説明

フルベン及びフルバレン類似体、及び癌治療におけるその使用

化合物、その化合物を含む医薬組成物、及びこれらの調製方法と使用を開示する。この化合物は、フルベン及び/又はフルバレン類似体である。この化合物及び組成物を使用し、薬剤耐性癌等の様々な癌、及び様々な眼疾患等の数々の炎症性、変性及び血管性疾患を治療及び/又は予防することができる。代表的なフルベン及び/又はフルバレン類似体は、様々な染料、ホルモン、糖、ペプチド、オリゴヌクレオチド、アミノ酸、ヌクレオチド、ヌクレオシド、及びポリオールのフルベン及びフルバレン類似体を含む。前記化合物は、少なくとも、Nox又はROSを阻害することによって作用すると考えられる。いくつかの実施形態では、Noxは、正常細胞よりも癌細胞において選択的に発現されるか、又は正常細胞よりも癌細胞において大量に発現される。従って、前記化合物は、様々な癌及び他の疾患に対する新しい治療薬である。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、原発性癌及び転移性癌を治療する新しい方法および組成物に関する。この方法及び組成物は、フルベン及び/又はフルバレンを用いる。本化合物、および本化合物を含有する医薬組成物は、ヒトにおける原発性癌及び転移性癌の治療に特に有用である。また、本発明は、上記治療用化合物又は組成物の様々な投与形態を包含する。
【0002】
本発明は、米国国立衛生研究所により授与された許可番号AR47901の下において国庫補助で行われた。米国政府は本発明において一定の権利を有する。
(発明の背景)
癌は、任意の正常組織から生じる異常細胞の数の増加、これら異常細胞による隣接組織の浸潤、及び所属リンパ節及び遠隔部位への悪性細胞のリンパ性または血行性拡延(転移)によって主に特徴付けられる。癌は、一定の条件下で新生組織形成に発展しうるわずかな前新生物変化から開始される多段階過程である。悪性内皮系腫瘍は、血管内皮増殖因子(VEGF)及びその主要な分泌促進受容体である血管内皮増殖因子受容体2を含む自己分泌ループの環境下で生じる。
【0003】
活性酸素種(ROS)は、癌における増殖と血管新生の伝達物質と考えられている。ROSの増加は、Ras変換細胞や、増殖因子で処置された細胞等の細胞増殖と相関する場合が多い。非変換細胞は、ROS産生を調節する増殖因子/サイトカインに反応し、培養下の腫瘍細胞は、H22を過剰産生することが多い。
【0004】
NAD(P)Hオキシダーゼ(Nox)は、ハイドロキノン(NADH)オキシダーゼ活性及びタンパク質ジスルフィド−チオール交換活性を有する細胞表面タンパク質である。一般的に、上記酵素のほとんどの形態は、NADH又はNADPHのいずれかを同様に効果的に利用できる。Noxには、p22(phox)、p47(phox)及び低分子量G−タンパク質Raclの他、Nox1−5、二重オキシダーゼ1及び2(Duox1及び2)等の多くの形態がある。
【0005】
Noxは、一定の癌におけるROSレベル増加の原因であると考えられている。活性酸素生成Nox酵素は、血管新生スイッチに関与しており、Nox阻害剤は、イン・ビトロ(in vitro)でのang−2産生に、及びイン・ビボ(in vivo)でのbEnd.3腫瘍増殖に影響力を持つ。ang−2産生は、Nox酵素阻害剤を用いて薬理学的に阻害され得る。この阻害剤は、イン・ビボ(in vivo)でのbEnd.3血管腫増殖をほぼ消失させる。従って、ang−2産生を標的としたシグナル伝達遮断は、イン・ビボ(in vivo)でのヒト血管腫の治療に有用であり得る。Journal
of Investigative Dermatology advance online publication, 1 June 2006; doi:10.1038/sj.jid.5700413。
【0006】
特定のNox酵素に関しては、Nox1の前立腺癌細胞株へのトランスフェクションが腫瘍増殖を劇的に助長したことが示されており(Arbiserら: PNAS 99:715−720, 2001)、前立腺腫瘍はH22レベルの増加を示す。さらに、前立腺腫瘍はNox1レベル及び過酸化水素レベルの増加を示すことが近年発見された(Limら,Prostate.2005 Feb 1;62(2):200−7)。また、Nox1依存性スーパーオキシド産生は、結腸腺癌細胞移動を制御することが示された(Sadokら,Biochim. Biophys. Acta. 1783(1):23−33 (Jan 2008))。Sadokは、Nox1の阻害又は発現抑制が、スー
パーオキシド産生とα2β1インテグリン細胞膜利用率の減少を導くことを示した。従って、前立腺癌におけるNoxタンパク質レベルとROSには相関関係があり、Nox1/H22の増加は腫瘍原性の増加と相関する。
【0007】
Nox4は、膵臓癌細胞等の癌細胞におけるアポトーシスの阻害に関与していると考えられている(Vaqueroら,J Biol Chem. 2004 Aug 13;279(33):34643−54)。Vaqueroは、NAD(P)H オキシダーゼ(おそらくNox4)により産生される増殖因子起因性ROSは膵臓癌細胞をアポトーシスから保護し、Nox4アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いたトランスフェクションは、一定の膵臓細胞(即ち、MIA PaCa−2及びPANC−1細胞)におけるNAD(P)Hオキシダーゼ活性及びROS産生を阻害し、且つこれらの細胞におけるアポトーシスを刺激したことを示唆した。
【0008】
PI3Kの下流のシグナル伝達分子Aktは、ROS生成酵素Nox4の発現を促すことが知られている。ある研究では、Akt過剰発現が細胞を放射状増殖から垂直増殖に転換するために十分であるか否かを試験するため、Aktを放射状増殖WM35メラノーマに組み込んだ。Aktの過剰発現は、VEGFの上方調節、スーパーオキシドROS産生の増加、及びより顕著な解糖代謝への切り替えを導いた。Aktを過剰発現させるWM35細胞の皮下移植は、イン・ビボ(in vivo)での腫瘍の急速な増殖を導く一方で、ベクター対照細胞は腫瘍を形成しなかった。Arbiserら,J.Clini.Invest.117(10):2762−2765(2007)。このデータは、Aktの阻害はNox4の下流産生を阻害し得、その後スーパーオキシド生成を阻害し、従ってメラノーマを治療するという前提を支持するものである。
【0009】
Duox1及び2は、気道内皮における主要なNox種であり、気道における主要な活性酸素種産生源の1つであると考えられている(Luxenら,Canser Res.2008 Feb 15;68(4):1037−45)。従って、これらの酵素の阻害はヒトの肺癌の治療に有用で有り得る。
【0010】
何人かの著者は、Noxは2つのカテゴリーに分けられると特徴付けている。1つは、ホルモン無感応性及び薬物反応性の(即ち、カプサイシンまたは抗腫瘍スルホニル尿素LY181984等のキニーネ−部位阻害剤を用いた)癌細胞に特化した指定「tNox」である。もう1つは、非変換細胞の細胞膜に付随する薬物中立型の構成形態である指定「CNox」である。(Brunoら,1992,Biochem.J.284:625−628,及びMorre and Morre,1995,Protoplasma 184:188−195)。
【0011】
癌細胞は、薬物反応性、ホルモン及び増殖因子中立型(tNox)活性と、薬物阻害性、ホルモン及び増殖因子依存性(CNox)活性の両方を示し、非形質転換細胞は、薬物阻害性、ホルモン及び薬物反応性CNoxのみを示す。CNoxは、癌細胞のtNoxのように、NADHを酸化可能であるが、ホルモンと増殖因子により調節される活性を有する。従って、何人かの著者は、tNoxの阻害剤(Nox4等、1つ以上の上記Nox酵素を含むと考えられる)は癌治療において有用であると理論化した。
【0012】
癌治療に加え、Nox阻害剤は、活性酸素種が関与してきた数多くの他の炎症性、変性及び血管性疾患に治療効果を提供するとさらに期待されている。
例えば、Noxは、網膜血管炎症、及び血管内皮増殖因子(VEGF)及び網膜新生血管における虚血起因性増加に関与すると報告されている(Al−Shabraweyら,Invest,Ophthalmol,Vis,Sci. (2008))。内毒素血症及びストレプトゾトシンに起因する糖尿病のモデルにおいて、野生型マウス、Nox2が
欠如したマウス、及びNADPHオキシダーゼ阻害剤アポシニンで治療されたマウスを用いて行われた研究は、ICAM−1の発現及び白血球停滞の内毒素血症起因性及び糖尿病起因性増加が、Nox2の排除により顕著に阻害されたことを示した。ICAM−1、白血球停滞、及び血液網膜関門の破壊の糖尿病起因性増加の回避において、アポシニン治療はNox2の排除と同様に効果的であり、糖尿病性網膜症のこれらの初期症状にNox2が主に影響していることを示唆した。
【0013】
網膜色素上皮におけるアポトーシス細胞の損失は、ROSの増加により開始され、抗酸化物質により阻害される(Glotkinら,2006 IOVS, 47:4614−4623)。これは、乾燥性加齢黄斑変性症の発症に関与していると考えられる。同様に、抗酸化物質の使用は、AMDで大きなドルーゼを有する患者における新生血管への進行を低減することが示されている(Coleman and Chew,2007,Curr.Opin.Ophthalmol.18(3):220−223)。
【0014】
NADP+還元酵素はレチンアルデヒド及びレチノイン酸の濃度を低下させ、このことはまたレチンアルデヒド起因性細胞死から細胞を保護する(Leeら,J. Biol.Chem.,282(49)35621−8(2007)。ひいては、NADPHオキシダーゼの阻害は、NADP+還元酵素の割合を増加させるのと同様の効果を有し、レチンアルデヒド又はレチノイン酸の媒介によってもたらされる網膜変性に有益な効果を有し得る。
