半導体装置及びその製造方法
【課題】強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜を用いたpMISFETを有する半導体装置及びその製造方法において、歩留まりが高く且つスイッチングスピードが高い半導体装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】ボックスマーク102内においてシリコン基板1を覆うようにシリコン酸化膜14を形成する。次に、基板上の半導体領域にシリサイド化反応によりニッケルシリサイド8を形成する。その後、強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9をpMISFET101及びボックスマーク102を覆うように形成する。その上に層間絶縁膜11を形成した後レジストをパターニングしてコンタクトホール13を形成する。この際、重ね合わせ精度が所定の規格を満たすまで、レジストを一旦除去し再度レジスト12bを形成する。
【解決手段】ボックスマーク102内においてシリコン基板1を覆うようにシリコン酸化膜14を形成する。次に、基板上の半導体領域にシリサイド化反応によりニッケルシリサイド8を形成する。その後、強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9をpMISFET101及びボックスマーク102を覆うように形成する。その上に層間絶縁膜11を形成した後レジストをパターニングしてコンタクトホール13を形成する。この際、重ね合わせ精度が所定の規格を満たすまで、レジストを一旦除去し再度レジスト12bを形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関し、特に、チャネル領域に圧縮歪みが加えられたpチャネル型MISFETと露光の重ね合わせ精度を検査するための検査パターンとを含む半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報通信機器の発達に伴いLSI(Large Scale Integrated Circuit:大規模集積回路)に要求される処理能力はますます高いものになっており、トランジスタについてはその高速化が図られている。従来、この高速化は主として構造の微細化によって進められてきた。しかし、リソグラフィ技術の限界によりゲート長を短くすることが、また物理的な要因からゲート絶縁膜の薄膜化が、夫々困難になってきている。
【0003】
このため、微細化以外の新しい高性能化技術が必要となっている。そのような技術として、応力を印加することによってチャネルを歪ませて移動度を高くする方法(ピエゾ抵抗効果)が知られている。これは、チャネルと平行な方向に引張(圧縮)応力を印加して歪ませた場合、電子の移動度は高く(低く)なり、正孔の移動度は低く(高く)なるというものである。
【0004】
この現象を利用してMISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor:金属絶縁物半導体電界効果トランジスタ)の高性能化を図る技術がいくつか提案されている。例えば、特許文献1には、nチャネル型MISFET(以下、nMISFETと記す)について、コンタクトホール開口の際のストッパー膜としてシリコン窒化膜を用い、このシリコン窒化膜に引張応力を印加することが提案されている。これは、シリコン窒化膜に印加された引張応力によりチャネルが歪み電子の移動度が高くなることにより、nMISFETの性能を向上させようとするものである。
【0005】
また、特許文献2には、nMISFETは引張応力を有するシリコン窒化膜で、pチャネル型MISFET(以下、pMISFETと記す)は圧縮応力を有するシリコン窒化膜で夫々覆うことが提案されている。これは、シリコン窒化膜によりnチャネルに引張応力を、pチャネルに圧縮応力を発生させると両キャリアの移動度が高くなるため、nMISFET及びpMISFETの両方の性能を向上させようとするものである。
【0006】
しかしながら、特許文献2に提案されたようにシリコン窒化膜をそのまま圧縮応力膜として使用した場合には、LSIの製造上、以下に示すような問題点がある。
【0007】
図21乃至26は、第1の従来のpMISFET101について、その製造方法を工程順に示す断面図である。図21乃至26において、(a)はpMISFET101を示す断面図であり、(b)は製造工程において露光の重ね合わせ精度の測定に用いる検査パターン(ボックスマーク102)を示す断面図である。
【0008】
先ず、図21に示すようにシリコン基板1の表面に素子分離領域2を形成する。その際、図21(b)に示すようにスクライブ領域にも素子分離領域2を形成する。この素子分離領域2はボックスマーク102のパターンを構成する。ボックスマーク102の大きさは、典型的には40μm×40μmの正方形であるが、検出の容易性を考慮し、少なくとも6μm×6μm以上とする。
【0009】
次に、ゲート絶縁膜及びゲート電極膜を成膜し、その後パターニングすることにより、ゲート絶縁膜3及びゲート電極4を形成する。次に、ゲート電極4をマスクとして、ボロンをイオン注入することにより、ソース・ドレイン拡張領域5を形成する。次に、この上にCVD(Chemical Vapor Deposition:化学的気相成長)法でシリコン酸化膜を成長させ、エッチバックにより、ゲート側壁6を形成する。その後、ゲート電極4とゲート側壁6とをマスクとして、ボロンをソース・ドレイン領域にイオン注入し、熱処理によりボロンを活性化させて、ソース・ドレイン7を形成する。
【0010】
次に、図22に示すようにニッケルをスパッタして熱処理を行い、ソース・ドレイン7の表面におけるシリサイド化反応によりニッケルシリサイド8を形成する。なお、余剰のニッケルはウェットエッチング等で除去する。このとき、後述する理由により、スクライブ領域の半導体領域も全面がシリサイド化される。このため、図22(b)に示すようにボックスマークの半導体領域の表面にもニッケルシリサイド8が形成される。なお、本明細書において、シリサイド化反応により金属シリサイドが形成され得る領域を、ソース・ドレイン7のような拡散層及びシリコン基板1等を含む総称として「半導体領域」という。
【0011】
次に、図23(a)に示すように強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9をpMISFET101上に成膜する。このとき、図23(b)に示すようにボックスマーク102上にも強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9が成膜される。この際に、後述する理由によりボックスマーク102に気泡10が発生する。
【0012】
次に、図24に示すように層間絶縁膜11を成膜し、図25に示すようにその上にレジスト12を塗布後、露光と現像工程を経て、レジスト12をパターニングする。その後、下地のパターンとレジスト12のパターンとの重ね合わせ精度を測定するため、ボックスマーク102を利用して検査装置で検査を行う。しかしながら、検査装置は、気泡10が存在することによりボックスマーク102を認識できないため、重ね合わせ精度を測定することができない。図25は重ね合わせ精度が所定の検査規格を満たしていない例であるが、この場合でも重ね合わせ精度を測定することができないため、そのまま次の工程に進められる。
【0013】
次に、図26に示すようにレジスト12をマスクとしてコンタクトホール13を開口する。上述したように、レジスト12のパターンが下地のパターンと合わないため、結果としてpMISFET101は正常に動作せず、歩留まりが低下してしまうこととなる。また、このような膜の気泡は、LSI製造工程の一つであるCMP(Chemical Mechanical Polishing:化学的機械的研磨)の際に、膜全体の剥がれを引き起こす可能性がある。膜全体が剥がれた場合、そのロットが廃棄となるだけでなく、剥がれた膜は塵となり他のロットの歩留まりを低下させる原因ともなる。
【0014】
図27は、上述の製造方法により作製した第1の従来の半導体装置の平面図である。但し、素子は表示していない。図27において、ボックスマーク102は、内側が金属シリサイド層で外側が素子分離領域2の場合(102c)及び内側が素子分離領域2で外側が金属シリサイド層の場合(102d)の両方が模式的に描かれている。
【0015】
製品領域22において、素子以外の領域には金属シリサイド層によるダミーパターン24が敷き詰められている。これは、素子以外の領域を素子と近い状態にすることにより、素子特性の位置依存性を小さくするためである。従って、サリサイド技術を用いる場合には、素子以外の半導体領域の表面にも金属シリサイドが形成される。これは、スクライブ領域23についても同様であり、半導体領域の表面に金属シリサイド層によるダミーパターン24が敷き詰められる。従って、ボックスマーク102における半導体領域の表面にも金属シリサイド層が形成される。
【0016】
この上に、強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9を成膜すると、ボックスマーク102の金属シリサイド領域に気泡10が発生する。これが、検査装置のボックスマーク102の認識を阻害し、重ね合わせ精度を測定できなくすることは、上述した通りである。
【0017】
図28(a)は、ボックスマークの光学顕微鏡による平面観察像であり、図28(b)は、図28(a)に示すY−Y線による断面図である。図28(a)は、コバルトシリサイド21上に強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9を成膜したものであるが、図27に模式的に示したのと同様な気泡10が観察された。
【0018】
図29(a)は、ニッケルシリサイド8の上に強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9を成膜した場合に発生した気泡10の断面SEM(Scanning Electron Microscope:走査型電子顕微鏡)観察像である。本図から、気泡10は、強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9とニッケルシリサイド8との界面における部分的な剥がれであることが分かる。pMISFETのチャネル領域の移動度を高くする目的でシリコン窒化膜に印加する圧縮応力を大きくすると、強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9は、図29(b)に示すように強い圧縮応力を受ける。そのため、強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9は剥がれることによって体積を増やし、応力を開放しようとすると考えられる。
【0019】
図30乃至35は、第2の従来のpMISFETについて、その製造方法を工程順に示す断面図である。図30乃至35において、(a)はpMISFETを示す断面図であり、(b)はボックスマークを示す断面図である。第2の従来構造は、素子分離領域とゲート電極に用いるポリシリコン膜とでボックスマークを形成している点において、第1の従来構造と異なっている。
【0020】
次に、図30及び31に示すようにソース・ドレイン拡張領域5、ゲート側壁6、ソース・ドレイン7及びニッケルシリサイド層8を第1の従来のpMISFETと同様に形成する。但し、ボックスマーク102において、ゲート側壁6はポリシリコン層16の周囲にも形成され、ニッケルシリサイド8はゲート電極4と同様にポリシリコン層16の表面にも形成される。
【0021】
次に、図32に示すように強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9を成膜する。このとき、ボックスマーク102上にも強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9が成膜される。この際に、第1の従来のpMISFETと同様にボックスマーク102上の強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9に気泡10が発生する。
【0022】
次に、層間絶縁膜11を成膜し、その上にレジストを塗布後、露光と現像工程を経て、レジスト12をパターニングする。その後、下地のパターンとレジスト12のパターンとの重ね合わせ精度を測定するが、気泡10が存在するため従来構造1と同様に重ね合わせ精度を測定することができない。従って、重ね合わせ精度が所定の規格を満たさない場合でもそのまま工程が進められることとなり、その結果、コンタクトホール13を開口した際に下地のパターンと合わなくなる。このため、MISFETの歩留まりが低下することとなる。
【0023】
【特許文献1】特開2002−198368号公報
【特許文献2】特開2003−86708号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
