説明

半導体装置の製造方法

【課題】半導体装置の製造コストを低減する。
【解決手段】半導体装置の製造方法は、高誘電率膜が形成された基板を処理室内に搬入するステップと、前記処理室に接続されたプラズマユニットによるプラズマによって活性化した窒素原子を含むガスを前記処理室内に供給して前記高誘電率膜に対してプラズマ窒化処理を施すステップと、前記処理室内に成膜ガスを供給して前記プラズマ窒化処理後の高誘電率膜上に電極膜を形成するステップと、前記電極膜形成後の基板を前記処理室内から搬出するステップと、前記プラズマユニットによるプラズマによって活性化したクリーニングガスを前記処理室内に供給して前記処理室内をクリーニングするステップと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関し、例えば、半導体集積回路装置(以下、ICという。)の製造方法において、半導体素子を含む集積回路が作り込まれる半導体ウエハ(以下、ウエハという。)にMOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)のゲートスタック構造を形成する工程に利用して有効なものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ICの構成要素の一つであるMOSFETのゲート絶縁膜には酸化シリコン(SiO2 )膜が使用されている。
最近は、ICの最小加工寸法の縮小の進展に伴って、ゲート絶縁膜を薄膜化してより多くの電気容量を持たせることが、要求されて来ている。
ところが、酸化シリコン膜が2.0nm以下に薄膜化されると、リーク電流が多くなるために、酸化シリコンはMOSFETとして使用し得なくなることが懸念されている。
これに対して、薄膜化ではなく、酸化シリコン膜よりも誘電率が高い金属酸化膜、特に、シリコンを含んだ金属酸化膜であるシリケート膜をゲート絶縁膜に使用することにより、電気容量を増加させることが検討されている。シリケート膜のうちでも、比較的熱的に安定なハフニウムシリケート(HfSiO)膜が有望視されている。
【0003】
ところで、従来のICの製造方法におけるMOSFETのゲート形成工程においては、ゲート絶縁膜の上にゲート電極としての多結晶シリコン(Poly−Si)を成膜した後に、導電性を持たせるためのドーパントが注入され、さらに、MOSFETのソースおよびドレインの部分のドーパントと一緒に活性化アニールが実施される。
一般に、この活性化アニールの処理温度は、1000℃程度である。
【0004】
従来のMOSFETのゲート形成工程において、ゲート絶縁膜としてハフニウムシリケート膜を使用した場合には、このように活性化アニールの処理温度が1000℃程度であることから、ハフニウムシリケート膜のHfOとSiOとが相互に拡散し、酸化ハフニウム(HfO2 )と酸化シリコン(SiO2 )とにそれぞれ分離してしまい、酸化ハフニウムが結晶化してしまうという問題点がある。
酸化ハフニウムが結晶化すると、結晶化した酸化ハフニウムとアモルファスの部分である酸化シリコンとの境界を伝って、リーク電流が流れてしまい、MOSFETとして動作しなくなるという現象につながってしまう。
そこで、HfOとSiOとの相互の拡散を防止するために、ハフニウムシリケート膜中に窒素原子を入れることが提案されている。
この窒素原子は例えば、窒素プラズマを用いてハフニウムシリケート膜中に拡散させ、その後、アニールによってシリコン原子やハフニウム原子や酸素原子と結合させて安定化させることにより、ゲート絶縁膜としての窒化ハフニウムシリケート(HfSiON)膜が形成される。
【0005】
この窒化ハフニウムシリケート膜を使用したゲートスタック(ゲート絶縁膜−ゲート電極)構造の形成工程においては、ハフニウムシリケート膜の成膜ステップ、プラズマ窒化法による窒素の導入ステップ、アニールによる窒素の安定化ステップおよび多結晶シリコン膜の形成ステップを、それぞれハフニウムシリケート膜形成用のCVD装置、プラズマ窒化装置、アニール装置および多結晶シリコン膜形成用のCVD装置を順番に使用することにより、実施する必要がある。
一般的には、これらの四つのステップをこれらの四つの装置によってそれぞれ実施することが、考えられる。
しかしながら、この場合には、前のステップを実施した装置から次のステップを実施するための装置にウエハを搬送する間に、ウエハが大気に晒されるために、大気中の水分等がウエハに形成された膜の表面に吸着する。
水分が膜表面に吸着したままの状態で、次のステップが実施されると、その水分が膜中に取り込まれるために、絶縁膜の絶縁耐性が劣化したり、絶縁膜と電極の界面に低誘電率層が形成されてゲートスタック構造としての電気容量の低下を招いたり、多結晶シリコン電極の抵抗率が劣化したりする。
【0006】
そこで、ハフニウムシリケート膜形成用のCVD装置、プラズマ窒化装置、アニール装置および多結晶シリコン膜形成用のCVD装置を一つの真空搬送室によって接続したクラスタツールと呼ばれる装置(以下、クラスタ装置という。)を使用することにより、これらの四つのステップを実施することが、考えられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、四つの装置を備えたクラスタ装置によって四つのステップを実施するように構成したMOSFETのゲート形成工程においては、クラスタ装置のスペースやコストが増大するために、MOSFETのゲート形成工程ひいてはICの製造方法のコストが増加してしまうという問題点がある。
【0008】
本発明の目的は、半導体装置の製造コストを低減することができる半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記した課題を解決するための手段のうち代表的なものは、次の通りである。
(1)高誘電率膜が形成された基板を処理室内に搬入するステップと、
前記処理室に接続されたプラズマユニットによるプラズマによって活性化した窒素原子を含むガスを前記処理室内に供給して前記高誘電率膜に対してプラズマ窒化処理を施すステップと、
前記処理室内に成膜ガスを供給して前記プラズマ窒化処理後の高誘電率膜上に電極膜を形成するステップと、
前記電極膜形成後の基板を前記処理室内から搬出するステップと、
前記プラズマユニットによるプラズマによって活性化したクリーニングガスを前記処理室内に供給して前記処理室内をクリーニングするステップと、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
(2)基板を処理する処理室と、
前記処理室に接続されたプラズマユニットと、
前記プラズマユニットに窒素原子を含むガスを供給する第一供給ラインと、
前記プラズマユニットにクリーニングガスを供給する第二供給ラインと、
前記処理室内に成膜ガスを供給する第三供給ラインと、
前記処理室内に前記プラズマユニットによるプラズマによって活性化した窒素原子を含むガスを供給して基板に対してプラズマ窒化処理を施し、その後、前記処理室内に成膜ガスを供給して前記プラズマ窒化処理後の基板上に電極膜を形成するように制御するとともに、前記処理室内に前記プラズマユニットによるプラズマによって活性化したクリーニングガスを前記処理室内に供給して前記処理室内をクリーニングするように制御するコントローラと、
