説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】所望の仕事関数を得ると共にトランジスタの駆動力を劣化させない構造を有する半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置は、半導体基板1と、半導体基板1の上に形成された界面層5と、界面層5の上に形成された高誘電率ゲート絶縁膜6と、高誘電率ゲート絶縁膜6上に形成されたゲート電極とを備える。高誘電率ゲート絶縁膜6はランタンを含有し、高誘電率ゲート絶縁膜6におけるゲート電極との界面に含まれているランタンの濃度は、高誘電率ゲート絶縁膜における界面層との界面に含まれているランタンの濃度よりも大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高誘電率のゲート絶縁膜、特に、ハフニウム若しくはジルコニア酸化物又はそれらを含むシリコン酸化物からなるゲート絶縁膜を備えた半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
32nm世代のCMOSにおける低消費電力化及び高性能化を達成するため、ゲート絶縁膜の更なる薄膜化が要求されている。従来のシリコン酸化膜系材料をゲート絶縁膜に用いた場合、薄膜化によるリーク電流の増大が許容範囲を超えている。このため、従来のシリコン酸化膜系材料に比べて高い比誘電率を有するhigh−k絶縁膜をゲート絶縁膜に用いる技術が進展している。high−k絶縁膜の材料の候補としては、HfSiON膜が1000℃以上の熱的安定性を有すると共に13以上の比誘電率を有する点で有望視されている。ところが、HfSiON膜をゲート絶縁膜に用いると共に、ポリシリコンからなるゲート電極を用いる従来の構造では、特にP型MIS(metal−insulator−semiconductor)トランジスタにおいて、空乏化によるEOT(等価換算膜厚)の増加に加えて、フェルミレベルピニングによる閾値電圧の上昇が無視できない。
【0003】
これらの問題に対し、ゲート電極としてポリシリコン電極の代わりに金属電極を用いたゲートスタック技術の開発が盛んに行われている。バルクCMOS向けに、メタルゲートを適用する場合、n型MISトランジスタにはSiの伝導帯近傍の実効仕事関数、p型MISトランジスタには価電子帯近傍の実効仕事関数を有する金属を選定する必要がある。具体的には、p型MISトランジスタには4.8eV以上の実効仕事関数、n型MISトランジスタには4.3eV以下の実効仕事関数を有する金属を選定する必要がある。
【0004】
この点、金属材料と仕事関数との公知の関係から、n型MISトランジスタには、Ti、Mo、又はTaといった金属材料、p型MISトランジスタには、Pt、RuO、又はTiNといった金属材料が有望であることが分かっている。したがって、p型MISトランジスタのメタルゲート、及び、n型MISトランジスタのメタルゲートとして、これらの材料を用い、デュアルメタルゲートプロセスを構築することになる。
【0005】
しかしながら、n型MISトランジスタの仕事関数に対して有望な上記材料は、反対に、Moに代表されるように、加工性に難があると共に、ゲートファーストプロセスを想定した場合、700℃以上の熱負荷に対して不安定であることが知られている。このため、インテグレーションの難易度が高いことが問題となっている。
【0006】
一方で、n型MISトランジスタのメタルゲートの材料として、上記の金属材料を用いることなく、n型MISトランジスタとして所望の仕事関数を得る方法が提案されている。すなわち、仕事関数をn型MISトランジスタ側の仕事関数に変調させる効果を有する例えばLa又はMgといった金属を、例えばゲート絶縁膜中に混入させたり、又は、メタルゲートとゲート絶縁膜との間に挿入する方法が提案されている。このように、例えば、メタルゲートとゲート絶縁膜との間にこの金属を挿入した構造では、n型MISトランジスタのメタルゲート材料に上記の有望な金属材料を用いた場合と同様に、所望の仕事関数を得ることができる。その結果、n型MISトランジスタとして所望のトランジスタ閾値を得ることができる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−324594号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記La又はマグネシウムなどの金属をゲート絶縁膜に混入させることにより、所望の仕事関数を得ることが可能となる一方で、トランジスタのオン電流の低下、移動度の低下、及び信頼性の低下という問題が生じる。このように、仕事関数の変調量とトランジスタの駆動力とはトレードオフの関係になっている。