この歩留まりの低下という問題点を解消するために、ボックスマークの大きさを小さくすることが考えられる。図36は、ニッケルシリサイド8上に強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9を成膜後、シリコン窒化膜9のみエッチングにより除去した後の光学顕微鏡による平面観察像である。図36(a)に示すように大面積のニッケルシリサイド8上には気泡の跡57が観察されるのに対し、図36(b)に示すようにニッケルシリサイド8を素子分離領域2(シリコン酸化膜)で1.5μm×1.5μmの領域に区切った場合には気泡の跡が観察されなかった。このことは、気泡10の発生は、大面積の金属シリサイド上に強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9を形成した場合に起こり易い現象であることを示している。
【0025】
しかしながら、図36(b)の例のような小さいボックスマークではパターンの検出が困難であるため、結果的に歩留まりが低下してしまうという問題点がある。また、これを回避するためには、例えばpMISFETの製造にサリサイド技術を用いないということも考えられる。しかしながら、その場合には拡散層のソース・ドレイン7及びポリシリコンのゲート電極4の抵抗が増大するため、スイッチングスピードが低下してしまうという問題点がある。
【0026】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜を用いたpMISFETを有する半導体装置及びその製造方法において、歩留まりが高く且つスイッチングスピードが高い半導体装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明に係る半導体装置は、シリコン基板と、このシリコン基板上に形成されたMISFETと、半導体領域を含み前記シリコン基板上に少なくとも1つ形成された検査パターンと、前記MISFET及び前記検査パターンを覆うように形成され前記MISFETのソース・ドレイン間のチャネル領域に圧縮歪みを加える圧縮応力膜と、を有し、前記MISFETは、少なくとも前記ソース・ドレインの一部に金属シリサイド層が形成され、前記検査パターンは、前記応力膜と接する前記半導体領域に前記金属シリサイド層が形成されていないことを特徴とする。
【0028】
本発明においては、検査パターンを覆うように形成される圧縮応力膜は金属シリサイド層の上には形成されていない。これにより、圧縮応力膜と金属シリサイド層との密着性が低いことによる気泡の発生を防止することができる。このため、例えば検査パターンが重ね合わせ検査に使用される場合に、重ね合わせ検査を確実に行うことができ、半導体装置の歩留まりを向上させることができる。また、MISFETのソース・ドレイン等に金属シリサイド層が形成されていることにより、スイッチングスピードが高い半導体装置を得ることができる。更に、圧縮応力膜により強い圧縮応力を印加することができるため、pMISFETにおいて正孔の移動度をより高くすることができる。これにより、半導体装置の性能をより向上させることができる。
【0029】
この場合に、前記検査パターンは、素子分離領域を含んでいてもよい。
【0030】
また、前記半導体領域は、拡散層領域を含んでいてもよい。
【0031】
更に、前記半導体領域は、ポリシリコン層を含んでいてもよい。
【0032】
更にまた、前記検査パターンにおいて、前記半導体領域と前記圧縮応力膜との間に絶縁膜が形成されていてもよい。これにより、シリコン基板等の半導体領域の表面に金属シリサイド層が形成されないようにすることができる。
【0033】
更にまた、前記絶縁膜は、シリコン酸化膜であるように構成することができる。
【0034】
更にまた、前記絶縁膜は、シリコン窒化膜であるように構成することができる。
【0035】
更にまた、前記圧縮応力膜は、シリコン窒化膜であるであるように構成することができる。
【0036】
更にまた、前記金属シリサイドは、コバルトシリサイドであるように構成することができる。
【0037】
更にまた、前記金属シリサイドは、ニッケルシリサイドであるように構成することができる。
【0038】
更にまた、前記金属シリサイドは、ニッケルプラチナシリサイドであるように構成することができる。
【0039】
更にまた、前記金属シリサイドは、ニッケルプラチナシリサイドであるように構成することができる。
【0040】
更にまた、前記金属シリサイドは、イットリウムシリサイドであるように構成することができる。
【0041】
更にまた、前記金属シリサイドは、エルビウムシリサイドであるように構成することができる。
【0042】
更にまた、前記MISFETは、pチャネル型MISFETであるように構成することができる。
【0043】
更にまた、前記検査パターンは、露光の重ね合わせ精度を検査するためのボックスマークであるように構成することができる。
【0044】
本発明に係る半導体装置の製造方法は、シリコン基板上にMISFETを形成する工程と、前記シリコン基板上に半導体領域を含む検査パターンを少なくとも1つ形成する工程と、前記半導体領域を覆うように絶縁膜を形成する工程と、少なくとも前記MISFETのソース・ドレインを含む前記シリコン基板上の半導体領域の表面に金属シリサイド層を形成する工程と、前記MISFET及び前記検査パターンを覆うように圧縮応力膜を形成する工程と、を有することを特徴とする。
【0045】
本発明においては、検査パターンの半導体領域を絶縁膜で覆うことにより、この半導体領域に金属シリサイド層が形成されないようにすることができる。これにより、圧縮応力膜に印加される圧縮応力が大きい場合でも、圧縮応力膜を成膜した後に気泡が発生することがない。このため、例えば検査パターンが重ね合わせ検査に使用される場合に、重ね合わせ検査を確実に行うことができ、半導体装置の歩留まりを向上させることができる。
【0046】
この場合に、前記絶縁膜を、前記金属シリサイド層を形成する工程の後で除去することとしてもよい。
【0047】
また、前記検査パターンを形成する工程は、素子分離領域を形成する工程を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0048】
本発明によれば、強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜を用いたpMISFETを有する半導体装置において、歩留まりが高くすることができ、且つスイッチングスピードが高い半導体装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
以下、本発明の実施形態について添付の図面を参照して具体的に説明する。先ず、本発明の第1の実施形態について説明する。図1(a)及び(b)は、本第1実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。図1(a)は、pMISFETの断面図であり、図1(b)は、スクライブ領域に設けられ重ね合わせ検査に使用されるボックスマークの断面図である。
【0050】
図1(a)に示すように、シリコン基板1の表面には、pMISFET101の領域を囲むように素子分離領域2が設けられている。素子分離領域2はシリコン基板1に形成された溝を埋めるように成膜されている。素子分離領域2としては、例えばシリコン酸化膜が用いられる。この素子分離領域2で他の素子から分離された領域内に、ソース・ドレイン7が夫々素子分離領域2に接するように互いに離隔して形成されている。ソース・ドレイン7は、シリコン基板1に例えばボロンを拡散させた拡散層である。ソース及びドレインの間にはソース及びドレインに接し且つ互いに離隔してソース・ドレイン拡張領域5が形成されている。ゲート絶縁膜3は、2つのソース・ドレイン拡張領域5の先端及びその間のシリコン基板1表面を覆うように形成されている。その上にはゲート電極4が形成されている。ゲート電極4としては、例えばポリシリコンが用いられる。
【0051】
ゲート電極4及びソース・ドレイン7の上部には、シリサイド化反応によりニッケルシリサイド8が形成されている。その上には強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9がシリコン基板1の表面全体を覆うように形成されている。
【0052】
図1(b)において、図1(a)と同様にシリコン基板1の表面に素子分離領域2が設けられている。但し、図2(b)においては、素子分離領域2はボックスマーク102のパターンを形成する目的で設けられている。この素子分離領域2の一部を含むボックスマーク102の領域内にはシリコン基板1の表面上にシリコン酸化膜14が成膜されている。シリコン基板1の表面には図1(a)と同様にシリサイド化反応によりニッケルシリサイド8が形成されている。これに対して、素子分離領域2及びシリコン酸化膜14の表面ではシリサイド化反応は起きないため、ボックスマーク102上にはニッケルシリサイド8は形成されていない。強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9は、シリコン酸化膜14の上からボックスマーク102全体を覆うように形成されている。
【0053】
図1(a)及び(b)において、強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9の上には層間絶縁膜11が形成されている。また、ソース・ドレイン7に接続する電極を形成するためのコンタクトホール13が層間絶縁膜11及び強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9を貫通するように設けられている。なお、図1における半導体装置は、コンタクトホール13を形成しレジストを除去する前の状態を表している。また、本実施形態における再露光後のレジスト12bは、形成したレジストのパターンと下地のパターンの重ね合わせ精度が検査により規格を満たさなかったため、このレジストを除去した後再度形成したレジストである。
【0054】
本実施形態においては、シリコン酸化膜14を成膜することによりボックスマーク102上にニッケルシリサイド8が形成されないため、強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9を形成した後の気泡の発生を効果的に防止することができる。以下、その理由について説明する。
【0055】
図2(a)及び(b)は、強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9が形成される下地の種類による気泡の発生状況を説明するための光学顕微鏡による平面観察像である。図2(a)は、ニッケルシリサイド下地50上に強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9を形成した例である。なお、平面観察像の大きさは、典型的なボックスマーク102の大きさである40μm×40μmである。本図に示すように、強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9に複数の気泡10が観察された。これは、シリコン窒化膜9に印加された圧縮応力が大きく、また、シリコン窒化膜9とニッケルシリサイド下地50との密着性が低いため、シリコン窒化膜9とニッケルシリサイド下地50との界面において応力を解放しようとして部分的な剥がれが生じたためと考えられる。なお、図示していないが引張応力を有するシリコン窒化膜及び弱い圧縮応力を有するシリコン窒化膜を成膜した場合には、気泡が発生する現象は確認されなかった。
【0056】
図2(b)は、各種の下地の上に強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9を形成した場合の気泡10の発生状況を比較したものである。本図に示すように、ヒ素ドープシリコン上に形成したコバルトシリサイド下地54の上に強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9を成膜した場合には、細かい多数の気泡10が観察された。また、ボロンドープシリコン上に形成したコバルトシリサイド下地53又はノンドープシリコン上に形成したコバルトシリサイド下地52である場合にも、数は少なくなるものの気泡10が観察された。このことから、金属シリサイドの下地上に強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9を形成する場合には、気泡10が発生し易いことが分かる。これに対して、下地がシリコン酸化膜下地51である場合には、強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9を成膜しても気泡10の発生は観察されなかった。
【0057】
