説明

表示デバイスの製造方法

【課題】Al合金膜の腐食を抑制でき、透明導電膜との接触電気抵抗も低減された表示デバイスを製造する。
【解決手段】下記(1)〜(4)の工程によってAl合金膜を透明導電膜と直接接触させる。(1)Alよりも貴な金属元素を含むAl合金膜を形成する第1の工程、(2)フォトリソグラフィおよびドライエッチングによってコンタクトホールを形成する第2の工程、(3)フォトリソグラフィで生成したフォトレジストの剥離を行なう第3の工程、(4)透明導電膜を形成する第4の工程と、をこの順序で包含し、第2の工程は、オーバーエッチングにおけるガスの流量比を、SF6/(SF6+O2)の比率で30%以下に制御して前記Al合金膜の表面をAlの酸化物で覆う工程を含み、第3の工程は、pH10.5以上のアルカリ溶液に接触させて前記Alの酸化物を除去する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイ、半導体装置、光学部品などに使用される表示デバイスの製造方法に関するものである。詳細には、本発明は、Al合金膜と透明導電膜が直接接触されたダイレクトコンタクト技術の改良発明であり、絶縁膜を介してAl合金膜と透明導電膜が電気的に接続するコンタクトホールを有する表示デバイスにおいて、Al合金膜を腐食させることなく低接触電気抵抗の表示デバイスを製造することのできる方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
Al合金は、電気抵抗率が低く、加工が容易であるなどの理由により、液晶表示デバイス、プラズマ表示デバイス、エレクトロルミネッセンス表示デバイス、フィールドエミッション表示デバイスなどの薄型表示デバイス(FPD)の分野で、配線膜、電極膜、反射電極膜の薄膜材料などに利用されている。
【0003】
例えば、アクティブマトリクス型の液晶パネルは、図1に示すように、スイッチング素子である薄膜トランジスタ(TFT)4、例えば酸化インジウム錫(ITO)膜などの酸化物透明導電膜から構成される画素電極5、および走査線や信号線を含む配線部6を有するTFT基板1を備えている。この走査線や信号線を構成する配線材料として、上記Al合金が用いられている。この走査線や信号線を含む配線部6のAl合金膜と画素電極(透明導電膜)5は、通常、それらの間に設けられた絶縁膜のコンタクトホールを通して電気的に接続される。
【0004】
尚、従来は、Al合金膜によって形成される各種電極部分と画素電極を直接接触させると、絶縁性の酸化アルミニウムなどが界面に形成されて接触電気抵抗が上昇するため、Al合金膜と透明導電膜との間にMo、Cr、Ti、W等の高融点金属からなるバリアメタル層が形成されていた。
【0005】
しかしながら、バリアメタル層の形成は製造コストの上昇や生産性の低下を招くことから、バリアメタル層の形成を省略し、Al合金膜を画素電極に直接接触させる技術(ダイレクトコンタクト技術)が提案されている(例えば特許文献1および特許文献2を参照)。これらの特許文献には、所定の合金元素を含むAl合金膜を用いれば、バリアメタル層を省略しても、画素電極との接触抵抗を低減できること、更にはAl合金自体の電気抵抗の低減や耐熱性の向上も達成できることが開示されている。
【0006】
Al合金膜と透明導電膜が、絶縁膜上に形成されたコンタクトホールを介して電気的に接続する構造は、例えば後述する図2〜図10の工程により形成される。即ち、図3に示す通り、スパッタリング等によりAl合金膜を成膜し、パターニングしてドレイン電極29を形成する(図7を参照)。次に、例えばプラズマCVD法で絶縁膜(SiN絶縁膜)30を成膜し、更にその上にフォトレジスト(感光樹脂)31を形成し、フォトレジスト31の開口部をエッチングして、図8に示す通り絶縁膜30にコンタクトホール32を形成する。コンタクトホール32の形成後は、図9に示す通り、フォトレジスト31を剥離液で除去し、次に図10に示す通り、絶縁膜30上に、例えば酸化インジウム錫(ITO)膜等の透明導電膜5を形成することにより、Al合金膜と透明導電膜が直接接触する構造が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−214606号公報
【特許文献2】特開2006−261636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1や特許文献2に開示されているように、Alに所定の合金元素を添加することによって種々の機能が付与されるが、合金元素の添加によって耐食性が悪化するという、好ましくない傾向が現れる。
【0009】
例えば、アレイ基板の製造工程では複数のウェットプロセスを通ることになるが、Alよりも貴な金属を添加すると、ガルバニック腐食の問題が表れ、耐食性が劣化してしまう。例えばフォトリソグラフィ工程では、TMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)を含むアルカリ性の現像液を使用するが、ダイレクトコンタクト構造の場合、バリアメタル層を省略しているためAl合金膜がむき出しとなり、現像液によるダメージを受けやすくなる。
【0010】
