説明

乗員保護システム、及び乗員保護装置

【課題】乗員、特に子供の安全性を向上させるための乗員保護システムを提供すること

【解決手段】車両の乗員の安全性を図るための乗員保護システムにおいて、乗員が大人
であるか子供であるかを判別する大人子供判別手段と、乗員の位置を検出する乗員位置検
出手段と、大人子供判別手段による判別結果、及び乗員位置検出手段による検出結果に基
づいて得られる、子供の乗車状況に応じて、車載機器の制御を行う子供保護制御手段とを
装備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は乗員保護システム、及び乗員保護装置に関し、より詳細には、乗員の安全性を
向上させるための乗員保護システム、及び乗員保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の走行安全性を支援するためのシステムが種々開発されており、その分野として
は、予防安全対策分野、事故回避対策分野、衝突時の被害軽減対策分野、衝突後の災害拡
大防止対策分野などが挙げられる。例えば、エアバッグシステムは、衝突時の被害軽減対
策分野に属する。
【0003】
ところで、最近では、子供の車室内での事故が多く報告されている。例えば、上記した
エアバッグシステムは、衝突時の被害を軽減する上で非常に有効なシステムであるが、乗
員が子供である場合に、大人と同様の制御をすると、適切な効果を発揮することができな
いおそれがある。
【0004】
このような問題を解決するものとして、下記の特許文献1に、乗員が子供である場合に
は、エアバッグのインフレータ(ガス発生装置)内の高圧ガスの噴出通路を絞り、点火を
コントロールすることによって、高圧ガスの噴出を緩慢にし、エアバッグの当たり所が悪
くなったり、強くなり過ぎるのを防止するようにした技術について開示されている。
【0005】
また、下記の特許文献2には、ウィンドウガラスによる挟み込み等の異常検知の感度を
乗員が大人と子供との場合で、変更するようにした技術について開示され、また、特許文
献3には、乗員が子供だけの場合に、運転操作を禁止するようにした技術について開示さ
れている。
【0006】
このように、子供が乗車している場合の安全性や利便性を向上させるようにした技術が
種々提案されている。しかしながら、まだまだ改良すべき点が多く残っている。例えば、
エアバッグの展開について、子供がシートに座っているのか、もしくはフロアに立ってい
るのか、又はエアバッグが展開する部分(例えば、インストルメントパネル)へ接近して
座っているのか、もしくは離れているのか、といった状況の違いによって、エアバックの
展開方法を変えることが望ましいと考えられる。
【特許文献1】特開2000−159054号公報
【特許文献2】特開平7−158345号公報
【特許文献3】特開平10−6809号公報
【発明の開示】
【課題を解決するための手段及びその効果】
【0007】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであって、乗員、特に子供の安全性を向上させる
ための乗員保護システム、及び乗員保護装置を提供することを目的としている。
【0008】
上記目的を達成するために本発明に係る乗員保護システム(1)は、車両の乗員の安全
性を図るための乗員保護システムにおいて、前記乗員が大人であるか子供であるかを判別
する大人子供判別手段と、前記乗員の位置を検出する乗員位置検出手段と、前記大人子供
判別手段による判別結果、及び前記乗員位置検出手段による検出結果に基づいて得られる
、子供の乗車状況に応じて、車載機器の制御を行う子供保護制御手段とを備えていること
を特徴としている。
【0009】
上記乗員保護システム(1)によれば、前記大人子供判別手段による判別結果(すなわ
ち、乗員が大人であるか子供であるか)、及び前記乗員位置検出手段による検出結果に基
づいて得られる、子供の乗車状況に応じて、前記車載機器(例えば、エアバッグのガス発
生装置)の制御が行われる。例えば、助手席に大人が座っている場合と、子供が座ってい
る場合とでは、エアバッグの展開の仕方が変えられ、さらに子供の乗車状況に応じて、エ
アバッグの展開の仕方が変えられる。
【0010】
保護対象が子供の場合、エアバッグの展開に用いるガスの噴出を緩慢にする。但し、子
供がインストルメントパネル(以降、インパネと略す)へ接近して座っている場合や、フ
ロアに立っている場合は、エアバッグの衝撃が大きくなるおそれがあるため、エアバッグ
を展開させない。また、子供がインパネから遠く離れて座っている場合には、ガス噴出の
開始を通常よりも早くする。このように、子供の乗車状況に応じて、前記車載機器を適切
に制御することによって、子供の安全性を向上させることができる。
【0011】
また、本発明に係る乗員保護システム(2)は、上記乗員保護システム(1)において
、前記子供保護制御手段が、前記大人子供判別手段による判別結果、前記乗員位置検出手
段による検出結果、及びシートベルトの装着状況を検出する装着状況検出手段による検出
結果から得られる、子供の乗車状況に応じて、前記車載機器の制御を行うものであること
を特徴としている。
【0012】
上記乗員保護システム(2)によれば、シートベルトの装着状況についても考慮に入れ
て、前記車載機器の制御が行われる。例えば、子供がフロアに立っているなど、適切な位
置で着座していない場合や、子供が適切な位置で着座しているが、シートベルトを装着し
ていない場合、子供が正規の形態で着座していないことが運転者へ知らされる。このよう
に、シートベルトの装着状況を考慮に入れて、前記車載機器を制御することによって、子
供の安全性をより向上させることができる。
【0013】
また、本発明に係る乗員保護システム(3)は、上記乗員保護システム(1)又は(2
)において、前記大人子供判別手段による判別結果、及び前記乗員位置検出手段による検
出結果に基づいて得られる、大人の乗車状況に応じて、車載機器の制御を行う大人保護制
御手段を備えていることを特徴としている。
【0014】
上記乗員保護システム(3)によれば、前記大人子供判別手段による判別結果(すなわ
ち、乗員が大人であるか子供であるか)、及び前記乗員位置検出手段による検出結果に基
づいて得られる、大人の乗車状況に応じて、前記車載機器の制御が行われる。従って、子
供だけでなく、大人に対しても安全性を向上させることができる。
【0015】
また、本発明に係る乗員保護システム(4)は、上記乗員保護システム(1)〜(3)
のいずれかにおいて、子供が正規の形態で着座していない場合、前記子供保護制御手段が
、子供が正規の形態で着座していないことを、子供の乗車状況に応じた形態で運転者へ知
らせるものであることを特徴としている。
【0016】
上記乗員保護システム(4)によれば、子供が正規の形態で着座していない場合、子供
が正規の形態で着座していないことが、子供の乗車状況に応じた形態で運転者へ知らされ
る。例えば、着座警告灯を設け、子供が適切な位置で着座し、シートベルトを装着してい
る場合(安全レベル1)には、着座警告灯を青色で灯火し(又は無灯)、子供が適切な位