を有することを特徴とする基板処理装置。
(3)基板上に高誘電率膜を形成する第一の処理室と、
前記高誘電率膜に対してプラズマ窒化処理を施すとともに、前記プラズマ窒化処理後の高誘電率膜上に電極膜を形成する第二の処理室と、
前記第二の処理室に接続されたプラズマユニットと、
前記プラズマユニットに窒素原子を含むガスを供給する第一供給ラインと、
前記プラズマユニットにクリーニングガスを供給する第二供給ラインと、
前記第二の処理室内に成膜ガスを供給する第三供給ラインと、
前記第二の処理室内に前記プラズマユニットによるプラズマによって活性化した窒素原子を含むガスを供給して基板上に形成された高誘電率膜に対してプラズマ窒化処理を施し、その後、前記第二の処理室内に成膜ガスを供給して前記プラズマ窒化処理後の高誘電率膜上に電極膜を形成するように制御するとともに、前記第二の処理室内に前記プラズマユニットによるプラズマによって活性化したクリーニングガスを前記第二の処理室内に供給して前記第二の処理室内をクリーニングするように制御するコントローラと、
を有することを特徴とする基板処理装置。
【発明の効果】
【0010】
前記(1)の手段によれば、処理室内にプラズマユニットによるプラズマによって活性化した窒素原子を含むガスを供給して高誘電率膜上にプラズマ窒化処理を施した後に、処理室内に成膜ガスを供給してプラズマ窒化処理後の高誘電率膜上に電極膜を形成し、また、同一のプラズマユニットによるプラズマによって活性化したクリーニングガスを同一の処理室内に供給して処理室内をクリーニングすることにより、プラズマユニットおよび処理室を共用することができるので、クラスタ装置のスペースやコストを低減することができ、ひいては半導体装置の製造方法のコストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態を図面に即して説明する。
【0012】
図1は本発明の一実施の形態であるICの製造方法におけるMOSFETのゲートスタック形成工程を示すフローチャートである。
図2以降は本発明の一実施の形態であるICの製造方法におけるMOSFETのゲートスタック形成工程に使用される基板処理装置を示している。
【0013】
本実施の形態に係る基板処理装置は、構造的には図2に示されているようにクラスタ装置として構成されており、機能的には、MOSFETのゲートスタック形成工程に使用されるように構成されている。
なお、本実施の形態に係るクラスタ装置においては、ウエハ2を搬送するためのウエハ搬送用キャリア(基板収納容器)としては、FOUP(front opening unified pod 。以下、ポッドという。)1が使用されている。
【0014】
図2に示されているように、クラスタ装置10は大気圧未満の圧力(負圧)に耐える構造に構成された第一ウエハ移載室(以下、負圧移載室という。)11を備えており、負圧移載室11の筐体(以下、負圧移載室筐体という。)12は、平面視が七角形で上下両端が閉塞した箱形状に形成されている。
負圧移載室11の中央部には負圧下においてウエハ2を移載するウエハ移載装置(以下、負圧移載装置という。)13が設置されており、負圧移載装置13はスカラ形ロボット(selective compliance assembly robot arm SCARA)によって構成されている。
【0015】
負圧移載室筐体12の7枚の側壁のうち長い側壁には、搬入用予備室(以下、搬入室という。)14と搬出用予備室(以下、搬出室という。)15とがそれぞれ隣接して連結されている。
搬入室14の筐体と搬出室15の筐体とはそれぞれ平面視が略菱形で上下両端が閉塞した箱形状に形成されているとともに、負圧に耐え得るロードロックチャンバ構造に構成されている。
【0016】
搬入室14および搬出室15の負圧移載室11と反対側には、大気圧以上の圧力(以下、正圧という。)を維持可能な構造に構成された第二ウエハ移載室(以下、正圧移載室という。)16が隣接して連結されており、正圧移載室16の筐体は平面視が横長の長方形で上下両端が閉塞した箱形状に形成されている。
搬入室14と正圧移載室16との境にはゲートバルブ17Aが設置されており、搬入室14と負圧移載室11との間にはゲートバルブ17Bが設置されている。搬出室15と正圧移載室16との境にはゲートバルブ18Aが設置されており、搬出室15と負圧移載室11との間にはゲートバルブ18Bが設置されている。
正圧移載室16には正圧下でウエハ2を移載する第二ウエハ移載装置(以下、正圧移載装置という。)19が設置されており、正圧移載装置19はスカラ形ロボットによって構成されている。正圧移載装置19は正圧移載室16に設置されたエレベータによって昇降されるように構成されているとともに、リニアアクチュエータによって左右方向に往復移動されるように構成されている。
正圧移載室16の左側にはノッチ合わせ装置20が設置されている。
【0017】
正圧移載室16の正面壁には三つのウエハ搬入搬出口21、22、23が、隣合わせに並べられて開設されており、これらのウエハ搬入搬出口21、22、23はウエハ2を正圧移載室16に対して搬入搬出し得るように設定されている。これらのウエハ搬入搬出口21、22、23にはポッドオープナ24がそれぞれ設置されている。
ポッドオープナ24はポッド1を載置する載置台25と、載置台25に載置されたポッド1のキャップを着脱するキャップ着脱機構26とを備えている。ポッドオープナ24は載置台25に載置されたポッド1のキャップをキャップ着脱機構26によって着脱することにより、ポッド1のウエハ出し入れ口を開閉するようになっている。
ポッドオープナ24の載置台25に対してはポッド1が、図示しない工程内搬送装置(RGV)によって供給および排出される。
【0018】
図2に示されているように、負圧移載室筐体12の7枚の側壁のうち正圧移載室16と反対側に位置する3枚の側壁には、第一処理ユニット31と、第二処理ユニット32と、第三処理ユニット33とがそれぞれ隣接して連結されている。
第一処理ユニット31と負圧移載室11との間にはゲートバルブ44(図3参照)が設置されている。第二処理ユニット32と負圧移載室11との間にはゲートバルブ118(図4参照)が設置されている。第三処理ユニット33と負圧移載室11との間にはゲートバルブ157(図5参照)が設置されている。
また、負圧移載室筐体12における7枚の側壁のうちの2枚の側壁には、第一クーリングユニット35と、第二クーリングユニット36とがそれぞれ連結されており、第一クーリングユニット35および第二クーリングユニット36はいずれも処理済みのウエハ2を冷却するように構成されている。
【0019】
クラスタ装置10はシーケンスフローを統括的に制御するコントローラ37を備えている。本実施の形態に係るコントローラ37は、後述するシーケンスを実行するように構成されている。
【0020】
次に、前記構成に係るクラスタ装置10を使用して、図1に示されたゲートスタック形成工程を実施する場合について説明する。
【0021】
図1に示されたウエハ投入ステップにおいては、クラスタ装置10の載置台25に供給されたポッド1のキャップが、キャップ着脱機構26によって取り外され、ポッド1のウエハ出し入れ口が開放される。
