説明

SOI基板の作製方法

【課題】単結晶シリコン基板よりも大面積な基板に、均一な質を有する複数の単結晶半導体層を貼り付けたSOI基板の作製方法を提供することを課題とする。
【解決手段】熱処理において、ベース基板支持及び単結晶半導体基板保持のトレイとして、凹部の底が深く、ベース基板に貼り付けられた単結晶半導体基板と接触しないトレイを用いて、単結晶半導体基板の熱分布の均一化を図る。また、該トレイの各々の凹部の間にベース基板支持部を設けることによって、該トレイとベース基板との接触面積を低減する。以上より、単結晶半導体基板から単結晶半導体層を分離する熱処理の際、単結晶半導体基板及びベース基板の熱分布が均一になるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁膜を介して半導体層の設けられた基板、特にSOI(Silicon on Insulator)基板の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、バルク状のシリコンウエハに代わり、絶縁表面に薄い単結晶半導体層が設けられたSOI(Silicon on Insulator)基板を使った集積回路が開発されている。絶縁膜上に形成された薄い単結晶シリコン膜の特長を活かすことで、集積回路中のトランジスタ同士を完全に分離して形成することができる。またトランジスタを完全空乏型とすることができるため、高集積、高速駆動、低消費電圧など付加価値の高い半導体集積回路を実現することができる。
【0003】
SOI基板を製造する方法の1つとして、スマートカット(登録商標)法が挙げられる。スマートカット法を用いることにより、シリコン基板上だけでなく、ガラス基板等の絶縁基板上に単結晶シリコン膜を有するSOI基板も作製できる。(例えば、特許文献1参照)。スマートカット法を用いた、ガラス基板上に単結晶シリコン薄膜を有するSOI基板の作製方法の概要は以下のようになる。まず、単結晶シリコン片表面に二酸化珪素膜を形成する。次に、単結晶シリコン片に水素イオンを注入することによって単結晶シリコン片中の所定の深さに水素イオン打ち込み面を形成する。それから、二酸化珪素膜を介して、水素イオンを注入した単結晶シリコン片をガラス基板に接合させる。しかる後熱処理を施すことで、該水素イオン打ち込み面が劈開面となり、水素イオンを注入した単結晶シリコン片が薄膜状に分離し、接合させたガラス基板上に単結晶シリコン薄膜を形成することができる。このスマートカット法は水素イオン注入剥離法と呼ぶこともある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−87606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のSOI基板は単結晶シリコンウエハの大きさに依存しており、大面積化を図ることは難しかった。大面積なベース基板に、保持用のトレイを用いて複数の単結晶シリコンウエハを貼り付け、水素イオン注入剥離法を行うことで、SOI基板の大面積化を図ることができるが、その場合も各単結晶シリコンウエハ間で単結晶半導体層の分離に差が生じ、各単結晶半導体層の質が均一にならないという問題があった。
【0006】
これは、ベース基板に貼り付けた単結晶シリコンウエハから単結晶半導体層を分離する熱処理時に、ベース基板及び各単結晶シリコンウエハの熱分布に偏りが生じることが主な理由と考えられる。
【0007】
したがって、本発明の一態様は、単結晶シリコン基板よりも大面積な基板に、均一な質を有する複数の単結晶半導体層を貼り付けたSOI基板の作製方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、単結晶半導体基板から単結晶半導体層を分離する熱処理の際、単結晶半導体基板及びベース基板の熱分布が均一になるようにする。該熱処理において、ベース基板支持及び単結晶半導体基板保持のトレイとして、ベース基板に貼り付けられた単結晶半導体基板と、凹部の底が接触しないほど深いトレイを用いて、単結晶半導体基板の熱分布の均一化を図る。また、該トレイの各々の凹部の間にベース基板支持部を設けることによって、該トレイとベース基板との接触面積を低減する。
【0009】
本発明の一態様は、上面に接合層が形成され、所望の深さに脆化層が形成された複数の単結晶半導体基板と、ベース基板と、複数の凹部が設けられた第1のトレイと、複数の凹部が設けられた第2のトレイとを用意し、複数の単結晶半導体基板を、第1のトレイの複数の凹部に配置し、第1のトレイの複数の凹部に配置された複数の単結晶半導体基板を、接合層を介して、ベース基板に密接させることで、接合層の表面とベース基板表面とを接合させて、ベース基板と複数の単結晶半導体基板を貼り合わせ、第1のトレイを複数の単結晶半導体基板から外し、複数の単結晶半導体基板と第2のトレイに設けられた複数の凹部が重なるように、第2のトレイを配置し、第2のトレイに配置された複数の単結晶半導体基板の加熱処理によって脆化層に亀裂を生じさせ、各単結晶半導体基板から分離された複数の単結晶半導体層が密着されたベース基板を形成し、第1のトレイに設けられた複数の凹部の深さは、単結晶半導体基板の厚さより小さく、第2のトレイに設けられた複数の凹部の深さは、単結晶半導体基板の厚さより大きいことを特徴とするSOI基板の作製方法である。ここで、第1のトレイに設けられた複数の凹部の深さとは、図3(B)に示す、凹部11の深さD1のことを指す。また、第2のトレイに設けられた複数の凹部の深さとは、図11(B)に示す、凹部21の深さD2のことを指す。
【0010】
本発明の他の一態様は、上面に接合層が形成され、所望の深さに脆化層が形成された複数の単結晶半導体基板と、ベース基板と、複数の凹部が設けられた第1のトレイと、複数の凹部と各々の凹部の間に支持部とが設けられた第2のトレイとを用意し、複数の単結晶半導体基板を、第1のトレイの複数の凹部に配置し、第1のトレイの複数の凹部に配置された複数の単結晶半導体基板を、接合層を介して、ベース基板に密接させることで、接合層の表面とベース基板表面とを接合させて、ベース基板と複数の単結晶半導体基板を貼り合わせ、第1のトレイを複数の単結晶半導体基板から外し、複数の単結晶半導体基板と第2のトレイに設けられた複数の凹部が重なるように、第2のトレイを配置し、第2のトレイに配置された複数の単結晶半導体基板の加熱処理によって脆化層に亀裂を生じさせ、各単結晶半導体基板から分離された複数の単結晶半導体層が密着されたベース基板を形成し、第1のトレイに設けられた複数の凹部の深さは、単結晶半導体基板の厚さより小さく、第2のトレイに設けられた複数の凹部の深さと支持部の高さの和は、単結晶半導体基板の厚さより大きく、第2のトレイに設けられた各々の凹部の間の幅は、支持部の幅より大きいことを特徴とするSOI基板の作製方法である。ここで、第1のトレイに設けられた複数の凹部の深さとは、図3(B)に示す、凹部11の深さD1のことを指す。また、第2のトレイに設けられた複数の凹部の深さとは、図13(B)に示す、凹部31の深さD3aのことを指す。また、第2のトレイに設けられた支持部の高さとは、図13(B)に示す、支持部32の高さD3bのことを指す。また、第2のトレイに設けられた各々の凹部の間の幅とは、図13(B)に示す、幅D4aのことを指す。また、第2のトレイに設けられた支持部の幅とは、図13(B)に示す、支持部32の幅D4bのことを指す。
【0011】
なお、第2のトレイは、複数の単結晶半導体基板と接触することなく配置することが好ましい。また、単結晶半導体層と分離した単結晶半導体基板は、第2のトレイに設けられた複数の凹部に保持されることが好ましい。また、第2のトレイに設けられた複数の凹部の底面の面積は、単結晶半導体基板の底面の面積の1.1倍以下とすることが好ましい。
【0012】
また、接合層は、単結晶半導体基板に接して形成された絶縁層上に形成されていてもよい。また、絶縁層は、複数の絶縁膜からなる積層構造であってもよい。
【0013】
また、脆化層の形成のためのソースガスに水素ガスを用い、水素ガスを励起して、Hを含むプラズマを生成し、プラズマに含まれるイオン種を加速して、単結晶半導体基板にドープすることで、脆化層を形成することが好ましい。
【0014】
また、ベース基板は、ガラス基板であることが好ましい。また、第2のトレイは、石英ガラス、シリコン、シリコンカーバイド、または無アルカリガラスであることが好ましい。
【0015】
なお、第1、第2として付される序数詞は便宜上用いるものであり、工程順又は積層順を示すものではない。また、本明細書において発明を特定するための事項として固有の名称を示すものではない。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様に示すSOI基板の作製方法によって、単結晶シリコン基板よりも大面積な基板に、均一な質を有する複数の単結晶半導体層が形成されたSOI基板を提供することができる。本発明の一態様に係るSOI基板を用いることで、例えば、半導体集積回路等の半導体装置の生産性を向上させることができる。なお、本明細書中において半導体装置とは半導体特性を利用することで機能しうる装置全般を示す。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一態様に係るSOI基板の構成の一例を示す外観図。
