説明

半導体装置の作製方法

【課題】酸化物半導体膜をチャネルに用いたトランジスタに安定した電気的特性を付与し、信頼性の高い半導体装置を作製する。
【解決手段】加熱処理により第1の結晶構造となりうる酸化物半導体膜と、加熱処理により第2の結晶構造となりうる酸化物半導体膜を積層して形成し、その後加熱処理を行うことによって、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜を種として第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜へ結晶成長する。このようにして形成した酸化物半導体膜を、トランジスタの活性層に用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
トランジスタなどの半導体素子を含む回路を有する半導体装置及びその作製方法に関する。例えば、電源回路に搭載されるパワーデバイス、メモリ、サイリスタ、コンバータ、イメージセンサなどを含む半導体集積回路、液晶表示パネルに代表される電気光学装置、発光素子を有する発光表示装置等を部品として搭載した電子機器に関する。
【0002】
なお、本明細書中において半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般を指し、電気光学装置、発光表示装置、半導体回路及び電子機器は全て半導体装置である。
【背景技術】
【0003】
液晶表示装置に代表されるように、ガラス基板等に形成されるトランジスタはアモルファスシリコン、多結晶シリコンなどによって構成されている。アモルファスシリコンを用いたトランジスタは電界効果移動度が低いもののガラス基板の大面積化に対応することができる。また、多結晶シリコンを用いたトランジスタの電界効果移動度は高いがガラス基板の大面積化には適していないという欠点を有している。
【0004】
シリコンを用いたトランジスタに対して、酸化物半導体を用いてトランジスタを作製し、電子デバイスや光デバイスに応用する技術が注目されている。例えば、酸化物半導体として、酸化亜鉛、In−Ga−Zn−O系酸化物を用いてトランジスタを作製し、表示装置の画素のスイッチング素子などに用いる技術が特許文献1及び特許文献2で開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−123861号公報
【特許文献2】特開2007−96055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
トランジスタの電気的特性は、活性層である酸化物半導体膜と、該酸化物半導体膜と接するゲート絶縁膜との界面状態に影響されやすい。トランジスタの製造中または製造後において、酸化物半導体膜と接するゲート絶縁膜との界面、即ち、ゲート電極側の界面が非晶質状態であると、製造工程における温度などの影響により構造状態が変動しやすく、トランジスタの電気的特性が不安定となりやすい。
【0007】
また、酸化物半導体膜をチャネルに用いたトランジスタは、可視光や紫外光を照射することで電気的特性が変化する。
【0008】
このような問題に鑑み、本発明の一態様は、酸化物半導体膜と該酸化物半導体膜と接するゲート絶縁膜との界面状態が良好なトランジスタを有する半導体装置及びその作製方法を提供することを課題の一つとする。また、酸化物半導体膜をチャネルに用いたトランジスタに安定した電気的特性を付与し、信頼性の高い半導体装置を作製することを課題の一とする。また、マザーガラスのような大きな基板を用いて、信頼性の高い半導体装置の大量生産を行うことのできる半導体装置の作製プロセスを提供することを課題の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、酸化物半導体膜と該酸化物半導体膜と接する絶縁膜(ゲート絶縁膜)との界面状態を良好にするために、少なくとも、酸化物半導体膜の界面近傍に結晶性の高い領域を形成する。それによって安定した電気的特性および信頼性の高い半導体装置を作製することができる。
【0010】
また、酸化物半導体膜の結晶性を向上させるための方法として、酸化物半導体膜の一部に第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜を設ければよい。第2の結晶構造は、ウルツ鉱型の結晶構造である。第2の結晶構造となりうる酸化物半導体膜は、第1の結晶構造となりうる酸化物半導体膜と比較して、加熱処理により結晶化しやすく、また結晶性が高い。第1の結晶構造は非ウルツ鉱構造、YbFe型構造、YbFe型構造及びその変形型構造のいずれか一種から選ばれた結晶構造である。
【0011】
また、加熱処理により第1の結晶構造となりうる酸化物半導体膜と、加熱処理により第2の結晶構造となりうる酸化物半導体膜を積層して形成し、その後加熱処理を行うことによって、第2の結晶構造である酸化物半導体膜を種として、加熱処理により第1の結晶構造となりうる酸化物半導体膜が結晶成長し、第1の結晶構造である酸化物半導体膜が形成される。
【0012】
該加熱処理は、150度以上650度以下、好ましくは200度以上500度以下で行う。
【0013】
また、結晶化させるための加熱処理の代わりに、加熱しながらスパッタリング法により酸化物半導体膜を形成することができる。
【0014】
以上により、例えば酸化物半導体膜を積層させた酸化物半導体積層体において、少なくとも第2の酸化物半導体膜を有する層を設けることにより、該酸化物半導体積層体に加熱処理を行うことで、結晶性の高い酸化物半導体膜を得ることができる。
【0015】
また、第2の酸化物半導体膜の膜厚は、一原子層以上10nm以下、好ましくは2nm以上5nm以下とする。
【0016】
上記構成において、酸化物半導体膜は非単結晶であり、酸化物半導体膜全体が非晶質状態(アモルファス状態)ではなく、酸化物半導体膜内に少なくともc軸配向を有する結晶を有する。
【0017】
本発明の一態様は、トランジスタを有する半導体装置の作製方法であり、絶縁表面上に第1の酸化物半導体膜を形成し、次に、第2の酸化物半導体膜を形成した後、第1の加熱処理し、第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜及び第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜を形成する。次に、該第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜上に、第3の酸化物半導体膜を形成した後、第2の加熱処理し、第3の結晶構造を有する酸化物半導体膜を形成して、第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜、及び第3の結晶構造を有する酸化物半導体膜の積層体をトランジスタのチャネル領域として形成することを特徴とする。
【0018】
なお、上記第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜及び第3の結晶構造を有する酸化物半導体膜の結晶構造は、YbFe型構造、YbFe型構造及び非ウルツ鉱型構造のいずれか一であり、上記第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜の結晶構造は、ウルツ鉱型構造である。
【0019】
第1の加熱処理及び第2の加熱処理の温度は、150度以上650度以下、好ましくは200度以上500度以下である。このため、基板として大面積基板であるマザーガラスを用いることができる。
【0020】
第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜乃至第3の結晶構造を有する酸化物半導体膜は、非単結晶であり、且つ酸化物半導体膜全体が非晶質状態(アモルファス状態)ではなく、c軸配向の結晶領域を有する。即ち、非晶質領域及びc軸配向の結晶領域を有する。
【0021】
第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜は、ウルツ鉱型の結晶構造を有するため、第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜及び第3の結晶構造を有する酸化物半導体膜と比較して、加熱処理により結晶化しやすく、また結晶性が高い。また、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜は、a−b面における平面において六角形をなす結合をしている。また、六角形の結合を有する層が膜厚方向(c軸方向)に積層して結合されており、c軸配向している。このため、ウルツ鉱型の結晶構造を有する第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜を種として、加熱により第1の酸化物半導体膜、及び第3の酸化物半導体膜を結晶成長させると、ウルツ鉱型の結晶構造を有する第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜の結晶軸と略同一となるように、第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜、及び第3の結晶構造を有する酸化物半導体膜を形成することができる。第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜、及び第3の結晶構造を有する酸化物半導体膜は、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜と同様に、a−b面における平面において六角形をなす結合をしている。また、六角形の結合を有する層が膜厚方向(c軸方向)に積層して結合されており、c軸配向している。
【0022】
また、上記酸化物半導体積層体上に、ゲート絶縁膜を形成し、ゲート絶縁膜上にゲート電極を形成することで、トランジスタを作製することができる。この結果、ゲート絶縁膜との界面において酸化物半導体積層体は結晶性が高く、均一性も高いため、電気的特性が安定であり、信頼性の高いトランジスタを得ることができる。
【0023】
また、ゲート電極上にゲート絶縁膜を形成し、ゲート絶縁膜上に上記酸化物半導体積層体を形成することで、トランジスタを作製することができる。この結果、ゲート絶縁膜との界面において上記酸化物半導体積層体は結晶性が高く、均一性も高いため、電気的特性が安定であり、信頼性の高いトランジスタを得ることができる。
【0024】
また、a−b面において六角形の結合を有し、c軸配向している結晶領域を有する酸化物半導体膜の積層体をトランジスタのチャネル領域に用いることで、トランジスタへの光照射前後、またはバイアス−熱ストレス(BT)試験前後においても、トランジスタのしきい値電圧の変化量が少なく、安定した電気的特性を有するトランジスタを作製することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の一態様により、酸化物半導体膜と該酸化物半導体膜と接するゲート絶縁膜との界面状態が良好なトランジスタを有する半導体装置を作製することができる。また、安定した電気的特性を有する半導体装置を作製することができる。また、マザーガラスのような大きな基板を用いて、信頼性の高い半導体装置を大量生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一態様である半導体装置を説明する上面図及び断面図である。
【図2】本発明の一態様である半導体装置の作製方法を説明する断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係わる結晶構造を説明する図。
【図4】本発明の実施の形態に係わる結晶構造を説明する図。
【図5】実施の形態に係わる結晶構造を説明するHAADF−STEM像。
【図6】実施の形態に係わる結晶構造を説明するHAADF−STEM像。
【図7】本発明の一態様である半導体装置を説明する上面図及び断面図である。
【図8】本発明の一態様である半導体装置の作製方法を説明する断面図である。
【図9】本発明の一態様である半導体装置を説明する上面図及び断面図である。
【図10】本発明の一態様である半導体装置の作製方法を説明する断面図である。
【図11】本発明の一態様である半導体装置を説明する上面図及び断面図である。
【図12】本発明の一態様である半導体装置の作製方法を説明する断面図である。
【図13】本発明の一態様である半導体装置を説明する上面図及び断面図である。
【図14】本発明の一態様である半導体装置の作製方法を説明する断面図である。
【図15】本発明の一態様である半導体装置を説明する上面図及び断面図である。
【図16】本発明の一態様である半導体装置の作製方法を説明する断面図である。
【図17】本発明の一態様である半導体装置を説明する断面図である。
【図18】本発明の一態様を示すブロック図及び回路図である。
【図19】本発明の一態様を示す断面図である。
【図20】電子機器の一態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する本発明の構成において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。
【0028】
なお、本明細書で説明する各図において、各構成の大きさ、膜の厚さ、または領域は、明瞭化のために誇張されている場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。
【0029】
また、本明細書にて用いる第1、第2、第3などの用語は、構成要素の混同を避けるために付したものであり、数的に限定するものではない。そのため、例えば、「第1の」を「第2の」または「第3の」などと適宜置き換えて説明することができる。
【0030】
(実施の形態1)
本実施の形態では、絶縁表面上の酸化物半導体膜をチャネルに用いたトランジスタ及びその作製方法について、図1及び2を用いて説明する。図1(B)は、半導体装置の構成の一形態であるトランジスタの構造を説明する断面図であり、上面図である図1(A)の一点破線A−Bの断面図に相当する。なお、図1(A)において、基板101、酸化物絶縁膜102、ゲート絶縁膜107、及び絶縁膜109は省略している。図2は、図1(B)に示すトランジスタの作製工程を説明する断面図である。
【0031】
図1(B)に示すトランジスタは、基板101上に形成された酸化物絶縁膜102と、酸化物絶縁膜102上に形成された酸化物半導体積層体105と、酸化物半導体積層体105上に形成されたソース電極及びドレイン電極として機能する一対の電極106と、酸化物絶縁膜102、酸化物半導体積層体105、及び一対の電極106上に形成されたゲート絶縁膜107と、ゲート絶縁膜107を介して酸化物半導体積層体105と重畳するゲート電極108とを有する。また、ゲート絶縁膜107及びゲート電極108を覆う絶縁膜109を有してもよい。
【0032】
酸化物半導体積層体105は、酸化物絶縁膜102に接する第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜105aと、第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜105aに接する第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜105bと、が積層されていることを特徴とする。
【0033】
また、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜105bを種結晶として、第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜105aが結晶成長していることを特徴とする。
【0034】
また、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜105bは、三方晶及び/又は六方晶である。
【0035】
即ち、第2の結晶構造及び第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜は、ともに三方晶及び/又は六方晶であるので、c軸方向からは六角形の格子像を確認できる。
【0036】
なお、第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜105a、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜105bはそれぞれ、非単結晶であり、且つ酸化物半導体膜全体が非晶質状態(アモルファス状態)ではなく、c軸配向の結晶領域を有する。
【0037】
次に、図1(B)に示すトランジスタの作製方法について、図2を用いて説明する。
【0038】
図2(A)に示すように、基板101上に酸化物絶縁膜102を形成した後、酸化物絶縁膜102上に第1の酸化物半導体膜103aを形成し、第1の酸化物半導体膜103a上に第2の酸化物半導体膜103bを形成する。
【0039】
基板101は、少なくとも、後の加熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有していることが必要となる。基板101としてガラス基板を用いる場合、歪み点が730度以上のものを用いることが好ましい。ガラス基板には、例えば、アルミノシリケートガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラスなどのガラス材料が用いられる。なお、BよりBaOを多く含むガラス基板を用いることが好ましい。大量生産する上では、基板101は第8世代(2160mm×2460mm)、第9世代(2400mm×2800mm、または2450mm×3050mm)、第10世代(2950mm×3400mm)等のマザーガラスを用いることが好ましい。マザーガラスは、処理温度が高く、処理時間が長いと大幅に収縮するため、マザーガラスを使用して大量生産を行う場合、作製工程の加熱処理は、600度以下、好ましくは450度以下とすることが望ましい。
【0040】
なお、上記のガラス基板に代えて、セラミック基板、石英基板、サファイア基板などの絶縁体でなる基板を用いることができる。他にも、結晶化ガラスなどを用いることができる。さらには、シリコンウェハ等の半導体基板の表面や金属材料よりなる導電性の基板の表面に絶縁膜を形成したものを用いることもできる。
【0041】
なお、アルカリ金属などの不純物を含むガラス基板を基板101として用いる場合、アルカリ金属の侵入防止のため、基板101及び酸化物絶縁膜102の間に窒化物絶縁膜として窒化シリコン膜、窒化アルミニウム膜などを形成してもよい。窒化物絶縁膜は、CVD法、スパッタリング法等で形成することができる。リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属は、後に形成される酸化物半導体膜の不純物であるため含有量を少なくすることが好ましい。
【0042】
酸化物絶縁膜102は、加熱により酸素の一部が放出する酸化物絶縁膜を用いて形成する。加熱により酸素の一部が放出する酸化物絶縁膜としては、化学量論比を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜を用いることが好ましい。加熱により酸素の一部が放出する酸化物絶縁膜は、加熱により第1の酸化物半導体膜103a及び第2の酸化物半導体膜103bに酸素を拡散させることができる。酸化物絶縁膜102は、代表的には、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化ハフニウム、酸化イットリウム等で形成することができる。
【0043】
化学量論比を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜は、加熱により酸素の一部が放出する。このときの酸素の放出量は、TDS(Thermal Desorption Spectrocopy:昇温脱離ガス分光法)分析にて、酸素原子に換算しての酸素の放出量が1.0×1018atoms/cm以上、好ましくは1.0×1020atoms/cm以上、より好ましくは3.0×1020atoms/cm以上である。
【0044】
ここで、TDS分析による、酸素原子に換算したときの酸素の放出量の測定方法について、以下に説明する。
【0045】
TDS分析したときの気体の放出量は、スペクトルの積分値に比例する。このため、酸化物絶縁膜のスペクトルの積分値と、標準試料の基準値に対する比とにより、気体の放出量を計算することができる。標準試料の基準値とは、所定の原子を含む試料の、スペクトルの積分値に対する原子の密度の割合である。
【0046】
