説明

半導体装置の駆動方法

【課題】半導体装置の駆動方法を提供する。
【解決手段】酸化物半導体を用いた書き込み用トランジスタ、該トランジスタと異なる半導体材料を用いた読み出し用のトランジスタ及び容量素子を含む不揮発性のメモリセルを有する半導体装置を提供する。メモリセルへの書き込みは、書き込み用トランジスタをオン状態として、書き込み用トランジスタのソース電極と、容量素子の電極の一方と、読み出し用トランジスタのゲート電極とが電気的に接続されたノードに電位を供給した後、書き込み用トランジスタをオフ状態として、ノードに所定量の電位を保持させることで行う。メモリセルの読み出しは、ビット線にプリチャージ電位を供給した後ビット線への電位の供給を止め、ビット線の電位がプリチャージ電位に保たれるか、または電位が下がるか、により行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示する発明は、半導体素子を利用した半導体装置および当該半導体装置の駆動方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体素子を利用した記憶装置は、電力の供給がなくなると記憶内容が失われる揮発性のものと、電力の供給がなくなっても記憶内容は保持される不揮発性のものとに大別される。
【0003】
揮発性記憶装置の代表的な例としては、DRAM(Dynamic Random Access Memory)がある。DRAMは、記憶素子を構成するトランジスタを選択してキャパシタに電荷を蓄積することで、データを記憶する。
【0004】
上述の原理から、DRAMでは、データを読み出すとキャパシタの電荷は失われるため、データの読み出しの度に、再度の書き込み動作が必要となる。また、記憶素子を構成するトランジスタにおいてはオフ状態でのソースとドレイン間のリーク電流(オフ電流)等によって、トランジスタが選択されていない状況でも電荷が流出、または流入するため、データの保持期間が短い。このため、所定の周期で再度の書き込み動作(リフレッシュ動作)が必要であり、消費電力を十分に低減することは困難である。また、電力の供給がなくなると記憶内容が失われるため、長期間の記憶の保持には、磁性材料や光学材料を利用した別の記憶装置が必要となる。
【0005】
揮発性記憶装置の別の例としてはSRAM(Static Random Access Memory)がある。SRAMは、フリップフロップなどの回路を用いて記憶内容を保持するため、リフレッシュ動作が不要であり、この点においてはDRAMより有利である。しかし、フリップフロップなどの回路を用いているため、記憶容量あたりの単価が高くなるという問題がある。また、電力の供給がなくなると記憶内容が失われるという点については、DRAMと変わるところはない。
【0006】
不揮発性記憶装置の代表例としては、フラッシュメモリがある。フラッシュメモリは、トランジスタのゲート電極とチャネル形成領域との間にフローティングゲートを有し、当該フローティングゲートに電荷を保持させることで記憶を行うため、データの保持期間は極めて長く(半永久的)、電力の供給がなくなっても記憶内容を保持できるという利点を有している(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
しかし、書き込みの際に生じるトンネル電流によって記憶素子を構成するゲート絶縁層が劣化するため、所定回数の書き込みによって記憶素子が機能しなくなるという問題が生じる。この問題の影響を緩和するために、例えば、各記憶素子の書き込み回数を均一化する手法が採られるが、これを実現するためには、複雑な周辺回路が必要になってしまう。そして、このような手法を採用しても、根本的な寿命の問題が解消するわけではない。つまり、フラッシュメモリは、データの書き換え頻度が高い用途には不向きである。
【0008】
また、フローティングゲートに電荷を注入させるため、または、その電荷を除去するためには、高い電圧が必要であり、また、そのための回路も必要である。さらに、電荷の注入、または除去のためには比較的長い時間を要し、書き込みまたは消去の高速化が容易ではないという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭57−105889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述の問題に鑑み、開示する発明の一態様では、電力が供給されない状況でも記憶内容の保持が可能で、かつ、書き込み回数にも制限が無い半導体装置の駆動方法を提供することを目的の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の一態様では、酸化物半導体を用いた書き込み用トランジスタ、該書き込み用トランジスタと異なる半導体材料を用いた読み出し用トランジスタ及び容量素子を含む不揮発性のメモリセルを有する半導体装置を提供する。該メモリセルへのデータの書き込み及び書き換えは、書き込み用トランジスタをオン状態とすることにより、書き込み用トランジスタのソース電極またはドレイン電極の一方と、容量素子の電極の一方と、読み出し用トランジスタのゲート電極とが電気的に接続されたノードに電位を供給し、その後、書き込み用トランジスタをオフ状態とすることにより、ノードに所定量の電位を保持させることで行う。また、該メモリセルからのデータの読み出しは、読み出し用トランジスタのドレイン電極と電気的に接続されたソース線を接地電位とし、読み出し用トランジスタのソース電極と電気的に接続されたビット線を接地電位と電源電位の間のプリチャージ電位とした後、ビット線への電位の供給を止めることにより、ビット線の電位がノードに保持された電位に応じて変動することで行う。
【0012】
より具体的には、例えば次のような構成および駆動方法を採用することができる。
【0013】
本発明の一態様ではビット線に第1のトランジスタのソース電極が電気的に接続され、ソース線に第1のトランジスタのドレイン電極が電気的に接続され、第1のトランジスタのゲート電極と、第2のトランジスタのドレイン電極と、容量素子の一方の電極が電気的に接続され、電位が保持されるノードが構成されている。本発明の一態様は該構成において、書き込み期間、および書き込み期間の後の読み出し期間を有し、読み出し期間において、ソース線を接地電位とし、ビット線をプリチャージ電位供給配線と接続し、ビット線をプリチャージ電位とした後、ビット線とプリチャージ電位供給配線を接続解除することで、ビット線の電位がノードに保持された電位に応じて変動する、半導体装置の駆動方法である。
【0014】
また、上記において、ビット線の電位の変動により、ノードに保持された電位を読み出すことができる。
【0015】
また、本発明の別の一態様では、ビット線と、ソース線と、複数のメモリセルを含むメモリセルアレイと、を有し、メモリセルの一において、ビット線に第1のトランジスタのソース電極が電気的に接続され、ソース線に第1のトランジスタのドレイン電極が電気的に接続され、第1のトランジスタのゲート電極と、第2のトランジスタのドレイン電極と、容量素子の一方の電極が電気的に接続され、電位が保持されるノードが構成されている。本発明の一態様は該構成において、書き込み期間、および書き込み期間の後の読み出し期間を有し、読み出し期間において、選択するメモリセルの一のソース線を接地電位とし、ビット線をプリチャージ電位供給配線と接続し、ビット線をプリチャージ電位とした後、選択するメモリセルの一のビット線とプリチャージ電位供給配線を接続解除することで、ビット線の電位がノードに保持された電位に応じて変動する、半導体装置の駆動方法である。
【0016】
また、上記において、ビット線の電位の変動により、選択するメモリセルの一のノードに保持された電位を読み出すことができる。
【0017】
また、上記において、読み出し期間において、非選択とするメモリセルの一のソース線をプリチャージ電位供給配線と接続することができる。
【0018】
また、上記において、第1のトランジスタをpチャネル型トランジスタまたはnチャネル型トランジスタとすることができる。
【0019】
また、上記において、第2のトランジスタのチャネル形成領域は、酸化物半導体を含むことができる。
【0020】
なお、本明細書等において「上」や「下」の用語は、構成要素の位置関係が「直上」または「直下」であることを限定するものではない。例えば、「ゲート絶縁層上のゲート電極」の表現であれば、ゲート絶縁層とゲート電極との間に他の構成要素を含むものを除外しない。
【0021】
また、本明細書等において「電極」や「配線」という用語は、これらの構成要素を機能的に限定するものではない。例えば、「電極」は「配線」の一部として用いられることがあり、その逆もまた同様である。さらに、「電極」や「配線」という用語は、複数の「電極」や「配線」が一体となって形成されている場合なども含む。
【0022】
また、「ソース」や「ドレイン」の機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このため、本明細書においては、「ソース」や「ドレイン」という用語は、入れ替えて用いることができるものとする。
【0023】
なお、本明細書等において、「電気的に接続」には、「何らかの電気的作用を有するもの」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するもの」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に制限を受けない。
【発明の効果】
【0024】
本発明の一態様で用いる酸化物半導体を用いたトランジスタはオフ電流が極めて小さいため、これを用いることにより極めて長期にわたり記憶内容を保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動作が不要となるか、または、リフレッシュ動作の頻度を極めて低くすることが可能となるため、消費電力を低減することができる。また、電力の供給がない場合(ただし、電位は固定されていることが望ましい)であっても、長期にわたって記憶内容を保持することが可能である。
【0025】
また、本発明の一態様である半導体装置では、データの書き込みに高い電圧を必要としないため、素子の劣化の問題もない。例えば、前述のフラッシュメモリのように、フローティングゲートへの電子の注入や、フローティングゲートからの電子の引き抜きを行う必要がないため、ゲート絶縁層の劣化といった問題が全く生じない。すなわち、開示する発明に係る半導体装置では、フラッシュメモリで問題となっている書き換え可能回数に制限はなく、信頼性が飛躍的に向上する。さらに、トランジスタのオン状態、オフ状態によって、データの書き込みが行われるため、高速な書き込みも容易に実現しうる。また、データを消去するための動作が不要であるというメリットもある。
【0026】
また、読み出し用トランジスタには、酸化物半導体以外の材料を適用した高速動作が可能なトランジスタを用い、半導体装置の高速な読み出しを実現しうる。また、酸化物半導体以外の材料を用いたトランジスタにより、高速動作が要求される各種回路(論理回路、駆動回路など)を好適に実現することが可能である。
【0027】
また、本発明の一態様である半導体装置の駆動方法では、メモリセルからのデータの読み出しを、ソース線を接地電位とし、ビット線をプリチャージ電位とした後、ビット線への電位の供給を止めることで行うため、読み出し期間においてソース線について電位の上昇を伴うプリチャージの必要がない。また、ビット線について、プリチャージ電位を超えて電位を上昇させる必要がないため、電位の変動が少ない。そのため、ソース線およびビット線の電位の変動が大きい読み出し方法と比較して、短時間に読み出し動作を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】半導体装置の回路図。
【図2】半導体装置の回路図。
【図3】半導体装置の回路図。
【図4】タイミングチャート。
【図5】タイミングチャート。
【図6】タイミングチャート。
【図7】タイミングチャート。
【図8】タイミングチャート。
【図9】タイミングチャート。
【図10】タイミングチャート。
【図11】タイミングチャート。
【図12】半導体装置の断面図および平面図。
【図13】半導体装置の作製工程に係る断面図。
【図14】半導体装置の作製工程に係る断面図。
【図15】半導体装置の作製工程に係る断面図。
【図16】半導体装置の作製工程に係る断面図。
【図17】半導体装置の作製工程に係る断面図。
【図18】酸化物半導体の結晶構造を示す図。
【図19】酸化物半導体の結晶構造を示す図。
【図20】酸化物半導体の結晶構造を示す図。
【図21】酸化物半導体の結晶構造を示す図。
【図22】計算によって得られた電界効果移動度のゲート電圧依存性を説明する図。
【図23】計算によって得られたドレイン電流と電界効果移動度のゲート電圧依存性を説明する図。
【図24】計算によって得られたドレイン電流と電界効果移動度のゲート電圧依存性を説明する図。
【図25】計算によって得られたドレイン電流と電界効果移動度のゲート電圧依存性を説明する図。
【図26】計算に用いたトランジスタの断面構造を説明する図。
【図27】酸化物半導体層を用いたトランジスタ特性のグラフ。
【図28】試料Aおよび試料BのXRDを示す図。
【図29】トランジスタのオフ電流と測定時基板温度との関係を示す図。
【図30】基板温度としきい値電圧の関係および基板温度と電界効果移動度の関係を示す図。
【図31】半導体装置を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の実施の形態の一例について、図面を用いて以下に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態および詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0030】
なお、図面等において示す各構成の、位置、大きさ、範囲などは、理解の簡単のため、実際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため、開示する発明は、必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。
【0031】
なお、本明細書等における「第1」、「第2」、「第3」などの序数詞は、構成要素の混同を避けるために付すものであり、数的に限定するものではないことを付記する。
【0032】
(実施の形態1)
本実施の形態では、開示する発明の一態様に係る半導体装置の回路構成およびその動作について、図1乃至図11を参照して説明する。なお、回路図においては、酸化物半導体を用いたトランジスタであることを示すためにOSの符号を併せて付す場合がある。なお、本発明の一態様の主旨は著しく低いオフ電流を特徴とするトランジスタを用いた半導体装置を提案することにある。そのため、酸化物半導体を用いたトランジスタに代えて、酸化物半導体以外の材料を用いたオフ電流が小さいトランジスタを用いてもよい。
【0033】
〈基本回路1〉
はじめに、最も基本的な回路構成およびその動作について、図1を参照して説明する。図1(A−1)に示す半導体装置において、ソース線SLとトランジスタ160のソース電極(またはドレイン電極)とは、電気的に接続され、ビット線BLとトランジスタ160のドレイン電極(またはソース電極)とは、電気的に接続されている。また、信号線Sとトランジスタ162のソース電極(またはドレイン電極)とは、電気的に接続され、書き込みワード線OSGと、トランジスタ162のゲート電極とは、電気的に接続されている。そして、トランジスタ160のゲート電極と、トランジスタ162のドレイン電極(またはソース電極)は、容量素子164の電極の一方と電気的に接続され、容量線Cと、容量素子164の電極の他方は電気的に接続されている。
【0034】
ここで、トランジスタ162には、例えば、酸化物半導体を用いたトランジスタが適用される。本発明の一態様に用いる酸化物半導体を用いたトランジスタは、オフ電流が極めて小さいという特徴を有している。このため、トランジスタ162をオフ状態とすることで、トランジスタ160のゲート電極の電位を極めて長期間にわたって保持することが可能である。そして、容量素子164を有することにより、トランジスタ160のゲート電極に与えられた電位の保持が容易になり、また、保持されたデータの読み出しが容易になる。
【0035】
なお、トランジスタ160としては、チャネルの導電型とその半導体材料については特に限定されない。トランジスタのチャネルの導電型については、pチャネル型を用いると、低電位を用いずに読み出しを行うことができるため、低電位を生成する周辺回路が不要となる。一方、nチャネル型を用いると、高速な読み出しが可能となる。半導体材料については、データの読み出し速度を向上させるという観点からは、例えば、単結晶シリコンを用いたトランジスタなど、スイッチング速度の高いトランジスタを適用するのが好適である。
【0036】
また、図1(B)に示すように、容量素子164を設けない構成とすることも可能である。
【0037】
図1(A−1)に示す半導体装置では、トランジスタ160のゲート電極の電位が保持可能という特徴を生かすことで、次のように、データの書き込み、保持、読み出しが可能である。
【0038】
はじめに、データの書き込みおよび保持について説明する。まず、容量線Cを所定の電位(定電位)とし、書き込みワード線OSGの電位を、トランジスタ162がオン状態となる電位にして、トランジスタ162をオン状態とする。これにより、信号線Sの電位が、トランジスタ160のゲート電極、および容量素子164に与えられる。すなわち、トランジスタ160のゲート電極には、所定の電位が与えられる(書き込み)。ここでは、異なる二つの電位Vdata1(高電位、データ”1”ともいう)およびVdata0(低電位、データ”0”ともいう)のいずれかが与えられるものとする。なお、異なる三つまたはそれ以上の電位を適用して、記憶容量を向上させても良い。その後、書き込みワード線OSGの電位を、トランジスタ162がオフ状態となる電位にして、トランジスタ162をオフ状態とすることにより、トランジスタ160のゲート電極に与えられた電位が保持される(保持)。
【0039】
トランジスタ162のオフ電流は極めて小さいため、トランジスタ160のゲート電極の電位は長期間にわたって保持される。
【0040】