【図2】単結晶半導体基板の構成の一例を示す外観図。
【図3】トレイの構成の一例を示す図。
【図4】トレイに配置された複数の単結晶半導体基板を示す外観図。
【図5】トレイの構成例を示す上面図。
【図6】トレイの構成例を示す上面図。
【図7】本発明の一態様に係るSOI基板の作製方法を示す断面図。
【図8】本発明の一態様に係るSOI基板の作製方法を示す断面図。
【図9】本発明の一態様に係るSOI基板の作製方法を示す断面図。
【図10】本発明の一態様に係るSOI基板の作製方法を示す断面図。
【図11】トレイの構成の一例を示す図。
【図12】本発明の一態様に係るSOI基板の作製方法を示す断面図。
【図13】トレイの構成の一例を示す図。
【図14】単結晶半導体基板の再生処理を説明する図。
【図15】本発明の一態様に係るSOI基板を用いた半導体装置の作製方法を示す図。
【図16】本発明の一態様に係るSOI基板を用いた半導体装置の作製方法を示す図。
【図17】本発明の一態様に係るSOI基板を用いた半導体装置の作製方法を示す図。
【図18】本発明の一態様に係るSOI基板を用いて形成されるインバータの構成を示す図。
【図19】本発明の一態様に係るSOI基板を用いて形成されるNAND回路の構成を示す図。
【図20】本発明の一態様に係るSOI基板を用いて形成される半導体装置の構成を示す図。
【図21】本発明の一態様に係るSOI基板を用いて形成される半導体装置の構成を示す図。
【図22】本発明の一態様に係るSOI基板を用いて形成される半導体装置を用いた電子機器の図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。
【0019】
(実施の形態1)
本実施の形態では、複数の単結晶半導体層が基板上に設けられたSOI基板およびその作製方法について説明する。
【0020】
図1は、SOI基板100の構成例を示す斜視図である。SOI基板100は、1枚のベース基板101に複数の単結晶半導体層116が貼り付けられている。各単結晶半導体層116は絶縁層102を介してベース基板101に設けられており、SOI基板100はいわゆるSOI構造の半導体基板である。
【0021】
絶縁層102は、単層構造でも積層構造でもよい。本実施の形態では絶縁層102は3層構造であり、ベース基板101側から、接合層114、絶縁膜112b、絶縁膜112aが積層されている。
【0022】
単結晶半導体層116は、単結晶半導体基板を薄膜化することで形成される層である。単結晶半導体基板には、市販の半導体基板を用いることができ、例えば、単結晶シリコン基板、単結晶ゲルマニウム基板、単結晶シリコンゲルマニウム基板など、第14族元素でなる単結晶半導体基板を用いることができる。また、ガリウムヒ素やインジウムリン等の化合物半導体基板も用いることができる。
【0023】
ベース基板101は、絶縁表面を有する基板を用いる。具体的には、アルミノシリケートガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラスのような電子工業用に使われる各種ガラス基板、石英基板、セラミック基板、サファイア基板が挙げられる。好ましくはベース基板101としてガラス基板を用いるのがよい。ガラス基板には、熱膨張係数が25×10−7/℃以上50×10−7/℃以下(好ましくは、30×10−7/℃以上40×10−7/℃以下)であり、歪み点が580℃以上750℃以下(好ましくは、600℃以上680℃以下)である基板を用いることが好ましい。また、半導体装置の汚染を抑えるため、ガラス基板は無アルカリガラス基板が好ましい。無アルカリガラス基板の材料には、例えば、アルミノシリケートガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラスなどのガラス材料などがある。また、ベース基板101には、ガラス基板の他、セラミック基板、石英基板やサファイア基板などの絶縁体でなる絶縁性基板、金属やステンレスなどの導電体でなる導電性基板、シリコンやガリウムヒ素など半導体でなる半導体基板などを用いることができる。
【0024】
ベース基板101には、300mm×300mm以上の基板を用いることが好ましい。例えば、このような大面積基板として、液晶パネルの製造用に開発されたマザーガラス基板が好適である。マザーガラス基板としては、例えば、第3世代(550mm×650mm)、第3.5世代(600mm×720mm)、第4世代(680mm×880mm、または730mm×920mm)、第5世代(1100mm×1300mm)、第6世代(1500mm×1850mm)、第7世代(1870mm×2200mm)、第8世代(2200mm×2400mm)、第9世代(2400mm×2800mm)、第10世代(2850mm×3050mm)などのサイズの基板が知られている。
【0025】
マザーガラス基板のような大面積な基板をベース基板101として用いることで、SOI基板の大面積化が実現できる。SOI基板の大面積化が実現すれば、1枚のSOI基板から多数のIC、LSI等のチップを製造することができ、1枚の基板から製造されるチップ数が増加するので、生産性を飛躍的に向上させることができる。
【0026】
以下、図2乃至図13を参照して、図1に示すSOI基板100の作製方法を説明する。
【0027】
まず、単結晶半導体基板111を準備する。単結晶半導体基板111は所望の大きさ、形状に加工されている。図2は、単結晶半導体基板111の構成の一例を示す外観図である。矩形状のベース基板101に貼り合わせること、および縮小投影型露光装置などの露光装置の露光領域が矩形であること等を考慮すると、図2に示すように単結晶半導体基板111の形状は矩形であることが好ましい。なお、特段の断りが無い限り、矩形には正方形が含まれることとする。例えば、矩形状の単結晶半導体基板111の長辺の長さは、縮小投影型露光装置の1ショットの露光領域の一辺のn倍(nは任意の正の整数で、n≧1)を満たすように加工することが好ましい。
【0028】
矩形の単結晶半導体基板111は、市販の円形状のバルク単結晶半導体基板を切断することで形成することができる。基板の切断には、ダイサー或いはワイヤソー等の切断装置、レーザ切断、プラズマ切断、電子ビーム切断、その他任意の切断手段を用いることができる。また、基板として薄片化する前の半導体基板製造用のインゴットを、その断面が矩形になるように直方体状に加工し、この直方体状のインゴットを薄片化することでも、矩形状の単結晶半導体基板111を製造することができる。
【0029】
なお、単結晶半導体基板111に、単結晶シリコン基板のような結晶構造がダイヤモンド構造の第14族元素でなる基板を用いる場合は、その主表面の面方位は、(100)であっても良いし、(110)面であっても良いし、(111)であっても良い。主表面の面方位が(100)の単結晶半導体基板111を用いることで、単結晶半導体層116とその表面に形成される絶縁層との界面準位密度を小さくすることができるため、電界効果型トランジスタの作製に好適である。
【0030】
主表面の面方位が(110)の単結晶半導体基板111を用いることで、接合層114と単結晶半導体層116との接合面において、接合層114を構成する元素と単結晶半導体層116を構成する第14族元素(例えばシリコン元素)との結合が密に形成されるため、接合層114と単結晶半導体層116との結合力が向上する。
【0031】
主表面の面方位が(110)面の単結晶半導体基板111を用いることで、その主表面には、他の面方位に比べて原子が密に配列しているため、単結晶半導体層116の平坦性が向上する。したがって、主表面の面方位が(110)面の単結晶半導体層116を用いて作製したトランジスタは、小さいS値、高電界効果移動度などの、優れた電気的特性を有する。なお、主表面の面方位が(110)面の単結晶半導体基板は、(100)面の単結晶半導体基板よりもヤング率が大きく、劈開しやすいという長所がある。
【0032】
単結晶半導体基板111を洗浄した後、第1のトレイ10に複数の単結晶半導体基板111を配置する。なお、単結晶半導体基板111の表面は、硫酸過水(SPM)、アンモニア過水(APM)、塩酸過水(HPM)、希フッ酸(DHF)などを用いて洗浄しておくのが好ましい。図3(A)は、第1のトレイ10の構成の一例を示す外観図である。また、図3(B)は、図3(A)の直線ABに対応する断面図である。第1のトレイ10は、板状の部材であり、単結晶半導体基板111を保持するための複数の凹部11が形成されている。図3は、図1のSOI基板100を製造するための第1のトレイ10であり、ここでは3行3列に凹部11が形成されている。図4に示すように、複数の凹部11それぞれに収めるように複数の単結晶半導体基板111を第1のトレイ10に並べる。また、凹部11の形状は、単結晶半導体基板111に合わせて矩形であることが好ましい。なお、特段の断りが無い限り、矩形には正方形が含まれることとする。なお、本明細書中で凹部とは、窪み状、凹み状又は溝状の形状の部分を表す。
