説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】High-kゲート絶縁膜を用いたMOSFETにおいて、信頼性劣化、チャネル移動度低下及びEOTの増加を抑制する方法を提供する。
【解決手段】半導体装置の製造方法は、半導体基板101上に、シリコン酸化物を含む第1絶縁層104を形成する工程(a)と、第1絶縁層104上に第1金属層105を形成する工程(b)と、第1金属層105上にゲート電極108を形成する工程(c)とを備える。第1絶縁層104及び第1金属層105からゲート絶縁膜を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置とその製造方法に関し、特に、酸化膜換算膜厚(EOT:Equivalent Oxide Thickness)の増大と、信頼性劣化及びチャネル移動度低下を抑制するための半導体装置の構造及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Feild Effect Transistor )の微細化技術の進展に伴い、それを支える材料技術も開発されている。例えば、ゲート絶縁層について、従来のシリコン酸化膜よりも比誘電率の高い金属酸化物(High-k)材料を採用したデバイスの開発が進められている。
【0003】
High-k材料をゲート絶縁層として用いたHigh-kゲート絶縁層の場合、誘電率が高い分、物理的な膜厚を厚くしてもゲート容量を維持し、高い駆動電流を得ることができる。また、物理的な膜厚を厚くすることができるので、その分リーク電流を減少できるという効果も得られる。
【0004】
但し、High-kゲート絶縁層を半導体基板上に直接堆積した場合、熱酸化により形成された従来のシリコン酸化膜と比べ、界面不整合による界面準位の量が多くなる。これが原因となり、当初想定していたようには電気特性を改善させることができないことが分ってきた。
【0005】
これに対応するために、High-kゲート絶縁層をゲートスタック構造に適用する時は、まず半導体基板上に界面層としてシリコン酸化膜、シリコン酸窒化膜などを形成する。これにより半導体基板との界面を安定化して、それからその上にHigh-kゲート絶縁層を形成する方法が主流になっている。
【0006】
しかし、この方法を採用する場合、High-kゲート絶縁層の下に低誘電率の膜が挿入されることになる。その結果として、MOSFETの容量はHigh-kゲート絶縁層と界面層との合成容量となり、駆動電流は低下してしまう。
【0007】
そこで、高い駆動電流を得るためには、High-kゲート絶縁層単体の場合に得られる高い容量値に近づけるように、できるだけ界面層を薄くすることが求められる。
【0008】
例えば、先行文献1では、界面層のシリコン酸化膜が厚くなってEOTが増加するのを防ぐために、耐酸化性に優れた窒素と金属とを含んだ高誘電率膜(例えば、HfON、HfSiON、AlON、AlSiON)をシリコン酸化膜の代わりの界面層としてHigh-kゲート絶縁層の下に形成する。これによりEOTの増膜を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−342775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1の構成において、NBTI(Negative Bias Temperature Instability)等の信頼性劣化が増加し、また、チャネル移動度が低下する問題が生じる。
【0011】
この点に鑑み、本開示の技術の目的は、High-k絶縁膜を有する半導体装置及びその製造方法において、EOTの増加を抑制しながら、信頼性の劣化及びチャネル移動度の低下についても抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明者らは、前記の目的を達成するための検討を行ない、多量の窒素を含む界面層がNBTI等の信頼性劣化の原因となること、また、界面層に含まれる多量の窒素がチャネル移動度を低下させる原因となることに着目した。特に、窒素の量が7%(組成比)を越える場合には信頼性の劣化及びチャネル移動度の低下が顕著になることを見出しており、これを避けることを着想した。
【0013】
具体的に、本開示の半導体装置の製造方法は、半導体基板上に、シリコン酸化物を含む第1絶縁層を形成する工程(a)と、第1絶縁層上に第1金属層を形成する工程(b)と、第1金属層上にゲート電極を形成する工程(c)とを備え、少なくとも第1絶縁層及び第1金属層からゲート絶縁膜を形成する。
【0014】
このような半導体装置の製造方法によると、第1絶縁層を第1金属膜によって還元してEOTを小さくすることができると共に、多量の窒素を含む界面層の使用を避けることにより信頼性劣化及びチャネル移動度の低下を抑制することができる。
【0015】
