説明

電界効果トランジスタ

【課題】耐圧性が高い電界効果トランジスタを提供すること。
【解決手段】p型の導電型を有する基板と、前記基板上に形成された高抵抗層と、前記高抵抗層上に形成され、p型の導電型を有するp型半導体層を前記基板側に配置したリサーフ構造を有する半導体動作層と、前記半導体動作層上に形成されたソース電極、ドレイン電極、およびゲート電極と、を備える。好ましくは、前記リサーフ構造は、前記p型半導体層上に形成されたn型の導電型を有するリサーフ層を備える。また、好ましくは、前記リサーフ構造は、前記p型半導体層上に形成されたアンドープのキャリア走行層と、前記キャリア走行層上に形成され該キャリア走行層とはバンドギャップエネルギーが異なるキャリア供給層とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界効果トランジスタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体動作層上にソース電極、ドレイン電極、ゲート電極を備える横型の電界効果トランジスタ(FET)において、電界集中を緩和して耐圧を高めるために、ゲート−ドレイン間にリサーフ構造を有するものが開示されている(たとえば特許文献1参照)。特許文献1に開示される電界効果トランジスタは、基板上にバッファ層を介して形成された、リサーフ構造を有する半導体動作層を備えている。
【0003】
そして、リサーフ構造は、p−GaNからなるp型半導体層と、p型半導体層上に形成されたn−GaNからなるリサーフ層とによって実現されている。このリサーフ構造の耐圧性は、p型半導体層のp型キャリアとリサーフ層のn型キャリアとのキャリア数のバランスに依存する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−205221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者らが上記特許文献1に開示される構造の電界効果トランジスタについて精査したところ、基板が導電性の場合、リサーフ構造におけるキャリア数のバランスを調整しても、所望の高耐圧性を得られない場合があるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、耐圧性が高い電界効果トランジスタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る電界効果トランジスタは、p型の導電型を有する基板と、前記基板上に形成された高抵抗層と、前記高抵抗層上に形成され、p型の導電型を有するp型半導体層を前記基板側に配置したリサーフ構造を有する半導体動作層と、前記半導体動作層上に形成されたソース電極、ドレイン電極、およびゲート電極と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る電界効果トランジスタは、上記の発明において、前記半導体動作層は、前記p型半導体層上に形成されたn型の導電型を有するリサーフ層を備え、前記p型半導体層と前記リサーフ層とが、前記リサーフ構造を形成していることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る電界効果トランジスタは、上記の発明において、前記半導体動作層は、前記p型半導体層上に形成されたアンドープのキャリア走行層と、前記キャリア走行層上に形成され該キャリア走行層とはバンドギャップエネルギーが異なるキャリア供給層とを備え、前記p型半導体層と前記キャリア走行層とが、前記リサーフ構造を形成していることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る電界効果トランジスタは、上記の発明において、前記高抵抗層と前記半導体動作層とが窒化物系化合物半導体からなることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る電界効果トランジスタは、上記の発明において、前記高抵抗層がシリコン酸化膜からなり、前記半導体動作層がシリコン系半導体からなることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