説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】PMISトランジスタのソースドレイン電極に高濃度のゲルマニウムを含むシリコンゲルマニウム層を用いても、シリコンゲルマニウム層に格子緩和を生じさせることなく、ソースドレイン電極の上部にシリコン層又は金属シリサイド層を形成できるようにする。
【解決手段】半導体装置は、n型半導体領域100の上にゲート絶縁膜101を介在させて形成されたゲート電極102と、その両側方に形成されたp型のソースドレイン電極150とを有している。ソースドレイン電極150は、n型半導体領域100に設けられた各リセス部100aに、その底部から少なくともチャネル領域の深さにまで形成されたシリコンゲルマニウム層111と、その上に形成され、炭素とシリコンゲルマニウム層のゲルマニウム濃度よりも低いゲルマニウムとを含むカーボンドープドシリコンゲルマニウム層112と、その上に形成された金属シリサイド層115とから構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関し、特にソースドレイン電極にシリコンゲルマニウム(SiGe)からなるエピタキシャル膜を含むPMIS(P-type Metal Insulator Semiconductor)トランジスタを有する半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体装置における大容量化は著しく、MISトランジスタ、とりわけMOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタの微細化の進展は、ゲート電極の幅(ゲート長)が40nm以下になろうとしている。また、トランジスタの動作の高速化に対応して、トランジスタのチャネル領域にストレスを印加することにより、該トランジスタの駆動力を上げる歪み技術も既に実用化されている。
【0003】
トランジスタのチャネル領域に歪みを導入することにより、チャネル領域のバンド構造が変化する。その結果、チャネル領域のキャリアの有効質量が変化して、バンド占有率の変化等が起こり、チャネル領域のキャリアの移動度が変化する。チャネル領域に歪みを導入するには、チャネル領域にストレスを印加する必要がある。チャネル領域に印加するストレスの方向は、NMOSトランジスタ及びPMOSトランジスタとでは異なっており、NMOSトランジスタにおいては引張り応力を印加する必要があり、PMOSトランジスタにおいては圧縮応力を印加する必要があることが知られている。
【0004】
このうち、PMOSトランジスタのチャネル領域におけるキャリアの移動度を劇的に向上させる歪み技術として、PMOSトランジスタのソースドレイン領域に、シリコン(Si)よりも格子定数が大きいシリコンゲルマニウム(SiGe)膜をエピタキシャル成長により成膜する方法が提案されている(例えば、非特許文献1を参照。)。シリコンよりも大きい格子定数を持つシリコンゲルマニウム膜をチャネル領域の両端に位置するソースドレイン領域にエピタキシャル成長させることにより、チャネル領域に横方向から格子定数の差に起因する圧縮応力を印加することができる。ここで、チャネル領域に印加される圧縮応力は、シリコンゲルマニウムに含まれるゲルマニウム濃度が高いほど大きくなる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】T. Ghani et. al., IEDM Tech. Dig., pp.978-980, 2003
【非特許文献2】Y. S. Kim et. al., IEDM Tech. Dig., pp.871-874, 2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述したように、PMOSトランジスタのチャネル領域におけるキャリアの移動度を向上させるには、チャネル領域に印加するストレスを高くする必要があり、そのためには、シリコンゲルマニウムに含まれるゲルマニウム濃度は高いほど好ましい。
【0007】
しかしながら、PMOSトランジスタのソースドレイン領域に、シリコンゲルマニウム層をエピタキシャル成長させるだけでは、以下のような問題が生じる。
【0008】
第1に、シリコンゲルマニウムは、アンモニア水と過酸化水素水とを含む洗浄液に溶解するという問題である。この洗浄液は、半導体装置の各製造工程においてパーティクルの除去等に必ず使用されるため大きな問題となる。
【0009】
第2に、形成されたシリコンゲルマニウム層には、通常の低抵抗の金属シリサイド電極が形成できないという問題である。すなわち、シリコンゲルマニウム層の上に金属膜を成膜して金属シリサイド層を形成すると、形成した金属シリサイド層のシート抵抗が上昇してしまう。金属シリサイド層のシート抵抗が上昇すると、トランジスタの駆動電流の向上を図る上で大きな阻害要因となる。
【0010】
これらの問題を解決する方法として、例えば非特許文献2に記載されているように、シリコンゲルマニウム層の上にシリコン層をエピタキシャル成長させるという方法がある。シリコンゲルマニウム層の上にシリコン層を選択的にエピタキシャル成長させるには、温度が700℃以上の水素雰囲気で成膜する必要がある。
【0011】
しかしながら、700℃以上の水素雰囲気では、ゲルマニウム濃度が25atm%(原子%)以上のシリコンゲルマニウム層は、原子のマイグレーションが起こり、格子緩和が発生してしまう。シリコンゲルマニウム層に格子緩和が発生すると、チャネル領域に圧縮応力を有効に印加することができなくなるという問題が生じる。
【0012】
本発明は、前記従来の問題を解決し、PMISトランジスタにおけるソースドレイン電極に相対的にゲルマニウム濃度が高いシリコンゲルマニウム層を用いても、該シリコンゲルマニウム層に格子緩和を生じさせることなく、ソースドレイン電極の上部にシリコン層又は金属シリサイド層を形成できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記の目的を達成するため、本発明は、半導体装置を、ソースドレイン電極を形成するシリコンゲルマニウム層とシリコン層又は金属シリサイド層との間に、該シリコンゲルマニウム層よりもゲルマニウム濃度が低く且つ炭素又は窒素を含む炭素又は窒素含有シリコンゲルマニウム層を形成する構成とする。
【0014】
具体的に、本発明に係る半導体装置は、n型半導体領域と、n型半導体領域の上に第1のゲート絶縁膜を介在させて形成された第1のゲート電極と、n型半導体領域における第1のゲート電極の両側方の領域に形成されたp型ソースドレイン電極とを備え、p型ソースドレイン電極は、n型半導体領域に設けられた各凹部に、その底部から少なくともチャネル領域の深さにまで形成されたシリコンゲルマニウム層と、シリコンゲルマニウム層の上に形成され、炭素又は窒素とシリコンゲルマニウム層のゲルマニウム濃度よりも低いゲルマニウムとを含む炭素又は窒素含有シリコンゲルマニウム層と、炭素又は窒素含有シリコンゲルマニウム層の上に形成された金属シリサイド層とから構成され、シリコンゲルマニウム層は格子緩和をしていないことを特徴とする。
