説明

半導体デバイスの製造方法及び半導体デバイス

層状半導体デバイスの製造方法であって、(a)複数の半導体ナノ構造を含む基体を用意する工程と、(b)エピタキシャル成長法によって前記ナノ構造上に半導体材料を成長させる工程と、(c)エピタキシャル成長法によって前記半導体材料上に前記半導体デバイスの層を成長させる工程と、を含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、層状半導体デバイスの製造方法及び本発明の方法によって製造された半導体デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
ワイドバンドギャップGaN及びその関連材料は、様々なデバイスに使用するための最も魅力的な化合物半導体のひとつである。これらの材料は、可視領域から紫外領域に及ぶ広いスペクトル領域及び高温/高電力領域で動作する光学電子デバイス及びマイクロ電子デバイスに適している。その他のワイドバンドギャップ半導体に対する窒化物半導体の主要な利点は、光学デバイス又はマイクロ電子デバイスに使用した際に高温及び高電力における劣化が少ないことである。一方、(量子細線及びドットにおける)低次元量子閉じ込め効果が、光学デバイスの性能を向上させるための主要な技術の1つになると考えられている。様々なIII−V族窒化物の低次元構造が、エッチング、再成長、選択領域における成長(オーバーグロース)、傾斜基板上での成長、自己組織化プロセス等によって形成されてきた。
【0003】
過去数年間の技術的進歩にもかかわらず、GaNデバイスのさらなる発展を妨げる主要な障害の1つは、高品質で安価な独立したGaNテンプレートが市販されていないことである。窒化物デバイスでは、サファイアやSiC等の代替基板が一般に使用されている。格子不整合及び成膜された膜と基板(ヘテロエピタキシー)との大きな熱膨張係数の差のために、非常に密度の高い(10〜1010cm−2)貫通転位及び望ましくない残留歪みによるウェハの屈曲/クラックが成長させた窒化物層において生じる。これらの要因により、窒化物を使用した光学電子デバイス及びマイクロ電子デバイスの性能と寿命が大きく左右される。
【0004】
エピタキシャル横方向成長(ELOG及びその変形であるファセット開始エピタキシャル横方向成長(facet initiated epitaxial lateral overgrowth(FIELO))及びPendeo(ラテン語で吊すを意味する)は、屈曲及び材料における貫通転位を抑制するために最も広く採用されている方法である。最初に成長させたGaN膜上に成膜したストライプ状横方向成長酸化物(又は金属)により、転位密度を約2桁減少させる(10cm−2レベル)ことができる。しかし、欠陥密度の低い材料は合体部に位置する翼領域(wing region)のみで生じ、翼領域はウェハの全表面積の約5分の1のみである。成長領域には合体部の大きな傾斜と引張応力が存在する。また、矩形のマスクによる非対称的な応力により、ウェハの非対称的な弓状の屈曲が生じる。
【0005】
現在、欠陥密度の低い独立したGaNは、光学電子デバイス及びマイクロ電子デバイスの所望の仕様を達成するための材料のひとつである。30mWの出力レベルにおけるCW動作での1万5千時間という記録的な窒化物レーザー寿命が、日亜化学工業株式会社によってHVPE成長基板を使用して最近達成されている。しかし、独立したGaN基板は非常に高価であると共に欠陥密度はSiウエハ、GaAsウエハ、InPウエハよりも高い。
【0006】
GaN材料を成長させるために適した様々な気相成長法が、米国特許第6,413,627号、米国特許第5,980,632号、米国特許第6,673,149号、米国特許第6,616,757号、米国特許第4,574,093号、米国特許第6,657,232号、米国特許出願第2005/0199886号に開示されている。そのような方法に関連するその他の刊行物としては以下の刊行物が挙げられる。
1.「結晶成長ハンドブック(Handbook of Crystal Growth)」,第3巻,D.T.J.Hurle編,Elsevier Science 1994
2.R.F.Davis他,「Pendeoエピタキシャル成長及び6H−SiC(0001)及びSi(111)基板上のGaN及びAlGaN合金薄膜の特性分析(Review of Pendeo−Epitaxial Growth and Characterization of Thin Films of GaN and AIGaN Alloys on 6H−SiC(0001) and Si(111) Substrates)」,MRS Internet J.Nitride Semicond.Res.6,14,1(2001)
3.M.Yoshiawa,A.Kikuchi,M.Mori,N.Fujita,K.Kishino,Growth of self−organised GaN nanostructures on AI(0001) by RF−radical source molecular beam epitaxy,Jpn.J.Appl.Phys.,36,L359(1997)
4.K.Kusakabe,A.Kikuchi,K.Kishino,「RF分子線エピタキシャル成長によるGaNナノコラム上へのGaN層の成長(Overgrowth of GaN layer on GaN nano−columns by RF−molecular beam epitaxy)」,J.Crystl.Growth.,237〜239,988(2002)
5.J.Su他,「有機金属気相成長によるIII族窒化物ナノ細線及びナノ構造の接触成長(Catalytic growth of group III−nitride nanowires and nanostructures by metalorganic chemical vapor deposition)」,Appl.Phys.Lett.,86,13105(2005)
6.G.Kipshidze他,「パルス有機金属気相成長によるGaNナノ細線の制御成長(Controlled growth of GaN nanowires by pulsed metalorganic chemical vapor deposition)」,Appl.Phys.Lett.,86,33104(2005)
7.H.M.Kim他,「ハイドライド気相エピタキシーによる単結晶GaNナノロッドの成長と特性分析(Growth and characterization of single−crystal GaN nanorods by hydride vapor phase epitaxy)」,Appl.Phys.Lett.,81,2193(2002)