例えば、標準試料である所定の密度の水素を含むシリコンウェハのTDS分析結果、および酸化物絶縁膜のTDS分析結果から、酸化物絶縁膜の酸素分子の放出量(N(O))は、数式1で求めることができる。ここで、TDS分析で得られる質量数32で検出されるスペクトルの全てが酸素分子由来と仮定する。質量数32のものとしてCHOHがあるが、存在する可能性が低いものとしてここでは考慮しない。また、酸素原子の同位体である質量数17の酸素原子および質量数18の酸素原子を含む酸素分子についても、自然界における存在比率が極微量であるため考慮しない。
【0047】
N(O)=N(H)/S(H)×S(O)×α (数1)
【0048】
N(H)は、標準試料から脱離した水素分子を密度で換算した値である。S(H)は、標準試料をTDS分析したときのスペクトルの積分値である。ここで、標準試料の基準値を、N(H)/S(H)とする。S(O)は、酸化物絶縁膜をTDS分析したときのスペクトルの積分値である。αは、TDS分析におけるスペクトル強度に影響する係数である。数式1の詳細に関しては、特開平6−275697号公報を参照する。なお、上記酸化物絶縁膜の酸素の放出量は、電子科学株式会社製の昇温脱離分析装置EMD−WA1000S/Wを用い、標準試料として1×1016atoms/cmの水素原子を含むシリコンウェハを用いて測定する。
【0049】
また、TDS分析において、酸素の一部は酸素原子として検出される。酸素分子と酸素原子の比率は、酸素分子のイオン化率から算出することができる。なお、上述のαは酸素分子のイオン化率を含むため、酸素分子の放出量を評価することで、酸素原子の放出量についても見積もることができる。
【0050】
なお、N(O)は酸素分子の放出量である。酸化物絶縁膜においては、酸素原子に換算したときの酸素の放出量は、酸素分子の放出量の2倍となる。
【0051】
酸化物絶縁膜102は、50nm以上、好ましくは200nm以上500nm以下とする。酸化物絶縁膜102を厚くすることで、酸化物絶縁膜102からの酸素放出量を増加させることができると共に、酸化物絶縁膜102及び後に形成される酸化物半導体膜との界面における欠陥を低減することが可能である。
【0052】
酸化物絶縁膜102は、スパッタリング法、CVD法等により形成する。なお、加熱により酸素の一部が放出する酸化物絶縁膜は、スパッタリング法を用いることで形成しやすいため好ましい。
【0053】
加熱により酸素の一部が放出する酸化物絶縁膜をスパッタリング法により形成する場合は、成膜ガス中の酸素量が高いことが好ましく、酸素、または酸素及び希ガスの混合ガス等を用いることができる。代表的には、成膜ガス中の酸素濃度を6%以上100%以下にすることが好ましい。
【0054】
第1の酸化物半導体膜103aは、加熱により三方晶及び/又は六方晶であり且つ第1の結晶構造となりうる酸化物半導体膜を用いて形成する。
【0055】
第1の酸化物半導体膜103aとしては、四元系金属の酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn−O膜や、三元系金属の酸化物であるIn−Ga−Zn−O膜、In−Sn−Zn−O膜、In−Al−Zn−O膜、Sn−Ga−Zn−O膜、Al−Ga−Zn−O膜、Sn−Al−Zn−O膜や、二元系金属の酸化物であるIn−Zn−O膜、Sn−Zn−O膜、Al−Zn−O膜、In−Ga−O膜などを用いることができる。また、上記酸化物半導体にSiOを含んでもよい。ここで、例えば、In−Ga−Zn−O膜とは、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)を有する酸化物膜である。
【0056】
第1の酸化物半導体膜103aは、加熱により、三方晶及び/又は六方晶であり、且つ非ウルツ鉱型、YbFe型構造、YbFe型構造及びその変形型構造のいずれか一の結晶構造となりうる酸化物半導体膜を用いて形成する。
【0057】
第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜の例として、三元系金属の酸化物であるIn−Ga−Zn−O膜は、三方晶及び/又は六方晶の非ウルツ鉱型の結晶を有する。また、三元系金属の酸化物であるIn−Ga−Zn−O膜には、YbFe型構造であるInGaZnOや、YbFe型構造であるInGaZnO等があり、その変形型構造をとりうる(M. Nakamura, N. Kimizuka, and T. Mohri、「The Phase Relations in the In−GaZnO−ZnO System at 1350度」、J. Solid State Chem.、1991、Vol.93, p.298−315)。なお、YbFe型構造は、Ybを含む層をA層としFeを含む層をB層とすると、ABB|ABB|ABB|の繰り返し構造を有し、その変形構造としては、例えば、ABBB|ABBB|の繰り返し構造を挙げることができる。また、YbFe型構造は、ABB|AB|ABB|AB|の繰り返し構造を有し、その変形構造としては、例えば、ABBB|ABB|ABBB|ABB|ABBB|ABB|の繰り返し構造を挙げることができる。
【0058】
なお、第1の酸化物半導体膜103aとして、上記金属酸化物に1×1017/cm以上5×1019/cm未満の窒素が含まれていてもよい。
【0059】
なお、第1の酸化物半導体膜103aとして形成することが可能な金属酸化物は、エネルギーギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上、より好ましくは3eV以上である。このように、エネルギーギャップの広い酸化物半導体を用いることで、トランジスタのオフ電流を低減することができる。
【0060】
第2の酸化物半導体膜103bは、加熱により第2の結晶構造となりうる酸化物半導体膜を用いて形成する。第2の結晶構造となりうる酸化物半導体膜は、三方晶及び/又は六方晶の第1の結晶構造となりうる酸化物半導体膜と比較して、加熱処理により結晶化しやすく、また結晶性が高い。
【0061】
第2の酸化物半導体膜103bとしては、酸化亜鉛、酸窒化物半導体等を用いることができる。酸窒化物半導体は、第1の酸化物半導体膜103aに列挙した金属酸化物に、5×1019/cm以上7原子%未満の窒素を添加して形成することができる。
【0062】
第2の酸化物半導体膜103bは、第1の酸化物半導体膜103aを結晶成長させるための種として用いるため、結晶成長する厚さとすればよく、代表的には一原子層以上10nm以下、好ましくは2nm以上5nm以下でよい。第2の酸化物半導体膜103bの厚さを薄くすることで成膜処理及び加熱処理におけるスループットを高めることができる。
【0063】
第1の酸化物半導体膜103a及び第2の酸化物半導体膜103bはそれぞれ、スパッタリング法、塗布法、印刷法、パルスレーザー蒸着法等により形成することができる。スパッタリング法により第1の酸化物半導体膜103a及び第2の酸化物半導体膜103bを成膜する場合は、ACスパッタ装置、DCスパッタ装置、またはRFスパッタ装置のいずれか一のスパッタ装置を用いる。
【0064】
なお、スパッタリング法により第2の酸化物半導体膜103bを酸窒化物半導体で形成する場合、第1の酸化物半導体膜103aを形成した後、スパッタリング装置に導入するガスの種類を切り替えることで、即ち窒素を導入することで、酸窒化物半導体を形成できる。即ち、連続的に第1の酸化物半導体膜103a及び第2の酸化物半導体膜103bを形成することが可能であり、量産性に優れている。
【0065】
次に、第1の加熱処理を行う。第1の加熱処理温度は、150度以上650度以下、好ましくは200度以上500度以下である。また、第1の加熱処理の加熱時間は1分以上24時間以下とする。なお、第1の加熱処理の温度を徐々に上昇させた後、一定温度としてもよい。500度以上からの温度上昇速度を0.5度/h以上3度/h以下とすることで、徐々に第2の酸化物半導体膜103bが結晶成長するため、より結晶性を高めることができる。
【0066】
第1の加熱処理においては、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気、酸素雰囲気、窒素雰囲気、乾燥空気雰囲気、または、希ガス(代表的にはアルゴン)及び酸素の混合雰囲気、若しくは希ガス及び窒素の混合雰囲気とすることが好適である。具体的には、水素などの不純物が、数ppm程度、または数ppb程度にまで除去された高純度ガス雰囲気とすることが好適である。
【0067】
第1の加熱処理に用いる加熱処理装置は特に限られず、抵抗発熱体などの発熱体からの熱伝導または熱輻射によって、被処理物を加熱する装置を備えていてもよい。例えば、電気炉や、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置等のRTA(Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置である。GRTA装置は、高温のガスを用いて加熱処理を行う装置である。
【0068】
第1の加熱処理により、第2の酸化物半導体膜103bの表面から第1の酸化物半導体膜103aに向けて結晶成長が始まる。第2の酸化物半導体膜103bは結晶化されやすいため、第2の酸化物半導体膜103b全てが結晶化し、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜104bとなる。また、第2の酸化物半導体膜103bの表面から第1の酸化物半導体膜103aに向けて結晶成長するため、c軸配向した結晶領域となる。即ち、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜104bは、a−b面における上平面において六角形をなす結合をしている。また、六角形の結合を有する層が膜厚方向(c軸方向)に積層して結合されており、c軸配向している。
【0069】
引続き第1の加熱処理を行うことで、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜104bを種として、第1の酸化物半導体膜103aの結晶成長が、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜104bとの界面から酸化物絶縁膜102に向かって進む。第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜104bは、c軸方向に配向しているため、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜104bを種とすることで、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜104bの結晶軸と概略同一となるように、第1の酸化物半導体膜103aを結晶成長させることができる。即ち、第1の酸化物半導体膜103aをc軸配向させながら結晶成長させることが可能である。即ち、第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜104aは、a−b面における上平面において六角形をなす結合をしている。また、六角形の結合を有する層が膜厚方向(c軸方向)に積層して結合されており、c軸配向している。以上の工程により、c軸配向した第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜104aを形成することができる(図2(B)参照。)。
【0070】
なお、第1の加熱処理により、第2の酸化物半導体膜103bの表面から垂直方向に結晶成長すると、第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜104a及び第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜104bのc軸は表面の概略垂直方向となる。
【0071】
また、当該第1の加熱処理により、第1の酸化物半導体膜103a及び第2の酸化物半導体膜103bに含まれる水素が放出する(即ち、脱水素化、脱水化される。)と共に、酸化物絶縁膜102に含まれる酸素の一部が、第1の酸化物半導体膜103a及び第2の酸化物半導体膜103bと、酸化物絶縁膜102における第1の酸化物半導体膜103aの界面近傍とに拡散する。当該工程により、第1の酸化物半導体膜103a及び第2の酸化物半導体膜103b中に含まれる酸素欠陥を低減することができると共に、酸化物絶縁膜102における第1の酸化物半導体膜103aの近傍に酸素を拡散させることで、酸化物絶縁膜102及び第1の酸化物半導体膜103aの界面における欠陥を低減することができる。この結果、水素濃度及び酸素欠陥が低減された第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜104a及び第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜104bを形成することができる。
【0072】
なお、スパッタリング法により第1の酸化物半導体膜103a及び第2の酸化物半導体膜103bを成膜する時に、スパッタリング装置の処理室のリークレートを1×10−10Pa・m/秒以下とすることで、スパッタリング法による成膜途中における第1の酸化物半導体膜103a及び第2の酸化物半導体膜103b中への、アルカリ金属、水素等の不純物の混入を低減することができる。また、排気系として吸着型の真空ポンプ(例えばクライオポンプなど)を用いることで、排気系からアルカリ金属、水素等の不純物の逆流を低減することができる。
【0073】
また、第1の酸化物半導体膜103a及び第2の酸化物半導体膜103bを成膜する時に、スパッタリング装置の処理室に導入するガス、例えば窒素ガスや、酸素ガスや、アルゴンガスなどを加熱した状態で導入して、成膜を行ってもよい。この結果、第1の酸化物半導体膜103a及び第2の酸化物半導体膜103bに含まれる水素含有量を低減することができる。
【0074】
また、スパッタリング法により第1の酸化物半導体膜103a及び第2の酸化物半導体膜103bを成膜する前に、スパッタリング装置、ターゲットの表面または内部に含まれる水分または水素を除去するために、プレヒート処理を行ってもよい。この結果、第1の酸化物半導体膜103a及び第2の酸化物半導体膜103bに含まれる水素含有量を低減することができる。
【0075】
以上の工程より、第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜104a及び第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜104bを形成することができる。また、酸化物半導体中に水素が含まれていると、その一部がドナーとなり、キャリアである電子が生じてしまう。また、酸化物半導体中の酸素欠陥も同様に、ドナーとなり、キャリアである電子が生じてしまう。したがって、第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜104a、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜104b中の水素濃度や酸素欠陥を低減すると、酸化物半導体中のキャリア濃度を減少させることができ、後に作製されるトランジスタのしきい値電圧のマイナスシフトを低減することができる。
【0076】
<六方晶系の結晶構造>
ここで、六方晶系の結晶構造について、以下に説明する。
【0077】
はじめに、c軸配向した第2の結晶構造を、図3を用いて説明する。c軸配向した第2の結晶構造について、c軸方向からみたa−b面における構造を図3(A)に、c軸方向を縦方向とする構造を図3(B)に示す。
【0078】
第2の結晶構造を有する結晶としては、例えば酸化亜鉛、窒化インジウム、窒化ガリウム等がある。また、窒素を含む酸化物半導体、つまり酸窒化半導体もc軸配向した第2の結晶構造を有する膜となる場合がある。
【0079】
具体的には、窒素を5×1019/cm以上、好ましくは1×1020/cm以上20原子%未満含むIn−Ga−Zn−O膜はc軸配向した第2の結晶構造を有する膜となり、In−Oの結晶面(インジウムと酸素を含む結晶面)とIn−Oの結晶面(インジウムと酸素を含む結晶面)との間に、一層のGaおよびZnを有する層を備える。
【0080】
次に、c軸配向した六方晶系の第1の結晶構造について説明する。
【0081】
例えば、窒素を1×1017/cm以上5×1019/cm未満含むIn−Ga−Zn−O膜はc軸配向した六方晶系の第1の結晶構造を有する膜となる。c軸配向した六方晶系の第1の結晶構造を有するIn−Ga−Zn−O膜は、a−b面にIn−Oの結晶面(インジウムと酸素を含む結晶面)を備え、In−Oの結晶面とIn−Oの結晶面との間に、GaおよびZnを有する二つの層を備える。なお、GaおよびZnを有する二つの層において、GaおよびZnは一方の層または双方の層に有すればよく、その位置は限定されない。
【0082】
第2の結晶構造および第1の結晶構造は、いずれも六方晶系であり、a−b面において原子が六角形に位置する。そして、六方晶系の第1の結晶構造が第2の結晶構造に接し、六方晶系の第1の結晶構造が第2の結晶構造に整合する。
【0083】
c軸配向した第1の結晶構造の上に、格子定数を同じくするc軸配向した六方晶系の第2の結晶構造が整合する様子を図4に示す。c軸配向した六方晶系の第2の結晶構造2000を図4(A)に示し、c軸配向した第1の結晶構造2001を図4(B)に示す。また、六方晶系の第2の結晶構造2000が第1の結晶構造2001に接して、六方晶系の第1の結晶構造2001が第2の結晶構造2000に整合する模式図を図4(C)に模式的に示す。
【0084】
このように六方晶系の第1の結晶構造2001が第2の結晶構造2000に接し、六方晶系の第1の結晶構造2001が第2の結晶構造2000に整合することによって、結晶性が高く、結晶化が容易なc軸配向した第2の結晶構造2000を含む層を種結晶層として形成し、次いで当該種結晶層に接して酸化物半導体膜を形成する構成とすることにより、種結晶層に含まれる第2の結晶構造2000が該酸化物半導体膜の結晶化を容易にするという効果を奏する。
【0085】
<種結晶層>
次に、種結晶層について説明する。種結晶層はc軸配向した第2の結晶構造を含む。特に、種結晶層は酸化物半導体膜に比べて結晶性が高く、結晶化し易い材料を用いる。
【0086】
種結晶層に用いることができるc軸配向した第2の結晶構造について、以下に説明する。
【0087】
c軸配向した第2の結晶構造を備え、種結晶層に用いることができる化合物としては、例えば酸化亜鉛、窒化インジウム、窒化ガリウム等をその例に挙げることができる。また、窒素を5×1019/cm以上、好ましくは1×1020/cm以上7原子%未満含む酸化物半導体もc軸配向した第2の結晶構造を含む膜となる場合がある。
【0088】
窒素を含む酸化物半導体を種結晶層に用いる場合、窒素濃度が5×1019/cm以上、好ましくは1×1020/cm以上7原子%未満となるように意図的に含ませる。窒素をこの範囲で意図的に含ませた酸化物半導体膜は、窒素を意図的に含ませていない酸化物半導体膜に比べてエネルギーギャップが小さく、キャリアを流しやすい。
【0089】
なお、c軸配向した第2の結晶構造のHAADF(high−angle annular dark field)−STEMの実観察像には、輝点が互い違いに現れる回折像が観察される場合がある。
【0090】
c軸配向した第2の結晶構造に基づいて計算により得たHAADF−STEMの実観察像を図5(A)に示す。
【0091】
また、窒素のみを含む成膜ガスを用いて成膜したIn−Ga−Zn−O膜のHAADF−STEMの実観察像を図5(B)に示す。
【0092】
図5(A)または図5(B)に示すHAADF−STEMの実観察像は、いずれも2周期性の層構造を有するc軸配向した第2の結晶構造を有することが確認できる。
【0093】
なお、窒素を含むIn−Ga−Zn−O膜は、スパッタリング法を用いて石英ガラス基板上に300nmの厚さで成膜した。ターゲットとしてIn:Ga:Zn=1:1:1[atom比]を用い、基板−ターゲット間の距離を60mmとし、DC電源を用いて0.5kwの電力で、圧力0.4Paにて成膜した。また、成膜中の基板温度を400度とし、スパッタリングガスは窒素のみとし、成膜室に40sccmの流量で流した。
【0094】
<酸化物半導体膜>
次に、酸化物半導体膜について説明する。酸化物半導体膜は、非単結晶であり、酸化物半導体膜全体が非晶質状態(アモルファス状態)ではなく、少なくともc軸配向した六方晶系の第1の結晶構造を含み、種結晶層から異方性をもって成長した結晶を含む。酸化物半導体膜全体が非晶質状態(アモルファス状態)ではないため、電気特性が不安定な非晶質の形成が抑制される。
【0095】
酸化物半導体膜に用いることができるc軸配向した異方性を有する第1の結晶構造について説明する。
【0096】
六方晶系の第1の結晶構造としては、YbFe型構造、YbFe型構造及びその変形型構造をその例に挙げることができる。例えば、三元系金属の酸化物であるIn−Ga−Zn−Oは、六方晶系の第1の結晶構造を備え、酸化物半導体膜に用いることができる。なお、酸化物半導体膜に用いることができるIn−Ga−Zn−O膜は、窒素を1×1017/cm以上5×1019/cm以下含んでいても良い。
