説明

車両制御装置

【課題】取得した生体情報に基づいて、より正確な必要性判断のもと運転支援を行う。
【解決手段】心拍等の生体情報が所定の閾値(基準値)を越えたかい否かを、警告や車両制御等の運転操作支援を行うか否かを判断するための条件とし、この生体情報の閾値を、同乗者の有無に応じて変更する。これにより、従来よりも、より正確な運転者支援を行うことができるようになる。
すなわち、一人で運転している時と、隣に上司などの普段から緊張する相手が同乗している場合とでは、通常時の生体情報が異なるため、同じ閾値で判定できない。
そこで、同乗者によって緊張度が増している場合は、その緊張度を踏まえて閾値を設定し、運転操作に対する緊張度を検出しやすくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置に係り、運転者の生体情報を検出して車両を制御する車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、運転者の心拍数や血圧等の生体情報を検出し、その検出値を用いて運転を支援するように制御した技術が提案されている。
例えば、特許文献1記載技術では、生体情報としてドライバの心拍情報や呼吸情報を検出し、ドライバの覚醒度が低下した場合に警告音を発したり、車内のスピードメータ等の表示部を点滅させるようにしている。
【0003】
【特許文献1】特開2005−95408
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献記載技術では、検出した生体情報が所定の閾値以上になった場合に運転支援をするようになっている。
しかし、例えば、社長が同乗している場合と家族が同乗している場合とでは運転者の緊張の度合いが異なるのが実情である。このように、運転者の緊張状態は同乗者の有無によって変化するものであるにもかかわらず、特許文献記載技術では一定の閾値を使用していた。
このため、緊張状態は同乗者が原因であり、必ずしも運転支援を必要としていない状態であるにもかかわらず、不要な運転支援を行う可能性がある。
【0005】
そこで本発明は、取得した生体情報に基づいて、より正確な必要性判断のもと運転支援を行うことが可能な車両制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)請求項1に記載した発明では、運転者の生体情報を取得する生体情報取得手段と、前記取得した生体情報の値が所定の閾値を越えた場合に、運転支援をする運転支援手段と、同乗者の有無を検出する同乗者検出手段と、を備え、前記支援手段は、前記同乗者検出手段による同乗者の有無に応じて前記閾値を変更する、ことにより前記目的を達成する。
(2)請求項2に記載した発明では、請求項1に記載の車両制御装置において、前記同乗者検出手段は、同乗者を判別する同乗者判別手段を備え、前記支援手段は、同乗者判別手段で判別された同乗者に応じて前記閾値を変更することを特徴とする。
(3)請求項3に記載した発明では、請求項1又は請求項2に記載の車両制御装置において、前記生体情報取得手段で取得する生体情報は、心拍数、発汗状態及び血圧の少なくとも1つであることを特徴とする。
(4)請求項4に記載した発明では、請求項1、請求項2、又は請求項3に記載の車両制御装置において、前記運転支援手段は、運転者への警告、車間距離制御、車速制御、又はブレーキ制御の少なくとも1つを行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、運転者の生体情報の値が所定の閾値を、同乗者の有無により変更し、変更した閾値を越えた場合に運転支援を行うようにしたので、より正確な必要性判断のもとで的確な運転支援を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明のナビゲーション装置における好適な実施の形態について、図1から図5を参照して詳細に説明する。
(1)実施形態の概要
本実施形態の車両制御装置では、心拍等の生体情報が所定の閾値(基準値)を越えたかい否かを、警告や車両制御等の運転操作支援を行うか否かを判断するための条件とし、この生体情報の閾値を、同乗者の有無に応じて変更する。これにより、従来よりも、より正確な運転者支援を行うことができるようになる。
