説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】酸化シリコン膜のエッチングに対するエッチング耐性を有する応力膜を形成することで、応力膜の上記エッチング時の膜減りを低減することを可能にする。
【解決手段】半導体基板11上にゲート電極形成溝23が形成されたサイドウォール絶縁膜21と、ゲート電極形成溝23内の半導体基板11上にゲート絶縁膜24を介して形成されたゲート電極25と、ゲート電極25の側壁にサイドウォール絶縁膜24を介して半導体基板11上に形成されていて応力を有する第1応力膜51と、第1応力膜51の外側の半導体基板11上に形成されていて第1応力膜51と同種の応力を有する第2応力膜52とを有し、第1応力膜51および第2応力膜52は酸化シリコン膜をエッチングするときのエッチング種に対するエッチング耐性を有し、第1応力膜51は第2応力膜52よりも前記エッチング種に対するエッチング耐性が強いことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トランジスタの移動度向上技術として、ダミーゲートを除去して形成した溝内部に高誘電率ゲート絶縁膜を介して金属ゲート電極を形成する、いわゆるダマシンゲート電極構造と、トランジスタのチャネル領域に応力を印加するストレスライナー膜との併用が検討されている。一般的にストレスライナー膜は、単層で形成されている。
【0003】
例えば、図19(1)に示すように、半導体基板111に素子形成領域112が分離される素子分離領域113を形成した後、半導体基板111の素子形成領域112上に、ダミーゲート絶縁膜141を介してダミーゲートパターン142を形成する。上記ダミーゲートパターン142は、ポリシリコン膜で形成されていて、上部に窒化シリコン膜が形成されていてもよい。また、上記ダミーゲート絶縁膜141は、酸化シリコン膜で形成されている。
【0004】
上記ダミーゲートパターン142の両側の半導体基板111には低濃度領域131、132が形成されている。この低濃度領域131、132は、エクステンション領域とも呼ばれるものである。上記低濃度領域131、132上の上記ダミーゲートパターン142の側壁には、サイドウォール絶縁膜121が形成されている。このサイドウォール絶縁膜121は、通常、窒化シリコン膜で形成されている。
さらに、上記ダミーゲートパターン142の両側の半導体基板111には上記低濃度領域131、132を介して、上記低濃度領域131、132よりも高濃度のソース・ドレインになる高濃度領域133、134が形成されている。
また、上記高濃度領域133、134の上部には、金属シリサイド層135、136が形成されている。
【0005】
そして、上記ダミーゲートパターン142、サイドウォール絶縁膜121等を被覆するように、上記半導体基板111上に、トランジスタのチャネル領域に応力を印加するための応力印加膜151が形成されている。この応力印加膜151は、通常、NMOSトランジスタの場合には引張応力を有する窒化シリコン膜で形成され、PMOSトランジスタの場合には圧縮応力を有する窒化シリコン膜で形成されている。
このような状態で、上記ダミーゲートパターン142のポリシリコンで形成されている部分の上部を露出するために、化学的機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)を行う。そして、上記ダミーゲートパターン142のポリシリコンが露出したら、このポリシリコンのダミーゲートパターン142を、例えばエッチングによって除去する。さらに、希フッ酸を用いたウエットエッチングによって、上記ダミーゲート絶縁膜141を除去する。
【0006】
この結果、図19(2)に示すように、上記ダミーゲートパターン142(前記図19(1)参照)およびダミーゲート絶縁膜141(前記図19(1)参照)が除去された領域にゲート電極形成溝123が形成される。上記ダミーゲート絶縁膜141をエッチング除去するとき、サイドウォール絶縁膜121に接触している部分およびその近傍の窒化シリコン膜からなる応力印加膜151がエッチングされる。この原因として、従来のストレスライナー膜の形成方法では、成膜初期の膜質が悪いことがあげられる。すなわち、ストレスライナー膜の成膜初期の膜のウエットエッチング耐性が不十分であることが原因と考えられる。
【0007】
このように、ストレスライナー膜がエッチングされることによる膜減りによって、応力印加膜151によるチャネル領域への応力印加が弱められ、十分な応力をチャネル領域に印加できないという問題が発生していた。また、図20には、応力印加膜151のサイドウォール絶縁膜121側がエッチングされた状態を電子顕微鏡によって撮影した断面写真を示す(例えば、非特許文献1参照。)。
【0008】
【非特許文献1】黛哲,王俊利,山川真弥,舘下八州志,平野智之,中田征志,山口晋平,山本雄一,宮波勇樹,押山到,田中和樹,田井香織,小川浩二,釘宮克尚,長濱嘉彦,萩本賢哉,山本亮,神田さおり,長野香,若林整,田川幸雄,塚本雅則,岩元勇人,齋藤正樹,門村新吾,長島直樹著 「ダマシンゲートプロセスを用いたtop-cutデュアルストレスライナーを有する高性能Metal/High-k Gate MOSFET」 応用物理学会分科会シリコンテクノロジー第98回研究集会報告「IEDM2007」特集号、p.22−25、応用物理学会シリコンテクノロジー分科会編集・発行 2008年1月24日
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
解決しようとする問題点は、酸化シリコンからなるダミーゲート絶縁膜を除去するときに、チャネル領域の応力を印加する応力膜(ストレスライナー膜)の成膜初期部分もエッチング除去され、上記応力膜によるチャネル領域への応力印加が十分にできない点である。
【0010】
本発明は、酸化シリコン膜のエッチングに対するエッチング耐性を有する応力膜を形成することで、応力膜の上記エッチング時の膜減りを低減することを可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の半導体装置は、
半導体基板上にゲート電極形成溝が形成されたサイドウォール絶縁膜と、
前記ゲート電極形成溝内の前記半導体基板上にゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極と、
前記ゲート電極の両側の前記半導体基板に形成されたソース・ドレイン領域と、
前記ゲート電極の側壁に前記サイドウォール絶縁膜を介して前記半導体基板上に形成されていて応力を有する第1応力膜と、
前記第1応力膜の外側の前記半導体基板上に形成されていて前記第1応力膜と同種の応力を有する第2応力膜とを有し、
前記第1応力膜および前記第2応力膜は酸化シリコン膜をエッチングするときのエッチング種に対するエッチング耐性を有し、
前記第1応力膜は前記第2応力膜よりも前記エッチング種に対するエッチング耐性が強い。
【0012】
本発明の半導体装置では、ゲート電極の側壁にサイドウォール絶縁膜を介して第1応力膜と、この第1応力膜と同種の応力を有する第2応力膜とが形成されていることから、上記第1、第2応力膜の応力をゲート電極下部の半導体基板に形成されるチャネル領域に印加することが可能になる。
例えば、半導体装置がPMOSトランジスタの場合、上記第1、第2応力膜の応力が圧縮応力であれば、PMOSトランジスタの移動度を向上させられる。
また、上記半導体装置がNMOSトランジスタの場合、上記第1、第2応力膜の応力が引張応力であれば、NMOSトランジスタの移動度を向上させられる。
また、上記第1応力膜および上記第2応力膜は酸化シリコン膜をエッチングするときのエッチング種に対するエッチング耐性を有し、上記第1応力膜は上記第2応力膜よりも上記エッチング種に対するエッチング耐性が強いことから、上記ゲート電極形成溝を形成するときに酸化シリコン膜をエッチングするような場合があっても、上記第1、第2応力膜がそのエッチングのエッチング種に対してエッチングされにくくなっている。しかも、第1応力膜が第2応力膜よりも上記エッチング種に対して強いエッチング耐性を有することから、第1、第2応力膜がともにエッチングされるとしても、第1応力膜が第2応力膜よりも多くエッチングされることはない。
したがって、ゲート電極の側壁に近い側には第1応力膜が残るので、ゲート電極下部の半導体基板に形成されるチャネル領域に第1応力膜の応力を確実に印加することが可能になる。
【0013】
本発明の半導体装置の製造方法は、
半導体基板上にダミーゲート絶縁膜を介してダミーゲートパターンを形成する工程と、
前記ダミーゲートパターンの側壁にサイドウォール絶縁膜を形成する工程と、
前記ダミーゲートパターンの両側の前記半導体基板にソース・ドレイン領域を形成する工程と、
前記ダミーゲートパターンおよび前記サイドウォール絶縁膜を被覆する前記ダミーゲート絶縁膜下部の前記半導体基板に応力を印加する第1応力膜および第2応力膜を積層して前記半導体基板上に形成する工程と、
前記ダミーゲートパターン上の前記第1応力膜および第2応力膜を除去して前記ダミーゲートパターン上部を露出させる工程と、
前記ダミーゲートパターンおよび前記ダミーゲート絶縁膜を除去してゲート電極形成溝を形成する工程と、
前記ゲート電極形成溝内の前記半導体基板上にゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成する工程を有し、
前記第1応力膜および前記第2応力膜は前記ダミーゲートパターンおよび前記ダミーゲート絶縁膜をエッチングするときのエッチング種に対するエッチング耐性を有する膜で形成され、
かつ前記第1応力膜は前記第2応力膜よりも前記エッチング種に対するエッチング耐性が強い絶縁膜で形成される。
【0014】
本発明の半導体装置の製造方法では、ゲート電極の側壁にサイドウォール絶縁膜を介して第1応力膜を形成し、さらにこの第1応力膜と同種の応力を有する第2応力膜を形成することから、上記第1、第2応力膜の応力をゲート電極下部の半導体基板に形成されるチャネル領域に印加することが可能になる。
例えば、半導体装置がPMOSトランジスタの場合、上記第1、第2応力膜の応力が圧縮応力であれば、PMOSトランジスタの移動度を向上させられる。
また、上記半導体装置がNMOSトランジスタの場合、上記第1、第2応力膜の応力が引張応力であれば、NMOSトランジスタの移動度を向上させられる。
また、上記第1応力膜および上記第2応力膜は酸化シリコン膜をエッチングするときのエッチング種に対するエッチング耐性を有し、上記第1応力膜は上記第2応力膜よりも上記エッチング種に対するエッチング耐性が強い絶縁膜で形成されることから、上記ゲート電極形成溝を形成するときに酸化シリコン膜をエッチングするような場合があっても、上記第1、第2応力膜がそのエッチングのエッチング種に対してエッチングされにくくなっている。しかも、第1応力膜が第2応力膜よりも上記エッチング種に対して強いエッチング耐性を有することから、第1、第2応力膜がエッチングされるとしても、第1応力膜が第2応力膜よりも多くエッチングされることはない。
したがって、ゲート電極の側壁に近い側には第1応力膜が残るので、ゲート電極下部の半導体基板に形成されるチャネル領域に第1応力膜の応力を確実に印加することが可能になる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の半導体装置は、第1応力膜の膜減りが抑制できるため、効果的にトランジスタのチャネル領域に第1応力膜の応力を印加することができるので、トランジスタの移動度を確実に向上できるという利点がある。
【0016】
本発明の半導体装置の製造方法は、第1応力膜の膜減りが抑制できるため、効果的にトランジスタのチャネル領域に第1応力膜の応力を印加することができるので、トランジスタの移動度を確実に向上できるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の半導体装置に係る一実施の形態(第1実施例)を、図1の概略構成断面図によって説明する。
【0018】
図1に示すように、半導体基板11に素子形成領域12が分離される素子分離領域13が形成されている。上記半導体基板11の素子形成領域12上に、ゲート電極形成溝23が形成されたサイドウォール絶縁膜21が形成されている。
上記半導体基板11は、例えばシリコン基板で形成され、上記サイドウォール絶縁膜21は、例えば窒化シリコン膜で形成されている。
【0019】
上記ゲート電極形成溝23内の上記半導体基板11上には、ゲート絶縁膜24を介してゲート電極25が形成されている。
【0020】
上記ゲート絶縁膜24は、例えば酸化シリコンよりも誘電率の高い高誘電率膜で形成される。例えば、ハフニウム(Hf)、ランタン(La)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zn)、タンタル(Ta)のうちから選択される1種の金属の金属酸化物、金属酸化珪化物、金属窒化酸化物、金属酸化窒化珪化物で形成される。その一例としては、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化アルミニウム(Al23)、酸化ランタン(La23)等の金属酸化物、窒化酸化ハフニウム(HfON)、窒化酸化アルミニウム(AlON)等の金属窒化酸化物、ハフニウムシリケート(HfSiO)を一例とする金属酸化珪化物、窒化ハフニウムシリケート(HfSiON)を一例とする金属酸化窒化珪化物等を用いることができる。