ポッド1が開放されると、正圧移載室16に設置された正圧移載装置19はウエハ搬入搬出口を通してポッド1からウエハ2を1枚ずつピックアップし、搬入室14に投入し、ウエハ2を搬入室用仮置き台に移載して行く。
この移載作業中には、搬入室14の負圧移載室11側はゲートバルブ17Bによって閉じられており、負圧移載室11内の圧力は、例えば、100Paに維持されている。
【0022】
図1に示されたウエハローディングステップにおいては、搬入室14の正圧移載室16側がゲートバルブ17Aによって閉じられ、搬入室14が排気装置(図示せず)によって負圧に排気される。搬入室14内が予め設定された圧力値に減圧されると、搬入室14の負圧移載室11側がゲートバルブ17Bによって開かれる。
次に、負圧移載室11の負圧移載装置13は搬入室用仮置き台からウエハ2を1枚ずつピックアップして負圧移載室11に搬入する。その後、搬入室14の負圧移載室11側がゲートバルブ17Bによって閉じられる。
続いて、第一処理ユニット31のゲートバルブ44が開かれ、負圧移載装置13はウエハ2を、図1に示された高誘電体膜形成ステップを実施する第一処理ユニット31に搬送して、第一処理ユニット31の処理室へ搬入(ウエハローディング)する。
なお、ウエハの第一処理ユニット31への搬入に際しては、搬入室14および負圧移載室11が真空排気されることによって内部の酸素や水分が予め除去されているため、外部の酸素や水分がウエハの第一処理ユニット31への搬入に伴って第一処理ユニット31の処理室に侵入することは確実に防止される。
【0023】
本実施の形態においては、第一処理ユニット31は、構造的には図3に示されているように、枚葉式ウォームウオール形基板処理装置として構成されており、機能的にはALD(Atomic Layer Deposition )装置(以下、ALD装置という。)40として構成されている。
図3に示されているように、ALD装置40は処理室41を形成する筐体42を備えており、筐体42には処理室41の壁面を加熱するためのヒータ(図示せず)が内蔵されている。
筐体42の負圧移載室11との境にはウエハ搬入搬出口43が開設されており、ウエハ搬入搬出口43はゲートバルブ44によって開閉されるように構成されている。
処理室41の底面上には、昇降軸46を昇降させる昇降駆動装置45が設置されており、昇降軸46の上端にはウエハ2を保持する保持具47が水平に支持されている。
保持具47にはウエハ2を加熱するヒータ47aが設けられている。
ウエハ搬入搬出口43および処理室41の底壁には、パージガス供給口48A、48Bがそれぞれ開設されており、両パージガス供給口48A、48Bにはパージガス供給ライン(図示せず)がそれぞれ接続されている。
筐体42のウエハ搬入搬出口43と反対側の部位には排気口49が開設されており、排気口49には排気装置50に接続された排気ライン51が接続されている。
【0024】
筐体42の天井壁には処理ガス供給口52が処理室41に連通するように開設されており、処理ガス供給口52には第一処理ガス供給ライン53A、第二処理ガス供給ライン53Bおよび酸化剤供給ライン90が接続されている。
第一処理ガス供給ライン53Aには上流側止め弁54Aおよび下流側止め弁55Aを介して第一バブラ56Aが接続されている。第一バブラ56Aのバブリング管57Aはアルゴンガス供給源59に接続されたアルゴンガス供給ライン58に接続されている。
第一処理ガス供給ライン53Aの上流側止め弁54Aと下流側止め弁55Aとの間には、アルゴンガス供給ライン58が止め弁60Aを介して接続されている。第一処理ガス供給ライン53Aのアルゴンガス供給ライン58の接続点と下流側止め弁55Aとの間には、ベントライン61Aの上流側端が接続されており、ベントライン61Aの下流側端は止め弁62Aを介して排気装置50に接続された排気ライン51に接続されている。
第二処理ガス供給ライン53Bには上流側止め弁54Bおよび下流側止め弁55Bを介して第二バブラ56Bが接続されている。第二バブラ56Bのバブリング管57Bはアルゴンガス供給源59に接続されたアルゴンガス供給ライン58に接続されている。
第二処理ガス供給ライン53Bの上流側止め弁54Bと下流側止め弁55Bとの間には、アルゴンガス供給ライン58が止め弁60Bを介して接続されている。第二処理ガス供給ライン53Bのアルゴンガス供給ライン58の接続点と下流側止め弁55Bとの間には、ベントライン61Bの上流側端が接続されており、ベントライン61Bの下流側端は止め弁62Bを介して排気装置50に接続された排気ライン51に接続されている。
酸化剤供給ライン90にはオゾナイザ91および止め弁92を介して酸素ガス供給源93が接続されている。酸化剤供給ライン90の止め弁92とオゾナイザ91との間には、アルゴンガス供給ライン58が止め弁94を介して接続されている。
【0025】
次に、図1に示された高誘電体膜形成ステップを、以上の構成に係るALD装置40を使用して高誘電体膜としてのハフニウムシリケート(HfSiO)膜をALD法によりウエハ2上に成膜する場合について説明する。
高誘電体膜としてのハフニウムシリケートを成膜する場合には、ハフニウム原子を含む原料として、例えば、Hf‐(MMP)4 (Hf(OC(CH3 2 CH2 OCH3 4 :テトラキス(1‐メトキシ‐2‐メチル‐2‐プロポキシ)‐ハフニウム)が使用され、シリコン原子を含む原料としては、例えば、Si‐(MMP)4 (Si(OC(CH3 2 CH2 OCH3 4 :テトラキス(1‐メトキシ‐2‐メチル‐2‐プロポキシ)‐シリコン)、が使用される。
これらの原料は、常温で液体であり、蒸気圧が高いので、例えば、バブリングで気化して得た原料ガスを用いる。
また、酸化剤としては、例えばオゾン(O3 )が使用される。
本実施の形態に係るALD装置40においては、ハフニウム液体原料を気化するのに第一バブラ56Aが使用される。この第一バブラ56Aのバブリングに使用されるアルゴンガスの流量は、0.5〜1SLM(スタンダード・リットル毎分)である。
また、シリコン液体原料を気化するのに、第二バブラ56Bが使用される。この第二バブラ56Bのバブリングに使用されるアルゴンガスの流量も、0.5〜1SLMである。
【0026】
ゲートバルブ44が開かれ、ハフニウムシリケート膜を形成すべきウエハ2が、第一処理ユニット31であるALD装置40の処理室41に搬入されて保持具47上に載置される。すると、図3に示されているように、ウエハ搬入搬出口43はゲートバルブ44によって閉じられる。
ゲートバルブ44が閉じられると、処理室41内は所定の圧力となるように、排気装置50によって排気される。
また、ウエハ2は保持具47に内蔵されたヒータ47aによって150〜500℃の範囲内の所定の温度に加熱される。
ウエハ2が搬入された時点では、止め弁54A、55A、54B、55Bはそれぞれ閉状態で、止め弁60A、62A、60B、62Bは開状態である。
ここで、原料を供給する準備のために、止め弁60A、55A、60B、55Bが閉じられるとともに、止め弁54A、62A、54B、62Bが開かれることにより、気化したハフニウム原料およびシリコン原料が第一処理ガス供給ライン53Aおよび第二処理ガス供給ライン53Bにそれぞれ詰められる。
