説明

半導体装置

【課題】信頼性の高い半導体装置を提供する。また、不良を抑制しつつ微細化を達成した半導体装置を提供する。
【解決手段】トレンチを有する絶縁層に接して、ソース領域またはドレイン領域として機能する領域の膜厚が、チャネル形成領域として機能する領域の膜厚よりも厚い酸化物半導体層を形成する。該酸化物半導体層を用いたトランジスタは、ソース抵抗またはドレイン抵抗を低減することができると共に、しきい値のバラツキ、電気特性の劣化、ノーマリーオン化を抑制することができ、信頼性の高いトランジスタとすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する発明は、半導体素子を利用した半導体装置及びその作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁表面を有する基板上に形成された半導体薄膜を用いてトランジスタを構成する技術が注目されている。該トランジスタは、集積回路(IC)や画像表示装置(表示装置)のような電子デバイスに広く応用されている。また、トランジスタに適用可能な半導体薄膜として、酸化物半導体等のワイドギャップ半導体を用いる技術が注目されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、In−Ga−Zn系酸化物で構成される酸化物半導体が、薄膜トランジスタのチャネル形成領域に適用可能であることが確認されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−103957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体装置に用いられるトランジスタは、劣化やバラツキを抑制して信頼性を向上させることが望まれる。信頼性の高いトランジスタを用いることで、信頼性の高い半導体装置とすることができる。
【0006】
また、トランジスタの動作の高速化、トランジスタの低消費電力化、高集積化、低価格化、などを達成するためには、トランジスタの微細化は必須である。
【0007】
トランジスタを微細化する場合には、短チャネル効果の問題が生じる。短チャネル効果とは、トランジスタの微細化(チャネル長(L)の縮小)に伴って顕在化する電気特性の劣化である。短チャネル効果は、ドレインの電界の効果がソースにまでおよぶことに起因するものである。短チャネル効果の具体例としては、しきい値電圧の低下、S値の増大、漏れ電流の増大などがある。
【0008】
そこで、開示する発明の一態様は、信頼性の高い半導体装置を提供することを目的の一とする。また、不良を抑制しつつ微細化を達成した半導体装置を提供することを目的の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
開示する発明の一態様は、トレンチを有する絶縁層に接して、ソース領域またはドレイン領域として機能する領域の膜厚が、チャネル形成領域として機能する領域の膜厚よりも厚い酸化物半導体層を形成する。該酸化物半導体層を用いたトランジスタは、ソース抵抗またはドレイン抵抗を低減することができると共に、しきい値のバラツキ、電気特性の劣化、ノーマリーオン化を抑制することができ、信頼性の高いトランジスタとすることができる。より具体的には、例えば以下の構成とすることができる。
【0010】
本発明の一態様は、トレンチを有する絶縁層と、トレンチの内壁面及び底面、並びに絶縁層の最上面に接して設けられたワイドギャップ半導体層と、ワイドギャップ半導体層と電気的に接続するソース電極及びドレイン電極と、ワイドギャップ半導体層上に設けられたゲート絶縁層と、トレンチ内を充填するように、ゲート絶縁層上に設けられたゲート電極と、を有し、ワイドギャップ半導体層において、トレンチの内壁面に接する領域及びトレンチの底面に接する領域の膜厚は、絶縁層の最上面に接する領域の膜厚よりも薄い半導体装置である。
【0011】
また、本発明の他の一態様は、トレンチを有する絶縁層と、トレンチの内壁面及び側面、並びに絶縁層の最上面に接して設けられたワイドギャップ半導体層と、ワイドギャップ半導体層と電気的に接続するソース電極及びドレイン電極と、ワイドギャップ半導体層上に設けられたゲート絶縁層と、トレンチ内を充填するように、ゲート絶縁層上に設けられたゲート電極と、を有し、トレンチのアスペクト比は、0.5以上5.0以下であり、ワイドギャップ半導体層において、トレンチの内壁面に接する領域及びトレンチの底面に接する領域の膜厚は、絶縁層の最上面に接する領域の膜厚よりも薄い半導体装置である。
【0012】
上記の半導体装置のいずれか、または双方において、絶縁層の最上面に接するワイドギャップ半導体層の膜厚は、トレンチの内壁面及び底面に接するワイドギャップ半導体層の膜厚の1.5倍以上10倍以下であるのが好ましい。
【0013】
上記の半導体装置のいずれか一において、ワイドギャップ半導体層として、酸化物半導体層を有していてもよい。
【0014】
なお、本明細書等において「上」という用語は、構成要素の位置関係が「直上」であることを限定するものではない。例えば、「ゲート絶縁層上のゲート電極」の表現であれば、ゲート絶縁層とゲート電極との間に他の構成要素を含むものを除外しない。また、「下」という用語についても同様である。
【0015】
また、本明細書等において「電極」や「配線」という用語は、これらの構成要素を機能的に限定するものではない。例えば、「電極」は「配線」の一部として用いられることがあり、その逆もまた同様である。さらに、「電極」や「配線」という用語は、複数の「電極」や「配線」が一体となって形成されている場合なども含む。
【0016】
また、「ソース」や「ドレイン」の機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このため、本明細書においては、「ソース」や「ドレイン」という用語は、入れ替えて用いることができるものとする。
【0017】
なお、本明細書等において、「電気的に接続」には、「何らかの電気的作用を有するもの」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するもの」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に制限を受けない。
【0018】
例えば、「何らかの電気的作用を有するもの」には、電極や配線をはじめ、トランジスタなどのスイッチング素子、抵抗素子、インダクタ、キャパシタ、その他の各種機能を有する素子などが含まれる。
【発明の効果】
【0019】
開示する発明の一態様によって、不良を抑制しつつ、微細化を達成した半導体装置の作製方法を提供することができる。
【0020】
また、開示する発明の一態様によって、トランジスタサイズを十分に小さくすることが可能になる。トランジスタサイズを十分に小さくすることで、半導体装置の占める面積が小さくなり、半導体装置の取り数が増大する。これにより、半導体装置あたりの製造コストは抑制される。また、半導体装置が小型化されるため、同程度の大きさでさらに機能が高められた半導体装置を実現することができる。または、半導体装置の高集積化が可能となる。また、トランジスタの微細化による、動作の高速化、低消費電力化などの効果を得ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一態様の半導体装置の平面図及び断面図。
【図2】本発明の一態様の半導体装置の作製工程に係る断面図。
【図3】本発明の一態様の半導体装置を示す断面図、平面図及び回路図。
【図4】本発明の一態様の半導体装置を示す回路図及び斜視図。
【図5】本発明の一態様の半導体装置を示す断面図及び平面図。
【図6】本発明の一態様の半導体装置を示す回路図。
【図7】本発明の一態様の半導体装置を示すブロック図。
【図8】本発明の一態様の半導体装置を示すブロック図。
【図9】本発明の一態様の半導体装置を示すブロック図。
【図10】実施例で作製した試料の断面TEM写真。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施の形態の一例について、図面を用いて以下に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態および詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する実施の形態および実施例において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。
【0023】
なお、図面等において示す各構成の、位置、大きさ、範囲などは、理解の簡単のため、実際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため、開示する発明は、必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。
