説明

ヘキセン酸誘導体、その調製方法、それらを含む医薬組成物およびその治療用途

式(I)の化合物であって、式中R、R1、R2およびR3が明細書において定義されている通りである化合物、異常脂質血症、アテローム性動脈硬化症および糖尿病の治療のためのそれらの使用、それらを含む医薬組成物、ならびにこれらの化合物の調製方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常脂質血症、アテローム性動脈硬化症および糖尿病の治療に使用することができる不飽和カルボン酸誘導体に、それらを含む医薬組成物に、またこれらの化合物の調製方法に関する。本発明はまた、異常脂質血症、アテローム性動脈硬化症および糖尿病治療用の薬物を調製するためのこれらの化合物の使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
大抵の国において、循環器疾患は、主要な疾病および主要な死亡原因の1つにとどまっている。約3分の1の人が、年令60才の前に循環器疾患を発現し、女性はより低い危険性(1対10の比率)を示している。年令が進むと(65才以後は、女性も男性同様に循環器疾患にかかり易くなる)、この疾患はより一層規模が拡大する。冠状動脈疾患、脳卒中、再狭窄および末梢血管疾患などの血管性疾患は、世界的に主要な死亡および身体障害の原因にとどまっている。
【0003】
食事および生活様式が循環器疾患の発現を促進する可能性がある一方、異常脂質血症へと導く遺伝的素因は、循環器性の偶発症候および死亡における重要な因子である。
【0004】
アテローム性動脈硬化症の発現は、血漿中のリポタンパク質の異常なレベルを意味する異常脂質血症と主として関連しているように見える。この機能異常は、冠状動脈疾患、糖尿病および肥満症において特に顕われる。
【0005】
アテローム性動脈硬化症の発現を説明しようとする概念は、コレステロールの代謝に、またトリグリセリドの代謝に主として焦点を合せていた。
【0006】
しかし、Randleらの研究(Lancet、(1963)、785〜789)以来、新規な概念:グルコース−脂肪酸サイクルまたはRandleサイクル、が提案されており、この概念は、トリグリセリドおよびコレステロールに関する脂質の代謝と、グルコースの酸素化との間の平衡の調節を記述するものである。この概念に従って本発明者らは、新規なプログラムを開発しており、その目標は、脂質代謝とグルコース代謝に同時に作用する新規な化合物を見出すことである。
【0007】
フィブラートは、「ペルオキシソーム増殖活性化受容体(Peroxisome Proliferator Activated Receptors)」を介した作用機序を有するよく知られている治療剤である。これらの受容体は、肝臓における脂質代謝の主な制御因子(PPARαアイソフォーム)である。最近の10年間、チアゾリジンジオンがヒトおよび動物における強力な血糖降下剤として記述されている。チアゾリジンジオンは、他のアイソフォームであるPPARs:PPARγの強力な選択的活性化剤であると報告されている(Lehmann et al.、J.Biol.Chem.、(1995)、270、12953〜12956)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、PPARαおよびPPARγアイソフォームの強力な活性化剤である新規な種類の化合物を発見している。この活性の結果として、これらの化合物は、実質的な脂質低下および血糖降下効果を有する。
【0009】
より具体的には、本発明は、以下の式(I)のヘキセン酸由来の化合物:
【0010】
【化1】