【0033】
第1のトレイ10は、SOI基板100の基板の作製工程での熱処理で変質、変形しない材料で作製される。例えば、石英ガラス、シリコンやシリコンカーバイド等の半導体材料、または無アルカリガラス等で第1のトレイ10を作製することができる。
【0034】
第1のトレイ10の厚さは、1.1mm以上2mm以下とすることができる。凹部11の深さD1は、単結晶半導体基板111の厚さより小さくする。ここで凹部11の深さD1は、0.2mm以上0.6mm以下とすることができ、0.3mm以上0.5mm以下が好ましい。第1のトレイ10のサイズは、ベース基板101と同じサイズとすることが好ましい。凹部11のサイズは、単結晶半導体基板111が収まるサイズとし、凹部11の底面の面積は、単結晶半導体基板111の底面の面積の1.1倍以下とするのが好ましい。また、凹部11のサイズは、単結晶半導体基板111を収める際に、単結晶半導体基板111の縁と凹部11の縁との間の距離は1mm以下とするのが好ましい。なお本実施の形態の作製方法では、図4に示すように、凹部11のサイズおよび配列によって、SOI基板100の単結晶半導体層116のサイズ、配列が制約される。なお、凹部11の底面とは、図3(B)に示す、各々の凹部11の上方向に開かれた面のことを指すものであり第1のトレイ10全体の底面を指すものではない。
【0035】
図5、図6は第1のトレイ10の構成例を示す上面図である。図5は、ベース基板101に、サイズが600mm×720mmであるマザーガラス基板を用いる場合の第1のトレイ10の平面図であり、第1のトレイ10のサイズは600mm×720mmである。図6は、ベース基板101に、サイズが730mm×920mmである第4世代のマザーガラス基板を用いる場合の第1のトレイ10の平面図であり、第1のトレイ10のサイズは730mm×920mmである。
【0036】
図5(A)は、露光領域のサイズが4インチ角の縮小投影型露光装置に対応するように、凹部11のサイズおよび配置を考慮した第1のトレイ10の平面図である。第1のトレイ10は4つのブロックに区分されており、各ブロックには3行3列に配置された9つの凹部11が形成されている。各凹部11のサイズは1ショットの露光領域に収まる102mm×82mmである。1ブロックにおいて、凹部11の間隔は、縦、横共に11mmであり、第1のトレイ10の縁から凹部11の縁までの距離は、縦、横共に16mmである。
【0037】
図5(B)は、露光領域のサイズが5インチ角の縮小投影型露光装置に対応するように、凹部11のサイズおよび配置を考慮した第1のトレイ10の平面図である。第1のトレイ10は4つのブロックに区分されており、各ブロックには3行2列に配置された6つの凹部11が形成されている。各凹部11のサイズは1ショットの露光領域に収まる102mm×130mmである。一ブロックにおいて、凹部11の間隔は、縦は11mmであり横は10mmであり、第1のトレイ10の縁から凹部11の縁までの距離は、縦、横共に16mmである。
【0038】
図6(A)は、露光領域のサイズが4インチ角の縮小投影型露光装置に対応するように、凹部11のサイズおよび配置を考慮した第1のトレイ10の平面図である。第1のトレイ10は6つのブロックに区分されており、各ブロックには3行3列に配置された9つの凹部11が形成されている。各凹部11のサイズは1ショットの露光領域に収まる105mm×84mmである。一ブロックにおいて、凹部11の間隔は、縦は11mmであり、横は10mmであり、第1のトレイ10の縁から凹部11の縁までの距離は、縦は16mmであり、横は15mmである。
【0039】
図6(B)は、露光領域のサイズが5インチ角の縮小投影型露光装置に対応するように、凹部11のサイズおよび配置を考慮した第1のトレイ10の平面図である。第1のトレイ10は6つのブロックに区分されており、各ブロックには2行3列に配置された6つの凹部11が形成されている。各凹部11のサイズは1ショットの露光領域に収まる132mm×105mmである。一ブロックにおいて、凹部11の間隔は、縦は13mmであり横は10mmであり、第1のトレイ10の縁から凹部11の縁までの距離は、縦、横共に15mmである。
【0040】
図4に示すように、第1のトレイ10に単結晶半導体基板111を配置した後、図7(A)に示すように、単結晶半導体基板111上に絶縁層112を形成する。絶縁層112は単層構造、2層以上の多層構造とすることができる。その厚さは5nm以上400nm以下とすることができる。絶縁層112を構成する膜には、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、酸化ゲルマニウム膜、窒化ゲルマニウム膜、酸化窒化ゲルマニウム膜、窒化酸化ゲルマニウム膜などのシリコンまたはゲルマニウムを組成に含む絶縁膜を用いることができる。また、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化ハフニウムなどの金属の酸化物でなる絶縁膜、窒化アルミニウムなどの金属の窒化物でなる絶縁膜、酸化窒化アルミニウム膜などの金属の酸化窒化物でなる絶縁膜、窒化酸化アルミニウム膜などの金属の窒化酸化物でなる絶縁膜を用いることもできる。
【0041】
なお、本明細書において、酸化窒化物とは、その組成として、窒素原子よりも酸素原子の数が多い物質とし、また、窒化酸化物とは、その組成として、酸素原子より窒素原子の数が多い物質とする。例えば、酸化窒化シリコン膜とは、ラザフォード後方散乱法(RBS:Rutherford Backscattering Spectrometry)及び水素前方散乱法(HFS:Hydrogen Forward Scattering)を用いて測定した場合に、濃度範囲として酸素が50〜70原子%、窒素が0.5〜15原子%、Siが25〜35原子%、水素が0.1〜10原子%の範囲で含まれるものをいう。また、窒化酸化シリコン膜とは、RBS及びHFSを用いて測定した場合に、濃度範囲として酸素が5〜30原子%、窒素が20〜55原子%、Siが25〜35原子%、水素が10〜30原子%の範囲で含まれるものをいう。但し、酸化窒化シリコンまたは窒化酸化シリコンを構成する原子の合計を100原子%としたとき、窒素、酸素、Si及び水素の含有比率が上記の範囲内に含まれるものとする。
【0042】
絶縁層112を構成する絶縁膜は、CVD法、スパッタ法、単結晶半導体基板111を酸化するまたは窒化するなどの方法により形成することができる。
【0043】
ベース基板101にアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属などの半導体装置の信頼性を低下させる不純物を含むような基板を用いた場合、このような不純物がベース基板101から、SOI基板の半導体層に拡散することを防止できるような膜を少なくとも1層以上、絶縁層112に設けることが好ましい。このような膜には、窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、窒化アルミニウム膜、または窒化酸化アルミニウム膜などがある。このような膜を含ませることで、絶縁層112をバリア層として機能させることができる。
【0044】
例えば、絶縁層112を単層構造のバリア層として形成する場合、厚さ5nm以上200nm以下の窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、窒化アルミニウム膜、または窒化酸化アルミニウム膜で形成することができる。
【0045】
絶縁層112を、バリア層として機能する2層構造の膜とする場合は、上層は、バリア機能の高い絶縁膜で構成することが好ましい。上層は、厚さ5nm〜200nmの窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、窒化アルミニウム膜、または窒化酸化アルミニウム膜で形成することができる。これらの膜は、不純物の拡散を防止するブロッキング効果が高いが、内部応力が高い。そのため、単結晶半導体基板111と接する下層の絶縁膜には、上層の絶縁膜の応力を緩和する効果のある膜を選択することが好ましい。このような絶縁膜には、酸化シリコン膜および酸化窒化シリコン膜、および単結晶半導体基板111を熱酸化して形成した熱酸化膜などがある。下層の絶縁膜の厚さは5nm以上300nm以下とすることができる。
【0046】
本実施の形態では、絶縁層112を絶縁膜112aと絶縁膜112bでなる2層構造とする。絶縁層112をブロッキング膜として機能させる、絶縁膜112aと絶縁膜112bの組み合わせは、例えば、酸化シリコン膜と窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜と窒化シリコン膜、酸化シリコン膜と窒化酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜と窒化酸化シリコン膜などがある。