次に、データの読み出しについて説明する。ソース線SLに所定の電位(定電位)を与えた状態で、容量線Cに適切な電位(読み出し電位)を与えると、トランジスタ160のゲート電極に保持された電位に応じて、ビット線BLは異なる電位をとる。一般に、トランジスタ160をpチャネル型とすると、トランジスタ160のゲート電極にVdata1(データ”1”)が与えられている場合の見かけのしきい値電圧Vth_Hは、トランジスタ160のゲート電極にVdata0(データ”0”)が与えられている場合の見かけのしきい値電圧Vth_Lより低くなるためである。ここで、見かけのしきい値電圧とは、トランジスタ160を「オン状態」とするために必要な容量線Cの電位をいうものとする。したがって、容量線Cの電位をVth_HとVth_Lの中間の電位V0とすることにより、トランジスタ160のゲート電極に与えられた電位を判別できる。例えば、書き込みにおいてVdata1(データ”1”)が与えられた場合には、容量線Cの電位がV0(>Vth_H)となれば、トランジスタ160は「オフ状態」となる。Vdata0(データ”0”)が与えられた場合には、容量線Cの電位がV0(<Vth_L)となって、トランジスタ160は「オン状態」となる。このため、ビット線BLの電位を測定することで、保持されているデータを読み出すことができる。
【0041】
なお、メモリセルをアレイ状に配置して用いる場合には、所望のメモリセルのデータのみを読み出せることが必要になる。このように、所定のメモリセルのデータを読み出し、それ以外のメモリセルのデータを読み出さないためには、トランジスタ160が並列に接続されている場合には、読み出しの対象ではないメモリセルの容量線Cに対して、ゲート電極の状態にかかわらずトランジスタ160が「オフ状態」となるような電位、つまり、Vth_Hより大きい電位を与えればよい。またトランジスタ160が直列に接続されている場合には、ゲート電極の状態にかかわらずトランジスタ160が「オン状態」となるような電位、つまり、Vth_Lより小さい電位を容量線Cに与えればよい。
【0042】
次に、データの書き換えについて説明する。データの書き換えは、上記データの書き込みおよび保持と同様に行われる。つまり、書き込みワード線OSGの電位を、トランジスタ162がオン状態となる電位にして、トランジスタ162をオン状態とする。これにより、信号線Sの電位(新たなデータに係る電位)が、トランジスタ160のゲート電極および容量素子164に与えられる。その後、書き込みワード線OSGの電位を、トランジスタ162がオフ状態となる電位にして、トランジスタ162をオフ状態とすることにより、トランジスタ160のゲート電極は、新たなデータに係る電位が与えられた状態となる。
【0043】
このように、開示する発明に係る半導体装置は、再度のデータの書き込みによって直接的にデータを書き換えることが可能である。このためフラッシュメモリなどにおいて必要とされる高電圧を用いてのフローティングゲートからの電荷の引き抜きが不要であり、消去動作に起因する動作速度の低下を抑制することができる。つまり、半導体装置の高速動作が実現される。
【0044】
なお、トランジスタ162のドレイン電極(またはソース電極)は、トランジスタ160のゲート電極と電気的に接続されることにより、不揮発性メモリ素子として用いられるフローティングゲート型トランジスタのフローティングゲートと同等の作用を奏する。以下において、トランジスタ162のドレイン電極(またはソース電極)とトランジスタ160のゲート電極が電気的に接続される部位をノードFGと呼ぶ場合がある。トランジスタ162がオフ状態の場合、当該ノードFGは絶縁体中に埋設されたと見ることができ、ノードFGには電位が保持される。本発明の一態様で用いる酸化物半導体を用いたトランジスタ162のオフ電流は、シリコン半導体などで形成されるトランジスタの10万分の1以下であるため、トランジスタ162のリークによる、ノードFGに蓄積された電位の消失を無視することが可能である。つまり、酸化物半導体を用いたトランジスタ162により、電力の供給が無くてもデータの保持が可能な不揮発性メモリ素子を実現することが可能である。
【0045】
例えば、In−Ga−Zn−O系の酸化物半導体を用いたトランジスタの場合、例えば、室温(25℃)でのオフ電流(ここでは、単位チャネル幅(1μm)あたりの値)は100zA(1zA(ゼプトアンペア)は1×10−21A)以下、好ましくは10zA以下、より好ましくは1zA以下、さらに好ましくは100yA以下レベルにまで低くすることができる。そのため容量素子164の容量値が10fF程度である場合には、少なくとも10秒以上のデータ保持が可能である。なお、当該保持時間が、トランジスタ特性や容量値によって変動することはいうまでもない。
【0046】
また、開示する発明の半導体装置においては、従来のフローティングゲート型トランジスタにおいて指摘されているゲート絶縁膜(トンネル絶縁膜)の劣化という問題が存在しない。つまり、従来問題とされていた、電子をフローティングゲートに注入する際のゲート絶縁膜の劣化という問題を解消することができる。これは、原理的な書き込み回数の制限が存在しないことを意味するものである。また、従来のフローティングゲート型トランジスタにおいて書き込みや消去の際に必要であった高電圧も不要である。
【0047】
図1(A−1)に示す半導体装置は、当該半導体装置を構成するトランジスタなどの要素が抵抗および容量を含むものとして、図1(A−2)のように考えることが可能である。つまり、図1(A−2)では、トランジスタ160および容量素子164が、それぞれ、抵抗および容量を含んで構成されると考えていることになる。R1およびC1は、それぞれ、容量素子164の抵抗値および容量値であり、抵抗値R1は、容量素子164を構成する絶縁層による抵抗値に相当する。また、R2およびC2は、それぞれ、トランジスタ160の抵抗値および容量値であり、抵抗値R2はトランジスタ160がオン状態の時のゲート絶縁層による抵抗値に相当し、容量値C2はいわゆるゲート容量(ゲート電極と、ソース電極またはドレイン電極との間に形成される容量、及び、ゲート電極とチャネル形成領域との間に形成される容量)の容量値に相当する。
【0048】
トランジスタ162がオフ状態にある場合のソース電極とドレイン電極の間の抵抗値(実効抵抗とも呼ぶ)をROSとすると、トランジスタ162のゲートリーク電流が十分に小さい条件において、R1およびR2が、R1≧ROS(R1はROS以上)、R2≧ROS(R2はROS以上)を満たす場合には、電位の保持期間(データの保持期間ということもできる)は、主としてトランジスタ162のオフ電流によって決定されることになる。
【0049】
逆に、当該条件を満たさない場合には、トランジスタ162のオフ電流が十分に小さくとも、保持期間を十分に確保することが困難になる。トランジスタ162のオフ電流以外のリーク電流(例えば、ソース電極とゲート電極の間において生じるリーク電流等)が大きいためである。このことから、本実施の形態において開示する半導体装置は、R1≧ROS(R1はROS以上)、およびR2≧ROS(R2はROS以上)の関係を満たすものであることが望ましいといえる。
【0050】
一方で、C1とC2は、C1≧C2(C1はC2以上)の関係を満たすことが望ましい。C1を大きくすることで、容量線CによってノードFGの電位を制御する際に、容量線Cの電位を効率よくノードFGに与えることができるようになり、容量線Cに与える電位間(例えば、読み出しの電位と、非読み出しの電位)の電位差を低く抑えることができるためである。
【0051】
このように、上述の関係を満たすことで、より好適な半導体装置を実現することが可能である。なお、R1およびR2は、トランジスタ160のゲート絶縁層や容量素子164の絶縁層によって制御される。C1およびC2についても同様である。よって、ゲート絶縁層や容量素子164の絶縁層の材料や厚さなどを適宜設定し、上述の関係を満たすようにすることが望ましい。
【0052】
本実施の形態で示す半導体装置においては、ノードFGが、フラッシュメモリ等のフローティングゲート型トランジスタのフローティングゲートと同等の作用をするが、本実施の形態のノードFGは、フラッシュメモリ等のフローティングゲートと本質的に異なる特徴を有している。
【0053】
フラッシュメモリでは、コントロールゲートに印加される電位が高いため、その電位が、隣接するセルのフローティングゲートに影響を与えないように、セルとセルとの間隔をある程度保つ必要が生じる。このことは、半導体装置の高集積化を阻害する要因の一つである。そして、当該要因は、高電圧をかけてトンネル電流を発生させるというフラッシュメモリの根本的な原理に起因するものである。
【0054】
一方、本実施の形態に係る半導体装置は、酸化物半導体を用いたトランジスタのスイッチングによって動作し、上述のようなトンネル電流による電荷注入の原理を用いない。すなわち、フラッシュメモリのような、電荷を注入するための高電圧が不要である。これにより、隣接セルに対する、コントロールゲートによる高電圧の影響を考慮する必要がないため、高集積化が容易になる。
【0055】
また、高電界が不要であり、大型の周辺回路(昇圧回路など)が不要である点も、フラッシュメモリに対するアドバンテージである。例えば、本実施の形態に係るメモリセルに印加される電圧(メモリセルの各端子に同時に印加される電位の最大のものと最小のものの差)の最大値は、2段階(1ビット)のデータを書き込む場合、一つのメモリセルにおいて、5V以下、好ましくは3V以下とすることができる。
【0056】
さらに、容量素子164を構成する絶縁層の比誘電率εr1と、トランジスタ160を構成する絶縁層の比誘電率εr2とを異ならせる場合には、容量素子164を構成する絶縁層の面積S1と、トランジスタ160においてゲート容量を構成する絶縁層の面積S2とが、2・S2≧S1(2・S2はS1以上)、望ましくはS2≧S1(S2はS1以上)を満たしつつ、C1≧C2(C1はC2以上)を実現することが容易である。すなわち、容量素子164を構成する絶縁層の面積を小さくしつつ、C1≧C2(C1はC2以上)を実現することが容易である。具体的には、例えば、容量素子164を構成する絶縁層においては、酸化ハフニウムなどのhigh−k材料でなる膜、または酸化ハフニウムなどのhigh−k材料でなる膜と酸化物半導体でなる膜との積層構造を採用してεr1を10以上、好ましくは15以上とし、ゲート容量を構成する絶縁層においては、酸化シリコンを採用して、3≦εr2≦4(εr2は3以上4以下)とすることができる。
【0057】
このような構成を併せて用いることで、開示する発明に係る半導体装置の、より一層の高集積化が可能である。
【0058】
また、フラッシュメモリの他に不揮発性のランダムアクセスメモリとして磁気トンネル接合素子(MTJ素子)が知られている。MTJ素子は、絶縁膜を介して上下に配置している強磁性体膜の磁化の向きが並行であれば低抵抗状態、反並行であれば高抵抗状態となることで情報を記憶する素子である。したがって、本実施の形態に係る酸化物半導体を用いたメモリとは原理が全く異なっている。表1はMTJ素子と、本実施の形態に係る半導体装置との対比を示す。
【0059】
【表1】

【0060】
MTJ素子は磁性材料を使用するためキュリー温度以上にすると磁性が失われてしまうという欠点がある。また、MTJ素子は電流駆動であるため、シリコンのバイポーラデバイスと相性が良いが、バイポーラデバイスは集積化に不向きである。そして、MTJ素子は書き込み電流が微少とはいえメモリの大容量化によって消費電力が増大してしまうといった問題がある。
【0061】
原理的にMTJ素子は磁界耐性に弱く強磁界にさらされると磁化の向きが狂いやすい。また、MTJ素子に用いる磁性体のナノスケール化によって生じる磁化揺らぎを制御する必要がある。
【0062】
さらに、MTJ素子は希土類元素を使用するため、金属汚染を嫌うシリコン半導体のプロセスに組み入れるには相当の注意を要する。MTJ素子はビット当たりの材料コストから見ても高価であると考えられる。
【0063】
一方、本実施の形態で示す酸化物半導体を用いたトランジスタは、チャネルを形成する半導体材料が金属酸化物であること以外は、素子構造や動作原理がシリコンMOSFETと同様である。また、酸化物半導体を用いたトランジスタは磁界の影響を受けず、ソフトエラーも生じ得ないといった特質を有する。このことからシリコン集積回路と非常に相性が良いといえる。
【0064】
なお、半導体装置の記憶容量を大きくするためには、高集積化以外に、多値化の手法を採ることもできる。例えば、メモリセルの一に3段階以上のデータを書き込む構成とすることで、2段階(1ビット)のデータを書き込む場合と比較して記憶容量を増大させることができる。例えば、上述のような、低電位Vdata0(データ”0”)、高電位Vdata1(データ”1”)に加え、他の電位を与える電位Vdataをトランジスタ160のゲート電極に与えることで、多値化を実現することができる。この場合、比較的規模の大きい回路構成(例えば、15F〜50Fなど:Fは最小加工寸法)を採用しても十分な記憶容量を確保することができる。
【0065】
〈基本回路2〉
図2は、図1(A−1)に示すメモリセルを2行×2列のマトリクス状に配置したメモリセルアレイの回路図である。図2におけるメモリセル170の構成は、図1(A−1)と同様である。図2(A)においては、それぞれのメモリセルにソース線SL、ビット線BL、信号線S、書き込みワード線OSG、容量線Cが電気的に接続されている。また、図2(B)においては、ビット線BLが信号線Sを兼ね、またソース線SLが2列のメモリセルにおいて共通化された構造を有している。
【0066】
図2(A)に示すように、それぞれにメモリセルにソース線SL、ビット線BL、信号線S、書き込みワード線OSG、容量線Cが電気的に接続される構造とすると、各線にメモリセルごとに異なる電位を供給することが可能となる。
【0067】
図2(B)に示すように、ビット線BLが信号線Sを兼ね、ソース線SLを2列で共通化された構造とすると、メモリセル170に接続する配線の本数を削減することができる。
【0068】
なお、ソース線SLは列に限らず、行で共通化させてもよい。またソース線SLを共通化させる列数(または行数)は、2列(2行)に限定されるものではなく、3列(または3行)以上の複数列(または複数行)のメモリセルにおいて共通した構造としてもよい。共通化させるソース線SLの列数(または行数)は、共通化による寄生抵抗および寄生容量を考慮し、好適な値を適宜選択すれば良い。また、共通化させる列数(または行数)が多い程、メモリセル170に接続される配線の本数を削減することができるため好ましい。
【0069】
また、図2のメモリセルアレイでは、メモリセルが並列に接続されているが、直列に接続されたメモリセルアレイとしてもよい。
【0070】
図2において、ビット線BLは、ビット線駆動回路194と電気的に接続されている。ここで、ビット線駆動回路194は、ビット線BLの他に、ビット線切り替え信号線BLCとプリチャージ電位供給配線PREと電気的に接続されている。
【0071】
図2(A)および図2(B)に示す半導体装置において、データの書き込み、保持、および読み出しは、図1の場合と同様であり、前述の記載を参酌することができる。ここでは、図2(B)に示す半導体装置において、ノードFGに電源電位VDDまたは接地電位GNDのいずれかを与える場合であって、ノードFGに電源電位VDDを与えた場合に保持されるデータをデータ”1”、ノードFGに接地電位GNDを与えた場合に保持されるデータをデータ”0”とする場合において、具体的な動作を説明する。
【0072】
まず、書き込みの動作は次の通りである。メモリセル170に接続される容量線Cの電位を接地電位GNDとし、書き込みワード線OSGを高電位VHとしてメモリセル170を選択する。これにより、ビット線BLの電位が、選択されたメモリセル170のノードFGに供給される。
【0073】
次に、保持の動作は次の通りである。メモリセル170に接続される書き込みワード線OSGの電位を、トランジスタ162がオフ状態となる電位にして、トランジスタ162をオフ状態とすることにより、ノードFGに与えられた電位が保持される。トランジスタ162のオフ電流は極めて小さいため、トランジスタ160のゲート電極の電位は長時間にわたって保持される。
【0074】
次に、読み出しの動作は次の通りである。まず、メモリセル170に接続されるソース線SLを接地電位GNDとする。また、ビット線BLをプリチャージ電位供給配線PREと接続し、ビット線BLをプリチャージ電位VPRE1とする。その後、ビット線BLとプリチャージ電位供給配線PREを接続解除すると、ビット線BLの電位がノードFGに保持された電位に応じて変動する。すなわち、トランジスタ160がpチャネル型トランジスタの場合、ノードFGにデータ”1”が保持されていればトランジスタ160がオフ状態となり、ビット線BLの電位はプリチャージ電位VPRE1に保たれる。また、ノードFGにデータ”0”が保持されていればトランジスタ160がオン状態となり、ビット線BLの電位が低下し、ソース線SLの接地電位GNDに近づく。このようにして、ビット線BLの電位の変動により、ノードFGに保持された電位を読み出すことができる。
【0075】
ビット線BLとプリチャージ電位供給配線PREの接続および接続解除は、ビット線切り替え信号線BLCの信号によってビット線駆動回路194の信号を切り替えることにより行う。
【0076】
また、図2に示すように、メモリセル170をアレイ状に配置して用いる場合には、読み出し期間に、所望のメモリセル170のデータのみを読み出せることが必要になる。このように、所定のメモリセル170のデータを読み出し、それ以外のメモリセル170のデータを読み出さないためには、読み出さないメモリセル170を非選択状態とする必要がある。
【0077】
例えば、トランジスタ160がpチャネル型トランジスタであり、ノードFGに電源電位VDDまたは接地電位GNDのいずれかを与える場合であって、ノードFGに電源電位VDDを与えた場合に保持されるデータをデータ”1”、ノードFGに接地電位GNDを与えた場合に保持されるデータをデータ”0”とする場合においては、ソース線SLを接地電位GNDとし、容量線Cを電源電位VDDとし、書き込みワード線OSGを接地電位GNDとすることでメモリセル170を非選択状態とすることができる。
【0078】
容量線Cを電源電位VDDとすることで、ノードFGの電位は容量素子164との容量結合によって電源電位VDD分上昇する。データ”1”である電源電位VDDがノードFGに書き込まれている場合は、電源電位VDD分上昇してVDD+VDD=2VDDになり、トランジスタ160のゲート電極の電位が、Vth_Hよりも大きくなるため、トランジスタ160はオフ状態となる。また、データ”0”である接地電位GNDがノードFGに書き込まれている場合は、電源電位VDD分上昇してGND+VDD=VDDとなり、トランジスタ160のゲート電極の電位がVth_Hよりも大きくなるため、pチャネル型トランジスタであるトランジスタ160はやはりオフ状態となる。すなわち、容量線Cを電源電位VDDとすることで、ノードFGに保持されたデータによらずに、トランジスタ160をオフ状態、すなわち、メモリセル170を非選択状態とすることができる。
【0079】
なお、トランジスタ160にnチャネル型トランジスタを用いることもできる。この場合、容量線Cを接地電位GNDとしても、nチャネル型トランジスタのゲート電極の電位が該トランジスタのしきい値電圧より高くなれば、全てのメモリセルをオフ状態にできるとは限らない。したがって、メモリセルを非選択状態とするために非選択行の容量線Cに低電位VLを供給する。ここで低電位VLは、接地電位GNDより電源電位VDD分低い電位である。