【0097】
三元系金属の酸化物であるIn−Ga−Zn−Oには、YbFe型構造であるInGaZnOや、YbFe型構造であるInGaZnO等があり、その変形型構造をとりうることが、M. Nakamura, N. Kimizuka, and T. Mohri、「The Phase Relations in the In−GaZnO−ZnO System at 1350度」、J. Solid State Chem.、1991、Vol.93, p.298−315に記載されている。
【0098】
また、酸化物半導体膜には四元系金属の酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn−O膜や、三元系金属の酸化物であるIn−Ga−Zn−O膜、In−Sn−Zn−O膜、In−Al−Zn−O膜、Sn−Ga−Zn−O膜、Al−Ga−Zn−O膜、Sn−Al−Zn−O膜や、二元系金属の酸化物であるIn−Zn−O膜、Sn−Zn−O膜、Al−Zn−O膜、In−Ga−O膜などを用いることができる。また、上記酸化物半導体膜は珪素を含んでもよい。ここで、例えば、In−Ga−Zn−O膜とは、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)を含む酸化物膜である。
【0099】
酸化物半導体膜は、種結晶層から異方性をもって結晶が成長している。これにより、ヘテロ構造を有する半導体膜が結晶性の高い領域を絶縁性の表面に接する構成とすることができ、未結合手に起因する界面準位が少なくなり、良好な界面状態を備えたヘテロ構造を有する半導体膜を提供できる。
【0100】
なお、c軸配向した六方晶系の第1の結晶構造のHAADF(high−angle annular dark field)−STEMの実観察像には、3つに一つの明暗を伴う回折像が観察される場合がある。
【0101】
c軸配向した六方晶系の第1の結晶構造に基づいて計算により得たHAADF−STEMの実観察像を図6(A)に示す。
【0102】
また、In−Ga−Zn−O膜のHAADF−STEMの実観察像を図6(B)に示す。
【0103】
図6(A)または図6(B)に示すHAADF−STEMの実観察像は、いずれも3つに一つの明暗を伴っており、9周期性の層構造を有するc軸配向した六方晶系の第1の結晶構造を有することが確認できる。
【0104】
なお、In−Ga−Zn−O膜は、スパッタリング法を用いて石英ガラス基板上に300nmの厚さで成膜した。ターゲットとしてIn:Ga:Zn=1:1:1[atom比]を用い、基板−ターゲット間の距離を60mmとし、DC電源を用いて0.5kwの電力で、圧力0.4Paにて成膜した。また、成膜中の基板温度を400度とし、スパッタリングガスは酸素のみとし、成膜室に40sccmの流量で流した。
【0105】
次に、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜104b上にマスクを形成した後、当該マスクを用いて第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜104a、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜104bを選択的にエッチングして、第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜105a、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜105bを形成する。なお、第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜105a、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜105bをまとめて、酸化物半導体積層体105と示す。この後、マスクを除去する。
【0106】
第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜104a、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜104bをエッチングするためのマスクは、フォトリソグラフィ工程、インクジェット法、印刷法等を適宜用いることができる。また、第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜104a、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜104bのエッチングは、ウエットエッチングまたはドライエッチングを適宜用いることができる。
【0107】
次に、酸化物半導体積層体105に接する一対の電極106を形成する。次に、酸化物絶縁膜102、酸化物半導体積層体105、及び一対の電極106上にゲート絶縁膜107を形成する。次に、ゲート絶縁膜107上にゲート電極108を形成する。また、ゲート絶縁膜107及びゲート電極108上に絶縁膜109を形成してもよい(図2(C)参照。)。
【0108】
一対の電極106は、ソース電極及びドレイン電極として機能する。
【0109】
一対の電極106は、アルミニウム、クロム、銅、タンタル、チタン、モリブデン、タングステンから選ばれた金属元素、または上述した金属元素を成分とする合金か、上述した金属元素を組み合わせた合金などを用いて形成することができる。また、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウムのいずれか一または複数から選択された金属元素を用いてもよい。また、一対の電極106は、単層構造でも、二層以上の積層構造としてもよい。例えば、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜を積層する二層構造、窒化チタン膜上にチタン膜を積層する二層構造、窒化チタン膜上にタングステン膜を積層する二層構造、窒化タンタル膜上にタングステン膜を積層する二層構造、チタン膜と、そのチタン膜上にアルミニウム膜を積層し、さらにその上にチタン膜を形成する三層構造などがある。また、アルミニウムに、チタン、タンタル、タングステン、モリブデン、クロム、ネオジム、スカンジウムから選ばれた元素の膜、または複数組み合わせた合金膜、もしくは窒化膜を用いてもよい。なお、一対の電極106の材料の一つとして銅を用いる場合には、酸化物半導体積層体105と接して銅マグネシウムアルミニウム合金層を設け、その銅マグネシウムアルミニウム合金層に接して銅層を設けた積層を用いればよい。
【0110】
また、一対の電極106は、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの透光性を有する導電性材料を適用することもできる。また、上記透光性を有する導電性材料と、上記金属元素の積層構造とすることもできる。
【0111】
一対の電極106は、印刷法またはインクジェット法により形成する。若しくは、スパッタリング法、CVD法、蒸着法等で導電膜を形成した後、該導電膜上にマスクを形成して導電膜をエッチングして形成する。導電膜上に形成するマスクは印刷法、インクジェット法、フォトリソグラフィ法を適宜用いることができる。
【0112】
なお、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜104b上に導電膜を形成した後、多階調フォトマスクによって、凹凸状のマスクを形成し、当該マスクを用いて、第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜104a、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜104b、並びに導電膜をエッチングした後、アッシングにより凹凸状のマスクを分離し、当該分離されたマスクにより導電膜を選択的にエッチングすることで、酸化物半導体積層体105及び一対の電極106を形成することができる。当該工程により、フォトマスク数及びフォトリソグラフィ工程数を削減することができる。
【0113】
ゲート絶縁膜107は、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、酸化窒化アルミニウム膜、または酸化ガリウム膜を単層でまたは積層して形成することができる。なお、ゲート絶縁膜107は、酸化物半導体積層体105と接する部分が酸素を含むことが好ましく、特に好ましくは酸化物絶縁膜102と同様に加熱により酸素を放出する酸化物絶縁膜により形成する。酸化シリコン膜を用いることで、酸化物半導体積層体105に酸素を拡散させることができ、特性を良好にすることができる。
【0114】
また、ゲート絶縁膜107として、ハフニウムシリケート(HfSiO)膜、窒素が添加されたハフニウムシリケート(HfSi)膜、窒素が添加されたハフニウムアルミネート(HfAl)膜、酸化ハフニウム膜、酸化イットリウム膜などのhigh−k材料膜を用いることでゲートリークを低減できる。さらには、high−k材料膜と、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、酸化窒化アルミニウム膜、及び酸化ガリウム膜のいずれか一以上との積層構造とすることができる。ゲート絶縁膜107の厚さは、1nm以上300nm以下、より好ましくは5nm以上50nm以下とするとよい。
【0115】
ゲート絶縁膜107は、スパッタリング法、CVD法等により形成する。
【0116】
なお、ゲート絶縁膜107を形成する前に、酸化物半導体積層体105の表面を、酸素、オゾン、一酸化二窒素等の酸化性ガスのプラズマに曝し、酸化物半導体積層体105の表面を酸化して酸素欠陥を低減してもよい。
【0117】
ゲート電極108は、アルミニウム、クロム、銅、タンタル、チタン、モリブデン、タングステンから選ばれた金属元素、上述した金属元素を成分とする合金、上述した金属元素を組み合わせた合金などを用いて形成することができる。また、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウムのいずれか一または複数から選択された金属元素を用いてもよい。また、ゲート電極108は、単層構造でも、二層以上の積層構造としてもよい。例えば、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜を積層する二層構造、窒化チタン膜上にチタン膜を積層する二層構造、窒化チタン膜上にタングステン膜を積層する二層構造、窒化タンタル膜上にタングステン膜を積層する二層構造、チタン膜と、そのチタン膜上にアルミニウム膜を積層し、さらにその上にチタン膜を形成する三層構造などがある。また、アルミニウムに、チタン、タンタル、タングステン、モリブデン、クロム、ネオジム、スカンジウムから選ばれた元素の膜、または複数組み合わせた合金膜、もしくは窒化膜を用いてもよい。
【0118】
また、ゲート電極108は、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの透光性を有する導電性材料を適用することもできる。また、上記透光性を有する導電性材料と、上記金属元素の積層構造とすることもできる。
【0119】
また、ゲート電極108とゲート絶縁膜との間に、ゲート絶縁膜に接する材料層として、窒素を含むIn−Ga−Zn−O膜や、窒素を含むIn−Sn−O膜や、窒素を含むIn−Ga−O膜や、窒素を含むIn−Zn−O膜や、窒素を含むSn−O膜や、窒素を含むIn−O膜や、金属窒化膜(InN、ZnNなど)を設けることが好ましい。これらの膜は5eV、好ましくは5.5eV以上の仕事関数を有し、トランジスタの電気特性のしきい値電圧をプラスにすることができ、所謂ノーマリーオフのスイッチング素子を実現できる。例えば、窒素を含むIn−Ga−Zn−O膜を用いる場合、少なくとも酸化物半導体積層体105より高い窒素濃度、具体的には7原子%以上のIn−Ga−Zn−O膜を用いる。
【0120】
ゲート電極108は、印刷法またはインクジェット法により形成する。若しくは、スパッタリング法、CVD法、蒸着法等で導電膜を形成した後、該導電膜上にマスクを形成して導電膜をエッチングして形成する。導電膜上に形成するマスクは印刷法、インクジェット法、フォトリソグラフィ法を適宜用いることができる。
【0121】
絶縁膜109は、ゲート絶縁膜107に列挙した絶縁膜を適宜用いて形成することができる。また、絶縁膜109としてスパッタリング法で得られる窒化シリコン膜を形成すると、外部からの水分やアルカリ金属の浸入を防止することが可能であり、酸化物半導体積層体105の不純物の含有量を低減することができる。
【0122】
なお、ゲート絶縁膜107または絶縁膜109の形成の後、水素及び水分をほとんど含まない雰囲気下(窒素雰囲気、酸素雰囲気、乾燥空気雰囲気(例えば、水分については露点−40度以下、好ましくは露点−60度以下)など)で加熱処理(温度範囲150度以上650度以下、好ましくは200度以上500度以下)を行ってもよい。
【0123】
以上の工程により、a−b面において六角形の結合を有し、c軸配向している三方晶及び/又は六方晶構造の結晶を有する酸化物半導体積層体をチャネルに有するトランジスタを作製することができる。
【0124】
本実施の形態に示す酸化物半導体積層体はゲート絶縁膜との界面近傍の領域において、結晶性が高く、均一性も高いため、電気的特性が安定であり、信頼性の高いトランジスタを得ることができる。また、a−b面において六角形の結合を有し、c軸配向している三方晶及び/又は六方晶構造の結晶を有する酸化物半導体積層体をトランジスタのチャネル領域に用いることで、トランジスタへの光照射前後、またはバイアス−熱ストレス(BT)試験前後においても、トランジスタのしきい値電圧の変化量が少なく、安定した電気的特性を有するトランジスタを作製することができる。
【0125】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1と異なるトランジスタの構造及び作製方法について、図7及び図8を用いて説明する。本実施の形態では、酸化物絶縁膜及び酸化物半導体積層体の間に一対の電極が設けられる点が、実施の形態1と異なる。なお、上面図である図7(A)の一点破線C−Dの断面図は図7(B)に相当する。図7(A)において、基板101、酸化物絶縁膜102、ゲート絶縁膜117、及び絶縁膜119は省略している。図8は、図7(B)に示すトランジスタの作製工程を説明する断面図である。
【0126】
図7(B)に示すトランジスタは、基板101上に形成された酸化物絶縁膜102と、酸化物絶縁膜102上に形成されたソース電極及びドレイン電極として機能する一対の電極116と、酸化物絶縁膜102と、ソース電極及びドレイン電極として機能する一対の電極116とを覆う酸化物半導体積層体115と、酸化物絶縁膜102、一対の電極116、及び酸化物半導体積層体115上に形成されたゲート絶縁膜117と、ゲート絶縁膜117を介して酸化物半導体積層体115と重畳するゲート電極118とを有する。また、ゲート絶縁膜117及びゲート電極118を覆う絶縁膜119を有してもよい。更には、絶縁膜119の開口部において、一対の電極116と接する一対の配線120を有してもよい。
【0127】
酸化物半導体積層体115は、酸化物絶縁膜102及び一対の電極116に接する第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜115aと、第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜115aに接する第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜115bと、が積層されていることを特徴とする。
【0128】
また、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜115bを種結晶として、第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜115aが結晶成長していることを特徴とする。
【0129】
実施の形態1と同様に、第2の結晶構造及び第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜は、ともに三方晶及び/又は六方晶であるので、c軸方向からは六角形の格子像を確認できる。
【0130】
なお、第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜115a、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜115bはそれぞれ、非単結晶であり、且つ酸化物半導体膜全体が非晶質状態(アモルファス状態)ではなく、c軸配向の結晶を有する。
【0131】
次に、図7(B)に示すトランジスタの作製方法について、図8を用いて説明する。
【0132】
図8(A)に示すように、実施の形態1と同様に、基板101上に酸化物絶縁膜102を形成する。次に、酸化物絶縁膜102上に一対の電極116を形成する。次に、一対の電極116及び酸化物絶縁膜102上に、第1の酸化物半導体膜113a及び第2の酸化物半導体膜113bを形成する。
【0133】
一対の電極116は、実施の形態1に示す一対の電極106と同様の材料及び作製方法を適宜用いて形成することができる。
【0134】
第1の酸化物半導体膜113a及び第2の酸化物半導体膜113bは、実施の形態1に示す第1の酸化物半導体膜103a及び第2の酸化物半導体膜103bと同様の材料及び作製方法を適宜用いて形成することができる。
【0135】
次に、実施の形態1と同様に、第1の加熱処理を行う。第1の加熱処理により、第2の酸化物半導体膜113bの表面から第1の酸化物半導体膜113aに向けて結晶成長が始まり、第2の酸化物半導体膜113bは第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜114bとなる。また、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜114bは、c軸配向した結晶を有する。
【0136】
引続き第1の加熱処理を行うことで、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜114bを種として、第1の酸化物半導体膜113aの結晶成長が、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜114bとの界面から酸化物絶縁膜102に向かって進み、第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜114aが形成される。また、第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜114aはc軸配向した結晶を有する。(図8(B)参照。)。
【0137】
以上の工程より、第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜114a、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜114bを形成することができる。
【0138】
次に、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜114b上にマスクを形成した後、当該マスクを用いて第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜114a、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜114bを選択的にエッチングして、第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜115a、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜115bを形成する。なお、第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜115a、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜115bをまとめて、酸化物半導体積層体115と示す。この後、マスクを除去する。
【0139】
次に、酸化物絶縁膜102、一対の電極116、及び酸化物半導体積層体115上にゲート絶縁膜117を形成する。次に、ゲート絶縁膜117上にゲート電極118を形成する。
【0140】
