説明

車両用制御装置

【課題】回生エネルギーの回収効率の向上を図り、低燃費性能を得ることができる車両用制御装置を提供すること。
【解決手段】回生装置による回生を行う際には、車輪の転がり抵抗がより小さくなるように、かかる車輪のキャンバ角を調整する。これにより、車両走行時の運動エネルギーを電気エネルギーに変換する際には、その変換の際に発生する変換損失(車輪の変形ヒステリシスロス)を小さくして、変換損失の低減を図ることができるので、その分、回生エネルギーの回収効率の向上を図り、省燃費性能を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪と、その車輪のキャンバ角を調整するキャンバ角調整装置と、車輪の回転エネルギーを電気エネルギーに回生する回生装置とを備えた車両に対し、キャンバ角調整装置を作動させて、車輪のキャンバ角を制御する車両用制御装置に関し、特に、回生エネルギーの回収効率の向上を図り、省燃費性能を得ることができる車両用制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電動モータを駆動源とするいわゆる電気自動車やハイブリット車両では、減速時に、電動モータの回生運転(電動モータを発電機として動作させつつ、その発電エネルギーを電動モータの電源である蓄電池(バッテリ)に充電させる運転)を行い、これにより、走行時の運動エネルギーを電気エネルギーに変換し、そのときの抵抗により制動力を得る回生制動を行うことが一般的である。
【0003】
回生制動は、回生エネルギーを回収できることから、燃費向上の上で有利であり、かかる回生制動を優先的に利用することが好ましい。そこで、例えば、特許文献1には、ブレーキペダルの操作状態に応じて設定される要求制動力が所定値よりも小さい場合には回生制動のみを行い、要求制動力が所定値よりも大きな場合に摩擦力を利用した摩擦制動を併せて行うという技術が開示されている。
【0004】
また、摩擦ブレーキは、常時適度に使用されていないと、摩擦係合面に錆が生じ、制動性能の低下や制動時の騒音振動などを招く。そこで、例えば、特許文献2には、摩擦係合面を良好な状態に維持するために、回生制動を優先して使用しつつ、摩擦制動も適度に使用するという技術が開示されている。
【特許文献1】特開平10−264793号公報
【特許文献2】特開2006−224768号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、回生制動の際には、車両走行時の運動エネルギーの全てを電気エネルギーに変換することが、燃費向上の観点から極めて好ましい。しかしながら、上述した従来の技術では、車両走行時の空気抵抗や車輪の転がり抵抗による変換損失が発生するため、回生エネルギーの回収効率が悪く、燃費性能が不十分であるという問題点があった。
【0006】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、回生エネルギーの回収効率の向上を図り、省燃費性能を得ることができる車両用制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、請求項1記載の車両用制御装置は、車速を減速する回生ブレーキとして作動可能であって、車輪の回転エネルギーを電気エネルギーとして回生すると共に、前記電気エネルギーを蓄電可能な蓄電装置を有する回生装置と、前記車輪のキャンバ角を調整するキャンバ角調整装置とを備えた車両に用いられるものであり、前記キャンバ角調整装置を制御して、前記車輪のキャンバ角を所定のキャンバ角に調整するキャンバ角制御手段を備え、そのキャンバ角制御手段は、前記回生装置による回生を行う際に、前記車輪の転がり抵抗がより小さくなるように、前記キャンバ角調整装置を制御する。
【0008】
請求項2記載の車両用制御装置は、請求項1記載の車両用制御装置において、運転者の減速要求を検出する減速要求検出手段と、前記車両が走行する路面の路面状況を検出する走行路面検出手段と、前記減速要求検出手段により検出された減速要求および前記走行路面検出手段により検出された路面状況に基づいて必要摩擦係数を算出する必要摩擦係数算出手段と、を備え、前記キャンバ角調整手段は、前記必要摩擦係数と前記減速要求とに応じて、前記車輪のキャンバ角を所定のキャンバ角に調整する。
【0009】
請求項3記載の車両用制御装置は、請求項2記載の車両用制御装置において、前記車両を前記減速要求に応じて減速させるのに必要とされる必要制動力を算出する必要制動力算出手段と、前記車輪の摩擦係数および転がり抵抗とキャンバ角との関係を記憶するキャンバ角マップと、を備え、前記キャンバ角調整手段は、前記車輪が発揮できる最小の摩擦係数である最小摩擦係数を前記キャンバ角マップに基づいて算出すると共に、前記必要制動力が前記回生ブレーキのみから得られ、かつ、前記必要摩擦係数が前記最小摩擦係数より小さいときに、転がり抵抗が最小となるキャンバ角を前記キャンバ角マップに基づいて算出すると共にその算出したキャンバ角を所定のキャンバ角として、前記車輪のキャンバ角を調整する。
【0010】
請求項4記載の車両用制御装置は、請求項2記載の車両用制御装置において、前記車輪の摩擦係数および転がり抵抗とキャンバ角との関係を記憶するキャンバ角マップを備え、
前記車両は、前記車輪に制動力を付与する機械式制動装置を備え、前記キャンバ角調整手段は、前記車輪が発揮できる最小摩擦係数および最大摩擦係数を前記キャンバ角マップに基づいて算出し、前記必要制動力が前記回生ブレーキと前記機械式制動装置とから得られ、かつ、前記必要摩擦係数が前記最小摩擦係数より大きく前記最大摩擦係数より小さいときに、前記必要摩擦係数に対応するキャンバ角を前記キャンバ角マップに基づいて算出すると共にその算出したキャンバ角を所定のキャンバ角として、前記車輪のキャンバ角を調整する。
【0011】
請求項5記載の車両用制御装置は、請求項3記載の車両用制御装置において、前記車両は、前記車輪に制動力を付与する機械式制動装置を備え、前記キャンバ角調整手段は、前記車輪が発揮できる最大摩擦係数を前記キャンバ角マップに基づいて算出し、前記必要制動力が前記回生ブレーキと前記機械式制動装置とから得られ、かつ、前記必要摩擦係数が前記最小摩擦係数より大きく前記最大摩擦係数より小さいときに、前記必要摩擦係数に対応するキャンバ角を前記キャンバ角マップに基づいて算出すると共にその算出したキャンバ角を所定のキャンバ角として、前記車輪のキャンバ角を調整する。
【0012】
請求項6記載の車両用制御装置は、請求項3から5のいずれかに記載の車両用制御装置において、前記車輪は、従動輪と、前記回生装置により回転駆動される駆動輪とを備え、前記キャンバ角調整手段は、前記必要摩擦係数および前記減速要求に応じて前記駆動輪および従動輪のキャンバ角を所定のキャンバ角に調整する。
【0013】
請求項7記載の車両用制御装置は、請求項2記載の車両用制御装置において、運転者の減速要求を検出する減速要求検出手段と、前記車両を前記減速要求に応じて減速させるのに必要とされる必要制動力を算出する必要制動力算出手段と、前記車輪の摩擦係数および転がり抵抗とキャンバ角との関係を記憶するキャンバ角マップを備え、前記車輪は、従動輪と、前記回生装置により回転駆動される駆動輪とを備え、前記車両は、前記車輪に制動力を付与する機械式制動装置を備え、前記キャンバ角調整手段は、前記車輪が発揮できる最小摩擦係数および最大摩擦係数を前記キャンバ角マップに基づいて算出し、前記必要制動力が前記回生ブレーキと前記機械式制動装置とから得られ、かつ、前記必要摩擦係数が前記最小摩擦係数より大きく前記最大摩擦係数より小さいときに、前記必要摩擦係数に対応するキャンバ角を前記キャンバ角マップに基づいて算出すると共にその算出したキャンバ角を所定のキャンバ角として、前記駆動輪のキャンバ角を調整すると共に、転がり抵抗が最小となるキャンバ角を前記キャンバ角マップに基づいて算出すると共にその算出したキャンバ角を所定のキャンバ角として、前記従動輪のキャンバ角を調整する。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の車両用制御装置によれば、車両の走行中にキャンバ角調整装置が作動され、車輪にキャンバ角が調整されると、かかるキャンバ角の調整に伴って、車輪の特性(例えば、グリップ特性や転がり抵抗特性)が変更される。また、この場合、車両の走行に伴い、車輪が回転されると、その車輪の回転エネルギーが、回生装置によって、電気エネルギーに回生され、蓄電装置に蓄電される。
【0015】
ここで、本発明によれば、キャンバ角調整手段を備え、回生装置による回生を行う際には、車輪の転がり抵抗がより小さくなるように、かかる車輪のキャンバ角を調整することができる。
【0016】
これにより、車両走行時の運動エネルギーを電気エネルギーに変換する際には、その変換の際に発生する変換損失(車輪の変形ヒステリシスロス)を小さくして、変換損失の低減を図ることができる。よって、変換損失の低減分に相当するエネルギーを使って回生装置によりさらに多くの電気エネルギーを回生することができるので、その分、回生エネルギーの回収効率の向上を図り、省燃費性能を得ることができるという効果がある。
【0017】
請求項2記載の車両用制御装置によれば、請求項1記載の車両用制御装置の奏する効果に加え、キャンバ調整手段は、必要摩擦係数算出手段により算出された必要摩擦係数に応じて、車輪のキャンバ角を調整するので、車輪の滑動(スリップ又はロック)を抑制することができる。その結果、車両走行時の運動エネルギーを電気エネルギーに変換する際には、車輪の滑動が抑制される分、車輪の運動(回転)エネルギーを電気エネルギーに確実に変換することができ、車輪の滑動に伴って回収エネルギーの回収効率が低下することを抑制することができるので、省燃費性能の向上を図ることができるという効果がある。同時に、制動性能を確保することができるという効果がある。
【0018】
また、本発明によれば、車両が走行する路面の路面状況を検出する走行路面検出手段を備え、その走行路面検出手段により検出された路面状況に基づいて必要摩擦係数を必要摩擦係数算出手段により算出する構成であるので、路面状況に応じて制御を変更することができる。よって、車輪の滑動(スリップ又はロック)をより確実に抑制して、車輪の運動(回転)エネルギーを電気エネルギーに確実に変換することができるという効果がある。
