説明

半導体装置およびその作製方法

【課題】短チャネル効果を抑制しつつ微細化を達成した半導体装置およびその作製方法を提供することを目的の一とする。
【解決手段】絶縁層にトレンチを形成し、トレンチの上端コーナー部と接する酸化物半導体膜に不純物を添加し、ソース領域およびドレイン領域を形成する。上記構造にすることで微細化することが可能である。また、トレンチを有することで、ソース電極層とドレイン電極層との距離を狭くしても該トレンチの深さを適宜設定することで、短チャネル効果を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する発明は、半導体素子を利用した半導体装置およびその作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁表面を有する基板上に形成された半導体薄膜を用いてトランジスタを構成する技術が注目されている。該トランジスタは、集積回路(IC)や画像表示装置(表示装置)のような電子デバイスに広く応用されている。また、トランジスタに適用可能な半導体薄膜として、酸化物半導体を用いる技術が注目されている。
【0003】
例えば、In−Ga−Zn系酸化物で構成される酸化物半導体が、薄膜トランジスタのチャネル形成領域に適用可能であることが確認されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−103957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、トランジスタの動作の高速化、トランジスタの低消費電力化、高集積化、低価格化、などを達成するためには、トランジスタの微細化は必須である。
【0006】
トランジスタを微細化する場合には、短チャネル効果の問題が生じる。短チャネル効果とは、トランジスタの微細化(チャネル長の縮小)に伴って顕在化する電気特性の劣化である。短チャネル効果は、ドレインの電界の効果がソースにまで及ぶことに起因するものである。短チャネル効果の具体例としては、しきい値電圧の低下、S値の増大、漏れ電流の増大などがある。
【0007】
また、ソース電極層およびドレイン電極層と、チャネル形成領域に用いる酸化物半導体膜とが直接接するトランジスタ構造とすると、コンタクト抵抗が高くなり、オン電流が抑制されてしまう恐れがある。コンタクト抵抗が高くなる原因は、ソース電極層およびドレイン電極層と、酸化物半導体膜との接触面でショットキー接合が形成されることが要因の一つと考えられる。
【0008】
そこで、開示する本発明の一態様は、短チャネル効果を抑制しつつ微細化を達成した半導体装置およびその作製方法を提供することを目的の一とする。また、開示する本発明の一態様は、ソース電極層およびドレイン電極層と、酸化物半導体膜との間の抵抗を低くして良好なオーミックコンタクトがとれる半導体装置およびその作製方法を提供することを目的の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
酸化物半導体膜を含むトランジスタ(半導体装置)において、酸化物半導体膜を、絶縁層に設けられたトレンチ(溝)に設ける。酸化物半導体膜は、少なくともトレンチの底面、下端コーナー部および側面の一部と接する領域において、酸化物半導体膜の表面に、概略垂直なc軸を有している結晶を含み、当該領域をチャネル形成領域として用いる。また、酸化物半導体膜には、トレンチの上端コーナー部と接する領域において、当該チャネル形成領域より不純物濃度が高い領域を形成し、当該領域をソース領域またはドレイン領域として用いるものとする。
【0010】
本発明の一態様は、第1の膜厚を有する第1の領域と、第1の膜厚より薄い第2の膜厚を有する第2の領域を有し、かつ、側面と、第2の領域上に底面が形成されたトレンチ、が設けられた絶縁層と、トレンチの底面および側面、第1の領域の上面に接して設けられた、ソース領域、ドレイン領域およびチャネル形成領域を含む酸化物半導体膜と、ソース領域およびドレイン領域と電気的に接続して設けられたソース電極層およびドレイン電極層と、酸化物半導体膜、ソース電極層およびドレイン電極層上に設けられたゲート絶縁層と、ゲート絶縁層上に設けられ、トレンチ内を充填するゲート電極層と、を有し、チャネル形成領域は、酸化物半導体膜の表面に、概略垂直なc軸を有する結晶を含み、トレンチの側面および底面と接して設けられ、ソース領域およびドレイン領域は、チャネル形成領域よりも不純物濃度が高く、第1の領域の上面とトレンチの側面が交わる上端コーナー部および第1の領域の上面と接して設けられている半導体装置である。
【0011】
また、本発明の他の一態様は、ソース電極層、ドレイン電極層およびゲート電極層と重畳しない酸化物半導体膜中にソース領域およびドレイン領域よりも不純物濃度が高い領域を有することが好ましい。
【0012】
また、本発明の他の一態様は、底面と側面が交わる下端コーナー部に曲面が形成されており、下端コーナー部の曲面は、20nm以上60nm以下の曲率半径を有することが好ましい。
【0013】
また、本発明の他の一態様は、ソース領域およびドレイン領域の一部は、ゲート電極層と重畳している半導体装置である。
【0014】
また、本発明の他の一態様は、第1の膜厚を有する第1の領域と、第1の膜厚より薄い第2の膜厚を有する第2の領域を有し、かつ、側面と、第2の領域上に底面が形成されたトレンチ、が設けられた絶縁層を形成する工程と、加熱しながらトレンチの底面および側面、第1の領域の上面に接して酸化物半導体膜を形成し、少なくともトレンチの側面および底面に接する領域に、酸化物半導体膜の表面に、概略垂直なc軸を有する結晶を含む酸化物半導体膜を形成する工程と、不純物を第1の領域の上面の法線方向に対して斜めから添加して、第1の領域の上面とトレンチの側面が交わる上端コーナー部および第1の領域の上面に接してソース領域およびドレイン領域を、トレンチの側面および底面に接してチャネル形成領域をそれぞれ形成する工程と、ソース領域およびドレイン領域と電気的に接続するソース電極層およびドレイン電極層を形成する工程と、酸化物半導体膜、ソース電極層およびドレイン電極層上にゲート絶縁層を形成する工程と、ゲート絶縁層上にトレンチ内を充填するゲート電極層を形成する工程と、を有し、ソース領域およびドレイン領域は、チャネル形成領域よりも不純物濃度が高い半導体装置の作製方法である。
【0015】
また、本発明の他の一態様は、第1の膜厚を有する第1の領域と、第1の膜厚より薄い第2の膜厚を有する第2の領域を有し、かつ、側面と、第2の領域上に底面が形成されたトレンチ、が設けられた絶縁層を形成する工程と、トレンチの底面および側面、第1の領域の上面に接して非晶質である酸化物半導体膜を形成する工程と、非晶質である酸化物半導体膜を加熱して、少なくともトレンチの側面および底面に接する領域に、酸化物半導体膜の表面に、概略垂直なc軸を有する結晶を含む酸化物半導体膜を形成する工程と、不純物を第1の領域の上面の法線方向に対して斜めから添加して、第1の領域の上面とトレンチの側面が交わる上端コーナー部および第1の領域の上面に接してソース領域およびドレイン領域を、トレンチの側面および底面に接してチャネル形成領域をそれぞれ形成する工程と、ソース領域およびドレイン領域と電気的に接続するソース電極層およびドレイン電極層を形成する工程と、酸化物半導体膜、ソース電極層およびドレイン電極層上にゲート絶縁層を形成する工程と、ゲート絶縁層上にトレンチ内を充填するゲート電極層を形成する工程と、を有し、ソース領域およびドレイン領域は、チャネル形成領域よりも不純物濃度が高い半導体装置の作製方法である。
【0016】
また、本発明の他の一態様は、第1の膜厚を有する第1の領域と、第1の膜厚より薄い第2の膜厚を有する第2の領域を有し、かつ、側面と、第2の領域上に底面が形成されたトレンチ、が設けられた絶縁層を形成する工程と、加熱しながらトレンチの底面および側面、第1の領域の上面に接して酸化物半導体膜を形成し、少なくともトレンチの側面および底面に接する領域に、酸化物半導体膜の表面に、概略垂直なc軸を有する結晶を含む酸化物半導体膜を形成する工程と、ソース電極層およびドレイン電極層を形成する工程と、酸化物半導体膜、ソース電極層およびドレイン電極層上にゲート絶縁層を形成する工程と、ゲート絶縁層上にトレンチと重畳するようにトレンチ内を充填するゲート電極層を形成する工程と、ゲート電極層の形成後に、ゲート電極層を通過するように不純物を添加し、第1の領域の上面とトレンチの側面が交わる上端コーナー部および第1の領域の上面に接してソース領域およびドレイン領域を、トレンチの側面および底面に接してチャネル形成領域をそれぞれ形成する工程と、を有し、ソース領域およびドレイン領域は、チャネル形成領域よりも不純物濃度が高い半導体装置の作製方法である。
【0017】
また、本発明の他の一態様は、第1の膜厚を有する第1の領域と、第1の膜厚より薄い第2の膜厚を有する第2の領域を有し、かつ、側面と、第2の領域上に底面が形成されたトレンチ、が設けられた絶縁層を形成する工程と、トレンチの底面および側面、第1の領域の上面に接して非晶質である酸化物半導体膜を形成する工程と、ソース電極層およびドレイン電極層を形成する工程と、酸化物半導体膜、ソース電極層およびドレイン電極層上にゲート絶縁層を形成する工程と、ゲート絶縁層上にトレンチと重畳するようにトレンチ内を充填するゲート電極層を形成する工程と、ゲート電極層の形成後に、ゲート電極層を通過するように不純物を添加し、第1の領域の上面とトレンチの側面が交わる上端コーナー部および第1の領域の上面に接してソース領域およびドレイン領域を、トレンチの側面および底面に接してチャネル形成領域をそれぞれ形成する工程と、非晶質である酸化物半導体膜を形成する工程乃至前記ゲート電極層を形成する工程のいずれか一の工程後に、非晶質である酸化物半導体膜を加熱して、少なくともトレンチの側面および底面に接する領域に、酸化物半導体膜の表面に、概略垂直なc軸を有する結晶を含む酸化物半導体膜を形成する工程と、を有し、ソース領域およびドレイン領域は、チャネル形成領域よりも不純物濃度が高い半導体装置の作製方法である。
【0018】
また、本発明の他の一態様は、第1の膜厚を有する第1の領域と、第1の膜厚より薄い第2の膜厚を有する第2の領域を有し、かつ、側面と、第2の領域上に底面が形成されたトレンチ、が設けられた絶縁層を形成する工程と、加熱しながらトレンチの底面および側面、第1の領域の上面に接して酸化物半導体膜を形成し、少なくともトレンチの側面および底面に接する領域に、酸化物半導体膜の表面に、概略垂直なc軸を有する結晶を含む酸化物半導体膜を形成する工程と、トレンチの側面および底面を覆うレジストマスクを形成する工程と、酸化物半導体膜に対して不純物を添加する工程と、上端コーナー部および第1の領域の上面に接してソース領域およびドレイン領域を、トレンチの側面および底面に接してチャネル形成領域をそれぞれ形成する工程と、レジストマスクを除去する工程と、ソース領域およびドレイン領域と電気的に接続するソース電極層およびドレイン電極層を形成する工程と、酸化物半導体膜、ソース電極層およびドレイン電極層上にゲート絶縁層を形成する工程と、ゲート絶縁層上にトレンチ内を充填するゲート電極層を形成する工程と、を有し、ソース領域およびドレイン領域は、チャネル形成領域よりも不純物濃度が高い半導体装置の作製方法である。
【0019】
また、本発明の他の一態様は、第1の膜厚を有する第1の領域と、第1の膜厚より薄い第2の膜厚を有する第2の領域を有し、かつ、側面と、第2の領域上に底面が形成されたトレンチ、が設けられた絶縁層を形成する工程と、トレンチの底面および側面、第1の領域の上面に接して非晶質である酸化物半導体膜を形成する工程と、酸化物半導体膜上に接してトレンチの側面および底面を覆うレジストマスクを形成する工程と、酸化物半導体膜に対して不純物を添加する工程と、第1の領域の上面とトレンチの側面が交わる上端コーナー部および第1の領域の上面に接してソース領域およびドレイン領域を、トレンチの側面および底面に接してチャネル形成領域をそれぞれ形成する工程と、レジストマスクを除去する工程と、ソース領域およびドレイン領域と電気的に接続するソース電極層およびドレイン電極層を形成する工程と、酸化物半導体膜、ソース電極層およびドレイン電極層上にゲート絶縁層を形成する工程と、ゲート絶縁層上にトレンチ内を充填するゲート電極層を形成する工程と、非晶質である酸化物半導体膜を形成する工程後またはレジストマスクを形成する工程後に、非晶質である酸化物半導体膜を加熱して、少なくともトレンチの側面および底面に接する領域に、酸化物半導体膜の表面に、概略垂直なc軸を有する結晶を含む酸化物半導体膜を形成する工程と、を有し、ソース領域およびドレイン領域は、チャネル形成領域よりも不純物濃度が高い半導体装置の作製方法である。
【0020】
また、本発明の他の一態様は、レジストマスクを用いてソース領域およびドレイン領域を形成する際、不純物の添加方法がプラズマ源改質イオンインプランテーション法またはプラズマベースイオンインプランテーション法であると好ましい。
【0021】
なお、本明細書等において「上」や「下」という用語は、構成要素の位置関係が「直上」または「直下」であることを限定するものではない。例えば、「絶縁層上のゲート電極層」の表現であれば、絶縁層とゲート電極層との間に他の構成要素を含むものを除外しない。
【0022】
また、本明細書等において「電極」や「配線」という用語は、これらの構成要素を機能的に限定するものではない。例えば、「電極」は「配線」の一部として用いられることがあり、その逆もまた同様である。さらに、「電極」や「配線」という用語は、複数の「電極」や「配線」が一体となって形成されている場合なども含む。
【0023】
また、「ソース」や「ドレイン」の機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このため、本明細書においては、「ソース」や「ドレイン」という用語は、入れ替えて用いることができるものとする。
【0024】
なお、本明細書等において、「電気的に接続」には、「何らかの電気的作用を有するもの」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するもの」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に制限を受けない。
【0025】
例えば、「何らかの電気的作用を有するもの」には、電極や配線などが含まれる。
【0026】
また、本明細書等において、平均面粗さ(Ra)とは、JISB0601:2001(ISO4287:1997)で定義されている中心線平均粗さ(Ra)を、測定面に対して適用できるよう三次元に拡張したものであり、基準面から指定面までの偏差の絶対値を平均した値で表現される。
【0027】
ここで、中心線平均粗さ(Ra)は、粗さ曲線からその中心線の方向に測定長さLの部分を抜き取り、この抜き取り部の中心線の方向をx軸、縦倍率の方向(x軸に垂直な方向)をy軸とし、粗さ曲線をy=f(x)で表すとき、次の式(1)で与えられる。
【0028】
【数1】

【0029】
そして、平均面粗さ(Ra)は、測定データの示す面である測定面をz=f(x,y)で表すとき、基準面から指定面までの偏差の絶対値を平均した値で表現され、次の式(2)で与えられる。
【0030】
【数2】

【0031】
ここで、指定面とは、粗さ計測の対象となる面であり、座標(x,y)(x,y)(x,y)(x,y)の4点で表される四角形の領域とし、指定面が理想的にフラットであるとしたときの面積をSとする。
【0032】
また、基準面とは、指定面の平均の高さにおける、xy平面と平行な面のことである。つまり、指定面の高さの平均値をZとするとき、基準面の高さもZで表される。
【発明の効果】
【0033】
開示する発明の一態様によって、短チャネル効果を抑制しつつ、微細化を達成した半導体装置およびその作製方法を提供することができる。また、ソース電極層およびドレイン電極層と、酸化物半導体膜との間の抵抗を低くして良好なオーミックコンタクトがとれる半導体装置およびその作製方法を提供することができる。
【0034】
また、開示する発明の一態様によって、トランジスタサイズを十分に小さくすることが可能になる。トランジスタサイズを十分に小さくすることで、半導体装置の占める面積が小さくなり、半導体装置の取り数が増大する。これにより、半導体装置あたりの製造コストは抑制される。また、半導体装置が小型化されるため、同程度の大きさでさらに機能が高められた半導体装置を実現することができる。または、半導体装置の高集積化が可能となる。また、チャネル長の縮小による、動作の高速化、低消費電力化などの効果を得ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一態様の半導体装置を示す断面図および平面図。
【図2】本発明の一態様の半導体装置の作製工程を示す断面図。
【図3】本発明の一態様の半導体装置の作製工程を示す断面図。
【図4】本発明の一態様の半導体装置の作製工程を示す断面図。
【図5】本発明の一態様の半導体装置の作製工程を示す断面図。
【図6】本発明の一態様の半導体装置の作製工程を示す断面図。
【図7】本発明の一態様の半導体装置を示す断面図、平面図および回路図。
【図8】本発明の一態様の半導体装置を示す回路図および斜視図。
【図9】本発明の一態様の半導体装置を示す断面図および平面図。
【図10】本発明の一態様の半導体装置を示す回路図。
【図11】本発明の一態様の半導体装置を示すブロック図。
【図12】本発明の一態様の半導体装置を示すブロック図。
【図13】本発明の一態様の半導体装置を示すブロック図。
【図14】実施例における実施例試料1のTEM像を示す図。
【図15】実施例における実施例試料2のTEM像を示す図。
【図16】本発明の一態様に係る酸化物材料の構造を説明する図。
【図17】本発明の一態様に係る酸化物材料の構造を説明する図。
【図18】本発明の一態様に係る酸化物材料の構造を説明する図。
【図19】計算によって得られた移動度のゲート電圧依存性を説明する図。
【図20】計算によって得られたドレイン電流と移動度のゲート電圧依存性を説明する図。
【図21】計算によって得られたドレイン電流と移動度のゲート電圧依存性を説明する図。
【図22】計算によって得られたドレイン電流と移動度のゲート電圧依存性を説明する図。
