説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】 半導体装置の性能や信頼性を向上させる。
【解決手段】 CMISFETを有する半導体装置において、nチャネル型MISFET30aのゲート電極31aは、P、AsまたはSbをドープしたシリコン膜をNi膜と反応させることで形成されたニッケルシリサイド膜からなり、pチャネル型MISFET30bのゲート電極31bは、ノンドープのシリコンゲルマニウム膜をNi膜と反応させることで形成されたニッケルシリコンゲルマニウム膜からなる。ゲート電極31aの仕事関数はP、AsまたはSbをドープすることによって制御され、ゲート電極31bの仕事関数はGe濃度を調節することによって制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造方法に関し、特に、金属ゲート電極を有するMISFETを備えた半導体装置およびその製造技術に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板上にゲート絶縁膜を形成し、ゲート絶縁膜上にゲート電極を形成し、イオン注入などによりソース・ドレイン領域を形成することで、MISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor:MIS電界効果トランジスタ、MISトランジスタ)を形成することができる。
【0003】
また、CMISFET(Complementary Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)においては、nチャネル型MISFETとpチャネル型MISFETの両方において低いしきい値電圧を実現するために、互いに異なる仕事関数(ポリシリコンの場合、フェルミ準位)を有する材料を使用してゲート電極を形成する、いわゆるデュアルゲート化が行われている。つまり、nチャネル型MISFETとpチャネル型MISFETのゲート電極を形成しているポリシリコン膜に対して、それぞれn型不純物とp 型不純物を導入することにより、nチャネル型MISFETのゲート電極材料の仕事関数(フェルミ準位)をシリコンの伝導帯近傍にするとともにpチャネル型MISFETのゲート電極材料の仕事関数(フェルミ準位)をシリコンの価電子帯近傍にして、しきい値電圧の低下を図っている。
【0004】
しかしながら、近年、CMISFET素子の微細化に伴いゲート絶縁膜の薄膜化が進み、ポリシリコン膜をゲート電極に使用した場合におけるゲート電極の空乏化の影響が無視できなくなってきている。このため、ゲート電極としてメタルゲート電極を用いてゲート電極の空乏化現象を抑制する技術がある。
【0005】
米国特許第6599831 B1号明細書には、ドーパントをドープしたポリシリコン膜を、その上のニッケル層と反応させて、ニッケルシリサイドからなるゲート電極を形成する技術が記載されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】米国特許第6599831 B1号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者の検討によれば、次のような問題があることを見出した。
【0007】
MISFETのゲート電極としてポリシリコン膜を用いた場合、ポリシリコンからなるゲート電極中の空乏化の影響が生じ得るが、ゲート電極をニッケルシリサイドのような金属材料により形成することで、ゲート電極の空乏化現象を抑制し、寄生容量をなくすことができる。このため、MISFET素子の小型化(ゲート絶縁膜の薄膜化)も可能になる。
【0008】
しかしながら、ゲート電極材料としてニッケルシリサイドのような金属膜を使用する場合においても、CMISFETのnチャネル型MISFETとpチャネル型MISFETの両方で低しきい値電圧化を図って半導体装置の性能を向上することが望まれ、そのためには、nチャネル型MISFETとpチャネル型MISFETのゲート電極の仕事関数を制御することが必要になる。
【0009】
ドーパントをドープしたポリシリコン膜を、その上のニッケル層と反応させて、ニッケルシリサイドからなるゲート電極を形成する技術では、ドーパントによってゲート電極の仕事関数を制御できるが、nチャネル型MISFETのゲート電極の仕事関数に比べて、pチャネル型MISFETのゲート電極の仕事関数の変動幅が小さい。また、不純物の活性化アニールなどの熱処理工程において、pチャネル型MISFETのゲート電極形成用のポリシリコン膜にドープしたホウ素(B)が、ゲート絶縁膜を突き抜けてゲート絶縁膜下のチャネル領域に拡散し、形成されたCMISFETの特性や信頼性に影響を与える可能性がある。
【0010】
本発明の目的は、半導体装置の性能を向上させることができる技術を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、半導体装置の信頼性を向上させることができる技術を提供することにある。
【0012】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0014】
本発明は、nチャネル型の第1MISFETと、pチャネル型の第2MISFETとを備え、第1MISFETの第1ゲート電極はSiとGeの少なくとも一種とNiとを構成元素とする第1の導電体膜(金属膜、金属化合物膜)からなり、第2MISFETの第2ゲート電極は、SiとGeの少なくとも一種とNiとを構成元素とする第2の導電体膜(金属膜、金属化合物膜)からなり、記第1MISFETの第1ゲート電極を構成する第1の導電体膜よりも、第2MISFETの第2ゲート電極を構成する第2の導電体膜が、Ge濃度が高いものである。
【0015】
また、本発明は、nチャネル型の第1MISFETとpチャネル型の第2MISFETとを有する半導体装置の製造方法であって、(a)半導体基板を準備する工程と、(b)半導体基板上にゲート絶縁膜用の第1絶縁膜を形成する工程と、(c)第1絶縁膜上にパターニングされたシリコン膜からなる第1MISFETの第1ダミー電極を形成し、第1絶縁膜上にパターニングされたシリコンゲルマニウム膜からなる第2MISFETの第2ダミー電極を形成する工程と、(d)第1ダミー電極および第2ダミー電極上に、ニッケルを主成分とする金属膜を形成する工程と、(e)第1ダミー電極を構成するシリコン膜と金属膜とを反応させて、ニッケルシリサイドからなる第1MISFETの第1ゲート電極を形成し、第2ダミー電極を構成するシリコンゲルマニウム膜と金属膜とを反応させてNiySi1-xGexからなる第2MISFETの第2ゲート電極を形成する工程とを有するものである。