る電界効果トランジスタは、上記の発明において、前記基板はキャリア濃度が1×1012〜1×1016cm−3であるシリコンからなり、前記p型半導体層は厚さが600nmでありキャリア濃度が1×1016cm−3であるGaNからなり、前記リサーフ層はシートキャリア濃度が1×1012〜2.5×1012cm−2であるGaNからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ゲート−ドレイン間における局所的な電界集中が効果的に緩和されるので、耐圧性が高い電界効果トランジスタを実現できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、実施の形態1に係る電界効果トランジスタの模式的な断面図である。
【図2】図2は、n型基板を用いた電界効果トランジスタの電界分布を、電気力線を用いて示す図である。
【図3】図3は、図1に示す電界効果トランジスタの電界分布を、電気力線を用いて示す図である。
【図4】図4は、実施の形態2に係る電界効果トランジスタの模式的な断面図である。
【図5】図5は、基板のキャリア濃度と破壊電圧との関係を示す図である。
【図6】図6は、リサーフ層のキャリア濃度と破壊電圧との関係を示す図である。
【図7】図7は、実施の形態3に係る電界効果トランジスタの模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図面を参照して本発明に係る電界効果トランジスタの実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。なお、各図面において、同一の構成要素には適宜同一の符号を付している。
【0016】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る電界効果トランジスタの模式的な断面図である。この電界効果トランジスタ100は、SiC、Siなどのp型の導電型を有する基板1と、基板1上に、AlN層2を介して形成された、縦方向の耐圧を維持するための高抵抗バッファ層3と、高抵抗バッファ層3上に形成された半導体動作層4とを備えている。半導体動作層4は、p−GaNからなるキャリア走行層としてのp型半導体層5と、n−GaNからなるコンタクト層6、7と、n−GaNからなるリサーフ層8とを有している。また、電界効果トランジスタ100は、半導体動作層4上に、ソース電極9、ドレイン電極10と、ゲート絶縁膜11を介して形成されたゲート電極12とを備えている。
【0017】
ソース電極9、ドレイン電極10は、それぞれコンタクト層6、7上に形成されている。また、リサーフ層8は、ゲート−ドレイン間において、コンタクト層7に隣接し、かつ積層方向においてゲート電極12と一部が重なり合うように形成されている。また、p型半導体層5とリサーフ層8とは、p型半導体層5を基板1側に配置したリサーフ構造R1を形成している。また、高抵抗バッファ層3は、たとえばGaN層とAlN層とを交互に積層して形成したものである。高抵抗バッファ層3は、このような積層構造とすれば、高抵抗であるとともに、基板1と半導体動作層4との間に発生する格子定数の違いに起因する歪みを緩和できる。また、AlN層2は、基板1と高抵抗バッファ層3とが合金化等の化学反応をすることを防止している。
【0018】
つぎに、この電界効果トランジスタ100のソース−ドレイン間に電圧を印加した状態における電界分布について説明する。はじめに、比較のため、電界効果トランジスタ100において、基板1をn型の導電型を有する基板1aに置き換えた電界効果トランジスタ100aの電界分布について説明し、つぎに、電界効果トランジスタ100の電界分布について説明する。
【0019】
図2は、n型基板を用いた電界効果トランジスタ100aの電界分布を、電気力線を用いて示す図である。この電界効果トランジスタ100aにおいても、p型半導体層5とリサーフ層8とが、リサーフ構造R1を形成している。したがって、p型半導体層5のp型キャリアC1とリサーフ層8のn型キャリアC2とのキャリア数のバランスの調整によって、或る程度の電界集中が緩和されている。
【0020】
