説明

半導体装置の製造方法、半導体装置、電気光学装置、および電子機器

【課題】三次元半導体装置における特性を向上させることができる製造方法および装置構成を提供する。
【解決手段】第1半導体膜(9)上にカーボンナノチューブを備えるプラグ電極(15)を形成する工程、形成されたプラグ電極(15)の周囲に層間絶縁膜(16,18)を形成する工程、層間絶縁膜の表面を平滑化してプラグ電極(15)の頂部を露出させる工程、層間絶縁膜およびプラグ電極の頂部上に非晶質の第2半導体膜を形成する工程、非晶質の第2半導体膜にエネルギーを供給して露出したプラグ電極(15)を触媒として機能させて非晶質の第2半導体膜を結晶化させ結晶化した第2半導体膜(23)とする工程を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体膜が複数積層された半導体装置の製造方法および半導体装置等に係り、特に、下層の半導体膜と上層の半導体膜とを接続するプラグ電極にカーボンナノチューブを利用する発明に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶装置や有機EL(Electro Luminescence)装置などの電気光学装置では、画素駆動用のトランジスタとして、又は、パネルを駆動するための駆動回路として薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)が用いられている。
【0003】
これらの装置は、低温プロセスによって製造することにより耐熱性の低い安価な基板が使用できるなどのメリットがあるため、低温プロセスを利用した薄膜トランジスタの製造方法が種々開発されている。
【0004】
なかでも、本発明者らによる下記特許文献1に記載の技術は、半導体膜(半導体装置)が複数積層された立体的な構造の半導体装置(以下「三次元半導体装置」ともいう。)を低温プロセスにより形成する有効な方法である。当該発明によれば、低温プロセスを用いることによるメリットに加え、配線遅延を低減し、半導体装置のチップ面積を削減できる等の三次元半導体装置のメリットも享有することができていた。
【特許文献1】特開2006−310741号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本明細書の実施の形態において追って詳細に説明するように、低温プロセスにおいて欠かせない上層の半導体膜をレーザー照射にて結晶化する際、上層の半導体膜と下層の半導体膜とを接続するプラグ電極の金属が半導体膜中に拡散し、上層の半導体膜の結晶化を阻害し、トランジスタ特性を劣化させる可能性があった。また、プラグ電極と上層の半導体膜を構成するシリコンとの間に体積膨張を伴うシリサイドが形成され、その体積変化によってボイドなどが発生し、コンタクト抵抗が増加するといった問題も生じていた。
【0006】
そこで、本発明は、三次元半導体装置における特性を向上させることができる製造方法および装置構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1―1)上記課題を解決するために、本発明の半導体装置の製造方法は、複数の半導体膜が積層された半導体装置の製造方法であって、第1半導体膜上にカーボンナノチューブを備えるプラグ電極を形成する工程と、形成されたプラグ電極の周囲に層間絶縁膜を形成する工程と、層間絶縁膜の表面を平滑化してプラグ電極の頂部を露出させる工程と、層間絶縁膜およびプラグ電極の頂部上に非晶質の第2半導体膜を形成する工程と、非晶質の第2半導体膜にエネルギーを供給して露出したプラグ電極を触媒として機能させて非晶質の第2半導体膜を結晶化させる工程と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
かかる発明は、カーボンナノチューブに非晶質の半導体膜を接触させエネルギーを印加させると非晶質の半導体膜が結晶化するという発見に基づいて、本願発明者が想到したものである。半導体膜を結晶化させた後のカーボンナノチューブには構造が変化していないため、本発明において、カーボンナノチューブは、いわゆる触媒として機能していると考えられる。上記本発明によれば、半導体膜が複数積層された立体的な構造の三次元半導体装置を製造するにあたり、第1半導体膜にカーボンナノチューブによるプラグ電極が形成され、カーボンナノチューブで形成されたプラグ電極に接触して非晶質の第2半導体膜が形成されている。この状態で、非晶質の第2半導体膜にエネルギーを供給すれば、カーボンナノチューブが触媒として機能し、非晶質の第2半導体膜が結晶化され、トランジスタ等の機能性膜として機能させることが可能となる。
【0009】
本発明によれば、カーボンナノチューブが触媒として機能するだけなので、半導体膜中にカーボンナノチューブが拡散し、半導体膜の結晶化を阻害するといった問題を生じない。また、本発明によれば、カーボンナノチューブを利用することにより半導体膜の組成物との化合物を生じることがないので、半導体膜に体積変化を起こすことがなく、コンタクト抵抗の増加に伴う半導体膜の特性劣化という問題が生じない。
【0010】
(1−2)上記の製法により形成された本発明の半導体装置は、第1半導体膜と、第1半導体膜上に形成されたカーボンナノチューブにより形成されているプラグ電極と、電極の周囲に形成されている層間絶縁膜と、層間絶縁膜上に形成され、プラグ電極に接続された第2半導体膜と、を含み、第2半導体膜がプラグ電極を触媒として機能させることにより結晶化されていることを特徴とする。
かかる発明の半導体装置では、第2半導体膜の結晶構造を分析すれば、第2半導体膜がプラグ電極を形成するカーボンナノチューブが触媒として機能することにより結晶化したものであることが確認できることになる。
【0011】
具体的には、本発明は以下の態様を備えることが可能である。
(1−3)まず、本発明の半導体装置の製造方法において、第1半導体膜上にカーボンナノチューブを成長させる金属層を形成する工程と、金属層に高周波プラズマを印加して金属層に核を形成する工程と、金属層からカーボンナノチューブを成長させてプラグ電極を形成する工程と、を備えることは好ましい。
【0012】