また、一例として、上記ゲート絶縁膜24は、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜等のシリコン系絶縁膜上に上記高誘電体絶縁膜を積層したものであってもよい。
【0021】
上記ゲート電極25は、例えば、チタン(Ti)の他にルテニウム(Ru)、ハフニウム(Hf)、イリジウム(Ir)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ランタン(La)、ニッケル(Ni)等の金属またはこれらのシリコン化合物、導電性を有する窒素化合物等の金属化合物を用いる。また、ポリシリコンを用いることもできる。
また、ゲート絶縁膜24とゲート電極25との間に、窒化チタン、チタン等の密着層(図示せず)を形成してもよい。
【0022】
上記ゲート電極25の両側における上記サイドウォール絶縁膜23の下部の半導体基板11には低濃度領域31、32が形成されている。この低濃度領域31、32は、エクステンション領域とも呼ばれるものである。
さらに、上記ゲート電極25の両側の半導体基板11には、上記低濃度領域31、32を介して、上記低濃度領域31、32よりも高濃度の高濃度領域33、34が形成されている。上記低濃度領域31、32および高濃度領域33、34でソース・ドレイン領域となる。
また、上記高濃度領域33、34の上部には、金属シリサイド層35、36が形成されている。上記金属シリサイド層35、36は、例えばコバルトシリサイド、ニッケルシリサイド、ニッケル白金シリサイド等で形成されている。
【0023】
また、上記半導体基板11上には、上記ゲート電極25の側壁に上記サイドウォール絶縁膜23を介して、応力(例えば圧縮応力)を有する第1応力膜51が形成されている。さらに、この第1応力膜51の外側の上記半導体基板11上には上記第1応力膜51と同種の応力を有する第2応力膜52が形成されている。
上記第1応力膜51および上記第2応力膜52は酸化シリコン膜をエッチングするときのエッチング種に対するエッチング耐性を有し、上記第1応力膜51は上記第2応力膜52よりも上記エッチング種に対するエッチング耐性が強いものとなっている。
【0024】
具体的には、上記第1応力膜51は上記第2応力膜52よりも膜密度が高い。
【0025】
例えば、上記第1応力膜51は2.0GPa以上3.0GPa以下の圧縮応力を有し、上記第2応力膜52は1.0GPa以上2.0GPa未満の圧縮応力を有する。
【0026】
上記のような圧縮応力値を有する第1応力膜51としては、上記窒化シリコン膜中に炭素が6atomic%以上8atomic%以下含まれる膜がある。
【0027】
上記第1応力膜51の膜中の炭素濃度が6atomic%未満であると、酸化シリコンのウエットエッチング液、例えば希フッ酸に対する十分なエッチング耐性を得ることができず、上記第1応力膜51の膜中の炭素濃度が8atomic%より多くなると、膜中の圧縮応力が強すぎて、膜剥がれを起こしやすくなる。したがって、第1応力膜51の炭素濃度は、6atomic%以上8atomic%以下とした。
【0028】
さらに、上記第1応力膜51は、膜厚が例えば5nm以上30nm未満の範囲に形成される。
【0029】
上記第1応力膜51の膜厚が5nmよりも薄いと圧縮応力のかかりが悪くなり、またエッチングレートが早くなる。上記第1応力膜51の膜厚が30nm以上になると、第1応力膜51が強い圧縮応力(2.0GPa以上3.0GPa以下)を有する膜であるため、その圧縮応力がいっそう強くなりすぎて膜剥れが生じやすくなる。したがって、第1応力膜51の膜厚は、5nm以上30nm未満とした。
上記条件により、上記第1応力膜51(圧縮応力膜の場合)は、2.0GPa以上3.0GPa以下の大きな圧縮応力を有する。
【0030】
また、第2応力膜52としては、上記窒化シリコン膜中に炭素が1atomic%以上6atomic%未満含まれる膜がある。
【0031】
また、上記第2応力膜52の膜中の炭素濃度が1atomic%未満であると、酸化シリコンのウエットエッチング液、例えば希フッ酸に対するエッチング耐性を得ることができず、上記第2応力膜52の膜中の炭素濃度が6atomic%以上になると、第2応力膜52としての膜厚では膜中の圧縮応力が強すぎて、膜剥がれを起こしやすくなる。したがって、第2応力膜52の炭素濃度は、1atomic%以上6atomic%未満とした。
【0032】
上記圧縮応力を有する窒化シリコン膜からなる第2応力膜52は、膜厚が例えば30nm以上70nm以下の範囲に形成されている。
【0033】
上記第2応力膜52の膜厚が30nmよりも薄いと第2応力膜52としての圧縮応力では圧縮応力のかかりが悪くなる。上記第2応力膜52の膜厚が70nm以上になると、第2応力膜52が有する圧縮応力(1.0GPa以上2.0GPa未満)であっても、圧縮応力が強すぎて膜剥れが生じやすくなる。また、ゲート電極の高さが100nm程度でることから、上記第1応力膜51と第2応力膜52とを合わせた膜厚が100nm程度あれば十分である。これらのことを鑑みて、第1応力膜51の膜厚は、30nm以上70nm以下とした。
上記条件により、上記第2応力膜52(圧縮応力膜の場合)は、1.0GPa以上2.0GPa未満の圧縮応力を有する。
【0034】
上記のような第1応力膜51は、酸化シリコン膜をウエットエッチングするエッチング種に対して、高いエッチング耐性を有する。例えばエッチング種が希フッ酸、例えば1:100に希釈した希フッ酸である場合、エッチングレートを0.2nm/min以下程度に保つことができる。
【0035】
また、上記のような第2応力膜52は、酸化シリコン膜をウエットエッチングするエッチング種に対して、高いエッチング耐性を有する。例えばエッチング種が希フッ酸、例えば1:100に希釈した希フッ酸である場合、エッチングレートを0.3nm/min以下程度に保つことができる。ただし、第2応力膜52より第1応力膜51のエッチングレートは遅くしてある。これによって、上記第1応力膜51とこの第2応力膜51とでは、上記第1応力膜51が上記第2応力膜51よりも酸化シリコンをエッチングするエッチング種に対するエッチング耐性が強い絶縁膜となっている。
【0036】
上記第1実施例の半導体装置1では、ゲート電極25の側壁にサイドウォール絶縁膜23を介して第1応力膜51と、この第1応力膜51と同種の応力を有する第2応力膜52とが形成されていることから、上記第第1応力膜51、第2応力膜52の圧縮応力をゲート電極25下部の半導体基板11に形成されるチャネル領域に印加することが可能になる。
例えば、半導体装置1がPMOSトランジスタの場合、上記第1応力膜51、第2応力膜52の応力が圧縮応力であることから、トランジスタの移動度が向上される。
また、上記第1応力膜51および上記第2応力膜52は酸化シリコン膜をエッチングするときのエッチング種に対するエッチング耐性を有し、上記第1応力膜51は上記第2応力膜52よりも上記エッチング種に対するエッチング耐性が強いことから、上記ゲート電極形成溝23を形成するときに酸化シリコン膜をエッチングするような場合があっても、上記第1応力膜51、第2応力膜52がそのエッチングのエッチング種に対してエッチングされにくくなっている。しかも、第1応力膜51が第2応力膜52よりも上記エッチング種に対して強いエッチング耐性を有することから、第1応力膜51、第2応力膜52がともにエッチングされるとしても、第1応力膜51が第2応力膜52よりも多くエッチングされることはない。
したがって、第1応力膜51の膜減りが抑制できるため、ゲート電極25の側壁に近い側には第1応力膜51が残るので、ゲート電極25下部の半導体基板11に形成されるチャネル領域に第1応力膜51の圧縮応力を確実に印加することが可能になる。さらに、第2応力膜52の圧縮応力も印加かされるようになっている。
【0037】
よって、効果的にトランジスタのチャネル領域に第1応力膜51の圧縮応力を印加することができるので、トランジスタの移動度を確実に向上できるという利点がある。
【0038】
次に、本発明の半導体装置に係る一実施の形態(第2実施例)を、図2の概略構成断面図によって説明する。
【0039】
図2に示すように、半導体基板11に素子形成領域12が分離される素子分離領域13が形成されている。上記半導体基板11の素子形成領域12上に、ゲート電極形成溝23が形成されたサイドウォール絶縁膜21が形成されている。
上記半導体基板11は、例えばシリコン基板で形成され、上記サイドウォール絶縁膜21は、例えば窒化シリコン膜で形成されている。
【0040】
上記ゲート電極形成溝23内の上記半導体基板11上には、ゲート絶縁膜24を介してゲート電極25が形成されている。
【0041】
上記ゲート絶縁膜24は、例えば酸化シリコンよりも誘電率の高い高誘電率膜で形成される。例えば、ハフニウム(Hf)、ランタン(La)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zn)、タンタル(Ta)のうちから選択される1種の金属の金属酸化物、金属酸化珪化物、金属窒化酸化物、金属酸化窒化珪化物で形成される。その一例としては、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化アルミニウム(Al23)、酸化ランタン(La23)等の金属酸化物、窒化酸化ハフニウム(HfON)、窒化酸化アルミニウム(AlON)等の金属窒化酸化物、ハフニウムシリケート(HfSiO)を一例とする金属酸化珪化物、窒化ハフニウムシリケート(HfSiON)を一例とする金属酸化窒化珪化物等を用いることができる。
また、一例として、上記ゲート絶縁膜24は、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜等のシリコン系絶縁膜上に上記高誘電体絶縁膜を積層したものであってもよい。
【0042】
上記ゲート電極25は、例えば、チタン(Ti)の他にルテニウム(Ru)、ハフニウム(Hf)、イリジウム(Ir)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ランタン(La)、ニッケル(Ni)等の金属またはこれらのシリコン化合物、導電性を有する窒素化合物等の金属化合物を用いる。また、ポリシリコンを用いることもできる。
また、ゲート絶縁膜24とゲート電極25との間に、窒化チタン、チタン等の密着層(図示せず)を形成してもよい。
【0043】
上記ゲート電極25の両側における上記サイドウォール絶縁膜23の下部の半導体基板11には低濃度領域31、32が形成されている。この低濃度領域31、32は、エクステンション領域とも呼ばれるものである。
さらに、上記ゲート電極25の両側の半導体基板11には、上記低濃度領域31、32を介して、上記低濃度領域31、32よりも高濃度の高濃度領域33、34が形成されている。上記低濃度領域31、32および高濃度領域33、34でソース・ドレイン領域となる。
また、上記高濃度領域33、34の上部には、金属シリサイド層35、36が形成されている。上記金属シリサイド層35、36は、例えばコバルトシリサイド、ニッケルシリサイド、ニッケル白金シリサイド等で形成されている。
【0044】
また、上記半導体基板11上には、上記ゲート電極25の側壁に上記サイドウォール絶縁膜23を介して、応力(例えば引張応力)を有する第1応力膜55が形成されている。さらに、この第1応力膜55の外側の上記半導体基板11上には上記第1応力膜55と同種の応力を有する第2応力膜56が形成されている。
上記第1応力膜55および上記第2応力膜56は酸化シリコン膜をエッチングするときのエッチング種に対するエッチング耐性を有し、上記第1応力膜55は上記第2応力膜56よりも上記エッチング種に対するエッチング耐性が強いものとなっている。
【0045】
具体的には、上記第1応力膜55は上記第2応力膜56よりも膜密度が高い。
【0046】
例えば、上記第1応力膜55は1.6GPaより大きく2.0GPa以下の引張応力を有し、上記第2応力膜56は0.8GPa以上1.6GPa以下の引張応力を有する。
【0047】
上記のような引張応力値を有する第1応力膜55としては、上記窒化シリコン膜中に水素が12atomic%未満含まれる膜がある。
【0048】
上記第1応力膜55の膜中の水素濃度が12atomic%以上であると、酸化シリコンのウエットエッチング液、例えば希フッ酸に対する十分なエッチング耐性を得ることができなくなる。したがって、第1応力膜55の水素濃度は、12atomic%未満とした。
【0049】
さらに、上記第1応力膜55は、膜厚が例えば5nm以上30nm未満の範囲に形成される。
【0050】
上記第1応力膜55の膜厚が5nmよりも薄いと引張応力のかかりが悪くなり、またエッチングレートが早くなる。上記第1応力膜51の膜厚が30nm以上になると、第1応力膜55が強い引張応力(1.6GPaより大きく2.0GPa以下)を有する膜であるため、その引張応力がいっそう強くなりすぎてクラックが生じやすくなる。したがって、第1応力膜55の膜厚は、5nm以上30nm未満とした。
【0051】
また、第2応力膜52としては、上記窒化シリコン膜中に水素が12atomic%以上25atomic%以下含まれる膜がある。
【0052】
上記第2応力膜56の膜中の水素濃度が25atomic%よりも多いと、酸化シリコンのウエットエッチング液、例えば希フッ酸に対するエッチング耐性を得ることができず、上記第2応力膜56の膜中の水素濃度が12atomic%未満になると、第2応力膜56としての膜厚では膜中の引張応力が強すぎて、クラックが発生しやすくなる。したがって、第2応力膜56の水素濃度は、12atomic%以上25atomic%以下とした。