また、処理室41内にはパージガスとしてのアルゴンガスが、パージガス供給口48A、48Bから0.1〜1.5SLM流される。
また、処理室41内の圧力は、10〜100Paに調圧される。
【0027】
ウエハ2の温度が安定した後に、次のステップ(1)〜(6)を1サイクルとして、ハフニウムシリケート膜が目標の膜厚になるまで、このサイクルが繰り返される。
(1)ウエハ2の温度が安定した後に、第一原料供給ステップとして、止め弁62Aが閉じられるとともに、止め弁55Aが開かれる。そのままの状態が0.5〜5秒間保持され、気化したハフニウム原料が処理室41に供給される。これにより、ハフニウム原料はウエハ2の表面上に吸着する。
(2)次に、第一原料排気ステップとして、止め弁54Aが閉じられるとともに、止め弁60Aが開かれる。そのままの状態が0.5〜10秒間保持され、第一処理ガス供給ライン53Aと処理室41内とが排気される。続いて、止め弁60A、55Aが閉じられ、止め弁54A、62Aが開かれて、第一処理ガス供給ライン53Aに気化したハフニウム原料が詰められる。
(3)第一処理ガス供給ライン53Aへの気化したハフニウム原料の充填と同時に、第二原料供給ステップとして、止め弁62Bが閉じられるとともに、止め弁55Bが開かれる。そのままの状態が0.5〜5秒間保持されて、気化したシリコン原料が処理室41に供給される。
これにより、シリコン原料はウエハ2の表面上に吸着する。すなわち、ウエハ2上にはハフニウム原料とシリコン原料の両方が吸着した状態となる。
(4)引き続いて、第二原料排気ステップとして、止め弁54Bが閉じられるとともに、止め弁60Bが開かれる。そのままの状態が0.5〜10秒間保持されて、第二処理ガス供給ライン53Bおよび処理室41内が排気される。続いて、止め弁60B、55Bが閉じられ、止め弁54B、62Bが開かれて第二処理ガス供給ライン53Bに気化したシリコン原料が詰められる。
(5)次に、第二処理ガス供給ライン53Bへの気化したシリコン原料の充填と同時に酸化ステップとして、止め弁92が開かれる。止め弁92が開かれることで酸素ガス供給源93から酸素ガスがオゾナイザ91に供給され、オゾナイザ91にて酸化剤としてのオゾンガスが生成される。そのままの状態が0.5〜15秒間保持されることで、オゾンガスが処理室41に供給される。
これにより、ステップ(1)(3)でウエハ2の表面上に吸着したハフニウム原料およびシリコン原料とオゾンとが反応して、ウエハ2の表面上に1オングストローム(Å)程度の膜厚のハフニウムシリケート膜が形成されることとなる。
(6)引き続いて、酸化剤の排気ステップとして止め弁92が閉じられるとともに、止め弁94が開かれる。そのままの状態が0.5〜15秒間保持されて、酸化剤供給ライン90および処理室41内が排気される。
通常、ALD法により成膜する場合には、1サイクルで1Å程度成膜されることから、20〜30Åの目標膜厚を得るには、20〜30サイクルが必要であり、1サイクルが5〜10秒とすると、ハフニウムシリケート膜の成膜には2〜6分かかることになる。
【0028】
以上のようにしてハフニウムシリケート膜の形成が終了すると、ゲートバルブ44が開かれ、成膜済みのウエハ2は負圧移載装置13によって第一処理ユニット31から負圧に維持された負圧移載室11に搬出(ウエハアンローディング)される。
続いて、ゲートバルブ44が閉じられた後に、ゲートバルブ118が開かれて、負圧移載装置13はウエハ2を、図1に示されたアニールステップを実施する第二処理ユニット32に搬送して、第二処理ユニット32の処理室へ搬入(ウエハローディング)する。
【0029】
本実施の形態においては、アニールステップを実施する第二処理ユニット32には、図4に示されたRTP(Rapid Thermal Processing)装置110が使用されている。
図4に示されているように、RTP装置110はウエハ2を処理する処理室111を形成した筐体112を備えており、筐体112は上下面が開口した円筒形状に形成された容器113と、容器113の上面開口部を閉塞する円盤形状のトッププレート114と、容器113の下面開口部を閉塞する円盤形状のボトムプレート115とが組み合わされて円筒中空体形状に構築されている。
容器113の側壁の一部には排気口116が処理室111の内外を連通するように開設されており、排気口116には処理室111を大気圧未満(以下、負圧という。)に排気し得る排気装置(図示せず)が接続されている。
容器113の側壁の排気口116と反対側の位置には、ウエハ2を処理室111に搬入搬出するためのウエハ搬入搬出口117が開設されており、ウエハ搬入搬出口117はゲートバルブ118によって開閉されるようになっている。
【0030】
ボトムプレート115の下面の中心線上には昇降駆動装置119が設置されており、昇降駆動装置119はボトムプレート115に挿通されてボトムプレート115に対して上下方向に摺動自在に構成された昇降軸120を昇降させるように構成されている。
昇降軸120の上端には昇降板121が水平に固定されており、昇降板121の上面には複数本(通常は3本または4本)のリフタピン122が垂直に立脚されて固定されており、各リフタピン122は昇降板121の昇降に伴って昇降することにより、ウエハ2を下から水平に支持して昇降させるようになっている。
【0031】
ボトムプレート115の上面における昇降軸120の外側には支持筒123が突設されており、支持筒123の上端面の上には冷却プレート124が水平に架設されている。
冷却プレート124の上方には、複数本の加熱ランプから構成された第一加熱ランプ群125および第二加熱ランプ群126が下から順に配置されて、それぞれ水平に架設されている。第一加熱ランプ群125および第二加熱ランプ群126は第一支柱127および第二支柱128によってそれぞれ水平に支持されている。
第一加熱ランプ群125および第二加熱ランプ群126の電力供給電線129はボトムプレート115を挿通して外部に引き出されている。
【0032】
処理室111にはタレット131が処理室111と同心円に配置されている。タレット131は内歯平歯車133の上面に同心円に固定されており、内歯平歯車133はボトムプレート115に介設されたベアリング132によって水平に支承されている。内歯平歯車133には原動側平歯車134が噛合されており、原動側平歯車134はボトムプレート115に介設されたベアリング135によって水平に支承され、ボトムプレート115の下に設置されたサセプタ回転装置136によって回転駆動されるようになっている。
タレット131の上端面の上には平板の円形リング形状に形成されたアウタプラットホーム137が水平に架設されており、アウタプラットホーム137の内側にはインナプラットホーム138が水平に架設されている。
インナプラットホーム138の内周の下端部にはサセプタ140が、内周面の下端部に径方向内向きに突設された係合部139に係合されて保持されている。サセプタ140の各リフタピン122に対向する位置には挿通孔141がそれぞれ開設されている。
【0033】