【0015】
NADPHオキシダーゼの特定の阻害は、未熟児網膜症のモデルにおいて血管新生を低減する、ことが示されている(Al−Shabrawayら,2005,Am.J.Pathol.167(2):599− 607,及びSaitoら,2007,Mol.Vision,13:840−853)。さらに、ROSの増加は糖尿病の動物で観察されており、ROS増加はVEGF活性の増加と相関する。同様に、酸化的ストレスは糖尿病性網膜症の発症において大きな要因であると考えられている(Kowluru and Chan,2007,Expt.Diabetes Res.,Article ID 43603)。
【0016】
ROSは、緑内障の発症において2つの個別の効果を有し得る。第一に、ROSの増加は小柱網の細胞性の上昇に導いた(これにより眼圧が上昇した、Saccaら,2007,Exp.Eye Res.84(3):389−399)。また、活性酸素種の増加は徐々に、視野欠損の解剖学的根拠である網膜神経節細胞のアポトーシスを刺激すると考えられている(Tezel,2006,Prog.Retin.Eye Res. 5(5):490−513)。
【0017】
非眼球皮膚組織において、花粉からのNADPHオキシダーゼはアレルギー反応を持続させることが示されている。NADPHオキシダーゼの阻害は、マスト細胞脱顆粒を低減し、アレルギー性眼疾患において有用であり得る(Nishikawaら,2007,BBRC,362(2):504−509)。
【0018】
NADPHオキシダーゼの阻害が上述の眼疾患のいくつかにおいて治療効果を提供することを示す直接的な実験証拠は欠如しているが、NADPHオキシダーゼの阻害は、細胞酸化還元平衡を変えることが期待でき、従って間接的方法により様々な条件で治療し得る。
【0019】
NADPHオキシダーゼは角膜上皮細胞及び角膜間質細胞において構成的に発現されるという観察(O’Brienら,2006,IOVS,47:853−863)に基づき、NADPHオキシダーゼ阻害剤は、ドライアイの治療においても有効であり得る。著者
らは、スーパーオキシドアニオンの産生が角膜の炎症に関与している可能性があることを示唆している。
【0020】
炎症性疾患における特定のNox酵素の役割に関し、Nox2含有NADPHオキシダーゼ及びAktの活性化は、アンジオテンシンII起因性心筋細胞肥大において重要な役割を果たすと考えられている(Physiol.Genomics 26:180−191,2006)。
【0021】
従って、Noxは、いくつかの癌及び炎症性疾患におけるROSレベル増加の原因であると考えられ、適切な阻害剤を用いた治療は、上記癌及び炎症性疾患の治療において有用であり得る。
【0022】
従来の化学療法剤の非選択性により一般的に引き起こされる悪影響を有さない癌治療の必要性が、依然として残されている。さらに、活性酸素種が関与してきた炎症性、変性及び血管性疾患のさらなる治療の必要性が残されている。本発明は、このような化合物、組成物及び方法を提供する。
(発明の概要)
化合物、前記化合物を含む医薬組成物、及びその調製方法と使用を開示する。1つの実施形態では、本化合物は、好適な中間体上でシクロペンタジエニルアニオンを1つ以上のケトン基又はアルデヒド基と反応させることにより形成することができる、フルベン及び/又はフルバレン類似体である。別の実施形態では、本化合物は、糖酸、ヌクレオシド酸、ヌクレオチド酸、又はアミノ酸、もしくはヌクレオチド又はアミノ酸を含有するオリゴヌクレオチド及びペプチド上で、フルベン及び/又はフルバレン含有カルボン酸(もしくは酸ハロゲン化物又はその無水物)をヒドロキシル基、チオール基、又はアミン基と反応させることにより形成することができる、フルベン及び/又はフルバレン類似体である。
【0023】
代表的な化合物として、コレステロール、プロゲステロン、テストステロン、又はエストロゲン等のステロイド及びステロイド前駆体;インジゴ及びベンゾフェノン等の染料;クルクミン、及びアルデヒド/ケトン含有クルクメンのフルベン及び/又はフルバレン類似体が挙げられる。
【0024】
これらのフルベン及び/又はフルバレン含有化合物の合成、特徴付け及び抗腫瘍効果の可能性評価についても開示する。
特定の理論に拘束されないが、上記化合物は1つ以上の以下のメカニズムにより作用すると考えられる:
a)Noxの全ての形態を阻害する、
b)Nox1−5を特定的に阻害する、
c)Nox2及び/又はNox4を特定的に阻害する(後者は正常細胞よりも癌細胞において多く存在する、
d)正常細胞よりも癌細胞において多く存在するNox酵素(以下、tNoxと呼ぶ)を阻害する、
e)ROSを阻害する、及び
f)スカベンジャー酵素カタラーゼ、スーパーオキシドジスムターゼI(Zn2+/Cu2+SOD)及びII(MN−SOD)、及びグルタチオンペルオキシダーゼ等のスーパーオキシドスカベンジャーを刺激する。
【0025】
本化合物がROSを阻害できるという証拠は、本化合物をスーパーオキシドジスムターゼに加えると、スーパーオキシドジスムターゼのスペクトルが変わり、遊離基に変換されると考えられることを示す電子スピン共鳴スペクトルを示す実施例において、本明細書中
で示されている。
【0026】
1つ以上の上記化合物を用いた治療は、健康な細胞を死滅させることなく癌細胞を選択的に死滅させるため、選択的抗癌療法を提供する。最も重要なことは、上記化合物は転移した癌細胞に対して効果がある点である。上述のように、癌細胞を死滅させるメカニズムは、CNoxに顕著な影響を与えずにtNoxを阻害することを含み、従って特に転移した腫瘍において細胞増殖を効果的に阻害するか、又は癌細胞に多数存在するNox4等のNox酵素のいずれかを阻害する。即ち、いくつかの実施形態では、Noxは正常細胞よりも癌細胞において選択的に発現されるものであり、他の実施形態では、Noxは正常細胞よりも癌細胞において高い濃度で発現されるものである。
【0027】
本医薬組成物は、薬理学的に許容される担体又は賦形剤とともに、本明細書に記載の有効量の化合物を含む。有効量で用いられた場合、本化合物は、様々な癌、具体的には転移癌の予防及び/又は治療の治療薬として作用し得、このような役割において安全且つ効果的であると考えられる。治療及び/又は予防可能な代表的な癌として、メラノーマ、白血病、非小細胞肺癌、結腸癌、中枢神経系(CNS)癌、腎臓癌、卵巣癌、乳癌及び前立腺癌が挙げられる。さらに、本医薬組成物は、眼疾患の治療において有用であり得る。
【0028】
以下の詳細な説明及び実施例において、本発明の前述及び他の態様を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】様々な濃度の溶媒対照群又は様々な試験化合物で治療されたPMA刺激性Cos−phox細胞におけるH22産生により決定された、様々な試験化合物によるNox2活性の阻害に関するグラフである。
【図2】イン・ビボ(in vivo)での腫瘍細胞に対するクルクミンフルベンの効果(平均腫瘍量)を示す図である。
【図3】溶媒又はフルベン−5(4−(シクロペンタ−2,4−ジエニルイジン(dienylidine)メチル)−5−メチル−1H−イミダゾール)のいずれかで治療され、さらに薄暗い光又は明るい光のいずれかに曝されたマウスの平均ERGb波振幅を示す図である。
【図4】スーパーオキシドジスムターゼ及びフルベン5(「インジゴフルベン」)の電子スピン共鳴(「ESR」)スペクトルである。(発明の詳細な説明) 化合物、前記化合物を含む医薬組成物、及びその調製方法と使用について開示する。
【0030】
以下の定義は、本明細書中に記載の本発明の境界を理解するために役立つであろう。
本明細書中で使用される場合、「アルキル」とは、メチル、エチル、又はイソプロピル等の、C1−C8、好ましくはC1−C5を含む直鎖又は分岐アルキル基をいう。「置換アルキル」とは、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、メルカプト、アリール、ヘテロシクロ、ハロ、アミノ、カルボキシル、カルバミル、シアノ等の1つ以上の置換基をさらに有するアルキル基をいう。「アルケニル」とは、C1−C8、好ましくはC1−C5を含み、さらに少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する直鎖又は分岐炭化水素基をいう。「置換アルケニル」とは、1つ以上の上記に定義された置換基をさらに有するアルケニル基をいう。「シクロアルキル」とは、3〜8個の炭素原子、好ましくは3〜6個の炭素原子を含む、飽和又は不飽和の非芳香族環状環含有基をいう。「置換シクロアルキル」とは、1つ以上の上記に定義された置換基をさらに有するシクロアルキル基をいう。「アリール」とは、6〜10個の炭素原子を有する芳香族基をいう。「置換アリール」とは、上記に定義された1つ以上の置換基をさらに有するアリール基をいう。「アルキルアリール」とは、アルキル−置換アリール基をいう。「置換アルキルアリール」とは、上記に定義された1つ以上の置換基をさらに有するアルキルアリール基をいう。「アリールアルキル」
とは、アリール置換アルキル基をいう。「置換アリールアルキル」とは、上記に定義された1つ以上の置換基をさらに有するアリールアルキル基をいう。「ヘテロシクリル」とは、環状構造の一部として1つ以上のヘテロ原子(例えば、O、N、S)を含み、さらにその環に2〜7個の炭素原子を有する飽和又は不飽和環状基をいう。「置換ヘテロシクリル」とは、上記に定義された1つ以上の置換基をさらに有するヘテロシクリル基をいう。
I.化合物
本化合物は、フルベン及び/又はフルバレン類似体、これら化合物のプロドラッグ又は代謝物、及びそれらの薬理学的に許容される塩である。1つの実施形態では、本化合物は、一般的に以下の式の1つである:

【0031】

式中、Xは、O、S、CH2、又はNR’であり、この場合、各R’は、個別に、水素
、C1-6アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、又はアリールアルキル
(ベンジル等)であり、アリール又はヘテロアリール環は、本明細書中に記載のように、任意の自由位置でH又は置換基Gと置換可能であり、x及びyは0〜3の整数である。
【0032】
他の実施形態では、本化合物は、ヒドロキシル基、チオール基、又はアミン基をもともと最初に含む化合物のエーテル、チオエーテル又はアミン誘導体であり、この場合、この基は、本明細書中に記載のように、フルベン又はフルバレン部分、及びカルボン酸又は活性カルボン酸部分を含む化合物と反応した。1つのフルベン含有カルボン酸を以下に示す:

【0033】
この場合、カルボニル基は、中間体上でヒドロキシル基、チオール基、又はアミン基に付着され、エステル結合、チオールエステル結合、又はアミド結合を形成する。例えば様々なケト−又はアルデヒド−含有カルボン酸を用いることにより、シクロペンタジエニルアニオンとの類似反応で類似化合物を調製することができる。
【0034】
フルベン又はフルバレン含有カルボン酸、酸ハロゲン化物、又は無水物との反応によって、本明細書中に記載の化合物の調製に使用可能な代表的なヒドロキシル、チオール、及びアミン含有部分として、天然糖又は合成糖、ポリオール、ポリエチレングリコール等のポリアルキレングリコール、ヌクレオシド及びヌクレオチド(例えば、上記化合物上での3’及び/又は5’−ヒドロキシ基との反応による)、上記ヌクレオシドを含む短い(即ち、25mer以下の)オリゴヌクレオチド、ヒドロキシル、チオール、及び/又はアミン含有アミノ酸、上記アミノ酸を含むペプチド及びタンパク質、及び以下の式の化合物が挙げられる:

【0035】
又は、Rの少なくとも1つがH以外であるという条件で、上記の別のフルベン又はフルバレン含有カルボン酸部分又は活性カルボン酸部分が挙げられる。
【0036】
代表的な置換基Gとして、C1-6アルキル(シクロアルキルを含む)、アルケニル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、ハロ(例えば、F、Cl、Br、又はI)、−OR’、−NR’R”、−CF3、−CN、−NO2、−C2R’、−SR’、−N3
、−C(=O)NR’R”、−NR’C(=O)R”、−C(=O)R’、−C(=O)OR’、−OC(=O)R’、−OC(=O)NR’R”、−NR’C(=O)OR”、−SO2R’、−SO2NR’R”、及び−NR’SO2R”が挙げられ、この場合、R
’及びR”は、個別に、水素、C1-6アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリ
ール、又はアリールアルキル(ベンジル等)である。
【0037】
本化合物は様々な鏡像体過剰率で生じ得、ラセミ混合物は既知のキラル分離技術を用いて精製することができる。
本化合物の形態は、遊離塩基又は塩(例えば、薬理学的に許容される塩)であり得る。好適な薬理学的に許容される塩の例として、硫酸塩、リン酸塩、及び硝酸塩等の無機酸付加塩;酢酸塩、ジクロロ酢酸塩、ガラクタル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸エステル塩、乳酸塩、グリコール酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、マレイン酸エステル塩、フマル酸エステル塩、メタンスルホン酸塩、P−トルエンスルホン酸塩、及びアスコルビン酸塩等の有機酸付加塩;アスパラギン酸塩及びグルタミン酸塩等の酸性アミノ酸を有する塩;ナトリウム及びカリウム等のアルキル金属塩;マグネシウム及びカルシウム等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩;トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、ジシクロヘキシルアミン、及びN,N’−ジベンジルエチレンジアミン等の有機塩基性塩;及びリジン及びアルギニン等の塩基性アミノ酸を有する塩が挙げられる。いくつかのケースでは、上記塩は、水和物又はエタノール溶媒和物であり得る。各塩の化学量論は、本化合物の本質によって異なるであろう。
【0038】
代表的な化合物は以下を含む:

【0039】

【0040】

【0041】

【0042】

【0043】

【0044】

【0045】

【0046】

【0047】

【0048】

【0049】

【0050】

【0051】

【0052】

【0053】

【0054】

【0055】
本明細書中、インジゴフルベンとして上記に特定した化合物は、「フルベン−5」とも呼ばれる。
【0056】
所望であれば、構造中の窒素原子上で、水素をC1-6アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、又はアリールアルキル部分に、又はアルキル部分をシクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、又はアリールアルキル部分に置換することにより、一定の上記化合物をより疎水性にすることができる。例として、以下が挙げられる:

【0057】
II.化合物の調製方法
いくつかの実施形態では、ナトリウムシクロペンタジエニドを任意のアルデヒド又はケトンと反応させることにより、本化合物を調製することができる。この方法を用いて、容易に入手可能なケトン−又はアルデヒド−含有出発物質から数多くのフルベンを作製することができる。
代表的なアルデヒド及びケトンは、以下のように提供される:

【0058】

【0059】

【0060】

【0061】

【0062】

【0063】

【0064】

【0065】

【0066】

【0067】

【0068】

【0069】

【0070】

【0071】

【0072】

【0073】

【0074】
式中、任意のアリール/ヘテロアリール環は、本明細書中に記載のように、1つ以上の置換基と置換可能であり、アミン(即ち、−NH基)は、明細書中に記載のように、R’基と置換可能である。
【0075】
他の実施形態では、ヒドロキシル基、チオール基、又はアミン基を、フルベン又はフルバレン部分、及びカルボン酸又は活性カルボン酸部分を含む化合物と反応させることにより、本化合物が調製される。
【0076】
一般的に、脱水剤及び/又は塩基の存在下で、ヒドロキシル基、チオール基、又はアミン基は、フルベン又はフルバレン含有カルボン酸又はその活性誘導体(例えば、酸塩化物又は無水物)のいずれかと反応される。様々な条件が可能である。
【0077】
酸触媒及びその後の水の形成(典型的に共沸蒸留により除去される)により、又は典型的にトリエチルアミン等の第3級アミンの存在下で、酸ハロゲン化物又は無水物と反応することにより、カルボン酸はヒドロキシル基又はエステル基と直接結合できる。得られた化合物は、エステル又はチオールエステル結合を有し、この結合を介してフルベン及び/又はフルバレン部分が付着される。
【0078】
遊離アミン官能基を有する中間体は、アミド結合形成に用いられる様々な薬剤のいずれか1つ(例えば、ペプチド合成で用いられる薬剤)を用いて、カルボン酸を含むフルベン又はフルバレン含有部分と結合することができる。上記試薬として、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、(ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスファート(BOP)、(ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)トリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスファート(P
yBOP)、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−ビス(テトラメチレン)ウロニウムヘキサフルオロホスファート(HBPyU)、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート(HBTU)、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)、及び1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)を有する(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)(EDCI)が挙げられる。いくつかのケースでは、上記試薬は、カップリング生成物の分離を非常に容易にするポリマー担持改変体として市販されている。上記試薬の例として、ポリスチレン結合N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(PS−DCC)が挙げられる。
【0079】
例えば、カルボン酸含有部分を塩化チオニル又は塩化オキサリル等の様々な試薬のいずれかと反応させることにより、酸ハロゲン化物を調製することができる。酸塩化物とカルボン酸との反応は、典型的に、第3級アミン、通常はヒンダードアミンの存在下で行われる。
【0080】
典型的に、エステル結合、チオールエステル結合、又はアミド結合形成の後、任意の保護基(例えば、tert−ブトキシカルボニル基又はベンジル基)が除去され、所望の化合物を生成する。保護基、及びその除去方法は、当業者に周知であり、例えば、T.W.Greene and P.G.M.Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,3rd Edition,John Wiley&Sons,New York(1999)に記載されている。
【0081】
本明細書中に記載の化合物を作製するために用いられるフルベン含有及び/又はフルバレン含有カルボン酸は、市販されているか、又は市販の出発物質から調製可能である。市販されていない物質は、所望の特定部分及び特定置換に関する様々な合成法により作製可能である。有機合成の当業者は、合成法のバリエーションを容易に理解するであろう。
【0082】
例えば、1つのフルベン含有及び/又はフルバレン含有カルボン酸を以下に示す:

【0083】
この場合、カルボニル基は中間体上でヒドロキシル基、チオール基、又はアミン基に付着され、エステル結合、チオールエステル結合、又はアミド結合を形成する。この中間体は、例えば、適切に保護された3−ケト酪酸(又は対応する酪酸塩)をシクロペンタジエニルアニオンと反応させ、フルベン環を形成することによって調製できる。所望であれば、カルボキシル酸塩を酸性化してカルボン酸部分を改変し、さらに反応させて無水物又は
酸ハロゲン化物を形成できる。上述のエステル化、チオールエステル化、又はアミド化により、このカルボン酸、酸ハロゲン化物、又は酸無水物中間体を使用して、ほとんどの任意のヒドロキシル、チオール、又はアミン含有化合物のフルベン類似体を形成することができる。
【0084】
上記中間体は、フルベン又はフルバレン部分を化合物上に組み込むために使用できる数多くの化合物の1つにすぎない。類似化合物は、例えば、異なるケト−又はアルデヒド−含有カルボン酸を用いることにより、シクロペンタジエニルアニオンとの類似反応で調製することができる。
【0085】
フルベン又はフルバレン含有カルボン酸、酸ハロゲン化物、又は無水物との反応により、本明細書中に記載の化合物の調製に使用可能な代表的なヒドロキシル、チオール、及びアミン含有部分を、以下に記載する。
【0086】
天然糖又は合成糖、ポリオール、ポリエチレングリコール等のポリアルキレングリコール、ヌクレオシド及びヌクレオチド(例えば、上記化合物上での3’及び/又は5’−ヒドロキシ基との反応による)、上記ヌクレオシドを含む短い(即ち、25mer以下の)オリゴヌクレオチド、ヒドロキシル、チオール、及び/又はアミン含有アミノ酸、上記アミノ酸を含むペプチド及びタンパク質、及び以下の式の化合物:

【0087】
又は、少なくとも1つのRはH以外であるという条件で、上記の別のフルベン又はフルバレン含有カルボン酸部分又は活性カルボン酸部分。
【0088】
フルベン/フルバレンの調製用に出発物質として使用されるシクロペンタジエン環上、及びフルベン/フルバレンのフレームワーク内の他の位置上に、他の置換基を組み入れることは容易に実現可能であることを、当業者は容易に理解するであろう。上記置換基は、置換基内の、及び置換基自体の有用な特性を提供するか、又はさらなる合成の手段として作用し得る。
【0089】
置換基は典型的に、ナトリウムシクロペンタジエニド(即ち、塩基の追加による)を形成する前に、シクロペンタジエンに付着され得る。このナトリウムシクロペンタジエニドは、好適なケトン又はアルデヒドと反応され、本明細書中に記載の化合物を形成するか、
又はヒドロキシル基、チオール基、又はアミン基と反応されるフルベン/フルバレン含有カルボン酸/酸ハロゲン化物/酸無水物を形成して本明細書中に記載の化合物を形成する。
【0090】
例えば、Cram and Partos,Electrophilic Substition and Other Reactions of Diazocyclopentadiene,J.A.C.S.p.1273−1277(1962)に記載の技術を用いて、ジアゾシクロペンタジエンを調製することができる。
【0091】
特定のハロゲンに依存して異なる様々な周知の手順を用い、ジアゾシクロペンタジエンをハロゲン化することができる。好適な試薬の例として、濃縮されたHBr中の臭素/水、塩化チオニル、pyr−IC1、フッ素及びアンバーリスト−Aが挙げられる。
【0092】
ジアゾシクロペンタジエンのジアゾ化された位置に置換基を有する数多くの他の類似体は、ジアゾシクロペンタジエン中間体を介し、対応するアミノ化合物から合成することができる。ジアゾシクロペンタジエンは、例えば、上述の周知の化学的性質を用いて調製することができる。
【0093】
ジアゾシクロペンタジエンをニトロ化することにより、2つの異性体、2−ニトロ及び3−ニトロシクロペンタジエン化合物が得られる。ベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボレートは、2−置換生成物を導き、臭素化は、テトラブロモジアゾシクロペンタジエンを提供する。ヨウ化水銀を用いた水銀化は、2,5−ジ−ヨードジアゾシクロペンタジエン(iododiazocyclopentadiene)を提供することができる。
【0094】
典型的に酸の存在下で、亜硝酸塩との反応により、ニトロ誘導体をアミン化合物に還元することができる。他の置換類似体は、当業者に周知の一般的技術を用い、ジアゾニウム塩中間体から生成することができる。このジアゾニウム塩中間体として、ヒドロキシ、アルコキシ、フルオロ、クロロ、ヨード、シアノ、及びメルカプトが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、ジアゾニウム塩中間体を水と反応させ、得られたヒドロキシル基を保護し、シクロペンタジエニルアニオンを形成し、さらにこれを好適なアルデヒド又はケトンと反応させることにより、ヒドロキシ−フルベン類似体を調製することができる。同様に、ジアゾシクロペンタジエンをアルコールと反応させることにより、アルコキシフルベン類似体を作製することができる。また、当業者に周知となるであろうように、ジアゾシクロペンタジエンを用いて、シアノ又はハロ化合物を合成することもできる。Hoffmanら,J.Med.Chem.36:953(1993)に記載の技術を使うことにより、メルカプト置換を得ることができる。上記のように生成されたメルカプタンは、今度は、水素化ナトリウム及び適切な臭化アルキルとの反応により、アルキルチオ置換基に変換することができる。それから、その後の酸化により、スルホンが提供されるであろう。有機合成の当業者に周知の技術を使って、対応するアミノ化合物を適切な酸無水物又は酸塩化物と反応させることにより、上述の化合物のアシルアミド類似体を調製することができる。
【0095】
ヒドロキシ置換類似体を使って、適切な酸、酸塩化物、又は酸無水物との反応により、対応するアルカノイルオキシ置換化合物を調製することができる。同様に、ヒドロキシ化合物は、電子欠乏芳香族環における求核性芳香族置換によるアリールオキシ及びヘテロアリールオキシ双方の前駆体である。このような化学的性質は、有機合成の当業者に十分周知である。また、エーテル誘導体は、アルキルハロゲン化物及び好適な塩基を用いたアルキル化により、又はMitsunobu化学により、ヒドロキシ化合物から調製すること
もできる。Mitsunobu化学では、トリアルキル−又はトリアリールホスフィン及びアゾジカルボン酸ジエチルが典型的に使用される。典型的なMitsunobu条件については、Hughes,Org.React.(N.Y.)42:335(1992)及びHughes,Org.Prep.Proced.Int.28:127(1996)を参照。
【0096】
シアノ置換類似体を加水分解し、対応するカルボキシアミド−置換化合物を提供することができる。さらなる加水分解により、対応するカルボン酸−置換類似体が形成される。水素化アルミニウムリチウムを用いたシアノ置換類似体の還元により、対応するアミノメチル類似体が生成される。有機合成の当業者に周知の技術を使って適切なアルキルリチウムと反応させることにより、対応するカルボン酸置換類似体からアシル置換類似体を調製することができる。
【0097】
適切なアルコール及び酸触媒との反応により、カルボン酸置換類似体を対応するエステルに変換することができる。エステル基を有する化合物は、水素化ホウ素ナトリウム又は水素化アルミニウムリチウムを用いて還元され得、対応するヒドロキシメチル置換類似体を生成することができる。今度は、従来の技術を使って、これらの類似体を水素化ナトリウム及び適切なハロゲン化アルキルと反応させることにより、エーテル部分を有する化合物に変換することができる。又は、ヒドロキシメチル置換類似体を塩化トシルと反応させ、対応するトシルオキシメチル類似体を提供することができ、このトシルオキシメチル類似体は、塩化チオニル及び適切なアルキルアミンを用いた連続した処置により、対応するアルキルアミノアシル類似体に変換することができる。一定の上記アミド類は、容易に求核性アシル置換を行い、ケトンを生成することが知られている。
【0098】
ヒドロキシ置換類似体を用いて、N−アルキル−又はN−アリールイソシアナートとの反応により、N−アルキル−又はN−アリルカルバモイルオキシ−置換化合物を調製することができる。有機合成の当業者に周知の技術を使って、アミノ置換類似体を用い、アルキルクロロぎ酸エステル及びN−アルキル−又はN−アリールイソシアナートとの反応により、それぞれアルコキシカルボキサミド置換化合物及び尿素誘導体を調製することができる。
【0099】
同様に、上述の反応等を含む周知の化学的性質を用い、ベンゼン環(及びピリジン、ピリミジン、ピラジン、及び他のヘテロアリール環)を置換することができる。例えば、ニトロベンゼン上のニトロ基を亜硝酸ナトリウムと反応させてジアゾニウム塩を形成し、上述のように処理されたジアゾニウム塩により、ベンゼン環に様々な置換基を形成することができる。
III.医薬組成物
本明細書中に記載の化合物は医薬組成物に組み入れられ得、病態又は疾患を起こしやすい患者における病態又は疾患を予防するため、及び/又はその病態又は疾患を生じた患者を治療するために使用される。本明細書中に記載の医薬組成物は、本明細書中に記載の1つ以上のフルベン及び/又はフルバレン類似体、及び/又はその薬理学的に許容される塩を含む。任意に、ラセミ混合物として、純エナンチオマーとして、又は様々なエナンチオマー純度の化合物として、活性化合物を用いることができる。
【0100】
本化合物の投与方法は様々であり得る。前記組成物は、好ましくは、経口投与される(例えば、水性又は非水性液体等の溶媒内又は固体担体内の液体の形態で)。好ましい経口投与用組成物としては、硬ゼラチンカプセル及び持続放出型カプセル等の、丸剤、錠剤、カプセル、カプレット、シロップ、及び液剤が挙げられる。本組成物は、単位用量の形態で、又は複数回投与又はサブユニット用量で処方されてもよい。好ましい組成物は、液体又は半固形の形態である。水又は他の薬学的に相溶性のある液体又は半固形等の液体薬学
的に不活性な担体を含む組成物を使用してもよい。上記液体及び半固形の使用については、当業者に十分周知である。
【0101】
また、本組成物は、注射により、即ち、経静脈的に、筋肉内に、皮下に、腹腔内に、動脈内に、くも膜下腔内に、及び脳室内に投与することもできる。経静脈的投与は、好ましい注射方法である。好適な注射用担体は当業者に十分周知であり、5%デキストロース溶液、生理食塩水、及びリン酸塩緩衝生理食塩水を含む。また、本化合物は、点滴又は注射として(例えば、薬理学的に許容される液体又は液体混合物中の懸濁液又は乳剤として)投与することもできる。
【0102】
また、例えば、直腸投与等の他の方法で製剤を投与してもよい。坐薬等の直腸投与に有用な製剤は、当業者に十分周知である。また、吸入により(例えば、経鼻的に行うか、又は、その全体が本明細書に組み込まれるBrooksらの米国特許番号4,922,901に記載されたタイプの送達装置を用いるかのいずれかのエアロゾルの形態で)、局所的に(例えば、ローションの形態で)、又は経皮的に(例えば、経皮貼布の使用、Novartis and Alza Corporationから市販されている技術の使用)、化合物を投与することもできる。本化合物をバルク活性化学薬品の形態で投与することも可能であるが、効率的且つ効果的投与のために各化合物を医薬組成物又は製剤の形態で提供することが好ましい。
【0103】
本化合物は、ナノ粒子、微粒子、マイクロカプセル等の薬剤送達装置に組み込むことができる。代表的な微粒子/ナノ粒子として、PEG化シクロデキストリン等のシクロデキストリン、小さな単層ベシクル等のリポソーム、及び増殖する腫瘍周辺の毛細血管床に詰まるよう設計されたサイズのリポソームを用いて調製されるものが挙げられる。好適な薬剤送達装置は、例えば、Heidel JDら,「リボヌクレオチド還元酵素サブユニットM2 siRNAを含む標的ナノ粒子の漸増静脈内投与用量の人間以外の霊長類における投与(Administration in non−human primates
of escalating intravenous doses of targeted nanoparticles containing ribonucleotide reductase subunit M2 siRNA)」,Proc Natl Acad Sci USA.2007 Apr 3;104(14):5715−21;Wongmekiatら,「シクロデキストリンとの共粉砕による薬物ナノ粒子の調製:生成機構及びナノ粒子生成に影響を及ぼす諸因子(Preparation of drug nanoparticles by co−grinding with
cyclodextrin:formation mechanism and factors affecting nanoparticle formation)」,Chem Pharm Bull(Tokyo).2007 Mar;55(3):359−63;Bartlett and Davis,「標的化、核酸−含有ナノ粒子の物理化学的および生物学的キャラクタリゼーション(Physicochemical and biological characterization of targeted,nucleic acid−containing nanoparticles)」,Bioconjug Chem.2007 Mar−Apr;18(2):456−68;Villalongaら,「超分子構築体によるキサンチンに対するアンペロメトリックバイオセンサ(Amperometric biosensor for xanthine with supramolecular architecture)」,Chem Commun(Camb).2007 Mar 7;(9):942−4;Defayeら,「シクロデキストリンの製薬的利用:膜相互作用の薬剤標的化と制御に関する観点(Pharmaceutical use of cyclodextrines:perspectives for drug targeting and
control of membrane interactions)」,Ann
Pharm Fr.2007 Jan;65(1):33−49;Wangら,「DNA濃縮機としてのオリゴ(エチレンジアミノ)−β−シクロデキストリン修飾金ナノ粒子の合成(Synthesis of Oligo(ethylenediamino)−β−Cyclodextrin Modified Gold Nanoparticle
as a DNA Concentrator)」;Mol Pharm.2007 Mar−Apr;4(2):189−98;Xiaら,「磁性超微粒子のその場自己集合を用いたY接合ポリアニリンナノロッドとナノチューブの制御した合成(Controlled synthesis of Y−junction polyaniline nanorods and nanotubes using in situ self−assembly of magnetic nanoparticles)」,J
Nanosci Nanotechnol.,2006 Dec;6(12):3950−4;及びNijhuisら,「分子プリントボードで固定化されたデンドリマー−安定化金ナノ粒子における室温での単電子トンネル(Room−temperature single−electron tunneling in dendrimer−stabilized gold nanoparticles anchored at
a molecular printboard)」,Small.2006 Dec;2(12):1422−6に記載されている。
