イオン注入装置、イオン注入方法及び半導体装置の製造方法
【課題】イオンビームの発散角やビームの傾きが変化しても、イオン注入量を高精度で制御するイオン注入装置、イオン注入方法、及び半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】イオン源部と、加減速部と、イオンビーム遮断部と、イオンビームの発散角とビームの傾きの少なくともいずれかを測定する測定部と、基板を保持する基板保持部と、制御部と、を備え、制御部は、測定部により測定された発散角とビームの傾きの少なくともいずれかの測定値に基づいて、基板へのイオン注入量が所定の範囲内に管理されるように、イオン注入の処理条件を補正して、イオン源部、加減速部、イオンビーム遮断部及び基板保持部のうちの少なくとも1つの動作を制御することを特徴とするイオン注入装置、イオン注入方法、半導体装置の製造方法。
【解決手段】イオン源部と、加減速部と、イオンビーム遮断部と、イオンビームの発散角とビームの傾きの少なくともいずれかを測定する測定部と、基板を保持する基板保持部と、制御部と、を備え、制御部は、測定部により測定された発散角とビームの傾きの少なくともいずれかの測定値に基づいて、基板へのイオン注入量が所定の範囲内に管理されるように、イオン注入の処理条件を補正して、イオン源部、加減速部、イオンビーム遮断部及び基板保持部のうちの少なくとも1つの動作を制御することを特徴とするイオン注入装置、イオン注入方法、半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン注入装置、イオン注入方法及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程において、半導体層などに不純物をドーピングするために、イオン注入が行われる。このためのイオン注入装置においては、イオン源で発生させたイオンビームを真空容器の中で輸送し、ターゲットである半導体基板などに照射する。真空容器内でのイオンビームの輸送距離は数十センチメートルから十数メートルとなり、真空容器内で効率よくイオンビームを輸送するために、磁場や電場によりイオンビーム軌道の偏向やイオンビームの形状の整形が行われるが、正電荷粒子の集まりであるイオンビームは、お互いの反発力により一定の発散角を持つことは避けられない。このため、イオンビームは一定の発散角を持つ。そして、半導体基板へのイオンビームの注入角のずれ、すなわちビームの傾きが生じることがある。このイオンビームの発散角やビームの傾きの変動は、半導体基板のイオン注入状態に影響を与えるため、発散角やビームの傾きは、高い精度で制御されることが必要である。
【0003】
ビームの傾きに関しては、ビームの傾きをモニターし、ビームの傾きを調整・修正する、または、イオンビームに対する半導体基板の相対角度を補正することにより、このビームの傾きに起因した半導体基板へのイオン注入角のずれを実質的に補正できる可能性がある。
【0004】
一方、イオンビームの発散角に関しても、発散角をモニターし、発散角を制御することが提案されている(特許文献1)。しかし、その制御の精度には限界があり、実用的には不十分な場合もある。また、発散角に関しては、イオンビームと半導体基板の相対角度を調整することにより、半導体基板へのイオン注入状態を補正することはできない。
【特許文献1】特開2005−353537号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、イオンビームの発散角やビームの傾きを高い精度で制御することを必要とせず、発散角及びビームの傾きが変化しても、半導体基板へのイオン注入状態を高い精度で制御することができるイオン注入装置、イオン注入方法、及び半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、イオンを生成するイオン源部と、前記イオンを加速し、イオンビームを生成する加減速部と、前記イオンビームを遮断するイオンビーム遮断部と、前記イオンビームの、発散角とビームの傾きの少なくともいずれかを測定する測定部と、前記イオンビームが照射される基板を保持する基板保持部と、前記イオン源部、前記加減速部、前記イオンビーム遮断部及び前記基板保持部のうちの少なくとも1つの動作を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記測定部により測定された、前記発散角と前記ビームの傾きの少なくともいずれかの測定値に基づいて、前記基板へのイオン注入量が所定の範囲内に管理されるように、イオン注入の処理条件を補正して、前記イオン源部、前記加減速部、前記イオンビーム遮断部及び前記基板保持部のうちの少なくとも1つの動作を制御することを特徴とするイオン注入装置が提供される。
【0007】
また、本発明の別の一態様によれば、イオンビームを発生し、前記イオンビームの、発散角とビームの傾きの少なくともいずれかを測定し、前記発散角と前記ビームの傾きの少なくともいずれかの測定値に基づいて、基板へのイオン注入量が所定の範囲内に管理されるように、イオン注入の処理条件を補正し、前記補正された処理条件に基づきイオン注入処理を行うことを特徴とするイオン注入方法が提供される。
【0008】
また、本発明の別の一態様によれば、半導体基板の上に段差を形成し、前記段差の底面及び側壁の少なくともいずれかに請求項3または4に記載のイオン注入方法によりイオン注入処理を行うことを備えたことを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、イオンビームの発散角やビームの傾きを高い精度で制御することを必要とせず、発散角及びビームの傾きが変化しても、半導体基板へのイオン注入状態を高い精度で制御することができるイオン注入装置、イオン注入方法、及び半導体装置の製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るイオン注入装置の構造を示す模式図である。
図1に表されるように、イオン注入装置100は、イオン源部102、加減速部104、スリット108、イオンビーム遮断部103、基板保持部112、測定部114、及び、これらの動作を制御する制御部116を備えている。イオン源部102で生成されたイオンは、加減速部104により、目的とするイオンが選択的に取り出され、所定のエネルギーまで加速される共に、その軌道が整形され、イオンビーム106となる。イオンビーム106は、スリット108を通り、基板保持部112に保持された半導体基板110に照射される。この際、イオンビーム106は、イオンビーム遮断部103によって遮断及び通過される。イオンビーム106の発散角とビームの傾きは、測定部114によって測定される。制御部116は、測定された発散角とビームの傾きの値に基づいて、半導体基板へのイオン注入量が所定(所望)の範囲内に管理されるように、イオン源部102、加減速部104、イオンビーム遮断部103及び基板保持部112のうちの少なくとも1つの動作を制御する。
また、図1に表されたように、イオンビーム走査部109を設け、イオンビーム106のビームの方向を変える構成とすることもできる。
なお、本図では、加減速部104の後にスリット108、イオンビーム走査部109、イオンビーム遮断部103の順に配置された例を示しているが、これに制限されず、加減速部104、スリット108、イオンビーム走査部109、イオンビーム遮断部103の配置の順番は任意である。例えば、スリット108の後に加減速部104があってもよく、また、イオンビーム走査部109とイオンビーム遮断部103がスリット108の前であってもよく、さらに、イオンビーム遮断部103がイオン源部102の直後にあっても良い。
また、イオンビーム走査部109と基板保持部112の少なくともいずれかによって、イオンビーム106と基板110の相対的位置を変え、基板110の所定面にイオンビーム106が照射される。この相対的位置を変える方法は、例えば、イオンビーム106を固定しておき基板110の位置を変化させる方法がある(この場合、基板110の位置は、基板保持部112によって変えられる)。この他、基板110を固定しておきイオンビーム106の基板上での照射位置を変化させる方法、さらには、イオンビーム106と基板110の両方の位置を変化させる方法のいずれとしてもよい。従って、図1においては、イオンビーム走査部109が設けられ、イオンビーム106のビームの方向を変える構成を例示しているが、これに限らない。従って、本願明細書において、イオンビーム106と基板110との相対的位置を変える際の、相対的位置の変化速度、相対的位置の変化回数、及び、相対的位置の変化方向は、基板保持部112及びイオンビーム走査部109の少なくともいずれかによって制御される。
図1では、イオンビーム走査部109が独立して設けられている構成が例示されているが、イオンビーム走査部109は独立して設けられていなくても良く、基板保持部112がイオンビーム走査部109を兼用していても良い。
なお、イオンビーム106と基板110との相対的位置を変化させることを走査と言うこととする。
【0011】
ここで、イオンビーム106の発散角とビームの傾きについて説明する。
図2(a)〜(c)は、イオンビーム106の各種の形状を表した模式図である。
図2(a)に表されるように、イオンビーム106aは、スリット108を通った後、半導体基板110の法線に対して垂直に、小さいビーム径で、半導体基板110に照射されている。すなわち、イオンビーム106aは、発散角が小さく、ビームの傾きがない(小さい)。
一方、図2(b)に表されるように、イオンビーム106bは、スリット108を通った後、半導体基板110の法線に対して垂直ではあるが、大きいビーム径で、半導体基板110に照射されている。すなわち、イオンビーム106bは、発散角が大きく、ビームの傾きが小さい。
また、図2(c)に表されるように、イオンビーム106cは、スリット108を通った後、半導体基板110の法線に対して斜めに、小さいビーム径で、半導体基板110に照射されている。すなわち、イオンビーム106cは、発散角が小さく、ビームの傾きが大きい。
【0012】
イオンビーム106は、電荷の集まりであり、互いに反発し合う状態で輸送されるため、自ずから発散する性質を持っている。これをある形状のビームに整形するが、その制御は容易ではない。例えば、イオンビーム106の発散角とビームの傾きは、装置の起動時と安定時の差による変動や、経時変化、イオン発生条件、加減速部の電極形状/電位配置の変化などにより種々変動してしまうのが実情である。
【0013】
次に、これら各種の形状のイオンビーム106a〜106cが、半導体基板110に入射する状態を説明する。
図3(a)〜(c)は、各種の形状のイオンビーム106a〜106cが、半導体基板110に照射される状態を示す模式図である。これらの図は、半導体基板110上にゲート電極202が形成されており、ゲート電極202をマスクにして、半導体基板110上にイオンビーム106a〜106cを照射し、ソース領域とドレイン領域となるイオン注入領域204を形成する場合を例示している。なお、説明を簡略にするために、その他の部分に関しては省略されている。また、イオンビーム106のビームの直径は、例えば数ミリメートルから数十ミリメートであり、一方、ゲート電極202の幅は、例えば数マイクロメートル以下のオーダーである。従って、図3(a)〜(c)は、これらの大きさ関係の実態を表したものではなく、説明のために大きさ関係を変形させて描かれている。
【0014】
図3(a)に表されるように、発散角とビームの傾きが共に小さいイオンビーム106aが、半導体基板110にほぼ垂直に照射される場合、イオンビーム106aは、ゲート電極202の側壁に照射される部分は少なく、その多くは、イオン注入領域204に照射される。
【0015】
一方、図3(b)に表されるように、発散角が大きいがビームの垂直方向(半導体基板の主面に対して)からの傾きが小さいイオンビーム106bが、半導体基板110に照射される場合、イオンビーム106bは、ゲート電極202の側壁に照射される部分が大きくなり、イオン注入領域204に注入されるイオンの量は、図3(a)に表された場合に比べ、実効的に少なくなる。
【0016】
一方、図3(c)に表されるように、発散角は小さいがビームの垂直方向からの傾きが大きいイオンビーム106cが、半導体基板110に照射される場合、イオンビーム106cは半導体基板110に対して斜め方向から照射される。この場合、イオンビーム106cは、ゲート電極202によって遮蔽される部分が大きくなり、イオン注入領域204に注入されるイオンの量は、やはり、図3(a)に表された場合に比べて、実効的に少なくなる。
【0017】
このように、イオンビーム106の発散角やビームの傾きが大きくなると、半導体基板110上の所定のイオン注入領域204に注入されるイオンの量が減少し、結果として半導体装置の特性を変化させ、問題となる。この問題は、上記のように、半導体基板110の上にイオンを遮蔽するゲート電極202のような段差があり、この段差の底面(下側部分)にイオン注入する際に問題となる。さらには、半導体基板110上にトレンチ構造のような段差があり、この段差の底面にイオン注入する際にも問題となる。
【0018】
図3(c)に表された、ビームの傾きが大きい場合は、イオンビーム106cに対する半導体基板110の相対角度を調整し、イオンビーム106cが半導体基板110に垂直に照射されるようにして、補正できる可能性がある。しかしながら、図3(b)に示したように、発散角が大きい場合は、イオンビーム106bに対する半導体基板110の相対角度の調整は、効果がない。
