説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】MISトランジスタにおけるシリコン混晶層からなるソースドレイン領域を、不純物の拡散による不具合を防止しながらチャネル領域に近づけることができるようにする。
【解決手段】半導体装置は、半導体基板10からなるn型の活性領域の上に、ゲート絶縁膜12を介在させて形成されたゲート電極13と、活性領域におけるゲート電極13の両側方の領域に形成されたp型ソースドレイン領域20と、活性領域における各p型ソースドレイン領域20の側面からそれぞれゲート電極13の下側に向かって形成されたn型ポケット領域18とを有している。p型ソースドレイン領域20は、シリコンとIV族元素との混晶層からなり、混晶層は、ゲート長方向におけるゲート電極側の側面がゲート電極側に突き出す凸部20aを有している。凸部20aの先端は、ポケット領域18によって覆われている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関し、特に、ソースドレイン領域にシリコン混晶層を含むMISFET(metal-insulator semiconductor field effect transistor)を有する半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路装置の高性能化を実現するため、MISFET(以下、MISトランジスタと称す。)のチャネル領域に応力を印加することにより、トランジスタの駆動能力を向上させる歪み技術が用いられるようになってきている。p型MISトランジスタにおいては、チャネル領域のゲート長方向に圧縮応力を印加することにより、キャリアの移動度が向上することが知られている。チャネル領域に圧縮応力を印加する方法には、半導体基板に用いられるシリコン(Si)よりも大きい格子定数を有するシリコンゲルマニウム(SiGe)層をソースドレイン領域に形成する方法が採られている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0003】
図9にp型MISトランジスタのソースドレイン領域にSiGeからなるシリコン混晶層を有する従来の半導体装置を示す。
【0004】
図9に示すように、シリコンからなる半導体基板100の上には、ゲート絶縁膜101を介在させたゲート電極102が形成されている。ゲート電極102の両側面には、絶縁膜からなるオフセットサイドウォール103が形成され、ゲート絶縁膜101を含めその外側には、断面L字状の第1のサイドウォール104と第2のサイドウォール105とがそれぞれ形成されている。
【0005】
半導体基板100におけるn型のチャネル領域であって、第1のサイドウォール104及び第2のサイドウォール105の下側にはそれぞれ、p型エクステンション領域106と、該p型エクステンション領域106の下方を覆うn型ポケット領域107とが形成されている。
【0006】
半導体基板100におけるp型エクステンション領域106及びn型ポケット領域107の外側には、p型のSiGeからなるシリコン混晶層108がソースドレイン領域として形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−186240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般に、SiGeからなるシリコン混晶層によるチャネル領域への圧縮応力は、p型トランジスタの駆動能力を向上させる。ところが、トランジスタの微細化が進むにつれて、チャネル領域の面積が小さくなるため、シリコン混晶層がチャネル領域に接近する。これにより、シリコン混晶層からのp型不純物の拡散によって、p型トランジスタのしきい値電圧Vtが変動して、該トランジスタの駆動能力を劣化させる。このため、p型トランジスタのソースドレイン形成領域にシリコン混晶層を形成する場合は、シリコン混晶層からのp型不純物の拡散を考慮しながら、シリコン混晶層をチャネル領域に近づける構成とする必要がある。
【0009】
従って、図9に示すように、シリコン混晶層が形成されるソースドレイン領域は、該シリコン混晶層からの不純物の拡散を考慮して、サイドウォールの外側に形成することとなる。ところが、シリコン混晶層がチャネル領域から離れた構成では、ゲート長方向の圧縮応力をチャネル領域に対して効果的に印加することができない。
【0010】
すなわち、応力を印加する観点からシリコン混晶層をチャネル領域にできるだけ近づけたいという要求は、シリコン混晶層からの不純物の拡散による不具合を防止する必要から、十分に達成することができないという問題がある。
【0011】
前記の問題に鑑み、本発明は、MISトランジスタにおけるシリコン混晶層からなるソースドレイン領域を、不純物の拡散による不具合を防止しながらチャネル領域に近づけることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の目的を達成するため、本発明は、半導体装置を第1導電型のシリコン混晶層に設けられた、ゲート電極側に突き出す凸部(Σ先端部)の先端が第2導電型のポケット領域に覆われる構成とする。
【0013】
具体的に、本発明に係る半導体装置は、半導体基板からなる第1導電型の活性領域の上に、ゲート絶縁膜を介在させて形成されたゲート電極と、活性領域におけるゲート電極の両側方の領域に形成された第2導電型のソースドレイン領域と、活性領域における各ソースドレイン領域の側面からそれぞれゲート電極の下側に向かって形成された第1導電型のポケット領域とを備え、ソースドレイン領域は、シリコンとIV族元素との混晶層からなり、混晶層はゲート長方向におけるゲート電極側の側面がゲート電極側に突き出す凸部を有しており、凸部の先端はポケット領域によって覆われている。
【0014】
