半導体装置及び半導体装置の作製方法
【課題】酸化物半導体を用いた半導体装置に安定した電気的特性を付与し、高信頼性化する。信頼性の高い半導体装置を歩留まり良く作製する。
【解決手段】酸化物半導体膜を有するトップゲート構造のスタガ型トランジスタにおいて、酸化物半導体膜と接する第1のゲート絶縁膜を、プラズマCVD法によりフッ化珪素及び酸素を含む成膜ガスを用いた酸化シリコン膜で形成し、該第1のゲート絶縁膜上に積層する第2のゲート絶縁膜を、プラズマCVD法により水素化珪素及び酸素を含む成膜ガスを用いた酸化シリコン膜で形成する。
【解決手段】酸化物半導体膜を有するトップゲート構造のスタガ型トランジスタにおいて、酸化物半導体膜と接する第1のゲート絶縁膜を、プラズマCVD法によりフッ化珪素及び酸素を含む成膜ガスを用いた酸化シリコン膜で形成し、該第1のゲート絶縁膜上に積層する第2のゲート絶縁膜を、プラズマCVD法により水素化珪素及び酸素を含む成膜ガスを用いた酸化シリコン膜で形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
半導体装置及び半導体装置の作製方法に関する。
【0002】
なお、本明細書中において半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般を指し、電気光学装置、半導体回路および電子機器は全て半導体装置である。
【背景技術】
【0003】
絶縁表面を有する基板上に形成された半導体薄膜を用いてトランジスタを構成する技術が注目されている。該トランジスタは集積回路(IC)や画像表示装置(表示装置)のような電子デバイスに広く応用されている。トランジスタに適用可能な半導体薄膜としてシリコン系半導体材料が広く知られているが、その他の材料として酸化物半導体が注目されている。
【0004】
例えば、トランジスタの活性層として、電子キャリア濃度が1018/cm3未満であるインジウム(In)、ガリウム(Ga)、及び亜鉛(Zn)を含む非晶質酸化物を用いたトランジスタが開示されている(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−165528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、酸化物半導体はデバイス作製工程において、電子供与体となる水素や水分の混入などが生じると、その電気伝導度が変化する恐れがある。このような現象は、酸化物半導体を用いたトランジスタにとって電気的特性の変動要因となる。
【0007】
このような問題に鑑み、酸化物半導体を用いた半導体装置に安定した電気的特性を付与し、高信頼性化することを目的の一とする。
【0008】
信頼性の高い半導体装置を歩留まり良く作製することを目的の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
酸化物半導体膜を有するトップゲート構造のスタガ型トランジスタ(順スタガ型トランジスタともいう)において、酸化物半導体膜と接する第1のゲート絶縁膜をプラズマ化学気相成長法(プラズマCVD法)によりフッ化珪素及び酸素を含む成膜ガスを用いた酸化シリコン膜で形成し、該第1のゲート絶縁膜上に積層する第2のゲート絶縁膜を、プラズマCVD法により水素化珪素及び酸素を含む成膜ガスを用いた酸化シリコン膜で形成する。
【0010】
本明細書で開示する発明の構成の一形態は、絶縁膜と、絶縁膜上にソース電極層及びドレイン電極層と、絶縁膜、ソース電極層及びドレイン電極層上に島状の酸化物半導体膜と、島状の酸化物半導体膜上に島状の酸化物半導体膜と接する島状の第1のゲート絶縁膜と、絶縁膜、ソース電極層、ドレイン電極層、島状の酸化物半導体膜、及び島状の第1のゲート絶縁膜上に絶縁膜、ソース電極層、ドレイン電極層、及び島状の第1のゲート絶縁膜を覆う第2のゲート絶縁膜と、島状の酸化物半導体膜と重畳する第2のゲート絶縁膜上にゲート電極層とを有し、島状の第1のゲート絶縁膜はフッ素を含む酸化シリコン膜であり、第2のゲート絶縁膜は水素を含み、かつ該水素濃度は第1のゲート絶縁膜における水素濃度より高い半導体装置である。
【0011】
本明細書で開示する発明の構成の一形態は、絶縁膜と、絶縁膜上にソース電極層及びドレイン電極層と、絶縁膜、ソース電極層及びドレイン電極層上に島状の酸化物半導体膜と、島状の酸化物半導体膜上に島状の酸化物半導体膜と接する島状の第1のゲート絶縁膜と、絶縁膜、ソース電極層、ドレイン電極層、島状の酸化物半導体膜、及び島状の第1のゲート絶縁膜上に絶縁膜、ソース電極層、ドレイン電極層、及び島状の第1のゲート絶縁膜を覆う第2のゲート絶縁膜と、島状の酸化物半導体膜と重畳する第2のゲート絶縁膜上にゲート電極層とを有し、島状の第1のゲート絶縁膜はフッ素を含む酸化シリコン膜であり、第2のゲート絶縁膜は水素を含み、かつ該水素濃度は第1のゲート絶縁膜における水素濃度より高く、絶縁膜はフッ素を含む酸化シリコン膜である半導体装置である。
【0012】
本明細書で開示する発明の構成の一形態は、絶縁膜を形成し、絶縁膜上にソース電極層及びドレイン電極層を形成し、絶縁膜、ソース電極層及びドレイン電極層を覆う酸化物半導体膜を形成し、酸化物半導体膜上に酸化物半導体膜と接してプラズマ化学気相成長法によりフッ化珪素及び酸素を含む成膜ガスを用いて第1のゲート絶縁膜を形成し、酸化物半導体膜及び第1のゲート絶縁膜を島状の酸化物半導体膜及び島状の第1のゲート絶縁膜に加工し、絶縁膜、ソース電極層、ドレイン電極層、島状の酸化物半導体膜、及び第1のゲート絶縁膜上に絶縁膜、ソース電極層、ドレイン電極層、及び第1のゲート絶縁膜を覆ってプラズマ化学気相成長法により水素化珪素及び酸素を含む成膜ガスを用いて第2のゲート絶縁膜を形成し、酸化物半導体膜と重畳する第2のゲート絶縁膜上にゲート電極層を形成する半導体装置の作製方法である。
【0013】
本明細書で開示する発明の構成の一形態は、プラズマ化学気相成長法によりフッ化珪素及び酸素を含む成膜ガスを用いて絶縁膜を形成し、絶縁膜上にソース電極層及びドレイン電極層を形成し、絶縁膜、ソース電極層及びドレイン電極層を覆う酸化物半導体膜を形成し、酸化物半導体膜上に酸化物半導体膜と接してプラズマ化学気相成長法によりフッ化珪素及び酸素を含む成膜ガスを用いて第1のゲート絶縁膜を形成し、酸化物半導体膜及び第1のゲート絶縁膜を島状の酸化物半導体膜及び島状の第1のゲート絶縁膜に加工し、絶縁膜、ソース電極層、ドレイン電極層、島状の酸化物半導体膜、及び第1のゲート絶縁膜上に絶縁膜、ソース電極層、ドレイン電極層、及び第1のゲート絶縁膜を覆ってプラズマ化学気相成長法により水素化珪素及び酸素を含む成膜ガスを用いて第2のゲート絶縁膜を形成し、酸化物半導体膜と重畳する第2のゲート絶縁膜上にゲート電極層を形成する半導体装置の作製方法である。
【0014】
上記構造において、第1のゲート絶縁膜の膜厚を1nm以上10nm以下程度と薄くし、積層する第2のゲート絶縁膜の膜厚を50nm以上100nm以下程度と厚くすることができる。
【0015】
成膜ガスとしてフッ化珪素及び酸素を用いて形成した第1のゲート絶縁膜では、第1のゲート絶縁膜中に含まれるフッ素濃度より水素濃度の方が低く、例えばフッ素濃度は1×1020 atoms/cm3以上であり、水素濃度は1×1020 atoms/cm3未満である。
【0016】
成膜ガスとして水素化珪素及び酸素を用いて形成した第2のゲート絶縁膜では、第2のゲート絶縁膜中に含まれるフッ素濃度より水素濃度の方が高く、例えばフッ素濃度は1×1020 atoms/cm3未満であり、水素濃度は1×1020 atoms/cm3以上である。
【0017】
上記構成において、フッ化珪素及び一酸化二窒素を含む成膜ガスを用いてプラズマCVD法により酸化物半導体膜と接する絶縁膜及び第1のゲート絶縁膜を形成することができる。また、フッ化珪素及び一酸化二窒素を含む成膜ガスを用いてプラズマCVD法により第2のゲート絶縁膜を形成することができる。
【0018】
プラズマCVD法によりフッ化珪素及び酸素を含む成膜ガスを用いて形成する第1のゲート絶縁膜は、成膜ガスに水素を含まないので、水素濃度を低く抑えた膜とすることができる。また、プラズマCVD法によりフッ化珪素及び酸素を含む成膜ガスを用いて形成すると、第1のゲート絶縁膜を緻密な膜とすることができる。緻密性が高い第1のゲート絶縁膜によって、積層する第2のゲート絶縁膜に含まれる水素が酸化物半導体膜中に侵入するのを防止することができる。
【0019】
一方、ソース電極層、ドレイン電極層、第1のゲート絶縁膜上に接して形成される第2のゲート絶縁膜は、プラズマCVD法により水素化珪素及び酸素を含む成膜ガスを用いて形成するため比較的速い成膜速度で成膜することができるので、第1のゲート絶縁膜より厚膜化が可能であり、生産性に有利である。また、接して形成するソース電極層、ドレイン電極層を腐蝕するフッ素や塩素などを成膜ガスに用いないために、ソース電極層及びドレイン電極層表面をあらすことなく第2のゲート絶縁膜を形成することができる。
【0020】
なお、第1のゲート絶縁膜は、ソース電極層及びドレイン電極層を酸化物半導体膜が覆った状態で酸化物半導体膜上に形成されるため、ソース電極層及びドレイン電極層は、第1のゲート絶縁膜成膜時に用いるフッ化珪素及び酸素を含む成膜ガスに曝されず、腐蝕などの損傷を受けない。
【0021】
従って半導体装置の作製工程において、ソース電極層及びドレイン電極層の腐蝕による形状不良や、積層する第2のゲート絶縁膜の被覆不良などを防止し、信頼性の高い半導体装置を歩留まり良く作製することができる。
【発明の効果】
【0022】
成膜ガスとしてフッ化珪素及び酸素を用いて形成し、水素濃度が低く制御され且つフッ素を含む緻密な酸化シリコン膜を酸化物半導体膜と接して設け、該フッ素を含む緻密な酸化シリコン膜上に、成膜ガスとしてより成膜速度の速い水素化珪素及び酸素を用いて形成した酸化シリコン膜を積層してゲート絶縁膜として用いることで、トランジスタに安定した電気的特性を付与し、高信頼性化することができる。
【0023】
また、成膜ガスとして生産性に有利な水素化珪素及び酸素を用いて形成した酸化シリコン膜を用いることで、歩留まり良く半導体装置を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】半導体装置の一形態を説明する図。
【図2】半導体装置の作製方法の一形態を説明する図。
【図3】半導体装置の一形態を説明する図。
【図4】半導体装置の一形態を説明する図。
【図5】半導体装置の一形態を説明する図。
【図6】半導体装置の一形態を説明する図。
【図7】半導体装置の一形態を説明する図。
【図8】電子機器を示す図。
【図9】電子機器を示す図。
【図10】半導体装置の一形態を説明する図。
【図11】実施例におけるSIMSの測定結果を示す図。
【図12】実施例におけるSIMSの測定結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下では、本明細書に開示する発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本明細書に開示する発明は以下の説明に限定されず、その形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。また、本明細書に開示する発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、第1、第2として付される序数詞は便宜上用いるものであり、工程順又は積層順を示すものではない。また、本明細書において発明を特定するための事項として固有の名称を示すものではない。
【0026】
(実施の形態1)
本実施の形態では、半導体装置及び半導体装置の作製方法の一形態を、図1乃至図3を用いて説明する。本実施の形態では、半導体装置の一例として酸化物半導体膜を有するトランジスタを示す。
【0027】
図1に、半導体装置の例として、トップゲート構造のスタガ型トランジスタ(順スタガ型トランジスタともいう)の断面図及び平面図を示す。図1(A)は平面図であり、図1(B)及び図1(C)は、図1(A)におけるA1−B1断面及びA2−B2断面に係る断面図である。なお、図1(A)においては、第1のゲート絶縁膜402a、第2のゲート絶縁膜402bを省略している。
【0028】
図1(A)、図1(B)、及び図1(C)に示すトランジスタ410は、絶縁表面を有する基板400上に、絶縁膜406、ソース電極層405a、ドレイン電極層405b、酸化物半導体膜403、第1のゲート絶縁膜402a、第2のゲート絶縁膜402b、及びゲート電極層401を含む。
【0029】
なお、トランジスタ410上には、さらに絶縁物が設けられていても良い。また、ソース電極層405aやドレイン電極層405bと配線とを電気的に接続させるために、第2のゲート絶縁膜402bなどには開口が形成されていても良い。また、酸化物半導体膜403の下方、絶縁膜406の下に、さらに、第2のゲート電極を有していても良い。
【0030】
トランジスタ410において、酸化物半導体膜403と接する第1のゲート絶縁膜402aをプラズマCVD法によりフッ化珪素及び酸素を含む成膜ガスを用いた酸化シリコン膜で形成し、第1のゲート絶縁膜402a上に積層する第2のゲート絶縁膜402bを、プラズマCVD法により水素化珪素及び酸素を含む成膜ガスを用いた酸化シリコン膜で形成する。
【0031】
図2(A)乃至図2(F)にトランジスタ410の作製方法の一例を示す。
【0032】
まず、絶縁表面を有する基板400上に下地膜として機能する絶縁膜406を形成する。
【0033】
下地膜となる絶縁膜406は、基板400からの不純物元素の拡散を防止する機能があり、プラズマCVD法又はスパッタリング法等により、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウム、又はこれらの混合材料を用いて単層で又は積層して形成することができる。
【0034】
また、絶縁膜406は酸化物半導体膜403と接するので、プラズマCVD法により成膜ガスに水素を含まない、フッ化珪素及び酸素を含む成膜ガスを用いた酸化シリコン膜で形成してもよい。フッ化珪素としては四フッ化珪素(SiF4)、六フッ化二珪素(Si2F6)などを用いることができる。また、絶縁膜406の成膜ガスに希ガス(ヘリウム、アルゴンなど)を含ませてもよい。
【0035】
プラズマCVD法によりフッ化珪素及び酸素を含む成膜ガスを用いて形成する絶縁膜406は、成膜ガスに水素を含まないので、酸化物半導体膜403へ混入することでトランジスタの特性変動の要因となる水素濃度を低く抑えた膜とすることができる。よって、絶縁膜406は酸化物半導体膜403と接して設けられても、酸化物半導体膜403を水素で汚染することなく、接して設けられることで他の膜より水素等の不純物が酸化物半導体膜403へ混入することを防止することができる。
【0036】
また、μ波(例えば周波数2.45GHz)を用いた高密度プラズマCVDは、緻密で絶縁耐圧の高い高品質な絶縁膜を形成できるので、半導体装置に含まれる絶縁膜の形成に用いると好ましい。
【0037】
絶縁表面を有する基板400に使用することができる基板に大きな制限はないが、少なくとも、後の熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有していることが必要となる。例えば、バリウムホウケイ酸ガラスやアルミノホウケイ酸ガラスなどのガラス基板、セラミック基板、石英基板、サファイア基板などを用いることができる。また、シリコンや炭化シリコンなどの単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウムなどの化合物半導体基板、SOI基板などを適用することもでき、これらの基板上に半導体素子が設けられたものを、基板400として用いてもよい。
【0038】
また、基板400として、可撓性基板を用いてもよい。可撓性基板を用いる場合、可撓性基板上に酸化物半導体膜を含むトランジスタを直接作製してもよいし、他の作製基板に酸化物半導体膜を含むトランジスタを作製し、その後可撓性基板に剥離、転置してもよい。なお、作製基板から可撓性基板に剥離、転置するために、作製基板と酸化物半導体膜を含むトランジスタとの間に剥離層を設けるとよい。
【0039】
次いで、絶縁膜406上に、ソース電極層405a及びドレイン電極層405b(これと同じ層で形成される配線を含む)となる導電膜を形成する。ソース電極層405a、及びドレイン電極層405bに用いる導電膜としては、例えば、Al、Cr、Cu、Ta、Ti、Mo、Wからから選ばれた元素を含む金属膜、または上述した元素を成分とする金属窒化物膜(窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)等を用いることができる。また、Al、Cuなどの金属膜の下側又は上側の一方または双方にTi、Mo、Wなどの高融点金属膜またはそれらの金属窒化物膜(窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)を積層させた構成としても良い。また、ソース電極層、及びドレイン電極層に用いる導電膜としては、導電性の金属酸化物で形成しても良い。導電性の金属酸化物としては酸化インジウム(In2O3)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム酸化スズ合金(In2O3―SnO2、ITOと略記する)、酸化インジウム酸化亜鉛合金(In2O3―ZnO)またはこれらの金属酸化物材料に酸化シリコンを含ませたものを用いることができる。
【0040】
第1のフォトリソグラフィ工程により導電膜上にレジストマスクを形成し、選択的にエッチングを行ってソース電極層405a、ドレイン電極層405bを形成した後、レジストマスクを除去する(図2(A)参照。)。
【0041】
なお、レジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0042】
また、絶縁膜406、ソース電極層405a、ドレイン電極層405b上に形成される酸化物半導体膜に水素、水酸基及び水分がなるべく含まれないようにするために、酸化物半導体膜の成膜の前処理として、スパッタリング装置の予備加熱室で、絶縁膜406が形成された基板400、又はソース電極層405a、及びドレイン電極層405bまでが形成された基板400を予備加熱し、基板400に吸着した水素、水分などの不純物を脱離し排気することが好ましい。なお、予備加熱室に設ける排気手段はクライオポンプが好ましい。なお、この予備加熱の処理は省略することもできる。
【0043】
次いで、絶縁膜406、ソース電極層405a、ドレイン電極層405b上に、膜厚2nm以上200nm以下、好ましくは5nm以上30nm以下の酸化物半導体膜を形成する。
【0044】
酸化物半導体膜に用いる酸化物半導体としては、少なくともIn、Ga、Sn及びZnから選ばれた一種以上の元素を含有する。例えば、四元系金属酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn−O系酸化物半導体や、三元系金属酸化物であるIn−Ga−Zn−O系酸化物半導体、In−Sn−Zn−O系酸化物半導体、In−Al−Zn−O系酸化物半導体、Sn−Ga−Zn−O系酸化物半導体、Al−Ga−Zn−O系酸化物半導体、Sn−Al−Zn−O系酸化物半導体や、二元系金属酸化物であるIn−Zn−O系酸化物半導体、Sn−Zn−O系酸化物半導体、Al−Zn−O系酸化物半導体、Zn−Mg−O系酸化物半導体、Sn−Mg−O系酸化物半導体、In−Mg−O系酸化物半導体や、In−Ga−O系の材料、In−O系酸化物半導体、Sn−O系酸化物半導体、Zn−O系酸化物半導体などを用いることができる。また、上記酸化物半導体にInとGaとSnとZn以外の元素、例えばSiO2を含んでもよい。
【0045】
例えば、In−Ga−Zn−O系酸化物半導体とは、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)を有する酸化物半導体、という意味であり、その組成比は問わない。
【0046】
また、酸化物半導体膜は、化学式InMO3(ZnO)m(m>0)で表記される薄膜を用いることができる。ここで、Mは、Ga、Al、MnおよびCoから選ばれた一または複数の金属元素を示す。例えばMとして、Ga、Ga及びAl、Ga及びMn、またはGa及びCoなどがある。
【0047】
酸化物半導体膜に用いる酸化物半導体としては、インジウムを含む酸化物半導体、インジウム及びガリウムを含む酸化物半導体などを好適に用いることができる。
【0048】
本実施の形態では、酸化物半導体膜としてIn−Ga−Zn−O系酸化物ターゲットを用いてスパッタリング法により成膜する。また、酸化物半導体膜は、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気下、酸素雰囲気下、又は希ガスと酸素の混合雰囲気下においてスパッタリング法により形成することができる。
【0049】
また、酸化物半導体としてIn−Zn−O系の材料を用いる場合、用いるターゲットとしては、原子数比で、In:Zn=50:1〜1:2(モル数比に換算するとIn2O3:ZnO=25:1〜1:4)、好ましくはIn:Zn=20:1〜1:1(モル数比に換算するとIn2O3:ZnO=10:1〜1:2)、さらに好ましくはIn:Zn=15:1〜1.5:1(モル数比に換算するとIn2O3:ZnO=15:2〜3:4)とする。例えば、In−Zn−O系酸化物半導体の形成に用いるターゲットは、原子数比がIn:Zn:O=X:Y:Zのとき、Z>1.5X+Yとする。
【0050】
また、酸化物ターゲットの充填率は90%以上100%以下、好ましくは95%以上99.9%以下である。充填率の高い金属酸化物ターゲットを用いることにより、成膜した酸化物半導体膜は緻密な膜とすることができる。
【0051】
酸化物半導体膜を成膜する際に用いるスパッタリングガスは、水素、水、水酸基又は水素化物などの不純物が除去された高純度ガスを用いることが好ましい。
【0052】
減圧状態に保持された成膜室内に基板を保持し、基板温度を100℃以上600℃以下好ましくは200℃以上400℃以下とする。基板を加熱しながら成膜することにより、成膜した酸化物半導体膜に含まれる不純物濃度を低減することができる。また、スパッタリングによる損傷が軽減される。そして、成膜室内の残留水分を除去しつつ水素及び水分が除去されたスパッタリングガスを導入し、上記ターゲットを用いて基板400上に酸化物半導体膜を成膜する。成膜室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプ、例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ましい。また、排気手段としては、ターボ分子ポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。クライオポンプを用いて排気した成膜室は、例えば、水素原子、水など水素原子を含む化合物(より好ましくは炭素原子を含む化合物も)等が排気されるため、当該成膜室で成膜した酸化物半導体膜に含まれる不純物の濃度を低減できる。
【0053】
成膜条件の一例としては、基板とターゲットの間との距離を100mm、圧力0.6Pa、直流(DC)電源0.5kW、酸素(酸素流量比率100%)雰囲気下の条件が適用される。なお、パルス直流電源を用いると、成膜時に発生する粉状物質(パーティクル、ごみともいう)が軽減でき、膜厚分布も均一となるために好ましい。
【0054】
次いで、酸化物半導体膜に熱処理を行う。この熱処理によって過剰な水素(水や水酸基を含む)を除去(脱水化または脱水素化)し、酸化物半導体膜の構造を整え、エネルギーギャップ中の欠陥準位を低減することができる。熱処理の温度は、250℃以上750℃以下、または400℃以上基板の歪み点未満とする。ここでは、熱処理装置の一つである電気炉に基板を導入し、酸化物半導体膜に対して窒素雰囲気下450℃において1時間の熱処理を行った後、大気に触れることなく、酸化物半導体膜への水や水素の再混入を防ぎ、酸化物半導体膜441を得る(図2(B)参照。)。
【0055】
なお、熱処理装置は電気炉に限られず、抵抗発熱体などの発熱体からの熱伝導または熱輻射によって、被処理物を加熱する装置を用いてもよい。例えば、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置等のRTA(Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置である。GRTA装置は、高温のガスを用いて熱処理を行う装置である。高温のガスには、アルゴンなどの希ガス、または窒素のような、熱処理によって被処理物と反応しない不活性気体が用いられる。
【0056】
例えば、熱処理として、650℃以上700℃以下の高温に加熱した不活性ガス中に基板を移動させて入れ、数分間加熱した後、基板を移動させて高温に加熱した不活性ガス中から出すGRTAを行ってもよい。
【0057】