すなわち、一人で運転している時と、隣に上司などの普段から緊張する相手が同乗している場合とでは、通常時の生体情報が異なるため、同じ閾値で判定できない。
そこで、同乗者によって緊張度が増している場合は、その緊張度を踏まえて閾値を設定し、運転操作に対する緊張度を検出しやすくする。
【0009】
具体的には、同乗者がいない場合において、生体情報として検出している心拍数が所定の閾値100(デフォルト値)を越えた場合、運転者は運転操作に対して緊張状態にあると判断することができるので、注意を喚起する警告等の運転支援を行う。
これに対して、上司や顧客等の運転者にとって緊張する同乗者がいる場合にも、心拍数の上昇等の生体情報が緊張状態を示すようになる。このため、心拍数が101であったとしても、同乗者が原因であり、運転操作に対する緊張ではない。そこで、上司等の緊張する同乗者がいる場合には、生体情報に対する閾値を、同乗者がいない場合よりも高く(例えば、心拍数の閾値110)変更し、運転支援を行うか否かを判断する。
さらに、本実施形態では、緊張度が低下すると考えられる場合として、例えば、同乗者数が多い場合(例えば、3人以上)や、断続的に会話をしている場合などの車内環境も判断し、このような場合には、生体情報の閾値を下げる(例えば、心拍数の閾値95)。
【0010】
このように、本実施形態では、生体情報を検出しその値が所定の閾値を越えた場合に運転操作支援を行うが、該判断を行う基準となる生体情報の閾値を、同乗者の有無及び車内環境に応じて変更することで、より正確な運転支援が行われる。
なお、本実施形態では生体情報として心拍数と発汗量を検出するが、その他、瞳孔が開いている状態(瞳孔の大きさ)、血圧、脳波等の自律神経系の情報が生体情報に該当し、これらのうちの少なくとも1つを検出するようにしてもよい。
【0011】
(2)実施形態の詳細
以下、本発明のナビゲーション装置における好適な実施の形態について、図1から図5を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施形態における車両制御装置の構成を表したものである。
この図1に示すように、車両制御装置は、各種プログラムやデータに従って車両制御装置全体を制御するECU(電子制御装置)10を備えており、ECU10には現在位置検出装置11、生体情報センサ12、同乗者情報検出部13、運転操作検出部14、データ記憶部16、プログラム記憶部17、警告部18、車両制御部19、その他の装置(通信手段として外部の情報センタやインターネットと接続するための通信制御装置等)が接続されている。
【0012】
現在位置検出装置11は、車両制御装置が搭載される車両の現在位置(緯度、経度からなる絶対座標値)を検出するためのものであり、人工衛星を利用して車両の位置を測定するGPS(Global Positioning System)受信装置111、地磁気を検出して車両の方位を求める地磁気センサ112、ジャイロセンサ113、車速センサ114等の1又は複数が使用される。
【0013】
生体情報センサ12は、運転者の生体情報を取得するセンサとして、心拍センサ121と、発汗センサ122を備えている。
車両が走行を開始すると、所定時間間隔で心拍数と発汗量を検出してECU10に供給するようになっている。
【0014】
心拍センサ121は、運転者の心拍数を検出するセンサで、運転者の脈拍数から心拍数を検出する。本実施形態における心拍センサ121は、ステアリングに配置された電極により、運転中の運転者の手から心拍信号を採取することで心拍数を検出するようになっている。なお、心拍センサ121は、専用のセンサを手首等の運転者の身体に配置するようにしてもよい。
【0015】
発汗センサ122は、ステアリングに配置され、発汗状態によって流れる電流値の変化から発汗状態を検出する。
【0016】
同乗者情報検出部13は、運転者以外の搭乗者の有無や同乗者の情報を検出するためのセンサとして、カメラ131、シート圧センサ132、及びシートベルトセンサ133、マイク134、及びタッチパネル135を備えている。
