説明

半導体装置の製造方法及び半導体装置

【課題】絶縁膜の比誘電率を容易かつ十分に低下させる。
【解決手段】半導体装置の製造方法では、それぞれ環状SiO構造を主骨格とし互いに構造が異なる2種類以上の有機シロキサン化合物原料を混合した後で気化する。又は、それら2種類以上の有機シロキサン化合物原料の混合と気化とを一度に行うことによって、気化ガスを生成する。そして、その気化ガスをキャリアガスとともに反応炉に輸送する。そして、反応炉にてその気化ガスを用いたプラズマCVD法又はプラズマ重合法によって多孔質絶縁膜を成膜する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン半導体集積回路(以下、LSI)において、かつては導電材料としてアルミニウム(Al)またはAl合金が広く用いられてきた。そして、LSIの微細化の進行に伴い、配線抵抗の低減と配線の高信頼化のために、導電材料として銅(Cu)が使用されるようになってきた。Cuはシリコン酸化膜中に容易に拡散するため、一般に、Cu配線の側面および底面には、Cuの拡散を防止する導電性バリアメタル膜が用いられ、Cu配線の上面には、絶縁性バリア膜が用いられる。
【0003】
近年のLSIの微細化に伴って、配線寸法も微細化が進み、配線間容量の増大が問題となってきている。このため、層間絶縁膜として、多孔質低誘電率膜の導入が進められている。半導体装置の多層配線の層間絶縁膜を低誘電率化することにより、信号伝達速度の高速化と、駆動電力の低電力化を図ることができるためである。
【0004】
層間絶縁膜の低誘電率化には、層間絶縁膜にポロジェンを導入しそれを脱離させることにより層間絶縁膜の空孔率を高めたり、層間絶縁膜中にハイドロカーボンを導入する試みがなされている。低誘電率膜は、例えばHSQ(ハイドロゲンシルセスキオキサン(Hydrogen Silsesquioxane))膜、CDO(カーボンドープトオキサイド(Carbon doped oxide))膜あるいは有機膜などである。これら低誘電率膜は、回転塗布法や気相法などにより形成される。
【0005】
近年、複数の原料を用いて比誘電率の低い層間絶縁膜を成膜する成膜方法が報告されている。
【0006】
特許文献1には、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法によって絶縁膜を形成する方法において、環状シロキサン原料と、環状有機シロキサン原料を構成する化学構造の一部を含む直鎖状原料と、の混合ガスを用いる多孔質絶縁膜の形成方法が記載されている。
【0007】
特許文献2には、3員環有機シロキサン原料ガスと4員環有機シロキサン原料ガスを反応チャンバー内で混合し、プラズマCVDあるいはプラズマ重合法によって高強度・高密着強度の絶縁膜を得る方法が記載されている。
【0008】
特許文献3には、シルセシキオキサン化合物とカップリング剤とを反応させて、低いk値の誘電体物質を得る方法が記載されている。
【0009】
特許文献4、5にも、それぞれ特定の構造の化合物を用いて低誘電率膜を成膜する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2007/032261号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2008/010591号パンフレット
【特許文献3】特開2003−045870号公報
【特許文献4】特開2006−005206号公報
【特許文献5】特開2008−263022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1の技術では、環状有機シロキサン原料を構成する化学構造の一部を含む直鎖状原料が、高次のSi−O−Si結合を形成してしまうため、膜中にSiO酸化膜ライクな部分(k値が4程度)が形成され、比誘電率を十分に下げることが困難である。
【0012】
特許文献2の技術では、複数の環状シロキサン原料を個々に気化した後にガス状態で混合するため、それに伴いキャリアガス流量が多くなってしまう。キャリアガス流量の増加により、プラズマ中における励起イオン種が多くなるため、原料から側鎖が解離したり、環状骨格構造が開環したりする。これにより膜中に含まれる炭化水素が減少したり、環状骨格構造起因の空孔導入量が減少したりしてしまうため、やはり、比誘電率を十分に下げることが困難である。
【0013】
特許文献3の技術で用いられるシルセスキオキサン原料は常温よりも融点が高いことが多く、原料として使うためには、溶媒を用いて溶解させる必要がある。しかしながら、この溶媒もプラズマ中における重合反応に関与してしまうため、比誘電率の低下を実現させるための最適な材料の選択が困難である。
【0014】
このように、絶縁膜の比誘電率を容易かつ十分に低下させることは困難だった。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、それぞれ環状SiO構造を主骨格とし互いに構造が異なる2種類以上の有機シロキサン化合物原料を混合した後で気化するか、又は、前記2種類以上の有機シロキサン化合物原料の混合と気化とを一度に行うことによって、気化ガスを生成する工程と、
前記気化ガスをキャリアガスとともに反応炉に輸送する工程と、
前記反応炉にて前記気化ガスを用いたプラズマCVD法又はプラズマ重合法によって多孔質絶縁膜を成膜する工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法を提供する。
【0016】
この製造方法によれば、容易に絶縁膜を低誘電率化することが可能となる。以下、その理由を説明する。
【0017】
先ず、この製造方法では、それぞれ環状SiO構造を主骨格とし互いに構造が異なる2種類以上の有機シロキサン化合物原料を、混合した後で気化するか、又は、混合と気化とを一度に行うことによって、絶縁膜の比誘電率を低減することができる。すなわち、環状SiO化合物の骨格構造を絶縁膜中に取り込むことにより、絶縁膜に空孔を導入し、絶縁膜の比誘電率を低下させることができる。
【0018】
空孔の導入には、例えば、膜中にポロジェンと呼ばれる空孔形成剤を導入し、それを熱、紫外光、電子線などのエネルギーを使い昇華させる方法がある。この方法は比較的容易に比誘電率の低下が実現できるものの、空孔サイズの微細化が困難な上、形成方法故に空孔同士が連結し、個々の空孔よりも大きな空孔(オープンポア)を形成する結果、不均一な膜密度分布を示す。また、ポロジェンの昇華には一般的に350℃以上に基板を加熱する必要があり、多孔質絶縁膜の低温プロセス化を阻害する要因となっていた。
【0019】
これに対して、環状SiO化合物の骨格構造を利用して絶縁膜中に空孔を導入する場合は、空孔径が1nm以下と微細になり、絶縁膜中で独立空孔(クローズドポア)として存在することができる。その結果、均一な膜密度分布を持った絶縁膜を得ることができる。例えば、環状シロキサンは化学式(1)のnを変化させることにより、空孔サイズを制御することができ、これにより、比誘電率を制御することができる。
シルセスキオキサンに関しても同様で、化学式(2)のmを変化させることにより、空孔サイズを制御することができ、これにより比誘電率を制御することができる。なお、シルセスキオキサンは常温より高い融点を持つものが多く、成膜装置での搬送等を考慮すると溶媒に溶かし使用することが好ましい。この溶媒に関し、鋭意研究を行ったところ、側鎖に不飽和炭化水素、および立体障害の大きい炭化水素をもったシクロシロキサンが最適であることが分かった。不飽和炭化水素はシルセスキオキサン同士を架橋し、立体障害の大きい炭化水素は、プラズマ中において、励起種がシルセスキオキサンに衝突し分解するのを抑制するためである。またシクロシロキサンが空孔として作用するため、比誘電率の低下に効果的である。立体障害の大きい炭化水素の例として、プロピル基及びブチル基(それぞれ異性体を含む)が挙げられる。
【0020】
また、複数の液体原料を用いて絶縁膜を成膜するに際し、複数の原料を個々に気化すると、キャリアガスが多くなってしまう。キャリアガスには不活性ガスが用いられるのが一般的であるが、キャリアガスはプラズマ中において励起ガスとしても作用するため、キャリアガスが多いほど原料の側鎖の解離や、骨格構造の開環といった分解が進んでしまう。この結果、絶縁膜中への微細な空孔の導入が困難となるとともに、絶縁膜中に取り込まれる炭化水素の量が減少してしまい、絶縁膜の比誘電率を下げることが困難になるという欠点がある。そこで、複数の原料を個々に気化するのではなく、複数の原料を混合した後で気化するか、又は、複数の原料の混合と気化とを一度に行うことによって、原料を輸送するキャリアガスを低減することが可能である。これにより原料の分解を抑制することができ、絶縁膜の低誘電率化が可能となる。
【0021】
また、ポロジェンの高温昇華工程を含まないため、350℃以下、例えば200℃といった低温プロセスで多孔質絶縁膜を得ることができるといった特徴を持つ。特に、350℃以上の高温において特性劣化の著しいMTJ素子を多層配線中に作りこむ混載MRAMデバイスの製造においては、該低温プロセスによる多孔質絶縁膜の成長は極めて重要となる。
【0022】
また、本発明は、多孔質絶縁膜を含む多層配線層を有し、
前記多孔質絶縁膜のうちの少なくとも何れか1層が、本発明の半導体装置の製造方法により製造された前記多孔質絶縁膜であることを特徴とする半導体装置を提供する。
【0023】
また、本発明は、多孔質絶縁膜を含む多層配線層を有し、
前記多孔質絶縁膜のうちの少なくとも何れか1層は、当該多孔質絶縁膜中に、有機シロキサンのSi−O主骨格構造を複数種類含み、
前記多孔質絶縁膜中の炭素原子数とシリコン原子数との比C/Siが2.2以上であることを特徴とする半導体装置を提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、絶縁膜の比誘電率を容易かつ十分に低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施例1で成膜された絶縁膜と比較例1で成膜された絶縁膜との相対比誘電率を示す図である。
【図2】実施例1で成膜された絶縁膜をラマン分光分析法によって分析した結果を示す図である。
【図3】実施例1で成膜された絶縁膜を小角X線散乱法によって分析した結果を示す図である。
【図4】実施例2〜4で成膜された絶縁膜を小角X線散乱法によって分析した結果を示す図である。
【図5】実施例5〜8で溶媒として用いられる環状有機シロキサンの側鎖の構造と相対比誘電率との関係を示す図である。
【図6】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法で用いられるプラズマ発生装置の一例を示す模式図である。
【図7】実施例14での原料の混合比と相対比誘電率との関係を示す図である。
【図8】実施例15での原料の混合比と相対比誘電率との関係を示す図である。
【図9】第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法で用いられるプラズマ発生装置の一例を示す模式図である。
【図10】第3の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す図である。
【図11】第3の実施形態に係る半導体装置の製造方法により製造される半導体装置の例を示す図である。
【図12】比較例1で用いたプラズマ発生装置を示す模式図である。
【図13】実施例9で成膜された絶縁膜と比較例2で成膜された絶縁膜との成膜レートを示す図である。
【図14】実施例9で成膜された絶縁膜、比較例2で成膜された絶縁膜、及び、実施例1で成膜された絶縁膜の成膜レートを示す図である。
【図15】原料である第2の環状有機シロキサンの不飽和炭化水素基を除いた側鎖の水素原子数を横軸とし、縦軸に成膜レートをプロットした図である。
【図16】実施例9と比較例2でそれぞれ成膜された絶縁膜の比誘電率を示す図である。
【図17】実施例9で成膜された絶縁膜の吸収ピークをFTIRにより分析した結果を示す図である。
【図18】実施例9で成膜された絶縁膜のラマン分光分析結果と、比較例2で成膜された膜とのラマン分光分析結果とを示す図である。
【図19】実施例9で成膜された絶縁膜と、比較例2で成膜された絶縁膜とのSi−Oピークの位置を示す図である。
【図20】実施例9で成膜された絶縁膜と、実施例1で成膜された絶縁膜と、比較例2により成膜された絶縁膜とにそれぞれ含まれるCHxとSi−O−Siとの比をFTIRにより分析した結果を示す図である。
【図21】実施例9で成膜された絶縁膜と、実施例1で成膜された絶縁膜と、比較例2により成膜された絶縁膜とにそれぞれ含まれるCとSiとの比をXPSにより分析した結果を示す図である。
【図22】実施例10での絶縁膜の製造プロセスを説明するためのタイムチャートである。
【図23】実施例10で成膜された絶縁膜と、比較例3で成膜された絶縁膜との膜強度の測定結果を示す図である。
【図24】実施例11での絶縁膜の製造プロセスを説明するためのタイムチャートである。
【図25】実施例10で成膜された絶縁膜と、実施例11で成膜された絶縁膜との密着強度の評価結果を示す図である。
【図26】キュア処理を行った時間の長さと弾性率及びk値との関係を示す図である。
【図27】混載MRAMの断面図である。
【図28】実施例13の絶縁膜を用いたデバイス(混載MRAM)と、比較例4の絶縁膜を用いたデバイスの反強磁性層のヒステリシス特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜に説明を省略する。
【0027】
本実施形態に係る半導体装置の製造方法では、以下の工程を行う。先ず、それぞれ環状SiO構造を主骨格とし互いに構造が異なる2種類以上の有機シロキサン化合物原料を混合した後で気化するか、又は、これら2種類以上の有機シロキサン化合物原料の混合と気化とを一度に行うことによって、気化ガスを生成する。次に、その気化ガスをキャリアガスとともに反応炉(チャンバー201a)に輸送する。次に、反応炉にて気化ガスを用いたプラズマCVD法又はプラズマ重合法によって絶縁膜を成膜する。以下、詳細に説明する。
【0028】
ここで、原料となる2種類以上の有機シロキサン化合物原料は、例えば、分子量が互いに異なることが挙げられる。
また、原料となる2種類以上の有機シロキサン化合物原料は、例えば、側鎖の分子量が互いに異なることが挙げられる。
【0029】
本実施形態では、低誘電率絶縁膜を成膜する。低誘電率絶縁膜とは、例えば、配線材を絶縁分離する膜(層間絶縁膜)であり、半導体素子を接続する多層配線間の容量を低減するため、シリコン酸化膜(比誘電率4.2)よりも比誘電率の低い材料を指す。特に、多孔質絶縁膜としては、例えば、シリコン酸化膜を多孔化して、比誘電率を小さくした材料や、HSQ(ハイドロゲンシルセスキオキサン(Hydrogen Silsesquioxane))膜、もしくはSiOCH、SiOC(例えば、Black DiamondTM、CORALTM、AuroraTM)などを多孔化して、比誘電率を小さくした材料などがある。
【0030】
以下、本実施形態に係る半導体装置の製造方法において絶縁膜の原料として用いられる、環状SiO構造を主骨格とする有機シロキサン化合物原料(以下、環状SiO化合物原料)について説明する。
【0031】
有機シロキサン化合物原料のうちの少なくとも1つは、例えば、炭素数2〜4の不飽和炭化水素基および炭素数1〜4の飽和炭化水素基を有し、この不飽和炭化水素基および飽和炭化水素基は、環状SiO構造を構成するSi原子に結合していることが好ましい。ここで、不飽和炭化水素基は、例えば、直鎖状不飽和炭化水素基であることが挙げられ、飽和炭化水素基は、例えば、分枝鎖状飽和炭化水素基であることが挙げられる。
【0032】
環状SiO化合物原料のうちの少なくとも何れか1つは、例えば、下記化学式(1)で示される環状シロキサンとすることができる。
【0033】
【化1】

