説明

導電性インキ組成物、反射部材、回路基板、電子装置

【課題】 塗布対象物との密着性が、従来よりも改善された導電性インキ組成物を提供する。また、金属の粒成長を抑制し、表面平滑性に優れた膜を形成することができる導電性インキ組成物を提供する。
【解決手段】 少なくとも貴金属を含む合金からなる金属微粒子の表面を、少なくとも二種の有機化合物からなる保護コロイドで被覆されてなる固形物を有機溶媒に分散させて導電性インキ組成物とする。上記保護コロイドには、例えば、(A)アミン類と、(B)カルボン酸とを含む原料から得られる保護コロイドを使用する。上記導電性インキ組成物を塗布、焼成することで、粒成長が抑制され、表面平滑性に優れ、塗布対象物との密着性が従来よりも改善された金属膜を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属微粒子を用いた導電性インキ組成物、反射部材、回路基板、電子装置に関するものであり、より詳しくは、金属の粒成長を抑制することができる導電性インキ組成物、並びに、該導電性インキ組成物を乾燥または熱処理してなる反射部材、および上記導電性インキ組成物を乾燥または熱処理してなる、配線、電極、反射部材等の金属層を有する回路基板、並びに、該回路基板を備えた、表示装置等の電子装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子装置の一つである液晶表示装置等の表示装置は、パーソナルコンピュータ、携帯電話、ディジタルスチルカメラ、液晶テレビ等、種々の分野において用いられている。
【0003】
これら表示装置等の電子装置は、例えば、TFT(薄膜トランジスタ)、配線等を多数有するTFTアレイ基板等の回路基板を備えている。
【0004】
このような回路基板は、一般的に、CVD(化学蒸着)やスパッタリング等の気相堆積法により成膜した薄膜のうち、不要な部分をフォトリソグラフィ等により除去(エッチング)するといったプロセスを複数回繰り返すことにより形成される。
【0005】
しかしながら、このような従来の製造方法は、成膜とエッチングとを繰り返し行うため、原料の使用効率が悪く、また、エッチング溶液等の廃棄物が多く発生し、処理コストが嵩むと共に、製造時間が長くかかるといった問題点や、各成膜工程に使用される成膜装置およびエッチング装置等の加工装置等、多くの真空装置を必要とすることから、例えばTFTアレイ基板等、近年さらなる大型化が要望されている回路基板の製造に、莫大な設備費が必要となるといった問題点を有している。
【0006】
そこで、近年、導電性微粒子を含有する液体材料を所望の領域に吐出することにより、被吐出物を含む所望のパターンを形成するいわゆるインクジェット法(液滴吐出法)により上記回路基板における配線等を形成する技術が提案されている。
【0007】
例えば、特許文献1には、金、銀、銅、パラジウム、ニッケルの何れかを含有する金属微粒子を含有する液体材料の一例として、粒径0.01μm程度の銀の微粒子を有機溶媒に分散させてなるペーストを用いてインクジェット法により配線を形成することが開示されている。
【特許文献1】特開2003−318192号公報(2003年11月7日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般的に、回路基板、例えば液晶表示装置に用いられるTFTアレイ基板を形成する場合、配線に求められる性能としては、抵抗が低く、平滑な表面性を有し、ガラス等の下地材料との密着性が良いことが挙げられる。
【0009】
しかしながら、一般的に、貴金属は安定であるため、塗布対象物、例えば基板との反応性が低く、このため、基板との密着性に乏しい。従来、インクジェット用のインク(インキ)としては、上記したように、粒径0.01μm程度の銀の微粒子を有機溶媒に分散させてなる、いわゆる銀インクが一般的に多用されているが、このように銀を薄膜として用いるためには、ガラス基板や絶縁材料の塗布面等の下地材料(塗布対象物)に対する密着性が要求される。スパッタ等では飛来粒子の打ち込み効果が貴金属(この場合は銀)と基板との密着性を向上させる要因となるが、前記したように銀粒子を用いたペーストを、例えばインクジェット方式により印刷するか、あるいは塗布する場合、成膜過程での基板への銀の打ち込み効果等は期待できず、上記ガラス基板等の下地材料との密着性が弱くなる。また、銀粒子に拘らず、上記金属微粒子が、貴金属のように他の物質との反応性、密着性が低い場合には、なおさら、基板から剥がれ易くなり、テープ剥離試験で簡単に剥がれてしまうという問題が生じる。
【0010】
しかも、銀をガラス基板上に成膜する場合、焼成温度が250℃程度から粒成長が顕著となり、そのために平滑な表面が荒れ、表面白濁が生じる等、高温焼成時の表面性に劣り、得られた金属膜は、そのままでは配線として使用することは困難であった。
【0011】
そこで、アニールを行うことによって、密着性(付着力)の改善を図ることも考えられるが、前記したように銀粒子を用いた場合に見られるように、前記貴金属の粒成長特性によって、膜表面が荒れ、表面平滑性が劣化するという問題が生じる。
【0012】
このように貴金属の粒成長により膜表面の平滑性が劣化すると、この荒れた膜表面により、種々の問題を招来する。例えば図28に示すように下部配線201を例えば上記インキを用いて形成した場合、配線同士が重畳する部分(配線のクロス部)に見られるように、下部配線201の表面平滑性が悪いと、該下部配線201上に形成される絶縁層202に凹凸による短絡、すなわち、膜切れ等の欠陥Lが生じるおそれがあり、該絶縁層202を介して形成された上部配線203とのリーク(上下配線における上下リーク)の原因となる。例えば、上記回路基板としてTFTアレイ基板を形成する場合、TFT部、ゲート電極部には、ゲート絶縁層を挟んでアモルファスシリコン(a−Si)層(約500Å=約50nm)が形成されており、下部配線201としてのゲート電極の表面荒れによって、TFT特性の劣化や、絶縁層202としてのゲート絶縁層の膜切れを招く。同様に、補助容量電極においても、絶縁層202の膜切れや上下リークを招くために、コンデンサとして機能しないことがある。
【0013】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、銀インクのように、金属微粒子として銀単体を使用した従来の導電性インキと比較して、金属の粒成長を抑制することができる導電性インキ組成物、並びに、該導電性インキ組成物を用いてなる反射部材および回路基板並びに電子装置を提供することにある。また、本発明のさらなる目的は、塗布対象物との密着性が、例えば銀インクのように、金属微粒子として貴金属を単体で用いた従来の導電性インキよりも改善された導電性インキ組成物、並びに、該導電性インキ組成物を用いてなる反射部材および回路基板並びに電子装置を提供することにある。また、本発明のさらなる別の目的は、金属の粒成長を抑制し、表面平滑性に優れた膜を形成することができる導電性インキ組成物、並びに、金属の粒成長が抑制され、表面平滑性に優れた金属層を有する回路基板並びに電子装置、反射部材を提供することにある。また、本発明のさらなる別の目的は、金属の粒成長が抑制され、反射効率に優れた膜を形成することができる導電性インキ組成物、並びに、金属の粒成長が抑制され、反射効率に優れた金属層を有する回路基板並びに電子装置、反射部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願発明者等は、上記従来の問題点を解決すべく鋭意検討した結果、貴金属に、貴金属以外の金属を添加して最終的に合金にすることで、貴金属の性質を抑制した上で、さらに、部分的に貴金属が多く存在するであろう部分から生じる金属の粒成長を、保護コロイドによって抑制することができることを見出した。また、本願発明者等は、少なくとも二種の有機化合物からなる保護コロイドを用いることにより、金属の粒成長の抑制効果が高く、塗布対象物との密着性や、膜表面の平滑性、反射効率を、従来よりも向上させることができることを見出した。そして、本願発明者等は、さらに鋭意検討した結果、導電性インキ組成物の保護コロイドをさらに工夫することにより、添加金属の含有量が少ない領域、さらには、金属微粒子として貴金属を単体で用いた場合でも、従来よりも金属の粒成長を抑制することができ、密着性、膜表面の平滑性、反射効率を向上させることができることを見出した。
【0015】
すなわち、本発明にかかる導電性インキ組成物は、上記課題を解決するために、少なくとも貴金属を含む合金からなる金属微粒子の表面が、少なくとも二種の有機化合物からなる保護コロイドで被覆されてなる固形物を含むことを特徴としている。
【0016】
また、本発明にかかる導電性インキ組成物は、上記課題を解決するために、少なくとも一種が貴金属である複数種の金属からなる金属微粒子と、該金属微粒子を包囲した少なくとも二種の有機化合物からなる保護コロイドとからなる固形物であり、有機溶媒に分散可能であることを特徴としている。
【0017】
これら導電性インキ組成物は、上記固形物における金属微粒子の割合が60質量%以上、95質量%以下の範囲内であり、保護コロイドの割合が5質量%以上、40質量%以下の範囲内(但し、両者の合計は100質量%)であることが好ましい。
【0018】
また、本発明にかかる導電性インキ組成物は、上記課題を解決するために、少なくとも一種が貴金属である複数種の金属からなる金属微粒子と、該金属微粒子を包囲した少なくとも二種の有機化合物からなる保護コロイドと、有機溶媒とを含む液状物であることを特徴としている。
【0019】
上記導電性インキ組成物は、上記金属微粒子、保護コロイド、および有機溶媒を、金属微粒子が15質量%以上、95質量%以下の範囲内、保護コロイドが1質量%以上、50質量%以下の範囲内、有機溶媒が1質量%以上、60質量%以下の範囲内(但し、これらの合計は100質量%)の割合で含むことが好ましい。
【0020】
上記の各構成によれば、上記導電性インキ組成物が、少なくとも一種が貴金属である複数種の金属からなる金属微粒子、例えば、少なくとも貴金属を含む合金からなる金属微粒子の表面が少なくとも二種の有機化合物からなる保護コロイドで被覆されてなる固形物を含むことで、銀インクのように、金属微粒子として銀単体を使用した従来の導電性インキと比較して、金属の粒成長を抑制し、表面平滑性に優れ、塗布対象物との密着性や反射効率が従来よりも改善された金属層(金属膜)を形成することができるという効果を奏する。
【0021】
また、上記金属微粒子は、上記貴金属以外の金属として、標準酸化還元電位が−0.45〜+1.5V/NHEの範囲内の金属を含むことが好ましい。
【0022】
また、上記金属微粒子は、上記貴金属以外の金属として、鉄、コバルト、ニッケル、銅、カドミウム、インジウム、錫、タリウム、鉛、モリブデンおよびビスマスからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属を含むことが好ましい。
【0023】
特に、上記金属微粒子は、銀とインジウムとからなることが好ましい。
【0024】
上記の各構成によれば、上記導電性インキ組成物を、回路基板における配線材料および/または電極材料として用いることで、上記金属微粒子として銀単体を使用した場合と比較して、金属の粒成長を抑制し、ガラス基板等の絶縁性基板(下地材料)との密着性を向上させることができる。よって、上記の各構成によれば、低抵抗の金属層、特に、低抵抗の配線および/または低抵抗の電極を形成することができるという効果を奏する。また、上記導電性インキ組成物は、金属の粒成長が抑制される結果、該導電性インキ組成物を用いてなる反射部材の反射効率を従来よりも改善することができる。よって、上記の各構成によれば、表面平滑性、塗布対象物との密着性、反射効率が従来よりも改善された反射部材を形成することができる導電性インキ組成物を提供することができるという効果を奏する。上記金属層は、反射電極等に特に好適に用いることができる。
【0025】
また、上記保護コロイドは、(A)アミン類と、(B)カルボン酸とを含む原料から得られる化合物および/または混合物であることが好ましく、上記(B)カルボン酸は、(I)炭素数4〜9のカルボン酸から選ばれる少なくとも一種のカルボン酸と、(II)炭素数10〜30のカルボン酸から選ばれる少なくとも一種のカルボン酸との混合物であり、かつ、(B)カルボン酸の平均炭素数は5〜25であることがより好ましい。
【0026】
さらに、上記(A)アミン類は、炭素数5〜20のアルキルアミンであることが好ましい。
【0027】
より具体的には、例えば、上記保護コロイドは、オクタデカジエン酸、ヘキサン酸、およびオクチルアミンからなることが好ましい。また、上記保護コロイドは、例えば、ナフテン酸、ヘキサン酸、およびオクチルアミンからなることが好ましい。
【0028】
さらに、上記保護コロイドは、アルキルアミンを40モル%以上、79モル%以下の範囲内、(I)炭素数4〜9のカルボン酸から選ばれる少なくとも一種のカルボン酸を2モル%以上、40モル%以下の範囲内、(II)炭素数10〜30のカルボン酸から選ばれる少なくとも一種のカルボン酸を1モル%以上、20モル%以下の範囲内(但し、これらの合計は100質量%)で含む原料から得られる化合物および/または混合物であることが好ましい。
【0029】
上記保護コロイドは、粒成長の抑制効果が非常に高く、本発明にかかる上記導電性インキ組成物からなる膜において部分的に貴金属が多く存在するであろう部分から生じる、金属の粒成長を、顕著に抑制することができる。このため、上記の構成によれば、表面平滑性に極めて優れ、ガラス基板等の絶縁性基板(下地材料)との密着性や反射効率が高い金属層(金属膜)を作成することができるという効果を奏する。
【0030】
また、本発明にかかる導電性インキ組成物は、上記課題を解決するために、貴金属からなる金属微粒子が保護コロイドで被覆されてなる固形物を含み、上記保護コロイドが、(A)アミン類と、(B)カルボン酸とからなり、上記(B)カルボン酸が、(I)炭素数4〜9のカルボン酸から選ばれる少なくとも一種のカルボン酸と、(II)炭素数10〜30のカルボン酸から選ばれる少なくとも一種のカルボン酸との混合物であり、かつ、(B)カルボン酸の平均炭素数は5〜25であることを特徴としている。
【0031】
また、本発明にかかる導電性インキ組成物は、上記課題を解決するために、貴金属からなる金属微粒子が、(A)アミン類と、(B)カルボン酸とからなる保護コロイドで被覆されてなる固形物であり、有機溶媒に分散可能であって、上記(B)カルボン酸が、(I)炭素数4〜9のカルボン酸から選ばれる少なくとも一種のカルボン酸と、(II)炭素数10〜30のカルボン酸から選ばれる少なくとも一種のカルボン酸との混合物であり、かつ、(B)カルボン酸の平均炭素数は5〜25であることを特徴としている。
【0032】
これら導電性インキ組成物においても、上記固形物における金属微粒子の割合は、60質量%以上、95質量%以下の範囲内であり、保護コロイドの割合が5質量%以上、40質量%以下の範囲内(但し、両者の合計は100質量%)であることが好ましい。
【0033】
また、本発明にかかる導電性インキ組成物は、上記課題を解決するために、貴金属からなる金属微粒子と、該金属微粒子を包囲した保護コロイドと、有機溶媒とを含む液状物であり、上記保護コロイドが、(A)アミン類と、(B)カルボン酸とからなり、上記(B)カルボン酸が、(I)炭素数4〜9のカルボン酸から選ばれる少なくとも一種のカルボン酸と、(II)炭素数10〜30のカルボン酸から選ばれる少なくとも一種のカルボン酸との混合物であり、かつ、(B)カルボン酸の平均炭素数は5〜25であることを特徴としている。
【0034】
このように上記導電性インキ組成物が、金属微粒子と保護コロイドと有機溶媒とを含む液状物である場合、上記導電性インキ組成物は、上記金属微粒子、保護コロイド、および有機溶媒を、金属微粒子が15質量%以上、95質量%以下の範囲内、保護コロイドが1質量%以上、50質量%以下の範囲内、有機溶媒が1質量%以上、60質量%以下の範囲内(但し、これらの合計は100質量%)の割合で含むことが好ましい。
【0035】
また、このように貴金属を、単体で金属微粒子として用いた導電性インキ組成物においても、上記アミン類は、炭素数5〜20のアルキルアミンであることが好ましい。
【0036】
また、上記保護コロイドは、オクタデカジエン酸、ヘキサン酸、およびオクチルアミンからなることが好ましい。また、上記保護コロイドは、例えば、ナフテン酸、ヘキサン酸、およびオクチルアミンからなることが好ましい。
【0037】
さらに、上記保護コロイドは、アルキルアミンを40モル%以上、79モル%以下の範囲内、(I)炭素数4〜9のカルボン酸から選ばれる少なくとも一種のカルボン酸を2モル%以上、40モル%以下の範囲内、(II)炭素数10〜30のカルボン酸から選ばれる少なくとも一種のカルボン酸を1モル%以上、20モル%以下の範囲内(但し、これらの合計は100質量%)で含む原料から得られる化合物および/または混合物であることが好ましい。
【0038】
上記保護コロイドは、粒成長の抑制効果が非常に高く、本発明にかかる上記導電性インキ組成物において上記金属微粒子として貴金属を単体で使用した場合であっても、金属微粒子として貴金属を有機溶媒に分散してなる、いわゆる銀インクのような従来の導電性インキと比較して、金属の粒成長を抑制し、表面平滑性に優れ、塗布対象物との密着性が従来よりも改善された金属層(金属膜)を形成することができるという効果を奏する。よって、上記の各構成によれば、低抵抗の金属層、特に、低抵抗の配線および/または電極を形成することができる導電性インキ組成物を提供することができるという効果を奏する。また、上記導電性インキ組成物は、金属の粒成長が抑制される結果、反射効率に優れた金属層を形成することができる。よって、上記の各構成によれば、表面平滑性、塗布対象物との密着性、反射効率に優れた反射部材を形成することができる導電性インキ組成物を提供することができるという効果を奏する。上記金属層は、反射電極等に特に好適に用いることができる。
【0039】
また、上記有機溶媒は、炭素数10〜35の炭化水素類であることが好ましい。そのなかでも、上記有機溶媒は、側鎖を有する炭素数16〜30の脂肪族炭化水素類であることが好ましい。
【0040】
上記有機溶媒は、入手が容易であると共に、上記保護コロイドで被覆された金属微粒子の分散安定性が良く、また、沸点が低いことから、乾燥または熱処理(例えば焼成)により、容易に除去することができるという効果を奏する。
【0041】
また、本発明にかかる反射部材は、上記課題を解決するために、本発明にかかる上記導電性インキ組成物を乾燥または熱処理(例えば焼成)してなることを特徴としている。
【0042】
また、本発明にかかる回路基板は、上記課題を解決するために、本発明にかかる上記導電性インキ組成物を乾燥または熱処理(例えば焼成)してなる金属層を有することを特徴としている。
【0043】
上記金属層としては、配線、電極、および反射部材から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0044】
さらに、本発明にかかる電子装置は、上記課題を解決するために、本発明にかかる上記回路基板を備えたことを特徴としている。
【0045】
上記配線や電極、反射部材等の金属層は、本発明にかかる上記導電性インキ組成物を乾燥または熱処理(例えば焼成)してなることから、いわゆる銀インクのような従来の導電性インキを用いた配線や電極、反射部材等の金属層と比較して、金属の粒成長が抑制され、表面平滑性に優れ、塗布対象物との密着性に優れている。しかも、上記導電性インキ組成物を乾燥または熱処理してなる金属層は、上記したように、従来の導電性インキを用いてなる金属層よりも金属の粒成長が抑制され、表面平滑性、塗布対象物との密着性に優れることから、上記従来の導電性インキを用いてなる金属層よりも低抵抗で、また、反射効率にも優れている。よって、上記の各構成によれば、金属の粒成長が抑制され、表面平滑性に優れ、塗布対象物との密着性が従来よりも改善された金属層を有する、信頼性の高い、反射部材、回路基板、並びに電子装置を提供することができるという効果を奏する。