また、フォトリソグラフィの工程で形成したフォトレジスト(樹脂)を剥離する洗浄工程では、アミン類を含む有機剥離液を用いて連続的に水洗が行なわれている。ところがアミンと水が混合するとアルカリ性溶液になるため、短時間でAlを腐食させてしまうという別の問題が生じる。ところでAl合金は、剥離洗浄工程を通るより以前にCVD工程を経ることによって熱履歴を受けている。この熱履歴の過程でAlマトリクス中には合金成分が析出物(高抵抗なAl酸化物)を形成するため、Al合金膜を透明導電膜の画素電極と直接接触させると接触電気抵抗が上昇する。また、この析出物とAlの間には大きな電位差があるので、剥離液であるアミンが水と接触した瞬間に前記ガルバニック腐食によってアルカリ腐食が進行し、電気化学的に卑であるAlがイオン化して溶出し、ピット状の孔食(黒点)が形成されてしまう、といった問題がある。特に、Al合金膜をpH8.5〜10程度の弱アルカリ溶液に浸漬すると、析出物のAl酸化物とAl合金膜の間で電池反応が起こり、部分的な腐食が発生する。
【0011】
本発明はこの様な事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、透明導電膜と直接接触するAl合金膜が基板上に形成されており、Al合金膜と透明導電膜が電気的に接続するコンタクトホールを有する表示デバイスにおいて、Al合金膜の腐食を抑制でき、透明導電膜との接触電気抵抗も低減された表示デバイスを製造することのできる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を達成することのできた本発明に係る表示デバイスの製造方法は、透明導電膜と直接接触するAl合金膜が基板上に形成されており、絶縁膜を介して前記Al合金膜と前記透明導電膜を電気的に接続するコンタクトホールを有する表示デバイスの製造方法であって、下記(1)〜(4)の工程によって前記Al合金膜を前記透明導電膜と直接接触させるところに要旨を有するものである。
(1)Alよりも貴な金属元素を含むAl合金膜を形成する第1の工程、
(2)フォトリソグラフィおよびドライエッチングによってコンタクトホールを形成する第2の工程、
(3)フォトリソグラフィで生成したフォトレジストの剥離を行なう第3の工程、および
(4)透明導電膜を形成する第4の工程と、
をこの順序で包含し、
前記第2の工程は、オーバーエッチングにおけるガスの流量比を、SF6/(SF6+O2)の比率で30%以下に制御して前記Al合金膜の表面をAlの酸化物で覆う工程を含み、
前記第3の工程は、pH10.5以上のアルカリ溶液に接触させて前記Alの酸化物を除去する工程を含む。
【0013】
好ましい実施形態において、前記第2の工程は、オーバーエッチングの後に酸素アッシングを行なって前記Al合金膜の表面をAlの酸化物で覆う工程を含み、前記オーバーエッチングにおけるガスの流量比は、SF6/(SF6+O2)の比率で65%以下である前記第3の工程は、前記オーバーエッチングの後に、酸素アッシングを行なう工程を更に含んでいる。
【0014】
好ましい実施形態において、前記第3の工程は、pH10.5未満のアルカリ溶液に接触させた後、pH10.5以上のアルカリ溶液に接触させて前記Alの酸化物を除去する工程を含む。
【0015】
好ましい実施形態において、前記第3の工程は、レジスト剥離の後に、水による洗浄工程を更に含んでいる。
【0016】
好ましい実施形態において、前記第1の工程におけるAl合金膜は、Ni,Co,Ag,Au,Zn,Cu,およびGeよりなる群から選択される少なくとも一種の元素を含むものである。
【0017】
好ましい実施形態において、前記Al合金膜は、希土類元素の1種以上を0.1〜0.5原子%の比率で更に含有するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、(ア)コンタクトホール形成のためのオーバーエッチング(更には、必要に応じて酸素アッシング)を制御し、Al合金膜表面にAlの酸化物を積極的に生成させているため、Al合金膜の腐食を効果的に防止でき、且つ、(イ)当該Alの酸化物を、その後の適切なウエットエッチングによって完全に除去しているため、Al合金膜と透明導電膜の接触電気抵抗を低減できる。よって、本発明によれば、Al合金膜の腐食を防止しつつ、低い接触電気抵抗を安定して長期間実現できるため、信頼性の高い表示デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、アクティブマトリクス型の液晶表示デバイスに適用される代表的な液晶パネルの構造を示す概略断面拡大説明図である。
【図2】図2は、表示デバイス用アレイ基板に適用される薄膜トランジスタ(TFT)の構成を例示する概略断面説明図である。
【図3】図3は、図2に示した表示デバイス用アレイ基板の製造工程の一例を、順番を追って示す説明図である。
【図4】図4は、図2に示した表示デバイス用アレイ基板の製造工程の一例を、順番を追って示す説明図である。
【図5】図5は、図2に示した表示デバイス用アレイ基板の製造工程の一例を、順番を追って示す説明図である。
【図6】図6は、図2に示した表示デバイス用アレイ基板の製造工程の一例を、順番を追って示す説明図である。
【図7】図7は、図2に示した表示デバイス用アレイ基板の製造工程の一例を、順番を追って示す説明図である。
【図8】図8は、図2に示した表示デバイス用アレイ基板の製造工程の一例を、順番を追って示す説明図である。