【0034】
化学式(1)において、nは2〜5であり、Rx、Ryは、それぞれ、水素、不飽和炭化水素基及び飽和炭化水素基の何れかであり、不飽和炭化水素基および飽和炭化水素基の各々は、ビニル基、アリル基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、およびターシャリーブチル基の何れかである。
ここで、化学式(1)の括弧内の構造を単位構造と称するものとすると、例えば、nが2の場合、2つの単位構造が繰り返し配置されて環状構造をなすが、このうち1つ目の単位構造におけるRxと、2つ目の単位構造におけるRxとは互いに同一であっても良いし、互いに異なっていても良い。同様に、1つ目の単位構造におけるRyと、2つ目の単位構造におけるRyとは互いに同一であっても良いし、互いに異なっていても良い。
同様に、nが3〜5の場合には、単位構造が3〜5個繰り返し配置されて環状構造をなすが、各単位構造におけるRxが互いに異なっていても良いし、何れか2つ以上の単位構造におけるRxが互いに同一であっても良い(すべての単位構造におけるRxが互いに等しい場合を含む)。また、nが3〜5の場合に、各単位構造におけるRyが互いに異なっていても良いし、何れか2つ以上の単位構造におけるRyが互いに同一であっても良い(すべての単位構造におけるRyが互いに等しい場合を含む)。
【0035】
また、環状SiO化合物原料のうちの少なくとも何れか1つは、例えば、下記化学式(17)で示されるシルセスキオキサンとすることができる。
【0036】
【化2】

【0037】
化学式(17)において、mはm>3(m≧4)であり、Rzは水素、不飽和炭化水素基及び飽和炭化水素基の何れかであり、不飽和炭化水素基および飽和炭化水素基の各々は、ビニル基、アリル基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、およびブチル基の何れかである。
ここで、化学式(17)の括弧内の構造を単位構造と称するものとすると、各単位構造におけるRzは互いに異なっていても良いし、何れか2つ以上の単位構造におけるRzが互いに同一であっても良い(すべての単位構造におけるRzが互いに等しい場合を含む)。
【0038】
(第一の実施形態)
本実施形態では、層間絶縁膜として好適な絶縁膜を、少なくとも2種以上の環状SiO化合物原料を混合した後で同一の気化器にて気化し、この気化ガスを用いたプラズマ気相成長法を実施することによって形成する。
【0039】
本実施形態において、例えば、原料は何れも化学式(1)で示される環状シロキサンとすることができる。化学式(1)のRx,Ryとしては、炭素数2〜4の直鎖状不飽和炭化水素基又は炭素数3〜4の分枝鎖状飽和炭化水素基を少なくとも1つ用いると好ましい。直鎖状不飽和炭化水素基及び分枝鎖状飽和炭化水素基の各々は、例えば、ビニル基、アリル基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ターシャリーブチル基の何れかである。また、nは、3又は4とすることが好ましい。具体的には、化学式(1)で示す環状シロキサンとして、化学式(2)で示すテトラビニルシクロテトラシロキサン誘導体、化学式(3)で示すトリビニルシクロテトラシロキサン誘導体、化学式(4)、(5)で示すジビニルシクロテトラシロキサン誘導体、化学式(6)で示すビニルシクロテトラシロキサン誘導体、化学式(7)で示すトリビニルシクロトリシロキサン誘導体、化学式(8)で示すジビニルシクロトリシロキサン誘導体、化学式(9)で示すビニルシクロトリシロキサン誘導体が例示される。
【0040】
【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【0041】
化学式(2)〜(9)において、R1〜7は、水素、又は、炭素数1〜4の炭化水素基(不飽和炭化水素基又は飽和炭化水素基)であり、R1〜7は互いに異なっていても良いし、R1〜7のうち何れか2つ以上が互いに同一であっても良い(R1〜7のすべてが互いに同一である場合を含む)。炭化水素基(不飽和炭化水素基又は飽和炭化水素基)は、ビニル基、アリル基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、およびブチル基の何れかである。
【0042】
環状シロキサンとしては、他に、下記化学式(10)〜(16)で示す構造のものを用いても良い。
【0043】
【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【0044】
化学式(10)〜(16)において、R1〜9は、水素、又は、炭素数1〜4の炭化水素基(不飽和炭化水素基又は飽和炭化水素基)であり、R1〜9は互いに異なっていても良いし、R1〜9のうち何れか2つ以上が互いに同一であっても良い(R1〜9のすべてが互いに同一である場合を含む)。炭化水素基(不飽和炭化水素基又は飽和炭化水素基)は、ビニル基、アリル基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、およびブチル基の何れかである。
【0045】
環状SiO化合物原料(有機シロキサン化合物原料)のうちの少なくとも何れか1つとして、化学式(1)の構造を有し、Rxがビニル基、Ryがメチル基であり、nが3〜5であるものを用いることができる。
【0046】
また、環状SiO化合物原料(有機シロキサン化合物原料)のうちの少なくとも何れか1つとして、化学式(1)の構造を有し、Rxがビニル基、Ryがイソプロピル基であり、nが3〜5であるものを用いることができる。
【0047】
また、環状SiO化合物原料(有機シロキサン化合物原料)のうちの少なくとも何れか1つとして、化学式(1)の構造を有し、Rxがビニル基、Ryがターシャリーブチル基であり、nが3〜5であるものを用いることができる。
【0048】
また、環状SiO化合物原料(有機シロキサン化合物原料)のうちの少なくとも何れか1つとして、化学式(1)の構造を有し、Rxがビニル基、Ryが(ノルマル)プロピル基であり、nが3〜5であるものを用いることができる。
【0049】
また、環状SiO化合物原料(有機シロキサン化合物原料)のうちの少なくとも何れか1つとして、化学式(1)の構造を有し、Rxがビニル基、Ryがsec−ブチル基であり、nが3〜5であるものを用いることができる。
【0050】
環状シロキサンとして、より好ましくは、下記化学式(29)で示すテトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサン、化学式(30)で示すトリビニルトリイソプロピルシクロトリシロキサン、又は、化学式(31)で示すテトラビニルテトライソプロピルシクロテトラシロキサンを用いることができる。
【0051】
【化18】

【化19】

【化20】

【0052】
或いは、本実施形態において、例えば、原料として、化学式(17)で示されるシルセスキオキサン(籠形シルセスキオキサン)を用いることもできる。化学式(17)のmは4以上であり、Rzは水素、不飽和炭化水素基及び飽和炭化水素基の何れかである。これら不飽和炭化水素基および飽和炭化水素基の各々は、ビニル基、アリル基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、およびブチル基の何れかである。
【0053】
化学式(17)で示されるシルセスキオキサンは、具体的には、例えば、下記化学式(18)〜(20)の何れかの構造とすることができる。ここで、m>3(m≧4)である。
【0054】
【化21】

【化22】

【化23】

【0055】
ここで、2種類の有機シロキサン化合物原料を混合する場合に、有機シロキサン化合物原料のうちの1つをシルセスキオキサンとし、他の1つを化学式(1)の構造を有する環状シロキサンとし、そのRx、Ryを不飽和炭化水素または立体障害の大きい炭化水素でとし、シルセスキオキサンを環状シロキサンに溶解させることにより得た原料を気化させて気化ガスを生成しても良い。不飽和炭化水素としては、ビニル基が挙げられる。立体障害の大きい炭化水素の一例として、ノルマル(n)−プロピル基、n−ブチル基が挙げられる。さらに立体障害効果の大きい分岐構造を有するイソ(i)−プロピル基やターシャリー(t)―ブチル基であってもよい。さらに、上記の各環状シロキサン側鎖の立体障害効果に加え、環員数が互いに異なる環状シロキサンを複数種類混合した原料を用いることで、環状シロキサンの配列をさらに乱して環状シロキサンの間に空間を導入させることも可能となる。この空間が擬似的な空孔として作用して、より低誘電率化できるといった効果をもたらす。
【0056】
化学式(17)で示されるシルセスキオキサンは、具体的には、例えば、下記化学式(21)〜(24)の何れかに示す構造のシルセスキオキサンとすることができる。
【0057】
【化24】

【化25】

【化26】

【化27】

【0058】
化学式(21)〜(24)において、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23は、それぞれ不飽和炭化水素基または飽和炭化水素基であり、不飽和炭化水素基および飽和炭化水素基の各々は、ビニル基、アリル基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、およびブチル基の何れかである。R10〜23は互いに異なっていても良いし、R10〜23のうち何れか2つ以上が互いに同一であっても良い(R10〜23のすべてが互いに同一である場合を含む)。
【0059】
或いは、化学式(17)で示されるシルセスキオキサンは、具体的には、例えば、下記化学式(25)〜(28)の何れかに示す構造のシルセスキオキサンとすることができる。
【0060】
【化28】