8.CC.Mitchell他,「窒化ガリウムのエピタキシャル横方向成長における物質輸送(Mass transport in the epitaxial lateral overgrowth of gallium nitride)」,J.Cryst.Growth,222,144(2001)
9.K.Hiramatsu,「III族窒化物エピタキシーに使用されるエピタキシャル横方向成長法(Epitaxial lateral overgrowth techniques used in group III nitride epitaxy)」,J.Phys:Condens,Matter.,13,6961(2001)
10.R.P.Strittmatter,「Development of micro−electromechnical systems in GaN」,博士論文,California Institute of Technology,P.92(2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
英国特許出願第0605838.2号は、ナノ構造の上面に厚い化合物半導体を成長させる(すなわち、ナノメートルオーダーの寸法の個別形成)ことを開示している。そのような半導体材料の大量生産は英国特許出願第0701069.7号に開示されている。本発明は、特許出願第0605838.2号及び英国特許出願第0701069.7号が開示する方法を改良し、半導体デバイスを十分に成長させることを可能とするものである。
【0008】
ここで、「厚い」半導体とは、実質的に自立性(self−supporting)であり、約50μmより大きな厚みを有する半導体を意味する。
【0009】
本発明の目的は、低い応力と低い欠陥密度を示す高品質なデバイスを成長させる方法を提供することにある。上記目的は、作成したナノ構造適応層を使用して基板と上部デバイスの格子不整合及び熱膨張係数の差を減少させることによって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様によれば、請求項に記載する層状半導体デバイスの製造方法が提供される。
【0011】
本発明の第2の態様によれば、請求項に記載する第1の態様に係る方法によって製造された半導体デバイスが提供される。
【0012】
本発明の第3の態様によれば、請求項に記載する半導体デバイスが提供される。
【0013】
好ましくは、複数のナノ構造を配置する基板を用意する。基板材料は、サファイア、シリコン、炭化ケイ素、ダイヤモンド、金属、金属酸化物、化合物半導体、ガラス、石英、複合材料からなる群から選択される。c面GaN等の通常の極性材料を成長させる場合には、基板の結晶方位はc面サファイアであってもよい。a面又はm面GaN等の非極性材料を成長させる場合には、基板の結晶方位はγ面サファイア又はm面4H又は6H SiCとすることができる。
【0014】
また、基板材料は、伝導性基板、絶縁性基板、半伝導性基板からなる群から選択することができる。
【0015】
ナノ構造は、分子線エピタキシャル成長(MBE)、有機金属気相成長(MOCVD)(有機金属気相エピタキシャル成長(MOVPE)等)、スパッタリング、ハイドライド気相エピタキシャル成長(HVPE)又はその他の半導体成長法によって基板上に成長させた半導体層を有するテンプレートをエッチングすることによって製造することができる。テンプレートは、単一の層、複数の層又はAlN、AlGa1−xN(1>x>0)、GaN、InGa1−xN(1>x>0)等のp型及びn型ドープト及びアンドープト半導体のヘテロ構造又は超格子からなることができる。成長させた半導体層の合計膜厚は好ましくは3μm未満である。そのようなテンプレートの例としては、基板/非晶質AlN(200〜500nm)/GaN(50〜100nm)、基板/AlN(〜20nm)/GaN(1〜3μm)、基板/AlN(〜20nm)/AlGaN(1〜3μm)/GaN(10〜100nm)、基板/AlN(〜20nm)/AlGaN(1〜3μm)/InGaN(10〜100nm)/GaN(10〜100nm)、基板/GaN/(AlGaN(2.5〜10nm)/GaN(2.5〜10nm)超格子)、基板/GaN/(AlGaN(2.5〜10nm)/AlN(2.5〜10nm)超格子)/GaN(10〜100nm)、基板/GaN/(InGaN(2.5〜10nm)/GaN(2.5〜10nm)超格子)/GaN(10〜100nm)、基板/Si/AlN(〜20nm)/GaN(1〜3μm)/p−GaN(10〜100nm)が挙げられる。
【0016】
エッチングでは、マスク(ナノサイズを有するため、「ナノマスク」ともいう)をテンプレートに形成して製造するナノ構造の寸法を制御する。マスクは、(例えばNiを用いた)金属アニール法、陽極多孔質アルミナ法、干渉法、ホログラフィ、電子ビームリソグラフィ、フォトリソグラフィ、ナノインプリント法又はその他の適当な方法によって形成することができる。
【0017】
形成するナノ構造のパターンは、使用する方法に応じてランダムなパターン又は所定のパターンとして所望の物理的又は化学特性を得ることができる。例えば、アニール法によってナノ構造のランダムなパターンを形成することができる。陽極多孔質アルミナ法では、使用する方法の応力(例えば、窪みマーク(pre−indentation mark)を使用するか否か)に応じてランダム及び所定の六方パターン(hexagonal pattern)を形成することができる。フォトリソグラフィ、干渉法、ナノインプリント法ではカスタムパターンを形成することができる。ナノインプリント法では、使用するマスクがNi等のアニールされた金属からなる場合にはランダムなパターンを形成することができる。
【0018】
金属アニール法によるナノマスクの製造方法は、
(a)半導体層テンプレート上に誘電体材料を成膜し、
(b)誘電体層上に薄い金属材料を成膜し、
(c)制御された周囲温度で金属をアニールして高密度ナノマスクを形成し、
(d)金属ナノマスクを使用して誘電材料に対してドライエッチング及びウェットエッチングを行い、
(e)金属及び誘電体ナノマスクを使用して半導体材料に対してドライエッチング及びウェットエッチングを行って高密度ナノ構造を形成することを含む。
【0019】
陽極多孔質アルミナ法によるナノマスクの製造方法は、
(a)半導体層テンプレート上に誘電体材料を成膜し、
(b)誘電体層上にAl薄膜を成膜し、
(c)制御された電解質、温度、電圧でAlを陽極酸化させて高密度陽極多孔質アルミナナノマスクを形成し、
