説明

半導体装置の作製方法

【課題】本発明の一態様は、酸化物半導体を用いたデバイスにおいて高い移動度を達成し
、信頼性の高い表示装置を提供する。
【解決手段】表面と略垂直な方向にc軸が配向する結晶領域を有する酸化物半導体層を形
成し、酸化物半導体層上に接する酸化物絶縁層を形成し、第3の加熱処理を行うことによ
り、酸化物半導体層に酸素を供給し、酸化物絶縁層上に、水素を含む窒化物絶縁層を形成
し、第4の加熱処理を行うことにより、少なくとも酸化物半導体層と酸化物絶縁層の界面
に水素を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
トランジスタなどの半導体素子を少なくとも一つの素子として含む回路を有する半導体装
置およびその作製方法に関する。例えば、電源回路に搭載されるパワーデバイスや、メモ
リ、サイリスタ、コンバータ、イメージセンサなどを含む半導体集積回路、液晶表示パネ
ルに代表される電気光学装置や有機発光素子を有する発光表示装置を部品として搭載した
電子機器に関する。
【0002】
なお、本明細書中において半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置
全般を指し、電気光学装置、半導体回路および電子機器は全て半導体装置である。
【背景技術】
【0003】
液晶表示装置に代表されるように、ガラス基板等に形成されるトランジスタはアモルファ
スシリコン、多結晶シリコンなどによって構成されている。アモルファスシリコンを用い
たトランジスタは電界効果移動度が低いもののガラス基板の大面積化に対応することがで
きる。また、多結晶シリコンを用いたトランジスタの電界効果移動度は高いがガラス基板
の大面積化には適していないという欠点を有している。
【0004】
シリコンを用いたトランジスタに対して、酸化物半導体を用いてトランジスタを作製し、
電子デバイスや光デバイスに応用する技術が注目されている。例えば酸化物半導体として
、酸化亜鉛、In−Ga−Zn−O系酸化物を用いてトランジスタを作製し、表示装置の
画素のスイッチング素子などに用いる技術が特許文献1および特許文献2で開示されてい
る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−123861号公報
【特許文献2】特開2007−96055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
また、大型の表示装置が普及しつつある。家庭用のテレビにおいても表示画面の対角が4
0インチから50インチクラスのテレビも普及し始めている。
【0007】
従来の酸化物半導体を用いたトランジスタの電界効果移動度は10〜20cm/Vsが
得られている。酸化物半導体を用いたトランジスタは、アモルファスシリコンのトランジ
スタの10倍以上の電界効果移動度が得られるため、大型の表示装置においても画素のス
イッチング素子としては十分な性能が得られる。
【0008】
しかし、酸化物半導体を用いたトランジスタを半導体装置の駆動デバイス、例えば大型の
表示装置等の駆動回路の一つのスイッチング素子として用いるには限界があった。
【0009】
本発明の一態様は、基板の大面積化を可能とするとともに、結晶性の優れた酸化物半導体
層を形成し、所望の高い電界効果移動度を有するトランジスタを製造可能とし、大型の表
示装置や高性能の半導体装置等の実用化を図ることを課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
トランジスタの電界効果移動度を高める方法の一つとして、酸化物半導体層の結晶化を行
う。第1の酸化物半導体層の成膜後にアニールを行い、その上面に第2の酸化物半導体層
の成膜を行い、その後、膜表面より上方の第2の酸化物半導体層の表面に向かって結晶成
長をさせる。第1の結晶層の結晶は、第2の酸化物半導体層にとっては種結晶に相当する
。その上側に第2の結晶層が形成されることが重要である。この第1の結晶層及び第2の
結晶層を形成する方法は、六方晶を作る全ての酸化物半導体で有効である。なお、第1の
結晶層及び第2の結晶層は、チャネル形成領域で各結晶のa軸およびb軸が配向し、かつ
、第1の酸化物半導体層の表面に対して垂直にc軸配向した非単結晶体である。
【0011】
また、トランジスタの電界効果移動度を高める方法の一つとして、酸化物半導体層の高純
度化も結晶化と同時、または別工程で行う。具体的には、ドナー準位を構成する水または
水素を除去し、さらに酸素欠損を低減した後、酸化物半導体層を構成する主成分材料の酸
素を十分に供給することにより、酸化物半導体層を高純度化することである。
【0012】
酸化物半導体層に酸素を供給する方法としては、酸化物半導体層に接して酸化物絶縁層を
形成する、または酸化物絶縁層を形成した後に熱処理を行うことが挙げられる。
【0013】
そして、酸化物半導体層に酸素を供給した後、酸化物半導体層の上方に形成する層間膜と
して水素を含む窒化物絶縁層を形成し、加熱して窒化物絶縁膜から酸化物半導体層の界面
(具体的には酸化物絶縁層との界面)または膜中に水素を拡散して特性改善を図る。例え
ば、酸化物絶縁層として酸化珪素の層(SiOx層)を用いた場合、加熱により、窒化物
絶縁膜から拡散された水素は、酸化物半導体層とSiOx層との界面のSiの未結合手や
、酸化物半導体中の酸素などの未結合手などを終端させる。本発明の一態様は、結晶化に
より、c軸配向させた後の酸化物半導体層に対して意図的に適量の水素を添加して、界面
準位をなくすことを特徴の一つとしている。なお、本明細書において、「水素を含む」と
は、酸化物半導体層に接する絶縁層と比較して多くの水素を含むことをいう。例えば、水
素を含む絶縁層中の水素濃度は、1×1019atoms/cm以上1×1022at
oms/cm以下とすることが好ましい。
【0014】
本明細書で開示する本発明の一態様は、絶縁表面を有する基板上に第1の酸化物半導体層
を形成し、第1の加熱処理を行うことにより、第1の酸化物半導体層の表面から内部に向
かって結晶成長し、該表面と略垂直な方向にc軸が配向する結晶領域を形成し、第1の酸
化物半導体層上に第2の酸化物半導体層を形成し、第2の加熱処理を行うことにより、結
晶領域から結晶成長させて第2の酸化物半導体層の少なくとも一部を結晶化し、第2の酸
化物半導体層上に導電層を形成し、導電層をエッチングすることにより、ソース電極層お
よびドレイン電極層を形成し、第2の酸化物半導体層、ソース電極層およびドレイン電極
層を覆うように酸化物絶縁層を形成し、第3の加熱処理を行うことにより、第2の酸化物
半導体層に酸素を供給し、酸化物絶縁層上の第2の酸化物半導体層と重畳する領域にゲー
ト電極層を形成し、酸化物絶縁層およびゲート電極層上に、水素を含む窒化物絶縁層を形
成し、第4の加熱処理を行うことにより、少なくとも第2の酸化物半導体層と酸化物絶縁
層の界面に水素を供給する半導体装置の作製方法である。
【0015】
また、上記方法により得られる構成も本発明の一態様であり、その構成は、絶縁表面を有
する基板上に、表面に対して垂直方向にc軸配向をしている第1の酸化物半導体層と、第
1の酸化物半導体層上に接し、且つ、表面に対して垂直方向にc軸配向をしている第2の
酸化物半導体層と、第1の酸化物半導体層及び第2の酸化物半導体層の積層上にソース電
極層またはドレイン電極層と、第2の酸化物半導体層上に接する酸化物絶縁層と、酸化物
絶縁層上にゲート電極層と、ゲート電極層上に水素を含む窒化物絶縁層とを有する半導体
装置である。
【0016】
また、他の本発明の一態様は、絶縁表面を有する基板上にゲート電極層を形成し、ゲート
電極層を覆うように第1の酸化物絶縁層を形成し、ゲート電極層および第1の酸化物絶縁
層上に第1の酸化物半導体層を形成し、第1の加熱処理を行うことにより、第1の酸化物
半導体層の表面から内部に向かって結晶成長し、該表面と略垂直な方向にc軸が配向する
結晶領域を形成し、第1の酸化物半導体層上に第2の酸化物半導体層を形成し、第2の加
熱処理を行うことにより、結晶領域から結晶成長させて第2の酸化物半導体層の少なくと
も一部を結晶化し、第2の酸化物半導体層上に導電層を形成し、導電層をエッチングする
ことにより、ソース電極層およびドレイン電極層を形成し、第2の酸化物半導体層、ソー
ス電極層およびドレイン電極層を覆うように第2の酸化物絶縁層を形成し、第3の加熱処
理を行うことにより、第2の酸化物半導体層に酸素を供給し、第2の酸化物絶縁層上に、
水素を含む窒化物絶縁層を形成し、第4の加熱処理を行うことにより、少なくとも第1の
酸化物半導体層と第1の酸化物絶縁層の界面に水素を供給する半導体装置の作製方法であ
る。
【0017】
また、上記方法により得られる構成も本発明の一態様であり、その構成は、絶縁表面を有
する基板上に平坦表面を有するゲート電極層と、ゲート電極層上にゲート絶縁層と、ゲー
ト絶縁層上に少なくとも一部接し、且つ、表面に対して垂直方向にc軸配向をしている第
1の酸化物半導体層と、第1の酸化物半導体層上に接し、且つ第1の酸化物半導体層の表
面に対して垂直方向にc軸配向をしている第2の酸化物半導体層と、第1の酸化物半導体
層及び第2の酸化物半導体層の積層上にソース電極層またはドレイン電極層と、第2の酸
化物半導体層上に接する酸化物絶縁層と、酸化物絶縁層上に接する水素を含む窒化物絶縁
層とを有する半導体装置である。
【0018】
上記各作製方法の構成により、トランジスタの電界効果移動度を高くできると、例えば、
表示装置において、スイッチ時間を短縮して表示特性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0019】
下地となる基板の材料が、酸化物、窒化物、金属など、いずれの材料であっても、高い電
界効果移動度を有するトランジスタを作製し、大型の表示装置や高性能の半導体装置等を
実現する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一態様を示す断面図である。
【図2】本発明の一態様を示す断面工程図である。
【図3】本発明の一態様を示す断面工程図である。
【図4】本発明の一態様を示す断面工程図である。
【図5】本発明の一態様を示す断面工程図である。
【図6】本発明の一態様を示す断面図である。
【図7】本発明の一態様を示す断面図である。
【図8】本発明の一態様を示す等価回路図である。
【図9】本発明の一態様を示す上面図及び断面図である。
【図10】本発明の一態様を示す上面図及び断面図である。
【図11】本発明の一態様を示す断面図である。
【図12】電子機器の一例を示す図である。
【図13】電子機器の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は
以下の説明に限定されず、その形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれ
ば容易に理解される。また、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈さ
れるものではない。
【0022】
(実施の形態1)
本実施の形態では、開示する発明の一態様に係る半導体装置の構成および作製方法につい
て、図1乃至図4を参照して説明する。
【0023】
図1は、半導体装置の構成の一例であるトランジスタ150を示す断面図である。なお、
トランジスタ150は、キャリアが電子であるnチャネル型IGFET(Insulat
ed Gate Field Effect Transistor)であるものとして
説明するが、pチャネル型IGFETを作製することも可能である。
【0024】
トランジスタ150の作製方法について図2または図3を参照して以下に説明する。
【0025】
まず、基板100上に、絶縁層102を形成する。そして、絶縁層102上に第1の酸化
物半導体層を成膜し、第1の加熱処理によって少なくとも第1の酸化物半導体層の表面を
含む領域を結晶化させて、第1の酸化物半導体層104を形成する(図2(A)参照)。
【0026】
基板100は、絶縁表面を有する基板であればよく、例えば、ガラス基板とすることがで
きる。特に大面積のガラス基板は、本発明の一態様に係る半導体装置を低コストで大量生
産することができるため、好ましい。また、ガラス基板は無アルカリガラス基板であるこ
とが望ましい。無アルカリガラス基板には、例えば、アルミノシリケートガラス、アルミ
ノホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス等のガラス材料が用いられる。他にも、
基板100として、石英基板、サファイア基板等の絶縁体でなる絶縁性基板、シリコン等
の半導体材料でなる半導体基板の表面を絶縁材料で被覆したもの、金属やステンレス等の
導電体でなる導電性基板の表面を絶縁材料で被覆したものを用いることができる。
【0027】
絶縁層102は下地として機能するものであり、CVD法やスパッタ法等を用いて形成す
ることができる。また、絶縁層102は、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、窒化酸化
珪素、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタルなどを含むように形成するのが
好適である。なお、絶縁層102は、単層構造としても良いし、積層構造としても良い。
絶縁層102の厚さは特に限定されないが、例えば、10nm以上500nm以下とする
ことができる。なお、絶縁層102は必須の構成要素ではないから、絶縁層102を設け
ない構成とすることも可能である。
【0028】
また、絶縁層102上に形成される第1の酸化物半導体層は、三元系金属酸化物であり、
In−M−Zn−O(Y=0.5〜5)で表現される酸化物半導体材料を用いても
良い。ここで、Mは、ガリウム(Ga)やアルミニウム(Al)やボロン(B)などの1
3族元素から選択される一または複数種類の元素を表す。なお、In、M、Zn、及びO
の含有量は任意であり、Mの含有量がゼロ(即ち、X=0)の場合を含む。一方、Inお
よびZnの含有量はゼロではない。すなわち、上述の表記には、In−Ga−Zn−Oや
In−Zn−Oなどが含まれる。
【0029】
また、第1の酸化物半導体層として他にも四元系金属酸化物であるIn−Sn−Ga−Z
n−Oや、三元系金属酸化物であるIn−Sn−Zn−O、Sn−Ga−Zn−O、Al
