説明

半導体装置の製造方法

【課題】半導体基板の主面上の洗浄効果を低下させることなく、電界効果トランジスタのゲート電極の側面上に形成されたオフセットスペーサ膜の除去を抑制する。
【解決手段】ゲート電極部Gn,Gpを覆うように、半導体基板1の主面上に薬液に対するエッチング速度が互いに異なる第1OSS膜10および第2OSS膜12を順次形成した後、異方性エッチングにより、ゲート電極部Gn,Gpの側面上に位置する第2OSS膜12を残して、他の部分に位置する第2OSS膜12を除去する。そして、ゲート電極部Gn,Gpと、ゲート電極部Gn,Gpの側面上に位置する第1OSS膜10および第2OSS膜12と、をマスクにして、半導体基板1に不純物をイオン注入した後、半導体基板1を薬液により洗浄して、露出している第1OSS膜10を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造技術に関し、特に、ゲート電極の側面上にオフセットスペーサ(Offset Spacer)膜を有する電界効果トランジスタの製造に適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電界効果トランジスタの製造方法について簡単に説明する。まず、単結晶シリコンからなる半導体基板の主面上にゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成した後、ゲート電極の側面上のみにオフセットスペーサ膜(以下、OSS膜という場合もある)を形成する。このオフセットスペーサ膜の厚さは、例えば10nm以下である。次に、ゲート電極およびゲート電極の側面上に形成されたオフセットスペーサ膜をマスクとして半導体基板に、エクステンション注入領域(ソース・ドレインの一部を構成する領域)を形成するための不純物をイオン注入法により導入する。この際、不純物をイオン注入法により導入しない領域はレジストパターンにより覆われている。次に、アッシング処理により上記レジストパターンを除去し、さらに、アルカリ系薬液を用いた洗浄(薬液処理)により、半導体基板の主面上から異物または残渣を除去する。その後、半導体基板に熱処理を施すことにより、半導体基板に導入した上記不純物を活性化させる。
【0003】
ところで、前述したアルカリ系薬液を用いた洗浄(薬液処理)においては、半導体基板の主面上から異物または残渣を除去することはできるが、同時に、露出した半導体基板がエッチングされる。エクステンション注入領域の半導体基板の主面からの深さは、例えば20nm程度と浅いため、アルカリ系薬液を用いた洗浄(薬液処理)により半導体基板がエッチングされると、エクステンション注入領域の半導体基板の主面からの深さが設計値よりも浅くなり、所望する電界効果トランジスタの動作特性が得られない等の問題が生じる。このため、アルカリ系薬液を用いた洗浄(薬液処理)においては、半導体基板のエッチングを抑制して、半導体基板のエッチング量を低減する必要がある。
【0004】
そこで、本発明者らは、図20に示すように、ゲート電極55の側面上に、ALD(Atomic Layer Deposition)法により形成された下層の窒化シリコン膜51、アッシング処理により形成された中間層の酸化シリコン膜52、およびALD法により形成された上層の窒化シリコン膜53の3層からなるOSS膜54を設け、ゲート電極55が形成されていない半導体基板50の主面上に、ALD法により形成された下層の窒化シリコン膜51を設けた。ゲート電極55の側面上に形成された下層の窒化シリコン膜51の厚さは、例えば1.5〜3nm程度、中間層の酸化シリコン膜52の厚さは、例えば1〜2nm程度、上層の窒化シリコン膜53の厚さは、例えば3.5〜5nm程度である。
【0005】
そして、半導体基板50にエクステンション注入領域56を形成するための不純物をイオン注入する際には、下層の窒化シリコン膜51を通して半導体基板50に不純物を導入する。その後、半導体基板50の主面上から異物または残渣を除去するために、アルカリ系薬液を用いた洗浄(薬液処理)を半導体基板50に施す。しかし、この洗浄では、ゲート電極55が形成されていない半導体基板50の主面上に下層の窒化シリコン膜51が形成されていることから、その下層の窒化シリコン膜51下の半導体基板50のエッチングを抑制することができる。
【0006】
例えば、米国特許第6696334号明細書(特許文献1)および米国特許第7202187号明細書(特許文献2)には、少なくとも1層を窒化シリコン膜とする2層構造のオフセットスペーサ膜が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6696334号明細書
【特許文献2】米国特許第7202187号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前述の図20に示した電界効果トランジスタでは、ゲート電極55の側面上にも、下層の窒化シリコン膜51、中間層の酸化シリコン膜52、および上層の窒化シリコン膜53の3層からなるOSS膜54が形成されている。そのため、アルカリ系薬液を用いた洗浄(薬液処理)を行うと、ゲート電極55が形成されていない半導体基板50の主面上に形成された下層の窒化シリコン膜51だけでなく、ゲート電極55の側面上に形成されたOSS膜54もエッチングされてしまう。
【0009】
OSS膜54がエッチングされて薄くなるか、または完全に除去されると、アルカリ系薬液を用いた洗浄(薬液処理)により、ゲート電極55を構成する導電体がエッチングされてゲート電極55の寸法が変動する。その結果、電解効果トランジスタの動作特性にばらつきが生じることがある。
【0010】
一方で、ゲート電極55の側面上に形成されたOSS膜54のエッチングを抑制しようとすれば、ゲート電極55が形成されていない半導体基板50の主面上に形成された下層の窒化シリコン膜51のエッチングも抑制されて、充分な洗浄効果が得られないという問題が生じてしまう。
【0011】
本発明の目的は、半導体基板の主面上の洗浄効果を低下させることなく、電界効果トランジスタのゲート電極の側面上に形成されたオフセットスペーサ膜の除去を抑制することのできる技術を提供することにある。