(d)アルミナナノマスク上に金属材料を成膜し、
(e)ウェットエッチングによってアルミナナノマスクを除去し、
(f)金属及び誘電体ナノマスクを使用して半導体材料に対してドライ及びウェットエッチングを行って高密度ナノ構造を形成することを含む。
【0020】
ナノインプリント法によるナノマスクの製造方法は、
(a)半導体層テンプレート上に誘電体材料を成膜し、
(b)誘電体層上にナノ穴マスク(nano−hole mask)をナノインプリントして現像し、
(c)ナノ穴マスク上に薄膜金属材料を成膜し、
(d)ナノインプリントマスクを除去して周期配向金属量子ドットナノマスクを形成し、
(e)金属ナノマスクを使用して誘電材料に対してドライエッチング及びウェットエッチングを行い、
(f)金属及び誘電体ナノマスクを使用して半導体材料に対してドライ及びウェットエッチングを行って高密度ナノ構造を形成することを含む。
【0021】
場合によっては、テンプレートは基板のみからなることができる(すなわち、基板の上面に半導体層が成長していないテンプレート)。この場合、マスクを基板上に直接形成する。
【0022】
ナノインプリント法によるナノマスクの形成方法では、マスターマスクを干渉法、電子ビームリソグラフィ、サブミクロンフォトリソグラフィ、X線リソグラフィ等によって形成することができる。マスクパターンは、所望の光学的効果のためのフォトニック結晶構造、高対称性フォトニック準結晶、回折格子、その他のパターンからなるように設計することができる。
【0023】
スパッタリング、電子ビーム蒸着又はプラズマ化学気相成長(PECVD)によって成膜することができるSiOやSi等の誘電材料は、前記方法によって形成したナノマスクの複製パターンを有するマスクとして機能することができる。誘電体層の膜厚は、エッチングする誘電材料と半導体層のエッチング選択性に依存する。
【0024】
このようにして製造したナノ構造は、1よりもかなり大きなアスペクト比(高さ/幅)を有する。半導体層のドライエッチングは、Ar、Cl、BCI又はH気体混合物を使用する反応性イオンエッチング(RIE)又は誘導結合高周波プラズマ法(ICP)によって行うことができる。エッチングでは、好ましくは基板が完全に露出されるまで半導体層をエッチングする。層構造は、製造したナノ構造の下部と中央部における横方向成長率が上部よりも低くなるように成長させることが好ましい。ナノ構造の層構造の例としては、基板/AlN(〜20nm)/n−Al0.03GaN0.97(2μm)/p−GaN(80nm)等の層構造が挙げられる。AlN及びn−Al0.03GaN0.97の表面に沿ったGaNの横方向成長率は、AlGaN内におけるAlの低い拡散率及び微量の酸化アルミニウムの存在のためにp−GaNよりも非常に低い。
【0025】
ナノ構造の寸法は、異なる酸及び塩基を使用したウェットエッチングによって変化させることができる。そのような処理により、横方向成長の最適化及び成長した厚膜の独立した化合物半導体材料の基板からの分離のためにナノ構造の直径を微調整することができる。
【0026】
ナノコラムに対してin situ又はex situ窒化処理を行い、横方向成長時のナノコラムの合体を減少させ、ナノ構造のデカップリングメカニズムを最大化させて厚い横成長上部層の欠陥密度と割れを減少させることができる。
【0027】
ナノ構造の層構造の例としては、(111)Si/非晶質AlN(〜200nm)/n−Al0.06GaN0.94(〜100nm)/p−GaN(80nm)等の層構造が挙げられる。次に、エッチングによりSiを約500nm露出させることによってナノ構造を製造することができる。SiをSiに変換するNHを使用した窒化処理は、ナノ構造の底部でのGaNの横方向成長を防止するために有用である。ナノ構造間の空隙の整合性により、その後の横方向エピタキシャル成長時に低い応力と欠陥密度を有する上層の形成が容易となる。
【0028】
形成されたIII族窒化物ナノコラムテンプレートは、MBE、MOCVD又はHVPEを使用する薄い連続するGaN膜のエピタキシャル横方向成長(ELOG)のために使用することができる。このようにして製造したテンプレートは、MOCVD、MBE、HVPEを使用したデバイスのエピタキシャル成長のために使用することができる。
【0029】
単結晶半導体材料は、ナノ構造とは異なる材料を含むことができる。
【0030】
半導体材料は、アンドープト材料、n型ドープト材料又はp型ドープト材料であってもよい。
【0031】
本発明の方法によって製造された化合物半導体デバイスは、エピタキシ成長によって形成される。成長は、HVPE法、MOCVD(MOVPE)法、CVD法、スパッタリング法、昇華法、MBE法又はHVPE法、MOCVD(MOVPE)法、CVD法、スパッタリング法、昇華法、MBE法の組み合わせ等の様々な方法によって行うことができる。
【0032】
エピタキシャル成長デバイスは、アンドープト材料、n型ドープト材料又はp型ドープト材料からなることができる。
【0033】
エピタキシャル成長は、パルス成長法を使用して部分的に行うことができる。
【0034】
基板を回転させながらデバイスを成長させることが有利である。
【0035】
成長させた化合物半導体デバイスは、デバイスのp面をウェハに接合した後に基板から分離することができる。半導体デバイスの分離は、比較的脆弱なナノ構造を機械的に砕くか、ウエットエッチング、光化学エッチング、電気化学エッチング又はレーザーアブレーションによって行うことができる。
【0036】
本発明に係る代表的な方法ではHVPEを利用し、高品質で平坦な低歪み・低欠陥密度化合物半導体をナノ構造適応層及びエピタキシャル横方向成長を使用して異種基板上に成長させる。適当なナノ構造の例としては、ナノ構造の長さ全体に沿ってほぼ一定な直径を有するナノコラム(「ナノロッド」又は「ナノ細線」としても知られる)又はナノ構造の寸法全体に沿って異なる直径を有する例えばピラミッド、円錐体又は球体等のその他の構造体を挙げることができる。なお、便宜上、以下ではナノコラムの使用について説明するが、上述したその他の適当なナノ構造も使用することができ、その他の用途にとって有利な場合もある。半導体材料のナノコラムは、MBE法、CVD法、MOCVD(MOVPE)法又はHVPE法によって成長させた化合物半導体層を有する異種基板上に形成することができる。通常、このようなナノコラムは約10〜120nmの直径を有することができる。デバイスのエピタキシャル化合物半導体層を、MBE、MOCVD又はHVPEによってさらに成長させることができる。
【0037】
