説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】p型MISトランジスタのゲート絶縁膜の酸化膜換算膜厚の厚膜化を抑制しつつ、p型MISトランジスタの実効仕事関数を増加させて、低閾値電圧を有するn型,p型MISトランジスタを実現する。
【解決手段】半導体装置は、第1,第2のMISトランジスタnTr,pTrを備えている。第1のMISトランジスタnTrは、第1の活性領域10a上に形成され、第1の高誘電率膜14Xaを有する第1のゲート絶縁膜14Aと、第1のゲート電極18Aとを備えている。第2のMISトランジスタpTrは、第2の活性領域10b上に形成され、第2の高誘電率膜14xを有する第2のゲート絶縁膜14Bと、第2のゲート電極18Bとを備えている。第2の高誘電率膜14xは、第1の調整用金属を含む。第1の高誘電率膜14Xaは、第2の高誘電率膜14xよりも窒素濃度が高く、且つ、第1の調整用金属を含まない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関し、特に高誘電率膜を含むゲート絶縁膜を有するMISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)を備えた半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路の高性能化の為に、従来のシリコン酸化膜又はシリコン酸窒化膜からなるゲート絶縁膜に代わり、アルミナ(Al23)、ハフニア(HfO2)及びハフニウムシリケート(HfSiOx)に代表される高誘電体材料からなるゲート絶縁膜の実用化、並びに従来のポリシリコン膜からなるゲート電極に代わり、金属膜からなるフルメタル構造のゲート電極、又はゲート絶縁膜とポリシリコン膜との間に金属膜を挿入するMIPS(Metal-Inserted Poly-silicon Stack)構造のゲート電極の実用化が進められている。
【0003】
n型MISFET(以下、「n型MISトランジスタ」と称す)、及びp型MISFET(以下、「p型MISトランジスタ」と称す)の閾値電圧を制御する方法として、n型MISトランジスタとp型MISトランジスタとで互いに異なる金属材料からなる金属膜を有するゲート電極を用いる方法がある。ここで、高誘電率膜を有するゲート絶縁膜及び金属膜を有するゲート電極を備えたMISトランジスタの場合、MISトランジスタの閾値電圧を、ゲート電極における金属膜の金属材料の仕事関数に応じて制御することができる。
【0004】
しかしながら、上記の方法では、次に示すデメリットがある。例えば、n型MISトランジスタのゲート電極材料とp型MISトランジスタのゲート電極材料とが互いに異なるため、n型MISトランジスタのゲート電極とp型MISトランジスタのゲート電極とを個別に形成する必要があり、製造工程が複雑であるというデメリットがある。また例えば、n型MISトランジスタとp型MISトランジスタとの間に位置するN/P境界領域のマージン(余裕領域)を広くする必要があり、n型,p型MISトランジスタの微細化が困難であるというデメリットがある。
【0005】
一方、n型,p型MISトランジスタの閾値電圧を制御する方法として、n型MISトランジスタとp型MISトランジスタとで互いに同じゲート電極材料を用い、n型MISトランジスタのゲート絶縁膜として、ランタン(La)を含む高誘電率膜を有するゲート絶縁膜を用いる一方、p型MISトランジスタのゲート絶縁膜として、アルミニウム(Al)を含む高誘電率膜を有するゲート絶縁膜を用いる方法がある(例えば非特許文献1,2参照)。
【0006】
上記の方法では、次に示すメリットがある。例えば、n型MISトランジスタのゲート電極材料とp型MISトランジスタのゲート電極材料とが互いに同じため、製造工程が簡易であるというメリットがある。また例えば、ゲート電極の加工が容易であるというメリットがある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Hyung-Suk Jung et al., ”A Highly Manufacturable MIPS (Metal Inserted Poly-Si Stack) Technology with Novel Threshold Voltage Control”, VLSI Tech. Digest 2005
【非特許文献2】H.N. Alshareef et al., “Thermally Stable N-Metal Gate MOSFETs Using La-Incorporated HfSiO Dielectric”, VLSI Tech. Digest 2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、本願発明者らが鋭意検討を重ねた結果、Laを含む高誘電率膜を有するゲート絶縁膜を備えたn型MISトランジスタと、Alを含む高誘電率膜を有するゲート絶縁膜を備えたp型MISトランジスタとを備えた半導体装置の場合、以下に示す問題があることを見出した。この問題について、図9(a) 〜(c) を参照しながら説明する。
【0009】
図9(a) は、ゲート絶縁膜における高誘電率膜の窒素濃度とp型MISトランジスタの実効仕事関数との関係を示す図である。図9(b) は、Alキャップ膜の膜厚とp型MISトランジスタの実効仕事関数との関係を示す図である。図9(c) は、Alキャップ膜の膜厚とゲート絶縁膜における高誘電率膜の酸化膜換算膜厚との関係を示す図である。
【0010】
図9(a) 〜(c) 並びに後述の図10及び図11(a) 〜(b) の評価に用いたMISトランジスタの構成は、次に示す通りである。MISトランジスタは、Siからなる半導体基板上に形成されたSiO2からなる下地膜と高誘電率膜とを有するゲート絶縁膜、及びTiNからなる金属膜とポリシリコンからなるシリコン膜とを有するゲート電極を備えている。
【0011】
図9(a) 〜(c) の評価に用いたp型MISトランジスタのゲート絶縁膜における高誘電率膜(例えばAlを含むHfSiON膜)の形成方法は、次に示す通りである。HfSiON膜上に、Alを含むキャップ膜(以下、「Alキャップ膜」と称す)を形成した後、Alキャップ膜に含まれるAlを、HfSiON膜に拡散させる。これにより、Alを含むHfSiON膜(HfAlSiON膜)を形成する。
【0012】
図9(a) の横軸に示す濃度A,濃度B,濃度Cは、ゲート絶縁膜における高誘電率膜に含まれる窒素の窒素濃度を示し、濃度A〜濃度Cは、濃度A<濃度B<濃度Cの関係を満たす。
【0013】
Alキャップ膜に含まれるAlを拡散させる膜(言い換えれば、Alキャップ膜下に形成された膜)として、窒素を含む高誘電率膜(例えばHfSiON膜)を用いた場合、次に示す問題がある。図9(a) に示すように、ゲート絶縁膜における高誘電率膜(例えばAlを含むHfSiON膜)の窒素濃度が高くなるに連れて、p型MISトランジスタの実効仕事関数(effective work function)が減少するという問題がある。この理由は、次に示すものと考えられる。HfSiON膜(即ち、Alキャップ膜下に形成された膜)の窒素濃度が高くなるに連れて、HfSiON膜へのAlの拡散が抑制され、HfSiON膜に拡散されるAlの拡散量が減少するため、フラットバンド電圧を大きくシフトさせることができず、p型MISトランジスタの実効仕事関数が減少する。
【0014】
p型MISトランジスタの実効仕事関数を増加させる手段として、次に示す手段が考えられる。図9(b) に示すように、Alキャップ膜の膜厚が厚くなるに連れて、p型MISトランジスタの実効仕事関数が増加する。このため、Alキャップ膜の膜厚を厚くすることにより、p型MISトランジスタの実効仕事関数を増加させることができる。
【0015】
しかしながら、Alキャップ膜の膜厚を厚くした場合、次に示す問題がある。図9(c) に示すように、Alキャップ膜の膜厚が厚くなるに連れて、ゲート絶縁膜における高誘電率膜の酸化膜換算膜厚(Equivalent Oxide Thickness:EOT)が厚膜化する。このため、Alキャップ膜の膜厚を厚くすると、図9(b) に示すように、p型MISトランジスタの実効仕事関数を増加させることは可能なものの、図9(c) に示すように、p型MISトランジスタのゲート絶縁膜における高誘電率膜の酸化膜換算膜厚が厚膜化するという問題がある。
【0016】
以上のように、p型MISトランジスタの実効仕事関数は、図9(a) に示すように、ゲート絶縁膜における高誘電率膜の窒素濃度が高くなるに連れて、減少する。そこで、Alキャップ膜の膜厚を厚くした場合、図9(b) に示すように、p型MISトランジスタの実効仕事関数を増加させることは可能なものの、図9(c) に示すように、ゲート絶縁膜における高誘電率膜の酸化膜換算膜厚が厚膜化するという問題がある。
【0017】
前記に鑑み、本発明の目的は、高誘電率膜を含むゲート絶縁膜を有するn型,p型MISトランジスタを備えた半導体装置において、p型MISトランジスタのゲート絶縁膜の酸化膜換算膜厚の厚膜化を抑制しつつ、p型MISトランジスタの実効仕事関数を増加させて、低閾値電圧を有するn型,p型MISトランジスタを実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記の目的を達成するために、本願発明者らが鋭意検討を重ねた結果、以下に示す知見を見出した。この知見について、図10及び図11(a) 〜(b) を参照しながら説明する。
【0019】
−p型MISトランジスタ−
図10は、Alキャップ膜の膜厚を変化させて、HfSiO膜及びHfSiON膜の各々にAlを拡散させた場合の、フラットバンド電圧の変化量(ΔVfb)と酸化膜換算膜厚の変化量(ΔEOT)との関係を示す図である。
【0020】
図10の評価方法は、以下に示す通りである。
【0021】
Alキャップ膜に含まれるAlが拡散される膜として、窒素を含まない高誘電率膜、例えばHfSiO膜を用い(□線参照)、HfSiO膜上に膜厚がxnmのAlキャップ膜を形成し、HfSiO膜に、Alキャップ膜に含まれるAlを拡散させて、Alを含むHfSiO膜(HfAlSiO膜)を形成した。Alキャップ膜の膜厚が0nmの時のΔVfb及びΔEOTの値を0とし、Alキャップ膜の膜厚がxnmの時のΔVfb及びΔEOTの値を求めた。図10にプロットされた5コの□は、左から右に向かって順に、Alキャップの膜厚が、0nm、0.1nm、0.3nm、0.5nm、0.7nmの時のΔVfb及びΔEOTの値を示す。
【0022】
Alキャップ膜に含まれるAlが拡散される膜として、窒素を含む高誘電率膜、例えばHfSiON膜を用い(△線参照)、HfSiON膜上に膜厚がynmのAlキャップ膜を形成し、HfSiON膜に、Alキャップ膜に含まれるAlを拡散させて、Alを含むHfSiON膜を形成した。Alキャップ膜の膜厚が0nmの時のΔVfb及びΔEOTの値を0とし、Alキャップ膜の膜厚がynmの時のΔVfb及びΔEOTの値を求めた。図10にプロットされた6コの△は、左から右に向かって順に、Alキャップの膜厚が、0nm、0.1nm、0.3nm、0.4nm、0.5nm、0.7nmの時のΔVfb及びΔEOTの値を示す。
【0023】
図10から判るように、Alキャップ膜に含まれるAlを拡散させる膜として、HfSiO膜を用いた場合、HfSiON膜を用いた場合に比べて、ΔVfbの値が大きい。このことから、次に示すことが判る。ゲート絶縁膜における高誘電率膜の窒素濃度を低くすることにより、ゲート絶縁膜の酸化膜換算膜厚の厚膜化を抑制しつつ、フラットバンド電圧をシフトさせることができ、p型MISトランジスタの実効仕事関数を増加させることができる。