【発明の効果】
【0016】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0017】
半導体装置の性能を向上させることができる。
【0018】
また、半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0020】
また、実施の形態で用いる図面においては、断面図であっても図面を見易くするためにハッチングを省略する場合もある。また、平面図であっても図面を見易くするためにハッチングを付す場合もある。
【0021】
(実施の形態1)
本実施の形態の半導体装置およびその製造工程を図面を参照して説明する。図1〜図11は、本発明の一実施の形態である半導体装置、例えばCMISFET(Complementary Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)、の製造工程中の要部断面図である。
【0022】
図1に示されるように、例えば1〜10Ωcm程度の比抵抗を有するp型の単結晶シリコンなどからなる半導体基板(半導体ウエハ)1を準備し、半導体基板1の主面に素子分離領域2を形成する。素子分離領域2は酸化シリコンなどの絶縁体からなり、例えばSTI(Shallow Trench Isolation)法またはLOCOS(Local Oxidization of Silicon )法などにより形成される。
【0023】
次に、半導体基板1のnチャネル型MISFETを形成する領域にp型ウエル3を形成し、pチャネル型MISFETを形成する領域にn型ウエル4を形成する。p型ウエル3は、例えばホウ素(B)などのp型の不純物をイオン注入することなどによって形成され、n型ウエル4は、例えばリン(P)またはヒ素(As)などのn型の不純物をイオン注入することなどにより形成される。
【0024】
次に、図2に示されるように、p型ウエル3およびn型ウエル4の表面にゲート絶縁膜5を形成する。ゲート絶縁膜5は、例えば薄い酸化シリコン膜などからなり、例えば熱酸化法などによって形成することができる。ゲート絶縁膜5が酸化シリコン膜の場合、膜厚は例えば2〜4nm程度にすることができる。また、ゲート絶縁膜5として、酸窒化シリコン膜を用いることもできる。また、ゲート絶縁膜5として、例えば、酸化ハフニウム(HfO2)、ハフニウムアルミネ−ト(HfAlOx)、ハフニウムシリケート(HfSiOx)、ジルコニア(酸化ジルコニウム)、ジルコニウムアルミネ−ト(ZrAlOx)、ジルコニウムシリケート(ZrSiOx)、酸化ランタン(La23)、ランタンシリケート(LaSiOx)などのいわゆるHigh−k膜(高誘電率膜)などを用いることもできる。この時に、最表面層は、シリコン膜と反応しずらいSiON系を含むHigh−k膜をスタックした構造でも良い。
【0025】
次に、ゲート絶縁膜5上にシリコン膜6aを形成する。シリコン膜6aは、例えば多結晶シリコン膜であり、CVD(Chemical Vapor Deposition:化学的気相成長)法などを用いて形成することができる。シリコン膜6aの成膜法としてCVD法を用いれば、ゲート絶縁膜5などにダメージを与えることなくシリコン膜6aを形成することができる。シリコン膜6aの膜厚は、例えば50nm程度にすることができる。また、シリコン膜6aとして、アモルファスシリコン(非晶質シリコン)膜を用いることも可能である。シリコン膜6aの成膜後、イオン注入を行い、リン(P)、アンチモン(Sb)またはヒ素(As)のようなシリコン膜に対してn型の不純物として機能する不純物(ドーパント)をシリコン膜6aに導入(ドープ)する。従って、シリコン膜6aは、不純物を導入したシリコン膜(ドープトポリシリコン膜またはドープトアモルファスシリコン膜)となる。
【0026】
次に、シリコン膜6a上に酸化シリコンなどからなる絶縁膜(ハードマスク層)7aを形成する。絶縁膜7aの膜厚は、例えば50〜100nm程度にすることができる。
【0027】
次に、図3に示されるように、フォトリソグラフィ法およびドライエッチング法などを用いて、シリコン膜6aおよび絶縁膜7aからなる積層膜をパターニング(パターン化、加工、選択的に除去)する。例えば反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)などを用いてパターニングすることができる。パターニングされたシリコン膜6aにより、擬似的なゲート電極(ダミー電極、ダミーゲート電極)11aがp型ウエル3上にゲート絶縁膜5を介して形成される。すなわち、p型ウエル3のゲート絶縁膜5上のシリコン膜6aにより、nチャネル型MISFET用の擬似的なゲート電極11aが形成される。このゲート電極11aは、後述する金属膜25との反応工程を経て、nチャネル型MISFETの金属ゲート電極(ゲート電極31a)となる。
【0028】
次に、図4に示されるように、n型ウエル4の表面のゲート絶縁膜5上を含む半導体基板1上にシリコンゲルマニウム(SiGe:Silicon-Germanium)膜6bを形成する。上記シリコン膜6aおよび絶縁膜7aのパターニング工程(ドライエッチング工程)でn型ウエル4の表面のゲート絶縁膜5がダメージを受けた場合は、n型ウエル4の表面にゲート絶縁膜5を再形成してから、シリコンゲルマニウム膜6bを形成することもできる。
【0029】
シリコンゲルマニウム膜6bは、例えばCVD法などを用いて形成することができる。例えば、成膜ガスとして、モノシラン(SiH4)ガスと、H2で希釈されたモノゲルマン(GeH4)ガスとを用いたCVD法により、シリコンゲルマニウム膜6bを成膜することができる。シリコンゲルマニウム膜6bの成膜法としてCVD法を用いれば、ゲート絶縁膜5などにダメージを与えることなくシリコンゲルマニウム膜6bを形成することができる。シリコンゲルマニウム膜6bの膜厚は、例えば50nm程度にすることができる。また、シリコンゲルマニウム膜6bとして、多結晶膜またはアモルファス(非晶質)膜を用いることができる。シリコンゲルマニウム膜6bにおけるシリコン(Si)とゲルマニウム(Ge)の比率は、CVD成膜工程におけるシリコンソースガス(例えばモノシラン(SiH4)のようなシラン系ガス)とゲルマニウムソースガス(例えばモノゲルマン(GeH4)ガスのようなゲルマン系ガス)とのガス比を調節することなどにより、制御することができる。また、シリコンゲルマニウム膜6は、不純物(ドーパント)を導入しないノンドープのシリコンゲルマニウム膜(ノンドープポリシリコンゲルマニウム膜またはノンドープアモルファスシリコンゲルマニウム膜)であることが、より好ましい。
