説明

薄膜トランジスタ基板およびその製造方法

【課題】高い表示品位を有する表示装置用の薄膜トランジスタ基板およびこれらを生産効率よく実現することができる製造方法を提供する。
【解決手段】基板1上の複数の部分に配設された半導体膜2と、半導体膜2上に、該半導体膜2と接し互いに離間して配設されたソース電極およびドレイン電極4と、半導体膜2、ソース電極3およびドレイン電極4を覆うゲート絶縁膜6と、ゲート絶縁膜6を介して、ソース電極3およびドレイン電極4の間に跨るように配設された、ゲート電極7とを有した薄膜トランジスタ201と、半導体膜2上に、該半導体膜と接して配設された補助容量電極10と、下層に半導体膜2を有してソース電極から延在するソース配線31と、ゲート電極7から延在するゲート配線71と、ドレイン電極4に電気的に接続された画素電極9と、隣り合う画素の補助容量電極10どうしを電気的に接続する、補助容量電極接続配線12とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表示装置を構成する薄膜トランジスタ基板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:以下「TFT」と呼称))をスイッチング素子として用いたTFTアクティブマトリックス基板(以下「TFT基板」と呼称)は、例えば液晶を利用した表示装置(以下「液晶表示装置」と呼称)等の電気光学装置に利用される。
【0003】
TFT基板を用いた電気光学装置では高精細化、高品位化などの表示性能の向上に向けた要求と共に、これらの製造を効率的に行うことで低コスト化を図るために製造工程の短縮化が要求されている。
【0004】
従来より液晶表示装置用のTFT基板のスイッチング素子には、バックチャネル型TFTが広く利用されている。液晶表示装置用のバックチャネル型TFTでは、一般的に、アモルファスシリコン(Si)が半導体の活性層として用いられており、逆スタガ型と呼ばれる構造が採用されている。これらのTFT基板は、通常4回ないし5回の写真製版工程を経て製造される。
【0005】
一方、上述した製造工程の短縮化の要求に対しては、上記逆スタガ型とは異なるスタガ型と呼ばれる構造を用いて写真製版工程を3回に短縮した製造方法が、例えば特許文献1、特許文献2などに開示されている。
【0006】
また、表示性能の向上に向けた要求に対しては、近年、従来のSiよりも高い移動度を示す酸化物半導体を活性層に用いたTFTの開発が盛んになされるようになっている(特許文献3、4、非特許文献1)。
【0007】
酸化物半導体材料として、酸化亜鉛(ZnO)系、酸化亜鉛(ZnO)に酸化ガリウム(Ga23)や酸化インジウム(In23)を添加したIGZO系などを中心に研究開発が進められている。
【0008】
上記のような酸化物半導体材料は、シュウ酸やカルボン酸のような弱酸系溶液でエッチングすることが可能であり、パターン加工が容易であるという利点がある。しかし、一方で、TFTのソース電極やドレイン電極に用いられる一般的な金属膜(Cr、Ti、Mo、Ta、Al、Cuおよびこれらの合金)をエッチング加工する際に通常用いられる酸系溶液にも容易に溶けてしまう。
【0009】
従って、酸化物半導体を活性層として用いるTFTを製造する場合は、例えば特許文献5に開示されるように、酸化物半導体の薬液耐性を向上させるための新たな元素を添加したり、酸化物半導体膜や金属膜の膜厚を適性化させることによって、金属膜をエッチングで除去した場合でも、酸化物半導体膜が消失せずに残るようにして製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭64−35529号(特開平1−35529号)公報
【特許文献2】特開2004−281687号(特許第4522660号)公報
【特許文献3】特開2004−103957号(特許第4164562号)公報
【特許文献4】特開2005−77822号公報
【特許文献5】特開2008−72011号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Kenji Nomura等著、「Room-temperature fabrication of transparent flexible thin-film transistors using amorphous oxide semiconductors」、Nature 2004年,第432巻,第488頁〜第492頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
TFT基板を用いた液晶表示装置は、TFT基板とこれに対向する対向基板とを貼り合わせ、これらの基板間に液晶が注入されて構成されている。TFT基板には水平方向に複数の走査配線(ゲート配線)と、これらに直交する複数の信号配線(ソース配線)によって囲まれる領域にTFTと画素電極が配置され、マトリックス状をなしている。対向基板には一定の電圧が供給される対向電極が形成され、対向電極と画素電極とで挟まれた液晶によって液晶容量が形成されている。
【0013】
画像は、TFT基板の走査配線に水平走査期間ごとに順次走査信号を印加し、さらに垂直方向の信号配線(ソース配線)に順次所定の信号電圧を印加して対応する画素電極に表示電圧を印加する。このとき水平走査のフレーム期間に渡って液晶容量に所定の電荷を保持することによって、1フレーム分の平面画像の表示が実現される。しかしながら、液晶容量に保持される電荷が変動すると、フリッカーやちらつきなどの表示品位の劣化となる現象を発生させてしまう。従って、液晶容量の他にTFT基板の画素電極に補助容量を形成することによって電荷の変動を軽減して表示品位の劣化を防ぐ構成を採っている。
【0014】
しかしながら、写真製版工程を3回に短縮した従来のTFT基板の製造方法では、補助容量を形成することが難しい。例えば上述の特許文献1に開示された製造方法によるTFT基板では、TFTや画素電極の構成についての記載(第1図および第5図)はあるが、補助容量の構成に関する記載はない。
【0015】
また特許文献2に開示された製造方法によるTFT基板では補助容量の構成が記載されているが、この補助容量は絶縁膜を介して画素電極と対向する対向電極が走査配線層の一部分を利用した形で構成されている(図28および図29)。このため補助容量の容量値設計の自由度が小さく、さらには容量値が変動する可能性があり、フリッカーなどの表示品位の劣化に対するマージンが小さくなるという課題が残される。
【0016】
また、例えば特許文献1、2に開示されたTFT基板の構成では、下地基板と半導体材料との間には金属膜のような遮光膜が形成されていない構成もある。このために半導体材料として従来のSiを用いた場合に、画像表示をするために基板の裏面からバックライト光が入射されると、TFTのチャネル部にフォトキャリアが発生してTFTスイッチング特性のON/OFF比を劣下させ、表示画像のコントラスト低下やクロストーク、表示ムラを発生させて表示品位を劣化させるという課題がある。
【0017】
また、特許文献2では、基板と半導体膜との間に遮光膜を形成したTFT基板の構成(図31)も開示されているが、新たに遮光膜の形成工程が加わってしまう。
【0018】
この課題に対しては、半導体材料として従来のSiの代わりに例えば酸化物系の半導体材料を用いることで解決可能である。すなわち、酸化物半導体はSiに比べると、移動度が高く、また光によるフォトキャリア発生の影響が小さいことから、表示品位の劣化を抑制できる。
【0019】
しかしながら、このような酸化物半導体を用いたTFT基板の場合には、上述したように、配線、電極材料となる従来公知の一般的な金属膜との薬液を用いた選択エッチングが困難である。従って、製造のプロセスマージンが小さくなったり、酸化物半導体TFTの性能を劣化させるなどの課題がある。
【0020】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、高性能の薄膜トランジスタを備え、高い表示品位を有する表示装置用の薄膜トランジスタ基板、およびこれらを生産効率よく実現することができる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明に係る薄膜トランジスタ基板の態様は、画素が複数マトリックス状に配列された薄膜トランジスタ基板であって、前記画素のそれぞれは、基板上の複数の部分に配設された半導体膜と、前記基板上の第1の部分の前記半導体膜上に、該半導体膜と接し互いに離間して配設された、第1の導電膜で構成されるソース電極およびドレイン電極と、絶縁膜で構成され、前記半導体膜、前記ソース電極および前記ドレイン電極を覆うゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜を介して、前記ソース電極および前記ドレイン電極の間に跨るように配設された、第2の導電膜で構成されるゲート電極と、を有した薄膜トランジスタと、前記基板上の第2の部分の前記半導体膜上に、該半導体膜と接して配設された前記第1の導電膜で構成される補助容量電極と、下層に前記半導体膜を有して前記ソース電極から延在し、前記第1の導電膜で構成されたソース配線と、前記ゲート電極から延在し、前記第2の導電膜で構成されたゲート配線と、前記ドレイン電極に電気的に接続された、前記第2の導電膜で構成される画素電極と、前記補助容量電極に電気的に接続され、隣り合う前記画素の前記補助容量電極どうしを電気的に接続する、前記第2の導電膜で構成された補助容量電極接続配線とを備え、前記絶縁膜によって、前記補助容量電極および前記ソース配線が覆われ、前記ゲート配線、前記画素電極および補助容量電極接続配線は前記絶縁膜上に配設される。