カメラ131は、助手席及び後部座席を撮像する。カメラ131で撮像された画像は、画像認識処理により同乗者が誰かを特定するために使用される。例えば、家族や上司、友人等の顔部分の画像を予め登録しておき、撮像画像から抽出した同乗者の顔部分と比較することで同乗者を特定する。
本実施形態においてカメラ131は、CCDカメラで構成されている。
【0017】
シート圧センサ132は、助手席及び後部の各座席に配置された感圧センサで構成され、各座席位置の同乗者を検出する。
また、シートベルトセンサ133は、シートベルトが着用されているか否かを検出するセンサで、シートベルトが着用されている座席には同乗者がいると判定する。
【0018】
マイク134は、各座席毎に配置されており、各座席の同乗者の声を集音する。集音した音声は、例えば、運転者との会話が断続的に行われているか否かの判断に使用される。
またマイク134は、運転席にも配置されており、運転者の会話から、敬語を使用しているか否かを認識することで、運転者にとって上司等の緊張する同乗者か否かについて判断されるようになっている。
【0019】
タッチパネル135は、図示しない表示装置に配置され、運転者自身が同乗者が誰かについて入力する場合に使用される。すなわち、表示装置には、上司、社長、家族、友人、等の車両に同乗する可能性がある者を表示し、運転者がタッチパネル135で該当する者を選択することで、同乗者が特定される。
なお、タッチパネル135に変えて、キーボード、マウス、ライトペン、ジョイスティック、赤外線等によるリモコン等の各種入力装置を使用して、同乗者を入力するようにしてもよい。
【0020】
運転操作検出部14は、距離センサ141、アクセルセンサ142、及びブレーキセンサ143を備えている。
距離センサ141は、車両前方に配置されたミリ波レーダやレーザレーダ等で構成され、前方車両との車間距離を検出する。
アクセルセンサ142は、アクセルを踏み込む速度や、踏力、踏む回数等を検出する。
ブレーキセンサ143は、ブレーキを踏み込む速度や、踏力、踏む回数等を検出する。
【0021】
なお、運転操作検出部14としては明示していないが、車両制御装置は平均速度検出部を備えており、車速センサ114で検出した車速から平均車速が検出されるようになっている。
【0022】
データ記憶部16と、プログラム記憶部17は、ROM、RAMの他、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ等の磁気記録媒体、メモリチップやICカード等の半導体記録媒体、CD−ROMやMO、PD(相変化書換型光ディスク)等の光学的に情報が読み取られる記録媒体、その他各種方法でデータやコンピュータプログラムが記録される記録媒体が含まれる。
記録媒体には、記録内容に応じて異なる媒体を使用するようにしてもよい。
【0023】
データ記憶部16は、道路地図データベース161、同乗者判定データ162、生体情報判定データ163、走行経路履歴データ164、運転操作履歴データ165等の本実施形態において使用される各種データが格納されている。
【0024】
道路地図データーベース161は、ナビゲーション機能で使用されるデータが使用され、車両の現在地周辺や目的地周辺等の各種地図や道路を表示装置に表示するための地図情報や、目的地までの経路探索に使用される道路情報、各施設に対する情報が格納された施設情報(POI情報)等の各種地図や道路に関するデータが格納されたデータベースである。
【0025】
本実施形態において道路地図データ161は、現在位置検出装置11で検出した車両の現在位置と、道路データとのマップマッチングにより、現在走行している道路上の位置を検出するために使用される。
マップマッチングにより検出した、現在走行中の道路データは、走行時刻データと共に、走行経路履歴データ164に蓄積される。
【0026】
また、特定した現在走行中の道路データは、蓄積した走行経路履歴と比較され、以前走行したことがある道路か否かの判定に使用される。
【0027】
同乗者判定データ162は、カメラ131の撮像画像の画像認識、シート圧センサ132で検出される体重、マイク134で集音した音声の認識等から、同乗者を特定又はカテゴリ分けするためのデータである。
すなわち、家族や友人、上司等の同乗者の画像(顔の部分)と、体重、基準音声の波形、及び運転者との関係(家族、友人、上司等)が同乗者判定データ162に予め登録されている。