尚、工程(b)の後に、第1金属層上に、金属酸化物を含む第2絶縁層を形成する工程(d)を更に備え、工程(c)において、第2絶縁層上にゲート電極を形成しても良い。
【0016】
このようにすると、第1金属層及び第1絶縁層に、更に第2絶縁層を加えてゲート絶縁膜を形成し、EOT及びしきい値の調整が可能となる。
【0017】
また、工程(d)の後に、第2絶縁層上に、第2金属層を形成する工程(e)を更に備え、工程(c)において、第2金属層上にゲート電極を形成しても良い。
【0018】
このようにすると、更に第2金属層を加えてゲート絶縁膜を形成し、EOT及びしきい値の調整が可能となる。更に、第2金属層は、雰囲気中の酸素が第2金属層よりも下の層に侵入するのを抑制するバリア層として機能する。
【0019】
また、工程(b)の後に、第1金属層上にキャップ層を形成する工程(f)を更に備え、工程(c)において、キャップ層上にゲート電極を形成しても良い。
【0020】
また、工程(d)の後に、第2絶縁層上にキャップ層を形成する工程(g)を更に備え、工程(c)において、キャップ層上にゲート電極を形成しても良い。
【0021】
また、工程(e)の後に、第2金属層上にキャップ層を形成する工程(h)を更に備え、工程(c)において、キャップ層上にゲート電極を形成しても良い。
【0022】
このようにすると、更にキャップ層を加えてゲート絶縁膜を形成し、EOT及びしきい値を調整することが可能となる。
【0023】
また、工程(c)の後に、熱処理を行ない、第1金属層により第1絶縁層を還元して第1絶縁層を薄膜化する工程(i)を更に備えても良い。
【0024】
このようにすると、EOTを小さくすることができる。
【0025】
また、工程(c)の後に、ゲート電極の両側部分の半導体基板に不純物を導入する工程を更に備え、工程(i)は、不純物の活性化と同時に行なわれるのであってもよい。
【0026】
このようにすると、第1ゲート絶縁膜を薄膜化するために新たな工程を追加することは不要になる。
【0027】
また、工程(b)の後で且つ工程(d)の前に、第1金属層を酸化する工程(j)を更に備えても良い。
【0028】
また、工程(j)において、プラズマ酸化により第1金属層を酸化しても良い。
【0029】
このようにすると、絶縁層中に未反応の金属層が残留して絶縁層の信頼性が劣化するのを避けることができる。第1金属層を酸化する方法の例としては、プラズマ酸化が挙げられる。
【0030】
また、熱処理を行なう工程を更に備えてもよい。
【0031】
熱処理により、形成した膜を緻密化する等の効果が得られる。この際、処理雰囲気中の酸素による第1絶縁層の膜厚の増加は、第1金属層、第2金属層が代りに酸化されることにより回避されるので、EOTの増加を抑制することができる。
【0032】
また、Siよりも酸化物の生成熱の絶対値が大きい金属元素を用いてもよい。
【0033】
このような金属元素により、第1金属層、第2金属層等を構成すると、より確実にEOTを小さくすることができる。
【0034】
また、金属元素は、酸化物がHigh-k絶縁層となる元素であっても良い。
【0035】
これにより、ゲート絶縁膜をHigh-k絶縁層とすることができる。
【0036】
また、第1金属層及び第2金属層は、同じ金属元素からなっていても良い。
【0037】
次に、本開示の第1の半導体装置は、半導体基板と、半導体基板上に形成され、Si及び金属元素を含むゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極とを備え、ゲート絶縁膜に含まれる金属元素の濃度は、ゲート絶縁膜の厚さ方向に変化しており、半導体基板側の部分においてゲート電極側の部分よりも高い。
【0038】
次に、本開示の第2の半導体装置は、半導体基板と、半導体基板上に形成され、Si及び金属元素を含むゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極とを備え、絶縁層に含まれる金属元素の濃度は、ゲート絶縁膜の厚さ方向に変化しており、半導体基板側の部分及びゲート電極側の部分において、ゲート絶縁膜の厚さ方向の中央部分よりも高い。
【0039】
このような半導体装置によると、窒素を含む界面層を用いることなくEOTを小さくすることができ、NBTI等の信頼性劣化及びチャネル移動度の低下を抑制しながらEOTを小さくすることができる。
【0040】
尚、金属元素は、Siよりも酸化物の生成熱の絶対値が大きくても良い。
【0041】
このようにすると、前記の製造工程において第1絶縁層として用いるSiO2 を金属元素により還元することができ、EOTを小さくすることができる。
【0042】
また、ゲート絶縁膜の下部は、シリコン酸化膜からなり、シリコン酸化膜の膜厚は0.7nm以下であっても良い。
【0043】
また、ゲート絶縁膜の酸化膜換算膜厚が1.0nm以下であっても良い。
【0044】