【0019】
本発明の第1の実施形態においては、イオンビーム106の発散角とビームの傾きを測定し、測定された発散角とビームの傾きの値に基づいて、半導体基板110へのイオン注入量が所定の範囲内に管理されるように、イオン源部102、加減速部104、イオンビーム走査部109、イオンビーム遮断部103、基板保持部112のうちの少なくとも1つの動作を制御する。例えば、イオン源部102で発生するイオンの量を制御するために、イオン源部102のイオン電流を増減することもできる。また、イオンビーム走査部109の動作を制御することにより、イオンビーム106と基板110との相対的位置の変化速度、変化回数、変化方向を変えることができる。具体的には、イオンビーム106の走査速度、走査回数、及び走査方向を変えることができる。また、半導体基板110を保持する基板保持部112の動作を制御することにより、半導体基板110のイオンビーム106に対する走査速度、走査回数、走査方向、及び回転数を変えることができる。また、イオンビーム遮断部103の動作を制御することにより、イオンビーム106の照射時間を変えることもできる。さらには、上記のいくつかを組み合わせた制御を行っても良い。また、上記の制御と同時に基板保持部112の動作を制御することにより、イオンビーム106に対する半導体基板110の設置角度を変更しながら上記の制御を行っても良い。
【0020】
これにより、発散角及びビームの傾きが変化しても、高い精度でイオン注入量を制御できる。これにより、性能の安定した半導体装置が安価に得られる。
【0021】
以下、イオンビーム106の発散角とビームの傾きの測定に関して説明する。
本発明の第1の実施形態のイオン注入装置は、図1に示したように、イオンビームの形状(強度分布)を測定する測定部114を有する。この測定部114は、例えば、ファラデーカップをイオンビーム106のビーム方向とほぼ垂直な平面内で2次元的に走査させる、または、2次元的に複数個のファラデーカップを並べることなどによって実現できる。あるいは、メッシュ状の導電細線をイオンビーム106上に挿入し、イオンビーム強度の2次元分布を測定することもできる。また、導電細線をイオンビーム106上を走査することによっても実現できる。さらには、イオンビーム強度を測定するためのセンサーを、基板110とほぼ同じ位置に挿入設置し、半導体基板110に実際にイオン注入を行う前にイオンビーム強度を測定するなど、イオンビーム強度が2次元的に測定できる各種の方法を利用することができる。なお、イオンビームの強度の測定は、必ずしも2次元的に行う必要はなく、必要によっては1次元でも良い。
【0022】
図4(a)〜(c)は、本発明の第1の実施形態に係るイオンビームの形状の測定結果を例示する模式図である。
これらの図において、横軸は、半導体基板110と平行な平面上にX−Y平面をとった場合のX軸上の位置を示し、縦軸は、Y軸上の位置を示す。また、X0及びY0はこれらの軸に関する基準点を示し、(X0,Y0)は、例えば、スリットの開口部の中心とすることができる。また、これらの図に描かれた曲線252〜256は、イオンビーム106の強度の等強度線252〜256を示している。すなわち、等強度線252はイオンビーム106の強度が高い(イオン電流が大きい)等強度線であり、等強度線256はイオンビーム強度が低い(イオン電流が小さい)等強度線であり、等強度線254は、これらの中間の強度の等強度線である。
【0023】
図4(a)は、図3(a)に表された、発散角とビームの傾きが共に小さいイオンビーム106aの場合に相当している。すなわち、イオンビーム106の等強度線252〜256は、基準点(X0,Y0)を中心とし、その等強度線が密である。
図4(b)は、図3(b)に表された、発散角が大きくビームの傾きが小さいイオンビーム106bの場合に相当している。すなわち、イオンビーム106の等強度線252〜256は、基準点(X0,Y0)を中心とし、その等強度線の間隔が広がっている。すなわち、イオンビームが広がっている。
図4(c)は、図3(c)に表された、発散角が小さくビームの傾きが大きいイオンビーム106cの場合に相当している。すなわち、イオンビーム106の等強度線252〜256は、その中心が基準点(X0,Y0)からずれている。
【0024】
以下、イオンビーム106の発散角とビームの傾きを表すパラメータについて説明する。
図5は、イオンビーム106の発散角とビームの傾きを表すパラメータを示す模式図である。
図5において、横軸と縦軸は、図4と同様に、それぞれX軸上及びY軸上の位置を示す。また、図4と同様に、等強度線252〜256は、イオンビーム106の2次元的な強度分布を示す等強度線である。
【0025】
図5において、例えば、等強度線256のX軸方向の幅AxをX軸方向の発散角Ax、Y軸方向の幅AyをY軸方向の発散角Ayと定義することができる。
【0026】
また、等強度線252〜256の中心点Cの基準点(X0,Y0)からのずれをイオンビーム106のビームの傾きと定義することができる。すなわち、X方向の距離Bxを、X方向のビームの傾きBxとし、またY方向の距離Byを、Y方向のビームの傾きByと定義することができる。
なお、以上のX軸方向の発散角Ax、Y軸方向の発散角Ay、ビームの傾きBx、及びY方向のビームの傾きByは、それぞれ角度に変換することができ、それを用いても良い。
【0027】
本発明の第1の実施形態のイオン注入装置においては、これら、X軸方向の発散角Ax、Y軸方向の発散角Ay、X方向のビームの傾きBx、Y方向のビームの傾きByに基づいて、半導体基板110への実効的なイオン注入量が所定の範囲内になるように、イオン源部102、加減速部104、イオンビーム走査部109、イオンビーム遮断部103及び基板保持部112のうちの少なくとも1つの動作を制御し、イオン注入の処理条件を制御する。
【0028】
図6(a)〜(c)は、本発明の第1の実施形態に係るイオン注入装置の処理条件を例示する図である。
図6(a)の横軸は、発散角の測定値を示しており、上記で定義したAxやAyとすることができる。縦軸は、イオンの注入時間を示す。すなわち、発散角の測定値に基づいて制御部116が制御を行う際に用いる、イオン注入時間の設定曲線を示している。図6(a)に表されるように、本発明の第1の実施形態においては、発散角が変化するとイオン注入時間を変える。図6(a)の例では、発散角が大きくなると注入時間を長くする。すなわち、図3に関して前述したように、発散角が大きいとイオンビーム106の径が広がるため、半導体基板110の所定の位置に実効的に注入されるイオンの量が減少する。これを補正するために、本発明の第1の実施形態においては、発散角が大きくなると注入時間を長くする。なお、この注入時間の制御は、図6(a)に例示したように連続的に変化させてもよいし、発散角の変化に対して階段状に変化させてもよい。また、図6(a)に示すように、発散角がある値を超えるまでは注入時間を一定とし、発散角がある値を超えると注入時間を変化させるようにしてもよく、各種の設定ができる。なお、注入時間の変更は、例えばイオンビーム遮断部103の動作を制御することによって実現できる。
【0029】
また、図6(b)に表されるように、発散角が大きくなると半導体基板の走査速度を低下させることができる。このようにしても、半導体基板110の所定の位置に実効的に注入されるイオンの量を補正して、必要とされる量を注入することができる。なお、半導体基板の走査速度の変更は、例えば基板保持部112の動作を制御することによって実現できる。
【0030】
また、図6(c)に表されるように、発散角が大きくなると、イオン源部102のイオン電流を変化させることができる。すなわち、発散角が大きくなった時に、イオン電流を増加することにより、半導体基板110の所定の位置に実効的に注入されるイオンの量を補正して、必要とされる量を注入することができる。
【0031】
この他、半導体基板110の走査回数、走査方向、及び回転数や、イオンビーム106の走査速度、走査回数、及び走査方向などを制御する際にも、図6(a)〜(c)に例示したものと類似の設定曲線を用いることができる。
【0032】
上記においては、説明の簡単化のために、発散角が1つの場合について例示して説明したが、実際には、X方向の発散角AxとY方向の発散角Ayが測定される。例えば、X方向の発散角AxとY方向の発散角Ayの平均値等を発散角の代表値として用い、イオン注入処理を制御することができる。あるいは、X方向の発散角AxとY方向の発散角Ayに基づいて、イオンビーム106と半導体基板110の設置角度関係を変化させることを併用することができる。例えば、イオン注入時間の変更と同時に、イオンビーム106に対する半導体基板110の設置角度を変えても良い。また、イオンビーム106の走査方向や、半導体基板110の走査方向や回転方向などの2次元特性を変化させることで、より高い精度のイオン注入を実施することができる。
【0033】
図7(a)〜(c)は、本発明の第1の実施形態に係るイオン注入装置の処理条件を例示する図である。
図7(a)の横軸は、ビームの傾きの測定値を示しており、上記で定義したBxやByとすることができる。縦軸は、イオンの注入時間を示す。すなわち、ビームの傾きの測定値に基づいて制御部116が制御する際に用いる、イオン注入時間の設定曲線を示している。図7(a)に表されるように、ビームの傾きが大きくなると注入時間を長くする。すなわち、ビームの傾きが大きいとイオンビーム106が半導体基板110に対して斜め方向から照射されるため、半導体基板110の所定の位置に実効的に注入されるイオンの量が減少する。これを補正するために、本発明の第1の実施形態においては、ビームの傾きが大きくなると注入時間を長くする。この注入時間の制御は、連続的に変化させてもよいし、ビームの傾きの変化に対して階段状に変化させてもよい。また、ビームの傾きがある値を超えるまでは注入時間を一定をし、ビームの傾きがある値を超えると注入時間を変化させるようにしてもよく、各種の設定ができる。
【0034】
また、図7(b)に表されるように、ビームの傾きが大きくなると半導体基板の走査速度を低下させることができる。このようにしても、半導体基板110の所定の位置に実効的に注入されるイオンの量を補正して、必要とされる量を注入することができる。
【0035】
また、図7(c)に表されるように、ビームの傾きが大きくなると、イオン源部102のイオン電流を変化させることができる。すなわち、発散角が大きくなった時に、イオン電流を増加することにより、半導体基板110の所定の位置に実効的に注入されるイオンの量を補正して、必要とされる量を注入することができる。この他、半導体基板110の走査回数、走査方向、及び回転数や、イオンビーム106の走査速度、走査回数、及び走査方向などを制御する際にも、図7(a)〜(c)に例示したものと類似の設定曲線を用いることができる。
【0036】
また、上記においては、説明の簡単化のために、ビームの傾きが1つの場合について例示して説明したが、実際には、X方向のビームの傾きBxとY方向のビームの傾きByが測定される。例えば、X方向のビームの傾きBxとY方向のビームの傾きByの平均値等をビームの傾きの代表値として用い、イオン注入処理を制御することができる。あるいは、X方向のビームの傾きBxとY方向のビームの傾きByに基づいて、イオンビーム106と半導体基板110の設置角度関係を変化させることを併用することができる。例えば、イオン注入時間の変更と同時に、イオンビーム106に対する半導体基板110の設置角度を変えても良い。また、イオンビーム106の走査方向や、イオンビーム106に対する半導体基板110の走査方向や回転方向などの2次元特性を変化させることで、より高い精度のイオン注入を実施することができる。
【0037】
さらに、上記の4つの測定値、すなわち、X軸方向の発散角Ax、Y軸方向の発散角Ay、X方向のビームの傾きBx、Y方向のビームの傾きByに基づいて、半導体基板110への実効的なイオン注入量が所定の範囲になるように、上記に例示した各種の制御のいくつかを組み合わせた制御により、イオン源部102、加減速部104、イオンビーム走査部109、イオンビーム遮断部103及び基板保持部112のうちの少なくとも1つの動作を制御することもできる。
このように、本発明の第1の実施形態に係るイオン注入装置100によれば、発散角及びビームの傾きが変化しても、高い精度でイオン注入量を制御できる。これにより、特性ばらつきに伴う歩留まり低下を防止でき、性能の安定した半導体装置が安価に得られる。
【0038】
なお、図5において、等強度線252〜256は、イオンビームの強度を相対的に示すものである。従って、図5において、最外線の等強度線256に基づいて発散角を定義する例を示したが、これに制限されず、発散角の定義には別の等強度線を用いることもできる。さらには、等強度線の絶対値による定義だけではなく、イオンビーム106の強度の2次元分布の変化率、あるいは積分値などによって定義することもできる。あるいは、それらを複合させた定義としても良い。