そして、撮像画像から抽出した同乗者の顔部分の画像や、検出した体重、音声を、同乗者判定データ162の各データと比較することで同乗者が特定される。
【0028】
生体情報判定データ163には、心拍数や発汗量が交感神経系優位の状態であると判断するための閾値、及び、変化量が格納されている。
この閾値は、運転支援を行うか否かを判断するための、生体情報の閾値であり、同乗者がいない場合の閾値(この閾値を通常時閾値という)がデフォルト値として規定されている。
【0029】
そして、生体情報判定データ163には、通常時閾値として例えば、心拍数100が規定されていると共に、各種運転操作や、同乗者に関する車内環境(同乗者数、会話の状態等)に応じた、閾値をどのように変更するかについて規定されている。
【0030】
図2は、生体情報判定データ163に規定されている、運転操作による生体情報の閾値の変更と、同乗者に関する車内環境による閾値の変更について概念的に表したものである。
この図2に示されるように、同乗者がいることで変化する運転動作として、以下の場合がある。
(a)車間距離が通常より広くなる。
同乗者がいて車間距離が通常よりも広くなっている場合には、緊張度が増加しているためのと考えられるので、閾値を高くする。
例えば、心拍数であれば、通常時閾値を100とした場合、同乗者がいて車間距離が通常よりも広くなっている場合の閾値を110に変更する。なお、同乗者がいることにより変更した後の閾値を変更後閾値という。
そして、高くした心拍の閾値110を越えた場合に、同乗者がいることによる緊張に加えて、運転操作に対する緊張も発生しているとして、警告等の運転支援を行う。
【0031】
なお、閾値を高くする場合の例として心拍を通常時閾値よりも10高くする場合について説明したが、他の生体情報を含めて、通常時閾値を100とし、高くする場合の変更後閾値を通常時閾値の110%としてもよい。
【0032】
(b)アクセルに関して、踏力が小さくなる
(c)ブレーキに関して、踏む回数が増える
(d)平均速度に関して、速度が低くなる(又は加速度が低い)
以上の(b)〜(d)の場合にも、同乗者による影響で緊張度が増加していると考えられるため、閾値を高くする。
【0033】
また、同乗者がいることで変化する要因として、車内における同乗者との状態(車内状態)がある。
(a)同乗人数に関して
同乗している人数が多いと、注意力が散漫状態になり、緊張度が低下する。従って、係る状態が検出された場合には、生体情報の変更後閾値を低くする。すなわち、通常時閾値を心拍100とした場合に、変更後閾値を90に下げる。閾値を下げる場合は、上げる場合と同様に、心拍以外の他の生体情報を含め、通常時閾値を100とした場合に、低くする場合の変更後閾値を通常時閾値の90%とする。
【0034】
(b)会話に関して
車内における同乗者との会話に関し、断続的に会話が多いと注意力が散漫になり、緊張度が低下する。
従って、この場合にも、通常時閾値よりも閾値を下げる。
【0035】
図2の例示項目以外で閾値を変更する場合として、例えば、現在走行している道路が過去に走行したことがある道路か否かについても判断され、所定回数以上走行している場合には、慣れた道路であるので、閾値を下げるようになっている。
【0036】
図1において、走行経路履歴データ164は、過去に走行した経路の履歴データが格納される。
走行経路履歴データ164には、経路探索に基づいて経路案内が行われた走行経路だけでなく、経路案内なしに走行した経路も履歴データとして格納される。
走行経路履歴データ164には、走行した経路が格納されるようになっているが、道路地図データーベース161に格納されている各道路の道路番号を格納するようにしてもよい。
【0037】
運転操作履歴データ165には、運転操作検出部14で検出される運転者の各種運転操作が格納される。
運転操作履歴データ165は、運転支援プログラム171において、運転操作が異常状態か否かを判断するために使用される。
運転操作履歴データ165は、RAMの所定領域に格納される。
運転操作履歴データ165には、距離センサ141、アクセルセンサ142、ブレーキセンサ143、からの出力信号が格納される。
【0038】