シリコン酸化膜からなる第1絶縁層の膜厚を0.7nm以下とすることにより、第2絶縁層を含むゲート絶縁膜全体としての酸化膜換算膜厚を1.0nm以下に設定することができる。このようにすると、より確実に、信頼性劣化及びチャネル移動度の低下が抑制され且つEOTが小さくなった半導体装置が実現する。
【発明の効果】
【0045】
本開示の技術によると、EOTの増加が抑制され且つHigh-k絶縁膜を適用したMOSFETを含み、NBTI等の信頼性劣化及びチャネル移動度の低下が抑制された半導体装置及びその製造方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1(a)〜(d)は、本開示の第1の実施形態に係る例示的半導体装置及びその製造方法を模式的に示す図である。
【図2】図2は、第1の実施形態において第1及び第2金属層に含まれる金属元素について示す表である。
【図3】図3は、第1の実施形態の例示的半導体装置の層間絶縁膜における金属元素の濃度分布を示す図である。
【図4】図4は、第1の実施形態の例示的半導体装置について、EOTの累積度数分布を示す図である。
【図5】図5(a)〜(d)は、本開示の第2の実施形態に係る例示的半導体装置及びその製造方法を模式的に示す図である。
【図6】図6(a)〜(d)は、本開示の第3の実施形態に係る例示的半導体装置及びその製造方法を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下に、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0048】
(第1の実施の形態)
第1の実施形態について説明する。図1(a)〜(d)は、本実施形態の例示的半導体装置100及びその製造方法について模式的に示す図である。
【0049】
本実施形態では、例えばシリコン酸化物を含む第1絶縁層と、金属元素を含む第1金属層と、金属酸化物を含む第2絶縁層と、金属元素を含む第2金属層と、金属元素を含むゲート電極とを含む積層構造を形成する。
【0050】
半導体装置100の製造方法を図1(a)の工程から順に説明する。まず、半導体基板101に素子分離領域102を形成する。例えば、シリコン基板である半導体基板101にエッチングによりトレンチを形成した後、CVD(Chemical Vapor Deposition )法によりSiO2 を埋め込むことにより素子分離領域102とする。次に、素子分離領域102により区画された半導体基板101にn型不純物を注入することによりn型ウェル領域103を形成する。
【0051】
続いて、半導体基板101上に、第1絶縁層104として、例えば、熱酸化法、プラズマ酸化法等によるSiO2 膜を1.0nm以下の膜厚に堆積する。
【0052】
続いて、第1絶縁層104上に、第1金属層105として、例えば、PVD(Physical Vapor Deposition )法、ALD(Atomic Layer Deposition )法等により、Hf、Zr、Ti等の金属材料を1.0nm以下の膜厚に堆積する。第1金属層105を構成する元素としては、これらの他に、酸化物の生成熱の絶対値がSiよりも大きい元素(例えば図2に示す元素)を用いることができる。
【0053】
続いて、第1金属層105上に、第2絶縁層106として、例えば、ALD法、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition )法等により、HfO2 、ZrO2 、HfZrO等のHigh-k材料を1.0nm以下の膜厚に堆積する。ここで、第2絶縁層106を堆積する前に、プラズマ酸化法により第1金属層105を酸化する工程を追加しても良い。これにより、未反応の金属層が残留して絶縁層の信頼性が劣化するのを避けることができる。
【0054】
続いて、第2絶縁層106上に、第2金属層107として、PVD法、ALD法等により、Hf、Zr、Ti等の金属材料を1.0nm以下の膜厚に堆積する。第2金属層107を構成する元素としても、これらの他に、酸化物の生成熱の絶対値がSiよりも大きい元素(例えば図2に示す元素)を用いることができる。また、第1金属層105及び第2金属層107が金属材料を含んでいても良いし、異なる金属材料を含んでいても良い。
【0055】
続いて、第2金属層107上に、ゲート電極108として、PVD法、ALD法等により、TiN、TaN等の金属元素を含む膜を10nm以下の膜厚に形成する。更にその上に、pチャネルのゲート領域を画定するためのマスク材料109を形成する。マスク材料109は、例えば、レジストである。
【0056】
次に、図1(b)の工程を行なう。ここでは、マスク材料109をマスクとして用い、ゲート電極108、第2金属層107、第2絶縁層106、第1金属層105及び第1絶縁層104をエッチングすることにより、パターニングされたこれらの層からなるゲートスタック構造120を形成する。この後、マスク材料109を除去する。
【0057】