なお、熱処理においては、窒素、またはヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスに、水、水素などが含まれないことが好ましい。または、熱処理装置に導入する窒素、またはヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスの純度を、6N(99.9999%)以上好ましくは7N(99.99999%)以上(即ち不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。
【0058】
また、熱処理で酸化物半導体膜を加熱した後、同じ炉に高純度の酸素ガス、高純度の一酸化二窒素ガス、又は超乾燥エア(CRDS(キャビティリングダウンレーザー分光法)方式の露点計を用いて測定した場合の水分量が20ppm(露点換算で−55℃)以下、好ましくは1ppm以下、好ましくは10ppb以下の空気)を導入してもよい。酸素ガスまたは一酸化二窒素ガスに、水、水素などが含まれないことが好ましい。または、熱処理装置に導入する酸素ガスまたは一酸化二窒素ガスの純度を、6N以上好ましくは7N以上(即ち、酸素ガスまたは一酸化二窒素ガス中の不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。酸素ガス又は一酸化二窒素ガスの作用により、脱水化または脱水素化処理による不純物の排除工程によって同時に減少してしまった酸化物半導体を構成する主成分材料である酸素を供給することによって、酸化物半導体膜を高純度化及び電気的にi型(真性)化する。
【0059】
また、酸化物半導体膜の熱処理は、島状の酸化物半導体膜に加工した後の酸化物半導体膜に行うこともできる。また、熱処理は、酸化物半導体膜成膜後であれば、島状の酸化物半導体膜上に第1のゲート絶縁膜、及び/又は第2のゲート絶縁膜を積層させた後で行っても良い。
【0060】
脱水化または脱水素化された酸化物半導体膜441に酸素ドープ処理を行ってもよい。酸化物半導体膜441に酸素ドープ処理を行うことにより、酸素を酸化物半導体膜441に供給して、酸化物半導体膜441中、又は酸化物半導体膜441中及び該界面近傍に酸素を含有させることができる。
【0061】
なお、酸素ドープ処理とは、酸素ラジカルまたは酸素原子、酸素イオンを酸化物半導体膜の表面及びバルクへ添加することである。特に、酸素をプラズマ化することにより、上記酸素ラジカルまたは酸素原子、酸素イオンを酸化物半導体膜の表面及びバルク中に添加することを酸素プラズマドープ処理ともいう。なお、酸化物半導体膜が形成される基板にバイアスを印加すると好ましい。
【0062】
本明細書に開示する酸化物半導体膜を有するトランジスタの作製工程において、酸素ドープ処理を行うことによって、積層する絶縁膜の膜中(バルク中)、酸化物半導体膜の膜中(バルク中)、ゲート絶縁膜の膜中(バルク中)、ゲート絶縁膜と酸化物半導体膜の界面、酸化物半導体膜と絶縁膜との界面において、少なくとも1ヶ所以上、該膜の化学量論比をこえる酸素が存在する酸素過剰領域を設けることができる。
【0063】
また、上記酸素過剰領域を、積層する絶縁膜、酸化物半導体膜、及びゲート絶縁膜において2ヶ所以上に設けてもよい。例えば作製工程において、酸素ドープ処理を行うことによって、ゲート絶縁膜と酸化物半導体膜の界面、酸化物半導体膜の膜中(バルク中)、及び酸化物半導体膜と絶縁膜との界面にそれぞれ酸素過剰領域を設けることができる。
【0064】
ドープされる酸素(酸素ラジカル、酸素原子、及び/又は酸素イオン)は、酸素を含むガスを用いてプラズマ発生装置により供給されてもよいし、又はオゾン発生装置により供給されてもよい。より具体的には、例えば、半導体装置の作製工程において用いるエッチング処理を行うための装置や、レジストマスクに対してアッシングを行うための装置などを用いて酸素を発生させ、酸化物半導体膜441を処理することができる。
【0065】
また、酸素ドープ処理を行った酸化物半導体膜441に熱処理(温度150℃以上470℃以下)を行ってもよい。熱処理は、窒素、酸素、超乾燥空気(CRDS(キャビティリングダウンレーザー分光法)方式の露点計を用いて測定した場合の水分量が20ppm(露点換算で−55℃)以下、好ましくは1ppm以下、より好ましくは10ppb以下の空気)、または希ガス(アルゴン、ヘリウムなど)の雰囲気下で行えばよいが、上記窒素、酸素、超乾燥空気、または希ガス等の雰囲気は、水、水素などが含まれず高純度化されていることが好ましい。
【0066】
以上の工程で高純度化し、電気的にi型(真性)化された酸化物半導体膜441を得る。高純度化された酸化物半導体膜441中にはキャリアが極めて少ない(ゼロに近い)。
【0067】
次いで、酸化物半導体膜441上に第1のゲート絶縁膜443を形成する(図2(C)参照。)。第1のゲート絶縁膜443は、プラズマCVD法により水素を含まないフッ化珪素及び酸素を含む成膜ガスを用いた酸化シリコン膜で形成する。フッ化珪素としては四フッ化珪素(SiF4)、六フッ化二珪素(Si2F6)などを用いることができる。また、第1のゲート絶縁膜443の成膜ガスに希ガス(ヘリウム、アルゴンなど)を含ませてもよい。
【0068】
プラズマCVD法によりフッ化珪素及び酸素を含む成膜ガスを用いて形成する第1のゲート絶縁膜443は、酸化物半導体膜403へ混入することでトランジスタの特性変動の要因となる水素を成膜ガスに含まないので、水素濃度を低く抑えた膜とすることができる。よって、第1のゲート絶縁膜443は酸化物半導体膜403と接して設けられても、酸化物半導体膜403を水素で汚染することなく、接して設けられることで他の膜より水素等の不純物が酸化物半導体膜403へ混入することを防止することができる。
【0069】
本実施の形態では、第1のゲート絶縁膜443を、プラズマCVD法により四フッ化珪素(SiF4)、一酸化二窒素(N2O)及びアルゴン(Ar)を含む成膜ガスを用いて形成する。例えば、第1のゲート絶縁膜443の成膜条件としては、成膜ガスとしては四フッ化珪素(SiF4)、一酸化二窒素(N2O)、及びアルゴン(Ar)(SiF4:N2O:Ar=6sccm:1000sccm:1000sccm)を用い、チャンバー内の圧力は133Pa、電力は800W、電源周波数は60MHz、基板(シリコンウエハ)の温度は400℃とすればよい。
【0070】
よって、第1のゲート絶縁膜443はフッ素を含む酸化シリコン膜となる。成膜ガスとしてフッ化珪素及び酸素を用いて形成した第1のゲート絶縁膜443では、フッ素濃度より水素濃度の方が低く、好ましくはフッ素濃度は1×1020 atoms/cm3以上であり、水素濃度は1×1020 atoms/cm3未満である。第1のゲート絶縁膜443の膜厚は1nm以上10nm以下程度とすればよい。
【0071】
なお、第1のゲート絶縁膜443は、ソース電極層405a及びドレイン電極層405bを酸化物半導体膜441が覆った状態で酸化物半導体膜441上に形成されるため、ソース電極層405a及びドレイン電極層405bは、第1のゲート絶縁膜443成膜時に用いるフッ化珪素及び酸素を含む成膜ガスに曝されず、腐蝕などの損傷を受けない。
【0072】
次いで、酸化物半導体膜441及び第1のゲート絶縁膜443を第2のフォトリソグラフィ工程により島状の酸化物半導体膜403、及び島状の第1のゲート絶縁膜402aに加工する(図2(D)参照。)。また、島状の酸化物半導体膜441、及び島状の第1のゲート絶縁膜402aを形成するためのレジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0073】
なお、ここでの酸化物半導体膜のエッチングは、ドライエッチングでもウェットエッチングでもよく、両方を用いてもよい。例えば、第1のゲート絶縁膜443をドライエッチングにより加工し、第1のゲート絶縁膜402aをマスクとして酸化物半導体膜441をウェットエッチングによって加工してもよい。第1のゲート絶縁膜443のエッチングガスとしては、塩素を含むガス(塩素系ガス、例えば塩素(Cl2)、三塩化硼素(BCl3)、四塩化珪素(SiCl4)、四塩化炭素(CCl4)など)、または、フッ素を含むガス(フッ素系ガス、例えば四フッ化炭素(CF4)、六フッ化硫黄(SF6)、三フッ化窒素(NF3)、トリフルオロメタン(CHF3)など)を用いることができる。さらに上記ガスに酸素や希ガス(例えばArなど)を添加したエッチングガスを用いてもよい。酸化物半導体膜のウェットエッチングに用いるエッチング液としては、燐酸と酢酸と硝酸を混ぜた溶液などを用いることができる。また、ITO07N(関東化学社製)を用いてもよい。
【0074】
酸化物半導体膜441及び第1のゲート絶縁膜443のエッチング加工を同じマスクで行うと、島状の酸化物半導体膜403、及び島状の第1のゲート絶縁膜402aを同形状に加工することができ、図2(D)のように端部を一致させることができる。
【0075】
次に、絶縁膜406、ソース電極層405a、ドレイン電極層405b、酸化物半導体膜403、及び第1のゲート絶縁膜402a上に第2のゲート絶縁膜402bを形成する(図2(E)参照。)。第2のゲート絶縁膜402bは、プラズマCVD法により水素化珪素及び酸素を含む成膜ガスを用いた酸化シリコン膜で形成する。水素化珪素としては四水素化珪素(モノシラン:SiH4)、六水素化珪素(ジシラン:Si2H6)、八水素化珪素(トリシラン:Si3H8)などを用いることができる。また、第2のゲート絶縁膜402bの成膜ガスに希ガス(ヘリウム、アルゴンなど)を含ませてもよい。
【0076】
本実施の形態では、第2のゲート絶縁膜402bを、プラズマCVD法により水素化珪素(SiH4)及び一酸化二窒素(N2O)を含む成膜ガスを用いて形成する。例えば、第2のゲート絶縁膜402bの成膜条件としては、成膜ガスとしては四水素化珪素(SiH4)及び一酸化二窒素(N2O)(SiH4:N2O=4sccm:800sccm)を用い、チャンバー内の圧力は40Pa、電力は150W、電源周波数は60MHz、基板(シリコンウエハ)の温度は400℃とすればよい。
【0077】
よって、第2のゲート絶縁膜402bは第1のゲート絶縁膜402aと比較してより高濃度の水素を含む酸化シリコン膜となる。成膜ガスとして水素化珪素及び酸素を用いて形成した第2のゲート絶縁膜402bでは、フッ素濃度より水素濃度の方が高く、好ましくはフッ素濃度は1×1020 atoms/cm3未満であり、水素濃度は1×1020 atoms/cm3以上である。第2のゲート絶縁膜402bの膜厚は50nm以上100nm以下程度とすればよい。
【0078】
プラズマCVD法によりフッ化珪素及び酸素を含む成膜ガスを用いて形成すると、第1のゲート絶縁膜402aを緻密な膜とすることができる。緻密性が高い第1のゲート絶縁膜402aによって、積層する第2のゲート絶縁膜402bに含まれる水素が酸化物半導体膜中に侵入するのを防止することができる。
【0079】
ソース電極層405a、ドレイン電極層405b、第1のゲート絶縁膜402a上に接して形成される第2のゲート絶縁膜402bは、プラズマCVD法により水素化珪素及び酸素を含む成膜ガスを用いて形成するため比較的速い成膜速度で成膜することができるので、第1のゲート絶縁膜402aより厚膜化が可能であり、生産性に有利である。また、接して形成するソース電極層405a、ドレイン電極層405bを腐蝕するフッ素や塩素などを成膜ガスに用いないために、ソース電極層405a、ドレイン電極層405b表面をあらすことなく第2のゲート絶縁膜402bを形成することができる。
【0080】
従って半導体装置の作製工程において、ソース電極層405a、ドレイン電極層405bの腐蝕による形状不良や、積層する第2のゲート絶縁膜402bの被覆不良などを防止し、信頼性の高い半導体装置を歩留まり良く作製することができる。
【0081】
第2のゲート絶縁膜402b上に導電膜を形成した後、第3のフォトリソグラフィ工程によりゲート電極層401を形成する。
【0082】
ゲート電極層401は、プラズマCVD法又はスパッタリング法等により、モリブデン、チタン、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジウム等の金属材料又はこれらを主成分とする合金材料を用いて、単層で又は積層して形成することができる。
【0083】
以上の工程でトランジスタ410が形成される(図2(F)参照。)。トランジスタ410は、トランジスタの特性変動の要因となる水素、水分、水酸基又は水素化物(水素化合物ともいう)などの不純物を酸化物半導体膜より意図的に排除し、かつ酸素を供給されることで高純度化された酸化物半導体膜403を含むトランジスタであり、酸化物半導体膜403に接する第1のゲート絶縁膜402aの水素濃度は低く制御されている。よって、トランジスタ410は、電気的特性変動が抑制されており、電気的に安定である。
【0084】
また、図3(A)のように絶縁膜406を第1の絶縁膜406a、第2の絶縁膜406bと積層構造とし、酸化物半導体膜403と接する第2の絶縁膜406bを第1のゲート絶縁膜402aと同様に成膜ガスに水素を含まない、プラズマCVD法によりフッ化珪素及び酸素を含む成膜ガスを用いた酸化シリコン膜で形成してもよい。この場合、第1の絶縁膜406aとして窒化シリコン膜や窒化酸化シリコン膜などの緻密な窒化膜を用いて、基板400からの不純物の混入を防止する構成としてもよい。
【0085】
また、図3(B)のようにゲート電極層401上にトランジスタ410を覆う保護膜として絶縁膜407を設けてもよい。
【0086】
絶縁膜407は、プラズマCVD法又はスパッタリング法等により、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウム、又はこれらの混合材料を用いて単層で又は積層して形成することができる。
【0087】
上述の絶縁膜407の形成後には、熱処理を行ってもよい。熱処理の温度は、250℃以上700℃以下、好ましくは450℃以上600℃以下、または基板の歪み点未満とする。
【0088】
熱処理は、窒素、酸素、超乾燥空気(CRDS(キャビティリングダウンレーザー分光法)方式の露点計を用いて測定した場合の水分量が20ppm(露点換算で−55℃)以下、好ましくは1ppm以下、より好ましくは10ppb以下の空気)、または希ガス(アルゴン、ヘリウムなど)の雰囲気下で行えばよいが、上記窒素、酸素、超乾燥空気、または希ガス等の雰囲気には、水、水素などが含まれないことが好ましい。また、熱処理装置に導入する窒素、酸素、または希ガスの純度は、6N(99.9999%)以上(即ち不純物濃度を1ppm以下)とするのが好ましく、7N(99.99999%)以上(即ち不純物濃度を0.1ppm以下)とすると、より好ましい。
【0089】
本実施の形態を用いて作製した、高純度化された酸化物半導体膜403を用いたトランジスタ410は、オフ状態における電流値(オフ電流値)を低くすることができる。
【0090】
また、酸化物半導体膜403を用いたトランジスタ410は、比較的高い電界効果移動度が得られるため、高速駆動が可能である。よって、表示機能を有する半導体装置の画素部に上記トランジスタを用いることで、高画質な画像を提供することができる。また、高純度化された酸化物半導体膜を含むトランジスタによって、同一基板上に駆動回路部または画素部を作り分けて作製することができるため、半導体装置の部品点数を削減することができる。
【0091】
以上のように、安定した電気的特性を有する酸化物半導体を用いた半導体装置を提供することができる。よって、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0092】
(実施の形態2)
実施の形態1で一例を示したトランジスタを用いて表示機能を有する半導体装置(表示装置ともいう)を作製することができる。また、トランジスタを含む駆動回路の一部または全体を、画素部と同じ基板上に一体形成し、システムオンパネルを形成することができる。
【0093】
図10(A)において、第1の基板4001上に設けられた画素部4002を囲むようにして、シール材4005が設けられ、第2の基板4006によって封止されている。図10(A)においては、第1の基板4001上のシール材4005によって囲まれている領域とは異なる領域に、別途用意された基板上に単結晶半導体膜又は多結晶半導体膜で形成された走査線駆動回路4004、信号線駆動回路4003が実装されている。また別途形成された信号線駆動回路4003と、走査線駆動回路4004または画素部4002に与えられる各種信号及び電位は、FPC(Flexible printed circuit)4018a、4018bから供給されている。
【0094】
図10(B)及び図10(C)において、第1の基板4001上に設けられた画素部4002と、走査線駆動回路4004とを囲むようにして、シール材4005が設けられている。また画素部4002と、走査線駆動回路4004の上に第2の基板4006が設けられている。よって画素部4002と、走査線駆動回路4004とは、第1の基板4001とシール材4005と第2の基板4006とによって、表示素子と共に封止されている。図10(B)及び図10(C)においては、第1の基板4001上のシール材4005によって囲まれている領域とは異なる領域に、別途用意された基板上に単結晶半導体膜又は多結晶半導体膜で形成された信号線駆動回路4003が実装されている。図10(B)及び図10(C)においては、別途形成された信号線駆動回路4003と、走査線駆動回路4004または画素部4002に与えられる各種信号及び電位は、FPC4018から供給されている。
【0095】
また図10(B)及び図10(C)においては、信号線駆動回路4003を別途形成し、第1の基板4001に実装している例を示しているが、この構成に限定されない。走査線駆動回路を別途形成して実装しても良いし、信号線駆動回路の一部または走査線駆動回路の一部のみを別途形成して実装しても良い。
【0096】
なお、別途形成した駆動回路の接続方法は、特に限定されるものではなく、COG(Chip On Glass)方法、ワイヤボンディング方法、或いはTAB(Tape Automated Bonding)方法などを用いることができる。図10(A)は、COG方法により信号線駆動回路4003、走査線駆動回路4004を実装する例であり、図10(B)は、COG方法により信号線駆動回路4003を実装する例であり、図10(C)は、TAB方法により信号線駆動回路4003を実装する例である。
【0097】
また、表示装置は、表示素子が封止された状態にあるパネルと、該パネルにコントローラを含むIC等を実装した状態にあるモジュールとを含む。
【0098】
なお、本明細書中における表示装置とは、画像表示デバイス、表示デバイス、もしくは光源(照明装置含む)を指す。また、コネクター、例えばFPCもしくはTABテープもしくはTCPが取り付けられたモジュール、TABテープやTCPの先にプリント配線板が設けられたモジュール、または表示素子にCOG方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て表示装置に含むものとする。
【0099】
また第1の基板上に設けられた画素部及び走査線駆動回路は、トランジスタを複数有しており、実施の形態1で一例を示したトランジスタを適用することができる。
【0100】
表示装置に設けられる表示素子としては液晶素子(液晶表示素子ともいう)、発光素子(発光表示素子ともいう)、を用いることができる。発光素子は、電流または電圧によって輝度が制御される素子をその範疇に含んでおり、具体的には無機EL(Electro Luminescence)、有機EL等が含まれる。また、電子インクなど、電気的作用によりコントラストが変化する表示媒体も適用することができる。
【0101】
半導体装置の一形態について、図4乃至図6を用いて説明する。図4乃至図6は、図10(B)のM−Nにおける断面図に相当する。
【0102】
図4乃至図6で示すように、半導体装置は接続端子電極4015及び端子電極4016を有しており、接続端子電極4015及び端子電極4016はFPC4018が有する端子と異方性導電膜4019を介して、電気的に接続されている。
【0103】
接続端子電極4015は、第1の電極層4030と同じ導電膜から形成され、端子電極4016は、トランジスタ4010、トランジスタ4011のソース電極及びドレイン電極と同じ導電膜で形成されている。
【0104】
また第1の基板4001上に設けられた画素部4002と、走査線駆動回路4004は、トランジスタを複数有しており、図4乃至図6では、画素部4002に含まれるトランジスタ4010と、走査線駆動回路4004に含まれるトランジスタ4011とを例示している。図4では、トランジスタ4010、トランジスタ4011上には絶縁膜4020が設けられ、図5及び図6ではさらに、絶縁層4021が設けられている。なお、絶縁膜4023は下地膜として機能する絶縁膜である。
【0105】
本実施の形態では、トランジスタ4010、トランジスタ4011として、実施の形態1で示したトランジスタを適用することができる。トランジスタ4010、トランジスタ4011は、電気的特性変動が抑制されており、電気的に安定である。よって、図4乃至図6で示す本実施の形態の半導体装置として信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0106】
画素部4002に設けられたトランジスタ4010は表示素子と電気的に接続し、表示パネルを構成する。表示素子は表示を行うことがでれば特に限定されず、様々な表示素子を用いることができる。
【0107】
図4に表示素子として液晶素子を用いた液晶表示装置の例を示す。図4において、表示素子である液晶素子4013は、第1の電極層4030、第2の電極層4031、及び液晶層4008を含む。なお、液晶層4008を挟持するように配向膜として機能する絶縁膜4032、絶縁膜4033が設けられている。第2の電極層4031は第2の基板4006側に設けられ、第1の電極層4030と第2の電極層4031とは液晶層4008を介して積層する構成となっている。
【0108】
またスペーサ4035は絶縁膜を選択的にエッチングすることで得られる柱状のスペーサであり、液晶層4008の膜厚(セルギャップ)を制御するために設けられている。なおスペーサの形状は、柱状に限定されるものではなく、例えば、球状のスペーサを用いていても良い。
【0109】
表示素子として、液晶素子を用いる場合、サーモトロピック液晶、低分子液晶、高分子液晶、高分子分散型液晶、強誘電性液晶、反強誘電性液晶等を用いることができる。これらの液晶材料は、条件により、コレステリック相、スメクチック相、キュービック相、カイラルネマチック相、等方相等を示す。
【0110】
また、配向膜を用いないブルー相を示す液晶を用いてもよい。ブルー相は液晶相の一つであり、コレステリック液晶を昇温していくと、コレステリック相から等方相へ転移する直前に発現する相である。ブルー相は狭い温度範囲でしか発現しないため、温度範囲を改善するために5重量%以上のカイラル剤を混合させた液晶組成物を用いて液晶層に用いる。ブルー相を示す液晶とカイラル剤とを含む液晶組成物は、応答速度が1msec以下と短く、光学的等方性であるため配向処理が不要であり、視野角依存性が小さい。また配向膜を設けなくてもよいのでラビング処理も不要となるため、ラビング処理によって引き起こされる静電破壊を防止することができ、作製工程中の液晶表示装置の不良や破損を軽減することができる。よって液晶表示装置の生産性を向上させることが可能となる。
【0111】
また、液晶材料の固有抵抗率は、1×109Ω・cm以上であり、好ましくは1×1011Ω・cm以上であり、さらに好ましくは1×1012Ω・cm以上である。なお、本明細書における固有抵抗率の値は、20℃で測定した値とする。
【0112】
液晶表示装置に設けられる保持容量の大きさは、画素部に配置されるトランジスタのリーク電流等を考慮して、所定の期間電荷を保持できるように設定される。高純度の酸化物半導体膜を有するトランジスタを用いることにより、各画素における液晶容量に対して1/3以下、好ましくは1/5以下の容量の大きさを有する保持容量を設ければ充分である。
【0113】
本実施の形態で用いる高純度化された酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、オフ状態における電流値(オフ電流値)を低くすることができる。よって、画像信号等の電気信号の保持時間を長くすることができ、電源オン状態では書き込み間隔も長く設定できる。よって、リフレッシュ動作の頻度を少なくすることができるため、消費電力を抑制する効果を奏する。
【0114】
また、本実施の形態で用いる高純度化された酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、比較的高い電界効果移動度が得られるため、高速駆動が可能である。よって、液晶表示装置の画素部に上記トランジスタを用いることで、高画質な画像を提供することができる。また、上記トランジスタは、同一基板上に駆動回路部または画素部に作り分けて作製することができるため、液晶表示装置の部品点数を削減することができる。
【0115】
液晶表示装置には、TN(Twisted Nematic)モード、IPS(In−Plane−Switching)モード、FFS(Fringe Field Switching)モード、ASM(Axially Symmetric aligned Micro−cell)モード、OCB(Optical Compensated Birefringence)モード、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)モード、AFLC(AntiFerroelectric Liquid Crystal)モードなどを用いることができる。
