以上高くならない温度でポリシリコン膜5を完全にシリサイド化できる金属が好適である。
【0057】
一方で、第二金属としては、金属として大きな仕事関数を有しているものが好ましい。また第二金属としては、第二金属のシリサイドが第一金属および2層目の第一金属のシリサイドより熱力学的に安定でなく、熱処理を行うことにより第一金属膜13および2層目の第一金属膜15のシリサイド化が進行し、第二金属がより金属として存在しやすくなるような材料が好適である。
【0058】
本実施形態では、第一金属および2層目の第一金属としてNi、第二金属としてPtを選択して検討を行った。NiとPtの組合せは、ソース・ドレイン拡散層9にすでに形成されているシリサイド層11にも用いられている材料であり、ポリシリコン膜5とのシリサイドを形成する上で比較的容易に導入できる材料であるが、本発明の趣旨を逸しない範囲で他の材料を用いることも可能である。
【0059】
ソース・ドレイン拡散層9にNiモノシリサイド(NiSi)層が形成されている場合は、Niダイシリサイド(NiSi)化によりソース・ドレイン拡散層9と配線とのコンタクト抵抗が高くなることを防ぐためにその後のプロセス温度を500℃以下にする必要があり、本実施形態では500℃以下でシリサイド化が十分進行するNiを用いることにした。
【0060】
また、第二金属膜14の膜厚t2は後述のように本シリサイドゲート電極の仕事関数を決定する上で重要である。t2としては、1nm以上、30nm以下の範囲が好適である。シリサイドゲート中の第二金属の濃度はt2にほぼ比例し、t2が1nm以上、30nm以下の場合0.5%以上、15%以下である。なお、第二金属の濃度は、ゲート電極の表面からゲート絶縁膜4とシリサイドゲート電極との接する部分に向かって高くなるまたは最大となるように傾斜的なプロファイルもしくはゲート絶縁膜4との接する部分にパイルアップするようになっていても良い。また金属リッチな第二金属を含む第二金属シリサイドの濃度も同様となることが好ましい。
【0061】
一方、第一金属膜13の膜厚t1および2層目の第一金属膜15の膜厚t3の和t1+t3は本シリサイドゲート電極のシリサイド相を決定する上で重要である。さらに、本シリサイドゲート電極のシリサイド相は、後述のように本シリサイドゲート電極の仕事関数を決定する上で重要である。すなわち、t1+t3および第二金属膜14の膜厚t2の組合せにより本シリサイドゲート電極の仕事関数が決定される。
【0062】
我々の検討では、t1+t3はポリシリコン膜5の膜厚以上、より好ましくはポリシリコン膜5の膜厚の1.2倍以上に設定することが好ましい。なお、本実施形態ではt1=5nm、t3=95nmすなわちt1+t3=100nmのNi膜を堆積した。なお、t1+t3=100nm、Pt膜厚t2=5nmとして、t1の膜厚を3nm以上、40nm以下の間で変化させた実験では、t1≦30nmの範囲でNiSi中のPt組成が一定であり、t1=40nmになるとPt組成が低下することを確認している。t1を厚くする場合にはPt膜上のNi膜厚t3も厚くしてPtが十分押し込まれる状況を作る必要があるが、t1+t3の過大な増加は余分な堆積膜厚の増加等をもたらすため、好ましくない。よって、t1≦30nm程度が良いと考えられる。
【0063】
以上の第一金属膜13、第二金属膜14および2層目の第一金属膜15を堆積した後に、ゲート絶縁膜4上のポリシリコン膜5中に第一金属、第二金属および2層目の第一金属を拡散させ、シリサイド化反応を起こさせるための熱処理を行った。この熱処理は、金属層(第一金属膜13、第二金属膜14および2層目の第一金属膜15)の酸化を防ぐため非酸化雰囲気中であることが求められると同時に、ゲート絶縁膜4上のポリシリコン膜5を全てシリサイド化するために十分な拡散速度が得られ、かつソース・ドレイン拡散層9に形成されているシリサイド層11が高抵抗にならない温度で行う必要がある。
【0064】
本実施形態では、ソース・ドレイン拡散層9に形成されているシリサイド層11と、ゲート電極上に形成するシリサイドがともにNiであることから、窒素ガス雰囲気中450℃5分とした。ソース・ドレイン拡散層9に形成されているシリサイドがCoシリサイドやTiシリサイドであれば、より高温領域、例えば800℃程度まで許容される。この熱処理過程は重要で、例えば400℃5分の場合はPt2Siが形成されていたが、420℃ではPtとして存在し、より確実には450℃で熱処理することが良いということがわかった。この熱処理により、NiおよびPtがポリシリコン膜5中に拡散して行きシリサイド化反応が起こり、ゲート絶縁膜4とPt含有NiSi電極19との接する部分までポリシリコン膜5のシリサイド化が起こった。
【0065】
X線回折(XRD)測定によると、本シリサイド中のNi/(Ni+Si)組成比は約0.75であった(NiSi相)。また、このシリサイド中のPtはシリサイド化されていない金属PtもしくはPtとシリコンの組成比が、3以上である金属リッチシリサイドの状態(PtxSiと表記したとき、x≧3)でシリサイド化されたPtとして、第一金属を含む第一金属シリサイドNiSi中に含有されていることが、図2(B)のX線光電子分光よりわかった。
【0066】
最後に、熱処理においてシリサイド化反応しなかった余剰のNi膜およびPt膜は硫酸過酸化水素水溶液または王水を用いてウェットエッチング除去した。この際に、ポリシリコン膜5および層間絶縁膜12上に直接堆積される第一金属膜13は第二金属膜14が層間絶縁膜12中に打込まれるのを防ぎ、上記ウェットエッチングを行う際に余剰のPt膜を取り除くのを容易にする効果があった。
【0067】
なお、上記の工程を通して、シリサイド電極の剥離はまったく観察されなかった。以上のような工程を経ることにより、図9(D)に示すような、Pt含有NiSi電極19を備えるMOSFET構造が形成された。
【0068】
以上のような工程で形成されたPt含有NiSi電極19を備えるMOSFET構造では、P型MOSFETに適した特性が得られた。また、NiをPtの下部に堆積することにより、ポリシリコン膜5中に先に拡散させることができ、ゲート絶縁膜4とPt含有NiSi電極19との接する部分のポリシリコンをより優先的にNiと結合させることが可能となった。
【0069】