かかる発明によれば、高周波プラズマを印加すると、そのエネルギーにより金属層に核が形成され、カーボンナノチューブを成長させる雰囲気に維持されることで、金属層の核にからカーボンナノチューブの構造体が成長し、導電性を備えるプラグ電極が形成される。
【0013】
(1−4)ここで、上記金属層は、ニッケル、コバルト、および鉄からなる群から選ばれる金属であることが好ましい。
かかる金属は、カーボンナノチューブを成長させることが可能な核を形成する金属として確認されている金属なのである。
【0014】
本発明は、好適には以下の工程・構成を備えることが可能である。
(2―1)まず、本発明の製造方法は、第1半導体膜上にプラグ電極を形成する工程の前に、透光性基板上に非晶質の第1半導体膜を形成する工程を備え、プラグ電極を形成する工程の後に、非晶質の第1半導体膜に透光性基板の裏面側からエネルギーを供給して当該第1半導体膜に接しているプラグ電極を触媒として機能させて非晶質の第1半導体膜を結晶化させる工程を備えることが可能である。
【0015】
かかる発明によれば、透光性基板を用いているので、非晶質の第1半導体膜を形成し、プラグ電極を形成した後、透光性基板の裏面からエネルギーを供給することにより、プラグ電極を触媒として機能させて非晶質の第1半導体膜を結晶化させることができる。よって、最下層の半導体膜であってもカーボンナノチューブを触媒として機能させて半導体膜を結晶化することが可能である。
【0016】
(2−2)上記の製法により形成された本発明の半導体装置は、第1半導体膜がプラグ電極を触媒として機能させることにより結晶化されていることになる。
かかる発明によれば、第1半導体膜の結晶構造を分析すれば、第1半導体膜がプラグ電極を形成するカーボンナノチューブが触媒として機能することにより結晶化したものであることが確認できることになる。
(2−3)本発明によって形成された半導体装置では、カーボンナノチューブの触媒機能を利用して第1半導体膜を結晶化させた場合には、第1半導体膜の主たる結晶面方位と第2半導体膜の主たる結晶面方位とが同じとなる。
同じカーボンナノチューブで形成されたプラグ電極の触媒機能を利用して結晶化された半導体膜であるため、結晶構造である結晶面方位が同じになるのである。
【0017】
(1/2)ここで、上記第1および/または第2半導体膜を結晶化させるためのエネルギーは、レーザ光を照射することにより供給されることが好ましい。
かかる発明は、レーザ光を照射することによりカーボンナノチューブのプラグ電極が触媒として機能し、当該プラグ電極に接する半導体膜を結晶化させることができることが確認されていることによるものである。
【0018】
(3)本発明において、第2半導体膜を結晶化させる工程の後に、上記の半導体装置の製造方法を1以上繰り返して、プラグ電極に接続された3層以上の半導体膜を積層することが可能である。
上記半導体装置の製造方法を適用することにより第1半導体膜上に形成された第2半導体膜を結晶化させることが可能であるため、結晶化された第2半導体膜上にさらにプラグ電極を形成するというように当該半導体装置の製造方法を複数回繰り返せば、3層以上の半導体膜を形成可能なのである。
【0019】
(4)本発明において、各半導体膜を含む半導体装置を形成する工程を含むことができる。
各半導体膜に対し従来の技術を適用し、個別具体的に半導体装置を製造する趣旨である。いずれの半導体膜を半導体装置に形成するかは任意であり、第2半導体膜のみに半導体装置を形成しても、第1半導体膜のみに半導体装置を形成しても、また双方の半導体膜に半導体装置を形成してもよい。
【0020】
(5)また本発明は、上記に記載の半導体装置の製造方法で製造された半導体装置、または、上記に記載の半導体装置を有する電気光学装置または電子機器でもある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
なお、同一の機能を有するものには同一もしくは関連の符号を付し、その繰り返しの説明を省略する。
【0022】
(定義)
本明細書における幾つかの用語を以下のように定義する。
「半導体膜」:半導体元素を主成分として含む膜をいい、結晶した半導体のみならず、結晶前の非晶質半導体を含む概念である。「半導体」としては、以下の実施形態ではシリコン(Si)を例示するが、カーボンナノチューブの触媒機能により結晶化が可能な元素であれば、ゲルマニウム等他の半導体元素を用いてもよい。
【0023】
「カーボンナノチューブ」:炭素から形成される微細チューブをいう。通常、六角形や五角形、七角形の多角形網目構造を備えるが、その構造に限定はない。チューブの内部に有機分子等を含むことにより導電性を備えた複合体である場合を含む。金属的な性質を持つアームチェア(Armchair)型や、半導体的な性質を持つジグザグ型・らせん型がある。またシングルウォール(単層)型であるかマルチウォール(多層)型であるかを問わない。内部に所定の分子、例えば有機分子を含んだ場合も含む。
【0024】
「プラグ電極」:下層の半導体膜と上層の半導体膜または金属層とを接続する柱状の電極という意味である。
【0025】
「平滑化」:絶縁膜の表面を滑らかにするための処理をいい、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法を適用して研磨する場合、エッチング等によりエッチバックする場合等を含む。
【0026】
「エネルギー」:半導体膜を結晶化するために与えられるパワーであり、レーザ照射による他、熱や電磁波の供給により印加される場合を含む。
【0027】
「金属層」:カーボンナノチューブを成長させることが確認されている金属元素であり、ニッケル、コバルト、または鉄がある。ただし、カーボンナノチューブを成長させることができる元素であれば金属に限らず本発明に適用可能である。
【0028】
「半導体装置」:半導体膜の所定の機能を実現するための素子をいい、薄膜トランジスタ(TFT)や薄膜ダイオードなどの薄膜を用いて構成された機能素子が例示できる。
【0029】
「触媒として機能」:自ら物理的・化学的に変化することなく他の組成物に物理的・化学的作用を生じさせる機能をいう。
【0030】