【0116】
また、ノーマリーブラック型の液晶表示装置、例えば垂直配向(VA)モードを採用した透過型の液晶表示装置としてもよい。ここで、垂直配向モードとは、液晶表示パネルの液晶分子の配列を制御する方式の一種であり、電圧が印加されていないときにパネル面に対して液晶分子が垂直方向を向く方式である。垂直配向モードとしては、いくつか挙げられるが、例えば、MVA(Multi−Domain Vertical Alignment)モード、PVA(Patterned Vertical Alignment)モード、ASV(Advanced Super View)モードなどを用いることができる。また、画素(ピクセル)をいくつかの領域(サブピクセル)に分け、それぞれ別の方向に分子を倒すよう工夫されているマルチドメイン化あるいはマルチドメイン設計といわれる方法を用いることができる。
【0117】
また、表示装置において、ブラックマトリクス(遮光層)、偏光部材、位相差部材、反射防止部材などの光学部材(光学基板)などは適宜設ける。例えば、偏光基板及び位相差基板による円偏光を用いてもよい。また、光源としてバックライト、サイドライトなどを用いてもよい。
【0118】
また、バックライトとして複数の発光ダイオード(LED)を用いて、時間分割表示方式(フィールドシーケンシャル駆動方式)を行うことも可能である。フィールドシーケンシャル駆動方式を適用することで、カラーフィルタを用いることなく、カラー表示を行うことができる。
【0119】
また、画素部における表示方式は、プログレッシブ方式やインターレース方式等を用いることができる。また、カラー表示する際に画素で制御する色要素としては、RGB(Rは赤、Gは緑、Bは青を表す)の三色に限定されない。例えば、RGBW(Wは白を表す)、又はRGBに、イエロー、シアン、マゼンタ等を一色以上追加したものがある。なお、色要素のドット毎にその表示領域の大きさが異なっていてもよい。ただし、本発明はカラー表示の表示装置に限定されるものではなく、モノクロ表示の表示装置に適用することもできる。
【0120】
また、表示装置に含まれる表示素子として、エレクトロルミネッセンスを利用する発光素子を適用することができる。エレクトロルミネッセンスを利用する発光素子は、発光材料が有機化合物であるか、無機化合物であるかによって区別され、一般的に、前者は有機EL素子、後者は無機EL素子と呼ばれている。
【0121】
有機EL素子は、発光素子に電圧を印加することにより、一対の電極から電子および正孔がそれぞれ発光性の有機化合物を含む層に注入され、電流が流れる。そして、それらキャリア(電子および正孔)が再結合することにより、発光性の有機化合物が励起状態を形成し、その励起状態が基底状態に戻る際に発光する。このようなメカニズムから、このような発光素子は、電流励起型の発光素子と呼ばれる。
【0122】
無機EL素子は、その素子構成により、分散型無機EL素子と薄膜型無機EL素子とに分類される。分散型無機EL素子は、発光材料の粒子をバインダ中に分散させた発光層を有するものであり、発光メカニズムはドナー準位とアクセプター準位を利用するドナー−アクセプター再結合型発光である。薄膜型無機EL素子は、発光層を誘電体層で挟み込み、さらにそれを電極で挟んだ構造であり、発光メカニズムは金属イオンの内殻電子遷移を利用する局在型発光である。なお、ここでは、発光素子として有機EL素子を用いて説明する。
【0123】
発光素子は発光を取り出すために少なくとも一対の電極の一方が透明であればよい。そして、基板上にトランジスタ及び発光素子を形成し、基板とは逆側の面から発光を取り出す上面射出や、基板側の面から発光を取り出す下面射出や、基板側及び基板とは反対側の面から発光を取り出す両面射出構造の発光素子があり、どの射出構造の発光素子も適用することができる。
【0124】
図5に表示素子として発光素子を用いた発光装置の例を示す。表示素子である発光素子4513は、画素部4002に設けられたトランジスタ4010と電気的に接続している。なお発光素子4513の構成は、第1の電極層4030、電界発光層4511、第2の電極層4031の積層構造であるが、示した構成に限定されない。発光素子4513から取り出す光の方向などに合わせて、発光素子4513の構成は適宜変えることができる。
【0125】
隔壁4510は、有機絶縁材料、又は無機絶縁材料を用いて形成する。特に感光性の樹脂材料を用い、第1の電極層4030上に開口部を形成し、その開口部の側壁が連続した曲率を持って形成される傾斜面となるように形成することが好ましい。
【0126】
電界発光層4511は、単数の層で構成されていても、複数の層が積層されるように構成されていてもどちらでも良い。
【0127】
発光素子4513に酸素、水素、水分、二酸化炭素等が侵入しないように、第2の電極層4031及び隔壁4510上に保護膜を形成してもよい。保護膜としては、窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、DLC膜等を形成することができる。また、第1の基板4001、第2の基板4006、及びシール材4005によって封止された空間には充填材4514が設けられ密封されている。このように外気に曝されないように気密性が高く、脱ガスの少ない保護フィルム(貼り合わせフィルム、紫外線硬化樹脂フィルム等)やカバー材でパッケージング(封入)することが好ましい。
【0128】
充填材4514としては窒素やアルゴンなどの不活性な気体の他に、紫外線硬化樹脂または熱硬化樹脂を用いることができ、PVC(ポリビニルクロライド)、アクリル、ポリイミド、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、PVB(ポリビニルブチラル)またはEVA(エチレンビニルアセテート)を用いることができる。例えば充填材として窒素を用いればよい。
【0129】
また、必要であれば、発光素子の射出面に偏光板、又は円偏光板(楕円偏光板を含む)、位相差板(λ/4板、λ/2板)、カラーフィルタなどの光学フィルムを適宜設けてもよい。また、偏光板又は円偏光板に反射防止膜を設けてもよい。例えば、表面の凹凸により反射光を拡散し、映り込みを低減できるアンチグレア処理を施すことができる。
【0130】
また、表示装置として、電子インクを駆動させる電子ペーパーを提供することも可能である。電子ペーパーは、電気泳動表示装置(電気泳動ディスプレイ)とも呼ばれており、紙と同じ読みやすさ、他の表示装置に比べ低消費電力、薄くて軽い形状とすることが可能という利点を有している。
【0131】
電気泳動表示装置は、様々な形態が考えられ得るが、プラスの電荷を有する第1の粒子と、マイナスの電荷を有する第2の粒子とを含むマイクロカプセルが溶媒または溶質に複数分散されたものであり、マイクロカプセルに電界を印加することによって、マイクロカプセル中の粒子を互いに反対方向に移動させて一方側に集合した粒子の色のみを表示するものである。なお、第1の粒子または第2の粒子は染料を含み、電界がない場合において移動しないものである。また、第1の粒子の色と第2の粒子の色は異なるもの(無色を含む)とする。
【0132】
このように、電気泳動表示装置は、誘電定数の高い物質が高い電界領域に移動する、いわゆる誘電泳動的効果を利用したディスプレイである。
【0133】
上記マイクロカプセルを溶媒中に分散させたものが電子インクと呼ばれるものであり、この電子インクはガラス、プラスチック、布、紙などの表面に印刷することができる。また、カラーフィルタや色素を有する粒子を用いることによってカラー表示も可能である。
【0134】
なお、マイクロカプセル中の第1の粒子および第2の粒子は、導電体材料、絶縁体材料、半導体材料、磁性材料、液晶材料、強誘電性材料、エレクトロルミネセント材料、エレクトロクロミック材料、磁気泳動材料から選ばれた一種の材料、またはこれらの複合材料を用いればよい。
【0135】
また、電子ペーパーとして、ツイストボール表示方式を用いる表示装置も適用することができる。ツイストボール表示方式とは、白と黒に塗り分けられた球形粒子を表示素子に用いる電極層である第1の電極層及び第2の電極層の間に配置し、第1の電極層及び第2の電極層に電位差を生じさせての球形粒子の向きを制御することにより、表示を行う方法である。
【0136】
図6に、半導体装置の一形態としてアクティブマトリクス型の電子ペーパーを示す。図6の電子ペーパーは、ツイストボール表示方式を用いた表示装置の例である。ツイストボール表示方式とは、白と黒に塗り分けられた球形粒子を表示素子に用いる電極層間に配置し、電極層間に電位差を生じさせての球形粒子の向きを制御することにより、表示を行う方法である。
【0137】
トランジスタ4010と接続する第1の電極層4030と、第2の基板4006に設けられた第2の電極層4031との間には黒色領域4615a及び白色領域4615bを有し、周りに液体で満たされているキャビティ4612を含む球形粒子4613が設けられており、球形粒子4613の周囲は樹脂等の充填材4614で充填されている。第2の電極層4031が共通電極(対向電極)に相当する。第2の電極層4031は、共通電位線と電気的に接続される。
【0138】
なお、図4乃至図6において、第1の基板4001、第2の基板4006としては、ガラス基板の他、可撓性を有する基板も用いることができ、例えば透光性を有するプラスチック基板などを用いることができる。プラスチックとしては、FRP(Fiberglass−Reinforced Plastics)板、PVF(ポリビニルフルオライド)フィルム、ポリエステルフィルムまたはアクリル樹脂フィルムを用いることができる。また、アルミニウムホイルをPVFフィルムやポリエステルフィルムで挟んだ構造のシートを用いることもできる。
【0139】
絶縁膜4023は、酸化シリコン、酸窒化シリコン、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化ガリウム等の無機絶縁材料を含む材料を用いて形成することができる。
【0140】
また、絶縁膜4023を第1のゲート絶縁膜4024aと同様に、プラズマCVD法により水素を含まないフッ化珪素及び酸素を含む成膜ガスを用いた酸化シリコン膜で形成してもよい。プラズマCVD法によりフッ化珪素及び酸素を含む成膜ガスを用いて形成される絶縁膜4023は、成膜ガスに水素を含まないので、酸化物半導体膜へ混入することでトランジスタの特性変動の要因となる水素濃度を低く抑えた膜とすることができる。
【0141】
絶縁膜4020は、酸化シリコン、酸窒化シリコン、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化ガリウム、また窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、又は窒化酸化アルミニウム等の無機絶縁材料を含む材料を用いて形成することができる。絶縁膜4020は単層、又は積層で形成すればよく、トランジスタの保護膜として機能する。絶縁膜4020の作製方法に特に限定はなく、例えば、プラズマCVD法やスパッタリング法などの成膜方法を用いて作製することができる。
【0142】
第1のゲート絶縁膜4024aは、プラズマCVD法により水素を含まないフッ化珪素及び酸素を含む成膜ガスを用いた酸化シリコン膜で形成する。フッ化珪素としては四フッ化珪素(SiF4)、六フッ化二珪素(Si2F6)などを用いることができる。また、第1のゲート絶縁膜402aの成膜ガスに希ガス(ヘリウム、アルゴンなど)を含ませてもよい。
【0143】
プラズマCVD法によりフッ化珪素及び酸素を含む成膜ガスを用いて形成する第1のゲート絶縁膜4024aは、成膜ガスに水素を含まないので、酸化物半導体膜へ混入することでトランジスタの特性変動の要因となる水素濃度を低く抑えた膜とすることができる。よって、第1のゲート絶縁膜4024aは酸化物半導体膜と接して設けられても、酸化物半導体膜を水素で汚染することなく、接して設けられることで他の膜より水素等の不純物が酸化物半導体膜へ混入することを防止することができる。
【0144】
第1のゲート絶縁膜4024aを、プラズマCVD法により四フッ化珪素(SiF4)、一酸化二窒素(N2O)及びアルゴン(Ar)を含む成膜ガスを用いて形成する。例えば、第1のゲート絶縁膜4024aの成膜条件としては、成膜ガスとしては四フッ化珪素(SiF4)、一酸化二窒素(N2O)、及びアルゴン(Ar)(SiF4:N2O:Ar=6sccm:1000sccm:1000sccm)を用い、チャンバー内の圧力は133Pa、電力は800W、電源周波数は60MHz、基板(シリコンウエハ)の温度は400℃とすればよい。
【0145】
よって、第1のゲート絶縁膜4024aはフッ素を含む酸化シリコン膜となる。成膜ガスとしてフッ化珪素及び酸素を用いて形成した第1のゲート絶縁膜4024aでは、フッ素濃度より水素濃度の方が低く、好ましくはフッ素濃度は1×1020 atoms/cm3以上であり、水素濃度は1×1020 atoms/cm3未満である。第1のゲート絶縁膜4024aの膜厚は1nm以上10nm以下程度とすればよい。
【0146】
なお、実施の形態1で示したように、第1のゲート絶縁膜4024aは、ソース電極層及びドレイン電極層を酸化物半導体膜が覆った状態で酸化物半導体膜上に形成されるため、ソース電極層及びドレイン電極層は、第1のゲート絶縁膜4024a成膜時に用いるフッ化珪素及び酸素を含む成膜ガスに曝されず、腐蝕などの損傷を受けない。
【0147】
第2のゲート絶縁膜4024bは、プラズマCVD法により水素化珪素及び酸素を含む成膜ガスを用いた酸化シリコン膜で形成する。水素化珪素としては四水素化珪素(モノシラン:SiH4)、六水素化珪素(ジシラン:Si2H6)、八水素化珪素(トリシラン:Si3H8)などを用いることができる。また、第2のゲート絶縁膜4024bの成膜ガスに希ガス(ヘリウム、アルゴンなど)を含ませてもよい。
【0148】
本実施の形態では、第2のゲート絶縁膜4024bを、プラズマCVD法により水素化珪素(SiH4)、一酸化二窒素(N2O)を含む成膜ガスを用いて形成する。例えば、第2のゲート絶縁膜4024bの成膜条件としては、成膜ガスとしては四水素化珪素(SiH4)及び一酸化二窒素(N2O)(SiH4:N2O=4sccm:800sccm)を用い、チャンバー内の圧力は40Pa、電力は150W、電源周波数は60MHz、基板(シリコンウエハ)の温度は400℃とすればよい。
【0149】
よって、第2のゲート絶縁膜4024bは、第1のゲート絶縁膜4024aと比較してより高濃度の水素を含む酸化シリコン膜となる。成膜ガスとして水素化珪素及び酸素を用いて形成した第2のゲート絶縁膜4024bでは、フッ素濃度より水素濃度の方が高く、好ましくはフッ素濃度は1×1020 atoms/cm3未満であり、水素濃度は1×1020atoms/cm3以上である。第2のゲート絶縁膜4024bの膜厚は50nm以上100nm以下程度とすればよい。
【0150】
プラズマCVD法によりフッ化珪素及び酸素を含む成膜ガスを用いて形成すると、第1のゲート絶縁膜4024aを緻密な膜とすることができる。緻密性が高い第1のゲート絶縁膜4024aによって、積層する第2のゲート絶縁膜4024bに含まれる水素が酸化物半導体膜中に侵入するのを防止することができる。
【0151】
ソース電極層、ドレイン電極層、第1のゲート絶縁膜4024a上に接して形成される第2のゲート絶縁膜4024bは、プラズマCVD法により水素化珪素及び酸素を含む成膜ガスを用いて形成するため比較的速い成膜速度で成膜することができるので、第1のゲート絶縁膜4024aより厚膜化が可能であり、生産性に有利である。また、接して形成するソース電極層、ドレイン電極層を腐蝕するフッ素や塩素などを成膜ガスに用いないために、ソース電極層、ドレイン電極層表面をあらすことなく第2のゲート絶縁膜4024bを形成することができる。
【0152】
従ってトランジスタ4010、トランジスタ4011の作製工程において、ソース電極層、ドレイン電極層の腐蝕による形状不良や、積層する第2のゲート絶縁膜4024bの被覆不良などを防止し、信頼性の高い半導体装置を歩留まり良く作製することができる。
【0153】
絶縁層4021は、無機絶縁材料又は有機絶縁材料を用いて形成することができる。なお、アクリル樹脂、ポリイミド、ベンゾシクロブテン系樹脂、ポリアミド、エポキシ樹脂等の、耐熱性を有する有機絶縁材料を用いると、平坦化絶縁膜として好適である。また上記有機絶縁材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)、シロキサン系樹脂、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス)等を用いることができる。なお、これらの材料で形成される絶縁膜を複数積層させることで、絶縁層を形成してもよい。
【0154】
絶縁層4021の形成法は、特に限定されず、その材料に応じて、スパッタリング法、スピンコート法、ディッピング法、スプレー塗布、液滴吐出法(インクジェット法、スクリーン印刷、オフセット印刷等)、ロールコーティング、カーテンコーティング、ナイフコーティング等を用いることができる。
【0155】
表示装置は光源又は表示素子からの光を透過させて表示を行う。よって光が透過する画素部に設けられる基板、絶縁膜、導電膜などの薄膜はすべて可視光の波長領域の光に対して透光性とする。
【0156】
表示素子に電圧を印加する第1の電極層及び第2の電極層(画素電極層、共通電極層、対向電極層などともいう)においては、取り出す光の方向、電極層が設けられる場所、及び電極層のパターン構造によって透光性、反射性を選択すればよい。
【0157】
第1の電極層4030、第2の電極層4031は、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム錫酸化物(以下、ITOと示す。)、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの透光性を有する導電性材料を用いることができる。
【0158】
また、第1の電極層4030、第2の電極層4031はタングステン(W)、モリブデン(Mo)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(Ag)等の金属、又はその合金、若しくはその窒化物から一つ、又は複数種を用いて形成することができる。
【0159】
また、トランジスタは静電気などにより破壊されやすいため、駆動回路保護用の保護回路を設けることが好ましい。保護回路は、非線形素子を用いて構成することが好ましい。
【0160】
以上のように実施の形態1で一例を示したトランジスタを適用することで、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0161】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0162】
(実施の形態3)
実施の形態1で一例を示したトランジスタを用いて、対象物の情報を読み取るイメージセンサ機能を有する半導体装置を作製することができる。
【0163】
図7(A)に、イメージセンサ機能を有する半導体装置の一例を示す。図7(A)はフォトセンサの等価回路であり、図7(B)はフォトセンサの一部を示す断面図である。
【0164】
フォトダイオード602は、一方の電極がフォトダイオードリセット信号線658に、他方の電極がトランジスタ640のゲートに電気的に接続されている。トランジスタ640は、ソース又はドレインの一方がフォトセンサ基準信号線672に、ソース又はドレインの他方がトランジスタ656のソース又はドレインの一方に電気的に接続されている。トランジスタ656は、ゲートがゲート信号線659に、ソース又はドレインの他方がフォトセンサ出力信号線671に電気的に接続されている。
【0165】
なお、本明細書における回路図において、酸化物半導体膜を用いるトランジスタと明確に判明できるように、酸化物半導体膜を用いるトランジスタの記号には「OS」と記載している。図7(A)において、トランジスタ640、トランジスタ656は酸化物半導体膜を用いるトランジスタである。
【0166】
図7(B)は、フォトセンサにおけるフォトダイオード602及びトランジスタ640に示す断面図であり、絶縁表面を有する基板601(TFT基板)上に、センサとして機能するフォトダイオード602及びトランジスタ640が設けられている。フォトダイオード602、トランジスタ640の上には接着層608を用いて基板613が設けられている。
【0167】
トランジスタ640上には絶縁膜631、保護絶縁膜632、第1の層間絶縁層633、第2の層間絶縁層634が設けられている。フォトダイオード602は、第1の層間絶縁層633上に設けられ、第1の層間絶縁層633上に形成した電極層641と、第2の層間絶縁層634上に設けられた電極層642との間に、第1の層間絶縁層633側から順に第1半導体層606a、第2半導体層606b、及び第3半導体層606cを積層した構造を有している。
【0168】
本実施の形態では、トランジスタ640として、実施の形態1で一例を示したトランジスタを適用することができる。トランジスタ640、トランジスタ656は、電気的特性変動が抑制されており、電気的に安定であるため、図7で示す本実施の形態の半導体装置として信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0169】
電極層641は、第2の層間絶縁層634に形成された導電層643と電気的に接続し、電極層642は電極層644を介してゲート電極645と電気的に接続している。ゲート電極645は、トランジスタ640のゲート電極と電気的に接続しており、フォトダイオード602はトランジスタ640と電気的に接続している。
【0170】
ここでは、第1半導体層606aとしてp型の導電型を有する半導体層と、第2半導体層606bとして高抵抗な半導体層(i型半導体層)、第3半導体層606cとしてn型の導電型を有する半導体層を積層するpin型のフォトダイオードを例示している。
【0171】
第1半導体層606aはp型半導体層であり、p型を付与する不純物元素を含むアモルファスシリコン膜により形成することができる。第1半導体層606aの形成には13族の不純物元素(例えばボロン(B))を含む半導体材料ガスを用いて、プラズマCVD法により形成する。半導体材料ガスとしてはシラン(SiH4)を用いればよい。または、Si2H6、SiH2Cl2、SiHCl3、SiCl4、SiF4等を用いてもよい。また、不純物元素を含まないアモルファスシリコン膜を形成した後に、拡散法やイオン注入法を用いて該アモルファスシリコン膜に不純物元素を導入してもよい。イオン注入法等により不純物元素を導入した後に加熱等を行うことで、不純物元素を拡散させるとよい。この場合にアモルファスシリコン膜を形成する方法としては、LPCVD法、気相成長法、又はスパッタリング法等を用いればよい。第1半導体層606aの膜厚は10nm以上50nm以下となるよう形成することが好ましい。
【0172】
第2半導体層606bは、i型半導体層(真性半導体層)であり、アモルファスシリコン膜により形成する。第2半導体層606bの形成には、半導体材料ガスを用いて、アモルファスシリコン膜をプラズマCVD法により形成する。半導体材料ガスとしては、シラン(SiH4)を用いればよい。または、Si2H6、SiH2Cl2、SiHCl3、SiCl4、SiF4等を用いてもよい。第2半導体層606bの形成は、LPCVD法、気相成長法、スパッタリング法等により行っても良い。第2半導体層606bの膜厚は200nm以上1000nm以下となるように形成することが好ましい。
【0173】
第3半導体層606cは、n型半導体層であり、n型を付与する不純物元素を含むアモルファスシリコン膜により形成する。第3半導体層606cの形成には、15族の不純物元素(例えばリン(P))を含む半導体材料ガスを用いて、プラズマCVD法により形成する。半導体材料ガスとしてはシラン(SiH4)を用いればよい。または、Si2H6、SiH2Cl2、SiHCl3、SiCl4、SiF4等を用いてもよい。また、不純物元素を含まないアモルファスシリコン膜を形成した後に、拡散法やイオン注入法を用いて該アモルファスシリコン膜に不純物元素を導入してもよい。イオン注入法等により不純物元素を導入した後に加熱等を行うことで、不純物元素を拡散させるとよい。この場合にアモルファスシリコン膜を形成する方法としては、LPCVD法、気相成長法、又はスパッタリング法等を用いればよい。第3半導体層606cの膜厚は20nm以上200nm以下となるよう形成することが好ましい。
【0174】
また、第1半導体層606a、第2半導体層606b、及び第3半導体層606cは、アモルファス半導体ではなく、多結晶半導体を用いて形成してもよいし、微結晶(セミアモルファス半導体(Semi Amorphous Semiconductor:SAS)を用いて形成してもよい。
【0175】