【0104】
上記化合物の例示的な投与方法は、当業者に明らかであろう。上記製剤の有用性は、使用される特定の組成物及び治療を受ける特定の患者によって異なり得る。上記製剤は、液体担体を含んでもよく、この液体担体は、油性、水性、乳化性であってもよく、又は投与形態に好適な一定の溶媒を含んでもよい。
【0105】
本組成物は、温血動物(例えば、マウス、ラット、ネコ、ウサギ、イヌ、ブタ、ウシ、又はサル等の哺乳動物)に対して、断続的に、又は漸進的、連続的、持続的又は制御された割合で投与できるが、ヒトに対して有利に投与される。さらに、製剤処方が投与される1日の時間及び1日あたりの回数は様々であり得る。
【0106】
好ましくは、本組成物は、癌細胞が位置する部位と有効成分が相互作用するよう投与される。本明細書中に記載の化合物は、上記癌の治療に非常に効果がある。
一定の状況においては、本明細書中に記載の化合物は、特定の癌の予防又は治療を意図した他の化合物と共に、医薬組成物の一部として用いることができる(即ち、併用療法)。本明細書中に記載の化合物の有効量に加え、本医薬組成物は、添加物又は付加物として様々な他の成分を含むこともできる。
タンパク質を用いた錯体形成
本明細書中に記載のフルベン及びフルバレン類似体は、アルブミン、トランスフェリン、VEGF、bFGF等のペプチド及びタンパク質を用いて錯体化することができる。これらの錯体は、作製が容易であり、非錯体化合物よりも毒性が低い傾向にある。
【0107】
本明細書中に記載の化合物をタンパク質又はペプチドを用いて錯体化する方法について、当業者は容易に理解することができる。上記錯体は、非錯体化合物を投与可能な任意の方法で投与することができる。
併用療法
併用療法は、(a)本明細書中に記載のフルベン及び/又はフルバレン類似体、少なくとも1つのさらなる本明細書中に記載の医薬品、及び薬理学的に許容される賦形剤、希釈剤、又は担体を有する単一の医薬組成物;又は(b)(i)本明細書中に記載のフルベン及び/又はフルバレン類似体及び薬理学的に許容される賦形剤、希釈剤、又は担体を含む第1組成物と、(ii)少なくとも1つのさらなる本明細書中に記載の医薬品、及び薬理学的に許容される賦形剤、希釈剤、又は担体を含む第2組成物と、を含む2つの個別の医薬組成物として投与してもよい。本医薬組成物は、同時に又は連続して、及び任意の順番
で、投与することができる。
【0108】
癌の治療又は予防での使用において、本明細書中に記載のフルベン及び/又はフルバレン類似体は、単一医薬組成物の一部として、少なくとも1つの他の化学療法剤と共に投与することができる。代替的に、フルベン及び/又はフルバレン類似体は、他の抗癌化学療法剤とは別に投与することができる。本実施形態では、フルベン及び/又はフルバレン類似体と、少なくとも1つの他の抗癌化学療法剤は、実質的に同時に投与される。即ち、本化合物が血液中に存在する間に治療レベルに達する限り、本化合物は同時に又は順番に投与される。
【0109】
併用療法では、本明細書中に記載のフルベン及び/又はフルバレン類似体、又は本明細書中に記載の化合物の薬理学的に許容される塩又はプロドラッグを、少なくとも1つの抗癌化学療法剤、理想的には異なるメカニズムで作用する抗癌化学療法剤(即ち、VEGF阻害剤、アルキル化剤等)と組み合わせて投与される。
【0110】
併用療法に使用可能な周知の抗癌剤の例として、ブスルファン、シスプラチン、マイトマイシンC、及びカルボプラチン等のアルキル化剤;コルヒチン、ビンブラスチン、パクリタキセル、及びドセタキセル等の有糸分裂阻害剤;カンプトテシン及びトポテカン等のトポイソメラーゼI阻害剤;ドキソルビシン及びエトポシド等のトポイソメラーゼII阻害剤;5−アザシチジン、5−フルオロウラシル及びメトトレキサート等のRNA/DNA代謝拮抗剤;5−フルオロ−2’−デオキシ−ウリジン、シタラビン、ヒドロキシ尿素及びチオグアニン等のDNA代謝拮抗剤;及びハーセプチン(登録商標)及びリツキサン(登録商標)等の抗体が挙げられるが、これらに限定されない。併用療法に使用可能な他の周知の抗癌剤として、亜ヒ酸、ガムシタビン(gamcitabine)、メルファラン、クロラムブシル、シクロフォスアミド、イホスファミド、ビンクリスチン、ミトグアゾン、エピルビシン、アクラルビシン、ブレオマイシン、ミトキサントロン、エリプチニウム、フルダラビン、オクトレオチド、レチノイン酸、タモキシフェン及びアラノシンが挙げられる。フルベン及び/又はフルバレン類似体と併用可能な他の種類の抗癌化合物を以下に述べる。
【0111】
フルベン及び/又はフルバレン類似体は、ドキサゾシン、テラゾシン、及びタムスロシン等のα1アドレナリン受容体拮抗剤と組み合わせることができる。このα1アドレナリン受容体拮抗剤は、アポトーシスの誘導により前立腺癌細胞の増殖を阻害することができる(Kyprianou,N.ら,Cancer Res 60:4550 4555,(2000))。
【0112】
Σ2受容体は、様々な腫瘍細胞タイプにおいて高濃度で発現され(Vilner,B.J.ら,Cancer Res.55:408 413(1995))、CB−64D、CB−184及びハロペリドール等のΣ2受容体拮抗剤は、新しいアポトーシス経路を活性化し、乳腺腫瘍細胞株における抗悪性腫瘍剤の有効性を高める。(Kyprianou,N.ら,Cancer Res.62:313 322(2002))。従って、フルベン及び/又はフルバレン類似体は、少なくとも1つの周知のΣ2受容体拮抗剤、又はこの拮抗剤の薬理学的に許容される塩と組み合わせることができる。
【0113】
フルベン及び/又はフルバレン類似体は、HMG−CoA還元酵素阻害剤であるロバスタチン、及びマウスのルイス肺癌モデルにおけるアポトーシスの誘導因子である酪酸と組み合わせることができ、抗腫瘍効果の有効性を高める(Giermasz,A.ら,Int.J.Cancer 97:746 750(2002))。併用療法に使用可能な周知のHMG−CoA還元酵素阻害剤として、ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン及びセリバスタチン、及びこれらの薬理学的に
許容される塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0114】
インジナビル又はサキナビル等の一定のHIVプロテアーゼ阻害剤は、有効な抗血管新生活性を有し、カポジ肉腫の退縮を促進する(Sgadari,C.ら,Nat.Med.8:225 232(2002))。従って(上記化合物のフルベン及び/又はフルバレン類似体の形成に加え)、フルベン及び/又はフルバレン類似体は、HIVプロテアーゼ阻害剤、又はその薬理学的に許容される塩と組み合わせることができる。代表的なHIVプロテアーゼ阻害剤として、アンプレナビル、アバカビル、CGP−73547、CGP−61755、DMP−450、インジナビル、ネルフィナビル、チプラナビル、リトナビル、サキナビル、ABT−378、AG1776、及びBMS−232,632が挙げられるが、これらに限定されない。
【0115】
フェンレチニド(N−(4−ヒドロキシフェニル)レチンアミド、4HPR)等の合成レチノイドは、小細胞肺癌細胞株におけるシスプラチン、エトポシド又はパクリタキセル等の他の化学療法剤と組み合わせると十分な活性を有することができる(Kalemkerian,G.P.ら,Cancer Chemother.Pharmacol.43:145 150(1999))。また、4HPRは、膀胱癌細胞株上へのγ線照射と組み合わせると十分な活性を有することが報告された(Zou,C.ら,Int.J.Oncol.13:1037 1041(1998))。代表的なレチノイド及び合成レチノイドとして、ベキサロテン、トレチノイン、13−シス−レチノイン酸、9−シス−レチノイン酸、α−ジフルオロメチルオルニチン、ILX23−7553、フェンレチニド、及びN−4−カルボキシフェニルレチンアミドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0116】
ラクタシスチン等のプロテアソーム阻害剤は、イン・ビボ(in vivo)で、及び従来の化学療法剤に耐性を持つものを含むイン・ビトロ(in vitro)の腫瘍細胞で、抗腫瘍活性を発揮する。NF−κB転写活性を阻害することにより、プロテアソーム阻害剤は、イン・ビボ(in vivo)での血管新生及び転移も回避し、さらにアポトーシスに対する癌細胞の感受性を高める(Almond,J.B.ら,Leukenmia 16:433 443(2002))。代表的なプロテアソーム阻害剤として、ラクタシスチン、MG−132、及びPS−341が挙げられるが、これらに限定されない。
【0117】
STI571(イマチニブメシル酸塩、グリベック(登録商標))等のチロシンキナーゼ阻害剤は、エトポシド等の他の抗白血病剤と組み合わせると有効な共同作用効果を有する(Liu,W.M.ら Br.J.Cancer 86:1472 1478(2002))。代表的なチロシンキナーゼ阻害剤として、グリベック(登録商標)、ZD1839(イレッサ(登録商標))、SH268、ゲニステイン、CEP2563、SU6668、SU11248、及びEMD121974が挙げられるが、これらに限定されない。
【0118】
ファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤R115777等のプレニル−タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤は、ヒト乳癌に対する抗腫瘍活性を有する(Kelland,L.R.ら,Clin.Cancer Res.7:3544 3550(2001))。ヒト癌細胞株におけるタンパク質ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤SCH66336とシスプラチンの相乗作用も報告されている(Adjei,A.A.ら,Clin.Cancer Res.7:1438 1445(2001))。ファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤等のプレニル−タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、ゲラニルゲラニル−タンパク質トランスフェラーゼI型(GGPTase−I)及びゲラニルゲラニル−タンパク質トランスフェラーゼII型の阻害剤、又は上記薬剤の薬理学的に許容される塩は、本明細書中に記載のフルベン及び/又はフルバレン類似体と併用できる。周知のプレニルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤の例として、R115777、SCH66336、L−778,123、BAL9611及びTAN−1813が挙げら
れるが、これらに限定されない。
【0119】
フラボピリドール等のサイクリン依存性キナーゼ(CDK)阻害剤は、ヒト結腸癌細胞において、CPT−11、DNAトポイソメラーゼI阻害剤等の他の抗癌剤と組み合わせると、有効な作用、多くの場合共同作用を有する(Motwani,M.ら,Clin.Cancer Res.7:4209 4219,(2001))。代表的なサイクリン依存性キナーゼ阻害剤として、フラボピリドール、UCN−01、ロスコビチン及びオロモウシンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0120】
一定のCOX−2阻害剤は、血管新生を阻止し、固形腫瘍の転移を抑制し、移植された腸癌細胞の増殖を遅らせることが知られている(Blanke,C.D.,Oncology(Hunting)16(No.4 Suppl.3):17 21(2002))。代表的なCOX−2阻害剤として、セレコキシブ、バレコキシブ(valecoxib)、及びロフェコキシブが挙げられるが、これらに限定されない。
【0121】
任意の上述の化合物は、フルベン及び/又はフルバレン類似体との併用療法に使用することができる。さらに、上記化合物の多くは、本明細書中に記載の化学的性質を用い、本化合物上でケトン、アルデヒド、ヒドロキシル、チオール、及び/又はアミン官能基を反応させることにより、フルベン及び/又はフルバレン類似体に変換することができる。上記化合物のフルベン及び/又はフルバレン類似体は、本発明の範囲に属する。
【0122】
さらに、フルベン及び/又はフルバレン類似体は、ハーセプチン(登録商標)又はリツキサン(登録商標)等の治療上有用な抗体、DGF、NGF等の増殖因子;IL−2、IL−4等のサイトカイン、又は細胞表面に結合する任意の分子と併用して、腫瘍部位を標的にすることができる。抗体及び他の分子は、その標的に本明細書中に記載の化合物を送達し、この化合物を有効な抗癌剤にする。また、生体複合体は、ハーセプチン(登録商標)又はリツキサン(登録商標)等の治療上有用な抗体の抗癌作用を高めることができる。
【0123】
また、手術の前及び/又は後に化合物を投与することにより、外科的腫瘍除去と併用して、及び放射線療法の前、中、及び/又は後に化合物を投与することにより放射線療法と併用して、本化合物を用いることもできる。
【0124】
本化合物の適切な用量は、疾患の症状の発生を予防するために十分な量、又は患者が患う疾患のいくつかの症状を治療するために十分な量である。「有効量」、「治療量」又は「有効用量」とは、所望の薬理学的又は治療学的作用を発揮し、疾患の効果的な予防又は治療を行うために十分な量を意味する。
【0125】
癌を治療する際、フルベン及び/又はフルバレン類似体の有効量とは、腫瘍の増殖を抑制するために十分な量、理想的には腫瘍を縮小させるために十分な量、より理想的には腫瘍を死滅させるために十分な量である。本明細書中に記載の化合物を予防的に投与することにより、初期において、又は再発において、癌を予防することができる。好ましくは、有効量とは、所望の結果を得るには十分であるが、かなりの副作用を生じさせるためには不十分な量である。