【図23】計算に用いたトランジスタの断面構造を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の実施の形態の一例について、図面を用いて以下に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態および詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する実施の形態および実施例において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。
【0037】
なお、図面等において示す各構成の、位置、大きさ、範囲などは、理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため、開示する発明は、必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。
【0038】
なお、本明細書等における「第1」、「第2」、「第3」などの序数詞は、構成要素の混同を避けるために付すものであり、数的に限定するものではないことを付記する。
【0039】
(実施の形態1)
本実施の形態では、開示する発明の一態様に係る半導体装置およびその作製工程の例について、図1乃至図3を用いて説明する。
【0040】
図1(A)に本実施の形態のトランジスタ162の平面図の一例を示す。また、図1(B)に図1(A)中の鎖線A1−A2における断面図を示す。
【0041】
本実施の形態に示すトランジスタ162は、トレンチ131が設けられた絶縁層130と、ソース領域144a、ドレイン領域144bおよびチャネル形成領域144cを含む酸化物半導体膜144と、ソース電極層142aおよびドレイン電極層142bと、ゲート絶縁層146と、ゲート電極層148と、を有する。
【0042】
ここで、上記構成の位置関係、接続関係について説明する。
【0043】
絶縁層130は、第1の膜厚を有する第1の領域130aと、第1の膜厚よりも薄い膜厚を有する第2の領域130bと、を有しており、第2の領域130bが、第1の領域130aの一と、第1の領域130aの他の一と、の間に配置され、トレンチ131の底面が第2の領域130bによって、トレンチ131の側面が第1の領域130aの一と、第1の領域130aの他の一によってそれぞれ形成されている。
【0044】
なお、本明細書等において、第1の領域130aの上面とトレンチ131の側面が交わる部分を「上端コーナー部」、トレンチ131の底面と側面が交わる部分を「下端コーナー部」と定義する。上端コーナー部および下端コーナー部は、その周辺の部分も含むものとする。
【0045】
酸化物半導体膜144は、トレンチ131の底面および側面、第1の領域130aの上面に接して設けられている。酸化物半導体膜144中のソース領域144aおよびドレイン領域144bは、第1の領域130aの上面とトレンチ131の側面が交わる上端コーナー部131aと接して設けられ、酸化物半導体膜144中のチャネル形成領域144cは、上端コーナー部131aを除くトレンチ131の側面および底面と接して設けられている。チャネル形成領域144cは、酸化物半導体膜144の表面に、概略垂直なc軸を有する結晶を含み、ソース領域144aおよびドレイン領域144bは、チャネル形成領域144cよりも不純物濃度が高くなっている。
【0046】
ソース電極層142aおよびドレイン電極層142bは、ソース領域144aおよびドレイン領域144bと電気的に接続して設けられ、ゲート絶縁層146は、酸化物半導体膜144、ソース電極層142aおよびドレイン電極層142b上に設けられ、ゲート電極層148は、ゲート絶縁層146上に設けられ、トレンチ131内を充填している。
【0047】
次いで、各構成の詳細について説明する。
【0048】
絶縁層130にトレンチ131が設けられ、当該トレンチ131と接して酸化物半導体膜144が設けられている。これにより、酸化物半導体膜144のチャネル長方向(キャリアが流れる方向)の断面形状は、トレンチ131の断面形状に沿って湾曲した形状となっており、トレンチ131の深さdが深くなるほどトランジスタ162の実効的なチャネル長を長くすることができる。ここで、トレンチ131のチャネル長方向の長さLに対して実効的なチャネル長の長さが2L以上になるように、トレンチ131を設けることが好ましい。
【0049】
トレンチ131の深さdを適宜決定することにより、酸化物半導体膜144のチャネル形成領域を3次元方向(基板垂直方向)に延長させることができる。よって、トランジスタ162の微細化を図り、ソース電極層142aとドレイン電極層142bの距離を短くしても、実効的なチャネル長を維持または延長させることができる。故に、トランジスタ162の微細化を達成しつつ、トランジスタ162の短チャネル効果を抑制することができる。
【0050】
これにより、トランジスタ162のサイズを十分に小さくすることが可能になるので、半導体装置の占める面積が小さくなり、半導体装置の取り数を増大させることができる。これにより、半導体装置あたりの製造コストを抑制することができる。また、半導体装置が小型化されるため、同程度の大きさでさらに機能が高められた半導体装置を実現することができる。または、半導体装置の高集積化が可能となる。また、チャネル長の縮小による、動作の高速化、低消費電力化などの効果を得ることもできる。
【0051】
絶縁層130に設けられたトレンチ131は、下端コーナー部に曲面が形成されている。下端コーナー部の曲面は20nm以上60nm以下の曲率半径を有することが好ましい。また、下端コーナー部の表面は平坦性が高いことが好ましく、例えば、平均面粗さが好ましくは0.5nm未満、より好ましくは0.3nm以下、さらに好ましくは0.1nm以下である。なお、平均面粗さが0に近いほど好ましい。このような下端コーナー部を有するトレンチ131に接して後述する酸化物半導体膜144の表面に、概略垂直なc軸を有する結晶を含む酸化物半導体膜を設けることにより、酸化物半導体膜の可視光や紫外光の照射による電気的特性の変化を抑制することができる。
【0052】
ここで、トランジスタ162に含まれる酸化物半導体膜144の少なくともチャネル形成領域144cは、結晶性を有するものとし、CAAC−OS(C Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor)膜とすることが好ましい。
【0053】
CAAC−OS膜は、完全な単結晶ではなく、完全な非晶質でもない。CAAC−OS膜は、非晶質相に結晶部および非晶質部を有する結晶−非晶質混相構造の酸化物半導体膜である。なお、当該結晶部は、一辺が100nm未満の立方体内に収まる大きさであることが多い。また、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)による観察像では、CAAC−OS膜に含まれる非晶質部と結晶部との境界は明確ではない。また、TEMによってCAAC−OS膜には粒界(グレインバウンダリーともいう。)は確認できない。そのため、CAAC−OS膜は、粒界に起因する電子移動度の低下が抑制される。
【0054】
CAAC−OS膜に含まれる結晶部は、c軸がCAAC−OS膜の被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向に揃い、かつab面に垂直な方向から見て三角形状または六角形状の原子配列を有し、c軸に垂直な方向から見て金属原子が層状または金属原子と酸素原子とが層状に配列している。なお、異なる結晶部間で、それぞれa軸およびb軸の向きが異なっていてもよい。本明細書において、単に垂直と記載する場合、85°以上95°以下の範囲も含まれることとする。また、単に平行と記載する場合、−5°以上5°以下の範囲も含まれることとする。
【0055】
なお、CAAC−OS膜において、結晶部の分布が一様でなくてもよい。例えば、CAAC−OS膜の形成過程において、酸化物半導体膜の表面側から結晶成長させる場合、被形成面の近傍に対し表面の近傍では結晶部の占める割合が高くなることがある。また、CAAC−OS膜へ不純物を添加することにより、当該不純物添加領域において結晶部が非晶質化することもある。
【0056】
CAAC−OS膜に含まれる結晶部のc軸は、CAAC−OS膜の被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向に揃うため、CAAC−OS膜の形状(被形成面の断面形状または表面の断面形状)によっては互いに異なる方向を向くことがある。なお、結晶部のc軸の方向は、CAAC−OS膜が形成されたときの被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向となる。結晶部は、成膜することにより、または成膜後に加熱処理などの結晶化処理を行うことにより形成される。
【0057】
ここで、CAAC−OS膜に含まれる結晶構造の一例について図16乃至図18を用いて詳細に説明する。なお、特に断りがない限り、図16乃至図18は上方向をc軸方向とし、c軸方向と直交する面をab面とする。なお、単に上半分、下半分という場合、ab面を境にした場合の上半分、下半分をいう。また、図16において、丸で囲まれたOは4配位のOを示し、二重丸で囲まれたOは3配位のOを示す。
【0058】
図16(A)に、1個の6配位のInと、Inに近接の6個の4配位の酸素原子(以下4配位のO)と、を有する構造を示す。ここでは、金属原子が1個に対して、近接の酸素原子のみ示した構造を小グループと呼ぶ。図16(A)の構造は、八面体構造をとるが、理解を容易にするため平面構造で示している。なお、図16(A)の上半分および下半分にはそれぞれ3個ずつ4配位のOがある。図16(A)に示す小グループは電荷が0である。
【0059】
図16(B)に、1個の5配位のGaと、Gaに近接の3個の3配位の酸素原子(以下3配位のO)と、Gaに近接の2個の4配位のOと、を有する構造を示す。3配位のOは、いずれもab面に存在する。図16(B)の上半分および下半分にはそれぞれ1個ずつ4配位のOがある。また、Inも5配位をとるため、図16(B)に示す構造をとりうる。図16(B)に示す小グループは電荷が0である。
【0060】
図16(C)に、1個の4配位のZnと、Znに近接の4個の4配位のOと、を有する構造を示す。図16(C)の上半分には1個の4配位のOがあり、下半分には3個の4配位のOがある。または、図16(C)の上半分に3個の4配位のOがあり、下半分に1個の4配位のOがあってもよい。図16(C)に示す小グループは電荷が0である。
【0061】
図16(D)に、1個の6配位のSnと、Snに近接の6個の4配位のOと、を有する構造を示す。図16(D)の上半分には3個の4配位のOがあり、下半分には3個の4配位のOがある。図16(D)に示す小グループは電荷が+1となる。
【0062】
図16(E)に、2個のZnを含む小グループを示す。図16(E)の上半分には1個の4配位のOがあり、下半分には1個の4配位のOがある。図16(E)に示す小グループは電荷が−1となる。
【0063】
ここでは、複数の小グループの集合体を中グループと呼び、複数の中グループの集合体を大グループ(ユニットセルともいう。)と呼ぶ。
【0064】
ここで、これらの小グループ同士が結合する規則について説明する。図16(A)に示す6配位のInの上半分の3個のOは下方向にそれぞれ3個の近接Inを有し、下半分の3個のOは上方向にそれぞれ3個の近接Inを有する。図16(B)に示す5配位のGaの上半分の1個のOは下方向に1個の近接Gaを有し、下半分の1個のOは上方向に1個の近接Gaを有する。図16(C)に示す4配位のZnの上半分の1個のOは下方向に1個の近接Znを有し、下半分の3個のOは上方向にそれぞれ3個の近接Znを有する。この様に、金属原子の上方向の4配位のOの数と、そのOの下方向にある近接金属原子の数は等しく、同様に金属原子の下方向の4配位のOの数と、そのOの上方向にある近接金属原子の数は等しい。Oは4配位なので、下方向にある近接金属原子の数と、上方向にある近接金属原子の数の和は4になる。従って、金属原子の上方向にある4配位のOの数と、別の金属原子の下方向にある4配位のOの数との和が4個のときに、金属原子を有する二種の小グループ同士は結合することができる。例えば、6配位の金属原子(InまたはSn)が下半分の4配位のOを介して結合する場合、4配位のOが3個であるため、5配位の金属原子(GaまたはIn)または4配位の金属原子(Zn)のいずれかと結合することになる。
【0065】
これらの配位数を有する金属原子は、c軸方向において、4配位のOを介して結合する。また、このほかにも、層構造の合計の電荷が0となるように小グループ同士が結合して中グループを構成する。
【0066】
図17(A)に、In−Ga−Zn系酸化物の層構造を構成する中グループのモデル図を示す。図17(B)に、3つの中グループで構成される大グループを示す。なお、図17(C)は、図17(B)の層構造をc軸方向から観察した場合の原子配列を示す。
【0067】
図17(A)においては、理解を容易にするため、3配位のOは省略し、4配位のOは個数のみ示し、例えば、Inの上半分および下半分にはそれぞれ3個ずつ4配位のOがあることを丸枠の3として示している。同様に、図17(A)において、Gaの上半分および下半分にはそれぞれ1個ずつ4配位のOがあり、丸枠の1として示している。また、同様に、図17(A)において、上半分には1個の4配位のOがあり、下半分には3個の4配位のOがあるZnを示している。
【0068】
図17(A)においてIn−Ga−Zn系酸化物の層構造を構成する中グループは、上から順に4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるInが、4配位のOが1個上半分にあるZnと結合し、そのZnの下半分の3個の4配位のOを介して、4配位のOが1個ずつ上半分および下半分にあるGaと結合し、そのGaの下半分の1個の4配位のOを介して、4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるInと結合している構成である。この中グループを複数結合して大グループを構成する。
【0069】
ここで、3配位のOおよび4配位のOの場合、結合1本当たりの電荷はそれぞれ−0.667、−0.5と考えることができる。例えば、In(6配位または5配位)、Zn(4配位)、Ga(5配位)の電荷は、それぞれ+3、+2、+3であるため、In、ZnおよびGaのいずれかを含む小グループは、電荷が0となる。そのため、これらの小グループの組み合わせであれば中グループの合計の電荷は常に0となる。
【0070】
また、In−Ga−Zn系酸化物の層構造を構成する中グループは、図17(A)に示した中グループに限定されず、In、Ga、Znの配列が異なる中グループを組み合わせた大グループも取りうる。
【0071】
また、このほかにも、四元系金属の酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn系酸化物や、三元系金属の酸化物であるIn−Sn−Zn系酸化物、In−Al−Zn系酸化物、Sn−Ga−Zn系酸化物、Al−Ga−Zn系酸化物、Sn−Al−Zn系酸化物や、In−Hf−Zn系酸化物、In−La−Zn系酸化物、In−Ce−Zn系酸化物、In−Pr−Zn系酸化物、In−Nd−Zn系酸化物、In−Sm−Zn系酸化物、In−Eu−Zn系酸化物、In−Gd−Zn系酸化物、In−Tb−Zn系酸化物、In−Dy−Zn系酸化物、In−Ho−Zn系酸化物、In−Er−Zn系酸化物、In−Tm−Zn系酸化物、In−Yb−Zn系酸化物、In−Lu−Zn系酸化物や、二元系金属の酸化物であるIn−Zn系酸化物、Sn−Zn系酸化物、Al−Zn系酸化物、Zn−Mg系酸化物、Sn−Mg系酸化物、In−Mg系酸化物や、In−Ga系酸化物、などを用いた場合も同様である。
【0072】
例えば、図18(A)に、In−Sn−Zn系酸化物の層構造を構成する中グループのモデル図を示す。
【0073】
図18(A)において、In−Sn−Zn系酸化物の層構造を構成するグループは、上から順に4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるSnが、4配位のOが1個ずつ上半分および下半分にあるInと結合し、そのInが、上半分に3個の4配位のOがあるZnと結合し、そのZnの下半分の1個の4配位のOを介して4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるInと結合し、そのInが、上半分に1個の4配位のOがあるZn2個からなる小グループと結合し、この小グループの下半分の1個の4配位のOを介して4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるSnと結合している構成である。この中グループを複数結合して大グループを構成する。
【0074】
ここで、In(6配位または5配位)、Zn(4配位)、Sn(5配位または6配位)の電荷は、それぞれ+3、+2、+4である。従って、Snを含む小グループは電荷が+1となる。そのため、Snを含む層構造を形成するためには、電荷+1を打ち消す電荷−1が必要となる。電荷−1をとる構造として、図18(A)に示すように、2個のZnを含む小グループが挙げられる。例えば、Snを含む小グループが1個に対し、2個のZnを含む小グループが1個あれば、電荷が打ち消されるため、層構造の合計の電荷を0とすることができる。
【0075】
具体的には、図18(B)に示した大グループが繰り返されることで、In−Sn−Zn系酸化物の結晶(InSnZn)を得ることができる。なお、得られるIn−Sn−Zn系酸化物の層構造は、InSnZn(ZnO)(mは0または自然数。)とする組成式で表すことができる。
【0076】
ここで、チャネル形成領域144cには、CAAC−OS膜を用いることにより、可視光や紫外光の照射による電気的特性の変化を抑制することができる。
【0077】
また、ソース領域144aおよびドレイン領域144bの一部が形成される、上端コーナー部131aと接して設けられる酸化物半導体膜144は、当該上端コーナー部131aが急峻な角部であるために上記の酸化物半導体膜144中のCAAC−OS膜の表面に、概略垂直なc軸を有する結晶の成長面の連続性が低い恐れがある。しかし、本実施の形態のように、上端コーナー部131aと接して設けられる酸化物半導体膜144をソース領域144aおよびドレイン領域144bとすることで、チャネル形成領域144c全体として、酸化物半導体膜144の表面に、概略垂直なc軸を有する結晶の成長面が連続している。よって、トランジスタにより安定な電気的特性を付与することが可能となる。