これにより、Ptがよりシリサイド化されにくい条件を作ることができ、仕事関数を50meV増加することができた。以上より本実施形態で示したPt含有NiSi電極19とHfSiONゲート絶縁膜(ゲート絶縁膜4)を組み合わせることで優れたP型MOSFET特性を得ることができる。また、ウェットエッチングを行いやすくした結果、プロセスのコストを低減することが可能となった。
【0070】
なお、相補型MOSFETとして必要なもう片方のN型MOSFETのゲート電極としては、NiSi(4.4eVの仕事関数)、NiSi(4.5eVの仕事関数)等が、本実施形態によるP型MOSFET用のPt含有NiSiとシリサイドの主金属(Ni)を同じにするため有効である。なお、NiSi、NiSiとチャネルに対する窒素イオン注入(1E15cm−2程度)を組み合わせることにより、低い閾値電圧要求に対応したN型MOSFETが形成可能である。以上より、製造コストを比較的低く抑えつつ、高性能で高信頼な相補型MOSFETを得ることができた。
【0071】
(第3の実施形態)
第3の実施形態での最終的な構造は、図12(C)である。この構造においては、N型MOSFET領域にPt含有NiSiゲート電極18、P型MOSFET領域にPt含有NiSiゲート電極19が形成されているのが特徴である。
【0072】
第3の実施形態の半導体装置は、Pチャネルトランジスタと、Nチャネルトランジスタと、を備え、Nチャネルトランジスタの第一金属を含む第一金属シリサイドのシリコンに対する第一金属の組成比が、Pチャネルトランジスタの第一金属を含む第一金属シリサイドのシリコンに対する第一金属の組成比より低いことを特徴とする。
また、Nチャネルトランジスタが、ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリのセルトランジスタであってもよい。
【0073】
第3の実施形態の半導体装置の製造方法は、第三の工程の後さらに、第一金属膜13および第二金属膜14を除去する工程と、ハードマスク17をパターンニングしてゲート電極(Pt含有NiSi電極18)上の所望の領域を露出させ、Pt含有NiSi電極18上に第一金属膜(2層目の第一金属膜15)を含む金属層を形成し、金属層を所定の温度で熱処理することにより、ゲート絶縁膜4とPt含有NiSi電極18との接する部分に、第一金属を含む第一金属シリサイドを含むゲート電極(Pt含有NiSi電極19)を形成する工程と、を含むことを特徴とする。
さらに、第二金属を含む第二金属シリサイドが、前記第二金属を含む第二金属シリサイド中のシリコンに対する第二金属の組成比が1より大きい金属リッチシリサイドであることが好ましい。
【0074】
図10(A)〜(E)、図11(A)〜(D)、および図12(A)〜(C)は第3の実施形態に関わるMOSFET構造の作製工程を示した断面図である。本実施形態は、層間絶縁膜形成後にこれを研磨することにより平坦化すると同時に、ゲート電極上部を露出させることが可能なCMP(Chemical Mechanical Polishing)技術を用いてMOSFETを作製する。
【0075】
まず図10(A)〜(E)から図11(A)〜(D)までの工程は、N型MOSFETおよびP型MOSFETの区別なく行う。そのうちで、図10(A)〜(E)、図11(A)〜(B)までの工程は、図4(A)〜(E)から図5(A)〜(B)とまったく同様で、第1の実施形態で説明した通りの工程であり、図11(B)に示すように、CVD(Chemical Vapor Deposition)法によって形成したシリコン酸化膜の層間絶縁膜12をCMP技術によって平坦化し、さらに、層間絶縁膜12のエッチバックを行うことでゲート電極のポリシリコン膜5を露出させた。
【0076】
次に、図11(C)に示すように、ゲート電極形状のポリシリコン膜5とのシリサイドを形成させるために、第二金属膜14および第一金属膜13をこの順番で堆積した。堆積手法の代表的なものとしては、スパッタあるいは化学的気相成長法などが挙げられる。この時の、第一金属としては、ポリシリコン膜5とシリサイドを形成可能な金属、例えば、Ni、Hf、V、Ti、Ta、W、Co、Cr、Zr、Mo、Nb、およびこれらの合金などから選択できるが、ソース・ドレイン拡散層9にすでに形成されているシリサイド層11の抵抗値がそれ以上高くならない温度でポリシリコン膜5を完全にシリサイド化できる金属が好適である。
【0077】
一方で、第二金属膜14としては、金属として大きな仕事関数を有しているものが好ましく、また第二金属のシリサイドが第一金属のシリサイドより熱力学的に安定でなく、熱処理を行うことにより第一金属膜13のシリサイド化が進行し、第二金属はより金属として存在しやすくなるような材料が好適である。
【0078】
本実施形態では、第一金属としてNi、第二金属としてPtを選択して検討を行った。NiとPtの組合せは、ソース・ドレイン拡散層9にすでに形成されているシリサイド層11にも用いられている材料であり、ポリシリコン膜5とのシリサイドを形成する上で比較的容易に導入できる材料であるが、本発明の趣旨を逸しない範囲で他の材料を用いることも可能である。ソース・ドレイン拡散層9にNiモノシリサイド(NiSi)層が形成されている場合は、Niダイシリサイド(NiSi)化によりソース・ドレイン拡散層9と配線とのコンタクト抵抗が高くなることを防ぐためにその後のプロセス温度を500℃以下にする必要があり、本実施形態では500℃以下でシリサイド化が十分進行するNiを用いることにした。
【0079】
また、第二金属膜14の膜厚t2は後述のように本シリサイドゲート電極の仕事関数を決定する上で重要である。t2としては、1nm以上、30nm以下の範囲が好適である。シリサイドゲート中の第二金属の濃度はt2にほぼ比例し、t2が1nm以上、30nm以下の場合0.5%以上、15%以下である。なお、第二金属の濃度はシリサイドゲート中で均一となっていても良い。より好ましい形態として、第二金属の濃度は、ゲート電極の表面からゲート絶縁膜4とシリサイドゲート電極との接する部分に向かって高くなるまたは最大となるように傾斜的なプロファイルもしくはゲート絶縁膜4接する部分にパイルアップするようになっていても良い。また金属リッチな第二金属を含む第二金属シリサイドの濃度も同様となることが好ましい。
【0080】
