説明

表示素子用配線、これを利用した薄膜トランジスタ基板及びその製造方法

【課題】 物理的に接着力が向上し、電気的には接触抵抗が良好な特性を有する表示素子用配線及びこれを利用した薄膜トランジスタ基板並びにその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 表示素子用配線を、低融点金属の合金元素が少なくとも一つ以上合金されているAg合金で形成する。液晶表示パネルにおいて、このような表示素子用配線を用いてゲート配線22,24,26及びデータ配線65,66,68を形成すれば、接触部で他の導電物質と連結される過程で腐食が発生して素子の特性を低下させるのを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は表示素子用配線及びこれを利用した薄膜トランジスタ基板並にその製造方法に係わり、特に、液晶表示装置に用いられる表示素子用配線とこれを利用した薄膜トランジスタ基板及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、半導体装置における配線は信号が伝達される手段として用いられるため、信号遅延を最少化することが要求される。
【0003】特に、液晶表示装置に用いられる薄膜トランジスタ基板は、大面積化と高精細化によって低抵抗配線の必要性が重要視されている。現在、信号遅延を防止するために表示素子の配線物質としては低抵抗を有する金属物質、特にAl(アルミニウム)またはAl合金のような金属物質を用いるのが一般的である。
【0004】しかし、AlまたはAl合金の配線は物理的または化学的特性が弱いため、接触部で他の導電物質と連結される過程で腐食が発生して素子の特性を低下させるという問題点がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明が目的とする技術的課題は、物理的に接着力が向上し、電気的には接触抵抗が良好な特性を有する表示素子用配線及びこれを利用した薄膜トランジスタ基板並びにその製造方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】このような課題を解決するために本発明では、低融点金属元素が合金されたAg合金で表示素子用配線を形成し、このような配線を薄膜トランジスタ基板に採用する。
【0007】詳しくは、本発明による表示素子用配線は、低融点金属元素を合金元素とし、前記合金元素が少なくとも一つ以上合金されているAg合金で形成されている。
【0008】ここで、合金元素は1.5E−12cm2/sec以上の拡散係数を有したり、または1500K以下の融点を有することが望ましい。また、Ag合金に合金されている合金元素はAg合金に20at%以下の構成比率を有するようにすることが好ましく、合金元素としてはLi、Mg、Al、Sm、あるいはMnであり得る。また、Ag合金は反射用液晶表示装置の反射電極に用いることができる。
【0009】また、このような表示素子用配線を用いて構成される薄膜トランジスタ基板には、低融点金属元素を合金元素とし、前記合金元素が少なくとも一つ以上合金されているAg合金で形成されたゲート電極及びゲート線を含むゲート配線が形成されており、ゲート配線に絶縁するように交差するソース電極、ドレーン電極及びデータ線を含むデータ配線が形成されている。ソース電極とドレーン電極に接触されており、ゲート電極、ソース電極及びドレーン電極と共に薄膜トランジスタを構成する半導体層が形成されており、ドレーン電極には画素電極が連結されている。ここで、データ配線は低融点金属元素を合金元素とし、前記合金元素が少なくとも一つ以上合金されているAg合金で形成されることが好ましい。
【0010】この時、配線を構成するAg合金層の合金元素は1.5E−12cm2/sec以上の拡散係数を有したり、または1500K以下の融点を有することが望ましい。また、Ag合金に合金されている合金元素は20at%以下の構成比率を有するようにするのが好ましいが、合金元素としてはLi、Mg、Al、Sm、あるいはMnが利用できる。
【0011】ここで、第1の構造を有する薄膜トランジスタ基板はゲート配線が絶縁基板の上に形成され、ゲート配線を覆うゲート絶縁膜をさらに含み、ゲート絶縁膜の上に半導体層が形成され、半導体層の上にソース電極とドレーン電極が接触されており、データ配線を覆う保護膜をさらに含み、保護膜にドレーン電極を露出する接触孔をさらに含み、接触孔を介して画素電極がドレーン電極に連結されている構造を有することができる。
【0012】この時、半導体層は水素化非晶質ケイ素で形成されることができ、ゲート配線の表面に形成される酸化膜をさらに含むことができる。また、ソース電極と半導体層の間及びドレーン電極と半導体層の間に介される合金元素の酸化膜をさらに含むことができる。
【0013】また、第2の構造を有する薄膜トランジスタ基板は、半導体層が絶縁基板の上に形成されるが、ソース領域、ドレーン領域及びチャンネル領域を含み、半導体層を覆うゲート絶縁膜をさらに含み、ゲート絶縁膜の上にゲート配線が形成され、ゲート配線を覆う層間絶縁膜をさらに含み、層間絶縁膜とゲート絶縁膜にソース領域とドレーン領域を各々露出する接触孔をさらに含み、層間絶縁膜の上にはデータ配線があって、ソース電極が半導体層のソース領域に、ドレーン電極が半導体層のドレーン領域に各々連結され、データ配線を覆う保護膜をさらに含み、保護膜にドレーン電極を露出する接触孔をさらに含み、接触孔を介して画素電極がドレーン電極に連結される構造を有することができる。
【0014】この時、半導体層は多結晶ケイ素で形成されることができ、ソース電極と半導体層の間及びドレーン電極と半導体層の間に介される合金元素の酸化膜をさらに含むことができる。
【0015】本発明による前記第1の構造を有する薄膜トランジスタ基板を製造するために、絶縁基板の上に低融点金属元素を合金元素とし、前記合金元素が少なくとも一つ以上合金されているAg合金を用いてゲート電極及びゲート線を含むゲート配線を形成し、ゲート配線を覆うゲート絶縁膜を形成する。次に、ゲート絶縁膜の上に半導体層を形成し、半導体層の上にソース電極、ドレーン電極及びデータ線を含むデータ配線を形成する。次に、データ配線を覆う保護膜を形成し、保護膜にドレーン電極の少なくとも一部を露出する接触孔を形成した後、接触孔を介してドレーン電極に連結される画素電極を形成する。この時、データ配線を低融点金属元素を合金元素とし、前記合金元素が少なくとも一つ以上合金されているAg合金で形成することが好ましい。
【0016】ここで、ゲート配線またはデータ配線は含有酸素濃度が5000ppm以下であるAg合金ターゲットをスパッタリングしてAg合金層を蒸着し、Ag合金層を写真エッチングして形成することができる。また、保護膜形成のための熱処理工程は200℃以上で進行させることが好ましいが、保護膜形成のための熱処理工程の際、データ配線となるAg合金層の合金元素が半導体層の上に自然に形成される酸化ケイ素膜と反応して、合金元素の酸化膜を形成することができる。