【0024】
なお、本明細書等における「第1」、「第2」、「第3」などの序数詞は、構成要素の混同を避けるために付すものであり、数的に限定するものではないことを付記する。
【0025】
(実施の形態1)
本実施の形態では、開示する発明の一態様に係る半導体装置及びその作製工程の例について、図1を参照して説明する。
【0026】
なお、本実施の形態では、トランジスタに適用されるワイドギャップ半導体として、酸化物半導体を用いる例を示す。酸化物半導体としては、少なくともシリコンの1.1eVよりも大きい禁制帯幅を持つ酸化物半導体を適用することができ、例えば、禁制帯幅が3.15eVであるIn−Ga−Zn−O系酸化物半導体、禁制帯幅が約3.0eVである酸化インジウム、禁制帯幅が約3.0eVであるインジウム錫酸化物、禁制帯幅が約3.3eVであるインジウムガリウム酸化物、禁制帯幅が約2.7eVであるインジウム亜鉛酸化物、禁制帯幅が約3.3eVである酸化錫、禁制帯幅が約3.37eVである酸化亜鉛などを好ましく用いることができる。ただし、本発明の半導体装置に適用可能なワイドギャップ半導体は、上述の酸化物半導体に限られず、窒化ガリウム、酸化窒化ガリウム、酸化窒化ガリウム亜鉛等を用いてもよい。このような材料を用いることにより、トランジスタのオフ電流を極めて低く保つことが可能である。
【0027】
図1(A)に本実施の形態のトランジスタ162の平面図を示す。また、図1(B)に、図1(A)のA−B断面における断面図を示す。
【0028】
図1に示すトランジスタ162は、トレンチ131が設けられた絶縁層130と、トレンチ131の内壁面及び底面、並びに絶縁層130の最上面(絶縁層130の被形成面と平行な面)に接して設けられた酸化物半導体層144と、酸化物半導体層144と電気的に接続するソース電極142a及びドレイン電極142bと、酸化物半導体層144上に設けられたゲート絶縁層146と、トレンチ131内を充填するようにゲート絶縁層146上に設けられたゲート電極148と、を有する。
【0029】
図1に示すトランジスタ162に設けられた酸化物半導体層144において、トレンチ131の内壁面に接する領域の膜厚、及びトレンチ131の底面に接する領域の膜厚は、絶縁層130の最上面に接する領域(絶縁層130において、トレンチ131が形成された領域以外と接する領域)の膜厚よりも薄い。
【0030】
酸化物半導体層144において、絶縁層130の最上面に接する領域は、ソース領域またはドレイン領域となる領域である。当該領域の膜厚を厚くすることで、ソース抵抗またはドレイン抵抗を低減することができる。一方、酸化物半導体層144において、トレンチ131の内壁面に接する領域、及びトレンチ131の底面に接する領域は、ゲート電極148と重畳して、チャネルを形成する領域である。当該領域の膜厚を薄くすることで、トランジスタ162において電流が流れるパスを小さくすることができるため、トランジスタ162のしきい値のバラツキや、電気特性の劣化、ノーマリーオン化を抑制することができる。よって、当該膜厚差を有する酸化物半導体層144を用いたトランジスタの信頼性を向上させることができる。
【0031】
例えば、酸化物半導体層144において、絶縁層130の最上面に接する領域の膜厚を、トレンチ131の内壁面に接する領域の膜厚、及びトレンチ131の底面に接する領域の膜厚の1.5倍以上10倍以下とするのが好ましく、2倍以上5倍以下とするのがより好ましい。絶縁層130の最上面に接する領域の膜厚を、トレンチ131の内壁面に接する領域の膜厚、及びトレンチ131の底面に接する領域の膜厚の1.5倍以上とすることで、上述の効果を十分に得ることができる。また、絶縁層130の最上面に接する領域の膜厚を、トレンチ131の内壁面に接する領域の膜厚、及びトレンチ131の底面に接する領域の膜厚の10倍以下とすることで、酸化物半導体層144上に接して設けられる層を、被覆性よく形成することができる。
【0032】
トランジスタ162に含まれる酸化物半導体層144は、水素などの不純物が十分に除去されることにより、または、十分な酸素が供給されることにより、高純度化されたものであることが望ましい。具体的には、例えば、酸化物半導体層144の水素濃度は5×1019atoms/cm以下、望ましくは5×1018atoms/cm以下、より望ましくは5×1017atoms/cm以下とする。なお、上述の酸化物半導体層144中の水素濃度は、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)で測定されるものである。このように、水素濃度が十分に低減され、且つ十分な酸素の供給により酸素欠乏に起因するエネルギーギャップ中の欠陥準位が低減されて、高純度化された酸化物半導体層144では、キャリア濃度が1×1012/cm未満、望ましくは、1×1011/cm未満、より望ましくは1.45×1010/cm未満となる。例えば、室温(25℃)でのオフ電流(ここでは、単位チャネル幅(1μm)あたりの値)は100zA(1zA(ゼプトアンペア)は1×10−21A)以下、好ましくは10zA以下、より好ましくは1zA以下、さらに好ましくは100yA(1yA(ヨクトアンペア)は1×10−24A)以下レベルにまで低くすることができる。このように、i型化(真性化)または実質的にi型化された酸化物半導体を用いることで、極めて優れたオフ電流特性のトランジスタ162を得ることができる。
【0033】
また、図1に示すトランジスタ162において、酸化物半導体層144のチャネル長方向(キャリアが流れる方向)の断面形状は、トレンチ131の断面形状に沿って湾曲した形状となっており、トレンチ131の深さが深くなればなるほどトランジスタ162の実効的なチャネル長を長くすることができる。
【0034】
従って、ソース電極142aとドレイン電極142bとの距離を短くしてもトレンチ131の深さを適宜設定することで実効的なチャネル長を維持することができるため、トランジスタ面積の縮小を達成しつつ短チャネル効果の発現を抑制することが可能である。なお、トレンチ131の上面形状は、トランジスタ162のチャネル幅方向(キャリアが流れる方向と直交する方向)に延在するストライプ形状であるのが好ましい。
【0035】
以下、図2を用いてトランジスタ162の作製工程の一例を示す。
【0036】
まず、半導体材料を含む基板(図示しない)上に、絶縁層130を形成する。
【0037】
半導体材料を含む基板としては、シリコンや炭化シリコンなどの単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウムなどの化合物半導体基板、SOI基板などを適用することができ、当該基板上に半導体素子が形成されていてもよい。なお、一般に「SOI基板」は、絶縁表面上にシリコン半導体層が設けられた構成の基板をいうが、本明細書等においては、絶縁表面上にシリコン以外の材料からなる半導体層が設けられた構成の基板も含むものとする。つまり、「SOI基板」が有する半導体層は、シリコン半導体層に限定されない。また、SOI基板には、ガラス基板などの絶縁基板上に絶縁層を介して半導体層が設けられた構成のものが含まれるものとする。
【0038】
絶縁層130としては、酸化シリコン膜、酸化ガリウム膜、酸化アルミニウム膜、酸化窒化シリコン膜、または酸化窒化アルミニウム膜等を形成することができる。
【0039】
次いで、絶縁層130にトレンチ131(溝とも呼ぶ)を形成する(図2(A)参照)。トレンチ131は、例えば、絶縁層130上にフォトリソグラフィ工程によりレジストマスクを形成し、レジストマスクを用いた絶縁層130のエッチングによって形成することができる。
【0040】
絶縁層130のエッチング工程としては、例えば、反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)法、ICP(Inductively Coupled Plasma)エッチング法、ECR(Electron Cyclotron Resonance)エッチング法、平行平板型(容量結合型)エッチング法、マグネトロンプラズマエッチング法、2周波プラズマエッチング法またはヘリコン波プラズマエッチング法等のドライエッチング法を用いることができる。また、エッチングガスとしては、三フッ化メタン(CHF)、四フッ化炭素(CF)、パーフルオロシクロブタン(C)などのフロロカーボン系ガス、メタン(CH)、水素、ヘリウム、又はアルゴンなどの希ガスを、適宜混合して用いることができる。
【0041】
また、トレンチ131は一回のエッチング工程、又は複数回のエッチング工程によって形成する。複数回のエッチング工程を行う場合、ドライエッチング工程とウェットエッチング工程を組み合わせてもよい。