【0024】
−n型MISトランジスタ−
図11(a) は、ゲート絶縁膜における高誘電率膜の窒素濃度とn型MISトランジスタの実効仕事関数との関係を示す図である。図11(b) は、ゲート絶縁膜における高誘電率膜の窒素濃度と該高誘電率膜の酸化膜換算膜厚との関係を示す図である。
【0025】
図11(a) 〜(b) の評価に用いたn型MISトランジスタのゲート絶縁膜における高誘電率膜(例えばLaを含むHfSiON膜)の形成方法は、次に示す通りである。HfSiON膜上に、Laを含むキャップ膜(以下、「Laキャップ膜」と称す)を形成した後、Laキャップ膜に含まれるLaを、HfSiON膜に拡散させる。これにより、Laを含むHfSiON膜(HfLaSiON膜)を形成する。
【0026】
図11(a) 〜(b) の横軸に示す濃度A,濃度B,濃度Cは、ゲート絶縁膜における高誘電率膜に含まれる窒素の窒素濃度を示し、濃度A〜濃度Cは、濃度A<濃度B<濃度Cの関係を満たす。
【0027】
Laキャップ膜に含まれるLaを拡散させる膜(言い換えれば、Laキャップ膜下に形成された膜)として、窒素を含む高誘電率膜(例えばHfSiON膜)を用いた場合、次に示すことが判る。図11(a) に示すように、n型MISトランジスタの実効仕事関数は、ゲート絶縁膜における高誘電率膜(例えばLaを含むHfSiON膜)の窒素濃度に大きく依存しない。図11(b) に示すように、ゲート絶縁膜における高誘電率膜の酸化膜換算膜厚は、該高誘電率膜の窒素濃度に大きく依存しない。
【0028】
以上のように、n型MISトランジスタの場合、ゲート絶縁膜における高誘電率膜の窒素濃度を高くしても、図11(a) に示すように、n型MISトランジスタの実効仕事関数が減少することはなく、且つ、図11(b) に示すように、ゲート絶縁膜における高誘電率膜の酸化膜換算膜厚が厚膜化することはない。
【0029】
そこで、本発明は、p型MISトランジスタのゲート絶縁膜における高誘電率膜の窒素濃度を、n型MISトランジスタのゲート絶縁膜における高誘電率膜の窒素濃度よりも低くすることにより、本発明の目的を達成するものである。
【0030】
前記の目的を達成するために、本発明は、本願発明者らが見出した前記の知見に基づいて成された発明であり、具体的には、本発明に係る半導体装置は、第1のMISトランジスタと第2のMISトランジスタとを備えた半導体装置であって、第1のMISトランジスタは、半導体基板における第1の活性領域上に形成され、第1の高誘電率膜を有する第1のゲート絶縁膜と、第1のゲート絶縁膜上に形成された第1のゲート電極とを備え、第2のMISトランジスタは、半導体基板における第2の活性領域上に形成され、第2の高誘電率膜を有する第2のゲート絶縁膜と、第2のゲート絶縁膜上に形成された第2のゲート電極とを備え、第2の高誘電率膜は、第1の調整用金属を含み、第1の高誘電率膜は、第2の高誘電率膜よりも窒素濃度が高く、且つ、第1の調整用金属を含まないことを特徴とする。
【0031】
本発明に係る半導体装置によると、第2の高誘電率膜の窒素濃度を、第1の高誘電率膜の窒素濃度よりも低くすることができるため、第2の高誘電率膜に拡散される第1の調整用金属の拡散量が減少することを抑制することができる。このため、第2のゲート絶縁膜の酸化膜換算膜厚の厚膜化を抑制しつつ、フラットバンド電圧をシフトさせることができるので、第2のMISトランジスタの実効仕事関数を増加させて、低閾値電圧を有する第2のMISトランジスタを実現することができる。一方、第1の高誘電率膜の窒素濃度を、第2の高誘電率膜の窒素濃度よりも高くする。第1の高誘電率膜の窒素濃度を高くしても、第1のMISトランジスタの実効仕事関数が減少することはなく、且つ、第1の高誘電率膜の酸化膜換算膜厚が厚膜化することはない。このため、第1のゲート絶縁膜の酸化膜換算膜厚を厚膜化させることなく、低閾値電圧を有する第1のMISトランジスタを実現することができる。
【0032】
従って、第2のゲート絶縁膜の酸化膜換算膜厚の厚膜化を抑制しつつ、第2のMISトランジスタの実効仕事関数を増加させて、低閾値電圧を有する第1,第2のMISトランジスタを実現することができる。
【0033】
加えて、第1の高誘電率膜は、窒素を含むため、第1の高誘電率膜の結晶化を抑制することができるので、信頼性の劣化を抑制することができる。さらに、第1の高誘電率膜は、窒素を含むため、第1の高誘電率膜の酸化膜換算膜厚を薄膜化することができる。一方、第2の高誘電率膜は、第1の調整用金属を含むため、第2の高誘電率膜の結晶化を抑制することができるので、信頼性の劣化を抑制することができる。
【0034】
本発明に係る半導体装置において、第1の高誘電率膜は窒素を含む一方、第2の高誘電率膜は窒素を含まないことが好ましい。
【0035】
このようにすると、第2の高誘電率膜が窒素を含まないため、第2の高誘電率膜に拡散される第1の調整用金属の拡散量が減少することを効果的に抑制することができる。
【0036】
本発明に係る半導体装置において、第1の調整用金属は、アルミニウムであることが好ましい。
【0037】
本発明に係る半導体装置において、第1の高誘電率膜は第2の調整用金属を含む一方、第2の高誘電率膜は第2の調整用金属を含まないことが好ましい。
【0038】
このようにすると、フラットバンド電圧をシフトさせることができ、第1のMISトランジスタの実効仕事関数を増加させて、低閾値電圧を有する第1のMISトランジスタを実現することができる。
【0039】
本発明に係る半導体装置において、第2の調整用金属は、ランタンであることが好ましい。
【0040】
本発明に係る半導体装置において、第1のゲート絶縁膜は、第1の活性領域上に形成された第1の下地膜と、第1の下地膜上に形成された第1の高誘電率膜とからなり、第2のゲート絶縁膜は、第2の活性領域上に形成された第2の下地膜と、第2の下地膜上に形成された第2の高誘電率膜とからなることが好ましい。
【0041】
本発明に係る半導体装置において、第1の下地膜及び第2の下地膜は、シリコン酸化膜からなることが好ましい。
【0042】
本発明に係る半導体装置において、第1の高誘電率膜及び第2の高誘電率膜は、比誘電率が10以上の金属酸化物からなることが好ましい。
【0043】
本発明に係る半導体装置において、第1のゲート電極は、第1のゲート絶縁膜上に形成された第1の金属膜と、第1の金属膜上に形成された第1のシリコン膜とからなり、第2のゲート電極は、第2のゲート絶縁膜上に形成された第2の金属膜と、第2の金属膜上に形成された第2のシリコン膜とからなることが好ましい。
【0044】
本発明に係る半導体装置において、第1のゲート電極の側面上に形成された断面形状がL字状の第1のサイドウォールと、第2のゲート電極の側面上に形成された断面形状がL字状の第2のサイドウォールと、第1の活性領域及び第2の活性領域上に、第1のゲート電極及び第1のサイドウォール、並びに第2のゲート電極及び第2のサイドウォールを覆うように形成された絶縁膜とをさらに備えていることが好ましい。
【0045】
本発明に係る半導体装置において、絶縁膜は、第1の活性領域におけるチャネル領域のゲート長方向に引っ張り応力を生じさせる応力絶縁膜であり、絶縁膜は、第1のサイドウォールの表面に接して形成されていることが好ましい。
【0046】
このようにすると、第1の活性領域におけるチャネル領域のゲート長方向に、引っ張り応力を印加することができるので、第1のMISトランジスタの駆動能力を向上させることができる。
【0047】
本発明に係る半導体装置において、第1のMISトランジスタは、n型MISトランジスタであり、第2のMISトランジスタは、p型MISトランジスタであることが好ましい。
【0048】
前記の目的を達成するために、本発明は、本願発明者らが見出した前記の知見に基づいて成された発明であり、具体的には、本発明に係る半導体装置の製造方法は、半導体基板における第1の活性領域上に形成された第1のMISトランジスタと半導体基板における第2の活性領域上に形成された第2のMISトランジスタとを有する半導体装置の製造方法であって、第1の活性領域及び第2の活性領域の上に、高誘電率膜を形成する工程(a)と、高誘電率膜における第2の活性領域の上に位置する第1の部分の上に、第1の調整用金属膜を形成する工程(b)と、工程(b)の後に、高誘電率膜における第1の活性領域の上に位置する第2の部分に、第1の窒素を導入する工程(c)と、工程(c)の後に、高誘電率膜における第2の部分の上及び第1の調整用金属膜の上に、ゲート電極形成膜を形成する工程(d)と、ゲート電極形成膜、第1の調整用金属膜及び高誘電率膜を順次パターニングすることにより、第1の活性領域の上に、高誘電率膜における第2の部分からなる第1の高誘電率膜を有する第1のゲート絶縁膜、及びゲート電極形成膜からなる第1のゲート電極を順次形成すると共に、第2の活性領域の上に、高誘電率膜における第1の部分からなる第2の高誘電率膜と第1の調整用金属膜とを有する第2のゲート絶縁膜、及びゲート電極形成膜からなる第2のゲート電極を順次形成する工程(e)と、工程(e)の後に、第2のゲート絶縁膜における第2の高誘電率膜に、第1の調整用金属膜に含まれる第1の調整用金属を拡散させる工程(f)とを備え、第1の高誘電率膜は、第1の調整用金属を含まず第1の窒素を含み、第2の高誘電率膜は、第1の調整用金属を含み、第1の高誘電率膜は、第2の高誘電率膜よりも窒素濃度が高いことを特徴とする。
【0049】
本発明に係る半導体装置の製造方法によると、第1の窒素を含む第1の高誘電率膜と、第1の高誘電率膜よりも窒素濃度が低く、且つ、第1の調整用金属を含む第2の高誘電率膜とを形成することができる。第2の高誘電率膜の窒素濃度を、第1の高誘電率膜の窒素濃度よりも低くすることができるため、第2の高誘電率膜に拡散される第1の調整用金属の拡散量が減少することを抑制することができる。このため、第2のゲート絶縁膜の酸化膜換算膜厚の厚膜化を抑制しつつ、フラットバンド電圧をシフトさせることができるので、第2のMISトランジスタの実効仕事関数を増加させて、低閾値電圧を有する第2のMISトランジスタを実現することができる。一方、第1の高誘電率膜の窒素濃度を、第2の高誘電率膜の窒素濃度よりも高くする。第1の高誘電率膜の窒素濃度を高くしても、第1のMISトランジスタの実効仕事関数が減少することはなく、第1の高誘電率膜の酸化膜換算膜厚が厚膜化することはない。このため、第1のゲート絶縁膜の酸化膜換算膜厚を厚膜化させることなく、低閾値電圧を有する第1のMISトランジスタを実現することができる。
【0050】
従って、第2のゲート絶縁膜の酸化膜換算膜厚の厚膜化を抑制しつつ、第2のMISトランジスタの実効仕事関数を増加させて、低閾値電圧を有する第1,第2のMISトランジスタを実現することができる。
【0051】
加えて、第1の高誘電率膜は、第1の窒素を含むため、第1の高誘電率膜の結晶化を抑制することができるので、信頼性の劣化を抑制することができる。さらに、第1の高誘電率膜は、第1の窒素を含むため、第1の高誘電率膜の酸化膜換算膜厚を薄膜化することができる。一方、第2の高誘電率膜は、第1の調整用金属を含むため、第2の高誘電率膜の結晶化を抑制することができるので、信頼性の劣化を抑制することができる。
【0052】
本発明に係る半導体装置の製造方法において、工程(b)よりも後で、且つ工程(c)よりも前に、高誘電率膜における第2の部分に、第2の調整用金属を拡散させる工程(g)をさらに備え、第1の高誘電率膜は第2の調整用金属を含む一方、第2の高誘電率膜は第2の調整用金属を含まないことが好ましい。
【0053】
このようにすると、フラットバンド電圧をシフトさせることができ、第1のMISトランジスタの実効仕事関数を増加させて、低閾値電圧を有する第1のMISトランジスタを実現することができる。