微結晶半導体は、ギブスの自由エネルギーを考慮すれば非晶質と単結晶の中間的な準安定状態に属するものである。すなわち、自由エネルギー的に安定な第3の状態を有する半導体であって、短距離秩序を持ち格子歪みを有する。柱状または針状結晶が基板表面に対して法線方向に成長している。微結晶半導体の代表例である微結晶シリコンは、そのラマンスペクトルが単結晶シリコンを示す520cm−1よりも低波数側に、シフトしている。即ち、単結晶シリコンを示す520cm−1とアモルファスシリコンを示す480cm−1の間に微結晶シリコンのラマンスペクトルのピークがある。また、ダングリングボンドを終端するため水素またはハロゲンを少なくとも1原子%またはそれ以上含ませている。さらに、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、ネオンなどの希ガス元素を含ませて格子歪みをさらに助長させることで、安定性が増し良好な微結晶半導体膜が得られる。
【0176】
この微結晶半導体膜は、周波数が数十MHz〜数百MHzの高周波プラズマCVD法、または周波数が1GHz以上のマイクロ波プラズマCVD装置により形成することができる。代表的には、SiH4、Si2H6、SiH2Cl2、SiHCl3などの水素化珪素や、SiCl4、SiF4などのハロゲン化珪素を水素で希釈して形成することができる。また、水素化珪素及び水素に加え、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、ネオンから選ばれた一種または複数種の希ガス元素で希釈して微結晶半導体膜を形成することができる。これらのときの水素化珪素に対して水素の流量比を5倍以上200倍以下、好ましくは50倍以上150倍以下、更に好ましくは100倍とする。さらには、シリコンを含む気体中に、CH4、C2H6等の炭化物気体、GeH4、GeF4等のゲルマニウム化気体、F2等を混入させてもよい。
【0177】
また、光電効果で発生した正孔の移動度は電子の移動度に比べて小さいため、pin型のフォトダイオードはp型の半導体層側(矢印の方向)を受光面とする方がよい特性を示す。ここでは、pin型のフォトダイオードが形成されている基板601の面からフォトダイオード602が受ける光を電気信号に変換する例を示す。また、受光面とした半導体層側とは逆の導電型を有する半導体層側からの光は外乱光となるため、電極層は遮光性を有する導電膜を用いるとよい。また、n型の半導体層側を受光面として用いることもできる。
【0178】
第1の層間絶縁層633、第2の層間絶縁層634としては、表面凹凸を低減するため平坦化絶縁膜として機能する絶縁層が好ましい。第1の層間絶縁層633、第2の層間絶縁層634としては、例えばポリイミド、アクリル樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、ポリアミド、エポキシ樹脂等の有機絶縁材料を用いることができる。また上記有機絶縁材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)、シロキサン系樹脂、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス)等の単層、又は積層を用いることができる。
【0179】
絶縁膜631、保護絶縁膜632、第1の層間絶縁層633、第2の層間絶縁層634としては、絶縁性材料を用いて、その材料に応じて、スパッタリング法、スピンコート法、ディッピング法、スプレー塗布、液滴吐出法(インクジェット法、スクリーン印刷、オフセット印刷等)、ロールコーティング、カーテンコーティング、ナイフコーティング等を用いて形成することができる。
【0180】
フォトダイオード602に入射する光を検出することによって、被検出物の情報を読み取ることができる。なお、被検出物の情報を読み取る際にバックライトなどの光源を用いることができる。
【0181】
トランジスタ640として、実施の形態1で一例を示したトランジスタを用いることができる。成膜ガスとしてフッ化珪素及び酸素を用いて形成し、水素濃度が低く制御され且つフッ素を含む緻密な酸化シリコン膜を酸化物半導体膜と接して設け、該フッ素を含む緻密な酸化シリコン膜上に、成膜ガスとしてより成膜速度の速い水素化珪素及び酸素を用いて形成した酸化シリコン膜を積層してゲート絶縁膜として用いることで、トランジスタ640に安定した電気的特性を付与し、高信頼性化することができる。
【0182】
また、成膜ガスとして生産性に有利な水素化珪素及び酸素を用いて形成した酸化シリコン膜も用いることで、歩留まり良く半導体装置を作製することができる。
【0183】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0184】
(実施の形態4)
本明細書に開示する半導体装置は、さまざまな電子機器(遊技機も含む)に適用することができる。電子機器としては、例えば、テレビジョン装置(テレビ、またはテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ等のカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。上記実施の形態で説明した液晶表示装置を具備する電子機器の例について説明する。
【0185】
図8(A)は電子書籍(E−bookともいう)であり、筐体9630、表示部9631、操作キー9632、太陽電池9633、充放電制御回路9634を有することができる。図8(A)に示した電子書籍は、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示する機能、カレンダー、日付又は時刻などを表示部に表示する機能、表示部に表示した情報を操作又は編集する機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、等を有することができる。なお、図8(A)では充放電制御回路9634の一例としてバッテリー9635、DCDCコンバータ(以下、コンバータと略記)9636を有する構成について示している。上記他の実施の形態のいずれかで示した半導体装置を表示部9631に適用することにより、信頼性の高い電子書籍とすることができる。
【0186】
図8(A)に示す構成とすることにより、表示部9631として半透過型、又は反射型の液晶表示装置を用いる場合、比較的明るい状況下での使用も予想され、太陽電池9633による発電、及びバッテリー9635での充電を効率よく行うことができ、好適である。なお太陽電池9633は、筐体9630の空きスペース(表面や裏面)に適宜設けることができるため、効率的なバッテリー9635の充電を行う構成とすることができるため好適である。なおバッテリー9635としては、リチウムイオン電池を用いると、小型化を図れる等の利点がある。
【0187】
また図8(A)に示す充放電制御回路9634の構成、及び動作について図8(B)にブロック図を示し説明する。図8(B)には、太陽電池9633、バッテリー9635、コンバータ9636、コンバータ9637、スイッチSW1乃至スイッチSW3、表示部9631について示しており、バッテリー9635、コンバータ9636、コンバータ9637、スイッチSW1乃至スイッチSW3が充放電制御回路9634に対応する箇所となる。
【0188】
まず外光により太陽電池9633により発電がされる場合の動作の例について説明する。太陽電池で発電した電力は、バッテリー9635を充電するための電圧となるようコンバータ9636で昇圧または降圧がなされる。そして、表示部9631の動作に太陽電池9633からの電力が用いられる際にはスイッチSW1をオンにし、コンバータ9637で表示部9631に必要な電圧に昇圧または降圧をすることとなる。また、表示部9631での表示を行わない際には、SW1をオフにし、SW2をオンにしてバッテリー9635の充電を行う構成とすればよい。
【0189】
次いで外光により太陽電池9633により発電がされない場合の動作の例について説明する。バッテリー9635に蓄電された電力は、スイッチSW3をオンにすることでコンバータ9637により昇圧または降圧がなされる。そして、表示部9631の動作にバッテリー9635からの電力が用いられることとなる。
【0190】
なお太陽電池9633については、充電手段の一例として示したが、他の手段によるバッテリー9635の充電を行う構成であってもよい。また他の充電手段を組み合わせて行う構成としてもよい。
【0191】
図9(A)は、ノート型のパーソナルコンピュータであり、本体3001、筐体3002、表示部3003、キーボード3004などによって構成されている。上記他の実施の形態のいずれかで示した半導体装置を表示部3003に適用することにより、信頼性の高いノート型のパーソナルコンピュータとすることができる。
【0192】
図9(B)は、携帯情報端末(PDA)であり、本体3021には表示部3023と、外部インターフェイス3025と、操作ボタン3024等が設けられている。また操作用の付属品としてスタイラス3022がある。上記他の実施の形態のいずれかで示した半導体装置を表示部3023に適用することにより、より信頼性の高い携帯情報端末(PDA)とすることができる。
【0193】
図9(C)は、電子書籍の一例を示している。例えば、電子書籍2700は、筐体2701および筐体2703の2つの筐体で構成されている。筐体2701および筐体2703は、軸部2711により一体とされており、該軸部2711を軸として開閉動作を行うことができる。このような構成により、紙の書籍のような動作を行うことが可能となる。
【0194】
筐体2701には表示部2705が組み込まれ、筐体2703には表示部2707が組み込まれている。表示部2705および表示部2707は、続き画面を表示する構成としてもよいし、異なる画面を表示する構成としてもよい。異なる画面を表示する構成とすることで、例えば右側の表示部(図9(C)では表示部2705)に文章を表示し、左側の表示部(図9(C)では表示部2707)に画像を表示することができる。上記他の実施の形態のいずれかで示した半導体装置を表示部2705、表示部2707に適用することにより、信頼性の高い電子書籍2700とすることができる。
【0195】
また、図9(C)では、筐体2701に操作部などを備えた例を示している。例えば、筐体2701において、電源2721、操作キー2723、スピーカー2725などを備えている。操作キー2723により、頁を送ることができる。なお、筐体の表示部と同一面にキーボードやポインティングデバイスなどを備える構成としてもよい。また、筐体の裏面や側面に、外部接続用端子(イヤホン端子、USB端子など)、記録媒体挿入部などを備える構成としてもよい。さらに、電子書籍2700は、電子辞書としての機能を持たせた構成としてもよい。
【0196】
また、電子書籍2700は、無線で情報を送受信できる構成としてもよい。無線により、電子書籍サーバから、所望の書籍データなどを購入し、ダウンロードする構成とすることも可能である。
【0197】
図9(D)は、携帯電話であり、筐体2800及び筐体2801の二つの筐体で構成されている。筐体2801には、表示パネル2802、スピーカー2803、マイクロフォン2804、ポインティングデバイス2806、カメラ用レンズ2807、外部接続端子2808などを備えている。また、筐体2800には、携帯電話の充電を行う太陽電池セル2810、外部メモリスロット2811などを備えている。また、アンテナは筐体2801内部に内蔵されている。上記他の実施の形態のいずれかで示した半導体装置を表示パネル2802に適用することにより、信頼性の高い携帯電話とすることができる。
【0198】
また、表示パネル2802はタッチパネルを備えており、図9(D)には映像表示されている複数の操作キー2805を点線で示している。なお、太陽電池セル2810で出力される電圧を各回路に必要な電圧に昇圧するための昇圧回路も実装している。
【0199】
表示パネル2802は、使用形態に応じて表示の方向が適宜変化する。また、表示パネル2802と同一面上にカメラ用レンズ2807を備えているため、テレビ電話が可能である。スピーカー2803及びマイクロフォン2804は音声通話に限らず、テレビ電話、録音、再生などが可能である。さらに、筐体2800と筐体2801は、スライドし、図9(D)のように展開している状態から重なり合った状態とすることができ、携帯に適した小型化が可能である。
【0200】
外部接続端子2808はACアダプタ及びUSBケーブルなどの各種ケーブルと接続可能であり、充電及びパーソナルコンピュータなどとのデータ通信が可能である。また、外部メモリスロット2811に記録媒体を挿入し、より大量のデータ保存及び移動に対応できる。
【0201】
また、上記機能に加えて、赤外線通信機能、テレビ受信機能などを備えたものであってもよい。
【0202】
図9(E)は、デジタルビデオカメラであり、本体3051、表示部(A)3057、接眼部3053、操作スイッチ3054、表示部(B)3055、バッテリー3056などによって構成されている。上記他の実施の形態のいずれかで示した半導体装置を表示部(A)3057、表示部(B)3055に適用することにより、信頼性の高いデジタルビデオカメラとすることができる。
【0203】
図9(F)は、テレビジョン装置の一例を示している。テレビジョン装置9600は、筐体9601に表示部9603が組み込まれている。表示部9603により、映像を表示することが可能である。また、ここでは、スタンド9605により筐体9601を支持した構成を示している。上記他の実施の形態のいずれかで示した半導体装置を表示部9603に適用することにより、信頼性の高いテレビジョン装置9600とすることができる。
【0204】
テレビジョン装置9600の操作は、筐体9601が備える操作スイッチや、別体のリモコン操作機により行うことができる。また、リモコン操作機に、当該リモコン操作機から出力する情報を表示する表示部を設ける構成としてもよい。
【0205】
なお、テレビジョン装置9600は、受信機やモデムなどを備えた構成とする。受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して有線または無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)または双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
【0206】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【実施例1】
【0207】
本実施例では、発明の一形態であるトランジスタにおいて、第1のゲート絶縁膜として用いることのできる酸化シリコン膜(酸化シリコン膜1)、及び第2のゲート絶縁膜として用いることのできる酸化シリコン膜(酸化シリコン膜2)を作製し、その膜特性を評価した結果を示す。
【0208】
以下に、本実施例の第1のゲート絶縁膜(酸化シリコン膜1)及び第2のゲート絶縁膜(酸化シリコン膜2)の作製方法を説明する。
【0209】
酸化シリコン膜1及び酸化シリコン膜2は、シリコンウエハ上にプラズマCVD法により形成した。
【0210】
酸化シリコン膜1として、シリコンウエハ上にプラズマCVD法により膜厚200nmの酸化シリコン膜を形成した。酸化シリコン膜1の成膜条件は、成膜ガスとしては四フッ化珪素(SiF4)、一酸化二窒素(N2O)、及びアルゴン(Ar)(SiF4:N2O:Ar=6sccm:1000sccm:1000sccm)を用い、チャンバー内の圧力は133Pa、電力は800W、電源周波数は60MHz、基板(シリコンウエハ)の温度は400℃、基板及び電極間の距離は7mmとした。また成膜速度は0.5nm/min〜1nm/minであった。
【0211】
一方、酸化シリコン膜2として、シリコンウエハ上にプラズマCVD法により膜厚200nmの酸化シリコン膜を形成した。酸化シリコン膜2の成膜条件は、成膜ガスとしては四水素化珪素(SiH4)及び一酸化二窒素(N2O)(SiH4:N2O=4sccm:800sccm)を用い、チャンバー内の圧力は40Pa、電力は150W、電源周波数は60MHz、基板(シリコンウエハ)の温度は400℃、基板及び電極間の距離は28mmとした。また成膜速度は30nm/min〜50nm/minであった。
【0212】
作製した酸化シリコン膜1と酸化シリコン膜2とに二次イオン質量分析計(SIMS、Secondary Ion Mass Spectrometry)による分析を行った。酸化シリコン膜1のSIMSによる測定結果を図11に、酸化シリコン膜2のSIMSによる測定結果を図12に示す。図11及び図12において、縦軸は濃度を示し、横軸は酸化シリコン膜表面からの深さを示す。
【0213】
図11に示すように、成膜ガスとしてフッ化珪素及び酸素を用いて形成した酸化シリコン膜1では、フッ素濃度より水素濃度の方が低く、フッ素濃度は1×1020 atoms/cm3以上であり、水素濃度は1×1020 atoms/cm3未満である。具体的には、フッ素濃度の範囲は、約2×1020 atoms/cm3〜1.4×1021 atoms/cm3程度であったが、水素濃度の範囲は約1×1018 atoms/cm3〜5×1019 atoms/cm3程度と低く抑えられていた。
【0214】
一方、図12に示すように、成膜ガスとして水素化珪素及び酸素を用いて形成した酸化シリコン膜2では、フッ素濃度より水素濃度の方が高く、フッ素濃度は1×1020 atoms/cm3未満であり、水素濃度は1×1020 atoms/cm3以上である。酸化シリコン膜2中に含まれるフッ素濃度の範囲は、約2×1018 atoms/cm3〜1×1019atoms/cm3程度であったが、水素濃度の範囲は約1×1020 atoms/cm3〜1×1021 atoms/cm3程度であった。
【0215】
なお、図11及び図12において、上記フッ素及び水素の濃度範囲は定量範囲内での数値である。
【0216】
以上のように、成膜ガスとしてフッ化珪素及び酸素を用いて形成した酸化シリコン膜1はフッ素を水素より高濃度に含む酸化シリコン膜であり、水素濃度が低く抑えられていることが確認できた。また、フッ素濃度においては、成膜ガスとしてフッ化珪素及び酸素を用いて形成した酸化シリコン膜1に含まれるフッ素濃度が、成膜ガスとして水素化珪素及び酸素を用いて形成した酸化シリコン膜2に含まれるフッ素濃度より高くなり、一方水素濃度においては、成膜ガスとしてフッ化珪素及び酸素を用いて形成した酸化シリコン膜1に含まれる水素濃度が、成膜ガスとして水素化珪素及び酸素を用いて形成した酸化シリコン膜2に含まれる水素濃度より低く抑えることが確認できた。
【0217】
一方、成膜ガスとして水素化珪素及び酸素を用いて形成した酸化シリコン膜2は成膜速度が、成膜ガスとしてフッ化珪素及び酸素を用いて形成した酸化シリコン膜1より速く生産性においては有利である。
【0218】
よって、成膜ガスとしてフッ化珪素及び酸素を用いて形成し、水素濃度が低く制御されたフッ素を含む緻密な酸化シリコン膜(酸化シリコン膜1)を酸化物半導体膜と接して設け、該フッ素を含む緻密な酸化シリコン膜(酸化シリコン膜1)上に、成膜速度の速い水素化珪素を用いて形成した酸化シリコン膜(酸化シリコン膜2)を積層してゲート絶縁膜として用いることで、トランジスタに安定した電気的特性を付与し、高信頼性化することができる。
【0219】
また、生産性に有利な水素化珪素を用いて形成した酸化シリコン膜を用いることで、歩留まり良く半導体装置を作製することができる。
【技術分野】
【0001】
半導体装置及び半導体装置の作製方法に関する。
【0002】
なお、本明細書中において半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般を指し、電気光学装置、半導体回路および電子機器は全て半導体装置である。
【背景技術】
【0003】
絶縁表面を有する基板上に形成された半導体薄膜を用いてトランジスタを構成する技術が注目されている。該トランジスタは集積回路(IC)や画像表示装置(表示装置)のような電子デバイスに広く応用されている。トランジスタに適用可能な半導体薄膜としてシリコン系半導体材料が広く知られているが、その他の材料として酸化物半導体が注目されている。
【0004】
例えば、トランジスタの活性層として、電子キャリア濃度が1018/cm3未満であるインジウム(In)、ガリウム(Ga)、及び亜鉛(Zn)を含む非晶質酸化物を用いたトランジスタが開示されている(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−165528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、酸化物半導体はデバイス作製工程において、電子供与体となる水素や水分の混入などが生じると、その電気伝導度が変化する恐れがある。このような現象は、酸化物半導体を用いたトランジスタにとって電気的特性の変動要因となる。
【0007】
このような問題に鑑み、酸化物半導体を用いた半導体装置に安定した電気的特性を付与し、高信頼性化することを目的の一とする。
【0008】
信頼性の高い半導体装置を歩留まり良く作製することを目的の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
酸化物半導体膜を有するトップゲート構造のスタガ型トランジスタ(順スタガ型トランジスタともいう)において、酸化物半導体膜と接する第1のゲート絶縁膜をプラズマ化学気相成長法(プラズマCVD法)によりフッ化珪素及び酸素を含む成膜ガスを用いた酸化シリコン膜で形成し、該第1のゲート絶縁膜上に積層する第2のゲート絶縁膜を、プラズマCVD法により水素化珪素及び酸素を含む成膜ガスを用いた酸化シリコン膜で形成する。
【0010】
本明細書で開示する発明の構成の一形態は、絶縁膜と、絶縁膜上にソース電極層及びドレイン電極層と、絶縁膜、ソース電極層及びドレイン電極層上に島状の酸化物半導体膜と、島状の酸化物半導体膜上に島状の酸化物半導体膜と接する島状の第1のゲート絶縁膜と、絶縁膜、ソース電極層、ドレイン電極層、島状の酸化物半導体膜、及び島状の第1のゲート絶縁膜上に絶縁膜、ソース電極層、ドレイン電極層、及び島状の第1のゲート絶縁膜を覆う第2のゲート絶縁膜と、島状の酸化物半導体膜と重畳する第2のゲート絶縁膜上にゲート電極層とを有し、島状の第1のゲート絶縁膜はフッ素を含む酸化シリコン膜であり、第2のゲート絶縁膜は水素を含み、かつ該水素濃度は第1のゲート絶縁膜における水素濃度より高い半導体装置である。
【0011】
本明細書で開示する発明の構成の一形態は、絶縁膜と、絶縁膜上にソース電極層及びドレイン電極層と、絶縁膜、ソース電極層及びドレイン電極層上に島状の酸化物半導体膜と、島状の酸化物半導体膜上に島状の酸化物半導体膜と接する島状の第1のゲート絶縁膜と、絶縁膜、ソース電極層、ドレイン電極層、島状の酸化物半導体膜、及び島状の第1のゲート絶縁膜上に絶縁膜、ソース電極層、ドレイン電極層、及び島状の第1のゲート絶縁膜を覆う第2のゲート絶縁膜と、島状の酸化物半導体膜と重畳する第2のゲート絶縁膜上にゲート電極層とを有し、島状の第1のゲート絶縁膜はフッ素を含む酸化シリコン膜であり、第2のゲート絶縁膜は水素を含み、かつ該水素濃度は第1のゲート絶縁膜における水素濃度より高く、絶縁膜はフッ素を含む酸化シリコン膜である半導体装置である。
【0012】
本明細書で開示する発明の構成の一形態は、絶縁膜を形成し、絶縁膜上にソース電極層及びドレイン電極層を形成し、絶縁膜、ソース電極層及びドレイン電極層を覆う酸化物半導体膜を形成し、酸化物半導体膜上に酸化物半導体膜と接してプラズマ化学気相成長法によりフッ化珪素及び酸素を含む成膜ガスを用いて第1のゲート絶縁膜を形成し、酸化物半導体膜及び第1のゲート絶縁膜を島状の酸化物半導体膜及び島状の第1のゲート絶縁膜に加工し、絶縁膜、ソース電極層、ドレイン電極層、島状の酸化物半導体膜、及び第1のゲート絶縁膜上に絶縁膜、ソース電極層、ドレイン電極層、及び第1のゲート絶縁膜を覆ってプラズマ化学気相成長法により水素化珪素及び酸素を含む成膜ガスを用いて第2のゲート絶縁膜を形成し、酸化物半導体膜と重畳する第2のゲート絶縁膜上にゲート電極層を形成する半導体装置の作製方法である。
【0013】
本明細書で開示する発明の構成の一形態は、プラズマ化学気相成長法によりフッ化珪素及び酸素を含む成膜ガスを用いて絶縁膜を形成し、絶縁膜上にソース電極層及びドレイン電極層を形成し、絶縁膜、ソース電極層及びドレイン電極層を覆う酸化物半導体膜を形成し、酸化物半導体膜上に酸化物半導体膜と接してプラズマ化学気相成長法によりフッ化珪素及び酸素を含む成膜ガスを用いて第1のゲート絶縁膜を形成し、酸化物半導体膜及び第1のゲート絶縁膜を島状の酸化物半導体膜及び島状の第1のゲート絶縁膜に加工し、絶縁膜、ソース電極層、ドレイン電極層、島状の酸化物半導体膜、及び第1のゲート絶縁膜上に絶縁膜、ソース電極層、ドレイン電極層、及び第1のゲート絶縁膜を覆ってプラズマ化学気相成長法により水素化珪素及び酸素を含む成膜ガスを用いて第2のゲート絶縁膜を形成し、酸化物半導体膜と重畳する第2のゲート絶縁膜上にゲート電極層を形成する半導体装置の作製方法である。
【0014】
上記構造において、第1のゲート絶縁膜の膜厚を1nm以上10nm以下程度と薄くし、積層する第2のゲート絶縁膜の膜厚を50nm以上100nm以下程度と厚くすることができる。
【0015】