プログラム記憶部17には、運転支援プログラム171、同乗者情報検出プログラム172、生体情報収集プログラム173、警告プログラム174、車両制御プログラム175、走行経路履歴収集プログラム176、音声認識プログラム177、画像処理プログラム178、運転操作履歴収集プログラム179、その他の各種プログラムが格納されている。
【0039】
運転支援プログラム171は、後述するように、同乗者の有無により生体情報の閾値を変更し、変更後の閾値を越えた場合に警告や車両制御等の運転操作支援を行うプログラムである。
同乗者情報検出プログラム172は、後述する音声認識プログラム177と画像処理プログラム178による認識結果に基づいて、検出された同乗者を特定するとともに、その同乗者との車内状態を判定するためのプログラムである。
【0040】
生体情報収集プログラム173は、生体情報センサ12で検出した生体情報(心拍数、発汗状態等)を所定時間間隔毎に取得し、RAMの所定領域に格納するプログラムである。
取得した生体情報は、所定時間、例えば、2分間分保存され、最も古い情報が削除されて最新の情報が保存されるようになっている。なお、生体情報は、所定時間分ではなくて所定数分保存するようにしてもよい。
生体情報収集プログラム173は、走行経路の案内中に常時実行されるプログラムで、運転支援プログラム171とは独立して実行されるようになっている。
【0041】
警告プログラム174と車両制御プログラム175は、運転支援処理において、検出した生体情報が、同乗者がいない場合の通常時閾値、又は同乗者がいる場合に変更した変更後閾値を越えている場合に、運転者に対して行う注意喚起等の警告の処理、及びアクセル、ブレーキ、ハンドル等の制御処理、を行うプログラムである。
【0042】
走行経路履歴収集プログラム176は、現在位置検出装置11で検出された車両の現在位置と道路地図データーベース161とから、車両が走行している経路(道路)を特定し、走行経路履歴データ164に保存するプログラムである。
この走行経路履歴収集プログラム176は、車両が走行している間実行されることで走行履歴が収集され、運転支援プログラム171とは独立して実行されるようになっている。
【0043】
音声認識プログラム177と画像処理プログラム178は、マイク134で集音した車内の会話等の音声を認識し、またカメラで131の撮像画像から同乗者を認識するプログラムである。
【0044】
運転操作履歴収集プログラム179は、運転操作検出部14で検出した各種運転操作を所定時間間隔毎に取得し、運転操作履歴データ165に格納するプログラムである。
運転操作履歴データ165に格納した運転操作に関するデータは、所定時間、例えば、2分間分保存され、最も古い情報が削除されて最新の情報が保存されるようになっている。
運転操作履歴データ165も、生体情報収集プログラム173と同様に、車両走行中において常時独立して実行されるプログラムである。
【0045】
次に、以上のように構成された車両制御装置における運転支援処理の処理動作について説明する。
図3は、運転支援処理の処理内容を表したフローチャートである。
この運転支援処理は、車両の走行開始により実行され走行中実行が継続されるが、イグニッションオンにより実行され、イグニッションオフにより終了するようにしてもよい。
【0046】
ECU10は、シート圧センサ132及びシートベルトセンサ133の検出値から同乗者がいるか否かを判断し(ステップ10)、同乗者がいない場合には(ステップ10;N)ステップ12に移行する。
【0047】
一方、同乗者が検出された場合、ECU10は、同乗者情報検出部13の出力から同乗者情報を検出する(ステップ11)。
図4は、ステップ11における同乗者情報検出処理の処理動作を表したフローチャートである。
ECU10は、まず同乗者の人数と、各同乗者の乗車場所を検出する(ステップ21)。
【0048】
すなわち、ECU10は、シート圧センサ131で検出されるシート圧、シートベルトセンサ133で検出されるシートベルが装着された位置、カメラ131の撮像画像から、同乗者人数を検出する。シート圧が所定圧以上である場合、及び、シートベルトが装着されている場合には、対応シートに同乗者がいると判断される。