【0012】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの一実施の形態を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0014】
この実施の形態は、電界効果トランジスタを有する半導体装置の製造方法であって、半導体基板の主面上にゲート電極部を形成する工程と、ゲート電極部を覆うように、半導体基板の主面上に第1OSS膜を形成する工程と、第1OSS膜を覆うように、半導体基板の主面上に第2OSS膜を形成する工程と、異方性エッチングにより、ゲート電極部の側面上に位置する第2OSS膜を残して、他の部分に位置する第2OSS膜を除去し、ゲート電極部の上面上およびゲート電極部が形成されていない半導体基板の主面上の第1OSS膜を露出させる工程と、半導体基板の主面上の所定の領域をレジストパターンで覆い、ゲート電極部と、ゲート電極部の側面上に位置する第1OSS膜および第2OSS膜とをマスクとして、レジストパターンにより覆われていない領域の半導体基板に不純物をイオン注入する工程と、レジストパターンを除去する工程と、半導体基板を薬液により洗浄して、ゲート電極部の上面上およびゲート電極部が形成されていない半導体基板の主面上の第1OSS膜を薄くする、または完全に除去する工程とを含み、第1OSS膜の薬液に対するエッチング速度が、第2OSS膜の薬液に対するエッチング速度よりも速いものである。
【発明の効果】
【0015】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの一実施の形態によって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0016】
半導体基板の主面上の洗浄効果を低下させることなく、電界効果トランジスタのゲート電極の側面上に形成されたオフセットスペーサ膜の除去を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態によるCMISデバイスの製造工程を説明する半導体基板の要部断面図である。
【図2】図1に続くCMISデバイスの製造工程中の図1と同じ箇所の要部断面図である。
【図3】図2に続くCMISデバイスの製造工程中の図1と同じ箇所の要部断面図である。
【図4】図3に続くCMISデバイスの製造工程中の図1と同じ箇所の要部断面図である。
【図5】フッ素系薬液に対するプラズマCVD法により形成されたTEOS膜およびALD法により形成された窒化シリコン膜のエッチング特性を説明するグラフ図である。
【図6】図4に続くCMISデバイスの製造工程中の図1と同じ箇所の要部断面図である。
【図7】図6に続くCMISデバイスの製造工程中の図1と同じ箇所の要部断面図である。
【図8】図7に続くCMISデバイスの製造工程中の図1と同じ箇所の要部断面図である。
【図9】図8に続くCMISデバイスの製造工程中の図1と同じ箇所の要部断面図である。
【図10】図9に続くCMISデバイスの製造工程中の図1と同じ箇所の要部断面図である。
【図11】図10に続くCMISデバイスの製造工程中の図1と同じ箇所の要部断面図である。
【図12】図11に続くCMISデバイスの製造工程中の図1と同じ箇所の要部断面図である。
【図13】図12に続くCMISデバイスの製造工程中の図1と同じ箇所の要部断面図である。
【図14】図13に続くCMISデバイスの製造工程中の図1と同じ箇所の要部断面図である。
【図15】成膜温度をパラメータとした、フッ素系薬液に対するALD法により形成された窒化シリコン膜のエッチング特性を説明するグラフ図である。
【図16】本発明の一実施の形態によるCMISデバイスの製造工程の第1変形例を説明する半導体基板の要部断面図である。
【図17】過酸化水素水を含む溶液(硫酸:過酸化水素水=5:1)に対するALD法により形成されたチタンナイトライド膜およびALD法により形成された窒化シリコン膜のエッチング特性を説明するグラフ図である。
【図18】本発明の一実施の形態によるCMISデバイスの製造工程の第2変形例を説明する半導体基板の要部断面図である。
【図19】本発明の一実施の形態によるCMISデバイスの製造工程の第3変形例を説明する半導体基板の要部断面図である。
【図20】本発明者らが、本発明に先駆けて検討した電界効果トランジスタの製造工程を説明する半導体基板の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の実施の形態において、便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
【0019】
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0020】
また、以下の実施の形態で用いる図面においては、平面図であっても図面を見易くするためにハッチングを付す場合もある。また、以下の実施の形態においては、電界効果トランジスタを代表するMISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)をMISと略し、pチャネル型のMISFETをpMISと略し、nチャネル型のMISFETをnMISと略す。また、以下の実施の形態において、ウエハと言うときは、Si(Silicon)単結晶ウエハを主とするが、それのみではなく、SOI(Silicon On Insulator)ウエハ、集積回路をその上に形成するための絶縁膜基板等を指すものとする。その形も円形またはほぼ円形のみでなく、正方形、長方形等も含むものとする。
【0021】
また、以下の実施の形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0022】
本実施の形態による電界効果トランジスタの製造方法を図1〜図14を用いて工程順に説明する。ここでは、電界効果トランジスタとして、CMIS(Complementary Metal Insulator Semiconductor)デバイスを例示する。図1〜図4および図6〜図14は電界効果トランジスタの要部断面図、図5はプラズマCVD法により形成されたTEOS膜およびALD法により形成された窒化シリコン膜の薬液耐性を説明するグラフ図である。
【0023】
