車両用運転操作補助装置、車両用運転操作補助方法および自動車
【課題】運転者に対し、より適切に車両の運転操作の支援を行うこと。
【解決手段】本発明に係る自動車では、リスクポテンシャル算出手段が、自車両の状態と、自車両周囲の障害物の状態とに基づいて、自車両周囲に存在する障害物に対するリスクポテンシャルを算出し、擬似車両挙動発生手段が、前記リスクポテンシャルが増大する運転操作を行った場合の車両挙動を、前記サスペンション装置を制御することによって擬似的に発生させる。
【解決手段】本発明に係る自動車では、リスクポテンシャル算出手段が、自車両の状態と、自車両周囲の障害物の状態とに基づいて、自車両周囲に存在する障害物に対するリスクポテンシャルを算出し、擬似車両挙動発生手段が、前記リスクポテンシャルが増大する運転操作を行った場合の車両挙動を、前記サスペンション装置を制御することによって擬似的に発生させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者の操作を補助する車両用運転操作補助装置、車両用運転操作補助方法および自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用運転操作補助装置として、操舵操作の反力や、アクセルペダルあるいはブレーキペダルの操作反力を制御する技術が知られている。
例えば、特許文献1には、車両周囲の状況(障害物)を検出し、その時点におけるリスクポテンシャルを求め、算出したリスクポテンシャルに基づいて操舵補助トルクを制御する技術が記載されている。
このような制御を行うことにより、特許文献1に記載された技術においては、運転者に車両周囲の状況を認識させ、適切な運転を支援することととしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−211886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された技術を含め、従来の車両用運転操作補助装置においては、運転者が行った操作に対して、反力を付与する等して運転操作を支援するものである。そのため、運転者が操作を行って初めて、その操作が適切なものであるか否かを判断することができることとなり、運転者による適切な運転操作が遅れる可能性がある。
本発明の課題は、運転者に対し、より適切に車両の運転操作の支援を行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するため、本発明に係る車両用運転操作補助装置は、
擬似車両挙動発生手段が、車両状態検出手段の検出結果およびリスクポテンシャルに基づいて、リスクポテンシャルが増大する運転操作を行った場合の車両挙動を、動作制御手段を制御することによって擬似的に発生させる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、運転者にリスクポテンシャルが増大しているような感覚を与え、それを抑制する運転操作を誘導することができるため、運転者に対し、より適切に車両の運転操作の支援を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1実施形態に係る車両用運転操作補助装置1を備えた自動車1Aの概略構成図である。
【図2】自動車1Aの制御系統を示すシステム構成図である。
【図3】操舵反力制御を行う際の減衰力算出制御マップを示す図である。
【図4】自動車1Aが有する能動型サスペンション機構の具体的な構成を示す図である。
【図5】コントローラ50が実行するリスクポテンシャル算出処理を示すフローチャートである。
【図6】コントローラ50が実行する運転操作誘導処理を示すフローチャートである。
【図7】前方リスクポテンシャルRPaが高い場合の制御動作を示す模式図である。
【図8】前方リスクポテンシャルRPaが高い場合に付与されるアクセルペダル反力および車体ピッチ角βの特性を示す図である。
【図9】後方リスクポテンシャルRPbが高い場合の制御動作を示す模式図である。
【図10】後方リスクポテンシャルRPbが高い場合に付与される車体ピッチ角γの特性を示す図である。
【図11】右方リスクポテンシャルRPcあるいは左方リスクポテンシャルRPdが高い場合の制御動作を示す模式図である。
【図12】右方リスクポテンシャルRPcあるいは左方リスクポテンシャルRPdが高い場合に付与される操舵反力および車体ロール角δの特性を示す図である。
【図13】応用例1のサスペンション構造を示す図である。
【図14】応用例5において、コントローラ50が実行する運転操作誘導処理を示すフローチャートである。
【図15】運転操作誘導処理の第1のサブフローを示す図である。
【図16】運転操作誘導処理の第2のサブフローを示す図である。
【図17】運転操作誘導処理の第3のサブフローを示す図である。
【図18】運転操作誘導処理の第4のサブフローを示す図である。
【図19】操舵反力を発生させる第1の閾値RPc0と、サスペンションストロークを変化させる第2の閾値RPc1との関係を示す図である。
【図20】応用例6のサスペンション構造を示す図である。
【図21】右方リスクポテンシャルRPcが高い場合に付与されるスタビライザリンク長の特性を示す図である。
【図22】コントローラ50が実行する運転操作誘導処理を示すフローチャートである。
【図23】前方リスクポテンシャルRPaが高い場合の制御動作を示す模式図である。
【図24】前方リスクポテンシャルRPaが高い場合に付与されるアクセルペダル反力およびサスペンションストロークの振動の特性を示す図である。
【図25】後方リスクポテンシャルRPbが高い場合の制御動作を示す模式図である。
【図26】後方リスクポテンシャルRPbが高い場合に付与されるサスペンションストロークの振動の特性を示す図である。
【図27】右方リスクポテンシャルRPcあるいは左方リスクポテンシャルRPdが高い場合の制御動作を示す模式図である。
【図28】右方リスクポテンシャルRPcあるいは左方リスクポテンシャルRPdが高い場合に付与される操舵反力およびサスペンションストロークの振動の特性を示す図である。
【図29】応用例1において、コントローラ50が実行する運転操作誘導処理を示すフローチャートである。
【図30】コントローラ50が実行する運転操作誘導処理を示すフローチャートである。
【図31】前方リスクポテンシャルRPaが高い場合の制御動作を示す模式図である。
【図32】前方リスクポテンシャルRPaが高い場合に付与されるアクセルペダル反力および車体3の揺動ロール角の特性を示す図である。
【図33】コントローラ50が実行する運転操作誘導処理を示すフローチャートである。
【図34】コントローラ50が実行する運転操作誘導処理を示すフローチャートである。
【図35】コントローラ50が実行する運転操作誘導処理を示すフローチャートである。
【図36】運転操作誘導処理の第1のサブフローを示す図である。
【図37】運転操作誘導処理の第2のサブフローを示す図である。
【図38】運転操作誘導処理の第3のサブフローを示す図である。
【図39】運転操作誘導処理の第4のサブフローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図を参照して本発明を適用した自動車の実施の形態を説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る車両用運転操作補助装置1を備えた自動車1Aの概略構成図である。
図1において、自動車1Aは、車輪2FR,2FL,2RR,2RLと、車体3と、車体3と各車輪との間に設置された能動型のサスペンション4FR,4FL,4RR,4RLと、ステアリングホイール5と、ステアリングホイール5と操向輪である車輪2FR,2FLとの間に設置されたステアリング装置6と、アクセルペダル7と、ブレーキペダル8と、車体3の前後左右それぞれに設置され、車両の周囲を撮影するカメラ9F,9R,9SR,9SLとを備えており、自動車1Aに搭載された各種機器からの信号は、後述するコントローラ50に入力されている。
【0009】
図2は、自動車1Aの制御系統を示すシステム構成図である。
図2において、自動車1Aの制御系統は、レーザレーダ10と、カメラ9F,9R,9SR,9SLと、車速センサ30と、コントローラ50と、操舵反力制御装置60と、サーボモータ61,81,91と、舵角センサ62と、アクセルペダル反力制御装置80と、ブレーキペダル反力制御装置90と、駆動力制御装置100と、制動力制御装置110と、能動型のサスペンション4FR,4FL,4RR,4RLそれぞれに備えられたアクチュエータ120FR,120FL,120RR,120RLおよび車体上下加速度検出器130FR,130FL,130RR,130RLと、車両状態検出器140とを備えている。
【0010】
なお、これらのうち、レーザレーダ10、カメラ9F,9R,9SR,9SL、車速センサ30、コントローラ50、操舵反力制御装置60、サーボモータ61,81,91、舵角センサ62、アクセルペダル反力制御装置80、ブレーキペダル反力制御装置90、駆動力制御装置100、制動力制御装置110、アクチュエータ120FR,120FL,120RR,120RL、車体上下加速度検出器130FR,130FL,130RR,130RL、車両状態検出器140は、本発明に係る車両用運転操作補助装置1を構成している。
【0011】
レーザレーダ10は、車両の前方のグリル部もしくはバンパ部等に取り付けられ、水平方向に赤外光パルスを走査する。
レーザレーダ10は、前方にある複数の反射物(通常、前方車の後端)で反射された赤外光パルスの反射波を検出し、反射波の到達時間より、複数の前方車までの車間距離とその存在方向を検出する。検出した車間距離および存在方向はコントローラ50へ出力される。
【0012】
なお、本実施の形態において、前方物体の存在方向は、自車両正面に対する相対角度として表すことができる。レーザレーダ10によりスキャンされる前方の領域は、自車正面に対して±6deg程度であり、この範囲内に存在する前方物体が検出される。
また、レーザレーダ10は、前方車両までの車間距離およびその存在方向だけでなく、自車前方に存在する歩行者等の障害物までの相対距離およびその存在方向を検出する。
【0013】
カメラ9Fは、フロントウィンドウ上部に取り付けられた小型のCCD(Charge Coupled Devices)カメラ、またはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)カメラ等の撮像装置であり、前方道路の状況を画像として検出し、検出した画像をコントローラ50に出力する。カメラ9Fによる検知領域は水平方向に±30deg程度であり、この領域に含まれる前方道路風景が画像として取り込まれる。
【0014】
また、カメラ9SR,9SLは、それぞれ左右の後部ドア上部に取り付けられた小型のCCDカメラ、もしくはCMOSカメラ等の撮像装置である。カメラ9SR,9SLは、自車側方の状況、特に隣接車線上の状況を画像として検出し、検出した画像をコントローラ50に出力する。なお、カメラ9SR,9SLは、前方を撮影するカメラ9Fに比して、より広範な領域を撮影するため、その検知領域は水平方向に±60deg程度となっている。
【0015】
さらに、カメラ9Rは、リアウィンドウ上部に取り付けられた小型のCCDカメラ、またはCMOSカメラ等の撮像装置であり、後方道路の状況を画像として検出し、検出した画像をコントローラ50に出力する。カメラ9Rによる検知領域は、カメラ9Fと同様に、水平方向に±30deg程度であり、この領域に含まれる後方道路風景が画像として取り込まれる。
車速センサ30は、車輪の回転数等から自車両の走行車速を検出し、検出した車速をコントローラ50へ出力する。
【0016】
コントローラ50は、CPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)等のCPU周辺部品とから構成され、車両用運転操作補助装置1および自動車1Aの制御系統全体の制御を行う。
コントローラ50は、車速センサ30から入力される自車速と、レーザレーダ10から入力される距離情報と、カメラ9F,9R,9SR,9SLから入力される車両周辺の画像情報とから、自車両周囲の障害物状況を検出する。
なお、コントローラ50は、カメラ9F,9R,9SR,9SLから入力される画像情報を画像処理することにより自車両周囲の障害物状況を検出する。
【0017】
ここで、自車両周囲の障害物状況としては、自車両前方を走行する他車両までの車間距離、隣接車線を自車両後方から接近する他車両の有無と接近度合、および車線識別線(白線)に対する自車両の左右位置、つまり相対位置と角度、さらに車線識別線の形状などを挙げることができる。また、自車両前方を横断する歩行者や二輪車等も障害物状況として検出される。
【0018】
コントローラ50は、検出した障害物状況に基づいて各障害物に対する自車両のリスクポテンシャル(障害物に対する自車両の接近度合を表す物理量)を算出する。さらに、コントローラ50は、それぞれの障害物に対するリスクポテンシャルを総合して自車両周囲の総合的なリスクポテンシャルを算出し、後述するようにリスクポテンシャルに応じて、車両の左右方向の制御(操舵反力あるいは操舵角の制御および操舵ゲインの制御)、前後方向(制駆動力の制御あるいはアクセルペダルとブレーキペダルの操作反力の制御)、上下方向(能動型サスペンションの減衰力、サスペンションストロークおよびばね定数の制御)について協調制御を行う。
【0019】
ここで、本実施形態においては、コントローラ50が、総合的なリスクポテンシャルに基づいて車両の前後、左右および上下方向の制御を行うものであるが、このとき、運転操作支援を行う上で、ノイズであると捉えられる路面状態および車両の挙動を運転者に伝達しないように制御し、運転操作支援を行う上で、適切な運転操作につながると捉えられる情報(路面状態および車両の挙動等)を運転者に伝達するように制御する。また、コントローラ50は、擬似的な車両挙動を発生させることにより、運転者の運転操作を誘導する。
【0020】
具体的には、コントローラ50は、自車両に発生する制駆動力、運転操作のために運転者が操作する運転操作機器に発生する操作反力、および、能動型サスペンションの減衰特性を制御する。運転操作機器とは、例えば運転者が自車両を加速したり減速したりするときに操作するアクセルペダル7やブレーキペダル8、あるいは、運転者が自車両の方向転換を行うときに操作するステアリングホイール5である。
【0021】
能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLの減衰特性について、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLに備えられたダンパの圧力制御あるいはサスペンションストロークの制御を行う。
即ち、コントローラ50には、車体上下加速度検出器130FR,130FL,130RR,130RLから出力された上下加速度検出信号X”2FL〜X”2RRが入力される。
【0022】
そして、コントローラ50は、車体上下加速度検出信号X"に所定のゲインKmを乗算する。
また、コントローラ50は、車体上下加速度について設定されたゲインKnと車体上下加速度検出信号の積分値∫dtとを乗算する。さらに、コントローラ50は、これらの乗算結果を加算し、この加算結果を各能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLそれぞれのダンパにおける油圧制御用のアクチュエータ120FR,120FL,120RR,120RLの指令値とする。
【0023】
操舵反力制御装置60は、車両の操舵系に組み込まれ、コントローラ50からの指令に応じて、サーボモータ61で発生させるトルクを制御する。サーボモータ61は、操舵反力制御装置60からの指令値に応じて発生させるトルクを制御し、運転者がハンドルを操作する際に発生する操舵反力を目標値に制御することができる。
ここで、コントローラ50は、リスクポテンシャルに応じた操舵反力制御を行うが、リスクポテンシャルに応じて操舵反力を付与する場合、図3に示す減衰力算出制御マップを用いることができる。
【0024】
この場合、操舵角速度θ’および発生トルクTHから、操舵反力TRに付加する減衰力TDを算出する。この減衰力算出制御マップは、図3に示すように、横軸に操舵角速度θ’を、縦軸に減衰力TDをそれぞれとり、操舵角速度θ’が0(零)から正方向に増加するときに、これに比例して減衰力TD0(零)から負方向に減少し、一方、操舵角速度θ’が0(零)から負方向に減少するときに、これに比例して減衰力TDが0(零)から正方向に増加するように設定されている。さらに、発生トルクTHが大きいほど、操舵角速度θ’の増加率(または減少率)に対する減衰力TDの減少率(又は増加率)が大きくなるように構成されている。
【0025】
舵角センサ62は、ステアリングコラムもしくはステアリングホイール付近に取り付けられた角度センサ等であり、ステアリングシャフトの回転を操舵角として検出し、コントローラ50へ出力する。
アクセルペダル7には、アクセルペダル7の踏み込み量(操作量)を検出するアクセルペダルストロークセンサ(不図示)が設けられている。アクセルペダルストロークセンサによって検出されたアクセルペダル操作量はコントローラ50に出力される。
【0026】
アクセルペダル反力制御装置80は、コントローラ50からの指令に応じて、アクセルペダル82のリンク機構に組み込まれたサーボモータ81で発生させるトルクを制御する。サーボモータ81は、アクセルペダル操作反力制御装置80からの指令値に応じて発生させる反力を制御し、運転者がアクセルペダル82を操作する際に発生する踏力を目標値に制御することができる。
【0027】
ブレーキペダル8には、その踏み込み量(操作量)を検出するブレーキペダルストロークセンサ(不図示)が設けられている。ブレーキペダルストロークセンサによって検出されたブレーキペダル操作量もコントローラ50に出力される。
ブレーキペダル反力制御装置90は、コントローラ50からの指令に応じて、ブレーキブースタで発生させるブレーキアシスト力を制御する。ブレーキブースタは、ブレーキペダル反力制御装置90からの指令値に応じて発生させるブレーキアシスト力を制御し、運転者がブレーキペダル8を操作する際に発生する踏力を目標値に制御することができる。ブレーキアシスト力が大きいほどブレーキペダル操作反力は小さくなり、ブレーキペダル8を踏み込みやすくなる。
【0028】
駆動力制御装置100は、エンジンコントローラを有し、コントローラ50からの指令に応じてエンジントルクを制御する。
制動力制御装置110は、ブレーキ液圧コントローラを有し、コントローラ50からの指令に応じてブレーキ液圧を制御する。
車両状態検出器140は、横加速度センサ、ヨーレートセンサ、アクセル開度センサ、ブレーキ圧センサ等、自車両の状態を検出する各種センサを備えており、検出した横加速度(以下、適宜「横G」と称する。)、ヨーレート、アクセル開度ACCおよびブレーキ圧BRK等の検出値を、コントローラ50に出力する。
【0029】
(能動型サスペンション機構の具体的構成)
図4は、自動車1Aが有する能動型サスペンション機構の具体的な構成を示す図である。
図4において、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLは、それぞれ車体側部材12と各車輪2FR,2FL,2RR,2RLを個別に支持する車輪側部材14との間に介装された能動型サスペンションであって、アクチュエータ120FR,120FL,120RR,120RLと、コイルスプリング16FR,16FL,16RR,16RLと、アクチュエータ120FR,120FL,120RR,120RLに対する作動油圧をコントローラ50からの指令値にのみ応動して制御する圧力制御弁17FR,17FL,17RR,17RLとを備えている。また、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLは、圧力制御弁17FL〜17RRと油圧源24との間の油圧配管25の途中に接続した高圧側アキュムレータ28Hと、圧力制御弁17FL〜17RRと油圧シリンダ15FL〜15RRとの間の油圧配管27に絞り弁28Vを介して連通した低圧側アキュムレータ28Lとを備えている。
【0030】
ここで、アクチュエータ120FR,120FL,120RR,120RLのそれぞれは、そのシリンダチューブ15aが車体側部材12に取付けられ、ピストンロッド15bが車輪側部材14に取付けられ、ピストン15cによって閉塞された上側圧力室B内の作動油圧が圧力制御弁17FL〜17RRによって制御される。また、コイルスプリング16FL〜16RRのそれぞれは、車体側部材12と車輪側部材14との間にアクチュエータ120FR,120FL,120RR,120RLと並列に装着されて車体の静荷重を支持している。なお、これらコイルスプリング16FL〜16RRは、車体の静荷重を支えるのみの低いバネ定数のものでよい。
【0031】
圧力制御弁17FL〜17RRは、上側圧力室Bの圧力が上昇(又は減少)すると、これに応じて上側圧力室Bの圧力を減圧(又は昇圧)し、上向きの振動入力による上側圧力室Bの圧力上昇(又は下向きの振動入力による上側圧力室Bの圧力減少)を抑制する。これにより、車体側部材14に伝達される振動入力を低減することができる。
一方、車体3には、各車輪2FR,2FL,2RR,2RLの直上部に車体上下加速度検出器130FR,130FL,130RR,130RLが配設され、これら車体上下加速度検出器130FR,130FL,130RR,130RLの車体上下加速度検出信号X”2FL〜X”2RRがコントローラ50に入力される。
【0032】
コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLの圧力制御を行うサスペンション制御部50aを有している。
サスペンション制御部は、車体上下加速度検出信号X”2FL〜X”2RRそれぞれに所定のゲインKmを乗算するゲイン調整機能と、所定のゲインKnと車体上下加速度検出信号X”2FL〜X”2RRそれぞれとの積分値∫dtとを乗算する車体上下速度算出兼ゲイン調整機能と、ゲイン調整機能および車体上下速度算出兼ゲイン調整機能の出力を加算する加算機能とを有しており、加算機能による加算出力が圧力制御弁17FL〜17RRの指令値V4FL〜V4RRとして各圧力制御弁17FL〜17RRに供給される。
【0033】
コントローラ50のサスペンション制御部50aにおいては、図4に示すように、車体上下加速度検出値X"2FL〜X"2RRが積分器51に供給され、その積分値でなる車体上下速度検出値X’2FL〜X’2RRが所定のゲインKnが設定された増幅器52で増幅される。一方、車体上下加速度検出値X"2FL〜X"2RRは所定の増幅度Kmが設定された増幅器53に供給されて増幅され、増幅器52,53の増幅出力が加算器54に入力されて加算される。さらに、車体上下加速度検出値X"2FL〜X"2RRは、例えばウインドコンパレータの構成を有する比較器55にも供給され、この比較器55で上下加速度検出値X"2FL〜X"2RRが所定の上限値および下限値内に収まっているときに例えば論理値"1”の比較出力が出力され、この比較出力がタイマ回路56に供給される。このタイマ回路56は、論理値"1”の比較出力が所定時間継続しているか否かを判定し、所定時間継続している場合に、論理値"1”のリセット信号RSを積分器51に出力し、積分器51の蓄積データをリセットする。
【0034】
このような構成の能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLにおいて、コントローラ50のサスペンション制御部50aが車体上下加速度検出信号X”2FL〜X”2RRに関するゲインKmおよび車体上下速度検出値X’2FL〜X’2RRに関するゲインKnを変更することで、路面から車体3に入力される振動をほぼ打ち消すように制御したり、路面から車体3に入力される振動をそのまま伝えたりすることができる。また、路面入力に拠らない圧力制御弁17FL〜17RRの指令値V4FL〜V4RRを生成することで、路面からの振動を抑制する以外の動作(例えば、車体のロールあるいはピッチの制御)を能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLに行わせることもできる。
【0035】
(コントローラ50における処理)
次に、コントローラ50が実行する各種処理について説明する。
本実施形態において、自動車1Aは、リスクポテンシャルRPに応じて、運転者が自発的に運転行動を起こすように自車両の姿勢を変化させることにより、運転者の運転操作を促し、車両前後方向および左右方向の運転操作補助を行う。
したがって、初めに、これらの制御において用いられるリスクポテンシャルRPを算出するためのリスクポテンシャル算出処理について説明する。
【0036】
(リスクポテンシャル算出処理)
図5は、コントローラ50が実行するリスクポテンシャル算出処理を示すフローチャートである。
コントローラ50は、車両用運転操作補助装置1による運転操作補助の開始を運転者が指示入力することに対応して、リスクポテンシャル算出処理を開始する。
図5において、リスクポテンシャル算出処理を開始すると、コントローラ50は、まず、自車両の走行状態を読み込む(ステップS1)。
【0037】
ここで、走行状態は、自車周囲の障害物状況を含む自車両の走行状況に関する情報である。具体的には、レーザレーダ10で検出される前方走行車までの相対距離および相対角度、また、前方カメラ9Fからの画像入力に基づく自車両に対する白線の相対位置(すなわち左右方向の変位と相対角度)、白線の形状および前方走行車までの相対距離と相対角度を読み込み、さらに、カメラ9R,9SR,9SLからの画像入力に基づく隣接車線後方に存在する走行車両までの相対距離および相対角度を読み込む。さらに、車速センサ30によって検出される車速を読み込む。また、カメラ9F,9R,9SR,9SLで検出される画像に基づいて、自車両周囲に存在する障害物の種別、つまり障害物が四輪車両、二輪車両、歩行者またはその他であるかを認識する。
【0038】
次に、コントローラ50は、ステップS1で読み込んだ走行状態のデータ(走行状態データ)に基づいて、現在の車両周囲状況を認識する(ステップS2)。
ここでは、前回の処理周期以前に検出し、不図示のメモリに記憶している自車両に対する各障害物の相対位置やその移動方向・移動速度と、ステップS1で得られた現在の走行状態データとにより、現在の各障害物の自車両に対する相対位置やその移動方向・移動速度を認識する。そして、自車両の走行に対して障害物となる他車両や白線が、自車両の周囲にどのように配置され、相対的にどのように移動しているかを認識する。
【0039】
次に、コントローラ50は、ステップS2において認識した各障害物に対する余裕時間TTC(Time To Collision)を障害物毎に算出する(ステップS3)。
障害物kに対する余裕時間TTCkは、次式(1)で求めることができる。
TTCk=(Dk−σ(Dk))/(Vrk+σ(Vrk)) (1)
ここで、Dk:自車両から障害物kまでの相対距離、Vrk:自車両に対する障害物kの相対速度、σ(Dk):相対距離のばらつき、σ(Vrk):相対速度のばらつき、をそれぞれ示す。
【0040】
相対距離、相対速度のばらつきσ(Dk)、σ(Vrk)は、検出器の不確定性や不測の事態が発生した場合の影響度合の大きさを考慮して、障害物kを認識したセンサの種類や、認識された障害物kの種別に応じて設定する。
レーザレーダ10は、カメラ、例えばCCD等によるカメラ9F,9R,9SR,9SLによる障害物の検出と比べて、検出距離、つまり自車両と障害物との相対距離の大きさによらず正しい距離を検出することができる。
【0041】
そこで、レーザレーダ10で障害物kまでの相対距離Dkを検出した場合は、相対距離Dkによらず、そのばらつきσ(Dk)をほぼ一定値に設定する。
一方、カメラ9F,9R,9SR,9SLで相対距離Dkを検出した場合は、相対距離Dkが大きくなるほどばらつきσ(Dk)が指数関数的に増加するように設定する。ただし、障害物kの相対距離Dkが小さい場合、レーザレーダで相対距離Dkを検出した場合に比べて、カメラによってより正確に相対距離を検出することができるので、相対距離のばらつきσ(Dk)を小さく設定する。
【0042】
例えば、レーザレーダ10で相対距離Dkを検出した場合、相対速度Vrkのばらつきσ(Vrk)は、相対速度Vrkに比例して大きくなるように設定する。一方、カメラ9F,9R,9SR,9SLで相対距離Dkを検出した場合、相対速度Vrkが大きくなるほど相対速度のばらつきσ(Vrk)が指数関数的に増加するように設定する。
カメラ9F,9R,9SR,9SLによって障害物状況を検出した場合、検出画像に画像処理を行うことによって障害物の種別を認識することができる。そこで、カメラ9F,9R,9SR,9SLによって障害物状況を検出した場合は、認識される障害物の種別に応じて相対距離、相対速度のばらつきσ(Dk)、σ(Vrk)を設定する。
【0043】
カメラ9F,9R,9SR,9SLによる相対距離Dkの検出は、障害物kの大きさが大きいほどその検出精度が高いため、障害物が四輪車両である場合の相対距離のばらつきσ(Dk)を二輪車両や歩行者の場合のばらつきσ(Dk)に比べて小さく設定する。
一方、相対速度のばらつきσ(Vrk)は、障害物k毎に想定される移動速度が大きいほど、ばらつきσ(Vrk)が大きくなるように設定する。つまり、四輪車両の移動速度は二輪車両や歩行者の移動速度よりも大きいと想定されるので、相対速度Vrkが同じ場合、障害物kが四輪車両である場合のばらつきσ(Vrk)は、二輪車両や歩行者の場合のばらつきσ(Vrk)に比べて大きく設定する。
【0044】
なお、レーザレーダ10とカメラ9F,9R,9SR,9SLの両方で障害物kを検出した場合は、例えば、値の大きな方のばらつきσ(Dk)、σ(Vrk)を用いてその障害物kに対する余裕時間TTCkを算出することができる。
次に、コントローラ50は、ステップS3で算出した余裕時間TTCkを用いて、各障害物kに対するリスクポテンシャルRPkを算出する(ステップS4)。
【0045】
ここで、各障害物kに対するリスクポテンシャルRPkは次式(2)で求められる。
RPk=(1/TTCk)×wk (2)
ここで、wk:障害物kの重みを示す。
(2)式に示すように、リスクポテンシャルRPkは余裕時間TTCkの逆数を用いて、余裕時間TTCkの関数として表されており、リスクポテンシャルRPkが大きいほど障害物kへの接近度合が大きいことを示している。
【0046】
障害物k毎の重みwkは、検出された障害物の種別に応じて設定する。例えば、障害物kが四輪車両、二輪車両あるいは歩行者である場合、自車両が障害物kに近接した場合の重要度、つまり影響度が高いため、重みwk=1に設定する。一方、障害物kが、路面に設置されたレーンマーカー等、接触しない対象物である場合には、重みwk=0.5に設定する。
【0047】
次に、コントローラ50は、ステップS4で算出した障害物k毎のリスクポテンシャルRPkから、車両前後方向の成分を抽出して加算し、車両周囲に存在する全障害物に対する総合的な前後方向リスクポテンシャルを算出する(ステップS5)。
前後方向リスクポテンシャルRPlongitudinalは、次式(3)で算出される。
RPlongitudinal=Σk(RPk×cosθk) (3)
ここで、θk:自車両に対する障害物kの存在方向を示し、障害物kが車両前方向、つまり自車正面に存在する場合、θk=0とし、障害物kが車両後方向に存在する場合、θk=180とする。
【0048】