【図9】図9は、図2に示した表示デバイス用アレイ基板の製造工程の一例を、順番を追って示す説明図である。
【図10】図10は、図2に示した表示デバイス用アレイ基板の製造工程の一例を、順番を追って示す説明図である。
【図11】図11は、実施例における実験用表示デバイスの作製工程外略図である。
【図12】図12は、実施例における実験用表示デバイスの作製工程外略図である。
【図13】図13は、本発明例のAl表面酸化膜(AlOx)のTEM像である。
【図14】図14は、比較例のAl表面酸化膜(AlOx)のTEM像である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、表示デバイスの基板上で、Alより貴な金属元素を含むAl合金膜(以下、単に「Al合金膜」と略記する場合がある。)と透明導電膜が直接接触するダイレクトコンタクト技術の改良技術であり、絶縁膜を介してAl合金膜と透明導電膜が電気的に接続するコンタクトホールを有する表示デバイスにおいて、Al合金膜の腐食防止と、Al合金膜と透明導電膜の接触電気抵抗(以下、単に「接触電気抵抗」と呼ぶ場合がある。)の低減化を満足し得る表示デバイスの製造方法に関するものである。
【0021】
本発明者は、上記構成の表示デバイスにおいて、低い接触電気抵抗を維持しつつ、フォトレジストの剥離・その後の洗浄工程などで生成する黒点を効果的に防止できる製造方法を提供するため、検討を重ねてきた。その結果、Al合金膜を透明導電膜に直接接触させるまでの工程手順において、意外にも、接触電気抵抗の低減化に悪影響を及ぼすAlの酸化物をAl合金膜の表面に、特定時期の間、積極的に生成させると黒点の生成が顕著に抑制されることを見出した。具体的には、窒化シリコン(SiNx)等の層間絶縁膜にフォトリソグラフィおよびドライエッチングによってコンタクトホールを形成した後、フォトリソグラフィで生成したフォトレジストの剥離を行なう前(すなわち、絶縁膜のコンタクトホール形成後、フォトレジスト剥離の前)に、Al合金膜の表面を酸化するための処理を施してAlの酸化物(AlOx)で覆えば良いことが判明した(後記する実施例を参照)。更に、引き続き、フォトレジストの剥離・洗浄工程において、少なくともpH10.5以上の強アルカリ溶液に接触(浸漬)して当該AlOxを除去する工程を行なえば、接触電気抵抗の低減化も同時に達成できることも判明した(後記する実施例を参照)。
【0022】
更に、上記のAl酸化物(AlOx)を効率よく生成させるためには、上述した「絶縁膜のコンタクトホール形成後、レジスト剥離の前」の時期に、酸素イオンをイオンボンバードする方法が有効であることを突き止めた。具体的には、ドライエッチング後のオーバーエッチング(絶縁膜を除去した後の継続エッチング)、またはオーバーエッチングおよびその後の酸素アッシング(酸素プラズマを用いたアッシング)において、オーバーエッチングにおけるガスの流量比(フッ素系ガスと酸素ガスの混合ガスの流量比)の制御、酸素アッシングにおけるRFパワーや処理時間の制御を適切に行えば、黒点防止に有用な所望のAlOxが得られることを見出し、本発明を完成した。
【0023】
以下、上記知見に到達した経緯および本発明の特徴部分について、詳しく説明する。
【0024】
前述したように、ドレイン電極などを構成するAl合金膜上に透明導電膜を構成するITO膜をスパッタリングなどによって成膜すると、Al合金膜と透明導電膜との界面に酸化皮膜(AlOx)が形成され、接触電気抵抗が高くなる。そのため、これまでは、ITO膜の成膜初期段階では、Al合金膜の表面を極力酸化しない対策が講じられており、例えば、酸素添加なしの雰囲気にて、膜厚約5〜20nm(好ましくは約10nm程度)のITO膜を成膜していた。しかしながら、表示デバイスの成膜工程では複数のウェットプロセスを通ることになるため、NiやCuなどのAlよりも貴な金属を含むAl合金膜を用いると、前述したガルバニック腐食の問題が表れ、耐食性が劣化してしまう。例えば、絶縁膜にコンタクトホールを形成するに当たっては、通常、Al合金膜上にフォトリソグラフィ法によって絶縁膜をパターン形成し、コンタクトホールを形成するためのドライエッチング(コンタクトエッチング)を行なった後に、レジスト剥離液(代表的には、東京応化工業株式会社製の「TOK106」および「PRS2000」など)を用いてレジスト剥離を行なうが、レジスト剥離後の水洗リンス(洗浄工程)において、その水溶性液体はアルカリ溶液となり、pH8.5〜10領域でマトリックスアルミニウムと金属間化合物との間で腐食(部分的な腐食)が発生し、黒点が生成されるようになる。
【0025】
これに対し、本発明では、「コンタクトホール形成後フォトレジストの剥離前」という所定の時期において、(ア)混合ガスの流量比が適切に制御されたオーバーエッチングを行なうか、または、(イ)オーバーエッチングの後に酸素アッシングを行なう場合には、オーバーエッチング時の混合ガスの流量比や酸素アッシング時のRFパワーなどを適切に制御する、という「AlOx生成処理」を行なって、Al合金膜の表面を積極的に酸化させてAlOxで覆うようにしている。そのため、本発明の方法によれば、Al合金膜が上記のアルカリ溶液に曝された場合であってもAl合金膜の部分腐食の発生が抑制される。
【0026】
