説明

制御装置

【課題】車両が進行を妨げられる方向へ走行することを確実に防止することができる制御装置を提供すること。
【解決手段】運転者によって操作されたシフトレバー4のポジションを電気的に検知する位置検知手段5と、位置検知手段5の検知結果に基づいて、変速機3の作動状態を切り替え制御する作動制御手段2と、車両の進行方向における周辺状況を検知する状況検知手段6とを有し、該状況検知手段6が進行方向に車両の進行が妨げられる状況を検知したとき、作動制御手段2は、シフトレバー4による変速機3の切り替え制御を無効にするシフトバイワイヤ式変速機の制御装置1であって、車両の走行を制御する走行制御手段7と、走行制御手段7による車両の走行制御を規制する規制手段2とを備え、規制手段2は、状況検知手段6の検知結果に基づいて、車両の走行速度を所定速度以下に抑制するか、又は車両の走行を停止するように、走行制御手段7による車両の走行制御を規制するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置に関し、特に、車両に搭載される変速機のシフトポジションまたは変速比の切り替えが電気的な制御で実現される変速機の制御装置に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、車両に搭載される変速機とりわけ自動変速機において、以下のような、いわゆるシフトバイワイヤ方式を用いた様々な変速機が実用化されている。かかるシフトバイワイヤ方式の自動変速機(以下、これをシフトバイワイヤ式変速機と称す)は、シフトレバーの位置をセンサによって電気的に検知し、この検知信号に基づいてシフト用モータを駆動し、自動変速機のマニュアルバルブを切り替える。
【0003】
これにより、P(パーキング)、R(リバース)、N(ニュートラル)、D(ドライブ)、M(マニュアルモード)、+(アップシフト)、−(ダウンシフト)等のシフトポジションを切り替えるようになっている。このようなシフトバイワイヤ式変速機では、シフトレバーはマニュアルバルブに対して機械的に連結されないため、車室内におけるシフトレバー等のシフト操作装置の配置を自由に行なうことができるという利点がある。
【0004】
また、特許文献1には、上述したようなシフトバイワイヤ式変速機のシフトチェンジを制御する制御装置に関する技術が開示されている。かかる車両用変速機制御装置は、変速機のシフトポジションまたは変速比を選択するシフト操作体(シフトレバー)の操作状態を電気的に検出し、この検出結果に基づいて変速機の接続(作動)状態を切り替える制御手段(切換制御手段)を備えている。
【0005】
また、かかる車両用変速機制御装置では、車両の前方および後方のうちの少なくとも一方の周辺状況を検出する検出手段(車載カメラ)を設け、該車載カメラによって走行に支障が生じる状況(障害物)を検出した場合、シフトレバーによる上記支障が生じる方向へ走行させるための操作を不能にする。または、上記支障が生じる方向へ走行させるための操作が行われても、該操作に基づく変速機の接続状態の切り替えを禁止するようにしていた。これにより、上記車両用変速機制御装置では、上記支障が生じる方向へ車両が走行することを防止することができるようになっていた。
【特許文献1】特開2002−248963号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、かかる車両用変速機制御装置では、変速機の接続状態を切り替えるシフトレバー操作を不能にするか禁止するかのみの制御によって、上記支障が生じる方向へ車両が走行することを防止していたため、車両の走行制御系(例えば、エンジンなどの駆動源、ドライブシャフトなどの駆動系またはブレーキなど)は、何ら規制していなかった。従って、例えば、山道などの傾斜を有する環境で上述したような状況に遭遇した場合、車両の動きを抑制または停止させることは困難である未だ不十分な問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、車両が進行を妨げられる方向へ走行することを確実に防止することができる制御装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、運転者によって操作されたシフトレバーのポジションを電気的に検知する位置検知手段と、位置検知手段の検知結果に基づいて、変速機の作動状態を切り替え制御する作動制御手段と、車両の進行方向における周辺状況を検知する状況検知手段とを有し、該状況検知手段が進行方向に車両の進行が妨げられる状況を検知したとき、作動制御手段は、シフトレバーによる変速機の切り替え制御を無効にするシフトバイワイヤ式変速機の制御装置であって、作動制御手段は、状況検知手段の検知結果に基づいて、車両に設けられる該車両の走行を制御するための走行制御手段に対し、車両の走行速度を所定速度以下に抑制するか、又は車両の走行を停止するように、車両の走行制御を規制するようにした。