なお、このとき、コントローラ50は、自車両前方(θ=0〜90,270〜360の範囲)におけるリスクポテンシャル(以下、「前方リスクポテンシャルRPa」と称する。)と、自車両後方(θ=90〜270の範囲)におけるリスクポテンシャル(以下、「後方リスクポテンシャルRPb」と称する。)をそれぞれ取得する。
続いて、コントローラ50は、ステップS4で算出した障害物k毎のリスクポテンシャルRPkから、車両左右方向の成分を抽出して加算し、車両周囲に存在する全障害物に対する総合的な左右方向リスクポテンシャルを算出する(ステップS6)。
【0049】
左右方向リスクポテンシャルRPlateralは、次式(4)で算出される。
RPlateral=Σk(RPk×sinθk) (4)
なお、このとき、コントローラ50は、自車両右方(θ=0〜180の範囲)におけるリスクポテンシャル(以下、「右方リスクポテンシャルRPc」と称する。)と、自車両左方(θ=180〜360の範囲)におけるリスクポテンシャル(以下、「左方リスクポテンシャルRPd」と称する。)をそれぞれ取得する。
【0050】
さらに、コントローラ50は、ステップS4で算出した障害物k毎のリスクポテンシャルRPkを全ての障害物kについて合計し、車両周囲の総合的なリスクポテンシャルRPを算出する(ステップS7)。
ステップS7の後、コントローラ50は、運転操作補助の終了を運転者が指示入力するまで、リスクポテンシャル算出処理を繰り返す。
なお、コントローラ50は、リスクポテンシャル算出処理において算出したリスクポテンシャルRP等のパラメータを、不図示のメモリに格納し、他の処理において利用可能な状態とする。
【0051】
(運転操作誘導処理)
次に、コントローラ50が実行する運転操作誘導処理について説明する。
運転操作誘導処理は、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLを制御して自車両の姿勢を変化させ、運転者に擬似的な感覚を与えることによって運転操作を促すための処理である。
図6は、コントローラ50が実行する運転操作誘導処理を示すフローチャートである。
コントローラ50は、運転者の指示入力に応じて運転操作誘導処理の実行を開始する。
図6において、運転操作誘導処理を開始すると、コントローラ50は、リスクポテンシャル算出処理において算出した前後および左右方向のリスクポテンシャルRPa,RPb,RPc,RPdを取得する(ステップP101)。
【0052】
次に、コントローラ50は、ステップP101において取得した前後および左右方向のリスクポテンシャルRPa、RPb,RPc,RPdが、それぞれについて設定された閾値RPa0,RPb0,RPc0,RPd0以上であるか否かの判定を行う(ステップP102)。
ステップP102において、前後および左右方向のリスクポテンシャルRPa、RPb,RPc,RPdのいずれも、それぞれについて設定された閾値RPa0,RPb0,RPc0,RPd0を超えていないと判定した場合、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
【0053】
また、ステップP102において、前方リスクポテンシャルRPaが閾値RPa0以上であると判定した場合、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4FLのサスペンションストロークを前方リスクポテンシャルRPaに応じて変化させる(ステップP103)。また、ステップP103において、コントローラ50は、アクセルペダル7の操作反力を前方リスクポテンシャルRPaに応じて増加させる。
ステッP103の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
【0054】
図7は、前方リスクポテンシャルRPaが高い場合の制御動作を示す模式図である。
また、図8は、前方リスクポテンシャルRPaが高い場合に付与されるアクセルペダル反力および車体ピッチ角βの特性を示す図である。
図7および図8において、前方リスクポテンシャルRPaが閾値RPa0より高い場合、図8(a)に示すように、アクセルペダル反力が前方リスクポテンシャルRPaに応じて強くなり、アクセルペダル7を踏み増しにくい状態となる。また、図7に示すように、能動型サスペンション4FR,4FLのサスペンションストロークが前方リスクポテンシャルRPaに応じて変化される。これにより、運転者に対して、自動車1Aが加速しているような感覚を与えることができる。また、このとき、図8(b)に示すように、ピッチ角(車体の後傾傾斜角)βは前方リスクポテンシャルRPaに応じて大きくなり、運転者に対して、前方リスクポテンシャルRPaが大きいほど、自動車1Aがより強く加速しているような感覚を与えることができる。
【0055】
このような運転操作の誘導を行うことにより、運転者に対して減速操作を促すことができる。
そして、運転者が減速操作を行うと、前方リスクポテンシャルRPaが減少し、ステップP103における運転操作の誘導が停止される。
また、ステップP102において、後方リスクポテンシャルRPbが閾値RPb0以上であると判定した場合、コントローラ50は、能動型サスペンション4RR,4RLのサスペンションストロークを後方リスクポテンシャルRPbに応じて変化させる(ステップP104)。
ステッP104の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
【0056】
図9は、後方リスクポテンシャルRPbが高い場合の制御動作を示す模式図である。
また、図10は、後方リスクポテンシャルRPbが高い場合に付与される車体ピッチ角γの特性を示す図である。
図9および図10において、後方リスクポテンシャルRPbが閾値RPb0より高い場合、図9に示すように、能動型サスペンション4RR,4RLのサスペンションストロークが前方リスクポテンシャルRPbに応じて変化される。これにより、運転者に対して、自動車1Aが減速しているような感覚を与えることができる。また、このとき、図10に示すように、ピッチ角(車体の前傾傾斜角)γは後方リスクポテンシャルRPbに応じて大きくなり、運転者に対して、後方リスクポテンシャルRPbが大きいほど、自動車1Aがより強く加速しているような感覚を与えることができる。
【0057】
このような運転操作の誘導を行うことにより、運転者に対して加速操作を促すことができる。
そして、運転者が加速操作を行うと、後方リスクポテンシャルRPbが減少し、ステップP104における運転操作の誘導が停止される。
また、ステップP102において、右方リスクポテンシャルRPcが閾値RPc0以上であると判定した場合、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4RRのサスペンションストロークを右方リスクポテンシャルRPcに応じて変化させる(ステップP105)。
【0058】
ステッP105の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
また、ステップP102において、左方リスクポテンシャルRPdが閾値RPd0以上であると判定した場合、コントローラ50は、能動型サスペンション4FL,4RLのサスペンションストロークを左方リスクポテンシャルRPdに応じて変化させる(ステップP106)。
ステッP106の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
【0059】
図11は、右方リスクポテンシャルRPcあるいは左方リスクポテンシャルRPdが高い場合の制御動作を示す模式図である。なお、図11においては、車両を後方から見た図を示しており、右方リスクポテンシャルRPcが高い場合を例に挙げている。
また、図12は、右方リスクポテンシャルRPcあるいは左方リスクポテンシャルRPdが高い場合に付与される操舵反力および車体ロール角δの特性を示す図である。
【0060】
図11および図12において、右方リスクポテンシャルRPcが閾値RPc0より高い場合、図12(a)に示すように、操舵反力が右方リスクポテンシャルRPcに応じて強くなり、右方向への操舵を切り増しにくい状態となる。また、図11に示すように、能動型サスペンション4FR,4RRのサスペンションストロークが右方リスクポテンシャルRPcに応じて変化される。これにより、運転者に対して、自動車1Aが右旋回して車体3が左にロールしているような感覚を与えることができる。また、このとき、図12(b)に示すように、ロール角(車体の左右傾斜角)δは右方リスクポテンシャルRPcに応じて大きくなり、運転者に対して、右方リスクポテンシャルRPcが大きいほど、自動車1Aがより強く右旋回しているような感覚を与えることができる。
【0061】
このような運転操作の誘導を行うことにより、運転者に対して左方向への操舵操作を促すことができる。
そして、運転者が左方向への操舵操作を行うと、右方リスクポテンシャルRPcが減少し、ステップP104における運転操作の誘導が停止される。
同様に、左方リスクポテンシャルRPdが高い場合には、操舵反力が左方リスクポテンシャルRPdに応じて強くなり、左方向への操舵を切り増しにくい状態となる。また、能動型サスペンション4FL,4RLのサスペンションストロークが左方リスクポテンシャルRPdに応じて変化される。これにより、運転者に対して、自動車1Aが左旋回して車体3が右にロールしているような感覚を与えることができる。また、このとき、ロール角(車体の左右傾斜角)δは左方リスクポテンシャルRPdに応じて大きくなり、運転者に対して、左方リスクポテンシャルRPdが大きいほど、自動車1Aがより強く左旋回しているような感覚を与えることができる。
【0062】
このような運転操作の誘導を行うことにより、運転者に対して右方向への操舵操作を促すことができる。
ここで、運転操作誘導処理において、前後方向のリスクポテンシャルRPa,RPbのいずれも閾値RPa0,RPb0以上である場合には、前後方向のうち、閾値を超えている絶対量が大きい方の制御を優先する、あるいは、いずれも制御を行わないといった方法とすることができる。
また、運転操作誘導処理において、左右方向のリスクポテンシャルRPc,RPdのいずれも閾値RPc0,RPd0以上である場合には、左右方向のうち、閾値を超えている絶対量が大きい方の制御を優先する、あるいは、いずれも制御を行わないといった方法とすることができる。
【0063】
(動作)
次に、動作を説明する。
運転操作誘導処理を実行している自動車1Aの走行中に、前後左右いずれかの方向におけるリスクポテンシャルが閾値を超えたとする。
すると、コントローラ50が、リスクポテンシャルが高くなった方向に応じて、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLを制御し、擬似的な車両の挙動を発生させる。
即ち、前方のリスクポテンシャルが高い場合、車体3を後傾させ、後方のリスクポテンシャルが高い場合、車体3を前傾させる。また、右方のリスクポテンシャルが高い場合、車体3を左にロールさせ、左方のリスクポテンシャルが高い場合、車体3を右にロールさせる。
【0064】
これにより、運転者は、自車両の状態がリスクポテンシャルが高まる方向に近づいていると感じ、リスクポテンシャルが低くなる方向への操作を行う。
即ち、運転者の運転操作を誘導することができる。
また、このとき、リスクポテンシャルが高まる方向への操作に対し、より強い操作反力を付与している。
そのため、運転者がリスクポテンシャルの高まる方向へ操作することを抑制できる。
以上のように、本実施形態に係る自動車1Aは、前後あるいは左右のリスクポテンシャルRPa、RPb,RPc,RPdが閾値以上であるか否かを判定し、リスクポテンシャルが高いと判定した方向への擬似的な車両の挙動を示すように、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLを制御する。
【0065】
そのため、現在の操作状態から、リスクポテンシャルが減少する方向への運転者による自発的な操作を促すことができる。
また、リスクポテンシャルが増加する方向への操作に対して、リスクポテンシャルに応じた反力を付与している。そのため、運転者がリスクポテンシャルの増加する方向へ操作しようとした場合に、操作が適切でないことを報知することができる。また、運転者による適切でない操作を抑制することができる。
このように、本実施形態に係る自動車1Aによれば、運転者に対し、より適切に車両の運転操作の支援を行うことができる。
【0066】
なお、本実施形態において、車速センサ30、車両状態検出器140および車体上下加速度検出器130FR,130FL,130RR,130RLが車両状態検出手段に対応する。また、カメラ9F,9R,9SR,9SLおよびコントローラ50が障害物検出手段に対応し、コントローラ50および能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLが動作制御手段および能動型のサスペンションに対応する。また、アクセルペダル7およびブレーキペダル8、ステアリングホイール5が運転操作手段に対応し、操舵反力制御装置60、アクセルペダル反力制御装置80およびブレーキペダル反力制御装置90が操作反力付与手段に対応する。また、コントローラ50がリスクポテンシャル算出手段および擬似車両挙動発生手段に対応する。
【0067】
(第1実施形態の効果)
(1)擬似車両挙動発生手段が、車両状態検出手段の検出結果およびリスクポテンシャルに基づいて、リスクポテンシャルが増大する運転操作を行った場合の車両挙動を、動作制御手段を制御することによって擬似的に発生させる。
そのため、現在の操作状態から、リスクポテンシャルが減少する方向への運転者による自発的な操作を促すことができる。
したがって、運転者にリスクポテンシャルが増大しているような感覚を与え、それを抑制する運転操作を誘導することができるため、運転者に対し、より適切に車両の運転操作の支援を行うことができる。
【0068】
(2)擬似車両挙動発生手段が、加減速操作あるいは操舵操作を行った場合に発生する車両挙動を擬似的に発生させるため、運転者に対して、それを抑制する運転操作を促すことができる。
(3)擬似車両挙動発生手段は、自車両の前後方向におけるリスクポテンシャルに対し、車体を前傾あるいは後傾させるように前記サスペンション装置を制御する。
したがって、運転者に擬似的な加速度あるいは減速度を感じさせることができる。
(4)擬似車両挙動発生手段は、自車両の左右方向におけるリスクポテンシャルに対し、車体をロールさせるようにサスペンション装置を制御する。
したがって、運転者に擬似的な旋回状態を感じさせることができる。
【0069】
(5)擬似車両挙動発生手段は、サスペンション装置のサスペンションストローク、減衰力およびばね定数と、操舵反力付与手段が操舵操作手段に付与する操舵反力と操舵操作に対して付与する操舵反力のゲインとを制御する。
そのため、車両上下方向および前後左右方向の挙動を利用して、運転者に対し、より適切に車両の運転操作の支援を行うことができる。
(6)能動型のサスペンション装置を制御することによって、擬似的な車両挙動を発生させることができるため、現在の操作状態から、リスクポテンシャルが減少する方向への運転者による自発的な操作を促すことができる。
【0070】
(7)自車両の状態と、自車両周囲の障害物の状態とに基づいて、自車両周囲に存在する障害物に対するリスクポテンシャルを算出し、算出した前記リスクポテンシャルに基づいて、前記リスクポテンシャルが増大する運転操作を行った場合の車両挙動を、前記サスペンション装置を制御することによって擬似的に発生させる車両用運転操作補助方法である。
そのため、現在の操作状態から、リスクポテンシャルが減少する方向への運転者による自発的な操作を促すことができる。
したがって、運転者に対し、より適切に車両の運転操作の支援を行うことが可能な自動車とできる。
【0071】
(8)擬似車両挙動発生手段が、車両状態検出手段の検出結果およびリスクポテンシャルに基づいて、リスクポテンシャルが増大する運転操作を行った場合の車両挙動を、サスペンション装置を制御することによって擬似的に発生させる自動車である。
そのため、現在の操作状態から、リスクポテンシャルが減少する方向への運転者による自発的な操作を促すことができる。
したがって、運転者に対し、より適切に車両の運転操作の支援を行うことが可能な自動車とできる。
【0072】
(応用例1)
第1実施形態において、自動車1Aは能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLを備え、これらのサスペンションストロークを変化させて、リスクポテンシャルに応じた車体3の傾斜を付与することとした。
これに対し、動作制御手段として異なる構成のサスペンションを用いることで、同様の制御を行ったり、運転者の操作を誘導するための異なる制御を行ったりすることができる。
例えば、インホイールモータを備える前後左右の車輪2FR,2FL,2RR,2RLそれぞれと車体3とが複数(ここでは6本)の直動型アクチュエータを介して連結された構造のサスペンションを用いることができる。
【0073】
図13は、応用例1のサスペンション構造を示す図である。
なお、本応用例1のサスペンション構造は、前後左右の駆動輪それぞれにおいて同様であるため、左前輪部分を例に挙げて説明する。
図13において、応用例1のサスペンション構造は、車体3に固定された6角形のアクチュエータ支持板1Bと、アクチュエータ支持板1Bの各頂点にボールジョイントを介してシリンダを連結されると共に、インホイールモータMにおいてアクチュエータ支持板1Bの各頂点と対向する位置に、駆動ロッドの先端をボールジョイントを介して連結されたアクチュエータ101FL〜106FLとを有する構成である。
【0074】
これら6本のアクチュエータ101FL〜106FLはパラレルメカニズムを構成しており、アクチュエータ101FL〜106FLを連動させて制御することにより、それによって支持されているホイールインモータMと駆動輪2FLを3次元的に動かすことが可能になる。
アクチュエータ支持板1Bは、車体3において鉛直からやや下方を向いた取り付け面に取り付けてある。そのため、複数の直動型アクチュエータの総合的な伸縮軸は、路面に平行な方向からやや下方に向いている。
【0075】
そのため、これら複数のアクチュエータにおける駆動ロッドの伸縮を制御することで、車体3の前部あるいは後部を上昇あるいは下降させたり、各駆動輪の転舵角、キャンバ角、トー角および車体3との距離を調整したりすることが可能である。
したがって、応用例1のサスペンション構造を用いた場合にも、図6の運転操作誘導処理を実行することができる。
また、応用例1のサスペンション構造では、4輪に対する車体3の相対的な向きを変更することができる。
そのため、車輪2FR,2FL,2RR,2RLの向きは変化させないまま、車体3の向きを変化させて、運転者の操作を促すことができる。
【0076】
具体的には、右方リスクポテンシャルRPcが閾値RPc0以上である場合に、車輪2FR,2FL,2RR,2RLの向きは変化させずに、車輪2FR,2FL,2RR,2RLに対して車体3を右方に回頭させる。
すると、運転者に対して、自車両が右方に向かっていると言う感覚を与えることができる。
そして、運転者が左方向に操舵を行うと、右方リスクポテンシャルRPcが減少する。
したがって、第1実施形態の誘導形態に加えて、他の形態で運転者に対する運転操作の誘導を行うことができる。
【0077】
(応用例2)
第1実施形態において、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLによって、車体3の挙動を制御するものとして説明したが、運転席シートの制御を行うことによっても、運転者の運転操作を誘導することができる。
即ち、応用例2の自動車1Aは、運転席シートの複数(例えば4本)の脚に、シートレッグ長を変化させることが可能なアクチュエータを備える。
そして、これらのアクチュエータによってシートレッグ長をそれぞれ変化させ、運転席シートを車体3に対して前傾あるいは後傾させたり、運転席シートを車体3に対して右あるいは左に傾けたりする。
【0078】
これにより、第1実施形態と同様に、運転者に減速あるいは加速しているような感覚、右旋回あるいは左旋回しているような感覚を与えることができ、運転者の運転操作を誘導することが可能となる。
また、このような運転席シートの構成を備えることにより、実際の車両挙動によって、車体が前傾あるいは後傾したり、左右にロールしたりする場合に、それらと反対方向に運転席シートを傾ける制御を行うことができる。
これにより、運転者は操舵操作を行いやすくなり、運転者の操舵操作を補助することができる。
なお、本応用例においては、シートレッグ長を変化させることが可能な運転席シートが動作制御手段を構成する。
【0079】
(応用例3)
応用例2における運転席シートの傾斜制御と、第1実施形態における車体3の傾斜制御とを組み合わせて実行することができる。
即ち、運転者の前方注視点を自車両に近づけると、同一の車速でも運転者はより速度が高いと感じる。
そのため、これを利用して、運転者に減速操作を促す場合に、車体3を後傾させ、運転席シートを前傾させる。
このような制御を行うことで、運転者に対し、車体3から加速感を与え、運転席シートから高速感を与えることができるため、運転操作の誘導効果(減速操作の促進効果)を高めることができる。
【0080】
(応用例4)
リスクポテンシャルが高まっていることを運転者に伝え、運転操作を促すために、車載スピーカから発する音を用いることも可能である。
例えば、自車両の後方スピーカから他車両の走行音を出力し、後方から車両が近づいている感覚を運転者に与えることができる。
【0081】
(応用例5)
第1実施形態においては、車両左右方向について、左右方向のリスクポテンシャルRPc,RPdを算出し、それに応じて、能動型サスペンションのサスペンションストローク(ロール傾斜角)を変化させると共に、操舵反力を増加させる場合を例に挙げて説明した。
これに対し、本応用例では、車両左右方向のリスクポテンシャルに応じて、操舵反力、および能動型サスペンションのサスペンションストローク(ロール傾斜角)を変化させる際、操舵反力を付与するリスクポテンシャルの閾値、およびロール傾斜角を付与するリスクポテンシャルの閾値を、それぞれ個別に設定する。また、操舵反力の付与、および能動型サスペンションのサスペンションストロークの変化を中断するリスクポテンシャルの閾値を設定する。
【0082】
図14は、本応用例において、コントローラ50が実行する運転操作誘導処理を示すフローチャートである。また、図15〜18は、図14に示す運転操作誘導処理において実行される第1〜第4のサブフローを示す図である。
図14において、運転操作誘導処理を開始すると、コントローラ50は、リスクポテンシャル算出処理において算出した前後および左右方向のリスクポテンシャルRPa,RPb,RPc,RPdを取得する(ステップT10)。
次に、コントローラ50は、ステップT1において取得した前方リスクポテンシャルRPaに応じて、運転操作誘導処理の第1のサブフローを実行する(ステップT20)。
【0083】
ステップT20において、コントローラ50は、例えば、図15に示すように、まず、前方リスクポテンシャルRPaが閾値RPa0以上であるか否かの判定を行う(ステップT21)。ステップT21において、前方リスクポテンシャルRPaが閾値RPa0以上であると判定した場合、コントローラ50は、第1実施形態と同様に、アクセルペダル反力を前方リスクポテンシャルRPaに応じて増加させる(ステップT22)。また、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4FLのサスペンションストロークを前方リスクポテンシャルRPaに応じて変化させる(ステップT23)。ステップS203の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理に戻る。一方、ステップT21において、前方リスクポテンシャルRPaが閾値RPa未満であると判定した場合、コントローラ50は、運転操作誘導処理に戻る。
【0084】
また、コントローラ50は、ステップT10において取得した後方リスクポテンシャルRPbに応じて、運転操作誘導処理の第2のサブフローを実行する(ステップT30)。
ステップT30において、コントローラ50は、例えば、図16に示すように、まず、後方リスクポテンシャルRPbが閾値RPb0以上であるか否かの判定を行う(ステップT31)。ステップT31において、後方リスクポテンシャルRPbが閾値RPb0以上であると判定した場合コントローラ50は、第1実施形態と同様に、能動型サスペンション4RR,4RLのサスペンションストロークを後方リスクポテンシャルRPbに応じて変化させる(ステップT32)。ステップT32の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理に戻る。一方、ステップT31において、後方リスクポテンシャルRPbが閾値RPb0未満であると判定した場合、コントローラ50は、運転操作誘導処理に戻る。
【0085】
また、コントローラ50は、ステップT10において取得した右方リスクポテンシャルRPcに応じて、運転操作誘導処理の第3のサブフローを実行する(ステップT40)。
ステップT40において、コントローラ50は、例えば、図17に示すように、まず、右方リスクポテンシャルRPcが第1の閾値RPc0以上であるか否かの判定を行う(ステップT41)。ステップT41において、右方リスクポテンシャルRPcが第1の閾値RPc0以上であると判定した場合、コントローラ50は、右方リスクポテンシャルRPcが第3の閾値RPc2以下であるか否かの判定を行う(ステップT42)。ステップT42において、右方リスクポテンシャルRPcが第3の閾値RPc2未満であると判定した場合、コントローラ50は、右方リスクポテンシャルRPcに応じて、操舵反力を増加させる(ステップT43)。
【0086】
ここで、本応用例では、例えば、図19に示すように、操舵反力を発生させる第1の閾値RPc0と、サスペンションストロークを変化させる第2の閾値RPc1を、それぞれ個別に設定する。
これにより、ステップT43に続いて、コントローラ50は、右方リスクポテンシャルRPcが第2の閾値RPc1以上であるか否かの判定を行い(ステップT44)、右方リスクポテンシャルRPcが比較的小さい場合、即ち、右方リスクポテンシャルRPcが第2の閾値RPc1未満である場合においては、操舵反力のみを発生させる。
【0087】
一方、ステップT44において、右方リスクポテンシャルRPcが比較的大きい第2の閾値RPc1以上の場合、即ち、右方リスクポテンシャルRPcが第2の閾値以上である場合においては、操舵反力に加えてロール傾斜角を発生させる(ステップT45)。
これにより、右方リスクポテンシャルの増加を、違和感なく、よりわかり易く運転者に伝えることができ、より適切に車両の運転操作の支援を行うことができる。
【0088】
また、このように、操舵反力、およびサスペンションストロークを変化させる右方リスクポテンシャルについて上限値(第3の閾値RPc2)を設定することにより、路面に設置されたレーンマーカー等、接触しない対象物であると推定される、右方向のリスクポテンシャルに対しては、運転操作誘導処理の実行に制限を設け、運転者の操作性(オーバーライド性)を確保すると共に、レーンマーカーを乗り越えるように違和感なくリスクポテンシャルの増加を感じさせることができる。そのため、より適切に車両の運転操作の支援を行うことができる。
【0089】
ステップT41において、右方リスクポテンシャルRPcが第1の閾値RPc未満であると判定した場合、および、ステップT42において、右方リスクポテンシャルRPcが第3の閾値以上であると判定した場合、コントローラ50は、運転操作誘導処理に戻る。また、ステップT44において、右方リスクポテンシャルRPcが第2の閾値未満であると判定した場合、および、ステップT45の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理に戻る。
【0090】
また、コントローラ50は、ステップT10において取得した左方リスクポテンシャルRPdに応じて、運転操作誘導処理の第4のサブフローを実行する(ステップT50)。
ステップT50において、コントローラ50は、例えば、図18に示すように、まず、左方リスクポテンシャルRPdが第1の閾値RPd0以上であるか否かの判定を行う(ステップT51)。ステップT51において、左方リスクポテンシャルRPdが第1の閾値RPd0以上であると判定した場合、コントローラ50は、左方リスクポテンシャルRPdが第3の閾値RPd2以下であるか否かの判定を行う(ステップT52)。ステップT52において、左方リスクポテンシャルRPdが第3の閾値RPd2未満であると判定した場合、コントローラ50は、左方リスクポテンシャルRPdに応じて、操舵反力を増加させる(ステップT53)。
【0091】
ここで、本応用例では、右方リスクポテンシャルRPcにおける場合と同様、操舵反力を発生させる第1の閾値RPd0と、サスペンションストロークを変化させる第2の閾値RPd1を、それぞれ個別に設定する。
これにより、ステップT53に続いて、コントローラ50は、左方リスクポテンシャルRPdが第2の閾値RPd1以上であるか否かの判定を行い(ステップT54)、左方リスクポテンシャルRPdが比較的小さい場合、即ち、左方リスクポテンシャルRPdが第2の閾値RPd1未満である場合においては、操舵反力のみを発生させる。
【0092】
一方、ステップT54において、左方リスクポテンシャルRPdが比較的大きい第2の閾値RPd1以上の場合、即ち、左方リスクポテンシャルRPdが第2の閾値RPd1以上である場合においては、操舵反力に加えてロール傾斜角を発生させる(ステップT55)。
これにより、左方リスクポテンシャルの増加を、違和感なく、よりわかり易く運転者に伝えることができ、より適切に車両の運転操作の支援を行うことができる。
【0093】
また、このように、操舵反力、およびサスペンションストロークを変化させる左方リスクポテンシャルについて上限値(第3の閾値RPd2)を設定することにより、路面に設置されたレーンマーカー等、接触しない対象物であると推定される、左方向のリスクポテンシャルに対しては、運転操作誘導処理の実行に制限を設け、運転者の操作性(オーバーライド性)を確保すると共に、レーンマーカーを乗り越えるように違和感なくリスクポテンシャルの増加を感じさせることができる。そのため、より適切に車両の運転操作の支援を行うことができる。
【0094】
ステップT51において、左方リスクポテンシャルRPdが第1の閾値RPc未満であると判定した場合、および、ステップT52において、左方リスクポテンシャルRPdが第3の閾値以上であると判定した場合、コントローラ50は、運転操作誘導処理に戻る。また、ステップT54において、左方リスクポテンシャルRPdが第2の閾値未満であると判定した場合、および、ステップT55の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理に戻る。
なお、本応用例において、第1の閾値RPc0あるいはRPd0が特許請求の範囲における第1の閾値に対応し、第2の閾値RPc1あるいはRPd1が特許請求の範囲における第2の閾値に対応する。
【0095】
(効果)
操舵反力を付与するための左右方向のリスクポテンシャルの閾値と、擬似的な車両挙動を発生させるための左右方向のリスクポテンシャルの閾値とを個別に設定することとしたため、車両の走行状態に応じて、操舵反力と擬似的な車両挙動とを適確なタイミングで発生させることができる。そのため、より適切に車両の運転操作の支援を行うことができる。
【0096】
(応用例6)