化合物半導体材料と基板との熱膨張係数の差による化合物半導体層の屈曲は、基板の衝撃を吸収するエアギャップとナノコラムの均衡のとれた寸法によって最小化することができる。そのため、この技術を使用して歪み及び欠陥密度が低い平坦な化合物半導体膜を成長させることができる。
【0038】
これらのナノコラムを使用したナノ−Pendeo横方向成長によって、ナノコラムと横方向成長層の界面における欠陥屈曲メカニズムにより上部化合物半導体膜の欠陥を最小化することができる。また、ナノコラムの寸法が小さいため、横方向成長層の粒界におけるファセット傾き(facet tilt)を最小化することができる。また、ナノコラムの制御された寸法とナノコラムと横方向成長層との間の局所的な応力によって、化合物半導体層(例えばGaN)を急速冷却及び機械的ねじり時に基板から容易に分離することができる。また、エッチングされたナノコラムが薄いp−GaN上層を含む場合、p−GaNの陽極電気化学選択エッチングを使用して基板からGaNを分離することができる。次に、GaN膜をさらにエピタキシャル成長させてデバイスを得る。
【0039】
例えば、基板は、c面サファイア、γ面サファイア、m面4H又は6H SiC等の異なる結晶方位を有することができる。異なる結晶方位を有する基板上に作製された非極性又は極性化合物半導体層上に形成されたナノコラムを使用することにより、品質が高く、低い歪みと欠陥密度を有する非極性・極性化合物半導体層を成長させることができる。そのため、本発明は、低い歪みと欠陥密度を有する化合物半導体材料上に成長させた高性能デバイスの非常に経済的な大量生産技術を提供することができる。
【0040】
同様な成長方法は、AlにHClを通過させることによって形成されたAlCl前駆体を使用した低い歪みと欠陥密度を有するAlN及びAlGaNの成長に応用することができる。AlNは通常のELOG成長法によって合体させることが非常に難しいが、ナノサイズのエアギャップを有するナノコラム適応層を使用することによってAlNとAlGaNを非常に迅速に合体させることができる。
【0041】
本発明に係る成長法は、式InAl1−x−yN(式中、0≦x≦1,0≦y≦1,0≦x+y≦1)で表されるIII−V窒化物化合物群又はその他の好適な半導体窒化物に適用することができる。また、II−VI化合物も本発明の方法による製造に適している場合がある。半導体は、GaN、AlN、InN、ZnO、SiC等の材料を含むことができる。以下の説明では、便宜上、半導体材料としてのエピタキシャルIII−V族窒化物層の例としてGaNを使用して本発明について説明するが、任意の適当な半導体材料も使用することができる。
【0042】
GaNのハイドライド気相エピタキシー(HVPE)(クロライド輸送化学気相成長(chloride transport chemical vapor deposition)とも呼ばれる)は、III族及びV族元素を気相で成長反応器の成膜ゾーンに輸送する比較的十分に確立された方法である。この方法では、MOCVD法における有機金属原料(供給源)の代わりに、III族元素を輸送するためにClを使用する。この方法により、MOCVD又はMBE法(≦2μm/時)と比較して高い成長速度(最大200μm/時)を達成できるという利点がある。非平衡で、壁が低温の反応器を使用するMOCVDとは対照的に、HVPEは壁が高温の反応器を使用する可逆的な平衡に基づく方法である。典型的な成長過程は以下の通りである。サファイア、炭化ケイ素、酸化亜鉛又はその他の使用可能な基板を成長室の成膜ゾーンに挿入し、加熱する。成長温度に達すると、NH流の導入を開始する。NH濃度が定常値に達するまで時間を置いた後、HCl流の導入を開始して、Gaゾーン内においてHClガスを800〜900℃で液体金属Gaと反応させることによって2HCl(気体)+2Ga(液体)→2GaCl(気体)+H(気体)で表されるように合成される塩化ガリウム(GaCl)の輸送を行う。あるいは、塩素ガスを金属Gaと約125℃で反応させる。次に、気体のGaClをGaゾーンから成膜ゾーンに輸送し、900〜1200℃でNHと反応させ、GaCl(気体)+NH(気体)→GaN(固体)+HCl(気体)+H(気体)で表される反応によってGaNを生成する。HVPE成長法の別の重要な利点は、混合転位(mixed dislocation)が消滅することによって厚いGaNにおける欠陥密度が減少することである。
【0043】
GaNを成長させるために、例えばナノ構造適応層としてGaNナノコラムを使用する方法にはいくつかの利点がある。カラムの小さな直径と高いアスペクト比(高さ/直径)のために、ナノコラムと上部横方向成長層との間に機械的な閉じ込めが生じる。応力と転位は、GaNナノコラムと上部横方向成長層との界面にほとんど局在化している。そのため、成長によって上部横方向成長層における応力及び転位がほぼなくなる。また、初期アイランドの配向の乱れによる従来のGaN膜のモザイク構造によって生じる欠陥を最小化させることができる。これは、非常に配向が乱れたナノコラムが成長するため、全体的な配向を向上させることができるためである。狭いエアギャップを有するナノコラムの形状により、非常に薄い成長層を合体させることが可能となる。通常は、連続成長したGaN層には0.1〜0.2μm以下の厚みで十分である。狭いエアギャップにより、非常に迅速な合体が容易となり、ナノコラム上へのAlNのエピタキシャル横方向成長によって連続するAlNを形成することができる。上述した全ての利点によって、ナノコラム適応層上に高品質なGaNを成長させ、ELOG又はPendeo法と比較した場合に、ナノコラムの上部又はエアギャップの上部の合体部における傾斜の少ないGaNとすることができる。
【0044】
ナノコラム適応層上に成長させたデバイスは、ナノコラム適応層の基板を使用して作製し、パッケージ化することができる。あるいは、デバイスは除去した基板を使用して作製し、パッケージ化することができる。成長させたデバイスは、各種方法によって分離することができる。サファイア及びIII−V族窒化物等の脆性材料中では、応力が限界値を超えると容易にクラックが生じ得る。高いアスペクト比とナノサイズを有する形成されたIII族窒化物ナノコラムにより、特に成長後に急速な冷却が行われる場合に、熱膨張係数の大きな差のために基板と上部デバイスとの間の分解機構(cracking mechanism)が助長される。機械的捻れは、限界値を超えるように局所応力を与え、上層を分離する。基板からGaNを分離する別の方法では、陽極電気化学エッチングを使用する。この場合、薄いp−GaN層を半導体層の上面に成膜する。p−GaNからなる先端を有するナノコラムはエッチングによって形成することができる。適当な電解質及びバイアス電圧を使用することにより、p型GaNを選択的にエッチングし、厚い上部GaN(アンドープト又はn−ドープト)を残すことができる。KOH、シュウ酸、リン酸等を使用した化学エッチング、ウェット化学エッチングとUV光を組み合わせた光化学エッチング又は基板の急速な冷却等も基板からデバイスを分離するために好適である。また、基板からデバイスを分離するためにレーザーアブレーションを使用することもできる。デバイスは上記方法を組み合わせて分離することもできる。