本発明の半導体装置によると、第2導電型のソースドレイン領域は、シリコンとIV族元素との混晶層からなり、且つ、混晶層は、ゲート長方向におけるゲート電極側の側面がゲート電極側に突き出す凸部を有しており、凸部の先端は第1導電型のポケット領域によって覆われている。このため、シリコン混晶層からの不純物がチャネル領域に拡散することが抑制されて、しきい値電圧の変動を防止することができる。また、シリコン混晶層をサイドウォールよりも内側に形成することが可能となるため、チャネル領域のゲート電極側への圧縮応力を効果的に印加することができる。
【0015】
本発明の半導体装置において、混晶層における凸部の深さ方向における先端位置は、ポケット領域の不純物濃度のピーク位置よりも深いか又は同等であることが好ましい。
【0016】
本発明の半導体装置は、活性領域の上部における各ソースドレイン領域の側面からそれぞれゲート電極の下側に向かって形成された第2導電型のエクステンション領域をさらに備え、混晶層における凸部の深さ方向における先端位置は、エクステンション領域の最大接合深さよりも深く、且つ、ポケット領域の最大接合深さの2分の1よりも深いことが好ましい。
【0017】
また、本発明の半導体装置は、ゲート電極におけるゲート長方向側の両側面上に形成された絶縁膜からなるサイドウォールをさらに備え、混晶層における活性領域の上面と交差する位置は、サイドウォールの外側の最外側面よりも内側に形成されていることが好ましい。
【0018】
本発明の半導体装置において、混晶層における凸部の先端位置は、活性領域の表面から18nm以上且つ23nm以下であってもよい。
【0019】
本発明の半導体装置において、混晶層を構成するIV族元素はゲルマニウムであることが好ましい。
【0020】
また、本発明の半導体装置において、混晶層を構成するIV族元素は炭素であってもよい。
【0021】
本発明の半導体装置は、ゲート電極の上部及び混晶層の上部にそれぞれ形成された金属シリサイド層と、活性領域の上に、金属シリサイド層を含めゲート電極及び混晶層を覆うように形成されたライナ絶縁膜とをさらに備えていてもよい。
【0022】
本発明の半導体装置において、ゲート電極の下方において、互いに対向するポケット領域同士が接していてもよい。
【0023】
本発明に係る半導体装置の製造方法は、半導体基板からなる第1導電型の活性領域の上にゲート絶縁膜を介在させてゲート電極を形成する工程(a)と、活性領域にゲート電極をマスクとして、第2導電型のポケット領域を選択的に形成する工程(b)と、ゲート電極の両側面上に、絶縁膜からなるハードマスク層を形成する工程(c)と、活性領域に対して、ハードマスク層をマスクとしてエッチングを行うことにより、活性領域におけるハードマスク層の外側の領域にリセスを形成する工程(d)と、リセスにシリコンとIV族元素との混晶からなり且つ第1導電型の混晶層を選択的に形成する工程(e)とを備え、工程(d)において、リセスにおけるゲート電極側の壁面はゲート電極側に突き出す凹部を有しており、工程(e)において、混晶層がリセスの凹部によって形成される側面の凸部の先端は、ポケット領域によって覆われている。
【0024】
本発明の半導体装置の製造方法によると、第1導電型の混晶層がリセスの凹部によって形成される側面の凸部の先端は、第2導電型のポケット領域によって覆われているため、シリコン混晶層からの不純物がチャネル領域に拡散することが抑制されて、しきい値電圧の変動を防止することができる。
【0025】
本発明の半導体装置の製造方法は、工程(c)において、ハードマスク層は、断面形状がL字状の第1のハードマスク層と、第1のハードマスク層上に形成された第2のハードマスク層とからなり、工程(e)よりも後に、第2のハードマスク層を除去する工程(f)をさらに備えていてもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る半導体装置及びその製造方法によると、混晶層の凸部の先端がポケット領域により覆われていることによって、混晶層からの不純物が熱処理等によってチャネル領域に拡散することが抑制されるため、しきい値電圧の変動を防ぐことができる。その上、シリコン混晶層の内壁をサイドウォールの最外側面よりも内側に形成することができるため、チャネル領域のゲート長方向への圧縮応力を効果的に印加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態に係る半導体装置の要部を示す模式的な断面図である。
【図2】(a)〜(c)は本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す模式的な工程順の断面図である。
【図3】(a)〜(c)は本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す模式的な工程順の断面図である。
【図4】(a)〜(c)は本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す模式的な工程順の断面図である。
【図5】(a)〜(c)は本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す模式的な工程順の断面図である。
【図6】(a)及び(b)は本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す模式的な工程順の断面図である。
【図7】本発明の一実施形態及びその変形例に係る半導体装置におけるゲート長寸法としきい値電圧との関係を従来例と比較したグラフである。
【図8】(a)〜(d)は図7の測定に用いた本発明及び従来例に係る半導体装置を示し、(a)は従来例に係る模式的な断面図であり、(b)〜(d)は本発明及びその変形例に係る模式的な断面図である。
【図9】従来の半導体装置の要部を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(一実施形態)
