説明

ハイブリッド車両の燃料性状推定装置

【課題】ハイブリッド車両においてドライバビリティの悪化を抑制しつつ燃料性状を迅速且つ正確に推定する。
【解決手段】ハイブリッド車両10において、ECU100は噴射量制御処理を実行する。当該処理では、要求出力Pwnに対するエンジン200の実出力Pwrの過不足量たる出力過不足量ΔPwが算出される。出力過不足量ΔPwが上限値以上である場合、相対的に低発熱量燃料であると推定され、MG2によりトルクのアシストが実行される。また、出力過不足量ΔPwが下限値未満である場合、相対的に高発熱燃料であると推定され、MG1によりトルクの吸収が実行される。この結果、エンジンの出力異常に伴うドライバビリティの悪化が抑制される。このようにドライバビリティの悪化が抑制された状態で、出力過不足量ΔPwに基づいて推定された燃料性状が燃料噴射量に反映され、エンジンの出力異常が解消される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば動力源として電動機及び内燃機関を有するハイブリッド車両において燃料の性状を推定するハイブリッド車両の燃料性状推定装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料性状は、内燃機関の出力に影響を与える。燃料性状が変化することによって要求出力通りの実出力が得られない状態、即ち、内燃機関の出力異常が生じている状態では、ドライバビリティが極端に悪化しかねないため、燃料性状に変化が生じた場合には、速やかにそれを検知する必要がある。
【0003】
燃料性状を検出する装置として、例えば燃料セタン価を判定するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示された内燃機関の燃料性状判定装置(以下、「従来の技術」と称する)によれば、クランキング回転数を一定に維持した状態で内燃機関を始動させた際に、完爆に要した時間と始動時の冷却水温とを検出し、予め定めたマップを参照することによって燃料のセタン価を精度良く判定することが可能であるとされている。
【0004】
尚、ノッキング検出結果に応じて電動機のアシスト力を制御して燃料性状変化によるドライバビリティ悪化を防止する技術も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2002−201997号公報
【特許文献2】特開平9−140006号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の技術では、始動時しか燃料性状を判定し得ないため、燃料性状の経時的な変化を検出することは困難である。また、クランキング回転数は、フリクションの影響や、バッテリ電圧の影響により一定に維持することが難しく、実質的には、燃料性状を判定する機会は著しく制限され易い。また、クランキング回転数を一定に維持できなければ必然的に検出精度が低下する。即ち、従来の技術には、燃料性状を迅速且つ正確に検出することが実質的にみて困難であるという技術的な問題点がある。また、燃料性状を検出する過程においても、上述したドライバビリティの悪化は生じ得るから、従来の技術では、そのようなドライバビリティの悪化も回避し難い。係る問題点は、動力源として内燃機関の他に電動機を備えたハイブリッド車両であっても同様に生じ得る。
【0007】
本発明は上述した問題点に鑑みてなされたものであり、ハイブリッド車両において、ドライバビリティの悪化を抑制しつつ燃料性状を迅速且つ正確に推定することが可能なハイブリッド車両の燃料性状推定装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するため、本発明に係るハイブリッド車両の燃料性状推定装置は、燃料を供給する供給手段を備えると共に車軸に連結された駆動軸に対し動力を出力可能な内燃機関、前記駆動軸に動力を出力可能な電動機、前記内燃機関の動力の一部により発電可能な発電機、及び該発電により得られる電力により充電可能なバッテリを備えたハイブリッド車両において、前記供給される燃料に係る燃料性状を推定するハイブリッド車両の燃料性状推定装置であって、前記内燃機関における、要求出力に対する実出力の過不足量を特定する特定手段と、前記駆動軸に前記要求出力に対応する動力が出力されるように前記特定される過不足量に応じて前記電動機及び前記発電機を制御する第1の制御手段と、前記過不足量に基づいて前記燃料性状を推定する推定手段とを具備することを特徴とする。
【0009】
本発明のハイブリッド車両における「内燃機関」とは、例えば複数の気筒を有し、当該複数の気筒の各々における燃焼室において、例えば電子制御式インジェクタ装置等形態を採り得る供給手段により供給される、例えばガソリン、軽油或いはアルコール等の各種燃料が燃焼した際に発生する爆発力を、例えばピストン及びコネクティングロッド等の機械的な伝達経路を経て、例えばクランク軸等を介してトルク等の動力として出力可能な機関を包括する概念であり、例えば2サイクル或いは4サイクルレシプロエンジン等を指す。係る内燃機関は、車軸に連結された駆動軸に対し、直接的に又は間接的にトルク等の動力を出力可能に構成される。
【0010】
一方、本発明に係るハイブリッド車両は、動力源として内燃機関の他に例えばモータ或いはモータジェネレータ等の形態を採り得る電動機を備えており、係る電動機も駆動軸に対し例えばトルク等の動力を出力可能に構成される。この際、車軸に出力すべき動力を内燃機関と電動機との間で如何に分配するかについては何らの制限を受けるものではなく、例えば主として内燃機関を動力源とし、電動機の動力により内燃機関の動力が適宜アシストされてもよいし、例えば主として電動機を動力源とし、内燃機関の動力により電動機の動力が適宜アシストされてもよいし、或いは内燃機関の動力と電動機の動力との分配比率が、その都度、内燃機関の、或いはハイブリッドシステム全体の動作効率が最適化され得るように相互に協調的に決定されてもよい。
【0011】
他方、本発明に係るハイブリッド車両は、内燃機関の動力の一部により発電可能なジェネレータ或いはモータジェネレータ等の発電機を備えており、発電により得られた電力によってバッテリを充電可能に構成されている。
【0012】
内燃機関において燃焼に供される燃料は、その燃料性状によって理論空燃比が異なるから、例えば、ガソリンの理論空燃比(概ね14.6程度)を基準として燃料が供給される場合、例えばアルコール比率の大きい燃料(即ち、理論空燃比が14.6未満)では、燃料供給量が相対的に減少することとなり内燃機関の出力は低下し、反対に、理論空燃比が14.6よりも大きい燃料では、燃料供給量が相対的に増加して内燃機関の出力が増加することとなる。即ち、内燃機関の実出力は、燃料性状に応じて要求出力から乖離する。このように内燃機関の実出力が要求出力から乖離した状態が継続すると、ドライバビリティが悪化しかねない。
【0013】
そこで、本発明に係るハイブリッド車両の燃料性状推定装置によれば、その動作時には、例えばECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等として構成される特定手段の作用により、要求出力に対する実出力の過不足量が特定される。
【0014】