この後、ゲート絶縁膜117及びゲート電極118上に絶縁膜119を形成する。次に、絶縁膜119上にマスクを形成した後、ゲート絶縁膜117及び絶縁膜119の一部をエッチングして、開口部を形成する。次に、開口部を介して、一対の電極116に接続する配線120を形成してもよい(図8(C)参照。)。
【0141】
ゲート絶縁膜117は、実施の形態1に示すゲート絶縁膜107と同様の材料及び作製方法を適宜用いて形成することができる。
【0142】
ゲート電極118は、実施の形態1に示すゲート電極108と同様の材料及び作製方法を適宜用いて形成することができる。
【0143】
絶縁膜119は、実施の形態1に示す絶縁膜109と同様の材料及び作製方法を適宜用いて形成することができる。
【0144】
配線120は、一対の電極116と同様の材料及び作製方法を適宜用いて形成することができる。
【0145】
以上の工程により、a−b面において六角形の結合を有し、c軸配向している三方晶及び/又は六方晶構造の結晶を有する酸化物半導体積層体をチャネル領域に有するトランジスタを作製することができる。
【0146】
本実施の形態に示す酸化物半導体積層体はゲート絶縁膜との界面近傍の領域において、結晶性が高く、均一性も高いため、電気的特性が安定であり、信頼性の高いトランジスタを得ることができる。また、a−b面において六角形の結合を有し、c軸配向している三方晶及び/又は六方晶構造の結晶を有する酸化物半導体積層体をトランジスタのチャネル領域に用いることで、トランジスタへの光照射、またはバイアス−熱ストレス(BT)試験前後においても、トランジスタのしきい値電圧の変化量が少なく、安定した電気的特性を有するトランジスタを作製することができる。
【0147】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0148】
(実施の形態3)
本実施の形態では、酸化物半導体膜をチャネルに用いたトランジスタ及びその作製方法について、図9及び図10を用いて説明する。図9(B)は、半導体装置の構成の一形態であるトランジスタの構造を説明する断面図であり、上面図である図9(A)の一点破線A−Bの断面図に相当する。なお、図9(A)において、基板101、酸化物絶縁膜102、ゲート絶縁膜107、及び絶縁膜109は省略している。図10は、図9(B)に示すトランジスタの作製工程を説明する断面図である。
【0149】
図9(B)に示すトランジスタは、基板101上に形成された酸化物絶縁膜102と、酸化物絶縁膜102上に形成された酸化物半導体積層体105と、酸化物半導体積層体105上に形成されたソース電極及びドレイン電極として機能する一対の電極106と、酸化物絶縁膜102、酸化物半導体積層体105、及び一対の電極106上に形成されたゲート絶縁膜107と、ゲート絶縁膜107を介して酸化物半導体積層体105と重畳するゲート電極108とを有する。また、ゲート絶縁膜107及びゲート電極108を覆う絶縁膜109を有してもよい。
【0150】
酸化物半導体積層体105は、酸化物絶縁膜102に接する第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜105aと、第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜105aに接する第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜105bと、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜105b及びゲート絶縁膜107に接する第3の結晶構造を有する酸化物半導体膜105cとが積層されていることを特徴とする。
【0151】
即ち、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜105bの上下に第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜105a、第3の結晶構造を有する酸化物半導体膜105cを有する。
【0152】
また、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜105bを種結晶として、第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜105a及び第3の結晶構造を有する酸化物半導体膜105cがそれぞれ結晶成長していることを特徴とする。
【0153】
第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜105a、第3の結晶構造を有する酸化物半導体膜105cの結晶構造は、三方晶及び/又は六方晶であり、YbFe型構造、YbFe型構造及び非ウルツ鉱型構造のいずれか一である。なお、非ウルツ鉱型構造とは、三方晶及び/又は六方晶のウルツ鉱型でない結晶構造である。
【0154】
また、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜105bの結晶構造は、三方晶及び/又は六方晶の一であるウルツ鉱型構造を有する。
【0155】
即ち、第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜乃至第3の結晶構造を有する酸化物半導体膜は、ともに三方晶及び/又は六方晶であるので、c軸方向からは六角形の格子像を確認できる。
【0156】
なお、第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜105a、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜105b、第3の結晶構造を有する酸化物半導体膜105cはそれぞれ、非単結晶であり、且つ酸化物半導体膜全体が非晶質状態(アモルファス状態)ではなく、c軸配向の結晶領域を有する。即ち、非晶質領域及びc軸配向の結晶領域を有する。
【0157】
次に、図9(B)に示すトランジスタの作製方法について、図10を用いて説明する。
【0158】
図10(A)に示すように、実施の形態1と同様に、基板101上に酸化物絶縁膜102を形成した後、酸化物絶縁膜102上に第1の酸化物半導体膜103aを形成し、第1の酸化物半導体膜103a上に第2の酸化物半導体膜103bを形成する。
【0159】
酸化物絶縁膜102は、加熱により酸素の一部が放出する酸化物絶縁膜を用いて形成する。加熱により酸素の一部が放出する酸化物絶縁膜としては、化学量論比を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜を用いることが好ましい。加熱により酸素の一部が放出する酸化物絶縁膜は、加熱により第1の酸化物半導体膜103a及び第2の酸化物半導体膜103bに酸素を拡散させることができる。酸化物絶縁膜102は、代表的には、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化ハフニウム、酸化イットリウム等で形成することができる。
【0160】
酸化物絶縁膜102は、50nm以上、好ましくは200nm以上500nm以下とする。酸化物絶縁膜102を厚くすることで、酸化物絶縁膜102の酸素放出量を増加させることができると共に、酸化物絶縁膜102及び後に形成される酸化物半導体膜との界面における欠陥を低減することが可能である。
【0161】
酸化物絶縁膜102は、スパッタリング法、CVD法等により形成する。なお、加熱により酸素の一部が放出する酸化物絶縁膜は、スパッタリング法を用いることで形成しやすいため好ましい。
【0162】
加熱により酸素の一部が放出する酸化物絶縁膜をスパッタリング法により形成する場合は、成膜ガス中の酸素量が高いことが好ましく、酸素、または酸素及び希ガスの混合ガス等を用いることができる。代表的には、成膜ガス中の酸素濃度を6%以上100%以下にすることが好ましい。
【0163】
第1の酸化物半導体膜103aは、加熱により、三方晶及び/又は六方晶であり、且つ非ウルツ鉱型、YbFe型構造、YbFe型構造及びその変形型構造のいずれか一の結晶構造となりうる酸化物半導体膜を用いて形成する。
【0164】
第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜の例として、三元系金属の酸化物であるIn−Ga−Zn−O膜は、三方晶及び/又は六方晶の非ウルツ鉱型の結晶を有する。また、三元系金属の酸化物であるIn−Ga−Zn−O膜には、YbFe型構造であるInGaZnOや、YbFe型構造であるInGaZnO等があり、その変形型構造をとりうる(M. Nakamura, N. Kimizuka, and T. Mohri、「The Phase Relations in the In−GaZnO−ZnO System at 1350度」、J. Solid State Chem.、1991、Vol.93, p.298−315)。
【0165】
第1の酸化物半導体膜103aとしては、四元系金属の酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn−O膜や、三元系金属の酸化物であるIn−Ga−Zn−O膜、In−Sn−Zn−O膜、In−Al−Zn−O膜、Sn−Ga−Zn−O膜、Al−Ga−Zn−O膜、Sn−Al−Zn−O膜や、二元系金属の酸化物であるIn−Zn−O膜、Sn−Zn−O膜、Al−Zn−O膜、In−Ga−O膜などを用いることができる。また、上記酸化物半導体にSiOを含んでもよい。ここで、例えば、In−Ga−Zn−O膜とは、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)を有する酸化物膜である。なお、第1の酸化物半導体膜103aとして、上記金属酸化物に1×1017/cm以上5×1019/cm未満の窒素が含まれていてもよい。
【0166】
なお、第1の酸化物半導体膜103aに形成することが可能な金属酸化物は、エネルギーギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上、より好ましくは3eV以上である。このように、エネルギーギャップの広い酸化物半導体を用いることで、トランジスタのオフ電流を低減することができる。
【0167】
第2の酸化物半導体膜103bは、加熱により、ウルツ鉱型の結晶構造となりうる酸化物半導体膜を用いて形成する。ウルツ鉱型の結晶構造となりうる酸化物半導体膜は、三方晶及び/又は六方晶の結晶構造となりうる酸化物半導体膜と比較して、加熱処理により結晶化しやすく、また結晶性が高い。
【0168】
第2の酸化物半導体膜103bとしては、酸化亜鉛、酸窒化物半導体等を用いることができる。酸窒化物半導体は、第1の酸化物半導体膜103aに列挙した金属酸化物に、5×1019/cm以上、好ましくは1×1020/cm以上7原子%未満の窒素を添加して形成することができる。
【0169】
第2の酸化物半導体膜103bは、第1の酸化物半導体膜103a、及びのちに形成する第3の酸化物半導体膜103cを結晶成長させるための種として用いるため、結晶成長する厚さとすればよく、代表的には一原子層以上10nm以下、好ましくは2nm以上5nm以下でよい。第2の酸化物半導体膜103bの厚さを薄くすることで成膜処理及び加熱処理におけるスループットを高めることができる。
【0170】
第1の酸化物半導体膜103a及び第2の酸化物半導体膜103bはそれぞれ、スパッタリング法、塗布法、印刷法、パルスレーザー蒸着法等により形成することができる。スパッタリング法により第1の酸化物半導体膜103a及び第2の酸化物半導体膜103bを成膜する場合は、ACスパッタ装置、DCスパッタ装置、またはRFスパッタ装置のいずれか一のスパッタ装置を用いる。
【0171】
なお、スパッタリング法により第2の酸化物半導体膜103bを酸窒化物半導体で形成する場合、第1の酸化物半導体膜103aを形成した後、スパッタリング装置に導入するガスの種類を切り替えることで、即ち窒素を導入することで、酸窒化物半導体を形成できる。即ち、連続的に第1の酸化物半導体膜103a及び第2の酸化物半導体膜103bを形成することが可能であり、量産性に優れている。
【0172】
次に、実施の形態1と同様に、第1の加熱処理を行う。
【0173】
第1の加熱処理により、第2の酸化物半導体膜103bの表面から第1の酸化物半導体膜103aに向けて結晶成長が始まる。第2の酸化物半導体膜103bは結晶化されやすいため、第2の酸化物半導体膜103b全てが結晶化し、ウルツ鉱型の結晶構造を有する第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜104bとなる。また、第2の酸化物半導体膜103bの表面から第1の酸化物半導体膜103aに向けて結晶成長するため、c軸配向した結晶領域となる。即ち、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜104bは、a−b面における平面において六角形をなす結合をしている。また、六角形の結合を有する層が膜厚方向(c軸方向)に積層して結合されており、c軸配向している。
【0174】
第1の加熱処理を継続することで、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜104bを種として、第1の酸化物半導体膜103aの結晶成長が、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜104bとの界面から酸化物絶縁膜102に向かって進む。第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜104bは、c軸配向しているため、当該第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜104bを種とすることで、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜104bの結晶軸と略同一となるように、第1の酸化物半導体膜103aを結晶成長させることができる。即ち、第1の酸化物半導体膜103aをc軸配向させながら結晶成長させることが可能である。即ち、第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜104aは、a−b面における平面において六角形をなす結合をしている。また、六角形の結合を有する層が膜厚方向(c軸方向)に積層して結合されており、c軸配向している。以上の工程により、c軸配向した第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜104aを形成することができる(図10(B)参照。)。
【0175】
なお、第1の加熱処理により、第2の酸化物半導体膜103bの表面から垂直方向に結晶成長すると、第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜104a及び第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜104bのc軸は表面の略垂直方向となる。
【0176】
また、当該第1の加熱処理により、第1の酸化物半導体膜103a及び第2の酸化物半導体膜103bに含まれる水素が放出する(即ち、脱水素化、脱水化される。)と共に、酸化物絶縁膜102に含まれる酸素の一部が、第1の酸化物半導体膜103a及び第2の酸化物半導体膜103bと、酸化物絶縁膜102における第1の酸化物半導体膜103aの界面近傍とに拡散する。当該工程により、第1の酸化物半導体膜103a及び第2の酸化物半導体膜103b中に含まれる酸素欠陥を低減することができると共に、酸化物絶縁膜102における第1の酸化物半導体膜103aの近傍に酸素を拡散させることで、酸化物絶縁膜102及び第1の酸化物半導体膜103aの界面における欠陥を低減することができる。この結果、水素濃度及び酸素欠陥が低減された第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜104a及び第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜104bを形成することができる。
【0177】
次に、図10(C)に示すように、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜104b上に第3の酸化物半導体膜103cを形成する。第3の酸化物半導体膜103cは、第1の酸化物半導体膜103aと同様の材料及び作製方法を用いて形成することができる。第3の酸化物半導体膜103cの厚さは作製するデバイスによって最適な膜厚を実施者が決定すればよい。例えば、第1の酸化物半導体膜103a、第2の酸化物半導体膜103b、及び第3の酸化物半導体膜103cの合計の厚さは10nm以上200nm以下とする。
【0178】
なお、スパッタリング法により第1の酸化物半導体膜103a乃至第3の酸化物半導体膜103cのいずれか一以上を成膜する時に、スパッタリング装置の処理室のリークレートを1×10−10Pa・m/秒以下とすることで、スパッタリング法による成膜途中における第1の酸化物半導体膜103a乃至第3の酸化物半導体膜103c中への、アルカリ金属、水素等の不純物の混入を低減することができる。また、排気系として吸着型の真空ポンプ(例えばクライオポンプなど)を用いることで、排気系からアルカリ金属、水素等の不純物の逆流を低減することができる。
【0179】
また、第1の酸化物半導体膜103a乃至第3の酸化物半導体膜103cのいずれか一以上を成膜する時に、スパッタリング装置の処理室に導入するガス、例えば窒素ガスや、酸素ガスや、アルゴンガスなどを加熱した状態で導入して、成膜を行ってもよい。この結果、第1の酸化物半導体膜103a乃至第3の酸化物半導体膜103cのいずれか一以上に含まれる水素含有量を低減することができる。
【0180】
また、スパッタリング法により第1の酸化物半導体膜103a乃至第3の酸化物半導体膜103cのいずれか一以上を成膜する前に、スパッタリング装置、ターゲットの表面または内部に含まれる水分または水素を除去するために、プレヒート処理を行ってもよい。この結果、第1の酸化物半導体膜103a乃至第3の酸化物半導体膜103cのいずれか一以上に含まれる水素含有量を低減することができる。
【0181】
次に、第2の加熱処理を行う。第2の加熱処理の温度は、150度以上650度以下、好ましくは200度以上500度以下とする。また、第2の加熱処理の加熱時間は1分以上24時間以下とする。
【0182】
第2の加熱処理において、雰囲気は第1の加熱処理と同様の雰囲気とすることができる。また、加熱装置は第1の加熱処理と同様のものを適宜用いることができる。
【0183】
第2の加熱処理を行うことで、ウルツ鉱型の結晶構造を有する第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜104bから第3の酸化物半導体膜103cへ向けて結晶成長が始まる。第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜104bは、c軸配向しているため、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜104bを種とすることで、第3の酸化物半導体膜103cは、第1の酸化物半導体膜103aと同様に、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜104bの結晶軸と略同一となるように、第3の酸化物半導体膜103cを結晶成長させることができる。即ち、第3の酸化物半導体膜103cをc軸配向させながら結晶成長させることが可能である。即ち、第3の結晶構造を有する酸化物半導体膜104cは、a−b面における平面において六角形をなす結合をしている。また、六角形の結合を有する層が膜厚方向(c軸方向)に積層して結合されており、c軸配向している。以上の工程により、c軸配向した第3の結晶構造を有する酸化物半導体膜104cを形成することができる。また、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜104bを種として結晶成長するため、第3の酸化物半導体膜103cの結晶成長が促進され、第3の結晶構造を有する酸化物半導体膜104cの表面は、結晶性が高いと共に、均一性も高い(図10(D)参照。)。
【0184】
なお、第2の加熱処理により、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜104bの表面から垂直方向に結晶成長すると、第3の結晶構造を有する酸化物半導体膜104cのc軸は第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜104bの表面の略垂直方向となる。
【0185】
