説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】EOTの増大及びキャリア移動度の低下を抑制しつつ、半導体基板表面に形成されている酸化膜と高誘電率絶縁膜との界面に、しきい値電圧を低減する電気双極子を形成可能な金属を添加する。
【解決手段】半導体基板100上にゲート絶縁膜140を介してゲート電極150が形成されている。ゲート絶縁膜140は、酸素含有絶縁膜101と、第1の金属を含む高誘電率絶縁膜102とを有する。高誘電率絶縁膜102は、第1の金属とは異なる第2の金属をさらに含む。高誘電率絶縁膜102における第2の金属の組成比が最大になる位置は、高誘電率絶縁膜102と酸素含有絶縁膜101との界面及び高誘電率絶縁膜102とゲート電極150との界面のそれぞれから離れている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関し、特に、ゲート絶縁膜として高誘電率絶縁膜を用いたトランジスタを有する半導体装置及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置のデザインルールの縮小に伴い、回路の集積度は飛躍的に向上し、1チップ上に1億個以上の電界効果型トランジスタ(Field Effect Transistor:FET)の搭載も可能となっている。高性能なトランジスタを実現するために、ゲート長の縮小だけではなく、ゲート絶縁膜の薄膜化も求められている。従来、ゲート絶縁膜には、シリコン酸化膜又はその窒化膜であるシリコン酸窒化膜等が用いられてきたが、EOT(Equivalent Oxide Thickness:等価酸化膜厚)が2nm程度以下まで小さくなると、ゲートリーク電流が増大し、回路の消費電力が増大するという問題が発生する。
【0003】
そこで、ゲートリーク電流を低減しつつ、EOTも低減するために、高誘電率ゲート絶縁膜に関心が寄せられている。ここで、高誘電率絶縁膜とは、シリコン窒化膜の比誘電率(約8.0)よりも高い比誘電率を有する絶縁膜を意味する。
【0004】
また、さらなるEOTの低減のために、従来のシリコン材料を用いたゲート電極に代えて、窒化チタンや窒化タンタル等のメタル材料を用いたゲート電極を高誘電率ゲート絶縁膜と組み合わせたトランジスタ、つまり、高誘電率ゲート絶縁膜/メタルゲート電極構造を有するトランジスタについて、多くの研究開発がなされている。
【0005】
高誘電率ゲート絶縁膜/メタルゲート電極構造を実現する上での課題の一つに、トランジスタのしきい値電圧の制御がある。従来用いられていたシリコン電極では、不純物イオン注入によってシリコン電極の仕事関数を調整することにより、N型FET及びP型FETのそれぞれに適したしきい値電圧を実現してきた。すなわち、N型FETに対しては、シリコン電極にヒ素やリンなどのN型不純物を注入することによって仕事関数の低減を図る一方、P型FETに対しては、シリコン電極にボロンなどのP型不純物を注入することによって仕事関数の増大を図っている。
【0006】
ところが、メタルゲート電極に対しては、不純物イオン注入による仕事関数制御を行うことができないため、トランジスタのしきい値電圧制御が大きな課題となっている。
【0007】
高誘電率ゲート絶縁膜/メタルゲート電極構造を有するトランジスタの仕事関数制御方法として、半導体基板表面に形成されている酸化膜と高誘電率ゲート絶縁膜との界面に、しきい値電圧を低減する電気双極子を形成することが可能な金属を添加する方法が提案されている(非特許文献1及び非特許文献2参照)。
【0008】
図8(a)は、非特許文献1に記載された、ハフニウムシリコンオキシナイトライド高誘電率ゲート絶縁膜/メタルゲート電極構造を有するN型FETに対して、半導体基板表面上の酸化膜と高誘電率ゲート絶縁膜との界面に電気双極子を形成する金属としてランタンを添加したトランジスタ構造の断面構成を示している。図8(a)に示すように、非特許文献1に開示されたN型FETにおいては、シリコン基板500上に形成されたシリコン酸化膜501上に、ハフニウムシリコンオキシナイトライド(HfSiON)からなる高誘電率絶縁膜502が堆積されている。また、高誘電率絶縁膜502上にランタン(La)の金属酸化膜503を介して、TiNからなるメタル電極504が堆積されている。
【0009】
図8(b)は、図8(a)に示す高誘電率ゲート絶縁膜/メタルゲート電極構造に対して活性化アニールを行ってランタン原子を拡散させることにより得られた組成分布(基板主面に垂直な方向の組成分布)を示している。図8(b)に示すように、ランタン(La)原子は、高誘電率ゲート絶縁膜(HfSiON)502を通って、シリコン酸化膜(SiO2 )501と高誘電率ゲート絶縁膜502との界面まで拡散しており、その結果、当該界面に電気双極子を形成することが可能となる。これにより、N型FETのしきい値電圧を230mV程度低減させることができる。尚、図8(b)に示すように、ランタン原子は、メタル電極(TiN)504中にも拡散しており、ランタン組成比(La濃度)は、メタル電極504と高誘電率ゲート絶縁膜502との界面で実質的に最大になる。
【0010】
図9(a)は、非特許文献2に記載されたトランジスタ構造、具体的には、高誘電率ゲート絶縁膜の下側にランタン酸化膜(N型FET)やアルミニウム酸化膜(P型FET)などの金属酸化膜を堆積することによって、半導体基板表面上の酸化膜と高誘電率ゲート絶縁膜との界面にしきい値電圧を低減する電気双極子が形成されるトランジスタ構造の断面構成を示している。図9(a)に示すように、非特許文献2に開示されたFETにおいては、シリコン基板500上に形成されたシリコン酸化膜501上に、ランタン(La)やアルミニウム(Al)の金属酸化膜503を介して、ハフニウムシリコンオキシナイトライド(HfSiON)からなる高誘電率絶縁膜502が堆積されている。また、高誘電率絶縁膜502上に、TiNからなるメタル電極504が堆積されている。図9(b)は、図9(a)に示す高誘電率ゲート絶縁膜/メタルゲート電極構造(金属酸化膜503としてランタン(La)の金属酸化膜を用いた場合)に対して活性化アニールを行ってランタン原子を拡散させることにより得られた組成分布(基板主面に垂直な方向の組成分布)を示している。図9(b)に示すように、ランタン(La)原子は、シリコン酸化膜(SiO2 )501と高誘電率ゲート絶縁膜(HfSiON)502との界面に存在しており、その結果、当該界面に電気双極子を形成することが可能となる。これにより、N型FETのしきい値電圧を500mV程度低減させることができる。尚、図9(b)に示すように、ランタン原子は、シリコン酸化膜501及び高誘電率ゲート絶縁膜502のそれぞれの内部にも拡散しており、ランタン組成比(La濃度)は、シリコン酸化膜501と高誘電率ゲート絶縁膜502との界面で実質的に最大になる。また、金属酸化膜503としてアルミニウム(Al)の金属酸化膜を用いた場合、P型FETのしきい値電圧を200mV程度低減させることができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】P. Sivasubramani 他、Dipole Moment Model Explaining nFET Vt Tuning utilizing La,Sc,Er,and Sr Doped HfSiON Dielectrics 、Symposium on VLSI Technology Digest of Technical Papers 、2007年、p.68-69
【非特許文献2】S. Kubicek他、Strain enhanced Low-VT CMOS featuring La/Al-doped HfSiO/TaC and 10ps Inventor Delay 、Symposium on VLSI Technology Digest of Technical Papers、2008年、p.130-131