【0015】
本発明の半導体装置によると、p型ソースドレイン電極は、シリコンゲルマニウム層の上に形成され、炭素又は窒素とシリコンゲルマニウム層のゲルマニウム濃度よりも低いゲルマニウムとを含む炭素又は窒素含有シリコンゲルマニウム層を有している。このため、炭素又は窒素含有シリコンゲルマニウム層の上に金属シリサイド層を形成するためのシリコン層を形成する際の温度が700℃以上の水素雰囲気におかれても、炭素又は窒素含有シリコンゲルマニウム層はそのゲルマニウム濃度が低いため、表面歪みエネルギーが小さくなる。その上、原子半径が小さい炭素又は窒素を添加していることから、表面での歪みエネルギーがより小さくなるので、その下のシリコンゲルマニウム層に生じる原子のマイグレーションを抑制することができる。これにより、シリコンゲルマニウム層に格子緩和を生じさせることなく、炭素又は窒素含有シリコンゲルマニウム層の上に、金属シリサイド形成用のシリコン層を成長させることができる。
【0016】
本発明の半導体装置において、シリコンゲルマニウム層のゲルマニウム濃度は、25atm%以上であることが好ましい。このようにすると、n型半導体領域における第1のゲート電極の下側に形成されるチャネル領域により有効な高い圧縮応力を印加することができる。
【0017】
本発明の半導体装置において、炭素又は窒素含有シリコンゲルマニウム層における炭素濃度又は窒素濃度は、3atm%以下であることが好ましい。このようにすると、シリコンゲルマニウム層に生じる原子のマイグレーションをより確実に抑制することができる。
【0018】
本発明の半導体装置は、炭素又は窒素含有シリコンゲルマニウム層と金属シリサイド層との間に形成されたシリコン層をさらに備えていてもよい。
【0019】
また、本発明の半導体装置は、p型半導体領域と、p型半導体領域の上に第2のゲート絶縁膜を介在させて形成された第2のゲート電極と、p型半導体領域における第2のゲート電極の両側方の領域に形成されたn型ソースドレイン電極とをさらに備えていてもよい。このようにすると、本発明を有するPMISトランジスタを有するCMOS(Complementary MOS)型半導体装置を実現することができる。
【0020】
本発明に係る半導体装置の製造方法は、n型半導体領域の上に第1のゲート絶縁膜を介在させた第1のゲート電極を選択的に形成する工程(a)と、n型半導体領域における第1のゲート電極の両側方の領域に対して選択的にエッチングを行うことにより、チャネル領域の深さ以上の凹部をそれぞれ形成する工程(b)と、エピタキシャル成長法により、各凹部にその底部から少なくともチャネル領域の深さにまで、p型のシリコンゲルマニウム層を選択的に形成する工程(c)と、エピタキシャル成長法により、シリコンゲルマニウム層の上に、炭素又は窒素とシリコンゲルマニウム層のゲルマニウム濃度よりも低いゲルマニウムとを含む炭素又は窒素含有シリコンゲルマニウム層とを選択的に形成する工程(d)と、エピタキシャル成長法により、炭素又は窒素含有シリコンゲルマニウム層の上に、シリコン層を選択的に形成する工程(e)と、シリコン層の上に金属膜を形成した後、形成した金属膜とシリコン層とから金属シリサイド層を形成する工程(f)とを備え、シリコンゲルマニウム層、炭素又は窒素含有シリコンゲルマニウム層及び金属シリサイド層からp型ソースドレイン電極をそれぞれ形成することを特徴とする。
【0021】
本発明の半導体装置の製造方法によると、シリコンゲルマニウム層の上に、炭素又は窒素とシリコンゲルマニウム層のゲルマニウム濃度よりも低いゲルマニウムとを含む炭素又は窒素含有シリコンゲルマニウム層を選択的に形成する工程を備えている。このため、炭素又は窒素含有シリコンゲルマニウム層の上にシリコン層を形成する際の温度が700℃以上の水素雰囲気におかれても、炭素又は窒素含有シリコンゲルマニウム層のゲルマニウム濃度が低いこと及びマイグレーションを起こしにくい炭素又は窒素を添加していることから、その下のシリコンゲルマニウム層に生じる原子のマイグレーションを抑制することができる。これにより、シリコンゲルマニウム層に格子緩和を生じさせることなく、炭素又は窒素含有シリコンゲルマニウム層の上に、金属シリサイド形成用のシリコン層を成長させることができる。
【0022】
本発明の半導体装置の製造方法において、工程(c)におけるシリコンゲルマニウム層、及び工程(d)における炭素又は窒素含有シリコンゲルマニウム層の成長温度は、それぞれ650℃以下であることが好ましい。このようにすると、各シリコンゲルマニウム層を確実にエピタキシャル成長することができる。
【0023】
本発明の半導体装置の製造方法において、工程(e)において、シリコン層は、温度が700℃以上の水素雰囲気で成長させることが好ましい。このようにすると、シリコン層を確実にエピタキシャル成長することができる。
【0024】
本発明の半導体装置の製造方法において、シリコンゲルマニウム層のゲルマニウム濃度は、25atm%以上であることが好ましい。このようにすると、n型半導体領域における第1のゲート電極の下側に形成されるチャネル領域により有効な高い圧縮応力を印加することができる。
【0025】
本発明の半導体装置の製造方法において、炭素又は窒素含有シリコンゲルマニウム層における炭素濃度又は窒素濃度は、3atm%以下であることが好ましい。このようにすると、シリコンゲルマニウム層に生じる原子のマイグレーションをより確実に抑制することができる。
【0026】
本発明の半導体装置の製造方法は、工程(f)よりも後に、圧縮応力を持つ絶縁膜をn型半導体領域の上に、第1のゲート電極及びp型ソースドレイン電極を覆うように形成する工程(g)をさらに備えていてもよい。
【0027】
本発明の半導体装置の製造方法において、工程(a)は、p型半導体領域の上に第2のゲート絶縁膜を介在させた第2のゲート電極を選択的に形成する工程を含み、工程(e)と工程(f)との間に、p型半導体領域における第2のゲート電極の両側方の領域に、n型不純物イオンを選択的にイオン注入することにより、n型ソースドレイン電極をそれぞれ形成する工程(h)をさらに備え、工程(f)は、金属膜をn型ソースドレイン電極の上にも形成し、形成した金属膜により、n型ソースドレイン電極の上部に金属シリサイド層を形成する工程を含んでいてもよい。このようにすると、本発明を有するPMISトランジスタを有するCMOS型半導体装置を実現することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る半導体装置及びその製造方法によると、PMISトランジスタにおけるソースドレイン電極に相対的にゲルマニウム濃度が高いシリコンゲルマニウム層を用いても、該シリコンゲルマニウム層に格子緩和を生じさせることなく、ソースドレイン電極の上部にシリコン層又は金属シリサイド層を形成することができる。その結果、PMISトランジスタの駆動電流を向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置を示す構成断面図である。