【0009】
従って、本発明の一態様によれば、状況検知手段が進行方向に車両の進行が妨げられる状況を検知したとき、言い換えれば、車両の進行方向に異常を検知したとき、作動制御手段は、シフトレバーの操作に基づく変速機の切り替え制御とは関係なく、車速を所定速度以下に抑制するか、または車両の走行を停止するように、直接、走行制御手段に対して車両の走行制御を規制する。
【0010】
これにより、本発明の制御装置では、変速機の作動状態に拘らず、作動制御手段が走行制御手段による走行制御を直接規制するので、車両が進行を妨げられる方向へ走行することを確実に防止することができる。
【0011】
また、本発明の一様態は、運転者によって操作されたシフトレバーのポジションを電気的に検知する位置検知手段と、位置検知手段の検知結果に基づいて、変速機の作動状態を切り替え制御する作動制御手段と、運転者の視線を監視する監視手段とを有し、該監視手段が車両の進行方向に対する運転者の向きが異なる状況を検知したとき、作動制御手段は、シフトレバーによる変速機の切り替え制御を無効にするシフトバイワイヤ式変速機の制御装置であって、作動制御手段は、監視手段の検知結果に基づいて、車両に設けられる該車両の走行を制御するための走行制御手段に対し、車両の走行速度を所定速度以下に抑制するか、又は車両の走行を停止するように、車両の走行制御を規制するようにした。
【0012】
従って、本発明の一態様によれば、監視手段が車両の進行方向に対する運転者の向き(姿勢)が異なる状況を検知したとき、言い換えれば、車両の走行に異常を来たす状況を検知したとき、作動制御手段は、シフトレバーの操作に基づく変速機の切り替え制御とは関係なく、車速を所定速度以下に抑制するか、または車両の走行を停止するように、直接、走行制御手段に対して車両の走行制御を規制する。
【0013】
これにより、本発明の制御装置では、監視手段によって運転者の意図する走行方向を考慮することができ、変速機の作動状態に拘らず、作動制御手段が走行制御手段による走行制御を直接規制するので、運転者の向きとは異なる方向へ車両が走行することを確実に防止することができる。
【0014】
また、本発明の一態様において、作動制御手段は、車両の進行方向が前進であると、車両の走行速度を所定速度以下に抑制し、車両の進行方向が後進であると、車両の走行を禁止するように走行制御を規制することが好ましい。
【0015】
従って、作動制御手段は、シフトレバーの操作に基づく変速機の切り替え制御とは関係なく、進行方向が前進であると、車速を所定速度以下に抑制するように、直接、走行制御手段に対して車両の走行制御を規制する。また、進行方向が後退であると、作動制御手段は、走行を禁止するように、直接、走行制御手段に対して車両の走行制御を規制する。
【0016】
このとき、作動制御手段は、車両の走行方向に応じて車両の走行制御に対する規制の仕方を変えることができるため、状況に関係無く、変速機の切り替え制御を禁止される操作上の煩わしさを解消し、使い勝手を格段と向上させることができる。
【0017】
さらに、本発明の一態様において、作動制御手段は、所定時間経過後、走行制御手段に対する規制を解除することが好ましい。これにより、運転者が車両の進行方向において進行の妨げられる状況が生じていることに気付くと、その後は運転者の意思にて運転を可能にすることができる。このとき、走行制御手段に対する規制は、運転者が状況を把握するのに十分な所定時間経過後、運転者が意図的に操作することなく、自動で解除されるため、運転者に煩わしさや不快感を与えることはない。従って、シフトバイワイヤ式変速機の制御装置における使い勝手をより一層向上させることができる。
【0018】