−Ga−Zn−O、Sn−Al−Zn−Oや、二元系金属酸化物であるSn−Zn−O、
Al−Zn−O、Zn−Mg−O、Sn−Mg−O、In−Mg−Oや、単元系金属酸化
物であるIn−O、Sn−O、Zn−Oなどを用いることもできる。
【0030】
本実施の形態では、第1の酸化物半導体層を、In−Ga−Zn−O系の酸化物半導体成
膜用ターゲットを用いて、スパッタ法により形成することとする。
【0031】
第1の酸化物半導体層をスパッタ法で作製するためのターゲットとしては、例えば、酸化
亜鉛を主成分とする酸化物半導体成膜用ターゲットを用いることができる。また、In、
Ga、およびZnを含む酸化物半導体成膜用ターゲットの組成比は、In:Ga:Zn=
1:x:y(xは0以上、yは0.5以上5以下)とする。例えば、In:Ga:Zn=
1:1:1[atom比](x=1、y=1)(すなわち、In:Ga:Z
nO=1:1:2[mol比])の組成比を有するターゲットなどを用いても良い。また
、酸化物半導体成膜用ターゲットとしてIn:Ga:Zn=1:1:0.5[atom比
]の組成比を有するターゲット、またはIn:Ga:Zn=1:1:2[atom比]、
In:Ga:Zn=1:0:1[atom比](x=0、y=1)の組成比を有するター
ゲットを用いることもできる。本実施の形態では、後に加熱処理を行い第1の酸化物半導
体層を意図的に結晶化させるため、結晶化が生じやすい酸化物半導体成膜用ターゲットを
用いることが好ましい。
【0032】
酸化物半導体成膜用ターゲット中の酸化物半導体の相対密度は80%以上、好ましくは9
5%以上、さらに好ましくは99.9%以上とする。相対密度の高い酸化物半導体成膜用
ターゲットを用いることにより、緻密な第1の酸化物半導体層が形成される。また、本実
施の形態では、後に加熱処理を行い第1の酸化物半導体層を意図的に結晶化させるため、
結晶化が生じやすい酸化物半導体成膜用ターゲットを用いることが好ましい。
【0033】
第1の酸化物半導体層の形成雰囲気は、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気、酸素雰囲
気、または、希ガス(代表的にはアルゴン)と酸素との混合雰囲気とするのが好適である
。具体的には、例えば、水素、水、水酸基、水素化物などの不純物の濃度が数ppm程度
(望ましくは数ppb程度)にまで除去された高純度ガス雰囲気を用いるのが好適である

【0034】
第1の酸化物半導体層の形成の際には、例えば、減圧状態に保持された処理室内に基板を
保持し、基板温度を100℃以上600℃以下好ましくは200℃以上400℃以下にす
る。そして、処理室内の残留水分を除去しつつ水素および水が除去されたスパッタガスを
導入し、金属酸化物をターゲットとして第1の酸化物半導体層を形成する。基板を熱しな
がら第1の酸化物半導体層を形成することにより、第1の酸化物半導体層に含まれる不純
物を低減することができる。また、スパッタによる損傷が軽減される。第1の酸化物半導
体層の成膜を行う前、または成膜中、または成膜後に、スパッタ装置に残存している水分
などを除去することが好ましい。処理室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空
ポンプを用いることが好ましい。例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリ
メーションポンプなどを用いることができる。また、ターボポンプにコールドトラップを
加えたものを用いてもよい。クライオポンプを用いて排気した処理室は、水素や水などが
除去されているため、第1の酸化物半導体層の不純物濃度を低減できる。
【0035】
なお、第1の酸化物半導体層の成膜を行う前、スパッタ装置に残存している水分などを除
去するためにプリヒート処理を行うと良い。プリヒート処理としては成膜チャンバー内を
減圧下で200℃〜600℃に加熱する方法や、加熱しながら窒素や不活性ガスの導入と
排気を繰り返す方法等がある。プリヒート処理を終えたら、基板またはスパッタ装置を冷
却した後、大気にふれることなく酸化物半導体層の成膜を行う。この場合のターゲット冷
却液は、水ではなく油脂等を用いるとよい。加熱せずに窒素の導入と排気を繰り返しても
一定の効果が得られるが、加熱しながら行うとなお良い。
【0036】
第1の酸化物半導体層の形成条件としては、例えば、基板とターゲットの間との距離が1
70mm、圧力が0.4Pa、直流(DC)電力が0.5kW、雰囲気が酸素(酸素流量
比率100%)雰囲気、といった条件を適用することができる。なお、パルス直流(DC
)電源を用いると、成膜時に発生する粉状物質(パーティクル、ゴミともいう)が軽減で
き、膜厚のばらつきも小さくなるため好ましい。第1の酸化物半導体層の厚さは、3nm
以上15nm以下とするのが好ましく、本実施の形態では一例として5nmとする。ただ
し、適用する酸化物半導体材料や用途などにより適切な厚さは異なるから、その厚さは、
用いる材料や用途などに応じて選択すればよい。
【0037】
また、第1の酸化物半導体層の結晶化としては、第1の加熱処理を行い、少なくとも第1
の酸化物半導体層の表面を含む領域を結晶化させ、第1の酸化物半導体層104を形成す
る。また、この第1の加熱処理により、第1の酸化物半導体層中の水(水酸基を含む)や
水素などを除去することができる。第1の加熱処理の温度は、450℃以上850℃以下
、好ましくは550℃以上750℃以下とする。また、加熱時間は1分以上24時間以下
とする。本実施の形態では、第1の加熱処理として、窒素雰囲気下で700℃、1時間の
熱処理を行い、脱水または脱水素化が行われた後、雰囲気を切り替えて酸素雰囲気にする
ことで第1の酸化物半導体層内部に酸素を供給する。
【0038】
なお、第1の加熱処理においては、窒素、酸素、またはヘリウム、ネオン、アルゴン等の
希ガスに、水、水素などが含まれないことが好ましい。または、加熱処理装置に導入する
窒素、酸素、またはヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスの純度を、6N(99.99
99%)以上、好ましくは7N(99.99999%)以上、(即ち不純物濃度を1pp
m以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。また、HOが20pp
m以下の乾燥空気中で、さらに好ましくは、HOが1ppm以下の乾燥空気中で、第1
の加熱処理を行っても良い。このような第1の加熱処理によって第1の酸化物半導体層1
04中の水(水酸基を含む)や水素などを除去することができる。
【0039】
第1の加熱処理によって少なくとも表面を含む領域に結晶領域を有する第1の酸化物半導
体層104を形成する。表面を含む領域に形成される結晶領域は、表面から内部に向かっ
て結晶成長することで形成される。当該結晶領域は、平均厚さが2nm以上10nm以下
の板状結晶である。また、当該結晶領域は、該表面に対して略垂直な方向にc軸が配向す
る結晶を有する領域である。ここで、略垂直とは、垂直方向から±10°以内の状態を言
うものとする。
【0040】
なお、第1の加熱処理に用いる加熱処理装置は特に限られず、抵抗発熱体などの発熱体か
らの熱伝導または熱輻射によって、被処理物を加熱する装置などを用いることができる。
例えば、電気炉や、LRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)
装置、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置等のRTA
(Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。LRTA装
置は、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアーク
ランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の
輻射により、被処理物を加熱する装置である。GRTA装置は、高温のガスを用いて加熱
処理を行う装置である。
【0041】
次に、少なくとも表面を含む領域に結晶領域を有する第1の酸化物半導体層104上に、
第2の酸化物半導体層105を形成する(図2(B)参照)。
【0042】
第2の酸化物半導体層105は、第1の酸化物半導体層と同様に、四元系金属酸化物であ
るIn−Sn−Ga−Zn−Oや、三元系金属酸化物であるIn−Ga−Zn−O、In
−Sn−Zn−O、In−Al−Zn−O、Sn−Ga−Zn−O、Al−Ga−Zn−
O、Sn−Al−Zn−Oや、二元系金属酸化物であるIn−Zn−O、Sn−Zn−O
、Al−Zn−O、Zn−Mg−O、Sn−Mg−O、In−Mg−Oや、単元系金属酸
化物であるIn−O、Sn−O、Zn−Oなどを用いて形成することができる。
【0043】
なお、第2の酸化物半導体層105は、第1の酸化物半導体層104と同一主成分の材料
を用いること、あるいは同一の結晶構造かつ近接した格子定数(格子定数のミスマッチが
1%以下)を有することが好ましい。または異なる主成分の材料を用いて形成しても良い

【0044】
同一主成分の材料を用いる場合、後に行われる第2の酸化物半導体層105の結晶化にお
いて、第1の酸化物半導体層104の結晶領域の結晶を種結晶として結晶成長を行いやす
くなる。また、実質的な膜厚を増加させることができるため、パワーデバイスなどの用途
には好適である。さらに、同一主成分材料である場合には、密着性などの界面物性や電気
的特性も良好である。
【0045】
本実施の形態では、第2の酸化物半導体層105を、In−Ga−Zn−O系の酸化物半
導体成膜用ターゲットを用いて、スパッタ法により成膜する。第2の酸化物半導体層10
5のスパッタ法による成膜は、上述した第1の酸化物半導体層のスパッタ法による成膜と
同様に行えばよい。ただし、第2の酸化物半導体層105の厚さは、第1の酸化物半導体
層104の厚さより厚くすることが好ましい。また、第1の酸化物半導体層104と第2
の酸化物半導体層105の厚さの和が3nm以上50nm以下となるように、第2の酸化
物半導体層105を形成することが好ましい。なお、適用する酸化物半導体材料や用途な
どにより適切な厚さは異なるから、その厚さは、用いる材料や用途などに応じて選択すれ
ばよい。
【0046】
次に、第2の酸化物半導体層105に第2の加熱処理を行い、第1の酸化物半導体層10
4の結晶領域を種結晶領域として結晶成長させて、第2の酸化物半導体層106を形成す
る(図2(C)参照)。
【0047】
第2の加熱処理の温度は、450℃以上850℃以下、好ましくは600℃以上700℃
以下とする。第2の加熱処理の加熱時間は1分以上100時間以下とし、好ましくは5時
間以上20時間以下とし、代表的には10時間とする。
【0048】
なお、第2の加熱処理においても、窒素、酸素、またはヘリウム、ネオン、アルゴン等の
希ガスに、水、水素などが含まれないことが好ましい。または、加熱処理装置に導入する
窒素、酸素、またはヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスの純度を、6N(99.99
99%)以上、好ましくは7N(99.999999%)以上、とすることが好ましい。
また、HOが20ppm以下の乾燥空気中で、さらに好ましくは、HOが1ppm以
下の乾燥空気中で、第2の加熱処理を行っても良い。このような第2の加熱処理によって
第2の酸化物半導体層106中の水(水酸基を含む)や水素などを除去することができる
。よって不純物を低減して高純度化し、i型化または実質的にi型化された第1の酸化物
半導体層104及び第2の酸化物半導体層106を形成できる。
【0049】
また、第2の加熱処理の昇温時には炉の内部を窒素雰囲気とし、冷却時には炉の内部を酸
素雰囲気として雰囲気を切り替えてもよく、窒素雰囲気で脱水または脱水化が行われた後
、雰囲気を切り替えて酸素雰囲気にすることで第2の酸化物半導体層106内部に酸素を
供給することができる。
【0050】
このように、第2の加熱処理を行うことにより、第2の酸化物半導体層105と第1の酸
化物半導体層104の界面に形成された結晶領域から第2の酸化物半導体層105全体を
結晶化させ、第2の酸化物半導体層106を形成することができる。また、第2の加熱処
理によって、さらに高い配向性を有する結晶層からなる第1の酸化物半導体層104とす
ることができる。
【0051】
上記酸化物半導体層は、InMO(ZnO)(m>0、且つmは自然数でない)で表
記される薄膜を用いることができる。ここで、Mは、Ga、Al、MnおよびCoから選
ばれた一または複数の金属元素を示す。例えばMとして、Ga、Ga及びAl、Ga及び
Mn、またはGa及びCoなどがある。また、InGaZnで表される材料を用
いることができる。ここで、x、y、zは任意の数である。また、x、y、zは整数であ
る必要はなく、非整数であっても良い。なお、xは0であっても良いが、yは0でないこ
とが望ましい。例えば、当該表記は、xが0であるIn−Zn−Oの結晶を含んでいる。
また、本明細書でいうIn−Ga−Zn−Oで表記される結晶は、InGaO(ZnO
(m>0、且つmは自然数でない)であり、mが自然数でないことは、ICP−MS
分析や、RBS分析を用いて確認することができる。また、x=1、y=1で表記される
結晶や、x=1、y=0.5で表記される結晶などを含む。このような結晶は、第2の加
熱処理によって、そのc軸が、第2の酸化物半導体層106表面と略垂直な方向をとるよ
うに配向する。
【0052】
ここで、上述の結晶は、In、Ga、Znのいずれかを含有し、a軸(a−axis)お
よびb軸(b−axis)に平行なレイヤーの積層構造として捉えることができる。具体
的には、上述の結晶は、Inを含有するレイヤーと、Inを含有しないレイヤー(Gaま
たはZnを含有するレイヤー)が、c軸(c−axis)方向に積層された構造を有する
。上記酸化物半導体層は、結晶性を有する領域を含み、当該結晶性を有する領域は、a−
b面が膜表面に概略平行であり、c軸が膜表面に概略垂直である結晶よりなる。つまり、
当該酸化物半導体層に含まれる結晶性を有する領域は、c軸配向している。また、このよ
うにc軸が配向した結晶性を有する領域を含むので、当該酸化物半導体層を、C Axi
