説明

半導体装置及び半導体装置の作製方法

【課題】酸化物半導体層を有する薄膜トランジスタにおいて、水分などの不純物を混入させずに良好な界面特性を提供することを課題の一つとする。電気特性及び信頼性の高い薄膜トランジスタを有する半導体装置、及び該半導体装置を量産高く作製する方法を提案することを課題とする。
【解決手段】ゲート絶縁層表面に酸素ラジカル処理を行うことを要旨とする。よってゲート絶縁層と半導体層との界面に酸素濃度のピークを有し、かつゲート絶縁層の酸素濃度は濃度勾配を有し、その酸素濃度はゲート絶縁層と半導体層との界面に近づくにつれて増加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はチャネル形成領域に酸化物半導体膜を用いた薄膜トランジスタ(以下、TFTという)で構成された回路を有する半導体装置およびその作製方法に関する。例えば、液晶表示パネルに代表される電気光学装置や有機発光素子を有する発光表示装置を部品として搭載した電子機器に関する。
【0002】
なお、本明細書中において半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般を指し、電気光学装置、半導体回路および電子機器は全て半導体装置である。
【背景技術】
【0003】
近年、マトリクス状に配置された表示画素毎にTFTからなるスイッチング素子を設けたアクティブマトリクス型の表示装置(液晶表示装置や発光表示装置や電気泳動式表示装置)が盛んに開発されている。アクティブマトリクス型の表示装置は、画素(又は1ドット)毎にスイッチング素子が設けられており、単純マトリクス方式に比べて画素密度が増えた場合に低電圧駆動できるので有利である。
【0004】
また、チャネル形成領域に酸化物半導体膜を用いて薄膜トランジスタ(TFT)などを作製し、電子デバイスや光デバイスに応用する技術が注目されている。例えば、酸化物半導体膜として酸化亜鉛(ZnO)を用いるTFTや、InGaO(ZnO)を用いるTFTが挙げられる。これらの酸化物半導体膜を用いたTFTを、透光性を有する基板上に形成し、画像表示装置のスイッチング素子などに用いる技術が特許文献1及び特許文献2で開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−123861号公報
【特許文献2】特開2007−96055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
酸化物半導体膜界面の不安定性など、チャネル形成領域に酸化物半導体膜を用いる薄膜トランジスタには、信頼性上の課題が多い。しかしながらこれまでIGZOを用いる薄膜トランジスタにおいて界面特性は全く論じられていない。また、信頼性上の不安定がみられる原因が不明であった。
【0007】
そこで、本発明の一形態は、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、及び亜鉛(Zn)を含む酸化物半導体膜を用いる薄膜トランジスタにおいて、水分などの不純物を混入させずに良好な界面特性を提供することを課題の一つとする。
【0008】
また、酸化物半導体膜と接するゲート絶縁層に水素が含まれている場合、ゲート絶縁層中の水素が拡散し、酸化物半導体膜中の酸素と反応してHO成分となる恐れがある。
【0009】
また、ゲート絶縁層の酸素濃度が低い場合、酸化物半導体膜中の酸素濃度が低減する恐れがある。
【0010】
また、本発明の一形態は、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、及び亜鉛(Zn)を含む酸化物半導体膜を用いる薄膜トランジスタにおいて、チャネル形成領域に酸素を多く含ませる構造を提供することを課題の一つとする。
【0011】
また、チャネル形成領域に酸化物半導体膜を用いる薄膜トランジスタには、動作速度が速く、製造工程が比較的簡単であり、十分な信頼性が求められている。
【0012】
薄膜トランジスタを形成するにあたり、ソース電極及びドレイン電極は、低抵抗な金属材料を用いる。特に、大面積の表示を行う表示装置を製造する際、配線の抵抗による信号の遅延問題が顕著になってくる。従って、配線や電極の材料としては、電気抵抗値の低い金属材料を用いることが望ましい。電気抵抗値の低い金属材料からなるソース電極及びドレイン電極と、酸化物半導体膜とが直接接する薄膜トランジスタ構造とすると、コンタクト抵抗が高くなる恐れがある。コンタクト抵抗が高くなる原因は、ソース電極及びドレイン電極と、酸化物半導体膜との接触面でショットキー接合が形成されることが要因の一つと考えられる。
【0013】
加えて、ソース電極及びドレイン電極と、酸化物半導体膜とが直接接する部分には容量が形成され、周波数特性(f特性と呼ばれる)が低くなり、薄膜トランジスタの高速動作を妨げる恐れがある。
【0014】
本発明の一形態は、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、及び亜鉛(Zn)を含む酸化物半導体膜を用いる薄膜トランジスタにおいて、ソース電極またはドレイン電極のコンタクト抵抗を低減した薄膜トランジスタ及びその作製方法を提供することを課題の一つとする。
【0015】
また、In、Ga、及びZnを含む酸化物半導体膜を用いる薄膜トランジスタの動作特性や信頼性を向上させることも課題の一つとする。
【0016】
また、In、Ga、及びZnを含む酸化物半導体膜を用いる薄膜トランジスタの電気特性のバラツキを低減することも課題の一つとする。特に、液晶表示装置においては、個々の素子間でのバラツキが大きい場合、そのTFT特性のバラツキに起因する表示むらが発生する恐れがある。
【0017】
また、発光素子を有する表示装置においても、画素電極に一定の電流が流れるように配置されたTFT(駆動回路または画素に配置される発光素子に電流を供給するTFT)のオン電流(Ion)のバラツキが大きい場合、表示画面において輝度のバラツキが生じる恐れがある。
【0018】
以上、本発明の一形態は、上記課題の少なくとも一つを解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の一形態は、ゲート絶縁層表面に酸素ラジカル処理を行うことを要旨とする。よってゲート絶縁層と半導体層との界面に酸素濃度のピークを有し、かつゲート絶縁層の酸素濃度は濃度勾配を有し、その酸素濃度はゲート絶縁層と半導体層との界面に近づくにつれて増加する。
【0020】
また、半導体層として酸素過剰酸化物半導体膜を用い、半導体層とソース電極層及びドレイン電極層との間に酸素欠乏酸化物半導体膜を用いたソース領域及びドレイン領域が設けられた逆スタガ型(ボトムゲート構造)の薄膜トランジスタを含む。
【0021】
半導体層、ソース領域及びドレイン領域としてIn、Ga、及びZnを含む酸化物半導体膜を用いることができる。また、In、Ga、及びZnのいずれか一をタングステン、モリブデン、チタン、ニッケル、又はアルミニウムと置換してもよい。
【0022】
本明細書において、In、Ga、及びZnを含む酸化物半導体膜を用いて形成された半導体層を「IGZO半導体層」とも記す。
【0023】
ゲート絶縁層に酸素ラジカル処理を行うことにより、酸素ラジカルをゲート絶縁層に打ち込んで酸素過剰酸化物半導体層との界面近傍のゲート絶縁層に対してバルクGIよりも過剰な酸素を含有させる。
【0024】
酸素ラジカル処理を行うことによって、ゲート絶縁層も酸化物半導体層との界面近傍を改質し、酸素過剰領域を有するゲート絶縁層とすることができる。
【0025】
酸素過剰領域を有するゲート絶縁層と酸素過剰酸化物半導体層は相性がよく、良好な界面特性を得ることができる。
【0026】
また、酸素過剰領域を有するゲート絶縁層と、酸素過剰酸化物半導体層とを積層するためには、連続成膜とすることが好ましい。
【0027】
酸素ラジカルは、酸素を含むガスを用いてプラズマ発生装置により供給されてもよいし、又はオゾン発生装置により供給されてもよい。本発明の一形態では供給された酸素ラジカル又は酸素を薄膜に照射することによって膜表面を改質することができる。
【0028】
また、酸素ラジカル処理に限定されず、アルゴンと酸素のラジカル処理を行ってもよい。アルゴンと酸素のラジカル処理とは、アルゴンガスと酸素ガスを導入してプラズマを発生させて薄膜表面の改質を行うことである。
【0029】
電界が印加され放電プラズマが発生している反応空間中のAr原子(Ar)は、放電プラズマ中の電子(e)により励起又は電離され、アルゴンラジカル(Ar)やアルゴンイオン(Ar)や電子(e)となる。アルゴンラジカル(Ar)はエネルギーの高い準安定状態にあり、周辺にある同種又は異種の原子と反応し、それらの原子を励起又は電離させて安定状態に戻ろうとして雪崩れ現象的に反応が発生する。その時に周辺に酸素があると、酸素原子(O)が励起又は電離され、酸素ラジカル(O)や酸素イオン(O)や酸素(O)となる。その酸素ラジカル(O)が被処理物である薄膜表面の材料と反応し、表面改質を行ったり、表面にある有機物と反応して有機物を除去するプラズマ処理が行われる。なお、不活性ガスのラジカルは、反応性ガスのラジカルと比較して準安定状態が長く維持されるという特徴があり、そのためプラズマを発生させるのに不活性ガスを用いるのが一般的である。
【0030】
また、ゲート絶縁層はシリコンターゲットを用い、Arガスと酸素ガスとを導入して行うスパッタ法で形成し、酸素を多く含む絶縁層とすることが最も好ましい。一方、TEOSガスなどを用いるプラズマCVD(PCVD)法でゲート絶縁層を形成する場合、ゲート絶縁層に含まれる水素が酸化物半導体層の酸素と反応するとHOやOHを作りやすく、キャリアキラーとしての阻害要因となり、信頼性の劣化を招く恐れがある。即ち、PCVD法で水素を含む絶縁膜をゲート絶縁層として用いる場合、ゲート絶縁層の水素が、酸素過剰酸化物半導体層の酸素と反応してしまう恐れがあるため、好ましくない。従って、ゲート絶縁層の水素濃度は、SIMS(二次イオン質量分析計)を用いた分析により得られる濃度ピークが2×1019cm−3以下とすることが好ましい。また、図3に酸素濃度の低いゲート絶縁層に酸素ラジカル処理を行う比較例を示すが、この場合においては、酸素過剰酸化物半導体層の酸素を吸収してしまう恐れがあるため、好ましくない。
【0031】
従って、図1(A)に酸素の濃度分布を示すように、ゲート絶縁層側の界面に酸素ラジカル処理をして酸素をドープし、その後、IGZO膜を形成した後、熱処理(200℃〜600℃)を行う。図1(A)は熱処理前のゲート絶縁層と半導体層との界面近傍の酸素濃度の模式図である。また、図1(B)は熱処理後のゲート絶縁層と半導体層との界面近傍の酸素濃度の模式図である。
【0032】
図1(A)に示す状態から熱処理を行って図1(B)の状態とすることによって、ゲート絶縁層中の過剰な酸素をIGZO膜側にドリフトさせ、またIGZO膜の酸素をGI側にドリフトさせることを防ぐ効果を有する。ゲート絶縁層表面の酸素ラジカルにより界面の安定化が図れる。信頼性上の不安定な原因の一つがゲート絶縁層とIGZO膜の界面にあることを明らかにし、IGZO膜でなくゲート絶縁層を改質すること、及びその後の熱処理で信頼性を安定化させている。
【0033】
また、ゲート絶縁層表面にプラズマ処理を行ってSiN化を行った後、酸素ラジカル処理を行って、ゲート絶縁層中の水素がIGZO膜に拡散することを低減してもよい。表面をSiN化するプラズマ処理としては、プラズマの励起をマイクロ波により行うことで、窒素ラジカル(NHラジカルを含む場合もある)によって、ゲート絶縁層表面を窒化する方法や、窒素雰囲気で逆スパッタを行う方法などを用いてもよい。また、図2は、表面をSiN化させた後、酸素ラジカル処理を行ったゲート絶縁層と半導体層との界面近傍の酸素濃度の模式図である。
【0034】
なお、図1、図2、及び図3は本発明の一形態の概念を簡略に説明するための模式図であり、特に限定されないことは言うまでもない。
【0035】
また、ソース電極層とIGZO半導体層とはオーミック性のコンタクトが必要であり、さらに、そのコンタクト抵抗は極力低減することが望まれる。同様に、ドレイン電極層とIGZO半導体層とはオーミック性のコンタクトが必要であり、さらに、そのコンタクト抵抗は極力低減することが望まれる。
【0036】
そこで、ソース電極層及びドレイン電極層とIGZO半導体層との間に、IGZO半導体層よりもキャリア濃度の高いソース領域及びドレイン領域を意図的に設けることによってオーミック性のコンタクトを形成する。
【0037】
半導体層として酸素過剰酸化物半導体層を用い、ソース領域及びドレイン領域として酸素欠乏酸化物半導体層を用いる。ソース領域及びドレイン領域の酸素欠乏酸化物半導体層は結晶粒を有している。
【0038】
結晶粒を有する酸素欠乏酸化物半導体層をソース領域またはドレイン領域として積極的に設けることにより、金属層であるソース電極層またはドレイン電極層と、IGZO膜との間を良好な接合としてショットキー接合に比べて熱的にも安定動作を有せしめる。また、チャネルのキャリアを供給する(ソース側)、またはチャネルのキャリアを安定して吸収する(ドレイン側)、または抵抗成分をソース電極層(またはドレイン電極層)との界面に作らないためにも積極的に結晶粒を有するソース領域またはドレイン領域を設けることは重要である。高いドレイン電圧でも良好な移動度を保持するためにも低抵抗化は重要である。
【0039】
ガラス基板上にDCスパッタ法によって400nmのIGZO膜を成膜し、XRD(X線回析)測定を行った。成膜条件は、圧力を0.4Paとし、電力を500Wとし、成膜温度を室温とし、アルゴンガス流量を10sccmとし、酸素流量を5sccmとし、ターゲットは、In:Ga:ZnO=1:1:1としたターゲットを用いた。なお、アモルファス状のIGZO膜を得るために、この比率のターゲットを意図的に用いている。
【0040】
図37は、そのXRD測定チャートである。成膜直後のチャートが図37中でas−depoと示したものに相当する。また、図37には、成膜後に窒素雰囲気350℃、1時間の熱処理後のチャートと、成膜後に窒素雰囲気500℃、1時間の熱処理後のチャートと、成膜後に窒素雰囲気600℃、1時間の熱処理後のチャートと、成膜後に窒素雰囲気700℃、1時間の熱処理後のチャートとを見比べるために、便宜上、並べて図示している。
【0041】
700℃の熱処理後の試料では、明確に結晶を示すピークが30〜35°の範囲と、55〜60°の範囲とで観察される。また、400nmのIGZO膜を成膜し、窒素雰囲気700℃、1時間の熱処理後の試料をFIB(Focused Ion beam)により端面を切り出し、高分解能透過電子顕微鏡(日立製作所製「H9000−NAR」:TEM)で加速電圧を300kVとし、断面観察を行った。50万倍で観察した結果が図48であり、結晶粒が確認できる。また走査透過型電子顕微鏡(日立製作所製「HD−2700」:STEM)で加速電圧を200kVとし、断面観察を行い、600万倍で観察した写真図が図49である。図49では明瞭な格子像が確認でき、XRD測定で結晶を示すピークが見られたことと対応している。
【0042】
また、結晶粒の有無や、結晶粒の大きさや、結晶粒の分布状態を調べるため、ガラス基板上にDCスパッタ法により50nmのIGZO膜を成膜し、FIBにより端面を切り出し、高分解能透過電子顕微鏡(日立製作所製「H9000−NAR」:TEM)で加速電圧を300kVとし、断面観察を行った。
【0043】
In:Ga:ZnO=1:1:1としたターゲットを用い、成膜条件は、圧力を0.4Paとし、電力を500Wとし、成膜温度を室温とし、アルゴンガス流量5sccm、酸素流量45sccmとして酸素過多条件としてスパッタ成膜を行った試料1と、酸素ガスを導入せずにアルゴンガス流量40sccmのみとし、他の条件を同じとした酸素欠乏条件でスパッタ成膜を行った試料2とを用意してそれぞれ断面観察を行った。
【0044】
試料1を50万倍で観察した結果が図38であり、試料2を50万倍で観察した結果が図39である。試料1においては、IGZO膜中に結晶粒は確認できないが、試料2においてIGZO膜中に直径1nm〜10nm、代表的には2nm〜4nm程度の結晶粒が散在していることが確認できる。試料2の結晶粒は、700℃の熱処理を行った試料の断面観察写真である図48よりも小さな結晶粒のサイズとなっている。この結果は。アモルファス状のIGZO膜を得るために、In:Ga:ZnO=1:1:1としたターゲットを意図的に用いているにも関わらず、成膜直後で結晶粒を含むIGZO膜が得られているといえる。
【0045】
また、試料1の成膜条件の後、さらに窒素雰囲気350℃、1時間の熱処理を行った試料3と、試料2の成膜条件の後、さらに窒素雰囲気350℃、1時間の熱処理を行った試料4とを用意してそれぞれ断面観察を行った。
【0046】
試料3を50万倍で観察した結果が図40であり、試料4を50万倍で観察した結果が図41である。また、試料3においては、IGZO膜中に結晶粒は確認できないが、試料4においてIGZO膜中に直径1nm〜10nm程度、代表的には2nm〜4nm程度の結晶粒が散在していることが確認できる。
【0047】
また、試料1乃至4を用いてXRD測定を行ったところ、図37に示したas−depoと示したものと、窒素雰囲気350℃、1時間の熱処理を行った試料と、それぞれ同様に明確に結晶を示すピークが確認できない結果が得られた。
【0048】
このように、スパッタ成膜条件を酸素過多条件とした試料1では結晶粒がTEM写真で確認されず、酸素欠乏条件とした試料2ではTEM写真で結晶粒が確認された原因を以下に示す。
【0049】
酸素欠乏条件とした試料2では、スパッタターゲットをArでたたいた時に本来結晶化する化学量論比の粒にArイオンのプラズマエネルギーが与えられ、飛翔中(ターゲットから基板まで)に結晶化、または粒子成長が行われる。よって、成膜途中の膜中の結晶粒は角部も観察される。また、350℃で熱処理すると、結晶粒の周辺のアモルファス成分の酸素と反応して、図41に示すように図39に比べて結晶粒の粒界はぼける、即ち不明瞭になる傾向が観察されている。アモルファス成分内での結晶の秩序性が結晶粒より周辺に発展成長していっていると考えられる。
【0050】
よって、酸素欠乏条件でより酸素濃度の少ないIGZO膜が形成され、N+型がより高濃度キャリア領域をもって構成されると考えられる。
【0051】
この結晶粒の生成過程より、ターゲットの成分比、成膜圧力(0.1Pa〜2.0Pa)、電力(250W〜3000W:8インチφ)、温度(室温〜100℃)、反応性スパッタの成膜条件などを適宜調節することで結晶粒の密度や、直径サイズは、1nm〜10nmの範囲で調節されうると言える。
【0052】
一方、酸素過多条件とした試料1ではスパッタターゲットをたたいて飛翔中にプラズマエネルギーで結晶成長を生じたくても同時に酸素が過剰にあるため、各元素は酸素と反応が強く、IGZOの結晶成長メカニズムをともなうことができず、ガラス状(アモルファス状)で基板上に全ての成分が成膜される。
【0053】
もちろん、酸素欠乏条件と酸素過多条件の中間の条件は、スパッタ成膜の酸素の混入の程度でプロセスが調節される。
【0054】
また、スパッタ法はターゲットに対して強いエネルギーをArイオンで与えるため、本体、成膜されたIGZO膜中には強い歪エネルギーが内在すると考えられる。この歪エネルギーを解放するため200℃〜600℃、代表的には300℃〜500℃の熱処理を行う。この熱処理により原子レベルの再配列が行われる。この熱処理によりキャリアの移動を阻害する歪が解放されるため、成膜と熱処理(光アニールも含む)は重要である。なお、200℃〜600℃の熱処理は、700℃を超えた熱処理のように、原子の大きな移動による単結晶成長までには至っていない。
【0055】
700℃以上の加熱温度では明瞭な結晶成長が観察され、図37に示すようにXRDでも結晶ピークが観察される。一方、酸素欠乏条件と酸素過多条件の両方とも、図37に示すように、XRD測定では結晶成分またはその結晶の程度が少ないためか、結晶粒の大きさが小さいためか、その他の要因のためかは不明であるが、観測されない。
【0056】
図39及び図41で観察される結晶粒をさらに拡大したものが図42、及び図43である。図42が酸素欠乏条件とした試料2の断面TEM写真(800万倍)である。図43が酸素欠乏条件とし、さらに熱処理を行った試料4の断面TEM写真(800万倍)である。図42及び図43には、どちらも結晶粒に明瞭な格子像が確認され、3層構造の単結晶が明確に観察されている。
【0057】
また、図38及び図40をさらに拡大したものが図44、図45、図46、及び図47である。図44が酸素過多条件とした試料1の断面TEM写真(200万倍)であり、800万倍の写真が図46である。図45が酸素過多条件とし、さらに熱処理を行った試料3の断面TEM写真(200万倍)であり、800万倍の写真が図47である。図44、図45、図46、及び図47には、どれも結晶粒が確認できない。