【化29】

【化30】

【化31】

【0061】
2種類の有機シロキサン化合物原料を混合する場合、おのおのの原料の分子が持つ側鎖の不飽和炭化水素基の数に応じて混合量を決めることができる。一例を挙げれば、2種類の有機シロキサン化合物原料のうち、第1原料はX個の不飽和水素基を有し、第2原料はY個の不飽和炭化水素基を有している場合、それら第1及び第2原料の混合比(モル比)は第1原料が1に対し第2原料の割合をX/Yを中心としてプラスマイナス25%の範囲内とすることが好ましい。つまり、第2原料の割合を0.75(X/Y)以上1.25(X/Y)以下とすることが好ましい。なお、特に、不飽和炭化水素基をもつ2種類の環状シロキサンを混合する場合に、このような混合比とすることが好ましい。
【0062】
また、2種類の有機シロキサン化合物原料を混合する場合、化学式(1)のn(n=2〜5)の値に応じても混合比を決めることができる。一例を挙げれば、2種類の環状シロキサンのうち、第1原料は化学式(1)の構造を有し且つnがn=E(E=1〜5)の環状シロキサンであり、第2原料は化学式(1)の構造を有し、かつ、nがn=F(E=Fでもよい)の環状シロキサンである場合、それらの混合比(モル比)は第1原料が1に対し第2原料の割合をE/Fを中心としてプラスマイナス25%の範囲内とすることが好ましい。つまり、第2原料の割合を0.75(E/F)以上1.25(E/F)以下とすることが好ましい。
【0063】
図6は本実施形態に係る半導体装置の製造方法で用いられるプラズマ発生装置の一例を示す模式図である。
【0064】
図6に示すプラズマ発生装置において、チャンバー(反応炉)201aは、排気配管207a、排気バルブ222a及び冷却トラップ208aを介して真空ポンプ209aに接続されている。このため、真空ポンプ209aを運転させることによってチャンバー201a内を減圧させることができる。また、チャンバー201a内の圧力(真空度)はチャンバー201aと真空ポンプ209aの間に設置されるスロットルバルブ(図示せず)を調節することによって制御することができる。チャンバー201aの内部には加熱機能を有するステージ203aが設けられている。ステージ203a上には、成膜対象の基板(例えば、シリコン基板200a)が載置される。絶縁膜の成膜に用いられる原料は、2種類以上の環状SiO化合物原料が混合されることにより得られる液体原料であり、原料リザーバタンク226aに投入及び封入される。この原料は不活性ガスによって原料リザーバタンク226aより配管を通じて圧送され、バルブ225a、液体流量コントローラ223a及びバルブ224aをこの順に介して気化器216aに導入される。圧送に用いられる不活性ガスとしては、ヘリウム、アルゴン、キセノン、窒素などが挙げられる。気化器216aへ導入される原料の流量は、液体流量コントローラ223aで所望の量に調整される。原料は、気化器216a内において気化されて気化ガスとなる。この気化ガスは、バルブ221aを介して配管215aを通じ、チャンバー201a内へ供給される。配管215aは、図示しないヒータによって加熱及び保温され、気化した原料(環状シロキサン)の再液化が抑制されている。
【0065】
このように、2種類以上の有機シロキサン化合物原料を混合し、常温常圧下で液体の原料として原料リザーバタンク226a内に貯留しておき、その液体の原料を原料リザーバタンク226a外に導出後に気化させて、気化ガスを生成する。
【0066】
気化器216aには、配管を通じて、気体流量コントローラ218a及びバルブ220aを介してキャリアガスが導入可能となっている。キャリアガスとしては、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)、ネオン(Ne)、キセノン(Xe)、窒素(N)などの不活性ガスを用いることができる。キャリアガスは、気化器216a内において原料が減圧化で加熱されることにより気化されて生成された気化ガス(環状シロキサンガス)を、バルブ221aを介して配管215aを通じ、チャンバー201a内へ輸送する。キャリアガスの流量は、気体流量コントローラ218aによって所望の量に調整される。原料の気化加熱温度は、原料の蒸気圧特性によるが、40℃〜180℃に調整することが望ましい。
【0067】
また、チャンバー201aには、配管を通じて、添加ガス流量コントローラ228a及びバルブ227aを介して、酸素(O)、二酸化炭素(CO)、一酸化炭素(CO)、一酸化窒素(NO)及び二酸化窒素(NO)などの酸化性ガスを添加ガスとして供給することができる。
【0068】
成膜の際、原料ガス(環状シロキサンガス)と不活性ガス(キャリアガス、励起ガス)のみを使うことにより、装置を簡素化することができ、また使用するガスが少なくなることにより成膜が単純になり、成膜の制御がしやすいという利点がある。
【0069】
チャンバー201a内には複数の貫通孔を有するシャワーヘッド204aが配置されている。チャンバー201aに導入された環状シロキサンガス及びキャリアガスは、シャワーヘッド204aによって分散される。なお、シャワーヘッド204aの上部にはガス分散板(図示略)を設けても良い。
【0070】
シャワーヘッド204aには、給電線211a及びマッチングコントローラ212aを介して高周波電源(RF(Radio−Frequency)電源)213aが接続されている。高周波電源213aは、接地線214aを介して接地され、ステージ203aは、接地線206aを介して接地されている。そして、高周波電源213aからは、シャワーヘッド204aに対し、ステージ203aとの間に高周波電力(RF電力)が供給される。ここでいう高周波とは1MHz以上の周波数をさす。代表的には13.56MHzやこの逓倍波を挙げることができる。また高周波電源以外に1MHz未満の電力を発生する低周波電源(図示せず)を設置しても良い。この低周波電源は高周波電源213aと同様にシャワーヘッド204aに接続しても良いし、ステージ203aに接続しても良い。
【0071】
気化器216aで原料ガスが気化した際に飽和蒸気圧を下回るように、気化器216aに流されるキャリアガスの流量と、気化器216aでの気化温度と、がコントロールされている。このため混合されている2種類以上の環状SiO化合物原料の各々の沸点や飽和蒸気圧が互いに異なっても、これら原料を偏りなく気化させることができるので、原料リザーバタンク226a内での混合比率を維持したままの気化ガスを得ることができる。
【0072】
配管215aを通してチャンバー201aに導入された原料ガスとキャリアガスは、シャワーヘッド204aとステージ203aとの間にかかる印加電力によってプラズマ化し、ステージ203a上に置かれたシリコン基板200aの表面に堆積し、膜を形成する。
【0073】
チャンバー201aでの原料ガスの分圧は0.1〜3Torr程度の範囲内で適宜選定することが好ましい。成膜時のチャンバー201a雰囲気圧は、真空ポンプ209aを使い、1〜6Torr程度の範囲内に設定することが好ましい。成膜時におけるシリコン基板200aの表面温度は、ステージ203aにより当該シリコン基板200aを加熱して、100〜400℃の範囲内で適宜に設定することができ、特に250〜400℃が好ましい。使用する化合物原料の種類によっては、原料ガスの供給に先立ってチャンバー201aへのキャリアガスの供給を開始しても良い。
【0074】
このような条件の下に成膜を行うと、原料ガスである環状SiO化合物原料の分子がプラズマによって励起され、活性化された状態でシリコン基板200aの表面へ到達し、該表面にて絶縁膜を形成する。絶縁膜が不飽和結合を有する基を備えている場合には、プラズマにより励起されて活性化した有機シリコン化合物の分子がシリコン基板200aの表面へ到達してステージ203aから更に熱エネルギーを受けとるので、上記の基にある不飽和結合が開環し、プラズマ活性化された分子間で熱重合反応も進行して、絶縁膜がシリコン基板上に成長する。
【0075】
このように、本実施形態においては、例えば、プラズマCVD法によって、シリコン基板200a上に絶縁膜を形成する。本実施形態においてプラズマCVD法は、気体となった原料を減圧下のチャンバー201aに例えば連続的に供給し、プラズマエネルギーによって、分子を励起状態にし、気相反応、あるいは基板表面反応などによってシリコン基板200a上に連続膜を形成する手法である。或いは、本実施形態においては、プラズマ重合法によって、シリコン基板200a上に絶縁膜を形成しても良い。プラズマ重合法の場合、熱エネルギーの併用により、シリコン基板200aと原料ガスとの界面におけるプラズマ重合反応が十分に進行し、密着性に富んだ絶縁膜の成長が可能となる。
【0076】
なお、チャンバー201aのクリーニングには、三フッ化窒素(NF)、六フッ化硫黄(SF)、テトラフルオロメタン(CF)、ヘキサフルオロエタン(C)等のガスを用いることができ、これらのガスは、必要に応じて酸素ガス、オゾンガス等との混合ガスとして用いてもよい。クリーニングガスは、クリーニングガス供給管(図示せず)を介してチャンバー201aへ供給される。成膜時と同様に、シャワーヘッド204aとステージ203aとの間に高周波電力を印加し、プラズマを誘起させることによりチャンバー201aのクリーニングを行う。リモートプラズマ等を用いて予めプラズマ状態としたクリーニングガスを用いることも有効である。
【0077】
(実施例1)
絶縁膜の成膜には、原料として、それぞれ化学式(1)で示される第1及び第2の環状有機シロキサンを用いた。このうち第1の環状有機シロキサンとしては、R1(Rx)がビニル基、R2(Ry)がイソプロピル基であり、n=3であるもの(2,4,6−トリイソプロピル−2,4,6−トリビニルシクロトリシロキサン)を用いた。また、第2の環状有機シロキサンとしては、R1(Rx)がビニル基であり、R2(Ry)がメチル基であり、n=4であるもの(2,4,6,8−テトラビニル−2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシロキサン)を用いた。成膜には、図6に示すプラズマ発生装置を用いた。原料リザーバタンク226aにはこれら2種類の原料を4:3(第1の環状有機シロキサンが4に対し、第2の環状有機シロキサンが3)のモル比で混合して得られる液体原料を投入及び封入した。キャリアガスとしては、500sccmのHeを気体流量コントローラ218aを介して気化器216aに導入した。このためチャンバー201aに導入されるHeの流量は500sccmである。成膜は、300mmφで、抵抗が0.1Ω・cm以下のp型シリコン基板上に、膜厚が100nmとなるように行った。その後、実施例1で成膜された絶縁膜の比誘電率をHgプローバを用いて測定した。
【0078】
(比較例1)
図12は比較例1に係る半導体装置の製造方法で用いたプラズマ発生装置の構成を示す模式図である。図12に示すプラズマ発生装置は、図6に示すプラズマ発生装置の各構成に加えて、原料リザーバタンク226a、バルブ225a、液体流量コントローラ223a、バルブ224a、気体流量コントローラ218a及び気化器216aとそれぞれ同様の原料リザーバタンク226e、バルブ225e、液体流量コントローラ223e、バルブ224e、気体流量コントローラ218e及び気化器216eを備えている。原料リザーバタンク226a内の原料は気化器216aにて、原料リザーバタンク226e内の原料は気化器216eにて、それぞれ気化された後で、互いに混合されて、チャンバー201a内に供給されるようになっている。本比較例1では、原料リザーバタンク226aには第1の環状有機シロキサンを投入し、原料リザーバタンク226eには第2の環状有機シロキサンを投入及び封入した。第1及び第2の環状有機シロキサンの構造は、それぞれ実施例1と同じ構造である。本比較例1では、第1及び第2の環状有機シロキサンの混合比が実施例1と同じくモル比で4:3となるように、原料リザーバタンク226aから気化器216aへ圧送する第1の環状有機シロキサンの流量と、原料リザーバタンク226eから気化器216eへ圧送する第2の環状有機シロキサンの流量とを制御した。また、キャリアガスのHeは、気体流量コントローラ218a、218eを介して、それぞれ500sccmを気化器216a、216eに導入した。このためチャンバー201aに導入したHe流量は1000sccmである。シリコン基板は、実施例1と同じものを用いた。そして、成膜された絶縁膜の比誘電率を実施例1と同じ方法で測定した。
【0079】
図1に実施例1と比較例1の比誘電率の測定結果を示す。実施例1で成膜した絶縁膜の比誘電率を1(相対値)としたとき、比較例1で成膜した絶縁膜の比誘電率は1.04(相対値)であり、実施例1の膜のほうが低い比誘電率を示した。これは、実施例1の方が比較例1よりも使用するキャリアガスを削減できることにより、原料である環状シロキサンの分解が抑制されたためである。
【0080】
図2は、実施例1で成膜された絶縁膜の構造をラマン(Raman)分光分析法を用いて分析した結果を示す図である。図2に示すように、n=3であるSi−Oの3員環構造と、n=4であるSi−Oの4員環構造と、の双方を確認することができた。なお、Si−Oの3員環構造では、空孔径が相対的に小さいため、比誘電率の低減効果は小さいが、絶縁膜の膜強度を高めることができる。一方、Si−Oの4員環構造では、空孔径が相対的に大きいため、絶縁膜の膜強度が弱くなってしまうが、比誘電率の低減効果が大きくなる。このため、Si−Oの3員環構造と4員環構造とを所望の割合で混在させることにより、所望の比誘電率の低減効果を得つつ、所望の膜強度を得ることができる。
【0081】
図3は、実施例1で成膜された絶縁膜の空孔径(ポア径)の分布を小角X線散乱法によって分析した結果(曲線L1)を示す図である。図3に示すように、絶縁膜の空孔径の分布曲線をピーク分解すると、第1の環状有機シロキサン(2,4,6−トリイソプロピル−2,4,6−トリビニルシクロトリシロキサン)に起因する空孔分布(曲線L2)と、第2の環状有機シロキサン(2,4,6,8−テトラビニル−2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシロキサン)に起因するポア分布(曲線L3)と、に分解できた。なお、図3に示す曲線L2のピークは、原料として第1の環状有機シロキサン(2,4,6−トリイソプロピル−2,4,6−トリビニルシクロトリシロキサン)を用いた場合の空孔分布(図示略)のピークと等しい。原料として第1の環状有機シロキサン(2,4,6−トリイソプロピル−2,4,6−トリビニルシクロトリシロキサン)を用いた場合、ラマン分光分析法により、Si−Oの3員環構造が観測される。一方、図3に示す曲線L3のピークは、原料として第2の環状有機シロキサン(2,4,6,8−テトラビニル−2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシロキサン)を用いた場合の空孔分布(図示略)のピークと等しい。原料として第2の環状有機シロキサン(2,4,6,8−テトラビニル−2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシロキサン)を用いた場合、ラマン分光分析法により、Si−Oの4員環構造が観測される。図3に示す結果から、原料とする環状有機シロキサンの組み合わせを適宜に調節することにより、絶縁膜中の空孔径の分布の制御が可能であることが分かる。なお、実施例1において、環状有機シロキサンの側鎖のひとつである不飽和炭化水素基として、ビニル基を用いた実施例を示したが、少なくとも不飽和炭化水素基を1つ以上有し、かつ炭素数が2つ以上であれば同等の効果を得られる。また、第2の環状有機シロキサンの飽和炭化水素基としてメチル基を用いた実施例を用いたが、ノルプロピル基、ノルマルブチル基、ターシャリープチル基等であっても同様の効果が得られる。
【0082】
(実施例2)
第1および第2の環状有機シロキサンの側鎖の立体障害効果が強くなれば、より低誘電率化に有効となる。絶縁膜の成膜に用いる原料として、第1及び第2の環状有機シロキサンを用いた。このうち第1の環状有機シロキサンとしては、実施例1における第1の環状有機シロキサンと同じ構造のもの(従って、n=3)を用いた。一方、第2の環状有機シロキサンとしては、nの値が(3ではなく)4である点でのみ実施例2の第1の環状有機シロキサンと相違するものを用いた。具体的には、第1の環状有機シロキサン(2,4,6−トリイソプロピル−2,4,6−トリビニルシクロトリシロキサン)に対する第2の環状有機シロキサンとしては、R1(Rx)がビニル基であり、R2(Ry)がイソプロピルあり、n=4である2,4,6,8−テトラビニル−2,4,6,8−テトライソピルシクロテトラシロキサンを用いた。成膜は、図6に示すプラズマ発生装置を用いて行った。そして、原料リザーバタンク226aにはこれら2種類の原料を1:1(第1の環状有機シロキサンが1に対し、第2の環状有機シロキサンが1)のモル比で混合して得られる液体原料を投入及び封入した。キャリアガスの種類及び流量は実施例1と同じとし、シリコン基板も実施例1と同じものを用いた。
【0083】
(実施例3)
