説明

半導体装置の作製方法

【課題】オフ電流の極めて小さい酸化物半導体膜を用いたトランジスタを提供する。また、該トランジスタを適用することで、消費電力の極めて小さい半導体装置を提供する。
【解決手段】基板上に加熱処理により酸素を放出する下地絶縁膜を形成し、下地絶縁膜上に第1の酸化物半導体膜を形成し、基板を加熱処理する。次に、第1の酸化物半導体膜上に導電膜を形成し、該導電膜を加工してソース電極およびドレイン電極を形成する。次に、第1の酸化物半導体膜を加工して第2の酸化物半導体膜を形成した直後にソース電極、ドレイン電極および第2の酸化物半導体膜を覆うゲート絶縁膜を形成し、ゲート絶縁膜上にゲート電極を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
トランジスタなどの半導体素子を含む回路を有する半導体装置の作製方法に関する。例えば、電源回路に搭載されるパワーデバイス、メモリ、サイリスタ、コンバータ、イメージセンサなどを含む半導体集積回路、液晶表示パネルに代表される電気光学装置、発光素子を有する発光表示装置等を部品として搭載した電子機器に関する。
【0002】
なお、本明細書中において半導体装置は、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般を指し、電気光学装置、発光表示装置、半導体回路および電子機器は全て半導体装置である。
【背景技術】
【0003】
液晶表示装置に代表されるように、ガラス基板等に形成されるトランジスタの多くは非晶質シリコン、多結晶シリコンなどによって構成されている。非晶質シリコンを用いたトランジスタは電界効果移動度が低いものの、ガラス基板の大面積化に対応することができる。また、多結晶シリコンを用いたトランジスタの電界効果移動度は高いがガラス基板の大面積化には対応できないという欠点を有している。
【0004】
シリコンを用いたトランジスタのほかに、近年は酸化物半導体を用いてトランジスタを作製し、電子デバイスや光デバイスに応用する技術が注目されている。例えば、酸化物半導体として、酸化亜鉛、In−Ga−Zn−O系酸化物を用いてトランジスタを作製し、表示装置の画素のスイッチング素子などに用いる技術が特許文献1および特許文献2で開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−123861号公報
【特許文献2】特開2007−96055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
酸化物半導体膜を用いたオフ電流の極めて小さいトランジスタを提供することを課題の一とする。また、該トランジスタを適用することで、消費電力の極めて小さい半導体装置を提供することを課題の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
基板上に、下地絶縁膜を形成し、該下地絶縁膜上に第1の酸化物半導体膜を形成した後で加熱処理を行う。次に、第1の酸化物半導体膜上に導電膜を形成し、該導電膜を加工してソース電極およびドレイン電極を形成する。次に、第1の酸化物半導体膜を加工して第2の酸化物半導体膜を形成した後、他の工程を挟むことなくソース電極、ドレイン電極および第2の酸化物半導体膜を覆うゲート絶縁膜を形成し、ゲート絶縁膜上にゲート電極を形成する。
【0008】
または、基板上に、加熱処理により酸素を放出する下地絶縁膜を形成し、該下地絶縁膜上に第1の酸化物半導体膜を形成し、第1の酸化物半導体膜上に導電膜を形成し、その後で加熱処理を行う。次に、導電膜を加工してソース電極およびドレイン電極を形成する。次に、第1の酸化物半導体膜を加工して第2の酸化物半導体膜を形成した後、他の工程を挟むことなくソース電極、ドレイン電極および第2の酸化物半導体膜を覆うゲート絶縁膜を形成し、ゲート絶縁膜上にゲート電極を形成する。
【0009】
第2の酸化物半導体膜を形成した後、他の工程を挟むことなくゲート絶縁膜で側面を覆うことを本発明の技術的思想の一とする。
【0010】
ここで、トランジスタのオフ電流の低減に関連し、酸化物半導体膜の側面を介して流れる電流について説明する。
【0011】
酸化物半導体膜をエッチング処理などにより加工すると、酸化物半導体膜の側面は活性となる。
【0012】
酸化物半導体膜の側面が活性であると、減圧雰囲気または還元雰囲気において、酸素を引き抜かれ、酸化物半導体膜の側面に酸素欠損を生じる。特に、高温であると酸素欠損が生じやすい。
【0013】
また、酸化物半導体膜をエッチング処理するとき、例えばドライエッチングにおいて酸化物半導体膜の側面が塩素ラジカル、フッ素ラジカル等を含むプラズマに曝されると、酸化物半導体膜の側面に露出する金属原子と、塩素ラジカル、フッ素ラジカル等とが結合する。このとき、金属原子と塩素原子、フッ素原子が結合して脱離するため、酸化物半導体膜中に当該金属原子と結合していた酸素原子が活性となる。活性となった酸素原子は容易に反応し、脱離しやすい。そのため、ドライエッチングなどのプラズマ処理により酸化物半導体膜の側面には酸素欠損が生じやすい。
【0014】
酸化物半導体膜において、酸素欠損はドナーとなりキャリアを発生させる。
【0015】
即ち、酸素欠損が生じることで酸化物半導体膜の側面がn型化し、トランジスタのリーク源となる。
【0016】
また、酸化物半導体膜の側面を流れる電流はオフ電流を増加させるだけでなく、場合によっては酸化物半導体膜の側面をチャネル形成領域とするしきい値電圧の異なるトランジスタ(寄生トランジスタ)が形成されてしまう。
【0017】
そこで、第2の酸化物半導体膜を形成した後、他の工程を挟むことなくゲート絶縁膜で覆うことで酸化物半導体膜の側面を流れる電流を低減し、かつ寄生トランジスタの形成を抑制することができる。
【0018】
また、酸化物半導体膜の側面は電流が流れやすいため、ソース電極およびドレイン電極の主表面(上面または下面)酸化物半導体膜の側面とを接触しない構造とすることが好ましい。例えば、ソース電極およびドレイン電極を、酸化物半導体膜上の、酸化物半導体膜よりも内側に設けることで、ソース電極およびドレイン電極の主表面と酸化物半導体膜の側面とを直接接触させないようにすることができる。
【0019】
また、酸化物半導体膜の下地である絶縁膜を加熱処理により酸素を放出する絶縁膜とし、酸化物半導体膜を加工する前に該絶縁膜から酸素を放出させ、酸化物半導体膜に酸素を供給する。酸化物半導体膜を加工した場合、絶縁膜から放出された酸素が酸化物半導体膜で覆われていない領域から外方拡散してしまう。この現象を抑制し、効率よく酸素を酸化物半導体膜に供給するために、酸化物半導体膜を加工する前に絶縁膜から酸素を放出させるとよい。効率よく酸化物半導体膜の酸素欠損を低減することによって、酸素欠損に起因したオフ電流の増加を抑制できる。
【0020】
また、c軸配向し、かつab面、表面または界面の方向から見て三角形状または六角形状の原子配列を有し、ab面において、a軸またはb軸の向きが異なる結晶を含む酸化物半導体膜をトランジスタのチャネル形成領域に用いる。
【0021】
前述の酸化物半導体膜は亜鉛を含んでもよい。亜鉛を含むことにより、c軸配向し、かつab面、表面または界面の方向から見て三角形状または六角形状の原子配列を有し、ab面において、a軸またはb軸の向きが異なる結晶を含む酸化物半導体膜を形成しやすくなる。
【0022】
前述の酸化物半導体膜は、組成の異なる二種の膜を積層すること、または積層後に熱処理することで結晶化させて形成することができる。
【0023】
前述の酸化物半導体膜は、インジウム、ガリウム、亜鉛、錫、チタンおよびアルミニウムから選ばれた二種以上の元素を含む材料からなる。
【0024】
前述の酸化物半導体膜は、バンドギャップが2.5eV以上、好ましくは3.0eV以上である。
【0025】
前述の酸化物半導体膜は、水素、アルカリ金属およびアルカリ土類金属などが低減され、極めて不純物濃度の低い酸化物半導体膜である。そのため、前述の酸化物半導体膜は不純物に起因するキャリアの生成が起こりにくい。
【0026】
酸化物半導体膜中の水素濃度は、5×1018/cm未満、好ましくは1×1018/cm以下、より好ましくは5×1017/cm以下、さらに好ましくは1×1016/cm以下とする。
【0027】
アルカリ金属は酸化物半導体を構成する元素ではないため、不純物である。アルカリ土類金属も、酸化物半導体を構成する元素ではない場合において、不純物となる。特に、アルカリ金属のうちNaは、酸化物半導体膜に接する絶縁膜中にNaととして拡散し、酸化物半導体膜内において、酸化物半導体を構成する金属と酸素の結合を分断する、または、その結合中に割り込む。その結果、例えば、しきい値電圧がマイナス方向にシフトすることによるノーマリオン化、電界効果移動度の低下等の、トランジスタ特性の劣化が起こり、加えて、特性のばらつきも生じる。この不純物によりもたらされるトランジスタ特性の劣化と、特性のばらつきは、酸化物半導体膜中の水素濃度が十分に低い場合において顕著に現れる。従って、酸化物半導体膜中の水素濃度が1×1018/cm以下、特に1×1017/cm以下である場合には、上記不純物の濃度を低減することが望ましい。具体的に、二次イオン質量分析法によるNa濃度の測定値は、5×1016/cm以下、好ましくは1×1016/cm以下、更に好ましくは1×1015/cm以下とするとよい。同様に、Li濃度の測定値は、5×1015/cm以下、好ましくは1×1015/cm以下とするとよい。同様に、K濃度の測定値は、5×1015/cm以下、好ましくは1×1015/cm以下とするとよい。
【0028】
以上に示した酸化物半導体膜をトランジスタのチャネル形成領域に用いることでトランジスタはオフ電流を小さくできる。
【0029】
ゲート電極はソース電極およびドレイン電極と重畳しないで形成することが好ましい。ゲート電極と、ソース電極およびドレイン電極とが重畳しないことにより寄生容量を低減することができ、トランジスタの高速動作が可能となる。
【0030】
ソース電極、ドレイン電極およびゲート電極をマスクに酸化物半導体膜にイオン添加を行うことでソース電極、ドレイン電極およびゲート電極が重畳しない領域にLDD(Lightly Doped Drain)領域として機能する領域を設けると好ましい。LDD領域があることで、ホットキャリア劣化等を抑制できる。また、LDD領域とゲート電極、ソース電極およびドレイン電極が重畳しないことにより寄生容量を低減することができ、トランジスタの高速動作が可能となる。
【0031】
イオン添加は、イオンインプランテーション装置またはイオンドーピング装置などを用いて行うことができる。水素など不純物の混入が少ないため、好ましくはイオンインプランテーション装置を用いる。
【0032】
添加するイオンは、窒素、リン、ヒ素、または希ガスの少なくともいずれか一種以上の元素からなるイオンを用いる。
【発明の効果】
【0033】
オフ電流の極めて小さい酸化物半導体膜を用いたトランジスタを提供することができる。また、該トランジスタを適用することで、消費電力の極めて小さい半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一態様である半導体装置の作製方法の一例を示す断面図。
【図2】本発明の一態様である半導体装置の一例を示す上面図および断面図。
【図3】本発明の一態様を示す回路図の一例。
【図4】本発明の一態様を示す回路図の一例。
【図5】本発明の一態様を示す回路図の一例。
【図6】本発明の一態様を示す回路図の一例。
【図7】CPUの具体例を示すブロック図およびその一部の回路図。
【図8】本発明の一態様を示す表示装置の一例を示す上面図および断面図。
【図9】本発明の一態様を示す保護回路の一例を示す回路図および上面図。
【図10】本発明の一態様を示す液晶の動作モードの一例を示す断面図。
【図11】本発明の一態様を示す液晶の動作モードの一例を示す断面図。
【図12】本発明の一態様を示す液晶の動作モードの一例を示す断面図。
【図13】本発明の一態様を示す液晶の動作モードの一例を示す上面図および断面図。
【図14】本発明の一態様を示す液晶の動作モードの一例を示す上面図。
【図15】本発明の一態様を示す液晶の動作モードの一例を示す上面図。
【図16】本発明の一態様である半導体装置を用いた電子機器の例を示す斜視図。
【図17】本発明の一態様を説明するための結晶のモデル。
【図18】本発明の一態様を説明するための結晶のモデル。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、その形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。また、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、図面を用いて発明の構成を説明するにあたり、同じものを指す符号は異なる図面間でも共通して用いる。なお、同様のものを指す際にはハッチパターンを同じくし、特に符号を付さない場合がある。
【0036】
以下、本発明の説明を行うが、本明細書で用いる用語について簡単に説明する。まず、トランジスタのソースとドレインについては、本明細書においては、一方をドレインと呼ぶとき他方をソースとする。すなわち、電位の高低によって、それらを区別しない。従って、本明細書において、ソースとされている部分をドレインと読み替えることもできる。
【0037】
また、電圧は、ある電位と基準の電位(例えばグラウンド電位)との電位差のことを示す場合が多い。よって、電圧を電位と言い換えることが可能である。
【0038】
本明細書においては、「接続する」と表現される場合であっても、現実の回路においては、物理的な接続部分がなく、配線が延在している場合だけのこともある。
【0039】
なお、第1、第2として付される序数詞は便宜上用いるものであり、工程順または積層順を示すものではない。また、本明細書において発明を特定するための事項として固有の名称を示すものではない。
【0040】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一形態の半導体装置およびその作製方法について上面図および断面図を用いて説明する。
【0041】
図2は本発明の一形態である半導体装置である。図2(A)は半導体装置の上面図であり、図2(B)および図2(C)は、それぞれ図2(A)の一点鎖線A−Bおよび一点鎖線C−Dにおける断面図である。