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、非特許文献1や非特許文献2に開示された方法によってしきい値電圧制御を行った場合、シリコン酸化膜と高誘電率ゲート絶縁膜との界面にしきい値電圧を低減する双極子を形成する金属酸化膜(ランタン酸化膜やアルミニウム酸化膜など)の形成条件を最適化することが困難になるという問題点がある。
【0013】
具体的には、図8(a)に示すように、高誘電率ゲート絶縁膜502の上に、ランタン酸化膜やアルミニウム酸化膜等の金属酸化膜503を堆積した場合、活性化アニールなどの後工程で実施される熱処理により、ランタン原子やアルミニウム原子をシリコン酸化膜501と高誘電率ゲート絶縁膜502との界面にまで拡散させて、しきい値電圧を低減している。この場合、比較的厚い(2〜3nm)高誘電率ゲート絶縁膜502中をランタン原子やアルミニウム原子を拡散させるために、比較的厚く(1nm程度)ランタン酸化膜やアルミニウム酸化膜等の金属酸化膜503を形成する必要がある。しかしながら、ランタン酸化膜やアルミニウム酸化膜は絶縁体であるため、このような金属酸化膜503を厚く形成した場合には、ゲート絶縁膜全体としてのEOTが増大してしまい、トランジスタ特性が劣化してしまう。
【0014】
一方、図9(a)に示すように、高誘電率ゲート絶縁膜502の下に、ランタン酸化膜やアルミニウム酸化膜等の金属酸化膜503を堆積した場合、シリコン酸化膜501と高誘電率ゲート絶縁膜502との間にランタンやアルミニウム等が形成されることになる。このため、薄膜(0.5nm以下)のランタン酸化膜やアルミニウム酸化膜等の金属酸化膜503によって、前述のように高誘電率ゲート絶縁膜502の上に金属酸化膜503を堆積した場合と同程度のしきい値電圧低減が可能となる。その結果、ゲート絶縁膜全体としてのEOTの増大を抑制することが可能となる。しかしながら、活性化アニールなどの後工程で実施される熱処理によってランタン原子やアルミニウム原子がシリコン基板500中まで拡散してしまう場合がある。このように、シリコン基板500中にランタンやアルミニウムなどの原子が拡散すると、キャリア移動度が低下してトランジスタ特性が劣化してしまう。
【0015】
前記に鑑み、本発明は、EOTの増大及びキャリア移動度の低下を抑制しつつ、半導体基板表面に形成されている酸化膜と高誘電率絶縁膜との界面に、しきい値電圧を低減する電気双極子を形成可能な金属を添加することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記の目的を達成するために、本願発明者は、ランタン酸化膜やアルミニウム酸化膜等の金属酸化膜を上下から高誘電率絶縁膜によって挟み込んだ構造を形成した後、熱処理によってランタン原子やアルミニウム原子等を拡散させることを想到した。このようにすると、高誘電率ゲート絶縁膜の内部においてランタンやアルミニウムの組成比(濃度)が最大になる新規な構成が得られる。
【0017】
具体的には、本発明に係る半導体装置は、半導体基板における第1の領域上に形成された第1のゲート絶縁膜と、前記第1のゲート絶縁膜上に形成された第1のゲート電極とを備え、前記第1のゲート絶縁膜は、第1の酸素含有絶縁膜と、前記第1の酸素含有絶縁膜上に形成され且つ第1の金属を含む第1の高誘電率絶縁膜とを有し、前記第1の高誘電率絶縁膜は、前記第1の金属とは異なる第2の金属をさらに含み、前記第1の高誘電率絶縁膜における前記第2の金属の組成比が最大になる位置は、前記第1の高誘電率絶縁膜と前記第1の酸素含有絶縁膜との界面及び前記第1の高誘電率絶縁膜と前記第1のゲート電極との界面のそれぞれから離れている。
【0018】
すなわち、本発明に係る半導体装置は、ランタン酸化膜やアルミニウム酸化膜等の金属酸化膜を上下から高誘電率絶縁膜によって挟み込んだ構造を形成した後に熱処理によってランタン原子やアルミニウム原子等を拡散させることにより得られるものである。
【0019】
このため、本発明に係る半導体装置によると、ランタン酸化膜やアルミニウム酸化膜等の金属酸化膜を高誘電率絶縁膜上に形成して熱処理を行うことにより得られる構造と比較して、金属酸化膜の下側に存在する高誘電率絶縁膜の膜厚を小さくすることができる。その結果、しきい値電圧を低下させるのに必要なランタン酸化膜やアルミニウム酸化膜等の金属酸化膜を薄膜化させることが可能となるので、ゲート絶縁膜全体としてのEOTの増大及びそれに伴うトランジスタ特性の劣化を抑制することができる。
【0020】
また、本発明に係る半導体装置によると、ランタン酸化膜やアルミニウム酸化膜等の金属酸化膜を高誘電率絶縁膜の下に形成して熱処理を行うことにより得られる構造と比較して、金属酸化膜の下側に存在する絶縁膜(高誘電率絶縁膜とシリコン酸化膜等の酸素含有絶縁膜との積層構造)の膜厚を大きくすることができる。その結果、活性化アニールなどの熱処理に起因する、ランタン原子やアルミニウム原子等の半導体基板中への拡散を抑制することが可能となるので、キャリア移動度の劣化及びそれに伴うトランジスタ特性の劣化を抑制することができる。
【0021】
従って、本発明に係る半導体装置によると、EOTの増大及びキャリア移動度の低下を抑制しつつ、半導体基板表面に形成されている酸素含有絶縁膜と高誘電率絶縁膜との界面に、しきい値電圧を低減する電気双極子を形成可能な金属を添加することができるので、トランジスタ特性を向上させることができる。
【0022】
本発明に係る半導体装置において、前記第2の金属は、前記第1の高誘電率絶縁膜と前記第1の酸素含有絶縁膜との界面にも存在し、それにより、当該界面に、前記第1のゲート電極に印加されるしきい値電圧を低減する電気双極子が形成されていてもよい。
【0023】
本発明に係る半導体装置において、前記第1の酸素含有絶縁膜はシリコン酸化膜であってもよい。
【0024】
本発明に係る半導体装置において、前記第1の高誘電率絶縁膜は、ハフニウム酸化膜、ハフニウムシリコン酸化膜、窒化ハフニウムシリコン酸化膜、ジルコニウム酸化膜又はハフニウムジルコニウム酸化膜のいずれかであってもよい。
【0025】
本発明に係る半導体装置において、前記第1のゲート電極は、前記第1の高誘電率絶縁膜と接する第1の金属含有層を含んでいてもよい。この場合、前記第1の金属含有層は、チタンナイトライド膜、タンタルナイトライド膜、タンタルカーバイド膜若しくは窒化タンタルカーバイド膜又はそれらの膜のうち2つ以上を積層させた膜であってもよい。
【0026】
本発明に係る半導体装置において、前記第1の領域はN型FET形成領域であり、前記第2の金属はランタン、ジスプロシウム、スカンジウム、エリビウム又はストロンチウムであってもよい。このようにすると、N型FETのしきい値電圧を確実に低減することができる。
【0027】
本発明に係る半導体装置において、前記第1の領域はP型FET形成領域であり、前記第2の金属はアルミニウムであってもよい。このようにすると、P型FETのしきい値電圧を確実に低減することができる。
【0028】
本発明に係る半導体装置において、前記半導体基板における第2の領域上に形成された第2のゲート絶縁膜と、前記第2のゲート絶縁膜上に形成された第2のゲート電極とを備え、前記第2のゲート絶縁膜は、第2の酸素含有絶縁膜と、前記第2の酸素含有絶縁膜上に形成され且つ前記第1の金属を含む第2の高誘電率絶縁膜とを有し、前記第2の高誘電率絶縁膜は、前記第1の金属及び前記第2の金属とは異なる第3の金属をさらに含み、前記第2の高誘電率絶縁膜における前記第3の金属の組成比が最大になる位置は、前記第2の高誘電率絶縁膜と前記第2の酸素含有絶縁膜との界面及び前記第2の高誘電率絶縁膜と前記第2のゲート電極との界面のそれぞれから離れていてもよい。この場合、前記第3の金属は、前記第2の高誘電率絶縁膜と前記第2の酸素含有絶縁膜との界面にも存在し、それにより、当該界面に、前記第2のゲート電極に印加されるしきい値電圧を低減する電気双極子が形成されていてもよい。また、この場合、前記第2の酸素含有絶縁膜はシリコン酸化膜であってもよい。また、この場合、前記第2の高誘電率絶縁膜は、ハフニウム酸化膜、ハフニウムシリコン酸化膜、窒化ハフニウムシリコン酸化膜、ジルコニウム酸化膜又はハフニウムジルコニウム酸化膜のいずれかであってもよい。さらに、この場合、前記第2のゲート電極は、前記第2の高誘電率絶縁膜と接する第2の金属含有層を含んでいてもよく、前記第2の金属含有層は、チタンナイトライド膜、タンタルナイトライド膜、タンタルカーバイド膜若しくは窒化タンタルカーバイド膜又はそれらの膜のうち2つ以上を積層させた膜であってもよい。