【0042】
ここで、トレンチ131のアスペクト比は、0.5以上5.0以下とするのが好ましい。なお、本明細書等において、トレンチのアスペクト比とは、トレンチの断面における内壁面の高さ(図1(B)におけるトレンチ131の深さd)を、底面の幅(図1(B)におけるトレンチ131の長さL)で除した値を指すものとする。
【0043】
トレンチ131のアスペクト比を上述の範囲内とすることで、トレンチ131の内壁面及び底面上へは、絶縁層130の最上面と比較して成膜がされにくくなるため、後に絶縁層130上に成膜される酸化物半導体層を、フォトマスクを用いたエッチング等の処理を行うことなく膜厚差を有する構成とすることが可能である。また、トレンチのアスペクト比が大きければ、集積化され、かつ、短チャネル効果の発現の抑制されたトランジスタを得ることができる。
【0044】
次いで、絶縁層130に設けられたトレンチ131の底面及び内壁面に接するように、酸化物半導体層144を形成する(図2(B)参照)。ここで、絶縁層130の最上面に接する酸化物半導体層144の膜厚は、1nm以上100nm以下とするのが好ましい。また、上述のように、トレンチ131のアスペクト比が0.5以上5.0以下であると、トレンチ131の内壁面または底面に接する領域においては、絶縁層130の最上面に接する領域の1/10以上2/3以下、好ましくは1/5以上1/2以下の膜厚を有する酸化物半導体層144を成膜することができる。なお、トレンチ131の内壁面に接する領域の酸化物半導体層144の膜厚と、トレンチ131の底面に接する領域の酸化物半導体層144の膜厚と、は同じである必要はなく、例えば、トレンチ131の内壁面に接する領域の酸化物半導体層144の膜厚は、トレンチ131の底面に接する領域の酸化物半導体層144の膜厚より薄い膜厚でもよい。
【0045】
なお、酸化物半導体層144の成膜は、スパッタリング法、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法、パルスレーザ堆積法、ALD(Atomic Layer Deposition)法等を適宜用いることができる。
【0046】
酸化物半導体層144の材料としては、少なくともシリコンよりも大きい禁制帯幅を持つ酸化物半導体を用いる。シリコンよりも大きい禁制帯幅を持つ酸化物半導体としては、例えば、四元系金属の酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn−O系酸化物半導体や、三元系金属の酸化物であるIn−Ga−Zn−O系酸化物半導体、In−Sn−Zn−O系酸化物半導体、In−Al−Zn−O系酸化物半導体、Sn−Ga−Zn−O系酸化物半導体、Al−Ga−Zn−O系酸化物半導体、Sn−Al−Zn−O系酸化物半導体、Hf−In−Zn−O系酸化物半導体や、二元系金属の酸化物であるIn−Zn−O系酸化物半導体、Sn−Zn−O系酸化物半導体、Al−Zn−O系酸化物半導体、Zn−Mg−O系酸化物半導体、Sn−Mg−O系酸化物半導体、In−Mg−O系酸化物半導体や、In−Ga−O系酸化物半導体、一元系金属の酸化物であるIn−O系酸化物半導体、Sn−O系酸化物半導体、Zn−O系酸化物半導体などを用いることができる。本実施の形態では、In−Ga−Zn−O系酸化物半導体を用いる。
【0047】
なお、例えば、In−Ga−Zn−O系酸化物半導体とは、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)を有する酸化物半導体、という意味であり、その組成比は問わない。
【0048】
また、酸化物半導体層144は、化学式InMO(ZnO)(m>0)で表記される薄膜を用いることができる。ここで、Mは、Zn、Ga、Al、Mn及びCoから選ばれた一または複数の金属元素を示す。例えばMとして、Ga、Ga及びAl、Ga及びMn、またはGa及びCoなどがある。
【0049】
また、酸化物半導体としてIn−Sn−Zn−O系酸化物半導体の材料を用いる場合、用いるターゲット中の金属元素の原子数比は、In:Sn:Zn=1:2:2、In:Sn:Zn=2:1:3、In:Sn:Zn=1:1:1などとすればよい。
【0050】
また、酸化物半導体としてIn−Zn−O系の材料を用いる場合、用いるターゲット中の金属元素の原子数比は、In:Zn=50:1〜1:2(モル数比に換算するとIn:ZnO=25:1〜1:4)、好ましくはIn:Zn=20:1〜1:1(モル数比に換算するとIn:ZnO=10:1〜1:2)、さらに好ましくはIn:Zn=15:1〜1.5:1(モル数比に換算するとIn:ZnO=15:2〜3:4)とする。例えば、In−Zn−O系酸化物半導体の形成に用いるターゲットは、原子数比がIn:Zn:O=X:Y:Zのとき、Z>1.5X+Yとする。
【0051】
成膜の雰囲気は、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気下、酸素雰囲気下、または、希ガスと酸素の混合雰囲気下などとすればよい。また、酸化物半導体層144への水素、水、水酸基、水素化物などの混入を防ぐために、水素、水、水酸基、水素化物などの不純物が十分に除去された高純度ガスを用いた雰囲気とすることが望ましい。
【0052】
また、酸化物半導体層は、単結晶、多結晶(ポリクリスタルともいう)又は非晶質などの状態をとる。
【0053】
好ましくは、酸化物半導体層はCAAC−OS(C Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor)膜とする。
【0054】
CAAC−OS膜は、完全な単結晶ではなく、完全な非晶質でもない。CAAC−OS膜は、結晶部及び非晶質部を有する結晶−非晶質混相構造の酸化物半導体層である。なお、当該結晶部は、一辺が100nm未満の立方体内に収まる大きさであることが多い。また、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)による観察像では、CAAC−OS膜に含まれる非晶質部と結晶部との境界は明確ではない。また、TEMによってCAAC−OS膜には粒界(グレインバウンダリーともいう。)は確認できない。そのため、CAAC−OS膜は、粒界に起因する電子移動度の低下が抑制される。
【0055】
CAAC−OS膜に含まれる結晶部は、c軸がCAAC−OS膜の被形成面の法線ベクトル又は表面の法線ベクトルに平行な方向に揃い、且つab面に垂直な方向から見て三角形状又は六角形状の原子配列を有し、c軸に垂直な方向から見て金属原子が層状又は金属原子と酸素原子とが層状に配列している。なお、異なる結晶部間で、それぞれa軸及びb軸の向きが異なっていてもよい。本明細書において、単に垂直と記載する場合、85°以上95°以下の範囲も含まれることとする。また、単に平行と記載する場合、−5°以上5°以下の範囲も含まれることとする。
【0056】
なお、CAAC−OS膜において、結晶部の分布が一様でなくてもよい。例えば、CAAC−OS膜の形成過程において、酸化物半導体層の表面側から結晶成長させる場合、被形成面の近傍に対し表面の近傍では結晶部の占める割合が高くなることがある。また、CAAC−OS膜へ不純物を添加することにより、当該不純物添加領域において結晶部が非晶質化することもある。
【0057】
CAAC−OS膜に含まれる結晶部のc軸は、CAAC−OS膜の被形成面の法線ベクトル又は表面の法線ベクトルに平行な方向に揃うため、CAAC−OS膜の形状(被形成面の断面形状又は表面の断面形状)によっては互いに異なる方向を向くことがある。なお、結晶部のc軸の方向はCAAC−OS膜が形成されたときの被形成面の法線ベクトル又は表面の法線ベクトルに平行な方向となる。結晶部は、成膜することにより、又は成膜後に加熱処理などの結晶化処理を行うことにより形成される。
【0058】
CAAC−OS膜を用いたトランジスタは、可視光や紫外光の照射による電気特性の変動を低減することが可能である。よって、当該トランジスタは、信頼性が高い。
【0059】
酸化物半導体層144をCAAC−OS膜とする際には、基板を加熱しながら酸化物半導体層144を形成すればよく、基板を加熱する温度としては、150℃以上450℃以下とすればよく、好ましくは基板温度が200℃以上350℃以下とする。なお、酸化物半導体層の形成時に、基板を加熱する温度を高くすることで、非晶質な部分に対して結晶部分の占める割合の多いCAAC−OS膜とすることができる。
【0060】