【0078】
また、ソース領域144aおよびドレイン領域144bは、チャネル形成領域144cよりも不純物濃度が高くなっている。不純物濃度を高くすることによって、不純物、例えばPが酸化物半導体の酸素の格子位置に入り、酸化物半導体中の金属Mと結合するとともに酸素とも結合し、M−POx結合を形成する。そのことにより、酸化物半導体中で酸素欠損が誘起され、キャリアが生成されコンタクト抵抗が低減するため、ソース電極層142aおよびドレイン電極層142bと酸化物半導体膜144の間で良好なオーミックコンタクトをとることができる。
【0079】
よって、このような構成にすることにより安定した電気的特性が付与された、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0080】
以下に、トランジスタ162の作製工程の一例を示す。
【0081】
まず、基板(図示しない)上に、絶縁層130を形成する(図2(A)参照)。
【0082】
半導体材料を含む基板としては、シリコンや炭化シリコンなどの単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウムなどの化合物半導体基板、SOI基板などを適用することができ、当該基板上に半導体素子が形成されていてもよい。また、ガラス基板でもよい。なお、一般に「SOI基板」は、絶縁表面上にシリコン半導体膜が設けられた構成の基板をいうが、本明細書等においては、絶縁表面上にシリコン以外の材料からなる半導体膜が設けられた構成の基板も含むものとする。つまり、「SOI基板」が有する半導体膜は、シリコン半導体膜に限定されない。また、SOI基板には、ガラス基板などの絶縁基板上に絶縁層を介して半導体膜が設けられた構成のものが含まれるものとする。
【0083】
絶縁層130としては、酸化シリコン膜、酸化ガリウム膜、酸化アルミニウム膜、酸化窒化シリコン膜、酸化窒化アルミニウム膜等を形成することができる。また、絶縁層130が過剰に酸素を含んでいてもよい。
【0084】
次いで、絶縁層130にトレンチ131(溝とも呼ぶ)を形成する(図2(B)参照)。トレンチ131は、例えば、絶縁層130上にフォトリソグラフィ工程によりレジストマスクを形成し、レジストマスクを用いた絶縁層130のエッチングによって形成することができる。
【0085】
トレンチ131の形成方法はフォトリソグラフィ法を用いたドライエッチング法を好適に用いることができ、一回のエッチングまたは複数回のエッチングによって形成することができる。複数回のエッチング工程を行う場合、ドライエッチング工程とウェットエッチング工程を組み合わせてもよい。
【0086】
例えば、反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)法、ICP(Inductively Coupled Plasma)エッチング法、ECR(Electron Cyclotron Resonance)エッチング法、平行平板型(容量結合型)エッチング法、マグネトロンプラズマエッチング法、2周波プラズマエッチング法またはヘリコン波プラズマエッチング法等のドライエッチング法を用いることができる。また、エッチングガスとしては、三フッ化メタン(CHF)、四フッ化炭素(CF)、パーフルオロシクロブタン(C)などのフロロカーボン系ガス、メタン(CH)、水素、ヘリウム、またはアルゴンなどの希ガスを、適宜混合して用いることができる。
【0087】
次いで、トレンチ131の底面および側面、第1の領域130aの上面に接するように、酸化物半導体膜144を形成する(図2(C)参照)。なお、少なくとも酸化物半導体膜144において、後にチャネル形成領域となる領域は、CAAC−OS膜を用いている。
【0088】
CAAC−OS膜を設けることにより、可視光や紫外光の照射による電気的特性の変化を抑制することができる。よって、このようなCAAC−OS膜を設けることにより安定した電気的特性が付与された、信頼性の高いトランジスタを提供することができる。
【0089】
酸化物半導体膜144をCAAC−OS膜とする際には、基板を加熱しながら酸化物半導体膜144を形成すればよく、基板を加熱する温度としては、200℃を超えて700℃以下、好ましくは300℃を超えて500℃以下、より好ましくは400℃以上450℃以下とする。なお、酸化物半導体膜の形成時に、基板を加熱する温度を高くすることで、非晶質な部分に対して結晶部分の占める割合の多いCAAC−OS膜とすることができる。
【0090】
また、酸化物半導体膜144をCAAC−OS膜とする他の方法としては、酸化物半導体膜の成膜時の基板を加熱する温度を、好ましくは200℃未満、より好ましくは180℃未満とすることによって酸化物半導体膜144を非晶質構造とし、非晶質状の酸化物半導体膜に350℃以上700℃以下、好ましくは400℃以上、より好ましくは500℃以上、さらに好ましくは550℃以上の加熱処理を行って当該酸化物半導体膜の少なくとも一部を結晶化させ、c軸配向を有する結晶を含む酸化物半導体膜144を形成することができる。なお、非晶質状の酸化物半導体膜を加熱処理するタイミングは、後に形成されるソース領域144a、ドレイン領域144bおよびチャネル形成領域144cの形成前であったら、いつ行ってもよい。
【0091】
少なくとも上端コーナー部131aを除くトレンチ131の側面および底面に接する酸化物半導体膜144がCAAC−OS膜となっており、その領域を後述するチャネル形成領域として用いる。
【0092】
酸化物半導体膜144の膜厚は、1nm以上100nm以下とし、スパッタリング法、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法、パルスレーザー堆積法、ALD(Atomic Layer Deposition)法等を適宜用いることができる。また、酸化物半導体膜144は、スパッタリングターゲット表面に対し、概略垂直に複数の基板表面がセットされた状態で成膜を行うスパッタ装置、所謂CPスパッタ装置(Columnar Plasma Sputtering system)を用いて成膜してもよい。なお、本実施の形態では、酸化物半導体膜144を島状に加工する。
【0093】
なお、酸化物半導体の成膜を行う前に、成膜室の加熱および排気を行って、成膜室中の水素、水、水酸基、水素化物などの不純物を除去しておくことが好ましい。特に成膜室の内壁に吸着して存在するこれらの不純物を除去することが重要である。ここで、加熱処理は、例えば、100℃以上450℃以下で行えばよい。また、処理室の排気は、ドライポンプなどの粗引きポンプと、スパッタイオンポンプ、ターボ分子ポンプおよびクライオポンプなどの高真空ポンプとを適宜組み合わせて行うとよい。ターボ分子ポンプは大きいサイズの分子の排気が優れる一方、水素や水の排気能力が低い。そこで、水の排気能力の高いクライオポンプおよび水素の排気能力の高いスパッタイオンポンプを組み合わせることが有効となる。また、このとき、不活性ガスを導入しながら不純物の除去を行うと、排気するだけでは脱離しにくい水などの脱離速度をさらに大きくすることができる。このような処理を行って酸化物半導体の成膜前に成膜室の不純物を除去することにより、酸化物半導体膜144への水素、水、水酸基、水素化物などの混入を防ぐことができる。
【0094】
用いる酸化物半導体としては、少なくともインジウム(In)あるいは亜鉛(Zn)を含むことが好ましい。特にInとZnを含むことが好ましい。また、該酸化物半導体を用いたトランジスタの電気特性のばらつきを減らすためのスタビライザーとして、それらに加えてガリウム(Ga)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてスズ(Sn)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてハフニウム(Hf)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてアルミニウム(Al)を有することが好ましい。
【0095】
また、他のスタビライザーとして、ランタノイドである、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)のいずれか一種あるいは複数種を有してもよい。
【0096】
例えば、酸化物半導体として、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、二元系金属の酸化物であるIn−Zn系酸化物、Sn−Zn系酸化物、Al−Zn系酸化物、Zn−Mg系酸化物、Sn−Mg系酸化物、In−Mg系酸化物、In−Ga系酸化物、三元系金属の酸化物であるIn−Ga−Zn系酸化物(IGZOとも表記する)、In−Al−Zn系酸化物、In−Sn−Zn系酸化物、Sn−Ga−Zn系酸化物、Al−Ga−Zn系酸化物、Sn−Al−Zn系酸化物、In−Hf−Zn系酸化物、In−La−Zn系酸化物、In−Ce−Zn系酸化物、In−Pr−Zn系酸化物、In−Nd−Zn系酸化物、In−Sm−Zn系酸化物、In−Eu−Zn系酸化物、In−Gd−Zn系酸化物、In−Tb−Zn系酸化物、In−Dy−Zn系酸化物、In−Ho−Zn系酸化物、In−Er−Zn系酸化物、In−Tm−Zn系酸化物、In−Yb−Zn系酸化物、In−Lu−Zn系酸化物、四元系金属の酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn系酸化物、In−Hf−Ga−Zn系酸化物、In−Al−Ga−Zn系酸化物、In−Sn−Al−Zn系酸化物、In−Sn−Hf−Zn系酸化物、In−Hf−Al−Zn系酸化物を用いることができる。
【0097】
なお、ここで、例えば、In−Ga−Zn系酸化物とは、InとGaとZnを主成分として有する酸化物という意味であり、InとGaとZnの比率は問わない。また、InとGaとZn以外の金属元素が入っていてもよい。
【0098】
また、酸化物半導体として、InMO(ZnO)(m>0、かつ、mは整数でない)で表記される材料を用いてもよい。なお、Mは、Ga、Fe、MnおよびCoから選ばれた一の金属元素または複数の金属元素を示す。また、酸化物半導体として、InSnO(ZnO)(n>0、かつ、nは整数)で表記される材料を用いてもよい。
【0099】
例えば、原子数比で、In:Ga:Zn=1:1:1あるいはIn:Ga:Zn=2:2:1のIn−Ga−Zn系酸化物やその組成の近傍の酸化物を用いることができる。あるいは、原子数比で、In:Sn:Zn=1:1:1、In:Sn:Zn=2:1:3あるいはIn:Sn:Zn=2:1:5のIn−Sn−Zn系酸化物やその組成の近傍の酸化物を用いるとよい。
【0100】
しかし、これらに限られず、必要とする半導体特性(移動度、しきい値、ばらつき等)に応じて適切な組成のものを用いればよい。また、必要とする半導体特性を得るために、キャリア濃度や不純物濃度、欠陥密度、金属元素と酸素の原子数比、原子間結合距離、密度等を適切なものとすることが好ましい。
【0101】
例えば、In−Sn−Zn系酸化物では比較的容易に高い移動度が得られる。しかしながら、In−Ga−Zn系酸化物でも、バルク内欠陥密度を低減することにより移動度を上げることができる。また、結晶性を有する酸化物半導体では、よりバルク内欠陥を低減することができ、表面の平坦性を高めればアモルファス状態の酸化物半導体以上の移動度を得ることができる。
【0102】
なお、例えば、In、Ga、Znの原子数比がIn:Ga:Zn=a:b:c(a+b+c=1)である酸化物の組成が、原子数比がIn:Ga:Zn=A:B:C(A+B+C=1)の酸化物の組成の近傍であるとは、a、b、cが、(a−A)+(b−B)+(c−C)≦rを満たすことをいい、rは、例えば、0.05とすればよい。他の酸化物でも同様である。
【0103】
酸化物半導体としてIn−Ga−Zn系の酸化物半導体の材料を用いる場合、用いるターゲットの組成比はIn:Ga:ZnO=1:x:y[mol比](xは0以上、yは0.5以上5以下)を用いるのが好適である。例えば、In:Ga:ZnO=1:1:2[mol比]の組成比を有するターゲットなどを用いることができる。また、In:Ga:ZnO=1:1:1[mol比]の組成比を有するターゲットや、In:Ga:ZnO=1:1:4[mol比]の組成比を有するターゲットの組成比を有するターゲットを用いることもできる。
【0104】
また、酸化物半導体としてIn−Sn−Zn系の酸化物半導体の材料を用いる場合、用いるターゲット中の金属元素の原子数比は、In:Sn:Zn=1:2:2、In:Sn:Zn=2:1:3、In:Sn:Zn=1:1:1あるいはIn:Sn:Zn=20:45:35などとすればよい。
【0105】
また、酸化物半導体としてIn−Zn系の酸化物半導体の材料を用いる場合、用いるターゲット中の金属元素の原子数比は、In:Zn=50:1〜1:2(モル比に換算するとIn:ZnO=25:1〜1:4)、好ましくはIn:Zn=20:1〜1:1(モル比に換算するとIn:ZnO=10:1〜1:2)、さらに好ましくはIn:Zn=15:1〜1.5:1(モル比に換算するとIn:ZnO=15:2〜3:4)とする。例えば、In−Zn系酸化物半導体の形成に用いるターゲットは、原子数比がIn:Zn:O=X:Y:Zのとき、Z>1.5X+Yとする。
【0106】
なお、酸化物半導体膜144は、成膜時に酸素が多く含まれるような条件(例えば、酸素100%の雰囲気下でスパッタリング法により成膜を行うなど)で成膜して、酸素を多く含む(好ましくは酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれている)膜とすることが好ましい。
【0107】
成膜の雰囲気は、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気下、酸素雰囲気下、または、希ガスと酸素の混合雰囲気下などとすればよい。ここで、成膜時に希ガスより酸素の体積比を大きくすることにより、酸化物半導体膜144に酸素を容易に供給することができ、酸化物半導体膜144中の酸素欠損を低減することができる。また、酸化物半導体膜144への水素、水、水酸基、水素化物などの混入を防ぐために、水素、水、水酸基、水素化物などの不純物が十分に除去された高純度ガスを用いた雰囲気とすることが望ましい。
【0108】
酸化物半導体膜144成膜後、酸化物半導体膜144に対して、過剰な水素(水や水酸基を含む)を除去(脱水化または脱水素化)するための熱処理を行ってもよい。熱処理を行うことによって、酸化物半導体膜144中に含まれる水素原子、または水素原子を含む物質をさらに除去することができる。熱処理の温度は、不活性ガス雰囲気下、250℃以上700℃以下、好ましくは450℃以上600℃以下、または基板の歪み点未満とする。不活性ガス雰囲気としては、窒素、または希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン等)を主成分とする雰囲気であって、水、水素などが含まれない雰囲気を適用するのが望ましい。例えば、熱処理装置に導入する窒素や、ヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスの純度を、6N(99.9999%)以上、好ましくは7N(99.99999%)以上(すなわち、不純物濃度が1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とする。
【0109】
当該熱処理は、例えば、抵抗発熱体などを用いた電気炉に基板を導入し、窒素雰囲気下、450℃、1時間の条件で行うことができる。
【0110】
また、熱処理装置は電気炉に限られず、加熱されたガスなどの媒体からの熱伝導、または熱輻射によって、被処理物を加熱する装置を用いても良い。例えば、LRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置等のRTA(Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置である。GRTA装置は、高温のガスを用いて熱処理を行う装置である。ガスとしては、アルゴンなどの希ガス、または窒素のような、熱処理によって被処理物と反応しない不活性気体が用いられる。なお、加熱処理装置としてGRTA装置を用いる場合には、その熱処理時間が短いため、650℃〜700℃の高温に加熱した不活性ガス中で基板を加熱してもよい。
【0111】
なお、上述の熱処理には水素や水などを除去する効果があるため、当該熱処理を、脱水化処理や、脱水素化処理などと呼ぶこともできる。当該熱処理は、例えば、酸化物半導体膜を島状に加工した後などのタイミングにおいて行うことも可能である。また、このような脱水化処理、脱水素化処理は、一回に限らず複数回行っても良い。
【0112】
また、上記の熱処理で酸化物半導体膜144を加熱した後、同じ炉にて加酸素化(酸化物半導体膜に酸素を加えることをいう。以降、同様である。)のための熱処理を行ってもよい。該熱処理は、熱処理装置に高純度の酸素ガス、高純度のNOガス、または超乾燥エア(CRDS(キャビティリングダウンレーザー分光法)方式の露点計を用いて測定した場合の水分量が20ppm(露点換算で−55℃)以下、好ましくは1ppm以下、好ましくは10ppb以下の空気)を導入し、200℃以上基板の歪み点未満で熱処理を行えばよい。好ましくは、250℃以上450℃以下で熱処理を行えばよい。特にこれらのガスには、水、水素などが含まれないことが好ましい。また、同じ炉に導入する酸素ガスまたはNOガスの純度を、6N以上好ましくは7N以上(即ち不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。酸素ガスまたはNOガスの作用によって、脱水化または脱水素化処理による不純物の排除工程で低減してしまった酸化物半導体を構成する主成分材料の一つである酸素を供給することができる。この工程により、脱水化または脱水素化処理により生じた酸素欠損を補填することができる。
【0113】
