説明

半導体装置の製造方法

【課題】MOSFETのゲート絶縁膜が薄膜化しゲート構造が複雑化した場合においても、動作速度に優れ、高信頼性を安定して確保できるMOSFETを実現する。
【解決手段】半導体装置の製造方法は、半導体基板3に、nチャネル型電界効果トランジスタ及びpチャネル型電界効果トランジスタを形成する工程(a)と、nチャネル型電界効果トランジスタ上及びpチャネル型電界効果トランジスタ上を覆うように応力膜11を形成する工程(b)と、応力膜11上に、pチャネル型電界効果トランジスタの上方を覆い且つnチャネル型電界効果トランジスタの上方に開口を有する遮光膜12を形成する工程(c)と、工程(c)の後に、半導体基板3上の全面に紫外線を照射する工程(d)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関し、特に、チャネル領域の基板結晶に歪みを与えられたMOSトランジスタを備える半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor,FET)においてキャリア移動度を向上させる方法のひとつに、FETのチャネル領域に所定の応力を加えて、該チャネル領域の基板結晶に歪みを与える方法がある。例えば、MOS(Metal Oxide Semiconductor )型FET(MOSFET)上に、内部応力として引っ張り応力又は圧縮応力を有する膜(応力膜)を形成し、該応力膜によってチャネル領域に所定の応力を加える方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。尚、ここでは各MOSFETのゲート長方向についての応力を考えている。
【0003】
チャネル領域に加えられる引っ張り応力は電子移動度の向上に効果があり、また、チャネル領域に加えられる圧縮応力は正孔移動度の向上に効果がある。したがって、nチャネル型MOSFET(nMOSFET)とpチャネル型MOSFET(pMOSFET)とを共に備える相補型MOS(CMOS)トランジスタ構造の場合、nMOSFET上には、そのチャネル領域に引っ張り応力を加える引っ張り応力膜が形成され、pMOSFET上には、そのチャネル領域に圧縮応力を加える圧縮応力膜が形成される。
【0004】
また、応力膜としては、現在、窒化シリコン膜が広く用いられている。但し、窒化シリコン膜と称しているが、Si元素及びN元素のみからなる膜には限らず、これらに加えて他の元素を含有する膜も一般に用いられている。
【0005】
通常、MOSFET上にSiN等の応力膜を形成するには、所定の応力膜を全面に形成した後、該応力膜をエッチングによりパターニングしてMOSFET上にのみ残す手法が採られる。
【0006】
例えば、CMOS構造の場合には、まずnMOSFET上及びpMOSFET上を含む全面に引っ張り応力膜を形成する。その後、pMOSFET上に形成されている部分の引っ張り応力膜をエッチングにより除去し、nMOSFET上にのみ引っ張り応力膜を残す。
【0007】
また、pMOSFET側についても同様に形成する。つまり、初めに、nMOSFET上に引っ張り応力膜を形成した後の全面に圧縮応力膜を形成する。その後、nMOSFET側に形成されている部分の圧縮応力膜をエッチングにより除去し、pMOSFET上にのみ圧縮応力膜を残す。
【0008】
このようなプロセスにより、nMOSFET上には引っ張り応力膜が形成され、pMOSFET上には圧縮応力膜が形成されたCMOS構造、つまりnMOSFET上、pMOSFET上にそれぞれ引っ張り応力膜、圧縮応力膜の選択形成されたCMOS構造が得られる。尚、引っ張り応力膜と圧縮応力膜の形成順序は問われない。つまり、前記の例とは逆の順、つまり、先に圧縮応力膜を形成し、後から引っ張り応力膜を形成するのであっても良い。
【特許文献1】特開2003−86708号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、前述した従来の技術の場合、さらに微細化が進んだ半導体デバイスにおいて、MOSFETのゲート絶縁膜の薄膜化、ゲート構造の複雑化等により、応力膜のエッチング時に発生するダメージによってトランジスタの信頼性が低下するという問題が発生する。
【0010】
つまり、応力膜のエッチング工程にはプラズマプロセスを用いるため、プラズマチャージの不均一性が生じてチャージ電流が流れる場合がある。ゲート絶縁膜が薄くなると、このプラズマチャージに対する耐性が低下するため、膜そのものの劣化が懸念される。更に、ゲート構造が複雑化して界面が増えると、プラズマチャージに対して界面不整合部が発生しやすくなり、特性の不安定化が懸念される。よって、このような点の解決が課題となっている。