置で着座しているが、シートベルトを装着していない場合(安全レベル2)には、黄色で
灯火し、子供がシートで着座しているが、シートベルトを装着せず、座り方が浅いなど、
適切な位置で着座していない場合(安全レベル3)には、赤色で灯火する。
【0017】
また、フロアに立っているなど、急ブレーキ時などにケガをするおそれが高い場合(安
全レベル4以上)には、着座警告灯を赤色で灯火するといった視覚によるアラームだけで
なく、音声によるアラームも実行する。これによって、運転者は子供の乗車状況を把握す
ることができ、子供が正しく乗車していない場合には、注意をしたり、また、急ブレーキ
や急ハンドルなどをしないように、特に注意して運転することができるようになる。
【0018】
また、本発明に係る乗員保護システム(5)は、上記乗員保護システム(3)において
、大人が正規の形態で着座していない場合、前記大人保護制御手段が、大人が正規の形態
で着座していないことを、当該大人へ知らせるものであることを特徴としている。
【0019】
上記乗員保護システム(5)によれば、大人が正規の形態で着座していない場合、その
旨がその本人へ知らされる。例えば、各シート毎にスピーカを設け、大人が適切な位置で
着座していない場合や、適切な位置で着座しているが、シートベルトを装着していない場
合、スピーカからブザー音を鳴らしたり、注意を促すメッセージを流す。これによって、
子供だけでなく、大人にも正しく乗車させることができる。
【0020】
また、本発明に係る乗員保護システム(6)は、上記乗員保護システム(1)〜(3)
のいずれかにおいて、子供が正規の形態で着座していない場合、前記子供保護制御手段が
、子供の乗車状況に応じて、先行車両との車間距離を確保するものであることを特徴とし
ている。
【0021】
上記乗員保護システム(6)によれば、子供が正規の形態で着座していない場合、子供
の乗車状況に応じて、先行車両との車間距離が確保される。例えば、子供が適切な位置で
着座している場合(安全レベル1、2)には、運転支援せず、子供がシートで着座してい
るが、シートベルトを装着せず、座り方が浅いなど、適切な位置で着座していない場合(
安全レベル3)や、フロアに立っている場合(安全レベル4)には、ブレーキ制御ECU
(Electronic Control Unit )へ所定の信号を送信し、車両を減速させ、先行車両との車
間距離を確保する。
これによって、子供が正規の形態で着座していない場合(すなわち、衝突などの事故が
発生したときに、被害が大きくなるおそれが高い状況にある場合)、先行車両との車間距
離が確保されるので、子供の安全性がより一層高められる。
【0022】
また、本発明に係る乗員保護システム(7)は、上記乗員保護システム(1)〜(3)
のいずれかにおいて、子供が正規の形態で着座していない場合、前記子供保護制御手段が
、子供の乗車状況に応じて、前記車両の加速、減速、及び操舵のうちの少なくともいずれ
か一つを抑制するものであることを特徴としている。
【0023】
上記乗員保護システム(7)によれば、子供が正規の形態で着座していない場合、子供
の乗車状況に応じて、前記車両の加速、減速、及び操舵のうちの少なくともいずれか一つ
が抑制される。例えば、子供がシートで着座している場合(安全レベル1〜3)には、シ
ートベルトを装着していなくても、また、座り方が浅いなど、適切な位置で着座していな
くても、加速や、減速、操舵などの走行を抑制せず、子供がフロアに立っている場合(安
全レベル4)には、エンジン制御ECUや、ブレーキ制御ECU、操舵制御ECUへ所定
の信号を送信し、車両の急加速や、急ブレーキ、急ハンドルを抑制する。
【0024】
これによって、子供がフロアに立っている場合(すなわち、急加速や、急ブレーキ、急
ハンドルなどが行われたときに、ケガをするおそれが高い状況にある場合)、加速や、減
速、操舵が抑制されるので、子供の安全性がより一層高められる。なお、加速の抑制制御
は、EFI(Electronic Fuel Injection )を構成するECUで行わせることができ、減
速の抑制制御は、ABS(Anti-lock Brake System)を構成するECUで行わせることが
でき、操舵の抑制制御は、EPS(Electronic Power steering System)を構成するEC
Uで行わせることができる。
【0025】
また、本発明に係る乗員保護システム(8)は、上記乗員保護システム(7)において
、危険検知手段により衝突などの危険が検知された場合、前記抑制を解除する抑制解除手
段を備えていることを特徴としている。
【0026】
衝突などの危険が迫っている場合に、急ブレーキや急ハンドルができないと、衝突を回
避できなくなったり、被害を小さくすることができないおそれがある。上記乗員保護シス
テム(8)によれば、前方を監視するミリ波レーダーなどで、衝突などの危険が検知され
た場合、前記抑制(すなわち、加速、減速、操舵の抑制)が解除される。これによって、
衝突などを適切に回避したり、事故などが起きても被害を小さくすることができる。
【0027】
また、本発明に係る乗員保護システム(9)は、上記乗員保護システム(1)〜(3)
のいずれかにおいて、子供が正規の形態で着座していない場合、前記子供保護制御手段が
、子供の乗車状況に応じて、前記車両の発進を禁止するものであることを特徴としている

【0028】
上記乗員保護システム(9)によれば、子供が正規の形態で着座していない場合、子供
の乗車状況に応じて、前記車両の発進が禁止される。例えば、子供がシートで着座してい
る場合(安全レベル1〜3)には、シートベルトを装着していなくても、また、座り方が
浅いなど、適切な位置で着座していなくても、前記車両の発進を禁止せず、子供がフロア
に立っている場合(安全レベル4)には、エンジン制御ECUへ所定の信号を送信し、前
記車両の発進を禁止する。
これによって、子供がフロアに立っている場合(すなわち、発進時や走行中に、ケガを
するおそれが高い状況にある場合)、前記車両の発進が禁止されるので、子供の安全性が
より一層高められる。
【0029】
また、本発明に係る乗員保護システム(10)は、上記乗員保護システム(1)〜(3
)のいずれかにおいて、子供が正規の形態で着座していない場合、前記子供保護制御手段
が、子供の乗車状況に応じて、エアバッグの展開を制御するものであることを特徴として
いる。
【0030】
上記乗員保護システム(10)によれば、子供が正規の形態で着座していない場合、子
供の乗車状況に応じて、エアバッグの展開が制御される。例えば、子供が適切な位置で着
座し、シートベルトを装着している場合(安全レベル1)、エアバッグの展開に用いるガ
スの噴出を通常時よりも緩慢にする。
【0031】
また、子供が適切な位置で着座しているが、シートベルトを装着していない場合(安全
レベル2)、エアバッグの展開に用いるガスの噴出を通常時よりも緩慢にすると共に、ガ
スの噴出開始を早くする。また、子供がシートで着座しているが、シートベルトを装着せ
ず、座り方が浅いなど、適切な位置で着座していない場合(安全レベル3)や、フロアに
立っている場合(安全レベル4)には、エアバッグの展開を禁止する。