【0053】
上記引張応力を有する窒化シリコン膜からなる第2応力膜56は、膜厚が例えば30nm以上70nm以下の範囲に形成されている。
【0054】
また、上記第2応力膜56の膜厚が30nmよりも薄いと第2応力膜56としての引張応力では引張応力のかかりが悪くなる。上記第2応力膜56の膜厚が70nm以上になると、第2応力膜56が有する引張応力(0.8GPa以上1.6GPa以下)であっても、引張応力が強すぎてクラックが発生しやすくなる。また、ゲート電極の高さが100nm程度でることから、上記第1応力膜55と第2応力膜56とを合わせた膜厚が100nm程度あれば十分である。これらのことを鑑みて、第2応力膜56の膜厚は、30nm以上70nm以下とした。
上記条件により、上記第2応力膜56(引張応力膜の場合)は、0.8GPa以上1.6GPa以下の引張応力を有する。
【0055】
上記のような第1応力膜55は、酸化シリコン膜をウエットエッチングするエッチング種に対して、高いエッチング耐性を有する。例えばエッチング種が希フッ酸、例えば1:100に希釈した希フッ酸である場合、エッチングレートを0.2nm/min以下程度に保つことができる。
【0056】
また、上記のような第2応力膜56は、酸化シリコン膜をウエットエッチングするエッチング種に対して、高いエッチング耐性を有する。例えばエッチング種が希フッ酸、例えば1:100に希釈した希フッ酸である場合、エッチングレートを0.3nm/min以下程度に保つことができる。ただし、第2応力膜56より第1応力膜55のエッチングレートは遅くしてある。これによって、上記第1応力膜55とこの第2応力膜56とでは、上記第1応力膜55が上記第2応力膜56よりも酸化シリコンをエッチングするエッチング種に対するエッチング耐性が強い絶縁膜となっている。
【0057】
上記第2実施例の半導体装置2では、ゲート電極25の側壁にサイドウォール絶縁膜23を介して第1応力膜55と、この第1応力膜55と同種の応力を有する第2応力膜56とが形成されていることから、上記第第1応力膜55、第2応力膜56の引張応力をゲート電極25下部の半導体基板11に形成されるチャネル領域に印加することが可能になる。
例えば、半導体装置2がNMOSトランジスタの場合、上記第1応力膜55、第2応力膜56の応力が引張応力であることから、トランジスタの移動度が向上される。
また、上記第1応力膜55および上記第2応力膜56は酸化シリコン膜をエッチングするときのエッチング種に対するエッチング耐性を有し、上記第1応力膜55は上記第2応力膜56よりも上記エッチング種に対するエッチング耐性が強いことから、上記ゲート電極形成溝23を形成するときに酸化シリコン膜をエッチングするような場合があっても、上記第1応力膜55、第2応力膜56がそのエッチングのエッチング種に対してエッチングされにくくなっている。しかも、第1応力膜55が第2応力膜56よりも上記エッチング種に対して強いエッチング耐性を有することから、第1応力膜55、第2応力膜56がともにエッチングされるとしても、第1応力膜55が第2応力膜56よりも多くエッチングされることはない。
したがって、第1応力膜55の膜減りが抑制できるため、ゲート電極25の側壁に近い側には第1応力膜55が残るので、ゲート電極25下部の半導体基板11に形成されるチャネル領域に第1応力膜55の引張応力を確実に印加することが可能になる。さらに、第2応力膜52の応力も印加されるようになっている。
【0058】
よって、効果的にトランジスタのチャネル領域に第1応力膜55の引張応力を印加することができるので、トランジスタの移動度を確実に向上できるという利点がある。
【0059】
次に、本発明の半導体装置の製造方法に係る一実施の形態(第1実施例)を、図3ないし図5の製造工程断面図によって説明する。
【0060】
図3(1)に示すように、半導体基板11に素子形成領域12が分離される素子分離領域13を形成した後、半導体基板11の素子形成領域12上に、ダミーゲート絶縁膜41を介してダミーゲートパターン42を形成する。上記ダミーゲートパターン42は、ポリシリコン膜で形成されていて、図示したように上部にハードマスクとして例えば窒化シリコン膜43が形成されていてもよい。また、上記ダミーゲート絶縁膜41は、酸化シリコン膜で形成されている。
【0061】
上記ダミーゲートパターン42の両側の半導体基板11には低濃度領域31、32が形成されている。この低濃度領域31、32は、エクステンション領域とも呼ばれるものである。上記低濃度領域31、32上の上記ダミーゲートパターン42の側壁には、サイドウォール絶縁膜21が形成されている。このサイドウォール絶縁膜21は、窒化シリコン膜で形成されている。
さらに、上記ダミーゲートパターン42の両側の半導体基板11には上記低濃度領域31、32を介して、上記低濃度領域31、32よりも高濃度の高濃度領域33、34が形成されている。上記低濃度領域31、32および高濃度領域33、34でソース・ドレイン領域となる。
また、上記高濃度領域33、34の上部には、金属シリサイド層35、36が形成されている。上記金属シリサイド層35、36は、例えばコバルトシリサイド、ニッケルシリサイド、ニッケル白金シリサイド等で形成されている。
【0062】
次に、図3(2)に示すように、上記ダミーゲートパターン42、サイドウォール絶縁膜21等を被覆するように、上記半導体基板11上に、トランジスタのチャネル領域に応力を印加するための第1応力膜51を形成する。この第1応力膜51は、通常、NMOSトランジスタの場合には引張応力を有する、例えば窒化シリコン膜で形成され、PMOSトランジスタの場合には圧縮応力を有する、例えば窒化シリコン膜で形成される。以下、圧縮応力を有する場合について説明する。
上記圧縮応力を有する窒化シリコン膜からなる第1応力膜51は、膜厚が例えば5nm以上30nm未満の範囲に形成される。
例えば、下記に記載した成膜条件の一例を用いて成膜することにより、2.0GPa以上3.0GPa以下の大きな圧縮応力を持つ窒化シリコン膜を形成する。
このような大きな圧縮応力を持つ窒化シリコン膜は、膜密度が高い膜であるため、酸化シリコンをエッチングするときのエッチング種に対するエッチング耐性を有する膜となる。
【0063】
上記圧縮応力を有する第1応力膜51の成膜条件の一例は、
原料ガスに、水素(H2)、窒素(N2)、アルゴン(Ar)、アンモニア(NH3)、トリメチルシラン(SiH(CH33:3MS)を用いる。
それぞれのガス流量は、一例として、
水素(H2)を1000cm3/min以上5000cm3/min以下、
窒素(N2)を500cm3/min以上2500cm3/min以下、
アルゴン(Ar)を1000cm3/min以上5000cm3/min以下、
アンモニア(NH3)を50cm3/min以上200cm3/min以下、
トリメチルシラン(SiH(CH33:3MS)を50cm3/min以上100cm3/min以下とする。
成膜時の基板温度を450℃〜550℃とし、
成膜雰囲気の圧力を133Pa〜667Paとし、
RFパワー(高周波)を50W以上100W以下とし、
RFパワー(低周波)を10W以上50W以下とする。
【0064】
上記成膜条件で形成された第1応力膜51は、膜中に炭素を6atomic%以上8atomic%以下含む膜となり、上記2.0GPa以上3.0GPa以下の大きな圧縮応力を持つ窒化シリコン膜となる。
例えば、上記第1応力膜51は、1:100に希釈した希フッ酸をエッチング種に用いたウエットエッチングに対するエッチングレートを0.2nm/min以下程度に保つことができる。
【0065】
上記第1応力膜51の膜中の炭素濃度が6atomic%未満であると、酸化シリコンのウエットエッチング液、例えば希フッ酸に対する十分なエッチング耐性を得ることができず、上記第1応力膜51の膜中の炭素濃度が8atomic%より多くなると、膜中の圧縮応力が強すぎて、膜剥がれを起こしやすくなる。したがって、第1応力膜51の炭素濃度は、6atomic%以上8atomic%以下とした。
【0066】
また、上記第1応力膜51の膜厚が5nmよりも薄いと圧縮応力のかかりが悪くなり、またエッチングレートが早くなる。上記第1応力膜51の膜厚が30nm以上になると、第1応力膜51が強い圧縮応力(2.0GPa以上3.0GPa以下)を有する膜であるため、その圧縮応力がいっそう強くなりすぎて膜剥れが生じやすくなる。したがって、第1応力膜51の膜厚は、5nm以上30nm未満とした。
上記条件により、上記第1応力膜51(圧縮応力膜の場合)は、2.0GPa以上3.0GPa以下の大きな圧縮応力を有する。
【0067】
次に、図4(3)に示すように、上記第1応力膜51上に圧縮応力を有する第2応力膜52を形成する。この第2応力膜52は、圧縮応力を有する、例えば窒化シリコン膜で形成される。
上記圧縮応力を有する窒化シリコン膜からなる第2応力膜52は、膜厚が例えば30nm以上70nm以下の範囲に形成されている。
例えば、下記に記載した成膜条件の一例を用いて成膜することにより、1.0GPa以上2.0GPa未満の圧縮応力を持つ窒化シリコン膜を形成することができる。
このような圧縮応力を持つ窒化シリコン膜は、密度が高い膜であるため、酸化シリコンをエッチングするときのエッチング種に対するエッチング耐性を有する膜となる。また、上記第1応力膜51とこの第2応力膜51とでは、上記第1応力膜51が上記第2応力膜51よりも酸化シリコンをエッチングするエッチング種に対するエッチング耐性が強い絶縁膜となる。
【0068】
上記圧縮応力を有する第2応力膜52の成膜条件の一例は、
原料ガスに、水素(H2)、窒素(N2)、アルゴン(Ar)、アンモニア(NH3)、トリメチルシラン(SiH(CH33:3MS)を用いる。
それぞれのガス流量は、一例として、
水素(H2)を1000cm3/min以上5000cm3/min以下、
窒素(N2)を500cm3/min以上2500cm3/min以下、
アルゴン(Ar)を1000cm3/min以上5000cm3/min以下、
アンモニア(NH3)を50cm3/min以上200cm3/min以下、
トリメチルシラン(SiH(CH33:3MS)を10cm3/min以上50cm3/min未満とする。
成膜時の基板温度を450℃〜550℃とし、
成膜雰囲気の圧力を133Pa〜667Paとし、
RFパワー(高周波)を50W以上100W以下とし、
RFパワー(低周波)を10W以上50W以下とする。
【0069】
上記成膜条件で形成された第2応力膜52は、膜中に炭素を1atomic%以上6atomic%未満含む膜となり、上記1.0GPa以上2.0GPa以下の大きな圧縮応力を持つ窒化シリコン膜となる。
例えば、上記第2応力膜52は、1:100に希釈した希フッ酸をエッチング種に用いたウエットエッチングに対するエッチングレートを0.3nm/min以下程度に保つことができる。
【0070】
上記第2応力膜52の膜中の炭素濃度が1atomic%未満であると、酸化シリコンのウエットエッチング液、例えば希フッ酸に対するエッチング耐性を得ることができず、上記第2応力膜52の膜中の炭素濃度が6atomic%以上になると、第2応力膜52としての膜厚では膜中の圧縮応力が強すぎて、膜剥がれを起こしやすくなる。したがって、第2応力膜52の炭素濃度は、1atomic%以上6atomic%未満とした。
【0071】
また、上記第2応力膜52の膜厚が30nmよりも薄いと第2応力膜52としての圧縮応力では圧縮応力のかかりが悪くなる。上記第2応力膜52の膜厚が70nm以上になると、第2応力膜52が有する圧縮応力(1.0GPa以上2.0GPa未満)であっても、圧縮応力が強すぎて膜剥れが生じやすくなる。また、ゲート電極の高さが100nm程度でることから、上記第1応力膜51と第2応力膜52とを合わせた膜厚が100nm程度あれば十分である。これらのことを鑑みて、第1応力膜51の膜厚は、30nm以上70nm以下とした。
上記条件により、上記第2応力膜52(圧縮応力膜の場合)は、1.0GPa以上2.0GPa未満の圧縮応力を有する。
【0072】
したがって、上記第1応力膜51および上記第2応力膜52は上記ダミーゲートパターン42および上記ダミーゲート絶縁膜41をエッチングするときのエッチング種に対するエッチング耐性を有する膜で形成され、かつ上記第1応力膜51は上記第2応力膜52よりも上記エッチング種に対するエッチング耐性が強い絶縁膜で形成されることになる。
【0073】
次に、図4(4)に示すように、上記第2応力膜52上に、絶縁膜61を形成する。この絶縁膜61は、例えばPMD(プリメタルデポジション)膜と呼ばれるもので、例えば高密度プラズマ(HDP)CVDにより製造された酸化シリコン膜やノンドープトシリケートガラス(SA−NSG)などの酸化膜で形成される。
【0074】
次に、図5(5)に示すように、上記ダミーゲートパターン42(前記図3参照)の上部を露出する。例えば、上記ダミーゲートパターン42上に形成されている窒化シリコン膜43(前記図3参照)、上記第1応力膜51、第2応力膜52、絶縁膜61(前記図4(4)参照)等を、例えば、化学的機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)によって除去し、上記ダミーゲートパターン42を露出させる。
上記化学的機械研磨では、まず、絶縁膜61の表面が平坦化される。さらに、上記ダミーゲートパターン42のポリシリコンで形成されている部分の上部が露出するまで、窒化シリコン膜43、上記第1応力膜51、第2応力膜52、絶縁膜61、サイドウォール絶縁膜21の上部等を研磨する。
