説明

半導体装置

【課題】高周波特性を低下させることなくLDMOSFETを有するチップの面積を縮小する。
【解決手段】LDMOSFETのソース領域と基板1の裏面に形成されたソース裏面電極36とを電気的に接続するp型打ち抜き層4を不純物を高濃度でドープした低抵抗のp型多結晶シリコン膜もしくは低抵抗の金属膜から形成する。そして、LDMOSFETの基本セルのソース同士を電気的に接続するソース配線は配線24Aのみとし、ソース配線を形成する配線層数は、ドレイン配線(配線24B、29B、33)を形成する配線層数より少なくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関し、特に、RF(Radio Frequency)パワーモジュールに搭載される半導体装置に適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開平10−27846号公報(特許文献1)には、隣り合う配線同士を異なる配線層によって形成することによって、両配線を同一配線層によって形成する場合に比べて実際の配線間距離を大きくとることを可能とし、集積度の向上を図りつつ配線間容量の増大を防止する技術が開示されている。
【0003】
また、特開2000−323719号公報(特許文献2)には、半導体支持基板と、半導体支持基板上に絶縁層を介して形成されたウエル領域とを短絡する低抵抗短絡層をゲート電極下の前記絶縁層に貫設し、半導体支持基板をソース電極に電気的に接続して接地することにより、オン抵抗を増大させることなく破壊耐量の向上が可能な半導体装置について開示されている。
【0004】
また、特開2002−94054号公報(特許文献3)には、n型半導体領域(ドレイン・オフセット層)の上部にソースと同電位でゲート電極よりも薄い膜厚のシールド導電層を設け、このシールド導電層と他の電極配線とを、ドレイン電極、シールド導電膜、ゲート電極、ソース電極、ゲート短絡用配線の順で配置した、出力電力特性および高周波特性が良好な増幅素子用パワーMOSFETが開示されている。
【0005】
また、特開2001−94094号公報(特許文献4)には、ソース領域、ドレイン領域およびリーチスルー領域上に電極引き出し用の導体プラグを設け、その導体プラグに第1配線層を接続し、さらにそれら第1配線層に対して、導体プラグ上で裏打ち用の第2配線層を接続したドレインオフセット領域を有する高周波増幅用MOSFETにおいて、微細化およびオン抵抗低減を図る技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−27846号公報
【特許文献2】特開2000−323719号公報
【特許文献3】特開2002−94054号公報
【特許文献4】特開2001−94094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、GSM(Global System for Mobile Communications)方式、PCS(Personal Communication Systems)方式、PDC(Personal Digital Cellular)方式、およびCDMA(Code Division Multiple Access)方式といった通信方式に代表される移動体通信機器が世界的に普及している。一般に、この種の移動体通信機器は、電波の放射と受信をするアンテナ、電力変調された高周波信号を増幅してアンテナへ供給する高周波電力増幅器(RFパワーモジュール)、アンテナで受信した高周波信号を信号処理する受信部、これらの制御を行う制御部、そしてこれらに電源電圧を供給する電池(バッテリー)で構成される。
【0008】
移動体通信機器のRFパワーモジュールの電力増幅回路に用いられる増幅素子としては、HBT、HEMTなどの化合物半導体デバイス、シリコンバイポーラトランジスタ、LDMOSFET(Laterally Diffused Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor、横方向拡散MOSFET)などが、目的や状況に応じて使用されている。
【0009】
また、近年、移動体通信機器の多機能化に伴って、RFパワーモジュールの小型化要求が強くなっており、RFパワーモジュールに含まれる増幅素子についてもチップ面積の縮小が求められている。本発明者らは、その増幅素子であるLDMOSFETのチップ面積を縮小する技術について検討している、その中で、本発明者らは、以下のような課題を見出した。その課題について、図38〜図42を用いて説明する。
【0010】
図38は、本発明者らが検討したLDMOSFETが形成されたチップの要部平面図であり、LDMOSFETの基本セルを示している。また、図39は、図38中のA−A線およびB−B線に沿った断面を示したものである。
【0011】
本発明者らが検討したLDMOSFETは、ソース電極が半導体基板(以下、単に基板と記す)101の裏面に形成された金属電極102となり、ソース電位を基板101の裏面から取得する構造を有している。このような構造は、ソース電極を基板の主面に配置したパッドから形成した場合に比べて、ソースの寄生インダクタンスを低減することができ、電力利得などの高周波特性の面で優れている。ただし、基板101の主面のソース領域103と金属電極102とを電気的に導通させるための打ち抜き層104が必要となる。この打ち抜き層104は、図38および図39中で破線にて示した領域である。基板101の主面に形成されたドレイン領域105は、上層の配線106、107、108および配線108の一部であるドレインパッド(ドレイン電極)109と電気的に接続されている。ゲート電極110は、配線108と同じ配線層に形成されたゲートパッド111と電気的に接続されている。
【0012】
打ち抜き層104は、不純物イオンを基板101に高濃度かつ高エネルギーで導入することによって形成されている。打ち抜き層104をこのような方法で形成した場合には、不純物イオンの注入を行う装置に起因して、不純物イオン導入時のエネルギーおよび濃度には限界がある。そのため、打ち抜き層104の寄生抵抗が大きくなってしまう課題が生じる。LDMOSFETのオン抵抗の増加および相互コンダクタンスの減少といった直流特性の劣化を抑制するためには、打ち抜き層104を広く形成して寄生抵抗を低減する手段が考えられる。しかしながら、打ち抜き層104が拡大することによってチップ面積の縮小を妨げてしまう課題が生じる。
【0013】
そこで、LDMOSFETの基本セルのソース(ソース領域103)同士を電気的に接続することによって、打ち抜き層104の寄生抵抗を実質的に低減し、打ち抜き層104の拡大を抑制する手段が考えられる。すなわち、各ソース領域103上に形成され、各ソース領域103と電気的に接続する配線112、113、114同士を、配線113と同層に形成された配線113Aを介して電気的に接続し、さらに配線113A下に配線113Aと電気的に接続する周辺打ち抜き層104Aを形成するものである。ここで、周辺打ち抜き層104Aは、前述の打ち抜き層104と同様のものである。
【0014】
しかしながら、チップ面積を縮小する場合には、ゲート、ドレインおよびソースの各領域を縮小することになる。それに伴って、ソースとドレインとの間に形成される寄生容量が増大し、そのうち、ソース配線である配線112、113、114とドレイン配線である配線106、107、108との間に形成される寄生容量は、平行平板型容量と同様のモデル化ができる。すなわち、図40に示すように、チップ面積縮小後におけるソース配線とドレイン配線との間の寄生容量C1は、チップ面積縮小前におけるソース配線とドレイン配線との間の寄生容量C2より大きくなる。
【0015】
図41に示すように、ソース配線とドレイン配線との間隔が狭くなれば、ソース−ドレイン間容量(LDMOSFETの出力容量)が増加する。さらに、図42に示すように、LDMOSFETは、出力容量が増加すると、高周波帯での使用時において電力効率が低下してしまう不具合を招いてしまう。
【0016】
本発明の目的は、高周波特性を低下させることなくLDMOSFETを有するチップの面積を縮小できる技術を提供することにある。
【0017】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
(1)本発明による半導体装置は、
第1導電型の半導体基板の主面にて、チャネル形成領域を挟んで互いに離間して形成された第2導電型のソース領域およびドレイン領域と、
前記チャネル形成領域上にゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極とを備えたLDMOSFETを有し、