さらに、本発明の一態様において、シフトレバーは、マニュアルシフトモードを有し、該マニュアルシフトモード用の操作部を備えることが好ましい。これにより、シフトレバーは、マニュアルシフトモード用の操作部におけるアップシフト(+)操作およびダウンシフト(−)操作によって、より柔軟な変速機の切り替え制御が可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、状況検知手段が進行方向に車両の進行が妨げられる状況を検知したとき、言い換えれば、車両の進行方向に異常を検知したとき、作動制御手段は、シフトレバーの操作に基づく変速機の切り替え制御とは関係なく、車速を所定速度以下に抑制するか、または車両の走行を停止するように、直接、走行制御手段に対して車両の走行制御を規制することにより、変速機の作動状態に拘らず、作動制御手段が走行制御手段による走行制御を直接規制することができ、かくして、車両が進行を妨げられる方向へ走行することを確実に防止することができる制御装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら実施例を挙げて説明する。
【実施例1】
【0021】
図1は、本発明による制御装置の一実施例に係る車両用変速機の制御装置を示す制御ブロック図である。この場合、車両用変速機の制御装置はシフトバイワイヤ(以下、これを単にSBWと称す)方式を用いている。図1に示すように、車両用変速機の制御装置であるSBWシステム1は、二輪駆動式または四輪駆動式の車両の走行を制御するシステムであり、作動制御手段としてのSBW用のECU(Electronic Control Unit;電子制御装置)2と、変速機である、いわゆるパーキングロック機構を含むマニュアルシフトチェンジ機能付き自動変速機3と、SBW用ECU2に変速指令信号S1を出力することで自動変速機3を操作するシフトレバー4とを有している。
【0022】
SBW用ECU2は、マイクロコンピュータを主体に構成された電気回路であり、CPU(Central Processing Unit;中央演算処理装置)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)等から構成されている。
【0023】
また、SBWシステム1は、運転者によって操作されたシフトレバー4のポジションを電気的に検知する位置検知手段としてのポジションセンサ5を有しており、SBW用ECU2は、上記ポジションセンサ5の検知結果に基づいて、自動変速機3の作動(接続)状態を切り替え制御するようになっている。
【0024】
かかるポジションセンサ5は、シフトレバー4の各ポジション、すなわち、P(パーキング)、R(リバース)、N(ニュートラル)、D(ドライブ)およびマニュアルモードにおける+(アップシフト)または−(ダウンシフト)を検知する。そして、ポジションセンサ5からいずれかのポジション(P、R、N、D、+、−)を指示する変速指令信号S1がSBW用ECU2に入力されることにより、SBW用ECU2は、シフトレバー4がどのポジションにあるのかを認識することができるようになっている。
【0025】
そして、かかるSBW方式の自動変速機3では、SBW用ECU2が、上記ポジションセンサ5から与えられるシフトレバー4のポジション検知結果としての変速指令信号S1に基づいて、変速支持信号S2を自動変速機3に対し出力し、シフト用モータ31を駆動させ、マニュアルバルブ32を切り替える。これにより、SBW方式の自動変速機3では、該自動変速機3の作動状態をシフトレバー4のポジション(P、R、N、D、M、+、−)に応じて切り替えるようになっている。
【0026】
このとき、シフト用モータ31に、該シフト用モータ31の作動状態を検知するためのモータ検知センサ等を設けてもよい。そして、該モータ検知センサによる検知結果を変速支持信号S2に応じてマニュアルバルブ32を切り替えた切り替え結果である変速完了信号S3としてSBW用ECU2に出力することにより、SBW用ECU2は、自動変速機3が上記シフトレバー4の操作に基づき変速されたことを認識することができる。
【0027】
さらに、SBWシステム1は、車両の進行方向における周辺状況(すなわち、上記進行方向に車両の進行を妨げる障害物などが存在するか否か)を検知する状況検知手段としての状況検知部6と、車両の走行を制御する走行制御手段としての走行制御部7とを有している。
【0028】
状況検知部6は、車両の前方および後方に配設される車載カメラ61と、該車載カメラ61によって車両の前方および後方の周辺を監視する周辺監視ECU62とを有している。なお、図1においては、便宜上、車載カメラ61は1つしか示されていないが、実際上、車載カメラ61は、上述のように、車両の前方および後方に設けられている。
【0029】