本発明の一実施形態について図1を参照しながら説明する。
【0029】
図1に示すように、本実施形態に係る半導体装置は、CMIS(complementary metal-insulator semiconductor)トランジスタを有している。
【0030】
一例として、半導体基板には、p型シリコン(Si)からなり、主面の面方位が{100}面である半導体基板10を用い、該半導体基板10の主面は、絶縁膜からなるシャロートレンチ分離(素子分離領域)11によって、n型MISトランジスタが形成されるn型トランジスタ領域A、非シリサイドのp型MISトランジスタが形成される非シリサイドp型トランジスタ領域B及びシリコンゲルマニウム層(SiGe層)を有するp型MISトランジスタが形成されるp型トランジスタ領域Cに区画されている。シリコンゲルマニウム層は、シリコンとIV族元素であるゲルマニウムとの混晶層である。
【0031】
n型トランジスタ領域Aには、半導体基板10からなる活性領域の上にゲート絶縁膜12を介在させた、例えばポリシリコンからなるゲート電極13が形成され、該ゲート電極13のゲート長方向側の両側面上には、窒化シリコン(SiN)からなるオフセットサイドウォール15が形成されている。オフセットサイドウォール15の外側には、酸化シリコンからなり断面L字状の第1のハードマスク層19と、酸化シリコン(SiO)からなる第1のサイドウォール21とが形成されている。半導体基板10の活性領域の上部における第1のハードマスク層19の下側には、n型エクステンション領域16が形成され、該n型エクステンション領域16の外側には、n型ソースドレイン領域23が形成されている。また、ゲート電極13の上部及びソースドレイン領域23の上部は、ニッケル(Ni)等の金属によるシリサイド層26がそれぞれ形成されている。さらに、ゲート電極13を含めn型ソースドレイン領域23を覆うように、チャネル領域におけるゲート長方向に引っ張り応力を生じる第1のライナ絶縁膜27が形成されている。
【0032】
非シリサイドp型トランジスタ領域Bには、半導体基板10からなる活性領域の上にゲート絶縁膜12を介在させたポリシリコンからなるゲート電極13が形成され、該ゲート電極13の上には、窒化シリコンからなるゲートハードマスク14が形成されている。また、ゲート電極13のゲート長方向側の両側面上には、窒化シリコンからなるオフセットサイドウォール15が形成されている。オフセットサイドウォール15の外側には、酸化シリコンからなり断面L字状の第1のハードマスク層19と、酸化シリコンからなる第1のサイドウォール21と、窒化シリコンからなる第2のサイドウォール22とが順次形成されている。半導体基板10の活性領域の上部における第1のハードマスク層19の下側には、p型エクステンション領域17が形成され、該p型エクステンション領域17の外側には、p型ソースドレイン領域24が形成されている。また、半導体基板10の活性領域の上部には、p型エクステンション領域17及びp型ソースドレイン領域24の下方を覆うように、n型ポケット領域18が形成されている。さらに、ゲート電極13を含めp型ソースドレイン領域24を覆うように、酸化シリコンからなるシリサイドブロック層25が形成され、該シリサイドブロック層25の上には、チャネル領域におけるゲート長方向に圧縮応力を生じる第2のライナ絶縁膜28が形成されている。
【0033】
p型トランジスタ領域Cには、半導体基板10からなる活性領域上にゲート絶縁膜12を介在させたポリシリコンからなるゲート電極13が形成され、ゲート電極13のゲート長方向側の両側面上には、窒化シリコンからなるオフセットサイドウォール15が形成されている。オフセットサイドウォール15の外側には、酸化シリコンからなり断面L字状の第1のハードマスク層19と、酸化シリコンからなる第1のサイドウォール21とが形成されている。半導体基板10の活性領域の上部における第1のハードマスク層19の下側には、p型エクステンション領域17が形成され、該p型エクステンション領域17の外側には、p型のシリコンゲルマニウム層20からなるp型ソースドレイン領域が形成されている。なお、図1においては、ソースドレイン形成領域にシリコンゲルマニウム層20のみを図示しているが、これに限定されるものではなく、シリコンゲルマニウム層20の周囲にシリコンゲルマニウム層20から半導体基板10にp型不純物が拡散して形成されたp型拡散領域が設けられていてもよい。また、半導体基板10の活性領域には、p型エクステンション領域17の下方及びシリコンゲルマニウム層20の側面を覆うように、n型ポケット領域18が形成されている。また、ゲート電極13の上部及びシリコンゲルマニウム層20の上部は、ニッケル(Ni)等の金属によるシリサイド層26がそれぞれ形成されている。さらに、ゲート電極13を含めシリコンゲルマニウム層20を覆うように、チャネル領域におけるゲート長方向に圧縮応力を生じる第2のライナ絶縁膜28が形成されている。
【0034】
p型トランジスタ領域Cに形成されたp型MISトランジスタは、p型ソースドレイン領域が、エピタキシャル成長によるp型のシリコンゲルマニウム層20から形成されている。シリコンゲルマニウム層20における少なくともゲート電極側の側面は、その面方位がシリコン結晶の{111}面であり、ゲート電極側に突き出す凸部20aを有している。本明細書においては、この側面の凸部20aをΣ先端部とも呼ぶ。また、ゲート電極側とは、シリコンゲルマニウム層20から見てゲート長方向におけるゲート電極側を意味する。
【0035】