【0042】
図2(A)は、簡単のため一部の膜を省略して示す。
【0043】
図2(A)において、ソース電極およびドレイン電極118と酸化物半導体膜126とは一部の上面形状が概略一致している。言い換えると、ソース電極およびドレイン電極118は、その全ての領域において、酸化物半導体膜126と重畳する。
【0044】
「上面形状が概略一致」とは、積層した膜と膜との間で少なくとも一部の輪郭が重なり、直線または曲線を形成することをいう。ただし、輪郭が重なり合わず、上層の膜が下層の膜の内側に形成されることや上層の膜が下層の膜の外側に形成されることもあり、この場合も「上面形状が概略一致」という。
【0045】
図2(B)について説明する。図2(B)は、基板100と、基板100上の下地絶縁膜102と、下地絶縁膜102上の第1の領域136および第2の領域146を含む酸化物半導体膜126と、酸化物半導体膜126上のソース電極およびドレイン電極118と、ソース電極およびドレイン電極118ならびに酸化物半導体膜126上のゲート絶縁膜112と、ゲート絶縁膜112上のゲート電極104と、ゲート絶縁膜112およびゲート電極104上の層間絶縁膜122と、を有する構造を示す。
【0046】
次に、図2(C)について説明する。図2(C)は、基板100と、基板100上の下地絶縁膜102と、下地絶縁膜102上の酸化物半導体膜126の第1の領域136と、下地絶縁膜102および酸化物半導体膜126を覆うゲート絶縁膜112と、ゲート絶縁膜112上のゲート電極104と、ゲート電極104上の層間絶縁膜122と、を有する構造を示す。
【0047】
次に、図2に示す半導体装置の作製方法について、図1を用いて説明する。
【0048】
まず、基板100上に下地絶縁膜102および第1の酸化物半導体膜106を、この順番で形成する(図1(A)参照。)。
【0049】
基板100に大きな制限はないが、少なくとも、後の熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有している必要がある。例えば、ガラス基板、セラミック基板、石英基板、サファイア基板などを、基板100として用いてもよい。また、シリコンや炭化シリコンなどの単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウムなどの化合物半導体基板、SOI(Silicon On Insulator)基板などを適用でき、これらの基板上に半導体素子が設けられたものを、基板100として用いてもよい。
【0050】
また、基板100として、可撓性基板を用いてもよい。その場合は、可撓性基板上に直接的にトランジスタを作製することとなる。なお、可撓性基板上にトランジスタを設けるには、基板100として非可撓性のものを用いて、この上にトランジスタを作製した後、トランジスタを剥離し、可撓性基板に転置する方法もある。その場合には、基板100とトランジスタとの間に剥離層を設けるとよい。
【0051】
下地絶縁膜102は、例えば酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化イットリウムまたは酸化ジルコニウムなどを用いればよく、積層または単層で設ける。例えば、熱酸化法、CVD法、スパッタリング法などで形成すればよい。下地絶縁膜102は、加熱処理により酸素を放出する膜を用いてもよい。加熱処理により酸素を放出する膜を用いることで、第1の酸化物半導体膜106に生じる欠陥を修復することができ、トランジスタの電気特性を向上させることができる。
【0052】
ここで、酸化窒化シリコンは、シリコン、酸素および窒素を含み、かつ窒素よりも酸素の含有量が多いものを指す。また、窒化酸化シリコンは、シリコン、酸素および窒素を含み、かつ酸素よりも窒素の含有量が多いものを指す。
【0053】
下地絶縁膜102は、トランジスタ特性に悪影響を与える元素が基板100から第1の酸化物半導体膜106に拡散することを防ぐために設けられる。したがって、下地絶縁膜102は前述の元素の拡散係数が小さい絶縁膜を用いればよい。これは、以下に示すゲート絶縁膜112および層間絶縁膜122も同様である。
【0054】
「加熱処理により酸素を放出する」とは、TDS(Thermal Desorption Spectroscopy:昇温脱離ガス分光法)分析にて放出される酸素が酸素原子に換算して1.0×1018atoms/cm以上、または3.0×1020atoms/cm以上であることをいう。
【0055】
ここで、TDS分析を用いた酸素の放出量の測定方法について、以下に説明する。
【0056】
TDS分析したときの気体の全放出量は、放出ガスのイオン強度の積分値に比例する。そしてこの積分値と標準試料との比較により、気体の全放出量を計算することができる。
【0057】
例えば、標準試料である所定の密度の水素を含むシリコンウェハのTDS分析結果、および絶縁膜のTDS分析結果から、絶縁膜の酸素分子の放出量(NO2)は、数式1で求めることができる。ここで、TDS分析で得られる質量数32で検出されるガスの全てが酸素分子由来と仮定する。質量数32のものとしてほかにCHOHがあるが、存在する可能性が低いものとしてここでは考慮しない。また、酸素原子の同位体である質量数17の酸素原子および質量数18の酸素原子を含む酸素分子についても、自然界における存在比率が極微量であるため考慮しない。
【0058】
O2=NH2/H2×SO2×α (数式1)
【0059】
H2は、標準試料から脱離した水素分子を密度で換算した値である。SH2は、標準試料をTDS分析したときのイオン強度の積分値である。ここで、標準試料の基準値を、NH2/SH2とする。SO2は、絶縁膜をTDS分析したときのイオン強度の積分値である。αは、TDS分析におけるイオン強度に影響する係数である。数式1の詳細に関しては、特開平6−275697公報を参照する。なお、上記絶縁膜の酸素の放出量は、電子科学株式会社製の昇温脱離分析装置EMD−WA1000S/Wを用い、標準試料として1×1016atoms/cmの水素原子を含むシリコンウェハを用いて測定した。
【0060】
また、TDS分析において、酸素の一部は酸素原子として検出される。酸素分子と酸素原子の比率は、酸素分子のイオン化率から算出することができる。なお、上述のαは酸素分子のイオン化率を含むため、酸素分子の放出量を評価することで、酸素原子の放出量についても見積もることができる。
【0061】
なお、NO2は酸素分子の放出量である。酸素原子に換算したときの放出量は、酸素分子の放出量の2倍となる。
【0062】
上記構成において、加熱処理により酸素を放出する膜は、酸素が過剰な酸化シリコン(SiO(X>2))であってもよい。酸素が過剰な酸化シリコン(SiO(X>2))は、シリコン原子数の2倍より多い酸素原子を単位体積当たりに含むものである。単位体積当たりのシリコン原子数および酸素原子数は、ラザフォード後方散乱法により測定した値である。
【0063】
下地絶縁膜102から第1の酸化物半導体膜106に酸素が供給されることで、第1の酸化物半導体膜106と下地絶縁膜102との界面準位を低減できる。この結果、トランジスタの動作などに起因して、第1の酸化物半導体膜106と下地絶縁膜102との界面にキャリアが捕獲されることを抑制することができ、トランジスタの電気特性を向上させることができる。
【0064】
さらに、酸化物半導体膜の酸素欠損に起因して電荷が生じる場合がある。一般に酸化物半導体膜の酸素欠損は、その一部がドナーとなりキャリアである電子を放出する。この結果、トランジスタのしきい値電圧がマイナス方向にシフトしてしまう。下地絶縁膜102から第1の酸化物半導体膜106に酸素が十分に供給されることにより、しきい値電圧がマイナス方向へシフトする要因である、酸化物半導体膜の酸素欠損を低減することができる。
【0065】
即ち、下地絶縁膜102に、加熱処理により酸素を放出する膜を設けることで、第1の酸化物半導体膜106と下地絶縁膜102との界面における界面準位および第1の酸化物半導体膜106の酸素欠損を低減し、第1の酸化物半導体膜106と下地絶縁膜102との界面におけるキャリア捕獲の影響を小さくすることができる。
【0066】
以上に下地絶縁膜102から奏する効果を示したが、適宜、下地絶縁膜102を、ゲート絶縁膜112および層間絶縁膜122に置き換えてもよい。その場合、効果を奏する工程に則し、第1の酸化物半導体膜106を第2の酸化物半導体膜116または酸化物半導体膜126に置き換えればよい。
【0067】
第1の酸化物半導体膜106としてCAAC酸化物半導体(C Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductorともいう。)を用いると好ましい。ただし、第1の酸化物半導体膜106はCAAC酸化物半導体に限定されるものではなく、非晶質酸化物半導体膜を用いてもよい。
【0068】
CAAC酸化物半導体は、c軸配向し、かつab面、表面または界面の方向から見て三角形状または六角形状の原子配列を有し、c軸においては、金属原子が層状または金属原子と酸素原子とが層状に配列しており、ab面(または表面または界面)においては、a軸またはb軸の向きが異なる(c軸を中心に回転した)結晶を含む酸化物半導体のことである。
【0069】
広義に、CAAC酸化物半導体は、非単結晶であって、そのab面に垂直な方向から見て、三角形もしくは六角形、または正三角形もしくは正六角形の原子配列を有し、かつc軸に垂直な方向から見て金属原子が層状または金属原子と酸素原子が層状に配列した相を含む材料をいう。
【0070】
CAAC酸化物半導体は単結晶ではないが、非晶質のみから形成されているものでもない。また、CAAC酸化物半導体は結晶化した部分(結晶部分)を含むが、1つの結晶部分と他の結晶部分の境界を明確に判別できないこともある。
【0071】
CAAC酸化物半導体を構成する酸素の一部は窒素で置換されてもよい。また、CAAC酸化物半導体を構成する個々の結晶部分のc軸は一定の方向(例えば、CAAC酸化物半導体を支持する基板面やCAAC酸化物半導体の表面に垂直な方向)に揃っていてもよい。または、CAAC酸化物半導体を構成する個々の結晶部分のab面の法線は一定の方向(例えば、CAAC酸化物半導体を支持する基板面やCAAC酸化物半導体の表面に垂直な方向)を向いていてもよい。
【0072】
CAAC酸化物半導体は、その組成等に応じて、導体または絶縁体となりうる。また、その組成等に応じて、可視光に対して透明であったり不透明であったりする。
【0073】
次に、CAAC酸化物半導体の形成方法について説明する。
【0074】
まず、酸化物半導体膜をスパッタリング法、分子線エピタキシー法、原子層堆積法またはパルスレーザー蒸着法によって形成する。なお、形成時に基板を加熱処理することで、結晶領域の割合の多い酸化物半導体膜とすることができる。例えば、基板温度が150℃以上450℃以下とすればよく、好ましくは基板温度が200℃以上350℃以下とする。
【0075】
次に、第1の加熱処理を行ってもよい。第1の加熱処理を行うことによって、より結晶領域の割合の高い酸化物半導体膜を形成することができる。第1の加熱処理は、例えば200℃以上基板の歪み点未満で行えばよい。好ましくは250℃以上450℃以下とする。雰囲気は限定されないが、酸化性雰囲気、不活性雰囲気または減圧雰囲気で行う。処理時間は3分〜24時間とする。処理時間を長くするほど結晶領域の割合の高い酸化物半導体膜を形成することができるが、24時間を超える熱処理は生産性の低下を招くため好ましくない。
【0076】
酸化性雰囲気は酸化性ガスを含む雰囲気である。酸化性ガスは、酸素、オゾンまたは亜酸化窒素などであって、水、水素などが含まれないことが好ましい。例えば、熱処理装置に導入する酸素、オゾン、亜酸化窒素の純度を、8N(99.999999%)以上、好ましくは9N(99.9999999%)以上(不純物濃度が10ppb以下、好ましくは0.1ppb未満)とする。酸化性雰囲気は、酸化性ガスを不活性ガスと混合して用いてもよい。その場合、酸化性ガスが少なくとも10ppm以上含まれる雰囲気とする。
【0077】
ここで、不活性雰囲気は、窒素、希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン)などの不活性ガスを主成分とする雰囲気である。具体的には、酸化性ガスなどの反応性ガスが10ppm未満である雰囲気とする。
【0078】
第1の加熱処理はRTA(Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。RTAを用いることで、短時間に限り、基板の歪み点以上の温度で熱処理を行うことができる。そのため、非晶質領域に対して結晶領域の割合の多い酸化物半導体膜を形成するための時間を短縮することができる。
【0079】
酸化物半導体膜としては、四元系金属酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn−O系の材料や、三元系金属酸化物であるIn−Ga−Zn−O系の材料、In−Sn−Zn−O系の材料、In−Al−Zn−O系の材料、Sn−Ga−Zn−O系の材料、Al−Ga−Zn−O系の材料、Sn−Al−Zn−O系の材料や、二元系金属酸化物であるIn−Zn−O系の材料、Sn−Zn−O系の材料、Al−Zn−O系の材料、Zn−Mg−O系の材料、Sn−Mg−O系の材料、In−Mg−O系の材料、In−Ga−O系の材料や、In−O系の材料、Sn−O系の材料、Zn−O系の材料などを用いてもよい。また、上記の材料に酸化シリコンを含ませてもよい。ここで、例えば、In−Ga−Zn−O系の材料は、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)を有する酸化物、という意味であり、その組成比は特に問わない。また、InとGaとZn以外の元素を含んでいてもよい。このとき、酸化物半導体膜の化学量論比に対し、Oを過剰にすると好ましい。Oを過剰にすることで酸化物半導体膜の酸素欠損に起因するキャリアの生成を抑制することができる。
【0080】
なお、一例として、酸化物半導体膜としてIn−Zn−O系の材料を用いる場合、原子数比で、In/Zn=0.5〜50、好ましくはIn/Zn=1〜20、さらに好ましくはIn/Zn=3〜15とする。Znの原子数比を前述の範囲とすることで、トランジスタの電界効果移動度を向上させることができる。ここで、化合物の原子数比がIn:Zn:O=X:Y:Zのとき、Z>1.5X+Yとする。
