車両用運転操作補助装置、車両用運転操作補助方法および自動車
【課題】運転者に対し、より適切に車両の運転操作の支援を行うこと。
【解決手段】本発明に係る自動車では、情報伝達制御手段が、運転者の上下方向の動きを、リスクポテンシャルの大きさに応じて抑制して、外乱情報を運転者に伝達する制御量を算出する。擬似車両挙動発生手段が、リスクポテンシャルが増大する運転操作を行った場合の車両挙動を、動作制御手段を制御することによって擬似的に発生させるための制御量を算出する。協調制御手段が、情報伝達制御手段によって算出された制御量と、擬似車両挙動発生手段によって算出された制御量とに基づいて、車両を制御する。
【解決手段】本発明に係る自動車では、情報伝達制御手段が、運転者の上下方向の動きを、リスクポテンシャルの大きさに応じて抑制して、外乱情報を運転者に伝達する制御量を算出する。擬似車両挙動発生手段が、リスクポテンシャルが増大する運転操作を行った場合の車両挙動を、動作制御手段を制御することによって擬似的に発生させるための制御量を算出する。協調制御手段が、情報伝達制御手段によって算出された制御量と、擬似車両挙動発生手段によって算出された制御量とに基づいて、車両を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者の操作を補助する車両用運転操作補助装置、車両用運転操作補助方法および自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用運転操作補助装置として、操舵操作の反力や、アクセルペダルあるいはブレーキペダルの操作反力を制御する技術が知られている。
例えば、特許文献1には、車両周囲の状況(障害物)を検出し、その時点におけるリスクポテンシャルを求め、算出したリスクポテンシャルに基づいて操舵補助トルクを制御する技術が記載されている。
このような制御を行うことにより、特許文献1に記載された技術においては、運転者に車両周囲の状況を認識させ、適切な運転を支援することととしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−211886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された技術を含め、従来の車両用運転操作補助装置においては、運転者が行った操作に対して、反力を付与する等して運転操作を支援するものである。そのため、運転者が操作を行って初めて、その操作が適切なものであるか否かを判断することができることとなり、運転者による適切な運転操作が遅れる可能性がある。
また、従来の車両用運転操作補助装置においては、車両の前後方向あるいは左右方向等、各方向についての制御を独立に行うものであるため、車両の走行状況によっては、運転者に対して必ずしも適切に運転操作のための情報を伝えることができない可能性がある。
このように、従来の技術においては、運転者に対し、適切に車両の運転操作の支援を行うことができない可能性がある。
本発明の課題は、運転者に対し、より適切に車両の運転操作の支援を行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するため、本発明に係る車両用運転操作補助装置は、
リスクポテンシャル算出手段が、自車両の状態と、自車両周囲の障害物の状態とに基づいて、自車両周囲に存在する障害物に対するリスクポテンシャルを算出し、擬似車両挙動発生手段が、前記リスクポテンシャルが増大する運転操作を行った場合の車両挙動を、動作制御手段を制御することによって擬似的に発生させる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、情報伝達制御手段が、自車両に生じている車両挙動を、リスクポテンシャルの大きさに応じて抑制して、外乱情報を運転者に伝達する制御量を算出する。擬似車両挙動発生手段が、リスクポテンシャルが増大する運転操作を行った場合の車両挙動を、動作制御手段を制御することによって擬似的に発生させるための制御量を算出する。協調制御手段が、情報伝達制御手段によって算出された制御量と、擬似車両挙動発生手段によって算出された制御量とに基づいて、車両を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1実施形態に係る車両用運転操作補助装置1を備えた自動車1Aの概略構成図である。
【図2】自動車1Aの制御系統を示すシステム構成図である。
【図3】操舵反力制御を行う際の減衰力算出制御マップを示す図である。
【図4】自動車1Aが有する能動型サスペンション機構の具体的な構成を示す図である。
【図5】コントローラ50が実行するリスクポテンシャル算出処理を示すフローチャートである。
【図6】コントローラ50が実行する協調制御処理を示すフローチャートである。
【図7】リスクポテンシャルRPと情報伝達制御処理の重みとの関係を示す図である。
【図8】コントローラ50が実行する情報伝達制御処理を示すフローチャートである。
【図9】リスクポテンシャルRPと情報伝達制御の基準値α0との関係を示す図である。
【図10】コントローラ50が実行する運転操作誘導処理を示すフローチャートである。
【図11】前方リスクポテンシャルRPaが高い場合の制御動作を示す模式図である。
【図12】前方リスクポテンシャルRPaが高い場合に付与されるアクセルペダル反力および車体ピッチ角βの特性を示す図である。
【図13】後方リスクポテンシャルRPbが高い場合の制御動作を示す模式図である。
【図14】後方リスクポテンシャルRPbが高い場合に付与される車体ピッチ角γの特性を示す図である。
【図15】右方リスクポテンシャルRPcあるいは左方リスクポテンシャルRPdが高い場合の制御動作を示す模式図である。
【図16】右方リスクポテンシャルRPcあるいは左方リスクポテンシャルRPdが高い場合に付与される操舵反力および車体ロール角δの特性を示す図である。
【図17】車両前後方向の運転操作補助処理を示すフローチャートである。
【図18】制駆動力制御の概念を示す図である。
【図19】車両左右方向の運転操作補助処理を示すフローチャートである。
【図20】車両の運転状態(加減速度)と安定度との関係を示す図である。
【図21】車両の運転状態と安定度との関係についての他の例を示す図である。
【図22】リスクポテンシャルRPが大きくなるほど、情報伝達制御処理の重みが小さくなる場合の特性を示す図である。
【図23】リスクポテンシャルRPと情報伝達制御の基準値α0との関係の他の例を示す図である。
【図24】リスクポテンシャルRPと操作反力(操舵反力およびペダルの操作反力)との関係を示す概念図である。
【図25】応用例7の情報伝達制御処理を示すフローチャートである。
【図26】能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLに代えて減衰力制御装置を備えた自動車1Aの概略構成図である。
【図27】減衰力制御装置の一例を示す一部を断面とした正面図である。
【図28】減衰力可変ショックアブソーバ400FL〜400RRの弁本体のポジションに対する減衰力特性を示す説明図である。
【図29】コントローラ50が有する機能構成例を示すブロック図である。
【図30】応用例9に係る自動車1Aの全体システム図である。
【図31】リスクポテンシャルRPとパラメータDdとの関係を示す図である。
【図32】サスペンションシート601の概略構成図である。
【図33】(a)は、シートの支持構造の拡大側面図、(b)は、シートの支持構造の平面図である。
【図34】応用例11のサスペンション構造を示す図である。
【図35】応用例15において、コントローラ50が実行する運転操作誘導処理を示すフローチャートである。
【図36】運転操作誘導処理の第1のサブフローを示す図である。
【図37】運転操作誘導処理の第2のサブフローを示す図である。
【図38】運転操作誘導処理の第3のサブフローを示す図である。
【図39】運転操作誘導処理の第4のサブフローを示す図である。
【図40】操舵反力を発生させる第1の閾値RPc0と、サスペンションストロークを変化させる第2の閾値RPc1との関係を示す図である。
【図41】応用例6のサスペンション構造を示す図である。
【図42】右方リスクポテンシャルRPcが高い場合に付与されるスタビライザリンク長の特性を示す図である。
【図43】第2実施形態における情報伝達制御処理を示すフローチャートである。
【図44】自動車1Aの安定度と補正ゲインKαとの関係を示す図である。
【図45】車両の状態と安定度との関係を示す図である。
【図46】第3実施形態における情報伝達制御処理を示すフローチャートである。
【図47】自動車1Aの安定度と補正ゲインKα’との関係を示す図である。
【図48】コントローラ50が実行する車両状態伝達量決定処理を示すフローチャートである。
【図49】コントローラ50が実行する車両挙動判定処理を示すフローチャートである。
【図50】コントローラ50が実行する旋回中判定処理を示すフローチャートである。
【図51】コントローラ50が実行する加速中判定処理を示すフローチャートである。
【図52】車速を一定に保つために必要なアクセル開度およびブレーキ圧と車速との関係を示す図である。
【図53】コントローラご50が実行する減速中判定処理を示すフローチャートである。
【図54】コントローラ50が実行する情報伝達度基準値算出処理を示すフローチャートである。
【図55】コントローラ50が実行する左右挙動伝達度基準値算出処理を示すフローチャートである。
【図56】横Gの絶対値|YG|と左右挙動伝達度基準値Kgy0との関係を示す図である。
【図57】コントローラ50が実行する前後挙動伝達度基準値算出処理を示すフローチャートである。
【図58】アクセル開度ACCおよびブレーキ圧BRKと前後挙動伝達度基準値Kgx0との関係を示す図である。
【図59】コントローラ50が実行する上下挙動伝達度基準値算出処理を示すフローチャートである。
【図60】アクセル開度ACCおよびブレーキ圧BRKと上下挙動伝達度基準値Kgz0との関係を示す図である
【図61】コントローラ50が実行する操作力伝達度基準値算出処理を示すフローチャートである。
【図62】Gの絶対値|YG|と操作力伝達度基準値Kfy0との関係を示す図である。
【図63】コントローラ50が実行する情報伝達度最小値算出処理を示すフローチャートである。
【図64】車速と、車速に依存する情報伝達度Kv1との関係を示す図である。
【図65】車両周囲の明るさと、車両周囲の明るさに依存する情報伝達度Kbとの関係を示す図である。
【図66】車両周囲の明るさと、車両周囲の明るさに依存する情報伝達度Kb1との関係を示す図である。
【図67】ワイパーの作動状態に依存する情報伝達度KwおよびKw1の値を示す図である。
【図68】道路種別に依存する情報伝達度Krの値を示す図である。
【図69】コントローラ50が実行する情報伝達度算出処理を示すフローチャートである。
【図70】コントローラ50が実行する左右挙動伝達度算出処理を示すフローチャートである。
【図71】コントローラ50が実行する前後挙動伝達度算出処理を示すフローチャートである。
【図72】コントローラ50が実行する上下挙動伝達度算出処理を示すフローチャートである。
【図73】コントローラ50が実行する操作力伝達度算出処理を示すフローチャートである。
【図74】コントローラ50が実行する運転操作誘導処理を示すフローチャートである。
【図75】前方リスクポテンシャルRPaが高い場合の制御動作を示す模式図である。
【図76】前方リスクポテンシャルRPaが高い場合に付与されるアクセルペダル反力およびサスペンションストロークの振動の特性を示す図である。
【図77】後方リスクポテンシャルRPbが高い場合の制御動作を示す模式図である。
【図78】後方リスクポテンシャルRPbが高い場合に付与されるサスペンションストロークの振動の特性を示す図である。
【図79】右方リスクポテンシャルRPcあるいは左方リスクポテンシャルRPdが高い場合の制御動作を示す模式図である。
【図80】右方リスクポテンシャルRPcあるいは左方リスクポテンシャルRPdが高い場合に付与される操舵反力およびサスペンションストロークの振動の特性を示す図である。
【図81】応用例1において、コントローラ50が実行する運転操作誘導処理を示すフローチャートである。
【図82】コントローラ50が実行する運転操作誘導処理を示すフローチャートである。
【図83】前方リスクポテンシャルRPaが高い場合の制御動作を示す模式図である。
【図84】前方リスクポテンシャルRPaが高い場合に付与されるアクセルペダル反力および車体3の揺動ロール角の特性を示す図である。
【図85】コントローラ50が実行する運転操作誘導処理を示すフローチャートである。
【図86】コントローラ50が実行する運転操作誘導処理を示すフローチャートである。
【図87】コントローラ50が実行する運転操作誘導処理を示すフローチャートである。
【図88】運転操作誘導処理の第1のサブフローを示す図である。
【図89】運転操作誘導処理の第2のサブフローを示す図である。
【図90】運転操作誘導処理の第3のサブフローを示す図である。
【図91】運転操作誘導処理の第4のサブフローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図を参照して本発明を適用した自動車の実施の形態を説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る車両用運転操作補助装置1を備えた自動車1Aの概略構成図である。
図1において、自動車1Aは、車輪2FR,2FL,2RR,2RLと、車体3と、車体3と各車輪との間に設置された能動型のサスペンション4FR,4FL,4RR,4RLと、ステアリングホイール5と、ステアリングホイール5と操向輪である車輪2FR,2FLとの間に設置されたステアリング装置6と、アクセルペダル7と、ブレーキペダル8と、車体3の前後左右それぞれに設置され、車両の周囲を撮影するカメラ9F,9R,9SR,9SLとを備えており、自動車1Aに搭載された各種機器からの信号は、後述するコントローラ50に入力されている。
【0009】
図2は、自動車1Aの制御系統を示すシステム構成図である。
図2において、自動車1Aの制御系統は、レーザレーダ10と、カメラ9F,9R,9SR,9SLと、車速センサ30と、コントローラ50と、操舵反力制御装置60と、サーボモータ61,81,91と、舵角センサ62と、アクセルペダル反力制御装置80と、ブレーキペダル反力制御装置90と、駆動力制御装置100と、制動力制御装置110と、能動型のサスペンション4FR,4FL,4RR,4RLそれぞれに備えられたアクチュエータ120FR,120FL,120RR,120RLおよび車体上下加速度検出器130FR,130FL,130RR,130RLと、車両状態検出器140とを備えている。
【0010】
なお、これらのうち、レーザレーダ10、カメラ9F,9R,9SR,9SL、車速センサ30、コントローラ50、操舵反力制御装置60、サーボモータ61,81,91、舵角センサ62、アクセルペダル反力制御装置80、ブレーキペダル反力制御装置90、駆動力制御装置100、制動力制御装置110、アクチュエータ120FR,120FL,120RR,120RL、車体上下加速度検出器130FR,130FL,130RR,130RL、車両状態検出器140は、本発明に係る車両用運転操作補助装置1を構成している。
【0011】
レーザレーダ10は、車両の前方のグリル部もしくはバンパ部等に取り付けられ、水平方向に赤外光パルスを走査する。
レーザレーダ10は、前方にある複数の反射物(通常、前方車の後端)で反射された赤外光パルスの反射波を検出し、反射波の到達時間より、複数の前方車までの車間距離とその存在方向を検出する。検出した車間距離および存在方向はコントローラ50へ出力される。
【0012】
なお、本実施の形態において、前方物体の存在方向は、自車両正面に対する相対角度として表すことができる。レーザレーダ10によりスキャンされる前方の領域は、自車正面に対して±6deg程度であり、この範囲内に存在する前方物体が検出される。
また、レーザレーダ10は、前方車両までの車間距離およびその存在方向だけでなく、自車前方に存在する歩行者等の障害物までの相対距離およびその存在方向を検出する。
【0013】
カメラ9Fは、フロントウィンドウ上部に取り付けられた小型のCCD(Charge Coupled Devices)カメラ、またはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)カメラ等の撮像装置であり、前方道路の状況を画像として検出し、検出した画像をコントローラ50に出力する。カメラ9Fによる検知領域は水平方向に±30deg程度であり、この領域に含まれる前方道路風景が画像として取り込まれる。
【0014】
また、カメラ9SR,9SLは、それぞれ左右の後部ドア上部に取り付けられた小型のCCDカメラ、もしくはCMOSカメラ等の撮像装置である。カメラ9SR,9SLは、自車側方の状況、特に隣接車線上の状況を画像として検出し、検出した画像をコントローラ50に出力する。なお、カメラ9SR,9SLは、前方を撮影するカメラ9Fに比して、より広範な領域を撮影するため、その検知領域は水平方向に±60deg程度となっている。
【0015】
さらに、カメラ9Rは、リアウィンドウ上部に取り付けられた小型のCCDカメラ、またはCMOSカメラ等の撮像装置であり、後方道路の状況を画像として検出し、検出した画像をコントローラ50に出力する。カメラ9Rによる検知領域は、カメラ9Fと同様に、水平方向に±30deg程度であり、この領域に含まれる後方道路風景が画像として取り込まれる。
【0016】
車速センサ30は、車輪の回転数等から自車両の走行車速を検出し、検出した車速をコントローラ50へ出力する。
コントローラ50は、CPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)等のCPU周辺部品とから構成され、車両用運転操作補助装置1および自動車1Aの制御系統全体の制御を行う。
【0017】
コントローラ50は、車速センサ30から入力される自車速と、レーザレーダ10から入力される距離情報と、カメラ9F,9R,9SR,9SLから入力される車両周辺の画像情報とから、自車両周囲の障害物状況を検出する。
なお、コントローラ50は、カメラ9F,9R,9SR,9SLから入力される画像情報を画像処理することにより自車両周囲の障害物状況を検出する。
【0018】
ここで、自車両周囲の障害物状況としては、自車両前方を走行する他車両までの車間距離、隣接車線を自車両後方から接近する他車両の有無と接近度合、および車線識別線(白線)に対する自車両の左右位置、つまり相対位置と角度、さらに車線識別線の形状などを挙げることができる。また、自車両前方を横断する歩行者や二輪車等も障害物状況として検出される。
【0019】
コントローラ50は、検出した障害物状況に基づいて各障害物に対する自車両のリスクポテンシャル(障害物に対する自車両の接近度合を表す物理量)を算出する。さらに、コントローラ50は、それぞれの障害物に対するリスクポテンシャルを総合して自車両周囲の総合的なリスクポテンシャルを算出し、後述するようにリスクポテンシャルに応じて、車両の左右方向の制御(操舵反力あるいは操舵角の制御および操舵ゲインの制御)、前後方向(制駆動力の制御あるいはアクセルペダルとブレーキペダルの操作反力の制御)、上下方向(能動型サスペンションの減衰力、サスペンションストロークおよびばね定数の制御)について協調制御を行う。
【0020】
ここで、本実施形態においては、コントローラ50が、総合的なリスクポテンシャルに基づいて車両の前後、左右および上下方向の制御を行うものである。このとき、コントローラ50は、運転操作支援を行う上で、ノイズであると捉えられる路面状態および車両の挙動を運転者に伝達しないように制御し、運転操作支援を行う上で、適切な運転操作につながると捉えられる情報(路面状態および車両の挙動等)を運転者に伝達するように制御する。また、コントローラ50は、擬似的な車両挙動を発生させることにより、運転者の運転操作を誘導する。さらに、コントローラ50は、ノイズであると捉えられる路面状態および車両の挙動の伝達制御と、擬似的な車両挙動を発生させることによる運転操作の誘導制御とを、条件に応じて切り替えて実行する。
【0021】
具体的には、コントローラ50は、自車両に発生する制駆動力、運転操作のために運転者が操作する運転操作機器に発生する操作反力、および、能動型サスペンションの減衰特性を制御する。運転操作機器とは、例えば運転者が自車両を加速したり減速したりするときに操作するアクセルペダル7やブレーキペダル8、あるいは、運転者が自車両の方向転換を行うときに操作するステアリングホイール5である。
【0022】
能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLの減衰特性について、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLに備えられたダンパの圧力制御あるいはサスペンションストロークの制御を行う。
即ち、コントローラ50には、車体上下加速度検出器130FR,130FL,130RR,130RLから出力された上下加速度検出信号X”2FL〜X”2RRが入力される。
【0023】
そして、コントローラ50は、車体上下加速度検出信号X"に所定のゲインKmを乗算する。
また、コントローラ50は、車体上下加速度について設定されたゲインKnと車体上下加速度検出信号の積分値∫dtとを乗算する。さらに、コントローラ50は、これらの乗算結果を加算し、この加算結果を各能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLそれぞれのダンパにおける油圧制御用のアクチュエータ120FR,120FL,120RR,120RLの指令値とする。
【0024】
操舵反力制御装置60は、車両の操舵系に組み込まれ、コントローラ50からの指令に応じて、サーボモータ61で発生させるトルクを制御する。サーボモータ61は、操舵反力制御装置60からの指令値に応じて発生させるトルクを制御し、運転者がハンドルを操作する際に発生する操舵反力を目標値に制御することができる。
ここで、コントローラ50は、リスクポテンシャルに応じた操舵反力制御を行うが、リスクポテンシャルに応じて操舵反力を付与する場合、図3に示す減衰力算出制御マップを用いることができる。
【0025】
この場合、操舵角速度θ’および発生トルクTHから、操舵反力TRに付加する減衰力TDを算出する。この減衰力算出制御マップは、図3に示すように、横軸に操舵角速度θ’を、縦軸に減衰力TDをそれぞれとり、操舵角速度θ’が0(零)から正方向に増加するときに、これに比例して減衰力TD0(零)から負方向に減少し、一方、操舵角速度θ’が0(零)から負方向に減少するときに、これに比例して減衰力TDが0(零)から正方向に増加するように設定されている。さらに、発生トルクTHが大きいほど、操舵角速度θ’の増加率(または減少率)に対する減衰力TDの減少率(又は増加率)が大きくなるように構成されている。
【0026】
舵角センサ62は、ステアリングコラムもしくはステアリングホイール付近に取り付けられた角度センサ等であり、ステアリングシャフトの回転を操舵角として検出し、コントローラ50へ出力する。
アクセルペダル7には、アクセルペダル7の踏み込み量(操作量)を検出するアクセルペダルストロークセンサ(不図示)が設けられている。アクセルペダルストロークセンサによって検出されたアクセルペダル操作量はコントローラ50に出力される。
【0027】
アクセルペダル反力制御装置80は、コントローラ50からの指令に応じて、アクセルペダル82のリンク機構に組み込まれたサーボモータ81で発生させるトルクを制御する。サーボモータ81は、アクセルペダル操作反力制御装置80からの指令値に応じて発生させる反力を制御し、運転者がアクセルペダル82を操作する際に発生する踏力を目標値に制御することができる。
【0028】
ブレーキペダル8には、その踏み込み量(操作量)を検出するブレーキペダルストロークセンサ(不図示)が設けられている。ブレーキペダルストロークセンサによって検出されたブレーキペダル操作量もコントローラ50に出力される。
ブレーキペダル反力制御装置90は、コントローラ50からの指令に応じて、ブレーキブースタで発生させるブレーキアシスト力を制御する。ブレーキブースタは、ブレーキペダル反力制御装置90からの指令値に応じて発生させるブレーキアシスト力を制御し、運転者がブレーキペダル8を操作する際に発生する踏力を目標値に制御することができる。ブレーキアシスト力が大きいほどブレーキペダル操作反力は小さくなり、ブレーキペダル8を踏み込みやすくなる。
【0029】
駆動力制御装置100は、エンジンコントローラを有し、コントローラ50からの指令に応じてエンジントルクを制御する。
制動力制御装置110は、ブレーキ液圧コントローラを有し、コントローラ50からの指令に応じてブレーキ液圧を制御する。
車両状態検出器140は、横加速度センサ、ヨーレートセンサ、アクセル開度センサ、ブレーキ圧センサ等、自車両の状態を検出する各種センサを備えており、検出した横加速度(以下、適宜「横G」と称する。)、ヨーレート、アクセル開度ACCおよびブレーキ圧BRK等の検出値を、コントローラ50に出力する。
【0030】
(能動型サスペンション機構の具体的構成)
図4は、自動車1Aが有する能動型サスペンション機構の具体的な構成を示す図である。
図4において、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLは、それぞれ車体側部材12と各車輪2FR,2FL,2RR,2RLを個別に支持する車輪側部材14との間に介装された能動型サスペンションであって、アクチュエータ120FR,120FL,120RR,120RLと、コイルスプリング16FR,16FL,16RR,16RLと、アクチュエータ120FR,120FL,120RR,120RLに対する作動油圧をコントローラ50からの指令値にのみ応動して制御する圧力制御弁17FR,17FL,17RR,17RLとを備えている。また、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLは、圧力制御弁17FL〜17RRと油圧源24との間の油圧配管25の途中に接続した高圧側アキュムレータ28Hと、圧力制御弁17FL〜17RRと油圧シリンダ15FL〜15RRとの間の油圧配管27に絞り弁28Vを介して連通した低圧側アキュムレータ28Lとを備えている。
【0031】
ここで、アクチュエータ120FR,120FL,120RR,120RLのそれぞれは、そのシリンダチューブ15aが車体側部材12に取付けられ、ピストンロッド15bが車輪側部材14に取付けられ、ピストン15cによって閉塞された上側圧力室B内の作動油圧が圧力制御弁17FL〜17RRによって制御される。また、コイルスプリング16FL〜16RRのそれぞれは、車体側部材12と車輪側部材14との間にアクチュエータ120FR,120FL,120RR,120RLと並列に装着されて車体の静荷重を支持している。なお、これらコイルスプリング16FL〜16RRは、車体の静荷重を支えるのみの低いバネ定数のものでよい。
【0032】
圧力制御弁17FL〜17RRは、上側圧力室Bの圧力が上昇(又は減少)すると、これに応じて上側圧力室Bの圧力を減圧(又は昇圧)し、上向きの振動入力による上側圧力室Bの圧力上昇(又は下向きの振動入力による上側圧力室Bの圧力減少)を抑制する。これにより、車体側部材12に伝達される振動入力を低減することができる。
一方、車体3には、各車輪2FR,2FL,2RR,2RLの直上部に車体上下加速度検出器130FR,130FL,130RR,130RLが配設され、これら車体上下加速度検出器130FR,130FL,130RR,130RLの車体上下加速度検出信号X”2FL〜X”2RRがコントローラ50に入力される。
【0033】
コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLの圧力制御を行うサスペンション制御部50aを有している。
サスペンション制御部は、車体上下加速度検出信号X”2FL〜X”2RRそれぞれに所定のゲインKmを乗算するゲイン調整機能と、所定のゲインKnと車体上下加速度検出信号X”2FL〜X”2RRそれぞれとの積分値∫dtとを乗算する車体上下速度算出兼ゲイン調整機能と、ゲイン調整機能および車体上下速度算出兼ゲイン調整機能の出力を加算する加算機能とを有しており、加算機能による加算出力が圧力制御弁17FL〜17RRの指令値V4FL〜V4RRとして各圧力制御弁17FL〜17RRに供給される。
【0034】
コントローラ50のサスペンション制御部50aにおいては、図4に示すように、車体上下加速度検出値X"2FL〜X"2RRが積分器51に供給され、その積分値でなる車体上下速度検出値X’2FL〜X’2RRが所定のゲインKnが設定された増幅器52で増幅される。一方、車体上下加速度検出値X"2FL〜X"2RRは所定の増幅度Kmが設定された増幅器53に供給されて増幅され、増幅器52,53の増幅出力が加算器54に入力されて加算される。さらに、車体上下加速度検出値X"2FL〜X"2RRは、例えばウインドコンパレータの構成を有する比較器55にも供給され、この比較器55で上下加速度検出値X"2FL〜X"2RRが所定の上限値および下限値内に収まっているときに例えば論理値"1”の比較出力が出力され、この比較出力がタイマ回路56に供給される。このタイマ回路56は、論理値"1”の比較出力が所定時間継続しているか否かを判定し、所定時間継続している場合に、論理値"1”のリセット信号RSを積分器51に出力し、積分器51の蓄積データをリセットする。
【0035】
このような構成の能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLにおいて、コントローラ50のサスペンション制御部50aが車体上下加速度検出信号X”2FL〜X”2RRに関するゲインKmおよび車体上下速度検出値X’2FL〜X’2RRに関するゲインKnを変更することで、路面から車体3に入力される振動をほぼ打ち消すように制御したり、路面から車体3に入力される振動をそのまま伝えたりすることができる。また、路面入力に拠らない圧力制御弁17FL〜17RRの指令値V4FL〜V4RRを生成することで、路面からの振動を抑制する以外の動作(例えば、車体のロールあるいはピッチの制御)を能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLに行わせることもできる。
【0036】
(コントローラ50における処理)
次に、コントローラ50が実行する各種処理について説明する。
本実施形態において、自動車1Aは、車両用運転操作補助装置1によって運転操作補助を行う場合に、リスクポテンシャルRPに応じて能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLによる情報伝達の度合い(ノイズの低減度合い)を変化させるための情報伝達制御処理を実行可能である。また、自動車1Aは、リスクポテンシャルRPに応じて、運転者が自発的に運転行動を起こすように自車両の姿勢を変化させることにより、運転者の運転操作を促す運転操作誘導処理を実行可能である。そして、コントローラ50は、リスクポテンシャルRPを基に、車両前後方向および左右方向の制御量と対応付けて、車両上下方向の制御量を決定する協調制御処理を実行することにより、情報伝達制御処理による制御量および運転操作誘導処理による制御量を基に、自車両各部の制御量を決定する。
したがって、初めに、これらの制御において用いられるリスクポテンシャルRPを算出するためのリスクポテンシャル算出処理について説明する。
【0037】
(リスクポテンシャル算出処理)
図5は、コントローラ50が実行するリスクポテンシャル算出処理を示すフローチャートである。
コントローラ50は、車両用運転操作補助装置1による運転操作補助の開始を運転者が指示入力することに対応して、リスクポテンシャル算出処理を開始する。
図5において、リスクポテンシャル算出処理を開始すると、コントローラ50は、まず、自車両の走行状態を読み込む(ステップS1)。
【0038】
ここで、走行状態は、自車周囲の障害物状況を含む自車両の走行状況に関する情報である。具体的には、レーザレーダ10で検出される前方走行車までの相対距離および相対角度、また、前方カメラ9Fからの画像入力に基づく自車両に対する白線の相対位置(すなわち左右方向の変位と相対角度)、白線の形状および前方走行車までの相対距離と相対角度を読み込み、さらに、カメラ9R,9SR,9SLからの画像入力に基づく隣接車線後方に存在する走行車両までの相対距離および相対角度を読み込む。さらに、車速センサ30によって検出される車速を読み込む。また、カメラ9F,9R,9SR,9SLで検出される画像に基づいて、自車両周囲に存在する障害物の種別、つまり障害物が四輪車両、二輪車両、歩行者またはその他であるかを認識する。
【0039】
次に、コントローラ50は、ステップS1で読み込んだ走行状態のデータ(走行状態データ)に基づいて、現在の車両周囲状況を認識する(ステップS2)。
ここでは、前回の処理周期以前に検出し、不図示のメモリに記憶している自車両に対する各障害物の相対位置やその移動方向・移動速度と、ステップS1で得られた現在の走行状態データとにより、現在の各障害物の自車両に対する相対位置やその移動方向・移動速度を認識する。そして、自車両の走行に対して障害物となる他車両や白線が、自車両の周囲にどのように配置され、相対的にどのように移動しているかを認識する。
【0040】
次に、コントローラ50は、ステップS2において認識した各障害物に対する余裕時間TTC(Time To Collision)を障害物毎に算出する(ステップS3)。
障害物kに対する余裕時間TTCkは、次式(1)で求めることができる。
TTCk=(Dk−σ(Dk))/(Vrk+σ(Vrk)) (1)
ここで、Dk:自車両から障害物kまでの相対距離、Vrk:自車両に対する障害物kの相対速度、σ(Dk):相対距離のばらつき、σ(Vrk):相対速度のばらつき、をそれぞれ示す。
【0041】
相対距離、相対速度のばらつきσ(Dk)、σ(Vrk)は、検出器の不確定性や不測の事態が発生した場合の影響度合の大きさを考慮して、障害物kを認識したセンサの種類や、認識された障害物kの種別に応じて設定する。
レーザレーダ10は、カメラ、例えばCCD等によるカメラ9F,9R,9SR,9SLによる障害物の検出と比べて、検出距離、つまり自車両と障害物との相対距離の大きさによらず正しい距離を検出することができる。
【0042】
そこで、レーザレーダ10で障害物kまでの相対距離Dkを検出した場合は、相対距離Dkによらず、そのばらつきσ(Dk)をほぼ一定値に設定する。
一方、カメラ9F,9R,9SR,9SLで相対距離Dkを検出した場合は、相対距離Dkが大きくなるほどばらつきσ(Dk)が指数関数的に増加するように設定する。ただし、障害物kの相対距離Dkが小さい場合、レーザレーダで相対距離Dkを検出した場合に比べて、カメラによってより正確に相対距離を検出することができるので、相対距離のばらつきσ(Dk)を小さく設定する。
【0043】
例えば、レーザレーダ10で相対距離Dkを検出した場合、相対速度Vrkのばらつきσ(Vrk)は、相対速度Vrkに比例して大きくなるように設定する。一方、カメラ9F,9R,9SR,9SLで相対距離Dkを検出した場合、相対速度Vrkが大きくなるほど相対速度のばらつきσ(Vrk)が指数関数的に増加するように設定する。
カメラ9F,9R,9SR,9SLによって障害物状況を検出した場合、検出画像に画像処理を行うことによって障害物の種別を認識することができる。そこで、カメラ9F,9R,9SR,9SLによって障害物状況を検出した場合は、認識される障害物の種別に応じて相対距離、相対速度のばらつきσ(Dk)、σ(Vrk)を設定する。
【0044】
カメラ9F,9R,9SR,9SLによる相対距離Dkの検出は、障害物kの大きさが大きいほどその検出精度が高いため、障害物が四輪車両である場合の相対距離のばらつきσ(Dk)を二輪車両や歩行者の場合のばらつきσ(Dk)に比べて小さく設定する。
一方、相対速度のばらつきσ(Vrk)は、障害物k毎に想定される移動速度が大きいほど、ばらつきσ(Vrk)が大きくなるように設定する。つまり、四輪車両の移動速度は二輪車両や歩行者の移動速度よりも大きいと想定されるので、相対速度Vrkが同じ場合、障害物kが四輪車両である場合のばらつきσ(Vrk)は、二輪車両や歩行者の場合のばらつきσ(Vrk)に比べて大きく設定する。
【0045】
なお、レーザレーダ10とカメラ9F,9R,9SR,9SLの両方で障害物kを検出した場合は、例えば、値の大きな方のばらつきσ(Dk)、σ(Vrk)を用いてその障害物kに対する余裕時間TTCkを算出することができる。
次に、コントローラ50は、ステップS3で算出した余裕時間TTCkを用いて、各障害物kに対するリスクポテンシャルRPkを算出する(ステップS4)。
ここで、各障害物kに対するリスクポテンシャルRPkは次式(2)で求められる。
RPk=(1/TTCk)×wk (2)
ここで、wk:障害物kの重みを示す。
(2)式に示すように、リスクポテンシャルRPkは余裕時間TTCkの逆数を用いて、余裕時間TTCkの関数として表されており、リスクポテンシャルRPkが大きいほど障害物kへの接近度合が大きいことを示している。
【0046】
障害物k毎の重みwkは、検出された障害物の種別に応じて設定する。例えば、障害物kが四輪車両、二輪車両あるいは歩行者である場合、自車両が障害物kに近接した場合の重要度、つまり影響度が高いため、重みwk=1に設定する。一方、障害物kが、路面に設置されたレーンマーカー等、接触しない対象物である場合には、重みwk=0.5に設定する。
【0047】
次に、コントローラ50は、ステップS4で算出した障害物k毎のリスクポテンシャルRPkから、車両前後方向の成分を抽出して加算し、車両周囲に存在する全障害物に対する総合的な前後方向リスクポテンシャルを算出する(ステップS5)。
前後方向リスクポテンシャルRPlongitudinalは、次式(3)で算出される。
RPlongitudinal=Σk(RPk×cosθk) (3)
ここで、θk:自車両に対する障害物kの存在方向を示し、障害物kが車両前方向、つまり自車正面に存在する場合、θk=0とし、障害物kが車両後方向に存在する場合、θk=180とする。
【0048】
なお、このとき、コントローラ50は、自車両前方(θ=0〜90,270〜360の範囲)におけるリスクポテンシャル(以下、「前方リスクポテンシャルRPa」と称する。)と、自車両後方(θ=90〜270の範囲)におけるリスクポテンシャル(以下、「後方リスクポテンシャルRPb」と称する。)をそれぞれ取得する。
続いて、コントローラ50は、ステップS4で算出した障害物k毎のリスクポテンシャルRPkから、車両左右方向の成分を抽出して加算し、車両周囲に存在する全障害物に対する総合的な左右方向リスクポテンシャルを算出する(ステップS6)。
【0049】
左右方向リスクポテンシャルRPlateralは、次式(4)で算出される。
RPlateral=Σk(RPk×sinθk) (4)
なお、このとき、コントローラ50は、自車両右方(θ=0〜180の範囲)におけるリスクポテンシャル(以下、「右方リスクポテンシャルRPc」と称する。)と、自車両左方(θ=180〜360の範囲)におけるリスクポテンシャル(以下、「左方リスクポテンシャルRPd」と称する。)をそれぞれ取得する。
【0050】
さらに、コントローラ50は、ステップS4で算出した障害物k毎のリスクポテンシャルRPkを全ての障害物kについて合計し、車両周囲の総合的なリスクポテンシャルRPを算出する(ステップS7)。
ステップS7の後、コントローラ50は、運転操作補助の終了を運転者が指示入力するまで、リスクポテンシャル算出処理を繰り返す。
なお、コントローラ50は、リスクポテンシャル算出処理において算出したリスクポテンシャルRP等のパラメータを、不図示のメモリに格納し、他の処理において利用可能な状態とする。
【0051】
(協調制御処理)
次に、情報伝達制御処理および運転操作誘導処理に対して上位の制御となる協調制御処理について説明する。
図6は、コントローラ50が実行する協調制御処理を示すフローチャートである。
コントローラ50は、車両用運転操作補助装置1による運転操作補助の開始を運転者が指示入力することに対応して、協調制御処理を開始する。
図6において、協調制御処理を開始すると、コントローラ50は、リスクポテンシャル算出処理において算出したリスクポテンシャルRPに基づいて、情報伝達制御処理および運転操作誘導処理の重み付けを設定する(ステップT1)。
情報伝達制御処理および運転操作誘導処理の重み付けは、情報伝達制御処理によって算出される制御量と、運転操作誘導処理によって算出される制御量とを総合的な制御量に算入する際の比率を示すものであり、リスクポテンシャルRPに応じて設定される。
【0052】
図7は、リスクポテンシャルRPと運転操作誘導処理の重みとの関係を示す図である。
図7において、横軸はリスクポテンシャルRPを示し、縦軸は運転操作誘導処理の重みを示している。
図7に示すように、リスクポテンシャルRPが大きくなるほど、運転操作誘導処理の重みは増加し、最大値1で飽和している。運転操作誘導処理の重みと、情報伝達制御処理の重みとは、合計で1となるように設定しているため、運転操作誘導処理の重みが1である場合、情報伝達制御処理の重みは0となる。反対に、情報伝達制御処理の重みが1である場合、運転操作誘導処理の重みは0となる。
【0053】
また、図7において、破線および一点鎖線で示すように、車両の安定度が高い場合には、運転操作誘導処理の重みが高くなるように特性を変化させたり、車両の安定度が低い場合には、情報伝達制御処理の重みが高くなるように特性を変化させたりすることができる。
次に、コントローラ50は、情報伝達制御処理および運転操作誘導処理をそれぞれ実行する(ステップT2,T3)。
このとき、何れかの処理の重みが0となっている場合には、その処理の実行をスキップする。
そして、コントローラ50は、情報伝達制御処理によって算出された制御量と、運転操作誘導処理によって算出された制御量とを、ステップT1において設定した重み付けに従って加算し、自車両各部の総合的な制御量を算出する(ステップT4)。
【0054】
ここで算出される制御量としては、例えば、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLのサスペンションストローク、減衰力、ばね定数、操舵角、操舵反力、操舵入力に対するゲイン、制駆動力操作反力等が挙げられる。
さらに、コントローラ50は、ステップT4において算出した自車両各部の総合的な制御量で、自車両の制御を実行する(ステップT5)。
ステップT5の後、コントローラ50は、協調制御処理を繰り返す。
【0055】
(情報伝達制御処理)
次に、協調制御処理のステップT2においてコントローラ50が実行する情報伝達制御処理について説明する。
情報伝達制御処理は、車両用運転操作補助装置1によって運転操作補助を行う場合に、リスクポテンシャルRPに応じて能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLによる情報伝達の度合い(ノイズの低減度合い)を変化させるための処理である。
【0056】
図8は、コントローラ50が実行する情報伝達制御処理を示すフローチャートである。
コントローラ50は、運転者の指示入力に応じて情報伝達制御処理の実行を開始する。
図8において、情報伝達制御処理を開始すると、コントローラ50は、リスクポテンシャル算出処理において算出したリスクポテンシャルRPが、リスクポテンシャルについて設定された閾値RP0より大きいか否かの判定を行う(ステップS101)。
【0057】
ステップS101において、リスクポテンシャルRPが閾値RP0より大きいと判定した場合、コントローラ50は、情報伝達制御の基準値α0を算出する(ステップS102)。
情報伝達制御の基準値α0は、リスクポテンシャルRPに対応して定められる制御のためのパラメータである。具体的には、この基準値α0は0〜1の間の値を取り、基準値α0の値が大きいほど、路面からの振動を打ち消す度合いを高め、基準値α0の値が小さいほど、路面からの振動を打ち消すことなく運転者に伝えるものとなる。
【0058】
図9は、リスクポテンシャルRPと情報伝達制御の基準値α0との関係を示す図である。
図9において、リスクポテンシャルRPが閾値RP0より大きくなると、リスクポテンシャルRPの増加に伴って、情報伝達制御の基準値α0も増加している。また、情報伝達制御の基準値α0は、最大値が1に設定されており、リスクポテンシャルRPの増加に対し、最大値1で飽和する。
ステップS101において、リスクポテンシャルRPが閾値RP0以下であると判定した場合、コントローラ50は、情報伝達制御の基準値α0を0に設定(α0=0)する(ステップS103)。
ステップS102およびステップS103の後、コントローラ50は、運転者が実行の停止を指示入力するまで、情報伝達制御処理を繰り返す。
【0059】
ステップS102およびステップS103において算出した情報伝達制御の基準値α0は、自動車1Aにおいて通常行っている能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLの制御に対し、付加的な制御を行う度合いを示すパラメータとしてコントローラ50が用いるものである。
本実施形態において、情報伝達制御処理が実行されていない状態では、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLによって路面からの振動を一定の割合で軽減(例えば路面からの入力のうち70%を軽減)する制御を行っている。
【0060】
情報伝達制御処理を実行することにより、コントローラ50は、情報伝達制御処理を実行していない場合における振動の軽減割合を変更し、情報伝達制御の基準値α0に対応する振動の軽減割合に能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLを制御する。
具体的には、コントローラ50は、情報伝達制御の基準値α0の値が大きいほど、路面からの振動を打ち消す度合いを高くし、情報伝達制御の基準値α0の値が小さいほど、路面からの振動を打ち消すことなく、運転者に伝えるように制御する。
【0061】
また、情報伝達制御の基準値α0は、リスクポテンシャルRPの増加に伴って増加する傾向に設定している。
そのため、本実施形態における自動車1Aは、リスクポテンシャルRPの増加に応じて、路面からの振動をより強く打ち消す制御を行う。
これにより、自車両周囲に、運転を行う上で高い注意を払う必要がある障害物が存在する場合に、路面からの振動が打ち消され、運転操作支援のために付与される操舵操作の反力等、運転者が運転を行う際に有用な情報を選択して伝達することができる。
【0062】
(運転操作誘導処理)
次に、コントローラ50が実行する運転操作誘導処理について説明する。
運転操作誘導処理は、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLを制御して自車両の姿勢を変化させ、運転者に擬似的な感覚を与えることによって運転操作を促すための処理である。
図10は、コントローラ50が実行する運転操作誘導処理を示すフローチャートである。
コントローラ50は、運転者の指示入力に応じて運転操作誘導処理の実行を開始する。
図10において、運転操作誘導処理を開始すると、コントローラ50は、リスクポテンシャル算出処理において算出した前後および左右方向のリスクポテンシャルRPa、RPb,RPc,RPdを取得する(ステップP101)。
【0063】
次に、コントローラ50は、ステップP101において取得した前後および左右方向のリスクポテンシャルRPa、RPb,RPc,RPdが、それぞれについて設定された閾値RPa0,RPb0,RPc0,RPd0を超えているか否かの判定を行う(ステップP102)。
ステップP102において、前後および左右方向のリスクポテンシャルRPa、RPb,RPc,RPdのいずれも、それぞれについて設定された閾値RPa0、RPb0,RPc0,RPd0を超えていないと判定した場合、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
【0064】
また、ステップP102において、前方リスクポテンシャルRPaが閾値RPa0を超えていると判定した場合、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4FLのサスペンションストロークを前方リスクポテンシャルRPaに応じて変化させる(ステップP103)。また、ステップP103において、コントローラ50は、アクセルペダル7の操作反力を前方リスクポテンシャルRPaに応じて増加させる。
ステッP103の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
【0065】
図11は、前方リスクポテンシャルRPaが高い場合の制御動作を示す模式図である。
また、図12は、前方リスクポテンシャルRPaが高い場合に付与されるアクセルペダル反力および車体ピッチ角βの特性を示す図である。
図11および図12において、前方リスクポテンシャルRPaが閾値RPa0より高い場合、図12(a)に示すように、アクセルペダル反力が前方リスクポテンシャルRPaに応じて強くなり、アクセルペダル7を踏み増しにくい状態となる。また、図11に示すように、能動型サスペンション4FR,4FLのサスペンションストロークが前方リスクポテンシャルRPaに応じて変化される。これにより、運転者に対して、自動車1Aが加速しているような感覚を与えることができる。また、このとき、図12(b)に示すように、ピッチ角(車体の後傾傾斜角)βは前方リスクポテンシャルRPaに応じて大きくなり、運転者に対して、前方リスクポテンシャルRPaが大きいほど、自動車1Aがより強く加速しているような感覚を与えることができる。
【0066】
このような運転操作の誘導を行うことにより、運転者に対して減速操作を促すことができる。
そして、運転者が減速操作を行うと、前方リスクポテンシャルRPaが減少し、ステップP103における運転操作の誘導が停止される。
また、ステップP102において、後方リスクポテンシャルRPbが閾値RPb0を超えていると判定した場合、コントローラ50は、能動型サスペンション4RR,4RLのサスペンションストロークを後方リスクポテンシャルRPbに応じて変化させる(ステップP104)。
ステッP104の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
【0067】
図13は、後方リスクポテンシャルRPbが高い場合の制御動作を示す模式図である。
また、図14は、後方リスクポテンシャルRPbが高い場合に付与される車体ピッチ角γの特性を示す図である。
図13および図14において、後方リスクポテンシャルRPbが閾値RPb0より高い場合、図13に示すように、能動型サスペンション4RR,4RLのサスペンションストロークが前方リスクポテンシャルRPbに応じて変化される。これにより、運転者に対して、自動車1Aが減速しているような感覚を与えることができる。また、このとき、図14に示すように、ピッチ角(車体の前傾傾斜角)γは後方リスクポテンシャルRPbに応じて大きくなり、運転者に対して、後方リスクポテンシャルRPbが大きいほど、自動車1Aがより強く加速しているような感覚を与えることができる。
【0068】
このような運転操作の誘導を行うことにより、運転者に対して加速操作を促すことができる。
そして、運転者が加速操作を行うと、後方リスクポテンシャルRPbが減少し、ステップP104における運転操作の誘導が停止される。
また、ステップP102において、右方リスクポテンシャルRPcが閾値RPc0を超えていると判定した場合、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4RRのサスペンションストロークを右方リスクポテンシャルRPcに応じて変化させる(ステップP105)。
【0069】
ステッP105の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
また、ステップP102において、左方リスクポテンシャルRPdが閾値RPd0を超えていると判定した場合、コントローラ50は、能動型サスペンション4FL,4RLのサスペンションストロークを左方リスクポテンシャルRPdに応じて変化させる(ステップP106)。
ステッP106の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
【0070】
図15は、右方リスクポテンシャルRPcあるいは左方リスクポテンシャルRPdが高い場合の制御動作を示す模式図である。なお、図15においては、車両を後方から見た図を示しており、右方リスクポテンシャルRPcが高い場合を例に挙げている。
また、図16は、右方リスクポテンシャルRPcあるいは左方リスクポテンシャルRPdが高い場合に付与される操舵反力および車体ロール角δの特性を示す図である。
【0071】
図15および図16において、右方リスクポテンシャルRPcが閾値RPc0より高い場合、図16(a)に示すように、操舵反力が右方リスクポテンシャルRPcに応じて強くなり、右方向への操舵を切り増しにくい状態となる。また、図15に示すように、能動型サスペンション4FR,4RRのサスペンションストロークが右方リスクポテンシャルRPcに応じて変化される。これにより、運転者に対して、自動車1Aが右旋回して車体3が左にロールしているような感覚を与えることができる。また、このとき、図16(b)に示すように、ロール角(車体の左右傾斜角)δは右方リスクポテンシャルRPcに応じて大きくなり、運転者に対して、右方リスクポテンシャルRPcが大きいほど、自動車1Aがより強く右旋回しているような感覚を与えることができる。
【0072】
このような運転操作の誘導を行うことにより、運転者に対して左方向への操舵操作を促すことができる。
そして、運転者が左方向への操舵操作を行うと、右方リスクポテンシャルRPcが減少し、ステップP104における運転操作の誘導が停止される。
同様に、左方リスクポテンシャルRPdが高い場合には、操舵反力が左方リスクポテンシャルRPdに応じて強くなり、左方向への操舵を切り増しにくい状態となる。また、能動型サスペンション4FL,4RLのサスペンションストロークが左方リスクポテンシャルRPdに応じて変化される。これにより、運転者に対して、自動車1Aが左旋回して車体3が右にロールしているような感覚を与えることができる。また、このとき、ロール角(車体の左右傾斜角)δは左方リスクポテンシャルRPdに応じて大きくなり、運転者に対して、左方リスクポテンシャルRPdが大きいほど、自動車1Aがより強く左旋回しているような感覚を与えることができる。
【0073】
このような運転操作の誘導を行うことにより、運転者に対して右方向への操舵操作を促すことができる。
ここで、運転操作誘導処理において、前後方向のリスクポテンシャルRPa,RPbのいずれも閾値RPa0,RPb0を超えている場合には、前後方向のうち、閾値を超えている絶対量が大きい方の制御を優先する、あるいは、いずれも制御を行わないといった方法とすることができる。
また、運転操作誘導処理において、左右方向のリスクポテンシャルRPc,RPdのいずれも閾値RPc0,RPd0を超えている場合には、左右方向のうち、閾値を超えている絶対量が大きい方の制御を優先する、あるいは、いずれも制御を行わないといった方法とすることができる。
【0074】
(車両前後方向の運転操作補助処理)
次に、自動車1AがリスクポテンシャルRPに応じて実行する車両前後方向の運転操作補助処理について説明する。
車両前後方向の運転操作補助処理は、自動車1Aにおける基本的な制御として実行されている。したがって、協調制御処理による制御は、車両前後方向の運転操作補助処理に対する付加的な制御として実行されるものである。
図17は、車両前後方向の運転操作補助処理を示すフローチャートである。
コントローラ50は、車両用運転操作補助装置1による運転操作補助の開始を運転者が指示入力することに対応して、車両前後方向の運転操作補助処理を開始する。
【0075】
図17において、車両前後方向の運転操作補助処理が開始されると、コントローラ50は、リスクポテンシャル算出処理で算出した前後方向のリスクポテンシャルRPlongitudinalに基づいて、目標制駆動力およびアクセルペダル反力制御指令値を算出する際に用いる制御反発力Fcを算出する(ステップS201)。