成膜ガスとしてフッ化珪素及び酸素を用いて形成した第1のゲート絶縁膜では、第1のゲート絶縁膜中に含まれるフッ素濃度より水素濃度の方が低く、例えばフッ素濃度は1×1020 atoms/cm3以上であり、水素濃度は1×1020 atoms/cm3未満である。
【0016】
成膜ガスとして水素化珪素及び酸素を用いて形成した第2のゲート絶縁膜では、第2のゲート絶縁膜中に含まれるフッ素濃度より水素濃度の方が高く、例えばフッ素濃度は1×1020 atoms/cm3未満であり、水素濃度は1×1020 atoms/cm3以上である。
【0017】
上記構成において、フッ化珪素及び一酸化二窒素を含む成膜ガスを用いてプラズマCVD法により酸化物半導体膜と接する絶縁膜及び第1のゲート絶縁膜を形成することができる。また、フッ化珪素及び一酸化二窒素を含む成膜ガスを用いてプラズマCVD法により第2のゲート絶縁膜を形成することができる。
【0018】
プラズマCVD法によりフッ化珪素及び酸素を含む成膜ガスを用いて形成する第1のゲート絶縁膜は、成膜ガスに水素を含まないので、水素濃度を低く抑えた膜とすることができる。また、プラズマCVD法によりフッ化珪素及び酸素を含む成膜ガスを用いて形成すると、第1のゲート絶縁膜を緻密な膜とすることができる。緻密性が高い第1のゲート絶縁膜によって、積層する第2のゲート絶縁膜に含まれる水素が酸化物半導体膜中に侵入するのを防止することができる。
【0019】
一方、ソース電極層、ドレイン電極層、第1のゲート絶縁膜上に接して形成される第2のゲート絶縁膜は、プラズマCVD法により水素化珪素及び酸素を含む成膜ガスを用いて形成するため比較的速い成膜速度で成膜することができるので、第1のゲート絶縁膜より厚膜化が可能であり、生産性に有利である。また、接して形成するソース電極層、ドレイン電極層を腐蝕するフッ素や塩素などを成膜ガスに用いないために、ソース電極層及びドレイン電極層表面をあらすことなく第2のゲート絶縁膜を形成することができる。
【0020】
なお、第1のゲート絶縁膜は、ソース電極層及びドレイン電極層を酸化物半導体膜が覆った状態で酸化物半導体膜上に形成されるため、ソース電極層及びドレイン電極層は、第1のゲート絶縁膜成膜時に用いるフッ化珪素及び酸素を含む成膜ガスに曝されず、腐蝕などの損傷を受けない。
【0021】
従って半導体装置の作製工程において、ソース電極層及びドレイン電極層の腐蝕による形状不良や、積層する第2のゲート絶縁膜の被覆不良などを防止し、信頼性の高い半導体装置を歩留まり良く作製することができる。
【発明の効果】
【0022】
成膜ガスとしてフッ化珪素及び酸素を用いて形成し、水素濃度が低く制御され且つフッ素を含む緻密な酸化シリコン膜を酸化物半導体膜と接して設け、該フッ素を含む緻密な酸化シリコン膜上に、成膜ガスとしてより成膜速度の速い水素化珪素及び酸素を用いて形成した酸化シリコン膜を積層してゲート絶縁膜として用いることで、トランジスタに安定した電気的特性を付与し、高信頼性化することができる。
【0023】
また、成膜ガスとして生産性に有利な水素化珪素及び酸素を用いて形成した酸化シリコン膜を用いることで、歩留まり良く半導体装置を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】半導体装置の一形態を説明する図。
【図2】半導体装置の作製方法の一形態を説明する図。
【図3】半導体装置の一形態を説明する図。
【図4】半導体装置の一形態を説明する図。
【図5】半導体装置の一形態を説明する図。
【図6】半導体装置の一形態を説明する図。
【図7】半導体装置の一形態を説明する図。
【図8】電子機器を示す図。
【図9】電子機器を示す図。
【図10】半導体装置の一形態を説明する図。
【図11】実施例におけるSIMSの測定結果を示す図。
【図12】実施例におけるSIMSの測定結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下では、本明細書に開示する発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本明細書に開示する発明は以下の説明に限定されず、その形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。また、本明細書に開示する発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、第1、第2として付される序数詞は便宜上用いるものであり、工程順又は積層順を示すものではない。また、本明細書において発明を特定するための事項として固有の名称を示すものではない。
【0026】
(実施の形態1)
本実施の形態では、半導体装置及び半導体装置の作製方法の一形態を、図1乃至図3を用いて説明する。本実施の形態では、半導体装置の一例として酸化物半導体膜を有するトランジスタを示す。
【0027】
図1に、半導体装置の例として、トップゲート構造のスタガ型トランジスタ(順スタガ型トランジスタともいう)の断面図及び平面図を示す。図1(A)は平面図であり、図1(B)及び図1(C)は、図1(A)におけるA1−B1断面及びA2−B2断面に係る断面図である。なお、図1(A)においては、第1のゲート絶縁膜402a、第2のゲート絶縁膜402bを省略している。
【0028】
図1(A)、図1(B)、及び図1(C)に示すトランジスタ410は、絶縁表面を有する基板400上に、絶縁膜406、ソース電極層405a、ドレイン電極層405b、酸化物半導体膜403、第1のゲート絶縁膜402a、第2のゲート絶縁膜402b、及びゲート電極層401を含む。
【0029】
なお、トランジスタ410上には、さらに絶縁物が設けられていても良い。また、ソース電極層405aやドレイン電極層405bと配線とを電気的に接続させるために、第2のゲート絶縁膜402bなどには開口が形成されていても良い。また、酸化物半導体膜403の下方、絶縁膜406の下に、さらに、第2のゲート電極を有していても良い。
【0030】
トランジスタ410において、酸化物半導体膜403と接する第1のゲート絶縁膜402aをプラズマCVD法によりフッ化珪素及び酸素を含む成膜ガスを用いた酸化シリコン膜で形成し、第1のゲート絶縁膜402a上に積層する第2のゲート絶縁膜402bを、プラズマCVD法により水素化珪素及び酸素を含む成膜ガスを用いた酸化シリコン膜で形成する。
【0031】
図2(A)乃至図2(F)にトランジスタ410の作製方法の一例を示す。
【0032】
まず、絶縁表面を有する基板400上に下地膜として機能する絶縁膜406を形成する。
【0033】
下地膜となる絶縁膜406は、基板400からの不純物元素の拡散を防止する機能があり、プラズマCVD法又はスパッタリング法等により、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウム、又はこれらの混合材料を用いて単層で又は積層して形成することができる。
【0034】
また、絶縁膜406は酸化物半導体膜403と接するので、プラズマCVD法により成膜ガスに水素を含まない、フッ化珪素及び酸素を含む成膜ガスを用いた酸化シリコン膜で形成してもよい。フッ化珪素としては四フッ化珪素(SiF4)、六フッ化二珪素(Si2F6)などを用いることができる。また、絶縁膜406の成膜ガスに希ガス(ヘリウム、アルゴンなど)を含ませてもよい。
【0035】
プラズマCVD法によりフッ化珪素及び酸素を含む成膜ガスを用いて形成する絶縁膜406は、成膜ガスに水素を含まないので、酸化物半導体膜403へ混入することでトランジスタの特性変動の要因となる水素濃度を低く抑えた膜とすることができる。よって、絶縁膜406は酸化物半導体膜403と接して設けられても、酸化物半導体膜403を水素で汚染することなく、接して設けられることで他の膜より水素等の不純物が酸化物半導体膜403へ混入することを防止することができる。
【0036】
また、μ波(例えば周波数2.45GHz)を用いた高密度プラズマCVDは、緻密で絶縁耐圧の高い高品質な絶縁膜を形成できるので、半導体装置に含まれる絶縁膜の形成に用いると好ましい。
【0037】
絶縁表面を有する基板400に使用することができる基板に大きな制限はないが、少なくとも、後の熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有していることが必要となる。例えば、バリウムホウケイ酸ガラスやアルミノホウケイ酸ガラスなどのガラス基板、セラミック基板、石英基板、サファイア基板などを用いることができる。また、シリコンや炭化シリコンなどの単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウムなどの化合物半導体基板、SOI基板などを適用することもでき、これらの基板上に半導体素子が設けられたものを、基板400として用いてもよい。
【0038】
また、基板400として、可撓性基板を用いてもよい。可撓性基板を用いる場合、可撓性基板上に酸化物半導体膜を含むトランジスタを直接作製してもよいし、他の作製基板に酸化物半導体膜を含むトランジスタを作製し、その後可撓性基板に剥離、転置してもよい。なお、作製基板から可撓性基板に剥離、転置するために、作製基板と酸化物半導体膜を含むトランジスタとの間に剥離層を設けるとよい。
【0039】
次いで、絶縁膜406上に、ソース電極層405a及びドレイン電極層405b(これと同じ層で形成される配線を含む)となる導電膜を形成する。ソース電極層405a、及びドレイン電極層405bに用いる導電膜としては、例えば、Al、Cr、Cu、Ta、Ti、Mo、Wからから選ばれた元素を含む金属膜、または上述した元素を成分とする金属窒化物膜(窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)等を用いることができる。また、Al、Cuなどの金属膜の下側又は上側の一方または双方にTi、Mo、Wなどの高融点金属膜またはそれらの金属窒化物膜(窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)を積層させた構成としても良い。また、ソース電極層、及びドレイン電極層に用いる導電膜としては、導電性の金属酸化物で形成しても良い。導電性の金属酸化物としては酸化インジウム(In2O3)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム酸化スズ合金(In2O3―SnO2、ITOと略記する)、酸化インジウム酸化亜鉛合金(In2O3―ZnO)またはこれらの金属酸化物材料に酸化シリコンを含ませたものを用いることができる。
【0040】
第1のフォトリソグラフィ工程により導電膜上にレジストマスクを形成し、選択的にエッチングを行ってソース電極層405a、ドレイン電極層405bを形成した後、レジストマスクを除去する(図2(A)参照。)。
【0041】
なお、レジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0042】
また、絶縁膜406、ソース電極層405a、ドレイン電極層405b上に形成される酸化物半導体膜に水素、水酸基及び水分がなるべく含まれないようにするために、酸化物半導体膜の成膜の前処理として、スパッタリング装置の予備加熱室で、絶縁膜406が形成された基板400、又はソース電極層405a、及びドレイン電極層405bまでが形成された基板400を予備加熱し、基板400に吸着した水素、水分などの不純物を脱離し排気することが好ましい。なお、予備加熱室に設ける排気手段はクライオポンプが好ましい。なお、この予備加熱の処理は省略することもできる。
【0043】
次いで、絶縁膜406、ソース電極層405a、ドレイン電極層405b上に、膜厚2nm以上200nm以下、好ましくは5nm以上30nm以下の酸化物半導体膜を形成する。
【0044】
酸化物半導体膜に用いる酸化物半導体としては、少なくともIn、Ga、Sn及びZnから選ばれた一種以上の元素を含有する。例えば、四元系金属酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn−O系酸化物半導体や、三元系金属酸化物であるIn−Ga−Zn−O系酸化物半導体、In−Sn−Zn−O系酸化物半導体、In−Al−Zn−O系酸化物半導体、Sn−Ga−Zn−O系酸化物半導体、Al−Ga−Zn−O系酸化物半導体、Sn−Al−Zn−O系酸化物半導体や、二元系金属酸化物であるIn−Zn−O系酸化物半導体、Sn−Zn−O系酸化物半導体、Al−Zn−O系酸化物半導体、Zn−Mg−O系酸化物半導体、Sn−Mg−O系酸化物半導体、In−Mg−O系酸化物半導体や、In−Ga−O系の材料、In−O系酸化物半導体、Sn−O系酸化物半導体、Zn−O系酸化物半導体などを用いることができる。また、上記酸化物半導体にInとGaとSnとZn以外の元素、例えばSiO2を含んでもよい。
【0045】
例えば、In−Ga−Zn−O系酸化物半導体とは、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)を有する酸化物半導体、という意味であり、その組成比は問わない。
【0046】
また、酸化物半導体膜は、化学式InMO3(ZnO)m(m>0)で表記される薄膜を用いることができる。ここで、Mは、Ga、Al、MnおよびCoから選ばれた一または複数の金属元素を示す。例えばMとして、Ga、Ga及びAl、Ga及びMn、またはGa及びCoなどがある。
【0047】
酸化物半導体膜に用いる酸化物半導体としては、インジウムを含む酸化物半導体、インジウム及びガリウムを含む酸化物半導体などを好適に用いることができる。
【0048】
本実施の形態では、酸化物半導体膜としてIn−Ga−Zn−O系酸化物ターゲットを用いてスパッタリング法により成膜する。また、酸化物半導体膜は、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気下、酸素雰囲気下、又は希ガスと酸素の混合雰囲気下においてスパッタリング法により形成することができる。
【0049】
また、酸化物半導体としてIn−Zn−O系の材料を用いる場合、用いるターゲットとしては、原子数比で、In:Zn=50:1〜1:2(モル数比に換算するとIn2O3:ZnO=25:1〜1:4)、好ましくはIn:Zn=20:1〜1:1(モル数比に換算するとIn2O3:ZnO=10:1〜1:2)、さらに好ましくはIn:Zn=15:1〜1.5:1(モル数比に換算するとIn2O3:ZnO=15:2〜3:4)とする。例えば、In−Zn−O系酸化物半導体の形成に用いるターゲットは、原子数比がIn:Zn:O=X:Y:Zのとき、Z>1.5X+Yとする。
【0050】
また、酸化物ターゲットの充填率は90%以上100%以下、好ましくは95%以上99.9%以下である。充填率の高い金属酸化物ターゲットを用いることにより、成膜した酸化物半導体膜は緻密な膜とすることができる。
【0051】
酸化物半導体膜を成膜する際に用いるスパッタリングガスは、水素、水、水酸基又は水素化物などの不純物が除去された高純度ガスを用いることが好ましい。
【0052】
減圧状態に保持された成膜室内に基板を保持し、基板温度を100℃以上600℃以下好ましくは200℃以上400℃以下とする。基板を加熱しながら成膜することにより、成膜した酸化物半導体膜に含まれる不純物濃度を低減することができる。また、スパッタリングによる損傷が軽減される。そして、成膜室内の残留水分を除去しつつ水素及び水分が除去されたスパッタリングガスを導入し、上記ターゲットを用いて基板400上に酸化物半導体膜を成膜する。成膜室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプ、例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ましい。また、排気手段としては、ターボ分子ポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。クライオポンプを用いて排気した成膜室は、例えば、水素原子、水など水素原子を含む化合物(より好ましくは炭素原子を含む化合物も)等が排気されるため、当該成膜室で成膜した酸化物半導体膜に含まれる不純物の濃度を低減できる。
【0053】
成膜条件の一例としては、基板とターゲットの間との距離を100mm、圧力0.6Pa、直流(DC)電源0.5kW、酸素(酸素流量比率100%)雰囲気下の条件が適用される。なお、パルス直流電源を用いると、成膜時に発生する粉状物質(パーティクル、ごみともいう)が軽減でき、膜厚分布も均一となるために好ましい。
【0054】
次いで、酸化物半導体膜に熱処理を行う。この熱処理によって過剰な水素(水や水酸基を含む)を除去(脱水化または脱水素化)し、酸化物半導体膜の構造を整え、エネルギーギャップ中の欠陥準位を低減することができる。熱処理の温度は、250℃以上750℃以下、または400℃以上基板の歪み点未満とする。ここでは、熱処理装置の一つである電気炉に基板を導入し、酸化物半導体膜に対して窒素雰囲気下450℃において1時間の熱処理を行った後、大気に触れることなく、酸化物半導体膜への水や水素の再混入を防ぎ、酸化物半導体膜441を得る(図2(B)参照。)。
【0055】
なお、熱処理装置は電気炉に限られず、抵抗発熱体などの発熱体からの熱伝導または熱輻射によって、被処理物を加熱する装置を用いてもよい。例えば、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置等のRTA(Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置である。GRTA装置は、高温のガスを用いて熱処理を行う装置である。高温のガスには、アルゴンなどの希ガス、または窒素のような、熱処理によって被処理物と反応しない不活性気体が用いられる。
【0056】
例えば、熱処理として、650℃以上700℃以下の高温に加熱した不活性ガス中に基板を移動させて入れ、数分間加熱した後、基板を移動させて高温に加熱した不活性ガス中から出すGRTAを行ってもよい。
【0057】
なお、熱処理においては、窒素、またはヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスに、水、水素などが含まれないことが好ましい。または、熱処理装置に導入する窒素、またはヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスの純度を、6N(99.9999%)以上好ましくは7N(99.99999%)以上(即ち不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。
【0058】
また、熱処理で酸化物半導体膜を加熱した後、同じ炉に高純度の酸素ガス、高純度の一酸化二窒素ガス、又は超乾燥エア(CRDS(キャビティリングダウンレーザー分光法)方式の露点計を用いて測定した場合の水分量が20ppm(露点換算で−55℃)以下、好ましくは1ppm以下、好ましくは10ppb以下の空気)を導入してもよい。酸素ガスまたは一酸化二窒素ガスに、水、水素などが含まれないことが好ましい。または、熱処理装置に導入する酸素ガスまたは一酸化二窒素ガスの純度を、6N以上好ましくは7N以上(即ち、酸素ガスまたは一酸化二窒素ガス中の不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。酸素ガス又は一酸化二窒素ガスの作用により、脱水化または脱水素化処理による不純物の排除工程によって同時に減少してしまった酸化物半導体を構成する主成分材料である酸素を供給することによって、酸化物半導体膜を高純度化及び電気的にi型(真性)化する。
【0059】
また、酸化物半導体膜の熱処理は、島状の酸化物半導体膜に加工した後の酸化物半導体膜に行うこともできる。また、熱処理は、酸化物半導体膜成膜後であれば、島状の酸化物半導体膜上に第1のゲート絶縁膜、及び/又は第2のゲート絶縁膜を積層させた後で行っても良い。
【0060】
脱水化または脱水素化された酸化物半導体膜441に酸素ドープ処理を行ってもよい。酸化物半導体膜441に酸素ドープ処理を行うことにより、酸素を酸化物半導体膜441に供給して、酸化物半導体膜441中、又は酸化物半導体膜441中及び該界面近傍に酸素を含有させることができる。
【0061】
なお、酸素ドープ処理とは、酸素ラジカルまたは酸素原子、酸素イオンを酸化物半導体膜の表面及びバルクへ添加することである。特に、酸素をプラズマ化することにより、上記酸素ラジカルまたは酸素原子、酸素イオンを酸化物半導体膜の表面及びバルク中に添加することを酸素プラズマドープ処理ともいう。なお、酸化物半導体膜が形成される基板にバイアスを印加すると好ましい。
【0062】
本明細書に開示する酸化物半導体膜を有するトランジスタの作製工程において、酸素ドープ処理を行うことによって、積層する絶縁膜の膜中(バルク中)、酸化物半導体膜の膜中(バルク中)、ゲート絶縁膜の膜中(バルク中)、ゲート絶縁膜と酸化物半導体膜の界面、酸化物半導体膜と絶縁膜との界面において、少なくとも1ヶ所以上、該膜の化学量論比をこえる酸素が存在する酸素過剰領域を設けることができる。
【0063】
また、上記酸素過剰領域を、積層する絶縁膜、酸化物半導体膜、及びゲート絶縁膜において2ヶ所以上に設けてもよい。例えば作製工程において、酸素ドープ処理を行うことによって、ゲート絶縁膜と酸化物半導体膜の界面、酸化物半導体膜の膜中(バルク中)、及び酸化物半導体膜と絶縁膜との界面にそれぞれ酸素過剰領域を設けることができる。
【0064】
ドープされる酸素(酸素ラジカル、酸素原子、及び/又は酸素イオン)は、酸素を含むガスを用いてプラズマ発生装置により供給されてもよいし、又はオゾン発生装置により供給されてもよい。より具体的には、例えば、半導体装置の作製工程において用いるエッチング処理を行うための装置や、レジストマスクに対してアッシングを行うための装置などを用いて酸素を発生させ、酸化物半導体膜441を処理することができる。
【0065】
また、酸素ドープ処理を行った酸化物半導体膜441に熱処理(温度150℃以上470℃以下)を行ってもよい。熱処理は、窒素、酸素、超乾燥空気(CRDS(キャビティリングダウンレーザー分光法)方式の露点計を用いて測定した場合の水分量が20ppm(露点換算で−55℃)以下、好ましくは1ppm以下、より好ましくは10ppb以下の空気)、または希ガス(アルゴン、ヘリウムなど)の雰囲気下で行えばよいが、上記窒素、酸素、超乾燥空気、または希ガス等の雰囲気は、水、水素などが含まれず高純度化されていることが好ましい。
【0066】
以上の工程で高純度化し、電気的にi型(真性)化された酸化物半導体膜441を得る。高純度化された酸化物半導体膜441中にはキャリアが極めて少ない(ゼロに近い)。
【0067】
次いで、酸化物半導体膜441上に第1のゲート絶縁膜443を形成する(図2(C)参照。)。第1のゲート絶縁膜443は、プラズマCVD法により水素を含まないフッ化珪素及び酸素を含む成膜ガスを用いた酸化シリコン膜で形成する。フッ化珪素としては四フッ化珪素(SiF4)、六フッ化二珪素(Si2F6)などを用いることができる。また、第1のゲート絶縁膜443の成膜ガスに希ガス(ヘリウム、アルゴンなど)を含ませてもよい。
【0068】
プラズマCVD法によりフッ化珪素及び酸素を含む成膜ガスを用いて形成する第1のゲート絶縁膜443は、酸化物半導体膜403へ混入することでトランジスタの特性変動の要因となる水素を成膜ガスに含まないので、水素濃度を低く抑えた膜とすることができる。よって、第1のゲート絶縁膜443は酸化物半導体膜403と接して設けられても、酸化物半導体膜403を水素で汚染することなく、接して設けられることで他の膜より水素等の不純物が酸化物半導体膜403へ混入することを防止することができる。
【0069】
本実施の形態では、第1のゲート絶縁膜443を、プラズマCVD法により四フッ化珪素(SiF4)、一酸化二窒素(N2O)及びアルゴン(Ar)を含む成膜ガスを用いて形成する。例えば、第1のゲート絶縁膜443の成膜条件としては、成膜ガスとしては四フッ化珪素(SiF4)、一酸化二窒素(N2O)、及びアルゴン(Ar)(SiF4:N2O:Ar=6sccm:1000sccm:1000sccm)を用い、チャンバー内の圧力は133Pa、電力は800W、電源周波数は60MHz、基板(シリコンウエハ)の温度は400℃とすればよい。
【0070】
よって、第1のゲート絶縁膜443はフッ素を含む酸化シリコン膜となる。成膜ガスとしてフッ化珪素及び酸素を用いて形成した第1のゲート絶縁膜443では、フッ素濃度より水素濃度の方が低く、好ましくはフッ素濃度は1×1020 atoms/cm3以上であり、水素濃度は1×1020 atoms/cm3未満である。第1のゲート絶縁膜443の膜厚は1nm以上10nm以下程度とすればよい。
【0071】
なお、第1のゲート絶縁膜443は、ソース電極層405a及びドレイン電極層405bを酸化物半導体膜441が覆った状態で酸化物半導体膜441上に形成されるため、ソース電極層405a及びドレイン電極層405bは、第1のゲート絶縁膜443成膜時に用いるフッ化珪素及び酸素を含む成膜ガスに曝されず、腐蝕などの損傷を受けない。
【0072】