【0017】また、本発明による前記第2の構造を有する薄膜トランジスタ基板を製造するために絶縁基板の上に半導体層を形成し、半導体層を覆うゲート絶縁膜を形成する。次に、ゲート絶縁膜の上に低融点金属元素を合金元素とし、前記合金元素が少なくとも一つ以上合金されているAg合金を用いてゲート電極及びゲート電極に連結されるゲート線を含むゲート配線を形成し、半導体層に不純物をドーピングしてソース領域及びドレーン領域を形成し、チャンネル領域を定義する。次に、ゲート配線を覆う層間絶縁膜を形成し、層間絶縁膜とゲート絶縁膜にソース領域とドレーン領域とを各々露出する接触孔を形成し、ソース領域に連結されるソース電極、ドレーン領域に連結されるドレーン電極及びデータ線を含むデータ配線を形成する。次に、データ配線を覆う保護膜を形成し、保護膜にドレーン電極を露出する接触孔を形成した後、接触孔を介してドレーン電極に連結される画素電極を形成する。この時、データ配線を低融点金属元素を合金元素とし、前記合金元素が少なくとも一つ以上合金されているAg合金で形成することができる。
【0018】ここで、ゲート配線またはデータ配線は含有酸素濃度が5000ppm以下であるAg合金ターゲットをスパッタリングしてAg合金層を蒸着し、Ag合金層を写真エッチングして形成することが好ましい。保護膜形成のための熱処理工程は200℃以上で進行させることが好ましいが、この時、データ配線をなすAg合金層の合金元素が半導体層の上に自然に存在する酸化ケイ素膜と反応して、合金元素の酸化膜を形成することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、添付した図面を参考として本発明の実施例による表示素子用配線、これを利用した薄膜トランジスタ基板及びその製造方法について詳細に説明する。
【0020】大面積、高解像度液晶表示装置において、低抵抗金属配線の開発は絶対的に要求されている。したがって、金属のうち最も低い比抵抗を有するAg材料に対する工程の開発は非常に大きな関心を受けている。
【0021】しかし、液晶表示装置に適合したAg材料の配線工程の開発のためには、Agの材料的な問題点と共に工程で要求される問題に対する解決がまず要求されている。
【0022】Agはガラスに対する接着力が劣り、化学的雰囲気(H2SO4、NaCl、KOH)で材料特性が低下しやすいという短所がある。これを解決するために、合金元素(alloying element)をAgに添加する方法は非常に効率的であるといえる。
【0023】まず、図1乃至図8を参照してAg合金の特性について説明する。
【0024】図1はAg、AgAl、AgMg及びCrの接着力テスト結果を示したグラフである。ガラス基板の上に厚さ1μmの薄膜をスパッタリングで積層した後、スクラッチテスター(scratch tester)で接着力(adhesion)を測定したものである。
【0025】スクラッチテスターとは、試料を所定の角度に傾くようにした後、ダイアモンドチップで表面を掻く時に出る音波(acoustic emission)を測定する道具である。波形は薄膜が破裂される時にピークを示し、この時の荷重(ロード)が臨界ロード(critical load)であって、薄膜と基板との接着力を示す数値として用いられる。
【0026】グラフで臨界ロードを見てみれば、Agが20Nであり、AgMgが25Nを示している。また、AgAlとCrは35N以下のロードではピークを見せていない。従って、AgにMg、Alなどの合金元素を添加したAg合金で基板の上に配線を形成すれば、基板との接着力を純銀Agに比して、改善させることができることが分かる。
【0027】下の表1はAg、AgAl、AgMgのアニールによる比抵抗変化を示したものである。
【0028】AgMgの場合、Alに近い比抵抗を示している。AgAlの場合、Alの含量が多くて比抵抗が高いが、Alの含量を低くすれば比抵抗を十分低くすることができる。
【0029】
【表1】


【0030】図1と表1によれば、AgにMgやAlのような合金元素を適切な割合で添加して配線を形成すれば、基板との接着力を改善できるとともに比抵抗もAgに近くすることができることが分かる。
【0031】図2乃至図5は、Ag合金ターゲットを用いてAg合金層/ケイ素酸化膜/ケイ素膜構造をアニール前後にオージェ分析(AES:Auger Electron Spectroscopy)で分析したデータを示したものである。
【0032】図2はAgMg配線を蒸着する当時の試片をAES分析した結果を示したグラフであり、図3はAgMg配線を400℃において真空熱処理した後の試片をAES分析した結果を示したグラフであり、図4はAgAl配線を蒸着しただけの試片をAES分析した結果を示したグラフであり、図5はAgAl配線を400℃において真空熱処理した後の試片をAES分析した結果を示したグラフである。
【0033】グラフで横軸のスパッタエッチ時間を見れば、アニールする前は8min、アニールした後にはは20minになっているが、これはアニールする前は表面の付近のみ測定し、アニールした後には界面まで深く測定した結果を示したものである。
【0034】AgMgまたはAgAlのスパッタリングは150℃において実施したが、スパッタリング直後にもAg合金層の表面に合金元素の酸化膜、つまりMgOまたはAl23が形成されることが分かる。
【0035】真空中400℃での熱処理によってMgまたはAlが界面へ移動して、界面の酸素と共にMgOまたはAl23を形成することが分かる。また、酸素はアニールする前にも表面に現れることから、Ag合金の蒸着温度だけでも表面に析出されることが分かる。
【0036】このような結果は合金元素、つまりMgまたはAlの速い拡散速度と表面析出効果に起因したことである。特に、Mgに対するデータを見ると、アニールした後にはMgが表面と界面のみに現れるようになることから、析出効果が大きいことが分かる。
【0037】前記のデータに対する理論的背景として図6aと図6bのような模式図を考えることができる。
【0038】図6aに示したように、Agに合金元素としてMgを添加して作り出したAgMgを酸素雰囲気で熱処理を実施すれば、図6bに示したように合金元素が表面に移動してMgOを形成する。
【0039】また、Mgは界面にも移動してSiO2と反応してMgOを形成するが、これを式(1)のような反応式で示すことができる。
2Mg+SiO2→2MgO+Si,ΔH298=−143.7(Kcal/mol)……(1)
【0040】配線薄膜自体では合金元素が枯渇されて、純粋なAgに近い低い比抵抗を有するようになる。
【0041】このように、Ag合金層の表面と界面では合金元素が主成分である新たな化合物層、つまり合金元素の酸化膜が形成される。この酸化膜はAg合金層の上・下部の膜または基板との接着力を向上させる。特に、下部膜がケイ素膜である場合、このような酸化膜はAg合金層とケイ素膜の間の接触抵抗を低くし、Ag合金層のAgがケイ素膜に拡散することを抑制するので、Ag合金層とケイ素膜とが安定的に接触できるようにする。
【0042】前記のような反応はガラスが耐えられる低い温度でならなければならず、また、Ag合金層の合金元素を十分に枯渇させてAgの比抵抗を十分低くしなければならないので、高い拡散速度を有する合金元素の選択が重要である。