【0011】
本発明は以上の課題に鑑みてなされたものであり、MOSFETのゲート絶縁膜が薄膜化し、また、ゲート構造が複雑化した場合においても、動作速度に優れ、高信頼性を安定して確保できるMOSFETを実現する半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の目的を達成するため、本発明に係る第1の半導体装置の製造方法は、半導体基板に、nチャネル型電界効果トランジスタ及びpチャネル型電界効果トランジスタを形成する工程(a)と、nチャネル型電界効果トランジスタ上及びpチャネル型電界効果トランジスタ上を覆うように応力膜を形成する工程(b)と、応力膜上に、pチャネル型電界効果トランジスタの上方を覆い且つnチャネル型電界効果トランジスタの上方に開口を有する遮光膜を形成する工程(c)と、工程(c)の後に、半導体基板上の全面に紫外線を照射する工程(d)とを備える。
【0013】
従来、pチャネル型電界効果トランジスタとnチャネル型電界効果トランジスタとに異なる応力を印加する応力膜を形成するためには、応力膜の一部を除去する工程が必要であり、該工程において、チャージ電流等によりトランジスタのゲート絶縁膜が劣化するおそれがあった。これに対し、第1の半導体装置の製造方法によると、応力膜の一部をエッチング等により除去する工程を回避して、応力膜によってpチャネル型電界効果トランジスタのチャネル領域とnチャネル型電界効果トランジスタのチャネル領域とに異なる応力が印加された半導体装置を製造することができる。
【0014】
前記の目的を達成するため、本発明の第2の半導体装置の製造方法は、半導体基板に、第1のゲート電極と、第1のゲート電極の側面に設けられた第1のサイドウォールと、半導体基板における第1のゲート電極の両側に設けられた第1のソース・ドレイン領域とを備えるnチャネル型電界効果トランジスタを形成すると共に、第2のゲート電極と、第2のゲート電極の側面に設けられた第2のサイドウォールと、半導体基板における第2のゲート電極の両側に設けられた第2のソース・ドレイン領域とを備えるpチャネル型電界効果トランジスタを形成する工程(a)と、nチャネル型電界効果トランジスタ上及びpチャネル型電界効果トランジスタ上を覆うように応力膜を形成する工程(b)と、応力膜上において、pチャネル型電界効果トランジスタにおける第1のサイドウォール上方から第1のソース・ドレイン領域上方までを連続的に覆い且つ第1のゲート電極上方に開口を有すると共に、nチャネル型電界効果トランジスタにおける第2のゲート電極上方を覆い且つ第2のサイドウォール上方から第2のソース・ドレイン領域上方まで連続した開口を有する遮光膜を形成する工程(c)と、工程(c)の後に、半導体基板上の全面に紫外線を照射する工程(d)とを備える。
【0015】
第2の半導体装置の製造方法によると、応力膜の一部を除去する工程を回避し、それによりゲート電極の劣化を回避しながら、所定の部分毎に異なる応力が印加された半導体装置を製造することができる。
【0016】
つまり、pチャネル型電界効果トランジスタに関し、第1のサイドウォール上方から第1のソース・ドレイン領域上方までの部分を覆う紫外線が照射された応力膜により、チャネル領域に引張り応力が印加される。これと共に、第1のゲート電極上方の応力膜には紫外線が照射されていないために、この部分の応力膜によってチャネル領域に圧縮応力が印加されるのを避けることができる。
【0017】
また、nチャネル型電界効果トランジスタに関し、第2のゲート電極上方を覆う紫外線が照射された応力膜により、チャネル領域に圧縮応力が印加される。これと共に、第2のサイドウォール上方から第2のソース・ドレイン領域上方までの部分を覆う応力膜には紫外線が照射されていないために、この部分の応力膜によってチャネル領域に引張り応力が印加されるのを避けることができる。
【0018】
尚、第1及び第2の半導体装置の製造方法のいずれにおいても、工程(d)の後に、遮光膜を除去する工程を更に備えることが好ましい。
【0019】
遮光膜は、紫外線照射の後に不要となるのであれば除去する。但し、他の目的に転用可能であれば、残しておいても良い。
【0020】
また、遮光膜は、カラーフィルタ又は金属膜であることが好ましい。
【0021】
半導体プロセスにて一般に用いられるフォトレジスト等は、紫外線を透過させるために遮光膜としては不適切であり、確実に紫外線の透過を防ぐためには、カラーフィルタ又は金属膜を用いるのがよい。