【0029】
本発明に係る半導体装置の製造方法は、半導体基板上に酸素含有絶縁膜、第1の金属を含む下部高誘電率絶縁膜、前記第1の金属とは異なる第2の金属を含む金属酸化膜、前記第1の金属を含む上部高誘電率絶縁膜を順次形成する工程(a)と、熱処理により、前記下部高誘電率絶縁膜と前記金属酸化膜と前記上部高誘電率絶縁膜とをミキシングさせて高誘電率絶縁膜を形成する工程(b)とを備えている。
【0030】
本発明に係る半導体装置の製造方法によると、ランタン酸化膜やアルミニウム酸化膜等の金属酸化膜を高誘電率絶縁膜上に形成する場合と比較して、金属酸化膜の下側に存在する高誘電率絶縁膜(つまり下部高誘電率絶縁膜)の膜厚を小さくすることができる。その結果、しきい値電圧を低下させるのに必要なランタン酸化膜やアルミニウム酸化膜等の金属酸化膜を薄膜化させることが可能となるので、ゲート絶縁膜全体(熱処理により得られる高誘電率絶縁膜と酸素含有絶縁膜との積層体)としてのEOTの増大及びそれに伴うトランジスタ特性の劣化を抑制することができる。
【0031】
また、本発明に係る半導体装置の製造方法によると、ランタン酸化膜やアルミニウム酸化膜等の金属酸化膜を高誘電率絶縁膜の下に形成する場合と比較して、金属酸化膜の下側に存在する絶縁膜(下部高誘電率絶縁膜と酸素含有絶縁膜との積層構造)の膜厚を大きくすることができる。その結果、熱処理に起因する、ランタン原子やアルミニウム原子等の半導体基板中への拡散を抑制することが可能となるので、キャリア移動度の劣化及びそれに伴うトランジスタ特性の劣化を抑制することができる。
【0032】
従って、本発明に係る半導体装置の製造方法によると、EOTの増大及びキャリア移動度の低下を抑制しつつ、半導体基板表面に形成されている酸素含有絶縁膜と高誘電率絶縁膜との界面に、しきい値電圧を低減する電気双極子を形成可能な金属を添加することができるので、トランジスタ特性を向上させることができる。
【0033】
本発明に係る半導体装置の製造方法において、前記下部高誘電率絶縁膜及び前記上部高誘電率絶縁膜は同じ種類の絶縁膜であってもよい。
【0034】
本発明に係る半導体装置の製造方法において、前記工程(b)よりも後に、前記高誘電率絶縁膜上にゲート電極を形成する工程(c)をさらに備えていてもよい。
【0035】
本発明に係る半導体装置の製造方法において、前記第2の金属はランタン、ジスプロシウム、スカンジウム、エリビウム又はストロンチウムであってもよい。このようにすると、N型FETのしきい値電圧を確実に低減することができる。
【0036】
本発明に係る半導体装置の製造方法において、前記第2の金属はアルミニウムであってもよい。このようにすると、P型FETのしきい値電圧を確実に低減することができる。
【0037】
本発明に係る半導体装置の製造方法において、前記工程(b)は、不活性ガス雰囲気中又は真空中において500℃以上で且つ1350℃以下の温度で熱処理を行う工程を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0038】
本発明によると、EOTの増大及びキャリア移動度の低下を抑制しつつ、半導体基板表面に形成されている酸素含有絶縁膜と高誘電率絶縁膜との界面に、しきい値電圧を低減する電気双極子を形成可能な金属を添加することができるので、トランジスタ特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1(a)は本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の断面図であり、図1(b)は、図1(a)に示すゲート絶縁膜/ゲート電極構造における基板主面に垂直な方向の組成分布を示す図である。
【図2】図2(a)〜(d)は本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図である。
【図3】図3(a)〜(c)は本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図である。
【図4】図4は本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の断面図である。
【図5】図5(a)〜(d)は本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図である。
【図6】図6(a)〜(d)は本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図である。
【図7】図7(a)〜(c)は本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図である。
【図8】図8(a)は第1従来例に係る半導体装置の断面図であり、図8(b)は、図8(a)に示すゲート絶縁膜/ゲート電極構造に対してアニールを行った後における基板主面に垂直な方向の組成分布を示す図である。
【図9】図9(a)は第2従来例に係る半導体装置の断面図であり、図9(b)は、図9(a)に示すゲート絶縁膜/ゲート電極構造に対してアニールを行った後における基板主面に垂直な方向の組成分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置及びその製造方法について、図面を参照しながら説明する。
【0041】
図1(a)は、本実施形態に係る半導体装置の断面図である。図1(a)に示すように、例えばシリコン基板等の半導体基板100におけるN型FET形成領域(素子分離領域によって囲まれた半導体基板100からなる第1の領域)の上に、ゲート絶縁膜140を介してゲート電極150が形成されている。ゲート絶縁膜140は、例えば厚さ1nm程度のシリコン酸化膜(SiO2 膜)等からなる酸素含有絶縁膜101と、酸素含有絶縁膜101上に形成され且つ例えば厚さ2nm程度のハフニウム酸化膜(HfO2 膜)等からなる高誘電率絶縁膜102とを有している。ゲート電極150は、高誘電率絶縁膜102と接し且つ例えば窒化チタン(TiN)膜からなる金属含有層(メタル電極)103と、金属含有層103上に形成されたポリシリコン層(ポリシリコン電極)104とを有している。
【0042】
また、図1(a)に示すように、ゲート電極150の側面には絶縁性のサイドウォールスペーサー105が形成されている。さらに、半導体基板100の表面部におけるサイドウォールスペーサー105の下側にはN型のエクステンション領域106が形成されていると共に、半導体基板100の表面部におけるゲート電極150から見てサイドウォールスペーサー105の外側にはN型のソース・ドレイン領域107が形成されている。
【0043】
本実施形態の特徴は、高誘電率絶縁膜102が、酸素含有絶縁膜101と高誘電率絶縁膜102との界面にしきい値電圧を低減する電気双極子を形成可能な金属材料、例えばランタン(La)を含有しており、高誘電率絶縁膜102におけるランタンの組成比(濃度)が最大になる位置は、酸素含有絶縁膜101と高誘電率絶縁膜102との界面及び高誘電率絶縁膜102とゲート電極150との界面のそれぞれから離れていることである。すなわち、高誘電率絶縁膜102の内部(例えば、厚さ方向における中央部付近)においてランタン濃度が最大になる。
【0044】
図1(b)は、図1(a)に示すゲート絶縁膜/ゲート電極構造(具体的には酸素含有絶縁膜101、高誘電率絶縁膜102及び金属含有層103の積層構造)における基板主面に垂直な方向の組成分布を示している。前述のように、本実施形態の高誘電率絶縁膜102は、ランタンとハフニウムとの混合金属酸化膜であるが、図1(b)に示すように、高誘電率絶縁膜102におけるランタン濃度(La組成/(Hf組成+La組成+O組成))は高誘電率絶縁膜102の内部(例えば、厚さ方向における中央部付近)で最大になり、その値は例えば60%である。また、高誘電率絶縁膜102と酸素含有絶縁膜101との界面でのランタン濃度は例えば10%程度であり、高誘電率絶縁膜102と金属含有層103との界面にも若干のランタンが含まれている。一方、本実施形態では、酸素含有絶縁膜101と半導体基板100との界面にはランタンは存在していない。