【0032】
これによって、保護対象が子供の場合には、それに適したガス噴出でエアバッグが展開
され、また、子供の着座している場所に適したタイミングで、ガスの噴出が開始される。
また、子供がフロアに立っている場合(すなわち、エアバッグを展開すると、却って被害
が大きくなるおそれが高い状況にある場合)、エアバッグの展開が禁止されるので、子供
の安全性がより一層高められる。
【0033】
また、本発明に係る乗員保護システム(11)は、上記乗員保護システム(1)〜(3
)のいずれかにおいて、子供がドア付近に存在する場合、前記子供保護制御手段が、子供
の乗車状況に応じて、ドアの閉鎖を抑制もしくは禁止する、又は車外の者に注意を促すも
のであることを特徴としている。
【0034】
上記乗員保護システム(11)によれば、子供がドア付近に存在する場合、子供の乗車
状況に応じて、ドアの閉鎖が抑制もしくは禁止される、又は車外の者に注意が促される。
例えば、子供の体の一部がドアの移動範囲内にある場合、ドアの閉鎖を抑制もしくは禁止
する、又は車外の者に注意を促す(例えば、ブザー音を鳴らす)。
【0035】
これによって、子供がドアに挟まれる危険性が高い状況にある場合、ドアの閉鎖が抑制
もしくは禁止され、又は車外の者に注意が促されるので、子供がドアに挟まれるのを防止
することができ、子供の安全性がより一層高められる。また、大人がドア付近に存在した
としても、上記のような制御は行われないので、利便性の低下を抑えることができる。
【0036】
また、本発明に係る乗員保護システム(12)は、上記乗員保護システム(1)〜(1
1)のいずれかにおいて、前記大人子供判別手段が、車室内に配置された撮像装置から得
られる画像情報に基づいて、被検対象の大きさ、及び/又は上方への突出部の位置する高
さから、前記乗員が大人であるか子供であるかを判別するものであり、前記乗員位置検出
手段が、前記撮像装置から得られる画像情報に基づいて、前記突出部の位置から、前記乗
員の位置を検出するものであることを特徴としている。
【0037】
上記乗員保護システム(12)によれば、車室内(例えば、天井)に配置された前記撮
像装置(例えば、CCDカメラ)から得られる画像情報に基づいて、前記被検対象の大き
さ、及び/又は上方への突出部(すなわち、頭部)の位置する高さ(すなわち、座高の高
さ)から、前記乗員が大人であるか子供であるかが判別される。子供は大人よりも体の大
きさが小さく、座高も低いので、前記被検対象の大きさ、及び/又は前記突出部の位置す
る高さから、前記乗員が大人であるか子供であるかの判別が適切に行われる。
【0038】
また、前記撮像装置から得られる画像情報に基づいて、前記突出部(すなわち、頭部)
の位置から、前記乗員の位置が検出されるので、子供が適切な位置で着座しているかどう
か、座り方が浅いなど、どのような位置で着座しているか、また、フロアに立っているか
どうか(フロア上方に頭部が位置するかどうか)などを適切に検出することができる。こ
のように、子供の乗車状況を適切に求めることができるので、子供の乗車状況に応じた、
前記車載機器の制御を適切に行うことができる。
【0039】
また、本発明に係る乗員保護システム(13)は、上記乗員保護システム(1)〜(1
1)のいずれかにおいて、前記大人子供判別手段が、車室内に配置された撮像装置から得
られる、前記車両の所定の高さ位置に配置された基準部材が映った画像情報に基づいて、
被検対象の上方への突出部の位置する高さと前記基準部材の位置する高さとの関係から、
前記乗員が大人であるか子供であるかを判別するものであることを特徴としている。
【0040】
上記乗員保護システム(13)によれば、車室内(例えば、天井)に配置された前記撮
像装置(例えば、CCDカメラ)から得られる、前記車両の所定の高さ位置(例えば、標
準的な大きさの子供がシートに着座したときの頭部位置)に配置された基準部材(例えば
、発光部材)が映った画像情報に基づいて、前記被検対象の上方への突出部(すなわち、
頭部)の位置する高さと前記基準部材の位置する高さとの関係(すなわち、どちらが高い
か)から、前記乗員が大人であるか子供であるかが判別される。子供は大人よりも座高も
低いので、前記突出物の位置する高さと前記基準部材の位置する高さとの関係から、前記
乗員が大人であるか子供であるかの判別が適切に行われる。従って、子供の乗車状況に応
じた、前記車載機器の制御を適切に行うことができる。
【0041】
また、本発明に係る乗員保護システム(14)は、上記乗員保護システム(1)〜(1
1)、(13)のいずれかにおいて、前記乗員位置検出手段が、車室内に配置された撮像
装置から得られる、シートに配置された基準部材が映った画像情報に基づいて、前記シー
トの位置から、前記乗員の位置を検出するものであることを特徴としている。
【0042】
シートの位置を検出する方法の一つとして、シートがスライドする部分にスイッチを設
け、そのスイッチのオン/オフにより、シートが前方に位置しているのか、後方に位置し
ているのかを検出していた。しかしながら、これでは前方と後方といった大雑把な検出し
かできなかった。より細かく検出するには、スイッチの数を増やせば良いが、それではコ
ストアップになる。
【0043】
上記乗員保護システム(14)によれば、車室内(例えば、天井)に配置された前記撮
像装置(例えば、CCDカメラ)から得られる、シートに配置された基準部材(例えば、
発光部材)が映った画像情報に基づいて、前記シートの位置が検出され、そして前記シー
トに着座している前記乗員の位置が検出される。このように、前記乗員の位置が適切に検
出されるので、子供の乗車状況に応じた、前記車載機器の制御を適切に行うことができる

【0044】
また、本発明に係る乗員保護システム(15)は、上記乗員保護システム(1)〜(1
4)のいずれかにおいて、車室内に配置された撮像装置から得られる画像情報に基づいて
、所定の期間内における被検対象の動きから、該被検対象が人間であるか否かを判別する
人間判別手段を備え、前記子供保護制御手段が、前記大人子供判別手段による判別結果、
前記乗員位置検出手段による検出結果、及び前記人間判別手段による判別結果に基づいて
、前記車載機器の制御を行うものであることを特徴としている。
【0045】
上記乗員保護システム(15)によれば、車室内(例えば、天井)に配置された前記撮
像装置(例えば、CCDカメラ)から得られる画像情報に基づいて、所定の期間内におけ
る被検対象の動きから、該被検対象が人間であるか否かが判別される。前記被検対象は人
間であるとは限らず、荷物などの場合も考えられる。車室内では、人間であっても、荷物
であっても、車両振動の影響を受けて動きを生じることになる。しかしながら、人間の場
合は、荷物と異なり、それ以上の動きをする。そのため、前記所定の期間内における前記
被検対象の動きを監視することによって、前記被検対象が人間であるか否かが適切に判別
される。
【0046】
また、前記大人子供判別手段による判別結果(すなわち、乗員が大人であるか子供であ
るか)、前記乗員位置検出手段による検出結果、及び前記人間判別手段による判別結果(