図3は、コバルトシリサイド下地55及びシリコン酸化膜下地51上に強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9を成膜した後の平面観察像である。図3に示すようにコバルトシリサイド下地55の領域には多数の気泡10が発生しているのが観察された。但し、シリコン酸化膜下地51の領域との境界から約3μm以内の領域ではコバルトシリサイド下地55の領域であっても気泡10は見られなかった。これは、境界から3μmまではシリコン酸化膜下地51による密着の影響が及ぶためと考えられる。上記の観察結果から、周囲をシリコン酸化膜下地51で囲まれたコバルトシリサイド下地55の場合、両側からの寄与を考慮しても、領域の大きさがおよそ6μm×6μm以上になると気泡10が発生し易くなると考えられる。一方、気泡が生じないようにボックスマークの大きさを小さくするとパターンの検出が困難であるため、レジスト形成後の重ね合わせ精度の検査ができない可能性がある。
【0058】
上述のコバルトシリサイド下地55に対して、シリコン酸化膜下地51の領域では気泡10は観察されなかった。これは、シリコン酸化膜下地51と強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9との密着性が高いためと考えられる。従って、図1(b)においてシリコン酸化膜14の上に強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9を成膜すれば気泡10が発生しないため、ボックスマーク102としての機能を満たすことができる。また、シリコン酸化膜14を成膜した後にシリサイド化反応によりニッケルシリサイド8を形成する工程を行っても、シリコン酸化膜14上にはニッケルシリサイド8は形成されない。以上の理由により、本実施形態においては、ボックスマーク102を構成するシリコン基板1を覆うようにシリコン酸化膜14を成膜することとした。
【0059】
図4に本実施形態の変形例を示す。図4(a)は、一例として素子分離領域2に囲まれた領域内に外側からコバルトシリサイド21、シリコン酸化膜14の順で下地を形成し、その上から全面に強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9を成膜した場合の平面観察像である。また、図4(b)は、図4(a)に示すX−X線による断面図である。なお、平面観察像の大きさは、典型的なボックスマーク102の大きさである40μm×40μmである。図4(a)に示すように、素子分離領域2で囲まれた領域内において気泡10は発生していない。このため、図4(b)に示すようにボックスマーク102において、シリコン酸化膜14又は素子分離領域2との境界からの距離が小さくなるように金属シリサイドを形成することもできる。
【0060】
以下に、図1に示す本実施形態の半導体装置の製造方法について説明する。図5乃至11及び図1は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法をその工程順に示す断面図である。なお、図5乃至11及び図1において、(a)はpMISFET101の断面図であり、(b)はボックスマーク102の断面図である。
【0061】
先ず、図5(a)に示すようにシリコン基板1の表面に素子分離領域2を形成する。この際、図5(b)においてスクライブ領域にボックスマークのパターンを構成するため、同様に素子分離領域2を形成する。ボックスマークの大きさは、典型的には40μm×40μmの正方形であるが、ボックスマーク102の検出の容易性を考慮し、少なくとも6μm×6μm以上とする。
【0062】
次に、ゲート絶縁膜及びゲート電極膜を成膜し、その後パターニングすることにより、ゲート絶縁膜3及びゲート電極4を形成する。ゲート電極4としてはポリシリコンを使用する。次に、ゲート電極4をマスクとして、ボロンをイオン注入することにより、ソース・ドレイン拡張領域5を形成する。次に、この上にCVD法でシリコン酸化膜を成長させ、エッチバックにより、ゲート側壁6を形成する。その後、ゲート電極4及びゲート側壁6をマスクとして、ボロンをソース・ドレイン領域にイオン注入し、熱処理によりボロンを活性化させて、ソース・ドレイン7を形成する。
【0063】
次に、図6に示すように全面にシリコン酸化膜を成膜後、フォトリソグラフィ法及びエッチング法により、図6(b)に示すボックスマーク102以外の部分についてはシリコン酸化膜を除去する。
【0064】
次に、図7に示すようにニッケルをスパッタして熱処理を行い、ソース・ドレイン7の表面におけるシリサイド化反応によりニッケルシリサイド8を形成する。余剰のニッケルはウェットエッチング等で除去する。このとき、ボックスマーク102の領域ではシリコン基板1を覆うようにシリコン酸化膜14が存在しているため、ニッケルシリサイド8は形成されない。なお、ニッケルシリサイド膜8を形成した後、シリコン酸化膜14は除去してもよく、又は残してもよい。
【0065】
次に、図8に示すように強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9をpMISFET101を覆うように成膜する。このとき、ボックスマーク102の上にも強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9が成膜される。この際、ボックスマーク102上にシリコン酸化膜14が形成されていることにより、上述したように強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9とシリコン酸化膜14の密着度は高いため、気泡は発生しない。また、前工程においてシリコン酸化膜14を取り除いた場合でも、シリコン基板1と強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9との密着性は高いため、同様に気泡は発生しない。
【0066】
次に、図9に示すように層間絶縁膜11を成膜する。次に、図10に示すように層間絶縁膜11の上にレジスト12aを塗布後、露光と現像工程を経て、レジスト12aをパターニングする。その後、下地のパターンとレジスト12aのパターンとの重ね合わせ精度を測定するため、ボックスマーク102を利用して検査装置で検査を行う。このとき、ボックスマーク102上に気泡が生じていないため、検査装置はボックスマーク102を認識することができ、重ね合わせ精度を測定できる。測定の結果、重ね合わせ精度が所定の規格を満たしていない場合には、一旦レジスト12aを除去し、再度レジストを塗布して露光・現像を行う。図11は再露光後のレジスト12bが形成された状態である。その後、再びボックスマーク102を利用して検査装置で重ね合わせ精度を測定する。重ね合わせ精度が所定の規格を満たすまで、レジストの除去・再形成を繰り返す。
【0067】
重ね合わせ精度が所定の規格を満たしたら、次に、レジスト12bをマスクとしてコンタクトホール13を開口することにより図1に示す半導体装置が得られる。この際、前工程において下地のパターンとコンタクトホール13との位置が合っているため、従来の半導体装置に比べて歩留まり向上させることができる。また、図1(a)に示すようにニッケルシリサイド8をソース・ドレイン7及びゲート電極4の上部に形成しているため、スイッチングスピードが高い半導体装置が得られる。
【0068】
図12は、本発明の第1の実施の形態により、強い圧縮応力を有するストレス窒化膜9を用いてpMISFETを作製した場合の平面模式図である。但し、素子自体は表示していない。図12において、ボックスマーク102は、内側がシリコン層25で外側が素子分離領域2の場合(102a)及び内側が素子分離領域2で外側がシリコン層25の場合(102b)の両方が模式的に描かれている。
【0069】
上述した図27と同様の理由で、図12において素子以外の領域には金属シリサイド層によるダミーパターン24が敷き詰められ、素子以外の半導体領域の表面にも、ボックスマーク102等を除く領域にはダミーパターン24が設けられている。但し、ボックスマーク102の半導体領域(シリコン層25)には金属シリサイドが形成されていない。なお、本図に示す内側がシリコン層25で外側が素子分離領域2の場合(102a)及び内側が素子分離領域2で外側がシリコン層25の場合(102b)のいずれの場合でもボックスマークとして認識可能である。
【0070】
なお、本発明を適用するにあたり注意すべき点が2点ある。第1に、金属シリサイドが形成されない領域の近傍において、素子の特性変動が起こる可能性があるという点である。このため、必要により設計上本発明を適用するボックスマーク102の近くの製品領域には素子を配置しないようにする。但し、本発明が適用されるボックスマーク102の半導体領域は、スクライブ領域23の中でも高々2%以内でしかない。これは、LSIチップサイズが1mm×1mm、スクライブ領域23の幅が100μm、ボックスマーク102の半導体領域が20μm×20μm及び本発明が適用されるボックスマーク102の数が5個と仮定した場合である。第2に、本実施形態によるボックスマーク102はその範囲に金属シリサイド層が形成されていないため、認識パターンが従来製品と異なるという点である。このため、本実施形態専用のパターン認識の条件を、検査装置に入力する必要がある。
【0071】
以上説明したように、本実施形態においてはボックスマーク102の領域内のシリコン基板1をシリコン酸化膜14で覆うことにより、強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9を成膜した後に気泡が発生することがない。これにより、露光の重ね合わせ精度の測定を確実に行うことができるため、従来に比べて半導体装置の歩留まりを向上させることができる。また、pMISFET101のソース・ドレイン7及びゲート電極4にニッケルシリサイド8が形成されているため、スイッチングスピードが高い半導体装置を得ることができる。更に、強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9を成膜してpMISFET101のチャネル領域に強い圧縮歪を加えることにより、正孔の移動度が高くなるため、これを利用して半導体装置の性能を向上させることができる。
【0072】
なお、上述の本実施形態において、シリサイド化反応によりニッケルシリサイド8を形成することとしているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、コバルトシリサイド、ニッケルプラチナシリサイド、プラチナシリサイド、イットリウムシリサイド又はエルビウムシリサイドを形成することとしてもよい。
【0073】
また、上述の本実施形態において、ボックスマーク102内の半導体領域を覆うようにシリコン酸化膜14を形成することとしているが、本発明はこれに限定されるものではない。他の種類の絶縁膜を形成することとしてもよく、例えば、シリコン窒化膜を形成することとしてもよい。
【0074】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図13(a)及び(b)は、本第2実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。図13(a)はpMISFETの断面図であり、図13(b)はスクライブ領域に設けられ重ね合わせ検査に用いられるボックスマークの断面図である。なお、図13(a)及び(b)について以下に示す事項以外は第1の実施形態と同様であるので、図13(a)及び(b)において、図1と同一構成物には同一符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0075】
本実施形態は、図13(b)に示すようにボックスマーク102を構成する素子分離領域2の上にポリシリコン層16が形成されている点において上述の第1の実施形態と異なっている。本実施形態において、このポリシリコン層16は図13(a)に示すゲート電極4と同じ材料である。ポリシリコン層16の周囲には側壁17が形成されている。この側壁17は、図13(a)に示すゲート側壁6と同じ材料である。シリコン酸化膜15はポリシリコン層16及び側壁17を覆うように成膜されている。上記以外は第1の実施形態と同様である。なお、図13(b)において、素子分離領域2が構成するボックスマーク102のパターンは、図12におけるボックスマーク102aのパターンに相当する。
【0076】
本実施形態においては、ボックスマーク102上にポリシリコン層16が形成されている。このポリシリコン層16の表面でシリサイド化反応を起こさせると、ゲート電極4と同様にポリシリコン層16にもニッケルシリサイド8が形成される。しかしながら、本実施形態においては、ボックスマーク102上のポリシリコン層16はシリコン酸化膜15に覆われているため、ニッケルシリサイド8が形成されない。これにより、強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9を成膜後に気泡が発生しないため、重ね合わせ検査において検査装置がボックスマーク102を正常に認識することができる。従って、上述の第1の実施形態と同様に半導体装置の歩留まりを向上させることができる。また、pMISFET101にはニッケルシリサイド8が形成されているため、スイッチングスピードが高い半導体装置が得られる。
【0077】