【0058】
本発明の半導体装置の一形態は、ゲート電極層と、ゲート電極層上にゲート絶縁層と、ゲート絶縁層上に酸化物半導体層と、酸化物半導体層上にソース領域及びドレイン領域と、ソース領域及びドレイン領域上にソース電極層及びドレイン電極層とを含む薄膜トランジスタを有し、ゲート絶縁層と酸化物半導体層との界面に酸素濃度のピークを有し、かつゲート絶縁層の酸素濃度は濃度勾配を有し、その酸素濃度はゲート絶縁層と酸化物半導体層との界面に近づくにつれて増加する。
【0059】
本発明の半導体装置の一形態は、ゲート電極層と、ゲート電極層上にゲート絶縁層と、ゲート絶縁層上に酸化物半導体層と、酸化物半導体層上にソース領域及びドレイン領域と、ソース領域及びドレイン領域上にソース電極層及びドレイン電極層とを含む薄膜トランジスタを有し、ゲート絶縁層と酸化物半導体層との界面に酸素濃度のピークを有し、かつゲート絶縁層及び酸化物半導体層の酸素濃度は濃度勾配を有し、その酸素濃度はゲート絶縁層と酸化物半導体層との界面に近づくにつれて増加する。
【0060】
上記構成において、酸化物半導体層の酸素濃度はソース領域及びドレイン領域の酸素濃度より高い。酸化物半導体層を酸素過剰酸化物半導体層、ソース領域及びドレイン領域を酸素欠乏酸化物半導体層とすると、ソース領域及びドレイン領域のキャリア濃度を酸化物半導体層より高くすることができる。
【0061】
また、ソース電極層及びドレイン電極層にチタン膜を用いることが好ましい。例えば、チタン膜、アルミニウム膜、チタン膜の積層を用いると低抵抗であり、かつアルミニウム膜にヒロックが発生しにくい。
【0062】
本発明の半導体装置の作製方法の一形態は、基板上にゲート電極層を形成し、ゲート電極層上にゲート絶縁層を形成し、ゲート絶縁層を酸素ラジカルに曝して改質し、改質されたゲート絶縁層上に酸化物半導体層を形成し、酸化物半導体層上にソース領域及びドレイン領域を形成し、ソース領域及びドレイン領域上にソース電極層及びドレイン電極層を形成し、ゲート絶縁層及び酸化物半導体層は大気に曝さずに連続的に形成する。
【0063】
ゲート絶縁層、半導体層、ソース領域及びドレイン領域、ソース電極層及びドレイン電極層は大気に曝さずに連続的に形成することができる。連続して成膜すると、ごみとなる大気中の不純物が界面に混入することによる不良を軽減することができる。
【0064】
ゲート絶縁層、半導体層、ソース領域及びドレイン領域、ソース電極層及びドレイン電極層はスパッタ法(スパッタリング法)で形成すればよい。
【0065】
このようにスパッタ法を用いて連続的に成膜すると、生産性が高く、薄膜界面の信頼性が安定する。また、ゲート絶縁層と半導体層を酸素雰囲気下で成膜し、酸素を多く含ませるようにすると、劣化による信頼性の低下や、薄膜トランジスタ特性のノーマリーオン側へのシフトなどを軽減することができる。
【0066】
本発明の半導体装置の作製方法の一形態は、基板上にゲート電極層を形成し、ゲート電極層上にゲート絶縁層を形成し、ゲート絶縁層を酸素ラジカルに曝して改質し、改質されたゲート絶縁層上に酸化物半導体層を形成し、酸化物半導体層上にソース領域及びドレイン領域を形成し、酸化物半導体層、ソース領域及びドレイン領域を200℃以上600℃以下で加熱し、ソース領域及びドレイン領域上にソース電極層及びドレイン電極層を形成し、ゲート絶縁層及び酸化物半導体層は大気に曝さずに連続的に形成する。
【発明の効果】
【0067】
本発明の一形態によって、光電流が少なく、寄生容量が小さく、オンオフ比の高い薄膜トランジスタを得ることができ、良好な動特性を有する薄膜トランジスタを作製できる。よって、電気特性が高く信頼性のよい薄膜トランジスタを有する半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】熱処理前後のゲート絶縁層と半導体層との界面近傍の酸素濃度の模式図。
【図2】窒化させたゲート絶縁層と半導体層との界面近傍の酸素濃度の模式図。
【図3】ゲート絶縁層と半導体層との界面近傍の酸素濃度の模式図(比較例)。
【図4】半導体装置を説明する図。
【図5】半導体装置を説明する図。
【図6】半導体装置を説明する図。
【図7】半導体装置の作製方法を説明する図。
【図8】半導体装置の作製方法を説明する図。
【図9】半導体装置を説明する図。
【図10】半導体装置を説明する図。
【図11】半導体装置を説明する図。
【図12】半導体装置を説明する図。
【図13】半導体装置を説明する図。
【図14】半導体装置の作製方法を説明する図。
【図15】半導体装置を説明する図。
【図16】半導体装置のブロック図を説明する図。
【図17】信号線駆動回路の構成を説明する図。
【図18】信号線駆動回路の動作を説明するタイミングチャート。
【図19】信号線駆動回路の動作を説明するタイミングチャート。
【図20】シフトレジスタの構成を説明する図。
【図21】図20に示すフリップフロップの接続構成を説明する図。
【図22】マルチチャンバー型の製造装置の上面模式図。
【図23】半導体装置を説明する図。
【図24】半導体装置を説明する図。
【図25】半導体装置を説明する図。
【図26】半導体装置を説明する図。
【図27】半導体装置を説明する図。
【図28】半導体装置を説明する図。
【図29】半導体装置を説明する図。
【図30】半導体装置を説明する図。
【図31】電子ペーパーの使用形態の例を説明する図。
【図32】電子書籍の一例を示す外観図。
【図33】テレビジョン装置およびデジタルフォトフレームの例を示す外観図。
【図34】遊技機の例を示す外観図。
【図35】携帯電話機の一例を示す外観図。
【図36】半導体装置を説明する図。
【図37】XRD測定の結果を示す図。
【図38】酸素過多条件とした試料1の断面TEM写真(50万倍)。
【図39】酸素欠乏条件とした試料2の断面TEM写真(50万倍)。
【図40】酸素過多条件とし、さらに熱処理を行った試料3の断面TEM写真(50万倍)。
【図41】酸素欠乏条件とし、さらに熱処理を行った試料4の断面TEM写真(50万倍)。
【図42】酸素欠乏条件とした試料2の断面TEM写真(800万倍)。
【図43】酸素欠乏条件とした試料4の断面TEM写真(800万倍)。
【図44】酸素過多条件とした試料1の断面TEM写真(800万倍)。
【図45】酸素過多条件とした試料3の断面TEM写真(200万倍)。
【図46】酸素過多条件とし、さらに熱処理を行った試料3の断面TEM写真(200万倍)。
【図47】酸素過多条件とし、さらに熱処理を行った試料3の断面TEM写真(800万倍)。
【図48】700℃の熱処理を行った試料の断面TEM写真(50万倍)。
【図49】700℃の熱処理を行った試料のSTEM写真(600万倍)。
【発明を実施するための形態】
【0069】
本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する本発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。
【0070】
(実施の形態1)
本実施の形態では、薄膜トランジスタ及びその作製工程について、図5乃至図8を用いて説明する。
【0071】
本実施の形態のボトムゲート構造の薄膜トランジスタ170a、170b、170cを図5及び図6に示す。図5(A1)は平面図であり、図5(A2)は図5(A1)における線A1−A2の断面図である。図5(B1)は平面図であり、図5(B2)は図5(B1)における線B1−B2の断面図である。図6(A1)は平面図であり、図6(A2)は図6(A1)における線C1−C2の断面図である。
【0072】
図5において、基板100上に、ゲート電極層101、ゲート絶縁層102、半導体層103、ソース領域又はドレイン領域104a、104b、ソース電極層又はドレイン電極層105a、105bを薄膜トランジスタ170aが設けられている。
【0073】
ゲート絶縁層102表面に酸素ラジカル処理を行う。よってゲート絶縁層102と半導体層103との界面に酸素濃度のピークを有し、かつゲート絶縁層102の酸素濃度は濃度勾配を有し、その酸素濃度はゲート絶縁層102と半導体層103との界面に近づくにつれて増加する。
【0074】
また、半導体層103としてIn、Ga、及びZnを含む酸素過剰酸化物半導体膜を用い、ソース電極層又はドレイン電極層105a、105bとIGZO半導体層である半導体層103との間に、酸素欠乏酸化物半導体層からなるソース領域又はドレイン領域104a、104bを意図的に設けることによってオーミック性のコンタクトを形成する。また、半導体層103、ソース領域又はドレイン領域104a、104bとして、In、Ga、及びZnのいずれか一をタングステン、モリブデン、チタン、ニッケル、アルミニウムと置換してもよい。
【0075】
ソース領域又はドレイン領域104a、104bとしては、In、Ga、及びZnを含む結晶粒を有する酸素欠乏酸化物半導体膜を用いる。
【0076】
チャネル用のIGZOは、薄膜トランジスタとしてノーマリーオンにならないようなキャリア濃度範囲とする。よって本発明のキャリア濃度範囲のIGZO膜を半導体層のチャネルとして用いることで信頼性の高い薄膜トランジスタとすることができる。
【0077】
またソース領域又はドレイン領域を積層構造としてもよい。ソース領域及びドレイン領域を積層する場合は、ソース電極層及びドレイン電極層側に向かってキャリア濃度が高くなるような濃度範囲にすればよい。ソース領域及びドレイン領域に不純物元素を含ませてキャリア濃度の高いソース領域及びドレイン領域を形成することができる。
【0078】
図5(A1)(A2)の薄膜トランジスタ170aは、ソース領域又はドレイン領域104a、104bとソース電極層又はドレイン電極層105a、105bとを別のマスクを用いてエッチング加工した例であり、ソース領域又はドレイン領域104a、104bとソース電極層又はドレイン電極層105a、105bとは形状が異なる。
【0079】
図5(B1)(B2)の薄膜トランジスタ170bは、ソース領域又はドレイン領域104a、104bとソース電極層又はドレイン電極層105a、105bとを同じマスクを用いてエッチング加工した例であり、ソース領域又はドレイン領域104a、104bとソース電極層又はドレイン電極層105a、105bとは同様な形状を反映している。
【0080】
また、図5(A1)(A2)(B1)(B2)の薄膜トランジスタ170a、170bは、半導体層103上において、ソース電極層又はドレイン電極層105a、105bの端部とソース領域又はドレイン領域104a、104bの端部が一致せず、ソース領域又はドレイン領域104a、104bが一部露出している例である。
【0081】
一方、図6(A1)(A2)の薄膜トランジスタ170cは、半導体層103とソース領域又はドレイン領域104a、104bとを同じマスクを用いてエッチング加工する例であり半導体層103とソース領域又はドレイン領域104a、104bの端部は一致している。なお、図6(A1)(A2)の薄膜トランジスタ170cは、半導体層103上において、ソース電極層又はドレイン電極層105a、105bの端部とソース領域又はドレイン領域104a、104bの端部も一致する例である。
【0082】
さらに、ソース電極層又はドレイン電極層が積層構造である薄膜トランジスタ171dを図15に示す。薄膜トランジスタ171dはソース電極層又はドレイン電極層105a1、105a2、105a3の積層、ソース電極層又はドレイン電極層105b1、105b2、105b3の積層を有している。例えば、ソース電極層又はドレイン電極層105a1、105b1としてチタン膜、105a2、105b2としてアルミニウム膜、105a3、105b3としてチタン膜を用いることができる。
【0083】
薄膜トランジスタ171dでは、ソース電極層又はドレイン電極層105a1、105b1をエッチングストッパーとして用いて、ソース電極層又はドレイン電極層105a2、105a3、105b2、105b3をウエットエッチングによってエッチングして形成する。上記ウエットエッチングと同じマスクを用いて、ソース電極層又はドレイン電極層105a1、105b1、ソース領域又はドレイン領域104a、104b、半導体層103をドライエッチングによってエッチングして形成する。
【0084】
従って、ソース電極層又はドレイン電極層105a1はソース領域又はドレイン領域104aの端部と、ソース電極層又はドレイン電極層105b1はソース領域又はドレイン領域104bの端部とそれぞれ一致しており、ソース電極層又はドレイン電極層105a2、105a3、ソース電極層又はドレイン電極層105b2、105b3は、ソース電極層又はドレイン電極層105a1、105b1より端部が後退している。
【0085】
このように、ソース電極層及びドレイン電極層に用いる導電膜と、ソース領域又はドレイン領域及び半導体層とがエッチング工程において選択比が低い場合は、エッチングストッパーとして機能する導電膜を積層して別のエッチング条件で複数回エッチング工程を行えばよい。
【0086】
図4(A)(B)に、ゲート電極層101が半導体層103、ソース領域又はドレイン領域104a、104b、ソース電極層又はドレイン電極層105a、105bより大きく、ゲート電極層101上に半導体層103、ソース領域又はドレイン領域104a、104b、ソース電極層又はドレイン電極層105a、105bが形成されている薄膜トランジスタ170d、170eの例を示す。また、薄膜トランジスタ170d、170eには保護膜として絶縁膜107a、107bが形成されている。
【0087】
図5(A1)(A2)の薄膜トランジスタ170aの作製方法を図7(A)乃至(G)を用いて説明する。
【0088】
基板100上にゲート電極層101、ゲート絶縁層102、半導体膜111を形成する(図7(A)参照。)。基板100は、バリウムホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、若しくはアルミノシリケートガラスなど、フュージョン法やフロート法で作製される無アルカリガラス基板、セラミック基板の他、本作製工程の処理温度に耐えうる耐熱性を有するプラスチック基板等を用いることができる。また、ステンレス合金などの金属基板の表面に絶縁膜を設けた基板を適用しても良い。基板50の大きさは、320mm×400mm、370mm×470mm、550mm×650mm、600mm×720mm、680mm×880mm、730mm×920mm、1000mm×1200mm、1100mm×1250mm、1150mm×1300mm、1500mm×1800mm、1900mm×2200mm、2160mm×2460mm、2400mm×2800mm、又は2850mm×3050mm等を用いることができる。
【0089】
また基板100上に下地膜として絶縁膜を形成してもよい。下地膜としては、スパッタ法等を用いて、酸化珪素膜、窒化珪素膜、酸化窒化珪素膜、または窒化酸化珪素膜の単層、又は積層で形成すればよい。
【0090】
ゲート電極層101は、チタン、モリブデン、クロム、タンタル、タングステン、アルミニウムなどの金属材料またはその合金材料を用いて形成する。ゲート電極層101は、スパッタ法や真空蒸着法で基板100上に導電膜を形成し、当該導電膜上にフォトリソグラフィ技術またはインクジェット法によりマスクを形成し、当該マスクを用いて導電膜をエッチングすることで、形成することができる。また、銀、金、銅などの導電性ナノペーストを用いてインクジェット法により吐出し焼成して、ゲート電極層101を形成することができる。なお、ゲート電極層101の密着性向上と基板や下地膜への拡散を防ぐバリアメタルとして、上記金属材料の窒化物膜を、基板100及びゲート電極層101の間に設けてもよい。また、ゲート電極層101は単層構造としても積層構造としてもよく、例えば基板100側からモリブデン膜とアルミニウム膜との積層、モリブデン膜とアルミニウムとネオジムとの合金膜との積層、チタン膜とアルミニウム膜との積層、チタン膜、アルミニウム膜及びチタン膜との積層などを用いることができる。
【0091】
なお、ゲート電極層101上には半導体膜や配線を形成するので、段切れ防止のため端部がテーパー状になるように加工することが望ましい。
【0092】
ゲート絶縁層102、及び半導体膜111は大気に曝さずに連続的に形成することができる。連続して成膜すると、大気成分や大気中に浮遊する汚染不純物元素に汚染されることなく各積層界面を形成することができる。
【0093】
アクティブマトリクス型の表示装置においては、回路を構成する薄膜トランジスタの電気特性が重要であり、この電気特性が表示装置の性能を左右する。特に、薄膜トランジスタの電気特性のうち、しきい値電圧(Vth)が重要である。電界効果移動度が高くともしきい値電圧値が高い、或いはしきい値電圧値がマイナスであると、回路として制御することが困難である。しきい値電圧値が高く、しきい値電圧の絶対値が大きい薄膜トランジスタの場合には、駆動電圧が低い状態では薄膜トランジスタとしてのスイッチング機能を果たすことができず、負荷となる恐れがある。また、しきい値電圧値がマイナスであると、ゲート電圧が0Vでもソース電極とドレイン電極の間に電流が流れる、所謂ノーマリーオンとなりやすい。
【0094】
nチャネル型の薄膜トランジスタの場合、ゲート電圧に正の電圧を印加してはじめてチャネルが形成されて、ドレイン電流が流れ出すトランジスタが望ましい。駆動電圧を高くしないとチャネルが形成されないトランジスタや、負の電圧状態でもチャネルが形成されてドレイン電流が流れるトランジスタは、回路に用いる薄膜トランジスタとしては不向きである。
【0095】
よって、In、Ga、及びZnを含む酸化物半導体膜を用いる薄膜トランジスタのゲート電圧が0Vにできるだけ近い正のしきい値電圧でチャネルが形成されることが望ましい。
【0096】
薄膜トランジスタのしきい値電圧は、酸化物半導体層の界面、即ち、酸化物半導体層とゲート絶縁層の界面に大きく影響すると考えられる。
【0097】
そこで、これらの界面を清浄な状態で形成することによって、薄膜トランジスタの電気特性を向上させるとともに、製造工程の複雑化を防ぐことができ、量産性と高性能の両方を備えた薄膜トランジスタを実現する。
【0098】
特に酸化物半導体層とゲート絶縁層との界面に大気中の水分が存在すると、薄膜トランジスタの電気的特性の劣化、しきい値電圧のばらつき、ノーマリーオンになりやすいといった問題を招く。酸化物半導体層とゲート絶縁層とを連続成膜することで、このような水素化合物を排除することができる。
【0099】
また、ゲート絶縁層102表面に酸素ラジカル処理を行い、ゲート絶縁層102表面を酸素過剰領域に改質する。
【0100】
ゲート絶縁層102表面の酸素ラジカル処理としては、逆スパッタなどのプラズマ処理を行えばよい。逆スパッタとは、ターゲット側に電圧を印加せずに、酸素、又は酸素及びアルゴン雰囲気下で基板側に電圧を印加して基板にプラズマを形成して表面を改質する方法である。また、ゲート絶縁層に窒化処理を行ってもよく、窒素雰囲気下で逆スパッタなどのプラズマ処理を行えばよい。
【0101】
よって、酸素ラジカルによりゲート絶縁層102表面を改質し、大気に曝すことなくゲート絶縁層102と、半導体膜111をスパッタ法により、減圧下で連続成膜することで良好な界面を有し、リーク電流が低く、且つ、電流駆動能力の高い薄膜トランジスタを実現することができる。
【0102】
また、ゲート絶縁層102及びIn、Ga、及びZnを含む酸化物半導体膜である半導体膜111は酸素雰囲気下(又は酸素90%以上、希ガス(アルゴン、又はヘリウムなど)10%以下)で成膜することが好ましい。
【0103】
このようにスパッタ法を用いて連続的に成膜すると、生産性が高く、薄膜界面の信頼性が安定する。また、ゲート絶縁層と半導体層を酸素雰囲気下で成膜し、酸素を多く含ませるようにすると、劣化による信頼性の低下や、薄膜トランジスタがノーマリーオンとなることを軽減することができる。
【0104】
ゲート絶縁層102は、スパッタ法を用いて、酸化珪素膜、窒化珪素膜、酸化窒化珪素膜、または窒化酸化珪素膜で形成することができる。図6(A1)(A2)に示す薄膜トランジスタ170cはゲート絶縁層102を積層する例である。
【0105】
ゲート絶縁層102として、窒化珪素膜または窒化酸化珪素膜と、酸化珪素膜または酸化窒化珪素膜との順に積層して形成することができる。なお、ゲート絶縁層を2層とせず、基板側から窒化珪素膜または窒化酸化珪素膜と、酸化珪素膜または酸化窒化珪素膜と、窒化珪素膜または窒化酸化珪素膜との順に3層積層して形成することができる。また、ゲート絶縁層を、酸化珪素膜、窒化珪素膜、酸化窒化珪素膜、または窒化酸化珪素膜の単層で形成することができる。