「電気光学装置」:電気的作用によって発光するあるいは外部からの光の状態を変化させる電気光学素子を備えた装置一般をいい、自ら光を発するものと外部からの光の通過を制御するもの双方を含む。例えば、電気光学素子として、液晶素子、電気泳動素子、EL(エレクトロルミネッセンス)素子、電界の印加により発生した電子を発光板に当てて発光させる電子放出素子などが挙げられる。
【0031】
「電子機器」:複数の素子または回路の組み合わせにより一定の機能を奏する機器一般をいい、例えば電気光学装置やメモリを備えて構成される。ここで電子機器は、回路基板を一枚または複数備えることが可能である。その構成に特に限定が無いが、例えば、携帯電話、腕時計、パーソナルコンピュータ、ICカード、ビデオカメラ、ヘッドマウントディスプレイ、リア型またはフロント型のプロジェクター、さらに表示機能付きファックス装置、デジタルカメラのファインダ、携帯型TV、DSP装置、PDA、電子手帳、電光掲示盤、宣伝公告用ディスプレイ等が含まれる。
【0032】
(原理説明)
カーボンナノチューブは、上記定義に記載したように、炭素原子が所定形状の網目構造を形成することにより得られる、例えば、直径0.4〜100nmの直径を有する微細な管である。本願発明者は、このカーボンナノチューブに非晶質の半導体膜を接触させておき、エネルギーを印加させことにより、非晶質の半導体膜を結晶化させることができるということを発見した。この結晶化ではカーボンナノチューブに物理的・化学的な変化を生じないため、カーボンナノチューブが触媒として機能しているといえる。
【0033】
カーボンナノチューブが半導体膜を結晶化できる理由は、例えば次のように考えることが可能である。カーボンナノチューブを構成する炭素原子の多角形構造の格子定数が半導体膜の結晶における格子定数と若干異なっている場合、この格子定数の不整合から、カーボンナノチューブを核として結晶成長する半導体膜には強い引っ張り応力が発生することになる。このような引っ張り応力が生じていると、自由エネルギーの関係から半導体膜の結晶化に要するエネルギーが低くなる場合があり、そのような場合には、非晶質(固相または液相)の半導体膜の結晶化が容易に進行することが考えられるのである。
【0034】
例えば、半導体膜がシリコンである場合を例示すれば、シリコンのダイヤモンド型結晶の格子定数は、0.543nmである。一方、アームチェア型と呼ばれるカーボンナノチューブでは、炭素原子により構成される多角形の格子定数が0.2454nmである。このとき、アームチェア型のカーボンナノチューブにおける格子定数の2倍のピッチでシリコンがヘテロエピタキシーのように結晶成長するとすれば、約9.6%の格子不整合が存在すると考えられる。これだけの格子不整合が存在すると、結晶成長するシリコン結晶には強い引っ張り応力が導入されると考えられ、この引っ張り応力故に結晶化が促進されるのである。
【0035】
なお、カーボンナノチューブは、構造体内部に有機分子が挿入されやすく、ナノチューブの内径に近い大きさを持った有機分子がいったん挿入されると非常に安定となる。有機分子が挿入されることによって、挿入された有機分子からナノチューブにキャリヤが供給され、電気伝導度を制御できることが報告されている。
【0036】
以下、実施形態1では、第1半導体膜上にカーボンナノチューブによるプラグ電極を形成し、そのプラグ電極を触媒として機能させて非晶質の第2半導体膜を結晶化させる製造方法を例示する。また実施形態2では、透光性基板上に第1半導体膜を形成し、カーボンナノチューブを形成した後にそのカーボンナノチューブを触媒として機能させ、第1半導体膜を結晶化させる製造方法を例示する。
【0037】
(実施形態1)
実施形態1は、第1半導体膜上に形成されたプラグ電極を触媒として機能させ、第2半導体膜を結晶化させる半導体装置の製造方法に関する。
図1〜図6は、本実施形態1の半導体装置の製造方法を説明する製造工程断面図である。本実施形態1に係る半導体装置の第1の製造方法は、大きく以下の工程を備える。
【0038】
1)第1半導体膜9を備える第1半導体装置10を形成する工程(図1)、
2)第1半導体膜9上にカーボンナノチューブによるプラグ電極15を形成する工程(図2)、
3)形成されたプラグ電極15の周囲に層間絶縁膜16を形成する工程(図3(A))、
4)層間絶縁膜16の表面を平滑化してプラグ電極15の頂部を露出させる工程(図3(B))、
5)層間絶縁膜16およびプラグ電極15の頂部上に非晶質の第2半導体膜22を形成する工程(図3(C)〜図5)、
6)非晶質の第2半導体膜22にエネルギーを供給して露出したプラグ電極15を触媒として機能させて非晶質の第2半導体膜22を結晶化させる工程(図6)。
以下詳細に説明する。
【0039】
(第1半導体装置形成工程)
まず従来のリソグラフィ法等を適用して第1半導体装置を形成する。第1半導体装置としては、薄膜トランジスタ(TFT)を例示する。この半導体装置形成工程はオプショナルなものであり、下層側の第1半導体膜を利用した半導体装置を設ける必要がない場合には第1半導体膜の形成以降の工程は不要である。
図1(A)に示すように、所定の基板(ガラス基板、石英ガラス基板)1上に非晶質のシリコンを堆積させて非晶質シリコン膜を形成する。非晶質シリコン膜の膜厚は、任意である。その形成方法としては、各種CVD(化学気相成長、Chemical Vapor Deposition)法、スパッタ法、蒸着法が適用可能である。例えば、LPCVD( Low Pressure Chemical Vapor Deposition )法を用いて、545℃の基板温度においてシラン(SiH4)ガスを導入して50nm程度の非晶質シリコン膜を堆積することができる。
【0040】
オプショナルで、基板1と非晶質シリコン膜との間に下地絶縁膜を形成してもよい。この下地絶縁膜は、例えば、酸化シリコン膜よりなり、プラズマCVD法により形成することができる。
【0041】
次いで、非晶質シリコン膜を他の素子と分離し一つの半導体装置のための島状の第1半導体膜3とする。例えば、非晶質シリコン膜上にフォトレジスト膜を形成し、露光・現像することにより島状にフォトレジスト膜を残存させる。次いで、残存するフォトレジスト膜をマスクにドライエッチングすることにより島状のシリコン膜を形成する。その後、残存するフォトレジスト膜をアッシングにより除去する。このフォトレジストの形成、露光・現像およびレジスト除去までの一連の工程を「パターニング」という。このような分離法をメサ分離法という。メサ分離法の他には、LOCOS(Local Oxidation of Silicon)法やトレンチ分離法などを適用することが可能である。