まず、図1に示すように、例えば単結晶シリコンに、例えばp型不純物(例えばボロン(B)等)を導入した半導体基板(この段階では半導体ウエハと称する平面略円形状の半導体の薄板)1を用意する。続いて、半導体基板1の所定の領域に素子分離部2を形成し、この素子分離部2によってnMISが形成される活性領域およびpMISが形成される活性領域をそれぞれ分離する。続いて、nMIS領域の半導体基板1に、イオン注入法を用いてp型不純物(例えばボロン(B)等)を選択的に導入することにより、p型ウェル3を形成する。同様に、pMIS領域の半導体基板1に、イオン注入法を用いてn型不純物(例えばヒ素(As)またはリン(P)等)を選択的に導入することにより、n型ウェル4を形成する。
【0024】
次に、nMIS領域の半導体基板1の主面上には、界面層(Inter Layer)5n上に、所定の誘電率を有するHigh−k膜(酸化シリコン(SiO)または酸窒化シリコン(SiON)よりも誘電率が高い誘電体膜)6n、所定の仕事関数を有する金属膜7n、および多結晶シリコン膜8nを積層させる構造で、nMISのゲート電極部Gnを形成する。同様に、pMIS領域の半導体基板1の主面上には、界面層5p上に、所定の誘電率を有するHigh−k膜6p、所定の仕事関数を有する金属膜7p、および多結晶シリコン膜8pを積層させる構造で、pMISのゲート電極部Gpを形成する。
【0025】
ここで、界面層5n,5pとしては、例えば酸化シリコン(SiO)または酸窒化シリコン(SiON)等の絶縁膜が適用され、High−k膜6n,6pとしては、例えばハフニウムシリコンオキシナイトライド(HfSiON)、ハフニウムシリケート(HfSiO)、ハフニウムオキシナイトライド(HfON)、または酸化ハフニウム(HfO2)等のハフニウム系の誘電体膜が適用される。また、nMIS領域のHigh−k膜6n上には、nMISのしきい値電圧を調整するために、酸化ランタン(LaO)またはランタン(La)等のキャップ膜(図示せず)を形成する。同様に、pMIS領域のHigh−k膜6p上には、pMISのしきい値電圧を調整するために、酸化アルミニウム(AlO)またはアルミニウム(Al)等のキャップ膜(図示せず)を形成する。
【0026】
また、金属膜7n,7pとしては、例えばチタン(Ti)、タンタル(Ta)、ニッケル(Ni)、ジルコニウム(Zr)、ルテニウム(Ru)、コバルト(Co)、またはタングステン(W)等の遷移金属、あるいはチタンナイトライド(TiN)等の窒化金属が適用される。nMISのしきい値電圧およびpMISのしきい値電圧をそれぞれ調整するために、金属膜7nと金属膜7pとでは異なる材料が適用される。
【0027】
次に、酸素プラズマ雰囲気中においてアッシング処理を施すことにより、ゲート電極部Gn,Gpをパターニングする際にマスクとして用いたレジストパターン(図示せず)を除去する。
【0028】
このとき、図2に示すように、レジストパターンが酸素プラズマ雰囲気中で除去されることによって、ゲート電極部Gn,Gpの表面に酸化層In,Ipが形成され、ゲート電極部Gn,Gpが形成されていない半導体基板1の主面上に酸化層Isが形成される。ゲート電極部Gn,Gpの表面に形成された酸化層In,Ipには、High−k膜6n,6pが酸化されたハフニウム系酸化層、金属膜7n,7pが酸化された金属系酸化層(たとえばチタン系酸化層)、および多結晶シリコン膜8n,8pが酸化されたシリコン系酸化層が含まれる。また、ゲート電極部Gn,Gpが形成されていない半導体基板1の主面上に形成された酸化層Isには、半導体基板1を構成する単結晶シリコンが酸化されたシリコン系酸化層が含まれる。なお、このハフニウム系酸化層、金属系酸化層、およびシリコン系酸化層は、空気中の酸素にHigh−k膜6n,6p、金属膜7n,7p、多結晶シリコン膜8n,8p、および半導体基板1を構成する単結晶シリコンが晒されることにより形成される場合もあり得る。
【0029】
次に、図3に示すように、酸化層In,Ip,Isを覆うように、半導体基板1の主面上に第1OSS膜(下層のOSS膜、1層目のOSS膜)10を形成する。第1OSS膜10は、アンモニアなどのアルカリ系薬液またはフッ化アンモニウムなどのフッ素系薬液に対して、耐エッチング性が相対的に低い絶縁膜(エッチング速度が相対的に速い絶縁膜)であり、例えばTEOS(Tetra Ethyl Ortho Silicate;Si(OC)とオゾン(O)とをソースガスに用いたプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法により形成されるTEOS膜である。第1OSS膜10の厚さは、例えば2〜5nm程度である。これにより、nMIS領域では、酸化層Inと第1OSS膜10とによって、ゲート電極部Gnを保護する第1保護膜11nが形成され、pMIS領域では、酸化層Ipと第1OSS膜10とによって、ゲート電極部Gpを保護する第1保護膜11pが形成される。
【0030】
次に、図4に示すように、第1OSS膜10を覆うように、半導体基板1の主面上に第2OSS膜(上層のOSS膜、2層目のOSS膜)12を形成する。第2OSS膜12は、アンモニアなどのアルカリ系薬液またはフッ化アンモニウムなどのフッ素系薬液に対して、耐エッチング性が相対的に高い絶縁膜(エッチング速度が相対的に遅い絶縁膜)であり、例えばALD法により形成される窒化シリコン膜である。第2OSS膜12の厚さは、例えば3〜8nm程度である。
【0031】
第2OSS膜12のアルカリ系薬液またはフッ素系薬液に対するエッチング速度は、第1OSS膜10のアルカリ系薬液またはフッ素系薬液に対するエッチング速度よりも遅いことを特徴とする。例えば第1OSS膜10をプラズマCVD法により形成したTEOS膜で構成し、第2OSS膜12をALD法により形成した窒化シリコン膜で構成することにより、アルカリ系薬液またはフッ素系薬液に対してエッチング速度が互いに異なる第1OSS膜10と第2OSS膜12とを得ることができる。
【0032】
図5に、フッ素系薬液(ダイキン工業製Z−BHF−5U(主成分フッ化アンモニウム))に対するプラズマCVD法により形成されたTEOS膜およびALD法により形成された窒化シリコン膜のエッチング特性を説明するグラフ図を示す。縦軸はエッチング量であり、横軸はエッチング時間である。成膜温度は500℃である。図5に示すように、第1OSS膜10を構成するTEOS膜のエッチング速度は、第2OSS膜12を構成する窒化シリコン膜のエッチング速度の約7倍である。
【0033】