【0022】
本発明に係る薄膜トランジスタ基板の製造方法の態様は、画素が複数マトリックス状に配列された薄膜トランジスタ基板の製造方法であって、基板上に半導体膜および第1の導電膜をこの順に成膜する工程(a)と、前記工程(a)の後に、第1の写真製版工程により前記第1の導電膜をパターニングし、薄膜トランジスタを構成するソース電極およびドレイン電極と、補助容量電極およびソース配線を形成するとともに、前記ソース電極、前記ドレイン電極、前記補助容量電極および前記ソース配線の下層に、前記半導体膜が残るように前記半導体膜をパターニングする工程(b)と、前記基板上全面に絶縁膜を形成して、前記ソース電極および前記ドレイン電極を覆うゲート絶縁膜を形成する工程(c)と、前記工程(c)の後に、第2の写真製版工程により、前記絶縁膜を貫通して前記ドレイン電極および前記補助容量電極の表面にそれぞれ達する第1および第2の複数のコンタクトホールを形成する工程(d)と、前記工程(d)の後に、前記基板上全面に第2の導電膜を成膜し、第3の写真製版工程により前記第2の導電膜をパターニングし、前記ゲート絶縁膜を介して、前記ソース電極および前記ドレイン電極の間に跨るゲート電極、前記ゲート電極から延在するゲート配線、前記第1のコンタクトホールを介して前記ドレイン電極と電気的に接続された画素電極および前記第2のコンタクトホールを介して前記補助容量電極に電気的に接続され、隣り合う前記画素の前記補助容量電極どうしを電気的に接続する補助容量電極接続配線を形成する工程(e)とを備え、前記工程(b)は、少なくとも2段階の露光量で部分的に異なる膜厚を有する第1のレジストパターンを形成する工程を含み、前記第1のレジストパターンは、前記ソース電極および前記ドレイン電極の間のチャネル部の上方に相当する部分の厚みが、他の部分よりも薄くなるように形成される。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る薄膜トランジスタ基板の態様によれば、高性能の薄膜トランジスタを備え、高い表示品位を有する表示装置用の薄膜トランジスタ基板を得ることができる。
【0024】
本発明に係る薄膜トランジスタ基板の製造方法態様によれば、3回の写真製版工程で高性能の薄膜トランジスタを備え、高い表示品位を有する表示装置用の薄膜トランジスタ基板を得ることができ、生産効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】TFT基板の全体構成を示す平面図である。
【図2】本発明に係る実施の形態1の薄膜トランジスタ基板の平面構成を模式的に示す平面図である。
【図3】画素の断面構成を模式的に示す断面図である。
【図4】本発明に係る実施の形態1の薄膜トランジスタ基板の製造方法の説明におけるソース電極およびドレイン電極をパターニングした段階での断面図である。
【図5】本発明に係る実施の形態1の薄膜トランジスタ基板の製造方法の説明におけるソース電極およびドレイン電極をパターニングした段階での平面図である。
【図6】本発明に係る実施の形態1の薄膜トランジスタの製造方法を説明する断面図である。
【図7】本発明に係る実施の形態1の薄膜トランジスタの製造方法を説明する断面図である。
【図8】本発明に係る実施の形態1の薄膜トランジスタの製造方法を説明する断面図である。
【図9】本発明に係る実施の形態1の薄膜トランジスタの製造方法を説明する断面図である。
【図10】本発明に係る実施の形態1の薄膜トランジスタの製造方法を説明する断面図である。
【図11】本発明に係る実施の形態1の薄膜トランジスタの製造方法を説明する断面図である。
【図12】本発明に係る実施の形態1の薄膜トランジスタの製造方法を説明する断面図である。
【図13】本発明に係る実施の形態1の薄膜トランジスタの製造方法を説明する平面図である。
【図14】本発明に係る実施の形態1の薄膜トランジスタの製造方法を説明する断面図である。
【図15】本発明に係る実施の形態1の薄膜トランジスタ基板の平面構成を模式的に示す平面図である。
【図16】本発明に係る実施の形態2の薄膜トランジスタの製造方法を説明する断面図である。
【図17】本発明に係る実施の形態2の薄膜トランジスタの製造方法を説明する断面図である。
【図18】本発明に係る実施の形態2の薄膜トランジスタの製造方法を説明する断面図である。
【図19】本発明に係る実施の形態2の薄膜トランジスタの製造方法を説明する断面図である。
【図20】本発明に係る実施の形態2の薄膜トランジスタの製造方法を説明する断面図である。
【図21】本発明に係る実施の形態2の薄膜トランジスタの製造方法を説明する断面図である。
【図22】本発明に係る実施の形態2の薄膜トランジスタの製造方法を説明する断面図である。
【図23】本発明に係る実施の形態1および2の薄膜トランジスタの変形例の構成を説明する平面図である。
【図24】本発明に係る実施の形態1および2の薄膜トランジスタの変形例の構成を説明する断面図である。
【図25】本発明に係る実施の形態1および2の薄膜トランジスタの変形例の構成を説明する平面図である。
【図26】本発明に係る実施の形態1および2の薄膜トランジスタの変形例の構成を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<実施の形態1>
本実施の形態に係るTFT基板は、スイッチング素子として薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor)が用いられたアクティブマトリックス基板であるものとして説明する。
【0027】
なお、TFT基板は、液晶表示装置(LCD)等の平面型表示装置(フラットパネルディスプレイ)に用いられる。
【0028】
<TFT基板の全体構成>
まず、図1を用いてTFT基板の全体構成について説明する。図1は、TFT基板の全体構成を模式的に説明する平面図であり、ここでは、LCD用のTFT基板を例に採っている。
【0029】
図1に示すTFT基板200は、TFT201がマトリックス状に配列されたTFTアレイ基板であり、表示領域202と、表示領域202を囲むように設けられた額縁領域203とに大きく分けられる。
【0030】
表示領域202には、複数のゲート配線(走査信号線)71、複数の補助容量電極10および複数のソース配線(表示信号線)31が配設され、複数のゲート配線71は互いに平行に配設され、複数のソース配線31は、複数のゲート配線71と直交して交差するように互いに平行に配設されている。図1では、ゲート配線71が横方向(X方向)に延在するように配設され、ソース配線31が縦方向(Y方向)に延在するように配設されている。
【0031】
そして、隣接するゲート配線71および隣接するソース配線31に囲まれた領域が画素204となるので、TFT基板200では、画素204がマトリックス状に配列された構成となる。
【0032】
図1においては、一部の画素204については、その構成を拡大して示しており、画素204内には、少なくとも1つのTFT201が配設されている。TFT201はソース配線31とゲート配線71の交差点近傍に配置され、TFT201のゲート電極がゲート配線71に接続され、TFT201のソース電極がソース配線31に接続され、TFT201のドレインは画素電極9に接続されている。また、画素電極9には補助容量209が接続され、複数のゲート配線71のそれぞれと平行に設けられた補助容量配線101に、補助容量電極10が接続されている。
【0033】
ゲート配線71と補助容量配線101とは交互に配設され、補助容量配線101とソース配線31とは、互いに直交して交差するように配設されている。
【0034】
TFT基板200の額縁領域203には、走査信号駆動回路205と表示信号駆動回路206とが設けられている。ゲート配線71は、表示領域202から走査信号駆動回路205が設けられた側の額縁領域203まで延在しており、ゲート配線71は、TFT基板200の端部で、走査信号駆動回路205に接続されている。
【0035】
ソース配線31も同様に表示領域202から表示信号駆動回路206が設けられた側の額縁領域203まで延在しており、ソース配線31は、TFT基板200の端部で、表示信号駆動回路206に接続されている。
【0036】
また、走査信号駆動回路205の近傍には、外部との接続基板207が配設され、表示信号駆動回路206の近傍には、外部との接続基板208が配設されている。なお、接続基板207および208は、例えば、FPC(Flexible Printed Circuit)などの配線基板である。
【0037】