【0042】
次に図1(B)に示すように、第1半導体膜3上にゲート絶縁膜5を形成する。ゲート絶縁膜5の膜厚は任意である。ゲート絶縁膜5の形成方法は、熱酸化法、CVD法等の各種絶縁膜の形成方法を適用可能である。例えば、第1半導体膜3の表面を所定の条件下、例えば酸素およびクリプトンKrの混合ガス(ガス容量比、酸素O2:Kr=3:97)を用い、圧力1torr、電力3kW、基板温度400℃の条件下でプラズマ酸化することにより5nm程度の膜厚の酸化シリコンによるゲート絶縁膜5を形成することができる。
【0043】
次に図1(C)に示すように、ゲート絶縁膜5上にゲート電極7を形成し、ゲート電極7をマスクとして不純物イオンを第1半導体膜3に注入(ドーピング)することにより、ソース・ドレイン領域9を形成する。ゲート電極7は、タンタル(Ta)、窒化タンタル(TaN)等を電極材料として用いた単層構造または複数層構造とすることができる。ゲート電極7の形成方法としては、蒸着法やスパッタリング法により金属膜を一様に形成し、その後にフォトリソグラフィ法を用いて金属膜をパターニングするというものである。次いで、不純物イオンの注入により、高濃度不純物領域であるソース・ドレイン領域9を形成する。ソース、ドレイン領域9の間の第1半導体膜3はチャネル領域となる。注入する不純物イオンは、nチャネル型TFTを形成する場合には、n型不純物(例えば、リンなど)を注入し、pチャネル型TFTを形成する場合には、p型不純物(例えば、ホウ素など)を注入する。なお、ソース、ドレイン領域を形成する不純物以外に、閾値調整用不純物などの不純物が注入されることがある。
【0044】
なお、ゲート電極にサイドウォールを形成してから不純物イオンを導入することで不純物濃度が異なる領域を半導体膜に形成することにより、LDD(Lightly Doped Drain)構造等の電流漏れ防止構造を有する半導体装置を形成してもよい。
【0045】
オプショナルで、ソース・ドレイン領域9上にシリサイド膜6を形成する。例えば、第1半導体膜3上にスパッタリング法によりニッケル(Ni)膜を堆積し、熱処理を施すことにより、ニッケル膜とシリコンである第1半導体膜3との接触部にニッケルシリサイドを形成する。このシリサイド膜6は、コンタクト抵抗の低減のために形成する。未反応のNi膜は除去することが好ましい。
以上の工程により、薄膜トランジスタである第1半導体装置10が形成される。
【0046】
(プラグ電極形成工程)
次いで第1半導体膜上にプラグ電極15を形成する。
まず、図2(A)に示すように、ソース・ドレイン領域9、およびゲート電極7に対してプラグ電極を配置すべき位置に金属層11を形成する。
【0047】
金属層11は、カーボンナノチューブを成長させる触媒層であり、金属材料としてはニッケルを例示する。金属層11の厚みは、カーボンナノチューブ形成の核となりうる程度の厚みがあれば十分である。金属層11の形成方法は、金属の成膜方法を種々適用可能である。例えば、基板温度200℃でアルゴンガス100%、圧力15mtorrという条件において、電力1kWでのスパッタリング法を適用して約8nmまでニッケルを成膜する。
【0048】
金属層の形成後、パターニングをしてカーボンナノチューブの形成領域の層をパターン化する。すなわち、ソース・ドレイン領域9上のシリサイド膜6およびゲート電極7上のプラグ電極設置位置に金属層11のパターンを形成する。但し、総ての電極をカーボンナノチューブで形成する必要はなく、例えば、ソース・ドレイン電極の片方または双方のみをカーボンナノチューブ製のプラグ電極とし、ゲートについては通常の金属材料によるプラグ電極としてもよい。具体的には、カーボンナノチューブの成長に必要な直径、例えば1μmの大きさにパターニングしてプラグ電極のコンタクト領域となる金属層11を形成する。パターニングのためのエッチング液としては、例えば、硝酸(65%):硫酸(98%):酢酸:水が、5:5:2:28の比率の混酸を室温下で用いることができる。
【0049】
次いで図2(B)に示すように、高周波プラズマを印加して金属層11に核を形成する。高周波プラズマはカーボンナノチューブの成長に適する所定条件下で印加する。例えば、高周波プラズマCVD装置を用いて、基板温度400℃、アンモニア雰囲気下、圧力0.64torr、印加電力90Wの条件下で、所定時間高周波プラズマ13を印加する。この処理により金属層11がナノメータサイズの島状の核を有するように変換される。
【0050】
なお、シリサイド膜6の表面に直接的にカーボンナノチューブを形成可能なニッケルシリサイドの核が形成されている場合には、当該工程は不要である。また金属層に高周波プラズマを印加しなくてもカーボンナノチューブを成長可能である場合には高周波プラズマ印加は不要である。
【0051】
次いで図2(C)に示すように、所定の雰囲気下でカーボンナノチューブを成長させてプラグ電極15を形成する。カーボンナノチューブは、炭素原子を含むガス(例えばメタン)を用いたCVD法にて成長可能なことが知られている。例えば、PECVD(Plasma-enhanced Physical Vapor Deposition)装置に所定濃度のメタンおよび水素ガス(例えばメタン10sccm、水素100sccm)を導入し、圧力0.9torr、印加電力50Wの条件下で20分間維持することにより、一定の高さにまでカーボンナノチューブを成長させることが可能である。このときの雰囲気温度は、400℃程度とする。成長条件および成長時間は、必要とするプラグ電極15の長さによって決定することが可能である。成長の過程で、カーボンナノチューブ内に有機分子を挿入させるようにしてもよい。その他、レーザ蒸発法を適用してカーボンナノチューブを形成してもよい。
【0052】
(層間絶縁膜形成工程)
本実施形態では、以下説明するように、3つのプラグ電極15のうちゲート電極7とドレイン領域9とに接続しているプラグ電極15を配線17に接続し、ソース領域9に接続しているプラグ電極15を上層の第2半導体膜に接続するものとして説明する。但し、他のゲート電極やドレイン電極についてのプラグ電極を上層の第2半導体膜に接続してもよい。上下層の半導体装置相互の配線構造により任意の電極接続構造を選択すればよい。