【0045】
以上に説明したように、本実施形態では、高誘電率絶縁膜102と酸素含有絶縁膜101との界面にしきい値電圧を低減する電気双極子を形成可能な金属材料を高誘電率絶縁膜102中に添加し、当該金属材料の濃度が高誘電率絶縁膜102の内部で最大になることを特徴としている。これにより、しきい値電圧を低減しつつ、ランタン原子の半導体基板100への突き抜けに起因するキャリア移動度の劣化、及びEOTの増大をそれぞれ抑制することが可能となる。
【0046】
具体的には、高誘電率絶縁膜102と酸素含有絶縁膜101との界面にもランタン原子を分布させることにより、当該界面に電気双極子を形成することが可能となり、しきい値電圧を低下させることができる。
【0047】
また、図8(a)及び(b)に示す第1従来例、つまり、高誘電率ゲート絶縁膜上にランタン酸化膜を形成する場合とは異なり、ランタン濃度分布のピークが高誘電率絶縁膜102の内部に位置しているため、当該ピーク位置から、高誘電率絶縁膜102と酸素含有絶縁膜101との界面までの距離が短くなる。言い換えると、高誘電率絶縁膜102中にランタンを拡散させるためのランタン酸化膜を第1従来例よりも薄くした場合にも、第1従来例と同等のしきい値電圧低減を実現することが可能となるので、ゲート絶縁膜140全体としてのEOTの増大及びそれに伴うトランジスタ特性の劣化を抑制することができる。
【0048】
また、図9(a)及び(b)に示す第2従来例、つまり、高誘電率ゲート絶縁膜の下にランタン酸化膜等を形成する場合とは異なり、ランタン濃度分布の裾を高誘電率絶縁膜102と酸素含有絶縁膜101との界面近傍で終端させることが可能となる。言い換えると、活性化アニールなどの熱処理に起因するランタン原子の半導体基板100中への拡散を抑制することが可能となるので、キャリア移動度の劣化及びそれに伴うトランジスタ特性の劣化を抑制することができる。
【0049】
尚、本実施形態において、高誘電率絶縁膜102と酸素含有絶縁膜101との界面にしきい値電圧を低減する電気双極子を形成可能な金属材料として、ランタンを用いたが、これに限らず、しきい値電圧を変動させることが可能な他の金属材料を用いてもよい。例えば、N型FETのしきい値電圧を低減するためには、ジスプロシウム、スカンジウム、エリビウム又はストロンチウム等を用いてもよい。
【0050】
また、本実施形態において、半導体基板100としてシリコン(Si)基板を用いたが、これに代えて、シリコンゲルマニウム(SiGe)基板又はゲルマニウム(Ge)基板等を用いてもよい。
【0051】
また、本実施形態において、半導体基板100の表面上に酸素含有絶縁膜101としてシリコン酸化膜(SiO2 膜)を形成したが、これに代えて、シリコン酸化窒化膜(SiON膜)を形成してもよい。また、半導体基板100としてSiGe基板を用いる場合には、SiGeO膜又はSiGeON膜等を形成してもよいし、半導体基板100としてGe基板を用いる場合には、GeO2 膜又はGeON膜等を形成してもよい。
【0052】
また、本実施形態において、高誘電率絶縁膜102としてハフニウム酸化膜を形成したが、これに代えて、ハフニウムシリコン酸化膜、窒化ハフニウムシリコン酸化膜、ジルコニウム酸化膜又はハフニウムジルコニウム酸化膜等を形成してもよい。
【0053】
また、本実施形態において、ゲート電極150は、高誘電率絶縁膜102と接する金属含有層103として、TiN(チタンナイトライド)膜を有していたが、これに代えて、タンタルナイトライド膜、タンタルカーバイド膜又は窒化タンタルカーバイド膜等を有していてもよい。或いは、金属含有層103は、チタンナイトライド膜、タンタルナイトライド膜、タンタルカーバイド膜及び窒化タンタルカーバイド膜の中から選んだ2つ以上の膜の積層体であってもよい。
【0054】
また、本実施形態において、高誘電率絶縁膜102の内部におけるランタン濃度の最大値を60%程度に、高誘電率絶縁膜102と酸素含有絶縁膜101との界面でのランタン濃度を10%程度にそれぞれ設定したが、高誘電率絶縁膜102の内部でランタン濃度が最大になり且つ高誘電率絶縁膜102と酸素含有絶縁膜101との界面にランタンが存在していれば、ランタン濃度の最大値や前記界面でのランタン濃度の値が特に限定されないことは言うまでもない。
【0055】
また、本実施形態において、N型FETを対象としてランタンを用いてしきい値電圧を低減することを説明したが、これに代えて、P型FETについても同様な手法によりしきい値電圧を制御することが可能である。具体的には、P型FETのしきい値電圧を低減するための金属材料として、例えばアルミニウムを用いてもよい。
【0056】
また、本実施形態において、プレーナー型のFETを対象としたが、これに代えて、ダマシンゲート構造を有するFET又はFinFET等を対象としても同様の効果が得られる。
【0057】
以下、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法について、N型FETの製造方法を例として、図2(a)〜(d)及び図3(a)〜(c)を参照しながら説明する。図2(a)〜(d)及び図3(a)〜(c)は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図である。尚、図2(a)〜(d)及び図3(a)〜(c)において、図1(a)に示す本実施形態に係る半導体装置と同一の構成要素には同一の符号を付す。
【0058】
まず、図2(a)に示すように、P型ウェルを有する半導体基板100上に、例えば厚さ1nm程度のシリコン酸化膜(SiO2 膜)等からなる酸素含有絶縁膜101を形成した後、酸素含有絶縁膜101上に、例えば厚さ1nm程度のハフニウム酸化膜(HfO2 膜)等からなる下部高誘電率絶縁膜110、例えば厚さ0.5nm程度のランタン酸化膜等からなる金属酸化膜111、及び例えば厚さ1nm程度のハフニウム酸化膜(HfO2 膜)等からなる上部高誘電率絶縁膜112を順次形成する。
【0059】
続いて、図2(b)に示すように、例えば窒素雰囲気中において例えば800℃程度の温度でアニールを行うことにより、下部高誘電率絶縁膜110、金属酸化膜111及び上部高誘電率絶縁膜112をミキシングさせて高誘電率絶縁膜102を形成する。ここで、高誘電率絶縁膜102の上部及び下部のランタン濃度と比べて、高誘電率絶縁膜102の中央部のランタン濃度は高い。
【0060】
続いて、図2(c)に示すように、高誘電率絶縁膜102上に、例えば厚さ10nm程度の窒化チタン膜からなる金属含有層103、及び例えば厚さ100nm程度のポリシリコン層104を順次堆積する。
【0061】
続いて、図2(d)に示すように、ゲート電極形成領域を覆うレジストパターン(図示省略)をマスクとして、ポリシリコン層104及び金属含有層103に対して順次ドライエッチングを行うことによって、例えばゲート長が50nm程度のゲート電極150を形成する。ここで、ゲート電極150の外側の高誘電率絶縁膜102及び酸素含有絶縁膜101もエッチング除去されて、ゲート電極150の下に、酸素含有絶縁膜101及び高誘電率絶縁膜102からなるゲート絶縁膜140が形成される。
【0062】
続いて、図3(a)に示すように、ゲート電極150をマスクとして、半導体基板100中に、注入不純物として例えば砒素をイオン注入することにより、N型のエクステンション領域106を形成する。ここで、イオン注入条件は、加速エネルギーが2keVであり、注入ドーズ量が1×1015atoms/cm2 である。
【0063】
続いて、半導体基板100上の全面に例えば厚さ70nm程度のシリコン酸化膜を堆積した後、当該シリコン酸化膜に対してエッチバックを行って、図3(b)に示すように、ゲート電極150の側面に例えば幅70nm程度のサイドウォールスペーサー105を形成する。
【0064】