しかしながら、この電界効果トランジスタ100aの場合は、基板1aもn型キャリアC2を有するため、電気力線Lが、p型半導体層5側から、基板1とリサーフ層8との両側に屈曲する。その結果、電気力線Lの密度が高く電界集中が起こる領域A1、A2が発生してしまう。
【0021】
一方、図3は、図1に示す電界効果トランジスタ100の電界分布を、電気力線を用いて示す図である。図3に示すように、この電界効果トランジスタ100の場合は、基板1がp型キャリアC1を有している。したがって、電気力線Lはリサーフ層8側からp型半導体層5をとおり基板1側に向かって大きな屈曲無く延伸するので、電気力線Lの密度が高い領域が発生せず、電界集中が起こらない。その結果、電界効果トランジスタ100は耐圧性が高いものとなる。
【0022】
また、電界効果トランジスタ100の閾値電圧は、p型半導体層5のキャリア濃度に依存するため、所望の閾値電圧を実現するためにはp型半導体層5のキャリア濃度は或る程度制限される。一方で、電界効果トランジスタ100のオン動作時の抵抗(オン抵抗)を低減するためには、リサーフ層8のキャリア濃度を増加し、またはリサーフ層8の厚さを増加することが好ましい。したがって、リサーフ構造R1だけでキャリア数のバランスを取って電界分布を制御することを考えると、閾値電圧とオン抵抗とを同時に所望の特性にすることは困難である。
【0023】
しかしながら、この電界効果トランジスタ100においては、電界分布を、基板1のp型キャリアC1のキャリア数も含めたバランスによって制御できる。したがって、たとえば、電界効果トランジスタ100において、p型半導体層5のキャリア濃度を所定値に設定しつつ、リサーフ層8のキャリア濃度または厚さを増加し、かつ基板1のキャリア濃度を、キャリア数のバランスを保つように調整すれば、所望の閾値電圧を実現し、かつ低オン抵抗、高耐圧性の電界効果トランジスタを実現できる。
【0024】
つぎに、この電界効果トランジスタ100の製造方法の一例を以下に示す。なお、以下では、有機金属気相成長(MOCVD)法を用いた場合について説明するが、特に限定はされない。
【0025】
はじめに、たとえば(111)面を主表面とするSiからなる基板1をMOCVD装置にセットし、濃度100%の水素ガスをキャリアガスとして用い、トリメチルガリウム(TMGa)とトリメチルアルミニウム(TMAl)とNHとを、それぞれ58μmol/min、100μmol/min、12l/minの流量で導入し、成長温度1050℃で、基板1上に、AlN層2、高抵抗バッファ層3、p型半導体層5を順次エピタキシャル成長させる。なお、p型半導体層5に対するp型のドーピング源としてビスシクロペンタディエニルマグネシウム(Cp2Mg)を用い、たとえばMgの濃度が1×1019cm−3程度になるようにCp2Mgの流量を調整する。また、Mgの濃度の測定は、SIMS(二次イオン質量分析計)によって行う。また、高抵抗バッファ層3は、厚さ200nm/20nmのGaN/AlN複合層をたとえば8層だけ積層したものとし、AlN層2、p型半導体層5の厚さは、たとえばそれぞれ100nm、500nmとする。
【0026】
つぎに、プラズマ化学気相成長(PCVD)法を用いて、p型半導体層5上に、厚さ2μmのSiO層を形成し、フォトリソグラフィとフッ酸とを用いて、SiO層のうちコンタクト層6、7およびリサーフ層8を形成すべき領域を除去する。つぎに、n型不純物であるSiイオンのイオン注入を行い、SiO層を除去した各領域にそれぞれ所望量Siイオンを打ち込む。つぎに、SiO層をフッ酸で除去した後、p型半導体層5上に、活性化アニール用の保護膜としてのSiO膜を厚さ500nmで成膜する。そして、打ち込んだSiイオンを活性化させるために、窒素ガスを流しながら、1150℃、4分の活性化アニールを行ない、コンタクト層6、7およびリサーフ層8を形成する。なお、Siイオンの打ち込み量は、たとえば、コンタクト層6、7におけるn型シートキャリア濃度が5×1014cm−2、リサーフ層8におけるシートキャリア濃度が2×1012cm−2程度になるようにする。また、このシートキャリア濃度の測定は、ホール測定、又はSIMS法によって行う。
【0027】