第1実施形態においては、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLによって、擬似的な車両の挙動を示す場合を例に挙げて説明した。
これに対し、本応用例においては、異なる構成のサスペンションを用いて、左右方向のリスクポテンシャルに応じた擬似的な車両挙動を示すものである。
具体的には、動作制御手段として、スタビライザリンク長を可変なスタビライザを備えるサスペンションを用い、スタビライザリンク長を制御することにより、運転者の運転操作を誘導するものである。例えば、スタビライザとサスペンションロアアームを連結するスタビライザリンクに、リンク長を変化させることのできる油圧シリンダを設置し、これを伸縮させてロール傾斜角を制御することにより、車体3の傾斜を付与する。
【0097】
図20は、本応用例のサスペンション構造を示す図である。なお、図20は、車両後方から見たサスペンション構造を示している。
図20において、アクチュエータ803は、中央部分が車体3に固定されたスタビライザ801に連結され、サスペンションロアアーム802との間のリンク長を伸縮することが可能である。そして、左右のアクチュエータ803におけるアクチュエータストローク長の左右差で、自動車1Aのロール傾斜角を制御する。
【0098】
なお、アクチュエータ803は、自動車1Aの前軸および後軸それぞれに取り付けられており、合計4つのアクチュエータ(以下、適宜、前右:803FR、前左:803FL、後右:803RR、後左:803RLと称する。)から構成されている。
図21は、右方リスクポテンシャルRPcが高い場合に付与されるスタビライザリンク長の特性を示す図であり、図21(a)は、第1の特性例を示し、図21(b)は、第2の特性例を示している。
【0099】
右方リスクポテンシャルRPcが閾値RPc0以上の場合、例えば、図21(a)の第1の特性例として示すように、右側スタビライザリンク長を中立位置から右方リスクポテンシャルRPcに応じて大きくする。
これにより、ロール傾斜角(左ロール)が発生し、運転者に対して、右方のリスクポテンシャルが高まっていることを報知することができ、左方向への操舵操作を促すことができる。
【0100】
また、右方リスクポテンシャルRPcが閾値RPc0以上の場合、図21(b)の第2の特性例として示すように、右側スタビライザリンク長を大きくするのと併せ、左側スタビライザリンク長を中立位置から右方リスクポテンシャルRPcに応じて小さくすることにより、アクチュエータの変化幅を小さくしつつ、ロール傾斜角を効果的に発生させることもできる。
なお、本サスペンション構造を、後述する第2実施形態に適用し、左右リスクポテンシャルに応じた振動を発生させることも可能である。
このようなサスペンション構造の場合にも、現在の操作状態から、リスクポテンシャルが減少する方向への運転者による自発的な操作を促すことができ、運転者に対し、より適切に車両の運転操作の支援を行うことができる。
【0101】
(効果)
擬似車両挙動発生手段が、車両状態検出手段の検出結果およびリスクポテンシャルに基づいて、リスクポテンシャルが増大する運転操作を行った場合の車両挙動を、スタビライザリンク長を制御することによって擬似的に発生させる。
そのため、現在の操作状態から、リスクポテンシャルが減少する方向への運転者による自発的な操作を促すことができる。
したがって、運転者にリスクポテンシャルが増大しているような感覚を与え、それを抑制する運転操作を誘導することができるため、運転者に対し、より適切に車両の運転操作の支援を行うことができる。
【0102】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
本実施形態では、第1実施形態における場合と運転操作誘導処理を異なるものとしている。
したがって、自動車1Aの構成については、第1実施形態を参照することとし、運転操作誘導処理について説明する。
【0103】
(運転操作誘導処理)
図22は、コントローラ50が実行する運転操作誘導処理を示すフローチャートである。
コントローラ50は、運転者の指示入力に応じて運転操作誘導処理の実行を開始する。
図22において、運転操作誘導処理を開始すると、コントローラ50は、リスクポテンシャル算出処理において算出した前後および左右方向のリスクポテンシャルRPa,RPb,RPc,RPdを取得する(ステップP201)。
次に、コントローラ50は、ステップP201において取得した前後および左右方向のリスクポテンシャルRPa,RPb,RPc,RPdが、それぞれについて設定された閾値RPa0,RPb0,RPc0,RPd0以上であるか否かの判定を行う(ステップP202)。
【0104】
ステップP202において、前後および左右方向のリスクポテンシャルRPa、RPb,RPc,RPdのいずれも、それぞれについて設定された閾値RPa0,RPb0,RPc0,RPd0を超えていないと判定した場合、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
また、ステップP202において、前方リスクポテンシャルRPaが閾値RPa0以上であると判定した場合、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4FLのサスペンションストロークを前方リスクポテンシャルRPaに応じた振幅で振動させる(ステップP203)。また、ステップP203において、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4FLのサスペンションストロークを、第1実施形態と同様に、前方リスクポテンシャルRPaに応じて変化させる。さらに、ステップP203において、コントローラ50は、アクセルペダル7の操作反力を前方リスクポテンシャルRPaに応じて増加させる。
ステッP203の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
【0105】
図23は、前方リスクポテンシャルRPaが高い場合の制御動作を示す模式図である。
また、図24は、前方リスクポテンシャルRPaが高い場合に付与されるアクセルペダル反力およびサスペンションストロークの振動の特性を示す図である。
なお、図23においては、サスペンションストロークの振動を表す模式図を示しており、第1実施形態におけるサスペンションストロークの増加分は図示していない。以下、図25、図27において同様である。
【0106】
図23および図24において、前方リスクポテンシャルRPaが閾値RPa0より高い場合、図24(a)に示すように、アクセルペダル反力が前方リスクポテンシャルRPaに応じて強くなり、アクセルペダル7を踏み増しにくい状態となる。また、図23に示すように、能動型サスペンション4FR,4FLのサスペンションストロークが前方リスクポテンシャルRPaに応じた振幅で振動する。これにより、運転者に対して、自動車1Aのいずれの方向においてリスクポテンシャルが高まっているかを報知することができる。また、このとき、図24(b)に示すように、能動型サスペンション4FR,4FLのサスペンションストロークの振幅は、前方リスクポテンシャルRPaに応じて大きくなり、運転者に対して、前方リスクポテンシャルRPaが大きいほど、より強い振動を伝えることができる。さらに、能動型サスペンション4FR,4FLのサスペンションストロークを、第1実施形態と同様に、前方リスクポテンシャルRPaに応じて変化させる。これにより、運転者に対して、自動車1Aが加速しているような感覚を与えることができる。
【0107】
このような運転操作の誘導を行うことにより、運転者に対して減速操作を促すことができる。
そして、運転者が減速操作を行うと、前方リスクポテンシャルRPaが減少し、ステップP203における運転操作の誘導が停止される。
また、ステップP202において、後方リスクポテンシャルRPbが閾値RPb0以上であると判定した場合、コントローラ50は、能動型サスペンション4RR,4RLのサスペンションストロークを前方リスクポテンシャルRPbに応じた振幅で振動させる(ステップP204)。また、ステップP204において、コントローラ50は、能動型サスペンション4RR,4RLのサスペンションストロークを、第1実施形態と同様に、前方リスクポテンシャルRPbに応じて変化させる。
ステッP204の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
【0108】
図25は、後方リスクポテンシャルRPbが高い場合の制御動作を示す模式図である。
また、図26は、後方リスクポテンシャルRPbが高い場合に付与されるサスペンションストロークの振動の特性を示す図である。
図25および図26において、後方リスクポテンシャルRPaが閾値RPb0より高い場合、図26に示すように、能動型サスペンション4RR,4RLのサスペンションストロークが後方リスクポテンシャルRPbに応じた振幅で振動する。これにより、運転者に対して、自動車1Aのいずれの方向においてリスクポテンシャルが高まっているかを報知することができる。また、このとき、図26に示すように、能動型サスペンション4RR,4RLのサスペンションストロークの振幅は、後方リスクポテンシャルRPbに応じて大きくなり、運転者に対して、後方リスクポテンシャルRPbが大きいほど、より強い振動を伝えることができる。さらに、能動型サスペンション4RR,4RLのサスペンションストロークを、第1実施形態と同様に、後方リスクポテンシャルRPbに応じて変化させる。これにより、運転者に対して、自動車1Aが減速しているような感覚を与えることができる。
【0109】
このような運転操作の誘導を行うことにより、運転者に対して加速操作を促すことができる。
そして、運転者が加速操作を行うと、前方リスクポテンシャルRPbが減少し、ステップP204における運転操作の誘導が停止される。
また、ステップP202において、右方リスクポテンシャルRPcが閾値RPc0以上であると判定した場合、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4RRのサスペンションストロークを右方リスクポテンシャルRPcに応じた振幅で振動させる(ステップP205)。また、ステップP205において、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4RRのサスペンションストロークを、第1実施形態と同様に、右方リスクポテンシャルRPcに応じて変化させる。
【0110】
ステッP204の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
また、ステップP202において、左方リスクポテンシャルRPdが閾値RPd0以上であると判定した場合、コントローラ50は、能動型サスペンション4FL,4RLのサスペンションストロークを左方リスクポテンシャルRPdに応じた振幅で振動させる(ステップP206)。また、ステップP206において、コントローラ50は、能動型サスペンション4FL,4RLのサスペンションストロークを、第1実施形態と同様に、右方リスクポテンシャルRPdに応じて変化させる。
ステッP206の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
【0111】
図27は、右方リスクポテンシャルRPcあるいは左方リスクポテンシャルRPdが高い場合の制御動作を示す模式図である。なお、図27においては、車両を後方から見た図を示しており、右方リスクポテンシャルRPcが高い場合を例に挙げている。
また、図28は、右方リスクポテンシャルRPcあるいは左方リスクポテンシャルRPdが高い場合に付与される操舵反力およびサスペンションストロークの振動の特性を示す図である。
【0112】
図27および図28において、右方リスクポテンシャルRPcが閾値RPc0より高い場合、図28(a)に示すように、操舵反力が右方リスクポテンシャルRPcに応じて強くなり、右方向への操舵を切り増しにくい状態となる。また、図27に示すように、能動型サスペンション4FR,4RRのサスペンションストロークが右方リスクポテンシャルRPcに応じた振幅で振動する。これにより、運転者に対して、自動車1Aのいずれの方向においてリスクポテンシャルが高まっているかを報知することができる。この場合、運転者に擬似的な凹凸を感じさせることができる。また、このとき、図28(b)に示すように、能動型サスペンション4FR,4RRのサスペンションストロークの振幅は、右方リスクポテンシャルRPcに応じて大きくなり、運転者に対して、右方リスクポテンシャルRPcが大きいほど、より強い振動を伝えることができる。さらに、能動型サスペンション4FR,4RRのサスペンションストロークを、第1実施形態と同様に、右方リスクポテンシャルRPcに応じて変化させる。これにより、運転者に対して、自動車1Aが右旋回して車体3が左にロールしているような感覚を与えることができる。
【0113】
このような運転操作の誘導を行うことにより、運転者に対して左方向への操舵操作を促すことができる。
そして、運転者が減速操作を行うと、右方リスクポテンシャルRPcが減少し、ステップP205における運転操作の誘導が停止される。
同様に、左方リスクポテンシャルRPdが高い場合には、操舵反力が左方リスクポテンシャルRPdに応じて強くなり、左方向への操舵を切り増しにくい状態となる。また、能動型サスペンション4FL,4RLのサスペンションストロークが左方リスクポテンシャルRPdに応じた振幅で振動する。これにより、運転者に対して、自動車1Aのいずれの方向においてリスクポテンシャルが高まっているかを報知することができる。また、このとき、能動型サスペンション4FL,4RLのサスペンションストロークの振幅は、左方リスクポテンシャルRPdに応じて大きくなり、運転者に対して、左方リスクポテンシャルRPdが大きいほど、より強い振動を伝えることができる。さらに、能動型サスペンション4FL,4RLのサスペンションストロークを、第1実施形態と同様に、左方リスクポテンシャルRPdに応じて変化させる。これにより、運転者に対して、自動車1Aが左旋回して車体3が右にロールしているような感覚を与えることができる。
【0114】
このような運転操作の誘導を行うことにより、運転者に対して右方向への操舵操作を促すことができる。
ここで、運転操作誘導処理において、前後方向のリスクポテンシャルRPa,RPbのいずれも閾値RPa0,RPb0以上である場合には、前後方向のうち、閾値を超えている絶対量が大きい方の制御を優先する、あるいは、いずれも制御を行わないといった方法とすることができる。
また、運転操作誘導処理において、左右方向のリスクポテンシャルRPc,RPdのいずれも閾値RPc0,RPd0以上である場合には、左右方向のうち、閾値を超えている絶対量が大きい方の制御を優先する、あるいは、いずれも制御を行わないといった方法とすることができる。
【0115】
(動作)
次に、動作を説明する。
運転操作誘導処理を実行している自動車1Aの走行中に、前後左右いずれかの方向におけるリスクポテンシャルが閾値を超えたとする。
すると、コントローラ50が、リスクポテンシャルが高くなった方向に応じて、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLを制御し、サスペンションストロークの振動および擬似的な車両の挙動を発生させる。
【0116】
即ち、前方のリスクポテンシャルが高い場合、車体3を後傾させて前輪のサスペンションストロークを振動させ、後方のリスクポテンシャルが高い場合、車体3を前傾させて後輪のサスペンションストロークを振動させる。また、右方のリスクポテンシャルが高い場合、車体3を左にロールさせて右前輪および右後輪のサスペンションストロークを振動させ、左方のリスクポテンシャルが高い場合、車体3を右にロールさせて左前輪および左後輪のサスペンションストロークを振動させる。
【0117】
これにより、運転者は、自車両の状態がリスクポテンシャルが高まる方向に近づいている(例えば、凹凸のある白線を踏んでいる)と感じ、リスクポテンシャルが低くなる方向への操作を行う。また、サスペンションの振動位置から、リスクポテンシャルが高い方向を認識できる。
また、このとき、リスクポテンシャルの大きさに応じたサスペンションストロークの振動としている。
これにより、運転者は、リスクポテンシャルの大きさを認識することができる。
即ち、運転者の運転操作を誘導することができる。
また、このとき、リスクポテンシャルが高まる方向への操作に対し、より強い操作反力を付与している。
そのため、運転者がリスクポテンシャルの高まる方向へ操作することを抑制できる。
【0118】
以上のように、本実施形態に係る自動車1Aは、前後あるいは左右のリスクポテンシャルRPa、RPb,RPc,RPdが閾値以上であるか否かを判定し、リスクポテンシャルが高いと判定した方向への擬似的な車両の挙動を示すように、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLを制御する。
そのため、現在の操作状態から、リスクポテンシャルが減少する方向への運転者による自発的な操作を促すことができる。
【0119】
また、リスクポテンシャルが高いと判定した方向のサスペンションストロークを、リスクポテンシャルに対応する振幅で振動させる。
そのため、運転者は、リスクポテンシャルが高い方向とその大きさを認識できる。
また、リスクポテンシャルが増加する方向への操作に対して、リスクポテンシャルに応じた反力を付与している。そのため、運転者がリスクポテンシャルの増加する方向へ操作しようとした場合に、操作が適切でないことを報知することができる。また、運転者による適切でない操作を抑制することができる。
このように、本実施形態に係る自動車1Aによれば、運転者に対し、より適切に車両の運転操作の支援を行うことができる。
【0120】
(第2実施形態の効果)
(1)擬似車両挙動発生手段が、リスクポテンシャルに基づいて、障害物が存在する側の車体を振動させるため、障害物の存在方向を運転者に理解しやすい形態で知らせることができる。
(2)擬似車両挙動発生手段は、自車両の前後方向における前記リスクポテンシャルに対し、前輪または後輪いずれかのサスペンション装置に振動を発生させる制御を行う。
したがって、運転者は、リスクポテンシャルが高い方向とその大きさを認識できる。
(3)擬似車両挙動発生手段は、自車両の左右方向におけるリスクポテンシャルに対し、左右輪いずれかのサスペンション装置に振動を発生させる制御を行う。
したがって、運転者に擬似的な凹凸を感じさせることができる。
【0121】
(応用例1)
第2実施形態においては、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLによって、リスクポテンシャルが高いと判定した方向のサスペンションストロークを振動させる場合を例に挙げて説明した。
これに対し、本応用例では、制御型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLのサスペンションストロークを振動させる代わりに、運転席シートの制御を行うことにより、運転者の運転操作を誘導するものである。
【0122】
具体的には、本応用例においては、運転席シートの複数の脚(例えば4本)に、シートレッグ長を変化させることが可能なアクチュエータ(制御型のサスペンション)を備える。
そして、これらのアクチュエータ(それぞれ、前右:700FR、前左:700FL、後右:700RR、後左:700RLとする。)によって、シートレッグ長を、リスクポテンシャルRPに応じた振幅で、それぞれ振動させる。
【0123】
図29は、本応用例において、コントローラ50が実行する運転操作誘導処理を示すフローチャートである。
コントローラ50は、運転者の指示入力に応じて情報伝達制御処理の実行を開始する。
図29において、運転操作誘導処理を開始すると、コントローラ50は、リスクポテンシャル算出処理において算出した前後および左右方向のリスクポテンシャルRPa,RPb,RPc,RPdを取得する(ステップT110)。
次に、コントローラ50は、ステップT110において取得した前後および左右方向のリスクポテンシャルRPa,RPb,RPc,RPdが、それぞれについて設定された閾値RPa0,RPb0,RPc0,RPd0を超えているか否かの判定を行う(ステップT120)。
【0124】
ステップT120において、前後および左右方向のリスクポテンシャルRPa,RPb,RPc,RPdのいずれも、それぞれ設定された閾値RPa0,RPb0,RPc0,RPd0を超えていないと判定した場合、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
また、ステップT120において、前方リスクポテンシャルRPaが閾値RPa0を超えていると判定した場合、コントローラ50は、アクチュエータ700FR,700FLにより、前方シートレッグ長を前方リスクポテンシャルRPaに応じた振幅で振動させる(ステップT130)。
【0125】
また、第1実施形態の応用例2と同様に、コントローラ50は、前方シートレッグ長を変化させ、運転席シートを車体3に対して後傾させる。さらに、コントローラ50は、アクセルペダルの操作反力を前方リスクポテンシャルRPaに応じて増加させる。
つまり、アクセルペダル反力が前方リスクポテンシャルRPaに応じて強くなり、アクセルペダルを踏み増しにくい状態になると共に、運転席シートの前方シートレッグ長が前方リスクポテンシャルRPaに応じた振幅で振動する。これにより、運転者に対して、前方のリスクポテンシャルが高まっていることを報知することができ、減速操作を促すことができる。
【0126】
そして、運転者が減速操作を行うと、前方リスクポテンシャルRPaが減少し、運転操作の誘導が停止される。
ステップT130の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
また、ステップT120において、後方リスクポテンシャルRPbが閾値RPb0を超えていると判定した場合、コントローラ50は、アクチュエータ700RR,700RLにより、後方シートレッグ長を後方リスクポテンシャルRPbに応じた振幅で振動させる(ステップT140)。
【0127】
また、第1実施形態の応用例2と同様に、コントローラ50は、後方シートレッグ長を変化させ、運転席シートを車体3に対して前傾させる。これにより、運転者に対して加速操作を促すことができる。
そして、運転者が加速操作を行うと、後方リスクポテンシャルRPbが減少し、運転操作の誘導が停止される。
ステップT140の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
また、ステップT120において、右方リスクポテンシャルRPcが閾値RPc0を超えていると判定した場合、アクチュエータ700FR,700RRにより、右方シートレッグ長を右方リスクポテンシャルRPcに応じた振幅で振動させる(ステップT150)。
【0128】
また、第1実施形態の応用例2と同様に、コントローラ50は、右方シートレッグ長を変化させ、運転席シートを車体3に対して左ロールさせる。さらに、コントローラ50は、操舵反力を右方リスクポテンシャルRPcに応じて増加させる。
つまり、操舵反力が右方リスクポテンシャルRPcに応じて強くなり、右方向への操舵を切り増しにくい状態になると共に、運転席シートの右方シートレッグ長が右方リスクポテンシャルRPcに応じた振幅で振動する。これにより、運転者に対して、右方のリスクポテンシャルが高まっていることを報知することができ、左方向への操舵操作を促すことができる。
【0129】
そして、運転者が操舵操作を行うと、右方リスクポテンシャルRPcが減少し、運転操作の誘導が停止される。
ステップT150の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
また、ステップT120において、左方リスクポテンシャルRPdが閾値RPd0を超えていると判定した場合、アクチュエータ700FL,700RLにより、左方シートレッグ長を左方リスクポテンシャルRPdに応じた振幅で振動させる(ステップT160)。
【0130】
また、第1実施形態の応用例2と同様に、コントローラ50は、左方シートレッグ長を変化させ、運転席シートを車体3に対して右ロールさせる。さらに、コントローラ50は、操舵反力を左方リスクポテンシャルRPdに応じて増加させる。
つまり、操舵反力が左方リスクポテンシャルRPdに応じて強くなり、左方向への操舵を切り増しにくい状態になると共に、運転席シートの左方シートレッグ長が左方リスクポテンシャルRPdに応じた振幅で振動する。これにより、運転者に対して、左方のリスクポテンシャルが高まっていることを報知することができ、右方向への操舵操作を促すことができる。
【0131】
そして、運転者が操舵操作を行うと、左方リスクポテンシャルRPdが減少し、運転操作の誘導が停止される。
ステップT160の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
このように、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLに代えて、運転席シートに設置したアクチュエータ700FR,700FL,700RR,700RLを振動させることによって、前後左右方向のリスクポテンシャルを運転者に伝達することができる。
なお、本応用例において、アクチュエータ700FR,700FL,700RR,700RLを備える運転席シートが動作制御手段に対応する。
【0132】
(効果)
擬似車両挙動発生手段が、車両状態検出手段の検出結果およびリスクポテンシャルに基づいて、リスクポテンシャルが増大する運転操作を行った場合の車両挙動を、動作制御手段を制御することによって擬似的に発生させる。
そのため、現在の操作状態から、リスクポテンシャルが減少する方向への運転者による自発的な操作を促すことができる。
【0133】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
本実施形態では、第1実施形態における場合と運転操作誘導処理を異なるものとしている。
したがって、自動車1Aの構成については、第1実施形態を参照することとし、運転操作誘導処理について説明する。
【0134】
(運転操作誘導処理)
図30は、コントローラ50が実行する運転操作誘導処理を示すフローチャートである。
コントローラ50は、運転者の指示入力に応じて運転操作誘導処理の実行を開始する。
図30において、運転操作誘導処理を開始すると、コントローラ50は、リスクポテンシャル算出処理において算出した前方リスクポテンシャルRPaを取得する(ステップP301)。
次に、コントローラ50は、ステップP301において取得した前方リスクポテンシャルRPaが、前方リスクポテンシャルRPaについて設定された閾値RPa0以上であるか否かの判定を行う(ステップP302)。
【0135】
ステップP302において、前方リスクポテンシャルRPaが、設定された閾値RPa0を超えていないと判定した場合、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
また、ステップP302において、前方リスクポテンシャルRPaが閾値RPa0以上であると判定した場合、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4RRのサスペンションストロークと、能動型サスペンション4FL,4RLのサスペンションストロークとを、交互に振動させ、車体3を前方リスクポテンシャルRPaに応じたロール角で揺動させる(ステップP303)。また、ステップP303において、コントローラ50は、アクセルペダル7の操作反力を前方リスクポテンシャルRPaに応じて増加させる。
ステッP303の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
【0136】
図31は、前方リスクポテンシャルRPaが高い場合の制御動作を示す模式図である。
また、図32は、前方リスクポテンシャルRPaが高い場合に付与されるアクセルペダル反力および車体3の揺動ロール角の特性を示す図である。
図31および図32において、前方リスクポテンシャルRPaが閾値RPa0より高い場合、図32(a)に示すように、アクセルペダル反力が前方リスクポテンシャルRPaに応じて強くなり、アクセルペダル7を踏み増しにくい状態となる。また、図31に示すように、能動型サスペンション4FR,4RRおよび能動型サスペンション4FL,4RLのサスペンションストロークが交互に振動し、前方リスクポテンシャルRPaに応じたロール角で車体3が揺動する。これにより、運転者に対して、自動車1Aが不安定な状態となっているような感覚を与えることができる。また、このとき、図32(b)に示すように、車体3の揺動ロール角は、前方リスクポテンシャルRPaに応じて大きくなり、運転者に対して、前方リスクポテンシャルRPaが大きいほど、より不安定となっているような感覚を与えることができる。
このような運転操作の誘導を行うことにより、運転者に対して減速操作を促すことができる。
そして、運転者が減速操作を行うと、前方リスクポテンシャルRPaが減少し、ステップP303における運転操作の誘導が停止される。
【0137】
(動作)
次に、動作を説明する。
運転操作誘導処理を実行している自動車1Aの走行中に、前方におけるリスクポテンシャルが閾値を超えたとする。
すると、コントローラ50が、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLを制御し、擬似的な車両の挙動を発生させる。
即ち、前方リスクポテンシャルRPaの大きさに応じたロール角で車体3を揺動させる。
これにより、運転者は、自車両が不安定な状態になっていると感じ、減速操作を行う。
即ち、運転者の運転操作を誘導することができる。
また、このとき、アクセルペダル7の操作に対し、より強い操作反力を付与している。
そのため、運転者が加速操作を行うことを抑制できる。
【0138】
以上のように、本実施形態に係る自動車1Aは、前方リスクポテンシャルRPaが閾値以上であるか否かを判定し、前方リスクポテンシャルが高いと判定した場合には、擬似的に車両が不安定な挙動を示すように、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLを制御する。
そのため、現在の操作状態から、リスクポテンシャルが減少する方向への運転者による自発的な操作(減速操作)を促すことができる。
【0139】
また、リスクポテンシャルが増加するアクセルペダル7の操作に対して、リスクポテンシャルに応じた反力を付与している。そのため、運転者がリスクポテンシャルの増加する方向へ操作しようとした場合に、操作が適切でないことを報知することができる。また、運転者による適切でない操作を抑制することができる。
このように、本実施形態に係る自動車1Aによれば、運転者に対し、より適切に車両の運転操作の支援を行うことができる。
【0140】
(第3実施形態の効果)
(1)擬似車両挙動発生手段は、自車両の前方における前記リスクポテンシャルに対し、前記サスペンション装置に車体のロールによる揺動を発生させる制御を行う。
したがって、運転者に対し、擬似的に車両が不安定な状態になったと感じさせることができる。
【0141】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。
本実施形態では、第1実施形態における場合と運転操作誘導処理を異なるものとしている。
したがって、自動車1Aの構成については、第1実施形態を参照することとし、運転操作誘導処理について説明する。