トッププレート114にはアニールガス供給管142および不活性ガス供給管143が処理室111に連通するようにそれぞれ接続されている。
また、トッププレート114には放射温度計のプローブ144が複数本、互いに半径方向にウエハ2の中心から周辺にかけてずらされてそれぞれ配置されてウエハ2の上面と対向するように挿入されている。放射温度計は複数本のプローブ144がそれぞれ検出した放射光に基づく計測温度をコントローラに逐次送信するように構成されている。
トッププレート114の他の場所にはウエハ2の放射率を非接触にて測定する放射率測定装置145が設置されている。放射率測定装置145はレファレンスプローブ146を備えており、レファレンスプローブ146はレファレンスプローブ用モータ147によって垂直面内で回転されるようになっている。
レファレンスプローブ146の上側には参照光を照射するレファレンスランプ148がレファレンスプローブ146の先端に対向するように設置されている。レファレンスプローブ146は放射温度計に光学的に接続されており、放射温度計はウエハ2からの光子密度とレファレンスランプ148からの参照光の光子密度とを比較することにより、計測温度を校正するようになっている。
【0034】
次に、図1に示されたアニールステップを、以上の構成に係るRTP装置を使用してハフニウムシリケート膜にアニールを施す場合について説明する。
【0035】
ゲートバルブ118が開かれると、アニールを施すべきウエハ2は、第二処理ユニット32であるRTP装置110の処理室111に負圧移載装置13によってウエハ搬入搬出口117から搬入され、複数本のリフタピン122の上端間に移載される。
ウエハ2をリフタピン122に移載した負圧移載装置13が処理室111の外へ退避すると、ウエハ搬入搬出口117がゲートバルブ118によって閉じられる。
また、昇降軸120が昇降駆動装置119によって下降されることにより、リフタピン122の上のウエハ2がサセプタ140の上に受け渡される。
処理室111が気密に閉じられた状態で、処理室111内は10〜10000Paの範囲内の所定の圧力となるように排気口116を通じて排気される。
【0036】
ウエハ2がサセプタ140に受け渡されると、ウエハ2をサセプタ140によって保持したタレット131が内歯平歯車133および原動側平歯車134を介してサセプタ回転装置136によって回転される。
サセプタ140に保持されたウエハ2はサセプタ回転装置136によって回転されながら、600〜1000℃の範囲内の所定の温度となるように第一加熱ランプ群125および第二加熱ランプ群126によって加熱される。
この回転および加熱中に、窒素ガスやアンモニアガス等の窒素原子を含むガスまたは酸素ガス等の酸素原子を含むガスが処理室111に、アニールガス供給管142から供給される。
サセプタ140がサセプタ回転装置136によって回転されながら、サセプタ140の上に保持されたウエハ2は第一加熱ランプ群125および第二加熱ランプ群126によって均一に加熱されるため、ウエハ2上のハフニウムシリケート膜は全面にわたって均一にアニールされる。
このアニールの処理時間は、5〜120秒間である。
【0037】
RTP装置110において予め設定された所定の処理時間が経過すると、処理室111が排気口116によって所定の負圧となるように排気された後に、ゲートバルブ118が開かれ、アニールが施されたウエハ2は、負圧移載装置13によって搬入時と逆の手順で処理室111から負圧移載室11に搬出(ウエハアンローディング)される。
続いて、ゲートバルブ118が閉じられた後に、ゲートバルブ157が開かれ、負圧移載装置13はウエハ2を、図1に示されたプラズマ窒化ステップおよびゲート電極形成ステップを同一の処理室で実施する第三処理ユニット33に搬送して、第三処理ユニット33の処理室へ搬入(ウエハローディング)する。
【0038】
本実施の形態においては、第三処理ユニット33には図5に示された枚葉式コールドウオール形CVD装置(以下、枚葉式CVD装置という。)150が使用されている。
図5に示されているように、枚葉式CVD装置150はウエハ2を処理する処理室151を形成した筐体152を備えており、筐体152は下側容器153と上側容器154とボトムキャップ155とが組み合わされて、上下端面がいずれも閉塞した円筒形状に形成されている。
筐体152の下側容器153の円筒壁における中間部にはゲートバルブ157によって開閉されるウエハ搬入搬出口156が水平方向に横長に開設されており、ウエハ搬入搬出口156はウエハ2を処理室151に負圧移載装置13によって搬入搬出し得るように形成されている。
下側容器153の上端部には排気バッファ空間158が環状に形成されており、排気バッファ空間158の上には円形リング形状に形成されたカバープレート159が被せられている。カバープレート159の内周縁辺部はウエハ2の外周縁辺部を被覆するように構成されている。
【0039】
筐体152は複数本の支柱161によって水平に支持されている。各支柱161には各昇降ブロック162がそれぞれ昇降自在に嵌合されており、これら昇降ブロック162間には昇降台163が架設されている。昇降台163はエアシリンダ装置等が使用された昇降駆動装置160によって昇降されるように構成されている。
筐体152のボトムキャップ155の中心には円形の挿通孔が開設されており、挿通孔には円筒形状に形成された支持軸164が処理室151に下方から同心円に挿通されている。支持軸164は昇降台163に支持されて昇降されるようになっている。
支持軸164の上端にはウエハ2を加熱するためのヒータ165aを支持する加熱ユニット165が、同心に配されて水平に固定されており、加熱ユニット165は支持軸164によって昇降されるようになっている。
【0040】
昇降台163の上にはブラシレスDCモータが使用されたサセプタ回転装置167が設置されている。筐体152とサセプタ回転装置167との間にはベローズ166が内側空間を気密封止するように介設されている。サセプタ回転装置167の回転軸168は中空軸に形成されており、支持軸164は回転軸168の内側で同心円に配置されている。
回転軸168はサセプタ回転装置167を介して昇降台163によって支持されることにより、支持軸164と共に昇降するようになっている。
回転軸168の上端には回転ドラム169が同心に配されて水平に固定されており、回転ドラム169は回転軸168によって回転されるようになっている。
回転ドラム169の上端には、サセプタ170が上端開口を閉塞するように被せられている。
また、回転ドラム169にはウエハ昇降装置171が設置されており、ウエハ昇降装置171はウエハ2をサセプタ170の下から垂直に突き上げてサセプタ170の上面から浮かせるように構成されている。
【0041】
下側容器153の上端部であってウエハ搬入搬出口156に対向する側壁には、処理室151を排気する排気口172が排気バッファ空間158に連通するように開設されている。排気口172には排気ライン(図示せず)の一端が接続されており、排気ラインの他端は真空ポンプや開閉弁および可変流量制御弁等からなる排気装置(図示せず)に接続されている。
【0042】
筐体152の上側容器154には、ガス供給手段としてのガスヘッド173が一体的に組み込まれている。