ここで、本発明に係る「特定する」とは、特定対象そのもの或いは特定対象と相関する物理量又は物理状態を、直接的に又は何らかの検出手段を介して間接的に、例えば電気信号等として取得すること、直接的に又は間接的に検出された、特定対象と相関する物理量又は物理状態に基づいて予め然るべき記憶手段等に記憶されたマップ等から該当する値として選択すること、及び、それら検出又は選択された、特定対象と相関する物理量又は物理状態から、予め設定されたアルゴリズムや計算式等に従って導出又は推定すること等を包括する広い概念である。
【0015】
特定手段は、係る過不足量を特定するに際して、例えばアクセルペダルの踏下量(以下、適宜「アクセル開度」と称する)及び車速に基づいて、例えば数値演算の結果として、或いは然るべきマップから対応する値を選択すること等により特定される要求出力と、例えば、発電機或いは電動機により検出される内燃機関のトルクに対応した反力トルク、及び内燃機関の機関回転数に基づいて、例えば数値演算の結果として、或いは然るべきマップから対応する値を選択すること等により特定される実出力との差分として、係る過不足量を特定する。
【0016】
このようにして過不足量が特定されると、例えばECU等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等として構成される第1の制御手段の作用により、駆動軸に対し要求出力に対応する動力が出力されるように、特定される過不足量に応じて電動機及び発電機が制御される。電動機から駆動軸に動力が出力されれば、駆動軸に出力される全体的な動力は増加するため、内燃機関の動力不足が補われる。また、内燃機関の動力の一部が発電に供された場合には、駆動軸に出力される全体的な動力は減少するため、内燃機関の出力過剰が補われる。
【0017】
このように電動機及び発電機が制御されることにより、実際には燃料性状に応じて内燃機関の出力異常(即ち、要求出力に対して実出力が過不足している状態)が発生しているにもかかわらず、駆動軸には好適には要求通りの動力が出力されることとなり、係る出力異常に起因するドライバビリティの悪化は未然に防がれる。或いはその発生期間が、実践上ドライバビリティの悪化を顕在化させない程度の短い期間に抑制される。
【0018】
ここで特に、内燃機関の出力異常を上述したように好適に補正し得ても、内燃機関における燃料の供給量には燃料性状の変化が反映されていないから、出力異常が生じている状態は継続している。従って、抜本的な問題解決のためには、燃料性状を迅速且つ正確に推定する必要がある。そこで、本発明に係るハイブリッド車両の燃料性状推定装置によれば、その動作時には、特定手段により過不足量が特定された場合に、上述した電動機及び発電機に係る出力異常補正の制御とは別に、例えばECU等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等として構成される推定手段により、係る特定された過不足量に基づいて燃料性状が推定される。
【0019】
ここで、燃料性状は、上述したように内燃機関の実出力の過不足量と相関があるため、例えば燃料性状を規定する指標値(例えば、実際の燃料の理論空燃比、燃料の成分比率等)と当該過不足量との対応関係が、予め実験的に、経験的に、理論的に、或いはシミュレーション等に基づいて明らかとされている、或いは推定可能である場合等には、そのような対応関係を記述してなるマップから適宜該当する指標値や成分比率を選択することによって、或いは、そのような対応関係に基づいた数値演算の結果等として、燃料性状を推定することが可能である。
【0020】
尚、推定手段に係る推定の態様は、燃料性状を推定可能である限りにおいて特に限定されず、例えば、燃料が相対的に低発熱量の燃料であるか高発熱量の燃料であるかに係る定性的な推定を行ってもよいし、より具体的に、燃料の成分比率、理論空燃比又は単位量当りの発熱量を取得すべく定量的な推定を行ってもよい。或いは、予め設定された基本的な燃料性状を規定する指標値、又は現時点で燃料の供給制御に供されている当該指標値等に対し補正を行うための補正量を推定してもよい。
【0021】
このように、本発明に係るハイブリッド車両の燃料性状推定装置によれば、ハイブリッド車両に備わる電動機及び発電機を制御することにより、燃料性状の変化(例えば、ガソリン100%の燃料における燃料性状を基準とした変化)に応じて生じる実出力の過不足に起因するドライバビリティの悪化が防止或いは抑制されると共に、その一方で実出力の過不足量に基づいて、別言すれば、電動機及び発電機の制御量等に基づいて、迅速且つ正確に燃料性状を推定することが可能となる。
【0022】
本発明に係るハイブリッド車両の燃料性状推定装置の一の態様では、前記ハイブリッド車両は、前記内燃機関の動力を入力軸及び前記駆動軸に夫々所定の比率で分配する動力分配手段を更に具備し、前記発電機には、前記内燃機関の動力の一部として前記入力軸を介して前記分配された動力が入力され、前記電動機は、前記バッテリから供給される電力又は前記発電により得られる電力により駆動され、前記特定手段は、前記入力軸を介して入力される前記分配された動力に基づいて前記過不足量を特定する。
【0023】
この態様によれば、ハイブリッド車両は、例えばプラネタリギアユニット等として構成される動力分配手段を備える。この動力分配手段は、内燃機関の動力を、入力軸及び駆動軸に夫々所定の比率で分配する。この入力軸には、発電機が連結されており、係る入力軸を介して内燃機関の動力の一部が入力される。また、駆動軸に連結される電動機は、バッテリからの電力供給又はこの発電機の発電電力の供給により駆動される。
【0024】
この態様によれば、内燃機関の動力の一部により発電を行い、当該発電で得られた電力により電動機を駆動することが可能であり、内燃機関を例えば常に燃料消費率(以下、適宜「燃費」と称する)の最適な動作点で動作させることが可能となる。即ち、内燃機関、電動機及び発電機相互間の動力配分が最適化され、ハイブリッド車両の動作効率が最適化され得る。
【0025】
この態様によれば、特定手段は、発電機に入力される内燃機関の動力に基づいて前述した過不足量を特定する。例えば、この際、発電機に入力される内燃機関のトルクの一部に対応する反力トルクに基づいて内燃機関のトルクが検出され、実出力の特定に供される。即ち、この態様では、発電機が言わばトルクセンサとして機能し得るため、内燃機関の実出力の特定精度が向上し、最終的に過不足量の特定精度が向上する。
【0026】
本発明に係るハイブリッド車両の燃料性状推定装置の他の態様では、前記第1の制御手段は、前記要求出力に対し前記実出力が不足する場合に前記駆動軸に動力が出力されるように前記電動機を制御すると共に、前記要求出力に対し前記実出力が過剰な場合に前記内燃機関の動力の一部が前記発電に供されるように前記発電機を制御する。
【0027】
この態様によれば、要求出力に対し実出力が不足する場合には駆動軸に動力が出力されるように電動機が制御され、要求出力に対し実出力が過剰である場合には過剰な動力が発電に供されるため、燃料性状を推定している期間中であっても、内燃機関の出力異常に起因するハイブリッド車両のドライバビリティの悪化が抑制され、好適である。
【0028】
本発明に係るハイブリッド車両の燃料性状推定装置の他の態様では、前記内燃機関は、排気の圧力による過給が可能な過給器、及び該過給器における過給圧を調整可能な過給圧調整手段を更に備え、前記第1の制御手段は、前記駆動軸に前記要求出力に応じた動力が出力されるように前記特定された過不足量に応じて前記過給圧調整手段を制御する。
【0029】