【0043】本発明ではAg合金層における合金元素の拡散速度と融点が非常に密接な関係にあることを勘案して、Ag合金層内で合金元素が表面と界面へ十分に移動する拡散速度を計算してこれに基づいて融点を計算し、これに対応する合金元素を決定することにする。
【0044】例えば、合金元素の拡散が250℃基準に行われており、0.3μm厚さのAg配線薄膜を10分間で移動することができる元素を選択すると、拡散距離(characteristic diffusion length)は、(Dt)1/2=0.3μm……(2)となる。この時、Dは拡散係数を、tは時間を示す。
【0045】式(2)によってD=1.5E−12cm2/secになるので、拡散係数がこの数値以上を有する合金元素を選択することが好ましい。
【0046】一方、0.5×Tm(Tm:合金元素の溶融点)より低い温度で粒子界面拡散が全体拡散を支配するので、T<0.5×Tm……(3) にならなければならない。この時、Tは現在温度を、Tmは合金元素の融点を示す。
【0047】また、面心立方格子(FCC)の結晶構造を有する金属において、その拡散係数は式(4)に従う。
D=0.3×exp(−8.5×Tm/T)cm2/sec……(4)
【0048】このような条件を考えれば、合金元素が有するべき融点と拡散係数値の領域を規定することができる。
【0049】図7は式(4)をグラフに示したものである。温度Tには523K(250℃)を代入した。グラフにおいて、x軸は融点Tm、y軸は拡散係数Dを示す。
【0050】グラフから分かるように、合金元素が1.5E−12cm2/sec以上の拡散係数を現すためには、融点Tmは1500K以下でなければならない。
【0051】図8は、合金元素として好適な融点とエンタルピー(enthalpy)値の領域(左下のブロック)を示したグラフである。
【0052】この領域は、前記で得た融点である1500Kより低い融点を有し、酸化ケイ素膜に比べて酸化膜形成エネルギーが大きな元素を表示したものである。
【0053】一般に、低融点金属元素は低い表面エネルギーを有していて表面析出が大きくなる傾向がある。従って、図8に示したように、Li、Mg、Al、Sm、Mnなどを合金元素として考慮することができる。
【0054】配線材料に用いられるAg合金はAgとLi、Mg、Al、Sm、Mnなどのような合金元素間の2元系合金以外に、これら元素間の3元系または4元系合金までも含むことができる。
【0055】この時、合金元素の構成比率はAg合金の比抵抗を考慮して総量で20at%以下になるようにする。例えば、Ag−a−b−cの4元系合金を考慮する場合のa、b、cの構成比率は0.1at%≦a≦20at%、0.1at%≦b≦20at%、0.1at%≦c≦20at%、a+b+c≦20at%とすることが好ましい。
【0056】詳述した説明によれば、適切な合金元素、例えばLi、Mg、Al、Sm、Mnが添加されたAg合金で大画面表示装置に適合した低抵抗配線を形成することができる。また、このようなAg合金で配線を形成する場合にはそれと接触する接触層との接着力と接触抵抗を向上させることができ、界面の安定性を確保することができる。
【0057】そして、このようなAg合金を用いて反射形液晶表示装置の反射電極を形成することも可能である。
【0058】以下では、このような物理的特性を有するAg合金配線を適用した薄膜トランジスタ基板及びその製造方法について、図面を参照して詳細に説明する。
【0059】まず、前記第1構造について図9及び図10R>0を参考として本発明の第1実施例による薄膜トランジスタ基板の構造について説明する。
【0060】図9は本発明の第1実施例による薄膜トランジスタ基板の配置図であり、図10は図9に示した薄膜トランジスタ基板をX−X'線に沿って示した断面図である。
【0061】絶縁基板10の上に低抵抗を有するAg合金からなるゲート配線22、24、26が形成されている。ゲート配線は横方向に延びているゲート線22、ゲート線22の端に連結されていて外部からゲート信号を受けてゲート線22に伝達するゲートパッド24及び薄膜トランジスタ用ゲート電極26を含む。
【0062】ゲート配線22、24、26に用いられるAg合金には、Li、Mg、Al、Sm、Mnのように高い拡散係数を有する低融点金属元素が合金されている。この時、Ag合金に合金された元素は1.5E−12cm2/sec以上の拡散係数(250℃のAgに対して)を有したり、または1500K以下の融点を有することが好ましい。
【0063】ここで、ゲート配線22、24、26に用いられるAg合金はAgとLi、Mg、Al、Sm、Mnなどのような合金元素間の2元系合金以外に、これら元素間の3元系または4元系合金までも含むことができる。この時、これら合金元素がAg合金で20at%以下の構成比率を有するようにすることが好ましい。
【0064】以下の配線に用いられるAg合金は詳述したゲート配線のためのAg合金と物理的及び化学的特性が同一であるので、これに対する説明は省略する。
【0065】すでに言及したようにAg合金はガラス基板との接着力が良いため、ゲート配線22、24、26はパターンが浮き上がることなく良好に基板10に接着される。
【0066】基板10の上には、窒化ケイ素などのゲート絶縁膜30がゲート配線22、24、26を覆っている。
【0067】ゲート電極26上のゲート絶縁膜30上部には水素化非晶質ケイ素などの物質からなる半導体層40が島形に形成されており、半導体層40の上部にはn形不純物が高濃度にドーピングされている水素化非晶質ケイ素などの物質からなる抵抗性接触層55、56が形成されている。
【0068】そして、金属酸化膜510が抵抗性接触層55、56の上に形成されている。この時、金属酸化膜510としては後述のデータ配線に含まれる物質にしたがってMgO、Al23、Li2Oなどが形成される。例えば、データ配線がAgMgまたはAgAlからなる場合には金属酸化膜としてMgOまたはAl23が形成される。
【0069】金属酸化膜510及びゲート絶縁膜30の上には、低抵抗を有するAg合金の金属物質からなるデータ配線62、65、66、68が形成されている。
【0070】データ配線62、65、66、68に用いられるAg合金もゲート配線22、24、26と同様に、Li、Mg、Al、Sm、Mnのような高い拡散係数を有する低融点金属元素が合金元素として合金されて形成されている。
【0071】データ配線62、65、66、68は、縦方向に形成されてゲート線22と交差して画素を定義するデータ線62、データ線62の分枝であり、抵抗接触層55上端の金属酸化膜510の上部まで延びているソース電極65、データ線62の一端に連結されており、外部からの画像信号の印加を受けるデータパッド68、ソース電極65と分離されており、ゲート電極26に対してソース電極65の反対側抵抗接触層56の上部に形成されているドレーン電極66を含む。
【0072】このような構造で金属酸化膜510が、データ配線62、65、66、68をなすAg合金層と抵抗性接触層55,56をなすケイ素層の間に形成されていて、二つの層の接触抵抗を低くすると同時に二つの層の接着力を向上させ、Ag合金層のAgがケイ素層へ拡散することを抑制する。