絶縁膜の成膜に用いる原料として、第1及び第2の環状有機シロキサンを用いた。このうち第1の環状有機シロキサンとしては、実施例2と同じ構造(従って、n=3)のものを用いた。一方、第2の環状有機シロキサンとしては、nの値が(4ではなく)5である点でのみ実施例2の第2の環状有機シロキサンと相違するものを用いた。成膜は、図6に示すプラズマ発生装置を用いて行った。そして、原料リザーバタンク226aにはこれら2種類の原料を1:1(第1の環状有機シロキサンが1に対し、第2の環状有機シロキサンが1)のモル比で混合して得られる液体原料を投入及び封入した。キャリアガスの種類及び流量は実施例2と同じとし、シリコン基板も実施例2と同じものを用いた。
【0084】
(実施例4)
絶縁膜の成膜に用いる原料として、第1乃至第3の環状有機シロキサンを用いた。このうち第1及び第2の環状有機シロキサンとしては、それぞれ実施例2と同じ構造のものを用いた(従って、第1の環状有機シロキサンのn=3、第2の環状有機シロキサンのn=4)。また、第3の環状有機シロキサンとしては、実施例3における第2の環状有機シロキサンと同じ構造のもの(従って、n=5)を用いた。成膜は、図6に示すプラズマ発生装置を用いて行った。そして、原料リザーバタンク226aにはこれら3種類の原料を1:1:1(第1の環状有機シロキサンが1に対し、第2の環状有機シロキサンが1、第3の環状有機シロキサンも1)のモル比で混合して得られる液体原料を投入及び封入した。キャリアガスの種類及び流量は実施例2と同じとし、シリコン基板も実施例2と同じものを用いた。
【0085】
図4は実施例2〜4のそれぞれについて、成膜された絶縁膜の空孔径の分布を小角X線散乱法によって分析した結果を示す図である。図4において、曲線L4が実施例2の結果を、曲線L5が実施例3の結果を、曲線L6が実施例4の結果を、それぞれ示す。なお、実施例2〜4のそれぞれについて、絶縁膜の比誘電率をHgプローバを用いて測定したところ、実施例2では比誘電率k=2.5、実施例3では比誘電率k=2.4、実施例4では比誘電率k=2.2となった。図4の結果から、nの値が大きい環状有機シロキサンを混合した場合ほど、平均空孔径が大きくなり、比誘電率(k)が低い(例えば2.4以下)の膜を得ることができることが分かった。なお、実施例2から4において、環状有機シロキサンの側鎖のひとつである不飽和炭化水素基として、ビニル基を用いた実施例を示したが、少なくとも不飽和炭化水素基を1つ以上有し、かつ炭素数が2つ以上であれば同等の効果を得られる。また、飽和炭化水素基としてイソプロピル基を用いた実施例を用いたが、ターシャリープチル基等であっても同様の効果が得られる。
【0086】
(実施例5〜8)
実施例5〜8では、絶縁膜の成膜に用いる原料として、化学式(20)に示すシルセスキオキサンと化学式(1)に示す環状有機シロキサンとを用いた。実施例5〜8の何れにおいても環状有機シロキサンのnを3とした。環状有機シロキサンの側鎖のRx(R1)、Ry(R2)は、実施例5では、Rx(R1)、Ry(R2)をともにメチル基とし、実施例6ではRx(R1)をビニル基、Ry(R2)をメチル基とし、実施例7ではRx(R1)をイソプロピル基、Ry(R2)をメチル基とし、実施例8ではRx(R1)をビニル基、Ry(R2)をイソプロピル基とした。実施例5〜8の何れにおいても、成膜は、図6に示すプラズマ発生装置を用いて行った。そして、実施例5〜8の何れにおいても、原料リザーバタンク226aにはそれぞれ上記2種類の原料を3:8(シルセスキオキサンが3に対し、環状有機シロキサンが8)のモル比で混合して得られる液体原料を投入及び封入した。なお、化学式(20)に示すシルセスキオキサンは常温で固体である。このため、化学式(1)に示す環状有機シロキサンを溶媒とし、この溶媒に化学式(20)に示すシルセスキオキサンを溶解することによって得た液体原料を原料リザーバタンク226aに投入及び封入した。
【0087】
図5は実施例5〜8のそれぞれについて、成膜された絶縁膜の比誘電率の測定結果の相対値を示す図である。ここで、環状有機シロキサンの側鎖の構造のうち、ビニル基は不飽和炭化水素であり、イソプロピル基は立体障害が大きい炭化水素である。図5に示す結果から、化学式(1)に示す環状有機シロキサン原料の側鎖に、不飽和炭化水素(ビニル基)或いは立体障害の大きい炭化水素(イソプロピル基)が存在する場合(実施例6〜8)に、比誘電率の低下が認められ、双方が側鎖にある場合(実施例8)に特に顕著に比誘電率が低下することが分かった。
【0088】
(実施例9)
多孔質絶縁膜の成膜には、原料として、それぞれ化学式(1)で示される第1及び第2の環状有機シロキサンを用いた。このうち第1の環状有機シロキサンとしては、R1(Rx)がビニル基、R2(Ry)がイソプロピル基であり、n=3であるもの(2,4,6−トリイソプロピル−2,4,6−トリビニルシクロトリシロキサン)を用いた。また、第2の環状有機シロキサンとしては、R1(Rx)がビニル基であり、R2(Ry)がイソプロピル基であり、n=4であるもの(2,4,6,8−テトライソプロピル−2,4,6,8−テトラビニルシクロトリシロキサン)を用いた。この第2の環状有機シロキサンは、4員環構造で分子量が大きいため結晶化しやすく、単独では安定に液体状態で存在しえなかった。本発明者は、3員環構造の第1の環状有機シロキサンを溶媒として、4員環構造の第2の環状有機シロキサンを溶解させることで安定に液体状態で存在しうること、すなわち3員環ビニルシロキサンと4員環ビニルシロキサンとの混合による原料の安定化といった新規現象を見出した。
なお、4員環構造の環状有機シロキサンでも、液体で安定なものもあり、結晶化しやすい(液体で安定に存在しにくい)のは側鎖がかさ高く分子量が大きい原料である。ここで、"側鎖がかさ高い"とは、例えば、化学組成Cのxが1つのSi原子あたり3以上となること、であることが1例として挙げられる(ここでのx、yはそれぞれ任意の正の数)。
【0089】
実施例9の成膜には、図6に示すプラズマ発生装置を用いた。原料リザーバタンク226aにはこれら2種類の原料を4:3(第1の環状有機シロキサンが4に対し、第2の環状有機シロキサンが3)のモル比で混合して得られる液体原料を投入及び封入した。キャリアガスとしては、400〜1000sccmのHeを気体流量コントローラ218aを介して気化器216aに導入した。成膜は、300mmφで、抵抗が0.1Ω・cm以下のp型シリコン基板上に、膜厚が100nmとなるように行った。その後、成膜された多孔質絶縁膜の膜厚、比誘電率をエリプソメーター、Hgプローバを用いてそれぞれ測定した。
【0090】
このように、実施例9では、2種類の有機シロキサン化合物原料を混合及び気化して気化ガスを生成し、2種類の有機シロキサン化合物原料は、それぞれ化学式(1)の構造を有し、これら有機シロキサン化合物原料のRxは互いに同じであり、これら有機シロキサン化合物原料のRyは互いに同じであり、且つ、RxとRyとは互いに異なる。
そして、RxとRyの何れか一方が不飽和炭化水素である。
より具体的は、Rxがビニル基、Ryがイソプロピル基である。
そして、2種類の有機シロキサン化合物原料のうち一方のnが3、他方のnが4である。
このため、2種類の有機シロキサン化合物原料のうち、nが4である有機シロキサン化合物原料(第2の環状有機シロキサン)の側鎖のうち、不飽和炭化水素基以外の側鎖の水素原子の合計数が24以上である。
【0091】
図13に、実施例9の場合と、比較例2の場合と、の成膜レートを示す。比較例2では、第1の環状有機シロキサンを単一で原料として使用した。
図13に示すように、実施例9の方が、比較例2と比べて高い成膜レートが得られた。高い成膜レートは当該プロセスのスループットを上げるばかりでなく、原料ガスやキャリアガスの消費を抑制するため低コスト化が期待できる。
実施例9で成膜レートが向上した理由として以下のようなメカニズムが考えられる。不飽和炭化水素の重合反応は、2重結合が開環することによって進む。この開環には水素ラジカルが必要とされる。第1の環状有機シロキサンと第2の環状有機シロキサンには、不飽和炭化水素以外にイソプロピルのようなかさ高い側鎖が付いている。このようにかさ高い側鎖には水素を多く含むため、プラズマ中で解離し水素ラジカルを多く発生させる。この結果、不飽和炭化水素の開環が促進され、重合反応が進み、成膜レートが向上したと考えられる。
【0092】
図14に、実施例9の場合と、比較例2の場合と、実施例1の場合と、の成膜レートを示す。
図14に示すように、実施例9の方が、比較例2及び実施例1と比べて高い成膜レートが得られた。また、図14に示す結果から、第2の環状有機シロキサンには、かさ高い側鎖を有するものを用いたほうが成膜レート向上により効果的であることが判明した。
【0093】
図15は、第2の環状有機シロキサンの不飽和炭化水素基を除いた側鎖の水素原子数を横軸とし、縦軸に成膜レートをプロットした図である。
図15に示すように、第2の環状有機シロキサンの不飽和炭化水素基を除いた側鎖の水素原子数が多いほど、成膜レートが向上する傾向がある。
【0094】
図16は、実施例9と比較例2でそれぞれ成膜された膜の比誘電率測定を行なった結果を示す。図16に示すように、同一条件で成膜を行なった場合、実施例9の原料を用いたほうが比較例2の場合と比較して低い誘電率が得られた。この理由として以下のようなメカニズムが考えられる。第2の環状有機シロキサンの主骨格はSi−Oの4員環から形成されており、Si−Oの3員環を主骨格とする第1の環状有機シロキサンと比較して、環の径が大きい。この構造が膜自体に取り込まれるため、第1の環状有機シロキサンのみを原料として成膜を行なった場合(比較例2)と比較して、径の大きな空孔を導入することが可能となる。その結果、低誘電率を実現していると考えられる。環状有機シロキサンの主骨格が膜中に取り込まれるためには、プラズマ中での主骨格構造の解離を抑制する必要がある。かさ高い側鎖の存在により、プラズマ中において主骨格に電子やイオンが衝突してしまうことを抑制でき、その結果としてプラズマ中での主骨格構造の解離を抑制できるため、かさ高い側鎖を持つことはこの点でも有利である。
【0095】
実施例9により成膜された膜をFTIR(Fourier Transform infrared Spectrometer)を使い膜構造分析を行なった。図17はその膜におけるSi−O−Si結合による吸収ピークを示す。図17に示す結果から、実施例9により成膜された膜中には、第1の環状有機シロキサンの主骨格であるSi−Oの3員環構造と、第2の環状有機シロキサンの主骨格であるSi−Oの4員環構造と、が含まれることが分かる。膜中の空孔径はSi−Oの4員環構造に起因する空孔径の方が、Si−Oの3員環構造に起因する空孔径よりも大きいため、膜中にSi−Oの4員環構造が含むようにできることから、空孔径を拡大させ、より低k値化が実現できる。
一方、第1の環状有機シロキサンのみを原料として成膜を行なった場合(比較例2)、実施例9と比較して3員環構造が多く、4員環構造が少ない。これは膜中にはSi−Oの3員環構造が多いことを示している。その比較例2は実施例9と比較して平均空孔径が小さくなっている。Si−Oの3員環原料から成膜した膜にSi−Oの4員環構造が認められるのは、成膜時に原料の一部が開裂し、4員環構造を形成するためと考えられるが、その量は実施例と比較して小さい。また開裂が進むと側鎖の炭化水素基が解離し、膜中の炭素濃度が減少し、k値の増加が懸念される。
【0096】
図18には実施例9により成膜された膜のラマン(Raman)分光分析結果(曲線L11)と、比較例2により成膜された膜のラマン分光分析結果(曲線L12)と、を示す。500cm−1付近に見られるピークは鎖状Si−O構造あるいはSi−Oの4員環のピークである。また590cm−1付近のピークはSi−Oの3員環のピークである。図18においては、実施例9の膜のデータと、比較例2の膜のデータとで、Si−Oの3員環のピークの高さを合わせてプロットしている。
図18に示される結果から、実施例9により成膜された膜には、比較例2により成膜された膜と比較して、鎖状Si−O構造あるいはSi−Oの4員環のより大きなピーク(以下、Si−Oピーク)が確認でき、鎖状Si−O構造あるいはSi−Oの4員環がより多く含まれていることが判明した。
【0097】
そこで、次にこのSi−Oピークが鎖状Si−O構造あるいはSi−Oの4員環によるものかを検討した。Si−Oの4員環のピークは鎖状Si−O構造のピークよりも低波数側に出現する。
そこで、実施例9により成膜された膜と、比較例2により成膜された膜のそれぞれについて、500cm−1付近のSi−Oピークの位置を詳細に調査した。
【0098】
図19には、実施例9により成膜された膜と、比較例2により成膜された膜のそれぞれについて、Si−Oピークの位置を示している。図19に示す結果から、実施例9により成膜された膜の方が、比較例2により成膜された膜に比べて、低波数側にピークがあることが判明した。この理由は、実施例9により成膜された膜の方がSi−Oの4員環構造を多く含むためと考えられる。
【0099】
図20は実施例9により成膜された絶縁膜と、実施例1により成膜された絶縁膜と、比較例2により成膜された絶縁膜にそれぞれ含まれるCHxとSi−O−Siとの比をFTIRにより分析した結果を示す図である。図20の縦軸は、FTIRの分析結果において、CHxのピーク(2750〜3200cm−1付近に見られるピーク)のエリア面積を分子とし、Si−O−Siのピーク(900〜1200cm−1付近に見られるピーク)のエリア面積を分母とした値である。図20の縦軸の値が大きいほど、膜中により多くのハイドロカーボンが取り込まれている。膜中により多くのハイドロカーボンが取り込まれる場合ほど、膜の低k値化が期待できる。図20の結果から、比較例2よりも実施例1の方が、膜中により多くのハイドロカーボンが取り込まれ、更に、実施例1よりも実施例9の方が、膜中により多くのハイドロカーボンが取り込まれたことが分かる。なお、成膜中のRF電力が小さいほど、膜中により多くのハイドロカーボンが取り込まれた。
【0100】
図21は実施例9により成膜された絶縁膜と、実施例1により成膜された絶縁膜と、比較例2により成膜された絶縁膜にそれぞれ含まれるCとSiとの比をXPS(X−ray Photoelectron Spectroscopy)により分析した結果を示す図である。この分析では、バルクの分析を行った。図21の縦軸はC(炭素)とSi(シリコン)の原子比である。図21の縦軸の値が大きいほど、膜中により多くのハイドロカーボンが取り込まれている。図21の結果からも、比較例2よりも実施例1の方が、膜中により多くのハイドロカーボンが取り込まれ、更に、実施例1よりも実施例9の方が、膜中により多くのハイドロカーボンが取り込まれたことが分かる。なお、図21の結果からも、成膜中のRF電力が小さいほど、膜中により多くのハイドロカーボンが取り込まれたことが分かる。
【0101】
FTIRとラマン分光の分析結果から、実施例9により成膜された膜は、環の径が大きい4員環構造をより多く含むため、低k値化が実現されたと考えられる。
【0102】
なお、実施例9或いは実施例1により成膜された多孔質絶縁膜を有する半導体装置は、一例として、以下の特徴を有する。すなわち、この半導体装置は、多孔質絶縁膜を含む多層配線層を有し、この多孔質絶縁膜のうちの少なくとも何れか1層は、当該多孔質絶縁膜中に、有機シロキサンのSi−O主骨格構造を複数種類含み、多孔質絶縁膜中の炭素原子数とシリコン原子数との比C/Siが2.2以上(図21中のRF電力が最低のプロットを参照)である。
【0103】
(実施例10)
多孔質絶縁膜の成膜には、原料として、実施例9と同一の第1及び第2の環状有機シロキサンを用いた。
【0104】
実施例10の成膜には、図6に示すプラズマ発生装置を用いた。原料リザーバタンク226aにはこれら2種類の原料を4:3(第1の環状有機シロキサンが4に対し、第2の環状有機シロキサンが3)のモル比で混合して得られる液体原料を投入及び封入した。キャリアガスとしてはHeを気体流量コントローラ218aを介して気化器216aに導入した。キャリアガスは励起ガスとして作用する。300mmφのp型シリコン基板上に、予め、膜厚が180nmのSiO膜と、膜厚が45nmのSiN膜と、をこの順に積層してブランケット基板を形成しておき、そのブランケット基板上に、実施例10の成膜を200nmの膜厚で行った。その際、図22に示すタイムチャートのように、RF電力を投入している期間は原料の気化ガスの流量(原料流量)、キャリアガスの流量(キャリア流量)、成膜圧力(P)を一定に維持して成膜を行った。具体的には、RF電力を350W、原料流量を91sccm、キャリア流量を400sccm、成膜圧力を280Paとした。
【0105】
実施例10により成膜された膜の膜強度の測定を行なった。また、比較例3として、図22と同じプロセスで、第1の環状有機シロキサンを単一で原料として使用した成膜を行い、得られた膜の膜強度の測定を行った。実施例10及び比較例3の膜強度の測定は、ナノインデンターを用いて密着性を測定することにより行った。その結果を図23に示す。
図23に示すように、実施例10により成膜された膜の方が、比較例3により成膜された膜よりも、膜強度が強いことが分かった。これは、第2の環状有機シロキサンであるSi−Oの4員環骨格構造は、第1の環状有機シロキサンであるSi−Oの3員環骨格構造と比較して結合が弱いことから、プラズマ中で4員環骨格構造が開環し、この開環した4員環骨格構造の一部のSi−OボンドがSi−Oの3員環骨格構造同士を結合させる現象が起こったためと考えられる。