一方、第一金属膜13の膜厚t1は従来から知られているように本シリサイドゲート電極のシリサイド相を決定する上で重要である。さらに、本シリサイドゲート電極のシリサイド相は、後述のように本シリサイドゲート電極の仕事関数を決定する上で重要である。すなわち、第一金属膜13の膜厚t1および第二金属膜14の膜厚t2の組合せにより本シリサイドゲート電極の仕事関数が決定される。我々の検討では、t1はポリシリコン膜5の膜厚の3/4以下に設定することが好ましい。なお、本実施形態では42nmのNi膜を堆積した。
【0081】
以上の第二金属膜14および第一金属膜13を堆積した後に、ゲート絶縁膜4上のポリシリコン膜5中に第二金属および第一金属を拡散させ、シリサイド化反応を起こさせるための熱処理を行った。この熱処理は、金属層(第二金属膜14および第一金属膜13)の酸化を防ぐため非酸化雰囲気中であることが求められると同時に、ゲート絶縁膜4上のポリシリコン膜5を全てシリサイド化するために十分な拡散速度が得られ、かつソース・ドレイン拡散層9に形成されているシリサイド層11が高抵抗にならない温度で行う必要がある。
【0082】
本実施形態では、ソース・ドレイン拡散層9に形成されているシリサイド層11と、ゲート電極上に形成するシリサイドがともにNiであることから、窒素ガス雰囲気中450℃5分とした。ソース・ドレイン拡散層9に形成されているシリサイドがCoシリサイドやTiシリサイドであれば、より高温領域、例えば800℃程度まで許容される。この熱処理により、NiおよびPtがポリシリコン膜5中に拡散して行きシリサイド化反応が起こり、ゲート絶縁膜4とPt含有NiSi電極18との接する部分までポリシリコン膜5のシリサイド化が起こった。X線回折(XRD)測定によると、本シリサイド中のNi/(Ni+Si)組成比は約0.5であった(NiSi相)。最後に、熱処理においてシリサイド化反応しなかった余剰のNi膜およびPt膜は硫酸過酸化水素水溶液または王水を用いてウェットエッチング除去した。
【0083】
なお、より詳細な検討により、第二金属膜14および第一金属膜13のポリシリコン膜5への導入方法は、図11(C)の方法に限らず、他の方法もあることがわかった。図6(A)〜(D)に、第二金属膜14および第一金属膜13のポリシリコン膜5への導入の他の方法を示す。図6(A)には図11(C)での方法を示した。一方で、図6(B)は図6(A)の第二金属膜14および第一金属膜13の順番を変えたものである。この方法によっても、第二金属はゲート絶縁膜4とPt含有NiSi電極18との接する部分で到達した。
【0084】
その他の手法としては、第一金属および第二金属が混合された第一金属および第二金属から構成される合金膜16を用いる方法ある。図6(C)に示したのは、ポリシリコン膜5上に合金膜16を堆積する手法、図6(D)に示したのは、ポリシリコン膜5上に合金膜16と第一金属膜13を積層する手法である。いずれの場合も、第二金属はゲート絶縁膜4との接する部分まで到達し、所望の特性を得ることができた。ただし、重要なのは、積層する第一金属膜13の膜厚でポリシリコン膜5の膜厚の3/4以下に設定することが好ましい。
【0085】
なお、上記の工程を通して、シリサイド電極の剥離はまったく観察されなかった。以上のような工程を経ることにより、図11(D)に示すような、Pt含有NiSi電極18を備えるMOSFET構造が形成された。
【0086】
ここで、図13に示すように、ゲート電極の第一金属を含む第一金属シリサイドの組成比を、NiSiからNiSiにすると、仕事関数が増加していくことがわかる。そのため、ゲート電極として、NiSiゲート電極19を用いることで、より低い閾値電圧の半導体装置1が実現される。そこで、P型MOSFET領域のPt含有NiSi電極18におけるNi組成を増加してPt含有NiSi電極19に変えるための工程を行う。
【0087】
まず、ハードマスク17を全体に堆積する。堆積には、CVD法などが好適である。ハードマスクの材料としては、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜、その他の絶縁膜など、後の工程で完全に除去可能な膜が好ましい。厚さは30nm以上、100nm以下程度が好ましい。
【0088】
次に、リソグラフィー技術およびRIE(Reactive Ion Etching)技術を用いて、ハードマスク17のパターニングを行い、P型MOSFET領域のみを開口する。そして、2層目の第一金属膜15を堆積する(図12(A))。堆積手法の代表的なものとしては、スパッタあるいは化学的気相成長法などが挙げられる。この時の、2層目の第一金属膜15としては、30nm以上、60nm以下程度のNi膜が適している。
【0089】
また、Ni膜の下部には、3nm以上、10nm以下程度のTi膜を設けても良い。このTi膜は、Ptを含有したNiSi上に形成されうる薄いシリコン酸化膜から酸素を奪い、2層目の第一金属膜15へのNiの拡散を容易にする役割を果たす。
【0090】
以上の2層目の第一金属膜15を堆積した後に、Pt含有NiSi電極18中に2層目の第一金属を拡散させ、シリサイド中のNi組成増加を起こさせるための熱処理を行った。この熱処理は、2層目の第一金属膜15の酸化を防ぐため非酸化雰囲気中であることが求められると同時に、ゲート絶縁膜4上のPt含有NiSi電極18のNi組成を十分高めるために十分な拡散速度が得られ、かつソース・ドレイン拡散層9に形成されているシリサイド層11が高抵抗にならない温度で行う必要がある。本実施形態では、ソース・ドレイン拡散層9に形成されているシリサイド層11と、ゲート電極上に形成するシリサイドがともにNiであることから、窒素ガス雰囲気中450℃5分とした。
【0091】
ただし、ソース・ドレイン拡散層9に形成されているシリサイドがCoシリサイドやTiシリサイドであれば、より高温領域、例えば800℃程度まで許容される。また、Ti膜の膜厚が5nm程度の場合は450℃の熱処理でよかったが、Ti膜の膜厚が10nm程度の場合は、500℃の熱処理が必要となった。この熱処理により、Pt含有NiSi電極18のNi組成増加がP型MOSFET領域のみに選択的に起こり、Pt含有NiSi電極19に改質した。
【0092】