また、等強度線252〜256の中心点Cの定義も各種の方法によることができる。すなわち、イオンビーム強度の2次元分布の内、最大値を与える点を中心点Cとすることもできる。また、等強度線252〜256の内で、中心側(強度が強い)の等強度線252のX方向の領域とY方向の領域の中心点とすることもできる。さらには、所定の強度の等強度線に基づいて定めることもできる。さらには、イオンビーム106の強度の2次元分布の変化率、あるいは積分値などによって定義することもできる。あるいは、それらを複合させた定義としても良い。
【0039】
さらには、発散角とビームの傾きに関して、X軸方向とY軸方向に平行な成分である上記の4つの測定値、すなわち、X軸方向の発散角Ax、Y軸方向の発散角Ay、X方向のビームの傾きBx、Y方向のビームの傾きByだけではなく、X軸方向とY軸方向に平行でない成分をさらに用いても良い。
このように、イオンビーム106のビームの傾きと発散角は、各種の定義が可能である。
【0040】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係るイオン注入方法について説明する。
図8は、本発明の第2の実施形態に係るイオン注入方法を例示するフローチャート図である。
図8に表されるように、第2の実施形態に係るイオン注入方法においては、イオンビームを発生し(S10)、そのイオンビーム106の発散角とビームの傾きを測定する(S20)。そして、発散角とビームの傾きの測定値に基づきイオン注入の処理条件を補正する(S30)。その補正に基づきイオン注入処理を行う(S40)。
【0041】
S20工程における、イオンビーム106の発散角とビームの傾きの測定には、すでに説明した手法を用いることができる。また、S30工程においては、発散角とビームの傾きの測定結果に基づき、例えば、すでに説明した、X軸方向の発散角Ax、Y軸方向の発散角Ay、X方向のビームの傾きBx、Y方向のビームの傾きByを求め、これらに基づき、図6(a)〜(c)及び、図7(a)〜(c)に関して前述した、イオン注入時の各種処理条件の設定値の補正が行われる。すなわち、イオンの量を制御するために、イオン源部102のイオン電流を増減することもできる。また、イオンビーム走査部109の動作を制御することにより、イオンビーム106と基板110との相対的位置の変化速度、変化回数、変化方向を変えることができる。具体的には、イオンビーム106の走査速度、走査回数、及び走査方向などを変えることができる。また、半導体基板110を保持する基板保持部112の動作を制御することにより、半導体基板110の走査速度、走査回数、走査方向、及び回転数を変えることができる。また、イオンビーム遮断部103の動作を制御することにより、イオンビーム106の照射時間を変えることもできる。さらに、上記のいくつかを組み合わせた制御を行っても良い。また、上記の制御と同時に基板保持部112の動作を制御することにより、イオンビーム106に対する半導体基板110の設置角度を変更しながら上記の制御を行っても良い。
そして、S40工程においては、これらの設定値の補正に基づきイオン注入処理を実施する。
【0042】
このように、本発明のイオン注入方法によれば、発散角及びビームの傾きが変化しても、半導体基板へのイオン注入状態を高い精度で制御することができる。これにより、特性ばらつきに伴う歩留まり低下を防止でき、性能の安定した半導体装置が安価に得られる。
【0043】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施形態に係る半導体装置の製造方法について説明する。
(第1の実施例)
図9は、本発明の第3の実施形態に係る第1の実施例の半導体装置の構造を例示する断面図である。
【0044】
図9に表されるように、実施例1の半導体装置は、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)であり、不純物濃度が基板の深さ方向に不均一なチャネル構造を有している。
【0045】
図9に表されるように、第1の実施例で製造される半導体装置は、半導体基板510上にゲート絶縁膜542を有し、このゲート絶縁膜542上にポリシリコンからなるゲート電極543を有している。このゲート電極543の側面にはゲート側壁544が設けられ、ゲート電極543の表面及びソース・ドレイン領域548の表面にはサリサイド構造を用いた、金属シリサイド膜547が形成されている。
【0046】
シリコンからなる半導体基板510内にはゲート電極543をマスクとしてイオン注入及び拡散が行われ、半導体基板510の表面にソース・ドレイン・エクステンション領域545が形成されている。また、チャネル領域においては、シリコン基板541の深さ方向の不純物濃度が不均一となっている。
【0047】
つまり、図9に表されるように、ソース・ドレイン・エクステンション領域545の底面だけでなく側面にもハロー領域546が形成されている。このハロー領域546は、斜めイオン注入法により作製される。
【0048】
以下、図9に表された半導体装置の製造方法について説明する。
まず、シリコンからなる半導体基板510の表面にウェル、素子分離領域、及びチャネル領域を形成する。次に、半導体基板510上に例えばシリコン酸化膜(SiO2)からなるゲート絶縁膜542を形成する。ここで、ゲート絶縁膜542はシリコン酸化膜に限定されず、例えば、SiOxNy、SiNx、Ta2O5、TiO2等でもよい。
次に、ゲート絶縁膜542上にポリシリコンを形成する。このポリシリコン上にパターニングされたレジストを形成し、このレジストをマスクとしてポリシリコン及びゲート絶縁膜542が除去される。これによって、ゲート電極543が形成される。ここで、ゲート電極543の材料はポリシリコンに限定されず、例えば、doped Poly、金属、金属シリサイド等を用いてもよい。
次に、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法により全面に薄膜のシリコン酸化膜が形成され、このシリコン酸化膜上にパターニングされたレジストを形成する。このレジストをマスクとして、例えばRIE(Reactive Ion Etching)法によりシリコン酸化膜が除去され、ゲート電極543の側面にゲート側壁544が形成される。ここで、ゲート側壁544の材料は、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜等を用いることができる。
【0049】
次に、注入角度0°のイオン注入と斜め方向からのハローイオン注入、及びRTA(Rapid Thermal Annealing)により、半導体基板510の表面に、ソース・ドレイン領域548、ソース・ドレイン・エクステンション領域545、及びハロー領域546を形成する。この際、本発明の第1及び第2実施形態で説明したイオン注入装置及びイオン注入方法によって、イオン注入を行う。すなわち、イオンビーム106の発散角とビームの傾きを測定し、この発散角とビームの傾きの測定値に基づき、イオン注入時の各種処理条件の設定値を補正する。その補正に基づきイオン注入処理を行う。
【0050】
なお、ハローイオン注入では、半導体基板の法線から例えば数十度の角度で行うことができ、また、ハローイオン注入に用いる元素としては、nMOSには例えばインジウム(In)等、pMOSには例えばアンチモン(Sb)等を用いることができる。
【0051】
次に、全面に金属膜を形成し、サリサイド技術により、ソース・ドレイン領域548及びゲート電極543の表面に金属シリサイド膜が形成される。金属膜の材料は、例えばチタン(Ti)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)等があげられる。
その後、コンタクト、配線等が形成され、図9に表される半導体装置が得られる。
【0052】
このようにして作製された半導体装置は、ソース・ドレイン領域、ソース・ドレイン・エクステンション領域、ハロー領域のイオン注入が、本発明のイオン注入装置及びイオン注入方法によって行われることにより、発散角及びビームの傾きが変化しても、高い精度でイオン注入量を制御できる。これにより、特性ばらつきに伴う歩留まり低下を防止でき、性能の安定した半導体装置が安価に得られる。
【0053】
(第2の実施例)
次に、本発明の第3の実施形態に係る第2の実施例について説明する。
図10は、本発明の第3の実施形態に係る第2の実施例の半導体装置の構造を例示する断面図である。
第2の実施例に係る半導体装置は、NAND型不揮発性半導体メモリ装置であり、図10は、1つのセル部分を示している。
【0054】
p型Si基板660上に、熱酸窒化膜(SiON膜)からなるトンネル絶縁膜661を介して、n+ 型多結晶Si層からなる浮遊ゲート電極662が形成されている。浮遊ゲート電極662上に、HfAlOxからなる電極間絶縁膜663が形成されている。そして、電極間絶縁膜663上にp+ 型多結晶Siからなる制御ゲート電極664が形成されている。そして、p型Si基板660上にトンネル絶縁膜661を挟んで、ソース・ドレイン領域666が形成されている。
【0055】
図11(a)〜(c)及び図12(a)、(b)は、本発明の第2の実施例の半導体装置の製造方法を例示する工程断面図である。これらの図において、左側の図面と右側の図面は、互いに直交する断面を示している。
まず、図11(a)に表されるように、所望の不純物をドーピングしたp型Si基板601(660)の表面に、トンネル絶縁膜となる厚さ約7nmから8nmのSiON膜602(661)を熱酸化法で形成後、浮遊ゲート電極となる厚さ60nmのリンドープのn+ 型多結晶Si層603(662)をCVD法で堆積する。このときの温度は620℃である。続いて、素子分離加工のためのマスク材604をCVD法で堆積する。
【0056】
その後、レジストマスク(図示せず)を用いたRIE法により、マスク材604、多結晶Si層603、SiON膜602を順次エッチング加工し、さらにSi基板601の露出領域をエッチングして、深さ100nmの素子分離溝606を形成する。
【0057】
次いで、図11(b)に表されるように、全面に素子分離用のシリコン酸化膜607を堆積して、素子分離溝606を完全に埋め込む。その後、表面部分のシリコン酸化膜607をCMP(Chemical Mechanical Polishing)法で除去して、表面を平坦化する。
次いで、図11(c)に表されるように、露出したマスク材604を選択的にエッチング除去した後、シリコン酸化膜607の露出表面を希弗酸溶液でエッチング除去し、多結晶Si層603の側壁面608を露出させる。その後、全面に電極間絶縁膜となる厚さ15nmのハフニウムアルミネート(HfAlOx)膜609(663)を形成する。
【0058】
次いで、図12(a)に表されるように、制御ゲート電極としてCVD法でボロンドープのp+ 型多結晶Si層610(664)を620℃で堆積して形成し、厚さ100nmの導電層を形成する。
【0059】
その後、レジストマスク(図示せず)を用いたRIE法により、多結晶Si層610、HfAlOx膜609、多結晶Si層603、SiON膜602を順次エッチング加工して、ワード線方向のスリット部612を形成する。これにより、浮遊ゲート電極及び制御ゲート電極の形状が確定する。
【0060】
次に、図12(b)に表されるように、電極側壁酸化膜としてシリコン酸化膜615を熱酸化法で形成後、イオン注入法を用いてn+ 型のソース/ドレイン拡散層616(666)を形成する。この際、本発明の第1及び第2実施形態で説明したイオン注入装置及びイオン注入方法によって、イオン注入を行う。すなわち、イオンビーム106の発散角とビームの傾きを測定し、この発散角とビームの傾きの測定値を基にイオン注入時の処理条件を補正する。その補正された処理条件に基づきイオン注入処理を行う。
【0061】
さらに、全面を覆うようにシリコン酸化膜などの層間絶縁膜617をCVD法で形成する。その後は、周知の方法で配線層等を形成して不揮発性メモリセルが完成する。
このようにして作製された半導体装置は、本発明のイオン注入装置及びイオン注入方法によって、n+ 型のソース/ドレイン拡散層616(666)を形成することにより、発散角及びビームの傾きが変化しても、高い精度でイオン注入量を制御できる。これにより、特性ばらつきに伴う歩留まり低下を防止でき、性能の安定した半導体装置が安価に得られる。
【0062】
なお、本実施例において例示された、p型Si基板660、トンネル絶縁膜661、浮遊ゲート電極662、電極間絶縁膜663、制御ゲート電極664には各種の構造と各種の材料を用いることができる。
【0063】
(第3の実施例)
本発明の第3の実施形態である半導体装置の製造方法は、半導体装置が段差となるトレンチ構造を有する場合にも適用できる。
図13(a)、(b)は、トレンチ720を有する半導体基板710に対するイオン注入の状態を例示する模式図である。
すなわち、図13(a)は、トレンチ(段差)720の側壁にイオンビーム106を照射しイオン注入する場合を例示している。また、図13(b)は、トレンチ(段差)720の底面にイオンビーム106照射しイオン注入する場合を例示している。この内、図13(a)に例示されたトレンチ720の側壁にイオン注入を行う半導体装置の具体例が、以下説明する第3の実施例である。
【0064】
図14は、第3の実施形態に係る第3の実施例の半導体装置の構造を例示する断面図
である。図14に表されるように、本実施例の半導体装置810は、DT(Deep Trench)MOS型の構造を有する。
【0065】