図33は、コントローラ50が実行する運転操作誘導処理を示すフローチャートである。
コントローラ50は、運転者の指示入力に応じて運転操作誘導処理の実行を開始する。
図33に示す運転操作誘導処理において、ステップP401〜ステップP403以外のステップについては、図6に示す第1実施形態の運転操作誘導処理における各ステップと同様である。
したがって、図6と同様のステップについては、同一の番号を付すこととし、ここでは異なる部分であるステップP401〜ステップP403について説明する。
【0142】
図33のステップP102において、前方リスクポテンシャルRPaが閾値RPa0以上であると判定した場合、コントローラ50は、車速が設定した閾値(例えば80km/h)以上であるか否かの判定を行う(ステップP401)。
ステップP401において、車速が設定した閾値以上であると判定した場合、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4FLのサスペンションストロークを前方リスクポテンシャルRPaに応じて変化させる(ステップP402)。また、ステップP402において、コントローラ50は、アクセルペダル7の操作反力を前方リスクポテンシャルRPaに応じて増加させる。
【0143】
ステッP402の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
一方、ステップP401において、車速が設定した閾値以上であると判定した場合、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4RRのサスペンションストロークと、能動型サスペンション4FL,4RLのサスペンションストロークとを、交互に振動させ、車体3を前方リスクポテンシャルRPaに応じたロール角で揺動させる(ステップP403)。また、ステップP403において、コントローラ50は、アクセルペダル7の操作反力を前方リスクポテンシャルRPaに応じて増加させる。
ステッP403の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
【0144】
(動作)
次に、動作を説明する。
運転操作誘導処理を実行している自動車1Aの走行中に、前方におけるリスクポテンシャルが閾値を超えたとする。
すると、コントローラ50が、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLを制御し、車速によって異なる態様で、擬似的な車両の挙動を発生させる。
即ち、車速が閾値以下である場合、前方リスクポテンシャルRPaの大きさに応じたロール角で車体3を揺動させる。
これにより、運転者は、自車両が不安定な状態になっていると感じ、減速操作を行う。
【0145】
また、車速が閾値以上である場合、前方リスクポテンシャルRPaの大きさに応じたピッチ角で車体3を後傾させる。
これにより、運転者は、自車両の状態がリスクポテンシャルが高まる方向に近づいていると感じ、リスクポテンシャルが低くなる方向への操作を行う。
即ち、これらの制御により、運転者の運転操作を誘導することができる。
また、このとき、アクセルペダル7の操作に対し、より強い操作反力を付与している。
そのため、運転者が加速操作を行うことを抑制できる。
【0146】
以上のように、本実施形態に係る自動車1Aは、前方リスクポテンシャルRPaが閾値以上であるか否かを判定し、前方リスクポテンシャルが高いと判定した場合には、車速に応じて異なる制御を行い、運転者の運転操作を誘導する。
即ち、車速が高い場合、擬似的な加速を示すように、能動型サスペンション4FR,4FLを制御する。また、車速が低い場合、擬似的に車両が不安定な挙動を示すように、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLを制御する。
そのため、車速に応じて、適切な制御態様に切り替えて、現在の操作状態から、リスクポテンシャルが減少する方向への運転者による自発的な操作(減速操作)を促すことができる。
【0147】
また、リスクポテンシャルが増加するアクセルペダル7の操作に対して、リスクポテンシャルに応じた反力を付与している。そのため、運転者がリスクポテンシャルの増加する方向へ操作しようとした場合に、操作が適切でないことを報知することができる。また、運転者による適切でない操作を抑制することができる。
このように、本実施形態に係る自動車1Aによれば、運転者に対し、より適切に車両の運転操作の支援を行うことができる。
【0148】
(第4実施形態の効果)
(1)擬似車両挙動発生手段は、自車両の前方におけるリスクポテンシャルに対し、車速に応じて、車体を後傾させるサスペンション装置の制御と、サスペンション装置に車体のロールを発生させる制御とを切り替えて行わせる。
そのため、車速に応じた制御態様で、より適切に運転者の自発的な運転操作を促すことができる。
【0149】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について説明する。
本実施形態では、第1実施形態における場合と運転操作誘導処理を異なるものとしている。
したがって、自動車1Aの構成については、第1実施形態を参照することとし、運転操作誘導処理について説明する。
【0150】
(運転操作誘導処理)
図34は、コントローラ50が実行する運転操作誘導処理を示すフローチャートである。
コントローラ50は、運転者の指示入力に応じて運転操作誘導処理の実行を開始する。
図34において、運転操作誘導処理を開始すると、コントローラ50は、車速、横加速度(横G)、運転者の運転負荷、運転者の操作量を含む車両の運転状態を取得する(P501)。
このとき、運転者の運転負荷は、カーナビゲーションシステムに記憶している道路形状や、VICS(Vehicle Information and Communication System)等によって取得した渋滞情報を基に判定できる。また、運転者の操作量は、操舵操作および制駆動力操作の履歴を取得しておき、その頻度を基に判定できる。
【0151】
次に、コントローラ50は、リスクポテンシャル算出処理において算出した各リスクポテンシャルを取得する(ステップP502)。
次に、コントローラ50は、車両の運転状態およびリスクポテンシャルに基づいて、自車両の安定度を検出する(ステップP503)。
ここで、自車両の安定度については、車速が高いほど、加減速度が大きいほど、また、操舵入力が大きいほど、リスクポテンシャルが大きいほど、安定度が低下する傾向に設定している。
【0152】
次いで、コントローラ50は、自車両の安定度に応じて、運転操作の誘導制御を行う際の重み付けを算出する(ステップP504)。
ステップP504においては、操舵反力、制駆動操作反力および能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLにおける路面入力の低減割合について、運転操作の誘導制御を行う場合と行わない場合とのいずれの制御量とするかを決定するための重み付け(以下、適宜「優先度」と称する。)を算出する。この優先度は、運転操作の誘導制御を行わない場合の各制御量を0、運転操作の誘導制御を行う場合の制御量を1とし、これらをいずれの比率で配分するかを決定するものである。
【0153】
本実施形態においては、安定度が最良である場合に運転操作の誘導制御を行う場合の制御量とし、このときに、優先度として“1”を算出する。一方、安定度が設定された閾値以下である場合に、運転操作の誘導制御を行わない場合の制御量とし、このときに、優先度として“0”を算出する。また、本実施形態においては、安定度に応じて、“0”〜“1”までの任意の値を優先度として算出する。
次に、コントローラ50は、ステップP504で算出した優先度(重み付け)によって、運転操作の誘導制御を行わない場合に対応する配分制御量を算出する(ステップP505)。
【0154】
さらに、コントローラ50は、ステップP504で算出した優先度によって、リスクポテンシャルに応じた運転操作の誘導制御を行う場合に対応する配分制御量を算出する(ステップP506)。
次いで、コントローラ50は、ステッP505およびステップP506において算出した配分制御量の合計値によって、操舵反力や制駆動力操作反力、あるいは、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLの制御を実行する(ステップP507)。
ステップP507の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
【0155】
(動作)
次に、動作を説明する。
自動車1Aの走行中に、運転操作誘導処理の実行が開始されたとする。
なお、このとき、自動車1Aにおいては、一定の割合で路面からの振動を打ち消すように能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLの制御を行っていたものとする。
運転操作誘導処理を実行することにより、自動車1Aは、車両の運転状態、リスクポテンシャルおよび車両の安定度に応じて、自車両各部における通常の制御と、運転操作の誘導制御との優先度を算出する。
【0156】
そして、自動車1Aは、運転操作の誘導制御のための制御量と運転操作の誘導制御を行わない場合の制御量とを優先度に応じて加算した制御量によって、自車両各部の制御を行い、運転操作の誘導を行う。
これにより、自車両の安定度を加味して、運転操作の誘導制御を重点的に行うか、あるいは、運転者の技量に委ねた通常の車両制御を重点的に行うかを柔軟に決定できる。
したがって、より適切に車両の運転操作の支援を行うことができる。
【0157】
以上のように、本実施形態に係る自動車1Aは、自車両の安定度に応じて、運転操作の誘導制御の制御量を重み付けした上で、自車両各部の制御を行う。
例えば、安定度が高い状態では、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLによって路面からの振動を伝達する割合を低下させ、安定度が低い状態では、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLによって路面からの振動を一定以上の割合で伝達することができる。
【0158】
また、操舵反力および制駆動操作反力の制御によるリスクポテンシャルの伝達については、安定度が低いほど制御量を高めることができる。
したがって、自車両の状態を反映させた制御量によって、運転操作の誘導制御を行うことができ、運転者に対し、より適切に車両の運転操作の支援を行うことができる。
なお、本実施形態において、車速センサ30、車両状態検出器140およびコントローラ50が安定状態検出手段に対応する。
【0159】
(第5実施形態の効果)
(1)安定状態検出手段が自車両の安定状態を検出する。
擬似車両挙動発生手段が、安定状態検出手段が検出した自車両の安定状態に基づいて、サスペンション装置に擬似的に車両挙動を発生させる際の制御量を変化させる。
したがって、自車両の安定度を加味して、運転操作の誘導を重点的に行うか、あるいは、運転者の技量に委ねた通常の車両制御を重点的に行うかを柔軟に決定できる。
【0160】
(第6実施形態)
上記実施形態では、左右方向のリスクポテンシャルに応じて、能動型サスペンションのストロークや運転席シートのシートレッグ長を振動させるにあたり、左右方向それぞれについて1つのリスクポテンシャル閾値を設定し、リスクポテンシャルに応じて能動型サスペンションのサスペンションストロークを振動させることとした。
これに対し、本実施形態は、車両や運転席シートの姿勢(ロール傾斜角)を発生させるための左右方向のリスクポテンシャル閾値とは別に、振動を付与するために用いる左右方向のリスクポテンシャル閾値を設定する。そして、左右方向のリスクポテンシャルが振動を付与するための閾値以上となった場合に、予め設定された振幅で能動型サスペンションのストロークあるいは運転席シートのシートレッグ長を振動させるものである。
【0161】
図35は、本実施形態において、コントローラ50が実行する運転操作誘導処理を示すフローチャートである。また、図36〜39は、図35に示す運転操作誘導処理において実行される第1〜第4のサブフローを示す図である。
コントローラ50は、運転者の指示入力に応じて運転操作誘導処理の実行を開始する。
図35において、運転操作誘導処理を開始すると、コントローラ50は、リスクポテンシャル算出処理において算出した前後および左右方向のリスクポテンシャルRPa,RPb,RPc,RPdを取得する(ステップT210)。
【0162】
次に、コントローラ50は、ステップT210において取得した前方リスクポテンシャルRPaに応じて、運転操作誘導処理の第1のサブフローを実行する(ステップT220)。
ステップT220において、コントローラ50は、例えば、図36に示すように、まず、前方リスクポテンシャルRPaが第1の閾値RPa0以上であるか否かの判定を行う(ステップT221)。ステップT221において、前方リスクポテンシャルRPaが第1の閾値RPa0以上であると判定した場合、コントローラ50は、第1実施形態と同様に、アクセルペダル反力を前方リスクポテンシャルRPaに応じて増加させる(ステップT222)。また、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4FLのサスペンションストロークを前方リスクポテンシャルRPaに応じて変化させる(ステップT223)。
【0163】
次に、コントローラ50は、前方リスクポテンシャルRPaが第2の閾値RPa1以上であるか否かの判定を行う(ステップT224)。ステップT224において、前方リスクポテンシャルRPaが第2の閾値RPa1以上であると判定した場合、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4FLのサスペンションストロークに振動を付与する(ステップT225)。
【0164】
つまり、前方リスクポテンシャルRPaが比較的小さい第2の閾値RPa1未満の場合においては、アクセルペダル反力と車体ピッチ角(後傾)を発生させ、さらに、前方リスクポテンシャルRPaが比較的大きい第2の閾値RPa1以上の場合においては、サスペンションストロークによる振動が付与される。これにより、運転者に対して、前方のリスクポテンシャルが高まっていることを報知することができ、違和感なく、適切に、減速操作を促すことができる。そして、運転者が減速操作を行うと、前方リスクポテンシャルRPaが減少し、運転操作の誘導が停止される。
【0165】
ステップT225の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理に戻る。
また、コントローラ50は、ステップT210において取得した後方リスクポテンシャルRPbに応じて、運転操作誘導処理の第2のサブフローを実行する(ステップT230)。
ステップT230において、コントローラ50は、例えば、図37に示すように、まず、後方リスクポテンシャルRPbが第1の閾値RPb0以上であるか否かの判定を行う(ステップT231)。ステップT231において、後方リスクポテンシャルRPbが第1の閾値RPb0以上であると判定した場合、コントローラ50は、第1実施形態と同様に、能動型サスペンション4RR,4RLのサスペンションストロークを後方リスクポテンシャルRPbに応じて変化させる(ステップT232)。
【0166】
次に、コントローラ50は、後方リスクポテンシャルRPbが第2の閾値RPb1以上であるか否かの判定を行う(ステップT233)。ステップT233において、後方リスクポテンシャルRPbが第2の閾値RPb1以上であると判定した場合、コントローラ50は、能動型サスペンション4RR,4RLのサスペンションストロークに振動を付与する(ステップT234)。
【0167】
つまり、後方リスクポテンシャルRPbが比較的小さい第2の閾値RPb1未満の場合においては、車体ピッチ角(前傾)を発生させ、さらに、後方リスクポテンシャルRPbが比較的大きい第2の閾値RPb1以上の場合においては、サスペンションストロークによる振動が付与される。これにより、運転者に対して、後方のリスクポテンシャルが高まっていることを報知することができ、違和感なく、適切に、加速操作を促すことができる。そして、運転者が加速操作を行うと、後方リスクポテンシャルRPbが減少し、運転操作の誘導が停止される。
【0168】
ステップT234の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理に戻る。
また、コントローラ50は、ステップT210において取得した右方リスクポテンシャルRPcに応じて、運転操作誘導処理の第3のサブフローを実行する(ステップT240)。
ステップT240において、コントローラ50は、例えば、図38に示すように、右方リスクポテンシャルRPcが第1の閾値RPc0以上であるか否かの判定を行う(ステップT241)。ステップT241において、右方リスクポテンシャルRPcが第1の閾値RPc0以上であると判定した場合、コントローラ50は、第1実施形態と同様に、操舵反力を右方リスクポテンシャルRPcに応じて増加させる(ステップT242)。また、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4RRのサスペンションストロークを右方リスクポテンシャルRPcに応じて変化させる(ステップT243)。
【0169】
次に、コントローラ50は、右方リスクポテンシャルRPcが第2の閾値RPc1以上であるか否かの判定を行う(ステップT244)。ステップT244において、右方リスクポテンシャルRPcが第2の閾値RPc1以上であると判定した場合、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4RRのサスペンションストロークに振動を付与する(ステップT245)。
【0170】
つまり、右方リスクポテンシャルRPcが比較的小さい第2の閾値RPc1未満の場合においては、操舵反力とロール傾斜角(左ロール)を発生させ、さらに、右方リスクポテンシャルRPcが比較的大きい第2の閾値RPc1以上の場合においては、サスペンションストロークによる振動が付与される。これにより、レーンマーカー上、もしくは、レーンマーカーより外側に設置される凹凸(いわゆる、ランブルストリップ)を車両が踏んだかのような感じを与えることもできる。そのため、運転者に対して、右方のリスクポテンシャルが高まっていることを報知することができ、違和感なく、適切に、左方向への操舵操作を促すことができる。そして、運転者が操舵操作を行うと、右方リスクポテンシャルRPcが減少し、運転操作の誘導が停止される。
【0171】
ステップT245の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理に戻る。
また、コントローラ50は、ステップT210において取得した左方リスクポテンシャルRPdに応じて、運転操作誘導処理の第4のサブフローを実行する(ステップT250)。
ステップT250において、コントローラ50は、例えば、図39に示すように、左方リスクポテンシャルRPdが第1の閾値RPd0以上であるか否かの判定を行う(ステップT251)。ステップT251において、左方リスクポテンシャルRPdが第1の閾値RPd0以上であると判定した場合、コントローラ50は、第1実施形態と同様に、操舵反力を左方リスクポテンシャルRPdに応じて増加させる(ステップT252)。また、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4RRのサスペンションストロークを左方リスクポテンシャルRPdに応じて変化させる(ステップT253)。
【0172】
次に、コントローラ50は、左方リスクポテンシャルRPdが第2の閾値RPd1以上であるか否かの判定を行う(ステップT254)。ステップT254において、左方リスクポテンシャルRPdが第2の閾値RPd1以上であると判定した場合、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4RRのサスペンションストロークに振動を付与する(ステップT255)。
【0173】
つまり、左方リスクポテンシャルRPdが比較的小さい第2の閾値RPd1未満の場合においては、操舵反力とロール傾斜角(右ロール)を発生させ、さらに、左方リスクポテンシャルRPdが比較的大きい第2の閾値RPd1以上の場合においては、サスペンションストロークによる振動が付与される。これにより、レーンマーカー上、もしくは、レーンマーカーより外側に設置される凹凸(いわゆる、ランブルストリップ)を車両が踏んだかのような感じを与えることもできる。そのため、運転者に対して、左方のリスクポテンシャルが高まっていることを報知することができ、違和感なく、適切に、右方向への操舵操作を促すことができる。そして、運転者が操舵操作を行うと、左方リスクポテンシャルRPdが減少し、運転操作の誘導が停止される。
【0174】
ステップT255の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理に戻る。
ここで、ステップT245、あるいは、ステップT255にて付与する振動の周波数は、例えば、車速が高いほど高周波となるよう、車速に応じて変更することができる。
また、本実施形態では、サスペンションストロークによって振動を付与したが、ペダル反力や操舵反力で振動を付与してもよい。
【0175】
さらに、リスクポテンシャルが高まっていることを運転者に伝え、運転操作を促すために、車載スピーカから発する音を用いることができる。例えば、前方リスクポテンシャルが高い場合、前方(前右、前左)スピーカから他車両の走行音を出力し、後方リスクポテンシャルが高い場合、後方(後右、後左)スピーカから他車両の走行音を出力することにより、他車両が近づいているような感じを運転者に与えることができる。また、右方リスクポテンシャルが高い場合、右方(前右、後右)スピーカから、レーンマーカー上、もしくはレーンマーカーより外側に設置される凹凸(いわゆる、ランブルストリップ)を車両が踏んだ時の走行音を出力し、左方リスクポテンシャルが高い場合は、左方(前左、後左)スピーカから出力することにより、左右方向のリスクポテンシャルが高まっていることを効果的に報知することができる。
なお、本実施形態において、第1の閾値RPc0あるいはRPd0が特許請求の範囲における第3の閾値に対応し、第2の閾値RPc1あるいはRPd1が特許請求の範囲における第4の閾値に対応する。
【0176】
(第6実施形態の効果)
(1)車体のロールを発生させるための左右方向のリスクポテンシャルの閾値と、車体に振動を付与するための左右方向のリスクポテンシャルの閾値とを個別に設定することとしたため、車両の走行状態に応じて、車体のロールと振動とを適確なタイミングで発生させることができる。そのため、より適切に車両の運転操作の支援を行うことができる。
【符号の説明】
【0177】
1A 自動車、1 車両用運転操作補助装置、2FR,2FL,2RR,2RL 車輪、3 車体、4FR,4FL,4RR,4RL 能動型サスペンション、5 ステアリングホイール、6 ステアリング装置、7 アクセルペダル、8 ブレーキペダル、9F,9R,9SR,9SL カメラ、10 レーザレーダ、12 車体側部材、14 車輪側部材、16FR,16FL,16RR,16RL コイルスプリング、17FR,17FL,17RR,17RL 圧力制御弁、30 車速センサ、50 コントローラ、60 操舵反力制御装置、61,81,91 サーボモータ、62 舵角センサ、80 アクセルペダル反力制御装置、90 ブレーキペダル反力制御装置、100 駆動力制御装置、110 制動力制御装置、120FR,120FL,120RR,120RL,803FR,803FL,803RR,803RL,700FR,700FL,700RR,700RL アクチュエータ、130FR,130FL,130RR,130RL 車体上下加速度検出器、140 車両状態検出器
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者の操作を補助する車両用運転操作補助装置、車両用運転操作補助方法および自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用運転操作補助装置として、操舵操作の反力や、アクセルペダルあるいはブレーキペダルの操作反力を制御する技術が知られている。
例えば、特許文献1には、車両周囲の状況(障害物)を検出し、その時点におけるリスクポテンシャルを求め、算出したリスクポテンシャルに基づいて操舵補助トルクを制御する技術が記載されている。
このような制御を行うことにより、特許文献1に記載された技術においては、運転者に車両周囲の状況を認識させ、適切な運転を支援することととしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−211886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された技術を含め、従来の車両用運転操作補助装置においては、運転者が行った操作に対して、反力を付与する等して運転操作を支援するものである。そのため、運転者が操作を行って初めて、その操作が適切なものであるか否かを判断することができることとなり、運転者による適切な運転操作が遅れる可能性がある。
本発明の課題は、運転者に対し、より適切に車両の運転操作の支援を行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するため、本発明に係る車両用運転操作補助装置は、
擬似車両挙動発生手段が、車両状態検出手段の検出結果およびリスクポテンシャルに基づいて、リスクポテンシャルが増大する運転操作を行った場合の車両挙動を、動作制御手段を制御することによって擬似的に発生させる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、運転者にリスクポテンシャルが増大しているような感覚を与え、それを抑制する運転操作を誘導することができるため、運転者に対し、より適切に車両の運転操作の支援を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1実施形態に係る車両用運転操作補助装置1を備えた自動車1Aの概略構成図である。
【図2】自動車1Aの制御系統を示すシステム構成図である。
【図3】操舵反力制御を行う際の減衰力算出制御マップを示す図である。
【図4】自動車1Aが有する能動型サスペンション機構の具体的な構成を示す図である。
【図5】コントローラ50が実行するリスクポテンシャル算出処理を示すフローチャートである。
【図6】コントローラ50が実行する運転操作誘導処理を示すフローチャートである。
【図7】前方リスクポテンシャルRPaが高い場合の制御動作を示す模式図である。
【図8】前方リスクポテンシャルRPaが高い場合に付与されるアクセルペダル反力および車体ピッチ角βの特性を示す図である。
【図9】後方リスクポテンシャルRPbが高い場合の制御動作を示す模式図である。
【図10】後方リスクポテンシャルRPbが高い場合に付与される車体ピッチ角γの特性を示す図である。
【図11】右方リスクポテンシャルRPcあるいは左方リスクポテンシャルRPdが高い場合の制御動作を示す模式図である。
【図12】右方リスクポテンシャルRPcあるいは左方リスクポテンシャルRPdが高い場合に付与される操舵反力および車体ロール角δの特性を示す図である。
【図13】応用例1のサスペンション構造を示す図である。
【図14】応用例5において、コントローラ50が実行する運転操作誘導処理を示すフローチャートである。
【図15】運転操作誘導処理の第1のサブフローを示す図である。
【図16】運転操作誘導処理の第2のサブフローを示す図である。
【図17】運転操作誘導処理の第3のサブフローを示す図である。
【図18】運転操作誘導処理の第4のサブフローを示す図である。
【図19】操舵反力を発生させる第1の閾値RPc0と、サスペンションストロークを変化させる第2の閾値RPc1との関係を示す図である。
【図20】応用例6のサスペンション構造を示す図である。
【図21】右方リスクポテンシャルRPcが高い場合に付与されるスタビライザリンク長の特性を示す図である。
【図22】コントローラ50が実行する運転操作誘導処理を示すフローチャートである。
【図23】前方リスクポテンシャルRPaが高い場合の制御動作を示す模式図である。
【図24】前方リスクポテンシャルRPaが高い場合に付与されるアクセルペダル反力およびサスペンションストロークの振動の特性を示す図である。
【図25】後方リスクポテンシャルRPbが高い場合の制御動作を示す模式図である。
【図26】後方リスクポテンシャルRPbが高い場合に付与されるサスペンションストロークの振動の特性を示す図である。
【図27】右方リスクポテンシャルRPcあるいは左方リスクポテンシャルRPdが高い場合の制御動作を示す模式図である。
【図28】右方リスクポテンシャルRPcあるいは左方リスクポテンシャルRPdが高い場合に付与される操舵反力およびサスペンションストロークの振動の特性を示す図である。
【図29】応用例1において、コントローラ50が実行する運転操作誘導処理を示すフローチャートである。
【図30】コントローラ50が実行する運転操作誘導処理を示すフローチャートである。
【図31】前方リスクポテンシャルRPaが高い場合の制御動作を示す模式図である。
【図32】前方リスクポテンシャルRPaが高い場合に付与されるアクセルペダル反力および車体3の揺動ロール角の特性を示す図である。
【図33】コントローラ50が実行する運転操作誘導処理を示すフローチャートである。
【図34】コントローラ50が実行する運転操作誘導処理を示すフローチャートである。
【図35】コントローラ50が実行する運転操作誘導処理を示すフローチャートである。
【図36】運転操作誘導処理の第1のサブフローを示す図である。
【図37】運転操作誘導処理の第2のサブフローを示す図である。
【図38】運転操作誘導処理の第3のサブフローを示す図である。
【図39】運転操作誘導処理の第4のサブフローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図を参照して本発明を適用した自動車の実施の形態を説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る車両用運転操作補助装置1を備えた自動車1Aの概略構成図である。
図1において、自動車1Aは、車輪2FR,2FL,2RR,2RLと、車体3と、車体3と各車輪との間に設置された能動型のサスペンション4FR,4FL,4RR,4RLと、ステアリングホイール5と、ステアリングホイール5と操向輪である車輪2FR,2FLとの間に設置されたステアリング装置6と、アクセルペダル7と、ブレーキペダル8と、車体3の前後左右それぞれに設置され、車両の周囲を撮影するカメラ9F,9R,9SR,9SLとを備えており、自動車1Aに搭載された各種機器からの信号は、後述するコントローラ50に入力されている。
【0009】
図2は、自動車1Aの制御系統を示すシステム構成図である。
図2において、自動車1Aの制御系統は、レーザレーダ10と、カメラ9F,9R,9SR,9SLと、車速センサ30と、コントローラ50と、操舵反力制御装置60と、サーボモータ61,81,91と、舵角センサ62と、アクセルペダル反力制御装置80と、ブレーキペダル反力制御装置90と、駆動力制御装置100と、制動力制御装置110と、能動型のサスペンション4FR,4FL,4RR,4RLそれぞれに備えられたアクチュエータ120FR,120FL,120RR,120RLおよび車体上下加速度検出器130FR,130FL,130RR,130RLと、車両状態検出器140とを備えている。