【0008】
前記に鑑み、本発明の目的は、所望の仕事関数を得ると共にトランジスタの駆動力を劣化させない構造を有する半導体装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明の例示的一形態の半導体装置は、半導体基板と、半導体基板の上に形成された界面層と、界面層の上に形成された高誘電率ゲート絶縁膜と、高誘電率ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極とを備え、高誘電率ゲート絶縁膜はランタンを含有しており、高誘電率ゲート絶縁膜におけるゲート電極との界面に含まれているランタンの濃度は、高誘電率ゲート絶縁膜における界面層との界面に含まれているランタンの濃度よりも大きい。
【0010】
本発明の例示的一形態の半導体装置において、高誘電率ゲート絶縁膜における界面層との界面中のランタンの濃度(atm%)は、HfLaSiON全組成の3%以下であることが好ましく、2%以下であることがより好ましい。なお、高誘電率ゲート絶縁膜を構成する全元素の中のバルクランタン濃度比にすると、5%以下であることが好ましい。
【0011】
本発明の例示的一形態の半導体装置において、高誘電率ゲート絶縁膜におけるゲート電極との界面中のランタンの濃度(atm%)は、7%以下であることが好ましい。
【0012】
本発明の例示的一形態の半導体装置において、界面層における半導体基板との界面中のランタンの濃度(atm%)は、2%以下であることが好ましく、1%以下であることがより好ましい。
【0013】
本発明の例示的一形態の半導体装置において、高誘電率ゲート絶縁膜中に含有されるランタンの濃度分布は、ゲート電極側から半導体基板側に向かって単調に減少していることが好ましい。
【0014】
本発明の例示的一形態の半導体装置において、高誘電率ゲート絶縁膜中に含有されるランタンの濃度分布は、ゲート電極側から高誘電率ゲート絶縁膜の高さ方向の中央部に向かって急峻に減少した後、界面層側に向かってなだらかに減少していることが好ましい。
【0015】
本発明の例示的一形態の半導体装置において、高誘電率ゲート絶縁膜は、ハフニウム若しくはジルコニウムを含む酸化膜又はシリコン酸化膜からなることが好ましい。
【0016】
本発明の例示的一形態の半導体装置において、ゲート電極は、窒化チタン(TiN)、窒化タンタル(TaN)、炭素含有タンタル(TaC)、又はアルミニウム含有窒化チタン(TiAlN)からなることが好ましい。
【0017】
本発明の例示的一形態の半導体装置の製造方法は、P型トランジスタ形成領域とN型トランジスタ形成領域とを有する半導体基板の上に界面層を形成する工程(a)と、界面層の上に高誘電率ゲート絶縁膜を形成する工程(b)と、高誘電率ゲート絶縁膜上に、P型トランジスタ形成領域を覆うハードマスクを形成する工程(c)と、工程(c)の後に、半導体基板上に、ランタン層を形成する工程(d)と、アニール処理により、N型トランジスタ形成領域における高誘電率ゲート絶縁膜中にランタン層からのランタンを拡散させる工程(e)と、工程(e)の後に残存しているランタン層を除去する工程(f)と、工程(f)の後に、P型トランジスタ形成領域には、高誘電率ゲート絶縁膜上にハードマスクを介してP型ゲート電極を形成する一方で、N型トランジスタ形成領域には、高誘電率ゲート絶縁膜上にN型ゲート電極を形成する工程(g)とを備え、高誘電率ゲート絶縁膜におけるゲート電極との界面に含まれているランタンの濃度は、高誘電率ゲート絶縁膜における界面層との界面に含まれているランタンの濃度よりも大きい。
【0018】
本発明の例示的一形態の半導体装置の製造方法において、工程(d)におけるランタン層の形成は、La若しくはLaからなるターゲットを用いたPVD法、CVD法、又は、原子層堆積法を用いて行う工程であり、工程(e)におけるアニール処理は、400℃以上で且つ800℃以下の温度で行う工程であることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の例示的一形態によると、所望の仕事関数及び所望のトランジスタ閾値を得ながら、トランジスタの界面特性、オン電流、及びキャリアの移動度を劣化させない半導体装置が実現される。その結果、信頼性に優れた半導体装置が実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明の例示的一実施形態に係る半導体装置及びその製造方法について、図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1(a)〜(e)及び図2(a)〜(e)は、本発明の例示的一実施形態に係る半導体装置を製造する方法を工程順に示す断面図である。なお、各図における紙面に向かって左側の領域が、p型MISトランジスタ形成領域1Aであり、同右側の領域が、n型MISトランジスタ形成領域1Bである。