【発明の効果】
【0046】
本発明にかかる導電性インキ組成物は、以上のように、少なくとも一種が貴金属である複数種の金属からなる金属微粒子、例えば、少なくとも貴金属を含む合金からなる金属微粒子の表面が、少なくとも二種の有機化合物からなる保護コロイドで被覆されてなる固形物を含むことで、銀インクのように金属微粒子として貴金属を単体で使用した従来の導電性インキを使用した場合と比較して、金属の粒成長を抑制し、表面平滑性に優れ、塗布対象物との密着性や反射効率が従来よりも改善された膜(金属膜)を形成することができるという効果を奏する。上記導電性インキ組成物は、少なくとも一種が貴金属である複数種の金属からなる金属微粒子と、該金属微粒子を包囲した少なくとも二種の有機化合物からなる保護コロイドとからなる固形物であってもよい。該固形物は、上記金属微粒子が保護コロイドで包囲(被覆)されていることで、有機溶媒に分散可能であり、有機溶媒に分散させて用いることができる。また、上記導電性インキ組成物は、それ自身、有機溶媒を含む液状物であってもよい。つまり、上記導電性インキ組成物は、上記金属微粒子と、該金属微粒子を包囲した少なくとも二種の有機化合物からなる保護コロイドと、有機溶媒とを含む液状物であってもよい。
【0047】
また、本発明にかかる導電性インキ組成物は、以上のように、貴金属からなる金属微粒子が、(A)アミン類と、(B)カルボン酸とからなる保護コロイドであって、上記(B)カルボン酸が、(I)炭素数4〜9のカルボン酸から選ばれる少なくとも一種のカルボン酸と、(II)炭素数10〜30のカルボン酸から選ばれる少なくとも一種のカルボン酸との混合物であり、かつ、(B)カルボン酸の平均炭素数は5〜25である保護コロイドで被覆されてなる固形物を含むことで、上記金属微粒子として貴金属を単体で使用した場合であっても、従来の導電性インキと比較して、金属の粒成長を抑制し、表面平滑性に優れ、塗布対象物との密着性や反射効率が従来よりも改善された金属層(金属膜)を形成することができるという効果を奏する。上記導電性インキ組成物もまた、貴金属からなる金属微粒子が、上記保護コロイドで包囲(被覆)されてなる固形物であり、有機溶媒に分散可能な構成を有していてもよく、それ自身、有機溶媒を含む液状物であってもよい。
【0048】
また、本発明にかかる反射部材、回路基板、並びに電子装置は、以上のように、本発明にかかる上記導電性インキ組成物を乾燥または熱処理(例えば焼成)してなる金属層を有することから、金属の粒成長が抑制され、表面平滑性に優れ、塗布対象物との密着性が従来よりも改善された、信頼性の高い回路基板並びに電子装置を提供することができるという効果を奏する。また、上記金属層は、従来の導電性インキを用いてなる金属層よりも金属の粒成長が抑制され、表面平滑性、塗布対象物との密着性に優れることから、上記従来の導電性インキを用いてなる金属層よりも低抵抗で、また、反射効率にも優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
本実施の形態にかかる導電性インキ組成物は、塗布対象物に塗布後、乾燥または熱処理(例えば焼成)することで金属薄膜を形成することができるインキ材料(インク材料)であり、少なくとも貴金属を含む金属微粒子と、該金属微粒子を包囲した少なくとも二種の有機化合物からなる保護コロイドとを少なくとも含んでなる。
【0050】
本実施の形態にかかる導電性インキ組成物は、例えば、少なくとも一種が貴金属である複数種の金属からなる金属微粒子と、該金属微粒子を包囲した少なくとも二種の有機化合物からなる保護コロイドとを少なくとも含んでなる。
【0051】
より具体的には、例えば、上記導電性インキ組成物は、少なくとも貴金属を含む合金からなる金属微粒子の表面が、少なくとも二種の有機化合物からなる保護コロイドで被覆(コーティング)されてなる固形物を含んでいる。
【0052】
また、上記導電性インキ組成物は、少なくとも一種が貴金属である複数種の金属からなる金属微粒子と、該金属微粒子を包囲した少なくとも二種の有機化合物からなる保護コロイドとによって構成される固形物であり、有機溶媒(分散媒)に分散可能な構成を有していてもよい。
【0053】
本実施の形態によれば、上記導電性インキ組成物中の固形物(コロイド粒子)が焼結されるときに、上記金属微粒子表面の保護コロイドが除去されることで、上記金属微粒子同士が融合し、これにより、金属膜が形成される。よって、上記コロイド粒子としては、少なくとも貴金属を含む合金の微粒子が、上記保護コロイドで被覆された構成を有していてもよく、少なくとも一種が貴金属である複数の金属の微粒子が、各々、上記保護コロイドで被覆された構成を有していてもよく、その混合物であってもよい。
【0054】
上記固形物は、上記金属微粒子が保護コロイドで包囲(被覆)されていることで、有機溶媒に分散可能であり、該導電性インキ組成物に有機溶媒を添加、混合することで、有機溶媒に溶解あるいは沈降していない状態とすることができる。このため、上記導電性インキ組成物は、有機溶媒に分散させることにより、いわゆるインキ(インク)として用いることができる。
【0055】
本実施の形態において、上記固形物に占める金属微粒子と保護コロイドとの割合は、金属微粒子が60質量%以上、95質量%以下の範囲内、保護コロイドが5質量%以上、40質量%以下の範囲(但し、両者の合計は100質量%)であることが好ましい。
【0056】
また、上記導電性インキ組成物は、例えば、少なくとも一種が貴金属である複数種の金属からなる金属微粒子と、該金属微粒子を包囲した少なくとも二種の有機化合物からなる保護コロイドと、有機溶媒とを含む液状物であってもよい。すなわち、上記導電性インキ組成物は、それ自身、有機溶媒を含む液状物であってもよい。すなわち、上記導電性インキ組成物は、該導電性インキ組成物における上記金属微粒子の含有量等、言い換えれば、例えば、導電性インキ組成物の流動性等にもよるが、さらに有機溶媒を添加して、あるいは、そのまま、導電性インキ(インク)として用いることができる。なお、上記導電性インキ組成物の流動性は、使用用途や使用方法等に応じて、適宜、所望の範囲内に設定すればよく、特に限定されるものではない。
【0057】
上記液状物における上記金属微粒子、保護コロイド、および有機溶媒(分散媒)の割合は、上記金属微粒子が15質量%以上、95質量%以下の範囲内、保護コロイドが1質量%以上、50質量%以下の範囲内、有機溶媒が1質量%以上、60質量%以下の範囲内(但し、これらの合計は100質量%)であることが好ましい。
【0058】
本実施の形態において用いられる上記金属微粒子は、その粒径が数nm〜数百nmのいわゆる超微粒子(ナノ粒子)であり、具体的には、例えば、1nm以上、100nm以下の範囲内の粒径を有する金属微粒子が好適に用いられる。
【0059】
また、本実施の形態において用いられる上記金属微粒子は、少なくとも貴金属を含んでいればよく、金属微粒子として複数種の金属からなる微粒子を使用する場合、その少なくとも一種が貴金属であれば、特に限定されるものではないが、上記導電性インキ組成物を、回路基板(配線基板)等における配線材料、すなわち、ガラス基板等の絶縁性基板上に形成される配線および/または電極の材料(以下、まとめて配線材料と記す)として使用する場合、上記金属微粒子は、低抵抗で、耐熱性、ガラス基板への付着力、耐プラズマ性等のプロセス耐性が高い金属からなることが好ましい。
【0060】
上記貴金属としては、具体的には、例えば、金、銀、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら貴金属は、一種類のみを使用してもよく、適宜、組み合わせて使用してもよい。上記貴金属の中でも、金、銀、白金等が好ましく、銀がより一層好ましい。
【0061】
上記貴金属以外に本実施の形態において使用される金属としては、例えば、標準酸化還元電位が−0.45〜+1.5V/NHEの金属が好適に使用される。
【0062】
また、上記貴金属以外に本実施の形態において使用される金属としては、鉄、コバルト、ニッケル、銅、カドミウム、インジウム、錫、タリウム、鉛、モリブデンおよびビスマスからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属であることが好ましく、例えば、上記貴金属として銀を使用する場合、上記金属微粒子は、上記貴金属以外の金属として、インジウムを含んでいることが特に好ましい。なお、これら例示の金属は、何れも、上記した標準酸化還元電位を満足している。
【0063】
上記金属微粒子が、貴金属以外の金属として上記金属を含むことで、上記導電性インキ組成物を、回路基板における上記配線材料として使用する場合、金属微粒子として貴金属を有機溶媒に分散してなる、いわゆる銀インクのように、金属微粒子として、貴金属を単体(具体的には銀単体)で使用した従来の導電性インキと比較して、金属の粒成長を抑制し、ガラス基板等の絶縁性基板との密着性を向上させることができる低抵抗の配線および/または電極を容易に形成することができる。
【0064】
特に、上記導電性インキ組成物が、銀に対してインジウムを0.5質量%以上、5質量%以下の割合で含む場合、低電気抵抗性と、耐プラズマ性を兼ね備えた配線および/または電極を得ることができる。また、上記導電性インキ組成物が、銀に対してインジウムを0.5質量%未満の割合で含む場合、保護コロイドの種類にもよるが、概ね4〜10μΩ・cmという電気抵抗率を得ることができる。したがって、上記導電性インキ組成物は、特に液晶TV用等に用いられる液晶表示装置用の回路基板の製造に好適に使用することができる。
【0065】
なお、上記電気抵抗率は、熱アニール処理後、四探針法で求めた面抵抗値と、別途測定した膜厚とから求めることができる。なお本実施の形態では、上記面抵抗値の測定には、三菱化学株式会社製の測定機「ロレスタ−GP(商品名)」を使用した。また、耐プラズマ性の評価には、ドライエッチング装置(RIE、リアクティブイオンエッチング方式)を使用した。
【0066】
本実施の形態において、上記金属微粒子中における貴金属と、貴金属以外の金属との割合は、上記導電性インキ組成物の用途や所望する物性、並びに、組み合わせる金属の種類等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではないが、上記導電性インキ組成物を、例えばTFTアレイ基板等の回路基板における配線材料として使用する場合、上記金属微粒子は、上記貴金属を主成分として含んでいることが好ましい。但し、上記貴金属以外の金属として銅を使用する場合、銅を主成分として用いても構わない。
【0067】
上記導電性インキ組成物としては、貴金属、例えば銀単体からなる金属微粒子をコロイド粒子として含む銀系導電性インキ組成物を用いてもよいが、上記導電性インキ組成物として、銀とインジウムとからなる金属微粒子をコロイド粒子として含む、銀−インジウム系導電性インキ組成物を用いる場合、上記金属微粒子中における銀に対するインジウムの割合(インジウム/銀(質量%))は、上記したように、上記導電性インキ組成物の用途や所望する物性等にもよるが、例えば、以下に示す割合に設定することが好ましい。例えば、上記導電性インキ組成物を、配線および/または電極として使用する場合、上記金属微粒子中における銀に対するインジウムの割合(インジウム/銀(質量%))は、6質量%以下(すなわち、0質量%を超えて6質量%以下)の範囲内であることが好ましく、2質量%以下(すなわち、0質量%を超えて、2質量%以下)の範囲内であることがより好ましい。また、上記導電性インキ組成物を、反射部材として使用する場合、上記金属微粒子中における銀に対するインジウムの割合(インジウム/銀(質量%))は、0.4質量%以下(すなわち、0質量%を超えて、0.4質量%以下)の範囲内であることが好ましく、0.2質量%以下(すなわち、0質量%を超えて、0.2質量%以下)の範囲内であることがより好ましい。
【0068】
上記インジウムの使用量、すなわち、得られる金属膜中のインジウムの含有量(インジウム濃度)を大きくすれば、耐プラズマ性を向上させることができる。また、得られる金属膜中のインジウムの含有量(インジウム濃度)を小さくすれば、耐プラズマ性は低くなるが、抵抗値を下げることができるとともに、反射特性を向上させることができる。なお、得られる金属膜中のインジウムの含有量を大きくすれば、その分、抵抗値は高くなるが、本実施の形態にかかる導電性インキ組成物は、銀を合金とすることで、銀の性質を抑制し、銀微粒子を有機溶媒に分散してなる銀インクよりも金属の粒成長を抑制し、かつ、部分的に銀が多く存在するであろう部分から生じる金属の粒成長を、保護コロイドによって抑制することができるとともに、少なくとも二種の有機化合物からなる保護コロイドを用いることにより、塗布対象物との密着性を、従来よりも向上させることができる。また、反射特性は、上記インジウム濃度によって影響され、インジウム濃度が大きいほど反射率は低下する。特に、蒸着膜と比較とすると、後述する実施例に示すように、低波長側で反射率が下がる傾向が見られる。しかしながら、上記したように、銀にインジウムを加えること、すなわち、反射部材、特に反射電極として、銀とインジウムとの固溶体(合金)からなる金属膜を用いることで、高い反射率と低抵抗化とを、共に実現することができるのみならず、後述する実施例に示すように、銀に適量のインジウムを添加すること、つまり、上記導電性インキ組成物として、上記保護コロイドを用いた、銀−インジウム系導電性インキ組成物を使用することで、例えば450nmから長波長側では、スパッタ成膜のアルミニウムの反射率を超える、極めて高い反射率を実現することができる。
【0069】
本実施の形態にかかる上記固形物は、上記金属微粒子の表面が上記保護コロイドによって被覆(コーティング)されたコロイド粒子(金属コロイド粒子)であり、上記コロイド粒子の粒径は、上記金属粒子の粒径をYnmとすると、凡そ、Y+2〜5nm程度となる。
【0070】
なお、本実施の形態では、具体的な態様として、特に記載がない限り、平均粒子径2nm以上、5nm以下の範囲内の金属微粒子を用いるものとするが、本発明はこれに限定されるものではない。このような微粒子(超微粒子)は、粒径が小さいことから、塗布対象物に接触させる際にその接触点が多くなると共に、より薄膜化が可能であり、得られる配線および/または電極に、容易に表面平滑性を付与することができる。
【0071】
また、本実施の形態で用いられる上記保護コロイドとしては、少なくとも二種の有機化合物からなる保護コロイドであれば、特に限定されるものではない。上記保護コロイドは、具体的には、少なくとも二種の有機化合物を原料として得られる化合物(低分子材料)および/または混合物(すなわち、少なくとも二種の有機化合物からなる原料から得られる化合物(低分子材料)、または少なくとも二種の有機化合物からなる原料から得られる混合物(有機化合物の混合物)、または上記化合物と混合物との混合体)の形態を有している。
【0072】
上記保護コロイドは、上記条件を満足するものであれば特に限定されるものではないが、主成分(有効成分)として、(A)アミン類と、(B)カルボン酸とを含む原料(単量体組成物)からなる化合物および/または混合物であることが好ましく、そのなかでも、(A)アミン類と、(B)カルボン酸とを含み、上記(B)のカルボン酸が、比較的分子量の小さいカルボン酸(以下、低分子量のカルボン酸と記す)と、比較的分子量が大きいカルボン酸(以下、高分子量のカルボン酸と記す)とからなる原料からなる化合物および/または混合物であることがより好ましく、低分子量のカルボン酸と、高分子量のカルボン酸と、アミン類とからなる原料を用いてなる化合物および/または混合物であることがより好ましい。
【0073】
本実施の形態において、上記低分子量のカルボン酸としては、炭素数4〜9のカルボン酸(すなわち、炭素数4〜9のカルボン酸から選ばれる少なくとも一種のカルボン酸)を使用する。また、高分子量のカルボン酸としては、炭素数10〜30のカルボン酸(すなわち、炭素数10〜30のカルボン酸から選ばれる少なくとも一種のカルボン酸)を使用する。
【0074】
すなわち、上記保護コロイドに用いられる上記(B)のカルボン酸は、(I)炭素数4〜9のカルボン酸から選ばれる少なくとも一種のカルボン酸と、(II)炭素数10〜30のカルボン酸から選ばれる少なくとも一種のカルボン酸との混合物であることが好ましい。また、上記(B)のカルボン酸の平均炭素数は5〜25であることが好ましい。
【0075】
本願発明者等が鋭意検討した結果、上記保護コロイドとして、(A)アミン類と、(B)カルボン酸とからなり、上記(B)のカルボン酸が、(I)炭素数4〜9のカルボン酸から選ばれる少なくとも一種のカルボン酸と、(II)炭素数10〜30のカルボン酸から選ばれる少なくとも一種のカルボン酸との混合物であり、かつ、上記(B)のカルボン酸の平均炭素数が5〜25である保護コロイドを使用した場合、上記貴金属以外の金属(添加金属)の含有量が少ない領域、さらには、金属微粒子として貴金属を単体で用いた場合でも、塗布対象物との密着性を向上させることができるとともに、上記貴金属の粒成長を抑制することができることが判った。
【0076】
また、上記低分子量のカルボン酸としては、(i)炭素数4〜8のカルボン酸(すなわち、炭素数4〜8のカルボン酸から選ばれる少なくとも一種のカルボン酸)がより好ましい。さらに、上記高分子量のカルボン酸としては、(ii)炭素数20〜30のカルボン酸(すなわち、炭素数20〜30のカルボン酸から選ばれる少なくとも一種のカルボン酸)、または、(iii)炭素数10〜30のカルボン酸の混合物であり、平均炭素数が15〜25のカルボン酸の混合物がより好ましい。
【0077】
本実施の形態において、上記(B)のカルボン酸としては、(i)炭素数4〜8のカルボン酸と、(ii)炭素数20〜30のカルボン酸または(iii)炭素数10〜30のカルボン酸の混合物であり、平均炭素数が15〜25のカルボン酸の混合物とからなるものであってもよい。
【0078】
上記原料中における(A)アミン類と(B)カルボン酸との割合は、特に限定されるものではないが、上記(A)のアミン類が40モル%以上、79モル%以下の範囲内、上記(B)のカルボン酸が21モル%以上、60モル%以下の範囲内(但し、両者の合計は100モル%)であることが好ましい。上記(B)のカルボン酸として、低分子量のカルボン酸と高分子量のカルボン酸との混合物を使用する場合、上記原料中における上記した各成分の割合は、低分子量のカルボン酸(具体的には、炭素数4〜9のカルボン酸から選ばれる少なくとも一種のカルボン酸、好適には炭素数4〜8のカルボン酸から選ばれる少なくとも一種のカルボン酸)が2モル%以上、40モル%以下の範囲内、高分子量のカルボン酸(具体的には、炭素数10〜30のカルボン酸から選ばれる少なくとも一種のカルボン酸、好適には、炭素数20〜30のカルボン酸から選ばれる少なくとも一種のカルボン酸、または炭素数10〜30のカルボン酸の混合物であり、平均炭素数が15〜25のカルボン酸の混合物)が1モル%以上、20モル%以下の範囲内であり、上記(A)のアミン類が40モル%以上、79モル%以下の範囲内(但し、これらの合計は100モル%)であることが好ましい。
【0079】