また、ECU10は、同乗者のシート圧を検出した際、又はシートベルトの装着を検出した際の車両位置を現在位置検出装置11の出力から検出する。
【0049】
ついで同乗者情報検出部13の出力値から同乗者を各シート毎に特定する(ステップ22)。
すなわち、ECU10は、カメラ131で撮像した顔画像、及びマイク133で集音した音声から同乗者を特定する。
なお、候補者が複数いる場合には、シート圧センサ132で検出される搭乗者の体重や、ステップ21で特定した同乗者の乗車位置から、搭乗者を特定する。これらは搭乗者データとして予めデータが入力され、データ記憶部16に記憶されている。
【0050】
また、ECU10は、車内状態を判定し(ステップ23)、図3のフローにリターンする。
ここで、車内状態の判定項目としては、会話をしている、寝ている、電話中である等の車内状態がマイク134の集音データから判定される。
【0051】
同乗者情報の検出(ステップ11、図3)が終了すると、ECU10は、走行時間と走行場所を検出する(ステップ12)。
すなわちECU10は、内部の時計から現在時刻を特定する。また、更に現在位置検出装置11で検出される車両の現在位置から、道路地図データーベース161を使用したマップマッチングにより、現在走行している場所(道路)を検出する。
そして、ECU10は、同一の時間帯(午前、午後、夜間、深夜)において、現在走行中の道路を過去に走行したことがあるか否かについて、走行経路履歴データ164から検出する。
【0052】
ついでECU10は、同乗者の有無、同乗者がいる場合には特定した同乗者、判定した車内状態、走行したことのある道路か否かに基づいて、運転者が運転操作に対する緊張状態にあるか否かを生体情報から判断するための閾値について決定する(ステップ13)。
例えば、同乗者がいない場合で、所定回数以上走行したことがない道路を走行中であれば閾値は生体情報判定データ163に格納されているデフォルトの値に決定される。また、同乗者がいる場合で、所定回数以上走行したことがある場合には、閾値を下げる。
その他、同乗者がいる場合には、図2で説明したように、運転操作の変化、及び車内状況に応じて閾値を高くし、又は低くする。
【0053】
そして、ECU10は、生体情報センサ12で検出される現時点での生体情報の各値が、ステップ13で決定した値を越えているか、又は運転操作について判断する(ステップ14)。
ECU10は、生体情報が閾値を越えている場合に異常と判断する。運転操作が異常か否かについては、運転操作履歴データ165に格納されている履歴内容を解析し、アクセル、ブレーキ操作が、所定値を越えている場合に異常と判断する。例えば、ブレーキの踏力が30kgを越えた場合、ブレーキの踏力がそれ以前の履歴データに比較して10%以上大きくなっている場合等が規定されている。同様に、アクセルについても予め規定されている。
【0054】
ECU10は、ステップ14で正常であると判断した場合(ステップ14;正常)には、ステップ10に戻って処理を継続する。
一方、異常で有ると判断した場合(ステップ14;異常)、ECU10は、運転者に対して警告を行う(ステップ15)。
すなわちECU10は、警告部18からビープ音を鳴らすことで警告をする。更に、状態(運転者の気持ち)を落ち着かせるためのリラックス音楽等をオーディオ装置から流したり、エアコンの風を顔に当てる等の温度調整を行うようにしてもよい。
また、ECU10は、警告として、周辺の安全な場所へ停止するように、音声により指示する。
【0055】
以上の警告の後、ECU10は、ステップ14と同様に生体情報と運転操作をチェックし正常か、異常かを判断する(ステップ16)。
警告によって落ち着いき正常状態に戻った場合には(ステップ16;正常)、ステップ10に戻って処理を継続する。
一方、警告ご所定時間経過しても正常状態に戻らずに異常状態のままである場合(ステップ16;異常)、ECU10は、車両制御を行う(ステップ17)。
【0056】
すなわちECU10は、車両制御として、まず、ハザードランプを点灯する。
さらに、ECU10は、アクセル・ブレーキ制御と、ハンドル制御により、追従走行や等速走行を行い、周辺の安全な場所に緊急停止をする。
安全な場所か否かの判断は、車両の現在位置と道路地図データーベースの道路データ、及び距離センサ141により車両周辺の障害物が存在するか否かにより判断する。