すなわち、被検対象が人間であるか)に基づいて、前記車載機器の制御が行われる。従っ
て、前記被検対象が人間でない場合に、乗員の保護を図る制御が行われるのを防止するこ
とができる。
【0047】
また、本発明に係る乗員保護装置(1)は、上記乗員保護システム(1)〜(15)の
いずれかを構成する乗員保護装置であって、前記大人子供判別手段と、前記乗員位置検出
手段と、前記大人子供判別手段による判別結果、及び前記乗員位置検出手段による検出結
果に基づいて得られる、子供の乗車状況に応じて、子供の安全レベルを判定する安全レベ
ル判定手段と、該安全レベル判定手段による判定結果に関する情報を、前記子供保護制御
手段を有した車両制御装置へ送信する送信手段とを備えていることを特徴としている。
【0048】
上記乗員保護装置(1)によれば、前記大人子供判別手段による判別結果(すなわち、
乗員が大人であるか子供であるか)、及び前記乗員位置検出手段による検出結果に基づい
て得られる、子供の乗車状況に応じて、子供の安全レベルが判定され、判定結果に関する
情報が前記車両制御装置(例えば、エアバッグ制御ECU、エンジン制御ECU、ブレー
キ制御ECU)へ送信される。これによって、エアバッグ制御ECUやエンジン制御EC
Uなど、各車両制御装置それぞれで、大人子供の判別や、乗員位置の検出、子供の乗車状
況の算出を行う必要が無いので、効率の良い乗車保護システムを実現することができる。
【0049】
また、本発明に係る乗員保護装置(2)は、上記乗員保護システム(1)〜(15)の
いずれかを構成する乗員保護装置であって、前記大人子供判別手段と、前記乗員位置検出
手段と、前記大人子供判別手段による判別結果に関する情報、及び前記乗員位置検出手段
による検出結果に関する情報を、前記子供保護制御手段を有した車両制御装置へ送信する
送信手段とを備えていることを特徴としている。
【0050】
上記乗員保護装置(2)によれば、前記大人子供判別手段による判別結果(すなわち、
乗員が大人であるか子供であるか)に関する情報、及び前記乗員位置検出手段による検出
結果に関する情報が前記車両制御装置(例えば、エアバッグ制御ECU、エンジン制御E
CU、ブレーキ制御ECU)へ送信される。これによって、エアバッグ制御ECUやエン
ジン制御ECUなど、各車両制御装置それぞれで、大人子供の判別や、乗員位置の検出、
を行う必要が無いので、効率の良い乗車保護システムを実現することができる。また、上
記乗員保護装置(1)と異なり、子供の安全レベルに関する情報ではなく、その元となる
情報が前記車両制御装置へ送信されるので、各車両制御装置それぞれで、より細かく独自
性のある制御を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
以下、本発明に係る乗員保護システム、及び乗員保護装置の実施の形態を図面に基づい
て説明する。図1は、実施の形態(1)に係る乗員保護システムの要部を概略的に示した
ブロック図である。図中1は乗員保護装置を示しており、乗員保護装置1は図示しないC
PUや、RAM、ROMなどから成るマイコン2と、データベース3とを含んで構成され
ている。
【0052】
マイコン2には、図2に示したように、車両21の天井22(前右、前左、後右、後左
)に配置された4台のCCDカメラ4FR、4FL、4RR、4RLが接続されており、
マイコン2では車室内の様子が撮像された画像情報を取得することができ、助手席や後部
座席(後部右席、後部左席)での乗員の乗車状況などを認識することができるようになっ
ている。例えば、図3に示したように、乗員の頭部がポジションP1にある場合、乗員は
シート23FL、23RR、23RLに深く座っている(すなわち、適切な位置で座って
いる)と判断することができ、乗員の頭部がポジションP2にある場合、乗員はシート2
3FL、23RR、23RLに浅く座っている(すなわち、適切な位置で座っていない)
と判断することができ、また、乗員の頭部がポジションP3にある場合、乗員はフロア2
4に立っていると判断することができる。また、乗員の体がポジションP4にある場合、
乗員が車両21の窓から顔や手などを出していると判断することができる。
【0053】
また、マイコン2には助手席、後部右席、後部左席でのシートベルトの装着状況を検出
するシートベルトスイッチ5FL、5RR、5RLや、助手席のシート23FLが前後に
スライド移動したことを検知するシートスライドスイッチ6、エアバッグシステムなどで
使用されるGセンサ7が接続されており、マイコン2ではシートベルトの装着状況や、助
手席のシート23FLが前後にスライド移動したこと、車両21の振動具合を認識するこ
とができるようになっている。
【0054】
また、マイコン2へはIG信号が入力されるようになっており、マイコン2ではIGス
イッチがオンになったことを認識することができるようになっている。また、マイコン2
は助手席のシート23FLに配置された発光部材8の点灯/消灯を制御することができ、
必要な時に発光部材8を点灯させることができるようになっている。後で詳しく説明する
が、マイコン2は、CCDカメラ4FLで撮像されることによって得られる、発光部材8
が映った画像情報に基づいて、シート23FLの位置を認識することができるようになっ
ている。
【0055】
さらに、マイコン2は通信バスラインBLを介して、衝突などを回避するために各種制
御を行うプリクラッシュ制御ECU9や、エンジン制御ECU10、ブレーキ制御ECU
11、ハンドル制御ECU12、エアバッグ制御ECU13、ドア制御ECU14などの
、各種車両制御装置と繋がっており、これら車両制御装置との間で情報のやり取りを行う
ことができ、例えば、プリクラッシュ制御ECU9から送信されてくる衝突等危険情報や
衝突等回避情報などを受信したり、ドア制御ECU14から送信されてくるドアの開閉情
報などを受信することができるようになっている。プリクラッシュ制御ECU9には、車
両21の前面付近に配置された、前方の障害物を検知するためのレーダー15が接続され
ており、衝突などの危険を検知することができるようになっている。
【0056】
また、マイコン2には、シート23FR、23FL、23RR、23RLそれぞれの上
方に配置されたスピーカ16FR、16FL、16RR、16RLがディジタル信号をア
ナログ信号へ変換する音声出力装置17を介して接続され、また、マイコン2には、運転
席の近くに設けられた、助手席、後部右席、後部左席それぞれでの乗車状況を表すための
表示装置18が接続されている。ランプ18FL、18RR、18RLそれぞれは、助手
席、後部右席、後部左席での乗車状況を表すようになっている。
【0057】
乗員保護装置1を構成するデータベース3には、例えば、図4に示したような、子供の
安全レベルの判定に用いる各項目(頭部のポジション、シートベルトの装着、ポジション
P4での体の有無)の内容を、安全レベル毎に示したデータが記憶されている。例えば、
子供の頭部がポジションP1にあり(すなわち、シートに深く座っており)、シートベル
トも装着されている場合、安全レベルは「1」になる。但し、子供の体がポジションP4