X線回折(XRD)測定によると、本シリサイド中のNi/(Ni+Si)組成比は約0.75であった(NiSi相)。最後に、熱処理においてシリサイド化反応しなかった余剰のNi膜は硫酸過酸化水素水溶液を用いてウェットエッチング除去した(図12(B))。さらに、選択性のエッチング等を用い、ハードマスク17を除去し、図12(C)のように、N型MOSFETのゲート電極にはPt含有NiSi電極18、P型MOSFETのゲート電極にはPt含有NiSi電極19、とする相補型MOSFET構造が得られた。
【0093】
なお、本実施形態の半導体装置の製造方法は、シリコン基板2上に、ゲート絶縁膜4を介してポリシリコン層(ポリシリコン膜5)を形成する第一の工程と、ポリシリコン膜5をパターニングする第二の工程と、ポリシリコン膜5上に第一金属膜13を含む第一の金属層を形成し、第一の金属層を所定の温度で熱処理することにより、ゲート絶縁膜4とポリシリコン膜5との接する部分に、第一金属を含む第一金属シリサイドを含むゲート電極(NiSiまたはNiSi電極27)を形成する工程と、第一金属膜13を除去する工程と、ハードマスク17をパターンニングしてNiSiまたはNiSi電極27上の所望の領域を露出させ、NiSiまたはNiSi電極27上に第二金属膜14を含む第二の金属層を形成し、第二の金属層を所定の温度で熱処理することにより、ゲート絶縁膜4とNiSiまたはNiSi電極27との接する部分に、第二金属を含む第二金属シリサイドまたは第二金属を含むゲート電極(Pt含有NiSiまたはNiSi電極(図示せず))を形成する工程と、を含むこととしてもよい。
さらに、第二金属を含む第二金属シリサイドが、前記第二金属を含む第二金属シリサイド中のシリコンに対する第二金属の組成比が1より大きい金属リッチシリサイドであることが好ましい。
【0094】
以上のような工程で形成されたゲート電極にPtを含有したNiSi(元のPt膜厚が5nmの場合)を配したPt含有NiSi電極19を備えるMOSFET構造では、電極の仕事関数が4.92eVであり、P型MOSFETに適した特性が得られた。
【0095】
一方で、ゲート電極にPtを含有したNiSiを配したPt含有NiSi電極18を備えるN型MOSFET構造では、電極の仕事関数が4.62eVであり、ミッドギャップ前後の特性を必要とするダイナミック・ランダム・アクセス・メモリやスタティック・ランダム・アクセス・メモリ向けトランジスタに適した特性が得られた。また、一方で、Pt含有NiSi電極18とゲート絶縁膜4との接する部分にLa酸化物からなるキャップ膜や薄いAlの層を挿入することにより、仕事関数で4.12〜4.28eV相当となり、N型MOSFETに適した特性が得られた。
【0096】
なお、上記の工程を通して、シリサイド電極の剥離はまったく観察されなかった。以上より本実施形態で示したように、Ptを含有したNiSi電極とPtを含有したNiSi電極を作り分け、それらとHfSiONゲート絶縁膜を組み合わせることで優れた相補型MOSFET特性を得ることができる。以上より、製造コストを比較的低く抑えつつ、高性能で高信頼な相補型MOSFETを得ることができた。
【0097】
(第4の実施形態)
本発明にかかる第4の実施形態での最終的な構造は、図16(C)である。この構造においては、N型MOSFET領域にNiSiまたはNiSi電極27、P型MOSFET領域にPt含有NiSi電極19が形成されているのが特徴である。
【0098】
第4の実施形態の半導体装置は、Pチャネルトランジスタと、Nチャネルトランジスタと、を備える半導体装置であって、Pチャネルトランジスタが、たとえば第1の実施形態の半導体装置であり、Nチャネルトランジスタが、第一金属を含む第一金属シリサイドを含むゲート電極を有することを特徴とすることができる。さらに、Nチャネルトランジスタのゲート電極が、第二金属を含む第二金属シリサイドおよび第二金属を含まなくてもよい。
第4の実施形態の半導体装置の製造方法は、シリコン基板2上に、ゲート絶縁膜4を介してポリシリコン層(ポリシリコン膜5)を形成する第一の工程と、ポリシリコン膜5をパターニングする第二の工程と、ポリシリコン膜5上に第一金属膜13を含む第一の金属層を形成し、第一の金属層を所定の温度で熱処理することにより、ゲート絶縁膜4とポリシリコン膜5との接する部分に、第一金属を含む第一金属シリサイドを含むゲート電極(NiSiまたはNiSi電極27)を形成する工程と、第一金属膜13を除去する工程と、ハードマスク17をパターンニングしてNiSiまたはNiSi電極27上の所望の領域を露出させ、NiSiまたはNiSi電極27上に第二金属膜14および第一金属膜(2層目の第一金属膜15)をこの順に含む第二の金属層を形成し、第二の金属層を所定の温度で熱処理することにより、ゲート絶縁膜4とNiSiまたはNiSi電極27との接する部分に、第一金属を含む第一金属シリサイド、および第二金属を含む第二金属シリサイドまたは第二金属を含むゲート電極(Pt含有NiSi電極19)を形成する工程と、を含むことを特徴とする。
さらに、第二金属を含む第二金属シリサイドが、前記第二金属を含む第二金属シリサイド中のシリコンに対する第二金属の組成比が1より大きい金属リッチシリサイドであることが好ましい。
【0099】
図14(A)〜(E)、図15(A)〜(D)、および図16(A)〜(C)は本発明の第4の実施形態に関わるMOSFET構造の作製工程を示した断面図である。本実施形態は、層間絶縁膜形成後にこれを研磨することにより平坦化すると同時に、ゲート電極上部を露出させることが可能なCMP(Chemical Mechanical Polishing)技術を用いてMOSFETを作製する。
【0100】
まず図14(A)〜(E)から図15(A)〜(D)までの工程は、N型MOSFETおよびP型MOSFETの区別なく行う。そのうちで、図14(A)〜(E)から図15(A)〜(B)までの工程は、図4(A)〜(E)から図5(A)〜(B)とまったく同様で、本発明にかかる第1の実施形態で説明した通りの工程であり、図15(B)に示すように、CVD(Chemical Vapor Deposition)法によって形成したシリコン酸化膜の層間絶縁膜12をCMP技術によって平坦化し、さらに、層間絶縁膜12のエッチバックを行うことでゲート電極のポリシリコン膜5を露出させた。
【0101】