【0080】
また、トランジスタ160にnチャネル型トランジスタを用いた場合、トランジスタ160の動作速度を高めることができるため、高速での読み出しが可能である。
【0081】
また、上述のように本実施の形態に示す半導体装置では、読み出し期間において、メモリセル170に接続されるソース線SLを接地電位とする。また、ビット線BLをプリチャージ電位供給配線PREと接続し、ビット線BLをプリチャージ電位とする。その後、ビット線BLとプリチャージ電位供給配線PREを接続解除し、ビット線BLの電位がノードFGに保持された電位に応じて変動することにより、ノードFGに保持された電位を読み出す。
【0082】
以上に示した半導体装置の駆動方法では、読み出し期間においてソース線SLについて電位の上昇を伴うプリチャージの必要がない。また、ビット線BLについて、プリチャージ電位を超えて電位を上昇させる必要がないため、電位の変動が少ない。そのため、ソース線SLおよびビット線BLの電位の変動が大きい読み出し方法と比較して、短時間に読み出し動作を行うことができる。また、短時間でもデータ”1”とデータ”0”を正確に読み出すことができる。
【0083】
〈応用例1〉
次に、図1に示す回路を応用したより具体的な回路構成について、図3を参照して説明する。なお、以下の説明においては、書き込み用トランジスタ(トランジスタ162)にnチャネル型トランジスタを用い、読み出し用トランジスタ(トランジスタ160)にpチャネル型トランジスタを用いる場合を例に説明する。なお、図3の回路図において、斜線を有する配線は、複数の信号線を含む配線である。
【0084】
図3は、(m×n)個のメモリセル170を有する半導体装置の回路図の一例である。図3中のメモリセル170の構成は、図1(A−1)と同様である。
【0085】
図3に示す半導体装置は、m本(mは2以上の整数)の書き込みワード線OSGと、m本の容量線Cと、n本(nは2以上の整数)のビット線BLと、ソース線SLと、メモリセル170が縦m個(行)×横n個(列)のマトリクス状に配置されたメモリセルアレイと、昇圧回路180と、アドレスデコーダを含む第1の駆動回路182と、ロードライバを含む第2の駆動回路192と、ページバッファを含む第3の駆動回路190と、コントローラを含む第4の駆動回路184と、入出力制御回路を含む第5の駆動回路186と、ビット線駆動回路194と、を有する。なお、駆動回路の数は、図3に限られるものではなく、各機能を有する駆動回路を組み合わせて用いてもよく、または、各駆動回路に含まれる機能を分割して用いてもよい。
【0086】
図3に示す半導体装置において、第1の駆動回路182はアドレスデコーダを含む。アドレスデコーダは、アドレス選択信号線Aをデコードし、デコードしたアドレス選択信号を、行選択信号線RADRと、ページバッファアドレス選択信号線PBADRに出力する回路である。アドレス選択信号線Aは、メモリセル170の行方向のアドレス選択信号と、ページバッファのアドレス選択信号が入力される端子であり、メモリセル170の行数、列数、またはページバッファの構成によって、1本〜複数本となる。行選択信号線RADRは、メモリセルの行方向のアドレスを指定する信号線である。ページバッファアドレス選択信号線PBADRは、ページバッファのアドレスを指定する信号線である。
【0087】
第2の駆動回路192は、ロードライバを含む。ロードライバは、第1の駆動回路182に含まれるアドレスデコーダから出力される行選択信号線RADRからの信号をもとに、メモリセル170の行方向の選択信号、書き込みワード線OSGへの信号、容量線Cへの信号を出力する。
【0088】
昇圧回路180は、配線VH−Lによって第2の駆動回路192と電気的に接続され、昇圧回路180に入力される一定電位(例えば、電源電位VDD)を昇圧して、第2の駆動回路192に該一定電位よりも高い電位(VH)を出力する。メモリセル170のノードFGに書き込む電位を、書き込み用トランジスタであるトランジスタ162のしきい値電圧(Vth_OS)分降下させないようにするためには、書き込みワード線OSGの電位をビット線BLの電位+Vth_OSよりも高くする必要がある。したがって、例えば、ノードFGに電源電位VDDを書き込む場合には、VHをVDD+Vth_OS以上とする。ただし、ノードFGに書き込まれる電位がVth_OS分降下しても問題がない場合には、昇圧回路180を設けなくともよい。
【0089】
第3の駆動回路190は、ページバッファを含む。ページバッファは、データラッチとセンスアンプの機能を有している。データラッチとしての機能は、内部データ入出力信号線INTDIO、若しくはビット線BLから出力されるデータを一時的に保存し、その保存したデータを内部データ入出力信号線INTDIO、若しくはビット線BLに出力する。センスアップとしての機能は、読み出し時にメモリセルから出力されるビット線BLをセンシングするものである。
【0090】
第4の駆動回路184は、コントローラを含み、チップイネーブルバー信号線CEB、ライトイネーブルバー信号線WEB、またはリードイネーブルバー信号線REBからの信号によって、第1の駆動回路182、第2の駆動回路192、第3の駆動回路190、第5の駆動回路186、ビット線駆動回路194、昇圧回路180を制御する信号を生成する回路である。
【0091】
チップイネーブルバー信号線CEBは、回路全体の選択信号を出力する信号線であり、アクティブ時のみ、入力信号の入力受け付け、及び出力信号の出力を行う。また、ライトイネーブルバー信号線WEBは、第3の駆動回路190内のページバッファのラッチデータを、メモリセルアレイへ書き込みを行うことを許可する信号を出力する信号線である。また、リードイネーブルバー信号線REBは、メモリセルアレイのデータの読み出しを許可する信号を出力する信号線である。また、第4の駆動回路184は、昇圧回路制御信号線BCCによって、昇圧回路180と電気的に接続されている。昇圧回路制御信号線BCCは、第4の駆動回路184内のコントローラから出力させる昇圧回路の制御信号を伝達する配線であり、回路構成によって、0本〜複数本となる。また、第4の駆動回路184は、ページバッファ制御信号線PBCによって第3の駆動回路190と電気的に接続されている。ページバッファ制御信号線PBCは、第4の駆動回路184内のコントローラから出力させるページバッファの制御信号を伝達する配線であり、回路構成によって、0本〜複数本となる。また、第4の駆動回路184は、ロードライバ制御信号線RDRVCによって、第2の駆動回路192と電気的に接続されている。また、第4の駆動回路184は、ビット線切り替え信号線BLCによって、ビット線駆動回路194と電気的に接続されている。
【0092】
また、第4の駆動回路184内には、遅延回路を設け、該遅延回路をページバッファ制御信号線PBC、ロードライバ制御信号線RDRVC、ソース線切り替え信号線SLCと電気的に接続するのが好ましい。例えば、遅延回路とページバッファ制御信号線PBCとを電気的に接続し、ページバッファ制御信号線PBCへ遅延信号を供給することで、ビット線BLの電位の変化を遅らせることができる。また、遅延回路とロードライバ制御信号線RDRVCとを電気的に接続し、ロードライバ制御信号線RDRVCへ遅延信号を供給することで、容量線Cの電位の変化を遅らせることができる。また、遅延回路とソース線切り替え信号線SLCとを電気的に接続し、ソース線切り替え信号線SLCへ遅延信号を供給することで、ソース線SLの電位の変化を遅らせることができる。これらによって、メモリセル170への誤書き込みを抑制することができる。
【0093】
ビット線駆動回路194は、第4の駆動回路184内のコントローラからのビット線切り替え信号BLCを基にビット線BLの電位を切り替える回路である。ビット線駆動回路194は、ビット線BLの電位を切り替える機能を有していれば良く、マルチプレクサ、インバータ等を用いても良い。ビット線切り替え信号線BLCは、第4の駆動回路184内のコントローラから出力されるビット線BLの電位を切り替える信号を伝達する配線である。回路構成よって、信号線本数は1本〜複数本となる。
【0094】
第5の駆動回路186は、入出力制御回路を含む。入出力制御回路は、データ入出力信号線DIOからの入力信号を内部データ入出力信号線INTDIOに出力するか、内部データ入出力信号線INTDIOからの入力信号をデータ入出力信号線DIOに出力するための回路である。データ入出力信号線DIO端子は、外部からのデータが入力されるか、外部へメモリデータが出力される端子である。回路構成によって、信号線本数は1本〜複数本となる。内部データ入出力信号線INTDIOは、入出力制御回路の出力信号をページバッファに入力するか、ページバッファの出力信号を入出力制御回路に入力する信号線である。回路構成によって、信号線本数は1本〜複数本となる。また、データ入出力信号線DIOは、データ入力用信号線とデータ出力用信号線に分けても良い。
【0095】
〈半導体装置の駆動方法〉
図4乃至図11に、図2(B)に係る半導体装置の書き込み、保持、及び読み出し動作に係るタイミングチャートの例を示す。タイミングチャート中のOSG、C等の名称は、タイミングチャートに示す電位が与えられる配線を示しており、同様の機能を有する配線が複数ある場合には、配線の名称の末尾に、1、m、n等を付すことで区別している。なお、開示する発明は以下に示す配列に限らない。
【0096】
図4乃至図11のタイミングチャートは、メモリセル(m×n)個(但し、m及びnは2以上の整数)にデータを書き込み、保持期間を経て、書き込まれた全データを読み出す場合の各配線間の電位の関係を示すものである。メモリセル(m×n)個に書き込むデータは、1行1列目のメモリセルにデータ”1”、1行n列目のメモリセルにデータ”0”、m行1列目のメモリセルにデータ”0”、m行n列目のメモリセルにデータ”1”とする。
【0097】
まず、図4のタイミングチャートについて説明する。図4は、トランジスタ160がpチャネル型トランジスタの場合のスタンバイ、書き込み、保持および読み出し動作の一例である。
【0098】
スタンバイ期間において、書き込みワード線OSGおよびソース線SLを接地電位GNDとし、容量線Cを電源電位VDDとする。また、ビット線BLを、プリチャージ電位VPRE1とする。VPRE1は、接地電位GNDと電源電位VDDの間の電位である。
【0099】
書き込み期間において、まず、選択行の書き込みワード線OSGを電源電位VDDより高い電位(高電位:VH)とし、容量線Cを接地電位GNDとし、非選択行の書き込みワード線OSGを接地電位GNDとし、容量線Cを電源電位VDDとすることで、書き込む行を選択する。
【0100】
なお、メモリセル170のノードFGに書き込む電位を、トランジスタ162のしきい値電圧(Vth_OS)分降下させないようにするためには、書き込みワード線OSGの電位をビット線BLの電位+Vth_OSよりも高くする必要がある。したがって、例えば、ノードFGに電源電位VDDを書き込む(すなわちデータ”1”を書き込む)場合には、VHをVDD+Vth_OS以上とする。ただし、ノードFGに書き込まれる電位がVth_OS分降下しても問題がない場合には、選択行の書き込みワード線OSGの電位を電源電位VDDとしてもよい。
【0101】
次いで、書き込み行選択のタイミングより遅らせて、ビット線BLからメモリセルへデータを入力する。例えば、データ”1”を書き込む場合であれば、ビット線BLに電源電位VDDを供給し、データ”0”を書き込む場合であれば、ビット線BLに接地電位GNDを入力する。
【0102】
図4のタイミングチャートでは、スタンバイ期間においてビット線BLに電源電位VDDと接地電位GNDの間の電位であるプリチャージ電位VPRE1を供給しているため、スタンバイ期間に続く書き込み期間において高速に書き込みを行うことができる。例えば、スタンバイ期間においてビット線BLに接地電位GNDを供給している場合、書き込み期間にデータ”1”である電源電位VDDを入力するときに接地電位GNDから電源電位VDDまでの電位の変化に時間がかかり、書き込みの速度が低下する。しかし、図4のタイミングチャートでは、スタンバイ期間においてビット線BLにプリチャージ電位VPRE1を供給することで、データとして電源電位VDDと接地電位GNDのどちらが入力される場合においても、電位の変化を短時間で行うことができる。
【0103】
次いで、書き込みワード線OSGを接地電位GNDとし、全ての行の容量線Cを電源電位VDDとして、すべてのメモリセルを非選択状態とし、書き込みワード線OSGを接地電位GNDとするタイミングよりも遅らせてビット線BLをVPRE1とする。ビット線BLをVPRE1とするタイミングが早いと、メモリセルへのデータの誤書き込みが生じることがあるためである。
【0104】
保持期間においては、全ての配線においてスタンバイ期間と同様の電位とする。
【0105】
少なくとも読み出し期間において、選択メモリセルが接続されるソース線SLを接地電位とする。また、少なくとも読み出し期間において、ビット線BLを選択、または非選択に関わらずプリチャージ電位供給配線PREと接続し、ビット線BLをプリチャージ電位VPRE1とする。また、読み出し期間において、選択行の容量線Cを接地電位GNDとし、非選択行の容量線Cを電源電位VDDにすることで読み出す行を選択する。書き込みワード線OSGは選択、または非選択に関わらず接地電位GNDとする。その後、選択列のビット線BLとプリチャージ電位供給配線PREを接続解除すると、選択したビット線BLの電位がノードFGに保持された電位に応じて変動する。すなわち、トランジスタ160がpチャネル型トランジスタの場合、ノードFGにデータ”1”が保持されていればトランジスタ160がオフ状態となり、ビット線BLの電位はプリチャージ電位VPRE1に保たれる。また、ノードFGにデータ”0”が保持されていればトランジスタ160がオン状態となり、ビット線BLの電位が低下し、ソース線SLの接地電位GNDに近づく。このようにして、ビット線BLの電位の変動により、ノードFGに保持された電位を読み出すことができる。
【0106】
以上に示した半導体装置の駆動方法では、ソース線SLについて電位の上昇を伴うプリチャージの必要がない。また、ビット線BLについてプリチャージ電位以上に電位を上昇させる必要がない。そのため、電位の上昇を伴う読み出しの駆動方法と比較して、短時間に読み出し動作を行うことができる。また、短時間でもデータ”1”とデータ”0”を正確に読み出すことができる。
【0107】
最後に、全ての容量線Cを電源電位VDDとし、ビット線BLを再びVPRE1にプリチャージする。
【0108】
トランジスタ160にpチャネル型トランジスタを用いると、図4のタイミングチャートに示す駆動方法のように、非選択行の容量線Cを正電位とすることでメモリセルをオフ状態とすることが可能である。したがって、メモリセルにおいて低電位を生成する回路を設ける必要がなくなるため、消費電力を削減し、且つ半導体装置を小型化することができる。
【0109】
なお、図4は図2(B)に示す半導体装置の駆動方法の一例であるため、ソース線SLがメモリセル間で共通化されたものとしているが、本発明の一態様はこれに限られない。各メモリセルまたは各列にソース線SLを有する構成としてもよい。これにより、各メモリセルまたは各列に異なるソース線SLの電位を供給することができる。そのため、たとえば非選択とするメモリセルのソース線SLに、VPRE1を供給してビット線BLと同じ電位とすることができる。
【0110】
次に、図5のタイミングチャートについて説明する。図4のタイミングチャートと図5のタイミングチャートの相違点は、図4において、ビット線BL(BL1〜BLn)をスタンバイ期間、非選択の書き込み期間、および非選択の読み出し期間においてVPRE1にプリチャージしているのに対して、図5ではビット線BLをスタンバイ期間、非選択の書き込み期間、および非選択の読み出し期間において接地電位GNDとしている点である。図5のように選択の読み出し期間以外において、ビット線BLを接地電位GNDとすることで、消費電力を低減することができる。
【0111】
次に、図6のタイミングチャートについて説明する。図4のタイミングチャートと、図6のタイミングチャートの相違点は、図4において、容量線C(C1〜Cm)をスタンバイ期間において電源電位VDDとしているのに対して、図6において、容量線Cをスタンバイ期間において接地電位GNDとしている点である。スタンバイ期間において、容量線Cを接地電位GNDとすることで、消費電力を低減することができる。
【0112】
次に、図7のタイミングチャートについて説明する。図4のタイミングチャートと、図7のタイミングチャートの相違点は、図4において、容量線Cをスタンバイ期間において電源電位VDDとしているのに対して、図7において、容量線Cをスタンバイ期間において接地電位GNDとしている点である。さらに、図4において、ビット線BLをスタンバイ期間、非選択の書き込み期間、および非選択の読み出し期間においてVPRE1にプリチャージしているのに対して、図7ではビット線BLをスタンバイ期間、非選択の書き込み期間、および非選択の読み出し期間において接地電位GNDとしている点である。スタンバイ期間において、容量線Cを接地電位GNDとし、選択の読み出し期間以外において、ビット線BLを接地電位GNDとすることで、消費電力を低減することができる。
【0113】
次に、図8のタイミングチャートについて説明する。図8は、トランジスタ160がnチャネル型トランジスタの場合のスタンバイ、書き込み、保持および読み出し動作の一例である。
【0114】
図4のタイミングチャートと、図8のタイミングチャートの相違点は、図4において、容量線Cを非選択の書き込み期間、および非選択の読み出し期間において電源電位VDDとしているのに対して、図8において、容量線Cを非選択の書き込み期間、および非選択の読み出し期間においてVLとしている点である。VLは、接地電位GNDから電源電位VDD分低い電位である。また、図4において、データ”1”が書き込まれたメモリセルの選択の読み出し期間において、ビット線BLの電位がVPRE1に保持され、データ”0”が書き込まれたメモリセルの選択の読み出し期間において、ビット線BLの電位がVPRE1から低下しているのに対して、図8において、データ”1”が書き込まれたメモリセルの選択の読み出し期間において、ビット線BLの電位がVPRE1から低下し、データ”0”が書き込まれたメモリセルの選択の読み出し期間において、ビット線BLの電位がVPRE1に保持されている点である。
【0115】
また、図8のタイミングチャートに示す駆動方法では、トランジスタ160にnチャネル型トランジスタを用いているため、トランジスタ160の動作速度を高めることができ、高速での読み出しが可能である。
【0116】