【0126】
有効用量は、患者の病態、癌の重症度、及び医薬組成物の投与方法等の要因により変化し得る。もちろん、化合物の有効用量は患者により異なるであろうが、一般的に、所望の治療効果が得られるが、顕著な副作用が観察されるには至らない量を含む。
【0127】
本化合物は、本明細書中に記載の方法に従って有効量で使用した場合、一定の癌細胞に選択的であるが、正常細胞に顕著な影響を及ぼさない。
ヒトの患者の場合、典型的な化合物の有効用量は、一般的に、一患者24時間当たり少なくとも約1μg、多くの場合少なくとも約10μg、ほとんどの場合少なくとも約25μgの量の化合物の投与を必要とする。有効用量は、一般的に、一患者24時間当たり約500μg以下、多くの場合約400μg以下、及びほとんどの場合約300μg以下である。さらに、有効用量の投与は、患者の血漿内の化合物濃度が通常500ng/mL以下、ほとんどの場合100ng/mL以下となるように行われる。
IV.化合物及び/又は医薬組成物の使用方法
本明細書中に記載の化合物、及び前記化合物を含む医薬組成物は、癌治療に使用することができる。治療可能な代表的な疾患として、血管腫等の新生物、及び悪性腫瘍、例えば、血管内皮増殖因子(VEGF)及びその主要分泌促進受容体である血管内皮増殖因子受容体2を含む自己分泌ループの環境下で生じる悪性腫瘍が挙げられる。
【0128】
癌は、Nox酵素の1つ(即ち、Nox1、Nox4等)が高濃度で存在するか、又は癌の増殖がROSの媒介によってもたらされるものを含む。
代表的な悪性腫瘍として、メラノーマ等の悪性内皮系腫瘍が挙げられる。治療可能なさらなる癌として、ヒト肉腫及び細胞腫、例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ血管肉腫、リンパ管肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮細胞腫、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺細胞腫、乳頭癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性肺癌、腎臓細胞腫、肝細胞腫、胆管癌、絨毛癌、セミノーマ、胎児性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頚部癌、精巣腫瘍、肺細胞腫、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫瘍、乏突起神経膠腫、髄膜腫、メラノーマ、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫;白血病、例えば、急性リンパ性白血病及び急性骨髄性白血病(骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄芽球性、単球性及び赤白血病);慢性白血病(慢性骨髄球性(顆粒球性)白血病及び慢性リンパ球性白血病);及び真性多血症、リンパ腫(ホジキン病及び非ホジキン病)、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、及び重鎖病、及び上記癌の悪性型が挙げられるが、これらに限定されない。
【0129】
1つの実施形態では、癌は、メラノーマ、直腸癌、結腸癌、乳癌、卵巣癌、小細胞肺癌、結腸癌、慢性リンパ球性癌、ヘアリー細胞白血病、食道癌、前立腺癌、乳癌、骨髄腫、又はリンパ腫である。上記癌は、癌患者の血清に存在する循環レベルのtNOX(Nox4又は他のNox酵素を含んでもよい)を有すると考えられる(例えば、その全体が参照として本明細書に組み込まれる米国特許番号5,605,810を参照)。
【0130】
いくつかの実施形態では、患者は既に癌を持っており、癌の治療中であり、腫瘍の転移(即ち、二次癌)の有無は問わない。
癌は、上皮組織、リンパ組織、結合組織、骨、又は中枢神経系の腫瘍のような腫瘍の形態で現れてもよい。
【0131】
上述の癌タイプの管理において、既存の療法と組み合わせて補助療法として本化合物を使用することもできる。このような状況において,薬剤耐性癌細胞を含む癌細胞への効果を最適化しつつ、正常細胞タイプへの影響を最小化するように、有効成分を投与することが好ましい。これは、主に化合物自体の作用により達成されるが、薬剤送達の標的化によって、及び/又は顕著な副作用を起こすために必要な閾値用量を満たすことなく所望の効果が得られるように用量を調節することによって、達成することもできる。
骨粗しょう症の治療
本明細書中に記載の化合物は、骨粗しょう症の治療にも使用することができる。サイトカインRANKL(NF−κBリガンドの受容体活性化因子)は、破骨細胞を活性化することにより骨粗しょう症の原因となる。本化合物は、アポトーシスの有効性を高めること
によりRANKL活性を阻害し,破骨細胞形成を抑制し,核内因子κB活性化経路の調節により浸潤を阻害する(例えば、Mol Cancer Res.2006 Sep;4(9):621−33を参照)。
炎症性疾患の治療
本明細書中に記載の化合物は、炎症性疾患の治療及び予防に有用である。活性酸素は、関節リウマチ、喘息、乾癬、エクセマ(excema)、ループス、強皮症等の炎症性疾患、粥状動脈硬化及び冠動脈疾患等の一定の心臓疾患において、NFκBを活性化する。本化合物は、活性酸素種生成の阻害において有効であるため、炎症性疾患に対して活性を有する。
【0132】
また、本化合物は一定の炎症性シグナルも阻害し、さらにこの炎症性シグナルを阻害することにより炎症性関節炎等の炎症性疾患を緩和することができる。
関節リウマチ(RA)は最も一般的な全身性自己免疫疾患であると考えられているが、甲状腺機能低下症、全身性エリテマトーデス(SLE)等の他の疾患等も、本明細書中に記載の化合物を用いて治療することができる。数多くの病態は、関節リウマチ、心疾患、及び癌等の慢性炎症やTNF−α及びIL−6のレベル上昇を伴う。数多くの胃腸疾患は、クローン病、過敏性腸症候群、及び炎症性腸症候群等の(但し、これらに限定されない)炎症によって引き起こされ、これらの疾患も本明細書中に記載の化合物を用いて治療及び/又は予防することができる。
【0133】
関節リウマチと、エプスタイン・バー・ウイルス(EBV)の再活性化による慢性炎症との間に、関連性が示唆されている。EBVは、世界人口の90%以上において、メモリーB細胞の一部に潜伏感染している。ウイルス病原性に関係するEBVコード化タンパク質の中で、潜伏性膜タンパク質1(LMP1)にかなりの注意が向けられてきた。EBV形質転換細胞においてタンパク質として発現された9個のEBV遺伝子のうち、LMP1はもっともよく特徴付けられており、イン・ビトロ(in vitro)及びイン・ビボ(in vivo)で細胞を形質転換できる唯一のEBVコード化遺伝子産物であり、その結果、リンパ球増殖の変化と悪性腫瘍に導く可能性がある。B細胞リンパ腫及び他の悪性腫瘍の病因における確立した役割に加え、EBV感染は、RA及びSLE等の様々なヒト自己免疫疾患の増悪と関連している可能性がある。
【0134】
マウスコラーゲン起因性関節炎(CIA)モデル(Myersら,Life Science 61:1861−1878(1997))は、関節リウマチと多くの病理的及び免疫的類似点があり、慢性炎症性病態を治療する化合物の治療可能性を評価するための安定的で予測可能なモデルを提供する。このモデルは、例えば、本明細書中に記載の化合物の上記疾患を治療及び/又は予防する能力を評価するために用いることができる。
【0135】
本明細書中に記載の化合物を用いたイン・ビトロ(in vitro)でのマウスB細胞株の治療は、原発性マウスB細胞に見られるサイトカインプロファイルを反復することが示され、このプロファイルは、CD40及びLMP1の媒介によりもたらされるNFκB及びAP−1の活性化が併用用量に依存して減少する。慢性炎症及びさらなる病変に導くサイトカインを阻害することにより、CD40及びLMP1の媒介によってもたらされるNFκB及びAP−1の活性化を用量に依存して減少させる化合物は、可能性として免疫反応の認識相(cognitive phase)とエフェクター相の両方において、抗炎症特性を有することが期待されるであろう。
眼疾患の治療
本化合物は、湿性及び乾燥性加齢黄斑変性症(AMD)、糖尿病性網膜症(DR)、緑内障、新生血管性緑内障、網膜血管炎、後部ぶどう膜炎等のぶどう膜炎、結膜炎、緑内障に続発する網膜炎、上強膜炎、強膜炎、視神経炎、球後視神経炎、眼科手術後の眼炎症、物理的眼外傷による眼炎症、白内障、眼アレルギー及びドライアイ等の炎症性要素を有す
る眼疾患の治療における使用にも好適である。
【0136】
現在の眼内送達方法として、局所性投与(眼に直接投与する点眼薬又は他の好適な局所性製剤)、結膜下注射、眼周囲注射、硝子体内注射、外科的移植、及び全身経路が挙げられる。
【0137】
具体的には、経口及び静注経路投与を用いることによる全身毒性が懸念される場合、眼組織における薬剤の治療レベルを達成するため、硝子体内注射、眼周囲球注射、及び持続放出性移植物を用いることができる。眼の外表面又は眼の前部組織のいずれかに影響する病態を治療する際に、点眼薬は有用であり、いくつかの製剤は、眼の後部まで浸透して網膜疾患を治療することができる。
【0138】
一定の疾患は、治療の送達が困難な眼の後部組織に影響を及ぼす。上記の各実施形態では、本明細書中に記載の化合物を眼の後部に送達するため、イオントフォレーシス(イオン浸透療法)を用いることができる。例えば、眼球イオントフォレーシス装置、OcuPhor(商標)は、安全且つ非侵襲的に眼の後部に薬剤を送達することができる(Iomed)。イオントフォレーシスは、小電流を使用して、イオン化された薬剤を体内組織内およびその全体に運ぶ。眼の組織を損傷し得るほどの高すぎる電流密度を使用しないよう注意を払う必要がある。
【0139】
イオントフォレーシスは、典型的に、薬剤アプリケータ、分散電極、及び電子イオントフォレーシス用量コントローラの使用を含む。薬剤アプリケータは、銀−塩化銀等の導体素子を含む小さなシリコンシェルであり得る。ヒドロゲルパッドが製剤を吸収し得る。小さなたわみ線が導体素子を用量コントローラに接続することができる。薬剤パッドは、アプリケータを下眼瞼の下の眼の胸膜に置いて、使用直前に薬液で水和することができる。治療中、下眼瞼はアプリケータを所定の位置に保持する。投与の薬剤用量及び割合は、電子コントローラをプログラミング及び設定することにより制御することができる。
神経変性疾患の治療及び/又は神経防護作用の提供
活性酸素種は、炎症及び神経変性疾患も誘発する。これらの活性酸素種の阻害により、脳卒中等の虚血脳損傷後のさらなる損傷、又は鈍的外傷から生じたさらなる損傷からの防護等の、神経防護作用が得られ、さらに網膜変性、アルツハイマー病、老年性認知症、初老期認知症、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、多発性硬化症等の神経変性疾患の治療及び予防が可能となる。
【0140】
活性酸素種は発作も活性化し、本明細書中に記載の化合物は、発作も改善し得るGABA性活性を有する。
血管性疾患の治療
ROSが関係してきた勃起障害や偏頭痛等の血管性疾患も、NADPHオキシダーゼ阻害剤に反応し得る。
【0141】
上記治療の全てにおいて、Nox1−5等1つ以上のNox酵素を阻害することにより、又はスーパーオキシドスカベンジャーを刺激することにより(従って、ROS産生を阻害することにより)、又はROSと直接反応して不活性化することにより、本化合物は作用する考えられる。
【0142】
Nox2含有NADPHオキシダーゼ及びAktの活性化は、アンジオテンシンII−起因性心筋細胞肥大に重要な役割を持つと考えられている(Physiol.Genomics 26:180−191,2006)。従って、このNox酵素の阻害により、アンジオテンシンII−起因性心筋細胞肥大を治療又は予防することができる。
【0143】
以下の実施例は本発明を例示するために示されたものであり、本発明の範囲を限定するものとして解釈されないものとする。これらの実施例では、別段の記載がない限り、全ての部及び百分率は重量による。反応収量はモル百分率で示される。
実施例
以下の実施例は本発明を例示するために示されたものであり、本発明の範囲を限定するものとして解釈されないものとする。これらの実施例では,別段の記載がない限り、全ての部及び百分率は重量による。反応収量はモル百分率で示されている。
実施例1:NADHオキシダーゼの分光学的検定
NADHオキシダーゼ活性は、37℃で、25mMのTris−Mes緩衝剤(pH7.2)、1mMのKCN、及び150μMのNADHを含む反応混合物中において、340nmで測定されたNADHの消失として決定することができる。活性は、例えば、Hitachi製U3210分光光度計を用いて、それぞれ5分間隔で2回撹拌及び連続記録して測定することができる。ミリモル吸光係数6.22を使って、特定の活性を決定できる。
実施例2:細胞増殖の測定
BALB/cf C3Hマウスから生じるマウス乳癌亜集団株4T1は、5%のウシ胎児血清、5%の新生仔ウシ血清、1mMの混合された非必須アミノ酸、2mMのL−グルタミン、ペニシリン(100単位/mL)、及びストレプトマイシン(100μg/mL)で補充されたダルベッコ変法イーグル培地、DME−10内で増殖することができる(Millerら,1987,Brit.J.Can.56:561−569,及びMillerら,1990,Invasion Metastasis 10:101−112)。
実施例3:様々な試験化合物によるNox2酵素の阻害
異なる濃度の溶媒対照群又は表1に記載された試験化合物で処置されたホルボール12−ミリスタート13−アセタート(PMA)で刺激されたCos−phox細胞における過酸化水素(H22)の産生量を決定することにより、様々な試験化合物のNox2酵素に対する活性が検証された。