更に本発明では、上記工程の後、レジストの剥離・洗浄工程において、pH10.5以上の強アルカリ溶液に接触させてAl合金膜の表面をウエットエッチングする工程を必ず行なうようにしているため、上記のAlOxは完全に除去される。そのため、その後の透明導電膜の形成によってAl合金膜と透明導電膜を直接接触させた場合であっても、接触電気抵抗の上昇をもたらす高抵抗のAl酸化物は形成され難い状態となる。また、本発明によれば、Alよりも貴な金属元素を含む導電性の析出物が透明導電膜との界面に形成されるようになるため、コンタクト抵抗の低下が抑えられる。
【0027】
このように、本発明の方法は、「コンタクトホール形成後フォトレジストの剥離前」に「黒点生成防止」のためのAlOx生成処理と、「フォトレジストの剥離・洗浄工程」で「接触電気抵抗低減」のための強アルカリ溶液によるウエットエッチング処理を、両方行なうことによって、Al合金膜の腐食防止と接触電気抵抗の低減化を両立させたところに特徴を有している。特に、本発明の方法は、接触電気抵抗低減化の観点からは排除すべきと考えられ、その生成を極力抑制するための対策が講じられていたAl酸化物(AlOx)を、「耐食性向上の観点からは、所定の時期には、むしろ積極的に生成させて有効利用すべき」という逆転の発想(思想)に基づき完成されたものである。更に、本発明の方法によれば、好ましくは、Ni、Co、Cu、Geなどのコンタクト抵抗低減元素を比較的少量添加しているため、上記の作用がより一層促進される。
【0028】
本発明の特徴部分をなす各工程について、より詳しく説明する。
【0029】
まず、上記の「コンタクトホール形成後、レジスト剥離の前」にAl合金膜を酸化してAlOxを形成するに当たっては、酸素イオンをイオンボンバードすることが有効であり、反応性イオンエッチング(REACTIVE ION ETCHING、RIE)方式でイオンボンバードを行なうことが好ましい。これにより、コンタクトホール周辺でのAl合金膜配線の断線や密着性低下などを回避できるほか、緻密な膜が形成され易くなって腐食防止効果が向上する。
【0030】
具体的には、絶縁膜を除去した後のオーバーエッチングのみを行なう場合と、オーバーエッチングの後に酸素アッシングを行なう場合とで、制御条件が若干異なるので、以下、個別に説明する。
【0031】
(A)オーバーエッチングのみを行なう場合(その後の酸素アッシングなし)
上記態様では、フッ素系ガス(例えば、SF6)と酸素ガスとの混合ガスを用い、その流量比を、SF6/(SF6+O2)の比率で30%以下に制御してオーバーエッチングを行なう。これにより、黒点防止に有効なAlOxが所定厚さ(好ましくは約4nm以上)生成されるようになる。黒点防止という観点からすれば、SF6/(SF6+O2)の流量比は少ない程よく、おおむね、10%以下であることが好ましい。なお、上記流量比の下限は、黒色防止の観点からは特に限定されないが絶縁膜であるSiNの残渣を除去する観点からすれば、おおむね、5%以上とすることが好ましい。
【0032】
オーバーエッチングに用いられるガス(混合ガス)は、少なくとも、SF6などのフッ素系ガスと酸素ガスを含有していれば良く、更に、HeやArなどの不活性ガスを含有していても良い。いずれにせよ、全混合ガス中のフッ素系ガス(SF6)の流量比が上記範囲内に制御されていれば良い。
【0033】
オーバーエッチングでは、上記以外の条件は特に限定されず、例えば、圧力:約10Pa、RFパワー:約50Wに制御して行なえば良い。
【0034】
(B)オーバーエッチングの後に酸素アッシングを行なう場合
上記態様では、まず、オーバーエッチング時における混合ガスの流量比を、SF6/(SF6+O2)の比率で65%以下に制御してオーバーエッチングを行なう。ここでは、その後に酸素アッシングを行なっているため、上記流量比の上限を、前述した(A)の場合に比べ、より高く設定できる。上記の流量比は少ない程よく、おおむね、50%以下であることが好ましい。
【0035】
オーバーエッチングの条件は、上記の流量比の上限が異なること以外は、上記(A)の場合と同じである。
【0036】
その後に酸素アッシングを行なう。酸素アッシングとは、酸素プラズマによるアッシングを意味し、ドライエッチングによるレジスト表面のダメージ層を除去する目的で、通常行なわれているものである。黒点生成防止に有用なAlOxを効果的に生成させるためには、酸素アッシングにおけるRFパワーは高いほど、また長時間行うほど好ましく、例えば、以下のように制御することが好ましい。
RFパワー:好ましくは50W以上であり、より好ましくは100W以上。
酸素アッシングの時間:好ましくは1分間以上であり、より好ましくは3分間以上。
【0037】
酸素アッシングにおける、上記以外の条件は特に限定されず、通常行なわれる条件を適宜選択して採用することができる。
【0038】
上記の方法によれば、Al合金膜の表面を覆うようにAlOxが形成される。上記AlOxの厚さは、おおむね、4nm以上であることが好ましく、これにより、黒点の生成を有効に防止することができる(後記する実施例を参照)。上記作用を効果的に発揮させるためには、AlOxの厚さは厚いほどよく、おおむね、5nm以上であることがより好ましい。AlOxの上限は、後続のアルカリ溶液との接触による除去のされ易さなどを考慮するとおおむね、20nm以下であることが好ましい。なお、AlOxの厚さは、日立製作所製「FE−TEM HF−2000」を用いた断面TEM観察によって求めた。