次に、図9のタイミングチャートについて説明する。図8のタイミングチャートと図9のタイミングチャートの相違点は、図8において、ビット線BLをスタンバイ期間、非選択の書き込み期間、および非選択の読み出し期間においてVPRE1にプリチャージしているのに対して、図9ではビット線をスタンバイ期間、非選択の書き込み期間、および非選択の読み出し期間において接地電位GNDとしている点である。図9のように選択の読み出し期間以外において、ビット線を接地電位GNDとすることで、消費電力を低減することができる。
【0117】
次に、図10のタイミングチャートについて説明する。図8のタイミングチャートと、図10のタイミングチャートの相違点は、図8において、容量線Cをスタンバイ期間において接地電位GNDとしているのに対して、図10において、容量線Cをスタンバイ期間において低電位VLとしている点である。
【0118】
次に、図11のタイミングチャートについて説明する。図8のタイミングチャートと、図11のタイミングチャートの相違点は、図8において、容量線Cをスタンバイ期間において電源電位GNDとしているのに対して、図11において、容量線Cをスタンバイ期間において低電位VLとしている点である。さらに、図8において、ビット線BLをスタンバイ期間、非選択の書き込み期間、および非選択の読み出し期間においてVPRE1にプリチャージしているのに対して、図11ではビット線BLをスタンバイ期間、非選択の書き込み期間、および非選択の読み出し期間において接地電位GNDとしている点である。スタンバイ期間において、容量線Cを低電位VLとし、選択の読み出し期間以外において、ビット線BLを接地電位GNDとすることで、消費電力を低減することができる。
【0119】
図4乃至図11のタイミングチャートに示した半導体装置の駆動方法を用いることで、ソース線SLおよびビット線BLの電位の上昇を伴う読み出しの駆動方法と比較して、短時間に読み出し動作を行うことができる。また、短時間でもデータ”1”とデータ”0”を正確に読み出すことができる。
【0120】
なお、開示する発明の半導体装置に関する動作方法、動作電圧などについては、上述の構成に限定されず、半導体装置の動作が実現される態様において適宜変更することが可能である。
【0121】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0122】
(実施の形態2)
本実施の形態では、開示する発明の一態様に係る半導体装置の構成およびその作製方法について図12乃至図30を参照して説明する。
【0123】
〈半導体装置の断面構成および平面構成〉
図12は、半導体装置の構成の一例である。図12(A)には、半導体装置の断面を、図12(B)には、半導体装置の平面を、それぞれ示す。ここで、図12(A)は、図12(B)のA1−A2およびB1−B2における断面に相当する。図12(A)および図12(B)に示す半導体装置は、下部に第1の半導体材料を用いたトランジスタ160を有し、上部に第2の半導体材料を用いたトランジスタ162を有する。ここで、第1の半導体材料と第2の半導体材料とは異なる材料とすることが望ましい。例えば、第1の半導体材料を酸化物半導体以外の半導体材料とし、第2の半導体材料を酸化物半導体とすることができる。酸化物半導体以外の半導体材料としては、例えば、シリコン、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、炭化シリコン、またはガリウムヒ素等を用いることができ、単結晶半導体を用いることが好ましい。他に、有機半導体材料などを用いてもよい。このような半導体材料を用いたトランジスタは、高速動作が容易である。一方で、酸化物半導体を用いたトランジスタは、その特性により長期間の電位保持を可能とする。図12に示す半導体装置は、メモリセルとして用いることができる。
【0124】
なお、開示する発明の技術的な本質は、データを保持するために酸化物半導体のようなオフ電流を十分に低減することが可能な半導体材料をトランジスタ162に用いる点にあるから、半導体装置に用いられる材料や半導体装置の構造など、半導体装置の具体的な構成をここで示すものに限定する必要はない。
【0125】
図12におけるトランジスタ160は、半導体基板500上の半導体層中に設けられたチャネル形成領域134と、チャネル形成領域134を挟むように設けられた不純物領域132(ソース領域およびドレイン領域とも記す)と、チャネル形成領域134上に設けられたゲート絶縁層122aと、ゲート絶縁層122a上にチャネル形成領域134と重畳するように設けられたゲート電極128aと、を有する。なお、図において、明示的にはソース電極やドレイン電極を有しない場合があるが、便宜上、このような状態を含めてトランジスタと呼ぶ場合がある。また、この場合、トランジスタの電気的な接続関係を説明するために、ソース領域やドレイン領域を含めてソース電極やドレイン電極と表現することがある。つまり、本明細書において、ソース電極との記載には、ソース領域が含まれうる。
【0126】
また、半導体基板500上の半導体層中に設けられた不純物領域126には、導電層128bが電気的に接続されている。ここで、導電層128bは、トランジスタ160のソース電極やドレイン電極としても機能する。また、不純物領域132と不純物領域126との間には、不純物領域130が設けられている。また、トランジスタ160を覆うように絶縁層136、絶縁層138、および絶縁層140が設けられている。なお、高集積化を実現するためには、図12に示すようにトランジスタ160がサイドウォール絶縁層を有しない構成とすることが望ましい。一方で、トランジスタ160の特性を重視する場合には、ゲート電極128aの側面にサイドウォール絶縁層を設け、不純物濃度が異なる領域を含む不純物領域132を設けても良い。
【0127】
図12におけるトランジスタ162は、絶縁層140などの上に設けられた酸化物半導体層144と、酸化物半導体層144と電気的に接続されているソース電極(またはドレイン電極)142a、およびドレイン電極(またはソース電極)142bと、酸化物半導体層144、ソース電極142aおよびドレイン電極142bを覆うゲート絶縁層146と、ゲート絶縁層146上に酸化物半導体層144と重畳するように設けられたゲート電極148aと、を有する。
【0128】
ここで、酸化物半導体層144に用いる酸化物半導体としては、少なくともインジウム(In)または亜鉛(Zn)を含むことが好ましい。特にInおよびZnを含むことが好ましい。また、それらに加えて、該酸化物半導体を用いたトランジスタの電気的特性のばらつきを減らすためのスタビライザーを有することが好ましい。スタビライザーとしては、ガリウム(Ga)、スズ(Sn)、ハフニウム(Hf)およびアルミニウム(Al)の少なくともいずれかを有すればよい。
【0129】
また、他のスタビライザーとして、ランタノイドである、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)のいずれか一種または複数種を有してもよい。
【0130】
例えば、酸化物半導体として、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、二元系金属の酸化物であるIn−Zn−O系酸化物、Sn−Zn−O系酸化物、Al−Zn−O系酸化物、Zn−Mg−O系酸化物、Sn−Mg−O系酸化物、In−Mg−O系酸化物、In−Ga−O系酸化物、三元系金属の酸化物であるIn−Ga−Zn−O系酸化物(IGZOとも表記する)、In−Al−Zn−O系酸化物、In−Sn−Zn−O系酸化物、Sn−Ga−Zn−O系酸化物、Al−Ga−Zn−O系酸化物、Sn−Al−Zn−O系酸化物、In−Hf−Zn−O系酸化物、In−La−Zn−O系酸化物、In−Ce−Zn−O系酸化物、In−Pr−Zn−O系酸化物、In−Nd−Zn−O系酸化物、In−Sm−Zn−O系酸化物、In−Eu−Zn−O系酸化物、In−Gd−Zn−O系酸化物、In−Tb−Zn−O系酸化物、In−Dy−Zn−O系酸化物、In−Ho−Zn−O系酸化物、In−Er−Zn−O系酸化物、In−Tm−Zn−O系酸化物、In−Yb−Zn−O系酸化物、In−Lu−Zn−O系酸化物、四元系金属の酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn−O系酸化物、In−Hf−Ga−Zn−O系酸化物、In−Al−Ga−Zn−O系酸化物、In−Sn−Al−Zn−O系酸化物、In−Sn−Hf−Zn−O系酸化物、In−Hf−Al−Zn−O系酸化物を用いることができる。
【0131】
なお、ここで、例えば、In−Ga−Zn−O系酸化物とは、In、GaおよびZnを主成分として有する酸化物という意味であり、In、GaおよびZnの比率は問わない。
【0132】
また、酸化物半導体として、InMO(ZnO)(m>0)で表記される材料を用いてもよい。なお、Mは、Ga、Fe、Mn及びCoから選ばれた一の金属元素または複数の金属元素を示す。また、酸化物半導体として、InSnO(ZnO)(n>0)で表記される材料を用いてもよい。
【0133】
例えば、In:Ga:Zn=1:1:1、In:Ga:Zn=2:2:1またはIn:Ga:Zn=3:1:2の原子数比のIn−Ga−Zn−O系酸化物やその組成の近傍の酸化物を用いることができる。または、In:Sn:Zn=1:1:1、In:Sn:Zn=2:1:3またはIn:Sn:Zn=2:1:5の原子数比のIn−Sn−Zn−O系酸化物やその組成の近傍の酸化物を用いるとよい。
【0134】
しかし、これらに限られず、必要とする半導体特性(電界効果移動度、しきい値電圧等)に応じて適切な組成のものを用いればよい。また、必要とする半導体特性を得るために、キャリア濃度や不純物濃度、欠陥密度、金属元素と酸素の原子数比、原子間結合距離、密度等を適切なものとすることが好ましい。
【0135】
例えば、In−Sn−Zn−O系酸化物を用いたトランジスタでは比較的容易に高い電界効果移動度が得られる。しかしながら、In−Ga−Zn−O系酸化物は、バルク内欠陥密度を低減することにより電界効果移動度を上げることができる。
【0136】
なお、例えば、In、Ga、Znの原子数比がIn:Ga:Zn=a:b:c(a+b+c=1)である酸化物の組成が、原子数比がIn:Ga:Zn=A:B:C(A+B+C=1)の酸化物の組成の近傍であるとは、a、b、cが、
(a―A)+(b―B)+(c―C)≦r
を満たすことをいい、rは、例えば、0.05とすればよい。他の酸化物でも同様である。
【0137】
酸化物半導体膜は、単結晶、多結晶(ポリクリスタルともいう。)または非晶質などの状態をとる。
【0138】
好ましくは、酸化物半導体膜は、CAAC−OS(C Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor)膜とする。
【0139】
CAAC−OS膜は、完全な単結晶ではなく、完全な非晶質でもない。CAAC−OS膜は、非晶質相に結晶部を有する結晶−非晶質混相構造の酸化物半導体膜である。なお、当該結晶部は、一辺が100nm未満の立方体内に収まる大きさであることが多い。また、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)による観察像では、CAAC−OS膜に含まれる非晶質部と結晶部との境界は明確ではない。また、TEMによってCAAC−OS膜には粒界(グレインバウンダリーともいう。)は確認できない。そのため、CAAC−OS膜は、粒界に起因する電子移動度の低下が抑制される。
【0140】
CAAC−OS膜に含まれる結晶部は、c軸がCAAC−OS膜の被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向に揃い、かつab面に垂直な方向から見て三角形状または六角形状の原子配列を有し、c軸に垂直な方向から見て金属原子が層状または金属原子と酸素原子とが層状に配列している。なお、異なる結晶部間で、それぞれa軸およびb軸の向きが異なっていてもよい。本明細書において、単に垂直と記載する場合、85°以上95°以下の範囲も含まれることとする。また、単に平行と記載する場合、−5°以上5°以下の範囲も含まれることとする。
【0141】
なお、CAAC−OS膜において、結晶部の分布が一様でなくてもよい。例えば、CAAC−OS膜の形成過程において、酸化物半導体膜の表面側から結晶成長させる場合、被形成面の近傍に対し表面の近傍では結晶部の占める割合が高くなることがある。また、CAAC−OS膜へ不純物を添加することにより、当該不純物添加領域において結晶部が非晶質化することもある。
【0142】
CAAC−OS膜に含まれる結晶部のc軸は、CAAC−OS膜の被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向に揃うため、CAAC−OS膜の形状(被形成面の断面形状または表面の断面形状)によっては互いに異なる方向を向くことがある。なお、結晶部のc軸の方向は、CAAC−OS膜が形成されたときの被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向となる。結晶部は、成膜することにより、または成膜後に熱処理などの結晶化処理を行うことにより形成される。
【0143】
CAAC−OS膜を用いたトランジスタは、可視光や紫外光の照射による電気特性の変動を低減することが可能である。よって、当該トランジスタは、信頼性が高い。
【0144】
なお、酸化物半導体膜を構成する酸素の一部は窒素で置換されてもよい。
【0145】
また、CAAC−OSのように結晶部を有する酸化物半導体では、よりバルク内欠陥を低減することができ、表面の平坦性を高めればアモルファス状態の酸化物半導体以上の移動度を得ることができる。表面の平坦性を高めるためには、平坦な表面上に酸化物半導体を形成することが好ましく、具体的には、平均面粗さ(Ra)が1nm以下、好ましくは0.3nm以下、より好ましくは0.1nm以下の表面上に形成するとよい。
【0146】
なお、Raは、JIS B0601で定義されている中心線平均粗さを面に対して適用できるよう三次元に拡張したものであり、「基準面から指定面までの偏差の絶対値を平均した値」と表現でき、以下の数式(1)にて定義される。
【0147】
【数1】

【0148】
なお、上記において、Sは、測定面(座標(x,y)(x,y)(x,y)(x,y)で表される4点によって囲まれる長方形の領域)の面積を指し、Zは測定面の平均高さを指す。Raは原子間力顕微鏡(AFM:Atomic ForceMicroscope)にて評価可能である。
【0149】
このようなCAAC−OS膜の例として、膜状に形成され、膜表面またはCAACが形成される基板面に垂直な方向から観察すると三角形または六角形の原子配列が認められ、かつその膜断面を観察すると金属原子または金属原子および酸素原子(または窒素原子)の層状配列が認められる酸化物を挙げることもできる。
【0150】
CAAC−OS膜に含まれる結晶構造の一例ついて図18乃至図21を用いて詳細に説明する。なお、特に断りがない限り、図18乃至図21は上方向をc軸方向とし、c軸方向と直交する面をab面とする。なお、単に上半分、下半分という場合、ab面を境にした場合の上半分、下半分をいう。また、図18において、丸で囲まれたOは4配位のOを示し、二重丸で囲まれたOは3配位のOを示す。
【0151】
図18(A)に、1個の6配位のInと、Inに近接の6個の4配位の酸素原子(以下4配位のO)と、を有する構造を示す。ここでは、金属原子が1個に対して、近接の酸素原子のみ示した構造を小グループと呼ぶ。図18(A)の構造は、八面体構造をとるが、簡単のため平面構造で示している。なお、図18(A)の上半分および下半分にはそれぞれ3個ずつ4配位のOがある。図18(A)に示す小グループは電荷が0である。
【0152】
図18(B)に、1個の5配位のGaと、Gaに近接の3個の3配位の酸素原子(以下3配位のO)と、Gaに近接の2個の4配位のOと、を有する構造を示す。3配位のOは、いずれもab面に存在する。図18(B)の上半分および下半分にはそれぞれ1個ずつ4配位のOがある。また、Inも5配位をとるため、図18(B)に示す構造をとりうる。図18(B)に示す小グループは電荷が0である。
【0153】
図18(C)に、1個の4配位のZnと、Znに近接の4個の4配位のOと、を有する構造を示す。図18(C)の上半分には1個の4配位のOがあり、下半分には3個の4配位のOがある。または、図18(C)の上半分に3個の4配位のOがあり、下半分に1個の4配位のOがあってもよい。図18(C)に示す小グループは電荷が0である。
【0154】
図18(D)に、1個の6配位のSnと、Snに近接の6個の4配位のOと、を有する構造を示す。図18(D)の上半分には3個の4配位のOがあり、下半分には3個の4配位のOがある。図18(D)に示す小グループは電荷が+1となる。
【0155】
図18(E)に、2個のZnを含む小グループを示す。図18(E)の上半分には1個の4配位のOがあり、下半分には1個の4配位のOがある。図18(E)に示す小グループは電荷が−1となる。
【0156】
ここでは、複数の小グループの集合体を中グループと呼び、複数の中グループの集合体を大グループ(ユニットセルともいう。)と呼ぶ。
【0157】
ここで、これらの小グループ同士が結合する規則について説明する。図18(A)に示す6配位のInの上半分の3個のOは下方向にそれぞれ3個の近接Inを有し、下半分の3個のOは上方向にそれぞれ3個の近接Inを有する。図18(B)に示す5配位のGaの上半分の1個のOは下方向に1個の近接Gaを有し、下半分の1個のOは上方向に1個の近接Gaを有する。図18(C)に示す4配位のZnの上半分の1個のOは下方向に1個の近接Znを有し、下半分の3個のOは上方向に3個の近接Znを有する。この様に、金属原子の上方向の4配位のOの数と、そのOの下方向にある近接金属原子の数は等しく、同様に金属原子の下方向の4配位のOの数と、そのOの上方向にある近接金属原子の数は等しい。Oは4配位なので、下方向にある近接金属原子の数と、上方向にある近接金属原子の数の和は4になる。従って、金属原子の上方向にある4配位のOの数と、別の金属原子の下方向にある4配位のOの数との和が4個のとき、金属原子を有する二種の小グループ同士は結合することができる。その理由を以下に示す。例えば、6配位の金属原子(InまたはSn)が下半分の4配位のOを介して結合する場合、4配位のOが3個であるため、5配位の金属原子(GaまたはIn)または4配位の金属原子(Zn)のいずれかと結合することになる。
【0158】
これらの配位数を有する金属原子は、c軸方向において、4配位のOを介して結合する。また、このほかにも、層構造の合計の電荷が0となるように複数の小グループが結合して中グループを構成する。
【0159】
図19(A)に、In−Sn−Zn−O系の層構造を構成する中グループのモデル図を示す。図19(B)に、3つのグループで構成されるユニットを示す。なお、図19(C)は、図19(B)の層構造をc軸方向から観察した場合の原子配列を示す。
【0160】
