説明

車両およびその制御方法

【課題】前後輪の何れか一方に回生制動力を出力可能な電動機を備えた車両において、電動機による回生制動力を利用する際に前後輪に対する制動力のバランスをとる。
【解決手段】ハイブリッド自動車20では、ブレーキペダル85が踏み込まれたときにモータ50による回生制動力を用いる場合、CVT40を介したエンジン22(クランクシャフト23)の回転数制御およびオルタネータの制御(ステップS210またはS220)に基づく制動力である機関起因制動力が前輪65a,65bに出力されると共にモータ50による回生制動力が後輪65c,65dに出力されて要求制動力BF*が得られるようにモータ50とCVT40とオルタネータ28とHBS100のブレーキアクチュエータ102とが制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両およびその制御方法に関し、特に、前後輪の何れか一方に少なくとも回生制動力を出力可能な電動機を備えた車両およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、発電可能な第1の電動機およびトランスミッションを介して前輪および後輪の一方に接続されたエンジンと、前輪および後輪の他方に接続された発電可能な第2の電動機とを備えた車両が知られている(例えば、特許文献1および2参照。)。この種の車両では、2つの電動機を用いた回生制動時に、第1および第2の電動機による回生制動力の分配比を前後加速度に応じた理想分配比となるように制御することで制動性能を高めることができる。また、従来から、前輪への制動トルクと後輪への制動トルクとの理想的な理想前後輪配分率を算出すると共にこの理想前後輪配分率に対する配分許容度を算出し、この配分許容度の範囲内で後輪に接続された第1電動発電機と前輪に接続された第2電動発電機との発電効率が高くなるように理想前後輪配分率を補正し、得られた前後輪配分率に基づいて各電動発電機へのトルク指令値を算出する手法も知られている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2004−166363号公報
【特許文献2】特開2002−213266号公報
【特許文献3】特開2004−1357471号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述のように、前後輪のそれぞれに発電可能な電動機を備えた車両では、前後輪に対する回生制動力の分配比が目標の分配比となるように2つの電動機を制御することが可能であるが、前後輪の何れか一方にのみ電動機を備えた車両では、何らかの対策を施されなければ、当該電動機による回生制動力を利用した場合に前後輪に対する制動力のバランスが崩れてしまい、制動時の挙動が不安定になってしまうおそれがある。
【0004】
そこで、本発明による車両およびその制御方法は、前後輪の何れか一方に回生制動力を出力可能な電動機を備えた車両において、電動機による回生制動力を利用する際に前後輪に対する制動力のバランスをとることを目的の一つとする。また、本発明による車両およびその制御方法は、前後輪の何れか一方に回生制動力を出力可能な電動機を備えた車両において、制動時の挙動をより安定化させることを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による車両およびその制御方法は、上述の目的の少なくとも一部を達成するために以下の手段を採っている。
【0006】
本発明による車両は、
内燃機関と、
変速比の変更を伴って前記内燃機関の機関軸に接続された入力軸の動力を変速して前輪および後輪の何れか一方である第1の車輪に連結された出力軸に出力可能な変速手段と、
前記前輪および前記後輪の他方である第2の車輪に少なくとも回生制動力を出力可能な電動機と、
前記内燃機関の前記機関軸に連結された発電機と、
前記発電機および前記電動機と電力をやり取り可能な蓄電手段と、
制動要求操作により要求されている要求制動力を設定する要求制動力設定手段と、
前記制動要求操作がなされたときに前記電動機による前記回生制動力を用いる場合には、前記変速手段を介した前記機関軸の回転数制御と前記発電機の制御とに基づく制動力である機関起因制動力が前記第1の車輪に出力されると共に前記電動機による前記回生制動力が前記第2の車輪に出力されて前記設定された要求制動力が得られるように前記電動機と前記変速手段と前記発電機とを制御する制動制御手段と、
を備えるものである。
【0007】
この車両では、制動要求操作がなされたときに電動機による回生制動力を用いる場合に、変速手段を介した機関軸の回転数制御と発電機の制御とに基づく制動力である機関起因制動力が第1の車輪に出力されると共に電動機による回生制動力が第2の車輪に出力されて制動要求操作により要求されている要求制動力が得られるように電動機と変速手段と発電機とが制御される。このように、第2の車輪に対して電動機による回生制動力を出力するときに変速手段を介した機関軸の回転数制御と発電機の制御とを行えば、内燃機関のエンジンブレーキによる制動力または当該エンジンブレーキによる制動力と発電機による回生制動力との和である機関起因制動力を第1車輪に出力して第1の車輪と第2の車輪との間で制動力のバランスをとることが可能となり、その結果、制動時における車両の挙動を安定化させることができる。また、この車両では、制動時に電動機による回生電力に加えて発電機の制御により得られる電力を用いて蓄電手段を充電することも可能となる。なお、ここでいう「制動要求操作」は、ブレーキペダルの踏み込み操作に加えて、アクセルペダルの踏み込みを解除する操作(アクセルオフ操作)をも含む。
【0008】
この場合、前記制動制御手段は、前記第1の車輪に出力される機関起因制動力と、前記第2の車輪に出力される前記回生制動力との比が所定の目標前後分配比となるように前記電動機と前記変速手段と前記発電機とを制御可能なものであってもよい。これにより、第1および第2の車輪に対して制動力をより適正に分配して車両の制動性能を向上させることが可能となる。なお、目標前後分配比は、一定のものであってもよく、車両の状態に応じて変更されるものであってもよい。