【0054】
本発明に係る半導体装置の製造方法において、工程(a)よりも後で、且つ工程(b)よりも前に、高誘電率膜における第2の部分に、第2の窒素を導入する工程(h)をさらに備え、第1の高誘電率膜は、第1の窒素及び第2の窒素を含むことが好ましい。
【0055】
このようにすると、高誘電率膜における第2の部分に、第2の窒素及び第1の窒素を順次導入することができるため、第1の高誘電率膜の窒素濃度を精度良く制御することができる。
【0056】
本発明に係る半導体装置の製造方法において、工程(a)よりも前に、第1の活性領域及び第2の活性領域の上に、下地膜を形成する工程(i)をさらに備え、工程(a)は、下地膜の上に、高誘電率膜を形成する工程であり、工程(e)は、ゲート電極形成膜、第1の調整用金属膜、高誘電率膜及び下地膜を順次パターニングすることにより、第1の活性領域の上に、下地膜からなる第1の下地膜と第1の高誘電率膜とを有する第1のゲート絶縁膜、及び第1のゲート電極を順次形成すると共に、第2の活性領域の上に、下地膜からなる第2の下地膜と第2の高誘電率膜と第1の調整用金属膜とを有する第2のゲート絶縁膜、及び第2のゲート電極を順次形成する工程であることが好ましい。
【0057】
本発明に係る半導体装置の製造方法において、工程(d)は、高誘電率膜における第2の部分の上及び第1の調整用金属膜の上に、金属膜を形成する工程(d1)と、金属膜の上に、シリコン膜を形成し、金属膜とシリコン膜とを有するゲート電極形成膜を形成する工程(d2)とを含み、工程(e)は、シリコン膜、金属膜、第1の調整用金属膜及び高誘電率膜を順次パターニングすることにより、第1の活性領域の上に、第1のゲート絶縁膜、及び金属膜からなる第1の金属膜とシリコン膜からなる第1のシリコン膜とを有する第1のゲート電極を順次形成すると共に、第2の活性領域の上に、第2のゲート絶縁膜、及び金属膜からなる第2の金属膜とシリコン膜からなる第2のシリコン膜とを有する第2のゲート電極を順次形成する工程であることが好ましい。
【発明の効果】
【0058】
本発明に係る半導体装置及びその製造方法によると、第2のゲート絶縁膜の酸化膜換算膜厚の厚膜化を抑制しつつ、第2のMISトランジスタの実効仕事関数を増加させて、低閾値電圧を有する第1,第2のMISトランジスタを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】(a) 〜(d) は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示すゲート長方向の要部工程断面図である。
【図2】(a) 〜(d) は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示すゲート長方向の要部工程断面図である。
【図3】(a) 〜(c)は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示すゲート長方向の要部工程断面図である。
【図4】(a) 〜(d) は、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示すゲート長方向の要部工程断面図である。
【図5】(a) 〜(c) は、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示すゲート長方向の要部工程断面図である。
【図6】(a) 〜(d) は、本発明の第3の実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示すゲート長方向の要部工程断面図である。
【図7】(a) 〜(c) は、本発明の第3の実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示すゲート長方向の要部工程断面図である。
【図8】(a) 〜(c) は、本発明の第1の実施形態の変形例に係る半導体装置の製造方法を工程順に示すゲート長方向の要部工程断面図である。
【図9】(a) は、ゲート絶縁膜における高誘電率膜の窒素濃度とp型MISトランジスタの実効仕事関数との関係を示す図であり、(b) は、Alキャップ膜の膜厚とp型MISトランジスタの実効仕事関数との関係を示す図であり、(c) は、Alキャップ膜の膜厚とゲート絶縁膜における高誘電率膜の酸化膜換算膜厚との関係を示す図である。
【図10】Alキャップ膜の膜厚を変化させて、HfSiO膜及びHfSiON膜の各々にAlを拡散させた場合のフラットバンド電圧の変化量と酸化膜換算膜厚の変化量との関係を示す図である。
【図11】(a) は、ゲート絶縁膜における高誘電率膜の窒素濃度とn型MISトランジスタの実効仕事関数との関係を示す図であり、(b) は、ゲート絶縁膜における高誘電率膜の窒素濃度と該高誘電率膜の酸化膜換算膜厚との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る半導体装置及びその製造方法について図面を参照しながら説明する。
【0061】
以下に、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法について、図1(a) 〜(d) 、図2(a) 〜(d) 及び図3(a) 〜(c)を参照しながら説明する。図1(a) 〜図3(c)は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示すゲート長方向の要部工程断面図である。なお、図1(a) 〜図3(c) 、並びに後述の図4(a) 〜図5(c) 、図6(a) 〜図7(c) 及び図8(a) 〜(c) において、左側に示す「nMIS領域」とはn型MISトランジスタが形成される領域を示し、右側に示す「pMIS領域」とはp型MISトランジスタが形成される領域を示している。
【0062】
まず、図1(a) に示すように、例えば埋め込み素子分離(Shallow Trench Isolation:STI)法により、例えばp型シリコンからなる半導体基板10の上部に、トレンチ内に絶縁膜が埋め込まれた素子分離領域11を選択的に形成する。これにより、半導体基板10におけるnMIS領域には、素子分離領域11に囲まれた第1の活性領域10aが形成され、半導体基板10におけるpMIS領域には、素子分離領域11に囲まれた第2の活性領域10bが形成される。その後、リソグラフィ法及びイオン注入法により、半導体基板10におけるnMIS領域に、例えばB(ホウ素)等のp型不純物を注入する。一方、半導体基板10におけるpMIS領域に、例えばP(リン)等のn型不純物を注入する。その後、半導体基板10に対して、例えば850℃,30秒間の熱処理を施す。これにより、半導体基板10におけるnMIS領域に、p型ウェル領域12aを形成すると共に、半導体基板10におけるpMIS領域に、n型ウェル領域12bを形成する。
【0063】
次に、図1(b) に示すように、例えば希釈フッ酸処理により、半導体基板10の表面を洗浄する。その後、例えばISSG(In-Situ Steam Generation)酸化法により、第1の活性領域10a及び第2の活性領域10b上に、例えば膜厚が0.8nm〜1nmのシリコン酸化膜(SiO2膜)又はシリコン酸窒化膜(SiON膜)からなる下地膜13を形成する。
【0064】
続いて、例えば有機金属気相堆積(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:MOCVD)法、又はALD(Atomic Layer Deposition)法等により、下地膜13上に、例えば膜厚が2nmの窒素を含まない高誘電率膜(例えばHfSiO膜)14を堆積する。高誘電率膜14は、比誘電率が10以上の金属酸化物からなることが好ましい。高誘電率膜14の材料としては、ハフニウムシリケート(HfSiO)の他に、例えば酸化ハフニウム(HfO2)、又は酸化ジルコニウム(ZrO2)等が挙げられる。
【0065】
続いて、例えばスパッタ法により、高誘電率膜14上に、例えば膜厚が0.3nmの第1の調整用金属膜15を堆積する。第1の調整用金属膜15は、第1の調整用金属を含む膜であり、第1の調整用金属として、例えばAlを用いる。この場合、第1の調整用金属膜15は、例えばAl又は酸化アルミニウム(Al23)からなる。
【0066】
続いて、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法、ALD法又はスパッタ法等により、例えば膜厚が5nmの窒化チタン(TiN)からなる保護膜16を堆積する。
【0067】
次に、図1(c) に示すように、リソグラフィ法により、保護膜16上に、nMIS領域を開口しpMIS領域を覆うレジストパターンReを形成する。その後、レジストパターンReをマスクとして、例えば高誘電率膜14に対して選択性を持つウェットエッチング法を用いて、保護膜16及び第1の調整用金属膜15におけるnMIS領域に形成された部分を順次除去する。
【0068】
次に、図1(d) に示すように、レジストパターンReを除去する。
【0069】
このようにして、高誘電率膜14におけるpMIS領域に形成された部分(該部分は、第2の活性領域10b上に位置する第1の部分を含む)上に、第1の調整用金属膜15及び保護膜16を順次形成する。
【0070】
続いて、例えば窒素プラズマ処理により、保護膜16をマスクとして、高誘電率膜14におけるnMIS領域に形成された部分(該部分は、第1の活性領域10a上に位置する第2の部分を含む)に、窒素(第1の窒素)を導入する。このとき、窒素は、上面から下面に向かって窒素濃度が低くなるように、高誘電率膜14におけるnMIS領域に形成された部分に導入され、半導体基板10におけるnMIS領域にまで到達する。またこのとき、第1の調整用金属膜15上には、保護膜16が形成されているため、第1の調整用金属膜15に、窒素が導入されることを防止することができる。このため、後述の通り、熱処理(具体的には、n型,p型ソースドレイン領域に含まれるn型,p型不純物を拡散させる為の熱処理)の際に、第2の高誘電率膜14bに、第1の調整用金属膜15bに含まれる窒素が拡散されることを防止することができる。
【0071】
このようにして、下地膜13におけるnMIS領域に形成された部分上に、窒素を含む高誘電率膜(例えばHfSiON膜)14Xを形成する。高誘電率膜14Xの窒素濃度は、上面から下面に向かって低くなる。一方、下地膜13におけるpMIS領域に形成された部分上に、窒素を含まない高誘電率膜14を形成する。ここで、「窒素を含まない高誘電率膜」とは、窒素が意図的に導入されていない高誘電率膜をいう。
【0072】
次に、図2(a) に示すように、例えば第1の調整用金属膜15に対して選択性を持つウェットエッチング法を用いて、保護膜16を除去する。
【0073】
続いて、例えばCVD法、ALD法又はスパッタ法等により、窒素を含む高誘電率膜14X及び第1の調整用金属膜15上に、例えば膜厚が10nmのTiNからなる金属膜17を堆積する。その後、例えばCVD法により、金属膜17上に、例えば膜厚が100nmのポリシリコンからなるシリコン膜18を堆積する。
【0074】
このようにして、窒素を含む高誘電率膜14X及び第1の調整用金属膜15上に、金属膜17とシリコン膜18とを有するゲート電極形成膜18Fを形成する。
【0075】