s Aligned Crystalline Oxide Semiconducto
r; CAACともよぶ。つまり、当該結晶性を有する領域を含む酸化物半導体層は非単
結晶であり、且つ膜全体は非晶質状態とはならない。
【0053】
In−Ga−Zn−O系の酸化物半導体結晶では、Inを含有するレイヤーの、a軸およ
びb軸に平行な方向に関する導電性は良好である。これは、In−Ga−Zn−O系の酸
化物半導体結晶では電気伝導が主としてInによって制御されること、および、一のIn
の5s軌道が、隣接するInの5s軌道と重なりを有することにより、キャリアパスが形
成されることによる。
【0054】
また、第1の酸化物半導体層104が絶縁層102との界面に非晶質領域を有するような
構造の場合、第2の加熱処理を行うことにより、第1の酸化物半導体層104の表面に形
成されている結晶領域から第1の酸化物半導体層104の下面に向かって結晶成長が行わ
れ、該非晶質領域が結晶化される場合もある。なお、絶縁層102を構成する材料や、熱
処理の条件などによっては、該非晶質領域が残存する場合もある。
【0055】
第1の酸化物半導体層104と第2の酸化物半導体層105とに同一主成分の酸化物半導
体材料を用いる場合、図2(C)に示すように、第1の酸化物半導体層104の結晶を結
晶成長の種結晶として、第2の酸化物半導体層105の表面に向かって上方に結晶成長し
、第2の酸化物半導体層106が形成され、第1の酸化物半導体層104と、第2の酸化
物半導体層106とが、同一結晶構造を有する。そのため、図2(C)では点線で示した
が、第1の酸化物半導体層104と第2の酸化物半導体層106の境界が判別できなくな
り、第1の酸化物半導体層104と第2の酸化物半導体層106を同一の層と見なせるこ
ともある。
【0056】
なお、第2の加熱処理に用いる加熱処理装置も第1の加熱処理と同様の条件で用いること
ができる。
【0057】
次に、マスクを用いたエッチングなどの方法によって第1の酸化物半導体層104及び第
2の酸化物半導体層106を加工して、島状の第1の酸化物半導体層104a及び島状の
第2の酸化物半導体層106aを形成する(図2(D)参照)。
【0058】
酸化物半導体層のエッチングには、ドライエッチング、ウェットエッチングのいずれを用
いても良い。もちろん、その両方を組み合わせて用いることもできる。酸化物半導体層を
所望の形状にエッチングできるよう、材料に合わせてエッチング条件(エッチングガスや
エッチング液、エッチング時間、温度等)は適宜設定する。
【0059】
ドライエッチングに用いることができるエッチングガスには、例えば、塩素を含むガス(
塩素系ガス、例えば塩素(Cl)、塩化硼素(BCl)、塩化珪素(SiCl)、
四塩化炭素(CCl)など)などがある。また、フッ素を含むガス(フッ素系ガス、例
えば四弗化炭素(CF)、六弗化硫黄(SF)、三弗化窒素(NF)、トリフルオ
ロメタン(CHF)など)、臭化水素(HBr)、酸素(O)、これらのガスにヘリ
ウム(He)やアルゴン(Ar)などの希ガスを添加したガス、などを用いても良い。
【0060】
また、ウェットエッチングに用いることができるエッチング液としては、燐酸と酢酸と硝
酸を混ぜた溶液などがある。また、ITO07N(関東化学社製)などのエッチング液を
用いてもよい。
【0061】
次に、島状の第2の酸化物半導体層106aに接するように導電層108を形成する(図
2(E)参照)。
【0062】
導電層108は、スパッタ法をはじめとするPVD法や、プラズマCVD法などのCVD
法を用いて形成することができる。また、導電層108は、アルミニウム、クロム、銅、
タンタル、チタン、モリブデン、タングステンからから選ばれた元素や、上述した元素を
成分とする合金等を用いて形成することができる。また、導電層108は、マンガン、マ
グネシウム、ジルコニウム、ベリリウムのいずれか一または複数を含む材料を用いてもよ
い。また、アルミニウムに、チタン、タンタル、タングステン、モリブデン、クロム、ネ
オジム、スカンジウムから選ばれた元素を一または複数含有させた材料を用いてもよい。
また、導電層108の他の材料として、窒化チタン、窒化タンタルなどのバリア性の高い
材料を用いてもよい。窒化チタンや窒化タンタルなどのバリア性の高い材料を、島状の第
2の酸化物半導体層106aと接する部分に用いることで、島状の第2の酸化物半導体層
106aへの不純物の侵入を抑制し、トランジスタ特性への悪影響を抑えることができる

【0063】
また、導電層108は、導電性の金属酸化物を用いて形成しても良い。導電性の金属酸化
物としては酸化インジウム(In)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)
、酸化インジウム酸化スズ合金(In―SnO、ITOと略記する場合がある)
、酸化インジウム酸化亜鉛合金(In―ZnO)、または、これらの金属酸化物材
料にシリコン若しくは酸化シリコンを含有させたものを用いることができる。
【0064】
導電層108としては、チタン層上にアルミニウム層と、該アルミニウム層上にチタン層
が積層された三層の積層構造とすることが好ましい。また、金属導電膜としてアルミニウ
ム層とタングステン層を積層した二層の積層構造、銅層とタングステン層を積層した二層
の積層構造、アルミニウム層とモリブデン層を積層した二層の積層構造とすることもでき
る。勿論、金属導電膜として単層、または4層以上の積層構造としてもよい。ここでは、
チタン膜の単層構造を適用する。チタン膜の単層構造を用いると、後のエッチングの際に
良好なテーパー形状を形成するエッチングを実現することができる。
【0065】
次に、導電層108を選択的にエッチングして、ソース電極層108aおよびドレイン電
極層108bを形成する(図3(A)参照)。
【0066】
エッチングに用いるマスク形成時の露光には、紫外線やKrFレーザ光やArFレーザ光
を用いるのが好適である。特に、チャネル長(L)が25nm未満の露光を行う場合には
、数nm〜数10nmと極めて波長が短い超紫外線(Extreme Ultravio
let)を用いてマスク形成の露光を行うのが好適である。超紫外線による露光は、解像
度が高く焦点深度も大きい。従って、後に形成されるトランジスタのチャネル長(L)を
10nm以上1000nm(1μm)以下とすることも可能である。このような方法でチ
ャネル長を小さくすることにより、動作速度を向上させることもできる。また、上記酸化
物半導体を用いたトランジスタはオフ電流が極めて小さいため、微細化による消費電力の
増大を抑制できる。
【0067】
導電層108のエッチングの際には、島状の第2の酸化物半導体層106aが除去されな
いように、それぞれの材料およびエッチング条件を適宜調節する。なお、材料およびエッ
チング条件によっては、当該工程において、島状の第2の酸化物半導体層106aの一部
がエッチングされ、溝部(凹部)を有する酸化物半導体層となることもある。
【0068】
また、島状の第1の酸化物半導体層104aおよび島状の第2の酸化物半導体層106a
の側面において、ソース電極層108a、またはドレイン電極層108bと接する部分が
非晶質状態となることもある。
【0069】
次に、大気に触れさせないようにし、島状の第2の酸化物半導体層106aの一部に接す
るゲート絶縁層112を形成する(図3(B)参照)。ゲート絶縁層112は、CVD法
やスパッタ法等を用いて形成することができる。また、ゲート絶縁層112は、酸化珪素
、酸化窒化珪素、窒化酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタルなど
を含むように形成するのが好適である。なお、ゲート絶縁層112は、単層構造としても
良いし、積層構造としても良い。積層構造とする場合は、酸化物半導体と接する層を上記
材料とし、その上に窒化珪素膜を積層することもできる。ゲート絶縁層112の厚さは特
に限定されないが、例えば、10nm以上500nm以下、好ましくは、50nm以上2
00nm以下とすることができる。
【0070】
本実施の形態では、スパッタ法により、酸素雰囲気下で酸化珪素膜を成膜してゲート絶縁
層112を形成する。ゲート絶縁層112の成膜時に酸素を島状の第2の酸化物半導体層
106aの一部に対して添加し、酸素を供給することができる。
【0071】
また、ゲート絶縁層112として、1×1011/cm以上のプラズマ密度を達成でき
る高密度プラズマ装置を用い、緻密で絶縁耐圧の高い高品質なゲート絶縁層を形成しても
よい。
【0072】
その後、不活性ガス雰囲気下、または酸素雰囲気下で第3の加熱処理を行うのが望ましい
。第3の加熱処理の温度は、200℃以上450℃以下、望ましくは250℃以上350
℃以下である。例えば、酸素を含む雰囲気下で250℃、1時間の熱処理を行えばよい。
第3の加熱処理を行うと、島状の第2の酸化物半導体層106aに酸素を供給し、島状の
第2の酸化物半導体層106a中の酸素欠損を低減することができる。
【0073】
次に、ゲート絶縁層112上の島状の第1の酸化物半導体層104a及び島状の第2の酸
化物半導体層106aと重畳する領域にゲート電極層114を形成する(図3(C)参照
)。ゲート電極層114は、ゲート絶縁層112上に導電層を形成した後に、当該導電層
を選択的にパターニングすることによって形成することができる。
【0074】
上記導電層は、スパッタ法をはじめとするPVD法や、プラズマCVD法などのCVD法
を用いて形成することができる。また、導電層は、アルミニウム、クロム、銅、タンタル
、チタン、モリブデン、タングステンからから選ばれた元素や、上述した元素を成分とす
る合金等を用いて形成することができる。また、上述した元素の窒化物である、窒化チタ
ン、窒化タンタルなどを用いて形成しても良い。マンガン、マグネシウム、ジルコニウム
、ベリリウムのいずれか一または複数を含む材料を用いてもよい。また、アルミニウムに
、チタン、タンタル、タングステン、モリブデン、クロム、ネオジム、スカンジウムから
選ばれた元素を一または複数含有させた材料を用いてもよい。
【0075】
次に、ゲート絶縁層112およびゲート電極層114上に、水素を含む層間絶縁層116
を形成した後、第4の加熱処理を行う(図3(D)参照)。例えば、水素を含む層間絶縁
層116中の水素濃度は、1×1019atoms/cm以上1×1022atoms
/cm以下とすることが好ましい。水素を含む層間絶縁層116は、CVD法などを用
いて形成することができる。本実施の形態では、CVD法により得られる窒化物絶縁層の
一つである窒化珪素膜を用いる。
【0076】
第4の加熱処理は、窒素雰囲気下、150℃以上450℃以下、好ましくは250℃以上
440℃以下とする。また、第4の加熱処理は、窒素雰囲気下に限定されず、酸素雰囲気
、希ガス雰囲気、乾燥空気雰囲気で行えばよい。
【0077】
水素を含む層間絶縁層116を形成した後の第4の加熱処理は、層間絶縁層116に含ま
れる水素を拡散させて、島状の第1の酸化物半導体層104a、及び島状の第2の酸化物
半導体層106aの欠陥(例えば、酸化物半導体中における酸素などの未結合手など)や
、界面のSiの未結合手を終端する工程である。酸化珪素膜からなる絶縁膜(ゲート絶縁
層112)の存在に関係なく島状の第1の酸化物半導体層104a、および島状の第2の
酸化物半導体層106aの膜中またはこれらの酸化物半導体層とSiOx層(ゲート絶縁
層112)の界面に水素を拡散させることができる。
【0078】
以上により、島状の第1の酸化物半導体層104aの結晶領域から結晶成長させた島状の
第2の酸化物半導体層106aを用い、層間絶縁層116に含まれる水素を拡散させて欠
陥を終端させたトランジスタ150が完成する。
【0079】
次いで、層間絶縁層116上に層間絶縁層118を形成し、図1に示す断面構造とする。
層間絶縁層118は、PVD法やCVD法などを用いて得られる酸化珪素、窒化酸化珪素
、窒化珪素、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化タンタル等の無機絶縁材料を含む
材料を用いて形成する。また、層間絶縁層118の材料として、ポリイミド、アクリル、
ベンゾシクロブテン、ポリアミド、エポキシ等の有機樹脂を用いることもできる。なお、
本実施の形態では、層間絶縁層116と層間絶縁層118の積層構造としているが、開示
する発明の一態様はこれに限定されない。1層としても良いし、3層以上の積層構造とし
ても良い。
【0080】
なお、上記層間絶縁層118は、その表面が平坦になるように形成することが望ましい。
表面が平坦になるように層間絶縁層118を形成することで、層間絶縁層118上に、電
極や配線などを好適に形成することができるためである。
【0081】
図1に示すトランジスタ150は、基板100上に絶縁層102を介して設けられた島状
の第1の酸化物半導体層104aと、島状の第1の酸化物半導体層104a上に設けられ
た島状の第2の酸化物半導体層106aと、島状の第2の酸化物半導体層106aと電気
的に接続するソース電極層108a、および、ドレイン電極層108bと、島状の第2の
酸化物半導体層106a、ソース電極層108a、およびドレイン電極層108bを覆う
ゲート絶縁層112と、ゲート絶縁層112上のゲート電極層114と、を有する。
【0082】
また、島状の第1の酸化物半導体層104aおよび島状の第2の酸化物半導体層106a
では、一般的なシリコンウェハにおけるキャリア濃度(1×1014/cm程度)と比
較して、十分に小さいキャリア濃度の値(例えば、1×1012/cm未満、より好ま
しくは、1.45×1010/cm未満)をとる。また、ドレイン電圧が1Vから10
Vの範囲のいずれかの電圧において、チャネル長が10μmであり、酸化物半導体層の合
計膜厚30nmの場合において、オフ電流(ゲートソース間の電圧を0V以下としたとき
のソースドレイン間に流れる電流)が1×10−13A以下、またはオフ電流密度(オフ
電流をトランジスタのチャネル幅で除した数値)は100aA(a(アト)は10−18
倍を示す)/μm以下、好ましくは10aA/μm以下、更に好ましくは1aA/μm以
下にすることができる。なお、オフ電流とドレイン電圧との値が分かればオームの法則か
らトランジスタがオフのときの抵抗値(オフ抵抗R)を算出することができ、チャネル形
成領域の断面積Aとチャネル長Lが分かればρ=RA/Lの式(Rはオフ抵抗)からオフ