【0045】
γ面サファイアを基板として使用する場合には、ナノ構造適応層を使用して非極性a面GaNを成長させることができる。ナノ構造適応層は、最初に成長させた低品質a面GaN膜及びカスタム設計された非極性層をエッチングすることによって作製する。このようにして成長させたa面GaNは非常に低い歪みと低い欠陥密度を有し、発光ダイオード、レーザーダイオード、微細電子デバイス等の非極性の高品質デバイスのさらなる成長に特に好適である。m面GaNは、同様にして作製したナノ構造適応層を使用して(100)LiAlO、m面4H又は6H SiC上に成長させることができる。非極性材料を使用することにより、バンドギャップ工学に基づいて異なる幅の量子井戸と組み合わせて白色LED等のモノリシック広帯域発光ダイオードを成長させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
以下、本発明の具体的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
【実施例】
【0047】
本発明について説明するために、本発明に係る方法を使用した実施例について以下に説明する。
【実施例1】
【0048】
実施例1は、絶縁性基板を有する発光ダイオード(LED)デバイスの成長と作製に関する。図3は方法の流れを模式的に示す。各デバイスはナノコラム基板に付着させた。ナノコラム基板は上面からの光の抽出を増加させる。低い歪みと欠陥を有する横方向成長層により、デバイスの内部量子効率が向上する。
【0049】
本実施例では、GaN膜のバッファを約350〜550℃で約20nmの膜厚に成長させた約2インチ(5.08cm)の直径を有するc面配向サファイア基板を使用し、図3の工程1に示すように、約1μmの膜厚のアンドープトGaN膜をエピタキシ成長させた。約2〜3μmのアンドープトU−GaN膜をMOCVDによって成膜し(図1の工程2)、ナノコラム形成用テンプレートを形成した。サファイア基板の搭載前に、GaN膜テンプレートをKOHで数秒間脱脂し、脱イオン水で洗浄し、HSO/HPO=3:1溶液を使用して80℃で数分間エッチングし、脱イオン水で洗浄した。SiO又はSiの薄い誘電体層(200nm以下)をPECVDによってGaNテンプレート上に成膜した。次に、薄いNi金属層(約2〜6nm)を電子ビーム蒸着又はスパッタリングによって誘電体層上に成膜した。Nガス下において金属を830℃以下の周囲温度で約1分間高速アニールし、高密度Niナノドットを形成した。金属Niの膜厚により、Niナノドットの密度と寸法を制御した。ArとCHFを使用した反応性イオンエッチング(RIE)を行い、Niナノドットを利用して誘電材料をエッチングした。次に、Ar、H、Cl又はBClの気体混合物を使用したICPエッチングを行い、金属及び誘電体ナノマスクを利用してGaN材料層をエッチングして高密度ナノコラムを形成した(図3の工程3)。
【0050】
残ったNiナノドットはHNO溶液を使用して除去した。残ったSiO又はSi誘電材料は、緩衝酸化物エッチング溶液又はリン酸を使用してそれぞれ除去した。KOHを使用してウェットエッチングを行うことにより、ナノコラムの寸法を微調整することができる。
【0051】
シラン及びNHガスを使用したPECVDによってex situ窒化処理を行った。窒化されたナノコラムの先端はRIEによって僅かにエッチングされた。
最初のエピタキシャル横方向成長(ELOG)をMOCVD成長法によって行った(図3の工程4)。すなわち、窒化されたGaNナノコラムテンプレートをMOCVD反応器に入れた。次に、基板温度を約1020℃まで上昇させ、NHの流量を約2000sccmに設定し、トリメチルガリウム(TMG)の流量を約5sccmに設定した。約30分間の成長後、基板温度を約1020℃まで上昇させ、TMGの流量を10sccmに設定して約10分間成長させ、次にTMGの流量を20sccmに設定して約20分間成長させた。連続したGaNが最初の30分間で完全に合体した。
【0052】
ナノコラムを窒化することの主要な利点は、ナノコラムを使用することによって達成される分離メカニズムを損なうナノコラムの基部における急速な合体を防止することができることである。窒化された表面は、GaNの横方向成長を抑制する抗界面活性効果を示す。
【0053】
図1は、GaNナノコラム上のELOG成長GaNのSEM断面図を示す。図2は、GaNナノコラム上の高品質バルクGaNの高解像度断面TEM画像を示す。画像では、僅かな貫通転位のみが上部ELOG成長GaNに観察される。GaNナノコラムの近傍のELOG GaNの成長表面に平行な積層欠陥が多少あるが、ナノ−Pendeo成長によってELOG GaNとナノコラムの界面において全ての欠陥が強く屈曲している。従って、ELOG GaNは僅かな欠陥のみを含む。
【0054】
次に、デバイスのエピタキシャル成長をMOCVD反応器で行った(図3の工程5)。製造されたLED構造は以下の層を含んでいた。n型SiドープトGaN層(約1.5〜2μm)、InGaN/GaN膜MQW活性領域(約35Å/100Å、2〜6対)、AlGaN:Mgキャップ層(約200Å)(図3の量子井戸層)、p型MgドープトGaN(約0.2〜0.3μm)。GaN:Si及びGaN:Mg層の電子及び正孔濃度はそれぞれ約3×1018cm−3及び6×1017cm−3だった。
【0055】
Ar、H、Cl又はBCIの気体混合物とSiOマスクを使用してICPエッチングを行い、Ti/Al(20/100nm)を成膜してn−コンタクトを形成した。次に、電子ビーム蒸着によってNi/Au(5/5nm)を成膜し、約550℃で約5分間、酸素雰囲気下でアニールして、p−コンタクトを形成した。
【実施例2】
【0056】
実施例1と同様にして、最初のエピタキシャル横方向成長をMOCVD成長法によって行った。ただし、本実施例では、実施例1で使用したトリメチルガリウム(TMG)の一部にトリメチルアルミニウム(TMA)を使用するか、トリメチルガリウム(TMG)の代わりにトリメチルアルミニウム(TMA)を使用してAlGaN層を成長させた。