次に、図15(C)に示すように、ゲート電極形状のポリシリコン膜5とのシリサイドを形成させるために、第一金属膜13を堆積した。堆積手法の代表的なものとしては、スパッタあるいは化学的気相成長法などが挙げられる。この時の、第一金属としては、ポリシリコン膜5とシリサイドを形成可能な金属、例えば、Ni、Hf、V、Ti、Ta、W、Co、Cr、Zr、Mo、Nb、およびこれらの合金などから選択できるが、ソース・ドレイン拡散層9にすでに形成されているシリサイド層11の抵抗値がそれ以上高くならない温度でポリシリコン膜5を完全にシリサイド化できる金属が好適である。
【0102】
本実施形態では、第一金属としてNiを選択して検討を行った。Niは、ソース・ドレイン拡散層9にすでに形成されているシリサイド層11にも用いられている材料であり、ポリシリコン膜5とのシリサイドを形成する上で比較的容易に導入できる材料であるが、本発明の趣旨を逸しない範囲で他の材料を用いることも可能である。ソース・ドレイン拡散層9にNiモノシリサイド(NiSi)層が形成されている場合は、Niダイシリサイド(NiSi)化によりソース・ドレイン拡散層9と配線とのコンタクト抵抗が高くなることを防ぐためにその後のプロセス温度を500℃以下にする必要があり、本実施形態では500℃以下でシリサイド化が十分進行するNiを用いることにした。
【0103】
第一金属膜13の膜厚t1は従来から知られているように本シリサイドゲート電極のシリサイド相を決定する上で重要である。さらに、本シリサイドゲート電極のシリサイド相は、後述のように本シリサイドゲート電極の仕事関数を決定する上で重要である。我々の検討では、t1はポリシリコン膜5の膜厚の3/4以下に設定することが好ましい。なお、本実施形態では42nmのNi膜を堆積した。
【0104】
以上の第一金属膜13を堆積した後に、ゲート絶縁膜4上のポリシリコン膜5中に第一金属を拡散させ、シリサイド化反応を起こさせるための熱処理を行った。この熱処理は、第一金属膜13の酸化を防ぐため非酸化雰囲気中であることが求められると同時に、ゲート絶縁膜4上のポリシリコン膜5を全てシリサイド化するために十分な拡散速度が得られ、かつソース・ドレイン拡散層9に形成されているシリサイド層11が高抵抗にならない温度で行う必要がある。
【0105】
本実施形態では、ソース・ドレイン拡散層9に形成されているシリサイド層11と、ゲート電極上に形成するシリサイドがともにNiであることから、窒素ガス雰囲気中350℃以上で十分であり、ここでは400℃5分とした。ソース・ドレイン拡散層9に形成されているシリサイドがCoシリサイドやTiシリサイドであれば、より高温領域、例えば800℃程度まで許容される。この熱処理により、Niがポリシリコン膜5中に拡散して行きシリサイド化反応が起こり、ゲート絶縁膜4とNiSiまたはNiSi電極27との接する部分までポリシリコン膜5のシリサイド化が起こった。
【0106】
X線回折(XRD)測定によると、本シリサイド中のNi/(Ni+Si)組成比は約0.5であった(NiSi相)。最後に、熱処理においてシリサイド化反応しなかった余剰のNi膜は硫酸過酸化水素水溶液や王水を用いてウェットエッチング除去した。
【0107】
なお、上記の工程を通して、シリサイド電極の剥離はまったく観察されなかった。以上のような工程を経ることにより、図15(D)に示すような、NiSiまたはNiSi電極27を備えるMOSFET構造が形成された。
【0108】
次に、P型MOSFET領域のゲート電極のNi組成を増加してかつPtを導入し、Pt含有NiSi電極19に変えるための工程を行う。まず、ハードマスク17を全体に堆積する。堆積には、CVD法などが好適である。ハードマスクの材料としては、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜、その他の絶縁膜など、後の工程で完全に除去可能な膜が好ましい。厚さは30nm以上、100nm以下程度とすることができる。
【0109】
次に、リソグラフィー技術およびRIE(Reactive Ion Etching)技術を用いて、ハードマスク17のパターニングを行い、P型MOSFET領域のみを開口する。そして、第二金属膜14および2層目の第一金属膜15を堆積する(図16(A))。堆積手法の代表的なものとしては、スパッタあるいは化学的気相成長法などが挙げられる。この時の、第二金属膜14としては、1nm以上、30nm以下程度のPt膜が適している。また、2層目の第一金属膜15としては、30nm以上、60nm以下程度のNi膜が適している。
【0110】
以上の第二金属膜14および2層目の第一金属膜15を堆積した後に、NiSi中に第二金属および2層目の第一金属を拡散させ、シリサイド中のNi組成増加とPt導入を起こさせるための熱処理を行った。この熱処理は、第二金属膜14および2層目の第一金属膜15の酸化を防ぐため非酸化雰囲気中であることが求められると同時に、ゲート絶縁膜4上のNiSiまたはNiSi電極27のNi組成を十分高めるために十分な拡散速度が得られ、かつソース・ドレイン拡散層9に形成されているシリサイド層11が高抵抗にならない温度で行う必要がある。
【0111】
本実施形態では、ソース・ドレイン拡散層9上に形成されているシリサイド層11と、ゲート電極上に形成するシリサイドがともにNiであることから、窒素ガス雰囲気中450℃5分とした。ただし、ソース・ドレイン拡散層9に形成されているシリサイドがCoシリサイドやTiシリサイドであれば、より高温領域、例えば800℃程度まで許容される。この熱処理により、NiSiまたはNiSi電極27のNi組成増加とPt導入がP型MOSFET領域のみに選択的に起こり、Pt含有NiSiゲート電極19に改質した。X線回折(XRD)測定によると、本シリサイド中のNi/(Ni+Si)組成比は約0.75であった(NiSi相)。
【0112】
最後に、熱処理においてシリサイド化反応しなかった余剰のNi膜およびPt膜は硫酸過酸化水素水溶液や王水を用いてウェットエッチング除去した(図16(B))。さらに、選択性のエッチング等を用い、ハードマスク17を除去し、図16(C)のように、N型MOSFETのゲート電極にはNiSiまたはNiSi電極27、P型MOSFETのゲート電極にはPt含有NiSi電極19、とする相補型MOSFET構造が得られた。
【0113】