ガスヘッド173は上側容器154と下側容器153との合わせ面に挟持された吹出プレート174を備えており、吹出プレート174には複数個の吹出口175が、全面にわたって均一に配置されて上下の空間を流通させるように開設されている。
吹出プレート174の上面と上側容器154の下面および内周面とが画成する内側空間は、ガス溜め176を形成している。
【0043】
上側容器154にはガス導入管177の下流側端部がガス溜め176に連通するように挿入されており、ガス導入管177の上流側端には成膜ガス供給ライン181の下流側端が接続されている。成膜ガス供給ライン181の上流側端は止め弁182およびマスフローコントローラ(以下、MFCという。)183を介して成膜ガス供給装置184に接続されている。
また、ガス導入管177の上流側端にはドーパントガス供給ライン185の下流側端が接続されている。ドーパントガス供給ライン185の上流側端は止め弁186およびMFC187を介してドーパントガス供給装置188に接続されている。
【0044】
上側容器154のガス導入管177と異なる位置にはプラズマ導入管190の下流側端部がガス溜め176に連通するように挿入されており、プラズマ導入管190の上流側端にはプラズマユニット191が接続されている。プラズマユニット191はプラズマを発生して、プラズマ導入管190を通じてガス溜め176に導入するようになっている。
プラズマユニット191にはクリーニングガス供給ライン192の下流側端が接続されている。クリーニングガス供給ライン192の上流側端は止め弁193およびMFC194を介してクリーニングガス供給装置195に接続されている。
プラズマユニット191には窒化ガス供給ライン196の下流側端が接続されている。窒化ガス供給ライン196の上流側端は止め弁197およびMFC198を介して窒化ガス供給装置199に接続されている。
【0045】
成膜ガス供給ライン181の止め弁182およびMFC183、ドーパントガス供給ライン185の止め弁186およびMFC187、クリーニングガス供給ライン192の止め弁193およびMFC194、窒化ガス供給ライン196の止め弁197およびMFC198は、電気配線(図示せず)を介してコントローラ37(図2参照)に接続されており、コントローラ37によって後述するように制御されるべく構成されている。
【0046】
次に、アニール済みのハフニウムシリケート膜に図1に示されたプラズマ窒化ステップおよびゲート電極形成ステップを、以上の構成に係る枚葉式CVD装置を使用して同一の処理室にて実施する場合について説明する。
【0047】
ゲートバルブ157が開かれると、成膜すべきウエハ2は第三処理ユニット33である枚葉式CVD装置150の処理室151に、負圧移載装置13によってウエハ搬入搬出口156から搬入され、ウエハ昇降装置171の突上ピンの上に移載される。
負圧移載装置13が処理室151から退出すると、ウエハ搬入搬出口156はゲートバルブ157によって閉じられる。
ゲートバルブ157が閉じられると、図5によって参照されるように、処理室151に対して回転ドラム169および加熱ユニット165が、昇降駆動装置による回転軸168および支持軸164の上昇作動によって上昇される。所定のストロークだけ上昇すると、ウエハ2はサセプタ170の上に移載された状態になる。
【0048】
ウエハ2がサセプタ170の上に移載されると、回転ドラム169が回転軸168によって回転される。
処理室151内が排気口172を通して排気装置によって排気され、処理室151内の圧力は0.5〜200Paの範囲内の所定の圧力となるように制御される。
また、サセプタ170に保持されたウエハ2は室温〜950℃の範囲内で所定のプラズマ窒化処理温度に、加熱ユニット165によって加熱される。
【0049】
次いで、0.1〜2SLMの流量の窒素(N2 )ガスやアンモニア(NH3 )ガス等の窒素原子を含むガスが窒化ガス201として、図5に示されているように、プラズマユニット191に窒化ガス供給装置199から窒化ガス供給ライン196の止め弁197およびMFC198を介して供給される。
プラズマユニット191に供給された窒化ガス201はプラズマユニット191に生成されたプラズマによって活性化されて、プラズマ導入管190を通じてガス溜め176に導入され、吹出プレート174の複数個の吹出口175から処理室151にシャワー状に吹き出される。
この活性化された窒化ガス201により、ウエハ2の表面にプラズマ窒化処理が施され、ウエハ2上のハフニウムシリケート膜に窒素が添加され、ハフニウムシリケート膜は窒化ハフニウムシリケート膜となる。
【0050】
プラズマ窒化ステップにおいて予め設定された処理時間が経過すると、処理室151内は排気口172を通じて排気装置によって排気され、処理室151内の残留ガスが除去される。
【0051】
処理室151内の残留ガスが除去されると、電極膜を形成するステップである図1に示されたゲート電極形成ステップが同一の処理室である処理室151において連続して実施される。
【0052】
ウエハ2の温度や処理室151内の圧力および回転ドラム169の回転作動が安定した時点で、成膜ガスがガス導入管177に導入される。
ガス導入管177に導入された成膜ガスはガス溜め176において拡散し、複数の吹出口175からウエハ2に向かってシャワー状に全面にわたって均等に吹き出す。
吹出口175群からシャワー状に吹き出した成膜ガスはサセプタ170の上のウエハ2に全面にわたって均一に接触した後に、排気バッファ空間158を通って排気口172に吸い込まれて排気されて行く。
成膜ガスのウエハ2への接触によって、ウエハ2上の窒化ハフニウムシリケート膜の上にはゲート電極を形成するためのCVD膜が堆積する。
【0053】
ここで、ゲート電極を形成するための電極膜であるCVD膜として、燐(P)をドープしたドープドポリシリコン(D−Poly−Si)膜を形成する場合の処理条件の一例を示すと、次の通りである。
成膜ガスとしては、例えば、モノシラン(SiH4 )やジシラン(Si2 6 )が使用され、その流量は、0.1〜1SLMである。
図6に示されているように、この成膜ガス202は成膜ガス供給ライン181の止め弁182およびMFC183を介して成膜ガス供給装置184からガス導入管177に供給される。
燐(P)ドープのためのドーパントガスとしては、ホフスィン(PH3 )が使用され、その流量は、0.1〜5SLMである。
図6に示されているように、ドーパントガス203はドーパントガス供給ライン185の止め弁186およびMFC187を介してドーパントガス供給装置188からガス導入管177に供給され、成膜ガス202に混合される。
ウエハの温度は540〜700℃の範囲内の所定の温度である。
処理室内の圧力は1000〜50000Paの範囲内の所定の圧力である。
【0054】
ゲート電極形成ステップについて予め設定された所定の処理時間が経過すると、成膜ガス202およびドーパントガス203の供給が停止される。
続いて、処理室151に残留した成膜ガス202およびドーパントガス203が排気装置による排気によって除去される。
