説明

半導体装置、ウエハ構造体および半導体装置の製造方法

【課題】微細プロセスよりも前に個片化用の溝を形成した場合でも、微細プロセスにおけるフォトリソグラフィで使用するフォトレジストを均一に形成することを可能にする。
【解決手段】配列された複数の素子形成領域AR1を含むp型半導体層103における隣り合う素子形成領域AR1間に平行な2つの溝TRを形成し、個片化時には2つの溝TRの間に形成された凸部120を切断する。この構成により、スクライブ領域SR全体に溝TRを形成する必要が無くなるため、溝TRの幅を例えばダイシングブレードの厚さやレーザスポットの径よりも小さくすることが可能となる。この結果、微細プロセスよりも前に個片化用の溝を形成した場合でも、微細プロセスにおけるフォトリソグラフィで使用するフォトレジストを均一に形成することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置、ウエハ構造体および半導体装置の製造方法に関し、特に化合物半導体を用いた半導体装置、ウエハ構造体および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置の製造方法は、小型化や軽量化などを目的としてWCSP(Wafer−Level Chip Size Package)技術を用いることが一般的である。WCSP技術では、ウエハの状態で再配線層やパッシベーション膜などの形成を行い、その後ウエハをダイシングすることで半導体装置を個片化する。ウエハのダイシングでは、例えば切断部分であるスクライブ領域に沿ってダイシングブレードよりも幅の広い溝を形成し、この溝の底部を配列方向にダイサーカットしていた(例えば以下に示す特許文献1参照)。また、溝を形成する際のマスクとしては、成膜の容易さやコストの観点から、シリコン酸化膜が一般的に用いられていた。
【0003】
【特許文献1】特開平9−330891号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また近年では、多種の半導体素子を形成することが可能であることや、高速動作および低電圧駆動などの観点から、III−V族半導体やII−VI族半導体など、種々の化合物半導体を用いた半導体素子の開発が進められている。
【0005】
上記のような化合物半導体を用いて例えばMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)やHEMT(High Electron Mobility Transistor)やショットキーバリアダイオード(Schottky Barrier Diode:SBD)などの半導体素子を形成する場合、通常、製造コストやプロセス容易性の観点から、ゲート電極やその他の電極材料としてアルミニウム(Al)などによる金属膜が用いられるが、このような金属膜はマスクとして使用するシリコン酸化膜をエッチングする際に使用するフッ酸などのエッチャントに可溶であるため、各種電極形成後にスクライブ領域に切断用の溝を形成しようとすると、製造プロセスが複雑化したり、材料選択における自由度が制限されたりなどの不具合が生じてしまう。
【0006】
このような理由から、従来の製造方法では、各種電極を形成する前にスクライブ領域の溝を形成するように構成されているが、各種電極形成などのような比較的微細な加工を要する工程(以下、微細プロセスという)を溝の形成工程よりも後に配置してしまうと、この微細プロセス時に例えばダイシングブレードの厚さやレーザカッターのスポット径よりも大きな幅の溝が存在することになる。このため、微細プロセスにおけるフォトリソグラフィで使用するフォトレジストを均一に形成できないという問題が発生する。
【0007】
そこで本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、微細プロセスよりも前に個片化用の溝を形成した場合でも、微細プロセスにおけるフォトリソグラフィで使用するフォトレジストを均一に形成することが可能な半導体装置、ウエハ構造体および半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために、本発明による半導体装置は、所定基板上に形成された一層以上の化合物半導体層における素子形成領域に1つ以上の半導体素子が形成された半導体装置であって、個片化による切断面と前記化合物半導体層における前記素子形成領域の側面との間に前記化合物半導体層を分断する溝が形成されていることを特徴としている。
【0009】
上記した本発明による半導体装置は、前記溝が、少なくとも前記化合物半導体層から前記所定基板にまで形成されていることを特徴としている。
【0010】
上記した本発明による半導体装置は、前記化合物半導体が、GaN、AlGaN、BAlGaN、InGaN、GaAs、InPおよびSeGeのうち少なくとも1つを含むことを特徴としている。
【0011】
上記した本発明による半導体装置は、前記半導体素子が、MOSFET、HEMTおよびSBDのうち少なくとも1つを含むことを特徴としている。
【0012】
また、本発明によるウエハ構造体は、配列された複数の素子形成領域と該素子形成領域間に配置されたスクライブ領域とを含む一層以上の化合物半導体層を備えたウエハ構造体であって、前記スクライブ領域に前記化合物半導体層における隣接する前記素子形成領域間を分断する2つの溝が形成されていることを特徴としている。
【0013】
また、本発明による半導体装置の製造方法は、所定基板上に複数の素子形成領域を含む化合物半導体層を一層以上形成する半導体層形成工程と、前記素子形成領域間を分断する2つの溝を前記化合物半導体層に形成する溝形成工程と、前記分断された素子形成領域に半導体素子を形成する素子形成工程と、を含むことを特徴としている。
【0014】
上記した本発明による半導体装置の製造方法は、前記素子形成工程が、前記半導体素子における電極の形成を含むことを特徴としている。
【0015】
上記した本発明による半導体装置の製造方法は、前記溝形成工程が、前記所定基板にまで前記溝を形成することを特徴としている。
【0016】
上記した本発明による半導体装置の製造方法は、前記2つの溝の間に位置する凸部を切断することで半導体装置を個片化する個片化工程を含み、前記凸部の上面の幅が、前記個片化工程において使用するダイシングブレードの厚さまたはレーザカッターのスポット径よりも大きいことを特徴としている。
【0017】
上記した本発明による半導体装置の製造方法は、前記溝形成工程が、エッチングにより前記溝を形成することを特徴としている。
【0018】