酸化物半導体層144成膜後、酸化物半導体層144に対して、熱処理(第1の熱処理)を行ってもよい。熱処理を行うことによって、酸化物半導体層144中に含まれる水素原子、又は水素原子を含む物質をさらに除去することができる。熱処理の温度は、不活性ガス雰囲気下、250℃以上700℃以下、好ましくは450℃以上600℃以下、または基板の歪み点未満とする。不活性ガス雰囲気としては、窒素、または希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン等)を主成分とする雰囲気であって、水、水素などが含まれない雰囲気を適用するのが望ましい。例えば、熱処理装置に導入する窒素や、ヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスの純度を、6N(99.9999%)以上、好ましくは7N(99.99999%)以上(すなわち、不純物濃度が1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とする。
【0061】
なお、上述の熱処理には水素や水などを除去する効果があるため、当該熱処理を、脱水化処理や、脱水素化処理などと呼ぶこともできる。当該熱処理は、例えば、酸化物半導体層を島状に加工した後などのタイミングにおいて行うことも可能である。また、このような脱水化処理、脱水素化処理は、一回に限らず複数回行ってもよい。
【0062】
次いで、酸化物半導体層144上に、導電層を形成し、該導電層を加工して酸化物半導体層144と電気的に接続するソース電極142a及びドレイン電極142bを形成する。
【0063】
ソース電極142a及びドレイン電極142bは、モリブデン、チタン、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、クロム、ネオジム、スカンジウム等の金属材料またはこれらを主成分とする合金材料を用いて形成することができる。
【0064】
次いで、酸化物半導体層144、ソース電極142a及びドレイン電極142b上にゲート絶縁層146を形成する(図2(C)参照)。
【0065】
ゲート絶縁層146の膜厚は、1nm以上100nm以下とし、スパッタリング法、MBE法、CVD法、パルスレーザ堆積法、ALD法等を適宜用いることができる。なお、酸化物半導体層144と接することを考慮すれば、水素等の不純物が十分に除去されていることが好ましいため、ゲート絶縁層146は、水素等の不純物が含まれにくいスパッタリング法を用いて形成することが好ましい。
【0066】
ゲート絶縁層146の材料としては、酸化シリコン膜、酸化ガリウム膜、酸化アルミニウム膜、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化窒化アルミニウム膜、または窒化酸化シリコン膜等を用いて形成することができる。さらに、ゲート絶縁層146は、作製するトランジスタのサイズやゲート絶縁層146の段差被覆性を考慮して形成することが好ましい。
【0067】
本実施の形態では、ゲート絶縁層146として、SiO2+α(ただし、α>0)である酸化シリコン膜を用いる。この酸化シリコン膜をゲート絶縁層146として用いることで、In−Ga−Zn−O系酸化物半導体に酸素を供給することができ、特性を良好にすることができる。
【0068】
また、ゲート絶縁層146の材料として酸化ハフニウム、酸化イットリウム、酸化ランタン、ハフニウムシリケート(HfSi(x>0、y>0))、ハフニウムアルミネート(HfAl(x>0、y>0))、窒素が添加されたハフニウムシリケート、窒素が添加されたハフニウムアルミネートなどのhigh−k材料を用いることでゲートリーク電流を低減できる。さらに、ゲート絶縁層146は、単層構造としてもよいし、積層構造としてもよい。
【0069】
ゲート絶縁層146の成膜後に、不活性ガス雰囲気下、または酸素雰囲気下で第2の熱処理を行ってもよい。熱処理の温度は、200℃以上450℃以下とするのが好ましく、250℃以上350℃以下とするのがより好ましい。第2の熱処理を行うことによって、トランジスタの電気的特性のばらつきを軽減することができる。また、酸化物半導体層144と接するゲート絶縁層146が酸素を含む場合、酸化物半導体層144に酸素を供給し、該酸化物半導体層144の酸素欠損を補填して、i型(真性半導体)またはi型に限りなく近い酸化物半導体層を形成することもできる。
【0070】
なお、本実施の形態では、ゲート絶縁層146の形成後に第2の熱処理を行っているが、第2の熱処理のタイミングはこれに限定されない。例えば、ソース電極142a及びドレイン電極142bを形成した後に第2の熱処理を行ってもよい。また、第1の熱処理に続けて第2の熱処理を行ってもよい。
【0071】
次いで、ゲート絶縁層146を介して酸化物半導体層144上にゲート電極148を形成する(図2(D)参照)。本実施の形態において、ゲート電極148は、トレンチ131内を充填するように設けられる。
【0072】
ゲート電極148の材料は、モリブデン、チタン、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、クロム、ネオジム、スカンジウム等の金属材料またはこれらを主成分とする合金材料を用いて形成することができる。また、ゲート電極148としてリン等の不純物元素をドーピングした多結晶シリコン膜に代表される半導体膜、ニッケルシリサイドなどのシリサイド膜を用いてもよい。ゲート電極148は、単層構造としてもよいし、積層構造としてもよい。
【0073】
ゲート絶縁層146と接するゲート電極148の一層として、窒素を含む金属酸化物、具体的には、窒素を含むIn−Ga−Zn−O膜、窒素を含むIn−Sn−O膜、窒素を含むIn−Ga−O膜、窒素を含むIn−Zn−O膜、窒素を含むSn−O膜、窒素を含むIn−O膜、金属窒化膜(InN、SnNなど)を用いるのが好ましい。これらの膜は5eV、好ましくは5.5eV以上の仕事関数を有し、ゲート電極として用いた場合、トランジスタの電気特性のしきい値電圧をプラスにすることができ、所謂ノーマリーオフのスイッチング素子を実現できるためである。
【0074】
以上によって、本実施の形態のトランジスタ162を作製することができる。本実施の形態で示すトランジスタ162は、アスペクト比が0.5以上5.0以下のトレンチ131を有する絶縁層130に接して酸化物半導体層144が設けられることで、エッチング等の追加の処理を行うことなく、領域毎に膜厚差を有する酸化物半導体層144を得ることができる。酸化物半導体層144において、ソース領域またはドレイン領域として機能する領域は、チャネル形成領域として機能する領域よりも膜厚が厚いため、酸化物半導体層144を用いたトランジスタ162は、ソース抵抗またはドレイン抵抗を低減することができると共に、しきい値のバラツキ、電気特性の劣化、ノーマリーオン化を抑制することができ、信頼性の高いトランジスタとすることができる。
【0075】
また、トランジスタ162において、酸化物半導体層144がトレンチ131の底面及び内壁面に接して設けられていることで、ソース電極142a及びドレイン電極142b間の距離(トランジスタ162の見かけ上のチャネル長)よりも、トランジスタ162の実効的なチャネル長を長くすることが可能である。よって、トランジスタ面積の縮小を図りつつ、短チャネル効果の発現を抑制することが可能である。
【0076】
また、トランジスタ162のチャネル形成領域に、禁制帯幅が広いワイドギャップ半導体を用いることで、トランジスタ162のオフ電流を低減することができる。本実施の形態においては、チャネル形成領域に高純度化され、真性化された酸化物半導体層144を用いることで、トランジスタ162のオフ電流をより低減することが可能となる。
【0077】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0078】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1に示すトランジスタ162を使用し、電力が供給されない状況でも記憶内容の保持が可能で、かつ、書き込み回数にも制限が無い半導体装置の一例を、図面を用いて説明する。
【0079】
トランジスタ162は、オフ電流が小さいため、これを用いることにより長期にわたり記憶内容を保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動作を必要としない、或いは、リフレッシュ動作の頻度が極めて少ない半導体記憶装置とすることが可能となるため、消費電力を十分に低減することができる。
【0080】
図3は、半導体装置の構成の一例である。図3(A)に、半導体装置の断面図を、図3(B)に半導体装置の平面図を、図3(C)に半導体装置の回路図をそれぞれ示す。ここで、図3(A)は、図3(B)のC1−C2及びD1−D2における断面に相当する。
【0081】