【0022】
また、応力膜は、窒化シリコン膜からなることが好ましい。
【0023】
紫外線照射によって応力の変化する膜として、窒化シリコン膜が有用である。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明に係る半導体装置の製造方法によると、領域によって応力の異なる応力膜を、エッチング等を伴うことなく設けることができる。このため、MOSFETのゲート絶縁膜が薄膜化し、ゲート構造が複雑化した場合においても、エッチング時のダメージを避けながら、安定して高信頼性を維持した半導体装置を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に、本発明に係る各実施形態を説明する。説明中、引っ張り応力及び圧縮応力もしくは収縮応力とは、その膜(領域)自体が他から受ける応力の方向によって定義する。従って、引っ張り応力膜とは、その膜自体は体勢が収縮し、他から引っ張り応力を受けている膜であることを意味する。また、チャネル領域にかかる応力とは、サイドウォール、ソース・ドレイン領域、ゲート電極等がチャネル領域に及ぼしている応力を意味しており、ゲート長方向の応力を考えている。
【0026】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法について、図面を参照しながら説明する。図1(a)〜(c)は、該製造工程を示す模式的な断面図である。
【0027】
初めに、図1(a)に示すように、シリコン基板3を用いてnMOSFET及びpMOSFETを共に備えるCMOS構造を形成する。これは、以下に例示するような通常のプロセスによって行なえばよい。
【0028】
まず、シリコン基板3の表面をSTI(Shallow Trench Isolation)構造の素子分離領域4によって素子分離し、nMOSFET領域1及びpMOSFET領域2を設ける。
【0029】
このうちnMOSFET領域1において、シリコン基板3の上部に、ホウ素(B)等のp型不純物を用いて注入等を行ない、p型ウェル領域5を形成する。該p型ウェル領域5上に、酸化シリコン膜等からなるゲート絶縁膜6を介して、ポリシリコン等からなるゲート電極7を形成する。
【0030】
続いて、ゲート電極7の両側の部分のp型ウェル領域5に、リン(P)、ヒ素(As)等のn型不純物を用いてソース・ドレイン・エクステンション領域9を形成する。更に、ゲート絶縁膜6及びゲート電極7の側壁に酸化シリコン膜等からなるサイドウォール8を形成し、サイドウォール8の両側の部分のp型ウェル領域5に、やはりn型不純物を用いてソース・ドレイン領域10(ソース領域とドレイン領域とを合わせてこのように呼ぶ)を形成する。このような工程により、nMOSFET領域1にnチャネル型電界効果トランジスタ(nMOSFET)が形成される。
【0031】
pMOSFET領域2においても、同様の工程によりpチャネル型電界効果トランジスタ(pMOSFET)を形成する。つまり、n型不純物を用いたn型ウェル領域15、ゲート絶縁膜16及びゲート電極17、p型不純物を用いたソース・ドレイン・エクステンション領域19、サイドウォール18、p型不純物を用いたソース・ドレイン領域20を形成し、pMOSFETとする。
【0032】
以上のようにして形成されるCMOS構造において、各部の膜厚、不純物濃度等は、CMOS構造に要求される特性等に応じて適宜選択される。一例として、ゲート電極7及び17についてゲート長を40nm程度、ゲート高さを100nm程度とし、また、サイドウォール8及び18の幅を50nm程度とする。
【0033】
次に、図1(b)の工程を行なう。初めに、nMOSFET領域1上及びpMOSFET領域2上を含むシリコン基板3上の全面に、SiNからなる膜厚約70nmの応力膜11を堆積する。例えば、Si原料としてシラン系ガス、N原料としてアンモニアガスを用い、CVD(Chemical Vapor Deposition )法により、窒化シリコン膜を形成すればよい。
【0034】
応力膜11の堆積直後における引っ張り応力は、−50MPa〜20MPa程度であり、ほぼニュートラル状態と考えることができる。また、この状態の応力膜11には、水素(H)が多量に残存している。
【0035】
次に、pMOSFET領域2を覆い、nMOSFET領域1上を開けるように、遮光膜12を形成する。これは、nMOSFET領域1上の部分の応力膜11に紫外線13を照射する際に、pMOSFET領域2上の部分の応力膜11に紫外線13が照射されるのを防ぐために設けるものである。そのため、紫外線を透過させることのない膜とする必要がある。