前記半導体基板の裏面にソース裏面電極が形成され、
前記半導体基板中に、前記ソース領域と前記ソース裏面電極とを電気的に接続する、多結晶シリコンまたは金属を主成分とする第1導電層が形成され、
前記半導体基板の前記主面上に、前記ドレイン領域と電気的に接続する複数層のドレイン配線、および前記ソース領域と電気的に接続する1層以上のソース配線が形成され、
前記ドレイン配線の第1配線層数は、前記ソース配線の第2配線層数より多いものである。
(2)また、本発明による半導体装置は、
第1導電型の半導体基板の主面にて、チャネル形成領域を挟んで互いに離間して形成された第2導電型のソース領域およびドレイン領域と、
前記チャネル形成領域上にゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極とを備えたLDMOSFETを有し、
前記半導体基板の裏面にソース裏面電極が形成され、
前記半導体基板中に、前記ソース領域と前記ソース裏面電極とを電気的に接続する、多結晶シリコンまたは金属を主成分とする第1導電層が形成され、
前記半導体基板の前記主面において、前記ソース領域の表面にはシリコンと金属との化合物層が形成され、
前記半導体基板の前記主面において、前記ドレイン領域と電気的に接続するドレイン電極が形成され、
前記化合物層の鉛直上方には、前記ソース裏面電極と電気的に接続する第1配線は配置されていない。
(3)また、本発明による半導体装置は、
第1導電型の半導体基板の主面にて、チャネル形成領域を挟んで互いに離間して形成された第2導電型のソース領域およびドレイン領域と、
前記チャネル形成領域上にゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極とを備えたMOSFETを有し、
前記ドレインは、第2導電型のドレイン低濃度領域と、前記ドレイン低濃度領域と接し、かつ前記チャネル形成領域から離間して形成され、前記ドレイン低濃度領域より不純物濃度が高い第2導電型のドレイン高濃度領域とから形成され、
前記ドレイン低濃度領域は、平面で前記ゲート電極と前記ドレイン高濃度領域との間に配置され、
前記ドレイン高濃度領域は、平面で前記ゲート電極と離間して配置され、
前記半導体基板の裏面にソース裏面電極が形成され、
前記半導体基板中に、前記ソース領域と前記ソース裏面電極とを電気的に接続する、多結晶シリコンまたは金属を主成分とする第1導電層が形成され、
前記半導体基板の前記主面上に、前記ドレイン領域と電気的に接続する第1ドレイン電極と、前記ソース領域と電気的に接続する第1主面ソース電極と、前記ゲート電極、前記第1ドレイン電極および第1主面ソース電極を覆う層間絶縁膜が形成され、
前記層間絶縁膜上に、前記第1ドレイン電極と電気的に接続する第2ドレイン電極が形成され、
前記第2ドレイン電極が配置された配線層では、前記第1主面ソース電極の鉛直上方で前記第1主面ソース電極と電気的に接続する第2主面ソース電極は配置されていない。
【発明の効果】
【0019】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0020】
LDMOSFETを有するチップ内において、ソース・ドレイン間の寄生容量の増加を抑制できるので、高周波特性を低下させることなくLDMOSFETを有するチップの面積を縮小することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態1である半導体装置が搭載されるRFパワーモジュールの回路ブロック図である。
【図2】ショットキバリアダイオード検波方式の検出回路を示す回路図である。
【図3】本発明の実施の形態1であるRFパワーモジュールの構造を示す上面図である。
【図4】図3中のA−A線に沿った断面図である。
【図5】本発明の実施の形態1である半導体装置の製造方法を説明する要部平面図である。
【図6】図5中のB−B線に沿った断面を示す要部断面図である。
【図7】図5に続く半導体装置の製造工程中の要部平面図である。
【図8】図7中のB−B線に沿った断面を示す要部断面図である。
【図9】図7に続く半導体装置の製造工程中の要部平面図である。
【図10】図9中のB−B線に沿った断面を示す要部断面図である。
【図11】図9に続く半導体装置の製造工程中の要部平面図である。
【図12】図11中のB−B線に沿った断面を示す要部断面図である。
【図13】図11に続く半導体装置の製造工程中の要部平面図である。
【図14】図13中のB−B線に沿った断面を示す要部断面図である。
【図15】図13に続く半導体装置の製造工程中の要部平面図である。
【図16】図15中のB−B線に沿った断面を示す要部断面図である。
【図17】図15に続く半導体装置の製造工程中の要部平面図である。
【図18】図17中のB−B線に沿った断面を示す要部断面図である。
【図19】本発明の実施の形態1である半導体装置の諸特性と本発明者らが検討した半導体装置の諸特性を比較した説明図である。
【図20】本発明の実施の形態1である半導体装置および本発明者らが検討した半導体装置における出力電力と電力効率との関係を示した説明図である。
【図21】本発明の実施の形態2である半導体装置の要部断面図である。
【図22】本発明の実施の形態2である半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図23】本発明の実施の形態2である半導体装置の要部断面図である。
【図24】本発明の実施の形態2である半導体装置の諸特性と本発明者らが検討した半導体装置の諸特性を比較した説明図である。
【図25】本発明の実施の形態2である半導体装置および本発明者らが検討した半導体装置における出力電力と電力効率との関係を示した説明図である。
【図26】本発明の実施の形態3である半導体装置の要部平面図である。
【図27】本発明の実施の形態3である半導体装置の製造方法を説明する要部平面図である。
【図28】図27中のA−A線、B−B線およびC−C線に沿った断面を示す要部断面図である。
【図29】図27に続く半導体装置の製造工程中の要部平面図である。
【図30】図29中のA−A線、B−B線およびC−C線に沿った断面を示す要部断面図である。
【図31】図29に続く半導体装置の製造工程中の要部平面図である。
【図32】図31中のA−A線、B−B線およびC−C線に沿った断面を示す要部断面図である。
【図33】図31に続く半導体装置の製造工程中の要部平面図である。
【図34】図33中のA−A線、B−B線およびC−C線に沿った断面を示す要部断面図である。
【図35】図33に続く半導体装置の製造工程中の要部平面図である。
【図36】図35中のA−A線、B−B線およびC−C線に沿った断面を示す要部断面図である。
【図37】図36に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図38】本発明者らが検討したLDMOSFETが形成されたチップの要部平面図である。
【図39】図38中でA−A線で示す位置での断面図である。
【図40】本発明者らが検討したLDMOSFETが形成されたチップの要部断面図である。
【図41】本発明者らが検討したLDMOSFETが形成されたチップにおけるソース−ドレイン配線間隔と出力容量との関係を示した説明図である。
【図42】本発明者らが検討したLDMOSFETが形成されたチップにおける出力容量と電力効率との関係を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
【0023】
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。
【0024】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、実施例等において構成要素等について、「Aからなる」、「Aよりなる」と言うときは、特にその要素のみである旨明示した場合等を除き、それ以外の要素を排除するものでないことは言うまでもない。
【0025】
同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0026】
また、本実施の形態を説明するための全図において同一機能を有するものは同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0027】
また、本実施の形態で用いる図面においては、平面図であっても図面を見易くするために部分的にハッチングを付す場合がある。
【0028】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0029】