【0009】
また、本発明の車両は、前記第1の車輪と前記第2の車輪とに対して制動力を出力可能な流体圧式制動手段を更に備えてもよく、前記制動制御手段は、前記制動要求操作がなされたときに前記電動機による前記回生制動力と前記流体圧式制動手段による制動力である流体圧制動力とを用いる場合に、前記機関起因制動力と前記回生制動力と前記流体圧制動力とで前記設定された要求制動力がまかなわれるように少なくとも前記電動機と前記変速手段と前記発電機とを制御するものであってもよい。これにより、制動要求操作により要求された要求制動力を常時良好に確保することが可能となる。
【0010】
更に、前記流体圧式制動手段は、前記第1の車輪と前記第2の車輪とに概ね一定の前後分配比をもって制動力を付与可能であってもよく、前記制動制御手段は、前記制動要求操作がなされたときに前記電動機による前記回生制動力と前記流体圧制動力とを用いる場合に、前記第1の車輪に出力される機関起因制動力と前記流体圧制動力との和と、前記第2の車輪に出力される前記回生制動力と前記流体圧制動力との和との比が所定の目標前後分配比となるように少なくとも前記電動機と前記変速手段と前記発電機とを制御するものであってもよい。このように、機関起因制動力と電動機による回生制動力とを調整して第1の車輪と第2車輪とに目標前後分配比に応じた制動力が分配されるようにすれば、流体圧式制動手段として比較的シンプルな構成をもったものを採用することが可能となる。
【0011】
また、前記制動制御手段は、前記蓄電手段の残容量に応じて前記電動機による前記回生制動力と前記発電機による回生制動力とを設定するものであってもよい。これにより、蓄電手段の過充電を抑制して蓄電手段の劣化を抑えることが可能となる。
【0012】
更に、前記変速手段は、前記変速比を無段階に変更可能な無段変速機であってもよい。これにより、内燃機関の機関軸の回転数をより適正に制御して要求されている機関起因制動力を得ることが可能となる。
【0013】
また、前記第1の車輪は前輪であると共に前記第2の車輪は後輪であってもよい。すなわち、本発明によれば、回生制動力を出力可能な電動機を後輪側にのみ備えた車両においても、前輪に機関起因制動力を出力することにより前後輪に出力される制動力のバランスを良好にとることが可能となる。
【0014】
本発明による車両の制御方法は、内燃機関と、変速比の変更を伴って前記内燃機関の機関軸に接続された入力軸の動力を変速して前輪および後輪の何れか一方である第1の車輪に連結された出力軸に出力可能な変速手段と、前記前輪および前記後輪の他方である第2の車輪に少なくとも回生制動力を出力可能な電動機と、前記内燃機関の前記機関軸に連結された発電機と、前記発電機および前記電動機と電力をやり取り可能な蓄電手段とを備える車両の制御方法であって、
制動要求操作がなされたときに前記電動機による前記回生制動力を用いる場合に、前記変速手段を介した前記機関軸の回転数制御と前記発電機の制御とに基づく制動力である機関起因制動力が前記第1の車輪に出力されると共に前記電動機による前記回生制動力が前記第2の車輪に出力されて前記制動要求操作により要求されている要求制動力が得られるように前記電動機と前記変速手段と前記発電機とを制御するものである。
【0015】
この方法のように、第2の車輪に対して電動機による回生制動力を出力するときに変速手段を介した機関軸の回転数制御と発電機の制御とを行えば、内燃機関のエンジンブレーキによる制動力または当該エンジンブレーキによる制動力と発電機による回生制動力との和である機関起因制動力を第1車輪に出力して第1の車輪と第2の車輪との間で制動力のバランスをとることが可能となり、その結果、制動時における車両の挙動を安定化させることができる。また、この方法によれば、制動時に電動機による回生電力に加えて発電機の制御により得られる電力を用いて蓄電手段を充電することも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0017】
図1は、本発明の実施例に係るハイブリッド自動車20の概略構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、エンジン22からの動力をトルクコンバータ30や前後進切換機構35、ベルト式の無断変速機(以下「CVT」という)40、ギヤ機構61、デファレンシャルギヤ62を介して前輪65a,65bに出力する前輪駆動系21と、モータ50からの動力をギヤ機構63、デファレンシャルギヤ64および後軸66を介して後輪65c,65dに出力する後輪駆動系51と、前輪65a,65bおよび後輪65c,65dに制動力を付与するための電子制御式の油圧ブレーキユニット100と、ハイブリッド自動車20の全体を制御するハイブリッド用電子制御ユニット(以下、「ハイブリッドECU」という)70とを備える。
【0018】
エンジン22は、ガソリンまたは軽油といった炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関として構成されており、その出力軸であるクランクシャフト23はトルクコンバータ30に接続されている。また、クランクシャフト23には、ギヤ列25を介してスタータモータ26が連結されると共に、ベルト27等を介してオルタネータ28や機械式オイルポンプ29が連結されている。そして、エンジン22は、エンジン用電子制御ユニット(以下「エンジンECU」という)24により運転制御され、エンジンECU24は、クランクシャフト23に取り付けられたクランクポジションセンサ23aからのクランクポジション信号といったエンジン22の運転状態を検出する各種センサからの信号に基づいて燃料噴射量や点火時期,吸入空気量等の制御を行う。また、エンジンECU24は、ハイブリッドECU70と通信しており、ハイブリッドECU70からの制御信号に従ってエンジン22を運転制御すると共に、エンジン22の運転状態に関するデータを必要に応じてハイブリッドECU70に出力する。
【0019】