図3(A)及び図3(B)に示す半導体装置は、下部に第1の半導体材料を用いたトランジスタ160を有し、上部に第2の半導体材料を用いたトランジスタ162を有するものである。トランジスタ162は、実施の形態1で示した構成と同一であるため、図3(A)、(B)において図1と同じ箇所は、同じ符号を用いて説明する。
【0082】
ここで、第1の半導体材料と第2の半導体材料は異なる禁制帯幅を持つ材料とすることが望ましい。例えば、第1の半導体材料を酸化物半導体以外の半導体材料(シリコンなど)とし、第2の半導体材料を酸化物半導体とすることができる。酸化物半導体以外の材料を用いたトランジスタは、高速動作が容易である。一方で、酸化物半導体を用いたトランジスタは、その特性により長時間の電荷保持を可能とする。
【0083】
なお、上記トランジスタは、いずれもnチャネル型トランジスタであるものとして説明するが、pチャネル型トランジスタを用いることができるのはいうまでもない。また、本実施の形態で開示する発明の技術的な本質は、情報を保持するためにワイドギャップ半導体をトランジスタ162に用いる点にあるから、半導体装置に用いられる材料や半導体装置の構造など、半導体装置の具体的な構成をここで示すものに限定する必要はない。
【0084】
図3(A)におけるトランジスタ160は、半導体材料(例えば、シリコンなど)を含む基板100に設けられたチャネル形成領域116と、チャネル形成領域116を挟むように設けられた不純物領域120と、不純物領域120に接する金属化合物領域124(半導体材料を金属材料と反応させて低抵抗化した領域)と、チャネル形成領域116上に設けられたゲート絶縁層108と、ゲート絶縁層108上に設けられたゲート電極110と、を有する。
【0085】
トランジスタ160の金属化合物領域124の一部には、電極126が接続されている。ここで、電極126は、トランジスタ160のソース電極やドレイン電極として機能する。また、基板100上にはトランジスタ160を囲むように素子分離絶縁層106が設けられており、トランジスタ160を覆うように絶縁層130が設けられている。なお、高集積化を実現するためには、図3(A)に示すようにトランジスタ160がサイドウォール絶縁層を有しない構成とすることが望ましい。一方で、トランジスタ160の特性を重視する場合には、ゲート電極110の側面にサイドウォール絶縁層を設け、不純物濃度が異なる領域を含む不純物領域120としてもよい。
【0086】
図3(A)に示すようにトランジスタ162は、ワイドギャップ半導体を有するトレンチ構造のトランジスタである。本実施の形態では、ワイドギャップ半導体として、酸化物半導体層144を有する。ここで、酸化物半導体層144は、高純度化されたものであることが望ましい。高純度化された酸化物半導体を用いることで、極めて優れたオフ電流特性のトランジスタ162を得ることができる。
【0087】
ゲート絶縁層146を介して、トランジスタ162のソース電極142aと重畳する領域には、導電層153が設けられており、ソース電極142aと、ゲート絶縁層146と、導電層153とによって、容量素子164が構成される。すなわち、トランジスタ162のソース電極142aは、容量素子164の一方の電極として機能し、導電層153は、容量素子164の他方の電極として機能する。導電層153は、ゲート電極148と同じ工程で作製することができる。
【0088】
なお、容量が不要の場合には、容量素子164を設けない構成とすることもできる。また、容量素子164は、別途、トランジスタ162の上方に設けてもよい。例えば、トレンチ型のキャパシタやスタック型の容量素子を別途、トランジスタ162の上方、或いは、トランジスタ160の下方に形成し、3次元的に積み重ねることでより高集積化を図ってもよい。
【0089】
トランジスタ162および容量素子164の上には絶縁層150が設けられている。そして、絶縁層150上にはトランジスタ162と、他のトランジスタを接続するための配線156が設けられている。配線156は、絶縁層150及びゲート絶縁層146などに形成された開口に形成された電極154を介してドレイン電極142bと電気的に接続されている。ここで、電極154は、少なくともトランジスタ162の酸化物半導体層144の一部と重畳するように設けられることが好ましい。
【0090】
図3(A)及び図3(B)において、トランジスタ160と、トランジスタ162とは、少なくとも一部が重畳するように設けられており、トランジスタ160のソース領域またはドレイン領域と酸化物半導体層144の一部が重畳するように設けられているのが好ましい。また、トランジスタ162及び容量素子164が、トランジスタ160の少なくとも一部と重畳するように設けられている。例えば、容量素子164の導電層153は、トランジスタ160のゲート電極110と少なくとも一部が重畳して設けられている。このような平面レイアウトを採用することにより、半導体装置の占有面積の低減を図ることができるため、高集積化を図ることができる。
【0091】
なお、図3(A)では電極126及び電極154を用いて、金属化合物領域124、ドレイン電極142b及び配線156を接続しているが、開示する発明はこれに限定されない。例えば、ドレイン電極142bを直接、金属化合物領域124に接触させてもよい。または、配線156を直接、ドレイン電極142bに接触させてもよい。
【0092】
図3(A)及び図3(B)に対応する回路構成の一例を図3(C)に示す。
【0093】
図3(C)において、第1の配線(1st Line)とトランジスタ160のソース電極とは、電気的に接続され、第2の配線(2nd Line)とトランジスタ160のドレイン電極とは、電気的に接続されている。また、第3の配線(3rd Line)とトランジスタ162のソース電極またはドレイン電極の一方とは、電気的に接続され、第4の配線(4th Line)と、トランジスタ162のゲート電極とは、電気的に接続されている。そして、トランジスタ160のゲート電極と、トランジスタ162のソース電極またはドレイン電極の他方は、容量素子164の電極の一方と電気的に接続され、第5の配線(5th Line)と、容量素子164の電極の他方は電気的に接続されている。
【0094】
図3(C)に示す半導体装置では、トランジスタ160のゲート電極の電位が保持可能という特徴を生かすことで、次のように、情報の書き込み、保持、読み出しが可能である。
【0095】
情報の書き込みおよび保持について説明する。まず、第4の配線の電位を、トランジスタ162がオン状態となる電位にして、トランジスタ162をオン状態とする。これにより、第3の配線の電位が、トランジスタ160のゲート電極、および容量素子164に与えられる。すなわち、トランジスタ160のゲート電極には、所定の電荷が与えられる(書き込み)。ここでは、異なる二つの電位レベルを与える電荷(以下Lowレベル電荷、Highレベル電荷という)のいずれかが与えられるものとする。その後、第4の配線の電位を、トランジスタ162がオフ状態となる電位にして、トランジスタ162をオフ状態とすることにより、トランジスタ160のゲート電極に与えられた電荷が保持される(保持)。
【0096】
トランジスタ162のオフ電流は極めて小さいため、トランジスタ160のゲート電極の電荷は長時間にわたって保持される。
【0097】
次に情報の読み出しについて説明する。第1の配線に所定の電位(定電位)を与えた状態で、第5の配線に適切な電位(読み出し電位)を与えると、トランジスタ160のゲート電極に保持された電荷量に応じて、第2の配線は異なる電位をとる。一般に、トランジスタ160をnチャネル型とすると、トランジスタ160のゲート電極にHighレベル電荷が与えられている場合の見かけのしきい値Vth_Hは、トランジスタ160のゲート電極にLowレベル電荷が与えられている場合の見かけのしきい値Vth_Lより低くなるためである。ここで、見かけのしきい値とは、トランジスタ160を「オン状態」とするために必要な第5の配線の電位をいうものとする。したがって、第5の配線の電位をVth_HとVth_Lの間の電位Vとすることにより、トランジスタ160のゲート電極に与えられた電荷を判別できる。例えば、書き込みにおいて、Highレベル電荷が与えられていた場合には、第5の配線の電位がV(>Vth_H)となれば、トランジスタ160は「オン状態」となる。Lowレベル電荷が与えられていた場合には、第5の配線の電位がV(<Vth_L)となっても、トランジスタ160は「オフ状態」のままである。このため、第2の配線の電位を見ることで、保持されている情報を読み出すことができる。
【0098】
なお、メモリセルをアレイ状に配置して用いる場合、所望のメモリセルの情報のみを読み出せることが必要になる。このように情報を読み出さない場合には、ゲート電極の状態にかかわらずトランジスタ160が「オフ状態」となるような電位、つまり、Vth_Hより小さい電位を第5の配線に与えればよい。または、ゲート電極の状態にかかわらずトランジスタ160が「オン状態」となるような電位、つまり、Vth_Lより大きい電位を第5の配線に与えればよい。