そして、車載カメラ61は、車両の前方および後方をそれぞれ監視し、車両の進行を妨げる障害物などが検知されると、該検知結果に基づき周辺監視ECU62がSBW用ECU2に対し周辺状況信号S4を出力する。SBW用ECU2は、周辺状況信号S4が入力されると、車両の前方または後方に障害物が存在することを認識し、後述する走行制御処理規制処理を行うようになっている。
【0030】
この場合、かかるSBWシステム1では、SBW用ECU2は、上述した自動変速機3の作動状態を切り替える制御機能に加えて、後述するように、状況検知部6の検知結果に基づいて、走行制御部7による車両の走行制御を規制する規制機能も備えている。
【0031】
走行制御部7は、駆動源である例えばエンジンを制御するエンジン制御ECU71と、駆動系である例えばドライブシャフトを制御する駆動系制御ECU72と、ブレーキを制御するブレーキ制御ECU73とから構成されている。
【0032】
そして、SBW用ECU2は、状況検知部6から入力される周辺状況信号S4に基づいて、エンジン制御ECU71、駆動系制御ECU72または、ブレーキ制御ECU73に対し、走行制御を規制する規制信号S5を出力し、後述する車両の走行制御を規制するようになっている。
【0033】
走行制御部7では、エンジン制御ECU71、駆動系制御ECU72または、ブレーキ制御ECU73が、SBW用ECU2から入力される規制信号S5に基づき、車両の車速を所定速度以下に抑制するか、または車両の走行を停止するように、各々対応するエンジン、ドライブシャフト等の駆動系または、ブレーキを制御する。これにより、車両が進行を妨げられる方向へ走行することを確実に防止することができるようになっている。
【0034】
次に、かかるSBWシステム1において、車両の前方または後方の少なくとも一方における車両の進行方向に該車両の進行が妨げられる状況、言い換えれば障害物などが存在する異常を検知したときにおける車両の走行制御について図2に基づき説明する。
【0035】
図2は、本発明によるSBWシステム1の制御において、特徴的な処理である走行制御規制処理の手順を示すフローチャートである。SBWシステム1を搭載した車両において、まず、SBW用ECU2はステップSP1において、走行制御規制処理を開始し、続くステップSP2に移って、自動変速機3がシフトレバー4の操作に基づき切り替え制御されたか否かを判断する。ここで、SBW用ECU2は肯定結果、すなわち自動変速機3がシフトレバー4の操作に基づき切り替え制御されたことを認識すると、次のステップSP3に移行する。
【0036】
そして、SBW用ECU2は、このステップSP3において、状況検知部6の検知結果に基づき、車両の前方に該車両の進行を妨げる障害物が存在するか否かを判断する。このとき、SBW用ECU2は、肯定結果、つまり、上記車両の前方に上記障害物が存在する異常を検知した検知結果を得ると、続くステップSP4へと移り、車両の進行方向が前進であるか否かを判断する。
【0037】
このステップSP4において、車両の進行方向が前進である肯定結果を得ると、SBW用ECU2は、次いでステップSP5へと移行し、走行制御部7におけるエンジン制御ECU71、駆動系制御ECU72または、ブレーキ制御ECU73の少なくともいずれかに対し、車速を所定速度(例えば、一般的な歩行速度より遅い2〔km/h〕程度)以下に抑制するように、車両の走行制御を規制する。なお、上記所定速度は、周辺状況、車両状態等に応じて変動する。
【0038】
そして、SBW用ECU2は、続くステップSP6に移り、運転者が上記異常に気付くのに十分な所定時間(例えば、2〔秒〕程度)経過するまで待機し、該所定時間が経過すると、次のステップSP7へ移行し、ステップSP5における車両の走行制御に対する規制を解除する。この後、SBW用ECU2は、続くステップSP8へ移り、この走行制御規制処理を終了する。なお、上記所定時間は、周辺状況、車両状態等に応じて変動する。
【0039】
先のステップSP2において、SBW用ECU2は、否定結果、すなわち自動変速機3がシフトレバー4の操作に基づき切り替え制御されていない(シフトレバー4の操作がない)ことを認識すると、ステップSP8に移行し、この走行制御規制処理を終了する。
【0040】
一方、先のステップSP3において、SBW用ECU2は、否定結果、すなわち車両の前方に上記障害物が存在しない検知結果を得ると、ステップSP9へと移る。また、先のステップSP4において、SBW用ECUは、車両の進行方向が後進である否定結果を得ると、ステップSP9へと移る。
【0041】