その後に、ゲートバルブ157が開かれて、ゲート電極のためのCVD膜が形成されたウエハ2は、負圧移載装置13によって搬入時と逆の手順で処理室151から負圧移載室11に搬出(ウエハアンローディング)される。
搬出後に、ゲートバルブ157は閉じられる。
【0055】
なお、高誘電体膜形成ステップ、アニールステップおよびゲート電極形成ステップ実施後のウエハは、第一クーリングユニット35または第二クーリングユニット36が使用されて、必要に応じて冷却される場合もある。
【0056】
クラスタ装置10でのゲート電極形成ステップ後の図1に示されたウエハアンローディングステップにおいては、搬出室15の負圧移載室11側がゲートバルブ18Bによって開かれ、負圧移載装置13はウエハ2を負圧移載室11から搬出室15へ搬送し、搬出室15の搬出室用仮置き台の上に移載する。
この際には、事前に、搬出室15の正圧移載室16側がゲートバルブ18Aによって閉じられ、搬出室15が排気装置(図示せず)によって負圧に排気される。
搬出室15が予め設定された圧力値に減圧されると、搬出室15の負圧移載室11側がゲートバルブ18Bによって開かれ、ウエハアンローディングステップが行われる。
ウエハアンローディングステップ後に、ゲートバルブ18Bは閉じられる。
【0057】
なお、ゲート電極形成ステップ実施済みのウエハ2についてのクラスタ装置10における第三処理ユニット33から負圧移載室11を介して行なわれる搬出室15へのアンローディング作業は、いずれも真空下に維持された第三処理ユニット33、負圧移載室11および搬出室15において実施されるために、第三処理ユニット33から搬出室15へのウエハ2のアンローディング作業に際して、ウエハ2に形成された膜の表面に自然酸化膜が生成されたり、異物等が付着したりするのは防止される。
ちなみに、搬入室14から第一処理ユニット31へ、第一処理ユニット31から第二処理ユニット32へ、第二処理ユニット32から第三処理ユニット33へ、ウエハをそれぞれ搬送する場合においても、搬送作業はいずれも真空下に維持された状態で実施されるために、ウエハ2に形成された膜の表面に自然酸化膜が生成されたり、異物等が付着したりするのは防止される。
【0058】
以上の作動が繰り返されることにより、搬入室14に一括して搬入された25枚のウエハ2について、第一処理ユニット31による高誘電極体膜形成ステップ、第二処理ユニット32によるアニールステップ、第三処理ユニット33によるプラズマ窒化ステップおよびゲート電極形成ステップが順次に実施されて行く。
なお、先に処理されているウエハ2が第一処理ユニット31での処理を終了し、第二処理ユニット32に搬入され後に、次のウエハ2を第一処理ユニット31に搬送し、処理することが可能である。
つまり、一連の処理順序の中で、それぞれの処理ユニットが空き状態になったら、次のウエハ2を搬入して、並列で複数のウエハを処理することが可能である。
25枚のウエハ2について一連の所定の処理が完了すると、処理済のウエハ2は搬出室15の仮置き台に溜められた状態になる。
【0059】
図1に示されたウエハ排出ステップにおいては、負圧に維持された搬出室15内に窒素ガスが供給され、搬出室15内が大気圧となった後に、搬出室15の正圧移載室16側が、ゲートバルブ18Aによって開かれる。
次いで、載置台25に載置された空のポッド1のキャップが、ポッドオープナ24のキャップ着脱機構26によって開かれる。
続いて、正圧移載室16の正圧移載装置19は搬出室15からウエハ2をピックアップして正圧移載室16に搬出し、正圧移載室16のウエハ搬入搬出口23を通してポッド1に収納(チャージング)して行く。
処理済みの25枚のウエハ2のポッド1への収納が完了すると、ポッド1のキャップがポッドオープナ24のキャップ着脱機構26によってウエハ出し入れ口に装着され、ポッド1が閉じられる。
【0060】
ところで、前述したプラズマ窒化ステップおよびゲート電極形成ステップが実施される枚葉式CVD装置150においては、CVD膜や反応生成物が処理室151の内面やサセプタ170やカバープレート159や吹出プレート174や回転ドラム169等に付着して堆積する。
この堆積物の膜厚がある厚さに達すると、剥離してパーティクルとなり、CVD膜の品質および信頼性を低下させるために、処理室151内を定期または不定期にセルフクリーニングすることが望ましい。
【0061】
本実施の形態に係る枚葉式CVD装置150においては、プラズマユニット191に接続されたクリーニングガス供給ライン192を使用することにより、処理室151内のセルフクリーニングが実施される。
すなわち、定期または不定期のセルフクリーニングステップの実施に際しては、図7に示されているように、処理室151内にウエハ2が搬入されていない状態で、三弗化窒素(NF3 )ガス等の弗素原子を含むガスがクリーニングガス204として、プラズマユニット191にクリーニングガス供給装置195からクリーニングガス供給ライン192の止め弁193およびMFC194を介して供給される。
プラズマユニット191に供給されたクリーニングガス204は、このプラズマユニット191に生成されたプラズマによって活性化されて、プラズマ導入管190を通じてガス溜め176に導入され、吹出プレート174の複数個の吹出口175から処理室151にシャワー状に吹き出される。
この活性化されたクリーニングガス204により、堆積物がエッチングされて除去されるので、処理室151の内面やサセプタ170やカバープレート159や吹出プレート174や回転ドラム169等がセルフクリーニングされることになる。
【0062】
前記実施の形態によれば、次の効果が得られる。
【0063】
1) ゲート電極形成ステップを行う枚葉式CVD装置に備えられクリーニングの際に用いられるプラズマユニットによるプラズマを利用して同一の処理室内でプラズマ窒化ステップととを実施することにより、高誘電極体膜形成ステップ、アニールステップ、プラズマ窒化ステップおよびゲート電極形成ステップの四つのステップを第一処理ユニット、第二処理ユニットおよび第三処理ユニットの三つのユニットによって実施することができるので、クラスタ装置のスペースやコストを低減することができ、ひいてはICの製造方法のコストを低減することができる。
【0064】
2) プラズマ窒化ステップ(高誘電率膜の改質処理)とゲート電極形成ステップ(ゲート電極形成処理)の処理条件を最適化することにより、処理温度を変えることなく同一の処理室において連続して実施することができるので、ゲートスタック形成工程ひいてはICの製造方法のスループットを向上させることができる。
【0065】
3) プラズマユニットに接続されたクリーニングガス供給ラインを使用して枚葉式CVD装置の処理室内をセルフクリーニングすることにより、処理室の内面やサセプタやカバープレートや吹出プレートや回転ドラム等にプラズマ窒化ステップおよびゲート電極形成ステップの実施によって堆積した堆積物を除去することができるので、当該堆積物を起因とするCVD膜の品質および信頼性の低下を未然に防止することができるとともに、枚葉式CVD装置を休止させて実施されるウエットエッチングによる所謂フルクリーニングの頻度を抑制することができ、枚葉式CVD装置ひいてはクラスタ装置の生産性を向上させることができる。