【0019】
請求項3記載の車両用制御装置によれば、請求項2記載の車両用制御装置の奏する効果に加え、キャンバ角調整手段は、必要制動力を回生ブレーキのみから得ることができ、かつ、必要摩擦係数が最小摩擦係数より小さいときに、転がり抵抗が最小となるキャンバ角をキャンバ角マップに基づいて算出すると共にその算出したキャンバ角を所定のキャンバ角として、車輪のキャンバ角を調整するので、車両走行時の運動エネルギーを電気エネルギーに変換する際には、その変換の際に発生する変換損失(車輪の変形ヒステリシスロス)を最小とすることができる。その結果、変換損失の低減を図り、変換損失の低減分に相当するエネルギーを使って回生装置によりさらに多くの電気エネルギーを回生することができるので、その分、回生エネルギーの回収効率の向上を図り、省燃費性能を得ることができるという効果がある。
【0020】
請求項4記載の車両用制御装置によれば、請求項2記載の車両用制御装置の奏する効果に加え、キャンバ角調整手段は、車輪が発揮できる最小摩擦係数および最大摩擦係数をキャンバ角マップに基づいて算出し、必要制動力が回生ブレーキと機械式制動装置とから得られ、かつ、必要摩擦係数が最小摩擦係数より大きく最大摩擦係数より小さいときに、必要摩擦係数に対応するキャンバ角をキャンバ角マップに基づいて算出すると共にその算出したキャンバ角を所定のキャンバ角として、車輪のキャンバ角を調整するので、車輪に必要最低限の摩擦係数を発揮させ、その滑動(スリップ又はロック)を抑制することができる。
【0021】
その結果、車両走行時の運動エネルギーを電気エネルギーに変換する際には、車輪の滑動が抑制される分、車輪の運動(回転)エネルギーを電気エネルギーに確実に変換することができ、車輪の滑動に伴って回収エネルギーの回収効率が低下することを抑制することができるので、省燃費性能の向上を図ることができるという効果がある。同時に、制動性能を確保することができるという効果がある。
【0022】
更に、車輪の滑動(スリップ又はロック)を抑制しつつ、車輪の転がり抵抗がより小さくなるように、車輪のキャンバ角を調整するので、運動エネルギーを電気エネルギーに変換する際の変換損失(車輪の変形ヒステリシスロス)を低減して、回生エネルギーの回収効率を高めることができ、その分、省燃費性能の向上を図ることができるという効果がある。
【0023】
請求項5記載の車両用制御装置によれば、請求項3記載の車両用制御装置の奏する効果に加え、キャンバ角調整手段は、車輪が発揮できる最大摩擦係数をキャンバ角マップに基づいて算出し、必要制動力が回生ブレーキと機械式制動装置とから得られ、かつ、必要摩擦係数が最小摩擦係数より大きく最大摩擦係数より小さいときに、必要摩擦係数に対応するキャンバ角をキャンバ角マップに基づいて算出すると共にその算出したキャンバ角を所定のキャンバ角として、車輪のキャンバ角を調整するので、車輪に必要最低限の摩擦係数を発揮させ、その滑動(スリップ又はロック)を抑制することができる。
【0024】
その結果、車両走行時の運動エネルギーを電気エネルギーに変換する際には、車輪の滑動が抑制される分、車輪の運動(回転)エネルギーを電気エネルギーに確実に変換することができ、車輪の滑動に伴って回収エネルギーの回収効率が低下することを抑制することができるので、省燃費性能の向上を図ることができるという効果がある。同時に、制動性能を確保することができるという効果がある。
【0025】
更に、車輪の滑動(スリップ又はロック)を抑制しつつ、車輪の転がり抵抗がより小さくなるように、車輪のキャンバ角を調整するので、運動エネルギーを電気エネルギーに変換する際の変換損失(車輪の変形ヒステリシスロス)を低減して、回生エネルギーの回収効率を高めることができ、その分、省燃費性能の向上を図ることができるという効果がある。
【0026】
請求項6記載の車両用制御装置によれば、請求項3から5のいずれかに記載の車両用制御装置の奏する効果に加え、車輪は、従動輪と回生装置により回転駆動される駆動輪とを備え、キャンバ角調整手段は、必要摩擦係数および減速要求に応じて駆動輪および従動輪のキャンバ角を所定のキャンバ角に調整するので、車輪(従動輪および駆動輪)の滑動(スリップ又はロック)を抑制することができる。その結果、車両走行時の運動エネルギーを電気エネルギーに変換する際には、車輪の滑動が抑制される分、車輪の運動(回転)エネルギーを電気エネルギーに確実に変換することができ、車輪の滑動に伴って回収エネルギーの回収効率が低下することを抑制することができるので、省燃費性能の向上を図ることができるという効果がある。同時に、制動性能を確保することができるという効果がある。
【0027】
請求項7記載の車両用制御装置によれば、請求項2記載の車両用制御装置の奏する効果に加え、キャンバ角調整手段は、車輪が発揮できる最小摩擦係数および最大摩擦係数を前記キャンバ角マップに基づいて算出し、必要制動力が回生ブレーキと機械式制動装置とから得られ、かつ、必要摩擦係数が最小摩擦係数より大きく最大摩擦係数より小さいときに、必要摩擦係数に対応するキャンバ角を前記キャンバ角マップに基づいて算出すると共にその算出したキャンバ角を所定のキャンバ角として、駆動輪のキャンバ角を調整するので、駆動輪の滑動(スリップ又はロック)を抑制することができる。その結果、駆動輪の回転をモータ装置へ確実に伝達して、運動(回転)エネルギーから電気エネルギーへの変換を効率良く行うことができるので、駆動輪の滑動に伴って回収エネルギーの回収効率が低下することを抑制して、省燃費性能の向上を図ることができる。同時に、制動性能を確保することができる。
【0028】
一方で、従動輪は、かかる従動輪の回転を回生のためにモータ装置へ伝達する必要がなく、車両の走行に伴って従動されていれば足りる車輪であるところ、本発明によれば、キャンバ角調整装置は、転がり抵抗が最小となるキャンバ角を前記キャンバ角マップに基づいて算出すると共にその算出したキャンバ角を所定のキャンバ角として、従動輪のキャンバ角を調整するので、車両の運動エネルギーを電気エネルギーに変換する際には、その変換の際に発生する変換損失(車輪の変形ヒステリシスロス)を最小として、変換損失を効果的に低減することができる。これにより、回生エネルギーの回収効率の向上を図り、省燃費性能をより一層達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施の形態における車両用制御装置100が搭載される車両1を模式的に示した模式図である。なお、図1の矢印FWDは、車両1の前進方向を示す。
【0030】
まず、車両1の概略構成について説明する。車両1は、図1に示すように、車体フレームBFと、その車体フレームBFに支持される複数(本実施の形態では4輪)の車輪2と、それら各車輪2の内の一部(本実施の形態では、左右の前輪2FL,2FR)を独立に回転駆動する車輪駆動装置3と、各車輪2の操舵駆動及びキャンバ角の調整等を行うキャンバ角調整装置4とを主に備え、車輪2のキャンバ角を車両用制御装置100により制御して、車輪2に設けられた2種類のトレッドを使い分けることで(図5及び図6参照)、走行性能の向上と省燃費の達成とを図ることができるように構成されている。
【0031】
次いで、各部の詳細構成について説明する。車輪2は、図1に示すように、車両1の進行方向前方側に位置する左右の前輪2FL,2FRと、進行方向後方側に位置する左右の後輪2RL,2RRとの4輪を備える。なお、左右の前輪2FL,2FRは、車輪駆動装置3から回転駆動力を付与されて、それぞれ独立に回転駆動される駆動輪として構成され、また、左右の後輪2RL,2RRは、車両1の走行に伴って従動される従動輪として構成されている。
【0032】
車輪駆動装置3は、上述したように、左右の前輪2FL,2FRをそれぞれ独立に回転駆動するための回転駆動装置であり、図1に示すように、2個の電動モータ(FL,FRモータ3FL,3FR)を左右の前輪2FL,2FRに(即ち、インホイールモータとして)配設して構成されている。運転者がアクセルペダル52を操作した場合には、各車輪駆動装置3から回転駆動力が左右の前輪2FL,2FRに付与され、それら左右の前輪2FL,2FRがアクセルペダル52の操作量に応じた回転速度で回転される。
【0033】
また、車輪2(前後輪2FL〜2RR)は、キャンバ角調整装置4により舵角とキャンバ角とが調整可能に構成されている。キャンバ角調整装置4は、各車輪2の舵角とキャンバ角とを調整するための駆動装置であり、図1に示すように、各車輪2に対応する位置に合計4個(FL〜RRアクチュエータ4FL〜4RR)が配置されている。
【0034】
例えば、運転者がステアリング54を操作した場合には、キャンバ角調整装置4の一部(例えば、前輪2FL,2FR側のみ)又は全部が駆動され、ステアリング54の操作量に応じた舵角を車輪2に付与する。これにより、車輪2の操舵動作が行われ、車両1が所定の方向へ旋回される。
【0035】
また、キャンバ角調整装置4は、車両1の走行状態(例えば、定速走行時、加減速時、制動時、或いは、直進時または旋回時)や車輪2が走行する路面Gの状態(例えば、乾燥路面時と雨天路面時)などの状態変化に応じて、車両用制御装置100により作動制御され、車輪2のキャンバ角を調整する。
【0036】
ここで、図2を参照して、車輪駆動装置3とキャンバ角調整装置4との詳細構成について説明する。図2(a)は、車輪2の断面図であり、図2(b)は、車輪2の舵角及びキャンバ角の調整方法を模式的に説明する模式図である。
【0037】
なお、図2(a)では、車輪駆動装置3に駆動電圧を供給するための電源配線などの図示が省略されている。また、図2(b)中の仮想軸Xf−Xb、仮想軸Yl−Yr、及び、仮想軸Zu−Zdは、それぞれ車両1の前後方向、左右方向、及び、上下方向にそれぞれ対応する。
【0038】
図2(a)に示すように、車輪2(前後輪2FL〜2RR)は、ゴム状弾性材から構成されるタイヤ2aと、アルミニウム合金などから構成されるホイール2bとを主に備えて構成され、ホイール2bの内周部には、車輪駆動装置3(FL,FRモータ3FL,3FR)がインホイールモータとして配設されている。