次に、図6に示すように、第1OSS膜10をエッチングストッパ膜として、第2OSS膜12を異方性エッチングすることにより、ゲート電極部Gn,Gpの側面上に位置する第2OSS膜12を残して、他の部分に位置する第2OSS膜12を除去する。
【0034】
これにより、nMIS領域では、ゲート電極部Gnの側面上は、第1保護膜11n(酸化層Inおよび第1OSS膜10)と第2OSS膜12とによって覆われ、ゲート電極部Gnの上面上は、第1保護膜11n(酸化層Inおよび第1OSS膜10)によって覆われ、ゲート電極部Gnが形成されていない半導体基板1の主面上は、酸化層Isと第1OSS膜10とによって覆われる。同様に、pMIS領域では、ゲート電極部Gpの側面上は、第1保護膜11p(酸化層Ipおよび第1OSS膜10)と第2OSS膜12とによって覆われ、ゲート電極部Gpの上面上は、第1保護膜11p(酸化層Ipおよび第1OSS膜10)によって覆われ、ゲート電極部Gpが形成されていない半導体基板1の主面上は、酸化層Isと第1OSS膜10とによって覆われる。
【0035】
次に、図7に示すように、nMIS領域を露出し、pMIS領域を覆うレジストパターン13を形成する。nMIS領域では、ゲート電極部Gnの側面上に位置する第1保護膜11n(酸化層Inおよび第1OSS膜10)と第2OSS膜12の合計の厚さがオフセット幅14nとなる。
【0036】
次に、ゲート電極部Gn、およびゲート電極部Gnの側面上に位置する第1保護膜11n(酸化層Inおよび第1OSS膜10)と第2OSS膜12をマスクとして、例えばヒ素(As)またはリン(P)等のn型不純物をイオン注入することにより、半導体基板1の主面から所定の深さにわたりn型のエクステンション注入領域(ソース・ドレインの一部を構成する領域)15nを形成する。エクステンション注入領域15nの半導体基板1の主面からの深さは、例えば20nm程度である。また、インジウム(In)、フッ化ボロン(BF2)、またはボロン(B)等のp型不純物を斜めイオン注入することにより、p型のハロー注入領域(図示せず)を形成する。
【0037】
次に、酸素プラズマ雰囲気中においてアッシング処理を施すことにより、レジストパターン13を除去する。
【0038】
次に、図8に示すように、pMIS領域を露出し、nMIS領域を覆うレジストパターン16を形成する。pMIS領域では、ゲート電極部Gpの側面上に位置する第1保護膜11p(酸化層Ipおよび第1OSS膜10)と第2OSS膜12の合計の厚さがオフセット幅14pとなる。
【0039】
次に、ゲート電極部Gp、およびゲート電極部Gpの側面上に位置する第1保護膜11p(酸化層Ipおよび第1OSS膜10)と第2OSS膜12をマスクとして、例えばフッ化ボロン(BF2)、ボロン(B)、またはインジウム(In)等のp型不純物をイオン注入することにより、半導体基板1の主面から所定の深さにわたりp型のエクステンション注入領域(ソース・ドレインの一部を構成する領域)15pを形成する。エクステンション注入領域15pの半導体基板1の主面からの深さは、例えば20nm程度である。また、ヒ素(As)またはリン(P)等のn型不純物を斜めイオン注入することにより、n型のハロー注入領域(図示せず)が形成される。
【0040】
次に、酸素プラズマ雰囲気中においてアッシング処理を施すことにより、レジストパターン16を除去する。
【0041】
次に、図9に示すように、半導体基板1を薬液、例えばアルカリ系薬液またはフッ素系薬液によって洗浄する。このとき、nMIS領域では、ゲート電極部Gnの側面上では第2OSS膜12が薬液に晒され、ゲート電極部Gnの上面上およびゲート電極部Gnが形成されていない半導体基板1の主面上では第1OSS膜10が薬液に晒されることになる。同様に、pMIS領域では、ゲート電極部Gpの側面上では第2OSS膜12が薬液に晒され、ゲート電極部Gpの上面上およびゲート電極部Gpが形成されていない半導体基板1の主面上では第1OSS膜10が薬液に晒されることになる。
【0042】
前述したように、薬液に対して、第1OSS膜10のエッチング速度は第2OSS膜12のエッチング速度よりも速い。例えば第1OSS膜10をプラズマCVD法により形成されたTEOS膜で構成し、第2OSS膜12をALD法により形成された窒化シリコン膜で構成した場合は、第1OSS膜10のエッチング速度は第2OSS膜12のエッチング速度の約7倍である。
【0043】
従って、薬液による洗浄により、nMIS領域では、ゲート電極部Gnの上面上およびゲート電極部Gnが形成されていない半導体基板1の主面上では、第1OSS膜10は薬液によって洗浄する前と比べて薄くなる、または完全に除去されて、異物または残渣が除去される。この第1OSS膜10が完全に除去された場合は、その下の酸化層In,Isも除去される。しかし、ゲート電極部Gnの側面上の第2OSS膜12はエッチングされ難いので、ゲート電極部Gnの側面上には第1保護膜11n(酸化層Inおよび第1OSS膜10)と第2OSS膜12は残り、ゲート電極部Gnの側面から、ゲート電極部Gnを構成する金属膜7nおよび多結晶シリコン膜8nが薬液によりエッチングされることはない。
【0044】
同様に、薬液による洗浄により、pMIS領域では、ゲート電極部Gpの上面上およびゲート電極部Gpが形成されていない半導体基板1の主面上では、第1OSS膜10は薬液によって洗浄する前と比べて薄くなる、または完全に除去されて、異物または残渣が除去される。この第1OSS膜10が完全に除去された場合は、その下の酸化層Ip,Isも除去される。しかし、ゲート電極部Gpの側面上の第2OSS膜12はエッチングされ難いので、ゲート電極部Gpの側面上には第1保護膜11p(酸化層Ipおよび第1OSS膜10)と第2OSS膜12は残り、ゲート電極部Gpの側面から、ゲート電極部Gpを構成する金属膜7pおよび多結晶シリコン膜8pが薬液によりエッチングされることはない。図9は、薬液に晒された第1OSS膜10が完全に除去された場合を示している。
【0045】
次に、図10に示すように、ゲート電極部Gn,Gpを覆うように、半導体基板1の主面上に酸化シリコン膜17が形成される。次に、その酸化シリコン膜17を覆うように、半導体基板1の主面上に窒化シリコン膜18が形成される。
【0046】