【0039】
次に、フォトレジストの剥離・洗浄を行なう。上記工程において、本発明では、少なくともpH10.5以上のアルカリ溶液との接触(ウエットエッチング)を行なうことが不可欠であり、これにより、前述した工程によって生成したAlOxは完全に除去(全面腐食、膜減り)されるようになる。その結果、Al合金膜の部分腐食の発生を招くことなく、低い接触電気抵抗が長時間安定して確保される。すなわち、後記する実施例で実証したように、pHが10.5未満(実施例ではpH9.5)の弱アルカリ溶液によるウエットエッチングを浸漬条件を変えて種々行なっても、それだけでは接触電気抵抗の低減効果は得られず、本発明で規定するようにpH10.5以上の強アルカリによるウエットエッチングを行なった場合に初めて、所望とする低い接触電気抵抗を達成できた。接触電気抵抗の低減化の観点からは、アルカリ溶液のpHは高いほど良いが、pHが高くなり過ぎると、AlOxの膜減りが大きくなり過ぎて、後に形成されるITOなどの透明導電性膜の断線を招くことから、pHは約13以下であることが好ましい。具体的には、例えば、上記pHの水酸化ナトリウム水溶液などを用いることができる。上記のアルカリ溶液は、市販品を用いても良く、例えば、現像液として用いられるpH12.5程度のTMAH液として、東京応化製の「NMD−W」、AZエレクトロニックマテリアルズ社製の「AZ−300MIF」;pH10.5〜13程度のレジスト剥離液「TOK106」(東京応化工業株式会社製)の水溶液;pH10.5〜13程度のDongwoo Finechem社製の「PRS2000」の水溶液などが代表的に例示される。上記の「TOK106」および「PRS2000」は、モノエタノールアミンとジメチルスルホキシド(DMSO)の混合溶液であり、これらの混合比率によってpHの範囲を調整できる。ウエットエッチングの好ましい温度や時間は、AlOxが適切に除去されるように、使用するアルカリ溶液やAl合金の組成などに応じて適宜適切に定めれば良いが、おおむね、30〜70℃で5〜180秒間(好ましくは、30〜60℃で10〜120秒間)であることが好ましい。
【0040】
本発明では、フォトレジストの剥離・洗浄において、「pH10.5以上の強アルカリ溶液との接触処理(ウエットエッチング処理)」を少なくとも行なえば良く、本発明の作用効果を阻害しない限度において、それ以外の処理を更に含んでいても良い。例えば、pH10.5未満の弱アルカリ溶液によるウエットエッチング処理を行ってから、上記のpH10.5以上の強アルカリによるウエットエッチング処理を行っても良く、このような異なるpHのアルカリ溶液を用いた段階的処理も本発明の範囲に包含される。後記する実施例では、pH9.5のTMAH溶液の浸漬後にpH12.8のTMAH溶液の浸漬を行なっているが、上記方法は、本発明で規定する「強アルカリ溶液による処理」を行なってAlOxを完全に除去しているため、所望の効果が有効に発揮されている。弱アルカリ溶液によるウエットエッチング処理は、本発明の作用を損なわない範囲で、「強アルカリ溶液によるウエットエッチング処理」やAl合金膜の組成などに応じて適宜適切に行えば良いが、おおむね、pH9.5〜10程度の弱アルカリ溶液を、約30〜60℃で約10〜300秒間程度行なうことが好ましい。
【0041】
上記工程では、水による洗浄(洗浄リンス)を更に行なうことが好ましい。これにより、上記レジスト剥離液などの溶液が洗浄槽に持ち込まれるため、例えば、pH9.5〜13程度の様々なアルカリ性水溶液となり、Al合金膜に部分的に発生した腐食を完全に抑制できるようになる。
【0042】
以上、本発明を特徴付ける工程について説明した。
【0043】
本発明は、特に上記の工程を制御したところに特徴があり、その他の工程については、通常用いられる方法を適宜採用することができる。
【0044】
本明細書において「Alより貴な金属元素」とは、Alよりもイオン化傾向が小さい金属元素を意味する。また、本明細書において「フォトリソグラフィ法」とは、フォトレジスト(ネガおよびポジ両方のフォトレジストを含む)に光を照射して現像し、次いでエッチングすることによりパターン形成を行なう方法を意味する。
【0045】
以下、図面を参照しながら、本発明法の詳細を、工程順に詳しく説明する。本発明の特徴部分は、上記に詳述したため、以下では、それ以外の工程を中心に説明する。
【0046】
まず図2に示したTFTアレイ基板1の製法について簡単に説明する。尚ここで、スイッチング素子として形成される薄膜トランジスタは、水素化アモルファスシリコンを半導体層として用いたアモルファスシリコンTFTを一例として挙げる。
【0047】
まずガラス基板1aに、スパッタリング等の手法で例えば膜厚200nm程度のAl合金膜(例えば、Al−0.6原子%Ni−0.5原子%Cu−0.3原子%La)を形成し、該Al合金膜をパターニングすることにより、ゲート電極26と走査線25を形成する(図3)。このとき、後記ゲート絶縁膜27のカバレッジが良くなるように、アルミニウム合金薄膜の周縁を約30〜40°のテーパー状にエッチングしておくのがよい。次いで、図4に示す如く、例えばプラズマCVD法等の手法で、例えば膜厚が約300nm程度の酸化シリコン膜(SiOx)でゲート絶縁膜27を形成し、更に、例えば膜厚50nm程度の水素化アモルファスシリコン膜(a−Si:H)と膜厚300nm程度の窒化シリコン膜(SiNx)を成膜する。