【0011】
上式において、
1は、
O、NおよびSから選択された1個または複数のヘテロ原子を場合によって含む、飽和もしくは不飽和の単環もしくは多環の5〜8員核により場合によって置換された、かつ/またはその核に場合によって縮合した(C6〜C18)アリール基であって、前記核それ自体が場合によって置換されているものと、
場合によって、置換され、かつO、NおよびSから選択された1個または複数のヘテロ原子を含む、飽和、不飽和もしくは芳香族単環式の5〜8員複素環基と、から選択され;
2およびR3は、それぞれ水素原子を表し、または一緒になってC3〜C7アルキレン鎖を形成し;
Rは、水素原子およびC1〜C10アルキル基から選択される;
その光学異性体、ならびに医薬的に許容できるその酸または塩基との付加塩、
に関する。
【0012】
式(I)の化合物の塩を形成するために使用することができる酸は、無機酸または有機酸である。得られる塩は、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、リン酸二水素塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩およびパラ−トルエンスルホン酸塩である。
【0013】
式(I)の化合物の塩を形成するため使用することができる塩基は、無機または有機塩基である。例えば、得られる塩は、金属、特にアルカリ金属、アルカリ土類金属および遷移金属(ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムまたはアルミニウムなど)と、または塩基、例えばアンモニアまたは第二級もしくは第三級アミン(ジエチルアミン、トリエチルアミン、ピペリジン、ピペラジンまたはモルホリンなど)と、または塩基性アミノ酸と、またはオサミン(メグルミンなど)と、またはアミノアルコール(3−アミノブタノールおよび2−アミノエタノールなど)と形成される塩である。
【0014】
本発明は、特に医薬として許容できる塩を包含するが、キラルアミンにより得られる塩などの式(I)の化合物の適切な分離または晶出が可能である塩をも包含する。
【0015】
本発明は、式(I)の化合物の立体異性体をも包含し、かつあらゆる割合における立体異性体の混合物をも包含する。
【0016】
上記の式(I)の化合物は、これらの化合物のプロドラッグをも包含する。
【0017】
用語「プロドラッグ」は、患者に投与すると、生体により化学的にかつ/または生物学的に式(I)の化合物に変換される化合物を意味する。
【0018】
本発明により、用語「アリール基」は、好ましくは炭素原子6〜18個を含む、単環式または多環式の炭素環状芳香族基を意味する。挙げることができるアリール基には、フェニル、ナフチル、アントリルおよびフェナントリル基が含まれる。
【0019】
用語「アルキル」は、炭素原子1〜10個、さらにより好ましくは炭素原子1〜6個、例えば炭素原子1〜4個を含む、直鎖もしくは分岐の炭化水素をベースとする鎖を意味する。
【0020】
アルキル基の例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、2−メチルブチル、1−エチルプロピル、ヘキシル、イソヘキシル、ネオヘキシル、1−メチルペンチル、3−メチルペンチル、1,1−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、1−エチルブチル、1−メチル−1−エチルプロピル、ヘプチル、1−メチルヘキシル、1−プロピルブチル、4,4−ジメチルペンチル、オクチル、1−メチルヘプチル、2−メチルヘキシル、5,5−ジメチルヘキシル、ノニル、デシル、1−メチルノニル、3,7−ジメチルオクチルおよび7,7−ジメチルオクチルである。
【0021】
複素環基は、一般にO、SおよびNから、場合によって酸化された形態で(SおよびNの場合)、選択されるヘテロ原子を含む単環または多環基である。
【0022】
複素環を構成する少なくとも1つの単環は、1〜4個の環内へテロ原子、さらにより好ましくは1〜3個のへテロ原子を含むことが好ましい。
【0023】
本発明により、多環式複素環核は、そのそれぞれが5〜8員である、1つまたは複数の単環からなる。
【0024】
5〜8員の単環式芳香族複素環基の例は、ピリジン、フラン、チオフェン、ピロール、イミダゾール、チアゾール、イソキサゾール、イソチアゾール、フラザン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、チアジン、オキサゾール、ピラゾール、オキサジアゾール、トリアゾールおよびチアジアゾールなどのヘテロアリールである。
【0025】
挙げてもよい好ましいヘテロアリール基には、ピリジル、ピリミジニル、トリアゾリル、チアジアゾリル、オキサゾリル、チアゾリルおよびチエニル基が含まれる。
【0026】
飽和または不飽和の複素環基は、不飽和部分を有しない複素環基または上記において定義した芳香族複素環基からそれぞれ生じる1つまたは複数の不飽和部分を含む複素環基である。
【0027】
2およびR3が、一緒になってC3〜C7アルキレン鎖を表す場合、R2、R3およびそれらが結合している炭素がシクロペンテンまたはシクロヘキセンを形成することが好ましい。
【0028】
アリールおよび複素環基は、1つまたは複数の下記の基Gにより場合によって置換されている:
トリフルオロメチル;スチリル;ハロゲン原子;O、NおよびSから選択される1個または複数のヘテロ原子を含み、かつ下記において定義する1つまたは複数の基Tにより場合によって置換されている単環式、二環式もしくは三環式の芳香族複素環基;基Het−CO−、但し、Hetは、上記において定義した芳香族複素環基を表し、1つまたは複数の基Tにより場合によって置換されている;C1〜C6アルキレンジイル鎖;C1〜C6アルキレンジオキシ鎖;ニトロ;シアノ;(C1〜C10)アルキル;(C1〜C10)アルキルカルボニル;(C1〜C10)アルコキシカルボニル−A−、但し、Aは(C1〜C6)アルキレン、(C2〜C6)アルケニレンまたは結合を表す;(C3〜C10)シクロアルキル;トリフルオロメトキシ;ジ−(C1〜C10)アルキルアミノ;(C1〜C10)アルコキシ(C1〜C10)アルキル;(C1〜C10)アルコキシ;1つまたは複数の基Tにより場合によって置換されている(C6〜C18)アリール;(C6〜C18)アリール(C1〜C10)アルコキシ−(CO)n−、但し、nは0または1であり、アリールは1つまたは複数の基Tにより場合によって置換されている;(C6〜C18)アリールオキシ−(CO)n−、但し、nは0または1であり、アリールは1つまたは複数の基Tにより場合によって置換されている;(C6〜C18)アリールチオ、但し、アリールは1つまたは複数の基Tにより場合によって置換されている;(C6〜C18)アリールオキシ(C1〜C10)アルキル(CO)n−、但し、nは0または1であり、アリールは1つまたは複数の基Tにより場合によって置換されている;O、NおよびSから選択される1個または複数のヘテロ原子を含み、1つまたは複数の基Tにより場合によって置換されている飽和もしくは不飽和の単環式5〜8員複素環;1つまたは複数の基Tにより場合によって置換されている(C6〜C18)アリールカルボニル;(C6〜C18)アリールカルボニル−B−(CO)n−、但し、nは0または1であり、Bは(C1〜C6)アルキレンまたは(C2〜C6)アルケニレンを表し、アリールは1つまたは複数の基Tにより場合によって置換されている;(C6〜C18)アリール−C−(CO)n−、但し、nは0または1であり、Cは(C1〜C6)アルキレンまたは(C2〜C6)アルケニレンを表し、アリールは1つまたは複数の基Tにより場合によって置換されている;1つまたは複数の基Tにより場合によって置換されている、上記において定義した飽和もしくは不飽和複素環と縮合した(C6〜C18)アリール;(C2〜C10)アルキニル;Tはハロゲン原子、(C6〜C18)アリール、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、(C1〜C6)アルコキシ(C6〜C18)アリール、ニトロ、カルボキシル、(C1〜C6)アルコキシカルボキシルから選択され、Tは、それが飽和もしくは不飽和複素環を置換する場合、オキソを表してもよく、あるいはTは(C1〜C6)アルコキシカルボニル(C1〜C6)アルキル、またはnが0または1である(C1〜C6)アルキルカルボニル((C1〜C6)アルキル)n−を表す。
【0029】
用語「ハロゲン原子」は、塩素、臭素、ヨウ素またはフッ素原子を意味する。
【0030】
単環式、二環式もしくは三環式の芳香族複素環基は、一般にO、SおよびNから選択される1個または複数のヘテロ原子を、場合によって酸化された形態で(SおよびNの場合)、含むことが好ましい。複素環を構成する少なくとも1つの単環は、1〜4個の環内のへテロ原子、より好ましくは1〜3個のへテロ原子を含むことが好ましい。
【0031】
複素環は、それぞれが5〜8員環である1つまたは複数の単環からなることが好ましい。
【0032】
5〜8員単環式へテロアリールの例は、特に、ピリジン、フラン、チオフェン、ピロール、イミダゾール、チアゾール、イソキサゾール、イソチアゾール、フラザン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、チアジン、オキサゾール、ピラゾール、オキサジアゾール、トリアゾールおよびチアジアゾールである。
【0033】
それぞれの単環が5〜8員である二環式へテロアリールの例は、インドリジン、インドール、イソインドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インダゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾフラザン、ベンゾチオフラザン、プリン、キノリン、イソキノリン、シンノリン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン、ナフチリジン、ピラゾロトリアジン(ピラゾロ−1,3,4−トリアジンなど)、ピラゾロピリミジンおよびプテリジンから選択される。
【0034】
挙げてもよい好ましいヘテロアリール基には、キノリル、ピリジル、ベンゾチアゾリルおよびトリアゾリル基が含まれる。
【0035】
それぞれの単環が5〜8員である三環式へテロアリールは、例えば、アクリジン、フェナジンおよびカルバゾールから選択される。
【0036】
用語「アルキレンジイル鎖」は、上記において定義したアルキル基から水素原子を取り除くことにより得られる直鎖もしくは分岐の脂肪族炭化水素をベースとするタイプの二価基を意味する。アルキレンジイル鎖の好ましい例は、kが2、3、4、5および6から選択される整数を表す鎖−(CH2k−、ならびに>C(CH32および−CH2−C(CH32−CH2−鎖である。アルキレンジオキシ鎖は−O−Alk−O−鎖を意味し、但し、Alkは直鎖もしくは分岐アルキレンを表しており、アルキレンは、アルキレンジイルについて上記において定義している通りであると理解される。好ましい意味の−O−Alk−O−は、例えば、−O−C(CH32−O−または−O−CH2−CH2−O−である。
【0037】
用語「アルケニレン」は、1つまたは複数のエチレン性不飽和部分、好ましくは1〜3箇所のエチレン性不飽和部分を含有する不飽和アルキレン鎖を定義する。アルキレン鎖の例は、−CH=CH−または−CH=CH−CH=CH−である。
【0038】
3〜C10シクロアルキル基の例は、特にシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルまたはシクロデシル基である。
【0039】
飽和もしくは不飽和の単環式5〜8員複素環は、芳香族複素環の飽和もしくは不飽和の誘導体である。
【0040】
より詳細にはモルホリン、ピペリジン、チアゾリジン、オキサゾリジン、テトラヒドロチエニル、テトラヒドロフリル、ピロリジン、イソキサゾリジン、イミダゾリジンまたはピラゾリジンを挙げてもよい。
【0041】
用語「アルキニル」は、アセチレンタイプの1つまたは複数の不飽和部分を含有する脂肪族炭化水素をベースとする基を意味する。好ましい例は、H3−C≡C−[原文通り]である。