【0057】
次に、デバイス(LED)のエピタキシャル成長をMOCVD反応器で行った。成長させたLED構造は以下の層を含んでいた。n型SiドープトAlGaN層(約1.5〜2μm)、AlGa1−xN/AlGa1−yN MQW活性領域(約35Å/100Å、2〜6対、y≧x+0.03)、AlGaN:Mgキャップ層(約200Å以下)、p型MgドープトAlGaN(約0.2〜0.3μm)。AlGaN:Si及びAlGaN:Mg層の電子及び正孔濃度はそれぞれ約1018cm−3及び6×1017cm−3だった。このようにして製造したLEDは、紫外線領域の波長の光を生成するために好適である。
【実施例3】
【0058】
本実施例では、テンプレートを使用してγ面サファイア基板の上面にa面GaN又はAIGaNを成長させた。それ以外は実施例1又は2と同様にしてナノコラムを形成した。このテンプレートは特定の利点を有する。すなわち、無極性半導体層を育てるのに使用されることができる。非極性半導体層を成長させるために使用することができ、白色LED等の光部品の作製に特に有益である(後述)。
【0059】
次に、デバイス(LED)のエピタキシャル成長をMOCVD反応器で行った。作製させたLED構造は以下の層を含んでいた。n型SiドープトGaN層(約1.5〜2μm)、InGaN/GaN MQW活性領域(6対の量子井戸(QW)、量子井戸幅:25、35、45、55、75、90Å、バリア:100Å)、AlGaN:Mgキャップ層(約200Å以下)、p型MgドープトAlGaN(約0.2〜0.3μm)。GaN:Si及びGaN:Mg層の電子及び正孔濃度はそれぞれ約3×1018cm−3及び6×1017cm−3だった。このデバイスは従来のLEDよりも非常に広い帯域幅を達成し、例えば、白色LEDを製造することができる。
【実施例4】
【0060】
本実施例では、m面4H−SiC及び6H−SiC上に成長させたm面GaN膜(p型ドープト、n型ドープト又はアンドープト)を含むテンプレートを使用した。ナノコラムは実施例1及び実施例2の方法に従って成長させることができる。実施例3と同様に、このようにテンプレートを選択することにより、ある種の光学部品に有用な非極性半導体層を製造することができる。
【0061】
次に、デバイス(LED)のエピタキシャル成長をMOCVD反応器で行った。成長させたLED構造は以下の層を含んでいた。n型SiドープトGaN層(約1.5〜2μm)、InGaN/GaN MQW活性領域(6対の量子井戸(QW)、量子井戸幅:25、35、45、55、75、90Å、バリア:100Å)、AlGaN:Mgキャップ層(約200Å以下)、p型MgドープトAlGaN(約0.2〜0.3μm)。GaN:Si及びGaN:Mg層の電子及び正孔濃度はそれぞれ約3×1018cm−3及び6×1017cm−3だった。半導体層が非極性であるため、このデバイスは従来のLEDよりも非常に広い帯域幅を達成することができる。
【実施例5】
【0062】
絶縁性基板を使用する上述した実施例とは異なり、独立したn−GaN、n−Si、n型4H−又は6H−SiC等の導電性基板上に成長させたn−GaN膜を含むテンプレートを使用した。図4は、導電性基板を使用したLEDデバイスの成長及び作製の流れを模式的に示す。工程1では、n型バッファを導電性基板に成長させた。工程2ではn−GaN層を成長させた。ナノコラムは、実施例1と同様な方法を使用して工程3によって形成した。工程4では、最初のエピタキシャル横方向成長によってn−GaN層を得た。工程5では、上記実施例と同様にLED層を成長させた。工程6では、電子ビーム蒸着によってNi/Au合金(10/10nm)を成膜し、約550℃で約5分間、酸素雰囲気下でアニールし、前記実施例と同様にp−GaN上にp型コンタクトを形成した。この場合には、n型コンタクトを基板の反対側の面に成長させた。独立型n−GaNを基板として使用する本実施例では、Ti/Al(膜厚:約20/100nm)をn型コンタクト金属として使用した。
【実施例6】
【0063】
実施例1〜5では、製造したデバイスを基板及びナノコラム構造上に実装した。一方、実施例6では、デバイスを基板から分離してカスタムメイドのサブマウントに実装した。そのため、最終的な厚みは減少した。図5は、基板(この場合はサファイア)を分離した薄膜GaN発光ダイオードデバイスの成長及び作製の流れを模式的に示す。工程1及び2は上述した実施例と同様だが、本実施例ではp型GaNを基板上に成長させてテンプレートを形成した。次に、p−GaN上層はエッチング(工程3)してp−GaNナノコラムを形成した。この工程により、p−GaNの比較的高いウェットエッチング速度(例えば、KOHを使用した電気化学エッチング又は光化学エッチング)のために分離工程(後述)が容易になる。工程4では、厚いn−GaNをエピタキシャル横方向成長によってp−GaNナノコラム上に形成した。工程5では、上記実施例と同様にn−GaN上にデバイスを成長させた。工程6では、電子ビーム蒸着によってNi/Au合金(約10/10nm)のp型コンタクトをp−GaN上に成膜し、約550℃で約5分間、酸素雰囲気下でアニールした。次に、Ti/Al/Au/Su−Auからなる反射性金属と約10/200/100/300nmの接合用合金をp−コンタクトNi/Au合金上に成膜した。工程7では、p−GaN上の接合用合金Su−Auを約285℃の融点を超える温度に加熱してp−GaNを良好な熱伝導性を有するサブマウントに接合した。サブマウントは、例えば、SiC、AIN、CVDダイヤモンド、Si、金属及びそれらの合金からなることができる。サブマウント上のAuめっきはp−GaNの接合を補助するために使用することができ、サブマウント上のボンディングパッドを介して電気的接続を行うことができる。工程8では、この場合には電気化学法を使用して基板をデバイスから分離する。厚いn−GaNは陽極として機能し、メッシュ状Ptを陰極として使用し、KOH又はHPOを電解質として使用した。約3.5〜4Vのバイアス電圧を(Pt参照電極に)印加して、p−GaNを選択的にエッチングした。デバイスは、通常は20分間のエッチング後に基板から分離した。工程9では、n型コンタクト(Ti/Al:20/50nm)を厚いN−GaN上に成膜した。この方法によって比較的薄いデバイスを製造することができることは明らかである。
【実施例7】
【0064】
本実施例では、実施例5と同様に、独立したn−GaN、n−Si、n型4H−又は6H−SiC等の導電性基板上に成長させたn−GaN膜を含むテンプレートを使用した。このテンプレートを使用することにより、MOCVDによってレーザダイオード構造を成長させることができる。テンプレートは以下の表1に示す層状構造を有することができる。表1では、最上層から順に示している。