また、上記(B)のカルボン酸が、高融点の固体のカルボン酸を含む場合、前記した低分子量のカルボン酸と高分子量のカルボン酸とのモル比の関係を考慮した上で、上記高融点の固体のカルボン酸よりも炭素数が少ないカルボン酸を添加することで、上記高融点の固体のカルボン酸を溶解させることが好ましい。
【0080】
上記高分子量のカルボン酸の具体的な例としては、例えば、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸、オクタデセン酸、オクタデカジエン酸、ドコサン酸等が挙げられる。これら高分子量のカルボン酸は、一種類のみを用いてもよく、適宜、二種類以上を混合して用いても構わない。また、上記高分子量のカルボン酸としては、上記したように高分子量のカルボン酸を適宜混合して用いてもよいし、石油原油中に存在する酸性物質の混合物であるナフテン酸等のように、分子量分布を有する高分子量のカルボン酸を用いてもよい。なお、上記ナフテン酸もまた、他のカルボン酸と適宜混合して用いてもよい。なお、市販のナフテン酸にはカルボン酸以外の成分も含まれるが、これら成分のうち、保護コロイドとして働く成分(有効成分)以外の成分は、洗浄、例えば、余分な保護コロイドを除去する工程において洗浄することにより、系から除去することができるので、最終的に得られる本願の導電性インキ組成物から除去することができる。よって、上記原料中には、上記有効成分以外の成分として、上記(A)のアミン類および(B)のカルボン酸以外の成分が含まれていても構わない。
【0081】
一方、上記低分子量のカルボン酸の具体的な例としては、例えば、酪酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸等が挙げられる。これら低分子量のカルボン酸もまた、一種類のみを用いてもよく、適宜、二種類以上を混合して用いても構わない。
【0082】
また、本実施の形態において、上記(A)のアミン類としては、アルキルアミン、特に、炭素数5〜20のアルキルアミンが好適に用いられる。
【0083】
上記保護コロイドのなかでも、ナフテン酸、ヘキサン酸、およびオクチルアミンを原料として得られる保護コロイド;オクタデカジエン酸、ヘキサン酸、およびオクチルアミンからなる保護コロイド;が、特に好適に用いられる。なお、本実施の形態では、入手が容易でかつ分子量分布を有する高分子量のカルボン酸としてナフテン酸を使用するものとし、該ナフテン酸として、重量平均分子量約270、ナフテン酸類、不飽和カルボン酸類、エステル類、ジオール、アルカン等を含む市販のナフテン酸を使用したが、本発明はこれに限定されるものではなく、前記の条件を満足するものであればよい。
【0084】
本実施の形態において、上記(B)のカルボン酸としては、上記したように、鎖式のカルボン酸であっても環式のカルボン酸であってもよく、また、単環であるか複環であるかも特に限定されるものではない。
【0085】
本実施の形態において、上記金属微粒子として、前記したように、少なくとも貴金属を含む合金からなる金属微粒子を用いる場合、上記保護コロイドとしては、少なくとも二種の有機化合物からなる保護コロイドであればよく、上記保護コロイド中には、上記(A)のアミン類および(B)のカルボン酸以外の成分が含まれていてもよく、これら(A)アミン類および(B)カルボン酸以外の成分並びにその含有量は、特に限定されるものではないが、上記したように、上記保護コロイドとしては、(A)アミン類および(B)カルボン酸を主成分として含んでいることが好ましく、(A)アミン類および(B)カルボン酸からなることが好ましい。
【0086】
また、上記有機溶媒(分散媒)としては、炭素数10〜35の炭化水素類が好適であり、そのなかでも、側鎖を有する炭素数16〜30の脂肪族炭化水素類がより好適に用いられる。上記有機溶媒としては、具体的には、例えば、テトラデカン、ヘプタメチルノナン、テトラメチルペンタデカン等の非極性溶媒が挙げられるが、これにのみ限定されるものではない。これら有機溶媒は、一種類のみを用いてもよく、適宜二種類以上を混合して用いても構わない。
【0087】
上記有機溶媒は、入手が容易であると共に、上記保護コロイドで被覆された金属微粒子の分散安定性が良く、また、沸点が低いことから、乾燥または熱処理(例えば焼成)により、容易に除去することができる。
【0088】
本実施の形態において、最終的に用いられる導電性インキ組成物中の金属微粒子の含有割合、すなわち、導電性インキとしての導電性インキ組成物中における上記金属微粒子の含有割合は、特に限定されるものではないが、30質量%以上、70質量%以下の範囲内であることが好ましい。なお、本実施の形態では、具体的な態様として、特に記載がない限りは、上記金属微粒子を、30質量%以上、40質量%以下の範囲内で含む導電性インキ組成物を使用したが、本発明はこれに限定されるものではない。上記導電性インキ組成物中における上記金属微粒子の割合はできるだけ高いことが望ましく、上記導電性インキ組成物は、上記金属微粒子をできるだけ高濃度にて使用することが望ましい。
【0089】
また、導電性インキとしての上記導電性インキ組成物中における保護コロイドの含有割合は、上記金属微粒子の含有割合にもよるが、8質量%以上、27質量%以下の範囲内であることが好ましい。上記保護コロイドは、上記金属微粒子に対し、過剰に使用される。本実施の形態では、例えば、上記金属微粒子に対し、15倍モルの割合で使用するが、上記保護コロイドは、上記金属微粒子に対し、1倍モル以上となるように使用すればよい。コロイド粒子(金属コロイド粒子)形成後、余分な保護コロイドは、洗浄により、系(導電性インキ組成物)から除去される。
【0090】
次に、上記コロイド粒子並びに該コロイド粒子を含む導電性インキ組成物の作成方法について、銀とインジウムとを含む金属からなる金属微粒子を作成する場合を例に挙げて以下に説明する。
【0091】
上記導電性インキ組成物は、金属塩(金属イオン)を、上記保護コロイドの存在下で還元処理して上記コロイド粒子を析出させた後、余分な保護コロイドを除去、洗浄し、目的の有機溶媒(分散媒)に置換することにより、容易に得ることができる。本実施の形態にかかる導電性インキ組成物(導電性インキ)は、上記コロイド粒子を有機溶媒(分散媒)に分散させることにより、金属コロイド液の状態で用いられる。
【0092】
より具体的には、例えば、先ず、図2(a)に示すように、反応容器301に、溶媒、金属塩、並びに保護コロイドの原料302を仕込み、金属塩溶液を調製する。なお、上記金属塩溶液の調製は、金属塩を溶媒に溶解した後、該溶液に、金属微粒子の凝集を防止する分散剤として上記保護コロイドの原料302を添加することにより調製してもよく、上記分散剤として上記保護コロイドの原料302を含有する溶媒中に、上記金属塩を溶解することにより調製してもよい。なお、上記金属塩は、金属塩溶液(金属イオン溶液)において、錯イオン(銀錯体、インジウム錯体)になっている。
【0093】
その後、図2(b)に示すように、上記金属塩溶液に、還元剤303を添加し、銀およびインジウムの2種類の金属を還元させて粒成長過程で合金させ、銀−インジウム合金粒子を析出させる。これにより、上記反応容器301内の溶媒中には、銀微粒子、インジウム微粒子の他に、銀−インジウム合金からなる合金微粒子が、金属微粒子304(図2(c)参照)として存在する。
【0094】
このようにして析出した金属微粒子304、つまり、例えば、上記合金微粒子は、図2(c)に示すように、保護コロイド305に付着し、これにより、上記金属微粒子304の表面が上記保護コロイド305によって被覆されたコロイド粒子が得られる。その後、上記コロイド粒子を形成していない余分な保護コロイド305を除去、洗浄し、上記反応容器301中の溶媒を、目的の有機溶媒(分散媒)に置換することにより、本実施の形態にかかる導電性インキ組成物を得ることができる。
【0095】
なお、上記金属微粒子304の粒子径は、上記還元反応の制御と上記保護コロイドの選択とによって制御することができる。
【0096】
また、上記の方法によれば、上記したように、銀イオンおよびインジウムイオンを還元させて粒成長過程で合金化することで、還元された粒子がまとまる過程において、単体の状態でコロイド粒子になるものが存在すること、並びに、合金となっていてもその比率が粒子によって異なっていることも当然考えられる。しかしながら、上記方法において、コロイド粒子に含有される複数の金属成分の比率(上記の例では各コロイド粒子に含有される銀成分およびインジウム成分の比率)がコロイド粒子全てにわたって揃っていることは重要ではなく、最終的に膜状態となったときに、複数の金属が分布し、金属単体ではない合金効果が得られることが重要である。
【0097】
本実施の形態において上記金属塩溶液の調製に用いられる溶媒(有機溶剤)としては、具体的には、例えば、トルエン、キシレン、ヘキサン、2,2,4−トリメチルペンタン等が挙げられるが、特に限定されるものではない。上記溶媒としては、上記保護コロイドの原料302や、金属塩、還元剤303(還元剤溶液)が溶解し、除去し易いことから、2,2,4−トリメチルペンタンが好適に用いられる。
【0098】
但し、上記保護コロイドは液体であるため、上記金属塩溶液は、金属塩を溶解させる溶媒を使用せず、保護コロイドのみでも調製することができる。
【0099】
本実施の形態で用いられる上記金属塩(金属化合物)としては、例えば、酢酸銀と酢酸インジウムとが挙げられるが、本実施の形態は、これに限定されるものではない。上記酢酸銀以外の銀化合物としては、例えば、硝酸銀、過塩素酸銀、安息香酸銀、蟻酸銀、プロピオン酸銀等が挙げられる。また、酢酸インジウム以外のインジウム化合物としては、硝酸インジウム、硫酸インジウム、アセチルアセトンインジウム、水酸化インジウム、2−エチルヘキサン酸インジウム等が挙げられる。これら金属塩は、一種類のみを用いてもよく、適宜、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。上記金属微粒子として銀からなる金属微粒子を作成する場合、上記金属塩としては、例えば、上記例示の銀化合物から選ばれる少なくとも一種の銀化合物が用いられる。なお、上記金属塩は、銀化合物、インジウム化合物に限定されるものではなく、所望の金属微粒子が得られるように、適宜、選択、組み合わせて使用される。
【0100】
上記金属塩濃度としては、例えば、15〜500mmol/Lとなるように設定されるが、上記したように、上記溶媒は必ずしも必要ではなく、上記金属塩濃度は、上記範囲内にのみ限定されるものではないことは、言うまでもない。
【0101】
なお、前記したように、上記保護コロイド(保護コロイドの原料302)は、上記金属微粒子、つまり、金属の物質量に対し、1倍モル以上、例えば15倍モルとなるように添加される。
【0102】
また、上記還元剤303としては、例えば、水素化ホウ素ナトリウムを使用することができる。上記水素化ホウ素ナトリウムは、例えば、2−プロパノール溶液(30mmol/L)として使用されるが、これに限定されるものではなく、2,2,4−トリメチルペンタン等、前記例示の溶媒(有機溶剤)に溶解して使用することができる。
【0103】
また、上記還元剤303としては、上記水素化ホウ素ナトリウム以外に、例えば、水素化ホウ素リチウム、ヒドラジン、トリイソプロポキシアルミニウム等、比較的強い還元剤が好適に使用される。
【0104】
上記還元剤303は、金属微粒子(金属)の当量に対し、例えば、1〜4倍当量にて使用される。
【0105】
上記還元剤303の滴下速度は、例えば、5〜100mL/分となるように設定される。このように、還元剤303を一度に添加せずに、所定の速度で滴下(添加)を行うか、あるいは、複数回に分けて添加、攪拌を行うことで、得られる金属微粒子の粒子径の制御を行うことができる。
【0106】
上記反応における反応温度、反応圧力、反応時間は、特に限定されるものではないが、例えば、大気中で、還元剤滴下後、室温にて1時間攪拌することにより上記反応を行うことができる。
【0107】
なお、上記反応液中には、オクチルアミン等のアミン類が上記金属微粒子304に対し、過剰に存在している。このため、上記反応液のpHは、洗浄前で、凡そ10〜11となる。
【0108】
また、上記洗浄方法は、特に限定されるものではないが、上記還元処理後のコロイド粒子を含むコロイド溶液を濃縮後、過剰のメタノールあるいはエタノールを添加し、濾過することで、洗浄を行うことができる。
【0109】
なお、本実施の形態では、上記還元処理として、上記金属塩溶液に還元剤303を添加する方法を例に挙げて説明したが、上記還元剤303に代えて、紫外光、電子線、熱エネルギー等を用いて還元させてもよく、上記金属イオンを還元することができさえすれば、上記還元処理方法としては、特に限定されるものではない。
【0110】
本実施の形態によれば、上記したように、金属微粒子を保護コロイドで被覆し、有機溶媒(分散媒)に分散させ、塗布対象物に塗布した後、乾燥または熱処理、例えば250〜350℃で焼成を行うことで、容易に上記金属からなる金属膜(金属薄膜)を形成することができる。
【0111】
つまり、上記導電性インキ組成物を用いた配線は、塗布対象物となる基板面に、上記導電性インキ組成物を、上記固形物が上記有機溶媒に分散された状態で、塗布した後、例えば焼成することにより容易に形成することができる。
【0112】
本実施の形態によれば、上記導電性インキ組成物中の固形物、すなわち、上記コロイド粒子が焼結されるときに、上記金属微粒子表面の保護コロイド、つまり、有機材料が除去されることで、上記金属微粒子同士が融合し、これにより、低抵抗の金属膜が形成される。
【0113】
なお、焼成後の保護コロイドの残量は、得られた金属膜、つまり、焼成膜に対して5質量%以下である。焼成により得られた金属膜の組成、例えば、銀−インジウム合金の組成は、例えばEDS(エネルギー分散型X線分析)やEPMA(X線マイクロアナライザ)分析等の元素分析や、ICP発光分析法等により定量分析を行うことにより評価することができる。また、残留有機分に関しては、TG(熱重量分析)等の熱分析により評価することができる。
【0114】
上記導電性インキ組成物を塗布対象物に塗布する方法としては、例えば、インクジェット法や、スピンコート法等が挙げられる。
【0115】
上記導電性インキ組成物を用いて金属膜を形成するには、例えば、上記導電性インキ組成物を、該導電性インキ組成物中の固形物を前記有機溶媒(分散媒)に分散させた状態で、ガラス基板上に、スピンコートで塗布した後、乾燥または熱処理(例えば焼成)すればよい。
【0116】
スピンコート条件としては、特に限定されるものではないが、例えば、500rpm〜2000rpmの範囲内で設定すればよい。例えば、1000rpmで30秒間スピンコートを行うことで、2500Å(250nm)の膜厚の上記導電性インキ組成物からなる膜(導電性インキ組成物膜)を得ることができる。なお、上記スピンコート条件は、所望の膜厚に応じて適宜調整すればよく、特に限定されるものではない。
【0117】
さらに、上記導電性インキ組成物膜の焼成圧力並びに焼成温度は、特に限定されるものではないが、通常、大気中での焼成において、250〜350℃の範囲内に設定される。なお、焼成時間は、上記導電性インキ組成物膜の膜厚や焼成温度等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではない。
【0118】
例えば、銀に対するインジウムの割合が1原子%(1.06質量%)の導電性インキ組成物膜を大気中で、300℃にて1時間、焼成を行って得られる金属膜(焼成膜)の抵抗値は、約10μΩ・cmであった。
【0119】
上記金属膜における表面平滑性、すなわち、粒成長の状態は、例えば、SEM(走査型電子顕微鏡)観察により、例えば1万倍〜3万倍程度の倍率とすることで、容易に観察することができる。但し、SEMを使用しなくても、目視で観察する場合、粒成長がない場合は膜表面が鏡面であるのに対して、粒成長が生じている場合、膜表面が白く濁って見えるため、粒成長の程度によっては、目視での粒成長の確認も可能である。
【0120】
一般に、貴金属は安定であるため基板との反応性が低く、このため、基板との密着性に乏しい。スパッタ等では飛来粒子の打ち込み効果が貴金属と基板との密着性を向上させる要因となるが、塗布の場合はこのような打ち込み効果は期待できず、基板との親和力により密着性を得るしかない。このため、通常は、酸素と結びつき易い金属を基板と貴金属との間に配し、基板に対しては酸素の親和力により、また、貴金属に対しては金属結合や拡散による親和力により、貴金属と基板とを密着させている。
【0121】
従来、インクジェット用のインク(インキ)としては、銀インクが一般的に多用されているが、従来の銀インクは、上記のような貴金属の性質を持つ他に、特に、高温焼成による粒成長が著しく、得られた金属膜は、そのままでは配線として使用することは困難であった。
【0122】
このため、銀を配線材料として用いる場合、基板上に、付着力を向上させるための処理を施したり、熱による表面平滑性の劣化やエッチングガスによる膜劣化、剥がれを防止するために、銀配線上に保護膜となる薄膜を形成したりする必要がある。つまり、基板上の薄膜が多層化され、この結果、回路基板の製造工程数が増加し、コストも上昇する。
【0123】
そこで、本願発明者等が鋭意検討した結果、例えば、銀にインジウム等の貴金属以外の金属を添加して合金にすると、銀の粒成長が低減され、密着性が良好になり、薄膜の多層化を防止し、回路基板の製造工程数の増加およびコストの上昇を抑えることができることが判った。
【0124】
しかしながら、本願発明者等がさらに検討を重ねた結果、上記したように銀を例えば銀−インジウム合金とすることで、銀を単体で用いる場合よりも、ガラスへの密着性、高温焼成時の表面性が改善されるものの、高温焼成により、径、高さとも凡そ1000Å〜5000Å(約100nm〜500nm)の突起(粒成長)が依然として多く発生することが判った。
【0125】
そこで、本願発明者等は、さらに検討を行った結果、上記したように、貴金属、この場合は銀を合金とすることで、銀の性質を抑制した上で、さらに、部分的に銀が多く存在するであろう部分から生じる粒成長を、保護コロイドによって抑制することができることを見出した。また、本願発明者等は、少なくとも二種の有機化合物からなる保護コロイドを用いることにより、塗布対象物との密着性を、従来よりも向上させることができることを見出した。
【0126】
特に、銀を使用した場合、上記効果は顕著であり、前記保護コロイドにより、粒成長が顕著に抑制されることが判った。
【0127】
また、本願発明者等がさらに検討した結果、保護コロイドをさらに工夫することにより、より顕著な粒成長の抑制効果が得られることを見出した。特に、前記したように、(A)アミン類と、(B)カルボン酸とを含む原料、特に、前記したように、低分子量のカルボン酸および高分子量のカルボン酸を含む(B)カルボン酸と、(A)アミン類とから得られる、特定の保護コロイドを使用することで、導電性インキ組成物から作製した膜における添加金属の含有量が少ない領域、例えば、銀−インジウム金属膜のインジウム含有量が少なくなる領域においても塗布対象物との密着性を向上させることができ、さらには、金属微粒子として貴金属を単体で用いた場合でも、上記密着性の向上並びに粒成長の抑制ができることを見出した。すなわち、インジウム含有量をゼロとした銀単体における膜の課題も解決するに至った。
【0128】
図1に、上記保護コロイドとして、後述する実施例2に示す保護コロイド(ヘキサン酸、ナフテン酸、オクチルアミンからなる保護コロイド)を使用してなる銀−インジウムのインキ膜(インク膜)を、Nガス雰囲気中、300℃にて1時間アニールして得られた金属膜表面の状態を、電子顕微鏡写真(倍率3万倍)にて示す。なお、上記銀−インジウムのインキ膜における銀に対するインジウムの割合は、1原子%となるように設定した。また、電子顕微鏡には、日立製作所製のSEM(走査型電子顕微鏡)「S−4100(商品名)」を使用した。なお、銀−インジウム合金(AgIn)におけるインジウム(In)1原子%は、インジウム(In)1.06質量%に相当する。