図19(A)においては、簡単のため、3配位のOは省略し、4配位のOは個数のみ示し、例えば、Snの上半分および下半分にはそれぞれ3個ずつ4配位のOがあることを丸枠の3として示している。同様に、図19(A)において、Inの上半分および下半分にはそれぞれ1個ずつ4配位のOがあり、丸枠の1として示している。また、同様に、図19(A)において、下半分には1個の4配位のOがあり、上半分には3個の4配位のOがあるZnと、上半分には1個の4配位のOがあり、下半分には3個の4配位のOがあるZnとを示している。
【0161】
図19(A)において、In−Sn−Zn−O系の層構造を構成する中グループは、上から順に4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるSnが、4配位のOが1個ずつ上半分および下半分にあるInと結合し、そのInが、上半分に3個の4配位のOがあるZnと結合し、そのZnの下半分の1個の4配位のOを介して4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるInと結合し、そのInが、上半分に1個の4配位のOがあるZn2個からなる小グループと結合し、この小グループの下半分の1個の4配位のOを介して4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるSnと結合している構成である。この中グループが複数結合して大グループを構成する。
【0162】
ここで、3配位のOおよび4配位のOの場合、結合1本当たりの電荷はそれぞれ−0.667、−0.5と考えることができる。例えば、In(6配位または5配位)、Zn(4配位)、Sn(5配位または6配位)の電荷は、それぞれ+3、+2、+4である。従って、Snを含む小グループは電荷が+1となる。そのため、Snを含む層構造を形成するためには、電荷+1を打ち消す電荷−1が必要となる。電荷−1をとる構造として、図18(E)に示すように、2個のZnを含む小グループが挙げられる。例えば、Snを含む小グループが1個に対し、2個のZnを含む小グループが1個あれば、電荷が打ち消されるため、層構造の合計の電荷を0とすることができる。
【0163】
具体的には、図19(B)に示した大グループが繰り返されることで、In−Sn−Zn−O系の結晶(InSnZn)を得ることができる。なお、得られるIn−Sn−Zn−O系の層構造は、InSnZn(ZnO)(mは0または自然数。)とする組成式で表すことができる。
【0164】
また、このほかにも、四元系金属の酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn−O系酸化物や、三元系金属の酸化物であるIn−Ga−Zn−O系酸化物(IGZOとも表記する。)、In−Al−Zn−O系酸化物、Sn−Ga−Zn−O系酸化物、Al−Ga−Zn−O系酸化物、Sn−Al−Zn−O系酸化物や、二元系金属の酸化物であるIn−Zn−O系酸化物、Sn−Zn−O系酸化物、Al−Zn−O系酸化物、Zn−Mg−O系酸化物、Sn−Mg−O系酸化物、In−Mg−O系酸化物や、In−Ga−O系酸化物、一元系金属の酸化物であるIn−O系酸化物、Sn−O系酸化物、Zn−O系酸化物などを用いた場合も同様である。
【0165】
例えば、図20(A)に、In−Ga−Zn−O系の層構造を構成する中グループのモデル図を示す。
【0166】
図20(A)において、In−Ga−Zn−O系の層構造を構成する中グループは、上から順に4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるInが、4配位のOが1個上半分にあるZnと結合し、そのZnの下半分の3個の4配位のOを介して、4配位のOが1個ずつ上半分および下半分にあるGaと結合し、そのGaの下半分の1個の4配位のOを介して、4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるInと結合している構成である。この中グループが複数結合して大グループを構成する。
【0167】
図20(B)に3つの中グループで構成される大グループを示す。なお、図20(C)は、図20(B)の層構造をc軸方向から観察した場合の原子配列を示している。
【0168】
ここで、In(6配位または5配位)、Zn(4配位)、Ga(5配位)の電荷は、それぞれ+3、+2、+3であるため、In、ZnおよびGaのいずれかを含む小グループは、電荷が0となる。そのため、これらの小グループの組み合わせであれば中グループの合計の電荷は常に0となる。
【0169】
また、In−Ga−Zn−O系の層構造を構成する中グループは、図20(A)に示した中グループに限定されず、In、Ga、Znの配列が異なるグループを組み合わせた大グループも取りうる。
【0170】
具体的には、図20(B)に示した大グループが繰り返されることで、In−Ga−Zn−O系の結晶を得ることができる。なお、得られるIn−Ga−Zn−O系の層構造は、InGaO(ZnO)(nは自然数。)とする組成式で表すことができる。
【0171】
n=1(InGaZnO)の場合は、例えば、図21(A)に示す結晶構造を取りうる。なお、図21(A)に示す結晶構造において、図18(B)で説明したように、Ga及びInは5配位をとるため、GaがInに置き換わった構造も取りうる。
【0172】
また、n=2(InGaZn)の場合は、例えば、図21(B)に示す結晶構造を取りうる。なお、図21(B)に示す結晶構造において、図18(B)で説明したように、Ga及びInは5配位をとるため、GaがInに置き換わった構造も取りうる。
【0173】
また、酸化物半導体層の水素濃度は、5×1019atoms/cm以下であることが好ましく、5×1018atoms/cm以下であることがより好ましい。
【0174】
例えば、In−Ga−Zn−O系の酸化物半導体を用いたトランジスタの場合、例えば、室温(25℃)でのオフ電流(ここでは、単位チャネル幅(1μm)あたりの値)は100zA(1zA(ゼプトアンペア)は1×10−21A)以下、好ましくは10zA以下、より好ましくは1zA以下、さらに好ましくは100yA以下レベルにまで低くすることができる。
【0175】
なお、図12のトランジスタ162では、微細化に起因して素子間に生じるリークを抑制するために、島状に加工された酸化物半導体層144を用いているが、島状に加工されていない構成を採用しても良い。酸化物半導体層を島状に加工しない場合には、加工の際のエッチングによる酸化物半導体層144の汚染を防止できる。
【0176】
図12における容量素子164は、ドレイン電極142b、ゲート絶縁層146、および導電層148b、とで構成される。すなわち、ドレイン電極142bは、容量素子164の一方の電極として機能し、導電層148bは、容量素子164の他方の電極として機能することになる。このような構成とすることにより、十分な容量を確保することができる。また、酸化物半導体層144とゲート絶縁層146とを積層させる場合には、ドレイン電極142bと、導電層148bとの絶縁性を十分に確保することができる。さらに、容量が不要の場合は、容量素子164を設けない構成とすることもできる。
【0177】
本実施の形態では、トランジスタ162および容量素子164が、トランジスタ160と少なくとも一部が重畳するように設けられている。このような平面レイアウトを採用することにより、高集積化を図ることができる。例えば、最小加工寸法をFとして、メモリセルの占める面積を15F〜25Fとすることが可能である。
【0178】
トランジスタ162および容量素子164の上には、絶縁層150が設けられている。そして、ゲート絶縁層146および絶縁層150に形成された開口には、配線154が設けられている。配線154は、メモリセルの一と他のメモリセルとを接続する配線であり、図2の回路図におけるビット線BLに相当する。配線154は、ソース電極142aと、導電層128bとを介して、不純物領域126に接続されている。これにより、トランジスタ160におけるソース領域またはドレイン領域と、トランジスタ162におけるソース電極142aと、をそれぞれ異なる配線に接続する場合と比較して、配線の数を削減することができるため、半導体装置の集積度を向上させることができる。
【0179】
また、導電層128bを設けることにより、不純物領域126とソース電極142aの接続する位置と、ソース電極142aと配線154との接続する位置を、重畳して設けることができる。このような平面レイアウトを採用することにより、コンタクト領域に起因する素子面積の増大を抑制することができる。つまり、半導体装置の集積度を高めることができる。
【0180】
〈SOI基板の作製方法〉
次に、上記半導体装置の作製に用いられるSOI基板の作製方法の一例について、図13を参照して説明する。
【0181】
まず、ベース基板として半導体基板500を準備する(図13(A)参照)。半導体基板500としては、単結晶シリコン基板、単結晶ゲルマニウム基板などの半導体基板を用いることができる。また、半導体基板として、太陽電池級シリコン(SOG−Si:Solar Grade Silicon)基板などを用いても良い。また、多結晶半導体基板を用いても良い。太陽電池級シリコンや、多結晶半導体基板などを用いる場合には、単結晶シリコン基板などを用いる場合と比較して、製造コストを抑制することができる。
【0182】
なお、半導体基板500に変えて、アルミノシリケートガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラスのような電子工業用に使われる各種ガラス基板、石英基板、セラミック基板、サファイア基板が挙げられる。また、窒化シリコンと酸化アルミニウムを主成分とした熱膨張係数がシリコンに近いセラミック基板を用いてもよい。
【0183】
半導体基板500は、その表面をあらかじめ洗浄しておくことが好ましい。具体的には、半導体基板500に対して、塩酸過酸化水素水混合溶液(HPM)、硫酸過酸化水素水混合溶液(SPM)、アンモニア過酸化水素水混合溶液(APM)、希フッ酸(DHF)等を用いて洗浄を行うのが好ましい。
【0184】
次に、ボンド基板を準備する。ここでは、ボンド基板として単結晶半導体基板510を用いる(図13(B)参照)。なお、ここでは、ボンド基板として単結晶のものを用いるが、ボンド基板の結晶性を単結晶に限る必要はない。
【0185】
単結晶半導体基板510としては、例えば、単結晶シリコン基板、単結晶ゲルマニウム基板、単結晶シリコンゲルマニウム基板など、第14族元素でなる単結晶半導体基板を用いることができる。また、ガリウムヒ素やインジウムリン等の化合物半導体基板を用いることもできる。市販のシリコン基板としては、直径5インチ(125mm)、直径6インチ(150mm)、直径8インチ(200mm)、直径12インチ(300mm)、直径16インチ(400mm)サイズの円形のものが代表的である。なお、単結晶半導体基板510の形状は円形に限らず、例えば、矩形等に加工したものであっても良い。また、単結晶半導体基板510は、CZ(チョクラルスキー)法やFZ(フローティングゾーン)法を用いて作製することができる。
【0186】
単結晶半導体基板510の表面には酸化膜512を形成する(図13(C)参照)。なお、汚染物除去の観点から、酸化膜512の形成前に、塩酸過酸化水素水混合溶液(HPM)、硫酸過酸化水素水混合溶液(SPM)、アンモニア過酸化水素水混合溶液(APM)、希フッ酸(DHF)、FPM(フッ酸、過酸化水素水、純水の混合液)等を用いて単結晶半導体基板510の表面を洗浄しておくことが好ましい。希フッ酸とオゾン水を交互に吐出して洗浄してもよい。
【0187】
酸化膜512は、例えば、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜等を単層で、または積層させて形成することができる。上記酸化膜512の作製方法としては、熱酸化法、CVD法、スパッタリング法などがある。また、CVD法を用いて酸化膜512を形成する場合、良好な貼り合わせを実現するためには、テトラエトキシシラン(略称;TEOS:化学式Si(OC)等の有機シランを用いて酸化シリコン膜を形成することが好ましい。
【0188】
本実施の形態では、単結晶半導体基板510に熱酸化処理を行うことにより酸化膜512(ここでは、酸化シリコン膜)を形成する。熱酸化処理は、酸化性雰囲気中にハロゲンを添加して行うことが好ましい。
【0189】
例えば、塩素(Cl)が添加された酸化性雰囲気中で単結晶半導体基板510に熱酸化処理を行うことにより、塩素酸化された酸化膜512を形成することができる。この場合、酸化膜512は、塩素原子を含有する膜となる。このような塩素酸化により、外因性の不純物である重金属(例えば、Fe、Cr、Ni、Mo等)を捕集して金属の塩化物を形成し、これを外方に除去して単結晶半導体基板510の汚染を低減させることができる。
【0190】
なお、酸化膜512に含有させるハロゲン原子は塩素原子に限られない。酸化膜512にはフッ素原子を含有させてもよい。単結晶半導体基板510表面をフッ素酸化する方法としては、HF溶液に浸漬させた後に酸化性雰囲気中で熱酸化処理を行う方法や、NFを酸化性雰囲気に添加して熱酸化処理を行う方法などがある。
【0191】
次に、イオンを電界で加速して単結晶半導体基板510に照射し、添加することで、単結晶半導体基板510の所定の深さに結晶構造が損傷した脆化領域514を形成する(図13(D)参照)。
【0192】
脆化領域514が形成される領域の深さは、イオンの運動エネルギー、イオンの質量と電荷、イオンの入射角などによって調節することができる。また、脆化領域514は、イオンの平均侵入深さとほぼ同じ深さの領域に形成される。このため、イオンを添加する深さで、単結晶半導体基板510から分離される単結晶半導体層の厚さを調節することができる。例えば、単結晶半導体層の厚さが、10nm以上500nm以下、好ましくは50nm以上200nm以下程度となるように平均侵入深さを調節すれば良い。
【0193】
当該イオンの照射処理は、イオンドーピング装置やイオン注入装置を用いて行うことができる。イオンドーピング装置の代表例としては、プロセスガスをプラズマ励起して生成された全てのイオン種を被処理体に照射する非質量分離型の装置がある。当該装置では、プラズマ中のイオン種を質量分離しないで被処理体に照射することになる。これに対して、イオン注入装置は質量分離型の装置である。イオン注入装置では、プラズマ中のイオン種を質量分離し、ある特定の質量のイオン種を被処理体に照射する。
【0194】
本実施の形態では、イオンドーピング装置を用いて、水素を単結晶半導体基板510に添加する例について説明する。ソースガスとしては水素を含むガスを用いる。照射するイオンについては、Hの比率を高くすると良い。具体的には、H、H、Hの総量に対してHの割合が50%以上(より好ましくは80%以上)となるようにする。Hの割合を高めることで、イオン照射の効率を向上させることができる。
【0195】
なお、添加するイオンは水素に限定されない。ヘリウムなどのイオンを添加しても良い。また、添加するイオンは一種類に限定されず、複数種類のイオンを添加しても良い。例えば、イオンドーピング装置を用いて水素とヘリウムとを同時に照射する場合には、異なる工程で照射する場合と比較して工程数を低減することができると共に、後の単結晶半導体層の表面荒れを抑えることが可能である。
【0196】
なお、イオンドーピング装置を用いて脆化領域514を形成する場合には、重金属も同時に添加されるおそれがあるが、ハロゲン原子を含有する酸化膜512を介してイオンの照射を行うことによって、これら重金属による単結晶半導体基板510の汚染を防ぐことができる。
【0197】
次に、半導体基板500と、単結晶半導体基板510とを対向させ、酸化膜512を介して密着させる。これにより、半導体基板500と、単結晶半導体基板510とが貼り合わされる(図13(E)参照)。なお、単結晶半導体基板510と貼り合わせる半導体基板500の表面に酸化膜または窒化膜を成膜してもよい。
【0198】
貼り合わせの際には、半導体基板500または単結晶半導体基板510の一箇所に、0.001N/cm以上100N/cm以下、例えば、1N/cm以上20N/cm以下の圧力を加えることが望ましい。圧力を加えて、貼り合わせ面を接近、密着させると、密着させた部分において半導体基板500と酸化膜512の接合が生じ、当該部分を始点として自発的な接合がほぼ全面におよぶ。この接合には、ファンデルワールス力や水素結合が作用しており、常温で行うことができる。
【0199】
なお、単結晶半導体基板510と半導体基板500とを貼り合わせる前には、貼り合わせに係る表面につき、表面処理を行うことが好ましい。表面処理を行うことで、単結晶半導体基板510と半導体基板500との界面での接合強度を向上させることができる。
【0200】
表面処理としては、ウェット処理、ドライ処理、またはウェット処理とドライ処理の組み合わせ、を用いることができる。また、異なるウェット処理どうしを組み合わせて用いても良いし、異なるドライ処理どうしを組み合わせて用いても良い。
【0201】
なお、貼り合わせの後には、接合強度を増加させるための熱処理を行ってもよい。この熱処理の温度は、脆化領域514における分離が生じない温度(例えば、室温以上400℃未満)とする。また、この温度範囲で加熱しながら、半導体基板500と酸化膜512とを接合させてもよい。上記熱処理には、拡散炉、抵抗加熱炉などの加熱炉、RTA(瞬間熱アニール、Rapid Thermal Anneal)装置、マイクロ波加熱装置などを用いることができる。なお、上記温度条件はあくまで一例に過ぎず、開示する発明の一態様がこれに限定して解釈されるものではない。
【0202】
次に、熱処理を行うことにより、単結晶半導体基板510を脆化領域において分離して、半導体基板500上に、酸化膜512を介して単結晶半導体層516を形成する(図13(F)参照)。
【0203】
なお、上記分離の際の熱処理温度は、できる限り低いものであることが望ましい。分離の際の温度が低いほど、単結晶半導体層516の表面荒れを抑制できるためである。具体的には、例えば、上記分離の際の熱処理温度は、300℃以上600℃以下とすればよく、400℃以上500℃以下とすると、より効果的である。
【0204】
なお、単結晶半導体基板510を分離した後には、単結晶半導体層516に対して、500℃以上の温度で熱処理を行い、単結晶半導体層516中に残存する水素の濃度を低減させてもよい。
【0205】
次に、単結晶半導体層516の表面にレーザー光を照射することによって、表面の平坦性を向上させ、かつ欠陥を低減させた単結晶半導体層518を形成する(図13(G)参照)。なお、レーザー光の照射処理に代えて、熱処理を行っても良い。
【0206】
なお、本実施の形態においては、単結晶半導体層516の分離に係る熱処理の直後に、レーザー光の照射処理を行っているが、本発明の一態様はこれに限定して解釈されない。単結晶半導体層516の分離に係る熱処理の後にエッチング処理を施して、単結晶半導体層516表面の欠陥が多い領域を除去してから、レーザー光の照射処理を行っても良いし、単結晶半導体層516表面の平坦性を向上させてからレーザー光の照射処理を行ってもよい。なお、上記エッチング処理としては、ウェットエッチング、ドライエッチングのいずれを用いてもよい。また、本実施の形態においては、上述のようにレーザー光を照射した後、単結晶半導体層516の膜厚を小さくする薄膜化工程を行ってもよい。単結晶半導体層516の薄膜化には、ドライエッチングまたはウェットエッチングの一方、または双方を用いればよい。