本実施形態の特徴として、凸部(Σ先端部)20aの先端は、n型ポケット領域18によって覆われている。ここでは、シリコンゲルマニウム層20における凸部20aの深さ方向における先端位置は、n型ポケット領域18の不純物濃度のピーク位置よりも深いか又は同等であることが好ましい。また、シリコンゲルマニウム層20における凸部20aの深さ方向における先端位置は、p型エクステンション領域17の最大接合深さよりも深く、且つ、n型ポケット領域18の最大接合深さの2分の1よりも深く、且つ、n型ポケット領域18の最大接合深さよりも浅いことが好ましい。さらに、シリコンゲルマニウム層20における半導体基板10の主面(第1のハードマスク層19の直下の活性領域の上面)と交差する位置は、サイドウォールを構成する第1のハードマスク層19の外側の最外側面(端部)よりも内側に形成されている。ここで、第1のハードマスク層19の外側の最外側面とは、第1のハードマスク層19のゲート電極側からソースドレイン領域側に伸びる下部部分の端部側面を意味する。従って、シリコンゲルマニウム層20は、第1のハードマスク層19における端部とオーバーラップするように、第1のハードマスク層19の下面に接して形成される。
【0036】
本実施形態に係る半導体装置は、特にp型トランジスタ領域Cに形成されたp型MISトランジスタにおいて、p型ソースドレイン領域がシリコンゲルマニウム層20からなり、且つ、シリコンゲルマニウム層20における少なくともゲート電極側の側面がゲート電極側に突き出す凸部20aを有している。その上、該凸部20aはn型ポケット領域18によって覆われているため、シリコンゲルマニウム層20からのp型不純物のチャネル領域への拡散を抑制することができる。さらに、シリコンゲルマニウム層20における凸部20aのゲート長方向における先端位置は、ゲート電極13の側面よりも外側で、且つ、サイドウォールを構成する第1のハードマスク層19の外側の最外側面(端部)よりも内側に形成されている。その結果、p型MISトランジスタのしきい値電圧Vtの変動を防止することができる。また、シリコンゲルマニウム層20をサイドウォール19、21の外側の端部よりもチャネル領域側に形成することが可能となるため、チャネル領域のゲート長方向への圧縮応力を効果的に印加することができる。
【0037】
以下、上記のように構成された半導体装置の製造方法の一例として図2〜図6を参照しながら説明する。
【0038】
まず、図2(a) に示すように、p型シリコンからなる半導体基板10の上部に、シャロートレンチ分離(素子分離領域)11を選択的に形成して、n型トランジスタ領域A、非シリサイドp型トランジスタ領域B及びp型トランジスタ領域Cに区画する。続いて、半導体基板10におけるn型トランジスタ領域Aに、p型ウェル又はp型チャネル領域を形成するための、例えばボロン(B)等のp型不純物をイオン注入によって導入する。また、半導体基板10における非シリサイドp型トランジスタ領域B及びp型トランジスタ領域Cには、n型ウェル又はn型チャネル領域を形成するための、例えば砒素(As)等のn型不純物をイオン注入により導入する。なお、p型不純物注入とn型不純物注入との注入の順序は特に問われない。
【0039】
続いて、半導体基板10の上に、例えば膜厚が1.5nmの酸化シリコンからなるゲート絶縁膜形成膜を形成する。その後、ゲート絶縁膜形成膜の上に、化学気相堆積(Chemical Vapor Deposition:CVD)法により、例えば膜厚が50nmのポリシリコンからなるゲート電極形成膜を堆積により形成する。ここで、ゲート絶縁膜形成膜には、酸化シリコンに限られず、酸化シリコンと、ハフニウム酸化物又はジルコニウム酸化物等の高誘電体とを積層した積層膜を用いてもよい。また、ゲート絶縁膜形成膜とゲート電極形成膜との間には、メタル層を挿入してポリメタルゲート構造としてもよい。また、ゲート絶縁膜形成膜はポリシリコンに限られない。
【0040】
続いて、CVD法により、ゲート電極形成膜の上に、例えば膜厚が30nmの窒化シリコンからなるゲートハードマスク形成膜を堆積する。その後、リソグラフィ法及びドライエッチング法により、ゲートハードマスク形成膜、ゲート電極形成膜、ゲート絶縁膜形成膜を順次パターニングする。これにより、n型トランジスタ領域A、非シリサイドp型トランジスタ領域B及びp型トランジスタ領域Cの半導体基板10からなる各活性領域の上に、それぞれ、ゲート絶縁膜形成膜からゲート絶縁膜12を形成し、ゲート電極形成膜からゲート電極13を形成し、ゲートハードマスク形成膜からゲートハードマスク14を形成する。ここでは、各ゲート電極13のゲート長寸法を28nmから35nm程度としている。
【0041】
続いて、CVD法により、半導体基板10の上に、各ゲートハードマスク14及びゲート電極13を覆うように、例えば膜厚が5nmのシリコン窒化膜を堆積し、堆積したシリコン窒化膜をドライエッチング法によって異方性エッチングすることにより、各ゲート電極13の両側面上にオフセットサイドウォール15を形成する。その後、n型トランジスタ領域Aの活性領域には、例えば砒素等のn型不純物をイオン注入することにより、活性領域におけるゲート電極13の両側方の領域に接合深さが浅いn型不純物領域であるn型エクステンション領域16を形成する。また、非シリサイドp型トランジスタ領域B及びp型MISトランジスタ領域Cの各活性領域には、ボロン等のp型不純物をイオン注入し、さらに、砒素等のn型不純物をイオン注入することにより、各活性領域におけるゲート電極13の両側方の領域に接合深さが浅いp型不純物領域であるp型エクステンション領域17と、p型エクステンション領域17の底面を覆うようにp型エクステンション領域17よりも接合深さが深いn型不純物領域であるn型ポケット領域18とを形成する。ここで、n型ポケット領域18のイオン注入方法として、例えば、砒素雰囲気で注入エネルギーを15keV〜75keVとし、n型不純物のドーズ量を1×1013ions/cm〜2×1013ions/cmとし、傾斜角度を15°から38°の範囲とする角度注入を行っている。これにより、n型不純物は、ゲート電極13の両側面上の各オフセットサイドウォール15よりも内側に注入される。このときのn型ポケット領域18の深さは、35nmから45nm程度が好ましく、ここでは40nmとしている。また、p型エクステンション領域17の深さは、8nmから12nm程度が好ましく、例えば10nmとし、p型不純物のドーズ量は1×1015ions/cm〜2×1015ions/cmとしている。なお、p型エクステンション領域17とn型ポケット領域18との注入の順序は特に問われない。