(実施の形態1)
本実施の形態1の半導体装置は、たとえばGSM方式のネットワークを利用して情報を伝送するデジタル携帯電話(移動体通信機器)に使用されるRF(Radio Frequency)パワーモジュールなどに搭載されるチップである。
【0030】
図1は、本実施の形態1のRFパワーモジュールPMの回路ブロック図である。図1には、たとえばGSM900とDCS1800との2つの周波数帯が使用可能(デュアルバンド方式)で、それぞれの周波数帯でGMSK(Gaussian filtered Minimum Shift Keying)変調方式とEDGE(Enhanced Data GSM Environment)変調方式との2つの通信方式を使用可能なRFパワーモジュールの回路ブロック図(増幅回路)が示されている。
【0031】
図1に示されるように、RFパワーモジュールPMは、電力増幅回路AMP1、AMP2、バイアス回路BAC1、BAC2、電源回路PSC1、PSC2、整合回路AJC1、AJC2、AJC3、AJC4、および検出回路DEC1、DEC2等を含んでいる。
【0032】
電力増幅回路AMP1は、3つの増幅段AMP11、AMP12、AMP13を含むGSM900用の電力増幅回路である。
【0033】
電力増幅回路AMP2は、3つの増幅段AMP21、AMP22、AMP23を含むDCS1800用の電力増幅回路である。
【0034】
バイアス回路BAC1は、電力増幅回路AMP1の増幅段AMP11〜AMP13にバイアス電圧を印加するバイアス回路である。
【0035】
バイアス回路BAC2は、電力増幅回路AMP2の増幅段AMP21〜AMP23にバイアス電圧を印加するバイアス回路である。
【0036】
電源回路PSC1は、電力増幅回路AMP1の各増幅段AMP11〜AMP13の出力用のLDMOSFETのドレイン端子に印加される電源電圧を生成する電源回路である。
【0037】
電源回路PSC2は、電力増幅回路AMP2の各増幅段AMP21〜AMP23の出力用のLDMOSFETのドレイン端子に印加される電源電圧を生成する電源回路である。
【0038】
整合回路AJC1は、GSM900用の入力端子IPT1およびGSM900用の電力増幅回路AMP1(1段目の増幅段AMP11)間の整合回路である。
【0039】
整合回路AJC3は、GSM900用の出力端子OPT1およびGSM900用の電力増幅回路AMP1(3段目の増幅段AMP13)間の出力整合回路である。
【0040】
整合回路AJC2は、DCS1800用の入力端子IPT2およびDCS1800用の電力増幅回路AMP2(1段目の増幅段AMP21)間の整合回路である。
【0041】
整合回路AJC4は、DCS1800用の出力端子OPT2およびDCS1800用の電力増幅回路AMP2(3段目の増幅段AMP23)間の出力整合回路である。
【0042】
検出回路DEC1は、GSM900用の電力増幅回路AMP1からの出力(出力信号、出力電力)を検出するための検出回路である。
【0043】
検出回路DEC2は、DCS1800用の電力増幅回路AMP2からの出力(出力信号、出力電力)を検出するための検出回路である。
【0044】
これらの諸回路のうち、GSM900用の電力増幅回路AMP1(増幅段AMP11〜AMP13)、DCS1800用の電力増幅回路AMP2(増幅段AMP21〜AMP23)、バイアス回路BAC1、BAC2、検出回路DEC1、DEC2は、1つのチップCHP内に形成されている。
【0045】
また、図示は省略するが、増幅段AMP12〜AMP13間および増幅段AMP21〜AMP23間に整合回路(段間整合回路)を設けることもできる。
【0046】
RFパワーモジュールPMのGSM900用の入力端子IPT1に入力されたRF入力信号は、整合回路AJC1を経てチップCHPに入力され、チップCHP内の電力増幅回路AMP1、すなわち3つの増幅段AMP11〜AMP13で増幅されてチップCHPから出力され、整合回路AJC3を経てGSM900用の出力端子OPT1からRF出力信号として出力される。
【0047】
RFパワーモジュールPMのDCS1800用の入力端子IPT2に入力されたRF入力信号は、整合回路AJC2を経てチップCHPに入力され、チップCHP内の電力増幅回路AMP2、すなわち3つの増幅段AMP21〜AMP23で増幅されてチップCHPから出力され、整合回路AJC4を経てDCS1800用の出力端子OPT2からRF出力信号として出力される。
【0048】
RFパワーモジュールPMのGSM900用のバイアス制御信号入力端子BIT1に入力されたバイアス制御信号は、バイアス回路BAC1に入力され、このバイアス制御信号に基づいて電力増幅回路AMP1の増幅段AMP11〜AMP13に印加するバイアス電圧が制御される。
【0049】
RFパワーモジュールPMのDCS1800用のバイアス制御信号入力端子BIT2に入力されたバイアス制御信号は、バイアス回路BAC2に入力され、このバイアス制御信号に基づいて電力増幅回路AMP2の増幅段AMP21〜AMP23に印加するバイアス電圧が制御される。
【0050】
GSM900用の電力増幅回路AMP1からの出力(出力信号、出力電力)は、検出回路DEC1で検出され、検出回路DEC1で検出された検出信号(出力電力検出信号)は、RFパワーモジュールPMのGSM900用の出力検出信号の出力端子OPT3から出力される。
【0051】
DCS1800用の電力増幅回路AMP2からの出力(出力信号、出力電力)は、検出回路DEC2で検出され、検出回路DEC2で検出された検出信号(出力電力検出信号)は、RFパワーモジュールPMのDCS1800用の出力検出信号の出力端子OPT4から出力される。
【0052】
上記電力増幅回路AMP1、AMP2のそれぞれは、上記3段の増幅段AMP11〜AMP13、AMP21〜AMP23として、3個のnチャネル型LDMOSFETを順次従属接続した回路構成を有している。すなわち、各増幅段AMP11、AMP12、AMP13、AMP21、AMP22、AMP23がnチャネル型LDMOSFETにより形成され、3個のnチャネル型LDMOSFETが順次接続されて電力増幅回路AMP1が形成され、3個のnチャネル型LDMOSFETが順次接続されて電力増幅回路AMP2が形成される。
【0053】
RFパワーモジュールの出力電力を検出する方式のひとつとして、ショットキバリアダイオード(Schottky Barrier Diode:SBD、ショットキバリアダイオード)を使用したSBD検波方式がある。図2は、このSBD検波方式の検出回路を示す回路図である。本実施の形態1では、RFパワーモジュールPMの検出回路DEC1、DEC2は、図2に示すようなSBD検波方式の検出回路を用いている。
【0054】
図2に示すようなSBD検波方式の検出回路DEC1、DEC2をRFパワーモジュールPMに内蔵させることにより、RFパワーモジュールPMの電力増幅回路AMP1、AMP2で増幅され出力される出力電力を、この検出回路DEC1、DEC2によって高感度で検出することができる。また、マイクロ波帯などで動作させることから、PN接合ダイオードよりもターンオフ特性の良いショットキバリアダイオードを用いることが好ましい。
【0055】
SBD検波方式の検出回路DEC1、DEC2は、ショットキバリアダイオード素子SD1、容量素子C22および抵抗素子R23により構成されている。もし、SBD検波方式の検出回路を構成するこれらの素子を、チップ部品(チップダイオード、チップコンデンサおよびチップ抵抗)などにより形成し、RFパワーモジュールを構成する配線基板(モジュール基板)上に搭載したとすると、RFパワーモジュールの平面寸法が大きくなり、RFパワーモジュールが大型化してしまう不具合が生じる。
【0056】
ここで、本実施の形態1では、電力増幅回路(AMP1、AMP2)とともに図2に示すようなSBD検波方式の検出回路(検出回路DEC1、DEC2)も同じチップCHP内に形成(集積化)し、このチップCHPを配線基板(モジュール基板)に搭載して、RFパワーモジュールPMを得るものである。
【0057】
ただし、RFパワーモジュールの出力電力を検出する方式は、本実施の形態1で示したSBD検波方式に限らず、MOSFETを使った検波方式など複数存在し、用途に応じて検波方式を選択することが可能である。
【0058】
図3は本実施の形態1のRFパワーモジュールPMの構造を示す上面図(平面図)であり、図4は図3中のA−A線に沿った断面を示している。
【0059】