【0106】
また、ゲート絶縁層102として、スパッタ法によりゲート電極層101上に窒化珪素膜を形成し、窒化珪素膜上にスパッタ法により酸化珪素膜を積層してもよい。
【0107】
ここでは、酸化窒化珪素膜とは、その組成として、窒素よりも酸素の含有量が多いものをいう。また、窒化酸化珪素膜とは、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が多いものをいう。
【0108】
また、ゲート絶縁層102として、アルミニウム、イットリウム、又はハフニウムの酸化物、窒化物、酸化窒化物、又は窒化酸化物の一種又はそれらの化合物を少なくとも2種以上含む化合物を用いることもできる。
【0109】
また、ゲート絶縁層102に、塩素、フッ素などのハロゲン元素を含ませてもよい。ゲート絶縁層102中のハロゲン元素の濃度は、濃度ピークにおいて1×1015atoms/cm以上1×1020atoms/cm以下とすればよい。
【0110】
本実施の形態では、ゲート絶縁層102中の水素をより少なくするため、ゲート絶縁層102をSi単結晶のターゲットを用いてアルゴンガスと酸素ガスを用い、スパッタ成膜する。このゲート絶縁層102中の水素が拡散し、半導体膜111中の過剰な酸素と反応してHO成分になることはチャネルのI型化を防ぐ上では極めて重要である。連続成膜をして、ゲート絶縁層102と半導体膜111の界面に水分を付着させないことも重要である。従って、チャンバー内をクライオポンプなどで真空排気し、到達最低圧力を1×10−7〜1×10−10Torr(約1×10−5Pa以上1×10−8Pa)の超高真空領域、所謂、UHV領域中でスパッタを行うことが好ましい。また、ゲート絶縁層102と半導体膜111の界面を大気に触れさせないように連続的に積層する際、ゲート絶縁層102の表面に酸素ラジカル処理を行い、表面を酸素過剰領域とすることは、その後の工程での信頼性向上のための熱処理において、酸素の半導体膜111界面の改質のための供給源を作る上で有効である。
【0111】
また、ゲート絶縁層102に酸素ラジカル処理を行って酸素過剰領域を設けることによって、ゲート絶縁層102の内部の酸素濃度と比較して半導体膜111の表面の酸素濃度が高濃度となる。また、酸素ラジカル処理を行わない場合と比べて、酸素ラジカル処理を行った場合は、ゲート絶縁層102と半導体膜111の界面における酸素濃度が高くなる。
【0112】
ゲート絶縁層102に酸素ラジカル処理を行って半導体膜111を積層し、熱処理を行えば、半導体膜111のゲート絶縁層102側の酸素濃度も高濃度となる。
【0113】
半導体膜111としては、In、Ga、及びZnを含む酸化物半導体膜を形成する。例えば、半導体膜111として、スパッタ法を用いて、In、Ga、及びZnを含む酸化物半導体膜を膜厚50nmで形成すればよい。具体的な条件例としては、直径8インチのIn、Ga、及びZnを含む酸化物半導体ターゲットを用いて、基板とターゲットの間との距離を170mm、圧力0.4Pa、直流(DC)電源0.5kW、アルゴン又は酸素雰囲気下で成膜することができる。また、パルス直流(DC)電源を用いると、ごみが軽減でき、膜厚分布も均一となるために好ましい。
【0114】
In、Ga、及びZnを含む酸化物半導体ターゲットを用いて、希ガス雰囲気下、または酸素雰囲気下で成膜することができる。ここでは酸素を限りなく多くIGZO膜中に含ませるために、ターゲットとしてIn、Ga、及びZnを含む酸化物半導体を用い、酸素のみの雰囲気下、または酸素が90%以上、且つ、Arが10%以下の雰囲気下でパルスDCスパッタ法のスパッタリングを行い、酸素過剰のIGZO膜を形成する。
【0115】
このように、大気に触れることなく、酸素過剰のゲート絶縁層102と酸素過剰の半導体膜111とを連続成膜することにより、酸素過剰の膜同士のため界面状態を安定させ、TFTの信頼性を向上させることができる。IGZO膜の成膜前に基板が大気に触れた場合、水分などが付着し、界面状態に悪影響を与え、しきい値のバラツキや、電気特性の劣化、ノーマリーオンのTFTになってしまう症状などを引き起こす恐れがある。水分は水素化合物であり、大気に触れることなく、連続成膜することによって、水素化合物が界面に存在することを排除することができる。従って、連続成膜することにより、しきい値のバラツキの低減や、電気特性の劣化の防止や、TFTがノーマリーオン側にシフトすることを低減、望ましくはシフトをなくすことができる。
【0116】
次に半導体膜111をマスク113を用いてエッチングにより加工し、半導体層112を形成する(図7(B)参照。)。半導体層112は、フォトリソグラフィ技術または液滴吐出法によりマスク113を形成し、当該マスク113を用いて半導体膜111をエッチングすることで、形成することができる。
【0117】
半導体層112の端部をテーパーを有する形状にエッチングすることで、段差形状による配線の段切れを防ぐことができる。
【0118】
次に、ゲート絶縁層102、半導体層112上にIn、Ga、及びZnを含む酸素欠乏酸化物半導体膜である半導体膜114を形成する(図7(C)参照。)。半導体膜114上にマスク116を形成する。マスク116は、フォトリソグラフィ技術またはインクジェット法により形成する。半導体膜114をマスク116を用いてエッチングにより加工し、半導体膜115を形成する(図7(D)参照。)。半導体膜115は膜厚2〜100nm(好ましくは20〜50nm)とすればよい。半導体膜114は希ガス(好ましくはアルゴン)雰囲気下で成膜する。
【0119】
また、半導体膜111や半導体膜115などのIGZO半導体膜のエッチングには、クエン酸やシュウ酸などの有機酸をエッチャントに用いることができる。例えば、50nmの半導体膜111はITO07N(関東化学社製)を使い150秒でエッチング加工できる。
【0120】
半導体膜115上に導電膜117を形成する(図7(E)参照。)。
【0121】
導電膜117は、アルミニウム、若しくは銅、シリコン、チタン、ネオジム、スカンジウム、モリブデンなどの耐熱性向上元素若しくはヒロック防止元素が添加されたアルミニウム合金の単層または積層で形成することが好ましい。また、n型の導電型を有する半導体膜と接する側の膜を、チタン、タンタル、モリブデン、タングステン、またはこれらの元素の窒化物で形成し、その上にアルミニウムまたはアルミニウム合金を形成した積層構造としても良い。更には、アルミニウムまたはアルミニウム合金の上面及び下面を、チタン、タンタル、モリブデン、タングステン、またはこれらの元素の窒化物で挟んだ積層構造としてもよい。ここでは、導電膜117として、チタン膜、アルミニウム膜、及びチタン膜の積層導電膜を用いる。
【0122】
チタン膜、アルミニウム膜、チタン膜の積層を用いると低抵抗であり、かつアルミニウム膜にヒロックが発生しにくい。
【0123】
導電膜117は、スパッタ法や真空蒸着法で形成する。また、導電膜117は、銀、金、銅などの導電性ナノペーストを用いてスクリーン印刷法、インクジェット法等を用いて吐出し焼成して形成しても良い。
【0124】
次に、導電膜117上にマスク118を形成する。マスク118を用いて導電膜117をエッチングし分離して、ソース電極層又はドレイン電極層105a、105bを形成する(図7(F)参照。)。本実施の形態の図7のように導電膜117をウエットエッチングすると、導電膜117は等方的にエッチングされるため、マスク118の端部と、ソース電極層又はドレイン電極層105a、105bの端部はより一致せずより後退している。次に、マスク118を用いてn型の導電型を有する半導体膜115をエッチングして、ソース領域又はドレイン領域104a、104bを形成する(図7(G)参照。)。なお、エッチング条件にもよるが半導体膜115のエッチング工程において、半導体層112の露出領域も一部エッチングされ、半導体層103となる。よってソース領域又はドレイン領域104a、104bの間の半導体層103のチャネル領域は図7(G)に示すように膜厚の薄い領域となる。IGZO半導体層である半導体層103において、薄い膜厚の領域が、2nm以上200nm以下、好ましくは20nm以上150nm以下とする。
【0125】
さらに、半導体層103にゲート絶縁層102と同様に、酸素ラジカル処理を行ってもよい。露出している半導体層103のチャネル形成領域に酸素ラジカル処理を行うことによって、半導体層表面を酸素過剰領域とすることができる。
【0126】
図4(B)に半導体層103のチャネル形成領域に酸素ラジカル処理を行った薄膜トランジスタ170eを示す。薄膜トランジスタ170eにおいて、チャネル形成領域である半導体層103の露出領域は酸素ラジカル処理によって酸素過剰領域に改質されている。
【0127】
半導体層表面を酸素過剰領域とすることによって、水素の半導体層への混入を防ぐ、またバックチャネルが酸素欠乏領域となりソースドレイン間の導通が起きることを防ぎオフ電流を下げることができる。このようにバックチャネル部の半導体層も酸素過剰領域とすることができるため、ゲート絶縁層への酸素ラジカル処理と同様に、バックチャネル部の半導体層の酸素ラジカル処理を行うことは有効である。
【0128】
ソース電極層又はドレイン電極層105a、105bの端部と、ソース領域又はドレイン領域104a、104bの端部は一致せずずれており、ソース電極層又はドレイン電極層105a、105bの端部の外側に、ソース領域又はドレイン領域104a、104bの端部が形成される。
【0129】
この後、マスク118を除去する。以上の工程により、薄膜トランジスタ170aを形成することができる。
【0130】
次に図5(B1)(B2)に示す薄膜トランジスタ170bの作製工程を図8に示す。
【0131】
図8(A)は図7(B)の工程においてマスク113を除去した状態である。半導体層112上に半導体膜114と導電膜121とを順に積層する(図8(B)参照。)。この場合半導体膜114と導電膜121とを大気に曝さないでスパッタ法で連続的に成膜することができる。
【0132】
半導体膜114と導電膜121上にマスク122を形成し、マスク122を用いて導電膜121をウエットエッチング加工してソース電極層又はドレイン電極層105a、105bを形成する(図8(C)参照。)。
【0133】
次に、半導体膜114をドライエッチング加工してソース領域又はドレイン領域104a、104bを形成する(図8(D)参照。)。同工程で半導体層112の一部もエッチングされ、半導体層103となる。図8のように、ソース領域又はドレイン領域104a、104bとソース電極層又はドレイン電極層105a、105bとを形成するエッチングに同じマスクを用いると、マスク数を減らすことができるため、工程簡略化、低コスト化が計れる。
【0134】
薄膜トランジスタ170a、170b、170c上にも、薄膜トランジスタ170d、170eと同様に保護膜として絶縁膜を形成してもよい。保護膜としてはゲート絶縁層と同様に形成することができる。なお、保護膜は、大気中に浮遊する有機物や金属物、水蒸気などの汚染不純物の侵入を防ぐためのものであり、緻密な膜が好ましい。例えば、薄膜トランジスタ170a、170b、170c、170d、170e上に保護膜として酸化膜(酸化珪素膜、酸化窒化珪素膜、酸化アルミニウム膜、酸化窒化アルミニウム膜)と窒化膜(窒化珪素膜、窒化酸化珪素膜、窒化アルミニウム膜、窒化酸化アルミニウム膜)との積層を形成すればよい。酸化珪素膜はシリコンターゲットを用いて窒素及びアルゴン雰囲気下でDCスパッタ法によって形成すればよく、窒化アルミニウム膜、酸化窒化アルミニウム膜は窒化アルミニウムのターゲットを用いてRFスパッタ法によって形成すればよく、酸化アルミニウム膜は酸化アルミニウムのターゲットを用いてRFスパッタ法によって形成すればよい。また、保護膜を形成する前に真空ベークを行ってもよい。
【0135】
また、半導体層103、及びソース領域又はドレイン領域104a、104bなどの酸化物半導体膜は成膜後に加熱処理を行うことが好ましい。加熱処理は成膜後であればどの工程で行ってもよいが、成膜直後、導電膜117の形成後、保護膜の形成後などで行うことができる。また、他の加熱処理と兼ねて行ってもよい。また加熱温度は200℃以上600℃以下、好ましくは300℃以上500℃以下とすればよい。図6のように半導体層103及びソース領域又はドレイン領域104a、104bを連続成膜する場合、積層した後に加熱処理を行ってもよい。加熱処理は半導体層103とソース領域又はドレイン領域104a、104bと別工程で複数回行ってもよい。
【0136】
ソース電極層又はドレイン電極層105a、105bの端部と、ソース領域又はドレイン領域104a、104bの端部は一致せずずれた形状となることで、ソース電極層又はドレイン電極層105a、105bの端部の距離が離れるため、ソース電極層又はドレイン電極層105a、105b間のリーク電流やショートを防止することができる。このため、信頼性が高く、且つ耐圧の高い薄膜トランジスタを作製することができる。
【0137】
また、図6(A1)(A2)の薄膜トランジスタ170cのようにソース領域又はドレイン領域104a、104bの端部とソース電極及びドレイン電極の端部を一致する形状としてもよい。ソース電極層又はドレイン電極層105a、105bを形成するためのエッチング及びソース領域又はドレイン領域104a、104bを形成するためのエッチングをドライエッチングで行うと図6(A1)(A2)の薄膜トランジスタ170cのような形状にすることができる。また、n型の導電型を有する半導体膜115をソース電極及びドレイン電極をマスクとしてエッチングし、ソース領域又はドレイン領域104a、104bを形成しても図6(A1)(A2)の薄膜トランジスタ170cのような形状にする。
【0138】
ソース領域又はドレイン領域(In、Ga、及びZnを含む酸素欠乏酸化物半導体層)を設けない、ゲート電極層、ゲート絶縁層、半導体層(In、Ga、及びZnを含む酸素過剰酸化物半導体層)、ソース電極層及びドレイン電極層という積層構造であると、ゲート電極層とソース電極層又はドレイン電極層との距離が近くなり、間に生じる寄生容量が増加してしまう。さらに、この寄生容量の増加は、半導体層の薄膜化によってより顕著になる。本実施の形態では、ソース領域又はドレイン領域を設ける、ゲート電極層、ゲート絶縁層、半導体層、ソース領域又はドレイン領域、ソース電極層及びドレイン電極層という積層構造を有する薄膜トランジスタとしているため、半導体層の膜厚が薄膜であっても寄生容量を抑制することができる。
【0139】
本実施の形態によって、光電流が少なく、寄生容量が小さく、オンオフ比の高い薄膜トランジスタを得ることができ、良好な動特性を有する薄膜トランジスタを作製できる。よって、電気特性が高く信頼性のよい薄膜トランジスタを有する半導体装置を提供することができる。
【0140】
(実施の形態2)
本実施の形態は、本発明の一形態のマルチゲート構造の薄膜トランジスタの例である。従って、他は実施の形態1と同様に行うことができ、実施の形態1と同一部分又は同様な機能を有する部分、及び工程の繰り返しの説明は省略する。
【0141】
本実施の形態では、半導体装置に用いられる薄膜トランジスタについて、図9(A)(B)乃至図11(A)(B)を用いて説明する。
【0142】
図9(A)は、薄膜トランジスタを示す平面図であり、図9(B)は、図9(A)における線E1−E2の薄膜トランジスタ170aを示す断面図に相当する。
【0143】
図9(A)(B)に示すように、基板150上に、ゲート電極層151a、151b、ゲート絶縁層152、半導体層153a、153b、ソース領域又はドレイン領域154a、154b、154c、ソース電極層又はドレイン電極層155a、155bを含むマルチゲート構造の薄膜トランジスタ171aが設けられている。
【0144】
半導体層153a、153bは、In、Ga、及びZnを含む酸素過剰酸化物半導体層であり、ソース領域又はドレイン領域154a、154b、154cはIn、Ga、及びZnを含む酸素欠乏酸化物半導体層である。ソース領域又はドレイン領域154a、154b、154cは、半導体層153a、153bよりキャリア濃度が高い。
【0145】
酸素過剰領域を有するゲート絶縁層152と酸素過剰酸化物半導体層である半導体層153a、153bは相性がよく、良好な界面特性を得ることができる。
【0146】
ゲート絶縁層152の形成後、ゲート絶縁層152表面に酸素ラジカル処理を行い酸素過剰領域とする。また、ゲート絶縁層152、及び半導体層153a、153bは連続成膜する。
【0147】
ソース領域及びドレイン領域154a、154b、154cの酸素欠乏酸化物半導体層は、1nm以上10nm以下のサイズの結晶粒を有し、半導体層153a、153bよりキャリア濃度が高い。
【0148】
半導体層153aと半導体層153bとは、一方をソース領域又はドレイン領域154cを介して電気的に接続しており、他方でそれぞれ半導体層153aはソース領域又はドレイン領域154aを介してソース電極層又はドレイン電極層155aと、半導体層153bはソース領域又はドレイン領域154bを介してソース電極層又はドレイン電極層155bと電気的に接続している。
【0149】
図10に他の構成のマルチゲート構造の薄膜トランジスタ171bを示す。図10(A)は、薄膜トランジスタ171bを示す平面図であり、図10(B)は、図10(A)における線F1−F2の薄膜トランジスタ171bを示す断面図に相当する。図10の薄膜トランジスタ171bにおいてはソース領域又はドレイン領域154c上にソース電極層又はドレイン電極層155a、155bと同工程で形成される配線層156が設けられ、半導体層153aと半導体層153bとはソース領域又はドレイン領域154cと配線層156によって電気的に接続されている。
【0150】
図11に他の構成のマルチゲート構造の薄膜トランジスタ171cを示す。図11(A)は、薄膜トランジスタ171cを示す平面図であり、図11(B)は、図11(A)における線G1−G2の薄膜トランジスタ171cを示す断面図に相当する。図11の薄膜トランジスタ171cにおいては、半導体層153aと半導体層153bとが連続した一層の半導体層153として形成されている例である。半導体層153はゲート絶縁層152を介して、ゲート電極層151a、151bを跨るように設けられる。
【0151】
このように、本発明の一形態のマルチゲート構造の薄膜トランジスタにおいては、各ゲート電極層上に形成される半導体層は連続して設けられてもよいし、ソース領域又はドレイン領域及び配線層などを介して複数の半導体層が電気的に接続して設けられてもよい。
【0152】
本発明の一形態のマルチゲート構造の薄膜トランジスタは、オフ電流が少なく、そのような薄膜トランジスタを含む半導体装置は高い電気特性及び高信頼性を付与することができる。
【0153】
本実施の形態では、マルチゲート構造としてゲート電極層が2つのダブルゲート構造の例を示すが、本発明の一形態はより多くのゲート電極層を有するトリプルゲート構造などにも適用することができる。
【0154】
本実施の形態では、ゲート電極層、ゲート絶縁層、半導体層(酸素過剰酸化物半導体層)、ソース領域及びドレイン領域(酸素欠乏酸化物半導体層)、ソース電極層及びドレイン電極層という積層構造を有する薄膜トランジスタとし、酸素欠乏酸化物半導体層に結晶粒を有するキャリア濃度が高いソース領域及びドレイン領域を用いることによって、半導体層の膜厚を薄膜にしたままで、かつ寄生容量を抑制できる。なお、薄膜であっても、ゲート絶縁層に対する割合が十分であるため寄生容量は十分に抑制される。
【0155】
本実施の形態によって、光電流が少なく、寄生容量が小さく、オンオフ比の高い薄膜トランジスタを得ることができ、良好な動特性を有する薄膜トランジスタを作製できる。よって、電気特性が高く信頼性のよい薄膜トランジスタを有する半導体装置を提供することができる。
【0156】
本実施の形態は他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0157】
(実施の形態3)
本実施の形態は、本発明の一形態の薄膜トランジスタにおいてソース領域及びドレイン領域を積層する例である。従って、他は実施の形態1又は実施の形態2と同様に行うことができ、実施の形態1又は実施の形態2と同一部分又は同様な機能を有する部分、及び工程の繰り返しの説明は省略する。
【0158】
本実施の形態では、半導体装置に用いられる薄膜トランジスタ173について、図12を用いて説明する。
【0159】
図12に示すように、基板100上に、ゲート電極層101、半導体層103、第2のソース領域又はドレイン領域であるソース領域又はドレイン領域106a、106b、第1のソース領域又はドレイン領域であるソース領域又はドレイン領域104a、104b、ソース電極層又はドレイン電極層105a、105bを含む薄膜トランジスタ173が設けられている。