以下に、図13に示す本実施形態の半導体装置の製造方法について説明する。図14乃至20及び図13は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法をその工程順に示す断面図である。なお、図14乃至20及び図13において、(a)はpMISFET101の断面図であり、(b)はボックスマーク102の断面図である。また、本実施形態の製造方法において、上述の第1の実施形態の製造方法と同一の工程については、その詳細な説明を省略する。
【0078】
ここで、pMISFET101の製造工程については、図5乃至11及び図1に示す第1の実施形態の製造方法と同一である。
【0079】
以下、主にボックスマーク102の製造工程について説明する。先ず、図14(b)に示すように、シリコン基板1のスクライブ領域に素子分離領域2を形成する。ボックスマーク102の大きさは、典型的には40μm×40μmの正方形であるが、ボックスマーク102の検出の容易性を考慮し、少なくとも6μm×6μm以上とする。次に、pMISFET101においてゲート電極4を形成する際にボックスマーク102上にポリシリコン層16が同時に形成される。次に、pMISFET101においてゲート側壁6を形成する際にボックスマーク102上のポリシリコン層16の周囲にもゲート電極4と同様に側壁17が形成される。
【0080】
その後、図15(b)に示すように、ポリシリコン層16及びその周囲の側壁17を覆うようにシリコン酸化膜15が形成される。ここでは、全面にシリコン酸化膜を成膜後、フォトリソグラフィ法及びエッチング法により、ボックスマーク102上以外の部分についてはシリコン酸化膜を除去することでシリコン酸化膜15が得られる。
【0081】
次に、図16に示すように露出した半導体領域にシリサイド化反応を起こさせることにより、ニッケルシリサイド8を形成する。このとき、ボックスマーク102上に形成されたシリコン酸化膜15の表面ではシリサイド化反応は起こらないため、ニッケルシリサイド8は形成されない。なお、ニッケルシリサイド膜8を形成した後、シリコン酸化膜15は除去してもよく、又は残してもよい。
【0082】
次に、図17に示すように強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9をpMISFET上及びボックスマーク102上に成膜する。なお、ボックスマーク102上にはシリコン酸化膜15が存在しているため、上述の第1の実施形態と同様に気泡は発生しない。また、前工程においてシリコン酸化膜15を取り除いた場合でも、ポリシリコン層と強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9との密着性は高いため、気泡は発生しない。
【0083】
その後、図19、図20及び図14に示す層間絶縁膜11、レジスト12a(又は再露光後のレジスト12b)及びコンタクトホール13の形成については、上述の第1の実施形態の製造方法と同様である。
【0084】
本実施形態においても、ボックスマーク102上に気泡が存在していないため、検査装置はボックスマークを認識することができ、重ね合わせ精度を測定できる。これにより、重ね合わせ精度が所定の規格を満たすまでレジストの形成及び重ね合わせ検査を繰り返すため、コンタクトホール13を下地のパターンと合う適正な位置に形成することができる。このため、従来に比べて半導体装置の歩留まりを向上させることができる。また、pMISFET101のソース・ドレイン7及びゲート電極4にニッケルシリサイド8が形成されているため、スイッチングスピードが高い半導体装置を得ることができる。更に、強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9を成膜してpMISFET101のチャネル領域に強い圧縮歪を加えることにより、正孔の移動度が高くなるため、これを利用して半導体装置の性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】(a)及び(b)は本発明の第1の実施形態に係る半導体装置を示す断面図であり、(a)はpMISFETに相当し、(b)はボックスマークに相当する。
【図2】(a)及び(b)は各種下地上に強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜を成膜した様子を示す平面観察像である(光学顕微鏡写真)。
【図3】シリコン酸化膜及びコバルトシリサイドを下地として、その上に強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜を成膜した様子を示す平面観察像である(光学顕微鏡写真)。
【図4】(a)はシリコン酸化膜、コバルトシリサイド及び素子分離領域でパターニングされたボックスマークの平面観察像であり(光学顕微鏡写真)、(b)はボックスマークの断面図である。
【図5】(a)及び(b)は本発明の第1の実施形態の製造工程を示す断面図であり、(a)はpMISFETに相当し、(b)はボックスマークに相当する。
【図6】(a)及び(b)は図5に続く製造工程を示す断面図である。
【図7】(a)及び(b)は図6に続く製造工程を示す断面図である。
【図8】(a)及び(b)は図7に続く製造工程を示す断面図である。
【図9】(a)及び(b)は図8に続く製造工程を示す断面図である。
【図10】(a)及び(b)は図9に続く製造工程を示す断面図である。
【図11】(a)及び(b)は図10に続く製造工程を示す断面図である。
【図12】本発明の第1の実施形態を模式的に示す平面図である。
【図13】(a)及び(b)は本発明の第2の実施形態に係る半導体装置を示す断面図であり、(a)はpMISFETに相当し、(b)はボックスマークに相当する。
【図14】(a)及び(b)は本発明の第2の実施形態の製造工程を示す断面図であり、(a)はpMISFETに相当し、(b)はボックスマークに相当する。
【図15】(a)及び(b)は図14に続く製造工程を示す断面図である。
【図16】(a)及び(b)は図15に続く製造工程を示す断面図である。
【図17】(a)及び(b)は図16に続く製造工程を示す断面図である。
【図18】(a)及び(b)は図17に続く製造工程を示す断面図である。
【図19】(a)及び(b)は図18に続く製造工程を示す断面図である。
【図20】(a)及び(b)は図19に続く製造工程を示す断面図である。
【図21】(a)及び(b)は第1の従来の半導体装置の製造工程を示す断面図であり、(a)はpMISFETに相当し、(b)はボックスマークに相当する。
【図22】(a)及び(b)は図21に続く製造工程を示す断面図である。
【図23】(a)及び(b)は図22に続く製造工程を示す断面図である。
【図24】(a)及び(b)は図23に続く製造工程を示す断面図である。
【図25】(a)及び(b)は図24に続く製造工程を示す断面図である。
【図26】(a)及び(b)は図25に続く製造工程を示す断面図である。
【図27】従来の半導体装置を模式的に示す平面図である。
【図28】(a)はコバルトシリサイド及び素子分離領域でパターニングされたボックスマークの平面観察像であり(光学顕微鏡写真)、(b)はボックスマークの断面図である。
【図29】(a)は金属シリサイド上に強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜を成膜した場合の気泡発生部の断面観察像(SEM写真)であり、(b)はこの気泡発生部を示す断面図である。
【図30】(a)及び(b)は第2の従来の半導体装置の製造工程を示す断面図であり、(a)はpMISFETに相当し、(b)はボックスマークに相当する。
【図31】(a)及び(b)は図30に続く製造工程を示す断面図である。
【図32】(a)及び(b)は図31に続く製造工程を示す断面図である。
【図33】(a)及び(b)は図32に続く製造工程を示す断面図である。
【図34】(a)及び(b)は図33に続く製造工程を示す断面図である。
【図35】(a)及び(b)は図34に続く製造工程を示す断面図である。
【図36】(a)及び(b)は面積が異なるニッケルシリサイド上に強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜を成膜した場合の気泡発生状況を示す平面観察像である(光学顕微鏡写真)。
【符号の説明】
【0086】
1;シリコン基板
2;素子分離領域
3;ゲート絶縁膜
4;ゲート電極
5;ソース・ドレイン拡張領域
6;ゲート側壁
7;ソース・ドレイン
8;ニッケルシリサイド
9;強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜
10;気泡
11;層間絶縁膜
12、12a;レジスト
12b;再露光後のレジスト
13;コンタクトホール
14、15;シリコン酸化膜
16;ポリシリコン層
17;側壁
21;コバルトシリサイド
22;製品領域
23;スクライブ領域
24;ダミーパターン
25;シリコン層
26;応力の向き
50;ニッケルシリサイド下地
51;シリコン酸化膜下地
52;ノンドープ上に形成したコバルトシリサイド下地
53;ボロンドープシリコン上に形成したコバルトシリサイド下地
54;ヒ素ドープシリコン上に形成したコバルトシリサイド下地
55;コバルトシリサイド下地
56;気泡が形成されない領域
57;気泡の跡
101;pMISFET
102、102a、102b、102c、102d;ボックスマーク
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関し、特に、チャネル領域に圧縮歪みが加えられたpチャネル型MISFETと露光の重ね合わせ精度を検査するための検査パターンとを含む半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報通信機器の発達に伴いLSI(Large Scale Integrated Circuit:大規模集積回路)に要求される処理能力はますます高いものになっており、トランジスタについてはその高速化が図られている。従来、この高速化は主として構造の微細化によって進められてきた。しかし、リソグラフィ技術の限界によりゲート長を短くすることが、また物理的な要因からゲート絶縁膜の薄膜化が、夫々困難になってきている。
【0003】
このため、微細化以外の新しい高性能化技術が必要となっている。そのような技術として、応力を印加することによってチャネルを歪ませて移動度を高くする方法(ピエゾ抵抗効果)が知られている。これは、チャネルと平行な方向に引張(圧縮)応力を印加して歪ませた場合、電子の移動度は高く(低く)なり、正孔の移動度は低く(高く)なるというものである。
【0004】
この現象を利用してMISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor:金属絶縁物半導体電界効果トランジスタ)の高性能化を図る技術がいくつか提案されている。例えば、特許文献1には、nチャネル型MISFET(以下、nMISFETと記す)について、コンタクトホール開口の際のストッパー膜としてシリコン窒化膜を用い、このシリコン窒化膜に引張応力を印加することが提案されている。これは、シリコン窒化膜に印加された引張応力によりチャネルが歪み電子の移動度が高くなることにより、nMISFETの性能を向上させようとするものである。
【0005】
また、特許文献2には、nMISFETは引張応力を有するシリコン窒化膜で、pチャネル型MISFET(以下、pMISFETと記す)は圧縮応力を有するシリコン窒化膜で夫々覆うことが提案されている。これは、シリコン窒化膜によりnチャネルに引張応力を、pチャネルに圧縮応力を発生させると両キャリアの移動度が高くなるため、nMISFET及びpMISFETの両方の性能を向上させようとするものである。
【0006】
しかしながら、特許文献2に提案されたようにシリコン窒化膜をそのまま圧縮応力膜として使用した場合には、LSIの製造上、以下に示すような問題点がある。
【0007】
図21乃至26は、第1の従来のpMISFET101について、その製造方法を工程順に示す断面図である。図21乃至26において、(a)はpMISFET101を示す断面図であり、(b)は製造工程において露光の重ね合わせ精度の測定に用いる検査パターン(ボックスマーク102)を示す断面図である。
【0008】
先ず、図21に示すようにシリコン基板1の表面に素子分離領域2を形成する。その際、図21(b)に示すようにスクライブ領域にも素子分離領域2を形成する。この素子分離領域2はボックスマーク102のパターンを構成する。ボックスマーク102の大きさは、典型的には40μm×40μmの正方形であるが、検出の容易性を考慮し、少なくとも6μm×6μm以上とする。
【0009】
次に、ゲート絶縁膜及びゲート電極膜を成膜し、その後パターニングすることにより、ゲート絶縁膜3及びゲート電極4を形成する。次に、ゲート電極4をマスクとして、ボロンをイオン注入することにより、ソース・ドレイン拡張領域5を形成する。次に、この上にCVD(Chemical Vapor Deposition:化学的気相成長)法でシリコン酸化膜を成長させ、エッチバックにより、ゲート側壁6を形成する。その後、ゲート電極4とゲート側壁6とをマスクとして、ボロンをソース・ドレイン領域にイオン注入し、熱処理によりボロンを活性化させて、ソース・ドレイン7を形成する。