【0053】
まず図3(A)に示すように、プラグ電極15の周囲に層間絶縁膜16を形成する。層間絶縁膜16の厚みは、上記プラグ電極15の高さに依存するが、上下の半導体膜間の絶縁が十分に果たせる程度の厚みであって、かつ、平滑化の時間が多くなりすぎない程度の厚みの範囲とする。層間絶縁膜16の形成方法としては、通常の絶縁膜形成方法を適用可能である。例えば、TEOS (tetraethoxysilane)を用いて所定条件にてプラグ電極15が総て隠れる程度の厚みに層間絶縁膜を形成する。
【0054】
次いで図3(B)に示すように、層間絶縁膜16の表面を所定の方法で平滑化する。平滑化の方法は種々考えられるが、例えばCMP法等の研磨法、エッチング法が考えられる。例えば、CMP法を適用する場合、CMP装置の制御パラメーターとして、研磨荷重、定盤の回転速度、ヘッドの回転速度、スラリーの選択・供給方法、コンディショニングの条件・頻度などを適正に設定し、層間絶縁膜の表面を平滑化する。プラグ電極15の表面が露出する程度に研磨すれば十分である。好ましくは、確実にカーボンナノチューブの表面を出すために、酸素等によるアッシング法を適用し、カーボンナノチューブの残渣を取り除くようにしてもよい。
【0055】
次いで図3(C)に示すように、露出したプラグ電極15に接触するように配線17を形成する。配線17は、通常の金属配線形成方法が適用可能である。例えば、アルミニウム等の金属層を形成した後、配線パターンに基づきフォトリソグラフィ法によりパターニングして、ゲート電極7およびドレイン領域9と接続しているプラグ電極15についての配線17を形成する。
【0056】
そして図4(A)に示すように、ソース領域9と接続しているプラグ電極15については、さらにカーボンナノチューブを再度成長させる。成長条件は上記したとおりである。
【0057】
次いで図4(B)に示すように、ソース領域9と接続しているプラグ電極15の周囲に層間絶縁膜18を形成する。層間絶縁膜18の形成は、下層の層間絶縁膜16と同様である。すなわち、TEOSを用いて所定条件にてプラグ電極15が総て隠れる程度の厚みに層間絶縁膜18を形成する。
【0058】
(平滑化工程)
次いで図5(A)に示すように、層間絶縁膜18の表面を平滑化してプラグ電極15の頂部を露出させる。平滑化の方法としては研磨法、エッチング法等、種々考えられる。例えば、CMP法を適用することにより、プラグ電極15の頂部が見えるまで研磨する。CMP法の詳細については上述のとおりである。アッシング法を適用可能である点も上述のとおりである。
【0059】
(第2半導体膜形成工程)
次いで図5(B)に示すように、平滑化した層間絶縁膜18および露出したプラグ電極15の頂部上に非晶質の第2半導体膜22を形成する。悲壮質の第2半導体膜22の厚みについては、薄膜トランジスタの機能膜として機能することが可能な厚みに形成する。非晶質の第2半導体膜22の形成方法としては、各種CVD法、スパッタ法、蒸着法が適用可能である。例えば、LPCVD( Low Pressure Chemical Vapor Deposition )法を用いる場合、425℃の基板温度においてSi26ガスを30sccmの濃度で導入する条件下で、250nm程度の非晶質のシリコン膜を堆積することが可能である。
【0060】
(第2半導体膜結晶化工程)
次いで図6(A)に示すように、非晶質の第2半導体膜22にエネルギーを供給してプラグ電極15を触媒として機能させ第2半導体膜を結晶化させる。印加するエネルギー源としては加熱、光照射等、種々の方法が考えられるが、特定領域の半導体膜を結晶化させるためには、レーザ光を照射することが好ましい。印加するレーザ光の強度は半導体膜の結晶化に必要な程度とする。例えば、波長308nmのエキシマレーザを用いる場合、1.5J/cm2の強度で照射する。
【0061】
このレーザ光の照射により、図6(B)に示すように、プラグ電極15の頂部の炭素原子構造を核として非晶質の半導体膜に結晶が成長していき、例えば5μm以上のグレインサイズの単結晶を有する結晶化した第2半導体膜23を形成可能である。
【0062】
(第2半導体装置形成工程)
次に図7に示すように、第2半導体膜23を機能層として利用した第2半導体装置20を形成する。第2半導体装置としては、薄膜トランジスタ(TFT)を例示する。第2半導体装置形成工程はオプショナルな工程であり、半導体装置を形成する必要がない場合には不要な工程である。
【0063】
第2半導体装置20の具体的な製法については、従来の半導体装置の製造方法を種々適用可能である。例えば、第2半導体膜23上にゲート絶縁膜26、ゲート電極27を形成し、ゲート電極27をマスクとして第2半導体膜23に不純物イオンを導入し、ソース・ドレイン領域29とする。ゲート電極27の下層がチャネル領域となる。必要に応じてソース・ドレイン領域29上にニッケル層を形成し熱処理を施すことにより、ソース・ドレイン領域29上にシリサイド膜を形成する。以上により、第2半導体装置20が形成される。
【0064】
さらに上記第1半導体装置10について施した製造方法と同様にして、層間絶縁膜30を形成し、第2半導体装置20のソース・ドレイン領域29およびゲート電極27の電極形成位置にコンタクトホール31を形成してから金属層を成膜してからパターニングする。この処理によって、第2半導体装置20のソース・ドレイン領域29およびゲート電極27に接続する配線32が形成される。必要に応じて、層間絶縁膜30および配線32上に保護層33を形成する。
以上の処理により、三次元半導体装置100が製造される。
【0065】
以上、実施形態1によれば以下の利点を有する。
1)本実施形態1によれば、カーボンナノチューブを触媒として機能するので、単なるアニール処理をする場合に比べて第2半導体膜の結晶化を大幅に促進することが可能である。
【0066】
2)本実施形態1によれば、プラグ電極を構成するカーボンナノチューブが半導体膜中の原子(シリコン)と反応を生じにくいため、半導体化合物(シリサイド)が形成されることがなく、その結果、ボイド等を生じることによる体積変化を生じたりすることがない。このため、半導体膜の特性劣化を抑制可能であり、また、プラグ電極と半導体膜とのコンタクト抵抗が増加することを抑制可能である。