上記した本発明による半導体装置の製造方法は、前記化合物半導体層が、GaN、AlGaN、BAlGaN、InGaN、GaAs、InPおよびSeGeのうち少なくとも1つを含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、スクライブ領域全体にダイシングブレードの厚さやレーザスポットの径よりも幅広な溝を必要とする構成でなく、個片化面と素子形成領域との間に比較的幅の狭い溝を形成することが可能な構成であるため、微細プロセスよりも前に個片化用の溝を形成した場合でも、微細プロセスにおけるフォトリソグラフィで使用するフォトレジストを均一に形成することが可能な半導体装置、ウエハ構造体および半導体装置の製造方法を実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面と共に詳細に説明する。なお、以下の実施の形態により本発明が限定されるものではない。また、以下の説明において、各図は本発明の内容を理解でき得る程度に形状、大きさ、および位置関係を概略的に示してあるに過ぎず、従って、本発明は各図で例示された形状、大きさ、および位置関係のみに限定されるものではない。さらに、各図では、構成の明瞭化のため、断面におけるハッチングの一部が省略されている。さらにまた、後述において例示する数値は、本発明の好適な例に過ぎず、従って、本発明は例示された数値に限定されるものではない。
【0021】
<実施の形態1>
以下、本発明の実施の形態1による半導体装置100を、図面を用いて詳細に説明する。なお、本実施の形態では、半導体素子として1つ以上のMOSFET100Aが形成された半導体装置100を例に挙げる。
【0022】
(構成)
図1(a)は本実施の形態による半導体装置100を個片化する前のウエハ1の概略構成を示す上視図であり、図1(b)はウエハ1に2次元配列された複数の半導体装置100のうちの1つの半導体装置100周辺を拡大した概略上視図である。また、図2は、図1(b)におけるA−A’断面の層構造を示す模式図である。
【0023】
図1(a)および図1(b)に示すように、ウエハ1には、例えばWCSP技術を用いて複数の半導体装置100が2次元的に配列した状態で形成されている。各半導体装置100は、これに含まれるMOSFETなどの半導体素子が形成される素子形成領域AR1を備える。
【0024】
ウエハ1において、縦または横に隣接する素子形成領域AR1間には、各半導体装置100を個片化する際の切断部分となるスクライブ領域SRが設定されており、このスクライブ領域SRの延在方向に沿って2本の平行な溝TRが形成されている。2本の溝TRの間には、スクライブ領域SRの延在方向に沿って延びるメサ状の凸部120が存在する。本実施の形態では、2本の溝TRの間の凸部120を例えばダイシングブレードやレーザカッターなどを用いて切断することで、各半導体装置100に個片化する。
【0025】
各素子形成領域AR1には、図2に示すように、例えば、シリコン基板101における凸部101a上に形成されたバッファ層102上に、動作時にチャネル層として機能するp型半導体層103と、ヘテロ接合界面を形成することでキャリアとして利用することができる2次元電子ガスを発生させるキャリア走行層104およびキャリア供給層105と、MOS(Metal Oxide Semiconductor)構造を構成するp型半導体層103上のゲート絶縁膜106およびゲート電極107と、ゲート電極107を挟む2つの領域に形成されたソース電極108sおよびドレイン電極108dと、よりなるMOSFET100Aを含む半導体素子が1つ以上形成されている。なお、本説明では、簡略化のため、1つのMOSFET100Aが形成された場合を例に挙げる。
【0026】
また、上述したように、本実施の形態による個片化前のウエハ1は、隣接する素子形成領域AR1間にスクライブ領域SRに沿って形成された2本の溝TRと、この溝TR間の凸部120とを備える。個片化時には、溝TR間の凸部120がこれの延在方向に沿って切断される。そこで本実施の形態では、凸部120上面の幅WCONVを、例えばダイシングブレードの厚さやレーザカッターのスポット径などによって定まる切断時の除去幅よりも広い幅に設定する。例えばダイシングブレードの厚さが100μm程度である場合、凸部120上面の幅WCONVを200μm程度以上とする。これにより、切断時に素子形成領域AR1へ与えられる物理的ダメージや熱ダメージを低減することができる。ただし、本発明はこれに限定されず、例えば凸部120上面の幅WCONVをダイシングブレードの厚さやレーザカッターのスポット径と同程度もしくは小さくしても良い。これにより、ウエハ1においてスクライブ領域SRとして使用される面積を低減できるため、素子形成領域AR1として使用可能な有効面積を大きくすることが可能となる。なお、2本の溝TR間に形成されたメサ状の凸部120は、図2に示すように、例えばシリコン基板101の上層部分である凸部101bと、上記した半導体素子を製造する際に形成された各種膜の一部(101a、102a、103a、104a、105a)とを含んでなる。
【0027】
また、上記したように、本実施の形態では、凸部120の上面の幅WCONVが、上記の除去幅、すなわち個片化時に使用するダイシングブレードの厚さやレーザカッターのスポット径よりも広く設定されているため、各溝TRの幅WTRをダイシングブレードの厚さやレーザカッターのスポット径よりも広くする必要が無い。この結果、溝TRの幅WTRを例えば10μm程度以下の十分に狭い幅とすることが可能となる。このように狭い幅とすることで、例えば微細プロセスよりも前に溝TRの形成工程を配置した場合でも、微細プロセスにおいてフォトリソグラフィ工程で使用するフォトレジストを均一に形成することが可能となる。また、この構成により、溝TRの形成工程を微細プロセスよりも後に配置する必要も無くなるため、製造プロセスの複雑化を回避することも可能である。
【0028】
さらに、本実施の形態では、溝TRを例えばシリコン基板101における上層部分にまで形成する。この構成により、本実施の形態では、溝TRを半導体装置100間における素子分離のトレンチとしても機能させることが可能となる。また、その深さは、例えばパッシベーション膜111上面から9μm程度とすることができる。ただし、本実施の形態では、シリコン基板101上層部分にまで到達する溝TRを例に挙げるが、本発明はこれに限定されず、個片化により形成された切断面(図6(b)における側面S2参照)と素子形成領域AR1との間にp型半導体層103上部からの溝TRが切断面に沿って形成されていればよい。