この態様によれば、内燃機関には、例えばターボチャージャ等の過給器が備わり、排気の圧力(以下、適宜「排気圧」と称する)に応じた過給が可能に構成される。また、内燃機関には更に、例えばウェストゲートバルブ(以下適宜「WGV」と称する)や、可変絞りノズル(以下、適宜「VN」と称する)等の過給圧調整手段が備わっており、例えば排気をリアパイプ等排気系にバイパスすることによって、或いは過給器を構成するタービンへの排気の流入を制限することによって、過給圧を調整することが可能に構成される。
【0030】
バッテリのSOC(State Of Charge:充電状態)は絶えず変化し得るから、SOCによっては電動機及び発電機による動力のアシスト及び吸収が困難である場合がある。例えば、バッテリのSOCが相対的に低下している場合には電動機による動力のアシストが難しく、またバッテリのSOCが満充電に近いような場合には、発電による動力の吸収が難しい。従って、場合によっては、燃料性状の変化に起因するドライバビリティの悪化が顕在化する可能性がある。
【0031】
その点、このように過給器及び過給圧調整手段を備える場合、過給圧を変化させることによって、内燃機関の出力を調整することが可能であり、内燃機関の出力異常を補正することが可能となる。即ち、バッテリの状態によらずに出力異常を補正しつつ迅速且つ正確に燃料性状を推定することが可能となり実践上有益である。
【0032】
尚、この態様では、前記過給圧調整手段は、開閉状態に応じて前記過給器に流入する前記排気の量を調整可能な開閉弁を含んでもよい。
【0033】
過給圧調整手段における例えば物理的、機械的又は電気的な構成は、過給圧を調整可能である限りにおいて何ら限定されないが、上述したWGVやVN等の形態を採り得る開閉弁を含む場合には、効率的且つ効果的である。
【0034】
ハイブリッド車両が過給器を備える本発明に係るハイブリッド車両の燃料性状推定装置の他の態様では、前記第1の制御手段は、前記特定された過不足量に応じて前記過給圧調整手段を制御した後、前記駆動軸に前記要求出力に応じた動力が出力されるように前記電動機及び前記発電機を更に制御する。
【0035】
過給圧調整手段による内燃機関の出力(トルク)補正は、電動機及び発電機による内燃機関の出力(トルク)補正と較べて精度が低くなりがちであり、過給圧調整手段の制御のみにより駆動軸に要求出力に対応する動力を出力することは実践上困難を伴い易い。一方、電動機及び発電機は、比較的高精度なトルク制御が可能であり、同時に比較的高精度な回転制御が可能であるから、このように過給圧の調整により出力異常の一部を解消した後に、更に電動機及び発電機により出力異常を補正することにより、電動機及び発電機に加わる負荷を軽減しつつ、内燃機関の出力異常を補償することが可能となって、実践上極めて有益である。
【0036】
本発明に係るハイブリッド車両の燃料性状推定装置の他の態様では、前記推定手段は、前記特定された過不足量が所定の上限値以上である場合、及び所定の下限値未満である場合のうち少なくとも一方において前記燃料性状を推定する。
【0037】
内燃機関の実出力は、必ずしも燃料性状の影響のみにより変動するとは限らない。例えば、吸排気バルブの開閉時期、点火装置の点火時期、燃焼室の状態、混合気の燃焼状態、排気圧、冷却水温、外気温又は湿度等多様な要素の影響を受け、内燃機関の実出力は変化し得る。無論、実出力が要求出力に対し変化していれば、例えば電動機及び発電機の制御による出力の補正は有効であるが、このような多様な要因により変化する出力変動を全て燃料性状の推定にフィードバックすると、結果的には燃料性状を誤学習しかねず、燃料性状の推定精度が低下しかねない。
【0038】
そこで、この態様では、例えば、予め実験的に、経験的に、理論的に或いはシミュレーション等に基づいて、例えば燃料性状の変化がなくとも内燃機関の通常の動作範囲で生じ得る出力変動(即ち、この場合、異常ではない)の範囲等を規定する上限値及び下限値が設定され、特定された過不足量が係る上限値以上である場合、及び下限値未満である場合のうち少なくとも一方(好適には、両方)において、燃料性状が推定される。従って、燃料性状の変化によらない内燃機関の出力変動が燃料性状の推定に供されることが防止され、燃料性状の推定精度が担保される。尚、この際、電動機及び発電機による内燃機関の出力変動の補償は、なされてもよいし、なされずともよい。
【0039】
本発明に係るハイブリッド車両の燃料性状推定装置の他の態様では、前記推定された燃料性状に基づいて前記燃料の供給量を補正する補正手段と、該補正された燃料が供給されるように前記供給手段を制御する第2の制御手段とを更に具備する。
【0040】
この態様によれば、例えばECU等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等として構成される補正手段により、推定手段によって推定された燃料性状に基づいて燃料の供給量が補正され、更に、例えばECU等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等として構成される第2の制御手段により、この補正された燃料が供給されるように供給手段が制御される。
【0041】
従って、この態様によれば、燃料性状の推定結果を実際の燃料供給量に反映することが可能となり、内燃機関の出力異常が抜本的に解消される。この際、燃料性状の推定は、推定手段により迅速且つ正確になされるため、内燃機関の出力異常が継続する期間(補正はなされており、駆動軸には既に要求出力に対応する正規の動力が出力されている)は十分に短いものとなる。即ち、補正手段及び第2の制御手段の作用により、内燃機関の性能低下が生じる期間は可及的に短く抑制され、電動機、発電機或いは過給圧調整手段を内燃機関の出力補正に供する機会を減少させ、物理的、機械的又は電気的な負荷を低減させることが可能となる。
【0042】
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
<発明の実施形態>
以下、図面を参照して、本発明の好適な各種実施形態について説明する。
<1:第1実施形態>
<1−1:実施形態の構成>
<1−1−1:ハイブリッド車両の構成>
始めに、図1を参照して、本発明の第1実施形態に係るハイブリッド車両10の構成について説明する。ここに、図1は、ハイブリッド車両10のブロック図である。
【0044】
図1において、ハイブリッド車両10は、車軸11、車輪12、ECU100、エンジン200、モータジェネレータMG1(以下、適宜「MG1」と称する)、モータジェネレータMG2(以下、適宜「MG2」と称する)、動力分割機構300、インバータ400、バッテリ500、SOCセンサ600、車速センサ700及びアクセルポジションセンサ800を備えた、本発明に係る「ハイブリッド車両」の一例である。
【0045】
車軸11は、エンジン200及びモータジェネレータMG2から出力された動力を車輪に伝達するための軸であり、本発明に係る「車軸」の一例である
車輪12は、車軸11を介して伝達される動力を路面に伝達する手段であり、図1においては左右一輪ずつが示されるが、実際には、前後左右に一輪ずつ備わりハイブリッド車両10全体で計4個備わっている。
【0046】
ECU100は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等を備え、ハイブリッド車両10の動作全体を制御することが可能に構成された電子制御ユニットであり、本発明に係る「ハイブリッド車両の燃料性状推定装置」の一例である。ECU100は、ROMに格納された制御プログラムに従って、後述する噴射量制御処理を実行することが可能に構成されている。