【図2】(a)〜(i)は本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す工程順の構成断面図である。
【図3】(a)は本発明の第1の実施形態に係る半導体装置におけるソースドレイン電極を構成するシリコンゲルマニウム層のX線回折(XRD)結果を従来例と共に示したグラフである。(b)は本発明の第1の実施形態に係る半導体装置におけるトランジスタ駆動電流の、シリコンゲルマニウム層のゲルニウム濃度依存性を従来例と共に示したグラフである。
【図4】本発明の第1の実施形態の第1変形例に係る半導体装置を示す構成断面図である。
【図5】(a)及び(b)は本発明の第1の実施形態の第2変形例に係る半導体装置の製造方法の要部を示す工程順の構成断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る半導体装置を示す構成断面図である。
【図7】(a)〜(e)は本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す工程順の構成断面図である。
【図8】(a)〜(d)は本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す工程順の構成断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0031】
図1は本発明の第1の実施形態に係るPMISトランジスタからなる半導体装置の断面構成を示している。図1に示すように、第1の実施形態に係る半導体装置は、例えばn型シリコン(Si)からなるn型のウエル等であるn型半導体領域100の上に、二酸化シリコン(SiO)等からなるゲート絶縁膜101と、該ゲート絶縁膜101の上に形成され、導電性を持つポリシリコンからなるゲート電極102とを有している。ゲート電極102におけるゲート長方向側の両側面上には、二酸化シリコンからなるオフセットサイドウォール104が形成されている。オフセットサイドウォール104の外側の面上には、二酸化シリコンからなる断面L字状の第1のサイドウォール106が形成され、その外側には、窒化シリコン(SiN)からなる第2のサイドウォール107が形成されている。
【0032】
n型半導体領域100の上部であって、各オフセットサイドウォール104及び各第1のサイドウォール106の下側の領域には、p型不純物である、例えばボロン(B)イオンがイオン注入されてなるエクステンション領域105がそれぞれ形成されている。なお、オフセットサイドウォール104は必ずしも設ける必要はない。また、ゲート電極102の第1のサイドウォール106及び第2のサイドウォール107は、必ずしも2層構造とする必要はない。
【0033】
n型半導体領域100における第1のサイドウォール106及び第2のサイドウォール107の外側の領域には、n型半導体領域100を彫り込んでなるリセス部(凹部)100aがそれぞれ形成されている。各リセス部100aには、ゲルマニウム(Ge)の濃度が30atm%(原子%)で、ボロンの濃度が1×1020/cm程度のシリコンゲルマニウム(SiGe)層111がエピタキシャル成長により形成されている。
【0034】
シリコンゲルマニウム層111の上には、例えば、濃度が0%よりも大きく且つ3atm%以下の炭素(C)と、濃度がシリコンゲルマニウム層111のゲルマニウム濃度よりも低いゲルマニウムとを含むp型のカーボンドープドシリコンゲルマニウム(Si1−x−yGe)層112が、エピタキシャル成長により形成されている。ここで、カーボンドープドシリコンゲルマニウム層112の厚さは20nm以下とする。なお、カーボンドープドシリコンゲルマニウム層112は、炭素(C)に代えて窒素(N)をドープしてもよい。また、カーボンドープドシリコンゲルマニウム層112の有効な膜厚の下限値は、約3nmである。
【0035】
カーボンドープドシリコンゲルマニウム層112の上側とゲート電極102の上部とには、例えば、ニッケル白金(NiPt)からなる金属による金属シリサイド層115が形成されている。
【0036】
以上のように、第1の実施形態に係るp型半導体装置は、シリコンゲルマニウム層111とカーボンドープドシリコンゲルマニウム層112とその上の金属シリサイド層115とからp型のソースドレイン電極150が構成されている。
【0037】
このように、第1の実施形態に係るp型半導体装置、すなわちPMISトランジスタは、ソースドレイン電極150において、p型のシリコンゲルマニウム層111と金属シリサイド層115との間に、p型のカーボンドープドシリコンゲルマニウム層112を設けている。このため、金属シリサイド層115を形成するためのシリコン層を、カーボンドープドシリコンゲルマニウム層112の上に、温度が700℃以上の水素雰囲気で形成したとしても、n型半導体領域100におけるゲート電極102の下側部分に生成されるチャネル領域に圧縮応力を印加するシリコンゲルマニウム層111に格子緩和を生じることがない。従って、ソースドレイン電極150を構成するシリコンゲルマニウム層111は、n型半導体領域100におけるゲート電極102の下側に生成されるチャネル領域に対してゲート長方向からの圧縮応力を確実に印加することができる。
【0038】
なお、第1の実施形態において、ゲート絶縁膜101には、二酸化シリコンに代えて、酸化ハフニウムシリコン等の高誘電体材料を用いてもよい。また、ゲート電極102は、ポリシリコン層の上に窒化チタン(TiN)等の金属層を積層する構成としてもよい。
【0039】
また、本実施形態においては、カーボンドープドシリコンゲルマニウム層112におけるカーボン(C)に代えて、窒素(N)を用いることができる。
【0040】
以下、前記のように構成された半導体装置の製造方法について図面を参照しながら説明する。
【0041】
図2(a)〜図2(i)は本発明の第1の実施形態に係るPMISトランジスタの製造方法の工程順の断面構成を示している。
【0042】