高不純物濃度のn++型シリコン基板802の主面上に、n型シリコンの第1のピラー領域(以下、単に「n型ピラー領域」とも称する)812と、p型シリコンの第2のピラー領域(以下、単に「p型ピラー領域」とも称する)814とが並列して設けられている。n型ピラー領域812及びn型ピラー領域814は、それぞれ、基板802の主面に対して略垂直に延在して設けられている。p型ピラー領域814の両側面にはn型ピラー領域812が隣接してPN接合部を形成している。
【0066】
n型ピラー領域812において、p型ピラー領域814が隣接する面の反対側の面には、トレンチT及びこのトレンチTに埋め込まれた誘電体816が隣接している。トレンチT及び誘電体816は、n型ピラー領域812間に挟まれるようにして設けられている。トレンチTの側壁は上端部808を除いて基板802の主面に対して略垂直である。
【0067】
p型ピラー領域814の上にはp型シリコンのベース領域(pウェル)818が設けられ、さらにこの表面部分にはベース領域818よりも不純物濃度が大なるp+型シリコンのベース領域(p+ウェル)819が設けられている。これらベース領域818、819の表面部分には、選択的に、n+型シリコンのソース領域(半導体主電極領域)821が設けられている。
【0068】
n型ピラー領域812の上には、n型ピラー領域812よりも不純物濃度が大なるn+型シリコンの半導体領域813が設けられている。半導体領域813は、ベース領域818と、トレンチTの側壁の上端部808近傍部分との間に挟まれるようにして設けられている。
【0069】
誘電体816(トレンチT)から、この両側の半導体領域813、ベース領域818を経てソース領域821に至る部分の表面上にはゲート絶縁膜823が設けられ、このゲート絶縁膜823の上にゲート電極827が設けられている。ゲート電極827の周囲と上面は層間絶縁膜825により覆われている。層間絶縁膜825に覆われていないソース領域821の一部とベース領域819の上、及び層間絶縁膜825の上にはソース電極829が設けられ、ソース領域821はソース電極829に接続されている。基板802の主面の反対面にはドレイン電極831が設けられている。
【0070】
以上のように構成される半導体装置810において、ゲート電極827に所定のゲート電圧を印加すると、その直下のp型ベース領域818の表面付近にnチャネルが形成され、n+型ソース領域821とn+型半導体領域813とが導通する。その結果、n+型ソース領域821、n+型半導体領域813、n型ピラー領域812、n++型基板802を介して、ソース電極829とドレイン電極831間に主電流経路が形成され、ソース電極829とドレイン電極831間はオン状態とされする。
【0071】
以下、上述した半導体装置810の製造方法の一例について説明する。
図15乃至図20は、本発明の第3の実施例の半導体装置810の製造方法を例示する工程断面図である。
【0072】
まず、高不純物濃度のn++型シリコン基板802の主面上に、低不純物濃度のn−型シリコン層804をエピタキシャル成長させ、フォトリソグラフィとエッチングにより、図15に表されるように、n−型シリコン層804の表面から基板802に達するトレンチTが形成される。トレンチTは基板802の主面に対して略垂直である。
【0073】
次いで、図16に表されるように、熱酸化法によりn−型シリコン層804の表面に酸化膜806を成長させる。図16中、1点鎖線は酸化前のn−型シリコン層804の表面及びトレンチTの側壁の上端部を表す。このとき、n−型シリコン層804の表面だけではなく、その表面から続く部分であるトレンチTの側壁の上端部808にも熱酸化を進行させる。その結果、側壁の上端部808は、酸化膜806が成長した分、n−型シリコン層804側に後退し、n−型シリコン層804の表面側に向かうにつれてトレンチTの内径が徐々に大となる、すなわちトレンチが拡開するように傾斜する。以上のようにして、n−型シリコン層804の表面、及びトレンチTの側壁の上端部808が酸化膜806で覆われる。この酸化膜806は、後述するイオン注入のマスクとして機能する。
【0074】
次いで、図17に表されるように、トレンチTの側壁に対して斜め方向からp型不純物である例えばボロン(B)を打ち込む。これは、トレンチTの側壁の片側面にイオン注入した後、半導体基板を180度回転させて反対側面にもイオン注入を行う。トレンチTの側壁において、酸化膜806で覆われていないn−型シリコン層804が露出した部分にボロンが注入され、酸化膜806で覆われた上端部808にはボロンは注入されない。この際、本発明の第1及び第2実施形態で説明したイオン注入装置及びイオン注入方法によって、イオン注入を行う。すなわち、イオンビーム106の発散角とビームの傾きを測定し、この発散角とビームの傾きの測定値に基づき、イオン注入時の処理条件を補正する。そして、その補正された処理条件に基づきイオン注入処理を行う。
【0075】
次いで、図18に表されるように、トレンチTの側壁の上端部808を覆っている酸化膜806の端を等方性エッチングにより除去する。これにより、トレンチTの側壁の上端部808においてn−型シリコン層804の表面から遠い側の一部分が露出される。
【0076】
次いで、図19に表されるように、トレンチTの側壁に対して斜め方向からn型不純物である例えばヒ素(As)を打ち込む。これは、トレンチTの側壁の片側面にイオン注入した後、半導体基板を180度回転させて反対側面にもイオン注入を行う。ヒ素は、トレンチTの側壁において、酸化膜806で覆われずに露出している上端部808の一部にも注入される。この際、本発明の第1及び第2実施形態で説明したイオン注入装置及びイオン注入方法によって、イオン注入を行う。すなわち、イオンビーム106の発散角とビームの傾きを測定し、この発散角とビームの傾きの測定値に基づき、イオン注入時の処理条件を補正する。そして、その補正された処理条件に基づきイオン注入処理を行う。
【0077】
上述したイオン注入工程の後、熱処理を施すことにより、n−型シリコン層804に注入されたヒ素とボロンを拡散及び活性化させる。この後、図20に表すように、トレンチTの側壁及び底面に熱酸化により酸化膜を形成し、さらに気相成長法などにより酸化シリコンまたは窒化シリコンなどを、トレンチT内を埋め込むように堆積する。この後、CMP(Chemical Mechanical Polishing)やエッチングなどにより、トレンチTを充填する部分以外の不要な誘電体816を除去すると共に、表面を平坦化する。
【0078】
次いで、シリコン層804の表面に選択的にゲート絶縁膜823を形成し、そのゲート絶縁膜823の上にゲート電極827を形成する。次いで、それらゲート絶縁膜823及びゲート電極827をマスクとしてp型ピラー領域814の表面にイオン注入を行い、自己整合的にp型ベース領域818を形成する。この際、本発明の第1及び第2実施形態で説明したイオン注入装置及びイオン注入方法によって、イオン注入を行う。すなわち、イオンビーム106の発散角とビームの傾きを測定し、この発散角とビームの傾きの測定値に基づき、イオン注入時の処理条件を補正する。そして、その補正された処理条件に基づきイオン注入処理を行う。
【0079】
次いで、p型ベース領域818の表面には、ソース電極829とのオーミックコンタクトのためのp+型ベース領域819をさらに形成する。次いで、ベース領域818、819の表面に選択的にn+型ソース領域821を形成する。この後、ゲート電極827を覆うように層間絶縁膜825を形成し、その層間絶縁膜825に、ソースコンタクトのためのコンタクトホールを形成する。このコンタクトホールからは、ベース領域819及びソース領域821の一部が露出される。そして、コンタクトホールを埋めるようにして層間絶縁膜825の上にソース電極829を形成する。これにより、ソース領域821はソース電極829と接続される。また、基板802の主面の反対面には、ドレイン電極831を形成する。
【0080】
以上のようにして、図14に表される半導体装置の構造が得られる。
このようにして作製された半導体装置は、本発明のイオン注入装置及びイオン注入方法によって、トレンチの側壁に安定してイオンを注入することにより、発散角及びビームの傾きが変化しても、高い精度でイオン注入量を制御できる。これにより、特性ばらつきに伴う歩留まり低下を防止でき、性能の安定した半導体装置が安価に得られる。
【0081】
なお、第3の実施例において、半導体の導電性に関し、n型とp型とを互いに入れ替えても良い。
【0082】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、注入するイオン種や半導体基板を構成する各要素の具体的な寸法関係や材料、並びにイオン注入装置を構成する各要素に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0083】
その他、本発明の実施の形態として上述したイオン注入装置、イオン注入方法、半導体装置の製造方法を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全てのイオン注入装置、イオン注入方法、半導体装置の製造方法も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0084】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るイオン注入装置の構造を示す模式図である。
【図2】(a)〜(c)は、イオンビームの各種の形状を表した模式図である。
【図3】(a)〜(c)は、各種の形状のイオンビームが半導体基板に照射される状態を示す模式図である。
【図4】(a)〜(c)は、本発明の第1の実施形態に係るイオンビームの形状の測定結果を例示する模式図である。
【図5】イオンビームの発散角とビームの傾きを表すパラメータを示す模式図である。
【図6】(a)〜(c)は、本発明の第1の実施形態に係るイオン注入装置の処理条件を例示する図である。
【図7】(a)〜(c)は、本発明の第1の実施形態に係るイオン注入装置の処理条件を例示する図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係るイオン注入方法を例示するフローチャート図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る第1の実施例の半導体装置の構造を例示する断面図である。
【図10】本発明の第3の実施形態に係る第2の実施例の半導体装置の構造を例示する断面図である。
【図11】(a)〜(c)は、本発明の第2の実施例の半導体装置の製造方法を例示する工程断面図である。
【図12】(a)、(b)は、図11(c)に続く工程断面図である。
【図13】(a)、(b)は、トレンチを有する半導体基板に対するイオン注入の状態を例示する模式図である。
【図14】本発明の第3の実施形態に係る第3の実施例の半導体装置の構造を例示する断面図である。
【図15】本発明の第3の実施例の半導体装置の製造方法を例示する工程断面図である。
【図16】図15に続く工程断面図である。
【図17】図16に続く工程断面図である。
【図18】図17に続く工程断面図である。
【図19】図18に続く工程断面図である。
【図20】図19に続く工程断面図である。
【符号の説明】
【0086】
100 イオン注入装置
102 イオン源部
103 イオンビーム遮断部
104 加減速部
106 イオンビーム
108 スリット
109 イオンビーム走査部
110 基板
112 基板保持部
114 測定部
116 制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン注入装置、イオン注入方法及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程において、半導体層などに不純物をドーピングするために、イオン注入が行われる。このためのイオン注入装置においては、イオン源で発生させたイオンビームを真空容器の中で輸送し、ターゲットである半導体基板などに照射する。真空容器内でのイオンビームの輸送距離は数十センチメートルから十数メートルとなり、真空容器内で効率よくイオンビームを輸送するために、磁場や電場によりイオンビーム軌道の偏向やイオンビームの形状の整形が行われるが、正電荷粒子の集まりであるイオンビームは、お互いの反発力により一定の発散角を持つことは避けられない。このため、イオンビームは一定の発散角を持つ。そして、半導体基板へのイオンビームの注入角のずれ、すなわちビームの傾きが生じることがある。このイオンビームの発散角やビームの傾きの変動は、半導体基板のイオン注入状態に影響を与えるため、発散角やビームの傾きは、高い精度で制御されることが必要である。
【0003】
ビームの傾きに関しては、ビームの傾きをモニターし、ビームの傾きを調整・修正する、または、イオンビームに対する半導体基板の相対角度を補正することにより、このビームの傾きに起因した半導体基板へのイオン注入角のずれを実質的に補正できる可能性がある。
【0004】
一方、イオンビームの発散角に関しても、発散角をモニターし、発散角を制御することが提案されている(特許文献1)。しかし、その制御の精度には限界があり、実用的には不十分な場合もある。また、発散角に関しては、イオンビームと半導体基板の相対角度を調整することにより、半導体基板へのイオン注入状態を補正することはできない。