【0039】
タイヤ2aは、車両1の内側(図2(a)右側)に配置される第1トレッド21と、その第1トレッド21と特性が異なり、車両1の外側(図2(a)左側)に配置される第2トレッド22とを備える。なお、車輪2(タイヤ2a)の詳細構成については図4を参照して後述する。
【0040】
車輪駆動装置3は、図2(a)に示すように、その前面側(図2(a)左側)に突出された駆動軸3aがホイール2bに連結固定されており、駆動軸3aを介して、回転駆動力を車輪2へ伝達可能に構成されている。また、車輪駆動装置3の背面には、キャンバ角調整装置4(FL〜RRアクチュエータ4FL〜4RR)が連結固定されている。
【0041】
なお、後輪2RL,2RRに関しては、車輪駆動装置3に代えて、連結部材6(図1参照)がホイール2bの内周部に配設されており、この連結部材6には、その前面側に駆動軸3aを介してホイール2bが連結固定されると共に、その背面にキャンバ角調整装置4が連結固定されている。
【0042】
キャンバ角調整装置4は、複数本(本実施の形態では3本)の油圧シリンダ4a〜4cを備えており、それら3本の油圧シリンダ4a〜4cのロッド部は、車輪駆動装置3又は連結部材6(図1参照)の背面側(図2(a)右側)にジョイント部(本実施の形態ではユニバーサルジョイント)60を介して連結固定されている。
【0043】
なお、図2(b)に示すように、各油圧シリンダ4a〜4cは、周方向略等間隔(即ち、周方向120°間隔)に配置されると共に、1の油圧シリンダ4bは、仮想軸Zu−Zd上に配置されている。
【0044】
これにより、各油圧シリンダ4a〜4cが各ロッド部をそれぞれ所定方向に所定長さだけ伸長駆動又は収縮駆動することで、車輪駆動装置3又は連結部材6(図1参照)が仮想軸Xf−Xb,Zu−Xdを揺動中心として揺動駆動され、その結果、各車輪2に所定のキャンバ角と舵角とが付与される。
【0045】
例えば、図2(b)に示すように、車輪2が中立位置(車両1の直進状態)にある状態で、油圧シリンダ4bのロッド部が収縮駆動され、かつ、油圧シリンダ4a,4cのロッド部が伸長駆動されると、車輪駆動装置3又は連結部材6(図1参照)が仮想線Xf−Xb回りに回転され(図2(b)矢印A)、車輪2にマイナス方向(ネガティブキャンバ)のキャンバ角(車輪2の中心線が仮想線Zu−Zdに対してなす角度)が付与される。一方、これとは逆の方向に油圧シリンダ4b及び油圧シリンダ4a,4cがそれぞれ伸縮駆動されると、車輪2にプラス方向(ポジティブキャンバ)のキャンバ角が付与される。
【0046】
また、車輪2が中立位置(車両1の直進状態)にある状態で、油圧シリンダ4aのロッド部が収縮駆動され、かつ、油圧シリンダ4cのロッド部が伸長駆動されると、車輪駆動装置3又は連結部材6(図1参照)が仮想線Zu−Zd回りに回転され(図2(b)矢印B)、車輪2にトーイン傾向の舵角(車輪2の中心線が車両1の基準線に対してなす角度であり、車両1の進行方向とは無関係に定まる角度)が付与される。一方、これとは逆の方向に油圧シリンダ4a及び油圧シリンダ4cが伸縮駆動されると、車輪2にトーアウト傾向の舵角が付与される。
【0047】
なお、ここで例示した各油圧シリンダ4a〜4cの駆動方法は、上述した通り、車輪2が中立位置にある状態から駆動する場合を説明するものであるが、これらの駆動方法を組み合わせて各油圧シリンダ4a〜4cの伸縮駆動を制御することにより、車輪2に任意のキャンバ角及び舵角を付与することができる。
【0048】
図1に戻って説明する。アクセルペダル52及びブレーキペダル53は、運転者により操作される操作部材であり、各ペダル52,53の踏み込み状態(踏み込み量、踏み込み速度など)に応じて、車両1の走行速度や制動力が決定され、車輪駆動装置3の作動制御が行われる。
【0049】
ステアリング54は、運転者により操作される操作部材であり、その操作状態(回転角度、回転速度など)に応じて、車両1の旋回半径などが決定され、キャンバ角調整装置4の作動制御が行われる。ワイパースイッチ55は、運転者により操作される操作部材であり、その操作状態(操作位置など)に応じて、ワイパー(図示せず)の作動制御が行われる。
【0050】
同様に、ウインカスイッチ56及び高グリップスイッチ57は、運転者により操作される操作部材であり、その操作状態(操作位置など)に応じて、前者の場合はウインカー(図示せず)の作動制御が行われ、後者の場合はキャンバ角調整装置4の作動制御が行われる。
【0051】
なお、高グリップスイッチ57がオンされた状態は、車輪2の特性として高グリップ性が選択された状態に対応し、高グリップスイッチ57がオフされた状態は車輪2の特性として低転がり抵抗が選択された状態に対応する。但し、本実施の形態では、高グリップスイッチ57の操作状態に関わらず、車輪2のキャンバ角がCPU71(図3参照)により自動的に調整される。
【0052】
車両用制御装置100は、上述のように構成された車両1の各部を制御するための車両用制御装置であり、例えば、各ペダル52,53の操作状態を検出し、その検出結果に応じて車輪駆動装置3を作動させることで、各車輪2の回転速度を制御する。
【0053】
或いは、アクセルペダル52、ブレーキペダル53やステアリング54の操作状態を検出し、その検出結果に応じてキャンバ角調整装置4を作動させ、各車輪のキャンバ角を調整することで、車輪2に設けられた2種類のトレッド21,22を使い分けて(図5及び図6参照)、走行性能の向上と省燃費の達成とを図る。ここで、図3を参照して、車両用制御装置100の詳細構成について説明する。
【0054】
図3は、車両用制御装置100の電気的構成を示したブロック図である。車両用制御装置100は、図3に示すように、CPU71、ROM72及びRAM73を備え、これらはバスライン74を介して入出力ポート75に接続されている。また、入出力ポート75には、車輪駆動装置3等の複数の装置が接続されている。
【0055】
CPU71は、バスライン74により接続された各部を制御する演算装置である。ROM72は、CPU71により実行される制御プログラムや固定値データ等を格納した書き換え不能な不揮発性のメモリであり、RAM73は、制御プログラムの実行時に各種のデータを書き換え可能に記憶するためのメモリである。
【0056】
なお、ROM72には、図7に図示される摩擦係数マップ72aと、図8に図示されるキャンバ角マップ72bとが設けられている。また、ROM72には、図10に図示されるフローチャート(キャンバ制御処理)のプログラムが格納されている。
【0057】
ここで、図7及び図8を参照して、摩擦係数マップ72a及びキャンバ角マップ72bについて説明する。図7は、摩擦係数マップ72aの内容を模式的に図示した模式図である。摩擦係数マップ72aは、ブレーキペダル53の踏み込み量(操作量)と必要前後摩擦係数との関係を記憶したマップである。
【0058】
CPU71は、この摩擦係数マップ72aの内容に基づいて、現在の車両1の走行状態において車輪2が発揮すべき摩擦係数(即ち、車輪2にスリップやロックを生じさせないために必要な摩擦係数)を算出する。なお、縦軸に示した必要前後摩擦係数は、車輪2にスリップ又はロックを生じさせないために必要な車両前後方向(図1上下方向)における摩擦係数である。
【0059】
この摩擦係数マップ72aによれば、図7に示すように、ブレーキペダル53が操作されていない状態(ブレーキ操作量=0)では、必要前後摩擦係数が最小値μfminに規定されると共に、ブレーキペダル53の操作量(踏み込み量)に比例して、必要前後摩擦係数が直線的に変化し、ブレーキペダル53の操作量が最大に操作された状態(ブレーキ操作量=100%)において、必要前後摩擦係数が最大値μfmaxとなるように規定されている。
【0060】
図8は、キャンバ角マップ72bの内容を模式的に図示した模式図である。キャンバ角マップ72bは、車輪2の摩擦係数および転がり抵抗とキャンバ角との関係を記憶したマップであり、車輪2が発揮可能な摩擦係数を表している。なお、キャンバ角マップ72bは、車輪2について実測した実測値に基づくものである。
【0061】
CPU71は、このキャンバ角マップ72bの内容に基づいて、車輪2に付与すべきキャンバ角を決定する。なお、図8において、実線501は摩擦係数に、実線502は転がり抵抗に、それぞれ対応する。
【0062】
また、横軸のキャンバ角は、図8右側(角度0度よりもθa側)がネガティブキャンバ(即ち、高グリップの第1トレッド21の接地(接地圧又は接地面積)が増加する側、図5参照)に、図8左側(角度0度よりもθy側)がポジティブキャンバ(即ち、低転がり抵抗の第2トレッド22の接地(接地圧又は接地面積)が増加する側、図6参照)に、それぞれ対応する。
【0063】
ここで、キャンバ角マップ72bには、後述する路面状況スイッチの3種類の操作状態に対応して、3種類のマップが記憶されているが、図8では、図面を簡素化して理解を容易とするべく、その内の1種類のマップ(乾燥舗装路用マップ)のみを代表例として図示し、他の2種類についてはその図示を省略している。
【0064】
即ち、キャンバ角マップ72bには、乾燥舗装路用マップ、未舗装用マップ及び雨天舗装路用マップの3種類が記憶されており、CPU71は、路面状況スイッチ(路面状況スイッチセンサ装置558a)の操作状態を検出し、乾燥舗装路が指示されている場合には乾燥舗装路用マップを、未舗装路が指示されている場合には未舗装路用マップを、雨天舗装路が指示されている場合には雨天舗装路用マップを、それぞれ読み出し、その内容に基づいて、キャンバ角調整装置4の作動制御を行う。
【0065】
このキャンバ角マップ72bによれば、図8に示すように、キャンバ角が0度の状態(即ち、第1トレッド21及び第2トレッド22が均等に接地している状態)では、摩擦係数は最小値μbとなる。なお、転がり抵抗についても同様であり、最小値となる。
【0066】