【0129】
さらに、比較のために、図25に、Nガス雰囲気中、300℃で1.5時間の熱アニール処理を行って得られた銀の単体蒸着膜表面の状態を、同じく電子顕微鏡写真(倍率3万倍)にて示す。なお、上記銀の単体蒸着膜の成膜は、「高真空蒸着装置EBX−10D(商品名)」(日本真空技術株式会社製電子ビーム蒸着機)により蒸着法で行った。
【0130】
また、図26に、Nガス雰囲気中、300℃で1.5時間の熱アニール処理を行って得られた銀−インジウム蒸着膜(インジウム仕込み量で3.0質量%)の表面の状態を、同じく電子顕微鏡写真(倍率3万倍)にて示す。
【0131】
さらに、図27に、保護コロイドとして、図1に示す保護コロイドに使用したナフテン酸と同じナフテン酸とオクチルアミンとからなる、実施例6に示す保護コロイドを使用してなる銀−インジウムのインキ膜を、Nガス雰囲気中、300℃にて1時間アニールして得られた金属膜表面の状態を、同じく電子顕微鏡写真(倍率3万倍)にて示す。
【0132】
また、比較のために、図32に、保護コロイドとしてオクチルアミンのみを使用してなる、銀のインキ膜を、Nガス雰囲気中、300℃で30分間アニールして得られた金属膜表面の状態を、同じく電子顕微鏡写真(倍率3万倍)にて示す。また、図33に、保護コロイドとして、ナフテン酸とオクチルアミンとからなる保護コロイドを使用してなる銀のインキ膜を、Nガス雰囲気中、300℃にて30分間アニールして得られた金属膜表面の状態を、同じく電子顕微鏡写真(倍率3万倍)にて示す。
【0133】
なお、上記した各条件以外のこれらインキ膜の具体的な作製条件並びに作成方法については、後述の説明並びに実施例に挙げた条件並びに方法を踏襲した。また、塗布対象物である基板に対する、上記した各インキ膜を作製するための各導電性インキ組成物の塗布条件は、何れも同条件とした。
【0134】
図32に示すように、従来の銀インクのように金属微粒子として銀を単体で使用し、また、比較のために保護コロイドとして有機化合物を一種類のみ使用してなる銀系導電性インキ組成物を、塗布対象物である基板に塗布後、上記したようにアニールを行うと、銀のナノ粒子が、融合・成長し、ネットワーク的に繋がっている状態が観察されることが判る。
【0135】
また、図32から、このように保護コロイドを一種類のみ使用した銀系導電性インキ組成物からなるインキ膜は、膜表面および膜断面の何れにも大きな空孔が認められ、膜面荒れが著しく、光が膜を透過する。このため、反射効率が悪い。なお、このように保護コロイドを一種類のみ使用した銀系導電性インキ組成物からなるインキ膜を光が透過する原因は、上記空孔にあると考えられる。
【0136】
また、図32に示すインキ膜は、上記したように膜面荒れが著しく、銀の粒成長および融合に由来する凹凸が、膜全面に形成されており、基板への付着力(密着性)は非常に弱いものであった。
【0137】
しかも、図32に示すインキ膜は、図27および図1に示すインキ膜と比較して、一見して膜厚が厚いことが判る。これは、図32に示すインキ膜は、膜中に、かなりの空孔を含んでいるためであると考えられる。
【0138】
また、図33に示すように、金属微粒子として銀を単体で使用し、保護コロイドとして、ナフテン酸とオクチルアミンとからなる保護コロイドを使用してなる銀系導電性インキ組成物を、塗布対象物である基板に塗布後、上記したようにアニールを行うと、図32に示すインキ膜同様、30分間のアニールでも、銀の粒成長(粒の高さは500nm以上)が激しく、得られたインキ膜は、膜厚が著しく不均一なものとなる。具体的には、図33に示すインキ膜は、上記したように、銀の粒成長による粒の高さが500nm以上であるのに対し、粒の下のインキ膜の膜厚は、約100nmと薄い。これは、銀の粒成長に、周囲の銀が取り込まれていくため、粒成長以外の部分のインキ膜の膜厚が薄くなるためであると考えられる。また、図33に示すインキ膜は、膜表面および膜断面に、細かい孔が認められる。
【0139】
そこで、まず、インジウムの添加効果を確認すべく、図25および図26に示す蒸着膜同士で比較すると、銀単体では、荒れた膜表面が、図26に示すようにインジウムを添加することで、改善されることが判る。
【0140】
次に、インキ膜同士で比較すると、図33に示すように、金属微粒子として銀を単体で使用し、保護コロイドとして、ナフテン酸とオクチルアミンとからなる保護コロイドを使用してなる銀のインキ膜に対し、図27に示すように、金属微粒子として、銀に対し、インジウムを1原子%の割合で添加し、保護コロイドとして、同じナフテン酸とオクチルアミンとからなる保護コロイドを使用してなる銀−インジウムのインキ膜は、インジウムの添加効果で銀の粒成長が抑制され、粒の大きさが、金属微粒子として銀を単体で使用した場合と比較して明らかに小さくなるとともに、図33に示すインキ膜に見られるような細かい孔が無くなることが判る。なお、図1に示すインキ膜についても、図27と同様、粒の大きさが、金属微粒子として銀を単体で使用した場合と比較して明らかに小さくなるとともに、図33に示すインキ膜に見られるような細かい孔が無くなることが判る。
【0141】
また、保護コロイドを一種のみ用いた、図32に示す銀のインキ膜と、図1および図27に示すインキ膜とを比較すると、図1および図27に示すように、本実施の形態にかかる導電性インキ組成物を用いることで、金属の粒成長がかなり抑制され、得られるインキ膜の表面平滑性が大きく改善されることが判る。さらに、図1および図27に示すように、本実施の形態にかかる導電性インキ組成物を用いることで、金属の粒成長が抑制され、図32に見られるような、膜剥がれ(浮き)を防止することができることが判る。このため、本実施の形態にかかる導電性インキ組成物を用いることで、得られるインキ膜と基板との密着性が、従来よりも大きく改善されることが判る。
【0142】
また、図1および図27に示すように、本実施の形態にかかる導電性インキ組成物を用いることで、図32に示すインキ膜に見られるような、金属の粒成長並びに融合による空孔の形成が防止されることから、このような空孔に起因する光の透過を防ぐことができ、従来よりも反射効率を向上させることができることが判る。
【0143】
さらに、図27に示すように、銀−インジウムのインキ膜においては、インジウムの添加並びに保護コロイドによる、荒れた膜表面の改善効果が認められるものの未だ粒成長が認められたが、図1に示すように、保護コロイドの選択により、粒成長が著しく抑制されることが判る。
【0144】
以上の結果から、本実施の形態にかかる導電性インキ組成物、特に、保護コロイドとして、前記分子量分布を有する保護コロイドを用いた導電性インキ組成物を乾燥または熱処理(例えば焼成)して得られる金属膜は、表面平滑性(平坦性)に優れ、前記したような下部配線(下側配線)、もしくは、下部配線(下側配線)の表面状態や表面荒れに影響される、TFT等の素子の下に配しても影響がないことが判る。つまり、上記金属膜は、配線のクロス部において、下部配線(下側配線)として使用しても、上部配線(上側配線)の切れや、上記下部配線と上部配線との間の絶縁層の膜切れによるリーク不良等を低減することができる。
【0145】
これにより、上記保護コロイドを用いた導電性インキ組成物を、配線材料としてのインク(導電性インキ)に使用することで、表面性が良好で、低抵抗の塗布配線を形成することが可能になった。
【0146】
上記導電性インキ組成物は、FPD(フラットパネルディスプレイ)における配線、特に配線のクロス部や、表面荒れに影響され易い、TFT等の素子の下地となる電極等に好適に使用することができる。
【0147】
上記導電性インキ組成物からなる配線は、例えば、以下のようにして形成することができる。
(1)先ず、基板上に、バンク(隔壁)によって形成されたパターンを形成する。具体的には、レジストを基板上にスピンコートした後、該レジストをプリベークし、パターン露光した後、現像、ポストベークを行う。
【0148】
なお、上記パターンにおける配線幅および上記バンクの高さは、特に限定されるものではないが、例えば、配線幅30μm、バンク高さ2μmとすればよい。
(2)次に、上記パターンが形成された基板を、例えばCFガス雰囲気中でプラズマ処理する。これにより、バンクの表面をフッ素処理すると同時に、基板上の有機物を分解除去する。
(3)その後、インクジェット装置により、上記導電性インキ組成物を、バンクに挟まれた配線パターンに塗布する。なお、上記インクジェット装置による液滴サイズは、特に限定されるものではないが、一例として、6pl程度に設定される。
(4)上記のようにして上記導電性インキ組成物を配線一面に塗布した後、例えば300℃で焼成し、金属化する。
【0149】
以下に、具体的な配線の形成について、より詳細に説明する。
【0150】
本実施の形態にかかる回路基板の製造、すなわち、該回路基板におけるパターンの形成には、いわゆるインクジェット法(液滴吐出法)により配線材料あるいは電極材料等を吐出あるいは滴下するインクジェット装置(パターン形成装置)が好適に用いられる。図3に該パターン形成装置の概略構成を示す。
【0151】
図3に示すパターン形成装置81は、基板31を載置する載置台32と、液滴供給装置(液滴吐出手段)としてのインクジェットヘッド33と、該インクジェットヘッド33を、図3中、X方向に移動させるX方向駆動部34と、Y方向に移動させるY方向駆動部35とを備えている。上記インクジェットヘッド33は、載置台32上の基板31上に対して、配線材料あるいは電極材料を含む流動性の液滴として、本実施の形態にかかる導電性インキ組成物を吐出するようになっている。
【0152】
また、上記パターン形成装置81には、インクジェットヘッド33に流動性の配線材料として、本実施の形態にかかる導電性インキ組成物(インク)を供給するインク供給システム36と、インクジェットヘッド33の吐出制御や、X方向駆動部34およびY方向駆動部35の駆動制御等の各種制御を行うコントロールユニット37とが設けられている。コントロールユニット37からは、X方向駆動部34およびY方向駆動部35に対して塗布位置情報が出力され、インクジェットヘッド33のヘッドドライバ(図示せず)に対して吐出情報が出力される。これにより、X方向駆動部34およびY方向駆動部35に連動してインクジェットヘッド33が動作し、基板31上の目的位置に目的量の液滴(導電性インキ組成物)が供給される。
【0153】
上記インクジェットヘッド33としては、ピエゾアクチュエータを使用するピエゾ方式のものであってもよく、ヘッド内にヒータを有するバブル方式のもの、あるいはその他の方式のものであってもよい。インクジェットヘッド33からのインク吐出量の制御は、所望の吐出量に合わせて最適設計したインクジェットヘッドを準備すれば勿論よいが、簡単には吐出ノズル穴の径のみを変更することでも対応可能である。また、上記液滴供給装置としては、インクジェットヘッド33に代えて、単に液滴を滴下させる方式のもの等、液滴を供給可能なものであれば特に限定されない。
【0154】
また、上記パターン形成装置81としては、基板31上に予め形成しておいた、配線材料に対する親液領域と非親液領域とを利用して、塗布あるいは浸漬等により所定のパターンを形成する方式を用いたものであってもよい。
【0155】
本実施の形態にかかる導電性インキ組成物は、表面平滑性が要求される回路基板における配線等の形成材料として好適に用いられる。そして、このような回路基板は、表示装置等の電子装置に好適に用いられる。
【0156】
以下、本実施の形態にかかる回路基板および電子装置について、図4〜図7(a)・(b)に基づいて説明すれば以下の通りである。
【0157】
なお、以下の説明においては、本実施の形態にかかる回路基板および電子装置として、TFTアレイ基板および該TFTアレイ基板を用いた液晶表示装置を例に挙げて説明するものとするが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。
【0158】
図4は、本実施の形態にかかる液晶表示装置におけるTFTアレイ基板の概略構成を示す平面図であり、図5は、図4に示すTFTアレイ基板における1画素の概略構成を示す平面図である。また、図6は、図5に示すTFTアレイ基板におけるA−A線矢視断面図であり、図7(a)は、図4に示すTFTアレイ基板における1端子部の概略構成を示す平面図であり、図7(b)は図7(a)に示す端子部のB−B線矢視断面図である。
【0159】
図4に示すように、本実施の形態にかかるTFTアレイ基板11は、ガラス基板12上に、図5に示すような画素が複数形成されている画素形成領域61が設けられていると共に、該画素形成領域61の周囲に、上記TFTアレイ基板11に、図7(a)・(b)に示すような端子部28が複数形成されている端子部形成領域62…が設けられている構成を有している。
【0160】
図5および図6に示すように、本実施の形態にかかるTFTアレイ基板11は、ガラス基板(絶縁性基板)12上に、ゲート配線13とソース配線14とがマトリクス状に設けられ、これらゲート配線13とソース配線14との交差部近傍に、スイッチング素子であるTFT15が設けられた構成を有している。また、隣り合うゲート配線13・13間には、補助容量配線16が設けられている。
【0161】
図6に示すように、ガラス基板12上には、ゲート配線13から分岐してなるゲート電極17と、上記補助容量配線16とが形成され、これらゲート電極17および補助容量配線16を覆うようにゲート絶縁層18が形成されている。
【0162】
また、上記ゲート電極17上には、上記ゲート絶縁層18を介して、アモルファスシリコン層19およびn+型シリコン層20からなる半導体層27、ソース電極21、ドレイン電極配線22が形成されており、これにより上記TFT15が形成されている。ここで、ソース電極21はソース配線14から分岐して形成されている。
【0163】
また、ドレイン電極配線22は、TFT15からコンタクトホール23まで延設されており、TFT15のドレイン電極としての役割と、TFT15と画素電極24とを電気的に接続する役割と、コンタクトホール23で補助容量配線16との間に電気容量を形成する役割とを有する。さらに、上記ドレイン電極配線22の上層には、TFT15を覆う保護層25と、平坦化等のための層間絶縁層26と、液晶等に電圧を印加するための画素電極24とが、この順に形成されている。
【0164】
さらに、図7(a)・(b)に示すように、端子部28は、ガラス基板12側から、端子配線30および端子電極29、ゲート絶縁層18が、この順に配された構成を有している。すなわち、上記端子部28は、上記端子配線30と、上記端子電極29の一部が、上記ゲート絶縁層18で被覆されている構成を有している。端子部28は、TFTアレイ基板11に外部回路基板、駆動用ドライバIC等を電気的に接続するための接続部であり、上記端子電極29は、外部回路基板、駆動用ドライバICとの電気的接続を良好にする等の目的で配置される。また、端子配線30は、前記画素形成領域61における、ゲート配線13、ソース配線14等と接続されている。
【0165】
なお、本実施の形態では、上記端子配線30と端子電極29とは、何れもガラス基板12上に形成されており、何れも同一組成の銀合金材料である銀インジウム合金からなっている。但し、端子配線30と、端子電極29とでは、銀に対するインジウムの含有割合が異なっている。ここでは、端子配線30における銀に対するインジウムの含有割合は、端子電極29における銀に対するインジウムの含有割合よりも小さくなるように配合比が調整されている。
【0166】
次に、前記導電性インキ組成物を用いて本実施の形態にかかる上記TFTアレイ基板11を製造する方法について、図3〜図24に基づいて以下に説明する。
【0167】
本実施の形態において、上記TFTアレイ基板11は、図8に示すように、ゲート配線前処理工程101、ゲート配線形成工程102、ゲート絶縁膜・半導体膜成膜工程103、ゲート絶縁膜・半導体膜加工工程104、ソース・ドレイン配線前処理工程105、ソース・ドレイン配線形成工程106、チャネル部加工工程107、保護膜・層間絶縁層成膜工程108、保護膜加工工程109、および画素電極形成工程110からなる。
【0168】
(ゲート配線前処理工程101)
上記ゲート配線前処理工程101では、図3に示すパターン形成装置81を使用して、ゲート配線13、ゲート電極17、補助容量配線16等を形成するための前処理を行う。図9(a)および図10(a)は、ゲート配線前処理工程101完了後のTFTアレイ基板11の画素部分および端子部分の平面図であり、図9(a)および図10(a)は、それぞれ、図4に示すガラス基板12上の画素形成領域61(画素部分)、端子部形成領域62(端子部分)における平面図である。
【0169】
上記ゲート配線前処理工程101では、所望の配線パターンを形成するために、上記パターン形成装置81によって吐出(滴下)された流動性の配線材料が、所望の領域に塗布されるように配線形成のための前処理を行う。
【0170】
上記前処理としては、大きく分けて2通りの方法がある。
【0171】
第1の方法は、図9(a)および図10(a)に示す配線形成領域である、ゲート配線13を形成するためのゲート配線形成領域41、ゲート電極17を形成するためのゲート電極形成領域42、補助容量配線16を形成するための補助容量配線形成領域43、並びに、端子配線30および端子電極29(端子部28)を形成するための端子配線形成領域44を親水領域(親液領域)とし、これら領域以外の配線非形成領域を撥水領域(撥液領域)とする親撥水処理(親撥液処理)によりパターン化する方法である。
【0172】
第2の方法は、液流を規制するガイド(隔壁)として、上記ゲート配線形成領域41、ゲート電極形成領域42、補助容量配線形成領域43、および端子配線形成領域44に沿ったガイドを形成する方法である。
【0173】
上記第1の方法としては、二酸化チタンを用いた光触媒による親撥水(親撥液)処理が代表的である。一方、上記第2の方法としては、レジスト材料を使用し、フォトリソグラフィによりガイド形成を行う方法が代表的である。さらに、上記ガイドあるいは基板面に親撥水(液)性を付与するために、上記ガイドあるいは基板を、CFガス、Oガスを導入したプラズマ雰囲気中に曝す処理を行うことがある。ここで使用するレジストは、配線形成後、剥離する。
【0174】
本実施の形態では、上記前処理として、二酸化チタンを使用した光触媒処理を行う。すなわち、TFTアレイ基板11のガラス基板12には、フッ素系非イオン界面活性剤である「ZONYL FSN」(商品名:デュポン社製)をイソプロピルアルコールに混合したものを塗布した。また、ゲート配線パターン等のマスクには光触媒層として、二酸化チタン微粒子をエタノールに分散させたものをスピンコートで塗布し、150℃で焼成した。そして、上記マスクを使用し、ガラス基板12に対して、365nmの紫外光を、70mW/cmの強度で2分間照射することにより、上記ガラス基板12の露光(UV露光)を行った。
【0175】
ここで、二酸化チタンによる親撥水(親撥液)領域の形成について、図11(a)〜(d)を参照して以下に説明する。
【0176】
図11(a)は、ガラス基板1に、スピンコート法等を用いて、フッ素系非イオン界面活性剤である「ZONYL FSN」(商品名、デュポン社製)をイソプロピルアルコールに混合したものを塗布することで、上記ガラス基板1上に、第1の膜2を形成した状態を示している。
【0177】