接続基板207および208のそれぞれを介して、走査信号駆動回路205および表示信号駆動回路206に外部からの各種信号が供給される。走査信号駆動回路205は、外部からの制御信号に基づいて、ゲート信号(走査信号)をゲート配線71に供給する。このゲート信号によって、ゲート配線71が順次選択される。表示信号駆動回路206は、外部からの制御信号や、表示データに基づいて表示信号をソース配線31に供給する。これにより、表示データに応じた表示電圧を各画素204に供給することができる。
【0038】
なお、走査信号駆動回路205と表示信号駆動回路206は、TFT基板200上に配置される構成に限られるものではなく、例えば、TCP(Tape Carrier Package)で駆動回路を構成し、TFT基板200とは別の部分に配置しても良い。
【0039】
また、補助容量電極10は、画素電極9と平面視的に重複(重畳)するように構成され、画素電極9を一方の電極とし、補助容量電極10を他方の電極として補助容量209を形成する。各画素204内の補助容量電極10は、補助容量配線101に接続されて結束し、例えば走査信号駆動回路205または表示信号駆動回路206などから共通電位が供給される。
【0040】
TFT201は、画素電極9に表示電圧を供給するためのスイッチング素子として機能し、ゲート電極から入力されるゲート信号によってTFT201のONとOFFが制御される。そして、ゲート電極に所定の電圧が印加され、TFT201がONする、ソース配線31から電流が流れるようになる。これにより、ソース配線31から、TFT201のドレイン電極に接続された画素電極9に表示電圧が印加され、画素電極9と対向電極(不図示)との間に、表示電圧に応じた電界が生じる。画素電極9と対向電極との間には液晶によって補助容量209と並列に液晶容量(不図示)が形成される。なお、IPS(In Plane Switching)方式の液晶表示装置の場合、対向電極は、TFT基板200側に配置される。
【0041】
これらの液晶容量と補助容量209によって画素電極9に印加された表示電圧が一定期間保持される。なお、TFT基板200の表面には、配向膜(不図示)が形成されていても良い。
【0042】
また、TFT基板200には図示されない対向基板が配置される。対向基板は、例えばカラーフィルタ基板であり、視認側に配置される。対向基板には、カラーフィルタ、ブラックマトリックス(BM)、対向電極および配向膜等が形成されている。
【0043】
TFT基板200と対向基板とは、一定の間隙(セルギャップ)を介して貼り合わされる。そして、この間隙に液晶が注入され封止される。すなわち、TFT基板200と対向基板との間に液晶層が挟持される。さらに、TFT基板200および対向基板の外側の面には、偏光板、位相差板等が設けられる。また、以上のように構成された液晶表示パネルの視認側とは反対側には、バックライトユニット等が配設される。TFT基板200が視認側とは反対側、対向基板が視認側に配置されるため、バックライトユニットは、TFT基板200の外側に配置される。
【0044】
<液晶表示装置の動作>
画素電極9と対向電極との間の電界によって、液晶が駆動される。すなわち、基板間の液晶の配向方向が変化する。これにより、液晶層を通過する光の偏光状態が変化する。偏光板を通過して直線偏光となった光は液晶層によって、偏光状態が変化する。
【0045】
具体的には、バックライトユニットからの光は、TFT基板200側の偏光板によって直線偏光になる。そして、この直線偏光が液晶層を通過することによって、偏光状態が変化する。
【0046】
従って、偏光状態によって、対向基板側の偏光板を通過する光量が変化する。すなわち、バックライトユニットから液晶表示パネルを透過する透過光のうち、視認側の偏光板を通過する光の光量が変化する。液晶の配向方向は、印加される表示電圧によって変化する。従って、表示電圧を制御することによって、視認側の偏光板を通過する光量を変化させることができる。すなわち、画素ごとに表示電圧を変えることによって、液晶表示装置に所望の画像を表示することができる。
【0047】
<TFT基板の画素の構成>
次に、図2および図3を参照して、TFT基板200の画素204の構成について説明する。図2は、画素204の平面構成を模式的に示す平面図であり、図3は、図2におけるX−X線での断面構成(画素TFT部の断面構成)、Y−Y線での断面構成(補助容量配線接続部の断面構成)、W−W線での断面構成(ゲート端子部の断面構成)およびZ−Z線での断面構成(ソース端子部の断面構成)を、それぞれ(a)部、(b)部、(c)部および(d)部として示す断面図である。
【0048】
図3に示すようにTFT基板200は、例えば、ガラス等の透明性絶縁基板である基板1上に形成され、図3の(c)部に示すように、画素TFT部には、基板1上に半導体膜2が配設され、その上に金属膜で構成されるソース電極3、ドレイン電極4が間隔を開けて配設され、ソース電極3とドレイン電極4との間の半導体膜2の表面内にチャネル部5が形成される構成となっている。そして、これらを覆うようにゲート絶縁膜6が配設され、さらにゲート絶縁膜6の上部には、下層のTFTチャネル部5上を覆うようにゲート電極7が形成されてTFT部201を構成している。
【0049】
また、ドレイン電極4上のゲート絶縁膜6には画素ドレインコンタクトホール8が形成され、この画素ドレインコンタクトホール8を介して下層のドレイン電極4と電気的に接続された画素電極9が配設されている。画素電極9のパターンの一部は、ゲート絶縁膜6に覆われた補助容量電極10のパターンと平面視的に重畳しており、この重畳した領域で補助容量部209が形成されている。ゲート電極7と画素電極9は同じ層で構成されている。また、補助容量電極10は、最下層の半導体膜14とソース電極3およびドレイン電極4を構成する金属膜とが積層された、積層膜で構成されている。
【0050】
図2に示すように、複数のソース配線31は、縦方向(Y方向)に延在するように互いに平行して設けられている。また、ソース配線31は、各画素におけるTFT201のソース電極3と一体となるように形成されている。また、ソース配線31は、図3の(d)部に示されるように補助容量電極10と同様に、最下層の半導体膜14とソース電極3を構成する金属膜とが積層された積層膜で構成されている。
【0051】
図2に示されるように補助容量電極10の平面視形状は、各画素領域で上層の画素電極9のパターンの一部と重畳するようにコの字状(square U-shape)に配置されている。なお、補助容量電極10はコの字状に限らず、所望の補助容量が得られるのであれば、直線状であってもL字状であっても良い。
【0052】
複数のゲート配線71は、ソース配線31と直交するように横方向(X方向)に延在するように互いに平行して設けられている。また、ゲート配線71は、各画素におけるTFT201のゲート電極7と一体となるように形成されている。すなわち、TFT201部分のゲート配線71がゲート電極7となる。ゲート電極7は、TFT201の配置に対応して、ゲート配線71よりも幅広い形状であっても、ゲート配線から分岐して画素領域に突き出した形状であっても良い。
【0053】
図3の(d)部に示されるように、基板1上の補助容量配線接続部には、互いに隣接する画素にそれぞれ配設された補助容量電極10の上層のゲート絶縁膜6に補助容量電極接続用コンタクトホール11を設け、これらの補助容量電極接続用コンタクトホール11を介して下層のソース配線31を跨いで各画素間の補助容量電極10どうしを接続するための補助容量電極接続配線12が配設されている。
【0054】
補助容量接続配線12は、互いに隣接する画素間の補助容量電極10どうしを鎖状に連結するように配置されており、それにより2本のゲート配線71間に配列される複数の画素(画素列)に関して電気的に直列に接続された一本の補助容量配線101が形成されることとなる。
【0055】
これにより、画素ごとに独立した補助容量電極10どうしの連結が容易にでき、複数の補助容量電極10を結束する配線を製造するための工程が不要となり、製造工程を簡略化できる。
【0056】
また、各画素列の補助容量配線101は、さらに結束されて、例えば走査信号駆動回路205(図1)または表示信号駆動回路206(図1)などから共通電位が供給される構成となっている。
【0057】
図3の(b)部に示されるように、基板1上のソース端子部には、ソース配線31から延長されたソース端子32が配設されている。ソース端子32は、最下層の半導体膜14とソース電極3を構成する金属膜とが積層された積層膜で構成されている。ソース端子32上のゲート絶縁膜6にはソース端子部コンタクトホール13が設けられ、このソース端子部コンタクトホール13を介してソース端子パッド33がソース端子32に接続される。ソース端子パッド33には表示信号駆動回路206(図1)が接続され、画像表示信号がソース配線31に供給される構成となっている。
【0058】
図3の(a)部に示されるように、基板1上のゲート端子部には、ゲート配線71から延長されたゲート端子72が形成されている。ゲート端子72は、基板1上のゲート絶縁膜6上に配設され、ゲート電極7を構成する金属膜で構成されている。ゲート端子72には走査信号駆動回路205(図1)が接続され、走査信号がゲート配線71に供給される構成となっている。
【0059】
<TFT基板の製造方法>
次に、TFT基板200の製造方法について、図4〜図15を用いて説明する。なお、最終工程を示す断面図は図3に相当し、図3における(a)〜(d)の各部は、以下の説明における製造工程を説明する各断面図において同じ部分を指すものとする。