次に、図11に示すように、窒化シリコン膜18および酸化シリコン膜17を異方性エッチングすることにより、ゲート電極部Gn,Gpの側面上に窒化シリコン膜18および酸化シリコン膜17を残す。これにより、nM1S領域では、ゲート電極部Gnの側面上に、第1保護膜11n(酸化層Inおよび第1OSS膜10)を介して、酸化シリコン膜17と窒化シリコン膜18とからなるサイドウォールスペーサ19nが形成される。同時に、pMIS領域では、ゲート電極部Gpの側面上に、第1保護膜11p(酸化層Ipおよび第1OSS膜10)を介して、酸化シリコン膜17と窒化シリコン膜18とからなるサイドウォールスペーサ19pが形成される。
【0047】
次に、図12に示すように、nMIS領域を露出し、pMIS領域を覆うレジストパターン20を形成する。次に、ゲート電極部Gnおよびサイドウォールスペーサ19n等をマスクとして、例えばヒ素(As)またはリン(P)等のn型不純物をイオン注入することにより、nMIS領域では、半導体基板1の主面から所定の深さにわたりn型のソース・ドレイン注入領域(ソース・ドレインの他の一部を構成する領域)21nを形成する。
【0048】
次に、酸素プラズマ雰囲気中においてアッシング処理を施すことにより、レジストパターン20を除去する。
【0049】
次に、図13に示すように、pMIS領域を露出し、nMIS領域を覆うレジストパターン22を形成する。次に、ゲート電極部Gpおよびサイドウォールスペーサ19p等をマスクとして、例えばフッ化ボロン(BF2)、ボロン(B)、またはインジウム(In)等のp型不純物をイオン注入することにより、pMIS領域では、半導体基板1の主面から所定の深さにわたりp型のソース・ドレイン注入領域(ソース・ドレインの他の一部を構成する領域)21pを形成する。
【0050】
次に、酸素プラズマ雰囲気中においてアッシング処理を施すことにより、レジストパターン22を除去する。
【0051】
次に、半導体基板1を、例えばアルカリ系薬液等によって洗浄する。このとき、nMIS領域では、ゲート電極部Gnを構成する多結晶シリコン膜8nの上面および半導体基板1の主面が露出し、pMIS領域では、ゲート電極部Gpを構成する多結晶シリコン膜8pの上面および半導体基板1の主面が露出している。そのため、多結晶シリコン膜8n,8pおよび半導体基板1の主面が、アルカリ系薬液等によりエッチングされると考えられるが、多結晶シリコン膜8n,8pは、例えば60nm程度と厚く、また半導体基板1に形成されたソース・ドレイン注入領域21n,21pの半導体基板1の主面からの深さは、例えば50〜100nm程度と深いため、これらがエッチングされたとしてもnMISまたはpMISの動作特性へ与える影響は小さい。
【0052】
次に、図14に示すように、所定の熱処理を施して、エクステンション注入領域15n,15pおよびソース・ドレイン注入領域21n,21pにそれぞれ注入された不純物を活性化させる。
【0053】
その後、サリサイドプロセスにより、ゲート電極部Gn,Gpを構成する多結晶シリコン膜8n,8pの上面およびソース・ドレイン注入領域21n,21pの上面に金属シリサイド層23を形成する。このとき、金属シリサイド層23の材料として、たとえば、ニッケルシリサイド(NiSi)やニッケル白金シリサイド(NiPtSi)が用いられる。
【0054】
以上の工程により、CMISデバイスを構成するnMISおよびpMISのそれぞれの主要部が形成される。その後、CMISデバイスを覆う層間絶縁膜および配線層等が形成される。
【0055】
このように、本実施の形態によれば、エクステンション注入領域15n,15pを形成した後の薬液による洗浄処理の際、nMIS領域では、ゲート電極部Gnの側面上は第2OSS膜(例えばプラズマCVD法により形成されたTEOS膜)12が薬液に晒され、ゲート電極部Gnの上面上およびゲート電極部Gnが形成されていない半導体基板1の主面上は第1OSS膜(例えばALD法により形成された窒化シリコン膜)10が薬液に晒されることになる。同様に、pMIS領域では、ゲート電極部Gpの側面上は第2OSS膜12が薬液に晒され、ゲート電極部Gpの上面上およびゲート電極部Gpが形成されていない半導体基板1の主面上は第1OSS膜10が薬液に晒されることになる。
【0056】
従って、薬液による洗浄により、nMIS領域では、ゲート電極部Gnの上面上およびゲート電極部Gnが形成されていない半導体基板1の主面上では、第1OSS膜10は薬液によって洗浄する前と比べて薄くなる、または完全に除去されて、異物または残渣は半導体基板1の主面から引き離される。しかし、第2OSS膜12の薬液に対するエッチング速度は第1OSS膜10の薬液に対するエッチング速度よりも遅いことから、ゲート電極部Gnの側面上には第1保護膜11n(酸化層Inおよび第1OSS膜10)と第2OSS膜12とが残り、ゲート電極部Gnを構成する金属膜7nまたは多結晶シリコン膜8nが薬液に晒されてエッチングされることはない。
【0057】
同様に、薬液による洗浄により、pMIS領域では、ゲート電極部Gpの上面上およびゲート電極部Gpが形成されていない半導体基板1の主面上では、第1OSS膜10は薬液によって洗浄する前と比べて薄くなる、または完全に除去されて、異物または残渣は半導体基板1の主面から引き離される。しかし、第2OSS膜12の薬液に対するエッチング速度は第1OSS膜10の薬液に対するエッチング速度よりも遅いことから、ゲート電極部Gpの側面上には第1保護膜11p(酸化層Ipおよび第1OSS膜10)と第2OSS膜12とが残り、ゲート電極部Gpを構成する金属膜7pまたは多結晶シリコン膜8pが薬液に晒されてエッチングされることはない。
【0058】
これらにより、半導体基板1の主面上の異物または残渣を除去するために、薬液による洗浄を行ったとしても、nMISのゲート電極部Gnのゲート寸法およびpMISのゲート電極部Gpのゲート寸法の変動が防止できるので、CMISデバイスの動作特性のばらつきを抑制することができる。
【0059】
なお、前述した実施の形態では、薬液に対するエッチング速度が互いに異なる2つの絶縁膜として、第1OSS膜10にはプラズマCVD法により形成されたTEOS膜を用い、第2OSS膜12にはALD法により形成された窒化シリコン膜を用いたが、これに限定されるものではない。以下に、3つの変形例について説明する。
【0060】
(第1変形例)
第1OSS膜および第2OSS膜を同一種類の絶縁材料から構成するが、成膜条件を制御することにより、薬液に対するエッチング速度が互いに異なる第1OSS膜と第2OSS膜とを形成する。