【0065】
【表1】

【実施例8】
【0066】
本実施例では、陽極多孔質アルミナナノマスク形成法を使用して上述したナノコラム構造を形成した。約2〜3μmのMOCVD成膜GaNが形成された約2インチ(5.08cm)の直径を有するc面配向サファイア基板を、HVPE縦型反応器の基板ホルダに載置した。サファイア基板の搭載前に、GaN膜テンプレートをKOHで数秒間脱脂し、脱イオン水で洗浄し、HSO/HPO=3:1溶液を使用して80℃で数分間エッチングし、脱イオン水で洗浄した。SiO又はSiの薄い誘電体層(200nm以下)をPECVDによってGaNテンプレート上に成膜した。次に、薄いAl金属(60〜200nm)を電子ビーム蒸着又はスパッタリングによって誘電体層上に成膜した。2段階の陽極酸化処理を行った。第1の陽極酸化処理は、0.3Mシュウ酸溶液を使用し、100mA以下の電流と20Vの電圧で5℃において約6時間行い、アルミニウム層上に酸化物(アルミナ)層を形成した。陽極酸化処理によってアルミニウムの表面組織が変化し、窪みが形成された。次に、6重量%HPOと1.8重量%HCrOの混合物によって酸化物を約60℃で1〜1.5時間除去した。第2の陽極酸化処理は、0.3Mシュウ酸溶液を使用し、100mA以下の電流と40Vの電圧で約5時間行った。第2の陽極酸化処理は、より均一なナノマスクパターンを形成するために必要である。次に、微量のアルミニウムをアルミナ層から除去してもよい。5重量%HPOを使用して陽極多孔質アルミナの細孔を整えると共に拡大させた。次に、薄いNi金属層(4〜10nm)を電子ビーム蒸着又はスパッタリングによって陽極多孔質アルミナの細孔に成膜し、Niナノドットを形成した。5重量%HPOを使用して全てのアルミナを除去した。ArとCHFを使用した反応性イオンエッチング(RIE)を行い、Niナノドットを利用して誘電材料をエッチングした。次に、Ar、H、Cl又はBClの気体混合物を使用したICPエッチングを行い、金属及び誘電体ナノマスクを利用してGaN材料エッチングして高密度ナノコラムを形成した。
【0067】
残ったNiナノドットはHNO溶液を使用して除去した。残ったSiO又はSi誘電材料は、緩衝酸化物エッチング溶液又はリン酸を使用してそれぞれ除去した。KOHを使用してウェットエッチングを行うことにより、ナノコラムの寸法を微調整することができる。
【0068】
このようにして製造したナノコラムは、上述した実施例のようにデバイスを形成するために使用することができる。
【実施例9】
【0069】
本実施例では、実施例1で説明したMOCVDエピタキシャル横方向成長法の代わりにパルスHVPE成長法を使用した。パルスHVPE成長法では、横方向成長モードにおいて試薬ガスの流れを順番にオン(NH及びGaCl:オン)及びオフ(GaCl及びNH:オフ)とした。オン及びオフの時間はそれぞれ約60秒及び15秒に設定した。連続したGaNエピタキシャル層が形成されるまでGaN成長工程を継続した。縦型反応器内でのV/III比を10〜40に設定した場合には、約30〜120μm/時の成長率を達成することができた。
【0070】
当業者には、上述した以外の広範な方法及びプロセスパラメータが本発明の範囲に含まれることは明らかであろう。例えば、当業者に明らかな様々な方法によってナノコラムを形成することができる。ナノコラムは、用途に適した様々な先端形状を有するように形成することができる。ナノコラムは、用途に適した様々な先端形状を有するように制御しながら形成することができる。パターンは、例えば、フォトニック結晶、フォトニック準結晶又は回折格子であってもよい。そのようなパターンは、例えばナノインプリントマスク製作プロセスを使用して形成することができる。これにより、新規なデバイス(例えばLED)を製造することができる。ナノコラムの材料は限定されず、例えば、特定の用途に最も適した特性が得られるように、テンプレートの初期層構造において合金含有量を高さに沿って変化させることができる。例えば、レーザーアブレーション分離処理時に吸収率を最適化するように合金含有量を選択することができる。あるいは、合金含有量を変化させることによってナノ構造上に成長させる半導体の格子定数を最適化することができる。また、ナノコラムの材料は、ナノ構造上に成長させる化合物半導体の材料と異なっていてもよい。
【0071】
上述した実施例では、半導体材料を成長させる前にナノコラムを半導体テンプレート上に形成した。ナノコラム層を使用することにより、基板に過度のダメージをもたらすことなく半導体を比較的容易に除去することができる。従って、半導体材料はエピタキシャルデバイスを成長させるように調製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】GaNナノコラム上の高品質バルク成長GaNのSEM断面図を示す。
【図2】GaNナノコラム上の高品質バルクGaNの高解像度断面TEM画像を示す。
【図3】絶縁性基板を使用した発光ダイオードデバイスの成長及び作製の流れを模式的に示す。
【図4】導電性基板を使用した発光ダイオードデバイスの成長及び作製の流れを模式的に示す。
【図5】基板を分離した薄膜GaN発光ダイオードデバイスの成長及び作製の流れを模式的に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
層状半導体デバイスの製造方法であって、
(a)複数の半導体ナノ構造を含む基体を用意する工程と、
(b)エピタキシャル成長法によって前記ナノ構造上に半導体材料を成長させる工程と、
(c)エピタキシャル成長法によって前記半導体材料上に前記半導体デバイスの層を成長させる工程と、を含む方法。
【請求項2】
請求項1において、前記複数の半導体ナノ構造が基板上に位置する方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記工程(a)の前に、前記ナノ構造を形成する工程を含む方法。
【請求項4】
請求項3において、前記ナノ構造をランダム又は所定のパターンを有するように形成する方法。
【請求項5】
請求項4において、前記所定のパターンがフォトニック結晶、フォトニック準結晶又は回折格子である方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項において、前記ナノ構造が、GaN、AlN、InN、ZnO、SiC、Si及びそれらの合金からなる群から選択される材料を含む方法。
【請求項7】