【0207】
以上の工程により、良好な特性の単結晶半導体層518を有するSOI基板を得ることができる(図13(G)参照)。
【0208】
〈半導体装置の作製方法〉
次に、上記のSOI基板を用いた半導体装置の作製方法について、図14乃至図17を参照して説明する。
【0209】
〈下部のトランジスタの作製方法〉
はじめに下部のトランジスタ160の作製方法について、図14および図15を参照して説明する。なお、図14および図15は、図13に示す方法で作成したSOI基板の一部であって、図12(A)に示す下部のトランジスタに相当する断面工程図である。
【0210】
まず、単結晶半導体層518を島状に加工して、半導体層120を形成する(図14(A)参照)。なお、この工程の前後において、トランジスタのしきい値電圧を制御するために、n型の導電性を付与する不純物元素や、p型の導電性を付与する不純物元素を半導体層に添加してもよい。半導体がシリコンの場合、n型の導電性を付与する不純物元素としては、例えば、リンや砒素などを用いることができる。また、p型の導電性を付与する不純物元素としては、例えば、硼素、アルミニウム、ガリウムなどを用いることができる。
【0211】
次に、半導体層120を覆うように絶縁層122を形成する(図14(B)参照)。絶縁層122は、後にゲート絶縁層となるものである。絶縁層122は、例えば、半導体層120表面の熱処理(熱酸化処理や熱窒化処理など)によって形成することができる。熱処理に代えて、高密度プラズマ処理を適用しても良い。高密度プラズマ処理は、例えば、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)などの希ガス、酸素、酸化窒素、アンモニア、窒素、水素などのうちいずれかの混合ガスを用いて行うことができる。もちろん、CVD法やスパッタリング法等を用いて絶縁層を形成しても良い。当該絶縁層122は、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化シリコン、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化イットリウム、ハフニウムシリケート(HfSi(x>0、y>0))、窒素が添加されたハフニウムシリケート(HfSi(x>0、y>0))、窒素が添加されたハフニウムアルミネート(HfAl(x>0、y>0))等を含む単層構造または積層構造とすることが望ましい。また、絶縁層122の厚さは、例えば、1nm以上100nm以下、好ましくは10nm以上50nm以下とすることができる。ここでは、プラズマCVD法を用いて、酸化シリコンを含む絶縁層を単層で形成することとする。
【0212】
次に、絶縁層122上にマスク124を形成し、一導電性を付与する不純物元素を半導体層120に添加して、不純物領域126を形成する(図14(C)参照)。なお、ここでは、不純物元素を添加した後、マスク124は除去する。
【0213】
次に、絶縁層122上にマスクを形成し、絶縁層122が不純物領域126と重畳する領域の一部を除去することにより、ゲート絶縁層122aを形成する(図14(D)参照)。絶縁層122の除去方法として、ウェットエッチングまたはドライエッチングなどのエッチング処理を用いることができる。
【0214】
次に、ゲート絶縁層122a上にゲート電極(これと同じ層で形成される配線を含む)を形成するための導電層を形成し、当該導電層を加工して、ゲート電極128aおよび導電層128bを形成する(図14(E)参照)。
【0215】
ゲート電極128aおよび導電層128bに用いる導電層としては、アルミニウムや銅、チタン、タンタル、タングステン等の金属材料を用いて形成することができる。また、多結晶シリコンなどの半導体材料を用いて、導電材料を含む層を形成しても良い。形成方法も特に限定されず、蒸着法、CVD法、スパッタリング法、スピンコート法などの各種成膜方法を用いることができる。また、導電層の加工は、レジストマスクを用いたエッチングによって行うことができる。
【0216】
次に、ゲート電極128aおよび導電層128bをマスクとして、一導電型を付与する不純物元素を半導体層に添加して、チャネル形成領域134、不純物領域132、および不純物領域130を形成する(図15(A)参照)。ここでは、p型トランジスタを形成するために、硼素(B)やアルミニウム(Al)などの不純物元素を添加する。ここで、添加される不純物元素の濃度は適宜設定することができる。また、不純物元素を添加した後には、活性化のための熱処理を行う。ここで、不純物領域の濃度は、不純物領域126、不純物領域132、不純物領域130の順に高くなる。
【0217】
次に、ゲート絶縁層122a、ゲート電極128a、導電層128bを覆うように、絶縁層136、絶縁層138および絶縁層140を形成する(図15(B)参照)。
【0218】
絶縁層136、絶縁層138、絶縁層140は、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム等の無機絶縁材料を含む材料を用いて形成することができる。特に、絶縁層136、絶縁層138、絶縁層140に誘電率の低い(low−k)材料を用いることで、各種電極や配線の重なりに起因する容量を十分に低減することが可能になるため好ましい。なお、絶縁層136、絶縁層138、絶縁層140には、これらの材料を用いた多孔性の絶縁層を適用しても良い。多孔性の絶縁層では、密度の高い絶縁層と比較して誘電率が低下するため、電極や配線に起因する容量をさらに低減することが可能である。また、絶縁層136や絶縁層138、絶縁層140は、ポリイミド、アクリル等の有機絶縁材料を用いて形成することも可能である。本実施の形態では、絶縁層136として酸化窒化シリコン、絶縁層138として窒化酸化シリコン、絶縁層140として酸化シリコンを用いる場合について説明する。なお、ここでは、絶縁層136、絶縁層138および絶縁層140の積層構造としているが、開示する発明の一態様はこれに限定されない。1層または2層としても良いし、4層以上の積層構造としても良い。
【0219】
次に、絶縁層138および絶縁層140にCMP(化学的機械研磨)処理やエッチング処理を行うことにより、絶縁層138および絶縁層140を平坦化する(図15(C)参照)。ここでは、絶縁層138が一部露出されるまで、CMP処理を行う。絶縁層138に窒化酸化シリコンを用い、絶縁層140に酸化シリコンを用いた場合、絶縁層138はエッチングストッパとして機能する。
【0220】
次に、絶縁層138および絶縁層140にCMP処理やエッチング処理を行うことにより、ゲート電極128aおよび導電層128bの上面を露出させる(図15(D)参照)。ここでは、ゲート電極128aおよび導電層128bが一部露出されるまで、エッチング処理を行う。当該エッチング処理は、ドライエッチングを用いることが好適であるが、ウェットエッチングを用いてもよい。ゲート電極128aおよび導電層128bの一部を露出させる工程において、後に形成されるトランジスタ162の特性を向上させるために、絶縁層136、絶縁層138、絶縁層140の表面は可能な限り平坦にしておくことが好ましい。
【0221】
以上の工程により、下部のトランジスタ160を形成することができる(図15(D)参照)。
【0222】
なお、上記の各工程の前後には、さらに電極や配線、半導体層、絶縁層などを形成する工程を含んでいても良い。例えば、配線の構造として、絶縁層および導電層の積層構造でなる多層配線構造を採用して、高度に集積化した半導体装置を実現することも可能である。
【0223】
〈上部のトランジスタの作製方法〉
次に、上部のトランジスタ162の作製方法について、図16および図17を参照して説明する。
【0224】
ここで、全ての膜において、トランジスタの特性に悪影響を与える水素または水などの不純物が含まれないよう成膜すると好ましい。例えば、半導体基板500などの表面に付着している不純物も膜に取り込まれてしまう。そのため、各層の成膜前に減圧雰囲気または酸化性雰囲気にて熱処理を行い、半導体基板500などの表面に付着している不純物を除去しておくことが好ましい。また、成膜室に起因する不純物も問題となるため、あらかじめ除去しておくと好ましい。具体的には、あらかじめ成膜室をベーキングしておき成膜室内部から脱ガスさせておくことが好ましい。また、各層の成膜前には、5分間×100枚程度のダミー成膜を行っておくと好ましい。ここで、ダミー成膜とは、ダミー基板に対してスパッタリングなどによる成膜を行うことで、ダミー基板及び成膜室内壁に膜を堆積させ、成膜室内の不純物及び成膜室内壁の吸着物を膜中に閉じこめることをいう。ダミー基板は、放出ガスの少ない材料が好ましく、例えば半導体基板500と同様の材料を用いてもよい。ダミー成膜を行うことで、後に成膜される膜中の不純物濃度を低減することができる。
【0225】
また成膜に用いるガスの純度も膜中の不純物濃度に影響するため、なるべく純度の高いガスを用いることが好ましい。スパッタリング法を用いる場合、例えば、純度が9Nであるアルゴンガス(露点−121℃、水0.1ppb、水素0.5ppb)および純度が8Nの酸素(露点−112℃、水1ppb、水素1ppb)のガスを用いればよい。
【0226】
まず、ゲート電極128a、導電層128b、絶縁層136、絶縁層138、絶縁層140などの上に酸化物半導体層を形成し、当該酸化物半導体層を加工して、酸化物半導体層144を形成する(図16(A)参照)。なお、酸化物半導体層を形成する前に、絶縁層136、絶縁層138、絶縁層140の上に、下地として機能する絶縁層を設けても良い。当該絶縁層は、スパッタリング法をはじめとするPVD法やプラズマCVD法などのCVD法などを用いて形成することができる。
【0227】
酸化物半導体層はスパッタリング法、蒸着法、PCVD法、PLD法、ALD法またはMBE法などによって成膜することができる。酸化物半導体層144は、好ましくはスパッタリング法により、基板加熱温度を100℃以上600℃以下、好ましくは150℃以上550℃以下、さらに好ましくは200℃以上500℃以下とし、酸素ガス雰囲気で成膜する。酸化物半導体層144の厚さは、1nm以上40nm以下、好ましくは3nm以上20nm以下とする。成膜時の基板加熱温度が高いほど、得られる酸化物半導体層144の不純物濃度は低くなる。また、酸化物半導体層144中の原子配列が整い、高密度化され、多結晶膜またはCAAC−OS膜が形成されやすくなる。さらに、酸素ガス雰囲気で成膜することでも、希ガスなどの余分な原子が含まれないため、多結晶膜またはCAAC−OS膜が形成されやすくなる。ただし、酸素ガスと希ガスの混合雰囲気としてもよく、その場合は酸素ガスの割合は30体積%以上、好ましくは50体積%以上、さらに好ましくは80体積%以上とする。なお、酸化物半導体層144は薄いほど、トランジスタの短チャネル効果が低減される。ただし、薄くしすぎると界面散乱の影響が強くなり、電界効果移動度の低下が起こることがある。
【0228】
酸化物半導体層144としてIn−Ga−Zn−O系酸化物をスパッタリング法で成膜する場合、好ましくは、原子数比がIn:Ga:Zn=1:1:1、4:2:3、3:1:2、1:1:2、2:1:3、または3:1:4で示されるIn−Ga−Zn−Oターゲットを用いる。前述の原子数比を有するIn−Ga−Zn−Oターゲットを用いて酸化物半導体層144を成膜することで、多結晶膜またはCAAC−OS膜が形成されやすくなる。
【0229】
また、酸化物半導体層144としてIn−Sn−Zn−O系酸化物をスパッタリング法で成膜する場合、好ましくは、原子数比がIn:Sn:Zn=1:1:1、2:1:3、1:2:2、または20:45:35で示されるIn−Sn−Zn−Oターゲットを用いる。前述の原子数比を有するIn−Sn−Zn−Oターゲットを用いて酸化物半導体層144を成膜することで、多結晶膜またはCAAC−OS膜が形成されやすくなる。
【0230】
次に、加熱処理を行う。加熱処理は、減圧雰囲気、不活性雰囲気または酸化性雰囲気で行う。加熱処理により、酸化物半導体層144中の不純物濃度を低減することができる。
【0231】
加熱処理は、減圧雰囲気または不活性雰囲気で加熱処理を行った後、温度を保持しつつ酸化性雰囲気に切り替えてさらに加熱処理を行うと好ましい。これは、減圧雰囲気または不活性雰囲気にて加熱処理を行うと、酸化物半導体層144中の不純物濃度を低減することができるが、同時に酸素欠損も生じてしまうためであり、このとき生じた酸素欠損を、酸化性雰囲気での加熱処理により低減することができる。
【0232】
酸化物半導体層144は、成膜時の基板加熱に加え、加熱処理を行うことで、膜中の不純物準位を極めて小さくすることが可能となる。その結果、トランジスタの電界効果移動度を後述する理想的な電界効果移動度近くまで高めることが可能となる。
【0233】
次に、基板に熱処理を行ってもよい。熱処理を行うことによって、より非晶質領域に対して結晶領域の割合の多い酸化物半導体層とすることができる。熱処理は、例えば200℃以上基板の歪み点未満で行えばよい。好ましくは、250℃以上450℃以下とする。雰囲気は限定されないが、酸化性雰囲気、不活性雰囲気または減圧雰囲気(10Pa以下)で行う。処理時間は3分〜24時間とする。処理時間を長くするほど非晶質領域に対して結晶領域の割合の多い酸化物半導体層を形成することができるが、24時間を超える熱処理は生産性の低下を招くため好ましくない。
【0234】
酸化性雰囲気とは酸化性ガスを含む雰囲気である。酸化性ガスとは、酸素、オゾンまたは亜酸化窒素などであって、水、水素などが含まれないことが好ましい。例えば、熱処理装置に導入する酸素、オゾン、亜酸化窒素の純度を、8N(99.999999%)以上、好ましくは9N(99.9999999%)以上とする。酸化性雰囲気は、酸化性ガスを不活性ガスと混合して用いてもよい。その場合、酸化性ガスが少なくとも10ppm以上含まれるものとする。
【0235】
ここで、不活性雰囲気とは、窒素、希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン)などの不活性ガスを主成分とする雰囲気である。具体的には、酸化性ガスなどの反応性ガスが10ppm未満とする。
【0236】
熱処理はRTA(Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。RTAを用いることで、短時間に限り、基板の歪み点以上の温度で熱処理を行うことができる。そのため、非晶質領域に対して結晶領域の割合の多い酸化物半導体層を形成するための時間を短縮することができる。
【0237】
In−Ga−Zn−O系酸化物のターゲットとしては、例えば、In:Ga:Zn=2:2:1[原子数比]のターゲットを用いることができる。なお、ターゲットの材料および組成を上述に限定する必要はない。例えば、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]のターゲットを用いることもできる。
【0238】
なお、非晶質であるIn−Sn−Zn−O系酸化物を活性層に用いたトランジスタの電気的特性が報告されており、電界効果移動度30cm/Vsが得られている(Eri Fukumoto, Toshiaki Arai, Narihiro Morosawa, Kazuhiko Tokunaga, Yasuhiro Terai, Takashige Fujimori and Tatsuya Sasaoka、 「High Mobility−Oxide Semiconductor TFT for Circuit Integration−Of AM−OLED」、 IDW’10 p631−p634)。
【0239】
また、酸化物半導体層は、化学式InMO(ZnO)(m>0)で表記される材料を用いた薄膜とすることができる。ここで、Mは、Ga、Al、MnおよびCoから選ばれた一または複数の金属元素を示す。例えば、Mとして、Ga、GaおよびAl、GaおよびMn、またはGaおよびCoなどを用いることができる。
【0240】
次に、酸化物半導体層144などの上に、ソース電極およびドレイン電極(これと同じ層で形成される配線を含む)を形成するための導電層を形成し、当該導電層を加工して、ソース電極142a、ドレイン電極142bを形成する(図16(B)参照)。
【0241】
導電層は、PVD法や、CVD法を用いて形成することができる。また、導電層の材料としては、アルミニウム、クロム、銅、タンタル、チタン、モリブデン、タングステンから選ばれた元素や、上述した元素を成分とする合金等を用いることができる。マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、ネオジム、スカンジウムのいずれか、またはこれらを複数組み合わせた材料を用いてもよい。
【0242】
導電層は、単層構造であっても良いし、2層以上の積層構造としてもよい。例えば、チタン膜や窒化チタン膜の単層構造、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜が積層された2層構造、窒化チタン膜上にチタン膜が積層された2層構造、チタン膜とアルミニウム膜とチタン膜とが積層された3層構造などが挙げられる。なお、導電層を、チタン膜や窒化チタン膜の単層構造とする場合には、テーパー形状を有するソース電極142aおよびドレイン電極142bへの加工が容易であるというメリットがある。
【0243】
また、導電層は、導電性の金属酸化物を用いて形成しても良い。導電性の金属酸化物としては酸化インジウム(In)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウムスズ(In―SnO、ITOと略記する場合がある)、酸化インジウム亜鉛(In―ZnO)、または、これらの金属酸化物材料にシリコン若しくは酸化シリコンを含有させたものを用いることができる。
【0244】
導電層のエッチングは、形成されるソース電極142aおよびドレイン電極142bの端部が、テーパー形状となるように行うことが好ましい。ここで、テーパー角は、例えば、30°以上60°以下であることが好ましい。ソース電極142a、ドレイン電極142bの端部をテーパー形状となるようにエッチングすることにより、後に形成されるゲート絶縁層146の被覆性を向上し、段切れを防止することができる。
【0245】
上部のトランジスタのチャネル長(L)は、ソース電極142a、およびドレイン電極142bの下端部の間隔によって決定される。なお、チャネル長(L)が25nm未満のトランジスタを形成する場合に用いるマスク形成の露光を行う際には、数nm〜数10nmと波長の短い超紫外線(Extreme Ultraviolet)を用いるのが望ましい。超紫外線による露光は、解像度が高く焦点深度も大きい。従って、後に形成されるトランジスタのチャネル長(L)を、10nm以上1000nm(1μm)以下とすることも可能であり、回路の動作速度を高めることが可能である。また、微細化によって、半導体装置の消費電力を低減することも可能である。