続いて、ゲートスタック構造120の側面に、例えばSiO2 、SiON、SiN等からなるオフセットスペーサ110を形成する。更に、半導体基板101におけるゲートスタック構造120の両側の領域に、当該オフセットスペーサ110越しに不純物注入としてイオン注入を行なうことにより、エクステンション・ポケット領域111を形成する。
【0058】
次に、図1(c)の工程を行なう。ここでは、ゲートスタック構造120の側面に、オフセットスペーサ110を覆うように、例えばSiO2 、SiON、SiN等からなるサイドウォール112を形成する。その後、ゲートスタック構造120、オフセットスペーサ110及びサイドウォール112をマスクとして用い、半導体基板101の表面に不純物注入としてイオン注入を行なうことにより、pチャネルMOSFETのソース・ドレイン領域113を形成する。
【0059】
次に、図1(d)の工程を行なう。ここでは、アニール(例えばスパイクアニール、レーザーアニール、フラッシュランプアニール)等の不純物活性化処理を行なうことにより、エクステンション・ポケット領域111及びソース・ドレイン領域113の活性化を行なう。この際、第1金属層105が第1絶縁層104を還元し、酸素を抜き取ることにより、第1絶縁層104が薄膜化される。この際、第2金属層107がバリア層として機能することにより、雰囲気中からゲートスタック構造120中への酸素の拡散は抑制される。
【0060】
より具体的には、各層は次のように反応する。
【0061】
第1絶縁層104がSiO2 からなる場合、還元により、酸素の少ない酸化シリコン又はシリコンの層が(第1絶縁層104の第1金属層105側に)生じる。この結果として、SiO2 からなる層は薄くなる。還元されたSiは、半導体基板101に吸収されるか、又は、第1金属層105に取り込まれて金属シリコン酸化物を形成する。
【0062】
第1金属層105は、一部(第1絶縁層104側の部分)が酸化されて金属酸化物の層が生じる。又は、前記の第1絶縁層104の還元により生じたSiを取り込んで金属シリコン酸化物を形成する。
【0063】
第2絶縁層106(High-k層)は、第1金属層105及び第2金属層107に含まれる金属元素の種類により、還元される場合がある。
【0064】
第2金属層107は、金属元素の種類によっては第2絶縁層106を還元した結果としていくらか酸化される。このことにより、第2金属層107よりも下方の層の酸化を抑制する。
【0065】
このようにして、アニールにより第1絶縁層104、第1金属層105、第2絶縁層106及び第2金属層107からゲート絶縁膜121が形成される。尚、図1(d)には一層のゲート絶縁膜121が示されているが、ゲート絶縁膜121を構成する元素には分布がある。また、アニールによって金属元素は元の位置から相互拡散しているが、濃度ピーク自体の位置は実質的には変化しない。
【0066】
第1金属層105及び第2金属層107が同じ金属元素を含んでいた場合、当該金属元素の濃度分布は、図3に示すようにゲート絶縁膜121の厚さ方向に変化しており、上部(ゲート電極108側)と下部(半導体基板101側)とにおいて、それらの間の中央部よりも濃度が高くなっている。
【0067】
以上のようにして、半導体基板101上にゲート絶縁膜121を介してゲート電極108が形成されたMOS構造を含む半導体装置100が製造される。本実施形態の半導体装置の製造方法によると、SiO2 等からなる第1絶縁層104を半導体基板101との界面を安定化するための界面層として利用し、且つ、第1絶縁層104を還元により薄膜化する。これにより、界面不整合による電気特性の劣化を抑制し、且つ、EOTを小さくすることができる。また、窒素を含まない界面層を用いるので、窒素に起因するNBT等の信頼性劣化及びチャネル移動度の低下を避けることができる。
【0068】
本実施形態の半導体装置100において、EOTは1.0nm以下となり、元々の第1絶縁層104の膜厚は0.7nm以下となる。半導体装置100についてのEOTの累積度数分布を図4に示している。
【0069】
尚、以上に説明した半導体装置100の製造方法において、第2金属層107の形成を省略しても良い。これにより、MOSFETのしきい値電圧、EOT等を調整することができる。このような場合、ゲート絶縁膜121中における第1金属層105を構成していた金属元素の濃度分布は、ゲート絶縁膜121の下部(半導体基板101側)において、中央部及び上部よりも大きくなる。
【0070】
更に、第2絶縁層106及び第2金属層107の形成を共に省略しても良い。これによっても、MOSFETのしきい値電圧、EOT等を調整することができる。
【0071】
尚、第2金属層107の形成を省略した場合、ゲート絶縁膜121の厚さ方向に関する金属元素の濃度分布は、ゲート電極108の側において、半導体基板101の側よりも高い分布となる。
【0072】
また、第2絶縁層106の形成を省略する場合、第1貴金属層としては、酸化物がHigh-k絶縁膜となる金属元素(Hf、Zr等)を用いる。これにより、第1金属層105が第1絶縁層104を還元し、HfO2 等のHigh-k絶縁膜となる。