【0010】
次に、図22に示すようにニッケルをスパッタして熱処理を行い、ソース・ドレイン7の表面におけるシリサイド化反応によりニッケルシリサイド8を形成する。なお、余剰のニッケルはウェットエッチング等で除去する。このとき、後述する理由により、スクライブ領域の半導体領域も全面がシリサイド化される。このため、図22(b)に示すようにボックスマークの半導体領域の表面にもニッケルシリサイド8が形成される。なお、本明細書において、シリサイド化反応により金属シリサイドが形成され得る領域を、ソース・ドレイン7のような拡散層及びシリコン基板1等を含む総称として「半導体領域」という。
【0011】
次に、図23(a)に示すように強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9をpMISFET101上に成膜する。このとき、図23(b)に示すようにボックスマーク102上にも強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9が成膜される。この際に、後述する理由によりボックスマーク102に気泡10が発生する。
【0012】
次に、図24に示すように層間絶縁膜11を成膜し、図25に示すようにその上にレジスト12を塗布後、露光と現像工程を経て、レジスト12をパターニングする。その後、下地のパターンとレジスト12のパターンとの重ね合わせ精度を測定するため、ボックスマーク102を利用して検査装置で検査を行う。しかしながら、検査装置は、気泡10が存在することによりボックスマーク102を認識できないため、重ね合わせ精度を測定することができない。図25は重ね合わせ精度が所定の検査規格を満たしていない例であるが、この場合でも重ね合わせ精度を測定することができないため、そのまま次の工程に進められる。
【0013】
次に、図26に示すようにレジスト12をマスクとしてコンタクトホール13を開口する。上述したように、レジスト12のパターンが下地のパターンと合わないため、結果としてpMISFET101は正常に動作せず、歩留まりが低下してしまうこととなる。また、このような膜の気泡は、LSI製造工程の一つであるCMP(Chemical Mechanical Polishing:化学的機械的研磨)の際に、膜全体の剥がれを引き起こす可能性がある。膜全体が剥がれた場合、そのロットが廃棄となるだけでなく、剥がれた膜は塵となり他のロットの歩留まりを低下させる原因ともなる。
【0014】
図27は、上述の製造方法により作製した第1の従来の半導体装置の平面図である。但し、素子は表示していない。図27において、ボックスマーク102は、内側が金属シリサイド層で外側が素子分離領域2の場合(102c)及び内側が素子分離領域2で外側が金属シリサイド層の場合(102d)の両方が模式的に描かれている。
【0015】
製品領域22において、素子以外の領域には金属シリサイド層によるダミーパターン24が敷き詰められている。これは、素子以外の領域を素子と近い状態にすることにより、素子特性の位置依存性を小さくするためである。従って、サリサイド技術を用いる場合には、素子以外の半導体領域の表面にも金属シリサイドが形成される。これは、スクライブ領域23についても同様であり、半導体領域の表面に金属シリサイド層によるダミーパターン24が敷き詰められる。従って、ボックスマーク102における半導体領域の表面にも金属シリサイド層が形成される。
【0016】
この上に、強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9を成膜すると、ボックスマーク102の金属シリサイド領域に気泡10が発生する。これが、検査装置のボックスマーク102の認識を阻害し、重ね合わせ精度を測定できなくすることは、上述した通りである。
【0017】
図28(a)は、ボックスマークの光学顕微鏡による平面観察像であり、図28(b)は、図28(a)に示すY−Y線による断面図である。図28(a)は、コバルトシリサイド21上に強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9を成膜したものであるが、図27に模式的に示したのと同様な気泡10が観察された。
【0018】
図29(a)は、ニッケルシリサイド8の上に強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9を成膜した場合に発生した気泡10の断面SEM(Scanning Electron Microscope:走査型電子顕微鏡)観察像である。本図から、気泡10は、強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9とニッケルシリサイド8との界面における部分的な剥がれであることが分かる。pMISFETのチャネル領域の移動度を高くする目的でシリコン窒化膜に印加する圧縮応力を大きくすると、強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9は、図29(b)に示すように強い圧縮応力を受ける。そのため、強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9は剥がれることによって体積を増やし、応力を開放しようとすると考えられる。
【0019】
図30乃至35は、第2の従来のpMISFETについて、その製造方法を工程順に示す断面図である。図30乃至35において、(a)はpMISFETを示す断面図であり、(b)はボックスマークを示す断面図である。第2の従来構造は、素子分離領域とゲート電極に用いるポリシリコン膜とでボックスマークを形成している点において、第1の従来構造と異なっている。
【0020】
次に、図30及び31に示すようにソース・ドレイン拡張領域5、ゲート側壁6、ソース・ドレイン7及びニッケルシリサイド層8を第1の従来のpMISFETと同様に形成する。但し、ボックスマーク102において、ゲート側壁6はポリシリコン層16の周囲にも形成され、ニッケルシリサイド8はゲート電極4と同様にポリシリコン層16の表面にも形成される。
【0021】
次に、図32に示すように強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9を成膜する。このとき、ボックスマーク102上にも強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9が成膜される。この際に、第1の従来のpMISFETと同様にボックスマーク102上の強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9に気泡10が発生する。
【0022】
次に、層間絶縁膜11を成膜し、その上にレジストを塗布後、露光と現像工程を経て、レジスト12をパターニングする。その後、下地のパターンとレジスト12のパターンとの重ね合わせ精度を測定するが、気泡10が存在するため従来構造1と同様に重ね合わせ精度を測定することができない。従って、重ね合わせ精度が所定の規格を満たさない場合でもそのまま工程が進められることとなり、その結果、コンタクトホール13を開口した際に下地のパターンと合わなくなる。このため、MISFETの歩留まりが低下することとなる。
【0023】
【特許文献1】特開2002−198368号公報
【特許文献2】特開2003−86708号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
この歩留まりの低下という問題点を解消するために、ボックスマークの大きさを小さくすることが考えられる。図36は、ニッケルシリサイド8上に強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9を成膜後、シリコン窒化膜9のみエッチングにより除去した後の光学顕微鏡による平面観察像である。図36(a)に示すように大面積のニッケルシリサイド8上には気泡の跡57が観察されるのに対し、図36(b)に示すようにニッケルシリサイド8を素子分離領域2(シリコン酸化膜)で1.5μm×1.5μmの領域に区切った場合には気泡の跡が観察されなかった。このことは、気泡10の発生は、大面積の金属シリサイド上に強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9を形成した場合に起こり易い現象であることを示している。
【0025】
しかしながら、図36(b)の例のような小さいボックスマークではパターンの検出が困難であるため、結果的に歩留まりが低下してしまうという問題点がある。また、これを回避するためには、例えばpMISFETの製造にサリサイド技術を用いないということも考えられる。しかしながら、その場合には拡散層のソース・ドレイン7及びポリシリコンのゲート電極4の抵抗が増大するため、スイッチングスピードが低下してしまうという問題点がある。
【0026】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜を用いたpMISFETを有する半導体装置及びその製造方法において、歩留まりが高く且つスイッチングスピードが高い半導体装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明に係る半導体装置は、シリコン基板と、このシリコン基板上に形成されたMISFETと、半導体領域を含み前記シリコン基板上に少なくとも1つ形成された検査パターンと、前記MISFET及び前記検査パターンを覆うように形成され前記MISFETのソース・ドレイン間のチャネル領域に圧縮歪みを加える圧縮応力膜と、を有し、前記MISFETは、少なくとも前記ソース・ドレインの一部に金属シリサイド層が形成され、前記検査パターンは、前記応力膜と接する前記半導体領域に前記金属シリサイド層が形成されていないことを特徴とする。
【0028】
本発明においては、検査パターンを覆うように形成される圧縮応力膜は金属シリサイド層の上には形成されていない。これにより、圧縮応力膜と金属シリサイド層との密着性が低いことによる気泡の発生を防止することができる。このため、例えば検査パターンが重ね合わせ検査に使用される場合に、重ね合わせ検査を確実に行うことができ、半導体装置の歩留まりを向上させることができる。また、MISFETのソース・ドレイン等に金属シリサイド層が形成されていることにより、スイッチングスピードが高い半導体装置を得ることができる。更に、圧縮応力膜により強い圧縮応力を印加することができるため、pMISFETにおいて正孔の移動度をより高くすることができる。これにより、半導体装置の性能をより向上させることができる。
【0029】
この場合に、前記検査パターンは、素子分離領域を含んでいてもよい。
【0030】
また、前記半導体領域は、拡散層領域を含んでいてもよい。
【0031】
更に、前記半導体領域は、ポリシリコン層を含んでいてもよい。
【0032】
更にまた、前記検査パターンにおいて、前記半導体領域と前記圧縮応力膜との間に絶縁膜が形成されていてもよい。これにより、シリコン基板等の半導体領域の表面に金属シリサイド層が形成されないようにすることができる。
【0033】
更にまた、前記絶縁膜は、シリコン酸化膜であるように構成することができる。
【0034】
更にまた、前記絶縁膜は、シリコン窒化膜であるように構成することができる。
【0035】
更にまた、前記圧縮応力膜は、シリコン窒化膜であるであるように構成することができる。
【0036】
更にまた、前記金属シリサイドは、コバルトシリサイドであるように構成することができる。
【0037】
更にまた、前記金属シリサイドは、ニッケルシリサイドであるように構成することができる。
【0038】
更にまた、前記金属シリサイドは、ニッケルプラチナシリサイドであるように構成することができる。
【0039】
更にまた、前記金属シリサイドは、ニッケルプラチナシリサイドであるように構成することができる。
【0040】
更にまた、前記金属シリサイドは、イットリウムシリサイドであるように構成することができる。
【0041】
更にまた、前記金属シリサイドは、エルビウムシリサイドであるように構成することができる。
【0042】
更にまた、前記MISFETは、pチャネル型MISFETであるように構成することができる。
【0043】
更にまた、前記検査パターンは、露光の重ね合わせ精度を検査するためのボックスマークであるように構成することができる。
【0044】
本発明に係る半導体装置の製造方法は、シリコン基板上にMISFETを形成する工程と、前記シリコン基板上に半導体領域を含む検査パターンを少なくとも1つ形成する工程と、前記半導体領域を覆うように絶縁膜を形成する工程と、少なくとも前記MISFETのソース・ドレインを含む前記シリコン基板上の半導体領域の表面に金属シリサイド層を形成する工程と、前記MISFET及び前記検査パターンを覆うように圧縮応力膜を形成する工程と、を有することを特徴とする。
【0045】