つぎに、SiO膜を除去し、SiHとNOを原料ガスとしたPCVD法を用いて、たとえばSiOからなる厚さ60nmのゲート絶縁膜11を形成する。つぎに、ゲート絶縁膜11の一部をフッ酸で除去した後に、リフトオフ法を用いてソース電極9、ドレイン電極10を形成する。なお、ソース電極9、ドレイン電極10は、いずれも厚さ25nm/300nmのTi/Al構造とする。また、金属膜の成膜は、スパッタ法や真空蒸着法を用いて行うことができる。そして、ソース電極9、ドレイン電極10を形成後、600℃、10分のアニールを行なう。
【0028】
つぎに、リフトオフ法を用いて、Ti/Au/Ti構造のゲート電極12を形成し、電界効果トランジスタ100が完成する。
【0029】
なお、上述した製造方法では、イオン注入法を用いてコンタクト層6、7、およびリサーフ層8を形成したが、たとえば拡散法や再成長法を用いて形成してもよい。また、n型不純物はSiに限られず、他の不純物でもよい。
【0030】
以上説明したように、本実施の形態1に係る電界効果トランジスタ100は、高耐圧性であり、さらには所望の閾値電圧と低いオン抵抗とを有するものとなる。
【0031】
(実施の形態2)
つぎに、本発明の実施の形態2について説明する。図4は、実施の形態2に係る電界効果トランジスタの模式的な断面図である。図4に示すように、この電界効果トランジスタ200は、図1に示す電界効果トランジスタ100と同様に、p型の導電型を有する基板1と、基板1上に、AlN層2を介して形成された高抵抗バッファ層3と、高抵抗バッファ層3上に形成された半導体動作層13とを備えている。半導体動作層13は、p−GaNからなるキャリア走行層としてのp型半導体層14と、p型半導体層14上に形成された、n−GaNからなるn型半導体層15およびリサーフ層16とを備え、n型半導体層15とリサーフ層16との間においてp型半導体層14に到る深さまでリセス部17が形成されている。さらに、電界効果トランジスタ200は、半導体動作層13上に、リセス部17を挟んで形成されたソース電極9およびドレイン電極10を備えている。さらに、電界効果トランジスタ200は、リセス部17を含めた半導体動作層13上にわたって形成されたゲート絶縁膜18と、リセス部17においてゲート絶縁膜18上に形成されたゲート電極19を備えている。なお、リセス部17は、電界効果トランジスタ200をノーマリオフ型とするために形成されている。
【0032】
また、リセス部17の各側壁は、p型半導体層14の表面に対して角度θ1、θ2を有する。この角度θ1、θ2は、たとえば90°であるが、角度θ2については、90°未満であれば、この角部における電界の局所的な集中が緩和されるので好ましく、65°以下であれば一層好ましい。また、角度θ1、θ2が30°以上であれば、ソース−ドレイン間距離が長くなりすぎず、素子の小型化、低コスト化の点で好ましい。
【0033】
そして、電界効果トランジスタ100と同様に、電界効果トランジスタ200においては、p型半導体層14とリサーフ層16とは、p型半導体層14を基板1側に配置したリサーフ構造R2を形成している。その結果、ソース−ドレイン間に電圧を印加した状態において、電気力線は、図3と同様にリサーフ層16側からp型半導体層14をとおり基板1側に向かって大きな屈曲無く延伸するので、電界集中が起こらず、電界効果トランジスタ200は耐圧性が高いものとなる。
【0034】
また、たとえば、電界効果トランジスタ200において、p型半導体層14のキャリア濃度を所定値に設定しつつ、リサーフ層16のキャリア濃度または厚さを増加し、かつ基板1のキャリア濃度を、キャリア数のバランスを保つように調整すれば、所望の閾値電圧を実現し、かつ低オン抵抗、高耐圧性の電界効果トランジスタを実現できる。
【0035】
つぎに、この電界効果トランジスタ200の製造方法の一例を以下に示す。はじめに、上述した電界効果トランジスタ100の製造方法と同様に、基板1上に、AlN層2、高抵抗バッファ層3、p型半導体層14を順次エピタキシャル成長させる。
【0036】
つぎに、TMGaとNHとを、それぞれ19μmol/min、12l/minの流量で導入すると同時に、n型のドーピング源としてSiHを所定量導入し、成長温度1050℃で、p型半導体層14上にn−GaN層をエピタキシャル成長させる。このn−GaN層の厚さはたとえば100nmとする。なお、SiHの導入量は、n型キャリア濃度がたとえば1×1017cm−3になるようにする。このキャリア濃度の測定は、ホール測定によって行う。