トルクコンバータ30は、周知の流体式トルクコンバータとして構成されており、油圧式のロックアップクラッチを有している。また、前後進切換機構35は、ダブルピニオンの遊星歯車機構36とブレーキB1とクラッチC1とを含む。前後進切換機構35のブレーキB1をオフすると共にクラッチC1をオンすることにより、トルクコンバータ30の出力軸34の回転をそのままCVT40のインプットシャフト41に伝達してハイブリッド自動車20を前進させることができる。また、ブレーキB1をオンすると共にクラッチC1をオフすることにより、トルクコンバータ30の出力軸の回転を逆方向に変換してCVT40のインプットシャフト41に伝達し、ハイブリッド自動車20を後進させることができる。更に、ブレーキB1をオフすると共にクラッチC1をオフすることによりトルクコンバータ30の出力軸とCVT40のインプットシャフト41とを切り離すこともできる。
【0020】
CVT40は、インプットシャフト41に接続された溝幅を変更可能なプライマリプーリ43と、同様に溝幅を変更可能であって駆動軸としてのアウトプットシャフト42に接続されたセカンダリプーリ44と、プライマリプーリ43およびセカンダリプーリ44の溝に巻き掛けられたベルト45とを有する。そして、CVT用電子制御ユニット(以下「CVTECU」という)46により駆動制御される油圧回路47からの作動油によりプライマリプーリ43およびセカンダリプーリ44の溝幅を変更すれば、インプットシャフト41に入力した動力を無段階に変速してアウトプットシャフト42に出力することが可能となる。また、例えばアクセルオフやブレーキペダル85の踏み込みによりエンジン22に対する燃料供給が停止された状態でプライマリプーリ43およびセカンダリプーリ44の溝幅を変更すれば、インプットシャフト41等を介してエンジン22のクランクシャフト23の回転数を調整することも可能となる。油圧回路47は、電動オイルポンプ60と機械式オイルポンプ29とから供給される作動油の油圧や油量を調整してプライマリプーリ43やセカンダリプーリ44、トルクコンバータ30(ロックアップクラッチ)、ブレーキB1、クラッチC1等に供給可能なものである。そして、CVTECU46には、インプットシャフト41に取り付けられた回転数センサ48からのインプットシャフト41の回転数Ninやアウトプットシャフト42に取り付けられた回転数センサ49からのアウトプットシャフト42の回転数Nout等が入力され、CVTECU46は、これらの情報に基づいて油圧回路47への駆動信号を生成、出力する。更に、CVTECU46は、前後進切換機構35のブレーキB1およびクラッチC1のオン/オフ制御やトルクコンバータ30のロックアップ制御をも実行する。更に、CVTECU46は、ハイブリッドECU70と通信しており、ハイブリッドECU70からの制御信号に従ってCVT40の変速比を制御すると共に必要に応じてインプットシャフト41の回転数Ninやアウトプットシャフト42の回転数NoutといったCVT40の運転状態に関するデータをハイブリッドECU70に出力する。
【0021】
モータ50は、発電機として機能すると共に電動機としても機能し得る同期発電電動機であり、インバータ52を介してエンジン22により駆動されるオルタネータ28や、当該オルタネータ28からの電力ラインに出力端子が接続された高圧バッテリ(例えば定格電圧42Vの二次電池)55に接続されている。これにより、モータ50は、オルタネータ28や高圧バッテリ55からの電力により作動したり、回生制動を行って発電した電力により高圧バッテリ55を充電したりすることができる。また、モータ50は、モータ用電子制御ユニット(以下「モータECU」という)53によって駆動制御される。モータECU53には、モータ50を駆動制御するために必要な信号、例えばモータ50の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ50aからの信号や図示しない電流センサにより検出されるモータ50への相電流値等が入力されており、モータECU53は、これらの信号等に基づいてインバータ52のスイッチング素子へのスイッチング信号を生成、出力する。また、モータECU53は、ハイブリッドECU70と通信しており、ハイブリッドECU70からの制御信号に従ってインバータ52へのスイッチング制御信号を出力することによりモータ50を駆動制御すると共に必要に応じてモータ50の運転状態に関するデータをハイブリッドECU70に出力する。なお、高圧バッテリ55には、電圧を変換するDC/DCコンバータ56を介して低圧バッテリ57が接続されており、高圧バッテリ55側からの電力が電圧変換されて低圧バッテリ57側へ供給されるようになっている。低圧バッテリ57は、上述の電動オイルポンプ60を始めとする各種補機類の電源として用いられる。そして、高圧バッテリ55と低圧バッテリ57とは、バッテリ用電子制御ユニット(以下「バッテリECU」という)58により管理されている。このバッテリECU58は、バッテリ55,57の出力端子(図示せず)に取り付けられた図示しない電圧センサからの端子間電圧や電流センサからの充放電電流、温度センサからの電池温度などに基づいて残容量SOCや入出力制限等を算出する。更に、バッテリECU58は、ハイブリッドECU70等と通信しており、必要に応じて残容量SOC等のデータをハイブリッドECU70等に出力する。
【0022】
油圧ブレーキユニット(以下「HBS」という)100は、マスタシリンダ101やブレーキアクチュエータ102、前輪65a,65bや後輪65c,65dに設けられたホイールシリンダ109a〜109d等を含む。また、HBS100のブレーキアクチュエータ102は、図示しない油圧発生源としてのポンプやアキュムレータ、マスタシリンダ101とホイールシリンダ109a〜109dとの連通状態を制御するマスタシリンダカットソレノイドバルブ、ブレーキペダル85の踏み込み量に応じてペダル踏力に対する反力を創出するストロークシミュレータ等を有し、運転者によるブレーキペダル85の踏み込み操作に拘わらず、ブレーキペダル85の踏み込み量を示すブレーキペダルポジションBPや車速V等に基づいてハイブリッド自動車20に作用させるべき制動力のうちのHBS100による分担分に応じた制動トルクが前輪65a,65bや後輪65c,65dに作用するようにホイールシリンダ109a〜109dへの油圧を調整するものである。そして、実施例では、ブレーキアクチュエータ102からホイールシリンダ109a〜109dへとブレーキオイルが供給されたときに、通常、前輪65a,65bと後輪65c,65dとに一定の前後分配比(例えば7:3)をもって制動力を付与されるようになっている。以下、HBS100によって前輪65a,65bと後輪65c,65dとに付与される制動力のうちの後輪65c,65dへの制動力の割合をHBS後輪制動力分配率d0(例えば、0.3)とする。
