説明

半導体製造装置、ゲルマニウムドットの製造方法およびそれを用いた半導体メモリの製造方法

【課題】ゲルマニウムからなるドットの密度を向上可能な半導体製造装置を提供する。
【解決手段】半導体製造装置600は、石英管610と、反応室620と、石英管610内へHガスを供給する配管650と、石英管610内にリモート水素プラズマを生成するアンテナ670、マッチング回路680および高周波電源690と、反応室620内で基板800を保持する基板ホルダー630と、基板800を加熱するヒーター640と、ゲルマンガスを基板800の近傍に供給する噴出器700および配管710とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体製造装置、ゲルマニウムドットの製造方法およびそれを用いた半導体メモリの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ゲルマニウムからなるドットを備える不揮発性半導体記憶装置が知られている(特許文献1)。
【0003】
この不揮発性半導体記憶装置は、ソース、ドレイン、シリコン酸化膜、ドット、高誘電体膜、およびコントロールゲートを備える。ソースおよびドレインは、シリコン半導体基板の一主面に形成される。シリコン酸化膜は、ソースとドレインとの間においてシリコン半導体基板の一主面上に形成される。
【0004】
ドットは、ゲルマニウムからなり、シリコン酸化膜上に形成される。高誘電体膜は、ドットを覆うようにシリコン酸化膜上に形成される。コントロールゲートは、高誘電体膜上に形成される。
【0005】
このように、不揮発性半導体記憶装置は、ドットをフローティングゲートとする半導体記憶装置である。
【特許文献1】特開2005−251990号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1は、フローティングゲートであるドットの密度を制御する方法を開示していないため、ゲルマニウムからなるドットの密度を高くすることが困難であるという問題がある。
【0007】
そこで、この発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、ゲルマニウムからなるドットの密度を向上可能な半導体製造装置を提供することである。
【0008】
また、この発明の別の目的は、ゲルマニウムからなるドットの密度を向上可能なゲルマニウムドットの製造方法を提供することである。
【0009】
さらに、この発明の別の目的は、ゲルマニウムからなるドットの密度を向上可能なゲルマニウムドットの製造方法を用いた半導体メモリの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明によれば、半導体製造装置は、反応室と、支持部材と、加熱装置と、第1および第2の供給装置とを備える。支持部材は、反応室内に配置され、基板を支持する。加熱装置は、基板を加熱する。第1の供給装置は、基板の表面に原子状水素を供給する。第2の供給装置は、第1の供給装置が原子状水素を基板の表面に供給しているときに基板の表面にゲルマンガスを供給する。
【0011】
好ましくは、第1の供給装置は、リモート水素プラズマによって水素ガスから原子状水素を生成し、その生成した原子状水素を基板の表面に供給する。
【0012】
好ましくは、第1の供給装置は、原子状水素とゲルマンガスとの反応領域と異なる領域で原子状水素を生成し、その生成した原子状水素を基板の表面に供給する。第2の供給装置は、原子状水素が生成される領域と異なる領域からゲルマンガスを基板の表面に供給する。
【0013】
また、この発明によれば、ゲルマニウムドットの製造方法は、反応室内に配置された基板を加熱する第1のステップと、基板の表面に原子状水素を供給する第2のステップと、原子状水素が基板の表面に供給されているときにゲルマンガスを基板の表面に供給する第3のステップとを備える。
【0014】
好ましくは、第2のステップにおいて、原子状水素は、リモート水素プラズマによって水素ガスから生成されて基板の表面に供給される。
【0015】
好ましくは、第2のステップにおいて、原子状水素は、原子状水素とゲルマンガスとの反応領域と異なる領域で生成されて基板の表面に供給される。第3のステップにおいて、ゲルマンガスは、原子状水素が生成される領域と異なる領域から基板の表面に供給される。
【0016】
さらに、この発明によれば、半導体メモリの製造方法は、半導体基板の一主面にソース電極およびドレイン電極を形成する第1のステップと、ソース電極とドレイン電極との間の半導体基板の一主面に絶縁膜を形成する第2のステップと、原子状水素とゲルマンガスとを用いて絶縁膜上にゲルマニウムドットを形成する第3のステップと、ゲルマニウムドットを酸化してゲルマニウムドットを覆うように酸化ゲルマニウム膜を形成する第4のステップと、酸化ゲルマニウム膜上に電荷蓄積ノードを形成する第5のステップとを備える。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、原子状水素を基板表面に供給しながらゲルマンガスを基板表面に供給してゲルマニウムドットが形成される。その結果、原子状水素がゲルマニウムドットの形成を促進する。
【0018】
したがって、この発明によれば、ゲルマニウムドットの密度を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0020】
図1は、この発明の実施の形態による半導体製造装置の概略図である。図1を参照して、この発明の実施の形態による半導体製造装置600は、石英管610と、反応室620と、基板ホルダー630と、ヒーター640と、配管650,710と、バルブ660,720と、アンテナ670と、マッチング回路680と、高周波電源690と、噴出器700とを備える。
【0021】
石英管610は、10cmφの直径を有し、その一方端が反応室620内に挿入されるように固定される。反応室620は、中空の円筒形状からなり、上面620Aに石英管610の一方端を挿入するための開口部621を有し、側面620Bに排気口622を有する。そして、反応室620は、開口部621から石英管610の一方端が挿入されることによって、内部空間が石英管610の内部空間と連通する。従って、ポンプ(図示せず)によって反応室620および石英管610の内部の気体を排気口622を介して排気できる。