【0073】データ配線62、65、66、68の上には、窒化ケイ素からなる保護膜70が形成されている。
【0074】保護膜70には、ドレーン電極66及びデータパッド68を各々露出する接触孔76、78が形成されており、ゲート絶縁膜30と共にゲートパッド24を露出する接触孔74が形成されている。
【0075】保護膜70の上には、接触孔76を介してドレーン電極66と電気的に連結されており画素に位置する画素電極82が形成されている。また、保護膜70の上には接触孔74、78を介して各々ゲートパッド24及びデータパッド68と連結されている補助ゲートパッド86及び補助データパッド88が形成されている。ここで、画素電極82と補助ゲート及びデータパッド86、88は、ITO(indium tin oxide)またはIZO(indium zinc oxide)からなる。
【0076】それでは、このような本発明の第1実施例による薄膜トランジスタ基板の製造方法について、図9及び図10と図11a乃至図15bを参考として詳細に説明する。
【0077】まず、図11a及び11bに示したように、基板10の上に高い拡散係数を有する低融点金属元素を合金元素とするAg合金からなるAg合金層を蒸着しパターニングして、ゲート線22、ゲート電極26及びゲートパッド24を含むゲート配線22、24、26を形成する。
【0078】このように、Ag合金で形成されるゲート配線22、24、26は低抵抗特性を維持することができ、ガラス基板との接着特性が良好である。
【0079】液晶表示装置の工程で要求される低い工程温度は、合金元素の高い拡散係数を要求している。したがって酸化性向の大きい合金元素がAg合金層内部で酸化を起こせないように、合金層内の酸素温度を最小限低くすることが要求される。合金元素がAg合金層内部で酸化を起こすようになると、合金元素の拡散速度が遅くなって詳述したような効果が得られないためである。従って、ゲート配線のためのAg合金層を蒸着する過程でAg合金ターゲット内の酸素濃度を5000ppm以下に制限することが好ましい。また、炭素、窒素の濃度も5000ppm以下に制限することが有利である。
【0080】以下の配線に用いられるAg合金層の形成方法は詳述したゲート配線のためのAg合金層の形成方法と同一であるので、これに対する説明は省略する。
【0081】その後、200℃以上の酸素雰囲気下で熱処理を通じてゲート配線22、24、26の表面に金属酸化膜(図示せず)を形成することができる。この時、ゲート配線22、24、26がAgMgで形成された場合にはMgOがこの界面に形成され、AgAlで形成された場合にはAl23が形成される。この場合、熱処理を通じて合金元素が表面及び界面に拡散するので、配線の比抵抗は減少し、基板との接着力は向上する。これに対する説明は既に図2乃至図6bを参照して説明したようである。
【0082】このようなゲート配線の熱処理は別途に行わなくても後続工程である絶縁膜蒸着工程で自然に行われる。
【0083】次に、図12a及び図12bに示したように、窒化ケイ素からなるゲート絶縁膜30、水素化非晶質ケイ素膜40、不純物がドーピングされた水素化非晶質ケイ素膜50の三重膜を連続して積層し、マスクを用いた写真エッチング工程で水素化非晶質ケイ素膜40と不純物がドーピングされた水素化非晶質ケイ素膜50をパターニングして、ゲート電極24上部のゲート絶縁膜30の上に島形の半導体層40と抵抗接触層50を形成する。
【0084】次に、図13a乃至図13bに示したように、抵抗性接触層55、56及びゲート絶縁膜30の上に高い拡散係数を有する低融点金属元素からなるAg合金で形成されたAg合金層を蒸着した後、マスクを用いた写真工程でパターニングして、データ配線62、65、66、68を形成する。データ配線62、65、66、686は、ゲート線22と交差するデータ線62と、データ線62と連結されてゲート電極26上部まで延びているソース電極65と、データ線62の一端に連結されているデータパッド68と、ソース電極65と分離されており、ゲート電極26を中心にソース電極65と対向するドレーン電極66とを含んでいる。
【0085】次に、ソース電極65とドレーン電極66をマスクとしてその間に露出された抵抗性接触層をエッチングして、各々ソース電極65に接触される抵抗性接触層55とドレーン電極66に接触される抵抗性接触層56に分離する。
【0086】次に、図14a及び14bのように、窒化ケイ素のような無機絶縁膜を積層して保護膜70を形成する。この時、保護膜70を200℃以上の温度範囲で積層するのが好ましい。
【0087】保護膜70を形成する工程で、ソース電極65と抵抗性接触層55及び半導体層40のようなケイ素膜との間、及び、ドレーン電極66と抵抗性接触層56及び半導体層40のようなケイ素膜との間に金属酸化膜510が形成されることができる。
【0088】金属酸化膜510が形成されるのは、データ配線62、65、66、68を形成するためのAg合金層を形成する前にケイ素膜55、56、40の上に自然に形成される自然酸化膜である酸化ケイ素膜に起因する。
【0089】保護膜工程の際の熱処理を通じてデータ配線62、65、66、68のAg合金の合金元素が界面に拡散して、酸化ケイ素膜を緻密な組織の合金元素の酸化膜510に作る。データ配線62、65、66、68がAgMgで形成された場合にはMgOがこの界面に形成され、AgAlで形成された場合にはAl23が形成される。
【0090】このような合金元素の酸化膜510はデータ配線62、65、66、68とケイ素膜40、55、56の界面で二つの層の接触抵抗を低くし、二つの層の接着力を向上させる役割を果たすなど、安定した界面特性を有するようにする。また、データ配線62、65、66、68は配線自体内で合金元素が枯渇され、純粋なAgの特性に近くなって比抵抗が小さくなるという長所がある。
【0091】通常の場合、データ配線を形成する前にケイ素膜40、50表面にHF洗浄を実施するが(図12b参照)、HF洗浄をしなくても合金元素の酸化によって半導体層及び抵抗性接触層40、55、56のようなケイ素膜とそれに接触するソース電極及びドレーン電極65、66の接触特性を向上させることができる。この時、ケイ素膜の上にCVD(Chemical Vapor Deposition)による酸化ケイ素膜を30Å以下に蒸着した後、これを用いることもできる。
【0092】次に、図15a乃至図15bに示したようにマスクを用いた写真エッチング工程でゲート絶縁膜30と共にパターニングして、ゲートパッド24、ドレーン電極66及びデータパッド68を露出する接触孔74、76、78を形成する。
【0093】次に、ITOまたはIZO膜を積層しマスクを用いたパターニングを実施して、接触孔76を介してドレーン電極66と連結される画素電極82と接触孔74、78を介してゲートパッド24及びデータパッド68と各々連結される補助ゲートパッド86及び補助データパッド88を各々形成する。
【0094】このような本発明の実施例による薄膜トランジスタ基板の構造では、ゲート配線とデータ配線が低抵抗を有するAg合金で形成されているため、信号遅延防止の観点で大画面高精細の液晶表示装置への適用に有利であり、各々の配線とその上下部に位置する配線層との接触抵抗を低くし接着力を向上させ得るなどの界面特性を向上させることができる。