このとき、図18(a)に示すように、自車両の前方に仮想的な弾性体200を設けたと仮定し、この仮想的な弾性体が前方障害物に当たって圧縮され、自車両に対する擬似的な走行抵抗を発生するというモデルを考える。ここで、制御反発力Fcは、図18(b)に示すように仮想弾性体200が先行車に当たって圧縮された場合の反発力と定義する。
【0076】
例えば、コントローラ50は、前後方向のリスクポテンシャルRPlongitudinalについて、閾値RPL1を設定し、前後方向のリスクポテンシャルRPlongitudinalが閾値RPL1を超えた場合には、RPlongitudinalとRPL1との差に比例した制御反発力Fcを次式(5)に従って算出する。
Fc=Kl・(RPlongitudinal−RPL1) (5)
(5)式は、前後方向のリスクポテンシャルRPlongitudinalを図18(a)における弾性体200の変位とみなし、弾性体200の変位に比例した制御反発力Fcを算出することを意味している。そのため、(5)式におけるKlは、弾性体200のばね定数に相当する係数である。
【0077】
次に、コントローラ50は、ステップS201で算出した制御反発力Fcを用いて、制駆動力制御を行う際に出力する制御用駆動力Fa_outおよび制御用制動力Fb_outを算出する(ステップS202)。
続いて、コントローラ50は、ステップS201で算出した制御反発力Fcに基づいて、アクセルペダル7に発生する操作反力の制御量、すなわちアクセルペダル反力制御指令値FAを算出する(ステップS203)。
【0078】
さらに、コントローラ50は、ステップS202で算出した制御用駆動力Fa_out、および制御用制動力Fb_outをそれぞれ駆動力制御装置100、および制動力制御装置110に出力する(ステップS204)。
これにより、駆動力制御装置100のエンジンコントローラが、コントローラ50からの指令に応じてエンジントルクを制御する。また、制動力制御装置110のブレーキ液圧コントローラが、コントローラ50からの指令に応じてブレーキ液圧を制御する。
【0079】
次いで、コントローラ50は、ステップS203で算出したアクセルペダル反力制御指令値FAをアクセルペダル反力制御装置80に出力する(ステップS205)。
これにより、アクセルペダル反力制御装置70が、アクセルペダル操作量SAに応じた通常の反力特性に、コントローラ50から入力される指令値に応じた反力を付加するようにアクセルペダル反力を制御する。
ステップS205の後、コントローラ50は、運転者が実行の停止を指示入力するまで、車両前後方向の運転操作補助処理を繰り返す。
【0080】
(車両左右方向の運転操作補助処理)
次に、自動車1AがリスクポテンシャルRPに応じて実行する車両左右方向の運転操作補助処理について説明する。
車両左右方向の運転操作補助処理は、自動車1Aにおける基本的な制御として実行されている。したがって、協調制御処理による制御は、車両左右方向の運転操作補助処理に対する付加的な制御として実行されるものである。
図19は、車両左右方向の運転操作補助処理を示すフローチャートである。
コントローラ50は、車両用運転操作補助装置1による運転操作補助の開始を運転者が指示入力することに対応して、車両左右方向の運転操作補助処理を実行する。
【0081】
図19において、車両左右方向の運転操作補助処理が開始されると、コントローラ50は、リスクポテンシャル算出処理で算出した車両左右方向のリスクポテンシャルRPlateralに基づいて、車両左右方向の成分を抽出して加算し、車両周囲に存在する全障害物に対する総合的な左右方向リスクポテンシャルを算出する(ステップS301)。
さらに、コントローラ50は、ステップS301で算出した左右方向のリスクポテンシャルから、左右方向制御指令値、すなわち操舵反力制御装置60への操舵反力制御指令値FSを算出する(ステップS302)。
【0082】
ここでは、車両左右方向のリスクポテンシャルRPlateralに応じて、リスクポテンシャルRPlateralが大きいほど、ハンドル操舵角を戻す方向、つまりハンドルを中立位置へと戻す方向へ大きな操舵反力を発生させる。
次いで、コントローラ50は、ステップS302で算出した左右方向制御指令値FSを操舵反力制御装置60に出力する(ステップS303)。
ステップS303の後、コントローラ50は、運転者が実行の停止を指示入力するまで、車両左右方向の運転操作補助処理を繰り返す。
【0083】
(動作)
次に、動作を説明する。
自動車1Aにおいて、基本的な制御として、リスクポテンシャル算出処理によって算出したリスクポテンシャルを基に、車両前後方向および車両左右方向の運転操作補助処理に基づく操舵反力および制駆動力操作反力についての制御が行われている。
そして、運転者が自動車1Aに対して協調制御処理の実行を指示入力すると、自動車1Aは、協調制御処理の実行を開始する。
すると、自動車1Aは、情報伝達制御処理および運転操作誘導処理を実行し、各処理に対応する制御量を算出する。
そして、自動車1Aは、これらの制御量を、リスクポテンシャルRPに対応する重み付けに従って、重み付け加算する。
【0084】
これにより得られた加算結果を総合的な制御量として、自動車1Aは、自車両各部の制御を実行する。
具体的には、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLについて、路面からの振動を抑制する制御と、運転者に加減速あるいは旋回を感じさせる制御とを配分した総合的な制御量によって制御を実行する。
【0085】
また、運転操作誘導処理を実行している自動車1Aの走行中は、走行状態に応じて、リスクポテンシャル算出処理によって算出されるリスクポテンシャルが随時変動する。
そのため、情報伝達制御処理による制御量と、運転操作誘導処理による制御量との重み付けは、自車両周囲の障害物状況によって変化されながら、自動車1Aの制御を行う。
このような動作により、運転操作に有用な情報を適切に抑制して運転者に伝えながら、リスクポテンシャルが低くなる方向へ運転者の運転操作を誘導することができる。
【0086】
以上のように、本実施形態に係る自動車1Aは、運転者に情報伝達を行うための情報伝達制御処理による制御と、運転者の運転操作を誘導するための運転操作誘導処理による制御とを、リスクポテンシャルに応じて重み付けすることで、総合的な制御を実行する。
そのため、自車両周囲の障害物状況に応じて、運転操作に有用な情報を適切に抑制して運転者に伝えながら、リスクポテンシャルが低くなる方向へ運転者の運転操作を誘導することができる。
したがって、運転者に対し、より適切に車両の運転操作の支援を行うことが可能となる。
【0087】
なお、本実施形態において、ステアリングホイール5、アクセルペダル7およびブレーキペダル8が運転操作手段に対応し、車体上下加速度検出器130FR,130FL,130RR,130RLが走行路状態検出手段に対応する。また、車速センサ30、車両状態検出器140および車体上下加速度検出器130FR,130FL,130RR,130RLが車両状態検出手段に対応し、カメラ9F,9R,9SR,9SLおよびコントローラ50が障害物検出手段に対応する。また、コントローラ50がリスクポテンシャル算出手段、情報伝達制御手段、擬似車両挙動発生手段および協調制御手段に対応し、操舵反力制御装置60、アクセルペダル反力制御装置80およびブレーキペダル反力制御装置90が操作反力付与手段に対応する。また、コントローラ50および能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLが動作制御手段および能動型のサスペンションに対応する。
【0088】
(第1実施形態の効果)
(1)情報伝達制御手段が、自車両に生じている車両挙動を、リスクポテンシャルの大きさに応じて抑制して、外乱情報を運転者に伝達する制御量を算出する。
擬似車両挙動発生手段が、リスクポテンシャルが増大する運転操作を行った場合の車両挙動を、動作制御手段を制御することによって擬似的に発生させるための制御量を算出する。
協調制御手段が、情報伝達制御手段によって算出された制御量と、擬似車両挙動発生手段によって算出された制御量とに基づいて、車両を制御する。
そのため、自車両周囲の障害物状況に応じて、運転操作に有用な外乱情報を適切に抑制して運転者に伝えながら、リスクポテンシャルが低くなる方向へ運転者の運転操作を誘導することができる。
したがって、運転者に対し、より適切に車両の運転操作の支援を行うことが可能となる。
【0089】
(2)協調制御手段は、情報伝達制御手段によって算出された制御量と、擬似車両挙動発生手段によって算出された制御量とを、リスクポテンシャルに応じて重み付け加算し、その加算結果によって車両を制御する。
したがって、自車両周囲の障害物状況に応じた重み付けによって、運転操作に有用な情報を適切に抑制して運転者に伝えながら、リスクポテンシャルが低くなる方向へ運転者の運転操作を誘導することができる。
【0090】
(3)協調制御手段は、情報伝達制御手段によって算出された制御量と、擬似車両挙動発生手段によって算出された制御量とを重み付け加算する際に、リスクポテンシャルが大きくなるほど、擬似車両挙動発生手段によって算出された制御量の重みを大きくする。
したがって、リスクポテンシャルが大きいほど、運転者に対し、路面状況を正確に伝えることができる。
(4)協調制御手段は、情報伝達制御手段によって算出された制御量と、擬似車両挙動発生手段によって算出された制御量とを重み付け加算する際に、自車両の安定度が低いほど、情報伝達制御手段によって算出された制御量の重みを大きくする。
【0091】
(5)操舵反力付与手段、動作制御手段を制御して自車両に生じている車両挙動を抑制するため、車両前後、左右および上下方向の挙動を抑制して運転者に伝達することができる。
(6)リスクポテンシャルが大きいほど、自車両に生じている車両挙動を大きく抑制して運転者に伝達する。
そのため、自車両周囲の障害物状況が低下するほど、障害物を避けるための運転操作支援に関する反力を効果的に伝えることができる。
【0092】
(7)能動型のサスペンションによってリスクポテンシャルに応じて車両挙動を抑制した状態で、リスクポテンシャルに応じた操作反力を付与するため、運転者に対し、より適切に車両の運転操作のための情報を伝達することができる。
(8)擬似車両挙動発生手段が、加減速操作あるいは操舵操作を行った場合に発生する車両挙動を擬似的に発生させるため、運転者に対して、それを抑制する運転操作を促すことができる。
【0093】
(9)擬似車両挙動発生手段は、自車両の前後方向におけるリスクポテンシャルに対し、車体を前傾あるいは後傾させるように前記サスペンション装置を制御する。
したがって、運転者に擬似的な加速度あるいは減速度を感じさせることができる。
(10)擬似車両挙動発生手段は、自車両の左右方向におけるリスクポテンシャルに対し、車体をロールさせるようにサスペンション装置を制御する。
したがって、運転者に擬似的な旋回状態を感じさせることができる。
【0094】
(11)擬似車両挙動発生手段は、動作制御手段としてのサスペンション装置のサスペンションストローク、減衰力およびばね定数と、操舵反力付与手段が操舵操作手段に付与する操舵反力と操舵操作に対して付与する操舵反力のゲインとを制御する。
そのため、車両上下方向および前後左右方向の挙動を利用して、運転者に対し、より適切に車両の運転操作の支援を行うことができる。
【0095】
(12)自車両の状態と、自車両周囲の障害物の状態とに基づいて、自車両に生じている車両挙動を抑制して伝達し、自車両の状態および自車両周囲の障害物の状態とに基づく操舵反力および制駆動操作反力を付与する情報伝達制御と、自車両の状態と、自車両周囲の障害物の状態とに基づいて、自車両周囲に存在する障害物に対するリスクポテンシャルを算出し、算出した前記リスクポテンシャルに基づいて、リスクポテンシャルが増大する運転操作を行った場合の車両挙動を擬似的に発生させる運転操作誘導処理とに基づく制御量によって、車両を制御する車両用運転操作補助方法である。
これにより、自車両周囲の障害物状況に応じて、運転操作に有用な外乱情報を適切に抑制して運転者に伝えながら、リスクポテンシャルが低くなる方向へ運転者の運転操作を誘導することができる。
したがって、運転者に対し、より適切に車両の運転操作の支援を行うことが可能な車両用運転操作補助方法とできる。
【0096】
(13)情報伝達制御手段が、自車両に生じている車両挙動を、リスクポテンシャルの大きさに応じて抑制して、外乱情報を運転者に伝達する制御量を算出する。
擬似車両挙動発生手段が、リスクポテンシャルが増大する運転操作を行った場合の車両挙動を、動作制御手段を制御することによって擬似的に発生させるための制御量を算出する。
協調制御手段が、情報伝達制御手段によって算出された制御量と、擬似車両挙動発生手段によって算出された制御量とに基づいて、車両を制御する。
そのため、自車両周囲の障害物状況に応じて、運転操作に有用な外乱情報を適切に抑制して運転者に伝えながら、リスクポテンシャルが低くなる方向へ運転者の運転操作を誘導することができる。
したがって、運転者に対し、より適切に車両の運転操作の支援を行うことが可能な自動車とできる。
【0097】
(応用例1)
第1実施形態において、図7に破線および一点鎖線で示したように、車両の安定度が高い場合には、運転操作誘導処理の重みが高くなるように特性を変化させ、車両の安定度が低い場合には、情報伝達制御処理の重みが高くなるように特性を変化させることができる。
即ち、コントローラ50によって、自車両の安定度を算出し、算出した安定度に応じて、図7の重み付け特性を変化させることができる。
この場合、例えば、自車両が不安定であるほど、情報伝達制御処理の効果を大きくし、自車両が安定であるほど、運転操作誘導処理の効果を大きくすることができる。
これにより、自車両の安定度に応じた制御内容によって、より適切に車両の運転操作の支援を行うことが可能となる。
【0098】
(応用例2)
応用例1において、自車両の安定度に応じて、情報伝達制御処理の重みを変化させることとしたが、自車両の安定度は、種々のパラメータによって定めることができる。
図20は、車両の運転状態(加減速度)と安定度との関係を示す図である。
図20に示すように、車両の加減速度が大きくなるほど、車両の安定度は低くなるように設定できる。
また、図20に示すように、加速時と減速時で車両の安定度にヒステリシスを持たせることができる。
即ち、車両が減速しているときは、加速しているときに比べ、車両が不安定化する可能性が高いため、減速時には安定度を低下させる割合を高め、加速時には安定度を上昇させる割合を高めるものである。
【0099】
(応用例3)
また、図21は、車両の運転状態と安定度との関係についての他の例を示す図である。
図21に示すように、下り坂を下っているときは、傾斜が大きいほど車両の安定度を低下させることができる。
また、横加速度(横G)が大きいときには、横加速度が大きいほど車両の安定度を低下させることができる。
【0100】
(応用例4)
第1実施形態において、リスクポテンシャルRPと運転操作誘導処理の重みについては、図7に示すように、リスクポテンシャルRPが大きくなるほど、運転操作誘導処理の重みが大きくなる場合を例に挙げた。
一方、条件によっては、図7と逆の特性に設定することも可能である。
図22は、リスクポテンシャルRPが大きくなるほど、運転操作誘導処理の重みが小さくなる場合の特性を示す図である。
図22に示す例では、リスクポテンシャルRPが大きくなるほど、運転者への情報伝達制御が強く行われる特性となっている。
これにより、リスクポテンシャルが大きくなっている状況において、路面状態をより直接的に運転者に伝達することができる。
【0101】
(応用例5)
図6に示す協調制御処理において、重み付けを行う具体的な手法は、例えば、以下のような形態とできる。
即ち、取得した車両運転状態、交通環境に関する情報、算出した車両の安定度から、情報伝達制御および運転操作誘導制御の上下制御重み量を算出する。
なお、複数の重み付けが算出される場合は各重みを加算・乗算し、各制御の割合を求める。
【0102】
・各重み(ノイズ抑制制御分、情報伝達制御分)の算出方法
複数の要素について重み付けのためのマップを容易しておく。
MAP(1)から算出した重みをG(1)、MAP(2)から算出した重みをG(2)・・・MAP(N)から算出した重みをG(N)とすると、全ての要素を加味した重みG(ALL)は、
G(ALL)= [ G(1)/0.5 + G(2)/0.5 + ・・・・ +G(N)] / (2×n)
と算出できる。
【0103】
例えば情報伝達制御分について、MAP1の重みが1(全て情報伝達制御分に使用)、MAP(2)の重みが0.5(情報伝達制御と運転操作誘導制御分が半々)の場合、計算される重みG(ノイズ抑制制御分)は0.75であり、75%の割合で情報伝達制御を、残り25%の割合で運転操作誘導制御分とする。
このようにして算出した重みから、情報伝達制御分の上下制御量を算出する。
補正前の情報伝達制御量をS(情報伝達制御)とすると、本方法により算出される補正後の制御量S’は
S’ = S×G(情報伝達抑制分)
であり、算出したS’に基づいて情報伝達制御を行う。
同様に、上記のように算出した重みから、運転操作誘導制御分の上下制御量を算出する。
補正前の情報伝達制御量をR(運転操作誘導制御)とすると、本方法により算出される補正後の制御量R’は
R’ = R×G(運転操作誘導抑制分)
であり、算出したR’に基づいて運転操作誘導制御を行う。
【0104】
(応用例6)
本実施形態における情報伝達の条件は、例えば以下のように設定することができる。
基本的な条件として、加減速時の加減速度およびピッチングと、旋回時のヨー運動および操舵反力は運転者に伝達することが望ましい。その他の情報は、運転者に伝えることが必ずしも有用ではないが、一部の情報については、下記の条件に従って運転者に伝達することができる。
【0105】
1)車速が高い場合、路面からの振動を遮断し、車速が低い場合、絶対量を下げて路面からの振動を伝達する。
2)視界が極端に悪い場合、路面からの振動を伝達する。視界が良い場合、絶対量を下げて路面からの振動を伝える。
3)夜間等、走行環境が暗い場合は路面からの振動を伝達し、走行環境が明るい場合には、絶対量を下げて路面からの振動を伝える。
これらの場合、視覚からの情報と車両挙動を一致させ、運転者に違和感を与えることを抑制できる。
4)高速道路では路面からの振動を遮断し、一般道および市街地では、絶対量を下げて路面からの振動を伝える。
【0106】
(応用例7)
本実施形態において、リスクポテンシャルRPと情報伝達制御の基準値α0との関係を図9に示す場合を例に挙げて説明したが、以下のような関係とすることができる。
図23は、リスクポテンシャルRPと情報伝達制御の基準値α0との関係の他の例を示す図である。
なお、図24は、リスクポテンシャルRPと操作反力(操舵反力およびペダルの操作反力)との関係を示す概念図である。
図23において、リスクポテンシャルRPが閾値RP0’以下の場合、α0=1として、路面からの振動を打ち消す度合いを高く設定している。また、リスクポテンシャルRPが閾値RP0’を超えると、リスクポテンシャルの増加に伴って情報伝達制御の基準値α0を減少させ、路面からの振動を打ち消す度合いを低下させている。
【0107】
また、図25は、図23の関係に基づく場合の情報伝達制御処理を示すフローチャートである。
コントローラ50は、運転者の指示入力に応じて情報伝達制御処理の実行を開始する。
図25において、情報伝達制御処理を開始すると、コントローラ50は、リスクポテンシャル算出処理において算出したリスクポテンシャルRPが、リスクポテンシャルについて設定された閾値RP0’より大きいか否かの判定を行う(ステップQ1)。
ステップQ1において、リスクポテンシャルRPが閾値RP0’より大きいと判定した場合、コントローラ50は、図23の関係に従って情報伝達制御の基準値α0を算出する(ステップQ2)。
ステップQ1において、リスクポテンシャルRPが閾値RP0’以下であると判定した場合、コントローラ50は、情報伝達制御の基準値α0を1に設定(α0=1)する(ステップQ3)。
【0108】
ステップQ2およびステップQ3の後、コントローラ50は、運転者が実行の停止を指示入力するまで、情報伝達制御処理を繰り返す。
これにより、リスクポテンシャルRPに応じて加えられる操作反力が小さい時(図24参照)は、路面からの振動を打ち消す度合いを高めることにより、小さい操作反力でも運転者に認識させることが可能になる。一方、リスクポテンシャルRPが大きく、付与される操作反力が大きい時(図24参照)は、路面からの振動を打ち消す度合いを低下させて、路面の情報を運転者に伝えつつ、運転者に操作反力を認識させることができる。
【0109】
(効果)
情報伝達制御手段が、リスクポテンシャルが第1の閾値以下である場合、自車両に生じている車両挙動を第1の制御量で抑制する。また、リスクポテンシャルが第1の閾値を超えている場合、情報伝達制御手段は、リスクポテンシャルが第1の閾値より大きくなるほど、自車両に生じている車両挙動を抑制する度合いを減少させる。
したがって、リスクポテンシャルに応じて加えられる操作反力が小さい時は、車両挙動を第1の制御量で抑制することにより、小さい操作反力でも運転者に認識させることが可能になる。一方、リスクポテンシャルが大きく、付与される操作反力が大きい時は、車両挙動を抑制する度合いを低下させて、外部からの情報を運転者に伝えつつ、運転者に操作反力を認識させることができる。
【0110】
(応用例8)
本実施形態において、車両用運転操作補助装置1が能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLを備えることとして説明したが、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLに代えて、入力した振動に対する減衰力を可変とした減衰力制御装置を用いることができる。
図26は、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLに代えて減衰力制御装置を備えた自動車1Aの概略構成図である。
また、図27は、減衰力制御装置の一例を示す一部を断面とした正面図である。
図26および図27において、自動車1Aには、各車輪2FR,2FL,2RR,2RLと車体3との間にそれぞれサスペンション装置を構成する減衰力可変ショックアブソーバ(減衰力制御装置)400FL〜400RRが配設され、これら減衰力可変ショックアブソーバ400FL〜400RRの減衰力を切り換えるステップモータ41FL〜41RRがコントローラ50からの制御信号によって制御される。
【0111】
これらの各減衰力可変ショックアブソーバ400FL〜400RRは、図27に示すように、外筒405と内筒406とで構成されるシリンダチューブ407を有するツインチューブ式ガス入りストラット型に構成され、内筒406内がこれに摺接するピストン408によって上下圧力室409U,409Lに画成されている。また、前記ピストン408は、外周面に内筒6と摺接するシール部材409がモールドされ且つ内周面に中心開孔410を有する円筒状の下部半体411と、この下部半体411に内嵌された上部半体412とで構成されている。なお、図27中の符号413は伸側油流路,414は孔部,427は圧側油流路,431は弁体,435はピストンロッド,436は車体側部材,437はブラケット,438U及び438Lはゴムブッシュ,439はナット,440はブラケット,441aは回転軸,442は連結杆,443はバンパーラバーである。
【0112】
この減衰力可変ショックアブソーバ400FL〜400RRの減衰力特性は、弁体431とピストン408との間に形成される各オリフィスの開口面積によって設定されるこになり、この弁体431をピストン408に対して相対回転させるステップモータ41FL〜41RRの回転角は、当該オリフィスの絞りによって決定される流動抵抗、すなわち、減衰係数を選択設定するための制御量となり、この減衰係数に前記ピストン速度を乗じた積の形で各弁体位置における減衰力が表される。したがって、後段に詳述するように、本応用例における制御量は厳密には減衰係数であるが、ここからは単に減衰力を制御量と考えていく。
【0113】
図28は、減衰力可変ショックアブソーバ400FL〜400RRの弁本体のポジションに対する減衰力特性を示す説明図である。
前記ステップモータ41FL〜41RRの回転角は、その回転角を位置Pとすると、図28に示すように、伸側の減衰力が最大減衰力となる位置Pが伸側最大位置PTMAXとなり、圧側の減衰力が最大減衰力となる位置Pが圧側最大位置PCMAXとなるが、ここでは便宜上、前記伸側減衰力も圧側減衰力も低減衰力に設定される範囲の中間値に相当する位置Pを“0”とし、伸側減衰力が高くなる方向への位置変化を正とし且つ圧側減衰力が高くなる方向への位置変化を負とすると、前記伸側最大位置PTMAXは正符号で単にPMAX と表され、圧側最大位置PCMAXは負符号で単に(−PMAX)と表される。ただし、これら各最大位置の絶対値|PMAX|は必ずしも同じ値である必要はない。
【0114】
そして、前記負値となる圧側最大位置(−PMAX)から正値となる伸側最大位置PMAXまでの全減衰力制御範囲のうち、位置Pが“0”を挟む正の閾値PT1から負の閾値PC1までの範囲が、伸側低減衰力D/FT0及び圧側低減衰力D/FC0となって、特に低速走行状態の滑らかさを達成するsoft範囲(以下、単にSS範囲とも記す。)となり、これより位置Pが正方向に大きい範囲、すなわち、位置Pが前記正の閾値PT1から正値の伸側最大位置PMAXまでの範囲が、伸側減衰力が高く設定される伸側制御範囲(以下、単にH−S範囲とも記す。)となる。また、soft範囲よりも位置Pが負方向に小さい範囲、すなわち、位置Pが前記負の閾値PC1から負値の圧側最大位置(−PMAX )までの範囲が、圧側減衰力が高く設定される圧側制御範囲(以下、単にS−H範囲とも記す。)となる。
【0115】
なお、図28において、前記位置P“0”と伸側最大位置PMAXとを結ぶ二点鎖線及び前記位置P“0”と圧側最大位置(−PMAX)とを結ぶ二点鎖線については後段に詳述する。また、図28の減衰力特性(減衰係数特性)によれば、この同等の絶対値を有する所定伸側減衰係数と所定圧側減衰係数とを達成する各所定位置値では、所定伸側位置値の絶対値の方が所定圧側位置値の絶対値よりも若干小さい。
【0116】
図29は、コントローラ50が有する機能構成例を示すブロック図である。
前記コントローラ50には、図29に示すように、その入力側に、各車輪位置に対応する車体側に設けられた、上下加速度に応じて上向きで正となり下向きで負となるアナログ電圧でなる上下加速度検出値(以下、単にバネ上上下加速度とも記す。)XFL″〜XRR″を出力する車体上下加速度検出器130FR,130FL,130RR,130RLが接続され、その出力側に、前記各減衰力可変ショックアブソーバ400FL〜400RRの減衰力を制御するステップモータ41FL〜41RRが接続されている。
【0117】
このコントローラ50は、例えば、入力インタフェース回路556a,出力インタフェース回路556b,演算処理装置556c及び記憶装置556dを少なくとも有するマイクロコンピュータ556と、車体上下加速度検出器130FR,130FL,130RR,130RLのバネ上上下加速度XFL″〜XRR″をデジタル値に変換して入力インタフェース回路556aに供給するA/D変換器557FL〜557RRと、出力インタフェース回路556bから出力される各ステップモータ41FL〜41RRに対するステップ制御信号が入力され、これをステップパルスに変換して各ステップモータ41FL〜41RRを駆動するモータ駆動回路559FL〜559RRとを備えている。
【0118】
ここで、マイクロコンピュータ56の演算処理装置556cは、各車体上下加速度検出器130i(i=FL〜RR。本応用例において、以下同様。)から入力される車体のバネ上上下加速度Xi″を積分して車体の上下速度(バネ上上下速度とも記す。)Xi′を算出すると共に、このバネ上上下速度Xi′を基にバネ上挙動比例範囲の上限値XUi′を算出し、この上限値XUi′に基づいて制御不感帯閾値XiO′を算出する。そして、バネ上上下速度Xi′,バネ上挙動比例範囲上限値XUi′,制御不感帯閾値XiO′に基づいて制御位置比例係数Riを算出し、この制御位置比例係数Ri を補正関数で補正して補正比例係数FRiを算出し、この補正比例係数FRiと基本制御最大位置PMAXとに基づいて目標制御位置PTiを算出し、算出した目標制御位置PTiの最大値を制限する制限処理を施す。
【0119】
そして、演算処理装置556cは、制限処理を施した目標制御位置PTiに基づいてステップモータ41iのステップ量Siを算出し、このステップ量Siをモータ駆動回路559iに出力して、各ステップモータ41iを駆動制御すると共に、前記目標制御位置PTiが、前記図28において、伸側から圧側方向へ、又は圧側から伸側方向へ移行する場合、つまり、位置Pがゼロクロスした場合には、ゼロクロスした時点から予め設定した所定時間Tα経過するまでの間は、目標制御位置PTiを“0”位置に保持する。
【0120】
また、記憶装置556dは、前記演算処理装置556cの演算処理に必要なプログラムや制御マップ等を予め記憶していると共に、演算処理過程での必要な値及び演算結果を逐次記憶する。
このような構成の減衰力制御装置を備えることにより、第1実施形態と同様に、路面からの振動を抑制する制御を行うことができる。
なお、本応用例において、減衰力可変ショックアブソーバ400FL〜400RRが減衰力が可変な減衰力制御装置を備えたサスペンションに対応する。
(効果)
減衰力制御装置によってリスクポテンシャルに応じて車両挙動を抑制した状態で、リスクポテンシャルに応じた操作反力を付与するため、運転者に対し、より適切に車両の運転操作のための情報を伝達することができる。
【0121】
(応用例9)
本実施形態において、自動車1Aは、ステアリングホイール5と車輪2FR,2FLとがステアリングコラムで機械的に連結された操舵系統を備えるものとして説明した。
これに対し、本応用例においては、ステアリングホイール5と車輪2FR,2FLとが機械的に分離され、それぞれをアクチュエータによって制御する操舵系統(いわゆるステアバイワイヤ方式の操舵系統)を備える自動車1Aに本発明を適用するものである。
(構成)
図30は、本応用例に係る自動車1Aの全体システム図である。
図30において、本応用例の自動車1Aに備えられる車両用操舵装置は、(1)操舵部、(2)バックアップ装置、(3)転舵部、(4)制御コントローラにより構成されている。
【0122】
(1)操舵部
操舵部は、舵角センサ501、エンコーダ502、トルクセンサ503,503、反力モータ505とを有して構成される。
前記舵角センサ501は、ステアリングホイール506の操作角を検出する手段で、後述するケーブルコラム507とステアリングホイール506とを結合するコラムシャフト508aに設けられている。つまり、舵角センサ501は、ステアリングホイール506とトルクセンサ503,503との間に設置されており、トルクセンサ503,503の捩れによる角度変化の影響を受けることなく、操舵角を検出できるようになっている。この舵角センサ501には、アブソリュート型レゾルバ等を用いる。
【0123】
前記トルクセンサ503,503は二重系を成し、前記舵角センサ501と反力モータ505との間に設置されている。トルクセンサ503,503は、軸方向に延在するトーションバーと、このトーションバーの一端に連結され、このトーションバーと同軸をなす第1軸と、このトーションバーの他端に連結され、このトーションバーおよび第1軸と同軸を成す第2軸とを有している。また、トルクセンサ503,503は、前記第1軸に固定された第1磁性体と、前記第2軸に固定された第2磁性体と、前記第1磁性体および第2磁性体に対面するコイルと、このコイルを包囲し、前記第1磁性体および第2磁性体と共に磁気回路を形成する第3磁性体とを有している。そして、前記コイルはトーションバーに作用する捩れに基づく第1磁性体と第2磁性体との相対変位に対応してインダクタンスが変化し、このインダクタンスに基づく出力信号によりトルクを検出する。
【0124】
前記反力モータ505は、ステアリングホイール506に反力を与える反力アクチュエータであり、前記コラムシャフト508aを回転軸とする1ロータ・1ステータの電動モータで構成されており、そのケーシングが車体の適所に固定されている。この反力モータ505としては、ブラシレスモータが使用され、ブラシレスモータの使用に伴ってエンコーダ502とホールIC(不図示)とを追加する。その場合は、ホールICのみでもモータトルクを発生するモータ駆動は可能であるが、微細なトルク変動が発生し、操舵反力感が低下する。そこで、より繊細で滑らかな反力制御を行うため、コラムシャフト508aの軸上にエンコーダ502を装着し、モータ制御を行うことで、微細なトルク変動を低減し、操舵反力感を向上させている。なお、エンコーダ502の代わりにレゾルバを用いても良い。
【0125】
(2)バックアップ装置
バックアップ装置は、ケーブルコラム507とクラッチ509により構成されている。前記クラッチ509は、コラムシャフト508aとプーリシャフト508bとの間に介装され、ここでは電磁クラッチを用いている。このクラッチ509は、締結されたとき、入力軸であるコラムシャフト508aと出力軸であるプーリシャフト508bとが連結され、ステアリングホイール506に加えられた操舵トルクは、ステアリング機構515に機械的に伝達される。
【0126】
前記ケーブルコラム507は、前記クラッチ509が締結されるバックアップモード時、操舵部と転舵部との間に介在する部材との干渉を避けて迂回しながらも、トルクを伝達するコラムシャフト機能を発揮する機械式バックアップ機構である。ケーブルコラム507は、2つのリールに端部がリールに固定された2本のインナーケーブルを互いに逆方向へ巻き付け、2つのリールケースに2本のインナーケーブルを内挿したアウターチューブの両端を固定することにより構成されている。
【0127】
(3)転舵部
転舵部は、エンコーダ510、舵角センサ511、トルクセンサ512,512、転舵モータ514,514、ステアリング機構515、操向輪516,516とを有して構成される。
前記舵角センサ511とトルクセンサ512,512とは、ケーブルコラム507のプーリが一端に取り付けられ、他端部にピニオンギアが形成されたピニオンシャフト517の軸上に設けられている。舵角センサ511としては、シャフトの回転数を検出するアブソリュート式レゾルバ等が用いられる。また、トルクセンサ512,512としては、上記トルクセンサ503,503 と同様に二重系を成し、インダクタンスの変化によりトルクを検出するものが用いられる。そして、ケーブルコラム507側に舵角センサ511を配置し、ステアリング機構515側にトルクセンサ512,512を配置することで、舵角センサ511による転舵角検出に際してトルクセンサ512,512の捩りによる角度変化の影響を受けないようにしている。
【0128】
前記転舵モータ514,514は、前記ピニオンシャフト517の舵角センサ511とトルクセンサ512,512との中間位置に設けたウォームギアに噛み合うピニオンギアをモータ軸に設けることで、モータ駆動時にピニオンシャフト517に転舵トルクを付与するように構成されている。この転舵モータ514,514は、1ロータ・2ステータ構造とすることにより二重系を成し、第一転舵モータ514と第二転舵モータ514を構成するブラシレスモータとしている。また、上記反力モータ505と同様に、ブラシレスモータの使用に伴ってエンコーダ510とホールIC(不図示)とを追加する。
【0129】
前記ステアリング機構515は、前記ピニオンシャフト517の回転により左右の操向輪516,516を転舵させる舵取り機構であって、ラックチューブ515a内に内挿され、前記ピニオンシャフト517のピニオンギアに噛み合うラックギアが形成されたラックシャフト515bと、この車両左右方向に延びるラックシャフト515bの両端部に結合されたタイロッド515c,515cと、一端が前記タイロッド515c,515cに結合され、他端が操向輪516,516に結合されたナックルアーム515d,515dと、を有して構成されている。
【0130】
(4)制御コントローラ
制御コントローラは、2つの電源518,518により処理演算等を行う2つの制御コントローラ519,519により二重系が構成されている。
前記制御コントローラ519は、操舵部の舵角センサ501、エンコーダ502、トルクセンサ503,503、ホールICと、転舵部のエンコーダ510、舵角センサ511、トルクセンサ512,512、ホールIC、車速センサ520からの検出値が入力される。
制御コントローラ519は、各センサの検出値に基づいて、反力モータ505および転舵モータ514の制御量を設定し、各モータ504,514を駆動制御する。また、制御コントローラ519は、システムが正常に作動している間は、クラッチ509を解放し、システムに異常が発生した場合には、クラッチ509を締結させ、ステアリングホイール506と操向輪516,516を機械的に連結させる。
【0131】
(動作)
[反力モータの制御量設定]
制御コントローラ519において、反力モータ505の制御量Thは、次式(6)に基づいて設定される。
Th=Kp×θ+Kd×dθ/d t+Kd d×d2θ/dt2+Dd×Kf×F (6)
ここで、θは操舵角、Kpは操舵角ゲイン、Kdは操舵角速度ゲイン、Kddは操舵角加速度ゲイン、Ddは路面反力係数、Kfは路面反力ゲイン、Fは路面反力値である。
式(6)において、右辺第1項、第2項および第3項では、操舵角θに基づく操舵反力の制御量が設定され、右辺第4項では、路面反力Fに基づく制御量が設定されるため、路面からタイヤに作用する力の影響を操舵反力トルクに反映させることができる。なお、操舵角加速度d2θ/dt2および操舵角速度dθ/dtは、舵角センサ501の検出値から算出する。
【0132】
このようなステアバイワイヤ方式の操舵系統を備える自動車1Aにおいて、通常の走行における操舵反力および転舵の制御を行い、さらに、本発明の制御を実行する。
即ち、リスクポテンシャルRPに応じて、第1実施形態における情報伝達制御の基準値α0に代えて、上記(6)式におけるパラメータDdを変化させる。
図31は、リスクポテンシャルRPとパラメータDdとの関係を示す図である。
本応用例においては、図31の関係に従って、パラメータDdを変化させ、路面からの振動を抑制する度合いを変化させる。また、このような車両上下方向の制御を行いつつ、リスクポテンシャルRPに応じて、車両前後方向および車両左右方向における操作反力の制御を行う。
これにより、自車両周囲の障害物状況に応じて車両上下方向のノイズを低減しつつ、車両前後および左右方向について、障害物に関する情報を伝達することができる。
【0133】
(応用例10)
本実施形態において、路面からの振動を抑制する度合いを制御するために、能動型サスペンションを用いるものとして説明した。
これに対し、本応用例においては、運転席シートと車体との間に能動型の振動抑制機構を設置したサスペンションシートを備えることとし、この振動抑制機構における振動の抑制度合いを、リスクポテンシャルに応じて変化させる。
図32は、サスペンションシート601の概略構成図である。
また、図32(a)は、シートの支持構造の拡大側面図、図32(b)は、シートの支持構造の平面図である。
【0134】
図32,33において、サスペンションシート601は、シートクッション603とリクライニング可能なシートバック605とで構成されている。前記サスペンションシート601は昇降リンク607を介して車体フロア608に対し、昇降可能に支持されている。この昇降リンク607は、シート601の車幅方向左右に一対備えられているもので、連結ピン610で連結されX状に配置された第1レバー611と第2レバー613とで構成されている。
【0135】
前記第1レバー611のサスペンションシート601前後方向後端は、第1支持部材615を介してサスペンションシート601側に回転自在に支持されている。第1支持部材615は、サスペンションシート601のシートクッションフレーム616に固定されたベースプレート617に固定されているものである。第1レバー611のサスペンションシート601前後方向前端は、第2支持部材619を介して車体フロア608に取付けられた取付プレート609に支持されている。この第2支持部材619は第1レバー611前端のローラ611aをサスペンションシート601前後方向へ移動可能に支持するよう構成されている。前記第2レバー613は、サスペンションシート601前後方向後端が取付プレート609に固定された第3支持部材621を介して取付プレート609に回転自在に支持され、同前端のローラ613aは第4支持部材623を介してサスペンションシート601側のベースプレート617に支持されている。この第4支持部材623は第2支持部材619と同様に第2レバー613前端のローラ613aをサスペンションシート601前後方向に移動可能にするよう構成されている。
【0136】
こうして支持されたサスペンションシート601側と車体フロア608側との間にはサスペンションシート601に下降荷重が作用した時、この荷重に対抗する弾性体たるスプリング625が介設されている。スプリング625はコイルスプリングで構成され、ベースフレート617上にほぼ水平に配置されている。このスプリング625の後端は第1レバー617の後端における第1ブラケット626間のピン627に取付けられている。第1ブラケット626は第1レバー611の後端間にて第1レバー611の回転軸心に対し偏心して固定されたロッド628に固着されたものである。スプリング625の前端は双腕レバー629の両端に連結されている。双腕レバー629の中央には第1連動リンク631が枢支され第1連動リンク631は第2連動リンク632に枢支されている。第2連動リンク632はその中間部がベースプレート617に取付けられた固定リンク648に枢支され、第2連動リンク632の他端に形成された長孔632aが移動体633のピン633aに嵌合している。移動体633はサスペンションシート601幅方向に延設された双方向ねじ634に螺合されている。双方向ねじ634は両端がベースプレート617に固定された軸受635に支持され、中間部が減速機636a,636bを介し、ベースプレート617に固定された駆動モータ637に連動構成されている。なお、駆動モータ637は、コントローラ50によってシートの上下位置を調整するための指令が入力されることにより駆動される。
【0137】
一方、前記サスペンションシート601側と車体フロア608側との間にはサスペンションシート601の振動を減衰する減衰力可変のショックアブソーバ638が介設されている。前記ショックアブソーバ638はサスペンションシート601の前部にてサスペンションシート601の幅方向に配置され、ピストンロッド639が第1回動リンク640に相対回転自在に支持されていると共に、この第1回動リンク640は第2回動リンク641に回転自在に連結されている。そして第2回動リンク641はベースプレート617の先端に立設された立設ブラケット642に回転自在に支持されている。また、ショックアブソーバ638のストラットチューブ649は端部に固定された連結ボス644を介し、取付プレート609に固定された第3ブラケット645に回動自在に支持されている。第3ブラケット645は、取付プレート609にビス止めされた取付片646に固定されている。
【0138】
そして前記ショックアブソーバ638は、駆動装置647により減衰力を変化させることが可能に構成されている。コントローラ50は、駆動装置647に対する駆動指令値をリスクポテンシャルRPに応じて変化させることにより、ショックアブソーバ638の減衰力を制御している。
例えば、コントローラ50は、第1実施形態の図7に示す場合と同様に、リスクポテンシャルRPが閾値RP0より大きくなると、リスクポテンシャルRPの増加に伴って、路面からの振動の軽減割合を増加させるように駆動装置647に対する指令値を設定する。また、コントローラ50は、リスクポテンシャルRPがさらに増加した場合、路面からの振動の軽減割合が上限値で飽和するように駆動装置647に対する駆動指令値を設定する。
【0139】
このような構成により、第1実施形態における能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLと同様に、サスペンションシート601によって、運転者に伝達される振動の抑制度合いをリスクポテンシャルRPに対応して変化させることができる。
なお、本応用例において、サスペンションシート601が動作制御手段に対応する。
【0140】
(効果)
情報伝達制御手段が、運転者に入力される上下方向の振動を、リスクポテンシャルの大きさに応じて抑制し、操作反力付与手段が、リスクポテンシャルの大きさに応じて、運転操作手段における操作反力を付与する。
したがって、リスクポテンシャルに応じて運転者に入力される上下方向の振動を抑制した状態で、リスクポテンシャルに応じた操作反力および操舵反力を付与するため、運転者に対し、より適切に車両の運転操作のための情報を伝達することができる。
【0141】
(応用例11)
第1実施形態において、自動車1Aは能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLを備え、これらのサスペンションストロークを変化させて、リスクポテンシャルに応じた車体3の傾斜を付与することとした。
これに対し、異なる構成のサスペンションを用いることで、同様の制御を行ったり、運転者の操作を誘導するための異なる制御を行ったりすることができる。
例えば、インホイールモータを備える前後左右の車輪2FR,2FL,2RR,2RLそれぞれと車体3とが複数(ここでは6本)の直動型アクチュエータを介して連結された構造のサスペンションを用いることができる。
【0142】
図34は、応用例11のサスペンション構造を示す図である。
なお、本応用例1のサスペンション構造は、前後左右の駆動輪それぞれにおいて同様であるため、左前輪部分を例に挙げて説明する。
図34において、応用例1のサスペンション構造は、車体3に固定された6角形のアクチュエータ支持板1Bと、アクチュエータ支持板1Bの各頂点にボールジョイントを介してシリンダを連結されると共に、インホイールモータMにおいてアクチュエータ支持板1Bの各頂点と対向する位置に、駆動ロッドの先端をボールジョイントを介して連結されたアクチュエータ101FL〜106FLとを有する構成である。
【0143】
これら6本のアクチュエータ101FL〜106FLはパラレルメカニズムを構成しており、アクチュエータ101FL〜106FLを連動させて制御することにより、それによって支持されているホイールインモータMと駆動輪2FLを3次元的に動かすことが可能になる。
アクチュエータ支持板1Bは、車体3において鉛直からやや下方を向いた取り付け面に取り付けてある。そのため、複数の直動型アクチュエータの総合的な伸縮軸は、路面に平行な方向からやや下方に向いている。
【0144】
そのため、これら複数のアクチュエータにおける駆動ロッドの伸縮を制御することで、車体3の前部あるいは後部を上昇あるいは下降させたり、各駆動輪の転舵角、キャンバ角、トー角および車体3との距離を調整したりすることが可能である。
したがって、応用例1のサスペンション構造を用いた場合にも、図10の運転操作誘導処理を実行することができる。
また、応用例1のサスペンション構造では、4輪に対する車体3の相対的な向きを変更することができる。
そのため、車輪2FR,2FL,2RR,2RLの向きは変化させないまま、車体3の向きを変化させて、運転者の操作を促すことができる。
【0145】
具体的には、右方リスクポテンシャルRPcが閾値RPc0以上である場合に、車輪2FR,2FL,2RR,2RLの向きは変化させずに、車輪2FR,2FL,2RR,2RLに対して車体3を右方に回頭させる。
すると、運転者に対して、自車両が右方に向かっていると言う感覚を与えることができる。
そして、運転者が左方向に操舵を行うと、右方リスクポテンシャルRPcが減少する。
したがって、第1実施形態の誘導形態に加えて、他の形態で運転者に対する運転操作の誘導を行うことができる。
【0146】
(応用例12)
第1実施形態において、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLによって、車体3の挙動を制御するものとして説明したが、運転席シートの制御を行うことによっても、運転者の運転操作を誘導することができる。
即ち、応用例12の自動車1Aは、運転席シートの複数(例えば4本)の脚に、シートレッグ長を変化させることが可能なアクチュエータを備える。
そして、これらのアクチュエータによってシートレッグ長をそれぞれ変化させ、運転席シートを車体3に対して前傾あるいは後傾させたり、運転席シートを車体3に対して右あるいは左に傾けたりする。
【0147】
これにより、第1実施形態と同様に、運転者に減速あるいは加速しているような感覚、右旋回あるいは左旋回しているような感覚を与えることができ、運転者の運転操作を誘導することが可能となる。
また、このような運転席シートの構成を備えることにより、実際の車両挙動によって、車体が前傾あるいは後傾したり、左右にロールしたりする場合に、それらと反対方向に運転席シートを傾ける制御を行うことができる。
これにより、運転者は操舵操作を行いやすくなり、運転者の操舵操作を補助することができる。
【0148】
(応用例13)
応用例12における運転席シートの傾斜制御と、第1実施形態における車体3の傾斜制御とを組み合わせて実行することができる。
即ち、運転者の前方注視点を自車両に近づけると、同一の車速でも運転者はより速度が高いと感じる。
そのため、これを利用して、運転者に減速操作を促す場合に、車体3を後傾させ、運転席シートを前傾させる。
このような制御を行うことで、運転者に対し、車体3から加速感を与え、運転席シートから高速感を与えることができるため、運転操作の誘導効果(減速操作の促進効果)を高めることができる。
【0149】
(応用例14)
リスクポテンシャルが高まっていることを運転者に伝え、運転操作を促すために、車載スピーカから発する音を用いることも可能である。
例えば、自車両の後方スピーカから他車両の走行音を出力し、後方から車両が近づいている感覚を運転者に与えることができる。
(応用例15)
第1実施形態においては、車両左右方向について、左右方向のリスクポテンシャルRPc,RPdを算出し、それに応じて、能動型サスペンションのサスペンションストローク(ロール傾斜角)を変化させると共に、操舵反力を増加させる場合を例に挙げて説明した。
【0150】
これに対し、本応用例では、車両左右方向のリスクポテンシャルに応じて、操舵反力、および能動型サスペンションのサスペンションストローク(ロール傾斜角)を変化させる際、操舵反力を付与するリスクポテンシャルの閾値、およびロール傾斜角を付与するリスクポテンシャルの閾値を、それぞれ個別に設定する。また、操舵反力の付与、および能動型サスペンションのサスペンションストロークの変化を中断するリスクポテンシャルの閾値を設定する。
【0151】
図35は、本応用例において、コントローラ50が実行する運転操作誘導処理を示すフローチャートである。また、図36〜39は、図35に示す運転操作誘導処理において実行される第1〜第4のサブフローを示す図である。
図35において、運転操作誘導処理を開始すると、コントローラ50は、リスクポテンシャル算出処理において算出した前後および左右方向のリスクポテンシャルRPa,RPb,RPc,RPdを取得する(ステップT10)。
【0152】
次に、コントローラ50は、ステップT1において取得した前方リスクポテンシャルRPaに応じて、運転操作誘導処理の第1のサブフローを実行する(ステップT20)。
ステップT20において、コントローラ50は、例えば、図36に示すように、まず、前方リスクポテンシャルRPaが閾値RPa0以上であるか否かの判定を行う(ステップT21)。ステップT21において、前方リスクポテンシャルRPaが閾値RPa0以上であると判定した場合、コントローラ50は、第1実施形態と同様に、アクセルペダル反力を前方リスクポテンシャルRPaに応じて増加させる(ステップT22)。また、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4FLのサスペンションストロークを前方リスクポテンシャルRPaに応じて変化させる(ステップT23)。ステップS203の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理に戻る。一方、ステップT21において、前方リスクポテンシャルRPaが閾値RPa未満であると判定した場合、コントローラ50は、運転操作誘導処理に戻る。
【0153】
また、コントローラ50は、ステップT10において取得した後方リスクポテンシャルRPbに応じて、運転操作誘導処理の第2のサブフローを実行する(ステップT30)。
ステップT30において、コントローラ50は、例えば、図37に示すように、まず、後方リスクポテンシャルRPbが閾値RPb0以上であるか否かの判定を行う(ステップT31)。ステップT31において、後方リスクポテンシャルRPbが閾値RPb0以上であると判定した場合コントローラ50は、第1実施形態と同様に、能動型サスペンション4RR,4RLのサスペンションストロークを後方リスクポテンシャルRPbに応じて変化させる(ステップT32)。ステップT32の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理に戻る。一方、ステップT31において、後方リスクポテンシャルRPbが閾値RPb0未満であると判定した場合、コントローラ50は、運転操作誘導処理に戻る。
【0154】
また、コントローラ50は、ステップT10において取得した右方リスクポテンシャルRPcに応じて、運転操作誘導処理の第3のサブフローを実行する(ステップT40)。
ステップT40において、コントローラ50は、例えば、図38に示すように、まず、右方リスクポテンシャルRPcが第1の閾値RPc0以上であるか否かの判定を行う(ステップT41)。ステップT41において、右方リスクポテンシャルRPcが第1の閾値RPc0以上であると判定した場合、コントローラ50は、右方リスクポテンシャルRPcが第3の閾値RPc2以下であるか否かの判定を行う(ステップT42)。ステップT42において、右方リスクポテンシャルRPcが第3の閾値RPc2未満であると判定した場合、コントローラ50は、右方リスクポテンシャルRPcに応じて、操舵反力を増加させる(ステップT43)。
【0155】
ここで、本応用例では、例えば、図40に示すように、操舵反力を発生させる第1の閾値RPc0と、サスペンションストロークを変化させる第2の閾値RPc1を、それぞれ個別に設定する。
これにより、ステップT43に続いて、コントローラ50は、右方リスクポテンシャルRPcが第2の閾値RPc1以上であるか否かの判定を行い(ステップT44)、右方リスクポテンシャルRPcが比較的小さい場合、即ち、右方リスクポテンシャルRPcが第2の閾値RPc1未満である場合においては、操舵反力のみを発生させる。
【0156】
一方、ステップT44において、右方リスクポテンシャルRPcが比較的大きい第2の閾値RPc1以上の場合、即ち、右方リスクポテンシャルRPcが第2の閾値以上である場合においては、操舵反力に加えてロール傾斜角を発生させる(ステップT45)。
これにより、右方リスクポテンシャルの増加を、違和感なく、よりわかり易く運転者に伝えることができ、より適切に車両の運転操作の支援を行うことができる。
【0157】
また、このように、操舵反力、およびサスペンションストロークを変化させる右方リスクポテンシャルについて上限値(第3の閾値RPc2)を設定することにより、路面に設置されたレーンマーカー等、接触しない対象物であると推定される、右方向のリスクポテンシャルに対しては、運転操作誘導処理の実行に制限を設け、運転者の操作性(オーバーライド性)を確保すると共に、レーンマーカーを乗り越えるように違和感なくリスクポテンシャルの増加を感じさせることができる。そのため、より適切に車両の運転操作の支援を行うことができる。
【0158】
ステップT41において、右方リスクポテンシャルRPcが第1の閾値RPc未満であると判定した場合、および、ステップT42において、右方リスクポテンシャルRPcが第3の閾値以上であると判定した場合、コントローラ50は、運転操作誘導処理に戻る。また、ステップT44において、右方リスクポテンシャルRPcが第2の閾値未満であると判定した場合、および、ステップT45の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理に戻る。
【0159】
また、コントローラ50は、ステップT10において取得した左方リスクポテンシャルRPdに応じて、運転操作誘導処理の第4のサブフローを実行する(ステップT50)。