【0042】
第1の好ましい本発明の化合物群は:
1が、O、NおよびSから選択された0〜4個のヘテロ原子を含む、単環式の炭素環もしくは複素環5〜8員核により場合によって置換された、かつ/またはその核に縮合した(C6〜C18)アリール基、好ましくは(C6〜C10)アリールであって、その核はそれ自体場合によって置換されているものを表し、
2およびR3が、それぞれ水素原子を表し、または一緒になってC3〜C7アルキレン鎖を形成し、
Rが、水素原子およびC1〜C10アルキル基から選択される、
化合物からなる。
【0043】
他のより一層好ましい本発明の化合物群は、R1が置換された(C6〜C10)アリール基を表す場合、そのアリール核が、下記のものから選択される1つまたは複数の基Gによって置換されている化合物からなる:
トリフルオロメチル;ハロゲン原子;スチリル;O、NおよびSから選択される1個または複数のヘテロ原子を含み、かつ1つまたは複数の、下記において定義する基Tにより場合によって置換されている単環式、二環式もしくは三環式芳香族複素環基;基Het−CO−、但し、Hetは、1つまたは複数の基Tにより場合によって置換されている、上記において定義した芳香族複素環基を表す;C1〜C6アルキレンジイル鎖;C1〜C6アルキレンジオキシ鎖;アミノ;ニトロ;シアノ;(C1〜C10)アルキル基;(C2〜C6)アルキニル基;(C1〜C10)アルキルカルボニル基;(C1〜C10)アルコキシカルボニル−A−基、但し、Aは(C1〜C6)アルキレン、(C2〜C6)アルケニレン基または結合を表す;(C3〜C10)シクロアルキル基;トリフルオロメトキシ基;ジ(C1〜C10)アルキルアミノ基;(C1〜C10)アルコキシ(C1〜C10)アルキル基;(C1〜C10)アルコキシ基;1つまたは複数の基Tにより場合によって置換されている(C6〜C18)アリール基;(C6〜C18)アリール(C1〜C10)アルコキシ−(CO)n−基、但し、nは0または1であり、アリールは1つまたは複数の基Tにより場合によって置換されている;(C6〜C18)アリールオキシ(CO)n−基、但し、nは0または1であり、アリールは1つまたは複数の基Tにより場合によって置換されている;nが0または1である(C6〜C18)アリールオキシ(CO)n−(C2〜C6)アルケニル基:(C6〜C18)アリールチオ基、但し、アリールは1つまたは複数の基Tにより場合によって置換されている;(C6〜C18)アリールオキシ(C1〜C10)アルキル(CO)n−、但し、nは0または1であり、かつアリールは1つまたは複数の基Tにより場合によって置換されている;O、NおよびSから選択される1個または複数のヘテロ原子を含み、1つまたは複数の基Tにより場合によって置換されている飽和もしくは不飽和の単環式5〜8員複素環;1つまたは複数の基Tにより場合によって置換されている(C6〜C18)アリールカルボニル基;(C6〜C18)アリールカルボニル−B−(CO)n−基、但し、nは0または1であり、Bは(C1〜C6)アルキレンまたは(C2〜C6)アルケニレンを表し、アリールは1つまたは複数の基Tにより場合によって置換されている;(C6〜C18)アリール−C−(CO)n−基、但し、nは0または1であり、Cは(C1〜C6)アルキレンまたは(C2〜C6)アルケニレンを表し、アリールは1つまたは複数の基Tにより場合によって置換されている;1つまたは複数の基Tにより場合によって置換されている、上記において定義した飽和もしくは不飽和複素環に縮合した(C6〜C18)アリール基;(C2〜C10)アルキニル基;Tはハロゲン原子、(C6〜C18)アリール、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、ニトロ、カルボキシル、(C1〜C6)アルコキシカルボキシルから選択され、Tは、それが飽和もしくは不飽和複素環を置換する場合、オキソを表すことができ、あるいは別法としてTは(C1〜C6)アルコキシカルボニル(C1〜C6)アルキル、またはnが0もしくは1である(C1〜C6)アルキルカルボニル((C1〜C6)アルキル)n−を表す。
【0044】
1がC6〜C10アリールである場合、R1はフェニルを表すのがより好ましい。
【0045】
他の好ましい本発明の化合物群は、R2およびR3が、一緒になってC3〜C7アルキレン鎖を表し、より好ましくはR2およびR3が、一緒になってアルキレン鎖−(CH23−または−(CH24−を表す化合物からなる。
【0046】
他のより一層好ましい本発明の化合物群は、R1が、上記において定義した置換された、かつ/または縮合したアリールであり、R2およびR3が、一緒になってC3〜C7アルキレン鎖を表し、かつより好ましくはR2およびR3が、一緒になってアルキレン鎖−(CH23−または−(CH24−を表し、Rが水素原子である化合物からなる。
【0047】
他の好ましい本発明の化合物群は、R2およびR3がそれぞれ、水素原子を表す化合物からなる。
【0048】
より特に、式(I)の好ましい化合物は、
・2−(4’−メトキシビフェニル−4−イルオキシ)ヘキサ−5−エン酸(enoic acid)
・2−(4’−フルオロビフェニル−4−イルオキシ)ヘキサ−5−エン酸;
・2−(4’−フェノキシフェノキシ)ヘキサ−5−エン酸;
・4−シクロヘキサ−1−エニル−2−[4−(2−メチルチアゾール−4−イル)フェノキシ]ブタン酸;
・4−シクロヘキサ−1−エニル−2−[4−(トリフルオロメチル)フェノキシ]ブタン酸;
・4−シクロヘキサ−1−エニル−2−(4’−メトキシ−1,1’−ビフェニル−4−イルオキシ)ブタン酸;
・2−[4−(5−クロロチオフェン−2−イル)フェノキシ]−4−シクロヘキサ−1−エニルブタン酸;
・2−(4−クロロフェノキシ)−4−シクロヘキサ−1−エニルブタン酸;
・2−(4−ベンゾ[b]チオフェン−2−イルフェノキシ)−4−シクロヘキサ−1−エニルブタン酸;
・2−(4−ベンゾ[b]チオフェン−3−イルフェノキシ)ヘキサ−5−エン酸;
・2−(3’−フルオロビフェニル−4−イルオキシ)ヘキサ−5−エン酸;
・2−(4−トリフルオロメチルフェノキシ)ヘキサ−5−エン酸;
・2−[4−(2−メチルチアゾール−4−イル)フェノキシ]ヘキサ−5−エン酸;
・2−(2’,5’−ジメチルビフェニル−4−イルオキシ)ヘキサ−5−エン酸;
・2−(4’−トリフルオロメトキシビフェニル−4−イルオキシ)ヘキサ−5−エン酸;
・2−(4’−クロロビフェニル−4−イルオキシ)ヘキサ−5−エン酸;および
・2−[3−(キノリン−2−イルメトキシ)フェノキシ]ヘキサ−5−エン酸
から選択される。
【0049】
本発明はまた、医薬組成物であって、上記において定義した式(I)の医薬的に有効な量の少なくとも1種の化合物を1種または複数の医薬的に許容できる賦形剤と組み合わせて含む組成物にも関する。
【0050】
これらの組成物は、直ちに放出されるもしくは制御され放出される錠剤、ゲルカプセル剤または顆粒の形態で経口的に、注射液の形態で静脈内に、貼着性経皮デバイスの形態で経皮的に、あるいは溶液、クリームまたはゲルの形態で局所的に、投与することができる。
【0051】
経口投与用固体組成物は、有効成分に賦形剤および適切な場合、結合剤、崩壊剤、滑剤、着色剤またはフレーバー増強剤を添加することによって、またこの混合物を錠剤、被覆錠剤、顆粒、粉末またはカプセル剤として形成することによって調製する。
【0052】
賦形剤の例には、ラクトース、コーンスターチ、スクロース、グルコース、ソルビトール、結晶性セルロースおよび二酸化ケイ素が含まれ、また結合剤の例にはポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルエーテル)、エチルセルロース、メチルセルロース、アラビアゴム、トラガカントゴム、ゼラチン、セラック、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、クエン酸カルシウム、デキストリンおよびペクチンが含まれる。滑剤の例には、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール、シリカおよび硬化植物油が含まれる。着色剤は、薬物における使用が許可されている任意のものとすることができる。フレーバー増強剤の例には、ココア粉末、ハーブの形態のミント、芳香粉末、油の形態のミント、ボルネオールおよびシナモン粉末が含まれる。錠剤または顆粒を糖、ゼラチンなどで適切に被覆することができるのは明らかである。
【0053】
有効成分として本発明の化合物を含む注射液形態物は、適切な場合、前記化合物をpH調整剤、緩衝剤、懸濁剤、可溶化剤、安定剤、等張剤および/または防腐剤と混合することによって、またこの混合物を標準的方法により静脈内、皮下または筋肉内注射用の形態に変換することによって調製する。適切な場合、得られた注射液形態物は、標準的方法により凍結乾燥することができる。
【0054】
懸濁剤の例には、メチルセルロース、ポリソルベート80、ヒドロキシエチルセルロース、アラビアゴム、粉末トラガカントゴム、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよびポリエトキシ化ソルビタンモノラウレートが含まれる。
【0055】
可溶化剤の例には、ポリオキシエチレンで凝固させたヒマシ油、ポリソルベート80、ニコチンアミド、ポリエトキシ化ソルビタンモノラウレートおよびヒマシ油脂肪酸のエチルエステルが含まれる。
【0056】
さらに、安定剤は、亜硫酸ナトリウム、メタ亜硫酸ナトリウムおよびエーテルを包含し、一方防腐剤はp−ヒドロキシ安息香酸メチル、p−ヒドロキシ安息香酸エチル、ソルビン酸、フェノール、クレゾールおよびクロロクレゾールを包含する。
【0057】
本発明はまた、異常脂質血症、アテローム性動脈硬化症および糖尿病の予防用のまたは治療用の薬物の調製のための、本発明の式(1)の化合物の使用にも関する。
【0058】
PPAR活性の変調に起因するか、それに関連した疾患、障害または状態の予防または治療を意図した、本発明の化合物の有効な投与用量および薬量学的量は、多数の因子に応じて、例えば、阻害因子の特性、患者の背丈、所望される治療の目標、治療しようとする病状の特性、使用する特定の医薬組成物、ならびに治療する医師の観察および結論に応じて、決まる。
【0059】
例えば、経口投与例えば錠剤またはゲルカプセル剤の場合、式(I)の化合物の可能な適切な用量は、有効物質について1日当り約0.1mg/体重kgと約100mg/体重kgの間、好ましくは1日当り約0.5mg/体重kgと約50mg/体重kgの間、より好ましくは1日当り約1mg/体重kgと約10mg/体重kgの間、またより好ましくは1日当り約2mg/体重kgと約5mg/体重kgの間、である。
【0060】
用いることができ、かつ上述の1日当りの経口投与量範囲を例示するために、代表的な体重10kgおよび100kgを考えると、式(I)の化合物の適切な投与量は、好ましい化合物を含む有効物質について1日当り約1〜10mgと1000〜10000mgの間、好ましくは1日当り約5〜50mgと500〜5000mgの間、より好ましくは1日当り約10.0〜100.0mgと100.0〜1000.0mgの間、またより一層好ましくは1日当り約20.0〜200.0mgと約50.0〜500.0mgの間、であろう。
【0061】
これらの投与量範囲は、所与の患者についての1日当り有効物質の合計量を表す。ある用量を投与する1日当りの投与回数は、その異化および排泄速度を反映する有効物質の半減期および患者において到達される、かつ治療の有効性のため要求される血漿中のまたは他の体液中の前記有効物質の最低限レベルおよび最適レベルなどの薬物動態学的および薬理学的因子に応じて広い割合で変動させることができる。
【0062】
1日当り投与回数、ならびに1回の投与摂取において投与すべき有効物質の量を決定する際には、多くの他の因子をも考慮に入れるべきである。これらの他の因子の中には、少なからず、治療される患者の個別的な応答性がある。
【0063】
本発明はまた、式(I)の化合物の一般的調製方法であって、下記の反応スキームにより、式(II)の化合物を式R1−OHのアルコールと反応させることによる方法にも関する。:
【0064】
【化2】