また、図11(b)は、透明ガラス基板3上に設けられたゲート配線パターン等のマスク4でUV露光を行っている状態を示している。上記マスク4のパターン面には、光触媒層5として、上記二酸化チタン微粒子をエタノールに分散させたものを塗布し、150℃で熱処理してある。
【0178】
上記条件による露光後は、図11(c)および図11(d)に示すように、UV露光された部分6だけが濡れ性が向上し、親水(液)パターンが形成される。
【0179】
(ゲート配線形成工程102)
次に、ゲート配線形成工程102について、図9(b)・(c)および図10(b)・(c)を参照して以下に説明する。
【0180】
図9(b)・(c)および図10(b)・(c)は、ゲート配線形成工程102完了後のガラス基板12の平面図である。図9(b)および図10(b)は、それぞれ、図4に示すガラス基板12上の画素形成領域61(画素部分)、端子部形成領域62(端子部分)における平面図である。図9(c)、図10(c)は、各々、図9(b)、図10(b)におけるC−C線矢視断面図、D−D線矢視断面図である。
【0181】
上記ゲート配線形成工程102では、前記パターン形成装置81を使用し、前記基板31として上記ガラス基板12を使用して、図9(a)および図10(a)に示すガラス基板12におけるゲート配線形成領域41、ゲート電極形成領域42、補助容量配線形成領域43、および端子配線形成領域44等の親水領域(親液領域)に、本実施の形態にかかる導電性インキ組成物を、流動性配線材料として塗布することにより、図9(b)・(c)および図10(b)・(c)に示すように、ゲート配線13、ゲート電極17、補助容量配線16、端子配線30等の配線を形成した。
【0182】
上記配線材料には、本実施の形態にかかる導電性インキ組成物として、例えば、前記した保護コロイド(すなわち、具体的には、後述する実施例2に記載の保護コロイド)で被覆された銀−インジウム合金微粒子を有機溶媒中に分散させたものを用いた。なお、本実施の形態では、上記導電性インキ組成物中に含まれる銀とインジウムは、銀に対するインジウムの割合が約5原子%以下となるように適宜調整した。配線幅は概ね50μmでインクジェットヘッド33からの上記導電性インキ組成物の吐出量は5plに設定した。
【0183】
なお、吐出される導電性インキ組成物に含まれる銀とインジウムとの割合は、後のゲート絶縁膜・半導体膜加工工程104、チャネル部加工工程107、保護膜加工工程109でドライエッチングが行われることを考慮し、工程中にプラズマに曝される箇所では、銀に対するインジウムの割合が5原子%となるように調整する一方、ゲート配線13は低抵抗であることが求められることを考慮し、ゲート絶縁層18や保護層25に覆われて直接プラズマに曝されない箇所では、銀に対するインジウムの割合が1原子%となるように調整した。
【0184】
これは、インジウムの割合が多くなるとプラズマに対する耐性が上がることが判っているためである。また、ゲート配線13には、この後の工程であるゲート絶縁膜・半導体膜成膜工程103の際に300℃の熱が加えられるが、このような温度下においてもゲート配線13が結晶成長等で表面が荒れることがあってはならず、また、ゲート配線13に信号が印加される時間は数十μsecと短時間であるため、ゲート配線13の抵抗によって、駆動用ドライバICに近いTFT15と、駆動用ドライバICから離れた位置にあるTFT15との間で生じる信号遅延による応答特性変化ができるだけ小さいことが必要であり、このため、上記ゲート配線13には、低抵抗であることが求められるためである。
【0185】
但し、上記した割合は製造プロセスや、所望するTFTアレイ基板11の性能等に応じて適切に選び得るものである。
【0186】
親水(液)処理された面では、インクジェットヘッド33から吐出された流動性の配線材料が、ゲート配線形成領域41に沿って広がるので、吐出間隔を概ね10〜100μm間隔で適宜調整して塗布を行った。塗布後に300℃で1時間焼成を行い、銀とインジウムとから構成されるゲート配線13、ゲート電極17、補助容量配線16、端子配線30を形成した。
【0187】
ここで、これらゲート配線13、ゲート電極17、補助容量配線16、端子配線30は、上記流動性配線材料として本実施の形態にかかる導電性インキ組成物を用いているので、従来の同様な配線材料で見られた粒成長は無く、300℃の条件に対して充分な耐熱性を有し、表面平滑性が失われない。これに対し、従来の銀流動性の配線材料では、焼成によって粒成長があるために、上下リークが発生しやすく、不良となっていた。
【0188】
なお、焼成温度を300℃に設定したのは、次段のゲート絶縁膜・半導体膜成膜工程103において約300℃の処理熱が加わるためである。したがって、焼成温度はこの温度に限定されるものではない。
【0189】
次に、インクジェット法により上記ゲート配線13を形成するための具体的な方法について説明する。図12(a)はゲート配線全体の構成を模式的に示す概略構成図であり、図12(b)は図12(a)に示すゲート配線におけるゲート電極部の構成を模式的に示す概略構成であり、図12(c)は、図12(a)に示すゲート配線における端子電極部の構成を模式的に示す概略構成図である。上記TFTアレイ基板11における配線部71は、ゲート配線13と、補助容量配線16と、端子配線30とを備えている。また、ゲート配線13は、ガラス基板12の端部において、端子配線部74を介して、端子電極部72において、図示しない駆動用ドライバICの端子電極と繋がっている。また補助容量配線16は、上記ガラス基板12における一方の端部で端子配線30に繋がっている。
【0190】
本実施の形態では、配線部71を、前記したように銀に対するインジウムの割合が1原子%の銀−インジウム合金で形成し、端子電極部73における端子電極29を、銀に対するインジウムの割合が5原子%の銀−インジウム合金で形成すべく、上記配合割合の異なる導電性インキ組成物を、図3に示すパターン形成装置81のインクジェットヘッド33に各々別々に搭載した。なお、インクジェットヘッド33は、上記導電性インキ組成物の種類の数だけ用意した。本実施の形態では、図12(a)・(b)に示すように、銀に対するインジウムの割合が1原子%用と5原子%用の2つのヘッド(図13(a)・(b)参照)を用意した。
【0191】
すなわち、本実施の形態において、図7(b)に示すように、端子配線30と端子電極29とを何れもガラス基板12上に形成し、しかも、これら端子配線30と端子電極29とを、インジウムの含有量が互いに異なる銀合金材料で各々形成するためには、インクジェットヘッド33は、少なくとも、配合比率の異なる銀合金材料からなる流動性の配線材料を吐出できる機構を有している必要がある。
【0192】
そこで、本実施の形態では、例えば、図13(a)・(b)に示すように、インクジェットヘッド33の進行方向(図13(a)・(b)中、矢印方向)に沿って、流動性の配線材料として、配線部用低抵抗材料を吐出するための第1ヘッド33aと、同じく流動性の配線材料として、端子部用耐プラズマ材料を吐出するための第2ヘッド33bとを順に備え、これら第1ヘッド33aと第2ヘッド33bとを適宜切替えることにより所望の流動性の配線材料を吐出するものとする。
【0193】
図13(a)〜(e)は、図12(a)〜(c)に示すTFTアレイ基板11の配線部71と、端子電極部73における端子部28との形成工程を示す図である。
【0194】
ここでは、先ず、図13(a)に示すように、配線部71、具体的には、図9(a)のゲート配線形成領域41並びに図10(a)の端子配線形成領域44における端子配線30形成領域に、銀に対するインジウムの割合が1原子%の導電性インキ組成物(配線部用低抵抗材料)を、該導電性インキ組成物専用のヘッドである第1ヘッド33aで塗布を行う。次に、図13(b)に示すように、端子電極部73、具体的には、図10(a)の端子配線形成領域44における端子電極29形成領域に、インジウムの割合が5原子%の導電性インキ組成物(端子部用耐プラズマ材料)を、該導電性インキ組成物専用のヘッドである第2ヘッド33bで塗布を行う。
【0195】
この際、2つの導電性インキ組成物は流動性の材料であるため、吐出後にガラス基板12上で交じり合うので、後の焼成工程後には、上記2つの導電性インキ組成物からなる端子配線30と端子電極29とは電気的に接続されていることになる。図7(b)および図13(b)に示すように上記2つの導電性インキ組成物が接触または互いに交じり合う領域(以下、境界部分Pと記す)では、部分的に両液(導電性インキ組成物)による中間的状態が作られるが、このとき、上記配線部用低抵抗材料としての導電性インキ組成物が上記端子電極29形成領域に流れ込まないようにするためには、上記端子電極29形成領域の十分手前で、導電性インキ組成物を吐出するヘッドを、上記第1ヘッド33aから第2ヘッド33bに切替えればよく、例えば、端子電極29形成領域の数百μm程度手前のところで上記導電性インキ組成物を切替えれば十分である。勿論、端子部28形成領域から先に上記導電性インキ組成物の塗布(吐出)を行っても構わない。
【0196】
これにより、本実施の形態では、同一配線上の、少なくとも2箇所の部位の特性、つまり、ここでは、図12(c)および図13(b)に示すように端子配線30と端子電極29とで、各々特性を異ならせている。同様に、本実施の形態によれば、使用する導電性インキ組成物中の銀−インジウム合金における銀に対するインジウムの割合を異ならせることで、図12(b)に示すように、ゲート電極部75におけるゲート配線13とゲート電極17とが、各々特性が異なるようにしている。
【0197】
上記TFTアレイ基板11では、上記端子配線30およびゲート配線13においては低抵抗が重視され、端子電極29ではプラズマエッチング耐性が重視される一方、上記ゲート電極17では、前記したように該ゲート電極17上に、ゲート絶縁層18を介して半導体層27が形成されるため、熱に対する表面平滑性(平坦性)が重視される。
【0198】
上記半導体層27は、厚さがほぼ500Å(50nm)と、上記配線部71を構成する各配線(3000〜5000Å、すなわち300〜500nm)と比較して極端に薄い。しかも、TFT15の特性は、上記半導体層27で決定されることから、上記半導体層27は、極めて重要な膜である。
【0199】
ゲート電極17に求められる平坦性は、上記半導体層27の膜厚を超えないことが望ましい。このことから、上記ゲート電極17の表面に形成される凹凸は、50nm以下であることが望ましく、10nm以下であることがより望ましい。
【0200】
塗布材料(インク)である上記導電性インキ組成物を構成する上記金属気粒子のサイズが数nmであることから、上記ゲート電極17、ひいては、該ゲート電極17上に形成される半導体層27の表面に、上記金属微粒子の粒子径を反映した凹凸が形成されることは否めないが、焼成(約300℃)によって、50nmを超える粒成長が認められる場合、上記半導体層27の下層のゲート電極17としては、特性が不十分となる可能性がある。
【0201】
このため、上記ゲート配線13においては、ゲート配線13とソース配線14との交差部を除けば、本実施の形態にかかる導電性インキ組成物を必ずしも用いる必要はないが、上記ゲート電極17においては平坦性が必要とされるので、本実施の形態にかかる導電性インキ組成物を用いることが好ましい。つまり、例えば上記配線部71では、ゲート電極17にのみ本実施の形態にかかる導電性インキ組成物を使用してもよい。勿論、全て本実施の形態にかかる導電性インキ組成物で形成してもよい。
【0202】
ゲート電極17にのみ本実施の形態にかかる導電性インキ組成物を使用する場合、例えば、前記インクジェットヘッド33において前記第1ヘッド33aおよび第2ヘッド33bに代えて、図14(a)・(b)に示すように、第1ヘッド91および第2ヘッド92を使用し、低抵抗を重視した公知の流動性配線材料Mを上記第1ヘッド33aから吐出することで、上記ゲート配線13を形成した後、上記第1ヘッド91と第2ヘッド92とを切替えて、上記第2ヘッド92から本実施の形態にかかる導電性インキ組成物Nを吐出することで、上記ゲート電極17を形成してもよい。
【0203】
上記したように上記ゲート電極17の形成に本実施の形態にかかる導電性インキ組成物を使用すれば、粒成長が抑制され、図15に示すように、下部配線201となるゲート電極17の平坦性が改善されることから、絶縁層202としてのゲート絶縁層18の膜切れが生じず、上記下部配線201、つまり、上記ゲート電極17と、上部配線203となる半導体層27との間で上下リークが発生しない。このため、歩留まりが向上すると共に、TFT特性も安定する。
【0204】
ここで、上述したゲート配線形成工程102の流れについて、図13(a)〜(e)を参照して説明する。なお、本実施の形態において使用した流動性の配線材料は、前記したように本実施の形態にかかる保護コロイドを有するものであり、インジウムの含有量によってその働きが左右されるものではない。
【0205】
先ず、図13(a)に示すように、ゲート配線前処理工程101において、表面に親撥水(親撥液)処理が施されたガラス基板12の配線形成領域、ここでは、端子配線形成領域44に、インクジェットヘッド33の第1ヘッド33aによって、配線部用低抵抗材料の流動性の配線材料を吐出して端子配線30を形成する。
【0206】
続いて、図13(b)に示すように、端子配線30が形成された後のガラス基板12上の端子電極29形成領域に、インクジェットヘッド33の第2ヘッド33bによって、上記配線部用低抵抗材料よりも耐プラズマ性に優れた、インジウム含有量の多い流動性の配線材料(端子部用耐プラズマ材料)を吐出して端子電極29を形成する。
【0207】
次いで、図13(c)に示すように、ガラス基板12上に形成された端子配線30と端子電極29とを焼成した後、保護膜となるゲート絶縁膜45を、端子配線30および端子電極29を覆うように形成する。
【0208】
その後、図13(d)に示すように、端子加工を行うために、端子電極29に対応する部分のゲート絶縁膜45を開口するようにマスクとなるレジスト材100を設け、マスク露光等でパターンを形成する。
【0209】
最後に、図13(e)に示すように、端子電極29に対応するゲート絶縁膜45の領域をエッチングした後、レジスト材100を剥離し、端子部28を形成する。
【0210】
このように、インクジェットヘッド33に、機能別に2つのヘッドを設け、2種類の流動性の配線材料を扱えるようする場合には、インク供給システム36、コントロールユニット37、吐出位置情報等もこれに対応させておくことが必要である。
【0211】
このように形成された端子部28は、図7(a)・(b)に示すようになる。なお、端子配線30は、端子電極29と接し、これらは電気的導通を有している。
【0212】
端子配線30は、ゲート絶縁層18に覆われるため、プロセス耐性のうち、耐熱性と、ガラス基板への付着力とを有するように上記配線材料を選択すればよい。これは、上記端子配線30は、ドライエッチング雰囲気に曝されないので耐プラズマ性を特に必要としないためである。
【0213】
本実施の形態では、上記端子配線30における銀に対するインジウムの含有量を1原子%となるように上記導電性インキ組成物(配線部用低抵抗材料)を調製した。この場合における上記端子配線30の電気抵抗率は約7μΩ・cmであった。また、本実施の形態では、画素形成領域61におけるゲート配線13、ゲート電極17、補助容量配線16も、端子配線30と同様、銀に対するインジウムの含有量が1原子%となるように、上記配線および/または電極の形成に使用する導電性インキ組成物(配線部用低抵抗材料)を調製した。
【0214】
一方、端子電極29は、電気的接続をとるため、端子上の絶縁膜を除去するエッチング工程において、絶縁膜が除去された後のオーバーエッチングにより、ドライエッチング雰囲気に曝される。そのため、このドライエッチング雰囲気に侵されないような耐プラズマ性を重視し、銀に対するインジウムの含有量が5原子%となるように上記導電性インキ組成物(端子部用耐プラズマ材料)を調製している。この端子電極29は、TFTアレイ基板11上のゲート配線13や、ソース配線14、端子配線30よりもかなり短く、電気抵抗率は他の部分よりも大きくてもよい。
【0215】
本実施の形態においては、上記インクジェットヘッド33は、第1ヘッド33aと第2ヘッド33bとを用いて、銀に対するインジウムの含有量が異なる2種類の流動性の配線材料を吐出して端子配線30および端子電極29を形成している。具体的には、端子配線30を形成するための領域(すなわち、端子配線30形成領域)には、端子配線30を形成したときに、銀に対するインジウムの含有量が1原子%となるような導電性インキ組成物を、上記配線材料として吐出した。一方、端子電極29を形成するための領域(すなわち、端子電極29形成領域)には、端子電極29を形成したときに、銀に対するインジウムの含有量が5原子%となるような導電性インキ組成物を、上記配線材料として吐出した。
【0216】
また、画素形成領域61におけるゲート配線13、ゲート電極17、補助容量配線16を形成するための領域には、端子配線30と同じ導電性インキ組成物を、上記配線材料として吐出した。吐出後、300℃で1時間焼成を行い、所定の端子配線30、端子電極29等を得た。このように、インジウムの含有量が1原子%の流動性の配線材料を上記画素形成領域61の配線部に用いることにより、低抵抗の配線を形成することができる。
【0217】
(ゲート絶縁膜・半導体膜成膜工程103)
続いて、ゲート絶縁膜・半導体膜成膜工程103について、図16(a)・(b)および図17(a)・(b)を参照して以下に説明する。
【0218】
図16(a)・(b)および図17(a)・(b)は、ゲート絶縁膜・半導体膜成膜工程103が完了した状態のガラス基板12を示す図である。図16(a)、図17(a)は、各々、ガラス基板12上の前記画素形成領域61(画素部分)、端子部形成領域62(端子部分)における平面図である。図16(b)、図17(b)は、各々、図16(a)、図17(a)におけるE−E線矢視断面図、F−F線矢視断面図である。
【0219】
上記ゲート絶縁膜・半導体膜成膜工程103では、図16(a)・(b)および図17(a)・(b)に示すように、ゲート配線形成工程102を経たガラス基板12上に、後にゲート絶縁層18となるゲート絶縁膜45、アモルファスシリコン層19となるアモルファスシリコン膜46、およびn+型シリコン層20となるn+型シリコン膜47を各々連続成膜する。ここで、ゲート絶縁膜45は窒化シリコンからなる膜である。これらの膜は全てCVD法により成膜して、それぞれの膜厚は順に、例えば、0.3μm、0.15μm、0.04μmとした。また、成膜温度は300℃とした。
【0220】
ゲート配線13には、先の工程で述べたように、本実施の形態にかかる導電性インキ組成物を使用しており、このため、結晶成長が抑制されている。このため、300℃の高温条件下でも表面が荒れることも無く、銀単体もしくは本実施の形態にかかる保護コロイドを使用しない場合と比較して、表面性の良いゲート配線13を得ることができる。このため、ゲート絶縁層18を介してこの上に形成される半導体層27やソース電極21とリークする事が無くなり、歩留まりが向上すると共に、TFTの特性も安定する。
【0221】
(ゲート絶縁膜・半導体膜加工工程104)
次に、ゲート絶縁膜・半導体膜加工工程104について、図18(a)・(b)および図19(a)・(b)を参照して以下に説明する。
【0222】
図18(a)・(b)および図19(a)・(b)は、ゲート絶縁膜・半導体膜加工工程104が完了した状態を示す図である。図18(a)、図19(a)は、各々、ガラス基板12上の前記画素形成領域61(画素部分)、端子部形成領域62(端子部分)における平面図である。図18(b)、図19(b)は、各々、図18(a)、図19(a)におけるG−G線矢視断面図、H−H線矢視断面図である。