まず、図2(a)に示すように、熱酸化法等により、n型シリコンからなるn型半導体領域100の主面上にゲート絶縁膜101を形成する。続いて、化学気相堆積(CVD)法により、ゲート絶縁膜101の上に、導電性を有するポリシリコン膜と第1のSiO膜とを順次堆積する。その後、リソグラフィ法及びエッチング法により、第1のSiO膜の上に形成した第1のレジストパターン(図示せず)をマスクとして、第1のSiO膜から保護膜103を形成し、ポリシリコン膜からゲート電極102を形成し、さらにゲート絶縁膜101をパターニングする。続いて、第1のレジストパターンを除去した後、CVD法により、保護膜103の上面及びゲート電極102の側面を含め、n型半導体領域100の上に第2のSiO膜を堆積する。続いて、堆積した第2のSiO膜に対してエッチバックを行って、少なくともゲート絶縁膜101の両端面並びにゲート電極102及び保護膜103の両側面に、第2のSiO膜からオフセットサイドウォール104を形成する。続いて、保護膜103及びオフセットサイドウォール104をマスクとして、n型半導体領域100にp型不純物である、例えばボロンイオンをイオン注入することにより、n型半導体領域100におけるオフセットサイドウォール104の外側の領域に、p型のエクステンション領域105を形成する。
【0043】
次に、図2(b)に示すように、CVD法により、保護膜103の上面及びオフセットサイドウォール104の外側の面を含め、n型半導体領域100の上に第3のSiO膜とSiN膜とを順次堆積する。その後、堆積したSiN膜及び第3のSiO膜に対してエッチバックを行うことにより、第3のSiO膜から、オフセットサイドウォール104の外側の面上及びn型半導体領域100の主面にまたがる断面L字状の第1のサイドウォール106と、SiN膜から、第1のサイドウォール106の外側の面上に第2のサイドウォール107とを形成する。
【0044】
次に、図2(c)に示すように、CVD法により、SiOと比べて膜密度が低く、且つ、500℃程度と比較的に低い温度で成膜できるSiO膜108を、n型半導体領域100の上に第2のサイドウォール107、第1のサイドウォール106、オフセットサイドウォール104及び保護膜103を覆うように形成する。
【0045】
次に、図2(d)に示すように、リソグラフィ法により、SiO膜108の上に、ソースドレイン形成領域を開口する開口パターンを有する第2のレジストパターン109を形成する。続いて、形成した第2のレジストパターン109をマスクとしてSiO膜108を選択的にエッチングすることにより、該SiO膜108からn型半導体領域100のソースドレイン形成領域を露出するハードマスク108Aを形成する。
【0046】
次に、図2(e)に示すように、第2のレジストパターン109を除去した後、ハードマスク108A、並びに第2のサイドウォール107、第1のサイドウォール106、オフセットサイドウォール104及び保護膜103をマスクとして、n型半導体領域100をエッチングすることにより、n型半導体領域100のソースドレイン形成領域に深さが、PMISトランジスタのチャネル領域以上となる、例えば60nmの深さを持つリセス部100aを形成する。リセス部100aを形成する際のエッチングには、ドライエッチング又はウエットエッチングを用いることができ、さらには、ドライエッチングとウエットエッチングとの双方を用いることができる。
【0047】
次に、図2(f)に示すように、成長温度が650℃以下の水素雰囲気を用いたCVD法により、ハードマスク108A、第2のサイドウォール107及び保護膜103等をマスクとして、各リセス部100aの底面から、結晶面の面方位が(111)面で且つゲルマニウム濃度が25%以上のp型のシリコンゲルマニウム(Si1−zGe)層111を少なくともチャネル領域に達するまで、より好ましくはチャネル領域を超える領域にまでエピタキシャル成長する。ここでは、成長条件及び成膜材料として、成長雰囲気を650℃の水素雰囲気とし、Si源には流量が30ml/min(0℃、1気圧、以下同じ。)のジクロロシラン(DCS)を用い、Ge源には流量が24ml/minのモノゲラン(GeH)を用いている。さらに、流量が65ml/minの塩化水素(HCl)と、p型不純物源として流量が160ml/minのジボラン(B)とを用いている。これにより、シリコンゲルマニウム層111は、ゲルマニウム濃度が30%で、ボロン濃度が1×1020/cmとなり、且つ格子緩和を生じない。なお、図2(f)においては、シリコンゲルマニウム層111は、その上面がn型半導体領域100の主面と同程度となるように形成したが、シリコンゲルマニウム層111の上面は、n型半導体領域100の主面よりも高くなってもよい。
【0048】
続いて、連続したCVD法により、シリコンゲルマニウム層111の上に、濃度が3atm%以下の炭素と、濃度がシリコンゲルマニウム層111のゲルマニウム濃度よりも低いゲルマニウム(例えば20atm%)とを含むp型のカーボンドープドシリコンゲルマニウム(Si1−x−yGe)層112をエピタキシャル成長する。ここでは、成長条件及び成膜材料として、成長雰囲気を650℃の水素雰囲気とし、Si源には流量が30ml/minのジクロロシラン(DCS)を用い、Ge源には流量が24ml/minのモノゲラン(GeH)を用い、C源には流量が20ml/minのモノメチルシラン(MMS)を用いている。さらに、流量が65ml/minの塩化水素(HCl)と、p型不純物源として流量が160ml/minのジボラン(B)とを用いている。なお、炭素(C)に代えて窒素(N)を添加する場合には、N源にはアンモニア(NH)を用いることができる。なお、シリコンゲルマニウム層111及びカーボンドープドシリコンゲルマニウム層112の成長温度を650℃以下としている。これにより、Ge及びBの外方拡散等が抑制されて、良好なエピタキシャル層を得ることができる。
【0049】
続いて、成長温度が700℃以上の水素雰囲気による、連続したCVD法より、カーボンドープドシリコンゲルマニウム層112の上に、厚さが10nm以上のシリコン層113をエピタキシャル成長する。ここでは、成長条件及び成膜材料として、成長雰囲気を725℃の水素雰囲気とし、Si源には流量が20ml/minのジクロロシラン(DCS)を用い、流量が17ml/minの塩化水素(HCl)を用いている。このように、本実施形態においては、シリコンゲルマニウム層111の上にカーボンドープドシリコンゲルマニウム層112を形成しているため、温度が725℃の水素雰囲気でシリコン層113を形成しても、その下に形成されたシリコンゲルマニウム層111に格子緩和が発生することはない。なお、このシリコン層113は、後工程において金属シリサイド層115を形成するために設けているが、金属シリサイド層115を形成するだけでなく、製造プロセス中において、カーボンドープドシリコンゲルマニウム層112を洗浄液から保護する保護膜として機能し、さらには、カーボンドープドシリコンゲルマニウム層112から、ドープされている炭素及びボロンの外方拡散層を防止するキャップ層としても機能する。
【0050】
次に、図2(g)に示すように、ハードマスク108Aを除去する。このとき、ゲート電極102の上の保護膜103も同時に除去される。
【0051】