【0067】
3)本実施形態1によれば、プラグ電極を形成するカーボンナノチューブは比較的低い温度、すなわち400℃程度の低温域で成長可能であるため、プラグ電極形成過程で下層の半導体膜に熱的な悪影響を与える可能性が無く、三次元半導体装置の上下層の接続電極として適している。
【0068】
4)本実施形態1によれば、プラグ電極を形成するカーボンナノチューブは金属材料に比べても非常に高い融点を有するため、プロセス中の熱によって物理的に安定であり、半導体膜中に電極構成材料が拡散して結晶化を阻害することを防止可能である。
【0069】
5)本実施形態1によれば、プラグ電極を形成するカーボンナノチューブは金属材料に比べても非常に高い熱伝導率を有するので、層間絶縁膜や半導体膜に囲まれており蓄熱しやすい三次元半導体装置の内部から放熱させるヒートシンクとして機能させることも可能である。
【0070】
6)本実施形態1によれば、プラグ電極を形成するカーボンナノチューブは金属材料と比べても非常に低い電気伝導度を有するので、プラグ電極を流れる電流による発熱量が些少であり、熱が籠もりやすい三次元半導体装置の内部での熱の発生自体を抑制することが可能である。
【0071】
7)本実施形態1によれば、金属層11に高周波プラズマを印加して核を形成してからCVD法によりカーボンナノチューブを成長させるので、容易に、かつ、短時間に、所望の高さのプラグ電極15を形成することが可能である。
【0072】
(実施形態2)
実施形態2は、下層側の第1半導体膜についてもカーボンナノチューブを触媒として機能させて結晶化する半導体装置の製造方法に関する。
【0073】
本実施形態2における層構造および製造工程の詳細については、前記実施形態1と同様であるため、同様の工程・構造については同一の符号を付することとし、その説明を省略する。
【0074】
図8及び図9は、本実施形態1の半導体装置の製造方法を説明する製造工程断面図である。本実施形態2に係る半導体装置の第2の製造方法は、大きく以下の工程を備える。
【0075】
1)透光性基板1a上に非晶質の第1半導体膜2を形成する工程(図8(A))、
2)非晶質の第1半導体膜2上にプラグ電極15を形成する工程(図8(B)(C))、
3)ゲート絶縁膜4を形成する工程(図8(D))、
4)透光性基板1aの裏面側からエネルギーを供給して非晶質の第1半導体膜2を結晶化させる工程(図8(E)、図9(A))、
5)第1半導体装置形成工程(図9(C))。
以下詳細に説明する。
【0076】
(非晶質の第1半導体膜形成工程)
まず図8(A)に示すように、透光性基板1a上に非晶質の第1半導体膜2を形成する。透光性基板1aとしては、半導体プロセスの熱に対する耐性・ハンドリングに対する機械的耐性があり、かつ、透過する光の減衰率がなるべく少ない基板であることが望ましい。例えば、ガラス基板、石英ガラス基板を利用可能である。透光性基板1aの厚みは、耐熱性・耐久性の他に、光減衰率も考慮して決定する。
【0077】
透光性基板1a上に非晶質のシリコンを堆積させる。非晶質シリコン膜の膜厚は、任意である。その形成方法としては、各種CVD法、スパッタ法、蒸着法が適用可能である。例えば、LPCVD法を用いて、545℃の基板温度においてシラン(SiH4)ガスを導入して50nm程度の非晶質シリコン膜を堆積することができる。
【0078】
オプショナルで、基板1と非晶質シリコン膜との間に下地絶縁膜を形成してもよい。この下地絶縁膜は、例えば、酸化シリコン膜よりなり、プラズマCVD法により形成することができる。
【0079】
次いで、非晶質シリコン膜を他の素子と分離する。例えば、フォトリソグラフィ法を適用して、非晶質シリコン膜をパターニングして島状の非晶質の第1半導体膜2を残存させる。LOCOS法やトレンチ分離法などを適用してもよい。
【0080】
(プラグ電極形成工程)
次に図8(B)に示すように、非晶質の第1半導体膜上に金属層11を島状に形成する。金属層の材料、厚み、形成方法は、上記実施形態1と同様である。オプショナルで、上述したように高周波プラズマを引加し、金属層11に核を形成してもよい。また、第1半導体膜2上にシリサイド膜を形成してもよい。
【0081】
次に図8(C)に示すように、所定の雰囲気下でカーボンナノチューブを成長させてプラグ電極15を形成する。カーボンナノチューブの形成方法は、上記実施形態1と同様である。
【0082】
(ゲート絶縁膜形成工程)
次いで図8(D)に示すように、カーボンナノチューブが若干成長した段階でゲート絶縁膜4を形成する。ゲート絶縁膜の形成方法は、上記実施形態1と同様である。
【0083】
なお、第1半導体膜を用いて半導体装置を形成しない場合には、当該工程を実施する必要はないが、プラグ電極15を保護するために層間絶縁膜を形成してから、後述するレーザ照射をすることが好ましい。
【0084】
(第1半導体膜結晶化工程)
次いで図8(E)に示すように、透光性基板1aの裏面側からエネルギーを供給して第1半導体膜2に接しているプラグ電極15を触媒として機能させて非晶質の第1半導体膜2を結晶化させる。印加するエネルギー源としては加熱、光照射等、種々の方法が考えられるが、特定領域の半導体膜を結晶化させるためには、レーザ光8を照射することが好ましい。印加するレーザ光の強度は半導体膜の結晶化に必要な程度とする。例えば、波長308nmのエキシマレーザを用いる場合、1.5J/cm2の強度で照射する。当該工程により、非晶質の第1半導体膜2に接触しているプラグ電極15を核として第1半導体膜2の結晶化が促進され、例えば5μm以上のグレインサイズの単結晶を有する結晶化した第1半導体膜3を形成可能である(図9(A))。
【0085】
(第1半導体装置形成工程)
本実施形態では、第1半導体膜の結晶化工程においてカーボンナノチューブで形成されたプラグ電極15を保護するために、以下の工程では二段階のプラグ電極成長を実施している。すなわち、第1半導体膜の結晶化に必要な程度までプラグ電極15を成長させてから(図8(C))、一旦ゲート絶縁膜4を形成してプラグ電極15を保護し(図8(D))、第1半導体膜の結晶化を行なった後(図8(E)、図9(A))、再びプラグ電極を成長させる。そのため、第1半導体装置形成工程の他に、ゲート絶縁膜の平滑化工程およびカーボンナノチューブで形成されるプラグ電極再形成工程を有している。但し、カーボンナノチューブの保護が不要な場合には、ゲート絶縁膜の平滑化工程(図9(C))およびプラグ電極再形成工程(図9(D))は不要である。