以上のような工程で形成されたPt含有NiSi電極19を備えるMOSFET構造では、電極の仕事関数が4.92eVであり、P型MOSFETに適した特性が得られた。一方で、NiSiまたはNiSi電極27を備えるMOSFET構造では、電極の仕事関数が4.5eVであり、ミッドギャップ前後の特性を必要とするダイナミック・ランダム・アクセス・メモリやスタティック・ランダム・アクセス・メモリ向けトランジスタに適した特性が得られた。
【0114】
また、一方で、NiSiまたはNiSi電極27とゲート絶縁膜4との接する部分にLa酸化物からなるキャップ膜や薄いAlの層を挿入することにより、仕事関数で4.0〜4.28eV相当となり、N型MOSFETに適した特性が得られた。なお、上記の工程を通して、シリサイド電極の剥離はまったく観察されなかった。以上より本実施形態で示したように、NiSi電極とPtを含有したNiSi電極を作り分け、それらとHfSiONゲート絶縁膜を組み合わせることで優れた相補型MOSFET特性を得ることができる。以上より、製造コストを比較的低く抑えつつ、高性能で高信頼な相補型MOSFETを得ることができた。
【0115】
以上の、第1、第2、第3および第4の実施形態の半導体装置を用いることにより、シリサイドをベースとしたゲート電極を用いることでゲート電極の空乏化を回避できるだけでなく、シリサイドの形成条件(温度および組成)を制御することによりこれまで困難とされていた高誘電率ゲート絶縁膜上における電極の仕事関数制御幅を拡大することが可能となり、同一チップ上での各デバイスに適した閾値電圧を提供することが可能になる。また、Niなどの低温サリサイドプロセスが可能な金属を選択すると、ソース・ドレイン拡散領域のコンタクトシリサイド層の高抵抗化を抑制できる。また、本発明による作製方法によれば、ゲート絶縁膜上にpoly−Si電極を形成した後に、再度これを除去する工程がないために、ゲート絶縁膜表面がウェットエチング液や有機溶剤に数度にわたり晒されることがない。このため、信頼性に優れたメタルゲート/高誘電率ゲート絶縁膜CMOSトランジスタを作製することが可能である。
【0116】
以上、実施形態を説明したが、本発明において明らかにされた半導体装置の概念は、本明細書において明らかにされた上述の実施形態の範囲にとどまらず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、材料及び構造を選択して実施することが可能である。
【0117】
例えば、ゲート電極に用いるシリサイド化可能な2種類の金属元素の組み合わせは、NiとPtに限定されるものではなく、所望の効果を得るための組み合わせであれば他の組み合わせも可能である。特に、NiとPtの組み合わせは、P型MOSFETの性能向上のために用いることが可能であるが、他の組み合わせも考えうる。また、他方のN型MOSFETの性能向上のために、他の金属の組み合わせを用いて、NiとPtの組み合わせの場合と同様の効果を発現させることも可能である。
【0118】
さらに、シリサイド化可能な2種類の金属元素以外の第三金属を含めることにより、N型MOSFETまたはP型MOSFETあるいはそれら両者のゲート電極にシリサイド化可能な2種類の金属元素以外の仕事関数を発現させることも可能である。例えば、N型MOSFETにのみPt含有Niシリサイドゲート電極中にAlを含めることにより、N型MOSFETのゲート電極にのみ低い仕事関数(〜4.28eV)を発現させ、最適な特性を得ることも可能である。
【0119】
さらに、ゲート電極をシリサイド化するための金属元素と、ソース・ドレイン拡散層のシリサイド化に用いる金属元素の組合せは、ソース・ドレイン拡散層のシリサイドの変質が起こらない温度範囲でゲートpoly−Siのシリサイド化を行えるという条件が満たされる必要がある。低温でのシリサイド化が困難な金属でも長時間の熱処理を行うことでシリサイド化が可能であるというように、それぞれのシリサイド金属元素の組合せに応じて熱処理温度や時間等の条件を調整して、所望の効果を得ることが可能となる。また、例えばゲート上のpoly−SiをアモルファスSiに置き換える、シリサイド化する金属の成膜温度を調整する等の工夫で、シリサイド化温度を所望の効果を得るために最適化することが可能であり、これらの技術を必要に応じて併用することで、好適な組合せを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】本発明にかかる本実施形態による半導体装置の構造を示す断面図である。
【図2】(A)本発明にかかる本実施形態による半導体装置において大きな仕事関数が実現できる理由を模式的に示した図である。 (B)本発明にかかる本実施形態による半導体装置において、Ptがより金属的な状態で存在することを示す、X線光電子分光による測定結果である。
【図3】本発明にかかる第1の実施形態による半導体装置の構造を示す断面図である。
【図4】本発明にかかる第1の実施形態による半導体装置の製造工程についての一部を示した断面図である。
【図5】本発明にかかる第1の実施形態による半導体装置の製造工程についての一部を示した断面図である。
【図6】本発明にかかる第1の実施形態による半導体装置の製造工程についての一部の変形を示した断面図である。
【図7】本発明にかかる第1の実施形態に沿って作製したPt添加Niシリサイド電極のPt添加組成に対する仕事関数を示したものである。
【図8】本発明にかかる第2の実施形態による半導体装置の製造工程についての一部を示した断面図である。
【図9】本発明にかかる第2の実施形態による半導体装置の製造工程についての一部を示した断面図である。
【図10】本発明にかかる第3の実施形態による半導体装置の製造工程についての一部を示した断面図である。
【図11】本発明にかかる第3の実施形態による半導体装置の製造工程についての一部を示した断面図である。
【図12】本発明にかかる第3の実施形態による半導体装置の製造工程についての一部を示した断面図である。
【図13】本発明にかかる第3の実施形態に沿って作製したPt添加Niシリサイド電極のPt添加組成に対する仕事関数をNiシリサイド電極のNi組成を変化させて比較したものである。
【図14】本発明にかかる第4の実施形態による半導体装置の製造工程についての一部を示した断面図である。