また、当該第2の加熱処理により、第1の加熱処理と同様に、第3の酸化物半導体膜103cに含まれる水素が放出する(即ち、脱水素化、脱水化される。)。この結果、水素濃度が低減された第3の結晶構造を有する酸化物半導体膜104cを形成することができる。
【0186】
以上の工程より、三方晶及び/又は六方晶構造である、第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜104a、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜104b、及び第3の結晶構造を有する酸化物半導体膜104cを形成することができる。第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜104a、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜104b、及び第3の結晶構造を有する酸化物半導体膜104cに含まれる水素濃度及び酸素欠陥を低減することができる。酸化物半導体中に水素が含まれていると、その一部がドナーとなり、キャリアである電子が生じてしまう。また、酸化物半導体中の酸素欠陥も同様に、ドナーとなり、キャリアである電子が生じてしまう。したがって、第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜104a、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜104b、及び第3の結晶構造を有する酸化物半導体膜104c中の水素濃度や酸素欠陥を低減すると、酸化物半導体中のキャリア濃度を減少させることができ、後に作製されるトランジスタのしきい値電圧のマイナスシフトを低減することができる。これらのため、第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜104a、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜104b、及び第3の結晶構造を有する酸化物半導体膜104c中の水素濃度及び酸素欠陥量を低減することで、後に作製されるトランジスタのしきい値電圧のマイナスシフトを低減することができる。
【0187】
次に、実施の形態1と同様に、第3の結晶構造を有する酸化物半導体膜104c上にマスクを形成した後、当該マスクを用いて第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜104a、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜104b、及び第3の結晶構造を有する酸化物半導体膜104cを選択的にエッチングして、第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜105a、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜105b、及び第3の結晶構造を有する酸化物半導体膜105cを形成する。なお、第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜105a、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜105b、及び第3の結晶構造を有する酸化物半導体膜105cをまとめて、酸化物半導体積層体105と示す。この後、マスクを除去する。
【0188】
次に、酸化物半導体積層体105に接する一対の電極106を形成する。次に、酸化物絶縁膜102、酸化物半導体積層体105、及び一対の電極106上にゲート絶縁膜107を形成する。次に、ゲート絶縁膜107上にゲート電極108を形成する。また、ゲート絶縁膜107及びゲート電極108上に絶縁膜109を形成してもよい(図10(E)参照。)。
【0189】
一対の電極106は、実施の形態1に示す一対の電極106と同様の材料及び作製方法を適宜用いて形成することができる。
【0190】
なお、第3の結晶構造を有する酸化物半導体膜104c上に導電膜を形成した後、多階調フォトマスクによって、凹凸状のマスクを形成し、当該マスクを用いて、第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜104a、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜104b、及び第3の結晶構造を有する酸化物半導体膜104c、並びに導電膜をエッチングした後、アッシングにより凹凸状のマスクを分離し、当該分離されたマスクにより導電膜を選択的にエッチングすることで、酸化物半導体積層体105及び一対の電極106を形成することができる。当該工程により、フォトマスク数及びフォトリソグラフィ工程数を削減することができる。
【0191】
ゲート絶縁膜107は、実施の形態1に示すゲート絶縁膜107と同様の材料及び作製方法を適宜用いて形成することができる。
【0192】
なお、ゲート絶縁膜107を形成する前に、酸化物半導体積層体105の表面を、酸素、オゾン、一酸化二窒素等の酸化性ガスのプラズマに曝し、酸化物半導体積層体105の表面を酸化して酸素欠陥を低減してもよい。
【0193】
ゲート電極108は、実施の形態1に示すゲート電極108と同様の材料及び作製方法を適宜用いて形成することができる。
【0194】
なお、ゲート絶縁膜107または絶縁膜109の形成の後、水素及び水分をほとんど含まない雰囲気下(窒素雰囲気、酸素雰囲気、乾燥空気雰囲気(例えば、水分については露点−40度以下、好ましくは露点−60度以下)など)で加熱処理(温度範囲150度以上650度以下、好ましくは200度以上500度以下)を行ってもよい。
【0195】
以上の工程により、a−b面において六角形の結合を有し、c軸配向している三方晶及び/又は六方晶構造の結晶領域を有する酸化物半導体積層体をチャネルに有するトランジスタを作製することができる。
【0196】
本実施の形態に示す酸化物半導体積層体はゲート絶縁膜との界面近傍の領域において、結晶性が高く、均一性も高いため、電気的特性が安定であり、信頼性の高いトランジスタを得ることができる。また、a−b面において六角形の結合を有し、c軸配向している三方晶及び/又は六方晶構造の結晶領域を有する酸化物半導体積層体をトランジスタのチャネル領域に用いることで、トランジスタへの光照射前後、またはバイアス−熱ストレス(BT)試験前後においても、トランジスタのしきい値電圧の変化量が少なく、安定した電気的特性を有するトランジスタを作製することができる。
【0197】
なお、酸窒化物半導体は、酸化物半導体と比べてエネルギーギャップが小さく、キャリアを流しやすい。従って、トランジスタにおいて、第3の結晶構造を有する酸化物半導体膜105cの膜厚を薄くすることで、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜105bがチャネルとなる埋め込みチャネル型トランジスタとなる。この結果、ゲート絶縁膜107及び第3の結晶構造を有する酸化物半導体膜105cの界面の影響を受けず、良好な電気特性を有するトランジスタを作製することができる。
【0198】
(実施の形態4)
本実施の形態では、実施の形態3と異なるトランジスタの構造及び作製方法について、図11及び図12を用いて説明する。本実施の形態では、酸化物絶縁膜及び酸化物半導体積層体の間に一対の電極が設けられる点が、実施の形態3と異なる。なお、上面図である図11(A)の一点破線C−Dの断面図は図11(B)に相当する。図11(A)において、基板101、酸化物絶縁膜102、ゲート絶縁膜117、及び絶縁膜119は省略している。図12は、図11(B)に示すトランジスタの作製工程を説明する断面図である。
【0199】
図11(B)に示すトランジスタは、基板101上に形成された酸化物絶縁膜102と、酸化物絶縁膜102上に形成されたソース電極及びドレイン電極として機能する一対の電極116と、酸化物絶縁膜102と、ソース電極及びドレイン電極として機能する一対の電極116とを覆う酸化物半導体積層体115と、酸化物絶縁膜102、一対の電極116、及び酸化物半導体積層体115上に形成されたゲート絶縁膜117と、ゲート絶縁膜117を介して酸化物半導体積層体115と重畳するゲート電極118とを有する。また、ゲート絶縁膜117及びゲート電極118を覆う絶縁膜119を有してもよい。更には、絶縁膜119の開口部において、一対の電極116と接する一対の配線120を有してもよい。
【0200】
酸化物半導体積層体115は、酸化物絶縁膜102及び一対の電極116に接する第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜115aと、第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜115aに接する第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜115bと、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜115b及びゲート絶縁膜117に接する第3の結晶構造を有する酸化物半導体膜115cとが積層されていることを特徴とする。
【0201】
即ち、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜115bの上下に第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜115a、第3の結晶構造を有する酸化物半導体膜115cを有する。
【0202】
また、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜115bを種結晶として、第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜115a及び第3の結晶構造を有する酸化物半導体膜115cがそれぞれ結晶成長していることを特徴とする。
【0203】
第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜115a、第3の結晶構造を有する酸化物半導体膜115cの結晶構造は、三方晶及び/又は六方晶であり、且つ非ウルツ鉱型、YbFe型構造、YbFe型構造及びその変形型構造のいずれか一である。なお、非ウルツ鉱型構造とは、三方晶及び/又は六方晶のウルツ鉱型でない結晶構造である。
【0204】
また、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜115bの結晶構造は、三方晶及び/又は六方晶の一であるウルツ鉱型構造である。
【0205】
実施の形態3と同様に、第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜115a乃至第3の結晶構造を有する酸化物半導体膜115cはともに三方晶及び/又は六方晶であるので、c軸方向からは六角形の格子像を確認できる。
【0206】
なお、第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜115a、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜115b、第3の結晶構造を有する酸化物半導体膜115cはそれぞれ、非単結晶であり、且つ酸化物半導体膜全体が非晶質状態(アモルファス状態)ではなく、c軸配向の結晶領域を有する。即ち、非晶質領域及びc軸配向の結晶領域を有する。
【0207】
次に、図11(B)に示すトランジスタの作製方法について、図12を用いて説明する。
【0208】
図12(A)に示すように、実施の形態1と同様に、基板101上に酸化物絶縁膜102を形成する。次に、酸化物絶縁膜102上に一対の電極116を形成する。次に、一対の電極116及び酸化物絶縁膜102上に、第1の酸化物半導体膜113a及び第2の酸化物半導体膜113bを形成する。
【0209】
一対の電極116は、実施の形態1に示す一対の電極106と同様の材料及び作製方法を適宜用いて形成することができる。
【0210】
第1の酸化物半導体膜113a及び第2の酸化物半導体膜113bは、実施の形態1に示す第1の酸化物半導体膜103a及び第2の酸化物半導体膜103bと同様の材料及び作製方法を適宜用いて形成することができる。
【0211】
次に、実施の形態1と同様に、第1の加熱処理を行う。第1の加熱処理により、第2の酸化物半導体膜113bの表面から第1の酸化物半導体膜113aに向けて結晶成長が始まり、第2の酸化物半導体膜113bは、ウルツ鉱型の結晶構造を有する第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜114bとなる。また、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜114bは、c軸配向した結晶を有する。
【0212】
引続き第1の加熱処理を行うことで、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜114bを種として、第1の酸化物半導体膜113aの結晶成長が、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜114bとの界面から酸化物絶縁膜102に向かって進み、第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜114aが形成される。また、第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜114aはc軸配向した結晶領域を有する。
【0213】
次に、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜114b上に第3の酸化物半導体膜113cを形成する(図12(B)参照。)第3の酸化物半導体膜113cは、実施の形態3に示す第3の酸化物半導体膜103cと同様の材料及び作製方法を適宜用いて形成することができる。
【0214】
次に、実施の形態3と同様に、第2の加熱処理を行う。第2の加熱処理を行うことで、ウルツ鉱型の結晶構造を有する第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜114bとの界面から第3の酸化物半導体膜113cへ向けて結晶成長が始まり、第3の酸化物半導体膜113cは、第3の結晶構造を有する酸化物半導体膜114cとなる。また、第3の結晶構造を有する酸化物半導体膜114cは、c軸配向した結晶領域を有する。(図12(C)参照。)。
【0215】
以上の工程より、三方晶及び/又は六方晶構造である、第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜114a、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜114b、及び第3の結晶構造を有する酸化物半導体膜114cを形成することができる。
【0216】
次に、第3の結晶構造を有する酸化物半導体膜114c上にマスクを形成した後、当該マスクを用いて第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜114a、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜114b、及び第3の結晶構造を有する酸化物半導体膜114cを選択的にエッチングして、第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜115a、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜115b、及び第3の結晶構造を有する酸化物半導体膜115cを形成する。なお、第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜115a、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜115b、及び第3の結晶構造を有する酸化物半導体膜115cをまとめて、酸化物半導体積層体115と示す。この後、マスクを除去する。
【0217】
次に、酸化物絶縁膜102、一対の電極116、及び酸化物半導体積層体115上にゲート絶縁膜117を形成する。次に、ゲート絶縁膜117上にゲート電極118を形成する。
【0218】
この後、ゲート絶縁膜117及びゲート電極118上に絶縁膜119を形成する。次に、絶縁膜119上にマスクを形成した後、ゲート絶縁膜117及び絶縁膜119の一部をエッチングして、開口部を形成する。次に、開口部を介して、一対の電極116に接続する配線120を形成してもよい(図12(D)参照。)。
【0219】
ゲート絶縁膜117は、実施の形態1に示すゲート絶縁膜107と同様の材料及び作製方法を適宜用いて形成することができる。
【0220】
ゲート電極118は、実施の形態1に示すゲート電極108と同様の材料及び作製方法を適宜用いて形成することができる。
【0221】
絶縁膜119は、実施の形態1に示す絶縁膜109と同様の材料及び作製方法を適宜用いて形成することができる。
【0222】
配線120は、一対の電極116と同様の材料及び作製方法を適宜用いて形成することができる。
【0223】
以上の工程により、a−b面において六角形の結合を有し、c軸配向している三方晶及び/又は六方晶構造の結晶領域を有する酸化物半導体積層体をチャネル領域に有するトランジスタを作製することができる。
【0224】
本実施の形態に示す酸化物半導体積層体はゲート絶縁膜との界面近傍の領域において、結晶性が高く、均一性も高いため、電気的特性が安定であり、信頼性の高いトランジスタを得ることができる。また、a−b面において六角形の結合を有し、c軸配向している三方晶及び/又は六方晶構造の結晶領域を有する酸化物半導体積層体をトランジスタのチャネル領域に用いることで、トランジスタへの光照射前後、またはバイアス−熱ストレス(BT)試験前後においても、トランジスタのしきい値電圧の変化量が少なく、安定した電気的特性を有するトランジスタを作製することができる。
【0225】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0226】
(実施の形態5)
本実施の形態では、実施の形態1乃至実施の形態4と異なるトランジスタの構造及び作製方法について、図13及び図14を用いて説明する。本実施の形態では、酸化物絶縁膜及びゲート絶縁膜の間にゲート電極が設けられる点が、実施の形態1乃至実施の形態4と異なる。即ち、実施の形態1乃至実施の形態4では、トップゲート型のトランジスタを用いて説明したが、本実施の形態はボトムゲート型のトランジスタについて、説明する。なお、上面図である図13(A)の一点破線E−Fの断面図が図13(B)に相当する。図13(A)において、基板101、酸化物絶縁膜102、ゲート絶縁膜127、及び絶縁膜129は省略している。図14は、図13(B)に示すトランジスタの作製工程を説明する断面図である。
【0227】
図13(B)に示すトランジスタは、基板101上に形成された酸化物絶縁膜102と、酸化物絶縁膜102上に形成されたゲート電極128と、酸化物絶縁膜102及びゲート電極128を覆うゲート絶縁膜127と、ゲート絶縁膜127を介してゲート電極128と重畳すると酸化物半導体積層体125と、酸化物半導体積層体125に接するソース電極及びドレイン電極として機能する一対の電極126とを有する。また、ゲート絶縁膜127、酸化物半導体積層体125及び一対の電極126を覆う絶縁膜129を有してもよい。
【0228】
酸化物半導体積層体125は、ゲート絶縁膜127に接する第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜125bと、第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜125bに接する第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜125cとが積層されていることを特徴とする。
【0229】
また、第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜125bを種結晶として、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜125cが結晶成長していることを特徴とする。
【0230】
第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜125bは、三方晶及び/又は六方晶の一であるウルツ鉱型の結晶構造を有する。
【0231】
第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜125cは、三方晶及び/又は六方晶であり、YbFe型構造、YbFe型構造及び非ウルツ鉱型構造のいずれか一の結晶構造を有する。