なお、上述の熱処理には脱水化処理または脱水素化処理により酸化物半導体中に生じた酸素欠損を補填する効果があるため、当該熱処理を、加酸素化処理などと呼ぶこともできる。当該熱処理は、例えば、酸化物半導体膜を島状に加工した後などのタイミングにおいて行うことも可能である。また、このような加酸素化処理は、一回に限らず複数回行っても良い。
【0114】
次いで、第1の領域130aの上面とトレンチ131の側面が交わる上端コーナー部131aおよび第1の領域130aの上面に接する酸化物半導体膜144に不純物141を添加する処理を行って、ソース領域144aおよびドレイン領域144bを形成する。同時に酸化物半導体膜144に不純物141が添加されなかった領域(CAAC−OS膜となっている、上端コーナー部131aを除くトレンチ131の側面および底面に接する酸化物半導体膜144)がチャネル形成領域144cとして機能する(図3(A)参照)。
【0115】
添加する不純物141は、リン、ホウ素、窒素、ヒ素、アルゴン、アルミニウム、またはこれらを含む分子イオンなどがある。また、上端コーナー部131aおよび第1の領域130aの上面に接する酸化物半導体膜144に不純物141を添加する方法として、イオンドーピング法またはイオンインプランテーション法を用いることができる。本実施の形態では、チャネル形成領域として機能する上端コーナー部131aを除くトレンチ131の側面および底面と接する酸化物半導体膜144に不純物141を添加させないように第1の領域130aの上面(半導体材料を含む基板面)を第1の領域130aの上面に対して傾けながら回転させて不純物141を添加する。
【0116】
基板表面(第1の領域130aの上面)の法線方向を基準にして不純物が射出される射出方向との間でなす角度をθ(0°<θ<90°)とする。設定の加速電圧をVac、ドーズ量をDとすると、第1の領域130aの上面に接する酸化物半導体膜144に添加される不純物141の第1の領域130aの上面に垂直な実効加速電圧はVac×cosθ、ドーズ量はD×cosθとなり、トレンチ131の側面と接する酸化物半導体膜144に添加される不純物141のトレンチ131の側面に垂直な実効加速電圧はVac×sinθ、ドーズ量はD×sinθとなる。θが小さいとθが大きいときと比較してトレンチ131の側面の深くまで不純物を添加することができるが、sinθが小さくなるため、ドーズ量は少なくなる。
【0117】
例えば、θ=60°、加速電圧を40kV、ドーズ量を2×1015ions/cmで添加すると、第1の領域130aの上面に接する酸化物半導体膜144には、第1の領域130aの上面に垂直な実効加速電圧を20kV、ドーズ量を1×1015ions/cmで、トレンチ131の側面と接する酸化物半導体膜144には、トレンチ131の側面に垂直な実効加速電圧を35kV、ドーズ量を1.7×1015ions/cmで添加される。
【0118】
また、θの最大値は、次の式(3)を満たすθ(0°<θ<90°)である。Lはトレンチ131のチャネル長方向の長さを、tは酸化物半導体膜の膜厚をそれぞれ表す。
【0119】
【数3】

【0120】
例えば、トレンチ131のチャネル長方向の長さを350nm、酸化物半導体膜144の膜厚を20nmとすると、θの最大値は約84°となる。
【0121】
なお、上記の「イオンドーピング法」とは、原料ガスから生成されるイオン化したガスを質量分離せず、そのまま電界で加速して対象物に照射し、イオン化したガスの元素を対象物に含ませる方式を指す。また、上記の「イオンインプランテーション法」とは、「イオン注入法」とも呼ばれ、原料ガスをプラズマ化し、このプラズマに含まれるイオン種を引き出し、質量分離をして、所定の質量を有するイオン種を加速して、イオンビームとして、対象物に注入する方法である。
【0122】
なお、酸化物半導体膜144に不純物141を添加する処理は、複数回行っても良い。酸化物半導体膜144に不純物141を添加する処理を複数回行う場合、不純物141は複数回すべてにおいて同じであってもよいし、1回の処理毎に変えてもよい。
【0123】
なお、不純物141のドーズ量は、1×1014〜2×1016ions/cmとするのが好ましい。また、不純物としてリンを添加する場合、加速電圧を10〜50kVとするのが好ましい。また、酸化物半導体膜の膜厚がさらに薄い場合には、加速電圧やドーズ量を適宜調整すればよい。本実施の形態では、不純物141としてリンを、イオンインプランテーション法を用いて酸化物半導体膜144に加速電圧を40kV、ドーズ量を2×1015ions/cm、θ=60°の条件で添加する。
【0124】
ソース領域144aおよびドレイン領域144bの一部が形成される、上端コーナー部131aと接して設けられる酸化物半導体膜144は、上端コーナー部131aが急峻な角部であるために先述した酸化物半導体膜144の表面に、概略垂直なc軸を有する結晶の成長面の連続性が低い恐れがある。しかし、本実施の形態のように、上端コーナー部131aと接して設けられる酸化物半導体膜144をソース領域144aおよびドレイン領域144bとすることにより上端コーナー部131aと接して設けられる酸化物半導体膜144をチャネル形成領域として用いないのでチャネル形成領域144c全体として、酸化物半導体膜144の表面に、概略垂直なc軸を有する結晶の成長面が連続している。よって、トランジスタにより安定な電気的特性を付与することが可能となる。
【0125】
また、ソース領域144aおよびドレイン領域144bは、チャネル形成領域144cよりも不純物濃度が高くなっている。不純物濃度を高くすることによってコンタクト抵抗が低くなるため、後に形成されるソース電極層142aおよびドレイン電極層142bと酸化物半導体膜144の間で良好なオーミックコンタクトをとることができる。
【0126】
また、不純物を添加する領域を、上端コーナー部131aよりトレンチ131の底面方向側のトレンチ131の側面に接する酸化物半導体膜144にまで延伸し、ソース領域144aおよびドレイン領域144bを上端コーナー部131aよりもトレンチ131の底面方向側に延伸してもよい。また、ソース領域144aとドレイン領域144bのトレンチ131の底面方向側に延伸させる長さは異なっていてもよい。
【0127】
次いで、ソース領域144aおよびドレイン領域144b上に、導電層を形成し、該導電層を加工してソース領域144aおよびドレイン領域144bと電気的に接続するようにソース電極層142aおよびドレイン電極層142bを形成する。また、ソース領域144aとソース電極層142aとの間、ドレイン領域144bおよびドレイン電極層142bとの間には、電極や配線などを介していても良い。また、ソース領域144aおよびドレイン領域144bの下にソース電極層142aおよびドレイン電極層142bを形成する構成としてもよい。
【0128】
ソース電極層142aおよびドレイン電極層142bは、モリブデン、チタン、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、クロム、ネオジム、スカンジウム等の金属材料またはこれらを主成分とする合金材料を用いて形成することができる。
【0129】
次いで、酸化物半導体膜144、ソース電極層142aおよびドレイン電極層142b上にゲート絶縁層146を形成する(図3(B)参照)。
【0130】
ゲート絶縁層146の膜厚は、1nm以上100nm以下とし、スパッタリング法、MBE法、CVD法、パルスレーザー堆積法、ALD法等を適宜用いることができる。なお、酸化物半導体膜144と接することを考慮すれば、水素等の不純物が十分に除去されていることが好ましいため、ゲート絶縁層146は、水素等の不純物が含まれにくいスパッタリング法を用いて形成することが好ましい。
【0131】
ゲート絶縁層146の材料としては、酸化シリコン膜、酸化ガリウム膜、酸化アルミニウム膜、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化窒化アルミニウム膜、または窒化酸化シリコン膜等を用いて形成することができる。さらに、ゲート絶縁層146は、作製するトランジスタのサイズやゲート絶縁層146の段差被覆性を考慮して形成することが好ましい。
【0132】
本実施の形態では、ゲート絶縁層146として、SiO2+α(ただし、α>0)である酸化シリコン膜を用いる。この酸化シリコン膜をゲート絶縁層146として用いることで、In−Ga−Zn系の酸化物半導体に酸素を供給することができ、特性を良好にすることができる。
【0133】
また、ゲート絶縁層146の材料として酸化ハフニウム、酸化イットリウム、酸化ランタン、ハフニウムシリケート(HfSi(x>0、y>0))、ハフニウムアルミネート(HfAl(x>0、y>0))、窒素が添加されたハフニウムシリケート、窒素が添加されたハフニウムアルミネートなどのhigh−k材料を用いることでゲートリーク電流を低減できる。さらに、ゲート絶縁層146は、単層構造としても良いし、積層構造としても良い。
【0134】
ゲート絶縁層146の成膜後に、加酸素化のための熱処理を行ってもよい。熱処理の温度は、不活性ガス雰囲気下、または酸素雰囲気下で200℃以上450℃以下とするのが好ましく、250℃以上350℃以下とするのがより好ましい。当該熱処理を行うことによって、トランジスタの電気的特性のばらつきを軽減することができる。また、酸化物半導体膜144と接するゲート絶縁層146が酸素を含む場合、酸化物半導体膜144に酸素を供給し、該酸化物半導体膜144の酸素欠損を補填することができる。
【0135】
上記の脱水化または脱水素化のための熱処理および加酸素化のための熱処理を行うことにより、i型(真性)またはi型に限りなく近い酸化物半導体膜を形成することもできる。
【0136】
酸化物半導体膜144に接している絶縁層130においてもゲート絶縁層146と同様のことがいえる。
【0137】
なお、本実施の形態では、ゲート絶縁層146の形成後に加酸素化のため熱処理を行っているが、当該熱処理のタイミングはこれに限定されない。例えば、ソース電極層142aおよびドレイン電極層142bを形成した後に当該熱処理を行っても良い。また、加酸素化のための熱処理に脱水化または脱水素化のための熱処理を兼ねさせても良い。
【0138】
次いで、ゲート絶縁層146を介して酸化物半導体膜144上にゲート電極層148を形成する(図3(C)参照)。本実施の形態において、ゲート電極層148は、ソース領域144aおよびドレイン領域144bの一部と重畳し、トレンチ131内を充填するように設けられる。
【0139】
ゲート電極層148の材料は、モリブデン、チタン、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、クロム、ネオジム、スカンジウム等の金属材料またはこれらを主成分とする合金材料を用いて形成することができる。また、ゲート電極層148としてリン等の不純物元素を添加した多結晶シリコン膜に代表される半導体膜、ニッケルシリサイドなどのシリサイド膜を用いてもよい。ゲート電極層148は、単層構造としてもよいし、積層構造としてもよい。
【0140】
ゲート絶縁層146と接するゲート電極層148の一層として、窒素を含む金属酸化物、具体的には、窒素を含むIn−Ga−Zn−O膜、窒素を含むIn−Sn−O膜、窒素を含むIn−Ga−O膜、窒素を含むIn−Zn−O膜、窒素を含むSn−O膜、窒素を含むIn−O膜、金属窒化膜(InN、SnNなど)を用いるのが好ましい。これらの膜は5eV、好ましくは5.5eV以上の仕事関数を有し、ゲート電極層148として用いた場合、トランジスタの電気特性のしきい値電圧をプラスにすることができ、所謂ノーマリーオフのスイッチング素子を実現できるためである。
【0141】
また、ゲート電極層148を形成後、さらに不純物171を酸化物半導体膜144に対して添加してトランジスタ172を作製してもよい(図4参照)。添加する不純物171は、不純物141と同様のものを用いることができる。このようにすることにより、酸化物半導体膜144中の、ソース電極層142a、ドレイン電極層142bおよびゲート電極層148と重畳しない領域にソース領域144aおよびドレイン領域144bよりも不純物濃度が高い領域144d、領域144eを形成することができる。このように領域144dおよび領域144eの不純物濃度を高めるとトランジスタ172の寄生抵抗を下げることができ、トランジスタ172のオン電流や移動度を向上させることができる。
【0142】
以上によって、本実施の形態のトランジスタ162、トランジスタ172を作製することができる。本実施の形態で示すトランジスタ162、トランジスタ172は、酸化物半導体膜144がトレンチ131の底面および側面に接して設けられていることで、ソース電極層142aおよびドレイン電極層142b間の距離(トランジスタ162、トランジスタ172の見かけ上のチャネル長)よりも、トランジスタ162、トランジスタ172の実効的なチャネル長を長くすることが可能である。例えば、トランジスタ162、トランジスタ172において、トレンチ131の側面、底面に接して酸化物半導体膜144を形成することで、チャネル長はトレンチ131の底面の長さ(第2の領域130bのチャネル長方向の長さ)の2倍以上とすることができる。よって、トランジスタサイズの縮小を図りつつ、短チャネル効果を抑制することが可能である。
【0143】
また、本実施の形態で示すトランジスタ162、トランジスタ172において、ソース領域144aおよびドレイン領域144bの一部が形成される、上端コーナー部131aと接して設けられる酸化物半導体膜144は、上端コーナー部131aが急峻な角部であるために先述した酸化物半導体膜144の表面に概略垂直なc軸を有する結晶の成長面の連続性が低い恐れがある。しかし、上端コーナー部131aと接して設けられる酸化物半導体膜144をソース領域144aおよびドレイン領域144bとすることにより上端コーナー部131aと接して設けられる酸化物半導体膜144をチャネル形成領域として用いないのでチャネル形成領域144c全体として、酸化物半導体膜144の表面に概略垂直なc軸を有する結晶の成長面が連続している。よって、トランジスタにより安定な電気的特性を付与することが可能となる。
【0144】
また、ソース領域144aおよびドレイン領域144bは、チャネル形成領域144cよりも不純物濃度が高くなっている。不純物濃度を高くすることによってコンタクト抵抗が低くなるため、ソース電極層142aおよびドレイン電極層142bと酸化物半導体膜144の間で良好なオーミックコンタクトをとることができる。
【0145】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0146】
(実施の形態2)
本実施の形態では、上記実施の形態で示したトランジスタ162の他の作製方法を、図2および図5を用いて説明する。
【0147】
まず、半導体材料を含む基板(図示しない)上に、絶縁層130を形成する(図2(A)参照)。
【0148】
次いで、絶縁層130にトレンチ131を形成する(図2(B)参照)。
【0149】
次いで、トレンチ131の底面および側面、第1の領域130aの上面に接するように、酸化物半導体膜144を形成する(図5(A)参照)。
【0150】
絶縁層130、トレンチ131、酸化物半導体膜144の形成方法、材料などは先の実施の形態を参酌することができる。
【0151】
次いで、酸化物半導体膜144上に、導電層を形成し、該導電層を加工してソース電極層142aおよびドレイン電極層142bを形成する(図5(B)参照)。
【0152】
ソース電極層142aおよびドレイン電極層142bの形成方法、材料などは先の実施形態を参酌することができる。
【0153】
次いで、酸化物半導体膜144、ソース電極層142aおよびドレイン電極層142b上にゲート絶縁層146を形成する(図5(B)参照)。
【0154】
ゲート絶縁層146の形成方法、材料などは先の実施形態を参酌することができる。
【0155】
本実施の形態では、ゲート絶縁層146として、膜厚20nmのSiO2+α(ただし、α>0)である酸化シリコン膜を用いる。
【0156】
次いで、ゲート絶縁層146を介して酸化物半導体膜144上にゲート電極層148を形成する(図5(C)参照)。
【0157】
ゲート電極層148の形成方法、材料などは先の実施形態を参酌することができる。
【0158】
本実施の形態では、ゲート電極層148として、窒化タンタルを用いる。ゲート電極層148は、トレンチ131内を充填し、かつ、該充填されたトレンチ131、および上端コーナー部131aに接するゲート絶縁層146、上に100nm積層されている。
【0159】
次いで、少なくとも、第1の領域130aの上面とトレンチ131の側面が交わる上端コーナー部131aおよび第1の領域130a、の上面に接する酸化物半導体膜144に不純物151を添加する処理を行って、ソース領域144aおよびドレイン領域144bを形成する。なお、ゲート電極層148と重なる酸化物半導体膜144中には、ゲート電極層148を通過させて不純物イオンを添加する。同時に酸化物半導体膜144に不純物151が添加されなかった領域(CAAC−OS膜となっている、上端コーナー部131aを除くトレンチ131の側面および底面に接する酸化物半導体膜144)がチャネル形成領域144cとして機能する。
【0160】
添加する不純物151は、リン、ホウ素、窒素、ヒ素、アルゴン、アルミニウム、またはこれらを含む分子イオンなどがある。また、上端コーナー部131aおよび第1の領域130aの上面に接する酸化物半導体膜144に不純物151を添加する方法として、イオンドーピング法またはイオンインプランテーション法を用いることができる。
【0161】
なお、酸化物半導体膜144に不純物151を添加する処理は、複数回行っても良い。酸化物半導体膜144に不純物151を添加する処理を複数回行う場合、不純物151は複数回すべてにおいて同じであってもよいし、1回の処理毎に変えてもよい。
【0162】
なお、不純物151のドーズ量は、1×1014〜2×1016ions/cmとするのが好ましい。また、不純物としてリンを添加する場合、加速電圧を180〜200kVとするのが好ましく、不純物としてホウ素を添加する場合、加速電圧を60〜70kVとするのが好ましい。本実施の形態では、先の実施の形態に示す基板表面(第1の領域130aの上面)の法線方向を基準にして不純物が射出される射出方向との間でなす角度をθ=0°、不純物151としてリンを、イオンインプランテーション法を用いて酸化物半導体膜144に加速電圧を190kV、ドーズ量を5×1015ions/cmの条件で添加する。