本発明においては、検査パターンの半導体領域を絶縁膜で覆うことにより、この半導体領域に金属シリサイド層が形成されないようにすることができる。これにより、圧縮応力膜に印加される圧縮応力が大きい場合でも、圧縮応力膜を成膜した後に気泡が発生することがない。このため、例えば検査パターンが重ね合わせ検査に使用される場合に、重ね合わせ検査を確実に行うことができ、半導体装置の歩留まりを向上させることができる。
【0046】
この場合に、前記絶縁膜を、前記金属シリサイド層を形成する工程の後で除去することとしてもよい。
【0047】
また、前記検査パターンを形成する工程は、素子分離領域を形成する工程を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0048】
本発明によれば、強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜を用いたpMISFETを有する半導体装置において、歩留まりが高くすることができ、且つスイッチングスピードが高い半導体装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
以下、本発明の実施形態について添付の図面を参照して具体的に説明する。先ず、本発明の第1の実施形態について説明する。図1(a)及び(b)は、本第1実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。図1(a)は、pMISFETの断面図であり、図1(b)は、スクライブ領域に設けられ重ね合わせ検査に使用されるボックスマークの断面図である。
【0050】
図1(a)に示すように、シリコン基板1の表面には、pMISFET101の領域を囲むように素子分離領域2が設けられている。素子分離領域2はシリコン基板1に形成された溝を埋めるように成膜されている。素子分離領域2としては、例えばシリコン酸化膜が用いられる。この素子分離領域2で他の素子から分離された領域内に、ソース・ドレイン7が夫々素子分離領域2に接するように互いに離隔して形成されている。ソース・ドレイン7は、シリコン基板1に例えばボロンを拡散させた拡散層である。ソース及びドレインの間にはソース及びドレインに接し且つ互いに離隔してソース・ドレイン拡張領域5が形成されている。ゲート絶縁膜3は、2つのソース・ドレイン拡張領域5の先端及びその間のシリコン基板1表面を覆うように形成されている。その上にはゲート電極4が形成されている。ゲート電極4としては、例えばポリシリコンが用いられる。
【0051】
ゲート電極4及びソース・ドレイン7の上部には、シリサイド化反応によりニッケルシリサイド8が形成されている。その上には強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9がシリコン基板1の表面全体を覆うように形成されている。
【0052】
図1(b)において、図1(a)と同様にシリコン基板1の表面に素子分離領域2が設けられている。但し、図2(b)においては、素子分離領域2はボックスマーク102のパターンを形成する目的で設けられている。この素子分離領域2の一部を含むボックスマーク102の領域内にはシリコン基板1の表面上にシリコン酸化膜14が成膜されている。シリコン基板1の表面には図1(a)と同様にシリサイド化反応によりニッケルシリサイド8が形成されている。これに対して、素子分離領域2及びシリコン酸化膜14の表面ではシリサイド化反応は起きないため、ボックスマーク102上にはニッケルシリサイド8は形成されていない。強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9は、シリコン酸化膜14の上からボックスマーク102全体を覆うように形成されている。
【0053】
図1(a)及び(b)において、強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9の上には層間絶縁膜11が形成されている。また、ソース・ドレイン7に接続する電極を形成するためのコンタクトホール13が層間絶縁膜11及び強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9を貫通するように設けられている。なお、図1における半導体装置は、コンタクトホール13を形成しレジストを除去する前の状態を表している。また、本実施形態における再露光後のレジスト12bは、形成したレジストのパターンと下地のパターンの重ね合わせ精度が検査により規格を満たさなかったため、このレジストを除去した後再度形成したレジストである。
【0054】
本実施形態においては、シリコン酸化膜14を成膜することによりボックスマーク102上にニッケルシリサイド8が形成されないため、強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9を形成した後の気泡の発生を効果的に防止することができる。以下、その理由について説明する。
【0055】
図2(a)及び(b)は、強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9が形成される下地の種類による気泡の発生状況を説明するための光学顕微鏡による平面観察像である。図2(a)は、ニッケルシリサイド下地50上に強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9を形成した例である。なお、平面観察像の大きさは、典型的なボックスマーク102の大きさである40μm×40μmである。本図に示すように、強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9に複数の気泡10が観察された。これは、シリコン窒化膜9に印加された圧縮応力が大きく、また、シリコン窒化膜9とニッケルシリサイド下地50との密着性が低いため、シリコン窒化膜9とニッケルシリサイド下地50との界面において応力を解放しようとして部分的な剥がれが生じたためと考えられる。なお、図示していないが引張応力を有するシリコン窒化膜及び弱い圧縮応力を有するシリコン窒化膜を成膜した場合には、気泡が発生する現象は確認されなかった。
【0056】
図2(b)は、各種の下地の上に強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9を形成した場合の気泡10の発生状況を比較したものである。本図に示すように、ヒ素ドープシリコン上に形成したコバルトシリサイド下地54の上に強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9を成膜した場合には、細かい多数の気泡10が観察された。また、ボロンドープシリコン上に形成したコバルトシリサイド下地53又はノンドープシリコン上に形成したコバルトシリサイド下地52である場合にも、数は少なくなるものの気泡10が観察された。このことから、金属シリサイドの下地上に強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9を形成する場合には、気泡10が発生し易いことが分かる。これに対して、下地がシリコン酸化膜下地51である場合には、強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9を成膜しても気泡10の発生は観察されなかった。
【0057】
図3は、コバルトシリサイド下地55及びシリコン酸化膜下地51上に強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9を成膜した後の平面観察像である。図3に示すようにコバルトシリサイド下地55の領域には多数の気泡10が発生しているのが観察された。但し、シリコン酸化膜下地51の領域との境界から約3μm以内の領域ではコバルトシリサイド下地55の領域であっても気泡10は見られなかった。これは、境界から3μmまではシリコン酸化膜下地51による密着の影響が及ぶためと考えられる。上記の観察結果から、周囲をシリコン酸化膜下地51で囲まれたコバルトシリサイド下地55の場合、両側からの寄与を考慮しても、領域の大きさがおよそ6μm×6μm以上になると気泡10が発生し易くなると考えられる。一方、気泡が生じないようにボックスマークの大きさを小さくするとパターンの検出が困難であるため、レジスト形成後の重ね合わせ精度の検査ができない可能性がある。
【0058】
上述のコバルトシリサイド下地55に対して、シリコン酸化膜下地51の領域では気泡10は観察されなかった。これは、シリコン酸化膜下地51と強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9との密着性が高いためと考えられる。従って、図1(b)においてシリコン酸化膜14の上に強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9を成膜すれば気泡10が発生しないため、ボックスマーク102としての機能を満たすことができる。また、シリコン酸化膜14を成膜した後にシリサイド化反応によりニッケルシリサイド8を形成する工程を行っても、シリコン酸化膜14上にはニッケルシリサイド8は形成されない。以上の理由により、本実施形態においては、ボックスマーク102を構成するシリコン基板1を覆うようにシリコン酸化膜14を成膜することとした。
【0059】
図4に本実施形態の変形例を示す。図4(a)は、一例として素子分離領域2に囲まれた領域内に外側からコバルトシリサイド21、シリコン酸化膜14の順で下地を形成し、その上から全面に強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9を成膜した場合の平面観察像である。また、図4(b)は、図4(a)に示すX−X線による断面図である。なお、平面観察像の大きさは、典型的なボックスマーク102の大きさである40μm×40μmである。図4(a)に示すように、素子分離領域2で囲まれた領域内において気泡10は発生していない。このため、図4(b)に示すようにボックスマーク102において、シリコン酸化膜14又は素子分離領域2との境界からの距離が小さくなるように金属シリサイドを形成することもできる。
【0060】
以下に、図1に示す本実施形態の半導体装置の製造方法について説明する。図5乃至11及び図1は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法をその工程順に示す断面図である。なお、図5乃至11及び図1において、(a)はpMISFET101の断面図であり、(b)はボックスマーク102の断面図である。
【0061】
先ず、図5(a)に示すようにシリコン基板1の表面に素子分離領域2を形成する。この際、図5(b)においてスクライブ領域にボックスマークのパターンを構成するため、同様に素子分離領域2を形成する。ボックスマークの大きさは、典型的には40μm×40μmの正方形であるが、ボックスマーク102の検出の容易性を考慮し、少なくとも6μm×6μm以上とする。
【0062】
次に、ゲート絶縁膜及びゲート電極膜を成膜し、その後パターニングすることにより、ゲート絶縁膜3及びゲート電極4を形成する。ゲート電極4としてはポリシリコンを使用する。次に、ゲート電極4をマスクとして、ボロンをイオン注入することにより、ソース・ドレイン拡張領域5を形成する。次に、この上にCVD法でシリコン酸化膜を成長させ、エッチバックにより、ゲート側壁6を形成する。その後、ゲート電極4及びゲート側壁6をマスクとして、ボロンをソース・ドレイン領域にイオン注入し、熱処理によりボロンを活性化させて、ソース・ドレイン7を形成する。
【0063】
次に、図6に示すように全面にシリコン酸化膜を成膜後、フォトリソグラフィ法及びエッチング法により、図6(b)に示すボックスマーク102以外の部分についてはシリコン酸化膜を除去する。
【0064】
次に、図7に示すようにニッケルをスパッタして熱処理を行い、ソース・ドレイン7の表面におけるシリサイド化反応によりニッケルシリサイド8を形成する。余剰のニッケルはウェットエッチング等で除去する。このとき、ボックスマーク102の領域ではシリコン基板1を覆うようにシリコン酸化膜14が存在しているため、ニッケルシリサイド8は形成されない。なお、ニッケルシリサイド膜8を形成した後、シリコン酸化膜14は除去してもよく、又は残してもよい。
【0065】
次に、図8に示すように強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9をpMISFET101を覆うように成膜する。このとき、ボックスマーク102の上にも強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9が成膜される。この際、ボックスマーク102上にシリコン酸化膜14が形成されていることにより、上述したように強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9とシリコン酸化膜14の密着度は高いため、気泡は発生しない。また、前工程においてシリコン酸化膜14を取り除いた場合でも、シリコン基板1と強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9との密着性は高いため、同様に気泡は発生しない。