【0057】
車両を緊急停止させた後、ECU10は、運転者が降車したか否かを判断し(ステップ18)、降車していなければ(;N)、ステップ10に戻って処理を継続する。
一方、運転者が降車した場合には(ステップ18;Y)、運転支援処理を終了してメインルーチンにリターンする。
【0058】
以上説明したように本実施形態の車両制御装置によれば、心拍等の生体情報が異常である場合に警告や車両制御等の運転支援を行うにあたり、生体情報異常か否かの判断基準となる閾値を同乗者の有無により変更しているので、運転者にとって不要な運転操作支援を減らすことができる。
【0059】
以上、本発明の車両制御装置における1実施形態について説明したが、本発明は説明した実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した範囲において各種の変形を行うことが可能である。
説明した実施形態では、警告(ステップ15)及び車両制御(ステップ17)の内容は、生体情報の異常と運転操作の異常とで区別せずに同一処理を行う場合について説明したが、生体情報の異常の場合の警告及び車両制御と、運転操作が異常である場合の警告及び車両制御とを区別するようにしてもよい。
【0060】
図5は、生体情報の異常の場合と運転操作が異常である場合の警告及び車両制御の内容を表したものである。
図5(a)は、警告の処理内容である。
この図5(a)に示されるように、生体が異常であると判断された場合の警告の内容は、図3のステップ15における警告と同じである。
一方、運転操作異常と判断された場合、ECU10は、ハンドルに配置されたバイブレータ(振動装置)を振動させた後、運転席シートに配置されたバイブレータを振動させる。なお、両バイブレータは同時に振動させてもよい。
その後、生体情報異常の場合と同様に、周辺の安全な場所へ移動して停止するように音声により指示する。
【0061】
一方、図5(b)は、車両制御の処理内容であり、生体情報異常であると判断された場合の車両制御内容は、図3のステップ17と同じである。
一方、運転操作異常と判断された場合、図5(b)に示されるように、ECU10は、異常と判定された情報や操作に対応して、車間距離を開ける、アクセル制御、及びハンドル制御を行う。
【0062】
なお、図3のステップ14、16において、生体情報の異常と運転操作の異常の両者が検出された場合、異常のレベルが高い方の制御を行う。
ここで、どちらの異常レベルが高いかについて判定するために、各検出値の値に対応して異常値のレベルを予め規定しておくことで比較、判定が行われる。
生体情報異常の場合、例えば、心拍について130〜150の場合に異常値「小」、151〜180の場合に異常値「中」、181以上の場合に異常値「大」と規定しておく。
一方、運転操作異常の場合、例えば、ブレーキ踏力について、150kg〜20kgの場合に異常値「小」、20〜30kgの場合に異常値「中」、30kg以上の場合に異常値「大」と規定しておく。
【0063】
以上の異常値レベルに差がある場合、ECU10は、以上レベルの高い方の制御を行い、両者が同一レベルにある場合には、生体情報と運転操作の変化量の比率を比較し、変化両が高い方の制御を行う。
例えば、心拍が20%上昇しているのに対して、ブレーキ踏力が10%上昇している場合には、変化量が大きい生体情報の異常に対応する制御を行う。
以上の判定基準によっても以上レベルの高低について判定できない場合には、周辺の安全な場所に緊急停止する。
【0064】
なお、生体情報の異常と運転操作の異常の両者が検出された場合、両方の制御を行うようにしてもよい。
【0065】
また、説明した実施形態では、検出する生体情報として、脈拍数と発汗情報を検出するようにしたが、他の生体情報として瞳孔や脳波などの自律神経系の他の情報を検出し、その変化から交感神経系優位状態の場合に誤りによる経路外れと判断するようにしてもよい。
また、顔を撮像し、瞳孔の変化から判断するようにしてもい。すなわち、瞳孔が開く方向に変化している場合には、交感神経系優位の状態であると判断する。
【0066】
更に生体情報として血圧センサにより運転者の血圧を検出するようにしてもよい。