【0036】
通常、応力膜に照射する紫外線としては、波長300nm以上のものを用いる。半導体装置の製造工程において多用される通常のフォトレジストは、このような紫外線を透過させてしまうため、本実施形態における遮光膜12としては機能しない。そこで、CCD(Charge Coupled Device )等において用いられるカラーフィルタを遮光膜12として用いるのがよい。カラーフィルタは、波長300nm以上の紫外線についてもほとんど吸収し、透過させることがない。但し、カラーフィルタに限るものではなく、他の例としては、タングステン(W)、アルミニウム(Al)等の金属膜を遮光膜12として用いることも可能である。
【0037】
遮光膜12を形成した後、nMOSFET領域1上に露出している部分の応力膜11と、pMOSFET領域2上に形成されている遮光膜12とに対して紫外線13の照射を行なう。これは、チャンバ内を所定環境に制御して紫外線照射を行なうことができる紫外線照射装置を用い、例えば、照射温度約450℃、照射時間約20分の条件にて行なう。また、紫外線の波長としては、通常は436nm(g線)、365nm(i線)等を用いる。
【0038】
その後、pMOSFET(領域)2上に選択的に形成された遮光膜12は除去する。但し、特に不具合を発生させないのであれば、除去することなく遮光膜12を残存させても構わない。
【0039】
図1(c)に、紫外線の照射と遮光膜12の除去とを終えた状態が示されている。
【0040】
紫外線13を照射された部分(nMOSFET領域1上の部分)の応力膜11aにおいて、紫外線照射前に比べて引っ張り応力が大きくなっている。これは、紫外線照射前には応力膜11中に残存していたHが除去され、体積が収縮したことに起因する。
【0041】
具体的に、紫外線照射前には−50MPa〜20MPa程度であった引っ張り応力は、2GPa程度にまで向上している。
【0042】
これに対し、pMOSFET領域2上の応力膜11は、遮光膜12に覆われていたために紫外線13が照射されず、変化していない。
【0043】
以上の結果、nMOSFET領域1におけるチャネル領域(ゲート電極7の下方の領域)のみに強大な引っ張り応力31を加えることができる。これにより、チャネルにおけるキャリアの移動度が向上し、nMOSFETとしての性能が向上する。尚、nMOSFETのゲート電極7上の部分の応力膜11aは、チャネル領域に圧縮応力を加えている。しかし、該圧縮応力の大きさに比べて、サイドウォール8上からソース・ドレイン領域10上までの応力膜11aによる引っ張り応力の大きさの方が大きい。ため、結果としてチャネル領域に加わる応力は引っ張り応力となっている。
【0044】
ここで、従来技術の場合、nMOSFET領域のみに強大な引っ張り応力を加えるためには、引っ張り応力の大きい応力膜を設けた後に、pMOSFET領域上の応力膜を除去し、この部分に引っ張り応力の小さい(又は、圧縮応力の大きい)別の応力膜を付けるということが行なわれていた。この場合、応力膜を除去する工程において、ゲート電極やサイドウォールに物理ダメージが加わること、また、ドライエッチングを用いる場合にはゲート絶縁膜にプラズマダメージが加わること等の問題があり、MOSトランジスタとしての品質及び信頼性を低下させる原因となっていた。
【0045】
これに対し、本実施形態の方法によると、紫外線13が照射されるnMOSFET領域1上の部分の応力膜11のみ引っ張り応力を向上させると共に、pMOSFET領域2上の部分の応力膜11については変化させないでおくことができる。したがって、応力膜11を除去する工程は不要となっており、MOSトランジスタとしての品質及び信頼性の低下を防止しながら、チャネル領域に所定の応力が印加された半導体装置を得ることができる。このような効果は、微細化、ゲート絶縁膜6の薄型化が進行した装置においてより顕著に表れる。
【0046】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法について、図面を参照しながら説明する。図2(a)及び(b)は、該製造工程を示す模式的な断面図である。
【0047】
初めに、第1の実施形態において説明したのと同様に、図1(a)に示す構造を形成する。つまり、シリコン基板3に、nMOSFET及びpMOSFETを備えるCMOS構造を形成する。
【0048】
次に、図2(a)に示す通り、nMOSFET領域1上及びpMOSFET領域2上を共に覆う応力膜11を均一に形成する。これは、第1の実施形態と同様に、窒化シリコン膜として形成する。