抵抗率ρを算出することもできる。オフ抵抗率は1×10Ω・m以上(又は1×10
Ω・m)が好ましい。ここで、断面積Aは、チャネル形成領域の膜厚をdとし、チャネ
ル幅をWとするとき、A=dWから算出することができる。
【0083】
また、加熱して層間絶縁層116に含まれる水素を島状の第1の酸化物半導体層104a
および島状の第2の酸化物半導体層106aに拡散させるため、水素の拡散する量によっ
ては、キャリア濃度の値が1×1014/cm以上1×1018/cm未満をとりう
る。
【0084】
アモルファスシリコンのトランジスタのオフ電流が1×10−12A程度であるのに対し
、酸化物半導体を用いたトランジスタのオフ電流は、その10000分の1以下である。
このように、i型化または実質的にi型化された酸化物半導体を用いることで、極めて優
れたオフ電流特性のトランジスタ150を得ることができる。
【0085】
また、島状の第1の酸化物半導体層104aと島状の第2の酸化物半導体層106aの材
料を同じ物とした場合(いわゆるホモ・エピ成長の場合)、島状の第1の酸化物半導体層
104aと島状の第2の酸化物半導体層106aの境界が判別できなくなるため図1では
点線で示したが、島状の第1の酸化物半導体層104aと島状の第2の酸化物半導体層1
06aを同一の層と見なせることもある(図1参照)。また、島状の第1の酸化物半導体
層104aと島状の第2の酸化物半導体層106aのいずれも非単結晶状態となる。
【0086】
もちろん、島状の第1の酸化物半導体層104aと島状の第2の酸化物半導体層106a
の材料を異なるものとしても良い。島状の第1の酸化物半導体層104aと島状の第2の
酸化物半導体層106aの材料を異なるものとする場合(いわゆるヘテロ・エピ成長の場
合)には、例えば、島状の第1の酸化物半導体層104aに二元系金属酸化物であるIn
−Zn−Oを用い、島状の第2の酸化物半導体層106aに三元系金属酸化物であるIn
−Ga−Zn−Oを用いる構成などを採用することができる。
【0087】
また、酸化物半導体層のうち、チャネル形成領域となる領域は、少なくとも平坦面を有し
ていることが好ましい。また、第1の酸化物半導体層と第2の酸化物半導体層は、同じc
軸配向をしている非単結晶体である。なお、第2の酸化物半導体層表面の高低差は、ゲー
ト電極層と重畳する領域(チャネル形成領域)において、1nm以下(好ましくは0.2
nm以下)であることが好ましい。
【0088】
(実施の形態2)
実施の形態1ではトップゲート型のトランジスタの作製例を示したが、本実施の形態では
、ボトムゲート型のトランジスタの作製例について説明する。
【0089】
まず、絶縁表面を有する基板上に、導電膜を形成した後、フォトマスクを用いてフォトリ
ソグラフィ工程によりゲート電極層401を設ける。
【0090】
基板400としては、アルミノシリケートガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、バリウム
ホウケイ酸ガラスなどのガラス材料や、シリコン基板、石英基板などを用いる。
【0091】
本実施の形態では基板400としてガラス基板を用い、後に形成する酸化物半導体層を結
晶化するための加熱を行うため、基板400に対して650℃、6分の加熱処理を2回行
う。成膜前に基板の加熱を行うことにより、基板の収縮による膜剥がれや、マスクの位置
ずれを抑える。
【0092】
また、下地層となる絶縁層を基板400とゲート電極層401の間に設けてもよい。下地
層は、基板400からの不純物元素の拡散を防止する機能があり、窒化珪素、酸化珪素、
窒化酸化珪素、または酸化窒化珪素から選ばれた一または複数の層による積層構造により
形成することができる。
【0093】
ゲート電極層401としては、金属導電層を用いることができる。金属導電層の材料とし
ては、Al、Cr、Cu、Ta、Ti、Mo、Wから選ばれた元素、または上述した元素
を成分とする合金か、上述した元素を組み合わせた合金等を用いるのが好ましい。例えば
、チタン層上にアルミニウム層と、該アルミニウム層上にチタン層が積層された三層の積
層構造とすることが好ましい。勿論、金属導電層として単層、または2層構造、または4
層以上の積層構造としてもよい。後に加熱処理を行う場合、ゲート電極層401としてそ
の加熱処理温度に耐えうる材料を選択することが好ましい。
【0094】
次いで、ゲート電極層401上にゲート絶縁層402を形成する。ゲート絶縁層402は
、プラズマCVD法又はスパッタ法等を用いて、酸化珪素層、窒化珪素層、酸化ハフニウ
ム層、酸化窒化珪素層又は窒化酸化珪素層を単層で又は積層して形成することができる。
例えば、窒化珪素膜と酸化珪素膜の積層とする。ゲート絶縁層402の膜厚は50nm以
上200nm以下とする。
【0095】
本実施の形態において、ゲート絶縁層402の形成は、高密度プラズマ装置により行う。
ここでは、高密度プラズマ装置は、1×1011/cm以上のプラズマ密度を達成でき
る装置を指している。例えば、3kW〜6kWのマイクロ波電力を印加してプラズマを発
生させて、絶縁膜の成膜を行う。
【0096】
チャンバーに材料ガスとしてモノシランガス(SiH)と亜酸化窒素(NO)と希ガ
スを導入し、10Pa〜30Paの圧力下で高密度プラズマを発生させてガラス等の絶縁
表面を有する基板上に絶縁膜を形成する。その後、モノシランガス(SiH)の供給を
停止し、大気に曝すことなく亜酸化窒素(NO)と希ガスとを導入して絶縁膜表面にプ
ラズマ処理を行ってもよい。少なくとも亜酸化窒素(NO)と希ガスとを導入して絶縁
膜表面に行われるプラズマ処理は、絶縁膜の成膜より後に行う。上記プロセス順序を経た
絶縁膜は、膜厚が薄く、例えば100nm未満であっても信頼性を確保することができる
絶縁膜である。
【0097】
本実施の形態では、ゲート絶縁層402として高密度プラズマ装置による膜厚100nm
の酸化窒化珪素膜(SiOxNyとも呼ぶ、ただし、x>y>0)を用いる。
【0098】
次いで、ゲート絶縁層402上に、厚さ2nm以上15nm以下の第1の酸化物半導体層
を形成する。また、第1の酸化物半導体層は、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気下、
酸素雰囲気下、又は希ガス(代表的にはアルゴン)及び酸素混合雰囲気下においてスパッ
タ法により形成することができる。本実施の形態では、後に加熱処理を行い意図的に結晶
化させるため、結晶化が生じやすい酸化物半導体成膜用ターゲットを用いることが好まし
い。
【0099】
次いで、第1の酸化物半導体層の第1の加熱処理を行い、少なくとも一部を結晶化させる
。第1の加熱処理の温度は、450℃以上850℃以下、好ましくは600℃以上700
℃以下とする。また、加熱時間は1分以上24時間以下とする。第1の加熱処理によって
表面から結晶成長した非単結晶層である第1の酸化物半導体層404を形成する(図4(
A)参照)。また、表面付近に形成される結晶層は、その表面に対して垂直方向にc軸配
向をしている。
【0100】
なお、第1の加熱処理においては、窒素、酸素、またはヘリウム、ネオン、アルゴン等の
希ガスに、水、水素などが含まれないことが好ましい。または、加熱処理装置に導入する
窒素、酸素、またはヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスの純度を、6N(99.99
99%)以上、好ましくは7N(99.99999%)以上、とすることが好ましい。ま
た、HOが20ppm以下の乾燥空気雰囲気下で第1の加熱処理を行っても良い。
【0101】
また、第1の加熱処理の昇温時には炉の内部を窒素雰囲気とし、冷却時には炉の内部を酸
素雰囲気として雰囲気を切り替えてもよく、窒素雰囲気で脱水または脱水化が行われた後
、雰囲気を切り替えて酸素雰囲気にすることで第1の酸化物半導体層内部に酸素を供給し
てi型とすることができる。
【0102】
次いで、板状結晶である第1の酸化物半導体層404上に、少なくとも第1の酸化物半導
体層404よりも膜厚の厚い第2の酸化物半導体層を形成する。なお、第2の酸化物半導
体層の膜厚は、作製するデバイスによって最適な膜厚を実施者が決定すればよい。例えば
、ボトムゲート型トランジスタを作製する場合は、第1の酸化物半導体層404と第2の
酸化物半導体層の合計膜厚は10nm以上200nm以下とする。
【0103】
また、第1の酸化物半導体層と第2の酸化物半導体層は、同一成分を含む材料を用いるこ
と、あるいは同一の結晶構造かつ近接した格子定数(格子定数のミスマッチが1%以下)
を有することが好ましい。同一成分を含む材料を用いる場合、後に行われる結晶化におい
て第1の酸化物半導体層の板状結晶を種結晶として結晶成長を行いやすくなる。また、同
一成分を含む材料である場合には、密着性などの界面物性や電気的特性も良好である。
【0104】
次いで、第2の加熱処理を行い、第1の酸化物半導体層の結晶層の結晶を種結晶として結
晶成長を行う。第2の加熱処理の温度は、450℃以上850℃以下、好ましくは550
℃以上650℃以下とする。また、加熱時間は1分以上24時間以下とする。第2の加熱
処理によって第2の酸化物半導体層を結晶化させる。こうして結晶化した第2の酸化物半
導体層406を得ることができる(図4(B)参照)。
【0105】
次いで、第1の酸化物半導体層及び第2の酸化物半導体層からなる酸化物半導体層をフォ
トリソグラフィ工程により島状の第1の酸化物半導体層404a及び島状の第2の酸化物
半導体層406aに加工する。次いで、ゲート絶縁層402、及び島状の第1の酸化物半
導体層404a及び島状の第2の酸化物半導体層406a上に、スパッタ法などにより金
属導電膜を形成した後、フォトリソグラフィ工程によりレジストマスクを形成し、選択的
にエッチングを行って金属電極層を形成する。
【0106】
後にソース電極層及びドレイン電極層(これと同じ層で形成される配線を含む)となる金
属導電膜の材料としては、Al、Cu、Cr、Ta、Ti、Mo、Wなどの金属材料、ま
たは該金属材料を成分とする合金材料で形成する。また、Si、Ti、Ta、W、Mo、
Cr、Nd、Sc、YなどAl膜に生ずるヒロックやウィスカーの発生を防止する元素が
添加されているAl材料を用いることで耐熱性を向上させることが可能となる。
【0107】
例えば、金属導電膜としては、チタン層上にアルミニウム層と、該アルミニウム層上にチ
タン層が積層された三層の積層構造とすることが好ましい。また、金属導電膜としてアル
ミニウム層とタングステン層を積層した二層の積層構造、銅層とタングステン層を積層し
た二層の積層構造、アルミニウム層とモリブデン層を積層した二層の積層構造とすること
もできる。勿論、金属導電膜として単層、または4層以上の積層構造としてもよい。
【0108】
次いで、レジストマスクを除去し、フォトリソグラフィ工程によりレジストマスクを形成
し、選択的にエッチングを行ってソース電極層408a、及びドレイン電極層408bを
形成した後、レジストマスクを除去する。なお、このエッチング工程では、島状の第2の
酸化物半導体層406aの一部のみがエッチングされ、溝部(凹部)を有する酸化物半導
体層となることもある。
【0109】
また、フォトリソグラフィ工程で用いるフォトマスク数及び工程数を削減するため、透過
した光が複数の強度となる露光マスクである多階調マスクによって形成されたレジストマ
スクを用いてエッチング工程を行ってもよい。多階調マスクを用いて形成したレジストマ
スクは複数の膜厚を有する形状となり、エッチングを行うことでさらに形状を変形するこ
とができるため、異なるパターンに加工する複数のエッチング工程に用いることができる
。よって、一枚の多階調マスクによって、少なくとも二種類以上の異なるパターンに対応
するレジストマスクを形成することができる。よって露光マスク数を削減することができ
、対応するフォトリソグラフィ工程も削減できるため、工程の簡略化が可能となる。
【0110】
次いで、酸化物半導体層の一部に接する保護絶縁膜となる酸化物絶縁層412を形成した
後、第3の加熱処理を行う(図4(C)参照)。
【0111】
本実施の形態では、酸化物絶縁層412として膜厚300nmの酸化珪素膜をスパッタ法
を用いて成膜する。成膜時の基板温度は、室温以上300℃以下とすればよく、本実施の
形態では100℃とする。酸化珪素膜のスパッタ法による成膜は、希ガス(代表的にはア
ルゴン)雰囲気下、酸素雰囲気下、または希ガス(代表的にはアルゴン)と酸素の混合雰
囲気下において行うことができる。また、ターゲットとして酸化珪素ターゲットまたは珪
素ターゲットを用いることができる。例えば、珪素ターゲットを用いて、酸素、及び窒素
雰囲気下でスパッタ法により酸化珪素を形成することができる。結晶化させた島状の第1
の酸化物半導体層404a及び、結晶化させた島状の第2の酸化物半導体層406aに接
して形成する酸化物絶縁層412は、10nm以上500nm以下の膜厚とし、代表的に
は酸化珪素膜、窒化酸化珪素膜、酸化アルミニウム膜、または酸化窒化アルミニウム膜な
どを用いる。
【0112】
また、第3の加熱処理の温度は、200℃以上450℃以下、望ましくは250℃以上3
50℃以下である。例えば、酸素を含む雰囲気下で250℃、1時間の熱処理を行えばよ
い。第3の加熱処理を行うと、島状の第1の酸化物半導体層404a及び、島状の第2の
酸化物半導体層406aに酸素を供給し、島状の第1の酸化物半導体層404a及び、島
状の第2の酸化物半導体層406a中の酸素欠損を低減することができる。
【0113】
次いで、酸化物絶縁層412上に、水素を含む層間絶縁層416を形成した後、第4の加
熱処理を行う(図4(D)参照)。水素を含む層間絶縁層416は、CVD法などを用い
て形成することができる。本実施の形態では、CVD法により得られる水素を含む窒化物
絶縁層の一つである窒化珪素膜を用いる。
【0114】
第4の加熱処理は、窒素雰囲気下、150℃以上450℃以下、好ましくは250℃以上
440℃以下とする。また、第4の加熱処理は、窒素雰囲気下に限定されず、酸素雰囲気
、希ガス雰囲気、乾燥空気雰囲気で行えばよい。
【0115】
水素を含む層間絶縁層416を形成した後の第4の加熱処理は、層間絶縁層416に含ま
れる水素を拡散させて、島状の第1の酸化物半導体層404a、及び島状の第2の酸化物
半導体層406aの欠陥を終端する工程である。酸化珪素膜からなる絶縁膜(酸化物絶縁