【0022】
基板ホルダー630は、反応室620の下面620C上に配置される。ヒーター640は、シリコンカーバイド(SiC)からなり、基板ホルダー630内に配置される。
【0023】
配管650は、バルブ660を介して石英管610の他方端に連結される。バルブ660は、配管650に装着される。アンテナ670は、基板ホルダー630上に設置された基板800から32cmの位置で石英管610の周囲を取り巻くように配置される。そして、アンテナ670は、その一方端がマッチング回路680に接続され、他方端が接地される。
【0024】
マッチング回路680は、アンテナ670の一方端と高周波電源690との間に接続される。高周波電源690は、マッチング回路680と、接地ノードとの間に接続される。
【0025】
噴出器700は、反応室620の内部において、基板ホルダー630の近傍に配置される。配管710は、一方端がバルブ720を介して噴出器700に連結される。バルブ720は、配管710に装着される。
【0026】
ヒーター640は、基板ホルダー630を介して基板800を所定の温度に加熱する。配管650は、水素(H)ガスをボンベ(図示せず)から石英管610内に導く。バルブ660は、Hガスを石英管610内へ供給し、またはHガスの石英管610内への供給を遮断する。
【0027】
マッチング回路680は、高周波電源690から供給された高周波電力の高周波電源690側への反射を低くして高周波電力をアンテナ670へ供給する。高周波電源690は、60MHzの高周波電力をマッチング回路680を介してアンテナ670へ供給する。
【0028】
噴出器700は、ゲルマン(GeH)ガスを配管710から受け、その受けたGeHガスを基板800の表面に供給する。配管710は、GeHガスをボンベ(図示せず)から受け、その受けたGeHガスを噴出器700へ導く。バルブ720は、GeHガスを噴出器700へ供給し、またはGeHガスの噴出器700への供給を遮断する。
【0029】
半導体製造装置600における動作について説明する。基板800が基板ホルダー630上に配置され、排気口622から反応室620および石英管610の真空引きが行なわれる。
【0030】
その後、基板800は、ヒーター640によって所定の温度に加熱される。また、バルブ660が開けられ、ボンベ(図示せず)から所定量のHガスが配管650を介して石英管610内へ導入される。さらに、バルブ720が開けられ、ボンベ(図示せず)から所定量のGeHガスが配管710および噴出器700を介して反応室620内へ導入される。
【0031】
そして、石英管610内の圧力が所定の圧力に達すると、高周波電源690は、60MHzの高周波電力をマッチング回路680を介してアンテナ670に供給する。この場合、マッチング回路680は、高周波電源690から供給された高周波電力の高周波電源690側への反射が最も低くなるように調整される。
【0032】
そうすると、石英管610内でプラズマ730が発生し、主に原子状水素がプラズマ730の発生領域から基板800の方向へ石英管610内を拡散し、基板800表面に到達する。また、噴出器700から噴出されたGeHガスも、基板800表面に到達する。そして、原子状水素とGeHガスとによって、ゲルマニウムからなるドットが基板800上に形成される。
【0033】
所定の時間が経過すると、高周波電源690がオフされ、バルブ660,720が閉じられて一連の動作が終了する。
【0034】
半導体製造装置600においては、Hガスを石英管610内に導入せずに、GeHガスだけを反応室620内に導入することによって基板800上に膜を堆積させることも可能である。
【0035】
なお、半導体製造装置600においては、基板800は、電気的にフローティングされた状態でゲルマニウムドットが製造される。
【0036】
次に、半導体製造装置600におけるゲルマニウムドットの製造方法について説明する。図2は、ゲルマニウムドットの製造方法を示す工程図である。図2を参照して、一連の動作が開始されると、シリコン基板1がRCA洗浄される(図2の工程(a)参照)。
【0037】
そして、2%の酸素(O)ガスを用いて1000℃の温度でシリコン基板1の表面が酸化される。これによって、3.7nmの膜厚を有するシリコン酸化膜2がシリコン基板1の表面に形成される(図2の工程(b)参照)。
【0038】
その後、シリコン基板1/シリコン酸化膜2が0.1%のフッ酸(HF)によって処理される。これによって、O−H結合21がシリコン酸化膜2の表面に形成され、シリコン酸化膜2の表面がOHによって終端される(図2の工程(c)参照)。
【0039】
引き続いて、シリコン基板1/シリコン酸化膜2が半導体製造装置600の基板ホルダー630上に設置される。そして、バルブ660,720を閉じた状態で石英管610内および反応室620内が排気口622を介して真空に引かれる。
【0040】
石英管610内および反応室620内が到達圧力に達すると、シリコン基板1/シリコン酸化膜2がヒーター640によって300℃に加熱される。そして、バルブ660が開かれ、600sccmのHガスが配管650から石英管610内に導入される。また、バルブ720が開かれ、20sccmのGeHガスが配管710および噴出器700を介して反応室620内に導入される。これによって、石英管610内および反応室620内の圧力は、53.2Paになる。
【0041】
そうすると、高周波電源690は、100Wの高周波電力をマッチング回路680を介してアンテナ670に印加する。これによって、プラズマ730が石英管610内で生成され、原子状水素が石英管610内を拡散してシリコン基板1/シリコン酸化膜2の表面に供給される。また、GeHガスがシリコン基板1/シリコン酸化膜2の表面に供給される(図2の工程(d)参照)。
【0042】
すなわち、原子状水素は、原子状水素とGeHガスとの反応領域と異なる領域で生成されてシリコン基板1/シリコン酸化膜2の表面に供給される。また、GeHガスは、原子状水素が生成される領域と異なる領域からシリコン基板1/シリコン酸化膜2の表面に供給される。
【0043】
そして、原子状水素とGeHガスとの反応によってシリコン酸化膜2の表面にゲルマニウムドット311が形成される(図2の工程(e)参照)。