【0048】
続いて、ゲート電極26をマスクとする裏面露光によって図5に示す如く窒化シリコン膜(SiNx)をパターニングし、チャネル保護膜を形成する。更にその上に、燐をドーピングした例えば膜厚50nm程度のn+型水素化アモルファスシリコン膜(n+a−Si:H)を成膜した後、図6に示す如く、水素化アモルファスシリコン膜(a−Si:H)とn型水素化アモルファスシリコン膜(n+a−Si:H)をパターニングする。
【0049】
そしてその上に、例えば膜厚300nm程度のAl合金膜を成膜し、図7に示す様にパターニングすることで、信号線と一体のソース電極28と、透明導電膜5に接触されるドレイン電極29を形成する。更に、ソース電極28とドレイン電極29をマスクとして、チャネル保護膜(SiNx)上のn型水素化アモルファスシリコン膜(n+a−Si:H)を除去する。
【0050】
そして図8に示す如く、例えばプラズマCVD装置などを用いて、窒化シリコン膜30を例えば膜厚300nm程度で成膜することにより保護膜を形成する。このときの成膜は例えば260℃程度で行なわれる。そしてこの窒化シリコン膜30上にフォトレジスト層31を形成した後、該窒化シリコン膜30をパターニングし、例えばドライエッチング等によって窒化シリコン膜30にコンタクトホール32を形成する。また図示していないが、同時にパネル端部のゲート電極上のTABとの接続に当たる部分にコンタクトホールを形成する。本発明において、このドライエッチングの条件は特に限定されず、通常、用いられる条件を適宜採用することができる。前述したように、本発明は、ドライエッチング後のオーバーエッチング(更には酸素アッシング)の条件を適切に制御して黒色防止に有用なAlOxを生成させるものだからである。ドライエッチングの好ましい条件の一例としては、SF6およびO2の混合ガスを用い、SF6/(SF6+O2)の流量比を約10%、RFパワーを約50Wに制御することが例示される。
【0051】
次いで、Al合金膜を酸化し、黒点防止に有用なAlOxの生成を目的として、前述したように、ドライエッチング後のオーバーエッチングを適切に制御して行なう。詳細は前述したとおりであり、これにより、Al合金膜の表面がAlOxで覆われるようになる(図示せず)。
【0052】
更に図9に示す如く、必要に応じて、酸素プラズマによるアッシング工程を、前述した条件で行なう。この酸素アッシング工程は必須ではなく、上記のオーバーエッチングのみを行なっても良い。その後、例えばアミン系等の剥離液を用いてフォトレジスト層31の剥離処理を行い、最後に例えば保管時間8時間程度以内に、図10に示す如く例えば膜厚40nm程度のITO膜を成膜し、パターニングによって透明導電膜5を形成する。同時に、パネル端部のゲート電極のTABとの接続部分に、TABとのボンディングのためITO膜をパターニングすると、TFTアレイ基板が完成する。
【0053】
なお、本発明に用いられるAl合金は、Alよりも貴な金属元素(Alよりもイオン化傾向が小さい元素)を含有するものであり、好ましくは、Ni,Co,Ag,Au,Zn,Cu,およびGeよりなる群から選択される少なくとも一種の元素を含んでいる。これらの元素は、コンタクト抵抗の低減に寄与する元素であり、本発明では、これらを単独で、または2種以上を併用することができる。好ましい金属元素はNi,Co,Ag,Znであり、より好ましくはNi,Co,Agである。
【0054】
上記金属元素の含有量(合計)は、Al合金膜中に0.1〜1.0原子%程度であることが好ましい。上記金属元素の含有量が0.1原子%未満では、接触電気抵抗が却って低下する。一方、上記金属元素の含有量が1.0原子%を超えると、Al合金膜自体の電気抵抗が高くなる。金属元素のより好ましい含有量は、0.2原子%以上1.0原子%以下である。
【0055】
また、本発明のAl合金膜には、上記以外の金属元素(合金元素)として、希土類元素の1種以上を更に含有させることも有効である。これらの元素は、Al合金膜中に好ましくは0.1〜0.5原子%含有させることによって耐熱性を300℃以上に高め、また機械的強度や耐食性などを高める作用を発揮する。こうした金属としては、ランタノイド系列希土類元素のいずれも採用できるが、特に好ましいのは、La,Gd,Ndよりなる群から選択される少なくとも1種である。
【0056】
この様にして形成されたTFTアレイ基板を備えた表示デバイスを、例えば液晶表示デバイスとして使用すれば、透明導電膜と接続配線部との間の接触電気抵抗を最小限に抑えることができるため、表示画面の表示品位に及ぼす悪影響を可及的に抑制できる。
【実施例】
【0057】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0058】
(実験用表示デバイスの作製)
図11および図12は、本実施例に用いた実験用表示デバイスの作製工程概略図である。実験用表示デバイスの構造は、前述した図7および図8に示したドレイン電極29として用いられるAl合金膜、層間絶縁膜30、コンタクトホール32、フォトレジスト31の部分を再現したものであり、TFT等は作製していない。
【0059】