【0029】
さらにまた、本実施の形態において、上記のような溝TRは、例えば塩素系ガスを用いた異方性ドライエッチングにより形成することができる。このため、溝TRの側面、すなわち素子形成領域AR1の側面S1は、例えばダイシングブレードやレーザカッターなどを用いて形成された面(以下、ダイサーカット面という)よりも凹凸や物理的ダメージ並びに熱ダメージなどが少ない面となっている。この構成によって素子形成領域AR1の側面S1を介した基板(本実施の形態ではシリコン基板101)へのリーク電流が低減されるため、本実施の形態では、良好な特性の半導体装置100を実現することが可能となる。
【0030】
また、上記のような半導体素子、溝TRおよび凸部120が形成されシリコン基板101上には、半導体素子との電気的な接続を形成するためのコンタクトホールを備えた層間絶縁膜109が形成されている。なお、溝TR内部および凸部120は、図2に示すように、例えばゲート絶縁膜106を形成する際に同時に形成された絶縁膜106aで覆われていてもよい。さらに、層間絶縁膜109上およびこれに形成されたコンタクトホール内には上層配線およびコンタクト内配線を含むメタル層110が形成されている。さらにまた、層間絶縁膜109上には下層を電気的および物理的に保護するためのパッシベーション膜111が形成されている。なお、層間絶縁膜109およびメタル層110は、複数層形成されていてもよい。
【0031】
上記において、基板には、上記したシリコン(111)基板101の他に、例えばサファイア基板など、種々の基板を適用することができる。また、シリコン基板101上のバッファ層102は、上層に成長させるp型半導体層103とシリコン基板101との特性差による相互作用を緩衝し、両者の接合強度を向上するための層である。このようなバッファ層102は、シリコン基板101上に膜厚が例えば50nm程度のAlN(窒化アルミニウム)層を形成し、これの上に膜厚が例えば5〜100nm程度のGaN層と膜厚が例えば1〜10nm程度のAlN層とよりなる積層膜を例えば20〜80層程度重ねることで形成することができる。ただし、本発明ではこの構成に限定されず、バッファ層102の上に形成する半導体層(本実施の形態ではp型半導体層103)の材料等によって種々変形されるものである。
【0032】
バッファ層102上のp型半導体層103は、例えばp型の不純物を含む半導体層であり、上述したように動作時にチャネルが形成される層である。このようなp型半導体層103は、例えばGaNやAlGaNやBAlGaNやInGaNなどのIII族窒化物半導体や、その他GaAsやInPやSeGeなどのような化合物半導体など、種々の半導体を用いて形成することができる。本実施の形態では、GaN層を用いてp型半導体層を形成した場合を例に挙げる。また、本実施の形態では、p型の不純物としてマグネシウム(Mg)を用いた場合を例に挙げ、その濃度(Mg濃度)を例えば1×1017/cm程度とする。
【0033】
p型半導体層103上のキャリア走行層104およびキャリア供給層105は、いわゆるHEMT構造を形成する層であり、上述したように、ヘテロ接合界面を形成することで界面近傍であるキャリア走行層104上層に動作時にキャリアとして利用することが可能な2次元電子ガスを発生させる。本実施の形態では、キャリア走行層104として例えばアンドープのGaN(以下、un−GaNという)層を用い、キャリア供給層105として例えばアンドープのAlGaN(以下、un−AlGaNという)層を用いる。ただし、本発明はこれらに限定されず、ヘテロ接合界面を形成して2次元電子ガスを発生させることが可能な種々の化合物半導体積層膜を適用することが可能である。
【0034】
p型半導体層103上のHEMT構造の一部(キャリア走行層104およびキャリア供給層105の一部)は除去されており、この除去部分におけるp型半導体層103上にゲート絶縁膜106およびゲート電極107が形成されている。この構成により、本実施の形態によるMOSFET100Aが、p型半導体層103とゲート絶縁膜106とゲート電極107とよりなるMOS構造を備える。本実施の形態では、ゲート絶縁膜106として例えばシリコン酸化膜を用い、また、ゲート電極107として例えばアルミニウム(Al)膜をチタニウム(Ti)膜で上下層からサンドウィッチした積層構造の金属膜を用いる。ただし、本発明はこれに限定されず、半導体装置100に組み込まれる半導体素子が例えばMIS(Metal Insulator Semiconductor)構造のFETであってもよい。したがって、ゲート絶縁膜106およびゲート電極107についても、種々の絶縁膜および導電体膜を用いることが可能である。
【0035】
キャリア供給層105上には、上述したように、ゲート電極107を挟む2つの領域に対をなすソース電極108sおよびドレイン電極108dが形成されている。本実施の形態において、ソース電極108sおよびドレイン電極108dには、例えば下層のTi膜と上層のAl膜とよりなる積層構造の金属膜を用いることができる。ただし、本発明ではこれに限定されず、例えば下層のキャリア供給層105とオーミック接合することが可能な種々の導電体を用いて形成することが可能である。
【0036】
また、半導体素子を覆う層間絶縁膜109は、例えばシリコン酸化膜などの絶縁膜を用いて形成することができる。さらに、層間絶縁膜109上およびこれのコンタクトホール内のメタル層110は、例えばTi膜とAl膜との積層構造を有する金属膜などを用いて形成することができる。さらにまた、これらを覆うパッシベーション膜111は、例えばシリコン窒化膜などの絶縁膜を用いて形成することができる。
【0037】
(製造方法)
次に、本実施の形態による半導体装置100の製造方法を、図面を用いて詳細に説明する。図3(a)から図6(b)は、本実施の形態による半導体装置100の製造方法を示すプロセス図である。なお、図3(a)から図6(b)では、図2と対応する断面を示す。
【0038】
本製造方法では、まず、図3(a)に示すように、シリコン基板101上に、バッファ層102Aを形成し、その上にp−GaN層103Aとun−GaN層104Aとun−AlGaN層105Aとを順次形成する。
【0039】