【図15】本発明にかかる第4の実施形態による半導体装置の製造工程についての一部を示した断面図である。
【図16】本発明にかかる第4の実施形態による半導体装置の製造工程についての一部を示した断面図である。
【図17】本発明にかかる従来例の半導体装置の構造を示す断面図である。
【図18】本発明にかかる従来例の半導体装置の構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0121】
1 半導体装置
2 シリコン基板
3 素子分離領域
4 ゲート絶縁膜
5 ポリシリコン膜
6 シリコン酸化膜
7 エクステンション拡散層領域
8 ゲート側壁
9 ソース・ドレイン拡散層
10 金属膜
11 シリサイド層
12 層間絶縁膜
13 第一金属膜
14 第二金属膜
15 2層目の第一金属膜
16 合金膜
17 ハードマスク
18 Pt含有NiSi電極
19 Pt含有NiSi電極
20 SiO
21 HfSiON
22 HfO
23 Ta電極
24 Ru電極
25 PドープNiSi電極
26 BドープNiSi電極
27 NiSiまたはNiSi電極
28 NiSi電極
29 Alを含有したNiSi電極
30 NiPtSi電極
100 半導体装置
101 シリコン基板
102 素子分離領域
103 ゲート絶縁膜
104 ゲート電極
105 シリコン原子
106 第一金属原子
107 第二金属原子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に設けられたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に設けられたゲート電極を備え、
前記ゲート電極が、前記ゲート絶縁膜と前記ゲート電極との接する部分に、第一金属を含む第一金属シリサイド、および第二金属を含む第二金属シリサイドまたは第二金属を含み、
前記第二金属を含む第二金属シリサイドが、前記第二金属を含む第二金属シリサイド中のシリコンに対する第二金属の組成比が1より大きい金属リッチシリサイドであることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記金属リッチシリサイドは、前記シリコンに対する第二金属の組成比が3以上であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
ソース・ドレイン領域およびエクステンション領域をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記ゲート絶縁膜が、金属酸化物、金属シリケート、および前記金属酸化物または前記金属シリケートに窒素が導入された高誘電率絶縁膜から選択されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項5】
前記高誘電率絶縁膜が、HfまたはZrを含むことを特徴とする請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記高誘電率絶縁膜が、シリコン酸化膜またはシリコン酸窒化膜、およびHfもしくはZrを含む層を含むことを特徴とする請求項4または5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記高誘電率絶縁膜が、HfSiONを含むことを特徴とする請求項4から6のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項8】
前記高誘電率絶縁膜の上部もしくは下部に、キャップ絶縁膜が形成されていることを特徴とする請求項4から7のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項9】
前記キャップ絶縁膜が、Al、La、およびMgから選択される金属を含有する金属酸化物であることを特徴とする請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記ゲート電極中の前記第二金属を含む第二金属シリサイドまたは前記第二金属の濃度が、前記ゲート電極の表面から前記ゲート電極と前記ゲート絶縁膜との接する部分に向かって、高くなることを特徴とする、請求項1から9のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項11】
前記ゲート電極を備えるトランジスタであって、
前記ゲート電極中の前記第一金属を含む第一金属シリサイドと、前記第二金属を含む第二金属シリサイドおよび前記第二金属との組成比が異なる、2つの前記トランジスタを有する請求項1から10のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項12】
前記第一金属を含む第一金属シリサイドのシリコン濃度が、前記第二金属を含む第二金属シリサイドのシリコンの濃度より高いことを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項13】
前記第一金属が、前記第二金属よりシリサイド化しやすいことを特徴とする請求項1から12のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項14】
前記第二金属が前記第一金属より大きな仕事関数を有していることを特徴とする請求項1から13のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項15】
前記第一金属が、Ni、Hf、V、Ti、Ta、W、Co、Cr、Zr、Mo、Nb、およびこれらの合金から選択されることを特徴とする請求項1から14のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項16】
前記第二金属が、Ptであることを特徴とする請求項1から15のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項17】
前記第二金属を含む第二金属シリサイドが、PtSiであることを特徴とする請求項16に記載の半導体装置。
【請求項18】
前記半導体装置が、PチャネルトランジスタまたはNチャネルトランジスタであることを特徴とする請求項1から17のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項19】