【0044】
高周波電力の印加から5〜60秒が経過すると、高周波電源690は、高周波電力のアンテナ670への印加を停止し、ゲルマニウムドット311の形成が終了する。
【0045】
このように、半導体製造装置600においては、原子状水素とGeHガスとをシリコン基板1の表面に供給してゲルマニウムドット311をシリコン酸化膜2上に形成する。そして、原子状水素は、リモート水素プラズマによって生成される。また、半導体製造装置600においては、原子状水素は、原子状水素とGeHガスとの反応領域と異なる領域で生成され、シリコン基板1の表面に供給される。さらに、GeHガスは、原子状水素が生成される領域と異なる領域からシリコン基板1の表面に供給される。
【0046】
なお、工程(d)においては、原子状水素は、原子状水素とGeHガスとの反応領域と異なる領域で生成されてシリコン基板1/シリコン酸化膜2の表面に供給され、GeHガスは、原子状水素が生成される領域と異なる領域からシリコン基板1/シリコン酸化膜2の表面に供給されるので、工程(d)は、原子状水素を原子状水素とGeHガスとの反応領域と異なる領域で生成してシリコン基板1/シリコン酸化膜2の表面に供給するステップと、原子状水素が生成される領域と異なる領域からGeHガスをシリコン基板1/シリコン酸化膜2の表面に供給するステップとを含む。
【0047】
図3は、半導体製造装置600を用いて作成したゲルマニウムドットの表面形状を示す図である。
【0048】
図3の(a)は、図2に示す工程(d)において、リモート水素プラズマによって原子状水素をシリコン基板1/シリコン酸化膜2の表面に供給せずに、GeHガスのみをシリコン基板1/シリコン酸化膜2の表面に供給して工程(a)〜(e)に従って成膜したときの表面形状を示す図である。
【0049】
また、図3の(b)は、図2に示す工程(a)〜(e)に従って作成したゲルマニウムドットの表面形状を示す図である。
【0050】
さらに、図3においては、ゲルマニウムドットを作成するときの基板温度は、300℃であり、反応圧力は、53.2Paであり、堆積時間は、30秒である。
【0051】
図3を参照して、GeHガスのみを用いて反応した場合、ゲルマニウムドットが形成されないが(図3の(a)参照)、リモート水素プラズマによる原子状水素とGeHガスとの両方を用いて反応した場合、300℃という低温において、ゲルマニウムドットが高密度に形成される(図3の(b)参照)。
【0052】
このように、原子状水素をGeHガスに追加してシリコン基板1/シリコン酸化膜2の表面に供給することによって、300℃という低温において、高密度なゲルマニウムドットを作成できる。
【0053】
図4は、XPS(X−ray Photoelectron Spectroscopy)スペクトルを示す図である。
【0054】
図4において、縦軸は、光電子強度を表し、横軸は、結合エネルギーを表す。また、図4の(a)は、Si2pのスペクトルを示し、図4の(b)は、Ge2pのスペクトルを示す。さらに、図4の(a)において、曲線k1は、原子状水素とGeHガスとの両方を用いて反応した試料におけるSi2pのスペクトルを示し、曲線k2は、GeHガスのみを用いて反応した試料におけるSi2pのスペクトルを示す。さらに、図4の(b)において、曲線k3は、原子状水素とGeHガスとの両方を用いて反応した試料におけるGe2pのスペクトルを示し、曲線k4は、GeHガスのみを用いて反応した試料におけるGe2pのスペクトルを示す。
【0055】
図4の(a)を参照して、原子状水素およびGeHガスの両方を用いて反応した場合、およびGeHガスのみを用いて反応した場合、Si−O結合およびSi−Si結合がほぼ同じ結合エネルギー位置に観測される。
【0056】
しかし、原子状水素およびGeHガスの両方を用いて反応した場合、Si−O結合およびSi−Si結合の光電子強度は、GeHガスのみを用いて反応した場合よりも低くなる(曲線k1,k2参照)。
【0057】
図4の(b)を参照して、原子状水素およびGeHガスの両方を用いて反応した場合、Ge−O結合およびGe−Ge結合の両方が観測されるが(曲線k3参照)、GeHガスのみを用いて反応した場合、Ge−O結合のみが観測され、Ge−Ge結合が観測されない(曲線k4参照)。
【0058】
そして、原子状水素およびGeHガスの両方を用いて反応した場合、Ge−O結合の光電子強度は、GeHガスのみを用いて反応した場合よりも大きい(曲線k3,k4参照)。
【0059】
このGe−O結合は、シリコン酸化膜2の酸素(O)とゲルマニウムドット311のゲルマニウム(Ge)との結合であり、Ge−Ge結合は、ゲルマニウムドット311中のGe−Ge結合である。
【0060】
したがって、原子状水素をGeHガスに追加してシリコン基板1/シリコン酸化膜2の表面に供給することによって、300℃という低温においても、シリコン酸化膜2上にゲルマニウムドットを作成できることが実証された。
【0061】
図5は、図2に示す工程(a)〜(e)に従ってゲルマニウムドットを作成するときの基板温度依存性を示す図である。
【0062】
図5において、(a)は、基板温度が室温(27℃)である場合を示し、(b)は、基板温度が100℃である場合を示し、(c)は、基板温度が200℃である場合を示し、(d)は、基板温度が300℃である場合を示す。そして、各基板温度において、反応圧力、高周波電力および堆積時間は、それぞれ、53.2Pa、100W、および30秒に保持された。
【0063】
基板温度が室温(27℃)、100℃、および200℃である場合、ゲルマニウムドットは、形成されないが(図5の(a)〜(c)参照)、基板温度が300℃である場合、ゲルマニウムドットが高密度に形成される(図5の(d)参照)。
【0064】
これは、基板温度を300℃に設定することによって、GeHガスの熱分解が促進され、分解された活性種が原子状水素によって覆われたシリコン酸化膜2の表面を移動し易くなるためと考えられる。
【0065】
図6は、図2に示す工程(a)〜(e)に従ってゲルマニウムドットを作成するときの堆積時間依存性を示す図である。
【0066】