【0023】
そして、HBS100のブレーキアクチュエータ102は、ブレーキ用電子制御ユニット(以下「ブレーキECU」という)105により駆動制御される。ブレーキECU105には、マスタシリンダ圧Pmcを検出するマスタシリンダ圧センサ101aからのマスタシリンダ圧Pmc、前輪65a,65bや後輪65c,65dに設けられた図示しない車輪速センサからの車輪速や図示しない操舵角センサからの操舵角等が入力される。ブレーキECU105は、これらの信号に基づいていわゆるABS制御やトラクションコントロール(TRC)、車両安定化制御(VSC)等を実行する。そして、ブレーキECU105は、ハイブリッドECU70等と通信しており、ハイブリッドECU70からの制御信号等に基づいてブレーキアクチュエータ102を駆動制御し、必要に応じてブレーキアクチュエータ102等の作動状態に関するデータ等をハイブリッドECU70等に出力する。
【0024】
一方、ハイブリッドECU70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に処理プログラムを記憶するROM74と、データを一時的に記憶するRAM76と、図示しない入出力ポートおよび通信ポート等とを備える。ハイブリッドECU70には、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号や、シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP、アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc、ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP、車速センサ87からの車速V等が入力ポートを介して入力されている。そして、ハイブリッドECU70は、これらの信号等に基づいて各種制御信号等を生成し、エンジンECU24やCVTECU46、モータECU53、バッテリECU58、ブレーキECU105等と通信により各種制御信号やデータのやり取りを行う。また、ハイブリッドECU70からは、クランクシャフト23に連結されたスタータモータ26やオルタネータ28への駆動信号、電動オイルポンプ60への制御信号等が出力ポートを介して出力される。
【0025】
上述のように構成された実施例のハイブリッド自動車20は、運転者のアクセルペダル83の操作に応じてエンジン22からの動力を前輪65a,65bに出力して走行するか、あるいはモータ50からの動力を後輪65c,65dに出力して走行する。また、実施例のハイブリッド自動車20は、必要に応じてエンジン22とモータ50との双方から動力を出力して4輪駆動により走行することもできる。このように4輪駆動により走行する場合の例としては、アクセルペダル83が大きく踏み込まれた急加速時や前輪65a,65bや後輪65c,65dの何れかがスリップしたとき等が挙げられる。
【0026】
次に、上述のように構成された実施例のハイブリッド自動車20の動作、特に、運転者によりブレーキペダル85が踏み込まれた制動時の動作について説明する。図2は、実施例のハイブリッドECU70により実行される制動制御ルーチンの一例を示すものであり、この制動制御ルーチンは、運転者によりブレーキペダル85が踏み込まれている最中に所定時間毎(例えば、数msec毎)に実行される。
【0027】
図2の制動制御ルーチンの開始に際して、ハイブリッドECU70のCPU72は、ブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP、車速センサ87からの車速V、高圧バッテリ55の残容量SOC、目標後輪制動力分配比dといった制御に必要なデータの入力処理を実行する(ステップS100)。この場合、高圧バッテリ55の残容量SOCは、バッテリECU58から通信により入力するものとした。また、目標後輪制動力分配比dは、ハイブリッド自動車20の全体に要求される制動力に対する後輪65c,65dにすべき制動力の割合を示すものであり、乗員の搭乗状態や荷物等の積載状態に応じて変化するハイブリッド自動車20の車重等に応じて別途設定されて所定の記憶領域に格納されているものである。
【0028】
ステップS100のデータ入力処理の後、入力したブレーキペダルポジションBPと車速Vとに基づいて運転者により要求されている要求制動力BF*を設定する(ステップS110)。実施例では、ブレーキペダルポジションBPおよび車速Vと要求制動力BF*との関係が予め定められて図示しない要求制動力設定用マップとしてROM74に記憶されており、要求制動力BF*としては、与えられたブレーキペダルポジションBPと車速Vとに対応するものが当該マップから導出・設定される。続いて、設定した要求制動力BF*に値1から入力した目標後輪制動力分配比dを減じた値を乗じて前輪65a,65bに付与すべき制動力である前輪要求制動力BFf*を設定すると共に、要求制動力BF*に目標後輪制動力分配比dを乗じて後輪65d,65dに付与すべき制動力である後輪要求制動力BFr*を設定する(ステップS120)。更に、ステップS100にて入力した車速Vと残容量SOCとに基づいて、その段階でモータ50に出力させることができる回生制動力であるモータ許容回生制動力BFmaを設定する(ステップS130)。実施例では、車速Vおよび残容量SOCとモータ許容回生制動力BFmaとの関係が予め定められて図示しないモータ許容回生制動力設定用マップとしてROM74に記憶されており、モータ許容回生制動力BFmaとしては、与えられた車速Vと残容量SOCとに対応するものが当該マップから導出・設定される。