【0042】
次に、図2(b)に示すように、CVD法により、半導体基板10の上に各ゲートハードマスク14及び各オフセットサイドウォール15を含む各ゲート電極13を覆うように、例えば膜厚が5nmの酸化シリコンからなる第1のハードマスク層19を形成する。その後、CVD法により、第1のハードマスク層19の上に、例えば膜厚が15nmの窒化シリコンからなる第2のハードマスク層30を形成する。
【0043】
次に、図2(c)に示すように、半導体基板10の全面にレジスト膜を成膜し、成膜されたレジスト膜に対して、リソグラフィ法により、p型トランジスタ領域Cに開口パターンを有し、n型トランジスタ領域A及び非シリサイドp型トランジスタ領域Bを覆うレジスト膜31を形成する。
【0044】
次に、開口パターンを有するレジスト膜31をマスクとした異方性のドライエッチング法により、図3(a)に示すように、p型トランジスタ領域Cの第2のハードマスク層30及び第1のハードマスク層19を順次エッチングする。これにより、p型トランジスタ領域Cにおいては、各オフセットサイドウォール15の側面上にのみ第2のハードマスク層30及び第1のハードマスク層19が残存する。なお、第1のハードマスク層19は、第2のハードマスク層30によって、オフセットサイドウォール15と半導体基板10との隣接部分で断面L字状となる。ここで、第2のハードマスク層30及び第1のハードマスク層19の各膜厚を増減させることにより、p型トランジスタ領域Cの活性領域の上面の露出幅を制御することができる。なお、オフセットサイドウォール15、第1のハードマスク層19及び第2のハードマスク層30からなるサイドウォールの幅寸法(合計の最大幅)は、ゲート電極13の側面から20nm〜25nmの範囲であることが好ましい。
【0045】
次に、レジスト膜31を除去し、その後、例えば異方性のドライエッチング法及び異方性のウェットエッチング法により、第2のハードマスク層30をマスクとしてp型トランジスタ領域Cの活性領域に対してエッチングを行う。これにより、p型MISトランジスタのソースドレイン領域を形成するためのリセス領域10aが形成される。このとき、ゲート電極13の上面及び側面には、ゲートハードマスク14、オフセットサイドウォール15及び第1のハードマスク層19が形成されているため、これらがエッチングマスクとなるので、ゲート電極13がエッチングされることはない。また、図2(a)で形成された、p型エクステンション領域17とn型ポケット領域18とは、リセス領域10aの形成によって第1のハードマスク層19の外側の側面(端面)よりも内側(チャネル側)のみに残存する。
【0046】
エッチングによって形成されたリセス領域10aは、その壁面が面方位の{111}面となり、深さ方向のほぼ中央部が第1のハードマスク層19の下方においてゲート電極側に突き出す凹部(Σ先端部)10bを形成する。この凹部10bの深さ方向における先端位置は、p型エクステンション領域17の最大接合深さよりも深く、さらにn型ポケット領域18bの最大接合深さの2分の1よりも深く、且つ、n型ポケット領域18bの最大接合深さよりも浅くなるように形成されている。すなわち、凹部10bの深さ方向における先端位置は、n型ポケット領域18の不純物濃度のピーク位置よりも深いか又は同等となるように形成される。
【0047】
なお、半導体基板10に形成されるリセス領域10aは、異方性ドライエッチング、等方性ドライエッチング及び異方性ウェットエッチングを組み合わせて行ってもよい。すなわち、例えば、主面の面方位が{100}面であるシリコンからなる半導体基板10を用いた場合には、{111}面の壁面が形成されるエッチング法を採用すればよい。
【0048】
また、一例として、凹部10bの深さ方向における先端位置は、半導体基板10の上面(ゲート電極13の直下の活性領域の表面)から18nm〜23nmが好ましく、ここでは20nmとしている。
【0049】
さらに、本実施形態においては、図3(a)において、リセス領域10aを形成する際のマスクとして、主に第1のハードマスク層19及びその上の第2のハードマスク層30を用いている。すなわち、p型トランジスタ領域Cにおいては、ゲート電極13におけるオフセットサイドウォール15の両側面上に、第1のハードマスク層19及び第2のハードマスク層30からなる一時的なサイドウォールを形成して、この一時的なサイドウォールをリセス領域10aの形成用のマスクとしている。このため、本実施形態においては、従来の製造方法のように通常のサイドウォールの上にハードマスク層を形成する場合の、通常のサイドウォールの外側の下部に生じるハードマスク層の残渣(いわゆるプチサイドウォール)が形成されることがない。従って、本実施形態においては、プチサイドウォールが形成されない分だけ、リセス領域10aにおけるゲート電極13側の端部をチャネル領域に近づけることが可能となる。
【0050】