【0223】
上記ゲート絶縁膜・半導体膜加工工程104では、先ず、第1のフォトリソグラフィにより、図16(b)および図17(b)に示すアモルファスシリコン膜46およびn+型シリコン膜47を加工する。これらアモルファスシリコン膜46およびn+型シリコン膜47は、図18(a)・(b)および図19(a)・(b)から判るように、上記アモルファスシリコン膜46からなるアモルファスシリコン層19、および、n+型シリコン膜47からなり、後にn+型シリコン層20となるn+型シリコン加工膜48が、画素形成領域61においてはゲート電極17上方に島状に残され、端子部形成領域62においては残されないように加工される。なお、上記加工に際し、エッチングはドライエッチング法により、六フッ化硫黄(SF)ガス、塩化水素(HCl)ガスの混合ガスを導入して行った。なお、ここまでは、ゲート絶縁膜45がガラス基板12の全面を覆っているので、端子配線30等がドライエッチング雰囲気中に露出することはない。
【0224】
続いて、第2のフォトリソグラフィによって、図16(b)および図17(b)に示すゲート絶縁膜45を加工する。端子部形成領域62において、部分的にゲート絶縁膜45をエッチングし、ゲート絶縁層18、開口部49を得た。エッチングはドライエッチング法により、CFガス、Oガスの混合ガスを導入して行った。
【0225】
なお、ここでは、上記端子部形成領域62は、耐プラズマ性を考え、予め銀に対するインジウムの割合が約5原子%となるように設定している。
【0226】
(ソース・ドレイン配線前処理工程105)
次に、ソース・ドレイン配線前処理工程105について、図20(a)を参照して以下に説明する。図20(a)は、ソース・ドレイン配線前処理工程105完了後の画素部分の概略構成を示す平面図であり、ゲート絶縁膜・半導体膜加工工程104を経たガラス基板12にソース配線14、ソース電極21、およびドレイン電極配線22を形成するための配線ガイド52を形成した状態を示している。
【0227】
なお、後述するソース・ドレイン配線形成工程106では、端子部形成領域62に配線等を形成しないので、ここでは画素形成領域61のみについて説明する。
【0228】
この工程では、ソース配線14、ソース電極21、およびドレイン電極配線22を形成する領域(ソース・ドレイン形成領域53)を除くように配線ガイド52を形成する。配線ガイド52はフォトレジスト材料を用いて形成した。すなわち、フォトレジストをゲート絶縁膜・半導体膜加工工程104を経たガラス基板12上に塗布し、プリベークを行った後、フォトマスクを用いて露光、現像を行い、次にポストベークを行った。ここで形成した配線ガイド52は、ソース配線14、ソース電極21を形成する領域の線幅が10μm、ドレイン電極配線22を構成する領域の線幅が10μmから40μmとなるように形成した。ソース電極21、ドレイン電極配線22の間隔、すなわちTFTのチャネル部51の長さは4μmとなるようにした。
【0229】
なお、パターン形成装置により塗布される配線材料が下地面となる面に良く馴染むように、ゲート絶縁層18の上面には、酸素プラズマにて親水(液)処理を施すとともに、配線ガイド52にはCFプラズマ中に曝すことにより撥水(液)処理を施してもよい。
【0230】
また、上記配線ガイド52の形成に代えて、前記ゲート電極形成に用いた光触媒による親撥水(親撥液)処理方法にて、配線電極パターンに応じた親撥水処理を施してもよい。
【0231】
(ソース・ドレイン配線形成工程106)
続いて、ソース・ドレイン配線形成工程106について、図20(b)・(c)を参照して以下に説明する。図20(b)・(c)は、上記ソース・ドレイン配線形成工程106が完了した状態を示す図である。図20(b)は、ガラス基板12上の画素形成領域(画素部分)における平面図である。図20(c)は、図20(b)におけるI−I線矢視断面図である。
【0232】
なお、以下の説明においても、前記したようにソース・ドレイン配線形成工程106では、端子部形成領域62に配線等を形成しないので、画素形成領域61のみについて説明する。
【0233】
上記ソース・ドレイン配線形成工程106では、前工程で設けた配線ガイド52を利用して、図20(b)・(c)に示すように、ソース配線14、ソース電極21、およびドレイン電極配線22を形成する。なお、塗布装置には図3に示すパターン形成装置81を使用した。
【0234】
配線材料には、例えば、前記した保護コロイド(すなわち、具体的には、後述する実施例2に記載の保護コロイド)で被覆された銀−インジウム合金微粒子を有機溶媒中に分散させた本実施の形態にかかる導電性インキ組成物を使用した。なお、上記導電性インキ組成物中に含まれる銀とインジウムは、後のチャネル部加工工程107、保護膜加工工程109でドライエッチングが行われることを考慮し、耐プラズマ性を有するように、銀に対するインジウムの割合が約5原子%となるように設定した。
【0235】
但し、上記した割合は製造プロセスや、所望するTFTアレイ基板11の性能等に応じて適切に選び得るものである。
【0236】
また、上記ソース・ドレイン配線形成工程106では、上記パターン形成装置81におけるインクジェットヘッド33からの上記導電性インキ組成物の吐出量を2plに設定し、形成膜厚は0.3μmとした。また、焼成温度は、アモルファスシリコン膜46等が約300℃で成膜されたことから、これよりも低い温度250℃とした。配線ガイド52は、有機溶媒を用いて除去した。
【0237】
(チャネル部加工工程107)
次に、チャネル部加工工程107について、図21を参照して以下に説明する。図21は、上記チャネル部加工工程107が完了した状態を、図20(b)におけるI−I線矢視断面にて示す図である。
【0238】
上記チャネル部加工工程107では、図21に示すTFTのチャネル部51の加工を行う。この処理は、塩素ガスを用いたドライエッチングによって行われるが、このとき新たなフォトリソグラフィは行わず、ソース電極21、ドレイン電極配線22のパターンを利用して加工を行う。
【0239】
(保護膜・層間絶縁層成膜工程108)
続いて、保護膜・層間絶縁層成膜工程108について、図22(a)・(b)および図23(a)・(b)を参照して以下に説明する。図22(a)・(b)および図23(a)・(b)は、上記保護膜・層間絶縁層成膜工程108が完了した状態を示す図である。図22(a)、図23(a)は、各々、ガラス基板12上の前記画素形成領域61(画素部分)、端子部形成領域62(端子部分)における平面図である。図22(b)、図23(b)は、各々、図22(a)、図23(a)におけるJ−J線矢視断面図、K−K線矢視断面図である。
【0240】
上記保護膜・層間絶縁層成膜工程108では、図22(a)・(b)および図23(a)・(b)に示すように、先ず、前工程を経たガラス基板12上に、CVD法により、保護膜として窒化シリコン膜55を成膜した。このときの基板温度は200℃に設定している。
【0241】
次に、この窒化シリコン膜55の上に、感光性アクリル樹脂材料を塗布した。続いて、マスクを用いた露光と、現像と、焼成とを行うことで、所定のパターンを有する層間絶縁層26を得た。このとき、ドレイン電極配線22と補助容量配線16とが重なる部分には、開口部56を設けている。一方、端子部形成領域62には、図23(b)から判るように、層間絶縁層26は形成されない。
【0242】
(保護膜加工工程109)
次いで、保護膜加工工程109について、図24(a)・(b)を参照して以下に説明する。図24(a)・(b)は、上記保護膜加工工程109が完了した状態を、各々、図22(a)、図23(a)におけるJ−J線矢視断面、K−K線矢視断面にて示す図である。
【0243】
上記保護膜加工工程109では、保護膜・層間絶縁層成膜工程108で形成された窒化シリコン膜55を、層間絶縁層26のパターンで加工する。画素形成領域61においては、開口部56直下にある窒化シリコン膜55(図22(a)・(b)および図23(a)・(b)参照)をエッチングすることで、図24(a)に示すように、保護層25(保護膜)と、コンタクトホール23とを得る。一方、端子部形成領域62では、図24(b)から判るように、端子部形成領域62全面において窒化シリコン膜55がエッチング除去される。なお、上記エッチングにはドライエッチング法により、CFガス、Oガスの混合ガスを導入して行った。
【0244】
(画素電極形成工程110)
最後の工程として、上記層間絶縁層26が形成された図24(a)・(b)に示す基板上に、図6および図7(a)・(b)に示す画素電極24、端子電極29となるITO(インジウム錫酸化物)膜をスパッタ法によって成膜した。このときの基板温度は200℃とした。続いて、フォトリソグラフィを用いてこのITO膜をパターニングし、図4〜図7(a)・(b)に示されるTFTアレイ基板11を得た。
【0245】
本実施の形態にかかる導電性インキ組成物は、焼成中に粒成長が生じ難い、さらには、粒成長を起こさないという従来の配線材料にはない優れた特性(耐熱性)を有するため、200℃、あるいは300℃といった高温条件下に基板が曝される場合でも表面が荒れることが無く、表面平滑性が良い配線および/または電極、具体的には、ゲート配線13、補助容量配線16、ゲート電極17等を得ることができる。特に、上記ゲート配線13、補助容量配線16、およびゲート電極17は、これらゲート配線13、補助容量配線16、およびゲート電極17上に形成されたゲート絶縁層18を介して、それぞれ、ゲート電極17は半導体層27と、補助容量配線16はドレイン電極配線22と対峙し、ソース配線14とゲート配線13とのクロス部(重畳部)は、上記ゲート絶縁層18を挟んでゲート配線13とソース配線14とが対峙している。従来は、これら配線および/または電極を形成するための配線材料を焼成する際に発生する粒成長によって、これら部位では、ゲート絶縁層18が膜切れを起こし、上下の配線で短絡、つまり、例えば図28に示したような上下リークが生じる。
【0246】
しかしながら、本実施の形態にかかる導電性インキ組成物を上記配線材料(塗布材料)として使用すれば、粒成長が抑制され、塗布膜表面の平滑性(平坦性)が良くなることによって、上記塗布膜上に形成される薄膜、すなわち、図15に示すように下部配線201上に形成される絶縁層202に、粒成長による凹凸による膜切れが生じず、図28に示す欠陥L(短絡)が発生しない。よって、上記したように、間に絶縁層202を挟むような配線(下部配線201、上部配線203)、特に、下部配線201に、上記配線材料として、本実施の形態にかかる導電性インキ組成物を適用すれば、非常に有効であり、歩留まりが向上する。また、上記したように本実施の形態にかかる導電性インキ組成物を、上記液晶表示装置(LCD)の配線に適用した場合、上記したゲート配線13とソース配線14とのクロス部の上下リークや、ゲート電極17上の半導体層27の膜切れを無くすことができ、TFT特性も安定する。
【0247】
なお、上記したように配線のクロス部では、下部配線201(下側配線)の表面性が悪いと、該下部配線201上面の絶縁層202を通して上部配線203との間で上下リークが生じる原因となる。また、TFT15の形成部分(TFT部)並びにゲート電極17の形成部分(ゲート電極部75、図12(a)・(c)参照)には、ゲート絶縁層18を挟んで、アモルファスシリコン層19を備えた半導体層27(約500Å=約50nm)が設けられており、ゲート電極17の表面荒れは、TFT特性の劣化や、ゲート絶縁層18の膜切れを招く。
【0248】
また、補助容量配線16形成部分(補助容量配線部)においても同様に、下部配線201(下側配線)の表面性が悪いと、ゲート絶縁層18の膜切れや、上下配線のリークを招き、コンデンサとして機能しないことがある。
【0249】
このため、上記半導体層27(a−Si層)では50nm以下、その他の部分(配線および/または電極)では150nm以下の平坦性を備えていることが望ましい。
【0250】
特に、上記補助容量配線16(補助容量配線部)においては、ドレイン電極配線22と、ゲート絶縁層18を介してコンデンサ(容量)を形成する必要があるため、ゲート電極17(ゲート電極部75、図12(a)・(c)参照)よりも広い範囲で平坦性が求められる。よって、上記補助容量配線16は、本実施の形態にかかる導電性インキ組成物で形成すると表面性が良いため、容量形成を行う上で非常に有効である。なお、この場合には、前記したように、異なる導電性インキ組成物ごとに異なるヘッドを使用し、例えば、上記補助容量配線16にのみ本実施の形態にかかる同電子インキ組成物を使用すればよい。勿論、前記したように、全て本実施の形態にかかる導電性インキ組成物で形成してもよい。
【0251】
本実施の形態にかかるTFTアレイ基板11において、特に平坦性が求められる箇所を、図5および図6おいて、領域Wで示す。
【0252】
なお、本実施の形態では、上記配線材料に、有機膜として本実施の形態にかかる保護コロイドをコーティングした、銀−インジウム合金微粒子を有機溶媒中に分散させてなる導電性インキ組成物を使用し、上記導電性インキ組成物中に含まれる銀とインジウムとは、銀に対するインジウムの割合が約5原子%以下となるように適宜設定した。但し、前記したように、銀に対するインジウムの割合は、製造プロセスあるいは所望するTFTアレイ基板11の性能等に応じて、適切に選択し得るものである。
【0253】
以上のように、本実施の形態によれば、上記導電性インキ組成物が、少なくとも一種が貴金属である複数種の金属からなる金属微粒子の表面、より具体的には、例えば、少なくとも貴金属を含む合金からなる金属微粒子の表面が、少なくとも二種の有機化合物からなる保護コロイドで被覆されてなる固形物を含むことで、金属微粒子として銀単体を使用した場合と比較して、金属の粒成長を抑制し、表面平滑性に優れ、塗布対象物との密着性が従来よりも改善された膜(金属膜)を形成することができる。
【0254】
すなわち、本実施の形態によれば、金属の粒成長を抑制し、表面平滑性に優れ、塗布対象物との密着性に優れた膜を形成することができる導電性インキ組成物を提供することができる。また、本実施の形態によれば、上記導電性インキ組成物を用いた電極や配線、薄膜形成基板や回路基板、電子装置等を提供することができる。言い換えれば、本実施の形態によれば、金属の粒成長が抑制され、表面平滑性に優れ、塗布対象物との密着性に優れた、配線や電極、薄膜形成基板、ひいては、上記配線および/または電極を有する、アクティブマトリクス基板(TFTアレイ基板)等の回路基板、並びにこれら回路基板を用いた(液晶)表示装置等の電子装置を提供することができる。
【0255】
すなわち、本実施の形態によれば、例えば、上記導電性インキ組成物を乾燥または熱処理(例えば焼成)することにより得られた薄膜形成基板や回路基板を提供することができる。
【0256】
例えば、本実施の形態において、上記基板、配線、電極、アクティブマトリクス基板、回路基板に使用される導電性インキ組成物は、250℃〜350℃の熱処理を受けている構成であってもよい。
【0257】
また、本実施の形態によれば、基体(下地となる基板)上に上記導電性インキ組成物により形成された配線または電極を提供することができる。
【0258】
さらに、本実施の形態によれば、複数の信号線がマトリクス状に形成され、各信号線の交差部近傍に形成されたスイッチング素子を有するアクティブマトリクス基板において各信号線が上記導電性インキ組成物により形成されているアクティブマトリクス基板を提供することができる。
【0259】
また、本実施の形態によれば、複数の信号線がマトリクス状に形成され、各信号線の交差部近傍に形成されたスイッチング素子を有するアクティブマトリクス基板において上記信号線のうち下部に形成された信号線(つまり、信号線のクロス部における下部配線)が上記導電性インキ組成物により形成されているアクティブマトリクス基板を提供することができる。
【0260】
さらに、本実施の形態によれば、複数の信号線がマトリクス状に形成され、各信号線の交差部近傍に形成されたスイッチング素子を有するアクティブマトリクス基板において上記スイッチング素子の下部にあって上記スイッチング素子のON/OFFを司る電極(例えばゲート電極)が、上記導電性インキ組成物により形成されているアクティブマトリクス基板を提供することができる。
【0261】
なお、上記導電性インキ組成物は、上記有機溶媒(分散媒)以外に、分散剤や界面活性剤、粘度調整剤、表面張力調整剤等の従来公知の各種添加剤を、上記導電性インキ組成物が有する効果を妨げない範囲内で含んでいても構わない。
【0262】
本実施の形態にかかる導電性インキ組成物は、反射型TFT液晶表示装置等に用いられるようなTFTアレイ基板上の光反射性電極(以下、単に反射電極と記す)等の反射部材に用いることもできる。この場合、上記導電性インキ材料の優れた耐熱性により、例えば、200℃、あるいは300℃といった高温での熱焼成においても、従来の銀インクを用いた、銀単体からなる膜のように表面平滑性が失われることはない。そのため、設計外の光散乱が起こらず、光反射性電極として充分な光反射率を維持できる等、TFTアレイ基板としての特性を充分に発揮させることができる。
【0263】
なお、勿論のことながら、上記導電性インキ組成物は、TFTアレイ基板等の回路基板中に形成される反射部材のみならず、単体で存在している反射板等の反射部材に用いてもよい。すなわち、本実施の形態にかかる反射部材は、必ずしも回路基板中に存在するものである必要はなく、単体で用いられるものであってもよい。
【0264】
本実施の形態にかかる導電性インキ組成物として銀−インジウム系導電性インキ組成物からなる金属膜を反射電極(反射板、画素電極)に用いたTFTアレイ基板11は、例えば以下のようにして製造することができる。
【0265】
なお、反射型TFT液晶表示装置に使用されるTFTアレイ基板11は、チャネル部加工工程107までは、上記と同様にして製造することができる。よって、以下の説明では、保護膜・層間絶縁層成膜工程108以降の工程について説明するものとする。
【0266】
(保護膜・層間絶縁層成膜工程108)
本保護膜・層間絶縁層成膜工程108においては、感光性アクリル樹脂材料の代わりに、ゾルゲル法を用いた塗布型の絶縁材料(ゾルゲル材料)を、前記窒化シリコン膜55上に塗布した。ゾルゲル材料は、銀−インジウム系導電性インキ組成物を焼成する工程において、感光性アクリル樹脂材料よりも高い耐熱性(高温耐性)を有している。また、ゾルゲル材料を使用することで、上記窒化シリコン膜55を形成したTFT15形成部(TFT部)の段差を平坦化することができる。
【0267】
なお、本保護膜・層間絶縁層成膜工程108においては、上記ゾルゲル材料の焼成工程を考慮して、窒化シリコン膜を250℃で成膜した。また窒化シリコン膜55を成膜した後に、該窒化シリコン膜55上に上記ゾルゲル材料を塗布し、同様に250℃で焼成を行った。
【0268】
なお、ゾルゲル材料は、これ自体は感光性を有していない。よって、本保護膜・層間絶縁層成膜工程108においては、上記窒化シリコン膜55上に塗布したゾルゲル材料上に、さらにレジストを塗布し、マスクを用いた露光と、現像と、焼成とを行うことで、所定のパターンを有する層間絶縁層26を得た。
【0269】
(保護膜加工工程109)
次いで、上記窒化シリコン膜55を、前記保護膜加工工程109と同様にドライエッチングすることにより、保護層25およびコンタクトホール23を形成した。
【0270】
上記ドライエッチングには、前記保護膜加工工程109と同様、CFガスとOガスとの混合ガスを用いた。その後、レジストを剥離することにより、図24(a)・(b)と同様の構造が得られた。なお、上記ゾルゲル材料からなる層のドライエッチング時には、該ゾルゲル材料下に形成されている窒化シリコン膜55も同時にエッチングした。