【0232】
第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜及び第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜は、ともに三方晶及び/又は六方晶であるので、c軸方向からは六角形の格子像を確認できる。
【0233】
第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜125b、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜125cはそれぞれ、非単結晶であり、且つ酸化物半導体膜全体が非晶質状態(アモルファス状態)ではなく、c軸配向の結晶領域を有する。即ち、非晶質領域及びc軸配向の結晶領域を有する。
【0234】
なお、ここでは、酸化物半導体積層体125を、第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜125bと、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜125cとの2層構造としたが、実施の形態3及び実施の形態4に示すように、3層構造の酸化物半導体積層体としてもよい。
【0235】
次に、図13(B)に示すトランジスタの作製方法について、図14を用いて説明する。
【0236】
図14(A)に示すように、実施の形態1と同様に、基板101上に酸化物絶縁膜102を形成する。次に、酸化物絶縁膜102上にゲート電極128を形成する。次に酸化物絶縁膜102及びゲート電極128上に、ゲート絶縁膜127を形成する。次に、ゲート絶縁膜127上に第1の酸化物半導体膜123bを形成する。
【0237】
ゲート電極128及びゲート絶縁膜127はそれぞれ、実施の形態1に示すゲート電極108及びゲート絶縁膜107と同様の材料及び作製方法を適宜用いて形成することができる。
【0238】
第1の酸化物半導体膜123bは、実施の形態1に示す第2の酸化物半導体膜103bと同様の材料及び作製方法を適宜用いて形成することができる。
【0239】
次に、実施の形態1と同様に、第1の加熱処理を行う。第1の加熱処理により、第1の酸化物半導体膜123bの表面からゲート絶縁膜127に向けて結晶成長が始まり、第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜124bとなる。また、第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜124bは、c軸配向した結晶領域を有する。
【0240】
次に、第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜124b上に第2の酸化物半導体膜123cを形成する(図14(B)参照。)。第2の酸化物半導体膜123cは、実施の形態3に示す第3の酸化物半導体膜103cと同様の材料及び作製方法を適宜用いて形成することができる。
【0241】
次に、実施の形態3と同様に、第2の加熱処理を行う。当該加熱処理により、第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜124bとの界面から第2の酸化物半導体膜123cへ向けて結晶成長が始まり、第2の酸化物半導体膜123cは、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜124cとなる。また、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜124cは、c軸配向した結晶領域を有する(図14(C)参照。)。
【0242】
以上の工程より、第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜124b、及び第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜124cを形成することができる。
【0243】
次に、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜124c上にマスクを形成した後、当該マスクを用いて第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜124b、及び第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜124cを選択的にエッチングして、第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜125b、及び第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜125cを形成する。なお、第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜125b、及び第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜125cをまとめて、酸化物半導体積層体125と示す。この後、マスクを除去する。
【0244】
次に、実施の形態1と同様に、一対の電極126を形成する。
【0245】
次に、ゲート絶縁膜127、一対の電極126、及び酸化物半導体積層体125上に絶縁膜129を形成してもよい(図14(D)参照。)。
【0246】
絶縁膜129は、実施の形態1に示す絶縁膜109と同様の材料及び作製方法を適宜用いて形成することができる。
【0247】
以上の工程により、a−b面において六角形の結合を有し、c軸配向している三方晶及び/又は六方晶構造の結晶領域を有する酸化物半導体積層体をチャネル領域に有するトランジスタを作製することができる。
【0248】
なお、本実施の形態では、チャネルエッチング型のトランジスタを用いて説明したが、チャネル保護型のトランジスタに適用することができる。
【0249】
酸化物半導体積層体はゲート絶縁膜との界面近傍の領域において、結晶性が高く、均一性も高いため、電気的特性が安定であり、信頼性の高いトランジスタを得ることができる。また、a−b面において六角形の結合を有し、c軸配向している三方晶及び/又は六方晶構造の結晶を有する酸化物半導体積層体をトランジスタのチャネル領域に用いることで、トランジスタへの光照射前後、またはバイアス−熱ストレス(BT)試験前後においても、トランジスタのしきい値電圧の変化量が少なく、安定した電気的特性を有するトランジスタを作製することができる。
【0250】
なお、酸窒化物半導体は、酸化物半導体と比べてエネルギーギャップが小さく、キャリアを流しやすい。従って、ゲート絶縁膜127に接する第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜125bを酸窒化物半導体膜で形成することで、良好な電気特性を有するトランジスタを作製することができる。
【0251】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0252】
(実施の形態6)
本実施の形態では、実施の形態1乃至実施の形態5と異なるトランジスタの構造及び作製方法について、図15及び図16を用いて説明する。本実施の形態では、ボトムゲート型のトランジスタである。また、ゲート絶縁膜及び酸化物半導体積層体の間に一対の電極が設けられている点が実施の形態5と異なる。なお、上面図である図15(A)の一点破線G−Hの断面図が図15(B)に相当する。図15(A)において、基板101、酸化物絶縁膜102、ゲート絶縁膜137、及び絶縁膜139は省略している。図16は、図15(B)に示すトランジスタの作製工程を説明する断面図である。
【0253】
図15(B)に示すトランジスタは、基板101上に形成された酸化物絶縁膜102と、酸化物絶縁膜102上に形成されたゲート電極138と、酸化物絶縁膜102及びゲート電極138を覆うゲート絶縁膜137と、ソース電極及びドレイン電極として機能する一対の電極136と、ゲート絶縁膜137及び一対の電極136に接する酸化物半導体積層体135とを有する。また、ゲート絶縁膜137、酸化物半導体積層体135及び一対の電極136を覆う絶縁膜139を有してもよい。
【0254】
酸化物半導体積層体135は、ゲート絶縁膜137に接する第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜135bと、第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜135bに接する第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜135cとが積層されていることを特徴とする。
【0255】
また、第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜135bを種結晶として、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜135cが結晶成長していることを特徴とする。
【0256】
第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜135bは、三方晶及び/又は六方晶の一であるウルツ鉱型の結晶構造を有する。
【0257】
第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜135cは、三方晶及び/又は六方晶であり、YbFe型構造、YbFe型構造及び非ウルツ鉱型構造のいずれか一の結晶構造を有する。
【0258】
第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜及び第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜は、ともに三方晶及び/又は六方晶であるので、c軸方向からは六角形の格子像を確認できる。
【0259】
第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜135b、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜135cはそれぞれ、非単結晶であり、且つ酸化物半導体膜全体が非晶質状態(アモルファス状態)ではなく、c軸配向の結晶領域を有する。即ち、非晶質領域及びc軸配向の結晶領域を有する。
【0260】
なお、ここでは、酸化物半導体積層体135を、第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜135bと、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜135cとの2層構造としたが、実施の形態3及び実施の形態4に示すように、3層構造の酸化物半導体積層体としてもよい。
【0261】
次に、図15(B)に示すトランジスタの作製方法について、図16を用いて説明する。
【0262】
図16(A)に示すように、実施の形態1と同様に、基板101上に酸化物絶縁膜102を形成する。次に、酸化物絶縁膜102上にゲート電極138を形成する。次に、酸化物絶縁膜102及びゲート電極138上に、ゲート絶縁膜137を形成する。次に、ゲート絶縁膜137上に一対の電極136を形成する。次に、ゲート絶縁膜137及び一対の電極136上に第1の酸化物半導体膜133bを形成する。
【0263】
ゲート電極138、ゲート絶縁膜137、及び第1の酸化物半導体膜133bはそれぞれ、実施の形態3に示すゲート電極108、ゲート絶縁膜107、及び第2の酸化物半導体膜103bと同様の材料及び作製方法を適宜用いて形成することができる。
【0264】
次に、実施の形態1と同様に、第1の加熱処理を行う。第1の加熱処理により、第1の酸化物半導体膜133bの表面からゲート絶縁膜137に向けて結晶成長が始まり、第1の酸化物半導体膜133bは第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜134bとなる。また、第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜134bは、c軸配向した結晶領域を有する。
【0265】
次に、第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜134b上に第2の酸化物半導体膜133cを形成する(図16(B)参照。)。第2の酸化物半導体膜133cは、実施の形態3に示す第3の酸化物半導体膜103cと同様の材料及び作製方法を適宜用いて形成することができる。
【0266】
次に、実施の形態3と同様に、第2の加熱処理を行う。当該加熱処理により、第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜134bとの界面から第2の酸化物半導体膜133cへ向けて結晶成長が始まり、第2の酸化物半導体膜133cは、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜134cとなる。また、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜134cは、c軸配向した結晶領域を有する(図16(C)参照。)。
【0267】
以上の工程より、第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜134b、及び第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜134cを形成することができる。
【0268】
次に、第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜134c上にマスクを形成した後、当該マスクを用いて第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜134b、及び第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜134cを選択的にエッチングして、第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜135b、及び第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜135cを形成する。なお、第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜135b、及び第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜135cをまとめて、酸化物半導体積層体135と示す。この後、マスクを除去する。
【0269】
次に、酸化物絶縁膜102、一対の電極136、及び酸化物半導体積層体135上に絶縁膜139を形成してもよい(図16(D)参照。)。
【0270】
絶縁膜139は、実施の形態3に示す絶縁膜109と同様の材料及び作製方法を適宜用いて形成することができる。
【0271】
以上の工程により、a−b面において六角形の結合を有し、c軸配向している三方晶及び/又は六方晶構造の結晶を有する酸化物半導体積層体をチャネル領域に有するトランジスタを作製することができる。
【0272】
なお、本実施の形態では、チャネルエッチング型のトランジスタを用いて説明したが、チャネル保護型のトランジスタに適用することができる。
【0273】
酸化物半導体積層体はゲート絶縁膜との界面近傍の領域において、結晶性が高く、均一性も高いため、電気的特性が安定であり、信頼性の高いトランジスタを得ることができる。また、a−b面において六角形の結合を有し、c軸配向している三方晶及び/又は六方晶構造の結晶領域を有する酸化物半導体積層体をトランジスタのチャネル領域に用いることで、トランジスタへの光照射前後、またはバイアス−熱ストレス(BT)試験前後においても、トランジスタのしきい値電圧の変化量が少なく、安定した電気的特性を有するトランジスタを作製することができる。
【0274】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0275】
(実施の形態7)
本実施の形態では、実施の形態1乃至実施の形態6において、複数のゲート電極を有するトランジスタについて説明する。ここでは、実施の形態5に示すトランジスタを用いて説明するが、実施の形態1乃至実施の形態4、及び実施の形態6に適宜適用することができる。
【0276】
実施の形態5と同様に、図17に示すように、基板101上に酸化物絶縁膜102を形成し、酸化物絶縁膜102上に、第1のゲート電極148a、第1のゲート絶縁膜147aを形成する。次に、第1のゲート絶縁膜147a上に、第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜125b、及び第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜125cが積層された酸化物半導体積層体125、一対の電極126、及び第2のゲート絶縁膜147bを形成する。
【0277】
次に、第2のゲート絶縁膜147b上であって、酸化物半導体積層体125と重畳する領域に第2のゲート電極148bを形成する。次に、第2のゲート絶縁膜147b及び第2のゲート電極148b上に保護膜として絶縁膜129を形成してもよい。
【0278】
第1のゲート電極148a及び第2のゲート電極148bは、実施の形態1に示すゲート電極108と同様に形成することができる。
【0279】
第1のゲート絶縁膜147a及び第2のゲート絶縁膜147bは、実施の形態1に示すゲート絶縁膜107と同様に形成することができる。
【0280】
第1のゲート電極148a及び第2のゲート電極148bは接続されていてもよい。この場合、第1のゲート電極148a及び第2のゲート電極148bは同電位となるため、チャネル領域が酸化物半導体積層体125の第1のゲート電極148a側、及び第2のゲート電極148b側に形成されるため、トランジスタのオン電流及び電界効果移動度を高めることができる。
【0281】
または、第1のゲート電極148a及び第2のゲート電極148bは接続されず、異なる電位が印加されてもよい。この場合、トランジスタのしきい値電圧を制御することができる。
【0282】
なお、本実施の形態では、一対の電極126を酸化物半導体積層体125及び第2のゲート絶縁膜147bの間に形成したが、第1のゲート絶縁膜147a及び酸化物半導体積層体125の間に形成してもよい。
【0283】
以上の工程により、ゲート電極を複数有するトランジスタを作製することができる。
【0284】
(実施の形態8)
本実施の形態では、同一基板上に少なくとも駆動回路の一部と、画素部に配置するトランジスタを有する表示装置を作製する形態について以下に説明する。
【0285】
画素部に配置するトランジスタは、実施の形態1乃至実施の形態7に従って形成する。また、実施の形態1乃至実施の形態7に示すトランジスタはnチャネル型トランジスタであるため、駆動回路のうち、nチャネル型トランジスタで構成することができる駆動回路の一部を画素部のトランジスタと同一基板上に形成する。
【0286】
アクティブマトリクス型表示装置のブロック図の一形態を図18(A)に示す。表示装置の基板5300上には、画素部5301、第1の走査線駆動回路5302、第2の走査線駆動回路5303、信号線駆動回路5304を有する。画素部5301には、複数の信号線が信号線駆動回路5304から延伸して配置され、複数の走査線が第1の走査線駆動回路5302、及び第2の走査線駆動回路5303から延伸して配置されている。なお走査線と信号線との交差領域には、各々、表示素子を有する画素がマトリクス状に配置されている。また、表示装置の基板5300はFPC(Flexible Printed Circuit)等の接続部を介して、タイミング制御回路(コントローラ、制御ICともいう)に接続されている。
【0287】
図18(A)では、第1の走査線駆動回路5302、第2の走査線駆動回路5303、信号線駆動回路5304は、画素部5301と同じ基板5300上に形成される。そのため、外部に設ける駆動回路等の部品の数が減るので、コストの低減を図ることができる。また、基板5300外部に駆動回路を設けた場合、配線を延伸させる必要が生じ、配線間の接続数が増える。同じ基板5300上に駆動回路を設けた場合、その配線間の接続数を減らすことができ、信頼性の向上、又は歩留まりの向上を図ることができる。
【0288】
また、画素部の回路構成の一形態を図18(B)に示す。ここでは、VA方式の液晶表示パネルの画素構造を示す。
【0289】