【0022】
まず、図1(a)に示すように、例えばシリコンからなる半導体基板1における上部に、LOCOS(local oxidation of silicon)法、又はSTI(shallow trench isolation)分離法等を用いて、素子分離絶縁膜2を形成する。続いて、n型MIS形成領域1Bを覆うマスクを用いて、半導体基板1にn型不純物をイオン注入することにより、半導体基板1におけるp型MISトランジスタ形成領域1Aにnウェル領域3を形成する。また、p型MIS形成領域1Aを覆うマスクを用いて、半導体基板1にp型不純物をイオン注入することにより、半導体基板1におけるn型MISトランジスタ形成領域1Bにpウェル領域4を形成する。
【0023】
次に、図1(b)に示すように、半導体基板1の全面に、極薄膜の界面層である膜厚0.5以上で且つ1.5nm程度の熱酸化膜5を形成する。続いて、圧力が、5mTorr(1mTorrは1/1000Torrであって、1Torrは約1.33×10Paである。以下同様である。)以上で且つ1000mTorr以下、混合ガスの割合がAr/N=1000/40、直流電源パワー(DCパワー)が0.5kW以上で且つ3kW以下、ステージ温度が室温以上で且つ400℃程度以下の条件にて、プラズマ窒化処理を行う。このようにすると、後に形成するhigh−k絶縁膜6のアニール時に、界面層である熱酸化膜5が増膜することを防止できる。
【0024】
続いて、圧力が、0.5Torr以上で且つ5Torr以下、温度が1000℃、酸素雰囲気下、時間が15sec程度のアニール条件にて、窒化処理後のアニールを行う。このようにすると、界面層5である熱酸化膜の膜中に存在している原子状窒素の脱離を促進させると共に、不完全な結合又は欠陥を修復することができる。
【0025】
続いて、熱酸化膜5の上に、原料ガスとして、TEMAH(テトラキスエチルメチルアミノハフニウム)とSiH4(シラン)とを用い、成膜温度が500℃以上で且つ600℃以下の範囲、混合ガスの流量が、TEMAH/SiH4/O2=50/50/1000sccmである条件下で、ハフニウムシリケート膜からなるhigh−k絶縁膜6を形成する。また、膜厚については、EOTとして1.0nm以上で且つ1.5nm程度以下の範囲を実現しようとするのであれば、物理膜厚は2nm以上で且つ3nm以下程度であることが好ましい。なお、high−k絶縁膜6としては、ハフニウム若しくはジルコニウムを含む酸化膜又はシリコン酸化膜を用いることができる。
【0026】
続いて、high−k絶縁膜6の結晶化を防止するために、high−k絶縁膜6に対してプラズマ窒化処理を行う。なお、ここでのプラズマ窒化処理の条件としては、上述した界面層5に対するプラズマ窒化処理の条件と同様である。続いて、high−k絶縁膜6に対して、酸素又は窒素雰囲気下でアニールを行う。このようにすると、high−k絶縁膜6の膜中の不純物除去及び欠陥の修復、並びに界面層5との密着性を向上させることができる。
【0027】
続いて、high−k絶縁膜6の上に、ハードマスクとしてのTiN層8を形成する。ここで、high−k絶縁膜6の上に、仕事関数を変調させる材料であるLa材料を直接形成せずに、ハードマスクとしてのTiN層8を形成するのは、La材料がhigh−k絶縁膜6中へ拡散する速度が速いため、p型MIS形成領域1Aにおいてhigh−k絶縁膜6中へLa材料が拡散することによる仕事関数の劣化を防止するためである。
【0028】
また、TiN層8の形成は、スパッタ法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法又はALD(Atomic Layer Deposition)法のいずれの成膜方法を用いてもよい。ここでは、例えばスパッタ法を用いて成膜する場合には、Tiをターゲットとして用い、圧力が0.1Torr、直流電源パワー(DCパワー)が0.3kW以上で且つ2kW以下、直流電源Vdcが100V程度、Nプラズマ雰囲気下の条件にて、反応性スパッタにより成膜する。また、膜厚として、10nm以上で且つ20nm以下程度であることが、加工上望ましい膜厚である。
【0029】