【0060】
まず、図4の(c)部に示すように、基板1上のTFT部に半導体膜2をパターニングし、その上に、ソース電極3およびドレイン電極4をパターニングする。ここまでの工程で、図4の(b)部に示すように、ソース端子部ではソース端子32が形成され、図4の(d)部に示すように、補助容量配線接続部では補助容量電極10およびソース配線31が形成され、図4の(c)部に示すように、補助容量部209では補助容量電極10が形成される。
【0061】
この状態での平面図を図5に示す。図5において、半導体膜2と同じ材質の半導体膜14でソース配線31、ソース端子32および補助容量電極10の下層膜がパターニングされ、ソース電極3およびドレイン電極4と同じ材質の金属膜で、ソース配線31、ソース端子32および補助容量電極10がパターニングされる。
【0062】
ここまでの工程を、製造工程を順に示す断面図である図6〜図11を参照してさらに説明する。
【0063】
まず、基板1の表面を洗浄液または純水を用いて洗浄する。なお、ここでは厚さ0.6mmのガラス基板を基板1として使用するものとする。洗浄された基板1に、図6に示す工程において非晶質構造の酸化物(以下、IGZOと呼称)ターゲットを用いたスパッタリング法で、酸化物半導体膜14を成膜する。ここでは、In(インジウム):Ga(ガリウム):Zn(亜鉛):O(酸素)の原子組成比が1:1:1:4であるIGZOターゲットを用いる。
【0064】
この場合、従来のArガスを用いたスパッタリングでは、酸素の原子組成比がターゲットの化学量論組成よりも少なく、酸素イオン欠乏状態(上記の例ではOの組成比が4未満)の酸化膜となってしまうことがある。従って、Arガスに酸素(O2)ガスを混合させてスパッタリングすることが好ましい。本実施の形態では、Arガスに対して分圧比で10%のO2ガスを添加した混合ガスを用いて、スパッタリングするものとし、酸化物半導体膜14を50nmの厚さで成膜する。
【0065】
次に、第1の金属膜15として3mol%のNiを添加したAl−3mol%Ni合金ターゲットを用いて、公知のArガスを用いたスパッタリング法でAl−3mol%Ni合金膜を200nmの厚さで成膜する。
【0066】
その後、図7に示す第1回目の写真製版工程で第1の金属膜15上にフォトレジストパターンを形成する。
【0067】
まず、ノボラック系のポジ型の感光性樹脂で構成されるフォトレジスト材を、塗布法を用いて第1の金属膜15上に塗布し、厚さ約1.5μmのフォトレジスト16を形成する。次に、予め準備したフォトマスク17を用いてフォトレジスト16の露光を行う。フォトマスク17にはTFTの半導体膜、ソース電極、ドレイン電極、ソース配線、ソース端子および補助容量電極膜のパターンを形成するための遮光膜パターンが形成されている。この遮光膜パターンにより露光光が遮られる領域が遮光領域となる。また、フォトマスク17には、TFTのチャネル部となる部分では露光光の光強度を低減させる半透過性のパターンが形成されており、この半透過性のパターンにより露光光が減衰した領域が半透過領域となる。
【0068】
フォトマスク17を用いてフォトレジスト16の露光を行った後に、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)を含む有機アルカリ系の現像液を用いて現像を行う。これにより、図8に示すように、TFTの半導体膜2、ソース電極3、ドレイン電極4、チャネル部5、ソース配線31、ソース端子32および補助容量電極10を形成するためフォトレジストパターン18を形成することができる。このフォトレジストパターン18では、半透過性のフォトマスクパターンで露光されたTFTのチャネル部に対応する領域では、未露光領域よりも薄い膜厚でフォトレジストが残存している。本実施の形態では約0.5μmの膜厚でフォトレジストを残存させている。また、このとき、上記の現像液によって、第1の金属膜14が、フォトレジストパターン18をマスクとして同時にエッチングでパターニングされる。すなわち、フォトレジストパターン18の現像と、第1の金属膜15のエッチングが同じ工程で行われる。
【0069】
常温(23℃)で、例えば、TMAH2.4重量%濃度のアルカリ溶液を現像液として用いた場合、Al−3mol%Ni膜は、約1.5nm/秒の速さでエッチングされる。このため、フォトレジスト現像後、現像時間をさらに133秒以上延長することによって、200nm厚さのAl−3mol%Ni膜を完全にエッチングで除去することができる。このように、フォトレジストパターン18の現像液を第1の金属膜15のエッチング液として用いることで、製造工程を簡略化することができる。
【0070】
なお、フォトレジストは、ポジ型の場合、露光した部分は変質してレジスト現像液で溶解するが、遮光された部分はレジスト現像液で溶解することはなく、規定の現像時間(一般的に60〜120秒)経過後に、ある程度現像処理を延長したとしてもフォトレジストパターンが大きく影響を受けることはない。
【0071】
なお、上述した延長の現像時間は、200nmの厚さのAl−3mol%Ni膜をエッチングするための計算上の時間であり、実際には、エッチング速さや膜厚のバラツキを考慮して、上記時間の1.25倍から3倍程度(オーバーエッチング時間25%から200%)で処理することが望ましく、上限値としては約400秒(399秒)程度となる。
【0072】
特許文献5に開示されているように、本実施の形態で用いたIGZO膜をはじめとする種々の酸化物半導体膜14は、酸溶液に非常に溶けやすい。従って、酸化物半導体膜14と金属膜15との選択エッチングが不可能であり、パターン加工が非常に難しいことが知られている。しかしながら、これらの酸化物半導体膜14は、TMAHのようなアルカリ溶液には溶けない。このため、有機アルカリ系の現像液を用いることで、酸化物半導体膜14をエッチングすることなく、上層のAl−3mol%Ni膜15だけをエッチングで除去することが可能となる。これにより、パターンの加工精度を向上することができる。
【0073】
また、従来、IGZO膜のような酸化物膜をAl系メタルと積層あるいは接触させた場合には、フォトレジストの有機アルカリ現像液中での現像において、両者の膜を電極とする電池反応が起こり、Al系メタルが酸化腐食、IGZO膜が還元腐食してパターン不良を発生させるという問題があった。
【0074】
しかしながら、本実施の形態のように、AlにNiを添加したAl−3mol%Ni膜を用いて、これをアルカリ現像液中でエッチングすることで、従来のAl系メタルで問題となっていた電池反応を防止することができる。従って、IGZO膜を還元腐食させることなく良好な選択エッチングをすることが可能となる。
【0075】
次に、図9に示す工程において、フォトレジストパターン18をマスクとして酸化物半導体膜14をエッチングでパターニングする。このエッチング工程では、シュウ酸5重量%濃度の水溶液を用いる。この場合は、常温(23℃)で約1nm/秒の速さでIGZO酸化物半導体膜がエッチングされる。なお、上述のシュウ酸水溶液に限らず一般的に公知のシュウ酸溶液ではAl−3mol%Niで構成される第1の金属膜15は溶けない。このため、IGZOで構成される酸化物半導体膜だけを選択的にエッチングすることが可能となり、パターンの加工精度を向上することができる。
【0076】
このエッチングにより、半導体膜2と、ソース配線31、ソース端子32および補助容量電極10の下層膜がパターニングされる。
【0077】
次に、図10に示す工程において、基板1の表面に対して酸素ガスプラズマを用いてレジストアッシングを行う。このレジストアッシングは、TFTのチャネル部に対応する領域の膜厚が薄くなっているフォトレジストだけを除去して、他の未露光部ではフォトレジストが残るように実施する。これにより、チャネル部に対応する領域以外ではフォトレジストパターン18が薄くなってフォトレジストパターン19となる。
【0078】
次に、図11に示す工程において、このフォトレジストパターン19をマスクとして、再びTMAH2.4重量%濃度のアルカリ現像液を用いて第1の金属膜15だけを選択的にエッチングする。これによってTFTのチャネル部に対応する領域の第1の金属膜15が除去(バックチャネルエッチング)され、TFTのチャネル部5が規定される。その後、アミン系のレジスト剥離液を用いてレジストパターン19を剥離除去することにより、図4および図5に示すようなTFTの半導体膜2、ソース電極3、ドレイン電極4、チャネル部5、ソース配線31、ソース端子32および補助容量電極10のパターンが基板1上に形成される。
【0079】
次に、図12に示す工程において、例えば、化学的気相成膜(CVD)法を用いてゲート絶縁膜6を成膜する。具体的には、約250℃の基板加熱条件下で厚さ300nmの窒化シリコン(SiN)膜を成膜する。
【0080】