ステップT50において、コントローラ50は、例えば、図39に示すように、まず、左方リスクポテンシャルRPdが第1の閾値RPd0以上であるか否かの判定を行う(ステップT51)。ステップT51において、左方リスクポテンシャルRPdが第1の閾値RPd0以上であると判定した場合、コントローラ50は、左方リスクポテンシャルRPdが第3の閾値RPd2以下であるか否かの判定を行う(ステップT52)。ステップT52において、左方リスクポテンシャルRPdが第3の閾値RPd2未満であると判定した場合、コントローラ50は、左方リスクポテンシャルRPdに応じて、操舵反力を増加させる(ステップT53)。
【0160】
ここで、本応用例では、右方リスクポテンシャルRPcにおける場合と同様、操舵反力を発生させる第1の閾値RPd0と、サスペンションストロークを変化させる第2の閾値RPd1を、それぞれ個別に設定する。
これにより、ステップT53に続いて、コントローラ50は、左方リスクポテンシャルRPdが第2の閾値RPd1以上であるか否かの判定を行い(ステップT54)、左方リスクポテンシャルRPdが比較的小さい場合、即ち、左方リスクポテンシャルRPdが第2の閾値RPd1未満である場合においては、操舵反力のみを発生させる。
【0161】
一方、ステップT54において、左方リスクポテンシャルRPdが比較的大きい第2の閾値RPd1以上の場合、即ち、左方リスクポテンシャルRPdが第2の閾値RPd1以上である場合においては、操舵反力に加えてロール傾斜角を発生させる(ステップT55)。
これにより、左方リスクポテンシャルの増加を、違和感なく、よりわかり易く運転者に伝えることができ、より適切に車両の運転操作の支援を行うことができる。
【0162】
また、このように、操舵反力、およびサスペンションストロークを変化させる左方リスクポテンシャルについて上限値(第3の閾値RPd2)を設定することにより、路面に設置されたレーンマーカー等、接触しない対象物であると推定される、左方向のリスクポテンシャルに対しては、運転操作誘導処理の実行に制限を設け、運転者の操作性(オーバーライド性)を確保すると共に、レーンマーカーを乗り越えるように違和感なくリスクポテンシャルの増加を感じさせることができる。そのため、より適切に車両の運転操作の支援を行うことができる。
【0163】
ステップT51において、左方リスクポテンシャルRPdが第1の閾値RPc未満であると判定した場合、および、ステップT52において、左方リスクポテンシャルRPdが第3の閾値以上であると判定した場合、コントローラ50は、運転操作誘導処理に戻る。また、ステップT54において、左方リスクポテンシャルRPdが第2の閾値未満であると判定した場合、および、ステップT55の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理に戻る。
なお、本応用例において、第1の閾値RPc0あるいはRPd0が特許請求の範囲における第2の閾値に対応し、第2の閾値RPc1あるいはRPd1が特許請求の範囲における第3の閾値に対応する。
【0164】
(効果)
操舵反力を付与するための左右方向のリスクポテンシャルの閾値と、擬似的な車両挙動を発生させるための左右方向のリスクポテンシャルの閾値とを個別に設定することとしたため、車両の走行状態に応じて、操舵反力と擬似的な車両挙動とを適確なタイミングで発生させることができる。そのため、より適切に車両の運転操作の支援を行うことができる。
【0165】
(応用例16)
第1実施形態においては、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLによって、擬似的な車両の挙動を示す場合を例に挙げて説明した。
これに対し、本応用例においては、異なる構成のサスペンションを用いて、左右方向のリスクポテンシャルに応じた擬似的な車両挙動を示すものである。
具体的には、動作制御手段として、スタビライザリンク長を可変なスタビライザを備えるサスペンションを用い、スタビライザリンク長を制御することにより、運転者の運転操作を誘導するものである。例えば、スタビライザとサスペンションロアアームを連結するスタビライザリンクに、リンク長を変化させることのできる油圧シリンダを設置し、これを伸縮させてロール傾斜角を制御することにより、車体3の傾斜を付与する。
【0166】
図41は、本応用例のサスペンション構造を示す図である。なお、図41は、車両後方から見たサスペンション構造を示している。
図41において、アクチュエータ803は、中央部分が車体3に固定されたスタビライザ801に連結され、サスペンションロアアーム802との間のリンク長を伸縮することが可能である。そして、左右のアクチュエータ803におけるアクチュエータストローク長の左右差で、自動車1Aのロール傾斜角を制御する。
【0167】
なお、アクチュエータ803は、自動車1Aの前軸および後軸それぞれに取り付けられており、合計4つのアクチュエータ(以下、適宜、前右:803FR、前左:803FL、後右:803RR、後左:803RLと称する。)から構成されている。
図42は、右方リスクポテンシャルRPcが高い場合に付与されるスタビライザリンク長の特性を示す図であり、図42(a)は、第1の特性例を示し、図42(b)は、第2の特性例を示している。
【0168】
右方リスクポテンシャルRPcが閾値RPc0以上の場合、例えば、図42(a)の第1の特性例として示すように、右側スタビライザリンク長を中立位置から右方リスクポテンシャルRPcに応じて大きくする。
これにより、ロール傾斜角(左ロール)が発生し、運転者に対して、右方のリスクポテンシャルが高まっていることを報知することができ、左方向への操舵操作を促すことができる。
【0169】
また、右方リスクポテンシャルRPcが閾値RPc0以上の場合、図42(b)の第2の特性例として示すように、右側スタビライザリンク長を大きくするのと併せ、左側スタビライザリンク長を中立位置から右方リスクポテンシャルRPcに応じて小さくすることにより、アクチュエータの変化幅を小さくしつつ、ロール傾斜角を効果的に発生させることもできる。
なお、本サスペンション構造を、後述する第2実施形態に適用し、左右リスクポテンシャルに応じた振動を発生させることも可能である。
このようなサスペンション構造の場合にも、現在の操作状態から、リスクポテンシャルが減少する方向への運転者による自発的な操作を促すことができ、運転者に対し、より適切に車両の運転操作の支援を行うことができる。
【0170】
(効果)
擬似車両挙動発生手段が、車両状態検出手段の検出結果およびリスクポテンシャルに基づいて、リスクポテンシャルが増大する運転操作を行った場合の車両挙動を、スタビライザリンク長を制御することによって擬似的に発生させる。
そのため、現在の操作状態から、リスクポテンシャルが減少する方向への運転者による自発的な操作を促すことができる。
したがって、運転者にリスクポテンシャルが増大しているような感覚を与え、それを抑制する運転操作を誘導することができるため、運転者に対し、より適切に車両の運転操作の支援を行うことができる。
【0171】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
本実施形態では、第1実施形態における情報伝達制御処理の基準値α0を車両の安定度に応じて補正する。
そのため、第1実施形態と異なる部分である情報伝達制御処理について説明する。
図43は、第2実施形態における情報伝達制御処理を示すフローチャートである。
コントローラ50は、運転者の指示入力に応じて情報伝達制御処理の実行を開始する。
【0172】
図43において、情報伝達制御処理を開始すると、コントローラ50は、リスクポテンシャル算出処理において算出したリスクポテンシャルRPが、リスクポテンシャルについて設定された閾値RP0より大きいか否かの判定を行う(ステップS401)。
ステップS401において、リスクポテンシャルRPが閾値RP0より大きいと判定した場合、コントローラ50は、情報伝達制御の基準値α0を算出する(ステップS402)。
このとき、コントローラ50は、第1実施形態の場合と同様に、図9に示す関係を基に、情報伝達制御の基準値α0を算出する。
ステップS402に続き、コントローラ50は、自車両の安定度を基に、情報伝達制御の基準値α0を補正する補正ゲインKαを算出する(ステップS403)。
【0173】
図44は、自動車1Aの安定度と補正ゲインKαとの関係を示す図である。
図44において、補正ゲインKαは、自動車1Aの安定度が低下するほど、基準値α0をより大きくするように補正するものとなっている。
また、図45(a)〜図45(c)は、車両の状態と安定度との関係を示す図である。即ち、図45(a)は車速と車両の安定度(車速依存分)を示す図、図45(b)は加減速度の大きさと車両の安定度(加減速度依存分)を示す図、図45(c)は横加速度(横G)の大きさと車両の安定度(横G依存分)との関係を示す図である。
【0174】
図45(a)〜図45(c)において、車速、加減速度の大きさおよび横Gの大きさが第1の閾値を超えると、これらの値が増加するにつれて、安定度が増大している。そして、安定度は、最大値1で飽和する。
ここで、安定度は最大値1で不安定な状態、最小値0で安定な状態と定義している。
図45(a)〜図45(c)に示す図において、車速、加減速度の大きさおよび横Gの大きさそれぞれについての安定度(ST_v,ST_xg,ST_yg)を取得し、これらを乗算することにより、総合的な安定度ST(=ST_v×ST_xg×ST_yg)を取得する。
【0175】
ステップS403に続き、コントローラ50は補正ゲインKαによって情報伝達の基準値α0を補正する(ステップS404)。
具体的には、コントローラ50は、ステップS304において、α0’=Kα・α0の演算を行い、算出したα0’を新たな情報伝達の基準値とする。
また、ステップS401において、リスクポテンシャルRPが閾値RP0以下であると判定した場合、コントローラ50は、情報伝達制御の基準値α0’を0に設定(α0’=0)する(ステップS405)。
【0176】
ステップS404およびステップS405の後、コントローラ50は、運転者が実行の停止を指示入力するまで、情報伝達制御処理を繰り返す。
ステップS404およびステップS405において算出した情報伝達制御の基準値α0’は、自動車1Aにおいて通常行っている能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLの制御に対し、付加的な制御を行う度合いを示すパラメータとしてコントローラ50が用いるものである。
【0177】
本実施形態において、情報伝達制御処理が実行されていない状態では、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLによって路面からの振動を一定の割合で軽減(例えば路面からの入力のうち70%を軽減)する制御を行っている。
情報伝達制御処理を実行することにより、コントローラ50は、情報伝達制御処理を実行していない場合における振動の軽減割合を変更し、情報伝達制御の基準値α0’に対応する振動の軽減割合に能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLを制御する。
【0178】
具体的には、コントローラ50は、情報伝達制御の基準値α0’の値が大きいほど、路面からの振動を打ち消す度合いを高くし、情報伝達制御の基準値α0’の値が小さいほど、路面からの振動を打ち消すことなく、運転者に伝えるように制御する。
また、情報伝達制御の基準値α0は、リスクポテンシャルRPの増加に伴って増加する傾向に設定している。
【0179】
そのため、本実施形態における自動車1Aは、リスクポテンシャルRPの増加に応じて、路面からの振動をより強く打ち消す制御を行う。
さらに、本実施形態における自動車1Aは、自車両の安定度に応じて、情報伝達制御の基準値α0を補正ゲインKαによって補正する。
具体的には、自車両の安定度が低下するほど、補正ゲインKαを大きくし、情報伝達制御の基準値α0に対して、より大きな基準値α0’を算出する。
【0180】
そのため、自車両周囲に、運転を行う上で高い注意を払う必要がある障害物が存在する場合に、自車両の安定度が低いほど、路面から入力される振動をより強く打ち消すことができ、運転操作支援のために付与される操舵操作の反力等、運転者が運転を行う際に有用な情報を選択して伝達することができる。
このようにして算出した基準値α0’を基に、自動車1Aは、車両上下方向の制御を行いつつ、第1実施形態と同様に車両前後方向および車両左右方向の運転操作補助処理を実行する。
【0181】
以上のように、本実施形態に係る自動車1Aは、自車両周囲の障害物状況に応じて算出したリスクポテンシャルに基づいて、リスクポテンシャルが大きいほど、路面からの振動を軽減して、車両前後および左右方向の操作の反力を付与する制御を行う。
また、このとき、自車両の安定度が低いほど、情報伝達制御の基準値α0を補正する補正ゲインKαを大きくし、路面から入力される振動を打ち消す度合いを高める。
【0182】
そのため、自動車1Aにおいては、自車両周囲の障害物状況および自車両の安定度に応じて車両上下方向のノイズを低減しつつ、車両前後および左右方向について、障害物に関する情報を伝達することができる。
したがって、運転者に対し、より適切に車両の運転操作のための情報を伝達することが可能となる。
なお、本実施形態において、車速センサ30、車両状態検出器140およびコントローラ50が安定状態検出手段に対応する。
【0183】
(第2実施形態の効果)
(1)自車両の安定状態に応じて、車両挙動を抑制する度合いを変化させるため、自車両の安定状態に応じたより適切な車両挙動の伝達制御を行うことができる。
(2)自車両の安定状態が不安定であるほど、車両挙動を抑制する度合いを大きくするため、リスクポテンシャルが高い状態において、リスクポテンシャルを低下させるための運転操作支援に関する情報を効果的に伝達することができる。
【0184】
(応用例1)
本実施形態において、図45を参照し、ST=ST_v×ST_xg×ST_ygとして車両の安定度STを求める場合について説明したが、車両の安定度STは、車速、加減速度の大きさ、横Gの大きさを重み付け加算し、加算結果を基に算出することができる。
具体的には、安定度ST=min(1、Kv×車速+Kxg×|加減速度|+Kyg×|横G|)として求めることができる。
この場合、車速、加減速度の大きさ、横Gの大きさそれぞれの影響をより適切に考慮して、安定度を算出することができる。
【0185】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
本実施形態では、第1実施形態における情報伝達制御の基準値α0を車両の安定度に応じて補正する。
ただし、第2実施形態の場合とは反対に、自車両の安定度が低下するほど、情報伝達制御の基準値α0を補正する補正ゲインを小さくし、運転者に路面の状況をより直接的に伝達する。
【0186】
そのため、第1実施形態と異なる部分である情報伝達制御処理について説明する。
図46は、第3実施形態における情報伝達制御処理を示すフローチャートである。
コントローラ50は、運転者の指示入力に応じて情報伝達制御処理の実行を開始する。
図46において、情報伝達制御処理を開始すると、コントローラ50は、リスクポテンシャル算出処理において算出したリスクポテンシャルRPが、リスクポテンシャルについて設定された閾値RP0より大きいか否かの判定を行う(ステップS501)。
【0187】
ステップS501において、リスクポテンシャルRPが閾値RP0より大きいと判定した場合、コントローラ50は、情報伝達制御の基準値α0を算出する(ステップS502)。
このとき、コントローラ50は、第1実施形態の場合と同様に、図9に示す関係を基に、情報伝達制御の基準値α0を算出する。
ステップS502に続き、コントローラ50は、第2実施形態と同様に、自車両の安定度を基に、情報伝達制御の基準値α0を補正する補正ゲインKα’を算出する(ステップS503)。
【0188】
図47は、自動車1Aの安定度と補正ゲインKα’との関係を示す図である。
図47において、補正ゲインKα’は、自動車1Aの安定度が低下するほど、基準値α0をより小さくするように補正するものとなっている。
ステップS503に続き、コントローラ50は補正ゲインKα’によって情報伝達の基準値α0を補正する(ステップS504)。
具体的には、コントローラ50は、ステップS404において、α0”=Kα’・α0の演算を行い、算出したα0”を新たな情報伝達の基準値とする。
また、ステップS501において、リスクポテンシャルRPが閾値RP0以下であると判定した場合、コントローラ50は、情報伝達制御の基準値α0”を0に設定(α0”=0)する(ステップS505)。
【0189】
ステップS504およびステップS505の後、コントローラ50は、運転者が実行の停止を指示入力するまで、情報伝達制御処理を繰り返す。
ステップS504およびステップS505において算出した情報伝達制御の基準値α0”は、自動車1Aにおいて通常行っている能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLの制御に対し、付加的な制御を行う度合いを示すパラメータとしてコントローラ50が用いるものである。
【0190】
本実施形態において、情報伝達制御処理が実行されていない状態では、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLによって路面からの振動を一定の割合で軽減(例えば路面からの入力のうち70%を軽減)する制御を行っている。
情報伝達制御処理を実行することにより、コントローラ50は、情報伝達制御処理を実行していない場合における振動の軽減割合を変更し、情報伝達制御の基準値α0”に対応する振動の軽減割合に能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLを制御する。
【0191】
具体的には、コントローラ50は、情報伝達制御の基準値α0”の値が大きいほど、路面からの振動を打ち消す度合いを高くし、情報伝達制御の基準値α0”の値が小さいほど、路面からの振動を打ち消すことなく、運転者に伝えるように制御する。
また、情報伝達制御の基準値α0は、リスクポテンシャルRPの増加に伴って増加する傾向に設定している。
【0192】
そのため、本実施形態における自動車1Aは、リスクポテンシャルRPの増加に応じて、路面からの振動をより強く打ち消す制御を行う。
さらに、本実施形態における自動車1Aは、自車両の安定度に応じて、情報伝達制御の基準値α0を補正ゲインKα’によって補正する。
具体的には、自車両の安定度が低下するほど、補正ゲインKα’を小さくし、情報伝達制御の基準値α0に対して、より小さな基準値α0”を算出する。
【0193】
そのため、自車両周囲に、運転を行う上で高い注意を払う必要がある障害物が存在する場合に、自車両の安定度が高いほど、路面から入力される振動をより強く打ち消すことができ、運転操作支援のために付与される操舵操作の反力等、運転者が運転を行う際に有用な情報を選択して伝達することができる。
このようにして算出した基準値α0”を基に、自動車1Aは、車両上下方向の制御を行いつつ、第1実施形態と同様に車両前後方向および車両左右方向の運転操作補助処理を実行する。
【0194】
以上のように、本実施形態に係る自動車1Aは、自車両周囲の障害物状況に応じて算出したリスクポテンシャルに基づいて、リスクポテンシャルが大きいほど、路面からの振動を軽減して、車両前後および左右方向の操作の反力を付与する制御を行う。
また、このとき、自車両の安定度が高いほど、情報伝達制御の基準値α0を補正する補正ゲインKα’を大きくし、路面から入力される振動を打ち消す度合いを低下させる。
【0195】
そのため、自動車1Aにおいては、自車両周囲の障害物状況および自車両の安定度に応じて車両上下方向のノイズを低減しつつ、車両前後および左右方向について、障害物に関する情報を伝達することができる。
したがって、運転者に対し、より適切に車両の運転操作のための情報を伝達することが可能となる。
このような制御形態は、自車両の安定度が低下したとしても、運転者自らが適切な操作を行える場合に有効である。そのため、熟練した運転者にとって、自車両が安定でない状態における情報伝達を適切に行うことができる制御パターンとなる。
【0196】
(第3実施形態の効果)
(1)自車両の安定状態が不安定であるほど、車両挙動を抑制する度合いを小さくするため、リスクポテンシャルが高い状態において、走行路面に関する情報を効果的に伝達することができる。
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。
本実施形態では、第1実施形態と同様の構成を有する自動車1Aにおいて、コントローラ50の制御則を異なるものとしている。
したがって、以下、コントローラ50における処理について説明する。
【0197】
(車両状態伝達量決定処理)
図48は、コントローラ50が実行する車両状態伝達量決定処理を示すフローチャートである。
コントローラ50は、運転者によって車両状態伝達量決定処理の実行が指示入力されることに対応して車両状態伝達量決定処理を開始する。
図48において、車両状態伝達量決定処理を開始すると、コントローラ50は、自車両の走行状態に関する情報を取得する(ステップS600)。
ステップS600においては、コントローラ50は、運転者の操作量(アクセル操作量、ブレーキ操作量、操舵角等)、センサ出力値(車速センサ、バネ下加速度センサ、車体上下加速度センサ等の出力値)、カーナビゲーションシステムからの情報、ワイパーの作動状態、ヘッドライトあるいはフォグランプの点灯の有無、外気温等の情報を取得する。
【0198】
次に、コントローラ50は、路面状況を判定する路面状況判定処理を実行する(ステップS700)。
ステップS700においては、コントローラ50は、バネ下加速度センサの出力値、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLのストローク、車輪速の変動等を基に、これらの値が設定された閾値以上の周波数変動および振幅変動がある場合に、悪路を走行しているものと判定する。
次に、コントローラ50は、自車両の車両挙動を判定する車両挙動判定処理を実行する(ステップS800)。
さらに、コントローラ50は、運転者に対する情報伝達を行う際の制御の基準値となる情報伝達度基準値を算出する情報伝達度基準値算出処理を実行する(ステップS900)。
【0199】
ステップS900においては、コントローラ50は、自車両の前後、左右および上下方向それぞれと、運転者の操作に対する操作反力に関する情報伝達度基準値を算出する。
次いで、コントローラ50は、運転者に対する情報伝達を行う際の自車両の状態を示すパラメータとなる情報伝達度最小値を算出する情報伝達度最小値算出処理を実行する(ステップS1000)。
【0200】
そして、コントローラ50は、運転者に対する情報伝達を行う度合いを示す情報伝達度を算出する情報伝達度算出処理を実行する(ステップS1100)。
ステップS1100においては、コントローラ50は、自車両の前後、左右および上下方向それぞれにおける情報伝達度と、運転者の操作に対する操作反力に関する情報伝達度を算出する。
コントローラ50は、ステップS1100において算出した情報伝達度に基づく制御指令値を各部に出力し、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RL、操舵反力制御装置60等による動作を行わせる。
なお、ステップS1100の後、コントローラ50は、運転者によって実行を停止させる指示入力があるまで、車両状態伝達量決定処理を繰り返し実行する。
【0201】
(車両挙動判定処理)
次に、車両状態伝達量決定処理のステップS800における車両挙動判定処理について説明する。
図49は、コントローラ50が実行する車両挙動判定処理を示すフローチャートである。
図49において、車両挙動判定処理を開始すると、コントローラ50は、自車両が旋回中であるか否かを判定する旋回中判定処理を実行する(ステップS810)。
次に、コントローラ50は、自車両が加速中であるか否かを判定する加速中判定処理を実行する(ステップS820)。
さらに、コントローラ50は、自車両が減速中であるか否かを判定する減速中判定処理を実行する(ステップS830)。
そして、コントローラ50は、車両状態伝達量決定処理に戻る。
【0202】
(旋回中判定処理)
次に、車両挙動判定処理のステップS810における旋回中判定処理について説明する。
図50は、コントローラ50が実行する旋回中判定処理を示すフローチャートである。
図50において、旋回中判定処理を開始すると、コントローラ50は、横加速度YGを取得し(ステップS811)、取得した横加速度の大きさが、横加速度について設定した閾値YG0より大きいか否かの判定を行う(ステップS812)。
ステップS812において、横加速度の大きさが閾値YG0よりも大きいと判定した場合、コントローラ50は、旋回中であるか否かを示す旋回中フラグFlg_STRの値を1に設定(Flg_STR=1)し(ステップS813)、車両挙動判定処理に戻る。
一方、ステップS812において、横加速度の大きさが閾値YG以下であると判定した場合、コントローラ50は、旋回中フラグFlg_STRの値を0に設定(Flg_STR=0)し(ステップS814)、車両挙動判定処理に戻る。
【0203】
(加速中判定処理)
次に、車両挙動判定処理のステップS320における加速中判定処理について説明する。
図51は、コントローラ50が実行する加速中判定処理を示すフローチャートである。
図51において、加速中判定処理を開始すると、コントローラ50は、アクセル開度ACCが、アクセル開度について設定した閾値ACC0より大きいか否かの判定を行う(ステップS821)。
ここで、アクセル開度について設定した閾値ACC0は、車速を一定に保つために必要なアクセル開度およびブレーキ圧と車速との関係を基に定めることができる。
【0204】
図52は、車速を一定に保つために必要なアクセル開度およびブレーキ圧と車速との関係を示す図である。
図52において、車速が定まると、その車速を保つために必要なアクセル開度も定まり、そのアクセル開度をステップS821で用いる閾値ACC0とすることができる。
ステップS821において、アクセル開度ACCが閾値ACC0より大きいと判定した場合、コントローラ50は、加速中であることを示す加速中フラグFlg_ACCの値を1に設定(Flg_ACC=1)し(ステップS822)、車両挙動判定処理に戻る。
一方、ステップS821において、アクセル開度ACCが閾値ACC0以下であると判定した場合、コントローラ50は、加速中フラグFlg_ACCの値を0に設定(Flg_ACC=0)し(ステップS823)、車両挙動判定処理に戻る。
【0205】
(減速中判定処理)
次に、車両挙動判定処理のステップS830における減速中判定処理について説明する。
図53は、コントローラご50が実行する減速中判定処理を示すフローチャートである。
図53において、減速中判定処理を開始すると、コントローラ50は、ブレーキ圧BRKが、ブレーキ圧について設定した閾値BRK0より大きいか否かの判定を行う(ステップS831)。
このとき、図51におけるアクセル開度の閾値ACC0と同様に、ブレーキ圧について閾値を定めることができる。
【0206】
即ち、図52において、車速が定まると、その車速を保つために必要なブレーキ圧も定まり、そのブレーキ圧をステップS831で用いる閾値BRK0とすることができる。
ステップS831において、ブレーキ圧BRKが閾値BRK0より大きいと判定した場合、コントローラ50は、減速中であることを示す減速中フラグFlg_BRKの値を1に設定(Flg_BRK=1)し(ステップS832)、車両挙動判定処理に戻る。
一方、ステップS831において、ブレーキ圧ACCが閾値BRK0以下であると判定した場合、コントローラ50は、減速中フラグFlg_BRKの値を0に設定(Flg_BRK=1)し(ステップS833)、車両挙動判定処理に戻る。
【0207】
(情報伝達度基準値算出処理)
次に、車両状態伝達量決定処理のステップS900における情報伝達度基準値算出処理について説明する。
図54は、コントローラ50が実行する情報伝達度基準値算出処理を示すフローチャートである。
図54において、情報伝達度基準値算出処理を開始すると、コントローラ50は、車両左右方向の挙動を伝達する処理のための基準値を算出する左右挙動伝達度基準値算出処理を実行する(ステップS910)。
【0208】
次に、コントローラ50は、車両前後方向の挙動を伝達する処理のための基準値を算出する前後挙動伝達度基準値算出処理を実行する(ステップS920)。
次に、コントローラ50は、車両上下方向の挙動を伝達する処理のための基準値を算出する上下挙動伝達度基準値算出処理を実行する(ステップS930)。
さらに、コントローラ50は、路面からステアリングホイール5に入力される操作力を伝達する処理のための基準値を算出する操作力伝達度基準値算出処理を実行する(ステップS940)。
ステップS940の後、コントローラ50は、車両状態伝達量決定処理に戻る。
【0209】
(左右挙動伝達度基準値算出処理)
次に、情報伝達度基準値算出処理のステップS910における左右挙動伝達度基準値算出処理について説明する。
図55は、コントローラ50が実行する左右挙動伝達度基準値算出処理を示すフローチャートである。
図55において、左右挙動伝達度基準値算出処理を開始すると、コントローラ50は、旋回中フラグFlg_STRの値が1に設定されているか否かの判定を行う(ステップS911)。
ステップS911において、旋回中フラグFlg_STRの値が1であると判定した場合、コントローラ50は、横Gの絶対値に基づいて、左右挙動伝達度基準値Kgy0を算出する(ステップS912)。
【0210】
図56は、横Gの絶対値|YG|と左右挙動伝達度基準値Kgy0との関係を示す図である。
図56において、横Gの絶対値|YG|が第1の閾値|YG0|を超えると、横Gの絶対値|YG|が増加するにつれて、左右挙動伝達度基準値Kgy0は増加している。そして、左右挙動伝達度基準値Kgy0は、最大値1で飽和する。
ステップS911において、旋回中フラグFlg_STRの値が1に設定されていないと判定した場合、コントローラ50は、左右挙動伝達度基準値Kgy0の値を0に設定する(ステップS913)。
ステップS912およびステップS913の後、コントローラ50は、情報伝達度基準値算出処理に戻る。
【0211】
(前後挙動伝達度基準値算出処理)
次に、情報伝達度基準値算出処理のステップS920における前後挙動伝達度基準値算出処理について説明する。
図57は、コントローラ50が実行する前後挙動伝達度基準値算出処理を示すフローチャートである。
図57において、前後挙動伝達度基準値算出処理を開始すると、コントローラ50は、加速中フラグFlg_ACCの値が1に設定されているか否かの判定を行う(ステップS921)。
ステップS921において、加速中フラグFlg_ACCの値が1に設定されていると判定した場合、コントローラ50は、アクセル開度ACCに基づいて、前後挙動伝達度基準値Kgx0を算出する(ステップS922)。
【0212】
図58は、アクセル開度ACCおよびブレーキ圧BRKと前後挙動伝達度基準値Kgx0との関係を示す図である。
図58において、アクセル開度ACCが第1の閾値ACC0を超えると、アクセル開度ACCが増加するにつれて、前後挙動伝達度基準値Kgx0は増加している。そして、前後挙動伝達度基準値Kgx0は、最大値1で飽和する。
また、図58において、ブレーキ圧BRKについても、ブレーキ圧BRKが第1の閾値BRK0を超えると、ブレーキ圧BRKが増加するにつれて、前後挙動伝達度基準値Kgx0は増加している。そして、前後挙動伝達度基準値Kgx0は、最大値1で飽和する。
【0213】
ステップS921において、加速中フラグFlg_ACCの値が1に設定されていないと判定した場合、コントローラ50は、減速中フラグFlg_BRKの値が1に設定されているか否かの判定を行う(ステップS923)。
ステップS923において、減速中フラグFlg_BRKの値が1に設定されていると判定した場合、コントローラ50は、ステップS922の処理に移行する。
一方、ステップS923において、減速中フラグFlg_BRKの値が1に設定されていないと判定した場合、コントローラ50は、前後挙動伝達度基準値Kgx0の値を0に設定する(ステップS924)。
ステップS922およびステップS924の後、コントローラ50は、情報伝達度基準値算出処理に戻る。
【0214】
(上下挙動伝達度基準値算出処理)
次に、情報伝達度基準値算出処理のステップS930における上下挙動伝達度基準値算出処理について説明する。
図59は、コントローラ50が実行する上下挙動伝達度基準値算出処理を示すフローチャートである。
図59において、上下挙動伝達度基準値算出処理を開始すると、コントローラ50は、加速中フラグFlg_ACCの値が1に設定されているか否かの判定を行う(ステップS931)。
ステップS931において、加速中フラグFlg_ACCの値が1に設定されていると判定した場合、コントローラ50は、アクセル開度ACCに基づいて、上下挙動伝達度基準値Kgz0を算出する(ステップS932)。
【0215】
図60は、アクセル開度ACCおよびブレーキ圧BRKと上下挙動伝達度基準値Kgz0との関係を示す図である。
図60において、アクセル開度ACCが第1の閾値ACC0を超えると、アクセル開度ACCが増加するにつれて、上下挙動伝達度基準値Kgz0は増加している。そして、上下挙動伝達度基準値Kgz0は、最大値1で飽和する。
また、図60において、ブレーキ圧BRKについても、ブレーキ圧BRKが第1の閾値BRK0を超えると、ブレーキ圧BRKが増加するにつれて、上下挙動伝達度基準値Kgz0は増加している。そして、上下挙動伝達度基準値Kgz0は、最大値1で飽和する。
【0216】
ステップS931において、加速中フラグFlg_ACCの値が1に設定されていないと判定した場合、コントローラ50は、減速中フラグFlg_BRKの値が1に設定されているか否かの判定を行う(ステップS933)。
ステップS933において、減速中フラグFlg_BRKの値が1に設定されていると判定した場合、コントローラ50は、ステップS932の処理に移行する。
一方、ステップS933において、減速中フラグFlg_BRKの値が1に設定されていないと判定した場合、コントローラ50は、上下挙動伝達度基準値Kgz0の値を0に設定する(ステップS934)。
ステップS932およびステップS934の後、コントローラ50は、情報伝達度基準値算出処理に戻る。
【0217】
(操作力伝達度基準値算出処理)
次に、情報伝達度基準値算出処理のステップS940における操作力伝達度基準値算出処理について説明する。
図61は、コントローラ50が実行する操作力伝達度基準値算出処理を示すフローチャートである。
図61において、操作力伝達度基準値算出処理を開始すると、コントローラ50は、旋回中フラグFlg_STRの値が1に設定されているか否かの判定を行う(ステップS941)。
ステップS941において、旋回中フラグFlg_STRの値が1であると判定した場合、コントローラ50は、横Gの絶対値に基づいて、操作力伝達度基準値Kfy0を算出する(ステップS942)。
【0218】
図62は、横Gの絶対値|YG|と操作力伝達度基準値Kfy0との関係を示す図である。
図62において、横Gの絶対値|YG|が第1の閾値|YG0|を超えると、横Gの絶対値|YG|が増加するにつれて、操作力伝達度基準値Kfy0は増加している。そして、操作力伝達度基準値Kfy0は、最大値1で飽和する。
ステップS941において、旋回中フラグFlg_STRの値が1に設定されていないと判定した場合、コントローラ50は、操作力伝達度基準値Kfy0の値を0に設定する(ステップS943)。
ステップS942およびステップS943の後、コントローラ50は、情報伝達度基準値算出処理に戻る。
【0219】
(情報伝達度最小値算出処理)
次に、車両状態伝達量決定処理のステップS1000における情報伝達度最小値算出処理について説明する。
図63は、コントローラ50が実行する情報伝達度最小値算出処理を示すフローチャートである。
図63において、情報伝達度最小値算出処理を開始すると、コントローラ50は、車速に依存する情報伝達度Kv1を算出する(ステップS1010)。
【0220】
図64は、車速と、車速に依存する情報伝達度Kv1との関係を示す図である。
図64において、車速が0から第1の閾値までは、車速に依存する情報伝達度Kv1は0.5で一定の値となっており、車速が第1の閾値を超えると、車速が増加するにつれて、車速に依存する情報伝達度Kv1は減少する。また、車速に依存する情報伝達度Kv1は、0が下限値となっている。
次に、コントローラ50は、車両周囲の明るさに依存する情報伝達度KbおよびKb1を算出する(ステップS1020)。
ここで、車両周囲の明るさに依存する情報伝達度Kbは悪路以外で用いる値、車両周囲の明るさに依存する情報伝達度Kb1は悪路で用いる値である。
【0221】
図65は、車両周囲の明るさと、車両周囲の明るさに依存する情報伝達度Kbとの関係を示す図である。また、図65は、車両周囲の明るさと、車両周囲の明るさに依存する情報伝達度Kb1との関係を示す図である。
図65において、車両周囲の明るさが第1の閾値を超えると、車両周囲の明るさが増加するほど、車両周囲の明るさに依存する情報伝達度Kbは増加している。そして、車両周囲の明るさに依存する情報伝達度Kbは、最大値0.5で飽和している。
また、図65において、車両周囲の明るさが第1の閾値を超えると、車両周囲の明るさが増加するほど、車両周囲の明るさに依存する情報伝達度Kb1は減少し、最小値0となる。さらに車両周囲の明るさが増加すると、車両周囲の明るさに依存する情報伝達度Kb1は増加し、最大値0.5で飽和している。
【0222】
なお、ステップS1020では、コントローラ50は、自車両が悪路以外を走行している場合、図65の関係を用いて車両周囲の明るさに依存する情報伝達度Kbを算出し、自車両が悪路を走行している場合、図66の関係を用いて車両周囲の明るさに依存する情報伝達度Kb1を算出する。
次に、コントローラ50は、ワイパーの作動状態に依存する情報伝達度KwおよびKw1を算出する(ステップS1030)。
ここで、ワイパーの作動状態に依存する情報伝達度Kwは悪路以外で用いる値、ワイパーの作動状態に依存する情報伝達度Kw1は悪路で用いる値である。
【0223】
図67は、ワイパーの作動状態に依存する情報伝達度KwおよびKw1の値を示す図である。
図67において、ワイパーの作動状態が、オフの場合、間欠動作している場合、通常速度で動作している場合、高速動作している場合のそれぞれについて、悪路以外で用いるワイパーの作動状態に依存する情報伝達度Kwと、悪路で用いるワイパーの作動状態に依存する情報伝達度Kw1とが設定されている。
なお、悪路を走行中であるか否かについて、コントローラ50は、バネ下加速度センサの出力値、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLのストローク、車輪速の変動等を基に、これらの値が設定された閾値以上の周波数変動および振幅変動がある場合に、悪路を走行しているものと判定する。
次に、コントローラ50は、道路種別に依存する情報伝達度Krを算出する(ステップS1040)。
【0224】
図68は、道路種別に依存する情報伝達度Krの値を示す図である。
図68において、道路種別が、市街地、郊外路および高速道路のそれぞれについて道路種別に依存する情報伝達度Krが設定されている。
なお、コントローラ50は、カーナビゲーションシステムからの現在位置および地図情報と、信号の数等を基に、市街地、郊外路および高速道路のいずれを走行しているかを判定する。
【0225】
次に、コントローラ50は、車速に依存する情報伝達度Kv1と、車両周囲の明るさに依存する情報伝達度KbあるいはKb1と、ワイパーの作動状態に依存する情報伝達度KwあるいはKw1と、道路種別に依存する情報伝達度Krとにおいて、最小のもの(以下、「情報伝達度最小値」と称する。)K_minを算出する情報伝達度最小値算出処理を実行する(ステップS1050)。
ステップS1050の後、コントローラ50は、車両状態伝達量決定処理に戻る。
【0226】
(情報伝達度算出処理)
次に、車両状態伝達量決定処理のステップS1100における情報伝達度算出処理について説明する。
図69は、コントローラ50が実行する情報伝達度算出処理を示すフローチャートである。
図69において、情報伝達度算出処理を開始すると、コントローラ50は、車両左右方向の挙動を伝達する度合いを示す左右挙動伝達度Kgyを算出する左右挙動伝達度算出処理を実行する(ステップS1110)。
次に、コントローラ50は、車両前後方向の挙動を伝達する度合いを示す前後挙動伝達度Kgxを算出する前後挙動伝達度算出処理を実行する(ステップS1120)。
【0227】
次に、コントローラ50は、車両上下方向の挙動を伝達する度合いを示す上下挙動伝達度Kgzを算出する上下挙動伝達度算出処理を実行する(ステップS1130)。
次に、コントローラ50は、路面からステアリングホイール5に入力される操作力を伝達する度合いを示す操作力伝達度Kfyを算出する操作力伝達度算出処理を実行する(ステップS1140)。
ステップS1140の後、コントローラ50は、車両状態伝達量決定処理に戻る。
【0228】
(左右挙動伝達度算出処理)
次に、情報伝達度算出処理のステップS1110における左右挙動伝達度算出処理について説明する。
図70は、コントローラ50が実行する左右挙動伝達度算出処理を示すフローチャートである。
図70において、左右挙動伝達度算出処理を開始すると、コントローラ50は、左右挙動伝達度基準値Kgy0が情報伝達度最小値K_minより大きいか否かの判定を行う(ステップS1111)。
ステップS1111において、左右挙動伝達度基準値Kgy0が情報伝達度最小値K_minより大きいと判定した場合、コントローラ50は、左右挙動伝達度Kgyとして、左右挙動伝達度基準値Kgy0を設定する(ステップS1112)。
一方、ステップS1111において、左右挙動伝達度基準値Kgy0が情報伝達度最小値K_min以下であると判定した場合、コントローラ50は、左右挙動伝達度Kgyとして、情報伝達度最小値K_minを設定する(ステップS1113)。
ステップS1112およびステップS1113の後、コントローラ50は、情報伝達度算出処理に戻る。
【0229】
(前後挙動伝達度算出処理)
次に、情報伝達度算出処理のステップS1120における前後挙動伝達度算出処理について説明する。
図71は、コントローラ50が実行する前後挙動伝達度算出処理を示すフローチャートである。
図71において、前後挙動伝達度算出処理を開始すると、コントローラ50は、前後挙動伝達度基準値Kgx0が情報伝達度最小値K_minより大きいか否かの判定を行う(ステップS1121)。
【0230】
ステップS1121において、前後挙動伝達度基準値Kgx0が情報伝達度最小値K_minより大きいと判定した場合、コントローラ50は、前後挙動伝達度Kgxとして、前後挙動伝達度基準値Kgx0を設定する(ステップS1122)。
一方、ステップS1121において、前後挙動伝達度基準値Kgx0が情報伝達度最小値K_min以下であると判定した場合、コントローラ50は、前後挙動伝達度Kgxとして、情報伝達度最小値K_minを設定する(ステップS1123)。
ステップS1122およびステップS1123の後、コントローラ50は、情報伝達度算出処理に戻る。
【0231】
(上下挙動伝達度算出処理)
次に、情報伝達度算出処理のステップS1130における上下挙動伝達度算出処理について説明する。
図72は、コントローラ50が実行する上下挙動伝達度算出処理を示すフローチャートである。
図72において、上下挙動伝達度算出処理を開始すると、コントローラ50は、上下挙動伝達度基準値Kgz0が情報伝達度最小値K_minより大きいか否かの判定を行う(ステップS1131)。
【0232】
ステップS1131において、上下挙動伝達度基準値Kgz0が情報伝達度最小値K_minより大きいと判定した場合、コントローラ50は、上下挙動伝達度Kgzとして、上下挙動伝達度基準値Kgz0を設定する(ステップS1132)。
一方、ステップS1131において、上下挙動伝達度基準値Kgz0が情報伝達度最小値K_min以下であると判定した場合、コントローラ50は、上下挙動伝達度Kgzとして、情報伝達度最小値K_minを設定する(ステップS1133)。
【0233】
次に、コントローラ50は、走行路面の状況が悪路であるか否かの判定を行う(ステップS1134)。
ステップS1134において、走行路面の状況が悪路でないと判定した場合、コントローラ50は、情報伝達度算出処理に戻る。
一方、ステップS1134において、走行路面の状況が悪路であると判定した場合、コントローラ50は、悪路に対応した情報伝達度最小値K_min1を算出する(ステップS1135)。
【0234】
このとき、コントローラ50は、車両周囲の明るさに依存する情報伝達度Kb1と、ワイパーの作動状態に依存する情報伝達度Kw1とのうち、小さいものを悪路に対応した情報伝達度最小値K_min1として設定する。
次に、コントローラ50は、上下挙動伝達度KgzがK_min1より大きいか否かの判定を行う(ステップS1136)。
ステップS1136において、上下挙動伝達度KgzがK_min1より大きいと判定した場合、コントローラ50は、情報伝達度算出処理に戻る。
一方、ステップS1136において、上下挙動伝達度KgzがK_min1以下であると判定した場合、コントローラ50は、上下挙動伝達度Kgzとして、悪路に対応した情報伝達度最小値K_min1を設定する(ステップS1137)。
ステップS1137の後、コントローラ50は、情報伝達度算出処理に戻る。
【0235】
(操作力伝達度算出処理)
次に、情報伝達度算出処理のステップS1140における操作力伝達度算出処理について説明する。
図73は、コントローラ50が実行する操作力伝達度算出処理を示すフローチャートである。
図73において、操作力伝達度算出処理を開始すると、コントローラ50は、操作力伝達度基準値Kfy0が情報伝達度最小値K_minより大きいか否かの判定を行う(ステップS1141)。
ステップS1141において、操作力伝達度基準値Kfy0が情報伝達度最小値K_minより大きいと判定した場合、コントローラ50は、操作力伝達度Kfyとして、操作力伝達度基準値Kfy0を設定する(ステップS1142)。
【0236】
一方、ステップS1141において、操作力伝達度基準値Kfy0が情報伝達度最小値K_min以下であると判定した場合、コントローラ50は、操作力伝達度Kfyとして、情報伝達度最小値K_minを設定する(ステップS1143)。
ステップS1142およびステップS1143の後、コントローラ50は、情報伝達度算出処理に戻る。
コントローラ50がこれらの制御を実行することにより、自動車1Aにおいては、路面状況および車両挙動に基づいて、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLによって路面からの振動を抑制する度合いを適切に制御することができる。
【0237】
(第4実施形態の効果)
(1)自車両の状態と、自車両周囲の障害物の状態とに基づいて、自車両に生じている車両挙動を抑制して伝達し、自車両の状態および自車両周囲の障害物の状態とに基づく操作反力を付与する。
そのため、自車両の状態と、自車両周囲の障害物の状態とに応じて、自車両に生じている車両挙動を抑制して伝達することができる。また、車両挙動を抑制して伝達した状態で、運転操作補助のために反力を付与することができる。
したがって、運転者に対し、より適切に車両の運転操作のための情報を伝達することが可能となる。
【0238】
(応用例1)
本実施形態において、上下挙動伝達度基準値算出処理では、加速中フラグが1であるか否か、および、減速中フラグが1であるか否かに基づいて、上下挙動伝達度基準値を設定するものとして説明した。
これに対し、本応用例では、上下挙動伝達度基準値算出処理において、走行路面の状況が悪路であるか否かに応じて、上下挙動伝達度基準値を設定する。
具体的には、加減速時における能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLの制御基準値として予め設定された値に対し、走行路面の状況が悪路である場合には、その制御基準値よりも大きい値(即ち、加減速による車両上下方向の挙動をより多く伝える値)に設定する。
このとき、図72に示す上下挙動伝達度算出処理では、走行路面の状況が悪路であるか否かを判定することなく、上下挙動伝達度を算出する。
このような処理により、走行路面の状況が悪路であり、路面から大きい振動が入力される場合に、加減速による車両上下方向の挙動を適確に運転者に伝達することができる。
【0239】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について説明する。
本実施形態では、第1実施形態における場合と運転操作誘導処理を異なるものとしている。
したがって、自動車1Aの構成については、第1実施形態を参照することとし、運転操作誘導処理について説明する。
【0240】
(運転操作誘導処理)
図74は、コントローラ50が実行する運転操作誘導処理を示すフローチャートである。
コントローラ50は、運転者の指示入力に応じて運転操作誘導処理の実行を開始する。
図74において、運転操作誘導処理を開始すると、コントローラ50は、リスクポテンシャル算出処理において算出した前後および左右方向のリスクポテンシャルRPa、RPb,RPc,RPdを取得する(ステップP201)。
【0241】
次に、コントローラ50は、ステップP201において取得した前後および左右方向のリスクポテンシャルRPa、RPb,RPc,RPdが、それぞれについて設定された閾値RPa0、RPb0,RPc0,RPd0を超えているか否かの判定を行う(ステップP202)。
ステップP202において、前後および左右方向のリスクポテンシャルRPa、RPb,RPc,RPdのいずれも、それぞれについて設定された閾値RPa0、RPb0,RPc0,RPd0を超えていないと判定した場合、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
【0242】
また、ステップP202において、前方リスクポテンシャルRPaが閾値RPa0を超えていると判定した場合、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4FLのサスペンションストロークを前方リスクポテンシャルRPaに応じた振幅で振動させる(ステップP203)。また、ステップP203において、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4FLのサスペンションストロークを、第1実施形態と同様に、前方リスクポテンシャルRPaに応じて変化させる。さらに、ステップP203において、コントローラ50は、アクセルペダル7の操作反力を前方リスクポテンシャルRPaに応じて増加させる。
【0243】
ステッP203の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
図75は、前方リスクポテンシャルRPaが高い場合の制御動作を示す模式図である。
また、図76は、前方リスクポテンシャルRPaが高い場合に付与されるアクセルペダル反力およびサスペンションストロークの振動の特性を示す図である。
なお、図75においては、サスペンションストロークの振動を表す模式図を示しており、第1実施形態におけるサスペンションストロークの増加分は図示していない。以下、図77、図79において同様である。
【0244】
図75および図76において、前方リスクポテンシャルRPaが閾値RPa0より高い場合、図76(a)に示すように、アクセルペダル反力が前方リスクポテンシャルRPaに応じて強くなり、アクセルペダル7を踏み増しにくい状態となる。また、図75に示すように、能動型サスペンション4FR,4FLのサスペンションストロークが前方リスクポテンシャルRPaに応じた振幅で振動する。これにより、運転者に対して、自動車1Aのいずれの方向においてリスクポテンシャルが高まっているかを報知することができる。また、このとき、図76(b)に示すように、能動型サスペンション4FR,4FLのサスペンションストロークの振幅は、前方リスクポテンシャルRPaに応じて大きくなり、運転者に対して、前方リスクポテンシャルRPaが大きいほど、より強い振動を伝えることができる。さらに、能動型サスペンション4FR,4FLのサスペンションストロークを、第1実施形態と同様に、前方リスクポテンシャルRPaに応じて変化させる。これにより、運転者に対して、自動車1Aが加速しているような感覚を与えることができる。
【0245】
このような運転操作の誘導を行うことにより、運転者に対して減速操作を促すことができる。
そして、運転者が減速操作を行うと、前方リスクポテンシャルRPaが減少し、ステップP203における運転操作の誘導が停止される。
また、ステップP202において、後方リスクポテンシャルRPbが閾値RPb0を超えていると判定した場合、コントローラ50は、能動型サスペンション4RR,4RLのサスペンションストロークを前方リスクポテンシャルRPbに応じた振幅で振動させる(ステップP204)。また、ステップP204において、コントローラ50は、能動型サスペンション4RR,4RLのサスペンションストロークを、第1実施形態と同様に、前方リスクポテンシャルRPbに応じて変化させる。
ステッP204の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
【0246】
図77は、後方リスクポテンシャルRPbが高い場合の制御動作を示す模式図である。
また、図78は、後方リスクポテンシャルRPbが高い場合に付与されるサスペンションストロークの振動の特性を示す図である。
図77および78において、前方リスクポテンシャルRPaが閾値RPa0より高い場合、図78に示すように、能動型サスペンション4RR,4RLのサスペンションストロークが前方リスクポテンシャルRPbに応じた振幅で振動する。これにより、運転者に対して、自動車1Aのいずれの方向においてリスクポテンシャルが高まっているかを報知することができる。また、このとき、図78に示すように、能動型サスペンション4RR,4RLのサスペンションストロークの振幅は、後方リスクポテンシャルRPbに応じて大きくなり、運転者に対して、後方リスクポテンシャルRPbが大きいほど、より強い振動を伝えることができる。さらに、能動型サスペンション4RR,4RLのサスペンションストロークを、第1実施形態と同様に、後方リスクポテンシャルRPbに応じて変化させる。これにより、運転者に対して、自動車1Aが加速しているような感覚を与えることができる。
【0247】
このような運転操作の誘導を行うことにより、運転者に対して減速操作を促すことができる。
そして、運転者が減速操作を行うと、前方リスクポテンシャルRPaが減少し、ステップP203における運転操作の誘導が停止される。
また、ステップP202において、右方リスクポテンシャルRPcが閾値RPc0を超えていると判定した場合、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4RRのサスペンションストロークを右方リスクポテンシャルRPcに応じた振幅で振動させる(ステップP205)。また、ステップP205において、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4RRのサスペンションストロークを、第1実施形態と同様に、右方リスクポテンシャルRPcに応じて変化させる。
【0248】
ステッP204の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
また、ステップP202において、左方リスクポテンシャルRPdが閾値RPd0を超えていると判定した場合、コントローラ50は、能動型サスペンション4FL,4RLのサスペンションストロークを左方リスクポテンシャルRPdに応じた振幅で振動させる(ステップP206)。また、ステップP206において、コントローラ50は、能動型サスペンション4FL,4RLのサスペンションストロークを、第1実施形態と同様に、右方リスクポテンシャルRPdに応じて変化させる。
ステッP206の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
【0249】
図79は、右方リスクポテンシャルRPcあるいは左方リスクポテンシャルRPdが高い場合の制御動作を示す模式図である。なお、図79においては、車両を後方から見た図を示しており、右方リスクポテンシャルRPcが高い場合を例に挙げている。