【0037】
つぎに、PCVD法を用いて、n−GaN層上に、アモルファスシリコン(a−Si)からなるマスク層を厚さ500nmで形成し、フォトリソグラフィとCFガスを用いてパターニングを行い、リセス部17を形成すべき領域に開口部を形成する。
【0038】
つぎに、マスク層をマスクとして、エッチングガスであるClガスを用いて開口部直下のn−GaN層およびp型半導体層14の一部をエッチング除去して、リセス部17を形成する。これによってn型半導体層15とリサーフ層16とが形成される。なお、エッチングガスは、マスク層をもエッチングするので、エッチングの進行に応じて開口部の幅が徐々に広がっていく。その結果、リセス部17の側壁には角度θ1、θ2の傾斜が生じる。なお、この角度θ1、θ2は、マスク層の材質や厚さ等によって適宜調整することができる。たとえば、マスク層がa−Siからなる場合は、角度θ1、θ2の値は約65°となる。
【0039】
つぎに、上述した電界効果トランジスタ100の製造方法と同様に、ゲート絶縁膜18、ソース電極9、ドレイン電極10、ゲート電極12を形成し、電界効果トランジスタ200が完成する。
【0040】
以上説明したように、本実施の形態2に係る電界効果トランジスタ200は、高耐圧性のノーマリオフ型であり、さらには所望の閾値電圧と低いオン抵抗とを有するものとなる。
【0041】
つぎに、実施の形態2に係る電界効果トランジスタ200の耐圧性について、シミュレーション計算結果を参照して説明する。なお、計算に用いたシミュレーションソフトはシノプシス(SYNOPSYS)社のTCADである。
【0042】
はじめに、電界効果トランジスタ200について、ソース−ドレイン間に電圧を印加した場合の破壊電圧について計算した。また、比較のために、電界効果トランジスタ200において、基板1をn型の基板に置き換えた電界効果トランジスタについても計算した。なお、素子内のいずれかの部分において電界強度が3.3MV/cmに達したとき、又は、SiO内の電界強度が8MV/cmに達したときのソース−ドレイン電圧を破壊電圧と定義した。また、計算に用いた特性値としては、基板1またはn型基板の厚さを525μmとした。また、AlN層2と高抵抗バッファ層3との合計の厚さを1800nmとし、合計の抵抗率を1×10Ωcm以上とした。また、p型半導体層14の厚さを600nm、キャリア濃度を10×1016cm−3とした。また、n型半導体層15およびリサーフ層16の厚さを100nmとした。また、ゲート絶縁膜18を厚さ60nmのSiO膜とした。また、ソース電極9、ドレイン電極10の幅をいずれも10μmとした。また、図4に示す幅W1、W2、W3の値を、それぞれ3μm、4μm、28μmとした。また、リセス部17の深さを250nmとした。
【0043】
図5は、基板のキャリア濃度と破壊電圧との関係を示す図である。なお、図5では、n型半導体層15およびリサーフ層16のシートキャリア濃度を2×1012cm−2として計算している。図5に示すように、n型基板の場合よりもp型基板である基板1の場合の方が、破壊電圧が高く、特に基板1のp型のキャリア濃度が1×1014cm−3の場合に、破壊電圧は742Vに達した。これに対して、n型基板のキャリア濃度が1×1014cm−3の場合には、破壊電圧は378Vであった。
【0044】
また、同様に、n型半導体層15およびリサーフ層16のシートキャリア濃度を1×1012cm−2として計算を行なったが、この場合にも、図5に示す基板のキャリア濃度の範囲で、基板1の場合の方が破壊電圧が高かった。たとえば、基板のキャリア濃度が1×1013cm−3の場合に、破壊電圧はn型基板の場合は160Vであったが、基板1の場合は526Vに達した。
【0045】
また、図6は、リサーフ層16のシートキャリア濃度と破壊電圧との関係を示す図である。なお、図6では、n型基板または基板1のキャリア濃度を、いずれも1×1013cm−3として計算している。図6に示すように、リサーフ層16のシートキャリア濃度が、最適値である2×1012cm−2をピークとした1×1012以上、2.5×1012cm−2以下の範囲において、n型基板の場合よりもp型基板である基板1の場合の方が、破壊電圧が高かった。また、550V以上の破壊電圧を達成する場合のリサーフ層16のキャリア濃度のマージンについては、n型基板の場合のマージンM2よりも、基板1の場合のマージンM1の方が大きかった。