【0095】本発明の配線の接触構造及び製造方法は、多結晶ケイ素薄膜トランジスタを用いる薄膜トランジスタ基板にも適用することができる。
【0096】以下では、図16及び図17を参考として本発明の第2実施例による薄膜トランジスタ基板の構造について詳細に説明する。
【0097】図16は本発明の第2実施例による薄膜トランジスタ基板の配置図であり、図17は図16に示した薄膜トランジスタ基板をXVII−XVII'線に沿って示した断面図である。
【0098】絶縁基板100の上に多結晶ケイ素からなる半導体層121が島形に形成されている。半導体層121にはチャンネル領域122、高濃度不純物領域であるソース領域125とドレーン領域126、そしてチャンネル領域122とソース領域125の間及びチャンネル領域122とドレーン領域126の間に位置する低濃度不純物領域であるLDD領域123、124が形成されている。
【0099】LDD領域123、124は多結晶ケイ素からなる半導体層を備えた薄膜トランジスタがOFF状態で発生する漏れ電流を最少化するために、チャンネル領域122と高濃度不純物領域125、126の間に位置させた抵抗層である。
【0100】絶縁基板100の上には窒化ケイ素などからなるゲート絶縁膜130が半導体層121を覆っている。
【0101】そして、ゲート絶縁膜130の上には、高い拡散係数を有する低融点金属元素を合金元素とするAg合金からなるゲート配線が形成されている。ゲート配線はゲート線141、ゲート線141の端に連結されており、外部からのゲート信号の印加を受けてゲート線141に伝達するゲートパッド142及びゲート線141に連結されるとともに半導体層121のチャンネル領域122に対応するゲート電極143を含む。
【0102】このように、ゲート配線をAg合金で形成する場合には低抵抗特性を維持することができ、下部層との界面特性が良好であるので安定した界面特性を維持することができる。
【0103】そして、ゲート配線141、142、143を窒化ケイ素などからなる層間絶縁膜150が覆っている。
【0104】また、層間絶縁膜150とゲート絶縁膜130にはソース領域125を露出する接触孔161と、ドレーン領域126を露出する接触孔162とが形成されている。
【0105】なお、層間絶縁膜150の上にはゲート配線141、142、143のように高い拡散係数を有する低融点金属元素を合金元素とするAg合金からなるデータ配線171、172、173、174が形成されている。データ配線はゲート線141と交差して画素を定義するデータ線171、データ線171の端部に延びるデータパッド172、データ線171から突出して半導体層121のソース領域125に接触されるソース電極173と、ソース電極173に対応して半導体層121のドレーン領域126に接触されるドレーン電極174を含む。
【0106】そして、ソース電極173とこれに接触する半導体層121のソース領域125の界面、及び、ドレーン電極174とこれに接触する半導体層121のドレーン領域126の界面には合金元素の金属酸化膜510が形成されている。
【0107】この時、金属酸化膜510としてはデータ配線用物質の材質にしたがってMgO、Al23、Li2Oなどが形成される。例えば、データ配線がAgMgまたはAgAlからなる場合には金属酸化膜としてMgOまたはAl23が形成される。
【0108】金属酸化膜510はソース電極173とドレーン電極174をなすAg合金層と半導体層121をなすケイ素層との間に形成されて、その界面で二つの層の接触抵抗を低くし二つの層の接着力を向上させ、Ag合金層173、174のAgがケイ素層121に拡散することを抑制するバリヤー兼界面クリーナとしての役割を果たしている。
【0109】このようなデータ配線171、172、173、174を窒化ケイ素からなる保護膜180が覆っている。
【0110】保護膜180にはドレーン電極174及びデータパッド172を各々露出する接触孔192、193が形成されており、層間絶縁膜150と共にゲートパッド142を露出する接触孔193が形成されている。
【0111】そして、保護膜180の上には接触孔191を介してドレーン電極174と電気的に連結されており、画素に位置する画素電極201が形成されている。また、保護膜180の上には接触孔192、193を介して各々データパッド172及びゲートパッド142と連結されている補助データパッド202及び補助ゲートパッド203が形成されている。ここで、画素電極201と補助データ及びゲートパッド172、142はlTOまたはIZOからなる。
【0112】以下では、このような本発明の第2実施例による薄膜トランジスタ基板の製造方法について、図16R>6及び図17と図18a乃至図22bを参考として詳細に説明する。
【0113】まず、図18a乃至図18bに示したように、絶縁基板100の上に多結晶ケイ素層を形成した後、マスクを用いた写真エッチング工程を進行して島形の半導体層121を形成する。
【0114】この時、多結晶ケイ素層は基板の上に非晶質ケイ素層を蒸着した後、レーザーアニーリングあるいは高温固形状化などのようなケイ素結晶化技術によって非晶質ケイ素を結晶化して形成することができる。
【0115】次に、図19a乃至図19bに示したように、半導体層121を覆うゲート絶縁膜130と高い拡散係数を有する低融点金属元素が合金されているAg合金からなるAg合金層を蒸着しパターニングして、ゲート線141、ゲートパッド142及びゲート電極143を含むゲート配線を形成する。
【0116】次に、図20a乃至図20bに示したように、半導体層121に高濃度不純物領域であるソース領域125とドレーン領域126及び低濃度不純物領域であるLDD領域123、124を形成する。この時、ゲート電極143に重なって不純物がドーピングされない半導体層121部分はチャンネル領域122で定義される。
【0117】半導体層121に不純物領域123、124、125、126を形成するためには、ゲート電極143をマスクとしてn形不純物を低濃度にドーピングする低濃度不純物ドーピング工程を行って、チャンネル領域122を除いた半導体層121部分を低濃度にドーピングする。次に、ゲート電極143とその周辺部、つまり半導体層121のチャンネル領域122及びLDD領域123、124で定義される部分を覆うドーピングマスクを形成した後、n形不純物を高濃度にドーピングする高濃度不純物ドーピング工程をおこなって、ドーピングマスクによってブロッキングされない半導体層121の端部部分を高濃度にドーピングする。
【0118】この時、低濃度にドーピングされた後に再び高濃度にドーピングされた半導体層121の端部部分は高濃度不純物領域であるソース領域125とドレーン領域126となり、低濃度にドーピングされてドーピングマスクによって高濃度にドーピングされない部分は、低濃度不純物領域であるLDD領域123、124となり、不純物がドーピングされない部分はチャンネル領域122となる。