【0049】
更に、応力膜11上の所定の領域を覆うように、遮光膜を選択的に形成する。具体的には、nMOSFET領域1において、ゲート電極7の上方に遮光膜12aを形成し、サイドウォール8上方からソース・ドレイン領域10上方までの部分については応力膜11を露出させておく。これと共に、pMOSFET領域2において、サイドウォール18上方からソース・ドレイン領域20上方までの部分に遮光膜12bを形成し、ゲート電極17上方を含む部分については応力膜11を露出させておく。
【0050】
尚、遮光膜12a及び遮光膜12bとしては、第1の実施形態と同様に、カラーフィルタ、金属膜等を用いる。
【0051】
この後、遮光膜12a及び遮光膜12bと、該遮光膜に覆われず露出している部分の応力膜11とに対し、紫外線13の照射を行なう。使用する紫外線13の波長、照射の方法等についても、第1の実施形態の場合と同様である。
【0052】
この後、pMOSFET上に選択的に形成された遮光膜は除去する。但し、特に不具合を発生させないのであれば、除去することなく遮光膜12を残存させても良い。
【0053】
図2(b)に、紫外線の照射と遮光膜12a及び遮光膜12bの除去とを終えた状態が示されている。
【0054】
nMOSFET領域1において、サイドウォール8上方からソース・ドレイン領域10上方までの部分の応力膜11aは、紫外線照射により引っ張り応力が強くなっている。これに対し、ゲート電極7の上方の部分については紫外線の照射を受けていないため、応力膜11が変化無く残されている。
【0055】
また、pMOSFET領域2において、ゲート電極17上方を含む部分の応力膜11aは、紫外線照射により引っ張り応力が強くなっている。これに対し、サイドウォール18上方からソース・ドレイン領域20上方までの部分については、紫外線の照射を受けていないため、応力膜11が変化無く残されている。
【0056】
以上の結果、応力膜11を除去する工程を伴うことなく、所定の領域についてのみ強大な引っ張り応力を有する応力膜を設けることができる。
【0057】
具体的に、nMOSFET領域1において、サイドウォール8及びソース・ドレイン領域10は、その上に接した応力膜11aに生じている収縮応力(紫外線照射により体積が収縮したことによって生じている応力)の影響を受ける。特に、サイドウォール8上方からソース・ドレイン領域10上方へ移るコーナー部分の応力膜11aによる多大な収縮応力の影響を受ける。このため、結果として、ゲート電極7の下方に位置するチャネル領域には、応力膜11aから大きな引っ張り応力が加わることになる。
【0058】
また、ゲート電極7上の部分の応力膜11については、紫外線照射を受けていないために体積収縮はしておらず、収縮応力も発生していない。よって、この部分の応力膜11は、nMOSFET領域1のチャネル領域に対して引っ張り応力を加えることはない。
【0059】
このようなことから、nMOSFET領域1のチャネル領域において、紫外線照射には−50MPa〜20MPa程度であった引っ張り応力を、紫外線照射後には3GPa程度にまで向上させることができる。これにより、nMOSFETにおいてキャリアの移動度を向上することができる。
【0060】
次に、pMOSFET領域2において、ゲート電極17上を含む部分の応力膜11aは、紫外線照射を受けて体積収縮しており、紫外線照射前に比べて引っ張り応力が大きくなっている。このため、ゲート電極17を介して、pMOSFET領域2のチャネル領域は、圧縮応力を受けることになる。
【0061】
また、サイドウォール18及びソース・ドレイン領域20が接している応力膜11については、体積収縮していないため、チャネル領域に引っ張り応力を及ぼすことはない。
【0062】
このようなことから、pMOSFET領域2のチャネル領域において、紫外線照射前には−50MPa〜20MPa程度であった引っ張り応力を、−400MPa程度とすることができる。つまり、ほぼニュートラル状態であったものを圧縮応力のかかった状態にすることができる。
【0063】
以上のように、本実施形態の半導体装置の製造方法によると、nMOSFET領域1におけるチャネル領域には強大な引っ張り応力32を加えると共に、pMOSFET領域2におけるチャネル領域には圧縮応力33を加えることができる。
【0064】
これにより、nMOSFET領域1及びpMOSFET領域2のいずれにおいても、チャネルの移動度を向上することができる。
【0065】