【0073】
また、第1金属層105と第2金属層107とが異なる金属元素を含んでいる構成でも良い。この場合にも、ゲート絶縁膜121中における第1金属層105を構成していた金属元素の濃度分布は、ゲート絶縁膜121の下部において、中央部及び上部よりも大きくなる。
【0074】
尚、第1金属層105及び第2金属層107について同じ金属元素を用いると、半導体装置100及びその製造プロセスを簡単にすることができる。また、第1金属層105及び第2金属層107について異なる金属元素を用いると、しきい値の調整を更に行なうことが可能となる。
【0075】
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施形態について説明する。図5(a)〜(d)は、本実施形態の例示的半導体装置200及びその製造方法について説明する図である。本実施形態では、半導体基板上に、例えばシリコン酸化物、シリコン酸窒化物(窒素の量が比較的少ない(特に、組成比が7%以下の)もの)を含む第1ゲート絶縁膜と、金属元素を含む第1金属層と、金属酸化物を含む第2絶縁層と、金属元素を含む第2金属層と、金属元素を含むキャップ層と、金属元素を含むゲート電極とを含む積層構造を形成する。
【0076】
半導体装置200の製造方法を図5(a)の工程から順に説明する。まず、半導体基板201に素子分離領域202を形成する。例えば、シリコン基板である半導体基板201にエッチングによりトレンチを形成した後、CVD法によりSiO2 を埋め込むことにより素子分離領域202とする。次に、素子分離領域202により区画された半導体基板201にp型不純物を注入することにより、p型ウェル領域203を形成する。
【0077】
続いて、半導体基板201上に、第1絶縁層204、第1金属層205、第2絶縁層206、第2金属層207を順次形成する。これらは、第1の実施形態において半導体基板101上に順次形成した、第1絶縁層104、第1金属層105、第2絶縁層106、第2金属層107と同様に形成すればよい。また、第2絶縁層206を堆積する前に、プラズマ酸化法により第1金属層205を酸化する工程を追加しても良い。
【0078】
次に、第2金属層207上に、キャップ層230として、PVD法、ALD法等により、AlO、Al等からなる膜を0.5nm以下の膜厚に堆積する。
【0079】
続いて、キャップ層230上に、ゲート電極208として、PVD法、ALD法等により、TiN、TaN等の金属元素を含む膜を10nm以下の膜厚に形成する。更にその上に、nチャネルのゲート領域を画定するためのマスク材料209を形成する。マスク材料209は、例えば、レジストである。
【0080】
次に、図5(b)の工程を行なう。ここでは、マスク材料209をマスクとして用い、ゲート電極208、キャップ層230、第2金属層207、第2絶縁層206、第1金属層205及び第1絶縁層204をエッチングすることにより、パターニングされたこれらの層からなるゲートスタック構造220を形成する。この後、マスク材料209は除去する。
【0081】
続いて、ゲートスタック構造220の側面に、例えばSiO2 、SiON、SiN等からなるオフセットスペーサ210を形成する。更に、半導体基板201におけるゲートスタック構造220の両側の領域に、当該オフセットスペーサ210越しに不純物注入としてイオン注入を行なうことにより、エクステンション・ポケット領域211を形成する。
【0082】
次に、図5(c)の工程を行なう。ここでは、ゲートスタック構造220の側面に、オフセットスペーサ210を覆うように、例えばSiO2 、SiON、SiN等からなるサイドウォール212を形成する。その後、ゲートスタック構造120、オフセットスペーサ210及びサイドウォール212をマスクとして用い、半導体基板201の表面に不純物注入としてイオン注入を行なうことにより、nチャネルMOSFETのソース・ドレイン領域213を形成する。
【0083】
次に、図5(d)の工程を行なう。ここでは、スパイクアニール、レーザーアニール、フラッシュランプアニール等の不純物活性化処理を行なうことにより、エクステンション・ポケット領域211及びソース・ドレイン領域213の活性化を行なう。この際、第1金属層205が第1絶縁層204を還元し、酸素を抜き取ることにより、第1絶縁層204が薄膜化される。雰囲気中からゲートスタック構造220中への酸素の拡散は、第2金属層207がバリア層として機能することにより抑制される。
【0084】
半導体装置200においても、ゲート絶縁膜221(図5(d)において一層に示されている)を構成する元素には濃度分布がある。第1金属層205及び第2金属層207が同じ金属元素を含んでいた場合、当該金属元素の濃度分布は、第1の実施形態において図3に示したのと同様に、上部(ゲート絶縁膜221側)と下部(半導体基板201側)とにおいて、それらの間の中央部よりも濃度が高くなっている。
【0085】