【0029】
こうしてモータ許容回生制動力BFmaを設定したならば、設定したモータ許容回生制動力BFmaがステップS120にて設定した後輪要求制動力BFr*以上であるか否かを判定する(ステップS140)。モータ許容回生制動力BFmaが後輪要求制動力BFr*以上であるときには、後輪要求制動力BFr*をモータ50による回生制動力のみでまかなうことができる。従って、ステップS140にて肯定判断がなされた場合には、ステップS120にて設定した後輪要求制動力BFr*をモータ50による回生制動力の目標値であるモータ目標回生制動力BFm*として設定すると共に、要求制動力BF*に対するHBS100による分担分である補填制動力BFhb*を値0に設定する(ステップS150)。これに対して、モータ許容回生制動力BFmaが後輪要求制動力BFr*未満であるときには、後輪要求制動力BFr*をモータ50による回生制動力のみでまかなうことができない。従って、ステップS140にて否定判断がなされた場合には、ステップS130にて設定したモータ許容回生制動力BFmaをモータ目標回生制動力BFm*として設定すると共に、後輪要求制動力BFr*に対する不足分をHBS100による制動力で補填すべく、後輪要求制動力BFr*からモータ目標回生制動力BFm*(=BFma)を減じた値を更に上述のHBS後輪制動力分配率d0で除した値をHBS100による分担分である補填制動力BFhb*として設定する(ステップS160)。
【0030】
ここで、後輪65c,65d側にモータ50を備えたハイブリッド自動車20においてモータ50に回生制動力を出力させる場合、前後輪に対する制動力のバランスをとるために、後輪65c,65dに出力されるモータ50による回生制動力に応じた制動力を前輪65a,65bに対して別途付与することが必要となる場合もある。このため、実施例では、少なくともエンジン22(クランクシャフト23)の回転数を制御して得られる制動力である機関起因制動力BFaeにより前輪65a,65bに対して必要とされる制動力をまかなうこととし、ステップS150またはS160の処理の後、設定された前輪要求制動力BFf*および補填制動力BFhb*とHBS後輪制動力分配比d0とに基づいて機関起因制動力BFaeを設定する(ステップS170)。ステップS170では、モータ50よる回生制動力に加えてHBS100からも制動力(補填制動力)が出力される場合を考慮して、ステップS150またはS160にて設定された補填制動力BFhb*と値1からHBS後輪制動力分配比d0を減じた値との積をステップS120にて設定された前輪要求制動力BFf*から減じる計算を実行して機関起因制動力BFaeを設定する。そして、機関起因制動力BFaeを設定したならば、設定した機関起因制動力BFaeが値0を上回っているか否かを判定し(ステップS180)、機関起因制動力BFaeが値0以下であれば、以降の処理をスキップして本ルーチンを一旦終了させる。
【0031】
一方、ステップS170にて設定した機関起因制動力BFaeが値0を上回っている場合には、ステップS100にて入力した車速Vに基づいて高圧バッテリ55の残容量SOCに関連する閾値Srefを設定する(ステップS190)。かかる閾値Srefは、モータ50に回生制動力を出力させるのに伴って機関起因制動力BFaeを出力するにあたり、エンジン22のクランクシャフト23に連結されたオルタネータ28を制御して発電させ、モータ50とオルタネータ28とにより発電される電力で高圧バッテリ55を充電しても過充電となるおそれが無いかどうかを判定するためのものである。すなわち、ブレーキペダル85が踏み込まれて燃料カット状態にあるエンジン22(クランクシャフト23)の回転数を調整すればエンジン22のフリクショントルクに基づく制動力(エンジンブレーキ)を得ることができるが、この際、オルタネータ28を制御(トルク制御)すれば、オルタネータ28による回生制動力をも得ることができる。ただし、モータ50に加えてオルタネータ28からも回生制動力を出力させた場合、モータ50とオルタネータ28との双方からの電力により高圧バッテリ55が充電されることになるので、残容量SOCの値によっては高圧バッテリ55を過充電してしまうおそれもある。このため、実施例では、上述のように閾値Srefを設定した上で、当該閾値Srefに基づいてモータ50とオルタネータ28とにより発電される電力で高圧バッテリ55を充電しても過充電となるおそれがあるか否かを判定しているのである。実施例では、車速Vごとのモータ許容回生制動力BFmaやオルタネータ28の特性等に基づいて車速Vと閾値Srefとの関係が予め定められて図示しないバッテリ閾値設定用マップとしてROM74に記憶されており、閾値Srefとしては、与えられた車速Vに対応するものが当該マップから導出・設定される。そして、閾値Srefを設定したならば、ステップS100にて入力した残容量SOCが閾値Sref以下であるか否かを判定する(ステップS200)。
【0032】
ステップS200にて残容量SOCが閾値Sref以下であると判断された場合、高圧バッテリ55の残容量が比較的少なく、モータ50とオルタネータ28とにより発電される電力で高圧バッテリ55を充電しても過充電とならないことになる。このため、ステップS200にて肯定判断がなされた場合には、燃料カット状態にあるエンジン22によるフリクショントルク(エンジンブレーキ)とオルタネータ28を制御して得られる回生制動力とで機関起因制動力BFaeをまかなうべく、エンジン22(クランクシャフト23)の目標回転数Ne*とオルタネータ28に対するトルク指令Talt*とを設定する(ステップS210)。実施例では、エンジン22の回転数とエンジン22のフリクショントルクに基づく制動力(エンジンブレーキ分、図3における一点鎖線参照)およびオルタネータ28による回生制動力(図3における二点鎖線参照)との関係に基づいてオルタネータ28に回生制動力を出力させるときの機関起因制動力BFaeとエンジン22の目標回転数Ne*との関係が予め定められて図3に例示するような第1エンジン目標回転数設定用マップとしてROM74に記憶されている。そして、ステップS210では、かかる第1エンジン目標回転数設定用マップからステップS170にて設定された機関起因制動力BFaeに対応するエンジン22の目標回転数Ne*が導出・設定される。また、実施例では、エンジン22の目標回転数Ne*とオルタネータ28に対するトルク指令Talt*との関係が予め定められて図示しないトルク指令設定用マップとしてROM74に記憶されており、ステップS210では、トルク指令Talt*として、設定された目標回転数Ne*に対応するものが当該マップから導出・設定される。