【0061】
例えば第1OSS膜および第2OSS膜を、ALD法により形成する窒化シリコン膜により構成する。ALD法により形成される窒化シリコン膜は、その成膜温度に依存して薬液に対するエッチング速度が異なることから、互いに異なる成膜温度で形成した窒化シリコン膜により第1OSS膜および第2OSS膜を形成する。
【0062】
図15に、成膜温度をパラメータとした、フッ素系薬液(ダイキン工業製Z−BHF−5U(主成分フッ化アンモニウム))に対するALD法により形成された窒化シリコン膜のエッチング特性を説明するグラフ図を示す。縦軸はエッチング量であり、横軸はエッチング時間である。図15に示すように、成膜温度が高くなるに従い、薬液に対する窒化シリコン膜のエッチング速度は遅く(エッチングされ難く)なる。従って、相対的に高い温度で窒化シリコン膜を成膜することにより、エッチングされ難い第2OSS膜を形成し、相対的に低い温度で窒化シリコン膜を成膜することにより、エッチングされ易い第1OSS膜を形成することができる。
【0063】
第1OSS膜を構成する窒化シリコン膜の成膜温度としては、第2OSS膜を構成する窒化シリコン膜の成膜温度よりも50℃以上、好ましくは100℃以上低い温度範囲が適切であると考えられる。例えば第1OSS膜を構成する窒化シリコン膜の成膜温度は400℃程度、第2OSS膜を構成する窒化シリコン膜の成膜温度は600℃程度とすることができる。
【0064】
図16(a)に、前述の図6を用いて説明した工程と同じ工程におけるCMISデバイスの要部断面図を示し、図16(b)に、前述の図9を用いて説明した工程と同じ工程におけるCMISデバイスの要部断面図を示す。
【0065】
図16(a)に示すように、nMIS領域では、ゲート電極部Gnの側面上に第2OSS膜(上層のOSS膜、2層目のOSS膜)32が露出し、ゲート電極部Gnの上面上およびゲート電極部Gnが形成されていない半導体基板1の主面上に第1OSS膜(下層のOSS膜、1層目のOSS膜)31が露出している。同様に、pMIS領域では、ゲート電極部Gpの側面上に第2OSS膜32が露出し、ゲート電極部Gpの上面上およびゲート電極部Gpが形成されていない半導体基板1の主面上に第1OSS膜31が露出している。
【0066】
ここで、第1OSS膜31は薬液に対するエッチング速度が相対的に速い窒化シリコン膜、第2OSS膜32は薬液に対するエッチング速度が相対的に遅い窒化シリコン膜である。従って、図16(b)に示すように、nMIS領域にn型のエクステンション注入領域15nを形成し、pMIS領域にp型のエクステンション注入領域15pを形成し、その後に、半導体基板1を、例えばアルカリ系薬液等によって洗浄する際、半導体基板1の主面上等に露出している第1OSS膜31は除去されても、nMIS領域ではゲート電極部Gnの側面上、pMIS領域ではゲート電極部Gpの側面上に露出している第2OSS膜32は除去されずに、所定のオフセット幅を維持することができる。
【0067】
(第2変形例)
第1OSS膜を金属膜で構成し、第2OSS膜を絶縁膜で構成することにより、薬液に対するエッチング速度が互いに異なる第1OSS膜と第2OSS膜とを形成する。
【0068】
第1OSS膜を、例えばALD法により形成するチタンナイトライド(TiN)膜により構成し、第2OSS膜を、例えばALD法により形成する窒化シリコン膜またはALD法により形成する酸化シリコン膜により構成する。ここでは、洗浄で用いる薬液に、過酸化水素水を含む溶液を用いる。
【0069】
図17に、過酸化水素水を含む溶液(硫酸:過酸化水素水=5:1)に対するALD法により形成されたチタンナイトライド(TiN)膜およびALD法により形成された窒化シリコン膜のエッチング特性を説明するグラフ図を示す。縦軸はエッチング量である。図17に示すように、10分の処理時間におけるALD法により形成されたチタンナイトライド(TiN)膜のエッチング量は100nmよりも大きい。これに対して15分の処理時間におけるALD法により形成された窒化シリコン膜のエッチング量は0.052nmであり、両者のエッチング速度の差は顕著である。従って、ALD法により形成された窒化シリコン膜により、エッチングされ難い第2OSS膜を構成し、ALD法により形成されたチタンナイトライド(TiN)膜により、エッチングされ易い第1OSS膜を構成する。
【0070】
図18(a)に、前述の図6を用いて説明した工程と同じ工程におけるCMISデバイスの要部断面図を示し、図18(b)に、前述の図9を用いて説明した工程と同じ工程におけるCMISデバイスの要部断面図を示す。
【0071】
図18(a)に示すように、nMIS領域では、ゲート電極部Gnの側面上に第2OSS膜(上層のOSS膜、2層目のOSS膜)42が露出し、ゲート電極部Gnの上面上およびゲート電極部Gnが形成されていない半導体基板1の主面上に第1OSS膜(下層のOSS膜、1層目のOSS膜)41が露出している。同様に、pMIS領域では、ゲート電極部Gpの側面上に第2OSS膜42が露出し、ゲート電極部Gpの上面上およびゲート電極部Gpが形成されていない半導体基板1の主面上に第1OSS膜41が露出している。
【0072】
ここで、第1OSS膜41は薬液に対するエッチング速度が相対的に速い金属膜(例えばALD法により形成されたチタンナイトライド(TiN)膜)、第2OSS膜42は薬液に対するエッチング速度が相対的に遅い絶縁膜(例えばALD法により形成された窒化シリコン膜またはALD法により形成された酸化シリコン膜)である。従って、図18(b)に示すように、nMIS領域にn型のエクステンション注入領域15nを形成し、pMIS領域にp型のエクステンション注入領域15pを形成し、その後に、半導体基板1を、例えば過酸化水素水を含む溶液によって洗浄する際、半導体基板1の主面上等に露出している第1OSS膜41は除去されても、nMIS領域ではゲート電極部Gnの側面上、pMIS領域ではゲート電極部Gpの側面上に露出している第2OSS膜42は除去されずに、所定のオフセット幅を維持することができる。
【0073】
(第3変形例)