なお、図23に示すように、k値が低いほど膜強度が弱くなる傾向があるが、いずれのk値においても、実施例10により成膜された膜の方が、比較例3により成膜された膜よりも、膜強度が強かった。
【0106】
(実施例11)
実施例11での多孔質絶縁膜の成膜は、図24に示すタイムチャートのように、キャリア流量を経時的に変化させた点でのみ、実施例10の成膜と相違し、その他の点については、実施例10と同様に行った。すなわち、実施例11では、図24に示すように、成膜初期における励起ガス流量(キャリア流量)を実施例10よりも多くし、その後、励起ガス流量を経時的に徐々に減少させる方法を適用した。具体的には、成膜初期における励起ガス流量を1000sccmに設定し、RF電力の投入開始から10秒経過したタイミングから、励起ガス流量を徐々に(一定の減少速度で)減少させる工程を7秒間行うことにより、励起ガス流量を実施例10と同じ400sccmにまで減少させた。
すなわち、実施例11では、多孔質絶縁膜を成膜する工程は、第1の多孔質絶縁膜を成膜する工程と、第2の多孔質絶縁膜を成膜する工程と、を含み、有機シロキサン化合物原料をキャリアガスとともにプラズマ発生装置内に供給し、有機シロキサン化合物原料をプラズマ化させることにより、第1及び第2の多孔質絶縁膜をそれぞれ成膜し、第2の多孔質絶縁膜を成膜する工程におけるキャリアガスの流量(b)に対する有機シロキサン化合物原料のガス流量(a)の比率(a/b)が、第1の多孔質絶縁膜を成膜する工程におけるキャリアガスの流量(b)に対する有機シロキサン化合物原料のガス流量(a)の比率(a/b)よりも大きい。
【0107】
実施例11の成膜を行った後、膜表面にエポキシを50μm塗布し、基板を1cm角(1辺が1cmの正方形)に切り出し密着性を測定するサンプルとした。密着性はm−ELT(modified Edge Liftoff Test)法により評価した。また、実施例10により得られた膜の密着性についても同様の評価を行った。それらの結果を図25に示す。
図25に示すように、実施例11により成膜された膜は、実施例10により成膜された膜に比べて、密着強度がより強いことが分かった。これは励起ガス流量の増加はモノマー分解を促進し膜の硬質化が進むためと考えられる。膜の強度と比誘電率には一般的に正に相関があると言われ、膜強度の増加と共に比誘電率は増加する。
【0108】
(実施例12)
多孔質絶縁膜の成膜には、原料として、実施例9と同一の第1及び第2の環状有機シロキサンを用いた。
【0109】
実施例12の成膜には、図6に示すプラズマ発生装置を用いた。原料リザーバタンク226aにはこれら2種類の原料を4:3(第1の環状有機シロキサンが4に対し、第2の環状有機シロキサンが3)のモル比で混合して得られる液体原料を投入及び封入した。キャリアガスとしてはHeを気体流量コントローラ218aを介して気化器216aに導入した。キャリアガスは励起ガスとして作用する。成膜は、300mmφのp型シリコン基板上に、膜厚が200nmとなるように行った。その後、熱、電子線或いは紫外光を使ったキュア処理を行なった。熱によるキュア処理(熱キュア)では基板温度を350℃以上とすることが好ましい。また電子線によるキュア処理(EBキュア)では電子線の加速エネルギーを1〜30keVとし、ドーズ量を0.05〜1.0mC/cmとすることが好ましい。また紫外光を使ったキュア処理(UVキュア)では、照射時間を10秒間〜5分間とすることが好ましく、紫外光は任意の1波長、あるいはブロードバンドの光源、あるいはこれらを組み合わせたもの(単波長+単波長、単波長+ブロードバンド、ブロードバンド+ブロードバンド)を使用することができる。また熱キュアとEBキュア、あるいは熱キュアとUVキュアを同時に行なってもよい。本実施例では基板温度を400℃まで加熱し、UVキュアを行なった。
【0110】
このように、実施例12では、多孔質絶縁膜を成膜する工程の後で、多孔質絶縁膜に対し、熱キュア処理、EBキュア処理及びUVキュア処理のうち少なくとも何れか1つ以上を組み合わせたキュア処理を行う。UVキュア処理は、基板温度350℃以上で、多孔質絶縁膜に紫外光を照射する処理である。
【0111】
図26(a)はキュア処理を行った時間の長さ(キュア時間)と弾性率(Modulus)との関係を示し、図26(b)はキュア処理を行った時間の長さとk値との関係を示す。この図からk値はキュア時間に対し初期は(例えば5分までは)減少を示すものの、その後は増加することが分かった。一方弾性率はキュア時間に対し単調増加することが判明した。
【0112】
第1の環状有機シロキサンや第2の環状有機シロキサンのように、側鎖に炭化水素基を持つ原料を用いて成膜を行なった場合、膜中にハイドロカーボンを取り込むことが可能となる。この取り込み量は原料の側鎖としてかさ高い炭化水素基が付いている場合ほど多いと考えられる。このような炭化水素基は電子線や紫外光のエネルギーによって結合を切り、脱離させることが可能である。また成膜表面は大気中からの吸着によりOH基等で終端されていると考えられる。キュア初期は炭化水素基の脱離による空孔導入と、OH基の脱離によるk値の減少が認められる。キュアを継続すると、炭化水素基の脱離とともに、Si−Oの再結合が進み、k値の増加と共に弾性率の増加が進む。通常のキュアを用いるプロセスでは、成膜時に膜原料の他にポロジェンを添加し、このポロジェンを脱離させることで、低k値を実現するが、本実施例ではポロジェンを使うことなく、側鎖の炭化水素基の脱離による低k値化が可能である。
【0113】
このように、実施例12においては、UVキュア処理の処理時間を10秒間〜5分間とする。換言すれば、UVキュア処理の処理時間は、多孔質絶縁膜の膜強度がUVキュア処理前よりも向上し、多孔質絶縁膜のk値がUVキュア処理前よりも低くなる時間とする。
【0114】
(実施例13)
多孔質絶縁膜の成膜には、原料として、実施例9と同一の第1及び第2の環状有機シロキサンを用いた。
【0115】
図27は混載MRAM(Magnetic Random Access Memory)の断面図である。図27の半導体装置には、MTJ素子(Magnetic Tunnel Junction)100(図27(a))と、ロジック回路(図27(b))と、が混載されている。
【0116】
MRAMは磁性体の磁化方向により、0、1判定をし、これにより記憶素子として動作する。一般に、磁性体の磁化が反転するモードは、反転核生成と磁壁移動の二つが有り、どちらのタイプにも適用可能であるが、本実施例では磁壁移動タイプの素子を例に説明する。
【0117】
図27(a)に示すように、混載MRAMは、MTJ素子100を有している。MTJ素子100は、スピン吸収層112,114、磁壁移動層120、トンネルバリア層130及びピン層140をこの順に積層した構造を有している。スピン吸収層112、114の下面は、コンタクト152、154を介してそれぞれ拡散層に接続している。コンタクト152、154は、多孔質絶縁膜160に埋め込まれている。スピン吸収層112、114は、多孔質絶縁膜170に埋め込まれている。磁壁移動層120、トンネルバリア層130及びピン層140は、多孔質絶縁膜180に埋め込まれている。配線111は多孔質絶縁膜180上に形成されている。ピン層140の上面は多孔質絶縁膜180に被覆されておらず、配線111に接続している。配線111上には、ビア115及び配線116が形成されている。ビア115及び配線116は、多孔質絶縁膜190に埋め込まれている。
なお、図27(b)に示すように、ロジック領域には、ロジック回路を構成するトランジスタが形成されている。図27(b)には、そのトランジスタのソースドレイン領域117が示されている。
【0118】
図27に示す混載MRAMの多孔質絶縁膜160、170、180、190として、本実施例の多孔質絶縁膜を適用して作成したデバイスと、比較例4の多孔質絶縁膜を適用して作成したデバイスのそれぞれについて、反強磁性層のヒステリシス特性を調べた。ここで、比較例4では、ポロジェンとキュアプロセスを併用して空孔を導入した多孔質絶縁膜を成膜した。
本実施例では成膜温度は350℃である。一方比較例4では成膜温度は350℃であるが、その他に、キュアプロセス時に400℃の加熱がされている。その結果を図28に示す。図28(a)が実施例13の結果を示し、図28(b)が比較例4の結果を示す。図28の横軸は磁場(磁界)、縦軸は抵抗比である。本実施例の多孔質絶縁膜を適用した場合、メモリウインドウが保持される(ある範囲(メモリウインドウ)で2値を取り得る)ため、デバイスとして動作できるのに対し、比較例4の多孔質絶縁膜を適用した場合メモリウインドウが見られず、2値を取ることが困難であるため、デバイスとして動作しないことが判明した。
【0119】
本実施例ではキュアプロセスを行なっていないので、プロセス温度を350℃以下とすることができるが、比較例4ではキュアプロセスのため400℃の熱履歴を経ている。MTJ素子は400℃以上の熱処理によって以下のような現象が起きると予想される。1つは熱処理により反強磁性層の結晶構造が変化し、このため反強磁性層の磁化方向が変化し、ピン層の磁化方向が固定できなくなる。もう1つは熱処理によりトンネルバリア層を通して金属拡散が発生し、磁気記録層やピン層の磁化特性が変化してしまうことである。これにより比較例4の多孔質絶縁膜を適用した際、デバイスの動作不良が発生したと考えられる。一方、本実施例の多孔質絶縁膜は350℃までの熱履歴しか経験していないため、MTJ素子で不良が発生せず動作すると考えられる。
なお、実施例13の原料を用いた場合、多孔質絶縁膜を350℃以下、例えば200℃といった低温でも成長できる。実施例13の原料を用いることで、MTJ素子への熱負荷をさらに抑制させることも可能である。成長温度範囲は350℃〜25℃で可能であるが、多孔質絶縁膜の安定性を考慮すると200℃以上〜350℃以下の温度であることが望ましい。
【0120】
このように、実施例13では、多孔質絶縁膜を成膜する工程は、ポロジェン昇華プロセスを含まず、且つ、基板温度を200℃以上350℃以下にして行う。
また、実施例13により製造された半導体装置(デバイス)は、多孔質絶縁膜を含む多層配線層を有し、前記多孔質絶縁膜のうちの少なくとも何れか1層が、実施例13より製造された多孔質絶縁膜である。そして、多層配線層中にメモリ素子が形成され、このメモリ素子がMTJ素子100である。
【0121】
以上のような第1の実施形態によれば、容易に絶縁膜を低誘電率化することが可能となる。以下、その理由を説明する。
【0122】
先ず、この製造方法では、それぞれ環状SiO構造を主骨格とし互いに構造が異なる2種類以上の有機シロキサン化合物原料を、混合した後で気化するか、又は、混合と気化とを一度に行うことによって、絶縁膜の比誘電率を低減することができる。すなわち、環状SiO化合物の骨格構造を絶縁膜中に取り込むことにより、絶縁膜に空孔を導入し、絶縁膜の比誘電率を低下させることができる。
【0123】
また、環状SiO化合物の骨格構造を利用して絶縁膜中に空孔を導入することにより、空孔径を1nm以下と微細にすることができ(図3、図4参照)、絶縁膜中でクローズドポアとして存在することができる。その結果、均一な膜密度分布を持った絶縁膜を得ることができる。例えば、環状シロキサンは化学式(1)のnを変化させることにより、空孔サイズを制御することができ、これにより、比誘電率を制御することができる。一方、シルセスシロキサンに関しても同様で、化学式(17)のmを変化させることにより、空孔サイズを制御することができ、これにより比誘電率を制御することができる。
【0124】
また、複数の液体原料を用いて絶縁膜を成膜するに際し、複数の原料を個々に気化すると、キャリアガスが多くなってしまう。キャリアガスには不活性ガスが用いられるのが一般的であるが、キャリアガスはプラズマ中において励起ガスとしても作用するため、キャリアガスが多いほど原料の側鎖の解離や、骨格構造の開環といった分解が進んでしまう。この結果、絶縁膜中への微細な空孔の導入が困難となるとともに、絶縁膜中に取り込まれる炭化水素の量が減少してしまい、絶縁膜の比誘電率を下げることが困難になるという欠点がある。
これに対し、本実施形態では、複数の原料を個々に気化するのではなく、複数の原料を混合した後で気化するか、又は、混合と気化とを一度に行うことによって、原料を輸送するキャリアガスを低減することが可能である。これにより原料の分解を抑制することができ、絶縁膜の低誘電率化が可能となる。
【0125】
また、このように絶縁膜の低誘電率化を達成できることから、ひいては配線の性能を向上させ、高速、低消費電力なLSIの製造が可能となる。
【0126】
(第2の実施形態)
本実施形態でも、層間絶縁膜として好適な絶縁膜を、少なくとも2種以上の環状SiO化合物原料を混合した後で同一の気化器にて気化し、この気化ガスを用いたプラズマ気相成長法を実施することによって形成する。
【0127】
図9は第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法で用いられるプラズマ発生装置の一例を示す模式図である。
【0128】
上記の第1の実施形態では、2種類以上の環状SiO化合物原料を同一の原料リザーバタンク226aに投入する例を説明したが、第2の実施形態では、2種類以上の環状SiO化合物原料をそれぞれ別個の原料リザーバタンク226a、226cに投入し、気化直前に混合する例を説明する。上記の第1の実施形態のようにあらかじめ混合された材料を使う場合は、混合後に混合比率を変えることはできないが、本実施形態の場合は気化直前に任意量ずつ混合することができるので、材料の混合比率を容易に変えることができる。第2の実施形態は、その他の点は第1の実施形態と同様である。以下、第2の実施形態が第1の実施形態と相違する点について詳細に説明する。
【0129】
図9に示すプラズマ発生装置は、図6に示すプラズマ発生装置の各構成に加えて、原料リザーバタンク226a、バルブ225a及び液体流量コントローラ223aとそれぞれ同様の原料リザーバタンク226c、バルブ225c及び液体流量コントローラ223cを備えている。原料リザーバタンク226a、226cにはそれぞれ互いに構造の異なる環状SiO化合物原料が封入されている。原料リザーバタンク226aに封入されている原料は、不活性ガスによって圧送され、バルブ225a、液体流量コントローラ223a及びバルブ224aをこの順に介して気化器216aに導入される。同様に、原料リザーバタンク226cに封入されている原料も、不活性ガスによって圧送され、バルブ225c、液体流量コントローラ223c及びバルブ224aをこの順に介して気化器216aに導入される。すなわち、原料リザーバタンク226a内の原料と原料リザーバタンク226a内の原料とは、気化器216aに供給される直前で互いに混合され、該混合後に気化される。これら原料が混合される場所は液体流量コントローラ223a及び223cと気化器216eとの間の配管内であればどこでもよい。それぞれの原料の流量は、液体流量コントローラ223a、223cにてそれぞれ所望の量に調整される。気化器216e内で気化した原料は、気体流量コントローラ218aで流量制御されたキャリアガスとともにチャンバー201aへ導入される。
【0130】
このように、2種類以上の有機シロキサン化合物原料をそれぞれ個別の容器である原料リザーバタンク226a内、原料リザーバタンク226c内に貯留しておき、2種類以上の有機シロキサン化合物原料を原料リザーバタンク226a、226cからそれぞれ導出後に互いに混合し、該混合の直後に気化させて、気化ガスを生成する。
【0131】
(実施例14)
絶縁膜の成膜には、原料として、第1及び第2の環状有機シロキサンを用いた。このうち第1の環状有機シロキサンとしては、実施例1における第1の環状有機シロキサンと同じ構造のものを用い、第2の環状有機シロキサンとしては、実施例1における第2の環状有機シロキサンと同じ構造のものを用いた。成膜には、図9に示すプラズマ発生装置を用いた。原料リザーバタンク226aには第1の環状有機シロキサンを、原料リザーバタンク226cには第2の環状有機シロキサンを、それぞれ投入及び封入した。そして、これら2種類の環状有機シロキサンの混合比を、液体流量コントローラ223a、223cによる流量調節によって複数種類に調節し、それぞれの混合比で絶縁膜を成膜した。
【0132】
図7は、実施例14における2種類の環状シロキサンの混合比と、成膜された絶縁膜の比誘電率との関係を示す図である。混合比は、第1の環状有機シロキサンのモル数を第2の環状有機シロキサンのモル数で除した値である。図7において、点P1は混合比を3/4(=0.75)とした場合のデータをプロットした点、点P2は混合比を0.75×0.75=0.5625とした場合のデータをプロットした点、点P3は混合比を0.75×1.25=0.9375とした場合のデータをプロットした点である。図7に示すように、混合比(モル比)を、第1の環状有機シロキサンが1に対し第2の環状有機シロキサンの割合を3/4を中心としたプラスマイナス25%の範囲内とすることにより、最も低い比誘電率を得ることができた。つまり、点P1、P2、P3では、その周囲の点P4、P5よりも、顕著に低い比誘電率を達成できた。なお、点P4、P5の更に周囲の点では、点P4、P5よりも更に比誘電率が高い。