【特許文献1】特開2005−353537号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、イオンビームの発散角やビームの傾きを高い精度で制御することを必要とせず、発散角及びビームの傾きが変化しても、半導体基板へのイオン注入状態を高い精度で制御することができるイオン注入装置、イオン注入方法、及び半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、イオンを生成するイオン源部と、前記イオンを加速し、イオンビームを生成する加減速部と、前記イオンビームを遮断するイオンビーム遮断部と、前記イオンビームの、発散角とビームの傾きの少なくともいずれかを測定する測定部と、前記イオンビームが照射される基板を保持する基板保持部と、前記イオン源部、前記加減速部、前記イオンビーム遮断部及び前記基板保持部のうちの少なくとも1つの動作を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記測定部により測定された、前記発散角と前記ビームの傾きの少なくともいずれかの測定値に基づいて、前記基板へのイオン注入量が所定の範囲内に管理されるように、イオン注入の処理条件を補正して、前記イオン源部、前記加減速部、前記イオンビーム遮断部及び前記基板保持部のうちの少なくとも1つの動作を制御することを特徴とするイオン注入装置が提供される。
【0007】
また、本発明の別の一態様によれば、イオンビームを発生し、前記イオンビームの、発散角とビームの傾きの少なくともいずれかを測定し、前記発散角と前記ビームの傾きの少なくともいずれかの測定値に基づいて、基板へのイオン注入量が所定の範囲内に管理されるように、イオン注入の処理条件を補正し、前記補正された処理条件に基づきイオン注入処理を行うことを特徴とするイオン注入方法が提供される。
【0008】
また、本発明の別の一態様によれば、半導体基板の上に段差を形成し、前記段差の底面及び側壁の少なくともいずれかに請求項3または4に記載のイオン注入方法によりイオン注入処理を行うことを備えたことを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、イオンビームの発散角やビームの傾きを高い精度で制御することを必要とせず、発散角及びビームの傾きが変化しても、半導体基板へのイオン注入状態を高い精度で制御することができるイオン注入装置、イオン注入方法、及び半導体装置の製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るイオン注入装置の構造を示す模式図である。
図1に表されるように、イオン注入装置100は、イオン源部102、加減速部104、スリット108、イオンビーム遮断部103、基板保持部112、測定部114、及び、これらの動作を制御する制御部116を備えている。イオン源部102で生成されたイオンは、加減速部104により、目的とするイオンが選択的に取り出され、所定のエネルギーまで加速される共に、その軌道が整形され、イオンビーム106となる。イオンビーム106は、スリット108を通り、基板保持部112に保持された半導体基板110に照射される。この際、イオンビーム106は、イオンビーム遮断部103によって遮断及び通過される。イオンビーム106の発散角とビームの傾きは、測定部114によって測定される。制御部116は、測定された発散角とビームの傾きの値に基づいて、半導体基板へのイオン注入量が所定(所望)の範囲内に管理されるように、イオン源部102、加減速部104、イオンビーム遮断部103及び基板保持部112のうちの少なくとも1つの動作を制御する。
また、図1に表されたように、イオンビーム走査部109を設け、イオンビーム106のビームの方向を変える構成とすることもできる。
なお、本図では、加減速部104の後にスリット108、イオンビーム走査部109、イオンビーム遮断部103の順に配置された例を示しているが、これに制限されず、加減速部104、スリット108、イオンビーム走査部109、イオンビーム遮断部103の配置の順番は任意である。例えば、スリット108の後に加減速部104があってもよく、また、イオンビーム走査部109とイオンビーム遮断部103がスリット108の前であってもよく、さらに、イオンビーム遮断部103がイオン源部102の直後にあっても良い。
また、イオンビーム走査部109と基板保持部112の少なくともいずれかによって、イオンビーム106と基板110の相対的位置を変え、基板110の所定面にイオンビーム106が照射される。この相対的位置を変える方法は、例えば、イオンビーム106を固定しておき基板110の位置を変化させる方法がある(この場合、基板110の位置は、基板保持部112によって変えられる)。この他、基板110を固定しておきイオンビーム106の基板上での照射位置を変化させる方法、さらには、イオンビーム106と基板110の両方の位置を変化させる方法のいずれとしてもよい。従って、図1においては、イオンビーム走査部109が設けられ、イオンビーム106のビームの方向を変える構成を例示しているが、これに限らない。従って、本願明細書において、イオンビーム106と基板110との相対的位置を変える際の、相対的位置の変化速度、相対的位置の変化回数、及び、相対的位置の変化方向は、基板保持部112及びイオンビーム走査部109の少なくともいずれかによって制御される。
図1では、イオンビーム走査部109が独立して設けられている構成が例示されているが、イオンビーム走査部109は独立して設けられていなくても良く、基板保持部112がイオンビーム走査部109を兼用していても良い。
なお、イオンビーム106と基板110との相対的位置を変化させることを走査と言うこととする。
【0011】
ここで、イオンビーム106の発散角とビームの傾きについて説明する。
図2(a)〜(c)は、イオンビーム106の各種の形状を表した模式図である。
図2(a)に表されるように、イオンビーム106aは、スリット108を通った後、半導体基板110の法線に対して垂直に、小さいビーム径で、半導体基板110に照射されている。すなわち、イオンビーム106aは、発散角が小さく、ビームの傾きがない(小さい)。
一方、図2(b)に表されるように、イオンビーム106bは、スリット108を通った後、半導体基板110の法線に対して垂直ではあるが、大きいビーム径で、半導体基板110に照射されている。すなわち、イオンビーム106bは、発散角が大きく、ビームの傾きが小さい。
また、図2(c)に表されるように、イオンビーム106cは、スリット108を通った後、半導体基板110の法線に対して斜めに、小さいビーム径で、半導体基板110に照射されている。すなわち、イオンビーム106cは、発散角が小さく、ビームの傾きが大きい。
【0012】
イオンビーム106は、電荷の集まりであり、互いに反発し合う状態で輸送されるため、自ずから発散する性質を持っている。これをある形状のビームに整形するが、その制御は容易ではない。例えば、イオンビーム106の発散角とビームの傾きは、装置の起動時と安定時の差による変動や、経時変化、イオン発生条件、加減速部の電極形状/電位配置の変化などにより種々変動してしまうのが実情である。
【0013】
次に、これら各種の形状のイオンビーム106a〜106cが、半導体基板110に入射する状態を説明する。
図3(a)〜(c)は、各種の形状のイオンビーム106a〜106cが、半導体基板110に照射される状態を示す模式図である。これらの図は、半導体基板110上にゲート電極202が形成されており、ゲート電極202をマスクにして、半導体基板110上にイオンビーム106a〜106cを照射し、ソース領域とドレイン領域となるイオン注入領域204を形成する場合を例示している。なお、説明を簡略にするために、その他の部分に関しては省略されている。また、イオンビーム106のビームの直径は、例えば数ミリメートルから数十ミリメートであり、一方、ゲート電極202の幅は、例えば数マイクロメートル以下のオーダーである。従って、図3(a)〜(c)は、これらの大きさ関係の実態を表したものではなく、説明のために大きさ関係を変形させて描かれている。
【0014】
図3(a)に表されるように、発散角とビームの傾きが共に小さいイオンビーム106aが、半導体基板110にほぼ垂直に照射される場合、イオンビーム106aは、ゲート電極202の側壁に照射される部分は少なく、その多くは、イオン注入領域204に照射される。
【0015】
一方、図3(b)に表されるように、発散角が大きいがビームの垂直方向(半導体基板の主面に対して)からの傾きが小さいイオンビーム106bが、半導体基板110に照射される場合、イオンビーム106bは、ゲート電極202の側壁に照射される部分が大きくなり、イオン注入領域204に注入されるイオンの量は、図3(a)に表された場合に比べ、実効的に少なくなる。
【0016】
一方、図3(c)に表されるように、発散角は小さいがビームの垂直方向からの傾きが大きいイオンビーム106cが、半導体基板110に照射される場合、イオンビーム106cは半導体基板110に対して斜め方向から照射される。この場合、イオンビーム106cは、ゲート電極202によって遮蔽される部分が大きくなり、イオン注入領域204に注入されるイオンの量は、やはり、図3(a)に表された場合に比べて、実効的に少なくなる。
【0017】
このように、イオンビーム106の発散角やビームの傾きが大きくなると、半導体基板110上の所定のイオン注入領域204に注入されるイオンの量が減少し、結果として半導体装置の特性を変化させ、問題となる。この問題は、上記のように、半導体基板110の上にイオンを遮蔽するゲート電極202のような段差があり、この段差の底面(下側部分)にイオン注入する際に問題となる。さらには、半導体基板110上にトレンチ構造のような段差があり、この段差の底面にイオン注入する際にも問題となる。
【0018】
図3(c)に表された、ビームの傾きが大きい場合は、イオンビーム106cに対する半導体基板110の相対角度を調整し、イオンビーム106cが半導体基板110に垂直に照射されるようにして、補正できる可能性がある。しかしながら、図3(b)に示したように、発散角が大きい場合は、イオンビーム106bに対する半導体基板110の相対角度の調整は、効果がない。
【0019】
本発明の第1の実施形態においては、イオンビーム106の発散角とビームの傾きを測定し、測定された発散角とビームの傾きの値に基づいて、半導体基板110へのイオン注入量が所定の範囲内に管理されるように、イオン源部102、加減速部104、イオンビーム走査部109、イオンビーム遮断部103、基板保持部112のうちの少なくとも1つの動作を制御する。例えば、イオン源部102で発生するイオンの量を制御するために、イオン源部102のイオン電流を増減することもできる。また、イオンビーム走査部109の動作を制御することにより、イオンビーム106と基板110との相対的位置の変化速度、変化回数、変化方向を変えることができる。具体的には、イオンビーム106の走査速度、走査回数、及び走査方向を変えることができる。また、半導体基板110を保持する基板保持部112の動作を制御することにより、半導体基板110のイオンビーム106に対する走査速度、走査回数、走査方向、及び回転数を変えることができる。また、イオンビーム遮断部103の動作を制御することにより、イオンビーム106の照射時間を変えることもできる。さらには、上記のいくつかを組み合わせた制御を行っても良い。また、上記の制御と同時に基板保持部112の動作を制御することにより、イオンビーム106に対する半導体基板110の設置角度を変更しながら上記の制御を行っても良い。
【0020】
これにより、発散角及びビームの傾きが変化しても、高い精度でイオン注入量を制御できる。これにより、性能の安定した半導体装置が安価に得られる。
【0021】
以下、イオンビーム106の発散角とビームの傾きの測定に関して説明する。
本発明の第1の実施形態のイオン注入装置は、図1に示したように、イオンビームの形状(強度分布)を測定する測定部114を有する。この測定部114は、例えば、ファラデーカップをイオンビーム106のビーム方向とほぼ垂直な平面内で2次元的に走査させる、または、2次元的に複数個のファラデーカップを並べることなどによって実現できる。あるいは、メッシュ状の導電細線をイオンビーム106上に挿入し、イオンビーム強度の2次元分布を測定することもできる。また、導電細線をイオンビーム106上を走査することによっても実現できる。さらには、イオンビーム強度を測定するためのセンサーを、基板110とほぼ同じ位置に挿入設置し、半導体基板110に実際にイオン注入を行う前にイオンビーム強度を測定するなど、イオンビーム強度が2次元的に測定できる各種の方法を利用することができる。なお、イオンビームの強度の測定は、必ずしも2次元的に行う必要はなく、必要によっては1次元でも良い。
【0022】
図4(a)〜(c)は、本発明の第1の実施形態に係るイオンビームの形状の測定結果を例示する模式図である。
これらの図において、横軸は、半導体基板110と平行な平面上にX−Y平面をとった場合のX軸上の位置を示し、縦軸は、Y軸上の位置を示す。また、X0及びY0はこれらの軸に関する基準点を示し、(X0,Y0)は、例えば、スリットの開口部の中心とすることができる。また、これらの図に描かれた曲線252〜256は、イオンビーム106の強度の等強度線252〜256を示している。すなわち、等強度線252はイオンビーム106の強度が高い(イオン電流が大きい)等強度線であり、等強度線256はイオンビーム強度が低い(イオン電流が小さい)等強度線であり、等強度線254は、これらの中間の強度の等強度線である。