【0160】
本実施の形態の薄膜トランジスタ173は、ソース領域又はドレイン領域104a、104bとソース電極層又はドレイン電極層105a、105bとの間にそれぞれ第2のソース領域又はドレイン領域としてソース領域又はドレイン領域106a、106bが設けられている。
【0161】
半導体層103は、In、Ga、及びZnを含む酸素過剰酸化物半導体層であり、ソース領域又はドレイン領域104a、104b、106a、106bはIn、Ga、及びZnを含む酸素欠乏酸化物半導体層である。
【0162】
ソース領域又はドレイン領域104a、104bとソース電極層又はドレイン電極層105a、105bとの間に設けられるソース領域又はドレイン領域106a、106bは、不純物元素を含む。
【0163】
ソース領域又はドレイン領域106a、106bに含ませる不純物元素として、例えば、インジウム、ガリウム、亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、チタン、鉄、錫、カルシウム、スカンジウム、イットリウム、ジルコニウム、ハフニウム、ホウ素、タリウム、ゲルマニウム、鉛などを用いることができる。これらの不純物元素(例えば、マグネシウム、アルミニウム、チタンなど)をソース領域又はドレイン領域に含ませると、酸素のブロッキング効果などがあり、成膜後の加熱処理などによって半導体層の酸素濃度を最適な範囲内に保持できる。本実施の形態では、ソース領域又はドレイン領域106a、106bにチタンを含むIn、Ga、及びZnを含む酸素欠乏酸化物半導体層を用いる。
【0164】
ソース領域又はドレイン領域106a、106bとしてチタンを含む酸素欠乏酸化物半導体層を設けると、ソース電極層及びドレイン電極層としてソース領域又はドレイン領域106a、106b上に直接アルミニウム膜を形成し、アルミニウム膜上にチタン膜を形成することができる。
【0165】
本発明の一形態の多層のソース領域又はドレイン領域を有する薄膜トランジスタは、より高速動作が可能であり、そのような薄膜トランジスタを含む半導体装置は高い電気特性及び高信頼性を付与することができる。
【0166】
本実施の形態は他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0167】
(実施の形態4)
本実施の形態は、実施の形態1において、薄膜トランジスタの形状及び作製方法が一部異なる例である。従って、他は実施の形態1と同様に行うことができ、実施の形態1と同一部分又は同様な機能を有する部分、及び工程の繰り返しの説明は省略する。
【0168】
本実施の形態では、表示装置に用いられる薄膜トランジスタ174及びその作製工程について、図13及び図14を用いて説明する。図13(A1)は薄膜トランジスタ174の平面図、図13(A2)及び図14は図13(A1)における線D1−D2の薄膜トランジスタ及びその作製工程を示す断面図に相当する。
【0169】
図13(A)(B)に示すように、基板100上に、ゲート電極層101、半導体層103、ソース領域又はドレイン領域104a、104b、ソース電極層又はドレイン電極層105a、105bを含む薄膜トランジスタ174が設けられている。
【0170】
半導体層103は、In、Ga、及びZnを含む酸素過剰酸化物半導体層であり、ソース領域又はドレイン領域104a、104bはIn、Ga、及びZnを含む酸素欠乏酸化物半導体層である。ソース領域又はドレイン領域104a、104bは、半導体層103よりキャリア濃度が高い。
【0171】
ゲート絶縁層102の形成後、ゲート絶縁層102表面に酸素ラジカル処理を行い酸素過剰領域とする。また、ゲート絶縁層102、及び半導体層103は連続成膜する。
【0172】
酸素過剰領域を有するゲート絶縁層102と酸素過剰酸化物半導体層である半導体層103は相性がよく、良好な界面特性を得ることができる。
【0173】
ソース領域及びドレイン領域104a、104bの酸素欠乏酸化物半導体層は、1nm以上10nm以下のサイズの結晶粒を有し、半導体層103よりキャリア濃度が高い。
【0174】
半導体層103はソース領域又はドレイン領域104aを介してソース電極層又はドレイン電極層105aと、ソース領域又はドレイン領域104bを介してソース電極層又はドレイン電極層105bと電気的に接続している。
【0175】
図14を用いて薄膜トランジスタ174の作製工程を説明する。基板100上にゲート電極層101を形成する。次に、ゲート電極層101上に、ゲート絶縁層102を形成し、酸素ラジカル処理をゲート絶縁層102表面に行った後、In、Ga、及びZnを含む酸素過剰酸化物半導体膜である半導体膜131、In、Ga、及びZnを含む酸素欠乏酸化物半導体膜である半導体膜132、導電膜133を順に形成する(図14(A)参照。)。
【0176】
ゲート絶縁層102、In、Ga、及びZnを含む酸素過剰酸化物半導体膜である半導体膜である半導体膜131、In、Ga、及びZnを含む酸素欠乏酸化物半導体膜である半導体膜132、導電膜133を大気に触れさせることなく連続的に形成することができる。大気に触れさせることなく連続成膜することで、大気成分や大気中に浮遊する汚染不純物元素に汚染されることなく各積層界面を形成することができるので、薄膜トランジスタ特性のばらつきを低減することができる。
【0177】
本実施の形態では、マスク135を形成するために高階調マスクを用いた露光を行う例を示す。マスク135を形成するためレジストを形成する。レジストは、ポジ型レジストまたはネガ型レジストを用いることができる。ここでは、ポジ型レジストを用いて示す。
【0178】
次に、フォトマスクとして多階調マスクを用いて、レジストに光を照射して、レジストを露光する。
【0179】
多階調マスクとは、露光部分、中間露光部分、及び未露光部分に3つの露光レベルを行うことが可能なマスクであり、一度の露光及び現像工程により、複数(代表的には二種類)の厚さの領域を有するレジストマスクを形成することが可能である。このため、多階調マスクを用いることで、フォトマスクの枚数を削減することが可能である。
【0180】
多階調マスクの代表例としては、グレートーンマスク、ハーフトーンマスクがある。
【0181】
グレートーンマスクは、透光性を有する基板及びその上に形成される遮光部並びに回折格子で構成される。遮光部においては、光の透過率が0%である。一方、回折格子はスリット、ドット、メッシュ等の光透過部の間隔を、露光に用いる光の解像度限界以下の間隔とすることにより、光の透過率を制御することができる。なお、回折格子は、周期的なスリット、ドット、メッシュ、または非周期的なスリット、ドット、メッシュどちらも用いることができる。
【0182】
透光性を有する基板は、石英等の透光性を有する基板を用いることができる。遮光部及び回折格子は、クロムや酸化クロム等の光を吸収する遮光材料を用いて形成することができる。
【0183】
グレートーンマスクに露光光を照射した場合、遮光部においては、光の透過率は0%であり、遮光部及び回折格子が設けられていない領域では光の透過率は100%である。また、回折格子においては、10〜70%の範囲で調整可能である。回折格子における光の透過率の調整は、回折格子のスリット、ドット、またはメッシュの間隔及びピッチの調整により可能である。
【0184】
ハーフトーンマスクは、透光性を有する基板及びその上に形成される半透過部並びに遮光部で構成される。半透過部は、MoSiN、MoSi、MoSiO、MoSiON、CrSiなどを用いることができる。遮光部は、クロムや酸化クロム等の光を吸収する遮光材料を用いて形成することができる。
【0185】
ハーフトーンマスクに露光光を照射した場合、遮光部においては、光の透過率は0%であり、遮光部及び半透過部が設けられていない領域では光の透過率は100%である。また、半透過部においては、10〜70%の範囲で調整可能である。半透過部に於ける光の透過率の調整は、半透過部の材料により調整により可能である。
【0186】
多階調マスクを用いて露光した後、現像することで、図14(B)に示すように、膜厚の異なる領域を有するマスク135を形成することができる。
【0187】
次に、マスク135により、半導体膜131、n型の導電型を有する半導体膜132、導電膜133をエッチングし分離する。この結果、半導体膜136、n型の導電型を有する半導体膜137、及び導電膜138を形成することができる(図14(B)参照。)。
【0188】
次に、マスク135をアッシングする。この結果、マスクの面積が縮小し、厚さが薄くなる。このとき、膜厚の薄い領域のマスクのレジスト(ゲート電極層101の一部と重畳する領域)は除去され、分離されたマスク139を形成することができる(図14(C)参照。)。
【0189】
マスク139を用いて導電膜138をエッチングし、ソース電極層又はドレイン電極層105a、105bを形成する。本実施の形態のように導電膜138をウエットエッチングすると、導電膜138は等方的にエッチングされるため、マスク139の端部と、ソース電極層又はドレイン電極層105a、105bの端部は一致せずより後退し、ソース電極層又はドレイン電極層105a、105bの外側にn型の導電型を有する半導体膜137及び半導体膜136が突出した形状となる。次に、マスク139を用いてn型の導電型を有する半導体膜137及び半導体膜136をエッチングして、ソース領域又はドレイン領域104a、104b、半導体層103を形成する(図14(D)参照。)。なお、半導体層103は一部のみがエッチングされ、溝部を有する半導体層となる。
【0190】
ソース領域又はドレイン領域104a、104bの形成工程と、半導体層103の溝部とを同一工程で形成することができ、同様に、半導体層103の端部が、一部エッチングされ露出した形状となる。この後、マスク139を除去する。
【0191】
以上の工程で、図13(A)(B)に示す薄膜トランジスタ174を作製することができる。
【0192】
本実施の形態のように、多階調マスクにより形成した複数(代表的には二種類)の厚さの領域を有するレジストマスクを用いると、レジストマスクの数を減らすことができるため、工程簡略化、低コスト化が計れる。
【0193】
本実施の形態は他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0194】
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明の半導体装置の一例である表示装置において、同一基板上に少なくとも駆動回路の一部と、画素部に配置する薄膜トランジスタを作製する例について以下に説明する。
【0195】
画素部に配置する薄膜トランジスタは、実施の形態1乃至実施の形態4のいずれか一に従って形成する。また、実施の形態1乃至実施の形態4のいずれか一に示す薄膜トランジスタはnチャネル型TFTであるため、駆動回路のうち、nチャネル型TFTで構成することができる駆動回路の一部を画素部の薄膜トランジスタと同一基板上に形成する。
【0196】
本発明の半導体装置の一例であるアクティブマトリクス型液晶表示装置のブロック図の一例を図16(A)に示す。図16(A)に示す表示装置は、基板5300上に表示素子を備えた画素を複数有する画素部5301と、各画素を選択する走査線駆動回路5302と、選択された画素へのビデオ信号の入力を制御する信号線駆動回路5303とを有する。
【0197】
画素部5301は、信号線駆動回路5303から列方向に伸張して配置された複数の信号線S1〜Sm(図示せず。)により信号線駆動回路5303と接続され、走査線駆動回路5302から行方向に伸張して配置された複数の走査線G1〜Gn(図示せず。)により走査線駆動回路5302と接続され、信号線S1〜Sm並びに走査線G1〜Gnに対応してマトリクス状に配置された複数の画素(図示せず。)を有する。そして、各画素は、信号線Sj(信号線S1〜Smのうちいずれか一)、走査線Gi(走査線G1〜Gnのうちいずれか一)と接続される。
【0198】
また、実施の形態1乃至実施の形態4のいずれか一に示す薄膜トランジスタは、nチャネル型TFTであり、nチャネル型TFTで構成する信号線駆動回路について図17を用いて説明する。
【0199】
図17に示す信号線駆動回路は、ドライバIC5601、スイッチ群5602_1〜5602_M、第1の配線5611、第2の配線5612、第3の配線5613及び配線5621_1〜5621_Mを有する。スイッチ群5602_1〜5602_Mそれぞれは、第1の薄膜トランジスタ5603a、第2の薄膜トランジスタ5603b及び第3の薄膜トランジスタ5603cを有する。
【0200】
ドライバIC5601は第1の配線5611、第2の配線5612、第3の配線5613及び配線5621_1〜5621_Mに接続される。そして、スイッチ群5602_1〜5602_Mそれぞれは、第1の配線5611、第2の配線5612、第3の配線5613及びスイッチ群5602_1〜5602_Mそれぞれに対応した配線5621_1〜5621_Mに接続される。そして、配線5621_1〜5621_Mそれぞれは、第1の薄膜トランジスタ5603a、第2の薄膜トランジスタ5603b及び第3の薄膜トランジスタ5603cを介して、3つの信号線に接続される。例えば、J列目の配線5621_J(配線5621_1〜配線5621_Mのうちいずれか一)は、スイッチ群5602_Jが有する第1の薄膜トランジスタ5603a、第2の薄膜トランジスタ5603b及び第3の薄膜トランジスタ5603cを介して、信号線Sj−1、信号線Sj、信号線Sj+1に接続される。
【0201】
なお、第1の配線5611、第2の配線5612、第3の配線5613には、それぞれ信号が入力される。
【0202】
なお、ドライバIC5601は、単結晶基板上に形成されていることが望ましい。さらに、スイッチ群5602_1〜5602_Mは、画素部と同一基板上に形成されていることが望ましい。したがって、ドライバIC5601とスイッチ群5602_1〜5602_MとはFPCなどを介して接続するとよい。
【0203】
次に、図17に示した信号線駆動回路の動作について、図18のタイミングチャートを参照して説明する。なお、図18のタイミングチャートは、i行目の走査線Giが選択されている場合のタイミングチャートを示している。さらに、i行目の走査線Giの選択期間は、第1のサブ選択期間T1、第2のサブ選択期間T2及び第3のサブ選択期間T3に分割されている。さらに、図17の信号線駆動回路は、他の行の走査線が選択されている場合でも図18と同様の動作をする。
【0204】
なお、図18のタイミングチャートは、J列目の配線5621_Jが第1の薄膜トランジスタ5603a、第2の薄膜トランジスタ5603b及び第3の薄膜トランジスタ5603cを介して、信号線Sj−1、信号線Sj、信号線Sj+1に接続される場合について示している。
【0205】
なお、図18のタイミングチャートは、i行目の走査線Giが選択されるタイミング、第1の薄膜トランジスタ5603aのオン・オフのタイミング5703a、第2の薄膜トランジスタ5603bのオン・オフのタイミング5703b、第3の薄膜トランジスタ5603cのオン・オフのタイミング5703c及びJ列目の配線5621_Jに入力される信号5721_Jを示している。
【0206】
なお、配線5621_1〜配線5621_Mには第1のサブ選択期間T1、第2のサブ選択期間T2及び第3のサブ選択期間T3において、それぞれ別のビデオ信号が入力される。例えば、第1のサブ選択期間T1において配線5621_Jに入力されるビデオ信号は信号線Sj−1に入力され、第2のサブ選択期間T2において配線5621_Jに入力されるビデオ信号は信号線Sjに入力され、第3のサブ選択期間T3において配線5621_Jに入力されるビデオ信号は信号線Sj+1に入力される。さらに、第1のサブ選択期間T1、第2のサブ選択期間T2及び第3のサブ選択期間T3において、配線5621_Jに入力されるビデオ信号をそれぞれData_j−1、Data_j、Data_j+1とする。
【0207】
図18に示すように、第1のサブ選択期間T1において第1の薄膜トランジスタ5603aがオンし、第2の薄膜トランジスタ5603b及び第3の薄膜トランジスタ5603cがオフする。このとき、配線5621_Jに入力されるData_j−1が、第1の薄膜トランジスタ5603aを介して信号線Sj−1に入力される。第2のサブ選択期間T2では、第2の薄膜トランジスタ5603bがオンし、第1の薄膜トランジスタ5603a及び第3の薄膜トランジスタ5603cがオフする。このとき、配線5621_Jに入力されるData_jが、第2の薄膜トランジスタ5603bを介して信号線Sjに入力される。第3のサブ選択期間T3では、第3の薄膜トランジスタ5603cがオンし、第1の薄膜トランジスタ5603a及び第2の薄膜トランジスタ5603bがオフする。このとき、配線5621_Jに入力されるData_j+1が、第3の薄膜トランジスタ5603cを介して信号線Sj+1に入力される。
【0208】
以上のことから、図17の信号線駆動回路は、1ゲート選択期間を3つに分割することで、1ゲート選択期間中に1つの配線5621から3つの信号線にビデオ信号を入力することができる。したがって、図17の信号線駆動回路は、ドライバIC5601が形成される基板と、画素部が形成されている基板との接続数を信号線の数に比べて約1/3にすることができる。接続数が約1/3になることによって、図17の信号線駆動回路は、信頼性、歩留まりなどを向上できる。
【0209】
なお、図17のように、1ゲート選択期間を複数のサブ選択期間に分割し、複数のサブ選択期間それぞれにおいて、ある1つの配線から複数の信号線それぞれにビデオ信号を入力することができれば、薄膜トランジスタの配置や数、駆動方法などは限定されない。
【0210】
例えば、3つ以上のサブ選択期間それぞれにおいて1つの配線から3つ以上の信号線それぞれにビデオ信号を入力する場合は、薄膜トランジスタ及び薄膜トランジスタを制御するための配線を追加すればよい。ただし、1ゲート選択期間を4つ以上のサブ選択期間に分割すると、1つのサブ選択期間が短くなる。したがって、1ゲート選択期間は、2つ又は3つのサブ選択期間に分割されることが望ましい。
【0211】
別の例として、図19のタイミングチャートに示すように、1つの選択期間をプリチャージ期間Tp、第1のサブ選択期間T1、第2のサブ選択期間T2、第3の選択期間T3に分割してもよい。さらに、図19のタイミングチャートは、i行目の走査線Giが選択されるタイミング、第1の薄膜トランジスタ5603aのオン・オフのタイミング5803a、第2の薄膜トランジスタ5603bのオン・オフのタイミング5803b、第3の薄膜トランジスタ5603cのオン・オフのタイミング5803c及びJ列目の配線5621_Jに入力される信号5821_Jを示している。図19に示すように、プリチャージ期間Tpにおいて第1の薄膜トランジスタ5603a、第2の薄膜トランジスタ5603b及び第3の薄膜トランジスタ5603cがオンする。このとき、配線5621_Jに入力されるプリチャージ電圧Vpが第1の薄膜トランジスタ5603a、第2の薄膜トランジスタ5603b及び第3の薄膜トランジスタ5603cを介してそれぞれ信号線Sj−1、信号線Sj、信号線Sj+1に入力される。第1のサブ選択期間T1において第1の薄膜トランジスタ5603aがオンし、第2の薄膜トランジスタ5603b及び第3の薄膜トランジスタ5603cがオフする。このとき、配線5621_Jに入力されるData_j−1が、第1の薄膜トランジスタ5603aを介して信号線Sj−1に入力される。第2のサブ選択期間T2では、第2の薄膜トランジスタ5603bがオンし、第1の薄膜トランジスタ5603a及び第3の薄膜トランジスタ5603cがオフする。このとき、配線5621_Jに入力されるData_jが、第2の薄膜トランジスタ5603bを介して信号線Sjに入力される。第3のサブ選択期間T3では、第3の薄膜トランジスタ5603cがオンし、第1の薄膜トランジスタ5603a及び第2の薄膜トランジスタ5603bがオフする。このとき、配線5621_Jに入力されるData_j+1が、第3の薄膜トランジスタ5603cを介して信号線Sj+1に入力される。
【0212】
以上のことから、図19のタイミングチャートを適用した図17の信号線駆動回路は、サブ選択期間の前にプリチャージ選択期間を設けることによって、信号線をプリチャージできるため、画素へのビデオ信号の書き込みを高速に行うことができる。なお、図19において、図18と同様なものに関しては共通の符号を用いて示し、同一部分又は同様な機能を有する部分の詳細な説明は省略する。
【0213】