そして、SBW用ECU2は、ステップSP9において、状況検知部6の検知結果に基づき、車両の後方に該車両の進行を妨げる障害物が存在するか否かを判断する。このとき、SBW用ECU2は、肯定結果、つまり、車両の後方に上記障害物が存在する異常を検知した検知結果を得ると、続くステップSP10へと移り、車両の進行方向が後進であるか否かを判断する。
【0042】
SBW用ECU2は、ステップSP10において車両の進行方向が後進である肯定結果を得ると、続くステップSP11に進み、走行制御部7におけるエンジン制御ECU71、駆動系制御ECU72または、ブレーキ制御ECU73の少なくともいずれかに対し、車両の走行を停止するように、車両の走行制御を規制する。
【0043】
そして、SBW用ECU2は、次のステップSP12に移り、運転者が上記異常に気付くのに十分な所定時間(例えば、2〔秒〕程度)経過するまで待機し、該所定時間が経過すると、次のステップSP13へ移行し、ステップSP11における車両の走行制御に対する規制を解除する。この後、SBW用ECU2は、ステップSP8へ移り、この走行制御規制処理を終了する。なお、上記所定時間は、周辺状況、車両状態等に応じて変動する。
【0044】
また、先のステップSP10において、車両の進行方向が前進である否定結果を得ると、SBW用ECU2は、ステップSP3に戻り、再び状況検知部6の検知結果に基づき、車両の前方に該車両の進行を妨げる障害物が存在するか否かを判断し、上述したルーチンを繰り返す。
【0045】
また、先のステップSP9において、SBW用ECU2は、否定結果、すなわち車両の後方に上記障害物が存在しない検知結果を得ると、ステップSP8へと移行し、この走行制御規制処理を終了する。
【0046】
このように、本実施例のSBWシステム1によれば、状況検知部6が車両の進行方向に該車両の進行が妨げられる状況を検知したとき、言い換えれば、車両の進行方向に障害物などが存在する異常を検知したとき、SBW用ECU2は、シフトレバー4の操作に基づく自動変速機3の切り替え制御とは関係なく、車速を所定速度以下に抑制するか、または車両の走行を停止するように、直接、走行制御部7のエンジン制御ECU71、駆動系制御ECU72または、ブレーキ制御ECU73の少なくともいずれかに対して車両の走行制御を規制する。
【0047】
これにより、SBWシステム1では、自動変速機3の作動状態に拘らず、SBW用ECU2が走行制御部7における各ECU71、72、73のいずれかによる走行制御を直接規制するので、車両が進行を妨げられる方向へ走行することを確実に防止することができる。
【0048】
また、SBWシステム1において、SBW用ECU2は、走行制御部7のいずれかのECU71、72、73による車両の走行制御を規制する際、車両の進行方向が前進であると、車両の走行速度を所定速度以下に抑制し、車両の進行方向が後進であると、車両の走行を禁止するようにした。
【0049】
従って、SBW用ECU2は、シフトレバー4の操作に基づく自動変速機3の切り替え制御とは関係なく、進行方向が前進であると、車速を所定速度以下に抑制するように、直接、走行制御部7に対して車両の走行制御を規制する。また、進行方向が後退であると、SBW用ECU2は、走行を停止するように、直接、走行制御部7のいずれかのECU71、72、73に対して車両の走行制御を規制する。
【0050】
このとき、SBW用ECU2は、車両の走行方向に応じて車両の走行制御に対する規制の仕方を変えることができるため、状況に関係無く、自動変速機3の切り替え制御を禁止される操作上の煩わしさを解消し、使い勝手を格段と向上させることができる。
【0051】
さらに、本発明のSBWシステム1では、SBW用ECU2が、所定時間経過後、走行制御部7に対する規制を解除するようにした。これにより、運転者が車両の進行方向において進行の妨げられる状況が生じていることに気付くと、その後は運転者の意思にて運転を可能にすることができる。
【0052】
このとき、走行制御部7に対する規制は、運転者が状況を把握するのに十分な所定時間経過後、運転者が意図的に操作することなく、自動で解除されるため、運転者に煩わしさや不快感を与えることはない。従って、シフトバイワイヤ式自動変速機3の制御装置であるSBWシステム1における使い勝手をより一層向上させることができる。
【0053】