次いで、酸化物半導体膜441及び第1のゲート絶縁膜443を第2のフォトリソグラフィ工程により島状の酸化物半導体膜403、及び島状の第1のゲート絶縁膜402aに加工する(図2(D)参照。)。また、島状の酸化物半導体膜441、及び島状の第1のゲート絶縁膜402aを形成するためのレジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0073】
なお、ここでの酸化物半導体膜のエッチングは、ドライエッチングでもウェットエッチングでもよく、両方を用いてもよい。例えば、第1のゲート絶縁膜443をドライエッチングにより加工し、第1のゲート絶縁膜402aをマスクとして酸化物半導体膜441をウェットエッチングによって加工してもよい。第1のゲート絶縁膜443のエッチングガスとしては、塩素を含むガス(塩素系ガス、例えば塩素(Cl2)、三塩化硼素(BCl3)、四塩化珪素(SiCl4)、四塩化炭素(CCl4)など)、または、フッ素を含むガス(フッ素系ガス、例えば四フッ化炭素(CF4)、六フッ化硫黄(SF6)、三フッ化窒素(NF3)、トリフルオロメタン(CHF3)など)を用いることができる。さらに上記ガスに酸素や希ガス(例えばArなど)を添加したエッチングガスを用いてもよい。酸化物半導体膜のウェットエッチングに用いるエッチング液としては、燐酸と酢酸と硝酸を混ぜた溶液などを用いることができる。また、ITO07N(関東化学社製)を用いてもよい。
【0074】
酸化物半導体膜441及び第1のゲート絶縁膜443のエッチング加工を同じマスクで行うと、島状の酸化物半導体膜403、及び島状の第1のゲート絶縁膜402aを同形状に加工することができ、図2(D)のように端部を一致させることができる。
【0075】
次に、絶縁膜406、ソース電極層405a、ドレイン電極層405b、酸化物半導体膜403、及び第1のゲート絶縁膜402a上に第2のゲート絶縁膜402bを形成する(図2(E)参照。)。第2のゲート絶縁膜402bは、プラズマCVD法により水素化珪素及び酸素を含む成膜ガスを用いた酸化シリコン膜で形成する。水素化珪素としては四水素化珪素(モノシラン:SiH4)、六水素化珪素(ジシラン:Si2H6)、八水素化珪素(トリシラン:Si3H8)などを用いることができる。また、第2のゲート絶縁膜402bの成膜ガスに希ガス(ヘリウム、アルゴンなど)を含ませてもよい。
【0076】
本実施の形態では、第2のゲート絶縁膜402bを、プラズマCVD法により水素化珪素(SiH4)及び一酸化二窒素(N2O)を含む成膜ガスを用いて形成する。例えば、第2のゲート絶縁膜402bの成膜条件としては、成膜ガスとしては四水素化珪素(SiH4)及び一酸化二窒素(N2O)(SiH4:N2O=4sccm:800sccm)を用い、チャンバー内の圧力は40Pa、電力は150W、電源周波数は60MHz、基板(シリコンウエハ)の温度は400℃とすればよい。
【0077】
よって、第2のゲート絶縁膜402bは第1のゲート絶縁膜402aと比較してより高濃度の水素を含む酸化シリコン膜となる。成膜ガスとして水素化珪素及び酸素を用いて形成した第2のゲート絶縁膜402bでは、フッ素濃度より水素濃度の方が高く、好ましくはフッ素濃度は1×1020 atoms/cm3未満であり、水素濃度は1×1020 atoms/cm3以上である。第2のゲート絶縁膜402bの膜厚は50nm以上100nm以下程度とすればよい。
【0078】
プラズマCVD法によりフッ化珪素及び酸素を含む成膜ガスを用いて形成すると、第1のゲート絶縁膜402aを緻密な膜とすることができる。緻密性が高い第1のゲート絶縁膜402aによって、積層する第2のゲート絶縁膜402bに含まれる水素が酸化物半導体膜中に侵入するのを防止することができる。
【0079】
ソース電極層405a、ドレイン電極層405b、第1のゲート絶縁膜402a上に接して形成される第2のゲート絶縁膜402bは、プラズマCVD法により水素化珪素及び酸素を含む成膜ガスを用いて形成するため比較的速い成膜速度で成膜することができるので、第1のゲート絶縁膜402aより厚膜化が可能であり、生産性に有利である。また、接して形成するソース電極層405a、ドレイン電極層405bを腐蝕するフッ素や塩素などを成膜ガスに用いないために、ソース電極層405a、ドレイン電極層405b表面をあらすことなく第2のゲート絶縁膜402bを形成することができる。
【0080】
従って半導体装置の作製工程において、ソース電極層405a、ドレイン電極層405bの腐蝕による形状不良や、積層する第2のゲート絶縁膜402bの被覆不良などを防止し、信頼性の高い半導体装置を歩留まり良く作製することができる。
【0081】
第2のゲート絶縁膜402b上に導電膜を形成した後、第3のフォトリソグラフィ工程によりゲート電極層401を形成する。
【0082】
ゲート電極層401は、プラズマCVD法又はスパッタリング法等により、モリブデン、チタン、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジウム等の金属材料又はこれらを主成分とする合金材料を用いて、単層で又は積層して形成することができる。
【0083】
以上の工程でトランジスタ410が形成される(図2(F)参照。)。トランジスタ410は、トランジスタの特性変動の要因となる水素、水分、水酸基又は水素化物(水素化合物ともいう)などの不純物を酸化物半導体膜より意図的に排除し、かつ酸素を供給されることで高純度化された酸化物半導体膜403を含むトランジスタであり、酸化物半導体膜403に接する第1のゲート絶縁膜402aの水素濃度は低く制御されている。よって、トランジスタ410は、電気的特性変動が抑制されており、電気的に安定である。
【0084】
また、図3(A)のように絶縁膜406を第1の絶縁膜406a、第2の絶縁膜406bと積層構造とし、酸化物半導体膜403と接する第2の絶縁膜406bを第1のゲート絶縁膜402aと同様に成膜ガスに水素を含まない、プラズマCVD法によりフッ化珪素及び酸素を含む成膜ガスを用いた酸化シリコン膜で形成してもよい。この場合、第1の絶縁膜406aとして窒化シリコン膜や窒化酸化シリコン膜などの緻密な窒化膜を用いて、基板400からの不純物の混入を防止する構成としてもよい。
【0085】
また、図3(B)のようにゲート電極層401上にトランジスタ410を覆う保護膜として絶縁膜407を設けてもよい。
【0086】
絶縁膜407は、プラズマCVD法又はスパッタリング法等により、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウム、又はこれらの混合材料を用いて単層で又は積層して形成することができる。
【0087】
上述の絶縁膜407の形成後には、熱処理を行ってもよい。熱処理の温度は、250℃以上700℃以下、好ましくは450℃以上600℃以下、または基板の歪み点未満とする。
【0088】
熱処理は、窒素、酸素、超乾燥空気(CRDS(キャビティリングダウンレーザー分光法)方式の露点計を用いて測定した場合の水分量が20ppm(露点換算で−55℃)以下、好ましくは1ppm以下、より好ましくは10ppb以下の空気)、または希ガス(アルゴン、ヘリウムなど)の雰囲気下で行えばよいが、上記窒素、酸素、超乾燥空気、または希ガス等の雰囲気には、水、水素などが含まれないことが好ましい。また、熱処理装置に導入する窒素、酸素、または希ガスの純度は、6N(99.9999%)以上(即ち不純物濃度を1ppm以下)とするのが好ましく、7N(99.99999%)以上(即ち不純物濃度を0.1ppm以下)とすると、より好ましい。
【0089】
本実施の形態を用いて作製した、高純度化された酸化物半導体膜403を用いたトランジスタ410は、オフ状態における電流値(オフ電流値)を低くすることができる。
【0090】
また、酸化物半導体膜403を用いたトランジスタ410は、比較的高い電界効果移動度が得られるため、高速駆動が可能である。よって、表示機能を有する半導体装置の画素部に上記トランジスタを用いることで、高画質な画像を提供することができる。また、高純度化された酸化物半導体膜を含むトランジスタによって、同一基板上に駆動回路部または画素部を作り分けて作製することができるため、半導体装置の部品点数を削減することができる。
【0091】
以上のように、安定した電気的特性を有する酸化物半導体を用いた半導体装置を提供することができる。よって、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0092】
(実施の形態2)
実施の形態1で一例を示したトランジスタを用いて表示機能を有する半導体装置(表示装置ともいう)を作製することができる。また、トランジスタを含む駆動回路の一部または全体を、画素部と同じ基板上に一体形成し、システムオンパネルを形成することができる。
【0093】
図10(A)において、第1の基板4001上に設けられた画素部4002を囲むようにして、シール材4005が設けられ、第2の基板4006によって封止されている。図10(A)においては、第1の基板4001上のシール材4005によって囲まれている領域とは異なる領域に、別途用意された基板上に単結晶半導体膜又は多結晶半導体膜で形成された走査線駆動回路4004、信号線駆動回路4003が実装されている。また別途形成された信号線駆動回路4003と、走査線駆動回路4004または画素部4002に与えられる各種信号及び電位は、FPC(Flexible printed circuit)4018a、4018bから供給されている。
【0094】
図10(B)及び図10(C)において、第1の基板4001上に設けられた画素部4002と、走査線駆動回路4004とを囲むようにして、シール材4005が設けられている。また画素部4002と、走査線駆動回路4004の上に第2の基板4006が設けられている。よって画素部4002と、走査線駆動回路4004とは、第1の基板4001とシール材4005と第2の基板4006とによって、表示素子と共に封止されている。図10(B)及び図10(C)においては、第1の基板4001上のシール材4005によって囲まれている領域とは異なる領域に、別途用意された基板上に単結晶半導体膜又は多結晶半導体膜で形成された信号線駆動回路4003が実装されている。図10(B)及び図10(C)においては、別途形成された信号線駆動回路4003と、走査線駆動回路4004または画素部4002に与えられる各種信号及び電位は、FPC4018から供給されている。
【0095】
また図10(B)及び図10(C)においては、信号線駆動回路4003を別途形成し、第1の基板4001に実装している例を示しているが、この構成に限定されない。走査線駆動回路を別途形成して実装しても良いし、信号線駆動回路の一部または走査線駆動回路の一部のみを別途形成して実装しても良い。
【0096】
なお、別途形成した駆動回路の接続方法は、特に限定されるものではなく、COG(Chip On Glass)方法、ワイヤボンディング方法、或いはTAB(Tape Automated Bonding)方法などを用いることができる。図10(A)は、COG方法により信号線駆動回路4003、走査線駆動回路4004を実装する例であり、図10(B)は、COG方法により信号線駆動回路4003を実装する例であり、図10(C)は、TAB方法により信号線駆動回路4003を実装する例である。
【0097】
また、表示装置は、表示素子が封止された状態にあるパネルと、該パネルにコントローラを含むIC等を実装した状態にあるモジュールとを含む。
【0098】
なお、本明細書中における表示装置とは、画像表示デバイス、表示デバイス、もしくは光源(照明装置含む)を指す。また、コネクター、例えばFPCもしくはTABテープもしくはTCPが取り付けられたモジュール、TABテープやTCPの先にプリント配線板が設けられたモジュール、または表示素子にCOG方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て表示装置に含むものとする。
【0099】
また第1の基板上に設けられた画素部及び走査線駆動回路は、トランジスタを複数有しており、実施の形態1で一例を示したトランジスタを適用することができる。
【0100】
表示装置に設けられる表示素子としては液晶素子(液晶表示素子ともいう)、発光素子(発光表示素子ともいう)、を用いることができる。発光素子は、電流または電圧によって輝度が制御される素子をその範疇に含んでおり、具体的には無機EL(Electro Luminescence)、有機EL等が含まれる。また、電子インクなど、電気的作用によりコントラストが変化する表示媒体も適用することができる。
【0101】
半導体装置の一形態について、図4乃至図6を用いて説明する。図4乃至図6は、図10(B)のM−Nにおける断面図に相当する。
【0102】
図4乃至図6で示すように、半導体装置は接続端子電極4015及び端子電極4016を有しており、接続端子電極4015及び端子電極4016はFPC4018が有する端子と異方性導電膜4019を介して、電気的に接続されている。
【0103】
接続端子電極4015は、第1の電極層4030と同じ導電膜から形成され、端子電極4016は、トランジスタ4010、トランジスタ4011のソース電極及びドレイン電極と同じ導電膜で形成されている。
【0104】
また第1の基板4001上に設けられた画素部4002と、走査線駆動回路4004は、トランジスタを複数有しており、図4乃至図6では、画素部4002に含まれるトランジスタ4010と、走査線駆動回路4004に含まれるトランジスタ4011とを例示している。図4では、トランジスタ4010、トランジスタ4011上には絶縁膜4020が設けられ、図5及び図6ではさらに、絶縁層4021が設けられている。なお、絶縁膜4023は下地膜として機能する絶縁膜である。
【0105】
本実施の形態では、トランジスタ4010、トランジスタ4011として、実施の形態1で示したトランジスタを適用することができる。トランジスタ4010、トランジスタ4011は、電気的特性変動が抑制されており、電気的に安定である。よって、図4乃至図6で示す本実施の形態の半導体装置として信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0106】
画素部4002に設けられたトランジスタ4010は表示素子と電気的に接続し、表示パネルを構成する。表示素子は表示を行うことがでれば特に限定されず、様々な表示素子を用いることができる。
【0107】
図4に表示素子として液晶素子を用いた液晶表示装置の例を示す。図4において、表示素子である液晶素子4013は、第1の電極層4030、第2の電極層4031、及び液晶層4008を含む。なお、液晶層4008を挟持するように配向膜として機能する絶縁膜4032、絶縁膜4033が設けられている。第2の電極層4031は第2の基板4006側に設けられ、第1の電極層4030と第2の電極層4031とは液晶層4008を介して積層する構成となっている。
【0108】
またスペーサ4035は絶縁膜を選択的にエッチングすることで得られる柱状のスペーサであり、液晶層4008の膜厚(セルギャップ)を制御するために設けられている。なおスペーサの形状は、柱状に限定されるものではなく、例えば、球状のスペーサを用いていても良い。
【0109】
表示素子として、液晶素子を用いる場合、サーモトロピック液晶、低分子液晶、高分子液晶、高分子分散型液晶、強誘電性液晶、反強誘電性液晶等を用いることができる。これらの液晶材料は、条件により、コレステリック相、スメクチック相、キュービック相、カイラルネマチック相、等方相等を示す。
【0110】
また、配向膜を用いないブルー相を示す液晶を用いてもよい。ブルー相は液晶相の一つであり、コレステリック液晶を昇温していくと、コレステリック相から等方相へ転移する直前に発現する相である。ブルー相は狭い温度範囲でしか発現しないため、温度範囲を改善するために5重量%以上のカイラル剤を混合させた液晶組成物を用いて液晶層に用いる。ブルー相を示す液晶とカイラル剤とを含む液晶組成物は、応答速度が1msec以下と短く、光学的等方性であるため配向処理が不要であり、視野角依存性が小さい。また配向膜を設けなくてもよいのでラビング処理も不要となるため、ラビング処理によって引き起こされる静電破壊を防止することができ、作製工程中の液晶表示装置の不良や破損を軽減することができる。よって液晶表示装置の生産性を向上させることが可能となる。
【0111】
また、液晶材料の固有抵抗率は、1×109Ω・cm以上であり、好ましくは1×1011Ω・cm以上であり、さらに好ましくは1×1012Ω・cm以上である。なお、本明細書における固有抵抗率の値は、20℃で測定した値とする。
【0112】
液晶表示装置に設けられる保持容量の大きさは、画素部に配置されるトランジスタのリーク電流等を考慮して、所定の期間電荷を保持できるように設定される。高純度の酸化物半導体膜を有するトランジスタを用いることにより、各画素における液晶容量に対して1/3以下、好ましくは1/5以下の容量の大きさを有する保持容量を設ければ充分である。
【0113】
本実施の形態で用いる高純度化された酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、オフ状態における電流値(オフ電流値)を低くすることができる。よって、画像信号等の電気信号の保持時間を長くすることができ、電源オン状態では書き込み間隔も長く設定できる。よって、リフレッシュ動作の頻度を少なくすることができるため、消費電力を抑制する効果を奏する。
【0114】
また、本実施の形態で用いる高純度化された酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、比較的高い電界効果移動度が得られるため、高速駆動が可能である。よって、液晶表示装置の画素部に上記トランジスタを用いることで、高画質な画像を提供することができる。また、上記トランジスタは、同一基板上に駆動回路部または画素部に作り分けて作製することができるため、液晶表示装置の部品点数を削減することができる。
【0115】
液晶表示装置には、TN(Twisted Nematic)モード、IPS(In−Plane−Switching)モード、FFS(Fringe Field Switching)モード、ASM(Axially Symmetric aligned Micro−cell)モード、OCB(Optical Compensated Birefringence)モード、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)モード、AFLC(AntiFerroelectric Liquid Crystal)モードなどを用いることができる。
【0116】
また、ノーマリーブラック型の液晶表示装置、例えば垂直配向(VA)モードを採用した透過型の液晶表示装置としてもよい。ここで、垂直配向モードとは、液晶表示パネルの液晶分子の配列を制御する方式の一種であり、電圧が印加されていないときにパネル面に対して液晶分子が垂直方向を向く方式である。垂直配向モードとしては、いくつか挙げられるが、例えば、MVA(Multi−Domain Vertical Alignment)モード、PVA(Patterned Vertical Alignment)モード、ASV(Advanced Super View)モードなどを用いることができる。また、画素(ピクセル)をいくつかの領域(サブピクセル)に分け、それぞれ別の方向に分子を倒すよう工夫されているマルチドメイン化あるいはマルチドメイン設計といわれる方法を用いることができる。
【0117】
また、表示装置において、ブラックマトリクス(遮光層)、偏光部材、位相差部材、反射防止部材などの光学部材(光学基板)などは適宜設ける。例えば、偏光基板及び位相差基板による円偏光を用いてもよい。また、光源としてバックライト、サイドライトなどを用いてもよい。
【0118】
また、バックライトとして複数の発光ダイオード(LED)を用いて、時間分割表示方式(フィールドシーケンシャル駆動方式)を行うことも可能である。フィールドシーケンシャル駆動方式を適用することで、カラーフィルタを用いることなく、カラー表示を行うことができる。
【0119】
また、画素部における表示方式は、プログレッシブ方式やインターレース方式等を用いることができる。また、カラー表示する際に画素で制御する色要素としては、RGB(Rは赤、Gは緑、Bは青を表す)の三色に限定されない。例えば、RGBW(Wは白を表す)、又はRGBに、イエロー、シアン、マゼンタ等を一色以上追加したものがある。なお、色要素のドット毎にその表示領域の大きさが異なっていてもよい。ただし、本発明はカラー表示の表示装置に限定されるものではなく、モノクロ表示の表示装置に適用することもできる。
【0120】
また、表示装置に含まれる表示素子として、エレクトロルミネッセンスを利用する発光素子を適用することができる。エレクトロルミネッセンスを利用する発光素子は、発光材料が有機化合物であるか、無機化合物であるかによって区別され、一般的に、前者は有機EL素子、後者は無機EL素子と呼ばれている。
【0121】
有機EL素子は、発光素子に電圧を印加することにより、一対の電極から電子および正孔がそれぞれ発光性の有機化合物を含む層に注入され、電流が流れる。そして、それらキャリア(電子および正孔)が再結合することにより、発光性の有機化合物が励起状態を形成し、その励起状態が基底状態に戻る際に発光する。このようなメカニズムから、このような発光素子は、電流励起型の発光素子と呼ばれる。
【0122】
無機EL素子は、その素子構成により、分散型無機EL素子と薄膜型無機EL素子とに分類される。分散型無機EL素子は、発光材料の粒子をバインダ中に分散させた発光層を有するものであり、発光メカニズムはドナー準位とアクセプター準位を利用するドナー−アクセプター再結合型発光である。薄膜型無機EL素子は、発光層を誘電体層で挟み込み、さらにそれを電極で挟んだ構造であり、発光メカニズムは金属イオンの内殻電子遷移を利用する局在型発光である。なお、ここでは、発光素子として有機EL素子を用いて説明する。
【0123】
発光素子は発光を取り出すために少なくとも一対の電極の一方が透明であればよい。そして、基板上にトランジスタ及び発光素子を形成し、基板とは逆側の面から発光を取り出す上面射出や、基板側の面から発光を取り出す下面射出や、基板側及び基板とは反対側の面から発光を取り出す両面射出構造の発光素子があり、どの射出構造の発光素子も適用することができる。
【0124】
図5に表示素子として発光素子を用いた発光装置の例を示す。表示素子である発光素子4513は、画素部4002に設けられたトランジスタ4010と電気的に接続している。なお発光素子4513の構成は、第1の電極層4030、電界発光層4511、第2の電極層4031の積層構造であるが、示した構成に限定されない。発光素子4513から取り出す光の方向などに合わせて、発光素子4513の構成は適宜変えることができる。
【0125】
隔壁4510は、有機絶縁材料、又は無機絶縁材料を用いて形成する。特に感光性の樹脂材料を用い、第1の電極層4030上に開口部を形成し、その開口部の側壁が連続した曲率を持って形成される傾斜面となるように形成することが好ましい。
【0126】
電界発光層4511は、単数の層で構成されていても、複数の層が積層されるように構成されていてもどちらでも良い。
【0127】
発光素子4513に酸素、水素、水分、二酸化炭素等が侵入しないように、第2の電極層4031及び隔壁4510上に保護膜を形成してもよい。保護膜としては、窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、DLC膜等を形成することができる。また、第1の基板4001、第2の基板4006、及びシール材4005によって封止された空間には充填材4514が設けられ密封されている。このように外気に曝されないように気密性が高く、脱ガスの少ない保護フィルム(貼り合わせフィルム、紫外線硬化樹脂フィルム等)やカバー材でパッケージング(封入)することが好ましい。
【0128】
充填材4514としては窒素やアルゴンなどの不活性な気体の他に、紫外線硬化樹脂または熱硬化樹脂を用いることができ、PVC(ポリビニルクロライド)、アクリル、ポリイミド、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、PVB(ポリビニルブチラル)またはEVA(エチレンビニルアセテート)を用いることができる。例えば充填材として窒素を用いればよい。
【0129】
また、必要であれば、発光素子の射出面に偏光板、又は円偏光板(楕円偏光板を含む)、位相差板(λ/4板、λ/2板)、カラーフィルタなどの光学フィルムを適宜設けてもよい。また、偏光板又は円偏光板に反射防止膜を設けてもよい。例えば、表面の凹凸により反射光を拡散し、映り込みを低減できるアンチグレア処理を施すことができる。
【0130】
また、表示装置として、電子インクを駆動させる電子ペーパーを提供することも可能である。電子ペーパーは、電気泳動表示装置(電気泳動ディスプレイ)とも呼ばれており、紙と同じ読みやすさ、他の表示装置に比べ低消費電力、薄くて軽い形状とすることが可能という利点を有している。
【0131】