【0081】
酸化物半導体膜として、化学式InMO(ZnO)(m>0)で表記される材料を用いてもよい。ここで、Mは、Ga、Al、MnおよびCoから選ばれた一または複数の金属元素を示す。例えば、Mとして、Ga、GaおよびAl、GaおよびMnまたはGaおよびCoなどを用いてもよい。
【0082】
また、窒素を1×1017atoms/cm以上5×1019atoms/cm以下(好ましくは5×1018atoms/cm以下)含むIn−Ga−Zn−O系の材料はc軸配向した六方晶の結晶構造を含む酸化物となり、In−Oの結晶面(インジウムと酸素を含む結晶面)とIn−Oの結晶面(インジウムと酸素を含む結晶面)との間に、一層のGaおよびZnを有する層を備える。または、上述の範囲で窒素を含むIn−Ga−Zn−O系の酸化物半導体膜において、隣り合うIn−Oの結晶面とIn−Oの結晶面との間に、複数層のGaおよびZnを有する層を備えても構わない。
【0083】
次に、酸化物半導体膜上に二層目の酸化物半導体膜を形成し、酸化物半導体膜の積層体を形成してもよい。一層目の酸化物半導体膜と二層目の酸化物半導体膜は、同様の方法で形成することができる。
【0084】
二層目の酸化物半導体膜を形成する際、基板を加熱処理しながら形成することで、一層目の酸化物半導体膜を種結晶に、二層目の酸化物半導体膜を結晶化させることができる。このとき、一層目の酸化物半導体膜と二層目の酸化物半導体膜が同一の元素から構成されることをホモ成長という。または、一層目の酸化物半導体膜と二層目の酸化物半導体膜とが、少なくとも一種以上異なる元素から構成されることをヘテロ成長という。
【0085】
なお、二層目の酸化物半導体膜を形成した後、第2の加熱処理を行ってもよい。第2の加熱処理は、第1の加熱処理と同様の方法で行えばよい。第2の加熱処理を行うことによって、非晶質領域に対して結晶領域の割合の多い積層構造とすることができる。または、第2の加熱処理を行うことによって、一層目の酸化物半導体膜を種結晶に、二層目の酸化物半導体膜を結晶化させることができる。このとき、一層目の酸化物半導体膜と二層目の酸化物半導体膜が同一の元素から構成されるホモ成長としても構わない。または、一層目の酸化物半導体膜と二層目の酸化物半導体膜とが、少なくとも一種以上異なる元素から構成されるヘテロ成長としても構わない。
【0086】
以上の方法で、CAAC酸化物半導体を形成することができる。
【0087】
ここで、CAAC酸化物半導体を形成する過程の第1の加熱処理および第2の加熱処理によって、下地絶縁膜102から第1の酸化物半導体膜106に酸素を供給しても構わない。
【0088】
第1の酸化物半導体膜106を形成した後、第3の加熱処理を行っても構わない。第3の加熱処理は150℃以上基板の歪み点未満、好ましくは250℃以上450℃以下、更に好ましくは300℃以上450℃以下の温度で行う。第3の加熱処理によって、下地絶縁膜102から第1の酸化物半導体膜106に酸素を供給することができる。第3の加熱処理は、減圧雰囲気、不活性雰囲気または酸化性雰囲気で行う。
【0089】
次に、第1の酸化物半導体膜106上に導電膜108を形成する(図1(B)参照。)。
【0090】
導電膜108は、単層または積層構造とすればよく、Al、Ti、Cr、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Mo、Ag、TaおよびW、それらの窒化物、酸化物ならびに合金から一以上選択して用いればよい。酸化物導電膜は金属膜と比べて抵抗が高いため、導電膜108の抵抗を低減するためにシート抵抗が10Ω/sq以下の低抵抗膜と積層すると好ましい。
【0091】
導電膜108を形成した後、第4の加熱処理を行っても構わない。第4の加熱処理は第3の加熱処理と同様の方法で行えばよい。第4の加熱処理によって、下地絶縁膜102から第1の酸化物半導体膜106に酸素を供給することができる。
【0092】
次に、導電膜108上にレジストを塗布し、フォトリソグラフィ法によってレジストマスクを形成する。該レジストマスクを用いて、導電膜108を加工し、ソース電極およびドレイン電極118を形成する(図1(C)参照。)。
【0093】
次に、第1の酸化物半導体膜106上にレジストを塗布し、フォトリソグラフィ法によってレジストマスクを形成する。該レジストマスクを用いて、第1の酸化物半導体膜106を加工し、第2の酸化物半導体膜116を形成する(図1(D)参照。)。これにより、ソース電極およびドレイン電極118の底面が、第2の酸化物半導体膜116の側面と接することを防ぐことができる。
【0094】
または、導電膜108および第1の酸化物半導体膜106を多階調マスクによって形成したレジストマスクを用いて加工してもよい。この場合、多階調マスクによって、厚さの異なる第1のレジスト領域と第2のレジスト領域とを有する第1のレジストマスクを形成する。ここで、第1のレジストマスクにおいて、第2のレジスト領域における厚さが第1のレジスト領域における厚さよりも大きいとする。まず、第1のレジストマスクを用いて、第1のレジスト領域および第2のレジスト領域を合わせた領域の形状に導電膜108を加工し、ソース電極およびドレイン電極118を形成する。次に、第1のレジストマスクをアッシングなどのプラズマ処理で後退させることで第1のレジスト領域を除去し、第2のレジスト領域のみ残した第2のレジストマスクを形成する。次に、第1の酸化物半導体膜106を第2のレジストマスクを用いて加工することで図1(D)に示す形状を得る。
【0095】
ここで、レジストマスクの剥離工程をアッシングなどのプラズマ処理で行ってもよい。アッシングによってレジストマスクを剥離することによって、剥離液を使用した場合と比べ、第2の酸化物半導体膜116の側面に酸素欠損が生じにくく、好ましい。
【0096】
上記のような工程で、導電膜108および第1の酸化物半導体膜106を加工することによって、加工された導電膜108の下には第2の酸化物半導体膜116の一部が残置する構造となる。言い換えると、加工された導電膜108は、その全ての領域において、第2の酸化物半導体膜116の一部と重畳する。ここで、加工された導電膜108が配線を兼ねる場合、該配線と他配線との交差部に蓄積される電荷を低減することができる。そのため、信号遅延など抑制する効果を奏する。
【0097】
次に、ソース電極およびドレイン電極118ならびに第2の酸化物半導体膜116を覆うゲート絶縁膜112を形成する(図1(E)参照)。ゲート絶縁膜112は、第2の酸化物半導体膜116を形成後、速やかに形成することが好ましい。これは、第2の酸化物半導体膜116の側面に生じた酸素欠損をゲート絶縁膜112によって低減するためである。
【0098】
ここで、酸化物半導体膜の上面および側面における酸素の欠損しやすさについて、一モデルを用いて計算を行い検証した結果について説明する。なお、CAAC酸化物半導体は、一側面に複数の結晶面を有することから計算が複雑になる。そのため、ここではc軸に配向したウルツ鉱構造であるZnO単結晶を用いて計算を行った。結晶のモデルとしては、図17に示すように、c軸に平行な面と垂直な面でそれぞれ切断し、(001)表面、(100)表面、および(110)表面を作製した。
【0099】
表面構造を作製した後、図18(A)乃至図18(C)に示すように(100)表面、(110)表面、および(001)表面から酸素が抜ける場合の計算を行い、その抜けやすさを各表面で比較した。
【0100】
結晶格子を(001)面が表面になるように切断したモデルを作製した。ただし、計算は3次元周期構造で行うため、(001)表面が2つ存在する真空領域が1nmのスラブモデルを作製した。同様にして、側面は(001)面と垂直な面と想定されるため、側面の一例として(100)面と(110)面が表面に出たスラブモデルを作製した。この2つの面を計算することで、(001)に垂直な面における酸素の抜けやすさの傾向を見ることができる。この場合も真空領域は1nmである。原子数は(100)表面モデル、(110)表面モデル、(001)表面モデルでそれぞれ、64、108、108原子とした。また、上記3構造の表面から酸素を1原子抜いた構造を作製した。
【0101】
計算には密度汎関数法のプログラムであるCASTEPを用いた。密度汎関数の方法として平面波基底擬ポテンシャル法を用い、汎関数はGGAPBEを用いた。始めにウルツ構造の4原子のユニットセルにおいて、格子定数を含めた構造最適化を行った。次に、最適化された構造をもとにして、表面構造を作製した。その後、作製した表面構造の酸素が欠損有りの構造と欠損無しの構造において、格子定数を固定した構造最適化を行った。エネルギーは構造最適化後のものを使用している。
【0102】
カットオフエネルギーはユニットセルの計算では380eV、表面構造の計算では300eVを用いた。k点として、ユニットセルの計算では9×9×6、(100)表面モデルの計算では3×2×1、(110)表面モデルの計算では1×2×2、(001)表面モデルの計算では2×2×1のグリッドを用いた。
【0103】
上記の表面構造に、酸素欠損有りの構造のエネルギーと酸素分子のエネルギーの半分を足した値から、酸素欠損無しの構造のエネルギーを引いたエネルギー差(ここでは、束縛エネルギーとよぶ。)を計算した。束縛エネルギーの小さい表面で酸素が抜けやすいと言える。
【0104】
【数2】

【0105】
数式2により得られた各表面の束縛エネルギーを表1に示す。
【0106】
【表1】

【0107】
表1に示す結果より、(001)表面と比べ、(100)表面および(110)表面は束縛エネルギーが小さく、酸素が抜けやすいと言える。即ち、上面に垂直な方向にc軸を有し、該c軸に配向したZnO膜は上面よりも側面の方が酸素が抜けやすいことが分かる。CAAC酸化物半導体であるZnOについても、様々な結晶面が混ざり合っているが、ZnO単結晶と同種の結晶面を側面に有している。そのため、ZnO単結晶における酸素の抜けやすさと同様の傾向があると言える。
【0108】
そのため、ゲート絶縁膜112は、加熱処理により酸素を放出する絶縁膜を用いることが好ましい。例えば、下地絶縁膜102と同様の材料を用いて形成すればよい。
【0109】
次に、ゲート絶縁膜112上にゲート電極104を形成する(図1(F)参照。)。ゲート電極104は、ソース電極およびドレイン電極118と重畳しないように設ける。ゲート電極とソース電極およびドレイン電極とが重畳しないことにより寄生容量を低減することができ、トランジスタの高速動作が可能となる。ゲート電極104は、導電膜108で示した材料を加工して形成すればよい。
【0110】
または、ゲート電極104として、Al、Si、Ti、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、In、SnおよびWの一種以上を含む酸化物膜を用いてもよい。該酸化物膜は5×1019atoms/cm以上20atomic%以下、好ましくは1×1020atoms/cm以上7atomic%以下の窒素を含んでもよい。例えば、In、GaおよびZnを含む酸化物膜に1×1020atoms/cm以上7atomic%以下の窒素を含む膜を用いるとよい。前述の酸化物膜を用いる場合、ゲート電極104を金属膜との積層構造とすることが好ましい。このとき、前述の酸化物膜をゲート絶縁膜112と接するように設ける。前述の酸化物膜は、金属膜よりもとりうる仕事関数の幅が広いため、トランジスタのしきい値電圧の制御性が高まる。
【0111】
次に、好ましくは、ソース電極およびドレイン電極118ならびにゲート電極104をマスクとし、ゲート絶縁膜112越しに第2の酸化物半導体膜116にイオンを添加し、イオンが添加されていない第1の領域136およびイオンが添加された第2の領域146を含む酸化物半導体膜126を形成する(図1(G)参照。)。第2の領域には、窒素、リン、ヒ素または希ガスから選ばれた一種以上の元素を、5×1018atoms/cm以上1×1022atoms/cm以下、好ましくは5×1018atoms/cm以上5×1019atoms/cm以下の濃度で添加させる。ただし、添加するイオンは前述のイオンに限定されるものではなく、第2の酸化物半導体膜116を低抵抗化することができる元素からなるイオンであればよい。このとき、ゲート絶縁膜112越しにイオンを添加することで、第2の酸化物半導体膜116が直接プラズマに曝されることがなくなるため、第2の酸化物半導体膜116にダメージが入りにくくなり、さらに第2の酸化物半導体膜116の膜減りを防ぐことができる。
【0112】
次に、層間絶縁膜122を形成する(図1(H)参照。)。
【0113】
層間絶縁膜122は下地絶縁膜102と同様の材料を用いて形成すればよい。
【0114】
次に、第5の加熱処理を行っても構わない。第5の加熱処理は、150℃以上450℃以下、好ましくは250℃以上325℃以下で行う。または、250℃から325℃まで段階的に温度を上げていってもよい。第5の加熱処理を行うことによって、層間絶縁膜122から酸化物半導体膜126へ酸素を供給しても構わない。
【0115】
以上の工程によってオフ電流の極めて小さいトランジスタを作製することができる。
【0116】
また、本実施の形態に示す酸化物半導体膜を用いたトランジスタを用いることで、マザーガラスのような大きな基板を用いても、信頼性が高く、大量生産の可能な半導体装置を提供することができる。
【0117】
(実施の形態2)
図3(A)に半導体装置を構成する記憶素子(以下、メモリセルとも記す。)の回路図の一例を示す。メモリセルは、酸化物半導体以外の材料(例えば、シリコン、ゲルマニウム、炭化シリコン、ガリウムヒ素、窒化ガリウム、有機化合物など)をチャネル形成領域に用いたトランジスタ1160と酸化物半導体をチャネル形成領域に用いたトランジスタ1162によって構成される。
【0118】
酸化物半導体をチャネル形成領域に用いたトランジスタ1162は、実施の形態1に従って作製することができる。
【0119】