【0065】
(上記反応スキーム中、R1、R2、R3およびRは、式(I)について上記において定義した通りであり、またXは−OHまたは塩素などのハロゲン原子を表す。) Xが−OHを表す場合、この反応は、直鎖もしくは環状エーテル(例えばジエチルエーテル、ジtert−ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテルまたはジメトキシエタンなど)のような、あるいは別法としてジオキサンまたはテトラヒドロフランのような極性非プロトン性溶媒中で行うことが好ましく、テトラヒドロフランおよびジメトキシエタンが好ましい。
【0066】
本発明の好ましい一実施形態により、アルコールR1−OHに対する式(II)の化合物のモル比は、0.9と1.5の間の範囲であり、ほぼ化学量論的比率である0.9と1.3の間、また好ましくは0.9と1.1の間、が望ましい。
【0067】
反応を促進するため、低級アルキル(すなわちC1〜C6アルキル)アゾジカルボン酸塩、例えばアゾジカルボン酸エチルなどのカップリング剤を媒質中に添加することが望ましい。
【0068】
反応媒質中に存在する場合、カップリング剤は、式(II)の化合物の最初の量に対して、1〜5当量の割合で、さらにより好ましくは1〜3当量の割合で、例えば1〜2モル当量の割合で、媒質中に混和する。
【0069】
好ましくは、トリフェニルホスフィンなどのホスフィンを反応媒質中に導入することも推奨される。この場合、式(II)の化合物に対するトリフェニルホスフィンのモル比は1と5の間、例えば1と3の間、また特に1と2の間、に維持することが好ましい。
【0070】
Xがハロゲン原子を表す場合、溶媒はケトン型のものが好ましく、また反応媒質中に塩基、好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムから選択される無機塩基を導入する。
【0071】
通常、塩基の式(II)の化合物に対するモル比は1と5の間、またより一層良好には1と3の間の範囲である。
【0072】
Xがハロゲン原子を表す場合、反応温度は一般に10℃と120℃の間、例えば60℃と100℃の間、またより一層好ましくは70℃と90℃の間の範囲である。
【0073】
Xが−OHを表す場合、反応温度は一般に−15℃と50℃の間の範囲であり、カップリング剤の存在下において−15℃と10℃の間の温度が望ましいと理解される。
【0074】
RがHを表す式(I)の化合物は、有利には、対応するRがC1〜C10アルキル基を表す式(I)の化合物の鹸化により得ることができる。この鹸化は、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムから選択される無機塩基などの塩基の作用により行うことができる。使用される塩基のモル量は、選択した塩基の強さに応じて、一般に1〜20当量、また好ましくは1〜12当量の範囲である。
【0075】
より詳細には、水酸化リチウム(LiOH)の場合、反応媒質中に存在する式(I)のエステルの量に対して8〜12当量の塩基を一緒に反応させるのが好ましい。
【0076】
この反応は、極性プロトン型の溶媒中で、またより好ましくは、エタノールと水の混合物またはメタノールと水の混合物などの低級(C1〜C4)アルカノールと水の混合物中で、行うことが好ましい。
【0077】
反応温度は35℃と120℃の間、さらにより好ましくは40℃と100℃の間の範囲であるのが有利である。
【0078】
以下の方法A〜Dは、上述の一般的方法の変形である。
【0079】
方法A
XがOHを表す場合、本発明による一般的な調製方法の好ましい実施形態は、下記の反応スキームに従う:
【0080】
【化3】