この画素構造は、一つの画素に複数の画素電極が有り、それぞれの画素電極にトランジスタが接続されている。各トランジスタは、異なるゲート信号で駆動されるように構成されている。すなわち、マルチドメイン設計された画素において、個々の画素電極に印加する信号を、独立して制御する構成を有している。
【0290】
トランジスタ628のゲート配線602と、トランジスタ629のゲート配線603には、異なるゲート信号を与えることができるように分離されている。一方、データ線として機能するソース電極又はドレイン電極616は、トランジスタ628とトランジスタ629で共通に用いられている。トランジスタ628とトランジスタ629は実施の形態1乃至実施の形態7のトランジスタを適宜用いることができる。
【0291】
第1の画素電極と第2の画素電極の形状は異なっており、スリットによって分離されている。V字型に広がる第1の画素電極の外側を囲むように第2の画素電極が形成されている。第1の画素電極と第2の画素電極に印加する電圧のタイミングを、トランジスタ628及びトランジスタ629により異ならせることで、液晶の配向を制御している。トランジスタ628はゲート配線602と接続し、トランジスタ629はゲート配線603と接続している。ゲート配線602とゲート配線603は異なるゲート信号を与えることで、トランジスタ628とトランジスタ629の動作タイミングを異ならせることができる。
【0292】
また、容量配線690が設けられ、ゲート絶縁膜を誘電体とし、第1の画素電極または第2の画素電極と電気的に接続する容量電極と保持容量を形成する。
【0293】
第1の画素電極と液晶層と対向電極が重なり合うことで、第1の液晶素子651が形成されている。また、第2の画素電極と液晶層と対向電極が重なり合うことで、第2の液晶素子652が形成されている。また、一画素に第1の液晶素子651と第2の液晶素子652が設けられたマルチドメイン構造である。
【0294】
なお、図18(B)に示す画素構成は、これに限定されない。例えば、図18(B)に示す画素に新たにスイッチ、抵抗素子、容量素子、トランジスタ、センサ、又は論理回路などを追加してもよい。
【0295】
また、本実施の形態では、VA方式の液晶表示パネルの形態を示したが特に限定されず、様々な方式の液晶表示装置に応用することができる。例えば、視野角特性を改善する方法として、基板主表面に対して水平方向の電界を液晶層に印加する横電界方式(IPS方式とも呼ぶ)に応用することができる。
【0296】
例えば、IPS方式の液晶表示パネルとして、配向膜を用いないブルー相を示す液晶を用いることが好ましい。ブルー相は液晶相の一つであり、コレステリック液晶を昇温していくと、コレステリック相から等方相へ転移する直前に発現する相である。ブルー相は狭い温度範囲でしか発現しないため、温度範囲を改善するためにカイラル剤を混合させた液晶組成物を用いて液晶素子の液晶層に用いる。ブルー相を示す液晶とカイラル剤とを含む液晶組成物は、応答速度が1msec以下と短く、光学的等方性であるため配向処理が不要であり、視野角依存性が小さい。
【0297】
また、液晶表示装置の動画特性を改善するため、バックライトとして複数のLED(発光ダイオード)光源または複数のEL光源などを用いて面光源を構成し、面光源を構成している各光源を独立して1フレーム期間内で間欠点灯駆動する駆動技術(例えばフィールドシーケンシャル方式など)もある。面光源として、3種類以上のLEDを用いてもよいし、白色発光のLEDを用いてもよい。面光源として、異なる色を呈する3種類以上の光源(例えば、R(赤)、G(緑)、B(青))を用いる場合は、カラーフィルタを用いなくともカラー表示が行える。また、面光源として、白色発光のLEDを用いる場合は、カラーフィルタを設けてカラー表示を行う。独立して複数のLEDを制御できるため、液晶層の光学変調の切り替えタイミングに合わせてLEDの発光タイミングを同期させることもできる。LEDを部分的に消灯することができるため、特に一画面を占める黒い表示領域の割合が多い映像表示の場合には、消費電力の低減効果が図れる。
【0298】
また、画素部の回路構成の一形態を図18(C)に示す。ここでは、有機EL素子を用いた表示パネルの画素構造を示す。
【0299】
有機EL素子は、発光素子に電圧を印加することにより、一対の電極から電子および正孔がそれぞれ発光性の有機化合物を含む膜に注入され、電流が流れる。そして、それらキャリア(電子および正孔)が再結合することにより、発光性の有機化合物が励起状態を形成し、その励起状態が基底状態に戻る際に発光する。このようなメカニズムから、このような発光素子は、電流励起型の発光素子と呼ばれる。
【0300】
図18(C)は、半導体装置の形態としてデジタル時間階調駆動を適用可能な画素構成の一形態を示す図である。
【0301】
デジタル時間階調駆動を適用可能な画素の構成及び画素の動作について説明する。ここでは酸化物半導体膜をチャネル領域に用いるnチャネル型のトランジスタを1つの画素に2つ用いる形態を示す。
【0302】
画素6400は、スイッチング用トランジスタ6401、駆動用トランジスタ6402、発光素子6404及び容量素子6403を有している。スイッチング用トランジスタ6401は、ゲート電極が走査線6406に接続され、第1電極(ソース電極及びドレイン電極の一方)が信号線6405に接続され、第2電極(ソース電極及びドレイン電極の他方)が駆動用トランジスタ6402のゲート電極に接続されている。駆動用トランジスタ6402は、ゲート電極が容量素子6403を介して電源線6407に接続され、第1電極が電源線6407に接続され、第2電極が発光素子6404の第1電極(画素電極)に接続されている。発光素子6404の第2電極は共通電極6408に相当する。共通電極6408は、同一基板上に形成される共通電位線と電気的に接続される。
【0303】
なお、発光素子6404の第2電極(共通電極6408)には低電源電位が設定されている。なお、低電源電位とは、電源線6407に設定される高電源電位を基準にして低電源電位<高電源電位を満たす電位であり、低電源電位としては例えばGND、0Vなどが設定されていても良い。この高電源電位と低電源電位との電位差を発光素子6404に印加して、発光素子6404に電流を流して発光素子6404を発光させるため、高電源電位と低電源電位との電位差が発光素子6404の順方向しきい値電圧以上となるようにそれぞれの電位を設定する。
【0304】
なお、容量素子6403は駆動用トランジスタ6402のゲート容量を代用して省略することも可能である。駆動用トランジスタ6402のゲート容量については、チャネル領域とゲート電極との間で容量が形成されていてもよい。
【0305】
ここで、電圧入力電圧駆動方式の場合には、駆動用トランジスタ6402のゲート電極には、駆動用トランジスタ6402が十分にオンするか、オフするかの二つの状態となるようなビデオ信号を入力する。つまり、駆動用トランジスタ6402は線形領域で動作させる。駆動用トランジスタ6402は線形領域で動作させるため、電源線6407の電圧よりも高い電圧を駆動用トランジスタ6402のゲート電極にかける。なお、信号線6405には、(電源線電圧+駆動用トランジスタ6402のVth)以上の電圧をかける。
【0306】
また、デジタル時間階調駆動に代えて、アナログ階調駆動を行う場合、信号の入力を異ならせることで、図18(C)と同じ画素構成を用いることができる。
【0307】
アナログ階調駆動を行う場合、駆動用トランジスタ6402のゲート電極に発光素子6404の順方向電圧+駆動用トランジスタ6402のVth以上の電圧をかける。発光素子6404の順方向電圧とは、所望の輝度とする場合の電圧を指しており、少なくとも順方向しきい値電圧を含む。なお、駆動用トランジスタ6402が飽和領域で動作するようなビデオ信号を入力することで、発光素子6404に電流を流すことができる。駆動用トランジスタ6402を飽和領域で動作させるため、電源線6407の電位は、駆動用トランジスタ6402のゲート電位よりも高くする。ビデオ信号をアナログとすることで、発光素子6404にビデオ信号に応じた電流を流し、アナログ階調駆動を行うことができる。
【0308】
なお、図18(C)に示す画素構成は、これに限定されない。例えば、図18(C)に示す画素に新たにスイッチ、抵抗素子、容量素子、センサ、トランジスタ又は論理回路などを追加してもよい。
【0309】
次に、発光素子の構成について、図19に示す画素の断面構造を用いて説明する。ここでは、発光素子駆動用トランジスタがnチャネル型の場合を例に挙げて、画素の断面構造について説明する。図19(A)、図19(B)、及び図19(C)の半導体装置に用いられる発光素子駆動用トランジスタ7011、7021、及び7001は、実施の形態1乃至実施の形態7に示すトランジスタと同様に作製できる。
【0310】
発光素子の第1の電極または第2の電極の少なくとの一方は可視光を透過する導電膜を用いて形成し、発光素子から発光を取り出す。発光を取り出す方向に着目した構造としては、発光素子とトランジスタが形成された基板を介することなく、基板の当該発光素子が形成された側から発光を取り出す上面射出構造、発光素子が形成された基板を介し、当該発光素子が形成されていない側に発光する下面射出構造、並びに基板の発光素子が形成された側及び基板を介して基板の他方の側に発光を取り出す両面射出構造がある。そして、図18(C)に示す画素構成はどの射出構造の発光素子にも適用することができる。
【0311】
下面射出構造の発光素子について、図19(A)を用いて説明する。下面射出構造の発光素子は、図19(A)に矢印で示す方向に光を発する。
【0312】
図19(A)において、発光素子駆動用トランジスタ7011は実施の形態1に示すnチャネル型のトランジスタを用いる形態を示しているが、特に限定されない。
【0313】
図19(A)では、発光素子駆動用トランジスタ7011のソース電極またはドレイン電極と電気的に接続された透光性を有する第1の電極7017上に、EL層7014、第2の電極7015が順に積層されている。
【0314】
第1の電極7017は可視光を透過する導電膜を用いる。可視光を透過する導電膜としては、例えば酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム錫酸化物(以下、ITOとする。)、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などがある。また、光を透過する程度(好ましくは、5nm〜30nm程度)の金属薄膜を用いることもできる。例えば20nmの膜厚を有するアルミニウム膜を他の透光性を有する導電膜に積層して用いることができる。
【0315】
第2の電極7015はEL層7014が発する光を効率よく反射する材料が好ましい。なぜなら光の取り出し効率を向上できるためである。なお、第2の電極7015を積層構造としてもよい。例えば、EL層7014に接する側に可視光を透過する導電膜を用い、他方に光を遮光する膜7016を積層して用いることもできる。光を遮光する膜としては、EL層が発する光を効率よく反射する金属膜等が好ましいが、例えば黒の顔料を添加した樹脂等を用いることもできる。
【0316】
なお、第1の電極7017及び第2の電極7015の一方は陽極として機能し、他方は陰極として機能する。陽極として機能する電極には、仕事関数の大きな物質が好ましく、陰極として機能する電極には仕事関数の小さな物質が好ましい。
【0317】
仕事関数が大きい材料としては、例えば、ZrN、Ti、W、Ni、Pt、Cr等や、ITO、In−Zn−Oなどを用いることができる。仕事関数が小さい材料としては、LiやCs等のアルカリ金属、およびMg、Ca、Sr等のアルカリ土類金属、およびこれらを含む合金(Mg:Ag、Al:Liなど)の他、YbやEr等の希土類金属等を用いることができる。
【0318】
なお、消費電力を比較する場合、第1の電極7017を陰極として機能させ、第2の電極7015を陽極とするほうが、駆動回路部の電圧上昇を抑制でき、消費電力を少なくできるため好ましい。
【0319】
EL層7014は、少なくとも発光層を含めば良く、単数の層で構成されていても、複数の層が積層されていてもよい。複数の層で構成されている構成としては、陽極側から正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、並びに電子注入層が積層された構成を形態に挙げることができる。なお、これらの層はEL層7014中に全て設ける必要はなく、また、重複して設けることもできる。また、中間層として電荷発生層の他、電子リレー層など他の構成を適宜加えることができる。
【0320】
また、発光素子7012は第1の電極7017の端部を覆う隔壁7019を備える。隔壁7019は、ポリイミド、アクリル、ポリアミド、エポキシ等の有機樹脂膜の他、無機絶縁膜または有機ポリシロキサン膜を適用できる。特に、隔壁7019の側面が連続した曲率を持って形成される傾斜面となるように、感光性の樹脂材料を用いて形成することが好ましい。隔壁7019に感光性の樹脂材料を用いる場合、レジストマスクを形成する工程を省略することができる。また、隔壁を無機絶縁膜で形成することもできる。無機絶縁膜を隔壁に用いることで、隔壁に含まれる水分量を低減できる。
【0321】
なお、カラーフィルタ層7033が発光素子7012と基板7010の間に設けられている(図19(A)参照)。発光素子7012に白色に発光する構成を適用することにより、発光素子7012が発する光はカラーフィルタ層7033を通過し、絶縁膜7032、ゲート絶縁膜7031、酸化物絶縁膜7030、及び基板7010を通過して、射出される。
【0322】
複数の種類のカラーフィルタ層7033を形成してもよく、例えば画素毎に赤色のカラーフィルタ層、青色のカラーフィルタ層、緑色のカラーフィルタ層などを設けることができる。なお、カラーフィルタ層7033はインクジェット法などの液滴吐出法や、印刷法、またはフォトリソグラフィ技術を用いたエッチング法などでそれぞれ形成する。
【0323】
また、カラーフィルタ層7033はオーバーコート層7034で覆われ、さらに保護絶縁膜7035によって覆う。なお、図19(A)ではオーバーコート層7034は薄い膜厚で図示したが、オーバーコート層7034は、アクリル樹脂などの樹脂材料を用い、カラーフィルタ層7033に起因する凹凸を平坦化する機能を有している。
【0324】
また、絶縁膜7032、カラーフィルタ層7033、オーバーコート層7034、及び保護絶縁膜7035に形成され、且つ、ドレイン電極に達するコンタクトホールは、隔壁7019と重なる位置に配置する。
【0325】
次に、両面射出構造の発光素子について、図19(B)を用いて説明する。両面射出構造の発光素子は、図19(B)に矢印で示す方向に光を発する。
【0326】
図19(B)において、発光素子駆動用トランジスタ7021は実施の形態1に示すnチャネル型のトランジスタを用いる形態を示しているが、特に限定されない。
【0327】
図19(B)では、発光素子駆動用トランジスタ7021のソース電極またはドレイン電極と電気的に接続された透光性を有する第1の電極7027上に、EL層7024、第2の電極7025が順に積層されている。
【0328】
第1の電極7027、及び第2の電極7025は可視光を透過する導電膜を用いる。可視光を透過する導電膜としては、図19(A)の第1の電極7017に用いることができる材料を適用することができる。よって、詳細な説明は第1の電極7017の説明を援用する。
【0329】
なお、第1の電極7027、又は第2の電極7025のいずれか一方は陽極として機能し、他方は陰極として機能する。陽極として機能する電極には、仕事関数の大きな物質が好ましく、陰極として機能する電極には仕事関数の小さな物質が好ましい。
【0330】
EL層7024は単数の層で構成されていても、複数の層が積層されていても良い。EL層7024としては、図19(A)のEL層7014に用いることができる構成、及び材料を適用することができる。よって、詳細な説明はEL層7014の説明を援用する。
【0331】
また、発光素子7022は第1の電極7027の端部を覆う隔壁7029を備える。隔壁7029は、図19(A)の隔壁7019に用いることができる構成、及び材料を適用することができる。よって、詳細な説明は隔壁7019の説明を援用する。
【0332】
また、図19(B)に示した素子構造の場合、発光素子7022から発せられる光は、矢印で示すように第2の電極7025側と第1の電極7027側の両方に射出し、第1の電極7027側に発せられる一方の光は、絶縁膜7042、ゲート絶縁膜7041、酸化物絶縁膜7040、及び基板7020を通過して射出させる。
【0333】
また、図19(B)の構造においては、フルカラー表示を行う場合、例えば発光素子7022として緑色発光素子とし、隣り合う一方の発光素子を赤色発光素子とし、もう一方の発光素子を青色発光素子とする。また、3種類の発光素子だけでなく白色素子を加えた4種類の発光素子でフルカラー表示ができる発光表示装置を作製してもよい。
【0334】
次に、上面射出構造の発光素子について、図19(C)を用いて説明する。上面射出構造の発光素子は、図19(C)に矢印で示す方向に光を発する。
【0335】
図19(C)において、発光素子駆動用トランジスタ7001は実施の形態1に示すnチャネル型のトランジスタを用いる形態を示しているが、特に限定されない。
【0336】
図19(C)では、発光素子駆動用トランジスタ7001のソース電極またはドレイン電極と電気的に接続された第1の電極7003上に、EL層7004、第2の電極7005が順に積層されている。
【0337】
第1の電極7003はEL層7004が発する光を効率よく反射する材料が好ましい。なぜなら光の取り出し効率を向上できるためである。なお、第1の電極7003を積層構造としてもよい。例えば、EL層7004に接する側に可視光を透過する導電膜を用い、他方に光を遮光する膜を積層して用いることもできる。光を遮光する膜としては、EL層が発する光を効率よく反射する金属膜等が好ましいが、例えば黒の顔料を添加した樹脂等を用いることもできる。
【0338】
第2の電極7005は可視光を透過する導電膜を用いる。可視光を透過する導電膜としては、図19(A)の第1の電極7017に用いることができる材料を適用することができる。よって、詳細な説明は第1の電極7017の説明を援用する。
【0339】
なお、第1の電極7003、又は第2の電極7005のいずれか一方は陽極として機能し、他方は陰極として機能する。陽極として機能する電極には、仕事関数の大きな物質が好ましく、陰極として機能する電極には仕事関数の小さな物質が好ましい。
【0340】
EL層7004は単数の層で構成されていても、複数の層が積層されていても良い。EL層7004としては、図19(A)のEL層7014に用いることができる構成、及び材料を適用することができる。よって、詳細な説明はEL層7014の説明を援用する。
【0341】
また、発光素子7002は第1の電極7003の端部を覆う隔壁7009を備える。隔壁7009は、図19(A)の隔壁7019に用いることができる構成、及び材料を適用することができる。よって、詳細な説明は隔壁7019の説明を援用する。
【0342】
また、図19(C)において、発光素子駆動用トランジスタ7001のソース電極またはドレイン電極は、ゲート絶縁膜7051、保護絶縁膜7052、及び絶縁膜7055に設けられたコンタクトホールを介して第1の電極7003と電気的に接続する。平坦化絶縁膜7053は、ポリイミド、アクリル、ベンゾシクロブテン、ポリアミド、エポキシ等の樹脂材料を用いることができる。また上記樹脂材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)、シロキサン系樹脂等を用いることができる。なお、これらの材料で形成される絶縁膜を複数積層させることで、平坦化絶縁膜7053を形成してもよい。平坦化絶縁膜7053の形成法は、特に限定されず、その材料に応じて、スパッタ法、SOG法、スピンコート、ディップ、スプレー塗布、液滴吐出法(インクジェット法、スクリーン印刷、オフセット印刷等)等を用いることができる。
【0343】
また、図19(C)の構造においては、フルカラー表示を行う場合、例えば発光素子7002として緑色発光素子とし、隣り合う一方の発光素子を赤色発光素子とし、もう一方の発光素子を青色発光素子とする。また、3種類の発光素子だけでなく白色素子を加えた4種類の発光素子でフルカラー表示ができる発光表示装置を作製してもよい。
【0344】
また、図19(C)の構造においては、配置する複数の発光素子を全て白色発光素子とし、且つ発光素子7002上方にカラーフィルタなどを有する封止基板を配置する構成とし、フルカラー表示ができる発光表示装置を作製してもよい。白色などの単色の発光を示す材料を形成し、カラーフィルタや色変換層を組み合わせることによりフルカラー表示を行うことができる。
【0345】
もちろん単色発光の表示を行ってもよい。例えば、白色発光を用いて照明装置を形成してもよいし、単色発光を用いてエリアカラータイプの発光装置を形成してもよい。