次いで、ドライエッチングによって、ポリシリコンで形成されているダミーゲートパターン42を除去する。さらにウエットエッチングにより、ダミーゲート絶縁膜41を除去する。このウエットエッチングでは、例えば希フッ酸(DHF)を用いた。この場合、酸化シリコンからなる絶縁膜61も除去される。
この結果、サイドウォール絶縁膜21の内側にゲート電極形成溝23が形成される。
上記ウエットエッチングのとき、第1応力膜51および第2応力膜52ともに、ウエットエッチング耐性を有する窒化シリコン膜で形成されてはいるが、第1応力膜51のほうが第2応力膜52よりもさらにウエットエッチング耐性が強いため、従来技術のように、サイドウォール絶縁膜21の側壁の応力膜がエッチングされるようなことは起こらない。したがって、酸化シリコンを除去するウエットエッチング工程において、第1応力膜51の膜減りが抑制でき、効果的にゲート電極形成溝23の下部の半導体基板に形成されるチャネル領域に応力(ストレス)を印加することができるようになる。
なお、図5(5)では、ゲート電極形成溝23を形成した後の状態を図示した。
【0075】
次に、図5(6)に示すように、上記ゲート電極形成溝23内の上記半導体基板11上にゲート絶縁膜24を介してゲート電極25を形成する。
【0076】
上記ゲート絶縁膜24は、例えば酸化シリコンよりも誘電率の高い高誘電率膜で形成される。例えば、ハフニウム(Hf)、ランタン(La)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zn)、タンタル(Ta)のうちから選択される1種の金属の金属酸化物、金属酸化珪化物、金属窒化酸化物、金属酸化窒化珪化物で形成される。その一例としては、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化アルミニウム(Al23)、酸化ランタン(La23)等の金属酸化物、窒化酸化ハフニウム(HfON)、窒化酸化アルミニウム(AlON)等の金属窒化酸化物、ハフニウムシリケート(HfSiO)を一例とする金属酸化珪化物、窒化ハフニウムシリケート(HfSiON)を一例とする金属酸化窒化珪化物等を用いることができる。
また、一例として、上記ゲート絶縁膜24は、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜等のシリコン系絶縁膜上に上記高誘電体絶縁膜を積層したものであってもよい。
【0077】
上記ゲート電極25は、例えば、チタン(Ti)の他にルテニウム(Ru)、ハフニウム(Hf)、イリジウム(Ir)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ランタン(La)、ニッケル(Ni)等の金属またはこれらのシリコン化合物、導電性を有する窒素化合物等の金属化合物を用いる。また、ポリシリコンを用いることもできる。
また、ゲート絶縁膜24とゲート電極25との間に、窒化チタン、チタン等の密着層(図示せず)を形成してもよい。
【0078】
上記第1実施例の製造方法では、ゲート電極25の側壁にサイドウォール絶縁膜23を介して第1応力膜51を形成し、さらにこの第1応力膜51と同種の応力を有する第2応力膜52を形成することから、上記第1応力膜51、第2応力膜52の応力をゲート電極25下部の半導体基板11に形成されるチャネル領域に印加することが可能になる。
例えば、半導体装置1がPMOSトランジスタの場合、上記第1、第2応力膜の応力が圧縮応力であれば、PMOSトランジスタの移動度を向上させられる。
また、上記第1応力膜51および上記第2応力膜52は酸化シリコン膜をエッチングするときのエッチング種、例えば希フッ酸に対するエッチング耐性を有し、上記第1応力膜51は上記第2応力膜52よりも上記エッチング種に対するエッチング耐性が強い絶縁膜で形成されることから、上記ゲート電極形成溝23を形成するときに酸化シリコン膜をエッチングするような場合、上記第1応力膜51、第2応力膜52がそのエッチングのエッチング種に対してエッチングされにくくなっている。しかも、第1応力膜51が第2応力膜52よりも上記エッチング種に対して強いエッチング耐性を有することから、第1応力膜51、第2応力膜52がエッチングされるとしても、第1応力膜51が第2応力膜52よりも多くエッチングされることはない。
したがって、ゲート電極25の側壁に近い側には第1応力膜51が残るので、ゲート電極25下部の半導体基板11に形成されるチャネル領域に第1応力膜51の応力を確実に印加することが可能になる。
【0079】
よって、第1応力膜51の膜減りが抑制できるため、効果的にトランジスタのチャネル領域に第1応力膜51の応力を印加することができるので、トランジスタの移動度を確実に向上できるという利点がある。
【0080】
上記第1実施例の製造方法では、上記第1応力膜51および第2応力膜51を成膜するときの原料ガスのトリメチルシランの代わりに、例えばテトラメチルシラン(4MS:Si(CH34)を用いることもできる。このように、トリメチルシランの代わりに、テトラメチルシラン(4MS:Si(CH34)を用いても、上記製造方法と同様な効果を得ることができる。
【0081】
次に、本発明の半導体装置の製造方法に係る一実施の形態(第2実施例)を、図6ないし図9の製造工程断面図によって説明する。
【0082】
図6(1)に示すように、半導体基板11に素子形成領域12が分離される素子分離領域13を形成した後、半導体基板11の素子形成領域12上に、ダミーゲート絶縁膜41を介してダミーゲートパターン42を形成する。上記ダミーゲートパターン42は、ポリシリコン膜で形成されていて、図示したように上部に窒化シリコン膜43が形成されていてもよい。また、上記ダミーゲート絶縁膜41は、酸化シリコン膜で形成されている。
【0083】
上記ダミーゲートパターン42の両側の半導体基板11には低濃度領域31、32が形成されている。この低濃度領域31、32は、エクステンション領域とも呼ばれるものである。上記低濃度領域31、32上の上記ダミーゲートパターン42の側壁には、サイドウォール絶縁膜21が形成されている。このサイドウォール絶縁膜21は、窒化シリコン膜で形成されている。
さらに、上記ダミーゲートパターン42の両側の半導体基板11には上記低濃度領域31、32を介して、上記低濃度領域31、32よりも高濃度の高濃度領域33、34が形成されている。上記低濃度領域31、32および高濃度領域33、34でソース・ドレイン領域となる。
また、上記高濃度領域33、34の上部には、金属シリサイド層35、36が形成されている。上記金属シリサイド層35、36は、例えばコバルトシリサイド、ニッケルシリサイド、ニッケル白金シリサイド等で形成されている。
【0084】
次に、図6(2)に示すように、上記ダミーゲートパターン42、サイドウォール絶縁膜21等を被覆するように、上記半導体基板11上に、トランジスタのチャネル領域に応力を印加するための第1応力膜を形成する。この第1応力膜は、通常、NMOSトランジスタの場合には引張応力を有する、例えば窒化シリコン膜で形成され、PMOSトランジスタの場合には圧縮応力を有する、例えば窒化シリコン膜で形成されている。ここでは圧縮応力を有する場合について説明する。
上記圧縮応力を有する窒化シリコン膜からなる第1応力膜は、膜厚が例えば5nm以上30nm未満の範囲に形成される。
例えば、下記に記載した成膜条件の一例を用いて成膜することにより、2.0GPa以上3.0GPa以下の大きな圧縮応力を持つ窒化シリコン膜を形成することができる。
このような大きな圧縮応力を持つ窒化シリコン膜は、膜密度が高い膜であるため、酸化シリコンをエッチングするときのエッチング種に対するエッチング耐性を有する膜となる。
【0085】
上記第1応力膜は、以下のようにして形成される。
まず、上記ダミーゲートパターン42、サイドウォール絶縁膜21等を被覆するように、上記半導体基板11上に、トランジスタのチャネル領域に応力を印加するための第1応力初期膜53を形成する。
【0086】
上記第1応力初期膜53の成膜条件の一例は、
原料ガスに、水素(H2)、窒素(N2)、アルゴン(Ar)、アンモニア(NH3)、トリメチルシラン(SiH(CH33:3MS)を用いる。
それぞれのガス流量は、一例として、
水素(H2)を1000cm3/min以上5000cm3/min以下、
窒素(N2)を500cm3/min以上2500cm3/min以下、
アルゴン(Ar)を1000cm3/min以上5000cm3/min以下、
アンモニア(NH3)を50cm3/min以上200cm3/min以下、
トリメチルシラン(SiH(CH33:3MS)を10cm3/min以上50cm3/min未満とする。
成膜時の基板温度を450℃〜550℃とし、
成膜雰囲気の圧力を133Pa〜667Paとし、
RFパワー(高周波)を50W以上100W以下とし、
RFパワー(低周波)を10W以上50W以下とする。
【0087】
上記成膜条件で形成された第1応力初期膜53は、膜中に炭素を1atomic%以上6atomic%未満含む膜となり、上記1.0GPa以上2.0GPa以下の大きな圧縮応力を持つ窒化シリコン膜となる。
例えば、上記第1応力初期膜53は、1:100に希釈した希フッ酸をエッチング種に用いたウエットエッチングに対するエッチングレートを0.3nm/min以下程度に保つことができる。
【0088】
次に、図7(3)に示すように、上記第1応力初期膜53に熱処理を施す。この熱処理条件は、一例として、熱処理雰囲気を窒素(N2)と水素(H2)の混合ガス雰囲気、もしくは窒素雰囲気とし、
それぞれのガス流量は、一例として、
窒素(N2)を5000cm3/min以上20000cm3/min以下、
水素(H2)を0cm3/min以上20000cm3/min以下とする。
上記水素は、0cm3/minとし、供給しなくてもよく、この場合には窒素単独の熱処理雰囲気となる。
熱処理時の基板温度を450℃〜550℃とする。
上記熱処理を施すことによって、膜中の水素量が低減され、また、熱処理雰囲気中の窒素がシリコンのダングリングボンドに結合することで、より緻密な膜となり、第1応力初期膜53は、圧縮応力が増し、圧縮応力値が2GPa以上3GPa以下を有する第1応力膜51となる。
上記熱処理は、単に膜中に水素量を低減するだけならば、希ガスを用いてもよい。
この第1応力膜51は、1:100に希釈した希フッ酸をエッチング種に用いたウエットエッチングに対するエッチングレートを0.2nm/min以下程度に保つことができる。
【0089】
また、上記第1応力膜51の膜厚が5nmよりも薄いと圧縮応力のかかりが悪くなり、またエッチングレートが早くなる。上記第1応力膜51の膜厚が30nm以上になると、第1応力膜51が強い圧縮応力(2.0GPa以上3.0GPa以下)を有する膜であるため、その圧縮応力がいっそう強くなりすぎて膜剥れが生じやすくなる。したがって、第1応力膜51の膜厚は、5nm以上30nm未満とした。
【0090】
次に、図7(4)に示すように、上記第1応力膜51上に圧縮応力を有する第2応力膜52を形成する。この第2応力膜52は、通常、PMOSトランジスタの場合には圧縮応力を有する、例えば窒化シリコン膜で形成されている。ここでは圧縮応力を有する場合について説明する。
上記圧縮応力を有する窒化シリコン膜からなる第2応力膜52は、膜厚が例えば30nm以上70nm以下の範囲に形成されている。
例えば、下記に記載した成膜条件の一例を用いて成膜することにより、1.0GPa以上2.0GPa未満の圧縮応力を持つ窒化シリコン膜を形成することができる。
このような圧縮応力を持つ窒化シリコン膜は、密度が高い膜であるため、酸化シリコンをエッチングするときのエッチング種に対するエッチング耐性を有する膜となる。また、上記第1応力膜51とこの第2応力膜51とでは、上記第1応力膜51が上記第2応力膜51よりも酸化シリコンをエッチングするエッチング種に対するエッチング耐性が強い絶縁膜となる。
【0091】
上記圧縮応力を有する第2応力膜52の成膜条件の一例は、
原料ガスに、水素(H2)、窒素(N2)、アルゴン(Ar)、アンモニア(NH3)、トリメチルシラン(SiH(CH33:3MS)を用いる。
それぞれのガス流量は、一例として、
水素(H2)を1000cm3/min以上5000cm3/min以下、
窒素(N2)を500cm3/min以上2500cm3/min以下、
アルゴン(Ar)を1000cm3/min以上5000cm3/min以下、
アンモニア(NH3)を50cm3/min以上200cm3/min以下、
トリメチルシラン(SiH(CH33:3MS)を10cm3/min以上50cm3/min未満とする。
成膜時の基板温度を450℃〜550℃とし、
成膜雰囲気の圧力を133Pa〜667Paとし、
RFパワー(高周波)を50W以上100W以下とし、
RFパワー(低周波)を10W以上50W以下とする。
【0092】
上記成膜条件で形成された第2応力膜52は、膜中に炭素を1atomic%以上6atomic%未満含む膜となり、上記1.0GPa以上2.0GPa以下の大きな圧縮応力を持つ窒化シリコン膜となる。
例えば、上記第2応力膜52は、1:100に希釈した希フッ酸をエッチング種に用いたウエットエッチングに対するエッチングレートを0.3nm/min以下程度に保つことができる。
【0093】