次に、図2(h)に示すように、スパッタ法又は真空蒸着法等により、少なくともシリコン層113及びゲート電極102の上面を覆うように、n型半導体領域100の上に厚さが10nmのニッケル白金(NiPt)からなる金属膜114を堆積する。その後、所定の熱処理を施すことにより、金属膜114により、ゲート電極102の上部に金属シリサイド層115を形成すると共に、シリコン層113を金属シリサイド層115とする。その後、未反応の金属膜114を酸性溶液等によって除去する。
【0052】
これにより、図2(i)に示すように、n型半導体領域100におけるゲート電極102の両側方の領域には、格子緩和を生じていないシリコンゲルマニウム層111、カーボンドープドシリコンゲルマニウム層112及び金属シリサイド層115からなるp型のソースドレイン電極150が形成される。
【0053】
このように、第1の実施形態においては、シリコンゲルマニウム層111の上に、例えば、濃度が3atm%以下の炭素と、濃度がシリコンゲルマニウム層111のゲルマニウム濃度よりも低いゲルマニウムとを含むカーボンドープドシリコンゲルマニウム層112を成膜する。これにより、温度が700℃以上の水素雰囲気にさらされても、カーボンドープドシリコンゲルマニウム層112の下に形成されたシリコンゲルマニウム層111に生じる原子のマイグレーションを抑制することができる。すなわち、PMISトランジスタにおけるチャネル領域の両端部に高い圧縮応力を印加可能な、ゲルマニウムの濃度が25%以上であるシリコンゲルマニウム層111に格子緩和を生じさせることなく、且つその上部に厚さが10nm以上のシリコン層113を形成することができる。このため、ソースドレイン電極150に金属シリサイド層115を確実に形成できるので、低抵抗のまま、チャネル領域により有効な高い圧縮応力を印加することができる。
【0054】
以下、図3(a)に本発明に係るシリコンゲルマニウム層と、従来のシリコンゲルマニウム層のX線回折(XRD)の測定結果を示す。いずれのシリコンゲルマニウム層もゲルマニウム濃度を30%としている。図3(a)に示すように、カーボンドープドシリコンゲルマニウム層を有する本発明は、ロッキングカーブにフリンジが見られることから、本発明のシリコンゲルマニウム層には格子緩和が生じていないことが分かる。これに対し、従来例のロッキングカーブにはフリンジが見られないことから、カーボンドープドシリコンゲルマニウム層を有さない従来のシリコンゲルマニウム層には格子緩和が生じていることが分かる。
【0055】
第1の実施形態によると、チャネル領域の両側のソースドレイン電極150に、ゲルマニウム濃度が25atm%以上のシリコンゲルマニウム層111を格子緩和を発生させることなく形成してチャネル部へストレスを有効に印加することができる。その上、カーボンドープドシリコンゲルマニウム層112の上には、シリコン層113をシリコンゲルマニウム層111に影響を与えることなく成膜できる。従って、金属シリサイド層115を形成する工程において、アンモニア水と過酸化水素水とを含む洗浄液を通常通り使用することができる。その結果、パーティクルをも効果的に除去でき、且つ金属シリサイド層115のシート抵抗も高抵抗化させることなく形成することができる。
【0056】
これらの効果により、PMISトランジスタのソースドレイン電極150として、ゲルマニウム濃度が25%以上で且つ格子緩和を生じさせないシリコンゲルマニウム層111を形成できる。このため、PMISトランジスタのチャネル領域にはより高い圧縮応力を確実に印加することができるので、該PMISトランジスタの駆動電流を向上することができる。
【0057】
図3(b)に、格子緩和が発生しない本発明のトランジスタの駆動電流と、格子緩和が発生する従来のトランジスタの駆動電流とを示す。図3(b)から、本発明は、格子緩和を発生させることなく、且つ25atm%以上の高濃度のゲルマニウム濃度を持つシリコンゲルマニウム層111を持つPMISトランジスタを形成でき、該PMISトランジスタの駆動電流を効果的に向上させることができることが分かる。
【0058】
(第1の実施形態の第1変形例)
以下、本発明の第1の実施形態の第1変形例に係るPMISトランジスタについて図4を参照しながら説明する。図4において、図1と同一の構成部材には同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0059】
図4に示すように、第1変形例に係るPMISトランジスタは、ソースドレイン電極150において、p型のシリコンゲルマニウム層111とp型のカーボンドープドシリコンゲルマニウム層112との間に、厚さが10nm程度のシリコン層113が形成されている。ここで、本変形例に係るシリコン層113はその導電型がp型であってもよい。
【0060】
また、シリコン層113を形成するには、第1の実施形態の図2(f)に示す工程において、形成されるシリコン層113の厚さを10nmよりも厚くすればよい。
【0061】
(第1の実施形態の第2変形例)
以下、本発明の第1の実施形態の第2変形例に係るPMISトランジスタについて図5(a)及び図5(b)を参照しながら説明する。図5(a)及び図5(b)において、図2と同一の構成部材には同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0062】
第2変形例に係るPMISトランジスタは、ゲート電極102の下側に生成されるチャネル領域に圧縮応力を印加するシリコンゲルマニウム層111に加え、n型半導体領域100の主面上にゲート電極102を覆うように、圧縮応力を持つライナ膜を設ける構成とする。
【0063】
具体的には、例えば図2(i)の工程で示したように、ゲート電極102及びソースドレイン電極150の上部にそれぞれ金属シリサイド層115を形成し、その後、図5(a)に示すように、熱燐酸により、窒化シリコンからなる第2のサイドウオール107を選択的に除去する。
【0064】
次に、図5(b)に示すように、CVD法により、n型半導体領域100の上に、各ソースドレイン電極150、第1のサイドウォール106、オフセットサイドウォール104及びゲート電極102上の金属シリサイド層115を覆うように、膜厚が40nm以上で且つ−3GPa以上の圧縮応力を持つ窒化シリコン(SiN)からなるライナ膜116を形成する。このライナ膜116により、PMISトランジスタのチャネル領域に印加される圧縮応力を増大することができる。
【0065】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0066】
図6は本発明の第2の実施形態に係るCMOS型半導体装置の断面構成を示している。図6に示すように、第2の実施形態に係る半導体装置は、1つの半導体基板に素子分離領域117を挟んで形成されたPMISトランジスタ10とNMISトランジスタ20とを有している。ここで、PMISトランジスタ10は、第1の実施形態と同等の構成、すなわちn型半導体領域100のリセス部100aにエピタキシャル成長してなり、チャネル領域に圧縮応力を印加可能なp型のシリコンゲルマニウム層111、p型のカーボンドープドシリコンゲルマニウム層112及び金属シリサイド層115からなるp型のソースドレイン電極150を有している。