具体的には、まず、例えばMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)装置のチャンバ内にシリコン基板101を設置した状態で、シリコン基板101上に例えばトリメチルアルミニウム(TMA)とアンモニア(NH)とをそれぞれ例えば100μmol/分程度、12リットル/分程度の流量で導入する。これにより、膜厚が例えば100nm程度のAlN層がシリコン基板101上にエピタキシャル成長する。次に、成長したAlN層上に例えばトリメチルガリウム(TMG)とアンモニアとをそれぞれ例えば58μmol/分程度、12リットル/分程度の流量で導入することで、膜厚が例えば200nm程度のGaN層をエピタキシャル成長し、続いて、GaN層上に例えばTMAとアンモニアとを上記と同様の流量で導入することで、膜厚が例えば20nm程度のAlN層をエピタキシャル成長する。その後、膜厚が200nm程度のGaN層と膜厚が20nm程度のAlN層とよりなる積層膜を例えば8層程度重ねることで、最下層のAlN層からの合計の膜厚が例えば1860nm程度の積層構造を有するバッファ層102Aをシリコン基板101上に形成する。
【0040】
続いて、バッファ層102A上に例えばTMGとアンモニアとの他にビスシクロペンタジエニルマグネシウム(Bis(Cyclopentadienyl)Magnesium:CP2Mg)を導入する。これにより、p型の不純物としてMgがドーピングされたGaN層(p−GaN層)103Aがバッファ層102A上にエピタキシャル成長する。なお、p−GaN層103Aの膜厚は、例えば500nm程度とすることができる。また、この際のTMGとアンモニアとの流量は、それぞれ例えば19μmol/分程度、12リットル/分程度とすることができる。さらに、CP2Mgの流量は、例えば成長したp−GaN層103AにおけるMg濃度が1×1017/cm程度となるような流量とすることができる。ただし、Mg濃度は、例えば2次イオン質量分析法(SIMS)により測定した結果である。
【0041】
続いて、p−GaN層103A上に例えばTMGとアンモニアとをそれぞれ例えば19μmol/分程度、12リットル/分程度の流量で導入することで、膜厚が例えば100nm程度のun−GaN層104Aをエピタキシャル成長する。続いて、un−GaN層104A上に例えばTMAとTMGとアンモニアとをそれぞれ例えば125μmol/分程度、19μmol/分程度、12リットル/分程度の流量で導入することで、膜厚が例えば20nm程度のun−AlGaN層105Aをエピタキシャル成長する。なお、un−AlGaN層105Aの組成は、例えばAl0.25Ga0.75Nとすることができる。また、上記工程における各層(バッファ層102A、p−GaN層103A、un−GaN層104Aおよびun−AlGaN層105A)の成長温度は、例えば1050℃程度とすることができる。
【0042】
以上のようにしてバッファ層102Aとp−GaN層103Aとun−GaN層104Aとun−AlGaN層105Aとよりなる積層膜をシリコン基板101上に形成すると、次に、例えばフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いることで、図3(b)に示すように、素子形成領域AR1におけるun−AlGaN層105Aおよびun−GaN層104Aの一部を除去し、下層のp−GaN層103Aの一部を露出させる。具体的には、例えばCVD法を用いることでun−AlGaN層105A上に膜厚が例えば300nm程度のシリコン酸化膜M1を形成し、次いで例えばフォトリソグラフィ技術を用いることで、シリコン酸化膜M1上にun−AlGaN層105Aおよびun−GaN層104Aの除去パターンが転写されたフォトレジストを形成する。続いて、該フォトレジストをマスクとして用いつつ、例えば緩衝フッ酸(BHF)を用いたウェットエッチングまたはフッ素系ガスを用いたドライエッチングによりシリコン酸化膜M1を加工することで、シリコン酸化膜M1に上記除去パターンを転写する。これにより、シリコン酸化膜M1に除去パターンとしての開口ap1が形成される。続いて、上記のフォトレジストを除去した後、開口ap1を有するシリコン酸化膜M1をマスクとして用いつつ、例えば塩素系ガスを用いたドライエッチングによりun−AlGaN層105Aおよびun−GaN層104Aを順次エッチングすることで、開口ap1下のun−AlGaN層105Aおよびun−GaN層104Aを除去し、この部分のp−GaN層103A上面を露出させる。この際、オーバエッチング気味に処理することで、開口ap1下のun−GaN層104Aを完全に除去することが好ましい。また、本工程において、半導体素子として使用しない領域に位置するun−GaN層104Aおよびun−AlGaN層105Aを除去してもよい。
【0043】
次に、マスクとして用いたシリコン酸化膜M1を除去した後、例えばフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いることで、図3(c)に示すように、各素子形成領域AR1間に2本の平行な溝TRを形成する。具体的には、例えば図3(b)を用いて説明した工程と同様の工程を用いることで、un−AlGaN層105Aおよび露出したp−GaN層103A上に、溝TR形成用の開口ap2を有するシリコン酸化膜M2を形成する。なお、シリコン酸化膜M2の膜厚は例えば1000nm程度とすることができる。続いて、シリコン酸化膜M2をマスクとして用いつつ、例えば塩素系ガスを用いたRIE(Reactive Ion Etching)やICP−RIE(Inductive Coupled Plasma−RIE)などの異方性ドライエッチングによりun−AlGaN層105Aとun−GaN層104Aとp−GaN層103Aとバッファ層102Aとシリコン基板101の上層部分とを順次エッチングすることで、スクライブ領域SRに平行な2本の溝TR(図1(a)および(b)参照)を形成する。
【0044】
また、上記工程の結果、素子形成領域AR1におけるバッファ層102A、p−GaN層103A、un−GaN層104Aおよびun−AlGaN層105Aがそれぞれバッファ層102、p型半導体層103、キャリア走行層104およびキャリア供給層105に整形されると共に、各素子形成領域AR1間が素子分離される。さらに、上記工程の結果、各スクライブ領域SRにおける2本の溝TRの間に、シリコン基板101の上層部分である凸部101bと、バッファ層102Aの一部であるバッファ層102aと、p−GaN層103Aの一部であるp−GaN層103aと、un−GaN層104Aの一部であるun−GaN層104aと、un−AlGaN層105Aの一部であるun−AlGaN層105aと、よりなるメサ状の凸部120が形成される。
【0045】