図3および図4に示される本実施の形態のRFパワーモジュールPMは、配線基板MB1と、配線基板MB1上に搭載(実装)されたチップCHPと、配線基板MB上に搭載(実装)された受動部品PP1と、チップCHPおよび受動部品PP1を含む配線基板MB1の上面を覆う封止樹脂MR1とを有している。チップCHPおよび受動部品PP1は、配線基板MB1の導体層(伝送線路)に電気的に接続されている。また、RFパワーモジュールPMは、たとえば図示しない外部回路基板またはマザーボードなどに実装することもできる。
【0060】
配線基板MB1は、たとえば複数の絶縁層(誘電体層)IL1と、複数の導体層または配線層(図示は省略)とを積層して一体化した多層基板(多層配線基板)である。図4中では、4つの絶縁層IL1が積層されて配線基板MB1が形成されているが、積層される絶縁層IL1の数はこれに限定されるものではなく種々変更可能である。配線基板MB1の絶縁層IL1を形成する材料としては、たとえばアルミナ(酸化アルミニウム、Al)などのようなセラミック材料を用いることができる。この場合、配線基板MB1はセラミック多層基板である。配線基板MB1の絶縁層IL1の材料は、セラミック材料に限定されるものではなく種々変更可能であり、たとえばガラスエポキシ樹脂などを用いても良い。
【0061】
配線基板MB1の上面MBU上と下面MBB上と絶縁層IL1間とには、配線形成用の導体層が形成されている。配線基板MB1の最上層の導体層によって、配線基板MB1の上面MBUに導電体からなる基板側端子MBTが形成され、配線基板3の最下層の導体層によって、配線基板MB1の下面MBBに導電体からなる外部接続端子OCTが形成されている。外部接続端子OCTは、たとえば図1における入力端子IPT1、IPT2、出力端子OPT1、OPT2、バイアス制御信号入力端子BIT1、BIT2および出力検出信号の出力端子OPT3、OPT4などに対応するものである。配線基板MB1の内部、すなわち絶縁層IL1の間にも導体層が形成されている。また、配線基板MB1の導体層により形成される配線パターンのうち、基準電位供給用の配線パターン(たとえば配線基板MB1の下面MBBの基準電位供給用端子GNDTなど)は、絶縁層IL1の配線形成面の大半の領域を覆うような大きな平面パターンで形成し、伝送線路用の配線パターンは帯状のパターンで形成することができる。
【0062】
配線基板MB1を構成する各導体層(配線層)は、必要に応じて絶縁層IL1に形成されたビアホールVH1内の導体または導体膜を通じて電気的に接続されている。従って、配線基板MB1の上面MBUの基板側端子MBTは、必要に応じて配線基板MB1の上面MBUおよび(または)内部の配線層(絶縁層IL1間の配線層)やビアホールVH1内の導体膜などを介して、配線基板MB1の下面MBBの外部接続端子OCTに電気的に接続されている。なお、ビアホールVH1のうち、チップCHPの下方に設けられたビアホールVHCは、チップCHPで生じた熱を配線基板MB1の下面MBB側に伝導させるためのサーマルビアとして機能させることもできる。
【0063】
配線基板MB1のチップCHP搭載領域には、キャビティと称する平面矩形状の窪みHL1が設けられており、チップCHPは配線基板MB1の窪みHL1の底面の導体層CND1に、たとえばはんだSLDなどの接合材によりフェイスアップでダイボンディングされている。チップCHPのダイボンディングには、はんだSLDの代わりに銀ペーストなどを用いることもできる。チップCHPの表面(上面)に形成された電極(ボンディングパッド)BP1は、ボンディングワイヤBW1を介して配線基板MB1の上面MBUの基板側端子MBTに電気的に接続されている。また、チップCHPの裏面には裏面電極ELBが形成されており、このチップCHPの裏面電極ELBは、配線基板MB1の窪みHL1の底面の導体層CND1にはんだSLDなどの接合材により接続(接合)され、さらにビアホールVH1内の導体膜などを介して、配線基板MB1の下面MBBの基準電位供給用端子GNDTに電気的に接続されている。
【0064】
受動部品PP1は、抵抗素子(たとえばチップ抵抗)、容量素子(たとえばチップコンデンサ)またはインダクタ素子(たとえばチップインダクタ)などの受動素子であり、たとえばチップ部品である。受動部品PP1は、配線基板MB1の上面MBUの基板側端子MBTにはんだSLD2などの導電性の良い接合材(接着剤)により実装されている。チップCHPまたは受動部品PP1が電気的に接続された配線基板MB1の上面MBUの基板側端子MBTは、配線基板MB1の内部の配線層やビアホールVH1内の導体膜などを介して、配線基板MB1の下面MBBの外部接続端子OCTに電気的に接続されている。また、本実施の形態1では、検出回路DEC1、DEC2用のショットキバリアダイオード素子はチップCHP内に形成しているので、チップCHP内に形成されたショットキバリアダイオード以外のショットキバリアダイオード素子は、配線基板MB1の上面MBU上には搭載されていない。
【0065】
封止樹脂MR1は、チップCHP、受動部品PP1およびボンディングワイヤBW1を覆うように配線基板MB1上に形成されている。封止樹脂MR1は、たとえばエポキシ樹脂などの樹脂材料からなり、フィラーなどを含有することもできる。
【0066】
次に、上記チップCHP内に形成されたLDMOSFETの製造方法を図5〜図18を用いて工程順に説明する。本実施の形態1のLDMOSFETの製造方法を説明する図面のうち、図5、図7、図9、図11、図13、図15および図17は、製造工程中の要部平面図であり、図6、図8、図10、図12、図14、図16および図18は、それぞれ図5、図7、図9、図11、図13、図15および図17中のB−B線に沿った断面を示す要部断面図である。
【0067】
まず、図5および図6に示すように、p型(第1導電型)単結晶シリコンからなる基板1の主面上に周知のエピタキシャル成長法を用いてp型単結晶シリコンからなるエピタキシャル層2を形成する。
【0068】
続いて、基板1上に膜厚150nm程度の酸化シリコン膜を形成し、その酸化シリコン膜をフォトリソグラフィ技術によってパターニングされたフォトレジスト膜をマスクとしてエッチングする。次いで、残った酸化シリコン膜をマスクとしてエピタキシャル層2の一部をエッチングし、基板1に達する深さ2.2μm程度の溝3を形成する。
【0069】
続いて、高濃度でp型不純物(たとえばB(ホウ素))がドープされたp型多結晶シリコン膜をCVD法で溝3の内部を含む基板1上に堆積した後、溝3の外部の多結晶シリコン膜をエッチバック法で除去することにより、溝3の内部にp型多結晶シリコン膜からなるp型打ち抜き層4を形成する。本実施の形態1において、p型打ち抜き層4に含まれるp型不純物量は、7×1020/cm程度とすることを例示できる。このように、不純物を高濃度でドープしたp型多結晶シリコン膜を溝3の内部に埋め込むことにより、寄生抵抗の小さいp型打ち抜き層(第1導電層)4を形成することができる。また、多結晶シリコン膜に代えて溝3の内部に金属膜(たとえばW(タングステン)膜)を埋め込でもよく、その場合にはさらに寄生抵抗の小さい打ち抜き層を形成することができる。
【0070】
続いて、フォトリソグラフィ技術によりパターニングされた窒化シリコン膜をマスクとしてエピタキシャル層2をエッチングして溝を形成し、その溝内に酸化シリコン膜を埋め込むことによって素子分離領域を形成する。この素子分離領域を形成することにより、基板1の主面ではLDMOSFETのセルが形成される活性領域Lが規定される。
【0071】
次に、図7および図8に示すように、フォトレジスト膜をマスクにしてエピタキシャル層2の一部にホウ素をイオン注入することによって、パンチスルーストッパ用のp型ウエル5を形成する。p型ウエル5は、主としてLDMOSFETのソース形成領域とチャネル形成領域とに形成される。イオン注入条件は、たとえば第1回目が加速エネルギー約200keV、ドーズ量約2.0×1013/cm、第2回目が加速エネルギー約50keV、ドーズ量約1.0×1013/cmである。
【0072】
続いて、エピタキシャル層2の表面をフッ酸で洗浄した後、基板1を約800℃で熱処理することによって、エピタキシャル層2の表面に膜厚11nm程度の酸化シリコン膜からなるゲート絶縁膜6を形成する。ゲート絶縁膜6は、熱酸化膜に代えて、窒素を含む酸化シリコン膜、いわゆる酸窒化膜を適用してもよい。この場合は、ゲート絶縁膜6の界面におけるホットエレクトロンのトラップを低減することができる。また、熱酸化膜の上部にCVD法で酸化シリコン膜を堆積し、これら2層の酸化膜でゲート絶縁膜6を構成してもよい。
【0073】