また、走査線駆動回路の構成について説明する。走査線駆動回路は、シフトレジスタ、バッファを有している。また場合によってはレベルシフタを有していても良い。走査線駆動回路において、シフトレジスタにクロック信号(CLK)及びスタートパルス信号(SP)が入力されることによって、選択信号が生成される。生成された選択信号はバッファにおいて緩衝増幅され、対応する走査線に供給される。走査線には、1ライン分の画素のトランジスタのゲート電極が接続されている。そして、1ライン分の画素のトランジスタを一斉にONにしなくてはならないので、バッファは大きな電流を流すことが可能なものが用いられる。
【0214】
走査線駆動回路の一部に用いるシフトレジスタの一形態について図20及び図21を用いて説明する。
【0215】
図20にシフトレジスタの回路構成を示す。図20に示すシフトレジスタは、複数のフリップフロップ5701_i(フリップフロップ5701_1〜5701_nのうちいずれか一)で構成される。また、第1のクロック信号、第2のクロック信号、スタートパルス信号、リセット信号が入力されて動作する。
【0216】
図20のシフトレジスタの接続関係について説明する。図20のシフトレジスタは、i段目のフリップフロップ5701_i(フリップフロップ5701_1〜5701_nのうちいずれか一)は、図21に示した第1の配線5501が第7の配線5717_i−1に接続され、図21に示した第2の配線5502が第7の配線5717_i+1に接続され、図21に示した第3の配線5503が第7の配線5717_iに接続され、図21に示した第6の配線5506が第5の配線5715に接続される。
【0217】
また、図21に示した第4の配線5504が奇数段目のフリップフロップでは第2の配線5712に接続され、偶数段目のフリップフロップでは第3の配線5713に接続され、図21に示した第5の配線5505が第4の配線5714に接続される。
【0218】
ただし、1段目のフリップフロップ5701_1の図21に示す第1の配線5501は第1の配線5711に接続され、n段目のフリップフロップ5701_nの図21に示す第2の配線5502は第6の配線5716に接続される。
【0219】
なお、第1の配線5711、第2の配線5712、第3の配線5713、第6の配線5716を、それぞれ第1の信号線、第2の信号線、第3の信号線、第4の信号線と呼んでもよい。さらに、第4の配線5714、第5の配線5715を、それぞれ第1の電源線、第2の電源線と呼んでもよい。
【0220】
次に、図20に示すフリップフロップの詳細について、図21に示す。図21に示すフリップフロップは、第1の薄膜トランジスタ5571、第2の薄膜トランジスタ5572、第3の薄膜トランジスタ5573、第4の薄膜トランジスタ5574、第5の薄膜トランジスタ5575、第6の薄膜トランジスタ5576、第7の薄膜トランジスタ5577及び第8の薄膜トランジスタ5578を有する。なお、第1の薄膜トランジスタ5571、第2の薄膜トランジスタ5572、第3の薄膜トランジスタ5573、第4の薄膜トランジスタ5574、第5の薄膜トランジスタ5575、第6の薄膜トランジスタ5576、第7の薄膜トランジスタ5577及び第8の薄膜トランジスタ5578は、nチャネル型トランジスタであり、ゲート・ソース間電圧(Vgs)がしきい値電圧(Vth)を上回ったとき導通状態になるものとする。
【0221】
次に、図20に示すフリップフロップの接続構成について、以下に示す。
【0222】
第1の薄膜トランジスタ5571の第1の電極(ソース電極またはドレイン電極の一方)が第5の配線5504に接続され、第1の薄膜トランジスタ5571の第2の電極(ソース電極またはドレイン電極の他方)が第3の配線5503に接続される。
【0223】
第2の薄膜トランジスタ5572の第1の電極が第4の配線第6の配線5506に接続され、第2の薄膜トランジスタ5572第2の電極が第3の配線5503に接続される。
【0224】
第3の薄膜トランジスタ5573の第1の電極が第5の配線5505に接続され、第3の薄膜トランジスタ5573の第2の電極が第2の薄膜トランジスタ5572のゲート電極に接続され、第3の薄膜トランジスタ5573のゲート電極が第5の配線5505に接続される。
【0225】
第4の薄膜トランジスタ5574の第1の電極が第6の配線5506に接続され、第4の薄膜トランジスタ5574の第2の電極が第2の薄膜トランジスタ5572のゲート電極に接続され、第4の薄膜トランジスタ5574のゲート電極が第1の薄膜トランジスタ5571のゲート電極に接続される。
【0226】
第5の薄膜トランジスタ5575の第1の電極が第5の配線5505に接続され、第5の薄膜トランジスタ5575の第2の電極が第1の薄膜トランジスタ5571のゲート電極に接続され、第5の薄膜トランジスタ5575のゲート電極が第1の配線5501に接続される。
【0227】
第6の薄膜トランジスタ5576の第1の電極が第6の配線5506に接続され、第6の薄膜トランジスタ5576の第2の電極が第1の薄膜トランジスタ5571のゲート電極に接続され、第6の薄膜トランジスタ5576のゲート電極が第2の薄膜トランジスタ5572のゲート電極に接続される。
【0228】
第7の薄膜トランジスタ5577の第1の電極が第6の配線5506に接続され、第7の薄膜トランジスタ5577の第2の電極が第1の薄膜トランジスタ5571のゲート電極に接続され、第7の薄膜トランジスタ5577のゲート電極が第2の配線5502に接続される。第8の薄膜トランジスタ5578の第1の電極が第6の配線5506に接続され、第8の薄膜トランジスタ5578の第2の電極が第2の薄膜トランジスタ5572のゲート電極に接続され、第8の薄膜トランジスタ5578のゲート電極が第1の配線5501に接続される。
【0229】
なお、第1の薄膜トランジスタ5571のゲート電極、第4の薄膜トランジスタ5574のゲート電極、第5の薄膜トランジスタ5575の第2の電極、第6の薄膜トランジスタ5576の第2の電極及び第7の薄膜トランジスタ5577の第2の電極の接続箇所をノード5543とする。さらに、第2の薄膜トランジスタ5572のゲート電極、第3の薄膜トランジスタ5573の第2の電極、第4の薄膜トランジスタ5574の第2の電極、第6の薄膜トランジスタ5576のゲート電極及び第8の薄膜トランジスタ5578の第2の電極の接続箇所をノード5544とする。
【0230】
なお、第1の配線5501、第2の配線5502、第3の配線5503及び第4の配線5504を、それぞれ第1の信号線、第2の信号、第3の信号線、第4の信号線と呼んでもよい。さらに、第5の配線5505を第1の電源線、第6の配線5506を第2の電源線と呼んでもよい。
【0231】
また、信号線駆動回路及び走査線駆動回路を実施の形態1乃至実施の形態4のいずれか一に示すnチャネル型TFTのみで作製することも可能である。実施の形態1乃至実施の形態4のいずれか一に示すnチャネル型TFTはトランジスタの移動度が大きいため、駆動回路の駆動周波数を高くすることが可能となる。また、実施の形態1乃至実施の形態4のいずれか一に示すnチャネル型TFTはインジウム、ガリウム、及び亜鉛を含む酸素欠乏酸化物半導体層であるソース領域又はドレイン領域により寄生容量が低減されるため、周波数特性(f特性と呼ばれる)が高い。例えば、実施の形態1乃至実施の形態4のいずれか一に示すnチャネル型TFTを用いた走査線駆動回路は、高速に動作させることが出来るため、フレーム周波数を高くすること、または、黒画面挿入を実現することなども実現することが出来る。
【0232】
さらに、走査線駆動回路のトランジスタのチャネル幅を大きくすることや、複数の走査線駆動回路を配置することなどによって、さらに高いフレーム周波数を実現することが出来る。複数の走査線駆動回路を配置する場合は、偶数行の走査線を駆動する為の走査線駆動回路を片側に配置し、奇数行の走査線を駆動するための走査線駆動回路をその反対側に配置することにより、フレーム周波数を高くすることを実現することが出来る。
【0233】
また、本発明の半導体装置の一例であるアクティブマトリクス型発光表示装置を作製する場合、少なくとも一つの画素に複数の薄膜トランジスタを配置するため、走査線駆動回路を複数配置することが好ましい。アクティブマトリクス型発光表示装置のブロック図の一例を図16(B)に示す。
【0234】
図16(B)に示す発光表示装置は、基板5400上に表示素子を備えた画素を複数有する画素部5401と、各画素を選択する第1の走査線駆動回路5402及び第2の走査線駆動回路5404と、選択された画素へのビデオ信号の入力を制御する信号線駆動回路5403とを有する。
【0235】
図16(B)に示す発光表示装置の画素に入力されるビデオ信号をデジタル形式とする場合、画素はトランジスタのオンとオフの切り替えによって、発光もしくは非発光の状態となる。よって、面積階調法または時間階調法を用いて階調の表示を行うことができる。面積階調法は、1画素を複数の副画素に分割し、各副画素を独立にビデオ信号に基づいて駆動させることによって、階調表示を行う駆動法である。また時間階調法は、画素が発光する期間を制御することによって、階調表示を行う駆動法である。
【0236】
発光素子は、液晶素子などに比べて応答速度が高いので、液晶素子よりも時間階調法に適している。具体的に時間階調法で表示を行なう場合、1フレーム期間を複数のサブフレーム期間に分割する。そしてビデオ信号に従い、各サブフレーム期間において画素の発光素子を発光または非発光の状態にする。複数のサブフレーム期間に分割することによって、1フレーム期間中に画素が実際に発光する期間のトータルの長さを、ビデオ信号により制御することができ、階調を表示することができる。
【0237】
なお、図16(B)に示す発光表示装置では、一つの画素にスイッチング用TFTと、電流制御用TFTとの2つを配置する場合、スイッチング用TFTのゲート配線である第1の走査線に入力される信号を第1走査線駆動回路5402で生成し、電流制御用TFTのゲート配線である第2の走査線に入力される信号を第2の走査線駆動回路5404で生成している例を示しているが、第1の走査線に入力される信号と、第2の走査線に入力される信号とを、共に1つの走査線駆動回路で生成するようにしても良い。また、例えば、スイッチング素子が有する各トランジスタの数によって、スイッチング素子の動作を制御するのに用いられる第1の走査線が、各画素に複数設けられることもあり得る。この場合、複数の第1の走査線に入力される信号を、全て1つの走査線駆動回路で生成しても良いし、複数の各走査線駆動回路で生成しても良い。
【0238】
また、発光表示装置においても、駆動回路のうち、nチャネル型TFTで構成することができる駆動回路の一部を画素部の薄膜トランジスタと同一基板上に形成することができる。また、信号線駆動回路及び走査線駆動回路を実施の形態1乃至実施の形態4のいずれか一に示すnチャネル型TFTのみで作製することも可能である。
【0239】
また、上述した駆動回路は、液晶表示装置や発光表示装置に限らず、スイッチング素子と電気的に接続する素子を利用して電子インクを駆動させる電子ペーパーに用いてもよい。電子ペーパーは、電気泳動表示装置(電気泳動ディスプレイ)も呼ばれており、紙と同じ読みやすさ、他の表示装置に比べ低消費電力、薄くて軽い形状とすることが可能という利点を有している。
【0240】
電気泳動ディスプレイは、様々な形態が考えられ得るが、プラスの電荷を有する第1の粒子と、マイナスの電荷を有する第2の粒子とを含むマイクロカプセルが溶媒または溶質に複数分散されたものであり、マイクロカプセルに電界を印加することによって、マイクロカプセル中の粒子を互いに反対方向に移動させて一方側に集合した粒子の色のみを表示するものである。なお、第1の粒子または第2の粒子は染料を含み、電界がない場合において移動しないものである。また、第1の粒子の色と第2の粒子の色は異なるもの(無色を含む)とする。
【0241】
このように、電気泳動ディスプレイは、誘電定数の高い物質が高い電界領域に移動する、いわゆる誘電泳動的効果を利用したディスプレイである。電気泳動ディスプレイは、液晶表示装置には必要な偏光板、対向基板も電気泳動表示装置には必要なく、厚さや重さが半減する。
【0242】
上記マイクロカプセルを溶媒中に分散させたものが電子インクと呼ばれるものであり、この電子インクはガラス、プラスチック、布、紙などの表面に印刷することができる。また、カラーフィルタや色素を有する粒子を用いることによってカラー表示も可能である。
【0243】
また、アクティブマトリクス基板上に適宜、二つの電極の間に挟まれるように上記マイクロカプセルを複数配置すればアクティブマトリクス型の表示装置が完成し、マイクロカプセルに電界を印加すれば表示を行うことができる。例えば、実施の形態1乃至実施の形態4のいずれか一の薄膜トランジスタによって得られるアクティブマトリクス基板を用いることができる。
【0244】
なお、マイクロカプセル中の第1の粒子および第2の粒子は、導電体材料、絶縁体材料、半導体材料、磁性材料、液晶材料、強誘電性材料、エレクトロルミネセント材料、エレクトロクロミック材料、磁気泳動材料から選ばれた一種の材料、またはこれらの複合材料を用いればよい。
【0245】
以上の工程により、半導体装置として信頼性の高い表示装置を作製することができる。
【0246】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0247】
(実施の形態6)
ここでは、少なくともゲート絶縁層と酸素過剰酸化物半導体層の積層を大気に触れることなく、連続成膜を行う逆スタガ型の薄膜トランジスタの作製例を以下に示す。ここでは、連続成膜を行う工程までの工程を示し、その後の工程は、実施の形態1乃至実施の形態4のいずれか一に従って薄膜トランジスタを作製すればよい。
【0248】
本明細書中で連続成膜とは、スパッタ法で行う第1の成膜工程からスパッタ法で行う第2の成膜工程までの一連のプロセス中、被処理基板の置かれている雰囲気が大気等の汚染雰囲気に触れることなく、常に真空中または不活性ガス雰囲気(窒素雰囲気または希ガス雰囲気)で制御されていることを言う。連続成膜を行うことにより、清浄化された被処理基板の水分等の再付着を回避して成膜を行うことができる。
【0249】
同一チャンバー内で第1の成膜工程から第2の成膜工程までの一連のプロセスを行うことは本明細書における連続成膜の範囲にあるとする。
【0250】
また、異なるチャンバーで第1の成膜工程から第2の成膜工程までの一連のプロセスを行う場合、第1の成膜工程を終えた後、大気にふれることなくチャンバー間を基板搬送して第2の成膜を施すことも本明細書における連続成膜の範囲にあるとする。
【0251】
なお、第1の成膜工程と第2の成膜工程の間に、基板搬送工程、アライメント工程、徐冷工程、または第2の工程に必要な温度とするため基板を加熱または冷却する工程等を有しても、本明細書における連続成膜の範囲にあるとする。
【0252】
ただし、洗浄工程、ウエットエッチング、レジスト形成といった液体を用いる工程が第1の成膜工程と第2の成膜工程の間にある場合、本明細書でいう連続成膜の範囲には当てはまらないとする。
【0253】
大気に触れることなく連続成膜を行う場合、図22に示すようなマルチチャンバー型の製造装置を用いることが好ましい。
【0254】
製造装置の中央部には、基板を搬送する搬送機構(代表的には搬送ロボット81)を備えた搬送室80が設けられ、搬送室80には、搬送室内へ搬入および搬出する基板を複数枚収納するカセットケースをセットするカセット室82が連結されている。
【0255】
また、搬送室には、それぞれゲートバルブ83〜88を介して複数の処理室が連結される。ここでは、上面形状が六角形の搬送室80に5つの処理室を連結する例を示す。なお、搬送室の上面形状を変更することで、連結できる処理室の数を変えることができ、例えば、四角形とすれば3つの処理室が連結でき、八角形とすれば7つの処理室が連結できる。
【0256】
5つの処理室のうち、少なくとも1つの処理室はスパッタリングを行うスパッタチャンバーとする。スパッタチャンバーは、少なくともチャンバー内部に、スパッタターゲット、ターゲットをスパッタするための電力印加機構やガス導入手段、所定位置に基板を保持する基板ホルダー等が設けられている。また、スパッタチャンバー内を減圧状態とするため、チャンバー内の圧力を制御する圧力制御手段がスパッタチャンバーに設けられている。
【0257】
スパッタ法にはスパッタ用電源に高周波電源を用いるRFスパッタ法と、DCスパッタ法があり、さらにパルス的にバイアスを与えるパルスDCスパッタ法もある。RFスパッタ法は主に絶縁膜を成膜する場合に用いられ、DCスパッタ法は主に金属膜を成膜する場合に用いられる。
【0258】
また、材料の異なるターゲットを複数設置できる多元スパッタ装置もある。多元スパッタ装置は、同一チャンバーで異なる材料膜を積層成膜することも、同一チャンバーで複数種類の材料を同時に放電させて成膜することもできる。
【0259】
また、チャンバー内部に磁石機構を備えたマグネトロンスパッタ法を用いるスパッタ装置や、グロー放電を使わずマイクロ波を用いて発生させたプラズマを用いるECRスパッタ法を用いるスパッタ装置がある。
【0260】
スパッタチャンバーとしては、上述した様々なスパッタ法を適宜用いる。
【0261】
また、成膜方法として、成膜中にターゲット物質とスパッタガス成分とを化学反応させてそれらの化合物薄膜を形成するリアクティブスパッタ法や、成膜中に基板にも電圧をかけるバイアススパッタ法もある。
【0262】
また、5つの処理室のうち、他の処理室の一つはスパッタリングの前に基板の予備加熱などを行う加熱チャンバー、スパッタリング後に基板を冷却する冷却チャンバー、或いはプラズマ処理を行うチャンバーとする。
【0263】
次に製造装置の動作の一例について説明する。
【0264】
被成膜面を下向きとした基板94を収納した基板カセットをカセット室82にセットして、カセット室82に設けられた真空排気手段によりカセット室を減圧状態とする。なお、予め、各処理室および搬送室80内部をそれぞれに設けられた真空排気手段により減圧しておく。こうしておくことで、各処理室間を基板が搬送されている間、大気に触れることなく清浄な状態を維持することができる。
【0265】
なお、被成膜面を下向きとした基板94は、少なくともゲート電極が予め設けられている。ゲート電極と基板との間に下地絶縁膜を設けてもよい。例えば、下地絶縁膜として、特に限定されないが、スパッタ法で得られる窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜などを用いればよい。基板94としてアルカリ金属を含むガラス基板を用いる場合、下地絶縁膜は、基板からナトリウム等の可動イオンがその上の半導体領域中に侵入して、TFTの電気特性が変化することを抑制する作用を有する。
【0266】
ここでは、ゲート電極を覆う窒化シリコン膜をプラズマCVD法で形成し、1層目のゲート絶縁層を形成した基板を用いる。プラズマCVD法で成膜された窒化シリコン膜は緻密であり、1層目のゲート絶縁層とすることでピンホールなどの発生を抑えることができる。なお、ここではゲート絶縁層を積層とする例を示すが特に限定されず、単層または3層以上の積層を用いてもよい。
【0267】
次いで、ゲートバルブ83を開いて搬送ロボット81により1枚目の基板94をカセットから抜き取り、ゲートバルブ84を開いて第1の処理室89内に搬送し、ゲートバルブ84を閉める。第1の処理室89では、加熱ヒータやランプ加熱で基板を加熱して基板94に付着している水分などを除去する。特に、ゲート絶縁層に水分が含まれるとTFTの電気特性が変化する恐れがあるため、スパッタ成膜前の加熱は有効である。なお、カセット室82に基板をセットした段階で十分に水分が除去されている場合には、この加熱処理は不要である。
【0268】
また、第1の処理室89にプラズマ処理手段を設け、1層目のゲート絶縁層の表面にプラズマ処理を行ってもよい。また、カセット室82に加熱手段を設けてカセット室82で水分を除去する加熱を行ってもよい。
【0269】
次いで、ゲートバルブ84を開いて搬送ロボット81により基板を搬送室80に搬送し、ゲートバルブ85を開いて第2の処理室90内に搬送し、ゲートバルブ85を閉める。
【0270】
ここでは、第2の処理室90は、RFマグネトロンスパッタ法を用いたスパッタチャンバーとする。
【0271】
第2の処理室90では、1層目のゲート絶縁層として窒化シリコン膜(SiNx膜)の成膜を行う。
【0272】
SiNx膜の成膜後、大気に触れることなく、ゲートバルブ85を開いて搬送ロボット81により基板を搬送室80に搬送し、ゲートバルブ86を開いて第3の処理室91内に搬送し、ゲートバルブ86を閉める。
【0273】
ここでは、第3の処理室91は、RFマグネトロンスパッタ法を用いたスパッタチャンバーとする。
【0274】