【0047】
例えば、下層の絶縁膜112aは、プロセスガスにSiHおよびNOを用いてプラズマ励起CVD法(以下、「PECVD法」という。)で形成した酸化窒化シリコン膜で形成することができる。また、絶縁膜112aとして、プロセスガスに有機シランガスと酸素を用いて、PECVD法で酸化シリコン膜を形成することもできる。また、単結晶半導体基板111を酸化した、酸化膜で絶縁膜112aを形成することもできる。
【0048】
有機シランガスとしては、テトラエトキシシラン(TEOS:化学式Si(OC)、テトラメチルシラン(TMS:化学式Si(CH)、テトラメチルシクロテトラシロキサン(TMCTS)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、トリエトキシシラン(SiH(OC)、トリスジメチルアミノシラン(SiH(N(CH)等のシリコン含有化合物を用いることができる。
【0049】
上層の絶縁膜112bは、プロセスガスにSiH、NO、NHおよびHを用いてPECVD法で形成した窒化酸化シリコン膜で形成することができる。または、プロセスガスにSiH、N、NHおよびHを用いてPECVD法で形成した窒化シリコン膜で形成することができる。
【0050】
例えば、PECVD法で、酸化窒化シリコンでなる絶縁膜112a、窒化酸化シリコンでなる絶縁膜112bを形成する場合、第1のトレイ10に配置された複数の単結晶半導体基板111をPECVD装置の処理室に搬入する。そして、絶縁膜112aの形成用プロセスガスとしてSiHおよびNOを処理室に供給し、このプロセスガスのプラズマを生成し、酸化窒化シリコン膜を単結晶半導体基板111上に形成する。次に、処理室に導入するガスを絶縁膜112b形成用のプロセスに変更する。ここでは、SiH、NO、NHおよびHおよびNOを用いる。これらの混合ガスのプラズマを生成して、酸化窒化シリコン膜上に窒化酸化シリコン膜を連続して形成する。また、複数の処理室を有するPECVD装置を用いる場合は、酸化窒化シリコン膜と窒化酸化シリコン膜と異なる処理室で形成することもできる。もちろん、処理室に導入するガスを変更することで、下層に酸化シリコン膜を形成することもできるし、上層に窒化シリコン膜を形成することもできる。
【0051】
上記のように絶縁膜112aおよび絶縁膜112bを形成することで、スループット良く、複数の単結晶半導体基板111に絶縁層112を形成することができる。また、大気に触れさせることなく絶縁膜112a、絶縁膜112bを形成できるので、絶縁膜112aと絶縁膜112bの界面が大気によって汚染されることを防止することができる。
【0052】
また、絶縁膜112aとして、単結晶半導体基板111を酸化処理して酸化膜を形成することができる。この酸化膜を形成するための、熱酸化処理には、ドライ酸化でも良いが、酸化雰囲気中にハロゲンを含むガスを添加することが好ましい。ハロゲンを含むガスとして、HCl、HF、NF、HBr、Cl、ClF、BCl、F、Brなどから選ばれた一種又は複数種ガスを用いることができる。
【0053】
例えば、酸素に対しHClを0.5〜10体積%(好ましくは3体積%)の割合で含む雰囲気中で、700℃以上の温度で熱処理を行う。950℃以上1100℃以下の加熱温度で熱酸化を行うとよい。処理時間は0.1〜6時間、好ましくは2.5〜3.5時間とすればよい。形成される酸化膜の膜厚は、15nm〜1100nm(好ましくは50nm〜150nm)、例えば100nmの厚さとすることができる。
【0054】
このような温度範囲で酸化処理を行うことで、ハロゲン元素によるゲッタリング効果を得ることができる。ゲッタリングとしては、特に、金属不純物を除去する効果がある。すなわち、塩素の作用により、金属などの不純物が揮発性の塩化物となって気相中へ離脱して、単結晶半導体基板111から除去される。また、酸化処理に含まれるハロゲン元素により、単結晶半導体基板111の表面の未結合手が終端されるため、酸化膜と単結晶半導体基板111との界面の局在準位密度が低減できる。
【0055】
このハロゲンを含む雰囲気での熱酸化処理により、酸化膜にハロゲンを含ませることができる。絶縁膜112aに、ハロゲン元素を1×1017atoms/cm〜5×1020atoms/cmの濃度で含ませることにより、SOI基板100において、金属などの不純物を捕獲して単結晶半導体層116の汚染を防止する保護膜としての機能を発現させることができる。
【0056】
熱酸化処理で下層の絶縁膜112aを形成し、PECVD法などの気相法で上層の絶縁膜112bを形成する方法の一例としては、単結晶半導体基板111を第1のトレイ10に配置する前に、熱酸化処理で絶縁膜112aを形成し、酸化膜でなる絶縁膜112aが形成された単結晶半導体基板111を第1のトレイ10に並べ、しかる後、絶縁膜112bを形成する方法がある。
【0057】
次に、図7(B)に示すように、絶縁層112を介して、電界で加速されたイオンでなるイオンビーム121を単結晶半導体基板111に照射して、単結晶半導体基板111の表面から所定の深さの領域に、脆化層113を形成する。イオンビーム121は、ソースガスを励起して、ソースガスのプラズマを生成し、プラズマから電界の作用により、プラズマに含まれるイオンを引き出すことで生成される。
【0058】
脆化層113が形成される領域の深さは、イオンビーム121の加速エネルギーとイオンビーム121の入射角によって調節することができる。加速エネルギーは加速電圧、ドーズ量などにより調節できる。イオンの平均侵入深さとほぼ同じ深さの領域に脆化層113が形成される。イオンを添加する深さで、単結晶半導体基板111から分離される半導体層の厚さが決定される。脆化層113が形成される深さは、単結晶半導体基板111の表面から50nm以上500nm以下であり、50nm以上200nm以下とするのが好ましい。
【0059】
イオンを単結晶半導体基板111に添加するには、質量分離を伴うイオン注入法よりも、質量分離を伴わないイオンドーピング法が好ましい。これによって、大面積の第1のトレイ10に配置された複数の単結晶半導体基板111に脆化層113を形成するタクトタイムを短縮できるからである。
【0060】
第1のトレイ10に収められた単結晶半導体基板111を、イオンドーピング装置の処理室に搬入する。ソースガスを励起しプラズマを生成し、プラズマ中からイオン種を引き出し、加速して、イオンビーム121生成する。そのイオンビーム121を、複数の単結晶半導体基板111に照射することで、所定の深さにイオンが高濃度に導入され、脆化層113が形成される。
【0061】
ソースガスに水素(H)を用いる場合、水素ガスを励起してH、H、Hを含むプラズマを生成することができる。ソースガスから生成されるイオン種の割合は、プラズマの励起方法、プラズマを発生させる雰囲気の圧力、ソースガスの供給量などを調節することで、変化させることができる。
【0062】
は他の水素イオン種(H、H)よりも、水素原子の数が多く、その結果質量が大きいため、同じエネルギーで加速される場合、H、Hよりも単結晶半導体基板111のより浅い領域に添加される。よって、イオンビーム121に含まれるHの割合を高くすることにより、水素イオンの平均侵入深さのばらつきが小さくなるので、単結晶半導体基板111における水素の深さ方向の濃度プロファイルはより急峻になり、そのプロファイルのピーク位置を浅くすることができる。よって、イオンビーム121に含まれるH、H、Hの総量に対してHが50%以上含まれるようにすることが好ましく、Hの割合は80%以上がより好ましい。
【0063】
水素ガスを用いて、イオンドーピング法でイオン添加を行う場合、加速電圧10kV以上200kV以下、ドーズ量1×1016ions/cm以上6×1016ions/cm以下とすることができる。この条件で水素イオンを添加することで、イオンビーム121に含まれるイオン種および、その割合にもよるが、脆化層113を単結晶半導体基板111の深さ50nm以上500nm以下の領域に形成することができる。
【0064】
例えば、単結晶半導体基板111が単結晶シリコン基板であり、絶縁膜112aが厚さ50nmの酸化窒化シリコン膜であり、絶縁膜112bが厚さ50nmの窒化酸化シリコン膜の場合、ソースガスが水素であり、加速電圧40kV、ドーズ量2.2×1016ions/cmの条件では、単結晶半導体基板111から厚さ120nm程度の単結晶半導体層を剥離することができる。また、絶縁膜112aを厚さ100nmの酸化窒化シリコン膜とし、他は同じ条件で水素イオンをドープすると、単結晶半導体基板111から厚さ70nm程度の単結晶半導体層を剥離することができる。
【0065】