以上のように、スクライブ領域SRに2本の溝TRおよび凸部120を形成すると、次に、マスクとして用いたシリコン酸化膜M2を除去した後、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いることで、上記各層が形成されたシリコン基板101上面全体を覆う、膜厚が例えば60nm程度のシリコン酸化膜を形成する。続いて、該シリコン酸化膜をフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて加工することで、図4(a)に示すように、キャリア供給層105上の少なくとも一部のシリコン酸化膜を除去して、ソース電極108sおよびドレイン電極108dとのコンタクト用の開口ap3をそれぞれ形成する。なお、本実施の形態では、説明の都合上、本工程で形成した素子形成領域AR1内のシリコン酸化膜をゲート絶縁膜106とし、同じく本工程で形成した他のシリコン酸化膜を絶縁膜106aとする。
【0046】
次に、例えばリフトオフ法を用いることで、図4(b)に示すように、ゲート絶縁膜106の開口ap3により露出されたキャリア供給層105上に、これとオーミック接触するソース電極108sおよびドレイン電極108dを形成する。具体的には、例えばフォトリソグラフィ技術を用いることで、ソース電極108sおよびドレイン電極108dの形成領域に開口ap3を有するフォトレジストR1を形成する。続いて、例えばスパッタ法または真空蒸着法を用いることで、フォトレジストR1上および開口ap3により露出されたキャリア供給層105上に、TiとAlとを順次堆積する。これにより、フォトレジストR1上にTi膜とAl膜との積層膜よりなる金属膜1008が形成される共に、開口ap3により露出されたキャリア供給層105上にソース電極108sおよびドレイン電極108dが形成される。なお、Ti膜およびAl膜の膜厚は、それぞれ例えば25nm程度、300nm程度とすることができる。続いて、例えばアセトンなどの剥離液を用いてフォトレジストR1を除去することで、フォトレジストR1上の金属膜1008をリフトオフにより除去する。その後、例えば600℃のアニール処理を10分間程度行なうことで、ソース側のキャリア供給層105とソース電極108sと、並びに、ドレイン側のキャリア供給層105とドレイン電極108dとを、それぞれオーミック接触させる。
【0047】
次に、例えばリフトオフ法を用いることで、図5(a)に示すように、ゲート絶縁膜106上にゲート電極107を形成する。具体的には、例えばフォトリソグラフィ技術を用いることで、ゲート絶縁膜106上におけるゲート電極107の形成領域に開口ap4を有するフォトレジストR2を形成する。続いて、例えばスパッタ法または真空蒸着法を用いることで、フォトレジストR2上および開口ap4により露出されたゲート絶縁膜106上に、TiとAlとTiとを順次堆積する。これにより、フォトレジストR2上にTi膜とAl膜とTi膜との積層膜よりなる金属膜1007が形成されると共に、開口ap4により露出されたゲート絶縁膜106上にゲート電極107が形成される。なお、下層のTi膜とAl膜と上層のTi膜との膜厚は、それぞれ例えば25nm程度、300nm程度、25nm程度とすることができる。続いて、例えばアセトンなどの剥離液を用いてフォトレジストR2を除去することで、フォトレジストR2上の金属膜1007をリフトオフにより除去する。
【0048】
以上のようにして素子形成領域AR1にp型半導体層103とキャリア走行層104およびキャリア供給層105とゲート絶縁膜106およびゲート電極107とソース電極108sおよびドレイン電極108dとよりなるMOSFET100Aを含む半導体素子を形成すると、次に、例えばCVD法を用いて酸化シリコンを堆積させることで、上記各層が形成されたシリコン基板101上面全体を覆う、膜厚が例えば3000nm程度の層間絶縁膜109を形成する。続いて、例えばフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いることで、ソース電極108sおよびドレイン電極108d並びにゲート電極107の一部をそれぞれ露出させるコンタクトホールを層間絶縁膜109に形成し、次いで例えばスパッタ法または真空蒸着法を用いることで、図5(b)に示すように、層間絶縁膜109上の上層配線とコンタクトホール内のコンタクト内線とを含むメタル層110を形成する。なお、層間絶縁膜109およびメタル層110は、それぞれ一層に限らず、複数層形成してもよい。
【0049】
次に、例えばCVD法を用いて窒化シリコンを堆積させることで、図6(a)に示すように、層間絶縁膜109およびメタル層110上に、膜厚が例えば800nm程度のパッシベーション膜111を形成する。なお、この工程の結果、図2に示す層構造を備えたウエハ1が製造される。
【0050】
次に、上記各層が形成されたシリコン基板101裏面に例えば粘着面を備えたダイシングシートDSを貼り付け、これを図示しないダイシングテーブル上に固定した後、図6(b)に示すように、シリコン基板101のスクライブ領域SRにおける凸部120を例えばダイシングブレードDBを用いて切断する。この際、シリコン基板101上面側からダイシングラインDLに沿って切断する。これにより、図1(a)、図1(b)および図2に示すウエハ1が個々の半導体装置100(図6(b)参照)に個片化される。なお、本実施の形態では、上記したようにダイシングブレードDBを用いて半導体装置100を個片化するが、本発明はこれに限定されず、例えばレーザカッターを用いたステルスカットにて半導体装置100を個片化してもよい。また、図6(b)では、凸部120上面の幅WCONVをダイシングブレードDBの厚さよりも大きくした場合を例に挙げるが、上述したように、本発明はこれに限定されるものではない。
【0051】
以上のような工程を用いて半導体装置100を製造することで、図6(b)に示すように、個片化後の半導体装置100の外縁付近には、凸部120の一部である凸部120aを備え、凸部120aと素子形成領域AR1との間には溝TRが形成されている。また、半導体装置100の個片化面である側面S2はダイサーカット面であるが、素子形成領域AR1の側面S1はエッチングにより形成された比較的凹凸や物理的ダメージ並びに熱ダメージなどが少ない、特性の良好な面となっている。このため、素子形成領域AR1の側面S1を介したリーク電流を低減することが可能となり、良好な特性の半導体装置100の製造が達成される。
【0052】
以上のように製造した個片化後の半導体装置100と、個片化前のウエハ1に形成された半導体装置100との電流電圧特性を図7に示す。図7に示すように、個片化後の半導体装置100の電流電圧特性Caは、個片化前の半導体装置100の電流電圧特性Cbと同程度の良好な特性を示している。