次に、図2(b) に示すように、リソグラフィ法により、シリコン膜18上に、レジストパターン(図示せず)を形成する。その後、レジストパターンをマスクとして、ドライエッチング法により、シリコン膜18、金属膜17、第1の調整用金属膜15、窒素を含む高誘電率膜14X及び窒素を含まない高誘電率膜14、並びに下地膜13を順次パターニングする。これにより、第1の活性領域10a上に、第1の下地膜13aと窒素を含む第1の高誘電率膜14Xaとを有する第1のゲート絶縁膜14A、及び第1の金属膜17aと第1のシリコン膜18aとを有する第1のゲート電極18Aを順次形成する。それと共に、第2の活性領域10b上に、第2の下地膜13bと窒素を含まない第2の高誘電率膜14bと第1の調整用金属膜15bとを有する第2のゲート絶縁膜14B、及び第2の金属膜17bと第2のシリコン膜18bとを有する第2のゲート電極18Bを順次形成する。
【0076】
次に、図2(c) に示すように、例えばCVD法により、半導体基板10上の全面に、例えば膜厚が8nmのシリコン酸化膜からなるオフセットスペーサ用絶縁膜を堆積する。その後、オフセットスペーサ用絶縁膜に対して異方性エッチングを行う。これにより、第1のゲート電極18Aの側面上に第1のオフセットスペーサ19aを形成する。それと共に、第2のゲート電極18Bの側面上に第2のオフセットスペーサ19bを形成する。
【0077】
続いて、リソグラフィ法及びイオン注入法により、第1の活性領域10aに、第1のゲート電極18Aをマスクとして、例えばAs(ヒ素)等のn型不純物を注入する。これにより、第1の活性領域10aにおける第1のゲート電極18Aの側方下に、接合深さが比較的浅いn型ソースドレイン領域(LDD領域又はエクステンション領域)20aを自己整合的に形成する。一方、リソグラフィ法及びイオン注入法により、第2の活性領域10bに、第2のゲート電極18Bをマスクとして、例えばBF2等のp型不純物を注入する。これにより、第2の活性領域10bにおける第2のゲート電極18Bの側方下に、接合深さが比較的浅いp型ソースドレイン領域(LDD領域又はエクステンション領域)20bを自己整合的に形成する。
【0078】
次に、図2(d) に示すように、例えばCVD法により、半導体基板10上の全面に、例えば膜厚が10nmのシリコン酸化膜からなる内側サイドウォール用絶縁膜、及び膜厚が30nmのシリコン窒化膜からなる外側サイドウォール用絶縁膜を順次堆積する。その後、外側サイドウォール用絶縁膜及び内側サイドウォール用絶縁膜に対して異方性エッチングを順次行う。これにより、第1のゲート電極18Aの側面上に、第1のオフセットスペーサ19aを介して、断面形状がL字状の第1の内側サイドウォール21aと第1の外側サイドウォール22aとを有する第1のサイドウォール22Aを形成する。それと共に、第2のゲート電極18Bの側面上に、第2のオフセットスペーサ19bを介して、断面形状がL字状の第2の内側サイドウォール21bと第2の外側サイドウォール22bとを有する第2のサイドウォール22Bを形成する。
【0079】
続いて、リソグラフィ法及びイオン注入法により、第1の活性領域10aに、第1のゲート電極18A、第1のオフセットスペーサ19a及び第1のサイドウォール22Aをマスクとして、例えばAs等のn型不純物を注入する。これにより、第1の活性領域10aにおける第1のサイドウォール22Aの外側方下に、接合深さが比較的深いn型ソースドレイン領域23aを自己整合的に形成する。一方、リソグラフィ法及びイオン注入法により、第2の活性領域10bに、第2のゲート電極18B、第2のオフセットスペーサ19b及び第2のサイドウォール22Bをマスクとして、例えばB(ボロン)等のp型不純物を注入する。これにより、第2の活性領域10bにおける第2のサイドウォール22Bの外側方下に、接合深さが比較的深いp型ソースドレイン領域23bを自己整合的に形成する。
【0080】
続いて、熱処理により、深いn型,p型ソースドレイン領域23a,23bに含まれるn型,p型不純物を活性化させる。それと共に、第1の調整用金属膜15bに含まれる第1の調整用金属(Al)を、窒素を含まない第2の高誘電率膜14bに拡散させる。このとき、Alは、上面から下面に向かってAl濃度が低くなるように、第2の高誘電率膜14bに拡散する。またこのとき、第2の高誘電率膜14bは、窒素を含まないため、第2の高誘電率膜14bに拡散されるAlの拡散量が減少することを効果的に抑制しながら、Alを第2の高誘電率膜14bに拡散させることができる。またこのとき、前述の通り、プラズマ窒化処理の際に、第1の調整用金属膜15に、窒素が導入されることはないため、第1の調整用金属膜15bに含まれる窒素が、第2の高誘電率膜14bに拡散されることはない。これにより、第2の下地膜13bと第2のゲート電極18Bとの間に、Alを含む第2の高誘電率膜(例えばHfAlSiO膜)14xを形成する。
【0081】
このようにして、第2の下地膜13bと窒素を含まずAlを含む第2の高誘電率膜14xとを有する第2のゲート絶縁膜14Bを形成する。第2の高誘電率膜14xのAl濃度は、上面から下面に向かって低くなる。第2の高誘電率膜14xの膜厚は、第2の高誘電率膜14bの膜厚と第1の調整用金属膜15bの膜厚とを合計した膜厚である。
【0082】
次に、図3(a) に示すように、例えば第1,第2の内側サイドウォール(シリコン酸化膜)21a,21bに対して選択性を持つドライエッチング法又はウェットエッチング法を用いて、第1,第2の外側サイドウォール(シリコン窒化膜)22a,22bを除去する。
【0083】
続いて、深いn型,p型ソースドレイン領域23a,23bの表面に形成された自然酸化膜(図示せず)、及び第1,第2のシリコン膜18a,18bの上面に形成された自然酸化膜(図示せず)を除去する。その後、例えばスパッタ法により、半導体基板10上の全面に、例えば膜厚が10nmのニッケルからなるシリサイド化用金属膜(図示せず)を堆積する。その後、例えば窒素雰囲気中、320℃の下、1回目のRTA(Rapid Thermal Annealing)処理により、深いn型,p型ソースドレイン領域23a,23bのSiとシリサイド化用金属膜のNiとを反応させると共に、第1,第2のシリコン膜18a,18bのSiとシリサイド化用金属膜のNiとを反応させる。これにより、深いn型,p型ソースドレイン領域23a,23bの上部に、例えば膜厚が20nmのニッケルシリサイドからなる第1,第2の金属シリサイド膜24a,24bを形成する。それと共に、第1,第2のシリコン膜18a,18bの上部に、例えば膜厚が20nmのニッケルシリサイドからなる第3,第4の金属シリサイド膜25a,25bを形成する。その後、例えば硫酸と過酸化水素水との混合液からなるエッチング液中への浸漬により、シリサイド化用金属膜における素子分離領域11、第1,第2のオフセットスペーサ19a,19b及び第1,第2の内側サイドウォール21a,21b等の上に残存する部分(即ち、シリサイド化用金属膜における未反応の部分)を除去する。その後、1回目のRTA処理での温度よりも高い温度(例えば550℃)の下、2回目のRTA処理により、第1,第2の金属シリサイド膜24a,24b及び第3,第4の金属シリサイド膜25a,25bのシリサイド組成比を安定化させる。
【0084】
次に、図3(b) に示すように、例えばプラズマCVD法により、半導体基板10上の全面に、例えば膜厚50nmのシリコン窒化膜からなる絶縁膜26を堆積する。その後、例えばCVD法により、絶縁膜26上に、例えばシリコン酸化膜からなる層間絶縁膜27を堆積する。その後、例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing)法により、層間絶縁膜27の表面の平坦化を行う。
【0085】
次に、図3(c) に示すように、通常のMISトランジスタを有する半導体装置の製造方法における工程と同様な工程を行う。具体的には、例えばドライエッチング法により、絶縁膜26及び層間絶縁膜27に、第1,第2の金属シリサイド膜24a,24bの上面に到達する第1,第2のコンタクトホール28a,28bを形成する。このとき、ホール内に絶縁膜26が露出した時点で一度エッチングを止めて、再度エッチングを行い、第1,第2のコンタクトホール28a,28bを形成する。これにより、第1,第2の金属シリサイド膜24a,24bにおけるオーバーエッチング量を減らすことができる。その後、例えばスパッタ法又はCVD法により、層間絶縁膜27上、並びに第1,第2のコンタクトホール28a,28bの底部及び側壁部に、例えばチタンと窒化チタンとが順次堆積されてなるバリアメタル膜を形成する。その後、例えばCVD法により、層間絶縁膜27上に、第1,第2のコンタクトホール28a,28b内を埋め込むように、例えばタングステンからなる導電膜を堆積する。その後、例えばCMP法により、導電膜及びバリアメタル膜における第1,第2のコンタクトホール28a,28b外に形成された部分を順次除去する。このようにして、第1,第2のコンタクトホール28a,28b内に、バリアメタル膜を介して導電膜が埋め込まれてなる第1,第2のコンタクトプラグ29a,29bを形成する。その後、層間絶縁膜27上に、第1,第2のコンタクトプラグ29a,29bと電気的に接続する配線(図示せず)を形成する。
【0086】
以上のようにして、本実施形態に係る半導体装置、具体的には、窒素を含む第1の高誘電率膜14Xaを有する第1のゲート絶縁膜14Aを備えたn型MISトランジスタnTrと、窒素を含まずAlを含む第2の高誘電率膜14xを有する第2のゲート絶縁膜14Bを備えたp型MISトランジスタpTrとを備えた半導体装置を製造することができる。
【0087】
以下に、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の構成について、図3(c) を参照しながら説明する。
【0088】
半導体基板10におけるnMIS領域には、n型MISトランジスタnTrが形成されている。半導体基板10におけるpMIS領域には、p型MISトランジスタpTrが形成されている。
【0089】
n型MISトランジスタnTrは、図3(c) に示すように、半導体基板10における第1の活性領域10a上に形成された第1のゲート絶縁膜14Aと、第1のゲート絶縁膜14A上に形成された第1のゲート電極18Aと、第1のゲート電極18Aの側面上に形成された第1のオフセットスペーサ19aと、第1のゲート電極18Aの側面上に第1のオフセットスペーサ19aを介して形成された断面形状がL字状の第1の内側サイドウォール21aと、第1の活性領域10aにおける第1のゲート電極18Aの側方下に形成された浅いn型ソースドレイン領域20aと、第1の活性領域10aにおける第1の内側サイドウォール21aの外側方下に形成された深いn型ソースドレイン領域23aと、深いn型ソースドレイン領域23a上に形成された第1の金属シリサイド膜24aと、第1のゲート電極18A上に形成された第3の金属シリサイド膜25aとを備えている。
【0090】
p型MISトランジスタpTrは、図3(c) に示すように、半導体基板10における第2の活性領域10b上に形成された第2のゲート絶縁膜14Bと、第2のゲート絶縁膜14B上に形成された第2のゲート電極18Bと、第2のゲート電極18Bの側面上に形成された第2のオフセットスペーサ19bと、第2のゲート電極18Bの側面上に第2のオフセットスペーサ19bを介して形成された断面形状がL字状の第2の内側サイドウォール21bと、第2の活性領域10bにおける第2のゲート電極18Bの側方下に形成された浅いp型ソースドレイン領域20bと、第2の活性領域10bにおける第2の内側サイドウォール21bの外側方下に形成された深いp型ソースドレイン領域23bと、深いp型ソースドレイン領域23b上に形成された第2の金属シリサイド膜24bと、第2のゲート電極18B上に形成された第4の金属シリサイド膜25bとを備えている。
【0091】
半導体基板10上には、第1,第2のゲート電極18A,18B、第1,第2のオフセットスペーサ19a,19b及び第1,第2の内側サイドウォール21a,21bを覆うように、絶縁膜26が形成されている。絶縁膜26は、第1,第2の内側サイドウォール21a,21bの表面に接して形成されている。絶縁膜26上には、層間絶縁膜27が形成されている。