【0081】
上記反応スキーム中、R1、R2およびR3は、式(I)について上記において定義した通りであり、R’は、水素を除く、上記において定義したRを表し、化合物(IIOH)は、Xが−OHを表す式(II)の化合物であり、化合物(IR')は、R’がアルキル基を表す式(I)の化合物であり、また化合物(IOH)は、Rが水素を表す式(I)の化合物である。THFはテトラヒドロフランを意味し、PPh3はトリフェニルホスフィンを意味し、DEADはアゾジカルボン酸ジエチルを意味し、「room temp.」は室温を意味し、EtOHはエタノールであり、またKOHは水酸化カリウムである。
【0082】
上記の反応スキームにおいて、鹸化反応ステップ(Ab)は随意的であり、すなわち所望の式(I)の化合物がカルボン酸である(R=H)場合にのみ行われる。
【0083】
この実施形態およびそれにより得られる式(I)の化合物は、実施例1および2において例証している。
【0084】
方法B
本発明による方法の1つの実施形態により、R1が上記において定義した基Gにより置換されたアリール基を表す式(I)の化合物の特別な場合である式(IG)の化合物は、有利には、下記の反応スキームにより調製することができる:
【0085】
【化4】

【0086】
上記反応スキーム中:
− R2およびR3は、式(I)について上記において定義した通りであり、
− R’は、水素を除く、上記において定義したRを表し、
− R11は、式(IV)の誘導体と反応性であり、かつ特に臭素もしくはヨウ素原子およびCF3SO3−基から選択され、臭素およびヨウ素が好ましい反応性基である基を有する、上記において定義したR1を表し、
− R12は、式(IV)の誘導体と反応性である基が、基Gにより置換されているR11を表す。
【0087】
上記の反応スキームにおいて示すように、鹸化ステップ(Bb)は随意的なものである。式(IG,R')および式(IG,H)の化合物は、R1が基Gにより置換されたアリール基を表す式(I)の化合物の特別な場合である、一組の式(IG)の化合物を形成する。
【0088】
したがって、式(I)の化合物であって、R1が、O、NおよびSから選択される1個または複数のヘテロ原子を含み、かつ場合によって上記において定義した1つまたは複数の基Tにより置換されている単環式、二環式もしくは三環式の芳香族複素環基により置換されたアリールを表し、あるいは別法としてR1が、1つまたは複数の基Tにより場合によって置換されているアリールを表す化合物は、R1が塩素、臭素またはヨウ素などのハロゲン原子によって置換されたアリールを表す対応する式(I)の化合物を、上記の反応スキームにおいて定義した式(IV)の
化合物であって、GがO、NおよびSから選択される1個または複数のヘテロ原子を含み、かつ場合により上記において定義した1つまたは複数の基Tにより置換されている単環式、二環式もしくは三環式の芳香族複素環基を表しており、その場合、最終化合物においてR1は、このような複素環基により置換されたアリールを表す、あるいは別法として、Gが1つまたは複数の基Tにより、場合によって置換されているアリールを表しており、その場合、最終化合物においてR1は、それ自体1つまたは複数の基Tにより場合によって置換されているアリール基により置換されたアリールを表す、化合物と反応させることにより調製することができる。
【0089】
反応媒質中に存在する式(III)の化合物の量に対して1.5〜5当量の、また好ましくは1.5〜3当量の、式(IV)の化合物を混和するのが有利である。
【0090】
この反応は、パラジウム0錯体および塩基の存在下で、極性非プロトン性溶媒中で行うのが好ましい。
【0091】
上記において定義したものなどの直鎖または環状エーテルが、より特に溶媒として適している。ジメトキシエタンが好ましい。
【0092】
使用する塩基は、任意の上述の無機塩基であり、炭酸ナトリウムが有利である。例えば、式(III)化合物の量に対して1.5〜5当量の、また好ましくは1.5〜3当量の、塩基を反応媒質中に導入することができる。
【0093】
好ましい一実施形態により、塩基の量と、式(IV)の化合物の量とは等しい。使用するパラジウム0錯体の量は触媒的である。通例では、0.001〜1当量の、また好ましくは0.01〜0.1当量の、前記錯体を使用する。使用することができるパラジウム0錯体の一例は、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム0である。
【0094】
反応温度は50℃と120℃の間、また好ましくは70℃と90℃の間の範囲であるのが有利である。
【0095】
この実施形態およびそれがもたらす化合物は、実施例3および4において例証する。
【0096】
方法C
上記において定義した式(II)の出発化合物において、Xがハロゲン、例えば塩素原子を表す場合、本発明による方法の好ましい一実施形態は、下記の反応スキームを採用する:
【0097】
【化5】

【0098】
上記反応スキーム中、R1、R2およびR3は、式(I)について上記において定義した通りであり、R’は、水素を除いた、上記において定義したRを表し、化合物(IICl)は、Xが塩素原子を表す式(II)の化合物であり、化合物(IR')は、Rがアルキル基を表す式(I)の化合物であり、また化合物(IOH)は、Rが水素を表す式(I)の化合物である。式(IR')および(IOH)の1組の化合物は一緒になって、1組の本発明による式(I)の化合物を形成する。MIBKはメチルイソブチルケトンを意味し、K2CO3は炭酸カリウムを意味し、MeOHはメタノールであり、またLiOHは水酸化リチウムである。
【0099】
上記の反応スキームにおいて、鹸化反応ステップ(Cb)は随意的なものであり、すなわち所望の式(I)の化合物がカルボン酸である(R=H)場合にのみ実行される。
【0100】
この実施形態およびそれにより得られる式(I)の化合物は、実施例5および6において例証している。
【0101】
方法D
式(I)の化合物は、Wangブロモタイプの樹脂上にグラフトした化合物を使用する合成経路によって、下記の反応スキームにより調製することもできる:
【0102】
【化6】