上記第2応力膜52の膜中の炭素濃度が1atomic%未満であると、酸化シリコンのウエットエッチング液、例えば希フッ酸に対するエッチング耐性を得ることができず、上記第2応力膜52の膜中の炭素濃度が6atomic%以上になると、第2応力膜52としての膜厚では膜中の圧縮応力が強すぎて、膜剥がれを起こしやすくなる。したがって、第2応力膜52の炭素濃度は、1atomic%以上6atomic%未満とした。
【0094】
また、上記第2応力膜52の膜厚が30nmよりも薄いと第2応力膜52としての圧縮応力では圧縮応力のかかりが悪くなる。上記第2応力膜52の膜厚が70nm以上になると、第2応力膜52が有する圧縮応力(1.0GPa以上2.0GPa未満)であっても、圧縮応力が強すぎて膜剥れが生じやすくなる。また、ゲート電極の高さが100nm程度でることから、上記第1応力膜51と第2応力膜52とを合わせた膜厚が100nm程度あれば十分である。これらのことを鑑みて、第1応力膜51の膜厚は、30nm以上70nm以下とした。
上記条件により、上記第2応力膜52(圧縮応力膜の場合)は、1.0GPa以上2.0GPa未満の圧縮応力を有する。
【0095】
したがって、上記第1応力膜51および上記第2応力膜52は上記ダミーゲートパターン42および上記ダミーゲート絶縁膜41をエッチングするときのエッチング種に対するエッチング耐性を有する膜で形成され、かつ上記第1応力膜51は上記第2応力膜52よりも上記エッチング種に対するエッチング耐性が強い絶縁膜で形成されることになる。
【0096】
次に、図8(5)に示すように、上記第2応力膜52上に、絶縁膜61を形成する。この絶縁膜61は、例えばPMD(プリメタルデポジション)膜と呼ばれるもので、例えば高密度プラズマ(HDP)CVDにより製造された酸化シリコン膜やノンドープトシリケートガラス(SA−NSG)などの酸化膜で形成される。
【0097】
次に、図8(6)に示すように、上記ダミーゲートパターン42(前記図6参照)のポリシリコンで形成されている部分の上部を露出する。例えば、上記ダミーゲートパターン42のポリシリコン上に形成されている窒化シリコン膜43(前記図6参照)、上記第1応力膜51、第2応力膜52、絶縁膜61(前記図7(4)参照)等を、例えば、化学的機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)によって除去し、上記ダミーゲートパターン42のポリシリコンを露出させる。
上記化学的機械研磨では、まず、絶縁膜61の表面が平坦化される。さらに、上記ダミーゲートパターン42のポリシリコンで形成されている部分の上部が露出するまで、窒化シリコン膜43、上記第1応力膜51、第2応力膜52、絶縁膜61、サイドウォール絶縁膜21の上部等を研磨する。
次いで、ドライエッチングによって、ポリシリコンで形成されているダミーゲートパターン42(前記図6(1)参照)を除去する。さらにウエットエッチングにより、ダミーゲート絶縁膜41(前記図6(1)参照)を除去する。このウエットエッチングでは、例えば希フッ酸(DHF)を用いた。この場合、酸化シリコンからなる絶縁膜61(前記図7(4)参照)も除去される。
この結果、サイドウォール絶縁膜21の内側にゲート電極形成溝23が形成される。
上記ウエットエッチングのとき、第1応力膜51および第2応力膜52ともに、ウエットエッチング耐性を有する窒化シリコン膜で形成されてはいるが、第1応力膜51のほうが第2応力膜52よりもさらにウエットエッチング耐性が強いため、従来技術のように、サイドウォール絶縁膜21の側壁の応力膜がエッチングされるようなことは起こらない。したがって、酸化シリコンを除去するウエットエッチング工程において、第1応力膜51の膜減りが抑制でき、効果的にゲート電極形成溝23の下部の半導体基板に形成されるチャネル領域に応力(ストレス)を印加することができるようになる。
【0098】
次に、図9(7)に示すように、上記ゲート電極形成溝23内の上記半導体基板11上にゲート絶縁膜24を介してゲート電極25を形成する。
【0099】
上記ゲート絶縁膜24は、例えば酸化シリコンよりも誘電率の高い高誘電率膜で形成される。例えば、ハフニウム(Hf)、ランタン(La)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zn)、タンタル(Ta)のうちから選択される1種の金属の金属酸化物、金属酸化珪化物、金属窒化酸化物、金属酸化窒化珪化物で形成される。その一例としては、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化アルミニウム(Al23)、酸化ランタン(La23)等の金属酸化物、窒化酸化ハフニウム(HfON)、窒化酸化アルミニウム(AlON)等の金属窒化酸化物、ハフニウムシリケート(HfSiO)を一例とする金属酸化珪化物、窒化ハフニウムシリケート(HfSiON)を一例とする金属酸化窒化珪化物等を用いることができる。
また、一例として、上記ゲート絶縁膜24は、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜等のシリコン系絶縁膜上に上記高誘電体絶縁膜を積層したものであってもよい。
【0100】
上記ゲート電極25は、例えば、チタン(Ti)の他にルテニウム(Ru)、ハフニウム(Hf)、イリジウム(Ir)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ランタン(La)、ニッケル(Ni)等の金属またはこれらのシリコン化合物、導電性を有する窒素化合物等の金属化合物を用いる。また、ポリシリコンを用いることもできる。
また、ゲート絶縁膜24とゲート電極25との間に、窒化チタン、チタン等の密着層(図示せず)を形成してもよい。
【0101】
上記第2実施例の製造方法では、ゲート電極25の側壁にサイドウォール絶縁膜23を介して第1応力膜51を形成し、さらにこの第1応力膜51と同種の応力を有する第2応力膜52を形成することから、上記第1応力膜51、第2応力膜52の応力をゲート電極25下部の半導体基板11に形成されるチャネル領域に印加することが可能になる。
例えば、半導体装置1がPMOSトランジスタの場合、上記第1、第2応力膜の応力が圧縮応力であれば、PMOSトランジスタの移動度を向上させられる。
また、上記第1応力膜51および上記第2応力膜52は酸化シリコン膜をエッチングするときのエッチング種、例えば希フッ酸に対するエッチング耐性を有し、上記第1応力膜51は上記第2応力膜52よりも上記エッチング種に対するエッチング耐性が強い絶縁膜で形成されることから、上記ゲート電極形成溝23を形成するときに酸化シリコン膜をエッチングするような場合、上記第1応力膜51、第2応力膜52がそのエッチングのエッチング種に対してエッチングされにくくなっている。しかも、第1応力膜51が第2応力膜52よりも上記エッチング種に対して強いエッチング耐性を有することから、第1応力膜51、第2応力膜52がエッチングされるとしても、第1応力膜51が第2応力膜52よりも多くエッチングされることはない。
したがって、ゲート電極25の側壁に近い側には第1応力膜51が残るので、ゲート電極25下部の半導体基板11に形成されるチャネル領域に第1応力膜51の応力を確実に印加することが可能になる。
【0102】
よって、第1応力膜51の膜減りが抑制できるため、効果的にトランジスタのチャネル領域に第1応力膜51の応力を印加することができるので、トランジスタの移動度を確実に向上できるという利点がある。
【0103】
上記第2実施例の製造方法では、上記第1応力膜51および第2応力膜51を成膜するときの原料ガスのトリメチルシランの代わりに、例えばテトラメチルシラン(4MS:Si(CH34)を用いることもできる。このように、トリメチルシランの代わりに、テトラメチルシラン(4MS:Si(CH34)を用いても、上記製造方法と同様な効果を得ることができる。
【0104】
次に、本発明の半導体装置の製造方法に係る一実施の形態(第3実施例)を説明する。 この第3実施例の製造方法は、前記第1実施例の製造方法において、第1応力膜51を形成した後、熱処理を行う方法である。この熱処理以外は、前記第1実施例の製造方法と同様である。
【0105】
第3実施例における熱処理条件は、一例として、熱処理雰囲気を窒素(N2)と水素(H2)の混合ガス雰囲気、もしくは窒素雰囲気とし、
それぞれのガス流量は、一例として、
窒素(N2)を5000cm3/min以上20000cm3/min以下、
水素(H2)を0cm3/min以上20000cm3/min以下とする。
上記水素は、0cm3/minとし、供給しなくてもよく、この場合には窒素単独の熱処理雰囲気となる。
熱処理時の基板温度を450℃〜550℃とする。
上記熱処理を施すことによって、第1応力膜51の膜中の水素量が低減され、また、熱処理雰囲気中の窒素がシリコンのダングリングボンドに結合することで、より緻密な膜となり、圧縮応力が増し、第1応力膜51はより圧縮応力値が強い膜となる。
上記熱処理は、単に膜中に水素量を低減するだけならば、希ガスを用いてもよい。
また、この熱処理では、第1応力膜51の圧縮応力値が強すぎないようにすることが必要である。先に述べたように、第1応力膜51の圧縮応力値が3.0GPaを超えるようになると、膜剥がれの原因になる。このため、第1応力膜51の圧縮応力値が3.0GPa以下になるようにする。
この熱処理によって、第1応力膜51は、1:100に希釈した希フッ酸をエッチング種に用いたウエットエッチングに対するエッチングレートを0.2nm/min以下程度に保つことができる。
【0106】
また、第3実施例の製造方法でも、前記第1実施例の製造方法と同様な作用、効果を得ることができる。
【0107】
上記説明では、半導体装置としてPMOSトランジスタの一例を説明したが、NMOSトランジスタにも本発明の製造方法は適用できる。その実施の形態の一例を、本発明の半導体装置の製造方法に係る一実施の形態(第4実施例)として、図10ないし図13の製造工程断面図によって説明する。
【0108】
図10(1)に示すように、半導体基板11に素子形成領域12が分離される素子分離領域13を形成した後、半導体基板11の素子形成領域12上に、ダミーゲート絶縁膜41を介してダミーゲートパターン42を形成する。上記ダミーゲートパターン42は、ポリシリコン膜で形成されていて、図示したように上部に窒化シリコン膜43が形成されていてもよい。また、上記ダミーゲート絶縁膜41は、酸化シリコン膜で形成されている。
【0109】
上記ダミーゲートパターン42の両側の半導体基板11には低濃度領域31、32が形成されている。この低濃度領域31、32は、エクステンション領域とも呼ばれるものである。上記低濃度領域31、32上の上記ダミーゲートパターン42の側壁には、サイドウォール絶縁膜21が形成されている。このサイドウォール絶縁膜21は、窒化シリコン膜で形成されている。
さらに、上記ダミーゲートパターン42の両側の半導体基板11には上記低濃度領域31、32を介して、上記低濃度領域31、32よりも高濃度の高濃度領域33、34が形成されている。上記低濃度領域31、32および高濃度領域33、34でソース・ドレイン領域となる。
また、上記高濃度領域33、34の上部には、金属シリサイド層35、36が形成されている。上記金属シリサイド層35、36は、例えばコバルトシリサイド、ニッケルシリサイド、ニッケル白金シリサイド等で形成されている。
【0110】
次に、図10(2)に示すように、上記ダミーゲートパターン42、サイドウォール絶縁膜21等を被覆するように、上記半導体基板11上に、トランジスタのチャネル領域に応力を印加するための第1応力膜を形成する。この第1応力膜は、通常、NMOSトランジスタの場合には引張応力を有する、例えば窒化シリコン膜で形成され、PMOSトランジスタの場合には圧縮応力を有する、例えば窒化シリコン膜で形成される。以下、引張応力を有する場合について説明する。
上記引張応力を有する窒化シリコン膜からなる第1応力膜は、膜厚が例えば5nm以上30nm未満の範囲に形成される。
例えば、下記に記載した成膜条件の一例を用いて成膜することにより、1.6GPaより大きく2.0GPa以下の大きな引張応力を持つ窒化シリコン膜を形成する。
このような大きな引張応力を持つ窒化シリコン膜は、膜密度が高い膜であるため、酸化シリコンをエッチングするときのエッチング種に対するエッチング耐性を有する膜となる。
【0111】
上記第1応力膜は、以下のようにして形成される。
まず、上記ダミーゲートパターン42、サイドウォール絶縁膜21等を被覆するように、上記半導体基板11上に、トランジスタのチャネル領域に応力を印加するための第1応力初期膜57を形成する。
【0112】
上記第1応力初期膜57の成膜条件の一例は、
原料ガスに、窒素(N2)、アンモニア(NH3)、モノシラン(SiH4)を用いる。
それぞれのガス流量は、一例として、
窒素(N2)を500cm3/min以上2000cm3/min以下、
アンモニア(NH3)を500cm3/min以上1500cm3/min以下、
モノシラン(SiH4)を50cm3/min以上300cm3/min以下とする。
成膜時の基板温度を250℃以上350℃以下とし、
成膜雰囲気の圧力を667Pa以上2.0kPa以下とし、
RFパワー(高周波)を50W以上150W以下とし、
RFパワー(低周波)を0Wとする。
【0113】
次に、図11(3)に示すように、上記第1応力初期膜57に紫外線キュア処理を施す。この紫外線キュア処理条件は、一例として、
枚葉式(200mmウエハ用)の紫外線キュア処理装置を用いる。
紫外線キュア処理の雰囲気をヘリウム(He)雰囲気、もしくは希ガス雰囲気とし、