図3(A)に示すように、トランジスタ1160のゲート電極と、トランジスタ1162のソース電極またはドレイン電極の一方とは、電気的に接続されている。また、第1の配線SL(1st Line:ソース線とも呼ぶ。)とトランジスタ1160のソース電極とは、電気的に接続され、第2の配線BL(2nd Line:ビット線とも呼ぶ。)とトランジスタ1160のドレイン電極とは、電気的に接続されている。そして、第3の配線S1(3rd Line:第1信号線とも呼ぶ。)とトランジスタ1162のソース電極またはドレイン電極の他方とは、電気的に接続され、第4の配線S2(4th Line:第2信号線とも呼ぶ。)と、トランジスタ1162のゲート電極とは、電気的に接続されている。
【0120】
酸化物半導体以外の材料、例えば単結晶シリコンをチャネル形成領域に用いたトランジスタ1160は十分な高速動作が可能なため、トランジスタ1160を用いることにより、記憶内容の読み出しなどを高速に行うことが可能である。また、酸化物半導体をチャネル形成領域に用いたトランジスタ1162は、トランジスタ1160に比べてオフ電流が小さいという特徴を有している。このため、トランジスタ1162をオフ状態とすることで、トランジスタ1160のゲート電極の電位を極めて長時間にわたって保持することが可能である。
【0121】
ゲート電極の電位が保持可能という特徴を生かすことで、次のように、情報の書き込み、保持、読み出しが可能である。
【0122】
はじめに、情報の書き込みおよび保持について説明する。まず、第4の配線S2の電位を、トランジスタ1162がオン状態となる電位として、トランジスタ1162をオン状態とする。これにより、第3の配線S1の電位が、トランジスタ1160のゲート電極に与えられる(書き込み)。その後、第4の配線S2の電位を、トランジスタ1162がオフ状態となる電位として、トランジスタ1162をオフ状態とすることにより、トランジスタ1160のゲート電極の電位が保持される(保持)。
【0123】
トランジスタ1162のオフ電流は極めて小さいため、トランジスタ1160のゲート電極の電位は長時間にわたって保持される。例えば、トランジスタ1160のゲート電極の電位がトランジスタ1160をオン状態とする電位であれば、トランジスタ1160のオン状態が長時間にわたって保持されることになる。また、トランジスタ1160のゲート電極の電位がトランジスタ1160をオフ状態とする電位であれば、トランジスタ1160のオフ状態が長時間にわたって保持される。
【0124】
次に、情報の読み出しについて説明する。上述のように、トランジスタ1160のオン状態またはオフ状態が保持された状態において、第1の配線SLに所定の電位(定電位)が与えられると、トランジスタ1160のオン状態またはオフ状態に応じて、第2の配線BLの電位は異なる値をとる。例えば、トランジスタ1160がオン状態の場合には、第1の配線SLの電位に第2の配線BLの電位が近づくことになる。また、トランジスタ1160がオフ状態の場合には、第2の配線BLの電位は変化しない。
【0125】
このように、情報が保持された状態において、第2の配線BLの電位と、所定の電位とを比較することで、情報を読み出すことができる。
【0126】
次に、情報の書き換えについて説明する。情報の書き換えは、上記情報の書き込みおよび保持と同様に行われる。つまり、第4の配線S2の電位を、トランジスタ1162がオン状態となる電位として、トランジスタ1162をオン状態とする。これにより、第3の配線S1の電位(新たな情報に係る電位)が、トランジスタ1160のゲート電極に与えられる。その後、第4の配線S2の電位を、トランジスタ1162がオフ状態となる電位として、トランジスタ1162をオフ状態とすることにより、新たな情報が保持された状態となる。
【0127】
このように、開示する発明に係るメモリセルは、再度の情報の書き込みによって直接的に情報を書き換えることが可能である。このためフラッシュメモリなどにおいて必要とされる消去動作が不要であり、消去動作に起因する動作速度の低下を抑制することができる。つまり、メモリセルを有する半導体装置の高速動作が実現される。
【0128】
また、図3(A)のメモリセルを発展させたメモリセルの回路図の一例を図3(B)に示す。
【0129】
図3(B)に示すメモリセル1100は、第1の配線SL(ソース線)と、第2の配線BL(ビット線)と、第3の配線S1(第1信号線)と、第4の配線S2(第2信号線)と、第5の配線WL(ワード線)と、トランジスタ1164(第1のトランジスタ)と、トランジスタ1161(第2のトランジスタ)と、トランジスタ1163(第3のトランジスタ)と、から構成されている。トランジスタ1164およびトランジスタ1163は、酸化物半導体以外の材料をチャネル形成領域に用いており、トランジスタ1161は酸化物半導体をチャネル形成領域に用いている。
【0130】
ここで、トランジスタ1164のゲート電極と、トランジスタ1161のソース電極またはドレイン電極の一方とは、電気的に接続されている。また、第1の配線SLと、トランジスタ1164のソース電極とは、電気的に接続され、トランジスタ1164のドレイン電極と、トランジスタ1163のソース電極とは、電気的に接続されている。そして、第2の配線BLと、トランジスタ1163のドレイン電極とは、電気的に接続され、第3の配線S1と、トランジスタ1161のソース電極またはドレイン電極の他方とは、電気的に接続され、第4の配線S2と、トランジスタ1161のゲート電極とは、電気的に接続され、第5の配線WLと、トランジスタ1163のゲート電極とは電気的に接続されている。
【0131】
次に、回路の動作の具体的な例について説明する。なお、以下の説明で例示する電位、電圧等の数字は適宜変更しても構わない。
【0132】
メモリセル1100への書き込みを行う場合は、第1の配線SLを0V、第5の配線WLを0V、第2の配線BLを0V、第4の配線S2を2Vとする。データ”1”を書き込む場合には第3の配線S1を2V、データ”0”を書き込む場合には第3の配線S1を0Vとする。このとき、トランジスタ1163はオフ状態、トランジスタ1161はオン状態となる。なお、書き込み終了時には、第3の配線S1の電位を変化させる前に、第4の配線S2を0Vとして、トランジスタ1161をオフ状態にする。
【0133】
その結果、データ”1”書き込み後にはトランジスタ1164のゲート電極に接続されるノード(以下、ノードA)の電位が約2V、データ”0”書き込み後にはノードAの電位が約0Vとなる。ノードAには、第3の配線S1の電位に応じた電荷が蓄積されるが、上述したようにトランジスタ1161のオフ電流は、極めて小さいため、トランジスタ1164のゲート電極の電位は長時間にわたって保持される。
【0134】
次に、メモリセルの読み出しを行う場合は、第1の配線SLを0V、第5の配線WLを2V、第4の配線S2を0V、第3の配線S1を0Vとし、第2の配線BLに接続されている読み出し回路を動作状態とする。このとき、トランジスタ1163はオン状態、トランジスタ1161はオフ状態となる。
【0135】
データ”0”、つまりノードAが約0Vの状態であればトランジスタ1164はオフ状態であるから、第2の配線BLと第1の配線SL間の抵抗は高い状態となる。一方、データ”1”、つまりノードAが約2Vの状態であればトランジスタ1164がオン状態であるから、第2の配線BLと第1の配線SL間の抵抗は低い状態となる。読み出し回路は、メモリセルの抵抗状態の違いから、データ”0”,”1”を読み出すことができる。なお、書き込み時の第2の配線BLは0Vとしたが、フローティング状態や0V以上の電位に充電されていても構わない。読み出し時の第3の配線S1は0Vとしたが、フローティング状態や0V以上の電位に充電されていても構わない。
【0136】
なお、データ”1”とデータ”0”は便宜上の定義であって、逆であっても構わない。また、上述した動作電圧は一例である。動作電圧は、データ”0”の場合にトランジスタ1164がオフ状態となり、データ”1”の場合にトランジスタ1164がオン状態となるように、また、書き込み時にトランジスタ1161がオン状態、書き込み時以外ではオフ状態となるように、また、読み出し時にトランジスタ1163がオン状態となるように選べばよい。特に2Vの代わりに、周辺の論理回路の電源電位VDDを用いてもよい。
【0137】
本実施の形態では理解の簡単のため、最小記憶単位(1ビット)のメモリセルについて説明したが、メモリセルの構成はこれに限られるものではない。複数のメモリセルを適当に接続して、より高度な半導体装置を構成することもできる。例えば、上記メモリセルを複数用いて、NAND型やNOR型の半導体装置を構成することが可能である。配線の構成も図3(A)や図3(B)に限定されず、適宜変更することができる。
【0138】
図4に、m×nビットの記憶容量を有する本発明の一態様に係る半導体装置のブロック回路図を示す。
【0139】
図4に示す半導体装置は、m本の第5の配線WL(1)〜WL(m)およびm本の第4の配線S2(1)〜S2(m)と、n本の第2の配線BL(1)〜BL(m)およびn本の第3の配線S1(1)〜S1(m)と、複数のメモリセル1100(1,1)〜1100(m,n)が縦m個(行)×横n個(列)(m、nは自然数。)のマトリクス状に配置されたメモリセルアレイ1110と、第2の配線BLおよび第3の配線S1を接続する駆動回路1111や、第4の配線S2および第5の配線WLと接続する駆動回路1113や、読み出し回路1112といった周辺回路によって構成されている。他の周辺回路として、リフレッシュ回路等が設けられてもよい。
【0140】
各メモリセルの代表として、メモリセル1100(i,j)を考える。ここで、メモリセル1100(i,j)(iは1以上m以下の整数、jは1以上n以下の整数)は、第2の配線BL(j)、第3の配線S1(j)、第5の配線WL(i)および第4の配線S2(i)、および第1の配線SLにそれぞれ接続されている。第1の配線SLには電位Vsが与えられている。また、第2の配線BL(1)〜BL(n)および第3の配線S1(1)〜S1(n)は駆動回路1111および読み出し回路1112に、第5の配線WL(1)〜WL(m)および第4の配線S2(1)〜S2(m)は駆動回路1113にそれぞれ接続されている。
【0141】
図4に示した半導体装置の動作について説明する。本構成では、行ごとの書き込みおよび読み出しを行う。
【0142】
第i行のメモリセル1100(i,1)〜1100(i,n)に書き込みを行う場合は、第1の配線SLの電位Vsを0V、第5の配線WL(i)を0V、第2の配線BL(1)〜BL(n)を0V、第4の配線S2(i)を2Vとする。このときトランジスタ1161は、オン状態となる。第3の配線S1(1)〜S1(n)は、データ”1”を書き込む列は2V、データ”0”を書き込む列は0Vとする。なお、書き込み終了にあたっては、第3の配線S1(1)〜S1(n)の電位を変化させる前に、第4の配線S2(i)を0Vとして、トランジスタ1161をオフ状態にする。また、第5の配線WL(i)以外の第5の配線WLを0V、第4の配線S2(i)以外の第4の配線S2を0Vとする。
【0143】
その結果、データ”1”の書き込みを行ったメモリセルのトランジスタ1164のゲート電極に接続されるノード(以下、ノードA)の電位は約2V、データ”0”の書き込みを行ったメモリセルのノードAの電位は約0Vとなる。また、非選択メモリセルのノードAの電位は変わらない。
【0144】
第i行のメモリセル1100(i,1)〜1100(i,n)の読み出しを行う場合は、第1の配線SLの電位Vsを0V、第5の配線WL(i)を2V、第4の配線S2(i)を0V、第3の配線S1(1)〜S1(n)を0Vとし、第2の配線BL(1)〜BL(n)に接続されている読み出し回路を動作状態とする。読み出し回路では、例えば、メモリセルの抵抗状態の違いから、データ”0”,”1”を読み出すことができる。なお、第5の配線WL(i)以外の第5の配線WLを0V、第4の配線S2(i)以外の第4の配線S2を0Vとする。なお、書き込み時の第2の配線BLは0Vとしたが、フローティング状態や0V以上の電位に充電されていても構わない。読み出し時の第3の配線S1は0Vとしたが、フローティング状態や0V以上の電位に充電されていても構わない。
【0145】
本実施の形態によって、酸化物半導体をチャネル形成領域に用いたトランジスタと接続するノードの電位を極めて長時間にわたって保持することが可能であるため、小さい消費電力にて、情報の書き込み、保持、読み出しが可能な記憶素子を作製することができる。
【0146】
本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0147】
(実施の形態3)
本実施の形態では、容量素子を有するメモリセルの回路図の一例を示す。図5(A)に示すメモリセル1170は、第1の配線SL、第2の配線BL、第3の配線S1、第4の配線S2と、第5の配線WLと、トランジスタ1171(第1のトランジスタ)と、トランジスタ1172(第2のトランジスタ)と、容量素子1173と、から構成されている。トランジスタ1171は、酸化物半導体以外の材料をチャネル形成領域に用いており、トランジスタ1172はチャネル形成領域に酸化物半導体を用いている。
【0148】
酸化物半導体をチャネル形成領域に用いたトランジスタ1172は、実施の形態1に従って作製することができる。
【0149】
ここで、トランジスタ1171のゲート電極と、トランジスタ1172のソース電極またはドレイン電極の一方と、容量素子1173の一方の電極とは、電気的に接続されている。また、第1の配線SLと、トランジスタ1171のソース電極とは、電気的に接続され、第2の配線BLと、トランジスタ1171のドレイン電極とは、電気的に接続され、第3の配線S1と、トランジスタ1172のソース電極またはドレイン電極の他方とは、電気的に接続され、第4の配線S2と、トランジスタ1172のゲート電極とは、電気的に接続され、第5の配線WLと、容量素子1173の他方の電極とは、電気的に接続されている。
【0150】
次に、回路の動作の具体的な例について説明する。なお、以下の説明で例示する電位、電圧等の数字は適宜変更しても構わない。
【0151】
メモリセル1170への書き込みを行う場合は、第1の配線SLを0V、第5の配線WLを0V、第2の配線BLを0V、第4の配線S2を2Vとする。データ”1”を書き込む場合には第3の配線S1を2V、データ”0”を書き込む場合には第3の配線S1を0Vとする。このとき、トランジスタ1172はオン状態となる。なお、書き込み終了時には、第3の配線S1の電位を変化させる前に、第4の配線S2を0Vとして、トランジスタ1172をオフ状態にする。