【0030】
次に、シリコン膜6b上に酸化シリコンなどからなる絶縁膜(ハードマスク層)7bを形成する。絶縁膜7bの膜厚は、例えば50〜100nm程度にすることができる。
【0031】
次に、図5に示されるように、フォトリソグラフィ法およびドライエッチング法などを用いて、シリコンゲルマニウム膜6bおよび絶縁膜7bからなる積層膜をパターニング(パターン化、加工、選択的に除去)する。例えば反応性イオンエッチング(RIE)などを用いてパターニングすることができる。パターニングされたシリコンゲルマニウム膜6bにより、擬似的なゲート電極(ダミー電極、ダミーゲート電極)11bがn型ウエル4上にゲート絶縁膜5を介して形成される。すなわち、n型ウエル4のゲート絶縁膜5上のシリコンゲルマニウム膜6bにより、pチャネル型MISFET用の擬似的なゲート電極11bが形成される。このゲート電極11bは、後述する金属膜25との反応工程を経て、pチャネル型MISFETの金属ゲート電極(ゲート電極31b)となる。また、シリコンゲルマニウム膜6bのドライエッチング工程においては、絶縁膜7aもエッチングマスクとして機能できるので、ゲート電極11aを構成するシリコン膜6がエッチングされるのを防止することができる。
【0032】
次に、図6に示されるように、p型ウエル3のゲート電極11aの両側の領域にリン(P)またはヒ素(As)などのn型の不純物をイオン注入することにより、p型ウエル3のゲート電極11aに整合して(一対の)n-型半導体領域12を形成し、n型ウエル4のゲート電極11bの両側の領域にホウ素(B)などのp型の不純物をイオン注入することにより、n型ウエル4のゲート電極11bに整合して(一対の)p-型半導体領域13を形成する。
【0033】
次に、ゲート電極11a,11bの側壁上に、例えば窒化シリコンなどの絶縁体からなるサイドウォール(側壁スペーサ、側壁絶縁膜)14を形成する。サイドウォール14は、例えば、半導体基板1上に窒化シリコン膜を堆積し、この窒化シリコン膜を異方性エッチングすることによって形成することができる。
【0034】
サイドウォール14の形成後、(一対の)n+型半導体領域15(ソース、ドレイン)が、例えば、p型ウエル3のゲート電極11aおよびサイドウォール14の両側の領域にリン(P)またはヒ素(As)などのn型の不純物をイオン注入することにより、p型ウエル3のゲート電極11aのサイドウォール14に整合して形成され、(一対の)p+型半導体領域16(ソース、ドレイン)が、例えば、n型ウエル4のゲート電極11bおよびサイドウォール14の両側の領域にホウ素(B)などのp型の不純物をイオン注入することにより、n型ウエル4のゲート電極11bのサイドウォール14に整合して形成される。
【0035】
イオン注入後、導入した不純物の活性化のためのアニール処理(活性化アニール、熱処理)を行う。例えば950℃程度のアニール処理を行うことで、n-型半導体領域12、p-型半導体領域13、n+型半導体領域15およびp+型半導体領域16に導入された不純物を活性化することができる。シリコン膜6aやシリコンゲルマニウム膜6bが成膜時にアモルファス(非晶質)膜であった場合には、このアニール処理などにより、多結晶膜になり得る。
【0036】
また、ゲート電極11bを構成するシリコンゲルマニウム膜6bが不純物を導入したシリコンゲルマニウム膜の場合、特に、ホウ素(B、ボロン)を導入したシリコンゲルマニウム膜の場合、このアニール工程でホウ素(B)がゲート絶縁膜5を突き抜けてゲート絶縁膜5下のチャネル領域に拡散する可能性があるが、本実施の形態では、上記のように、ゲート電極11bを構成するシリコンゲルマニウム膜6bとして、不純物を導入していないノンドープのシリコンゲルマニウム膜を用いることで、このアニール工程で、ホウ素(B)などの不純物がゲート絶縁膜5を突き抜けてゲート絶縁膜5下のチャネル領域に拡散するのを防止することができる。
【0037】
上記アニール処理により、n-型半導体領域12、p-型半導体領域13、n+型半導体領域15およびp+型半導体領域16に導入された不純物が活性化される。これにより、nチャネル型MISFETのソースまたはドレインとして機能するn型の半導体領域(不純物拡散層)が、n+型半導体領域15およびn-型半導体領域12により形成され、pチャネル型MISFETのソースまたはドレインとして機能するp型の半導体領域(不純物拡散層)が、p+型半導体領域16およびp-型半導体領域13により形成される。n+型半導体領域15は、n-型半導体領域12よりも不純物濃度が高く、p+型半導体領域16は、p-型半導体領域13よりも不純物濃度が高い。
【0038】
次に、図7に示されるように、必要に応じてエッチング(例えば希フッ酸などを用いたウェットエッチング)を行ってn+型半導体領域15およびp+型半導体領域16の表面を露出させた後(この際、ゲート電極11a,11b上の絶縁膜7a,7bは残存させ、ゲート電極11a,11bの表面は露出させない)、n+型半導体領域15およびp+型半導体領域16上を含む半導体基板1上に例えばコバルト(Co)膜などの金属膜を堆積して熱処理することによって、n+型半導体領域15およびp+型半導体領域16の表面に、それぞれ金属シリサイド膜(コバルトシリサイド膜)21を形成する。これにより、ソース、ドレインの拡散抵抗やコンタクト抵抗を低抵抗化することができる。その後、未反応の金属膜(コバルト膜)は除去する。この際、ゲート電極11a,11b上には絶縁膜7a,7bが存在しているので、ゲート電極11a,11bの表面には金属シリサイド膜は形成されない。また、n+型半導体領域15およびp+型半導体領域16の表面に金属シリサイド膜21を形成することにより、拡散抵抗やコンタクト抵抗を低抵抗化することができるが、不要であれば金属シリサイド膜21の形成を省略することもできる。
【0039】
次に、半導体基板1上に絶縁膜22を形成する。すなわち、ゲート電極11a,11bを覆うように、半導体基板1上に絶縁膜22を形成する。絶縁膜22は、例えば酸化シリコン膜(例えばTEOS(Tetraethoxysilane)酸化膜)からなる。絶縁膜22の成膜工程が比較的高温の場合は、上記金属シリサイド膜21はコバルトシリサイド膜であることが好ましいが、絶縁膜22の成膜工程があまり高くない場合は、上記金属シリサイド膜21をニッケルシリサイド膜とすることもできる。