【0092】
絶縁膜26及び層間絶縁膜27には、層間絶縁膜27及び絶縁膜26を貫通し、第1,第2の金属シリサイド膜24a,24bと接続する第1,第2のコンタクトプラグ29a,29bが形成されている。
【0093】
第1のゲート絶縁膜14Aは、第1の活性領域10a上に形成された第1の下地膜13aと、第1の下地膜13a上に形成された第1の高誘電率膜14Xaとを有する。第2のゲート絶縁膜14Bは、第2の活性領域10b上に形成された第2の下地膜13bと、第2の下地膜13b上に形成された第2の高誘電率膜14xとを有する。
【0094】
第1の高誘電率膜14Xaは、窒素を含む。一方、第2の高誘電率膜14xは、窒素を含まない。第1の高誘電率膜14Xaは、第2の高誘電率膜14xよりも窒素濃度が高い。第1の高誘電率膜14Xaの窒素濃度は、上面から下面に向かって低くなる。
【0095】
第1の高誘電率膜14Xaは、第1の調整用金属(Al)を含まない。一方、第2の高誘電率膜14xは、第1の調整用金属(Al)を含む。第2の高誘電率膜14xのAl濃度は、上面から下面に向かって低くなる。
【0096】
第1のゲート電極18Aは、第1のゲート絶縁膜14A上に形成された第1の金属膜17aと、第1の金属膜17a上に形成された第1のシリコン膜18aとを有する。第2のゲート電極18Bは、第2のゲート絶縁膜14B上に形成された第2の金属膜17bと、第2の金属膜17b上に形成された第2のシリコン膜18bとを有する。
【0097】
本実施形態によると、窒素を含む第1の高誘電率膜14Xaと、窒素を含まずAlを含む第2の高誘電率膜14xとを形成することができる。第2の高誘電率膜14xは、窒素を含まないため、第2の高誘電率膜14bに拡散される第1の調整用金属(Al)の拡散量が減少することを効果的に抑制することができる。このため、図10に示す通り、第2のゲート絶縁膜14Bの酸化膜換算膜厚の厚膜化を抑制しつつ、フラットバンド電圧をシフトさせることができるので、p型MISトランジスタpTrの実効仕事関数を増加させて、低閾値電圧を有するp型MISトランジスタpTrを実現することができる。一方、第1の高誘電率膜14Xaの窒素濃度を、第2の高誘電率膜14xの窒素濃度よりも高くする。第1の高誘電率膜14Xaの窒素濃度を高くしても、図11(a) に示す通り、n型MISトランジスタnTrの実効仕事関数が減少することはなく、且つ、図11(b) に示す通り、第1の高誘電率膜14Xaの酸化膜換算膜厚が厚膜化することはない。このため、第1のゲート絶縁膜14Aの酸化膜換算膜厚を厚膜化させることなく、低閾値電圧を有するn型MISトランジスタnTrを実現することができる。
【0098】
従って、第2のゲート絶縁膜14Bの酸化膜換算膜厚の厚膜化を抑制しつつ、p型MISトランジスタpTrの実効仕事関数を増加させて、低閾値電圧を有するn型,p型MISトランジスタnTr,pTrを実現することができる。
【0099】
加えて、第1の高誘電率膜14Xaは、窒素を含むため、第1の高誘電率膜14Xaの結晶化を抑制することができるので、信頼性の劣化を抑制することができる。さらに、第1の高誘電率膜14Xaは、窒素を含むため、第1の高誘電率膜14Xaの酸化膜換算膜厚を薄膜化することができる。一方、第2の高誘電率膜14xは、窒素を含まないものの、Alを含むため、第2の高誘電率膜14xの結晶化を抑制することができるので、信頼性の劣化を抑制することができる。即ち、Alは、窒素と同様に、高誘電率膜の結晶化を抑制する機能を果たす。
【0100】
なお、本実施形態では、図1(b) に示すように、下地膜13上に、高誘電率膜14を堆積した後、高誘電率膜14上に、第1の調整用金属膜15を堆積する場合を具体例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、高誘電率膜の堆積の後で、第1の調整用金属膜の堆積の前に、例えば窒素雰囲気中、1000℃の下、アニール処理を行ってもよい。このようにすると、アニール処理により、高誘電率膜を緻密化することができる。さらに、アニール処理の後に行う熱処理(具体的には、深いn型,p型のソースドレイン領域に含まれるn型,p型不純物を活性化させる為の熱処理)の際に、緻密化された高誘電率膜に、第1の調整用金属膜に含まれるAlを効果的に拡散させることができるため、p型MISトランジスタの実効仕事関数を効果的に増加させることができる。
【0101】
本実施形態では、第1の調整用金属膜に含まれる第1の調整用金属を、その下に形成された高誘電率膜に拡散させる為の熱処理として、深いn型,p型のソースドレイン領域に含まれるn型,p型不純物を活性化させる為の熱処理を兼用する場合を具体例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。即ち、半導体装置の製造途中に施される高温(例えば600℃)の熱処理の際に、第1の調整用金属膜に含まれる第1の調整用金属が、その下に形成された高誘電率膜に拡散される可能性がある。この熱処理としては、例えば、シリコン膜の堆積に伴う熱処理(第1の実施形態:図2(a) ,第2の実施形態:図5(a) ,第3の実施形態:図7(a) 参照)、シリコン窒化膜からなる外側サイドウォール用絶縁膜の堆積に伴う熱処理(第1の実施形態:図2(d) 参照)、及び第2の調整用金属膜に含まれる第2の調整用金属を、その下に形成された高誘電率膜に拡散させる為のアニール処理(第2の実施形態:図4(c) 参照)等が挙げられる。
【0102】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る半導体装置及びその製造方法について図面を参照しながら説明する。なお、第2の実施形態に係る半導体装置及びその製造方法について、第1の実施形態に係る半導体装置及びその製造方法と相違する点を中心に説明し、共通する点については適宜省略して説明する。
【0103】
以下に、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法について、図4(a) 〜(d) 及び図5(a) 〜(c) を参照しながら説明する。図4(a) 〜図5(c) は、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示すゲート長方向の要部工程断面図である。なお、図4(a) 〜図5(c) において、第1の実施形態における構成要素と同一の構成要素には、第1の実施形態における図1(a) 〜図3(c) に示す符号と同一の符号を付している。
【0104】
まず、第1の実施形態における図1(a) 〜(c) と同様の工程を行い、図4(a) に示す構成(即ち、図1(c) に示す構成と同様の構成)を得る。
【0105】
次に、図4(b) に示すように、レジストパターンReを除去する。
【0106】
このようにして、高誘電率膜14におけるpMIS領域に形成された部分(該部分は、第2の活性領域10b上に位置する第1の部分を含む)上に、第1の調整用金属膜15及び保護膜16を順次形成する。
【0107】
続いて、例えばスパッタ法又はALD法により、高誘電率膜14におけるnMIS領域に形成された部分及び保護膜16上に、例えば膜厚が2nmの第2の調整用金属膜30を堆積する。第2の調整用金属膜30は、第2の調整用金属を含む膜であり、第2の調整用金属として、例えばLaを用いる。この場合、第2の調整用金属膜30は、例えば酸化ランタン(La23)からなる。
【0108】
このようにして、高誘電率膜14におけるnMIS領域に形成された部分(該部分は、第1の活性領域10a上に位置する第2の部分を含む)上に、第2の調整用金属膜30を形成する。
【0109】
次に、図4(c) に示すように、例えば700℃の下、アニール処理により、高誘電率膜14におけるnMIS領域に形成された部分に、第2の調整用金属膜30に含まれる第2の調整用金属(La)を拡散させる。このとき、Laは、上面から下面に向かってLa濃度が低くなるように、高誘電率膜14におけるnMIS領域に形成された部分に拡散し、下地膜13におけるnMIS領域に形成された部分と高誘電率膜14におけるnMIS領域に形成された部分との界面にまで到達する。またこのとき、第1の調整用金属膜15上には、所定膜厚(例えば3nm)以上の保護膜16が形成されているため、第1の調整用金属膜15に、第2の調整用金属膜30に含まれるLaが拡散されることを防止することができる。このため、後述の通り、熱処理(具体的には、n型,p型ソースドレイン領域に含まれるn型,p型不純物を拡散させる為の熱処理)の際に、第2の高誘電率膜14bに、第1の調整用金属膜15bに含まれるLaが拡散されることを防止することができる。
【0110】
このようにして、下地膜13におけるnMIS領域に形成された部分上に、Laを含む高誘電率膜14Yを形成する。高誘電率膜14YのLa濃度は、上面から下面に向かって低くなる。一方、下地膜13におけるpMIS領域に形成された部分上に、Laを含まない高誘電率膜14を形成する。
【0111】
次に、図4(d) に示すように、例えばLaを含む高誘電率膜14Yに対して選択性を持つウェットエッチング法を用いて、第2の調整用金属膜30を除去する。
【0112】
続いて、例えば窒素プラズマ処理により、保護膜16をマスクとして、Laを含む高誘電率膜14Y(該部分は、第1の活性領域10a上に位置する第2の部分を含む)に、窒素(第1の窒素)を導入する。このとき、窒素は、上面から下面に向かって窒素濃度が低くなるように、Laを含む高誘電率膜14Yに導入され、半導体基板10におけるnMIS領域にまで到達する。またこのとき、第1の調整用金属膜15上には、保護膜16が形成されているため、第1の調整用金属膜15に、窒素が導入されることを防止することができる。
【0113】
このようにして、下地膜13におけるnMIS領域に形成された部分上に、La及び窒素を含む高誘電率膜14Zを形成する。高誘電率膜14ZのLa濃度は、上面から下面に向かって低くなる。高誘電率膜14Zの窒素濃度は、上面から下面に向かって低くなる。一方、下地膜13におけるpMIS領域に形成された部分上に、La及び窒素を含まない高誘電率膜14を形成する。
【0114】
次に、図5(a) に示すように、第1の実施形態における図2(a) に示す工程と同様な工程を行う。具体的には、保護膜16を除去した後、La及び窒素を含む高誘電率膜14Z及び第1の調整用金属膜15上に、金属膜17とシリコン膜18とを有するゲート電極形成膜18Fを形成する。
【0115】
次に、図5(b) に示すように、第1の実施形態における図2(b) に示す工程と同様な工程を行う。具体的には、ゲート電極形成膜18F、第1の調整用金属膜15、La及び窒素を含む高誘電率膜14Z及びLa及び窒素を含まない高誘電率膜14、並びに下地膜13を順次パターニングする。これにより、第1の活性領域10a上に、第1の下地膜13aとLa及び窒素を含む第1の高誘電率膜14Zaとを有する第1のゲート絶縁膜14A、及び第1のゲート電極18Aを順次形成する。それと共に、第2の活性領域10b上に、第2の下地膜13bとLa及び窒素を含まない第2の高誘電率膜14bと第1の調整用金属膜15bとを有する第2のゲート絶縁膜14B、及び第2のゲート電極18Bを順次形成する。
【0116】
続いて、第1の実施形態における図2(c) に示す工程と同様な工程を行う。具体的には、第1,第2のゲート電極18A,18Bの側面上に、第1,第2のオフセットスペーサ19a,19bを形成する。その後、第1,第2の活性領域10a,10bにおける第1,第2のゲート電極18A,18Bの側方下に、浅いn型,p型ソースドレイン領域20a,20bを形成する。