その後、第2回目の写真製版工程でフォトレジストパターンを形成して、SiN膜をパターニングする。すなわち、フォトレジストパターンをマスクとして用いて、SiN膜をエッチングする。このエッチング工程では、公知のフッ素系ガスを用いたドライエッチング法を用いる。これにより、ドレイン電極4上に画素ドレインコンタクトホール8、補助容量電極10上に補助容量電極接続用コンタクトホール11およびソース端子32上にソース端子部コンタクトホール13を形成する。その後、フォトレジストパターンを除去することで、図12および図13に示すように、複数のコンタクトホール8、11、13を有するゲート絶縁膜6を形成することができる。
【0081】
次に、図14に示す工程において、第2の導電膜として透明導電膜120を成膜する。本実施の形態では、透明導電膜120としてIZO(酸化インジウムIn23+酸化亜鉛ZnO)膜を、公知のArガスを用いたスパッタリング法で、厚さ100nmの厚さに成膜する。
【0082】
次いで、第3回目の写真製版工程でフォトレジストパターンを形成し、当該フォトレジストパターンをマスクとして、IZO膜120をエッチングする。これにより、図3および図15に示すように、ゲート電極7、画素電極9、補助容量電極接続用配線12およびソース端子パッド33が形成される。このエッチング工程では、公知のシュウ酸系溶液によるウエットエッチングを用いることができる。エッチング後にフォトレジストパターンを除去する。
【0083】
以上説明したように、本実施の形態に係るTFT基板の製造方法によれば、3回の写真製版工程だけでTFT基板200を得ることができる。
【0084】
完成させたTFT基板200の表面に配向膜やスペーサを形成する。配向膜は、液晶を配列させるためのポリイミド等で構成される。また、カラーフィルタや配向膜を備えた対向基板を準備し、TFT基板200と対向基板とを貼り合わせる。そして、上記のスペーサによって両基板間に隙間を形成し、そこに液晶を注入保持する。さらに両基板の外側に偏光板、位相差板およびバックライトユニット等を配設する。これにより液晶表示装置を完成させることができる。
【0085】
<効果>
完成した液晶表示装置のTFT基板には、最下層にTFTの半導体膜2が形成されているため、半導体膜にはバックライトユニットからの光が直接入射するが、半導体膜2として、IGZO酸化物系半導体膜を用いているので、半導体膜2にSiを用いた場合のようなフォトキャリア発生によるTFT特性のON/OFF比の劣下の影響が少ないTFT基板を実現することができる。
【0086】
従って、下地基板と半導体膜2との間に遮光膜を形成する必要がなく、当該遮光膜を形成するための製造工程の増加を招くことなく、コントラスト比が高く、表示ムラのない高表示品質を有する液晶表示装置を実現することができる。
【0087】
また、移動度の高い酸化物系半導体膜を用いたTFT基板を実現することができるので、動作速度の速いTFT基板、およびそれを用いた液晶表示装置を高い歩留まりで製造することができる。
【0088】
もちろん、本発明に係るTFT基板は、液晶表示装置以外の表示装置に利用しても良い。例えば、有機EL(electroluminescence)ディスプレイ装置等の電気光学表示装置に利用することができる。
【0089】
また、表示装置以外の半導体部品等に用いられる薄膜トランジスタ、アクティブマトリックス基板に利用することも可能である。
【0090】
また、本実施の形態では、第1の金属膜15として、Al−3mol%Ni膜を用いたことによって、有機アルカリ薬液で比較的速いエッチング速度をもってエッチング可能となる。このため、下層の酸化物系(あるいは窒化物系)半導体膜にダメージを与えることなく選択エッチングが可能となるという効果と共に、一般的なAl膜では酸化物半導体膜2との接触によりオーミックコンタクト特性が劣化するという問題を発生させずに、酸化物半導体膜2との電気的なオーミックコンタクト特性を良好にすることができる。
【0091】
また、第1の金属膜15に接して形成される上層のIZO膜などで構成される透明導電膜(画素電極9、ソース端子パッド33)とのコンタクト特性についてもより良好なものとすることができる。
【0092】
<変形例>
なお、第1の金属膜15の材料は、Al−3mol%Ni膜に限定されるものではない。例えば、Alに添加する元素はNiに限らず、周期律で同じ10族に属するパラジウム(Pd)、白金(Pt)であっても良い。
【0093】
また、これらNi、Pd、Ptの2種類以上をAlに添加しても良い。Alにこれらの元素を添加することによって、TMAHを含むアルカリ溶液(現像液)でIGZO膜を腐食させることなくエッチングすることが可能となる。
【0094】
また、添加量も3mol%に限らず、0.5mol%以上であればTMAHを含むアルカリ現像液でエッチングすることが可能である。なお、添加量が10mol%を超えると、Al合金膜中でAlNi、AlPd、およびAlPtの化合物相が析出する割合が多くなり、これらがアルカリ現像液でエッチング残となってエッチング不良を引き起こす可能性もある。従って、Alに添加するNi、Pd、およびPtの添加総量は0.5mol%以上10mol%以下とすることが望ましい。このようにすることで、有機アルカリ現像液によるエッチングレートを向上させることができ、エッチングし易くすることができる。
【0095】
また、TMAH溶液のTMAH濃度は、2.4重量%に限らず、例えば液温が10℃から50℃までの間において、0.2重量%以上25重量%以下の範囲とすることができる。TMAH濃度が0.2重量%未満の場合は、上記Al合金膜であってもエッチングレートが著しく低下してエッチングが困難となる。一方で、TMAH濃度が25重量%を超える場合は、フォトレジストパターン16へのダメージが大きくなり、パターン不良を起こす可能性がある。
【0096】
なお、TMAH濃度が2.4重量%でない場合でも、下層の酸化物半導体膜2および上層のIZO膜などで構成される透明導電膜(画素電極9、ソース端子パッド33)とのコンタクト特性についても良好なものとする効果は変わらない。
【0097】
また、酸化物半導体膜14と接する第1の金属膜15をAl膜で構成しても良い。この場合、Al膜にはN原子やO原子を添加する。N原子やO原子の添加は、反応性スパッタリング法を用いて行うことができる。
【0098】
例えば、ArガスにN2ガスやO2ガスを添加した混合ガスを用いて、反応性スパッタリングを行う。これにより、N原子やO原子をAl膜に添加することができる。
【0099】
N原子やO原子の添加量は、Al膜が導電性を有する範囲に止めるのが好ましい。例えば比抵抗値の上限として従来より電極膜として一般的に用いられてきたTi、Cr、Mo、Ta、Wやこれらの合金膜の値を基準として200μΩcm以下に設定した場合、N原子は40at%以下、O原子は15at%以下とすることが好ましい。
【0100】
また200μΩcmを超えない範囲でN原子とO原子の両方を添加しても良い。この場合でも上述の実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0101】
さらには上述したNi、Pd、Ptを含むAl合金膜にさらにN原子やO原子を添加しても良い。このようにAl膜やAl合金膜を、N原子やO原子を含む導電膜とすることによって、電気的なオーミックコンタクト特性を良好にすることができる。すなわち、下層の酸化物半導体膜2とのコンタクト特性、ならびに上層のIZO膜などで構成される透明導電膜(画素電極9、ソース端子パッド33)とのコンタクト特性をより良好にすることができ、TFT特性や画素の表示特性を向上させることができる。
【0102】
なお、N原子とO原子の添加量は、N2ガスやO2ガスの分圧を調整することで、制御することができる。
【0103】
以上のように酸化物半導体膜14上に接して形成される、Al膜やAl合金膜で構成されるソース電極およびドレイン電極について、少なくとも酸化物半導体膜14と接する面において、窒素を含む導電性のアルミニウム、あるいはこれを主成分とする膜を有するAl膜とした構成を採用することにより、実施の形態1と同様に下層の酸化物系(あるいは窒化物系)半導体膜にダメージを与えることなく選択エッチングできるという効果を得ることができる。また、一般的なAl膜では酸化物半導体膜2(あるいは窒化物系半導体膜)との接触によりオーミックコンタクト特性が劣化する問題を解決し、下層の酸化物半導体膜2(あるいは窒化物系半導体膜)および上層のIZO膜などで構成される透明導電膜(画素電極9、ソース端子パッド33)とのコンタクト特性について良好にすることができる。
【0104】
<実施の形態2>
以上説明した実施の形態1においては、第1の導電膜15をAl合金膜で構成する例を説明したが、実施の形態2に係るTFT基板200では、第1の導電膜15を、Cu膜もしくはCuを主成分とするCu合金膜で構成している。以下、Cu膜もしくはCuを主成分とするCu合金膜をCu膜と総称する。なお、その他、実施の形態1と同じの構成については同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0105】
<TFT基板の製造方法>
以下、実施の形態2に係るTFT基板200の製造方法について、図4、5、図16〜図22を用いて説明する。なお、最終工程を示す断面図は図3に相当し、図3における(a)〜(d)の各部は、以下の説明における製造工程を説明する各断面図において同じ部分を指すものとする。
【0106】