【0053】
なお、上記した実施の形態では、溝TRをシリコン基板101上面、すなわち素子形成面から形成した場合を例に挙げたが、本発明はこれに限定されず、例えばシリコン基板101裏面から溝TRを形成するように構成してもよい。この場合、溝TRは、例えばシリコン基板101裏面から少なくともキャリア供給層105にまで到達するように形成される。
【0054】
<実施の形態2>
次に、本発明の実施の形態2による半導体装置200を、図面を用いて詳細に説明する。なお、本実施の形態では、半導体素子として1つ以上のHEMT200Aが形成された半導体装置200を例に挙げる。なお、以下の説明において、本発明の実施の形態1と同様の構成については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0055】
(構成)
本実施の形態において、半導体装置200を個片化する前のウエハ2の上方からの概略構成は、図1(a)および図1(b)に示す概略構成と同様であるため、ここではこれを引用することで詳細な説明を省略する。また、図8は、本実施の形態によるウエハ2の層構造を示す模式図である。なお、図8では、図1(b)におけるA−A’断面と対応する断面の層構造を示す。
【0056】
図8と図2とを比較すると明らかなように、本実施の形態において各素子形成領域AR1に形成されるHEMT200Aは、本発明の実施の形態1によるMOSFET100Aと同様の構成において、キャリア走行層204およびキャリア供給層205がゲート電極207の形成領域において除去されていない構成を有している。また、MOSFET100におけるゲート絶縁膜107が省かれ、且つ、ゲート電極107がキャリア供給層205とショットキー接触するゲート電極207に置き換えられた構成を有している。なお、ゲート絶縁膜106が省かれたことに伴い、素子形成領域AR1外の領域に形成された絶縁膜106aも省かれている。また、他の構成は、本発明の実施の形態1と同様であるため、同一の符号を付し、その詳細な説明を省く。
【0057】
ゲート電極207は、上述したようにキャリア供給層205上に形成され、これとショットキー接触する。本実施の形態において、ゲート電極207には、例えば下層のニッケル(Ni)膜と上層の金(Au)膜とよりなる積層構造の金属膜を用いることができる。ただし、本発明ではこれに限定されず、例えば下層のキャリア供給層205とショットキー接触することが可能な種々の導電体を用いて形成することが可能である。
【0058】
また、キャリア走行層204およびキャリア供給層205は、本発明の実施の形態1におけるキャリア走行層104およびキャリア供給層105と同様の材料を用いて形成することが可能であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0059】
(製造方法)
次に、本実施の形態による半導体装置200の製造方法を、図面を用いて詳細に説明する。図9(a)から図9(c)は、本実施の形態による半導体装置200の製造方法を示すプロセス図である。なお、以下の説明において、本発明の実施の形態1と同様の工程については、それを引用することで説明を簡略化する。
【0060】
本製造方法では、まず、本発明の実施の形態1において図3(a)を用いて説明した工程と同様の工程を用いることで、シリコン基板101上に、バッファ層102Aとp−GaN層103Aとun−GaN層104Aとun−AlGaN層105Aとを順次形成する。
【0061】
次に、本発明の実施の形態1において図3(c)を用いて説明した工程と同様の工程を用いることで、図9(a)に示すように、各素子形成領域AR1間に2本の平行な溝TRを形成する。なお、この工程の結果、素子形成領域AR1におけるバッファ層102A、p−GaN層103A、un−GaN層104Aおよびun−AlGaN層105Aがそれぞれバッファ層102、p型半導体層103、キャリア走行層204およびキャリア供給層205に整形されると共に、各素子形成領域AR1間が素子分離され、さらに、各スクライブ領域SRにおける2本の溝TRの間に、本発明の実施の形態1の図3(c)と同様に、シリコン基板101の上層部分である凸部101bと、バッファ層102Aの一部であるバッファ層102aと、p−GaN層103Aの一部であるp−GaN層103aと、un−GaN層104Aの一部であるun−GaN層104aと、un−AlGaN層105Aの一部であるun−AlGaN層105aと、よりなるメサ状の凸部120が形成される。
【0062】
次に、マスクとして用いたシリコン酸化膜M22を除去した後、本発明の実施の形態1において図4(a)を用いて説明したリフトオフ工程と同様の工程を用いることで、図9(b)に示すように、キャリア供給層205上に、これとオーミック接触するソース電極108sおよびドレイン電極108dを形成する。なお、マスクとして用いたフォトレジストR21を例えばアセトンなどの剥離液を用いて除去することで、フォトレジストR21上の金属膜1008がリフトオフにより除去され、開口ap21内に形成されたソース電極108sおよびドレイン電極108dが残る。
【0063】
次に、例えばリフトオフ法を用いることで、図9(c)に示すように、キャリア供給層205上におけるソース電極108sおよびドレイン電極108dで挟まれた領域にゲート電極207を形成する。具体的には、例えばフォトリソグラフィ技術を用いることで、ソース電極108sおよびドレイン電極108dで挟まれた領域上に開口ap22を有するフォトレジストR22を形成する。続いて、例えばスパッタ法または真空蒸着法を用いることで、フォトレジストR22上および開口ap22により露出されたキャリア供給層205上に、NiとAuとを順次堆積する。これにより、フォトレジストR22上にNi膜とAu膜との積層膜よりなる金属膜2007が形成されると共に、開口ap22により露出されたキャリア供給層205上にこれとショットキー接合するゲート電極207が形成される。なお、Ni膜およびAu膜の膜厚は、それぞれ例えば100nm程度、200nm程度とすることができる。なお、マスクとして用いたフォトレジストR22を例えばアセトンなどの剥離液を用いて除去することで、フォトレジストR22上の金属膜2007がリフトオフにより除去され、開口ap22内に形成されたゲート電極207が残る。
【0064】