【0047】
エンジン200は、本発明に係る「内燃機関」の一例たるガソリンエンジンであり、ハイブリッド車両10の主たる動力源として機能する。尚、エンジン200の詳細な構成については後述する。
【0048】
モータジェネレータMG1は、本発明に係る「発電機」の一例であり、バッテリ500を充電するための或いはモータジェネレータMG2に電力を供給するための発電機として、更にはエンジン200の駆動力をアシストする電動機として機能するように構成されている。
【0049】
モータジェネレータMG2は、本発明に係る「電動機」の一例であり、エンジン200の動力をアシストする電動機として、或いはバッテリ500を充電するための発電機として機能するように構成されている。
【0050】
尚、これらモータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2は、例えば同期電動発電機として構成され、外周面に複数個の永久磁石を有するロータと、回転磁界を形成する三相コイルが巻回されたステータとを備える。但し、他の形式のモータジェネレータであっても構わない。
【0051】
動力分割機構300は、エンジン200の出力をMG1及び車軸11へ分配することが可能に構成された遊星歯車機構であり、本発明に係る「動力分配手段」の一例である。
【0052】
ここで、図2を参照して、動力分割機構300の詳細な構成について説明する。ここに、図2は、動力分割機構300とその周辺部の関係を示す模式図である。尚、同図において、図1と重複する箇所には同一の符合を付してその説明を適宜省略することとする。
【0053】
図2において、動力分割機構300は、中心部に設けられたサンギア303と、サンギア303の外周に同心円状に設けられたリングギア301と、サンギア303とリングギア301との間に配置されてサンギア303の外周を自転しつつ公転する複数のピニオンギア305と、後述するクランクシャフト205(即ち、本発明に係る「入出力軸」の一例)の端部に結合され、各ピニオンギアの回転軸を軸支するプラネタリキャリア306とを備える。
【0054】
また、サンギア303は、サンギア軸304(即ち、本発明に係る「入力軸」の一例)を介してMG1のロータ(符合は省略)に結合され、リングギア301は、リングギア軸302(即ち、本発明に係る「駆動軸」の一例)を介してMG2の不図示のロータに結合されている。リングギア軸302は、車軸11と連結されており、MG2が発する動力は、リングギア軸302を介して車軸11へと伝達され、同様に車軸11を介して伝達される車輪12からの回転力は、リングギア軸302を介してMG2に入力される。
【0055】
係る構成の下、動力分割機構300は、エンジン200が発する動力を、プラネタリキャリア306とピニオンギア305とによってサンギア303及びリングギア301に所定の比率で分配し、エンジン200の動力を2系統に分割することが可能である。
【0056】
図1に戻り、インバータ400は、バッテリ500から取り出した直流電力を交流電力に変換してモータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2に供給すると共に、モータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2によって発電された交流電力を直流電力に変換してバッテリ500に供給することが可能に構成されている。尚、インバータ400は、所謂PCU(Power Control Unit)の一部として構成されていてもよい。
【0057】
バッテリ500はモータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2を力行するための電力に係る電力供給源として機能することが可能に構成された充電可能な蓄電池である。
【0058】
SOCセンサ600は、バッテリ500の充電残量(以下、適宜「SOC」と称する)を検出することが可能に構成されたセンサである。SOCセンサ600は、ECU100と電気的に接続されており、SOCセンサ600によって検出されたバッテリ500のSOCは、常にECU100によって把握される構成となっている。
【0059】
車速センサ700は、ハイブリッド車両10の車速を検出することが可能に構成されたセンサである。車速センサ900は、ECU100と電気的に接続されており、検出された車速は、ECU100によって常に把握される構成となっている。
【0060】
アクセルポジションセンサ800は、不図示のアクセルペダルに係るアクセル開度を検出することが可能に構成されたセンサである。アクセルポジションセンサ800は、ECU100と電気的に接続されており、検出されたアクセル開度はECU100によって絶えず把握される構成となっている。
【0061】
<1−1−2:エンジンの詳細構成>
次に、図3を参照して、エンジン200の要部構成について、その動作の一部を交えて説明する。ここに、図3は、エンジン200の模式図である。尚、図2において、図1と重複する箇所には同一の符合を付してその説明を適宜省略することとする。
【0062】
エンジン200は、気筒201内において燃焼室に点火プラグ(符号省略)の一部が露出してなる点火装置202による点火動作を介して混合気を燃焼せしめると共に、係る燃焼による爆発力に応じて生じるピストン203の往復運動を、コネクティングロッド204を介してクランクシャフト205の回転運動に変換することが可能に構成されている。また、クランクシャフト205近傍には、クランクシャフト205の回転位置(即ち、クランク角)を検出するクランクポジションセンサ206が設置されている。クランクポジションセンサ206は、ECU100と電気的に接続されており、ECU100は、クランクポジションセンサ206によって検出されたクランク角に基づいて、点火装置202の点火時期等を制御することが可能に構成されている。また、ECU100は、クランクシャフト205の回転位置に基づいてエンジン200の機関回転数Neを算出することが可能に構成されている。
【0063】
気筒201内における燃料の燃焼に際し、外部から吸入された空気は吸気管207を通過し、吸気ポート213において、インジェクタ214から噴射された燃料と混合されて前述の混合気となる。燃料は、燃料タンク215に貯留されており、低圧ポンプ217の作用により、デリバリパイプ216を介してインジェクタ214に圧送供給されている。インジェクタ214は、ECU100と電気的に接続されており、この供給される燃料を、ECU100の制御に従って吸気ポート213に噴射することが可能に構成されている。尚、燃料を噴射する噴射手段の形態は、図示するような所謂吸気ポートインジェクタの構成を採らずともよく、例えば、低圧ポンプにより圧送される燃料の圧力を更に高圧ポンプによって昇圧せしめ、高温高圧の気筒201内部へ燃料を直接噴射することが可能に構成された、所謂直噴インジェクタ等の形態を有していてもよい。
【0064】
尚、本実施形態に係るエンジン200は、燃料としてガソリンとアルコールとが混合されてなるアルコール混合燃料を使用可能であり、燃料中のアルコール比率が例えば0〜100%の間で変化しても動作するように構成されている。即ち、ハイブリッド車両10は、所謂FFV(Flexible Fuel Vehicle)の一例をなしている。
【0065】