層412)の存在に関係なく島状の第1の酸化物半導体層404a、及び島状の第2の酸
化物半導体層406aの膜中またはこれらの酸化物半導体層とSiOx層(酸化珪素膜)
の界面に水素を拡散させることができる。
【0116】
以上により、島状の第1の酸化物半導体層404aの結晶領域から結晶成長させた島状の
第2の酸化物半導体層406aを用い、層間絶縁層416に含まれる水素を拡散させて欠
陥を終端させたトランジスタ450が完成する。
【0117】
次いで、層間絶縁層416上に層間絶縁層418を形成し、図4(E)に示す断面構造と
する。層間絶縁層418は、PVD法やCVD法などを用いて得られる酸化珪素、窒化酸
化珪素、窒化珪素、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化タンタル等の無機絶縁材料
を含む材料を用いて形成する。また、層間絶縁層418の材料として、アクリル等の有機
樹脂を用いることもできる。なお、本実施の形態では、層間絶縁層416と層間絶縁層4
18の積層構造としているが、開示する発明の一態様はこれに限定されない。1層として
も良いし、3層以上の積層構造としても良い。
【0118】
また、図4(E)に示すように、ゲート電極層401は、ソース電極層408a(または
ドレイン電極層408b)と重なる領域を有することも特徴の一つである。上記島状の酸
化物半導体層は、ソース電極層408aの端部とゲート絶縁層402の段差、即ち断面図
においてゲート絶縁層の平坦面からテーパー面となる変化点との間の領域(ここでは図4
(E)中で示したLOV領域)を有している。LOV領域は、ゲート電極層の端部で生じ
る結晶粒界に、キャリアが流れないようにするために重要である。
【0119】
また、酸化物絶縁層412上にバックゲートとして機能する電極層を形成してもよい。そ
の場合の作製例を図5(A)及び図5(B)に示す。図4(C)の状態を得た後、ゲート
電極層401に達するコンタクトホールを形成し(図示しない)、酸化物絶縁層412上
に電極層414を形成する(図5(A)参照)。次いで、電極層414及び酸化物絶縁層
412上に、水素を含む層間絶縁層416を形成する。そして第4の加熱処理を行って図
5(B)に示すトランジスタ451を得ることができる。電極層414を酸化物半導体層
のチャネル形成領域と重なる位置に設けることによって、BT試験(バイアス−熱ストレ
ス試験)前後におけるトランジスタ451のしきい値電圧の変化量を低減することができ
る。また、c軸配向した非単結晶層を有する酸化物半導体層を用いたトランジスタは、ト
ランジスタに光を照射しつづけて行うBT試験前後においてもトランジスタのしきい値電
圧の変化量が低減でき、安定した電気的特性を有するトランジスタを作製することができ
る。また、電極層414は、電位がトランジスタ451のゲート電極層401と異なって
いても良い。また、電極層414の電位がGND、0V、或いはフローティング状態であ
ってもよい。
【0120】
(実施の形態3)
本実施の形態では、チャネルストップ型のトランジスタの例を図6を用いて示す。
【0121】
本実施の形態は、実施の形態2と一部異なるだけであるため、詳細な説明はここでは省略
することとする。
【0122】
以下に工程を順に説明する。実施の形態2と同様に、基板500上にゲート電極層501
、ゲート絶縁層502を形成する。次いで、実施の形態2と同様に、第1の酸化物半導体
層を形成し、第1の加熱処理を行って第1の酸化物半導体層を結晶化させる。次いで、実
施の形態2と同様に、第2の酸化物半導体層を形成し、第2の加熱処理を行って第2の酸
化物半導体層を結晶化させる。
【0123】
次いで、酸化物絶縁層を形成し、第3の加熱処理を行う。酸化物絶縁層は、実施の形態2
に示した酸化物絶縁層412と同じ材料を用いる。また、第3の加熱処理も実施の形態2
に示した第3の加熱処理と同じ条件とし、第1の酸化物半導体層及び第2の酸化物半導体
層に酸素を供給し、第1の酸化物半導体層及び第2の酸化物半導体層中の酸素欠損を低減
する。
【0124】
次いで、フォトリソグラフィ工程によりレジストマスクを酸化物絶縁層上に形成し、選択
的にエッチングを行って島状の第1の酸化物半導体層504a、及び島状の第2の酸化物
半導体層506aを形成する。
【0125】
次いで、レジストマスクを除去し、フォトリソグラフィ工程によりレジストマスクを形成
し、選択的にエッチングを行って島状の酸化物絶縁層520を形成する。
【0126】
次いで、島状の酸化物絶縁層520、及び島状の第1の酸化物半導体層504a、及び島
状の第2の酸化物半導体層506a上に、スパッタ法などにより金属導電膜を形成した後
、フォトリソグラフィ工程によりレジストマスクを形成し、選択的にエッチングを行って
ソース電極層508a及びドレイン電極層508bを形成する。
【0127】
次いで、島状の酸化物絶縁層520、ソース電極層508a、及びドレイン電極層508
b上に水素を含む層間絶縁層516を形成した後、第4の加熱処理を行う。また、第4の
加熱処理も実施の形態2に示した第4の加熱処理と同じ条件とし、第1の酸化物半導体層
及び第2の酸化物半導体層に水素を供給し、第1の酸化物半導体層及び第2の酸化物半導
体層中の欠損を低減する。
【0128】
以上により、島状の第1の酸化物半導体層504aの結晶領域から結晶成長させた島状の
第2の酸化物半導体層506aを用い、層間絶縁層516に含まれる水素を拡散させて欠
陥を終端させたチャネルストップ型のトランジスタ550が完成する。
【0129】
次いで、層間絶縁層516上に平坦化のための層間絶縁層518を形成し、図6に示す断
面構造を得ることができる。
【0130】
なお、本実施の形態は、実施の形態2と自由に組み合わせることができる。
【0131】
(実施の形態4)
本実施の形態では、先の実施の形態において説明した半導体装置を半導体集積回路に用い
る場合の一例として、先の実施の形態において説明した半導体装置と別の半導体材料を用
いた半導体装置との積層構造を有する半導体装置について、図7を参照して説明する。
【0132】
図7は、本実施の形態にかかる半導体装置の構成の一例を示す断面図である。図7中のA
1−A2はトランジスタ250のチャネル長方向に平行に沿って切った断面であり、B1
−B2はトランジスタ150のチャネル長方向に平行に沿って切った断面である。図7に
示される半導体装置は、下部に、酸化物半導体以外の材料(例えば、シリコン)を用いた
トランジスタ250を有し、上部に酸化物半導体を用いたトランジスタ150を有するも
のである。酸化物半導体を用いたトランジスタ150は、図1に示したトランジスタ15
0である。なお、トランジスタ250およびトランジスタ150は、いずれもn型トラン
ジスタとして説明するが、p型トランジスタを採用しても良い。特に、トランジスタ25
0は、p型とすることが容易である。
【0133】
トランジスタ250は、半導体材料を含む基板200に設けられたチャネル形成領域21
6と、チャネル形成領域216を挟むように設けられた不純物領域214および高濃度不
純物領域220(これらをあわせて単に不純物領域とも呼ぶ)と、チャネル形成領域21
6上に設けられたゲート絶縁層208aと、ゲート絶縁層208a上に設けられたゲート
電極層210aと、不純物領域214と電気的に接続するソース電極層またはドレイン電
極層230a、および、ソース電極層またはドレイン電極層230bを有する(図7参照
)。
【0134】
ここで、ゲート電極層210aの側面にはサイドウォール絶縁層218が設けられている
。また、基板200の主平面に垂直な方向から見てサイドウォール絶縁層218と重なら
ない領域には、高濃度不純物領域220を有し、高濃度不純物領域220と接する金属化
合物領域224を有する。また、基板200上にはトランジスタ250を囲むように素子
分離絶縁層206が設けられており、トランジスタ250を覆うように、層間絶縁層22
6および層間絶縁層228が設けられている。ソース電極層またはドレイン電極層230
a、ソース電極層またはドレイン電極層230bは、層間絶縁層226および層間絶縁層
228に形成された開口を通じて、金属化合物領域224と電気的に接続されている。つ
まり、ソース電極層またはドレイン電極層230a、ソース電極層またはドレイン電極層
230bは、金属化合物領域224を介して高濃度不純物領域220および不純物領域2
14と電気的に接続されている。ソース電極層またはドレイン電極層230a、ソース電
極層またはドレイン電極層230bと同様に、電極230cが層間絶縁層226および層
間絶縁層228に設けられた開口に形成されている。また、層間絶縁層228上には絶縁
層234が設けられており、当該絶縁層234に埋め込まれるように、電極236a、電
極236b、電極236cが設けられている。ここで、電極236aはソース電極層また
はドレイン電極層230aと接しており、電極236bはソース電極層またはドレイン電
極層230bと接しており、電極236cは電極230cと接している。
【0135】
トランジスタ150は、絶縁層102上に設けられた島状の第1の酸化物半導体層104
aおよび島状の第2の酸化物半導体層106aと、島状の第1の酸化物半導体層104a
および島状の第2の酸化物半導体層106a上に設けられ、島状の第1の酸化物半導体層
104aおよび島状の第2の酸化物半導体層106aと電気的に接続されているソース電
極層108a、ドレイン電極層108bと、島状の第1の酸化物半導体層104a、島状
の第2の酸化物半導体層106a、ソース電極層108a、およびドレイン電極層108
bを覆うように設けられたゲート絶縁層112と、ゲート絶縁層112上の、島状の第2
の酸化物半導体層106aと重畳する領域に設けられたゲート電極層114と、を有する
(図7参照)。
【0136】
また、トランジスタ150上には、層間絶縁層116および層間絶縁層118が設けられ
ている。ここで、ゲート絶縁層112、層間絶縁層116、および層間絶縁層118には
、ソース電極層108a、ドレイン電極層108bにまで達する開口が設けられており、
当該開口を通じて、電極254d、電極254eが、それぞれ、ソース電極層108a、
ドレイン電極層108bに接して形成されている。また、電極254d、電極254eと
同様に、ゲート絶縁層112、層間絶縁層116、および層間絶縁層118に設けられた
開口を通じて、電極236a、電極236b、電極236cに接する電極254a、電極
254b、電極254cが形成されている。
【0137】
また、層間絶縁層118上には絶縁層256が設けられており、当該絶縁層256に埋め
込まれるように、電極258a、電極258b、電極258c、電極258dが設けられ
ている。ここで、電極258aは電極254aと接しており、電極258bは電極254
bと接しており、電極258cは電極254cおよび電極254dと接しており、電極2
58dは電極254eと接している。
【0138】
つまり、トランジスタ150のソース電極層108aまたはドレイン電極層108bは、
電極230c、電極236c、電極254c、電極258c、電極254dを介して、他
の要素(酸化物半導体以外の材料を用いたトランジスタなど)と電気的に接続されている
(図7参照)。さらに、トランジスタ150のソース電極層108aまたはドレイン電極
層108bは、電極254e、電極258dを介して、他の要素に電気的に接続されてい
る。なお、接続に係る電極(電極230c、電極236c、電極254c、電極258c
、電極254d等)の構成は、上記に限定されず、適宜追加、省略等が可能である。
【0139】
なお、各種電極(例えば、電極258a、電極258b、電極258c、電極258dな
ど)の一部には銅を含む材料を用いることが好ましい。これらの一部に銅を含む材料を用
いることで、導電性を向上させることができる。銅を含む電極や配線は、いわゆるダマシ
ンプロセスなどによって形成することが可能である。
【0140】
以上、本実施の形態では、積層構造にかかる半導体装置の代表的な一例について説明した
が、開示する発明の一態様はこれに限定されない。例えば、トランジスタの構成、絶縁層
の数や配置、電極や配線の数や接続関係、などは適宜変更することが可能である。例えば
、電極の接続関係の一例として、トランジスタ250のゲート電極層210aと、トラン
ジスタ150のソース電極層108aまたはドレイン電極層108bとが電気的に接続さ
れる構成を採用することもできる。
【0141】
このように、酸化物半導体以外の材料を用いたトランジスタと、酸化物半導体を用いたト
ランジスタとを一体に備える構成とすることで、酸化物半導体を用いたトランジスタとは
異なる電気特性を備えた半導体装置を実現することができる。
【0142】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適
宜組み合わせて用いることができる。
【0143】
(実施の形態5)
本実施の形態では、開示する発明の一態様に係る半導体装置の具体例として、記憶装置と
して機能する半導体装置の構成例を説明する。なお、ここでは、酸化物半導体を用いたト
ランジスタと、酸化物半導体以外の材料(例えば、シリコン)を用いたトランジスタと、
を含む半導体装置について説明する。
【0144】
図8に示す半導体装置では、トランジスタ300のゲート電極と、トランジスタ302の
ソース電極またはドレイン電極の一方とは、電気的に接続されている。また、第1の配線
(1st Line:ソース線とも呼ぶ)とトランジスタ300のソース電極とは、電気
的に接続され、第2の配線(2nd Line:ビット線とも呼ぶ)とトランジスタ30
0のドレイン電極とは、電気的に接続されている。そして、第3の配線(3rd Lin
e:第1信号線とも呼ぶ)とトランジスタ302のソース電極またはドレイン電極の他方
とは、電気的に接続され、第4の配線(4th Line:第2信号線とも呼ぶ)と、ト
ランジスタ302のゲート電極とは、電気的に接続されている。ここで、トランジスタ3
00には酸化物半導体以外の材料(例えば、シリコン)が用いられており、トランジスタ
302には酸化物半導体材料が用いられている。
【0145】
酸化物半導体以外の材料を用いたトランジスタ300は、酸化物半導体を用いたトランジ
スタ302と比較して、さらなる高速動作が可能なため、これを用いることにより、記憶
内容の読み出しなどを高速に行うことが可能である。また、酸化物半導体を用いたトラン