【0099】
本実施の形態に示す半導体装置では、チャネル形成領域にワイドギャップ半導体(例えば酸化物半導体)を用いたオフ電流の極めて小さいトランジスタを適用することで、極めて長期にわたり記憶内容を保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動作が不要となるか、または、リフレッシュ動作の頻度を極めて低くすることが可能となるため、消費電力を十分に低減することができる。また、電力の供給がない場合(ただし、電位は固定されていることが望ましい)であっても、長期にわたって記憶内容を保持することが可能である。
【0100】
また、本実施の形態に示す半導体装置では、情報の書き込みに高い電圧を必要とせず、素子の劣化の問題もない。例えば、従来の不揮発性メモリのように、フローティングゲートへの電子の注入や、フローティングゲートからの電子の引き抜きを行う必要がないため、ゲート絶縁層の劣化といった問題が全く生じない。すなわち、開示する発明に係る半導体装置では、従来の不揮発性メモリで問題となっている書き換え可能回数に制限はなく、信頼性が飛躍的に向上する。さらに、トランジスタのオン状態、オフ状態によって、情報の書き込みが行われるため、高速な動作も容易に実現しうる。
【0101】
また、トランジスタ162にトレンチ構造を採用することで、トランジスタ162の平面面積を縮小できるため、高集積化が可能である。さらに、トランジスタ162は、信頼性の高いトランジスタであるため、該トランジスタを用いた半導体装置を信頼性の高い半導体装置とすることができる。
【0102】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0103】
(実施の形態3)
本実施の形態においては、実施の形態1に示すトランジスタを使用し、電力が供給されない状況でも記憶内容の保持が可能で、かつ、書き込み回数にも制限が無い半導体装置について、実施の形態2に示した構成と異なる構成について、図4及び図5を用いて説明を行う。
【0104】
図4(A)は、半導体装置の回路構成の一例を示し、図4(B)は半導体装置の一例を示す概念図である。まず、図4(A)に示す半導体装置について説明を行い、続けて図4(B)に示す半導体装置について、以下説明を行う。
【0105】
図4(A)に示す半導体装置において、ビット線BLとトランジスタ262のソース電極又はドレイン電極とは電気的に接続され、ワード線WLとトランジスタ262のゲート電極とは電気的に接続され、トランジスタ262のソース電極又はドレイン電極と容量素子254の第1の端子とは電気的に接続されている。
【0106】
本実施の形態において、トランジスタ262として実施の形態1に示すワイドギャップ半導体を用いたトランジスタを適用する。ワイドギャップ半導体を用いたトランジスタ262は、オフ電流が小さいという特徴を有している。特に、ワイドギャップ半導体として、高純度化された酸化物半導体を用いることで、オフ電流を極めて小さくすることができる。このため、トランジスタ262をオフ状態とすることで、容量素子254の第1の端子の電位(あるいは、容量素子254に蓄積された電荷)を極めて長時間にわたって保持することが可能である。また、トランジスタ262では、短チャネル効果が現れにくいというメリットもある。
【0107】
次に、図4(A)に示す半導体装置(メモリセル250)に、情報の書き込みおよび保持を行う場合について説明する。
【0108】
まず、ワード線WLの電位を、トランジスタ262がオン状態となる電位として、トランジスタ262をオン状態とする。これにより、ビット線BLの電位が、容量素子254の第1の端子に与えられる(書き込み)。その後、ワード線WLの電位を、トランジスタ262がオフ状態となる電位として、トランジスタ262をオフ状態とすることにより、容量素子254の第1の端子の電位が保持される(保持)。
【0109】
トランジスタ262のオフ電流は極めて小さいから、容量素子254の第1の端子の電位(あるいは容量素子に蓄積された電荷)は長時間にわたって保持することができる。
【0110】
次に、情報の読み出しについて説明する。トランジスタ262がオン状態となると、浮遊状態であるビット線BLと容量素子254とが導通し、ビット線BLと容量素子254の間で電荷が再分配される。その結果、ビット線BLの電位が変化する。ビット線BLの電位の変化量は、容量素子254の第1の端子の電位(あるいは容量素子254に蓄積された電荷)によって、異なる値をとる。
【0111】
例えば、容量素子254の第1の端子の電位をV、容量素子254の容量をC、ビット線BLが有する容量成分(以下、ビット線容量とも呼ぶ)をCB、電荷が再分配される前のビット線BLの電位をVB0とすると、電荷が再分配された後のビット線BLの電位は、(CB×VB0+C×V)/(CB+C)となる。従って、メモリセル250の状態として、容量素子254の第1の端子の電位がV1とV0(V1>V0)の2状態をとるとすると、電位V1を保持している場合のビット線BLの電位(=(CB×VB0+C×V1)/(CB+C))は、電位V0を保持している場合のビット線BLの電位(=(CB×VB0+C×V0)/(CB+C))よりも高くなることがわかる。
【0112】
そして、ビット線BLの電位を所定の電位と比較することで、情報を読み出すことができる。
【0113】
このように、図4(A)に示す半導体装置は、トランジスタ262のオフ電流が極めて小さいという特徴から、容量素子254に蓄積された電荷は長時間にわたって保持することができる。つまり、リフレッシュ動作が不要となるか、または、リフレッシュ動作の頻度を極めて低くすることが可能となるため、消費電力を十分に低減することができる。また、電力の供給がない場合であっても、長期にわたって記憶内容を保持することが可能である。
【0114】
次に、図4(B)に示す半導体装置について、説明を行う。
【0115】
図4(B)に示す半導体装置は、上部に記憶回路として図4(A)に示したメモリセル250を複数有するメモリセルアレイ251a及び251bを有し、下部に、メモリセルアレイ251(メモリセルアレイ251a及び251b)を動作させるために必要な周辺回路253を有する。なお、周辺回路253は、メモリセルアレイ251と電気的に接続されている。
【0116】
図4(B)に示した構成とすることにより、周辺回路253をメモリセルアレイ251(メモリセルアレイ251a及び251b)の直下に設けることができるため半導体装置の小型化を図ることができる。
【0117】
周辺回路253に設けられるトランジスタは、トランジスタ262とは異なる半導体材料を用いるのがより好ましい。例えば、シリコン、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、炭化シリコン、またはガリウムヒ素等を用いることができ、単結晶半導体を用いることが好ましい。他に、有機半導体材料などを用いてもよい。このような半導体材料を用いたトランジスタは、十分な高速動作が可能である。したがって、該トランジスタにより、高速動作が要求される各種回路(論理回路、駆動回路など)を好適に実現することが可能である。
【0118】
なお、図4(B)に示した半導体装置では、2つのメモリセルアレイ251(メモリセルアレイ251aと、メモリセルアレイ251b)が積層された構成を例示したが、積層するメモリセルの数はこれに限定されない。3つ以上のメモリセルを積層する構成としてもよい。
【0119】
次に、図4(A)に示したメモリセル250の具体的な構成について図5を用いて説明を行う。
【0120】
図5は、メモリセル250の構成の一例である。図5(A)に、メモリセル250の断面図を、図5(B)にメモリセル250の平面図をそれぞれ示す。ここで、図5(A)は、図5(B)のF1−F2、及びG1−G2における断面に相当する。
【0121】
図5(A)及び図5(B)に示すトランジスタ262は、実施の形態1で示した構成と同一であるため、図5(A)、(B)において図1と同じ箇所は、同じ符号を用いて説明する。
【0122】
ゲート絶縁層146を介して、トランジスタ262のソース電極142aと重畳する領域には、導電層264が設けられており、ソース電極142aと、ゲート絶縁層146と、導電層264とによって、容量素子254が構成される。すなわち、トランジスタ262のソース電極142aは、容量素子254の一方の電極として機能し、導電層264は、容量素子254の他方の電極として機能する。
【0123】