気筒201内部と吸気管207とは、吸気バルブ218の開閉によって連通状態が制御されている。気筒201内部で燃焼した混合気は排気となり吸気バルブ218の開閉に連動して開閉する排気バルブ219の開弁時に排気ポート220を介して排気管221に導かれる。
【0066】
吸気管207上には、クリーナ208が配設されており、外部から吸入される空気が浄化される構成となっている。また、クリーナ208の下流側(シリンダ側)には更に、エアフローメータ209が配設されている。エアフローメータ209は、ホットワイヤー式と称される形態を有しており、吸入された空気の質量流量を直接検出することが可能に構成されている。尚、エアフローメータ209は、ECU100と電気的に接続されており、検出された吸入空気の質量流量は、ECU100によって絶えず把握される構成となっている。
【0067】
吸気管207におけるエアフローメータ209の下流側には、気筒201内部へ吸入される空気に係る吸入空気量を調節するスロットルバルブ210が配設されている。このスロットルバルブ210には、スロットルポジションセンサ212が電気的に接続されており、その開閉状態を表すスロットル開度を検出することが可能に構成されている。
【0068】
スロットバルブモータ211は、ECU100と電気的に接続され、スロットルバルブ210を駆動することが可能に構成されたモータである。ECU100は、前述したアクセルポジションセンサ800によって検出されるアクセル開度に基づいてスロットルバルブモータ211の駆動状態を制御することが可能に構成されており、これによりスロットルバルブ210の開閉状態(即ち、スロットル開度)が制御される構成となっている。
【0069】
尚、スロットルバルブ210は、上述したように一種の電子制御式スロットルバルブであり、スロットル開度は、ECU100により運転者の意思(即ち、アクセル開度)とは無関係に制御され得る。
【0070】
排気管221には、三元触媒223が設置されている。三元触媒223は、エンジン200から排出されるCO(一酸化炭素)、HC(炭化水素)、及びNOx(窒素酸化物)を夫々浄化することが可能な触媒である。また、排気管221における三元触媒223の上流側には、空燃比センサ222が配設されている。空燃比センサ222は、排気ポート220を介して排出される排気から、エンジン200の空燃比を検出することが可能に構成されている。空燃比センサ222は、ECU100と電気的に接続されており、検出された空燃比は、絶えずECU100によって把握される構成となっている。
【0071】
また、気筒201を収容するシリンダブロックに設置されたウォータージャケットには、エンジン200を冷却するための冷却水の温度を検出するための温度センサ224が配設されている。温度センサ224は、ECU100と電気的に接続されており、検出された冷却水温は、ECU100によって絶えず把握される構成となっている。
【0072】
<1−2:実施形態の動作>
<1−2−1:ハイブリッド車両10の基本動作>
図1のハイブリッド車両10においては、主として発電機として機能するモータジェネレータMG1、主として電動機として機能するモータジェネレータMG2、及びエンジン200の夫々の動力配分がECU100及び動力分割機構300により制御され、走行状態が制御される。以下に、幾つかの状況に応じたハイブリッド車両10の動作について説明する。
【0073】
<1−2−1−1:始動時>
例えば、ハイブリッド車両10の始動時においては、バッテリ500の電気エネルギを用いて駆動されるモータジェネレータMG1が電動機として機能する。この動力によってエンジン200がクランキングされエンジン200が始動する。
【0074】
<1−2−1−2:発進時>
発進時には、SOCセンサ600の出力信号に基づいたバッテリ500の蓄電状態に応じて2種類の態様を採り得る。例えば、通常の(即ち、SOCが良好な)発進時においては、モータジェネレータMG1によってバッテリ500を充電する必要は生じないため、エンジン200は暖機のためだけに始動し、ハイブリッド車両10は、モータジェネレータMG2の動力により発進する。一方、蓄電状態が良好ではない(即ち、SOCが低下している)場合、エンジン200の動力によりモータジェネレータMG1が発電機として機能し、バッテリ500が充電される。
【0075】
<1−2−1−3:軽負荷走行時>
例えば、低速走行時や緩やかな坂を下っている場合には、比較的エンジン200の効率が悪い為、インジェクタ214を介した燃料の噴射が停止されることによりエンジン200が停止され、ハイブリッド車両10は、モータジェネレータMG2による動力のみで走行する。尚、この際、SOCが低下していれば、エンジン200はモータジェネレータMG1を駆動するために始動し、モータジェネレータMG1によりバッテリ500の充電が行われる。
【0076】
<1−2−1−4:通常走行時>
エンジン200の効率(例えば、燃焼効率等)が比較的良好な運転領域においては、ハイブリッド車両10は主としてエンジン200の動力によって走行する。この際、エンジン200の動力は、動力分割機構300によって2系統に分割され、一方は、車軸11を介して車輪12に伝達され、他方は、モータジェネレータMG1を駆動して発電を行う。更に、この発電された電力により、モータジェネレータMG2が駆動され、モータジェネレータMG2によりエンジン200の動力がアシストされる。尚、この際、SOCが低下している場合には、エンジン200の出力を上昇させて、モータジェネレータMG1により発電された電力の一部がバッテリ500へ充電される。
【0077】
<1−2−1−5:制動時>
減速が行われる際には、車輪12から車軸11を介して伝達される動力によってモータジェネレータMG2を回転させ、発電機として動作させる。これにより、車輪12の運動エネルギが電気エネルギに変換され、バッテリ500が充電される、所謂「回生」が行われる。
【0078】
<1−2−2:エンジン200の基本制御>
次に、エンジン200の基本的な制御動作について説明する。ECU100は、エンジン200に要求される出力であるエンジン要求出力を、一定の周期で繰り返し演算している。この際、ECU100は、アクセルポジションセンサ800によって検出されるアクセル開度及び車速センサ700によって検出される車速に基づいて、予めROMに格納されたマップから現時点におけるアクセル開度及び車速に対応した出力軸トルク(車軸11に出力されるべきトルク)を算出する。
【0079】
更に、ECU100は、SOCセンサ600の出力信号に基づいて要求発電量を求め、要求発電量と各種の補機類(エアコンやパワーステアリング等)の要求量とを参照して出力軸トルクを補正することによって、エンジン要求出力を算出する。なお、エンジン要求出力の演算方法は公知のハイブリッド車両で実行されている通りでよく、その細部は必要に応じて種々変更されてよい。
【0080】
<1−2−3:噴射量制御処理の概要>
ハイブリッド車両10において、エンジン200に使用される燃料は、その燃料性状(例えば、アルコール含有比率等)が変化する。燃料性状が変化すると理論空燃比が変化し、より具体的には、アルコール含有比率が高い程理論空燃比は小さくなり、アルコール含有比率が低い程理論空燃比は大きくなる。或いは燃料が相対的に低発熱量の燃料であればエンジン200の出力は相対的に低下し、燃料が相対的に高発熱量の燃料であればエンジン200の出力は相対的に上昇する。
【0081】