【0133】
(実施例15)
絶縁膜の成膜には、原料として、それぞれ化学式(1)で示される第1及び第2の環状有機シロキサンを用いた。このうち第1の環状有機シロキサンとしては、R1(Rx)、R2(Ry)がそれぞれメチル基であり、n=2であるもの(テトラメチルシクロジシロキサン)を用いた。また、第2の環状有機シロキサンとしては、R1(Rx)がビニル基であり、R2(Ry)がメチル基であり、n=5であるもの(2,4,6,8、10−ペンタビニル−2,4,6,8、10−ペンタメチルシクロペンタシロキサン)を用いた。成膜には、図9に示すプラズマ発生装置を用いた。原料リザーバタンク226aには第1の環状有機シロキサンを、原料リザーバタンク226cには第2の環状有機シロキサンを、それぞれ投入及び封入した。そして、これら2種類の環状有機シロキサンの混合比を、液体流量コントローラ223a、223cによる流量調節によって複数種類に調節し、それぞれの混合比で絶縁膜を成膜した。
【0134】
図8は、実施例15における2種類の環状シロキサンの混合比と、成膜された絶縁膜の比誘電率との関係を示す図である。混合比は、第1の環状有機シロキサンのモル数を第2の環状有機シロキサンのモル数で除した値である。図8において、点P11は混合比を2/5(=0.4)とした場合のデータをプロットした点、点P12は混合比を0.4×0.75=0.3とした場合のデータをプロットした点、点P13は混合比を0.4×1.25=0.5とした場合のデータをプロットした点である。図8に示すように、混合比(モル比)を、第1の環状有機シロキサンが1に対し第2の環状有機シロキサンの割合を2/5を中心としたプラスマイナス25%の範囲内とすることにより、最も低い比誘電率を得ることができた。つまり、点P11、P12、P13では、その周囲の点P14、P15よりも、顕著に低い比誘電率を達成できた。なお、点P14、P15の更に周囲の点では、点P14、P15よりも更に比誘電率が高い。
【0135】
以上のような第2の実施形態によっても、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0136】
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、上記の第1及び第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法の具体的な適用例を説明する。
【0137】
図10は第3の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例における一連の工程を示す断面図である。
【0138】
先ず、図10(a)に示すように、層間絶縁膜301、バリアメタル膜303、下層配線302及びバリア絶縁膜304を形成する。これら層間絶縁膜301、バリアメタル膜303、下層配線302及びバリア絶縁膜304は、以下に説明する層間絶縁膜306、バリアメタル膜308、上層配線311及びバリア絶縁膜310と同様に形成することができる。
【0139】
次に、図10(b)に示すように、バリア絶縁膜304上に、上記の第1及び第2の実施形態で説明した絶縁膜の成膜方法により層間絶縁膜306を成膜する。
【0140】
次に、図10(c)に示すように、後工程でCMP(Chemical Mechanical Polish)を行う際に層間絶縁膜306の保護膜として機能するハードマスク膜307を、層間絶縁膜306上に成膜する。ハードマスク膜307は、例えば、SiO膜、TEOS膜、比較的硬質な(Modulus 10GPa以上の)SiOC膜あるいはSiOCH膜とすることができる。
【0141】
次に、図10(d)に示すように、フォトリソグラフィーと異方性エッチングによって、層間絶縁膜306に配線溝および配線孔を形成する。
【0142】
次に、図10(e)に示すように、その後バリアメタル膜308を形成する。バリアメタル膜308は、配線の側面および底面を被覆するように形成される導電性膜である。バリアメタル膜308は、配線を構成する金属元素が層間絶縁膜306や下層へ拡散することを抑制するバリア性を有する。例えば、配線がCuを主成分とする金属元素により構成される場合には、バリアメタル膜308は、タンタル(Ta)、窒化タンタル(TaN)、窒化チタン(TiN)あるいは炭窒化タングステン(WCN)のような高融点金属やその窒化物等、またはそれらの積層膜とすることができる。
【0143】
次に、図10(f)に示すように、配線溝および配線孔に金属配線材309を埋め込む。金属配線材309は、例えば、Cuを主成分とする。なお、金属配線材309の信頼性を向上させるため、金属配線材309にはCu以外の金属元素が含有されていても良いし、或いは、Cu以外の金属元素が金属配線材309を構成するCuの上面や側面などに形成されていても良い。
【0144】
次に、Cu粒成長のための熱処理を施す。この熱処理の温度は、例えば、200℃〜400℃、時間は30秒〜1時間に設定する。
【0145】
次に、図10(g)に示すように、CMPなどの研磨技術を用い、配線溝および配線孔以外の余剰な金属配線材309、バリアメタル308及びハードマスク膜307を除去することにより、上層配線311を形成する。
【0146】
次に、図10(h)に示すように、上層配線311上、層間絶縁膜306上及びバリアメタル308上に、バリア絶縁膜310を成膜する。バリア絶縁膜310は、Cu配線である上層配線311の酸化を抑制する機能と、層間絶縁膜306中へのCuの拡散を防ぐ機能とを有するほかに、バリア絶縁膜310上に形成される層間絶縁膜(図示略)の加工時にエッチングストップ層として機能する。バリア絶縁膜310は、例えば、SiC膜、SiCN膜、SiN膜、CoWP膜、CoWB膜、CoSnP膜、CoSnB膜、NiB膜、NiMoB膜などにより構成することができる。
【0147】
以後は、図10(b)〜図10(h)の工程を所望の回数だけ繰り返すことにより、所望の層構造の多層配線層を形成することができる。なお、ここでは、配線溝と配線孔とを一度に形成するデュアルダマシン法に第1及び第2の実施形態を適用する例を説明したが、シングルダマシン法を用いたときの配線層形成にも同様に第1及び第2の実施形態を適用することができる。
【0148】
図11は、このような製造方法により製造される半導体装置の例を示す断面図である。図11(a)はこの半導体装置のDRAM(Dynamic Random Access Memory)セル部を示し、図11(b)はこの半導体装置のロジック部を示す。またDRAMの別の一例として図11(c)のような断面構造を取ることも可能である。
【0149】
先ず、DRAMセル部の構造を説明する。図11(a)に示すように、DRAMセル部は、STI(Shallow Trench Isolation)等の素子分離膜6により素子分離されたシリコン基板5上に形成されたMOSトランジスタ9を有している。このMOSトランジスタ9は、シリコン基板5に形成された拡散層7と、ゲート絶縁膜8aを介してシリコン基板5上に形成されたゲート電極8と、サイドウォール10と、を有している。各MOSトランジスタ9は、エッチングストップ膜2を介してコンタクト層間絶縁膜1により覆われている。コンタクト層間絶縁膜1には、拡散層7に接するコンタクトプラグ4がコンタクトバリアメタル膜3をライナーとして形成されている。
【0150】
コンタクト層間絶縁膜1上には、第1層の層間絶縁膜11が形成され、この層間絶縁膜11には、ビット線として機能する第1層配線19が、第1層配線バリアメタル膜13をライナーとして形成されている。層間絶縁膜11上には、第2層の層間絶縁膜21が形成され、この層間絶縁膜21には、第2層配線25が、第2層配線バリアメタル膜23をライナーとして形成されている。層間絶縁膜21上には、第2層配線のキャップ膜30が形成されている。このキャップ膜30上には、第3層の層間絶縁膜31が形成され、この層間絶縁膜31上には、第3層配線のキャップ膜40が形成され、このキャップ膜40上には第4層の層間絶縁膜41が形成され、この層間絶縁膜41上には第4層配線のキャップ膜50が形成されている。このキャップ膜50上には、ハードマスク絶縁膜94が形成されている。そして、ハードマスク絶縁膜94、キャップ膜50、層間絶縁膜41、キャップ膜40、層間絶縁膜31、キャップ膜30を貫通する孔部内には、下部電極膜91、容量絶縁膜92及び上部電極膜93の3層の膜をこの順に積層してなる積層膜をライナーとして、シリンダ内埋設メタル99が形成されている。これらシリンダ内埋設メタル99、下部電極膜91、容量絶縁膜92及び上部電極膜93により容量素子90が構成されている。なお、シリンダ容量を構成する部位以外においては、キャップ膜50上にハードマスク絶縁膜94、下部電極膜91、容量絶縁膜92及び上部電極膜93は存在していない。
【0151】
シリンダ内埋設メタル99上及びキャップ膜50上には、第5層の層間絶縁膜51が形成されている。この層間絶縁膜51には、シリンダ内埋設メタル99に達する配線溝が形成され、この配線溝には、第5層配線バリアメタル膜53をライナーとして、第5層配線55が形成されている。層間絶縁膜51上及び第5層配線55上には、第5層配線のキャップ膜60が形成されている。このキャップ膜60上には、第6層の層間絶縁膜61が形成されている。この層間絶縁膜61には、第6層配線バリアメタル膜63をライナーとして第6層配線65が形成されている。層間絶縁膜61上及び第6層配線65上には、第6層配線のキャップ膜70が形成されている。
【0152】
次に、ロジック部の構造を説明する。図11(b)に示すように、ロジック部においても、DRAMセル部と同様に、シリコン基板5には素子分離膜6及び拡散層7が形成されている。そして、シリコン基板5上には、エッチングストップ膜2が形成されている。このエッチングストップ膜2上には、コンタクト層間絶縁膜1が形成され、このコンタクト層間絶縁膜1には、拡散層7に達する孔部が形成され、この孔部には、コンタクトバリアメタル膜3をライナーとしてコンタクトプラグ4が形成されている。コンタクトプラグ4上及びコンタクト層間絶縁膜1上には、第1層の層間絶縁膜11が形成されている。この層間絶縁膜11には、ビット線として機能する第1層配線15が、第1層配線バリアメタル膜13をライナーとして形成されている。
【0153】
層間絶縁膜11上には、第2層の層間絶縁膜21が形成され、この層間絶縁膜21には、第2層配線バリアメタル膜23をライナーとして第2層配線25が形成されている。層間絶縁膜21上には、第2層配線のキャップ膜30が形成されている。キャップ膜30上には、第3層の層間絶縁膜31が形成され、この層間絶縁膜31には、第3層配線バリアメタル膜33をライナーとして第3層配線35が形成されている。層間絶縁膜31上には、第3層配線のキャップ膜40が形成されている。同様に、キャップ膜40上には、第4層の層間絶縁膜41が形成され、この層間絶縁膜41には、第4層配線バリアメタル膜43をライナーとして第4層配線45が形成されている。層間絶縁膜41上には、第4層配線のキャップ膜50が形成されている。同様に、キャップ膜50上には、第5層の層間絶縁膜51が形成され、この層間絶縁膜51には、第5層配線バリアメタル膜53をライナーとして第5層配線55が形成されている。層間絶縁膜51上には、第5層配線のキャップ膜60が形成されている。同様に、キャップ膜60上には、第6層の層間絶縁膜61が形成され、この層間絶縁膜61には、第6層配線バリアメタル膜63をライナーとして第6層配線65が形成されている。層間絶縁膜61上には、第6層配線のキャップ膜70が形成されている。
【0154】
以上において、例えば、第1層〜第6層の層間絶縁膜11、21、31、41、51、61の各々を、第1の実施形態又は第2の実施形態で説明した絶縁膜の成膜方法によって成膜することができる。
【0155】
図11(c)に示される断面構造のDRAMの場合、記憶回路を構成する容量素子408は、下部電極403、容量絶縁膜404、上部電極405、ハードマスク409、バリアメタル膜406及び上部接続配線407を有している。容量素子408の上の層には、固定電位を有する配線402aと信号配線402bとが形成され、容量素子408の上部接続配線407と同層に位置する配線401bの上の層には配線401aが形成されている。この構造においても、層間絶縁膜411、412、413、414の各々を、第1の実施形態又は第2の実施形態で説明した絶縁膜の成膜方法によって成膜することができる。
【0156】
上記の第1及び第2の実施形態では、原料を気化器216aに導入する前に、2種類以上の原料を混合する例を説明したが、気化器216a内に2種類以上の原料を別個の配管を介して導入し、これら原料を気化器216a内で混合しても良い。
【0157】
また、気化器216a内に2種類以上の原料を別個の配管を介して導入し、これら原料を気化器216a内で混合する場合、気化器216a内における2種類以上の原料の混合と、気化器216a内における原料の気化と、を一度に(同時に)行うことも好ましい。このためには、例えば、気化器216a内の気化室(図示せず)に、2種類以上の原料を別個の配管を介して導入し、該気化室において原料の混合と気化とを一度に(同時に)行うと良い。
【0158】
また、第1及び第2の実施形態では、絶縁膜の成膜対象が半導体基板、特にシリコン基板(シリコン基板200a)である例を説明したが、SOI(Silicon on Insulator)基板、TFT(Thin film transistor)、或いは液晶表示パネルの基板などであっても良い。
【符号の説明】
【0159】
1 コンタクト層間絶縁膜
2 エッチングストップ膜
3 コンタクトバリアメタル膜
4 コンタクトプラグ
5 シリコン基板
6 素子分離膜
7 拡散層
8 ゲート電極
8a ゲート絶縁膜
9 MOSトランジスタ
10 サイドウォール
11 第1層の層間絶縁膜
13 第1層配線バリアメタル膜
15 第1層配線
19 第1層配線
20 第1層配線のキャップ膜
21 第2層の層間絶縁膜
23 第2層配線バリアメタル膜
25 第2層配線
30 第2層配線のキャップ膜
31 第3層の層間絶縁膜
33 第3層配線バリアメタル膜
35 第3層配線
40 第3層配線のキャップ膜
41 第4層の層間絶縁膜
43 第4層配線バリアメタル膜
45 第4層配線
50 第4層配線のキャップ膜
51 第5層の層間絶縁膜
53 第5層配線バリアメタル膜
55 第5層配線
60 第5層配線のキャップ膜
61 第6層の層間絶縁膜
63 第6層配線バリアメタル膜
65 第6層配線
70 第6層配線のキャップ膜
90 容量素子
91 下部電極膜
92 容量絶縁膜
93 上部電極膜
94 ハードマスク絶縁膜
99 シリンダ内埋設メタル
100 MTJ素子
111 配線
112 スピン吸収層
114 スピン吸収層
115 ビア
116 配線
117 ソースドレイン領域
120 磁壁移動層
130 トンネルバリア層130
140 ピン層
152 コンタクト
154 コンタクト
160 多孔質絶縁膜
170 多孔質絶縁膜
180 多孔質絶縁膜
190 多孔質絶縁膜
200a シリコン基板
201a チャンバー
203a ステージ
204a シャワーヘッド
206a 接地線
207a 排気配管
208a 冷却トラップ
209a 真空ポンプ
211a 給電線
212a マッチングコントローラ
213a 高周波電源
215a 配管
216a,216e 気化器
218a,218e 気体流量コントローラ
221a バルブ
222a 排気バルブ
223a,223c,223e 液体流量コントローラ
224a,224e バルブ
225a,225c,225e バルブ
226a,226c,226e 原料リザーバタンク
227a バルブ
228a 添加ガス流量コントローラ
301 層間絶縁膜
302 下層配線
303 バリアメタル膜
304 バリア絶縁膜
306 層間絶縁膜
307 ハードマスク膜
308 バリアメタル膜
309 金属配線材
310 バリア絶縁膜
311 上層配線
401a 配線
401b 配線
402a 配線
402b 信号配線
403 下部電極
404 容量絶縁膜
405 上部電極
406 バリアメタル膜
407 上部接続配線
408 容量素子
409 ハードマスク
411、412、413、414 層間絶縁膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ環状SiO構造を主骨格とし互いに構造が異なる2種類以上の有機シロキサン化合物原料を混合した後で気化するか、又は、前記2種類以上の有機シロキサン化合物原料の混合と気化とを一度に行うことによって、気化ガスを生成する工程と、
前記気化ガスをキャリアガスとともに反応炉に輸送する工程と、
前記反応炉にて前記気化ガスを用いたプラズマCVD法又はプラズマ重合法によって多孔質絶縁膜を成膜する工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記有機シロキサン化合物原料のうち少なくとも1つは、下記化学式(1)の構造を有する環状シロキサンであることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【化1】