ジスタ302は、オフ電流が極めて小さいという特徴を有している。このため、トランジ
スタ302をオフ状態とすることで、トランジスタ300のゲート電極の電位を極めて長
時間にわたって保持することが可能である。
【0146】
トランジスタ302のソース電極またはドレイン電極は、トランジスタ300のゲート電
極と電気的に接続されることにより、不揮発性メモリ素子として用いられるフローティン
グゲート型トランジスタのフローティングゲートと同等の作用を奏する。このため、本実
施の形態においては、トランジスタ302のソース電極またはドレイン電極とトランジス
タ300のゲート電極が電気的に接続される部位をフローティングゲート部FGと呼ぶ。
当該フローティングゲート部FGは絶縁物中に埋設されていることにより電荷を保持する
ことができる。トランジスタ302はシリコン半導体で形成されるトランジスタ300と
比較して、オフ電流が10万分の1以下であるため、フローティングゲート部FGに蓄積
される電荷の、トランジスタ302のリークによる消失を無視することができる。
【0147】
このような構成を採用することで、従来のフローティングゲート型トランジスタにおいて
指摘されているゲート絶縁膜(トンネル絶縁膜)の劣化を回避することができる。すなわ
ち電子をフローティングゲートに注入する際に生じるトンネル電流によってゲート絶縁膜
が劣化することを解消することができる。このため、図8に示す半導体装置では、原理的
に書き込み回数の制限を無視することができる。
【0148】
なお、フローティングゲート部FGには容量素子を付加してもよい。フローティングゲー
ト部FGに容量素子を付加することで、電荷の保持が容易になり、また、各配線の電位変
動に起因するフローティングゲート部FGの電位変動を抑制することが容易になる。
【0149】
図8に示す半導体装置では、トランジスタ300のゲート電極の電位が保持可能という特
徴を生かすことで、次のように、情報の書き込み、保持、読み出しが可能である。
【0150】
はじめに、情報の書き込みおよび保持について説明する。まず、第4の配線の電位を、ト
ランジスタ302がオン状態となる電位として、トランジスタ302をオン状態とする。
これにより、第3の配線の電位が、トランジスタ300のゲート電極に与えられる(書き
込み)。その後、第4の配線の電位を、トランジスタ302がオフ状態となる電位として
、トランジスタ302をオフ状態とすることにより、トランジスタ300のゲート電極の
電位が保持される(保持)。
【0151】
トランジスタ302のオフ電流は極めて小さいから、トランジスタ300のゲート電極の
電位は長時間にわたって保持される。例えば、トランジスタ300のゲート電極の電位が
トランジスタ300をオン状態とする電位であれば、トランジスタ300のオン状態が長
時間にわたって保持されることになる。また、トランジスタ300のゲート電極の電位が
トランジスタ300をオフ状態とする電位であれば、トランジスタ300のオフ状態が長
時間にわたって保持される。
【0152】
次に、情報の読み出しについて説明する。上述のように、トランジスタ300のオン状態
またはオフ状態が保持された状態において、第1の配線に所定の電位(低電位)が与えら
れると、トランジスタ300のオン状態またはオフ状態に応じて、第2の配線の電位は異
なる値をとる。例えば、トランジスタ300がオン状態の場合には、第1の配線の電位に
対して、第2の配線の電位が低下することになる。逆に、トランジスタ300がオフ状態
の場合には、第2の配線の電位は変化しない。
【0153】
このように、情報が保持された状態において、第1の配線の電位と第2の配線の電位とを
比較することで、情報を読み出すことができる。
【0154】
次に、情報の書き換えについて説明する。情報の書き換えは、上記情報の書き込みおよび
保持と同様に行われる。つまり、第4の配線の電位を、トランジスタ302がオン状態と
なる電位として、トランジスタ302をオン状態とする。これにより、第3の配線の電位
(新たな情報に係る電位)が、トランジスタ300のゲート電極に与えられる。その後、
第4の配線の電位を、トランジスタ302がオフ状態となる電位として、トランジスタ3
02をオフ状態とすることにより、新たな情報が保持された状態となる。
【0155】
このように、開示する発明に係る半導体装置は、再度の情報の書き込みによって直接的に
情報を書き換えることが可能である。このためフラッシュメモリなどにおいて必要とされ
る消去動作が不要であり、消去動作に起因する動作速度の低下を抑制することができる。
つまり、半導体装置の高速動作が実現される。
【0156】
また、本実施の形態に係る半導体装置は、トランジスタ302の低オフ電流特性により、
極めて長時間にわたり情報を保持することが可能である。つまり、DRAMなどで必要と
されるリフレッシュ動作が不要であり、消費電力を抑制することができる。また、実質的
な不揮発性の半導体装置として用いることが可能である。
【0157】
また、トランジスタ302のスイッチング動作によって情報の書き込みなどを行うため、
高い電圧を必要とせず、素子の劣化の問題もない。さらに、トランジスタのオン、オフに
よって、情報の書き込みや消去が行われるため、高速な動作も容易に実現しうる。
【0158】
また、酸化物半導体以外の材料を用いたトランジスタは、酸化物半導体を用いたトランジ
スタと比較して、さらなる高速動作が可能なため、これを用いることにより、記憶内容の
読み出しを高速に行うことが可能である。
【0159】
なお、上記説明は、電子を多数キャリアとするn型トランジスタ(nチャネル型トランジ
スタ)を用いる場合についてのものであるが、n型トランジスタに代えて、正孔を多数キ
ャリアとするp型トランジスタを用いることができるのはいうまでもない。
【0160】
本実施の形態にかかる半導体装置は、例えば先の実施の形態において説明したようなトラ
ンジスタの積層構造によって形成することができる。もちろん、開示する発明をトランジ
スタの積層構造に限定する必要はない。例えば、トランジスタ300とトランジスタ30
2を同一面上に形成しても良い。また、本実施の形態にかかる半導体装置は、トランジス
タ302のオフ電流が小さいことを利用するものであるから、トランジスタ300につい
ては特に限定する必要はない。例えば、本実施の形態では酸化物半導体以外の材料を用い
てトランジスタ300を形成しているが、酸化物半導体を用いても構わない。
【0161】
また、本実施の形態では理解の簡単のため、最小単位の半導体装置について説明したが、
半導体装置の構成はこれに限られるものではない。複数の半導体装置を適当に接続して、
より高度な半導体装置を構成することもできる。例えば、上記半導体装置を複数用いて、
NAND型やNOR型の半導体装置を構成することが可能である。配線の構成も図8に限
定されず、適宜変更することができる。
【0162】
本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み
合わせて用いることができる。
【0163】
(実施の形態6)
本実施の形態では、c軸配向した酸化物半導体層を含むトランジスタを作製し、該トラン
ジスタを画素部、さらには駆動回路に用いて表示機能を有する半導体装置(表示装置とも
いう)を作製する場合について説明する。また、駆動回路の一部または全部を、画素部と
同じ基板上に一体形成し、システムオンパネルを形成することができる。
【0164】
本実施の形態では、本発明の一形態である半導体装置として液晶表示装置の例を示す。ま
ず、半導体装置の一形態に相当する液晶表示パネルの外観及び断面について、図9を用い
て説明する。図9(A)は、第1の基板4001上に形成されたc軸配向した酸化物半導
体層を含むトランジスタ4010、トランジスタ4011、及び液晶素子4013を、第
2の基板4006との間にシール材4005によって封止した、パネルの上面図であり、
図9(B)は、図9(A)のM−Nにおける断面図に相当する。
【0165】
第1の基板4001上に設けられた画素部4002と、信号線駆動回路4003と、走査
線駆動回路4004とを囲むようにして、シール材4005が設けられている。また画素
部4002と、信号線駆動回路4003と、走査線駆動回路4004の上に第2の基板4
006が設けられている。よって画素部4002、信号線駆動回路4003、及び走査線
駆動回路4004は、第1の基板4001とシール材4005と第2の基板4006とに
よって、液晶層4008と共に封止されている。
【0166】
また、第1の基板4001上に設けられた画素部4002と、信号線駆動回路4003と
、走査線駆動回路4004は、トランジスタを複数有しており、図9(B)では、画素部
4002に含まれるトランジスタ4010と、走査線駆動回路4004に含まれるトラン
ジスタ4011とを例示している。トランジスタ4010、トランジスタ4011上には
絶縁層4020、絶縁層4014、および絶縁層4021が設けられている。
【0167】
トランジスタ4010、トランジスタ4011は、実施の形態2で示したc軸配向した酸
化物半導体層を含むトランジスタを適用することができる。本実施の形態において、トラ
ンジスタ4010、トランジスタ4011はnチャネル型トランジスタである。
【0168】
絶縁層4021上において、駆動回路用のトランジスタ4011の酸化物半導体層のチャ
ネル形成領域と重なる位置に導電層4040が設けられている。導電層4040を酸化物
半導体層のチャネル形成領域と重なる位置に設けることによって、BT試験前後における
トランジスタ4011のしきい値電圧の変化量を低減することができる。また、c軸配向
した非単結晶層を有する酸化物半導体層を用いたトランジスタは、トランジスタに光を照
射しつづけて行うBT試験前後においてもトランジスタのしきい値電圧の変化量が低減で
き、安定した電気的特性を有するトランジスタを作製することができる。また、導電層4
040は、電位がトランジスタ4011のゲート電極層と同じでもよいし、異なっていて
も良く、第2のゲート電極層として機能させることもできる。また、導電層4040の電
位は、GND、0V、またはフローティング状態であってもよい。
【0169】
また、液晶素子4013が有する画素電極層4030は、トランジスタ4010と電気的
に接続されている。そして液晶素子4013の対向電極層4031は第2の基板4006
上に形成されている。画素電極層4030と対向電極層4031と液晶層4008とが重
なっている部分が、液晶素子4013に相当する。なお、画素電極層4030、対向電極
層4031にはそれぞれ配向膜として機能する絶縁層4032、絶縁層4033が設けら
れ、絶縁層4032、絶縁層4033を介して液晶層4008を挟持している。
【0170】
なお、第2の基板4006としては、ガラス、プラスチックを用いることができる。
【0171】
また、柱状のスペーサ4035は絶縁層を選択的にエッチングすることで得られ、画素電
極層4030と対向電極層4031との間の距離(セルギャップ)を制御するために設け
られている。なお球状のスペーサを用いていても良い。また、対向電極層4031は、ト
ランジスタ4010と同一絶縁基板上に設けられる共通電位線と電気的に接続される。ま
た、共通接続部を用いて、一対の基板間に配置される導電性粒子を介して対向電極層40
31と共通電位線とを電気的に接続することができる。なお、導電性粒子はシール材40
05に含有させる。
【0172】
また、配向膜を用いないブルー相を示す液晶を用いてもよい。ブルー相は液晶相の一つで
あり、コレステリック液晶を昇温していくと、コレステリック相から等方相へ転移する直
前に発現する相である。ブルー相は狭い温度範囲でしか発現しないため、温度範囲を改善
するために5重量%以上のカイラル剤を混合させた液晶組成物を用いて液晶層4008に
用いると良い。ブルー相を示す液晶とカイラル剤とを含む液晶組成物は、応答速度が1m
sec以下と短く、光学的等方性であるため配向処理が不要であり、視野角依存性が小さ
い。
【0173】
また、ブルー相を示す液晶を用いると、配向膜へのラビング処理も不要となるため、ラビ
ング処理によって引き起こされる静電破壊を防止することができ、作製工程中の液晶表示
装置の不良や破損を軽減することができる。よって液晶表示装置の生産性を向上させるこ
とが可能となる。特に、酸化物半導体層を用いるトランジスタでは、静電気の影響により
トランジスタの電気的な特性が著しく変動して設計範囲を逸脱する恐れがある。よって酸
化物半導体層を用いるトランジスタを有する液晶表示装置にブルー相の液晶材料を用いる
ことはより効果的である。
【0174】
なお、本実施の形態で示す液晶表示装置は透過型液晶表示装置の例であるが、反射型液晶
表示装置としても良いし、半透過型液晶表示装置としても良い。
【0175】
また、本実施の形態で示す液晶表示装置では、基板の外側(視認側)に偏光板を設け、内
側に着色層(カラーフィルター)、表示素子に用いる電極層という順に設ける例を示すが
、偏光板は基板の内側に設けてもよい。また、偏光板と着色層の積層構造も本実施の形態
に限定されず、偏光板及び着色層の材料や作製工程条件によって適宜設定すればよい。ま
た、必要に応じてブラックマトリクスとして機能する遮光層を設けてもよい。
【0176】
また、本実施の形態では、トランジスタの表面凹凸を低減するため、及びトランジスタの
信頼性を向上させるため、トランジスタを保護層や平坦化絶縁層として機能する絶縁層(
絶縁層4020、絶縁層4014、絶縁層4021)で覆う構成となっている。なお、保
護層は、大気中に浮遊する有機物や金属物、水蒸気などの汚染不純物の侵入を防ぐための
ものであり、緻密な膜が好ましい。保護層は、スパッタ法を用いて、酸化珪素層、窒化珪
素層、酸化窒化珪素層、窒化酸化珪素層、酸化アルミニウム層、窒化アルミニウム層、酸
化窒化アルミニウム層、又は窒化酸化アルミニウム層の単層、又は積層で形成すればよい

【0177】
ここでは、保護層として絶縁層の積層を形成する。ここでは、一層目の絶縁層4020と
して、スパッタ法を用いて酸化珪素層を形成する。保護層として酸化珪素層を用いると、
保護層と接する酸化物半導体層に酸素を添加し、酸素欠損を低減することができる。
【0178】
また、保護層の二層目として絶縁層4014を形成する。ここでは、二層目の絶縁層40