以上のようにして、半導体基板201上にゲート絶縁膜221を介してゲート電極208が形成されたMOS構造を含む半導体装置200が製造される。本実施形態の半導体装置の製造方法によると、SiO2 等からなる第1絶縁層204を半導体基板201との界面を安定化するための界面層として利用し、且つ、第1絶縁層204を還元により薄膜化する。これにより、界面不整合による電気特性の劣化を抑制し、且つ、EOTを小さくすることができる。また、窒素を含まない界面層、又は、窒素の量が十分に少ない(特に、組成比が7%以下の)界面層を用いるので、界面層に多量の窒素が含まれていることに起因するNBT等の信頼性劣化及びチャネル移動度の低下を避けることができる。
【0086】
本実施形態の半導体装置200において、EOTは1.0nm以下となり、元々の第1絶縁層204の膜厚は0.7nm以下となる。
【0087】
また、本実施形態の場合、キャップ層230を設けていることにより、MOSFETのしきい値電圧、EOTを更に調整することができる。
【0088】
また、第2金属層207の形成を省略しても良いこと、更には、第2絶縁層206及び第2金属層207の形成を共に省略しても良いことについても、第1の実施形態の場合と同様である。
【0089】
また、第1金属層205と第2金属層207とが異なる金属元素を含んでいる構成でも良い。この場合にも、ゲート絶縁膜221中における第1金属層205を構成していた金属元素の濃度分布は、ゲート絶縁膜221の下部において、中央部及び上部よりも大きくなる。
【0090】
(第3の実施の形態)
次に、第3の実施形態について説明する。図6(a)〜(d)は、本実施形態の例示的半導体装置300及びその製造方法について説明する図である。
【0091】
本実施形態は、第1の実施形態にて説明したpチャネルMOSFETと、第2の実施形態にて説明したnチャネルMOSFETとを組み合わせたCMOSFET(complementary MOSFET)に関するものである。
【0092】
半導体装置300の製造方法について、図6(a)の工程から順に説明する。まず、半導体基板301に対してエッチングによりトレンチを形成した後、当該トレンチにCVD法等によりSiO2 を埋め込むことにより素子分離領域302を形成する。次に、次に、素子分離領域302により区画された半導体基板301に対し、n型不純物を注入することによりn型ウェル領域303を形成すると共に、p型不純物を注入することによりp型ウェル領域333を形成する。
【0093】
続いて、n型ウェル領域303及びp型ウェル領域333上に亘って、第1絶縁層304として、熱酸化法、プラズマ酸化法等により、例えばSiO2 を0.1nm以下の膜厚に堆積する。
【0094】
続いて、第1絶縁層304上に、第1金属層305として、PVD法、ALD法等により、Hf、Zr、Ti等の金属材料を1.0nm以下の膜厚に堆積する。第1金属層105を構成する元素としては、これらの他に、酸化物の生成熱の絶対値がSiよりも大きい元素(例えば図2に示す元素)を用いることができる。
【0095】
続いて、第1金属層305上に、第2絶縁層306として、ALD法、MOCVD法等により、HfO2 、ZrO2 、HfZrO等のHigh-k材料を1.0nm以下の膜厚に堆積する。ここで、第2絶縁層306を堆積する前に、プラズマ酸化法により第1金属層305を酸化する工程を追加しても良い。
【0096】
続いて、第2絶縁層306上に、第2金属層307として、PVD法、ALD法等により、Hf、Zr、Ti等の金属材料を1.0nm以下の膜厚に堆積する。第2金属層307を構成する元素としても、これらの他に、酸化物の生成熱の絶対値がSiよりも大きい元素(例えば図3に示す元素)を用いることができる。
【0097】
続いて、第2金属層307上に、キャップ層330として、PVD法、ALD法等により、AlO、Al等からなる膜を0.5nm以下の膜厚に堆積する。更に、n型ウェル領域303上方部分において、キャップ層330上に、マスク334を堆積する。
【0098】
次に、図6(b)の工程を行なう。まず、マスク334を利用してエッチングを行ない、p型ウェル領域333上方部分のキャップ層330を除去する。その後、マスク334を除去する。
【0099】
続いて、n型ウェル領域303上方及びp型ウェル領域333上方について、ゲート電極308として、PVD法、ALD法等により、TiN、TaN等の金属元素を含む膜を10nm以下の膜厚に形成する。
【0100】
次に、図6(c)の工程を行なう。ここでは、n型ウェル領域303上方及びp型ウェル領域333上方においてゲート電極308上にマスク(図示省略)を形成してゲートパターニングを行ない、それぞれゲートスタック構造320a及び320bを形成する。更に、それぞれのゲートスタック構造320a及び320bの側面を覆うオフセットスペーサ310を形成し、ゲートスタック構造及びオフセットスペーサ310をマスクとする不純物注入により、エクステンション・ポケット領域311を形成する。
【0101】