キャンバ角が0度の状態(即ち、第1トレッド21と第2トレッド22とが均等に接地している状態)から、ネガティブキャンバ側(θa側)へ向けて変化すると、かかる変化に伴って、高グリップ特性の第1トレッド21の接地(接地圧又は接地面積)が漸次増加する(低転がり抵抗の第2トレッド22の接地(接地圧又は接地面積)が漸次減少する)ことで、摩擦係数(及び転がり抵抗)が漸次増加するように規定されている。
【0067】
そして、キャンバ角がθa(以下、「第1キャンバ角θa」と称す。)に達すると、第2トレッド22が走行路面から離間され、第1トレッド21のみが走行路面に接地した状態となることで、摩擦係数が最大値μaに達する。
【0068】
なお、キャンバ角が第2キャンバ角θaからネガティブキャンバ側へ向けて更に変化しても、第2トレッド22が既に走行路面から離間されているので、摩擦係数の変化はほとんど生じず、摩擦係数は最大値μaに維持される。
【0069】
なお、転がり抵抗の変化は、キャンバ角が第1キャンバ角θaに達した後、その変化(傾き)が小さくなるが、キャンバ角の変化に伴って漸次増加する。つまり、キャンバ角がネガティブキャンバ側へ向けて変化し、かかる変化に伴ってキャンバスラストが漸次増加することで、転がり抵抗が漸次増加する。
【0070】
ここで、キャンバ角が第1キャンバ角θaに達した後、転がり抵抗は増加するにも関わらず摩擦係数が一定に維持されるのは、一般に、摩擦係数の変化がキャンバスラストの影響よりも第1トレッド21の高グリップ性による影響を受け易いためである。
【0071】
一方、図8に示すように、0度よりもポジティブキャンバ側(図8左側)の領域では、キャンバ角が0度の状態(即ち、第1トレッド21と第2トレッド22とが均等に接地している状態)から、ポジティブキャンバ側へ向けて変化しても、摩擦係数の変化はほとんど生じることがなく、最小値μbに維持される。
【0072】
即ち、キャンバ角が0度の状態からプラス方向へ向けて変化し、かかる変化に伴って低転がり抵抗の第2トレッド22の接地(接地圧又は接地面積)が漸次増加する(高グリップ性の第1トレッド21の接地(接地圧又は接地面積)が漸次減少する)にも関わらず、摩擦係数は最小値μbに維持される。
【0073】
これは、一般に、低転がり抵抗の第2トレッド22が高グリップ性の第1トレッド21よりも高硬度に構成されるために、第2トレッド22の接地が第1トレッド21の接地による高グリップ性への寄与を妨げるためである。
【0074】
一方、転がり抵抗の変化は、キャンバ角の変化に伴って漸次増加する。即ち、キャンバ角がポジティブキャンバ側へ向けて変化し、かかる変化に伴ってキャンバスラストが漸次増加することで、転がり抵抗が漸次増加する。
【0075】
ここで、転がり抵抗は増加するにも関わらず摩擦係数が一定に維持されるのは、上述したのと同様に、一般に、摩擦係数の変化がキャンバスラストの影響よりも第2トレッド22の低転がり抵抗による影響を受け易いためである。
【0076】
ここで、図8で図示を省略した未舗装路用マップ及び雨天舗装路用マップについては、乾燥舗装路用マップの実線を摩擦係数および転がり抵抗が小さくなる方向へ平行移動したものとなる。また、いずれのマップにおいても、摩擦係数および転がり抵抗が最小値となるキャンバ角は0度となり、摩擦係数が最大値となるキャンバ角は第1キャンバ角θaとなる。
【0077】
図3に戻って説明する。車輪駆動装置3は、上述したように、左右の前輪2FL,2FR(図1参照)を回転駆動するための装置であり、これら左右の前輪2FL,2FRに回転駆動力を付与する2個のFL,〜RRモータ3FL〜3RRと、それら各モータ3FL〜3RRをCPU71からの命令に基づいて駆動制御する駆動回路(図示せず)とを主に備えている。なお、車輪駆動装置3は、後述するように、回生装置として機能するように構成されている。
【0078】
キャンバ角調整装置4は、上述したように、各車輪2の舵角とキャンバ角とを調整するための駆動装置であり、各車輪2(車輪駆動装置3)に角度調整のための駆動力を付与する4個のFL〜RRアクチュエータ4FL〜4RRと、それら各アクチュエータ4FL〜4RRをCPU71からの命令に基づいて駆動制御する駆動回路(図示せず)とを主に備えている。
【0079】
なお、FL〜RRアクチュエータ4FL〜4RRは、3本の油圧シリンダ4a〜4cと、それら各油圧シリンダ4a〜4cにオイル(油圧)を供給する油圧ポンプ4d(図1参照)と、その油圧ポンプから各油圧シリンダ4a〜4cに供給されるオイルの供給方向を切り換える電磁弁(図示せず)と、各油圧シリンダ4a〜4c(ロッド部)の伸縮量を検出する伸縮センサ(図示せず)とを主に備えて構成されている。
【0080】
CPU71からの指示に基づいて、キャンバ角調整装置4の駆動回路が油圧ポンプを駆動制御すると、その油圧ポンプから供給されるオイル(油圧)によって、各油圧シリンダ4a〜4cが伸縮駆動される。また、電磁弁がオン/オフされると、各油圧シリンダ4a〜4cの駆動方向(伸長又は収縮)が切り換えられる。
【0081】
キャンバ角調整装置4の駆動回路は、各油圧シリンダ4a〜4cの伸縮量を伸縮センサにより監視し、CPU71から指示された目標値(伸縮量)に達した油圧シリンダ4a〜4cは、その伸縮駆動が停止される。なお、伸縮センサによる検出結果は、駆動回路からCPU71に出力され、CPU71は、その検出結果に基づいて各車輪2の現在の舵角及びキャンバ角を得ることができる。
【0082】
機械式ブレーキ制御装置300は、運転者によるブレーキペダル53の操作状態(踏み込み量、踏み込み速度など)に応じた機械式ブレーキによる制動力を各車輪2FL〜2RRへ付与するための制御装置である。なお、本実施の形態における機械式ブレーキは、ブレーキディスクへブレーキパッドを油圧(液圧)により押し付けて制動力を得る摩擦制動式のブレーキとして構成されている。また、この機械式ブレーキが請求項4、請求項5及び請求項7に記載の機械式制動装置に該当する。
【0083】
ブレーキペダルセンサ装置53aにより運転者によるブレーキペダル53の操作(即ち、運転者による減速の要求(減速要求))状態が検出されると、その検出結果がCPU71へ出力される。CPU71は、該検出結果に基づき機械式ブレーキ(液圧)の付与量を設定し(後述するように、機械式ブレーキへ液圧を付与しない場合を含む)、機械式ブレーキ制御装置300へ出力する。
【0084】
機械式ブレーキ制御装置300は、かかる付与量に基づき、各車輪2FL〜2RRのブレーキアクチュエータ(図示せず)へ付与する液圧を制御する。その結果、各車輪2FL〜2RRには、ブレーキペダル53の操作状態に応じた機械式ブレーキによる制動力が付与される。
【0085】
一方、左右の前輪2FL,2FRをそれぞれ駆動するFLモータ3FL及びFRモータ3FRは、回生回路(図示せず)と共に回生ブレーキ装置を構成し、回生モータとして機能する。この場合、FLモータ3FL及びFRモータ3FRは、左右の前輪2FL,2FRを回動させることで、これら左右の前輪2FL,2FRの回転エネルギーを電気エネルギーとして回生するとともに、左右の前輪2FL,2FRの回転を阻害することで、車速を減速させる回生ブレーキとして作動される。
【0086】
図示されない回生回路は、交流電流を直流電流に変換するインバータを内蔵し、CPU71からの制御信号に基づいてこれらのモータ3FL,3FRを回生モータとして機能させることにより、左右の前輪2FL、2FRの回転エネルギーを電気エネルギーとして回生し、その回生によりFL,FRモータ3FL,3FRで発生された電力を蓄電装置としてのバッテリ(図示せず)へ供給する。なお、本実施の形態では、蓄電装置として蓄電池であるバッテリを例に説明を行うが、電気エネルギーを蓄えることができれば、例えば、キャパシタなどでも良い。
【0087】
即ち、本実施の形態における車両1は、FL,FRモータ3FL,3FRによる回生ブレーキと、機械式ブレーキとの協調により制動を行う車両である。ここで、図9を参照して、この回生ブレーキと機械式ブレーキとの協調により行われる制動方法について説明する。
【0088】
図9は、ブレーキペダル53の操作状態と制動力との相関を示す模式図である。図9に示す模式図において、横軸は、ブレーキペダルセンサ装置53aにより検出されたブレーキペダル53の操作量を示し、図中右側へ向かうほどブレーキペダル53の操作量が多いことを示す。一方、縦軸は、車両1へ付与される制動力を示し、図中上側へ向かうほど、車両1へ付与される制動力が大きいことを示す。
【0089】
ここで、図9において、点線701は、全体の制動力に対応しており、全体の制動力は、図9に示すように、ブレーキペダル53が操作されていない状態で0であり、運転者によりブレーキペダル53が操作されると、ブレーキペダル53の操作量に比例して直線的に増加する。
【0090】
また、図9において、実線702は、回生ブレーキによる制動力に対応し、実線703は、機械式ブレーキによる制動力に対応する。図9に示すように、運転者によってブレーキペダル53が踏み込まれ始めてから、ブレーキペダル53の操作量が「X」に到達するまでは、全体の制動力がすべて回生ブレーキによる制動力によって賄われる。
【0091】
そのため、運転者により操作されたブレーキペダル53の操作量、換言すれば、運転者が要求する車両の減速に必要な制動力(必要制動力)を、回生ブレーキを作動させることで得る(達成する)ことができるとCPU71が判断したときには、回生ブレーキのみを作動させて車両を減速させる。判断は、必要制動力が予め設定された制動閾値「X」に到達するまで(制動閾値「X」未満)であるかによって判断される。
【0092】
よって、ブレーキペダル53の操作量が「0」から「X」までの範囲では、CPU71は、ブレーキペダル53の操作量に応じた制動力を全て回生ブレーキから得るよう車輪駆動装置3(FL,FRモータ3FL,3FR)へ制御信号を出力する。制動閾値「X」は、本実施の形態では、車両ごとの実験データなどによって予め定められた値を用いているが、車両の走行状態、悪路などの路面状況、或いは、天気などの走行環境により適宜変更しても良い。
【0093】