【0033】
一方、ステップS200にて残容量SOCが閾値Srefを上回っていると判断された場合、高圧バッテリ55の残容量が比較的多く、モータ50とオルタネータ28とにより発電される電力で高圧バッテリ55を充電すると過充電となるおそれがあることになる。このため、ステップS200にて否定判断がなされた場合には、燃料カット状態にあるエンジン22によるフリクショントルク(エンジンブレーキ)に基づく制動力のみで機関起因制動力BFaeがまかなわれるようにエンジン22の目標回転数Ne*を設定すると共に、オルタネータ28に対するトルク指令Talt*を値0に設定する(ステップS220)。実施例では、エンジン22の回転数とエンジン22のフリクショントルクに基づく制動力との関係に基づいてオルタネータ28に回生制動力を出力させないときの機関起因制動力BFaeとエンジン22の目標回転数Ne*との関係が予め定められて図4に例示するような第2エンジン目標回転数設定用マップとしてROM74に記憶されている。そして、ステップS220では、かかる第2エンジン目標回転数設定用マップからステップS170にて設定された機関起因制動力BFaeに対応するエンジン22の目標回転数Ne*が導出・設定される。
【0034】
このように、ステップS210またはS220にて目標回転数Ne*とトルク指令Talt*とを設定したならば、設定されたエンジン22の目標回転数Ne*に基づいてCVT40における目標変速比γ*を設定する(ステップS230)。実施例では、エンジン22の目標回転数Ne*と目標変速比γ*との関係が予め定められて図示しない変速比設定用マップとしてROM74に記憶されており、目標変速比γ*としては、ステップS210またはS220にて設定された目標回転数Ne*に対応するものが当該マップから導出・設定される。そして、設定したモータ目標回生制動力BFm*をモータECU53に、補填制動力BFhb*をブレーキECU105に、目標変速比γ*をCVTECU46に、トルク指令Talt*に基づく制御信号をオルタネータ28にそれぞれ送信し(ステップS240)、本ルーチンを一旦終了させる。なお、モータ目標回生制動力BFm*を受信したモータECU53は、モータ目標回生制動力BFm*が得られるようにインバータ52のスイッチング素子のスイッチング制御を行ない、ブレーキECU105は、補填制動力BFhb*が得られるようにブレーキアクチュエータ102を制御する。更に、目標変速比γ*を受信したCVTECU46は、目標変速比γ*に応じてプライマリプーリ43およびセカンダリプーリ44の溝幅が変更されるように油圧回路47を制御する。
【0035】
上述のように図2の制動制御ルーチンが実行された際には、モータ許容回生制動力BFmaが後輪要求制動力BFr*以上であれば、HBS100による補填制動力BFhb*は不要となるので(S150)、前輪65a,65bに対する機関起因制動力BFhb*と、後輪65c,65に対するモータ目標回生制動力BF*との比が目標後輪制動力分配比dに応じた比(1−d:d)となるようにモータ50とCVT40とオルタネータ28とが制御されることになる。また、モータ許容回生制動力BFmaが後輪要求制動力BFr*未満であれば、HBS100による補填制動力BFhb*が必要となるが(S160)、この場合には、前輪65a,65bに対する機関起因制動力BFhb*とHBS100からの制動力((1−d0)・BFhb*)との和と、後輪65c,65dに対するモータ目標回生制動力BF*とHBS100からの制動力(d0・BFhb*)との和との比が目標後輪制動力分配比dに応じた比(1−d:d)となるようにモータ50とCVT40とオルタネータ28とブレーキアクチュエータ102が制御される。
【0036】
以上説明したように、実施例のハイブリッド自動車20では、ブレーキペダル85が踏み込まれたときにモータ50による回生制動力を用いる場合、CVT40を介したエンジン22(クランクシャフト23)の回転数制御およびオルタネータの制御(ステップS210またはS220)に基づく制動力である機関起因制動力が前輪65a,65bに出力されると共にモータ50による回生制動力が後輪65c,65dに出力されて要求制動力BF*が得られるようにモータ50とCVT40とオルタネータ28とが制御される。このように、後輪65c,65dに対してモータ50による回生制動力を出力するときにCVT40を介したエンジン22の回転数制御とオルタネータ28の制御(トルク制御)とを行えば、エンジン22のエンジンブレーキ(フリクショントルク)による制動力または当該エンジンブレーキによる制動力とオルタネータ28による回生制動力との和である機関起因制動力を前輪65a,65bに出力して前後輪間で制動力のバランスをとることが可能となり、その結果、後輪65c,65dのロック等を抑制して制動時におけるハイブリッド自動車20の挙動を安定化させることができる。
【0037】