続いて、図3(c)に示すように、ゲート電極150及びサイドウォールスペーサー105をマスクとして、半導体基板100中に、注入不純物として例えば砒素をイオン注入することにより、N型のソース・ドレイン領域107を形成する。ここで、イオン注入条件は、加速エネルギーが20keVであり、注入ドーズ量が4×1015atoms/cm2 である。
【0065】
続いて、エクステンション領域106及びソース・ドレイン領域107に注入されている不純物を活性化させるために、例えば1000℃、0秒のスパイク条件で活性化アニールを行う。
【0066】
以上に説明したように、本実施形態では、ランタン酸化膜からなる金属酸化膜111を、ハフニウム酸化膜からなる下部高誘電率絶縁膜110及び上部高誘電率絶縁膜112によって挟み込んだ構造を形成した後、アニールを行うことによって、中央部のランタン濃度が高い高誘電率絶縁膜(ランタン含有高誘電率絶縁膜)102を酸素含有絶縁膜101上に形成する。これにより、従来方法の問題点であった、ランタンのシリコン基板中への突き抜けによるキャリア移動度の劣化やEOT増大などに起因するトランジスタ特性の劣化を抑制することが可能となる。
【0067】
尚、以上の説明はN型FETを対象として行ったが、P型FETに対しても同様の方法を用いることができる。但し、P型FETを対象とする場合、金属酸化膜111としてランタン酸化膜に代えて、例えばアルミニウム酸化膜等を用いてもよい。また、N型FETを対象とする場合に、金属酸化膜111としてランタン酸化膜に代えて、例えばジスプロシウム酸化膜、スカンジウム酸化膜、エリビウム酸化膜又はストロンチウム酸化膜等を用いてもよい。
【0068】
また、本実施形態において、金属酸化膜111を下部高誘電率絶縁膜110及び上部高誘電率絶縁膜112によって挟み込んだ構造を1つ形成したが、当該構造を2つ以上形成してもよい。言い換えると、図2(a)に示す工程で上部高誘電率絶縁膜112を形成した後、金属酸化膜及び高誘電率絶縁膜をこの順に交互にさらに形成してもよい。この場合、最上層の高誘電率絶縁膜を形成しなくてもよい。
【0069】
また、本実施形態において、下部高誘電率絶縁膜110、金属酸化膜111及び上部高誘電率絶縁膜112をミキシングさせて高誘電率絶縁膜102を形成するために、上部高誘電率絶縁膜112の堆積工程(図2(a)参照)と金属含有層103(窒化チタン膜)の堆積工程(図2(c)参照)との間にアニール工程を実施している。しかし、当該アニール工程の実施タイミングは、上部高誘電率絶縁膜112の堆積工程よりも後であれば特に限定されるものではない。例えば、金属含有層103若しくはポリシリコン層104の堆積工程の直後にアニール工程を実施してもよいし、又は当該アニール工程を、ソース・ドレイン領域107に注入されている不純物の活性化アニール工程と兼用してもよい。また、下部高誘電率絶縁膜110、金属酸化膜111及び上部高誘電率絶縁膜112をミキシングさせて高誘電率絶縁膜102を形成するためのアニール工程を窒素雰囲気中において800℃程度の温度で実施したが、これに限られず、不活性ガス雰囲気中又は真空中において500℃以上で且つ1350℃以下の温度でアニール工程を実施してもよい。
【0070】
また、本実施形態において、下部高誘電率絶縁膜110及び上部高誘電率絶縁膜112として同じハフニウム酸化膜を用いたが、下部高誘電率絶縁膜110及び上部高誘電率絶縁膜112として、互いに異なる種類の絶縁膜を用いてもよい。
【0071】
また、本実施形態において、酸素含有絶縁膜101としてシリコン酸化膜、下部高誘電率絶縁膜110及び上部高誘電率絶縁膜112としてハフニウム酸化膜、金属酸化膜111としてランタン酸化膜、金属含有層103(メタル電極)として窒化チタン膜を用いているが、これらは一例を示すものであり、同様の効果を有する他の代替材料を用いてもよいことは言うまでもない。
【0072】
また、本実施形態において、ゲート電極150の上部を構成するポリシリコン層104及びソース・ドレイン領域107のそれぞれの表面部に、例えばニッケルシリサイドからなるシリサイド層を設けてもよいことは言うまでもない。
【0073】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置及びその製造方法について、図面を参照しながら説明する。尚、本実施形態は、N型FET及びP型FETの両方に、第1の実施形態と同様の高誘電率絶縁膜、つまり、基板表面の酸素含有絶縁膜と高誘電率絶縁膜との界面にしきい値電圧を低減する電気双極子を形成可能な金属材料を含有し且つ当該金属材料の濃度が膜内部で最大となる高誘電率絶縁膜を有するゲート絶縁膜を備えた半導体装置を対象としている。
【0074】
図4は、本実施形態に係る半導体装置の断面図である。図4に示すように、例えばシリコン基板等の半導体基板200におけるN型FET形成領域(素子分離領域によって囲まれた半導体基板200からなる第1の領域)の上に、ゲート絶縁膜240Aを介してゲート電極250Aが形成されていると共に、半導体基板200におけるP型FET形成領域(素子分離領域によって囲まれた半導体基板200からなる第2の領域)の上に、ゲート絶縁膜240Bを介してゲート電極250Bが形成されている。ゲート絶縁膜240Aは、例えば厚さ1nm程度のシリコン酸化膜(SiO2 膜)等からなる酸素含有絶縁膜201と、酸素含有絶縁膜201上に形成され且つ例えば厚さ2nm程度のハフニウム酸化膜(HfO2 膜)等からなる高誘電率絶縁膜202Aとを有している。ゲート絶縁膜240Bは、ゲート絶縁膜240Aと同様の酸素含有絶縁膜201と、酸素含有絶縁膜201上に形成され且つ例えば厚さ2nm程度のハフニウム酸化膜(HfO2 膜)等からなる高誘電率絶縁膜202Bとを有している。ゲート電極250A及び250Bは、高誘電率絶縁膜202A及び202Bのそれぞれと接し且つ例えば窒化チタン(TiN)膜からなる金属含有層(メタル電極)203と、金属含有層203上に形成されたポリシリコン層(ポリシリコン電極)204とを有している。
【0075】
また、図4に示すように、ゲート電極250A及び250Bの側面には絶縁性のサイドウォールスペーサー205が形成されている。また、半導体基板200の表面部におけるゲート電極250A側面のサイドウォールスペーサー205の下側にはN型のエクステンション領域206Aが形成されていると共に、半導体基板200の表面部におけるゲート電極250Aから見てサイドウォールスペーサー205の外側にはN型のソース・ドレイン領域207Aが形成されている。また、半導体基板200の表面部におけるゲート電極250B側面のサイドウォールスペーサー205の下側にはP型のエクステンション領域206Bが形成されていると共に、半導体基板200の表面部におけるゲート電極250Bから見てサイドウォールスペーサー205の外側にはP型のソース・ドレイン領域207Bが形成されている。
【0076】
本実施形態の第1の特徴は、高誘電率絶縁膜202Aが、酸素含有絶縁膜201と高誘電率絶縁膜202Aとの界面にしきい値電圧を低減する電気双極子を形成可能な金属材料、例えばランタン(La)を含有しており、高誘電率絶縁膜202Aにおけるランタンの組成比(濃度)が最大になる位置は、酸素含有絶縁膜201と高誘電率絶縁膜202Aとの界面及び高誘電率絶縁膜202Aとゲート電極250Aとの界面のそれぞれから離れていることである。すなわち、高誘電率絶縁膜202Aの内部(例えば、厚さ方向における中央部付近)においてランタン濃度が最大になる。また、高誘電率絶縁膜202Aと酸素含有絶縁膜201との界面及び高誘電率絶縁膜202Aとゲート電極250A(金属含有層203)との界面にはランタンが含まれている一方、ゲート絶縁膜240A(酸素含有絶縁膜201)と半導体基板200との界面にはランタンは存在していない。
【0077】
また、本実施形態の第2の特徴は、高誘電率絶縁膜202Bが、酸素含有絶縁膜201と高誘電率絶縁膜202Bとの界面にしきい値電圧を低減する電気双極子を形成可能な金属材料、例えばアルミニウム(Al)を含有しており、高誘電率絶縁膜202Bにおけるアルミニウムの組成比(濃度)が最大になる位置は、酸素含有絶縁膜201と高誘電率絶縁膜202Bとの界面及び高誘電率絶縁膜202Bとゲート電極250Bとの界面のそれぞれから離れていることである。すなわち、高誘電率絶縁膜202Bの内部(例えば、厚さ方向における中央部付近)においてアルミニウム濃度が最大になる。また、高誘電率絶縁膜202Bと酸素含有絶縁膜201との界面及び高誘電率絶縁膜202Bとゲート電極250B(金属含有層203)との界面にはアルミニウムが含まれている一方、ゲート絶縁膜240B(酸素含有絶縁膜201)と半導体基板200との界面にはアルミニウムは存在していない。