図6において、(a)は、堆積時間が5秒である場合を示し、(b)は、堆積時間が15秒である場合を示し、(c)は、堆積時間が30秒である場合を示し、(d)は、堆積時間が60秒である場合を示す。そして、各堆積時間において、反応圧力、高周波電力および基板温度は、それぞれ、53.2Pa、100W、および300℃に保持された。
【0067】
5秒の堆積時間において、ゲルマニウムドットの形成が観測され(図6の(a)参照)、堆積時間が長くなるに従って、ゲルマニウムドットのサイズが大きくなり、ゲルマニウムドットの密度が高くなる(図6の(a)〜(d)参照)。
【0068】
図7は、ゲルマニウムドットの高さと個数との関係を示す図である。図7において、縦軸は、ドット数を表し、横軸は、ドット高さを表す。また、ゲルマニウムドットを作成するときの基板温度は、300℃であり、反応圧力は、53.2Paである。
【0069】
図7を参照して、堆積時間が5秒である場合、ドット高さの平均値は、1.4nmであり、ドット高さは、1.0nm〜2.0nmの範囲に分布する。また、堆積時間が15秒である場合、ドット高さの平均値は、3.2nmであり、ドット高さは、1.5nm〜6nmの範囲に分布する。
【0070】
さらに、堆積時間が30秒である場合、ドット高さの平均値は、4.0nmであり、ドット高さは、約2.6nm〜6nmの範囲に分布する。さらに、堆積時間が60秒である場合、ドット高さの平均値は、5.6nmであり、ドット高さは、約3.6nm〜7.5nmの範囲に分布する。
【0071】
そして、堆積時間が30秒および60秒と長くなると、各ドット高さにおけるドット数が増加する。
【0072】
図8は、ドット密度および平均ドット高さと堆積時間との関係を示す図である。図8において、縦軸は、ドット密度および平均ドット高さを表し、横軸は、堆積時間を表す。また、曲線k5は、ドット密度と堆積時間との関係を示し、曲線k6は、平均ドット高さと堆積時間との関係を示す。
【0073】
なお、図8においては、基板温度は、300℃であり、反応圧力は、53.2Paである。
【0074】
図8を参照して、ドット密度は、堆積時間が5秒から15秒に増えると、1010cm−2台から1011cm−2台へと急激に高くなり、堆積時間が15秒から30秒および60秒と長くなるに従って徐々に高くなり、60秒の反応時間において、ほぼ飽和する(曲線k5参照)。
【0075】
また、平均ドット高さは、堆積時間が長くなるに従って大きくなる(曲線k6参照)。
【0076】
したがって、堆積時間を制御することによって、ゲルマニウムドットの密度および平均ドット高さを制御することができる。
【0077】
上述したように、原子状水素をGeHガスに追加して基板表面に供給することによって、300℃という低温においてゲルマニウムドットを高密度に形成できる。また、堆積時間を制御することによってゲルマニウムドットの密度および平均ドット高さを制御できる。
【0078】
そして、この発明の実施の形態においては、原子状水素は、基板から32cmの距離だけ離れた位置においてリモート水素プラズマによって生成され、基板表面に供給される。また、GeHガスは、リモート水素プラズマが発生する領域から離れた位置で基板表面へ供給されるので、GeHガスがリモートプラズマによって分解されることはない。
【0079】
したがって、リモートプラズマによって発生する各種のイオンによる基板表面へのダメージを抑制してゲルマニウムドットを作成できる。
【0080】
なお、上記においては、半導体製造装置600は、リモート水素プラズマによって原子状水素を生成すると説明したが、この発明の実施の形態においては、これに限らず、他の方法によって原子状水素を生成し、その生成した原子状水素を基板表面に供給するようにしてもよい。
【0081】
次に、図1に示す半導体製造装置600を用いて作成したゲルマニウムドットの応用例について説明する。
【0082】
図9は、ゲルマニウムドットを用いた半導体メモリの断面図である。図9を参照して、半導体メモリ100は、半導体基板101と、ソース電極102と、ドレイン電極103と、絶縁膜105と、複合フローティングゲート300と、ゲート電極104と、サイドウォール106とを備える。
【0083】
半導体メモリ100は、絶縁膜105とゲート電極104とに挟まれる部分に複合フローティングゲート300を配置した構造からなる。そして、複合フローティングゲート300は、制御ノード310および電荷蓄積ノード320の積層により構成される。制御ノード310は、量子ドット311と、それを被覆する酸化膜312とによって構成され、電荷蓄積ノード320は、シリサイド量子ドット321と、それを被覆する高誘電率絶縁膜322とによって構成され、それぞれの材料の組み合わせと、ノードの積層の組み合わせにより、半導体メモリ100の作用が異なる。
【0084】
半導体基板101は、(100)の面方位を有するn型単結晶シリコン(Si)基板からなる。ソース電極102およびドレイン電極103は、半導体基板101の一主面側に形成される。そして、ソース電極102およびドレイン電極103は、p型Siからなる。
【0085】
絶縁膜105は、SiOからなり、半導体基板1の一主面に接して形成される。そして、絶縁膜105は、約2nm〜4nmの膜厚を有する。この2nm〜4nmの膜厚は、電子が絶縁膜105をトンネル可能な膜厚である。
【0086】
複合フローティングゲート300は、絶縁膜105に接して形成される。ゲート電極104は、複合フローティングゲート300に接して形成される。そして、ゲート電極104は、不純物半導体または半透明導電体からなる。より具体的には、ゲート電極104は、タンタル(Ta)、アルミニウム(Al)、タングステン(W)およびモリブデン(Mo)等の純金属あるいはそれらの合金、ITO(Indium Tin Oxide)およびIZO(Indium Zinc Oxide)等の透明導電体または不純物を高濃度にドープして低抵抗化した半導体等からなる。
【0087】
サイドウォール106は、シリコン酸化膜を含む絶縁膜からなり、複合フローティングゲート300およびゲート電極104を両側から挟むように絶縁膜105上に形成される。
【0088】
複合フローティングゲート300は、制御ノード310と、電荷蓄積ノード320とからなる。制御ノード310は、絶縁膜105に接して形成される。電荷蓄積ノード320は、制御ノード310に接して形成される。このように、複合フローティングゲート300は、電荷蓄積ノード320を制御ノード310上に積層した2層構造からなる。