次に、ゲート絶縁膜6の上部にゲート電極7を形成する。ゲート電極7を形成するには、たとえばゲート絶縁膜6の上部にCVD法で膜厚250nm程度のノンドープの多結晶シリコン膜を堆積し、その多結晶シリコン膜にn型の不純物を導入し、多結晶シリコン膜の上部にCVD法で膜厚125nm程度の酸化シリコン膜からなるキャップ絶縁膜8を堆積した後、フォトレジスト膜をマスクにしてキャップ絶縁膜8および多結晶シリコン膜をドライエッチングする。
【0074】
次に、フォトレジスト膜をマスクにしてエピタキシャル層2の一部にP(リン)をイオン注入することによって、n型(第2導電型)オフセットドレイン領域(ドレイン低濃度領域)9を形成する。n型オフセットドレイン領域9は、その端部がチャネル形成領域と接するように、ゲート電極7の側壁下部で終端する。n型オフセットドレイン領域9を形成するためのイオン注入条件は、たとえば加速エネルギー40keV、ドーズ量8.0×1012/cmである。このように、n型オフセットドレイン領域9の不純物濃度を低くすることにより、ゲート電極7とドレインとの間に空乏層が広がるようになるので、両者の間に形成される帰還容量(Cgd)が低減される。
【0075】
次に、上記フォトレジスト膜を除去した後、新たなフォトレジスト膜をマスクにしてp型ウエル5の表面にAs(ヒ素)をイオン注入することによって、n型ソース領域10を形成する。このときのイオン注入条件は、たとえば加速エネルギー15keV、ドーズ量3.0×1015/cmである。このように、不純物(As)を低加速エネルギーでイオン注入し、n型ソース領域10を浅く形成することにより、ソースからチャネル形成領域への不純物の広がりを抑制できるので、しきい値電圧の低下を抑制することができる。
【0076】
続いて、上記フォトレジスト膜をマスクにしてp型ウエル5の表面にB(ホウ素)をイオン注入することによって、n型ソース領域10の下部にp型ハロー領域11を形成する。この時、基板1の主面に対して30度の斜め方向から不純物をイオン注入する斜めイオン注入法を用い、たとえば加速エネルギー15keV、ドーズ量8.0×1012/cmで不純物をイオン注入した後、基板1を90度回転するという操作を4回繰り返す。p型ハロー領域11は、必ずしも形成する必要はないが、これを形成した場合は、ソースからチャネル形成領域への不純物の広がりがさらに抑制され、さらに短チャネル効果が抑制されるので、しきい値電圧の低下をさらに抑制することができる。
【0077】
次に、上記フォトレジスト膜を除去した後、ゲート電極7の側壁にサイドウォールスペーサ12を形成する。サイドウォールスペーサ12は、基板1上にCVD法で酸化シリコン膜を堆積した後、この酸化シリコン膜を異方性エッチングして形成する。サイドウォールスペーサ12用の酸化シリコン膜は、具体的には有機ソースであるTEOS(tetraethyl orthosilicate)を熱分解して形成するHLD(High Temperature Low Pressure Decomposition)膜が用いられる。HLD膜は、膜厚均一性に優れ、また膜中に不純物が拡散し難いという特徴がある。
【0078】
次に、ドレイン形成領域の上部に開口を有するフォトレジスト膜をマスクにして、n型オフセットドレイン領域9の一部にP(リン)をイオン注入する。このときのイオン注入条件は、たとえば加速エネルギー40keV、ドーズ量8.0×1012/cmである。これにより、n型オフセットドレイン領域9の一部の一部には、ゲート電極7のドレイン側の側壁に形成されたサイドウォールスペーサ12に対して自己整合的にn型オフセットドレイン領域(ドレイン高濃度領域)13が形成される。
【0079】
上記イオン注入の加速エネルギーは、n型オフセットドレイン領域9を形成する際に行うイオン注入の加速エネルギーと同じなので、n型オフセットドレイン領域13の接合深さは、n型オフセットドレイン領域9の接合深さとほぼ同じになる。また、n型オフセットドレイン領域13に注入された不純物は、n型オフセットドレイン領域9に注入された不純物と同じ導電型の不純物(P)なので、n型オフセットドレイン領域13の不純物濃度は、n型オフセットドレイン領域9の不純物濃度よりも高くなる。すなわち、n型オフセットドレイン領域13は、n型オフセットドレイン領域9よりも低抵抗となるので、オン抵抗(Ron)を低減することができる。
【0080】
型オフセットドレイン領域9は、ゲート電極7に対して自己整合的に形成されるのに対し、n型オフセットドレイン領域13は、ゲート電極7の側壁のサイドウォールスペーサ12に対して自己整合的に形成されることから、n型オフセットドレイン領域13は、ゲート長方向に沿ったサイドウォールスペーサ12の膜厚に相当する分、ゲート電極7から離間して形成される。従って、n型オフセットドレイン領域13の不純物濃度を高くしても、帰還容量(Cgd)に及ぼす影響は僅かである。
【0081】
次に、n型オフセットドレイン領域9の形成に用いたフォトレジスト膜を除去した後、n型オフセットドレイン領域13の一部とソース形成領域のp型ウエル5のそれぞれの上部に開口を有するフォトレジスト膜をマスクにして、n型オフセットドレイン領域13とp型ウエル5のそれぞれの一部にAs(ヒ素)をイオン注入する。このときのイオン注入条件は、たとえば加速エネルギー60keV、ドーズ量8.0×1015/cmである。
【0082】
上記のイオン注入により、n型オフセットドレイン領域13の一部には、n型オフセットドレイン領域13よりも不純物濃度が高く、かつn型オフセットドレイン領域13よりもさらにチャネル形成領域から離間したn型ドレイン領域(ドレイン高濃度領域)15が形成される。なお、このとき、高不純物濃度のn型ドレイン領域15を低不純物濃度のn型オフセットドレイン領域13やn型オフセットドレイン領域9に比べて浅く形成することにより、ソース、ドレイン間の寄生容量(ドレイン容量)を低減することができる。
【0083】
また、上記のイオン注入により、p型ウエル5には、n型ソース領域10よりも不純物濃度が高く、かつn型ソース領域10よりも底部の位置が深いn型ソース領域16が形成される。n型ソース領域16は、ゲート電極7の側壁のサイドウォールスペーサ12に対して自己整合的に形成されるので、ゲート長方向に沿ったサイドウォールスペーサ12の膜厚に相当する分、チャネル形成領域から離間して形成される。
【0084】
このように、n型ソース領域16をサイドウォールスペーサ12に対して自己整合的に形成することにより、n型ソース領域16とチャネル形成領域との距離を高精度に規定することができる。他方、ゲート電極7の側壁にサイドウォールスペーサ12を形成せず、フォトレジスト膜をマスクにしたイオン注入によってチャネル形成領域から離間したn型ソース領域16を形成しようとすると、フォトマスクの合わせずれによってn型ソース領域16とチャネル形成領域との距離がばらついてしまう。この場合、n型ソース領域16の端部がチャネル形成領域に近づき過ぎると、n型ソース領域16の不純物がチャネル形成領域に拡散し、しきい値電圧がばらついてしまう。他方、n型ソース領域16の端部がチャネル形成領域から離れ過ぎると、ソース抵抗が増加してしまう。
【0085】
従って、n型ソース領域16をサイドウォールスペーサ12に対して自己整合で形成する本実施の形態1によれば、LDMOSFETを微細化した場合でも上記のような問題を回避できるので、LDMOSFETの微細化を推進することができる。
【0086】
ここまでの工程により、n型オフセットドレイン領域9とn型オフセットドレイン領域13とn型ドレイン領域15とからなるドレイン、およびn型ソース領域10とn型ソース領域16とからなるソースを有するLDMOSFETが完成する。
【0087】
LDMOSFETは、短いチャネル長で高電圧駆動を可能とするために、ゲート電極7の一方(ドレイン)側でn型オフセットドレイン領域(ドレイン低濃度領域)9が形成され、他方(ソース)側のソース形成領域とチャネル形成領域とにp型ウエル5が形成されている。また、n型オフセットドレイン領域内9における電荷量、および平面におけるゲート電極7の端部とn型ドレイン領域(ドレイン高濃度領域)15との間の距離は、LDMOSFETのブレークダウン電圧が最大値となるように最適化しなければならない。
【0088】
次に、n型ドレイン領域15およびn型ソース領域16の形成に用いたフォトレジスト膜を除去した後、p型打ち抜き層4の上部を開口したフォトレジスト膜をマスクにしてp型打ち抜き層4の表面にフッ化ホウ素(BF2)をイオン注入することにより、p型半導体領域17を形成し、p型打ち抜き層4の表面を低抵抗化する。イオン注入条件は、たとえば加速エネルギー60keV、ドーズ量2.0×1015/cmである。
【0089】