また、図80は、右方リスクポテンシャルRPcあるいは左方リスクポテンシャルRPdが高い場合に付与される操舵反力およびサスペンションストロークの振動の特性を示す図である。
【0250】
図79および図80において、右方リスクポテンシャルRPcが閾値RPc0より高い場合、図80(a)に示すように、操舵反力が右方リスクポテンシャルRPcに応じて強くなり、右方向への操舵を切り増しにくい状態となる。また、図79に示すように、能動型サスペンション4FR,4RRのサスペンションストロークが右方リスクポテンシャルRPcに応じた振幅で振動する。これにより、運転者に対して、自動車1Aのいずれの方向においてリスクポテンシャルが高まっているかを報知することができる。この場合、運転者に擬似的な凹凸を感じさせることができる。また、このとき、図80(b)に示すように、能動型サスペンション4FR,4RRのサスペンションストロークの振幅は、右方リスクポテンシャルRPcに応じて大きくなり、運転者に対して、右方リスクポテンシャルRPcが大きいほど、より強い振動を伝えることができる。さらに、能動型サスペンション4FR,4RRのサスペンションストロークを、第1実施形態と同様に、右方リスクポテンシャルRPcに応じて変化させる。これにより、運転者に対して、自動車1Aが右旋回して車体3が左にロールしているような感覚を与えることができる。
【0251】
このような運転操作の誘導を行うことにより、運転者に対して左方向への操舵操作を促すことができる。
そして、運転者が減速操作を行うと、右方リスクポテンシャルRPcが減少し、ステップP205における運転操作の誘導が停止される。
同様に、左方リスクポテンシャルRPdが高い場合には、操舵反力が左方リスクポテンシャルRPdに応じて強くなり、左方向への操舵を切り増しにくい状態となる。また、能動型サスペンション4FL,4RLのサスペンションストロークが左方リスクポテンシャルRPdに応じた振幅で振動する。これにより、運転者に対して、自動車1Aのいずれの方向においてリスクポテンシャルが高まっているかを報知することができる。また、このとき、能動型サスペンション4FL,4RLのサスペンションストロークの振幅は、左方リスクポテンシャルRPdに応じて大きくなり、運転者に対して、左方リスクポテンシャルRPdが大きいほど、より強い振動を伝えることができる。さらに、能動型サスペンション4FL,4RLのサスペンションストロークを、第1実施形態と同様に、左方リスクポテンシャルRPdに応じて変化させる。これにより、運転者に対して、自動車1Aが左旋回して車体3が右にロールしているような感覚を与えることができる。
【0252】
このような運転操作の誘導を行うことにより、運転者に対して右方向への操舵操作を促すことができる。
ここで、運転操作誘導処理において、前後方向のリスクポテンシャルRPa,RPbのいずれも閾値RPa0,RPb0を超えている場合には、前後方向のうち、閾値を超えている絶対量が大きい方の制御を優先する、あるいは、いずれも制御を行わないといった方法とすることができる。
また、運転操作誘導処理において、左右方向のリスクポテンシャルRPc,RPdのいずれも閾値RPc0,RPd0を超えている場合には、左右方向のうち、閾値を超えている絶対量が大きい方の制御を優先する、あるいは、いずれも制御を行わないといった方法とすることができる。
【0253】
(動作)
次に、動作を説明する。
運転操作誘導処理を実行している自動車1Aの走行中に、前後左右いずれかの方向におけるリスクポテンシャルが閾値を超えたとする。
すると、コントローラ50が、リスクポテンシャルが高くなった方向に応じて、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLを制御し、サスペンションストロークの振動および擬似的な車両の挙動を発生させる。
即ち、前方のリスクポテンシャルが高い場合、車体3を後傾させて前輪のサスペンションストロークを振動させ、後方のリスクポテンシャルが高い場合、車体3を前傾させて後輪のサスペンションストロークを振動させる。また、右方のリスクポテンシャルが高い場合、車体3を左にロールさせて右前輪および右後輪のサスペンションストロークを振動させ、左方のリスクポテンシャルが高い場合、車体3を右にロールさせて左前輪および左後輪のサスペンションストロークを振動させる。
【0254】
これにより、運転者は、自車両の状態がリスクポテンシャルが高まる方向に近づいている(例えば、凹凸のある白線を踏んでいる)と感じ、リスクポテンシャルが低くなる方向への操作を行う。また、サスペンションの振動位置から、リスクポテンシャルが高い方向を認識できる。
また、このとき、リスクポテンシャルの大きさに応じたサスペンションストロークの振動としている。
これにより、運転者は、リスクポテンシャルの大きさを認識することができる。
即ち、運転者の運転操作を誘導することができる。
また、このとき、リスクポテンシャルが高まる方向への操作に対し、より強い操作反力を付与している。
そのため、運転者がリスクポテンシャルの高まる方向へ操作することを抑制できる。
【0255】
以上のように、本実施形態に係る自動車1Aは、前後あるいは左右のリスクポテンシャルRPa、RPb,RPc,RPdが閾値を超えているか否かを判定し、リスクポテンシャルが高いと判定した方向への擬似的な車両の挙動を示すように、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLを制御する。
そのため、現在の操作状態から、リスクポテンシャルが減少する方向への運転者による自発的な操作を促すことができる。
【0256】
また、リスクポテンシャルが高いと判定した方向のサスペンションストロークを、リスクポテンシャルに対応する振幅で振動させる。
そのため、運転者は、リスクポテンシャルが高い方向とその大きさを認識できる。
また、リスクポテンシャルが増加する方向への操作に対して、リスクポテンシャルに応じた反力を付与している。そのため、運転者がリスクポテンシャルの増加する方向へ操作しようとした場合に、操作が適切でないことを報知することができる。また、運転者による適切でない操作を抑制することができる。
このように、本実施形態に係る自動車1Aによれば、運転者に対し、より適切に車両の運転操作の支援を行うことができる。
【0257】
(第5実施形態の効果)
(1)擬似車両挙動発生手段が、リスクポテンシャルに基づいて、障害物が存在する側の車体を振動させるため、障害物の存在方向を運転者に理解しやすい形態で知らせることができる。
(2)擬似車両挙動発生手段は、自車両の前後方向における前記リスクポテンシャルに対し、前輪または後輪いずれかのサスペンション装置に振動を発生させる制御を行う。
したがって、運転者は、リスクポテンシャルが高い方向とその大きさを認識できる。
(3)擬似車両挙動発生手段は、自車両の左右方向におけるリスクポテンシャルに対し、左右輪いずれかのサスペンション装置に振動を発生させる制御を行う。
したがって、運転者に擬似的な凹凸を感じさせることができる。
【0258】
(応用例1)
第5実施形態においては、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLによって、リスクポテンシャルが高いと判定した方向のサスペンションストロークを振動させる場合を例に挙げて説明した。
これに対し、本応用例では、制御型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLのサスペンションストロークを振動させる代わりに、運転席シートの制御を行うことにより、運転者の運転操作を誘導するものである。
【0259】
具体的には、本応用例においては、運転席シートの複数の脚(例えば4本)に、シートレッグ長を変化させることが可能なアクチュエータ(制御型のサスペンション)を備える。
そして、これらのアクチュエータ(それぞれ、前右:700FR、前左:700FL、後右:700RR、後左:700RLとする。)によって、シートレッグ長を、リスクポテンシャルRPに応じた振幅で、それぞれ振動させる。
【0260】
図81は、本応用例において、コントローラ50が実行する運転操作誘導処理を示すフローチャートである。
コントローラ50は、運転者の指示入力に応じて情報伝達制御処理の実行を開始する。
図81において、運転操作誘導処理を開始すると、コントローラ50は、リスクポテンシャル算出処理において算出した前後および左右方向のリスクポテンシャルRPa,RPb,RPc,RPdを取得する(ステップT110)。
次に、コントローラ50は、ステップT110において取得した前後および左右方向のリスクポテンシャルRPa,RPb,RPc,RPdが、それぞれについて設定された閾値RPa0,RPb0,RPc0,RPd0を超えているか否かの判定を行う(ステップT120)。
【0261】
ステップT120において、前後および左右方向のリスクポテンシャルRPa,RPb,RPc,RPdのいずれも、それぞれ設定された閾値RPa0,RPb0,RPc0,RPd0を超えていないと判定した場合、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
また、ステップT120において、前方リスクポテンシャルRPaが閾値RPa0を超えていると判定した場合、コントローラ50は、アクチュエータ700FR,700FLにより、前方シートレッグ長を前方リスクポテンシャルRPaに応じた振幅で振動させる(ステップT130)。
【0262】
また、第1実施形態の応用例2と同様に、コントローラ50は、前方シートレッグ長を変化させ、運転席シートを車体3に対して後傾させる。さらに、コントローラ50は、アクセルペダルの操作反力を前方リスクポテンシャルRPaに応じて増加させる。
つまり、アクセルペダル反力が前方リスクポテンシャルRPaに応じて強くなり、アクセルペダルを踏み増しにくい状態になると共に、運転席シートの前方シートレッグ長が前方リスクポテンシャルRPaに応じた振幅で振動する。これにより、運転者に対して、前方のリスクポテンシャルが高まっていることを報知することができ、減速操作を促すことができる。
【0263】
そして、運転者が減速操作を行うと、前方リスクポテンシャルRPaが減少し、運転操作の誘導が停止される。
ステップT130の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
また、ステップT120において、後方リスクポテンシャルRPbが閾値RPb0を超えていると判定した場合、コントローラ50は、アクチュエータ700RR,700RLにより、後方シートレッグ長を後方リスクポテンシャルRPbに応じた振幅で振動させる(ステップT140)。
【0264】
また、第1実施形態の応用例2と同様に、コントローラ50は、後方シートレッグ長を変化させ、運転席シートを車体3に対して前傾させる。これにより、運転者に対して加速操作を促すことができる。
そして、運転者が加速操作を行うと、後方リスクポテンシャルRPbが減少し、運転操作の誘導が停止される。
ステップT140の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
また、ステップT120において、右方リスクポテンシャルRPcが閾値RPc0を超えていると判定した場合、アクチュエータ700FR,700RRにより、右方シートレッグ長を右方リスクポテンシャルRPcに応じた振幅で振動させる(ステップT150)。
【0265】
また、第1実施形態の応用例12と同様に、コントローラ50は、右方シートレッグ長を変化させ、運転席シートを車体3に対して左ロールさせる。さらに、コントローラ50は、操舵反力を右方リスクポテンシャルRPcに応じて増加させる。
つまり、操舵反力が右方リスクポテンシャルRPcに応じて強くなり、右方向への操舵を切り増しにくい状態になると共に、運転席シートの右方シートレッグ長が右方リスクポテンシャルRPcに応じた振幅で振動する。これにより、運転者に対して、右方のリスクポテンシャルが高まっていることを報知することができ、左方向への操舵操作を促すことができる。
【0266】
そして、運転者が操舵操作を行うと、右方リスクポテンシャルRPcが減少し、運転操作の誘導が停止される。
ステップT150の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
また、ステップT120において、左方リスクポテンシャルRPdが閾値RPd0を超えていると判定した場合、アクチュエータ700FL,700RLにより、左方シートレッグ長を左方リスクポテンシャルRPdに応じた振幅で振動させる(ステップT160)。
【0267】
また、第1実施形態の応用例12と同様に、コントローラ50は、左方シートレッグ長を変化させ、運転席シートを車体3に対して右ロールさせる。さらに、コントローラ50は、操舵反力を左方リスクポテンシャルRPdに応じて増加させる。
つまり、操舵反力が左方リスクポテンシャルRPdに応じて強くなり、左方向への操舵を切り増しにくい状態になると共に、運転席シートの左方シートレッグ長が左方リスクポテンシャルRPdに応じた振幅で振動する。これにより、運転者に対して、左方のリスクポテンシャルが高まっていることを報知することができ、右方向への操舵操作を促すことができる。
【0268】
そして、運転者が操舵操作を行うと、左方リスクポテンシャルRPdが減少し、運転操作の誘導が停止される。
ステップT160の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
このように、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLに代えて、運転席シートに設置したアクチュエータ700FR,700FL,700RR,700RLを振動させることによって、前後左右方向のリスクポテンシャルを運転者に伝達することができる。
なお、本応用例において、アクチュエータ700FR,700FL,700RR,700RLを備える運転席シートが動作制御手段に対応する。
【0269】
(効果)
擬似車両挙動発生手段が、車両状態検出手段の検出結果およびリスクポテンシャルに基づいて、リスクポテンシャルが増大する運転操作を行った場合の車両挙動を、動作制御手段を制御することによって擬似的に発生させる。
そのため、現在の操作状態から、リスクポテンシャルが減少する方向への運転者による自発的な操作を促すことができる。
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について説明する。
本実施形態では、第1実施形態における場合と運転操作誘導処理を異なるものとしている。
したがって、自動車1Aの構成については、第1実施形態を参照することとし、運転操作誘導処理について説明する。
【0270】
(運転操作誘導処理)
図82は、コントローラ50が実行する運転操作誘導処理を示すフローチャートである。
コントローラ50は、運転者の指示入力に応じて運転操作誘導処理の実行を開始する。
図82において、運転操作誘導処理を開始すると、コントローラ50は、リスクポテンシャル算出処理において算出した前方リスクポテンシャルRPaを取得する(ステップP301)。
次に、コントローラ50は、ステップP301において取得した前方リスクポテンシャルRPaが、前方リスクポテンシャルRPaについて設定された閾値RPa0以上であるか否かの判定を行う(ステップP302)。
【0271】
ステップP302において、前方リスクポテンシャルRPaが、設定された閾値RPa0を超えていないと判定した場合、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
また、ステップP302において、前方リスクポテンシャルRPaが閾値RPa0以上であると判定した場合、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4RRのサスペンションストロークと、能動型サスペンション4FL,4RLのサスペンションストロークとを、交互に振動させ、車体3を前方リスクポテンシャルRPaに応じたロール角で揺動させる(ステップP303)。また、ステップP303において、コントローラ50は、アクセルペダル7の操作反力を前方リスクポテンシャルRPaに応じて増加させる。
ステッP303の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
【0272】
図83は、前方リスクポテンシャルRPaが高い場合の制御動作を示す模式図である。
また、図84は、前方リスクポテンシャルRPaが高い場合に付与されるアクセルペダル反力および車体3の揺動ロール角の特性を示す図である。
図83および図84において、前方リスクポテンシャルRPaが閾値RPa0より高い場合、図84(a)に示すように、アクセルペダル反力が前方リスクポテンシャルRPaに応じて強くなり、アクセルペダル7を踏み増しにくい状態となる。また、図83に示すように、能動型サスペンション4FR,4RRおよび能動型サスペンション4FL,4RLのサスペンションストロークが交互に振動し、前方リスクポテンシャルRPaに応じたロール角で車体3が揺動する。これにより、運転者に対して、自動車1Aが不安定な状態となっているような感覚を与えることができる。また、このとき、図84(b)に示すように、車体3の揺動ロール角は、前方リスクポテンシャルRPaに応じて大きくなり、運転者に対して、前方リスクポテンシャルRPaが大きいほど、より不安定となっているような感覚を与えることができる。
このような運転操作の誘導を行うことにより、運転者に対して減速操作を促すことができる。
そして、運転者が減速操作を行うと、前方リスクポテンシャルRPaが減少し、ステップP303における運転操作の誘導が停止される。
【0273】
(動作)
次に、動作を説明する。
運転操作誘導処理を実行している自動車1Aの走行中に、前方におけるリスクポテンシャルが閾値を超えたとする。
すると、コントローラ50が、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLを制御し、擬似的な車両の挙動を発生させる。
即ち、前方リスクポテンシャルRPaの大きさに応じたロール角で車体3を揺動させる。
【0274】
これにより、運転者は、自車両が不安定な状態になっていると感じ、減速操作を行う。
即ち、運転者の運転操作を誘導することができる。
また、このとき、アクセルペダル7の操作に対し、より強い操作反力を付与している。
そのため、運転者が加速操作を行うことを抑制できる。
以上のように、本実施形態に係る自動車1Aは、前方リスクポテンシャルRPaが閾値以上であるか否かを判定し、前方リスクポテンシャルが高いと判定した場合には、擬似的に車両が不安定な挙動を示すように、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLを制御する。
【0275】
そのため、現在の操作状態から、リスクポテンシャルが減少する方向への運転者による自発的な操作(減速操作)を促すことができる。
また、リスクポテンシャルが増加するアクセルペダル7の操作に対して、リスクポテンシャルに応じた反力を付与している。そのため、運転者がリスクポテンシャルの増加する方向へ操作しようとした場合に、操作が適切でないことを報知することができる。また、運転者による適切でない操作を抑制することができる。
このように、本実施形態に係る自動車1Aによれば、運転者に対し、より適切に車両の運転操作の支援を行うことができる。
【0276】
(第6実施形態の効果)
(1)擬似車両挙動発生手段は、自車両の前方における前記リスクポテンシャルに対し、前記サスペンション装置に車体のロールによる揺動を発生させる制御を行う。
したがって、運転者に対し、擬似的に車両が不安定な状態になったと感じさせることができる。
【0277】
(第7実施形態)
次に、本発明の第7実施形態について説明する。
本実施形態では、第1実施形態における場合と運転操作誘導処理を異なるものとしている。
したがって、自動車1Aの構成については、第1実施形態を参照することとし、運転操作誘導処理について説明する。
図85は、コントローラ50が実行する運転操作誘導処理を示すフローチャートである。
コントローラ50は、運転者の指示入力に応じて運転操作誘導処理の実行を開始する。
図85に示す運転操作誘導処理において、ステップP401〜ステップP403以外のステップについては、図10に示す第1実施形態の運転操作誘導処理における各ステップと同様である。
したがって、図10と同様のステップについては、同一の番号を付すこととし、ここでは異なる部分であるステップP401〜ステップP403について説明する。
【0278】
図85のステップP102において、前方リスクポテンシャルRPaが閾値RPa0以上であると判定した場合、コントローラ50は、車速が設定した閾値(例えば80km/h)以上であるか否かの判定を行う(ステップP401)。
ステップP401において、車速が設定した閾値以上であると判定した場合、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4FLのサスペンションストロークを前方リスクポテンシャルRPaに応じて変化させる(ステップP402)。また、ステップP402において、コントローラ50は、アクセルペダル7の操作反力を前方リスクポテンシャルRPaに応じて増加させる。
【0279】
ステッP402の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
一方、ステップP401において、車速が設定した閾値以上であると判定した場合、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4RRのサスペンションストロークと、能動型サスペンション4FL,4RLのサスペンションストロークとを、交互に振動させ、車体3を前方リスクポテンシャルRPaに応じたロール角で揺動させる(ステップP403)。また、ステップP403において、コントローラ50は、アクセルペダル7の操作反力を前方リスクポテンシャルRPaに応じて増加させる。
ステッP403の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
【0280】
(動作)
次に、動作を説明する。
運転操作誘導処理を実行している自動車1Aの走行中に、前方におけるリスクポテンシャルが閾値を超えたとする。
すると、コントローラ50が、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLを制御し、車速によって異なる態様で、擬似的な車両の挙動を発生させる。
即ち、車速が閾値以下である場合、前方リスクポテンシャルRPaの大きさに応じたロール角で車体3を揺動させる。
これにより、運転者は、自車両が不安定な状態になっていると感じ、減速操作を行う。
【0281】
また、車速が閾値以上である場合、前方リスクポテンシャルRPaの大きさに応じたピッチ角で車体3を後傾させる。
これにより、運転者は、自車両の状態がリスクポテンシャルが高まる方向に近づいていると感じ、リスクポテンシャルが低くなる方向への操作を行う。
即ち、これらの制御により、運転者の運転操作を誘導することができる。
【0282】
また、このとき、アクセルペダル7の操作に対し、より強い操作反力を付与している。
そのため、運転者が加速操作を行うことを抑制できる。
以上のように、本実施形態に係る自動車1Aは、前方リスクポテンシャルRPaが閾値以上であるか否かを判定し、前方リスクポテンシャルが高いと判定した場合には、車速に応じて異なる制御を行い、運転者の運転操作を誘導する。
【0283】
即ち、車速が高い場合、擬似的な加速を示すように、能動型サスペンション4FR,4FLを制御する。また、車速が低い場合、擬似的に車両が不安定な挙動を示すように、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLを制御する。
そのため、車速に応じて、適切な制御態様に切り替えて、現在の操作状態から、リスクポテンシャルが減少する方向への運転者による自発的な操作(減速操作)を促すことができる。
【0284】
また、リスクポテンシャルが増加するアクセルペダル7の操作に対して、リスクポテンシャルに応じた反力を付与している。そのため、運転者がリスクポテンシャルの増加する方向へ操作しようとした場合に、操作が適切でないことを報知することができる。また、運転者による適切でない操作を抑制することができる。
このように、本実施形態に係る自動車1Aによれば、運転者に対し、より適切に車両の運転操作の支援を行うことができる。
【0285】
(第7実施形態の効果)
(1)擬似車両挙動発生手段は、自車両の前方におけるリスクポテンシャルに対し、車速に応じて、車体を後傾させるサスペンション装置の制御と、サスペンション装置に車体のロールを発生させる制御とを切り替えて行わせる。
そのため、車速に応じた制御態様で、より適切に運転者の自発的な運転操作を促すことができる。
(第8実施形態)
次に、本発明の第8実施形態について説明する。
本実施形態では、第1実施形態における場合と運転操作誘導処理を異なるものとしている。
したがって、自動車1Aの構成については、第1実施形態を参照することとし、運転操作誘導処理について説明する。
【0286】
(運転操作誘導処理)
図86は、コントローラ50が実行する運転操作誘導処理を示すフローチャートである。
コントローラ50は、運転者の指示入力に応じて運転操作誘導処理の実行を開始する。
図86において、運転操作誘導処理を開始すると、コントローラ50は、車速、横加速度(横G)、運転者の運転負荷、運転者の操作量を含む車両の運転状態を取得する(P501)。
このとき、運転者の運転負荷は、カーナビゲーションシステムに記憶している道路形状や、VICS(Vehicle Information and Communication System)等によって取得した渋滞情報を基に判定できる。また、運転者の操作量は、操舵操作および制駆動力操作の履歴を取得しておき、その頻度を基に判定できる。
【0287】
次に、コントローラ50は、リスクポテンシャル算出処理において算出した各リスクポテンシャルを取得する(ステップP502)。
次に、コントローラ50は、車両の運転状態およびリスクポテンシャルに基づいて、自車両の安定度を検出する(ステップP503)。
ここで、自車両の安定度については、車速が高いほど、加減速度が大きいほど、また、操舵入力が大きいほど、リスクポテンシャルが大きいほど、安定度が低下する傾向に設定している。
【0288】
次いで、コントローラ50は、自車両の安定度に応じて、運転操作の誘導制御を行う際の重み付けを算出する(ステップP504)。
ステップP504においては、操舵反力、制駆動操作反力および能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLにおける路面入力の低減割合について、運転操作の誘導制御を行う場合と行わない場合とのいずれの制御量とするかを決定するための重み付け(以下、適宜「優先度」と称する。)を算出する。この優先度は、運転操作の誘導制御を行わない場合の各制御量を0、運転操作の誘導制御を行う場合の制御量を1とし、これらをいずれの比率で配分するかを決定するものである。
【0289】
本実施形態においては、安定度が最良である場合に運転操作の誘導制御を行う場合の制御量とし、このときに、優先度として“1”を算出する。一方、安定度が設定された閾値以下である場合に、運転操作の誘導制御を行わない場合の制御量とし、このときに、優先度として“0”を算出する。また、本実施形態においては、安定度に応じて、“0”〜“1”までの任意の値を優先度として算出する。
【0290】
次に、コントローラ50は、ステップP504で算出した優先度(重み付け)によって、運転操作の誘導制御を行わない場合に対応する配分制御量を算出する(ステップP505)。
さらに、コントローラ50は、ステップP504で算出した優先度によって、リスクポテンシャルに応じた運転操作の誘導制御を行う場合に対応する配分制御量を算出する(ステップP506)。
次いで、コントローラ50は、ステッP505およびステップP506において算出した配分制御量の合計値によって、操舵反力や制駆動力操作反力、あるいは、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLの制御を実行する(ステップP507)。
ステップP507の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
【0291】
(動作)
次に、動作を説明する。
自動車1Aの走行中に、運転操作誘導処理の実行が開始されたとする。
なお、このとき、自動車1Aにおいては、一定の割合で路面からの振動を打ち消すように能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLの制御を行っていたものとする。
運転操作誘導処理を実行することにより、自動車1Aは、車両の運転状態、リスクポテンシャルおよび車両の安定度に応じて、自車両各部における通常の制御と、運転操作の誘導制御との優先度を算出する。
【0292】
そして、自動車1Aは、運転操作の誘導制御のための制御量と運転操作の誘導制御を行わない場合の制御量とを優先度に応じて加算した制御量によって、自車両各部の制御を行い、運転操作の誘導を行う。
これにより、自車両の安定度を加味して、運転操作の誘導制御を重点的に行うか、あるいは、運転者の技量に委ねた通常の車両制御を重点的に行うかを柔軟に決定できる。
【0293】
したがって、より適切に車両の運転操作の支援を行うことができる。
以上のように、本実施形態に係る自動車1Aは、自車両の安定度に応じて、運転操作の誘導制御の制御量を重み付けした上で、自車両各部の制御を行う。
例えば、安定度が高い状態では、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLによって路面からの振動を伝達する割合を低下させ、安定度が低い状態では、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLによって路面からの振動を一定以上の割合で伝達することができる。
【0294】
また、操舵反力および制駆動操作反力の制御によるリスクポテンシャルの伝達については、安定度が低いほど制御量を高めることができる。
したがって、自車両の状態を反映させた制御量によって、運転操作の誘導制御を行うことができ、運転者に対し、より適切に車両の運転操作の支援を行うことができる。
なお、本実施形態において、車速センサ30、車両状態検出器140およびコントローラ50が安定状態検出手段に対応する。
【0295】
(第8実施形態の効果)
(1)安定状態検出手段が自車両の安定状態を検出する。
擬似車両挙動発生手段が、安定状態検出手段が検出した自車両の安定状態に基づいて、サスペンション装置に擬似的に車両挙動を発生させる際の制御量を変化させる。
したがって、自車両の安定度を加味して、運転操作の誘導を重点的に行うか、あるいは、運転者の技量に委ねた通常の車両制御を重点的に行うかを柔軟に決定できる。
【0296】
(第9実施形態)
上記実施形態では、左右方向のリスクポテンシャルに応じて、能動型サスペンションのストロークや運転席シートのシートレッグ長を振動させるにあたり、左右方向それぞれについて1つのリスクポテンシャル閾値を設定し、リスクポテンシャルに応じて能動型サスペンションのサスペンションストロークを振動させることとした。
これに対し、本実施形態は、車両や運転席シートの姿勢(ロール傾斜角)を発生させるための左右方向のリスクポテンシャル閾値とは別に、振動を付与するために用いる左右方向のリスクポテンシャル閾値を設定する。そして、左右方向のリスクポテンシャルが振動を付与するための閾値以上となった場合に、予め設定された振幅で能動型サスペンションのストロークあるいは運転席シートのシートレッグ長を振動させるものである。
【0297】
図87は、本実施形態において、コントローラ50が実行する運転操作誘導処理を示すフローチャートである。また、図88〜91は、図87に示す運転操作誘導処理において実行される第1〜第4のサブフローを示す図である。
コントローラ50は、運転者の指示入力に応じて運転操作誘導処理の実行を開始する。
図87において、運転操作誘導処理を開始すると、コントローラ50は、リスクポテンシャル算出処理において算出した前後および左右方向のリスクポテンシャルRPa,RPb,RPc,RPdを取得する(ステップT210)。
【0298】
次に、コントローラ50は、ステップT210において取得した前方リスクポテンシャルRPaに応じて、運転操作誘導処理の第1のサブフローを実行する(ステップT220)。
ステップT220において、コントローラ50は、例えば、図88に示すように、まず、前方リスクポテンシャルRPaが第1の閾値RPa0以上であるか否かの判定を行う(ステップT221)。ステップT221において、前方リスクポテンシャルRPaが第1の閾値RPa0以上であると判定した場合、コントローラ50は、第1実施形態と同様に、アクセルペダル反力を前方リスクポテンシャルRPaに応じて増加させる(ステップT222)。また、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4FLのサスペンションストロークを前方リスクポテンシャルRPaに応じて変化させる(ステップT223)。
【0299】
次に、コントローラ50は、前方リスクポテンシャルRPaが第2の閾値RPa1以上であるか否かの判定を行う(ステップT224)。ステップT224において、前方リスクポテンシャルRPaが第2の閾値RPa1以上であると判定した場合、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4FLのサスペンションストロークに振動を付与する(ステップT225)。
【0300】
つまり、前方リスクポテンシャルRPaが比較的小さい第2の閾値RPa1未満の場合においては、アクセルペダル反力と車体ピッチ角(後傾)を発生させ、さらに、前方リスクポテンシャルRPaが比較的大きい第2の閾値RPa1以上の場合においては、サスペンションストロークによる振動が付与される。これにより、運転者に対して、前方のリスクポテンシャルが高まっていることを報知することができ、違和感なく、適切に、減速操作を促すことができる。そして、運転者が減速操作を行うと、前方リスクポテンシャルRPaが減少し、運転操作の誘導が停止される。
【0301】
ステップT225の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理に戻る。
また、コントローラ50は、ステップT210において取得した後方リスクポテンシャルRPbに応じて、運転操作誘導処理の第2のサブフローを実行する(ステップT230)。
ステップT230において、コントローラ50は、例えば、図89に示すように、まず、後方リスクポテンシャルRPbが第1の閾値RPb0以上であるか否かの判定を行う(ステップT231)。ステップT231において、後方リスクポテンシャルRPbが第1の閾値RPb0以上であると判定した場合、コントローラ50は、第1実施形態と同様に、能動型サスペンション4RR,4RLのサスペンションストロークを後方リスクポテンシャルRPbに応じて変化させる(ステップT232)。
【0302】
次に、コントローラ50は、後方リスクポテンシャルRPbが第2の閾値RPb1以上であるか否かの判定を行う(ステップT233)。ステップT233において、後方リスクポテンシャルRPbが第2の閾値RPb1以上であると判定した場合、コントローラ50は、能動型サスペンション4RR,4RLのサスペンションストロークに振動を付与する(ステップT234)。
【0303】
つまり、後方リスクポテンシャルRPbが比較的小さい第2の閾値RPb1未満の場合においては、車体ピッチ角(前傾)を発生させ、さらに、後方リスクポテンシャルRPbが比較的大きい第2の閾値RPb1以上の場合においては、サスペンションストロークによる振動が付与される。これにより、運転者に対して、後方のリスクポテンシャルが高まっていることを報知することができ、違和感なく、適切に、加速操作を促すことができる。そして、運転者が加速操作を行うと、後方リスクポテンシャルRPbが減少し、運転操作の誘導が停止される。
【0304】
ステップT234の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理に戻る。
また、コントローラ50は、ステップT210において取得した右方リスクポテンシャルRPcに応じて、運転操作誘導処理の第3のサブフローを実行する(ステップT240)。
ステップT240において、コントローラ50は、例えば、図90に示すように、右方リスクポテンシャルRPcが第1の閾値RPc0以上であるか否かの判定を行う(ステップT241)。ステップT241において、右方リスクポテンシャルRPcが第1の閾値RPc0以上であると判定した場合、コントローラ50は、第1実施形態と同様に、操舵反力を右方リスクポテンシャルRPcに応じて増加させる(ステップT242)。また、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4RRのサスペンションストロークを右方リスクポテンシャルRPcに応じて変化させる(ステップT243)。
【0305】
次に、コントローラ50は、右方リスクポテンシャルRPcが第2の閾値RPc1以上であるか否かの判定を行う(ステップT244)。ステップT244において、右方リスクポテンシャルRPcが第2の閾値RPc1以上であると判定した場合、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4RRのサスペンションストロークに振動を付与する(ステップT245)。
【0306】
つまり、右方リスクポテンシャルRPcが比較的小さい第2の閾値RPc1未満の場合においては、操舵反力とロール傾斜角(左ロール)を発生させ、さらに、右方リスクポテンシャルRPcが比較的大きい第2の閾値RPc1以上の場合においては、サスペンションストロークによる振動が付与される。これにより、レーンマーカー上、もしくは、レーンマーカーより外側に設置される凹凸(いわゆる、ランブルストリップ)を車両が踏んだかのような感じを与えることもできる。そのため、運転者に対して、右方のリスクポテンシャルが高まっていることを報知することができ、違和感なく、適切に、左方向への操舵操作を促すことができる。そして、運転者が操舵操作を行うと、右方リスクポテンシャルRPcが減少し、運転操作の誘導が停止される。
【0307】
ステップT245の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理に戻る。
また、コントローラ50は、ステップT210において取得した左方リスクポテンシャルRPdに応じて、運転操作誘導処理の第4のサブフローを実行する(ステップT250)。
ステップT250において、コントローラ50は、例えば、図91に示すように、左方リスクポテンシャルRPdが第1の閾値RPd0以上であるか否かの判定を行う(ステップT251)。ステップT251において、左方リスクポテンシャルRPdが第1の閾値RPd0以上であると判定した場合、コントローラ50は、第1実施形態と同様に、操舵反力を左方リスクポテンシャルRPdに応じて増加させる(ステップT252)。また、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4RRのサスペンションストロークを左方リスクポテンシャルRPdに応じて変化させる(ステップT253)。
【0308】
次に、コントローラ50は、左方リスクポテンシャルRPdが第2の閾値RPd1以上であるか否かの判定を行う(ステップT254)。ステップT254において、左方リスクポテンシャルRPdが第2の閾値RPd1以上であると判定した場合、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4RRのサスペンションストロークに振動を付与する(ステップT255)。
【0309】
つまり、左方リスクポテンシャルRPdが比較的小さい第2の閾値RPd1未満の場合においては、操舵反力とロール傾斜角(右ロール)を発生させ、さらに、左方リスクポテンシャルRPdが比較的大きい第2の閾値RPd1以上の場合においては、サスペンションストロークによる振動が付与される。これにより、レーンマーカー上、もしくは、レーンマーカーより外側に設置される凹凸(いわゆる、ランブルストリップ)を車両が踏んだかのような感じを与えることもできる。そのため、運転者に対して、左方のリスクポテンシャルが高まっていることを報知することができ、違和感なく、適切に、右方向への操舵操作を促すことができる。そして、運転者が操舵操作を行うと、左方リスクポテンシャルRPdが減少し、運転操作の誘導が停止される。
【0310】
ステップT255の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理に戻る。
ここで、ステップT245、あるいは、ステップT255にて付与する振動の周波数は、例えば、車速が高いほど高周波となるよう、車速に応じて変更することができる。
また、本実施形態では、サスペンションストロークによって振動を付与したが、ペダル反力や操舵反力で振動を付与してもよい。
【0311】
さらに、リスクポテンシャルが高まっていることを運転者に伝え、運転操作を促すために、車載スピーカから発する音を用いることができる。例えば、前方リスクポテンシャルが高い場合、前方(前右、前左)スピーカから他車両の走行音を出力し、後方リスクポテンシャルが高い場合、後方(後右、後左)スピーカから他車両の走行音を出力することにより、他車両が近づいているような感じを運転者に与えることができる。また、右方リスクポテンシャルが高い場合、右方(前右、後右)スピーカから、レーンマーカー上、もしくはレーンマーカーより外側に設置される凹凸(いわゆる、ランブルストリップ)を車両が踏んだ時の走行音を出力し、左方リスクポテンシャルが高い場合は、左方(前左、後左)スピーカから出力することにより、左右方向のリスクポテンシャルが高まっていることを効果的に報知することができる。
なお、本実施形態において、第1の閾値RPc0あるいはRPd0が特許請求の範囲における第4の閾値に対応し、第2の閾値RPc1あるいはRPd1が特許請求の範囲における第5の閾値に対応する。
【0312】
(第9実施形態の効果)
(1)車体のロールを発生させるための左右方向のリスクポテンシャルの閾値と、車体に振動を付与するための左右方向のリスクポテンシャルの閾値とを個別に設定することとしたため、車両の走行状態に応じて、車体のロールと振動とを適確なタイミングで発生させることができる。そのため、より適切に車両の運転操作の支援を行うことができる。
【符号の説明】
【0313】
1A 自動車、1 車両用運転操作補助装置、2FR,2FL,2RR,2RL 車輪、3 車体、4FR,4FL,4RR,4RL 能動型サスペンション、5 ステアリングホイール、6 ステアリング装置、7 アクセルペダル、8 ブレーキペダル、9F,9R,9SR,9SL カメラ、10 レーザレーダ、12 車体側部材、14 車輪側部材、16FR,16FL,16RR,16RL コイルスプリング、17FR,17FL,17RR,17RL 圧力制御弁、30 車速センサ、50 コントローラ、60 操舵反力制御装置、61,81,91 サーボモータ、62 舵角センサ、80 アクセルペダル反力制御装置、90 ブレーキペダル反力制御装置、100 駆動力制御装置、110 制動力制御装置、120FR,120FL,120RR,120RL,803FR,803FL,803RR,803RL,700FR,700FL,700RR,700RL アクチュエータ、130FR,130FL,130RR,130RL 車体上下加速度検出器、140 車両状態検出器、400FL〜400RR 減衰力可変ショックアブソーバ、601サスペンションシート
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者の操作を補助する車両用運転操作補助装置、車両用運転操作補助方法および自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用運転操作補助装置として、操舵操作の反力や、アクセルペダルあるいはブレーキペダルの操作反力を制御する技術が知られている。
例えば、特許文献1には、車両周囲の状況(障害物)を検出し、その時点におけるリスクポテンシャルを求め、算出したリスクポテンシャルに基づいて操舵補助トルクを制御する技術が記載されている。
このような制御を行うことにより、特許文献1に記載された技術においては、運転者に車両周囲の状況を認識させ、適切な運転を支援することととしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−211886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された技術を含め、従来の車両用運転操作補助装置においては、運転者が行った操作に対して、反力を付与する等して運転操作を支援するものである。そのため、運転者が操作を行って初めて、その操作が適切なものであるか否かを判断することができることとなり、運転者による適切な運転操作が遅れる可能性がある。
また、従来の車両用運転操作補助装置においては、車両の前後方向あるいは左右方向等、各方向についての制御を独立に行うものであるため、車両の走行状況によっては、運転者に対して必ずしも適切に運転操作のための情報を伝えることができない可能性がある。
このように、従来の技術においては、運転者に対し、適切に車両の運転操作の支援を行うことができない可能性がある。
本発明の課題は、運転者に対し、より適切に車両の運転操作の支援を行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するため、本発明に係る車両用運転操作補助装置は、
リスクポテンシャル算出手段が、自車両の状態と、自車両周囲の障害物の状態とに基づいて、自車両周囲に存在する障害物に対するリスクポテンシャルを算出し、擬似車両挙動発生手段が、前記リスクポテンシャルが増大する運転操作を行った場合の車両挙動を、動作制御手段を制御することによって擬似的に発生させる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、情報伝達制御手段が、自車両に生じている車両挙動を、リスクポテンシャルの大きさに応じて抑制して、外乱情報を運転者に伝達する制御量を算出する。擬似車両挙動発生手段が、リスクポテンシャルが増大する運転操作を行った場合の車両挙動を、動作制御手段を制御することによって擬似的に発生させるための制御量を算出する。協調制御手段が、情報伝達制御手段によって算出された制御量と、擬似車両挙動発生手段によって算出された制御量とに基づいて、車両を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1実施形態に係る車両用運転操作補助装置1を備えた自動車1Aの概略構成図である。
【図2】自動車1Aの制御系統を示すシステム構成図である。
【図3】操舵反力制御を行う際の減衰力算出制御マップを示す図である。
【図4】自動車1Aが有する能動型サスペンション機構の具体的な構成を示す図である。
【図5】コントローラ50が実行するリスクポテンシャル算出処理を示すフローチャートである。
【図6】コントローラ50が実行する協調制御処理を示すフローチャートである。
【図7】リスクポテンシャルRPと情報伝達制御処理の重みとの関係を示す図である。
【図8】コントローラ50が実行する情報伝達制御処理を示すフローチャートである。
【図9】リスクポテンシャルRPと情報伝達制御の基準値α0との関係を示す図である。
【図10】コントローラ50が実行する運転操作誘導処理を示すフローチャートである。
【図11】前方リスクポテンシャルRPaが高い場合の制御動作を示す模式図である。
【図12】前方リスクポテンシャルRPaが高い場合に付与されるアクセルペダル反力および車体ピッチ角βの特性を示す図である。
【図13】後方リスクポテンシャルRPbが高い場合の制御動作を示す模式図である。
【図14】後方リスクポテンシャルRPbが高い場合に付与される車体ピッチ角γの特性を示す図である。
【図15】右方リスクポテンシャルRPcあるいは左方リスクポテンシャルRPdが高い場合の制御動作を示す模式図である。
【図16】右方リスクポテンシャルRPcあるいは左方リスクポテンシャルRPdが高い場合に付与される操舵反力および車体ロール角δの特性を示す図である。
【図17】車両前後方向の運転操作補助処理を示すフローチャートである。
【図18】制駆動力制御の概念を示す図である。
【図19】車両左右方向の運転操作補助処理を示すフローチャートである。
【図20】車両の運転状態(加減速度)と安定度との関係を示す図である。
【図21】車両の運転状態と安定度との関係についての他の例を示す図である。
【図22】リスクポテンシャルRPが大きくなるほど、情報伝達制御処理の重みが小さくなる場合の特性を示す図である。
【図23】リスクポテンシャルRPと情報伝達制御の基準値α0との関係の他の例を示す図である。
【図24】リスクポテンシャルRPと操作反力(操舵反力およびペダルの操作反力)との関係を示す概念図である。
【図25】応用例7の情報伝達制御処理を示すフローチャートである。
【図26】能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLに代えて減衰力制御装置を備えた自動車1Aの概略構成図である。
【図27】減衰力制御装置の一例を示す一部を断面とした正面図である。
【図28】減衰力可変ショックアブソーバ400FL〜400RRの弁本体のポジションに対する減衰力特性を示す説明図である。
【図29】コントローラ50が有する機能構成例を示すブロック図である。
【図30】応用例9に係る自動車1Aの全体システム図である。
【図31】リスクポテンシャルRPとパラメータDdとの関係を示す図である。
【図32】サスペンションシート601の概略構成図である。
【図33】(a)は、シートの支持構造の拡大側面図、(b)は、シートの支持構造の平面図である。
【図34】応用例11のサスペンション構造を示す図である。
【図35】応用例15において、コントローラ50が実行する運転操作誘導処理を示すフローチャートである。
【図36】運転操作誘導処理の第1のサブフローを示す図である。
【図37】運転操作誘導処理の第2のサブフローを示す図である。
【図38】運転操作誘導処理の第3のサブフローを示す図である。
【図39】運転操作誘導処理の第4のサブフローを示す図である。
【図40】操舵反力を発生させる第1の閾値RPc0と、サスペンションストロークを変化させる第2の閾値RPc1との関係を示す図である。
【図41】応用例6のサスペンション構造を示す図である。
【図42】右方リスクポテンシャルRPcが高い場合に付与されるスタビライザリンク長の特性を示す図である。
【図43】第2実施形態における情報伝達制御処理を示すフローチャートである。
【図44】自動車1Aの安定度と補正ゲインKαとの関係を示す図である。
【図45】車両の状態と安定度との関係を示す図である。
【図46】第3実施形態における情報伝達制御処理を示すフローチャートである。
【図47】自動車1Aの安定度と補正ゲインKα’との関係を示す図である。
【図48】コントローラ50が実行する車両状態伝達量決定処理を示すフローチャートである。
【図49】コントローラ50が実行する車両挙動判定処理を示すフローチャートである。
【図50】コントローラ50が実行する旋回中判定処理を示すフローチャートである。
【図51】コントローラ50が実行する加速中判定処理を示すフローチャートである。
【図52】車速を一定に保つために必要なアクセル開度およびブレーキ圧と車速との関係を示す図である。
【図53】コントローラご50が実行する減速中判定処理を示すフローチャートである。
【図54】コントローラ50が実行する情報伝達度基準値算出処理を示すフローチャートである。
【図55】コントローラ50が実行する左右挙動伝達度基準値算出処理を示すフローチャートである。
【図56】横Gの絶対値|YG|と左右挙動伝達度基準値Kgy0との関係を示す図である。
【図57】コントローラ50が実行する前後挙動伝達度基準値算出処理を示すフローチャートである。
【図58】アクセル開度ACCおよびブレーキ圧BRKと前後挙動伝達度基準値Kgx0との関係を示す図である。
【図59】コントローラ50が実行する上下挙動伝達度基準値算出処理を示すフローチャートである。
【図60】アクセル開度ACCおよびブレーキ圧BRKと上下挙動伝達度基準値Kgz0との関係を示す図である
【図61】コントローラ50が実行する操作力伝達度基準値算出処理を示すフローチャートである。
【図62】Gの絶対値|YG|と操作力伝達度基準値Kfy0との関係を示す図である。
【図63】コントローラ50が実行する情報伝達度最小値算出処理を示すフローチャートである。
【図64】車速と、車速に依存する情報伝達度Kv1との関係を示す図である。
【図65】車両周囲の明るさと、車両周囲の明るさに依存する情報伝達度Kbとの関係を示す図である。
【図66】車両周囲の明るさと、車両周囲の明るさに依存する情報伝達度Kb1との関係を示す図である。
【図67】ワイパーの作動状態に依存する情報伝達度KwおよびKw1の値を示す図である。
【図68】道路種別に依存する情報伝達度Krの値を示す図である。
【図69】コントローラ50が実行する情報伝達度算出処理を示すフローチャートである。
【図70】コントローラ50が実行する左右挙動伝達度算出処理を示すフローチャートである。
【図71】コントローラ50が実行する前後挙動伝達度算出処理を示すフローチャートである。
【図72】コントローラ50が実行する上下挙動伝達度算出処理を示すフローチャートである。
【図73】コントローラ50が実行する操作力伝達度算出処理を示すフローチャートである。
【図74】コントローラ50が実行する運転操作誘導処理を示すフローチャートである。
【図75】前方リスクポテンシャルRPaが高い場合の制御動作を示す模式図である。
【図76】前方リスクポテンシャルRPaが高い場合に付与されるアクセルペダル反力およびサスペンションストロークの振動の特性を示す図である。
【図77】後方リスクポテンシャルRPbが高い場合の制御動作を示す模式図である。
【図78】後方リスクポテンシャルRPbが高い場合に付与されるサスペンションストロークの振動の特性を示す図である。
【図79】右方リスクポテンシャルRPcあるいは左方リスクポテンシャルRPdが高い場合の制御動作を示す模式図である。
【図80】右方リスクポテンシャルRPcあるいは左方リスクポテンシャルRPdが高い場合に付与される操舵反力およびサスペンションストロークの振動の特性を示す図である。
【図81】応用例1において、コントローラ50が実行する運転操作誘導処理を示すフローチャートである。
【図82】コントローラ50が実行する運転操作誘導処理を示すフローチャートである。
【図83】前方リスクポテンシャルRPaが高い場合の制御動作を示す模式図である。
【図84】前方リスクポテンシャルRPaが高い場合に付与されるアクセルペダル反力および車体3の揺動ロール角の特性を示す図である。
【図85】コントローラ50が実行する運転操作誘導処理を示すフローチャートである。
【図86】コントローラ50が実行する運転操作誘導処理を示すフローチャートである。
【図87】コントローラ50が実行する運転操作誘導処理を示すフローチャートである。
【図88】運転操作誘導処理の第1のサブフローを示す図である。
【図89】運転操作誘導処理の第2のサブフローを示す図である。
【図90】運転操作誘導処理の第3のサブフローを示す図である。
【図91】運転操作誘導処理の第4のサブフローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図を参照して本発明を適用した自動車の実施の形態を説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る車両用運転操作補助装置1を備えた自動車1Aの概略構成図である。
図1において、自動車1Aは、車輪2FR,2FL,2RR,2RLと、車体3と、車体3と各車輪との間に設置された能動型のサスペンション4FR,4FL,4RR,4RLと、ステアリングホイール5と、ステアリングホイール5と操向輪である車輪2FR,2FLとの間に設置されたステアリング装置6と、アクセルペダル7と、ブレーキペダル8と、車体3の前後左右それぞれに設置され、車両の周囲を撮影するカメラ9F,9R,9SR,9SLとを備えており、自動車1Aに搭載された各種機器からの信号は、後述するコントローラ50に入力されている。