続いて、ゲートスタック構造320a及び320bの側面に、オフセットスペーサ310を覆うように、サイドウォール312を形成する。更に、ゲートスタック構造320a及び320b、オフセットスペーサ310、サイドウォール312をマスクとして半導体基板301に不純物を注入し、ソース・ドレイン領域313を形成する。
【0102】
次に、図6(d)の工程を行なう。ここでは、スパイクアニール、レーザーアニール、フラッシュランプアニール等の不純物活性化処理を行なうことにより、エクステンション・ポケット領域311及びソース・ドレイン領域313の活性化を行なう。この際、第1金属層305が第1絶縁層304を還元し、酸素を抜き取ることにより、第1絶縁層304が薄膜化される。雰囲気中からゲートスタック構造320a及び320b中への酸素の拡散は、第2金属層207がバリア層として機能することにより抑制される。
【0103】
半導体装置300においても、ゲート絶縁膜321(図6(d)において一層に示されている)を構成する元素には濃度分布がある。第1金属層305及び第2金属層307が同じ金属元素を含んでいた場合、当該金属元素の濃度分布は、第1の実施形態において図3に示したのと同様に、上部(ゲート絶縁膜321側)と下部(半導体基板301側)とにおいて、それらの間の中央部よりも濃度が高くなっている。
【0104】
以上のようにして、半導体基板301上にゲート絶縁膜321を介してゲート電極308が形成されたpチャネルMOSFET及びnチャネルMOSFETを共に有する半導体装置300が製造される。
【0105】
本実施形態の半導体装置の製造方法によると、SiO2 等からなる第1絶縁層304を半導体基板301との界面を安定化するための界面層として利用し、且つ、第1絶縁層304を還元により薄膜化する。これにより、界面不整合による電気特性の劣化を抑制し、且つ、EOTを小さくすることができる。また、窒素を含まない界面層を用いるので、窒素に起因するNBT等の信頼性劣化及びチャネル移動度の低下を避けることができる。
【0106】
本実施形態の半導体装置300において、EOTは1.0nm以下となり、元々の第1絶縁層204の膜厚は0.7nm以下となる。
【0107】
また、第2金属層307の形成を省略しても良いこと、更には、第2絶縁層306及び第2金属層307の形成を共に省略しても良いことについても、第1の実施形態の場合と同様である。
【0108】
また、第1金属層305と第2金属層307とが異なる金属元素を含んでいる構成でも良い。この場合にも、ゲート絶縁膜321中における第1金属層305を構成していた金属元素の濃度分布は、ゲート絶縁膜321の下部において、中央部及び上部よりも大きくなる。
【産業上の利用可能性】
【0109】
以上説明したように、本開示の半導体装置及びその製造方法は、High-k絶縁膜を適用したMOSFETにおいてEOTの増加を抑制することができると共に、NBTI等の信頼性劣化及びチャネル移動度の低下を抑制できるので、微細化の進んだMOSFETを含む半導体装置の性能向上にも有用である。
【符号の説明】
【0110】
100、200、300 半導体装置
101、201、301 半導体基板
102、202、302 素子分離領域
103、 303 n型ウェル領域
104、204、304 第1絶縁層
105、205、305 第1金属層
106、206、306 第2絶縁層
107、207、307 第2金属層
108、208、308 ゲート電極
109、209、309 マスク材料
110、210、310 オフセットスペーサ
111、211、311 エクステンション・ポケット領域
112、212、312 サイドウォール
113、213、313 ソース・ドレイン領域
120、220、320a、320b ゲートスタック構造
121、221、321 ゲート絶縁膜
230、330 キャップ層
203、333 p型ウェル領域
334 マスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に、シリコン酸化物を含む第1絶縁層を形成する工程(a)と、
前記第1絶縁層上に第1金属層を形成する工程(b)と、
前記第1金属層上にゲート電極を形成する工程(c)とを備え、
少なくとも前記第1絶縁層及び前記第1金属層からゲート絶縁膜を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1の半導体装置の製造方法において、
前記工程(b)の後に、前記第1金属層上に、金属酸化物を含む第2絶縁層を形成する工程(d)を更に備え、
前記工程(c)において、前記第2絶縁層上に前記ゲート電極を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項2の半導体装置の製造方法において、
前記工程(d)の後に、前記第2絶縁層上に、第2金属層を形成する工程(e)を更に備え、