【0163】
ソース領域144aおよびドレイン領域144bの一部が形成される、上端コーナー部131aと接して設けられる酸化物半導体膜144は、上端コーナー部131aが急峻な角部であるために先述した酸化物半導体膜144の表面に、概略垂直なc軸を有する結晶の成長面の連続性が低い恐れがある。しかし、本実施の形態のように、上端コーナー部131aと接して設けられる酸化物半導体膜144をソース領域144aおよびドレイン領域144bとすることにより上端コーナー部131aと接して設けられる酸化物半導体膜144をチャネル形成領域として用いないのでチャネル形成領域144c全体として、酸化物半導体膜144の表面に、概略垂直なc軸を有する結晶の成長面が連続している。よって、トランジスタにより安定な電気的特性を付与することが可能となる。
【0164】
また、ソース領域144aおよびドレイン領域144bは、チャネル形成領域144cよりも不純物濃度が高くなっている。不純物濃度を高くすることによってコンタクト抵抗が低くなるため、ソース電極層142aおよびドレイン電極層142bと酸化物半導体膜144の間で良好なオーミックコンタクトをとることができる。
【0165】
また、不純物を添加する領域を、上端コーナー部131aよりトレンチ131の底面方向側のトレンチ131の側面に接する酸化物半導体膜144にまで延伸し、ソース領域144aおよびドレイン領域144bを上端コーナー部131aよりもトレンチ131の底面方向側に延伸してもよい。また、ソース領域144aとドレイン領域144bのトレンチ131の底面方向側に延伸させる長さは異なっていてもよい。
【0166】
また、先の実施の形態の図4に示すように、酸化物半導体膜144中のソース電極層142a、ドレイン電極層142bおよびゲート電極層148と重畳しない領域にソース領域144aおよびドレイン領域144bよりも不純物濃度が高い領域144d、領域144eを形成するトランジスタ172を作製してもよい。このように領域144dおよび領域144eの不純物濃度を高めるとトランジスタ172の寄生抵抗を下げることができ、トランジスタ172のオン電流や移動度を向上させることができる。
【0167】
以上によって、本実施の形態のトランジスタ162、トランジスタ172を作製することができる。本実施の形態で示すトランジスタ162、トランジスタ172は、酸化物半導体膜144がトレンチ131の底面および側面に接して設けられていることで、ソース電極層142aおよびドレイン電極層142b間の距離(トランジスタ162、トランジスタ172の見かけ上のチャネル長)よりも、トランジスタ162、トランジスタ172の実効的なチャネル長を長くすることが可能である。例えば、トランジスタ162、トランジスタ172において、トレンチ131の側面、底面に接して酸化物半導体膜144を形成することで、チャネル長はトレンチ131の底面の長さ(第2の領域130bのチャネル長方向の長さ)の2倍以上とすることができる。よって、トランジスタサイズの縮小を図りつつ、短チャネル効果を抑制することが可能である。
【0168】
また、本実施の形態で示すトランジスタ162、トランジスタ172において、ソース領域144aおよびドレイン領域144bの一部が形成される、上端コーナー部131aと接して設けられる酸化物半導体膜144は、上端コーナー部131aが急峻な角部であるために先述した酸化物半導体膜144の表面に、概略垂直なc軸を有する結晶の成長面の連続性が低い恐れがある。しかし、上端コーナー部131aと接して設けられる酸化物半導体膜144をソース領域144aおよびドレイン領域144bとすることで、チャネル形成領域144c全体として、酸化物半導体膜144の表面に、概略垂直なc軸を有する結晶の成長面が連続している。よって、トランジスタにより安定な電気的特性を付与することが可能となる。
【0169】
また、ソース領域144aおよびドレイン領域144bは、チャネル形成領域144cよりも不純物濃度が高くなっている。不純物濃度を高くすることによってコンタクト抵抗が低くなるため、ソース電極層142aおよびドレイン電極層142bと酸化物半導体膜144の間で良好なオーミックコンタクトをとることができる。
【0170】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0171】
(実施の形態3)
本実施の形態では、上記実施の形態で示したトランジスタ162の他の作製方法を、図2および図6を用いて説明する。
【0172】
まず、半導体材料を含む基板(図示しない)上に、絶縁層130を形成する(図2(A)参照)。
【0173】
次いで、絶縁層130にトレンチ131を形成する(図2(B)参照)。
【0174】
次いで、トレンチ131の底面および側面、第1の領域130aの上面に接するように、酸化物半導体膜144を形成する(図6(A)参照)。
【0175】
上記の絶縁層130、トレンチ131、酸化物半導体膜144の形成方法、材料などは先の実施の形態を参酌することができる。
【0176】
次いで、酸化物半導体膜144上に接して上端コーナー部131aを除くトレンチ131の側面および底面を覆うレジストマスク140を形成し、少なくとも、第1の領域130aの上面とトレンチ131の側面が交わる上端コーナー部131aおよび第1の領域130a、の上面に接する酸化物半導体膜144に不純物161を添加する処理を行って、ソース領域144aおよびドレイン領域144bを形成する。同時に酸化物半導体膜144に不純物161が添加されなかった領域(CAAC−OS膜となっている、上端コーナー部131aを除くトレンチ131の側面および底面に接する酸化物半導体膜144)がチャネル形成領域144cとして機能する(図6(B)参照)。
【0177】
添加する不純物161は、リン、ホウ素、窒素、ヒ素、アルゴン、アルミニウム、またはこれらを含む分子イオンなどがある。また、上端コーナー部131aおよび第1の領域130aの上面に接する酸化物半導体膜144に不純物161を添加する方法として、プラズマ源改質イオンインプランテーション(PIII:Plasma Immersion Ion Implantation)法またはプラズマベースイオンインプランテーション(PBII:Plasma Based Ion Implantation)法を用いることができる。
【0178】
なお、上記の「PIII法」、「PBII法」とは、プラズマをベースにした三次元のイオン注入法であり、プラズマ中に試料を入れ、試料に電圧を印加すると、その電圧によりイオンが加速されて試料に注入される方法である。上記方法を用いることで、凹凸面がある試料であっても三次元方向からイオンが均等に注入される。
【0179】
なお、酸化物半導体膜144に不純物161を添加する処理は、複数回行っても良い。酸化物半導体膜144に不純物161を添加する処理を複数回行う場合、不純物161は複数回すべてにおいて同じであってもよいし、1回の処理毎に変えてもよい。
【0180】
なお、不純物161のドーズ量は、1×1014〜2×1016ions/cmとするのが好ましい。また、不純物としてリンを添加する場合、加速電圧を10〜50kVとするのが好ましい。また、酸化物半導体膜の膜厚がさらに薄い場合には、加速電圧やドーズ量を適宜調整すればよい。本実施の形態では、不純物161としてリンを、PIII法を用いて酸化物半導体膜144に加速電圧を20kV、ドーズ量を1×1015ions/cm、の条件で添加する。
【0181】
ソース領域144aおよびドレイン領域144bの一部が形成される、上端コーナー部131aと接して設けられる酸化物半導体膜144は、上端コーナー部131aが急峻な角部であるために先述した酸化物半導体膜144の表面に、概略垂直なc軸を有する結晶の成長面の連続性が低い恐れがある。しかし、本実施の形態のように、上端コーナー部131aと接して設けられる酸化物半導体膜144をソース領域144aおよびドレイン領域144bとすることにより上端コーナー部131aと接して設けられる酸化物半導体膜144をチャネル形成領域として用いないのでチャネル形成領域144c全体として、酸化物半導体膜144の表面に、概略垂直なc軸を有する結晶の成長面が連続している。よって、トランジスタにより安定な電気的特性を付与することが可能となる。
【0182】
また、ソース領域144aおよびドレイン領域144bは、チャネル形成領域144cよりも不純物濃度が高くなっている。不純物濃度を高くすることによってコンタクト抵抗が低くなるため、後に形成されるソース電極層142aおよびドレイン電極層142bと酸化物半導体膜144の間で良好なオーミックコンタクトをとることができる。
【0183】
また、不純物を添加する領域を、上端コーナー部131aよりトレンチ131の底面方向側のトレンチ131の側面に接する酸化物半導体膜144にまで延伸し、ソース領域144aおよびドレイン領域144bを上端コーナー部131aよりもトレンチ131の底面方向側に延伸してもよい。また、ソース領域144aとドレイン領域144bのトレンチ131の底面方向側に延伸させる長さは異なっていてもよい。
【0184】
次いで、レジストマスク140を除去し、ソース領域144aおよびドレイン領域144b上に、導電層を形成し、該導電層を加工してソース領域144aおよびドレイン領域144bと電気的に接続するようにソース電極層142aおよびドレイン電極層142bを形成する(図6(C)参照)。また、ソース領域144aとソース電極層142aとの間、ドレイン領域144bおよびドレイン電極層142bとの間には、電極や配線などを介していても良い。
【0185】
ソース電極層142aおよびドレイン電極層142bの形成方法、材料などは先の実施形態を参酌することができる。
【0186】
次いで、酸化物半導体膜144、ソース電極層142aおよびドレイン電極層142b上にゲート絶縁層146を形成する。
【0187】
ゲート絶縁層146の形成方法、材料などは先の実施形態を参酌することができる。
【0188】
次いで、ゲート絶縁層146を介して酸化物半導体膜144上にゲート電極層148を形成する(図6(D)参照)。本実施の形態において、ゲート電極層148は、ソース領域144aおよびドレイン領域144bの一部と重畳し、トレンチ131内を充填するように設けられる。
【0189】
ゲート電極層148の形成方法、材料などは先の実施形態を参酌することができる。
【0190】
また、先の実施の形態の図4に示すように、ゲート電極層148を形成後、さらに不純物171を酸化物半導体膜144に対して添加してトランジスタ172を作製してもよい。添加する不純物171は、不純物161と同様のものを用いることができる。このようにすることにより、酸化物半導体膜144中の、ソース電極層142a、ドレイン電極層142bおよびゲート電極層148と重畳しない領域にソース領域144aおよびドレイン領域144bよりも不純物濃度が高い領域144d、領域144eを形成することができる。このように領域144dおよび領域144eの不純物濃度を高めるとトランジスタ172の寄生抵抗を下げることができ、トランジスタ172のオン電流や移動度を向上させることができる。
【0191】
以上によって、本実施の形態のトランジスタ162、トランジスタ172を作製することができる。本実施の形態で示すトランジスタ162、トランジスタ172は、酸化物半導体膜144がトレンチ131の底面および側面に接して設けられていることで、ソース電極層142aおよびドレイン電極層142b間の距離(トランジスタ162、トランジスタ172の見かけ上のチャネル長)よりも、トランジスタ162、トランジスタ172の実効的なチャネル長を長くすることが可能である。例えば、トランジスタ162において、トレンチ131の側面、底面に接して酸化物半導体膜144を形成することで、チャネル長はトレンチ131の底面の長さ(第2の領域130bのチャネル長方向の長さ)の2倍以上とすることができる。よって、トランジスタサイズの縮小を図りつつ、短チャネル効果を抑制することが可能である。
【0192】
また、本実施の形態で示すトランジスタ162、トランジスタ172において、ソース領域144aおよびドレイン領域144bの一部が形成される、上端コーナー部131aと接して設けられる酸化物半導体膜144は、上端コーナー部131aが急峻な角部であるために先述した酸化物半導体膜144の表面に、概略垂直なc軸を有する結晶の成長面の連続性が低い恐れがある。しかし、上端コーナー部131aと接して設けられる酸化物半導体膜144をソース領域144aおよびドレイン領域144bとすることにより上端コーナー部131aと接して設けられる酸化物半導体膜144をチャネル形成領域として用いないのでチャネル形成領域144c全体として、酸化物半導体膜144の表面に、概略垂直なc軸を有する結晶の成長面が連続している。よって、トランジスタにより安定な電気的特性を付与することが可能となる。
【0193】
また、ソース領域144aおよびドレイン領域144bは、チャネル形成領域144cよりも不純物濃度が高くなっている。不純物濃度を高くすることによってコンタクト抵抗が低くなるため、ソース電極層142aおよびドレイン電極層142bと酸化物半導体膜144の間で良好なオーミックコンタクトをとることができる。
【0194】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0195】
(実施の形態4)
本実施の形態では、実施の形態1に示すトランジスタ162を使用し、電力が供給されない状況でも記憶内容の保持が可能で、かつ、書き込み回数にも制限が無い半導体装置の一例を、図7を用いて説明する。
【0196】
酸化物半導体を用いたトランジスタ162は、酸化物半導体以外の半導体材料(シリコンなど)を用いたトランジスタよりもオフ電流が小さいため、これを用いることにより長期にわたり、記憶内容を保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動作を必要としない、或いは、リフレッシュ動作の頻度が極めて少ない半導体記憶装置とすることが可能となるため、消費電力を十分に低減することができる。
【0197】
図7は、半導体装置の構成の一例である。図7(A)に、半導体装置の断面図を、図7(B)に半導体装置の平面図を、図7(C)に半導体装置の回路図をそれぞれ示す。ここで、図7(A)は、図7(B)のC1−C2およびD1−D2における断面に相当する。
【0198】
図7(A)および図7(B)に示す半導体装置は、下部に第1の半導体材料を用いたトランジスタ160を有し、上部に第2の半導体材料を用いたトランジスタ162を有するものである。トランジスタ162は、実施の形態1で示した構成と同一であるため、図7(A)、図7(B)において図1と同じ箇所は、同じ符号を用いて説明する。
【0199】
ここで、第1の半導体材料と第2の半導体材料は異なる禁制帯幅を持つ材料とすることが望ましい。例えば、第1の半導体材料を酸化物半導体以外の半導体材料(シリコンなど)とし、第2の半導体材料を酸化物半導体とすることができる。酸化物半導体以外の材料を用いたトランジスタは、高速動作が容易である。一方で、酸化物半導体を用いたトランジスタは、その特性により長時間の電荷保持を可能とする。
【0200】
なお、上記トランジスタは、いずれもnチャネル型トランジスタであるものとして説明するが、pチャネル型トランジスタを用いることができるのはいうまでもない。また、開示する発明の技術的な本質は、情報を保持するためにトレンチの上端コーナー部と接する酸化物半導体膜中にソース領域およびドレイン領域を有するトランジスタ162を用いる点にあるから、半導体装置に用いられる材料や半導体装置の構造など、半導体装置の具体的な構成をここで示すものに限定する必要はない。
【0201】
図7(A)におけるトランジスタ160は、半導体材料(例えば、シリコンなど)を含む基板100に設けられたチャネル形成領域116と、チャネル形成領域116を挟むように設けられた不純物領域120と、不純物領域120に接する金属化合物領域124と、チャネル形成領域116上に設けられた絶縁層108と、絶縁層108上に設けられたゲート電極層110と、を有する。
【0202】
図7(A)には図示しないが、トランジスタ160の金属化合物領域124の一部には、電極が接続されていてもよい。ここで、電極は、トランジスタ160のソース電極層やドレイン電極層として機能する。また、基板100上にはトランジスタ160を囲むように素子分離絶縁層106が設けられており、トランジスタ160を覆うように絶縁層130が設けられている。なお、高集積化を実現するためには、図7(A)に示すようにトランジスタ160がサイドウォール絶縁層を有しない構成とすることが望ましい。一方で、トランジスタ160の特性を重視する場合には、ゲート電極層110の側面にサイドウォール絶縁層を設け、不純物濃度が異なる領域を含む不純物領域120としてもよい。
【0203】
図7(A)に示すようにトランジスタ162は、トレンチの上端コーナー部と接する酸化物半導体膜中にソース領域およびドレイン領域を有するトランジスタである。ここで、酸化物半導体膜144は、脱水化処理や脱水素化処理によって高純度化されたものであることが望ましい。
【0204】
酸化物半導体膜144には、不純物を添加する処理が行われており、ソース領域144a、ドレイン領域144bおよびチャネル形成領域144cが設けられている。
【0205】
ゲート絶縁層146を介して、トランジスタ162のソース電極層142aと重畳する領域には、導電層153が設けられており、ソース電極層142aと、ゲート絶縁層146と、導電層153とによって、容量素子164が構成される。すなわち、トランジスタ162のソース電極層142aは、容量素子164の一方の電極として機能し、導電層153は、容量素子164の他方の電極として機能する。導電層153は、ゲート電極層148と同じ工程で作製することができる。なお、容量が不要の場合には、容量素子164を設けない構成とすることもできる。また、容量素子164は、別途、トランジスタ162の上方に設けてもよい。例えば、トレンチ型の容量素子やスタック型の容量素子を別途、トランジスタ162の上方、或いは、トランジスタ160の下方に形成し、3次元的に積み重ねることでより高集積化を図ってもよい。
【0206】