【0103】
上記反応スキーム中、R1、R2およびR3は、一般式(I)について定義した通りである。
【0104】
上記の反応スキームにおいて、極性非プロトン性溶媒、例えばジメチルホルムアミド中で、α−ヒドロキシ酸および炭酸セシウムの混合物を樹脂グラフト化α−ヒドロキシ酸誘導体が得られるように樹脂の懸濁液で処理する。
【0105】
次いでこの誘導体に、4,4−ジメチル−2−(トリフェニルホスファニル)(1,2,5)−チアジアゾリジンなどのホスフィンの存在下で、アルコールR1−OHを添加する。通例室温で、できれば1〜数時間の範囲にある時間の間、例えば18時間、反応が行われる。
【0106】
次いで標準的技術により、例えばトリフルオロ酢酸を使用し、樹脂からこの化合物を脱離させて、上記の反応スキームの最終ステップで得られる式(IOH)のカルボン酸をもたらす。このカルボン酸は、Rが水素を表す式(I)の化合物の特別の場合であり、それ自体知られている任意の方法により、Rが、水素を除いた、本発明による1組の化合物について上記に示した定義付けを有する式(I)の化合物に、場合によって容易に変換することができる。
【0107】
この実施形態およびそれにより得られる式(I)の化合物は、実施例7において例証している。
【0108】
上述の方法において、調製することを所望される式(I)の化合物中に存在する種々の置換基に応じて、操作条件は実質的に変動できることを理解すべきである。このような変動および適応は、例えば科学的総説、特許文献、ケミカルアブストラクトおよびインターネットを含めたコンピュータデータベースから、当分野の技術者には容易に利用可能である。同様に、出発物質は市販されているか、あるいは上述の種々の出版物およびデータベース中に当分野の技術者が容易に見出すことができる合成により入手可能であるかいずれかである。
【0109】
式(I)の化合物の光学異性体は、一方では、式(I)の化合物のラセミ混合物から異性体を分離し、かつ/または精製するための、当分野の技術者に知られている標準的技術により得ることができる。この光学異性体は、光学的に活性な出発化合物の立体選択的合成により直接得ることもできる。
【0110】
以下の実施例は、決して限定することなく本発明を例証するものである。これらの実施例において、またプロトン核磁気共鳴(300MHz NMR)データにおいて、次の略号を使用している:一重線にはs、二重線にはd、三重線にはt、四重線にはq、八重線にはo、および複合多重線にはm。化学シフトδはppmで表している。「M.p.」は「融点」を意味する。
【0111】
実施例
【0112】
実施例1:2−[(4−トリフルオロメチルフェニル)オキシ]−4−シクロヘキシ−1−エン−1−イルブタン酸エチルの調製方法
1.1g(0.0071モル)の4−トリフルオロメチルフェノールと、1.5g(0.0071モル)の4−シクロヘキシ−1−エン−1−イル−2−ヒドロキシブタン酸エチル(B.B.Snider、J.Org.Chem.、(1984)、1688〜1691)とを70mlのテトラヒドロフラン(THF)中における2.8g(0.0071モル+50%)のトリフェニルホスフィンの溶液に添加し、また0℃で7mlのTHF中の1.8g(0.0071モル+50%)のアゾジカルボン酸ジエチル(DEAD)の溶液を添加する。この溶液を撹拌しながら、そのまま室温にもどし、かつ1晩中反応させる。この反応媒質を濃縮し、1N水酸化ナトリウム(NaOH)溶液に溶解し、かつ酢酸エチル(EtOAc)で抽出する。抽出液を飽和塩化ナトリウム(NaCl)溶液で洗浄し、次いで硫酸ナトリウム(Na2SO4)上で乾燥する。濃縮した後、得られた油を150mlのエーテル/へキサン混合物中に溶解する。白色沈殿(O=PPh3)が生成し、吸引濾過によりそれを除去する。
【0113】
再び、この溶液を濃縮する。生成物をフラッシュクロマトグラフィー(98/2ヘプタン/酢酸エチル)により精製する。
【0114】
2.0gの、無色油が得られる。
収率=80%
1H NMR(CDCl3,300MHz):1.45(3H,t,J=7Hz);1.71〜1.87(4H,m);2.15〜2.35(8H,m);4.39〜4.46(2H,q,J=7Hz);4.84(1H,t,J=6Hz);5.61(1H,s);7.14(2H,d,J=8Hz);7.74(2H,d,J=8Hz)。
【0115】
実施例2:4−シクロヘキシ−1−エニル−2−[4−(トリフルオロメチル)フェノキシ]ブタン酸の調製方法
上記において得られたエステル(1.8g;0.005モル)を20mlのエタノール中に溶解する。1.7gの85%水酸化カリウム(KOH)(5当量)を添加した後、この溶液を30分間還流させる。10mlの水を添加した後.還流を4時間継続する。この反応媒質を濃縮する。得られた油を水に溶解し、エーテルで洗浄する。水性相を1N塩酸(HCl)で酸性にし、次いで酢酸エチルで抽出する。抽出液をNa2SO4上で乾燥し、次いで濃縮する。得られた固体を50mlのヘプタンから再結晶させ、1.1gの白色固体が得られる。
収率=75%
m.p.:109〜111℃
1H NMR(CDCl3,300MHz):1.36〜1.76(4H,m);1.76〜2.02(4H,m);4.02〜2.29(4H,m);4.68(1H,m);5.39(1H,s);6.94(2H,d,J=8.3Hz);7.54(2H,d,J=8.3Hz)。
質量分析:(ES)M−H=327.2
【0116】
実施例3:2−[4−(5−クロロチオフェン−2−イル)−フェノキシ]−4−シクロヘキシ−1−エニルブタン酸エチルの調製方法
0.18g(0.04当量)のPd(PPh34と、次いで1.2g(0.0084モル)の5−クロロ−2−チオフェンホウ素酸とを20mlのジメトキシエタン中の1.4g(0.0038モル)の2−[(4−ブロモフェニル)オキシ]−4−シクロヘキシ−1−エン−1−イルブタン酸エチルの溶液に添加する。室温で、4.2mlの2M炭酸ナトリウム溶液を添加する。この反応混合物を1晩中撹拌し、次いで2時間還流させる。室温まで冷却した後、この混合物を水中に溶解し、酢酸エチルで抽出する。抽出液を1N水酸化ナトリウムで洗浄し、次いで飽和NaCl水溶液で洗浄し、最後にNa2SO4上で乾燥する。濃縮した後、得られた黒色油をフラッシュクロマトグラフィー(95/5ヘプタン/酢酸エチル)により精製する。1.1gの濃厚な油が得られる。
収率=73%
1H NMR(CDCl3,300MHz):1.48(3H,t,J=7Hz);1.78〜1.88(4H,m);2.18〜2.38(8H,m);4.42〜4.49(2H,q,J=7Hz);4.83(1H,t,J=6Hz);5.56(1H,s);7.07〜7.18(4H,m);7.61(2H,d,J=8Hz)。
【0117】
実施例4:2−[4−(5−クロロチオフェン−2−イル)−フェノキシ]−4−シクロヘキシ−1−エニルブタン酸の調製方法
上記の実施例3で得られたエステル(1.1g、0.0027モル)を25mlのエタノールに溶解する。0.5g(0.0081モル)の85%水酸化カリウムを添加し、混合物を30分間還流させる。12.5mlの水を添加し、さらに4時間還流を継続する。室温まで冷却した後、反応媒質を濃縮し、水に溶解し、かつエーテルで洗浄する。水性相を1N HClで酸性にする。生成した白色沈殿をジクロロメタンで抽出し、Na2SO4上で乾燥する。136〜138℃で融解する0.9gのクリーム色固体が得られる。
収率=90%
1H NMR(CDCl3,300MHz):1.40〜1.73(4H,m);1.81〜2.03(4H,m);2.03〜2.28(4H,m);4.66(1H,m);5.41(1H,s);6.76〜7.02(4H,m);7.34〜7.51(2H,m)。
【0118】
実施例5:4−シクロヘキシ−1−エン−1−イル−2−[(4’−メトキシ−1,1’−ビフェニル−4−イル)オキシ]ブタン酸メチルの調製方法
1.9g(0.0138モル)の炭酸カリウムを30mlの3−メチル−2−ペンタノン(MIBK)中の1.4g(0.0069モル)の4’−メトキシ−1,1’−ビフェニル−4−オールの溶液に添加する。この混合物を30分間還流させ、次いで10mlの3−メチル−2−ペンタノン中の1.5g(0.0069モル)の2−クロロ−4−シクロヘキシ−1−エン−1−イルブタン酸メチルの溶液を添加する。還流をさらに6時間継続する。室温まで冷却した後、反応媒質を濃縮し、水に溶解し、かつ酢酸エチルで抽出する。抽出液を1N水酸化ナトリウムで洗浄し、次いで飽和NaCl水溶液で洗浄し、Na2SO4上で乾燥する。濃縮した後、濃厚な油が得られ、それをフラッシュクロマトグラフィー(95/5ヘプタン/酢酸エチル)により精製する。1.1gの油性生成物が、このようにして得られる。
収率=42%
1H NMR(CDCl3,300MHz):1.43〜1.47(4H,m);1.88〜2.10,8H,m);3.66(3H,s);3.75(3H,s);4.57(1H,t,J=6Hz);5.36(1H,s);6.83〜6.89(4H,m);7.36〜7.41(4H,m)。
【0119】
実施例6:4−シクロヘキシ−1−エニル−2−(4’−メトキシ−1,1’−ビフェニル−4−イルオキシ)ブタン酸の調製方法
上記の実施例5において得られたエステル(1.0g、0.0026モル)を20mlのメタノールに溶解する。室温で26mlの1M LiOH・H2Oの溶液を添加する。この乳状懸濁液を1時間還流させる。反応媒質を濃縮した後、得られた白色固体を1/2HClに溶解する。この懸濁液を30分間撹拌し、次いで酢酸エチルで抽出する。濃縮した後、152〜154℃の融点を有する0.6gの白色固体が得られる。
収率=63%
1H NMR(CDCl3,300MHz):1.42〜1.74(4H,m);1.82〜2.04(4H,m);2.04〜2.36(4H,m);3.83(3H,s);4.68(1H,m);5.42(1H,s);6.95(4H,m);7.46(4H,m)。
【0120】
実施例7:4−シクロヘキシ−1−エニル−2−[4−(2−メトキシカルボニルビニル)フェノキシ]ブタン酸の調製方法
水中における炭酸セシウムの20%溶液(23ml、14.4ミリモル)をメタノール(200ml)中の4−シクロヘキシ−1−エニル−2−ヒドロキシ酪酸(7g、38ミリモル)の溶液に添加する。10分間撹拌した後、溶媒を蒸発除去し、残渣をトルエン中に溶解し、次いでトルエンを蒸発除去する。この残渣をジメチルホルムアミド(DMF)(125ml)中に溶解し、次いでDMF(125ml)中のWangブロモ樹脂(23.7g、18ミリモル)の懸濁液を添加する。この混合物を60℃で18時間撹拌する。次いでこの樹脂をTHF(3×150ml、2分)、1/1THF/H2O(3×150ml、2分)、メタノール(MeOH)(3×150ml、2分)、ジクロロメタン(3×150ml、2分)およびMeOH(3×150ml、2分)で数回洗浄する。この樹脂を50℃において真空下で乾燥する。
【0121】
ジクロロメタン(2ml)中の3−(4−ヒドロキシフェニル)プロプ−2−エン酸エチル(1ミリモル)の溶液をこのグラフト化樹脂(150mg、0.1ミリモル)に添加する。次いでジクロロメタン(8ml)中の4,4−ジメチル−2−(トリフェニルホスファニル)−1,2,5−チアジアゾリジン(1ミリモル)の溶液を添加し、この懸濁液を室温で18時間撹拌する。この樹脂を濾過し、DMF(5ml)、50/50DMF/H2O(5ml)、MeOH(2×5ml)および80/20DCM/DCE(3×5ml)で洗浄する。次いでこの樹脂をTFA/DCM(トリフルオロ酢酸/ジクロロメタン)の20/80溶液で15分間処理する。樹脂を濾過除去し、ジクロロメタン(2×5ml)で洗浄する。濾液を蒸発させ、その残渣を分離用LCMSにより精製して、3.20mgの、油の形態での予期される生成物を得る。
質量分析=M〜H:343.3
上述の実施例1〜7の化合物を得るために記述したものと同様のプロトコルにより、以下の表1に示している化合物が得られた。
【0122】
【表1−1】