そして、運転者によるブレーキペダル53の操作量がさらに大きくなり、ブレーキペダル53の操作量が「X」以上になると、回生ブレーキと機械式ブレーキとの協調による制動が行われる。そのため、運転者により操作されたブレーキペダル53の操作量、換言すれば、運転者が要求する車両の減速に必要な制動力(必要制動力)が回生ブレーキを作動させることで得る(達成する)ことができないとき、つまり、回生ブレーキと機械式制動装置としての機械式ブレーキとの両方を作動させることで得られる(達成する)ことができるとCPU71が判断したときは、回生ブレーキと機械式ブレーキの両方を作動させて車両を減速させる。判断は、必要制動力が予め設定された制動閾値「X」に到達した後(制動閾値「X」以上)であるかによって判断される。
【0094】
よって、ブレーキペダル53の操作量が「X」以上の範囲では、CPU71は、ブレーキペダル53の操作量に応じた回生ブレーキの付与量(制動力)と機械式ブレーキの付与量(制動力)とをそれぞれ設定し、設定した制動力を車輪駆動装置3(FL,FRモータ3FL,3FR)及びブレーキ機械式ブレーキ制御装置30へ出力する。よって、従動輪である左右の後輪2RL,2RRへは、ブレーキペダル53の操作量が「X」以上となった場合に機械式ブレーキによる制動が開始される。
【0095】
なお、請求項3及び7記載の必要制動力算出手段としては、ブレーキペダル53の操作量と制動閾値「X」との関係を判断する処理、即ち、ブレーキペダル53の操作量が制動閾値「X」未満であるか或いは制動閾値「X」以上であるかを判断する処理が該当する。
【0096】
図3に戻って説明する。車両速度センサ装置32は、路面Gに対する車両1の対地速度(絶対値及び進行方向)を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、前後及び左右方向加速度センサ32a,32bと、それら各加速度センサ32a,32bの検出結果を処理してCPU71に出力する制御回路(図示せず)とを主に備えている。
【0097】
前後方向加速度センサ32aは、車両1(車体フレームBF)の前後方向(図1上下方向)の加速度を検出するセンサであり、左右方向加速度センサ32bは、車両1(車体フレームBF)の左右方向(図1左右方向)の加速度を検出するセンサである。なお、本実施の形態では、これら各加速度センサ32a,32bが圧電素子を利用した圧電型センサとして構成されている。
【0098】
CPU71は、車両速度センサ装置32の制御回路から入力された各加速度センサ32a,32bの検出結果(加速度値)を時間積分して、2方向(前後及び左右方向)の速度をそれぞれ算出すると共に、それら2方向成分を合成することで、車両1の対地速度(絶対値及び進行方向)を得ることができる。
【0099】
接地荷重センサ装置34は、各車輪2の接地面が路面Gから受ける荷重を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、各車輪2が受ける荷重をそれぞれ検出するFL〜RR荷重センサ34FL〜34RRと、それら各荷重センサ34FL〜34RRの検出結果を処理してCPU71に出力する処理回路(図示せず)とを備えている。
【0100】
なお、本実施の形態では、各荷重センサ34FL〜34RRがピエゾ抵抗型の3軸荷重センサとして構成されている。これら各荷重センサ34FL〜34RRは、各車輪2のサスペンション軸(図示せず)上に配設され、上述した車輪2が路面Gから受ける荷重を車両1の前後方向(仮想軸Xf−Xb方向)、左右方向(仮想軸Yl−Yr方向)及び上下方向(仮想軸Zu−Zd方向)の3方向で検出する(図2(b)参照)。
【0101】
CPU71は、接地荷重センサ装置34から入力された各荷重センサ34FL〜34RRの検出結果(接地荷重)より、各車輪2の接地面における路面Gの摩擦係数μを次のように推定する。
【0102】
例えば、前輪2FLに着目すると、FL荷重センサ34FLにより検出される車両1の前後方向、左右方向および垂直方向の荷重がそれぞれFx、Fy及びFzであれば、前輪2FLの接地面に対応する部分の路面Gにおける車両1前後方向の摩擦係数μは、前輪2FLが路面Gに対してスリップしているスリップ状態ではFx/Fzとなり(μx=Fx/Fz)、前輪2FLが路面Gに対してスリップしていない非スリップ状態ではFx/Fzよりも大きい値であると推定される(μx>Fx/Fz)。
【0103】
なお、車両1の左右方向の摩擦係数μyについても同様であり、スリップ状態ではμy=Fy/Fzとなり、非スリップ状態ではFy/Fzよりも大きな値と推定される。また、摩擦係数μを他の手法により検出することは当然可能である。他の手法としては、例えば、特開2001−315633号公報や特開2003−118554号に開示される公知の技術が例示される。
【0104】
車輪回転速度センサ装置35は、各車輪2の回転速度を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、各車輪2の回転速度をそれぞれ検出する4個のFL〜RR回転速度センサ35FL〜35RRと、それら各回転速度センサ35FL〜35RRの検出結果を処理してCPU71に出力する処理回路(図示せず)とを備えている。
【0105】
なお、本実施の形態では、各回転センサ35FL〜35RRが各車輪2に設けられ、各車輪2の角速度を回転速度として検出する。即ち、各回転センサ35FL〜35RRは、各車輪2に連動して回転する回転体と、その回転体の周方向に多数形成された歯の有無を電磁的に検出するピックアップとを備えた電磁ピックアップ式のセンサとして構成されている。
【0106】
CPU71は、車輪回転速度センサ装置35から入力された各車輪2の回転速度と、予めROM72に記憶されている各車輪2の外径とから、各車輪2の実際の周速度をそれぞれ得ることができ、その周速度と車両1の走行速度(対地速度)とを比較することで、各車輪2がスリップしているか否かを判断することができる。
【0107】
アクセルペダルセンサ装置52aは、アクセルペダル52の操作状態を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、アクセルペダル52の踏み込み状態を検出する角度センサ(図示せず)と、その角度センサの検出結果を処理してCPU71に出力する制御回路(図示せず)とを主に備えている。
【0108】
ブレーキペダルセンサ装置53aは、ブレーキペダル53の操作状態を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、ブレーキペダル53の踏み込み状態を検出する角度センサ(図示せず)と、その角度センサの検出結果を処理してCPU71に出力する制御回路(図示せず)とを主に備えている。
【0109】
ステアリングセンサ装置54aは、ステアリング54の操作状態を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、ステアリング54の操作状態を検出する角度センサ(図示せず)と、その角度センサの検出結果を処理してCPU71に出力する制御回路(図示せず)とを主に備えている。
【0110】
ワイパスイッチセンサ装置55aは、ワイパースイッチ55の操作状態を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、ワイパースイッチ55の操作状態(操作位置)を検出するポジショニングセンサ(図示せず)と、そのポジショニングセンサの検出結果を処理してCPU71に出力する制御回路(図示せず)とを主に備えている。
【0111】
ウィンカスイッチセンサ装置56aは、ウィンカスイッチ56の操作状態を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、ウィンカスイッチ56の操作状態(操作位置)を検出するポジショニングセンサ(図示せず)と、そのポジショニングセンサの検出結果を処理してCPU71に出力する制御回路(図示せず)とを主に備えている。
【0112】
高グリップスイッチセンサ装置57aは、高グリップスイッチ57の操作状態を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、高グリップスイッチ57の操作状態(操作位置)を検出するポジショニングセンサ(図示せず)と、そのポジショニングセンサの検出結果を処理してCPU71に出力する制御回路(図示せず)とを主に備えている。
【0113】
なお、本実施の形態では、各角度センサが電気抵抗を利用した接触型のポテンショメータとして構成されている。CPU71は、各センサ装置52a〜54aの制御回路から入力された検出結果により各ペダル52,53の踏み込み量及びステアリング54の操作角を得ると共に、その検出結果を時間微分することにより、各ペダル52,53の踏み込み速度(操作速度)及びステアリング54の回転速度(操作速度)を得ることができる。
【0114】
路面状況スイッチセンサ装置58aは、路面状況スイッチ(図示せず)の操作状態を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、路面状況スイッチの操作状態(操作位置)を検出するポジショニングセンサ(図示せず)と、そのポジショニングセンサの検出結果を処理してCPU71に出力する制御回路(図示せず)とを主に備えている。
【0115】
なお、路面状況スイッチは、運転者により操作される操作部材であり、走行路面の状況に応じて、運転者により路面状況スイッチが切り換えられると、その操作状態(操作位置)に応じて、キャンバ角調整装置4の作動制御がCPU71により行われる。具体的には、路面状況スイッチは、3段式(3ポジション式)のロッカースイッチとして構成され、第1位置は走行路面が乾燥舗装路である状態に、第2位置は走行路面が未舗装路である状態に、第3位置は走行路面が雨天舗装路である状態に。それぞれ対応する。
【0116】
図3に示す他の入出力装置36としては、例えば、雨量を検出するための雨量センサや路面Gの状態を非接触で検出する光学センサなどが例示される。
【0117】
次いで、図4から図6を参照して、車輪2の詳細構成について説明する。図4は、車両1の上面視を模式的に示した模式図である。図5及び図6は、車両1の正面視を模式的に図示した模式図であり、図5では、車輪2にネガティブキャンバが付与された状態が図示され、図6では、車輪2にポジティブキャンバが付与された状態が図示されている。