【0089】
制御ノード310は、複数の量子ドット311と、酸化膜312とからなる。複数の量子ドット311は、絶縁膜105上に二次元的に形成される。そして、複数の量子ドット311の各々は、略半球状のGe結晶からなり、10nm以下の直径および8nm以下の高さを有する。酸化膜312は、Si酸化膜からなり、複数の量子ドット311を覆うように形成される。
【0090】
電荷蓄積ノード320は、複数のシリサイド量子ドット321と、高誘電率絶縁膜322とからなる。複数のシリサイド量子ドット321は、制御ノード310の酸化膜312上に二次元的に形成される。そして、複数のシリサイド量子ドット321の各々は、略球状のニッケルシリサイド(Niシリサイド)またはタングステンシリサイド(Wシリサイド)からなり、約6nmの平均的な高さを有する。
【0091】
高誘電率絶縁膜322は、複数のシリサイド量子ドット321を覆うように形成される。そして、高誘電率絶縁膜322は、タンタル酸化膜(Ta酸化膜)またはジルコニウム酸化膜(Zr酸化膜)からなる。
【0092】
なお、高誘電率絶縁膜322としてTa酸化膜またはZr酸化膜を用いるのは、次の理由による。データ通信に広く使われている赤外域の光で電子を励起し、量子ドットへ注入することが可能となり、高速通信ネットワークから半導体メモリ100を用いて作成した集積回路からのデータ出力が実現できるからである。
【0093】
絶縁膜105は、正の電圧がゲート電極104に印加されると、半導体基板101中の電子をトンネルによって量子ドット311中へ通過させ、または量子ドット311中の電子をトンネルによって半導体基板101へ通過させる。
【0094】
制御ノード310は、電子の半導体基板101から電荷蓄積ノード320への注入および電子の電荷蓄積ノード320から半導体基板101への放出を制御する機能を有する。電荷蓄積ノード320は、半導体基板101から制御ノード310を介して注入された電子を保持する機能を有する。
【0095】
半導体メモリ100の製造方法について説明する。図10は、図9に示す半導体メモリ100の製造方法を説明するためのフローチャートである。図10を参照して、半導体メモリ100を製造する動作が開始されると、n型Siからなる半導体基板101の一主面にBを高濃度にドープすることによってソース電極102およびドレイン電極103を形成する(ステップS1)。
【0096】
その後、半導体基板101の一主面を2%の酸素雰囲気中において約1000℃で酸化することにより半導体基板101の一主面の全面にSiO膜を形成し、その形成したSiO膜をフォトリソグラフィーによってパターンニングして絶縁膜105を形成する(ステップS2)。
【0097】
そして、絶縁膜105の表面を0.1%のフッ酸で洗浄する(ステップS3)。これによって、絶縁膜105の表面がOHによって終端される。その後、試料を半導体製造装置600の基板ホルダー630上に設置し、リモート水素プラズマによる原子状水素とGeHガスとを用いてゲルマニウムからなる量子ドット311を絶縁膜105上に形成する(ステップS4)。
【0098】
引き続いて、シラン(SiH)ガスを原料として、減圧化学気相堆積法(LPCVD:Low Pressure Chemical Vapour Deposition)によってシリコン薄膜を量子ドット311を覆うように量子ドット311上にのみ選択成長する。そして、このシリコン薄膜を酸素雰囲気中で酸化し、2nm程度の膜厚を有する酸化膜312を形成する(ステップS5)。その後、SiHガスを原料として、LPCVDによってSi結晶からなる量子ドットを自己組織的にSi酸化膜312上に形成する(ステップS6)。この場合、配管650およびバルブ660を介してHガスを石英管610内へ導入せずに、配管710および噴出器700を用いてSiHガスを反応室620内に導入する。
【0099】
そして、試料を半導体製造装置600から取り出し、量子ドット上にNi薄膜を形成する。その後、量子ドットおよびNi薄膜を加熱処理またはリモートプラズマ処理し、シリサイド量子ドット321を形成する(ステップS7)。
【0100】
引き続いて、高誘電体絶縁膜322をシリサイド量子ドット321上に形成し(ステップS8)、ゲート電極104を高誘電体絶縁膜322上に形成する(ステップS9)。
【0101】
その後、フォトリソグラフィーによって量子ドット311、Si酸化膜312、シリサイド量子ドット321、高誘電体絶縁膜322およびゲート電極104を所定の寸法にパターンニングし(ステップS10)、量子ドット311、Si酸化膜312、シリサイド量子ドット321、高誘電体絶縁膜322およびゲート電極104の両側にサイドウォール106を形成する(ステップS11)。これによって、半導体メモリ100が完成する。
【0102】
図11は、ゲルマニウムドットを用いた他の半導体メモリの断面図である。図11を参照して、半導体メモリ110は、図9に示す半導体メモリ100の複合フローティングゲート300を複合フローティングゲート400に代えたものであり、その他は、半導体メモリ100と同じである。
【0103】
複合フローティングゲート400は、図9に示す複合フローティングゲート300に制御ノード410を追加したものであり、その他は、複合フローティングゲート300と同じである。
【0104】
制御ノード410は、電荷蓄積ノード320上に形成される。このように、複合フローティングゲート400は、上述した2層構造からなる複合フローティングゲート300上に制御ノード410を積層した3層構造を有する。そして、複合フローティングゲート400は、絶縁膜105とゲート電極104との間に配置される。
【0105】
制御ノード410は、半導体メモリ110のメモリ消去における電子の放出を制御する機能を有する。そして、制御ノード410は、複数の量子ドット411と、高誘電率絶縁膜412とからなる。複数の量子ドット411は、電荷蓄積ノード320の高誘電率絶縁膜322上に二次元的に形成される。そして、複数の量子ドット411の各々は、略球状のGe結晶からなり、10nm以下の高さを有する。高誘電率絶縁膜412は、複数の量子ドット411を覆うように形成される。そして、高誘電率絶縁膜412は、Ta酸化膜またはZr酸化膜からなる。