【0040】
次に、CMP(Chemical Mechanical Polishing:化学的機械的研磨)法などによる絶縁膜22の上面の平坦化処理を行い、絶縁膜7a,7bの表面を露出させる。これにより、図7の構造が得られる。
【0041】
次に、図8に示されるように、エッチングを行ってゲート電極11a,11b上の絶縁膜7a,7bを除去し、ゲート電極11a,11bの表面(上面)を露出させる。例えばフッ酸などを用いたウェットエッチングにより、ゲート電極11a,11b上の絶縁膜7a,7bを除去することができる。また、絶縁膜7a,7bの膜厚よりも絶縁膜22の膜厚の方が厚いので、ゲート電極11a,11b上の絶縁膜7a,7bをエッチングにより除去しても、絶縁膜22は残存している。また、サイドウォール14を絶縁膜7a,7bと異なる材料により形成することで、例えば、絶縁膜7a,7bを酸化シリコン膜により形成し、サイドウォール14を窒化シリコン膜により形成することで、ゲート電極11a,11b上の絶縁膜7a,7bをエッチングにより除去した際に、サイドウォール14を残存させることができる。
【0042】
次に、図9に示されるように、半導体基板1上に金属膜(Ni膜)25を形成する。すなわち、ゲート電極11a,11bの上面上を含む半導体基板1上に金属膜25を形成する。金属膜25は、ニッケル(Ni)を主成分とする金属膜、すなわちNi(ニッケル)膜である。金属膜25は、例えばスパッタリング法などを用いて形成することができる。上記のように、ゲート電極11a,11b上の絶縁膜7a,7bを除去してゲート電極11a,11bの表面を露出させた後に金属膜25を形成しているので、ゲート電極11a,11bの上面は金属膜25に接触している。
【0043】
次に、図10に示されるように、熱処理を行うことにより、金属膜25とゲート電極11a,11bとを反応させて、導電体膜(金属膜、金属化合物膜)26a,26bを形成する。すなわち、熱処理を行うことにより、ゲート電極11aを構成するシリコン膜6aを金属膜25と反応させて導電体膜26aを形成し、ゲート電極11bを構成するシリコンゲルマニウム膜6bを金属膜25と反応させて導電体膜26bを形成する。例えば窒素ガス雰囲気中で400℃程度の熱処理を行うことにより、金属膜25とゲート電極11a,11bとを反応させて、導電体膜26a,26bを形成することができる。この際、ゲート電極11a,11bを構成するシリコン膜6aおよびシリコンゲルマニウム膜6bの全部が金属膜25と反応して導電体膜26a,26bになるようにする。上記のように金属膜25はNi膜(ニッケル膜)であるので、導電体膜26aは、ニッケルシリサイド(NiySi:y>0)からなり、導電体膜26bは、ニッケルシリコンゲルマニウム(NiySi1-xGex:1≧x>0,y>0)からなる。その後、未反応の金属膜25は除去する。例えば、SPM処理(硫酸過水(H2SO4/H22/H2O)を用いた処理)などにより、未反応の金属膜25を除去することができる。
【0044】
上記のように、金属膜25(すなわちNi膜)とゲート電極11aを構成するシリコン膜6aとが反応することにより、ニッケルシリサイド(NiySi:y>0)からなる導電体膜(ニッケルシリサイド膜)26aが形成される。シリコン膜6aには、リン(P)、アンチモン(Sb)またはヒ素(As)のようなシリコン膜に対してn型の不純物として機能する不純物(ドーパント)を導入(ドープ)していたので、導電体膜26a中にも、シリコン膜6aに導入していた上記不純物が存在することになる。従って、導電体膜26aは、シリコン膜に対してn型の不純物として機能する不純物、すなわちリン(P)、アンチモン(Sb)またはヒ素(As)のうちの少なくとも一種の不純物が導入(ドープ)されたニッケルシリサイド(NiySi:y>0)からなる。この導電体膜26aは、nチャネル型MISFET30aのゲート電極31aとなる。nチャネル型MISFET30aのゲート電極31aは、(金属伝導を示す)ニッケルシリサイド膜である導電体膜26aからなるので、金属ゲート電極(メタルゲート電極)である。
【0045】
また、上記のように、金属膜25(すなわちNi膜)とゲート電極11bを構成するシリコンゲルマニウム膜6bとが反応することにより、ニッケルシリコンゲルマニウム(NiySi1-xGex:1≧x>0,y>0)からなる導電体膜(ニッケルシリコンゲルマニウム膜)26bが形成される。シリコンゲルマニウム膜6bには、不純物(ドーパント)を導入(ドープ)していなかったので、導電体膜26b中には不純物が導入されていないことになる。特に、ホウ素(B)は導電体膜26b中に導入されていない(含まれていない)ことになる。従って、導電体膜26bは、ホウ素(B)のような不純物が導入(ドープ)されていないニッケルシリコンゲルマニウム(NiySi1-xGex:1≧x>0,y>0)からなる。この導電体膜26bは、pチャネル型MISFET30bのゲート電極31bとなる。pチャネル型MISFET30bのゲート電極31bは、(金属伝導を示す)ニッケルシリコンゲルマニウム膜である導電体膜26bからなるので、金属ゲート電極(メタルゲート電極)である。
【0046】
次に、図11に示されるように、半導体基板1上に絶縁膜41を形成する。すなわち、ゲート電極31a,31bを覆うように、半導体基板1上(絶縁膜22上)に絶縁膜41を形成する。絶縁膜41は、例えば酸化シリコン膜(例えばTEOS酸化膜)などからなる。それから、必要に応じてCMP法などを用いて絶縁膜41の上面を平坦化する。
【0047】
次に、フォトリソグラフィ法を用いて絶縁膜41上に形成したフォトレジストパターン(図示せず)をエッチングマスクとして、絶縁膜41および絶縁膜22をドライエッチングすることにより、n+型半導体領域15(ソース、ドレイン)、p+型半導体領域16(ソース、ドレイン)およびゲート電極31a,31bの上部などにコンタクトホール(開口部)42を形成する。コンタクトホール42の底部では、半導体基板1の主面の一部、例えばn+型半導体領域15(の表面上の金属シリサイド膜21)の一部、p+型半導体領域16(の表面上の金属シリサイド膜21)の一部またはゲート電極31a,31bの一部などが露出される。なお、図10の断面図においては、n+型半導体領域15(の表面上の金属シリサイド膜21)の一部とp+型半導体領域16(の表面上の金属シリサイド膜21)の一部とがコンタクトホール42の底部で露出しているが、図示しない領域(断面)において、ゲート電極31a,31b上にもコンタクトホール42が形成され、ゲート電極31a,31bの一部がそのコンタクトホール42の底部で露出する。