【0078】
以上に説明したように、本実施形態では、高誘電率絶縁膜202A及び202Bのそれぞれと酸素含有絶縁膜201との界面にしきい値電圧を低減する電気双極子を形成可能な金属材料を高誘電率絶縁膜202A及び202B中に添加し、当該金属材料の濃度が高誘電率絶縁膜202A及び202Bの内部で最大になることを特徴としている。これにより、しきい値電圧を低減しつつ、ランタン原子又はアルミニウム原子の半導体基板200への突き抜けに起因するキャリア移動度の劣化、及びEOTの増大をそれぞれ抑制することが可能となる。
【0079】
具体的には、高誘電率絶縁膜202A及び202Bのそれぞれと酸素含有絶縁膜201との界面にもランタン原子又はアルミニウム原子を分布させることにより、当該界面に電気双極子を形成することが可能となり、しきい値電圧を低下させることができる。
【0080】
また、図8(a)及び(b)に示す第1従来例、つまり、高誘電率ゲート絶縁膜上にランタン酸化膜を形成する場合とは異なり、ランタン濃度分布又はアルミニウム濃度分布のピークが高誘電率絶縁膜202A及び202Bの内部に位置しているため、当該ピーク位置から、高誘電率絶縁膜202A及び202Bのそれぞれと酸素含有絶縁膜201との界面までの距離が短くなる。言い換えると、高誘電率絶縁膜202A及び202B中にランタン又はアルミニウムを拡散させるためのランタン酸化膜又はアルミニウム酸化膜を第1従来例よりも薄くした場合にも、第1従来例と同等のしきい値電圧低減を実現することが可能となるので、ゲート絶縁膜240A及び240B全体としてのEOTの増大及びそれに伴うトランジスタ特性の劣化を抑制することができる。
【0081】
また、図9(a)及び(b)に示す第2従来例、つまり、高誘電率ゲート絶縁膜の下にランタン酸化膜等を形成する場合とは異なり、ランタン濃度分布又はアルミニウム濃度分布の裾を高誘電率絶縁膜202A及び202Bのそれぞれと酸素含有絶縁膜201との界面近傍で終端させることが可能となる。言い換えると、活性化アニールなどの熱処理に起因するランタン原子又はアルミニウム原子の半導体基板200中への拡散を抑制することが可能となるので、キャリア移動度の劣化及びそれに伴うトランジスタ特性の劣化を抑制することができる。
【0082】
尚、本実施形態において、N型FETのゲート絶縁膜240Aとなる高誘電率絶縁膜202Aと酸素含有絶縁膜201との界面にしきい値電圧を低減する電気双極子を形成可能な金属材料として、ランタンを用いたが、これに限らず、しきい値電圧を変動させることが可能な他の金属材料、例えばジスプロシウム、スカンジウム、エリビウム又はストロンチウム等を用いてもよい。
【0083】
また、本実施形態において、P型FETのゲート絶縁膜240Bとなる高誘電率絶縁膜202Bと酸素含有絶縁膜201との界面にしきい値電圧を低減する電気双極子を形成可能な金属材料として、アルミニウムを用いたが、これに限らず、しきい値電圧を変動させることが可能な他の金属材料を用いてもよい。
【0084】
また、本実施形態において、半導体基板200としてシリコン(Si)基板を用いたが、これに代えて、シリコンゲルマニウム(SiGe)基板又はゲルマニウム(Ge)基板等を用いてもよい。
【0085】
また、本実施形態において、半導体基板200の表面上に酸素含有絶縁膜201としてシリコン酸化膜(SiO2 膜)を形成したが、これに代えて、シリコン酸化窒化膜(SiON膜)を形成してもよい。また、半導体基板200としてSiGe基板を用いる場合には、SiGeO膜又はSiGeON膜等を形成してもよいし、半導体基板200としてGe基板を用いる場合には、GeO2 膜又はGeON膜等を形成してもよい。
【0086】
また、本実施形態において、高誘電率絶縁膜202A及び202Bとしてハフニウム酸化膜を形成したが、これに代えて、ハフニウムシリコン酸化膜、窒化ハフニウムシリコン酸化膜、ジルコニウム酸化膜又はハフニウムジルコニウム酸化膜等を形成してもよい。
【0087】
また、本実施形態において、ゲート電極250A及び250Bは、高誘電率絶縁膜202A及び202Bのそれぞれと接する金属含有層203として、TiN(チタンナイトライド)膜を有していたが、これに代えて、タンタルナイトライド膜、タンタルカーバイド膜又は窒化タンタルカーバイド膜等を有していてもよい。或いは、金属含有層203は、チタンナイトライド膜、タンタルナイトライド膜、タンタルカーバイド膜及び窒化タンタルカーバイド膜の中から選んだ2つ以上の膜の積層体であってもよい。
【0088】
また、本実施形態において、プレーナー型のFETを対象としたが、これに代えて、ダマシンゲート構造を有するFET又はFinFET等を対象としても同様の効果が得られる。
【0089】
以下、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法について、図5(a)〜(d)、図6(a)〜(d)及び図7(a)〜(c)を参照しながら説明する。図5(a)〜(d)、図6(a)〜(d)及び図7(a)〜(c)は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図である。尚、図5(a)〜(d)、図6(a)〜(d)及び図7(a)〜(c)において、図4に示す本実施形態に係る半導体装置と同一の構成要素には同一の符号を付す。
【0090】
まず、図5(a)に示すように、N型FET形成領域にP型ウェルを有すると共にP型FET形成領域にN型ウェルを有する半導体基板200上に、例えば厚さ1nm程度のシリコン酸化膜(SiO2 膜)等からなる酸素含有絶縁膜201を形成した後、酸素含有絶縁膜201上に、例えば厚さ1nm程度のハフニウム酸化膜(HfO2 膜)等からなる下部高誘電率絶縁膜210を形成する。
【0091】
続いて、図5(b)に示すように、下部高誘電率絶縁膜210上に、例えば厚さ0.5nm程度のアルミニウム酸化膜等からなる第1の金属酸化膜211を形成した後、図5(c)に示すように、P型FET形成領域を覆うレジストパターン212をマスクとして、例えばTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)などの薬液を用いてN型FET形成領域の第1の金属酸化膜211を選択的に除去する。尚、TMAHは、一般的に現像液に用いられている薬液であるが、N型FET形成領域の第1の金属酸化膜211の除去を、レジストパターニング時の現像液処理において実施してもよい。
【0092】
続いて、図5(d)に示すように、レジストパターン212を除去した後、N型FET形成領域の下部高誘電率絶縁膜210上及びP型FET形成領域の第1の金属酸化膜211上に、例えば厚さ0.5nm程度のランタン酸化膜等からなる第2の金属酸化膜213を形成する。
【0093】
続いて、図6(a)に示すように、N型FET形成領域を覆うレジストパターン214をマスクとして、例えば塩酸などの薬液を用いてP型FET形成領域の第2の金属酸化膜213を選択的に除去する。
【0094】
続いて、図6(b)に示すように、レジストパターン214を除去した後、N型FET形成領域の第2の金属酸化膜213上及びP型FET形成領域の第1の金属酸化膜211上に、例えば厚さ1nm程度のハフニウム酸化膜(HfO2 膜)等からなる上部高誘電率絶縁膜215を形成する。
【0095】
続いて、図6(c)に示すように、例えば窒素雰囲気中において例えば800℃程度の温度でアニールを行うことにより、N型FET形成領域では、下部高誘電率絶縁膜210、第2の金属酸化膜213及び上部高誘電率絶縁膜215をミキシングさせて高誘電率絶縁膜202Aを形成すると共に、P型FET形成領域では、下部高誘電率絶縁膜210、第1の金属酸化膜211及び上部高誘電率絶縁膜215をミキシングさせて高誘電率絶縁膜202Bを形成する。ここで、N型FET形成領域の高誘電率絶縁膜202Aの上部及び下部のランタン濃度と比べて、高誘電率絶縁膜202Aの中央部のランタン濃度の方が高く、P型FET形成領域の高誘電率絶縁膜202Bの上部及び下部のアルミニウム濃度と比べて、高誘電率絶縁膜202Bの中央部のアルミニウム濃度の方が高い。