【0118】
上述したように、車輪2は、第1トレッド21及び第2トレッド22の2種類のトレッドを備え、図4に示すように、各車輪2(前輪2FL,2FR及び後輪2RL,2RR)において、第1トレッド21が車両1の内側に配置され、第2トレッド22が車両1の外側に配置されている。
【0119】
本実施の形態では、両トレッド21,22の幅寸法(図4左右方向寸法)が同一に構成されている。また、第1トレッド21は、第2トレッド22に比して、グリップ力の高い特性(高グリップ性)に構成される。一方、第2トレッド22は、第1トレッド21に比して、転がり抵抗の小さい特性(低転がり抵抗)に構成されている。即ち、第1トレッド21は、第2トレッド22に比して、ゴム硬度が低い値(低硬度)に設定されている。言い換えると、第2トレッド22は、第1トレッド21に比して、ゴム硬度が高い値(高硬度)に設定されている。
【0120】
例えば、図5に示すように、キャンバ角調整装置4が作動制御され、車輪2のキャンバ角θL,θRがマイナス方向(ネガティブキャンバ)に調整されると、車両1の内側に配置される第1トレッド21の接地(接地圧又は接地面積)Rinが増加されると共に、車両1の外側に配置される第2トレッド22の接地(接地圧又は接地面積)Routが減少される。これにより、第1トレッド21の高グリップ性を利用して、走行性能(例えば、旋回性能、加速性能、制動性能或いは雨天時の車両安定性など)の向上を図ることができる。
【0121】
一方、図6に示すように、キャンバ各調整装置4が作動制御され、車輪2のキャンバ角θL,θRがプラス方向(ポジティブキャンバ方向)に調整されると、車両1の内側に配置される第1トレッド21の接地(接地圧又は接地面積)が減少されると共に、車両1の外側に配置される第2トレッド22の接地(接地圧又は接地面積)が増加される。これにより、第2トレッド22の低転がり抵抗を利用して、省燃費性能の向上を図ることができる。
【0122】
次いで、図10を参照して、キャンバ制御処理について説明する。図10は、キャンバ制御処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置100の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2ms間隔で)実行される処理であり、車輪2に付与するキャンバ角を調整することで、制動時において、回生エネルギーの回収効率の向上を図り、省燃費性能の向上を図る。
【0123】
CPU71は、キャンバ制御処理に関し、まず、路面状況を判断する(S51)。この処理は、路面状況スイッチセンサ装置58a(図3参照)による検出結果を確認し、運転者による路面状況スイッチの操作状態を取得することで行われる。即ち、CPU71は、上述したように、路面状況スイッチの操作位置を第1位置と確認した場合には、路面状況を乾燥路面と判断し、第2位置であれば未舗装路面と判断すると共に、第3位置であれば雨天舗装路面と判断する。
【0124】
次いで、S52の処理では、ブレーキペダル53の操作状態を検出し(S52)、その検出した操作状態に対応する必要前後摩擦係数を摩擦係数マップ72a(図7参照)から読み出す(S53)。これにより、車輪2にスリップ又はロックを生じさせないために必要な車両前後方向(図1上下方向)における摩擦係数を得ることができる。
【0125】
次いで、S54の処理では、車輪2の舵角及び車両1の対地速度(車速)を検出し(S54)、その検出した舵角及び車速から必要横摩擦係数を算出する(S55)。なお、CPU71は、上述したように、ステアリングセンサ装置54a及び車両速度センサ装置32の検出結果に基づいて、車輪2の舵角及び車両1の対地速度を検出する。
【0126】
ここで、必要横摩擦係数は、旋回走行中の車両1において、その車輪2にスリップが生じさせないために必要な車両左右方向(図1左右方向)における摩擦係数であり、次に説明するように算出される。
【0127】
即ち、まず、車輪2の舵角σ、アッカーマン旋回半径R0及び車両1のホイールベースIの関係は、tanσ=I/R0により表すことができる。この関係式は、舵角σが微小角の場合、σ=I/R0と近似することができる。これをアッカーマン旋回半径R0について変形することで、R0=I/σを得ることができる。
【0128】
一方、車両1の実旋回半径R及び車両1の対地速度(車速)vの関係は、車両1について実測したスタビリティファクターKを使用することで、車両1のステア特性より、R/R0=1+K・v2により表すことができる。これを実旋回半径Rについて変形すると共に、先に求めたアッカーマン旋回半径R0を代入することで、R=I(1+K・v2)/σを得ることができる。
【0129】
ここで、旋回走行中に車両1に作用する遠心力Fは、車両1の重量をmとすれば、F=m・v2/Rとなり、これに先に求めた実旋回半径Rを代入することで、F=m・v2・σ/(I(1+K・v2))を得ることができる。車輪2が横方向(車両1の左右方向)にスリップすることを回避するための摩擦力は、この遠心力Fよりも大きな値であれば良いので、必要横摩擦係数μwは、遠心力Fを重量mで割ることで、μw=F/m=v2・σ/(I(1+K・v2))により表すことができる。
【0130】
S53及びS55の処理において必要前後摩擦係数及び必要横摩擦係数を得た後は、それら必要前後摩擦係数及び必要横摩擦係数に基づいて(即ち、車両1の前後方向及び左右方向を向くベクトルの合力として)、必要摩擦係数を算出して(S56)、S57の処理へ移行する。
【0131】
S57の処理では、必要とされている制動力を回生制動のみで発揮できるか否かを判断すると共に、S56の処理において算出した必要摩擦係数と、車輪2が発揮可能な摩擦係数の最小値μbとを比較し、必要摩擦係数が最小値μb以下であるか否かを判断する(S57)。
【0132】
即ち、ブレーキペダル53の操作量が機械式ブレーキを作動させる境界である「X」未満(ブレーキ操作量<X、図9参照)であるかをS52の処理で検出した結果に基づいて確認し、その確認の結果、ブレーキ操作量<Xであれば、ブレーキペダル53の操作量に応じた制動力を全て回生制動のみによって発揮することができる(賄うことができる)と判断される。
【0133】
なお、車輪2が発揮可能な摩擦係数の最小値μbは、上述したように、キャンバ角マップ72b(図8参照)から読み出される。また、この場合には、CPU71は、S51の処理において判別した路面状況に応じたマップを3種類のマップの中から選択し、その選択したマップの内容に基づいて、最小値μbを読み出す。
【0134】
S57において判断した結果、必要な制動力を回生制動のみで発揮でき、かつ、必要摩擦係数が最小値μb以下であると判断される場合には(S57:Yes)、キャンバ角マップ72b(図8参照)から転がり抵抗が最小となるキャンバ角を所定のキャンバ角として読み出し(S58)、その読み出したキャンバ角(所定のキャンバ角)に調節することでを車輪2(駆動輪及び従動輪)に所定のキャンバ角を付与して(S59)、このキャンバ制御処理を終了する。
【0135】
具体的には、例えば、S56の処理において算出された必要摩擦係数がμyであって、μy≦μbの関係が成り立つということであるが(S57:Yes)、この場合は、摩擦係数がμb以下となる範囲内において転がり抵抗が最小となるキャンバ角(本実施の形態では図8のキャンバ角マップ72bより「0」度)を所定のキャンバ角として読み出し(S58)、この読み出したキャンバ角(「0」度)を駆動輪及び従動輪に所定のキャンバ角として付与(読み出したキャンバ角に調整)する(S59)。即ち、必要摩擦係数μyに対応するキャンバ角を図8に示すキャンバ角マップ72bからθyと読み出し、この読み出したキャンバ角θyを車輪2(駆動輪及び従動輪)に付与するのではない。
【0136】
このように、本実施の形態では、図8に示すように、S56の処理において算出された必要摩擦係数μyが車輪2の発揮できる摩擦係数の最小値μbを下回っている場合、車輪2に「0」度よりも絶対値が大きなキャンバ角を付与しても、転がり抵抗の低減(省燃費走行の達成)を見込めないので、車輪2には、最小値μbを発揮可能な範囲内で最も小さい角度(「0」度)を所定のキャンバ角として付与する。
【0137】
即ち、本実施の形態では、車輪駆動装置3(回生装置)による回生を行う際、車輪2(駆動輪及び従動輪)の転がり抵抗が最小となるように、かかる車輪2のキャンバ角を調整することができる。
【0138】
これにより、車両1走行時の運動エネルギーを電気エネルギーに変換する際に、その変換の際に発生する変換損失(車輪2の転がり抵抗(変形ヒステリシスロス))を最小として、変換損失の低減を図ることができるので、その分、回生エネルギーの回収効率の向上を図り、省燃費性能を得ることができる。
【0139】
一方、S57の処理において、必要な制動力を回生制動のみでは発揮できない、又は、必要摩擦係数がμbよりも大きいと判断される場合には(S57:No)、次いで、必要摩擦係数が最小値μbよりも大きくかつ最大値μa未満であるか否かを判断する(S60)。なお、車輪2が発揮可能な摩擦係数の最大値μaは、上述したように、キャンバ角マップ72b(図8参照)から読み出される。
【0140】
S60において判断した結果、必要摩擦係数が最小値μbより大きくかつ最大値μa未満であると判断される場合には(S60:Yes)、必要摩擦係数に対応する(即ち、必要摩擦係数と同等の摩擦係数となる)キャンバ角を各車輪2(駆動輪及び従動輪)毎にキャンバ角マップ72bから読み出し(S61)、その読み出したキャンバ角を各車輪2(駆動輪及び従動輪)に所定のキャンバ角として付与(各車輪2のキャンバ角を読み出したキャンバ角に調整)して(S62)、このキャンバ制御処理を終了する。
【0141】
具体的には、この場合は、例えば、一の車輪2に対し、S56の処理において算出された必要摩擦係数がμxであって、μb<μx<μaの関係が成り立つということであるので(S60:Yes)、この必要摩擦係数μxに対応するキャンバ角を図8に示すキャンバ角マップ72bからθxと読み出し(S61)、この読み出したキャンバ角θxを一の車輪2に所定のキャンバ角として調整することで付与すると共に(S62)、これらの処理を各車輪2毎に実行する。