【0066】
次に、図9に示すように層間絶縁膜11を成膜する。次に、図10に示すように層間絶縁膜11の上にレジスト12aを塗布後、露光と現像工程を経て、レジスト12aをパターニングする。その後、下地のパターンとレジスト12aのパターンとの重ね合わせ精度を測定するため、ボックスマーク102を利用して検査装置で検査を行う。このとき、ボックスマーク102上に気泡が生じていないため、検査装置はボックスマーク102を認識することができ、重ね合わせ精度を測定できる。測定の結果、重ね合わせ精度が所定の規格を満たしていない場合には、一旦レジスト12aを除去し、再度レジストを塗布して露光・現像を行う。図11は再露光後のレジスト12bが形成された状態である。その後、再びボックスマーク102を利用して検査装置で重ね合わせ精度を測定する。重ね合わせ精度が所定の規格を満たすまで、レジストの除去・再形成を繰り返す。
【0067】
重ね合わせ精度が所定の規格を満たしたら、次に、レジスト12bをマスクとしてコンタクトホール13を開口することにより図1に示す半導体装置が得られる。この際、前工程において下地のパターンとコンタクトホール13との位置が合っているため、従来の半導体装置に比べて歩留まり向上させることができる。また、図1(a)に示すようにニッケルシリサイド8をソース・ドレイン7及びゲート電極4の上部に形成しているため、スイッチングスピードが高い半導体装置が得られる。
【0068】
図12は、本発明の第1の実施の形態により、強い圧縮応力を有するストレス窒化膜9を用いてpMISFETを作製した場合の平面模式図である。但し、素子自体は表示していない。図12において、ボックスマーク102は、内側がシリコン層25で外側が素子分離領域2の場合(102a)及び内側が素子分離領域2で外側がシリコン層25の場合(102b)の両方が模式的に描かれている。
【0069】
上述した図27と同様の理由で、図12において素子以外の領域には金属シリサイド層によるダミーパターン24が敷き詰められ、素子以外の半導体領域の表面にも、ボックスマーク102等を除く領域にはダミーパターン24が設けられている。但し、ボックスマーク102の半導体領域(シリコン層25)には金属シリサイドが形成されていない。なお、本図に示す内側がシリコン層25で外側が素子分離領域2の場合(102a)及び内側が素子分離領域2で外側がシリコン層25の場合(102b)のいずれの場合でもボックスマークとして認識可能である。
【0070】
なお、本発明を適用するにあたり注意すべき点が2点ある。第1に、金属シリサイドが形成されない領域の近傍において、素子の特性変動が起こる可能性があるという点である。このため、必要により設計上本発明を適用するボックスマーク102の近くの製品領域には素子を配置しないようにする。但し、本発明が適用されるボックスマーク102の半導体領域は、スクライブ領域23の中でも高々2%以内でしかない。これは、LSIチップサイズが1mm×1mm、スクライブ領域23の幅が100μm、ボックスマーク102の半導体領域が20μm×20μm及び本発明が適用されるボックスマーク102の数が5個と仮定した場合である。第2に、本実施形態によるボックスマーク102はその範囲に金属シリサイド層が形成されていないため、認識パターンが従来製品と異なるという点である。このため、本実施形態専用のパターン認識の条件を、検査装置に入力する必要がある。
【0071】
以上説明したように、本実施形態においてはボックスマーク102の領域内のシリコン基板1をシリコン酸化膜14で覆うことにより、強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9を成膜した後に気泡が発生することがない。これにより、露光の重ね合わせ精度の測定を確実に行うことができるため、従来に比べて半導体装置の歩留まりを向上させることができる。また、pMISFET101のソース・ドレイン7及びゲート電極4にニッケルシリサイド8が形成されているため、スイッチングスピードが高い半導体装置を得ることができる。更に、強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9を成膜してpMISFET101のチャネル領域に強い圧縮歪を加えることにより、正孔の移動度が高くなるため、これを利用して半導体装置の性能を向上させることができる。
【0072】
なお、上述の本実施形態において、シリサイド化反応によりニッケルシリサイド8を形成することとしているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、コバルトシリサイド、ニッケルプラチナシリサイド、プラチナシリサイド、イットリウムシリサイド又はエルビウムシリサイドを形成することとしてもよい。
【0073】
また、上述の本実施形態において、ボックスマーク102内の半導体領域を覆うようにシリコン酸化膜14を形成することとしているが、本発明はこれに限定されるものではない。他の種類の絶縁膜を形成することとしてもよく、例えば、シリコン窒化膜を形成することとしてもよい。
【0074】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図13(a)及び(b)は、本第2実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。図13(a)はpMISFETの断面図であり、図13(b)はスクライブ領域に設けられ重ね合わせ検査に用いられるボックスマークの断面図である。なお、図13(a)及び(b)について以下に示す事項以外は第1の実施形態と同様であるので、図13(a)及び(b)において、図1と同一構成物には同一符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0075】
本実施形態は、図13(b)に示すようにボックスマーク102を構成する素子分離領域2の上にポリシリコン層16が形成されている点において上述の第1の実施形態と異なっている。本実施形態において、このポリシリコン層16は図13(a)に示すゲート電極4と同じ材料である。ポリシリコン層16の周囲には側壁17が形成されている。この側壁17は、図13(a)に示すゲート側壁6と同じ材料である。シリコン酸化膜15はポリシリコン層16及び側壁17を覆うように成膜されている。上記以外は第1の実施形態と同様である。なお、図13(b)において、素子分離領域2が構成するボックスマーク102のパターンは、図12におけるボックスマーク102aのパターンに相当する。
【0076】
本実施形態においては、ボックスマーク102上にポリシリコン層16が形成されている。このポリシリコン層16の表面でシリサイド化反応を起こさせると、ゲート電極4と同様にポリシリコン層16にもニッケルシリサイド8が形成される。しかしながら、本実施形態においては、ボックスマーク102上のポリシリコン層16はシリコン酸化膜15に覆われているため、ニッケルシリサイド8が形成されない。これにより、強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9を成膜後に気泡が発生しないため、重ね合わせ検査において検査装置がボックスマーク102を正常に認識することができる。従って、上述の第1の実施形態と同様に半導体装置の歩留まりを向上させることができる。また、pMISFET101にはニッケルシリサイド8が形成されているため、スイッチングスピードが高い半導体装置が得られる。
【0077】
以下に、図13に示す本実施形態の半導体装置の製造方法について説明する。図14乃至20及び図13は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法をその工程順に示す断面図である。なお、図14乃至20及び図13において、(a)はpMISFET101の断面図であり、(b)はボックスマーク102の断面図である。また、本実施形態の製造方法において、上述の第1の実施形態の製造方法と同一の工程については、その詳細な説明を省略する。
【0078】
ここで、pMISFET101の製造工程については、図5乃至11及び図1に示す第1の実施形態の製造方法と同一である。
【0079】
以下、主にボックスマーク102の製造工程について説明する。先ず、図14(b)に示すように、シリコン基板1のスクライブ領域に素子分離領域2を形成する。ボックスマーク102の大きさは、典型的には40μm×40μmの正方形であるが、ボックスマーク102の検出の容易性を考慮し、少なくとも6μm×6μm以上とする。次に、pMISFET101においてゲート電極4を形成する際にボックスマーク102上にポリシリコン層16が同時に形成される。次に、pMISFET101においてゲート側壁6を形成する際にボックスマーク102上のポリシリコン層16の周囲にもゲート電極4と同様に側壁17が形成される。
【0080】
その後、図15(b)に示すように、ポリシリコン層16及びその周囲の側壁17を覆うようにシリコン酸化膜15が形成される。ここでは、全面にシリコン酸化膜を成膜後、フォトリソグラフィ法及びエッチング法により、ボックスマーク102上以外の部分についてはシリコン酸化膜を除去することでシリコン酸化膜15が得られる。
【0081】
次に、図16に示すように露出した半導体領域にシリサイド化反応を起こさせることにより、ニッケルシリサイド8を形成する。このとき、ボックスマーク102上に形成されたシリコン酸化膜15の表面ではシリサイド化反応は起こらないため、ニッケルシリサイド8は形成されない。なお、ニッケルシリサイド膜8を形成した後、シリコン酸化膜15は除去してもよく、又は残してもよい。
【0082】
次に、図17に示すように強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9をpMISFET上及びボックスマーク102上に成膜する。なお、ボックスマーク102上にはシリコン酸化膜15が存在しているため、上述の第1の実施形態と同様に気泡は発生しない。また、前工程においてシリコン酸化膜15を取り除いた場合でも、ポリシリコン層と強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9との密着性は高いため、気泡は発生しない。
【0083】
その後、図19、図20及び図14に示す層間絶縁膜11、レジスト12a(又は再露光後のレジスト12b)及びコンタクトホール13の形成については、上述の第1の実施形態の製造方法と同様である。
【0084】
本実施形態においても、ボックスマーク102上に気泡が存在していないため、検査装置はボックスマークを認識することができ、重ね合わせ精度を測定できる。これにより、重ね合わせ精度が所定の規格を満たすまでレジストの形成及び重ね合わせ検査を繰り返すため、コンタクトホール13を下地のパターンと合う適正な位置に形成することができる。このため、従来に比べて半導体装置の歩留まりを向上させることができる。また、pMISFET101のソース・ドレイン7及びゲート電極4にニッケルシリサイド8が形成されているため、スイッチングスピードが高い半導体装置を得ることができる。更に、強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜9を成膜してpMISFET101のチャネル領域に強い圧縮歪を加えることにより、正孔の移動度が高くなるため、これを利用して半導体装置の性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】(a)及び(b)は本発明の第1の実施形態に係る半導体装置を示す断面図であり、(a)はpMISFETに相当し、(b)はボックスマークに相当する。
【図2】(a)及び(b)は各種下地上に強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜を成膜した様子を示す平面観察像である(光学顕微鏡写真)。
【図3】シリコン酸化膜及びコバルトシリサイドを下地として、その上に強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜を成膜した様子を示す平面観察像である(光学顕微鏡写真)。
【図4】(a)はシリコン酸化膜、コバルトシリサイド及び素子分離領域でパターニングされたボックスマークの平面観察像であり(光学顕微鏡写真)、(b)はボックスマークの断面図である。
【図5】(a)及び(b)は本発明の第1の実施形態の製造工程を示す断面図であり、(a)はpMISFETに相当し、(b)はボックスマークに相当する。
【図6】(a)及び(b)は図5に続く製造工程を示す断面図である。
【図7】(a)及び(b)は図6に続く製造工程を示す断面図である。
【図8】(a)及び(b)は図7に続く製造工程を示す断面図である。
【図9】(a)及び(b)は図8に続く製造工程を示す断面図である。
【図10】(a)及び(b)は図9に続く製造工程を示す断面図である。