にある(すなわち、窓から顔や手などを出している)場合、安全レベルは「5」になる。
【0058】
また、子供の頭部がポジションP1にあるが、シートベルトが装着されていない場合、
安全レベルは「2」になり、子供の頭部がポジションP2にある(すなわち、シートに浅
く座っている)場合、安全レベルは「3」になる。また、子供の頭部がポジションP3に
ある(すなわち、フロア24に立っている)場合、安全レベルは「4」になる。
【0059】
次に、実施の形態(1)に係る乗員保護システムを構成する乗員保護装置1におけるマ
イコン2の行う処理動作[1]を図5に示したフローチャートに基づいて説明する。なお
、この処理動作[1]は所定のタイミング毎に行われる動作である。まず、IGがオンさ
れたか否かを判断し(ステップS1)、IGがオンされたと判断すれば、ステップS3へ
進んで、助手席のシート23FLの位置を検出するための処理を開始する。
【0060】
一方、IGがオンされていない(又はIGは以前よりオン状態になっている)と判断す
れば、次に、シートスライドスイッチ6から得られる信号に基づいて、助手席のシート2
3FLがスライド移動したか否かを判断し(ステップS2)、シート23FLがスライド
移動したと判断すれば、ステップS3へ進んで、シート23FLの位置を検出するための
処理を開始する。他方、シート23FLはスライド移動していないと判断すれば、そのま
まステップS9へ進む。
【0061】
助手席のシート23FLの位置を検出するには、まず、シート23FLに設けられてい
る発光部材8を点灯させ(ステップS3)、CCDカメラ4FLを用いて助手席周辺を監
視し(ステップS4)、CCDカメラ4FLにより撮像された画像情報を取得して(ステ
ップS5)、発光部材8を消灯させる(ステップS6)。発光部材8の点灯時間は100
m秒くらいで十分である。
【0062】
次に、取得した画像情報に基づいて、発光部材8のXY面における位置を特定し(ステ
ップS7)、発光部材8のXY面における位置を、シート23FLのXY面における位置
として、マイコン2内のRAM(図示せず)に記憶させ(ステップS8)、その後、助手
席での乗員の乗車状況を認識するための処理動作[1−a]を行うためにステップS9へ
進む。
【0063】
ステップS9(図6参照)では、まず、CCDカメラ4FR、4FLの2台を用いて助
手席周辺を監視し(ステップS21)、CCDカメラ4FR、4FLにより撮像された画
像情報を取得して(ステップS22)、取得した画像情報に基づいて、助手席周辺に所定
の大きさ以上の動きがあるか否か(すなわち、助手席に人間が存在するか、助手席に荷物
が載っているか)を判断する(ステップS23)。なお、車両21の振動による誤った結
果を得ないようにするために、Gセンサ7から得られる車両21の振動に関するデータを
用いて上記判断を行うようにする。つまり、車両振動による動き分をカットする。
【0064】
前記所定の大きさ以上の動きがないと判断すれば、助手席に荷物が載っていると看做し
、図9に示したような、RAMに記憶される、乗員の乗車状況を表すデータテーブルDT
の助手席の項目欄を全て「0」にして(ステップS24)、処理動作[1−a]を終了す
る。一方、前記所定の大きさ以上の動きがあると判断すれば、助手席に人間が存在すると
看做し、次に、CCDカメラ4FR、4FLから得られた画像情報に基づいて、被検対象
(乗員)の大きさと上方への突出部(すなわち、頭部)の位置する高さを特定し(ステッ
プS25)、乗員の体の大きさ及び頭部の位置する高さに基づいて、前記乗員が大人であ
るか子供であるかを判断する(ステップS26)。カメラを複数台用いるため、高さを精
度良く特定することができる。
【0065】
なお、ここでは単純に画像情報に基づいて、前記乗員が大人であるか子供であるかを判
別するようにしているが、別の実施の形態では、図10に示したように、シート23FL
の所定の高さ位置(例えば、標準的な大きさの子供がシート23FLに着座した時の頭部
位置)に発光部材25を設け、この発光部材が映った画像情報に基づいて、前記乗員の頭
部の位置する高さと前記発光部材の高さ位置との関係から、前記乗員が大人であるか子供
であるかを判別するようにしても良い。
【0066】
ステップS26において、前記乗員の体が所定値よりも大きい、又は頭部の位置する高
さが所定値よりも高いと判断すれば、前記乗員は大人であると看做し、次に、データテー
ブルDT(図9参照)の助手席の大人欄を「1」にし、それ以外の項目欄を「0」にし(
ステップS27)、その後、大人の乗車状況を認識するための処理動作[1−b]を行う
ためにステップS28(図7参照)へ進む。
【0067】
一方、ステップS26において、前記乗員の体は前記所定値よりも小さく、また頭部の
位置する高さが前記所定値よりも低いと判断すれば、前記乗員は子供であると看做し、次
に、データテーブルDT(図9参照)の助手席の子供欄を「1」にし、それ以外の項目欄
を「0」にし(ステップS29)、その後、子供の乗車状況を認識するための処理動作[
1−c]を行うためにステップS30(図8参照)へ進む。
【0068】
次に、大人の乗車状況を認識するための処理動作[1−b]を図7に示したフローチャ
ートに基づいて説明する。まず、CCDカメラ4FR、4FLから得られた画像情報に基
づいて、XY面における乗員(大人)の頭部の位置を特定し(ステップS31)、前記乗
員の頭部がポジションP1(図3参照)に存在するか否かを判断する(ステップS32)

【0069】
前記乗員の頭部がポジションP1に存在する(すなわち、前記乗員は適切な位置で着座
している)と判断すれば、次に、シートベルトスイッチ5FLから得られる信号に基づい
て、前記乗員がシートベルトを装着しているか否かを判断する(ステップS33)。前記
乗員がシートベルトを装着している(すなわち、前記乗員は正規の形態で着座している)
と判断すれば、そのまま処理動作[1−b]を終了する。一方、前記乗員はシートベルト
を装着していないと判断すれば、「シートベルトを着用して下さい」といったメッセージ
がスピーカ16FLから出力されるように(すなわち、助手席に乗車している大人へ直接
注意するように)、音声出力装置17を制御する(ステップS34)。
【0070】
また、ステップS32において、前記乗員の頭部がポジションP1に存在しない(すな
わち、前記乗員は適切な位置で着座していない)と判断すれば、次に、シートベルトスイ
ッチ5FLから得られる信号に基づいて、前記乗員がシートベルトを装着しているか否か
を判断する(ステップS35)。
【0071】
前記乗員がシートベルトを装着していると判断すれば、「正しく座ってください」とい
ったメッセージがスピーカ16FLから出力されるように、音声出力装置17を制御する
(ステップS36)。一方、前記乗員がシートベルトを装着していないと判断すれば、「
正しく座ってください。そして、シートベルトを着用して下さい」といったメッセージが
スピーカ16FLから出力されるように、音声出力装置17を制御する(ステップS37
)。
【0072】
次に、子供の乗車状況を認識するための処理動作[1−c]を図8に示したフローチャ