前記工程(c)において、前記第2金属層上に前記ゲート電極を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1の半導体装置の製造方法において、
前記工程(b)の後に、前記第1金属層上にキャップ層を形成する工程(f)を更に備え、
前記工程(c)において、前記キャップ層上に前記ゲート電極を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項2の半導体装置の製造方法において、
前記工程(d)の後に、前記第2絶縁層上にキャップ層を形成する工程(g)を更に備え、
前記工程(c)において、前記キャップ層上に前記ゲート電極を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項3の半導体装置の製造方法において、
前記工程(e)の後に、前記第2金属層上にキャップ層を形成する工程(h)を更に備え、
前記工程(c)において、前記キャップ層上に前記ゲート電極を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つの半導体装置の製造方法において、
前記工程(c)の後に、熱処理を行ない、前記第1金属層により前記第1絶縁層を還元して前記第1絶縁層を薄膜化する工程(i)を更に備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項7の半導体装置の製造方法において、
前記工程(c)の後に、前記ゲート電極の両側部分の前記半導体基板に不純物を導入する工程を更に備え、
前記工程(i)は、前記不純物の活性化と同時に行なわれることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項2、3又は5において、
前記工程(b)の後で且つ前記工程(d)の前に、前記第1金属層を酸化する工程(j)を更に備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項10】
請求項9において、
前記工程(j)において、プラズマ酸化により前記第1金属層を酸化することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1つの半導体装置の製造方法において、
熱処理を行なう工程を更に備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法において、
Siよりも酸化物の生成熱の絶対値が大きい金属元素を用いることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項13】
請求項12の半導体装置の製造方法において、
前記金属元素は、酸化物がHigh-k絶縁層となる元素であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項14】
請求項3又は6において、
前記第1金属層及び前記第2金属層は、同じ金属元素からなることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項15】
半導体基板と、
前記半導体基板上に形成され、Si及び金属元素を含むゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極とを備え、
前記ゲート絶縁膜に含まれる前記金属元素の濃度は、前記ゲート絶縁膜の厚さ方向に変化しており、前記半導体基板側の部分において前記ゲート電極側の部分よりも高いことを特徴とする半導体装置。
【請求項16】
半導体基板と、
前記半導体基板上に形成され、Si及び金属元素を含むゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極とを備え、
前記ゲート絶縁膜に含まれる前記金属元素の濃度は、前記ゲート絶縁膜の厚さ方向に変化しており、前記半導体基板側の部分及び前記ゲート電極側の部分において、前記ゲート絶縁膜の厚さ方向の中央部分よりも高いことを特徴とする半導体装置。
【請求項17】
請求項15又は16の半導体装置において、
前記金属元素は、Siよりも酸化物の生成熱の絶対値が大きいことを特徴とする半導体装置。
【請求項18】
請求項15〜17のいずれか1つの半導体装置において、
前記ゲート絶縁膜の下部は、シリコン酸化膜からなり、
前記シリコン酸化膜の膜厚は0.7nm以下であることを特徴とする半導体装置。
【請求項19】
請求項15〜18のいずれか1つの半導体装置において、
前記ゲート絶縁膜の酸化膜換算膜厚が1.0nm以下であることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−23119(P2012−23119A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−158482(P2010−158482)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】