【0246】
次に、ソース電極142a、ドレイン電極142bを覆い、かつ、酸化物半導体層144の一部と接するように、ゲート絶縁層146を形成する(図16(C)参照)。
【0247】
ゲート絶縁層146は、CVD法やスパッタリング法等を用いて形成することができる。また、ゲート絶縁層146は、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化ハフニウム、酸化イットリウム、ハフニウムシリケート(HfSi(x>0、y>0))、窒素が添加されたハフニウムシリケート(HfSi(x>0、y>0))、窒素が添加されたハフニウムアルミネート(HfAl(x>0、y>0))、などを含むように形成するのが好適である。ゲート絶縁層146は、単層構造としても良いし、上記の材料を組み合わせて積層構造としても良い。また、その厚さは特に限定されないが、半導体装置を微細化する場合には、トランジスタの動作を確保するために薄くするのが望ましい。例えば、酸化シリコンを用いる場合には、1nm以上100nm以下、好ましくは10nm以上50nm以下とすることができる。
【0248】
上述のように、ゲート絶縁層を薄くすると、トンネル効果などに起因するゲートリークが問題となる。ゲートリークの問題を解消するには、ゲート絶縁層146に、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化イットリウム、ハフニウムシリケート(HfSi(x>0、y>0))、窒素が添加されたハフニウムシリケート(HfSi(x>0、y>0))、窒素が添加されたハフニウムアルミネート(HfAl(x>0、y>0))、などの高誘電率(high−k)材料を用いると良い。high−k材料をゲート絶縁層146に用いることで、電気的特性を確保しつつ、ゲートリークを抑制するために膜厚を大きくすることが可能になる。なお、high−k材料を含む膜と、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウムなどのいずれかを含む膜との積層構造としてもよい。
【0249】
次に、ゲート電極(これと同じ層で形成される配線を含む)を形成するための導電層を形成し、当該導電層を加工して、ゲート電極148aおよび導電層148bを形成する(図16(D)参照)。
【0250】
ゲート電極148aおよび導電層148bは、モリブデン、チタン、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジウム等の金属材料またはこれらを主成分とする合金材料を用いて形成することができる。なお、ゲート電極148aおよび導電層148bは、単層構造としても良いし、積層構造としても良い。
【0251】
次に、ゲート絶縁層146、ゲート電極148a、および導電層148b上に、絶縁層150を形成する(図17(A)参照)。絶縁層150は、PVD法やCVD法などを用いて形成することができる。また、酸化シリコン、酸窒化シリコン、窒化シリコン、酸化ハフニウム、酸化ガリウム、酸化アルミニウム等の無機絶縁材料を含む材料を用いて形成することができる。なお、絶縁層150には、誘電率の低い材料や、誘電率の低い構造(多孔性の構造など)を用いることが望ましい。絶縁層150の誘電率を低くすることにより、配線や電極などの間に生じる容量を低減し、動作の高速化を図ることができるためである。なお、本実施の形態では、絶縁層150の単層構造としているが、開示する発明の一態様はこれに限定されず、2層以上の積層構造としても良い。
【0252】
次に、ゲート絶縁層146、絶縁層150に、ソース電極142aにまで達する開口を形成する。その後、絶縁層150上にソース電極142aと接する配線154を形成する(図17(B)参照)。なお、当該開口の形成は、マスクなどを用いた選択的なエッチングにより行われる。
【0253】
配線154は、PVD法や、CVD法を用いて導電層を形成した後、当該導電層をパターニングすることによって形成される。また、導電層の材料としては、アルミニウム、クロム、銅、タンタル、チタン、モリブデン、タングステンから選ばれた元素や、上述した元素を成分とする合金等を用いることができる。マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、ネオジム、スカンジウムのいずれか、またはこれらを複数組み合わせた材料を用いてもよい。
【0254】
より具体的には、例えば、絶縁層150の開口を含む領域にPVD法によりチタン膜を薄く(5nm程度)形成した後に、開口に埋め込むようにアルミニウム膜を形成する方法を適用することができる。ここで、PVD法により形成されるチタン膜は、被形成面の酸化膜(自然酸化膜など)を還元し、下部電極など(ここではソース電極142a)との接触抵抗を低減させる機能を有する。また、アルミニウム膜のヒロックを防止することができる。また、チタンや窒化チタンなどによるバリア膜を形成した後に、メッキ法により銅膜を形成してもよい。
【0255】
絶縁層150に形成する開口は、導電層128bと重畳する領域に形成することが望ましい。このような領域に開口を形成することで、コンタクト領域に起因する素子面積の増大を抑制することができる。
【0256】
ここで、導電層128bを用いずに、不純物領域126とソース電極142aとの接続と、ソース電極142aと配線154との接続とを重畳させる場合について説明する。この場合、不純物領域126上に形成された絶縁層136、絶縁層138および絶縁層140に開口(下部のコンタクトと呼ぶ)を形成し、下部のコンタクトにソース電極142aを形成した後、ゲート絶縁層146および絶縁層150において、下部のコンタクトと重畳する領域に開口(上部のコンタクトと呼ぶ)を形成し、配線154を形成することになる。下部のコンタクトと重畳する領域に上部のコンタクトを形成する際に、エッチングにより下部のコンタクトに形成されたソース電極142aが断線してしまうおそれがある。これを避けるために、下部のコンタクトと上部のコンタクトが重畳しないように形成することにより、素子面積が増大するという問題がおこる。
【0257】
本実施の形態に示すように、導電層128bを用いることにより、ソース電極142aを断線させることなく、上部のコンタクトの形成が可能となる。これにより、下部のコンタクトと上部のコンタクトを重畳させて設けることができるため、コンタクト領域に起因する素子面積の増大を抑制することができる。つまり、半導体装置の集積度を高めることができる。
【0258】
次に、配線154を覆うように絶縁層156を形成する(図17(C)参照)。
【0259】
以上により、酸化物半導体層144を用いたトランジスタ162、および容量素子164が完成する(図17(C)参照)。
【0260】
上記の酸化物半導体層144を用いることで、オフ電流が十分に低く、かつ信頼性の高いトランジスタを得ることができる。そして、このようなトランジスタを用いることで、極めて長期にわたり記憶内容を保持することが可能な半導体装置が得られる。
【0261】
また、本実施の形態において示す半導体装置では、配線を共通化することも可能であり、集積度が高められた半導体装置を実現することができる。
【0262】
図12に示すトランジスタでは、上述の酸化物半導体層を用いているため、電界効果移動度が高く、かつ信頼性の高いトランジスタを得ることができる。
【0263】
ここで、本発明の一態様に用いられる、酸化物半導体を用いたトランジスタの電界効果移動度を計算した結果について説明する。
【0264】
酸化物半導体に限らず、実際に測定される絶縁ゲート型トランジスタの電界効果移動度は、さまざまな理由によって本来の電界効果移動度よりも低くなる。電界効果移動度を低下させる要因としては半導体内部の欠陥や半導体と絶縁膜との界面の欠陥があるが、Levinsonモデルを用いると、半導体内部に欠陥がないと仮定した場合の電界効果移動度を理論的に導き出せる。
【0265】
半導体本来の電界効果移動度をμ、測定される電界効果移動度をμとし、半導体中に何らかのポテンシャル障壁(粒界等)が存在すると仮定すると、下記の数式(2)と表現できる。
【0266】
【数2】

【0267】
ここで、Eはポテンシャル障壁の高さであり、kがボルツマン定数、Tは絶対温度である。また、ポテンシャル障壁が欠陥に由来すると仮定すると、Levinsonモデルでは、下記の数式(3)と表される。
【0268】
【数3】

【0269】
ここで、eは電気素量、Nはチャネル内の単位面積当たりの平均欠陥密度、εは半導体の誘電率、nは単位面積当たりのチャネルに含まれるキャリア数、Coxは単位面積当たりの容量、Vはゲート電圧、tはチャネルの厚さである。なお、厚さ30nm以下の半導体層であれば、チャネルの厚さは半導体層の厚さと同一として差し支えない。線形領域におけるドレイン電流Iは、下記の数式(4)で表される。
【0270】
【数4】

【0271】
ここで、Lはチャネル長、Wはチャネル幅であり、ここでは、L=W=10μmである。また、Vはドレイン電圧である。上式の両辺をVgで割り、更に両辺の対数を取ると、下記の数式(5)となる。
【0272】
【数5】

【0273】
数式(5)の右辺はVの関数である。この式からわかるように、縦軸をln(Id/Vg)、横軸を1/Vgとして実測値をプロットして得られるグラフの直線の傾きから欠陥密度Nが求められる。すなわち、トランジスタのI−V特性から、欠陥密度を評価できる。酸化物半導体としては、インジウム(In)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)の比率が、In:Sn:Zn=1:1:1[原子数比]のものでは欠陥密度Nは1×1012/cm程度である。
【0274】
このようにして求めた欠陥密度等をもとに数4および数5よりμ=120cm/Vsが導出される。欠陥のあるIn−Sn−Zn酸化物半導体膜を用いたトランジスタで測定される電界効果移動度は30cm/Vs程度である。しかし、半導体内部および半導体とゲート絶縁膜との界面の欠陥が無い酸化物半導体膜を用いたトランジスタの電界効果移動度μは120cm/Vsとなると予想できる。
【0275】
ただし、半導体内部に欠陥がなくても、半導体とゲート絶縁膜との界面での散乱によってトランジスタの輸送特性は影響を受ける。すなわち、ゲート絶縁膜界面からxだけ離れた場所における電界効果移動度μは、下記の数式(6)で表される。
【0276】
【数6】

【0277】
ここで、Dはゲート方向の電界、B、lは定数である。Bおよびlは、実際の測定結果より求めることができ、上記の測定結果からは、B=4.75×10cm/s、l=10nm(界面散乱が及ぶ深さ)である。Dが増加する(すなわち、ゲート電圧が高くなる)と数式(6)の第2項が増加するため、電界効果移動度μは低下することがわかる。
【0278】
半導体内部の欠陥が無い理想的な酸化物半導体をチャネルに用いたトランジスタの電界効果移動度μを計算した結果を図22に示す。なお、計算にはシノプシス社製デバイスシミュレーションソフト、Sentaurus Deviceを使用し、酸化物半導体のバンドギャップを2.8eV、電子親和力を4.7eV、比誘電率を15、厚さを15nmとした。さらに、ゲート、ソース、ドレインの仕事関数をそれぞれ、5.5eV、4.6eV、4.6eVとした。また、ゲート絶縁膜の厚さは100nm、比誘電率は4.1とした。チャネル長およびチャネル幅はともに10μm、ドレイン電圧Vは0.1Vである。
【0279】
図22で示されるように、ゲート電圧1V強で電界効果移動度100cm/Vs以上のピークをつけるが、ゲート電圧がさらに高くなると、界面散乱の影響が大きくなり、電界効果移動度が低下する。なお、界面散乱の影響を低減するためには、半導体層表面を原子レベルで平坦にすること(Atomic Layer Flatness)が望ましい。
【0280】
このような電界効果移動度を有する微細なトランジスタを作製した場合の特性を計算した結果を図23乃至図25に示す。なお、計算に用いたトランジスタの断面構造を図26に示す。図26に示すトランジスタは酸化物半導体層にnの導電型を呈する半導体領域2103aおよび半導体領域2103cを有する。半導体領域2103aおよび半導体領域2103cの抵抗率は2×10−3Ωcmとする。
【0281】
図26(A)に示すトランジスタは、下地絶縁膜2101と、下地絶縁膜2101に埋め込まれるように形成された酸化アルミニウムよりなる埋め込み絶縁膜2102の上に形成される。トランジスタは半導体領域2103a、半導体領域2103cと、それらに挟まれ、チャネル形成領域となる真性である半導体領域2103bと、ゲート2105を有する。ゲート2105の幅を33nmとする。
【0282】
ゲート2105と半導体領域2103bの間には、ゲート絶縁膜2104を有し、また、ゲート2105の両側面には側壁絶縁膜2106aおよび側壁絶縁膜2106b、ゲート2105の上部には、ゲート2105と他の配線との短絡を防止するための絶縁膜2107を有する。側壁絶縁膜の幅は5nmとする。また、半導体領域2103aおよび半導体領域2103cに接して、ソース2108aおよびドレイン2108bを有する。なお、このトランジスタにおけるチャネル幅を40nmとする。
【0283】
図26(B)に示すトランジスタは、下地絶縁膜2101と、酸化アルミニウムよりなる埋め込み絶縁膜2102の上に形成され、半導体領域2103a、半導体領域2103cと、それらに挟まれた真性の半導体領域2103bと、幅33nmのゲート2105とゲート絶縁膜2104と側壁絶縁膜2106aおよび側壁絶縁膜2106bと絶縁膜2107とソース2108aおよびドレイン2108bを有する点で図26(A)に示すトランジスタと同じである。
【0284】
図26(A)に示すトランジスタと図26(B)に示すトランジスタの相違点は、側壁絶縁膜2106aおよび側壁絶縁膜2106bの下の半導体領域の導電型である。図26(A)に示すトランジスタでは、側壁絶縁膜2106aおよび側壁絶縁膜2106bの下の半導体領域はnの導電型を呈する半導体領域2103aおよび半導体領域2103cであるが、図26(B)に示すトランジスタでは、真性の半導体領域2103bである。すなわち、半導体領域2103bとゲート2105がLoffだけ重ならない領域ができている。この領域をオフセット領域といい、その幅Loffをオフセット長という。図から明らかなように、オフセット長は、側壁絶縁膜2106a(側壁絶縁膜2106b)の幅と同じである。
【0285】
その他の計算に使用するパラメータは上述の通りである。計算にはシノプシス社製デバイスシミュレーションソフト、Sentaurus Deviceを使用した。図23は、図26(A)に示される構造のトランジスタのドレイン電流(Id、実線)および電界効果移動度(μ、点線)のゲート電圧(Vg、ゲートとソースの電位差)依存性を示す。ドレイン電流Idは、ドレイン電圧(ドレインとソースの電位差)を+1Vとし、電界効果移動度μはドレイン電圧を+0.1Vとして計算したものである。
【0286】
図23(A)はゲート絶縁膜の厚さを15nmとしたものであり、図23(B)は10nmとしたものであり、図23(C)は5nmとしたものである。ゲート絶縁膜が薄くなるほど、特にオフ状態でのドレイン電流Id(オフ電流)が顕著に低下する。一方、電界効果移動度μのピーク値やオン状態でのドレイン電流Id(オン電流)には目立った変化が無い。ゲート電圧1V前後で、ドレイン電流はメモリ素子等で必要とされる10μAを超えることが示された。
【0287】
図24は、図26(B)に示される構造のトランジスタで、オフセット長Loffを5nmとしたもののドレイン電流Id(実線)および電界効果移動度μ(点線)のゲート電圧Vg依存性を示す。ドレイン電流Idは、ドレイン電圧を+1Vとし、電界効果移動度μはドレイン電圧を+0.1Vとして計算したものである。図24(A)はゲート絶縁膜の厚さを15nmとしたものであり、図24(B)は10nmとしたものであり、図24(C)は5nmとしたものである。
【0288】
また、図25は、図26(B)に示される構造のトランジスタで、オフセット長Loffを15nmとしたもののドレイン電流Id(実線)および電界効果移動度μ(点線)のゲート電圧依存性を示す。ドレイン電流Idは、ドレイン電圧を+1Vとし、電界効果移動度μはドレイン電圧を+0.1Vとして計算したものである。図25(A)はゲート絶縁膜の厚さを15nmとしたものであり、図25(B)は10nmとしたものであり、図25(C)は5nmとしたものである。
【0289】
いずれもゲート絶縁膜が薄くなるほど、オフ電流が顕著に低下する一方、電界効果移動度μのピーク値やオン電流には目立った変化が無い。
【0290】
なお、電界効果移動度μのピークは、図23では80cm/Vs程度であるが、図24では60cm/Vs程度、図25では40cm/Vsと、オフセット長Loffが増加するほど低下する。また、オフ電流も同様な傾向がある。一方、オン電流にはオフセット長Loffの増加にともなって減少するが、オフ電流の低下に比べるとはるかに緩やかである。また、いずれもゲート電圧1V前後で、ドレイン電流はメモリ素子等で必要とされる10μAを超えることが示された。
【0291】
次に、本発明の一態様に用いられる、酸化物半導体を用いたトランジスタの電界効果移動度を測定した結果について説明する。
【0292】
In、SnおよびZnを含む酸化物半導体層をチャネル形成領域として有するトランジスタは、該酸化物半導体層を成膜する際に基板を加熱して成膜すること、または酸化物半導体層を形成した後に熱処理を行うことで良好な特性を得ることができる。
【0293】
In、SnおよびZnを含む酸化物半導体層の形成後に基板を意図的に加熱することで、トランジスタの電界効果移動度を向上させることが可能となる。
【0294】
例えば、図27(A)および(B)は、図26のトランジスタにおいて、酸化物半導体層がIn、SnおよびZnを含む酸化物半導体膜を用いたトランジスタの特性である。なお、測定に用いたトランジスタは、チャネル長Lが3μm、チャネル幅Wが10μmであり、厚さ100nmのゲート絶縁膜を用いている。なお、Vは10Vとした。
【0295】
図27(A)は基板を200℃に加熱してIn、SnおよびZnを含む酸化物半導体層を形成したときのトランジスタ特性を示すが、電界効果移動度は32.2cm/Vsecが得られている。
【0296】
電界効果移動度は、In、SnおよびZnを含む酸化物半導体層を形成した後に熱処理をすることによって、さらに高めることができる。図27(B)は、In、SnおよびZnを含む酸化物半導体層を200℃でスパッタリング法により形成した後、650℃で熱処理をしたときのトランジスタ特性を示す。このとき電界効果移動度は34.5cm/Vsecが得られている。
【0297】