ートに基づいて説明する。まず、CCDカメラ4FR、4FLから得られた画像情報に基
づいて、ポジションP4(図3参照)に前記乗員の体が存在するか否かを判断し(ステッ
プS41)、ポジションP4に前記乗員の体が存在する(すなわち、子供が窓から顔や手
などを出している)と判断すれば、子供の安全レベルを最低の「5」と判定し、データテ
ーブルDTの安全レベル「5」の欄を「1」にし、それ以外の安全レベル欄を「0」にす
る(ステップS42)。なお、ここではポジションP4に前記乗員の体が存在する場合、
安全レベルを「5」にしているが、別の実施の形態では、ウィンドウガラスの開閉状況を
考慮に入れて、ウィンドウガラスが閉じている場合には、前記乗員の体がポジションP4
にあることを無視して、安全レベルを判定するようにしても良い。
【0073】
次に、表示装置18を制御することによって、助手席での乗車状況を表すためのランプ
18FLを赤色で表示させ(ステップS43)、さらに、「助手席の子供が窓から顔や手
を出しています」といったメッセージがスピーカ16FRから出力されるように(すなわ
ち、運転者へ注意するように)、音声出力装置17を制御する(ステップS44)。
【0074】
一方、ステップS41において、ポジションP4に前記乗員の体は存在しないと判断す
れば、次に、CCDカメラ4FR、4FLから得られた画像情報に基づいて、XY面にお
ける乗員(子供)の頭部の位置を特定し(ステップS45)、前記乗員の頭部がポジショ
ンP1に存在するか否かを判断する(ステップS46)。
【0075】
前記乗員の頭部がポジションP1に存在する(すなわち、前記乗員は適切な位置で着座
している)と判断すれば、次に、シートベルトスイッチ5FLから得られる信号に基づい
て、前記乗員がシートベルトを装着しているか否かを判断する(ステップS47)。前記
乗員がシートベルトを装着している(すなわち、前記乗員は正規の形態で着座している)
と判断すれば、子供の安全レベルを最高の「1」と判定し、データテーブルDTの安全レ
ベル「1」の欄を「1」にし、それ以外の安全レベル欄を「0」にし(ステップS48)
、その後、表示装置18を制御することによって、助手席での乗車状況を表すためのラン
プ18FLを青色で表示させる(ステップS49)。
【0076】
一方、前記乗員がシートベルトを装着していないと判断すれば、子供の安全レベルを「
2」と判定し、データテーブルDTの安全レベル「2」の欄を「1」にし、それ以外の安
全レベル欄を「0」にし(ステップS50)、その後、表示装置18を制御することによ
って、助手席での乗車状況を表すためのランプ18FLを黄色で表示させる(ステップS
51)。
【0077】
また、ステップS46において、前記乗員の頭部がポジションP1に存在しないと判断
すれば、次に、前記乗員の頭部がポジションP2に存在するか否かを判断し(ステップS
52)、前記乗員の頭部がポジションP2に存在する(すなわち、前記乗員はシート23
FLに浅く座っている)と判断すれば、子供の安全レベルを「3」と判定し、データテー
ブルDTの安全レベル「3」の欄を「1」にし、それ以外の安全レベル欄を「0」にし(
ステップS53)、その後、表示装置18を制御することによって、助手席での乗車状況
を表すためのランプ18FLを赤色で表示させる(ステップS54)。
【0078】
一方、ステップS52において、前記乗員の頭部がポジションP2に存在しないと判断
すれば、前記乗員の頭部はポジションP3に存在する(すなわち、前記乗員はフロア24
に立っている)と看做し、子供の安全レベルを「4」と判定し、データテーブルDTの安
全レベル「4」の欄を「1」にし、それ以外の安全レベル欄を「0」にし(ステップS5
5)、その後、表示装置18を制御することによって、助手席での乗車状況を表すための
ランプ18FLを赤色で表示させ(ステップS56)、さらに、「助手席の子供がフロア
に立っています」といったメッセージがスピーカ16FRから出力されるように(すなわ
ち、運転者へ注意するように)、音声出力装置17を制御する(ステップS57)。
【0079】
これら処理動作[1−b](図7)、[1−c](図8)を行うことによって、助手席
での乗員の乗車状況を認識するための処理動作[1−a](図6、図5のステップS9)
が完了すると、次に、データテーブルDTに基づいて、助手席での乗員の有無情報と、乗
員が大人であるか子供であるかを示した情報と、子供の安全レベルを示した情報と、助手
席のシート23FLの位置情報(ステップS8でRAMに格納済)とをエアバッグ制御E
CU13へ送信する(ステップS10)。
【0080】
エアバッグ制御ECU13は、衝突などの事故が発生し、エアバッグを展開させる条件
が成立したとしても、助手席に乗員がいない場合は助手席側のエアバッグを展開させず、
また、乗員が子供の場合には、ガスの噴出を通常時よりも緩慢にするように構成されてい
る。但し、安全レベルが「3〜5」の場合には、エアバックを展開させないようになって
いる。また、乗員が子供の場合、シート23FLの位置に基づいて、ガスの噴出開始を変
えるようになっており、例えば、シート23FLが後ろの方にある場合、ガスの噴出開始
を早くさせるようになっている。
【0081】
ステップS10での処理後、後部右席、後部左席それぞれでの乗員の乗車状況を認識す
るための処理動作を行う(ステップS11、S12)。なお、これら処理動作は、上記し
た助手席での乗員の乗車状況を認識するための処理動作[1−a](図6)と同様である
ため、ここではその説明を省略する。
【0082】
次に、データテーブルDTに基づいて、最も低い安全レベルを示した情報をエンジン制
御ECU10と、ブレーキ制御ECU11と、ハンドル制御ECU12と、ドア制御EC
U13とへ送信する(ステップS13)。例えば、助手席の子供の安全レベルが「1」で
あり、後部右席の子供の安全レベルが「3」であり、後部左席に子供がいない場合、最も
低い安全レベル「3」を示した情報が送信される。なお、車両21に子供が乗車していな
い場合には、安全レベル「0」を示した情報が送信される。
【0083】
エンジン制御ECU10は、子供の安全レベルが「4、5」の場合、車両21の急加速
を抑制したり、車両21の発進を禁止するように構成され、ブレーキ制御ECU11は、
安全レベルが「4、5」の場合、車両21の急ブレーキを抑制するように、安全レベルが
「3〜5」の場合、車両21を減速させ、先行車両との車間距離を確保するように構成さ
れ、また、ハンドル制御ECU12は、子供の安全レベルが「4、5」の場合、急ハンド
ルを抑制するように構成されている。なお、これら抑制などについては、安全レベルの違
いによって差別化を図るようにしても良い。
【0084】
次に、実施の形態(1)に係る乗員保護システムを構成する乗員保護装置1におけるマ
イコン2の行う処理動作[2]を図11に示したフローチャートに基づいて説明する。な
お、この処理動作[2]はプリクラッシュ制御ECU9から送信されてくる情報を受信し
た場合に行われる動作である。
【0085】
まず、受信した情報が衝突等危険情報であるか否かを判断し(ステップS61)、衝突
等危険情報であると判断すれば、上記したような急加速、急ブレーキ、急ハンドルの抑制