次に、p型半導体領域17の形成に用いたフォトレジスト膜を除去した後、図9および図10に示すように、基板1上にCVD法で膜厚50nm程度の窒化シリコン膜20と膜厚1400nm程度の酸化シリコン膜21とを堆積した後、化学的機械研磨(Chemical Mechanical Polishing)法を用いて酸化シリコン膜21の表面を平坦化し、続いてフォトレジスト膜をマスクにして酸化シリコン膜21と窒化シリコン膜20とをドライエッチングすることにより、p型打ち抜き層4(p型半導体領域17)、ソース(n型ソース領域17)、ドレイン(n型ドレイン領域15)およびゲート電極7のそれぞれの上部にコンタクトホール22を形成する。
【0090】
続いて、コンタクトホール22の内部を含む基板1上にスパッタリング法にて膜厚10nm程度のTi(チタン)膜および膜厚50nm程度のTiN(窒化チタン)膜を順次堆積する。次いで、CVD法にて基板1上にW(タングステン)膜を堆積し、そのW膜でコンタクトホール22を埋め込む。次いで、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法にて基板1上のW膜、TiN膜およびTi膜を除去してコンタクトホール22内にW膜、TiN膜およびTi膜を残すことにより、コンタクトホール22内にW膜、TiN膜およびTi膜からなるプラグ23を形成する。
【0091】
次に、図11および図12に示すように、基板1上にスパッタリング法にて膜厚5nm程度のWN(窒化タングステン)膜および膜厚100nm程度のW膜を順次堆積する。続いて、フォトレジスト膜をマスクとしてこの積層膜をエッチングすることによって、n型ソース領域16およびp型半導体領域17と電気的に接続する配線(第1主面ソース電極)24A、n型ドレイン領域15と電気的に接続する配線(第1ドレイン電極)24B、およびゲート電極7と電気的に接続する配線24Cを形成する。
【0092】
次に、図13および図14に示すように、配線24A、24B、24Cの上部にCVD法で膜厚1100nm程度の酸化シリコン膜26を堆積し、続いて酸化シリコン膜26の一部をエッチングして配線24Bおよび配線24Cに達するスルーホール27を形成する。続いて、上記プラグ23を形成した工程と同様の工程(図9および図10参照)により、スルーホール27内にプラグ28を形成する。
【0093】
続いて、プラグ28上を含む酸化シリコン膜26上に膜厚10nm程度のTi膜、膜厚50nm程度のTiN膜、膜厚10nm程度のTi膜、膜厚800nm程度のAl膜、膜厚10nm程度のTi膜、および膜厚75nm程度のTiN膜を順次積層して積層膜を形成する。次いで、フォトレジスト膜をマスクとしたエッチングによりこの積層膜をパターニングし、LDMOSFETのドレイン(n型オフセットドレイン領域9、n型オフセットドレイン領域13およびn型ドレイン領域15)および配線24Bと電気的に接続する配線(第2ドレイン電極)29Bと、ゲート電極7および配線24Cと電気的に接続する配線29Cとを形成する。
【0094】
次に、図15および図16に示すように、配線29B、29C上を含む酸化シリコン膜26上にCVD法で膜厚1600nm程度の酸化シリコン膜30を堆積する。続いて酸化シリコン膜30の一部をエッチングして配線29Bおよび配線29Cに達するスルーホール31を形成する。なお、配線29Cに達するスルーホール31は、図15および図16では図示されない領域に形成される。続いて、上記プラグ23、28を形成した工程と同様の工程により、スルーホール31内にプラグ32を形成する。
【0095】
次に、図17および図18に示すように、プラグ32上を含む酸化シリコン膜30上に膜厚10nm程度のTi膜、膜厚2000nm程度のAl膜、および膜厚75nm程度のTiN膜を順次積層して積層膜を形成する。次いで、フォトレジスト膜をマスクとしたエッチングによりこの積層膜をパターニングし、LDMOSFETのドレイン(n型オフセットドレイン領域9、n型オフセットドレイン領域13およびn型ドレイン領域15)および配線24B、29Bと電気的に接続する配線(第2ドレイン電極)33と、ゲート電極7および配線24C、29Cと電気的に接続する配線とを形成する。なお、ゲート電極7および配線24C、29Cと電気的に接続する配線は、図17および図18に示されない領域にて形成される。配線33の一部は後の工程にて後述するドレインパッドとなり、ゲート電極7および配線24C、29Cと電気的に接続する配線の一部は後の工程にて後述するゲートパッドとなる。
【0096】
次に、配線33とゲート電極7および配線24C、29Cと電気的に接続する配線とを含む酸化シリコン膜30上に、CVD法にて膜厚800nm程度の酸化シリコン膜34および膜厚300nmの窒化シリコン膜35を堆積する。
【0097】
続いて、フォトレジスト膜をマスクとして窒化シリコン膜35および酸化シリコン膜34をエッチングし、配線33に達する開口部と、ゲート電極7および配線24C、29Cと電気的に接続する配線に開口部を開口する。それにより、配線33の一部からなるドレインパッド(ドレイン電極)33Aと、ゲート電極7および配線24C、29Cと電気的に接続する配線の一部からなるゲートパッド(図示は省略)とを形成する。
【0098】
次に、基板1の裏面を280nm程度研磨し、続いて基板1の裏面にソース裏面電極36を形成する。ソース裏面電極36は、たとえば膜厚600nm程度のNi(ニッケル)−Cu(銅)合金膜をスパッタリング法で堆積することによって形成することができる。
【0099】
その後、基板1を分割領域(図示は省略)に沿って切断することにより、個々のチップCHPへ個片化した後、ソース裏面電極36を介して配線基板MB1に半田付けし、本実施の形態1の半導体装置を製造する。
【0100】
上記の本実施の形態1によれば、p型打ち抜き層4を不純物を高濃度でドープした低抵抗のp型多結晶シリコン膜もしくは低抵抗の金属膜から形成している。そのため、p型打ち抜き層4の寄生抵抗を実質的に低減するためにLDMOSFETの基本セルのソース(n型ソース領域およびp型半導体領域17)同士を電気的に接続する配線(以降、ソース配線と記す)は配線24Aのみとし、それ以外のソース配線(第2主面ソース電極)をソース上に形成せずに済む。つまり、ソース配線を形成する配線層数(第2配線層数)は、ドレイン配線(配線24B、29B、33)を形成する配線層数(第1配線層数)より少なくなっている。それにより、ドレイン配線とソース配線との間の寄生容量(出力容量)を大幅に低減することができる。本発明者らが行った実験によれば、配線24A上にもソース配線が形成されている構造(従来構造)に比べて、本実施の形態1の構造は、LDMOSFETの出力容量を約30%低減することができた(図19参照)。
【0101】
増幅素子であるLDMOSFETにおいて、その寄生容量は高周波出力特性に大きな影響を与えるものであり、出力容量が大きくなれば高周波帯での動作においてインピーダンス値が小さくなることから、LDMOSFETに流れ込む電流が増加する。また、LDMOSFETは寄生抵抗も有していることから、流れ込む電流が増加すればその寄生抵抗によって生じる損失(消費される電力)も増加する。そのため、出力容量が大きくなると、増幅素子としての電力効率の低下を招いてしまう不具合が存在する。一方で、出力容量が小さくなれば、LDMOSFETに流れ込む電流も小さくなるので、増幅素子としての電力効率を向上することができる。ここで、図20は、従来構造のLDMOSFETおよび本実施の形態1のLDMOSFETのそれぞれにおける、出力電力Pout(dBm)に対する電力効率PAE(%)の関係を示したもので、LDMOSFETの動作周波数fが900MHzである場合のグラフを示している。図20に示すように、本実施の形態1のLDMOSFETによれば、従来構造のLDMOSFETに比べて出力効率PAE(%)を約2%向上することができる。
【0102】
また、本実施の形態1によれば、p型打ち抜き層4を不純物を高濃度でドープした低抵抗のp型多結晶シリコン膜もしくは低抵抗の金属膜から形成している。そのため、LDMOSFETの基本セルのソース同士を電気的に接続するためのp型打ち抜き層4については省略できる。それにより、チップCHPを小型化することが可能となる。また、チップCHPの面積を小型化するためにソース・ドレイン間を近づけても、配線24A以外のソース配線は存在しないことから、ソース配線とドレイン配線との間の寄生容量が増加してしまうことを防ぐことができる。すなわち、本実施の形態1によれば、LDMOSFETの高周波特性を低下させることなくチップCHPの小型化を実現することが可能となる。
【0103】
(実施の形態2)