OSS膜を、これまで説明した第1OSS膜と第2OSS膜との2層構造ではなく、1層構造とする。そして、ゲート電極部Gn,Gpの上面上およびゲート電極部Gn,Gpが形成されていない半導体基板1の主面上に形成されたOSS膜に、半導体基板1の厚さ方向に不純物をイオン注入することによりダメージを与える。これにより、ダメージを与えた部分のOSS膜の薬液に対するエッチンングレートを、ダメージを与えていないゲート電極部Gn,Gpの側面上のOSS膜の薬液に対するエッチング速度よりも速くする。
【0074】
OSS膜にダメージを与える不純物は、例えば窒素(N)、アルゴン(Ar)、またはゲルマニウム(Ge)等であり、エクステンション注入領域を形成するために、半導体基板にイオン注入されるn型不純物またはp型不純物とは異なる。
【0075】
また、OSS膜は、例えばALD法により形成された窒化シリコン膜またはALD法により形成された酸化シリコン膜であり、洗浄に用いる薬液には、例えばアルカリ系薬液またはフッ素系薬液を用いる。
【0076】
図19(a)に、前述の図6を用いて説明した工程と同じ工程におけるCMISデバイスの要部断面図を示し、図19(b)に、前述の図9を用いて説明した工程と同じ工程におけるCMISデバイスの要部断面図を示す。
【0077】
nMIS領域では、ゲート電極部Gnの側面上にダメージのないOSS膜45aが露出し、ゲート電極部Gnの上面上およびゲート電極部Gnが形成されていない半導体基板1の主面上にダメージのあるOSS膜45bが露出している。同様に、pMIS領域では、ゲート電極部Gpの側面上にダメージのないOSS膜45aが露出し、ゲート電極部Gpの上面上およびゲート電極部Gpが形成されていない半導体基板1の主面上にダメージのあるOSS膜45bが露出している。
【0078】
ここで、ダメージのあるOSS膜45bは薬液に対するエッチング速度が相対的に速く、ダメージのないOSS膜45aは薬液に対するエッチング速度が相対的に遅い。従って、図19(b)に示すように、nMIS領域にn型のエクステンション注入領域15nを形成し、pMIS領域にp型のエクステンション注入領域15pを形成し、その後に、半導体基板1を、例えばアルカリ系薬液等によって洗浄する際、半導体基板1の主面上のダメージのあるOSS膜45bは除去されても、nMIS領域ではゲート電極部Gnの側面上、pMIS領域ではゲート電極部Gpの側面上のダメージのないOSS膜45aは除去されずに、所定のオフセット幅を維持することができる。
【0079】
また、前述した実施の形態では、nMISのゲート電極部Gnを、界面層5n上に、所定の誘電率を有するHigh−k膜6n、所定の仕事関数を有する金属膜7n、および多結晶シリコン膜8nを積層させた構造とし、pMISのゲート電極部Gpを、界面層5p上に、所定の誘電率を有するHigh−k膜6p、所定の仕事関数を有する金属膜7p、および多結晶シリコン膜8pを積層させた構造とした。しかし、これに限定されるものではない。例えばnMISのゲート電極部GnおよびpMISのゲート電極部Gpを、酸化シリコン膜または酸窒化シリコン膜からなる誘電体膜(ゲート絶縁膜)上に、多結晶シリコン膜(ゲート電極)を積層させる構造としてもよい。
【0080】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、ゲート電極の側面上にオフセットスペーサ膜を有する電界効果トランジスタの製造に適用することができる。
【符号の説明】
【0082】
1 半導体基板
2 素子分離部
3 p型ウェル
4 n型ウェル
5n,5p 界面層(Inter Layer)
6n,6p High−k膜(誘電体膜)
7n,7p 金属膜
8n,8p 多結晶シリコン膜
10 第1OSS膜(下層のOSS膜、1層目のOSS膜)
11n,11p 第1保護膜
12 第2OSS膜(上層のOSS膜、2層目のOSS膜)
13 レジストパターン
14n,14p オフセット幅
15n,15p エクステンション注入領域
16 レジストパターン
17 酸化シリコン膜
18 窒化シリコン膜
19n,19p サイドウォールスペーサ
20 レジストパターン
21n,21p ソース・ドレイン注入領域
22 レジストパターン
23 金属シリサイド層
31 第1OSS膜(下層のOSS膜、1層目のOSS膜)
32 第2OSS膜(上層のOSS膜、2層目のOSS膜)
41 第1OSS膜(下層のOSS膜、1層目のOSS膜)
42 第2OSS膜(上層のOSS膜、2層目のOSS膜)
45a,45b OSS膜
50 半導体基板
51 下層の窒化シリコン膜
52 中間層の酸化シリコン膜
53 上層の窒化シリコン膜
54 OSS膜
55 ゲート電極
56 エクステンション注入領域
Gn,Gp ゲート電極部
In,Ip,Is 酸化層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電界効果トランジスタを形成する半導体装置の製造方法であって、
(a)半導体基板の主面上にゲート電極部を形成する工程と、
(b)前記ゲート電極部を覆うように、前記半導体基板の主面上に第1オフセットスペーサ膜を形成する工程と、
(c)前記第1オフセットスペーサ膜を覆うように、前記半導体基板の主面上に第2オフセットスペーサ膜を形成する工程と、
(d)異方性エッチングにより、前記ゲート電極部の側面上に位置する前記第2オフセットスペーサ膜を残して、他の部分に位置する前記第2オフセットスペーサ膜を除去し、前記ゲート電極部の上面上および前記ゲート電極部が形成されていない前記半導体基板の主面上の前記第1オフセットスペーサ膜を露出させる工程と、
(e)前記半導体基板の主面上の所定の領域をレジストパターンで覆い、前記ゲート電極部と、前記ゲート電極部の側面上に位置する前記第1オフセットスペーサ膜および前記第2オフセットスペーサ膜とをマスクとして、前記レジストパターンにより覆われていない領域の前記半導体基板に不純物をイオン注入する工程と、
(f)前記レジストパターンを除去する工程と、
(g)前記半導体基板を薬液により洗浄して、前記ゲート電極部の上面上および前記ゲート電極部が形成されていない前記半導体基板の主面上の前記第1オフセットスペーサ膜を薄くする、または完全に除去する工程と、
を含み、
前記第1オフセットスペーサ膜の前記薬液に対するエッチング速度が、前記第2オフセットスペーサ膜の前記薬液に対するエッチング速度よりも速いことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1オフセットスペーサ膜はプラズマCVD法により形成されたTEOS膜であり、前記第2オフセットスペーサ膜はALD法により形成された窒化シリコン膜であり、