表1:試験化合物

【0144】
Cos−phox細胞は、本明細書に参照として組み込まれるPriceら,Blood,99:2653−61(2002)に過去に記載された。
【0145】
本明細書に参照として組み込まれるMartynら,Cellular Signalling,18:69−82(2006)、及びPerryら,J.Invest.Dermatol.,126:2316−22(2006)に過去に記載されたように、ホモバニリン酸分析を用いてH22放出量を測定した。即ち、12ウェルプレートの1ウェル当たり1.5〜1.75x105細胞をCos−phox細胞で種まきした。翌日、ハンクス液で細胞を一度洗浄し、0.4mg/mlのホルボール12−ミリスタート13−アセタート(PMA)で刺激し、それから溶媒対照群、又は1mlの媒介物中異なる濃度(即ち、1μM、5μM、又は20μM)の試験化合物No.8、10、15、16、17、又は18のいずれかで15分間プレインキュベートした。その後、ハンクス液でこれらの細胞を一度洗浄した。溶媒対照群又は異なる濃度の試験化合物No.8、10、15、16、17、又は18を、前処理と同じ濃度で、0.5mlのホモバニリン酸分析溶液(100mMのホモバニリン酸検定、Ca2+及びMg2+を有するハンクス液中4単位/mlの西洋ワサビペルオキシダーゼ)に加え、37℃で1時間、上記細胞でインキュベートし
た。75mlのホモバニリン酸検定ストップ緩衝液(リン酸緩衝生理食塩水中0.1Mのグリシン/0.1MのNaOH(pH12)及び25mMのEDTA)を加えることにより、反応が止められた。BioTek Synergy HT(BioTek Instruments Inc.,Winooski,Vermont,CA)にて、励起320nm及び発光440nmで蛍光が読み取られた。
【0146】
試験化合物の添加を伴う(データは示されていない)又は伴わないPMA刺激がない場合、Cox−phox細胞はH22を産生しなかったため、この特定のシステムにおいて、Nox2活性の検出にはPMAを必要とした。試験化合物No.8、10、15、16、17、又は18のCox−phox細胞におけるH22産生阻害能力は、無治療対照群(100%)に対する割合として図1に示されている。
【0147】
結果は、試験化合物No.8、10、15、16、17、及び18は用量に依存してNox2酵素を阻害したことを示した。
実施例4:様々な試験化合物のイン・ビトロ(in vitro)試験
約100万個の腫瘍細胞をヌードマウスに皮下注射した。腫瘍が目に見えるようになったら、1日に40mg/kgのクルクミンフルベンで治療を行った。本化合物は、100mlのエタノール中で再構成され、900μlの20%イントラリピドで希釈され、さらに0.3mlのこの混合物を毎日腹腔内注射した。腫瘍はノギスで測定され、腫瘍量は式(幅2x長さ)0.52を使って算出された。式中、幅は最小寸法であり、2は二乗を表し、1は長さを表す。
【0148】
結果は以下の表1、及び図2に示されている。