なお、CVD法を用いてTiN膜を成膜する場合には、塩化チタン(TiCl)及び窒化種(例えばNHなど)からなる原料ガスを用いてTi膜を形成して窒化する方法を用いることができる。また、ALD法を用いてTiN膜を成膜する場合には、塩化チタン(TiCl)等の原料ガスと窒化種(例えばNHなど)とを交互に供給することによって成膜する。ALD法を用いることにより、膜厚および不純物の制御を向上できるのみならず、プロセスの低温化が可能となるなどの利点が多い。
【0030】
次に、リソグラフィ及びエッチング技術を用いて、TiN膜8におけるn型MISトランジスタ形成領域1Bの部分をエッチング除去する。この場合、TiN膜8の下層のhigh−k絶縁膜6が、TiN膜8の除去に用いる薬液に曝されてダメージを与えないような条件設定が必要である。具体的には、1/1000〜1/100程度の希塩酸(dHCl)若しくは過酸化水素水(H)と塩酸(HCl)とを混合した濃度1/100〜1/1000程度の塩酸過水(HPM)、又は硫酸(HSO)と過酸化水素水(H)とを混合した濃度1/100〜1/1000程度の硫酸過酸化水素水(SPM)を用いることが好ましい。
【0031】
次に、図1(d)に示すように、スパッタ法又はALD法を用いて、半導体基板1の前面に、仕事関数を変調させる材料であるランタン層9を形成する。スパッタ法を用いる場合には、ランタンからなるターゲットを用い、Arガスを用いた直流放電により、ランタン層9を形成することができる。また、酸素ガスを用いた反応性スパッタによって酸化ランタン層からなるランタン層9を形成することができる。さらには、酸化ランタン(La)からなるターゲットを用いたRFスパッタによって酸化ランタン層からなるランタン層9を形成することができる。また、ランタンを含む有機材料を気化させ、堆積した後、パージ処理、酸化、及び、有機物除去を順に行ってランタン層9を形成することができる。
【0032】
ここでは、一例として、上記RFスパッタを用いて酸化ランタンからなるランタン層9を成膜する条件について具体的に説明する。具体的な条件として、RFパワーが300W以上でかつ800W以下、放電圧力が0.1Torr、直流電源Vdcが100V程度とすることで、成膜レートが1nmあたり40sec以上で且つ100sec以下程度に制御することができる。このようにして、N型MISトランジスタ形成領域1Bにおけるhigh−k絶縁膜6上にて、膜厚0.1以上で且つ1nm程度、好ましくは0.1nm以上で且つ2nm程度のランタン層9を成膜する。
【0033】
次に、図1(e)に示すように、ランタン層9に対してアニール処理を行うことにより、ランタン層9中のランタンをhigh−k絶縁膜6中に熱拡散させて混入させる。具体的には、温度が約600℃以上で且つ700℃以下の範囲、好ましくは約800℃以上で且つ900℃以下の範囲、より好ましくは、約600℃以上で且つ約900℃以下の範囲の温度にて、窒素雰囲気下でアニール処理を行う。また、アニール時間は、数ミリ秒以上で且つ数分以下、好ましくは、約1秒以上で且つ約20分以下の範囲である。
【0034】
続いて、アニール処理後、high−k絶縁膜6及びTiN層8上の未反応のランタン化合物を除去する。このようにするのは、未反応のランタン化合物を残存させた状態で、ゲート電極の形成などの次工程に進行すると、N型MISトランジスタの特性として、過剰ランタンによる耐圧及び信頼性の低下が問題となる一方で、P型MISトランジスタの特性として、ゲートエッチング時のエッチストップ及び界面抵抗の上昇によるデバイスの遅延が問題になる。
【0035】
また、ここでは、未反応のランタンを洗浄除去する際は、n型MISトランジスタ形成領域1Bにおけるhigh−k絶縁膜6が薬液に曝されてダメージを与えないような条件設定とすることが必要である。具体的には、1/1000〜1/100程度の希塩酸(dHCl)若しくは過酸化水素水(H)と塩酸(HCl)とを混合した濃度1/100〜1/1000程度の塩酸過水(HPM)、又は硫酸(HSO)と過酸化水素水(H)とを混合した濃度1/100〜1/1000程度の硫酸過酸化水素水(SPM)を用いることが好ましい。
【0036】
また、アニール処理後のTiN層8へのLaの拡散長がアニール温度に依存し、800℃でのアニール処理の場合には3nm程度とみなされる。このため、未反応ランタンの除去は、少なくともTiN層8の表面の3〜5nm程度をオーバーエッチングする程度の洗浄を行うことが好ましい。この場合、N型MISトランジスタ形成領域1Bにおけるhigh−k絶縁膜6に対するダメージを最小限に押さえながら、P型MISトランジスタ形成領域1Aにおける未反応のランタン化合物とTiN層8の表面層を除去することが好ましい。もっともhigh−k絶縁膜6へのダメージが許容できる範囲内であれば、TiNを全面除去することも可能である。
【0037】