【0066】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々に変更が可能であることはいうまでもない。
【0067】
前記実施の形態においては、ゲート電極としてドープドポリシリコン膜を形成する場合ついて説明したが、本発明はゲート電極としてメタルゲート電極(以下、メタル電極という。)を形成する場合にも、適用することができる。
なお、メタル電極の形成材料としては、例えば、TiN、TaN、NiSi、PtSi、TaC、TiSi、Ru、SiGe等がある。
【0068】
前記実施の形態においては、MOSFETのゲートスタック形成工程について説明したが、プラズマ窒化ステップと電極膜形成ステップとが必要なメモリのキャパシタ形成工程等にも適用することができる。
なお、キャパシタ上部電極の形成材料としては、例えば、Al、TiN、Ru、RuO2 、SRO(Srx Ruy 3 )、Ir、Pt等がある。
電極形成ステップに使用する電極形成用ガスは、所望の電極形成材料に応じて、適宜に選定されることになる。
【0069】
高誘電体膜の形成材料としては、窒化ハフニウムシリケート(HfSiON)を使用するに限らない。
ゲート絶縁膜を形成するための高誘電体膜の形成材料としては、例えば、ZrSiON、HfON、ZrON、HfAlON、ZrAlON等がある。
【0070】
被処理基板はウエハに限らず、LCD装置の製造工程におけるガラス基板や液晶パネル等の基板であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の一実施の形態であるICの製造方法におけるMOSFETのゲートスタック形成工程を示すフローチャートである。
【図2】本発明の一実施の形態ICの製造方法におけるMOSFETのゲートスタック形成工程の実施に使用されるクラスタ装置を示す平面断面図である。
【図3】枚葉式ALD装置を示す正面断面図である。
【図4】RTP装置を示す正面断面図である。
【図5】枚葉式CVD装置を示す一部省略一部切断正面図であり、プラズマ窒化ステップを示している。
【図6】ゲート電極形成ステップを示す枚葉式CVD装置の一部省略一部切断正面図である。
【図7】セルフクリーニングステップを示す枚葉式CVD装置の一部省略一部切断正面図である。
【符号の説明】
【0072】
1…ポッド、2…ウエハ(被処理基板)、10…クラスタ装置(基板処理装置)、11…負圧移載室(基板移載室)、12…負圧移載室筐体、13…負圧移載装置(ウエハ移載装置)、14…搬入室(搬入用予備室)、15…搬出室(搬出用予備室)、16…正圧移載室(ウエハ移載室)、17A、17B…ゲートバルブ、18A、18B…ゲートバルブ、19…正圧移載装置(ウエハ移載装置)、20…ノッチ合わせ装置、21、22、23…ウエハ搬入搬出口、24…ポッドオープナ、25…載置台、26…キャップ着脱機構、31…第一処理ユニット、32…第二処理ユニット、33…第三処理ユニット、35…第一クーリングユニット、36…第二クーリングユニット、37…コントローラ。
40…ALD装置、41…処理室、42…筐体、43…ウエハ搬入搬出口、44…ゲートバルブ、45…昇降駆動装置、46…昇降軸、47…保持具、47a…ヒータ、48A、48B…パージガス供給口、49…排気口、50…排気装置、51…排気ライン、52…処理ガス供給口、53A…第一処理ガス供給ライン、54A…上流側止め弁、55A…下流側止め弁、56A…第一バブラ、57A…バブリング管、58…アルゴンガス供給ライン、59…アルゴンガス供給源、60A…止め弁、61A…ベントライン、62A…止め弁、53B…第二処理ガス供給ライン、54B…上流側止め弁、55B…下流側止め弁、56B…第二バブラ、57B…バブリング管、60B…止め弁、61B…ベントライン、62B…止め弁。
90…酸化剤供給ライン、91…オゾナイザ、92…止め弁、93…酸素ガス供給源、94…止め弁。
110…RTP装置、111…処理室、112…筐体、113…容器、114…トッププレート、115…ボトムプレート、116…排気口、117…ウエハ搬入搬出口、118…ゲートバルブ、119…昇降駆動装置、120…昇降軸、121…昇降板、122…リフタピン、123…支持筒、124…冷却プレート、125…第一加熱ランプ群、126…第二加熱ランプ群、127…第一支柱、128…第二支柱、129…電力供給電線、131…タレット、132…ベアリング、133…内歯平歯車、134…原動側平歯車、135…ベアリング、136…サセプタ回転装置、137…アウタプラットホーム、138…インナプラットホーム、139…係合部、140…サセプタ、141…挿通孔、142…アニールガス供給管、143…不活性ガス供給管、144…プローブ、145…放射率測定装置、146…レファレンスプローブ、147…レファレンスプローブ用モータ、148…レファレンスランプ。
150…枚葉式CVD装置、151…処理室、152…筐体、153…下側容器、154…上側容器、155…ボトムキャップ、156…ウエハ搬入搬出口、157…ゲートバルブ、158…排気バッファ空間、159…カバープレート、161…支柱、162…昇降ブロック、163…昇降台、164…支持軸、165…加熱ユニット、165a…ヒータ、166…ベローズ、167…サセプタ回転装置、168…回転軸、169…回転ドラム、170…サセプタ、171…ウエハ昇降装置、172…排気口、173…ガスヘッド、174…吹出プレート、175…吹出口、176…ガス溜め、177…ガス導入管、181…成膜ガス供給ライン、182…止め弁、183…MFC、184…成膜ガス供給装置、185…ドーパントガス供給ライン、186…止め弁、187…MFC、188…ドーパントガス供給装置、190…プラズマ導入管、191…プラズマユニット、192…クリーニングガス供給ライン、193…止め弁、194…MFC、195…クリーニングガス供給装置、196…窒化ガス供給ライン、197…止め弁、198…MFC、199…窒化ガス供給装置、201…窒化ガス、202…成膜ガス、203…ドーパントガス、204…クリーニングガス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高誘電率膜が形成された基板を処理室内に搬入するステップと、
前記処理室に接続されたプラズマユニットによるプラズマによって活性化した窒素原子を含むガスを前記処理室内に供給して前記高誘電率膜に対してプラズマ窒化処理を施すステップと、
前記処理室内に成膜ガスを供給して前記プラズマ窒化処理後の高誘電率膜上に電極膜を形成するステップと、
前記電極膜形成後の基板を前記処理室内から搬出するステップと、
前記プラズマユニットによるプラズマによって活性化したクリーニングガスを前記処理室内に供給して前記処理室内をクリーニングするステップと、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−44088(P2009−44088A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−210165(P2007−210165)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】