【0096】
続いて、図6(d)に示すように、高誘電率絶縁膜202A及び202Bのそれぞれの上に、例えば厚さ10nm程度の窒化チタン膜からなる金属含有層203、及び例えば厚さ100nm程度のポリシリコン層204を順次堆積した後、N型FET及びP型FETのそれぞれのゲート電極形成領域を覆うレジストパターン(図示省略)をマスクとして、ポリシリコン層204及び金属含有層203に対して順次ドライエッチングを行う。これによって、N型FET形成領域及びP型FET形成領域のそれぞれにおいて、例えばゲート長が50nm程度のゲート電極250A及び250Bが形成される。ここで、ゲート電極250Aの外側の高誘電率絶縁膜202A及び酸素含有絶縁膜201もエッチング除去されて、ゲート電極250Aの下に、酸素含有絶縁膜201及び高誘電率絶縁膜202Aからなるゲート絶縁膜240Aが形成される。また、ゲート電極250Bの外側の高誘電率絶縁膜202B及び酸素含有絶縁膜201もエッチング除去されて、ゲート電極250Bの下に、酸素含有絶縁膜201及び高誘電率絶縁膜202Bからなるゲート絶縁膜240Bが形成される。
【0097】
続いて、図7(a)に示すように、P型FET形成領域を覆うレジストパターン(図示省略)及びゲート電極250Aをマスクとして、半導体基板200中に、注入不純物として例えば砒素をイオン注入することにより、N型のエクステンション領域206Aを形成する。ここで、イオン注入条件は、加速エネルギーが2keVであり、注入ドーズ量が1×1015atoms/cm2 である。また、N型FET形成領域を覆うレジストパターン(図示省略)及びゲート電極250Bをマスクとして、半導体基板200中に、注入不純物として例えばボロンをイオン注入することにより、P型のエクステンション領域206Bを形成する。ここで、イオン注入条件は、加速エネルギーが0.3keVであり、注入ドーズ量が5×1014atoms/cm2 である。
【0098】
続いて、半導体基板200上の全面に例えば厚さ70nm程度のシリコン酸化膜を堆積した後、当該シリコン酸化膜に対してエッチバックを行って、図7(b)に示すように、ゲート電極250A及び250Bのそれぞれの側面に例えば幅70nm程度のサイドウォールスペーサー205を形成する。
【0099】
続いて、図7(c)に示すように、P型FET形成領域を覆うレジストパターン(図示省略)、ゲート電極250A及びその側面のサイドウォールスペーサー205をマスクとして、半導体基板200中に、注入不純物として例えば砒素をイオン注入することにより、N型のソース・ドレイン領域207Aを形成する。ここで、イオン注入条件は、加速エネルギーが20keVであり、注入ドーズ量が4×1015atoms/cm2 である。また、N型FET形成領域を覆うレジストパターン(図示省略)、ゲート電極250B及びその側面のサイドウォールスペーサー205をマスクとして、半導体基板200中に、注入不純物として例えばボロンをイオン注入することにより、P型のソース・ドレイン領域207Bを形成する。ここで、イオン注入条件は、加速エネルギーが1.5keVであり、注入ドーズ量が4×1015atoms/cm2 である。
【0100】
続いて、エクステンション領域206A及び206B並びにソース・ドレイン領域207A及び207Bに注入されている不純物を活性化させるために、例えば1000℃、0秒のスパイク条件で活性化アニールを行う。
【0101】
以上に説明したように、本実施形態では、アルミニウム酸化膜からなる第1の金属酸化膜211又はランタン酸化膜からなる第2の金属酸化膜213を、ハフニウム酸化膜からなる下部高誘電率絶縁膜210及び上部高誘電率絶縁膜215によって挟み込んだ構造を形成した後、アニールを行うことによって、中央部のランタン濃度が高い高誘電率絶縁膜(ランタン含有高誘電率絶縁膜)202A及び中央部のアルミニウム濃度が高い高誘電率絶縁膜(アルミニウム含有高誘電率絶縁膜)202Bをそれぞれ酸素含有絶縁膜201上に形成する。これにより、従来方法の問題点であった、ランタン又はアルミニウムのシリコン基板中への突き抜けによるキャリア移動度の劣化やEOT増大などに起因するトランジスタ特性の劣化を抑制することが可能となる。
【0102】
尚、本実施形態において、金属酸化膜211又は213を下部高誘電率絶縁膜210及び上部高誘電率絶縁膜215によって挟み込んだ構造を1つ形成したが、当該構造を2つ以上形成してもよい。言い換えると、図6(b)に示す工程で上部高誘電率絶縁膜215を形成した後、図5(b)〜(d)及び図6(a)、(b)に示す一連の工程をさらに1回以上繰り返し行ってもよい。この場合、最上層の高誘電率絶縁膜については形成しなくてもよい。
【0103】
また、本実施形態において、下部高誘電率絶縁膜210と金属酸化膜211又は213と上部高誘電率絶縁膜215とをミキシングさせて高誘電率絶縁膜202A及び202Bを形成するために、上部高誘電率絶縁膜215の堆積工程(図6(b)参照)と金属含有層203(窒化チタン膜)の堆積工程(図6(d)参照)との間にアニール工程を実施している。しかし、当該アニール工程の実施タイミングは、上部高誘電率絶縁膜215の堆積工程よりも後であれば特に限定されるものではない。例えば、金属含有層203若しくはポリシリコン層204の堆積工程の直後にアニール工程を実施してもよいし、又は当該アニール工程を、ソース・ドレイン領域207A及び207Bに注入されている不純物の活性化アニール工程と兼用してもよい。また、下部高誘電率絶縁膜210と金属酸化膜211又は213と上部高誘電率絶縁膜215とをミキシングさせて高誘電率絶縁膜202A及び202Bを形成するためのアニール工程を窒素雰囲気中において800℃程度の温度で実施したが、これに限られず、不活性ガス雰囲気中又は真空中において500℃以上で且つ1350℃以下の温度でアニール工程を実施してもよい。
【0104】
また、本実施形態において、下部高誘電率絶縁膜210及び上部高誘電率絶縁膜215として同じハフニウム酸化膜を用いたが、下部高誘電率絶縁膜210及び上部高誘電率絶縁膜215として、互いに異なる種類の絶縁膜を用いてもよい。また、酸素含有絶縁膜201、下部高誘電率絶縁膜210及び上部高誘電率絶縁膜215のそれぞれについて、N型FET形成領域とP型FET形成領域とで同じ絶縁膜を用いたが、これらの絶縁膜について、N型FET形成領域とP型FET形成領域とで異なる絶縁膜を用いてもよい。
【0105】
また、本実施形態において、酸素含有絶縁膜201としてシリコン酸化膜、下部高誘電率絶縁膜210及び上部高誘電率絶縁膜215としてハフニウム酸化膜、第1の金属酸化膜211としてアルミニウム酸化膜、第2の金属酸化膜213としてランタン酸化膜、金属含有層203(メタル電極)として窒化チタン膜を用いているが、これらは一例を示すものであり、同様の効果を有する他の代替材料を用いてもよいことは言うまでもない。
【0106】
また、本実施形態において、ゲート電極250A及び250Bのそれぞれの上部を構成するポリシリコン層204の表面部、並びにソース・ドレイン領域207A及び207Bのそれぞれの表面部に、例えばニッケルシリサイドからなるシリサイド層を設けてもよいことは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関し、特に、ゲート絶縁膜として高誘電率絶縁膜を用いたトランジスタを有する半導体装置及びその製造方法に適用した場合、EOTの増大及びキャリア移動度の低下を抑制しつつ、しきい値電圧を低減できるという効果が得られ、有用である。
【符号の説明】
【0108】
100 半導体基板
101 酸素含有絶縁膜
102 高誘電率絶縁膜
103 金属含有層
104 ポリシリコン層
105 サイドウォールスペーサー
106 エクステンション領域
107 ソース・ドレイン領域