【0009】
図2は、自動車1Aの制御系統を示すシステム構成図である。
図2において、自動車1Aの制御系統は、レーザレーダ10と、カメラ9F,9R,9SR,9SLと、車速センサ30と、コントローラ50と、操舵反力制御装置60と、サーボモータ61,81,91と、舵角センサ62と、アクセルペダル反力制御装置80と、ブレーキペダル反力制御装置90と、駆動力制御装置100と、制動力制御装置110と、能動型のサスペンション4FR,4FL,4RR,4RLそれぞれに備えられたアクチュエータ120FR,120FL,120RR,120RLおよび車体上下加速度検出器130FR,130FL,130RR,130RLと、車両状態検出器140とを備えている。
【0010】
なお、これらのうち、レーザレーダ10、カメラ9F,9R,9SR,9SL、車速センサ30、コントローラ50、操舵反力制御装置60、サーボモータ61,81,91、舵角センサ62、アクセルペダル反力制御装置80、ブレーキペダル反力制御装置90、駆動力制御装置100、制動力制御装置110、アクチュエータ120FR,120FL,120RR,120RL、車体上下加速度検出器130FR,130FL,130RR,130RL、車両状態検出器140は、本発明に係る車両用運転操作補助装置1を構成している。
【0011】
レーザレーダ10は、車両の前方のグリル部もしくはバンパ部等に取り付けられ、水平方向に赤外光パルスを走査する。
レーザレーダ10は、前方にある複数の反射物(通常、前方車の後端)で反射された赤外光パルスの反射波を検出し、反射波の到達時間より、複数の前方車までの車間距離とその存在方向を検出する。検出した車間距離および存在方向はコントローラ50へ出力される。
【0012】
なお、本実施の形態において、前方物体の存在方向は、自車両正面に対する相対角度として表すことができる。レーザレーダ10によりスキャンされる前方の領域は、自車正面に対して±6deg程度であり、この範囲内に存在する前方物体が検出される。
また、レーザレーダ10は、前方車両までの車間距離およびその存在方向だけでなく、自車前方に存在する歩行者等の障害物までの相対距離およびその存在方向を検出する。
【0013】
カメラ9Fは、フロントウィンドウ上部に取り付けられた小型のCCD(Charge Coupled Devices)カメラ、またはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)カメラ等の撮像装置であり、前方道路の状況を画像として検出し、検出した画像をコントローラ50に出力する。カメラ9Fによる検知領域は水平方向に±30deg程度であり、この領域に含まれる前方道路風景が画像として取り込まれる。
【0014】
また、カメラ9SR,9SLは、それぞれ左右の後部ドア上部に取り付けられた小型のCCDカメラ、もしくはCMOSカメラ等の撮像装置である。カメラ9SR,9SLは、自車側方の状況、特に隣接車線上の状況を画像として検出し、検出した画像をコントローラ50に出力する。なお、カメラ9SR,9SLは、前方を撮影するカメラ9Fに比して、より広範な領域を撮影するため、その検知領域は水平方向に±60deg程度となっている。
【0015】
さらに、カメラ9Rは、リアウィンドウ上部に取り付けられた小型のCCDカメラ、またはCMOSカメラ等の撮像装置であり、後方道路の状況を画像として検出し、検出した画像をコントローラ50に出力する。カメラ9Rによる検知領域は、カメラ9Fと同様に、水平方向に±30deg程度であり、この領域に含まれる後方道路風景が画像として取り込まれる。
【0016】
車速センサ30は、車輪の回転数等から自車両の走行車速を検出し、検出した車速をコントローラ50へ出力する。
コントローラ50は、CPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)等のCPU周辺部品とから構成され、車両用運転操作補助装置1および自動車1Aの制御系統全体の制御を行う。
【0017】
コントローラ50は、車速センサ30から入力される自車速と、レーザレーダ10から入力される距離情報と、カメラ9F,9R,9SR,9SLから入力される車両周辺の画像情報とから、自車両周囲の障害物状況を検出する。
なお、コントローラ50は、カメラ9F,9R,9SR,9SLから入力される画像情報を画像処理することにより自車両周囲の障害物状況を検出する。
【0018】
ここで、自車両周囲の障害物状況としては、自車両前方を走行する他車両までの車間距離、隣接車線を自車両後方から接近する他車両の有無と接近度合、および車線識別線(白線)に対する自車両の左右位置、つまり相対位置と角度、さらに車線識別線の形状などを挙げることができる。また、自車両前方を横断する歩行者や二輪車等も障害物状況として検出される。
【0019】
コントローラ50は、検出した障害物状況に基づいて各障害物に対する自車両のリスクポテンシャル(障害物に対する自車両の接近度合を表す物理量)を算出する。さらに、コントローラ50は、それぞれの障害物に対するリスクポテンシャルを総合して自車両周囲の総合的なリスクポテンシャルを算出し、後述するようにリスクポテンシャルに応じて、車両の左右方向の制御(操舵反力あるいは操舵角の制御および操舵ゲインの制御)、前後方向(制駆動力の制御あるいはアクセルペダルとブレーキペダルの操作反力の制御)、上下方向(能動型サスペンションの減衰力、サスペンションストロークおよびばね定数の制御)について協調制御を行う。
【0020】
ここで、本実施形態においては、コントローラ50が、総合的なリスクポテンシャルに基づいて車両の前後、左右および上下方向の制御を行うものである。このとき、コントローラ50は、運転操作支援を行う上で、ノイズであると捉えられる路面状態および車両の挙動を運転者に伝達しないように制御し、運転操作支援を行う上で、適切な運転操作につながると捉えられる情報(路面状態および車両の挙動等)を運転者に伝達するように制御する。また、コントローラ50は、擬似的な車両挙動を発生させることにより、運転者の運転操作を誘導する。さらに、コントローラ50は、ノイズであると捉えられる路面状態および車両の挙動の伝達制御と、擬似的な車両挙動を発生させることによる運転操作の誘導制御とを、条件に応じて切り替えて実行する。
【0021】
具体的には、コントローラ50は、自車両に発生する制駆動力、運転操作のために運転者が操作する運転操作機器に発生する操作反力、および、能動型サスペンションの減衰特性を制御する。運転操作機器とは、例えば運転者が自車両を加速したり減速したりするときに操作するアクセルペダル7やブレーキペダル8、あるいは、運転者が自車両の方向転換を行うときに操作するステアリングホイール5である。
【0022】
能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLの減衰特性について、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLに備えられたダンパの圧力制御あるいはサスペンションストロークの制御を行う。
即ち、コントローラ50には、車体上下加速度検出器130FR,130FL,130RR,130RLから出力された上下加速度検出信号X”2FL〜X”2RRが入力される。
【0023】
そして、コントローラ50は、車体上下加速度検出信号X"に所定のゲインKmを乗算する。
また、コントローラ50は、車体上下加速度について設定されたゲインKnと車体上下加速度検出信号の積分値∫dtとを乗算する。さらに、コントローラ50は、これらの乗算結果を加算し、この加算結果を各能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLそれぞれのダンパにおける油圧制御用のアクチュエータ120FR,120FL,120RR,120RLの指令値とする。
【0024】
操舵反力制御装置60は、車両の操舵系に組み込まれ、コントローラ50からの指令に応じて、サーボモータ61で発生させるトルクを制御する。サーボモータ61は、操舵反力制御装置60からの指令値に応じて発生させるトルクを制御し、運転者がハンドルを操作する際に発生する操舵反力を目標値に制御することができる。
ここで、コントローラ50は、リスクポテンシャルに応じた操舵反力制御を行うが、リスクポテンシャルに応じて操舵反力を付与する場合、図3に示す減衰力算出制御マップを用いることができる。
【0025】
この場合、操舵角速度θ’および発生トルクTHから、操舵反力TRに付加する減衰力TDを算出する。この減衰力算出制御マップは、図3に示すように、横軸に操舵角速度θ’を、縦軸に減衰力TDをそれぞれとり、操舵角速度θ’が0(零)から正方向に増加するときに、これに比例して減衰力TD0(零)から負方向に減少し、一方、操舵角速度θ’が0(零)から負方向に減少するときに、これに比例して減衰力TDが0(零)から正方向に増加するように設定されている。さらに、発生トルクTHが大きいほど、操舵角速度θ’の増加率(または減少率)に対する減衰力TDの減少率(又は増加率)が大きくなるように構成されている。
【0026】
舵角センサ62は、ステアリングコラムもしくはステアリングホイール付近に取り付けられた角度センサ等であり、ステアリングシャフトの回転を操舵角として検出し、コントローラ50へ出力する。
アクセルペダル7には、アクセルペダル7の踏み込み量(操作量)を検出するアクセルペダルストロークセンサ(不図示)が設けられている。アクセルペダルストロークセンサによって検出されたアクセルペダル操作量はコントローラ50に出力される。
【0027】
アクセルペダル反力制御装置80は、コントローラ50からの指令に応じて、アクセルペダル82のリンク機構に組み込まれたサーボモータ81で発生させるトルクを制御する。サーボモータ81は、アクセルペダル操作反力制御装置80からの指令値に応じて発生させる反力を制御し、運転者がアクセルペダル82を操作する際に発生する踏力を目標値に制御することができる。
【0028】
ブレーキペダル8には、その踏み込み量(操作量)を検出するブレーキペダルストロークセンサ(不図示)が設けられている。ブレーキペダルストロークセンサによって検出されたブレーキペダル操作量もコントローラ50に出力される。
ブレーキペダル反力制御装置90は、コントローラ50からの指令に応じて、ブレーキブースタで発生させるブレーキアシスト力を制御する。ブレーキブースタは、ブレーキペダル反力制御装置90からの指令値に応じて発生させるブレーキアシスト力を制御し、運転者がブレーキペダル8を操作する際に発生する踏力を目標値に制御することができる。ブレーキアシスト力が大きいほどブレーキペダル操作反力は小さくなり、ブレーキペダル8を踏み込みやすくなる。
【0029】
駆動力制御装置100は、エンジンコントローラを有し、コントローラ50からの指令に応じてエンジントルクを制御する。
制動力制御装置110は、ブレーキ液圧コントローラを有し、コントローラ50からの指令に応じてブレーキ液圧を制御する。
車両状態検出器140は、横加速度センサ、ヨーレートセンサ、アクセル開度センサ、ブレーキ圧センサ等、自車両の状態を検出する各種センサを備えており、検出した横加速度(以下、適宜「横G」と称する。)、ヨーレート、アクセル開度ACCおよびブレーキ圧BRK等の検出値を、コントローラ50に出力する。
【0030】
(能動型サスペンション機構の具体的構成)
図4は、自動車1Aが有する能動型サスペンション機構の具体的な構成を示す図である。
図4において、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLは、それぞれ車体側部材12と各車輪2FR,2FL,2RR,2RLを個別に支持する車輪側部材14との間に介装された能動型サスペンションであって、アクチュエータ120FR,120FL,120RR,120RLと、コイルスプリング16FR,16FL,16RR,16RLと、アクチュエータ120FR,120FL,120RR,120RLに対する作動油圧をコントローラ50からの指令値にのみ応動して制御する圧力制御弁17FR,17FL,17RR,17RLとを備えている。また、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLは、圧力制御弁17FL〜17RRと油圧源24との間の油圧配管25の途中に接続した高圧側アキュムレータ28Hと、圧力制御弁17FL〜17RRと油圧シリンダ15FL〜15RRとの間の油圧配管27に絞り弁28Vを介して連通した低圧側アキュムレータ28Lとを備えている。
【0031】
ここで、アクチュエータ120FR,120FL,120RR,120RLのそれぞれは、そのシリンダチューブ15aが車体側部材12に取付けられ、ピストンロッド15bが車輪側部材14に取付けられ、ピストン15cによって閉塞された上側圧力室B内の作動油圧が圧力制御弁17FL〜17RRによって制御される。また、コイルスプリング16FL〜16RRのそれぞれは、車体側部材12と車輪側部材14との間にアクチュエータ120FR,120FL,120RR,120RLと並列に装着されて車体の静荷重を支持している。なお、これらコイルスプリング16FL〜16RRは、車体の静荷重を支えるのみの低いバネ定数のものでよい。
【0032】
圧力制御弁17FL〜17RRは、上側圧力室Bの圧力が上昇(又は減少)すると、これに応じて上側圧力室Bの圧力を減圧(又は昇圧)し、上向きの振動入力による上側圧力室Bの圧力上昇(又は下向きの振動入力による上側圧力室Bの圧力減少)を抑制する。これにより、車体側部材12に伝達される振動入力を低減することができる。
一方、車体3には、各車輪2FR,2FL,2RR,2RLの直上部に車体上下加速度検出器130FR,130FL,130RR,130RLが配設され、これら車体上下加速度検出器130FR,130FL,130RR,130RLの車体上下加速度検出信号X”2FL〜X”2RRがコントローラ50に入力される。
【0033】
コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLの圧力制御を行うサスペンション制御部50aを有している。
サスペンション制御部は、車体上下加速度検出信号X”2FL〜X”2RRそれぞれに所定のゲインKmを乗算するゲイン調整機能と、所定のゲインKnと車体上下加速度検出信号X”2FL〜X”2RRそれぞれとの積分値∫dtとを乗算する車体上下速度算出兼ゲイン調整機能と、ゲイン調整機能および車体上下速度算出兼ゲイン調整機能の出力を加算する加算機能とを有しており、加算機能による加算出力が圧力制御弁17FL〜17RRの指令値V4FL〜V4RRとして各圧力制御弁17FL〜17RRに供給される。
【0034】
コントローラ50のサスペンション制御部50aにおいては、図4に示すように、車体上下加速度検出値X"2FL〜X"2RRが積分器51に供給され、その積分値でなる車体上下速度検出値X’2FL〜X’2RRが所定のゲインKnが設定された増幅器52で増幅される。一方、車体上下加速度検出値X"2FL〜X"2RRは所定の増幅度Kmが設定された増幅器53に供給されて増幅され、増幅器52,53の増幅出力が加算器54に入力されて加算される。さらに、車体上下加速度検出値X"2FL〜X"2RRは、例えばウインドコンパレータの構成を有する比較器55にも供給され、この比較器55で上下加速度検出値X"2FL〜X"2RRが所定の上限値および下限値内に収まっているときに例えば論理値"1”の比較出力が出力され、この比較出力がタイマ回路56に供給される。このタイマ回路56は、論理値"1”の比較出力が所定時間継続しているか否かを判定し、所定時間継続している場合に、論理値"1”のリセット信号RSを積分器51に出力し、積分器51の蓄積データをリセットする。
【0035】
このような構成の能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLにおいて、コントローラ50のサスペンション制御部50aが車体上下加速度検出信号X”2FL〜X”2RRに関するゲインKmおよび車体上下速度検出値X’2FL〜X’2RRに関するゲインKnを変更することで、路面から車体3に入力される振動をほぼ打ち消すように制御したり、路面から車体3に入力される振動をそのまま伝えたりすることができる。また、路面入力に拠らない圧力制御弁17FL〜17RRの指令値V4FL〜V4RRを生成することで、路面からの振動を抑制する以外の動作(例えば、車体のロールあるいはピッチの制御)を能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLに行わせることもできる。
【0036】
(コントローラ50における処理)
次に、コントローラ50が実行する各種処理について説明する。
本実施形態において、自動車1Aは、車両用運転操作補助装置1によって運転操作補助を行う場合に、リスクポテンシャルRPに応じて能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLによる情報伝達の度合い(ノイズの低減度合い)を変化させるための情報伝達制御処理を実行可能である。また、自動車1Aは、リスクポテンシャルRPに応じて、運転者が自発的に運転行動を起こすように自車両の姿勢を変化させることにより、運転者の運転操作を促す運転操作誘導処理を実行可能である。そして、コントローラ50は、リスクポテンシャルRPを基に、車両前後方向および左右方向の制御量と対応付けて、車両上下方向の制御量を決定する協調制御処理を実行することにより、情報伝達制御処理による制御量および運転操作誘導処理による制御量を基に、自車両各部の制御量を決定する。
したがって、初めに、これらの制御において用いられるリスクポテンシャルRPを算出するためのリスクポテンシャル算出処理について説明する。
【0037】
(リスクポテンシャル算出処理)
図5は、コントローラ50が実行するリスクポテンシャル算出処理を示すフローチャートである。
コントローラ50は、車両用運転操作補助装置1による運転操作補助の開始を運転者が指示入力することに対応して、リスクポテンシャル算出処理を開始する。
図5において、リスクポテンシャル算出処理を開始すると、コントローラ50は、まず、自車両の走行状態を読み込む(ステップS1)。
【0038】
ここで、走行状態は、自車周囲の障害物状況を含む自車両の走行状況に関する情報である。具体的には、レーザレーダ10で検出される前方走行車までの相対距離および相対角度、また、前方カメラ9Fからの画像入力に基づく自車両に対する白線の相対位置(すなわち左右方向の変位と相対角度)、白線の形状および前方走行車までの相対距離と相対角度を読み込み、さらに、カメラ9R,9SR,9SLからの画像入力に基づく隣接車線後方に存在する走行車両までの相対距離および相対角度を読み込む。さらに、車速センサ30によって検出される車速を読み込む。また、カメラ9F,9R,9SR,9SLで検出される画像に基づいて、自車両周囲に存在する障害物の種別、つまり障害物が四輪車両、二輪車両、歩行者またはその他であるかを認識する。
【0039】
次に、コントローラ50は、ステップS1で読み込んだ走行状態のデータ(走行状態データ)に基づいて、現在の車両周囲状況を認識する(ステップS2)。
ここでは、前回の処理周期以前に検出し、不図示のメモリに記憶している自車両に対する各障害物の相対位置やその移動方向・移動速度と、ステップS1で得られた現在の走行状態データとにより、現在の各障害物の自車両に対する相対位置やその移動方向・移動速度を認識する。そして、自車両の走行に対して障害物となる他車両や白線が、自車両の周囲にどのように配置され、相対的にどのように移動しているかを認識する。
【0040】
次に、コントローラ50は、ステップS2において認識した各障害物に対する余裕時間TTC(Time To Collision)を障害物毎に算出する(ステップS3)。
障害物kに対する余裕時間TTCkは、次式(1)で求めることができる。
TTCk=(Dk−σ(Dk))/(Vrk+σ(Vrk)) (1)
ここで、Dk:自車両から障害物kまでの相対距離、Vrk:自車両に対する障害物kの相対速度、σ(Dk):相対距離のばらつき、σ(Vrk):相対速度のばらつき、をそれぞれ示す。
【0041】
相対距離、相対速度のばらつきσ(Dk)、σ(Vrk)は、検出器の不確定性や不測の事態が発生した場合の影響度合の大きさを考慮して、障害物kを認識したセンサの種類や、認識された障害物kの種別に応じて設定する。
レーザレーダ10は、カメラ、例えばCCD等によるカメラ9F,9R,9SR,9SLによる障害物の検出と比べて、検出距離、つまり自車両と障害物との相対距離の大きさによらず正しい距離を検出することができる。
【0042】
そこで、レーザレーダ10で障害物kまでの相対距離Dkを検出した場合は、相対距離Dkによらず、そのばらつきσ(Dk)をほぼ一定値に設定する。
一方、カメラ9F,9R,9SR,9SLで相対距離Dkを検出した場合は、相対距離Dkが大きくなるほどばらつきσ(Dk)が指数関数的に増加するように設定する。ただし、障害物kの相対距離Dkが小さい場合、レーザレーダで相対距離Dkを検出した場合に比べて、カメラによってより正確に相対距離を検出することができるので、相対距離のばらつきσ(Dk)を小さく設定する。
【0043】
例えば、レーザレーダ10で相対距離Dkを検出した場合、相対速度Vrkのばらつきσ(Vrk)は、相対速度Vrkに比例して大きくなるように設定する。一方、カメラ9F,9R,9SR,9SLで相対距離Dkを検出した場合、相対速度Vrkが大きくなるほど相対速度のばらつきσ(Vrk)が指数関数的に増加するように設定する。
カメラ9F,9R,9SR,9SLによって障害物状況を検出した場合、検出画像に画像処理を行うことによって障害物の種別を認識することができる。そこで、カメラ9F,9R,9SR,9SLによって障害物状況を検出した場合は、認識される障害物の種別に応じて相対距離、相対速度のばらつきσ(Dk)、σ(Vrk)を設定する。
【0044】
カメラ9F,9R,9SR,9SLによる相対距離Dkの検出は、障害物kの大きさが大きいほどその検出精度が高いため、障害物が四輪車両である場合の相対距離のばらつきσ(Dk)を二輪車両や歩行者の場合のばらつきσ(Dk)に比べて小さく設定する。
一方、相対速度のばらつきσ(Vrk)は、障害物k毎に想定される移動速度が大きいほど、ばらつきσ(Vrk)が大きくなるように設定する。つまり、四輪車両の移動速度は二輪車両や歩行者の移動速度よりも大きいと想定されるので、相対速度Vrkが同じ場合、障害物kが四輪車両である場合のばらつきσ(Vrk)は、二輪車両や歩行者の場合のばらつきσ(Vrk)に比べて大きく設定する。
【0045】
なお、レーザレーダ10とカメラ9F,9R,9SR,9SLの両方で障害物kを検出した場合は、例えば、値の大きな方のばらつきσ(Dk)、σ(Vrk)を用いてその障害物kに対する余裕時間TTCkを算出することができる。
次に、コントローラ50は、ステップS3で算出した余裕時間TTCkを用いて、各障害物kに対するリスクポテンシャルRPkを算出する(ステップS4)。
ここで、各障害物kに対するリスクポテンシャルRPkは次式(2)で求められる。
RPk=(1/TTCk)×wk (2)
ここで、wk:障害物kの重みを示す。
(2)式に示すように、リスクポテンシャルRPkは余裕時間TTCkの逆数を用いて、余裕時間TTCkの関数として表されており、リスクポテンシャルRPkが大きいほど障害物kへの接近度合が大きいことを示している。
【0046】
障害物k毎の重みwkは、検出された障害物の種別に応じて設定する。例えば、障害物kが四輪車両、二輪車両あるいは歩行者である場合、自車両が障害物kに近接した場合の重要度、つまり影響度が高いため、重みwk=1に設定する。一方、障害物kが、路面に設置されたレーンマーカー等、接触しない対象物である場合には、重みwk=0.5に設定する。
【0047】
次に、コントローラ50は、ステップS4で算出した障害物k毎のリスクポテンシャルRPkから、車両前後方向の成分を抽出して加算し、車両周囲に存在する全障害物に対する総合的な前後方向リスクポテンシャルを算出する(ステップS5)。
前後方向リスクポテンシャルRPlongitudinalは、次式(3)で算出される。
RPlongitudinal=Σk(RPk×cosθk) (3)
ここで、θk:自車両に対する障害物kの存在方向を示し、障害物kが車両前方向、つまり自車正面に存在する場合、θk=0とし、障害物kが車両後方向に存在する場合、θk=180とする。
【0048】
なお、このとき、コントローラ50は、自車両前方(θ=0〜90,270〜360の範囲)におけるリスクポテンシャル(以下、「前方リスクポテンシャルRPa」と称する。)と、自車両後方(θ=90〜270の範囲)におけるリスクポテンシャル(以下、「後方リスクポテンシャルRPb」と称する。)をそれぞれ取得する。
続いて、コントローラ50は、ステップS4で算出した障害物k毎のリスクポテンシャルRPkから、車両左右方向の成分を抽出して加算し、車両周囲に存在する全障害物に対する総合的な左右方向リスクポテンシャルを算出する(ステップS6)。
【0049】
左右方向リスクポテンシャルRPlateralは、次式(4)で算出される。
RPlateral=Σk(RPk×sinθk) (4)
なお、このとき、コントローラ50は、自車両右方(θ=0〜180の範囲)におけるリスクポテンシャル(以下、「右方リスクポテンシャルRPc」と称する。)と、自車両左方(θ=180〜360の範囲)におけるリスクポテンシャル(以下、「左方リスクポテンシャルRPd」と称する。)をそれぞれ取得する。
【0050】
さらに、コントローラ50は、ステップS4で算出した障害物k毎のリスクポテンシャルRPkを全ての障害物kについて合計し、車両周囲の総合的なリスクポテンシャルRPを算出する(ステップS7)。
ステップS7の後、コントローラ50は、運転操作補助の終了を運転者が指示入力するまで、リスクポテンシャル算出処理を繰り返す。
なお、コントローラ50は、リスクポテンシャル算出処理において算出したリスクポテンシャルRP等のパラメータを、不図示のメモリに格納し、他の処理において利用可能な状態とする。
【0051】
(協調制御処理)
次に、情報伝達制御処理および運転操作誘導処理に対して上位の制御となる協調制御処理について説明する。
図6は、コントローラ50が実行する協調制御処理を示すフローチャートである。
コントローラ50は、車両用運転操作補助装置1による運転操作補助の開始を運転者が指示入力することに対応して、協調制御処理を開始する。
図6において、協調制御処理を開始すると、コントローラ50は、リスクポテンシャル算出処理において算出したリスクポテンシャルRPに基づいて、情報伝達制御処理および運転操作誘導処理の重み付けを設定する(ステップT1)。
情報伝達制御処理および運転操作誘導処理の重み付けは、情報伝達制御処理によって算出される制御量と、運転操作誘導処理によって算出される制御量とを総合的な制御量に算入する際の比率を示すものであり、リスクポテンシャルRPに応じて設定される。
【0052】
図7は、リスクポテンシャルRPと運転操作誘導処理の重みとの関係を示す図である。
図7において、横軸はリスクポテンシャルRPを示し、縦軸は運転操作誘導処理の重みを示している。
図7に示すように、リスクポテンシャルRPが大きくなるほど、運転操作誘導処理の重みは増加し、最大値1で飽和している。運転操作誘導処理の重みと、情報伝達制御処理の重みとは、合計で1となるように設定しているため、運転操作誘導処理の重みが1である場合、情報伝達制御処理の重みは0となる。反対に、情報伝達制御処理の重みが1である場合、運転操作誘導処理の重みは0となる。
【0053】
また、図7において、破線および一点鎖線で示すように、車両の安定度が高い場合には、運転操作誘導処理の重みが高くなるように特性を変化させたり、車両の安定度が低い場合には、情報伝達制御処理の重みが高くなるように特性を変化させたりすることができる。
次に、コントローラ50は、情報伝達制御処理および運転操作誘導処理をそれぞれ実行する(ステップT2,T3)。
このとき、何れかの処理の重みが0となっている場合には、その処理の実行をスキップする。
そして、コントローラ50は、情報伝達制御処理によって算出された制御量と、運転操作誘導処理によって算出された制御量とを、ステップT1において設定した重み付けに従って加算し、自車両各部の総合的な制御量を算出する(ステップT4)。
【0054】
ここで算出される制御量としては、例えば、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLのサスペンションストローク、減衰力、ばね定数、操舵角、操舵反力、操舵入力に対するゲイン、制駆動力操作反力等が挙げられる。
さらに、コントローラ50は、ステップT4において算出した自車両各部の総合的な制御量で、自車両の制御を実行する(ステップT5)。
ステップT5の後、コントローラ50は、協調制御処理を繰り返す。
【0055】
(情報伝達制御処理)
次に、協調制御処理のステップT2においてコントローラ50が実行する情報伝達制御処理について説明する。
情報伝達制御処理は、車両用運転操作補助装置1によって運転操作補助を行う場合に、リスクポテンシャルRPに応じて能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLによる情報伝達の度合い(ノイズの低減度合い)を変化させるための処理である。
【0056】
図8は、コントローラ50が実行する情報伝達制御処理を示すフローチャートである。
コントローラ50は、運転者の指示入力に応じて情報伝達制御処理の実行を開始する。
図8において、情報伝達制御処理を開始すると、コントローラ50は、リスクポテンシャル算出処理において算出したリスクポテンシャルRPが、リスクポテンシャルについて設定された閾値RP0より大きいか否かの判定を行う(ステップS101)。
【0057】
ステップS101において、リスクポテンシャルRPが閾値RP0より大きいと判定した場合、コントローラ50は、情報伝達制御の基準値α0を算出する(ステップS102)。
情報伝達制御の基準値α0は、リスクポテンシャルRPに対応して定められる制御のためのパラメータである。具体的には、この基準値α0は0〜1の間の値を取り、基準値α0の値が大きいほど、路面からの振動を打ち消す度合いを高め、基準値α0の値が小さいほど、路面からの振動を打ち消すことなく運転者に伝えるものとなる。
【0058】
図9は、リスクポテンシャルRPと情報伝達制御の基準値α0との関係を示す図である。
図9において、リスクポテンシャルRPが閾値RP0より大きくなると、リスクポテンシャルRPの増加に伴って、情報伝達制御の基準値α0も増加している。また、情報伝達制御の基準値α0は、最大値が1に設定されており、リスクポテンシャルRPの増加に対し、最大値1で飽和する。
ステップS101において、リスクポテンシャルRPが閾値RP0以下であると判定した場合、コントローラ50は、情報伝達制御の基準値α0を0に設定(α0=0)する(ステップS103)。
ステップS102およびステップS103の後、コントローラ50は、運転者が実行の停止を指示入力するまで、情報伝達制御処理を繰り返す。
【0059】
ステップS102およびステップS103において算出した情報伝達制御の基準値α0は、自動車1Aにおいて通常行っている能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLの制御に対し、付加的な制御を行う度合いを示すパラメータとしてコントローラ50が用いるものである。
本実施形態において、情報伝達制御処理が実行されていない状態では、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLによって路面からの振動を一定の割合で軽減(例えば路面からの入力のうち70%を軽減)する制御を行っている。
【0060】
情報伝達制御処理を実行することにより、コントローラ50は、情報伝達制御処理を実行していない場合における振動の軽減割合を変更し、情報伝達制御の基準値α0に対応する振動の軽減割合に能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLを制御する。
具体的には、コントローラ50は、情報伝達制御の基準値α0の値が大きいほど、路面からの振動を打ち消す度合いを高くし、情報伝達制御の基準値α0の値が小さいほど、路面からの振動を打ち消すことなく、運転者に伝えるように制御する。
【0061】
また、情報伝達制御の基準値α0は、リスクポテンシャルRPの増加に伴って増加する傾向に設定している。
そのため、本実施形態における自動車1Aは、リスクポテンシャルRPの増加に応じて、路面からの振動をより強く打ち消す制御を行う。
これにより、自車両周囲に、運転を行う上で高い注意を払う必要がある障害物が存在する場合に、路面からの振動が打ち消され、運転操作支援のために付与される操舵操作の反力等、運転者が運転を行う際に有用な情報を選択して伝達することができる。
【0062】
(運転操作誘導処理)
次に、コントローラ50が実行する運転操作誘導処理について説明する。
運転操作誘導処理は、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLを制御して自車両の姿勢を変化させ、運転者に擬似的な感覚を与えることによって運転操作を促すための処理である。
図10は、コントローラ50が実行する運転操作誘導処理を示すフローチャートである。
コントローラ50は、運転者の指示入力に応じて運転操作誘導処理の実行を開始する。
図10において、運転操作誘導処理を開始すると、コントローラ50は、リスクポテンシャル算出処理において算出した前後および左右方向のリスクポテンシャルRPa、RPb,RPc,RPdを取得する(ステップP101)。
【0063】
次に、コントローラ50は、ステップP101において取得した前後および左右方向のリスクポテンシャルRPa、RPb,RPc,RPdが、それぞれについて設定された閾値RPa0,RPb0,RPc0,RPd0を超えているか否かの判定を行う(ステップP102)。
ステップP102において、前後および左右方向のリスクポテンシャルRPa、RPb,RPc,RPdのいずれも、それぞれについて設定された閾値RPa0、RPb0,RPc0,RPd0を超えていないと判定した場合、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
【0064】
また、ステップP102において、前方リスクポテンシャルRPaが閾値RPa0を超えていると判定した場合、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4FLのサスペンションストロークを前方リスクポテンシャルRPaに応じて変化させる(ステップP103)。また、ステップP103において、コントローラ50は、アクセルペダル7の操作反力を前方リスクポテンシャルRPaに応じて増加させる。
ステッP103の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
【0065】
図11は、前方リスクポテンシャルRPaが高い場合の制御動作を示す模式図である。
また、図12は、前方リスクポテンシャルRPaが高い場合に付与されるアクセルペダル反力および車体ピッチ角βの特性を示す図である。
図11および図12において、前方リスクポテンシャルRPaが閾値RPa0より高い場合、図12(a)に示すように、アクセルペダル反力が前方リスクポテンシャルRPaに応じて強くなり、アクセルペダル7を踏み増しにくい状態となる。また、図11に示すように、能動型サスペンション4FR,4FLのサスペンションストロークが前方リスクポテンシャルRPaに応じて変化される。これにより、運転者に対して、自動車1Aが加速しているような感覚を与えることができる。また、このとき、図12(b)に示すように、ピッチ角(車体の後傾傾斜角)βは前方リスクポテンシャルRPaに応じて大きくなり、運転者に対して、前方リスクポテンシャルRPaが大きいほど、自動車1Aがより強く加速しているような感覚を与えることができる。
【0066】
このような運転操作の誘導を行うことにより、運転者に対して減速操作を促すことができる。
そして、運転者が減速操作を行うと、前方リスクポテンシャルRPaが減少し、ステップP103における運転操作の誘導が停止される。
また、ステップP102において、後方リスクポテンシャルRPbが閾値RPb0を超えていると判定した場合、コントローラ50は、能動型サスペンション4RR,4RLのサスペンションストロークを後方リスクポテンシャルRPbに応じて変化させる(ステップP104)。
ステッP104の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
【0067】
図13は、後方リスクポテンシャルRPbが高い場合の制御動作を示す模式図である。
また、図14は、後方リスクポテンシャルRPbが高い場合に付与される車体ピッチ角γの特性を示す図である。
図13および図14において、後方リスクポテンシャルRPbが閾値RPb0より高い場合、図13に示すように、能動型サスペンション4RR,4RLのサスペンションストロークが前方リスクポテンシャルRPbに応じて変化される。これにより、運転者に対して、自動車1Aが減速しているような感覚を与えることができる。また、このとき、図14に示すように、ピッチ角(車体の前傾傾斜角)γは後方リスクポテンシャルRPbに応じて大きくなり、運転者に対して、後方リスクポテンシャルRPbが大きいほど、自動車1Aがより強く加速しているような感覚を与えることができる。
【0068】
このような運転操作の誘導を行うことにより、運転者に対して加速操作を促すことができる。
そして、運転者が加速操作を行うと、後方リスクポテンシャルRPbが減少し、ステップP104における運転操作の誘導が停止される。
また、ステップP102において、右方リスクポテンシャルRPcが閾値RPc0を超えていると判定した場合、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4RRのサスペンションストロークを右方リスクポテンシャルRPcに応じて変化させる(ステップP105)。
【0069】
ステッP105の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
また、ステップP102において、左方リスクポテンシャルRPdが閾値RPd0を超えていると判定した場合、コントローラ50は、能動型サスペンション4FL,4RLのサスペンションストロークを左方リスクポテンシャルRPdに応じて変化させる(ステップP106)。
ステッP106の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
【0070】
図15は、右方リスクポテンシャルRPcあるいは左方リスクポテンシャルRPdが高い場合の制御動作を示す模式図である。なお、図15においては、車両を後方から見た図を示しており、右方リスクポテンシャルRPcが高い場合を例に挙げている。
また、図16は、右方リスクポテンシャルRPcあるいは左方リスクポテンシャルRPdが高い場合に付与される操舵反力および車体ロール角δの特性を示す図である。
【0071】
図15および図16において、右方リスクポテンシャルRPcが閾値RPc0より高い場合、図16(a)に示すように、操舵反力が右方リスクポテンシャルRPcに応じて強くなり、右方向への操舵を切り増しにくい状態となる。また、図15に示すように、能動型サスペンション4FR,4RRのサスペンションストロークが右方リスクポテンシャルRPcに応じて変化される。これにより、運転者に対して、自動車1Aが右旋回して車体3が左にロールしているような感覚を与えることができる。また、このとき、図16(b)に示すように、ロール角(車体の左右傾斜角)δは右方リスクポテンシャルRPcに応じて大きくなり、運転者に対して、右方リスクポテンシャルRPcが大きいほど、自動車1Aがより強く右旋回しているような感覚を与えることができる。
【0072】
このような運転操作の誘導を行うことにより、運転者に対して左方向への操舵操作を促すことができる。
そして、運転者が左方向への操舵操作を行うと、右方リスクポテンシャルRPcが減少し、ステップP104における運転操作の誘導が停止される。
同様に、左方リスクポテンシャルRPdが高い場合には、操舵反力が左方リスクポテンシャルRPdに応じて強くなり、左方向への操舵を切り増しにくい状態となる。また、能動型サスペンション4FL,4RLのサスペンションストロークが左方リスクポテンシャルRPdに応じて変化される。これにより、運転者に対して、自動車1Aが左旋回して車体3が右にロールしているような感覚を与えることができる。また、このとき、ロール角(車体の左右傾斜角)δは左方リスクポテンシャルRPdに応じて大きくなり、運転者に対して、左方リスクポテンシャルRPdが大きいほど、自動車1Aがより強く左旋回しているような感覚を与えることができる。
【0073】
このような運転操作の誘導を行うことにより、運転者に対して右方向への操舵操作を促すことができる。
ここで、運転操作誘導処理において、前後方向のリスクポテンシャルRPa,RPbのいずれも閾値RPa0,RPb0を超えている場合には、前後方向のうち、閾値を超えている絶対量が大きい方の制御を優先する、あるいは、いずれも制御を行わないといった方法とすることができる。
また、運転操作誘導処理において、左右方向のリスクポテンシャルRPc,RPdのいずれも閾値RPc0,RPd0を超えている場合には、左右方向のうち、閾値を超えている絶対量が大きい方の制御を優先する、あるいは、いずれも制御を行わないといった方法とすることができる。
【0074】
(車両前後方向の運転操作補助処理)
次に、自動車1AがリスクポテンシャルRPに応じて実行する車両前後方向の運転操作補助処理について説明する。
車両前後方向の運転操作補助処理は、自動車1Aにおける基本的な制御として実行されている。したがって、協調制御処理による制御は、車両前後方向の運転操作補助処理に対する付加的な制御として実行されるものである。
図17は、車両前後方向の運転操作補助処理を示すフローチャートである。
コントローラ50は、車両用運転操作補助装置1による運転操作補助の開始を運転者が指示入力することに対応して、車両前後方向の運転操作補助処理を開始する。
【0075】
図17において、車両前後方向の運転操作補助処理が開始されると、コントローラ50は、リスクポテンシャル算出処理で算出した前後方向のリスクポテンシャルRPlongitudinalに基づいて、目標制駆動力およびアクセルペダル反力制御指令値を算出する際に用いる制御反発力Fcを算出する(ステップS201)。
このとき、図18(a)に示すように、自車両の前方に仮想的な弾性体200を設けたと仮定し、この仮想的な弾性体が前方障害物に当たって圧縮され、自車両に対する擬似的な走行抵抗を発生するというモデルを考える。ここで、制御反発力Fcは、図18(b)に示すように仮想弾性体200が先行車に当たって圧縮された場合の反発力と定義する。
【0076】
例えば、コントローラ50は、前後方向のリスクポテンシャルRPlongitudinalについて、閾値RPL1を設定し、前後方向のリスクポテンシャルRPlongitudinalが閾値RPL1を超えた場合には、RPlongitudinalとRPL1との差に比例した制御反発力Fcを次式(5)に従って算出する。
Fc=Kl・(RPlongitudinal−RPL1) (5)
(5)式は、前後方向のリスクポテンシャルRPlongitudinalを図18(a)における弾性体200の変位とみなし、弾性体200の変位に比例した制御反発力Fcを算出することを意味している。そのため、(5)式におけるKlは、弾性体200のばね定数に相当する係数である。
【0077】
次に、コントローラ50は、ステップS201で算出した制御反発力Fcを用いて、制駆動力制御を行う際に出力する制御用駆動力Fa_outおよび制御用制動力Fb_outを算出する(ステップS202)。
続いて、コントローラ50は、ステップS201で算出した制御反発力Fcに基づいて、アクセルペダル7に発生する操作反力の制御量、すなわちアクセルペダル反力制御指令値FAを算出する(ステップS203)。
【0078】
さらに、コントローラ50は、ステップS202で算出した制御用駆動力Fa_out、および制御用制動力Fb_outをそれぞれ駆動力制御装置100、および制動力制御装置110に出力する(ステップS204)。
これにより、駆動力制御装置100のエンジンコントローラが、コントローラ50からの指令に応じてエンジントルクを制御する。また、制動力制御装置110のブレーキ液圧コントローラが、コントローラ50からの指令に応じてブレーキ液圧を制御する。
【0079】
次いで、コントローラ50は、ステップS203で算出したアクセルペダル反力制御指令値FAをアクセルペダル反力制御装置80に出力する(ステップS205)。
これにより、アクセルペダル反力制御装置70が、アクセルペダル操作量SAに応じた通常の反力特性に、コントローラ50から入力される指令値に応じた反力を付加するようにアクセルペダル反力を制御する。
ステップS205の後、コントローラ50は、運転者が実行の停止を指示入力するまで、車両前後方向の運転操作補助処理を繰り返す。
【0080】
(車両左右方向の運転操作補助処理)
次に、自動車1AがリスクポテンシャルRPに応じて実行する車両左右方向の運転操作補助処理について説明する。
車両左右方向の運転操作補助処理は、自動車1Aにおける基本的な制御として実行されている。したがって、協調制御処理による制御は、車両左右方向の運転操作補助処理に対する付加的な制御として実行されるものである。
図19は、車両左右方向の運転操作補助処理を示すフローチャートである。
コントローラ50は、車両用運転操作補助装置1による運転操作補助の開始を運転者が指示入力することに対応して、車両左右方向の運転操作補助処理を実行する。
【0081】
図19において、車両左右方向の運転操作補助処理が開始されると、コントローラ50は、リスクポテンシャル算出処理で算出した車両左右方向のリスクポテンシャルRPlateralに基づいて、車両左右方向の成分を抽出して加算し、車両周囲に存在する全障害物に対する総合的な左右方向リスクポテンシャルを算出する(ステップS301)。
さらに、コントローラ50は、ステップS301で算出した左右方向のリスクポテンシャルから、左右方向制御指令値、すなわち操舵反力制御装置60への操舵反力制御指令値FSを算出する(ステップS302)。
【0082】
ここでは、車両左右方向のリスクポテンシャルRPlateralに応じて、リスクポテンシャルRPlateralが大きいほど、ハンドル操舵角を戻す方向、つまりハンドルを中立位置へと戻す方向へ大きな操舵反力を発生させる。
次いで、コントローラ50は、ステップS302で算出した左右方向制御指令値FSを操舵反力制御装置60に出力する(ステップS303)。
ステップS303の後、コントローラ50は、運転者が実行の停止を指示入力するまで、車両左右方向の運転操作補助処理を繰り返す。
【0083】
(動作)
次に、動作を説明する。
自動車1Aにおいて、基本的な制御として、リスクポテンシャル算出処理によって算出したリスクポテンシャルを基に、車両前後方向および車両左右方向の運転操作補助処理に基づく操舵反力および制駆動力操作反力についての制御が行われている。
そして、運転者が自動車1Aに対して協調制御処理の実行を指示入力すると、自動車1Aは、協調制御処理の実行を開始する。
すると、自動車1Aは、情報伝達制御処理および運転操作誘導処理を実行し、各処理に対応する制御量を算出する。
そして、自動車1Aは、これらの制御量を、リスクポテンシャルRPに対応する重み付けに従って、重み付け加算する。
【0084】
これにより得られた加算結果を総合的な制御量として、自動車1Aは、自車両各部の制御を実行する。
具体的には、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLについて、路面からの振動を抑制する制御と、運転者に加減速あるいは旋回を感じさせる制御とを配分した総合的な制御量によって制御を実行する。
【0085】
また、運転操作誘導処理を実行している自動車1Aの走行中は、走行状態に応じて、リスクポテンシャル算出処理によって算出されるリスクポテンシャルが随時変動する。
そのため、情報伝達制御処理による制御量と、運転操作誘導処理による制御量との重み付けは、自車両周囲の障害物状況によって変化されながら、自動車1Aの制御を行う。
このような動作により、運転操作に有用な情報を適切に抑制して運転者に伝えながら、リスクポテンシャルが低くなる方向へ運転者の運転操作を誘導することができる。
【0086】
以上のように、本実施形態に係る自動車1Aは、運転者に情報伝達を行うための情報伝達制御処理による制御と、運転者の運転操作を誘導するための運転操作誘導処理による制御とを、リスクポテンシャルに応じて重み付けすることで、総合的な制御を実行する。
そのため、自車両周囲の障害物状況に応じて、運転操作に有用な情報を適切に抑制して運転者に伝えながら、リスクポテンシャルが低くなる方向へ運転者の運転操作を誘導することができる。
したがって、運転者に対し、より適切に車両の運転操作の支援を行うことが可能となる。
【0087】
なお、本実施形態において、ステアリングホイール5、アクセルペダル7およびブレーキペダル8が運転操作手段に対応し、車体上下加速度検出器130FR,130FL,130RR,130RLが走行路状態検出手段に対応する。また、車速センサ30、車両状態検出器140および車体上下加速度検出器130FR,130FL,130RR,130RLが車両状態検出手段に対応し、カメラ9F,9R,9SR,9SLおよびコントローラ50が障害物検出手段に対応する。また、コントローラ50がリスクポテンシャル算出手段、情報伝達制御手段、擬似車両挙動発生手段および協調制御手段に対応し、操舵反力制御装置60、アクセルペダル反力制御装置80およびブレーキペダル反力制御装置90が操作反力付与手段に対応する。また、コントローラ50および能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLが動作制御手段および能動型のサスペンションに対応する。
【0088】
(第1実施形態の効果)
(1)情報伝達制御手段が、自車両に生じている車両挙動を、リスクポテンシャルの大きさに応じて抑制して、外乱情報を運転者に伝達する制御量を算出する。
擬似車両挙動発生手段が、リスクポテンシャルが増大する運転操作を行った場合の車両挙動を、動作制御手段を制御することによって擬似的に発生させるための制御量を算出する。
協調制御手段が、情報伝達制御手段によって算出された制御量と、擬似車両挙動発生手段によって算出された制御量とに基づいて、車両を制御する。
そのため、自車両周囲の障害物状況に応じて、運転操作に有用な外乱情報を適切に抑制して運転者に伝えながら、リスクポテンシャルが低くなる方向へ運転者の運転操作を誘導することができる。
したがって、運転者に対し、より適切に車両の運転操作の支援を行うことが可能となる。
【0089】
(2)協調制御手段は、情報伝達制御手段によって算出された制御量と、擬似車両挙動発生手段によって算出された制御量とを、リスクポテンシャルに応じて重み付け加算し、その加算結果によって車両を制御する。
したがって、自車両周囲の障害物状況に応じた重み付けによって、運転操作に有用な情報を適切に抑制して運転者に伝えながら、リスクポテンシャルが低くなる方向へ運転者の運転操作を誘導することができる。
【0090】
(3)協調制御手段は、情報伝達制御手段によって算出された制御量と、擬似車両挙動発生手段によって算出された制御量とを重み付け加算する際に、リスクポテンシャルが大きくなるほど、擬似車両挙動発生手段によって算出された制御量の重みを大きくする。
したがって、リスクポテンシャルが大きいほど、運転者に対し、路面状況を正確に伝えることができる。
(4)協調制御手段は、情報伝達制御手段によって算出された制御量と、擬似車両挙動発生手段によって算出された制御量とを重み付け加算する際に、自車両の安定度が低いほど、情報伝達制御手段によって算出された制御量の重みを大きくする。
【0091】
(5)操舵反力付与手段、動作制御手段を制御して自車両に生じている車両挙動を抑制するため、車両前後、左右および上下方向の挙動を抑制して運転者に伝達することができる。
(6)リスクポテンシャルが大きいほど、自車両に生じている車両挙動を大きく抑制して運転者に伝達する。
そのため、自車両周囲の障害物状況が低下するほど、障害物を避けるための運転操作支援に関する反力を効果的に伝えることができる。
【0092】
(7)能動型のサスペンションによってリスクポテンシャルに応じて車両挙動を抑制した状態で、リスクポテンシャルに応じた操作反力を付与するため、運転者に対し、より適切に車両の運転操作のための情報を伝達することができる。
(8)擬似車両挙動発生手段が、加減速操作あるいは操舵操作を行った場合に発生する車両挙動を擬似的に発生させるため、運転者に対して、それを抑制する運転操作を促すことができる。
【0093】
(9)擬似車両挙動発生手段は、自車両の前後方向におけるリスクポテンシャルに対し、車体を前傾あるいは後傾させるように前記サスペンション装置を制御する。
したがって、運転者に擬似的な加速度あるいは減速度を感じさせることができる。
(10)擬似車両挙動発生手段は、自車両の左右方向におけるリスクポテンシャルに対し、車体をロールさせるようにサスペンション装置を制御する。
したがって、運転者に擬似的な旋回状態を感じさせることができる。
【0094】
(11)擬似車両挙動発生手段は、動作制御手段としてのサスペンション装置のサスペンションストローク、減衰力およびばね定数と、操舵反力付与手段が操舵操作手段に付与する操舵反力と操舵操作に対して付与する操舵反力のゲインとを制御する。
そのため、車両上下方向および前後左右方向の挙動を利用して、運転者に対し、より適切に車両の運転操作の支援を行うことができる。
【0095】
(12)自車両の状態と、自車両周囲の障害物の状態とに基づいて、自車両に生じている車両挙動を抑制して伝達し、自車両の状態および自車両周囲の障害物の状態とに基づく操舵反力および制駆動操作反力を付与する情報伝達制御と、自車両の状態と、自車両周囲の障害物の状態とに基づいて、自車両周囲に存在する障害物に対するリスクポテンシャルを算出し、算出した前記リスクポテンシャルに基づいて、リスクポテンシャルが増大する運転操作を行った場合の車両挙動を擬似的に発生させる運転操作誘導処理とに基づく制御量によって、車両を制御する車両用運転操作補助方法である。
これにより、自車両周囲の障害物状況に応じて、運転操作に有用な外乱情報を適切に抑制して運転者に伝えながら、リスクポテンシャルが低くなる方向へ運転者の運転操作を誘導することができる。
したがって、運転者に対し、より適切に車両の運転操作の支援を行うことが可能な車両用運転操作補助方法とできる。
【0096】
(13)情報伝達制御手段が、自車両に生じている車両挙動を、リスクポテンシャルの大きさに応じて抑制して、外乱情報を運転者に伝達する制御量を算出する。
擬似車両挙動発生手段が、リスクポテンシャルが増大する運転操作を行った場合の車両挙動を、動作制御手段を制御することによって擬似的に発生させるための制御量を算出する。
協調制御手段が、情報伝達制御手段によって算出された制御量と、擬似車両挙動発生手段によって算出された制御量とに基づいて、車両を制御する。
そのため、自車両周囲の障害物状況に応じて、運転操作に有用な外乱情報を適切に抑制して運転者に伝えながら、リスクポテンシャルが低くなる方向へ運転者の運転操作を誘導することができる。
したがって、運転者に対し、より適切に車両の運転操作の支援を行うことが可能な自動車とできる。
【0097】
(応用例1)
第1実施形態において、図7に破線および一点鎖線で示したように、車両の安定度が高い場合には、運転操作誘導処理の重みが高くなるように特性を変化させ、車両の安定度が低い場合には、情報伝達制御処理の重みが高くなるように特性を変化させることができる。
即ち、コントローラ50によって、自車両の安定度を算出し、算出した安定度に応じて、図7の重み付け特性を変化させることができる。
この場合、例えば、自車両が不安定であるほど、情報伝達制御処理の効果を大きくし、自車両が安定であるほど、運転操作誘導処理の効果を大きくすることができる。
これにより、自車両の安定度に応じた制御内容によって、より適切に車両の運転操作の支援を行うことが可能となる。
【0098】
(応用例2)
応用例1において、自車両の安定度に応じて、情報伝達制御処理の重みを変化させることとしたが、自車両の安定度は、種々のパラメータによって定めることができる。
図20は、車両の運転状態(加減速度)と安定度との関係を示す図である。