次に、図2(a)に示すように、半導体基板1の全面に、N型MISトランジスタ形成領域1Bにおけるゲート電極材料であるTiN層10を形成する。ここでは、上述したハードマスクとしてのTiN層8の形成と同様に、PVD法、CVD法、又はALD法を用いることができる。TiN層10の膜厚としては、4nm以上で且つ20nm以下であることが好ましい。また、ゲート電極材料としては、上記窒化チタン(TiN)の他に、窒化タンタル(TaN)、炭素含有タンタル(TaC)、又はアルミニウム含有窒化チタン(TiAlN)を用いることができる。
【0038】
続いて、濃度が1×1014以上で且つ2×1015/cm程度のリンがドーピングされたポリシリコン膜を膜厚80以上で且つ150nmの範囲で堆積する(図示せず)。
【0039】
次に、図2(b)に示すように、リソグラフィ及びエッチング技術を用いて、P型MISトランジスタ形成領域1Aでは、ドーピングされたポリシリコン膜、TiN層10、TiN層8、high−k絶縁膜6、及び界面層5をパターニングしてP型ゲート電極を形成する。また、N型MISトランジスタ形成領域1Bでは、ドーピングされたポリシリコン膜、TiN層10、high−k絶縁膜6、及び界面層5をパターニングしてN型ゲート電極を形成する。
【0040】
次に、図2(c)に示すように、公知の方法により、P型MISトランジスタ形成領域1Aでは、接合深さが比較的浅いP型不純物拡散層11a、サイドウォール12、接合深さが比較的深いP型不純物拡散層13a、及び、シリサイド層14を形成する。同様に、N型MISトランジスタ形成領域1Bでは、接合深さが比較的浅いN型不純物拡散層11b、サイドウォール12、接合深さが比較的深いN型不純物拡散層13b、及び、シリサイド層14を形成する。
【0041】
次に、図2(d)に示すように、公知の方法により、半導体基板1の上に、P型ゲート電極及びN型ゲート電極を覆うように、例えばシリコン酸化膜からなる層間絶縁膜15を形成する。続いて、層間絶縁膜15を貫通してシリサイド層14に到達する例えばタングステンからなるコンタクトプラグ16を形成する。その後、図示しない配線などを形成する。
【0042】
以上の図1(a)〜(e)及び図2(a)〜(d)を用いて説明した工程により、本発明の例示的一実施形態に係る半導体装置の構造を製造することができる。
【0043】
以下に、本発明の例示的一実施形態に係る半導体装置の特性について、具体的に説明する。
【0044】
まず、図3は、N型MISトランジスタ形成領域1Bに形成されるN型MISトランジスタについて、high−k絶縁膜6中のランタン濃度(面密度)(/cm)と実効仕事関数の変化量ΔeWF(eV)との関係を示している。
【0045】
図3に示すように、N型MISトランジスタにおけるhigh−k絶縁膜6中のランタン濃度の上昇に比例して、実効仕事関数の変化量ΔeWFが増大していることが分かる。
【0046】
次に、図4は、N型MISトランジスタ形成領域1Bに形成されるN型MISトランジスタについて、high−k絶縁膜6のEOT(等価換算膜厚)と実効仕事関数eWF(eV)との関係を示している。
【0047】
図4に示すように、上述した図2(d)の工程によりランタン層(例えばLaO層)9中のランタンのhigh−k絶縁膜6への導入量をアニール温度の上昇に伴って増大させることにより、EOTは薄膜化し、かつ実行仕事関数も低減していくことが分かる。このことは、ランタンがhigh−k絶縁膜6、例えばHfSiON膜へ混入されることにより、比誘電率がさらに改善することが分かる。一方で、図4から、アニール温度を高温化すると、例えば1nmのLaO層からなるランタン層9を適用した場合には、アニール温度600℃を境にして、EOTの低膜化が極端に鈍化すると共に実効仕事関数が大幅に減少することが分かる。同様に、例えば2nmのLaO層からなるランタン層9を適用した場合には、アニール温度800℃を境にして、EOTは大幅に増膜化すると共に実効仕事関数が大幅に減少することが分かる。
【0048】
次に、図5は、N型MISトランジスタ形成領域1Bに形成されるN型MISトランジスタについて、high−k絶縁膜6、界面層5、及びシリコンからなる半導体基板(シリコン基板)中におけるLaの深さ方向の濃度(atom%)の分布状態を示している。
【0049】