【0048】
次に、コンタクトホール42内に、タングステン(W)などからなるプラグ43を形成する。プラグ43は、例えば、コンタクトホール42の内部を含む絶縁膜41上にバリア膜(例えば窒化チタン膜)43aを形成した後、タングステン膜をCVD法などによってバリア膜43a上にコンタクトホール42を埋めるように形成し、絶縁膜41上の不要なタングステン膜およびバリア膜43aをCMP法またはエッチバック法などによって除去することにより形成することができる。
【0049】
次に、プラグ43が埋め込まれた絶縁膜41上に、配線(第1配線層)44を形成する。例えば、チタン膜44a、窒化チタン膜44b、アルミニウム膜44c、チタン膜44dおよび窒化チタン膜44eをスパッタリング法などによって順に形成し、フォトリソグラフィ法およびドライエッチング法などを用いてパターニングすることで、配線44を形成することができる。アルミニウム膜44cは、アルミニウム(Al)単体またはアルミニウム合金などのアルミニウムを主成分とする導電体膜である。配線44はプラグ43を介して、nチャネル型MISFET30aのソースまたはドレイン用のn+型半導体領域15、pチャネル型MISFET30bのソースまたはドレイン用のp+型半導体領域16、nチャネル型MISFET30aのゲート電極31aまたはpチャネル型MISFET30bのゲート電極31bなどと電気的に接続される。配線44は、上記のようなアルミニウム配線に限定されず種々変更可能であり、例えばタングステン配線や銅配線(例えばダマシン法で形成した埋込銅配線)とすることもできる。その後、更に層間絶縁膜や上層の配線層などが形成されるが、ここではその説明は省略する。第2層配線以降はダマシン法により形成した埋込銅配線とすることもできる。
【0050】
上記のようにして製造された本実施の形態の半導体装置は、半導体基板1の主面に形成されたnチャネル型MISFET30aおよびpチャネル型MISFET30bを備えたCMISFETを有しており、それらMISFET30a,30bのゲート電極31a,31bは、導電体膜26a,26bからなる金属ゲート電極である。
【0051】
nチャネル型MISFET30aのゲート電極31a(すなわち導電体膜26a)は、上記のように、Ni膜(金属膜25)とシリコン膜6a(ゲート電極11a)とを反応させることにより形成されており、ニッケルシリサイド(NiySi:y>0)からなる。また、シリコン膜6aには、リン(P)、アンチモン(Sb)またはヒ素(As)のようなシリコン膜に対してn型の不純物として機能する不純物(ドーパント)を導入(ドープ)していたので、導電体膜26a中にも、シリコン膜6aに導入していたリン(P)、アンチモン(Sb)またはヒ素(As)のような不純物が存在することになる。従って、nチャネル型MISFET30aのゲート電極31a(すなわち導電体膜26a)は、シリコン膜に対してn型の不純物として機能する不純物、すなわちリン(P)、アンチモン(Sb)またはヒ素(As)のうちの少なくとも一種の不純物が導入(ドープ)されたニッケルシリサイド(NiySi:y>0)からなる。
【0052】
一方、pチャネル型MISFET30bのゲート電極31b(すなわち導電体膜26b)は、上記のように、Ni膜(金属膜25)とシリコンゲルマニウム膜6b(ゲート電極11b)とを反応させることにより形成されており、ニッケルシリコンゲルマニウム(NiySi1-xGex:1≧x>0,y>0)からなる。また、シリコンゲルマニウム膜6bには、ホウ素(B)のような不純物(ドーパント)を導入(ドープ)していなかったので、導電体膜26b中にはホウ素(B)のような不純物が導入されていない。従って、pチャネル型MISFET30bのゲート電極31b(すなわち導電体膜26b)は、ホウ素(B)のような不純物が導入されていない(含まれていない)ニッケルシリコンゲルマニウム(NiySi1-xGex:1≧x>0,y>0)からなる。
【0053】
図12は、NiySi1-xGexの仕事関数を示すグラフである。図12のグラフの横軸は、NiySi1-xGex(ニッケルシリコンゲルマニウム)におけるx(Geの比率)に対応し、図12のグラフの縦軸は、仕事関数に対応する。NiySi1-xGexにおけるx=0がニッケルシリサイド(NiySi)に対応し、NiySi1-xGexにおけるx=1がニッケルゲルマニウム(NiyGe)に対応する。また、図12のグラフには、不純物(B(ホウ素),P(リン),As(ヒ素),Sb(アンチモン))を導入したニッケルシリサイド(NiySi)の仕事関数についてもプロットしてある。
【0054】
図12のグラフからも分かるように、ニッケルシリサイド(NiySi)の仕事関数は約4.65eVであり、ニッケルゲルマニウム(NiyGe)の仕事関数は約5.2eVであり、NiySi1-xGexの仕事関数は、xの値に依存して、約4.65〜5.2eVの間の値となる。ニッケルシリコンゲルマニウムにおけるGeの比率(NiySi1-xGexにおけるx)を増加させることで、仕事関数を上昇させることができる。従って、NiySi1-xGex(ニッケルシリコンゲルマニウム)におけるx(Geの比率)を調節することによって、ニッケルシリコンゲルマニウム(NiySi1-xGex)の仕事関数を所望の値に制御することができる。
【0055】
本実施の形態では、pチャネル型MISFET30bのニッケルシリコンゲルマニウム(NiySi1-xGex)からなるゲート電極31bのGe濃度(NiySi1-xGexにおけるx)を調節することによって、ゲート電極31bの仕事関数を所望の値に調整でき、pチャネル型MISFET30bのしきい値電圧を制御することができる。また、pチャネル型MISFET30bのしきい値電圧(の絶対値)を低下させること(低しきい値電圧化)が可能になる。
【0056】