次に、図3(b)に示すように、例えばCVD法により、第2のハードマスク層30をマスクとしてリセス領域10aの内部に、p型不純物がドープされたシリコンゲルマニウム層20を、その上部が半導体基板10の主面(ゲート電極13直下の活性領域の上面)よりも高くなるようにエピタキシャル成長する。ここでは、シリコンゲルマニウム層20にドープされるp型の不純物濃度は3.5×1019/cmである。このとき、p型トランジスタ領域Cにおいては、ゲート電極13の上にゲートハードマスク14が形成され、また、n型トランジスタ領域A及び非シリサイドp型トランジスタ領域Bの各活性領域は、第2のハードマスク層30で覆われているため、シリコンゲルマニウム層20は、シリコンが露出したリセス領域10aにのみ選択的に成長する。なお、シリコンゲルマニウム層20における半導体基板10の主面(第1のハードマスク層19の直下の活性領域の上面)と交差する位置は、サイドウォールを構成する第1のハードマスク層19の外側の側面(端面)よりも内側(チャネル側)に形成される。また、このとき、シリコンゲルマニウム層20におけるリセス領域10aの凹部10bに成長した凸部20aのゲート長方向における先端位置は、ゲート電極13の下方にまでは達しておらず、第1のハードマスク層19の下方に位置する。
【0051】
次に、図3(c)に示すように、例えば温度が160℃の熱燐酸により、いずれも窒化シリコンからなる第2のハードマスク30及びp型トランジスタ領域Cにおけるゲートハードマスク14を選択的に除去する。このとき、n型トランジスタ領域A及び非シリサイドp型トランジスタ領域Bにおいては、酸化シリコンからなる第1のハードマスク19が残存しているため、ゲートハードマスク14がエッチングされることはない。
【0052】
次に、図4(a)に示すように、CVD法により、半導体基板10の上の全面に、例えば膜厚が4nmの酸化シリコンからなる第1のサイドウォール形成膜21Aを成膜する。具体的には、n型トランジスタ領域A及び非シリサイドp型トランジスタ領域Bにおいては、第1のサイドウォール形成膜21Aを第1のハードマスク19の上に成膜する。また、p型トランジスタ領域Cにおいては、第1のサイドウォール形成膜21Aを、シリコンゲルマニウム層20及び第1のハードマスク層19と、オフセットサイドウォール15の上端及びゲート電極13の上面とに連続的に成膜する。続いて、第1のサイドウォール形成膜21Aの上の全面に、例えば膜厚が15nmの窒化シリコンからなる第2のサイドウォール形成膜22Aを成膜する。
【0053】
次に、図4(b)に示すように、異方性のドライエッチング法により、第2のサイドウォール形成膜22A、第1のサイドウォール形成膜21A及び第1のハードマスク層19を順次エッチングする。これにより、n型トランジスタ領域A、非シリサイドp型トランジスタ領域B及びp型トランジスタ領域Cにおいて、各ゲート電極13の側面に形成された断面形状がL字状の第1のハードマスク層19の上に、第1のサイドウォール形成膜21Aから断面形状がほぼL字状の第1のサイドウォール21が形成され、第1のサイドウォール21の上に第2のサイドウォール形成膜22Aから第2のサイドウォール22が形成される。
【0054】
このとき、第1のハードマスク層19、第1のサイドウォール21及び第2のサイドウォール22から構成されるサイドウォールの幅寸法(合計の最大幅)は、第1のサイドウォール21及び第2のサイドウォール22の膜厚を変化させることによって制御可能である。ここでは、サイドウォールの幅寸法は22nmから26nm程度に設定している。なお、図4(b)においては、第1のサイドウォール21及び第2のサイドウォール22の外側の下部端面位置が第1のハードマスク層19の外側の下部端面位置と一致しているが、必ずしも一致させる必要はなく、第1のサイドウォール21及び第2のサイドウォール22の膜厚を厚くした場合には、第1のハードマスク層19の外側の下部端面を覆うように第1のサイドウォール21及び第2のサイドウォール22が形成される。
【0055】
p型トランジスタ領域Cにおけるゲート電極13、第1のハードマスク層19、第1のサイドウォール21及び第2のサイドウォール22の高さは、第1のサイドウォール21のエッチング時のエッチングガスにさらされること、及びゲートハードマスク14が残存していないことから、n型トランジスタ領域A及び非シリサイドp型トランジスタ領域Bに形成されている各サイドウォール21、22と比べて低く仕上がる。また、p型トランジスタ領域Cの第1のハードマスク層19は、n型トランジスタ領域A及び非シリサイドp型トランジスタ領域Bの各第1のハードマスク層19と比べて、リセス領域10a及びシリコンゲルマニウム層20の形成時や、その前後における洗浄工程においてエッチングされているため、膜厚が薄くなっている。このため、p型トランジスタ領域Cにおけるサイドウォールの幅寸法は、n型トランジスタ領域A及び非シリサイドp型トランジスタ領域Bの場合と比べて小さく仕上がる。
【0056】
次に、図4(c)に示すように、n型トランジスタ領域Aの活性領域に、ゲート電極13をマスクとして、すなわちゲートハードマスク14、オフセットサイドウォール15、第1のハードマスク層19、第1のサイドウォール21及び第2のサイドウォール22をマスクとして、例えば砒素等のn型不純物を選択的にイオン注入する。これにより、n型トランジスタ領域Aの活性領域に、接合深さが深いn型不純物領域であるn型ソースドレイン領域23がn型エクステンション領域16の外側に形成される。続いて、非シリサイドp型トランジスタ領域Bの活性領域に、ゲート電極13等をマスクとして、例えばボロン等のp型不純物を選択的にイオン注入する。これにより、非シリサイドp型トランジスタ領域Bの活性領域に、接合深さが深いp型不純物領域であるp型ソースドレイン領域24がp型エクステンション領域17の外側で且つn型ポケット領域18の上部に形成される。なお、n型ソースドレイン領域23と、p型ソースドレイン領域24との形成順序は特に問われない。その後、例えば温度が950℃で且つ1秒以下の急速アニールにより、イオン注入により導入された各不純物を活性化する。
【0057】
次に、図5(a)に示すように、CVD法により半導体基板10の上の全面に、例えば膜厚が16nmの酸化シリコンからなるシリサイドブロック層25を堆積する。なお、本工程までの熱処理によってシリコンゲルマニウム層20からチャネル領域に拡散するボロンの拡散距離は、例えば3nmから8nm程度である。その後、図示はしていないが、リソグラフィ法により、非シリサイドp型トランジスタ領域Bを覆い、n型トランジスタ領域A及びp型トランジスタ領域Cに開口パターンを有するレジスト膜を形成する。