【0142】
このように、本実施の形態では、車輪2に必要最低限の摩擦係数を発揮させ、その滑動(スリップ又はロック)を抑制することができるので、車輪2の運動(回転)エネルギーを電気エネルギーに確実に変換することができる。よって、車輪2の滑動に伴って回収エネルギーの回収効率が低下することを抑制して、省燃費性能の向上を図ることができる。同時に、加速・制動性能や旋回性能を確保することができる。
【0143】
更に、車輪2の滑動(スリップ又はロック)を抑制しつつ、車輪2の転がり抵抗がより小さくなるように、車輪2のキャンバ角を調整するので、運動エネルギーを電気エネルギーに変換する際の変換損失(車輪2の変形ヒステリシスロス)を低減して、回生エネルギーの回収効率を高めることができ、その分、省燃費性能の向上を図ることができる。
【0144】
一方、S60の処理において、必要摩擦係数が最小値μbより大きくかつ最大値μa未満ではないと判断される場合には(S60:No)、必要摩擦係数が最大値μa以上ということであるので、この場合には(S60:No)、最大キャンバ角(即ち、上述した第1キャンバ角θa、図8参照)を車輪2(駆動輪及び従動輪)に付与すると共に(S63)、報知処理(S64)を実行して、このキャンバ制御処理を終了する。
【0145】
具体的には、この場合は、S56の処理において算出された必要摩擦係数μzが最大値μa以上(μb≦μz)ということであるが(S60:No)、上述の場合のように、必要摩擦係数μzに対応するキャンバ角を図8に示すキャンバ角マップ72bから例えばθzと読み出すのではなく、この場合は、車輪2に付与するキャンバ角を第1キャンバ角θaと決定し、これを車輪2に付与する(S63)。
【0146】
このように、本実施の形態では、図8に示すように、S56の処理において算出された必要摩擦係数μzが車輪2の発揮できる摩擦係数の最大値μaを越えている場合、車輪2に第1キャンバ角θaよりも絶対値が大きなキャンバ角を付与しても、それ以上の摩擦係数の増加(グリップ性能の向上)を見込めないと判断し、車輪2には、最大値μaを発揮可能な範囲内で最も小さい角度(0度に近い角度)、即ち、第1キャンバ角θaを付与する。これにより、キャンバ角が不必要に大きくなることを回避して、車両1の走行安定性を確保することができる。同時に、制動時における上述した変換損失を低減して、回生エネルギーの回収効率を高めることができるので、その分、省燃費性能の向上を図ることができる。
【0147】
なお、報知処理(S64)では、急制動などによって、車輪2がスリップやロックしている(又はするおそれのある)旨をスピーカから出力すると共にモニター装置へ表示することで、運転者に対して報知する。これにより、安全性の向上に寄与できる。
【0148】
ここで、図10に示すフローチャート(キャンバ制御処理)において、請求項1記載のキャンバ角制御手段としてはS59、S62及びS63の処理が、請求項2記載の減速要求検出手段としてはS52の処理が、走行路面検出手段としてはS51の処理が、必要摩擦係数算出手段としてはS56の処理が、請求項7記載の減速要求検出手段としてはS52の処理が、それぞれ該当する。
【0149】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0150】
例えば、上記実施の形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。
【0151】
上記実施の形態では、左右の車輪2に付与するキャンバ角θR,θLが同じ角度である場合を説明したが(θR=θL)、必ずしもこれに限られるものではなく、左右の車輪2にそれぞれ異なるキャンバ角θR,θLを付与することは当然可能である(θR<θL又はθL<θR)。
【0152】
上記実施の形態では、第1トレッド21,221が車両内側に、第2トレッド22が車両外側に、それぞれ配設される場合を説明したが、この位置関係に限定されるものではなく、各車輪2毎に適宜変更することは当然可能である。
【0153】
例えば、第1トレッド21,221が車両外側に、第2トレッド22が車両内側に、それぞれ配設されていても良く、前輪では第1トレッド21,221が車両外側に、後輪では第2トレッド22を車両内側に、それぞれ配設されていても良い。或いは、各車輪2毎にこの位置関係が異なっていても良い。
【0154】
上記実施の形態では、一の車輪が2種類のトレッドを有する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他の形態を採用することは当然可能である。例えば、異なる特性のトレッドをそれぞれ有する2の車輪を並列に組み合わせて(即ち、いわゆるダブルタイヤとして)構成しても良い。
【0155】
上記実施の形態では、摩擦係数マップ72aにおいて、ブレーキ操作量に対する必要前後摩擦係数の変化が直線的に変化する場合を説明したが(図7参照)、かかる構成は一例であり、他の構成とすることは当然可能である。例えば、かかる変化を曲線とすることは当然可能である。
【0156】
上記実施の形態では、車両用制御装置100が1の摩擦係数マップ72aのみを備える場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、複数の摩擦係数マップを備えることは当然可能である。
【0157】
例えば、路面の状況に対応してそれぞれ異なる内容で構成される複数の摩擦係数マップ(例えば、路面状況スイッチの操作範囲に対応する乾燥舗装路用マップ、未舗装用マップ及び雨天舗装路用マップの3種類)を準備し、図10のS53の処理においては、路面状況スイッチの操作状態に対応するマップから必要前後摩擦係数を読み出すように構成しても良い。
【0158】
上記実施の形態では、車輪2を回転駆動する車輪駆動装置3がモータ装置により構成される場合を説明したが、車輪2の駆動源は必ずしもこれに限られるものではなく、他の駆動源を採用することは当然可能である。他の駆動源としては、例えば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンが例示される。この場合、請求項1記載の回生装置(車輪2の回転エネルギーを電気エネルギーに回生する回生装置)としては、いわゆるオルタネータが該当する。
【0159】
上記実施の形態では、左右の前輪2FL,2FRが駆動輪とされると共に、左右の後輪2RL,2RRが従動輪とされる場合を説明したが、必ずしもこの配置に限られるものではなく、この逆の配置とすることは当然可能である。
【0160】
以下に本発明の変形例を示す。請求項1記載の車両用制御装置において、前記キャンバ角調整手段は、前記車輪が走行路面との間で滑りを生じないために必要な摩擦係数を前記車両の走行状態に基づいて算出する必要摩擦係数算出手段を備え、前記必要摩擦係数算出手段により算出された前記摩擦係数と同等の摩擦係数を前記車輪が発揮し、かつ、前記車輪の転がり抵抗がより小さくなるように、前記車輪のキャンバ角を調整することを特徴とする車両用制御装置1。
【0161】
車両用制御装置1によれば、請求項1記載の車両用制御装置の奏する効果に加え、加速・制動・旋回性能の確保と省燃費性能との両立を図ることができるという効果がある。
【0162】
即ち、車輪の転がり抵抗と摩擦係数との間には相関があり、車輪の転がり抵抗(即ち、ヒステリシスロス)を小さくすれば省燃費を達成できるが、グリップ性能の確保が困難となり、加速性能、制動性能或いは旋回性能の低下を招く。一方、車輪のグリップ特性を高めれば加速性能、制動性能或いは旋回性能の向上を図ることができるが、転がり抵抗が増加して、燃費の悪化を招く。
【0163】
これに対し、本発明によれば、回生時キャンバ調整手段は、必要摩擦係数算出手段により算出された摩擦係数と同等の摩擦係数を車輪が発揮するように車輪のキャンバ角を調整するので、車輪の滑動(スリップ又はロック)を抑制することができる。その結果、車輪の運動(回転)エネルギーを電気エネルギーに確実に変換することができるので、車輪の滑動に伴って回収エネルギーの回収効率が低下することを抑制して、省燃費性能の向上を図ることができる。同時に、加速・制動性能や旋回性能を確保することができる。
【0164】
更に、回生時キャンバ調整手段は、車輪の滑動(スリップ又はロック)を抑制しつつ、車輪の転がり抵抗がより小さくなるように、車輪のキャンバ角を調整するので、運動エネルギーを電気エネルギーに変換する際の変換損失(車輪の変形ヒステリシスロス)を低減して、省燃費性能の向上を図ることができる。
【0165】
なお、回生時キャンバ角調整手段は、必要摩擦係数算出手段により算出された摩擦係数が車輪の発揮できる最大の摩擦係数を越えている場合、車輪が最大の摩擦係数を発揮するキャンバ角となるように、車輪のキャンバ角を調整することが好ましい。
【0166】
この場合には、キャンバ角は車輪が最大の摩擦係数を発揮する範囲において最も小さい角度(0度に近い角度)であることがより好ましい。上記範囲ではキャンバ角と共に転がり抵抗も増加する一方で、摩擦係数はキャンバ角を大きくしても一定値に収束してそれ以上のグリップ性能の向上は見込めない。よって、最も小さい角度とすることで、転がり抵抗による変換損失(変形ヒステリシスロス)を低減して、省燃費性能を得つつ、キャンバ角が不必要に大きくなることを回避して、車両の走行安定性を確保することができるからである。
【0167】
また、この場合には、車輪の発揮できる摩擦係数を超えている旨を運転者に対して報知する報知手段(例えば、警告音の出力やモニター等への警告表示)又は車両速度を低下させる手段(例えば、制動装置による制動指示やエンジン等の出力低下指示)を備えることが好ましい。これにより、車両の走行が限界性能(加速制動性能・旋回性能)を越えていることを運転者に知らせることができる、又は、車両速度を運転者の操作に寄らず機械的に低下させることができ、安全性の向上に寄与できる。
【0168】