基板を意図的に加熱することでスパッタリング成膜中の水分が酸化物半導体層中に取り込まれるのを低減する効果が期待できる。また、成膜後に熱処理をすることによっても、酸化物半導体層から水素や水酸基若しくは水分などを放出させ除去することができ、上記のように電界効果移動度を向上させることができる。このような電界効果移動度の向上は、脱水化・脱水素化による不純物の除去のみならず、高密度化により原子間距離が短くなるためとも推定される。また、酸化物半導体から不純物を除去して高純度化することで結晶化を図ることができる。このように高純度化された非単結晶酸化物半導体は、理想的には100cm/Vsecを超える電界効果移動度を実現することも可能になると推定される。
【0298】
In、SnおよびZnを含む酸化物半導体に酸素イオンを注入し、熱処理により該酸化物半導体に含まれる水素や水酸基若しくは水分などを放出させ、その熱処理と同時にまたはその後の熱処理により酸化物半導体を結晶化させてもよい。このような結晶化若しくは再結晶化の処理により結晶性のよい非単結晶酸化物半導体を得ることができる。
【0299】
熱処理は酸素雰囲気中で行うことができるが、まず窒素若しくは不活性ガス、または減圧下で熱処理を行ってから酸素を含む雰囲気中で熱処理を行っても良い。最初に脱水化・脱水素化を行ってから酸素を酸化物半導体層に加えることで、熱処理の効果をより高めることができる。また、後から酸素を加えるには、酸素イオンを電界で加速して酸化物半導体層に注入する方法を適用しても良い。
【0300】
酸化物半導体層中および酸化物半導体層と積層される膜との界面には、酸素欠損による欠陥が生成されやすいが、かかる熱処理により酸化物半導体層中に酸素を過剰に含ませることで、定常的に生成される酸素欠損を過剰な酸素によって補償することが可能となる。過剰酸素は主に格子間に存在する酸素であり、その酸素濃度は1×1016atoms/cm以上2×1020atoms/cm以下とすれば、結晶に歪み等を与えることなく酸化物半導体層中に含ませることができる。
【0301】
また、熱処理によって酸化物半導体層に結晶領域が含まれるようにすることで、より安定な酸化物半導体層を得ることができる。例えば、In:Sn:Zn=1:1:1[原子数比]のターゲットを用いて、基板を意図的に加熱せずにスパッタリング成膜した酸化物半導体層は、X線回折(XRD:X−Ray Diffraction)でハローパタンが観測される。この成膜された酸化物半導体層を熱処理することによって結晶化させることができる。熱処理温度は任意であるが、例えば650℃の熱処理を行うことで、X線回折により明確な回折ピークを観測することができる。
【0302】
実際に、In−Sn−Zn−O膜のXRD分析を行った。XRD分析には、Bruker AXS社製X線回折装置D8 ADVANCEを用い−Out−Of−Plane法で測定した。
【0303】
XRD分析を行った試料として、試料Aおよび試料Bを用意した。以下に試料Aおよび試料Bの作製方法を説明する。
【0304】
脱水素化処理済みの石英基板上にIn−Sn−Zn−O膜を100nmの厚さで成膜した。
【0305】
In−Sn−Zn−O膜は、スパッタリング装置を用い、酸素雰囲気で電力を100W(DC)として成膜した。ターゲットは、In:Sn:Zn=1:1:1[原子数比]のIn−Sn−Zn−Oターゲットを用いた。なお、成膜時の基板加熱温度は200℃とした。このようにして作製した試料を試料Aとした。
【0306】
次に、試料Aと同様の方法で作製した試料に対し熱処理を650℃の温度で行った。熱処理は、はじめに窒素雰囲気で1時間の熱処理を行い、温度を下げずに酸素雰囲気でさらに1時間の熱処理を行った。このようにして作製した試料を試料Bとした。
【0307】
図28に試料Aおよび試料BのXRDスペクトルを示す。試料Aでは、結晶由来のピークが観測されなかったが、試料Bでは、2θが35deg近傍および37deg〜38degに結晶由来のピークが観測された。
【0308】
このように、In、SnおよびZnを含む酸化物半導体膜は成膜時に意図的に加熱すること及び/又は成膜後に熱処理することによりトランジスタの特性を向上させることができる。
【0309】
この基板加熱や熱処理は、酸化物半導体層にとって悪性の不純物である水素や水酸基を酸化物半導体層に含ませないようにすること、または酸化物半導体層から除去する作用がある。すなわち、酸化物半導体層中でドナー不純物となる水素、水酸基、水分などを除去することで高純度化を図ることができ、高純度化されることによりオフ電流を1aA/μm以下にすることができる。ここで、上記オフ電流値の単位は、チャネル幅1μmあたりの電流値を示す。
【0310】
具体的には、図29に示すように、基板温度が125℃の場合には1aA/μm(1×10−18A/μm)以下、85℃の場合には100zA/μm(1×10−19A/μm)以下、室温(27℃)の場合には1zA/μm(1×10−21A/μm)以下にすることができる。好ましくは、125℃において0.1aA/μm(1×10−19A/μm)以下に、85℃において10zA/μm(1×10−20A/μm)以下に、室温において0.1zA/μm(1×10−22A/μm)以下にすることができる。これらのオフ電流値は、シリコンを半導体膜として用いたトランジスタに比べて、極めて低いものであることは明らかである。
【0311】
もっとも、酸化物半導体層の成膜時に水素、水酸基、水分などが膜中に混入しないように、成膜室外部からのリークや成膜室内の内壁からの脱ガスを十分抑え、スパッタガスの高純度化を図ることが好ましい。例えば、スパッタガスは水分が膜中に含まれないように露点−70℃以下であるガスを用いることが好ましい。また、ターゲットそのものに水素、水酸基、水分などの不純物が含まれていないように、高純度化されたターゲットを用いることが好ましい。In、SnおよびZnを含む酸化物半導体膜は熱処理によって膜中の水分を除去することができるが、In、GaおよびZnを含む酸化物半導体膜と比べて水分の放出温度が高いため、好ましくは最初から水分の含まれない膜を形成しておくことが好ましい。
【0312】
図30(A)に基板温度としきい値電圧の関係を、図30(B)に基板温度と電界効果移動度の関係を示す。
【0313】
図30(A)より、基板温度が高いほどしきい値電圧は低くなることがわかる。なお、その範囲は−40℃〜150℃で1.09V〜−0.23Vであった。
【0314】
また、図30(B)より、基板温度が高いほど電界効果移動度が低くなることがわかる。なお、その範囲は−40℃〜150℃で36cm/Vs〜32cm/Vsであった。従って、上述の温度範囲において電気的特性の変動が小さいことがわかる。
【0315】
上記のようなIn、SnおよびZnを含む酸化物半導体膜にチャネル形成領域を有するトランジスタによれば、オフ電流を1aA/μm以下に保ちつつ、電界効果移動度を30cm/Vsec以上、好ましくは40cm/Vsec以上、より好ましくは60cm/Vsec以上とし、LSIで要求されるオン電流の値を満たすことができる。例えば、L/W=33nm/40nmのFETで、ゲート電圧2.7V、ドレイン電圧1.0Vのとき12μA以上のオン電流を流すことができる。またトランジスタの動作に求められる温度範囲においても、十分な電気的特性を確保することができる。このような特性であれば、シリコンで作られる集積回路の中に酸化物半導体膜を用いたトランジスタを混載しても、動作速度を犠牲にすることなく新たな機能を有する集積回路を実現することができる。
【0316】
本実施の形態は他の実施の形態と適宜組み合わせて用いることができる。
【0317】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0318】
(実施の形態3)
本実施の形態では、上述の実施の形態で説明した半導体装置を電子機器に適用する場合について、図31を用いて説明する。本実施の形態では、コンピュータ、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯情報端末(携帯型ゲーム機、音響再生装置なども含む)、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラなどのカメラ、電子ペーパー、テレビジョン装置(テレビ、またはテレビジョン受信機ともいう)などの電子機器に、上述の半導体装置を適用する場合について説明する。
【0319】
図31(A)は、ノート型のパーソナルコンピュータであり、筐体701、筐体702、表示部703、キーボード704などによって構成されている。筐体701と筐体702の少なくとも一には、先の実施の形態に示す半導体装置が設けられている。そのため、データの書き込み及び読み出しが高速で、長期間の記憶保持が可能で、且つ消費電力が十分に低減されたノート型のパーソナルコンピュータが実現される。
【0320】
図31(B)は、携帯情報端末(PDA)であり、本体711には、表示部713と、外部インターフェイス715と、操作ボタン714等が設けられている。また、携帯情報端末を操作するスタイラス712などを備えている。本体711内には、先の実施の形態に示す半導体装置が設けられている。そのため、データの書き込み及び読み出しが高速で、長期間の記憶保持が可能で、且つ消費電力が十分に低減された携帯情報端末が実現される。
【0321】
図31(C)は、電子ペーパーを実装した電子書籍720であり、筐体721と筐体723の2つの筐体で構成されている。筐体721および筐体723には、それぞれ表示部725および表示部727が設けられている。筐体721と筐体723は、軸部737により接続されており、該軸部737を軸として開閉動作を行うことができる。また、筐体721は、電源731、操作キー733、スピーカー735などを備えている。筐体721、筐体723の少なくとも一には、先の実施の形態に示す半導体装置が設けられている。そのため、データの書き込み及び読み出しが高速で、長期間の記憶保持が可能で、且つ消費電力が十分に低減された電子書籍が実現される。
【0322】
図31(D)は、携帯電話機であり、筐体740と筐体741の2つの筐体で構成されている。さらに、筐体740と筐体741は、スライドし、図31(D)のように展開している状態から重なり合った状態とすることができ、携帯に適した小型化が可能である。また、筐体741は、表示パネル742、スピーカー743、マイクロフォン744、操作キー745、ポインティングデバイス746、カメラ用レンズ747、外部接続端子748などを備えている。また、筐体740は、携帯電話機の充電を行う太陽電池セル749、外部メモリスロット750などを備えている。また、アンテナは、筐体741に内蔵されている。筐体740と筐体741の少なくとも一には、先の実施の形態に示す半導体装置が設けられている。そのため、データの書き込み及び読み出しが高速で、長期間の記憶保持が可能で、且つ消費電力が十分に低減された携帯電話機が実現される。
【0323】
図31(E)は、デジタルカメラであり、本体761、表示部767、接眼部763、操作スイッチ764、表示部765、バッテリー766などによって構成されている。本体761内には、先の実施の形態に示す半導体装置が設けられている。そのため、データの書き込み及び読み出しが高速で、長期間の記憶保持が可能で、且つ消費電力が十分に低減されたデジタルカメラが実現される。
【0324】
図31(F)は、テレビジョン装置770であり、筐体771、表示部773、スタンド775などで構成されている。テレビジョン装置770の操作は、筐体771が備えるスイッチや、リモコン操作機780により行うことができる。筐体771およびリモコン操作機780には、先の実施の形態に示す半導体装置が搭載されている。そのため、データの書き込み及び読み出しが高速で、長期間の記憶保持が可能で、且つ消費電力が十分に低減されたテレビジョン装置が実現される。
【0325】
以上のように、本実施の形態に示す電子機器には、先の実施の形態に係る半導体装置が搭載されている。このため、消費電力を低減した電子機器が実現される。
【符号の説明】
【0326】
120 半導体層
122 絶縁層
122a ゲート絶縁層
124 マスク
126 不純物領域
128a ゲート電極
128b 導電層
130 不純物領域
132 不純物領域
134 チャネル形成領域
136 絶縁層
138 絶縁層
140 絶縁層
142a ソース電極
142b ドレイン電極
144 酸化物半導体層
146 ゲート絶縁層
148a ゲート電極
148b 導電層
150 絶縁層
154 配線
156 絶縁層
160 トランジスタ
162 トランジスタ
164 容量素子
170 メモリセル
180 昇圧回路
182 駆動回路
184 駆動回路
186 駆動回路
190 駆動回路
192 駆動回路
194 駆動回路
500 半導体基板
510 単結晶半導体基板
512 酸化膜
514 脆化領域
516 単結晶半導体層
518 単結晶半導体層
701 筐体
702 筐体
703 表示部
704 キーボード
711 本体
712 スタイラス
713 表示部
714 操作ボタン
715 外部インターフェイス
720 電子書籍
721 筐体
723 筐体
725 表示部
727 表示部
731 電源
733 操作キー
735 スピーカー
737 軸部
740 筐体
741 筐体
742 表示パネル
743 スピーカー
744 マイクロフォン
745 操作キー
746 ポインティングデバイス
747 カメラ用レンズ
748 外部接続端子
749 太陽電池セル
750 外部メモリスロット
761 本体
763 接眼部
764 操作スイッチ
765 表示部
766 バッテリー
767 表示部
770 テレビジョン装置
771 筐体
773 表示部
775 スタンド
780 リモコン操作機
2101 下地絶縁膜
2102 絶縁膜
2103a 半導体領域
2103b 半導体領域
2103c 半導体領域
2104 ゲート絶縁膜
2105 ゲート
2106a 側壁絶縁膜
2106b 側壁絶縁膜
2107 絶縁膜
2108a ソース
2108b ドレイン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビット線に第1のトランジスタのソース電極が電気的に接続され、ソース線に前記第1のトランジスタのドレイン電極が電気的に接続され、前記第1のトランジスタのゲート電極と、第2のトランジスタのドレイン電極と、容量素子の一方の電極が電気的に接続され、電位が保持されるノードが構成されるメモリセルを有する半導体装置の駆動方法であって、
データ読み出し期間において、
前記ソース線を接地電位とし、
前記ビット線をプリチャージ電位供給配線と接続し、前記ビット線をプリチャージ電位とした後、
前記ビット線と前記プリチャージ電位供給配線を接続解除することで、前記ビット線の電位が前記ノードに保持された電位に応じて変動させ、
前記変動を読み取ることにより、前記ノードに保持された電位を読み出す、半導体装置の駆動方法。
【請求項2】
複数の信号線と、複数のビット線と、複数のソース線と、複数の容量線と、複数のメモリセルを含むメモリセルアレイと、を有し、
前記メモリセルの各々において、
前記複数のビット線の一に第1のトランジスタのソース電極が電気的に接続され、前記複数のソース線の一に前記第1のトランジスタのドレイン電極が電気的に接続され、前記第1のトランジスタのゲート電極と、第2のトランジスタのドレイン電極と、容量素子の一方の電極が電気的に接続され、前記容量素子の他方の電極が前記複数の容量線の一に電気的に接続され、第2のトランジスタのソース電極と複数の信号線の一に電気的に接続され、
前記第1のトランジスタのゲート電極と、前記第2のトランジスタのドレイン電極と、前記容量素子の一方の電極との間に、前記複数の信号線の一から与えられた電位が保持されるノードが構成される半導体装置の駆動方法であって、
データ読み出し期間において、
前記複数のメモリセルの一に接続する前記複数の容量線の一を接地電位としてメモリセルを選択し、
選択のメモリセルに接続する前記複数のソース線の一を接地電位とし、
選択のメモリセルに接続する前記複数のビット線の一をプリチャージ電位供給配線と電気的に接続し、前記複数のビット線の一をプリチャージ電位とした後、
前記複数のビット線の一と前記プリチャージ電位供給配線の接続を解除することで、前記複数のビット線の一の電位を前記ノードに保持された電位に応じて変動させ、
前記変動を読み取ることにより、前記選択のメモリセルの前記ノードに保持された電位を読み出す、半導体装置の駆動方法。
【請求項3】
複数のビット線と、少なくとも1本のソース線と、複数の容量線と、複数のメモリセルを含むメモリセルアレイと、を有し、
前記メモリセルの各々において、
前記複数のビット線の一に第1のトランジスタのソース電極が電気的に接続され、前記ソース線に前記第1のトランジスタのドレイン電極が電気的に接続され、前記第1のトランジスタのゲート電極と、第2のトランジスタのドレイン電極と、容量素子の一方の電極が電気的に接続され、前記容量素子の他方の電極が前記複数の容量線の一に電気的に接続され、
前記第1のトランジスタのゲート電極と、前記第2のトランジスタのドレイン電極と、前記容量素子の一方の電極との間に、前記複数のビット線の一から与えられた電位が保持されるノードが構成される半導体装置の駆動方法であって、
データ読み出し期間において、
前記複数のメモリセルの一に接続する前記複数の容量線の一を接地電位としてメモリセルを選択し、
前記ソース線を接地電位とし、
選択のメモリセルに接続する前記複数のビット線の一をプリチャージ電位供給配線と電気的に接続し、前記複数のビット線の一をプリチャージ電位とした後、
前記複数のビット線の一と前記プリチャージ電位供給配線の接続を解除することで、前記複数のビット線の一の電位を前記ノードに保持された電位に応じて変動させ、
前記変動を読み取ることにより、前記選択のメモリセルの前記ノードに保持された電位を読み出す、半導体装置の駆動方法。
【請求項4】
前記データ読み出し期間において、
非選択とするメモリセルの一の前記ソース線を前記プリチャージ電位供給配線と接続する、請求項2または請求項3に記載の半導体装置の駆動方法。
【請求項5】
前記第1のトランジスタはpチャネル型トランジスタである、請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載の半導体装置の駆動方法。
【請求項6】
前記第1のトランジスタはnチャネル型トランジスタである、請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載の半導体装置の駆動方法。
【請求項7】
前記第2のトランジスタのチャネル形成領域は、酸化物半導体を含む請求項1乃至請求項6のいずれか一に記載の半導体装置の駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2013−8435(P2013−8435A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−111824(P2012−111824)
【出願日】平成24年5月15日(2012.5.15)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】