【0106】
なお、高誘電率絶縁膜412がTa酸化膜またはZr酸化膜からなる理由は、上述した高誘電率絶縁膜322がTa酸化膜またはZr酸化膜からなる理由と同じである。
【0107】
半導体メモリ110の製造方法について説明する。半導体メモリ110は、上述した半導体メモリ100の製造方法において、電荷蓄積ノード320を形成した後、ゲート電極104を形成する前に、すなわち、図10に示すステップS8とステップS9との間に、量子ドット311と同じ方法によって量子ドット411を形成し、その形成した量子ドット411上に高誘電率絶縁膜322と同じ方法によって高誘電率絶縁膜412を形成する工程を挿入すればよい。すなわち、複数の量子ドット411は、原子状水素とGeHガスとを用いて作成される。
【0108】
その他は、半導体メモリ100と同じである。
【0109】
上述した図9および図11において、各ノードの境界は、説明のために略水平面で区切って図示しているが、実際は、膜の上に量子ドットを2次元に配置している。そのため、絶縁膜105と制御ノード310との境界は、略水平面に近いが、制御ノード310と電荷蓄積ノード320との境界、電荷蓄積ノード320と制御ノード410との境界は、量子ドットの形状によって凹凸が存在する。
【0110】
半導体メモリ100,110におけるメモリ書込動作とメモリ消去動作とについて説明する。
【0111】
図12〜図17は、それぞれ、半導体メモリ100,110におけるメモリ書込動作とメモリ消去動作とを説明するための第1から第6のエネルギーバンド図である。
【0112】
以下の説明では、半導体メモリ110におけるトランジスタキャパシタ部のエネルギーバンド図を参照してメモリ書き込み動作およびメモリ消去動作を説明する。
【0113】
まず、図12を参照して、半導体メモリ110のゲート電極104に正の電圧が印加されていないときのエネルギーバンド図について説明する。制御ゲート310の量子ドット311は、絶縁膜105とSi酸化膜312とによって挟まれており、ナノサイズを有するため、離散的なエネルギー準位LV1が量子ドット311の伝導帯中に存在する。同様に、離散的なエネルギー準位LV2がシリサイド量子ドット321の伝導帯中に存在し、離散的なエネルギー準位LV3が量子ドット411の伝導帯中に存在する。これらのエネルギー準位LV1〜LV3は、電子に対するエネルギー準位である。
【0114】
そして、量子ドット311は、量子ドット411と同じGe結晶からなっているので、エネルギー準位LV1は、エネルギー準位LV3と同じである。また、シリサイド量子ドット321は、量子ドット311,411と異なる材料からなっているので、エネルギー準位LV2は、エネルギー準位LV1,LV3よりも低い。更に、シリサイド量子ドット321は、半導体基板101とも異なる材料からなっているので、エネルギー準位LV2は、半導体基板101の伝導帯よりも低い。
【0115】
このように、半導体メモリ110においては、電荷蓄積ノード320におけるシリサイド量子ドット321の電子に対するエネルギー準位LV2は、電荷蓄積ノード320の両側に存在する制御ノード310,410における量子ドット311,411の電子に対するエネルギー準位LV1,LV3よりも低い。したがって、電荷蓄積ノード320は、シリサイド量子ドット321の電子に対するエネルギー準位LV2が量子ドット311,411の電子に対するエネルギー準位LV1,LV3よりも低くなるように制御ノード310,410と異なる材料からなる。
【0116】
次に、図13を参照して、図12に示すエネルギーバンド図を有する半導体メモリ110におけるメモリの書き込み動作は、ゲート電極104に正の電圧を印加し、半導体基板101から電子をGe系量子ドット311やシリサイド量子ドット321に注入することにより行われる。
【0117】
ゲート電極104に正の電圧を印加すると、半導体基板101の電子600が絶縁膜105をトンネルして制御ノード310のGe系量子ドット311へと注入される。Ge系量子ドット311へ電子が注入されると、Ge系量子ドット311の静電エネルギーが上昇するため、Ge系量子ドット311中の電子保持によって半導体基板101のバンドは、下側に曲げられる。この状態は、論理上の「1」と判定される。
【0118】
正の電圧をゲート電極104に更に印加すると、さらに、半導体基板101の電子が絶縁膜105をトンネルして制御ノード310のGe系量子ドット311へと注入される。これによって、Ge系量子ドット311へ2個目の電子700が注入される(図14参照)。この状態は、論理上の「2」と判定される。
【0119】
このように、ゲート電極104に正電圧を印加することによって、半導体基板101の電子600が1個ずつ絶縁膜105をトンネルして制御ノード310のGe系量子ドット311へと注入される。この状態をもって多値表現が可能となる。
【0120】
Ge系量子ドット311に注入された数個の電子は、光入力または電子放出操作のない間は量子ドット311に保持される。
【0121】
また、半導体メモリ110のゲート電極104に正電圧を更に印加すると、上記同様に、半導体基板101から電子801がGe系量子ドット311内に注入される(図15参照)。そしてGe系量子ドット311に蓄積されている電子の量が一定基準を超すと、Ge系量子ドット311内に保持されている電子802は、Si酸化膜312をトンネルしてシリサイド量子ドット321内に注入される(図15参照)。
【0122】
シリサイド量子ドット321は、ナノ(量子)構造であるため、離散化したエネルギー準位LV2が存在し、このエネルギー準位LV2は、制御ノード310,410中の量子ドット311,411のエネルギー準位LV1,LV3よりも低い。その結果、シリサイド量子ドット321は、電子保持によるしきい値シフトの検知が可能であり、さらには、金属系材料を用いているため、保持電子数の制限がなく、多数の電子を安定に保持できる。そのため、電子保持時間が長くなり、結果として情報の保持時間が長くなる。さらには、電荷保持ノードとしてシリサイド量子ドット321を用いることで、電子の注入に必要な時間、すなわち情報書き込み時間に大きく影響を及ぼす絶縁膜105を極めて薄膜化することが可能となるため、書き込み速度も同時に効率良く改善できる。
【0123】