まず、図11に示すように、無アルカリガラス板(板厚0.7mm)を基板とし、その表面に、ドレイン電極を想定して、Al−0.6原子%Ni−0.5原子%Cu−0.3原子%La合金膜72をスパッタリング法により成膜した(厚さ300nm)。次いで、フォトリソグラフィおよびドライエッチングによるパターニングを行ない、Al合金薄膜72を約30°〜40°のテーパー状にエッチングした。
【0060】
この上に、絶縁膜73として窒化シリコン(SiNx)膜をプラズマ気相蒸着法(CVD法)によって成膜した(厚さ300nm)。このときの成膜温度は250℃で行い、成膜時間は約6分とした。
【0061】
この絶縁膜73の表面にエッチング用マスクとして、厚膜の感光樹脂(フォトレジスト、ノボラック樹脂製)74をコーティングし、フォトリソグラフィおよびドライエッチングによるパターニングを行ない、窒化シリコンにコンタクトホール(接触エリア10μm×10μm)75を形成した(図11を参照)。ドライエッチングはRIE(反応性イオンエッチング)で実施し、使用ガスは、SF6:33.3%、O2:26.7%、Ar:40%の混合ガスとした。
【0062】
このようにして窒化シリコンをドライエッチングした後に、下記(1)〜(4)の方法で、オーバーエッチング(必要に応じて酸素アッシング)→アルカリ溶液によるウエットエッチング処理を行ってフォトレジストを除去した(図12を参照)。その後、温度約25℃、湿度約50%に制御されたクリーンルーム内で8時間保管した後、Al合金膜の表面に、スパッタリング法で膜厚200nmのITO膜を成膜した(図示せず)。
【0063】
下記(1)〜(4)の方法において、(1)と(3)、(2)と(4)は、それぞれ対応しており、(1)の後に強アルカリ処理を行なったのが(3);(2)の後に強アルカリ処理を行なったのが(4)である。これらの概要を以下に示す。
(1)の方法・・・オーバーエッチング(酸素アッシングなし)→弱アルカリによるウエットエッチング
(3)の方法・・・上記(1)の後に、強アルカリによるウエットエッチング
(2)の方法・・・オーバーエッチング(酸素アッシングあり)→弱アルカリによるウエットエッチング
(4)の方法・・・上記(2)の後に、強アルカリによるウエットエッチング
【0064】
以下、各方法について、詳細に説明する。
【0065】
(1)オーバーエッチング(酸素アッシングなし)→弱アルカリによるウエットエッチング処理(表1を参照)
まず、SF6とO2の混合ガスを用いてオーバーエッチングを行なった。混合ガスの流量比[SF6/(SF6+O2)]は、表1に示すように、10〜65%の範囲で変化させて行なった。上記以外のオーバーエッチングの条件は、圧力約10Pa、RFパワー約50Wとした。
【0066】
表2に、各条件でオーバーエッチングを行なった後、(弱アルカリ処理の前に)Al合金膜の表面に形成されるAlの酸化膜(AlOx)の厚さを、それぞれ示す。また、参考のため、AlOxのTEM像(3,000,000倍)を、図13(膜厚3.9nm、比較例)および図14(膜厚4.9nm、本発明例)に、それぞれ示す。
【0067】
次に、pH9.5の弱アルカリ溶液(TMAH液として、Dongwoo Finechem社製の「PRS2000」の水溶液を使用)でAl薄膜表面をウエットエッチングした。ウエットエッチング時間は、表1に示すように、1〜15分間の間で変化させた。
【0068】
(2)オーバーエッチング(酸素アッシングあり)→弱アルカリによるウエットエッチング処理(表3を参照)
上記(1)の方法において、SF6とO2の混合ガスの流量比[SF6/(SF6+O2)]を、表3に示すように50%で一定としたこと以外は、上記(1)と同様にしてオーバーエッチングエッチングを行った。その後の酸素アッシングを、表3に示すように、RFパワーおよび処理時間を変化させて行なった。表3以外の酸素アッシングの条件は、圧力約10Pa、RFパワー約50Wとした。
【0069】
表4に、各条件でオーバーエッチング→酸素アッシングの後に、(弱アルカリ処理の前に)Al合金膜の表面に形成されるAlの酸化膜(AlOx)の厚さを、それぞれ示す。
【0070】
次に、上記(1)と同様にして、pH9.5の弱アルカリ溶液でウエットエッチングを行なった。ウエットエッチング時間は、表2に示すように、1〜15分間の間で変化させた。
【0071】
(3)オーバーエッチング(酸素アッシングなし)→弱アルカリによるウエットエッチング処理→強アルカリによるウエットエッチング処理(表5を参照)
上記(1)の工程を行なった後、pH12.8の強アルカリ溶液(TMAH液として、Dongwoo Finechem社製の「PRS2000」の水溶液を使用)でAl薄膜表面をウエットエッチングした(ウエットエッチング時間は25秒間)。
【0072】
(4)オーバーエッチング(酸素アッシングあり)→弱アルカリによるウエットエッチング処理→強アルカリによるウエットエッチング処理(表6を参照)
上記(2)の工程を行なった後、上記(3)の工程で用いたpH12.8の強アルカリ溶液でAl薄膜表面をウエットエッチングした(ウエットエッチング時間は25秒間)。
【0073】
上記の各試料について、ITO膜(透明導電膜)とAl合金膜の接触電気抵抗を四端子ケルビン法で測定した。本実施例では、接触電気抵抗が300Ω以下を合格とした。
【0074】
また、上記の10μm□コンタクトホールを1000倍の光学顕微鏡で観察し、黒点の個数を測定した。黒点の個数に応じて、○(0個)、△(1〜10個)、×(10個以上)で評価した。本実施例では、○または△を合格(Al合金膜の腐食防止効果あり)とした。