【0067】
一方、NMISトランジスタ20は、p型シリコンからなるp型のウエル等であるp型半導体領域200の上に、二酸化シリコンからなるゲート絶縁膜101と、該ゲート絶縁膜101の上に形成され、導電性を持つポリシリコンからなるゲート電極202とを有している。ゲート電極202におけるゲート長方向側の両側面上には、二酸化シリコンからなるオフセットサイドウォール104が形成されている。オフセットサイドウォール104の外側の面上には、二酸化シリコンからなる断面L字状の第1のサイドウォール106と、その外側には、窒化シリコン(SiN)からなる第2のサイドウォール107とが形成されている。
【0068】
p型半導体領域200の上部であって、各オフセットサイドウォール104及び各第1のサイドウォール106の下側の領域には、n型不純物である、例えばリン(P)イオン又はヒ素(As)イオンがイオン注入されてなるエクステンション領域205がそれぞれ形成されている。また、p型半導体領域200における第1のサイドウォール106及び第2のサイドウォール107の外側の領域には、n型不純物が注入されてなるn型のソースドレイン電極250が形成されている。
【0069】
このように、第2の実施形態によると、CMOS型半導体装置であっても、NMISトランジスタ20のソースドレイン電極250は、p型半導体領域200にn型不純物がイオン注入された拡散層により構成されている。従って、NMISトランジスタ20には、そのチャネル領域に圧縮応力が印加されることはなく、PMISトランジスタ10のチャネル領域にのみ、選択的に圧縮応力が印加される。
【0070】
なお、本実施形態においても、ゲート絶縁膜101に、酸化ハフニウムシリコン等の高誘電体材料を用いてもよい。また、各ゲート電極102、202は、ポリシリコン層の上に窒化チタン等の金属層を積層する構成としてもよい。
【0071】
また、カーボンドープドシリコンゲルマニウム層112におけるカーボン(C)に代えて、窒素(N)を用いることができる。
【0072】
以下、前記のようなCMOS型半導体装置の製造方法について図面を参照しながら説明する。
【0073】
図7(a)〜図7(e)及び図8(a)〜図8(d)は本発明の第2の実施形態に係るCMOS型半導体装置の製造方法の工程順の断面構成を示している。
【0074】
まず、図7(a)に示すように、シリコンからなる半導体基板(図示せず)の上部に、公知の方法によりシャロートレンチからなる素子分離領域117を選択的に形成する。続いて、半導体基板の上部に素子分離領域117に区画されたn型半導体領域100及びp型半導体領域200をイオン注入法等により形成する。その後、熱酸化法等により、n型半導体領域100及びp型半導体領域200の主面上にゲート絶縁膜101を形成する。続いて、CVD法により、ゲート絶縁膜101の上に、導電性を有するポリシリコン膜と第1のSiO膜とを順次堆積する。その後、リソグラフィ法及びエッチング法により、第1のSiO膜の上に形成した第1のレジストパターン(図示せず)をマスクとして、第1のSiO膜から保護膜103を形成し、ポリシリコン膜からゲート電極102、202をそれぞれ形成し、さらにゲート絶縁膜101をそれぞれパターニングする。ここで、各ゲート電極102、202を構成するポリシリコンの導電性は、PMISトランジスタ10のゲート電極102をp型とし、NMISトランジスタ20のゲート電極202をn型としてもよい。続いて、第1のレジストパターンを除去した後、CVD法により、各保護膜103の上面及び各ゲート電極102、202の側面を含め、n型半導体領域100及びp型半導体領域200の上に第2のSiO膜を堆積する。続いて、堆積した第2のSiO膜に対してエッチバックを行って、少なくとも各ゲート絶縁膜101の両端面、並びに各ゲート電極102、202及び各保護膜103の両側面に、第2のSiO膜からオフセットサイドウォール104をそれぞれ形成する。続いて、p型半導体領域200を第2のレジストパターン(図示せず)によりマスクすると共に、保護膜103及びオフセットサイドウォール104をマスクとして、n型半導体領域100にp型不純物であるボロンイオンをイオン注入する。これにより、n型半導体領域100におけるオフセットサイドウォール104の外側の領域に、p型のエクステンション領域105が形成される。続いて、n型半導体領域100を第3のレジストパターン(図示せず)によりマスクすると共に、保護膜103及びオフセットサイドウォール104をマスクとして、p型半導体領域200にn型不純物である、例えばヒ素イオンをイオン注入する。これにより、p型半導体領域200におけるオフセットサイドウォール104の外側の領域に、n型のエクステンション領域205が形成される。なお、エクステンション領域105、205の形成順序は特に問われない。
【0075】
次に、図7(b)に示すように、CVD法により、各ゲート電極102、202における保護膜103の上面及びオフセットサイドウォール104の外側の面を含め、n型半導体領域100及びp型半導体領域200の上に第3のSiO膜とSiN膜とを順次堆積する。その後、堆積したSiN膜及び第3のSiO膜に対してエッチバックを行う。これにより、n型半導体領域100においては、第3のSiO膜から、ゲート電極102におけるオフセットサイドウォール104の外側の面上及びn型半導体領域100の主面にまたがる断面L字状の第1のサイドウォール106が形成される。これと同時に、p型半導体領域200においては、ゲート電極202におけるオフセットサイドウォール104の外側の面上及びp型半導体領域200の主面にまたがる断面L字状の第1のサイドウォール106が形成される。また、SiN膜から、各ゲート電極102、202における第1のサイドウォール106の外側の面上に第2のサイドウォール107がそれぞれ形成される。
【0076】
次に、図7(c)に示すように、CVD法により、SiOと比べて膜密度が低く、且つ、500℃程度と比較的に低い温度で成膜できるSiO膜を、n型半導体領域100及びp型半導体領域200の上の全面を覆うように形成する。その後、リソグラフィ法により、SiO膜の上に、PMISトランジスタのソースドレイン形成領域を開口する開口パターンを有する第4のレジストパターン109Aを形成する。続いて、形成した第4のレジストパターン109AをマスクとしてSiO膜を選択的にエッチングすることにより、該SiO膜からn型半導体領域100におけるソースドレイン形成領域を露出するハードマスク108Aを形成する。
【0077】