以上説明した半導体メモリ110によれば、ゲート電極104である不純物半導体または半透明金属からの電気的パルスまたは光パルスによりGe系量子ドット311、シリサイド量子ドット321へ電子の注入を高速で効率的に行なうことが可能となる。
【0124】
また、半導体メモリ110は、絶縁膜105と半導体基板101との境界面がSiOとSiとの界面であるので、閾値電圧の増加や電界効果移動度の低下を招くことなく、良好なトランジスタ特性が実現できる。
【0125】
次に、半導体メモリ110におけるメモリの消去動作について説明する。半導体メモリ110におけるメモリの消去は、ゲート電極104に光を照射したり、負の電圧を印加したりして、Ge系量子ドット311やシリサイド量子ドット321に注入された電子を半導体基板101へ放出することによって行なわれる。
【0126】
以下、図16および図17を参照して、半導体メモリ110の消去動作を説明する。なお、半導体メモリ100の構造と、半導体メモリ110の構造とがあるが、同様の動作を示す段階があるので、半導体メモリ110の構造におけるトランジスタキャパシタ部の構造で説明を行う。
【0127】
一旦、書き込んだ情報を消去する場合、ゲート電極104から微弱な光900を入射する。微弱な光900がゲート電極104に入射されると、内部光電効果によって、電荷蓄積ノード320のシリサイド量子ドット321に保持された電子が励起される。その結果、半導体メモリ100では、シリサイド量子ドット321に保持された電子は、制御ノード310のGe系量子ドット311中へ当該電子901が放出される(図16参照)。
【0128】
そして、ゲート電極104に負電圧をさらに印加することでGe系量子ドット311中の電子902は、半導体基板101へ放出される(図16参照)。
【0129】
また、半導体メモリ110では、シリサイド量子ドット321に保持された電子901,903がそれぞれ制御ノード310のGe系量子ドット311中、および制御ノード410のGe系量子ドット411中へ分散して放出される。(図16参照)。
【0130】
そして、ゲート電極104に負電圧をさらに印加することでGe系量子ドット311中の電子902のみが半導体基板101へ放出される(図16参照)。
【0131】
即ち、半導体メモリ110では、電荷蓄積ノード320のシリサイド量子ドット321に保持された電子を放出する際、制御ノード310のGe系量子ドット311中と、制御ノード410のGe系量子ドット411中とへ分散されることにより、一斉に保持電子を全部放出することなく、制御ノード310のGe系量子ドット311中に放出された電子のみをゲート電圧で制御しながら放出するようにしている(図17参照)。
【0132】
その結果、多値メモリの部分的な消去動作が可能となるので、メモリ消去動作の制御をより確実化させることができる。
【0133】
また、一度に全ての電子を放出する場合は、ゲート電極104に負電圧を印加した状態でゲート電極104に微弱な光900を照射する。これにより、内部光電効果によってシリサイド量子ドット321内の保持電子を一挙に制御ノード310のGe系量子ドット311中に放出でき、さらに電圧を印加することで、Ge系量子ドット311中に保持されていた電子が半導体基板101に放出され、保持電子がなくなるため、データは消去されたことになる。
【0134】
なお、シリサイド量子ドット321に対する制御ノード310のGe系量子ドット311および制御ノード410のGe系量子ドット411のバリアは、低いために赤外域の光でも容易に電子を放出できるので、現在、光データ通信に広く使われている赤外域の光で半導体メモリ110からのデータ出力が可能であるという利点を有する。
【0135】
なお、微弱な光900の光源として、メモリパッケージ内部に有機EL材料を塗布することで実現してもよい。
【0136】
以上、説明したような複合フローティングゲート(300,400)および、電子の注入および放出手段をとることによって、半導体メモリ100,110において、多値記憶動作を実現できる。
【0137】
また、Ge系量子ドットに比べ電子系に対する深いポテンシャル井戸が実現できるシリサイド量子ドットに電子を注入することにより、注入された電子は、上記シリサイド量子ドット内に安定して蓄積可能となり、電子を放出しにくくなる。その結果、絶縁膜105の薄膜化による書き込み・消去時間の低減が改善できるため、多値記憶動作を安定かつ高速に実現可能となる。
【0138】
図18は、ゲルマニウムドットを用いたさらに他の半導体メモリの断面図である。ゲルマニウムドットを用いた半導体メモリは、図18に示す半導体メモリ120であってもよい。図18を参照して、半導体メモリ120は、図9に示す半導体メモリ100の複合フローティングゲート300をフローティングゲート500に代えたものであり、その他は、半導体メモリ100と同じである。
【0139】
フローティングゲート500は、絶縁膜105とゲート電極104とに接して絶縁膜105とゲート電極104との間に形成される。そして、フローティングゲート500は、ゲルマニウムドット501と、Si酸化膜502とからなる。
【0140】
ゲルマニウムドット501は、絶縁膜105に接して絶縁膜105上に形成される。Si酸化膜502は、ゲルマニウムドット501を覆うようにゲルマニウムドット501上に形成される。
【0141】
半導体メモリ120においては、フローティングゲート500は、電荷蓄積ノードとして機能し、情報を記憶する。
【0142】
半導体メモリ120は、図10に示すフローチャートにおいて、ステップS6〜ステップS8を削除したフローチャートに従って製造される。
【0143】
ゲルマニウムドットのみを用いた半導体メモリ120においても、多値記憶が可能である。
【0144】
なお、半導体メモリ120においては、ゲルマニウムドット501をジャーマナイドドットに代えてもよい。ジャーマナイドドットは、たとえば、Niジャーマナイドドットからなる。このNiジャーマナイドドットは、上述した方法によってゲルマニウムドットを形成し、その形成したゲルマニウムドット上に極薄のNi膜(たとえば、1.8nm)を形成し、その後、リモートプラズマ処理を行なうことによって形成される。そして、ジャーマナイドドットは、Ni以外の金属を用いたジャーマナイドドットからなっていてもよい。Ni以外の金属を用いたジャーマナイドドットも、Niジャーマナイドドットと同じ方法によって形成される。