【0046】
図5、6に示すように、基板がp型である実施の形態2に係る電界効果トランジスタ200は破壊電圧が高くなる。また、たとえば電界効果トランジスタ200をn型基板の場合と同程度の破壊電圧とする場合は、ゲート電極19とドレイン電極10との間の幅を短くできるので、ゲート−ドレイン間の抵抗も低くでき、一層の低オン抵抗を実現できる。また、電界効果トランジスタ200の場合は、所定の破壊電圧を達成する場合のリサーフ層16のキャリア濃度のマージンが大きいので、製造性および設計の自由度が高くなる。
【0047】
なお、破壊電圧が最大となる基板1のキャリア濃度は、p型半導体層14およびリサーフ層16のそれぞれの厚さおよびキャリア濃度にも依存する。したがって、たとえば所望の閾値電圧やオン抵抗等に応じてp型半導体層14およびリサーフ層16を設計し、これに応じて基板1のキャリア濃度を決定することが好ましい。
【0048】
(実施の形態3)
つぎに、本発明の実施の形態3について説明する。図7は、実施の形態3に係る電界効果トランジスタの模式的な断面図である。図7に示すように、この電界効果トランジスタ300は、図1に示す電界効果トランジスタ100と同様に、p型の導電型を有する基板1と、基板1上に、AlN層2を介して形成された高抵抗バッファ層3と、高抵抗バッファ層3上に形成された半導体動作層20とを備えている。半導体動作層20は、p−GaNからなるp型半導体層21と、アンドープのGaNからなるキャリア走行層22、23と、キャリア走行層22、23上にそれぞれ形成されたAlGaNからなるキャリア供給層24、25とを備え、キャリア供給層24とキャリア供給層25との間においてp型半導体層21の表面に到る深さまでリセス部26が形成されている。さらに、電界効果トランジスタ300は、半導体動作層20上に、リセス部26を挟んで形成されたソース電極9およびドレイン電極10を備えている。さらに、電界効果トランジスタ300は、リセス部26を含めた半導体動作層20上にわたって形成されたゲート絶縁膜27と、リセス部26においてゲート絶縁膜27上に形成されたゲート電極28を備えている。
【0049】
キャリア供給層24、25は、キャリア走行層22、23よりもバンドギャップエネルギーが高いので、キャリア走行層22、23のキャリア供給層24、25とのヘテロ接合の界面近傍には2次元電子ガス22a、23aがそれぞれ発生している。この電界効果トランジスタ300は、この2次元電子ガス22a、23aをキャリアとすることによって、低いオン抵抗と、高速のスイッチング動作とを実現している。
【0050】
また、リセス部26の形成によって、電界効果トランジスタ300をノーマリオフ型として動作する。また、図4に示す電界効果トランジスタ200と同様に、リセス部26の各側壁の、p型半導体層21の表面に対する傾斜角度は、たとえば90°であるが、90°未満、さらには65°以下が好ましく、30°以上が好ましい。
【0051】
そして、この電界効果トランジスタ300においては、p型半導体層21とキャリア走行層23とは、p型半導体層21を基板1側に配置したリサーフ構造R3を形成している。なお、このリサーフ構造R3においては、n型キャリアは2次元電子ガス23aである。その結果、ソース−ドレイン間に電圧を印加した状態において、電気力線は、図3と同様にキャリア走行層23側からp型半導体層21をとおり基板1側に向かって大きな屈曲無く延伸するので、電界集中が起こらず、電界効果トランジスタ300は耐圧性が高いものとなる。
【0052】
この電界効果トランジスタ300は、上述した電界効果トランジスタ200の製造方法とほぼ同様の方法で製造できる。なお、キャリア走行層22、23の厚さはたとえば100nmとする。また、キャリア供給層24、25となるAlGaN層を形成する際には、たとえばTMAlとTMGaとNHとを、それぞれ125μmol/min、19μmol/min、12l/minの流量で導入すると同時に、n型のドーピング源としてSiHを所定量導入し、成長温度1050℃でたとえば厚さ100nmだけエピタキシャル成長させる。