【0023】
図4(a)は、図3(a)に表された、発散角とビームの傾きが共に小さいイオンビーム106aの場合に相当している。すなわち、イオンビーム106の等強度線252〜256は、基準点(X0,Y0)を中心とし、その等強度線が密である。
図4(b)は、図3(b)に表された、発散角が大きくビームの傾きが小さいイオンビーム106bの場合に相当している。すなわち、イオンビーム106の等強度線252〜256は、基準点(X0,Y0)を中心とし、その等強度線の間隔が広がっている。すなわち、イオンビームが広がっている。
図4(c)は、図3(c)に表された、発散角が小さくビームの傾きが大きいイオンビーム106cの場合に相当している。すなわち、イオンビーム106の等強度線252〜256は、その中心が基準点(X0,Y0)からずれている。
【0024】
以下、イオンビーム106の発散角とビームの傾きを表すパラメータについて説明する。
図5は、イオンビーム106の発散角とビームの傾きを表すパラメータを示す模式図である。
図5において、横軸と縦軸は、図4と同様に、それぞれX軸上及びY軸上の位置を示す。また、図4と同様に、等強度線252〜256は、イオンビーム106の2次元的な強度分布を示す等強度線である。
【0025】
図5において、例えば、等強度線256のX軸方向の幅AxをX軸方向の発散角Ax、Y軸方向の幅AyをY軸方向の発散角Ayと定義することができる。
【0026】
また、等強度線252〜256の中心点Cの基準点(X0,Y0)からのずれをイオンビーム106のビームの傾きと定義することができる。すなわち、X方向の距離Bxを、X方向のビームの傾きBxとし、またY方向の距離Byを、Y方向のビームの傾きByと定義することができる。
なお、以上のX軸方向の発散角Ax、Y軸方向の発散角Ay、ビームの傾きBx、及びY方向のビームの傾きByは、それぞれ角度に変換することができ、それを用いても良い。
【0027】
本発明の第1の実施形態のイオン注入装置においては、これら、X軸方向の発散角Ax、Y軸方向の発散角Ay、X方向のビームの傾きBx、Y方向のビームの傾きByに基づいて、半導体基板110への実効的なイオン注入量が所定の範囲内になるように、イオン源部102、加減速部104、イオンビーム走査部109、イオンビーム遮断部103及び基板保持部112のうちの少なくとも1つの動作を制御し、イオン注入の処理条件を制御する。
【0028】
図6(a)〜(c)は、本発明の第1の実施形態に係るイオン注入装置の処理条件を例示する図である。
図6(a)の横軸は、発散角の測定値を示しており、上記で定義したAxやAyとすることができる。縦軸は、イオンの注入時間を示す。すなわち、発散角の測定値に基づいて制御部116が制御を行う際に用いる、イオン注入時間の設定曲線を示している。図6(a)に表されるように、本発明の第1の実施形態においては、発散角が変化するとイオン注入時間を変える。図6(a)の例では、発散角が大きくなると注入時間を長くする。すなわち、図3に関して前述したように、発散角が大きいとイオンビーム106の径が広がるため、半導体基板110の所定の位置に実効的に注入されるイオンの量が減少する。これを補正するために、本発明の第1の実施形態においては、発散角が大きくなると注入時間を長くする。なお、この注入時間の制御は、図6(a)に例示したように連続的に変化させてもよいし、発散角の変化に対して階段状に変化させてもよい。また、図6(a)に示すように、発散角がある値を超えるまでは注入時間を一定とし、発散角がある値を超えると注入時間を変化させるようにしてもよく、各種の設定ができる。なお、注入時間の変更は、例えばイオンビーム遮断部103の動作を制御することによって実現できる。
【0029】
また、図6(b)に表されるように、発散角が大きくなると半導体基板の走査速度を低下させることができる。このようにしても、半導体基板110の所定の位置に実効的に注入されるイオンの量を補正して、必要とされる量を注入することができる。なお、半導体基板の走査速度の変更は、例えば基板保持部112の動作を制御することによって実現できる。
【0030】
また、図6(c)に表されるように、発散角が大きくなると、イオン源部102のイオン電流を変化させることができる。すなわち、発散角が大きくなった時に、イオン電流を増加することにより、半導体基板110の所定の位置に実効的に注入されるイオンの量を補正して、必要とされる量を注入することができる。
【0031】
この他、半導体基板110の走査回数、走査方向、及び回転数や、イオンビーム106の走査速度、走査回数、及び走査方向などを制御する際にも、図6(a)〜(c)に例示したものと類似の設定曲線を用いることができる。
【0032】
上記においては、説明の簡単化のために、発散角が1つの場合について例示して説明したが、実際には、X方向の発散角AxとY方向の発散角Ayが測定される。例えば、X方向の発散角AxとY方向の発散角Ayの平均値等を発散角の代表値として用い、イオン注入処理を制御することができる。あるいは、X方向の発散角AxとY方向の発散角Ayに基づいて、イオンビーム106と半導体基板110の設置角度関係を変化させることを併用することができる。例えば、イオン注入時間の変更と同時に、イオンビーム106に対する半導体基板110の設置角度を変えても良い。また、イオンビーム106の走査方向や、半導体基板110の走査方向や回転方向などの2次元特性を変化させることで、より高い精度のイオン注入を実施することができる。
【0033】
図7(a)〜(c)は、本発明の第1の実施形態に係るイオン注入装置の処理条件を例示する図である。
図7(a)の横軸は、ビームの傾きの測定値を示しており、上記で定義したBxやByとすることができる。縦軸は、イオンの注入時間を示す。すなわち、ビームの傾きの測定値に基づいて制御部116が制御する際に用いる、イオン注入時間の設定曲線を示している。図7(a)に表されるように、ビームの傾きが大きくなると注入時間を長くする。すなわち、ビームの傾きが大きいとイオンビーム106が半導体基板110に対して斜め方向から照射されるため、半導体基板110の所定の位置に実効的に注入されるイオンの量が減少する。これを補正するために、本発明の第1の実施形態においては、ビームの傾きが大きくなると注入時間を長くする。この注入時間の制御は、連続的に変化させてもよいし、ビームの傾きの変化に対して階段状に変化させてもよい。また、ビームの傾きがある値を超えるまでは注入時間を一定をし、ビームの傾きがある値を超えると注入時間を変化させるようにしてもよく、各種の設定ができる。
【0034】
また、図7(b)に表されるように、ビームの傾きが大きくなると半導体基板の走査速度を低下させることができる。このようにしても、半導体基板110の所定の位置に実効的に注入されるイオンの量を補正して、必要とされる量を注入することができる。
【0035】
また、図7(c)に表されるように、ビームの傾きが大きくなると、イオン源部102のイオン電流を変化させることができる。すなわち、発散角が大きくなった時に、イオン電流を増加することにより、半導体基板110の所定の位置に実効的に注入されるイオンの量を補正して、必要とされる量を注入することができる。この他、半導体基板110の走査回数、走査方向、及び回転数や、イオンビーム106の走査速度、走査回数、及び走査方向などを制御する際にも、図7(a)〜(c)に例示したものと類似の設定曲線を用いることができる。
【0036】
また、上記においては、説明の簡単化のために、ビームの傾きが1つの場合について例示して説明したが、実際には、X方向のビームの傾きBxとY方向のビームの傾きByが測定される。例えば、X方向のビームの傾きBxとY方向のビームの傾きByの平均値等をビームの傾きの代表値として用い、イオン注入処理を制御することができる。あるいは、X方向のビームの傾きBxとY方向のビームの傾きByに基づいて、イオンビーム106と半導体基板110の設置角度関係を変化させることを併用することができる。例えば、イオン注入時間の変更と同時に、イオンビーム106に対する半導体基板110の設置角度を変えても良い。また、イオンビーム106の走査方向や、イオンビーム106に対する半導体基板110の走査方向や回転方向などの2次元特性を変化させることで、より高い精度のイオン注入を実施することができる。
【0037】
さらに、上記の4つの測定値、すなわち、X軸方向の発散角Ax、Y軸方向の発散角Ay、X方向のビームの傾きBx、Y方向のビームの傾きByに基づいて、半導体基板110への実効的なイオン注入量が所定の範囲になるように、上記に例示した各種の制御のいくつかを組み合わせた制御により、イオン源部102、加減速部104、イオンビーム走査部109、イオンビーム遮断部103及び基板保持部112のうちの少なくとも1つの動作を制御することもできる。
このように、本発明の第1の実施形態に係るイオン注入装置100によれば、発散角及びビームの傾きが変化しても、高い精度でイオン注入量を制御できる。これにより、特性ばらつきに伴う歩留まり低下を防止でき、性能の安定した半導体装置が安価に得られる。
【0038】
なお、図5において、等強度線252〜256は、イオンビームの強度を相対的に示すものである。従って、図5において、最外線の等強度線256に基づいて発散角を定義する例を示したが、これに制限されず、発散角の定義には別の等強度線を用いることもできる。さらには、等強度線の絶対値による定義だけではなく、イオンビーム106の強度の2次元分布の変化率、あるいは積分値などによって定義することもできる。あるいは、それらを複合させた定義としても良い。
また、等強度線252〜256の中心点Cの定義も各種の方法によることができる。すなわち、イオンビーム強度の2次元分布の内、最大値を与える点を中心点Cとすることもできる。また、等強度線252〜256の内で、中心側(強度が強い)の等強度線252のX方向の領域とY方向の領域の中心点とすることもできる。さらには、所定の強度の等強度線に基づいて定めることもできる。さらには、イオンビーム106の強度の2次元分布の変化率、あるいは積分値などによって定義することもできる。あるいは、それらを複合させた定義としても良い。
【0039】
さらには、発散角とビームの傾きに関して、X軸方向とY軸方向に平行な成分である上記の4つの測定値、すなわち、X軸方向の発散角Ax、Y軸方向の発散角Ay、X方向のビームの傾きBx、Y方向のビームの傾きByだけではなく、X軸方向とY軸方向に平行でない成分をさらに用いても良い。
このように、イオンビーム106のビームの傾きと発散角は、各種の定義が可能である。
【0040】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係るイオン注入方法について説明する。
図8は、本発明の第2の実施形態に係るイオン注入方法を例示するフローチャート図である。
図8に表されるように、第2の実施形態に係るイオン注入方法においては、イオンビームを発生し(S10)、そのイオンビーム106の発散角とビームの傾きを測定する(S20)。そして、発散角とビームの傾きの測定値に基づきイオン注入の処理条件を補正する(S30)。その補正に基づきイオン注入処理を行う(S40)。
【0041】
S20工程における、イオンビーム106の発散角とビームの傾きの測定には、すでに説明した手法を用いることができる。また、S30工程においては、発散角とビームの傾きの測定結果に基づき、例えば、すでに説明した、X軸方向の発散角Ax、Y軸方向の発散角Ay、X方向のビームの傾きBx、Y方向のビームの傾きByを求め、これらに基づき、図6(a)〜(c)及び、図7(a)〜(c)に関して前述した、イオン注入時の各種処理条件の設定値の補正が行われる。すなわち、イオンの量を制御するために、イオン源部102のイオン電流を増減することもできる。また、イオンビーム走査部109の動作を制御することにより、イオンビーム106と基板110との相対的位置の変化速度、変化回数、変化方向を変えることができる。具体的には、イオンビーム106の走査速度、走査回数、及び走査方向などを変えることができる。また、半導体基板110を保持する基板保持部112の動作を制御することにより、半導体基板110の走査速度、走査回数、走査方向、及び回転数を変えることができる。また、イオンビーム遮断部103の動作を制御することにより、イオンビーム106の照射時間を変えることもできる。さらに、上記のいくつかを組み合わせた制御を行っても良い。また、上記の制御と同時に基板保持部112の動作を制御することにより、イオンビーム106に対する半導体基板110の設置角度を変更しながら上記の制御を行っても良い。
そして、S40工程においては、これらの設定値の補正に基づきイオン注入処理を実施する。
【0042】
このように、本発明のイオン注入方法によれば、発散角及びビームの傾きが変化しても、半導体基板へのイオン注入状態を高い精度で制御することができる。これにより、特性ばらつきに伴う歩留まり低下を防止でき、性能の安定した半導体装置が安価に得られる。
【0043】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施形態に係る半導体装置の製造方法について説明する。
(第1の実施例)
図9は、本発明の第3の実施形態に係る第1の実施例の半導体装置の構造を例示する断面図である。