を解除させるために、解除信号をエンジン制御ECU10と、ブレーキ制御ECU11と
、ハンドル制御ECU12とへ送信する(ステップS62)。
【0086】
一方、前記受信した情報が衝突等危険情報でないと判断すれば、前記受信した情報が衝
突等回避情報であるか否かを判断し(ステップS63)、衝突等回避情報であると判断す
れば、前記解除を取り消すために、取消信号をエンジン制御ECU10と、ブレーキ制御
ECU11と、ハンドル制御ECU12とへ送信する(ステップS64)。
【0087】
次に、実施の形態(1)に係る乗員保護システムを構成する乗員保護装置1におけるマ
イコン2の行う処理動作[3]を図12に示したフローチャートに基づいて説明する。な
お、この処理動作[3]は車両21の停止時(すなわち、IGのオフ時)に所定のタイミ
ング毎に行われる動作であり、まず、助手席にいる子供がドアに挟まれないようにするた
めの処理(ステップS71:S81〜S90)を行う。
【0088】
データテーブルDTに基づいて、助手席に子供がいるか否かを判断し(ステップS81
)、助手席に子供がいると判断すれば、次に、ドア制御ECU14から送信されてくるド
アの開閉情報に基づいて、助手席のドアが開放されているか否かを判断する(ステップS
82)。
【0089】
助手席のドアが開放されていると判断すれば、次に、CCDカメラ4FR、4FLの2
台を用いて助手席のドア付近を監視し(ステップS83)、CCDカメラ4FR、4FL
により撮像された画像情報を取得し(ステップS84)、取得した画像情報に基づいて、
助手席のドア付近に子供の体が存在するか否か(すなわち、子供の手などがドアに挟まれ
るおそれがあるか否か)を判断する(ステップS85)。
【0090】
助手席のドア付近に子供の体が存在すると判断すれば、助手席のドアの閉鎖を抑制させ
るために、ドア制御ECU14へドアFL閉鎖抑制信号を送信し(ステップS86)、そ
の後、助手席のドアの閉鎖を抑制させていることを示すためのドア閉鎖抑制フラグfFL
1にする(ステップS87)。
【0091】
一方、ステップS85において、助手席のドア付近に子供の体は存在しないと判断すれ
ば、ドアの閉鎖を抑制する必要がないため、次に、ドア閉鎖抑制フラグfFLが1であるか
否かを判断する(ステップS88)。ドア閉鎖抑制フラグfFLが1である(すなわち、こ
れまでドアの閉鎖を抑制していた)と判断すれば、前記抑制を解除するために、ドア制御
ECU14へドアFL閉鎖抑制解除信号を送信し(ステップS89)、その後、ドア閉鎖
抑制フラグfFLを0に戻す(ステップS90)。
【0092】
また、ステップS81において、助手席に子供がいないと判断した場合や、ステップS
82において、助手席のドアが開放されていないと判断した場合は、ドアに子供の手など
が挟まれるおそれがなく、ステップS83〜S87を行う必要がないため、そのままステ
ップS88へ進む。なお、ここでは、ドアに子供の手などが挟まれるのを防止するために
、ドアの閉鎖を抑制させるようにしているが、別の実施の形態では、ドアの閉鎖を禁止さ
せたり、車外にいる者に挟み込みの注意を促す告知などを行うようにしても良い。
【0093】
助手席にいる子供がドアに挟まれないようにするための処理(ステップS71:S81
〜S90)の完了後、後部右席、後部左席にいる子供がドアに挟まれないようにするため
の処理動作を行う(ステップS72、S73)。なお、これら処理動作は、上記した助手
席にいる子供がドアに挟まれないようにするための処理動作と同様であるため、ここでは
その説明を省略する。
【0094】
上記実施の形態(1)に係る乗員保護システムによれば、子供の乗車状況に応じて、車
載機器(例えば、エアバッグのガス発生装置)の制御が行われる。例えば、助手席に大人
が座っている場合と、子供が座っている場合とでは、エアバッグの展開の仕方が変えられ
、さらに子供の乗車状況に応じて、エアバッグの展開の仕方が変えられる。
【0095】
保護対象が子供の場合、エアバッグの展開に用いるガスの噴出が緩慢にされる。また、
子供がインパネへ接近して座っている場合や、フロア24に立っている場合は、エアバッ
グの衝撃が大きくなるおそれがあるため、エアバッグが展開されない。また、子供がイン
パネから遠く離れて座っている場合には、ガス噴出の開始が通常よりも早くされる。この
ように、子供の乗車状況に応じて、前記車載機器が適切に制御されるので、子供の安全性
を向上させることができる。
【0096】
また、上記実施の形態(1)に係る乗員保護システムでは、子供の乗車状況に応じて、
エンジン制御ECU10や、ブレーキ制御ECU11、ハンドル制御ECU12、エアバ
ッグ制御ECU13、ドア制御ECU14などの制御ECUを用いて、車載機器の制御を
行う場合について説明しているが、子供の乗車状況に応じた前記車載機器の制御は、この
形態に限定されるものではなく、例えば、安全レベルが「4、5」の場合には、ハザード
ランプを点灯させるなどして、後続車両の運転者へ注意を促すようにしても良い。
【0097】
また、上記実施の形態(1)に係る乗員保護システムでは、乗員保護装置1で子供の位
置やシートベルトの装着/非装着などに基づいて、子供の安全レベルを判定し、その判定
結果に関する情報を各制御ECUへ送信するようにしているが、別の実施の形態では、前
記判定結果に関する情報ではなく、その判定の元になる情報そのものを各制御ECUへ送
信するようにしても良い。これにより、各制御ECUそれぞれで、より細かく独自性のあ
る制御を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の実施の形態(1)に係る乗員保護システムの要部を概略的に示したブロック図である。
【図2】実施の形態(1)に係る乗員保護システムが装備された車両を模式的に示した図であり、(a)は部分平面透過図であり、(b)は部分側面透過図である。
【図3】実施の形態(1)に係る乗員保護システムが装備された車両を模式的に示した部分平面透過図である。
【図4】実施の形態(1)に係る乗員保護システムを構成する乗員保護装置におけるデータベースのフォーマットの一例を示した図である。
【図5】実施の形態(1)に係る乗員保護システムを構成する乗員保護装置におけるマイコンの行う処理動作を示したフローチャートである。
【図6】実施の形態(1)に係る乗員保護システムを構成する乗員保護装置におけるマイコンの行う処理動作を示したフローチャートである。
【図7】実施の形態(1)に係る乗員保護システムを構成する乗員保護装置におけるマイコンの行う処理動作を示したフローチャートである。
【図8】実施の形態(1)に係る乗員保護システムを構成する乗員保護装置におけるマイコンの行う処理動作を示したフローチャートである。
【図9】データテーブルに記憶されている内容の一例を示した図である。
【図10】実施の形態(1)に係る乗員保護システムが装備された車両のシートを模式的に示した斜視図である。
【図11】実施の形態(1)に係る乗員保護システムを構成する乗員保護装置におけるマイコンの行う処理動作を示したフローチャートである。