まず、図4の(c)部に示すように、基板1上のTFT部に半導体膜2をパターニングし、その上に、ソース電極3およびドレイン電極4をパターニングする。ここまでの工程で、図4の(b)部に示すように、ソース端子部ではソース端子32が形成され、図4の(d)部に示すように、補助容量配線接続部では補助容量電極10およびソース配線31が形成され、図4の(c)部に示すように、補助容量部209では補助容量電極10が形成される。
【0107】
この状態での平面図を図5に示す。図5において、半導体膜2と同じ材質の半導体膜14でソース配線31、ソース端子32および補助容量電極10の下層膜がパターニングされ、ソース電極3およびドレイン電極4と同じ材質の金属膜で、ソース配線31、ソース端子32および補助容量電極10がパターニングされる。
【0108】
ここまでの工程を、製造工程を順に示す断面図である図16〜図22を参照してさらに説明する。
【0109】
まず、基板1の表面を洗浄液または純水を用いて洗浄する。なお、ここでは厚さ0.6mmのガラス基板を基板1として使用するものとする。洗浄された基板1に、図16に示す工程において非晶質構造の酸化物(以下、IGZOと呼称)ターゲットを用いたスパッタリング法で、酸化物半導体膜14を成膜する。ここでは、In(インジウム):Ga(ガリウム):Zn(亜鉛):O(酸素)の原子組成比が1:1:1:4であるIGZOターゲットを用いる。
【0110】
この場合、従来のArガスを用いたスパッタリングでは、酸素の原子組成比がターゲットの化学量論組成よりも少なく、酸素イオン欠乏状態(上記の例ではOの組成比が4未満)の酸化膜となってしまうことがある。従って、Arガスに酸素(O2)ガスを混合させてスパッタリングすることが好ましい。本実施の形態では、Arガスに対して分圧比で10%のO2ガスを添加した混合ガスを用いて、スパッタリングするものとし、酸化物半導体膜14を50nmの厚さで成膜する。
【0111】
次に、第1の金属膜15として純Cu膜をスパッタリング法で成膜する。このスパッタリングでは、純Arガスを用いて、厚さ200nmの純Cu膜を成膜する。
【0112】
その後、図17に示す第1回目の写真製版工程で第1の金属膜15上にフォトレジストパターンを形成する。
【0113】
まず、ノボラック系のポジ型の感光性樹脂で構成されるフォトレジスト材を、塗布法を用いて第1の金属膜15上に塗布し、厚さ約1.5μmのフォトレジスト16を形成する。次に、予め準備したフォトマスク17を用いてフォトレジスト16の露光を行う。フォトマスク17にはTFTの半導体膜、ソース電極、ドレイン電極、ソース配線、ソース端子および補助容量電極膜のパターンを形成するための遮光膜パターンが形成されている。この遮光膜パターンにより露光光が遮られる領域が遮光領域となる。また、フォトマスク17には、TFTのチャネル部となる部分では露光光の光強度を低減させる半透過性のパターンが形成されており、この半透過性のパターンにより露光光が減衰した領域が半透過領域となる。
【0114】
フォトマスク17を用いてフォトレジスト16の露光を行った後に、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)を含む有機アルカリ系の現像液を用いて現像を行う。これにより、図18に示すように、TFTの半導体膜2、ソース電極3、ドレイン電極4、チャネル部5、ソース配線31、ソース端子32および補助容量電極10を形成するためフォトレジストパターン18を形成することができる。
【0115】
このフォトレジストパターン18では、半透過性のフォトマスクパターンで露光されたTFTのチャネル部に対応する領域では、未露光領域よりも薄い膜厚でフォトレジストが残存している。本実施の形態では約0.5μmの膜厚でフォトレジストを残存させている。
【0116】
次に、図19に示す工程において、フォトレジストパターン18をマスクとして、第1の導電膜15をエッチングでパターニングする。このエッチングでは、過硫酸アンモニウム0.3重量%の水溶液を含む液温23℃の薬液をエッチャントとして用いる。この場合、純Cu膜で構成される第1の金属膜15は、約1nm/秒の速さでエッチングされる。一方で、IGZOで構成される酸化物半導体膜14は、過硫酸アンモニウム系溶液にはエッチングされにくい。従って、過硫酸アンモニウムを含む溶液を用いることで、図19に示すように、Cuで構成される第1の導電膜15だけを選択的にエッチングすることができる。
【0117】
次に、図20に示す工程において、フォトレジストパターン18をマスクとして酸化物半導体膜14をエッチングでパターニングする。このエッチング工程では、シュウ酸5重量%濃度の水溶液を用いる。この場合は、常温(23℃)で約1nm/秒の速さでIGZO酸化物半導体膜がエッチングされる。なお、上述のシュウ酸水溶液に限らず一般的に公知のシュウ酸溶液ではCu膜あるいはCuを主成分とするCu合金膜で構成される第1の金属膜15は溶けない。このため、IGZOで構成される酸化物半導体膜14だけを選択的にエッチングすることが可能となり、パターンの加工精度を向上することができる。
【0118】
このエッチングにより、半導体膜2と、ソース配線31、ソース端子32および補助容量電極10の下層膜がパターニングされる。
【0119】
次に、図21に示す工程において、基板1の表面に対して酸素ガスプラズマを用いてレジストアッシングを行う。このレジストアッシングは、TFTのチャネル部に対応する領域の膜厚が薄くなっているフォトレジストだけを除去して、他の未露光部ではフォトレジストが残るように実施する。これにより、チャネル部に対応する領域以外ではフォトレジストパターン18が薄くなってフォトレジストパターン19となる。
【0120】
次に、図22に示す工程において、このフォトレジストパターン19をマスクとして、再び過硫酸アンモニウム0.3重量%の水溶液を含む液温23℃の薬液を用いて第1の金属膜15だけを選択的にエッチングする。これによってTFTのチャネル部に対応する領域の第1の金属膜が除去(バックチャネルエッチング)されTFTのチャネル部5が規定される。その後、アミン系のレジスト剥離液を用いてレジストパターン19を剥離除去することにより、図4および図5に示すようなTFTの半導体膜2、ソース電極3、ドレイン電極4、チャネル部5、ソース配線31、ソース端子32および補助容量電極10のパターンが基板1上に形成される。
【0121】
その後、図12〜図14を用いて説明した工程を経て、図3および図15に示すように、ゲート電極7、画素電極9、補助容量電極接続用配線12およびソース端子パッド33が形成され、3回の写真製版工程だけでTFT基板200を得ることができる。
【0122】
<効果>
第1の導電膜15を、Cu膜もしくはCuを主成分とするCu合金膜で構成することで、Al合金膜で構成する場合に比べて配線抵抗値を1/5〜1/2程度に低くすることができる。このため、表示パネルの大型化(配線が長くなる)や、画素数が多くなる高精細化(配線幅が狭くなる)に対し、Cu系膜の方が、同じ膜厚で比較した場合、配線の高抵抗化に伴う信号遅延(映像信号波形のくずれなど)による表示品質劣化に対するマージンが高くなる。
【0123】
例えば、材料固有の比抵抗値はCu膜およびCu−M合金膜(M組成10mol%以下)では、1.7〜5μΩcm程度であるのに対し、Al−Ni(PtあるいはPdを組成10mol%以下で含む)合金膜では3.5〜10μΩcm程度となる。
【0124】
<変形例>
なお、第1の金属膜15の材料として純Cuを用いたが、第1金属膜15の材料は、これに限定されるものではない。例えば、CuにTi、V、Cr、Mn、FeおよびNiの何れか1種以上を添加したCu合金膜を用いても良い。
【0125】
ここで添加物の添加量の上限値は、配線抵抗を考慮して10mol%以下を目安とする。また、下限値は、これらの添加物がCu合金膜のパターン形成後に行う200〜350℃の熱処理によって表面保護膜として析出するのに最低必要な量となるように設定し、例えば、表面保護膜の膜厚がCu合金膜の膜厚の1%程度(Cu合金の膜厚が200nmなら2nm)とするならば、原子数比で1at%(=1mol%)とする。
【0126】
これらのCu合金膜は、上述したように200〜350℃の熱処理を行うことにより、添加元素がCu合金膜の表面に析出してCu合金の表面全体を覆うように保護膜を形成するため、下層の酸化物半導体膜2とのコンタクト特性、ならびに上層のIZO膜などで構成される透明導電膜(画素電極9、ソース端子パッド33)とのコンタクト特性をより良好にすることができる。
【0127】
また、少なくとも酸化物半導体膜14と接するCu膜またはCu合金膜にN原子やO原子を添加するようにしても良い。N原子やO原子の添加は、反応性スパッタリング法を用いて行うことができる。
【0128】
例えば、ArガスにN2ガスやO2ガスを添加した混合ガスを用いて、反応性スパッタリングを行う。これにより、N原子やO原子をCu合金膜に添加することができる。
【0129】
N原子やO原子の添加量は、Cu合金膜が導電性を有する範囲に止めるのが好ましい。例えば比抵抗値の上限として従来より電極膜として一般的に用いられてきたTi、Cr、Mo、Ta、Wやこれらの合金膜の値を基準として200μΩcm以下に設定した場合、N原子は40at%以下、O原子は15at%以下とすることが好ましい。