電気泳動表示装置は、様々な形態が考えられ得るが、プラスの電荷を有する第1の粒子と、マイナスの電荷を有する第2の粒子とを含むマイクロカプセルが溶媒または溶質に複数分散されたものであり、マイクロカプセルに電界を印加することによって、マイクロカプセル中の粒子を互いに反対方向に移動させて一方側に集合した粒子の色のみを表示するものである。なお、第1の粒子または第2の粒子は染料を含み、電界がない場合において移動しないものである。また、第1の粒子の色と第2の粒子の色は異なるもの(無色を含む)とする。
【0132】
このように、電気泳動表示装置は、誘電定数の高い物質が高い電界領域に移動する、いわゆる誘電泳動的効果を利用したディスプレイである。
【0133】
上記マイクロカプセルを溶媒中に分散させたものが電子インクと呼ばれるものであり、この電子インクはガラス、プラスチック、布、紙などの表面に印刷することができる。また、カラーフィルタや色素を有する粒子を用いることによってカラー表示も可能である。
【0134】
なお、マイクロカプセル中の第1の粒子および第2の粒子は、導電体材料、絶縁体材料、半導体材料、磁性材料、液晶材料、強誘電性材料、エレクトロルミネセント材料、エレクトロクロミック材料、磁気泳動材料から選ばれた一種の材料、またはこれらの複合材料を用いればよい。
【0135】
また、電子ペーパーとして、ツイストボール表示方式を用いる表示装置も適用することができる。ツイストボール表示方式とは、白と黒に塗り分けられた球形粒子を表示素子に用いる電極層である第1の電極層及び第2の電極層の間に配置し、第1の電極層及び第2の電極層に電位差を生じさせての球形粒子の向きを制御することにより、表示を行う方法である。
【0136】
図6に、半導体装置の一形態としてアクティブマトリクス型の電子ペーパーを示す。図6の電子ペーパーは、ツイストボール表示方式を用いた表示装置の例である。ツイストボール表示方式とは、白と黒に塗り分けられた球形粒子を表示素子に用いる電極層間に配置し、電極層間に電位差を生じさせての球形粒子の向きを制御することにより、表示を行う方法である。
【0137】
トランジスタ4010と接続する第1の電極層4030と、第2の基板4006に設けられた第2の電極層4031との間には黒色領域4615a及び白色領域4615bを有し、周りに液体で満たされているキャビティ4612を含む球形粒子4613が設けられており、球形粒子4613の周囲は樹脂等の充填材4614で充填されている。第2の電極層4031が共通電極(対向電極)に相当する。第2の電極層4031は、共通電位線と電気的に接続される。
【0138】
なお、図4乃至図6において、第1の基板4001、第2の基板4006としては、ガラス基板の他、可撓性を有する基板も用いることができ、例えば透光性を有するプラスチック基板などを用いることができる。プラスチックとしては、FRP(Fiberglass−Reinforced Plastics)板、PVF(ポリビニルフルオライド)フィルム、ポリエステルフィルムまたはアクリル樹脂フィルムを用いることができる。また、アルミニウムホイルをPVFフィルムやポリエステルフィルムで挟んだ構造のシートを用いることもできる。
【0139】
絶縁膜4023は、酸化シリコン、酸窒化シリコン、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化ガリウム等の無機絶縁材料を含む材料を用いて形成することができる。
【0140】
また、絶縁膜4023を第1のゲート絶縁膜4024aと同様に、プラズマCVD法により水素を含まないフッ化珪素及び酸素を含む成膜ガスを用いた酸化シリコン膜で形成してもよい。プラズマCVD法によりフッ化珪素及び酸素を含む成膜ガスを用いて形成される絶縁膜4023は、成膜ガスに水素を含まないので、酸化物半導体膜へ混入することでトランジスタの特性変動の要因となる水素濃度を低く抑えた膜とすることができる。
【0141】
絶縁膜4020は、酸化シリコン、酸窒化シリコン、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化ガリウム、また窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、又は窒化酸化アルミニウム等の無機絶縁材料を含む材料を用いて形成することができる。絶縁膜4020は単層、又は積層で形成すればよく、トランジスタの保護膜として機能する。絶縁膜4020の作製方法に特に限定はなく、例えば、プラズマCVD法やスパッタリング法などの成膜方法を用いて作製することができる。
【0142】
第1のゲート絶縁膜4024aは、プラズマCVD法により水素を含まないフッ化珪素及び酸素を含む成膜ガスを用いた酸化シリコン膜で形成する。フッ化珪素としては四フッ化珪素(SiF4)、六フッ化二珪素(Si2F6)などを用いることができる。また、第1のゲート絶縁膜402aの成膜ガスに希ガス(ヘリウム、アルゴンなど)を含ませてもよい。
【0143】
プラズマCVD法によりフッ化珪素及び酸素を含む成膜ガスを用いて形成する第1のゲート絶縁膜4024aは、成膜ガスに水素を含まないので、酸化物半導体膜へ混入することでトランジスタの特性変動の要因となる水素濃度を低く抑えた膜とすることができる。よって、第1のゲート絶縁膜4024aは酸化物半導体膜と接して設けられても、酸化物半導体膜を水素で汚染することなく、接して設けられることで他の膜より水素等の不純物が酸化物半導体膜へ混入することを防止することができる。
【0144】
第1のゲート絶縁膜4024aを、プラズマCVD法により四フッ化珪素(SiF4)、一酸化二窒素(N2O)及びアルゴン(Ar)を含む成膜ガスを用いて形成する。例えば、第1のゲート絶縁膜4024aの成膜条件としては、成膜ガスとしては四フッ化珪素(SiF4)、一酸化二窒素(N2O)、及びアルゴン(Ar)(SiF4:N2O:Ar=6sccm:1000sccm:1000sccm)を用い、チャンバー内の圧力は133Pa、電力は800W、電源周波数は60MHz、基板(シリコンウエハ)の温度は400℃とすればよい。
【0145】
よって、第1のゲート絶縁膜4024aはフッ素を含む酸化シリコン膜となる。成膜ガスとしてフッ化珪素及び酸素を用いて形成した第1のゲート絶縁膜4024aでは、フッ素濃度より水素濃度の方が低く、好ましくはフッ素濃度は1×1020 atoms/cm3以上であり、水素濃度は1×1020 atoms/cm3未満である。第1のゲート絶縁膜4024aの膜厚は1nm以上10nm以下程度とすればよい。
【0146】
なお、実施の形態1で示したように、第1のゲート絶縁膜4024aは、ソース電極層及びドレイン電極層を酸化物半導体膜が覆った状態で酸化物半導体膜上に形成されるため、ソース電極層及びドレイン電極層は、第1のゲート絶縁膜4024a成膜時に用いるフッ化珪素及び酸素を含む成膜ガスに曝されず、腐蝕などの損傷を受けない。
【0147】
第2のゲート絶縁膜4024bは、プラズマCVD法により水素化珪素及び酸素を含む成膜ガスを用いた酸化シリコン膜で形成する。水素化珪素としては四水素化珪素(モノシラン:SiH4)、六水素化珪素(ジシラン:Si2H6)、八水素化珪素(トリシラン:Si3H8)などを用いることができる。また、第2のゲート絶縁膜4024bの成膜ガスに希ガス(ヘリウム、アルゴンなど)を含ませてもよい。
【0148】
本実施の形態では、第2のゲート絶縁膜4024bを、プラズマCVD法により水素化珪素(SiH4)、一酸化二窒素(N2O)を含む成膜ガスを用いて形成する。例えば、第2のゲート絶縁膜4024bの成膜条件としては、成膜ガスとしては四水素化珪素(SiH4)及び一酸化二窒素(N2O)(SiH4:N2O=4sccm:800sccm)を用い、チャンバー内の圧力は40Pa、電力は150W、電源周波数は60MHz、基板(シリコンウエハ)の温度は400℃とすればよい。
【0149】
よって、第2のゲート絶縁膜4024bは、第1のゲート絶縁膜4024aと比較してより高濃度の水素を含む酸化シリコン膜となる。成膜ガスとして水素化珪素及び酸素を用いて形成した第2のゲート絶縁膜4024bでは、フッ素濃度より水素濃度の方が高く、好ましくはフッ素濃度は1×1020 atoms/cm3未満であり、水素濃度は1×1020atoms/cm3以上である。第2のゲート絶縁膜4024bの膜厚は50nm以上100nm以下程度とすればよい。
【0150】
プラズマCVD法によりフッ化珪素及び酸素を含む成膜ガスを用いて形成すると、第1のゲート絶縁膜4024aを緻密な膜とすることができる。緻密性が高い第1のゲート絶縁膜4024aによって、積層する第2のゲート絶縁膜4024bに含まれる水素が酸化物半導体膜中に侵入するのを防止することができる。
【0151】
ソース電極層、ドレイン電極層、第1のゲート絶縁膜4024a上に接して形成される第2のゲート絶縁膜4024bは、プラズマCVD法により水素化珪素及び酸素を含む成膜ガスを用いて形成するため比較的速い成膜速度で成膜することができるので、第1のゲート絶縁膜4024aより厚膜化が可能であり、生産性に有利である。また、接して形成するソース電極層、ドレイン電極層を腐蝕するフッ素や塩素などを成膜ガスに用いないために、ソース電極層、ドレイン電極層表面をあらすことなく第2のゲート絶縁膜4024bを形成することができる。
【0152】
従ってトランジスタ4010、トランジスタ4011の作製工程において、ソース電極層、ドレイン電極層の腐蝕による形状不良や、積層する第2のゲート絶縁膜4024bの被覆不良などを防止し、信頼性の高い半導体装置を歩留まり良く作製することができる。
【0153】
絶縁層4021は、無機絶縁材料又は有機絶縁材料を用いて形成することができる。なお、アクリル樹脂、ポリイミド、ベンゾシクロブテン系樹脂、ポリアミド、エポキシ樹脂等の、耐熱性を有する有機絶縁材料を用いると、平坦化絶縁膜として好適である。また上記有機絶縁材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)、シロキサン系樹脂、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス)等を用いることができる。なお、これらの材料で形成される絶縁膜を複数積層させることで、絶縁層を形成してもよい。
【0154】
絶縁層4021の形成法は、特に限定されず、その材料に応じて、スパッタリング法、スピンコート法、ディッピング法、スプレー塗布、液滴吐出法(インクジェット法、スクリーン印刷、オフセット印刷等)、ロールコーティング、カーテンコーティング、ナイフコーティング等を用いることができる。
【0155】
表示装置は光源又は表示素子からの光を透過させて表示を行う。よって光が透過する画素部に設けられる基板、絶縁膜、導電膜などの薄膜はすべて可視光の波長領域の光に対して透光性とする。
【0156】
表示素子に電圧を印加する第1の電極層及び第2の電極層(画素電極層、共通電極層、対向電極層などともいう)においては、取り出す光の方向、電極層が設けられる場所、及び電極層のパターン構造によって透光性、反射性を選択すればよい。
【0157】
第1の電極層4030、第2の電極層4031は、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム錫酸化物(以下、ITOと示す。)、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの透光性を有する導電性材料を用いることができる。
【0158】
また、第1の電極層4030、第2の電極層4031はタングステン(W)、モリブデン(Mo)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(Ag)等の金属、又はその合金、若しくはその窒化物から一つ、又は複数種を用いて形成することができる。
【0159】
また、トランジスタは静電気などにより破壊されやすいため、駆動回路保護用の保護回路を設けることが好ましい。保護回路は、非線形素子を用いて構成することが好ましい。
【0160】
以上のように実施の形態1で一例を示したトランジスタを適用することで、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0161】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0162】
(実施の形態3)
実施の形態1で一例を示したトランジスタを用いて、対象物の情報を読み取るイメージセンサ機能を有する半導体装置を作製することができる。
【0163】
図7(A)に、イメージセンサ機能を有する半導体装置の一例を示す。図7(A)はフォトセンサの等価回路であり、図7(B)はフォトセンサの一部を示す断面図である。
【0164】
フォトダイオード602は、一方の電極がフォトダイオードリセット信号線658に、他方の電極がトランジスタ640のゲートに電気的に接続されている。トランジスタ640は、ソース又はドレインの一方がフォトセンサ基準信号線672に、ソース又はドレインの他方がトランジスタ656のソース又はドレインの一方に電気的に接続されている。トランジスタ656は、ゲートがゲート信号線659に、ソース又はドレインの他方がフォトセンサ出力信号線671に電気的に接続されている。
【0165】
なお、本明細書における回路図において、酸化物半導体膜を用いるトランジスタと明確に判明できるように、酸化物半導体膜を用いるトランジスタの記号には「OS」と記載している。図7(A)において、トランジスタ640、トランジスタ656は酸化物半導体膜を用いるトランジスタである。
【0166】
図7(B)は、フォトセンサにおけるフォトダイオード602及びトランジスタ640に示す断面図であり、絶縁表面を有する基板601(TFT基板)上に、センサとして機能するフォトダイオード602及びトランジスタ640が設けられている。フォトダイオード602、トランジスタ640の上には接着層608を用いて基板613が設けられている。
【0167】
トランジスタ640上には絶縁膜631、保護絶縁膜632、第1の層間絶縁層633、第2の層間絶縁層634が設けられている。フォトダイオード602は、第1の層間絶縁層633上に設けられ、第1の層間絶縁層633上に形成した電極層641と、第2の層間絶縁層634上に設けられた電極層642との間に、第1の層間絶縁層633側から順に第1半導体層606a、第2半導体層606b、及び第3半導体層606cを積層した構造を有している。
【0168】
本実施の形態では、トランジスタ640として、実施の形態1で一例を示したトランジスタを適用することができる。トランジスタ640、トランジスタ656は、電気的特性変動が抑制されており、電気的に安定であるため、図7で示す本実施の形態の半導体装置として信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0169】
電極層641は、第2の層間絶縁層634に形成された導電層643と電気的に接続し、電極層642は電極層644を介してゲート電極645と電気的に接続している。ゲート電極645は、トランジスタ640のゲート電極と電気的に接続しており、フォトダイオード602はトランジスタ640と電気的に接続している。
【0170】
ここでは、第1半導体層606aとしてp型の導電型を有する半導体層と、第2半導体層606bとして高抵抗な半導体層(i型半導体層)、第3半導体層606cとしてn型の導電型を有する半導体層を積層するpin型のフォトダイオードを例示している。
【0171】
第1半導体層606aはp型半導体層であり、p型を付与する不純物元素を含むアモルファスシリコン膜により形成することができる。第1半導体層606aの形成には13族の不純物元素(例えばボロン(B))を含む半導体材料ガスを用いて、プラズマCVD法により形成する。半導体材料ガスとしてはシラン(SiH4)を用いればよい。または、Si2H6、SiH2Cl2、SiHCl3、SiCl4、SiF4等を用いてもよい。また、不純物元素を含まないアモルファスシリコン膜を形成した後に、拡散法やイオン注入法を用いて該アモルファスシリコン膜に不純物元素を導入してもよい。イオン注入法等により不純物元素を導入した後に加熱等を行うことで、不純物元素を拡散させるとよい。この場合にアモルファスシリコン膜を形成する方法としては、LPCVD法、気相成長法、又はスパッタリング法等を用いればよい。第1半導体層606aの膜厚は10nm以上50nm以下となるよう形成することが好ましい。
【0172】
第2半導体層606bは、i型半導体層(真性半導体層)であり、アモルファスシリコン膜により形成する。第2半導体層606bの形成には、半導体材料ガスを用いて、アモルファスシリコン膜をプラズマCVD法により形成する。半導体材料ガスとしては、シラン(SiH4)を用いればよい。または、Si2H6、SiH2Cl2、SiHCl3、SiCl4、SiF4等を用いてもよい。第2半導体層606bの形成は、LPCVD法、気相成長法、スパッタリング法等により行っても良い。第2半導体層606bの膜厚は200nm以上1000nm以下となるように形成することが好ましい。
【0173】
第3半導体層606cは、n型半導体層であり、n型を付与する不純物元素を含むアモルファスシリコン膜により形成する。第3半導体層606cの形成には、15族の不純物元素(例えばリン(P))を含む半導体材料ガスを用いて、プラズマCVD法により形成する。半導体材料ガスとしてはシラン(SiH4)を用いればよい。または、Si2H6、SiH2Cl2、SiHCl3、SiCl4、SiF4等を用いてもよい。また、不純物元素を含まないアモルファスシリコン膜を形成した後に、拡散法やイオン注入法を用いて該アモルファスシリコン膜に不純物元素を導入してもよい。イオン注入法等により不純物元素を導入した後に加熱等を行うことで、不純物元素を拡散させるとよい。この場合にアモルファスシリコン膜を形成する方法としては、LPCVD法、気相成長法、又はスパッタリング法等を用いればよい。第3半導体層606cの膜厚は20nm以上200nm以下となるよう形成することが好ましい。
【0174】
また、第1半導体層606a、第2半導体層606b、及び第3半導体層606cは、アモルファス半導体ではなく、多結晶半導体を用いて形成してもよいし、微結晶(セミアモルファス半導体(Semi Amorphous Semiconductor:SAS)を用いて形成してもよい。
【0175】
微結晶半導体は、ギブスの自由エネルギーを考慮すれば非晶質と単結晶の中間的な準安定状態に属するものである。すなわち、自由エネルギー的に安定な第3の状態を有する半導体であって、短距離秩序を持ち格子歪みを有する。柱状または針状結晶が基板表面に対して法線方向に成長している。微結晶半導体の代表例である微結晶シリコンは、そのラマンスペクトルが単結晶シリコンを示す520cm−1よりも低波数側に、シフトしている。即ち、単結晶シリコンを示す520cm−1とアモルファスシリコンを示す480cm−1の間に微結晶シリコンのラマンスペクトルのピークがある。また、ダングリングボンドを終端するため水素またはハロゲンを少なくとも1原子%またはそれ以上含ませている。さらに、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、ネオンなどの希ガス元素を含ませて格子歪みをさらに助長させることで、安定性が増し良好な微結晶半導体膜が得られる。
【0176】
この微結晶半導体膜は、周波数が数十MHz〜数百MHzの高周波プラズマCVD法、または周波数が1GHz以上のマイクロ波プラズマCVD装置により形成することができる。代表的には、SiH4、Si2H6、SiH2Cl2、SiHCl3などの水素化珪素や、SiCl4、SiF4などのハロゲン化珪素を水素で希釈して形成することができる。また、水素化珪素及び水素に加え、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、ネオンから選ばれた一種または複数種の希ガス元素で希釈して微結晶半導体膜を形成することができる。これらのときの水素化珪素に対して水素の流量比を5倍以上200倍以下、好ましくは50倍以上150倍以下、更に好ましくは100倍とする。さらには、シリコンを含む気体中に、CH4、C2H6等の炭化物気体、GeH4、GeF4等のゲルマニウム化気体、F2等を混入させてもよい。
【0177】
また、光電効果で発生した正孔の移動度は電子の移動度に比べて小さいため、pin型のフォトダイオードはp型の半導体層側(矢印の方向)を受光面とする方がよい特性を示す。ここでは、pin型のフォトダイオードが形成されている基板601の面からフォトダイオード602が受ける光を電気信号に変換する例を示す。また、受光面とした半導体層側とは逆の導電型を有する半導体層側からの光は外乱光となるため、電極層は遮光性を有する導電膜を用いるとよい。また、n型の半導体層側を受光面として用いることもできる。
【0178】
第1の層間絶縁層633、第2の層間絶縁層634としては、表面凹凸を低減するため平坦化絶縁膜として機能する絶縁層が好ましい。第1の層間絶縁層633、第2の層間絶縁層634としては、例えばポリイミド、アクリル樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、ポリアミド、エポキシ樹脂等の有機絶縁材料を用いることができる。また上記有機絶縁材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)、シロキサン系樹脂、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス)等の単層、又は積層を用いることができる。
【0179】
絶縁膜631、保護絶縁膜632、第1の層間絶縁層633、第2の層間絶縁層634としては、絶縁性材料を用いて、その材料に応じて、スパッタリング法、スピンコート法、ディッピング法、スプレー塗布、液滴吐出法(インクジェット法、スクリーン印刷、オフセット印刷等)、ロールコーティング、カーテンコーティング、ナイフコーティング等を用いて形成することができる。
【0180】
フォトダイオード602に入射する光を検出することによって、被検出物の情報を読み取ることができる。なお、被検出物の情報を読み取る際にバックライトなどの光源を用いることができる。
【0181】
トランジスタ640として、実施の形態1で一例を示したトランジスタを用いることができる。成膜ガスとしてフッ化珪素及び酸素を用いて形成し、水素濃度が低く制御され且つフッ素を含む緻密な酸化シリコン膜を酸化物半導体膜と接して設け、該フッ素を含む緻密な酸化シリコン膜上に、成膜ガスとしてより成膜速度の速い水素化珪素及び酸素を用いて形成した酸化シリコン膜を積層してゲート絶縁膜として用いることで、トランジスタ640に安定した電気的特性を付与し、高信頼性化することができる。
【0182】
また、成膜ガスとして生産性に有利な水素化珪素及び酸素を用いて形成した酸化シリコン膜も用いることで、歩留まり良く半導体装置を作製することができる。
【0183】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0184】
(実施の形態4)
本明細書に開示する半導体装置は、さまざまな電子機器(遊技機も含む)に適用することができる。電子機器としては、例えば、テレビジョン装置(テレビ、またはテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ等のカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。上記実施の形態で説明した液晶表示装置を具備する電子機器の例について説明する。
【0185】
図8(A)は電子書籍(E−bookともいう)であり、筐体9630、表示部9631、操作キー9632、太陽電池9633、充放電制御回路9634を有することができる。図8(A)に示した電子書籍は、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示する機能、カレンダー、日付又は時刻などを表示部に表示する機能、表示部に表示した情報を操作又は編集する機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、等を有することができる。なお、図8(A)では充放電制御回路9634の一例としてバッテリー9635、DCDCコンバータ(以下、コンバータと略記)9636を有する構成について示している。上記他の実施の形態のいずれかで示した半導体装置を表示部9631に適用することにより、信頼性の高い電子書籍とすることができる。
【0186】
図8(A)に示す構成とすることにより、表示部9631として半透過型、又は反射型の液晶表示装置を用いる場合、比較的明るい状況下での使用も予想され、太陽電池9633による発電、及びバッテリー9635での充電を効率よく行うことができ、好適である。なお太陽電池9633は、筐体9630の空きスペース(表面や裏面)に適宜設けることができるため、効率的なバッテリー9635の充電を行う構成とすることができるため好適である。なおバッテリー9635としては、リチウムイオン電池を用いると、小型化を図れる等の利点がある。
【0187】
また図8(A)に示す充放電制御回路9634の構成、及び動作について図8(B)にブロック図を示し説明する。図8(B)には、太陽電池9633、バッテリー9635、コンバータ9636、コンバータ9637、スイッチSW1乃至スイッチSW3、表示部9631について示しており、バッテリー9635、コンバータ9636、コンバータ9637、スイッチSW1乃至スイッチSW3が充放電制御回路9634に対応する箇所となる。