図5に示すように、ランタン層9としての酸化ランタン(LaO)の膜厚が0.5nm、1nm、2nmである場合に、600℃又は800℃の高温アニールを行った結果によると(但し、スパイクアニールは行っていない)、ランタン層9からのランタンが、high−k絶縁膜6中に深く拡散し、界面層5との界面、さらにはシリコン基板(半導体基板1)と界面層5との界面を越えて拡散していることが分かる。ただし、酸化ランタンの膜厚が1nm又は2nmであって高温アニールの温度が800℃であった場合には、他の場合(酸化ランタン2nmでアニール温度600℃、酸化ランタン0.5nmでアニール温度800℃、酸化ランタン1nmでアニール温度600℃)に比べて高濃度で且つ深くランタンが拡散している。この結果は、上述の図4にて酸化ランタン1nm又は2nmで800℃の場合に、EOTの薄膜化の鈍化及び増膜化と共に実効仕事関数が低下した場合に対応している。つまり、アニール温度が800℃以上となって且つランタン層9としての酸化ランタンの膜厚が1nm以上となると、高濃度に深く拡散するLaがシリコン基板又は界面層5と反応してEOTが増膜傾向となることが原因と考えられる。
【0050】
次に、N型MISトランジスタ形成領域1Bに形成されるN型MISトランジスタについて、各LaOの成膜及びアニール条件に対して、界面層熱酸化膜5とhigh−k絶縁膜6との界面ランタン濃度(atom%)、N型MISトランジスタの実効仕事関数の変化量ΔeWF(eV)及び同トランジスタのLaO成膜なし条件に対する移動度劣化度合いΔμ/μ(%)を示したものが、下記[表1]である。
【0051】
【表1】

【0052】
[表1]の結果に基づいて、界面ランタン濃度(atom%)を横軸にして、上記ΔeWF(eV)、移動度劣化度合いΔμ/μ(%)を縦軸にとってプロットしたものが図6である。
【0053】
図6に示すように、アニール温度を高温にすると、界面層熱酸化膜5とhigh−k絶縁膜6界面のランタン濃度が上昇し、実効仕事関数シフト量が増加するが、キャリア移動度も劣化することが分かる。つまり、LaO1nmでかつアニール温度が800℃の場合において、界面層5とhigh−k絶縁膜6との界面のランタンの濃度が組成比で3%程度となり、実効仕事関数の改善は得られるが、キャリア移動度が顕著に劣化していることが分かる。またLaO2nmでは、さらに移動度の劣化がより進行していることが分かる。このように、アニール温度とhigh−k絶縁膜5から界面層6へのランタンの拡散濃度の制御が重要であることが分かる。
【0054】
以上の図3〜図6の結果から分かるように、実効仕事関数(eWF)を最大化しながら、EOTの増膜及びキャリア移動度の劣化を抑制するためには、図4及び図5に示すように、high−k絶縁膜6における界面層5との界面中のランタン濃度(atm%)として3%以下であることが好ましい。また、アニール温度が800℃でランタン層9としてのLaO層の膜厚1nmの場合には、図4に示すように、EOTの薄膜化の鈍化と共に実効仕事関数が低下し始めていることから、より好ましくは、2%以下であることが好ましい。なお、high−k絶縁膜6を構成する全元素の中のバルクランタン濃度比にすると、5%(面密度にして2×1013/cm程度)以下であることが好ましい。
【0055】
−変形例−
ここで、上述した本発明の例示的一実施形態の半導体装置及びその製造方法の変形例について説明する。
【0056】
上述した半導体装置の製造方法においては、high−k絶縁膜6上にランタン層9を形成した後、アニール処理によってhigh−k絶縁膜6へランタン層9中のランタンを拡散させる工程について説明した。本変形例では、ランタン層9を多段階成膜により形成すると共にアニール処理を多段階で行うものであり、その他の工程は、上述と同様である。
【0057】
具体的には、例えば、第1の段階として、薄膜のランタン層(膜厚0.3nm)を堆積した後に高温(アニール温度800℃以上)でのアニール処理を行い、第2の段階として、厚膜のランタン層(膜厚1.0nm)を堆積した後に中温(アニール温度700℃以上)でのアニール処理を行い、第3の段階として、厚膜のランタン層(膜厚1.0nm)を堆積した後に低温(アニール温度600℃以上)でのアニール処理を行う。なお、アニール処理では、窒素ガス雰囲気下であることが好ましい。このように、ランタン層9の堆積膜厚とアニール温度とを多段階に制御することにより、high−k絶縁膜6中のランタンの分布制御を詳細に行う。
【0058】
このようにするのは、high−k絶縁膜6中へランタンが固相拡散する場合、高温アニールが適用されると、ランタンとhigh−k絶縁膜6との反応がほぼ拡散律速で進行することから、ランタンの供給量を抑えるために、ランタン層の成膜量を少なくすることが好ましいからである。一方で、低温アニールが適用されると、ランタンとhigh−k絶縁膜6との反応が、high−k絶縁膜6中へのランタンの拡散速度が遅い反応律速で進行することから、ランタンの供給量を多くするために、ランタン層9の成膜量を多くすることが好ましいからである。