イオンビーム121のソースガスにヘリウム(He)を用いることもできる。ヘリウムを励起して生成されるイオン種がHeが殆どであるため、質量分離を伴わないイオンドーピング法でも、Heを主なイオンとして単結晶半導体基板111に添加することができる。よって、イオンドーピング法で、効率良く、微小な空孔を脆化層113に形成することができる。ヘリウムを用いて、イオンドーピング法でイオン添加を行う場合、加速電圧10kV以上200kV以下、ドーズ量1×1016ions/cm以上6×1016ions/cm以下とすることができる。
【0066】
ソースガスに塩素ガス(Clガス)、フッ素ガス(Fガス)などのハロゲンガスを用いることもできる。
【0067】
脆化層113を形成した後、図7(C)に示すように、絶縁層112の上面に、接合層114を形成する。接合層114を形成する工程では、単結晶半導体基板111の加熱温度は、脆化層113に添加した元素または分子が析出しない温度とし、その加熱温度は350℃以下が好ましい。言い換えると、この加熱温度は脆化層113からガスが抜けない温度である。なお、接合層114は、イオン添加工程を行う前に形成することもできる。この場合は、接合層114を形成するときのプロセス温度は、350℃以上にすることができる。また、絶縁層112が親水性の接合面として十分機能する場合は、わざわざ接合層114を設けずに、絶縁層112を接合層として用いてもよい。例えば、絶縁層112として、単結晶半導体基板111を熱酸化処理して得られる熱酸化膜を形成した場合、それをベース基板101との接合面としてよい。
【0068】
接合層114は、平滑で親水性の接合面を単結晶半導体基板111の表面に形成するための層である。そのため、接合層114の平均面粗さRaが0.7nm以下とすることが好ましく、0.4nm以下がより好ましい。また、接合層114の厚さは、5nm以上500nm以下とすることができ、10nm以上200nm以下とすることがより好ましい。
【0069】
接合層114には、化学的気相反応により形成される絶縁膜が好ましい。例えば、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、窒化シリコン膜などを、接合層114として形成することとができる。接合層114として、PECVD法で酸化シリコン膜を形成する場合には、ソースガスに有機シランガスおよび酸素(O)ガスを用いることが好ましい。ソースガスに有機シランを用いることで、プロセス温度が350℃以下で、平滑な表面を有する酸化シリコン膜を形成することができる。また、熱CVD法で、加熱温度が500℃以下200℃以上で形成されるLTO(低温酸化物、low temperature oxide)で形成することができる。LTOの形成には、シリコンソースガスにモノシラン(SiH)またはジシラン(Si)などを用い、酸素ソースガスに一酸化二窒素(NO)などを用いることができる。
【0070】
例えば、ソースガスにTEOSとOを用いて、酸化シリコン膜でなる接合層114を形成するための条件例としては、処理室に、流量15sccmでTEOSを導入し、流量750sccmでOを導入する。他の成膜条件としては、成膜圧力は100Pa、成膜温度300℃、RF出力300W、電源周波数13.56MHzが挙げられる。
【0071】
また、図7(B)の工程と図7(C)の工程の順序を逆にすることもできる。すなわち、第1のトレイ10に配置された複数の単結晶半導体基板111に、絶縁層112および接合層114を形成した後、脆化層113を形成することもできる。この場合、絶縁層112と接合層114を同じ成膜装置で形成できる場合は、絶縁層112と接合層114の形成を連続して行うことが好ましい。
【0072】
また、図7(B)の工程を行った後、図7(A)の工程と図7(C)の工程を行うこともできる。すなわち、第1のトレイ10に配置された複数の単結晶半導体基板111にイオン種をドープして脆化層113を形成した後、絶縁層112および接合層114を形成することもできる。この場合、絶縁層112と接合層114を同じ成膜装置で形成できる場合は、絶縁層112と接合層114の形成を連続して行うことが好ましい。また、脆化層113を形成する前に、単結晶半導体基板111の表面を保護するために、単結晶半導体基板111を酸化処理して、表面に酸化膜を形成し、酸化膜を介してイオン種を単結晶半導体基板111にドープすることもできる。脆化層113を形成した後はこの酸化膜を除去する。また、酸化膜を残した状態で、絶縁層112を形成することもできる。
【0073】
なお、脆化層113を形成するために、イオンドーピング法でソースガスから生成されたイオン種を、単結晶半導体基板111にドープしているため、イオンビーム121中に、ソースガスのイオン種以外の、イオン種が含まれる。このようなイオン種は、例えば、イオンドーピング装置の処理室の治具や電極を構成している金属などである。これらのイオン種は、ソースガス(水素、ヘリウムなど)のイオン種より質量が大きいため、単結晶半導体基板111の表面に形成される膜(絶縁層112、接合層114または酸化膜)の表面にドープされる。この金属などの不純物を除去するため、イオンドーピング工程の後、単結晶半導体基板111の表面に形成される膜の表面をウエットエッチングして、その膜を薄く除去することもできる。
【0074】
次に、絶縁層112、脆化層113および接合層114が形成された単結晶半導体基板111を第1のトレイ10からはずし、複数の単結晶半導体基板111を洗浄する。この洗浄工程は、純水による超音波洗浄で行うことができる。超音波洗浄はメガヘルツ超音波洗浄(メガソニック洗浄)が好ましい。超音波洗浄の後、単結晶半導体基板111をオゾン水で洗浄してもよい。オゾン水で洗浄することで、有機物の除去と、接合層114表面の親水性を向上させる表面活性化処理を行うことができる。洗浄処理、および表面活性化処理の終了後、図7(D)に示すように単結晶半導体基板111を第1のトレイ10の凹部11に配置する。
【0075】
接合層114の表面の活性化処理は、オゾン処理、オゾン水による洗浄の他原子ビーム若しくはイオンビームの照射処理、プラズマ処理、若しくはラジカル処理で行うことができる。原子ビーム若しくはイオンビームを利用する場合には、アルゴン等の不活性ガス中性原子ビーム若しくは不活性ガスイオンビームを用いることができる。これらの処理は、単結晶半導体基板111を第1のトレイ10に配置した状態で行うこともできる。
【0076】
ここで、オゾン処理の一例を説明する。例えば、酸素を含む雰囲気下で紫外線(UV)を照射することにより、被処理体表面にオゾン処理を行うことができる。酸素を含む雰囲気下で紫外線を照射するオゾン処理は、UVオゾン処理または紫外線オゾン処理などとも言われる。酸素を含む雰囲気下において、紫外線のうち200nm未満の波長を含む光と200nm以上の波長を含む光を照射することにより、オゾンを生成させるとともに、オゾンから一重項酸素を生成させることができる。紫外線のうち180nm未満の波長を含む光を照射することにより、オゾンを生成させるとともに、オゾンから一重項酸素を生成させることもできる。
【0077】
酸素を含む雰囲気下で、200nm未満の波長を含む紫外光および200nm以上の波長を含む紫外光を照射することにより起きる反応例を示す。
+hν(λnm)→O(P)+O(P) (1)
O(P)+O→O (2)
+hν(λnm)→O(D)+O (3)
【0078】
上記反応式(1)において、酸素(O)を含む雰囲気下で200nm未満の波長(λnm)を含む光(hν)を照射することにより基底状態の酸素原子(O(P))が生成される。次に、反応式(2)において、基底状態の酸素原子(O(P))と酸素(O)とが反応してオゾン(O)が生成される。そして、反応式(3)において、生成されたオゾン(O)を含む雰囲気下で200nm以上の波長(λnm)を含む光が照射されることにより、励起状態の一重項酸素O(D)が生成される。酸素を含む雰囲気下において、紫外線のうち200nm未満の波長を含む光を照射することによりオゾンを生成させるとともに、200nm以上の波長を含む光を照射することによりオゾンを分解して一重項酸素を生成する。上記のようなオゾン処理は、例えば、酸素を含む雰囲気下での低圧水銀ランプの照射(λ=185nm、λ=254nm)により行うことができる。
【0079】
また、酸素を含む雰囲気下で、180nm未満の波長を含む光を照射することにより起きる反応例を示す。
+hν(λnm)→O(D)+O(P) (4)
O(P)+O→O (5)
+hν(λnm)→O(D)+O (6)
【0080】
上記反応式(4)において、酸素(O)を含む雰囲気下で180nm未満の波長(λnm)を含む光を照射することにより、励起状態の一重項酸素O(D)と基底状態の酸素原子(O(P))が生成する。次に、反応式(5)において、基底状態の酸素原子(O(P))と酸素(O)とが反応してオゾン(O)が生成する。反応式(6)において、生成されたオゾン(O)を含む雰囲気下で180nm未満の波長(λnm)を含む光が照射されることにより、励起状態の一重項酸素と酸素が生成される。酸素を含む雰囲気下において、紫外線のうち180nm未満の波長を含む光を照射することによりオゾンを生成させるとともにオゾンまたは酸素を分解して一重項酸素を生成する。上記のようなオゾン処理は、例えば、酸素を含む雰囲気下でのXeエキシマUVランプの照射(λ=172nm)により行うことができる。