第3の処理室91では、2層目のゲート絶縁層として酸化シリコン膜(SiOx膜)の成膜を行う。ゲート絶縁層として、酸化シリコン膜の他に、酸化アルミニウム膜(Al膜)、酸化マグネシウム膜(MgOx膜)、窒化アルミニウム膜(AlNx膜)、酸化イットリウム膜(YOx膜)などを用いることができる。
【0275】
ゲート絶縁層中の水素をより少なくするため、ゲート絶縁層をSi単結晶のターゲットを用いてアルゴンガスと酸素ガスを用い、スパッタ成膜する。このゲート絶縁層中の水素が拡散し、IGZO膜中の過剰な酸素と反応してHO成分になることはチャネルのI型化を防ぐ上では極めて重要である。連続成膜をして、ゲート絶縁層とIGZO膜の界面に水分を付着させないことも重要である。従って、チャンバー内をクライオポンプなどで真空排気し、到達最低圧力を1×10−7〜1×10−10Torr(約1×10−5Pa以上1×10−8Pa)の超高真空領域、所謂、UHV領域中でスパッタを行うことが好ましい。また、ゲート絶縁層とIGZO膜の界面を大気に触れさせないように連続的に積層する際、ゲート絶縁層の表面に酸素ラジカル処理を行い、表面を酸素過剰領域とすることは、その後の工程での信頼性向上のための熱処理において、酸素のIGZO膜界面の改質のための供給源を作る上で有効である。
【0276】
また、ゲート絶縁層に酸素ラジカル処理を行って酸素過剰領域を設けることによって、ゲート絶縁層の内部の酸素濃度と比較してIGZO側の表面の酸素濃度が高濃度となる。また、酸素ラジカル処理を行わない場合と比べて、酸素ラジカル処理を行った場合は、ゲート絶縁層とIGZO膜の界面における酸素濃度が高くなる。
【0277】
ゲート絶縁層に酸素ラジカル処理を行ってIGZO膜を積層し、熱処理を行えば、IGZO膜のゲート絶縁層側の酸素濃度も高濃度となる。
【0278】
また、ゲート絶縁層にハロゲン元素、例えばフッ素、塩素などを膜中に少量添加し、ナトリウム等の可動イオンの固定化をさせてもよい。その方法としては、チャンバー内にハロゲン元素を含むガスを導入してスパッタリングを行う。ただし、ハロゲン元素を含むガスを導入する場合にはチャンバーの排気手段に除害設備を設ける必要がある。ゲート絶縁層に含ませるハロゲン元素の濃度は、SIMS(二次イオン質量分析計)を用いた分析により得られる濃度ピークが1×1015cm−3以上1×1020cm−3以下の範囲内とすることが好ましい。
【0279】
SiOx膜の成膜後、大気に触れることなく、ゲートバルブ86を開いて搬送ロボット81により基板を搬送室80に搬送し、ゲートバルブ87を開いて第4の処理室92内に搬送し、ゲートバルブ87を閉める。
【0280】
ここでは、第4の処理室92は、DCマグネトロンスパッタ法を用いたスパッタチャンバーとする。第4の処理室92では、ゲート絶縁層表面への酸素ラジカル処理と、半導体層として酸素過剰酸化物半導体層(IGZO膜の成膜)、並びにソース領域及びドレイン領域として酸素欠乏酸化物半導体層の成膜を行う。
【0281】
ゲート絶縁層表面の酸素ラジカル処理としては、逆スパッタなどのプラズマ処理を行えばよい。逆スパッタとは、ターゲット側に電圧を印加せずに、酸素、又は酸素及びアルゴン雰囲気下で基板側に電圧を印加して基板表面にプラズマを形成して表面を改質する方法である。また、ゲート絶縁層に窒化処理を行ってもよく、窒素雰囲気下で逆スパッタなどのプラズマ処理を行えばよい。
【0282】
In、Ga、及びZnを含む酸化物半導体ターゲットを用いて、希ガス雰囲気下、または酸素雰囲気下で成膜することができる。ここでは酸素を限りなく多くIGZO膜中に含ませるために、ターゲットとしてIn、Ga、及びZnを含む酸化物半導体を用い、酸素のみの雰囲気下、または酸素が90%以上、且つ、Arが10%以下の雰囲気下でパルスDCスパッタ法のスパッタリングを行い、酸素過剰のIGZO膜を形成する。
【0283】
このように、大気に触れることなく、酸素過剰のSiOx膜と酸素過剰のIGZO膜とを連続成膜することにより、酸素過剰の膜同士のため界面状態を安定させ、TFTの信頼性を向上させることができる。IGZO膜の成膜前に基板が大気に触れた場合、水分などが付着し、界面状態に悪影響を与え、しきい値のバラツキや、電気特性の劣化、ノーマリーオンのTFTになってしまう症状などを引き起こす恐れがある。水分は水素化合物であり、大気に触れることなく、連続成膜することによって、水素化合物が界面に存在することを排除することができる。従って、連続成膜することにより、しきい値のバラツキの低減や、電気特性の劣化の防止や、TFTがノーマリーオン側にシフトすることを低減、望ましくはシフトをなくすことができる。
【0284】
また、第3の処理室91のスパッタチャンバーに人工石英のターゲットと、In、Ga、及びZnを含む酸化物半導体ターゲットとの両方を設置し、シャッターを用いて順次積層して連続成膜することによって同一チャンバー内で積層を行うこともできる。シャッターは、ターゲットと基板の間に設け、成膜を行うターゲットはシャッターを開け、成膜を行わないターゲットはシャッターにより閉じる。同一チャンバー内で積層する利点としては、使用するチャンバーの数を減らせる点と、異なるチャンバー間を基板搬送する間にパーティクル等が基板に付着することを防止できる点である。
【0285】
グレートーンマスクを用いる工程でなければ、この段階で製造装置からカセット室を介して基板を搬出し、フォトリソグラフィ技術を用いて酸素過剰のIGZO膜のエッチング加工を行うが、グレートーンマスクを用いる工程であれば引き続き、以下に示す連続成膜を行う。
【0286】
引き続き、第4の処理室92にて、希ガスのみの雰囲気下でパルスDCスパッタ法のスパッタリングを行い、酸素過剰のIGZO膜上に接して酸素欠乏のIGZO膜を形成する。この酸素欠乏のIGZO膜は酸素過剰のIGZO膜よりも膜中の酸素濃度が低い。この酸素欠乏のIGZO膜はソース領域またはドレイン領域として機能する。
【0287】
次いで、大気に触れることなく、ゲートバルブ87を開いて第4の処理室92内に搬送し、ゲートバルブ87を閉める。
【0288】
次いで、大気に触れることなく、ゲートバルブ87を開いて搬送ロボット81により基板を搬送室80に搬送し、ゲートバルブ88を開いて第5の処理室93内に搬送し、ゲートバルブ88を閉める。
【0289】
ここでは、第5の処理室93は、DCマグネトロンスパッタ法を用いたスパッタチャンバーとする。第5の処理室93では、ソース電極層またはドレイン電極層となる金属多層膜(導電膜)の成膜を行う。第5の処理室93のスパッタチャンバーにチタンのターゲットと、アルミニウムのターゲットとの両方を設置し、シャッターを用いて順次積層して連続成膜することによって同一チャンバー内で積層を行う。ここでは、チタン膜上にアルミニウム膜を積層し、さらにアルミニウム膜上にチタン膜を積層する。
【0290】
このように、グレートーンマスクを用いる場合、大気に触れることなく、酸素過剰のSiOx膜と酸素過剰のIGZO膜と酸素欠乏のIGZO膜と金属多層膜とを連続成膜することができる。特に、酸素過剰のIGZO膜の界面状態がより安定し、TFTの信頼性を向上させることができる。IGZO膜の成膜前後に基板が大気に触れた場合、水分などが付着し、界面状態に悪影響を与え、しきい値のバラツキや、電気特性の劣化、ノーマリーオンのTFTになってしまう症状などを引き起こす恐れがある。水分は水素化合物であり、大気に触れることなく、連続成膜することによって、水素化合物がIGZO膜の界面に存在することを排除することができる。従って、4層を連続成膜することにより、しきい値のバラツキの低減や、電気特性の劣化の防止や、TFTがノーマリーオン側にシフトすることを低減、望ましくはシフトをなくすことができる。
【0291】
また、大気に触れることなく、酸素欠乏のIGZO膜とソース電極層及びドレイン電極層となる金属多層膜の成膜とを連続成膜することにより、酸素欠乏のIGZO膜と金属多層膜との間で良好な界面状態を実現でき、接触抵抗を低減できる。
【0292】
また、第3の処理室91のスパッタチャンバーに人工石英のターゲットと、In、Ga、及びZnを含む酸化物半導体ターゲットとの両方を設置し、シャッターを用いて順次導入するガスを切り替えて3層を連続成膜することによって同一チャンバー内で積層を行うこともできる。同一チャンバー内で積層する利点としては、使用するチャンバーの数を減らせる点と、異なるチャンバー間を基板搬送する間にパーティクル等が基板に付着することを防止できる点である。
【0293】
以上の工程を繰り返してカセットケース内の基板に成膜処理を行って複数の基板の処理を終えた後、カセット室の真空を大気に開放して、基板およびカセットを取り出す。
【0294】
また、第1の処理室89で、酸素過剰のIGZO膜及び酸素欠乏のIGZO膜の成膜後の加熱処理、具体的には200℃〜600℃の加熱処理、好ましくは300℃〜500℃の加熱処理を行うことができる。この加熱処理を行うことにより逆スタガ型の薄膜トランジスタの電気特性を向上させることができる。この加熱処理は、酸素過剰のIGZO膜及び酸素欠乏のIGZO膜の成膜後であれば特に限定されず、例えば、酸素過剰のIGZO膜及び酸素欠乏のIGZO膜の成膜直後や、金属多層膜成膜直後に行うことができる。
【0295】
次いで、グレートーンマスクを用いて各積層膜をエッチング加工する。ドライエッチングやウェットエッチングを用いて形成してもよいし、複数回のエッチングに分けてそれぞれ選択的にエッチングしてもよい。
【0296】
半導体層、ソース領域、ドレイン領域、ソース電極層及びドレイン電極層をエッチング加工により形成した後、保護膜を形成する前に真空ベークを行ってもよい。
【0297】
また、半導体層、ソース領域、ドレイン領域、ソース電極層及びドレイン電極層をエッチング加工により形成した後、保護膜を形成する前に酸素ラジカル処理を行ってもよい。露出している半導体層のチャネル形成領域に酸素ラジカル処理を行うことによって、半導体層表面を酸素過剰領域とすることができる。
【0298】
半導体層表面を酸素過剰領域とすることによって、水素の半導体層への混入を防ぐ、またバックチャネルが酸素欠乏領域となりソースドレイン間の導通が起きることを防ぎオフ電流を下げることができる。このようにバックチャネル部の半導体層も酸素過剰領域とすることができるため、ゲート絶縁層への酸素ラジカル処理と同様に、バックチャネル部の半導体層の酸素ラジカル処理を行うことは有効である。
【0299】
以降の工程は、上述した実施の形態1乃至実施の形態4のいずれか一に従えば、逆スタガ型の薄膜トランジスタが作製できる。
【0300】
ここではマルチチャンバー方式の製造装置を例に説明を行ったが、スパッタチャンバーを直列に連結するインライン方式の製造装置を用いて大気に触れることなく連続成膜を行ってもよい。
【0301】
また、図22に示す装置は被成膜面を下向きに基板をセットする、所謂フェイスダウン方式の処理室としたが、基板を垂直に立て、縦置き方式の処理室としてもよい。縦置き方式の処理室は、フェイスダウン方式の処理室よりもフットプリントが小さいメリットがあり、さらに基板の自重により撓む恐れのある大面積の基板を用いる場合に有効である。
【0302】
(実施の形態7)
本発明の薄膜トランジスタを作製し、該薄膜トランジスタを画素部、さらには駆動回路に用いて表示機能を有する半導体装置(表示装置ともいう)を作製することができる。また、本発明の薄膜トランジスタを駆動回路の一部または全体を、画素部と同じ基板上に一体形成し、システムオンパネルを形成することができる。
【0303】
表示装置は表示素子を含む。表示素子としては液晶素子(液晶表示素子ともいう)、発光素子(発光表示素子ともいう)を用いることができる。発光素子は、電流または電圧によって輝度が制御される素子をその範疇に含んでおり、具体的には無機EL(Electro Luminescence)、有機EL等が含まれる。また、電子インクなど、電気的作用によりコントラストが変化する表示媒体も適用することができる。
【0304】
また、表示装置は、表示素子が封止された状態にあるパネルと、該パネルにコントローラを含むIC等を実装した状態にあるモジュールとを含む。さらに本発明は、該表示装置を作製する過程における、表示素子が完成する前の一形態に相当する素子基板に関し、該素子基板は、電流を表示素子に供給するための手段を複数の各画素に備える。素子基板は、具体的には、表示素子の画素電極のみが形成された状態であっても良いし、画素電極となる導電膜を成膜した後であって、エッチングして画素電極を形成する前の状態であっても良いし、あらゆる形態があてはまる。
【0305】
なお、本明細書中における表示装置とは、画像表示デバイス、表示デバイス、もしくは光源(照明装置含む)を指す。また、コネクター、例えばFPC(Flexible printed circuit)もしくはTAB(Tape Automated Bonding)テープもしくはTCP(Tape Carrier Package)が取り付けられたモジュール、TABテープやTCPの先にプリント配線板が設けられたモジュール、または表示素子にCOG(Chip On Glass)方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て表示装置に含むものとする。
【0306】
本実施の形態では、本発明の一形態の半導体装置として液晶表示装置の例を示す。
【0307】
図23(A)(B)に、本発明を適用したアクティブマトリクス型の液晶表示装置を示す。図23(A)は液晶表示装置の平面図であり、図23(B)は図23(A)における線V−Xの断面図である。半導体装置に用いられる薄膜トランジスタ201としては、実施の形態2で示す薄膜トランジスタと同様に作製でき、酸素ラジカル処理をされたゲート絶縁層上に酸素過剰酸化物半導体層及び酸素欠乏酸化物半導体層を含む信頼性の高い薄膜トランジスタである。また、実施の形態1、実施の形態3、又は実施の形態4で示す薄膜トランジスタも本実施の薄膜トランジスタ201として適用することもできる。
【0308】
図23(A)の本実施の形態の液晶表示装置は、ソース配線層202、マルチゲート構造の逆スタガ型の薄膜トランジスタ201、ゲート配線層203、容量配線層204を含む。
【0309】
また、図23(B)において、本実施の形態の液晶表示装置は、マルチゲート構造の薄膜トランジスタ201、絶縁層211、絶縁層212、絶縁層213、及び表示素子に用いる電極層255、配向膜として機能する絶縁層261、偏光板268が設けられた基板200と、配向膜として機能する絶縁層263、表示素子に用いる電極層265、カラーフィルタとして機能する着色層264、偏光板267が設けられた基板266とが液晶層262を挟持して対向しており、液晶表示素子260を有している。
【0310】
また、配向膜を用いないブルー相を示す液晶を用いてもよい。ブルー相は液晶相の一つであり、コレステリック液晶を昇温していくと、コレステリック相から等方相へ転移する直前に発現する相である。ブルー相は狭い温度範囲でしか発現しないため、温度範囲を改善するために5重量%以上のカイラル剤を混合させた液晶組成物を用いて液晶層262に用いる。ブルー相を示す液晶とカイラル剤とを含む液晶組成物は、応答速度が10μs〜100μsと短く、光学的等方性であるため配向処理が不要であり、視野角依存性が小さい。
【0311】
なお図23は透過型液晶表示装置の例であるが、本発明の一形態は反射型液晶表示装置でも半透過型液晶表示装置でも適用できる。
【0312】
また、図23の液晶表示装置では、基板266の外側(視認側)に偏光板267を設け、内側に着色層264、表示素子に用いる電極層265という順に設ける例を示すが、偏光板267は基板266の内側に設けてもよい。また、偏光板と着色層の積層構造も図23に限定されず、偏光板及び着色層の材料や作製工程条件によって適宜設定すればよい。また、ブラックマトリクスとして機能する遮光膜を設けてもよい。
【0313】
また、本実施の形態では、薄膜トランジスタの表面凹凸を低減するため、及び薄膜トランジスタの信頼性を向上させるため、実施の形態1で得られた薄膜トランジスタを保護膜や平坦化絶縁膜として機能する絶縁層(絶縁層211、絶縁層212、絶縁層213)で覆う構成となっている。なお、保護膜は、大気中に浮遊する有機物や金属物、水蒸気などの汚染不純物の侵入を防ぐためのものであり、緻密な膜が好ましい。保護膜は、スパッタ法を用いて、酸化珪素膜、窒化珪素膜、酸化窒化珪素膜、窒化酸化珪素膜、酸化アルミニウム膜、窒化アルミニウム膜、酸化窒化アルミニウム膜、又は窒化酸化アルミニウム膜の単層、又は積層で形成すればよい。本実施の形態では保護膜をスパッタ法で形成する例を示すが、特に限定されず種々の方法で形成すればよい。
【0314】
保護膜の一層目として絶縁層211を形成する。絶縁層211は、アルミニウム膜のヒロック防止に効果がある。ここでは、絶縁層211として、スパッタ法を用いて酸化珪素膜を形成する。
【0315】
また、保護膜の二層目として絶縁層212を形成する。ここでは、絶縁層212として、スパッタ法を用いて窒化珪素膜を形成する。保護膜の一層として窒化珪素膜を用いると、ナトリウム等の可動イオンが半導体領域中に侵入して、TFTの電気特性を変化させることを抑制することができる。
【0316】
また、保護膜を形成した後に、IGZO半導体層のアニール(300℃〜400℃)を行ってもよい。
【0317】
また、平坦化絶縁膜として絶縁層213を形成する。絶縁層213としては、アクリル、ポリイミド、ベンゾシクロブテン、ポリアミド、エポキシ等の、耐熱性を有する有機材料を用いることができる。また上記有機材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)、シロキサン系樹脂、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス)等を用いることができる。シロキサン系樹脂は、置換基に水素の他、フッ素、アルキル基、またはアリール基のうち少なくとも1種を有していてもよい。なお、これらの材料で形成される絶縁膜を複数積層させることで、絶縁層213を形成してもよい。
【0318】
なおシロキサン系樹脂とは、シロキサン系材料を出発材料として形成されたSi−O−Si結合を含む樹脂に相当する。シロキサン系樹脂は、置換基に水素の他、フッ素、アルキル基、または芳香族炭化水素のうち、少なくとも1種を有していてもよい。
【0319】
絶縁層213の形成法は、特に限定されず、その材料に応じて、スパッタ法、SOG法、スピンコート、ディップ、スプレー塗布、液滴吐出法(インクジェット法、スクリーン印刷、オフセット印刷等)、ドクターナイフ、ロールコーター、カーテンコーター、ナイフコーター等を用いることができる。絶縁層213を材料液を用いて形成する場合、ベークする工程で同時に、IGZO半導体層のアニール(300℃〜400℃)を行ってもよい。絶縁層213の焼成工程とIGZO半導体層のアニールを兼ねることで効率よく半導体装置を作製することが可能となる。
【0320】
画素電極層として機能する電極層255、265は、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム錫酸化物(以下、ITOと示す。)、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの透光性を有する導電性材料を用いることができる。
【0321】
また、電極層255、265として、導電性高分子(導電性ポリマーともいう)を含む導電性組成物を用いて形成することができる。導電性組成物を用いて形成した画素電極は、シート抵抗が10000Ω/□以下、波長550nmにおける透光率が70%以上であることが好ましい。また、導電性組成物に含まれる導電性高分子の抵抗率が0.1Ω・cm以下であることが好ましい。
【0322】
導電性高分子としては、いわゆるπ電子共役系導電性高分子が用いることができる。例えば、ポリアニリンまたはその誘導体、ポリピロールまたはその誘導体、ポリチオフェンまたはその誘導体、若しくはこれらの2種以上の共重合体などがあげられる。
【0323】
以上の工程により、半導体装置として信頼性の高い液晶表示装置を作製することができる。
【0324】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0325】
(実施の形態8)
本実施の形態では、本発明の半導体装置として電子ペーパーの例を示す。
【0326】
図30は、本発明を適用した半導体装置の例としてアクティブマトリクス型の電子ペーパーを示す。半導体装置に用いられる薄膜トランジスタ581としては、実施の形態2で示す薄膜トランジスタと同様に作製でき、酸素ラジカル処理をされたゲート絶縁層上に酸素過剰酸化物半導体層、並びにソース領域及びドレイン領域として酸素欠乏酸化物半導体層を含む信頼性の高い薄膜トランジスタである。また、実施の形態1、実施の形態3、又は実施の形態4で示す薄膜トランジスタも本実施の薄膜トランジスタ581として適用することもできる。