前記薬液はアルカリ系薬液またはフッ素系薬液であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1オフセットスペーサ膜および前記第2オフセットスペーサ膜はALD法により形成された窒化シリコン膜であり、前記第1オフセットスペーサ膜は第1成膜温度で形成され、前記第2オフセットスペーサ膜は第2成膜温度で形成され、前記第1成膜温度は、前記第2成膜温度よりも50℃以上低く、
前記薬液はアルカリ系薬液またはフッ素系薬液であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項3記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1オフセットスペーサ膜の前記第1成膜温度は400℃程度であり、前記第2オフセットスペーサ膜の前記第2成膜温度は600℃程度であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項1記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1オフセットスペーサ膜はALD法により形成されたチタンナイトライド膜であり、前記第2オフセットスペーサ膜はALD法により形成された窒化シリコン膜またはALD法により形成された酸化シリコン膜であり、
前記薬液は過酸化水素水を含む溶液であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項1記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1オフセットスペーサ膜の厚さは、2〜5nm程度であり、前記第2オフセットスペーサ膜の厚さは、3〜8nm程度であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項7】
請求項1記載の半導体装置の製造方法において、
前記ゲート電極部は、前記半導体基板の主面上に、所定の誘電率を有する誘電体膜、所定の仕事関数を有する金属膜、および多結晶シリコン膜を積層した構造であり、前記誘電体膜はHigh−k膜であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項7記載の半導体装置の製造方法において、
前記半導体基板の主面と前記誘電体膜との間には、界面層が形成されていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項7記載の半導体装置の製造方法において、
前記誘電体膜と前記金属膜との間には、しきい値電圧を調整するためのキャップ膜が形成されていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項10】
請求項7記載の半導体装置の製造方法において、
前記誘電体膜は、HfSiON、HfSiO、HfON、またはHfOであることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項11】
請求項7記載の半導体装置の製造方法において、
前記ゲート電極部と前記第1オフセットスペーサ膜との間に、酸化層が形成されていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項12】
請求項1記載の半導体装置の製造方法において、
前記ゲート電極部は、所定の誘電率を有する誘電体膜および多結晶シリコン膜を積層した構造であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項13】
電界効果トランジスタを形成する半導体装置の製造方法であって、
(a)半導体基板の主面上にゲート電極部を形成する工程と、
(b)前記ゲート電極部を覆うように、前記半導体基板の主面上にオフセットスペーサ膜を形成する工程と、
(c)前記半導体基板の厚さ方向に第1不純物をイオン注入して、前記ゲート電極部の上面上および前記ゲート電極部が形成されていない前記半導体基板の主面上の前記オフセットスペーサ膜にダメージを与える工程と、
(d)前記半導体基板の主面上の所定の領域をレジストパターンで覆い、前記ゲート電極部と、前記ゲート電極部の側面上に位置する前記オフセットスペーサ膜とをマスクとして、前記レジストパターンにより覆われていない領域の前記半導体基板に第2不純物をイオン注入する工程と、
(e)前記レジストパターンを除去する工程と、
(f)前記半導体基板を薬液により洗浄して、前記ゲート電極部の上面上および前記ゲート電極部が形成されていない前記半導体基板の主面上の前記オフセットスペーサ膜を薄くする、または完全に除去する工程と、
を含み、
前記第1不純物をイオン注入して前記ダメージを与えた前記オフセットスペーサ膜の前記薬液に対するエッチング速度が、前記第1不純物をイオン注入して前記ダメージを与えていない前記オフセットスペーサ膜の前記薬液に対するエッチング速度よりも速いことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項14】
請求項13記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1不純物は窒素、アルゴン、またはゲルマニウムであり、前記第2不純物とは異なることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項15】
請求項13記載の半導体装置の製造方法において、
前記オフセットスペーサ膜は、ALD法により形成された窒化シリコン膜またはALD法により形成された酸化シリコン膜であり、
前記薬液はアルカリ系薬液またはフッ素系薬液であることを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−94620(P2012−94620A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239431(P2010−239431)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】