【0271】
(画素電極形成工程110)
次に、層間絶縁層26が形成された上記基板(すなわち、図24(a)・(b)に示す基板)上に、本実施の形態にかかる導電性インキ組成物を、1500rpmで30秒間、スピンコートを行うことで、250nmの膜厚の上記導電性インキ組成物からなる膜(導電性インキ組成物膜)を得た。
【0272】
上記導電性インキ組成物には、銀に対するインジウムの割合が0.1原子%であり、保護コロイドとして、後述する実施例11に記載の保護コロイドを用いた導電性インキ組成物(反射電極用低抵抗材料)を用いた。
【0273】
次いで、上記導電性インキ組成物膜を、大気中で、250℃で1時間、焼成を行った。上記導電性インキ組成物からなる金属膜(焼成膜)の反射率は、550nmの波長で94%であった。
【0274】
次いで、フォトリソグラフィを用いて、上記導電性インキ組成物からなる金属膜(焼成膜)をパターニングした。これにより、上記層間絶縁層26が形成された図24(a)・(b)に示す基板上に、反射電極として、図6および図7(a)・(b)に示すように、上記導電性インキ組成物からなる画素電極24および端子電極29が形成されたTFTアレイ基板11を得ることができた。すなわち、上記の方法によれば、層間絶縁層26上に、上記導電性インキ組成物からなる画素電極24(反射電極)が形成された、図4〜図7(a)・(b)に示されるTFTアレイ基板11と同様の構造を有するTFTアレイ基板11を得ることができた。
【0275】
なお、上記した反射電極形成工程では、上記層間絶縁層26が形成された、図24(a)・(b)に示す構造を有する基板上に、上記導電性インキ組成物をスピンコート法により塗布、焼成し、その後パターニングすることにより、上記反射電極を形成したが、上記反射電極の形成方法としては、これに限定されるものではなく、他の方法を用いてもよい。例えば、上記層間絶縁層26が形成された、図24(a)・(b)に示す構造を有する基板上に、レジストを塗布し、パターニングすることにより、反射電極をパターン形成するためのガイドを形成し、その後、本実施の形態にかかる上記導電性インキ組成物を塗布、焼成し、上記ガイドを有機溶剤で除去することにより、上記反射電極を形成することもできる。なお、上記有機溶剤としては、上記レジストを溶解することができるように、使用するレジストに応じて、適宜選択すればよく、特に限定されるものではない。
【0276】
このようにして得られた反射電極は、上記導電性インキ材料の優れた耐熱性により、200℃、あるいは300℃といった焼成温度においても、従来の銀インクを用いた、銀単体からなる膜のように表面平滑性が失われることはなかった。上記の方法によれば、設計外の光散乱が起こらず、光反射性電極として充分な光反射率を維持することができるTFTアレイ基板11を提供することができることが判る。
【0277】
なお、上記具体例においては、本実施の形態にかかる導電性インキ組成物として、銀−インジウム系導電性インキ組成物を使用したが、本実施の形態はこれに限定されるものではなく、前記したように、金属微粒子として銀を単体で用いてなる、本実施の形態にかかる銀系導電性インキ組成物を使用してもよい。
【0278】
前記したように、本実施の形態によれば、特定の保護コロイド、すなわち、(A)アミン類と、(B)カルボン酸とからなり、上記(B)カルボン酸が、(I)炭素数4〜9のカルボン酸から選ばれる少なくとも一種のカルボン酸と、(II)炭素数10〜30のカルボン酸から選ばれる少なくとも一種のカルボン酸との混合物であり、かつ、(B)カルボン酸の平均炭素数が5〜25である保護コロイドを使用することで、導電性インキ組成物から作製した膜における添加金属の含有量が少ない領域、例えば、銀−インジウム金属膜のインジウム含有量が少なくなる領域においても塗布対象物との密着性を向上させることができ、さらには、金属微粒子として貴金属を単体で用いた場合でも、金属の粒成長を抑制し、塗布対象物との密着性を改善することができる。
【0279】
図30に、上記保護コロイドとして、オクタデカジエン酸と、ヘキサン酸と、オクチルアミンとからなる、実施例11に示す保護コロイドを使用してなる銀のインキ膜を、Nガス雰囲気中、300℃にて1時間アニールして得られた金属膜表面の状態を、電子顕微鏡写真(倍率3万倍)にて示す。
【0280】
また、図31に、比較のために、上記保護コロイドとして、ペンタデカン酸と、オクチルアミンとからなる保護コロイドを使用してなる銀のインキ膜を、Nガス雰囲気中、300℃にて1時間アニールして得られた金属膜表面の状態を、同じく電子顕微鏡写真(倍率3万倍)にて示す。
【0281】
図31に示すように、銀を単体で用いた場合、保護コロイドとして、ペンタデカン酸と、オクチルアミンとからなる保護コロイドを使用すると、図33に示すように、保護コロイドとしてナフテン酸とオクチルアミンとからなる保護コロイドを使用した銀のインク膜よりも銀の粒成長は少ないものの、得られた金属膜の膜表面に凹凸や粒成長が認められるとともに、膜表面および膜断面に細かい孔が認められる。また、図31に示す結果から、銀を単体で用いた場合、保護コロイドとして、ペンタデカン酸と、オクチルアミンとからなる保護コロイドを用いても、図32に示す銀のインキ膜に対する、銀の粒成長の顕著な抑制効果は認められないことが判る。また、図31に示す銀のインキ膜においても、分断面近くでは、膜剥がれにより、塗布対象物である基材(下地材料)より膜が浮いており、密着性(付着力)が低いことが判る。
【0282】
これに対し、図30に示すように、特定の保護コロイドを使用することで、図31〜33に示す金属膜と比較して、膜表面の粒成長が著しく抑制され、膜表面や膜断面の細かい孔も見られず、表面性が非常に良くなっていることが判る。また、図30によれば、分断面近くで膜が剥がれることもなく、基材との密着性(付着力)も向上していることが判る。
【0283】
従って、本実施の形態によれば、特定の保護コロイドを使用することで、金属微粒子として貴金属を単体で使用した場合でも、金属の粒成長が抑制され、表面平滑性、塗布対象物との密着性、反射特性(反射効率)に優れ、低抵抗の配線や電極、反射部材を有する、アクティブマトリクス基板(TFTアレイ基板)等の回路基板、並びにこれら回路基板を用いた(液晶)表示装置等の電子装置を提供することができる。
【0284】
さらに、本実施の形態にかかる導電性インキ組成物並びに配線の構成、配線形成方法は、PDP(プラズマディスプレイパネル)を構成するガラス基板上のバス電極、データ電極としても用いられる。これらの電極は、PDPを駆動するために前面ガラス基板、または背面ガラス基板に配置されるものであり、従来は、銀、クロム/銅/クロム、アルミニウム/クロムの構成であり、上記電極は、銅やアルミニウムの基板への付着力向上、膨張係数の違いに対する対策等から、上記したようにガラス基板との間にクロム層をはさむ構造としなければ使用することができなかった。一方、流動性の配線材料として従来知られている銀は耐熱性に課題があり、高温焼成により結晶粒の成長が生じ、使用し難い材料であった。
【0285】
これに対して、本実施の形態にかかる導電性インキ組成物は、優れた耐熱性と、ガラス基板への付着力とを有するので、銀等の従来の材料に代わって、バス電極、データ電極として有益に用いられる。
【0286】
また、本実施の形態にかかる導電性インキ組成物並びに配線の構成、配線形成方法は、EL(エレクトロルミネッセンス)を用いた表示装置についても用いることができる。液晶表示装置と同様に、EL素子を駆動する回路基板は、TFTアレイを用いた回路形成であることが多く、本実施の形態で示した工程と同様の工程を経て作製されることがある。従って、本発明を、ELを用いた表示装置に適用することは可能である。
【0287】
以上のように、本実施の形態にかかる導電性インキ組成物は、液晶表示装置等に用いられるTFTアレイ基板、PDP(プラズマディスプレイパネル)に用いられる電極基板、プリント配線基板、フレキシブル配線基板等の各種回路基板の製造に好適に用いられる。また、このような回路基板は、液晶表示装置、PDP(プラズマディスプレイパネル)、有機EL(エレクトロルミネッセンス)パネル、無機ELパネル等の表示装置;指紋センサ、X線撮像装置等に代表される二次元画像入力装置等の画像入力装置;等の電子装置に好適に用いることができる。
【0288】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0289】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0290】
〔実施例1〕
(ヘキサン酸+ドコサン酸+オクチルアミン)
2−プロパノール550mlに水素化ホウ素ナトリウム15mmolを添加し、80℃で3時間撹拌して水素化ホウ素ナトリウム−2−プロパノール溶液を調製した。
【0291】
一方、(A)アミン類としてのオクチルアミン150mmolと、(B)カルボン酸としてのヘキサン酸68mmolおよびドコサン酸8mmolと、金属化合物である酢酸インジウム0.3mmolおよび酢酸銀15mmolとを、有機溶媒としての2,2,4−トリメチルペンタン1.05Lに添加して溶解させて金属塩溶液を調製した。
【0292】
その後、上記金属塩溶液中に、上記水素化ホウ素ナトリウム−2−プロパノール溶液を10ml/minで滴下した。滴下後、60分間撹拌した後、エバポレータで濃縮し、褐色の液体を得た。この液体にメタノール1Lを加え、導電性インキ組成物を褐色の沈殿物として生成させた後、吸引濾過により沈殿物を回収した。
【0293】
得られた導電性インキ組成物を、テトラデカンに、金属の重量(質量)が35質量%になるように分散させ、銀−インジウム系導電性インキを得た。紫外可視分光光度計および透過型電子顕微鏡を使用し、導電性インキ中のナノ粒子を確認した。得られた導電性インキを無アルカリガラス基板上にスピンコートによって塗布し、マッフル炉にて300℃、30分間焼成(熱アニール)した。得られた焼成膜の膜厚は273nmであり、体積抵抗率は8.4μΩ・cmであった。膜と基板との密着性(付着力)は、テープ剥離試験により評価した。テープ剥離試験は、熱アニール後、所定のカットを入れた膜面に粘着テープを貼り、膜面を引き剥がすように粘着テープを剥離し、一部でも膜面に剥がれが見られれば不良、全く剥がれが見られないときを良と判定した。本実施例で得られた膜と基板との密着性(付着力)は良好で、テープ剥離試験をクリアした。また、蛍光X線分光装置にて組成を測定したところ、膜中のインジウムの割合が0.78原子%であった。その焼成膜を触針式膜厚計測定および走査型電子顕微鏡で観察したところ、中心線平均粗さRaは3.2nmであり、平滑な膜であった。また、Nガス雰囲気下、300℃で60分間保持しても膜表面の形態に変化は見られず、耐熱性に優れていた。
【0294】
〔実施例2〕
(ヘキサン酸+ナフテン酸+オクチルアミン)
実施例1の条件で、(B)のカルボン酸のうちドコサン酸8mmolをナフテン酸(平均分子量=約270)2.025g(約8mmolに相当)に代えた以外は実施例1と同様にして銀−インジウム系導電性インキを作製し、無アルカリガラス基板上に成膜した。得られた焼成膜の膜厚は355nmであり、体積抵抗率は9.8μΩ・cmであった。膜と基板との密着性は良好でテープ剥離試験をクリアした。膜中のインジウムの割合は1.0原子%であった。中心線平均粗さRaは3.2nmであり、平滑な膜であった。また、Nガス雰囲気下、300℃、60分間保持しても膜表面の形態に変化は見られず、耐熱性に優れていた。GC/MSにて用いたナフテン酸を測定したところ、炭素数10から30のものの混合物であり、炭素数17の成分が最も多く含まれていた。なお、ナフテン酸の物質量は、平均分子量から計算した。
【0295】
〔実施例3〕
(ヘキサン酸+オクチルアミン)
実施例1の条件で、ドコサン酸を用いず、ヘキサン酸を76mmolとした(つまり、(B)のカルボン酸としてヘキサン酸のみを用いた)以外は実施例1と同様にして銀−インジウム系導電性インキを作製し、無アルカリガラス基板上に成膜した。得られた焼成膜の膜厚は508.1nmであり、体積抵抗率は12.5μΩ・cmであった。膜中のインジウムの割合は0.1原子%で中心線平均粗さRaは38.2nmであり、前記実施の形態1および2と比較して膜と基板との密着性および表面平滑性に劣るものであったが、銀を単体で使用してなる、従来の銀インクよりも、得られた膜の表面の粗さ並びに膜と基板との密着性は改善されていた。
【0296】
〔実施例4〕
(ヘキサン酸+オクタデカン酸+オクチルアミン)
実施例1の条件で、(B)のカルボン酸のうちドコサン酸をオクタデカン酸に代えた以外は実施例1と同様にして銀−インジウム系導電性インキを作製し、無アルカリガラス基板上に成膜した。膜中のインジウムの割合は0.1原子%であった。膜と基板との密着性は前記実施の形態1および2と比較して劣るものであったが、銀を単体で使用してなる、従来の銀インクよりも、得られた膜の表面粗さ並びに膜と基板との密着性は改善されていた。
【0297】
〔実施例5〕
(ドコサン酸+オクチルアミン)
実施例1の条件で、ヘキサン酸を使用せず、ドコサン酸を76mmolとした(つまり、(B)のカルボン酸としてドコサン酸のみを用いた)以外は、実施例1と同様にして銀−インジウム系導電性インキの作製を行ったが、室温では前記金属が溶媒に十分に溶解せず、また、60℃に保持して同様に作製を行ったが、凝集物が生成することが判った。よって、上記条件では従来よりも密着性の改善効果は得られるにしても、実施例1と比較して膜と基板との密着性の改善効果に劣ることが判る。
【0298】
〔実施例6〕
(ナフテン酸+オクチルアミン)
実施例2の条件で、ヘキサン酸を使用せず、ナフテン酸(平均分子量=約270)を20.25g(約75mmolに相当)とした(つまり、(B)のカルボン酸としてナフテン酸のみを用いた)以外は実施例2と同様にして銀−インジウム系導電性インキを作製し、無アルカリガラス基板上に成膜した。得られた焼成膜の膜厚は286nmであり、体積抵抗率は11.8μΩ・cmであった。膜と基板との密着性は良好でテープ剥離試験をクリアした。膜中のインジウムの割合は0.8原子%であった。中心線平均粗さRaは3.7nmであり、平滑な膜であった。しかし、Nガス雰囲気下、300℃で60分保持後、膜表面に数百nmの粒子がまばらに生成し、前記実施の形態1、2と比較して耐熱性に劣るものであったが、銀を単体で使用してなる、従来の銀インクよりも、得られた膜の表面粗さは改善されていた。
【0299】
〔実施例7〕
(ヘキサン酸+テトラデカン酸+オクチルアミン)
実施例1の条件で、酢酸インジウム0.3mmolを0.4mmolに、(B)のカルボン酸のうちドコサン酸8.0mmolをテトラデカン酸8.0mmolに代えた以外は実施例1と同様にして銀−インジウム系導電性インキを作製し、無アルカリガラス基板上に成膜した。得られた焼成膜の膜厚は422nmであり、体積抵抗率は10.2μΩ・cmであった。膜と基板との密着性は良好でテープ剥離試験をクリアした。膜中のインジウムの割合は0.3%であった。中心線表面粗さRaは2.7nmであり、平滑な膜であった。
【0300】
〔実施例8〕
(ヘキサン酸+ペンタデカン酸+オクチルアミン)
実施例1の条件で、酢酸インジウム0.3mmolを0.4mmolに、(B)のカルボン酸のうちドコサン酸8.0mmolをペンタデカン酸8.0mmolに代えた以外は実施例1と同様にして銀−インジウム系導電性インキを作製し、無アルカリガラス基板上に成膜した。得られた焼成膜の膜厚は384nmであり、体積抵抗率は10.4μΩ・cmであった。膜と基板との密着性は良好でテープ剥離試験をクリアした。膜中のインジウムの割合は0.4%であった。中心線表面粗さRaは1.6nmであり、平滑な膜であった。
【0301】
〔実施例9〕
(ヘキサン酸+ヘキサデカン酸+オクチルアミン)
実施例1の条件で、酢酸インジウム0.3mmolを0.4mmolに、(B)のカルボン酸のうちドコサン酸8.0mmolをヘキサデカン酸8.0mmolに代えた以外は実施例1と同様にして銀−インジウム系導電性インキを作製し、無アルカリガラス基板上に成膜した。得られた焼成膜の膜厚は450nmであり、体積抵抗率は10.4μΩ・cmであった。膜と基板との密着性は良好でテープ剥離試験をクリアした。膜中のインジウムの割合は0.3%であった。中心線表面粗さRaは6.5nmであり、平滑な膜であった。
【0302】
〔実施例10〕
(ヘキサン酸+オクタデセン酸+オクチルアミン)
実施例1の条件で、酢酸インジウム0.3mmolを0.4mmolに、(B)のカルボン酸のうちドコサン酸8.0mmolをオクタデセン酸8.0mmolに代えた以外は実施例1と同様にして銀−インジウム系導電性インキを作製し、無アルカリガラス基板上に成膜した。得られた焼成膜の膜厚は450nmであり、体積抵抗率は10.4μΩ・cmであった。膜と基板との密着性は良好でテープ剥離試験をクリアした。膜中のインジウムの割合は0.3%であった。中心線表面粗さRaは6.5nmであり、平滑な膜であった。
【0303】
〔実施例11〕
(ヘキサン酸+オクタデカジエン酸+オクチルアミン)
実施例1の条件で、酢酸インジウム0.3mmolを0.4mmolに、(B)のカルボン酸のうちドコサン酸8.0mmolをオクタデカジエン酸8.0mmolに代えた以外は実施例1と同様にして銀−インジウム系導電性インキを作製し、無アルカリガラス基板上に成膜した。得られた焼成膜の膜厚は329nmであり、体積抵抗率は5.35μΩ・cmであった。膜と基板との密着性は良好でテープ剥離試験をクリアした。膜中のインジウムの割合は0.2%であった。中心線表面粗さRaは3.9nmであり、平滑な膜であった。
【0304】
〔実施例12〕
また、保護コロイドの種類を種々変更し、焼成条件300℃、焼成時間30〜90分間にて、粒成長の有無を測定した結果を表1に示す。50nmを超える粒成長が確認されるものの、銀単体の場合と比較して表面荒れが改善されたものを「△」、粒成長が、50nm以下に抑えられているものを「○」で示す。
【0305】
【表1】

【0306】
以上のように、本発明によれば、上記導電性インキ組成物が、少なくとも貴金属を含む合金からなる金属微粒子の表面が、少なくとも二種の有機化合物からなる保護コロイドで被覆されてなる固形物を含むことで、金属微粒子として銀単体を使用した場合と比較して、金属の粒成長を抑制し、表面平滑性に優れた、塗布対象物との密着性が従来よりも改善された膜(金属膜)を形成することができることが判る。また、保護コロイドとして、アミン類に加えて前記した高分子量のカルボン酸と低分子量のカルボン酸とを共に含む保護コロイドを使用することで、上記金属の粒成長の抑制効果が顕著に向上することが判る。
【0307】
〔実施例13〕
実施例1の条件で、酢酸インジウム0.3mmolを0.4mmolに、(B)のカルボン酸のうちドコサン酸8.0mmolをオクタデカジエン酸8.0mmolに代えた以外は実施例1と同様にして銀−インジウム系導電性インキを作製し、無アルカリガラス基板上に成膜した。得られた焼成膜の膜厚は300nmであり、体積抵抗率は4.38μΩ・cmであった。膜と基板との密着性は良好でテープ剥離試験をクリアした。膜中のインジウムは、検出されはしたが、その割合は0.1%未満であった。中心線表面粗さRaは2.1nmであり、平滑な膜であった。
【0308】
この膜の反射特性を調べたところ、図29に示す通りであった。「In0.1at%」は、カルボン酸としてヘキサン酸およびオクタデカジエン酸を用いた上記銀−インジウム系導電性インキの塗布膜(焼成膜)であり、400nm近傍の領域で反射特性が下がっているが、概ね可視光領域で良好な反射特性を示した。
【0309】