さらに、本発明のSBWシステム1では、シフトレバー4が、マニュアルシフトモードを有し、該マニュアルシフトモード用の操作部を設けるようにした。これにより、シフトレバーとしては、マニュアルシフトモード用の操作部、すなわち上述した+(アップシフト)または−(ダウンシフト)におけるアップシフト(+)操作およびダウンシフト(−)操作によって、より柔軟な自動変速機3の切り替え制御が可能となる。
【実施例2】
【0054】
次に、本発明の第2の実施例による車両用変速機の制御装置としてのSBWシステム10について、図面を参照しながら説明する。
【0055】
図1との対応部分に同一符号を付して示す図3は、全体として本発明の第2の実施例によるSBWシステム10を示す制御ブロック図である。なお、図3に示す第2の実施例におけるSBWシステム10は、状況検知部6の車載カメラ61および周辺監視ECU62に換えて、監視手段としての監視カメラ63および運転者監視ECU64が設けられている点を除き、ほぼ第1の実施例におけるSBWシステム1と同じ構成からなり、同一部分の詳細な説明については、上述した第1の実施例と重複するため、ここでは便宜上、説明を割愛する。
【0056】
この場合、SBWシステム10は、状況検知部6に、運転者を監視するための運転席近傍に設けられる監視カメラ63と、この監視カメラ63による監視結果に基づく運転者監視結果信号S6をSBW用ECU2に対し出力する運転者監視ECU64を有している。これにより、運転者の視線を確認することができるようになっている。
【0057】
SBW用ECU2は、運転者監視ECU64から入力される運転者監視結果信号S6に基づいて、走行制御部7のエンジン制御ECU71、駆動系制御ECU72または、ブレーキ制御ECU73に対し、走行制御を規制する規制信号S5を出力し、車両の走行制御を規制するようになっている。
【0058】
そして、走行制御部7では、エンジン制御ECU71、駆動系制御ECU72または、ブレーキ制御ECU73が、SBW用ECU2から入力される規制信号S5に基づき、車両の車速を所定速度以下に抑制するか、または車両の走行を停止するように、各々対応するエンジン、ドライブシャフト等の駆動系または、ブレーキを制御する。
【0059】
これにより、運転者が進行方向とは異なる方向を向いた状態で車両が走行を開始する場合、運転者の意図する走行方向を考慮して、走行制御を規制することができるようになっている。言い換えれば、例えば、運転者が後ろ向きなのに対し、車両が前進する場合、車両の車速を所定速度以下に抑制して運転者に対し、シフト操作が誤っていないか確認させることができる。また、運転者が前向きなのに対し、車両が後進する場合、車両の走行を停止させて運転者に対し、シフト操作が誤っていないか確認させることができる。このようにして、SBWシステム10では、運転者の意思とは異なる進行方向に車両が走行することを未然に防止することができる。
【0060】
ここで、SBWシステム10において、車両の前方または後方の少なくとも一方に障害物などが存在する異常を検知したときにおける車両の走行制御について図4に基づき説明する。
【0061】
図2との対応部分に同一符号を付した図4は、本発明によるSBWシステム10の制御において、特徴的な処理である走行制御規制処理の手順を示すフローチャートである。なお、図4に示す走行制御規制処理では、図2に示す走行制御規制処理におけるステップSP3およびステップSP9に換えて、ステップSP20およびステップSP21が設けられている点を除き、ほぼ第1の実施例における走行制御規制処理と同じであるため、重複する部分においては、便宜上、説明を割愛する。
【0062】
SBWシステム10を搭載した車両において、SBW用ECU2は、ステップSP20において、状況検知部6の監視カメラ63および運転者監視ECU64による運転者監視結果に基づき、運転者が後ろ向きであるか否かを判断する。このとき、SBW用ECU2は、運転者が後ろ向きである肯定結果を得ると、ステップSP4へと進み、車両の走行方向が前進であるか否かを判断する。
【0063】
一方、ステップSP20において、運転者が前向きである否定結果を得ると、SBW用ECU2は、次のステップSP21へと移行し、運転者が前向きであるか否かを判断する。そして、ステップSP21において、運転者が前向きである肯定結果を得ると、SBW用ECU2はステップSP10へと移行し、車両の進行方向が後進であるか否かを判断する。また、ステップSP21において、運転者が前向きでもない否定結果を得ると、SBW用ECU2は、ステップSP11へと移行し、走行制御部7におけるエンジン制御ECU71、駆動系制御ECU72または、ブレーキ制御ECU73の少なくともいずれかに対し、車両の走行を停止するように、車両の走行制御を規制する。