【0081】
200nm未満の波長を含む光により被処理体表面に付着する有機物などの化学結合を切断し、オゾンまたはオゾンから生成された一重項酸素により被処理体表面に付着する有機物、または化学結合を切断した有機物などを酸化分解して除去することができる。上記のようなオゾン処理を行うことで、被処理体表面の親水性および清浄性を高めることができ、接合を良好に行うことができる。
【0082】
酸素を含む雰囲気下で紫外線を照射することによりオゾンが生成される。オゾンは、被処理体表面に付着する有機物の除去に効果を奏する。また、一重項酸素も、オゾンと同等またはそれ以上に、被処理体表面に付着する有機物の除去に効果を奏する。オゾン及び一重項酸素は、活性状態にある酸素の例であり、総称して活性酸素とも言われる。上記反応式等で説明したとおり、一重項酸素を生成する際にオゾンが生じる、またはオゾンから一重項酸素を生成する反応もあるため、ここでは一重項酸素が寄与する反応も含めて、便宜的にオゾン処理と称する。
【0083】
次に、第1のトレイ10に配置された単結晶半導体基板111とベース基板101を貼り合わせる。貼り合わせる前に、ベース基板101も洗浄する。塩酸と過酸化水素水を用いた洗浄や、メガヘルツ超音波洗浄で行うことができる。また、接合層114と同様に、ベース基板101の接合面となる表面に対して、オゾン処理などの表面活性化処理を行うことが好ましい。
【0084】
また、ベース基板101上に絶縁膜を形成しておくのが好ましい。ベース基板101は、その表面に絶縁膜が必ずしも形成されていなくとも良いが、ベース基板101の表面にバリア膜として機能する窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、窒化アルミニウム膜、または窒化酸化アルミニウム膜などを形成しておくことで、ベース基板101から単結晶半導体基板111に、アルカリ金属やアルカリ土類金属などの不純物が入り込むのを防ぐことができる。
【0085】
図8(A)は接合工程を説明する断面図である。複数の単結晶半導体基板111が配置された第1のトレイ10の上方からベース基板101を載置して、接合層114を介して、ベース基板101と複数の単結晶半導体基板111を密接させる。ベース基板101の端の一箇所に1N/cm〜500N/cm程度の圧力を加える。この圧力は、1N/cm〜20N/cmが好ましい。圧力をかけた部分から接合層114とベース基板101とが接合し始める。やがて1枚のベース基板101に対して、第1のトレイ10上の全ての単結晶半導体基板111が接合し、ベース基板101に複数の単結晶半導体基板が密着することができる。この接合工程は、加熱処理を伴わず、常温で行うことができるため、ベース基板101に、ガラス基板のように耐熱温度が700℃以下の低耐熱性の基板を用いることが可能である。
【0086】
複数の単結晶半導体基板111を第1のトレイ10に並べているため、単結晶半導体基板111の厚さの違いにより、接合層114の表面がベース基板101と接触しない単結晶半導体基板111が生じる場合がある。そのため、圧力をかける場所は一箇所ではなく、各単結晶半導体基板111に圧力をかけるようにすることが好ましい。また、第1のトレイ10に配置された状態で、接合層114表面の高さの違いがあっていても、ベース基板101のたわみにより接合層114の一部分がベース基板101と密着すれば、接合層114表面全体に接合が進行することが可能である。
【0087】
また、図8(A)のようにベース基板101を第1のトレイ10に載せた後、図9のように、ベース基板101を下側に入れ替えてもよい。ベース基板101と第1のトレイ10の天地を入れ替えることで、単結晶半導体基板111の厚さの違いが相殺され、接合層114の表面全体をベース基板101の表面に容易に接触させることができる。
【0088】
図8(A)に示すように、第1のトレイ10に配置された単結晶半導体基板111上にベース基板101を載置するときに、接合面がゴミなどにより汚染されてしまうと、汚染部分は接合されなくなる。そのため、接合面の汚染を防ぐため、ベース基板101の載置は、気密な処理室内で行うことが好ましい。また、処理室内を5.0×10−3Pa程度の減圧状態とし、接合処理の雰囲気を清浄にすることが好ましい。
【0089】
次に、図8(B)に示すように、単結晶半導体基板111の貼り合わせに用いた第1のトレイ10を、単結晶半導体基板111及びベース基板101の下から外し、第2のトレイ20を配置する。
【0090】
第2のトレイ20の外観図及び断面図を図11(A)及び図11(B)に示す。図11(B)は、図11(A)の直線ABに対応する断面図である。第2のトレイ20は、板状の部材であり、後の工程で分離される単結晶半導体基板を保持するための複数の凹部21が形成されており、ここでは、3行3列に凹部21が形成されている。ただし、第1のトレイ10とは異なり、凹部21の深さD2は、単結晶半導体基板111の厚さより大きくする。また、凹部21の形状は、単結晶半導体基板111に合わせて矩形であることが好ましい。なお、特段の断りが無い限り、矩形には正方形が含まれることとする。
【0091】
また、第2のトレイ20の厚さは、1.7mm以上2.9mm以下とすることができる。凹部21の深さD2は、0.8mm以上1.5mm以下とすることができる。なお、第2のトレイ20のサイズは、第1のトレイ10と同様にするのが好ましい。つまり、第2のトレイ20のサイズは、ベース基板101と同じサイズとすることが好ましい。また、凹部21のサイズは、単結晶半導体基板111(単結晶半導体基板117)が収まるサイズとし、凹部21の底面の面積は、単結晶半導体基板111(単結晶半導体基板117)の底面の面積の1.1倍以下とするのが好ましい。また、単結晶半導体基板111(単結晶半導体基板117)を凹部21に収める際の単結晶半導体基板111(単結晶半導体基板117)の縁と凹部21の縁との間の距離は1mm以下とするのが好ましい。また、第1のトレイ10と同様に第2のトレイ20の構成例も図5及び図6で示されるものとなる。なお、凹部21の底面とは、図11(B)に示す、各々の凹部21の上方向に開かれた面のことを指すものであり第2のトレイ20全体の底面を指すものではない。
【0092】
第2のトレイ20は、SOI基板100の基板の作製工程での熱処理で変質、変形しない材料で作製される。特に、熱処理での熱膨張が少ない材料を選択することが好ましい。例えば、石英ガラス、シリコンやシリコンカーバイド等の半導体材料、または無アルカリガラス等で第2のトレイ20を作製することができる。
【0093】
このような第2のトレイ20を、図8(B)に示すように、凹部21と単結晶半導体基板111が重なるように配置して、単結晶半導体基板111が貼り合わせられたベース基板101を支持する。ここで、第2のトレイ20は、凹部21の深さD2が単結晶半導体基板111の厚さより大きいので、単結晶半導体基板111の底面と接触することなく、ベース基板101を支持することができる。
【0094】
トレイは、ベース基板101と同程度の大きさであるため、場所により熱分布が異なりやすく、図8(A)のように単結晶半導体基板111がトレイと接触していると、その熱分布の影響を受けやすい。しかし、第2のトレイ20を用いることにより、加熱処理の際に第2のトレイ20と単結晶半導体基板111の底面との接触を防ぐことができ、各単結晶半導体基板111の熱分布が異なるものになることを防ぐことができる。よって、各単結晶半導体基板111の熱分布を均一にして、単結晶半導体層の分離を行うことができ、質的に均一な単結晶半導体層をベース基板101上に形成することができる。
【0095】
また、第2のトレイ20でベース基板101を支持することによって、ベース基板の周辺端部だけでなく、ベース基板101の中央部でもベース基板を支持することができる。よって、加熱処理の際に大きくベース基板が撓むことを防ぐことができるので、均一な単結晶半導体層をベース基板101上に形成することができる。
【0096】
また、第2のトレイ20を配置した後、ベース基板101と接合層114との接合界面での結合力を増加させるための加熱処理を行うことが好ましい。この処理温度は、脆化層113に亀裂を発生させない温度とし、200℃以上450℃以下の温度範囲で処理することができる。また、この温度範囲で加熱しながら、ベース基板101に単結晶半導体基板111を貼り合わせることで、ベース基板101と接合層114との接合界面での結合力を強固にすることができる。
【0097】
次いで、加熱処理を行い、脆化層113で剥離を生じさせて、単結晶半導体基板111から単結晶半導体層115を分離する。図8(C)は、単結晶半導体基板111から単結晶半導体層115を分離する分離工程を説明する図である。単結晶半導体基板117は単結晶半導体層115が分離された単結晶半導体基板111を示している。