一方、エンジン200では、基本的に燃料中のアルコール含有比率が0%であるとして、即ち基本的にガソリン100%の燃料が使用されるものとしてインジェクタ214による燃料の噴射量が計算されており、燃料性状が変化すると、エンジン200の実出力が要求出力に対し乖離する。例えばアルコール含有比率が増加すると、エアフローメータ209により検出される吸入空気量に対し相対的に少ない燃料が噴射されることになるから、実出力は要求出力に対して不足する。また、アルコールはガソリンと比較して発熱量が小さいから、ガソリンと同等の出力を得るためには必然的にガソリンよりも多く噴射される必要がある。尚、ここでは、エンジン200がアルコール混合燃料を使用可能なエンジンであるとし、燃料性状として燃料中のアルコール含有比率を例に挙げているが、ガソリンエンジンであっても、燃料性状は変化し得るから、同様の問題は、通常のガソリンエンジン等において同様に生じ得る。
【0082】
ここで、図4を参照し、燃料性状によるエンジン200の実出力の変化について説明する。ここに、図4は、エンジン200の動作領域を表すマップの模式図である。
【0083】
図4において、縦軸にはエンジントルクTRが、また横軸には機関回転数NEが表されている。このような二次元の座標系において、エンジン200は基本的に図示動作線R上に位置する動作点で動作する。動作線Rは、例えば実出力毎に燃費率が最小となる動作点を繋ぎ合わせてなる線であり、要求出力が算出されると、基本的に動作点が一意に決定される。例えば、ある要求出力Pw1に対しては、図示等出力線EQPw1と動作線Rとの交点に相当する座標点R1が動作点として設定される。ECU100は、エンジン200がこの動作点で動作するように、MG1及びMG2の動作状態を制御する。
【0084】
一方、燃料性状が変化した場合、例えば、エンジン200に、相対的に高発熱量の燃料が供給されている場合、エンジン200の実出力はPw2(Pw2>Pw1)となり、要求出力よりも過剰となって、エンジン200の動作点が、図示等出力線EQPw2上の座標点R2となる。また、エンジン200に相対的に低発熱量の燃料が供給されている場合、エンジン200の実出力はPw3(Pw3<Pw1)とんり、要求出力よりも低下して、エンジン200の動作点が、図示等出力線EQPw3上の座標点R3となる。
【0085】
このように、燃料性状の変化は、エンジン200の実出力に大きく影響し、運転者の意思が出力に反映されずにドライバビリティの悪化を招く要因となるため、迅速且つ正確に検出される必要がある。また、燃料性状の変化に対する実出力の変化はリアルタイムであり、燃料性状の変化を検出して実際の燃料噴射量にフィードバックする間にも実出力の変動、即ちエンジン200の出力異常は継続しているから、このような燃料性状の変化の検出と同時に、エンジン200の出力異常の補正を行う必要がある。そこで、ハイブリッド車両10では、ECU100が以下に説明する噴射量制御処理を実行することにより、燃料性状の変化を迅速且つ正確に検出し、更にエンジン200の実出力の異常が好適に補償されている。
【0086】
<1−2−3:噴射量制御処理の詳細>
ここで、図5を参照し、噴射量制御処理の詳細について説明する。ここに、図5は、噴射量制御処理のフローチャートである。
【0087】
図5において、ECU100は、エンジン200の出力の要求値である要求出力Pwnを算出する(ステップA10)。要求出力Pwnは、既に述べたように、アクセルポジションセンサ800によって検出されるアクセル開度と、車速センサ700によって検出される車速とに基づいて算出される。
【0088】
次に、ECU100は、エンジン200の実出力Pwrを算出する(ステップA11)。ここで、エンジン200の実出力Pwrは、MG1により検出されるエンジン200の反力トルクに基づいて算出される。即ち、動力分割機構300の作用により、エンジン200がクランクシャフト205に出力するトルク(即ち、動力)は、サンギア303及びリングギア301等の歯数等により定まる所定の比率でサンギア軸304に分配される。この分配されたトルクが、MG1により反力トルクとして検出される。即ち、MG1はこの際、一種のトルクセンサとして機能することとなる。ECU100は、このMG1により検出される反力トルクからエンジン200が実際に出力しているトルクを正確に算出することが可能である。
【0089】
一方、エンジン200の機関回転数NEは、クランクポジションセンサ206から出力される信号に基づいて絶えず演算されており、ECU100はステップA11に係る処理において、算出されたエンジントルクと機関回転数とに基づいて、エンジン200の実出力Pwrを正確に算出することが可能である。
【0090】
実出力Pwrが算出されると、ECU100は出力過不足量ΔPw(ΔPw=Pwn−Pwr)を算出する(ステップA12)。出力過不足量ΔPwを算出すると、ECU100は更に、算出された出力過不足量ΔPwが上限値ΔPwH未満且つ下限値ΔPwL以上であるか、即ち、出力過不足量ΔPwが所定の範囲内に収まっているか否かを判別する(ステップA13)。ここで、上限値ΔPwH及び下限値ΔPwLは、夫々ライバビリティの悪化を顕在化させない程度の出力変動範囲を規定する値に設定されており、出力過不足量ΔPwが当該範囲内に収まっている場合には、燃料性状の変化を燃料噴射量にフィードバックする必要性は実質的に生じない。或いは、係る上限値及び下限値は、実際に燃料性状の変化が生じておらずとも発生し得る程度の出力変動の範囲を規定していてもよく、この場合、誤って燃料性状が変化している旨の推定を行うことが防止される。
【0091】
従って、算出された出力過不足量ΔPwが当該範囲内にある場合(ステップA13:YES)、ECU100は、燃料性状の推定及びエンジン200の出力異常を補償することなく、通常の走行制御を継続し(ステップA14)、処理をステップA10に戻して、要求出力Pwrの算出処理を繰り返す。
【0092】
一方、出力過不足量ΔPwが上限値及び下限値によって規定される範囲内に無い場合(ステップA13:NO)、ECU100は、出力過不足量ΔPwが上限値ΔPwH以上であるか否かを判別する(ステップA15)。出力過不足量ΔPwが上限値ΔPwH以上である場合(ステップA15:YES)、即ち、エンジン200の実出力Pwrが要求出力Pwnに対して不足している場合、ECU100は、エンジン200の現時点での燃料が、相対的にみて低発熱量の燃料である旨の燃料性状の推定を行う(ステップA16)。
【0093】
一方、出力過不足量ΔPwが上限値ΔPw以上でない場合(ステップA15:NO)、即ち、出力過不足量ΔPwが下限値ΔPwL未満である場合、ECU100は、エンジン200の実出力Pwrが要求出力Pwnに対し過剰であるため、燃料が相対的にみて高発熱量である旨の燃料性状の推定を行う(ステップA19)。
【0094】
ここで、ステップA16に係る処理により低発熱量の燃料である旨の推定がなされた場合、ECU100は、要求出力Pwnに対し不足する動力をMG2のトルクによってアシストすべく、MG2を制御する(ステップA17)。この結果、ハイブリッド車両10全体としては、リングギア軸301に要求出力Pwnに対応する動力が出力される状態となり、エンジン200の出力異常が補償され、ドライバビリティの悪化が速やかに改善される。
【0095】
また、ECU100は、ステップA19に係る処理により高発熱量の燃料である旨の推定がなされた場合、要求出力Pwnに対して過剰な動力をMG1によって吸収し、MG1により発電を行う(ステップA20)。この結果、ハイブリッド車両10全体としては、リングギア軸301に要求出力Pwnに対応する動力が出力される状態となり、エンジン200の出力異常が補償され、ドライバビリティの悪化が速やかに改善される。