【0058】
次に、図5(b)に示すように、レジスト膜(不図示)をマスクとして、シリサイドブロック層25をエッチングすることにより、n型トランジスタ領域A及びp型トランジスタ領域Cからシリサイドブロック層25を除去する。
【0059】
次に、図5(c)に示すように、シリサイドブロック層25をマスクとして、例えば温度が160℃の熱燐酸により、n型トランジスタ領域A及びp型トランジスタ領域Cにおける、窒化シリコンからなる第2のサイドウォール絶縁膜22と、n型トランジスタ領域Aにおける窒化シリコンからなるゲートハードマスク14とを選択的に除去する。このとき、非シリサイドp型トランジスタ領域Bにおいては、シリサイドブロック膜25によってマスクされているため、ゲートハードマスク107及び第2のサイドウォール22が残存する。
【0060】
次に、図6(a)に示すように、半導体基板10の上の全面に、例えばニッケル膜を堆積し、所定の熱処理及び未反応ニッケルの除去を行うサリサイド(salicide)法を実施する。これにより、n型トランジスタ領域A及びp型トランジスタ領域Cにおいて、ゲート電極13、n型ソースドレイン領域23及びシリコンゲルマニウム層20の各上部にニッケルとシリコンとからなるシリサイド層26がそれぞれ形成される。なお、シリサイド層26の形成にニッケルを用いたが、ニッケルに限られず、例えば白金(Pt)又はコバルト(Co)等の他の金属によるシリサイド層を用いてもよい。
【0061】
次に、図6(b)に示すように、CVD法により、n型トランジスタ領域Aを覆うように、例えば膜厚が16nmの窒化シリコンからなる引っ張り応力を有する第1のライナ絶縁膜27を選択的に形成する。続いて、CVD法により、非シリサイドp型トランジスタ領域B及びp型トランジスタ領域Cを覆うように、例えば膜厚が20nmの窒化シリコンからなる圧縮応力を有する第2のライナ絶縁膜28を選択的に形成する。
【0062】
その後は、図示していないが、必要なコンタクト及び配線を形成することにより、CMISトランジスタを含む半導体装置を得ることができる。
【0063】
以上説明したように、本実施形態によると、p型トランジスタ領域Cに形成されるp型ソースドレイン領域であるシリコンゲルマニウム層20をゲート電極13の下方のチャネル領域に確実に近づけることができる。その上、シリコンゲルマニウム層20をチャネル領域に近づけても、n型ポケット領域18がシリコンゲルマニウム層20の凸部20aの先端を覆っていることにより、該シリコンゲルマニウム層20に導入されたp型の不純物であるボロンが熱によりチャネル領域に拡散することを防止できる。これにより、従来のように、熱拡散によるボロンが先に注入された不純物元素の分布プロファイルを乱してしまい、p型MISトランジスタの駆動力が低下する等の不具合を防止することができる。
【0064】
なお、本実施形態においては、チャネル領域に圧縮応力を印加する歪み構造を採るMISトランジスタをp型トランジスタとしたが、本発明は、p型トランジスタに限られない。すなわち、n型MISトランジスタに対して、そのチャネル領域に引っ張り応力を印加する構成としてもよく、この場合には、ソースドレイン領域を構成するシリコン混晶層として、シリコンと炭素との混晶層であるシリコンカーバイド(SiC)を用いることができる。
【0065】
以下に、従来例に係るp型MISトランジスタと、本実施形態に係るp型MISトランジスタとの電気的特性の比較結果を示す。図7はゲート長寸法(Lg)としきい値電圧(Vtsc)との関係を示している。図8(a)〜図8(d)は、図7に示すグラフのa〜dと対応するトランジスタ構造であって、(a)は従来構造であり、(b)〜(d)は本実施形態とその変形例に係る構造を示している。具体的には、図8(a)に示す従来のトランジスタ構造においては、n型ポケット領域107はSiGeからなるシリコン混晶層108の凸部の先端を完全に覆ってはいない。一方、図8(b)〜(d)に示す本発明に係るトランジスタ構造においては、n型ポケット領域17は、シリコンゲルマニウム層18の凸部の先端を完全に覆っている。
【0066】
図7に示すように、図8(a)に示す従来構造aの場合には、ゲート長寸法が0.1μmよりも小さくなると、しきい値電圧特性が変動する傾向がみられる。さらに、ゲート長寸法が0.06μm以下となると、しきい値電圧特性が大幅に低下して、短チャネル効果が顕在化することが分かる。これは、前述したように、ソースドレインとなるシリコン混晶層108からチャネル領域にボロンが拡散して、チャネル領域に注入されたn型不純物元素の分布プロファイルが乱れ、その結果、しきい値電圧特性が低下するためである。
【0067】
これに対し、本実施形態の場合には、ゲート長寸法が0.04μmであっても、しきい値電圧特性の変動は小さく、短チャネル特性に有利であることが分かる。その上、シリコンゲルマニウム層20をチャネル領域に近づけることができるため、p型MISトランジスタの駆動力を効果的に向上させることができる。
【0068】
なお、n型ポケット領域18がシリコンゲルマニウム層20の凸部を覆う構成の変形例として、図8(c)に示すように、互いに対向するn型ポケット領域18同士が接している構成、又は図8(d)に示すように、n型ポケット領域18同士が互いに重なる構成としても、同等以上の効果を得られることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明に係る半導体装置及びその製造方法は、しきい値電圧の変動を防ぐことができると共に、チャネル領域のゲート長方向に圧縮応力を効果的に印加することができ、特に、ソースドレイン領域にシリコン混晶層を含むMISFETを含む半導体装置に有用である。