110 下部高誘電率絶縁膜
111 金属酸化膜
112 上部高誘電率絶縁膜
140 ゲート絶縁膜
150 ゲート電極
200 半導体基板
201 酸素含有絶縁膜
202A、202B 高誘電率絶縁膜
203 金属含有層
204 ポリシリコン層
205 サイドウォールスペーサー
206A、206B エクステンション領域
207A、207B ソース・ドレイン領域
210 下部高誘電率絶縁膜
211 第1の金属酸化膜
212 レジストパターン
213 第2の金属酸化膜
214 レジストパターン
215 上部高誘電率絶縁膜
240A、240B ゲート絶縁膜
250A、250B ゲート電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板における第1の領域上に形成された第1のゲート絶縁膜と、
前記第1のゲート絶縁膜上に形成された第1のゲート電極とを備え、
前記第1のゲート絶縁膜は、第1の酸素含有絶縁膜と、前記第1の酸素含有絶縁膜上に形成され且つ第1の金属を含む第1の高誘電率絶縁膜とを有し、
前記第1の高誘電率絶縁膜は、前記第1の金属とは異なる第2の金属をさらに含み、
前記第1の高誘電率絶縁膜における前記第2の金属の組成比が最大になる位置は、前記第1の高誘電率絶縁膜と前記第1の酸素含有絶縁膜との界面及び前記第1の高誘電率絶縁膜と前記第1のゲート電極との界面のそれぞれから離れていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記第2の金属は、前記第1の高誘電率絶縁膜と前記第1の酸素含有絶縁膜との界面にも存在し、それにより、当該界面に、前記第1のゲート電極に印加されるしきい値電圧を低減する電気双極子が形成されることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の半導体装置において、
前記第1の酸素含有絶縁膜はシリコン酸化膜であることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記第1の高誘電率絶縁膜は、ハフニウム酸化膜、ハフニウムシリコン酸化膜、窒化ハフニウムシリコン酸化膜、ジルコニウム酸化膜又はハフニウムジルコニウム酸化膜のいずれかであることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記第1のゲート電極は、前記第1の高誘電率絶縁膜と接する第1の金属含有層を含むことを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項5に記載の半導体装置において、
前記第1の金属含有層は、チタンナイトライド膜、タンタルナイトライド膜、タンタルカーバイド膜若しくは窒化タンタルカーバイド膜又はそれらの膜のうち2つ以上を積層させた膜であることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記第1の領域はN型FET形成領域であり、
前記第2の金属はランタン、ジスプロシウム、スカンジウム、エリビウム又はストロンチウムであることを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記第1の領域はP型FET形成領域であり、
前記第2の金属はアルミニウムであることを特徴とする半導体装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記半導体基板における第2の領域上に形成された第2のゲート絶縁膜と、
前記第2のゲート絶縁膜上に形成された第2のゲート電極とを備え、
前記第2のゲート絶縁膜は、第2の酸素含有絶縁膜と、前記第2の酸素含有絶縁膜上に形成され且つ前記第1の金属を含む第2の高誘電率絶縁膜とを有し、
前記第2の高誘電率絶縁膜は、前記第1の金属及び前記第2の金属とは異なる第3の金属をさらに含み、
前記第2の高誘電率絶縁膜における前記第3の金属の組成比が最大になる位置は、前記第2の高誘電率絶縁膜と前記第2の酸素含有絶縁膜との界面及び前記第2の高誘電率絶縁膜と前記第2のゲート電極との界面のそれぞれから離れていることを特徴とする半導体装置。
【請求項10】
請求項9に記載の半導体装置において、
前記第3の金属は、前記第2の高誘電率絶縁膜と前記第2の酸素含有絶縁膜との界面にも存在し、それにより、当該界面に、前記第2のゲート電極に印加されるしきい値電圧を低減する電気双極子が形成されることを特徴とする半導体装置。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の半導体装置において、
前記第2の酸素含有絶縁膜はシリコン酸化膜であることを特徴とする半導体装置。
【請求項12】
請求項9〜11のいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記第2の高誘電率絶縁膜は、ハフニウム酸化膜、ハフニウムシリコン酸化膜、窒化ハフニウムシリコン酸化膜、ジルコニウム酸化膜又はハフニウムジルコニウム酸化膜のいずれかであることを特徴とする半導体装置。
【請求項13】
請求項9〜12のいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記第2のゲート電極は、前記第2の高誘電率絶縁膜と接する第2の金属含有層を含むことを特徴とする半導体装置。
【請求項14】
請求項13に記載の半導体装置において、
前記第2の金属含有層は、チタンナイトライド膜、タンタルナイトライド膜、タンタルカーバイド膜若しくは窒化タンタルカーバイド膜又はそれらの膜のうち2つ以上を積層させた膜であることを特徴とする半導体装置。
【請求項15】
半導体基板上に酸素含有絶縁膜、第1の金属を含む下部高誘電率絶縁膜、前記第1の金属とは異なる第2の金属を含む金属酸化膜、前記第1の金属を含む上部高誘電率絶縁膜を順次形成する工程(a)と、
熱処理により、前記下部高誘電率絶縁膜と前記金属酸化膜と前記上部高誘電率絶縁膜とをミキシングさせて高誘電率絶縁膜を形成する工程(b)とを備えていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項16】
請求項15に記載の半導体装置の製造方法において、
前記下部高誘電率絶縁膜及び前記上部高誘電率絶縁膜は同じ種類の絶縁膜であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項17】
請求項15又は16に記載の半導体装置の製造方法において、
前記工程(b)よりも後に、前記高誘電率絶縁膜上にゲート電極を形成する工程(c)をさらに備えていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項18】
請求項15〜17のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第2の金属はランタン、ジスプロシウム、スカンジウム、エリビウム又はストロンチウムであることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項19】
請求項15〜17のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第2の金属はアルミニウムであることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項20】
請求項15〜19のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記工程(b)は、不活性ガス雰囲気中又は真空中において500℃以上で且つ1350℃以下の温度で熱処理を行う工程を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−272782(P2010−272782A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−124943(P2009−124943)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】