【0075】
これらの結果を表1、3、5、および6に併記する。表中、接触電気抵抗の単位はΩである。
【0076】
【表1】

【0077】
【表2】

【0078】
【表3】

【0079】
【表4】

【0080】
【表5】

【0081】
【表6】

【0082】
まず、上記(1)および(2)の方法を行なった表1および表3を参照する。
【0083】
上記方法のように、フォトレジストの剥離・洗浄工程で、本発明で規定する強アルカリ溶液によるウエットエッチングを行わなかった場合は、弱アルカリ溶液の処理時間にかかわらず、いずれの場合も、本発明で設定する低い接触電気抵抗は得られなかった。このことから、弱アルカリ溶液による浸漬処理では、接触電気抵抗の上昇をもたらすAlOxを完全に除去できないことが確認された。なお、接触電気抵抗については、本発明で規定する条件でオーバーエッチングや酸素アッシングを行なった例では、黒点数の減少(○または△)が認められた。
【0084】
次に、上記(3)よおび(4)の方法を行なった表5および表6を参照する。
【0085】
これらの方法では、強アルカリ溶液によるウエットエッチングを行なったため、すべての例で、接触電気抵抗の低減が認められた。これらのうち、本発明で規定する条件でオーバーエッチング(更には酸素アッシング)を行なった例では、黒点の数も抑えられ、Al合金膜の腐食防止と接触電気抵抗の低減化の両方を実現することができた。
【符号の説明】
【0086】
1 TFTアレイ基板
1a ガラス基板
2 対向基板
3 液晶層
4 薄膜トランジスタ(TFT)
5 透明導電膜
6 配線部
7 共通電極
8 カラーフィルタ
9 遮光膜
10 偏光板
11 配向膜
12 TABテープ
13 ドライバ回路
14 制御回路
15 スペーサー
16 シ−ル材
17 保護膜
18 拡散膜
19 プリズムシート
20 導光板
21 反射板
22 バックライト
23 保持フレーム
24 プリント基板
25 走査線
26 ゲート電極
27 ゲート絶縁膜
28 ソース電極
29 ドレイン電極
30 保護膜(窒化シリコン膜)
31 フォトレジスト
32 コンタクトホール
71 ガラス基板
72 Al合金膜
73 絶縁膜
74 フォトレジスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明導電膜と直接接触するAl合金膜が基板上に形成されており、絶縁膜を介して前記Al合金膜と前記透明導電膜を電気的に接続するコンタクトホールを有する表示デバイスの製造方法であって、
下記(1)〜(4)の工程によって前記Al合金膜を前記透明導電膜と直接接触させることを特徴とする表示デバイスの製造方法。
(1)Alよりも貴な金属元素を含むAl合金膜を形成する第1の工程、
(2)フォトリソグラフィおよびドライエッチングによってコンタクトホールを形成する第2の工程、
(3)フォトリソグラフィで生成したフォトレジストの剥離および洗浄を行なう第3の工程、および
(4)透明導電膜を形成する第4の工程と、
をこの順序で包含し、
前記第2の工程は、オーバーエッチングにおけるガスの流量比を、SF6/(SF6+O2)の比率で30%以下に制御して前記Al合金膜の表面をAlの酸化物で覆う工程を含み、
前記第3の工程は、pH10.5以上のアルカリ溶液に接触させて前記Alの酸化物を除去する工程を含む。
【請求項2】
前記第2の工程は、オーバーエッチングの後に酸素アッシングを行なって前記Al合金膜の表面をAlの酸化物で覆う工程を含み、前記オーバーエッチングにおけるガスの流量比は、SF6/(SF6+O2)の比率で65%以下である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記第3の工程は、pH10.5未満のアルカリ溶液に接触させた後、pH10.5以上のアルカリ溶液に接触させて前記Alの酸化物を除去する工程を含む請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記第1の工程におけるAl合金膜は、Ni,Co,Ag,Au,Zn,Cu,およびGeよりなる群から選択される少なくとも一種の元素を含むものである請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記Al合金膜は、希土類元素の1種以上を0.1〜0.5原子%の比率で更に含有するものである請求項4に記載の製法。
【請求項6】
前記第3の工程は、レジスト剥離の後に、水による洗浄工程を更に含む請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。

【図11】
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【図12】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−181839(P2010−181839A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−27769(P2009−27769)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】