例えば、NiySi1-xGex(ニッケルシリコンゲルマニウム)におけるxが0.2以上(x≧0.2)になるようにすることで、すなわちNiySi1-xGex(1≧x≧0.2,y>0)によりpチャネル型MISFET30bのゲート電極31bを構成することで、pチャネル型MISFET30bのゲート電極31bの仕事関数を、ニッケルシリサイド(NiySi)の仕事関数よりも約0.1eV以上高い値(例えば4.75eV以上)にすることができ、ニッケルシリサイド(NiySi)にB(ホウ素)をドープした場合以上にゲート電極31bの仕事関数を上昇させることができる。このように、pチャネル型MISFET30bのゲート電極31bをニッケルシリコンゲルマニウム(NiySi1-xGex)により形成することで、ノンドープのニッケルシリサイド(NiySi)によりゲート電極31bを形成した場合に比較して、ゲート電極31bの仕事関数を高めることができ、特にゲート電極31bを構成するNiySi1-xGexにおけるxを0.2以上にすることで、B(ホウ素)をドープしたニッケルシリサイド(NiySi)によりゲート電極31bを形成した場合以上にゲート電極31bの仕事関数を高めることができ、pチャネル型MISFET30bのしきい値電圧(の絶対値)を低下させること(低しきい値電圧化)ができる。なお、pチャネル型MISFET30bのゲート電極31bのGe濃度(NiySi1-xGexにおけるxに対応)は、シリコンゲルマニウム膜6bにおけるGeの比率(濃度)を調節することにより、調整(制御)することができる。
【0057】
また、図12のグラフにも示されるように、ニッケルシリサイド(NiySi)にn型不純物を導入すれば、仕事関数を低下させることができる。例えば、ニッケルシリサイド(NiySi)にP(リン)、As(ヒ素)またはSb(アンチモン)をドープすることで、ノンドープのニッケルシリサイド(NiySi)に比べて仕事関数を0.1〜0.3eV程度低下させることができる。仕事関数を低下させる効果は、Sb(アンチモン)をドープした場合が最も大きく、ノンドープのニッケルシリサイド(NiySi)に比べて仕事関数を約0.3eV低下させることができる。一方、ニッケルシリサイド(NiySi)にp型不純物を導入すれば仕事関数を上昇させることができ、例えば、ニッケルシリサイド(NiySi)にB(ホウ素、ボロン)をドープすることで、ノンドープのニッケルシリサイド(NiySi)に比べて仕事関数を0.1eV程度上昇させることができる。
【0058】
本実施の形態では、上記のように、nチャネル型MISFET30aのゲート電極31aは、ニッケルシリサイド(NiySi:y>0)からなり、リン(P)、アンチモン(Sb)またはヒ素(As)のような不純物を導入している。このため、nチャネル型MISFET30aのゲート電極31aの仕事関数は、ノンドープのニッケルシリサイド(NiySi)の仕事関数よりも0.1〜0.3eV程度低い値にすることができる。従って、nチャネル型MISFET30aのゲート電極31aの仕事関数は、pチャネル型MISFET30bのゲート電極31bの仕事関数よりも低くなる。本実施の形態では、リン(P)、アンチモン(Sb)またはヒ素(As)のようなn型不純物を導入することによってゲート電極31aの仕事関数を調整でき、nチャネル型MISFET30aのしきい値電圧を制御することができる。また、nチャネル型MISFET30aのしきい値電圧(の絶対値)を低下させること(低しきい値電圧化)が可能になる。
【0059】
このように、本実施の形態では、nチャネル型MISFET30aについては、ゲート電極31aにリン(P)、アンチモン(Sb)またはヒ素(As)のような不純物を導入することでゲート電極31aの仕事関数を調節して(ノンドープのニッケルシリサイドよりも低下させて)nチャネル型MISFET30aのしきい値電圧を制御(低しきい値電圧化)し、pチャネル型MISFET30bについては、ゲート電極31bをニッケルシリコンゲルマニウム(NiySi1-xGex)により形成してGeの比率を調節することでゲート電極31bの仕事関数を調節して(ニッケルシリサイドよりも高くして)pチャネル型MISFET30bのしきい値電圧を制御(低しきい値電圧化)している。これにより、CMISFETのnチャネル型MISFET30aとpチャネル型MISFET30bの両方で低しきい値電圧化が可能になり、CMISFETを有する半導体装置の性能を向上させることができる。
【0060】
また、ドーパント(P,As,Sb,Bなど)だけでゲート電極の仕事関数を調節する場合、nチャネル型MISFETのゲート電極(P,AsまたはSbをドープしたゲート電極)の仕事関数に比べて、pチャネル型MISFETのゲート電極(Bをドープしたゲート電極)の仕事関数の変動幅が小さい。すなわち、nチャネル型MISFETのゲート電極の仕事関数は、Sb(アンチモン)などをドープすることでノンドープのニッケルシリサイドに比べて0.3eV程度低くすることが可能であるが、pチャネル型MISFETのゲート電極の仕事関数は、B(ホウ素)などをドープしてもノンドープのニッケルシリサイドに比べて0.1(〜0.2)eV程度しか高くすることができない。それに対して本実施の形態では、Ge濃度の調節によりpチャネル型MISFET30bのゲート電極31bの仕事関数を制御するので、pチャネル型MISFET30bのゲート電極31bの仕事関数の変動幅を相対的に大きくすることが可能である。例えば、ゲート電極31bを構成するNiySi1-xGexにおけるxを0.2以上にすることで、B(ホウ素)をドープしたニッケルシリサイド(NiySi)によりゲート電極を形成した場合以上にゲート電極31bの仕事関数を高めることができ、更にゲート電極31bのGe濃度(NiySi1-xGexにおけるx)を高めれば、ノンドープのニッケルシリサイドに比べて約0.3eV以上仕事関数を高めることも可能である。このため、ミッドギャップを基点に対称性に優れたゲート電極31aおよびゲート電極31bを形成でき、優れた特性のCMISFETを得ることができる。
【0061】
また、本実施の形態では、nチャネル型MISFET30aについては、シリコン膜6a(ゲート電極11a)を金属膜25(Ni膜)と反応させることでニッケルシリサイド(NiySi)からなるゲート電極30aを形成しているが、他の形態として、シリコン膜6aの代わりにシリコンゲルマニウム膜6よりもGe濃度が低いシリコンゲルマニウム膜(このシリコンゲルマニウム膜にはリン(P)、アンチモン(Sb)またはヒ素(As)のようなn型不純物をドープしておく)を用い、この低Ge濃度のシリコンゲルマニウム膜を金属膜25(Ni膜)と反応させてニッケルシリコンゲルマニウム(NiySi1-xGex)からなるnチャネル型MISFET30aのゲート電極31aを形成することもできる。この場合、nチャネル型MISFET30aのゲート電極31aのGe濃度(NiySi1-xGexにおけるxに対応)は、pチャネル型MISFET30bのゲート電極31bのGe濃度(NiySi1-xGexにおけるxに対応)よりも低くなる。