(化学式(1)において、nは2〜5であり、Rx、Ryは、それぞれ、水素、不飽和炭化水素基及び飽和炭化水素基の何れかであり、これら不飽和炭化水素基および飽和炭化水素基の各々は、ビニル基、アリル基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、およびターシャリーブチル基の何れかである。)
【請求項3】
2種類の前記有機シロキサン化合物原料を混合及び気化して前記気化ガスを生成するか、又は、2種類の前記有機シロキサン化合物原料を気化後混合して前記気化ガスを生成し、
前記2種類の前記有機シロキサン化合物原料は、それぞれ前記化学式(1)の構造を有し、これら有機シロキサン化合物原料の前記Rxは互いに同じであり、これら有機シロキサン化合物原料の前記Ryは互いに同じであり、且つ、前記Rxと前記Ryとは互いに異なることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記Rxと前記Ryの何れか一方が不飽和炭化水素であることを特徴とする請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記Rxがビニル基、前記Ryがイソプロピル基であることを特徴とする請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記2種類の有機シロキサン化合物原料のうち一方のnが3、他方のnが4であることを特徴とする請求項3乃至5の何れか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記2種類の有機シロキサン化合物原料のうち、nが4である有機シロキサン化合物原料の側鎖のうち、不飽和炭化水素基以外の側鎖の水素原子の合計数が24以上であることを特徴とする請求項6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記有機シロキサン化合物原料のうちの少なくとも1つは、炭素数2〜4の不飽和炭化水素基および炭素数1〜4の飽和炭化水素基を有し、
前記不飽和炭化水素基および前記飽和炭化水素基は、前記環状SiO構造を構成するSi原子に結合していることを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記不飽和炭化水素基は直鎖状不飽和炭化水素基であることを特徴とする請求項2乃至8の何れか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記飽和炭化水素基は分枝鎖状飽和炭化水素基であることを特徴とする請求項2乃至8の何れか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記有機シロキサン化合物原料のうち少なくとも1つは、下記化学式(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、(7)、(8)、(9)、(10)、(11)、(12)、(13)、(14)、(15)、(16)の何れかに示す構造を有する環状有機シロキサンであることを特徴とする請求項2乃至7の何れか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