【図11】(a)及び(b)は図10に続く製造工程を示す断面図である。
【図12】本発明の第1の実施形態を模式的に示す平面図である。
【図13】(a)及び(b)は本発明の第2の実施形態に係る半導体装置を示す断面図であり、(a)はpMISFETに相当し、(b)はボックスマークに相当する。
【図14】(a)及び(b)は本発明の第2の実施形態の製造工程を示す断面図であり、(a)はpMISFETに相当し、(b)はボックスマークに相当する。
【図15】(a)及び(b)は図14に続く製造工程を示す断面図である。
【図16】(a)及び(b)は図15に続く製造工程を示す断面図である。
【図17】(a)及び(b)は図16に続く製造工程を示す断面図である。
【図18】(a)及び(b)は図17に続く製造工程を示す断面図である。
【図19】(a)及び(b)は図18に続く製造工程を示す断面図である。
【図20】(a)及び(b)は図19に続く製造工程を示す断面図である。
【図21】(a)及び(b)は第1の従来の半導体装置の製造工程を示す断面図であり、(a)はpMISFETに相当し、(b)はボックスマークに相当する。
【図22】(a)及び(b)は図21に続く製造工程を示す断面図である。
【図23】(a)及び(b)は図22に続く製造工程を示す断面図である。
【図24】(a)及び(b)は図23に続く製造工程を示す断面図である。
【図25】(a)及び(b)は図24に続く製造工程を示す断面図である。
【図26】(a)及び(b)は図25に続く製造工程を示す断面図である。
【図27】従来の半導体装置を模式的に示す平面図である。
【図28】(a)はコバルトシリサイド及び素子分離領域でパターニングされたボックスマークの平面観察像であり(光学顕微鏡写真)、(b)はボックスマークの断面図である。
【図29】(a)は金属シリサイド上に強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜を成膜した場合の気泡発生部の断面観察像(SEM写真)であり、(b)はこの気泡発生部を示す断面図である。
【図30】(a)及び(b)は第2の従来の半導体装置の製造工程を示す断面図であり、(a)はpMISFETに相当し、(b)はボックスマークに相当する。
【図31】(a)及び(b)は図30に続く製造工程を示す断面図である。
【図32】(a)及び(b)は図31に続く製造工程を示す断面図である。
【図33】(a)及び(b)は図32に続く製造工程を示す断面図である。
【図34】(a)及び(b)は図33に続く製造工程を示す断面図である。
【図35】(a)及び(b)は図34に続く製造工程を示す断面図である。
【図36】(a)及び(b)は面積が異なるニッケルシリサイド上に強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜を成膜した場合の気泡発生状況を示す平面観察像である(光学顕微鏡写真)。
【符号の説明】
【0086】
1;シリコン基板
2;素子分離領域
3;ゲート絶縁膜
4;ゲート電極
5;ソース・ドレイン拡張領域
6;ゲート側壁
7;ソース・ドレイン
8;ニッケルシリサイド
9;強い圧縮応力を有するシリコン窒化膜
10;気泡
11;層間絶縁膜
12、12a;レジスト
12b;再露光後のレジスト
13;コンタクトホール
14、15;シリコン酸化膜
16;ポリシリコン層
17;側壁
21;コバルトシリサイド
22;製品領域
23;スクライブ領域
24;ダミーパターン
25;シリコン層
26;応力の向き
50;ニッケルシリサイド下地
51;シリコン酸化膜下地
52;ノンドープ上に形成したコバルトシリサイド下地
53;ボロンドープシリコン上に形成したコバルトシリサイド下地
54;ヒ素ドープシリコン上に形成したコバルトシリサイド下地
55;コバルトシリサイド下地
56;気泡が形成されない領域
57;気泡の跡
101;pMISFET
102、102a、102b、102c、102d;ボックスマーク
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン基板と、このシリコン基板上に形成されたMISFETと、半導体領域を含み前記シリコン基板上に少なくとも1つ形成された検査パターンと、前記MISFET及び前記検査パターンを覆うように形成され前記MISFETのソース・ドレイン間のチャネル領域に圧縮歪みを加える圧縮応力膜と、を有し、前記MISFETは、少なくとも前記ソース・ドレインの一部に金属シリサイド層が形成され、前記検査パターンは、前記圧縮応力膜と接する前記半導体領域に前記金属シリサイド層が形成されていないことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記検査パターンは、素子分離領域を含むことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記半導体領域は、拡散層領域を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記半導体領域は、ポリシリコン層を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記検査パターンにおいて、前記半導体領域と前記圧縮応力膜との間に絶縁膜が形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記絶縁膜は、シリコン酸化膜であることを特徴とする請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記絶縁膜は、シリコン窒化膜であることを特徴とする請求項5に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記圧縮応力膜は、シリコン窒化膜であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記金属シリサイドは、コバルトシリサイドであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記金属シリサイドは、ニッケルシリサイドであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記金属シリサイドは、ニッケルプラチナシリサイドであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記金属シリサイドは、プラチナシリサイドであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記金属シリサイドは、イットリウムシリサイドであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記金属シリサイドは、エルビウムシリサイドであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記MISFETは、pチャネル型MISFETであることを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項16】
前記検査パターンは、露光の重ね合わせ精度を検査するためのボックスマークであることを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項17】
シリコン基板上にMISFETを形成する工程と、前記シリコン基板上に半導体領域を含む検査パターンを少なくとも1つ形成する工程と、前記半導体領域を覆うように絶縁膜を形成する工程と、少なくとも前記MISFETのソース・ドレインを含む前記シリコン基板上の半導体領域の表面に金属シリサイド層を形成する工程と、前記MISFET及び前記検査パターンを覆うように圧縮応力膜を形成する工程と、を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項18】
前記絶縁膜を、前記金属シリサイド層を形成する工程の後で除去することを特徴とする請求項17に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項19】
前記検査パターンを形成する工程は、素子分離領域を形成する工程を含むことを特徴とする請求項17又は18に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項1】
シリコン基板と、このシリコン基板上に形成されたMISFETと、半導体領域を含み前記シリコン基板上に少なくとも1つ形成された検査パターンと、前記MISFET及び前記検査パターンを覆うように形成され前記MISFETのソース・ドレイン間のチャネル領域に圧縮歪みを加える圧縮応力膜と、を有し、前記MISFETは、少なくとも前記ソース・ドレインの一部に金属シリサイド層が形成され、前記検査パターンは、前記圧縮応力膜と接する前記半導体領域に前記金属シリサイド層が形成されていないことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記検査パターンは、素子分離領域を含むことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記半導体領域は、拡散層領域を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記半導体領域は、ポリシリコン層を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記検査パターンにおいて、前記半導体領域と前記圧縮応力膜との間に絶縁膜が形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記絶縁膜は、シリコン酸化膜であることを特徴とする請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記絶縁膜は、シリコン窒化膜であることを特徴とする請求項5に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記圧縮応力膜は、シリコン窒化膜であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記金属シリサイドは、コバルトシリサイドであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記金属シリサイドは、ニッケルシリサイドであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記金属シリサイドは、ニッケルプラチナシリサイドであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記金属シリサイドは、プラチナシリサイドであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記金属シリサイドは、イットリウムシリサイドであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記金属シリサイドは、エルビウムシリサイドであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記MISFETは、pチャネル型MISFETであることを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項16】
前記検査パターンは、露光の重ね合わせ精度を検査するためのボックスマークであることを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項17】
シリコン基板上にMISFETを形成する工程と、前記シリコン基板上に半導体領域を含む検査パターンを少なくとも1つ形成する工程と、前記半導体領域を覆うように絶縁膜を形成する工程と、少なくとも前記MISFETのソース・ドレインを含む前記シリコン基板上の半導体領域の表面に金属シリサイド層を形成する工程と、前記MISFET及び前記検査パターンを覆うように圧縮応力膜を形成する工程と、を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項18】
前記絶縁膜を、前記金属シリサイド層を形成する工程の後で除去することを特徴とする請求項17に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項19】
前記検査パターンを形成する工程は、素子分離領域を形成する工程を含むことを特徴とする請求項17又は18に記載の半導体装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【公開番号】特開2010−135346(P2010−135346A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−67659(P2007−67659)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】
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