【0123】
【表1−2】

【0124】
【表1−3】

【0125】
【表1−4】

【0126】
【表1−5】

【0127】
【表1−6】

【0128】
【表1−7】

【0129】
【表1−8】

【0130】
【表1−9】

【0131】
【表1−10】

【0132】
【表1−11】

【0133】
【表1−12】

【0134】
【表1−13】

【0135】
【表1−14】

【0136】
【表1−15】

【0137】
【表1−16】

【0138】
【表1−17】

【0139】
【表1−18】

【0140】
【表1−19】

【0141】
【表1−20】

【0142】
【表1−21】

【0143】
【表1−22】

【0144】
【表1−23】

【0145】
【表1−24】

【0146】
【表1−25】

【0147】
【表1−26】

【0148】
【表1−27】

【0149】
【表1−28】

【0150】
【表1−29】

【0151】
【表1−30】

【0152】
【表1−31】

【0153】
【表1−32】

【0154】
【表1−33】

【0155】
【表1−34】

【0156】
【表1−35】

【0157】
結果
下記の試験を行うことにより、脂質低下および血糖降下効果に導く本発明の化合物の活性を生体外および生体内において実証した:
PPAR活性化の測定は、Lehmannら(J.Biol.Chem.、270、(1995)、12953〜12956)により記述される技術によって実施した。
【0158】
CV−1細胞(サル腎臓細胞)に、キメラタンパク質PPARα−Gal4またはPPARγ−Gal4用の発現ベクター、またGal4応答要素を含むプロモーターの制御下に置かれたルシフェラーゼ遺伝子の発現を可能にする「レポーター」プラスミドを同時形質導入する。
【0159】
この細胞を96ウェルミクロプレート内に置き、かつレポータープラスミド(pG5−tk−pGL3)と、キメラタンパク質(PPARα−Gal4またはPPARγ−Gal4)用の発現ベクターとを商業用試薬を使用して同時形質導入する。4時間インキュベートした後、全培地(胎児子ウシ血清10%を含む)をウェルに添加する。24時間後この培地を取り出し、試験用生成物(50μM、25μMおよび最終12.5μM)を含む全培地で置き換える。この生成物を18時間、この細胞と接触させたままとする。次いでこの細胞を溶解させ、ルミノメータを使用してルシフェラーゼ活性を測定する。次いで、この生成物により誘発されてレポーター遺伝子の発現が(この生成物をまったく受け入れていない対照細胞と比較して)活性化されることにより、PPAR活性化因子を計算することができる。
【0160】
例として、濃度50μMにおける実施例2の化合物は、リガンドなしの受容体の活性に対して、キメラタンパク質PPARα−Gal−4を24.9倍活性化し、またキメラタンパク質PPARγ−Gal4を9.3倍活性化する。PPARαまたはγリガンドのための結合領域が存在しないと(Gal4発現ベクター単独であると)、この生成物の存在下で測定されるルシフェラーゼ活性はゼロである。
【0161】
下記の結果は、キメラ体αおよびγについて、濃度50μM、25μMおよび12.5μMで得られた。
【0162】
【表2】

【0163】
これらの化合物の抗糖尿病および脂質低下活性をdb/dbマウスについて経口的に測定した。
【0164】
生後17週間のdb/dbマウスを実施例2の化合物(100mg/kg/日)により15日間経口治療する。試験したそれぞれの群は、動物7匹を含む。15日間治療した後、弱い麻酔のもとにまた4時間絶食後に、後眼窩試料を採取する。
【0165】
下記のパラメータを測定した:
D15(COBAS)における血清について血糖(グルコースオキシダーゼ)の検定および次の脂質パラメータの検定:トリグリセリド、全コレステロール(CHOL)、HDLコレステロール(HDL−C)および遊離脂肪酸(FFA)(BioMerieux and Waco Chemicals検定キット)。
【0166】
得られた結果を下記の表に示している。報告した測定値は、平均値±標準誤差を表す。
【0167】
【表3】

【0168】
これらの結果は、トリグリセリドおよび遊離脂肪酸についての本発明の化合物の抗糖尿病および脂質低下活性を実証している。これらの同一の化合物について、HDLコレステロールのレベルが目立って増加している点に注目すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物:
【化1】

上式において、
1は、
O、NおよびSから選択された1個または複数のヘテロ原子を場合によって含む、飽和もしくは不飽和の単環もしくは多環の5〜8員核により場合によって置換された、かつ/またはその核に場合によって縮合した(C6〜C18)アリール基であって、前記核それ自体が場合によって置換されているものと、
場合によって、置換され、かつO、NおよびSから選択された1個または複数のヘテロ原子を含む、飽和、不飽和もしくは芳香族単環式の5〜8員複素環基と、
から選択され;
2およびR3は、それぞれ水素原子を表し、または一緒になってC3〜C7アルキレン鎖を形成し;
Rは、水素原子およびC1〜C10アルキル基から選択される;
その光学異性体、ならびに医薬的に許容できるその酸または塩基との付加塩。
【請求項2】
1が、O、NおよびSから選択された0〜4個のヘテロ原子を含有する単環式の炭素環もしくは複素環5〜8員核により場合によって置換された、かつ/またはその核に縮合した(C6〜C18)アリール基、好ましくは(C6〜C10)アリール基であって、前記核それ自体が場合によって置換されているものを表し、
2およびR3が、それぞれ水素を表し、または一緒になってC3〜C7アルキレン鎖を形成し、
Rが、水素原子およびC1〜C10アルキル基から選択される、請求項1に記載の化合物、
その光学異性体、ならびに医薬的に許容できるその酸または塩基との付加塩。
【請求項3】
1が、置換された(C6〜C10)アリール基を表す場合、前記アリール核が、以下から選択される1つまたは複数の基G:
トリフルオロメチル;ハロゲン原子;スチリル;O、NおよびSから選択される1個または複数のヘテロ原子を含み、かつ場合によって1つまたは複数の下記において定義する基Tにより置換されている単環式、二環式もしくは三環式芳香族複素環基;基Het−CO−、但し、Hetは、1つまたは複数の基Tにより場合によって置換されている上記において定義した芳香族複素環基を表す;C1〜C6アルキレンジイル鎖;C1〜C6アルキレンジオキシ鎖;アミノ;ニトロ;シアノ;(C1〜C10)アルキル基;(C2〜C6)アルキニル基;(C1〜C10)アルキルカルボニル基;(C1〜C10)アルコキシカルボニル−A−基、但し、Aは(C1〜C6)アルキレン、(C2〜C6)アルケニレン基または結合を表す;(C3〜C10)シクロアルキル基;トリフルオロメトキシ基;ジ(C1〜C10)アルキルアミノ基;(C1〜C10)アルコキシ(C1〜C10)アルキル基;(C1〜C10)アルコキシ基;1つまたは複数の基Tにより場合によって置換されている(C6〜C18)アリール基;(C6〜C18)アリール(C1〜C10)アルコキシ−(CO)n−基、但し、nは0または1であり、アリールは1つまたは複数の基Tにより場合によって置換されている;(C6〜C18)アリールオキシ(CO)n−基、但し、nは0または1であり、アリールは1つまたは複数の基Tにより場合によって置換されている;(C6〜C18)アリールオキシ(CO)n(C2〜C6)アルケニル基、但し、nは0または1である;(C6〜C18)アリールチオ基、但し、アリールは1つまたは複数の基Tにより場合によって置換されている;(C6〜C18)アリールオキシ(C1〜C10)アルキル−(CO)n−、但し、nは0または1であり、アリールは1つまたは複数の基Tにより場合によって置換されている;O、NおよびSから選択される1個または複数のヘテロ原子を含み、かつ場合によって1つまたは複数の基Tにより置換されている飽和もしくは不飽和の単環式5〜8員複素環;1つまたは複数の基Tにより場合によって置換されている(C6〜C18)アリールカルボニル基;(C6〜C18)アリールカルボニル−B−(CO)n−基、但し、nは0または1であり、Bは(C1〜C6)アルキレンまたは(C2〜C6)アルケニレンを表し、アリールは1つまたは複数の基Tにより場合によって置換されている;(C6〜C18)アリール−C−(CO)n−基、但し、nは0または1であり、Cは(C1〜C6)アルキレンまたは(C2〜C6)アルケニレンを表し、アリールは1つまたは複数の基Tにより場合によって置換されている;1つまたは複数の基Tにより場合によって置換されている、上記において定義した飽和もしくは不飽和複素環と縮合した(C6〜C18)アリール基;(C2〜C10)アルキニル基;Tはハロゲン原子、(C6〜C18)アリール、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、ニトロ、カルボキシル、(C1〜C6)アルコキシカルボキシルから選択され、Tは、それが飽和もしくは不飽和複素環を置換する場合、オキソを表してもよく、あるいはTは(C1〜C6)アルコキシカルボニル(C1〜C6)アルキルまたは、nが0または1である(C1〜C6)アルキルカルボニル((C1〜C6)アルキル)n−を表す、
によって置換されていることを特徴とする、前記請求項のいずれかに記載の化合物、その光学異性体、ならびに医薬的に許容できるその酸または塩基との付加塩。
【請求項4】
1が、C6〜C10アリールである場合、R1がフェニルであることを特徴とする、前記請求項に記載の化合物、
その光学異性体、ならびに医薬的に許容できるその酸または塩基との付加塩。
【請求項5】
2およびR3が、一緒になってC3〜C7アルキレン鎖を表す、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物、
その光学異性体、ならびに医薬的に許容できるその酸または塩基との付加塩。
【請求項6】
2およびR3が、一緒になってアルキレン鎖−(CH23−または−(CH24−を表すことを特徴とする、前記請求項に記載の化合物、
その光学異性体、ならびに医薬的に許容できるその酸または塩基との付加塩。
【請求項7】
1が、置換された、かつ/または縮合した(C6〜C10)アリール基であり、R2およびR3が一緒になってC3〜C7アルキレン鎖を表し、Rが水素原子であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物、
その光学異性体、ならびに医薬的に許容できるその酸または塩基との付加塩。
【請求項8】
2およびR3が、それぞれ水素原子を表すことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物、
その光学異性体、ならびに医薬的に許容できるその酸または塩基との付加塩。
【請求項9】
・2−(4’−メトキシビフェニル−4−イルオキシ)ヘキサ−5−エン酸;
・2−(4’−フルオロビフェニル−4−イルオキシ)ヘキサ−5−エン酸;
・2−(4’−フェノキシフェノキシ)ヘキサ−5−エン酸;
・4−シクロヘキサ−1−エニル−2−[4−(2−メチルチアゾール−4−イル)フェノキシ]ブタン酸;
・4−シクロヘキサ−1−エニル−2−[4−(トリフルオロメチル)フェノキシ]ブタン酸;
・4−シクロヘキサ−1−エニル−2−(4’−メトキシ−1,1’−ビフェニル−4−イルオキシ)ブタン酸;
・2−[4−(5−クロロチオフェン−2−イル)フェノキシ]−4−シクロヘキサ−1−エニルブタン酸;
・2−(4−クロロフェノキシ)−4−シクロヘキサ−1−エニルブタン酸;
・2−(4−ベンゾ[b]チオフェン−2−イルフェノキシ)−4−シクロヘキサ−1−エニルブタン酸;
・2−(4−ベンゾ[b]チオフェン−3−イルフェノキシ)ヘキサ−5−エン酸;
・2−(3−フルオロビフェニル−4−イルオキシ)ヘキサ−5−エン酸;
・2−(4−トリフルオロメチルフェノキシ)ヘキサ−5−エン酸;
・2−[4−(2−メチルチアゾール−4−イル)フェノキシ]ヘキサ−5−エン酸;
・2−(2’,5’−ジメチルビフェニル−4−イルオキシ)ヘキサ−5−エン酸;
・2−(4’−トリフルオロメトキシビフェニル−4−イルオキシ)ヘキサ−5−エン酸;
・2−(4’−クロロビフェニル−4−イルオキシ)ヘキサ−5−エン酸;および
・2−[3−(キノリン−2−イルメトキシ)フェノキシ]ヘキサ−5−エン酸、
から選択される、請求項1に記載の化合物、
その光学異性体、ならびに医薬的に許容できるその酸または塩基との付加塩。
【請求項10】
前記請求項のいずれか一項に記載の化合物の調製方法であって、下記の反応スキーム:
【化2】