図20に示すように、車両の加減速度が大きくなるほど、車両の安定度は低くなるように設定できる。
また、図20に示すように、加速時と減速時で車両の安定度にヒステリシスを持たせることができる。
即ち、車両が減速しているときは、加速しているときに比べ、車両が不安定化する可能性が高いため、減速時には安定度を低下させる割合を高め、加速時には安定度を上昇させる割合を高めるものである。
【0099】
(応用例3)
また、図21は、車両の運転状態と安定度との関係についての他の例を示す図である。
図21に示すように、下り坂を下っているときは、傾斜が大きいほど車両の安定度を低下させることができる。
また、横加速度(横G)が大きいときには、横加速度が大きいほど車両の安定度を低下させることができる。
【0100】
(応用例4)
第1実施形態において、リスクポテンシャルRPと運転操作誘導処理の重みについては、図7に示すように、リスクポテンシャルRPが大きくなるほど、運転操作誘導処理の重みが大きくなる場合を例に挙げた。
一方、条件によっては、図7と逆の特性に設定することも可能である。
図22は、リスクポテンシャルRPが大きくなるほど、運転操作誘導処理の重みが小さくなる場合の特性を示す図である。
図22に示す例では、リスクポテンシャルRPが大きくなるほど、運転者への情報伝達制御が強く行われる特性となっている。
これにより、リスクポテンシャルが大きくなっている状況において、路面状態をより直接的に運転者に伝達することができる。
【0101】
(応用例5)
図6に示す協調制御処理において、重み付けを行う具体的な手法は、例えば、以下のような形態とできる。
即ち、取得した車両運転状態、交通環境に関する情報、算出した車両の安定度から、情報伝達制御および運転操作誘導制御の上下制御重み量を算出する。
なお、複数の重み付けが算出される場合は各重みを加算・乗算し、各制御の割合を求める。
【0102】
・各重み(ノイズ抑制制御分、情報伝達制御分)の算出方法
複数の要素について重み付けのためのマップを容易しておく。
MAP(1)から算出した重みをG(1)、MAP(2)から算出した重みをG(2)・・・MAP(N)から算出した重みをG(N)とすると、全ての要素を加味した重みG(ALL)は、
G(ALL)= [ G(1)/0.5 + G(2)/0.5 + ・・・・ +G(N)] / (2×n)
と算出できる。
【0103】
例えば情報伝達制御分について、MAP1の重みが1(全て情報伝達制御分に使用)、MAP(2)の重みが0.5(情報伝達制御と運転操作誘導制御分が半々)の場合、計算される重みG(ノイズ抑制制御分)は0.75であり、75%の割合で情報伝達制御を、残り25%の割合で運転操作誘導制御分とする。
このようにして算出した重みから、情報伝達制御分の上下制御量を算出する。
補正前の情報伝達制御量をS(情報伝達制御)とすると、本方法により算出される補正後の制御量S’は
S’ = S×G(情報伝達抑制分)
であり、算出したS’に基づいて情報伝達制御を行う。
同様に、上記のように算出した重みから、運転操作誘導制御分の上下制御量を算出する。
補正前の情報伝達制御量をR(運転操作誘導制御)とすると、本方法により算出される補正後の制御量R’は
R’ = R×G(運転操作誘導抑制分)
であり、算出したR’に基づいて運転操作誘導制御を行う。
【0104】
(応用例6)
本実施形態における情報伝達の条件は、例えば以下のように設定することができる。
基本的な条件として、加減速時の加減速度およびピッチングと、旋回時のヨー運動および操舵反力は運転者に伝達することが望ましい。その他の情報は、運転者に伝えることが必ずしも有用ではないが、一部の情報については、下記の条件に従って運転者に伝達することができる。
【0105】
1)車速が高い場合、路面からの振動を遮断し、車速が低い場合、絶対量を下げて路面からの振動を伝達する。
2)視界が極端に悪い場合、路面からの振動を伝達する。視界が良い場合、絶対量を下げて路面からの振動を伝える。
3)夜間等、走行環境が暗い場合は路面からの振動を伝達し、走行環境が明るい場合には、絶対量を下げて路面からの振動を伝える。
これらの場合、視覚からの情報と車両挙動を一致させ、運転者に違和感を与えることを抑制できる。
4)高速道路では路面からの振動を遮断し、一般道および市街地では、絶対量を下げて路面からの振動を伝える。
【0106】
(応用例7)
本実施形態において、リスクポテンシャルRPと情報伝達制御の基準値α0との関係を図9に示す場合を例に挙げて説明したが、以下のような関係とすることができる。
図23は、リスクポテンシャルRPと情報伝達制御の基準値α0との関係の他の例を示す図である。
なお、図24は、リスクポテンシャルRPと操作反力(操舵反力およびペダルの操作反力)との関係を示す概念図である。
図23において、リスクポテンシャルRPが閾値RP0’以下の場合、α0=1として、路面からの振動を打ち消す度合いを高く設定している。また、リスクポテンシャルRPが閾値RP0’を超えると、リスクポテンシャルの増加に伴って情報伝達制御の基準値α0を減少させ、路面からの振動を打ち消す度合いを低下させている。
【0107】
また、図25は、図23の関係に基づく場合の情報伝達制御処理を示すフローチャートである。
コントローラ50は、運転者の指示入力に応じて情報伝達制御処理の実行を開始する。
図25において、情報伝達制御処理を開始すると、コントローラ50は、リスクポテンシャル算出処理において算出したリスクポテンシャルRPが、リスクポテンシャルについて設定された閾値RP0’より大きいか否かの判定を行う(ステップQ1)。
ステップQ1において、リスクポテンシャルRPが閾値RP0’より大きいと判定した場合、コントローラ50は、図23の関係に従って情報伝達制御の基準値α0を算出する(ステップQ2)。
ステップQ1において、リスクポテンシャルRPが閾値RP0’以下であると判定した場合、コントローラ50は、情報伝達制御の基準値α0を1に設定(α0=1)する(ステップQ3)。
【0108】
ステップQ2およびステップQ3の後、コントローラ50は、運転者が実行の停止を指示入力するまで、情報伝達制御処理を繰り返す。
これにより、リスクポテンシャルRPに応じて加えられる操作反力が小さい時(図24参照)は、路面からの振動を打ち消す度合いを高めることにより、小さい操作反力でも運転者に認識させることが可能になる。一方、リスクポテンシャルRPが大きく、付与される操作反力が大きい時(図24参照)は、路面からの振動を打ち消す度合いを低下させて、路面の情報を運転者に伝えつつ、運転者に操作反力を認識させることができる。
【0109】
(効果)
情報伝達制御手段が、リスクポテンシャルが第1の閾値以下である場合、自車両に生じている車両挙動を第1の制御量で抑制する。また、リスクポテンシャルが第1の閾値を超えている場合、情報伝達制御手段は、リスクポテンシャルが第1の閾値より大きくなるほど、自車両に生じている車両挙動を抑制する度合いを減少させる。
したがって、リスクポテンシャルに応じて加えられる操作反力が小さい時は、車両挙動を第1の制御量で抑制することにより、小さい操作反力でも運転者に認識させることが可能になる。一方、リスクポテンシャルが大きく、付与される操作反力が大きい時は、車両挙動を抑制する度合いを低下させて、外部からの情報を運転者に伝えつつ、運転者に操作反力を認識させることができる。
【0110】
(応用例8)
本実施形態において、車両用運転操作補助装置1が能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLを備えることとして説明したが、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLに代えて、入力した振動に対する減衰力を可変とした減衰力制御装置を用いることができる。
図26は、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLに代えて減衰力制御装置を備えた自動車1Aの概略構成図である。
また、図27は、減衰力制御装置の一例を示す一部を断面とした正面図である。
図26および図27において、自動車1Aには、各車輪2FR,2FL,2RR,2RLと車体3との間にそれぞれサスペンション装置を構成する減衰力可変ショックアブソーバ(減衰力制御装置)400FL〜400RRが配設され、これら減衰力可変ショックアブソーバ400FL〜400RRの減衰力を切り換えるステップモータ41FL〜41RRがコントローラ50からの制御信号によって制御される。
【0111】
これらの各減衰力可変ショックアブソーバ400FL〜400RRは、図27に示すように、外筒405と内筒406とで構成されるシリンダチューブ407を有するツインチューブ式ガス入りストラット型に構成され、内筒406内がこれに摺接するピストン408によって上下圧力室409U,409Lに画成されている。また、前記ピストン408は、外周面に内筒6と摺接するシール部材409がモールドされ且つ内周面に中心開孔410を有する円筒状の下部半体411と、この下部半体411に内嵌された上部半体412とで構成されている。なお、図27中の符号413は伸側油流路,414は孔部,427は圧側油流路,431は弁体,435はピストンロッド,436は車体側部材,437はブラケット,438U及び438Lはゴムブッシュ,439はナット,440はブラケット,441aは回転軸,442は連結杆,443はバンパーラバーである。
【0112】
この減衰力可変ショックアブソーバ400FL〜400RRの減衰力特性は、弁体431とピストン408との間に形成される各オリフィスの開口面積によって設定されるこになり、この弁体431をピストン408に対して相対回転させるステップモータ41FL〜41RRの回転角は、当該オリフィスの絞りによって決定される流動抵抗、すなわち、減衰係数を選択設定するための制御量となり、この減衰係数に前記ピストン速度を乗じた積の形で各弁体位置における減衰力が表される。したがって、後段に詳述するように、本応用例における制御量は厳密には減衰係数であるが、ここからは単に減衰力を制御量と考えていく。
【0113】
図28は、減衰力可変ショックアブソーバ400FL〜400RRの弁本体のポジションに対する減衰力特性を示す説明図である。
前記ステップモータ41FL〜41RRの回転角は、その回転角を位置Pとすると、図28に示すように、伸側の減衰力が最大減衰力となる位置Pが伸側最大位置PTMAXとなり、圧側の減衰力が最大減衰力となる位置Pが圧側最大位置PCMAXとなるが、ここでは便宜上、前記伸側減衰力も圧側減衰力も低減衰力に設定される範囲の中間値に相当する位置Pを“0”とし、伸側減衰力が高くなる方向への位置変化を正とし且つ圧側減衰力が高くなる方向への位置変化を負とすると、前記伸側最大位置PTMAXは正符号で単にPMAX と表され、圧側最大位置PCMAXは負符号で単に(−PMAX)と表される。ただし、これら各最大位置の絶対値|PMAX|は必ずしも同じ値である必要はない。
【0114】
そして、前記負値となる圧側最大位置(−PMAX)から正値となる伸側最大位置PMAXまでの全減衰力制御範囲のうち、位置Pが“0”を挟む正の閾値PT1から負の閾値PC1までの範囲が、伸側低減衰力D/FT0及び圧側低減衰力D/FC0となって、特に低速走行状態の滑らかさを達成するsoft範囲(以下、単にSS範囲とも記す。)となり、これより位置Pが正方向に大きい範囲、すなわち、位置Pが前記正の閾値PT1から正値の伸側最大位置PMAXまでの範囲が、伸側減衰力が高く設定される伸側制御範囲(以下、単にH−S範囲とも記す。)となる。また、soft範囲よりも位置Pが負方向に小さい範囲、すなわち、位置Pが前記負の閾値PC1から負値の圧側最大位置(−PMAX )までの範囲が、圧側減衰力が高く設定される圧側制御範囲(以下、単にS−H範囲とも記す。)となる。
【0115】
なお、図28において、前記位置P“0”と伸側最大位置PMAXとを結ぶ二点鎖線及び前記位置P“0”と圧側最大位置(−PMAX)とを結ぶ二点鎖線については後段に詳述する。また、図28の減衰力特性(減衰係数特性)によれば、この同等の絶対値を有する所定伸側減衰係数と所定圧側減衰係数とを達成する各所定位置値では、所定伸側位置値の絶対値の方が所定圧側位置値の絶対値よりも若干小さい。
【0116】
図29は、コントローラ50が有する機能構成例を示すブロック図である。
前記コントローラ50には、図29に示すように、その入力側に、各車輪位置に対応する車体側に設けられた、上下加速度に応じて上向きで正となり下向きで負となるアナログ電圧でなる上下加速度検出値(以下、単にバネ上上下加速度とも記す。)XFL″〜XRR″を出力する車体上下加速度検出器130FR,130FL,130RR,130RLが接続され、その出力側に、前記各減衰力可変ショックアブソーバ400FL〜400RRの減衰力を制御するステップモータ41FL〜41RRが接続されている。
【0117】
このコントローラ50は、例えば、入力インタフェース回路556a,出力インタフェース回路556b,演算処理装置556c及び記憶装置556dを少なくとも有するマイクロコンピュータ556と、車体上下加速度検出器130FR,130FL,130RR,130RLのバネ上上下加速度XFL″〜XRR″をデジタル値に変換して入力インタフェース回路556aに供給するA/D変換器557FL〜557RRと、出力インタフェース回路556bから出力される各ステップモータ41FL〜41RRに対するステップ制御信号が入力され、これをステップパルスに変換して各ステップモータ41FL〜41RRを駆動するモータ駆動回路559FL〜559RRとを備えている。
【0118】
ここで、マイクロコンピュータ56の演算処理装置556cは、各車体上下加速度検出器130i(i=FL〜RR。本応用例において、以下同様。)から入力される車体のバネ上上下加速度Xi″を積分して車体の上下速度(バネ上上下速度とも記す。)Xi′を算出すると共に、このバネ上上下速度Xi′を基にバネ上挙動比例範囲の上限値XUi′を算出し、この上限値XUi′に基づいて制御不感帯閾値XiO′を算出する。そして、バネ上上下速度Xi′,バネ上挙動比例範囲上限値XUi′,制御不感帯閾値XiO′に基づいて制御位置比例係数Riを算出し、この制御位置比例係数Ri を補正関数で補正して補正比例係数FRiを算出し、この補正比例係数FRiと基本制御最大位置PMAXとに基づいて目標制御位置PTiを算出し、算出した目標制御位置PTiの最大値を制限する制限処理を施す。
【0119】
そして、演算処理装置556cは、制限処理を施した目標制御位置PTiに基づいてステップモータ41iのステップ量Siを算出し、このステップ量Siをモータ駆動回路559iに出力して、各ステップモータ41iを駆動制御すると共に、前記目標制御位置PTiが、前記図28において、伸側から圧側方向へ、又は圧側から伸側方向へ移行する場合、つまり、位置Pがゼロクロスした場合には、ゼロクロスした時点から予め設定した所定時間Tα経過するまでの間は、目標制御位置PTiを“0”位置に保持する。
【0120】
また、記憶装置556dは、前記演算処理装置556cの演算処理に必要なプログラムや制御マップ等を予め記憶していると共に、演算処理過程での必要な値及び演算結果を逐次記憶する。
このような構成の減衰力制御装置を備えることにより、第1実施形態と同様に、路面からの振動を抑制する制御を行うことができる。
なお、本応用例において、減衰力可変ショックアブソーバ400FL〜400RRが減衰力が可変な減衰力制御装置を備えたサスペンションに対応する。
(効果)
減衰力制御装置によってリスクポテンシャルに応じて車両挙動を抑制した状態で、リスクポテンシャルに応じた操作反力を付与するため、運転者に対し、より適切に車両の運転操作のための情報を伝達することができる。
【0121】
(応用例9)
本実施形態において、自動車1Aは、ステアリングホイール5と車輪2FR,2FLとがステアリングコラムで機械的に連結された操舵系統を備えるものとして説明した。
これに対し、本応用例においては、ステアリングホイール5と車輪2FR,2FLとが機械的に分離され、それぞれをアクチュエータによって制御する操舵系統(いわゆるステアバイワイヤ方式の操舵系統)を備える自動車1Aに本発明を適用するものである。
(構成)
図30は、本応用例に係る自動車1Aの全体システム図である。
図30において、本応用例の自動車1Aに備えられる車両用操舵装置は、(1)操舵部、(2)バックアップ装置、(3)転舵部、(4)制御コントローラにより構成されている。
【0122】
(1)操舵部
操舵部は、舵角センサ501、エンコーダ502、トルクセンサ503,503、反力モータ505とを有して構成される。
前記舵角センサ501は、ステアリングホイール506の操作角を検出する手段で、後述するケーブルコラム507とステアリングホイール506とを結合するコラムシャフト508aに設けられている。つまり、舵角センサ501は、ステアリングホイール506とトルクセンサ503,503との間に設置されており、トルクセンサ503,503の捩れによる角度変化の影響を受けることなく、操舵角を検出できるようになっている。この舵角センサ501には、アブソリュート型レゾルバ等を用いる。
【0123】
前記トルクセンサ503,503は二重系を成し、前記舵角センサ501と反力モータ505との間に設置されている。トルクセンサ503,503は、軸方向に延在するトーションバーと、このトーションバーの一端に連結され、このトーションバーと同軸をなす第1軸と、このトーションバーの他端に連結され、このトーションバーおよび第1軸と同軸を成す第2軸とを有している。また、トルクセンサ503,503は、前記第1軸に固定された第1磁性体と、前記第2軸に固定された第2磁性体と、前記第1磁性体および第2磁性体に対面するコイルと、このコイルを包囲し、前記第1磁性体および第2磁性体と共に磁気回路を形成する第3磁性体とを有している。そして、前記コイルはトーションバーに作用する捩れに基づく第1磁性体と第2磁性体との相対変位に対応してインダクタンスが変化し、このインダクタンスに基づく出力信号によりトルクを検出する。
【0124】
前記反力モータ505は、ステアリングホイール506に反力を与える反力アクチュエータであり、前記コラムシャフト508aを回転軸とする1ロータ・1ステータの電動モータで構成されており、そのケーシングが車体の適所に固定されている。この反力モータ505としては、ブラシレスモータが使用され、ブラシレスモータの使用に伴ってエンコーダ502とホールIC(不図示)とを追加する。その場合は、ホールICのみでもモータトルクを発生するモータ駆動は可能であるが、微細なトルク変動が発生し、操舵反力感が低下する。そこで、より繊細で滑らかな反力制御を行うため、コラムシャフト508aの軸上にエンコーダ502を装着し、モータ制御を行うことで、微細なトルク変動を低減し、操舵反力感を向上させている。なお、エンコーダ502の代わりにレゾルバを用いても良い。
【0125】
(2)バックアップ装置
バックアップ装置は、ケーブルコラム507とクラッチ509により構成されている。前記クラッチ509は、コラムシャフト508aとプーリシャフト508bとの間に介装され、ここでは電磁クラッチを用いている。このクラッチ509は、締結されたとき、入力軸であるコラムシャフト508aと出力軸であるプーリシャフト508bとが連結され、ステアリングホイール506に加えられた操舵トルクは、ステアリング機構515に機械的に伝達される。
【0126】
前記ケーブルコラム507は、前記クラッチ509が締結されるバックアップモード時、操舵部と転舵部との間に介在する部材との干渉を避けて迂回しながらも、トルクを伝達するコラムシャフト機能を発揮する機械式バックアップ機構である。ケーブルコラム507は、2つのリールに端部がリールに固定された2本のインナーケーブルを互いに逆方向へ巻き付け、2つのリールケースに2本のインナーケーブルを内挿したアウターチューブの両端を固定することにより構成されている。
【0127】
(3)転舵部
転舵部は、エンコーダ510、舵角センサ511、トルクセンサ512,512、転舵モータ514,514、ステアリング機構515、操向輪516,516とを有して構成される。
前記舵角センサ511とトルクセンサ512,512とは、ケーブルコラム507のプーリが一端に取り付けられ、他端部にピニオンギアが形成されたピニオンシャフト517の軸上に設けられている。舵角センサ511としては、シャフトの回転数を検出するアブソリュート式レゾルバ等が用いられる。また、トルクセンサ512,512としては、上記トルクセンサ503,503 と同様に二重系を成し、インダクタンスの変化によりトルクを検出するものが用いられる。そして、ケーブルコラム507側に舵角センサ511を配置し、ステアリング機構515側にトルクセンサ512,512を配置することで、舵角センサ511による転舵角検出に際してトルクセンサ512,512の捩りによる角度変化の影響を受けないようにしている。
【0128】
前記転舵モータ514,514は、前記ピニオンシャフト517の舵角センサ511とトルクセンサ512,512との中間位置に設けたウォームギアに噛み合うピニオンギアをモータ軸に設けることで、モータ駆動時にピニオンシャフト517に転舵トルクを付与するように構成されている。この転舵モータ514,514は、1ロータ・2ステータ構造とすることにより二重系を成し、第一転舵モータ514と第二転舵モータ514を構成するブラシレスモータとしている。また、上記反力モータ505と同様に、ブラシレスモータの使用に伴ってエンコーダ510とホールIC(不図示)とを追加する。
【0129】
前記ステアリング機構515は、前記ピニオンシャフト517の回転により左右の操向輪516,516を転舵させる舵取り機構であって、ラックチューブ515a内に内挿され、前記ピニオンシャフト517のピニオンギアに噛み合うラックギアが形成されたラックシャフト515bと、この車両左右方向に延びるラックシャフト515bの両端部に結合されたタイロッド515c,515cと、一端が前記タイロッド515c,515cに結合され、他端が操向輪516,516に結合されたナックルアーム515d,515dと、を有して構成されている。
【0130】
(4)制御コントローラ
制御コントローラは、2つの電源518,518により処理演算等を行う2つの制御コントローラ519,519により二重系が構成されている。
前記制御コントローラ519は、操舵部の舵角センサ501、エンコーダ502、トルクセンサ503,503、ホールICと、転舵部のエンコーダ510、舵角センサ511、トルクセンサ512,512、ホールIC、車速センサ520からの検出値が入力される。
制御コントローラ519は、各センサの検出値に基づいて、反力モータ505および転舵モータ514の制御量を設定し、各モータ504,514を駆動制御する。また、制御コントローラ519は、システムが正常に作動している間は、クラッチ509を解放し、システムに異常が発生した場合には、クラッチ509を締結させ、ステアリングホイール506と操向輪516,516を機械的に連結させる。
【0131】
(動作)
[反力モータの制御量設定]
制御コントローラ519において、反力モータ505の制御量Thは、次式(6)に基づいて設定される。
Th=Kp×θ+Kd×dθ/d t+Kd d×d2θ/dt2+Dd×Kf×F (6)
ここで、θは操舵角、Kpは操舵角ゲイン、Kdは操舵角速度ゲイン、Kddは操舵角加速度ゲイン、Ddは路面反力係数、Kfは路面反力ゲイン、Fは路面反力値である。
式(6)において、右辺第1項、第2項および第3項では、操舵角θに基づく操舵反力の制御量が設定され、右辺第4項では、路面反力Fに基づく制御量が設定されるため、路面からタイヤに作用する力の影響を操舵反力トルクに反映させることができる。なお、操舵角加速度d2θ/dt2および操舵角速度dθ/dtは、舵角センサ501の検出値から算出する。
【0132】
このようなステアバイワイヤ方式の操舵系統を備える自動車1Aにおいて、通常の走行における操舵反力および転舵の制御を行い、さらに、本発明の制御を実行する。
即ち、リスクポテンシャルRPに応じて、第1実施形態における情報伝達制御の基準値α0に代えて、上記(6)式におけるパラメータDdを変化させる。
図31は、リスクポテンシャルRPとパラメータDdとの関係を示す図である。
本応用例においては、図31の関係に従って、パラメータDdを変化させ、路面からの振動を抑制する度合いを変化させる。また、このような車両上下方向の制御を行いつつ、リスクポテンシャルRPに応じて、車両前後方向および車両左右方向における操作反力の制御を行う。
これにより、自車両周囲の障害物状況に応じて車両上下方向のノイズを低減しつつ、車両前後および左右方向について、障害物に関する情報を伝達することができる。
【0133】
(応用例10)
本実施形態において、路面からの振動を抑制する度合いを制御するために、能動型サスペンションを用いるものとして説明した。
これに対し、本応用例においては、運転席シートと車体との間に能動型の振動抑制機構を設置したサスペンションシートを備えることとし、この振動抑制機構における振動の抑制度合いを、リスクポテンシャルに応じて変化させる。
図32は、サスペンションシート601の概略構成図である。
また、図32(a)は、シートの支持構造の拡大側面図、図32(b)は、シートの支持構造の平面図である。
【0134】
図32,33において、サスペンションシート601は、シートクッション603とリクライニング可能なシートバック605とで構成されている。前記サスペンションシート601は昇降リンク607を介して車体フロア608に対し、昇降可能に支持されている。この昇降リンク607は、シート601の車幅方向左右に一対備えられているもので、連結ピン610で連結されX状に配置された第1レバー611と第2レバー613とで構成されている。
【0135】
前記第1レバー611のサスペンションシート601前後方向後端は、第1支持部材615を介してサスペンションシート601側に回転自在に支持されている。第1支持部材615は、サスペンションシート601のシートクッションフレーム616に固定されたベースプレート617に固定されているものである。第1レバー611のサスペンションシート601前後方向前端は、第2支持部材619を介して車体フロア608に取付けられた取付プレート609に支持されている。この第2支持部材619は第1レバー611前端のローラ611aをサスペンションシート601前後方向へ移動可能に支持するよう構成されている。前記第2レバー613は、サスペンションシート601前後方向後端が取付プレート609に固定された第3支持部材621を介して取付プレート609に回転自在に支持され、同前端のローラ613aは第4支持部材623を介してサスペンションシート601側のベースプレート617に支持されている。この第4支持部材623は第2支持部材619と同様に第2レバー613前端のローラ613aをサスペンションシート601前後方向に移動可能にするよう構成されている。
【0136】
こうして支持されたサスペンションシート601側と車体フロア608側との間にはサスペンションシート601に下降荷重が作用した時、この荷重に対抗する弾性体たるスプリング625が介設されている。スプリング625はコイルスプリングで構成され、ベースフレート617上にほぼ水平に配置されている。このスプリング625の後端は第1レバー617の後端における第1ブラケット626間のピン627に取付けられている。第1ブラケット626は第1レバー611の後端間にて第1レバー611の回転軸心に対し偏心して固定されたロッド628に固着されたものである。スプリング625の前端は双腕レバー629の両端に連結されている。双腕レバー629の中央には第1連動リンク631が枢支され第1連動リンク631は第2連動リンク632に枢支されている。第2連動リンク632はその中間部がベースプレート617に取付けられた固定リンク648に枢支され、第2連動リンク632の他端に形成された長孔632aが移動体633のピン633aに嵌合している。移動体633はサスペンションシート601幅方向に延設された双方向ねじ634に螺合されている。双方向ねじ634は両端がベースプレート617に固定された軸受635に支持され、中間部が減速機636a,636bを介し、ベースプレート617に固定された駆動モータ637に連動構成されている。なお、駆動モータ637は、コントローラ50によってシートの上下位置を調整するための指令が入力されることにより駆動される。
【0137】
一方、前記サスペンションシート601側と車体フロア608側との間にはサスペンションシート601の振動を減衰する減衰力可変のショックアブソーバ638が介設されている。前記ショックアブソーバ638はサスペンションシート601の前部にてサスペンションシート601の幅方向に配置され、ピストンロッド639が第1回動リンク640に相対回転自在に支持されていると共に、この第1回動リンク640は第2回動リンク641に回転自在に連結されている。そして第2回動リンク641はベースプレート617の先端に立設された立設ブラケット642に回転自在に支持されている。また、ショックアブソーバ638のストラットチューブ649は端部に固定された連結ボス644を介し、取付プレート609に固定された第3ブラケット645に回動自在に支持されている。第3ブラケット645は、取付プレート609にビス止めされた取付片646に固定されている。
【0138】
そして前記ショックアブソーバ638は、駆動装置647により減衰力を変化させることが可能に構成されている。コントローラ50は、駆動装置647に対する駆動指令値をリスクポテンシャルRPに応じて変化させることにより、ショックアブソーバ638の減衰力を制御している。
例えば、コントローラ50は、第1実施形態の図7に示す場合と同様に、リスクポテンシャルRPが閾値RP0より大きくなると、リスクポテンシャルRPの増加に伴って、路面からの振動の軽減割合を増加させるように駆動装置647に対する指令値を設定する。また、コントローラ50は、リスクポテンシャルRPがさらに増加した場合、路面からの振動の軽減割合が上限値で飽和するように駆動装置647に対する駆動指令値を設定する。
【0139】
このような構成により、第1実施形態における能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLと同様に、サスペンションシート601によって、運転者に伝達される振動の抑制度合いをリスクポテンシャルRPに対応して変化させることができる。
なお、本応用例において、サスペンションシート601が動作制御手段に対応する。
【0140】
(効果)
情報伝達制御手段が、運転者に入力される上下方向の振動を、リスクポテンシャルの大きさに応じて抑制し、操作反力付与手段が、リスクポテンシャルの大きさに応じて、運転操作手段における操作反力を付与する。
したがって、リスクポテンシャルに応じて運転者に入力される上下方向の振動を抑制した状態で、リスクポテンシャルに応じた操作反力および操舵反力を付与するため、運転者に対し、より適切に車両の運転操作のための情報を伝達することができる。
【0141】
(応用例11)
第1実施形態において、自動車1Aは能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLを備え、これらのサスペンションストロークを変化させて、リスクポテンシャルに応じた車体3の傾斜を付与することとした。
これに対し、異なる構成のサスペンションを用いることで、同様の制御を行ったり、運転者の操作を誘導するための異なる制御を行ったりすることができる。
例えば、インホイールモータを備える前後左右の車輪2FR,2FL,2RR,2RLそれぞれと車体3とが複数(ここでは6本)の直動型アクチュエータを介して連結された構造のサスペンションを用いることができる。
【0142】
図34は、応用例11のサスペンション構造を示す図である。
なお、本応用例1のサスペンション構造は、前後左右の駆動輪それぞれにおいて同様であるため、左前輪部分を例に挙げて説明する。
図34において、応用例1のサスペンション構造は、車体3に固定された6角形のアクチュエータ支持板1Bと、アクチュエータ支持板1Bの各頂点にボールジョイントを介してシリンダを連結されると共に、インホイールモータMにおいてアクチュエータ支持板1Bの各頂点と対向する位置に、駆動ロッドの先端をボールジョイントを介して連結されたアクチュエータ101FL〜106FLとを有する構成である。
【0143】
これら6本のアクチュエータ101FL〜106FLはパラレルメカニズムを構成しており、アクチュエータ101FL〜106FLを連動させて制御することにより、それによって支持されているホイールインモータMと駆動輪2FLを3次元的に動かすことが可能になる。
アクチュエータ支持板1Bは、車体3において鉛直からやや下方を向いた取り付け面に取り付けてある。そのため、複数の直動型アクチュエータの総合的な伸縮軸は、路面に平行な方向からやや下方に向いている。
【0144】
そのため、これら複数のアクチュエータにおける駆動ロッドの伸縮を制御することで、車体3の前部あるいは後部を上昇あるいは下降させたり、各駆動輪の転舵角、キャンバ角、トー角および車体3との距離を調整したりすることが可能である。
したがって、応用例1のサスペンション構造を用いた場合にも、図10の運転操作誘導処理を実行することができる。
また、応用例1のサスペンション構造では、4輪に対する車体3の相対的な向きを変更することができる。
そのため、車輪2FR,2FL,2RR,2RLの向きは変化させないまま、車体3の向きを変化させて、運転者の操作を促すことができる。
【0145】
具体的には、右方リスクポテンシャルRPcが閾値RPc0以上である場合に、車輪2FR,2FL,2RR,2RLの向きは変化させずに、車輪2FR,2FL,2RR,2RLに対して車体3を右方に回頭させる。
すると、運転者に対して、自車両が右方に向かっていると言う感覚を与えることができる。
そして、運転者が左方向に操舵を行うと、右方リスクポテンシャルRPcが減少する。
したがって、第1実施形態の誘導形態に加えて、他の形態で運転者に対する運転操作の誘導を行うことができる。
【0146】
(応用例12)
第1実施形態において、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLによって、車体3の挙動を制御するものとして説明したが、運転席シートの制御を行うことによっても、運転者の運転操作を誘導することができる。
即ち、応用例12の自動車1Aは、運転席シートの複数(例えば4本)の脚に、シートレッグ長を変化させることが可能なアクチュエータを備える。
そして、これらのアクチュエータによってシートレッグ長をそれぞれ変化させ、運転席シートを車体3に対して前傾あるいは後傾させたり、運転席シートを車体3に対して右あるいは左に傾けたりする。
【0147】
これにより、第1実施形態と同様に、運転者に減速あるいは加速しているような感覚、右旋回あるいは左旋回しているような感覚を与えることができ、運転者の運転操作を誘導することが可能となる。
また、このような運転席シートの構成を備えることにより、実際の車両挙動によって、車体が前傾あるいは後傾したり、左右にロールしたりする場合に、それらと反対方向に運転席シートを傾ける制御を行うことができる。
これにより、運転者は操舵操作を行いやすくなり、運転者の操舵操作を補助することができる。
【0148】
(応用例13)
応用例12における運転席シートの傾斜制御と、第1実施形態における車体3の傾斜制御とを組み合わせて実行することができる。
即ち、運転者の前方注視点を自車両に近づけると、同一の車速でも運転者はより速度が高いと感じる。
そのため、これを利用して、運転者に減速操作を促す場合に、車体3を後傾させ、運転席シートを前傾させる。
このような制御を行うことで、運転者に対し、車体3から加速感を与え、運転席シートから高速感を与えることができるため、運転操作の誘導効果(減速操作の促進効果)を高めることができる。
【0149】
(応用例14)
リスクポテンシャルが高まっていることを運転者に伝え、運転操作を促すために、車載スピーカから発する音を用いることも可能である。
例えば、自車両の後方スピーカから他車両の走行音を出力し、後方から車両が近づいている感覚を運転者に与えることができる。
(応用例15)
第1実施形態においては、車両左右方向について、左右方向のリスクポテンシャルRPc,RPdを算出し、それに応じて、能動型サスペンションのサスペンションストローク(ロール傾斜角)を変化させると共に、操舵反力を増加させる場合を例に挙げて説明した。
【0150】
これに対し、本応用例では、車両左右方向のリスクポテンシャルに応じて、操舵反力、および能動型サスペンションのサスペンションストローク(ロール傾斜角)を変化させる際、操舵反力を付与するリスクポテンシャルの閾値、およびロール傾斜角を付与するリスクポテンシャルの閾値を、それぞれ個別に設定する。また、操舵反力の付与、および能動型サスペンションのサスペンションストロークの変化を中断するリスクポテンシャルの閾値を設定する。
【0151】
図35は、本応用例において、コントローラ50が実行する運転操作誘導処理を示すフローチャートである。また、図36〜39は、図35に示す運転操作誘導処理において実行される第1〜第4のサブフローを示す図である。
図35において、運転操作誘導処理を開始すると、コントローラ50は、リスクポテンシャル算出処理において算出した前後および左右方向のリスクポテンシャルRPa,RPb,RPc,RPdを取得する(ステップT10)。
【0152】
次に、コントローラ50は、ステップT1において取得した前方リスクポテンシャルRPaに応じて、運転操作誘導処理の第1のサブフローを実行する(ステップT20)。
ステップT20において、コントローラ50は、例えば、図36に示すように、まず、前方リスクポテンシャルRPaが閾値RPa0以上であるか否かの判定を行う(ステップT21)。ステップT21において、前方リスクポテンシャルRPaが閾値RPa0以上であると判定した場合、コントローラ50は、第1実施形態と同様に、アクセルペダル反力を前方リスクポテンシャルRPaに応じて増加させる(ステップT22)。また、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4FLのサスペンションストロークを前方リスクポテンシャルRPaに応じて変化させる(ステップT23)。ステップS203の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理に戻る。一方、ステップT21において、前方リスクポテンシャルRPaが閾値RPa未満であると判定した場合、コントローラ50は、運転操作誘導処理に戻る。
【0153】
また、コントローラ50は、ステップT10において取得した後方リスクポテンシャルRPbに応じて、運転操作誘導処理の第2のサブフローを実行する(ステップT30)。
ステップT30において、コントローラ50は、例えば、図37に示すように、まず、後方リスクポテンシャルRPbが閾値RPb0以上であるか否かの判定を行う(ステップT31)。ステップT31において、後方リスクポテンシャルRPbが閾値RPb0以上であると判定した場合コントローラ50は、第1実施形態と同様に、能動型サスペンション4RR,4RLのサスペンションストロークを後方リスクポテンシャルRPbに応じて変化させる(ステップT32)。ステップT32の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理に戻る。一方、ステップT31において、後方リスクポテンシャルRPbが閾値RPb0未満であると判定した場合、コントローラ50は、運転操作誘導処理に戻る。
【0154】
また、コントローラ50は、ステップT10において取得した右方リスクポテンシャルRPcに応じて、運転操作誘導処理の第3のサブフローを実行する(ステップT40)。
ステップT40において、コントローラ50は、例えば、図38に示すように、まず、右方リスクポテンシャルRPcが第1の閾値RPc0以上であるか否かの判定を行う(ステップT41)。ステップT41において、右方リスクポテンシャルRPcが第1の閾値RPc0以上であると判定した場合、コントローラ50は、右方リスクポテンシャルRPcが第3の閾値RPc2以下であるか否かの判定を行う(ステップT42)。ステップT42において、右方リスクポテンシャルRPcが第3の閾値RPc2未満であると判定した場合、コントローラ50は、右方リスクポテンシャルRPcに応じて、操舵反力を増加させる(ステップT43)。
【0155】
ここで、本応用例では、例えば、図40に示すように、操舵反力を発生させる第1の閾値RPc0と、サスペンションストロークを変化させる第2の閾値RPc1を、それぞれ個別に設定する。
これにより、ステップT43に続いて、コントローラ50は、右方リスクポテンシャルRPcが第2の閾値RPc1以上であるか否かの判定を行い(ステップT44)、右方リスクポテンシャルRPcが比較的小さい場合、即ち、右方リスクポテンシャルRPcが第2の閾値RPc1未満である場合においては、操舵反力のみを発生させる。
【0156】
一方、ステップT44において、右方リスクポテンシャルRPcが比較的大きい第2の閾値RPc1以上の場合、即ち、右方リスクポテンシャルRPcが第2の閾値以上である場合においては、操舵反力に加えてロール傾斜角を発生させる(ステップT45)。
これにより、右方リスクポテンシャルの増加を、違和感なく、よりわかり易く運転者に伝えることができ、より適切に車両の運転操作の支援を行うことができる。
【0157】
また、このように、操舵反力、およびサスペンションストロークを変化させる右方リスクポテンシャルについて上限値(第3の閾値RPc2)を設定することにより、路面に設置されたレーンマーカー等、接触しない対象物であると推定される、右方向のリスクポテンシャルに対しては、運転操作誘導処理の実行に制限を設け、運転者の操作性(オーバーライド性)を確保すると共に、レーンマーカーを乗り越えるように違和感なくリスクポテンシャルの増加を感じさせることができる。そのため、より適切に車両の運転操作の支援を行うことができる。
【0158】
ステップT41において、右方リスクポテンシャルRPcが第1の閾値RPc未満であると判定した場合、および、ステップT42において、右方リスクポテンシャルRPcが第3の閾値以上であると判定した場合、コントローラ50は、運転操作誘導処理に戻る。また、ステップT44において、右方リスクポテンシャルRPcが第2の閾値未満であると判定した場合、および、ステップT45の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理に戻る。
【0159】
また、コントローラ50は、ステップT10において取得した左方リスクポテンシャルRPdに応じて、運転操作誘導処理の第4のサブフローを実行する(ステップT50)。
ステップT50において、コントローラ50は、例えば、図39に示すように、まず、左方リスクポテンシャルRPdが第1の閾値RPd0以上であるか否かの判定を行う(ステップT51)。ステップT51において、左方リスクポテンシャルRPdが第1の閾値RPd0以上であると判定した場合、コントローラ50は、左方リスクポテンシャルRPdが第3の閾値RPd2以下であるか否かの判定を行う(ステップT52)。ステップT52において、左方リスクポテンシャルRPdが第3の閾値RPd2未満であると判定した場合、コントローラ50は、左方リスクポテンシャルRPdに応じて、操舵反力を増加させる(ステップT53)。
【0160】
ここで、本応用例では、右方リスクポテンシャルRPcにおける場合と同様、操舵反力を発生させる第1の閾値RPd0と、サスペンションストロークを変化させる第2の閾値RPd1を、それぞれ個別に設定する。
これにより、ステップT53に続いて、コントローラ50は、左方リスクポテンシャルRPdが第2の閾値RPd1以上であるか否かの判定を行い(ステップT54)、左方リスクポテンシャルRPdが比較的小さい場合、即ち、左方リスクポテンシャルRPdが第2の閾値RPd1未満である場合においては、操舵反力のみを発生させる。
【0161】
一方、ステップT54において、左方リスクポテンシャルRPdが比較的大きい第2の閾値RPd1以上の場合、即ち、左方リスクポテンシャルRPdが第2の閾値RPd1以上である場合においては、操舵反力に加えてロール傾斜角を発生させる(ステップT55)。
これにより、左方リスクポテンシャルの増加を、違和感なく、よりわかり易く運転者に伝えることができ、より適切に車両の運転操作の支援を行うことができる。
【0162】
また、このように、操舵反力、およびサスペンションストロークを変化させる左方リスクポテンシャルについて上限値(第3の閾値RPd2)を設定することにより、路面に設置されたレーンマーカー等、接触しない対象物であると推定される、左方向のリスクポテンシャルに対しては、運転操作誘導処理の実行に制限を設け、運転者の操作性(オーバーライド性)を確保すると共に、レーンマーカーを乗り越えるように違和感なくリスクポテンシャルの増加を感じさせることができる。そのため、より適切に車両の運転操作の支援を行うことができる。
【0163】
ステップT51において、左方リスクポテンシャルRPdが第1の閾値RPc未満であると判定した場合、および、ステップT52において、左方リスクポテンシャルRPdが第3の閾値以上であると判定した場合、コントローラ50は、運転操作誘導処理に戻る。また、ステップT54において、左方リスクポテンシャルRPdが第2の閾値未満であると判定した場合、および、ステップT55の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理に戻る。
なお、本応用例において、第1の閾値RPc0あるいはRPd0が特許請求の範囲における第2の閾値に対応し、第2の閾値RPc1あるいはRPd1が特許請求の範囲における第3の閾値に対応する。
【0164】
(効果)
操舵反力を付与するための左右方向のリスクポテンシャルの閾値と、擬似的な車両挙動を発生させるための左右方向のリスクポテンシャルの閾値とを個別に設定することとしたため、車両の走行状態に応じて、操舵反力と擬似的な車両挙動とを適確なタイミングで発生させることができる。そのため、より適切に車両の運転操作の支援を行うことができる。
【0165】
(応用例16)
第1実施形態においては、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLによって、擬似的な車両の挙動を示す場合を例に挙げて説明した。
これに対し、本応用例においては、異なる構成のサスペンションを用いて、左右方向のリスクポテンシャルに応じた擬似的な車両挙動を示すものである。
具体的には、動作制御手段として、スタビライザリンク長を可変なスタビライザを備えるサスペンションを用い、スタビライザリンク長を制御することにより、運転者の運転操作を誘導するものである。例えば、スタビライザとサスペンションロアアームを連結するスタビライザリンクに、リンク長を変化させることのできる油圧シリンダを設置し、これを伸縮させてロール傾斜角を制御することにより、車体3の傾斜を付与する。
【0166】
図41は、本応用例のサスペンション構造を示す図である。なお、図41は、車両後方から見たサスペンション構造を示している。
図41において、アクチュエータ803は、中央部分が車体3に固定されたスタビライザ801に連結され、サスペンションロアアーム802との間のリンク長を伸縮することが可能である。そして、左右のアクチュエータ803におけるアクチュエータストローク長の左右差で、自動車1Aのロール傾斜角を制御する。
【0167】
なお、アクチュエータ803は、自動車1Aの前軸および後軸それぞれに取り付けられており、合計4つのアクチュエータ(以下、適宜、前右:803FR、前左:803FL、後右:803RR、後左:803RLと称する。)から構成されている。
図42は、右方リスクポテンシャルRPcが高い場合に付与されるスタビライザリンク長の特性を示す図であり、図42(a)は、第1の特性例を示し、図42(b)は、第2の特性例を示している。
【0168】
右方リスクポテンシャルRPcが閾値RPc0以上の場合、例えば、図42(a)の第1の特性例として示すように、右側スタビライザリンク長を中立位置から右方リスクポテンシャルRPcに応じて大きくする。
これにより、ロール傾斜角(左ロール)が発生し、運転者に対して、右方のリスクポテンシャルが高まっていることを報知することができ、左方向への操舵操作を促すことができる。
【0169】
また、右方リスクポテンシャルRPcが閾値RPc0以上の場合、図42(b)の第2の特性例として示すように、右側スタビライザリンク長を大きくするのと併せ、左側スタビライザリンク長を中立位置から右方リスクポテンシャルRPcに応じて小さくすることにより、アクチュエータの変化幅を小さくしつつ、ロール傾斜角を効果的に発生させることもできる。
なお、本サスペンション構造を、後述する第2実施形態に適用し、左右リスクポテンシャルに応じた振動を発生させることも可能である。
このようなサスペンション構造の場合にも、現在の操作状態から、リスクポテンシャルが減少する方向への運転者による自発的な操作を促すことができ、運転者に対し、より適切に車両の運転操作の支援を行うことができる。
【0170】
(効果)
擬似車両挙動発生手段が、車両状態検出手段の検出結果およびリスクポテンシャルに基づいて、リスクポテンシャルが増大する運転操作を行った場合の車両挙動を、スタビライザリンク長を制御することによって擬似的に発生させる。
そのため、現在の操作状態から、リスクポテンシャルが減少する方向への運転者による自発的な操作を促すことができる。
したがって、運転者にリスクポテンシャルが増大しているような感覚を与え、それを抑制する運転操作を誘導することができるため、運転者に対し、より適切に車両の運転操作の支援を行うことができる。
【0171】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
本実施形態では、第1実施形態における情報伝達制御処理の基準値α0を車両の安定度に応じて補正する。
そのため、第1実施形態と異なる部分である情報伝達制御処理について説明する。
図43は、第2実施形態における情報伝達制御処理を示すフローチャートである。
コントローラ50は、運転者の指示入力に応じて情報伝達制御処理の実行を開始する。
【0172】
図43において、情報伝達制御処理を開始すると、コントローラ50は、リスクポテンシャル算出処理において算出したリスクポテンシャルRPが、リスクポテンシャルについて設定された閾値RP0より大きいか否かの判定を行う(ステップS401)。
ステップS401において、リスクポテンシャルRPが閾値RP0より大きいと判定した場合、コントローラ50は、情報伝達制御の基準値α0を算出する(ステップS402)。
このとき、コントローラ50は、第1実施形態の場合と同様に、図9に示す関係を基に、情報伝達制御の基準値α0を算出する。
ステップS402に続き、コントローラ50は、自車両の安定度を基に、情報伝達制御の基準値α0を補正する補正ゲインKαを算出する(ステップS403)。
【0173】
図44は、自動車1Aの安定度と補正ゲインKαとの関係を示す図である。
図44において、補正ゲインKαは、自動車1Aの安定度が低下するほど、基準値α0をより大きくするように補正するものとなっている。
また、図45(a)〜図45(c)は、車両の状態と安定度との関係を示す図である。即ち、図45(a)は車速と車両の安定度(車速依存分)を示す図、図45(b)は加減速度の大きさと車両の安定度(加減速度依存分)を示す図、図45(c)は横加速度(横G)の大きさと車両の安定度(横G依存分)との関係を示す図である。
【0174】
図45(a)〜図45(c)において、車速、加減速度の大きさおよび横Gの大きさが第1の閾値を超えると、これらの値が増加するにつれて、安定度が増大している。そして、安定度は、最大値1で飽和する。
ここで、安定度は最大値1で不安定な状態、最小値0で安定な状態と定義している。
図45(a)〜図45(c)に示す図において、車速、加減速度の大きさおよび横Gの大きさそれぞれについての安定度(ST_v,ST_xg,ST_yg)を取得し、これらを乗算することにより、総合的な安定度ST(=ST_v×ST_xg×ST_yg)を取得する。
【0175】
ステップS403に続き、コントローラ50は補正ゲインKαによって情報伝達の基準値α0を補正する(ステップS404)。
具体的には、コントローラ50は、ステップS304において、α0’=Kα・α0の演算を行い、算出したα0’を新たな情報伝達の基準値とする。
また、ステップS401において、リスクポテンシャルRPが閾値RP0以下であると判定した場合、コントローラ50は、情報伝達制御の基準値α0’を0に設定(α0’=0)する(ステップS405)。
【0176】
ステップS404およびステップS405の後、コントローラ50は、運転者が実行の停止を指示入力するまで、情報伝達制御処理を繰り返す。
ステップS404およびステップS405において算出した情報伝達制御の基準値α0’は、自動車1Aにおいて通常行っている能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLの制御に対し、付加的な制御を行う度合いを示すパラメータとしてコントローラ50が用いるものである。
【0177】
本実施形態において、情報伝達制御処理が実行されていない状態では、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLによって路面からの振動を一定の割合で軽減(例えば路面からの入力のうち70%を軽減)する制御を行っている。
情報伝達制御処理を実行することにより、コントローラ50は、情報伝達制御処理を実行していない場合における振動の軽減割合を変更し、情報伝達制御の基準値α0’に対応する振動の軽減割合に能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLを制御する。
【0178】
具体的には、コントローラ50は、情報伝達制御の基準値α0’の値が大きいほど、路面からの振動を打ち消す度合いを高くし、情報伝達制御の基準値α0’の値が小さいほど、路面からの振動を打ち消すことなく、運転者に伝えるように制御する。
また、情報伝達制御の基準値α0は、リスクポテンシャルRPの増加に伴って増加する傾向に設定している。
【0179】
そのため、本実施形態における自動車1Aは、リスクポテンシャルRPの増加に応じて、路面からの振動をより強く打ち消す制御を行う。
さらに、本実施形態における自動車1Aは、自車両の安定度に応じて、情報伝達制御の基準値α0を補正ゲインKαによって補正する。
具体的には、自車両の安定度が低下するほど、補正ゲインKαを大きくし、情報伝達制御の基準値α0に対して、より大きな基準値α0’を算出する。
【0180】
そのため、自車両周囲に、運転を行う上で高い注意を払う必要がある障害物が存在する場合に、自車両の安定度が低いほど、路面から入力される振動をより強く打ち消すことができ、運転操作支援のために付与される操舵操作の反力等、運転者が運転を行う際に有用な情報を選択して伝達することができる。
このようにして算出した基準値α0’を基に、自動車1Aは、車両上下方向の制御を行いつつ、第1実施形態と同様に車両前後方向および車両左右方向の運転操作補助処理を実行する。
【0181】
以上のように、本実施形態に係る自動車1Aは、自車両周囲の障害物状況に応じて算出したリスクポテンシャルに基づいて、リスクポテンシャルが大きいほど、路面からの振動を軽減して、車両前後および左右方向の操作の反力を付与する制御を行う。
また、このとき、自車両の安定度が低いほど、情報伝達制御の基準値α0を補正する補正ゲインKαを大きくし、路面から入力される振動を打ち消す度合いを高める。
【0182】
そのため、自動車1Aにおいては、自車両周囲の障害物状況および自車両の安定度に応じて車両上下方向のノイズを低減しつつ、車両前後および左右方向について、障害物に関する情報を伝達することができる。
したがって、運転者に対し、より適切に車両の運転操作のための情報を伝達することが可能となる。
なお、本実施形態において、車速センサ30、車両状態検出器140およびコントローラ50が安定状態検出手段に対応する。
【0183】
(第2実施形態の効果)
(1)自車両の安定状態に応じて、車両挙動を抑制する度合いを変化させるため、自車両の安定状態に応じたより適切な車両挙動の伝達制御を行うことができる。
(2)自車両の安定状態が不安定であるほど、車両挙動を抑制する度合いを大きくするため、リスクポテンシャルが高い状態において、リスクポテンシャルを低下させるための運転操作支援に関する情報を効果的に伝達することができる。
【0184】
(応用例1)
本実施形態において、図45を参照し、ST=ST_v×ST_xg×ST_ygとして車両の安定度STを求める場合について説明したが、車両の安定度STは、車速、加減速度の大きさ、横Gの大きさを重み付け加算し、加算結果を基に算出することができる。