ガス流量は、一例として、ヘリウム(He)を10L/min以上20L/min以下とする。
紫外線キュア処理時の基板温度を450℃以上550℃以下とする。
紫外線キュア処理の雰囲気の圧力を0.67kPa以上1.3kPa以下とし、
紫外線ランプパワーを1kW以上10kW以下とする。
上記紫外線キュア処理を施すことによって、上記第1応力初期膜57の膜中のシリコン水素結合を低減することで、引張応力を有し、より緻密な第1応力膜55となる。
【0114】
上記成膜条件で形成された第1応力膜55は、膜中に水素を12atomic%未満含む膜となり、上記1.6GPaより大きく2.0GPa以下の大きな引張応力を持つ窒化シリコン膜となる。
例えば、上記第1応力膜55は、1:100に希釈した希フッ酸をエッチング種に用いたウエットエッチングに対するエッチングレートを0.2nm/min以下程度に保つことができる。
【0115】
上記第1応力膜55の膜中の水素濃度が12atomic%以上であると、酸化シリコンのウエットエッチング液、例えば希フッ酸に対する十分なエッチング耐性を得ることができなくなる。したがって、第1応力膜55の水素濃度は、12atomic%未満とした。
【0116】
また、上記第1応力膜55の膜厚が5nmよりも薄いと引張応力のかかりが悪くなり、またエッチングレートが早くなる。上記第1応力膜51の膜厚が30nm以上になると、第1応力膜55が強い引張応力(1.6GPaより大きく2.0GPa以下)を有する膜であるため、その引張応力がいっそう強くなりすぎてクラックが生じやすくなる。したがって、第1応力膜55の膜厚は、5nm以上30nm未満とした。
【0117】
次に、図11(4)に示すように、上記第1応力膜55上に引張応力を有する第2応力膜を形成する。この第2応力膜は、通常、NMOSトランジスタの場合には引張応力を有する、例えば窒化シリコン膜で形成されている。ここでは引張応力を有する場合について説明する。
上記引張応力を有する窒化シリコン膜からなる第2応力膜は、膜厚が例えば30nm以上70nm以下の範囲に形成されている。
例えば、下記に記載した成膜条件の一例を用いて成膜することにより、0.8GPa以上1.6GPa以下の引張応力を持つ窒化シリコン膜を形成することができる。
このような引張応力を持つ窒化シリコン膜は、膜密度が高い膜であるため、酸化シリコンをエッチングするときのエッチング種に対するエッチング耐性を有する膜となる。また、上記第1応力膜55とこの第2応力膜56とでは、上記第1応力膜55が上記第2応力膜56よりも酸化シリコンをエッチングするエッチング種に対するエッチング耐性が強い絶縁膜となる。
【0118】
上記第2応力膜は、以下のようにして形成される。
まず、上記第1応力膜55上に、トランジスタのチャネル領域に応力を印加するための第2応力初期膜58を形成する。
【0119】
上記第2応力初期膜58の成膜条件の一例は、
原料ガスに、窒素(N2)、アンモニア(NH3)、モノシラン(SiH4)を用いる。
それぞれのガス流量は、一例として、
窒素(N2)を500cm3/min以上2000cm3/min以下、
アンモニア(NH3)を500cm3/min以上1500cm3/min以下、
モノシラン(SiH4)を50cm3/min以上300cm3/min以下とする。
成膜時の基板温度を250℃以上350℃以下とし、
成膜雰囲気の圧力を667Pa以上2.0kPa以下とし、
RFパワー(高周波)を50W以上150W以下とし、
RFパワー(低周波)を0Wとする。
【0120】
次に、図12(5)に示すように、上記第2応力初期膜58に紫外線キュア処理を施す。この紫外線キュア処理条件は、一例として、
枚葉式(200mmウエハ用)の紫外線キュア処理装置を用いる。
紫外線キュア処理の雰囲気をヘリウム(He)雰囲気、もしくは希ガス雰囲気とし、
ガス流量は、一例として、ヘリウム(He)を10L/min以上20L/min以下とする。
紫外線キュア処理時の基板温度を350℃以上450℃以下とする。ただし、第2応力初期膜58の成膜条件が上記第1応力初期膜57と同様の場合、第1応力初期膜57の紫外線キュア温度よりも低い温度とする。
紫外線キュア処理の雰囲気の圧力を0.67kPa以上1.3kPa以下とし、
紫外線ランプパワーを1kW以上10kW以下とする。
上記紫外線キュア処理を施すことによって、上記第2応力初期膜58の膜中のシリコン水素結合を低減することで、引張応力を有し、より緻密な第2応力膜56となる。
第1応力初期膜57に対する紫外線キュア処理よりも紫外線キュア温度を下げたことにより、第2応力膜56の引張応力は第1応力膜55よりも小さくなる。
【0121】
上記成膜条件で形成された第2応力膜56は、膜中に水素を12atomic%以上25atomic%以下含む膜となり、上記0.8GPa以上1.6GPa以下の引張応力を持つ窒化シリコン膜となる。
例えば、上記第2応力膜56は、1:100に希釈した希フッ酸をエッチング種に用いたウエットエッチングに対するエッチングレートを0.3nm/min以下程度に保つことができる。
【0122】
上記紫外線キュア処理は、その処理温度(基板温度)によって、窒化シリコン膜の引張応力値を制御することができる。上記の場合、処理温度を450℃以上550℃以下とすることで、1.6GPaより大きく2.0GPa以下の引張応力を持つ窒化シリコン膜とすることができ、処理温度を350℃以上450℃以下とすることで0.8GPa以上1.6GPa以下の引張応力を持つ窒化シリコン膜とすることができる。このように、処理温度を調節することで、窒化シリコン膜の引張応力値を制御することができる。
【0123】
上記第2応力膜56の膜中の水素濃度が25atomic%よりも多いと、酸化シリコンのウエットエッチング液、例えば希フッ酸に対するエッチング耐性を得ることができず、上記第2応力膜56の膜中の水素濃度が12atomic%未満になると、第2応力膜56としての膜厚では膜中の引張応力が強すぎて、クラックが発生しやすくなる。したがって、第2応力膜56の水素濃度は、12atomic%以上25atomic%以下とした。
【0124】
また、上記第2応力膜56の膜厚が30nmよりも薄いと第2応力膜56としての引張応力では引張応力のかかりが悪くなる。上記第2応力膜56の膜厚が70nm以上になると、第2応力膜56が有する引張応力(0.8GPa以上1.6GPa以下)であっても、引張応力が強すぎてクラックが発生しやすくなる。また、ゲート電極の高さが100nm程度でることから、上記第1応力膜55と第2応力膜56とを合わせた膜厚が100nm程度あれば十分である。これらのことを鑑みて、第2応力膜56の膜厚は、30nm以上70nm以下とした。
上記条件により、上記第2応力膜56(引張応力膜の場合)は、0.8GPa以上1.6GPa以下の引張応力を有する。
【0125】
したがって、上記第1応力膜55および上記第2応力膜56は上記ダミーゲートパターン42および上記ダミーゲート絶縁膜41をエッチングするときのエッチング種に対するエッチング耐性を有する膜で形成され、かつ上記第1応力膜55は上記第2応力膜56よりも上記エッチング種に対するエッチング耐性が強い絶縁膜で形成されることになる。
【0126】
次に、図12(6)に示すように、上記第2応力膜56上に、絶縁膜61を形成する。この絶縁膜61は、例えばPMD(プリメタルデポジション)膜と呼ばれるもので、例えば高密度プラズマ(HDP)CVDにより製造された酸化シリコン膜やノンドープトシリケートガラス(SA−NSG)などの酸化膜で形成される。
【0127】
次に、図13(7)に示すように、上記ダミーゲートパターン42のポリシリコンで形成されている部分の上部を露出する。例えば、上記ダミーゲートパターン42のポリシリコン上に形成されている窒化シリコン膜43、上記第1応力膜55、第2応力膜56、絶縁膜61等を、例えば、化学的機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)によって除去し、上記ダミーゲートパターン42のポリシリコンを露出させる。
上記化学的機械研磨では、まず、絶縁膜61の表面が平坦化される。さらに、上記ダミーゲートパターン42のポリシリコンで形成されている部分の上部が露出するまで、窒化シリコン膜43、上記第1応力膜55、第2応力膜56、絶縁膜61、サイドウォール絶縁膜21の上部等を研磨する。
次いで、ドライエッチングによって、ポリシリコンで形成されているダミーゲートパターン42(前記図10(1)参照)を除去する。さらにウエットエッチングにより、ダミーゲート絶縁膜41(前記図10(1)参照)を除去する。このウエットエッチングでは、例えば希フッ酸(DHF)を用いた。この場合、酸化シリコンからなる絶縁膜61(前記図12(6)参照)も除去される。
この結果、サイドウォール絶縁膜21の内側にゲート電極形成溝23が形成される。
上記ウエットエッチングのとき、第1応力膜55および第2応力膜56ともに、ウエットエッチング耐性を有する窒化シリコン膜で形成されてはいるが、第1応力膜55のほうが第2応力膜56よりもさらにウエットエッチング耐性が強いため、従来技術のように、サイドウォール絶縁膜21の側壁の応力膜がエッチングされるようなことは起こらない。したがって、酸化シリコンを除去するウエットエッチング工程において、第1応力膜55の膜減りが抑制でき、効果的にゲート電極形成溝23の下部の半導体基板に形成されるチャネル領域に応力(ストレス)を印加することができるようになる。
【0128】
次に、図13(8)に示すように、上記ゲート電極形成溝23内の上記半導体基板11上にゲート絶縁膜24を介してゲート電極25を形成する。
【0129】
上記ゲート絶縁膜24は、例えば酸化シリコンよりも誘電率の高い高誘電率膜で形成される。例えば、ハフニウム(Hf)、ランタン(La)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zn)、タンタル(Ta)のうちから選択される1種の金属の金属酸化物、金属酸化珪化物、金属窒化酸化物、金属酸化窒化珪化物で形成される。その一例としては、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化アルミニウム(Al23)、酸化ランタン(La23)等の金属酸化物、窒化酸化ハフニウム(HfON)、窒化酸化アルミニウム(AlON)等の金属窒化酸化物、ハフニウムシリケート(HfSiO)を一例とする金属酸化珪化物、窒化ハフニウムシリケート(HfSiON)を一例とする金属酸化窒化珪化物等を用いることができる。
また、一例として、上記ゲート絶縁膜24は、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜等のシリコン系絶縁膜上に上記高誘電体絶縁膜を積層したものであってもよい。
【0130】
上記ゲート電極25は、例えば、チタン(Ti)の他にルテニウム(Ru)、ハフニウム(Hf)、イリジウム(Ir)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ランタン(La)、ニッケル(Ni)等の金属またはこれらのシリコン化合物、導電性を有する窒素化合物等の金属化合物を用いる。また、ポリシリコンを用いることもできる。
また、ゲート絶縁膜24とゲート電極25との間に、窒化チタン、チタン等の密着層(図示せず)を形成してもよい。
【0131】
上記第4実施例の製造方法では、ゲート電極25の側壁にサイドウォール絶縁膜23を介して第1応力膜55を形成し、さらにこの第1応力膜55と同種の応力を有する第2応力膜56を形成することから、上記第1応力膜55、第2応力膜56の応力をゲート電極25下部の半導体基板11に形成されるチャネル領域に印加することが可能になる。
例えば、半導体装置2がPMOSトランジスタの場合、上記第1応力膜55、第2応力膜56の応力が引張応力であれば、NMOSトランジスタの移動度を向上させられる。
また、上記第1応力膜55および上記第2応力膜56は酸化シリコン膜をエッチングするときのエッチング種、例えば希フッ酸に対するエッチング耐性を有し、上記第1応力膜55は上記第2応力膜56よりも上記エッチング種に対するエッチング耐性が強い絶縁膜で形成されることから、上記ゲート電極形成溝23を形成するときに酸化シリコン膜をエッチングするような場合、上記第1応力膜55、第2応力膜56がそのエッチングのエッチング種に対してエッチングされにくくなっている。しかも、第1応力膜55が第2応力膜56よりも上記エッチング種に対して強いエッチング耐性を有することから、第1応力膜55、第2応力膜56がエッチングされるとしても、第1応力膜55が第2応力膜56よりも多くエッチングされることはない。
したがって、ゲート電極25の側壁に近い側には第1応力膜55が残るので、ゲート電極25下部の半導体基板11に形成されるチャネル領域に第1応力膜51の応力を確実に印加することが可能になる。
【0132】
よって、第1応力膜55の膜減りが抑制できるため、効果的にトランジスタのチャネル領域に第1応力膜55の応力を印加することができるので、トランジスタの移動度を確実に向上できるという利点がある。
【0133】
上記第4実施例の製造方法では、上記第1応力初期膜57および第2応力初期膜58を成膜するときの原料ガスのモノシランの代わりに、例えばジシラン(Si26)、トリシラン(Si38)等を用いることもできる。このように、モノシランの代わりに、ジシラン(Si26)、トリシラン(Si38)を用いても、上記製造方法と同様な効果を得ることができる。
【0134】