次に、図7(d)に示すように、第4のレジストパターン109Aを除去した後、ハードマスク108A、並びにゲート電極102の第2のサイドウォール107、第1のサイドウォール106、オフセットサイドウォール104及び保護膜103をマスクとして、n型半導体領域100をエッチングすることにより、n型半導体領域100のソースドレイン形成領域に深さが、PMISトランジスタのチャネル領域以上となる、例えば60nmの深さを持つリセス部100aを形成する。
【0078】
次に、図7(e)に示すように、成長温度が650℃以下の水素雰囲気を用いたCVD法により、ハードマスク108A、ゲート電極102の第2のサイドウォール107及び保護膜103等をマスクとして、各リセス部100aの底面から、面方位が(111)面で且つゲルマニウム濃度が25%以上のp型のシリコンゲルマニウム(Si1−zGe)層111を少なくともチャネル領域に達するまで、より好ましくはチャネル領域を超える領域にまでエピタキシャル成長する。ここでは、成長条件及び成膜材料として、成長雰囲気を650℃の水素雰囲気とし、Si源には流量が30ml/min(0℃、1気圧、以下同じ。)のDCSを用い、Ge源には流量が24ml/minのGeHを用いている。さらに、流量が65ml/minのHClと、p型不純物源として流量が160ml/minのBとを用いている。これにより、シリコンゲルマニウム層111は、ゲルマニウム濃度が30%で、ボロン濃度が1×1020/cmとなり、且つ格子緩和を生じない。なお、第2の実施形態においても、シリコンゲルマニウム層111の上面は、n型半導体領域100の主面よりも高く形成してもよい。
【0079】
続いて、連続したCVD法により、シリコンゲルマニウム層111の上に、濃度が3atm%以下の炭素と、濃度がシリコンゲルマニウム層111のゲルマニウム濃度よりも低いゲルマニウム(例えば20atm%)とを含むp型のカーボンドープドシリコンゲルマニウム(Si1−x−yGe)層112をエピタキシャル成長する。ここでは、成長条件及び成膜材料として、成長雰囲気を650℃の水素雰囲気とし、Si源には流量が30ml/minのDCSを用い、Ge源には流量が24ml/minのGeHを用い、C源には流量が20ml/minのMMSを用いている。さらに、流量が65ml/minのHClと、p型不純物源として流量が160ml/minのBとを用いている。なお、炭素(C)に代えて窒素(N)を添加することもでき、この場合のN源にはNHを用いることができる。なお、シリコンゲルマニウム層111及びカーボンドープドシリコンゲルマニウム層112の成長温度を650℃以下としており、いずれも良好なエピタキシャル層を得ることができる。
【0080】
続いて、成長温度が700℃以上の水素雰囲気による、連続したCVD法より、カーボンドープドシリコンゲルマニウム層112の上に、厚さが10nm以上のシリコン層113をエピタキシャル成長する。ここでは、成長条件及び成膜材料として、成長雰囲気を725℃の水素雰囲気とし、Si源には流量が20ml/minのDCSを用い、流量が17ml/minのHClを用いている。このように、本実施形態においては、シリコンゲルマニウム層111の上にカーボンドープドシリコンゲルマニウム層112を形成しているため、温度が725℃の水素雰囲気でシリコン層113を形成しても、その下に形成されたシリコンゲルマニウム層111に格子緩和が発生することはない。
【0081】
次に、図8(a)に示すように、リソグラフィ法及びエッチング法により、n型半導体領域100及びp型半導体領域200の上で且つ、ハードマスク108AにおけるNMISトランジスタのソースドレイン形成領域の上側部分を露出する開口パターンを有する第5のレジストパターン118を形成する。続いて、形成した第5のレジストパターン118をマスクとしてハードマスク108Aをエッチングすることにより、該ハードマスク108Aにp型半導体領域200のソースドレイン形成領域を露出するハードマスク108Bを形成する。続いて、イオン注入法により、第5のレジストパターン118をマスクとしてn型不純物をイオン注入することにより、p型半導体領域200におけるゲート電極202の両側方の領域にn型拡散層からなるソースドレイン電極250を形成する。その後、注入されたn型不純物の活性化を図るため、例えば温度が1025℃のスパイクアニールを行う。
【0082】
次に、図8(b)に示すように、第5のレジストパターン118及びハードマスク108Bを除去する。このとき、各ゲート電極102、202の上の保護膜103も同時に除去される。
【0083】
次に、図8(c)に示すように、スパッタ法又は真空蒸着法等により、n型半導体領域100においては、少なくともシリコン層113及びゲート電極102の上面を覆うように、また、p型半導体領域200においては、該p型半導体領域200及びゲート電極202の上面を覆うように、厚さが10nmのニッケル白金(NiPt)からなる金属膜114を堆積する。その後、所定の熱処理を施すことにより、n型半導体領域100においては、金属膜114により、ゲート電極102の上部に金属シリサイド層115を形成すると共に、シリコン層113を金属シリサイド層115とする。また、p型半導体領域200においては、金属膜114により、ゲート電極202の上部に金属シリサイド層115を形成すると共に、n型のソースドレイン電極250の上部に金属シリサイド層115を形成する。その後、未反応の金属膜114を酸性溶液等によって除去する。
【0084】
これにより、図8(d)に示すように、n型半導体領域100におけるゲート電極102の両側方の領域には、格子緩和を生じていないシリコンゲルマニウム層111、カーボンドープドシリコンゲルマニウム層112及び金属シリサイド層115からなるp型のソースドレイン電極150が形成される。
【0085】
以上説明したように、第2の実施形態においては、PMISトランジスタ10及びNMISトランジスタ20からなるCMOS型半導体装置を形成することができる。その上、PMISトランジスタ10のチャネル領域の両端部に形成されるp型のソースドレイン電極150として、ゲルマニウム濃度が30%であって、高い圧縮応力を印加可能なシリコンゲルマニウム層111を格子緩和を生じさせることなく形成することができる。同時に、ソースドレイン電極150の上部に、厚さが10nm以上のシリコン層113を形成できるため、該シリコン層113から低抵抗な金属シリサイド層115を確実に形成できる。従って、p型のソースドレイン電極150を低抵抗としたまま、PMISトランジスタ10のチャネル領域により有効な高い圧縮応力を印加することができる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明に係る半導体装置及びその製造方法は、PMISトランジスタにおけるソースドレイン電極に相対的にゲルマニウム濃度が高いシリコンゲルマニウム層を用いても、該シリコンゲルマニウム層に格子緩和を生じさせることなく、ソースドレイン電極の上部に金属シリサイド層を形成することができ、ソースドレイン電極にシリコンゲルマニウムからなるエピタキシャル膜を含むPMISトランジスタ等に有用である。