【0096】
ステップA17又はステップA20に係る処理が実行されると、ECU100は、ステップA12に係る処理で得られた出力過不足量ΔPwを実際の燃料噴射量に反映させる(ステップA18)。この際、ECU100のROMには、予め出力過不足量と燃料性状との対応関係が記述されたマップが格納されており、ECU100は、当該マップから該当する数値を選択することにより、例えば、ガソリンの噴射量に数値演算的な補正処理を施すための補正量、又は燃料の成分比率、或いは単位量当りに得られる発熱量等の指標値を取得し、取得した指標値に基づいた数値演算の結果として燃料噴射量を補正する。この結果、燃料の噴射量は、現時点における燃料性状を正確に反映した値となり、要求出力Pwnに対するエンジン200の実出力Pwrの差分は、少なくとも減少する。好適にはゼロ或いは無視し得る小さな値となる。尚、ステップA18に係る処理が実行されると、処理はステップA10に戻り、一連の処理が繰り返される。
【0097】
尚、この際、噴射量の補正に係る補正値等は、例えばRAM等に適宜更新可能に記憶される。従って、燃料性状が例えば経時的に連続して発生しても、噴射量はその変化に追随して絶えず最適な量の燃料が噴射される。
【0098】
以上説明したように、本実施形態に係るハイブリッド車両10によれば、モータジェネレータMG1によるトルクの吸収及びモータジェネレータMG2によるトルクのアシストにより、要求出力Pwnに対する実出力Pwrの過不足量が補償されるため、燃料性状が変化したとしてもエンジン200の出力異常がドライバビリティの悪化を誘発する可能性は極低いものとなる。更に、当該過不足量に基づいて燃料性状を迅速且つ正確に推定することが可能となる。即ち、燃料性状の変化がエンジン200の出力異常を招く期間を極短期間に留めることが可能となる。
<2:第2実施形態>
第1実施形態では、要求出力Pwnに対する実出力Pwrの過不足量を、MG1によるトルクの吸収、及びMG2によるトルクアシストにより補償し、燃料性状の推定期間中におけるドライバビリティの悪化が抑制されているが、例えば、バッテリ500のSOCが例えば所定の上限値を超えた過充電状態に相当する場合、MG1によるトルクの吸収は実質的に不可能となる。また、同様にSOCが所定の下限値を下回った電力不足の状態では、MG2によるトルクのアシストが実質的に不可能となる。このような場合には、ECU100が出力過不足量ΔPwに基づいて燃料を推定し、実際の燃料噴射量に反映させるのに要する時間が相対的にみて短時間であったとしても、エンジン200の出力異常がドライバビリティの悪化を招く可能性がある。
【0099】
そこで、図6を参照し、そのような場合に好適な本発明の第2実施形態について説明する。ここに、図6は、本発明の第2実施形態に係るエンジン900の模式図である。尚、同図において、図3と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
【0100】
図6において、エンジン900は、タービン225及びコンプレッサ226を含むターボチャージャ(即ち、本発明に係る「過給器」の一例)を備える点において主として第1実施形態に係るエンジン200と相違している。
【0101】
即ち、エンジン900において、排気管221に排出された排気の一部は、タービン225に流入し、タービン225をその圧力に応じて回転せしめる。タービン225の回転軸は、タービン225と対向配置されたコンプレッサ226と同軸に構成されており、タービン225が排気によって回転すると、それに伴いコンプレッサ226も回転し、過給が行われる構成となっている。また、吸気管207上には、吸入空気を冷却するためのインタークーラ227が設置されており、コンプレッサ226による過給効率が向上せしめられている。
【0102】
一方、排気管221には、タービン225をバイパスするように排気バイパス管(符号省略)が設けられており、係る排気バイパス管上には、ウェストゲートバルブ228(以下、適宜「WGV228」と称する)が設置されている。WGV228は、ECU100と電気的に接続された、ECU100の制御により開閉する電磁開閉弁であり、その弁開度或いは開弁期間に応じた量の排気を、タービン225を介することなく排気バイパス管を介して排出することが可能に構成されている。このため、エンジン900では、WGV228の開閉状態に応じて、過給圧の調整が可能となっている。即ち、WGV228は、本発明に係る「過給圧調整手段」の一例である。尚、エンジン900は、過給圧調整手段として、WGV228に代えて、或いは加えて、排気絞り弁や可変絞りノズル(VN)等を備えていてもよい。この場合、弁を絞ること等によってタービン225に流入する排気の量を減少せしめ、或いは弁を開くことによってタービン225に流入する排気の量を増加せしめ、過給圧を調整することが可能となる。
【0103】
次に、図7を参照し、このようなエンジン900を有するハイブリッド車両における噴射量制御処理の詳細について説明する。ここに、図7は、本発明の第2実施形態に係る噴射量制御処理のフローチャートである。尚、同図において、図5と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
【0104】
図7において、低発熱量の燃料である旨の推定がなされると(ステップA16)、ECU100は、ターボチャージャの目標過給圧Paを増加補正し、エンジン900における過給圧を増加させる(ステップB10)。この際、ECU100は、不図示の過給圧センサによって検出される過給圧が係る増加補正された目標過給圧PaとなるようにWGV228の開度を調整する。この結果、エンジン900の実出力Pwrが上昇する。
【0105】
但し、ターボチャージャによる実出力Pwrの制御は、MG1及びMG2によるトルクの制御と比較すれば精度が悪いから、実際に出力過不足量ΔPwを完全に補償することは難しい。そこで、ステップB10に係る処理によってエンジン900の実出力Pwrが上昇せしめられた後、ECU100は、過給圧制御によって補償しきれない出力過不足量を、MG2にトルクをアシストさせることにより補償する(ステップB11)。このため、ステップB10に係る処理では、算出された出力過不足量ΔPwの一部が補償されるように、即ち、不足するトルクの一部がアシストされるように、WGV228の開度が制御されてもよい。
【0106】
或いは、ECU100は、その時点のバッテリ500のSOCに応じて、SOCが良好であれば上述した制御を実行し、SOCが良好でなければWGV228による過給圧制御によって出力過不足量ΔPwよりも大きな出力補償を行って、過剰な動力をMG1による発電に供することによってSOCの回復に努めてもよい。更には、ECU100は、ステップB10に係る処理を実行した後、一旦処理をステップA11に戻し、実出力Pwrの算出、出力過不足量ΔPwの算出及び出力過不足量ΔPwの比較判別を順次実行してもよい。
【0107】
一方、ステップA19に係る処理により高発熱量の燃料である旨の推定がなされると、ECU100は、ターボチャージャの目標過給圧Paを減少補正し、エンジン900における過給圧を減少させる(ステップB12)。この際、ECU100は、不図示の過給圧センサによって検出される過給圧が係る減少補正された目標過給圧PaとなるようにWGV228の開度を調整する。この結果、エンジン900の実出力Pwrが低下する。