14として、プラズマCVD法を用いて水素を含む窒化物絶縁層の一つである窒化珪素層
を形成し、その後熱処理を行って酸化物半導体層に水素を拡散させる。また、保護層とし
て窒化珪素層を用いると、ナトリウム等のイオンが半導体領域中に侵入して、トランジス
タの電気特性を変化させることを抑制することができる。
【0179】
また、平坦化絶縁層として絶縁層4021を形成する。絶縁層4021としては、アクリ
ル等の有機材料を用いることができる。また上記有機材料の他に、低誘電率材料(low
−k材料)、シロキサン系樹脂、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス)
等を用いることができる。なお、これらの材料で形成される絶縁層を複数積層させること
で、絶縁層4021を形成してもよい。
【0180】
画素電極層4030、対向電極層4031は、酸化タングステンを含むインジウム酸化物
、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、
酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム錫酸化物(以下、ITOと示す。)、
インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの透光性を有する
導電性材料を用いることができる。
【0181】
また同一基板上に形成された信号線駆動回路4003と、走査線駆動回路4004または
画素部4002に与えられる各種信号及び電位は、FPC4018から供給されている。
【0182】
本実施の形態では、接続端子電極4015が、液晶素子4013が有する画素電極層40
30と同じ導電層から形成され、端子電極4016は、トランジスタ4010、トランジ
スタ4011のソース電極層及びドレイン電極層と同じ導電層で形成されている。
【0183】
接続端子電極4015は、FPC4018が有する端子と、異方性導電層4019を介し
て電気的に接続されている。
【0184】
また、必要であれば、カラーフィルタを各画素に対応して設ける。また、第1の基板40
01と第2の基板4006の外側には偏光板や拡散板を設ける。また、バックライトの光
源は冷陰極管やLEDにより構成されて液晶表示モジュールとなる。
【0185】
液晶表示モジュールには、TN(Twisted Nematic)モード、IPS(I
n−Plane−Switching)モード、FFS(Fringe Field S
witching)モード、MVA(Multi−domain Vertical A
lignment)モード、PVA(Patterned Vertical Alig
nment)モード、ASM(Axially Symmetric aligned
Micro−cell)モード、OCB(Optical Compensated B
irefringence)モード、FLC(Ferroelectric Liqui
d Crystal)モード、AFLC(AntiFerroelectric Liq
uid Crystal)モードなどを用いることができる。
【0186】
以上の工程により、液晶表示装置を作製することができる。
【0187】
実施の形態2に示すc軸配向した酸化物半導体層を含むトランジスタは、結晶性の優れた
酸化物半導体層を有し、高い電界効果移動度を有するため、本実施の形態のように、これ
を用いて液晶表示装置を製造することで、優れた表示特性の液晶表示装置が実現される。
【0188】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能
である。
【0189】
(実施の形態7)
半導体装置の一形態に相当する発光表示パネル(発光パネルともいう)の外観及び断面に
ついて、図10を用いて説明する。図10(A)は、第1の基板上に形成されたc軸配向
した酸化物半導体層を含むトランジスタ及び発光素子を、第2の基板との間にシール材に
よって封止した、パネルの平面図であり、図10(B)は、図10(A)のH−Iにおけ
る断面図に相当する。
【0190】
第1の基板4501上に設けられた画素部4502、信号線駆動回路4503a、信号線
駆動回路4503b、及び走査線駆動回路4504a、走査線駆動回路4504bを囲む
ようにして、シール材4505が設けられている。また画素部4502、信号線駆動回路
4503a、信号線駆動回路4503b、及び走査線駆動回路4504a、走査線駆動回
路4504bの上に第2の基板4506が設けられている。よって画素部4502、信号
線駆動回路4503a、信号線駆動回路4503b、及び走査線駆動回路4504a、走
査線駆動回路4504bは、第1の基板4501とシール材4505と第2の基板450
6とによって、充填材4507と共に密封されている。このように外気に曝されないよう
に気密性が高く、脱ガスの少ない保護フィルムやカバー材でパッケージング(封入)する
ことが好ましい。
【0191】
また第1の基板4501上に設けられた画素部4502、信号線駆動回路4503a、信
号線駆動回路4503b、及び走査線駆動回路4504a、走査線駆動回路4504bは
、トランジスタを複数有しており、図10(B)では、画素部4502に含まれるトラン
ジスタ4510と、信号線駆動回路4503aに含まれるトランジスタ4509とを例示
している。
【0192】
トランジスタ4509、トランジスタ4510は、実施の形態2で示したc軸配向した酸
化物半導体層を含む移動度の高いトランジスタを適用することができる。本実施の形態に
おいて、トランジスタ4509、トランジスタ4510はnチャネル型トランジスタであ
る。
【0193】
駆動回路用のトランジスタ4509の酸化物半導体層のチャネル形成領域と重なる位置に
導電層4540が絶縁層4544上に設けられている。また、導電層4540は、電位が
トランジスタ4509のゲート電極層と同じでもよいし、異なっていても良く、第2のゲ
ート電極層として機能させることもできる。また、導電層4540の電位は、GND、0
V、またはフローティング状態であってもよい。
【0194】
トランジスタ4509は、保護絶縁層としてチャネル形成領域を含む半導体層に接して絶
縁層4541が形成されている。絶縁層4541は実施の形態2で示した酸化物絶縁層4
12と同様な材料及び方法で形成すればよい。また、絶縁層4541上に保護絶縁層45
14が形成されている。保護絶縁層4514は実施の形態2で示した層間絶縁層416と
同様な材料及び方法で形成すればよい。ここでは、保護絶縁層4514として、PCVD
法により窒化珪素層を形成する。
【0195】
また、保護絶縁層4514上に、トランジスタの表面凹凸を低減する平坦化絶縁層として
機能する絶縁層4544を形成する。絶縁層4544としては、実施の形態6で示した絶
縁層4021と同様な材料及び方法で形成すればよい。ここでは、絶縁層4544として
アクリルを用いる。
【0196】
また、発光素子4511が有する画素電極である第1の電極層4517は、トランジスタ
4510のソース電極層またはドレイン電極層と電気的に接続されている。なお発光素子
4511の構成は、第1の電極層4517、電界発光層4512、第2の電極層4513
の積層構造であるが、示した構成に限定されない。発光素子4511から取り出す光の方
向などに合わせて、発光素子4511の構成は適宜変えることができる。
【0197】
隔壁4520は、有機樹脂層、または無機絶縁層を用いて形成する。特に感光性の材料を
用い、第1の電極層4517上に開口部を形成し、その開口部の側壁が連続した曲率を有
する傾斜面となるようにすることが好ましい。
【0198】
電界発光層4512は、単数の層で構成されていても、複数の層が積層されるように構成
されていても良い。
【0199】
発光素子4511に酸素、水素、水分、二酸化炭素等が侵入しないように、第2の電極層
4513及び隔壁4520上に保護層を形成してもよい。保護層としては、窒化珪素層、
窒化酸化珪素層、DLC層等を形成することができる。
【0200】
また、信号線駆動回路4503a、信号線駆動回路4503b、走査線駆動回路4504
a、走査線駆動回路4504b、または画素部4502に与えられる各種信号及び電位は
、FPC4518a、FPC4518bから供給されている。
【0201】
接続端子電極4515が、発光素子4511が有する第1の電極層4517と同じ導電層
から形成され、端子電極4516は、トランジスタ4509、トランジスタ4510が有
するソース電極層及びドレイン電極層と同じ導電層から形成されている。
【0202】
接続端子電極4515は、FPC4518aが有する端子と、異方性導電層4519を介
して電気的に接続されている。
【0203】
発光素子4511からの光の取り出し方向に位置する第2の基板4506は、透光性でな
ければならない。その場合には、ガラス板、プラスチック板、ポリエステルフィルムまた
はアクリルフィルムのような透光性を有する材料を用いる。
【0204】
また、充填材4507としては窒素やアルゴンなどの不活性な気体の他に、紫外線硬化樹
脂または熱硬化樹脂を用いることができ、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などを用いること
ができる。例えば充填材として窒素を用いればよい。
【0205】
また、必要であれば、発光素子の射出面に偏光板、又は円偏光板(楕円偏光板を含む)、
位相差板(λ/4板、λ/2板)、カラーフィルタなどの光学フィルムを適宜設けてもよ
い。
【0206】
以上の工程により、発光表示装置(表示パネル)を作製することができる。
【0207】
実施の形態2に示すc軸配向した酸化物半導体層を用いたトランジスタは、結晶性の優れ
た酸化物半導体層を有し、高い電界効果移動度を有するため、本実施の形態のように、こ
れを用いて発光表示装置を製造することで、優れた表示特性の発光表示装置が実現される

【0208】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能
である。
【0209】
(実施の形態8)
半導体装置の一形態として電子ペーパーの例を示す。
【0210】
実施の形態2に示す方法により得られるc軸配向した酸化物半導体層を含むトランジスタ
は、電子ペーパーに用いてもよい。電子ペーパーは、電気泳動表示装置(電気泳動ディス
プレイ)とも呼ばれており、紙と同じように読みやすく、他の表示装置に比べ低消費電力
化、薄型化、軽量化が可能という利点を有している。
【0211】
電気泳動ディスプレイは、様々な形態が考えられ得るが、例えば、プラスの電荷を有する
第1の粒子と、マイナスの電荷を有する第2の粒子とを含むマイクロカプセルが溶媒また
は溶質に複数分散されたものであり、マイクロカプセルに電界を印加することによって、
マイクロカプセル中の粒子を互いに反対方向に移動させて一方側に集合した粒子の色のみ
を表示する構成とすることができる。なお、第1の粒子または第2の粒子は染料を含み、
電界がない場合において移動しないものである。また、第1の粒子の色と第2の粒子の色
は異なるもの(無色を含む)とする。
【0212】
このように、電気泳動ディスプレイは、誘電定数の高い物質が高い電界領域に移動する、
いわゆる誘電泳動的効果を利用したディスプレイである。
【0213】
上記マイクロカプセルを溶媒中に分散させたものが電子インクと呼ばれるものであり、こ
の電子インクはガラス、プラスチック、布、紙などの表面に印刷することができる。また
、カラーフィルタや色素を有する粒子を用いることによってカラー表示も可能である。
【0214】
また、アクティブマトリクス基板上に適宜、二つの電極の間に挟まれるように上記マイク
ロカプセルを複数配置すればアクティブマトリクス型の表示装置が完成し、マイクロカプ
セルに電界を印加すれば表示を行うことができる。例えば、実施の形態2のc軸配向した
酸化物半導体層を含むトランジスタによって得られるアクティブマトリクス基板を用いる
ことができる。
【0215】
なお、マイクロカプセル中の第1の粒子および第2の粒子は、導電体材料、絶縁体材料、
半導体材料、磁性材料、液晶材料、強誘電性材料、エレクトロルミネセント材料、エレク
トロクロミック材料、磁気泳動材料から選ばれた一種の材料、またはこれらの複合材料を
用いて形成することができる。
【0216】
図11には、半導体装置の例として、アクティブマトリクス型の電子ペーパーを示す。半
導体装置に用いられるトランジスタ581は、実施の形態2で示すトランジスタと同様に
作製でき、c軸配向した酸化物半導体層を含む移動度の高いトランジスタである。また、
絶縁層584は、水素を含む窒化物絶縁層であり、c軸配向した酸化物半導体層に水素を
供給するために設けられている。
【0217】
図11の電子ペーパーは、ツイストボール表示方式を用いた表示装置の例である。ツイス
トボール表示方式とは、白と黒に塗り分けられた球形粒子を表示素子に用いる電極層であ
る第1の電極層及び第2の電極層の間に配置し、第1の電極層及び第2の電極層に電位差
を生じさせての球形粒子の向きを制御することにより、表示を行う方法である。
【0218】
トランジスタ581はボトムゲート構造のトランジスタであり、半導体層と接する絶縁層
583に覆われている。トランジスタ581のソース電極層又はドレイン電極層は、第1
の電極層587と、絶縁層583、絶縁層584、絶縁層585に形成された開口におい
て電気的に接続している。第1の電極層587と第2の電極層588との間には、キャビ
ティ594が存在する。キャビティ594内は、黒色領域590a及び白色領域590b
を有する球形粒子と、液体とで満たされている。また、キャビティ594の周囲は樹脂等
の充填材595で充填されている。これらは第1の基板580及び第2の基板596の間
に配置されている(図11参照)。
【0219】
また、第1の電極層587が画素電極に相当し、第2の電極層588が共通電極に相当す
る。第2の電極層588は、トランジスタ581と同一絶縁基板上に設けられる共通電位
線と電気的に接続される。共通接続部を用いて、一対の基板間に配置される導電性粒子を
介して第2の電極層588と共通電位線とを電気的に接続することができる。
【0220】
また、ツイストボールの代わりに、電気泳動素子を用いることも可能である。透明な液体
と、正に帯電した白い微粒子と負に帯電した黒い微粒子とを封入した直径10μm〜20