本実施形態において、血圧センサは、例えば、人体において心臓の収縮に伴う血液の脈波が心臓から指先に到達するまでの脈波伝播時間(PWTT:Pulse Wave Transmit Time)と血圧との相関関係を利用して血圧測定を行うものである。
血圧センサは、心臓の拍動時に発生する電位変化を検知して心臓の収縮タイミングを検知するための電極センサと、指先の血流量の変化を赤外線により検知して脈波が指先に到達したタイミング(脈拍)を捉えるための赤外線センサを備えており、これらセンサにより検知した脈波伝播時間に基づいた演算により血圧を測定する。
なお、特開2000−107141号公報に記載されるように、心臓からの距離の差を利用して、脈拍を計測する脈拍センサを両センサ部に配置するようにしてもよい。
【0067】
また、説明した実施形態では、生体情報異常、運転操作異常のいずれかが検出された場合に警告と、制御を行う場合について説明したが、警告だけを行うようにしてもよい。
また、生体情報異常と運転操作異常の両方について判断したが、生体異常についてだけ判断するようにしてもよい。
【0068】
また、説明した実施形態では、同乗者の判定データ162を予め登録する場合について説明したが、予め登録するのではなく、撮像画像から認識した顔画像、検出した体重、音声などの同乗者の情報を履歴として蓄えておき、初めて同様するような同乗者の場合、良く同乗する同乗者に比べて緊張度が高くなるため、生体情報の閾値を、過去の同乗回数が少ないほど高くするようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の1実施形態における車両制御装置の構成図である。
【図2】生体情報判定データの規定についての説明図である。
【図3】運転支援処理の処理内容を表したフローチャートである。
【図4】同乗者情報検出処理の処理動作を表したフローチャートである。
【図5】生体情報の異常の場合と運転操作が異常である場合の警告及び車両制御の内容を表した説明図である。
【符号の説明】
【0070】
10 ECU
11 現在位置検出装置
12 生体情報センサ
121 心拍センサ
122 発汗センサ
13 同乗者情報検出部
131 カメラ
132 シート圧センサ
133 シートベルトセンサ
134 タッチパネル
14 運転操作検出部
141 距離センサ
142 アクセルセンサ
143 ブレーキセンサ
16 データ記憶部
17 プログラム記憶部
18 警告部
19 車両制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者の生体情報を取得する生体情報取得手段と、
前記取得した生体情報の値が所定の閾値を越えた場合に、運転支援をする運転支援手段と、
同乗者の有無を検出する同乗者検出手段と、を備え、
前記支援手段は、前記同乗者検出手段による同乗者の有無に応じて前記閾値を変更することを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
前記同乗者検出手段は、同乗者を判別する同乗者判別手段を備え、
前記支援手段は、同乗者判別手段で判別された同乗者に応じて前記閾値を変更することを特徴とする請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記生体情報取得手段で取得する生体情報は、心拍数、発汗状態及び血圧の少なくとも1つであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記運転支援手段は、運転者への警告、車間距離制御、車速制御、又はブレーキ制御の少なくとも1つを行うことを特徴とする請求項1、請求項2、又は請求項3に記載の車両制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−122579(P2007−122579A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−316479(P2005−316479)
【出願日】平成17年10月31日(2005.10.31)
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【Fターム(参考)】