Pチャネルトランジスタと、
Nチャネルトランジスタと、を備える半導体装置において、
前記Pチャネルトランジスタが、請求項1から17のいずれかに記載の半導体装置であり、
前記Nチャネルトランジスタが、前記第一金属を含む第一金属シリサイドを含むゲート電極を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項20】
前記Pチャネルトランジスタと、
前記Nチャネルトランジスタと、を備え、
前記Nチャネルトランジスタの前記第一金属を含む第一金属シリサイドのシリコンに対する第一金属の組成比が、前記Pチャネルトランジスタの前記第一金属を含む第一金属シリサイドの前記シリコンに対する第一金属の組成比より低いことを特徴とする請求項18に記載の半導体装置。
【請求項21】
前記Nチャネルトランジスタが、ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリのセルトランジスタであることを特徴とする請求項19および20のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項22】
基板上に、ゲート絶縁膜を介してポリシリコン層を形成する第一の工程と、
前記ポリシリコン層をパターニングする第二の工程と、
前記ポリシリコン層上に第一金属膜および第二金属膜を含む金属層を形成し、
前記金属層を所定の温度で熱処理することにより、前記ゲート絶縁膜と前記ポリシリコン層との接する部分に、第一金属を含む第一金属シリサイド、および第二金属を含む第二金属シリサイドまたは第二金属を含むゲート電極を形成する第三の工程と、を含み、
前記第二金属を含む第二金属シリサイドが、前記第二金属を含む第二金属シリサイド中のシリコンに対する第二金属の組成比が1より大きい金属リッチシリサイドであることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項23】
前記第三の工程において、前記金属層は、前記第二金属膜、および前記第一金属膜がこの順に積層されることを特徴とする請求項22記載の半導体装置の製造方法。
【請求項24】
前記第三の工程において、前記金属層は、前記第一金属膜、前記第二金属膜、および前記第一金属膜がこの順に積層されることを特徴とする請求項22記載の半導体装置の製造方法。
【請求項25】
前記第三の工程において、前記金属層は、前記第一金属膜および前記第二金属膜がこの順に積層されることを特徴とする請求項22記載の半導体装置の製造方法。
【請求項26】
前記第三の工程において、前記金属層は、前記第一金属および前記第二金属から構成される合金膜であることを特徴とする請求項22記載の半導体装置の製造方法。
【請求項27】
前記第三の工程において、前記金属層は、前記合金膜および前記第一金属がこの順に積層されることを特徴とする請求項22記載の半導体装置の製造方法。
【請求項28】
前記第三の工程の後さらに、前記第一金属膜および前記第二金属膜を除去する工程と、
ハードマスクをパターンニングして前記ゲート電極上の所望の領域を露出させ、前記ゲート電極上に前記第一金属膜を含む前記金属層を形成し、
前記金属層を所定の温度で熱処理することにより、前記ゲート絶縁膜と前記ゲート電極との接する部分に、第一金属を含む第一金属シリサイドを含むゲート電極を形成する工程と、を含むことを特徴とする請求項22から27のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項29】
基板上に、ゲート絶縁膜を介してポリシリコン層を形成する第一の工程と、
前記ポリシリコン層をパターニングする第二の工程と、
前記ポリシリコン層上に第一金属膜を含む第一の金属層を形成し、
前記第一の金属層を所定の温度で熱処理することにより、前記ゲート絶縁膜と前記ポリシリコン層との接する部分に第一金属を含む第一金属シリサイドを含むゲート電極を形成する工程と、
前記第一金属膜を除去する工程と、
ハードマスクをパターンニングして前記ゲート電極上の所望の領域を露出させ、前記ゲート電極上に第二金属膜を含む第二の金属層を形成し、
前記第二の金属層を所定の温度で熱処理することにより、前記ゲート絶縁膜と前記ゲート電極との接する部分に、第二金属を含む第二金属シリサイドまたは第二金属を含むゲート電極を形成する工程と、を含み、
前記第二金属を含む第二金属シリサイドが、前記第二金属を含む第二金属シリサイド中のシリコンに対する第二金属の組成比が1より大きい金属リッチシリサイドであることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項30】
基板上に、ゲート絶縁膜を介してポリシリコン層を形成する第一の工程と、
前記ポリシリコン層をパターニングする第二の工程と、
前記ポリシリコン層上に第一金属膜を含む第一の金属層を形成し、
前記第一の金属層を所定の温度で熱処理することにより、前記ゲート絶縁膜と前記ポリシリコン層との接する部分に、第一金属を含む第一金属シリサイドを含むゲート電極を形成する工程と、
前記第一金属膜を除去する工程と、
ハードマスクをパターンニングして前記ゲート電極上の所望の領域を露出させ、前記ゲート電極上に第二金属膜および前記第一金属膜をこの順に含む第二の金属層を形成し、
前記第二の金属層を所定の温度で熱処理することにより、前記ゲート絶縁膜と前記ゲート電極との接する部分に、第一金属を含む第一金属シリサイド、および第二金属を含む第二金属シリサイドまたは第二金属を含むゲート電極を形成する工程と、を含み、
前記第二金属を含む第二金属シリサイドが、前記第二金属を含む第二金属シリサイド中のシリコンに対する第二金属の組成比が1より大きい金属リッチシリサイドであることを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−87391(P2010−87391A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−257038(P2008−257038)
【出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】