また、同様にして、「In0.3at%」、「In0.6at%」、「In0.8at%」、「Al(スパッタ膜)」、および、「In0.1%(蒸着膜)」の反射特性を調べた。この結果を併せて図29に示す。ここで、「In0.3at%」、「In0.6at%」、「In0.8at%」は、実施例2に示すように、カルボン酸としてヘキサン酸およびナフテン酸を用いた銀−インジウム系導電性インキからなる焼成膜の反射率特性であり、それぞれ、膜中インジウムの割合が、0.3原子%、0.6原子%、0.8原子%の場合を示している。また、「Al(スパッタ膜)」はスパッタ成膜によるAl膜を示す。「In0.1%(蒸着膜)」は、銀−インジウム合金を蒸着してなる蒸着膜(保護コロイドは含まない)であり、膜中インジウムの割合が、0.1原子%の場合を示している。図29に示す各膜(金属膜)における膜中インジウムの割合(In濃度)並びに各金属膜の成膜に使用した導電性インキ(導電性インキ組成物)に用いた保護コロイドをまとめて表2に示す。なお、上記反射特性の測定には、「日立分光光度計U−4100」(株式会社日立製作所製の分光光度計)を用いた。
【0310】
【表2】

【0311】
図29に示す結果から、反射率はインジウムの含有量に大きく影響されることが判る。また、膜中インジウムの割合が大きいほど反射率が低下することから、良好な反射特性を得るには、膜中のインジウム量をできるだけ減らすことが必要であることが判る。
【0312】
一方、基板への密着性は、実施例3、4から判るように、膜中のインジウムの割合が減少するにしたがって弱くなる傾向にあるが、In濃度を種々変更して調べた結果、保護コロイドに、オクタデカジエン酸、ヘキサン酸、オクチルアミンを用いてなる膜は、インジウム含有量(In濃度)が極端に低い場合でも上記密着性に優れ、図29における「In0.1at%」では、膜中のインジウムの割合が0.1原子%を下回っても良好な密着性を維持している。
【0313】
さらに、「In0.1at%」に示すように、保護コロイドに、オクタデカジエン酸、ヘキサン酸、オクチルアミンを用いてなる膜は、インジウムと保護コロイドとの作用で銀の粒成長が抑制されるため、300℃の熱処理後でも銀特有の粒成長は見られず、反射板に好適に使用することができることが判った。この「In0.1at%」で示される膜の反射特性は、波長400nmでは反射率80%と、「Al(スパッタ膜)」よりも低いものの、波長450nmよりも長波長側では、逆にスパッタ成膜によるAl膜の反射率を超え、「In0.1%(蒸着膜)」に近い反射特性を得ることができた。
【0314】
なお、この「In0.1at%」が、「In0.1%(蒸着膜)」に低波長側で反射率が及ばないのは、上記インキ膜中に残留する有機成分が関係している可能性があると推察される。従って、In濃度が大きいほど反射率が低下する一因に、In濃度のみならず、含有有機成分が関係している可能性もあると推察される。
【0315】
〔実施例14〕
(銀系導電性インキ組成物)
実施例1の条件で、酢酸インジウムを使用せず、(B)のカルボン酸のうちドコサン酸8.0mmolをオクタデカジエン酸8.0mmolに代えた以外は実施例1と同様にして、上記金属微粒子として銀を単体で用いた銀系導電性インキ(銀系導電性インキ組成物)を作製し、無アルカリガラス基板上に成膜した。得られた焼成膜の膜厚は298nmであり、体積抵抗率は3.11μΩ・cmであった。膜と基板との密着性は良好でテープ剥離試験をクリアした。中心線表面粗さRaは16.3nmであり、平滑な膜であった。本実施例によれば、金属として銀を単体で使用したにも拘らず、オクタデカジエン酸、ヘキサン酸、オクチルアミンを保護コロイドとして用いることで、銀を単体で使用している従来の銀インクよりも、得られた膜の表面粗さは改善されていた。
【0316】
上記各実施例で用いた(B)カルボン酸の炭素数または平均炭素数を、表3にまとめて示す。
【0317】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0318】
本発明の導電性インキ組成物は、金属の粒成長を抑制し、表面平滑性に優れ、塗布対象物との密着性や反射効率が従来よりも改善された膜(金属膜)を形成することができるため、液晶表示装置等に用いられるTFTアレイ基板、PDPに用いられる電極基板、プリント配線基板、フレキシブル配線基板等の各種回路基板の製造、特にインクジェット法を用いた回路基板の製造に好適に用いられる。また、このような回路基板は、液晶表示装置、PDP、有機ELパネル、無機ELパネル等の表示装置;指紋センサ、X線撮像装置等に代表される二次元画像入力装置等の画像入力装置;等の電子装置に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0319】
【図1】実施例2に示す保護コロイドを使用してなる銀−インジウムのインキ膜を、Nガス雰囲気中、300℃にて1時間アニールして得られた金属膜表面の状態を、電子顕微鏡写真(倍率3万倍)にて示す図である。
【図2】(a)〜(c)は、本発明の実施の一形態にかかる導電性インキ組成物の製造工程を示す図である。
【図3】本発明にかかる回路基板を製造するためのパターン形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図4】本発明の実施の一形態にかかる液晶表示装置におけるTFTアレイ基板の概略構成を示す平面図である。
【図5】図4に示すTFTアレイ基板における1画素の概略構成を示す平面図である。
【図6】図5に示すTFTアレイ基板におけるA−A線矢視断面図である。
【図7】(a)は、図4に示すTFTアレイ基板における1端子部の概略構成を示す平面図であり、(b)は、(a)に示す端子部のB−B線矢視断面図である。
【図8】本発明の実施の一形態にかかる液晶表示装置におけるTFTアレイ基板の製造工程を示す工程図である。
【図9】(a)はゲート配線前処理工程完了後のTFTアレイ基板における画素部分の概略構成を示す平面図であり、(b)は、ゲート配線形成工程完了後の画素部分の概略構成を示す平面図であり、(c)は、(b)のC−C線矢視断面図である。
【図10】(a)は、ゲート配線前処理工程完了後のTFTアレイ基板における端子部分の概略構成を示す平面図であり、(b)は、ゲート配線形成工程完了後の端子部分の概略構成を示す平面図であり、(c)は、(b)のD−D線矢視断面図である。
【図11】(a)〜(d)は、ゲート配線前処理工程における親撥水(親撥液)領域の形成工程を示す図である。
【図12】(a)は、ゲート配線全体の構成を模式的に示す概略構成図であり、(b)は、(a)に示すゲート配線におけるゲート電極部の構成を模式的に示す概略構成であり、(c)は、(a)に示すゲート配線における端子電極部の構成を模式的に示す概略構成図である。
【図13】(a)〜(e)は、図12(a)〜(c)に示すTFTアレイ基板の配線部と、端子電極部における端子部との形成工程を示す図である。
【図14】(a)および(b)は、ゲート電極にのみ本実施の形態にかかる導電性インキ組成物を使用する場合の上記ゲート電極の形成工程を示す図である。
【図15】本発明により配線の平坦性が改善された状態を示す模式図である。
【図16】(a)は、ゲート絶縁膜・半導体膜成膜工程完了後のTFTアレイ基板における画素部分の概略構成を示す平面図であり、(b)は、(a)のF−F線矢視断面図である。
【図17】(a)は、ゲート絶縁膜・半導体膜成膜工程完了後のTFTアレイ基板における端子部分の概略構成を示す平面図であり、(b)は、(a)のF−F線矢視断面図である。
【図18】ゲート絶縁膜・半導体膜加工工程完了後のTFTアレイ基板における画素部分の概略構成を示す平面図であり、(b)は、(a)のG−G線矢視断面図である。
【図19】ゲート絶縁膜・半導体膜加工工程完了後のTFTアレイ基板における端子部分の概略構成を示す平面図であり、(b)は、(a)のH−H線矢視断面図である。
【図20】(a)は、ソース・ドレイン配線前処理工程完了後の画素部分の概略構成を示す平面図であり、(b)は、ソース・ドレイン配線形成工程完了後の画素部分の概略構成を示す平面図であり、(c)は、(b)のI−I線矢視断面図である。
【図21】チャネル部加工工程完了後の画素部分の概略構成を、図20(b)におけるI−I線矢視断面にて示す図である。
【図22】(a)は、保護膜・層間絶縁層成膜工程完了後の画素部分の概略構成を示す平面図であり、(b)は、(a)のJ−J線矢視断面図である。
【図23】(a)は、保護膜・層間絶縁層成膜工程完了後の端子部分の概略構成を示す平面図であり、(b)は、(a)のK−K線矢視断面図である。
【図24】(a)は、保護膜加工工程完了後の画素部分の概略構成を、図22(a)におけるJ−J線矢視断面にて示す図であり、(b)は、保護膜加工工程完了後の端子部分の概略構成を、図23(a)におけるK−K線矢視断面にて示す図である。
【図25】Nガス雰囲気中、300℃で1.5時間の熱アニール処理を行って得られた銀の単体蒸着膜表面の状態を、電子顕微鏡写真(倍率3万倍)にて示す図である。
【図26】Nガス雰囲気中、300℃で1.5時間の熱アニール処理を行って得られた銀−インジウム蒸着膜の表面の状態を、電子顕微鏡写真(倍率3万倍)にて示す図である。
【図27】保護コロイドとして、ナフテン酸とオクチルアミンとからなる保護コロイドを使用してなる銀−インジウムのインキ膜を、Nガス雰囲気中、300℃にて1時間アニールして得られた金属膜表面の状態を、電子顕微鏡写真(倍率3万倍)にて示す図である。
【図28】貴金属の粒成長により上部配線と下部配線との間にリークが生じている状態を示す模式図である。
【図29】実施例13に示す各金属膜中のインジウム含有量と反射特性との関係を示すグラフである。
【図30】保護コロイドとして、オクタデカジエン酸とヘキサン酸とオクチルアミンとからなる保護コロイドを使用してなる銀のインキ膜を、Nガス雰囲気中、300℃にて1時間アニールして得られた金属膜表面の状態を、電子顕微鏡写真(倍率3万倍)にて示す図である。
【図31】保護コロイドとして、ペンタデカン酸とオクチルアミンとからなる保護コロイドを使用してなる銀のインキ膜を、Nガス雰囲気中、300℃にて1時間アニールして得られた金属膜表面の状態を、電子顕微鏡写真(倍率3万倍)にて示す図である。
【図32】保護コロイドとしてオクチルアミンのみを使用してなる銀のインキ膜を、Nガス雰囲気中、300℃で30分間アニールして得られた金属膜表面の状態を、電子顕微鏡写真(倍率3万倍)にて示す図である。
【図33】保護コロイドとして、ナフテン酸とオクチルアミンとからなる保護コロイドを使用してなる銀のインキ膜を、Nガス雰囲気中、300℃にて30分間アニールして得られた金属膜表面の状態を、電子顕微鏡写真(倍率3万倍)にて示す図である。
【符号の説明】
【0320】
11 TFTアレイ基板(回路基板)
12 ガラス基板
13 ゲート配線(配線、金属層)
14 ソース配線(配線、金属層)
15 TFT
16 補助容量配線(配線、金属層)
17 ゲート電極(電極、金属層)
18 ゲート絶縁層
19 アモルファスシリコン層(半導体層)
21 ソース電極(電極、金属層)
22 ドレイン電極配線(配線、金属層)
23 コンタクトホール
24 画素電極(電極、反射部材、金属層)
25 保護層
26 層間絶縁層
27 半導体層
28 端子部
29 端子電極(電極、反射部材、金属層)
30 端子配線(配線、金属層)
31 基板
33 インクジェットヘッド
41 ゲート配線形成領域
42 ゲート電極形成領域
43 補助容量配線形成領域
44 端子配線形成領域
45 ゲート絶縁膜
46 アモルファスシリコン膜(半導体層)
61 画素形成領域
62 端子部形成領域
71 配線部(配線、金属層)
72 端子電極部
73 端子電極部
74 端子配線部
75 ゲート電極部
81 パターン形成装置
91 第1ヘッド
92 第2ヘッド
101 ゲート配線前処理工程
102 ゲート配線形成工程
103 ゲート絶縁膜・半導体膜成膜工程
104 ゲート絶縁膜・半導体膜加工工程
105 ソース・ドレイン配線前処理工程
106 ソース・ドレイン配線形成工程
107 チャネル部加工工程
108 保護膜・層間絶縁層成膜工程
109 保護膜加工工程
110 画素電極形成工程
201 下部配線
202 絶縁層
203 上部配線
301 反応容器
302 保護コロイドの原料
303 還元剤
304 金属微粒子
305 保護コロイド
M 流動性配線材料
N 導電性インキ組成物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも貴金属を含む合金からなる金属微粒子の表面が、少なくとも二種の有機化合物からなる保護コロイドで被覆されてなる固形物を含むことを特徴とする導電性インキ組成物。
【請求項2】
少なくとも一種が貴金属である複数種の金属からなる金属微粒子と、該金属微粒子を包囲した少なくとも二種の有機化合物からなる保護コロイドとからなる固形物であり、有機溶媒に分散可能であることを特徴とする導電性インキ組成物。
【請求項3】
貴金属からなる金属微粒子が保護コロイドで被覆されてなる固形物を含み、
上記保護コロイドが、(A)アミン類と、(B)カルボン酸とからなり、
上記(B)カルボン酸が、(I)炭素数4〜9のカルボン酸から選ばれる少なくとも一種のカルボン酸と、(II)炭素数10〜30のカルボン酸から選ばれる少なくとも一種のカルボン酸との混合物であり、かつ、(B)カルボン酸の平均炭素数は5〜25であることを特徴とする導電性インキ組成物。
【請求項4】
貴金属からなる金属微粒子が、(A)アミン類と、(B)カルボン酸とからなる保護コロイドで被覆されてなる固形物であり、有機溶媒に分散可能であって、上記(B)カルボン酸が、(I)炭素数4〜9のカルボン酸から選ばれる少なくとも一種のカルボン酸と、(II)炭素数10〜30のカルボン酸から選ばれる少なくとも一種のカルボン酸との混合物であり、かつ、(B)カルボン酸の平均炭素数は5〜25であることを特徴とする導電性インキ組成物。
【請求項5】
上記固形物における金属微粒子の割合が60質量%以上、95質量%以下の範囲内であり、保護コロイドの割合が5質量%以上、40質量%以下の範囲内(但し、両者の合計は100質量%)であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の導電性インキ組成物。
【請求項6】
少なくとも一種が貴金属である複数種の金属からなる金属微粒子と、該金属微粒子を包囲した少なくとも二種の有機化合物からなる保護コロイドと、有機溶媒とを含む液状物であることを特徴とする導電性インキ組成物。
【請求項7】
貴金属からなる金属微粒子と、該金属微粒子を包囲した保護コロイドと、有機溶媒とを含む液状物であり、
上記保護コロイドが、(A)アミン類と、(B)カルボン酸とからなり、
上記(B)カルボン酸が、(I)炭素数4〜9のカルボン酸から選ばれる少なくとも一種のカルボン酸と、(II)炭素数10〜30のカルボン酸から選ばれる少なくとも一種のカルボン酸との混合物であり、かつ、(B)カルボン酸の平均炭素数は5〜25であることを特徴とする導電性インキ組成物。
【請求項8】
上記金属微粒子、保護コロイド、および有機溶媒を、金属微粒子が15質量%以上、95質量%以下の範囲内、保護コロイドが1質量%以上、50質量%以下の範囲内、有機溶媒が1質量%以上、60質量%以下の範囲内(但し、これらの合計は100質量%)の割合で含むことを特徴とする請求項6または7記載の導電性インキ組成物。
【請求項9】
上記金属微粒子は、上記貴金属以外の金属として、標準酸化還元電位が−0.45〜+1.5V/NHEの範囲内の金属を含むことを特徴とする請求項1、2、6の何れか1項に記載の導電性インキ組成物。
【請求項10】
上記金属微粒子は、上記貴金属以外の金属として、鉄、コバルト、ニッケル、銅、カドミウム、インジウム、錫、タリウム、鉛、モリブデンおよびビスマスからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属を含むことを特徴とする請求項1、2、6の何れか1項に記載の導電性インキ組成物。
【請求項11】
上記金属微粒子は、銀とインジウムとからなることを特徴とする請求項1、2、6の何れか1項に記載の導電性インキ組成物。
【請求項12】
上記保護コロイドは、(A)アミン類と、(B)カルボン酸とを含む原料から得られる化合物および/または混合物であることを特徴とする請求項1、2、6、9〜11の何れか1項に記載の導電性インキ組成物。
【請求項13】
上記(B)カルボン酸は、(I)炭素数4〜9のカルボン酸から選ばれる少なくとも一種のカルボン酸と、(II)炭素数10〜30のカルボン酸から選ばれる少なくとも一種のカルボン酸との混合物であり、かつ、(B)カルボン酸の平均炭素数は5〜25であることを特徴とする請求項12記載の導電性インキ組成物。
【請求項14】
上記(A)アミン類は、炭素数5〜20のアルキルアミンであることを特徴とする請求項3、4、7、12、13の何れか1項に記載の導電性インキ組成物。
【請求項15】
上記保護コロイドは、オクタデカジエン酸、ヘキサン酸、およびオクチルアミンからなることを特徴とする請求項1〜14の何れか1項に記載の導電性インキ組成物。
【請求項16】
上記保護コロイドは、ナフテン酸、ヘキサン酸、およびオクチルアミンからなることを特徴とする請求項1〜14の何れか1項に記載の導電性インキ組成物。
【請求項17】
上記保護コロイドは、アルキルアミンを40モル%以上、79モル%以下の範囲内、(I)炭素数4〜9のカルボン酸から選ばれる少なくとも一種のカルボン酸を2モル%以上、40モル%以下の範囲内、(II)炭素数10〜30のカルボン酸から選ばれる少なくとも一種のカルボン酸を1モル%以上、20モル%以下の範囲内(但し、これらの合計は100質量%)で含む原料から得られる化合物化合物であるであることを特徴とする請求項1〜11の何れか1項に記載の導電性インキ組成物。
【請求項18】
上記有機溶媒は、炭素数10〜35の炭化水素類であることを特徴とする請求項6〜8の何れか1項に記載の導電性インキ組成物。
【請求項19】
上記有機溶媒は、側鎖を有する炭素数16〜30の脂肪族炭化水素類であることを特徴とする請求項6〜8の何れか1項に記載の導電性インキ組成物。
【請求項20】
請求項1〜19の何れか1項に記載の導電性インキ組成物を乾燥または熱処理してなることを特徴とする反射部材。
【請求項21】
請求項1〜19の何れか1項に記載の導電性インキ組成物を乾燥または熱処理してなる金属層を有することを特徴とする回路基板。
【請求項22】
上記金属層が、配線、電極、および反射部材から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項21記載の回路基板。
【請求項23】
請求項21または22に記載の回路基板を備えたことを特徴とする電子装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図28】
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【図29】
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【図1】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【公開番号】特開2006−37071(P2006−37071A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−160706(P2005−160706)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【出願人】(000006068)三ツ星ベルト株式会社 (730)
【Fターム(参考)】