【符号の説明】
【0087】
10 PMISトランジスタ
20 NMISトランジスタ
100 n型半導体領域
100a リセス部
101 ゲート絶縁膜
102 ゲート電極
103 保護膜
104 オフセットサイドウォール
105 エクステンション領域
106 第1のサイドウォール
107 第2のサイドウォール
108 SiO膜
108A ハードマスク
108B ハードマスク
109 第2のレジストパターン
109A 第4のレジストパターン
111 シリコンゲルマニウム層
112 カーボンドープドシリコンゲルマニウム層
113 シリコン層
114 金属膜
115 金属シリサイド層
116 ライナ膜
117 素子分離領域
118 第5のレジストパターン
150 ソースドレイン電極
200 p型半導体領域
202 ゲート電極
205 エクステンション領域
250 ソースドレイン電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
n型半導体領域と、
前記n型半導体領域の上に第1のゲート絶縁膜を介在させて形成された第1のゲート電極と、
前記n型半導体領域における前記第1のゲート電極の両側方の領域に形成されたp型ソースドレイン電極とを備え、
前記p型ソースドレイン電極は、
前記n型半導体領域に設けられた各凹部に、その底部から少なくともチャネル領域の深さにまで形成されたシリコンゲルマニウム層と、
前記シリコンゲルマニウム層の上に形成され、炭素又は窒素と前記シリコンゲルマニウム層のゲルマニウム濃度よりも低いゲルマニウムとを含む炭素又は窒素含有シリコンゲルマニウム層と、
前記炭素又は窒素含有シリコンゲルマニウム層の上に形成された金属シリサイド層とから構成され、
前記シリコンゲルマニウム層は、格子緩和をしていないことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記シリコンゲルマニウム層のゲルマニウム濃度は、25atm%以上であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記炭素又は窒素含有シリコンゲルマニウム層における炭素濃度又は窒素濃度は、3atm%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記炭素又は窒素含有シリコンゲルマニウム層と前記金属シリサイド層との間に形成されたシリコン層をさらに備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
p型半導体領域と、
前記p型半導体領域の上に第2のゲート絶縁膜を介在させて形成された第2のゲート電極と、
前記p型半導体領域における前記第2のゲート電極の両側方の領域に形成されたn型ソースドレイン電極とをさらに備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
n型半導体領域の上に第1のゲート絶縁膜を介在させた第1のゲート電極を選択的に形成する工程(a)と、
前記n型半導体領域における前記第1のゲート電極の両側方の領域に対して選択的にエッチングを行うことにより、チャネル領域の深さ以上の凹部をそれぞれ形成する工程(b)と、
エピタキシャル成長法により、前記各凹部にその底部から少なくとも前記チャネル領域の深さにまで、p型のシリコンゲルマニウム層を選択的に形成する工程(c)と、
エピタキシャル成長法により、前記シリコンゲルマニウム層の上に、炭素又は窒素と前記シリコンゲルマニウム層のゲルマニウム濃度よりも低いゲルマニウムとを含む炭素又は窒素含有シリコンゲルマニウム層とを選択的に形成する工程(d)と、
エピタキシャル成長法により、前記炭素又は窒素含有シリコンゲルマニウム層の上に、シリコン層を選択的に形成する工程(e)と、
前記シリコン層の上に金属膜を形成した後、形成した金属膜と前記シリコン層とから金属シリサイド層を形成する工程(f)とを備え、
前記シリコンゲルマニウム層、炭素又は窒素含有シリコンゲルマニウム層及び金属シリサイド層からp型ソースドレイン電極をそれぞれ形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記工程(c)における前記シリコンゲルマニウム層、及び前記工程(d)における前記炭素又は窒素含有シリコンゲルマニウム層の成長温度は、それぞれ650℃以下であることを特徴とする請求項6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記工程(e)において、前記シリコン層は、温度が700℃以上の水素雰囲気で成長させることを特徴とする請求項6又は7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記シリコンゲルマニウム層のゲルマニウム濃度は、25atm%以上であることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記炭素又は窒素含有シリコンゲルマニウム層における炭素濃度又は窒素濃度は、3atm%以下であることを特徴とする請求項6〜9のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記工程(f)よりも後に、圧縮応力を持つ絶縁膜を前記n型半導体領域の上に、前記第1のゲート電極及びp型ソースドレイン電極を覆うように形成する工程(g)をさらに備えていることを特徴とする請求項6〜10のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記工程(a)は、p型半導体領域の上に第2のゲート絶縁膜を介在させた第2のゲート電極を選択的に形成する工程を含み、
前記工程(e)と前記工程(f)との間に、前記p型半導体領域における前記第2のゲート電極の両側方の領域に、n型不純物イオンを選択的にイオン注入することにより、n型ソースドレイン電極をそれぞれ形成する工程(h)をさらに備え、
前記工程(f)は、前記金属膜を前記n型ソースドレイン電極の上にも形成し、形成した金属膜により、前記n型ソースドレイン電極の上部に金属シリサイド層を形成する工程を含むことを特徴とする請求項6〜11のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−278083(P2010−278083A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−126890(P2009−126890)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】