【0327】
図30の電子ペーパーは、ツイストボール表示方式を用いた表示装置の例である。ツイストボール表示方式とは、白と黒に塗り分けられた球形粒子を表示素子に用いる電極層である第1の電極層及び第2の電極層の間に配置し、第1の電極層及び第2の電極層に電位差を生じさせての球形粒子の向きを制御することにより、表示を行う方法である。
【0328】
薄膜トランジスタ581はマルチゲート構造の逆スタガ型の薄膜トランジスタであり、ソース電極層又はドレイン電極層によって第1の電極層587と、絶縁層585に形成する開口で接しており電気的に接続している。第1の電極層587と第2の電極層588との間には黒色領域590a及び白色領域590bを有し、周りに液体で満たされているキャビティ594を含む球形粒子589が設けられており、球形粒子589の周囲は樹脂等の充填材595で充填されている(図30参照。)。
【0329】
また、ツイストボールの代わりに、電気泳動素子を用いることも可能である。透明な液体と、正に帯電した白い微粒子と負に帯電した黒い微粒子とを封入した直径10μm〜200μm程度のマイクロカプセルを用いる。第1の電極層と第2の電極層との間に設けられるマイクロカプセルは、第1の電極層と第2の電極層によって、電場が与えられると、白い微粒子と、黒い微粒子が逆の方向に移動し、白または黒を表示することができる。この原理を応用した表示素子が電気泳動表示素子であり、一般的に電子ペーパーとよばれている。電気泳動表示素子は、液晶表示素子に比べて反射率が高いため、補助ライトは不要であり、また消費電力が小さく、薄暗い場所でも表示部を認識することが可能である。また、表示部に電源が供給されない場合であっても、一度表示した像を保持することが可能であるため、電波発信源から表示機能付き半導体装置(単に表示装置、又は表示装置を具備する半導体装置ともいう)を遠ざけた場合であっても、表示された像を保存しておくことが可能となる。
【0330】
以上の工程により、半導体装置として信頼性の高い電子ペーパーを作製することができる。
【0331】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0332】
(実施の形態9)
本実施の形態では、本発明の半導体装置として発光表示装置の例を示す。表示装置の有する表示素子としては、ここではエレクトロルミネッセンスを利用する発光素子を用いて示す。エレクトロルミネッセンスを利用する発光素子は、発光材料が有機化合物であるか、無機化合物であるかによって区別され、一般的に、前者は有機EL素子、後者は無機EL素子と呼ばれている。
【0333】
有機EL素子は、発光素子に電圧を印加することにより、一対の電極から電子および正孔がそれぞれ発光性の有機化合物を含む層に注入され、電流が流れる。そして、それらキャリア(電子および正孔)が再結合することにより、発光性の有機化合物が励起状態を形成し、その励起状態が基底状態に戻る際に発光する。このようなメカニズムから、このような発光素子は、電流励起型の発光素子と呼ばれる。
【0334】
無機EL素子は、その素子構成により、分散型無機EL素子と薄膜型無機EL素子とに分類される。分散型無機EL素子は、発光材料の粒子をバインダ中に分散させた発光層を有するものであり、発光メカニズムはドナー準位とアクセプター準位を利用するドナー−アクセプター再結合型発光である。薄膜型無機EL素子は、発光層を誘電体層で挟み込み、さらにそれを電極で挟んだ構造であり、発光メカニズムは金属イオンの内殻電子遷移を利用する局在型発光である。なお、ここでは、発光素子として有機EL素子を用いて説明する。
【0335】
図26(A)(B)は、本発明を適用した半導体装置の例としてアクティブマトリクス型の発光表示装置を示す。図26(A)は発光表示装置の平面図であり、図26(B)は図26(A)における線Y−Zの断面図である。なお、図27に、図26に示す発光表示装置の等価回路を示す。
【0336】
半導体装置に用いられる薄膜トランジスタ301、302としては、実施の形態1及び実施の形態2で示す薄膜トランジスタと同様に作製でき、酸素ラジカル処理をされたゲート絶縁層上に酸素過剰酸化物半導体層、並びにソース領域及びドレイン領域として酸素欠乏酸化物半導体層を含む信頼性の高い薄膜トランジスタである。また、実施の形態3、又は実施の形態4で示す薄膜トランジスタも本実施の薄膜トランジスタ301、302として適用することもできる。
【0337】
図26(A)及び図26(B)に示す本実施の形態の発光表示装置は、マルチゲート構造の薄膜トランジスタ301、発光素子303、容量素子304、ソース配線層305、ゲート配線層306、電源線307を含む。薄膜トランジスタ301、302はnチャネル型薄膜トランジスタである。
【0338】
また、図26(B)において、本実施の形態の発光表示装置は、薄膜トランジスタ302、絶縁層311、絶縁層312、絶縁層313、隔壁321、及び発光素子303に用いる第1の電極層320、電界発光層322、第2の電極層323を有している。
【0339】
絶縁層313は、アクリル、ポリイミド、ポリアミドなどの有機樹脂、またはシロキサンを用いて形成することが好ましい。
【0340】
本実施の形態では画素の薄膜トランジスタ302がn型であるので、画素電極層である第1の電極層320として、陰極を用いるのが望ましい。具体的には、陰極としては、仕事関数が小さい材料、例えば、Ca、Al、MgAg、AlLi等を用いることができる。
【0341】
隔壁321は、有機樹脂膜、無機絶縁膜または有機ポリシロキサンを用いて形成する。特に感光性の材料を用い、第1の電極層320上に開口部を形成し、その開口部の側壁が連続した曲率を持って形成される傾斜面となるように形成することが好ましい。
【0342】
電界発光層322は、単数の層で構成されていても、複数の層が積層されるように構成されていてもどちらでも良い。
【0343】
電界発光層322を覆うように、陽極を用いた第2の電極層323を形成する。第2の電極層323は、実施の形態7に画素電極層として列挙した透光性を有する導電性材料を用いた透光性導電膜で形成することができる。上記透光性導電膜の他に、窒化チタン膜またはチタン膜を用いても良い。第1の電極層320と電界発光層322と第2の電極層323とが重なり合うことで、発光素子303が形成されている。この後、発光素子303に酸素、水素、水分、二酸化炭素等が侵入しないように、第2の電極層323及び隔壁321上に保護膜を形成してもよい。保護膜としては、窒化珪素膜、窒化酸化珪素膜、DLC膜等を形成することができる。
【0344】
さらに、実際には、図26(B)まで完成したら、さらに外気に曝されないように気密性が高く、脱ガスの少ない保護フィルム(貼り合わせフィルム、紫外線硬化樹脂フィルム等)やカバー材でパッケージング(封入)することが好ましい。
【0345】
次に、発光素子の構成について、図28を用いて説明する。ここでは、駆動用TFTがn型の場合を例に挙げて、画素の断面構造について説明する。図28(A)(B)(C)の半導体装置に用いられる駆動用TFTであるTFT7001、7011、7021は、実施の形態1で示す薄膜トランジスタと同様に作製でき、酸素ラジカル処理をされたゲート絶縁層上に酸素過剰酸化物半導体層、並びにソース領域及びドレイン領域として酸素欠乏酸化物半導体層を含む信頼性の高い薄膜トランジスタである。また、実施の形態2、実施の形態3、又は実施の形態4で示す薄膜トランジスタをTFT7001、7011、7021として適用することもできる。
【0346】
発光素子は発光を取り出すために少なくとも陽極又は陰極の一方が透明であればよい。そして、基板上に薄膜トランジスタ及び発光素子を形成し、基板とは逆側の面から発光を取り出す上面射出や、基板側の面から発光を取り出す下面射出や、基板側及び基板とは反対側の面から発光を取り出す両面射出構造の発光素子があり、本発明の一形態の画素構成はどの射出構造の発光素子にも適用することができる。
【0347】
上面射出構造の発光素子について図28(A)を用いて説明する。
【0348】
図28(A)に、駆動用TFTであるTFT7001がn型で、発光素子7002から発せられる光が陽極7005側に抜ける場合の、画素の断面図を示す。図28(A)では、発光素子7002の陰極7003と駆動用TFTであるTFT7001が電気的に接続されており、陰極7003上に発光層7004、陽極7005が順に積層されている。陰極7003は仕事関数が小さく、なおかつ光を反射する導電膜であれば様々の材料を用いることができる。例えば、Ca、Al、CaF、MgAg、AlLi等が望ましい。そして発光層7004は、単数の層で構成されていても、複数の層が積層されるように構成されていてもどちらでも良い。複数の層で構成されている場合、陰極7003上に電子注入層、電子輸送層、発光層、ホール輸送層、ホール注入層の順に積層する。なおこれらの層を全て設ける必要はない。陽極7005は光を透過する透光性を有する導電性材料を用いて形成し、例えば酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム錫酸化物(以下、ITOと示す。)、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの透光性を有する導電性導電膜を用いても良い。
【0349】
陰極7003及び陽極7005で発光層7004を挟んでいる領域が発光素子7002に相当する。図28(A)に示した画素の場合、発光素子7002から発せられる光は、矢印で示すように陽極7005側に射出する。
【0350】
次に、下面射出構造の発光素子について図28(B)を用いて説明する。駆動用TFT7011がn型で、発光素子7012から発せられる光が陰極7013側に射出する場合の、画素の断面図を示す。図28(B)では、駆動用TFT7011と電気的に接続された透光性を有する導電膜7017上に、発光素子7012の陰極7013が成膜されており、陰極7013上に発光層7014、陽極7015が順に積層されている。なお、陽極7015が透光性を有する場合、陽極上を覆うように、光を反射または遮蔽するための遮蔽膜7016が成膜されていてもよい。陰極7013は、図28(A)の場合と同様に、仕事関数が小さい導電性材料であれば様々な材料を用いることができる。ただしその膜厚は、光を透過する程度(好ましくは、5nm〜30nm程度)とする。例えば20nmの膜厚を有するアルミニウム膜を、陰極7013として用いることができる。そして発光層7014は、図28(A)と同様に、単数の層で構成されていても、複数の層が積層されるように構成されていてもどちらでも良い。陽極7015は光を透過する必要はないが、図28(A)と同様に、透光性を有する導電性材料を用いて形成することができる。そして遮蔽膜7016は、例えば光を反射する金属等を用いることができるが、金属膜に限定されない。例えば黒の顔料を添加した樹脂等を用いることもできる。
【0351】
陰極7013及び陽極7015で、発光層7014を挟んでいる領域が発光素子7012に相当する。図28(B)に示した画素の場合、発光素子7012から発せられる光は、矢印で示すように陰極7013側に射出する。
【0352】
次に、両面射出構造の発光素子について、図28(C)を用いて説明する。図28(C)では、駆動用TFT7021と電気的に接続された透光性を有する導電膜7027上に、発光素子7022の陰極7023が成膜されており、陰極7023上に発光層7024、陽極7025が順に積層されている。陰極7023は、図28(A)の場合と同様に、仕事関数が小さい導電性材料であれば様々な材料を用いることができる。ただしその膜厚は、光を透過する程度とする。例えば20nmの膜厚を有するAlを、陰極7023として用いることができる。そして発光層7024は、図28(A)と同様に、単数の層で構成されていても、複数の層が積層されるように構成されていてもどちらでも良い。陽極7025は、図28(A)と同様に、光を透過する透光性を有する導電性材料を用いて形成することができる。
【0353】
陰極7023と、発光層7024と、陽極7025とが重なっている部分が発光素子7022に相当する。図28(C)に示した画素の場合、発光素子7022から発せられる光は、矢印で示すように陽極7025側と陰極7023側の両方に射出する。
【0354】
なお、ここでは、発光素子として有機EL素子について述べたが、発光素子として無機EL素子を設けることも可能である。
【0355】
なお本実施の形態では、発光素子の駆動を制御する薄膜トランジスタ(駆動用TFT)と発光素子が電気的に接続されている例を示したが、駆動用TFTと発光素子との間に電流制御用TFTが接続されている構成であってもよい。
【0356】
なお本実施の形態で示す半導体装置は、図28に示した構成に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0357】
以上の工程により、半導体装置として信頼性の高い発光表示装置を作製することができる。
【0358】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0359】
(実施の形態10)
次に、本発明の半導体装置の一形態である表示パネルの構成について、以下に示す。本実施の形態では、表示素子として液晶素子を有する液晶表示装置の一形態である液晶表示パネル(液晶パネルともいう)、表示素子として発光素子を有する半導体装置の一形態である発光表示パネル(発光パネルともいう)について説明する。
【0360】
次に、本発明の半導体装置の一形態に相当する発光表示パネルの外観及び断面について、図29を用いて説明する。図29は、第1の基板上に形成された酸素ラジカル処理をされたゲート絶縁層上に酸素過剰酸化物半導体層、並びにソース領域及びドレイン領域として酸素欠乏酸化物半導体層を含む信頼性の高い薄膜トランジスタ及び発光素子を、第2の基板との間にシール材によって封止した、パネルの上面図であり、図29(B)は、図29(A)のH−Iにおける断面図に相当する。
【0361】
第1の基板4501上に設けられた画素部4502、信号線駆動回路4503a、4503b、及び走査線駆動回路4504a、4504bを囲むようにして、シール材4505が設けられている。また画素部4502、信号線駆動回路4503a、4503b、及び走査線駆動回路4504a、4504bの上に第2の基板4506が設けられている。よって画素部4502、信号線駆動回路4503a、4503b、及び走査線駆動回路4504a、4504bは、第1の基板4501とシール材4505と第2の基板4506とによって、充填材4507と共に密封されている。
【0362】
また第1の基板4501上に設けられた画素部4502、信号線駆動回路4503a、4503b、及び走査線駆動回路4504a、4504bは、薄膜トランジスタを複数有しており、図29(B)では、画素部4502に含まれる薄膜トランジスタ4510と、信号線駆動回路4503aに含まれる薄膜トランジスタ4509とを例示している。
【0363】
薄膜トランジスタ4509、4510は、酸素ラジカル処理をされたゲート絶縁層上に酸素過剰酸化物半導体層、並びにソース領域及びドレイン領域として酸素欠乏酸化物半導体層を含む信頼性の高い薄膜トランジスタに相当し、実施の形態1、実施の形態2、実施の形態3、又は実施の形態4に示す薄膜トランジスタを適用することができる。本実施の形態において、薄膜トランジスタ4509、4510はnチャネル型薄膜トランジスタである。
【0364】
また4511は発光素子に相当し、発光素子4511が有する画素電極である第1の電極層4517は、薄膜トランジスタ4510のソース電極層またはドレイン電極層と電気的に接続されている。なお発光素子4511の構成は、本実施の形態に示した構成に限定されない。発光素子4511から取り出す光の方向などに合わせて、発光素子4511の構成は適宜変えることができる。
【0365】
また、信号線駆動回路4503a、4503b、走査線駆動回路4504a、4504b、または画素部4502に与えられる各種信号及び電位は、FPC4518a、4518bから供給されている。
【0366】
本実施の形態では、接続端子4515が、第2の電極層4512と同じ導電膜から形成され、配線4516は、発光素子4511が有する第1の電極層4517と同じ導電膜から形成されている。
【0367】
接続端子4515は、FPC4518aが有する端子と、異方性導電膜4519を介して電気的に接続されている。
【0368】
発光素子4511からの光の取り出し方向に位置する基板には、第2の基板は透光性でなければならない。その場合には、ガラス板、プラスチック板、ポリエステルフィルムまたはアクリルフィルムのような透光性を有する材料を用いる。
【0369】
また、充填材4507としては窒素やアルゴンなどの不活性な気体の他に、紫外線硬化樹脂または熱硬化樹脂を用いることができ、PVC(ポリビニルクロライド)、アクリル、ポリイミド、エポキシ樹脂、シリコ−ン樹脂、PVB(ポリビニルブチラル)またはEVA(エチレンビニルアセテート)を用いることができる。本実施の形態は充填材として窒素を用いた。
【0370】
また、必要であれば、発光素子の射出面に偏光板、又は円偏光板(楕円偏光板を含む)、位相差板(λ/4板、λ/2板)、カラーフィルタなどの光学フィルムを適宜設けてもよい。また、偏光板又は円偏光板に反射防止膜を設けてもよい。例えば、表面の凹凸により反射光を拡散し、映り込みを低減できるアンチグレア処理を施すことができる。
【0371】
信号線駆動回路4503a、4503b、及び走査線駆動回路4504a、4504bは、別途用意された基板上に単結晶半導体膜又は多結晶半導体膜によって形成された駆動回路で実装されていてもよい。また、信号線駆動回路のみ、或いは一部、又は走査線駆動回路のみ、或いは一部のみを別途形成して実装しても良く、本実施の形態は図29の構成に限定されない。
【0372】
次に、本発明の半導体装置の一形態に相当する液晶表示パネルの外観及び断面について、図24を用いて説明する。図24は、第1の基板4001上に形成された酸素ラジカル処理をされたゲート絶縁層上に酸素過剰酸化物半導体層、並びにソース領域及びドレイン領域として酸素欠乏酸化物半導体層を含む信頼性の高い薄膜トランジスタ4010、4011、及び液晶素子4013を、第2の基板4006との間にシール材4005によって封止した、パネルの上面図であり、図24(B)は、図24(A1)(A2)のM−Nにおける断面図に相当する。
【0373】
第1の基板4001上に設けられた画素部4002と、走査線駆動回路4004とを囲むようにして、シール材4005が設けられている。また画素部4002と、走査線駆動回路4004の上に第2の基板4006が設けられている。よって画素部4002と、走査線駆動回路4004とは、第1の基板4001とシール材4005と第2の基板4006とによって、液晶層4008と共に封止されている。また第1の基板4001上のシール材4005によって囲まれている領域とは異なる領域に、別途用意された基板上に単結晶半導体膜又は多結晶半導体膜で形成された信号線駆動回路4003が実装されている。
【0374】
なお、別途形成した駆動回路の接続方法は、特に限定されるものではなく、COG方法、ワイヤボンディング方法、或いはTAB方法などを用いることができる。図24(A1)は、COG方法により信号線駆動回路4003を実装する例であり、図24(A2)は、TAB方法により信号線駆動回路4003を実装する例である。
【0375】
また第1の基板4001上に設けられた画素部4002と、走査線駆動回路4004は、薄膜トランジスタを複数有しており、図24(B)では、画素部4002に含まれる薄膜トランジスタ4010と、走査線駆動回路4004に含まれる薄膜トランジスタ4011とを例示している。
【0376】
薄膜トランジスタ4010、4011は、酸素ラジカル処理をされたゲート絶縁層上に酸素過剰酸化物半導体層、並びにソース領域及びドレイン領域として酸素欠乏酸化物半導体層を含む信頼性の高い薄膜トランジスタに相当し、実施の形態1、実施の形態2、実施の形態3、又は実施の形態4に示す薄膜トランジスタを適用することができる。本実施の形態において、薄膜トランジスタ4010、4011はnチャネル型薄膜トランジスタである。
【0377】
また、液晶素子4013が有する画素電極層4030は、薄膜トランジスタ4010と電気的に接続されている。そして液晶素子4013の対向電極層4031は第2の基板4006上に形成されている。画素電極層4030と対向電極層4031と液晶層4008とが重なっている部分が、液晶素子4013に相当する。なお、画素電極層4030、対向電極層4031はそれぞれ配向膜として機能する絶縁層4032、4033が設けられ、絶縁層4032、4033を介して液晶層4008を挟持している。