【0152】
その結果、データ”1”の書き込み後にはトランジスタ1171のゲート電極に接続されるノード(以下、ノードA)の電位が約2V、データ”0”の書き込み後にはノードAの電位が約0Vとなる。
【0153】
メモリセル1170の読み出しを行う場合は、第1の配線SLを0V、第5の配線WLを2V、第4の配線S2を0V、第3の配線S1を0Vとし、第2の配線BLに接続されている読み出し回路を動作状態とする。このとき、トランジスタ1172は、オフ状態となる。
【0154】
第5の配線WLを2Vとした場合のトランジスタ1171の状態について説明する。トランジスタ1171の状態を決めるノードAの電位は、第5の配線WL−ノードA間の容量C1と、トランジスタ1171のゲート電極−ソース電極とドレイン電極間の容量C2に依存する。
【0155】
なお、読み出し時の第3の配線S1は0Vとしたが、フローティング状態や0V以上の電位に充電されていても構わない。データ”1”とデータ”0”は便宜上の定義であって、逆であっても構わない。
【0156】
書き込み時の第3の配線S1の電位は、書き込み後にトランジスタ1172がオフ状態となり、また、第5の配線WLの電位が0Vの場合にトランジスタ1171がオフ状態である範囲で、データ”0”、”1”の電位をそれぞれ選べばよい。読み出し時の第5の配線WLの電位は、データ”0”の場合にトランジスタ1171がオフ状態となり、データ”1”の場合にトランジスタ1171がオン状態となるように選べばよい。例えば、トランジスタ1171のしきい値電圧とすればよい。上述したトランジスタ1171の状態を変えない範囲であれば、どのようなしきい値電圧でも構わない。
【0157】
また、第1のゲート電極、および第2のゲート電極を有する選択トランジスタと、容量素子を有するメモリセルを用いるNOR型の半導体記憶装置の例について図5(B)を用いて説明する。
【0158】
図5(B)に示すメモリセルアレイは、i行(iは3以上の自然数。)j列(jは3以上の自然数。)にマトリクス状に配列された複数のメモリセル1180と、i本のワード線WL(ワード線WL_1〜WL_i)と、i本の容量線CL(容量線CL_1〜CL_i)と、i本のゲート線BGL(ゲート線BGL_1〜BGL_i)と、j本のビット線BL(ビット線BL_1〜BL_j)と、ソース線SLと、を具備する。なお、本実施の形態ではi本のゲート線BGL(ゲート線BGL_1〜BGL_i)を具備するメモリセルアレイについて説明するが、これに限定されない。例えば、ゲート線BGLを設けないメモリセルアレイであっても構わない。ここで、iおよびjは便宜上3以上の自然数としているが、本実施の形態に示すメモリセルアレイの行数および列数は、それぞれ3以上に限定されるものではない。1行または1列のメモリセルアレイとしてもよいし、2行または2列のメモリセルアレイとしてもよい。
【0159】
さらに、複数のメモリセル1180のそれぞれ(メモリセル1180(M,N)(ただし、Nは1以上j以下の自然数、Mは1以上i以下の自然数。)ともいう。)は、トランジスタ1181(M,N)と、容量素子1183(M,N)と、トランジスタ1182(M,N)と、を備える。
【0160】
なお、半導体記憶装置において、容量素子は、第1の容量電極、第2の容量電極、ならびに第1の容量電極および第2の容量電極に重畳する誘電体層により構成される。容量素子は、第1の容量電極および第2の容量電極の間に印加される電圧に応じて電荷が蓄積される。
【0161】
トランジスタ1181(M,N)は、nチャネル型トランジスタであり、ソース電極、ドレイン電極、第1のゲート電極、および第2のゲート電極を有する。なお、本実施の形態の半導体記憶装置において、必ずしもトランジスタ1181をnチャネル型トランジスタにしなくてもよい。
【0162】
トランジスタ1181(M,N)のソース電極およびドレイン電極の一方は、ビット線BL_Nに接続され、トランジスタ1181(M,N)の第1のゲート電極は、ワード線WL_Mに接続され、トランジスタ1181(M,N)の第2のゲート電極は、ゲート線BGL_Mに接続される。トランジスタ1181(M,N)のソース電極およびドレイン電極の一方がビット線BL_Nに接続される構成にすることにより、メモリセルごとに選択的にデータを読み出すことができる。
【0163】
トランジスタ1181(M,N)は、メモリセル1180(M,N)において選択トランジスタとしての機能を有する。
【0164】
トランジスタ1181(M,N)としては、酸化物半導体をチャネル形成領域に用いたトランジスタを用いることができる。
【0165】
トランジスタ1182(M,N)は、pチャネル型トランジスタである。なお、本実施の形態の半導体記憶装置において、必ずしもトランジスタ1182をpチャネル型トランジスタにしなくてもよい。
【0166】
トランジスタ1182(M,N)のソース電極およびドレイン電極の一方は、ソース線SLに接続され、トランジスタ1182(M,N)のソース電極およびドレイン電極の他方は、ビット線BL_Nに接続され、トランジスタ1182(M,N)のゲート電極は、トランジスタ1181(M,N)のソース電極およびドレイン電極の他方に接続される。
【0167】
トランジスタ1182(M,N)は、メモリセル1180(M,N)において、出力トランジスタとしての機能を有する。トランジスタ1182(M,N)としては、例えば単結晶シリコンをチャネル形成領域に用いるトランジスタを用いることができる。
【0168】
容量素子1183(M,N)の第1の容量電極は、容量線CL_Mに接続され、容量素子1183(M,N)の第2の容量電極は、トランジスタ1181(M,N)のソース電極およびドレイン電極の他方に接続される。なお、容量素子1183(M,N)は、保持容量としての機能を有する。
【0169】
ワード線WL_1〜WL_iのそれぞれの電圧は、例えばデコーダを用いた駆動回路により制御される。
【0170】
ビット線BL_1〜BL_jのそれぞれの電圧は、例えばデコーダを用いた駆動回路により制御される。
【0171】
容量線CL_1〜CL_iのそれぞれの電圧は、例えばデコーダを用いた駆動回路により制御される。
【0172】
ゲート線BGL_1〜BGL_iのそれぞれの電圧は、例えばゲート線駆動回路を用いて制御される。
【0173】
ゲート線駆動回路は、例えばダイオードおよび第1の容量電極がダイオードのアノードおよびゲート線BGLに電気的に接続される容量素子を備える回路により構成される。
【0174】
トランジスタ1181の第2のゲート電極の電圧を調整することにより、トランジスタ1181の閾値電圧を調整することができる。従って、選択トランジスタとして機能するトランジスタ1181の閾値電圧を調整し、オフ状態におけるトランジスタ1181のソース電極およびドレイン電極の間に流れる電流を極力小さくすることができる。よって、記憶回路におけるデータの保持期間を長くすることができる。また、データの書き込みおよび読み出しに必要な電圧を従来の半導体装置より低くすることができるため、消費電力を低減することができる。
【0175】
本実施の形態によって、酸化物半導体をチャネル形成領域に用いたトランジスタに接続するノードの電位を極めて長時間にわたって保持することが可能であるため、小さい消費電力にて、情報の書き込み、保持、読み出しが可能な記憶素子を作製することができる。
【0176】
本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0177】
(実施の形態4)
本実施の形態では、実施の形態1に示すトランジスタを用いた半導体装置の例について、図6を参照して説明する。
【0178】
図6(A)には、いわゆるDRAM(Dynamic Random Access Memory)に相当する構成の半導体装置の一例を示す。図6(A)に示すメモリセルアレイ1120は、複数のメモリセル1130がマトリクス状に配列された構成を有している。また、メモリセルアレイ1120は、m本の第1の配線BL、およびn本の第2の配線WLを有する。なお、本実施の形態においては、第1の配線BLをビット線BLと呼び、第2の配線WLをワード線WLと呼ぶ。
【0179】
メモリセル1130は、トランジスタ1131と、容量素子1132と、から構成されている。トランジスタ1131のゲート電極は、第2の配線WLと接続されている。また、トランジスタ1131のソース電極またはドレイン電極の一方は、第1の配線BLと接続されており、トランジスタ1131のソース電極またはドレイン電極の他方は、容量素子の電極の一方と接続されている。また、容量素子の電極の他方は容量線CLと接続され、一定の電位が与えられている。トランジスタ1131には、実施の形態1に示すトランジスタが適用される。
【0180】
実施の形態1において示した酸化物半導体をチャネル形成領域に用いるトランジスタは、単結晶シリコンをチャネル形成領域に用いたトランジスタに比べてオフ電流が小さいという特徴を有する。このため、いわゆるDRAMとして認識されている図6(A)に示す半導体装置に実施の形態1で示したトランジスタを適用する場合、実質的な不揮発性メモリを得ることが可能である。
【0181】
図6(B)には、いわゆるSRAM(Static Random Access Memory)に相当する構成の半導体装置の一例を示す。図6(B)に示すメモリセルアレイ1140は、複数のメモリセル1150がマトリクス状に配列された構成とすることができる。また、メモリセルアレイ1140は、第1の配線BL、第2の配線WLおよび第3の配線(反転ビット線/BL)を有する。
【0182】
メモリセル1150は、第1のトランジスタ1151、第2のトランジスタ1152、第3のトランジスタ1153、第4のトランジスタ1154、第5のトランジスタ1155、および第6のトランジスタ1156を有している。第1のトランジスタ1151と第2のトランジスタ1152は、選択トランジスタとして機能する。また、第3のトランジスタ1153と第4のトランジスタ1154のうち、一方はnチャネル型トランジスタ(ここでは、第4のトランジスタ1154)であり、他方はpチャネル型トランジスタ(ここでは、第3のトランジスタ1153)である。つまり、第3のトランジスタ1153と第4のトランジスタ1154によってCMOS回路が構成されている。同様に、第5のトランジスタ1155と第6のトランジスタ1156によってCMOS回路が構成されている。
【0183】
第1のトランジスタ1151、第2のトランジスタ1152、第4のトランジスタ1154、第6のトランジスタ1156は、nチャネル型トランジスタであり、実施の形態1において示したトランジスタを適用すればよい。第3のトランジスタ1153と第5のトランジスタ1155は、pチャネル型トランジスタであり、酸化物半導体以外の材料をチャネル形成領域に用いればよい。ただし、上記の第1乃至第6のトランジスタ1151乃至1156のうち、pチャネル型トランジスタに実施の形態1に示したトランジスタを適用してもよいし、nチャネル型トランジスタに酸化物半導体以外の材料をチャネル形成領域に用いたトランジスタを適用してもよい。
【0184】
本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0185】
(実施の形態5)
酸化物半導体をチャネル形成領域に用いたトランジスタを少なくとも一部に用いてCPU(Central Processing Unit)を構成することができる。
【0186】
図7(A)は、CPUの具体的な構成を示すブロック図である。図7(A)に示すCPUは、基板1190上に、演算回路(ALU:Arithmetic logic unit)1191、ALUコントローラ1192、インストラクションデコーダ1193、インタラプトコントローラ1194、タイミングコントローラ1195、レジスタ1196、レジスタコントローラ1197、バスインターフェース(Bus I/F)1198、書き換え可能なROM1199、およびROMインターフェース(ROM I/F)1189を有している。基板1190は、半導体基板、SOI基板、ガラス基板などを用いる。ROM1199およびROMインターフェース1189は、別チップに設けてもよい。もちろん、図7(A)に示すCPUは、その構成を簡略化して示した一例にすぎず、実際のCPUはその用途によって多種多様な構成を有している。
【0187】
バスインターフェース1198を介してCPUに入力された命令は、インストラクションデコーダ1193に入力され、デコードされた後、ALUコントローラ1192、インタラプトコントローラ1194、レジスタコントローラ1197、タイミングコントローラ1195に入力される。
【0188】
ALUコントローラ1192、インタラプトコントローラ1194、レジスタコントローラ1197、タイミングコントローラ1195は、デコードされた命令に基づき、各種制御を行なう。具体的にALUコントローラ1192は、ALU1191の動作を制御するための信号を生成する。また、インタラプトコントローラ1194は、CPUのプログラム実行中に、外部の入出力装置や、周辺回路からの割り込み要求を、その優先度やマスク状態から判断し、処理する。レジスタコントローラ1197は、レジスタ1196のアドレスを生成し、CPUの状態に応じてレジスタ1196の読み出しや書き込みを行なう。
【0189】
また、タイミングコントローラ1195は、ALU1191、ALUコントローラ1192、インストラクションデコーダ1193、インタラプトコントローラ1194、およびレジスタコントローラ1197の動作のタイミングを制御する信号を生成する。例えばタイミングコントローラ1195は、基準クロック信号CLK1を元に、内部クロック信号CLK2を生成する内部クロック生成部を備えており、クロック信号CLK2を上記各種回路に供給する。
【0190】
図7(A)に示すCPUでは、レジスタ1196に、記憶素子が設けられている。レジスタ1196の記憶素子には、実施の形態2に記載されている記憶素子を用いることができる。
【0191】