【0064】
このように、本実施例のSBWシステム10によれば、状況検知部6が運転者の視線を監視することによって、運転者の向き(姿勢)が車両の進行方向に対して異なる状況、言い換えれば、車両の走行に異常を来たす状況を検知したとき、SBW用ECU2は、シフトレバー4の操作に基づく自動変速機3の切り替え制御とは関係なく、車速を所定速度以下に抑制するか、または車両の走行を停止するように、直接、走行制御部7のエンジン制御ECU71、駆動系制御ECU72または、ブレーキ制御ECU73の少なくともいずれかに対して車両の走行制御を規制する。
【0065】
これにより、SBWシステム10では、自動変速機3の作動状態に拘らず、SBW用ECU2が走行制御部7における各ECU71、72、73のいずれかによる走行制御を直接規制するので、運転者の向きとは異なる方向へ車両が走行することを確実に防止することができる。
【0066】
また、SBWシステム10において、SBW用ECU2は、走行制御部7のいずれかのECU71、72、73による車両の走行制御を規制する際、車両の進行方向が前進であると、車両の走行速度を所定速度以下に抑制し、車両の進行方向が後進であると、車両の走行を禁止するようにした。
【0067】
従って、SBW用ECU2は、シフトレバー4の操作に基づく自動変速機3の切り替え制御とは関係なく、進行方向が前進であると、車速を所定速度以下に抑制するように、直接、走行制御部7に対して車両の走行制御を規制する。また、進行方向が後退であると、SBW用ECU2は、走行を停止するように、直接、走行制御部7のいずれかのECU71、72、73に対して車両の走行制御を規制する。
【0068】
このとき、SBW用ECU2は、車両の走行方向に応じて車両の走行制御に対する規制の仕方を変えることができるため、状況に関係無く、自動変速機3の切り替え制御を禁止される操作上の煩わしさを解消し、使い勝手を格段と向上させることができる。
【0069】
さらに、本発明のSBWシステム10では、SBW用ECU2が、所定時間経過後、走行制御部7に対する規制を解除するようにした。これにより、運転者が車両の進行方向と自らの向き(姿勢)が異なる状況が生じていることに気付くと、その後は運転者の意思にて運転を可能にすることができる。
【0070】
このとき、走行制御部7に対する規制は、運転者が状況を把握するのに十分な所定時間経過後、運転者が意図的に操作することなく、自動で解除されるため、運転者に煩わしさや不快感を与えることはない。従って、シフトバイワイヤ式自動変速機3の制御装置であるSBWシステム10における使い勝手をより一層向上させることができる。
【0071】
さらに、本発明のSBWシステム10では、シフトレバー4が、マニュアルシフトモードを有し、該マニュアルシフトモード用の操作部を設けるようにした。これにより、シフトレバーとしては、マニュアルシフトモード用の操作部、すなわち上述した+(アップシフト)または−(ダウンシフト)におけるアップシフト(+)操作およびダウンシフト(−)操作によって、より柔軟な自動変速機3の切り替え制御が可能となる。
【0072】
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【0073】
例えば、上述した第1および第2の実施例をそれぞれ併せ持つ制御装置であっても良い。すなわち、状況検知部6が、状況検知手段としての車載カメラ61および周辺監視ECU62と、監視手段としての監視カメラ63および運転者監視ECU64とを有し、SBW用ECU2は、周辺状況検知結果(車両の進行方向における上記障害物の有無)および運転者監視結果(車両の進行方向に対する運転者の向き)の少なくともいずれか一方に基づき、車両の走行制御を規制するようにしても良い。
【0074】
この場合、上述した第1の実施例の効果に加えて上述した第2の実施例の効果を併せ持つことができる。かくして、車両の走行に異常を来たすことが予測される場合に、運転者の意図する走行方向を考慮して当該車両の異常を来たす方向への走行を未然に防止することができる利点を得ることができる。
【0075】