ゲート電極31aとゲート電極31bのGe濃度の差により、ゲート電極31aの仕事関数とゲート電極31bの仕事関数とに差を設ける(すなわちpチャネル型MISFET30bのゲート電極31bの仕事関数をnチャネル型MISFET30aのゲート電極31aの仕事関数よりも高くする)ことができ、ミッドギャップを基点に対称性に優れたゲート電極31aおよびゲート電極31bを形成でき、優れた特性のCMISFETを得ることができる。また、しきい値電圧も低くすることができる。但し、本実施の形態のように、シリコン膜6a(ゲート電極11a)を金属膜25(Ni膜)と反応させることでニッケルシリサイド(NiySi)からなるゲート電極30aを形成した場合(すなわちゲート電極30aがGeを含まない場合)が、ゲート電極31aの仕事関数とゲート電極31bの仕事関数との差を最も大きくすることができ、ミッドギャップを基点に対称性に優れたゲート電極31aおよびゲート電極31bをより的確に形成でき、また、低しきい値電圧化にも有利となるので、より好ましい。
【0062】
従って、nチャネル型MISFET30aのゲート電極31aとpチャネル型MISFET30bのゲート電極31bとは、SiとGeの少なくとも一種とNiとを構成元素とする導電体膜(金属膜、金属化合物膜)からなり、nチャネル型MISFET30aのゲート電極31aを構成する導電体膜(金属膜、金属化合物膜)よりも、pチャネル型MISFET30bのゲート電極31bを構成する導電体膜(金属膜、金属化合物膜)の方がGe濃度が高い。そして、本実施の形態のように、nチャネル型MISFET30aのゲート電極31aがGeを含有しないニッケルシリサイドからなり、pチャネル型MISFET30bのゲート電極31bがGeを含有するNiySi1-xGexからなれば、より好ましい。
【0063】
また、pチャネル型MISFETのゲート電極11bを構成するシリコンゲルマニウム膜6bがp型不純物、特にB(ホウ素、ボロン)を導入したシリコンゲルマニウム膜(例えばBドープトポリシリコンゲルマニウム膜)の場合、このシリコンゲルマニウム膜6bやn-型半導体領域12、p-型半導体領域13、n+型半導体領域15およびp+型半導体領域16に導入した不純物を活性化するためのアニール(活性化アニール)工程において、pチャネル型MISFETのゲート電極11bを構成するシリコンゲルマニウム膜中のp型不純物(ホウ素)がゲート絶縁膜5を突き抜けてゲート絶縁膜5下のチャネル領域に拡散する可能性がある。これは、半導体装置の性能や信頼性を低下させる可能性がある。
【0064】
それに対して、本実施の形態では、ゲート電極11aを構成するシリコンゲルマニウム膜6bを、不純物を導入していないノンドープのシリコンゲルマニウム膜により形成しているので、n-型半導体領域12、p-型半導体領域13、n+型半導体領域15およびp+型半導体領域16に導入した不純物を活性化するためのアニール工程などにおいて、p型不純物(ホウ素)がゲート絶縁膜5を突き抜けてゲート絶縁膜5下のチャネル領域に拡散するのを防止することができる。従って、半導体装置の性能や信頼性を向上させることができる。
【0065】
また、本実施の形態とは異なり、ゲート絶縁膜5上にスパッタリング法などを用いて金属膜を直接形成する場合、ゲート絶縁膜5にダメージが与えられる可能性があるが、本実施の形態では、ゲート絶縁膜5上にCVD法などを用いてシリコン膜6aやシリコンゲルマニウム膜6bを形成し、このシリコン膜6およびシリコンゲルマニウム膜6b(ゲート電極11a,11b)をその上に形成した金属膜25bと反応させて金属ゲート電極としてのゲート電極31a,31bを形成しているので、ゲート絶縁膜5にダメージが与えられるのを防止することができる。
【0066】
また、本実施の形態では、金属膜25にNiを主成分とする金属膜(Ni膜)を用いているので、比較的低い熱処理温度でのフルシリサイド化反応が可能になる。すなわち、シリコン膜6aおよびシリコンゲルマニウム膜6b(ゲート電極11a,11b)と金属膜25とを反応させて導電体膜26a,26b(ゲート電極31a,31b)を形成するための熱処理工程の熱処理温度を比較的低くすることができ、また、ゲート電極11a,11bを構成するシリコン膜6aおよびシリコンゲルマニウム膜6bの全部を金属膜25と反応させて導電体膜26a,26b(ゲート電極31a,31b)を形成でき、ゲート絶縁膜5上に未反応のシリコン膜6aやシリコンゲルマニウム膜6bが残存するのを防止できる。また、熱処理工程におけるゲート絶縁膜5と半導体基板1との反応やゲート絶縁膜5とシリコン膜6aまたはシリコンゲルマニウム膜6bとの反応を抑制または防止できる。従って、半導体装置の性能や信頼性をより向上することができる。
【0067】
また、本実施の形態とは異なり、金属ゲート電極形成後にソース・ドレイン領域を形成した場合、ソース・ドレイン領域にイオン注入法で導入した不純物を活性化させるための高温のアニール(活性化アニール)工程によって、ゲート電極を構成している金属とゲート絶縁膜が反応したり、ゲート電極がゲート絶縁膜から剥離したり、あるいはゲート絶縁膜さらにはシリコン基板へゲート電極の金属原子が拡散するなどして、MISFETの電気的特性が劣化してしまう可能性がある。本実施の形態では、MISFETのソース・ドレイン領域(n-型半導体領域12、p-型半導体領域13、n+型半導体領域15およびp+型半導体領域16)に導入(イオン注入)した不純物を活性化させるためのアニール処理を行った後に、シリコン膜6およびシリコンゲルマニウム膜6b(ゲート電極11a,11b)をその上に形成した金属膜25と反応させてゲート電極31a,31bを形成しているので、不純物の活性化アニール工程でゲート電極とゲート絶縁膜が反応したり、ゲート電極がゲート絶縁膜から剥離したり、あるいはゲート電極の金属原子がゲート絶縁膜やシリコン基板へ拡散したりするのを防止でき、MISFETの電気的特性が劣化するのを防止することができる。
【0068】
また、本実施の形態では、シリコン膜6aおよびシリコンゲルマニウム膜6bからなるゲート電極11a,11bを形成した後、これを金属膜25と反応させてゲート電極31a,31bを形成しているので、従来のポリシリコンゲート電極構造の半導体装置の製造ラインや製造装置を踏襲でき、容易かつ安価に金属ゲート電極構造の半導体装置を製造することができる。