図7(A)に示すCPUにおいて、レジスタコントローラ1197は、ALU1191からの指示に従い、レジスタ1196における保持動作の選択を行う。すなわち、レジスタ1196が有する記憶素子において、位相反転素子によるデータの保持を行うか、容量素子によるデータの保持を行うかを、選択する。位相反転素子によるデータの保持が選択されている場合、レジスタ1196内の記憶素子への、電源電圧の供給が行われる。容量素子におけるデータの保持が選択されている場合、容量素子へのデータの書き換えが行われ、レジスタ1196内の記憶素子への電源電圧の供給を停止することができる。
【0192】
電源停止に関しては、図7(B)または図7(C)に示すように、記憶素子群と、電源電位VDDまたは電源電位VSSの与えられているノード間に、スイッチング素子を設けることにより行うことができる。以下に図7(B)および図7(C)の回路の説明を行う。
【0193】
図7(B)および図7(C)では、記憶素子への電源電位の供給を制御するスイッチング素子に、酸化物半導体をチャネル形成領域に用いたトランジスタを含む記憶回路の構成の一例を示す。
【0194】
図7(B)に示す記憶装置は、スイッチング素子1141と、記憶素子1142を複数有する記憶素子群1143とを有している。具体的に、各記憶素子1142には、実施の形態2に記載されている記憶素子を用いることができる。記憶素子群1143が有する各記憶素子1142には、スイッチング素子1141を介して、ハイレベルの電源電位VDDが供給されている。さらに、記憶素子群1143が有する各記憶素子1142には、信号INの電位と、ローレベルの電源電位VSSの電位が与えられている。
【0195】
図7(B)では、スイッチング素子1141として、酸化物半導体をチャネル形成領域に有するトランジスタを用いており、該トランジスタは、そのゲート電極に与えられる信号SigAによりスイッチングが制御される。
【0196】
なお、図7(B)では、スイッチング素子1141がトランジスタを一つだけ有する構成を示しているが、特に限定されず、トランジスタを複数有していてもよい。スイッチング素子1141が、スイッチング素子として機能するトランジスタを複数有している場合、上記複数のトランジスタは並列に接続されていてもよいし、直列に接続されていてもよいし、直列と並列が組み合わされて接続されていてもよい。
【0197】
また、図7(B)では、スイッチング素子1141により、記憶素子群1143が有する各記憶素子1142への、ハイレベルの電源電位VDDの供給が制御されているが、スイッチング素子1141により、ローレベルの電源電位VSSの供給が制御されていてもよい。
【0198】
また、図7(C)には、記憶素子群1143が有する各記憶素子1142に、スイッチング素子1141を介して、ローレベルの電源電位VSSが供給されている、記憶装置の一例を示す。スイッチング素子1141により、記憶素子群1143が有する各記憶素子1142への、ローレベルの電源電位VSSの供給を制御することができる。
【0199】
記憶素子群と、電源電位VDDまたは電源電位VSSの与えられているノード間に、スイッチング素子を設け、一時的にCPUの動作を停止し、電源電圧の供給を停止した場合においてもデータを保持することが可能であり、消費電力の低減を行うことができる。具体的には、例えば、パーソナルコンピュータのユーザーが、キーボードなどの入力装置への情報の入力を停止している間でも、CPUの動作を停止することができ、それにより消費電力を低減することができる。
【0200】
ここでは、CPUを例に挙げて説明したが、DSP(Digital Signal Processor)、カスタムLSI、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のLSIにも応用可能である。
【0201】
本実施の形態は、上記実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0202】
(実施の形態6)
本実施の形態では、酸化物半導体をチャネル形成領域に用いたトランジスタ用いて形成された表示装置の例を示す。表示装置に設けられる表示素子としては液晶素子(液晶表示素子ともいう。)、発光素子(発光表示素子ともいう。)などを用いることができる。発光素子は、電流または電圧によって輝度が制御される素子をその範疇に含んでおり、具体的には無機EL(Electro Luminescence)、有機ELなどを含む。また、電子インクなど、電気的作用によりコントラストが変化する表示媒体も表示素子として適用することができる。本実施の形態では、表示装置の一例として液晶表示装置を図8を参照して説明する。
【0203】
なお、本実施の形態における表示装置は、表示素子が封止された状態にあるパネルと、該パネルにコントローラを含むICなどを実装した状態にあるモジュールとを含む。
【0204】
また、本実施の形態における表示装置は画像表示デバイス、表示デバイス、もしくは光源(照明装置含む)を指す。また、コネクター、例えばFPCもしくはTABテープもしくはTCPが取り付けられたモジュール、TABテープやTCPの先にプリント配線板が設けられたモジュールまたは表示素子にCOG方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て表示装置に含むものとする。
【0205】
図8(A)において、第1の基板201上に設けられた画素部202と、走査線駆動回路204とを囲むようにして、シール材205が設けられている。また画素部202と、走査線駆動回路204の上に第2の基板206が設けられている。よって画素部202と、走査線駆動回路204とは、第1の基板201とシール材205と第2の基板206とによって、液晶素子などの表示素子と共に封止されている。図8(A)においては、第1の基板201上のシール材205によって囲まれている領域とは異なる領域に、別途用意された基板上に単結晶半導体膜または多結晶半導体膜で形成された信号線駆動回路203が実装されている。図8(A)においては、信号線駆動回路203と、走査線駆動回路204、および画素部202に与えられる各種信号および電位は、FPC(Flexible printed circuit)であるFPC218から供給されている。
【0206】
また図8(A)においては、走査線駆動回路204を第1の基板201上に設け、かつ信号線駆動回路203を別途設けて第1の基板201に実装している例を示しているが、この構成に限定されない。走査線駆動回路を別途設けて実装してもよいし、信号線駆動回路の一部または走査線駆動回路の一部のみを別途設けて実装してもよい。
【0207】
なお、別途設けた駆動回路の接続方法は、特に限定されるものではなく、COG(Chip On Glass)法、ワイヤボンディング法、またはTAB(Tape Automated Bonding)法などを用いてもよい。図8(A)は、COG法により信号線駆動回路203を実装する例である。
【0208】
第1の基板上に設けられた画素部および走査線駆動回路は、トランジスタを複数有しており、実施の形態1で示したトランジスタを適用することができる。
【0209】
図8(B)は、図8(A)のM−Nにおける断面図に相当する。
【0210】
第1の基板201上に設けられた画素部202と、走査線駆動回路204は、トランジスタを複数有しており、図8(B)では、画素部202に含まれるトランジスタ210と、走査線駆動回路204に含まれるトランジスタ211とを例示している。
【0211】
本実施の形態では、トランジスタ210、トランジスタ211として、実施の形態1で示したトランジスタを適用することができる。よって、図8(B)で示す本実施の形態の半導体装置として信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0212】
画素部202に設けられたトランジスタ210は表示素子と電気的に接続し、表示パネルを構成する。
【0213】
表示素子である液晶素子213は、第1の電極230、第2の電極231、および液晶層208を含む。なお、液晶層208を挟持するように配向膜として機能する絶縁膜232および絶縁膜233が設けられている。第2の電極231は第2の基板206側に設けられ、第1の電極230と第2の電極231とは液晶層208を介して積層する構成となっている。
【0214】
また、スペーサ235は絶縁膜を選択的にエッチングすることで得られる柱状のスペーサであり、液晶層208の厚さ(セルギャップ)を制御するために設けられている。なお球状のスペーサを用いていてもよい。
【0215】
表示素子として、液晶素子を用いる場合、サーモトロピック液晶、低分子液晶、高分子液晶、高分子分散型液晶、強誘電性液晶、反強誘電性液晶などを用いる。これらの液晶材料は、条件により、コレステリック相、スメクチック相、キュービック相、カイラルネマチック相、等方相などを示す。
【0216】
また、液晶材料の固有抵抗率は、1×10Ω・cm以上であり、好ましくは1×1011Ω・cm以上であり、さらに好ましくは1×1012Ω・cm以上である。なお、本明細書における固有抵抗率の値は、20℃で測定した値とする。
【0217】
液晶表示装置に設けられる保持容量の大きさは、画素部に配置されるトランジスタのリーク電流などを考慮して、所定の期間の間電荷を保持できるように設定される。酸化物半導体膜を有するトランジスタを用いることにより、各画素における液晶容量に対して1/3以下または1/5以下の容量の大きさを有する保持容量を設ければ充分である。
【0218】
図8(B)で示すように、半導体装置は接続端子電極215および端子電極216を有しており、接続端子電極215および端子電極216はFPC218が有する端子と異方性導電膜219を介して、電気的に接続されている。なお、端子電極216の下部には酸化物半導体膜217が残置している。
【0219】
接続端子電極215は、第1の電極230と同じ導電膜から形成され、端子電極216は、トランジスタ210、トランジスタ211のソース電極およびドレイン電極と同じ導電膜から形成されている。
【0220】
本実施の形態で用いる酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、オフ電流を小さくすることができる。よって、画像信号などの電気信号の保持時間を長くすることができ、電源オン状態では書き込み間隔も長く設定できる。よって、リフレッシュ動作の頻度を少なくできるため、消費電力を抑制する効果を奏する。
【0221】
また、本実施の形態で用いる酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、比較的高い電界効果移動度が得られるため、高速駆動が可能である。よって、液晶表示装置の画素部に上記トランジスタを用いることで、高画質な画像を提供することができる。また、上記トランジスタは、同一基板上に駆動回路部または画素部に作り分けて作製することができるため、液晶表示装置の部品点数を削減することができる。
【0222】
液晶表示装置には、液晶の駆動方法に、基板に対して直交に電圧を印加する縦電界方式、基板に対して平行に電圧を印加する横電界方式がある。以下に液晶の動作モードについて例に挙げて説明する。
【0223】
まず図10(A1)および(A2)に、TNモードの液晶表示装置の画素構成を説明する断面模式図を示す。
【0224】
互いに対向するように配置された第1の基板3101および第2の基板3102に、表示素子を有する層3100が挟持されている。また、第1の基板3101側に第1の偏光板3103が形成され、第2の基板3102側に第2の偏光板3104が形成されている。第1の偏光板3103の吸収軸と、第2の偏光板3104の吸収軸は、クロスニコルの状態で配置されている。
【0225】
なお図示しないが、バックライト等は、第2の偏光板3104の外側に配置される。第1の基板3101、および第2の基板3102上には、それぞれ第1の電極3108、第2の電極3109が設けられている。そして、バックライトと反対側、つまり視認側の電極である第1の電極3108は、透光性を有するように形成する。
【0226】
このような構成を有する液晶表示装置において、ノーマリホワイトモードの場合、第1の電極3108および第2の電極3109に電圧が印加(縦電界方式と呼ぶ)されると、図10(A1)に示すように、液晶分子3105は縦に並んだ状態となる。すると、バックライトからの光は第1の偏光板3103を通過することができず、黒色表示となる。
【0227】
そして図10(A2)に示すように、第1の電極3108および第2の電極3109の間に電圧が印加されていないときは、液晶分子3105は横に並び、平面内で捩れている状態となる。その結果、バックライトからの光は第1の偏光板3103を通過することができ、白色表示となる。また、第1の電極3108および第2の電極3109に印加する電圧を調節することにより、階調を表現することができる。このようにして、所定の映像表示が行われる。
【0228】
このとき、カラーフィルタを設けることにより、フルカラー表示を行うことができる。カラーフィルタは、第1の基板3101側、または第2の基板3102側のどちらに設けることもできる。
【0229】
TNモードに使用される液晶材料は、公知のものを使用すればよい。
【0230】
図10(B1)および(B2)に、VAモードの液晶表示装置の画素構成を説明する断面模式図を示す。VAモードは、無電界の時に液晶分子3105が基板に垂直となるように配向されているモードである。
【0231】
図10(A1)および(A2)と同様に、第1の基板3101、および第2の基板3102上には、それぞれ第1の電極3108、第2の電極3109が設けられている。そして、バックライトと反対側、つまり視認側の電極である第1の電極3108は、透光性を有するように形成する。そして第1の基板3101側には、第1の偏光板3103が形成され、第2の基板3102側に第2の偏光板3104が形成されている。また、第1の偏光板3103の吸収軸と、第2の偏光板3104の吸収軸は、クロスニコルの状態で配置されている。
【0232】
このような構成を有する液晶表示装置において、第1の電極3108および第2の電極3109に電圧が印加される(縦電界方式)と、図10(B1)に示すように液晶分子3105は横に並んだ状態となる。すると、バックライトからの光は、第1の偏光板3103を通過することができ、白色表示となる。
【0233】