【0010】
なお、これらのうち、レーザレーダ10、カメラ9F,9R,9SR,9SL、車速センサ30、コントローラ50、操舵反力制御装置60、サーボモータ61,81,91、舵角センサ62、アクセルペダル反力制御装置80、ブレーキペダル反力制御装置90、駆動力制御装置100、制動力制御装置110、アクチュエータ120FR,120FL,120RR,120RL、車体上下加速度検出器130FR,130FL,130RR,130RL、車両状態検出器140は、本発明に係る車両用運転操作補助装置1を構成している。
【0011】
レーザレーダ10は、車両の前方のグリル部もしくはバンパ部等に取り付けられ、水平方向に赤外光パルスを走査する。
レーザレーダ10は、前方にある複数の反射物(通常、前方車の後端)で反射された赤外光パルスの反射波を検出し、反射波の到達時間より、複数の前方車までの車間距離とその存在方向を検出する。検出した車間距離および存在方向はコントローラ50へ出力される。
【0012】
なお、本実施の形態において、前方物体の存在方向は、自車両正面に対する相対角度として表すことができる。レーザレーダ10によりスキャンされる前方の領域は、自車正面に対して±6deg程度であり、この範囲内に存在する前方物体が検出される。
また、レーザレーダ10は、前方車両までの車間距離およびその存在方向だけでなく、自車前方に存在する歩行者等の障害物までの相対距離およびその存在方向を検出する。
【0013】
カメラ9Fは、フロントウィンドウ上部に取り付けられた小型のCCD(Charge Coupled Devices)カメラ、またはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)カメラ等の撮像装置であり、前方道路の状況を画像として検出し、検出した画像をコントローラ50に出力する。カメラ9Fによる検知領域は水平方向に±30deg程度であり、この領域に含まれる前方道路風景が画像として取り込まれる。
【0014】
また、カメラ9SR,9SLは、それぞれ左右の後部ドア上部に取り付けられた小型のCCDカメラ、もしくはCMOSカメラ等の撮像装置である。カメラ9SR,9SLは、自車側方の状況、特に隣接車線上の状況を画像として検出し、検出した画像をコントローラ50に出力する。なお、カメラ9SR,9SLは、前方を撮影するカメラ9Fに比して、より広範な領域を撮影するため、その検知領域は水平方向に±60deg程度となっている。
【0015】
さらに、カメラ9Rは、リアウィンドウ上部に取り付けられた小型のCCDカメラ、またはCMOSカメラ等の撮像装置であり、後方道路の状況を画像として検出し、検出した画像をコントローラ50に出力する。カメラ9Rによる検知領域は、カメラ9Fと同様に、水平方向に±30deg程度であり、この領域に含まれる後方道路風景が画像として取り込まれる。
車速センサ30は、車輪の回転数等から自車両の走行車速を検出し、検出した車速をコントローラ50へ出力する。
【0016】
コントローラ50は、CPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)等のCPU周辺部品とから構成され、車両用運転操作補助装置1および自動車1Aの制御系統全体の制御を行う。
コントローラ50は、車速センサ30から入力される自車速と、レーザレーダ10から入力される距離情報と、カメラ9F,9R,9SR,9SLから入力される車両周辺の画像情報とから、自車両周囲の障害物状況を検出する。
なお、コントローラ50は、カメラ9F,9R,9SR,9SLから入力される画像情報を画像処理することにより自車両周囲の障害物状況を検出する。
【0017】
ここで、自車両周囲の障害物状況としては、自車両前方を走行する他車両までの車間距離、隣接車線を自車両後方から接近する他車両の有無と接近度合、および車線識別線(白線)に対する自車両の左右位置、つまり相対位置と角度、さらに車線識別線の形状などを挙げることができる。また、自車両前方を横断する歩行者や二輪車等も障害物状況として検出される。
【0018】
コントローラ50は、検出した障害物状況に基づいて各障害物に対する自車両のリスクポテンシャル(障害物に対する自車両の接近度合を表す物理量)を算出する。さらに、コントローラ50は、それぞれの障害物に対するリスクポテンシャルを総合して自車両周囲の総合的なリスクポテンシャルを算出し、後述するようにリスクポテンシャルに応じて、車両の左右方向の制御(操舵反力あるいは操舵角の制御および操舵ゲインの制御)、前後方向(制駆動力の制御あるいはアクセルペダルとブレーキペダルの操作反力の制御)、上下方向(能動型サスペンションの減衰力、サスペンションストロークおよびばね定数の制御)について協調制御を行う。
【0019】
ここで、本実施形態においては、コントローラ50が、総合的なリスクポテンシャルに基づいて車両の前後、左右および上下方向の制御を行うものであるが、このとき、運転操作支援を行う上で、ノイズであると捉えられる路面状態および車両の挙動を運転者に伝達しないように制御し、運転操作支援を行う上で、適切な運転操作につながると捉えられる情報(路面状態および車両の挙動等)を運転者に伝達するように制御する。また、コントローラ50は、擬似的な車両挙動を発生させることにより、運転者の運転操作を誘導する。
【0020】
具体的には、コントローラ50は、自車両に発生する制駆動力、運転操作のために運転者が操作する運転操作機器に発生する操作反力、および、能動型サスペンションの減衰特性を制御する。運転操作機器とは、例えば運転者が自車両を加速したり減速したりするときに操作するアクセルペダル7やブレーキペダル8、あるいは、運転者が自車両の方向転換を行うときに操作するステアリングホイール5である。
【0021】
能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLの減衰特性について、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLに備えられたダンパの圧力制御あるいはサスペンションストロークの制御を行う。
即ち、コントローラ50には、車体上下加速度検出器130FR,130FL,130RR,130RLから出力された上下加速度検出信号X”2FL〜X”2RRが入力される。
【0022】
そして、コントローラ50は、車体上下加速度検出信号X"に所定のゲインKmを乗算する。
また、コントローラ50は、車体上下加速度について設定されたゲインKnと車体上下加速度検出信号の積分値∫dtとを乗算する。さらに、コントローラ50は、これらの乗算結果を加算し、この加算結果を各能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLそれぞれのダンパにおける油圧制御用のアクチュエータ120FR,120FL,120RR,120RLの指令値とする。
【0023】
操舵反力制御装置60は、車両の操舵系に組み込まれ、コントローラ50からの指令に応じて、サーボモータ61で発生させるトルクを制御する。サーボモータ61は、操舵反力制御装置60からの指令値に応じて発生させるトルクを制御し、運転者がハンドルを操作する際に発生する操舵反力を目標値に制御することができる。
ここで、コントローラ50は、リスクポテンシャルに応じた操舵反力制御を行うが、リスクポテンシャルに応じて操舵反力を付与する場合、図3に示す減衰力算出制御マップを用いることができる。
【0024】
この場合、操舵角速度θ’および発生トルクTHから、操舵反力TRに付加する減衰力TDを算出する。この減衰力算出制御マップは、図3に示すように、横軸に操舵角速度θ’を、縦軸に減衰力TDをそれぞれとり、操舵角速度θ’が0(零)から正方向に増加するときに、これに比例して減衰力TD0(零)から負方向に減少し、一方、操舵角速度θ’が0(零)から負方向に減少するときに、これに比例して減衰力TDが0(零)から正方向に増加するように設定されている。さらに、発生トルクTHが大きいほど、操舵角速度θ’の増加率(または減少率)に対する減衰力TDの減少率(又は増加率)が大きくなるように構成されている。
【0025】
舵角センサ62は、ステアリングコラムもしくはステアリングホイール付近に取り付けられた角度センサ等であり、ステアリングシャフトの回転を操舵角として検出し、コントローラ50へ出力する。
アクセルペダル7には、アクセルペダル7の踏み込み量(操作量)を検出するアクセルペダルストロークセンサ(不図示)が設けられている。アクセルペダルストロークセンサによって検出されたアクセルペダル操作量はコントローラ50に出力される。
【0026】
アクセルペダル反力制御装置80は、コントローラ50からの指令に応じて、アクセルペダル82のリンク機構に組み込まれたサーボモータ81で発生させるトルクを制御する。サーボモータ81は、アクセルペダル操作反力制御装置80からの指令値に応じて発生させる反力を制御し、運転者がアクセルペダル82を操作する際に発生する踏力を目標値に制御することができる。
【0027】
ブレーキペダル8には、その踏み込み量(操作量)を検出するブレーキペダルストロークセンサ(不図示)が設けられている。ブレーキペダルストロークセンサによって検出されたブレーキペダル操作量もコントローラ50に出力される。
ブレーキペダル反力制御装置90は、コントローラ50からの指令に応じて、ブレーキブースタで発生させるブレーキアシスト力を制御する。ブレーキブースタは、ブレーキペダル反力制御装置90からの指令値に応じて発生させるブレーキアシスト力を制御し、運転者がブレーキペダル8を操作する際に発生する踏力を目標値に制御することができる。ブレーキアシスト力が大きいほどブレーキペダル操作反力は小さくなり、ブレーキペダル8を踏み込みやすくなる。
【0028】
駆動力制御装置100は、エンジンコントローラを有し、コントローラ50からの指令に応じてエンジントルクを制御する。
制動力制御装置110は、ブレーキ液圧コントローラを有し、コントローラ50からの指令に応じてブレーキ液圧を制御する。
車両状態検出器140は、横加速度センサ、ヨーレートセンサ、アクセル開度センサ、ブレーキ圧センサ等、自車両の状態を検出する各種センサを備えており、検出した横加速度(以下、適宜「横G」と称する。)、ヨーレート、アクセル開度ACCおよびブレーキ圧BRK等の検出値を、コントローラ50に出力する。
【0029】
(能動型サスペンション機構の具体的構成)
図4は、自動車1Aが有する能動型サスペンション機構の具体的な構成を示す図である。
図4において、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLは、それぞれ車体側部材12と各車輪2FR,2FL,2RR,2RLを個別に支持する車輪側部材14との間に介装された能動型サスペンションであって、アクチュエータ120FR,120FL,120RR,120RLと、コイルスプリング16FR,16FL,16RR,16RLと、アクチュエータ120FR,120FL,120RR,120RLに対する作動油圧をコントローラ50からの指令値にのみ応動して制御する圧力制御弁17FR,17FL,17RR,17RLとを備えている。また、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLは、圧力制御弁17FL〜17RRと油圧源24との間の油圧配管25の途中に接続した高圧側アキュムレータ28Hと、圧力制御弁17FL〜17RRと油圧シリンダ15FL〜15RRとの間の油圧配管27に絞り弁28Vを介して連通した低圧側アキュムレータ28Lとを備えている。
【0030】
ここで、アクチュエータ120FR,120FL,120RR,120RLのそれぞれは、そのシリンダチューブ15aが車体側部材12に取付けられ、ピストンロッド15bが車輪側部材14に取付けられ、ピストン15cによって閉塞された上側圧力室B内の作動油圧が圧力制御弁17FL〜17RRによって制御される。また、コイルスプリング16FL〜16RRのそれぞれは、車体側部材12と車輪側部材14との間にアクチュエータ120FR,120FL,120RR,120RLと並列に装着されて車体の静荷重を支持している。なお、これらコイルスプリング16FL〜16RRは、車体の静荷重を支えるのみの低いバネ定数のものでよい。
【0031】
圧力制御弁17FL〜17RRは、上側圧力室Bの圧力が上昇(又は減少)すると、これに応じて上側圧力室Bの圧力を減圧(又は昇圧)し、上向きの振動入力による上側圧力室Bの圧力上昇(又は下向きの振動入力による上側圧力室Bの圧力減少)を抑制する。これにより、車体側部材14に伝達される振動入力を低減することができる。
一方、車体3には、各車輪2FR,2FL,2RR,2RLの直上部に車体上下加速度検出器130FR,130FL,130RR,130RLが配設され、これら車体上下加速度検出器130FR,130FL,130RR,130RLの車体上下加速度検出信号X”2FL〜X”2RRがコントローラ50に入力される。
【0032】
コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLの圧力制御を行うサスペンション制御部50aを有している。
サスペンション制御部は、車体上下加速度検出信号X”2FL〜X”2RRそれぞれに所定のゲインKmを乗算するゲイン調整機能と、所定のゲインKnと車体上下加速度検出信号X”2FL〜X”2RRそれぞれとの積分値∫dtとを乗算する車体上下速度算出兼ゲイン調整機能と、ゲイン調整機能および車体上下速度算出兼ゲイン調整機能の出力を加算する加算機能とを有しており、加算機能による加算出力が圧力制御弁17FL〜17RRの指令値V4FL〜V4RRとして各圧力制御弁17FL〜17RRに供給される。
【0033】
コントローラ50のサスペンション制御部50aにおいては、図4に示すように、車体上下加速度検出値X"2FL〜X"2RRが積分器51に供給され、その積分値でなる車体上下速度検出値X’2FL〜X’2RRが所定のゲインKnが設定された増幅器52で増幅される。一方、車体上下加速度検出値X"2FL〜X"2RRは所定の増幅度Kmが設定された増幅器53に供給されて増幅され、増幅器52,53の増幅出力が加算器54に入力されて加算される。さらに、車体上下加速度検出値X"2FL〜X"2RRは、例えばウインドコンパレータの構成を有する比較器55にも供給され、この比較器55で上下加速度検出値X"2FL〜X"2RRが所定の上限値および下限値内に収まっているときに例えば論理値"1”の比較出力が出力され、この比較出力がタイマ回路56に供給される。このタイマ回路56は、論理値"1”の比較出力が所定時間継続しているか否かを判定し、所定時間継続している場合に、論理値"1”のリセット信号RSを積分器51に出力し、積分器51の蓄積データをリセットする。
【0034】
このような構成の能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLにおいて、コントローラ50のサスペンション制御部50aが車体上下加速度検出信号X”2FL〜X”2RRに関するゲインKmおよび車体上下速度検出値X’2FL〜X’2RRに関するゲインKnを変更することで、路面から車体3に入力される振動をほぼ打ち消すように制御したり、路面から車体3に入力される振動をそのまま伝えたりすることができる。また、路面入力に拠らない圧力制御弁17FL〜17RRの指令値V4FL〜V4RRを生成することで、路面からの振動を抑制する以外の動作(例えば、車体のロールあるいはピッチの制御)を能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLに行わせることもできる。
【0035】
(コントローラ50における処理)
次に、コントローラ50が実行する各種処理について説明する。
本実施形態において、自動車1Aは、リスクポテンシャルRPに応じて、運転者が自発的に運転行動を起こすように自車両の姿勢を変化させることにより、運転者の運転操作を促し、車両前後方向および左右方向の運転操作補助を行う。
したがって、初めに、これらの制御において用いられるリスクポテンシャルRPを算出するためのリスクポテンシャル算出処理について説明する。
【0036】
(リスクポテンシャル算出処理)
図5は、コントローラ50が実行するリスクポテンシャル算出処理を示すフローチャートである。
コントローラ50は、車両用運転操作補助装置1による運転操作補助の開始を運転者が指示入力することに対応して、リスクポテンシャル算出処理を開始する。
図5において、リスクポテンシャル算出処理を開始すると、コントローラ50は、まず、自車両の走行状態を読み込む(ステップS1)。
【0037】
ここで、走行状態は、自車周囲の障害物状況を含む自車両の走行状況に関する情報である。具体的には、レーザレーダ10で検出される前方走行車までの相対距離および相対角度、また、前方カメラ9Fからの画像入力に基づく自車両に対する白線の相対位置(すなわち左右方向の変位と相対角度)、白線の形状および前方走行車までの相対距離と相対角度を読み込み、さらに、カメラ9R,9SR,9SLからの画像入力に基づく隣接車線後方に存在する走行車両までの相対距離および相対角度を読み込む。さらに、車速センサ30によって検出される車速を読み込む。また、カメラ9F,9R,9SR,9SLで検出される画像に基づいて、自車両周囲に存在する障害物の種別、つまり障害物が四輪車両、二輪車両、歩行者またはその他であるかを認識する。
【0038】
次に、コントローラ50は、ステップS1で読み込んだ走行状態のデータ(走行状態データ)に基づいて、現在の車両周囲状況を認識する(ステップS2)。
ここでは、前回の処理周期以前に検出し、不図示のメモリに記憶している自車両に対する各障害物の相対位置やその移動方向・移動速度と、ステップS1で得られた現在の走行状態データとにより、現在の各障害物の自車両に対する相対位置やその移動方向・移動速度を認識する。そして、自車両の走行に対して障害物となる他車両や白線が、自車両の周囲にどのように配置され、相対的にどのように移動しているかを認識する。
【0039】
次に、コントローラ50は、ステップS2において認識した各障害物に対する余裕時間TTC(Time To Collision)を障害物毎に算出する(ステップS3)。
障害物kに対する余裕時間TTCkは、次式(1)で求めることができる。
TTCk=(Dk−σ(Dk))/(Vrk+σ(Vrk)) (1)
ここで、Dk:自車両から障害物kまでの相対距離、Vrk:自車両に対する障害物kの相対速度、σ(Dk):相対距離のばらつき、σ(Vrk):相対速度のばらつき、をそれぞれ示す。
【0040】
相対距離、相対速度のばらつきσ(Dk)、σ(Vrk)は、検出器の不確定性や不測の事態が発生した場合の影響度合の大きさを考慮して、障害物kを認識したセンサの種類や、認識された障害物kの種別に応じて設定する。
レーザレーダ10は、カメラ、例えばCCD等によるカメラ9F,9R,9SR,9SLによる障害物の検出と比べて、検出距離、つまり自車両と障害物との相対距離の大きさによらず正しい距離を検出することができる。
【0041】
そこで、レーザレーダ10で障害物kまでの相対距離Dkを検出した場合は、相対距離Dkによらず、そのばらつきσ(Dk)をほぼ一定値に設定する。
一方、カメラ9F,9R,9SR,9SLで相対距離Dkを検出した場合は、相対距離Dkが大きくなるほどばらつきσ(Dk)が指数関数的に増加するように設定する。ただし、障害物kの相対距離Dkが小さい場合、レーザレーダで相対距離Dkを検出した場合に比べて、カメラによってより正確に相対距離を検出することができるので、相対距離のばらつきσ(Dk)を小さく設定する。
【0042】
例えば、レーザレーダ10で相対距離Dkを検出した場合、相対速度Vrkのばらつきσ(Vrk)は、相対速度Vrkに比例して大きくなるように設定する。一方、カメラ9F,9R,9SR,9SLで相対距離Dkを検出した場合、相対速度Vrkが大きくなるほど相対速度のばらつきσ(Vrk)が指数関数的に増加するように設定する。
カメラ9F,9R,9SR,9SLによって障害物状況を検出した場合、検出画像に画像処理を行うことによって障害物の種別を認識することができる。そこで、カメラ9F,9R,9SR,9SLによって障害物状況を検出した場合は、認識される障害物の種別に応じて相対距離、相対速度のばらつきσ(Dk)、σ(Vrk)を設定する。
【0043】
カメラ9F,9R,9SR,9SLによる相対距離Dkの検出は、障害物kの大きさが大きいほどその検出精度が高いため、障害物が四輪車両である場合の相対距離のばらつきσ(Dk)を二輪車両や歩行者の場合のばらつきσ(Dk)に比べて小さく設定する。
一方、相対速度のばらつきσ(Vrk)は、障害物k毎に想定される移動速度が大きいほど、ばらつきσ(Vrk)が大きくなるように設定する。つまり、四輪車両の移動速度は二輪車両や歩行者の移動速度よりも大きいと想定されるので、相対速度Vrkが同じ場合、障害物kが四輪車両である場合のばらつきσ(Vrk)は、二輪車両や歩行者の場合のばらつきσ(Vrk)に比べて大きく設定する。
【0044】
なお、レーザレーダ10とカメラ9F,9R,9SR,9SLの両方で障害物kを検出した場合は、例えば、値の大きな方のばらつきσ(Dk)、σ(Vrk)を用いてその障害物kに対する余裕時間TTCkを算出することができる。
次に、コントローラ50は、ステップS3で算出した余裕時間TTCkを用いて、各障害物kに対するリスクポテンシャルRPkを算出する(ステップS4)。
【0045】
ここで、各障害物kに対するリスクポテンシャルRPkは次式(2)で求められる。
RPk=(1/TTCk)×wk (2)
ここで、wk:障害物kの重みを示す。
(2)式に示すように、リスクポテンシャルRPkは余裕時間TTCkの逆数を用いて、余裕時間TTCkの関数として表されており、リスクポテンシャルRPkが大きいほど障害物kへの接近度合が大きいことを示している。
【0046】
障害物k毎の重みwkは、検出された障害物の種別に応じて設定する。例えば、障害物kが四輪車両、二輪車両あるいは歩行者である場合、自車両が障害物kに近接した場合の重要度、つまり影響度が高いため、重みwk=1に設定する。一方、障害物kが、路面に設置されたレーンマーカー等、接触しない対象物である場合には、重みwk=0.5に設定する。
【0047】
次に、コントローラ50は、ステップS4で算出した障害物k毎のリスクポテンシャルRPkから、車両前後方向の成分を抽出して加算し、車両周囲に存在する全障害物に対する総合的な前後方向リスクポテンシャルを算出する(ステップS5)。
前後方向リスクポテンシャルRPlongitudinalは、次式(3)で算出される。
RPlongitudinal=Σk(RPk×cosθk) (3)
ここで、θk:自車両に対する障害物kの存在方向を示し、障害物kが車両前方向、つまり自車正面に存在する場合、θk=0とし、障害物kが車両後方向に存在する場合、θk=180とする。
【0048】
なお、このとき、コントローラ50は、自車両前方(θ=0〜90,270〜360の範囲)におけるリスクポテンシャル(以下、「前方リスクポテンシャルRPa」と称する。)と、自車両後方(θ=90〜270の範囲)におけるリスクポテンシャル(以下、「後方リスクポテンシャルRPb」と称する。)をそれぞれ取得する。
続いて、コントローラ50は、ステップS4で算出した障害物k毎のリスクポテンシャルRPkから、車両左右方向の成分を抽出して加算し、車両周囲に存在する全障害物に対する総合的な左右方向リスクポテンシャルを算出する(ステップS6)。
【0049】
左右方向リスクポテンシャルRPlateralは、次式(4)で算出される。
RPlateral=Σk(RPk×sinθk) (4)
なお、このとき、コントローラ50は、自車両右方(θ=0〜180の範囲)におけるリスクポテンシャル(以下、「右方リスクポテンシャルRPc」と称する。)と、自車両左方(θ=180〜360の範囲)におけるリスクポテンシャル(以下、「左方リスクポテンシャルRPd」と称する。)をそれぞれ取得する。
【0050】
さらに、コントローラ50は、ステップS4で算出した障害物k毎のリスクポテンシャルRPkを全ての障害物kについて合計し、車両周囲の総合的なリスクポテンシャルRPを算出する(ステップS7)。
ステップS7の後、コントローラ50は、運転操作補助の終了を運転者が指示入力するまで、リスクポテンシャル算出処理を繰り返す。
なお、コントローラ50は、リスクポテンシャル算出処理において算出したリスクポテンシャルRP等のパラメータを、不図示のメモリに格納し、他の処理において利用可能な状態とする。
【0051】
(運転操作誘導処理)
次に、コントローラ50が実行する運転操作誘導処理について説明する。
運転操作誘導処理は、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLを制御して自車両の姿勢を変化させ、運転者に擬似的な感覚を与えることによって運転操作を促すための処理である。
図6は、コントローラ50が実行する運転操作誘導処理を示すフローチャートである。
コントローラ50は、運転者の指示入力に応じて運転操作誘導処理の実行を開始する。
図6において、運転操作誘導処理を開始すると、コントローラ50は、リスクポテンシャル算出処理において算出した前後および左右方向のリスクポテンシャルRPa,RPb,RPc,RPdを取得する(ステップP101)。
【0052】
次に、コントローラ50は、ステップP101において取得した前後および左右方向のリスクポテンシャルRPa、RPb,RPc,RPdが、それぞれについて設定された閾値RPa0,RPb0,RPc0,RPd0以上であるか否かの判定を行う(ステップP102)。
ステップP102において、前後および左右方向のリスクポテンシャルRPa、RPb,RPc,RPdのいずれも、それぞれについて設定された閾値RPa0,RPb0,RPc0,RPd0を超えていないと判定した場合、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
【0053】
また、ステップP102において、前方リスクポテンシャルRPaが閾値RPa0以上であると判定した場合、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4FLのサスペンションストロークを前方リスクポテンシャルRPaに応じて変化させる(ステップP103)。また、ステップP103において、コントローラ50は、アクセルペダル7の操作反力を前方リスクポテンシャルRPaに応じて増加させる。
ステッP103の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
【0054】
図7は、前方リスクポテンシャルRPaが高い場合の制御動作を示す模式図である。
また、図8は、前方リスクポテンシャルRPaが高い場合に付与されるアクセルペダル反力および車体ピッチ角βの特性を示す図である。
図7および図8において、前方リスクポテンシャルRPaが閾値RPa0より高い場合、図8(a)に示すように、アクセルペダル反力が前方リスクポテンシャルRPaに応じて強くなり、アクセルペダル7を踏み増しにくい状態となる。また、図7に示すように、能動型サスペンション4FR,4FLのサスペンションストロークが前方リスクポテンシャルRPaに応じて変化される。これにより、運転者に対して、自動車1Aが加速しているような感覚を与えることができる。また、このとき、図8(b)に示すように、ピッチ角(車体の後傾傾斜角)βは前方リスクポテンシャルRPaに応じて大きくなり、運転者に対して、前方リスクポテンシャルRPaが大きいほど、自動車1Aがより強く加速しているような感覚を与えることができる。
【0055】
このような運転操作の誘導を行うことにより、運転者に対して減速操作を促すことができる。
そして、運転者が減速操作を行うと、前方リスクポテンシャルRPaが減少し、ステップP103における運転操作の誘導が停止される。
また、ステップP102において、後方リスクポテンシャルRPbが閾値RPb0以上であると判定した場合、コントローラ50は、能動型サスペンション4RR,4RLのサスペンションストロークを後方リスクポテンシャルRPbに応じて変化させる(ステップP104)。
ステッP104の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
【0056】
図9は、後方リスクポテンシャルRPbが高い場合の制御動作を示す模式図である。
また、図10は、後方リスクポテンシャルRPbが高い場合に付与される車体ピッチ角γの特性を示す図である。
図9および図10において、後方リスクポテンシャルRPbが閾値RPb0より高い場合、図9に示すように、能動型サスペンション4RR,4RLのサスペンションストロークが前方リスクポテンシャルRPbに応じて変化される。これにより、運転者に対して、自動車1Aが減速しているような感覚を与えることができる。また、このとき、図10に示すように、ピッチ角(車体の前傾傾斜角)γは後方リスクポテンシャルRPbに応じて大きくなり、運転者に対して、後方リスクポテンシャルRPbが大きいほど、自動車1Aがより強く加速しているような感覚を与えることができる。
【0057】
このような運転操作の誘導を行うことにより、運転者に対して加速操作を促すことができる。
そして、運転者が加速操作を行うと、後方リスクポテンシャルRPbが減少し、ステップP104における運転操作の誘導が停止される。
また、ステップP102において、右方リスクポテンシャルRPcが閾値RPc0以上であると判定した場合、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4RRのサスペンションストロークを右方リスクポテンシャルRPcに応じて変化させる(ステップP105)。
【0058】
ステッP105の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
また、ステップP102において、左方リスクポテンシャルRPdが閾値RPd0以上であると判定した場合、コントローラ50は、能動型サスペンション4FL,4RLのサスペンションストロークを左方リスクポテンシャルRPdに応じて変化させる(ステップP106)。
ステッP106の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
【0059】
図11は、右方リスクポテンシャルRPcあるいは左方リスクポテンシャルRPdが高い場合の制御動作を示す模式図である。なお、図11においては、車両を後方から見た図を示しており、右方リスクポテンシャルRPcが高い場合を例に挙げている。
また、図12は、右方リスクポテンシャルRPcあるいは左方リスクポテンシャルRPdが高い場合に付与される操舵反力および車体ロール角δの特性を示す図である。
【0060】
図11および図12において、右方リスクポテンシャルRPcが閾値RPc0より高い場合、図12(a)に示すように、操舵反力が右方リスクポテンシャルRPcに応じて強くなり、右方向への操舵を切り増しにくい状態となる。また、図11に示すように、能動型サスペンション4FR,4RRのサスペンションストロークが右方リスクポテンシャルRPcに応じて変化される。これにより、運転者に対して、自動車1Aが右旋回して車体3が左にロールしているような感覚を与えることができる。また、このとき、図12(b)に示すように、ロール角(車体の左右傾斜角)δは右方リスクポテンシャルRPcに応じて大きくなり、運転者に対して、右方リスクポテンシャルRPcが大きいほど、自動車1Aがより強く右旋回しているような感覚を与えることができる。
【0061】