【0059】
図7は、N型MISトランジスタ形成領域1Bに形成されるN型MISトランジスタについて、深さ方向におけるランタン濃度の分布について、上記第1〜第3の段階におけるランタン濃度の分布7b〜7d(高温アニールの第1の段階7d、中温アニールの第2の段階7c、低温アニールの第3の段階7b)と全段階を積算したランタン濃度の分布7aとを示している。
【0060】
図7に示すように、上記第1〜第3の段階による多段階制御を行って、high−k絶縁膜6中へのランタンの拡散を行った場合、ランタンの濃度は、high−k絶縁膜6におけるn型ゲート電極との界面において7%、high−k絶縁膜6における界面層5との界面において2.5%、界面層5におけるシリコン基板との界面において1%程度であるランタン分布が得られた。
【0061】
以上のようにすると、high−k絶縁膜6と界面層5との界面へのランタンの拡散を制御しながら、high−k絶縁膜6の表面側(n型ゲート電極との界面側)にランタンを高濃度に分布させることができる。つまり、好ましくは、high−k絶縁膜6におけるn型ゲート電極との界面において7%、high−k絶縁膜6における界面層5との界面において3%(より好ましくは2%)、界面層5におけるシリコン基板との界面において2%(より好ましくは1%)のランタンの濃度(atom%)を得るとよい。このようにすると、本変形例では、EOTをさらに向上させることができると共に実効仕事関数を低下させることができる。また、トランジスタの閾値電圧Vtを最大限に低く抑えることができる。同時に、キャリアの移動度の劣化などの信頼性の低下を招来することのないデバイス特性を得ることができる。なお、本変形例では、多段階制御として3段階である場合について説明したが、段階数はこれに限定されるものではないことは言うまでもない。
【0062】
なお、以上で説明した例示的一実施形態は、本発明を実施するにあたって好ましい具体例であることから、技術的に種々の限定がなされているが、特に本発明を限定する旨の明記がなされていない限り、これらの形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲に含まれる全ての変更及び改変された態様に及ぶものである。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】図1(a)〜(e)は、本発明の例示的一実施形態に係る半導体装置を製造する方法を工程順に示す断面図である。
【図2】図2(a)〜(e)は、本発明の例示的一実施形態に係る半導体装置を製造する方法を工程順に示す断面図である。
【図3】N型MISトランジスタ形成領域に形成されるN型MISトランジスタにおける、high−k絶縁膜中のLa濃度(/cm)と実効仕事関数ΔeWF(eV)との関係図である。
【図4】N型MISトランジスタ形成領域に形成されるN型MISトランジスタにおける、high−k絶縁膜のEOT(酸化膜換算膜厚)と実効仕事関数の変化量ΔeWF(eV)との関係図である。
【図5】N型MISトランジスタ形成領域に形成されるN型MISトランジスタにおける、high−k絶縁膜、界面層、及びシリコンからなる半導体基板中におけるLaの深さ方向の分布図である。
【図6】N型MISトランジスタ形成領域に形成されるN型MISトランジスタにおける、high−k/界面層界面La濃度(atom%)、実効仕事関数の変化量ΔeWF(eV)、及びトランジスタのキャリア移動度のLaO無条件に対する劣化度合い(%)の相互間の関係図である。
【図7】N型MISトランジスタ形成領域に形成されるN型MISトランジスタにおける、変形例における多段階制御を用いた深さ方向におけるランタン濃度の分布図である。
【符号の説明】
【0064】
1 半導体基板
2 分離絶縁膜
3 nウェル領域
4 pウェル領域
5 界面層
6 high−k絶縁膜
8 TiN層
9 ランタン層
10 TiN層
11a 接合深さが比較的浅いp型不純物拡散層
11b 接合深さが比較的浅いn型不純物拡散層
12 サイドウォール
13a 接合深さが比較的深いp型不純物拡散層
13b 接合深さが比較的深いn型不純物拡散層
14 シリサイド層
15 層間絶縁膜
16 コンタクトプラグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板の上に形成された界面層と、
前記界面層の上に形成された高誘電率ゲート絶縁膜と、
前記高誘電率ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極とを備え、