トランジスタ162および容量素子164の上には絶縁層152が設けられている。そして、絶縁層152上にはトランジスタ162と、他のトランジスタを接続するための配線156が設けられている。なお、図7(A)には図示しないが、配線156は、ゲート絶縁層146、および絶縁層152などに形成された開口に形成された電極を介してドレイン電極層142bと電気的に接続されていてもよい。ここで、電極は、少なくともトランジスタ162の酸化物半導体膜144の一部と重畳するように設けられることが好ましい。
【0207】
図7(A)および図7(B)において、トランジスタ160と、トランジスタ162とは、少なくとも一部が重畳するように設けられており、トランジスタ160のソース領域またはドレイン領域と酸化物半導体膜144の一部が重畳するように設けられているのが好ましい。また、トランジスタ162および容量素子164が、トランジスタ160の少なくとも一部と重畳するように設けられている。このような平面レイアウトを採用することにより、半導体装置の占有面積の低減を図ることができるため、高集積化を図ることができる。
【0208】
なお、金属化合物領域124とドレイン電極層142bの接続は、例えば、ドレイン電極層142bを直接、金属化合物領域124に接触させても良い。または、配線156を直接、ドレイン電極層142bに接触させても良い。
【0209】
次に、図7(A)および図7(B)に対応する回路構成の一例を図7(C)に示す。
【0210】
図7(C)において、第1の配線(1st Line)とトランジスタ160のソース電極層とは、電気的に接続され、第2の配線(2nd Line)とトランジスタ160のドレイン電極層とは、電気的に接続されている。また、第3の配線(3rd Line)とトランジスタ162のソース電極層またはドレイン電極層の一方とは、電気的に接続され、第4の配線(4th Line)と、トランジスタ162のゲート電極層とは、電気的に接続されている。そして、トランジスタ160のゲート電極層と、トランジスタ162のソース電極層またはドレイン電極層の他方は、容量素子164の電極の一方と電気的に接続され、第5の配線(5th Line)と、容量素子164の電極の他方は電気的に接続されている。
【0211】
図7(C)に示す半導体装置では、トランジスタ160のゲート電極層の電位が保持可能という特徴を生かすことで、次のように、情報の書き込み、保持、読み出しが可能である。
【0212】
情報の書き込みおよび保持について説明する。まず、第4の配線の電位を、トランジスタ162がオン状態となる電位にして、トランジスタ162をオン状態とする。これにより、第3の配線の電位が、トランジスタ160のゲート電極層、および容量素子164に与えられる。すなわち、トランジスタ160のゲート電極層には、所定の電荷が与えられる(書き込み)。ここでは、異なる二つの電位レベルを与える電荷(以下Lowレベル電荷、Highレベル電荷という)のいずれかが与えられるものとする。その後、第4の配線の電位を、トランジスタ162がオフ状態となる電位にして、トランジスタ162をオフ状態とすることにより、トランジスタ160のゲート電極層に与えられた電荷が保持される(保持)。
【0213】
トランジスタ162のオフ電流は極めて小さいため、トランジスタ160のゲート電極層の電荷は長時間にわたって保持される。
【0214】
次に情報の読み出しについて説明する。第1の配線に所定の電位(定電位)を与えた状態で、第5の配線に適切な電位(読み出し電位)を与えると、トランジスタ160のゲート電極層に保持された電荷量に応じて、第2の配線は異なる電位をとる。一般に、トランジスタ160をnチャネル型とすると、トランジスタ160のゲート電極層にHighレベル電荷が与えられている場合の見かけのしきい値Vth_Hは、トランジスタ160のゲート電極層にLowレベル電荷が与えられている場合の見かけのしきい値Vth_Lより低くなるためである。ここで、見かけのしきい値電圧とは、トランジスタ160を「オン状態」とするために必要な第5の配線の電位をいうものとする。したがって、第5の配線の電位をVth_HとVth_Lの間の電位Vとすることにより、トランジスタ160のゲート電極層に与えられた電荷を判別できる。例えば、書き込みにおいて、Highレベル電荷が与えられていた場合には、第5の配線の電位がV(>Vth_H)となれば、トランジスタ160は「オン状態」となる。Lowレベル電荷が与えられていた場合には、第5の配線の電位がV(<Vth_L)となっても、トランジスタ160は「オフ状態」のままである。このため、第2の配線の電位を見ることで、保持されている情報を読み出すことができる。
【0215】
なお、メモリセルをアレイ状に配置して用いる場合、所望のメモリセルの情報のみを読み出せることが必要になる。このように情報を読み出さない場合には、ゲート電極層の状態にかかわらずトランジスタ160が「オフ状態」となるような電位、つまり、Vth_Hより小さい電位を第5の配線に与えればよい。または、ゲート電極層の状態にかかわらずトランジスタ160が「オン状態」となるような電位、つまり、Vth_Lより大きい電位を第5の配線に与えればよい。
【0216】
本実施の形態に示す半導体装置では、チャネル形成領域に酸化物半導体を用いたオフ電流の極めて小さいトランジスタを適用することで、極めて長期にわたり記憶内容を保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動作が不要となるか、または、リフレッシュ動作の頻度を極めて低くすることが可能となるため、消費電力を十分に低減することができる。また、電力の供給がない場合(ただし、電位は固定されていることが望ましい)であっても、長期にわたって記憶内容を保持することが可能である。
【0217】
また、本実施の形態に示す半導体装置では、情報の書き込みに高い電圧を必要とせず、素子の劣化の問題もない。例えば、従来の不揮発性メモリのように、フローティングゲートへの電子の注入や、フローティングゲートからの電子の引き抜きを行う必要がないため、絶縁層の劣化といった問題が全く生じない。すなわち、開示する発明に係る半導体装置では、従来の不揮発性メモリで問題となっている書き換え可能回数に制限はなく、信頼性が飛躍的に向上する。さらに、トランジスタのオン状態、オフ状態によって、情報の書き込みが行われるため、高速な動作も容易に実現しうる。
【0218】
また、トランジスタ162にトレンチ構造を採用することで、トランジスタ162の平面面積を縮小できるため、高集積化が可能である。さらに、トランジスタ162は、酸化物半導体膜において、ソース領域およびドレイン領域の一部が形成される、上端コーナー部と接して設けられる酸化物半導体膜は、上端コーナー部が急峻な角部であるために先述した酸化物半導体膜の表面に、概略垂直なc軸を有する結晶の成長面の連続性が低い恐れがある。しかし、上端コーナー部と接して設けられる酸化物半導体膜をソース領域およびドレイン領域とすることにより上端コーナー部と接して設けられる酸化物半導体膜をチャネル形成領域として用いないのでチャネル形成領域全体として、酸化物半導体膜の表面に、概略垂直なc軸を有する結晶の成長面が連続している。よって、トランジスタにより安定な電気的特性を付与することが可能となる。
【0219】
また、ソース領域およびドレイン領域は、チャネル形成領域よりも不純物濃度が高くなっている。不純物濃度を高くすることによって抵抗が低くなるため、ソース電極層およびドレイン電極層と酸化物半導体膜の間で良好なオーミックコンタクトをとることができる。
【0220】
また、トランジスタの電気特性のばらつきを軽減し、電気特性の向上を実現することができ、短チャネル効果を抑制しつつ、微細化を達成した半導体装置を提供することができる。
【0221】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0222】
(実施の形態5)
本実施の形態においては、実施の形態1に示すトランジスタ162を使用し、電力が供給されない状況でも記憶内容の保持が可能で、かつ、書き込み回数にも制限が無い半導体装置について、実施の形態4に示した構成と異なる構成について、図8および図9を用いて説明を行う。
【0223】
図8(A)は、半導体装置の回路構成の一例を示し、図8(B)は半導体装置の一例を示す概念図である。まず、図8(A)に示す半導体装置について説明を行い、続けて図8(B)に示す半導体装置について、以下で説明を行う。
【0224】
図8(A)に示す半導体装置において、ビット線BLとトランジスタ162のソース電極層またはドレイン電極層とは電気的に接続され、ワード線WLとトランジスタ162のゲート電極層とは電気的に接続され、トランジスタ162のソース電極層またはドレイン電極層と容量素子254の第1の端子とは電気的に接続されている。
【0225】
酸化物半導体を用いたトランジスタ162は、オフ電流が極めて小さいという特徴を有している。このため、トランジスタ162をオフ状態とすることで、容量素子254の第1の端子の電位(あるいは、容量素子254に蓄積された電荷)を極めて長時間にわたって保持することが可能である。また、酸化物半導体を用いたトランジスタ162では、短チャネル効果が現れにくいというメリットもある。
【0226】
次に、図8(A)に示す半導体装置(メモリセル250)に、情報の書き込みおよび保持を行う場合について説明する。
【0227】
まず、ワード線WLの電位を、トランジスタ162がオン状態となる電位として、トランジスタ162をオン状態とする。これにより、ビット線BLの電位が、容量素子254の第1の端子に与えられる(書き込み)。その後、ワード線WLの電位を、トランジスタ162がオフ状態となる電位として、トランジスタ162をオフ状態とすることにより、容量素子254の第1の端子の電位が保持される(保持)。
【0228】
トランジスタ162のオフ電流は極めて小さいから、容量素子254の第1の端子の電位(あるいは容量素子に蓄積された電荷)は長時間にわたって保持することができる。
【0229】
次に、情報の読み出しについて説明する。トランジスタ162がオン状態となると、浮遊状態であるビット線BLと容量素子254とが導通し、ビット線BLと容量素子254の間で電荷が再分配される。その結果、ビット線BLの電位が変化する。ビット線BLの電位の変化量は、容量素子254の第1の端子の電位(あるいは容量素子254に蓄積された電荷)によって、異なる値をとる。
【0230】
例えば、容量素子254の第1の端子の電位をV、容量素子254の容量をC、ビット線BLが有する容量成分(以下、ビット線容量とも呼ぶ)をCB、電荷が再分配される前のビット線BLの電位をVB0とすると、電荷が再分配された後のビット線BLの電位は、(CB×VB0+C×V)/(CB+C)となる。従って、メモリセル250の状態として、容量素子254の第1の端子の電位がV1とV0(V1>V0)の2状態をとるとすると、電位V1を保持している場合のビット線BLの電位(=(CB×VB0+C×V1)/(CB+C))は、電位V0を保持している場合のビット線BLの電位(=(CB×VB0+C×V0)/(CB+C))よりも高くなることがわかる。
【0231】
そして、ビット線BLの電位を所定の電位と比較することで、情報を読み出すことができる。
【0232】
このように、図8(A)に示す半導体装置は、トランジスタ162のオフ電流が極めて小さいという特徴から、容量素子254に蓄積された電荷は長時間にわたって保持することができる。つまり、リフレッシュ動作が不要となるか、または、リフレッシュ動作の頻度を極めて低くすることが可能となるため、消費電力を十分に低減することができる。また、電力の供給がない場合であっても、長期にわたって記憶内容を保持することが可能である。
【0233】
次に、図8(B)に示す半導体装置について、説明を行う。
【0234】
図8(B)に示す半導体装置は、上部に記憶回路として図8(A)に示したメモリセル250を複数有するメモリセルアレイ251aおよびメモリセルアレイ251bを有し、下部に、メモリセルアレイ251(メモリセルアレイ251aおよびメモリセルアレイ251b)を動作させるために必要な周辺回路253を有する。なお、周辺回路253は、メモリセルアレイ251と電気的に接続されている。
【0235】
図8(B)に示した構成とすることにより、周辺回路253をメモリセルアレイ251(メモリセルアレイ251aおよびメモリセルアレイ251b)の直下に設けることができるため半導体装置の小型化を図ることができる。
【0236】
周辺回路253に設けられるトランジスタは、トランジスタ162とは異なる半導体材料を用いるのがより好ましい。例えば、シリコン、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、炭化シリコン、またはガリウムヒ素等を用いることができ、単結晶半導体を用いることが好ましい。他に、有機半導体材料などを用いてもよい。このような半導体材料を用いたトランジスタは、十分な高速動作が可能である。したがって、該トランジスタにより、高速動作が要求される各種回路(論理回路、駆動回路など)を好適に実現することが可能である。
【0237】
なお、図8(B)に示した半導体装置では、2つのメモリセルアレイ251(メモリセルアレイ251aおよびメモリセルアレイ251b)が積層された構成を例示したが、積層するメモリセルの数はこれに限定されない。3つ以上のメモリセルを積層する構成としても良い。
【0238】
次に、図8(A)に示したメモリセル250の具体的な構成について図9を用いて説明を行う。
【0239】
図9は、メモリセル250の構成の一例である。図9(A)に、メモリセル250の断面図を、図9(B)にメモリセル250の平面図をそれぞれ示す。ここで、図9(A)は、図9(B)のF1−F2およびG1−G2における断面に相当する。
【0240】
図9(A)および図9(B)に示すトランジスタ162は、実施の形態1で示した構成と同一であるため、図9(A)、図9(B)において図1と同じ箇所は、同じ符号を用いて説明する。
【0241】
図9(A)に示すようにトランジスタ162は、トレンチの上端コーナー部と接する酸化物半導体膜中にソース領域およびドレイン領域を有するトランジスタである。ここで、酸化物半導体膜144は、脱水化処理や脱水素化処理により高純度化されたものであることが望ましい。
【0242】
酸化物半導体膜144には、不純物を添加する処理が行われており、ソース領域144a、ドレイン領域144bおよびチャネル形成領域144cが設けられている。
【0243】
ゲート絶縁層146を介して、トランジスタ162のソース電極層142aと重畳する領域には、導電層153が設けられており、ソース電極層142aと、ゲート絶縁層146と、導電層153とによって、容量素子254が構成される。すなわち、トランジスタ162のソース電極層142aは、容量素子254の一方の電極として機能し、導電層153は、容量素子254の他方の電極として機能する。また、導電層153は、ゲート電極層148と同じ工程で作製することができる。
【0244】
トランジスタ162および容量素子254の上には絶縁層152が設けられている。そして、絶縁層152上にはメモリセル250と、隣接するメモリセル250を接続するための配線260が設けられている。配線260は、ゲート絶縁層146および絶縁層152などに形成された開口を介してトランジスタ162のドレイン電極層142bと電気的に接続されている。但し、開口に他の導電層を設け、該他の導電層を介して、配線260とドレイン電極層142bとを電気的に接続してもよい。なお、配線260は、図8(A)の回路図におけるビット線BLに相当する。
【0245】
図9(A)および図9(B)において、トランジスタ162のドレイン電極層142bは、隣接するメモリセルに含まれるトランジスタのソース電極層としても機能している。このような平面レイアウトを採用することにより、半導体装置の占有面積の低減を図ることができるため、高集積化を図ることができる。
【0246】
以上のように、上部に多層に形成された複数のメモリセルは、トレンチの上端コーナー部と接する酸化物半導体膜中にソース領域およびドレイン領域を有するトランジスタにより形成されている。上記トランジスタは、オフ電流が小さいため、これを用いることにより長期にわたり記憶内容を保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動作の頻度を極めて低くすることが可能となるため、消費電力を十分に低減することができる。
【0247】
このように、酸化物半導体以外の材料を用いたトランジスタ(換言すると、十分な高速動作が可能なトランジスタ)を用いた周辺回路と、酸化物半導体を用いたトランジスタ(より広義には、十分にオフ電流が小さいトランジスタ)を用いた記憶回路とを一体に備えることで、これまでにない特徴を有する半導体装置を実現することができる。また、周辺回路と記憶回路を積層構造とすることにより、半導体装置の集積化を図ることができる。
【0248】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0249】
(実施の形態6)
本実施の形態では、酸化物半導体膜にチャネルが形成されるトランジスタの電界効果移動度について図19を参照して説明する。
【0250】
酸化物半導体に限らず、実際に測定される絶縁ゲート型トランジスタの電界効果移動度は、さまざまな理由によって本来の移動度よりも低くなる。移動度を低下させる要因としては半導体内部の欠陥や半導体と絶縁膜との界面の欠陥があるが、Levinsonモデルを用いると、半導体内部に欠陥がないと仮定した場合の電界効果移動度を理論的に導き出せる。
【0251】
半導体本来の移動度をμ、測定される電界効果移動度をμとし、半導体中に何らかのポテンシャル障壁(粒界等)が存在すると仮定すると、次の式(4)で表現できる。
【0252】
【数4】

【0253】
ここで、Eはポテンシャル障壁の高さであり、kはボルツマン定数、Tは絶対温度である。また、ポテンシャル障壁が欠陥に由来すると仮定すると、Levinsonモデルでは、次の式(5)で表される。
【0254】
【数5】

【0255】
ここで、eは電気素量、Nはチャネル内の単位面積当たりの平均欠陥密度、εは半導体の誘電率、nは単位面積当たりのチャネルに含まれるキャリア数、Coxは単位面積当たりの容量、Vはゲート電圧、tはチャネルの厚さである。なお、厚さ30nm以下の半導体層であれば、チャネルの厚さは半導体層の厚さと同一として差し支えない。