【0145】
また、この発明の実施の形態においては、配管650、アンテナ670、マッチング回路680および高周波電源690は、基板800の表面に原子状水素を供給する「第1の供給装置」を構成する。
【0146】
また、この発明の実施の形態においては、噴出器700および配管710は、基板の表面にゲルマンガス(GeHガス)を供給する「第2の供給装置」を構成する。
【0147】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0148】
この発明は、ゲルマニウムからなるドットの密度を向上可能な半導体製造装置に適用される。また、この発明は、ゲルマニウムからなるドットの密度を向上可能なゲルマニウムドットの製造方法に適用される。さらに、この発明は、ゲルマニウムからなるドットの密度を向上可能なゲルマニウムドットの製造方法を用いた半導体メモリの製造方法に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】この発明の実施の形態による半導体製造装置の概略図である。
【図2】ゲルマニウムドットの製造方法を示す工程図である。
【図3】半導体製造装置を用いて作成したゲルマニウムドットの表面形状を示す図である。
【図4】XPS(X−ray Photoelectron Spectroscopy)スペクトルを示す図である。
【図5】図2に示す工程(a)〜(e)に従ってゲルマニウムドットを作成するときの基板温度依存性を示す図である。
【図6】図2に示す工程(a)〜(e)に従ってゲルマニウムドットを作成するときの堆積時間依存性を示す図である。
【図7】ゲルマニウムドットの高さと個数との関係を示す図である。
【図8】ドット密度および平均ドット高さと堆積時間との関係を示す図である。
【図9】ゲルマニウムドットを用いた半導体メモリの断面図である。
【図10】図9に示す半導体メモリの製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図11】ゲルマニウムドットを用いた他の半導体メモリの断面図である。
【図12】半導体メモリにおけるメモリ書込動作とメモリ消去動作とを説明するための第1のエネルギーバンド図である。
【図13】半導体メモリにおけるメモリ書込動作とメモリ消去動作とを説明するための第2のエネルギーバンド図である。
【図14】半導体メモリにおけるメモリ書込動作とメモリ消去動作とを説明するための第3のエネルギーバンド図である。
【図15】半導体メモリにおけるメモリ書込動作とメモリ消去動作とを説明するための第4のエネルギーバンド図である。
【図16】半導体メモリにおけるメモリ書込動作とメモリ消去動作とを説明するための第5のエネルギーバンド図である。
【図17】半導体メモリにおけるメモリ書込動作とメモリ消去動作とを説明するための第6のエネルギーバンド図である。
【図18】ゲルマニウムドットを用いたさらに他の半導体メモリの断面図である。
【符号の説明】
【0150】
600 半導体製造装置、610 石英管、620 反応室、630 基板ホルダー、640 ヒーター、650,710 配管、670 アンテナ、680 マッチング回路、690 高周波電源、700 噴出器、800 基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応室と、
前記反応室内に配置され、基板を支持する支持部材と、
前記基板を加熱する加熱装置と、
前記基板の表面に原子状水素を供給する第1の供給装置と、
前記第1の供給装置が前記原子状水素を前記基板の表面に供給しているときに前記基板の表面にゲルマンガスを供給する第2の供給装置とを備える半導体製造装置。
【請求項2】
前記第1の供給装置は、リモート水素プラズマによって水素ガスから原子状水素を生成し、その生成した原子状水素を前記基板の表面に供給する、請求項1に記載の半導体製造装置。
【請求項3】
前記第1の供給装置は、前記原子状水素と前記ゲルマンガスとの反応領域と異なる領域で前記原子状水素を生成し、その生成した原子状水素を前記基板の表面に供給し、
前記第2の供給装置は、前記原子状水素が生成される領域と異なる領域から前記ゲルマンガスを前記基板の表面に供給する、請求項2に記載の半導体製造装置。
【請求項4】
反応室内に配置された基板を加熱する第1のステップと、
前記基板の表面に原子状水素を供給する第2のステップと、
前記原子状水素が前記基板の表面に供給されているときにゲルマンガスを前記基板の表面に供給する第3のステップとを備えるゲルマニウムドットの製造方法。
【請求項5】
前記第2のステップにおいて、前記原子状水素は、リモート水素プラズマによって水素ガスから生成されて前記基板の表面に供給される、請求項4に記載のゲルマニウムドットの製造方法。
【請求項6】
前記第2のステップにおいて、前記原子状水素は、前記原子状水素と前記ゲルマンガスとの反応領域と異なる領域で生成されて前記基板の表面に供給され、
前記第3のステップにおいて、前記ゲルマンガスは、前記原子状水素が生成される領域と異なる領域から前記基板の表面に供給される、請求項5に記載のゲルマニウムドットの製造方法。
【請求項7】
半導体基板の一主面にソース電極およびドレイン電極を形成する第1のステップと、
前記ソース電極と前記ドレイン電極との間の前記半導体基板の一主面に絶縁膜を形成する第2のステップと、
原子状水素とゲルマンガスとを用いて前記絶縁膜上にゲルマニウムドットを形成する第3のステップと、
前記ゲルマニウムドットを酸化して前記ゲルマニウムドットを覆うように酸化ゲルマニウム膜を形成する第4のステップと、
前記酸化ゲルマニウム膜上に電荷蓄積ノードを形成する第5のステップとを備える半導体メモリの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2010−153610(P2010−153610A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−330524(P2008−330524)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【Fターム(参考)】