前記高誘電率ゲート絶縁膜はランタンを含有しており、
前記高誘電率ゲート絶縁膜における前記ゲート電極との界面に含まれている前記ランタンの濃度は、前記高誘電率ゲート絶縁膜における前記界面層との界面に含まれている前記ランタンの濃度よりも大きく、
前記高誘電率ゲート絶縁膜における前記界面層との界面中の前記ランタンの濃度(atm%)は、3%以下である、半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記高誘電率ゲート絶縁膜における前記界面層との界面中の前記ランタンの濃度(atm%)は、2%以下である、半導体装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の半導体装置において、
前記高誘電率ゲート絶縁膜における前記ゲート電極との界面中の前記ランタンの濃度(atm%)は、7%以下である、半導体装置。
【請求項4】
請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記界面層における前記半導体基板との界面中の前記ランタンの濃度(atm%)は、2%以下である、半導体装置。
【請求項5】
請求項4に記載の半導体装置において、
前記界面層における前記半導体基板との界面中の前記ランタンの濃度(atm%)は、1%以下である、半導体装置。
【請求項6】
請求項1〜5のうちのいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記高誘電率ゲート絶縁膜中に含有される前記ランタンの濃度分布は、前記ゲート電極側から前記半導体基板側に向かって単調に減少している、半導体装置。
【請求項7】
請求項6に記載の半導体装置において、
前記高誘電率ゲート絶縁膜中に含有される前記ランタンの濃度分布は、前記ゲート電極側から前記高誘電率ゲート絶縁膜の高さ方向の中央部に向かって急峻に減少した後、前記界面層側に向かってなだらかに減少している、半導体装置。
【請求項8】
請求項1〜7のうちのいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記高誘電率ゲート絶縁膜は、ハフニウム若しくはジルコニウムを含む酸化膜又はシリコン酸化膜からなる、半導体装置。
【請求項9】
請求項1〜8のうちのいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記ゲート電極は、窒化チタン(TiN)、窒化タンタル(TaN)、炭素含有タンタル(TaC)、又はアルミニウム含有窒化チタン(TiAlN)からなる、半導体装置。
【請求項10】
P型トランジスタ形成領域とN型トランジスタ形成領域とを有する半導体基板の上に界面層を形成する工程(a)と、
前記界面層の上に高誘電率ゲート絶縁膜を形成する工程(b)と、
前記高誘電率ゲート絶縁膜上に、前記P型トランジスタ形成領域を覆うハードマスクを形成する工程(c)と、
前記工程(c)の後に、前記半導体基板上に、ランタン層を形成する工程(d)と、
アニール処理により、前記N型トランジスタ形成領域における前記高誘電率ゲート絶縁膜中に前記ランタン層からのランタンを拡散させる工程(e)と、
前記工程(e)の後に残存している前記ランタン層を除去する工程(f)と、
前記工程(f)の後に、前記P型トランジスタ形成領域には、前記高誘電率ゲート絶縁膜上に前記ハードマスクを介してP型ゲート電極を形成する一方で、前記N型トランジスタ形成領域には、前記高誘電率ゲート絶縁膜上にN型ゲート電極を形成する工程(g)とを備え、
前記高誘電率ゲート絶縁膜における前記ゲート電極との界面に含まれている前記ランタンの濃度は、前記高誘電率ゲート絶縁膜における前記界面層との界面に含まれている前記ランタンの濃度よりも大きい、半導体装置の製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の半導体装置の製造方法において、
前記工程(d)における前記ランタン層の形成は、La若しくはLaからなるターゲットを用いたPVD法、CVD法、又は、原子層堆積法を用いて行う工程であり、
前記工程(e)における前記アニール処理は、400℃以上で且つ800℃以下の温度で行う工程である、半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−153752(P2010−153752A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−333088(P2008−333088)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】