【0108】
但し、ターボチャージャによる実出力Pwrの制御は、MG1及びMG2によるトルクの制御と比較すれば精度が悪いから、実際に出力過不足量ΔPwを完全に補償することは難しい。そこで、ステップB12に係る処理によってエンジン900の実出力Pwrが低下せしめられた後、ECU100は、過給圧制御によって補償しきれない出力過不足量を、MG1にトルクを吸収させることにより補償する(ステップB13)。このため、ステップB12に係る処理では、算出された出力過不足量ΔPwの一部が補償されるように、即ち、過剰なトルクの一部が減少するように、WGV228の開度が制御されてもよい。
【0109】
或いは、ECU100は、その時点のバッテリ500のSOCに応じて、SOCが低下していれば上述した制御を実行し、SOCが良好であれば、WGV228による過給圧制御によって出力過不足量ΔPwよりも大きな出力補償を行って、不足する動力をMG2によるトルクのアシストによって補償してもよい。更には、ECU100は、ステップB12に係る処理を実行した後、一旦処理をステップA11に戻し、実出力Pwrの算出、出力過不足量ΔPwの算出及び出力過不足量ΔPwの比較判別を順次実行してもよい。
【0110】
以上説明したように、第2実施形態に係る噴射量制御処理では、バッテリ500のSOCを考慮することなく、WGV228による過給圧制御によって、燃料性状の変化に応じたエンジン900の出力異常を補償することが可能となる。また、過給圧制御による精度の限界を超えた微小な出力補償については、MG1によるトルクの吸収及びMG2によるトルクのアシストにより実現することが可能となる。即ち、より効率的に且つ効果的に、燃料性状の変化によりもたらされるドライバビリティの悪化を抑制することが可能となるのである。
【0111】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うハイブリッド車両の制御装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明の第1実施形態に係るハイブリッド車両のブロック図である。
【図2】図1のハイブリッド車両における動力分割機構とその周辺部の関係を示す模式図である。
【図3】図1のハイブリッド車両におけるエンジンの模式図である。
【図4】エンジンの動作領域を表すマップの模式図である。
【図5】ECUが実行する噴射量制御処理のフローチャートである。
【図6】本発明の第2実施形態に係るエンジンの模式図である。
【図7】図6のハイブリッド車両においてECUが実行する噴射量制御処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0113】
10…ハイブリッド車両、100…ECU、200…エンジン、201…気筒、203…ピストン、205…クランクシャフト、214…インジェクタ、225…タービン、226…コンプレッサ、228…ウェストゲートバルブ、300…動力分割機構、301…リングギア、303…サンギア、306…プラネタリキャリア、500…バッテリ、600…SOCセンサ、700…車速センサ、800…アクセルポジションセンサ、900…エンジン。MG1、MG2…モータジェネレータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を供給する供給手段を備えると共に車軸に連結された駆動軸に対し動力を出力可能な内燃機関、前記駆動軸に動力を出力可能な電動機、前記内燃機関の動力の一部により発電可能な発電機、及び該発電により得られる電力により充電可能なバッテリを備えたハイブリッド車両において、前記供給される燃料に係る燃料性状を推定するハイブリッド車両の燃料性状推定装置であって、
前記内燃機関における、要求出力に対する実出力の過不足量を特定する特定手段と、
前記駆動軸に前記要求出力に対応する動力が出力されるように前記特定される過不足量に応じて前記電動機及び前記発電機を制御する第1の制御手段と、
前記過不足量に基づいて前記燃料性状を推定する推定手段と
を具備することを特徴とするハイブリッド車両の燃料性状推定装置。
【請求項2】
前記ハイブリッド車両は、前記内燃機関の動力を入力軸及び前記駆動軸に夫々所定の比率で分配する動力分配手段を更に具備し、
前記発電機には、前記内燃機関の動力の一部として前記入力軸を介して前記分配された動力が入力され、
前記電動機は、前記バッテリから供給される電力又は前記発電により得られる電力により駆動され、
前記特定手段は、前記入力軸を介して入力される前記分配された動力に基づいて前記過不足量を特定する
ことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の燃料性状推定装置。
【請求項3】
前記第1の制御手段は、前記要求出力に対し前記実出力が不足する場合に前記駆動軸に動力が出力されるように前記電動機を制御すると共に、前記要求出力に対し前記実出力が過剰な場合に前記内燃機関の動力の一部が前記発電に供されるように前記発電機を制御する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のハイブリッド車両の燃料性状推定装置。
【請求項4】
前記内燃機関は、排気の圧力による過給が可能な過給器、及び該過給器における過給圧を調整可能な過給圧調整手段を更に備え、
前記第1の制御手段は、前記駆動軸に前記要求出力に応じた動力が出力されるように前記特定された過不足量に応じて前記過給圧調整手段を制御する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のハイブリッド車両の燃料性状推定装置。
【請求項5】
前記過給圧調整手段は、開閉状態に応じて前記過給器に流入する前記排気の量を調整可能な開閉弁を含む
ことを特徴とする請求項4に記載のハイブリッド車両の燃料性状推定装置。
【請求項6】
前記第1の制御手段は、前記特定された過不足量に応じて前記過給圧調整手段を制御した後、前記駆動軸に前記要求出力に応じた動力が出力されるように前記電動機及び前記発電機を更に制御する
ことを特徴とする請求項4又は5に記載のハイブリッド車両の燃料性状推定装置。
【請求項7】
前記推定手段は、前記特定された過不足量が所定の上限値以上である場合、及び所定の下限値未満である場合のうち少なくとも一方において前記燃料性状を推定する
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のハイブリッド車両の燃料性状推定装置。
【請求項8】
前記推定された燃料性状に基づいて前記燃料の供給量を補正する補正手段と、
該補正された燃料が供給されるように前記供給手段を制御する第2の制御手段と
を更に具備することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のハイブリッド車両の燃料性状推定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−120266(P2008−120266A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−306902(P2006−306902)
【出願日】平成18年11月13日(2006.11.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】