【0256】
線形領域におけるドレイン電流Iは、次の式(6)で表される。
【0257】
【数6】

【0258】
ここで、Lはチャネル長、Wはチャネル幅であり、ここでは、L=W=10μmである。また、Vはドレイン電圧である。上式の両辺をVで割り、さらに両辺の対数を取ると、次の式(7)となる。
【0259】
【数7】

【0260】
この右辺はVの関数である。この式からわかるように、縦軸をln(I/V)、横軸を1/Vとする直線の傾きから欠陥密度Nが求められる。すなわち、トランジスタのI―V特性から、欠陥密度を評価できる。酸化物半導体としては、インジウム(In)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)の比率が、In:Sn:Zn=1:1:1のものでは欠陥密度Nは1×1012/cm程度である。
【0261】
このようにして求めた欠陥密度等をもとに上記式(4)および式(5)よりμ=120cm/Vsが導出される。欠陥のあるIn−Sn−Zn酸化物で測定される移動度は40cm/Vs程度である。しかし、半導体内部および半導体と絶縁層との界面の欠陥が無い酸化物半導体の移動度μは120cm/Vsとなると予想できる。
【0262】
ただし、半導体内部に欠陥がなくても、チャネルとゲート絶縁層との界面での散乱によってトランジスタの輸送特性は影響を受ける。すなわち、ゲート絶縁層界面からxだけ離れた場所における移動度μは、次の式(8)で表される。
【0263】
【数8】

【0264】
ここで、Dはゲート方向の電界、B、lは定数である。Bおよびlは、実際の測定結果より求めることができ、上記の測定結果からは、B=4.75×10cm/s、l=10nm(界面散乱が及ぶ深さ)である。Dが増加する(すなわち、ゲート電圧が高くなる)と上記式(8)の第2項が増加するため、移動度μは低下することがわかる。
【0265】
半導体内部の欠陥が無い理想的な酸化物半導体をチャネルに用いたトランジスタの移動度μを計算した結果を図19に示す。なお、計算にはシノプシス社製デバイスシミュレーションソフト、Sentaurus Deviceを使用し、酸化物半導体の、バンドギャップを2.8eV、電子親和力を4.7eV、比誘電率を15、厚さを15nmとした。さらに、ゲート電極層、ソース電極層、ドレイン電極層の仕事関数をそれぞれ、5.5eV、4.6eV、4.6eVとした。また、ゲート絶縁膜の厚さは100nm、比誘電率は4.1とした。チャネル長およびチャネル幅はともに10μm、ドレイン電圧Vは0.1Vである。
【0266】
図19で示されるように、ゲート電圧1V強で移動度100cm/Vs以上のピークをつけるが、ゲート電圧がさらに高くなると、界面散乱の影響が大きくなり、移動度が低下する。なお、界面散乱を低減するためには、半導体層表面を原子レベルで平坦にすること(Atomic Layer Flatness)が望ましい。
【0267】
このような移動度を有する酸化物半導体を用いて微細なトランジスタを作製した場合の特性を計算した結果を図20乃至図22に示す。なお、計算に用いたトランジスタの断面構造を図23に示す。図23に示すトランジスタは酸化物半導体膜にnの導電型を呈する半導体領域303aおよび半導体領域303cを有する。半導体領域303aおよび半導体領域303cの抵抗率は2×10−3Ωcmとする。
【0268】
図23(A)に示すトランジスタは、下地絶縁層301と、下地絶縁層301に埋め込まれるように形成された酸化アルミニウムよりなる埋め込み絶縁層302の上に形成される。トランジスタは半導体領域303a、半導体領域303cと、それらに挟まれ、チャネル形成領域となる真性の半導体領域303bと、ゲート電極層305を有する。ゲート電極層305の幅を33nmとする。
【0269】
ゲート電極層305と半導体領域303bの間には、ゲート絶縁層304を有し、また、ゲート電極層305の両側面には側壁絶縁層306aおよび側壁絶縁層306b、ゲート電極層305の上部には、ゲート電極層305と他の配線との短絡を防止するための絶縁層307を有する。側壁絶縁層の幅は5nmとする。また、半導体領域303aおよび半導体領域303cに接して、ソース電極層308aおよびドレイン電極層308bを有する。なお、このトランジスタにおけるチャネル幅を40nmとする。
【0270】
図23(B)に示すトランジスタは、下地絶縁層301と、酸化アルミニウムよりなる埋め込み絶縁層302の上に形成され、半導体領域303a、半導体領域303cと、それらに挟まれた真性の半導体領域303bと、幅33nmのゲート電極層305とゲート絶縁層304と側壁絶縁層306aおよび側壁絶縁層306bと絶縁層307とソース電極層308aおよびドレイン電極層308bを有する点で図23(A)に示すトランジスタと同じである。
【0271】
図23(A)に示すトランジスタと図23(B)に示すトランジスタの相違点は、側壁絶縁層306aおよび側壁絶縁層306bの下の半導体領域の導電型である。図23(A)に示すトランジスタでは、側壁絶縁層306aおよび側壁絶縁層306bの下の半導体領域はnの導電型を呈する半導体領域303aおよび半導体領域303cであるが、図23(B)に示すトランジスタでは、真性の半導体領域303bである。すなわち、半導体領域303a(半導体領域303c)とゲート電極層305がLoffだけ重ならない領域ができている。この領域をオフセット領域といい、その幅Loffをオフセット長という。図から明らかなように、オフセット長は、側壁絶縁層306a(側壁絶縁層306b)の幅と同じである。
【0272】
その他の計算に使用するパラメータは上述の通りである。計算にはシノプシス社製デバイスシミュレーションソフト、Sentaurus Deviceを使用した。図20は、図23(A)に示される構造のトランジスタのドレイン電流(I、実線)および移動度(μ、点線)のゲート電圧(V、ゲート電極層とソース電極層の電位差)依存性を示す。ドレイン電流Iは、ドレイン電圧(ドレイン電極層とソース電極層の電位差)を+1Vとし、移動度μはドレイン電圧を+0.1Vとして計算したものである。
【0273】
図20(A)はゲート絶縁層の厚さを15nmとしたものであり、図20(B)は10nmとしたものであり、図20(C)は5nmとしたものである。ゲート絶縁層が薄くなるほど、特にオフ状態でのドレイン電流I(オフ電流)が顕著に低下する。一方、移動度μのピーク値やオン状態でのドレイン電流I(オン電流)には目立った変化が無い。ゲート電圧1V前後で、ドレイン電流はメモリ素子等で必要とされる10μAを超えることが示された。
【0274】
図21は、図23(B)に示される構造のトランジスタで、オフセット長Loffを5nmとしたもののドレイン電流I(実線)および移動度μ(点線)のゲート電圧V依存性を示す。ドレイン電流Iは、ドレイン電圧を+1Vとし、移動度μはドレイン電圧を+0.1Vとして計算したものである。図21(A)はゲート絶縁層の厚さを15nmとしたものであり、図21(B)は10nmとしたものであり、図21(C)は5nmとしたものである。
【0275】
また、図22は、図23(B)に示される構造のトランジスタで、オフセット長Loffを15nmとしたもののドレイン電流I(実線)および移動度μ(点線)のゲート電圧依存性を示す。ドレイン電流Iは、ドレイン電圧を+1Vとし、移動度μはドレイン電圧を+0.1Vとして計算したものである。図22(A)はゲート絶縁膜の厚さを15nmとしたものであり、図22(B)は10nmとしたものであり、図22(C)は5nmとしたものである。
【0276】
いずれもゲート絶縁層が薄くなるほど、オフ電流が顕著に低下する一方、移動度μのピーク値やオン電流には目立った変化が無い。
【0277】
なお、移動度μのピークは、図20では80cm/Vs程度であるが、図21では60cm/Vs程度、図22では40cm/Vsと、オフセット長Loffが増加するほど低下する。また、オフ電流も同様な傾向がある。一方、オン電流にはオフセット長Loffの増加にともなって減少するが、オフ電流の低下に比べるとはるかに緩やかである。また、いずれもゲート電圧1V前後で、ドレイン電流はメモリ素子等で必要とされる10μAを超えることが示された。
【0278】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0279】
(実施の形態7)
本実施の形態では、先の実施の形態で示した半導体装置を携帯電話、スマートフォン、電子書籍などの携帯機器に応用した場合の例を図10乃至図13を用いて説明する。
【0280】
携帯電話、スマートフォン、電子書籍などの携帯機器においては、画像データの一時記憶などにSRAMまたはDRAMが使用されている。SRAMまたはDRAMは使用される理由としてはフラッシュメモリでは応答が遅く、画像処理では不向きであるためである。一方で、SRAMまたはDRAMを画像データの一時記憶に用いた場合以下の特徴がある。
【0281】
通常のSRAMは、図10(A)に示すように1つのメモリセルがトランジスタ801〜トランジスタ806の6個のトランジスタで構成されており、それをXデコーダー807、Yデコーダー808にて駆動している。トランジスタ803とトランジスタ805、トランジスタ804とトランジスタ806はインバータを構成し、高速駆動を可能としている。しかし1つのメモリセルが6トランジスタで構成されているため、セル面積が大きいという欠点がある。デザインルールの最小寸法をFとしたときにSRAMのメモリセル面積は通常100〜150Fである。このため、SRAMはビットあたりの単価が各種メモリの中で最も高い。
【0282】
それに対して、DRAMはメモリセルが図10(B)に示すようにトランジスタ811、保持容量812によって構成され、それをXデコーダー813、Yデコーダー814にて駆動している。1つのセルが1つのトランジスタと1つの容量の構成になっており、面積が小さい。DRAMのメモリセル面積は通常10F以下である。ただし、DRAMは常にリフレッシュが必要であり、書き換えを行わない場合でも電力を消費する。
【0283】
しかし、先の実施の形態で説明した半導体装置のメモリセル面積は、10F前後であり、かつ頻繁なリフレッシュは不要である。したがって、メモリセル面積が縮小され、かつ消費電力が低減することができる。
【0284】
図11に携帯機器のブロック図を示す。図11に示す携帯機器はRF回路901、アナログベースバンド回路902、デジタルベースバンド回路903、バッテリー904、電源回路905、アプリケーションプロセッサ906、フラッシュメモリ910、ディスプレイコントローラ911、メモリ回路912、ディスプレイ913、タッチセンサ919、音声回路917、キーボード918などより構成されている。ディスプレイ913は表示部914、ソースドライバ915、ゲートドライバ916によって構成されている。アプリケーションプロセッサ906はCPU907、DSP908、インターフェイス(IF)909を有している。一般にメモリ回路912はSRAMまたはDRAMで構成されており、この部分に先の実施の形態で説明した半導体装置を採用することによって、情報の書き込みおよび読み出しが高速で、長期間の記憶保持が可能で、かつ消費電力が十分に低減することができる。
【0285】
図12に、ディスプレイのメモリ回路950に先の実施の形態で説明した半導体装置を使用した例を示す。図12に示すメモリ回路950は、メモリ952、メモリ953、スイッチ954、スイッチ955およびメモリコントローラ951により構成されている。また、メモリ回路950は、信号線からの画像データ(入力画像データ)、メモリ952、およびメモリ953に記憶されたデータ(記憶画像データ)を読み出し、および制御を行うディスプレイコントローラ956と、ディスプレイコントローラ956からの信号により表示するディスプレイ957が接続されている。
【0286】
まず、ある画像データがアプリケーションプロセッサ(図示しない)によって、形成される(入力画像データA)。入力画像データAは、スイッチ954を介してメモリ952に記憶される。そしてメモリ952に記憶された画像データ(記憶画像データA)は、スイッチ955、およびディスプレイコントローラ956を介してディスプレイ957に送られ、表示される。
【0287】
入力画像データAに変更が無い場合、記憶画像データAは、通常30〜60Hz程度の周期でメモリ952からスイッチ955を介して、ディスプレイコントローラ956により読み出される。
【0288】
次に、例えばユーザーが画面を書き換える操作をしたとき(すなわち、入力画像データAに変更が有る場合)、アプリケーションプロセッサは新たな画像データ(入力画像データB)を形成する。入力画像データBはスイッチ954を介してメモリ953に記憶される。この間も定期的にメモリ952からスイッチ955を介して記憶画像データAは読み出されている。メモリ953に新たな画像データ(記憶画像データB)が記憶し終わると、ディスプレイ957の次のフレームより、記憶画像データBは読み出され、スイッチ955、およびディスプレイコントローラ956を介して、ディスプレイ957に記憶画像データBが送られ、表示がおこなわれる。この読み出しはさらに次に新たな画像データがメモリ952に記憶されるまで継続される。
【0289】
このようにメモリ952およびメモリ953は交互に画像データの書き込みと、画像データの読み出しを行うことによって、ディスプレイ957の表示をおこなう。なお、メモリ952およびメモリ953はそれぞれ別のメモリには限定されず、1つのメモリを分割して使用してもよい。先の実施の形態で説明した半導体装置をメモリ952およびメモリ953に採用することによって、情報の書き込みおよび読み出しが高速で、長期間の記憶保持が可能で、かつ消費電力が十分に低減することができる。
【0290】
図13に電子書籍のブロック図を示す。図13はバッテリー1001、電源回路1002、マイクロプロセッサ1003、フラッシュメモリ1004、音声回路1005、キーボード1006、メモリ回路1007、タッチパネル1008、ディスプレイ1009、ディスプレイコントローラ1010によって構成される。
【0291】
ここでは、図13のメモリ回路1007に先の実施の形態で説明した半導体装置を使用することができる。メモリ回路1007の役割は書籍の内容を一時的に保持する機能を持つ。機能の例としては、ユーザーがハイライト機能を使用する場合などがある。ユーザーが電子書籍を読んでいるときに、特定の箇所にマーキングをしたい場合がある。このマーキング機能をハイライト機能といい、表示の色を変える、アンダーラインを引く、文字を太くする、文字の書体を変えるなどによって、周囲との違いを示すことである。ユーザーが指定した箇所の情報を記憶し、保持する機能である。この情報を長期に保存する場合にはフラッシュメモリ1004にコピーしても良い。このような場合においても、先の実施の形態で説明した半導体装置を採用することによって、情報の書き込みおよび読み出しが高速で、長期間の記憶保持が可能で、かつ消費電力が十分に低減することができる。
【0292】
以上のように、本実施の形態に示す携帯機器には、先の実施の形態に係る半導体装置が搭載されている。このため、読み出しが高速で、長期間の記憶保持が可能で、かつ消費電力を低減した携帯機器が実現される。
【0293】
本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【実施例】
【0294】
本実施例では、実施の形態1に示すように絶縁層にトレンチを形成し、該トレンチに酸化物半導体膜を形成した試料を作製し、酸化物半導体膜の結晶状態について観察を行った。
【0295】
まず、試料として作製工程が異なる、実施例試料1、および実施例試料2の2種類を作製した。
【0296】
実施例試料1、および実施例試料2において、絶縁層としてシリコン基板上にスパッタリング法による酸化シリコン膜を膜厚500nm形成した。
【0297】
酸化シリコン膜の成膜条件は、ターゲットとして酸化シリコン(SiO)ターゲットを用い、シリコン基板とターゲットの間との距離を60mm、圧力0.4Pa、電源2kW、アルゴンおよび酸素(アルゴン流量25sccm:酸素流量25sccm)雰囲気下、基板温度100℃とした。
【0298】
酸化シリコン膜上にフォトリソグラフィ工程によりレジストマスクを形成し、レジストマスクを用いて酸化シリコン膜をエッチングし、トレンチを形成した。エッチング工程としては、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合型プラズマ)エッチング法により、エッチングガスとして三フッ化メタン(CHF)、ヘリウム(He)、およびメタン(CH)(CHF:He:CH=22.5sccm:127.5sccm:5sccm)を用い、電源電力475W、バイアス電力300W、圧力3.5Paで、96秒間行った。なお、エッチング工程の後に、酸素によるアッシング(電源電力200W、圧力67Pa(0.5Torr)、300秒間)を行った。トレンチの断面における側面(内壁)の長さ(図1(B)におけるトレンチ131の深さd)の2倍と底部の長さ(図1(B)におけるトレンチ131のチャネル長方向の長さL)の合計は約350nmとした。
【0299】
酸化シリコン膜上から剥離液を用いてレジストマスクを除去し、トレンチの底面、上端コーナー部、下端コーナー部、および側面に接して酸化シリコン膜上に酸化物半導体膜を形成した。酸化物半導体膜として、スパッタリング法によりIn−Ga−Zn−O膜を膜厚40nm形成した。
【0300】
実施例試料1では、基板を400℃に加熱しながら酸化物半導体膜の成膜を行った。なお、実施例試料1のIn−Ga−Zn−O膜の成膜条件は、組成比として、原子数比で、In:Ga:Zn=1:1:1の酸化物ターゲットを用い、シリコン基板とターゲットとの間の距離を60mm、圧力0.4Pa、直流(DC)電源0.5kW、アルゴンおよび酸素(アルゴン流量30sccm:酸素流量15sccm)雰囲気下、基板温度400℃とした。酸化物半導体膜の成膜に用いるアルゴンおよび酸素雰囲気下では、水、水素などが含まれないことが好ましい。例えば、アルゴンの純度を9N、露点−121℃、水0.1ppb、水素0.5ppb、酸素の純度を8N、露点−112℃、水1ppb、水素1ppbが好ましい。
【0301】