具体的には、安定度ST=min(1、Kv×車速+Kxg×|加減速度|+Kyg×|横G|)として求めることができる。
この場合、車速、加減速度の大きさ、横Gの大きさそれぞれの影響をより適切に考慮して、安定度を算出することができる。
【0185】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
本実施形態では、第1実施形態における情報伝達制御の基準値α0を車両の安定度に応じて補正する。
ただし、第2実施形態の場合とは反対に、自車両の安定度が低下するほど、情報伝達制御の基準値α0を補正する補正ゲインを小さくし、運転者に路面の状況をより直接的に伝達する。
【0186】
そのため、第1実施形態と異なる部分である情報伝達制御処理について説明する。
図46は、第3実施形態における情報伝達制御処理を示すフローチャートである。
コントローラ50は、運転者の指示入力に応じて情報伝達制御処理の実行を開始する。
図46において、情報伝達制御処理を開始すると、コントローラ50は、リスクポテンシャル算出処理において算出したリスクポテンシャルRPが、リスクポテンシャルについて設定された閾値RP0より大きいか否かの判定を行う(ステップS501)。
【0187】
ステップS501において、リスクポテンシャルRPが閾値RP0より大きいと判定した場合、コントローラ50は、情報伝達制御の基準値α0を算出する(ステップS502)。
このとき、コントローラ50は、第1実施形態の場合と同様に、図9に示す関係を基に、情報伝達制御の基準値α0を算出する。
ステップS502に続き、コントローラ50は、第2実施形態と同様に、自車両の安定度を基に、情報伝達制御の基準値α0を補正する補正ゲインKα’を算出する(ステップS503)。
【0188】
図47は、自動車1Aの安定度と補正ゲインKα’との関係を示す図である。
図47において、補正ゲインKα’は、自動車1Aの安定度が低下するほど、基準値α0をより小さくするように補正するものとなっている。
ステップS503に続き、コントローラ50は補正ゲインKα’によって情報伝達の基準値α0を補正する(ステップS504)。
具体的には、コントローラ50は、ステップS404において、α0”=Kα’・α0の演算を行い、算出したα0”を新たな情報伝達の基準値とする。
また、ステップS501において、リスクポテンシャルRPが閾値RP0以下であると判定した場合、コントローラ50は、情報伝達制御の基準値α0”を0に設定(α0”=0)する(ステップS505)。
【0189】
ステップS504およびステップS505の後、コントローラ50は、運転者が実行の停止を指示入力するまで、情報伝達制御処理を繰り返す。
ステップS504およびステップS505において算出した情報伝達制御の基準値α0”は、自動車1Aにおいて通常行っている能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLの制御に対し、付加的な制御を行う度合いを示すパラメータとしてコントローラ50が用いるものである。
【0190】
本実施形態において、情報伝達制御処理が実行されていない状態では、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLによって路面からの振動を一定の割合で軽減(例えば路面からの入力のうち70%を軽減)する制御を行っている。
情報伝達制御処理を実行することにより、コントローラ50は、情報伝達制御処理を実行していない場合における振動の軽減割合を変更し、情報伝達制御の基準値α0”に対応する振動の軽減割合に能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLを制御する。
【0191】
具体的には、コントローラ50は、情報伝達制御の基準値α0”の値が大きいほど、路面からの振動を打ち消す度合いを高くし、情報伝達制御の基準値α0”の値が小さいほど、路面からの振動を打ち消すことなく、運転者に伝えるように制御する。
また、情報伝達制御の基準値α0は、リスクポテンシャルRPの増加に伴って増加する傾向に設定している。
【0192】
そのため、本実施形態における自動車1Aは、リスクポテンシャルRPの増加に応じて、路面からの振動をより強く打ち消す制御を行う。
さらに、本実施形態における自動車1Aは、自車両の安定度に応じて、情報伝達制御の基準値α0を補正ゲインKα’によって補正する。
具体的には、自車両の安定度が低下するほど、補正ゲインKα’を小さくし、情報伝達制御の基準値α0に対して、より小さな基準値α0”を算出する。
【0193】
そのため、自車両周囲に、運転を行う上で高い注意を払う必要がある障害物が存在する場合に、自車両の安定度が高いほど、路面から入力される振動をより強く打ち消すことができ、運転操作支援のために付与される操舵操作の反力等、運転者が運転を行う際に有用な情報を選択して伝達することができる。
このようにして算出した基準値α0”を基に、自動車1Aは、車両上下方向の制御を行いつつ、第1実施形態と同様に車両前後方向および車両左右方向の運転操作補助処理を実行する。
【0194】
以上のように、本実施形態に係る自動車1Aは、自車両周囲の障害物状況に応じて算出したリスクポテンシャルに基づいて、リスクポテンシャルが大きいほど、路面からの振動を軽減して、車両前後および左右方向の操作の反力を付与する制御を行う。
また、このとき、自車両の安定度が高いほど、情報伝達制御の基準値α0を補正する補正ゲインKα’を大きくし、路面から入力される振動を打ち消す度合いを低下させる。
【0195】
そのため、自動車1Aにおいては、自車両周囲の障害物状況および自車両の安定度に応じて車両上下方向のノイズを低減しつつ、車両前後および左右方向について、障害物に関する情報を伝達することができる。
したがって、運転者に対し、より適切に車両の運転操作のための情報を伝達することが可能となる。
このような制御形態は、自車両の安定度が低下したとしても、運転者自らが適切な操作を行える場合に有効である。そのため、熟練した運転者にとって、自車両が安定でない状態における情報伝達を適切に行うことができる制御パターンとなる。
【0196】
(第3実施形態の効果)
(1)自車両の安定状態が不安定であるほど、車両挙動を抑制する度合いを小さくするため、リスクポテンシャルが高い状態において、走行路面に関する情報を効果的に伝達することができる。
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。
本実施形態では、第1実施形態と同様の構成を有する自動車1Aにおいて、コントローラ50の制御則を異なるものとしている。
したがって、以下、コントローラ50における処理について説明する。
【0197】
(車両状態伝達量決定処理)
図48は、コントローラ50が実行する車両状態伝達量決定処理を示すフローチャートである。
コントローラ50は、運転者によって車両状態伝達量決定処理の実行が指示入力されることに対応して車両状態伝達量決定処理を開始する。
図48において、車両状態伝達量決定処理を開始すると、コントローラ50は、自車両の走行状態に関する情報を取得する(ステップS600)。
ステップS600においては、コントローラ50は、運転者の操作量(アクセル操作量、ブレーキ操作量、操舵角等)、センサ出力値(車速センサ、バネ下加速度センサ、車体上下加速度センサ等の出力値)、カーナビゲーションシステムからの情報、ワイパーの作動状態、ヘッドライトあるいはフォグランプの点灯の有無、外気温等の情報を取得する。
【0198】
次に、コントローラ50は、路面状況を判定する路面状況判定処理を実行する(ステップS700)。
ステップS700においては、コントローラ50は、バネ下加速度センサの出力値、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLのストローク、車輪速の変動等を基に、これらの値が設定された閾値以上の周波数変動および振幅変動がある場合に、悪路を走行しているものと判定する。
次に、コントローラ50は、自車両の車両挙動を判定する車両挙動判定処理を実行する(ステップS800)。
さらに、コントローラ50は、運転者に対する情報伝達を行う際の制御の基準値となる情報伝達度基準値を算出する情報伝達度基準値算出処理を実行する(ステップS900)。
【0199】
ステップS900においては、コントローラ50は、自車両の前後、左右および上下方向それぞれと、運転者の操作に対する操作反力に関する情報伝達度基準値を算出する。
次いで、コントローラ50は、運転者に対する情報伝達を行う際の自車両の状態を示すパラメータとなる情報伝達度最小値を算出する情報伝達度最小値算出処理を実行する(ステップS1000)。
【0200】
そして、コントローラ50は、運転者に対する情報伝達を行う度合いを示す情報伝達度を算出する情報伝達度算出処理を実行する(ステップS1100)。
ステップS1100においては、コントローラ50は、自車両の前後、左右および上下方向それぞれにおける情報伝達度と、運転者の操作に対する操作反力に関する情報伝達度を算出する。
コントローラ50は、ステップS1100において算出した情報伝達度に基づく制御指令値を各部に出力し、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RL、操舵反力制御装置60等による動作を行わせる。
なお、ステップS1100の後、コントローラ50は、運転者によって実行を停止させる指示入力があるまで、車両状態伝達量決定処理を繰り返し実行する。
【0201】
(車両挙動判定処理)
次に、車両状態伝達量決定処理のステップS800における車両挙動判定処理について説明する。
図49は、コントローラ50が実行する車両挙動判定処理を示すフローチャートである。
図49において、車両挙動判定処理を開始すると、コントローラ50は、自車両が旋回中であるか否かを判定する旋回中判定処理を実行する(ステップS810)。
次に、コントローラ50は、自車両が加速中であるか否かを判定する加速中判定処理を実行する(ステップS820)。
さらに、コントローラ50は、自車両が減速中であるか否かを判定する減速中判定処理を実行する(ステップS830)。
そして、コントローラ50は、車両状態伝達量決定処理に戻る。
【0202】
(旋回中判定処理)
次に、車両挙動判定処理のステップS810における旋回中判定処理について説明する。
図50は、コントローラ50が実行する旋回中判定処理を示すフローチャートである。
図50において、旋回中判定処理を開始すると、コントローラ50は、横加速度YGを取得し(ステップS811)、取得した横加速度の大きさが、横加速度について設定した閾値YG0より大きいか否かの判定を行う(ステップS812)。
ステップS812において、横加速度の大きさが閾値YG0よりも大きいと判定した場合、コントローラ50は、旋回中であるか否かを示す旋回中フラグFlg_STRの値を1に設定(Flg_STR=1)し(ステップS813)、車両挙動判定処理に戻る。
一方、ステップS812において、横加速度の大きさが閾値YG以下であると判定した場合、コントローラ50は、旋回中フラグFlg_STRの値を0に設定(Flg_STR=0)し(ステップS814)、車両挙動判定処理に戻る。
【0203】
(加速中判定処理)
次に、車両挙動判定処理のステップS320における加速中判定処理について説明する。
図51は、コントローラ50が実行する加速中判定処理を示すフローチャートである。
図51において、加速中判定処理を開始すると、コントローラ50は、アクセル開度ACCが、アクセル開度について設定した閾値ACC0より大きいか否かの判定を行う(ステップS821)。
ここで、アクセル開度について設定した閾値ACC0は、車速を一定に保つために必要なアクセル開度およびブレーキ圧と車速との関係を基に定めることができる。
【0204】
図52は、車速を一定に保つために必要なアクセル開度およびブレーキ圧と車速との関係を示す図である。
図52において、車速が定まると、その車速を保つために必要なアクセル開度も定まり、そのアクセル開度をステップS821で用いる閾値ACC0とすることができる。
ステップS821において、アクセル開度ACCが閾値ACC0より大きいと判定した場合、コントローラ50は、加速中であることを示す加速中フラグFlg_ACCの値を1に設定(Flg_ACC=1)し(ステップS822)、車両挙動判定処理に戻る。
一方、ステップS821において、アクセル開度ACCが閾値ACC0以下であると判定した場合、コントローラ50は、加速中フラグFlg_ACCの値を0に設定(Flg_ACC=0)し(ステップS823)、車両挙動判定処理に戻る。
【0205】
(減速中判定処理)
次に、車両挙動判定処理のステップS830における減速中判定処理について説明する。
図53は、コントローラご50が実行する減速中判定処理を示すフローチャートである。
図53において、減速中判定処理を開始すると、コントローラ50は、ブレーキ圧BRKが、ブレーキ圧について設定した閾値BRK0より大きいか否かの判定を行う(ステップS831)。
このとき、図51におけるアクセル開度の閾値ACC0と同様に、ブレーキ圧について閾値を定めることができる。
【0206】
即ち、図52において、車速が定まると、その車速を保つために必要なブレーキ圧も定まり、そのブレーキ圧をステップS831で用いる閾値BRK0とすることができる。
ステップS831において、ブレーキ圧BRKが閾値BRK0より大きいと判定した場合、コントローラ50は、減速中であることを示す減速中フラグFlg_BRKの値を1に設定(Flg_BRK=1)し(ステップS832)、車両挙動判定処理に戻る。
一方、ステップS831において、ブレーキ圧ACCが閾値BRK0以下であると判定した場合、コントローラ50は、減速中フラグFlg_BRKの値を0に設定(Flg_BRK=1)し(ステップS833)、車両挙動判定処理に戻る。
【0207】
(情報伝達度基準値算出処理)
次に、車両状態伝達量決定処理のステップS900における情報伝達度基準値算出処理について説明する。
図54は、コントローラ50が実行する情報伝達度基準値算出処理を示すフローチャートである。
図54において、情報伝達度基準値算出処理を開始すると、コントローラ50は、車両左右方向の挙動を伝達する処理のための基準値を算出する左右挙動伝達度基準値算出処理を実行する(ステップS910)。
【0208】
次に、コントローラ50は、車両前後方向の挙動を伝達する処理のための基準値を算出する前後挙動伝達度基準値算出処理を実行する(ステップS920)。
次に、コントローラ50は、車両上下方向の挙動を伝達する処理のための基準値を算出する上下挙動伝達度基準値算出処理を実行する(ステップS930)。
さらに、コントローラ50は、路面からステアリングホイール5に入力される操作力を伝達する処理のための基準値を算出する操作力伝達度基準値算出処理を実行する(ステップS940)。
ステップS940の後、コントローラ50は、車両状態伝達量決定処理に戻る。
【0209】
(左右挙動伝達度基準値算出処理)
次に、情報伝達度基準値算出処理のステップS910における左右挙動伝達度基準値算出処理について説明する。
図55は、コントローラ50が実行する左右挙動伝達度基準値算出処理を示すフローチャートである。
図55において、左右挙動伝達度基準値算出処理を開始すると、コントローラ50は、旋回中フラグFlg_STRの値が1に設定されているか否かの判定を行う(ステップS911)。
ステップS911において、旋回中フラグFlg_STRの値が1であると判定した場合、コントローラ50は、横Gの絶対値に基づいて、左右挙動伝達度基準値Kgy0を算出する(ステップS912)。
【0210】
図56は、横Gの絶対値|YG|と左右挙動伝達度基準値Kgy0との関係を示す図である。
図56において、横Gの絶対値|YG|が第1の閾値|YG0|を超えると、横Gの絶対値|YG|が増加するにつれて、左右挙動伝達度基準値Kgy0は増加している。そして、左右挙動伝達度基準値Kgy0は、最大値1で飽和する。
ステップS911において、旋回中フラグFlg_STRの値が1に設定されていないと判定した場合、コントローラ50は、左右挙動伝達度基準値Kgy0の値を0に設定する(ステップS913)。
ステップS912およびステップS913の後、コントローラ50は、情報伝達度基準値算出処理に戻る。
【0211】
(前後挙動伝達度基準値算出処理)
次に、情報伝達度基準値算出処理のステップS920における前後挙動伝達度基準値算出処理について説明する。
図57は、コントローラ50が実行する前後挙動伝達度基準値算出処理を示すフローチャートである。
図57において、前後挙動伝達度基準値算出処理を開始すると、コントローラ50は、加速中フラグFlg_ACCの値が1に設定されているか否かの判定を行う(ステップS921)。
ステップS921において、加速中フラグFlg_ACCの値が1に設定されていると判定した場合、コントローラ50は、アクセル開度ACCに基づいて、前後挙動伝達度基準値Kgx0を算出する(ステップS922)。
【0212】
図58は、アクセル開度ACCおよびブレーキ圧BRKと前後挙動伝達度基準値Kgx0との関係を示す図である。
図58において、アクセル開度ACCが第1の閾値ACC0を超えると、アクセル開度ACCが増加するにつれて、前後挙動伝達度基準値Kgx0は増加している。そして、前後挙動伝達度基準値Kgx0は、最大値1で飽和する。
また、図58において、ブレーキ圧BRKについても、ブレーキ圧BRKが第1の閾値BRK0を超えると、ブレーキ圧BRKが増加するにつれて、前後挙動伝達度基準値Kgx0は増加している。そして、前後挙動伝達度基準値Kgx0は、最大値1で飽和する。
【0213】
ステップS921において、加速中フラグFlg_ACCの値が1に設定されていないと判定した場合、コントローラ50は、減速中フラグFlg_BRKの値が1に設定されているか否かの判定を行う(ステップS923)。
ステップS923において、減速中フラグFlg_BRKの値が1に設定されていると判定した場合、コントローラ50は、ステップS922の処理に移行する。
一方、ステップS923において、減速中フラグFlg_BRKの値が1に設定されていないと判定した場合、コントローラ50は、前後挙動伝達度基準値Kgx0の値を0に設定する(ステップS924)。
ステップS922およびステップS924の後、コントローラ50は、情報伝達度基準値算出処理に戻る。
【0214】
(上下挙動伝達度基準値算出処理)
次に、情報伝達度基準値算出処理のステップS930における上下挙動伝達度基準値算出処理について説明する。
図59は、コントローラ50が実行する上下挙動伝達度基準値算出処理を示すフローチャートである。
図59において、上下挙動伝達度基準値算出処理を開始すると、コントローラ50は、加速中フラグFlg_ACCの値が1に設定されているか否かの判定を行う(ステップS931)。
ステップS931において、加速中フラグFlg_ACCの値が1に設定されていると判定した場合、コントローラ50は、アクセル開度ACCに基づいて、上下挙動伝達度基準値Kgz0を算出する(ステップS932)。
【0215】
図60は、アクセル開度ACCおよびブレーキ圧BRKと上下挙動伝達度基準値Kgz0との関係を示す図である。
図60において、アクセル開度ACCが第1の閾値ACC0を超えると、アクセル開度ACCが増加するにつれて、上下挙動伝達度基準値Kgz0は増加している。そして、上下挙動伝達度基準値Kgz0は、最大値1で飽和する。
また、図60において、ブレーキ圧BRKについても、ブレーキ圧BRKが第1の閾値BRK0を超えると、ブレーキ圧BRKが増加するにつれて、上下挙動伝達度基準値Kgz0は増加している。そして、上下挙動伝達度基準値Kgz0は、最大値1で飽和する。
【0216】
ステップS931において、加速中フラグFlg_ACCの値が1に設定されていないと判定した場合、コントローラ50は、減速中フラグFlg_BRKの値が1に設定されているか否かの判定を行う(ステップS933)。
ステップS933において、減速中フラグFlg_BRKの値が1に設定されていると判定した場合、コントローラ50は、ステップS932の処理に移行する。
一方、ステップS933において、減速中フラグFlg_BRKの値が1に設定されていないと判定した場合、コントローラ50は、上下挙動伝達度基準値Kgz0の値を0に設定する(ステップS934)。
ステップS932およびステップS934の後、コントローラ50は、情報伝達度基準値算出処理に戻る。
【0217】
(操作力伝達度基準値算出処理)
次に、情報伝達度基準値算出処理のステップS940における操作力伝達度基準値算出処理について説明する。
図61は、コントローラ50が実行する操作力伝達度基準値算出処理を示すフローチャートである。
図61において、操作力伝達度基準値算出処理を開始すると、コントローラ50は、旋回中フラグFlg_STRの値が1に設定されているか否かの判定を行う(ステップS941)。
ステップS941において、旋回中フラグFlg_STRの値が1であると判定した場合、コントローラ50は、横Gの絶対値に基づいて、操作力伝達度基準値Kfy0を算出する(ステップS942)。
【0218】
図62は、横Gの絶対値|YG|と操作力伝達度基準値Kfy0との関係を示す図である。
図62において、横Gの絶対値|YG|が第1の閾値|YG0|を超えると、横Gの絶対値|YG|が増加するにつれて、操作力伝達度基準値Kfy0は増加している。そして、操作力伝達度基準値Kfy0は、最大値1で飽和する。
ステップS941において、旋回中フラグFlg_STRの値が1に設定されていないと判定した場合、コントローラ50は、操作力伝達度基準値Kfy0の値を0に設定する(ステップS943)。
ステップS942およびステップS943の後、コントローラ50は、情報伝達度基準値算出処理に戻る。
【0219】
(情報伝達度最小値算出処理)
次に、車両状態伝達量決定処理のステップS1000における情報伝達度最小値算出処理について説明する。
図63は、コントローラ50が実行する情報伝達度最小値算出処理を示すフローチャートである。
図63において、情報伝達度最小値算出処理を開始すると、コントローラ50は、車速に依存する情報伝達度Kv1を算出する(ステップS1010)。
【0220】
図64は、車速と、車速に依存する情報伝達度Kv1との関係を示す図である。
図64において、車速が0から第1の閾値までは、車速に依存する情報伝達度Kv1は0.5で一定の値となっており、車速が第1の閾値を超えると、車速が増加するにつれて、車速に依存する情報伝達度Kv1は減少する。また、車速に依存する情報伝達度Kv1は、0が下限値となっている。
次に、コントローラ50は、車両周囲の明るさに依存する情報伝達度KbおよびKb1を算出する(ステップS1020)。
ここで、車両周囲の明るさに依存する情報伝達度Kbは悪路以外で用いる値、車両周囲の明るさに依存する情報伝達度Kb1は悪路で用いる値である。
【0221】
図65は、車両周囲の明るさと、車両周囲の明るさに依存する情報伝達度Kbとの関係を示す図である。また、図65は、車両周囲の明るさと、車両周囲の明るさに依存する情報伝達度Kb1との関係を示す図である。
図65において、車両周囲の明るさが第1の閾値を超えると、車両周囲の明るさが増加するほど、車両周囲の明るさに依存する情報伝達度Kbは増加している。そして、車両周囲の明るさに依存する情報伝達度Kbは、最大値0.5で飽和している。
また、図65において、車両周囲の明るさが第1の閾値を超えると、車両周囲の明るさが増加するほど、車両周囲の明るさに依存する情報伝達度Kb1は減少し、最小値0となる。さらに車両周囲の明るさが増加すると、車両周囲の明るさに依存する情報伝達度Kb1は増加し、最大値0.5で飽和している。
【0222】
なお、ステップS1020では、コントローラ50は、自車両が悪路以外を走行している場合、図65の関係を用いて車両周囲の明るさに依存する情報伝達度Kbを算出し、自車両が悪路を走行している場合、図66の関係を用いて車両周囲の明るさに依存する情報伝達度Kb1を算出する。
次に、コントローラ50は、ワイパーの作動状態に依存する情報伝達度KwおよびKw1を算出する(ステップS1030)。
ここで、ワイパーの作動状態に依存する情報伝達度Kwは悪路以外で用いる値、ワイパーの作動状態に依存する情報伝達度Kw1は悪路で用いる値である。
【0223】
図67は、ワイパーの作動状態に依存する情報伝達度KwおよびKw1の値を示す図である。
図67において、ワイパーの作動状態が、オフの場合、間欠動作している場合、通常速度で動作している場合、高速動作している場合のそれぞれについて、悪路以外で用いるワイパーの作動状態に依存する情報伝達度Kwと、悪路で用いるワイパーの作動状態に依存する情報伝達度Kw1とが設定されている。
なお、悪路を走行中であるか否かについて、コントローラ50は、バネ下加速度センサの出力値、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLのストローク、車輪速の変動等を基に、これらの値が設定された閾値以上の周波数変動および振幅変動がある場合に、悪路を走行しているものと判定する。
次に、コントローラ50は、道路種別に依存する情報伝達度Krを算出する(ステップS1040)。
【0224】
図68は、道路種別に依存する情報伝達度Krの値を示す図である。
図68において、道路種別が、市街地、郊外路および高速道路のそれぞれについて道路種別に依存する情報伝達度Krが設定されている。
なお、コントローラ50は、カーナビゲーションシステムからの現在位置および地図情報と、信号の数等を基に、市街地、郊外路および高速道路のいずれを走行しているかを判定する。
【0225】
次に、コントローラ50は、車速に依存する情報伝達度Kv1と、車両周囲の明るさに依存する情報伝達度KbあるいはKb1と、ワイパーの作動状態に依存する情報伝達度KwあるいはKw1と、道路種別に依存する情報伝達度Krとにおいて、最小のもの(以下、「情報伝達度最小値」と称する。)K_minを算出する情報伝達度最小値算出処理を実行する(ステップS1050)。
ステップS1050の後、コントローラ50は、車両状態伝達量決定処理に戻る。
【0226】
(情報伝達度算出処理)
次に、車両状態伝達量決定処理のステップS1100における情報伝達度算出処理について説明する。
図69は、コントローラ50が実行する情報伝達度算出処理を示すフローチャートである。
図69において、情報伝達度算出処理を開始すると、コントローラ50は、車両左右方向の挙動を伝達する度合いを示す左右挙動伝達度Kgyを算出する左右挙動伝達度算出処理を実行する(ステップS1110)。
次に、コントローラ50は、車両前後方向の挙動を伝達する度合いを示す前後挙動伝達度Kgxを算出する前後挙動伝達度算出処理を実行する(ステップS1120)。
【0227】
次に、コントローラ50は、車両上下方向の挙動を伝達する度合いを示す上下挙動伝達度Kgzを算出する上下挙動伝達度算出処理を実行する(ステップS1130)。
次に、コントローラ50は、路面からステアリングホイール5に入力される操作力を伝達する度合いを示す操作力伝達度Kfyを算出する操作力伝達度算出処理を実行する(ステップS1140)。
ステップS1140の後、コントローラ50は、車両状態伝達量決定処理に戻る。
【0228】
(左右挙動伝達度算出処理)
次に、情報伝達度算出処理のステップS1110における左右挙動伝達度算出処理について説明する。
図70は、コントローラ50が実行する左右挙動伝達度算出処理を示すフローチャートである。
図70において、左右挙動伝達度算出処理を開始すると、コントローラ50は、左右挙動伝達度基準値Kgy0が情報伝達度最小値K_minより大きいか否かの判定を行う(ステップS1111)。
ステップS1111において、左右挙動伝達度基準値Kgy0が情報伝達度最小値K_minより大きいと判定した場合、コントローラ50は、左右挙動伝達度Kgyとして、左右挙動伝達度基準値Kgy0を設定する(ステップS1112)。
一方、ステップS1111において、左右挙動伝達度基準値Kgy0が情報伝達度最小値K_min以下であると判定した場合、コントローラ50は、左右挙動伝達度Kgyとして、情報伝達度最小値K_minを設定する(ステップS1113)。
ステップS1112およびステップS1113の後、コントローラ50は、情報伝達度算出処理に戻る。
【0229】
(前後挙動伝達度算出処理)
次に、情報伝達度算出処理のステップS1120における前後挙動伝達度算出処理について説明する。
図71は、コントローラ50が実行する前後挙動伝達度算出処理を示すフローチャートである。
図71において、前後挙動伝達度算出処理を開始すると、コントローラ50は、前後挙動伝達度基準値Kgx0が情報伝達度最小値K_minより大きいか否かの判定を行う(ステップS1121)。
【0230】
ステップS1121において、前後挙動伝達度基準値Kgx0が情報伝達度最小値K_minより大きいと判定した場合、コントローラ50は、前後挙動伝達度Kgxとして、前後挙動伝達度基準値Kgx0を設定する(ステップS1122)。
一方、ステップS1121において、前後挙動伝達度基準値Kgx0が情報伝達度最小値K_min以下であると判定した場合、コントローラ50は、前後挙動伝達度Kgxとして、情報伝達度最小値K_minを設定する(ステップS1123)。
ステップS1122およびステップS1123の後、コントローラ50は、情報伝達度算出処理に戻る。
【0231】
(上下挙動伝達度算出処理)
次に、情報伝達度算出処理のステップS1130における上下挙動伝達度算出処理について説明する。
図72は、コントローラ50が実行する上下挙動伝達度算出処理を示すフローチャートである。
図72において、上下挙動伝達度算出処理を開始すると、コントローラ50は、上下挙動伝達度基準値Kgz0が情報伝達度最小値K_minより大きいか否かの判定を行う(ステップS1131)。
【0232】
ステップS1131において、上下挙動伝達度基準値Kgz0が情報伝達度最小値K_minより大きいと判定した場合、コントローラ50は、上下挙動伝達度Kgzとして、上下挙動伝達度基準値Kgz0を設定する(ステップS1132)。
一方、ステップS1131において、上下挙動伝達度基準値Kgz0が情報伝達度最小値K_min以下であると判定した場合、コントローラ50は、上下挙動伝達度Kgzとして、情報伝達度最小値K_minを設定する(ステップS1133)。
【0233】
次に、コントローラ50は、走行路面の状況が悪路であるか否かの判定を行う(ステップS1134)。
ステップS1134において、走行路面の状況が悪路でないと判定した場合、コントローラ50は、情報伝達度算出処理に戻る。
一方、ステップS1134において、走行路面の状況が悪路であると判定した場合、コントローラ50は、悪路に対応した情報伝達度最小値K_min1を算出する(ステップS1135)。
【0234】
このとき、コントローラ50は、車両周囲の明るさに依存する情報伝達度Kb1と、ワイパーの作動状態に依存する情報伝達度Kw1とのうち、小さいものを悪路に対応した情報伝達度最小値K_min1として設定する。
次に、コントローラ50は、上下挙動伝達度KgzがK_min1より大きいか否かの判定を行う(ステップS1136)。
ステップS1136において、上下挙動伝達度KgzがK_min1より大きいと判定した場合、コントローラ50は、情報伝達度算出処理に戻る。
一方、ステップS1136において、上下挙動伝達度KgzがK_min1以下であると判定した場合、コントローラ50は、上下挙動伝達度Kgzとして、悪路に対応した情報伝達度最小値K_min1を設定する(ステップS1137)。
ステップS1137の後、コントローラ50は、情報伝達度算出処理に戻る。
【0235】
(操作力伝達度算出処理)
次に、情報伝達度算出処理のステップS1140における操作力伝達度算出処理について説明する。
図73は、コントローラ50が実行する操作力伝達度算出処理を示すフローチャートである。
図73において、操作力伝達度算出処理を開始すると、コントローラ50は、操作力伝達度基準値Kfy0が情報伝達度最小値K_minより大きいか否かの判定を行う(ステップS1141)。
ステップS1141において、操作力伝達度基準値Kfy0が情報伝達度最小値K_minより大きいと判定した場合、コントローラ50は、操作力伝達度Kfyとして、操作力伝達度基準値Kfy0を設定する(ステップS1142)。
【0236】
一方、ステップS1141において、操作力伝達度基準値Kfy0が情報伝達度最小値K_min以下であると判定した場合、コントローラ50は、操作力伝達度Kfyとして、情報伝達度最小値K_minを設定する(ステップS1143)。
ステップS1142およびステップS1143の後、コントローラ50は、情報伝達度算出処理に戻る。
コントローラ50がこれらの制御を実行することにより、自動車1Aにおいては、路面状況および車両挙動に基づいて、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLによって路面からの振動を抑制する度合いを適切に制御することができる。
【0237】
(第4実施形態の効果)
(1)自車両の状態と、自車両周囲の障害物の状態とに基づいて、自車両に生じている車両挙動を抑制して伝達し、自車両の状態および自車両周囲の障害物の状態とに基づく操作反力を付与する。
そのため、自車両の状態と、自車両周囲の障害物の状態とに応じて、自車両に生じている車両挙動を抑制して伝達することができる。また、車両挙動を抑制して伝達した状態で、運転操作補助のために反力を付与することができる。
したがって、運転者に対し、より適切に車両の運転操作のための情報を伝達することが可能となる。
【0238】
(応用例1)
本実施形態において、上下挙動伝達度基準値算出処理では、加速中フラグが1であるか否か、および、減速中フラグが1であるか否かに基づいて、上下挙動伝達度基準値を設定するものとして説明した。
これに対し、本応用例では、上下挙動伝達度基準値算出処理において、走行路面の状況が悪路であるか否かに応じて、上下挙動伝達度基準値を設定する。
具体的には、加減速時における能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLの制御基準値として予め設定された値に対し、走行路面の状況が悪路である場合には、その制御基準値よりも大きい値(即ち、加減速による車両上下方向の挙動をより多く伝える値)に設定する。
このとき、図72に示す上下挙動伝達度算出処理では、走行路面の状況が悪路であるか否かを判定することなく、上下挙動伝達度を算出する。
このような処理により、走行路面の状況が悪路であり、路面から大きい振動が入力される場合に、加減速による車両上下方向の挙動を適確に運転者に伝達することができる。
【0239】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について説明する。
本実施形態では、第1実施形態における場合と運転操作誘導処理を異なるものとしている。
したがって、自動車1Aの構成については、第1実施形態を参照することとし、運転操作誘導処理について説明する。
【0240】
(運転操作誘導処理)
図74は、コントローラ50が実行する運転操作誘導処理を示すフローチャートである。
コントローラ50は、運転者の指示入力に応じて運転操作誘導処理の実行を開始する。
図74において、運転操作誘導処理を開始すると、コントローラ50は、リスクポテンシャル算出処理において算出した前後および左右方向のリスクポテンシャルRPa、RPb,RPc,RPdを取得する(ステップP201)。
【0241】
次に、コントローラ50は、ステップP201において取得した前後および左右方向のリスクポテンシャルRPa、RPb,RPc,RPdが、それぞれについて設定された閾値RPa0、RPb0,RPc0,RPd0を超えているか否かの判定を行う(ステップP202)。
ステップP202において、前後および左右方向のリスクポテンシャルRPa、RPb,RPc,RPdのいずれも、それぞれについて設定された閾値RPa0、RPb0,RPc0,RPd0を超えていないと判定した場合、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
【0242】
また、ステップP202において、前方リスクポテンシャルRPaが閾値RPa0を超えていると判定した場合、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4FLのサスペンションストロークを前方リスクポテンシャルRPaに応じた振幅で振動させる(ステップP203)。また、ステップP203において、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4FLのサスペンションストロークを、第1実施形態と同様に、前方リスクポテンシャルRPaに応じて変化させる。さらに、ステップP203において、コントローラ50は、アクセルペダル7の操作反力を前方リスクポテンシャルRPaに応じて増加させる。
【0243】
ステッP203の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
図75は、前方リスクポテンシャルRPaが高い場合の制御動作を示す模式図である。
また、図76は、前方リスクポテンシャルRPaが高い場合に付与されるアクセルペダル反力およびサスペンションストロークの振動の特性を示す図である。
なお、図75においては、サスペンションストロークの振動を表す模式図を示しており、第1実施形態におけるサスペンションストロークの増加分は図示していない。以下、図77、図79において同様である。
【0244】
図75および図76において、前方リスクポテンシャルRPaが閾値RPa0より高い場合、図76(a)に示すように、アクセルペダル反力が前方リスクポテンシャルRPaに応じて強くなり、アクセルペダル7を踏み増しにくい状態となる。また、図75に示すように、能動型サスペンション4FR,4FLのサスペンションストロークが前方リスクポテンシャルRPaに応じた振幅で振動する。これにより、運転者に対して、自動車1Aのいずれの方向においてリスクポテンシャルが高まっているかを報知することができる。また、このとき、図76(b)に示すように、能動型サスペンション4FR,4FLのサスペンションストロークの振幅は、前方リスクポテンシャルRPaに応じて大きくなり、運転者に対して、前方リスクポテンシャルRPaが大きいほど、より強い振動を伝えることができる。さらに、能動型サスペンション4FR,4FLのサスペンションストロークを、第1実施形態と同様に、前方リスクポテンシャルRPaに応じて変化させる。これにより、運転者に対して、自動車1Aが加速しているような感覚を与えることができる。
【0245】
このような運転操作の誘導を行うことにより、運転者に対して減速操作を促すことができる。
そして、運転者が減速操作を行うと、前方リスクポテンシャルRPaが減少し、ステップP203における運転操作の誘導が停止される。
また、ステップP202において、後方リスクポテンシャルRPbが閾値RPb0を超えていると判定した場合、コントローラ50は、能動型サスペンション4RR,4RLのサスペンションストロークを前方リスクポテンシャルRPbに応じた振幅で振動させる(ステップP204)。また、ステップP204において、コントローラ50は、能動型サスペンション4RR,4RLのサスペンションストロークを、第1実施形態と同様に、前方リスクポテンシャルRPbに応じて変化させる。
ステッP204の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
【0246】
図77は、後方リスクポテンシャルRPbが高い場合の制御動作を示す模式図である。
また、図78は、後方リスクポテンシャルRPbが高い場合に付与されるサスペンションストロークの振動の特性を示す図である。
図77および78において、前方リスクポテンシャルRPaが閾値RPa0より高い場合、図78に示すように、能動型サスペンション4RR,4RLのサスペンションストロークが前方リスクポテンシャルRPbに応じた振幅で振動する。これにより、運転者に対して、自動車1Aのいずれの方向においてリスクポテンシャルが高まっているかを報知することができる。また、このとき、図78に示すように、能動型サスペンション4RR,4RLのサスペンションストロークの振幅は、後方リスクポテンシャルRPbに応じて大きくなり、運転者に対して、後方リスクポテンシャルRPbが大きいほど、より強い振動を伝えることができる。さらに、能動型サスペンション4RR,4RLのサスペンションストロークを、第1実施形態と同様に、後方リスクポテンシャルRPbに応じて変化させる。これにより、運転者に対して、自動車1Aが加速しているような感覚を与えることができる。
【0247】
このような運転操作の誘導を行うことにより、運転者に対して減速操作を促すことができる。
そして、運転者が減速操作を行うと、前方リスクポテンシャルRPaが減少し、ステップP203における運転操作の誘導が停止される。
また、ステップP202において、右方リスクポテンシャルRPcが閾値RPc0を超えていると判定した場合、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4RRのサスペンションストロークを右方リスクポテンシャルRPcに応じた振幅で振動させる(ステップP205)。また、ステップP205において、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4RRのサスペンションストロークを、第1実施形態と同様に、右方リスクポテンシャルRPcに応じて変化させる。
【0248】
ステッP204の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
また、ステップP202において、左方リスクポテンシャルRPdが閾値RPd0を超えていると判定した場合、コントローラ50は、能動型サスペンション4FL,4RLのサスペンションストロークを左方リスクポテンシャルRPdに応じた振幅で振動させる(ステップP206)。また、ステップP206において、コントローラ50は、能動型サスペンション4FL,4RLのサスペンションストロークを、第1実施形態と同様に、右方リスクポテンシャルRPdに応じて変化させる。
ステッP206の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
【0249】
図79は、右方リスクポテンシャルRPcあるいは左方リスクポテンシャルRPdが高い場合の制御動作を示す模式図である。なお、図79においては、車両を後方から見た図を示しており、右方リスクポテンシャルRPcが高い場合を例に挙げている。
また、図80は、右方リスクポテンシャルRPcあるいは左方リスクポテンシャルRPdが高い場合に付与される操舵反力およびサスペンションストロークの振動の特性を示す図である。
【0250】
図79および図80において、右方リスクポテンシャルRPcが閾値RPc0より高い場合、図80(a)に示すように、操舵反力が右方リスクポテンシャルRPcに応じて強くなり、右方向への操舵を切り増しにくい状態となる。また、図79に示すように、能動型サスペンション4FR,4RRのサスペンションストロークが右方リスクポテンシャルRPcに応じた振幅で振動する。これにより、運転者に対して、自動車1Aのいずれの方向においてリスクポテンシャルが高まっているかを報知することができる。この場合、運転者に擬似的な凹凸を感じさせることができる。また、このとき、図80(b)に示すように、能動型サスペンション4FR,4RRのサスペンションストロークの振幅は、右方リスクポテンシャルRPcに応じて大きくなり、運転者に対して、右方リスクポテンシャルRPcが大きいほど、より強い振動を伝えることができる。さらに、能動型サスペンション4FR,4RRのサスペンションストロークを、第1実施形態と同様に、右方リスクポテンシャルRPcに応じて変化させる。これにより、運転者に対して、自動車1Aが右旋回して車体3が左にロールしているような感覚を与えることができる。
【0251】
このような運転操作の誘導を行うことにより、運転者に対して左方向への操舵操作を促すことができる。
そして、運転者が減速操作を行うと、右方リスクポテンシャルRPcが減少し、ステップP205における運転操作の誘導が停止される。
同様に、左方リスクポテンシャルRPdが高い場合には、操舵反力が左方リスクポテンシャルRPdに応じて強くなり、左方向への操舵を切り増しにくい状態となる。また、能動型サスペンション4FL,4RLのサスペンションストロークが左方リスクポテンシャルRPdに応じた振幅で振動する。これにより、運転者に対して、自動車1Aのいずれの方向においてリスクポテンシャルが高まっているかを報知することができる。また、このとき、能動型サスペンション4FL,4RLのサスペンションストロークの振幅は、左方リスクポテンシャルRPdに応じて大きくなり、運転者に対して、左方リスクポテンシャルRPdが大きいほど、より強い振動を伝えることができる。さらに、能動型サスペンション4FL,4RLのサスペンションストロークを、第1実施形態と同様に、左方リスクポテンシャルRPdに応じて変化させる。これにより、運転者に対して、自動車1Aが左旋回して車体3が右にロールしているような感覚を与えることができる。
【0252】
このような運転操作の誘導を行うことにより、運転者に対して右方向への操舵操作を促すことができる。
ここで、運転操作誘導処理において、前後方向のリスクポテンシャルRPa,RPbのいずれも閾値RPa0,RPb0を超えている場合には、前後方向のうち、閾値を超えている絶対量が大きい方の制御を優先する、あるいは、いずれも制御を行わないといった方法とすることができる。
また、運転操作誘導処理において、左右方向のリスクポテンシャルRPc,RPdのいずれも閾値RPc0,RPd0を超えている場合には、左右方向のうち、閾値を超えている絶対量が大きい方の制御を優先する、あるいは、いずれも制御を行わないといった方法とすることができる。
【0253】
(動作)
次に、動作を説明する。
運転操作誘導処理を実行している自動車1Aの走行中に、前後左右いずれかの方向におけるリスクポテンシャルが閾値を超えたとする。
すると、コントローラ50が、リスクポテンシャルが高くなった方向に応じて、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLを制御し、サスペンションストロークの振動および擬似的な車両の挙動を発生させる。
即ち、前方のリスクポテンシャルが高い場合、車体3を後傾させて前輪のサスペンションストロークを振動させ、後方のリスクポテンシャルが高い場合、車体3を前傾させて後輪のサスペンションストロークを振動させる。また、右方のリスクポテンシャルが高い場合、車体3を左にロールさせて右前輪および右後輪のサスペンションストロークを振動させ、左方のリスクポテンシャルが高い場合、車体3を右にロールさせて左前輪および左後輪のサスペンションストロークを振動させる。
【0254】
これにより、運転者は、自車両の状態がリスクポテンシャルが高まる方向に近づいている(例えば、凹凸のある白線を踏んでいる)と感じ、リスクポテンシャルが低くなる方向への操作を行う。また、サスペンションの振動位置から、リスクポテンシャルが高い方向を認識できる。
また、このとき、リスクポテンシャルの大きさに応じたサスペンションストロークの振動としている。
これにより、運転者は、リスクポテンシャルの大きさを認識することができる。
即ち、運転者の運転操作を誘導することができる。
また、このとき、リスクポテンシャルが高まる方向への操作に対し、より強い操作反力を付与している。
そのため、運転者がリスクポテンシャルの高まる方向へ操作することを抑制できる。
【0255】
以上のように、本実施形態に係る自動車1Aは、前後あるいは左右のリスクポテンシャルRPa、RPb,RPc,RPdが閾値を超えているか否かを判定し、リスクポテンシャルが高いと判定した方向への擬似的な車両の挙動を示すように、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLを制御する。
そのため、現在の操作状態から、リスクポテンシャルが減少する方向への運転者による自発的な操作を促すことができる。
【0256】
また、リスクポテンシャルが高いと判定した方向のサスペンションストロークを、リスクポテンシャルに対応する振幅で振動させる。
そのため、運転者は、リスクポテンシャルが高い方向とその大きさを認識できる。
また、リスクポテンシャルが増加する方向への操作に対して、リスクポテンシャルに応じた反力を付与している。そのため、運転者がリスクポテンシャルの増加する方向へ操作しようとした場合に、操作が適切でないことを報知することができる。また、運転者による適切でない操作を抑制することができる。
このように、本実施形態に係る自動車1Aによれば、運転者に対し、より適切に車両の運転操作の支援を行うことができる。
【0257】
(第5実施形態の効果)
(1)擬似車両挙動発生手段が、リスクポテンシャルに基づいて、障害物が存在する側の車体を振動させるため、障害物の存在方向を運転者に理解しやすい形態で知らせることができる。
(2)擬似車両挙動発生手段は、自車両の前後方向における前記リスクポテンシャルに対し、前輪または後輪いずれかのサスペンション装置に振動を発生させる制御を行う。
したがって、運転者は、リスクポテンシャルが高い方向とその大きさを認識できる。
(3)擬似車両挙動発生手段は、自車両の左右方向におけるリスクポテンシャルに対し、左右輪いずれかのサスペンション装置に振動を発生させる制御を行う。
したがって、運転者に擬似的な凹凸を感じさせることができる。
【0258】
(応用例1)
第5実施形態においては、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLによって、リスクポテンシャルが高いと判定した方向のサスペンションストロークを振動させる場合を例に挙げて説明した。
これに対し、本応用例では、制御型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLのサスペンションストロークを振動させる代わりに、運転席シートの制御を行うことにより、運転者の運転操作を誘導するものである。
【0259】
具体的には、本応用例においては、運転席シートの複数の脚(例えば4本)に、シートレッグ長を変化させることが可能なアクチュエータ(制御型のサスペンション)を備える。
そして、これらのアクチュエータ(それぞれ、前右:700FR、前左:700FL、後右:700RR、後左:700RLとする。)によって、シートレッグ長を、リスクポテンシャルRPに応じた振幅で、それぞれ振動させる。
【0260】
図81は、本応用例において、コントローラ50が実行する運転操作誘導処理を示すフローチャートである。
コントローラ50は、運転者の指示入力に応じて情報伝達制御処理の実行を開始する。
図81において、運転操作誘導処理を開始すると、コントローラ50は、リスクポテンシャル算出処理において算出した前後および左右方向のリスクポテンシャルRPa,RPb,RPc,RPdを取得する(ステップT110)。
次に、コントローラ50は、ステップT110において取得した前後および左右方向のリスクポテンシャルRPa,RPb,RPc,RPdが、それぞれについて設定された閾値RPa0,RPb0,RPc0,RPd0を超えているか否かの判定を行う(ステップT120)。
【0261】
ステップT120において、前後および左右方向のリスクポテンシャルRPa,RPb,RPc,RPdのいずれも、それぞれ設定された閾値RPa0,RPb0,RPc0,RPd0を超えていないと判定した場合、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
また、ステップT120において、前方リスクポテンシャルRPaが閾値RPa0を超えていると判定した場合、コントローラ50は、アクチュエータ700FR,700FLにより、前方シートレッグ長を前方リスクポテンシャルRPaに応じた振幅で振動させる(ステップT130)。
【0262】
また、第1実施形態の応用例2と同様に、コントローラ50は、前方シートレッグ長を変化させ、運転席シートを車体3に対して後傾させる。さらに、コントローラ50は、アクセルペダルの操作反力を前方リスクポテンシャルRPaに応じて増加させる。
つまり、アクセルペダル反力が前方リスクポテンシャルRPaに応じて強くなり、アクセルペダルを踏み増しにくい状態になると共に、運転席シートの前方シートレッグ長が前方リスクポテンシャルRPaに応じた振幅で振動する。これにより、運転者に対して、前方のリスクポテンシャルが高まっていることを報知することができ、減速操作を促すことができる。
【0263】
そして、運転者が減速操作を行うと、前方リスクポテンシャルRPaが減少し、運転操作の誘導が停止される。
ステップT130の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
また、ステップT120において、後方リスクポテンシャルRPbが閾値RPb0を超えていると判定した場合、コントローラ50は、アクチュエータ700RR,700RLにより、後方シートレッグ長を後方リスクポテンシャルRPbに応じた振幅で振動させる(ステップT140)。
【0264】
また、第1実施形態の応用例2と同様に、コントローラ50は、後方シートレッグ長を変化させ、運転席シートを車体3に対して前傾させる。これにより、運転者に対して加速操作を促すことができる。
そして、運転者が加速操作を行うと、後方リスクポテンシャルRPbが減少し、運転操作の誘導が停止される。
ステップT140の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
また、ステップT120において、右方リスクポテンシャルRPcが閾値RPc0を超えていると判定した場合、アクチュエータ700FR,700RRにより、右方シートレッグ長を右方リスクポテンシャルRPcに応じた振幅で振動させる(ステップT150)。
【0265】
また、第1実施形態の応用例12と同様に、コントローラ50は、右方シートレッグ長を変化させ、運転席シートを車体3に対して左ロールさせる。さらに、コントローラ50は、操舵反力を右方リスクポテンシャルRPcに応じて増加させる。
つまり、操舵反力が右方リスクポテンシャルRPcに応じて強くなり、右方向への操舵を切り増しにくい状態になると共に、運転席シートの右方シートレッグ長が右方リスクポテンシャルRPcに応じた振幅で振動する。これにより、運転者に対して、右方のリスクポテンシャルが高まっていることを報知することができ、左方向への操舵操作を促すことができる。
【0266】
そして、運転者が操舵操作を行うと、右方リスクポテンシャルRPcが減少し、運転操作の誘導が停止される。
ステップT150の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
また、ステップT120において、左方リスクポテンシャルRPdが閾値RPd0を超えていると判定した場合、アクチュエータ700FL,700RLにより、左方シートレッグ長を左方リスクポテンシャルRPdに応じた振幅で振動させる(ステップT160)。
【0267】
また、第1実施形態の応用例12と同様に、コントローラ50は、左方シートレッグ長を変化させ、運転席シートを車体3に対して右ロールさせる。さらに、コントローラ50は、操舵反力を左方リスクポテンシャルRPdに応じて増加させる。
つまり、操舵反力が左方リスクポテンシャルRPdに応じて強くなり、左方向への操舵を切り増しにくい状態になると共に、運転席シートの左方シートレッグ長が左方リスクポテンシャルRPdに応じた振幅で振動する。これにより、運転者に対して、左方のリスクポテンシャルが高まっていることを報知することができ、右方向への操舵操作を促すことができる。
【0268】
そして、運転者が操舵操作を行うと、左方リスクポテンシャルRPdが減少し、運転操作の誘導が停止される。
ステップT160の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
このように、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLに代えて、運転席シートに設置したアクチュエータ700FR,700FL,700RR,700RLを振動させることによって、前後左右方向のリスクポテンシャルを運転者に伝達することができる。
なお、本応用例において、アクチュエータ700FR,700FL,700RR,700RLを備える運転席シートが動作制御手段に対応する。
【0269】
(効果)