(上記反応スキーム中、R1、R2、R3およびRは、請求項1から8のいずれか一項において定義した通りであり、Xは−OHまたはハロゲン原子を表す。)により、式(II)の化合物を式R1−OHのアルコールと反応させることによる方法。
【請求項11】
下記の反応スキームによる請求項10に記載の方法であって:
【化3】

(上記反応スキーム中、R1、R2およびR3は、請求項1において定義した通りであり、R’は、水素を除く、請求項1において定義したRを表し、化合物(IIOH)は、Xが−OHを表す請求項10に記載の式(II)の化合物であり、化合物(IR')は、R’がアルキル基を表す請求項1における式(I)の化合物であり、また化合物(IOH)は、Rが水素を表す式(I)の化合物である。)、
極性非プロトン性溶媒、カップリング剤およびホスフィンの存在下での第1のステップを含み;第2のステップが随意的な鹸化反応である方法。
【請求項12】
下記の反応スキームによる請求項10に記載の方法であって:
【化4】

(上記反応スキーム中、R1、R2およびR3は、請求項1において定義した通りであり、R’は、水素を除く、請求項1において定義したRを表し、化合物(IICl)は、Xが塩素原子を表す請求項10において定義した式(II)の化合物であり、化合物(IR')は、Rがアルキル基を表す式(I)の化合物であり、化合物(IOH)は、Rが水素を表す式(I)の化合物である。)、
前記方法が、溶媒中における式R1−OHのアルコールの溶液に無機塩基を添加することにあり、かつ、Xが塩素原子である請求項11において定義した式(II)の化合物の溶液を添加して式(I)の化合物を得ることにあり、最終ステップが随意的な鹸化反応である方法。
【請求項14】
1が、請求項1において定義した基Gにより置換されたアリール基を表す、請求項1から9のいずれか一項に記載の化合物の調製方法であって、下記の反応スキーム:
【化5】

(上記反応スキーム中、
2およびR3は、請求項1において定義した通りであり、
R’は、水素を除く、請求項1において定義したRを表し、
11は、式(IV)の誘導体と反応性であり、臭素もしくはヨウ素原子およびCF3SO3−基から選択される基を有する、請求項1において定義したR1を表し、
12は、式(IV)の誘導体と反応性である基が、前記基Gにより置換されているR11を表す。)による、
ステップ(Ba)が、パラジウム0錯体および塩基の存在下で極性非プロトン性溶媒中において行われ;第2のステップが随意的な鹸化反応である方法。
【請求項15】
樹脂上にグラフトした化合物を使用する、請求項1から9のいずれか一項に記載の化合物の調製方法であって、下記の反応スキーム:
【化6】

(上記反応スキーム中、R1、R2およびR3は、請求項1において定義した通りである。)による、
極性非プロトン性溶媒中のα−ヒドロキシ酸および炭酸セシウムの混合物を樹脂で処理するステップと、次いで、ホスフィンの存在下で、R1が請求項1において定義したものである式R1−OHのアルコールと接触させるステップとを含み、反応が室温で、できれば1〜数時間の範囲にある時間の間行われ、次いで前記化合物を前記樹脂から脱離させて、Rが水素を表す式(I)の化合物を得、その化合物は、随意的に、Rが水素を除く請求項1において定義したものである式(I)の化合物に変換することができる方法。
【請求項16】
請求項1から9のいずれか一項に記載の、または請求項10から14のいずれか一項に記載の方法により得られた、医薬的に有効な量の式(I)の化合物を、1種または複数の医薬的に許容できる賦形剤と組み合わせて含む医薬組成物。
【請求項17】
請求項1から9のいずれか一項に記載の、または請求項11から14のいずれか一項に記載の方法により得られた、式(I)の化合物の使用であって、異常脂質血症、アテローム性動脈硬化症および糖尿病の予防および/または治療用の薬物を調製するための使用。

【公表番号】特表2007−536290(P2007−536290A)
【公表日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−511902(P2007−511902)
【出願日】平成17年4月6日(2005.4.6)
【国際出願番号】PCT/EP2005/003606
【国際公開番号】WO2005/105724
【国際公開日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】