【0117】
続いて、第1の実施形態における図2(d) に示す工程と同様な工程を行う。具体的には、第1,第2のゲート電極18A,18Bの側面上に、第1,第2のオフセットスペーサ19a,19bを介して、第1,第2のサイドウォールを形成する。その後、第1,第2の活性領域10a,10bにおける第1,第2のサイドウォールの外側方下に、深いn型,p型ソースドレイン領域23a,23bを形成する。その後、熱処理により、深いn型,p型ソースドレイン領域23a,23bに含まれるn型,p型不純物を活性化させる。それと共に、第1の調整用金属膜15bに含まれる第1の調整用金属(Al)を、La及び窒素を含まない第2の高誘電率膜14bに拡散させる。このとき、Alは、上面から下面に向かってAl濃度が低くなるように、第2の高誘電率膜14bに拡散する。またこのとき、第2の高誘電率膜14bは、窒素を含まないため、第2の高誘電率膜14bに拡散されるAlの拡散量が減少することを効果的に抑制しながら、Alを第2の高誘電率膜14bに拡散させることができる。またこのとき、前述の通り、アニール処理の際に、第1の調整用金属膜15に、第2の調整用金属膜30に含まれるLaが拡散されることはないため、第1の調整用金属膜15bに含まれるLaが、第2の高誘電率膜14bに拡散されることはない。これにより、第2の下地膜13bと第2のゲート電極18Bとの間に、Alを含む第2の高誘電率膜14x(後述の図5(c) 参照)を形成する。
【0118】
このようにして、第2の下地膜13bとLa及び窒素を含まずAlを含む第2の高誘電率膜14xとを有する第2のゲート絶縁膜14Bを形成する。第2の高誘電率膜14xのAl濃度は、上面から下面に向かって低くなる。第2の高誘電率膜14xの膜厚は、第2の高誘電率膜14bの膜厚と第1の調整用金属膜15bの膜厚とを合計した膜厚である。
【0119】
続いて、第1の実施形態における図3(a) 〜(c) に示す工程と同様な工程を順次行い、図5(c)に示す構成を得る。
【0120】
以上のようにして、本実施形態に係る半導体装置、具体的には、La及び窒素を含む第1の高誘電率膜14Zaを有する第1のゲート絶縁膜14Aを備えたn型MISトランジスタnTrと、La及び窒素を含まずAlを含む第2の高誘電率膜14xを有する第2のゲート絶縁膜14Bを備えたp型MISトランジスタpTrとを備えた半導体装置を製造することができる。
【0121】
本実施形態と第1の実施形態との相違点は、以下に示す点である。
【0122】
第1の実施形態では、第1のゲート絶縁膜14Aにおける第1の高誘電率膜14Xaが、窒素を含む。これに対し、本実施形態では、第1のゲート絶縁膜14Aにおける第1の高誘電率膜14Zaが、La及び窒素を含む。
【0123】
本実施形態によると、La及び窒素を含む第1の高誘電率膜14Zaと、La及び窒素を含まずAlを含む第2の高誘電率膜14xとを形成することができる。第2の高誘電率膜14xは、窒素を含まないため、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0124】
さらに、第1の高誘電率膜14ZaにLaを拡散させることができる。このため、フラットバンド電圧をシフトさせることができ、n型MISトランジスタnTrの実効仕事関数を増加させて、低閾値電圧を有するn型MISトランジスタnTrを実現することができる。
【0125】
なお、第2の実施形態では、第2の調整用金属膜30に含まれる第2の調整用金属として、Laを用いた場合を具体例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0126】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る半導体装置及びその製造方法について図面を参照しながら説明する。なお、第3の実施形態に係る半導体装置及びその製造方法について、第1の実施形態に係る半導体装置及びその製造方法と相違する点を中心に説明し、共通する点については適宜省略して説明する。
【0127】
以下に、本発明の第3の実施形態に係る半導体装置の製造方法について、図6(a) 〜(d) 及び図7(a) 〜(c) を参照しながら説明する。図6(a) 〜図7(c) は、本発明の第3の実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示すゲート長方向の要部工程断面図である。なお、図6(a) 〜図7(c) において、第1の実施形態における構成要素と同一の構成要素には、第1の実施形態における図1(a) 〜図3(c) に示す符号と同一の符号を付している。
【0128】
まず、第1の実施形態における図1(a) に示す工程と同様の工程を行い、図1(a) に示す構成と同様の構成を得る。
【0129】
次に、図6(a) に示すように、例えば希釈フッ酸処理により、半導体基板10の表面を洗浄する。その後、例えばISSG酸化法により、第1の活性領域10a及び第2の活性領域10b上に、例えば膜厚が0.8nm〜1nmのシリコン酸化膜又はシリコン酸窒化膜からなる下地膜13を形成する。その後、例えばMOCVD法又はALD法等により、下地膜13上に、例えば膜厚が2nmの窒素を含まない高誘電率膜14を堆積する。
【0130】
次に、図6(b) に示すように、例えば1回目の窒素プラズマ処理により、高誘電率膜14(高誘電率膜14は、第1の活性領域10a上に位置する第2の部分を含む)に窒素(第2の窒素)を導入する。このとき、窒素は、上面から下面に向かって窒素濃度が低くなるように、高誘電率膜14に導入される。
【0131】
このようにして、下地膜13上に、窒素を含む高誘電率膜14Mを形成する。高誘電率膜14Mの窒素濃度は、上面から下面に向かって低くなる。ここで、図6(b) に示す本実施形態における高誘電率膜14Mの窒素濃度は、図1(d) に示す第1の実施形態における高誘電率膜14Xの窒素濃度、及び図4(d) に示す第2の実施形態における高誘電率膜14Zの窒素濃度よりも低い。
【0132】
続いて、例えば窒素雰囲気中、1000℃の下、アニール処理を行う。これにより、高誘電率膜14Mを緻密化することができる。それと共に、高誘電率膜14Mに導入された窒素のうち結合が不完全な窒素を脱離させることができる。
【0133】
続いて、例えばスパッタ法により、窒素を含む高誘電率膜14M上に、例えば膜厚が0.3nmのAl又はAl23からなる第1の調整用金属膜15を堆積する。
【0134】
続いて、例えばCVD法、ALD法又はスパッタ法等により、第1の調整用金属膜15上に、例えば膜厚が5nmのTiNからなる保護膜16を堆積する。
【0135】
次に、図6(c) に示すように、リソグラフィ法により、保護膜16上に、nMIS領域を開口しpMIS領域を覆うレジストパターンReを形成する。その後、例えば窒素を含む高誘電率膜14Mに対して選択性を持つウェットエッチング法を用いて、保護膜16及び第1の調整用金属膜15におけるnMIS領域に形成された部分を順次除去する。
【0136】
次に、図6(d) に示すように、レジストパターンReを除去する。
【0137】
このようにして、窒素を含む高誘電率膜14MにおけるpMIS領域に形成された部分(該部分は、第2の活性領域10b上に位置する第1の部分を含む)上に、第1の調整用金属膜15及び保護膜16を順次形成する。
【0138】
続いて、例えば2回目の窒素プラズマ処理により、保護膜16をマスクとして、窒素を含む高誘電率膜14MにおけるnMIS領域に形成された部分に、窒素(第1の窒素)を導入する。このとき、窒素は、上面から下面に向かって窒素濃度が低くなるように、高誘電率膜14MにおけるnMIS領域に形成された部分に導入され、半導体基板10におけるnMIS領域にまで到達する。またこのとき、第1の調整用金属膜15上には、保護膜16が形成されているため、第1の調整用金属膜15に、窒素が導入されることを防止することができる。
【0139】
このようにして、下地膜13におけるnMIS領域に形成された部分上に、窒素(第2の窒素及び第1の窒素)を含む高誘電率膜14Nを形成する。高誘電率膜14Nの窒素濃度は、上面から下面に向かって低くなる。一方、下地膜13におけるpMIS領域に形成された部分上に、高誘電率膜14Nよりも窒素濃度が低く、且つ、窒素(第2の窒素)を含む高誘電率膜14Mを形成する。高誘電率膜14Mの窒素濃度は、上面から下面に向かって低くなる。
【0140】
次に、図7(a) に示すように、第1の実施形態における図2(a) に示す工程と同様な工程を行う。具体的には、保護膜16を除去した後、窒素を含む高誘電率膜14N及び第1の調整用金属膜15上に、金属膜17とシリコン膜18とを有するゲート電極形成膜18Fを形成する。
【0141】
次に、図7(b) に示すように、第1の実施形態における図2(b) に示す工程と同様な工程を行う。具体的には、ゲート電極形成膜18F、第1の調整用金属膜15、窒素を含む高誘電率膜14N及び高誘電率膜14Nよりも窒素濃度が低く、且つ、窒素を含む高誘電率膜14M、並びに下地膜13を順次パターニングする。これにより、第1の活性領域10a上に、第1の下地膜13aと窒素を含む第1の高誘電率膜14Naとを有する第1のゲート絶縁膜14A、及び第1のゲート電極18Aを順次形成する。それと共に、第2の活性領域10b上に、第2の下地膜13bと第1の高誘電率膜14Naよりも窒素濃度が低く、且つ、窒素を含む第2の高誘電率膜14Mbと第1の調整用金属膜15bとを有する第2のゲート絶縁膜14B、及び第2のゲート電極18Bを順次形成する。
【0142】
続いて、第1の実施形態における図2(c) に示す工程と同様な工程を行う。具体的には、第1,第2のゲート電極18A,18Bの側面上に、第1,第2のオフセットスペーサ19a,19bを形成する。その後、第1,第2の活性領域10a,10bにおける第1,第2のゲート電極18A,18Bの側方下に、浅いn型,p型ソースドレイン領域20a,20bを形成する。
【0143】
続いて、第1の実施形態における図2(d) に示す工程と同様な工程を行う。具体的には、第1,第2のゲート電極18A,18Bの側面上に、第1,第2のオフセットスペーサ19a,19bを介して、第1,第2のサイドウォールを形成する。その後、第1,第2の活性領域10a,10bにおける第1,第2のサイドウォールの外側方下に、深いn型,p型ソースドレイン領域23a,23bを形成する。その後、熱処理により、深いn型,p型ソースドレイン領域23a,23bに含まれるn型,p型不純物を活性化させる。それと共に、第1の調整用金属膜15bに含まれる第1の調整用金属(Al)を、窒素を含む第2の高誘電率膜14Mbに拡散させる。このとき、Alは、上面から下面に向かってAl濃度が低くなるように、第2の高誘電率膜14Mbに拡散する。またこのとき、第2の高誘電率膜14Mbは、第1の高誘電率膜14Naよりも窒素濃度が低いため、第2の高誘電率膜14Mbに拡散されるAlの拡散量が減少することを抑制しながら、Alを第2の高誘電率膜14Mbに拡散させることができる。これにより、第2の下地膜13bと第2のゲート電極18Bとの間に、Alを含む第2の高誘電率膜14Mx(後述の図7(c) 参照)を形成する。
【0144】
このようにして、第2の下地膜13bと第1の高誘電率膜14Naよりも窒素濃度が低く、且つ、窒素及びAlを含む第2の高誘電率膜14Mxとを有する第2のゲート絶縁膜14Bを形成する。第2の高誘電率膜14Mxの窒素濃度は、上面から下面に向かって低くなる。第2の高誘電率膜14MxのAl濃度は、上面から下面に向かって低くなる。第2の高誘電率膜14Mxの膜厚は、第2の高誘電率膜14Mbの膜厚と第1の調整用金属膜15bの膜厚とを合計した膜厚である。
【0145】