【0130】
また200μΩcmを超えない範囲でN原子とO原子の両方を添加しても良い。この場合でも上述の実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0131】
さらには上述したTi、V、Cr、Mn、Fe、およびNiの何れか1種以上を含むCu合金にさらにN原子やO原子を添加しても良い。このようにCu膜やCu合金膜にさらにN原子やO原子を含む合金膜とすることによって、電気的なオーミックコンタクト特性を良好にすることができる。すなわち、下層の酸化物半導体膜2とのコンタクト特性、ならびに上層のIZO膜などで構成される透明導電膜(画素電極9、ソース端子パッド33)とのコンタクト特性をより良好にすることができ、TFT特性や画素の表示特性を向上させることができる。
【0132】
なお、N原子とO原子の添加量は、N2ガスやO2ガスの分圧を調整することで、制御することができる。
【0133】
以上のように酸化物半導体膜14上に接して形成される、Cu膜やCu合金膜で構成されるソース電極およびドレイン電極について、少なくとも酸化物半導体膜14と接する面において、Cu膜やCu合金膜にさらにN原子やO原子を含む合金膜とする膜を有するCu膜とした構成を採用することにより、実施の形態2と同様に下層の酸化物系(あるいは窒化物系)半導体膜にダメージを与えることなく選択エッチング、もしくは同時エッチングが可能となり、良好なパターン形状に加工することができるとともに、一般的なCu膜では酸化物半導体膜2(あるいは窒化物系半導体膜)との接触によりオーミックコンタクト特性が劣化する問題を解決し、下層の酸化物半導体膜2(あるいは窒化物系半導体膜)および上層のIZO膜などで構成される透明導電膜(画素電極9、ソース端子パッド33)とのコンタクト特性について良好にすることができる。
【0134】
また過硫酸アンモニウム溶液の過硫酸アンモニウム濃度は0.3重量%に限らず、例えば液温が10℃から50℃までの間において、0.02重量%以上10重量%以下の範囲とすることができる。過硫酸アンモニウム溶液の濃度が0.02重量%未満の場合は、上記Cu合金膜のエッチングレートが著しく低下してエッチングが困難となる。一方で、過硫酸アンモニウム濃度が10重量%を超える場合は、Cu合金膜のサイドエッチング量(レジストパターンの端部からCu合金膜パターンの端部までの後退量)が大きくなり、平面パターンにおけるパターンの加工精度を低下させる可能性がある。
【0135】
また、実施の形態1および2では、TFTを構成する半導体膜2として、酸化インジウム、酸化ガリウム、酸化亜鉛で構成される酸化物半導体(IGZO)を適用した例を説明したが、材料は、これらに限定されるものではない。
【0136】
基本的には、バックライト光に対して透光性を有し光吸収が少ない半導体膜、言い換えればフォトキャリアによる光リークの影響が少ない半導体膜であれば、本構造のように透明ガラス基板上に半導体膜を直接形成した場合でも、基板裏面からのバックライト光照射時の光リーク電流によるTFT特性の劣化の影響が少ないという効果が得られる。このため、例えば13族元素を主成分とした窒化物半導体、あるいはこれらの酸化物、窒化物の混合物で構成される半導体を適用することが可能である。
【0137】
ここで、窒化物半導体としては、Al−N、Ga−N、In−Nなどの2元系窒化物およびこれらの混合物を主成分とするものが挙げられ、酸化物半導体では、In−Ga−O、Al−In−Oなどの3元系酸化物およびこれらの混合物を主成分とするものが挙げられる。
【0138】
なお、半導体膜2として窒化物半導体を使用する場合、IGZO系のような酸化物半導体に比べると、酸薬液に対する耐性が向上するため、例えばシュウ酸よりも強酸であるリン酸とシュウ酸などを主成分とする混酸水溶液を用いる。この混酸水溶液は、Al合金膜やCu合金膜もエッチングできるので、第1の導電膜15と半導体膜14を同時にエッチングすることができる。
【0139】
N原子およびO原子の少なくとも一方を含む酸化物系あるいは窒化物系の半導体膜であれば適用可能であり、これらを用いた場合でも、実施の形態1および2と同様の効果を得ることが可能である。また、非Si系の半導体膜2を用いることによって、高性能のTFTを得ることができる。
【0140】
なお、本明細書において、主成分とは、物質を構成する2種類以上の成分のうち、最も組成比の多い成分のことと定義する。
【0141】
<その他の変形例>
以上説明した実施の形態1および2においては、第2の導電膜としてIZOで構成される透明導電膜を用いてゲート電極7、ゲート配線71、画素電極9、補助容量電極接続用配線12およびソース端子パッド33を形成する例を説明したが、例えば、図23および図24に示すように、ゲート電極7およびゲート配線71を透明導電膜と金属膜の2層以上の積層膜で形成するようにしても良い。
【0142】
すなわち、図23および図24の(c)部に示すように、ゲート電極7およびゲート配線71を透明導電膜120の上に金属膜70が積層された構成としても良い。これにより、ゲート配線71の電気抵抗値を低減することができるので、表示装置の大型化に対応することが可能となる。
【0143】
さらに、例えば、図25および図26に示すように、補助容量電極接続配線12も同様に透明導電膜と金属膜の2層以上の積層膜で形成するようにしても良い。
【0144】
すなわち、図25および図26の(d)部に示すように、補助容量電極接続配線12を透明導電膜120の上に金属膜70が積層された構成としても良い。これにより、補助容量配線12の電気抵抗値を低減することができ、表示装置の大型化に対応することが可能となる。
【0145】
上記のような構成は、例えば、第2の導電膜として、透明導電膜と金属膜をこの順に成膜した後に、実施の形態1における図6〜図11を用いて説明した工程、あるいは実施の形態2における図16〜図22を用いて説明した工程と同様の2層膜のパターニング工程を実施することによって得ることができる。
【0146】
より具体的には、第3回目の写真製版工程により、図8または図18で説明したレジストパターン16のように、部分的に異なる膜厚を有するフォトレジストパターンを形成する。当該フォトレジストパターンは、ゲート電極7およびゲート配線71の上方に相当する部分の厚みが、他の部分よりも厚くなるように形成されており、これを用いることで、ゲート電極7およびゲート配線71の上には金属膜70を残し、他の部分では、金属膜70を除去する。
【0147】
すなわち、ゲート電極7およびゲート配線71の上方以外の部分で厚みが薄くなったフォトレジストパターンに対して、図10および図21を用いて説明したように、酸素ガスプラズマを用いてレジストアッシングを行う。このレジストアッシングにより、膜厚が薄くなっているフォトレジストだけを除去して、膜厚が厚い他の部分ではフォトレジストを残す。これにより、ゲート電極7およびゲート配線71の上方以外の部分ではフォトレジストパターンがなくなる。これをエッチングマスクとして金属膜70をエッチングすることで、ゲート電極7およびゲート配線71の上にのみ金属膜70を残すことができる。
【0148】
この方法で、図25および図26に示すように、補助容量電極接続配線12も透明導電膜と金属膜の2層以上の積層膜で形成することができる。
【0149】
また、実施の形態1および2においては、TFTを構成するための半導体膜2として、酸化物半導体膜14、窒化物半導体あるいはこれらの酸化物、窒化物の混合物で構成される半導体などの非Si系の半導体膜を用いた場合の効果について説明を行った。しかし、半導体膜2としては、フォトキャリアによる光リークの影響が少ない半導体膜であれば実施の形態1、2と同様に下地基板と半導体膜2との間に遮光膜を形成することによる製造工程の増加を招くことなく、表示ムラのない高表示品質を有する液晶表示装置を実現することができる。
【0150】
従って、半導体膜2としては、汎用される半導体材料であるSi、より具体的には、アモルファスシリコンあるいは結晶性シリコンであっても、膜厚を適宜薄膜化するなどの光リークの影響を低減する調整を行えば用いることが可能である。
【0151】
この場合には、半導体膜2を薄膜化したことと、半導体膜2に酸化物系半導体膜と比較して移動度の劣るSiを用いたことにより発生するTFTのON特性の劣化と、それに伴うコントラスト比の劣化などが若干生ずるものの、それ以外の効果については、実施の形態1、2と同様の効果を得ることができる。
【0152】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0153】
1 基板、2 半導体膜、3 ソース電極、4 ドレイン電極、5 チャネル部、6 ゲート絶縁膜、7 ゲート電極、10 補助容量電極、12 補助容量電極接続配線、31 ソース配線、71 ゲート配線、200 TFTアレイ基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画素が複数マトリックス状に配列された薄膜トランジスタ基板であって、
前記画素のそれぞれは、
基板上の複数の部分に配設された半導体膜と、
前記基板上の第1の部分の前記半導体膜上に、該半導体膜と接し互いに離間して配設された、第1の導電膜で構成されるソース電極およびドレイン電極と、