その後、本発明の実施の形態1において図5(b)から図6(a)を用いて説明した工程と同様の工程を用いることで、層間絶縁膜109、メタル層110およびパッシベーション膜111を順次形成し、その後、同実施の形態1において図6(b)を用いて説明した工程と同様の工程を用いることで、上記各層が形成されたウエハ2(図8参照)を個々の半導体装置200に個片化する。なお、本実施の形態においても、本発明による実施の形態1と同様に、凸部120上面の幅WCONVがダイシングブレードDBの厚さまたはレーザカッターのスポット径と同程度または小さくても良い。
【0065】
以上のように製造した半導体装置200であっても、本発明の実施の形態1と同様に、微細プロセスよりも前に個片化用の溝TRを形成した場合でも、微細プロセスにおけるフォトリソグラフィで使用するフォトレジストを均一に形成することが可能となる。また、溝TRの側面、すなわち素子形成領域AR1の側面S1がエッチングにより形成された、ダイサーカット面よりも凹凸や物理的ダメージ並びに熱ダメージなどが少ない面となっているため、素子形成領域AR1の側面S1を介した基板(本実施の形態ではシリコン基板101)へのリーク電流を低減することが可能となり、良好な特性の半導体装置200を実現することが可能となる。
【0066】
<実施の形態3>
次に、本発明の実施の形態3による半導体装置300を、図面を用いて詳細に説明する。なお、本実施の形態では、半導体素子として1つ以上のSBD300Aが形成された半導体装置300を例に挙げる。なお、以下の説明において、本発明の実施の形態1または2と同様の構成については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0067】
(構成)
本実施の形態において、半導体装置300を個片化する前のウエハ3の上方からの概略構成は、図1(a)および図1(b)に示す概略構成と同様であるため、ここではこれを引用することで詳細な説明を省略する。また、図10は、本実施の形態によるウエハ3の層構造を示す模式図である。なお、図10では、図1(b)におけるA−A’断面と対応する断面の層構造を示す。
【0068】
図10と図2および図8とを比較すると明らかなように、本実施の形態において、各素子形成領域AR1に形成されるSBD300Aは、本発明の実施の形態2によるHEMT200Aと同様の構成において、キャリア走行層205上のゲート電極207が省かれ、キャリア供給層205上のソース電極108sおよびドレイン電極108dがそれぞれカソード電極308cおよびアノード電極308aに置き換えられた構成を有している。他の構成は、本発明の実施の形態1または2と同様であるため、同一の符号を付し、その詳細な説明を省く。
【0069】
カソード電極308cは、キャリア供給層205とオーミック接触する金属膜よりなる電極である。本実施の形態では、例えば下層のTi膜と上層のAl膜とよりなる積層構造の金属膜を用いる。ただし、本発明はこれに限定されず、下層のキャリア供給層205とオーミック接触することが可能な種々の導電体を用いて形成することが可能である。
【0070】
アノード電極308aは、キャリア供給層205とショットキー接触する金属膜よりなる電極である。本実施の形態では、例えば下層のNi膜と上層のAl膜とよりなる積層構造の金属膜を用いる。ただし、本発明ではこれに限定されず、下層のキャリア供給層205とショットキー接触することが可能な種々の導電体を用いて形成することが可能である。
【0071】
(製造方法)
次に、本実施の形態による半導体装置300の製造方法を、図面を用いて詳細に説明する。図11(a)および図11(b)は、本実施の形態による半導体装置300の製造方法を示すプロセス図である。なお、以下の説明において、本発明の実施の形態1または2と同様の工程については、それを引用することで説明を簡略化する。
【0072】
本製造方法では、まず、本発明の実施の形態1において図3(a)を用いて説明した工程と同様の工程を用いることで、シリコン基板101上に、バッファ層102Aとp−GaN層103Aとun−GaN層104Aとun−AlGaN層105Aとを順次形成する。
【0073】
次に、本発明の実施の形態1において図3(c)を用いて説明した工程と同様の工程を用いることで、本発明の実施の形態2において図9(a)に示すような2本の平行な溝TRを各素子形成領域AR1間に形成する。なお、この工程の結果、素子形成領域AR1におけるバッファ層102A、p−GaN層103A、un−GaN層104Aおよびun−AlGaN層105Aがそれぞれバッファ層102、p型半導体層103、キャリア走行層204およびキャリア供給層205に整形されると共に、各素子形成領域AR1間が素子分離され、さらに、各スクライブ領域SRにおける2本の溝TRの間に、シリコン基板101の上層部分である凸部101bと、バッファ層102Aの一部であるバッファ層102aと、p−GaN層103Aの一部であるp−GaN層103aと、un−GaN層104Aの一部であるun−GaN層104aと、un−AlGaN層105Aの一部であるun−AlGaN層105aと、よりなるメサ状の凸部120が形成される。
【0074】
次に、本発明の実施の形態1において図4(a)を用いて説明したリフトオフ工程と同様の工程をもちいることで、図11(a)に示すように、キャリア供給層205上に、これとオーミック接触するカソード電極308cを形成する。なお、マスクとして用いたフォトレジストR31を例えばアセトンなどの剥離液を用いて除去することで、フォトレジストR31上の金属膜3008がリフトオフにより除去され、開口ap31内に形成されたカソード電極308cが残る。
【0075】
次に、本発明の実施の形態2において図9(c)を用いて説明したリフトオフ工程と同様の工程を用いることで、図11(b)に示すように、キャリア供給層205上に、これとショットキー接触するアノード電極308aを形成する。なお、マスクとして用いたフォトレジストR32を例えばアセトンなどの剥離液を用いて除去することで、フォトレジストR32上の金属膜3018がリフトオフにより除去され、開口ap32内に形成されたアノード電極308aが残る。
【0076】
その後、本発明の実施の形態1において図5(b)から図6(a)を用いて説明した工程と同様の工程を用いることで、層間絶縁膜109、メタル層110およびパッシベーション膜111を順次形成し、その後、同実施の形態1において図6(b)を用いて説明した工程と同様の工程を用いることで、上記各層が形成されたウエハ3(図10参照)を個々の半導体装置300に個片化する。なお、本実施の形態においても、本発明による実施の形態1と同様に、凸部120上面の幅WCONVがダイシングブレードDBの厚さまたはレーザカッターのスポット径と同程度または小さくても良い。