【0086】
まず図9(B)に示すように、ゲート絶縁膜4上にゲート電極7を形成し、ゲート電極7をマスクとして第1半導体膜3に不純物イオンを導入し、ソース・ドレイン領域9とする。ゲート電極7の下層がチャネル領域となる。必要に応じてソース・ドレイン領域9上にニッケル層を形成し熱処理を施すことにより、ソース・ドレイン領域9上にシリサイド膜を形成する。以上により、第1半導体装置10が形成される。
【0087】
次いで図9(C)に示すように、ゲート絶縁膜4の表面を平滑化してプラグ電極15の頂部を露出させる。平滑化の方法としては研磨法、エッチング法等、種々考えられる。例えば、CMP法を適用することにより、プラグ電極15の頂部が見えるまで研磨する。CMP法の詳細については上述のとおりである。アッシング法を適用可能である点も上述のとおりである。
【0088】
次いで図9(D)に示すように、露出したプラグ電極15をさらに成長させる。プラグ電極15を必要な高さまで成長させた後は、上記実施形態1と同様に、層間絶縁膜形成工程、平滑化工程、第2半導体膜形成工程、第2半導体膜結晶化工程等を実施して、第2半導体装置を形成すればよい。
【0089】
以上、本実施形態2によれば、透光性基板の裏面側からレーザ光を照射するので、カーボンナノチューブで形成されたプラグ電極15を触媒として機能させて下層の第1半導体膜2の結晶化を促進することが可能である。
【0090】
本実施形態2によれば、下層の第1半導体膜2も上層の第2半導体膜23と同じくカーボンナノチューブの触媒機能を利用して結晶化させるので、第1半導体膜の主たる結晶面方位と第2半導体膜の主たる結晶面方位とを同じにすることが可能である。よって、半導体膜の特性を上下層で揃えることが可能となる。この工程を繰り返すことにより、均一な特性を有する半導体装置を備えた三次元半導体装置を提供することが可能である。
【0091】
(実施形態3)
本発明の実施形態3は、上記実施形態の製造方法で製造された三次元半導体装置を備える電気光学装置および電子機器に関する。
【0092】
図10に、電気光学装置を用いた電子機器の例を示す。図10(A)は携帯電話への適用例であり、図10(B)は、ビデオカメラへの適用例である。また、図10(C)は、テレビジョンへ(TV)の適用例であり、図10(D)は、ロールアップ式テレビジョンへの適用例である。
【0093】
上記実施形態の製造方法で製造された三次元半導体装置は、例えば、電気光学装置(表示部)に用いられる。以下に電気光学装置を備えた電子機器を例示する。
【0094】
図10(A)に示すように、携帯電話530には、アンテナ部531、音声出力部532、音声入力部533、操作部534および電気光学装置(表示部)500を備えている。この電子機器に本発明の半導体装置を組み込むことができる。
【0095】
図10(B)に示すように、ビデオカメラ540には、受像部541、操作部542、音声入力部543および電気光学装置(表示部)500を備えている。この電子機器に本発明の半導体装置を組み込むことができる。
【0096】
図10(C)に示すように、テレビジョン550は、電気光学装置(表示部)500を備えている。この電子機器に本発明の半導体装置を組み込むことができる。
なお、パーソナルコンピュータ等に用いられるモニタ装置(電気光学装置)にも本発明の半導体装置を組み込むことができる。
【0097】
図10(D)に示すように、ロールアップ式テレビジョン560は、電気光学装置(表示部)500を備えている。この電子機器に本発明の半導体装置を組み込むことができる。
【0098】
なお、電気光学装置を有する電子機器としては、上記の他、表示機能付きファックス装置、デジタルカメラのファインダ、携帯型TV、電子手帳、電光掲示板、宣伝広告用ディスプレイなどがある。
【0099】
(変形例)
本発明は、上記実施形態に限定されることなく種々に変形して適用することが可能である。すなわち、上記実施の形態を通じて説明された実施例や応用例は、用途に応じて適宜に組み合わせて、又は変更若しくは改良を加えて用いることができ、本発明は上述した実施の形態の記載に限定されるものではない。そのような組み合わせ又は変更若しくは改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0100】
例えば、上記実施形態では、第1半導体膜についても第2半導体膜についても半導体装置(薄膜トランジスタ)を形成する場合を例示したが、これに限定されない。下層の半導体装置と上層の半導体装置とを異なる種類(例えば薄膜トランジスタとダイオード等)としてもよい。
【0101】
また、第1半導体膜および第2半導体膜の一方にだけ半導体装置を形成してもよい。例えば、上層の第2半導体膜にのみ半導体装置を形成する場合には、下層の第1半導体膜を、カーボンナノチューブで形成されたプラグ電極の成長土台、電極、ヒートシンクとして機能させることが可能である。
【0102】
さらに、上記実施形態において、第2半導体膜結晶化工程または第2半導体装置形成工程の後に、上記の半導体装置の製造方法を繰り返すことによって、3層以上の半導体膜を備える三次元半導体装置を提供することが可能である。具体的には、結晶化された第2半導体膜23上にさらにプラグ電極15を形成するというように当該半導体装置の製造方法を複数回繰り返すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明に係る実施形態1の製造工程断面図であり、(A)は第1半導体膜形成工程、(B)はゲート絶縁膜形成工程、(C)は第1半導体装置形成工程。
【図2】本発明に係る実施形態1の製造工程断面図であり、(A)は電極層形成工程、(B)は高周波プラズマ供給(核形成)工程、(C)はプラグ電極形成工程。
【図3】本発明に係る実施形態1の製造工程断面図であり、(A)は層間絶縁膜形成工程、(B)は平滑化工程、(C)は配線形成工程。
【図4】本発明に係る実施形態1の製造工程断面図であり、(A)はプラグ電極再形成工程、(B)は層間絶縁膜形成工程。