絶縁膜で構成され、前記半導体膜、前記ソース電極および前記ドレイン電極を覆うゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜を介して、前記ソース電極および前記ドレイン電極の間に跨るように配設された、第2の導電膜で構成されるゲート電極と、を有した薄膜トランジスタと、
前記基板上の第2の部分の前記半導体膜上に、該半導体膜と接して配設された前記第1の導電膜で構成される補助容量電極と、
下層に前記半導体膜を有して前記ソース電極から延在し、前記第1の導電膜で構成されたソース配線と、
前記ゲート電極から延在し、前記第2の導電膜で構成されたゲート配線と、
前記ドレイン電極に電気的に接続された、前記第2の導電膜で構成される画素電極と、
前記補助容量電極に電気的に接続され、隣り合う前記画素の前記補助容量電極どうしを電気的に接続する、前記第2の導電膜で構成された補助容量電極接続配線と、を備え、
前記絶縁膜によって、前記補助容量電極および前記ソース配線が覆われ、
前記ゲート配線、前記画素電極および補助容量電極接続配線は前記絶縁膜上に配設される、薄膜トランジスタ基板。
【請求項2】
前記ソース配線は、前記基板上において平面視で第1の方向に延在し、
前記ゲート配線は、前記第1の方向とは直交する第2の方向に延在し、
平面視において、それぞれの前記画素における前記補助容量電極が、前記補助容量電極接続配線により、前記第2の方向に電気的に直列に接続される、請求項1記載の薄膜トランジスタ基板。
【請求項3】
前記第2の導電膜は透明導電膜で構成され、
前記ゲート配線は、前記透明導電膜上に配設された導電膜をさらに備える、請求項1記載の薄膜トランジスタ基板。
【請求項4】
前記半導体膜は、
酸化亜鉛、酸化ガリウム、酸化インジウムで構成される酸化物半導体膜、あるいは13族元素を主成分とした窒化物の何れかを含む窒化物半導体膜で構成される、請求項1記載の薄膜トランジスタ基板。
【請求項5】
前記窒化物半導体膜は、
Al−N、Ga−NおよびIn−Nの何れか、またはこれらの混合物を主成分とする、請求項4記載の薄膜トランジスタ基板。
【請求項6】
前記第1の導電膜は、
アルミニウムを主成分とし、ニッケル、パラジウムおよび白金の少なくとも1種を含むアルミニウム合金膜で構成される、請求項4記載の薄膜トランジスタ基板。
【請求項7】
前記第1の導電膜は、
窒素および酸素の少なくとも一方を含むアルミニウム膜、あるいはアルミニウムを主成分とし、ニッケル、パラジウムおよび白金の少なくとも1種を含むとともに、窒素および酸素の少なくとも一方を含むアルミニウム合金膜で構成される、請求項4記載の薄膜トランジスタ基板。
【請求項8】
前記第1の導電膜は、
銅膜または、銅を主成分とし、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄およびニッケルの何れか1種を含むCu合金膜で構成される、請求項4記載の薄膜トランジスタ基板。
【請求項9】
前記第1の導電膜は、
窒素および酸素の少なくとも一方を含む銅膜、あるいは銅を主成分とし、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄およびニッケルの何れか1種を含むとともに、窒素および酸素の少なくとも一方を含む銅合金膜で構成される、請求項4記載の薄膜トランジスタ基板。
【請求項10】
画素が複数マトリックス状に配列された薄膜トランジスタ基板の製造方法であって、
(a)基板上に半導体膜および第1の導電膜をこの順に成膜する工程と、
(b)前記工程(a)の後に、第1の写真製版工程により前記第1の導電膜をパターニングし、薄膜トランジスタを構成するソース電極およびドレイン電極と、補助容量電極およびソース配線を形成するとともに、前記ソース電極、前記ドレイン電極、前記補助容量電極および前記ソース配線の下層に、前記半導体膜が残るように前記半導体膜をパターニングする工程と、
(c)前記基板上全面に絶縁膜を形成して、前記ソース電極および前記ドレイン電極を覆うゲート絶縁膜を形成する工程と、
(d)前記工程(c)の後に、第2の写真製版工程により、前記絶縁膜を貫通して前記ドレイン電極および前記補助容量電極の表面にそれぞれ達する第1および第2の複数のコンタクトホールを形成する工程と、
(e)前記工程(d)の後に、前記基板上全面に第2の導電膜を成膜し、第3の写真製版工程により前記第2の導電膜をパターニングし、前記ゲート絶縁膜を介して、前記ソース電極および前記ドレイン電極の間に跨るゲート電極、前記ゲート電極から延在するゲート配線、前記第1のコンタクトホールを介して前記ドレイン電極と電気的に接続された画素電極および前記第2のコンタクトホールを介して前記補助容量電極に電気的に接続され、隣り合う前記画素の前記補助容量電極どうしを電気的に接続する補助容量電極接続配線を形成する工程と、を備え、
前記工程(b)は、
少なくとも2段階の露光量で部分的に異なる膜厚を有する第1のレジストパターンを形成する工程を含み、
前記第1のレジストパターンは、前記ソース電極および前記ドレイン電極の間のチャネル部の上方に相当する部分の厚みが、他の部分よりも薄くなるように形成される、薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項11】
前記(e)は、
前記第2の導電膜として透明導電膜と金属で構成される導電膜とをこの順に積層する工程と、
前記第3の写真製版工程により、少なくとも2段階の露光量で部分的に異なる膜厚を有する第2のレジストパターンを形成する工程と、を含み、
前記第2のレジストパターンは、前記ゲート電極および前記ゲート配線の上方に相当する部分の厚みが、他の部分よりも厚くなるように形成されることで、前記ゲート電極および前記ゲート配線の上に前記導電膜を残す、請求項10記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項12】
前記工程(a)は、
前記半導体膜として、
酸化亜鉛、酸化ガリウム、酸化インジウムで構成される酸化物半導体膜、あるいは13族元素を主成分とした窒化物の何れかを含む窒化物半導体膜を形成する工程と、
前記第1の導電膜として、
アルミニウムを主成分とし、ニッケル、パラジウムおよび白金の少なくとも1種を含むアルミニウム合金膜を形成する工程と、を含み、
前記工程(b)は、
(b1)前記第1のレジストパターンをエッチングマスクとして、前記第1の導電膜および前記半導体膜を順に除去する工程と、
(b2)前記第1のレジストパターンを全体的に薄膜化して、前記チャネル部の上方に相当する部分が除去された薄膜化されたレジストパターンを形成する工程と、
(b3)前記薄膜化されたレジストパターンをエッチングマスクとして、前記半導体膜の前記チャネル部上の前記第1の導電膜を除去し、互いに離間された前記ソース電極および前記ドレイン電極を形成する工程とを含む、請求項10記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項13】
前記工程(b1)は、
水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)を含む有機アルカリ系溶液で前記第1の導電膜をエッチングする工程を含む、請求項12記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項14】
前記工程(a)は、
前記半導体膜として、
酸化亜鉛、酸化ガリウム、酸化インジウムで構成される酸化物半導体膜、あるいは13族元素を主成分とした窒化物の何れかを含む窒化物半導体膜を形成する工程と、
前記第1の導電膜として、
銅膜または、銅を主成分とし、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄およびニッケルの何れか1種を含むCu合金膜を形成する工程と、を含み、
前記工程(b)は、
(b1)前記第1のレジストパターンをエッチングマスクとして、前記第1の導電膜および前記半導体膜を順に除去する工程と、
(b2)前記第1のレジストパターンを全体的に薄膜化して、前記チャネル部の上方に相当する部分が除去された薄膜化されたレジストパターンを形成する工程と、
(b3)前記薄膜化されたレジストパターンをエッチングマスクとして、前記半導体膜の前記チャネル部上の前記第1の導電膜を除去し、互いに離間された前記ソース電極および前記ドレイン電極を形成する工程とを含む、請求項10記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項15】
前記工程(b1)は、
過硫酸アンモニウムを含む溶液で前記第1の導電膜をエッチングする工程を含む、請求項14記載の薄膜トランジスタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2012−252098(P2012−252098A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123612(P2011−123612)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】