このような運転操作の誘導を行うことにより、運転者に対して左方向への操舵操作を促すことができる。
そして、運転者が左方向への操舵操作を行うと、右方リスクポテンシャルRPcが減少し、ステップP104における運転操作の誘導が停止される。
同様に、左方リスクポテンシャルRPdが高い場合には、操舵反力が左方リスクポテンシャルRPdに応じて強くなり、左方向への操舵を切り増しにくい状態となる。また、能動型サスペンション4FL,4RLのサスペンションストロークが左方リスクポテンシャルRPdに応じて変化される。これにより、運転者に対して、自動車1Aが左旋回して車体3が右にロールしているような感覚を与えることができる。また、このとき、ロール角(車体の左右傾斜角)δは左方リスクポテンシャルRPdに応じて大きくなり、運転者に対して、左方リスクポテンシャルRPdが大きいほど、自動車1Aがより強く左旋回しているような感覚を与えることができる。
【0062】
このような運転操作の誘導を行うことにより、運転者に対して右方向への操舵操作を促すことができる。
ここで、運転操作誘導処理において、前後方向のリスクポテンシャルRPa,RPbのいずれも閾値RPa0,RPb0以上である場合には、前後方向のうち、閾値を超えている絶対量が大きい方の制御を優先する、あるいは、いずれも制御を行わないといった方法とすることができる。
また、運転操作誘導処理において、左右方向のリスクポテンシャルRPc,RPdのいずれも閾値RPc0,RPd0以上である場合には、左右方向のうち、閾値を超えている絶対量が大きい方の制御を優先する、あるいは、いずれも制御を行わないといった方法とすることができる。
【0063】
(動作)
次に、動作を説明する。
運転操作誘導処理を実行している自動車1Aの走行中に、前後左右いずれかの方向におけるリスクポテンシャルが閾値を超えたとする。
すると、コントローラ50が、リスクポテンシャルが高くなった方向に応じて、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLを制御し、擬似的な車両の挙動を発生させる。
即ち、前方のリスクポテンシャルが高い場合、車体3を後傾させ、後方のリスクポテンシャルが高い場合、車体3を前傾させる。また、右方のリスクポテンシャルが高い場合、車体3を左にロールさせ、左方のリスクポテンシャルが高い場合、車体3を右にロールさせる。
【0064】
これにより、運転者は、自車両の状態がリスクポテンシャルが高まる方向に近づいていると感じ、リスクポテンシャルが低くなる方向への操作を行う。
即ち、運転者の運転操作を誘導することができる。
また、このとき、リスクポテンシャルが高まる方向への操作に対し、より強い操作反力を付与している。
そのため、運転者がリスクポテンシャルの高まる方向へ操作することを抑制できる。
以上のように、本実施形態に係る自動車1Aは、前後あるいは左右のリスクポテンシャルRPa、RPb,RPc,RPdが閾値以上であるか否かを判定し、リスクポテンシャルが高いと判定した方向への擬似的な車両の挙動を示すように、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLを制御する。
【0065】
そのため、現在の操作状態から、リスクポテンシャルが減少する方向への運転者による自発的な操作を促すことができる。
また、リスクポテンシャルが増加する方向への操作に対して、リスクポテンシャルに応じた反力を付与している。そのため、運転者がリスクポテンシャルの増加する方向へ操作しようとした場合に、操作が適切でないことを報知することができる。また、運転者による適切でない操作を抑制することができる。
このように、本実施形態に係る自動車1Aによれば、運転者に対し、より適切に車両の運転操作の支援を行うことができる。
【0066】
なお、本実施形態において、車速センサ30、車両状態検出器140および車体上下加速度検出器130FR,130FL,130RR,130RLが車両状態検出手段に対応する。また、カメラ9F,9R,9SR,9SLおよびコントローラ50が障害物検出手段に対応し、コントローラ50および能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLが動作制御手段および能動型のサスペンションに対応する。また、アクセルペダル7およびブレーキペダル8、ステアリングホイール5が運転操作手段に対応し、操舵反力制御装置60、アクセルペダル反力制御装置80およびブレーキペダル反力制御装置90が操作反力付与手段に対応する。また、コントローラ50がリスクポテンシャル算出手段および擬似車両挙動発生手段に対応する。
【0067】
(第1実施形態の効果)
(1)擬似車両挙動発生手段が、車両状態検出手段の検出結果およびリスクポテンシャルに基づいて、リスクポテンシャルが増大する運転操作を行った場合の車両挙動を、動作制御手段を制御することによって擬似的に発生させる。
そのため、現在の操作状態から、リスクポテンシャルが減少する方向への運転者による自発的な操作を促すことができる。
したがって、運転者にリスクポテンシャルが増大しているような感覚を与え、それを抑制する運転操作を誘導することができるため、運転者に対し、より適切に車両の運転操作の支援を行うことができる。
【0068】
(2)擬似車両挙動発生手段が、加減速操作あるいは操舵操作を行った場合に発生する車両挙動を擬似的に発生させるため、運転者に対して、それを抑制する運転操作を促すことができる。
(3)擬似車両挙動発生手段は、自車両の前後方向におけるリスクポテンシャルに対し、車体を前傾あるいは後傾させるように前記サスペンション装置を制御する。
したがって、運転者に擬似的な加速度あるいは減速度を感じさせることができる。
(4)擬似車両挙動発生手段は、自車両の左右方向におけるリスクポテンシャルに対し、車体をロールさせるようにサスペンション装置を制御する。
したがって、運転者に擬似的な旋回状態を感じさせることができる。
【0069】
(5)擬似車両挙動発生手段は、サスペンション装置のサスペンションストローク、減衰力およびばね定数と、操舵反力付与手段が操舵操作手段に付与する操舵反力と操舵操作に対して付与する操舵反力のゲインとを制御する。
そのため、車両上下方向および前後左右方向の挙動を利用して、運転者に対し、より適切に車両の運転操作の支援を行うことができる。
(6)能動型のサスペンション装置を制御することによって、擬似的な車両挙動を発生させることができるため、現在の操作状態から、リスクポテンシャルが減少する方向への運転者による自発的な操作を促すことができる。
【0070】
(7)自車両の状態と、自車両周囲の障害物の状態とに基づいて、自車両周囲に存在する障害物に対するリスクポテンシャルを算出し、算出した前記リスクポテンシャルに基づいて、前記リスクポテンシャルが増大する運転操作を行った場合の車両挙動を、前記サスペンション装置を制御することによって擬似的に発生させる車両用運転操作補助方法である。
そのため、現在の操作状態から、リスクポテンシャルが減少する方向への運転者による自発的な操作を促すことができる。
したがって、運転者に対し、より適切に車両の運転操作の支援を行うことが可能な自動車とできる。
【0071】
(8)擬似車両挙動発生手段が、車両状態検出手段の検出結果およびリスクポテンシャルに基づいて、リスクポテンシャルが増大する運転操作を行った場合の車両挙動を、サスペンション装置を制御することによって擬似的に発生させる自動車である。
そのため、現在の操作状態から、リスクポテンシャルが減少する方向への運転者による自発的な操作を促すことができる。
したがって、運転者に対し、より適切に車両の運転操作の支援を行うことが可能な自動車とできる。
【0072】
(応用例1)
第1実施形態において、自動車1Aは能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLを備え、これらのサスペンションストロークを変化させて、リスクポテンシャルに応じた車体3の傾斜を付与することとした。
これに対し、動作制御手段として異なる構成のサスペンションを用いることで、同様の制御を行ったり、運転者の操作を誘導するための異なる制御を行ったりすることができる。
例えば、インホイールモータを備える前後左右の車輪2FR,2FL,2RR,2RLそれぞれと車体3とが複数(ここでは6本)の直動型アクチュエータを介して連結された構造のサスペンションを用いることができる。
【0073】
図13は、応用例1のサスペンション構造を示す図である。
なお、本応用例1のサスペンション構造は、前後左右の駆動輪それぞれにおいて同様であるため、左前輪部分を例に挙げて説明する。
図13において、応用例1のサスペンション構造は、車体3に固定された6角形のアクチュエータ支持板1Bと、アクチュエータ支持板1Bの各頂点にボールジョイントを介してシリンダを連結されると共に、インホイールモータMにおいてアクチュエータ支持板1Bの各頂点と対向する位置に、駆動ロッドの先端をボールジョイントを介して連結されたアクチュエータ101FL〜106FLとを有する構成である。
【0074】
これら6本のアクチュエータ101FL〜106FLはパラレルメカニズムを構成しており、アクチュエータ101FL〜106FLを連動させて制御することにより、それによって支持されているホイールインモータMと駆動輪2FLを3次元的に動かすことが可能になる。
アクチュエータ支持板1Bは、車体3において鉛直からやや下方を向いた取り付け面に取り付けてある。そのため、複数の直動型アクチュエータの総合的な伸縮軸は、路面に平行な方向からやや下方に向いている。
【0075】
そのため、これら複数のアクチュエータにおける駆動ロッドの伸縮を制御することで、車体3の前部あるいは後部を上昇あるいは下降させたり、各駆動輪の転舵角、キャンバ角、トー角および車体3との距離を調整したりすることが可能である。
したがって、応用例1のサスペンション構造を用いた場合にも、図6の運転操作誘導処理を実行することができる。
また、応用例1のサスペンション構造では、4輪に対する車体3の相対的な向きを変更することができる。
そのため、車輪2FR,2FL,2RR,2RLの向きは変化させないまま、車体3の向きを変化させて、運転者の操作を促すことができる。
【0076】
具体的には、右方リスクポテンシャルRPcが閾値RPc0以上である場合に、車輪2FR,2FL,2RR,2RLの向きは変化させずに、車輪2FR,2FL,2RR,2RLに対して車体3を右方に回頭させる。
すると、運転者に対して、自車両が右方に向かっていると言う感覚を与えることができる。
そして、運転者が左方向に操舵を行うと、右方リスクポテンシャルRPcが減少する。
したがって、第1実施形態の誘導形態に加えて、他の形態で運転者に対する運転操作の誘導を行うことができる。
【0077】
(応用例2)
第1実施形態において、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLによって、車体3の挙動を制御するものとして説明したが、運転席シートの制御を行うことによっても、運転者の運転操作を誘導することができる。
即ち、応用例2の自動車1Aは、運転席シートの複数(例えば4本)の脚に、シートレッグ長を変化させることが可能なアクチュエータを備える。
そして、これらのアクチュエータによってシートレッグ長をそれぞれ変化させ、運転席シートを車体3に対して前傾あるいは後傾させたり、運転席シートを車体3に対して右あるいは左に傾けたりする。
【0078】
これにより、第1実施形態と同様に、運転者に減速あるいは加速しているような感覚、右旋回あるいは左旋回しているような感覚を与えることができ、運転者の運転操作を誘導することが可能となる。
また、このような運転席シートの構成を備えることにより、実際の車両挙動によって、車体が前傾あるいは後傾したり、左右にロールしたりする場合に、それらと反対方向に運転席シートを傾ける制御を行うことができる。
これにより、運転者は操舵操作を行いやすくなり、運転者の操舵操作を補助することができる。
なお、本応用例においては、シートレッグ長を変化させることが可能な運転席シートが動作制御手段を構成する。
【0079】
(応用例3)
応用例2における運転席シートの傾斜制御と、第1実施形態における車体3の傾斜制御とを組み合わせて実行することができる。
即ち、運転者の前方注視点を自車両に近づけると、同一の車速でも運転者はより速度が高いと感じる。
そのため、これを利用して、運転者に減速操作を促す場合に、車体3を後傾させ、運転席シートを前傾させる。
このような制御を行うことで、運転者に対し、車体3から加速感を与え、運転席シートから高速感を与えることができるため、運転操作の誘導効果(減速操作の促進効果)を高めることができる。
【0080】
(応用例4)
リスクポテンシャルが高まっていることを運転者に伝え、運転操作を促すために、車載スピーカから発する音を用いることも可能である。
例えば、自車両の後方スピーカから他車両の走行音を出力し、後方から車両が近づいている感覚を運転者に与えることができる。
【0081】
(応用例5)
第1実施形態においては、車両左右方向について、左右方向のリスクポテンシャルRPc,RPdを算出し、それに応じて、能動型サスペンションのサスペンションストローク(ロール傾斜角)を変化させると共に、操舵反力を増加させる場合を例に挙げて説明した。
これに対し、本応用例では、車両左右方向のリスクポテンシャルに応じて、操舵反力、および能動型サスペンションのサスペンションストローク(ロール傾斜角)を変化させる際、操舵反力を付与するリスクポテンシャルの閾値、およびロール傾斜角を付与するリスクポテンシャルの閾値を、それぞれ個別に設定する。また、操舵反力の付与、および能動型サスペンションのサスペンションストロークの変化を中断するリスクポテンシャルの閾値を設定する。
【0082】
図14は、本応用例において、コントローラ50が実行する運転操作誘導処理を示すフローチャートである。また、図15〜18は、図14に示す運転操作誘導処理において実行される第1〜第4のサブフローを示す図である。
図14において、運転操作誘導処理を開始すると、コントローラ50は、リスクポテンシャル算出処理において算出した前後および左右方向のリスクポテンシャルRPa,RPb,RPc,RPdを取得する(ステップT10)。
次に、コントローラ50は、ステップT1において取得した前方リスクポテンシャルRPaに応じて、運転操作誘導処理の第1のサブフローを実行する(ステップT20)。
【0083】
ステップT20において、コントローラ50は、例えば、図15に示すように、まず、前方リスクポテンシャルRPaが閾値RPa0以上であるか否かの判定を行う(ステップT21)。ステップT21において、前方リスクポテンシャルRPaが閾値RPa0以上であると判定した場合、コントローラ50は、第1実施形態と同様に、アクセルペダル反力を前方リスクポテンシャルRPaに応じて増加させる(ステップT22)。また、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4FLのサスペンションストロークを前方リスクポテンシャルRPaに応じて変化させる(ステップT23)。ステップS203の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理に戻る。一方、ステップT21において、前方リスクポテンシャルRPaが閾値RPa未満であると判定した場合、コントローラ50は、運転操作誘導処理に戻る。
【0084】
また、コントローラ50は、ステップT10において取得した後方リスクポテンシャルRPbに応じて、運転操作誘導処理の第2のサブフローを実行する(ステップT30)。
ステップT30において、コントローラ50は、例えば、図16に示すように、まず、後方リスクポテンシャルRPbが閾値RPb0以上であるか否かの判定を行う(ステップT31)。ステップT31において、後方リスクポテンシャルRPbが閾値RPb0以上であると判定した場合コントローラ50は、第1実施形態と同様に、能動型サスペンション4RR,4RLのサスペンションストロークを後方リスクポテンシャルRPbに応じて変化させる(ステップT32)。ステップT32の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理に戻る。一方、ステップT31において、後方リスクポテンシャルRPbが閾値RPb0未満であると判定した場合、コントローラ50は、運転操作誘導処理に戻る。
【0085】
また、コントローラ50は、ステップT10において取得した右方リスクポテンシャルRPcに応じて、運転操作誘導処理の第3のサブフローを実行する(ステップT40)。
ステップT40において、コントローラ50は、例えば、図17に示すように、まず、右方リスクポテンシャルRPcが第1の閾値RPc0以上であるか否かの判定を行う(ステップT41)。ステップT41において、右方リスクポテンシャルRPcが第1の閾値RPc0以上であると判定した場合、コントローラ50は、右方リスクポテンシャルRPcが第3の閾値RPc2以下であるか否かの判定を行う(ステップT42)。ステップT42において、右方リスクポテンシャルRPcが第3の閾値RPc2未満であると判定した場合、コントローラ50は、右方リスクポテンシャルRPcに応じて、操舵反力を増加させる(ステップT43)。
【0086】
ここで、本応用例では、例えば、図19に示すように、操舵反力を発生させる第1の閾値RPc0と、サスペンションストロークを変化させる第2の閾値RPc1を、それぞれ個別に設定する。
これにより、ステップT43に続いて、コントローラ50は、右方リスクポテンシャルRPcが第2の閾値RPc1以上であるか否かの判定を行い(ステップT44)、右方リスクポテンシャルRPcが比較的小さい場合、即ち、右方リスクポテンシャルRPcが第2の閾値RPc1未満である場合においては、操舵反力のみを発生させる。
【0087】
一方、ステップT44において、右方リスクポテンシャルRPcが比較的大きい第2の閾値RPc1以上の場合、即ち、右方リスクポテンシャルRPcが第2の閾値以上である場合においては、操舵反力に加えてロール傾斜角を発生させる(ステップT45)。
これにより、右方リスクポテンシャルの増加を、違和感なく、よりわかり易く運転者に伝えることができ、より適切に車両の運転操作の支援を行うことができる。
【0088】
また、このように、操舵反力、およびサスペンションストロークを変化させる右方リスクポテンシャルについて上限値(第3の閾値RPc2)を設定することにより、路面に設置されたレーンマーカー等、接触しない対象物であると推定される、右方向のリスクポテンシャルに対しては、運転操作誘導処理の実行に制限を設け、運転者の操作性(オーバーライド性)を確保すると共に、レーンマーカーを乗り越えるように違和感なくリスクポテンシャルの増加を感じさせることができる。そのため、より適切に車両の運転操作の支援を行うことができる。
【0089】
ステップT41において、右方リスクポテンシャルRPcが第1の閾値RPc未満であると判定した場合、および、ステップT42において、右方リスクポテンシャルRPcが第3の閾値以上であると判定した場合、コントローラ50は、運転操作誘導処理に戻る。また、ステップT44において、右方リスクポテンシャルRPcが第2の閾値未満であると判定した場合、および、ステップT45の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理に戻る。
【0090】
また、コントローラ50は、ステップT10において取得した左方リスクポテンシャルRPdに応じて、運転操作誘導処理の第4のサブフローを実行する(ステップT50)。
ステップT50において、コントローラ50は、例えば、図18に示すように、まず、左方リスクポテンシャルRPdが第1の閾値RPd0以上であるか否かの判定を行う(ステップT51)。ステップT51において、左方リスクポテンシャルRPdが第1の閾値RPd0以上であると判定した場合、コントローラ50は、左方リスクポテンシャルRPdが第3の閾値RPd2以下であるか否かの判定を行う(ステップT52)。ステップT52において、左方リスクポテンシャルRPdが第3の閾値RPd2未満であると判定した場合、コントローラ50は、左方リスクポテンシャルRPdに応じて、操舵反力を増加させる(ステップT53)。
【0091】
ここで、本応用例では、右方リスクポテンシャルRPcにおける場合と同様、操舵反力を発生させる第1の閾値RPd0と、サスペンションストロークを変化させる第2の閾値RPd1を、それぞれ個別に設定する。
これにより、ステップT53に続いて、コントローラ50は、左方リスクポテンシャルRPdが第2の閾値RPd1以上であるか否かの判定を行い(ステップT54)、左方リスクポテンシャルRPdが比較的小さい場合、即ち、左方リスクポテンシャルRPdが第2の閾値RPd1未満である場合においては、操舵反力のみを発生させる。
【0092】
一方、ステップT54において、左方リスクポテンシャルRPdが比較的大きい第2の閾値RPd1以上の場合、即ち、左方リスクポテンシャルRPdが第2の閾値RPd1以上である場合においては、操舵反力に加えてロール傾斜角を発生させる(ステップT55)。
これにより、左方リスクポテンシャルの増加を、違和感なく、よりわかり易く運転者に伝えることができ、より適切に車両の運転操作の支援を行うことができる。
【0093】
また、このように、操舵反力、およびサスペンションストロークを変化させる左方リスクポテンシャルについて上限値(第3の閾値RPd2)を設定することにより、路面に設置されたレーンマーカー等、接触しない対象物であると推定される、左方向のリスクポテンシャルに対しては、運転操作誘導処理の実行に制限を設け、運転者の操作性(オーバーライド性)を確保すると共に、レーンマーカーを乗り越えるように違和感なくリスクポテンシャルの増加を感じさせることができる。そのため、より適切に車両の運転操作の支援を行うことができる。
【0094】
ステップT51において、左方リスクポテンシャルRPdが第1の閾値RPc未満であると判定した場合、および、ステップT52において、左方リスクポテンシャルRPdが第3の閾値以上であると判定した場合、コントローラ50は、運転操作誘導処理に戻る。また、ステップT54において、左方リスクポテンシャルRPdが第2の閾値未満であると判定した場合、および、ステップT55の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理に戻る。
なお、本応用例において、第1の閾値RPc0あるいはRPd0が特許請求の範囲における第1の閾値に対応し、第2の閾値RPc1あるいはRPd1が特許請求の範囲における第2の閾値に対応する。
【0095】
(効果)
操舵反力を付与するための左右方向のリスクポテンシャルの閾値と、擬似的な車両挙動を発生させるための左右方向のリスクポテンシャルの閾値とを個別に設定することとしたため、車両の走行状態に応じて、操舵反力と擬似的な車両挙動とを適確なタイミングで発生させることができる。そのため、より適切に車両の運転操作の支援を行うことができる。
【0096】
(応用例6)
第1実施形態においては、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLによって、擬似的な車両の挙動を示す場合を例に挙げて説明した。
これに対し、本応用例においては、異なる構成のサスペンションを用いて、左右方向のリスクポテンシャルに応じた擬似的な車両挙動を示すものである。
具体的には、動作制御手段として、スタビライザリンク長を可変なスタビライザを備えるサスペンションを用い、スタビライザリンク長を制御することにより、運転者の運転操作を誘導するものである。例えば、スタビライザとサスペンションロアアームを連結するスタビライザリンクに、リンク長を変化させることのできる油圧シリンダを設置し、これを伸縮させてロール傾斜角を制御することにより、車体3の傾斜を付与する。
【0097】
図20は、本応用例のサスペンション構造を示す図である。なお、図20は、車両後方から見たサスペンション構造を示している。
図20において、アクチュエータ803は、中央部分が車体3に固定されたスタビライザ801に連結され、サスペンションロアアーム802との間のリンク長を伸縮することが可能である。そして、左右のアクチュエータ803におけるアクチュエータストローク長の左右差で、自動車1Aのロール傾斜角を制御する。
【0098】
なお、アクチュエータ803は、自動車1Aの前軸および後軸それぞれに取り付けられており、合計4つのアクチュエータ(以下、適宜、前右:803FR、前左:803FL、後右:803RR、後左:803RLと称する。)から構成されている。
図21は、右方リスクポテンシャルRPcが高い場合に付与されるスタビライザリンク長の特性を示す図であり、図21(a)は、第1の特性例を示し、図21(b)は、第2の特性例を示している。
【0099】
右方リスクポテンシャルRPcが閾値RPc0以上の場合、例えば、図21(a)の第1の特性例として示すように、右側スタビライザリンク長を中立位置から右方リスクポテンシャルRPcに応じて大きくする。
これにより、ロール傾斜角(左ロール)が発生し、運転者に対して、右方のリスクポテンシャルが高まっていることを報知することができ、左方向への操舵操作を促すことができる。
【0100】
また、右方リスクポテンシャルRPcが閾値RPc0以上の場合、図21(b)の第2の特性例として示すように、右側スタビライザリンク長を大きくするのと併せ、左側スタビライザリンク長を中立位置から右方リスクポテンシャルRPcに応じて小さくすることにより、アクチュエータの変化幅を小さくしつつ、ロール傾斜角を効果的に発生させることもできる。
なお、本サスペンション構造を、後述する第2実施形態に適用し、左右リスクポテンシャルに応じた振動を発生させることも可能である。
このようなサスペンション構造の場合にも、現在の操作状態から、リスクポテンシャルが減少する方向への運転者による自発的な操作を促すことができ、運転者に対し、より適切に車両の運転操作の支援を行うことができる。
【0101】
(効果)
擬似車両挙動発生手段が、車両状態検出手段の検出結果およびリスクポテンシャルに基づいて、リスクポテンシャルが増大する運転操作を行った場合の車両挙動を、スタビライザリンク長を制御することによって擬似的に発生させる。
そのため、現在の操作状態から、リスクポテンシャルが減少する方向への運転者による自発的な操作を促すことができる。
したがって、運転者にリスクポテンシャルが増大しているような感覚を与え、それを抑制する運転操作を誘導することができるため、運転者に対し、より適切に車両の運転操作の支援を行うことができる。
【0102】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
本実施形態では、第1実施形態における場合と運転操作誘導処理を異なるものとしている。
したがって、自動車1Aの構成については、第1実施形態を参照することとし、運転操作誘導処理について説明する。
【0103】
(運転操作誘導処理)
図22は、コントローラ50が実行する運転操作誘導処理を示すフローチャートである。
コントローラ50は、運転者の指示入力に応じて運転操作誘導処理の実行を開始する。
図22において、運転操作誘導処理を開始すると、コントローラ50は、リスクポテンシャル算出処理において算出した前後および左右方向のリスクポテンシャルRPa,RPb,RPc,RPdを取得する(ステップP201)。
次に、コントローラ50は、ステップP201において取得した前後および左右方向のリスクポテンシャルRPa,RPb,RPc,RPdが、それぞれについて設定された閾値RPa0,RPb0,RPc0,RPd0以上であるか否かの判定を行う(ステップP202)。
【0104】
ステップP202において、前後および左右方向のリスクポテンシャルRPa、RPb,RPc,RPdのいずれも、それぞれについて設定された閾値RPa0,RPb0,RPc0,RPd0を超えていないと判定した場合、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
また、ステップP202において、前方リスクポテンシャルRPaが閾値RPa0以上であると判定した場合、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4FLのサスペンションストロークを前方リスクポテンシャルRPaに応じた振幅で振動させる(ステップP203)。また、ステップP203において、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4FLのサスペンションストロークを、第1実施形態と同様に、前方リスクポテンシャルRPaに応じて変化させる。さらに、ステップP203において、コントローラ50は、アクセルペダル7の操作反力を前方リスクポテンシャルRPaに応じて増加させる。
ステッP203の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
【0105】
図23は、前方リスクポテンシャルRPaが高い場合の制御動作を示す模式図である。
また、図24は、前方リスクポテンシャルRPaが高い場合に付与されるアクセルペダル反力およびサスペンションストロークの振動の特性を示す図である。
なお、図23においては、サスペンションストロークの振動を表す模式図を示しており、第1実施形態におけるサスペンションストロークの増加分は図示していない。以下、図25、図27において同様である。
【0106】
図23および図24において、前方リスクポテンシャルRPaが閾値RPa0より高い場合、図24(a)に示すように、アクセルペダル反力が前方リスクポテンシャルRPaに応じて強くなり、アクセルペダル7を踏み増しにくい状態となる。また、図23に示すように、能動型サスペンション4FR,4FLのサスペンションストロークが前方リスクポテンシャルRPaに応じた振幅で振動する。これにより、運転者に対して、自動車1Aのいずれの方向においてリスクポテンシャルが高まっているかを報知することができる。また、このとき、図24(b)に示すように、能動型サスペンション4FR,4FLのサスペンションストロークの振幅は、前方リスクポテンシャルRPaに応じて大きくなり、運転者に対して、前方リスクポテンシャルRPaが大きいほど、より強い振動を伝えることができる。さらに、能動型サスペンション4FR,4FLのサスペンションストロークを、第1実施形態と同様に、前方リスクポテンシャルRPaに応じて変化させる。これにより、運転者に対して、自動車1Aが加速しているような感覚を与えることができる。
【0107】
このような運転操作の誘導を行うことにより、運転者に対して減速操作を促すことができる。
そして、運転者が減速操作を行うと、前方リスクポテンシャルRPaが減少し、ステップP203における運転操作の誘導が停止される。
また、ステップP202において、後方リスクポテンシャルRPbが閾値RPb0以上であると判定した場合、コントローラ50は、能動型サスペンション4RR,4RLのサスペンションストロークを前方リスクポテンシャルRPbに応じた振幅で振動させる(ステップP204)。また、ステップP204において、コントローラ50は、能動型サスペンション4RR,4RLのサスペンションストロークを、第1実施形態と同様に、前方リスクポテンシャルRPbに応じて変化させる。
ステッP204の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
【0108】
図25は、後方リスクポテンシャルRPbが高い場合の制御動作を示す模式図である。
また、図26は、後方リスクポテンシャルRPbが高い場合に付与されるサスペンションストロークの振動の特性を示す図である。