図21は、本実施の形態2におけるチップCHP内の要部断面図を示したものである。
【0104】
本実施の形態2では、前記実施の形態1における配線24A(たとえば図18参照)および配線24Aに接続するプラグ23(たとえば図18参照)を省略し、n型ソース領域16およびp型半導体領域17の表面に、たとえばCo(コバルト)とシリコンとによるシリサイド層(化合物層)24Dを設けたものである。このようなシリサイド層24Dを設けることにより、前記実施の形態1で示した配線(第1配線)24Aおよび配線24Aに接続するプラグ(第1配線)23がなくとも、シリサイド層24Dを介することによって、n型ソース領域16からp型半導体領域17へ、p型半導体領域17からp型打ち抜き層4へ、p型打ち抜き層4からソース裏面電極36へソース電流を流すことが可能となる。それにより、ソース配線の高さは前記実施の形態1より低くなり、ソース配線とドレイン配線とが対向する面積は前記実施の形態1より小さくなる。このため、前記実施の形態1に比べてソース配線とドレイン配線との間の寄生容量を低減することができる。
【0105】
また、LDMOSFETの基本セル間でソース同士をソース配線によって電気的に接続しない構造としただけでは、ソースの寄生抵抗が大きくなってしまい、LDMOSFETのオン抵抗の増加および相互コンダクタンスの減少等の直流特性が劣化してしまう不具合発生の虞がある。しかしながら、本実施の形態2によれば、前記実施の形態1と同様にp型打ち抜き層4を不純物を高濃度でドープした低抵抗のp型多結晶シリコン膜もしくは低抵抗の金属膜から形成しているので、p型打ち抜き層4の単位面積当たりの抵抗値を小さくすることができる。それにより、ソースの寄生抵抗の増大を抑制できるので、LDMOSFETの直流特性の劣化を防ぐことが可能となる。
【0106】
上記のシリサイド層24Dを形成するには、p型半導体領域17を形成した後(図8参照)、図22に示すように、n型ソース領域16およびp型半導体領域17上以外の領域をフォトレジスト膜RESIで覆う。次いで、そのフォトレジスト膜RESIをマスクとしてn型ソース領域16およびp型半導体領域17の表面の酸化膜をエッチングして除去する。次いで、フォトレジスト膜RESIをマスクとして基板1上に、たとえばコバルト膜24Eを堆積した後に、基板1に熱処理を施すことによってコバルト膜24Eと基板1(エピタキシャル層2)を形成するシリコンとを反応させることによってn型ソース領域16およびp型半導体領域17の表面にシリサイド層24Dを形成することができる。
【0107】
また、上記の本実施の形態2の説明では、ソース配線である配線24Aを省略する場合について記述したが、図23に示すように、配線24Aを形成してもよい。この場合、図21に示した構造に比べてn型ソース領域16からp型打ち抜き層4に至る経路の寄生抵抗をさらに低減することができる。また、LDMOSFETの出力容量も低減することができる。本発明者らが行った実験によれば、このような本実施の形態2の構造は、配線24A上にもソース配線が形成されている構造(従来構造)に比べて、LDMOSFETの出力容量を約34%低減することができた(図24参照)。
【0108】
また、図25は、従来構造のLDMOSFET、前記実施の形態1のLDMOSFETおよび本実施の形態2のLDMOSFETのそれぞれにおける、出力電力Pout(dBm)に対する電力効率PAE(%)の関係を示したもので、LDMOSFETの動作周波数fが900MHzである場合のグラフを示している。図25に示すように、本実施の形態2のLDMOSFETによれば、従来構造のLDMOSFETに比べて出力効率PAE(%)を約2%向上することができる。
【0109】
上記の本実施の形態2によっても前記実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0110】
(実施の形態3)
本実施の形態3は、前記実施の形態1、2で示したチップCHP内にLDMOSFET以外の素子も形成されている場合のものである。
【0111】
図26は、本実施の形態3のチップCHPの要部平面図である。本実施の形態3においては、チップCHP内には、LDMOSFET等の能動素子41と、容量42および抵抗43等の受動素子とが形成されており、これら能動素子41および受動素子は、前記実施の形態1にて説明した電力増幅回路AMP1、AMP2(図1参照)を形成している。また、チップCHPの主面には、これら能動素子41および受動素子と電気的に接続するボンディングパッドBP1(図3も参照)が形成されている。このような本実施の形態3のチップCHPの製造工程について図27〜図37を用いて説明する。本実施の形態3のチップCHPの製造方法を説明する図面のうち、図27、図29、図31、図33および図35は、製造工程中の要部平面図であり、図28、図30、図32、図34、図36および図37は、それぞれ図27、図29、図31、図33および図35中のA−A線、B−B線およびC−C線に沿った断面を示す要部断面図である。
【0112】
本実施の形態3のチップCHPの製造工程は、前記実施の形態1のLDMOSFETの製造工程におけるゲート絶縁膜6を形成する工程9(図8参照)までは同様である。その後、図27および図28に示すように、たとえばゲート絶縁膜6の上部にCVD法で膜厚250nm程度のノンドープの多結晶シリコン膜を堆積し、その多結晶シリコン膜にn型の不純物を導入し、多結晶シリコン膜の上部にCVD法で膜厚125nm程度の酸化シリコン膜からなるキャップ絶縁膜8を堆積した後、フォトレジスト膜をマスクにしてキャップ絶縁膜8および多結晶シリコン膜をドライエッチングする。それにより、活性領域L上にはゲート電極7を形成し、素子分離領域DS上に抵抗43を形成する。
【0113】
続いて、前記実施の形態1と同様の工程にてn型オフセットドレイン領域9、n型ソース領域10、p型ハロー領域11、サイドウォールスペーサ12、n型オフセットドレイン領域13、n型ドレイン領域15、n型ソース領域およびp型半導体領域17を形成する。サイドウォールスペーサ12は、抵抗43の側壁にも形成される。
【0114】
次に、図29および図30に示すように、前記実施の形態2において図22を用いて説明した工程と同様の工程により、n型ソース領域16およびp型半導体領域17の表面にシリサイド層24Dを形成する。
【0115】
続いて、基板1上に窒化シリコン膜20と酸化シリコン膜21とを堆積した後、化学的機械研磨法を用いて酸化シリコン膜21の表面を平坦化する。次いで、フォトレジスト膜をマスクにして酸化シリコン膜21と窒化シリコン膜20とをドライエッチングすることにより、p型打ち抜き層4(p型半導体領域17)、ソース(n型ソース領域17)、ドレイン(n型ドレイン領域15)、ゲート電極7および抵抗43のそれぞれの上部にコンタクトホール22を形成する。
【0116】
続いて、コンタクトホール22の内部を含む基板1上にスパッタリング法にて膜厚10nm程度のTi膜および膜厚50nm程度のTiN膜を順次堆積する。次いで、CVD法にて基板1上にW(タングステン)膜を堆積し、そのW膜でコンタクトホール22を埋め込む。次いで、CMP法にて基板1上のW膜、TiN膜およびTi膜を除去してコンタクトホール22内にW膜、TiN膜およびTi膜を残すことにより、コンタクトホール22内にW膜、TiN膜およびTi膜からなるプラグ23を形成する。
【0117】
続いて、基板1上にスパッタリング法にて膜厚5nm程度のWN(窒化タングステン)膜および膜厚100nm程度のW膜を順次堆積する。続いて、フォトレジスト膜をマスクとしてこの積層膜をエッチングすることによって、n型ソース領域16およびp型半導体領域17と電気的に接続する配線24A、n型ドレイン領域15と電気的に接続する配線24B、ゲート電極7と電気的に接続する配線24C、抵抗43と電気的に接続する配線24F、および容量42の容量電極となる下部電極24Gを形成する。
【0118】
次に、図31および図32に示すように、配線24A、24B、24C、24Fおよび下部電極24Gの上部にCVD法で膜厚1100nm程度の酸化シリコン膜26を堆積し、続いて酸化シリコン膜26の一部をエッチングして配線24B、24C、24Fおよび下部電極24Gに達するスルーホール27を形成する。続いて、上記プラグ23を形成した工程と同様の工程により、スルーホール27内にプラグ28を形成する。
【0119】
次に、図33および図34に示すように、フォトレジスト膜をマスクとしたエッチングにより、下部電極24G上の酸化シリコン膜26に下部電極24Gに達する開口部26Aを形成する。続いて、開口部26A内を含む酸化シリコン膜26上に窒化シリコン膜を堆積した後、フォトレジスト膜をマスクとしたエッチングによってその窒化シリコン膜をエッチングして開口部26A内にその窒化シリコン膜を残し、開口部26A内にその窒化シリコン膜からなる容量42の容量絶縁膜26Bを形成する。