【0044】
図9に表されるように、実施例1の半導体装置は、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)であり、不純物濃度が基板の深さ方向に不均一なチャネル構造を有している。
【0045】
図9に表されるように、第1の実施例で製造される半導体装置は、半導体基板510上にゲート絶縁膜542を有し、このゲート絶縁膜542上にポリシリコンからなるゲート電極543を有している。このゲート電極543の側面にはゲート側壁544が設けられ、ゲート電極543の表面及びソース・ドレイン領域548の表面にはサリサイド構造を用いた、金属シリサイド膜547が形成されている。
【0046】
シリコンからなる半導体基板510内にはゲート電極543をマスクとしてイオン注入及び拡散が行われ、半導体基板510の表面にソース・ドレイン・エクステンション領域545が形成されている。また、チャネル領域においては、シリコン基板541の深さ方向の不純物濃度が不均一となっている。
【0047】
つまり、図9に表されるように、ソース・ドレイン・エクステンション領域545の底面だけでなく側面にもハロー領域546が形成されている。このハロー領域546は、斜めイオン注入法により作製される。
【0048】
以下、図9に表された半導体装置の製造方法について説明する。
まず、シリコンからなる半導体基板510の表面にウェル、素子分離領域、及びチャネル領域を形成する。次に、半導体基板510上に例えばシリコン酸化膜(SiO2)からなるゲート絶縁膜542を形成する。ここで、ゲート絶縁膜542はシリコン酸化膜に限定されず、例えば、SiOxNy、SiNx、Ta2O5、TiO2等でもよい。
次に、ゲート絶縁膜542上にポリシリコンを形成する。このポリシリコン上にパターニングされたレジストを形成し、このレジストをマスクとしてポリシリコン及びゲート絶縁膜542が除去される。これによって、ゲート電極543が形成される。ここで、ゲート電極543の材料はポリシリコンに限定されず、例えば、doped Poly、金属、金属シリサイド等を用いてもよい。
次に、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法により全面に薄膜のシリコン酸化膜が形成され、このシリコン酸化膜上にパターニングされたレジストを形成する。このレジストをマスクとして、例えばRIE(Reactive Ion Etching)法によりシリコン酸化膜が除去され、ゲート電極543の側面にゲート側壁544が形成される。ここで、ゲート側壁544の材料は、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜等を用いることができる。
【0049】
次に、注入角度0°のイオン注入と斜め方向からのハローイオン注入、及びRTA(Rapid Thermal Annealing)により、半導体基板510の表面に、ソース・ドレイン領域548、ソース・ドレイン・エクステンション領域545、及びハロー領域546を形成する。この際、本発明の第1及び第2実施形態で説明したイオン注入装置及びイオン注入方法によって、イオン注入を行う。すなわち、イオンビーム106の発散角とビームの傾きを測定し、この発散角とビームの傾きの測定値に基づき、イオン注入時の各種処理条件の設定値を補正する。その補正に基づきイオン注入処理を行う。
【0050】
なお、ハローイオン注入では、半導体基板の法線から例えば数十度の角度で行うことができ、また、ハローイオン注入に用いる元素としては、nMOSには例えばインジウム(In)等、pMOSには例えばアンチモン(Sb)等を用いることができる。
【0051】
次に、全面に金属膜を形成し、サリサイド技術により、ソース・ドレイン領域548及びゲート電極543の表面に金属シリサイド膜が形成される。金属膜の材料は、例えばチタン(Ti)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)等があげられる。
その後、コンタクト、配線等が形成され、図9に表される半導体装置が得られる。
【0052】
このようにして作製された半導体装置は、ソース・ドレイン領域、ソース・ドレイン・エクステンション領域、ハロー領域のイオン注入が、本発明のイオン注入装置及びイオン注入方法によって行われることにより、発散角及びビームの傾きが変化しても、高い精度でイオン注入量を制御できる。これにより、特性ばらつきに伴う歩留まり低下を防止でき、性能の安定した半導体装置が安価に得られる。
【0053】
(第2の実施例)
次に、本発明の第3の実施形態に係る第2の実施例について説明する。
図10は、本発明の第3の実施形態に係る第2の実施例の半導体装置の構造を例示する断面図である。
第2の実施例に係る半導体装置は、NAND型不揮発性半導体メモリ装置であり、図10は、1つのセル部分を示している。
【0054】
p型Si基板660上に、熱酸窒化膜(SiON膜)からなるトンネル絶縁膜661を介して、n+ 型多結晶Si層からなる浮遊ゲート電極662が形成されている。浮遊ゲート電極662上に、HfAlOxからなる電極間絶縁膜663が形成されている。そして、電極間絶縁膜663上にp+ 型多結晶Siからなる制御ゲート電極664が形成されている。そして、p型Si基板660上にトンネル絶縁膜661を挟んで、ソース・ドレイン領域666が形成されている。
【0055】
図11(a)〜(c)及び図12(a)、(b)は、本発明の第2の実施例の半導体装置の製造方法を例示する工程断面図である。これらの図において、左側の図面と右側の図面は、互いに直交する断面を示している。
まず、図11(a)に表されるように、所望の不純物をドーピングしたp型Si基板601(660)の表面に、トンネル絶縁膜となる厚さ約7nmから8nmのSiON膜602(661)を熱酸化法で形成後、浮遊ゲート電極となる厚さ60nmのリンドープのn+ 型多結晶Si層603(662)をCVD法で堆積する。このときの温度は620℃である。続いて、素子分離加工のためのマスク材604をCVD法で堆積する。
【0056】
その後、レジストマスク(図示せず)を用いたRIE法により、マスク材604、多結晶Si層603、SiON膜602を順次エッチング加工し、さらにSi基板601の露出領域をエッチングして、深さ100nmの素子分離溝606を形成する。
【0057】
次いで、図11(b)に表されるように、全面に素子分離用のシリコン酸化膜607を堆積して、素子分離溝606を完全に埋め込む。その後、表面部分のシリコン酸化膜607をCMP(Chemical Mechanical Polishing)法で除去して、表面を平坦化する。
次いで、図11(c)に表されるように、露出したマスク材604を選択的にエッチング除去した後、シリコン酸化膜607の露出表面を希弗酸溶液でエッチング除去し、多結晶Si層603の側壁面608を露出させる。その後、全面に電極間絶縁膜となる厚さ15nmのハフニウムアルミネート(HfAlOx)膜609(663)を形成する。
【0058】
次いで、図12(a)に表されるように、制御ゲート電極としてCVD法でボロンドープのp+ 型多結晶Si層610(664)を620℃で堆積して形成し、厚さ100nmの導電層を形成する。
【0059】
その後、レジストマスク(図示せず)を用いたRIE法により、多結晶Si層610、HfAlOx膜609、多結晶Si層603、SiON膜602を順次エッチング加工して、ワード線方向のスリット部612を形成する。これにより、浮遊ゲート電極及び制御ゲート電極の形状が確定する。
【0060】
次に、図12(b)に表されるように、電極側壁酸化膜としてシリコン酸化膜615を熱酸化法で形成後、イオン注入法を用いてn+ 型のソース/ドレイン拡散層616(666)を形成する。この際、本発明の第1及び第2実施形態で説明したイオン注入装置及びイオン注入方法によって、イオン注入を行う。すなわち、イオンビーム106の発散角とビームの傾きを測定し、この発散角とビームの傾きの測定値を基にイオン注入時の処理条件を補正する。その補正された処理条件に基づきイオン注入処理を行う。
【0061】
さらに、全面を覆うようにシリコン酸化膜などの層間絶縁膜617をCVD法で形成する。その後は、周知の方法で配線層等を形成して不揮発性メモリセルが完成する。
このようにして作製された半導体装置は、本発明のイオン注入装置及びイオン注入方法によって、n+ 型のソース/ドレイン拡散層616(666)を形成することにより、発散角及びビームの傾きが変化しても、高い精度でイオン注入量を制御できる。これにより、特性ばらつきに伴う歩留まり低下を防止でき、性能の安定した半導体装置が安価に得られる。
【0062】
なお、本実施例において例示された、p型Si基板660、トンネル絶縁膜661、浮遊ゲート電極662、電極間絶縁膜663、制御ゲート電極664には各種の構造と各種の材料を用いることができる。
【0063】
(第3の実施例)
本発明の第3の実施形態である半導体装置の製造方法は、半導体装置が段差となるトレンチ構造を有する場合にも適用できる。
図13(a)、(b)は、トレンチ720を有する半導体基板710に対するイオン注入の状態を例示する模式図である。
すなわち、図13(a)は、トレンチ(段差)720の側壁にイオンビーム106を照射しイオン注入する場合を例示している。また、図13(b)は、トレンチ(段差)720の底面にイオンビーム106照射しイオン注入する場合を例示している。この内、図13(a)に例示されたトレンチ720の側壁にイオン注入を行う半導体装置の具体例が、以下説明する第3の実施例である。
【0064】
図14は、第3の実施形態に係る第3の実施例の半導体装置の構造を例示する断面図
である。図14に表されるように、本実施例の半導体装置810は、DT(Deep Trench)MOS型の構造を有する。
【0065】
高不純物濃度のn++型シリコン基板802の主面上に、n型シリコンの第1のピラー領域(以下、単に「n型ピラー領域」とも称する)812と、p型シリコンの第2のピラー領域(以下、単に「p型ピラー領域」とも称する)814とが並列して設けられている。n型ピラー領域812及びn型ピラー領域814は、それぞれ、基板802の主面に対して略垂直に延在して設けられている。p型ピラー領域814の両側面にはn型ピラー領域812が隣接してPN接合部を形成している。
【0066】
n型ピラー領域812において、p型ピラー領域814が隣接する面の反対側の面には、トレンチT及びこのトレンチTに埋め込まれた誘電体816が隣接している。トレンチT及び誘電体816は、n型ピラー領域812間に挟まれるようにして設けられている。トレンチTの側壁は上端部808を除いて基板802の主面に対して略垂直である。
【0067】
p型ピラー領域814の上にはp型シリコンのベース領域(pウェル)818が設けられ、さらにこの表面部分にはベース領域818よりも不純物濃度が大なるp+型シリコンのベース領域(p+ウェル)819が設けられている。これらベース領域818、819の表面部分には、選択的に、n+型シリコンのソース領域(半導体主電極領域)821が設けられている。
【0068】
n型ピラー領域812の上には、n型ピラー領域812よりも不純物濃度が大なるn+型シリコンの半導体領域813が設けられている。半導体領域813は、ベース領域818と、トレンチTの側壁の上端部808近傍部分との間に挟まれるようにして設けられている。
【0069】
誘電体816(トレンチT)から、この両側の半導体領域813、ベース領域818を経てソース領域821に至る部分の表面上にはゲート絶縁膜823が設けられ、このゲート絶縁膜823の上にゲート電極827が設けられている。ゲート電極827の周囲と上面は層間絶縁膜825により覆われている。層間絶縁膜825に覆われていないソース領域821の一部とベース領域819の上、及び層間絶縁膜825の上にはソース電極829が設けられ、ソース領域821はソース電極829に接続されている。基板802の主面の反対面にはドレイン電極831が設けられている。
【0070】
以上のように構成される半導体装置810において、ゲート電極827に所定のゲート電圧を印加すると、その直下のp型ベース領域818の表面付近にnチャネルが形成され、n+型ソース領域821とn+型半導体領域813とが導通する。その結果、n+型ソース領域821、n+型半導体領域813、n型ピラー領域812、n++型基板802を介して、ソース電極829とドレイン電極831間に主電流経路が形成され、ソース電極829とドレイン電極831間はオン状態とされする。
【0071】
以下、上述した半導体装置810の製造方法の一例について説明する。
図15乃至図20は、本発明の第3の実施例の半導体装置810の製造方法を例示する工程断面図である。
【0072】
まず、高不純物濃度のn++型シリコン基板802の主面上に、低不純物濃度のn−型シリコン層804をエピタキシャル成長させ、フォトリソグラフィとエッチングにより、図15に表されるように、n−型シリコン層804の表面から基板802に達するトレンチTが形成される。トレンチTは基板802の主面に対して略垂直である。
【0073】