また、実施例のハイブリッド自動車20では、HBS100による補填制動力の有無に拘わらず、前輪65a,65bに出力される制動力と、後輪65c,65dに出力される制動力との比が後輪目標制動力分配比dに応じた比(1−d:d)となるように少なくともモータ50とCVT40とオルタネータ28とが制御されるので、前後輪に対して制動力をより適正に分配して制動性能を向上させると共にHBS100として比較的シンプルな構成をもったものを採用することが可能となる。更に、実施例のハイブリッド自動車20では、モータ許容回生制動力BFmaが後輪要求制動力BFr*未満であれば、HBS100による制動力が利用され、機関起因制動力とモータ50による回生制動力とHBS100による制動力とで要求された要求制動力BF*が良好に確保されることになる。
【0038】
また、実施例のように、機関起因制動力を出力させる際に、高圧バッテリ55の残容量SOCに応じてオルタネータ28による回生制動をも利用すれば、オルタネータ28により発電される電力を用いて高圧バッテリ55を充電することも可能となる。そして、上記実施例においては、高圧バッテリ55の残容量SOCに応じてモータ50のモータ目標回生制動力BFm*が設定されると共に(ステップS130〜S160)、残容量SOCに応じてオルタネータ28による回生制動力を規定する目標回転数Ne*およびトルク指令Talt*が設定されるので(ステップS210またはS220)、高圧バッテリ55の過充電を抑制してその劣化を抑えることも可能となる。
【0039】
なお、上記実施例は、ブレーキペダル85が踏み込まれたときに、まずモータ50による回生制動力を利用し、要求制動力BF*に応じてHBS100による制動力をも利用するものとして説明されたが、これに限られるものではない。すなわち、油圧ブレーキユニットとして、通常マスタシリンダと各ホイールシリンダとを連通させて制動要求操作に応じてマスタシリンダで発生されたブレーキオイルの圧力であるマスタシリンダ圧(操作圧力)に基づく操作制動力を前後輪に所定の前後分配比をもって出力するよりシンプルなものを用いてもよい。この場合、例えばマスタシリンダ圧等に応じたブレーキペダル85の踏力に基づいて要求制動力BF*を設定すると共に、要求制動力BF*を操作制動力でまかなえないときにモータ50による回生制動力を利用するものとし、この際に、前輪65a,65bに出力される機関起因制動力と油圧ブレーキユニットよる制動力との和と、後輪65c,65dに出力される回生制動力と油圧ブレーキユニットによる制動力との和との比が目標前後分配比となるようにモータ50とCVT40とオルタネータ28とを制御するとよい。また、このような油圧ブレーキユニットは、操作圧力発生手段としてのマスタシリンダに加えて、マスタシリンダからのブレーキオイルを加圧可能な加圧手段としてのポンプを備えてポンプの加圧により発生されるブレーキオイルの圧力である加圧圧力とを用いて制動力を出力可能なものであってもよい。このような油圧ブレーキユニットを用いれば、操作制動力とモータ50による回生制動力(および機関起因制動力)とで要求制動力BF*をまかなえないときに、ポンプを作動させてマスタシリンダからのブレーキオイルを加圧することにより要求制動力BF*を得ることが可能となる。また、このような操作制動力を前後輪に一定の前後分配比をもって出力する油圧ブレーキユニットを用いる場合、前輪65a,65bに出力される機関起因制動力と、後輪65c,65dに出力される回生制動力との比のみが当該所定の前後分配比あるいは他の目標前後分配比となるようにモータ50とCVT40とオルタネータ28とを制御してもよい。すなわち、必ずしも前輪65a,65bに出力される制動力と後輪65c,65dに出力される制動力との比を厳密に目標前後分配比に一致させる必要はない。
【0040】
ここまで、ブレーキペダル85が踏み込まれたときの動作を例にとって本発明を説明したが、図2の制動制御ルーチンは、アクセルペダルの踏み込みが解除されたときに、アクセルオフ操作に基づく制動力を出力する際にも適用され得ることはいうまでもない。更に、ベルト式のCVT40の代わりに、トロイダル式のCVTを用いてもよい。このように、変速比を無段階に変更可能な無段変速機を用いれば、エンジン22(クランクシャフト23)の回転数をより適正に制御して要求されている機関起因制動力を得ることが可能となるが、CVT40の代わりに有段の自動変速機を用いてもよいことはいうまでもない。また、実施例のハイブリッド自動車20は、後輪65c,65d側にのみ回生制動力を出力可能なモータ50を備えており、前輪65a,65bに機関起因制動力を出力することにより前後輪に出力される制動力のバランスをとるものであるが、これに限られるものではない。すなわち、本発明は、エンジン22の動力を後軸66を介して後輪65c,65dに出力すると共に、モータ50の動力(回生制動力)を前輪65a,65bに出力する車両にも適用され得る。
【0041】
以上、実施例を用いて本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、様々な変更をなし得ることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、自動車産業において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施例に係るハイブリッド自動車20の概略構成図である。
【図2】実施例のハイブリッドECU70により実行される制動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図3】第1エンジン目標回転数設定用マップの一例を示す説明図である。
【図4】第2エンジン目標回転数設定用マップの一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0044】