【図12】実施の形態(1)に係る乗員保護システムを構成する乗員保護装置におけるマイコンの行う処理動作を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0099】
1 乗員保護装置
2 マイコン
3 データベース
4FR、4FL、4RR、4RL CCDカメラ
8、25 発光部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の乗員の安全性を図るための乗員保護システムにおいて、
前記乗員が大人であるか子供であるかを判別する大人子供判別手段と、
前記乗員の位置を検出する乗員位置検出手段と、
前記大人子供判別手段による判別結果、及び前記乗員位置検出手段による検出結果に基
づいて得られる、子供の乗車状況に応じて、車載機器の制御を行う子供保護制御手段とを
備えていることを特徴とする乗員保護システム。
【請求項2】
前記子供保護制御手段が、前記大人子供判別手段による判別結果、前記乗員位置検出手
段による検出結果、及びシートベルトの装着状況を検出する装着状況検出手段による検出
結果から得られる、子供の乗車状況に応じて、前記車載機器の制御を行うものであること
を特徴とする請求項1記載の乗員保護システム。
【請求項3】
前記大人子供判別手段による判別結果、及び前記乗員位置検出手段による検出結果に基
づいて得られる、大人の乗車状況に応じて、車載機器の制御を行う大人保護制御手段を備
えていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の乗員保護システム。
【請求項4】
子供が正規の形態で着座していない場合、
前記子供保護制御手段が、子供が正規の形態で着座していないことを、子供の乗車状況
に応じた形態で運転者へ知らせるものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの
項に記載の乗員保護システム。
【請求項5】
大人が正規の形態で着座していない場合、
前記大人保護制御手段が、大人が正規の形態で着座していないことを、当該大人へ知ら
せるものであることを特徴とする請求項3記載の乗員保護システム。
【請求項6】
子供が正規の形態で着座していない場合、
前記子供保護制御手段が、子供の乗車状況に応じて、先行車両との車間距離を確保する
ものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載の乗員保護システム。
【請求項7】
子供が正規の形態で着座していない場合、
前記子供保護制御手段が、子供の乗車状況に応じて、前記車両の加速、減速、及び操舵
のうちの少なくともいずれか一つを抑制するものであることを特徴とする請求項1〜3の
いずれかの項に記載の乗員保護システム。
【請求項8】
危険検知手段により衝突などの危険が検知された場合、前記抑制を解除する抑制解除手
段を備えていることを特徴とする請求項7記載の乗員保護システム。
【請求項9】
子供が正規の形態で着座していない場合、
前記子供保護制御手段が、子供の乗車状況に応じて、前記車両の発進を禁止するもので
あることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載の乗員保護システム。
【請求項10】
子供が正規の形態で着座していない場合、
前記子供保護制御手段が、子供の乗車状況に応じて、エアバッグの展開を制御するもの
であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載の乗員保護システム。
【請求項11】
子供がドア付近に存在する場合、
前記子供保護制御手段が、子供の乗車状況に応じて、ドアの閉鎖を抑制もしくは禁止す
る、又は車外の者に注意を促すものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項
に記載の乗員保護システム。
【請求項12】
前記大人子供判別手段が、車室内に配置された撮像装置から得られる画像情報に基づい
て、被検対象の大きさ、及び/又は上方への突出部の位置する高さから、前記乗員が大人
であるか子供であるかを判別するものであり、
前記乗員位置検出手段が、前記撮像装置から得られる画像情報に基づいて、前記突出部
の位置から、前記乗員の位置を検出するものであることを特徴とする請求項1〜11のい
ずれかの項に記載の乗員保護システム。
【請求項13】
前記大人子供判別手段が、車室内に配置された撮像装置から得られる、前記車両の所定
の高さ位置に配置された基準部材が映った画像情報に基づいて、被検対象の上方への突出
部の位置する高さと前記基準部材の位置する高さとの関係から、前記乗員が大人であるか
子供であるかを判別するものであることを特徴とする請求項1〜11のいずれかの項に記
載の乗員保護システム。
【請求項14】
前記乗員位置検出手段が、車室内に配置された撮像装置から得られる、シートに配置さ
れた基準部材が映った画像情報に基づいて、前記シートの位置から、前記乗員の位置を検
出するものであることを特徴とする請求項1〜11、13のいずれかの項に記載の乗員保
護システム。
【請求項15】
車室内に配置された撮像装置から得られる画像情報に基づいて、所定の期間内における
被検対象の動きから、該被検対象が人間であるか否かを判別する人間判別手段を備え、
前記子供保護制御手段が、前記大人子供判別手段による判別結果、前記乗員位置検出手
段による検出結果、及び前記人間判別手段による判別結果に基づいて、前記車載機器の制
御を行うものであることを特徴とする請求項1〜14のいずれかの項に記載の乗員保護シ
ステム。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれかの項に記載の乗員保護システムを構成する乗員保護装置であ
って、
前記大人子供判別手段と、
前記乗員位置検出手段と、
前記大人子供判別手段による判別結果、及び前記乗員位置検出手段による検出結果に基
づいて得られる、子供の乗車状況に応じて、子供の安全レベルを判定する安全レベル判定
手段と、
該安全レベル判定手段による判定結果に関する情報を、前記子供保護制御手段を有した
車両制御装置へ送信する送信手段とを備えていることを特徴とする乗員保護装置。
【請求項17】
請求項1〜15のいずれかの項に記載の乗員保護システムを構成する乗員保護装置であ
って、
前記大人子供判別手段と、
前記乗員位置検出手段と、
前記大人子供判別手段による判別結果に関する情報、及び前記乗員位置検出手段による
検出結果に関する情報を、前記子供保護制御手段を有した車両制御装置へ送信する送信手
段とを備えていることを特徴とする乗員保護装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−117046(P2006−117046A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−305377(P2004−305377)
【出願日】平成16年10月20日(2004.10.20)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】