【0098】
加熱処理を行うことで、温度上昇によって脆化層113に形成されている微小な孔には、イオンドーピングで添加した元素が析出し、内部の圧力が上昇する。圧力の上昇により、脆化層113の微小な孔に体積変化が起こり、脆化層113に亀裂が生じるので、脆化層113に沿って単結晶半導体基板111が分離される。接合層114はベース基板101に接合しているので、ベース基板101上には単結晶半導体基板111から分離された単結晶半導体層115が固定される。単結晶半導体層115を単結晶半導体基板111から分離するための加熱処理の温度は、ベース基板101の歪み点を越えない温度とする。また、加熱処理によって、単結晶半導体層115を分離した単結晶半導体基板117は、第2のトレイ20に設けられた凹部21で保持される。
【0099】
なお、図8(C)に示すように、単結晶半導体基板111の周辺部がベース基板101に接合しない場合が多くある。この理由としては、次のようなことが挙げられる。単結晶半導体基板111の平坦化の際に、単結晶半導体基板111周辺にエッジロールオフ(Edge Roll Off:E.R.O.)と呼ばれる中央部より基板の厚さが薄く、平坦性の低い領域が形成されている。または、単結晶半導体基板111の周辺部が面取りされている。または、単結晶半導体基板111を移動した際に接合層114の周辺部を傷付けている、または汚している。それらによって、ベース基板101と接合層114とが密着していないので、単結晶半導体基板111の周辺部では脆化層113が分離しにくくなっていると推測される。そのため、ベース基板101には、単結晶半導体基板111よりもサイズが小さい単結晶半導体層115が貼り付けられ、また、単結晶半導体基板117の周囲には凸部130が形成される。凸部130は、ベース基板101に貼り付けられなかった、残存した脆化層133、残存した単結晶半導体層135、残存した絶縁層132(残存した絶縁膜132b、残存した絶縁膜132a)および残存した接合層134からなる。
【0100】
さらに、残存した脆化層133も、加熱処理によって内部圧力が上昇して内部の微小孔が膨張し、破裂することがある。これにより、残存した脆化層133上の、残存した単結晶半導体層135、残存した絶縁層132(残存した絶縁膜132b、残存した絶縁膜132a)および残存した接合層134が飛び散り、単結晶半導体層115の上に異物として付着する、または単結晶半導体層115に傷を付けることがある。これは、単結晶半導体層115と分離した単結晶半導体基板117が基板平面と平行方向に移動して、凸部130が単結晶半導体層115と重なる位置に来ると、より顕著に現れる。
【0101】
しかし、本実施の形態では、凹部21のサイズは、単結晶半導体基板111が収まるサイズとし、凹部21の底面の面積は、単結晶半導体基板の底面の面積の1.1倍以下とするため、分離した単結晶半導体基板117が単結晶半導体層115に対して基板平面と平行方向に動ける空間的余裕はとても少ない。これにより、単結晶半導体基板117は、凸部130が単結晶半導体層115と重ならないような位置に配置されるため、単結晶半導体層115に異物が付着すること、または単結晶半導体層115に傷が付けられることを防ぎ、質的に均一な単結晶半導体層をベース基板101上に形成することができる。
【0102】
この加熱処理には、RTA(Rapid Thermal Anneal)装置、抵抗加熱炉、マイクロ波加熱装置を用いることができる。RTA装置には、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。この加熱処理で、単結晶半導体層115が貼り付けられたベース基板101の温度は、ベース基板101の歪み点を超えない範囲とし、550℃以上650℃以下の範囲に上昇させることが好ましい。
【0103】
GRTA装置を用いる場合は、加熱温度550℃以上650℃以下、処理時間0.5分以上60分以内とすることができる。抵抗加熱装置を用いる場合は、加熱温度200℃以上650℃以下、処理時間2時間以上4時間以内とすることができる。マイクロ波加熱装置を用いる場合は、例えば、周波数2.45GHzのマイクロ波を照射し、処理時間10分以上20分以内とすることができる。
【0104】
抵抗加熱を有する縦型炉を用いた加熱処理の具体的な処理方法を説明する。図8(B)に示す、単結晶半導体基板111が貼り付けられたベース基板101を第2のトレイ20と共に、縦型炉のボートに載置する。ボートを縦型炉のチャンバーに搬入する。単結晶半導体基板111が酸化を抑制するため、まずチャンバー内を排気して真空状態とする。真空度は、5×10−3Pa程度とする。真空状態にした後、窒素をチャンバー内に供給して、チャンバー内を大気圧の窒素雰囲気にする。この間、温度を200℃に上昇させる。
【0105】
チャンバー内を大気圧の窒素雰囲気にした後、温度200℃で2時間加熱する。その後、1時間かけて400℃に温度上昇させる。加熱温度400℃の状態が安定したら、1時間かけて600℃に温度上昇させる。加熱温度600℃の状態が安定したら、600℃で2時間加熱処理する。その後、1時間かけて、加熱温度400℃まで下げ、10分〜30分間後に、チャンバー内からボートを搬出する。大気雰囲気下で、ボート上の第2のトレイ20に並べられた単結晶半導体基板117、および単結晶半導体層115が貼り付けられたベース基板101を冷却する。
【0106】
上記の抵抗加熱炉を用いた加熱処理は、接合層114とベース基板101との結合力を強化するための加熱処理と、脆化層113に分離を生じさせる加熱処理が連続して行われる。この2つの加熱処理を異なる装置で行う場合は、例えば、抵抗加熱炉において、処理温度200℃、処理時間2時間の加熱処理を行った後、貼り合わされたベース基板101と単結晶半導体基板111を炉から搬出する。次いで、RTA装置で、処理温度600℃以上700℃以下、処理時間1分以上30分以下の加熱処理を行い、単結晶半導体基板111を脆化層113で分割させる。例えば、処理温度650℃で5分程度加熱処理を行えばよい。
【0107】
700℃以下の低温処理で、接合層114とベース基板101を強固に接合させるためには、接合層114の表面、およびベース基板の表面にOH基、水分子(HO)が存在することが好ましい。これは、接合層114とベース基板101との接合が、OH基や水分子が共有結合(酸素と水素の共有結合)や水素結合を形成することで開始するからである。
【0108】
したがって、接合層114、ベース基板101の表面を活性化して親水性とすることは好ましい。また、酸素または水素を含ませるような方法で、接合層114を形成することが好ましい。例えば、処理温度400℃以下のPECVD法により、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、または窒化酸化シリコン膜、窒化シリコン膜などを形成することで水素を膜に含ませることができる。酸化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜を形成するには、例えば、プロセスガスにSiHおよびNOを用いればよい。窒化酸化シリコン膜を形成するには、例えばSiH、NHおよびNOを用いればよい。窒化シリコン膜を形成するには、例えばSiH、およびNHを用いればよい。また、PECVD法で形成するときの原料に、TEOS(化学式Si(OC)のようなOH基を有する化合物を用いることが好ましい。
【0109】
なお、700℃以下の低温処理としたのは、ガラス基板の耐熱温度以下の温度であるからである。なお、スマートカット(登録商標)で形成されるSOI基板では単結晶シリコン層と単結晶シリコンウエハを貼り付けるために800℃以上の加熱処理を行っており、ガラス基板の耐熱温度を超える温度での加熱処理を必要とする。
【0110】
なお、ベース基板101に熱収縮量が大きな基板を用いると、SOI基板の製造過程、および半導体装置の製造過程での温度上昇による熱収縮が問題になる場合がある。その場合には、単結晶半導体基板111に貼り合わせる前に、ベース基板101を加熱処理して、予め熱収縮させることでその影響を抑えることができる。この加熱処理は、例えば、抵抗加熱装置で、640℃で4時間加熱し、しかる後0.2℃/分の速度で冷却することで行うことができる。または、GRTA装置で、650℃で6分間加熱を3〜5回程度繰り返すことで行うことができる。なお、図8(C)の単結晶半導体基板111を分割するための加熱処理で、ベース基板101を熱収縮させることができる場合は、貼り合わせる前の加熱処理を行わなくともよい。
【0111】
ベース基板101に密着された単結晶半導体層115は、脆化層113の形成及び脆化層113の分離によって、結晶欠陥が形成されている。また、その表面は平坦性が損なわれている。結晶欠陥を低減、および平坦性を向上するために、図10(A)に示すように、単結晶半導体層115にレーザビーム122を照射するのが好ましい。
【0112】