続いて、第1の実施形態における図3(a) 〜(c) に示す工程と同様な工程を順次行い、図7(c)に示す構成を得る。
【0146】
以上のようにして、本実施形態に係る半導体装置、具体的には、窒素を含む第1の高誘電率膜14Naを有する第1のゲート絶縁膜14Aを備えたn型MISトランジスタnTrと、第1の高誘電率膜14Naよりも窒素濃度が低く、且つ、窒素及びAlを含む第2の高誘電率膜14Mxを有する第2のゲート絶縁膜14Bを備えたp型MISトランジスタpTrとを備えた半導体装置を製造することができる。
【0147】
本実施形態と第1の実施形態との相違点は、以下に示す点である。
【0148】
第1に、第1の実施形態では、第1のゲート電極14Aにおける第1の高誘電率膜14Xaは、窒素(第1の窒素)を含む。これに対し、本実施形態では、第1のゲート電極14Aにおける第1の高誘電率膜14Naは、窒素(第2の窒素及び第1の窒素)を含む。第2に、第1の実施形態では、第2のゲート電極14Bにおける第2の高誘電率膜14xは、窒素を含まずAlを含む。これに対し、本実施形態では、第2のゲート電極14Bにおける第2の高誘電率膜14Mxは、窒素及びAlを含む。
【0149】
本実施形態によると、窒素を含む第1の高誘電率膜14Naと、第1の高誘電率膜14Naよりも窒素濃度が低く、且つ、窒素及びAlを含む第2の高誘電率膜14Mxとを形成することができるので、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0150】
さらに、第1の高誘電率膜14Naに、第2の窒素(図6(b) 参照)及び第1の窒素(図6(d) 参照)を順次導入することができるため、第1の高誘電率膜14Naの窒素濃度を精度良く制御することができる。
【0151】
なお、本実施形態では、第2の実施形態と同様に、第1の高誘電率膜に、Laを拡散させてもよい。このようにすると、フラットバンド電圧をシフトさせることができ、n型MISトランジスタの実効仕事関数を増加させて、低閾値電圧を有するn型MISトランジスタを実現することができる。
【0152】
<第1の実施形態の変形例>
本発明の第1の実施形態の変形例に係る半導体装置及びその製造方法について図面を参照しながら説明する。なお、第1の実施形態の変形例に係る半導体装置及びその製造方法について、第1の実施形態に係る半導体装置及びその製造方法と相違する点を中心に説明し、共通する点については適宜省略して説明する。
【0153】
以下に、本発明の第1の実施形態の変形例に係る半導体装置の製造方法について、図8(a) 〜(c) を参照しながら説明する。図8(a) 〜(c) は、本発明の第1の実施形態の変形例に係る半導体装置の製造方法を工程順に示すゲート長方向の要部工程断面図である。なお、図8(a) 〜(c) において、第1の実施形態における構成要素と同一の構成要素には、第1の実施形態における図1(a) 〜図3(c) に示す符号と同一の符号を付している。
【0154】
まず、第1の実施形態における図1(a) 〜(c) に示す工程と同様な工程を順次行い、図1(c) に示す構成と同様の構成を得る。
【0155】
次に、図8(a) に示すように、レジストパターンReを除去する。その後、例えば第1の調整用金属膜に対して選択性を持つウェットエッチング法を用いて、保護膜16を除去する。
【0156】
このようにして、高誘電率膜14におけるpMIS領域に形成された部分(該部分は、第2の活性領域10b上に位置する第1の部分を含む)上に、第1の調整用金属膜を形成する。
【0157】
続いて、例えば窒素プラズマ処理により、第1の調整用金属膜をマスクとして、高誘電率膜14におけるnMIS領域に形成された部分(該部分は、第1の活性領域10a上に位置する第2の部分を含む)に、窒素(第1の窒素)を導入する。このとき、窒素は、上面から下面に向かって窒素濃度が低くなるように、高誘電率膜14におけるnMIS領域に形成された部分に導入される。またこのとき、第1の調整用金属膜の表面領域に、窒素が導入されて、窒素を含む第1の調整用金属膜15Xが形成される。
【0158】
このようにして、下地膜13におけるnMIS領域に形成された部分上に、窒素を含む高誘電率膜14Xを形成する。それと共に、下地膜13におけるpMIS領域に形成された部分上に、高誘電率膜14Xよりも窒素濃度が低い高誘電率膜14及び窒素を含む第1の調整用金属膜15Xを順次形成する。
【0159】
続いて、第1の実施形態における図2(a) に示す工程と同様の工程を行う。具体的には、窒素を含む高誘電率膜14X及び窒素を含む第1の調整用金属膜15X上に、金属膜17とシリコン膜18とを有するゲート電極形成膜18Fを形成する。
【0160】
次に、図8(b) に示すように、第1の実施形態における図2(b) に示す工程と同様の工程を行う。具体的には、ゲート電極形成膜18F、窒素を含む第1の調整用金属膜15X、窒素を含む高誘電率膜14X及び高誘電率膜14Xよりも窒素濃度が低い高誘電率膜14、並びに下地膜13を順次パターニングする。これにより、第1の活性領域10a上に、第1の下地膜13aと窒素を含む第1の高誘電率膜14Xaとを有する第1のゲート絶縁膜14A、及び第1のゲート電極18Aを順次形成する。それと共に、第2の活性領域10b上に、第2の下地膜13bと第1の高誘電率膜14Xaよりも窒素濃度が低い第2の高誘電率膜14bと窒素を含む第1の調整用金属膜15Xbとを有する第2のゲート絶縁膜14B、及び第2のゲート電極18Bを順次形成する。
【0161】
続いて、第1の実施形態における図2(c) に示す工程と同様の工程を行う。具体的には、第1,第2のゲート電極18A,18Bの側面上に、第1,第2のオフセットスペーサ19a,19bを形成する。その後、第1,第2の活性領域10a,10bにおける第1,第2のゲート電極18A,18Bの側方下に、浅いn型,p型ソースドレイン領域20a,20bを形成する。
【0162】
続いて、第1の実施形態における図2(d) に示す工程と同様な工程を行う。具体的には、第1,第2のゲート電極18A,18Bの側面上に、第1,第2のオフセットスペーサ19a,19bを介して、第1,第2のサイドウォールを形成する。その後、第1,第2の活性領域10a,10bにおける第1,第2のサイドウォールの外側方下に、深いn型,p型ソースドレイン領域23a,23bを形成する。その後、熱処理により、深いn型,p型ソースドレイン領域23a,23bに含まれるn型,p型不純物を活性化させる。それと共に、第1の調整用金属膜15Xbに含まれる第1の調整用金属(Al)を、第2の高誘電率膜14bに拡散させる。このとき、Alは、上面から下面に向かってAl濃度が低くなるように、第2の高誘電率膜14bに拡散する。またこのとき、第2の高誘電率膜14bは、第1の高誘電率膜14Xaよりも窒素濃度が低いため、第2の高誘電率膜14bに拡散されるAlの拡散量が減少することを抑制しながら、Alを第2の高誘電率膜14bに拡散させることができる。またこのとき、第1の調整用金属膜15Xbに含まれる窒素が、第2の高誘電率膜14bに拡散される。これにより、第2の下地膜13bと第2のゲート電極18Bとの間に、Al及び窒素を含む第2の高誘電率膜14y(後述の図8(c) 参照)を形成する。
【0163】
このようにして、第2の下地膜13bと第1の高誘電率膜14Xaよりも窒素濃度が低く、且つ、Al及び窒素を含む第2の高誘電率膜14yとを有する第2のゲート絶縁膜14Bを形成する。第2の高誘電率膜14yのAl濃度は、上面から下面に向かって低くなる。第2の高誘電率膜14yの窒素濃度は、上面から下面に向かって低くなる。第2の高誘電率膜14yの膜厚は、第2の高誘電率膜14bの膜厚と第1の調整用金属膜15Xbの膜厚とを合計した膜厚である。
【0164】
続いて、第1の実施形態における図3(a) 〜(c) に示す工程と同様な工程を順次行い、図8(c)に示す構成を得る。
【0165】
以上のようにして、本実施形態に係る半導体装置、具体的には、窒素を含む第1の高誘電率膜14Xaを有する第1のゲート絶縁膜14Aを備えたn型MISトランジスタnTrと、第1の高誘電率膜14Xaよりも窒素濃度が低く、且つ、Al及び窒素を含む第2の高誘電率膜14yを有する第2のゲート絶縁膜14Bを備えたp型MISトランジスタpTrとを備えた半導体装置を製造することができる。
【0166】
本変形例と第1の実施形態との相違点は、以下に示す点である。
【0167】
第1の実施形態では、第2のゲート電極14Bにおける第2の高誘電率膜14xは、窒素を含まずAlを含む。これに対し、本変形例では、第2のゲート電極14Bにおける第2の高誘電率膜14yは、Al及び窒素を含む。
【0168】
本変形例によると、窒素を含む第1の高誘電率膜14Xaと、第1の高誘電率膜14Xaよりも窒素濃度が低く、且つ、Al及び窒素を含む第2の高誘電率膜14yとを形成することができるので、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0169】
なお、第1〜第3の実施形態では、第1の調整用金属膜15に含まれる第1の調整用金属として、Alを用いた場合を具体例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0170】
また、第1〜第3の実施形態では、シリコン膜18として、ポリシリコン膜を用いたが、これに代えて、例えばアモルファスシリコン膜又はシリコン膜等を用いてもよい。
【0171】
また、第1〜第3の実施形態では、シリサイド化用金属膜の材料として、ニッケルを用いたが、これに代えて、例えば白金、コバルト、チタン及びタングステン等のシリサイド化用金属を用いてもよい。
【0172】
また、第1〜第3の実施形態では、第1,第2の外側サイドウォールを除去したが、本発明はこれに限定されるものではなく、第1,第2の外側サイドウォールを除去せずに残存させてもよい。
【0173】
また、第1〜第3の実施形態では、絶縁膜26として、第1,第2のコンタクトホール28a,28bの形成の際にエッチングストッパとして機能する絶縁膜を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、絶縁膜における第1の活性領域上に形成される部分の膜として、第1の活性領域におけるチャネル領域のゲート長方向に引っ張り応力を生じさせる応力絶縁膜を用いてもよい。このようにすると、第1の活性領域におけるチャネル領域のゲート長方向に、引っ張り応力を印加することができるので、n型MISトランジスタの駆動能力を向上させることができる。加えて、第1の外側サイドウォールを除去して、応力絶縁膜を、第1の内側サイドウォールの表面に接して形成することにより、第1の外側サイドウォールの除去分だけ、応力絶縁膜を、第1の活性領域におけるチャネル領域に近付けて形成することができるので、第1の活性領域におけるチャネル領域のゲート長方向に、引っ張り応力を効果的に印加することができる。さらに、第1の外側サイドウォールの除去分だけ、応力絶縁膜を厚膜化することができるので、第1の活性領域におけるチャネル領域のゲート長方向に、引っ張り応力を効果的に印加することができる。
【産業上の利用可能性】
【0174】
本発明は、p型MISトランジスタのゲート絶縁膜の酸化膜換算膜厚の厚膜化を抑制しつつ、p型MISトランジスタの実効仕事関数を増加させて、低閾値電圧を有するn型,p型MISトランジスタを実現することができる。このため、高誘電率膜を含むゲート絶縁膜を有するn型,p型MISトランジスタを備えた半導体装置及びその製造方法に有用である。
【符号の説明】
【0175】
10 半導体基板
10a 第1の活性領域
10b 第2の活性領域
11 素子分離領域
12a p型ウェル領域
12b n型ウェル領域
13 下地膜
13a 第1の下地膜