擬似車両挙動発生手段が、車両状態検出手段の検出結果およびリスクポテンシャルに基づいて、リスクポテンシャルが増大する運転操作を行った場合の車両挙動を、動作制御手段を制御することによって擬似的に発生させる。
そのため、現在の操作状態から、リスクポテンシャルが減少する方向への運転者による自発的な操作を促すことができる。
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について説明する。
本実施形態では、第1実施形態における場合と運転操作誘導処理を異なるものとしている。
したがって、自動車1Aの構成については、第1実施形態を参照することとし、運転操作誘導処理について説明する。
【0270】
(運転操作誘導処理)
図82は、コントローラ50が実行する運転操作誘導処理を示すフローチャートである。
コントローラ50は、運転者の指示入力に応じて運転操作誘導処理の実行を開始する。
図82において、運転操作誘導処理を開始すると、コントローラ50は、リスクポテンシャル算出処理において算出した前方リスクポテンシャルRPaを取得する(ステップP301)。
次に、コントローラ50は、ステップP301において取得した前方リスクポテンシャルRPaが、前方リスクポテンシャルRPaについて設定された閾値RPa0以上であるか否かの判定を行う(ステップP302)。
【0271】
ステップP302において、前方リスクポテンシャルRPaが、設定された閾値RPa0を超えていないと判定した場合、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
また、ステップP302において、前方リスクポテンシャルRPaが閾値RPa0以上であると判定した場合、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4RRのサスペンションストロークと、能動型サスペンション4FL,4RLのサスペンションストロークとを、交互に振動させ、車体3を前方リスクポテンシャルRPaに応じたロール角で揺動させる(ステップP303)。また、ステップP303において、コントローラ50は、アクセルペダル7の操作反力を前方リスクポテンシャルRPaに応じて増加させる。
ステッP303の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
【0272】
図83は、前方リスクポテンシャルRPaが高い場合の制御動作を示す模式図である。
また、図84は、前方リスクポテンシャルRPaが高い場合に付与されるアクセルペダル反力および車体3の揺動ロール角の特性を示す図である。
図83および図84において、前方リスクポテンシャルRPaが閾値RPa0より高い場合、図84(a)に示すように、アクセルペダル反力が前方リスクポテンシャルRPaに応じて強くなり、アクセルペダル7を踏み増しにくい状態となる。また、図83に示すように、能動型サスペンション4FR,4RRおよび能動型サスペンション4FL,4RLのサスペンションストロークが交互に振動し、前方リスクポテンシャルRPaに応じたロール角で車体3が揺動する。これにより、運転者に対して、自動車1Aが不安定な状態となっているような感覚を与えることができる。また、このとき、図84(b)に示すように、車体3の揺動ロール角は、前方リスクポテンシャルRPaに応じて大きくなり、運転者に対して、前方リスクポテンシャルRPaが大きいほど、より不安定となっているような感覚を与えることができる。
このような運転操作の誘導を行うことにより、運転者に対して減速操作を促すことができる。
そして、運転者が減速操作を行うと、前方リスクポテンシャルRPaが減少し、ステップP303における運転操作の誘導が停止される。
【0273】
(動作)
次に、動作を説明する。
運転操作誘導処理を実行している自動車1Aの走行中に、前方におけるリスクポテンシャルが閾値を超えたとする。
すると、コントローラ50が、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLを制御し、擬似的な車両の挙動を発生させる。
即ち、前方リスクポテンシャルRPaの大きさに応じたロール角で車体3を揺動させる。
【0274】
これにより、運転者は、自車両が不安定な状態になっていると感じ、減速操作を行う。
即ち、運転者の運転操作を誘導することができる。
また、このとき、アクセルペダル7の操作に対し、より強い操作反力を付与している。
そのため、運転者が加速操作を行うことを抑制できる。
以上のように、本実施形態に係る自動車1Aは、前方リスクポテンシャルRPaが閾値以上であるか否かを判定し、前方リスクポテンシャルが高いと判定した場合には、擬似的に車両が不安定な挙動を示すように、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLを制御する。
【0275】
そのため、現在の操作状態から、リスクポテンシャルが減少する方向への運転者による自発的な操作(減速操作)を促すことができる。
また、リスクポテンシャルが増加するアクセルペダル7の操作に対して、リスクポテンシャルに応じた反力を付与している。そのため、運転者がリスクポテンシャルの増加する方向へ操作しようとした場合に、操作が適切でないことを報知することができる。また、運転者による適切でない操作を抑制することができる。
このように、本実施形態に係る自動車1Aによれば、運転者に対し、より適切に車両の運転操作の支援を行うことができる。
【0276】
(第6実施形態の効果)
(1)擬似車両挙動発生手段は、自車両の前方における前記リスクポテンシャルに対し、前記サスペンション装置に車体のロールによる揺動を発生させる制御を行う。
したがって、運転者に対し、擬似的に車両が不安定な状態になったと感じさせることができる。
【0277】
(第7実施形態)
次に、本発明の第7実施形態について説明する。
本実施形態では、第1実施形態における場合と運転操作誘導処理を異なるものとしている。
したがって、自動車1Aの構成については、第1実施形態を参照することとし、運転操作誘導処理について説明する。
図85は、コントローラ50が実行する運転操作誘導処理を示すフローチャートである。
コントローラ50は、運転者の指示入力に応じて運転操作誘導処理の実行を開始する。
図85に示す運転操作誘導処理において、ステップP401〜ステップP403以外のステップについては、図10に示す第1実施形態の運転操作誘導処理における各ステップと同様である。
したがって、図10と同様のステップについては、同一の番号を付すこととし、ここでは異なる部分であるステップP401〜ステップP403について説明する。
【0278】
図85のステップP102において、前方リスクポテンシャルRPaが閾値RPa0以上であると判定した場合、コントローラ50は、車速が設定した閾値(例えば80km/h)以上であるか否かの判定を行う(ステップP401)。
ステップP401において、車速が設定した閾値以上であると判定した場合、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4FLのサスペンションストロークを前方リスクポテンシャルRPaに応じて変化させる(ステップP402)。また、ステップP402において、コントローラ50は、アクセルペダル7の操作反力を前方リスクポテンシャルRPaに応じて増加させる。
【0279】
ステッP402の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
一方、ステップP401において、車速が設定した閾値以上であると判定した場合、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4RRのサスペンションストロークと、能動型サスペンション4FL,4RLのサスペンションストロークとを、交互に振動させ、車体3を前方リスクポテンシャルRPaに応じたロール角で揺動させる(ステップP403)。また、ステップP403において、コントローラ50は、アクセルペダル7の操作反力を前方リスクポテンシャルRPaに応じて増加させる。
ステッP403の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
【0280】
(動作)
次に、動作を説明する。
運転操作誘導処理を実行している自動車1Aの走行中に、前方におけるリスクポテンシャルが閾値を超えたとする。
すると、コントローラ50が、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLを制御し、車速によって異なる態様で、擬似的な車両の挙動を発生させる。
即ち、車速が閾値以下である場合、前方リスクポテンシャルRPaの大きさに応じたロール角で車体3を揺動させる。
これにより、運転者は、自車両が不安定な状態になっていると感じ、減速操作を行う。
【0281】
また、車速が閾値以上である場合、前方リスクポテンシャルRPaの大きさに応じたピッチ角で車体3を後傾させる。
これにより、運転者は、自車両の状態がリスクポテンシャルが高まる方向に近づいていると感じ、リスクポテンシャルが低くなる方向への操作を行う。
即ち、これらの制御により、運転者の運転操作を誘導することができる。
【0282】
また、このとき、アクセルペダル7の操作に対し、より強い操作反力を付与している。
そのため、運転者が加速操作を行うことを抑制できる。
以上のように、本実施形態に係る自動車1Aは、前方リスクポテンシャルRPaが閾値以上であるか否かを判定し、前方リスクポテンシャルが高いと判定した場合には、車速に応じて異なる制御を行い、運転者の運転操作を誘導する。
【0283】
即ち、車速が高い場合、擬似的な加速を示すように、能動型サスペンション4FR,4FLを制御する。また、車速が低い場合、擬似的に車両が不安定な挙動を示すように、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLを制御する。
そのため、車速に応じて、適切な制御態様に切り替えて、現在の操作状態から、リスクポテンシャルが減少する方向への運転者による自発的な操作(減速操作)を促すことができる。
【0284】
また、リスクポテンシャルが増加するアクセルペダル7の操作に対して、リスクポテンシャルに応じた反力を付与している。そのため、運転者がリスクポテンシャルの増加する方向へ操作しようとした場合に、操作が適切でないことを報知することができる。また、運転者による適切でない操作を抑制することができる。
このように、本実施形態に係る自動車1Aによれば、運転者に対し、より適切に車両の運転操作の支援を行うことができる。
【0285】
(第7実施形態の効果)
(1)擬似車両挙動発生手段は、自車両の前方におけるリスクポテンシャルに対し、車速に応じて、車体を後傾させるサスペンション装置の制御と、サスペンション装置に車体のロールを発生させる制御とを切り替えて行わせる。
そのため、車速に応じた制御態様で、より適切に運転者の自発的な運転操作を促すことができる。
(第8実施形態)
次に、本発明の第8実施形態について説明する。
本実施形態では、第1実施形態における場合と運転操作誘導処理を異なるものとしている。
したがって、自動車1Aの構成については、第1実施形態を参照することとし、運転操作誘導処理について説明する。
【0286】
(運転操作誘導処理)
図86は、コントローラ50が実行する運転操作誘導処理を示すフローチャートである。
コントローラ50は、運転者の指示入力に応じて運転操作誘導処理の実行を開始する。
図86において、運転操作誘導処理を開始すると、コントローラ50は、車速、横加速度(横G)、運転者の運転負荷、運転者の操作量を含む車両の運転状態を取得する(P501)。
このとき、運転者の運転負荷は、カーナビゲーションシステムに記憶している道路形状や、VICS(Vehicle Information and Communication System)等によって取得した渋滞情報を基に判定できる。また、運転者の操作量は、操舵操作および制駆動力操作の履歴を取得しておき、その頻度を基に判定できる。
【0287】
次に、コントローラ50は、リスクポテンシャル算出処理において算出した各リスクポテンシャルを取得する(ステップP502)。
次に、コントローラ50は、車両の運転状態およびリスクポテンシャルに基づいて、自車両の安定度を検出する(ステップP503)。
ここで、自車両の安定度については、車速が高いほど、加減速度が大きいほど、また、操舵入力が大きいほど、リスクポテンシャルが大きいほど、安定度が低下する傾向に設定している。
【0288】
次いで、コントローラ50は、自車両の安定度に応じて、運転操作の誘導制御を行う際の重み付けを算出する(ステップP504)。
ステップP504においては、操舵反力、制駆動操作反力および能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLにおける路面入力の低減割合について、運転操作の誘導制御を行う場合と行わない場合とのいずれの制御量とするかを決定するための重み付け(以下、適宜「優先度」と称する。)を算出する。この優先度は、運転操作の誘導制御を行わない場合の各制御量を0、運転操作の誘導制御を行う場合の制御量を1とし、これらをいずれの比率で配分するかを決定するものである。
【0289】
本実施形態においては、安定度が最良である場合に運転操作の誘導制御を行う場合の制御量とし、このときに、優先度として“1”を算出する。一方、安定度が設定された閾値以下である場合に、運転操作の誘導制御を行わない場合の制御量とし、このときに、優先度として“0”を算出する。また、本実施形態においては、安定度に応じて、“0”〜“1”までの任意の値を優先度として算出する。
【0290】
次に、コントローラ50は、ステップP504で算出した優先度(重み付け)によって、運転操作の誘導制御を行わない場合に対応する配分制御量を算出する(ステップP505)。
さらに、コントローラ50は、ステップP504で算出した優先度によって、リスクポテンシャルに応じた運転操作の誘導制御を行う場合に対応する配分制御量を算出する(ステップP506)。
次いで、コントローラ50は、ステッP505およびステップP506において算出した配分制御量の合計値によって、操舵反力や制駆動力操作反力、あるいは、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLの制御を実行する(ステップP507)。
ステップP507の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理を繰り返す。
【0291】
(動作)
次に、動作を説明する。
自動車1Aの走行中に、運転操作誘導処理の実行が開始されたとする。
なお、このとき、自動車1Aにおいては、一定の割合で路面からの振動を打ち消すように能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLの制御を行っていたものとする。
運転操作誘導処理を実行することにより、自動車1Aは、車両の運転状態、リスクポテンシャルおよび車両の安定度に応じて、自車両各部における通常の制御と、運転操作の誘導制御との優先度を算出する。
【0292】
そして、自動車1Aは、運転操作の誘導制御のための制御量と運転操作の誘導制御を行わない場合の制御量とを優先度に応じて加算した制御量によって、自車両各部の制御を行い、運転操作の誘導を行う。
これにより、自車両の安定度を加味して、運転操作の誘導制御を重点的に行うか、あるいは、運転者の技量に委ねた通常の車両制御を重点的に行うかを柔軟に決定できる。
【0293】
したがって、より適切に車両の運転操作の支援を行うことができる。
以上のように、本実施形態に係る自動車1Aは、自車両の安定度に応じて、運転操作の誘導制御の制御量を重み付けした上で、自車両各部の制御を行う。
例えば、安定度が高い状態では、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLによって路面からの振動を伝達する割合を低下させ、安定度が低い状態では、能動型サスペンション4FR,4FL,4RR,4RLによって路面からの振動を一定以上の割合で伝達することができる。
【0294】
また、操舵反力および制駆動操作反力の制御によるリスクポテンシャルの伝達については、安定度が低いほど制御量を高めることができる。
したがって、自車両の状態を反映させた制御量によって、運転操作の誘導制御を行うことができ、運転者に対し、より適切に車両の運転操作の支援を行うことができる。
なお、本実施形態において、車速センサ30、車両状態検出器140およびコントローラ50が安定状態検出手段に対応する。
【0295】
(第8実施形態の効果)
(1)安定状態検出手段が自車両の安定状態を検出する。
擬似車両挙動発生手段が、安定状態検出手段が検出した自車両の安定状態に基づいて、サスペンション装置に擬似的に車両挙動を発生させる際の制御量を変化させる。
したがって、自車両の安定度を加味して、運転操作の誘導を重点的に行うか、あるいは、運転者の技量に委ねた通常の車両制御を重点的に行うかを柔軟に決定できる。
【0296】
(第9実施形態)
上記実施形態では、左右方向のリスクポテンシャルに応じて、能動型サスペンションのストロークや運転席シートのシートレッグ長を振動させるにあたり、左右方向それぞれについて1つのリスクポテンシャル閾値を設定し、リスクポテンシャルに応じて能動型サスペンションのサスペンションストロークを振動させることとした。
これに対し、本実施形態は、車両や運転席シートの姿勢(ロール傾斜角)を発生させるための左右方向のリスクポテンシャル閾値とは別に、振動を付与するために用いる左右方向のリスクポテンシャル閾値を設定する。そして、左右方向のリスクポテンシャルが振動を付与するための閾値以上となった場合に、予め設定された振幅で能動型サスペンションのストロークあるいは運転席シートのシートレッグ長を振動させるものである。
【0297】
図87は、本実施形態において、コントローラ50が実行する運転操作誘導処理を示すフローチャートである。また、図88〜91は、図87に示す運転操作誘導処理において実行される第1〜第4のサブフローを示す図である。
コントローラ50は、運転者の指示入力に応じて運転操作誘導処理の実行を開始する。
図87において、運転操作誘導処理を開始すると、コントローラ50は、リスクポテンシャル算出処理において算出した前後および左右方向のリスクポテンシャルRPa,RPb,RPc,RPdを取得する(ステップT210)。
【0298】
次に、コントローラ50は、ステップT210において取得した前方リスクポテンシャルRPaに応じて、運転操作誘導処理の第1のサブフローを実行する(ステップT220)。
ステップT220において、コントローラ50は、例えば、図88に示すように、まず、前方リスクポテンシャルRPaが第1の閾値RPa0以上であるか否かの判定を行う(ステップT221)。ステップT221において、前方リスクポテンシャルRPaが第1の閾値RPa0以上であると判定した場合、コントローラ50は、第1実施形態と同様に、アクセルペダル反力を前方リスクポテンシャルRPaに応じて増加させる(ステップT222)。また、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4FLのサスペンションストロークを前方リスクポテンシャルRPaに応じて変化させる(ステップT223)。
【0299】
次に、コントローラ50は、前方リスクポテンシャルRPaが第2の閾値RPa1以上であるか否かの判定を行う(ステップT224)。ステップT224において、前方リスクポテンシャルRPaが第2の閾値RPa1以上であると判定した場合、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4FLのサスペンションストロークに振動を付与する(ステップT225)。
【0300】
つまり、前方リスクポテンシャルRPaが比較的小さい第2の閾値RPa1未満の場合においては、アクセルペダル反力と車体ピッチ角(後傾)を発生させ、さらに、前方リスクポテンシャルRPaが比較的大きい第2の閾値RPa1以上の場合においては、サスペンションストロークによる振動が付与される。これにより、運転者に対して、前方のリスクポテンシャルが高まっていることを報知することができ、違和感なく、適切に、減速操作を促すことができる。そして、運転者が減速操作を行うと、前方リスクポテンシャルRPaが減少し、運転操作の誘導が停止される。
【0301】
ステップT225の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理に戻る。
また、コントローラ50は、ステップT210において取得した後方リスクポテンシャルRPbに応じて、運転操作誘導処理の第2のサブフローを実行する(ステップT230)。
ステップT230において、コントローラ50は、例えば、図89に示すように、まず、後方リスクポテンシャルRPbが第1の閾値RPb0以上であるか否かの判定を行う(ステップT231)。ステップT231において、後方リスクポテンシャルRPbが第1の閾値RPb0以上であると判定した場合、コントローラ50は、第1実施形態と同様に、能動型サスペンション4RR,4RLのサスペンションストロークを後方リスクポテンシャルRPbに応じて変化させる(ステップT232)。
【0302】
次に、コントローラ50は、後方リスクポテンシャルRPbが第2の閾値RPb1以上であるか否かの判定を行う(ステップT233)。ステップT233において、後方リスクポテンシャルRPbが第2の閾値RPb1以上であると判定した場合、コントローラ50は、能動型サスペンション4RR,4RLのサスペンションストロークに振動を付与する(ステップT234)。
【0303】
つまり、後方リスクポテンシャルRPbが比較的小さい第2の閾値RPb1未満の場合においては、車体ピッチ角(前傾)を発生させ、さらに、後方リスクポテンシャルRPbが比較的大きい第2の閾値RPb1以上の場合においては、サスペンションストロークによる振動が付与される。これにより、運転者に対して、後方のリスクポテンシャルが高まっていることを報知することができ、違和感なく、適切に、加速操作を促すことができる。そして、運転者が加速操作を行うと、後方リスクポテンシャルRPbが減少し、運転操作の誘導が停止される。
【0304】
ステップT234の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理に戻る。
また、コントローラ50は、ステップT210において取得した右方リスクポテンシャルRPcに応じて、運転操作誘導処理の第3のサブフローを実行する(ステップT240)。
ステップT240において、コントローラ50は、例えば、図90に示すように、右方リスクポテンシャルRPcが第1の閾値RPc0以上であるか否かの判定を行う(ステップT241)。ステップT241において、右方リスクポテンシャルRPcが第1の閾値RPc0以上であると判定した場合、コントローラ50は、第1実施形態と同様に、操舵反力を右方リスクポテンシャルRPcに応じて増加させる(ステップT242)。また、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4RRのサスペンションストロークを右方リスクポテンシャルRPcに応じて変化させる(ステップT243)。
【0305】
次に、コントローラ50は、右方リスクポテンシャルRPcが第2の閾値RPc1以上であるか否かの判定を行う(ステップT244)。ステップT244において、右方リスクポテンシャルRPcが第2の閾値RPc1以上であると判定した場合、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4RRのサスペンションストロークに振動を付与する(ステップT245)。
【0306】
つまり、右方リスクポテンシャルRPcが比較的小さい第2の閾値RPc1未満の場合においては、操舵反力とロール傾斜角(左ロール)を発生させ、さらに、右方リスクポテンシャルRPcが比較的大きい第2の閾値RPc1以上の場合においては、サスペンションストロークによる振動が付与される。これにより、レーンマーカー上、もしくは、レーンマーカーより外側に設置される凹凸(いわゆる、ランブルストリップ)を車両が踏んだかのような感じを与えることもできる。そのため、運転者に対して、右方のリスクポテンシャルが高まっていることを報知することができ、違和感なく、適切に、左方向への操舵操作を促すことができる。そして、運転者が操舵操作を行うと、右方リスクポテンシャルRPcが減少し、運転操作の誘導が停止される。
【0307】
ステップT245の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理に戻る。
また、コントローラ50は、ステップT210において取得した左方リスクポテンシャルRPdに応じて、運転操作誘導処理の第4のサブフローを実行する(ステップT250)。
ステップT250において、コントローラ50は、例えば、図91に示すように、左方リスクポテンシャルRPdが第1の閾値RPd0以上であるか否かの判定を行う(ステップT251)。ステップT251において、左方リスクポテンシャルRPdが第1の閾値RPd0以上であると判定した場合、コントローラ50は、第1実施形態と同様に、操舵反力を左方リスクポテンシャルRPdに応じて増加させる(ステップT252)。また、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4RRのサスペンションストロークを左方リスクポテンシャルRPdに応じて変化させる(ステップT253)。
【0308】
次に、コントローラ50は、左方リスクポテンシャルRPdが第2の閾値RPd1以上であるか否かの判定を行う(ステップT254)。ステップT254において、左方リスクポテンシャルRPdが第2の閾値RPd1以上であると判定した場合、コントローラ50は、能動型サスペンション4FR,4RRのサスペンションストロークに振動を付与する(ステップT255)。
【0309】
つまり、左方リスクポテンシャルRPdが比較的小さい第2の閾値RPd1未満の場合においては、操舵反力とロール傾斜角(右ロール)を発生させ、さらに、左方リスクポテンシャルRPdが比較的大きい第2の閾値RPd1以上の場合においては、サスペンションストロークによる振動が付与される。これにより、レーンマーカー上、もしくは、レーンマーカーより外側に設置される凹凸(いわゆる、ランブルストリップ)を車両が踏んだかのような感じを与えることもできる。そのため、運転者に対して、左方のリスクポテンシャルが高まっていることを報知することができ、違和感なく、適切に、右方向への操舵操作を促すことができる。そして、運転者が操舵操作を行うと、左方リスクポテンシャルRPdが減少し、運転操作の誘導が停止される。
【0310】
ステップT255の後、コントローラ50は、運転操作誘導処理に戻る。
ここで、ステップT245、あるいは、ステップT255にて付与する振動の周波数は、例えば、車速が高いほど高周波となるよう、車速に応じて変更することができる。
また、本実施形態では、サスペンションストロークによって振動を付与したが、ペダル反力や操舵反力で振動を付与してもよい。
【0311】
さらに、リスクポテンシャルが高まっていることを運転者に伝え、運転操作を促すために、車載スピーカから発する音を用いることができる。例えば、前方リスクポテンシャルが高い場合、前方(前右、前左)スピーカから他車両の走行音を出力し、後方リスクポテンシャルが高い場合、後方(後右、後左)スピーカから他車両の走行音を出力することにより、他車両が近づいているような感じを運転者に与えることができる。また、右方リスクポテンシャルが高い場合、右方(前右、後右)スピーカから、レーンマーカー上、もしくはレーンマーカーより外側に設置される凹凸(いわゆる、ランブルストリップ)を車両が踏んだ時の走行音を出力し、左方リスクポテンシャルが高い場合は、左方(前左、後左)スピーカから出力することにより、左右方向のリスクポテンシャルが高まっていることを効果的に報知することができる。
なお、本実施形態において、第1の閾値RPc0あるいはRPd0が特許請求の範囲における第4の閾値に対応し、第2の閾値RPc1あるいはRPd1が特許請求の範囲における第5の閾値に対応する。
【0312】
(第9実施形態の効果)
(1)車体のロールを発生させるための左右方向のリスクポテンシャルの閾値と、車体に振動を付与するための左右方向のリスクポテンシャルの閾値とを個別に設定することとしたため、車両の走行状態に応じて、車体のロールと振動とを適確なタイミングで発生させることができる。そのため、より適切に車両の運転操作の支援を行うことができる。
【符号の説明】
【0313】
1A 自動車、1 車両用運転操作補助装置、2FR,2FL,2RR,2RL 車輪、3 車体、4FR,4FL,4RR,4RL 能動型サスペンション、5 ステアリングホイール、6 ステアリング装置、7 アクセルペダル、8 ブレーキペダル、9F,9R,9SR,9SL カメラ、10 レーザレーダ、12 車体側部材、14 車輪側部材、16FR,16FL,16RR,16RL コイルスプリング、17FR,17FL,17RR,17RL 圧力制御弁、30 車速センサ、50 コントローラ、60 操舵反力制御装置、61,81,91 サーボモータ、62 舵角センサ、80 アクセルペダル反力制御装置、90 ブレーキペダル反力制御装置、100 駆動力制御装置、110 制動力制御装置、120FR,120FL,120RR,120RL,803FR,803FL,803RR,803RL,700FR,700FL,700RR,700RL アクチュエータ、130FR,130FL,130RR,130RL 車体上下加速度検出器、140 車両状態検出器、400FL〜400RR 減衰力可変ショックアブソーバ、601サスペンションシート
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転操作を行う運転操作手段と、
走行路の状態を検出する走行路状態検出手段と、
自車両の状態を検出する車両状態検出手段と、
自車両周囲に存在する障害物を検出する障害物検出手段と、
前記車両状態検出手段および前記障害物検出手段の検出結果に基づいて、前記自車両の周囲に存在する障害物に対するリスクポテンシャルを算出するリスクポテンシャル算出手段と、
前記リスクポテンシャルに応じて、前記運転操作手段における操作反力を付与する操作反力付与手段と、
運転者の上下方向の動きを制御する動作制御手段と、
前記走行路状態検出手段および前記車両状態検出手段の検出結果に基づいて、前記動作制御手段を制御して、自車両に生じている車両挙動を前記リスクポテンシャルに応じて抑制して、外乱情報を運転者に伝達する情報伝達制御手段と、
前記車両状態検出手段の検出結果および前記リスクポテンシャルに基づいて、前記リスクポテンシャルが増大する運転操作を行った場合の車両挙動を、前記動作制御手段を制御することによって擬似的に発生させるための制御量を算出する擬似車両挙動発生手段と、
前記情報伝達制御手段によって算出された制御量と、前記擬似車両挙動発生手段によって算出された制御量とを協調制御する協調制御手段と、
を備えることを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項2】
前記協調制御手段は、前記情報伝達制御手段によって算出された制御量と、前記擬似車両挙動発生手段によって算出された制御量とを、前記リスクポテンシャルに応じて重み付け加算し、その加算結果によって車両を制御することを特徴とする請求項1記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項3】
前記協調制御手段は、前記情報伝達制御手段によって算出された制御量と、前記擬似車両挙動発生手段によって算出された制御量とを重み付け加算する際に、前記リスクポテンシャルが大きくなるほど、前記擬似車両挙動発生手段によって算出された制御量の重みを大きくすることを特徴とする請求項1または2記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項4】
前記協調制御手段は、前記情報伝達制御手段によって算出された制御量と、前記擬似車両挙動発生手段によって算出された制御量とを重み付け加算する際に、前記リスクポテンシャルが大きくなるほど、前記情報伝達制御手段によって算出された制御量の重みを大きくすることを特徴とする請求項1または2記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項5】
前記協調制御手段は、前記情報伝達制御手段によって算出された制御量と、前記擬似車両挙動発生手段によって算出された制御量とを重み付け加算する際に、自車両の安定度が低いほど、前記情報伝達制御手段によって算出された制御量の重みを大きくすることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項6】
前記情報伝達制御手段は、前記リスクポテンシャルの大きさに応じて、前記操舵反力付与手段と、前記動作制御手段との少なくともいずれかを制御することにより、自車両に生じている車両挙動を抑制して運転者に伝達することを特徴とする請求項1記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項7】
前記情報伝達制御手段は、前記リスクポテンシャルが大きいほど、自車両に生じている車両挙動を大きく抑制して運転者に伝達することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項8】
自車両の安定状態を検出する安定状態検出手段を備え、
前記情報伝達制御手段は、前記安定状態検出手段が検出した自車両の安定状態に基づいて、前記車両挙動を抑制する度合いを変化させることを特徴とする請求項7記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項9】
前記情報伝達制御手段は、前記安定状態検出手段が検出した自車両の安定状態が不安定であるほど、前記車両挙動を抑制する度合いを大きくすることを特徴とする請求項8記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項10】
前記情報伝達制御手段は、前記安定状態検出手段が検出した自車両の安定状態が不安定であるほど、前記車両挙動を抑制する度合いを小さくすることを特徴とする請求項8記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項11】
前記情報伝達制御手段は、前記リスクポテンシャルが第1の閾値以下である場合、自車両に生じている車両挙動を第1の制御量で抑制し、前記リスクポテンシャルが前記第1の閾値を超えている場合、前記リスクポテンシャルが該第1の閾値より大きくなるほど、自車両に生じている車両挙動を抑制する度合いを減少させることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項12】
前記動作制御手段は、車輪と車体との間に介在する能動型のサスペンションであることを特徴とする請求項1記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項13】
前記動作制御手段は、減衰力が可変な減衰力制御装置を備えたサスペンションであることを特徴とする請求項1記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項14】
前記擬似車両挙動発生手段は、加減速操作あるいは操舵操作を行った場合に発生する車両挙動を、前記動作制御手段を制御することによって擬似的に発生させることを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項15】
前記擬似車両挙動発生手段は、自車両の前後方向における前記リスクポテンシャルに対し、車体を前傾あるいは後傾させるように前記動作制御手段を制御することを特徴とする請求項14記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項16】
前記擬似車両挙動発生手段は、自車両の左右方向における前記リスクポテンシャルに対し、車体をロールさせるように前記動作制御手段を制御することを特徴とする請求項14記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項17】
前記擬似車両挙動発生手段は、前記リスクポテンシャルに基づいて、障害物が存在する側の車体を、前記動作制御手段を制御することによって振動させることを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項18】
前記擬似車両挙動発生手段は、自車両の前後方向における前記リスクポテンシャルに対し、前輪または後輪いずれかの前記動作制御手段としてのサスペンション装置に振動を発生させる制御を行うことを特徴とする請求項17記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項19】
前記擬似車両挙動発生手段は、自車両の左右方向における前記リスクポテンシャルに対し、左右輪いずれかの前記動作制御手段としてのサスペンション装置に振動を発生させる制御を行うことを特徴とする請求項17記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項20】
前記擬似車両挙動発生手段は、自車両の前方における前記リスクポテンシャルに対し、前記動作制御手段としてのサスペンション装置に車体のロールによる揺動を発生させる制御を行うことを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項21】
前記擬似車両挙動発生手段は、自車両の前方における前記リスクポテンシャルに対し、車速に応じて、車体を後傾させる前記サスペンション装置の制御と、前記サスペンション装置に車体のロールを発生させる制御とを切り替えて行わせることを特徴とする請求項20記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項22】
前記操作反力付与手段は、自車両の左右方向における前記リスクポテンシャルが第2の閾値以上である場合に、前記運転操作手段における操作反力を付与し、
前記擬似車両挙動発生手段は、前記リスクポテンシャルが前記第2の閾値より大きい第3の閾値以上である場合に、前記リスクポテンシャルが増大する運転操作を行った場合の車両挙動を、前記動作制御手段を制御することによって擬似的に発生させることを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項23】
前記擬似車両挙動発生手段は、自車両の左右方向における前記リスクポテンシャルが第4の閾値以上である場合に、前記リスクポテンシャルが増大する運転操作を行った場合の車両挙動として、前記動作制御手段に車体のロールに対応する挙動を発生させる制御を行い、前記リスクポテンシャルが前記第4の閾値より大きい第5の閾値以上である場合に、前記動作制御手段によって運転者の左右いずれかの側の振動を発生させる制御を行うことを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項24】
自車両の安定状態を検出する安定状態検出手段を備え、
前記擬似車両挙動発生手段は、前記安定状態検出手段が検出した自車両の安定状態に基づいて、前記動作制御手段によって擬似的に車両挙動を発生させる際の制御量を変化させることを特徴とする請求項1から23のいずれか1項に記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項25】
前記擬似車両挙動発生手段は、前記動作制御手段としてのサスペンション装置のサスペンションストローク、減衰力およびばね定数と、前記操作反力付与手段が前記運転操作手段に付与する操作反力と運転操作に対して付与する操作反力のゲインとを制御することを特徴とする請求項1から24のいずれか1項に記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項26】
前記動作制御手段は、スタビライザリンク長を可変なスタビライザを備えたサスペンションであることを特徴とする請求項1記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項27】
前記動作制御手段は、運転席シートと車体との間に介在する制御型のサスペンションであることを特徴とする請求項1記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項28】
自車両の状態と、自車両周囲の障害物の状態とに基づいて、自車両に生じている車両挙動を抑制して伝達し、自車両の状態および自車両周囲の障害物の状態とに基づく操舵反力および制駆動操作反力を付与する情報伝達制御と、自車両の状態と、自車両周囲の障害物の状態とに基づいて、自車両周囲に存在する障害物に対するリスクポテンシャルを算出し、算出した前記リスクポテンシャルに基づいて、前記リスクポテンシャルが増大する運転操作を行った場合の車両挙動を擬似的に発生させる運転操作誘導処理とに基づく制御量によって、車両を制御することを特徴とする車両用運転操作補助方法。
【請求項29】
車体と、
車両の運転操作を行う運転操作手段と、
走行路の状態を検出する走行路状態検出手段と、
自車両の状態を検出する車両状態検出手段と、
自車両周囲に存在する障害物を検出する障害物検出手段と、
前記車両状態検出手段および前記障害物検出手段の検出結果に基づいて、前記自車両の周囲に存在する障害物に対するリスクポテンシャルを算出するリスクポテンシャル算出手段と、
前記リスクポテンシャルに応じて、前記運転操作手段における操作反力を付与する操作反力付与手段と、
運転者の上下方向の動きを制御する動作制御手段と、
前記走行路状態検出手段および前記車両状態検出手段の検出結果に基づいて、前記動作制御手段を制御して、自車両に生じている車両挙動を前記リスクポテンシャルに応じて抑制して、外乱情報を運転者に伝達する情報伝達制御手段と、
前記車両状態検出手段の検出結果および前記リスクポテンシャルに基づいて、前記リスクポテンシャルが増大する運転操作を行った場合の車両挙動を、前記動作制御手段を制御することによって擬似的に発生させるための制御量を算出する擬似車両挙動発生手段と、
前記情報伝達制御手段によって算出された制御量と、前記擬似車両挙動発生手段によって算出された制御量とを協調制御する協調制御手段と、
を備えることを特徴とする自動車。
【請求項1】
車両の運転操作を行う運転操作手段と、
走行路の状態を検出する走行路状態検出手段と、
自車両の状態を検出する車両状態検出手段と、
自車両周囲に存在する障害物を検出する障害物検出手段と、
前記車両状態検出手段および前記障害物検出手段の検出結果に基づいて、前記自車両の周囲に存在する障害物に対するリスクポテンシャルを算出するリスクポテンシャル算出手段と、
前記リスクポテンシャルに応じて、前記運転操作手段における操作反力を付与する操作反力付与手段と、
運転者の上下方向の動きを制御する動作制御手段と、
前記走行路状態検出手段および前記車両状態検出手段の検出結果に基づいて、前記動作制御手段を制御して、自車両に生じている車両挙動を前記リスクポテンシャルに応じて抑制して、外乱情報を運転者に伝達する情報伝達制御手段と、
前記車両状態検出手段の検出結果および前記リスクポテンシャルに基づいて、前記リスクポテンシャルが増大する運転操作を行った場合の車両挙動を、前記動作制御手段を制御することによって擬似的に発生させるための制御量を算出する擬似車両挙動発生手段と、
前記情報伝達制御手段によって算出された制御量と、前記擬似車両挙動発生手段によって算出された制御量とを協調制御する協調制御手段と、
を備えることを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項2】
前記協調制御手段は、前記情報伝達制御手段によって算出された制御量と、前記擬似車両挙動発生手段によって算出された制御量とを、前記リスクポテンシャルに応じて重み付け加算し、その加算結果によって車両を制御することを特徴とする請求項1記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項3】
前記協調制御手段は、前記情報伝達制御手段によって算出された制御量と、前記擬似車両挙動発生手段によって算出された制御量とを重み付け加算する際に、前記リスクポテンシャルが大きくなるほど、前記擬似車両挙動発生手段によって算出された制御量の重みを大きくすることを特徴とする請求項1または2記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項4】
前記協調制御手段は、前記情報伝達制御手段によって算出された制御量と、前記擬似車両挙動発生手段によって算出された制御量とを重み付け加算する際に、前記リスクポテンシャルが大きくなるほど、前記情報伝達制御手段によって算出された制御量の重みを大きくすることを特徴とする請求項1または2記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項5】
前記協調制御手段は、前記情報伝達制御手段によって算出された制御量と、前記擬似車両挙動発生手段によって算出された制御量とを重み付け加算する際に、自車両の安定度が低いほど、前記情報伝達制御手段によって算出された制御量の重みを大きくすることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項6】
前記情報伝達制御手段は、前記リスクポテンシャルの大きさに応じて、前記操舵反力付与手段と、前記動作制御手段との少なくともいずれかを制御することにより、自車両に生じている車両挙動を抑制して運転者に伝達することを特徴とする請求項1記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項7】
前記情報伝達制御手段は、前記リスクポテンシャルが大きいほど、自車両に生じている車両挙動を大きく抑制して運転者に伝達することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項8】
自車両の安定状態を検出する安定状態検出手段を備え、
前記情報伝達制御手段は、前記安定状態検出手段が検出した自車両の安定状態に基づいて、前記車両挙動を抑制する度合いを変化させることを特徴とする請求項7記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項9】
前記情報伝達制御手段は、前記安定状態検出手段が検出した自車両の安定状態が不安定であるほど、前記車両挙動を抑制する度合いを大きくすることを特徴とする請求項8記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項10】
前記情報伝達制御手段は、前記安定状態検出手段が検出した自車両の安定状態が不安定であるほど、前記車両挙動を抑制する度合いを小さくすることを特徴とする請求項8記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項11】
前記情報伝達制御手段は、前記リスクポテンシャルが第1の閾値以下である場合、自車両に生じている車両挙動を第1の制御量で抑制し、前記リスクポテンシャルが前記第1の閾値を超えている場合、前記リスクポテンシャルが該第1の閾値より大きくなるほど、自車両に生じている車両挙動を抑制する度合いを減少させることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項12】
前記動作制御手段は、車輪と車体との間に介在する能動型のサスペンションであることを特徴とする請求項1記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項13】
前記動作制御手段は、減衰力が可変な減衰力制御装置を備えたサスペンションであることを特徴とする請求項1記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項14】
前記擬似車両挙動発生手段は、加減速操作あるいは操舵操作を行った場合に発生する車両挙動を、前記動作制御手段を制御することによって擬似的に発生させることを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項15】
前記擬似車両挙動発生手段は、自車両の前後方向における前記リスクポテンシャルに対し、車体を前傾あるいは後傾させるように前記動作制御手段を制御することを特徴とする請求項14記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項16】
前記擬似車両挙動発生手段は、自車両の左右方向における前記リスクポテンシャルに対し、車体をロールさせるように前記動作制御手段を制御することを特徴とする請求項14記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項17】
前記擬似車両挙動発生手段は、前記リスクポテンシャルに基づいて、障害物が存在する側の車体を、前記動作制御手段を制御することによって振動させることを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項18】
前記擬似車両挙動発生手段は、自車両の前後方向における前記リスクポテンシャルに対し、前輪または後輪いずれかの前記動作制御手段としてのサスペンション装置に振動を発生させる制御を行うことを特徴とする請求項17記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項19】
前記擬似車両挙動発生手段は、自車両の左右方向における前記リスクポテンシャルに対し、左右輪いずれかの前記動作制御手段としてのサスペンション装置に振動を発生させる制御を行うことを特徴とする請求項17記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項20】
前記擬似車両挙動発生手段は、自車両の前方における前記リスクポテンシャルに対し、前記動作制御手段としてのサスペンション装置に車体のロールによる揺動を発生させる制御を行うことを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項21】
前記擬似車両挙動発生手段は、自車両の前方における前記リスクポテンシャルに対し、車速に応じて、車体を後傾させる前記サスペンション装置の制御と、前記サスペンション装置に車体のロールを発生させる制御とを切り替えて行わせることを特徴とする請求項20記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項22】
前記操作反力付与手段は、自車両の左右方向における前記リスクポテンシャルが第2の閾値以上である場合に、前記運転操作手段における操作反力を付与し、
前記擬似車両挙動発生手段は、前記リスクポテンシャルが前記第2の閾値より大きい第3の閾値以上である場合に、前記リスクポテンシャルが増大する運転操作を行った場合の車両挙動を、前記動作制御手段を制御することによって擬似的に発生させることを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項23】
前記擬似車両挙動発生手段は、自車両の左右方向における前記リスクポテンシャルが第4の閾値以上である場合に、前記リスクポテンシャルが増大する運転操作を行った場合の車両挙動として、前記動作制御手段に車体のロールに対応する挙動を発生させる制御を行い、前記リスクポテンシャルが前記第4の閾値より大きい第5の閾値以上である場合に、前記動作制御手段によって運転者の左右いずれかの側の振動を発生させる制御を行うことを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項24】
自車両の安定状態を検出する安定状態検出手段を備え、
前記擬似車両挙動発生手段は、前記安定状態検出手段が検出した自車両の安定状態に基づいて、前記動作制御手段によって擬似的に車両挙動を発生させる際の制御量を変化させることを特徴とする請求項1から23のいずれか1項に記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項25】
前記擬似車両挙動発生手段は、前記動作制御手段としてのサスペンション装置のサスペンションストローク、減衰力およびばね定数と、前記操作反力付与手段が前記運転操作手段に付与する操作反力と運転操作に対して付与する操作反力のゲインとを制御することを特徴とする請求項1から24のいずれか1項に記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項26】
前記動作制御手段は、スタビライザリンク長を可変なスタビライザを備えたサスペンションであることを特徴とする請求項1記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項27】
前記動作制御手段は、運転席シートと車体との間に介在する制御型のサスペンションであることを特徴とする請求項1記載の車両用運転操作補助装置。
【請求項28】
自車両の状態と、自車両周囲の障害物の状態とに基づいて、自車両に生じている車両挙動を抑制して伝達し、自車両の状態および自車両周囲の障害物の状態とに基づく操舵反力および制駆動操作反力を付与する情報伝達制御と、自車両の状態と、自車両周囲の障害物の状態とに基づいて、自車両周囲に存在する障害物に対するリスクポテンシャルを算出し、算出した前記リスクポテンシャルに基づいて、前記リスクポテンシャルが増大する運転操作を行った場合の車両挙動を擬似的に発生させる運転操作誘導処理とに基づく制御量によって、車両を制御することを特徴とする車両用運転操作補助方法。
【請求項29】
車体と、
車両の運転操作を行う運転操作手段と、
走行路の状態を検出する走行路状態検出手段と、
自車両の状態を検出する車両状態検出手段と、
自車両周囲に存在する障害物を検出する障害物検出手段と、
前記車両状態検出手段および前記障害物検出手段の検出結果に基づいて、前記自車両の周囲に存在する障害物に対するリスクポテンシャルを算出するリスクポテンシャル算出手段と、
前記リスクポテンシャルに応じて、前記運転操作手段における操作反力を付与する操作反力付与手段と、
運転者の上下方向の動きを制御する動作制御手段と、
前記走行路状態検出手段および前記車両状態検出手段の検出結果に基づいて、前記動作制御手段を制御して、自車両に生じている車両挙動を前記リスクポテンシャルに応じて抑制して、外乱情報を運転者に伝達する情報伝達制御手段と、
前記車両状態検出手段の検出結果および前記リスクポテンシャルに基づいて、前記リスクポテンシャルが増大する運転操作を行った場合の車両挙動を、前記動作制御手段を制御することによって擬似的に発生させるための制御量を算出する擬似車両挙動発生手段と、
前記情報伝達制御手段によって算出された制御量と、前記擬似車両挙動発生手段によって算出された制御量とを協調制御する協調制御手段と、
を備えることを特徴とする自動車。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57】
【図58】
【図59】
【図60】
【図61】
【図62】
【図63】
【図64】
【図65】
【図66】
【図67】
【図68】
【図69】
【図70】
【図71】
【図72】
【図73】
【図74】
【図75】
【図76】
【図77】
【図78】
【図79】
【図80】
【図81】
【図82】
【図83】
【図84】
【図85】
【図86】
【図87】
【図88】
【図89】
【図90】
【図91】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57】
【図58】
【図59】
【図60】
【図61】
【図62】
【図63】
【図64】
【図65】
【図66】
【図67】
【図68】
【図69】
【図70】
【図71】
【図72】
【図73】
【図74】
【図75】
【図76】
【図77】
【図78】
【図79】
【図80】
【図81】
【図82】
【図83】
【図84】
【図85】
【図86】
【図87】
【図88】
【図89】
【図90】
【図91】
【公開番号】特開2010−221994(P2010−221994A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−259192(P2009−259192)
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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