【0053】
なお、上記実施の形態において、高抵抗バッファ層は、たとえばGaN層とAlN層とを交互に積層して形成したものであるが、1×10Ωcm程度以上の抵抗率を有するものであれば特に限定されない。たとえば、化学式AlxInyGa1-x-yAsuv1-u-v(ただし、0≦x≦1、0≦y≦1、x+y≦1、0≦u≦1、0≦v≦1、u+v<1)で表される窒化物系化合物半導体からなり、互いに組成の異なる層を交互に積層したものとできる。
【0054】
また、上記実施の形態における半導体動作層についても、その材料はGaNやAlGaNに限らず、所望の導電型やバンドギャップエネルギーを有する窒化物系化合物半導体とすることができる。
【0055】
また、半導体動作層については、その材料は、窒化物系化合物半導体に限らず、他の半導体材料、たとえばシリコン系半導体とすることができる。たとえば、SOI基板上に作成した横型電子デバイス、SiC上の横型電子デバイス等に用いることができる。
【符号の説明】
【0056】
1、1a 基板
2 AlN層
3 高抵抗バッファ層
4、13、20 半導体動作層
5、14、21 p型半導体層
6、7 コンタクト層
8 リサーフ層
9 ソース電極
10 ドレイン電極
11、18、27 ゲート絶縁膜
12、19、28 ゲート電極
15 n型半導体層
16 リサーフ層
17、26 リセス部
22、23 キャリア走行層
22a、23a 2次元電子ガス
24、25 キャリア供給層
100、100a、200、300 電界効果トランジスタ
A1、A2 領域
C1 p型キャリア
C2 n型キャリア
L 電気力線
M1、M2 マージン
R1〜R3 リサーフ構造
W1〜W3 幅
θ1、θ2 角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
p型の導電型を有する基板と、
前記基板上に形成された高抵抗層と、
前記高抵抗層上に形成され、p型の導電型を有するp型半導体層を前記基板側に配置したリサーフ構造を有する半導体動作層と、
前記半導体動作層上に形成されたソース電極、ドレイン電極、およびゲート電極と、
を備えることを特徴とする電界効果トランジスタ。
【請求項2】
前記半導体動作層は、前記p型半導体層上に形成されたn型の導電型を有するリサーフ層を備え、前記p型半導体層と前記リサーフ層とが、前記リサーフ構造を形成していることを特徴とする請求項1に記載の電界効果トランジスタ。
【請求項3】
前記半導体動作層は、前記p型半導体層上に形成されたアンドープのキャリア走行層と、前記キャリア走行層上に形成され該キャリア走行層とはバンドギャップエネルギーが異なるキャリア供給層とを備え、前記p型半導体層と前記キャリア走行層とが、前記リサーフ構造を形成していることを特徴とする請求項1に記載の電界効果トランジスタ。
【請求項4】
前記高抵抗層と前記半導体動作層とが窒化物系化合物半導体からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の電界効果トランジスタ。
【請求項5】
前記高抵抗層がシリコン酸化膜からなり、前記半導体動作層がシリコン系半導体からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の電界効果トランジスタ。
【請求項6】
前記基板はキャリア濃度が1×1012〜1×1016cm−3であるシリコンからなり、前記p型半導体層は厚さが600nmでありキャリア濃度が1×1016cm−3であるGaNからなり、前記リサーフ層はシートキャリア濃度が1×1012〜2.5×1012cm−2であるGaNからなることを特徴とする請求項2に記載の電界効果トランジスタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−219151(P2010−219151A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−61709(P2009−61709)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】