次に、本発明の半導体装置の製造方法に係る一実施の形態(第5実施例)を、図14ないし図18の製造工程断面図によって説明する。
【0135】
図14(1)に示すように、半導体基板11に素子形成領域12が分離される素子分離領域13を形成した後、半導体基板11の素子形成領域12上に、ダミーゲート絶縁膜41を介してダミーゲートパターン42を形成する。上記ダミーゲートパターン42は、ポリシリコン膜で形成されていて、図示したように上部に窒化シリコン膜43が形成されていてもよい。また、上記ダミーゲート絶縁膜41は、酸化シリコン膜で形成されている。
【0136】
上記ダミーゲートパターン42の両側の半導体基板11には低濃度領域31、32が形成されている。この低濃度領域31、32は、エクステンション領域とも呼ばれるものである。上記低濃度領域31、32上の上記ダミーゲートパターン42の側壁には、サイドウォール絶縁膜21が形成されている。このサイドウォール絶縁膜21は、窒化シリコン膜で形成されている。
さらに、上記ダミーゲートパターン42の両側の半導体基板11には上記低濃度領域31、32を介して、上記低濃度領域31、32よりも高濃度の高濃度領域33、34が形成されている。上記低濃度領域31、32および高濃度領域33、34でソース・ドレイン領域となる。
また、上記高濃度領域33、34の上部には、金属シリサイド層35、36が形成されている。上記金属シリサイド層35、36は、例えばコバルトシリサイド、ニッケルシリサイド、ニッケル白金シリサイド等で形成されている。
【0137】
次に、図14(2)に示すように、上記ダミーゲートパターン42、サイドウォール絶縁膜21等を被覆するように、上記半導体基板11上に、トランジスタのチャネル領域に応力を印加するための第1応力膜を形成する。この第1応力膜は、通常、NMOSトランジスタの場合には引張応力を有する、例えば窒化シリコン膜で形成され、PMOSトランジスタの場合には引張応力を有する、例えば窒化シリコン膜で形成される。以下、引張応力を有する場合について説明する。
上記引張応力を有する窒化シリコン膜からなる第1応力膜は、膜厚が例えば5nm以上30nm未満の範囲に形成される。
例えば、下記に記載した成膜条件の一例を用いて成膜することにより、1.6GPaより大きく2.0GPa以下の大きな引張応力を持つ窒化シリコン膜を形成する。
このような大きな引張応力を持つ窒化シリコン膜は、膜密度が高い膜であるため、酸化シリコンをエッチングするときのエッチング種に対するエッチング耐性を有する膜となる。
【0138】
上記第1応力膜は、以下のようにして形成される。
まず、上記ダミーゲートパターン42、サイドウォール絶縁膜21等を被覆するように、上記半導体基板11上に、トランジスタのチャネル領域に応力を印加するための第1応力初期膜57を形成する。
【0139】
上記第1応力初期膜57の成膜条件の一例は、
原料ガスに、窒素(N2)、アンモニア(NH3)、モノシラン(SiH4)を用いる。
それぞれのガス流量は、一例として、
窒素(N2)を500cm3/min以上2000cm3/min以下、
アンモニア(NH3)を500cm3/min以上1500cm3/min以下、
モノシラン(SiH4)を50cm3/min以上300cm3/min以下とする。
成膜時の基板温度を250℃以上350℃以下とし、
成膜雰囲気の圧力を667Pa以上2.0kPa以下とし、
RFパワー(高周波)を50W以上150W以下とし、
RFパワー(低周波)を0Wとする。
【0140】
次に、図15(3)に示すように、上記第1応力初期膜57に紫外線キュア処理を施す。この紫外線キュア処理条件は、一例として、
枚葉式(200mmウエハ用)の紫外線キュア処理装置を用いる。
紫外線キュア処理の雰囲気をヘリウム(He)雰囲気、もしくは希ガス雰囲気とし、
ガス流量は、一例として、ヘリウム(He)を10L/min以上20L/min以下とする。
紫外線キュア処理時の基板温度を350℃以上450℃以下とする。
紫外線キュア処理の雰囲気の圧力を0.67kPa以上1.3kPa以下とし、
紫外線ランプパワーを1kW以上10kW以下とする。
上記紫外線キュア処理を施すことによって、上記第1応力初期膜57の膜中のシリコン水素結合を低減することで、引張応力を有するようになる。
【0141】
次に、図15(4)に示すように、上記第1応力初期膜57に熱処理を施す。この熱処理条件は、一例として、熱処理雰囲気を窒素(N2)ガス雰囲気とし、
ガス流量は、一例として、
窒素(N2)を5000cm3/min以上20000cm3/min以下とする。
熱処理時の基板温度を450℃〜550℃とする。
上記熱処理を施すことによって、膜中の水素量が低減され、また、熱処理雰囲気中の窒素がシリコンのダングリングボンドに結合することで、より緻密な膜となり、引張応力が増し、第1応力初期膜57は引張応力値が1.6GPaより大きく2.0GPa以下を有する第1応力膜55となる。
上記熱処理は、単に膜中に水素量を低減するだけならば、希ガスを用いてもよい。
この第1応力膜55は、1:100に希釈した希フッ酸をエッチング種に用いたウエットエッチングに対するエッチングレートを0.2nm/min以下程度に保つことができる。
【0142】
また、上記第1応力膜55の膜厚が5nmよりも薄いと引張応力のかかりが悪くなり、またエッチングレートが早くなる。上記第1応力膜51の膜厚が30nm以上になると、第1応力膜51が強い引張応力(1.6GPaより大きく2.0GPa以下)を有する膜であるため、その引張応力がいっそう強くなりすぎて膜にクラックを生じやすくなる。したがって、第1応力膜55の膜厚は、5nm以上30nm未満とした。
【0143】
次に、図16(5)に示すように、上記第1応力膜55上に引張応力を有する第2応力膜を形成する。この第2応力膜は、通常、NMOSトランジスタの場合には引張応力を有する、例えば窒化シリコン膜で形成されている。ここでは引張応力を有する場合について説明する。
上記引張応力を有する窒化シリコン膜からなる第2応力膜は、膜厚が例えば30nm以上70nm以下の範囲に形成されている。
例えば、下記に記載した成膜条件の一例を用いて成膜することにより、0.8GPa以上1.6GPa以下の引張応力を持つ窒化シリコン膜を形成することができる。
このような引張応力を持つ窒化シリコン膜は、膜密度が高い膜であるため、酸化シリコンをエッチングするときのエッチング種に対するエッチング耐性を有する膜となる。また、上記第1応力膜55とこの第2応力膜とでは、上記第1応力膜55が上記第2応力膜よりも酸化シリコンをエッチングするエッチング種に対するエッチング耐性が強い絶縁膜となる。
【0144】
上記第2応力膜は、以下のようにして形成される。
まず、上記第1応力膜55上に、トランジスタのチャネル領域に応力を印加するための第2応力初期膜58を形成する。
【0145】
上記第2応力初期膜58の成膜条件の一例は、
原料ガスに、窒素(N2)、アンモニア(NH3)、モノシラン(SiH4)を用いる。
それぞれのガス流量は、一例として、
窒素(N2)を500cm3/min以上2000cm3/min以下、
アンモニア(NH3)を500cm3/min以上1500cm3/min以下、
モノシラン(SiH4)を50cm3/min以上300cm3/min以下とする。
成膜時の基板温度を250℃以上350℃以下とし、
成膜雰囲気の圧力を667Pa以上2.0kPa以下とし、
RFパワー(高周波)を50W以上150W以下とし、
RFパワー(低周波)を0Wとする。
【0146】
次に、図16(6)に示すように、上記第1応力初期膜57に紫外線キュア処理を施す。この紫外線キュア処理条件は、一例として、
枚葉式(200mmウエハ用)の紫外線キュア処理装置を用いる。
紫外線キュア処理の雰囲気をヘリウム(He)雰囲気、もしくは希ガス雰囲気とし、
ガス流量は、一例として、ヘリウム(He)を10L/min以上20L/min以下とする。
紫外線キュア処理時の基板温度を350℃以上450℃以下とする。ただし、第2応力初期膜58の成膜条件が上記第1応力初期膜57と同様の場合、第1応力初期膜57の紫外線キュア温度よりも低い温度とする。
紫外線キュア処理の雰囲気の圧力を0.67kPa以上1.3kPa以下とし、
紫外線ランプパワーを1kW以上10kW以下とする。
上記紫外線キュア処理を施すことによって、上記第2応力初期膜58の膜中のシリコン水素結合を低減することで、引張応力を有するようになり、より緻密な第2応力膜56となる。
第1応力初期膜57に対する紫外線キュア処理よりも紫外線キュア温度を下げたことにより、第2応力膜56の引張応力は第1応力膜55よりも小さくなる。
【0147】
上記成膜条件で形成された第2応力膜56は、膜中に水素を12atomic%以上25atomic%以下含む膜となり、上記0.8GPa以上1.6GPa以下の引張応力を持つ窒化シリコン膜となる。
例えば、上記第2応力膜56は、1:100に希釈した希フッ酸をエッチング種に用いたウエットエッチングに対するエッチングレートを0.3nm/min以下程度に保つことができる。
【0148】
上記第2応力膜56の膜中の水素濃度が25atomic%よりも多いと、酸化シリコンのウエットエッチング液、例えば希フッ酸に対するエッチング耐性を得ることができず、上記第2応力膜56の膜中の水素濃度が12atomic%未満になると、第2応力膜56としての膜厚では膜中の引張応力が強すぎて、クラックが発生しやすくなる。したがって、第2応力膜56の水素濃度は、12atomic%以上25atomic%以下とした。
【0149】
また、上記第2応力膜56の膜厚が30nmよりも薄いと第2応力膜56としての引張応力では引張応力のかかりが悪くなる。上記第2応力膜56の膜厚が70nm以上になると、第2応力膜56が有する引張応力(0.8GPa以上1.6GPa以下)であっても、引張応力が強すぎてクラックが発生しやすくなる。また、ゲート電極の高さが100nm程度でることから、上記第1応力膜55と第2応力膜56とを合わせた膜厚が100nm程度あれば十分である。これらのことを鑑みて、第2応力膜56の膜厚は、30nm以上70nm以下とした。
上記条件により、上記第2応力膜56(引張膜の場合)は、0.8GPa以上1.6GPa以下の引張応力を有する。
【0150】
したがって、上記第1応力膜55および上記第2応力膜56は上記ダミーゲートパターン42および上記ダミーゲート絶縁膜41をエッチングするときのエッチング種に対するエッチング耐性を有する膜で形成され、かつ上記第1応力膜55は上記第2応力膜56よりも上記エッチング種に対するエッチング耐性が強い絶縁膜で形成されることになる。
【0151】
次に、図17(7)に示すように、上記第2応力膜56上に、絶縁膜61を形成する。この絶縁膜61は、例えばPMD(プリメタルデポジション)膜と呼ばれるもので、例えば高密度プラズマ(HDP)CVDにより製造された酸化シリコン膜やノンドープトシリケートガラス(SA−NSG)などの酸化膜で形成される。
【0152】
次に、図17(8)に示すように、上記ダミーゲートパターン42のポリシリコンで形成されている部分の上部を露出する。例えば、上記ダミーゲートパターン42のポリシリコン上に形成されている窒化シリコン膜43、上記第1応力膜55、第2応力膜56、絶縁膜61等を、例えば、化学的機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)によって除去し、上記ダミーゲートパターン42のポリシリコンを露出させる。
上記化学的機械研磨では、まず、絶縁膜61の表面が平坦化される。さらに、上記ダミーゲートパターン42のポリシリコンで形成されている部分の上部が露出するまで、窒化シリコン膜43、上記第1応力膜55、第2応力膜56、絶縁膜61、サイドウォール絶縁膜21の上部等を研磨する。
次いで、ドライエッチングによって、ポリシリコンで形成されているダミーゲートパターン42(前記図14(1)参照)を除去する。さらにウエットエッチングにより、ダミーゲート絶縁膜41(前記図14(1)参照)を除去する。このウエットエッチングでは、例えば希フッ酸(DHF)を用いた。この場合、酸化シリコンからなる絶縁膜61(前記図16(6)参照)も除去される。
この結果、サイドウォール絶縁膜21の内側にゲート電極形成溝23が形成される。
上記ウエットエッチングのとき、第1応力膜55および第2応力膜56ともに、ウエットエッチング耐性を有する窒化シリコン膜で形成されてはいるが、第1応力膜55のほうが第2応力膜56よりもさらにウエットエッチング耐性が強いため、従来技術のように、サイドウォール絶縁膜21の側壁の応力膜がエッチングされるようなことは起こらない。したがって、酸化シリコンを除去するウエットエッチング工程において、第1応力膜55の膜減りが抑制でき、効果的にゲート電極形成溝23の下部の半導体基板に形成されるチャネル領域に応力(ストレス)を印加することができるようになる。
【0153】
次に、図18(9)に示すように、上記ゲート電極形成溝23内の上記半導体基板11上にゲート絶縁膜24を介してゲート電極25を形成する。
【0154】
上記ゲート絶縁膜24は、例えば酸化シリコンよりも誘電率の高い高誘電率膜で形成される。例えば、ハフニウム(Hf)、ランタン(La)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zn)、タンタル(Ta)のうちから選択される1種の金属の金属酸化物、金属酸化珪化物、金属窒化酸化物、金属酸化窒化珪化物で形成される。その一例としては、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化アルミニウム(Al23)、酸化ランタン(La23)等の金属酸化物、窒化酸化ハフニウム(HfON)、窒化酸化アルミニウム(AlON)等の金属窒化酸化物、ハフニウムシリケート(HfSiO)を一例とする金属酸化珪化物、窒化ハフニウムシリケート(HfSiON)を一例とする金属酸化窒化珪化物等を用いることができる。