【0119】前記では低濃度不純物ドーピング工程後にドーピングマスクを使用する高濃度不純物ドーピング工程を実施したが、これらの順序を変えて進行しても差支えない。
【0120】次に、図21a乃至図21bに示したように、ゲート配線141、142、143を含む基板の前面を覆った層間絶縁膜150を形成する。次に、層間絶縁膜150とゲート絶縁膜130を写真エッチング工程によってパターニングして、ソース領域125を露出する接触孔161とドレーン領域126を露出する接触孔162を形成する。
【0121】次に、その上にゲート配線と同様に高い拡散係数を有する低融点金属元素が合金されているAg合金からなるAg合金層を蒸着しパターニングして、データ配線171、172、173、174を形成する。データ配線171、172、173、174は、ゲート線141と交差するデータ線171と、データ線171と連結されて接触孔161を介してソース領域125に連結されるソース電極173と、データ線141の一端に連結されているデータパッド172と、ソース電極173と分離されており、接触孔162を介してドレーン領域126に連結されるドレーン電極174とを含んでいる。
【0122】次に、図22a乃至図22bに示したように、窒化ケイ素のような無機絶縁膜を積層して保護膜180を形成する。この時、保護膜180を200℃以上の温度範囲で積層することが好ましい。
【0123】保護膜180を形成するための熱工程で、ソース電極173と半導体層121との間、及び、ドレーン電極174と半導体層121との間に金属酸化膜510が形成されることができる。このように、金属酸化膜510が形成されるのはデータ配線171、172、173、174を形成するためのAg合金層を形成する前に、半導体層121の上に自然に形成される自然酸化膜である酸化ケイ素膜に起因する。
【0124】保護膜工程時の熱処理を通じてデータ配線171、172、173、174のAg合金の合金元素が界面に拡散し、酸化ケイ素膜を緻密な組織の合金元素の酸化膜510を作る。データ配線171、172、173、174がAgMgで形成された場合にはMgOがこの界面に形成され、AgAlで形成された場合にはAl23が形成される。
【0125】このような合金元素の酸化膜510はデータ配線171、172、173、174と半導体層121の界面で二つの層の接触抵抗を低くし、二つの層の接着力を向上させる役割を果たすなどの安定した界面特性を有するようにする。
【0126】次に、図23a乃至図23bに示したように、マスクを用いた写真エッチング工程で保護膜180をパターニングして、ドレーン電極174を露出する接触孔191とデータパッド172を露出する接触孔192、保護膜180と層間絶縁膜150を共にパターニングして、ゲートパッド142を露出する接触孔193を形成する。
【0127】最後に、ITO膜またはIZO膜を積層しマスクを用いたパターニングを実施して、接触孔191を介してドレーン電極174と連結される画素電極201と、接触孔192を介してデータパッド172に連結される補助データパッド202と、接触孔193を介してゲートパッド142を覆う補助ゲートパッド203とを各々形成する。
【0128】このような本発明の第2実施例による薄膜トランジスタ基板でもゲート配線とデータ配線は低抵抗を有するAg合金で形成されているため、大画面高精細の液晶表示装置への適用が有利であり、それぞれの配線とその上下部に位置する配線層との接触抵抗などの界面特性を向上させることができる。
【0129】図24はAg合金で形成された電極を採用する薄膜トランジスタの電気的特性を示したグラフである。
【0130】Ag合金で2000〜4000Åのゲート電極を形成し、SiNxで4500Åのゲート絶縁膜を形成し、a−Siで500Åの半導体層を形成し、n+a−Siで2500Åの抵抗性接触層を形成し、Ag alloyで2000〜4000Åのソース及びドレーン電極を形成して製造した、薄膜トランジスタのゲート電圧によるドレーンの電流を測定して示したものである。
【0131】オフ電流はゲート電圧が−5Vの時に0.1pAであるが、オン電流はゲート電圧が20Vの時に1.6μAを示している。オフ電流に対するオン電流の比は107を示していることから、オン電流/オフ電流特性が優れていることが分かる。
【0132】このような実験結果は、本発明が電気的特性に優れた薄膜トランジスタを提供できることを提示している。
【0133】
【発明の効果】前述したように、本発明は適切な合金元素が添加されたAg合金の配線を形成することにより、低抵抗配線を形成できるので大画面高精細の製品の特性を向上させることができ、上部及び下部の接触物質層との接触抵抗を少なくさせることができ、界面の安定性を確保することができ、かつ信頼性のある液晶表示装置を製作することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】Ag、AgAl、AgMg及びCrの接着力テスト結果を示すグラフである。
【図2】AgMg配線を蒸着する当時の試片をオージェ(AES)分析した結果を示すグラフである。
【図3】AgMg配線を400℃において真空熱処理した後の試片をAES分析した結果を示すグラフである。
【図4】AgAl配線を蒸着する当時の試片をAES分析した結果を示すグラフである。
【図5】AgAl配線を400℃において真空熱処理した後の試片をAES分析した結果を示すグラフである。
【図6a】合金配線に熱処理を通じて表面と界面に酸化膜が形成される過程を示すものである。
【図6b】合金配線に熱処理を通じて表面と界面に酸化膜が形成される過程を示すものである。
【図7】合金元素として好適な溶解点と拡散係数値の領域を示すたグラフである。
【図8】合金元素として好適な溶解点とエンタルピー値の領域を示すグラフである。
【図9】本発明の第1実施例による薄膜トランジスタ基板の配置図である。
【図10】図9に示した薄膜トランジスタ基板をX−X'線に沿って示す断面図である。
【図11a】本発明の第1実施例によって製造する最初の段階における薄膜トランジスタ基板の配置図である。
【図11b】図11aにおいてXIb−XIb'線に沿って切断して示す断面図である。
【図12a】図11aの次の段階での薄膜トランジスタ基板の配置図である。
【図12b】図12aにおいてXIIb−XIIb'線に沿って切断して示す断面図である。
【図13a】図12aの次の段階での薄膜トランジスタ基板の配置図である。
【図13b】図13aにおいてXIIIb−XIIIb'に沿って切断して示す断面図である。
【図14a】図13aの次の段階での薄膜トランジスタ基板の配置図である。
【図14b】図14aにおいてXIVb−XIVb'線に沿って切断して示す断面図である。
【図15a】図14aの次の段階での薄膜トランジスタ基板の配置図である。
【図15b】図15aにおいてXVb−XVb'線に沿って切断して示す断面図である。
【図16】本発明の第2実施例による薄膜トランジスタ基板の配置図である。
【図17】図16に示した薄膜トランジスタ基板を、XVII−XVII'線に沿って示す断面図である。
【図18a】本発明の第2実施例によって製造する最初の段階における薄膜トランジスタ基板の配置図である。