そして図10(B2)に示すように、第1の電極3108および第2の電極3109の間に電圧が印加されていないときは、液晶分子3105は縦に並んだ状態となる。その結果、第2の偏光板3104により偏光されたバックライトからの光は、液晶分子3105の複屈折の影響を受けることなくセル内を通過する。すると、偏光されたバックライトからの光は、第1の偏光板3103を通過することができず、黒色表示となる。また、第1の電極3108および第2の電極3109に印加する電圧を調節することにより、階調を表現することができる。このようにして、所定の映像表示が行われる。
【0234】
このとき、カラーフィルタを設けることにより、フルカラー表示を行うことができる。カラーフィルタは、第1の基板3101側、または第2の基板3102側のどちらに設けることもできる。
【0235】
図10(C1)および(C2)に、MVAモードの液晶表示装置の画素構成を説明する断面模式図を示す。MVAモードは一画素を複数に分割し、それぞれの部分の配向方向を異ならせて、視野角依存性を互いに補償する方法である。図10(C1)に示すように、MVAモードでは、第1の電極3108および第2の電極3109上に配向制御用に断面が三角の突起物3158および159が設けられている。なお、他の構成はVAモードと同等である。
【0236】
第1の電極3108および第2の電極3109に電圧が印加される(縦電界方式)と、図10(C1)に示すように液晶分子3105は突起物3158および3159の面に対して液晶分子3105の長軸が概ね垂直となるように配向する。すると、バックライトからの光は、第1の偏光板3103を通過することができ、白色表示となる。
【0237】
そして図10(C2)に示すように、第1の電極3108および第2の電極3109の間に電圧が印加されていないときは、液晶分子3105は縦に並んだ状態となる。その結果、バックライトからの光は、第1の偏光板3103を通過することができず、黒色表示となる。また、第1の電極3108および第2の電極3109に印加する電圧を調節することにより、階調を表現することができる。このようにして、所定の映像表示が行われる。
【0238】
このとき、カラーフィルタを設けることにより、フルカラー表示を行うことができる。カラーフィルタは、第1の基板3101側、または第2の基板3102側のどちらに設けることもできる。
【0239】
MVAモードの他の例を上面図および断面図を図13に示す。図13(A)に示すように、第2の電極3109a、第2の電極3109bおよび第2の電極3109cは、くの字のように屈曲したパターンに形成されている。図13(B)で示すように、第2の電極3109a、3109b、3109c上および第1の電極3108上に配向膜である絶縁膜3162および絶縁膜3163がそれぞれが形成されている。第1の電極3108上には突起物3158が第2の電極3109bと重畳するように形成されている。
【0240】
図11(A1)および(A2)に、OCBモードの液晶表示装置の画素構成を説明する断面模式図を示す。OCBモードは、液晶層内で液晶分子3105が視野角依存性を補償するように配向しており、これはベンド配向と呼ばれる。
【0241】
図10と同様に、第1の基板3101、および第2の基板3102上には、それぞれ第1の電極3108、第2の電極3109が設けられている。そして、バックライトと反対側、つまり視認側の電極である第1の電極3108は、透光性を有するように形成する。そして第1の基板3101側には、第1の偏光板3103が形成され、第2の基板3102側に第2の偏光板3104が形成されている。また、第1の偏光板3103の吸収軸と、第2の偏光板3104の吸収軸は、クロスニコルの状態で配置されている。
【0242】
このような構成を有する液晶表示装置において、第1の電極3108および第2の電極3109に電圧が印加される(縦電界方式)と黒色表示が行われる。このとき液晶分子3105は、図11(A1)に示すように縦に並んだ状態となる。すると、バックライトからの光は、第1の偏光板3103を通過することができず、黒色表示となる。
【0243】
そして図11(A2)に示すように、第1の電極3108および第2の電極3109の間に電圧が印加されていないときは、液晶分子3105はベンド配向の状態となる。その結果、バックライトからの光は、第1の偏光板3103を通過することができ、白色表示となる。また、第1の電極3108および第2の電極3109に印加する電圧を調節することにより、階調を表現することができる。このようにして、所定の映像表示が行われる。
【0244】
このとき、カラーフィルタを設けることにより、フルカラー表示を行うことができる。カラーフィルタは、第1の基板3101側、または第2の基板3102側のどちらに設けることもできる。
【0245】
このようなOCBモードでは、液晶層内で液晶分子3105の配列により視野角依存性を補償できる。さらに、一対の積層された偏光子を含む層によりコントラスト比を高めることができる。
【0246】
図11(B1)および(B2)に、FLCモードおよびAFLCモードの液晶表示装置の画素構成を説明する断面模式図を示す。
【0247】
図10と同様に、第1の基板3101、および第2の基板3102上には、それぞれ第1の電極3108、第2の電極3109が設けられている。そして、バックライトと反対側、つまり視認側の電極である第1の電極3108は、透光性を有するように形成する。そして第1の基板3101側には、第1の偏光板3103が形成され、第2の基板3102側に第2の偏光板3104が形成されている。また、第1の偏光板3103の吸収軸と、第2の偏光板3104の吸収軸は、クロスニコルの状態で配置されている。
【0248】
このような構成を有する液晶表示装置において、第1の電極3108および第2の電極3109に電圧が印加(縦電界方式と呼ぶ)されると、液晶分子3105はラビング方向からずれた方向で横に並んでいる状態となる。その結果、バックライトからの光は、第1の偏光板3103を通過することができ、白色表示となる。
【0249】
そして図11(B2)に示すように、第1の電極3108および第2の電極3109の間に電圧が印加されていないときは、液晶分子3105はラビング方向に沿って横に並んだ状態となる。すると、バックライトからの光は、第1の偏光板3103を通過することができず、黒色表示となる。また、第1の電極3108および第2の電極3109に印加する電圧を調節することにより、階調を表現することができる。このようにして、所定の映像表示が行われる。
【0250】
このとき、カラーフィルタを設けることにより、フルカラー表示を行うことができる。カラーフィルタは、第1の基板3101側、または第2の基板3102側のどちらに設けることもできる。
【0251】
FLCモードおよびAFLCモードに使用される液晶材料は、公知のものを使用すればよい。
【0252】
図12(A1)および(A2)に、IPSモードの液晶表示装置の画素構成を説明する断面模式図を示す。IPSモードは、一方の基板側のみに設けた電極の横電界によって液晶分子3105を基板に対して平面内で回転させるモードである。
【0253】
IPSモードは一方の基板に設けられた一対の電極により液晶を制御することを特徴とする。そのため、第2の基板3102上に一対の電極3150、電極3151が設けられている。一対の電極3150、電極3151は、それぞれ透光性を有するとよい。そして第1の基板3101側には、第1の偏光板3103が形成され、第2の基板3102側に第2の偏光板3104が形成されている。また、第1の偏光板3103の吸収軸と、第2の偏光板3104の吸収軸は、クロスニコルの状態で配置されている。
【0254】
このような構成を有する液晶表示装置において、一対の電極3150、電極3151に電圧が印加されると、図12(A1)に示すように液晶分子3105はラビング方向からずれた電気力線に沿って配向する。すると、バックライトからの光は、第1の偏光板3103を通過することができ、白色表示となる。
【0255】
そして図12(A2)に示すように、一対の電極3150、電極3151の間に電圧が印加されていないとき、液晶分子3105は、ラビング方向に沿って横に並んだ状態となる。その結果、バックライトからの光は、第1の偏光板3103を通過することができず、黒色表示となる。また、一対の電極3150、電極3151の間に印加する電圧を調節することにより、階調を表現することができる。このようにして、所定の映像表示が行われる。
【0256】
このとき、カラーフィルタを設けることにより、フルカラー表示を行うことができる。カラーフィルタは、第1の基板3101側、または第2の基板3102側のどちらに設けることもできる。
【0257】
IPSモードで用いることできる一対の電極3150および151の例を図14に示す。図14(A)乃至図14(C)の上面図に示すように、一対の電極3150および3151が互い違いとなるように形成されており、図14(A)では電極3150aおよび電極3151aはうねりを有する波状形状であり、図14(B)では電極3150bおよび電極3151bは櫛歯状であり一部重なっている形状であり、図14(C)では電極3150cおよび電極3151cは櫛歯状であり電極同士がかみ合うような形状である。
【0258】
図12(B1)および(B2)に、FFSモードの液晶表示装置の画素構成を説明する断面模式図を示す。FFSモードはIPSモードと同じ横電界方式であるが、図12(B1)および(B2)に示すように、電極3150上に絶縁膜を介して電極3151が形成される構造である。
【0259】
一対の電極3150、電極3151は、それぞれ透光性を有するとよい。そして第1の基板3101側には、第1の偏光板3103が形成され、第2の基板3102側に第2の偏光板3104が形成されている。また、第1の偏光板3103の吸収軸と、第2の偏光板3104の吸収軸は、クロスニコルの状態で配置されている。
【0260】
このような構成を有する液晶表示装置において、一対の電極3150、電極3151に電圧が印加されると、図12(B1)に示すように液晶分子3105はラビング方向からずれた電気力線に沿って配向する。すると、バックライトからの光は、第1の偏光板3103を通過することができ、白色表示となる。
【0261】
そして図12(B2)に示すように、一対の電極3150、電極3151の間に電圧が印加されていないとき、液晶分子3105は、ラビング方向に沿って横に並んだ状態となる。その結果、バックライトからの光は、第1の偏光板3103を通過することができず、黒色表示となる。また、一対の電極3150、電極3151の間に印加する電圧を調節することにより、階調を表現することができる。このようにして、所定の映像表示が行われる。
【0262】
このとき、カラーフィルタを設けることにより、フルカラー表示を行うことができる。カラーフィルタは、第1の基板3101側、または第2の基板3102側のどちらに設けることもできる。
【0263】
FFSモードで用いることできる一対の電極3150および151の例を図15に示す。図15(A)乃至図15(C)の上面図に示すように、電極3150上に様々なパターンに形成された電極3151が形成されており、図15(A)では電極3150a上の電極3151aは屈曲したくの字形状であり、図15(B)では電極3150b上の電極3151bは櫛歯状で電極同士がかみ合うような形状であり、図15(C)では電極3150c上の電極3151cは櫛歯状の形状である。
【0264】
IPSモードおよびFFSモードに使用される液晶材料は、公知のものを使用すればよい。または、ブルー相を示す液晶を用いてもよい。
【0265】
また、これら以外にも、PVAモード、ASMモード、TBAモードなどの動作モードを適用することが可能である。
【0266】
表示装置において、ブラックマトリクス(遮光層)、偏光部材、位相差部材、反射防止部材などの光学部材(光学基板)などは適宜設ける。例えば、偏光基板および位相差基板による円偏光を用いてもよい。また、光源としてバックライト、サイドライトなどを用いてもよい。
【0267】
また、バックライトとして複数の発光ダイオード(LED)を用いて、時間分割表示方式(フィールドシーケンシャル駆動方式)を行うことも可能である。フィールドシーケンシャル駆動方式を適用することで、カラーフィルタを用いることなく、カラー表示を行うことができる。
【0268】
上述したように、画素部における表示方式は、プログレッシブ方式やインターレース方式などを用いる。また、カラー表示する際に画素で制御する色要素としては、RGB(Rは赤、Gは緑、Bは青を表す)の三色に限定されない。例えば、RGBW(Wは白を表す)、またはRGBに、イエロー、シアン、マゼンタなどを一色以上追加したものがある。なお、色要素のドット毎にその表示領域の大きさが異なっていてもよい。ただし、本発明はカラー表示の表示装置に限定されるものではなく、モノクロ表示の表示装置に適用することもできる。
【0269】
また、表示装置に含まれる表示素子として、エレクトロルミネッセンスを利用する発光素子を適用してもよい。エレクトロルミネッセンスを利用する発光素子は、発光材料が有機化合物であるか、無機化合物であるかによって区別され、一般的に、前者は有機EL素子、後者は無機EL素子と呼ばれている。
【0270】
有機EL素子は、発光素子に電圧を印加することにより、一対の電極から電子および正孔がそれぞれ発光性の有機化合物を含む層に注入され、電流が流れる。そして、これらキャリア(電子および正孔)が再結合することにより、発光する。このようなメカニズムから、このような発光素子は、電流励起型の発光素子と呼ばれる。
【0271】
無機EL素子は、その素子構成により、分散型無機EL素子と薄膜型無機EL素子とに分類される。分散型無機EL素子は、発光材料の粒子をバインダ中に分散させた発光層を有するものであり、発光メカニズムはドナー準位とアクセプター準位を利用するドナー−アクセプター再結合型発光である。薄膜型無機EL素子は、発光層を誘電体層で挟み込み、さらにそれを電極で挟んだ構造であり、発光メカニズムは金属イオンの内殻電子遷移を利用する局在型発光である。なお、ここでは、発光素子として有機EL素子を用いて説明する。
【0272】
発光素子は光を取り出すために少なくとも一対の電極の一方が透明であればよい。そして、基板上にトランジスタおよび発光素子を作製し、基板とは逆側の面から光を取り出す上面射出や、基板側の面から光を取り出す下面射出や、基板側および基板とは反対側の面から光を取り出す両面射出構造の発光素子があり、どの射出構造の発光素子を適用してもよい。