また、一例として、上記ゲート絶縁膜24は、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜等のシリコン系絶縁膜上に上記高誘電体絶縁膜を積層したものであってもよい。
【0155】
上記ゲート電極25は、例えば、チタン(Ti)の他にルテニウム(Ru)、ハフニウム(Hf)、イリジウム(Ir)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ランタン(La)、ニッケル(Ni)等の金属またはこれらのシリコン化合物、導電性を有する窒素化合物等の金属化合物を用いる。また、ポリシリコンを用いることもできる。
また、ゲート絶縁膜24とゲート電極25との間に、窒化チタン、チタン等の密着層(図示せず)を形成してもよい。
【0156】
上記第5実施例の製造方法では、ゲート電極25の側壁にサイドウォール絶縁膜23を介して第1応力膜55を形成し、さらにこの第1応力膜55と同種の応力を有する第2応力膜56を形成することから、上記第1応力膜55、第2応力膜56の応力をゲート電極25下部の半導体基板11に形成されるチャネル領域に印加することが可能になる。
例えば、半導体装置2がPMOSトランジスタの場合、上記第1応力膜55、第2応力膜56の応力が引張応力であれば、NMOSトランジスタの移動度を向上させられる。
また、上記第1応力膜55および上記第2応力膜56は酸化シリコン膜をエッチングするときのエッチング種、例えば希フッ酸に対するエッチング耐性を有し、上記第1応力膜55は上記第2応力膜56よりも上記エッチング種に対するエッチング耐性が強い絶縁膜で形成されることから、上記ゲート電極形成溝23を形成するときに酸化シリコン膜をエッチングするような場合、上記第1応力膜55、第2応力膜56がそのエッチングのエッチング種に対してエッチングされにくくなっている。しかも、第1応力膜55が第2応力膜56よりも上記エッチング種に対して強いエッチング耐性を有することから、第1応力膜55、第2応力膜56がエッチングされるとしても、第1応力膜55が第2応力膜56よりも多くエッチングされることはない。
したがって、ゲート電極25の側壁に近い側には第1応力膜55が残るので、ゲート電極25下部の半導体基板11に形成されるチャネル領域に第1応力膜51の応力を確実に印加することが可能になる。
【0157】
よって、第1応力膜55の膜減りが抑制できるため、効果的にトランジスタのチャネル領域に第1応力膜55の応力を印加することができるので、トランジスタの移動度を確実に向上できるという利点がある。
【0158】
上記第5実施例の製造方法では、上記第1応力初期膜57および第2応力初期膜58を成膜するときの原料ガスのモノシランの代わりに、例えばジシラン(Si26)、トリシラン(Si38)等を用いることもできる。このように、モノシランの代わりに、ジシラン(Si26)、トリシラン(Si38)を用いても、上記製造方法と同様な効果を得ることができる。
【0159】
次に、本発明の半導体装置の製造方法に係る一実施の形態(第6実施例)を説明する。 この第6実施例の製造方法は、前記第4実施例の製造方法において、第1応力膜55を形成した後、熱処理を行う方法である。この熱処理以外は、前記第4実施例の製造方法と同様である。
【0160】
第6実施例における熱処理条件は、一例として、熱処理雰囲気を窒素(N2)ガス雰囲気とし、
ガス流量は、一例として、
窒素(N2)を5000cm3/min以上20000cm3/min以下とし、
熱処理時の基板温度を450℃〜550℃とする。
上記熱処理を施すことによって、第1応力膜55の膜中の水素量が低減されることで、より緻密な膜となり、引張応力が増し、第1応力膜55はより引張応力値が強い膜となる。
上記熱処理は、希ガスを用いてもよい。
また、この熱処理では、第1応力膜55の引張応力値が強すぎないようにすることが必要である。先に述べたように、第1応力膜55の引張応力が2.0GPaを超えるようになると、膜中にクラックが発生する原因になる。このため、第1応力膜55の引張応力値が2.0GPa以下になるようにする。
この熱処理によって、第1応力膜55は、1:100に希釈した希フッ酸をエッチング種に用いたウエットエッチングに対するエッチングレートを0.2nm/min以下程度に保つことができる。
【0161】
また、第6実施例の製造方法でも、前記第4実施例の製造方法と同様な作用、効果を得ることができる。
【0162】
上記製造方法の各実施例では、上記第1応力膜51、第2応力膜52は、通常の化学気相成長装置(CVD装置)を用いて成膜される。その型式は、何であってもよく、例えば枚葉式でもバッチ式でもよく、またプラズマCVD装置であっても、熱CVD装置であってもよい。例えば、平行平板型のプラズマCVD装置を用いる。
上記熱処理には、既知の熱処理装置を用いることができる。この熱処理は、上記CVD装置内の基板加熱装置を用いて行うこともできる。この場合、成膜と熱処理をin−situで連続してできるという利点がある。
また、上記紫外線キュア照射には、既知の紫外線キュア装置を用いることができる。
【0163】
上記説明では、半導体基板11としてシリコン基板を用いた場合について説明したが、本発明では、SOI(Silicon on insulator)基板のシリコン層に本発明の半導体装置が形成される場合にも適用できる。この場合には、SOI(Silicon on insulator)基板のシリコン層が半導体基板と同様になる。
【図面の簡単な説明】
【0164】
【図1】本発明の半導体装置に係る一実施の形態(第1実施例)を示した概略構成断面図である。
【図2】本発明の半導体装置に係る一実施の形態(第2実施例)を示した概略構成断面図である。
【図3】本発明の半導体装置の製造方法に係る一実施の形態(第1実施例)を示した製造工程断面図である。
【図4】本発明の半導体装置の製造方法に係る一実施の形態(第1実施例)を示した製造工程断面図である。
【図5】本発明の半導体装置の製造方法に係る一実施の形態(第1実施例)を示した製造工程断面図である。
【図6】本発明の半導体装置の製造方法に係る一実施の形態(第2実施例)を示した製造工程断面図である。
【図7】本発明の半導体装置の製造方法に係る一実施の形態(第2実施例)を示した製造工程断面図である。
【図8】本発明の半導体装置の製造方法に係る一実施の形態(第2実施例)を示した製造工程断面図である。
【図9】本発明の半導体装置の製造方法に係る一実施の形態(第2実施例)を示した製造工程断面図である。
【図10】本発明の半導体装置の製造方法に係る一実施の形態(第4実施例)を示した製造工程断面図である。
【図11】本発明の半導体装置の製造方法に係る一実施の形態(第4実施例)を示した製造工程断面図である。
【図12】本発明の半導体装置の製造方法に係る一実施の形態(第4実施例)を示した製造工程断面図である。
【図13】本発明の半導体装置の製造方法に係る一実施の形態(第4実施例)を示した製造工程断面図である。
【図14】本発明の半導体装置の製造方法に係る一実施の形態(第5実施例)を示した製造工程断面図である。
【図15】本発明の半導体装置の製造方法に係る一実施の形態(第5実施例)を示した製造工程断面図である。
【図16】本発明の半導体装置の製造方法に係る一実施の形態(第5実施例)を示した製造工程断面図である。
【図17】本発明の半導体装置の製造方法に係る一実施の形態(第5実施例)を示した製造工程断面図である。
【図18】本発明の半導体装置の製造方法に係る一実施の形態(第5実施例)を示した製造工程断面図である。
【図19】従来技術の製造方法の一例を示した製造工程断面図である。
【図20】課題を示した電子顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0165】
1…半導体装置、11…半導体基板、21…サイドウォール絶縁膜、23…ゲート電極形成溝、24…ゲート絶縁膜、25…ゲート電極、51…第1応力膜、52…第2応力膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上にゲート電極形成溝が形成されたサイドウォール絶縁膜と、
前記ゲート電極形成溝内の前記半導体基板上にゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極と、
前記ゲート電極の両側の前記半導体基板に形成されたソース・ドレイン領域と、
前記ゲート電極の側壁に前記サイドウォール絶縁膜を介して前記半導体基板上に形成されていて応力を有する第1応力膜と、
前記第1応力膜の外側の前記半導体基板上に形成されていて前記第1応力膜と同種の応力を有する第2応力膜とを有し、
前記第1応力膜および前記第2応力膜は酸化シリコン膜をエッチングするときのエッチング種に対するエッチング耐性を有し、
前記第1応力膜は前記第2応力膜よりも前記エッチング種に対するエッチング耐性が強い
半導体装置。
【請求項2】
前記第1応力膜および前記第2応力膜は窒化シリコン膜からなり、
前記第1応力膜は前記第2応力膜よりも膜密度が高い
請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1応力膜および前記第2応力膜は、圧縮応力を有し、炭素を含む窒化シリコン膜で形成され、
前記第1応力膜は膜中に炭素が6atomic%以上8atomic%以下含まれ、
前記第2応力膜は膜中に炭素が1atomic%以上6atomic%未満含まれる
請求項1記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1応力膜および前記第2応力膜は、引張応力を有し、水素を含む窒化シリコン膜で形成され
前記第1応力膜は膜中に水素が12atomic%未満含まれ、
前記第2応力膜は膜中に水素が12atomic%以上25atomic%以下含まれる
請求項1記載の半導体装置。
【請求項5】
半導体基板上にダミーゲート絶縁膜を介してダミーゲートパターンを形成する工程と、
前記ダミーゲートパターンの側壁にサイドウォール絶縁膜を形成する工程と、
前記ダミーゲートパターンの両側の前記半導体基板にソース・ドレイン領域を形成する工程と、
前記ダミーゲートパターンおよび前記サイドウォール絶縁膜を被覆する前記ダミーゲート絶縁膜下部の前記半導体基板に応力を印加する第1応力膜および第2応力膜を積層して前記半導体基板上に形成する工程と、
前記ダミーゲートパターン上の前記第1応力膜および第2応力膜を除去して前記ダミーゲートパターン上部を露出させる工程と、
前記ダミーゲートパターンおよび前記ダミーゲート絶縁膜を除去してゲート電極形成溝を形成する工程と、
前記ゲート電極形成溝内の前記半導体基板上にゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成する工程を有し、
前記第1応力膜および前記第2応力膜は前記ダミーゲートパターンおよび前記ダミーゲート絶縁膜をエッチングするときのエッチング種に対するエッチング耐性を有する膜で形成され、
かつ前記第1応力膜は前記第2応力膜よりも前記エッチング種に対するエッチング耐性が強い絶縁膜で形成される
半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記第1応力膜および前記第2応力膜は炭素を含む圧縮応力を有する窒化シリコン膜で形成され、
前記第1応力膜は膜中に炭素が6atomic%以上8atomic%以下含まれ、
前記第2応力膜は膜中に炭素が1atomic%以上6atomic%未満含まれる
請求項5記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記第1応力膜および前記第2応力膜は水素を含む引張応力を有する窒化シリコン膜で形成され
前記第1応力膜は膜中に水素が12atomic%未満含まれ、
前記第2応力膜は膜中に水素が12atomic%以上25atomic%以下含まれる
請求項5記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記第1応力膜の形成工程は、
前記第1応力膜を、圧縮応力を有する窒化シリコン膜で成膜した後、熱処理して圧縮応力を増す
請求項5記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記第1応力膜の形成工程は、
前記第1応力膜を、窒化シリコン膜で成膜した後、紫外線キュア処理して引張応力を調節する
請求項5記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記第1応力膜の形成工程は、
前記第1応力膜を、引張応力を有する窒化シリコン膜で成膜した後、熱処理して引張応力を増す
請求項5記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2009−218266(P2009−218266A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−57746(P2008−57746)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】