13b 第2の下地膜
14 高誘電率膜
14X 窒素を含む高誘電率膜
14Y Laを含む高誘電率膜
14Z La及び窒素を含む高誘電率膜
14M 窒素を含む高誘電率膜
14N 窒素を含む高誘電率膜
14Xa 窒素を含む第1の高誘電率膜
14Za La及び窒素を含む第1の高誘電率膜
14Na 窒素を含む第1の高誘電率膜
14b 第2の高誘電率膜
14Mb 窒素を含む第2の高誘電率膜
14x Alを含む第2の高誘電率膜
14Mx 窒素及びAlを含む第2の高誘電率膜
14y Al及び窒素を含む第2の高誘電率膜
14A 第1のゲート絶縁膜
14B 第2のゲート絶縁膜
15,15b 第1の調整用金属膜
15X,15Xb 窒素を含む第1の調整用金属膜
16 保護膜
17 金属膜
17a 第1の金属膜
17b 第2の金属膜
18 シリコン膜
18a 第1のシリコン膜
18b 第2のシリコン膜
18F ゲート電極形成膜
18A 第1のゲート電極
18B 第2のゲート電極
19a 第1のオフセットスペーサ
19b 第2のオフセットスペーサ
20a 浅いn型ソースドレイン領域
20b 浅いp型ソースドレイン領域
21a 第1の内側サイドウォール
21b 第2の内側サイドウォール
22a 第1の外側サイドウォール
22b 第2の外側サイドウォール
22A 第1のサイドウォール
22B 第2のサイドウォール
23a 深いn型ソースドレイン領域
23b 深いp型ソースドレイン領域
24a 第1の金属シリサイド膜
24b 第2の金属シリサイド膜
25a 第3の金属シリサイド膜
25b 第4の金属シリサイド膜
26 絶縁膜
27 層間絶縁膜
28a 第1のコンタクトホール
28b 第2のコンタクトホール
29a 第1のコンタクトプラグ
29b 第2のコンタクトプラグ
30 第2の調整用金属膜
Re レジストパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のMISトランジスタと第2のMISトランジスタとを備えた半導体装置であって、
前記第1のMISトランジスタは、
半導体基板における第1の活性領域上に形成され、第1の高誘電率膜を有する第1のゲート絶縁膜と、
前記第1のゲート絶縁膜上に形成された第1のゲート電極とを備え、
前記第2のMISトランジスタは、
前記半導体基板における第2の活性領域上に形成され、第2の高誘電率膜を有する第2のゲート絶縁膜と、
前記第2のゲート絶縁膜上に形成された第2のゲート電極とを備え、
前記第2の高誘電率膜は、第1の調整用金属を含み、
前記第1の高誘電率膜は、前記第2の高誘電率膜よりも窒素濃度が高く、且つ、前記第1の調整用金属を含まないことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記第1の高誘電率膜は窒素を含む一方、前記第2の高誘電率膜は前記窒素を含まないことを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の半導体装置において、
前記第1の調整用金属は、アルミニウムであることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記第1の高誘電率膜は第2の調整用金属を含む一方、前記第2の高誘電率膜は前記第2の調整用金属を含まないことを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項4に記載の半導体装置において、
前記第2の調整用金属は、ランタンであることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項1〜5のうちいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記第1のゲート絶縁膜は、前記第1の活性領域上に形成された第1の下地膜と、前記第1の下地膜上に形成された前記第1の高誘電率膜とからなり、
前記第2のゲート絶縁膜は、前記第2の活性領域上に形成された第2の下地膜と、前記第2の下地膜上に形成された前記第2の高誘電率膜とからなることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
請求項6に記載の半導体装置において、
前記第1の下地膜及び前記第2の下地膜は、シリコン酸化膜からなることを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
請求項1〜7のうちいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記第1の高誘電率膜及び前記第2の高誘電率膜は、比誘電率が10以上の金属酸化物からなることを特徴とする半導体装置。
【請求項9】
請求項1〜8のうちいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記第1のゲート電極は、前記第1のゲート絶縁膜上に形成された第1の金属膜と、前記第1の金属膜上に形成された第1のシリコン膜とからなり、
前記第2のゲート電極は、前記第2のゲート絶縁膜上に形成された第2の金属膜と、前記第2の金属膜上に形成された第2のシリコン膜とからなることを特徴とする半導体装置。
【請求項10】
請求項1〜9のうちいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記第1のゲート電極の側面上に形成された断面形状がL字状の第1のサイドウォールと、
前記第2のゲート電極の側面上に形成された断面形状がL字状の第2のサイドウォールと、
前記第1の活性領域及び前記第2の活性領域上に、前記第1のゲート電極及び前記第1のサイドウォール、並びに前記第2のゲート電極及び前記第2のサイドウォールを覆うように形成された絶縁膜とをさらに備えていることを特徴とする半導体装置。
【請求項11】
請求項10に記載の半導体装置において、
前記絶縁膜は、前記第1の活性領域におけるチャネル領域のゲート長方向に引っ張り応力を生じさせる応力絶縁膜であり、
前記絶縁膜は、前記第1のサイドウォールの表面に接して形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項12】
請求項1〜11のうちいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記第1のMISトランジスタは、n型MISトランジスタであり、
前記第2のMISトランジスタは、p型MISトランジスタであることを特徴とする半導体装置。
【請求項13】
半導体基板における第1の活性領域上に形成された第1のMISトランジスタと前記半導体基板における第2の活性領域上に形成された第2のMISトランジスタとを有する半導体装置の製造方法であって、
前記第1の活性領域及び前記第2の活性領域の上に、高誘電率膜を形成する工程(a)と、
前記高誘電率膜における前記第2の活性領域の上に位置する第1の部分の上に、第1の調整用金属膜を形成する工程(b)と、
前記工程(b)の後に、前記高誘電率膜における前記第1の活性領域の上に位置する第2の部分に、第1の窒素を導入する工程(c)と、
前記工程(c)の後に、前記高誘電率膜における前記第2の部分の上及び前記第1の調整用金属膜の上に、ゲート電極形成膜を形成する工程(d)と、
前記ゲート電極形成膜、前記第1の調整用金属膜及び前記高誘電率膜を順次パターニングすることにより、前記第1の活性領域の上に、前記高誘電率膜における前記第2の部分からなる第1の高誘電率膜を有する第1のゲート絶縁膜、及び前記ゲート電極形成膜からなる第1のゲート電極を順次形成すると共に、前記第2の活性領域の上に、前記高誘電率膜における前記第1の部分からなる第2の高誘電率膜と前記第1の調整用金属膜とを有する第2のゲート絶縁膜、及び前記ゲート電極形成膜からなる第2のゲート電極を順次形成する工程(e)と、
前記工程(e)の後に、前記第2のゲート絶縁膜における前記第2の高誘電率膜に、前記第1の調整用金属膜に含まれる第1の調整用金属を拡散させる工程(f)とを備え、
前記第1の高誘電率膜は、前記第1の調整用金属を含まず前記第1の窒素を含み、
前記第2の高誘電率膜は、前記第1の調整用金属を含み、
前記第1の高誘電率膜は、前記第2の高誘電率膜よりも窒素濃度が高いことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項14】
請求項13に記載の半導体装置の製造方法において、
前記工程(b)よりも後で、且つ前記工程(c)よりも前に、前記高誘電率膜における前記第2の部分に、第2の調整用金属を拡散させる工程(g)をさらに備え、
前記第1の高誘電率膜は前記第2の調整用金属を含む一方、前記第2の高誘電率膜は前記第2の調整用金属を含まないことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項15】
請求項13に記載の半導体装置の製造方法において、
前記工程(a)よりも後で、且つ前記工程(b)よりも前に、前記高誘電率膜における前記第2の部分に、第2の窒素を導入する工程(h)をさらに備え、
前記第1の高誘電率膜は、前記第1の窒素及び前記第2の窒素を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項16】
請求項13〜15のうちいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記工程(a)よりも前に、前記第1の活性領域及び前記第2の活性領域の上に、下地膜を形成する工程(i)をさらに備え、
前記工程(a)は、前記下地膜の上に、前記高誘電率膜を形成する工程であり、
前記工程(e)は、前記ゲート電極形成膜、前記第1の調整用金属膜、前記高誘電率膜及び前記下地膜を順次パターニングすることにより、前記第1の活性領域の上に、前記下地膜からなる第1の下地膜と前記第1の高誘電率膜とを有する前記第1のゲート絶縁膜、及び前記第1のゲート電極を順次形成すると共に、前記第2の活性領域の上に、前記下地膜からなる第2の下地膜と前記第2の高誘電率膜と前記第1の調整用金属膜とを有する前記第2のゲート絶縁膜、及び前記第2のゲート電極を順次形成する工程であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項17】
請求項13〜15のうちいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記工程(d)は、前記高誘電率膜における前記第2の部分の上及び前記第1の調整用金属膜の上に、金属膜を形成する工程(d1)と、前記金属膜の上に、シリコン膜を形成し、前記金属膜と前記シリコン膜とを有する前記ゲート電極形成膜を形成する工程(d2)とを含み、
前記工程(e)は、前記シリコン膜、前記金属膜、前記第1の調整用金属膜及び前記高誘電率膜を順次パターニングすることにより、前記第1の活性領域の上に、前記第1のゲート絶縁膜、及び前記金属膜からなる第1の金属膜と前記シリコン膜からなる第1のシリコン膜とを有する前記第1のゲート電極を順次形成すると共に、前記第2の活性領域の上に、前記第2のゲート絶縁膜、及び前記金属膜からなる第2の金属膜と前記シリコン膜からなる第2のシリコン膜とを有する前記第2のゲート電極を順次形成する工程であることを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−44580(P2011−44580A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−191697(P2009−191697)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】