0μm程度のマイクロカプセルを用いる。第1の電極層と第2の電極層との間に設けられ
るマイクロカプセルは、第1の電極層と第2の電極層によって、電場が与えられると、白
い微粒子と、黒い微粒子が逆の方向に移動し、白または黒を表示することができる。この
原理を応用した表示素子が電気泳動表示素子であり、電子ペーパーに用いることができる

【0221】
以上の工程により、電子ペーパーを作製することができる。
【0222】
本実施の形態では、実施の形態2に示すc軸配向した酸化物半導体層を含むトランジスタ
を用いて、いわゆる電子ペーパーを作製している。当該トランジスタは、結晶性の優れた
酸化物半導体層を有し、高い電界効果移動度を有するため、これを用いて電子ペーパーを
製造することで、優れた表示特性の電子ペーパーが実現される。
【0223】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能
である。
【0224】
(実施の形態9)
本明細書に開示する半導体装置は、さまざまな電子機器(遊技機も含む)に適用すること
ができる。電子機器としては、例えば、テレビジョン装置(テレビ、またはテレビジョン
受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラやデジタルビデオカメ
ラなどのカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともい
う)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機な
どが挙げられる。
【0225】
本実施の形態では、実施の形態6乃至実施の形態8のいずれか一で得られる表示装置を搭
載した電子機器の例について図12及び図13を用いて説明する。
【0226】
図12(A)は、少なくとも表示装置を一部品として実装して作製したノート型のパーソ
ナルコンピュータであり、本体3001、筐体3002、表示部3003、キーボード3
004などによって構成されている。なお、実施の形態6に示す液晶表示装置をノート型
のパーソナルコンピュータは有している。
【0227】
図12(B)は、少なくとも表示装置を一部品として実装して作製した携帯情報端末(P
DA)であり、本体3021には表示部3023と、外部インターフェイス3025と、
操作ボタン3024等が設けられている。また操作用の付属品としてスタイラス3022
がある。なお、実施の形態7に示す発光表示装置を携帯情報端末は有している。
【0228】
図12(C)は実施の形態8に示す電子ペーパーを一部品として実装して作製した電子書
籍であり、電子書籍2700は、筐体2701および筐体2703の2つの筐体で構成さ
れている。筐体2701および筐体2703は、軸部2711により一体とされており、
該軸部2711を軸として開閉動作を行うことができる。このような構成により、紙の書
籍のような動作を行うことが可能となる。
【0229】
筐体2701には表示部2705が組み込まれ、筐体2703には表示部2707が組み
込まれている。表示部2705および表示部2707は、続き画面を表示する構成として
もよいし、異なる画面を表示する構成としてもよい。異なる画面を表示する構成とするこ
とで、例えば右側の表示部(図12(C)では表示部2705)に文章を表示し、左側の
表示部(図12(C)では表示部2707)に画像を表示することができる。
【0230】
また、図12(C)では、筐体2701に操作部などを備えた例を示している。例えば、
筐体2701において、電源2721、操作キー2723、スピーカー2725などを備
えている。操作キー2723により、頁を送ることができる。なお、筐体の表示部と同一
面にキーボードやポインティングデバイスなどを備える構成としてもよい。また、筐体の
裏面や側面に、外部接続用端子(イヤホン端子、USB端子など)、記録媒体挿入部など
を備える構成としてもよい。さらに、電子書籍2700は、電子辞書としての機能を持た
せた構成としてもよい。
【0231】
また、電子書籍2700は、無線で情報を送受信できる構成としてもよい。無線により、
電子書籍サーバから、所望の書籍データなどを購入し、ダウンロードする構成とすること
も可能である。
【0232】
図12(D)は、少なくとも表示装置を一部品として実装して作製した携帯電話であり、
筐体2800及び筐体2801の二つの筐体で構成されている。筐体2801には、表示
パネル2802、スピーカー2803、マイクロフォン2804、ポインティングデバイ
ス2806、カメラ用レンズ2807、外部接続端子2808などを備えている。また、
筐体2800には、携帯型情報端末の充電を行う太陽電池セル2810、外部メモリスロ
ット2811などを備えている。また、アンテナは筐体2801内部に内蔵されている。
【0233】
また、表示パネル2802はタッチパネル機能を備えており、図12(D)には映像表示
されている複数の操作キー2805を点線で示している。なお、太陽電池セル2810で
出力される電圧を各回路に必要な電圧に昇圧するための昇圧回路も実装している。
【0234】
表示パネル2802は、使用形態に応じて表示の方向が適宜変化する。また、表示パネル
2802と同一面上にカメラ用レンズ2807を備えているため、テレビ電話が可能であ
る。スピーカー2803及びマイクロフォン2804は音声通話に限らず、テレビ電話、
録音、再生などが可能である。さらに、筐体2800と筐体2801は、スライドし、図
12(D)のように展開している状態から重なり合った状態とすることができ、携帯に適
した小型化が可能である。
【0235】
外部接続端子2808はACアダプタ及びUSBケーブルなどの各種ケーブルと接続可能
であり、充電及びパーソナルコンピュータなどとのデータ通信が可能である。また、外部
メモリスロット2811に記録媒体を挿入し、より大量のデータ保存及び移動に対応でき
る。
【0236】
また、上記機能に加えて、赤外線通信機能、テレビ受信機能などを備えたものであっても
よい。
【0237】
図12(E)は少なくとも表示装置を一部品として実装して作製したデジタルカメラであ
り、本体3051、表示部(A)3057、接眼部3053、操作スイッチ3054、表
示部(B)3055、バッテリー3056などによって構成されている。
【0238】
図13は、テレビジョン装置の一例を示している。テレビジョン装置9600は、筐体9
601に表示部9603が組み込まれている。表示部9603により、映像を表示するこ
とが可能である。また、ここでは、スタンド9605により筐体9601を支持した構成
を示している。
【0239】
テレビジョン装置9600の操作は、筐体9601が備える操作スイッチや、別体のリモ
コン操作機9610により行うことができる。リモコン操作機9610が備える操作キー
9609により、チャンネルや音量の操作を行うことができ、表示部9603に表示され
る映像を操作することができる。また、リモコン操作機9610に、当該リモコン操作機
9610から出力する情報を表示する表示部9607を設ける構成としてもよい。
【0240】
なお、テレビジョン装置9600は、受信機やモデムなどを備えた構成とする。受信機に
より一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して有線または無線に
よる通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)または双方向
(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
【0241】
表示部9603には、画素のスイッチング素子として、実施の形態2に示すトランジスタ
を複数配置し、その表示部9603と同一絶縁基板上に形成する駆動回路に実施の形態2
に示す移動度の高いトランジスタを配置する。
【0242】
本実施の形態は、実施の形態1乃至8のいずれか一と自由に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0243】
100 基板
102 絶縁層
104 第1の酸化物半導体層
104a 島状の第1の酸化物半導体層
105 第2の酸化物半導体層
106 第2の酸化物半導体層
106a 島状の第2の酸化物半導体層
108 導電層
108a ソース電極層
108b ドレイン電極層
112 ゲート絶縁層
114 ゲート電極層
116 層間絶縁層
118 層間絶縁層
150 トランジスタ
200 基板
206 素子分離絶縁層
208a ゲート絶縁層
210a ゲート電極層
214 不純物領域
216 チャネル形成領域
218 サイドウォール絶縁層
220 高濃度不純物領域
224 金属化合物領域
226 層間絶縁層
228 層間絶縁層
230a ソース電極層またはドレイン電極層
230b ソース電極層またはドレイン電極層
230c 電極
234 絶縁層
236a 電極
236b 電極
236c 電極
250 トランジスタ
254a 電極
254b 電極
254c 電極
254d 電極
254e 電極
256 絶縁層
258a 電極
258b 電極
258c 電極
258d 電極
300 トランジスタ
302 トランジスタ
400 基板
401 ゲート電極層
402 ゲート絶縁層
404 第1の酸化物半導体層
404a 島状の第1の酸化物半導体層
406 第2の酸化物半導体層
406a 島状の第2の酸化物半導体層
408a ソース電極層
408b ドレイン電極層
412 酸化物絶縁層
414 電極層
416 層間絶縁層
418 層間絶縁層
450 トランジスタ
451 トランジスタ
500 基板
501 ゲート電極層
502 ゲート絶縁層
504a 島状の第1の酸化物半導体層
506a 島状の第2の酸化物半導体層
508a ソース電極層
508b ドレイン電極層
516 層間絶縁層
518 層間絶縁層
520 島状の酸化物絶縁層
550 トランジスタ
580 第1の基板
581 トランジスタ
583 絶縁層
584 絶縁層
585 絶縁層
587 第1の電極層
588 第2の電極層
590a 黒色領域
590b 白色領域
594 キャビティ
595 充填材
596 第2の基板
2700 電子書籍
2701 筐体
2703 筐体
2705 表示部
2707 表示部
2711 軸部
2721 電源
2723 操作キー
2725 スピーカー
2800 筐体
2801 筐体
2802 表示パネル
2803 スピーカー
2804 マイクロフォン
2805 操作キー
2806 ポインティングデバイス
2807 カメラ用レンズ
2808 外部接続端子
2810 太陽電池セル
2811 外部メモリスロット
3001 本体
3002 筐体
3003 表示部
3004 キーボード
3021 本体
3022 スタイラス
3023 表示部
3024 操作ボタン
3025 外部インターフェイス
3051 本体
3053 接眼部
3054 操作スイッチ
3055 表示部(B)
3056 バッテリー
3057 表示部(A)
4001 第1の基板
4002 画素部
4003 信号線駆動回路
4004 走査線駆動回路
4005 シール材
4006 第2の基板
4008 液晶層
4010 トランジスタ
4011 トランジスタ
4013 液晶素子
4014 絶縁層
4015 接続端子電極
4016 端子電極
4018 FPC
4019 異方性導電層
4020 絶縁層
4021 絶縁層
4030 画素電極層
4031 対向電極層
4032 絶縁層
4033 絶縁層
4035 スペーサ
4040 導電層
4501 第1の基板
4502 画素部
4503a 信号線駆動回路
4503b 信号線駆動回路
4504a 走査線駆動回路
4504b 走査線駆動回路
4505 シール材
4506 第2の基板
4507 充填材
4509 トランジスタ
4510 トランジスタ
4511 発光素子
4512 電界発光層
4513 第2の電極層
4514 保護絶縁層
4515 接続端子電極
4516 端子電極
4517 第1の電極層
4518a FPC
4518b FPC
4519 異方性導電層
4520 隔壁
4540 導電層
4541 絶縁層
4544 絶縁層
9600 テレビジョン装置
9601 筐体
9603 表示部
9605 スタンド
9607 表示部
9609 操作キー
9610 リモコン操作機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁表面を有する基板上に第1の酸化物半導体層を形成し、
第1の加熱処理を行うことにより、前記第1の酸化物半導体層の表面から内部に向かって結晶成長し、該表面と略垂直な方向にc軸が配向する結晶領域を形成し、
前記第1の酸化物半導体層上に第2の酸化物半導体層を形成し、
第2の加熱処理を行うことにより、前記結晶領域から結晶成長させて前記第2の酸化物半導体層の少なくとも一部を結晶化し、
前記第2の酸化物半導体層上に導電層を形成し、
前記導電層をエッチングすることにより、ソース電極層およびドレイン電極層を形成し、
前記第2の酸化物半導体層、前記ソース電極層、および前記ドレイン電極層を覆うように酸化物絶縁層を形成し、
第3の加熱処理を行うことにより、前記第2の酸化物半導体層に酸素を供給し、
前記酸化物絶縁層上の前記第2の酸化物半導体層と重畳する領域にゲート電極層を形成し、
前記酸化物絶縁層および前記ゲート電極層上に、水素を含む窒化物絶縁層を形成し、
第4の加熱処理を行うことにより、少なくとも前記第2の酸化物半導体層と前記酸化物絶縁層の界面に水素を供給する半導体装置の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−21341(P2013−21341A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−186067(P2012−186067)
【出願日】平成24年8月27日(2012.8.27)
【分割の表示】特願2010−273185(P2010−273185)の分割
【原出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【特許番号】特許第5127999号(P5127999)
【特許公報発行日】平成25年1月23日(2013.1.23)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】