【符号の説明】
【0070】
A n型トランジスタ領域
B 非シリサイドp型トランジスタ領域
C p型トランジスタ領域
10 半導体基板
10a リセス領域
10b 凹部
11 シャロートレンチ分離
12 ゲート絶縁膜
13 ゲート電極
14 ゲートハードマスク
15 オフセットサイドウォール
16 n型エクステンション領域
17 p型エクステンション領域
18 n型ポケット領域
19 第1のハードマスク層
20 シリコンゲルマニウム層(p型ソースドレイン領域)
20a 凸部(Σ先端部)
21 第1のサイドウォール
21A 第1のサイドウォール形成膜
22 第2のサイドウォール
22A 第2のサイドウォール形成膜
23 n型ソースドレイン領域
24 p型ソースドレイン領域
25 シリサイドブロック層
26 シリサイド層
27 第1のライナ絶縁膜
28 第2のライナ絶縁膜
30 第2のハードマスク層
31 レジスト膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板からなる第1導電型の活性領域の上に、ゲート絶縁膜を介在させて形成されたゲート電極と、
前記活性領域における前記ゲート電極の両側方の領域に形成された第2導電型のソースドレイン領域と、
前記活性領域における前記各ソースドレイン領域の側面からそれぞれ前記ゲート電極の下側に向かって形成された第1導電型のポケット領域とを備え、
前記ソースドレイン領域は、シリコンとIV族元素との混晶層からなり、
前記混晶層は、ゲート長方向におけるゲート電極側の側面がゲート電極側に突き出す凸部を有しており、
前記凸部の先端は、前記ポケット領域によって覆われていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記混晶層における前記凸部の深さ方向における先端位置は、前記ポケット領域の不純物濃度のピーク位置よりも深いか又は同等であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記活性領域の上部における前記各ソースドレイン領域の側面からそれぞれ前記ゲート電極の下側に向かって形成された第2導電型のエクステンション領域をさらに備え、
前記混晶層における前記凸部の深さ方向における先端位置は、前記エクステンション領域の最大接合深さよりも深く、且つ、前記ポケット領域の最大接合深さの2分の1よりも深いことを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記ゲート電極におけるゲート長方向側の両側面上に形成された絶縁膜からなるサイドウォールをさらに備え、
前記混晶層における前記活性領域の上面と交差する位置は、前記サイドウォールの外側の最外側面よりも内側に形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記混晶層における前記凸部の先端位置は、前記活性領域の表面から18nm以上且つ23nm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記混晶層を構成する前記IV族元素は、ゲルマニウムであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記混晶層を構成する前記IV族元素は、炭素であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記ゲート電極の上部及び前記混晶層の上部にそれぞれ形成された金属シリサイド層と、
前記活性領域の上に、前記金属シリサイド層を含め前記ゲート電極及び混晶層を覆うように形成されたライナ絶縁膜とをさらに備えていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記ゲート電極の下方において、互いに対向する前記ポケット領域同士が接していることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項10】
半導体基板からなる第1導電型の活性領域の上にゲート絶縁膜を介在させてゲート電極を形成する工程(a)と、
前記活性領域に前記ゲート電極をマスクとして、第2導電型のポケット領域を選択的に形成する工程(b)と、
前記ゲート電極の両側面上に、前記絶縁膜からなるハードマスク層を形成する工程(c)と、
前記活性領域に対して、前記ハードマスク層をマスクとしてエッチングを行うことにより、前記活性領域における前記ハードマスク層の外側の領域にリセスを形成する工程(d)と、
前記リセスにシリコンとIV族元素との混晶からなり且つ第1導電型の混晶層を選択的に形成する工程(e)とを備え、
前記工程(d)において、前記リセスにおけるゲート電極側の壁面はゲート電極側に突き出す凹部を有しており、
前記工程(e)において、前記混晶層が前記リセスの前記凹部によって形成される側面の凸部の先端は、前記ポケット領域によって覆われていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記工程(c)において、前記ハードマスク層は、断面形状がL字状の第1のハードマスク層と、前記第1のハードマスク層上に形成された第2のハードマスク層とからなり、
前記工程(e)よりも後に、前記第2のハードマスク層を除去する工程(f)をさらに備えていることを特徴とする請求項10に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−159690(P2011−159690A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−18385(P2010−18385)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】