【図18b】図18aにおいてXVIIIb−XVIIIb'線に沿って切断して示す断面図である。
【図19a】図18aの次の段階での薄膜トランジスタ基板の配置図である。
【図19b】図19aにおいてXIXb−XIXb'線に沿って切断して示す断面図である。
【図20a】図19aの次の段階での薄膜トランジスタ基板の配置図である。
【図20b】図20aにおいてXXb−XXb'線に沿って切断して示す断面図である。
【図21a】図20aの次の段階での薄膜トランジスタ基板の配置図である。
【図21b】図21aにおいてXXIb−XXIb'線に沿って切断して示す断面図である。
【図22b】図21aの次の段階での薄膜トランジスタ基板の配置図である。
【図22b】図22aにおいてXXIIb−XXIIb'線に沿って切断して示す断面図である。
【図23a】図22aの次の段階での薄膜トランジスタ基板の配置図である。
【図23b】図23aにおいてXXIIIb−XXIIIb'線に沿って切断して示す断面図である。
【図24】本発明によって製造される薄膜トランジスタ基板における薄膜トランジスタのオン/オフ電流特性を示すグラフである。
【符号の説明】
10、100 絶縁基板
22、141 ゲート線
24、142 ゲートパッド
26、143 ゲート電極
30、130 ゲート絶縁膜
40、121 半導体層
50、55、56 抵抗接触層
62、171 データ線
65、173 ソース電極
66、174 ドレーン電極
68、172 データパッド
70、180 保護膜
74、76、78、161、162、191、192、193 接触孔
82、201 画素電極
86、203 補助ゲートパッド
88、202 補助データパッド
122 チャンネル領域
123、124 LDD領域
125 ソース領域
126 ドレーン領域
150 層間絶縁膜
510 金属酸化膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】低融点金属元素を合金元素とし、前記合金元素が少なくとも一つ以上合金されているAg合金で形成された、表示素子用配線。
【請求項2】前記合金元素は1.5E−12cm2/sec以上の拡散係数を有する、請求項1に記載の表示素子用配線。
【請求項3】前記合金元素は1500K以下の融点を有する、請求項1に記載の表示素子用配線。
【請求項4】前記合金元素は前記Ag合金の20at%以下の構成比率を有する、請求項1に記載の表示素子用配線。
【請求項5】前記合金元素はLi、Mg、Al、Sm、あるいはMnのいずれかである、請求項1に記載の表示素子用配線。
【請求項6】前記Ag合金が反射形液晶表示装置の反射電極に用いられる、請求項1に記載の表示素子用配線。
【請求項7】低融点金属元素を合金元素とし、前記合金元素が少なくとも一つ以上合金されているAg合金で形成されたゲート電極及びゲート線を含むゲート配線と、前記ゲート配線に絶縁するように交差するソース電極、ドレーン電極及びデータ線を含むデータ配線と、前記ソース電極とドレーン電極に接触されており、前記ゲート電極、前記ソース電極及び前記ドレーン電極と共に薄膜トランジスタを構成する半導体層と、前記ドレーン電極に連結される画素電極と、を含む薄膜トランジスタ基板。
【請求項8】前記データ配線は、低融点金属元素を合金元素とし、前記合金元素が少なくとも一つ以上合金されているAg合金で形成されている、請求項7に記載の薄膜トランジスタ基板。
【請求項9】前記合金元素は1.5E−12cm2/sec以上の拡散係数を有する、請求項7に記載の薄膜トランジスタ基板。
【請求項10】前記合金元素は1500K以下の融点を有する、請求項7に記載の薄膜トランジスタ基板。
【請求項11】前記合金元素は20at%以下の構成比率を有する、請求項7に記載の薄膜トランジスタ基板。
【請求項12】前記合金元素はLi、Mg、Al、Sm、あるいはMnのいずれかである、請求項7に記載の薄膜トランジスタ基板。
【請求項13】前記ゲート配線が形成される絶縁基板と、前記半導体層が形成され、前記ゲート配線が覆われるゲート絶縁膜と、前記データ配線を覆うと共に、前記画素電極を前記ドレイン電極に連結するための接触孔を有する保護膜とをさらに含み、前記半導体層の上に前記ソース電極と前記ドレーン電極とが接触されている、請求項7に記載の薄膜トランジスタ基板。
【請求項14】前記半導体層は水素化非晶質ケイ素で形成される、請求項13に記載の薄膜トランジスタ基板。
【請求項15】前記ゲート配線の表面に形成される酸化膜をさらに含む、請求項13に記載の薄膜トランジスタ基板。
【請求項16】前記ソース電極と前記半導体層との間、及び、前記ドレーン電極と前記半導体層との間に介される前記合金元素の酸化膜をさらに含む、請求項13に記載の薄膜トランジスタ基板。
【請求項17】前記半導体層は、ソース領域、ドレーン領域及びチャンネル領域を含み、前記半導体層が表面に形成された絶縁基板と、前記ゲート配線が表面に形成され、前記半導体層を覆うと共に、前記ソース領域と前記ドレーン領域を各々露出する第1接触孔及び第2接触孔が形成されたゲート絶縁膜と、前記ゲート配線を覆うとともに、前記第1接触孔及び前記第2接触孔に各々連続した第3接触孔及び第4接触孔が形成された層間絶縁膜と、前記データ配線を覆うと共に、前記画素電極を前記ドレーン電極に接続するための接触孔を有する保護膜とをさらに含み、前記ソース電極は、前記第1及び第3接触孔を介して前記ソース領域に連結され、前記ドレーン電極は、前記第2及び第4接触孔を介して前記ドレーン領域に連結される、請求項7に記載の薄膜トランジスタ基板。
【請求項18】前記半導体層は多結晶ケイ素で形成される、請求項17に記載の薄膜トランジスタ基板。
【請求項19】前記ソース電極と前記半導体層との間、及び、前記ドレーン電極と前記半導体層との間に介される前記合金元素の酸化膜をさらに含む、請求項17に記載の薄膜トランジスタ基板。
【請求項20】絶縁基板の上に低融点金属元素を合金元素とし、前記合金元素が少なくとも一つ以上合金されているAg合金を用いてゲート電極及びゲート線を含むゲート配線を形成する段階と、前記ゲート配線を覆うゲート絶縁膜を形成する段階と、前記ゲート絶縁膜の上に半導体層を形成する段階と、前記半導体層の上にソース電極、ドレーン電極及びデータ線を含むデータ配線を形成する段階と、前記データ配線を覆う保護膜を形成する段階と、前記保護膜に前記ドレーン電極を露出する接触孔を形成する段階と、前記接触孔を介して前記ドレーン電極に連結される画素電極を形成する段階とを含む、薄膜トランジスタ基板の製造方法。
【請求項21】前記データ配線は低融点金属元素を合金元素とし、前記合金元素が少なくとも一つ以上合金されているAg合金で形成する、請求項20に記載の薄膜トランジスタ基板の製造方法。
【請求項22】前記ゲート配線は、含有酸素濃度が5000ppm以下であるAg合金ターゲットをスパッタリングしてAg合金層を蒸着し、前記Ag合金層を写真エッチングして形成する、請求項20に記載の薄膜トランジスタ基板の製造方法。
【請求項23】前記データ配線は、含有酸素濃度が5000ppm以下であるAg合金ターゲットをスパッタリングしてAg合金層を蒸着し、前記Ag合金層を写真エッチングして形成する、請求項20に記載の薄膜トランジスタ基板の製造方法。