図25および図26において、後方リスクポテンシャルRPaが閾値RPb0より高い場合、図26に示すように、能動型サスペンション4RR,4RLのサスペンションストロークが後方リスクポテンシャルRPbに応じた振幅で振動する。これにより、運転者に対して、自動車1Aのいずれの方向においてリスクポテンシャルが高まっているかを報知することができる。また、このとき、図26に示すように、能動型サスペンション4RR,4RLのサスペンションストロークの振幅は、後方リスクポテンシャルRPbに応じて大きくなり、運転者に対して、後方リスクポテンシャルRPbが大きいほど、より強い振動を伝えることができる。さらに、能動型サスペンション4RR,4RLのサスペンションストロークを、第1実施形態と同様に、後方リスクポテンシャルRPbに応じて変化させる。これにより、運転者に対して、自動車1Aが減速しているような感覚を与えることができる。
【0109】
このような運転操作の誘導を行うことにより、運転者に対して加速操作を促すことができる。
そして、運転者が加速操作を行うと、前方リスクポテンシャルRPbが減少し、ステップP204における運転操作の誘導が停止される。
また、ステップP202において、右方リスクポテンシャルRPcが閾値RPc0以上であると判定した場合、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4RRのサスペンションストロークを右方リスクポテンシャルRPcに応じた振幅で振動させる(ステップP205)。また、ステップP205において、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4RRのサスペンションストロークを、第1実施形態と同様に、右方リスクポテンシャルRPcに応じて変化させる。
【0110】
ステッP204の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
また、ステップP202において、左方リスクポテンシャルRPdが閾値RPd0以上であると判定した場合、コントローラ50は、能動型サスペンション4FL,4RLのサスペンションストロークを左方リスクポテンシャルRPdに応じた振幅で振動させる(ステップP206)。また、ステップP206において、コントローラ50は、能動型サスペンション4FL,4RLのサスペンションストロークを、第1実施形態と同様に、右方リスクポテンシャルRPdに応じて変化させる。
ステッP206の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
【0111】
図27は、右方リスクポテンシャルRPcあるいは左方リスクポテンシャルRPdが高い場合の制御動作を示す模式図である。なお、図27においては、車両を後方から見た図を示しており、右方リスクポテンシャルRPcが高い場合を例に挙げている。
また、図28は、右方リスクポテンシャルRPcあるいは左方リスクポテンシャルRPdが高い場合に付与される操舵反力およびサスペンションストロークの振動の特性を示す図である。
【0112】
図27および図28において、右方リスクポテンシャルRPcが閾値RPc0より高い場合、図28(a)に示すように、操舵反力が右方リスクポテンシャルRPcに応じて強くなり、右方向への操舵を切り増しにくい状態となる。また、図27に示すように、能動型サスペンション4FR,4RRのサスペンションストロークが右方リスクポテンシャルRPcに応じた振幅で振動する。これにより、運転者に対して、自動車1Aのいずれの方向においてリスクポテンシャルが高まっているかを報知することができる。この場合、運転者に擬似的な凹凸を感じさせることができる。また、このとき、図28(b)に示すように、能動型サスペンション4FR,4RRのサスペンションストロークの振幅は、右方リスクポテンシャルRPcに応じて大きくなり、運転者に対して、右方リスクポテンシャルRPcが大きいほど、より強い振動を伝えることができる。さらに、能動型サスペンション4FR,4RRのサスペンションストロークを、第1実施形態と同様に、右方リスクポテンシャルRPcに応じて変化させる。これにより、運転者に対して、自動車1Aが右旋回して車体3が左にロールしているような感覚を与えることができる。
【0113】
このような運転操作の誘導を行うことにより、運転者に対して左方向への操舵操作を促すことができる。
そして、運転者が減速操作を行うと、右方リスクポテンシャルRPcが減少し、ステップP205における運転操作の誘導が停止される。
同様に、左方リスクポテンシャルRPdが高い場合には、操舵反力が左方リスクポテンシャルRPdに応じて強くなり、左方向への操舵を切り増しにくい状態となる。また、能動型サスペンション4FL,4RLのサスペンションストロークが左方リスクポテンシャルRPdに応じた振幅で振動する。これにより、運転者に対して、自動車1Aのいずれの方向においてリスクポテンシャルが高まっているかを報知することができる。また、このとき、能動型サスペンション4FL,4RLのサスペンションストロークの振幅は、左方リスクポテンシャルRPdに応じて大きくなり、運転者に対して、左方リスクポテンシャルRPdが大きいほど、より強い振動を伝えることができる。さらに、能動型サスペンション4FL,4RLのサスペンションストロークを、第1実施形態と同様に、左方リスクポテンシャルRPdに応じて変化させる。これにより、運転者に対して、自動車1Aが左旋回して車体3が右にロールしているような感覚を与えることができる。
【0114】
このような運転操作の誘導を行うことにより、運転者に対して右方向への操舵操作を促すことができる。
ここで、運転操作誘導処理において、前後方向のリスクポテンシャルRPa,RPbのいずれも閾値RPa0,RPb0以上である場合には、前後方向のうち、閾値を超えている絶対量が大きい方の制御を優先する、あるいは、いずれも制御を行わないといった方法とすることができる。
また、運転操作誘導処理において、左右方向のリスクポテンシャルRPc,RPdのいずれも閾値RPc0,RPd0以上である場合には、左右方向のうち、閾値を超えている絶対量が大きい方の制御を優先する、あるいは、いずれも制御を行わないといった方法とすることができる。
【0115】
(動作)
次に、動作を説明する。
運転操作誘導処理を実行している自動車1Aの走行中に、前後左右いずれかの方向におけるリスクポテンシャルが閾値を超えたとする。
すると、コントローラ50が、リスクポテンシャルが高くなった方向に応じて、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLを制御し、サスペンションストロークの振動および擬似的な車両の挙動を発生させる。
【0116】
即ち、前方のリスクポテンシャルが高い場合、車体3を後傾させて前輪のサスペンションストロークを振動させ、後方のリスクポテンシャルが高い場合、車体3を前傾させて後輪のサスペンションストロークを振動させる。また、右方のリスクポテンシャルが高い場合、車体3を左にロールさせて右前輪および右後輪のサスペンションストロークを振動させ、左方のリスクポテンシャルが高い場合、車体3を右にロールさせて左前輪および左後輪のサスペンションストロークを振動させる。
【0117】
これにより、運転者は、自車両の状態がリスクポテンシャルが高まる方向に近づいている(例えば、凹凸のある白線を踏んでいる)と感じ、リスクポテンシャルが低くなる方向への操作を行う。また、サスペンションの振動位置から、リスクポテンシャルが高い方向を認識できる。
また、このとき、リスクポテンシャルの大きさに応じたサスペンションストロークの振動としている。
これにより、運転者は、リスクポテンシャルの大きさを認識することができる。
即ち、運転者の運転操作を誘導することができる。
また、このとき、リスクポテンシャルが高まる方向への操作に対し、より強い操作反力を付与している。
そのため、運転者がリスクポテンシャルの高まる方向へ操作することを抑制できる。
【0118】
以上のように、本実施形態に係る自動車1Aは、前後あるいは左右のリスクポテンシャルRPa、RPb,RPc,RPdが閾値以上であるか否かを判定し、リスクポテンシャルが高いと判定した方向への擬似的な車両の挙動を示すように、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLを制御する。
そのため、現在の操作状態から、リスクポテンシャルが減少する方向への運転者による自発的な操作を促すことができる。
【0119】
また、リスクポテンシャルが高いと判定した方向のサスペンションストロークを、リスクポテンシャルに対応する振幅で振動させる。
そのため、運転者は、リスクポテンシャルが高い方向とその大きさを認識できる。
また、リスクポテンシャルが増加する方向への操作に対して、リスクポテンシャルに応じた反力を付与している。そのため、運転者がリスクポテンシャルの増加する方向へ操作しようとした場合に、操作が適切でないことを報知することができる。また、運転者による適切でない操作を抑制することができる。
このように、本実施形態に係る自動車1Aによれば、運転者に対し、より適切に車両の運転操作の支援を行うことができる。
【0120】
(第2実施形態の効果)
(1)擬似車両挙動発生手段が、リスクポテンシャルに基づいて、障害物が存在する側の車体を振動させるため、障害物の存在方向を運転者に理解しやすい形態で知らせることができる。
(2)擬似車両挙動発生手段は、自車両の前後方向における前記リスクポテンシャルに対し、前輪または後輪いずれかのサスペンション装置に振動を発生させる制御を行う。
したがって、運転者は、リスクポテンシャルが高い方向とその大きさを認識できる。
(3)擬似車両挙動発生手段は、自車両の左右方向におけるリスクポテンシャルに対し、左右輪いずれかのサスペンション装置に振動を発生させる制御を行う。
したがって、運転者に擬似的な凹凸を感じさせることができる。
【0121】
(応用例1)
第2実施形態においては、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLによって、リスクポテンシャルが高いと判定した方向のサスペンションストロークを振動させる場合を例に挙げて説明した。
これに対し、本応用例では、制御型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLのサスペンションストロークを振動させる代わりに、運転席シートの制御を行うことにより、運転者の運転操作を誘導するものである。
【0122】
具体的には、本応用例においては、運転席シートの複数の脚(例えば4本)に、シートレッグ長を変化させることが可能なアクチュエータ(制御型のサスペンション)を備える。
そして、これらのアクチュエータ(それぞれ、前右:700FR、前左:700FL、後右:700RR、後左:700RLとする。)によって、シートレッグ長を、リスクポテンシャルRPに応じた振幅で、それぞれ振動させる。
【0123】
図29は、本応用例において、コントローラ50が実行する運転操作誘導処理を示すフローチャートである。
コントローラ50は、運転者の指示入力に応じて情報伝達制御処理の実行を開始する。
図29において、運転操作誘導処理を開始すると、コントローラ50は、リスクポテンシャル算出処理において算出した前後および左右方向のリスクポテンシャルRPa,RPb,RPc,RPdを取得する(ステップT110)。
次に、コントローラ50は、ステップT110において取得した前後および左右方向のリスクポテンシャルRPa,RPb,RPc,RPdが、それぞれについて設定された閾値RPa0,RPb0,RPc0,RPd0を超えているか否かの判定を行う(ステップT120)。
【0124】
ステップT120において、前後および左右方向のリスクポテンシャルRPa,RPb,RPc,RPdのいずれも、それぞれ設定された閾値RPa0,RPb0,RPc0,RPd0を超えていないと判定した場合、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
また、ステップT120において、前方リスクポテンシャルRPaが閾値RPa0を超えていると判定した場合、コントローラ50は、アクチュエータ700FR,700FLにより、前方シートレッグ長を前方リスクポテンシャルRPaに応じた振幅で振動させる(ステップT130)。
【0125】
また、第1実施形態の応用例2と同様に、コントローラ50は、前方シートレッグ長を変化させ、運転席シートを車体3に対して後傾させる。さらに、コントローラ50は、アクセルペダルの操作反力を前方リスクポテンシャルRPaに応じて増加させる。
つまり、アクセルペダル反力が前方リスクポテンシャルRPaに応じて強くなり、アクセルペダルを踏み増しにくい状態になると共に、運転席シートの前方シートレッグ長が前方リスクポテンシャルRPaに応じた振幅で振動する。これにより、運転者に対して、前方のリスクポテンシャルが高まっていることを報知することができ、減速操作を促すことができる。
【0126】
そして、運転者が減速操作を行うと、前方リスクポテンシャルRPaが減少し、運転操作の誘導が停止される。
ステップT130の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
また、ステップT120において、後方リスクポテンシャルRPbが閾値RPb0を超えていると判定した場合、コントローラ50は、アクチュエータ700RR,700RLにより、後方シートレッグ長を後方リスクポテンシャルRPbに応じた振幅で振動させる(ステップT140)。
【0127】
また、第1実施形態の応用例2と同様に、コントローラ50は、後方シートレッグ長を変化させ、運転席シートを車体3に対して前傾させる。これにより、運転者に対して加速操作を促すことができる。
そして、運転者が加速操作を行うと、後方リスクポテンシャルRPbが減少し、運転操作の誘導が停止される。
ステップT140の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
また、ステップT120において、右方リスクポテンシャルRPcが閾値RPc0を超えていると判定した場合、アクチュエータ700FR,700RRにより、右方シートレッグ長を右方リスクポテンシャルRPcに応じた振幅で振動させる(ステップT150)。
【0128】
また、第1実施形態の応用例2と同様に、コントローラ50は、右方シートレッグ長を変化させ、運転席シートを車体3に対して左ロールさせる。さらに、コントローラ50は、操舵反力を右方リスクポテンシャルRPcに応じて増加させる。
つまり、操舵反力が右方リスクポテンシャルRPcに応じて強くなり、右方向への操舵を切り増しにくい状態になると共に、運転席シートの右方シートレッグ長が右方リスクポテンシャルRPcに応じた振幅で振動する。これにより、運転者に対して、右方のリスクポテンシャルが高まっていることを報知することができ、左方向への操舵操作を促すことができる。
【0129】
そして、運転者が操舵操作を行うと、右方リスクポテンシャルRPcが減少し、運転操作の誘導が停止される。
ステップT150の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
また、ステップT120において、左方リスクポテンシャルRPdが閾値RPd0を超えていると判定した場合、アクチュエータ700FL,700RLにより、左方シートレッグ長を左方リスクポテンシャルRPdに応じた振幅で振動させる(ステップT160)。
【0130】
また、第1実施形態の応用例2と同様に、コントローラ50は、左方シートレッグ長を変化させ、運転席シートを車体3に対して右ロールさせる。さらに、コントローラ50は、操舵反力を左方リスクポテンシャルRPdに応じて増加させる。
つまり、操舵反力が左方リスクポテンシャルRPdに応じて強くなり、左方向への操舵を切り増しにくい状態になると共に、運転席シートの左方シートレッグ長が左方リスクポテンシャルRPdに応じた振幅で振動する。これにより、運転者に対して、左方のリスクポテンシャルが高まっていることを報知することができ、右方向への操舵操作を促すことができる。
【0131】
そして、運転者が操舵操作を行うと、左方リスクポテンシャルRPdが減少し、運転操作の誘導が停止される。
ステップT160の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
このように、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLに代えて、運転席シートに設置したアクチュエータ700FR,700FL,700RR,700RLを振動させることによって、前後左右方向のリスクポテンシャルを運転者に伝達することができる。
なお、本応用例において、アクチュエータ700FR,700FL,700RR,700RLを備える運転席シートが動作制御手段に対応する。
【0132】
(効果)
擬似車両挙動発生手段が、車両状態検出手段の検出結果およびリスクポテンシャルに基づいて、リスクポテンシャルが増大する運転操作を行った場合の車両挙動を、動作制御手段を制御することによって擬似的に発生させる。
そのため、現在の操作状態から、リスクポテンシャルが減少する方向への運転者による自発的な操作を促すことができる。
【0133】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
本実施形態では、第1実施形態における場合と運転操作誘導処理を異なるものとしている。
したがって、自動車1Aの構成については、第1実施形態を参照することとし、運転操作誘導処理について説明する。
【0134】
(運転操作誘導処理)
図30は、コントローラ50が実行する運転操作誘導処理を示すフローチャートである。
コントローラ50は、運転者の指示入力に応じて運転操作誘導処理の実行を開始する。
図30において、運転操作誘導処理を開始すると、コントローラ50は、リスクポテンシャル算出処理において算出した前方リスクポテンシャルRPaを取得する(ステップP301)。
次に、コントローラ50は、ステップP301において取得した前方リスクポテンシャルRPaが、前方リスクポテンシャルRPaについて設定された閾値RPa0以上であるか否かの判定を行う(ステップP302)。
【0135】
ステップP302において、前方リスクポテンシャルRPaが、設定された閾値RPa0を超えていないと判定した場合、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
また、ステップP302において、前方リスクポテンシャルRPaが閾値RPa0以上であると判定した場合、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4RRのサスペンションストロークと、能動型サスペンション4FL,4RLのサスペンションストロークとを、交互に振動させ、車体3を前方リスクポテンシャルRPaに応じたロール角で揺動させる(ステップP303)。また、ステップP303において、コントローラ50は、アクセルペダル7の操作反力を前方リスクポテンシャルRPaに応じて増加させる。
ステッP303の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
【0136】
図31は、前方リスクポテンシャルRPaが高い場合の制御動作を示す模式図である。
また、図32は、前方リスクポテンシャルRPaが高い場合に付与されるアクセルペダル反力および車体3の揺動ロール角の特性を示す図である。
図31および図32において、前方リスクポテンシャルRPaが閾値RPa0より高い場合、図32(a)に示すように、アクセルペダル反力が前方リスクポテンシャルRPaに応じて強くなり、アクセルペダル7を踏み増しにくい状態となる。また、図31に示すように、能動型サスペンション4FR,4RRおよび能動型サスペンション4FL,4RLのサスペンションストロークが交互に振動し、前方リスクポテンシャルRPaに応じたロール角で車体3が揺動する。これにより、運転者に対して、自動車1Aが不安定な状態となっているような感覚を与えることができる。また、このとき、図32(b)に示すように、車体3の揺動ロール角は、前方リスクポテンシャルRPaに応じて大きくなり、運転者に対して、前方リスクポテンシャルRPaが大きいほど、より不安定となっているような感覚を与えることができる。
このような運転操作の誘導を行うことにより、運転者に対して減速操作を促すことができる。
そして、運転者が減速操作を行うと、前方リスクポテンシャルRPaが減少し、ステップP303における運転操作の誘導が停止される。
【0137】
(動作)
次に、動作を説明する。
運転操作誘導処理を実行している自動車1Aの走行中に、前方におけるリスクポテンシャルが閾値を超えたとする。
すると、コントローラ50が、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLを制御し、擬似的な車両の挙動を発生させる。
即ち、前方リスクポテンシャルRPaの大きさに応じたロール角で車体3を揺動させる。
これにより、運転者は、自車両が不安定な状態になっていると感じ、減速操作を行う。
即ち、運転者の運転操作を誘導することができる。
また、このとき、アクセルペダル7の操作に対し、より強い操作反力を付与している。
そのため、運転者が加速操作を行うことを抑制できる。
【0138】
以上のように、本実施形態に係る自動車1Aは、前方リスクポテンシャルRPaが閾値以上であるか否かを判定し、前方リスクポテンシャルが高いと判定した場合には、擬似的に車両が不安定な挙動を示すように、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLを制御する。
そのため、現在の操作状態から、リスクポテンシャルが減少する方向への運転者による自発的な操作(減速操作)を促すことができる。
【0139】
また、リスクポテンシャルが増加するアクセルペダル7の操作に対して、リスクポテンシャルに応じた反力を付与している。そのため、運転者がリスクポテンシャルの増加する方向へ操作しようとした場合に、操作が適切でないことを報知することができる。また、運転者による適切でない操作を抑制することができる。
このように、本実施形態に係る自動車1Aによれば、運転者に対し、より適切に車両の運転操作の支援を行うことができる。
【0140】
(第3実施形態の効果)
(1)擬似車両挙動発生手段は、自車両の前方における前記リスクポテンシャルに対し、前記サスペンション装置に車体のロールによる揺動を発生させる制御を行う。
したがって、運転者に対し、擬似的に車両が不安定な状態になったと感じさせることができる。
【0141】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。
本実施形態では、第1実施形態における場合と運転操作誘導処理を異なるものとしている。
したがって、自動車1Aの構成については、第1実施形態を参照することとし、運転操作誘導処理について説明する。
図33は、コントローラ50が実行する運転操作誘導処理を示すフローチャートである。
コントローラ50は、運転者の指示入力に応じて運転操作誘導処理の実行を開始する。
図33に示す運転操作誘導処理において、ステップP401〜ステップP403以外のステップについては、図6に示す第1実施形態の運転操作誘導処理における各ステップと同様である。
したがって、図6と同様のステップについては、同一の番号を付すこととし、ここでは異なる部分であるステップP401〜ステップP403について説明する。
【0142】
図33のステップP102において、前方リスクポテンシャルRPaが閾値RPa0以上であると判定した場合、コントローラ50は、車速が設定した閾値(例えば80km/h)以上であるか否かの判定を行う(ステップP401)。
ステップP401において、車速が設定した閾値以上であると判定した場合、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4FLのサスペンションストロークを前方リスクポテンシャルRPaに応じて変化させる(ステップP402)。また、ステップP402において、コントローラ50は、アクセルペダル7の操作反力を前方リスクポテンシャルRPaに応じて増加させる。
【0143】
ステッP402の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
一方、ステップP401において、車速が設定した閾値以上であると判定した場合、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4RRのサスペンションストロークと、能動型サスペンション4FL,4RLのサスペンションストロークとを、交互に振動させ、車体3を前方リスクポテンシャルRPaに応じたロール角で揺動させる(ステップP403)。また、ステップP403において、コントローラ50は、アクセルペダル7の操作反力を前方リスクポテンシャルRPaに応じて増加させる。
ステッP403の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
【0144】
(動作)
次に、動作を説明する。
運転操作誘導処理を実行している自動車1Aの走行中に、前方におけるリスクポテンシャルが閾値を超えたとする。
すると、コントローラ50が、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLを制御し、車速によって異なる態様で、擬似的な車両の挙動を発生させる。
即ち、車速が閾値以下である場合、前方リスクポテンシャルRPaの大きさに応じたロール角で車体3を揺動させる。
これにより、運転者は、自車両が不安定な状態になっていると感じ、減速操作を行う。
【0145】
また、車速が閾値以上である場合、前方リスクポテンシャルRPaの大きさに応じたピッチ角で車体3を後傾させる。
これにより、運転者は、自車両の状態がリスクポテンシャルが高まる方向に近づいていると感じ、リスクポテンシャルが低くなる方向への操作を行う。
即ち、これらの制御により、運転者の運転操作を誘導することができる。
また、このとき、アクセルペダル7の操作に対し、より強い操作反力を付与している。
そのため、運転者が加速操作を行うことを抑制できる。
【0146】
以上のように、本実施形態に係る自動車1Aは、前方リスクポテンシャルRPaが閾値以上であるか否かを判定し、前方リスクポテンシャルが高いと判定した場合には、車速に応じて異なる制御を行い、運転者の運転操作を誘導する。
即ち、車速が高い場合、擬似的な加速を示すように、能動型サスペンション4FR,4FLを制御する。また、車速が低い場合、擬似的に車両が不安定な挙動を示すように、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLを制御する。
そのため、車速に応じて、適切な制御態様に切り替えて、現在の操作状態から、リスクポテンシャルが減少する方向への運転者による自発的な操作(減速操作)を促すことができる。
【0147】
また、リスクポテンシャルが増加するアクセルペダル7の操作に対して、リスクポテンシャルに応じた反力を付与している。そのため、運転者がリスクポテンシャルの増加する方向へ操作しようとした場合に、操作が適切でないことを報知することができる。また、運転者による適切でない操作を抑制することができる。
このように、本実施形態に係る自動車1Aによれば、運転者に対し、より適切に車両の運転操作の支援を行うことができる。
【0148】
(第4実施形態の効果)
(1)擬似車両挙動発生手段は、自車両の前方におけるリスクポテンシャルに対し、車速に応じて、車体を後傾させるサスペンション装置の制御と、サスペンション装置に車体のロールを発生させる制御とを切り替えて行わせる。
そのため、車速に応じた制御態様で、より適切に運転者の自発的な運転操作を促すことができる。
【0149】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について説明する。
本実施形態では、第1実施形態における場合と運転操作誘導処理を異なるものとしている。
したがって、自動車1Aの構成については、第1実施形態を参照することとし、運転操作誘導処理について説明する。
【0150】
(運転操作誘導処理)
図34は、コントローラ50が実行する運転操作誘導処理を示すフローチャートである。
コントローラ50は、運転者の指示入力に応じて運転操作誘導処理の実行を開始する。
図34において、運転操作誘導処理を開始すると、コントローラ50は、車速、横加速度(横G)、運転者の運転負荷、運転者の操作量を含む車両の運転状態を取得する(P501)。
このとき、運転者の運転負荷は、カーナビゲーションシステムに記憶している道路形状や、VICS(Vehicle Information and Communication System)等によって取得した渋滞情報を基に判定できる。また、運転者の操作量は、操舵操作および制駆動力操作の履歴を取得しておき、その頻度を基に判定できる。
【0151】
次に、コントローラ50は、リスクポテンシャル算出処理において算出した各リスクポテンシャルを取得する(ステップP502)。
次に、コントローラ50は、車両の運転状態およびリスクポテンシャルに基づいて、自車両の安定度を検出する(ステップP503)。
ここで、自車両の安定度については、車速が高いほど、加減速度が大きいほど、また、操舵入力が大きいほど、リスクポテンシャルが大きいほど、安定度が低下する傾向に設定している。
【0152】
次いで、コントローラ50は、自車両の安定度に応じて、運転操作の誘導制御を行う際の重み付けを算出する(ステップP504)。
ステップP504においては、操舵反力、制駆動操作反力および能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLにおける路面入力の低減割合について、運転操作の誘導制御を行う場合と行わない場合とのいずれの制御量とするかを決定するための重み付け(以下、適宜「優先度」と称する。)を算出する。この優先度は、運転操作の誘導制御を行わない場合の各制御量を0、運転操作の誘導制御を行う場合の制御量を1とし、これらをいずれの比率で配分するかを決定するものである。
【0153】
本実施形態においては、安定度が最良である場合に運転操作の誘導制御を行う場合の制御量とし、このときに、優先度として“1”を算出する。一方、安定度が設定された閾値以下である場合に、運転操作の誘導制御を行わない場合の制御量とし、このときに、優先度として“0”を算出する。また、本実施形態においては、安定度に応じて、“0”〜“1”までの任意の値を優先度として算出する。
次に、コントローラ50は、ステップP504で算出した優先度(重み付け)によって、運転操作の誘導制御を行わない場合に対応する配分制御量を算出する(ステップP505)。
【0154】
さらに、コントローラ50は、ステップP504で算出した優先度によって、リスクポテンシャルに応じた運転操作の誘導制御を行う場合に対応する配分制御量を算出する(ステップP506)。
次いで、コントローラ50は、ステッP505およびステップP506において算出した配分制御量の合計値によって、操舵反力や制駆動力操作反力、あるいは、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLの制御を実行する(ステップP507)。
ステップP507の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
【0155】
(動作)
次に、動作を説明する。
自動車1Aの走行中に、運転操作誘導処理の実行が開始されたとする。