【0077】
以上のように製造した半導体装置300であっても、本発明の実施の形態1または2と同様に、微細プロセスよりも前に個片化用の溝TRを形成した場合でも、微細プロセスにおけるフォトリソグラフィで使用するフォトレジストを均一に形成することが可能となる。また、溝TRの側面、すなわち素子形成領域AR1の側面S1がエッチングにより形成された、ダイサーカット面よりも凹凸や物理的ダメージ並びに熱ダメージなどが少ない面となっているため、素子形成領域AR1の側面S1を介した基板(本実施の形態ではシリコン基板101)へのリーク電流を低減することが可能となり、良好な特性の半導体装置300を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の実施の形態1による半導体装置を個片化する前のウエハの概略構成を示す上視図およびその概略拡大図である。
【図2】図1(b)におけるA−A’断面の層構造を示す模式図である。
【図3】本発明の実施の形態1による半導体装置の製造方法を示すプロセス図である(1)。
【図4】本発明の実施の形態1による半導体装置の製造方法を示すプロセス図である(2)。
【図5】本発明の実施の形態1による半導体装置の製造方法を示すプロセス図である(3)。
【図6】本発明の実施の形態1による半導体装置の製造方法を示すプロセス図である(4)。
【図7】本発明の実施の形態1による個片化後の半導体装置と個片化前の半導体装置との電流電圧特性を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態2による半導体装置が形成されたウエハの層構造を示す模式図である。
【図9】本発明の実施の形態2による半導体装置の製造方法を示すプロセス図である。
【図10】本発明の実施の形態3による半導体装置が形成されたウエハの層構造を示す模式図である。
【図11】本発明の実施の形態3による半導体装置の製造方法を示すプロセス図である。
【符号の説明】
【0079】
1、2、3 ウエハ
100、200、300 半導体装置
100A MOSFET
101 シリコン基板
101a、101b、120、120a 凸部
102、102A、102a バッファ層
103 p型半導体層
103A、103a p−GaN層
104、204 キャリア走行層
104A、104a un−GaN層
105、205 キャリア供給層
105A、105a un−AlGaN層
106 ゲート絶縁膜
106a 絶縁膜
107、207 ゲート電極
108d ドレイン電極
108s ソース電極
109 層間絶縁膜
110 メタル層
111 パッシベーション膜
200A HEMT
300A SBD
308a アノード電極
308c カソード電極
AR1 素子形成領域
S1、S2 側面
SR スクライブ領域
TR 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定基板上に形成された一層以上の化合物半導体層における素子形成領域に1つ以上の半導体素子が形成された半導体装置であって、
個片化による切断面と前記化合物半導体層における前記素子形成領域の側面との間に前記化合物半導体層を分断する溝が形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記溝は、少なくとも前記化合物半導体層から前記所定基板にまで形成されていることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記化合物半導体は、GaN、AlGaN、BAlGaN、InGaN、GaAs、InPおよびSeGeのうち少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1または2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記半導体素子は、MOSFET、HEMTおよびSBDのうち少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の半導体装置。
【請求項5】
配列された複数の素子形成領域と該素子形成領域間に配置されたスクライブ領域とを含む一層以上の化合物半導体層を備えたウエハ構造体であって、
前記スクライブ領域に前記化合物半導体層における隣接する前記素子形成領域間を分断する2つの溝が形成されていることを特徴とするウエハ構造体。
【請求項6】
所定基板上に複数の素子形成領域を含む化合物半導体層を一層以上形成する半導体層形成工程と、
前記素子形成領域間を分断する2つの溝を前記化合物半導体層に形成する溝形成工程と、
前記分断された素子形成領域に半導体素子を形成する素子形成工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記素子形成工程は、前記半導体素子における電極の形成を含むことを特徴とする請求項6記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記溝形成工程は、前記所定基板にまで前記溝を形成することを特徴とする請求項6または7記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記2つの溝の間に位置する凸部を切断することで半導体装置を個片化する個片化工程を含み、
前記凸部の上面の幅は、前記個片化工程において使用するダイシングブレードの厚さまたはレーザカッターのスポット径よりも大きいことを特徴とする請求項6〜8のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記溝形成工程は、エッチングにより前記溝を形成することを特徴とする請求項6〜9のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記化合物半導体層は、GaN、AlGaN、BAlGaN、InGaN、GaAs、InPおよびSeGeのうち少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項6〜10のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−272492(P2009−272492A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−122513(P2008−122513)
【出願日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】