請求項2〜6のいずれか1項において、前記ナノ構造を前記基板上に成長させる方法。
【請求項8】
請求項2〜6のいずれか1項において、半導体テンプレートをエッチングすることによって前記ナノ構造を形成する方法。
【請求項9】
請求項8において、前記テンプレートが、III−V又はII−VI化合物を含むn型ドープト半導体、p型ドープト半導体又はアンドープト半導体からなる単一の層、複数の層又はヘテロ構造又は超格子を含む方法。
【請求項10】
請求項8において、前記テンプレートが、AlN、AlGa1−xN(式中、1>x>0である)、GaN、InGa1−xN(式中、1>x>0である)から選択されるn型ドープト半導体、p型ドープト半導体又はアンドープト半導体からなる単一の層、複数の層又はヘテロ構造又は超格子を含む方法。
【請求項11】
請求項8〜10のいずれか1項において、前記テンプレートがp−GaN上層を含む方法。
【請求項12】
請求項8〜11のいずれか1項において、エッチングの前に前記テンプレート上にマスクを形成する工程を含む方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項において、各ナノ構造がナノコラムを含む方法。
【請求項14】
請求項2〜13のいずれか1項において、前記基板の材料が、伝導性基板、絶縁性基板、半伝導性基板からなる群から選択される方法。
【請求項15】
請求項2〜14のいずれか1項において、前記基板の材料が、サファイア、シリコン、炭化ケイ素、ダイヤモンド、金属、金属酸化物、化合物半導体、ガラス、石英、複合材料からなる群から選択される方法。
【請求項16】
請求項2〜15のいずれか1項において、前記基板の材料が所定の結晶方位を有する単結晶を含む方法。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか1項において、前記工程(b)が、最初に横方向成長を行い、次に縦方法成長を行うことを含む方法。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか1項において、MOCVD法、MBE法、HVPE法の少なくとも1つを使用して前記工程(b)を行う方法。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか1項において、パルス成長法を使用して前記工程(b)を行う方法。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれか1項において、前記工程(b)で成長させる前記半導体材料がアンドープト材料、n型ドープト材料又はp型ドープト材料である方法。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれか1項において、MOCVD法、MBE法、CVD法、HVPE法、スパッタリング法及び/又は昇華法を使用して前記工程(c)を行う方法。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれか1項において、前記工程(c)が少なくとも1つの別の層を成長させることを含む方法。
【請求項23】
請求項1〜22のいずれか1項において、前記デバイスにコンタクト電極を形成する工程をさらに含む方法。
【請求項24】
請求項1〜23のいずれか1項において、前記基板が導電材料で形成されている場合に、前記基板上にコンタクト電極を形成する工程をさらに含む方法。
【請求項25】
請求項1〜24のいずれか1項において、前記工程(b)で成長させた前記半導体材料から前記基体を分離する工程をさらに含む方法。
【請求項26】
請求項25において、前記分離工程を前記工程(b)と前記工程(c)との間に行う方法。
【請求項27】
請求項25において、前記分離工程を前記工程(c)の後に行う方法。
【請求項28】
請求項25〜27のいずれか1項において、前記分離を、前記ナノコラムの機械的破砕、前記半導体材料の急速冷却、レーザーアブレーション、ウェット化学エッチング、電気化学エッチング又は光化学エッチングによって行う方法。
【請求項29】
請求項25〜28のいずれか1項において、分離後に、前記半導体材料上にコンタクト電極を形成する方法。
【請求項30】
請求項1〜29のいずれか1項において、前記デバイスをサブマウントに接合する工程をさらに含む方法。
【請求項31】
請求項1〜30のいずれか1項において、前記デバイスが光学デバイスである方法。
【請求項32】
請求項31において、前記デバイスが発光ダイオードを含む方法。
【請求項33】
請求項31において、前記デバイスがレーザーダイオードを含む方法。
【請求項34】
請求項1〜33のいずれか1項において、前記工程(c)において、非極性エピタキシャル半導体材料で前記デバイスを形成する方法。
【請求項35】
請求項1〜34のいずれか1項において、前記工程(b)において成長させる前記半導体材料が非極性である方法。
【請求項36】
請求項35において、前記半導体材料がa面又はm面GaNを含む方法。
【請求項37】
請求項35又は36において、前記基板がγ面サファイア又はm面4H又は6H SiCを含む方法。
【請求項38】
請求項1〜37のいずれか1項に記載の方法によって製造された半導体デバイス。
【請求項39】
複数の半導体ナノ構造を含む基体と、前記ナノ構造上に位置する半導体材料と、前記半導体材料上に位置するデバイス層と、を含む半導体デバイス。
【請求項40】
請求項39において、前記複数のナノ構造が基板上に位置するデバイス。
【請求項41】
請求項39又は40において、コンタクト電極を含むデバイス。
【請求項42】
添付図面を参照して実質的に説明した方法。
【請求項43】
添付図面を参照して実質的に説明した半導体デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−518615(P2010−518615A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−548747(P2009−548747)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際出願番号】PCT/GB2008/050063
【国際公開番号】WO2008/096168
【国際公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(508143719)ナノガン リミテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】NANOGAN LIMITED
【Fターム(参考)】