一方、実施例試料2では、基板を200℃に加熱しながら酸化物半導体膜の成膜を行い、成膜後窒素雰囲気下、600℃で1時間加熱処理を行った。なお、実施例試料2のIn−Ga−Zn−O膜の成膜条件は、組成比として、原子数比で、In:Ga:Z=1:1:1の酸化物ターゲットを用い、シリコン基板とターゲットとの間の距離を60mm、圧力0.4Pa、直流(DC)電源0.5kW、アルゴンおよび酸素(アルゴン流量30sccm:酸素流量15sccm)雰囲気下とした。
【0302】
以上の工程で得られた実施例試料1および実施例試料2において、断面を切り出し、高分解能透過電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ製「H9000−NAR」:TEM)で加速電圧を300kVとし、上端コーナー部、下端コーナー部の断面観察を行った。図14(A)に実施例試料1の上端コーナー部の倍率200万倍のTEM像、図14(B)に実施例試料1の上端コーナー部の倍率800万倍のTEM像、図14(C)に実施例試料1の下端コーナー部の倍率200万倍のTEM像、図14(D)に実施例試料1の下端コーナー部の倍率800万倍のTEM像、図15(A)に実施例試料2の上端コーナー部の倍率200万倍のTEM像、図15(B)に実施例試料2の上端コーナー部の倍率800万倍のTEM像、図15(C)に実施例試料2の下端コーナー部の倍率200万倍のTEM像、図15(D)に実施例試料2の下端コーナー部の倍率800万倍のTEM像、をそれぞれ示す。
【0303】
図14(C)、図15(C)に示すように、トレンチにおける下端コーナー部は曲面状であり、該曲率半径は20nm以上30nm以下であった。そして曲面状の下端コーナー部には、表面に概略垂直なc軸を有している結晶を含むIn−Ga−Zn−O膜(CAAC−OS膜)が確認できる。表面に概略垂直なc軸を有している結晶は高倍率の図14(D)、図15(D)でより顕著であり、In−Ga−Zn−O膜中に下端コーナー部の曲面に沿って幾層に重なる層状のIn−Ga−Zn−Oの結晶状態が確認できた。
【0304】
しかし、図14(A)、図15(A)に示すように、トレンチにおける上端コーナー部には急峻な角部があることが確認できる。また、高倍率の図14(B)、図15(B)に示すように、表面に概略垂直なc軸を有している結晶を含むIn−Ga−Zn−O膜(CAAC−OS膜)を下端コーナー部ほど確認することはできなかった。
【0305】
このことから、実施例試料1および実施例試料2において、トレンチの下端コーナー部に接して成膜された酸化物半導体膜は、表面に概略垂直なc軸を有している結晶を含む結晶性酸化物半導体膜(CAAC−OS膜)であり、そのCAAC−OS膜の成長面は曲面状の下端コーナー部において連続性を有することが確認できた。一方、トレンチの上端コーナー部に接して成膜された酸化物半導体膜は、トレンチの下端コーナー部に接して成膜された酸化物半導体膜に比べてCAAC−OS膜の成長面の連続性はあまり確認できなかった。
【0306】
下端コーナー部において、CAAC−OS膜がトレンチに設けられており、可視光や紫外光の照射によるトランジスタの電気的特性変化、および短チャネル効果がより抑制できる。
【0307】
また、上端コーナー部において、下端コーナー部に比べてCAAC−OS膜の成長面の連続性は確認できず、結晶の成長面の連続性が低い恐れがある。
【0308】
しかし、先の実施の形態に示したように上端コーナー部と接して設けられる酸化物半導体膜をソース領域およびドレイン領域とすることにより上端コーナー部と接して設けられる酸化物半導体膜をチャネル形成領域として用いないのでチャネル形成領域全体として、酸化物半導体膜の表面に概略垂直なc軸を有する結晶の成長面が連続している。よって、トランジスタにより安定な電気的特性を付与することが可能となる。
【0309】
また、ソース領域およびドレイン領域は、チャネル形成領域よりも不純物濃度が高くなっている。不純物濃度を高くすることによって抵抗が低くなるため、ソース電極層およびドレイン電極層と酸化物半導体膜の間で良好なオーミックコンタクトをとることができる。
【0310】
よって、トランジスタの電気特性のばらつきを軽減し、電気特性の向上を実現することができ、短チャネル効果を抑制しつつ、微細化を達成した半導体装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0311】
100 基板
106 素子分離絶縁層
108 絶縁層
110 ゲート電極層
116 チャネル形成領域
120 不純物領域
124 金属化合物領域
130 絶縁層
130a 第1の領域
130b 第2の領域
131 トレンチ
131a 上端コーナー部
140 レジストマスク
142a ソース電極層
142b ドレイン電極層
144 酸化物半導体膜
144a ソース領域
144b ドレイン領域
144c チャネル形成領域
146 ゲート絶縁層
148 ゲート電極層
152 絶縁層
153 導電層
156 配線
160 トランジスタ
162 トランジスタ
164 容量素子
172 トランジスタ
250 メモリセル
251 メモリセルアレイ
251a メモリセルアレイ
251b メモリセルアレイ
253 周辺回路
254 容量素子
260 配線
301 下地絶縁層
302 埋め込み絶縁層
303a 半導体領域
303b 半導体領域
303c 半導体領域
304 ゲート絶縁層
305 ゲート電極層
306a 側壁絶縁層
306b 側壁絶縁層
307 絶縁層
308a ソース電極層
308b ドレイン電極層
801 トランジスタ
802 トランジスタ
803 トランジスタ
804 トランジスタ
805 トランジスタ
806 トランジスタ
807 Xデコーダー
808 Yデコーダー
811 トランジスタ
812 保持容量
813 Xデコーダー
814 Yデコーダー
901 RF回路
902 アナログベースバンド回路
903 デジタルベースバンド回路
904 バッテリー
905 電源回路
906 アプリケーションプロセッサ
907 CPU
908 DSP
909 インターフェイス
910 フラッシュメモリ
911 ディスプレイコントローラ
912 メモリ回路
913 ディスプレイ
914 表示部
915 ソースドライバ
916 ゲートドライバ
917 音声回路
918 キーボード
919 タッチセンサ
950 メモリ回路
951 メモリコントローラ
952 メモリ
953 メモリ
954 スイッチ
955 スイッチ
956 ディスプレイコントローラ
957 ディスプレイ
1001 バッテリー
1002 電源回路
1003 マイクロプロセッサ
1004 フラッシュメモリ
1005 音声回路
1006 キーボード
1007 メモリ回路
1008 タッチパネル
1009 ディスプレイ
1010 ディスプレイコントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の膜厚を有する第1の領域と、第1の膜厚より薄い第2の膜厚を有する第2の領域を有し、かつ、側面と、前記第2の領域上に底面が形成されたトレンチ、が設けられた絶縁層と、
前記トレンチの底面および側面、前記第1の領域の上面に接して設けられた、ソース領域、ドレイン領域およびチャネル形成領域を含む酸化物半導体膜と、
前記ソース領域および前記ドレイン領域と電気的に接続して設けられたソース電極層およびドレイン電極層と、
前記酸化物半導体膜、前記ソース電極層および前記ドレイン電極層上に設けられたゲート絶縁層と、
前記ゲート絶縁層上に設けられ、前記トレンチ内を充填するゲート電極層と、を有し、
前記チャネル形成領域は、前記酸化物半導体膜の表面に、概略垂直なc軸を有する結晶を含み、前記トレンチの側面および底面と接して設けられ、
前記ソース領域および前記ドレイン領域は、前記チャネル形成領域よりも不純物濃度が高く、前記第1の領域の上面と前記トレンチの側面が交わる上端コーナー部および前記第1の領域の上面と接して設けられている半導体装置。
【請求項2】
前記ソース電極層、前記ドレイン電極層および前記ゲート電極層と重畳しない前記酸化物半導体膜中に前記ソース領域および前記ドレイン領域よりも不純物濃度が高い領域を有する請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記トレンチは、底面と側面が交わる下端コーナー部に曲面が形成されており、
前記下端コーナー部の曲面は、20nm以上60nm以下の曲率半径を有する、請求項1または請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記ソース領域および前記ドレイン領域の一部は、前記ゲート電極層と重畳している請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載の半導体装置。
【請求項5】
第1の膜厚を有する第1の領域と、第1の膜厚より薄い第2の膜厚を有する第2の領域を有し、かつ、側面と、前記第2の領域上に底面が形成されたトレンチ、が設けられた絶縁層を形成する工程と、
加熱しながら前記トレンチの底面および側面、前記第1の領域の上面に接して酸化物半導体膜を形成し、少なくとも前記トレンチの側面および底面に接する領域に、前記酸化物半導体膜の表面に、概略垂直なc軸を有する結晶を含む酸化物半導体膜を形成する工程と、
不純物を前記第1の領域の上面の法線方向に対して斜めから添加して、前記第1の領域の上面と前記トレンチの側面が交わる上端コーナー部および前記第1の領域の上面に接してソース領域およびドレイン領域を、前記トレンチの側面および底面に接してチャネル形成領域をそれぞれ形成する工程と、
前記ソース領域および前記ドレイン領域と電気的に接続するソース電極層およびドレイン電極層を形成する工程と、
前記酸化物半導体膜、前記ソース電極層および前記ドレイン電極層上にゲート絶縁層を形成する工程と、
前記ゲート絶縁層上に前記トレンチ内を充填するゲート電極層を形成する工程と、を有し、
前記ソース領域および前記ドレイン領域は、前記チャネル形成領域よりも不純物濃度が高い半導体装置の作製方法。
【請求項6】
第1の膜厚を有する第1の領域と、第1の膜厚より薄い第2の膜厚を有する第2の領域を有し、かつ、側面と、前記第2の領域上に底面が形成されたトレンチ、が設けられた絶縁層を形成する工程と、
前記トレンチの底面および側面、前記第1の領域の上面に接して非晶質である酸化物半導体膜を形成する工程と、
非晶質である前記酸化物半導体膜を加熱して、少なくとも前記トレンチの側面および底面に接する領域に、前記酸化物半導体膜の表面に、概略垂直なc軸を有する結晶を含む酸化物半導体膜を形成する工程と、
不純物を前記第1の領域の上面の法線方向に対して斜めから添加して、前記第1の領域の上面と前記トレンチの側面が交わる上端コーナー部および前記第1の領域の上面に接してソース領域およびドレイン領域を、前記トレンチの側面および底面に接してチャネル形成領域をそれぞれ形成する工程と、
前記ソース領域および前記ドレイン領域と電気的に接続するソース電極層およびドレイン電極層を形成する工程と、
前記酸化物半導体膜、前記ソース電極層および前記ドレイン電極層上にゲート絶縁層を形成する工程と、
前記ゲート絶縁層上に前記トレンチ内を充填するゲート電極層を形成する工程と、を有し、
前記ソース領域および前記ドレイン領域は、前記チャネル形成領域よりも不純物濃度が高い半導体装置の作製方法。
【請求項7】
第1の膜厚を有する第1の領域と、第1の膜厚より薄い第2の膜厚を有する第2の領域を有し、かつ、側面と、前記第2の領域上に底面が形成されたトレンチ、が設けられた絶縁層を形成する工程と、
加熱しながら前記トレンチの底面および側面、前記第1の領域の上面に接して酸化物半導体膜を形成し、少なくとも前記トレンチの側面および底面に接する領域は、前記酸化物半導体膜の表面に、概略垂直なc軸を有する結晶を含む酸化物半導体膜を形成する工程と、
ソース電極層およびドレイン電極層を形成する工程と、
前記酸化物半導体膜、前記ソース電極層および前記ドレイン電極層上にゲート絶縁層を形成する工程と、
前記ゲート絶縁層上に前記トレンチと重畳するように前記トレンチ内を充填するゲート電極層を形成する工程と、
前記ゲート電極層の形成後に、前記ゲート電極層を通過するように不純物を添加し、前記第1の領域の上面と前記トレンチの側面が交わる上端コーナー部および前記第1の領域の上面に接してソース領域およびドレイン領域を、前記トレンチの側面および底面に接してチャネル形成領域をそれぞれ形成する工程と、を有し、
前記ソース領域および前記ドレイン領域は、前記チャネル形成領域よりも不純物濃度が高い半導体装置の作製方法。
【請求項8】
第1の膜厚を有する第1の領域と、第1の膜厚より薄い第2の膜厚を有する第2の領域を有し、かつ、側面と、前記第2の領域上に底面が形成されたトレンチ、が設けられた絶縁層を形成する工程と、
前記トレンチの底面および側面、前記第1の領域の上面に接して非晶質である酸化物半導体膜を形成する工程と、
ソース電極層およびドレイン電極層を形成する工程と、
前記酸化物半導体膜、前記ソース電極層および前記ドレイン電極層上にゲート絶縁層を形成する工程と、
前記ゲート絶縁層上に前記トレンチと重畳するように前記トレンチ内を充填するゲート電極層を形成する工程と、
前記ゲート電極層の形成後に、前記ゲート電極層を通過するように不純物を添加し、前記第1の領域の上面と前記トレンチの側面が交わる上端コーナー部および前記第1の領域の上面に接してソース領域およびドレイン領域を、前記トレンチの側面および底面に接してチャネル形成領域をそれぞれ形成する工程と、
前記非晶質である酸化物半導体膜を形成する工程乃至前記ゲート電極層を形成する工程のいずれか一の工程後に、非晶質である前記酸化物半導体膜を加熱して、少なくとも前記トレンチの側面および底面に接する領域に、前記酸化物半導体膜の表面に、概略垂直なc軸を有する結晶を含む酸化物半導体膜を形成する工程と、を有し、
前記ソース領域および前記ドレイン領域は、前記チャネル形成領域よりも不純物濃度が高い半導体装置の作製方法。
【請求項9】
第1の膜厚を有する第1の領域と、第1の膜厚より薄い第2の膜厚を有する第2の領域を有し、かつ、側面と、前記第2の領域上に底面が形成されたトレンチ、が設けられた絶縁層を形成する工程と、
加熱しながら前記トレンチの底面および側面、前記第1の領域の上面に接して酸化物半導体膜を形成し、少なくとも前記トレンチの側面および底面に接する領域は、前記酸化物半導体膜の表面に、概略垂直なc軸を有する結晶を含む酸化物半導体膜を形成する工程と、
前記トレンチの側面および底面を覆うレジストマスクを形成する工程と、
前記酸化物半導体膜に対して不純物を添加する工程と、
前記前記第1の領域の上面と前記トレンチの側面が交わる上端コーナー部および前記第1の領域の上面に接してソース領域およびドレイン領域を、前記トレンチの側面および底面に接してチャネル形成領域をそれぞれ形成する工程と、
前記レジストマスクを除去する工程と、
前記ソース領域および前記ドレイン領域と電気的に接続するソース電極層およびドレイン電極層を形成する工程と、
前記酸化物半導体膜、前記ソース電極層および前記ドレイン電極層上にゲート絶縁層を形成する工程と、
前記ゲート絶縁層上に前記トレンチ内を充填するゲート電極層を形成する工程と、を有し、
前記ソース領域および前記ドレイン領域は、前記チャネル形成領域よりも不純物濃度が高い半導体装置の作製方法。
【請求項10】
第1の膜厚を有する第1の領域と、第1の膜厚より薄い第2の膜厚を有する第2の領域を有し、かつ、側面と、前記第2の領域上に底面が形成されたトレンチ、が設けられた絶縁層を形成する工程と、
前記トレンチの底面および側面、前記第1の領域の上面に接して非晶質である酸化物半導体膜を形成する工程と、
前記酸化物半導体膜上に接して前記トレンチの側面および底面を覆うレジストマスクを形成する工程と、
前記酸化物半導体膜に対して不純物を添加する工程と、
前記第1の領域の上面と前記トレンチの側面が交わる上端コーナー部および前記第1の領域の上面に接してソース領域およびドレイン領域を、前記トレンチの側面および底面に接してチャネル形成領域をそれぞれ形成する工程と、
前記レジストマスクを除去する工程と、
前記ソース領域および前記ドレイン領域と電気的に接続するソース電極層およびドレイン電極層を形成する工程と、
前記酸化物半導体膜、前記ソース電極層および前記ドレイン電極層上にゲート絶縁層を形成する工程と、
前記ゲート絶縁層上に前記トレンチ内を充填するゲート電極層を形成する工程と、
前記非晶質である酸化物半導体膜を形成する工程後または前記レジストマスクを形成する工程後に、非晶質である前記酸化物半導体膜を加熱して、少なくとも前記トレンチの側面および底面に接する領域は、前記酸化物半導体膜の表面に、概略垂直なc軸を有する結晶を含む酸化物半導体膜を形成する工程と、を有し、
前記ソース領域および前記ドレイン領域は、前記チャネル形成領域よりも不純物濃度が高い半導体装置の作製方法。
【請求項11】
前記不純物の添加方法がプラズマ源改質イオンインプランテーション法またはプラズマベースイオンインプランテーション法である請求項9または請求項10に記載の半導体装置の作製方法。
【請求項12】
前記ソース電極層、前記ドレイン電極層およびゲート電極層と重畳しない前記酸化物半導体膜中に前記ソース領域および前記ドレイン領域よりも不純物濃度が高い領域を形成する請求項5乃至請求項11のいずれか一に記載の半導体装置の作製方法。
【請求項13】
前記トレンチは、底面と側面が交わる下端コーナー部に曲面が形成されており、
前記下端コーナー部の曲面は、20nm以上60nm以下の曲率半径を有する、請求項5乃至請求項12のいずれか一に記載の半導体装置の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図16】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図14】
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【図15】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−253330(P2012−253330A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−105551(P2012−105551)
【出願日】平成24年5月4日(2012.5.4)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】