トランジスタ262および容量素子254の上には絶縁層258が設けられている。そして、絶縁層258上にはメモリセル250と、隣接するメモリセル250を接続するための配線260が設けられている。配線260は、ゲート絶縁層146及び絶縁層258などに形成された開口を介してトランジスタ262のドレイン電極142bと電気的に接続されている。但し、開口に他の導電層を設け、該他の導電層を介して、配線260とドレイン電極142bとを電気的に接続してもよい。なお、配線260は、図4(A)の回路図におけるビット線BLに相当する。
【0124】
図5(A)及び図5(B)において、トランジスタ262のドレイン電極142bは、隣接するメモリセルに含まれるトランジスタのソース電極としても機能している。このような平面レイアウトを採用することにより、半導体装置の占有面積の低減を図ることができるため、高集積化を図ることができる。
【0125】
以上のように、上部に多層に形成された複数のメモリセルは、ワイドギャップ半導体層として酸化物半導体を用いたトランジスタにより形成されている。ワイドギャップ半導体層として酸化物半導体を用いたトランジスタは、オフ電流が小さいため、これを用いることにより長期にわたり記憶内容を保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動作の頻度を極めて低くすることが可能となるため、消費電力を十分に低減することができる。
【0126】
このように、酸化物半導体以外の材料を用いたトランジスタ(換言すると、十分な高速動作が可能なトランジスタ)を用いた周辺回路と、酸化物半導体を用いたトランジスタ(より広義には、十分にオフ電流が小さいトランジスタ)を用いた記憶回路とを一体に備えることで、これまでにない特徴を有する半導体装置を実現することができる。また、周辺回路と記憶回路を積層構造とすることにより、半導体装置の集積化を図ることができる。
【0127】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0128】
(実施の形態4)
本実施の形態では、先の実施の形態で示した半導体装置を携帯電話、スマートフォン、電子書籍などの携帯機器に応用した場合の例を図6乃至図9を用いて説明する。
【0129】
携帯電話、スマートフォン、電子書籍などの携帯機器においては、画像データの一時記憶などにSRAMまたはDRAMが使用されている。SRAMまたはDRAMは使用される理由としてはフラッシュメモリでは応答が遅く、画像処理では不向きであるためである。一方で、SRAMまたはDRAMを画像データの一時記憶に用いた場合以下の特徴がある。
【0130】
通常のSRAMは、図6(A)に示すように1つのメモリセルがトランジスタ801〜806の6個のトランジスタで構成されており、それをXデコーダー807、Yデコーダー808にて駆動している。トランジスタ803とトランジスタ805、トランジスタ804とトランジスタ806はインバータを構成し、高速駆動を可能としている。しかし1つのメモリセルが6トランジスタで構成されているため、セル面積が大きいという欠点がある。デザインルールの最小寸法をFとしたときにSRAMのメモリセル面積は通常100〜150Fである。このためSRAMはビットあたりの単価が各種メモリの中で最も高い。
【0131】
それに対して、DRAMはメモリセルが図6(B)に示すようにトランジスタ811、保持容量812によって構成され、それをXデコーダー813、Yデコーダー814にて駆動している。1つのセルが1トランジスタ1容量の構成になっており、面積が小さい。DRAMのメモリセル面積は通常10F以下である。ただし、DRAMは常にリフレッシュが必要であり、書き換えをおこなわない場合でも電力を消費する。
【0132】
しかし、先の実施の形態で説明した半導体装置のメモリセル面積は、10F前後であり、且つ頻繁なリフレッシュは不要である。したがって、メモリセル面積が縮小され、且つ消費電力が低減することができる。
【0133】
図7に携帯機器のブロック図を示す。図7に示す携帯機器はRF回路901、アナログベースバンド回路902、デジタルベースバンド回路903、バッテリー904、電源回路905、アプリケーションプロセッサ906、フラッシュメモリ910、ディスプレイコントローラ911、メモリ回路912、ディスプレイ913、タッチセンサ919、音声回路917、キーボード918などより構成されている。ディスプレイ913は表示部914、ソースドライバ915、ゲートドライバ916によって構成されている。アプリケーションプロセッサ906はCPU907、DSP908、インターフェイス909(IF909)を有している。一般にメモリ回路912はSRAMまたはDRAMで構成されており、この部分に先の実施の形態で説明した半導体装置を採用することによって、情報の書き込みおよび読み出しが高速で、長期間の記憶保持が可能で、且つ消費電力が十分に低減することができる。
【0134】
図8に、ディスプレイのメモリ回路950に先の実施の形態で説明した半導体装置を使用した例を示す。図8に示すメモリ回路950は、メモリ952、メモリ953、スイッチ954、スイッチ955およびメモリコントローラ951により構成されている。また、メモリ回路950は、信号線から入力された画像データ(入力画像データ)、メモリ952、及びメモリ953に記憶されたデータ(記憶画像データ)を読み出し、及び制御を行うディスプレイコントローラ956と、ディスプレイコントローラ956からの信号により表示するディスプレイ957が接続されている。
【0135】
まず、ある画像データがアプリケーションプロセッサ(図示しない)によって、形成される(入力画像データA)。入力画像データAは、スイッチ954を介してメモリ952に記憶される。そしてメモリ952に記憶された画像データ(記憶画像データA)は、スイッチ955、及びディスプレイコントローラ956を介してディスプレイ957に送られ、表示される。
【0136】
入力画像データAに変更が無い場合、記憶画像データAは、通常30〜60Hz程度の周期でメモリ952からスイッチ955を介して、ディスプレイコントローラ956により読み出される。
【0137】
次に、例えばユーザーが画面を書き換える操作をしたとき(すなわち、入力画像データAに変更が有る場合)、アプリケーションプロセッサは新たな画像データ(入力画像データB)を形成する。入力画像データBはスイッチ954を介してメモリ953に記憶される。この間も定期的にメモリ952からスイッチ955を介して記憶画像データAは読み出されている。メモリ953に新たな画像データ(記憶画像データB)が記憶し終わると、ディスプレイ957の次のフレームより、記憶画像データBは読み出され、スイッチ955、及びディスプレイコントローラ956を介して、ディスプレイ957に記憶画像データBが送られ、表示がおこなわれる。この読み出しはさらに次に新たな画像データがメモリ952に記憶されるまで継続される。
【0138】
このようにメモリ952及びメモリ953は交互に画像データの書き込みと、画像データの読み出しを行うことによって、ディスプレイ957の表示をおこなう。なお、メモリ952及びメモリ953はそれぞれ別のメモリには限定されず、1つのメモリを分割して使用してもよい。先の実施の形態で説明した半導体装置をメモリ952及びメモリ953に採用することによって、情報の書き込みおよび読み出しが高速で、長期間の記憶保持が可能で、且つ消費電力が十分に低減することができる。
【0139】
図9に電子書籍のブロック図を示す。図9はバッテリー1001、電源回路1002、マイクロプロセッサ1003、フラッシュメモリ1004、音声回路1005、キーボード1006、メモリ回路1007、タッチパネル1008、ディスプレイ1009、ディスプレイコントローラ1010によって構成される。
【0140】
ここでは、図9のメモリ回路1007に先の実施の形態で説明した半導体装置を使用することができる。メモリ回路1007の役割は書籍の内容を一時的に保持する機能を持つ。機能の例としては、ユーザーがハイライト機能を使用する場合などがある。ユーザーが電子書籍を読んでいるときに、特定の箇所にマーキングをしたい場合がある。このマーキング機能をハイライト機能と言い、表示の色を変える、アンダーラインを引く、文字を太くする、文字の書体を変えるなどによって、周囲との違いを示すことである。ユーザーが指定した箇所の情報を記憶し、保持する機能である。この情報を長期に保存する場合にはフラッシュメモリ1004にコピーしてもよい。このような場合においても、先の実施の形態で説明した半導体装置を採用することによって、情報の書き込みおよび読み出しが高速で、長期間の記憶保持が可能で、且つ消費電力が十分に低減することができる。
【0141】
以上のように、本実施の形態に示す携帯機器には、先の実施の形態に係る半導体装置が搭載されている。このため、読み出しが高速で、長期間の記憶保持が可能で、且つ消費電力を低減した携帯機器が実現される。