【請求項24】前記保護膜形成のための熱処理工程は200℃以上で進行させる、請求項23に記載の薄膜トランジスタ基板の製造方法。
【請求項25】前記保護膜形成のための熱処理工程の際、前記データ配線を成すAg合金の合金元素が前記半導体層の上に自然に形成される酸化ケイ素膜と反応して前記合金元素の酸化膜を形成する、請求項24に記載の薄膜トランジスタ基板の製造方法。
【請求項26】絶縁基板の上に半導体層を形成する段階と、前記半導体層を覆うゲート絶縁膜を形成する段階と、前記ゲート絶縁膜の上に低融点金属元素を合金元素とし、前記合金元素が少なくとも一つ以上合金されているAg合金を用いてゲート電極及びゲート電極に連結されるゲート線を含むゲート配線を形成する段階と、前記半導体層に不純物をドーピングしてソース領域及びドレーン領域を形成し、チャンネル領域を定義する段階と、前記ゲート配線を覆う層間絶縁膜を形成する段階と、前記層間絶縁膜と前記ゲート絶縁膜に、前記ソース領域と前記ドレーン領域を各々露出する接触孔を形成する段階と、前記ソース領域に連結されるソース電極、前記ドレーン領域に連結されるドレーン電極及びデータ線を含むデータ配線を形成する段階と、前記データ配線を覆う保護膜を形成する段階と、前記保護膜に前記ドレーン電極を露出する接触孔を形成する段階と、前記接触孔を介して前記ドレーン電極に連結される画素電極を形成する段階と、を含む薄膜トランジスタ基板の製造方法。
【請求項27】前記データ配線は低融点金属元素を合金元素とし、前記合金元素が少なくとも一つ以上合金されているAg合金で形成する、請求項26に記載の薄膜トランジスタ基板の製造方法。
【請求項28】前記ゲート配線は、含有酸素濃度が5000ppm以下であるAg合金ターゲットをスパッタリングしてAg合金層を蒸着し、前記Ag合金層を写真エッチングして形成する、請求項26に記載の薄膜トランジスタ基板の製造方法。
【請求項29】前記データ配線は、含有酸素濃度が5000ppm以下であるAg合金ターゲットをスパッタリングしてAg合金層を蒸着し、前記Ag合金層を写真エッチングして形成する、請求項27に記載の薄膜トランジスタ基板の製造方法。
【請求項30】前記保護膜形成のための熱処理工程は200℃以上で進行させる、請求項29に記載の薄膜トランジスタ基板の製造方法。
【請求項31】前記保護膜形成のための熱処理工程の際、前記データ配線をなすAg合金の合金元素が前記半導体層の上に自然に存在する酸化ケイ素膜と反応して前記合金元素の酸化膜を形成する、請求項30に記載の薄膜トランジスタ基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6a】
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【図11b】
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【図5】
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【図6b】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図18a】
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【図10】
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【図11a】
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【図12a】
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【図12b】
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【図13a】
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【図13b】
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【図14a】
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【図14b】
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【図15a】
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【図15b】
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【図17】
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【図16】
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【図18b】
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【図19a】
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【図19b】
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【図20a】
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【図20b】
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【図24】
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【図21a】
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【図21b】
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【図22a】
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【図22b】
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【図23a】
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【図23b】
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【公開番号】特開2002−151434(P2002−151434A)
【公開日】平成14年5月24日(2002.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−231153(P2001−231153)
【出願日】平成13年7月31日(2001.7.31)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【Fターム(参考)】