【0273】
図8(B)において、第1の基板201、第2の基板206としては、可撓性を有する基板も用いてもよく、例えば透光性を有するプラスチック基板などを用いる。プラスチックとしては、FRP(Fiberglass−Reinforced Plastics)板、PVF(ポリビニルフルオライド)フィルム、ポリエステルフィルムまたはアクリル樹脂フィルムを用いる。また、アルミニウムホイルをPVFフィルムやポリエステルフィルムで挟んだ構造のシートを用いてもよい。
【0274】
図8(B)の表示装置は光源からの光を透過させて表示を行う。よって光が透過する画素部に設けられる基板、絶縁膜、導電膜などの薄膜はすべて可視光に対して透光性とする。
【0275】
第1の電極230、第2の電極231には、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム錫酸化物(以下、ITOと示す。)、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの透光性を有する導電性材料を用いる。
【0276】
また、第1の電極230、第2の電極231として、導電性高分子(導電性ポリマーともいう)を含む導電性組成物を用いる。導電性高分子としては、いわゆるπ電子共役系導電性高分子を用いてもよい。例えば、ポリアニリンまたはその誘導体、ポリピロールまたはその誘導体、ポリチオフェンまたはその誘導体、もしくはアニリン、ピロールおよびチオフェンの2種以上からなる共重合体若しくはその誘導体等が挙げられる。
【0277】
また、第1の電極230、第2の電極231は、可視光に対して透光性を有すれば、導電膜108と同様の導電膜を用いてもよい。また、可視光に対して透光性を有すれば、トランジスタ210のゲート電極と同一層かつ同一材料を用いてもよい。
【0278】
また、トランジスタは静電気などにより破壊されやすいため、駆動回路保護用の保護回路を設けることが好ましい。保護回路は、非線形素子を用いて構成することが好ましい。
【0279】
保護回路に適用可能な回路の一例を図9(A)に示す。保護回路997はnチャネル型のトランジスタ970aおよびトランジスタ970bによって構成されており、それぞれダイオードと同様の特性を示すように、ゲート端子がドレイン端子と接続されている。なお、トランジスタ970aおよびトランジスタ970bとして、実施の形態1で示したトランジスタを用いてもよい。
【0280】
トランジスタ970aの第1端子(ゲート)と第3端子(ドレイン)は第1の配線945に接続され、第2端子(ソース)は第2の配線960に接続されている。また、トランジスタ970bの第1端子(ゲート)と第3端子(ドレイン)は第2の配線960に接続され、第2端子(ソース)は第1の配線945に接続されている。すなわち、図9(A)で示す保護回路は、二つのトランジスタのそれぞれが整流方向を逆向きにして、第1の配線945と第2の配線960を接続する構成を備えている。言い換えると、整流方向が第1の配線945から第2の配線960に向かうトランジスタと、整流方向が第2の配線960から第1の配線945に向かうトランジスタを、第1の配線945と第2の配線960の間に有する構成である。
【0281】
上記の保護回路は、第2の配線960が静電気等により正または負に帯電した場合、その電荷を打ち消す方向に電流が流れる。例えば、第2の配線960が正に帯電した場合は、正電荷を第1の配線945に逃がす方向に電流が流れる。この動作により、帯電した第2の配線960に接続している回路や素子の静電破壊または誤動作を防止することができる。また、帯電した第2の配線960と他の配線が絶縁膜を介して交差する構成において、該絶縁膜が絶縁破壊される現象を防止することができる。
【0282】
なお、保護回路は上記構成に限定されない。例えば、整流方向が第1の配線945から第2の配線960に向かう複数のトランジスタと、整流方向がと第2の配線960から第1の配線945に向かう複数のトランジスタを有する構成であってもよい。また、奇数個のトランジスタを使って保護回路を構成することもできる。
【0283】
図9(A)に例示した保護回路は様々な用途に適用することができる。例えば、第1の配線945を表示装置の共通配線とし、第2の配線960を複数の信号線の一とし、その間に当該保護回路を適用することができる。保護回路が設けられた信号線に接続された画素トランジスタは、配線の帯電による静電破壊やしきい値電圧のシフト等の不具合から保護される。該保護回路は表示装置の他の部位にも適用できるのはもちろんのこと、他の用途、例えば半導体記憶装置、CPUなどにも用いることができる。
【0284】
次に、基板上に保護回路997を構成する例を説明する。保護回路997の上面図の一例を図9(B)に示す。
【0285】
トランジスタ970aはゲート電極911aを有し、ゲート電極911aは第1の配線945と接続している。トランジスタ970aのソース電極は第2の配線960と接続され、ドレイン電極は第1の電極915aを介して第1の配線945と接続している。また、トランジスタ970aはソース電極とドレイン電極の間にゲート電極911aと重畳する半導体膜913を備える。
【0286】
トランジスタ970bはゲート電極911bを有し、ゲート電極911bはコンタクトホール925bを介して第2の配線960と接続している。トランジスタ970bのドレイン電極は第2の配線960と接続され、ソース電極は第1の電極915aとコンタクトホール925aを介して第1の配線945と接続している。また、トランジスタ970bはソース電極とドレイン電極の間にゲート電極911bと重畳する半導体膜914を備える。
【0287】
以上のように実施の形態1で例示したトランジスタを適用することで、消費電力が小さく、かつ信頼性の高い半導体装置を提供することができる。なお、実施の形態1で例示したトランジスタは上述の表示機能を有する半導体装置のみでなく、電源回路に搭載されるパワーデバイス、LSIなどの半導体集積回路、対象物の情報を読み取るイメージセンサ機能を有する半導体装置など様々な機能を有する半導体装置に適用することが可能である。
【0288】
また、トランジスタを介した電荷の放出を抑制できるため、動きの少ない画像(静止画を含む。)では、表示の書き換え周波数を低減でき、表示装置のさらなる消費電力の低減が可能となる。
【0289】
以上のように、本発明の一態様によって、表示品位が高く、かつ信頼性が高く、消費電力の小さい液晶表示装置を得ることができる。
【0290】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて用いることができる。
【0291】
(実施の形態7)
本実施の形態では、実施の形態1を適用した電子機器の例について説明する。
【0292】
図16(A)は携帯情報端末である。筐体300と、ボタン301と、マイクロフォン302と、表示部303と、スピーカ304と、カメラ305と、を具備し、携帯型電話機としての機能を有する。本発明の一態様は、表示部303およびカメラ305に適用することができる。また、図示しないが、本体内部にあるCPU、無線回路または記憶回路に本発明の一態様を適用することもできる。
【0293】
図16(B)は、ディスプレイである。筐体310と、表示部311と、を具備する。本発明の一態様は、表示部311に適用することができる。本発明の一態様を用いることで、表示部311のサイズを大きくしたときにも表示品位の高いディスプレイとすることができる。
【0294】
図16(C)は、デジタルスチルカメラである。筐体320と、ボタン321と、マイクロフォン322と、表示部323と、を具備する。本発明の一態様は、表示部323に適用することができる。また、図示しないが、本体内部にある記憶回路またはイメージセンサに本発明の一態様を適用することもできる。
【0295】
本発明の一態様を用いることで、電子機器のコストを下げることができる。また表示品位の高い表示装置を得ることができる。
【0296】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて用いることができる。
【符号の説明】
【0297】
100 基板
102 下地絶縁膜
104 ゲート電極
106 第1の酸化物半導体膜
108 導電膜
112 ゲート絶縁膜
116 第2の酸化物半導体膜
118 ドレイン電極
122 層間絶縁膜
126 酸化物半導体膜
136 第1の領域
146 第2の領域
201 第1の基板
202 画素部
203 信号線駆動回路
204 走査線駆動回路
205 シール材
206 第2の基板
208 液晶層
210 トランジスタ
211 トランジスタ
213 液晶素子
215 接続端子電極
216 端子電極
217 酸化物半導体膜
218 FPC
219 異方性導電膜
230 第1の電極
231 第2の電極
232 絶縁膜
233 絶縁膜
235 スペーサ
300 筐体
301 ボタン
302 マイクロフォン
303 表示部
304 スピーカ
305 カメラ
310 筐体
311 表示部
320 筐体
321 ボタン
322 マイクロフォン
323 表示部
911a ゲート電極
911b ゲート電極
913 半導体膜
914 半導体膜
915a 第1の電極
925a コンタクトホール
925b コンタクトホール
945 配線
960 配線
970a トランジスタ
970b トランジスタ
997 保護回路
1100 メモリセル
1110 メモリセルアレイ
1111 駆動回路
1112 回路
1113 駆動回路
1120 メモリセルアレイ
1130 メモリセル
1131 トランジスタ
1132 容量素子
1140 メモリセルアレイ
1141 スイッチング素子
1142 記憶素子
1143 記憶素子群
1150 メモリセル
1151 トランジスタ
1152 トランジスタ
1153 トランジスタ
1154 トランジスタ
1155 トランジスタ
1156 トランジスタ
1160 トランジスタ
1161 トランジスタ
1162 トランジスタ
1163 トランジスタ
1164 トランジスタ
1170 メモリセル
1171 トランジスタ
1172 トランジスタ
1173 容量素子
1180 メモリセル
1181 トランジスタ
1182 トランジスタ
1183 容量素子
1189 ROMインターフェース
1190 基板
1191 ALU
1192 ALUコントローラ
1193 インストラクションデコーダ
1194 インタラプトコントローラ
1195 タイミングコントローラ
1196 レジスタ
1197 レジスタコントローラ
1198 バスインターフェース
1199 ROM
3100 表示素子を有する層
3101 第1の基板
3102 第2の基板
3103 第1の偏光板
3104 第2の偏光板
3105 液晶分子
3108 第1の電極
3109 第2の電極
3109a 第2の電極
3109b 第2の電極
3109c 第2の電極
3150 電極
3150a 電極
3150b 電極
3150c 電極
3151a 電極
3151b 電極
3151c 電極
3151 電極
3158 突起物
3162 絶縁膜
3163 絶縁膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に下地絶縁膜を形成し、
前記下地絶縁膜上に第1の酸化物半導体膜を形成した後、加熱処理を行い、
前記第1の酸化物半導体膜上に導電膜を形成し、
前記導電膜を加工してソース電極およびドレイン電極を形成した後、前記第1の酸化物半導体膜を加工して第2の酸化物半導体膜を形成し、
前記第2の酸化物半導体膜、前記ソース電極および前記ドレイン電極を覆ってゲート絶縁膜を形成し、
前記ゲート絶縁膜上にゲート電極を形成し、
前記下地絶縁膜は、前記加熱処理により酸素を放出することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項2】
基板上に下地絶縁膜を形成し、
前記下地絶縁膜上に第1の酸化物半導体膜を形成し、
前記第1の酸化物半導体膜上に導電膜を形成した後、加熱処理を行い、
前記導電膜を加工してソース電極およびドレイン電極を形成した後、前記第1の酸化物半導体膜を加工して第2の酸化物半導体膜を形成し、
前記第2の酸化物半導体膜、前記ソース電極および前記ドレイン電極を覆ってゲート絶縁膜を形成し、
前記ゲート絶縁膜上にゲート電極を形成し、
前記下地絶縁膜は、前記加熱処理により酸素を放出することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記第1の酸化物半導体膜が、In、Ga、SnおよびZnから選ばれた二種以上の元素を含むことを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一において、
前記ゲート電極、前記ソース電極および前記ドレイン電極をマスクとして、前記第2の酸化物半導体膜にイオンを添加することで、前記イオンが添加されていない第1の領域と、前記イオンが添加された第2の領域と、を形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項5】
請求項4において、
前記イオンは窒素、リン、ヒ素、または希ガスから選ばれた一種以上の元素からなることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項6】
請求項4または請求項5において、
前記第2の領域には、窒素、リン、ヒ素または希ガスから選ばれた一種以上の元素が、5×1018atoms/cm以上1×1022atoms/cm以下含まれていることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一において、
前記加熱処理は300℃以上450℃以下で行うことを特徴とする半導体装置の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−160715(P2012−160715A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−1727(P2012−1727)
【出願日】平成24年1月9日(2012.1.9)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】