また、回生時キャンバ角調整手段は、必要摩擦係数算出手段により算出された摩擦係数が車輪の発揮できる最小の摩擦係数を下回っている場合、車輪が最小の摩擦係数を発揮する範囲であって車輪の転がり抵抗が最も小さくなる角度(例えば、0度に近い角度)となるように、キャンバ角を調整することが好ましい。キャンバ角が不必要に大きくなることを回避して、車両の走行安定性を確保しつつ、転がり抵抗による変換損失(変形ヒステリシスロス)を最小にして、省燃費性能のより一層の向上を図ることができるからである。
【0169】
車両用制御装置1において、前記車両は、前記回生装置として構成されるモータ装置を備え、前記車輪は、前記モータ装置により回転駆動される駆動輪と、前記車両の走行に伴って従動される従動輪とを備え、前記キャンバ角調整手段は、前記駆動輪のキャンバ角を調整する駆動輪調整手段と、前記従動輪のキャンバ角を調整する従動輪調整手段とを備え、前記駆動輪調整手段は、前記必要摩擦係数算出手段により算出された前記摩擦係数と同等の摩擦係数を前記駆動輪が発揮し、かつ、前記駆動輪の転がり抵抗がより小さくなるように、前記駆動輪のキャンバ角を調整し、前記従動輪調整手段は、前記従動輪の転がり抵抗が最小となるように、前記従動輪のキャンバ角を調整することを特徴とする車両用制御装置2。
【0170】
車両用制御装置2によれば、車両用制御装置1の奏する効果に加え、駆動輪調整手段は、必要摩擦係数算出手段により算出された摩擦係数と同等の摩擦係数を駆動輪が発揮するように車輪のキャンバ角を調整するので、駆動輪の滑動(スリップ又はロック)を抑制することができる。その結果、駆動輪の回転をモータ装置へ確実に伝達して、運動(回転)エネルギーから電気エネルギーへの変換を効率良く行うことができるので、駆動輪の滑動に伴って回収エネルギーの回収効率が低下することを抑制して、省燃費性能の向上を図ることができる。同時に、加速・制動性能や旋回性能を確保することができる。
【0171】
そして、駆動輪調整手段は、駆動輪の滑動(スリップ又はロック)を抑制しつつ、かかる駆動輪の転がり抵抗がより小さくなるように、駆動輪のキャンバ角を調整するので、上記効果を確保しつつ、運動エネルギーを電気エネルギーに変換する際の変換損失(車輪の変形ヒステリシスロス)を低減して、省燃費性能の向上も図ることができる。
【0172】
一方で、従動輪は、かかる従動輪の回転を回生のためにモータ装置へ伝達する必要がなく、車両の走行に伴って従動されていれば足りる車輪であるところ、本発明によれば、従動輪調整手段は、その転がり抵抗が最小となるように、従動輪のキャンバ角を調整するので、車両の運動エネルギーを電気エネルギーに変換する際には、その変換の際に発生する変換損失(車輪の変形ヒステリシスロス)を最小として、変換損失を効果的に低減することができる。これにより、回生エネルギーの回収効率の向上を図り、省燃費性能をより一層達成することができる。
【0173】
ここで、図10に示すフローチャート(キャンバ制御処理)において、車両用制御装置1記載の必要摩擦係数算出手段としてはS56の処理が、車両用制御装置2記載の駆動輪調整手段としてはS59の処理が、従動輪調整手段としてはS59の処理が、それぞれ該当する。また、車両用制御装置2に記載のモータ装置としては、車輪駆動装置3(FL,FRモータ3FL,3FRが該当する。
【図面の簡単な説明】
【0174】
【図1】本発明の一実施の形態における車両用制御装置が搭載される車両を模式的に示した模式図である。
【図2】(a)は車輪の断面図であり、(b)は車輪の舵角及びキャンバ角の調整方法を模式的に説明する模式図である。
【図3】車両用制御装置の電気的構成を示したブロック図である。
【図4】車両の上面視を模式的に示した模式図である。
【図5】車両の正面視を模式的に図示した模式図であり、車輪にネガティブキャンバが付与された状態である。
【図6】車両の正面視を模式的に図示した模式図であり、車輪にポジティブキャンバが付与された状態である。
【図7】摩擦係数マップの内容を模式的に図示した模式図である。
【図8】キャンバ角マップの内容を模式的に図示した模式図である。
【図9】ブレーキペダルの操作状態と制動力との相関を示す模式図である。
【図10】キャンバ制御処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0175】
100 車両用制御装置
1 車両
2 車輪
2FL 前輪(車輪、駆動輪)
2FR 前輪(車輪、駆動輪)
2RL 後輪(車輪、従動輪)
2RR 後輪(車輪、従動輪)
3 車輪駆動装置(回生装置)
3FL FLモータ(回生装置)
3FR FRモータ(回生装置)
4 キャンバ角調整装置
4FL〜4RR FL〜RRアクチュエータ(キャンバ角調整装置)
4a〜4c 油圧シリンダ(キャンバ角調整装置の一部)
4d 油圧ポンプ(キャンバ角調整装置の一部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車速を減速する回生ブレーキとして作動可能であって、車輪の回転エネルギーを電気エネルギーとして回生すると共に、前記電気エネルギーを蓄電可能な蓄電装置を有する回生装置と、前記車輪のキャンバ角を調整するキャンバ角調整装置とを備えた車両に用いられる車両用制御装置において、
前記キャンバ角調整装置を制御して、前記車輪のキャンバ角を所定のキャンバ角に調整するキャンバ角制御手段を備え、
そのキャンバ角制御手段は、前記回生装置による回生を行う際に、前記車輪の転がり抵抗がより小さくなるように、前記キャンバ角調整装置を制御することを特徴とする車両用制御装置。
【請求項2】
運転者の減速要求を検出する減速要求検出手段と、
前記車両が走行する路面の路面状況を検出する走行路面検出手段と、
前記減速要求検出手段により検出された減速要求および前記走行路面検出手段により検出された路面状況に基づいて必要摩擦係数を算出する必要摩擦係数算出手段と、を備え、
前記キャンバ角調整手段は、前記必要摩擦係数と前記減速要求とに応じて、前記車輪のキャンバ角を所定のキャンバ角に調整することを特徴とする請求項1記載の車両用制御装置。
【請求項3】
前記車両を前記減速要求に応じて減速させるのに必要とされる必要制動力を算出する必要制動力算出手段と、
前記車輪の摩擦係数および転がり抵抗とキャンバ角との関係を記憶するキャンバ角マップと、を備え、
前記キャンバ角調整手段は、前記車輪が発揮できる最小の摩擦係数である最小摩擦係数を前記キャンバ角マップに基づいて算出すると共に、前記必要制動力が前記回生ブレーキのみから得られ、かつ、前記必要摩擦係数が前記最小摩擦係数より小さいときに、転がり抵抗が最小となるキャンバ角を前記キャンバ角マップに基づいて算出すると共にその算出したキャンバ角を所定のキャンバ角として、前記車輪のキャンバ角を調整することを特徴とする請求項2記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記車輪の摩擦係数および転がり抵抗とキャンバ角との関係を記憶するキャンバ角マップを備え、
前記車両は、前記車輪に制動力を付与する機械式制動装置を備え、
前記キャンバ角調整手段は、前記車輪が発揮できる最小摩擦係数および最大摩擦係数を前記キャンバ角マップに基づいて算出し、前記必要制動力が前記回生ブレーキと前記機械式制動装置とから得られ、かつ、前記必要摩擦係数が前記最小摩擦係数より大きく前記最大摩擦係数より小さいときに、前記必要摩擦係数に対応するキャンバ角を前記キャンバ角マップに基づいて算出すると共にその算出したキャンバ角を所定のキャンバ角として、前記車輪のキャンバ角を調整することを特徴とする請求項2記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記車両は、前記車輪に制動力を付与する機械式制動装置を備え、
前記キャンバ角調整手段は、前記車輪が発揮できる最大摩擦係数を前記キャンバ角マップに基づいて算出し、前記必要制動力が前記回生ブレーキと前記機械式制動装置とから得られ、かつ、前記必要摩擦係数が前記最小摩擦係数より大きく前記最大摩擦係数より小さいときに、前記必要摩擦係数に対応するキャンバ角を前記キャンバ角マップに基づいて算出すると共にその算出したキャンバ角を所定のキャンバ角として、前記車輪のキャンバ角を調整することを特徴とする請求項3記載の車両制御装置。
【請求項6】
前記車輪は、従動輪と、前記回生装置により回転駆動される駆動輪とを備え、
前記キャンバ角調整手段は、前記必要摩擦係数および前記減速要求に応じて前記駆動輪および従動輪のキャンバ角を所定のキャンバ角に調整することを特徴とする請求項3から5のいずれかに記載の車両用制御装置。
【請求項7】
運転者の減速要求を検出する減速要求検出手段と、
前記車両を前記減速要求に応じて減速させるのに必要とされる必要制動力を算出する必要制動力算出手段と、
前記車輪の摩擦係数および転がり抵抗とキャンバ角との関係を記憶するキャンバ角マップを備え、
前記車輪は、従動輪と、前記回生装置により回転駆動される駆動輪とを備え、
前記車両は、前記車輪に制動力を付与する機械式制動装置を備え、
前記キャンバ角調整手段は、前記車輪が発揮できる最小摩擦係数および最大摩擦係数を前記キャンバ角マップに基づいて算出し、前記必要制動力が前記回生ブレーキと前記機械式制動装置とから得られ、かつ、前記必要摩擦係数が前記最小摩擦係数より大きく前記最大摩擦係数より小さいときに、前記必要摩擦係数に対応するキャンバ角を前記キャンバ角マップに基づいて算出すると共にその算出したキャンバ角を所定のキャンバ角として、前記駆動輪のキャンバ角を調整すると共に、転がり抵抗が最小となるキャンバ角を前記キャンバ角マップに基づいて算出すると共にその算出したキャンバ角を所定のキャンバ角として、前記従動輪のキャンバ角を調整することを特徴とする請求項2記載の車両用制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2009−12541(P2009−12541A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−174663(P2007−174663)
【出願日】平成19年7月2日(2007.7.2)
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【Fターム(参考)】