なお、このとき、自動車1Aにおいては、一定の割合で路面からの振動を打ち消すように能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLの制御を行っていたものとする。
運転操作誘導処理を実行することにより、自動車1Aは、車両の運転状態、リスクポテンシャルおよび車両の安定度に応じて、自車両各部における通常の制御と、運転操作の誘導制御との優先度を算出する。
【0156】
そして、自動車1Aは、運転操作の誘導制御のための制御量と運転操作の誘導制御を行わない場合の制御量とを優先度に応じて加算した制御量によって、自車両各部の制御を行い、運転操作の誘導を行う。
これにより、自車両の安定度を加味して、運転操作の誘導制御を重点的に行うか、あるいは、運転者の技量に委ねた通常の車両制御を重点的に行うかを柔軟に決定できる。
したがって、より適切に車両の運転操作の支援を行うことができる。
【0157】
以上のように、本実施形態に係る自動車1Aは、自車両の安定度に応じて、運転操作の誘導制御の制御量を重み付けした上で、自車両各部の制御を行う。
例えば、安定度が高い状態では、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLによって路面からの振動を伝達する割合を低下させ、安定度が低い状態では、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLによって路面からの振動を一定以上の割合で伝達することができる。
【0158】
また、操舵反力および制駆動操作反力の制御によるリスクポテンシャルの伝達については、安定度が低いほど制御量を高めることができる。
したがって、自車両の状態を反映させた制御量によって、運転操作の誘導制御を行うことができ、運転者に対し、より適切に車両の運転操作の支援を行うことができる。
なお、本実施形態において、車速センサ30、車両状態検出器140およびコントローラ50が安定状態検出手段に対応する。
【0159】
(第5実施形態の効果)
(1)安定状態検出手段が自車両の安定状態を検出する。
擬似車両挙動発生手段が、安定状態検出手段が検出した自車両の安定状態に基づいて、サスペンション装置に擬似的に車両挙動を発生させる際の制御量を変化させる。
したがって、自車両の安定度を加味して、運転操作の誘導を重点的に行うか、あるいは、運転者の技量に委ねた通常の車両制御を重点的に行うかを柔軟に決定できる。
【0160】
(第6実施形態)
上記実施形態では、左右方向のリスクポテンシャルに応じて、能動型サスペンションのストロークや運転席シートのシートレッグ長を振動させるにあたり、左右方向それぞれについて1つのリスクポテンシャル閾値を設定し、リスクポテンシャルに応じて能動型サスペンションのサスペンションストロークを振動させることとした。
これに対し、本実施形態は、車両や運転席シートの姿勢(ロール傾斜角)を発生させるための左右方向のリスクポテンシャル閾値とは別に、振動を付与するために用いる左右方向のリスクポテンシャル閾値を設定する。そして、左右方向のリスクポテンシャルが振動を付与するための閾値以上となった場合に、予め設定された振幅で能動型サスペンションのストロークあるいは運転席シートのシートレッグ長を振動させるものである。
【0161】
図35は、本実施形態において、コントローラ50が実行する運転操作誘導処理を示すフローチャートである。また、図36〜39は、図35に示す運転操作誘導処理において実行される第1〜第4のサブフローを示す図である。
コントローラ50は、運転者の指示入力に応じて運転操作誘導処理の実行を開始する。
図35において、運転操作誘導処理を開始すると、コントローラ50は、リスクポテンシャル算出処理において算出した前後および左右方向のリスクポテンシャルRPa,RPb,RPc,RPdを取得する(ステップT210)。
【0162】
次に、コントローラ50は、ステップT210において取得した前方リスクポテンシャルRPaに応じて、運転操作誘導処理の第1のサブフローを実行する(ステップT220)。
ステップT220において、コントローラ50は、例えば、図36に示すように、まず、前方リスクポテンシャルRPaが第1の閾値RPa0以上であるか否かの判定を行う(ステップT221)。ステップT221において、前方リスクポテンシャルRPaが第1の閾値RPa0以上であると判定した場合、コントローラ50は、第1実施形態と同様に、アクセルペダル反力を前方リスクポテンシャルRPaに応じて増加させる(ステップT222)。また、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4FLのサスペンションストロークを前方リスクポテンシャルRPaに応じて変化させる(ステップT223)。
【0163】
次に、コントローラ50は、前方リスクポテンシャルRPaが第2の閾値RPa1以上であるか否かの判定を行う(ステップT224)。ステップT224において、前方リスクポテンシャルRPaが第2の閾値RPa1以上であると判定した場合、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4FLのサスペンションストロークに振動を付与する(ステップT225)。
【0164】
つまり、前方リスクポテンシャルRPaが比較的小さい第2の閾値RPa1未満の場合においては、アクセルペダル反力と車体ピッチ角(後傾)を発生させ、さらに、前方リスクポテンシャルRPaが比較的大きい第2の閾値RPa1以上の場合においては、サスペンションストロークによる振動が付与される。これにより、運転者に対して、前方のリスクポテンシャルが高まっていることを報知することができ、違和感なく、適切に、減速操作を促すことができる。そして、運転者が減速操作を行うと、前方リスクポテンシャルRPaが減少し、運転操作の誘導が停止される。
【0165】
ステップT225の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理に戻る。
また、コントローラ50は、ステップT210において取得した後方リスクポテンシャルRPbに応じて、運転操作誘導処理の第2のサブフローを実行する(ステップT230)。
ステップT230において、コントローラ50は、例えば、図37に示すように、まず、後方リスクポテンシャルRPbが第1の閾値RPb0以上であるか否かの判定を行う(ステップT231)。ステップT231において、後方リスクポテンシャルRPbが第1の閾値RPb0以上であると判定した場合、コントローラ50は、第1実施形態と同様に、能動型サスペンション4RR,4RLのサスペンションストロークを後方リスクポテンシャルRPbに応じて変化させる(ステップT232)。
【0166】
次に、コントローラ50は、後方リスクポテンシャルRPbが第2の閾値RPb1以上であるか否かの判定を行う(ステップT233)。ステップT233において、後方リスクポテンシャルRPbが第2の閾値RPb1以上であると判定した場合、コントローラ50は、能動型サスペンション4RR,4RLのサスペンションストロークに振動を付与する(ステップT234)。
【0167】
つまり、後方リスクポテンシャルRPbが比較的小さい第2の閾値RPb1未満の場合においては、車体ピッチ角(前傾)を発生させ、さらに、後方リスクポテンシャルRPbが比較的大きい第2の閾値RPb1以上の場合においては、サスペンションストロークによる振動が付与される。これにより、運転者に対して、後方のリスクポテンシャルが高まっていることを報知することができ、違和感なく、適切に、加速操作を促すことができる。そして、運転者が加速操作を行うと、後方リスクポテンシャルRPbが減少し、運転操作の誘導が停止される。
【0168】
ステップT234の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理に戻る。
また、コントローラ50は、ステップT210において取得した右方リスクポテンシャルRPcに応じて、運転操作誘導処理の第3のサブフローを実行する(ステップT240)。
ステップT240において、コントローラ50は、例えば、図38に示すように、右方リスクポテンシャルRPcが第1の閾値RPc0以上であるか否かの判定を行う(ステップT241)。ステップT241において、右方リスクポテンシャルRPcが第1の閾値RPc0以上であると判定した場合、コントローラ50は、第1実施形態と同様に、操舵反力を右方リスクポテンシャルRPcに応じて増加させる(ステップT242)。また、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4RRのサスペンションストロークを右方リスクポテンシャルRPcに応じて変化させる(ステップT243)。
【0169】
次に、コントローラ50は、右方リスクポテンシャルRPcが第2の閾値RPc1以上であるか否かの判定を行う(ステップT244)。ステップT244において、右方リスクポテンシャルRPcが第2の閾値RPc1以上であると判定した場合、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4RRのサスペンションストロークに振動を付与する(ステップT245)。
【0170】
つまり、右方リスクポテンシャルRPcが比較的小さい第2の閾値RPc1未満の場合においては、操舵反力とロール傾斜角(左ロール)を発生させ、さらに、右方リスクポテンシャルRPcが比較的大きい第2の閾値RPc1以上の場合においては、サスペンションストロークによる振動が付与される。これにより、レーンマーカー上、もしくは、レーンマーカーより外側に設置される凹凸(いわゆる、ランブルストリップ)を車両が踏んだかのような感じを与えることもできる。そのため、運転者に対して、右方のリスクポテンシャルが高まっていることを報知することができ、違和感なく、適切に、左方向への操舵操作を促すことができる。そして、運転者が操舵操作を行うと、右方リスクポテンシャルRPcが減少し、運転操作の誘導が停止される。
【0171】
ステップT245の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理に戻る。
また、コントローラ50は、ステップT210において取得した左方リスクポテンシャルRPdに応じて、運転操作誘導処理の第4のサブフローを実行する(ステップT250)。
ステップT250において、コントローラ50は、例えば、図39に示すように、左方リスクポテンシャルRPdが第1の閾値RPd0以上であるか否かの判定を行う(ステップT251)。ステップT251において、左方リスクポテンシャルRPdが第1の閾値RPd0以上であると判定した場合、コントローラ50は、第1実施形態と同様に、操舵反力を左方リスクポテンシャルRPdに応じて増加させる(ステップT252)。また、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4RRのサスペンションストロークを左方リスクポテンシャルRPdに応じて変化させる(ステップT253)。
【0172】
次に、コントローラ50は、左方リスクポテンシャルRPdが第2の閾値RPd1以上であるか否かの判定を行う(ステップT254)。ステップT254において、左方リスクポテンシャルRPdが第2の閾値RPd1以上であると判定した場合、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4RRのサスペンションストロークに振動を付与する(ステップT255)。
【0173】
つまり、左方リスクポテンシャルRPdが比較的小さい第2の閾値RPd1未満の場合においては、操舵反力とロール傾斜角(右ロール)を発生させ、さらに、左方リスクポテンシャルRPdが比較的大きい第2の閾値RPd1以上の場合においては、サスペンションストロークによる振動が付与される。これにより、レーンマーカー上、もしくは、レーンマーカーより外側に設置される凹凸(いわゆる、ランブルストリップ)を車両が踏んだかのような感じを与えることもできる。そのため、運転者に対して、左方のリスクポテンシャルが高まっていることを報知することができ、違和感なく、適切に、右方向への操舵操作を促すことができる。そして、運転者が操舵操作を行うと、左方リスクポテンシャルRPdが減少し、運転操作の誘導が停止される。
【0174】
ステップT255の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理に戻る。
ここで、ステップT245、あるいは、ステップT255にて付与する振動の周波数は、例えば、車速が高いほど高周波となるよう、車速に応じて変更することができる。
また、本実施形態では、サスペンションストロークによって振動を付与したが、ペダル反力や操舵反力で振動を付与してもよい。
【0175】
さらに、リスクポテンシャルが高まっていることを運転者に伝え、運転操作を促すために、車載スピーカから発する音を用いることができる。例えば、前方リスクポテンシャルが高い場合、前方(前右、前左)スピーカから他車両の走行音を出力し、後方リスクポテンシャルが高い場合、後方(後右、後左)スピーカから他車両の走行音を出力することにより、他車両が近づいているような感じを運転者に与えることができる。また、右方リスクポテンシャルが高い場合、右方(前右、後右)スピーカから、レーンマーカー上、もしくはレーンマーカーより外側に設置される凹凸(いわゆる、ランブルストリップ)を車両が踏んだ時の走行音を出力し、左方リスクポテンシャルが高い場合は、左方(前左、後左)スピーカから出力することにより、左右方向のリスクポテンシャルが高まっていることを効果的に報知することができる。
なお、本実施形態において、第1の閾値RPc0あるいはRPd0が特許請求の範囲における第3の閾値に対応し、第2の閾値RPc1あるいはRPd1が特許請求の範囲における第4の閾値に対応する。
【0176】
(第6実施形態の効果)
(1)車体のロールを発生させるための左右方向のリスクポテンシャルの閾値と、車体に振動を付与するための左右方向のリスクポテンシャルの閾値とを個別に設定することとしたため、車両の走行状態に応じて、車体のロールと振動とを適確なタイミングで発生させることができる。そのため、より適切に車両の運転操作の支援を行うことができる。
【符号の説明】
【0177】
1A 自動車、1 車両用運転操作補助装置、2FR,2FL,2RR,2RL 車輪、3 車体、4FR,4FL,4RR,4RL 能動型サスペンション、5 ステアリングホイール、6 ステアリング装置、7 アクセルペダル、8 ブレーキペダル、9F,9R,9SR,9SL カメラ、10 レーザレーダ、12 車体側部材、14 車輪側部材、16FR,16FL,16RR,16RL コイルスプリング、17FR,17FL,17RR,17RL 圧力制御弁、30 車速センサ、50 コントローラ、60 操舵反力制御装置、61,81,91 サーボモータ、62 舵角センサ、80 アクセルペダル反力制御装置、90 ブレーキペダル反力制御装置、100 駆動力制御装置、110 制動力制御装置、120FR,120FL,120RR,120RL,803FR,803FL,803RR,803RL,700FR,700FL,700RR,700RL アクチュエータ、130FR,130FL,130RR,130RL 車体上下加速度検出器、140 車両状態検出器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の状態を検出する車両状態検出手段と、
自車両周囲に存在する障害物を検出する障害物検出手段と、
車両の運転操作を行う運転操作手段と、
前記運転操作手段における操作反力を付与する操作反力付与手段と、
前記車両状態検出手段および前記障害物検出手段の検出結果に基づいて、前記自車両の周囲に存在する障害物に対するリスクポテンシャルを算出するリスクポテンシャル算出手段と、
前記リスクポテンシャルの大きさに応じて、前記操作反力付与手段を制御する操作反力付与手段と、
運転者に上下方向の動きを付与する動作制御手段と、
前記車両状態検出手段の検出結果および前記リスクポテンシャルに基づいて、前記リスクポテンシャルが増大する運転操作を行った場合の車両挙動を、前記動作制御手段を制御することによって擬似的に発生させる擬似車両挙動発生手段と、
を備えることを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項2】
前記擬似車両挙動発生手段は、加減速操作あるいは操舵操作を行った場合に発生する車両挙動を、前記動作制御手段を制御することによって擬似的に発生させることを特徴とする請求項1記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項3】
前記擬似車両挙動発生手段は、自車両の前後方向における前記リスクポテンシャルに対し、車体を前傾あるいは後傾させるように前記動作制御手段を制御することを特徴とする請求項2記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項4】
前記擬似車両挙動発生手段は、自車両の左右方向における前記リスクポテンシャルに対し、車体をロールさせるように前記動作制御手段を制御することを特徴とする請求項2記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項5】
前記擬似車両挙動発生手段は、前記リスクポテンシャルに基づいて、障害物が存在する側の車体を、前記動作制御手段を制御することによって振動させることを特徴とする請求項1記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項6】
前記擬似車両挙動発生手段は、自車両の前後方向における前記リスクポテンシャルに対し、前輪または後輪いずれかの前記動作制御手段としての前記サスペンション装置に振動を発生させる制御を行うことを特徴とする請求項5記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項7】
前記擬似車両挙動発生手段は、自車両の左右方向における前記リスクポテンシャルに対し、左右輪いずれかの前記動作制御手段としての前記サスペンション装置に振動を発生させる制御を行うことを特徴とする請求項5記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項8】
前記擬似車両挙動発生手段は、自車両の前方における前記リスクポテンシャルに対し、前記動作制御手段としての前記サスペンション装置に車体のロールによる揺動を発生させる制御を行うことを特徴とする請求項1記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項9】
前記擬似車両挙動発生手段は、自車両の前方における前記リスクポテンシャルに対し、車速に応じて、車体を後傾させる前記サスペンション装置の制御と、前記サスペンション装置に車体のロールを発生させる制御とを切り替えて行わせることを特徴とする請求項8記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項10】
前記操作反力付与手段は、自車両の左右方向における前記リスクポテンシャルが第1の閾値以上である場合に、前記運転操作手段における操作反力を付与し、
前記擬似車両挙動発生手段は、前記リスクポテンシャルが前記第1の閾値より大きい第2の閾値以上である場合に、前記リスクポテンシャルが増大する運転操作を行った場合の車両挙動を、前記動作制御手段を制御することによって擬似的に発生させることを特徴とする請求項1記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項11】
前記擬似車両挙動発生手段は、自車両の左右方向における前記リスクポテンシャルが第3の閾値以上である場合に、前記リスクポテンシャルが増大する運転操作を行った場合の車両挙動として、前記動作制御手段に車体のロールを発生させる制御を行い、前記リスクポテンシャルが前記第3の閾値より大きい第4の閾値以上である場合に、左右輪いずれかの前記動作制御手段に振動を発生させる制御を行うことを特徴とする請求項1記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項12】
自車両の安定状態を検出する安定状態検出手段を備え、
前記擬似車両挙動発生手段は、前記安定状態検出手段が検出した自車両の安定状態に基づいて、前記動作制御手段に擬似的に車両挙動を発生させる際の制御量を変化させることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項13】
前記擬似車両挙動発生手段は、前記動作制御手段としての前記サスペンション装置のサスペンションストローク、減衰力およびばね定数と、前記操作反力付与手段が前記運転操作手段に付与する操作反力と運転操作に対して付与する操作反力のゲインとを制御することを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項14】
前記動作制御手段は、車輪と車体との間に介在する能動型のサスペンションであることを特徴とする請求項1記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項15】
前記動作制御手段は、スタビライザリンク長を可変なスタビライザを備えたサスペンションであることを特徴とする請求項1記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項16】
前記動作制御手段は、運転席シートと車体との間に介在する制御型のサスペンションであることを特徴とする請求項1記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項17】
自車両の状態と、自車両周囲の障害物の状態とに基づいて、自車両周囲に存在する障害物に対するリスクポテンシャルを算出し、算出した前記リスクポテンシャルに基づいて、前記リスクポテンシャルが増大する運転操作を行った場合の車両挙動を擬似的に発生させることを特徴とする車両用運転操作補助方法。
【請求項18】
車体と、
自車両の状態を検出する車両状態検出手段と、
自車両周囲に存在する障害物を検出する障害物検出手段と、
車両の運転操作を行う運転操作手段と、
前記運転操作手段における操作反力を付与する操作反力付与手段と、
前記車両状態検出手段および前記障害物検出手段の検出結果に基づいて、前記自車両の周囲に存在する障害物に対するリスクポテンシャルを算出するリスクポテンシャル算出手段と、
前記リスクポテンシャルの大きさに応じて、前記操作反力付与手段を制御する操作反力付与手段と、
運転者に上下方向の動きを付与する動作制御手段と、
前記車両状態検出手段の検出結果および前記リスクポテンシャルに基づいて、前記リスクポテンシャルが増大する運転操作を行った場合の車両挙動を、前記動作制御手段を制御することによって擬似的に発生させる擬似車両挙動発生手段と、
を備えることを特徴とする自動車。
【請求項1】
自車両の状態を検出する車両状態検出手段と、
自車両周囲に存在する障害物を検出する障害物検出手段と、
車両の運転操作を行う運転操作手段と、
前記運転操作手段における操作反力を付与する操作反力付与手段と、
前記車両状態検出手段および前記障害物検出手段の検出結果に基づいて、前記自車両の周囲に存在する障害物に対するリスクポテンシャルを算出するリスクポテンシャル算出手段と、
前記リスクポテンシャルの大きさに応じて、前記操作反力付与手段を制御する操作反力付与手段と、
運転者に上下方向の動きを付与する動作制御手段と、
前記車両状態検出手段の検出結果および前記リスクポテンシャルに基づいて、前記リスクポテンシャルが増大する運転操作を行った場合の車両挙動を、前記動作制御手段を制御することによって擬似的に発生させる擬似車両挙動発生手段と、
を備えることを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項2】
前記擬似車両挙動発生手段は、加減速操作あるいは操舵操作を行った場合に発生する車両挙動を、前記動作制御手段を制御することによって擬似的に発生させることを特徴とする請求項1記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項3】
前記擬似車両挙動発生手段は、自車両の前後方向における前記リスクポテンシャルに対し、車体を前傾あるいは後傾させるように前記動作制御手段を制御することを特徴とする請求項2記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項4】
前記擬似車両挙動発生手段は、自車両の左右方向における前記リスクポテンシャルに対し、車体をロールさせるように前記動作制御手段を制御することを特徴とする請求項2記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項5】
前記擬似車両挙動発生手段は、前記リスクポテンシャルに基づいて、障害物が存在する側の車体を、前記動作制御手段を制御することによって振動させることを特徴とする請求項1記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項6】
前記擬似車両挙動発生手段は、自車両の前後方向における前記リスクポテンシャルに対し、前輪または後輪いずれかの前記動作制御手段としての前記サスペンション装置に振動を発生させる制御を行うことを特徴とする請求項5記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項7】
前記擬似車両挙動発生手段は、自車両の左右方向における前記リスクポテンシャルに対し、左右輪いずれかの前記動作制御手段としての前記サスペンション装置に振動を発生させる制御を行うことを特徴とする請求項5記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項8】
前記擬似車両挙動発生手段は、自車両の前方における前記リスクポテンシャルに対し、前記動作制御手段としての前記サスペンション装置に車体のロールによる揺動を発生させる制御を行うことを特徴とする請求項1記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項9】
前記擬似車両挙動発生手段は、自車両の前方における前記リスクポテンシャルに対し、車速に応じて、車体を後傾させる前記サスペンション装置の制御と、前記サスペンション装置に車体のロールを発生させる制御とを切り替えて行わせることを特徴とする請求項8記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項10】
前記操作反力付与手段は、自車両の左右方向における前記リスクポテンシャルが第1の閾値以上である場合に、前記運転操作手段における操作反力を付与し、
前記擬似車両挙動発生手段は、前記リスクポテンシャルが前記第1の閾値より大きい第2の閾値以上である場合に、前記リスクポテンシャルが増大する運転操作を行った場合の車両挙動を、前記動作制御手段を制御することによって擬似的に発生させることを特徴とする請求項1記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項11】
前記擬似車両挙動発生手段は、自車両の左右方向における前記リスクポテンシャルが第3の閾値以上である場合に、前記リスクポテンシャルが増大する運転操作を行った場合の車両挙動として、前記動作制御手段に車体のロールを発生させる制御を行い、前記リスクポテンシャルが前記第3の閾値より大きい第4の閾値以上である場合に、左右輪いずれかの前記動作制御手段に振動を発生させる制御を行うことを特徴とする請求項1記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項12】
自車両の安定状態を検出する安定状態検出手段を備え、
前記擬似車両挙動発生手段は、前記安定状態検出手段が検出した自車両の安定状態に基づいて、前記動作制御手段に擬似的に車両挙動を発生させる際の制御量を変化させることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項13】
前記擬似車両挙動発生手段は、前記動作制御手段としての前記サスペンション装置のサスペンションストローク、減衰力およびばね定数と、前記操作反力付与手段が前記運転操作手段に付与する操作反力と運転操作に対して付与する操作反力のゲインとを制御することを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項14】
前記動作制御手段は、車輪と車体との間に介在する能動型のサスペンションであることを特徴とする請求項1記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項15】
前記動作制御手段は、スタビライザリンク長を可変なスタビライザを備えたサスペンションであることを特徴とする請求項1記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項16】
前記動作制御手段は、運転席シートと車体との間に介在する制御型のサスペンションであることを特徴とする請求項1記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項17】
自車両の状態と、自車両周囲の障害物の状態とに基づいて、自車両周囲に存在する障害物に対するリスクポテンシャルを算出し、算出した前記リスクポテンシャルに基づいて、前記リスクポテンシャルが増大する運転操作を行った場合の車両挙動を擬似的に発生させることを特徴とする車両用運転操作補助方法。
【請求項18】
車体と、
自車両の状態を検出する車両状態検出手段と、
自車両周囲に存在する障害物を検出する障害物検出手段と、
車両の運転操作を行う運転操作手段と、
前記運転操作手段における操作反力を付与する操作反力付与手段と、
前記車両状態検出手段および前記障害物検出手段の検出結果に基づいて、前記自車両の周囲に存在する障害物に対するリスクポテンシャルを算出するリスクポテンシャル算出手段と、
前記リスクポテンシャルの大きさに応じて、前記操作反力付与手段を制御する操作反力付与手段と、
運転者に上下方向の動きを付与する動作制御手段と、
前記車両状態検出手段の検出結果および前記リスクポテンシャルに基づいて、前記リスクポテンシャルが増大する運転操作を行った場合の車両挙動を、前記動作制御手段を制御することによって擬似的に発生させる擬似車両挙動発生手段と、
を備えることを特徴とする自動車。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
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【図28】
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【図34】
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【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【公開番号】特開2010−221993(P2010−221993A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−259191(P2009−259191)
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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