【図5】本発明に係る実施形態1の製造工程断面図であり、(A)は平滑化工程、(B)は第2半導体膜形成工程。
【図6】本発明に係る実施形態1の製造工程断面図であり、(A)は第2半導体膜結晶化工程、(B)は結晶化後の第2半導体膜。
【図7】本発明に係る実施形態1の製造工程断面図であり、製造された三次元半導体装置の断面図。
【図8】本発明に係る実施形態2の製造工程断面図であり、(A)は第1半導体膜形成工程、(B)は電極層形成工程、(C)はプラグ電極形成工程、(D)はゲート絶縁膜形成工程、(D)は第1半導体膜結晶化工程。
【図9】本発明に係る実施形態2の製造工程断面図であり、(A)は結晶化後の第1半導体膜断面図、(B)は第1半導体装置形成工程、(C)は平滑化工程、(D)はプラグ電極再形成工程。
【図10】実施形態3に係る電子機器の例示であり、(A)は携帯電話、(B)は腕時計、(C)は携帯型情報処理装置。
【符号の説明】
【0104】
1…基板、1a…透光性基板、2…非晶質第1半導体膜、3…結晶化第1半導体膜、4…ゲート絶縁膜、5…ゲート絶縁膜、6…シリサイド膜、7…ゲート電極、9…ソース・ドレイン領域、10…第1半導体装置、11…金属層、15…プラグ電極、16…層間絶縁膜、17…配線、18…層間絶縁膜、20…第2半導体装置、22…非晶質第2半導体膜、23…結晶化第2半導体膜、26…ゲート絶縁膜、27…ゲート電極、29…ソース・ドレイン領域、30…層間絶縁膜、32…配線、33…保護層、530…携帯電話、531…アンテナ部、532…音声出力部、533…音声入力部、534…操作部、540…ビデオカメラ、541…受像部、542…操作部、543…音声入力部、550…テレビジョン、560…ロールアップ式テレビジョン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の半導体膜が積層された半導体装置の製造方法であって、
第1半導体膜上にカーボンナノチューブを備えるプラグ電極を形成する工程と、
形成された該プラグ電極の周囲に層間絶縁膜を形成する工程と、
該層間絶縁膜の表面を平滑化して該プラグ電極の頂部を露出させる工程と、
該層間絶縁膜および該プラグ電極の頂部上に非晶質の第2半導体膜を形成する工程と、
該非晶質の第2半導体膜にエネルギーを供給して露出した該プラグ電極を触媒として機能させて該非晶質の第2半導体膜を結晶化させる工程と、
を備えたことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第1半導体膜上に前記カーボンナノチューブを成長させる金属層を形成する工程と、
該金属層に高周波プラズマを印加して該金属層に核を形成する工程と、
該金属層から該カーボンナノチューブを成長させて前記プラグ電極を形成する工程と、
を備える請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記金属層は、ニッケル、コバルト、および鉄からなる群から選ばれる金属である、
請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記第1半導体膜上にプラグ電極を形成する工程の前に、
透光性基板上に非晶質の前記第1半導体膜を形成する工程を備え、
前記プラグ電極を形成する工程の後に、
該非晶質の第1半導体膜に該透光性基板の裏面側からエネルギーを供給して当該第1半導体膜に接している前記プラグ電極を触媒として機能させて該非晶質の第1半導体膜を結晶化させる工程を備える、
請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第1半導体膜の主たる結晶面方位と前記第2半導体膜の主たる結晶面方位とが同じである、
請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記エネルギーは、レーザ光を照射することにより供給される、
請求項1または4に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記第2半導体膜を結晶化させる工程の後に、請求項1に記載の半導体装置の製造方法を1以上繰り返して、前記プラグ電極に接続された3層以上の半導体膜を積層する、
半導体装置の製造方法。
【請求項8】
各前記半導体膜を含む半導体装置を形成する工程を含む、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
第1半導体膜と、
該第1半導体膜上に形成されたカーボンナノチューブにより形成されているプラグ電極と、
該電極の周囲に形成されている層間絶縁膜と、
該層間絶縁膜上に形成され、該プラグ電極に接続された第2半導体膜と、を含み、
該第2半導体膜が該プラグ電極を触媒として機能させることにより結晶化されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項10】
前記第1半導体膜が該プラグ電極を触媒として機能させることにより結晶化されている、
請求項9に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記第1半導体膜の主たる結晶面方位と前記第2半導体膜の主たる結晶面方位とが同じである、
請求項10に記載の半導体装置。
【請求項12】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法で製造された半導体装置、または、請求項9乃至11のいずれか一項に記載の半導体装置を有する、電気光学装置。
【請求項13】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法で製造された半導体装置、または、請求項9乃至11のいずれか一項に記載の半導体装置を有する、電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−283819(P2009−283819A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−136477(P2008−136477)
【出願日】平成20年5月26日(2008.5.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】