【0142】
本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【実施例】
【0143】
本実施例では、実施の形態1に示した作製方法を用いて、トレンチを有する絶縁層に接して酸化物半導体層を成膜する例を示す。
【0144】
本実施例で用いた試料の作製方法を以下に示す。
【0145】
基板としてはシリコン基板を用い、該シリコン基板上に絶縁層として酸化シリコン膜をスパッタリング法で500nmの膜厚で成膜した。
【0146】
酸化シリコン膜の成膜条件としては、ターゲットとして酸化シリコン(SiO)ターゲットを用い、シリコン基板とターゲットの間との距離を60mm、圧力0.4Pa、高周波(RF)電源2kW、アルゴン及び酸素(アルゴン流量25sccm:酸素流量25sccm)雰囲気下、基板温度100℃とした。
【0147】
次いで、酸化シリコン膜上にフォトリソグラフィ工程によりレジストマスクを形成し、レジストマスクを用いて酸化シリコン膜をエッチングしトレンチを形成した。エッチング工程としては、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合型プラズマ)エッチング法により、エッチングガスとして三フッ化メタン(CHF)、ヘリウム(He)、及びメタン(CH)(CHF:He:CH=22.5sccm:127.5sccm:5sccm)を用い、電源電力475W、バイアス電力300W、圧力3.5Paで、96秒間行った。なお、エッチング工程の後に、酸素によるアッシング(電源電力200W、圧力67Pa(0.5Torr)、300秒間)を行った。トレンチの断面における内壁面の長さ(図1(B)におけるトレンチの深さd)は、310nmとし、底面の幅(図1(B)におけるトレンチの長さL)は330nmとした。すなわち、作製したトレンチにおけるアスペクト比は、0.94であった。
【0148】
酸化シリコン膜上から剥離液を用いてレジストマスクを除去し、トレンチの内壁面、トレンチの底面、及び絶縁層の最上面に接する酸化物半導体層として、スパッタリング法によりIn−Ga−Zn−O膜を成膜した。
【0149】
本実施例においては、基板を400℃に加熱しながら酸化物半導体層の成膜を行った。なお、In−Ga−Zn−O膜の成膜条件は、組成比としてIn:Ga:Zn=1:1:1[atom比]の酸化物ターゲットを用い、シリコン基板とターゲットとの間の距離を60mm、圧力0.4Pa、直流(DC)電源0.5kW、アルゴン及び酸素(アルゴン流量30sccm:酸素流量15sccm)雰囲気下とした。酸化物半導体層の膜厚は40nmを狙って成膜した。なお、酸化物半導体層の成膜に用いるアルゴン及び酸素は、水、水素などが含まれないことが好ましい。例えば、アルゴンの純度を9N、露点−121℃、水0.1ppb、水素0.5ppb、酸素の純度を8N、露点−112℃、水1ppb、水素1ppbレベルが好ましい。
【0150】
以上の工程で得られた本実施例の試料の、断面TEM(Transmission Electron Microscopy(透過型電子顕微鏡))写真を、図10に示す。
【0151】
図10より、トレンチを有する絶縁層310上に設けられた酸化物半導体層320は、領域によって膜厚差を有しており、トレンチの内壁面に接する領域320bの膜厚、及びトレンチの底面に接する領域320aの膜厚は、絶縁層310の最上面に接する領域320cの膜厚よりも薄いことが確認できる。酸化物半導体層320において、トレンチの内壁面に接する領域320bの膜厚は16nmであり、トレンチの底面に接する領域320aの膜厚は21nmであり、絶縁層310の最上面に接する領域320cの膜厚は40nmであった。
【0152】
以上示したように、本実施例において、トレンチを有する絶縁層310に接して酸化物半導体層320を設けることで、エッチング等の追加の処理を行うことなく、領域毎に膜厚差を有する酸化物半導体層320を得ることができる。該酸化物半導体層320をトランジスタに用いることで、ソース抵抗またはドレイン抵抗を低減することができると共に、しきい値のバラツキ、電気特性の劣化、ノーマリーオン化を抑制することができ、信頼性の高いトランジスタとすることができる。
【符号の説明】
【0153】
100 基板
106 素子分離絶縁層
108 ゲート絶縁層
110 ゲート電極
116 チャネル形成領域
120 不純物領域
124 金属化合物領域
126 電極
130 絶縁層
131 トレンチ
144 酸化物半導体層
146 ゲート絶縁層
148 ゲート電極
150 絶縁層
153 導電層
154 電極
156 配線
160 トランジスタ
162 トランジスタ
164 容量素子
250 メモリセル
251 メモリセルアレイ
253 周辺回路
254 容量素子
258 絶縁層
260 配線
262 トランジスタ
264 導電層
310 絶縁層
320 酸化物半導体層
801 トランジスタ
803 トランジスタ
804 トランジスタ
805 トランジスタ
806 トランジスタ
807 Xデコーダー
808 Yデコーダー
811 トランジスタ
812 保持容量
813 Xデコーダー
814 Yデコーダー
901 RF回路
902 アナログベースバンド回路
903 デジタルベースバンド回路
904 バッテリー
905 電源回路
906 アプリケーションプロセッサ
907 CPU
908 DSP
909 インターフェイス
910 フラッシュメモリ
911 ディスプレイコントローラ
912 メモリ回路
913 ディスプレイ
914 表示部
915 ソースドライバ
916 ゲートドライバ
917 音声回路
918 キーボード
919 タッチセンサ
950 メモリ回路
951 メモリコントローラ
952 メモリ
953 メモリ
954 スイッチ
955 スイッチ
956 ディスプレイコントローラ
957 ディスプレイ
1001 バッテリー
1002 電源回路
1003 マイクロプロセッサ
1004 フラッシュメモリ
1005 音声回路
1006 キーボード
1007 メモリ回路
1008 タッチパネル
1009 ディスプレイ
1010 ディスプレイコントローラ
142a ソース電極
142b ドレイン電極
251a メモリセルアレイ
251b メモリセルアレイ
320a 領域
320b 領域
320c 領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレンチを有する絶縁層と、
前記トレンチの内壁面及び底面、並びに前記絶縁層の最上面に接して設けられたワイドギャップ半導体層と、
前記ワイドギャップ半導体層と電気的に接続するソース電極及びドレイン電極と、
前記ワイドギャップ半導体層上に設けられたゲート絶縁層と、
前記トレンチ内を充填するように、前記ゲート絶縁層上に設けられたゲート電極と、を有し、
前記ワイドギャップ半導体層において、前記トレンチの内壁面に接する領域及び前記トレンチの底面に接する領域の膜厚は、前記絶縁層の最上面に接する領域の膜厚よりも薄い半導体装置。
【請求項2】
トレンチを有する絶縁層と、
前記トレンチの内壁面及び底面、並びに前記絶縁層の最上面に接して設けられたワイドギャップ半導体層と、
前記ワイドギャップ半導体層と電気的に接続するソース電極及びドレイン電極と、
前記ワイドギャップ半導体層上に設けられたゲート絶縁層と、
前記トレンチ内を充填するように、前記ゲート絶縁層上に設けられたゲート電極と、を有し、
前記トレンチのアスペクト比は、0.5以上5.0以下であり、
前記ワイドギャップ半導体層において、前記トレンチの内壁面に接する領域及び前記トレンチの底面に接する領域の膜厚は、前記絶縁層の最上面に接する領域の膜厚よりも薄い半導体装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記絶縁層の最上面に接するワイドギャップ半導体層の膜厚は、前記トレンチの内壁面及び底面に接するワイドギャップ半導体層の膜厚の1.5倍以上10倍以下である半導体装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一において、
前記ワイドギャップ半導体層として、酸化物半導体層を有する半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−235102(P2012−235102A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−94363(P2012−94363)
【出願日】平成24年4月18日(2012.4.18)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】