(化学式(2)乃至(16)において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9は、水素、不飽和炭化水素基及び飽和炭化水素基の何れかであり、これら不飽和炭化水素基および飽和炭化水素基の各々は、ビニル基、アリル基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、およびブチル基の何れかである。)
【請求項12】
前記有機シロキサン化合物原料のうち少なくとも1つは、前記化学式(1)の構造を有し、Rxがビニル基、Ryがメチル基であり、nが3〜5であることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記有機シロキサン化合物原料のうち少なくとも1つは、前記化学式(1)の構造を有し、Rxがビニル基、Ryがイソプロピル基であり、nが3〜5であることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記有機シロキサン化合物原料のうち少なくとも1つは、前記化学式(1)の構造を有し、Rxがビニル基、Ryがターシャリーブチル基であり、nが3〜5であることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
前記有機シロキサン化合物原料のうち少なくとも1つは、下記化学式(17)の構造を有するシルセスキオキサンであることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【化17】

(化学式(17)において、mは4以上であり、Rzは水素、不飽和炭化水素基及び飽和炭化水素基の何れかであり、不飽和炭化水素基および飽和炭化水素基の各々は、ビニル基、アリル基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、およびブチル基の何れかである。)
【請求項16】
前記有機シロキサン化合物原料のうち少なくとも1つは、下記化学式(18)、(19)、(20)の何れかに示す構造のシルセスキオキサンであり、m>3であることを特徴とする請求項15に記載の半導体装置の製造方法。
【化18】

【化19】

【化20】

【請求項17】
前記有機シロキサン化合物原料のうち少なくとも1つは、下記化学式(21)、(22)、(23)、(24)の何れかに示すシルセスキオキサンであることを特徴とする請求項15に記載の半導体装置の製造方法。
【化21】

【化22】

【化23】

【化24】

(化学式(21)乃至(24)において、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23は、水素、不飽和炭化水素基及び飽和炭化水素基の何れかであり、これら不飽和炭化水素基および飽和炭化水素基の各々は、ビニル基、アリル基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、およびブチル基の何れかである。)
【請求項18】
前記有機シロキサン化合物原料のうち少なくとも1つは、下記化学式(25)、(26)、(27)、(28)の何れかに示すシルセスキオキサンであることを特徴とする請求項15に記載の半導体装置の製造方法。
【化25】

【化26】

【化27】

【化28】

【請求項19】
前記有機シロキサン化合物原料のうちの1つは前記シルセスキオキサンであり、
前記有機シロキサン化合物原料のうちの他の1つは前記化学式(1)の構造を有する環状シロキサンであり、且つ、Rx、Ryは不飽和炭化水素または立体障害の大きい炭化水素であり、
前記シルセスキオキサンを前記環状シロキサンに溶解させることにより得た原料を気化させて前記気化ガスを生成することを特徴とする請求項16に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項20】
2種類の前記有機シロキサン化合物原料を混合及び気化して前記気化ガスを生成し、
前記2種類の前記有機シロキサン化合物原料のうち、第1原料はX個の不飽和炭化水素基を有し、第2原料はY(X=Yの場合もあり)個の不飽和炭化水素基を有し、
前記第1及び第2原料の混合比(モル比)は、前記第1原料が1に対し前記第2原料の割合をX/Yを中心としてプラスマイナス25%の範囲内とすることを特徴とする請求項1乃至19の何れか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項21】
2種類の前記有機シロキサン化合物原料を混合及び気化して前記気化ガスを生成し、
前記2種類の前記有機シロキサン化合物原料のうち、第1原料は前記化学式(1)の構造を有し且つnがn=Eであり、第2原料は前記化学式(1)の構造を有し、かつ、nがn=F(E=Fの場合もあり)、
前記第1及び第2原料の混合比(モル比)は、前記第1原料が1に対し前記第2原料の割合をE/Fを中心としてプラスマイナス25%の範囲内とすることを特徴とする請求項1乃至19の何れか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項22】
前記2種類以上の有機シロキサン化合物原料を混合し、常温常圧下で液体の原料として容器内に貯留しておき、
前記液体の原料を前記容器外に導出後に気化させて前記気化ガスを生成することを特徴とする請求項1乃至21の何れか一項に記載の半導体装置の製造方法
【請求項23】
前記2種類以上の有機シロキサン化合物原料をそれぞれ個別の容器内に貯留しておき、
前記2種類以上の有機シロキサン化合物原料を前記個別の容器からそれぞれ導出後に互いに混合し、該混合の直後に気化させるか、又は、該混合と気化とを一度に行うことによって、前記気化ガスを生成することを特徴とする請求項1乃至21の何れか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項24】
前記絶縁膜を成膜する工程では、プラズマ発生装置内に酸素(O)、二酸化炭素(CO)、一酸化炭素(CO)、一酸化窒素(NO)及び二酸化窒素(NO)からなる群から選択される酸化性ガスを導入し、前記気化ガスをプラズマ化することを特徴とする請求項1乃至23の何れか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項25】
前記多孔質絶縁膜を成膜する工程は、第1の多孔質絶縁膜を成膜する工程と、第2の多孔質絶縁膜を成膜する工程と、を含み、
前記有機シロキサン化合物原料をキャリアガスとともにプラズマ発生装置内に供給し、前記有機シロキサン化合物原料をプラズマ化させることにより、前記第1及び第2の多孔質絶縁膜をそれぞれ成膜し、
前記第2の多孔質絶縁膜を成膜する工程における前記キャリアガスの流量(b)に対する前記有機シロキサン化合物原料のガス流量(a)の比率(a/b)が、前記第1の多孔質絶縁膜を成膜する工程における前記キャリアガスの流量(b)に対する前記有機シロキサン化合物原料のガス流量(a)の比率(a/b)よりも大きいことを特徴とする請求項1乃至24の何れか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項26】
前記多孔質絶縁膜を成膜する工程の後で、
前記多孔質絶縁膜に対し、熱キュア処理、EBキュア処理及びUVキュア処理のうち少なくとも何れか1つ以上を組み合わせたキュア処理を行うことを特徴とする請求項1乃至25の何れか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項27】
前記UVキュア処理は、基板温度350℃以上で、前記多孔質絶縁膜に紫外光を照射する処理であることを特徴とする請求項26に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項28】
前記UVキュア処理の処理時間は、前記多孔質絶縁膜の膜強度が前記UVキュア処理前よりも向上し、前記多孔質絶縁膜のk値が前記UVキュア処理前よりも低くなる時間とすることを特徴とする請求項26又は27に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項29】
前記多孔質絶縁膜を成膜する工程は、ポロジェン昇華プロセスを含まず、且つ、基板温度を350℃以下にして行うことを特徴とする請求項1乃至26の何れか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項30】
前記2種類以上の有機シロキサン化合物原料は、分子量が互いに異なることを特徴とする請求項1乃至29の何れか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項31】
前記2種類以上の有機シロキサン化合物原料は、側鎖の分子量が互いに異なることを特徴とする請求項1乃至30の何れか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項32】
多孔質絶縁膜を含む多層配線層を有し、
前記多孔質絶縁膜のうちの少なくとも何れか1層が、請求項1乃至31の何れか一項に記載の半導体装置の製造方法により製造された前記多孔質絶縁膜であることを特徴とする半導体装置。
【請求項33】
多孔質絶縁膜を含む多層配線層を有し、
前記多孔質絶縁膜のうちの少なくとも何れか1層は、当該多孔質絶縁膜中に、有機シロキサンのSi−O主骨格構造を複数種類含み、
前記多孔質絶縁膜中の炭素原子数とシリコン原子数との比C/Siが2.2以上であることを特徴とする半導体装置。
【請求項34】
前記多孔質絶縁膜中に、有機シロキサンのSi−O主骨格構造として、Si−Oの3員環構造とSi−Oの4員環構造とを含むことを特徴とする請求項33に記載の半導体装置。
【請求項35】
前記多層配線層中にメモリ素子が形成されていることを特徴とする請求項32乃至34の何れか一項に記載の半導体装置。
【請求項36】
前記メモリ素子がMTJ素子であることを特徴とする請求項35に記載の半導体装置。
【請求項37】
前記メモリ素子が容量素子であることを特徴とする請求項35に記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2011−192962(P2011−192962A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283111(P2010−283111)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】