【0378】
なお、第1の基板4001、第2の基板4006としては、ガラス、金属(代表的にはステンレス)、セラミックス、プラスチックを用いることができる。プラスチックとしては、FRP(Fiberglass−Reinforced Plastics)板、PVF(ポリビニルフルオライド)フィルム、ポリエステルフィルム、ポリエステルフィルムまたはアクリル樹脂フィルムを用いることができる。また、アルミニウムホイルをPVFフィルムやポリエステルフィルムで挟んだ構造のシートを用いることもできる。
【0379】
また4035は絶縁膜を選択的にエッチングすることで得られる柱状のスペーサであり、画素電極層4030と対向電極層4031との間の距離(セルギャップ)を制御するために設けられている。なお球状のスペーサを用いていても良い。
【0380】
また別途形成された信号線駆動回路4003と、走査線駆動回路4004または画素部4002に与えられる各種信号及び電位は、FPC4018から供給されている。
【0381】
本実施の形態では、接続端子4015が、液晶素子4013が有する画素電極層4030と同じ導電膜から形成され、配線4016は、薄膜トランジスタ4010、4011のゲート電極層と同じ導電膜で形成されている。
【0382】
接続端子4015は、FPC4018が有する端子と、異方性導電膜4019を介して電気的に接続されている。
【0383】
また図24においては、信号線駆動回路4003を別途形成し、第1の基板4001に実装している例を示しているが、本実施の形態はこの構成に限定されない。走査線駆動回路を別途形成して実装しても良いし、信号線駆動回路の一部または走査線駆動回路の一部のみを別途形成して実装しても良い。
【0384】
図25は、本発明を適用して作製されるTFT基板2600を用いて半導体装置として液晶表示モジュールを構成する一例を示している。
【0385】
図25は液晶表示モジュールの一例であり、TFT基板2600と対向基板2601がシール材2602により固着され、その間にTFT等を含む画素部2603、液晶層を含む表示素子2604、着色層2605、偏光板2606が設けられ表示領域を形成している。着色層2605はカラー表示を行う場合に必要であり、RGB方式の場合は、赤、緑、青の各色に対応した着色層が各画素に対応して設けられている。TFT基板2600と対向基板2601の外側には偏光板2606、偏光板2607、拡散板2613が配設されている。光源は冷陰極管2610と反射板2611により構成され、回路基板2612は、フレキシブル配線基板2609によりTFT基板2600の配線回路部2608と接続され、コントロール回路や電源回路などの外部回路が組みこまれている。また偏光板と、液晶層との間に位相差板を有した状態で積層してもよい。
【0386】
液晶表示モジュールには、TN(Twisted Nematic)モード、IPS(In−Plane−Switching)モード、FFS(Fringe Field Switching)モード、MVA(Multi−domain Vertical Alignment)モード、PVA(Patterned Vertical Alignment)、ASM(Axially Symmetric aligned Micro−cell)モード、OCB(Optical Compensated Birefringence)モード、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)モード、AFLC(AntiFerroelectric Liquid Crystal)などを用いることができる。
【0387】
以上の工程により、半導体装置として信頼性の高い表示パネルを作製することができる。
【0388】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0389】
(実施の形態11)
本発明の半導体装置は、電子ペーパーとして適用することができる。電子ペーパーは、情報を表示するものであればあらゆる分野の電子機器に用いることが可能である。例えば、電子ペーパーを用いて、電子書籍(電子ブック)、ポスター、電車などの乗り物の車内広告、クレジットカード等の各種カードにおける表示等に適用することができる。電子機器の一例を図31、図32に示す。
【0390】
図31(A)は、電子ペーパーで作られたポスター2631を示している。広告媒体が紙の印刷物である場合には、広告の交換は人手によって行われるが、本発明を適用した電子ペーパーを用いれば短時間で広告の表示を変えることができる。また、表示も崩れることなく安定した画像が得られる。なお、ポスターは無線で情報を送受信できる構成としてもよい。
【0391】
また、図31(B)は、電車などの乗り物の車内広告2632を示している。広告媒体が紙の印刷物である場合には、広告の交換は人手によって行われるが、本発明を適用した電子ペーパーを用いれば人手を多くかけることなく短時間で広告の表示を変えることができる。また表示も崩れることなく安定した画像が得られる。なお、ポスターは無線で情報を送受信できる構成としてもよい。
【0392】
また、図32は、電子書籍2700の一例を示している。例えば、電子書籍2700は、筐体2701および筐体2703の2つの筐体で構成されている。筐体2701および筐体2703は、軸部2711により一体とされており、該軸部2711を軸として開閉動作を行うことができる。このような構成により、紙の書籍のような動作を行うことが可能となる。
【0393】
筐体2701には表示部2705が組み込まれ、筐体2703には表示部2707が組み込まれている。表示部2705および表示部2707は、続き画面を表示する構成としてもよいし、異なる画面を表示する構成としてもよい。異なる画面を表示する構成とすることで、例えば右側の表示部(図32では表示部2705)に文章を表示し、左側の表示部(図32では表示部2707)に画像を表示することができる。
【0394】
また、図32では、筐体2701に操作部などを備えた例を示している。例えば、筐体2701において、電源2721、操作キー2723、スピーカ2725などを備えている。操作キー2723により、頁を送ることができる。なお、筐体の表示部と同一面にキーボードやポインティングディバイスなどを備える構成としてもよい。また、筐体の裏面や側面に、外部接続用端子(イヤホン端子、USB端子、またはACアダプタおよびUSBケーブルなどの各種ケーブルと接続可能な端子など)、記録媒体挿入部などを備える構成としてもよい。さらに、電子書籍2700は、電子辞書としての機能を持たせた構成としてもよい。
【0395】
また、電子書籍2700は、無線で情報を送受信できる構成としてもよい。無線により、電子書籍サーバから、所望の書籍データなどを購入し、ダウンロードする構成とすることも可能である。
【0396】
(実施の形態12)
本発明に係る半導体装置は、さまざまな電子機器(遊技機も含む)に適用することができる。電子機器としては、例えば、テレビジョン装置(テレビ、またはテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。
【0397】
図33(A)は、テレビジョン装置9600の一例を示している。テレビジョン装置9600は、筐体9601に表示部9603が組み込まれている。表示部9603により、映像を表示することが可能である。また、ここでは、スタンド9605により筐体9601を支持した構成を示している。
【0398】
テレビジョン装置9600の操作は、筐体9601が備える操作スイッチや、別体のリモコン操作機9610により行うことができる。リモコン操作機9610が備える操作キー9609により、チャンネルや音量の操作を行うことができ、表示部9603に表示される映像を操作することができる。また、リモコン操作機9610に、当該リモコン操作機9610から出力する情報を表示する表示部9607を設ける構成としてもよい。
【0399】
なお、テレビジョン装置9600は、受信機やモデムなどを備えた構成とする。受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して優先または無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)または双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
【0400】
図33(B)は、デジタルフォトフレーム9700の一例を示している。例えば、デジタルフォトフレーム9700は、筐体9701に表示部9703が組み込まれている。表示部9703は、各種画像を表示することが可能であり、例えばデジタルカメラなどで撮影した画像データを表示させることで、通常の写真立てと同様に機能させることができる。
【0401】
なお、デジタルフォトフレーム9700は、操作部、外部接続用端子(USB端子、USBケーブルなどの各種ケーブルと接続可能な端子など)、記録媒体挿入部などを備える構成とする。これらの構成は、表示部と同一面に組み込まれていてもよいが、側面や裏面に備えるとデザイン性が向上するため好ましい。例えば、デジタルフォトフレームの記録媒体挿入部に、デジタルカメラで撮影した画像データを記憶したメモリを挿入して画像データを取り込み、取り込んだ画像データを表示部9703に表示させることができる。
【0402】
また、デジタルフォトフレーム9700は、無線で情報を送受信出来る構成としてもよい。無線により、所望の画像データを取り込み、表示させる構成とすることもできる。
【0403】
図34(A)は携帯型遊技機であり、筐体9881と筐体9891の2つの筐体で構成されており、連結部9893により、開閉可能に連結されている。筐体9881には表示部9882が組み込まれ、筐体9891には表示部9883が組み込まれている。また、図34(A)に示す携帯型遊技機は、その他、スピーカ部9884、記録媒体挿入部9886、LEDランプ9890、入力手段(操作キー9885、接続端子9887、センサ9888(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい又は赤外線を測定する機能を含むもの)、マイクロフォン9889)等を備えている。もちろん、携帯型遊技機の構成は上述のものに限定されず、少なくとも本発明に係る半導体装置を備えた構成であればよく、その他付属設備が適宜設けられた構成とすることができる。図34(A)に示す携帯型遊技機は、記録媒体に記録されているプログラム又はデータを読み出して表示部に表示する機能や、他の携帯型遊技機と無線通信を行って情報を共有する機能を有する。なお、図34(A)に示す携帯型遊技機が有する機能はこれに限定されず、様々な機能を有することができる。
【0404】
図34(B)は大型遊技機であるスロットマシン9900の一例を示している。スロットマシン9900は、筐体9901に表示部9903が組み込まれている。また、スロットマシン9900は、その他、スタートレバーやストップスイッチなどの操作手段、コイン投入口、スピーカなどを備えている。もちろん、スロットマシン9900の構成は上述のものに限定されず、少なくとも本発明に係る半導体装置を備えた構成であればよく、その他付属設備が適宜設けられた構成とすることができる。
【0405】
図35は、携帯電話機1000の一例を示している。携帯電話機1000は、筐体1001に組み込まれた表示部1002の他、操作ボタン1003、外部接続ポート1004、スピーカ1005、マイク1006などを備えている。
【0406】
図35に示す携帯電話機1000は、表示部1002を指などで触れることで、情報を入力ことができる。また、電話を掛ける、或いはメールを打つなどの操作は、表示部1002を指などで触れることにより行うことができる。
【0407】
表示部1002の画面は主として3つのモードがある。第1は、画像の表示を主とする表示モードであり、第2は、文字等の情報の入力を主とする入力モードである。第3は表示モードと入力モードの2つのモードが混合した表示+入力モードである。
【0408】
例えば、電話を掛ける、或いはメールを作成する場合は、表示部1002を文字の入力を主とする文字入力モードとし、画面に表示させた文字の入力操作を行えばよい。この場合、表示部1002の画面のほとんどにキーボードまたは番号ボタンを表示させることが好ましい。
【0409】
また、携帯電話機1000内部に、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサを有する検出装置を設けることで、携帯電話機1000の向き(縦か横か)を判断して、表示部1002の画面表示を自動的に切り替えるようにすることができる。
【0410】
また、画面モードの切り替えは、表示部1002を触れること、又は筐体1001の操作ボタン1003の操作により行われる。また、表示部1002に表示される画像の種類によって切り替えるようにすることもできる。例えば、表示部に表示する画像信号が動画のデータであれば表示モード、テキストデータであれば入力モードに切り替える。
【0411】
また、入力モードにおいて、表示部1002の光センサで検出される信号を検知し、表示部1002のタッチ操作による入力が一定期間ない場合には、画面のモードを入力モードから表示モードに切り替えるように制御してもよい。
【0412】
表示部1002は、イメージセンサとして機能させることもできる。例えば、表示部1002に掌や指を触れることで、掌紋、指紋等を撮像することで、本人認証を行うことができる。また、表示部に近赤外光を発光するバックライトまたは近赤外光を発光するセンシング用光源を用いれば、指静脈、掌静脈などを撮像することもできる。
【0413】
(実施の形態13)
本実施の形態は、本発明の薄膜トランジスタにおいてチャネル保護型の薄膜トランジスタの例である。従って、他は実施の形態1又は実施の形態2と同様に行うことができ、実施の形態1又は実施の形態2と同一部分又は同様な機能を有する部分、及び工程の繰り返しの説明は省略する。
【0414】
本実施の形態では、半導体装置に用いられる薄膜トランジスタ175について、図36を用いて説明する。
【0415】
図36に示すように、基板100上に、ゲート電極層101、ゲート絶縁層102、半導体層103、チャネル保護層108、ソース領域又はドレイン領域104a、104b、ソース電極層又はドレイン電極層105a、105bを含む薄膜トランジスタ175が設けられている。
【0416】
本実施の形態の薄膜トランジスタ175は、半導体層103のチャネル形成上にチャネル保護層108が設けられている。半導体層103はチャネル保護層108がチャネルストッパーとして機能するためエッチングされない。チャネル保護層108もゲート絶縁層102、半導体層103と大気に触れさせずに連続成膜することによって形成してもよい。積層する薄膜を大気に曝さずに連続的に成膜すると生産性が向上する。
【0417】
チャネル保護層108としては、無機材料(酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、窒化酸化珪素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウムなど)を用いることができる。作製法としては、スパッタ法を用いることができる。
【0418】
半導体層103は、In、Ga、及びZnを含む酸素過剰酸化物半導体層であり、ソース領域又はドレイン領域104a、104bはIn、Ga、及びZnを含む酸素欠乏酸化物半導体層である。
【0419】
酸素過剰領域を有するゲート絶縁層と酸素過剰酸化物半導体層は相性がよく、良好な界面特性を得ることができる。
【0420】
ゲート絶縁層102の形成後、ゲート絶縁層表面に酸素ラジカル処理を行い酸素過剰領域とする。また、ゲート絶縁層102、及び半導体層103は連続成膜する。
【0421】
ソース領域及びドレイン領域104a、104bの酸素欠乏酸化物半導体層は、1nm以上10nm以下のサイズの結晶粒を有し、半導体層103よりキャリア濃度が高い。
【0422】
本実施の形態では、ゲート電極層、ゲート絶縁層、半導体層(酸素過剰酸化物半導体層)、ソース領域及びドレイン領域(酸素欠乏酸化物半導体層)、ソース電極層及びドレイン電極層という積層構造を有する薄膜トランジスタとし、酸素欠乏酸化物半導体層に結晶粒を有するキャリア濃度が高いソース領域及びドレイン領域を用いることによって、半導体層の膜厚を薄膜にしたままで、かつ寄生容量を抑制できる。なお、薄膜であっても、ゲート絶縁層に対する割合が十分であるため寄生容量は十分に抑制される。
【0423】
本実施の形態によって、光電流が少なく、寄生容量が小さく、オンオフ比の高い薄膜トランジスタを得ることができ、良好な動特性を有する薄膜トランジスタを作製できる。よって、電気特性が高く信頼性のよい薄膜トランジスタを有する半導体装置を提供することができる。
【0424】
本実施の形態は他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲート電極層と、前記ゲート電極層上にゲート絶縁層と、前記ゲート絶縁層上に酸化物半導体層と、前記酸化物半導体層上にソース領域及びドレイン領域と、前記ソース領域及びドレイン領域上にソース電極層及びドレイン電極層とを含む薄膜トランジスタを有し、
前記ゲート絶縁層と前記酸化物半導体層との界面に酸素濃度のピークを有し、かつ前記ゲート絶縁層の酸素濃度は濃度勾配を有し、その酸素濃度は前記ゲート絶縁層と前記酸化物半導体層との界面に近づくにつれて増加することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
ゲート電極層と、前記ゲート電極層上にゲート絶縁層と、前記ゲート絶縁層上に酸化物半導体層と、前記酸化物半導体層上にソース領域及びドレイン領域と、前記ソース領域及びドレイン領域上にソース電極層及びドレイン電極層とを含む薄膜トランジスタを有し、
前記ゲート絶縁層と前記酸化物半導体層との界面に酸素濃度のピークを有し、かつ前記ゲート絶縁層及び前記酸化物半導体層の酸素濃度は濃度勾配を有し、その酸素濃度は前記ゲート絶縁層と前記酸化物半導体層との界面に近づくにつれて増加することを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、前記酸化物半導体層の酸素濃度は前記ソース領域及び前記ドレイン領域の酸素濃度より高いことを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項において、前記酸化物半導体層、前記ソース領域及び前記ドレイン領域はインジウム、ガリウム、及び亜鉛を含む酸化物半導体層であることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
基板上にゲート電極層を形成し、
前記ゲート電極層上にゲート絶縁層を形成し、
前記ゲート絶縁層を酸素ラジカルに曝して改質し、
前記改質されたゲート絶縁層上に酸化物半導体層を形成し、
前記酸化物半導体層上にソース領域及びドレイン領域を形成し、
前記ソース領域及び前記ドレイン領域上にソース電極層及びドレイン電極層を形成し、
前記ゲート絶縁層及び前記酸化物半導体層は大気に曝さずに連続的に形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項6】
基板上にゲート電極層を形成し、
前記ゲート電極層上にゲート絶縁層を形成し、
前記ゲート絶縁層を酸素ラジカルに曝して改質し、
前記改質されたゲート絶縁層上に酸化物半導体層を形成し、
前記酸化物半導体層上にソース領域及びドレイン領域を形成し、
前記酸化物半導体層、前記ソース領域及びドレイン領域を200℃以上600℃以下で加熱し、
前記ソース領域及び前記ドレイン領域上にソース電極層及びドレイン電極層を形成し、
前記ゲート絶縁層及び前記酸化物半導体層は大気に曝さずに連続的に形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項7】
請求項5又は請求項6において、前記ゲート絶縁層、前記酸化物半導体層、前記ソース領域、前記ドレイン領域、前記ソース電極層、及び前記ドレイン電極層はスパッタ法によって形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【公開番号】特開2010−80947(P2010−80947A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−195539(P2009−195539)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】