【0120】
次に、図35および図36に示すように、プラグ28および容量絶縁膜26B上を含む酸化シリコン膜26上に膜厚10nm程度のTi膜、膜厚50nm程度のTiN膜、膜厚10nm程度のTi膜、膜厚800nm程度のAl膜、膜厚10nm程度のTi膜、および膜厚75nm程度のTiN膜を順次積層して積層膜を形成する。次いで、フォトレジスト膜をマスクとしたエッチングによりこの積層膜をパターニングする。それにより、LDMOSFETのドレイン(n型オフセットドレイン領域9、n型オフセットドレイン領域13およびn型ドレイン領域15)および配線24Bと電気的に接続する配線29Bと、ゲート電極7および配線24Cと電気的に接続する配線29Cと、抵抗43と電気的に接続する配線29Dと、下部電極24Gと電気的に接続する配線29Eと、容量42の上部電極とを形成する。ここまでの工程により、下部電極24G、容量絶縁膜26Bおよび上部電極29Fからなる容量42が完成する。
【0121】
その後、前記実施の形態1において図15〜図18を用いて説明した工程を経て、図37に示すような断面を有する本実施の形態3のチップCHPを形成し、本実施の形態3の半導体装置を製造する。
【0122】
上記の本実施の形態3によれば、チップCHPにLDMOSFET41ばかりでなく、容量42および抵抗43も形成する。それにより、チップCHP内にてLDMOSFET41、容量42および抵抗43から前述の電力増幅回路AMP1、AMP2(図1参照)を形成することが可能となる。その結果、チップCHPが搭載される配線基板MB1(図3および図4参照)に搭載される受動部品PP1(図3および図4参照)の数も削減することができる。すなわち、RFパワーモジュールPM(図3および図4参照)自体も小型化することができる。
【0123】
上記の本実施の形態3によっても前記実施の形態1、2と同様の効果を得ることができる。
【0124】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0125】
前記実施の形態2においては、Co膜を用いてシリサイド層を形成する場合について説明したが、Co膜以外の金属膜、たとえばTi膜を用いてシリサイド層を形成してもよい。
【0126】
また、前記実施の形態2においては、シリサイド層を設け、そのシリサイド層を介してLDMOSFETのソース領域とp型半導体領域(p型打ち抜き層)とを電気的に接続する場合について説明したが、シリサイド層を設ける代わりにソース領域およびp型半導体領域(p型打ち抜き層上)に金属膜(たとえばタングステン膜)を形成し、その金属膜を介してLDMOSFETのソース領域とp型半導体領域(p型打ち抜き層)とを電気的に接続する構造としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明の半導体装置は、たとえばLDMOSFETを含み、RFパワーモジュールに搭載されるチップに適用することができる。
【符号の説明】
【0128】
1 基板
2 エピタキシャル層
3 溝
4 p型打ち抜き層(第1導電層)
5 p型ウエル
6 ゲート絶縁膜
7 ゲート電極
8 キャップ絶縁膜
9 n型オフセットドレイン領域(ドレイン低濃度領域)
10 n型ソース領域
11 p型ハロー領域
12 サイドウォールスペーサ
13 n型オフセットドレイン領域(ドレイン高濃度領域)
15 n型ドレイン領域(ドレイン高濃度領域)
16 n型ソース領域
17 p型半導体領域
20 窒化シリコン膜
21 酸化シリコン膜
22 コンタクトホール
23 プラグ(第1配線)
24A 配線(第1配線、第1主面ソース電極)
24B 配線(第1ドレイン電極)
24C 配線
24D シリサイド層(化合物層)
24E コバルト膜
24F 配線
24G 下部電極
26 酸化シリコン膜
26A 開口部
26B 容量絶縁膜
27 スルーホール
28 プラグ
29B 配線(第2ドレイン電極)
29C 配線
29D、29E 配線
29F 上部電極
30 酸化シリコン膜
31 スルーホール
32 プラグ
33 配線(第2ドレイン電極)
33A ドレインパッド(ドレイン電極)
34 酸化シリコン膜
35 窒化シリコン膜
36 ソース裏面電極
41 能動素子
42 容量
43 抵抗
101 基板
102 金属電極
103 ソース領域
104 打ち抜き層
104A 周辺打ち抜き層
105 ドレイン領域
106、107、108 配線(ドレイン配線)
109 ドレインパッド(ドレイン電極)
110 ゲート電極
111 ゲートパッド
112、113、114 配線(ソース配線)
113A 配線
AJC1、AJC2 整合回路
AMP1、AMP2 電力増幅回路
AMP11〜AMP13、AMP21〜AMP23 増幅段
BAC1、BAC2 バイアス回路
BIT1、BIT2 バイアス制御信号入力端子
BP1 ボンディングパッド
BW1 ボンディングワイヤ
C1、C2 寄生容量
C22 容量素子
CHP チップ
CND1 導体層
DEC1、DEC2 検出回路
DS 素子分離領域
ELB 裏面電極
GNDT 基準電位供給用端子
HL1 窪み
IL1 絶縁層
IPT1、IPT2 入力端子
L 活性領域
MB1 配線基板
MBB 下面
MBT 基板側端子
MBU 上面
MR1 封止樹脂
OCT 外部接続端子
OPT1〜OPT4 出力端子
PM RFパワーモジュール
PP1 受動部品
PSC1、PSC2 電源回路
R23 抵抗素子
RESI フォトレジスト膜
SD1 ショットキバリアダイオード素子
SLD、SLD2 はんだ
VH1、VHC ビアホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の半導体基板と、
前記半導体基板に形成された前記第1導電型と反対の第2導電型である第1半導体領域および第2半導体領域と、
前記半導体基板に前記第1半導体領域よりも深い位置に形成された前記第1導電型のウエルと、
前記第1半導体領域および前記第2半導体領域に挟まれた領域上であって、前記ウエル上に形成されたゲート電極と、
前記半導体基板の裏面に形成された裏面電極と、
前記半導体基板に形成された溝と、
前記溝内に形成され、前記裏面電極と電気的に接続し、且つ、前記ウエルと接触する打ち抜き層と、
前記半導体基板上に形成された第1絶縁膜と、
前記第1絶縁膜に形成され、且つ、前記第2半導体領域と接続する第1プラグと、
前記第1絶縁膜上に形成され、且つ、前記第1プラグと接続する第1配線と、
を有し、
前記打ち抜き層の表面および前記打ち抜き層と前記第1半導体領域との間の前記半導体基板には、前記第1導電型の第3半導体領域が形成されており、
前記第1半導体領域上および前記第3半導体領域上にはシリサイド膜が形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
平面視において、前記第1半導体領域上には配線が形成されていないことを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の半導体装置において、
前記打ち抜き層は、多結晶シリコン膜からなることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の半導体装置において、
前記打ち抜き層は、金属膜からなることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の半導体装置において、
前記シリサイド膜は、コバルトとシリコンを反応させた化合物からなることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載の半導体装置において、
前記第1導電型はp型であり、前記第2導電型はn型であることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【公開番号】特開2012−124506(P2012−124506A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−10039(P2012−10039)
【出願日】平成24年1月20日(2012.1.20)
【分割の表示】特願2005−365106(P2005−365106)の分割
【原出願日】平成17年12月19日(2005.12.19)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】