なお、上述した第1および第2の実施例においては、シフトレバーとして、マニュアルシフトモード付きのシフトレバー4を適用した場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば、シフトレバー4とは別体にマニュアルシフトモード用の操作部(例えば、マニュアルシフト操作用のボタンまたはパドル)をハンドルまたはハンドル周辺に設けるようにしても良く、この他、種々の操作手段を広く適用することができる。このように、シフトレバーとは別体でマニュアルシフトモード用の操作部を設けることにより、ハンドルから手を離すことなくマニュアルでシフトチェンジ(変速操作)することができるので、より柔軟な変速操作をより安定した運転状態で行うことができる利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、自動車製造業や自動車部品製造業等に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の第1の実施例に係る車両用変速機の制御装置を示す制御ブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施例におけるSBW用ECUで実行される走行制御プログラムを示すフローチャートである。
【図3】本発明の第2の実施例に係る車両用変速機の制御装置を示す制御ブロック図である。
【図4】本発明の第2の実施例におけるSBW用ECUで実行される走行制御プログラムを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0078】
1…制御装置
2…SBW用ECU(作動制御手段)
3…自動変速機(変速機)
4…シフトレバー
5…ポジションセンサ(位置検知手段)
6…状況検知部(状況検知手段)
61…車載カメラ
62…周辺監視用ECU
63…車載カメラ
64…運転者監視用ECU(監視手段)
7…走行制御部(走行制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者によって操作されたシフトレバーのポジションを電気的に検知する位置検知手段と、前記位置検知手段の検知結果に基づいて、変速機の作動状態を切り替え制御する作動制御手段と、車両の進行方向における周辺状況を検知する状況検知手段とを有し、該状況検知手段が前記進行方向に前記車両の進行が妨げられる状況を検知したとき、前記作動制御手段は、前記シフトレバーによる前記変速機の切り替え制御を無効にするシフトバイワイヤ式変速機の制御装置であって、
前記作動制御手段は、前記状況検知手段の検知結果に基づいて、
前記車両に設けられる該車両の走行を制御するための走行制御手段に対し、
前記車両の走行速度を所定速度以下に抑制するか、又は前記車両の走行を停止するように、前記車両の走行制御を規制する
ことを特徴とする制御装置。
【請求項2】
運転者によって操作されたシフトレバーのポジションを電気的に検知する位置検知手段と、前記位置検知手段の検知結果に基づいて、変速機の作動状態を切り替え制御する作動制御手段と、前記運転者の視線を監視する監視手段とを有し、該監視手段が前記車両の進行方向に対する前記運転者の向きが異なる状況を検知したとき、前記作動制御手段は、前記シフトレバーによる前記変速機の切り替え制御を無効にするシフトバイワイヤ式変速機の制御装置であって、
前記作動制御手段は、前記監視手段の前記検知結果に基づいて、
前記車両に設けられる該車両の走行を制御するための走行制御手段に対し、
前記車両の走行速度を所定速度以下に抑制するか、又は前記車両の走行を停止するように、前記車両の走行制御を規制する
ことを特徴とする制御装置。
【請求項3】
前記作動制御手段は、
前記車両の進行方向が前進であると、前記車両の走行速度を所定速度以下に抑制し、
前記車両の進行方向が後進であると、前記車両の走行を禁止するように、前記車両走行制御を規制する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記作動制御手段は、所定時間経過後、前記走行制御手段に対する前記規制を解除する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記シフトレバーは、マニュアルシフトモードを有し、該マニュアルシフトモード用の操作部を備える
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−274678(P2009−274678A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−129977(P2008−129977)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】