20 ハイブリッド自動車、21 前輪駆動系、22 エンジン、22a 吸気マニフォールド、23 クランクシャフト、23a クランクポジションセンサ、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、25 ギヤ列、26 スタータモータ、27 ベルト、28 オルタネータ、29 機械式オイルポンプ、30 トルクコンバータ、34 出力軸、35 前後進切換機構、36 遊星歯車機構、40 CVT、41 インプットシャフト、42 アウトプットシャフト、43 プライマリプーリ、44 セカンダリプーリ、45 ベルト、46 CVT用電子制御ユニット(CVTECU)、47 油圧回路、50 モータ、50a 回転位置検出センサ、51 後輪駆動、52 インバータ、53 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、55 高圧バッテリ、56 DC/DCコンバータ、57 低圧バッテリ、58 バッテリ用電子制御ユニット(バッテリECU)、60 電動オイルポンプ、61,63 ギヤ機構、62,64 デファレンシャルギヤ、65a,65b 前輪、65c,65d 後輪、66 後軸、70 ハイブリッド用電子制御ユニット(ハイブリッドECU)、72 CPU、74 ROM、76 RAM、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、87 車速センサ、100 油圧ブレーキユニット(HBS)、101 マスタシリンダ、101a,101b マスタシリンダ圧センサ、102 ブレーキアクチュエータ、103 ブレーキブースタ、103a 圧力センサ、104 逆止弁、105 ブレーキ用電子制御ユニット(ブレーキECU)、106 リザーバ、109a,109b,109c,109d ホイールシリンダ、110 第1系統、111,121 MCカットソレノイドバルブ、112a,112d,122b,122c 保持ソレノイドバルブ、113a,113d,123b,123c 減圧ソレノイドバルブ、114,124 リザーバ、115,125 ポンプ、116,126 逆止弁、120 第2系統、B1 ブレーキ、C1 クラッチ、L10,L11,L20,L21 供給油路、L12a,L12d,L22b,L22c 加減圧油路、L13,L23 減圧油路、L14,L15,L16,L24,L25,L26 油路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、
変速比の変更を伴って前記内燃機関の機関軸に接続された入力軸の動力を変速して前輪および後輪の何れか一方である第1の車輪に連結された出力軸に出力可能な変速手段と、
前記前輪および前記後輪の他方である第2の車輪に少なくとも回生制動力を出力可能な電動機と、
前記内燃機関の前記機関軸に連結された発電機と、
前記発電機および前記電動機と電力をやり取り可能な蓄電手段と、
制動要求操作により要求されている要求制動力を設定する要求制動力設定手段と、
前記制動要求操作がなされたときに前記電動機による前記回生制動力を用いる場合には、前記変速手段を介した前記機関軸の回転数制御と前記発電機の制御とに基づく制動力である機関起因制動力が前記第1の車輪に出力されると共に前記電動機による前記回生制動力が前記第2の車輪に出力されて前記設定された要求制動力が得られるように前記電動機と前記変速手段と前記発電機とを制御する制動制御手段と、
を備える車両。
【請求項2】
前記制動制御手段は、前記第1の車輪に出力される機関起因制動力と、前記第2の車輪に出力される前記回生制動力との比が所定の目標前後分配比となるように前記電動機と前記変速手段と前記発電機とを制御可能である請求項1に記載の車両。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両において、
前記第1の車輪と前記第2の車輪とに対して制動力を出力可能な流体圧式制動手段を更に備え、
前記制動制御手段は、前記制動要求操作がなされたときに前記電動機による前記回生制動力と前記流体圧式制動手段による制動力である流体圧制動力とを用いる場合に、前記機関起因制動力と前記回生制動力と前記流体圧制動力とで前記設定された要求制動力がまかなわれるように少なくとも前記電動機と前記変速手段と前記発電機とを制御する車両。
【請求項4】
請求項3に記載の車両において、
前記流体圧式制動手段は、前記第1の車輪と前記第2の車輪とに概ね一定の前後分配比をもって制動力を付与可能であり、
前記制動制御手段は、前記制動要求操作がなされたときに前記電動機による前記回生制動力と前記流体圧制動力とを用いる場合に、前記第1の車輪に出力される機関起因制動力と前記流体圧制動力との和と、前記第2の車輪に出力される前記回生制動力と前記流体圧制動力との和との比が所定の目標前後分配比となるように少なくとも前記電動機と前記変速手段と前記発電機とを制御する車両。
【請求項5】
前記制動制御手段は、前記蓄電手段の残容量に応じて前記電動機による前記回生制動力と前記発電機による回生制動力とを設定する請求項1から4の何れかに記載の車両。
【請求項6】
前記変速手段は、前記変速比を無段階に変更可能な無段変速機である請求項1から5の何れかに記載の車両。
【請求項7】
前記第1の車輪は前輪であると共に前記第2の車輪は後輪である請求項1から6の何れかに記載の車両。
【請求項8】
内燃機関と、変速比の変更を伴って前記内燃機関の機関軸に接続された入力軸の動力を変速して前輪および後輪の何れか一方である第1の車輪に連結された出力軸に出力可能な変速手段と、前記前輪および前記後輪の他方である第2の車輪に少なくとも回生制動力を出力可能な電動機と、前記内燃機関の前記機関軸に連結された発電機と、前記発電機および前記電動機と電力をやり取り可能な蓄電手段とを備える車両の制御方法であって、
制動要求操作がなされたときに前記電動機による前記回生制動力を用いる場合に、前記変速手段を介した前記機関軸の回転数制御と前記発電機の制御とに基づく制動力である機関起因制動力が前記第1の車輪に出力されると共に前記電動機による前記回生制動力が前記第2の車輪に出力されて前記制動要求操作により要求されている要求制動力が得られるように前記電動機と前記変速手段と前記発電機とを制御する車両の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−284001(P2007−284001A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−116510(P2006−116510)
【出願日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】