表1:クルクミンフルベンによる治療

【0149】
実施例5:NADPHオキシダーゼ阻害剤フルベン−5は、アルビノマウスにおける光起因性網膜機能損失を縮小する
アルビノマウスを明るい光に曝すと、網膜機能の損失が生じる。これは、活性酸素種(ROS)が原因で生じる損傷によって部分的にもたらされる作用である。様々なストレス因子によるNADPHオキシダーゼの活性化は、ROS産生を増加させる。これらの実験の目的は、光起因性網膜機能損失がNADPHオキシダーゼ活性によってもたらされるか否かを試験することであった。
方法:
Balb−Cマウスは、薄暗い(20lux)又は明るい(10,000lux)白色光に6時間曝された。溶媒(イントラリピド−DMSO)に溶解されたNADPHオキシダーゼを阻害するトリフェニルメタンであるフルベン−5、又は溶媒だけをマウスに注射した。2週間毎日腹腔内注射を行った。光に曝してから0、7、及び14日後に網膜電図(ERGs)を撮った。
結果:
溶媒を注射して明るい光に曝されたマウスは、明るい光に曝されたがフルベン−5で治療されたマウス、又は薄暗い光に曝されたマウスと比べ、ERGa−波及びb−波振幅が顕著に縮小した。この結果は、図3に示されている。
結論:
NADPHオキシダーゼ阻害剤フルベン−5よる治療は、明るい光に曝されることによりERGで測定された網膜機能にもたらされる損傷を防止した。明るい光に曝すことによりNADPHオキシダーゼが活性化され、その結果ROS産生が増加し網膜細胞の損傷の原因になっている可能性がある。網膜形態、アポトーシス、NADPHオキシダーゼ酵素活性、酸化還元状態、及びROS含有量を現在分析中である。
【0150】
薄暗い光(対照)又は網膜変性(光起因性網膜変性;LIRD)の原因となる強度の明るい光のいずれかにマウスを曝した。これは、網膜変性の古典的な齧歯類モデルである。各光条件において、動物の半数に溶媒を注射し、残りの半数にフルベン5を注射した。光に曝してから1週間後に、治療されたマウスの網膜電図(ERGs)を測定した。ERGは、閃光に反応して生じる眼球全体の電位の変化の評価基準であり、網膜機能の指標として用いられる。
【0151】
データは、明るい光に曝すことにより1週間でERGb−波振幅が約50%抑制されたことを示した。しかし、毎日フルベン5を注射されたラットはERG振幅の抑制を示さず、フルベン5が1週間で起きる視覚機能損失を予防したことが示唆された。これらのデータは、図3にまとめられている。
実施例6:代表的なフルベン及びスーパーオキシドジスムターゼのESRスペクトル
Liは、ESRにより、単離されたエンドソームによるNADPH−依存性・O2−の産生を確認した(Liら,Molecular and Cellular Biology,January 2006,P.140−154,26(1):140−154(2006))。BrukerモデルEMX ESR分光計(Bruker)を用いて、室温下でESR検定を行った。各試料の小胞画分と、全重量500μlのpH7.4のPBS中50mMのスピントラップ剤5,5−ジメチル−1−ピロリンN−オキシド(DMPO)とを混合した。この溶液は、イミノ二酢酸キレート樹脂(10ml/l;Sigma−Aldrich社)を含んだ。この反応は、NADPHを100μMまで加えることにより開始され、直ちにESR分光計内に置かれた。DMPO−ヒドロキシルラジカル付加物の形成を10分間検定した。機器の設定は次の通り:受信機の増幅率、1x106;変調周波数、100kHz;マイクロ波電力、40.14mW;振幅変調、1.0G;及び掃引速度、1G/s。
【0152】
本出願では、実質的にLiらの記載に従った条件を用いて、フルベン5及びスーパーオキシドジスムターゼのESRスペクトルを得た。ESRスペクトル(図4)は、フルベン5がスーパーオキシドと反応することによりラジカルを形成し、そのためスーパーオキシドジスムターゼがROSを生成する能力を阻害すると考えられることを示している。
【0153】
本発明は、本明細書中に記載の特定の実施形態によって範囲が限定されるものではない。事実、記載の改良に加え、様々な本発明の改良が前述の説明及び添付の図から当業者に明らかになるであろう。このような改良は、添付請求項の範囲に属するものである。
【0154】
様々な公表文献が本明細書中に引用されており、これらの開示は、その全体が参照として組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物における癌の治療方法であって、
治療上有効な量の組成物を前記哺乳動物に投与し、
前記組成物は、治療上相当量のNox又はROSの発現を阻害するために十分な量のフルベン又はフルバレン含有治療薬を含み、
従って、腫瘍の増殖が少なくとも部分的に阻害されることを特徴とする治療方法。
【請求項2】
前記哺乳動物がヒトであることを特徴とする請求項1の方法。
【請求項3】
前記癌が、血管腫、メラノーマ、直腸癌、結腸癌、乳癌、卵巣癌、小細胞肺癌、結腸癌、慢性リンパ球性癌、ヘアリー細胞白血病、食道癌、前立腺癌、乳癌、骨髄腫、及びリンパ腫からなる群から選択されることを特徴とする請求項1の方法。
【請求項4】
前記癌は、転移癌であることを特徴とする請求項1の方法。
【請求項5】
前記ヒトは、前記組成物の投与前に抗癌療法を受けたために免疫抑制状態であることを特徴とする請求項1の方法。
【請求項6】
前記癌は、固形腫瘍の形態で現れ、前記固形腫瘍は、非癌細胞よりも高い濃度で1つ以上のNox酵素を発現する細胞を有することを特徴とする請求項1の方法。
【請求項7】
前記腫瘍は、上皮組織、リンパ組織、結合組織、骨、又は中枢神経系の腫瘍であることを特徴とする請求項6の方法。
【請求項8】
前記化合物は、非経口的に、経口的に、又は直接的に、前記腫瘍に投与されることを特徴とする請求項1の方法。
【請求項9】
前記化合物は、移植された装置により投与されることを特徴とする請求項1の方法。
【請求項10】
前記投与は、持続放出性製剤を用いて行われることを特徴とする請求項1の方法。
【請求項11】
化合物は、次の式の1つを有することを特徴とする請求項1の方法であって、

式中、
Xは、O、S、NH又はCH2であり、
x及びyは、0〜3の整数であり、
Gは、C1-6アルキル、アルケニル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、ハロ、−OR’、−NR’R”、−CF3、−CN、−NO2、−C2R’、−SR’、−N
3、−C(=O)NR’R”、−NR’C(=O)R”、−C(=O)R’、−C(=O
)OR’、−OC(=O)R’、−OC(=O)NR’R”、−NR’C(=O)OR”、−SO2R’、−SO2NR’R”、及び−NR’SO2R”からなる群から選択され
、この場合、R’及びR”は個々に水素、C1-6アルキル、シクロアルキル、ヘテロシク
リル、アリール、及びアリールアルキルである方法。
【請求項12】
前記化合物は、次の式の1つを有することを特徴とする請求項1の方法であって、

Rの少なくとも1つはH以外であることを条件とする方法。
【請求項13】
前記化合物は、次からなる群から選択されることを特徴とする請求項1の方法。
















【請求項14】
眼疾患の治療方法であって、
前記眼疾患を治療するために十分な量のフルベン又はフルバレン含有化合物を哺乳動物に投与することを特徴とする治療方法。
【請求項15】
前記フルベン又はフルバレン含有化合物の量は、治療上相当量のNADPHオキシダーゼを阻害するために十分であることを特徴とする請求項14の方法。
【請求項16】
前記哺乳動物は、ヒトであることを特徴とする請求項14の方法。
【請求項17】
前記眼疾患は、湿性又は乾燥性加齢黄斑変性症(AMD)、糖尿病性網膜症(DR)、緑内障、新生血管性緑内障、網膜血管炎、後部ぶどう膜炎等のぶどう膜炎、結膜炎、緑内障に続発する網膜炎、上強膜炎、強膜炎、視神経炎、球後視神経炎、白内障、眼科手術後
の眼炎症、物理的眼外傷による眼炎症、眼アレルギー、及びドライアイからなる群から選択されることを特徴とする請求項14の方法。
【請求項18】
前記化合物は、眼に直接投与する点眼薬又は他の好適な局所性製剤の形態で局所性投与によって投与されることを特徴とする請求項14の方法。
【請求項19】
前記化合物は、結膜下注射、眼周囲注射、又は硝子体内注射により投与されることを特徴とする請求項14の方法。
【請求項20】
前記化合物は、外科的移植により投与されることを特徴とする請求項14の方法。
【請求項21】
前記化合物は、全身投与又はイオントフォレーシスにより投与されることを特徴とする請求項14の方法。
【請求項22】
前記投与は、持続放出性製剤を用いて行われることを特徴とする請求項14の方法。
【請求項23】
化合物は、次の式の1つを有することを特徴とする請求項14の方法であって、

式中、
Xは、O、S、NH又はCH2であり、
x及びyは、0〜3の整数であり、
Gは、C1-6アルキル、アルケニル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、ハロ、−OR’、−NR’R”、−CF3、−CN、−NO2、−C2R’、−SR’、−N
3、−C(=O)NR’R”、−NR’C(=O)R”、−C(=O)R’、−C(=O
)OR’、−OC(=O)R’、−OC(=O)NR’R”、−NR’C(=O)OR”、−SO2R’、−SO2NR’R”、及び−NR’SO2R”からなる群から選択され
、この場合、R’及びR”は個別に水素、C1-6アルキル、シクロアルキル、ヘテロシク
リル、アリール、及びアリールアルキルである方法。
【請求項24】
前記化合物は、次の式の1つを有することを特徴とする請求項14の方法であって、

Rの少なくとも1つはH以外であることを条件とする方法。
【請求項25】
前記化合物は、次の式からなる群から選択されることを特徴とする請求項14の方法。
















【請求項26】
次の式の1つの化合物であって、

式中、
Xは、O、S、NH又はCH2であり、
x及びyは、0〜3の整数であり、
Gは、C1-6アルキル、アルケニル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、ハロ、−OR’、−NR’R”、−CF3、−CN、−NO2、−C2R’、−SR’、−N
3、−C(=O)NR’R”、−NR’C(=O)R”、−C(=O)R’、−C(=O
)OR’、−OC(=O)R’、−OC(=O)NR’R”、−NR’C(=O)OR”、−SO2R’、−SO2NR’R”、及び−NR’SO2R”からなる群から選択され
、この場合、R’及びR”は個別に水素、C1-6アルキル、シクロアルキル、ヘテロシク
リル、アリール、及びアリールアルキルである方法。
【請求項27】
次の式のいずれかの化合物であって、

Rの少なくとも1つはH以外であることを条件とする方法。
【請求項28】
次からなる群から選択される化合物。
















【請求項29】
次の式の化合物であって、


式中、R’は、H、C1-6直鎖、分岐、又は環状アルキル、アリール、アリールアルキル
、又はアルキルアリールからなる群から選択される化合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−526100(P2010−526100A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506687(P2010−506687)
【出願日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【国際出願番号】PCT/US2008/062497
【国際公開番号】WO2008/137740
【国際公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(509304896)エモリー ユニバーシティ (5)
【Fターム(参考)】