【0188】
まず外光により太陽電池9633により発電がされる場合の動作の例について説明する。太陽電池で発電した電力は、バッテリー9635を充電するための電圧となるようコンバータ9636で昇圧または降圧がなされる。そして、表示部9631の動作に太陽電池9633からの電力が用いられる際にはスイッチSW1をオンにし、コンバータ9637で表示部9631に必要な電圧に昇圧または降圧をすることとなる。また、表示部9631での表示を行わない際には、SW1をオフにし、SW2をオンにしてバッテリー9635の充電を行う構成とすればよい。
【0189】
次いで外光により太陽電池9633により発電がされない場合の動作の例について説明する。バッテリー9635に蓄電された電力は、スイッチSW3をオンにすることでコンバータ9637により昇圧または降圧がなされる。そして、表示部9631の動作にバッテリー9635からの電力が用いられることとなる。
【0190】
なお太陽電池9633については、充電手段の一例として示したが、他の手段によるバッテリー9635の充電を行う構成であってもよい。また他の充電手段を組み合わせて行う構成としてもよい。
【0191】
図9(A)は、ノート型のパーソナルコンピュータであり、本体3001、筐体3002、表示部3003、キーボード3004などによって構成されている。上記他の実施の形態のいずれかで示した半導体装置を表示部3003に適用することにより、信頼性の高いノート型のパーソナルコンピュータとすることができる。
【0192】
図9(B)は、携帯情報端末(PDA)であり、本体3021には表示部3023と、外部インターフェイス3025と、操作ボタン3024等が設けられている。また操作用の付属品としてスタイラス3022がある。上記他の実施の形態のいずれかで示した半導体装置を表示部3023に適用することにより、より信頼性の高い携帯情報端末(PDA)とすることができる。
【0193】
図9(C)は、電子書籍の一例を示している。例えば、電子書籍2700は、筐体2701および筐体2703の2つの筐体で構成されている。筐体2701および筐体2703は、軸部2711により一体とされており、該軸部2711を軸として開閉動作を行うことができる。このような構成により、紙の書籍のような動作を行うことが可能となる。
【0194】
筐体2701には表示部2705が組み込まれ、筐体2703には表示部2707が組み込まれている。表示部2705および表示部2707は、続き画面を表示する構成としてもよいし、異なる画面を表示する構成としてもよい。異なる画面を表示する構成とすることで、例えば右側の表示部(図9(C)では表示部2705)に文章を表示し、左側の表示部(図9(C)では表示部2707)に画像を表示することができる。上記他の実施の形態のいずれかで示した半導体装置を表示部2705、表示部2707に適用することにより、信頼性の高い電子書籍2700とすることができる。
【0195】
また、図9(C)では、筐体2701に操作部などを備えた例を示している。例えば、筐体2701において、電源2721、操作キー2723、スピーカー2725などを備えている。操作キー2723により、頁を送ることができる。なお、筐体の表示部と同一面にキーボードやポインティングデバイスなどを備える構成としてもよい。また、筐体の裏面や側面に、外部接続用端子(イヤホン端子、USB端子など)、記録媒体挿入部などを備える構成としてもよい。さらに、電子書籍2700は、電子辞書としての機能を持たせた構成としてもよい。
【0196】
また、電子書籍2700は、無線で情報を送受信できる構成としてもよい。無線により、電子書籍サーバから、所望の書籍データなどを購入し、ダウンロードする構成とすることも可能である。
【0197】
図9(D)は、携帯電話であり、筐体2800及び筐体2801の二つの筐体で構成されている。筐体2801には、表示パネル2802、スピーカー2803、マイクロフォン2804、ポインティングデバイス2806、カメラ用レンズ2807、外部接続端子2808などを備えている。また、筐体2800には、携帯電話の充電を行う太陽電池セル2810、外部メモリスロット2811などを備えている。また、アンテナは筐体2801内部に内蔵されている。上記他の実施の形態のいずれかで示した半導体装置を表示パネル2802に適用することにより、信頼性の高い携帯電話とすることができる。
【0198】
また、表示パネル2802はタッチパネルを備えており、図9(D)には映像表示されている複数の操作キー2805を点線で示している。なお、太陽電池セル2810で出力される電圧を各回路に必要な電圧に昇圧するための昇圧回路も実装している。
【0199】
表示パネル2802は、使用形態に応じて表示の方向が適宜変化する。また、表示パネル2802と同一面上にカメラ用レンズ2807を備えているため、テレビ電話が可能である。スピーカー2803及びマイクロフォン2804は音声通話に限らず、テレビ電話、録音、再生などが可能である。さらに、筐体2800と筐体2801は、スライドし、図9(D)のように展開している状態から重なり合った状態とすることができ、携帯に適した小型化が可能である。
【0200】
外部接続端子2808はACアダプタ及びUSBケーブルなどの各種ケーブルと接続可能であり、充電及びパーソナルコンピュータなどとのデータ通信が可能である。また、外部メモリスロット2811に記録媒体を挿入し、より大量のデータ保存及び移動に対応できる。
【0201】
また、上記機能に加えて、赤外線通信機能、テレビ受信機能などを備えたものであってもよい。
【0202】
図9(E)は、デジタルビデオカメラであり、本体3051、表示部(A)3057、接眼部3053、操作スイッチ3054、表示部(B)3055、バッテリー3056などによって構成されている。上記他の実施の形態のいずれかで示した半導体装置を表示部(A)3057、表示部(B)3055に適用することにより、信頼性の高いデジタルビデオカメラとすることができる。
【0203】
図9(F)は、テレビジョン装置の一例を示している。テレビジョン装置9600は、筐体9601に表示部9603が組み込まれている。表示部9603により、映像を表示することが可能である。また、ここでは、スタンド9605により筐体9601を支持した構成を示している。上記他の実施の形態のいずれかで示した半導体装置を表示部9603に適用することにより、信頼性の高いテレビジョン装置9600とすることができる。
【0204】
テレビジョン装置9600の操作は、筐体9601が備える操作スイッチや、別体のリモコン操作機により行うことができる。また、リモコン操作機に、当該リモコン操作機から出力する情報を表示する表示部を設ける構成としてもよい。
【0205】
なお、テレビジョン装置9600は、受信機やモデムなどを備えた構成とする。受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して有線または無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)または双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
【0206】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【実施例1】
【0207】
本実施例では、発明の一形態であるトランジスタにおいて、第1のゲート絶縁膜として用いることのできる酸化シリコン膜(酸化シリコン膜1)、及び第2のゲート絶縁膜として用いることのできる酸化シリコン膜(酸化シリコン膜2)を作製し、その膜特性を評価した結果を示す。
【0208】
以下に、本実施例の第1のゲート絶縁膜(酸化シリコン膜1)及び第2のゲート絶縁膜(酸化シリコン膜2)の作製方法を説明する。
【0209】
酸化シリコン膜1及び酸化シリコン膜2は、シリコンウエハ上にプラズマCVD法により形成した。
【0210】
酸化シリコン膜1として、シリコンウエハ上にプラズマCVD法により膜厚200nmの酸化シリコン膜を形成した。酸化シリコン膜1の成膜条件は、成膜ガスとしては四フッ化珪素(SiF4)、一酸化二窒素(N2O)、及びアルゴン(Ar)(SiF4:N2O:Ar=6sccm:1000sccm:1000sccm)を用い、チャンバー内の圧力は133Pa、電力は800W、電源周波数は60MHz、基板(シリコンウエハ)の温度は400℃、基板及び電極間の距離は7mmとした。また成膜速度は0.5nm/min〜1nm/minであった。
【0211】
一方、酸化シリコン膜2として、シリコンウエハ上にプラズマCVD法により膜厚200nmの酸化シリコン膜を形成した。酸化シリコン膜2の成膜条件は、成膜ガスとしては四水素化珪素(SiH4)及び一酸化二窒素(N2O)(SiH4:N2O=4sccm:800sccm)を用い、チャンバー内の圧力は40Pa、電力は150W、電源周波数は60MHz、基板(シリコンウエハ)の温度は400℃、基板及び電極間の距離は28mmとした。また成膜速度は30nm/min〜50nm/minであった。
【0212】
作製した酸化シリコン膜1と酸化シリコン膜2とに二次イオン質量分析計(SIMS、Secondary Ion Mass Spectrometry)による分析を行った。酸化シリコン膜1のSIMSによる測定結果を図11に、酸化シリコン膜2のSIMSによる測定結果を図12に示す。図11及び図12において、縦軸は濃度を示し、横軸は酸化シリコン膜表面からの深さを示す。
【0213】
図11に示すように、成膜ガスとしてフッ化珪素及び酸素を用いて形成した酸化シリコン膜1では、フッ素濃度より水素濃度の方が低く、フッ素濃度は1×1020 atoms/cm3以上であり、水素濃度は1×1020 atoms/cm3未満である。具体的には、フッ素濃度の範囲は、約2×1020 atoms/cm3〜1.4×1021 atoms/cm3程度であったが、水素濃度の範囲は約1×1018 atoms/cm3〜5×1019 atoms/cm3程度と低く抑えられていた。
【0214】
一方、図12に示すように、成膜ガスとして水素化珪素及び酸素を用いて形成した酸化シリコン膜2では、フッ素濃度より水素濃度の方が高く、フッ素濃度は1×1020 atoms/cm3未満であり、水素濃度は1×1020 atoms/cm3以上である。酸化シリコン膜2中に含まれるフッ素濃度の範囲は、約2×1018 atoms/cm3〜1×1019atoms/cm3程度であったが、水素濃度の範囲は約1×1020 atoms/cm3〜1×1021 atoms/cm3程度であった。
【0215】
なお、図11及び図12において、上記フッ素及び水素の濃度範囲は定量範囲内での数値である。
【0216】
以上のように、成膜ガスとしてフッ化珪素及び酸素を用いて形成した酸化シリコン膜1はフッ素を水素より高濃度に含む酸化シリコン膜であり、水素濃度が低く抑えられていることが確認できた。また、フッ素濃度においては、成膜ガスとしてフッ化珪素及び酸素を用いて形成した酸化シリコン膜1に含まれるフッ素濃度が、成膜ガスとして水素化珪素及び酸素を用いて形成した酸化シリコン膜2に含まれるフッ素濃度より高くなり、一方水素濃度においては、成膜ガスとしてフッ化珪素及び酸素を用いて形成した酸化シリコン膜1に含まれる水素濃度が、成膜ガスとして水素化珪素及び酸素を用いて形成した酸化シリコン膜2に含まれる水素濃度より低く抑えることが確認できた。
【0217】
一方、成膜ガスとして水素化珪素及び酸素を用いて形成した酸化シリコン膜2は成膜速度が、成膜ガスとしてフッ化珪素及び酸素を用いて形成した酸化シリコン膜1より速く生産性においては有利である。
【0218】
よって、成膜ガスとしてフッ化珪素及び酸素を用いて形成し、水素濃度が低く制御されたフッ素を含む緻密な酸化シリコン膜(酸化シリコン膜1)を酸化物半導体膜と接して設け、該フッ素を含む緻密な酸化シリコン膜(酸化シリコン膜1)上に、成膜速度の速い水素化珪素を用いて形成した酸化シリコン膜(酸化シリコン膜2)を積層してゲート絶縁膜として用いることで、トランジスタに安定した電気的特性を付与し、高信頼性化することができる。
【0219】
また、生産性に有利な水素化珪素を用いて形成した酸化シリコン膜を用いることで、歩留まり良く半導体装置を作製することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁膜と、
前記絶縁膜上にソース電極層及びドレイン電極層と、
前記絶縁膜、前記ソース電極層、及び前記ドレイン電極層上に島状の酸化物半導体膜と、
前記島状の酸化物半導体膜上に前記島状の酸化物半導体膜と接する島状の第1のゲート絶縁膜と、
前記絶縁膜、前記ソース電極層、前記ドレイン電極層、前記島状の酸化物半導体膜、及び前記島状の第1のゲート絶縁膜上に前記絶縁膜、前記ソース電極層、前記ドレイン電極層、及び前記島状の第1のゲート絶縁膜を覆う第2のゲート絶縁膜と、
前記島状の酸化物半導体膜と重畳する前記第2のゲート絶縁膜上にゲート電極層とを有し、
前記島状の第1のゲート絶縁膜はフッ素を含む酸化シリコン膜であり、
前記第2のゲート絶縁膜は水素を含み、かつ該水素濃度は前記第1のゲート絶縁膜における水素濃度より高いことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
絶縁膜と、
前記絶縁膜上にソース電極層及びドレイン電極層と、
前記絶縁膜、前記ソース電極層、及び前記ドレイン電極層上に島状の酸化物半導体膜と、
前記島状の酸化物半導体膜上に前記島状の酸化物半導体膜と接する島状の第1のゲート絶縁膜と、
前記絶縁膜、前記ソース電極層、前記ドレイン電極層、前記島状の酸化物半導体膜、及び前記島状の第1のゲート絶縁膜上に前記絶縁膜、前記ソース電極層、前記ドレイン電極層、及び前記島状の第1のゲート絶縁膜を覆う第2のゲート絶縁膜と、
前記島状の酸化物半導体膜と重畳する前記第2のゲート絶縁膜上にゲート電極層とを有し、
前記島状の第1のゲート絶縁膜はフッ素を含む酸化シリコン膜であり、
前記第2のゲート絶縁膜は水素を含み、かつ該水素濃度は前記第1のゲート絶縁膜における水素濃度より高く、
前記絶縁膜はフッ素を含む酸化シリコン膜であることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、前記第1のゲート絶縁膜の膜厚は前記第2のゲート絶縁膜の膜厚より薄いことを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項において、前記島状の第1のゲート絶縁膜の膜厚は1nm以上10nm以下であることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項において、前記第1のゲート絶縁膜では、前記第1のゲート絶縁膜中に含まれるフッ素濃度より水素濃度の方が低く、前記フッ素濃度は1×1020 atoms/cm3以上であり、前記水素濃度は1×1020 atoms/cm3未満であることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項において、前記第2のゲート絶縁膜では、前記第2のゲート絶縁膜中に含まれるフッ素濃度より水素濃度の方が高く、前記フッ素濃度は1×1020 atoms/cm3未満であり、前記水素濃度は1×1020 atoms/cm3以上であることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
絶縁膜を形成し、
前記絶縁膜上にソース電極層及びドレイン電極層を形成し、
前記絶縁膜、前記ソース電極層、及び前記ドレイン電極層を覆う酸化物半導体膜を形成し、
前記酸化物半導体膜上に前記酸化物半導体膜と接してプラズマ化学気相成長法によりフッ化珪素及び酸素を含む成膜ガスを用いて第1のゲート絶縁膜を形成し、
前記酸化物半導体膜及び前記第1のゲート絶縁膜を島状の酸化物半導体膜及び島状の第1のゲート絶縁膜に加工し、
前記絶縁膜、前記ソース電極層、前記ドレイン電極層、前記島状の酸化物半導体膜、及び前記島状の第1のゲート絶縁膜上に前記絶縁膜、前記ソース電極層、前記ドレイン電極層、及び前記第1のゲート絶縁膜を覆ってプラズマ化学気相成長法により水素化珪素及び酸素を含む成膜ガスを用いて第2のゲート絶縁膜を形成し、
前記酸化物半導体膜と重畳する前記第2のゲート絶縁膜上にゲート電極層を形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項8】
プラズマ化学気相成長法によりフッ化珪素及び酸素を含む成膜ガスを用いて絶縁膜を形成し、
前記絶縁膜上にソース電極層及びドレイン電極層を形成し、
前記絶縁膜、前記ソース電極層、及び前記ドレイン電極層を覆う酸化物半導体膜を形成し、
前記酸化物半導体膜上に前記酸化物半導体膜と接してプラズマ化学気相成長法によりフッ化珪素及び酸素を含む成膜ガスを用いて第1のゲート絶縁膜を形成し、
前記酸化物半導体膜及び前記第1のゲート絶縁膜を島状の酸化物半導体膜及び島状の第1のゲート絶縁膜に加工し、
前記絶縁膜、前記ソース電極層、前記ドレイン電極層、前記島状の酸化物半導体膜、及び前記島状の第1のゲート絶縁膜上に前記絶縁膜、前記ソース電極層、前記ドレイン電極層、及び前記第1のゲート絶縁膜を覆ってプラズマ化学気相成長法により水素化珪素及び酸素を含む成膜ガスを用いて第2のゲート絶縁膜を形成し、
前記酸化物半導体膜と重畳する前記第2のゲート絶縁膜上にゲート電極層を形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項9】
請求項8において、プラズマ化学気相成長法によりフッ化珪素及び一酸化二窒素を含む成膜ガスを用いて前記絶縁膜を形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項10】
請求項7乃至9のいずれか一項において、プラズマ化学気相成長法によりフッ化珪素及び一酸化二窒素を含む成膜ガスを用いて前記第1のゲート絶縁膜を形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項11】
請求項7乃至10のいずれか一項において、プラズマ化学気相成長法により水素化珪素及び一酸化二窒素を含む成膜ガスを用いて前記第2のゲート絶縁膜を形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項12】
請求項7乃至11のいずれか一項において、スパッタリング法を用いて前記酸化物半導体膜を形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項1】
絶縁膜と、
前記絶縁膜上にソース電極層及びドレイン電極層と、
前記絶縁膜、前記ソース電極層、及び前記ドレイン電極層上に島状の酸化物半導体膜と、
前記島状の酸化物半導体膜上に前記島状の酸化物半導体膜と接する島状の第1のゲート絶縁膜と、
前記絶縁膜、前記ソース電極層、前記ドレイン電極層、前記島状の酸化物半導体膜、及び前記島状の第1のゲート絶縁膜上に前記絶縁膜、前記ソース電極層、前記ドレイン電極層、及び前記島状の第1のゲート絶縁膜を覆う第2のゲート絶縁膜と、
前記島状の酸化物半導体膜と重畳する前記第2のゲート絶縁膜上にゲート電極層とを有し、
前記島状の第1のゲート絶縁膜はフッ素を含む酸化シリコン膜であり、
前記第2のゲート絶縁膜は水素を含み、かつ該水素濃度は前記第1のゲート絶縁膜における水素濃度より高いことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
絶縁膜と、
前記絶縁膜上にソース電極層及びドレイン電極層と、
前記絶縁膜、前記ソース電極層、及び前記ドレイン電極層上に島状の酸化物半導体膜と、
前記島状の酸化物半導体膜上に前記島状の酸化物半導体膜と接する島状の第1のゲート絶縁膜と、
前記絶縁膜、前記ソース電極層、前記ドレイン電極層、前記島状の酸化物半導体膜、及び前記島状の第1のゲート絶縁膜上に前記絶縁膜、前記ソース電極層、前記ドレイン電極層、及び前記島状の第1のゲート絶縁膜を覆う第2のゲート絶縁膜と、
前記島状の酸化物半導体膜と重畳する前記第2のゲート絶縁膜上にゲート電極層とを有し、
前記島状の第1のゲート絶縁膜はフッ素を含む酸化シリコン膜であり、
前記第2のゲート絶縁膜は水素を含み、かつ該水素濃度は前記第1のゲート絶縁膜における水素濃度より高く、
前記絶縁膜はフッ素を含む酸化シリコン膜であることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、前記第1のゲート絶縁膜の膜厚は前記第2のゲート絶縁膜の膜厚より薄いことを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項において、前記島状の第1のゲート絶縁膜の膜厚は1nm以上10nm以下であることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項において、前記第1のゲート絶縁膜では、前記第1のゲート絶縁膜中に含まれるフッ素濃度より水素濃度の方が低く、前記フッ素濃度は1×1020 atoms/cm3以上であり、前記水素濃度は1×1020 atoms/cm3未満であることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項において、前記第2のゲート絶縁膜では、前記第2のゲート絶縁膜中に含まれるフッ素濃度より水素濃度の方が高く、前記フッ素濃度は1×1020 atoms/cm3未満であり、前記水素濃度は1×1020 atoms/cm3以上であることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
絶縁膜を形成し、
前記絶縁膜上にソース電極層及びドレイン電極層を形成し、
前記絶縁膜、前記ソース電極層、及び前記ドレイン電極層を覆う酸化物半導体膜を形成し、
前記酸化物半導体膜上に前記酸化物半導体膜と接してプラズマ化学気相成長法によりフッ化珪素及び酸素を含む成膜ガスを用いて第1のゲート絶縁膜を形成し、
前記酸化物半導体膜及び前記第1のゲート絶縁膜を島状の酸化物半導体膜及び島状の第1のゲート絶縁膜に加工し、
前記絶縁膜、前記ソース電極層、前記ドレイン電極層、前記島状の酸化物半導体膜、及び前記島状の第1のゲート絶縁膜上に前記絶縁膜、前記ソース電極層、前記ドレイン電極層、及び前記第1のゲート絶縁膜を覆ってプラズマ化学気相成長法により水素化珪素及び酸素を含む成膜ガスを用いて第2のゲート絶縁膜を形成し、
前記酸化物半導体膜と重畳する前記第2のゲート絶縁膜上にゲート電極層を形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項8】
プラズマ化学気相成長法によりフッ化珪素及び酸素を含む成膜ガスを用いて絶縁膜を形成し、
前記絶縁膜上にソース電極層及びドレイン電極層を形成し、
前記絶縁膜、前記ソース電極層、及び前記ドレイン電極層を覆う酸化物半導体膜を形成し、
前記酸化物半導体膜上に前記酸化物半導体膜と接してプラズマ化学気相成長法によりフッ化珪素及び酸素を含む成膜ガスを用いて第1のゲート絶縁膜を形成し、
前記酸化物半導体膜及び前記第1のゲート絶縁膜を島状の酸化物半導体膜及び島状の第1のゲート絶縁膜に加工し、
前記絶縁膜、前記ソース電極層、前記ドレイン電極層、前記島状の酸化物半導体膜、及び前記島状の第1のゲート絶縁膜上に前記絶縁膜、前記ソース電極層、前記ドレイン電極層、及び前記第1のゲート絶縁膜を覆ってプラズマ化学気相成長法により水素化珪素及び酸素を含む成膜ガスを用いて第2のゲート絶縁膜を形成し、
前記酸化物半導体膜と重畳する前記第2のゲート絶縁膜上にゲート電極層を形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項9】
請求項8において、プラズマ化学気相成長法によりフッ化珪素及び一酸化二窒素を含む成膜ガスを用いて前記絶縁膜を形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項10】
請求項7乃至9のいずれか一項において、プラズマ化学気相成長法によりフッ化珪素及び一酸化二窒素を含む成膜ガスを用いて前記第1のゲート絶縁膜を形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項11】
請求項7乃至10のいずれか一項において、プラズマ化学気相成長法により水素化珪素及び一酸化二窒素を含む成膜ガスを用いて前記第2のゲート絶縁膜を形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項12】
請求項7乃至11のいずれか一項において、スパッタリング法を用いて前記酸化物半導体膜を形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−4549(P2012−4549A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109188(P2011−109188)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】
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