【0346】
また、必要があれば、円偏光板などの偏光フィルムなどの光学フィルムを設けてもよい。
【0347】
なお、発光素子の駆動を制御するトランジスタ(発光素子駆動用トランジスタ)と発光素子が電気的に接続されている例を示したが、発光素子駆動用トランジスタと発光素子との間に電流制御用トランジスタが接続されている構成であってもよい。
【0348】
なお本実施の形態で示す半導体装置は、図19に示した構成に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0349】
(実施の形態9)
本明細書に開示する半導体装置は、さまざまな電子機器(遊技機も含む)に適用することができる。電子機器としては、例えば、テレビジョン装置(テレビ、またはテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ等のカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。上記実施の形態で説明した表示装置を具備する電子機器の形態について説明する。
【0350】
図20(A)は、携帯型の情報端末であり、本体3001、筐体3002、表示部3003a、3003bなどによって構成されている。表示部3003bはタッチ入力機能を有するパネルとなっており、表示部3003bに表示されるキーボードボタン3004を触れることで画面操作や、文字入力を行うことができる。勿論、表示部3003aをタッチ入力機能を有するパネルとして構成してもよい。実施の形態1乃至実施の形態7で示したトランジスタをスイッチング素子として用い、実施の形態8に示す液晶パネルや有機発光パネルを作製して表示部3003a、3003bに適用することにより、携帯型の情報端末とすることができる。
【0351】
図20(A)に示す携帯型の情報端末は、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示する機能、カレンダー、日付又は時刻などを表示部に表示する機能、表示部に表示した情報を操作又は編集する機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、等を有することができる。また、筐体の裏面や側面に、外部接続用端子(イヤホン端子、USB端子など)、記録媒体挿入部などを備える構成としてもよい。
【0352】
また、図20(A)に示す携帯型の情報端末は、無線で情報を送受信できる構成としてもよい。無線により、電子書籍サーバから、所望の書籍データなどを購入し、ダウンロードする構成とすることも可能である。
【0353】
また、図20(A)に示す携帯型の情報端末は、2つの表示部3003a、3003bのうち、一方を取り外すことができ、取り外した場合の図を図20(B)に示している。表示部3003aもタッチ入力機能を有するパネルとし、持ち運びの際、さらなる軽量化を図ることができ、一方の手で筐体3002を持ち、他方の手で操作することができ、便利である。
【0354】
さらに、図20(B)に示す筐体3002にアンテナやマイク機能や無線機能を持たせ、携帯電話として用いてもよい。
【0355】
図20(C)は、携帯電話の一形態を示している。図20(C)に示す携帯電話機5005は、筐体に組み込まれた表示部5001の他、ヒンジ5002に取り付けられた表示パネル5003、操作ボタン5004、スピーカ、マイクなどを備えている。
【0356】
図20(C)に示す携帯電話機5005は、表示パネル5003がスライドして、表示部5001と重なるようになっており、透光性を有するカバーとしても機能する。表示パネル5003は、実施の形態8の図19(B)に示した、基板側及び基板とは反対側の面から発光を取り出す両面射出構造の発光素子を用いた表示パネルである。
【0357】
また、両面射出構造の発光素子を用いた表示パネル5003であるため、表示部5001と重ねた状態でも表示を行うことができ、使用者はどちらも表示し、どちらの表示も視認することもできる。表示パネル5003は透光性を有し、表示パネルの向こう側が透けて見えるパネルである。例えば、地図の表示を表示部5001で行い、使用者の所在地ポイントを表示パネル5003で表示することによって認識しやすい状態を提供することができる。
【0358】
また、携帯電話機5005に撮像素子を設け、テレビ電話として使用する場合、複数の相手を表示しながら、複数の相手と会話ができるため、テレビ会議なども行うことができる。例えば、表示パネル5003に一人または複数の相手の顔を表示し、さらに表示部5001にもう一人の顔を表示させることで、使用者は2人以上の顔を見ながら会話を行うことができる。
【0359】
また、表示パネル5003に表示されたタッチ入力ボタン5006を指などで触れることで、情報を入力することができる。また、電話を掛ける、或いはメールを打つなどの操作は、表示パネル5003をスライドさせて、操作ボタン5004を指などで触れることにより行うことができる。
【0360】
図20(D)は、テレビジョン装置9600の一形態を示している。テレビジョン装置9600は、筐体9601に表示部9603が組み込まれている。表示部9603により、映像を表示することが可能である。また、ここでは、CPUを内蔵したスタンド9605により筐体9601を支持した構成を示している。実施の形態1乃至実施の形態7で示したトランジスタを表示部9603に適用することにより、テレビジョン装置9600とすることができる。
【0361】
テレビジョン装置9600の操作は、筐体9601が備える操作スイッチや、別体のリモコン操作機により行うことができる。また、リモコン操作機に、当該リモコン操作機から出力する情報を表示する表示部を設ける構成としてもよい。
【0362】
なお、テレビジョン装置9600は、受信機やモデムなどを備えた構成とする。受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して有線または無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)または双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
【0363】
また、テレビジョン装置9600は、外部接続端子9604や、記憶媒体再生録画部9602、外部メモリスロットを備えている。外部接続端子9604は、USBケーブルなどの各種ケーブルと接続可能であり、パーソナルコンピュータなどとのデータ通信が可能である。記憶媒体再生録画部9602では、ディスク状の記録媒体を挿入し、記録媒体に記憶されているデータの読み出し、記録媒体への書き込みが可能である。また、外部メモリスロットに差し込まれた外部メモリ9606にデータ保存されている画像や映像などを表示部9603に映し出すことも可能である。
【0364】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【符号の説明】
【0365】
101 基板
102 酸化物絶縁膜
103a 酸化物半導体膜
103b 酸化物半導体膜
103c 酸化物半導体膜
104a 酸化物半導体膜
104b 酸化物半導体膜
104c 酸化物半導体膜
105 酸化物半導体積層体
105a 酸化物半導体膜
105b 酸化物半導体膜
105c 酸化物半導体膜
106 電極
107 ゲート絶縁膜
108 ゲート電極
109 絶縁膜
113a 酸化物半導体膜
113b 酸化物半導体膜
113c 酸化物半導体膜
114a 酸化物半導体膜
114b 酸化物半導体膜
114c 酸化物半導体膜
115 酸化物半導体積層体
115a 酸化物半導体膜
115b 酸化物半導体膜
115c 酸化物半導体膜
116 電極
117 ゲート絶縁膜
118 ゲート電極
119 絶縁膜
120 配線
123b 酸化物半導体膜
123c 酸化物半導体膜
124b 酸化物半導体膜
124c 酸化物半導体膜
125 酸化物半導体積層体
125b 酸化物半導体膜
125c 酸化物半導体膜
126 電極
127 ゲート絶縁膜
128 ゲート電極
129 絶縁膜
133b 酸化物半導体膜
133c 酸化物半導体膜
134b 酸化物半導体膜
134c 酸化物半導体膜
135 酸化物半導体積層体
135b 酸化物半導体膜
135c 酸化物半導体膜
136 電極
137 ゲート絶縁膜
138 ゲート電極
139 絶縁膜
147a ゲート絶縁膜
147b ゲート絶縁膜
148a ゲート電極
148b ゲート電極
602 ゲート配線
603 ゲート配線
616 ソース電極又はドレイン電極
628 トランジスタ
629 トランジスタ
651 液晶素子
652 液晶素子
690 容量配線
2000 結晶構造
2001 結晶構造
3001 本体
3002 筐体
3003a 表示部
3003b 表示部
3004 キーボードボタン
5001 表示部
5002 ヒンジ
5003 表示パネル
5004 操作ボタン
5005 携帯電話機
5006 タッチ入力ボタン
5300 基板
5301 画素部
5302 走査線駆動回路
5303 走査線駆動回路
5304 信号線駆動回路
6400 画素
6401 スイッチング用トランジスタ
6402 駆動用トランジスタ
6403 容量素子
6404 発光素子
6405 信号線
6406 走査線
6407 電源線
6408 共通電極
7001 発光素子駆動用トランジスタ
7002 発光素子
7003 電極
7004 EL層
7005 電極
7009 隔壁
7010 基板
7011 発光素子駆動用トランジスタ
7012 発光素子
7014 EL層
7015 電極
7016 膜
7017 電極
7019 隔壁
7020 基板
7021 発光素子駆動用トランジスタ
7022 発光素子
7024 EL層
7025 電極
7027 電極
7029 隔壁
7030 酸化物絶縁膜
7031 ゲート絶縁膜
7032 絶縁膜
7033 カラーフィルタ層
7034 オーバーコート層
7035 保護絶縁膜
7040 酸化物絶縁膜
7041 ゲート絶縁膜
7042 絶縁膜
7051 ゲート絶縁膜
7052 保護絶縁膜
7053 平坦化絶縁膜
7055 絶縁膜
9600 テレビジョン装置
9601 筐体
9602 記憶媒体再生録画部
9603 表示部
9604 外部接続端子
9605 スタンド
9606 外部メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁表面上に第1の酸化物半導体膜を形成し、
前記第1の酸化物半導体膜上に第2の酸化物半導体膜を形成した後に、加熱処理を行って、前記第1の酸化物半導体膜を第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜とし、前記第2の酸化物半導体膜を第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜とし、
前記第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜及び前記第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜を選択的にエッチングして酸化物半導体積層体を形成し、
前記酸化物半導体積層体上にゲート絶縁膜を形成し、
前記ゲート絶縁膜上にゲート電極を形成する工程を有し、
前記第1の結晶構造は非ウルツ鉱構造、YbFe型構造、YbFe型構造及びその変形型構造のいずれか一種から選ばれた結晶構造であり、
前記第2の結晶構造はウルツ鉱型の結晶構造であることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記加熱処理により、前記第1の酸化物半導体膜は、前記第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜を種として結晶成長し、前記第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜となることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜は、三方晶及び/又は六方晶構造であることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項において、
前記第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜、および前記第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜は、非単結晶であり、且つ層全体が非晶質状態ではなく、c軸配向の結晶領域を有することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項において、
前記第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜は、亜鉛、インジウム、またはガリウムを含むことを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項において、
前記加熱処理は、150度以上650度以下の加熱処理であることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項において、
前記第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜、および前記第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜は、脱水化または脱水素化されていることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項8】
絶縁表面上に第1の酸化物半導体膜を形成し、
前記第1の酸化物半導体膜上に第2の酸化物半導体膜を形成した後に、第1の加熱処理を行い、前記第1の酸化物半導体膜を第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜とし、前記第2の酸化物半導体膜を第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜とし、
前記第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜上に第3の酸化物半導体膜を形成した後に、第2の加熱処理を行い、前記第3の酸化物半導体膜を第3の結晶構造を有する酸化物半導体膜とし、
前記第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜、前記第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜および前記第3の結晶構造を有する酸化物半導体膜を選択的にエッチングして酸化物半導体積層体を形成し、
前記酸化物半導体積層体上にゲート絶縁膜を形成し、
前記ゲート絶縁膜上にゲート電極を形成し、
前記第1の結晶構造及び前記第3の結晶構造は、YbFe型構造、YbFe型構造及び非ウルツ鉱型構造のいずれか一であり、
前記第2の結晶構造は、ウルツ鉱型構造であることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項9】
請求項8において、
前記第1の酸化物半導体膜および前記第3の酸化物半導体膜はそれぞれ、前記第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜を種として結晶成長し、前記第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜および第3の結晶構造を有する酸化物半導体膜となることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項10】
請求項8または請求項9において、
前記第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜および前記第3の結晶構造を有する酸化物半導体膜は、三方晶及び/又は六方晶構造であることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項11】
請求項8乃至10のいずれか一項において、
前記第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜および前記第3の結晶構造を有する酸化物半導体膜、並びに前記第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜は、非単結晶であり、且つ層全体が非晶質状態ではなく、c軸配向の結晶領域を有することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項12】
請求項8乃至11のいずれか一項において、
前記第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜および第3の結晶構造を有する酸化物半導体膜は、亜鉛、インジウム、またはガリウムを含むことを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項13】
請求項8乃至12のいずれか一項において、
前記第1の加熱処理および前記第2の加熱処理は、150度以上650度以下の加熱処理であることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項14】
請求項8乃至13のいずれか一項において、
前記第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜乃至第3の結晶構造を有する酸化物半導体膜は、脱水化または脱水素化されていることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれか一項において、
前記第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜は、酸化亜鉛、または酸窒化物半導体であることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項16】
絶縁表面上に形成された酸化物半導体積層体と、
前記酸化物半導体積層体に接するゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜に接するゲート電極と、
前記酸化物半導体積層体に接続する一対の電極と、を有し、
前記酸化物半導体積層体は、第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜と、
前記第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜上に形成された第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜と、
前記第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜上に形成された第3の結晶構造を有する酸化物半導体膜と、を有し、
前記第1の結晶構造及び前記第3の結晶構造は、YbFe型構造、YbFe型構造及び非ウルツ鉱型構造のいずれか一であり、
前記第2の結晶構造は、ウルツ鉱型構造であることを特徴とする半導体装置。
【請求項17】
請求項16において、
前記第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜および第3の結晶構造を有する酸化物半導体膜は、三方晶及び/又は六方晶構造であることを特徴とする半導体装置。
【請求項18】
請求項16または請求項17において、
前記第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜乃至前記第3の結晶構造を有する酸化物半導体膜は、非単結晶であり、且つ非晶質領域と、c軸配向を有する結晶領域とを有することを特徴とする半導体装置。
【請求項19】
請求項16乃至18のいずれか一項において、
前記第1の結晶構造を有する酸化物半導体膜および第3の結晶構造を有する酸化物半導体膜は、亜鉛、インジウム、またはガリウムを含むことを特徴とする半導体装置。
【請求項20】
請求項16乃至19のいずれか一項において、
前記第2の結晶構造を有する酸化物半導体膜は、酸化亜鉛、または酸窒化物半導体であることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−134467(P2012−134467A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255613(P2011−255613)
【出願日】平成23年11月23日(2011.11.23)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】