次いで、図16に表されるように、熱酸化法によりn−型シリコン層804の表面に酸化膜806を成長させる。図16中、1点鎖線は酸化前のn−型シリコン層804の表面及びトレンチTの側壁の上端部を表す。このとき、n−型シリコン層804の表面だけではなく、その表面から続く部分であるトレンチTの側壁の上端部808にも熱酸化を進行させる。その結果、側壁の上端部808は、酸化膜806が成長した分、n−型シリコン層804側に後退し、n−型シリコン層804の表面側に向かうにつれてトレンチTの内径が徐々に大となる、すなわちトレンチが拡開するように傾斜する。以上のようにして、n−型シリコン層804の表面、及びトレンチTの側壁の上端部808が酸化膜806で覆われる。この酸化膜806は、後述するイオン注入のマスクとして機能する。
【0074】
次いで、図17に表されるように、トレンチTの側壁に対して斜め方向からp型不純物である例えばボロン(B)を打ち込む。これは、トレンチTの側壁の片側面にイオン注入した後、半導体基板を180度回転させて反対側面にもイオン注入を行う。トレンチTの側壁において、酸化膜806で覆われていないn−型シリコン層804が露出した部分にボロンが注入され、酸化膜806で覆われた上端部808にはボロンは注入されない。この際、本発明の第1及び第2実施形態で説明したイオン注入装置及びイオン注入方法によって、イオン注入を行う。すなわち、イオンビーム106の発散角とビームの傾きを測定し、この発散角とビームの傾きの測定値に基づき、イオン注入時の処理条件を補正する。そして、その補正された処理条件に基づきイオン注入処理を行う。
【0075】
次いで、図18に表されるように、トレンチTの側壁の上端部808を覆っている酸化膜806の端を等方性エッチングにより除去する。これにより、トレンチTの側壁の上端部808においてn−型シリコン層804の表面から遠い側の一部分が露出される。
【0076】
次いで、図19に表されるように、トレンチTの側壁に対して斜め方向からn型不純物である例えばヒ素(As)を打ち込む。これは、トレンチTの側壁の片側面にイオン注入した後、半導体基板を180度回転させて反対側面にもイオン注入を行う。ヒ素は、トレンチTの側壁において、酸化膜806で覆われずに露出している上端部808の一部にも注入される。この際、本発明の第1及び第2実施形態で説明したイオン注入装置及びイオン注入方法によって、イオン注入を行う。すなわち、イオンビーム106の発散角とビームの傾きを測定し、この発散角とビームの傾きの測定値に基づき、イオン注入時の処理条件を補正する。そして、その補正された処理条件に基づきイオン注入処理を行う。
【0077】
上述したイオン注入工程の後、熱処理を施すことにより、n−型シリコン層804に注入されたヒ素とボロンを拡散及び活性化させる。この後、図20に表すように、トレンチTの側壁及び底面に熱酸化により酸化膜を形成し、さらに気相成長法などにより酸化シリコンまたは窒化シリコンなどを、トレンチT内を埋め込むように堆積する。この後、CMP(Chemical Mechanical Polishing)やエッチングなどにより、トレンチTを充填する部分以外の不要な誘電体816を除去すると共に、表面を平坦化する。
【0078】
次いで、シリコン層804の表面に選択的にゲート絶縁膜823を形成し、そのゲート絶縁膜823の上にゲート電極827を形成する。次いで、それらゲート絶縁膜823及びゲート電極827をマスクとしてp型ピラー領域814の表面にイオン注入を行い、自己整合的にp型ベース領域818を形成する。この際、本発明の第1及び第2実施形態で説明したイオン注入装置及びイオン注入方法によって、イオン注入を行う。すなわち、イオンビーム106の発散角とビームの傾きを測定し、この発散角とビームの傾きの測定値に基づき、イオン注入時の処理条件を補正する。そして、その補正された処理条件に基づきイオン注入処理を行う。
【0079】
次いで、p型ベース領域818の表面には、ソース電極829とのオーミックコンタクトのためのp+型ベース領域819をさらに形成する。次いで、ベース領域818、819の表面に選択的にn+型ソース領域821を形成する。この後、ゲート電極827を覆うように層間絶縁膜825を形成し、その層間絶縁膜825に、ソースコンタクトのためのコンタクトホールを形成する。このコンタクトホールからは、ベース領域819及びソース領域821の一部が露出される。そして、コンタクトホールを埋めるようにして層間絶縁膜825の上にソース電極829を形成する。これにより、ソース領域821はソース電極829と接続される。また、基板802の主面の反対面には、ドレイン電極831を形成する。
【0080】
以上のようにして、図14に表される半導体装置の構造が得られる。
このようにして作製された半導体装置は、本発明のイオン注入装置及びイオン注入方法によって、トレンチの側壁に安定してイオンを注入することにより、発散角及びビームの傾きが変化しても、高い精度でイオン注入量を制御できる。これにより、特性ばらつきに伴う歩留まり低下を防止でき、性能の安定した半導体装置が安価に得られる。
【0081】
なお、第3の実施例において、半導体の導電性に関し、n型とp型とを互いに入れ替えても良い。
【0082】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、注入するイオン種や半導体基板を構成する各要素の具体的な寸法関係や材料、並びにイオン注入装置を構成する各要素に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0083】
その他、本発明の実施の形態として上述したイオン注入装置、イオン注入方法、半導体装置の製造方法を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全てのイオン注入装置、イオン注入方法、半導体装置の製造方法も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0084】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るイオン注入装置の構造を示す模式図である。
【図2】(a)〜(c)は、イオンビームの各種の形状を表した模式図である。
【図3】(a)〜(c)は、各種の形状のイオンビームが半導体基板に照射される状態を示す模式図である。
【図4】(a)〜(c)は、本発明の第1の実施形態に係るイオンビームの形状の測定結果を例示する模式図である。
【図5】イオンビームの発散角とビームの傾きを表すパラメータを示す模式図である。
【図6】(a)〜(c)は、本発明の第1の実施形態に係るイオン注入装置の処理条件を例示する図である。
【図7】(a)〜(c)は、本発明の第1の実施形態に係るイオン注入装置の処理条件を例示する図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係るイオン注入方法を例示するフローチャート図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る第1の実施例の半導体装置の構造を例示する断面図である。
【図10】本発明の第3の実施形態に係る第2の実施例の半導体装置の構造を例示する断面図である。
【図11】(a)〜(c)は、本発明の第2の実施例の半導体装置の製造方法を例示する工程断面図である。
【図12】(a)、(b)は、図11(c)に続く工程断面図である。
【図13】(a)、(b)は、トレンチを有する半導体基板に対するイオン注入の状態を例示する模式図である。
【図14】本発明の第3の実施形態に係る第3の実施例の半導体装置の構造を例示する断面図である。
【図15】本発明の第3の実施例の半導体装置の製造方法を例示する工程断面図である。
【図16】図15に続く工程断面図である。
【図17】図16に続く工程断面図である。
【図18】図17に続く工程断面図である。
【図19】図18に続く工程断面図である。
【図20】図19に続く工程断面図である。
【符号の説明】
【0086】
100 イオン注入装置
102 イオン源部
103 イオンビーム遮断部
104 加減速部
106 イオンビーム
108 スリット
109 イオンビーム走査部
110 基板
112 基板保持部
114 測定部
116 制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンを生成するイオン源部と、
前記イオンを加速し、イオンビームを生成する加減速部と、
前記イオンビームを遮断するイオンビーム遮断部と、
前記イオンビームの、発散角とビームの傾きの少なくともいずれかを測定する測定部と、
前記イオンビームが照射される基板を保持する基板保持部と、
前記イオン源部、前記加減速部、前記イオンビーム遮断部及び前記基板保持部のうちの少なくとも1つの動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記測定部により測定された、前記発散角と前記ビームの傾きの少なくともいずれかの測定値に基づいて、前記基板へのイオン注入量が所定の範囲内に管理されるように、イオン注入の処理条件を補正して、前記イオン源部、前記加減速部、前記イオンビーム遮断部及び前記基板保持部のうちの少なくとも1つの動作を制御することを特徴とするイオン注入装置。
【請求項2】
前記処理条件は、イオン電流、イオン注入時間、前記イオンビームと前記基板との相対的位置の変化速度、前記イオンビームと前記基板との相対的位置の変化回数、及び、前記イオンビームと前記基板との相対的位置の変化方向のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1記載のイオン注入装置。
【請求項3】
イオンビームを発生し、
前記イオンビームの、発散角とビームの傾きの少なくともいずれかを測定し、
前記発散角と前記ビームの傾きの少なくともいずれかの測定値に基づいて、基板へのイオン注入量が所定の範囲内に管理されるように、イオン注入の処理条件を補正し、
前記補正された処理条件に基づきイオン注入処理を行うことを特徴とするイオン注入方法。
【請求項4】
前記処理条件は、イオン電流、イオン注入時間、前記イオンビームと前記基板との相対的位置の変化速度、前記イオンビームと前記基板との相対的位置の変化回数、及び、前記イオンビームと前記基板との相対的位置の変化方向のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項3記載のイオン注入方法。
【請求項5】
半導体基板の上に段差を形成し、
前記段差の底面及び側壁の少なくともいずれかに請求項3または4に記載のイオン注入方法によりイオン注入処理を行うことを備えたことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項1】
イオンを生成するイオン源部と、
前記イオンを加速し、イオンビームを生成する加減速部と、
前記イオンビームを遮断するイオンビーム遮断部と、
前記イオンビームの、発散角とビームの傾きの少なくともいずれかを測定する測定部と、
前記イオンビームが照射される基板を保持する基板保持部と、
前記イオン源部、前記加減速部、前記イオンビーム遮断部及び前記基板保持部のうちの少なくとも1つの動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記測定部により測定された、前記発散角と前記ビームの傾きの少なくともいずれかの測定値に基づいて、前記基板へのイオン注入量が所定の範囲内に管理されるように、イオン注入の処理条件を補正して、前記イオン源部、前記加減速部、前記イオンビーム遮断部及び前記基板保持部のうちの少なくとも1つの動作を制御することを特徴とするイオン注入装置。
【請求項2】
前記処理条件は、イオン電流、イオン注入時間、前記イオンビームと前記基板との相対的位置の変化速度、前記イオンビームと前記基板との相対的位置の変化回数、及び、前記イオンビームと前記基板との相対的位置の変化方向のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1記載のイオン注入装置。
【請求項3】
イオンビームを発生し、
前記イオンビームの、発散角とビームの傾きの少なくともいずれかを測定し、
前記発散角と前記ビームの傾きの少なくともいずれかの測定値に基づいて、基板へのイオン注入量が所定の範囲内に管理されるように、イオン注入の処理条件を補正し、
前記補正された処理条件に基づきイオン注入処理を行うことを特徴とするイオン注入方法。
【請求項4】
前記処理条件は、イオン電流、イオン注入時間、前記イオンビームと前記基板との相対的位置の変化速度、前記イオンビームと前記基板との相対的位置の変化回数、及び、前記イオンビームと前記基板との相対的位置の変化方向のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項3記載のイオン注入方法。
【請求項5】
半導体基板の上に段差を形成し、
前記段差の底面及び側壁の少なくともいずれかに請求項3または4に記載のイオン注入方法によりイオン注入処理を行うことを備えたことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2009−87603(P2009−87603A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−253308(P2007−253308)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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