【0069】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、金属ゲート電極を有するMISFETを備えた半導体装置およびその製造技術に適用して有効である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の一実施の形態である半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図2】図1に続く半導体装置の製造工程中における要部断面図である。
【図3】図2に続く半導体装置の製造工程中における要部断面図である。
【図4】図3に続く半導体装置の製造工程中における要部断面図である。
【図5】図4に続く半導体装置の製造工程中における要部断面図である。
【図6】図5に続く半導体装置の製造工程中における要部断面図である。
【図7】図6に続く半導体装置の製造工程中における要部断面図である。
【図8】図7に続く半導体装置の製造工程中における要部断面図である。
【図9】図8に続く半導体装置の製造工程中における要部断面図である。
【図10】図9に続く半導体装置の製造工程中における要部断面図である。
【図11】図10に続く半導体装置の製造工程中における要部断面図である。
【図12】NiySi1-xGexの仕事関数を示すグラフである。
【符号の説明】
【0072】
1 半導体基板
2 素子分離領域
3 p型ウエル
4 n型ウエル
5 ゲート絶縁膜
6a シリコン膜
6b シリコンゲルマニウム膜
7a 絶縁膜
7b 絶縁膜
11a ゲート電極
11b ゲート電極
12 n-型半導体領域
13 p-型半導体領域
14 サイドウォール
15 n+型半導体領域
16 p+型半導体領域
21 金属シリサイド膜
22 絶縁膜
25 金属膜
26a 導電体膜
26b 導電体膜
30a nチャネル型MISFET
30b pチャネル型MISFET
31a ゲート電極
31b ゲート電極
41 絶縁膜
42 コンタクトホール
43 プラグ
43a バリア膜
44 配線
44a チタン膜
44b 窒化チタン膜
44c アルミニウム膜
44d チタン膜
44e 窒化チタン膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
nチャネル型の第1MISFETと、
pチャネル型の第2MISFETとを備え、
前記第1MISFETの第1ゲート電極は、SiとGeの少なくとも一種とNiとを構成元素とする第1の導電体膜からなり、
前記第2MISFETの第2ゲート電極は、SiとGeの少なくとも一種とNiとを構成元素とする第2の導電体膜からなり、
前記第1MISFETの前記第1ゲート電極を構成する前記第1の導電体膜よりも、前記第2MISFETの前記第2ゲート電極を構成する前記第2の導電体膜が、Ge濃度が高いことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置において、
前記第1の導電体膜は、Geを含有しないニッケルシリサイドからなり、
前記第2の導電体膜は、Geを含有するNiySi1-xGexからなることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1記載の半導体装置において、
前記第2の導電体膜は、NiySi1-xGexからなり、前記xは0.2以上であることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1記載の半導体装置において、
前記第1の導電体膜は、シリコンに対してn型不純物として機能する第1の不純物が導入されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項1記載の半導体装置において、
前記第1の導電体膜は、P,As,Sbの少なくとも一種がドープされていることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項1記載の半導体装置において、
前記第2の導電体膜は、不純物がドープされていないことを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
請求項1記載の半導体装置において、
前記第2の導電体膜は、ホウ素を含んでいないことを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
請求項1記載の半導体装置において、
前記第2MISFETの前記第2ゲート電極の仕事関数は、前記第1MISFETの前記第1ゲート電極の仕事関数よりも高いことを特徴とする半導体装置。
【請求項9】
nチャネル型の第1MISFETとpチャネル型の第2MISFETとを有する半導体装置の製造方法であって、
(a)半導体基板を準備する工程と、
(b)前記半導体基板上にゲート絶縁膜用の第1絶縁膜を形成する工程と、
(c)前記第1絶縁膜上にパターニングされたシリコン膜からなる前記第1MISFETの第1ダミー電極を形成し、前記第1絶縁膜上にパターニングされたシリコンゲルマニウム膜からなる前記第2MISFETの第2ダミー電極を形成する工程と、
(d)前記第1ダミー電極および前記第2ダミー電極上に、ニッケルを主成分とする金属膜を形成する工程と、
(e)前記第1ダミー電極を構成する前記シリコン膜と前記金属膜とを反応させて、ニッケルシリサイドからなる前記第1MISFETの第1ゲート電極を形成し、前記第2ダミー電極を構成する前記シリコンゲルマニウム膜と前記金属膜とを反応させてNiySi1-xGexからなる前記第2MISFETの第2ゲート電極を形成する工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項10】
請求項9記載の半導体装置の製造方法において、
前記シリコン膜は、P,As,Sbの少なくとも一種がドープされたシリコン膜からなり、
前記シリコンゲルマニウム膜は不純物を導入していないシリコンゲルマニウム膜からなることを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2006−5056(P2006−5056A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−178164(P2004−178164)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成15年度新エネルギー・産業技術総合開発機構「次世代半導体材料・プロセス基盤技術開発」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【Fターム(参考)】