また、応力膜11を除去する工程を回避していることから、エッチング等によるダメージを生じることなく、MOSトランジスタとしての品質及び信頼性の低下を防止しすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の半導体装置の製造方法は、MOSFETのゲート絶縁膜が薄膜化しゲート構造が複雑化した場合にも、動作速度に優れ且つ高信頼性を確保されたMOSFETを実現でき、特に、チャネル領域の基板結晶に歪みを与えたMOSトランジスタを備える半導体装置の製造方法としても有用である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】図1(a)〜(c)は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を模式的に示す図である。
【図2】図2(a)及び(b)は、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0068】
1 nMOSFET領域
2 pMOSFET領域
3 シリコン基板
4 素子分離領域
5 p型ウェル領域
6 ゲート絶縁膜
7 ゲート電極
8 サイドウォール
9 ソース・ドレイン・エクステンション領域
10 ソース・ドレイン領域
11 応力膜
11a 紫外線を照射された応力膜
12 遮光膜
12a、12b 遮光膜
13 紫外線
15 n型ウェル領域
16 ゲート絶縁膜
17 ゲート電極
18 サイドウォール
19 ソース・ドレイン・エクステンション領域
20 ソース・ドレイン領域
31 応力
32 応力
33 応力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板に、nチャネル型電界効果トランジスタ及びpチャネル型電界効果トランジスタを形成する工程(a)と、
前記nチャネル型電界効果トランジスタ上及び前記pチャネル型電界効果トランジスタ上を覆うように応力膜を形成する工程(b)と、
前記応力膜上に、前記pチャネル型電界効果トランジスタの上方を覆い且つ前記nチャネル型電界効果トランジスタの上方に開口を有する遮光膜を形成する工程(c)と、
前記工程(c)の後に、前記半導体基板上の全面に紫外線を照射する工程(d)とを備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
半導体基板に、
第1のゲート電極と、前記第1のゲート電極の側面に設けられた第1のサイドウォールと、前記半導体基板における前記第1のゲート電極の両側に設けられた第1のソース・ドレイン領域とを備えるnチャネル型電界効果トランジスタを形成すると共に、第2のゲート電極と、前記第2のゲート電極の側面に設けられた第2のサイドウォールと、前記半導体基板における前記第2のゲート電極の両側に設けられた第2のソース・ドレイン領域とを備えるpチャネル型電界効果トランジスタを形成する工程(a)と、
前記nチャネル型電界効果トランジスタ上及び前記pチャネル型電界効果トランジスタ上を覆うように応力膜を形成する工程(b)と、
前記応力膜上において、前記pチャネル型電界効果トランジスタにおける前記第1のサイドウォール上方から前記第1のソース・ドレイン領域上方までを連続的に覆い且つ前記第1のゲート電極上方に開口を有すると共に、前記nチャネル型電界効果トランジスタにおける前記第2のゲート電極上方を覆い且つ前記第2のサイドウォール上方から前記第2のソース・ドレイン領域上方まで連続した開口を有する遮光膜を形成する工程(c)と、
前記工程(c)の後に、前記半導体基板上の全面に紫外線を照射する工程(d)とを備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記工程(d)の後に、前記遮光膜を除去する工程を更に備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一つにおいて、
前記遮光膜は、カラーフィルタ又は金属膜であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一つにおいて、
前記応力膜は、窒化シリコン膜からなることを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−302175(P2009−302175A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−152661(P2008−152661)
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】