レーザビーム122を単結晶半導体層115側から照射することで、単結晶半導体層115上面から溶融させる。溶融した後、単結晶半導体層115が冷却、固化することで、図10(B)に示すように、その上面の平坦性が向上された単結晶半導体層116は形成される。図10(B)の外観図が図1である。
【0113】
このレーザビームの照射工程では、レーザビーム122を用いているため、ベース基板101の温度上昇が抑えられる。これにより、ガラス基板のような耐熱性の低い基板をベース基板101に用いることが可能になる。レーザビーム122の照射によって単結晶半導体層115を部分溶融させることが好ましい。完全溶融させると、液相となった単結晶半導体層115での無秩序な核発生により、単結晶半導体層115が再結晶化することとなり、単結晶半導体層115の結晶性が低下するからである。部分溶融させることで、単結晶半導体層115では、溶融されていない固相部分から結晶成長が進行する、いわゆる縦成長が起こる。縦成長による再結晶化によって、単結晶半導体層115の結晶欠陥が減少され、結晶性が回復される。なお、単結晶半導体層115が完全溶融状態であるとは、図10(A)の積層構造では、単結晶半導体層115が接合層114との界面まで溶融され、液体状態になっていることをいう。他方、単結晶半導体層115が部分溶融状態であるとは、上層が溶融して液相であり、下層が固相である状態をいう。
【0114】
レーザビーム122を発振するレーザ発振器は、その発振波長が、紫外光域乃至可視光域にあるものが選択される。レーザビーム122の波長は、単結晶半導体層115に吸収される波長とする。その波長は、レーザ光の表皮深さ(skin depth)などを考慮して決定することができる。例えば、波長は250nm以上700nm以下の範囲とすることができる。
【0115】
このレーザ発振器には、連続発振レーザ、疑似連続発振レーザ及びパルス発振レーザを用いることができる。部分溶融させるためパルス発振レーザが好ましい。例えば、パルス発振レーザの場合は、繰り返し周波数1MHz以下、パルス幅10n秒以上500n秒以下である。例えば、繰り返し周波数10Hz〜300Hz、パルス幅25n秒、波長308nmのXeClエキシマレーザを用いることができる。
【0116】
また、レーザビーム122のエネルギーは、レーザビーム122の波長、レーザビーム122の表皮深さ、単結晶半導体基板111の膜厚などを考慮して決定することができる。レーザビーム122のエネルギーは、例えば、300mJ/cm以上800mJ/cm以下の範囲とすることができる。例えば、単結晶半導体層115の厚さが120nm程度であり、レーザ発振器にパルス発振レーザを用い、レーザビーム122の波長が308nmの場合は、レーザビーム122のエネルギー密度は600mJ/cm〜700mJ/cmとすることができる。
【0117】
レーザビーム122の照射の雰囲気は、希ガスまたは窒素雰囲気のような不活性雰囲気、または真空状態で行うことが好ましい。不活性雰囲気中でレーザビーム122を照射するには、気密性のあるチャンバー内でレーザビーム122を照射し、このチャンバー内の雰囲気を制御すればよい。チャンバーを用いない場合は、レーザビーム122の被照射面に窒素ガス、希ガスなど不活性ガスを吹き付けることで、不活性雰囲気でのレーザビーム122の照射を実現することができる。
【0118】
窒素などの不活性雰囲気や真空状態のほうが、大気雰囲気よりも単結晶半導体層116の平坦性を向上させる効果が高く、また、これらの雰囲気のほうが大気雰囲気よりもクラックやリッジの発生を抑える効果が高くなるため、レーザビーム122の使用可能なエネルギー範囲が広くなる。
【0119】
光学系により、レーザビーム122は、エネルギー分布を均一にし、かつ断面の形状を線状にすることが好ましい。これにより、スループット良く、かつレーザビーム122の照射を均一に行うことができる。レーザビーム122のビーム長は、ベース基板101の1辺より長くすることで、1回の走査で、ベース基板101に貼り付けられた全ての単結晶半導体層115にレーザビーム122を照射することができる。レーザビーム122のビーム長がベース基板101の1辺より短い場合は、複数回の走査で、ベース基板101に貼り付けられた全ての単結晶半導体層115にレーザビーム122を照射することができるような長さにすればよい。
【0120】
なお、レーザビーム122を単結晶半導体層115に照射する前に、単結晶半導体層115の表面に形成されている自然酸化膜などの酸化膜を除去する処理を行うのが好ましい。酸化膜を除去するのは、単結晶半導体層115表面に酸化膜が残存した状態で、レーザビーム122を照射しても、平坦化の効果が十分に得られないからである。酸化膜の除去処理は、フッ酸で単結晶半導体層115を処理することで行うことができる。フッ酸による処理は、単結晶半導体層115の表面が撥水性を示すまで行うことが望ましい。撥水性を示すことで、単結晶半導体層115から酸化膜が除去されたことが確認できる。
【0121】
図10(A)のレーザビーム122の照射工程は、次のように行うことができる。まず、単結晶半導体層115を1/100に希釈されたフッ酸で110秒間処理して、表面の酸化膜を除去する。レーザビーム122のレーザ発振器として、XeClエキシマレーザ(波長:308nm、パルス幅:25n秒、繰り返し周波数60Hz)を用いる。光学系により、レーザビーム122の断面を300mm×0.34mmの線状に整形する。レーザビーム122の走査速度を2.0mm/秒とし、スキャンピッチを33μm、ビームショット数を約10ショットで、レーザビーム122を単結晶半導体層115に照射する。照射面に窒素ガスを吹き付けながら、レーザビーム122を走査する。ベース基板101が730mm×920mmの場合は、レーザビーム122のビーム長が300mmであるので、レーザビーム122の照射領域を3分割することで、ベース基板101に貼り付けられた全ての単結晶半導体層115にレーザビーム122を照射することができる。
【0122】
レーザビーム122を照射された単結晶半導体層116の表面は平坦化され、その表面の凹凸形状の算術平均粗さを1nm以上7nm以下とすることができる。また、その凹凸形状の二乗平均平方根粗さを1nm以上10nm以下とすることができる。また、その凹凸形状の最大高低差が5nm以上250nm以下とすることができる。すなわち、レーザビーム122の照射処理は、単結晶半導体層115の平坦化処理ということができる。
【0123】
このように単結晶半導体層116の表面を平坦化することで、単結晶半導体層116上に形成されるゲート絶縁膜の膜厚を5nm乃至50nm程度まで薄くすることが可能である。よって、ゲート電圧を抑えつつも高いオン電流のトランジスタを形成することができる。
【0124】
平坦化処理には、化学機械研磨(Chemical Mechanical Polishing、略称:CMP)が知られているが、マザーガラス基板は大面積でうねりがあるため、ベース基板101にマザーガラス基板を使用した場合、CMPで単結晶半導体層115の平坦化処理を行うことは困難である。本実施の形態では、この平坦化処理をレーザビーム122の照射処理で行うため、マザーガラス基板を破損する力を加えることなく、かつ耐熱温度を超える温度でマザーガラス基板を加熱することなく、単結晶半導体層115の平坦化を可能にする。
【0125】
レーザビーム122を照射した後、単結晶半導体層116に500℃以上650℃以下の加熱処理を行うことが好ましい。この加熱処理によって、レーザビーム122の照射で回復されなかった、単結晶半導体層116の欠陥の消滅および歪みの緩和を行うことができる。この加熱処理には、RTA(Rapid Thermal Anneal)装置、抵抗加熱炉、マイクロ波加熱装置を用いることができる。RTA装置には、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。例えば、抵抗加熱炉を用いた場合は、500℃の温度で1時間加熱した後、550℃で4時間加熱するとよい。
【0126】
また、単結晶半導体層116をエッチングし、表面の平坦化を図ってもよい。本実施の形態では、例えば反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)法、ICP(Inductively Coupled Plasma)エッチング法、ECR(Electron Cyclotron Resonance)エッチング法、平行平板型(容量結合型)エッチング法、マグネトロンプラズマエッチング法、2周波プラズマエッチング法またはヘリコン波プラズマエッチング法等のドライエッチング法を用いる。
【0127】
例えばICPエッチング法を用いる場合、エッチングガスである塩素の流量40sccm〜100sccm、コイル型の電極に投入する電力100W〜200W、下部電極(バイアス側)に投入する電力40W〜100W、反応圧力0.5Pa〜1.0Paとすれば良い。本実施の形態では、エッチングガスである塩素の流量100sccm、反応圧力1.0Pa、下部電極の温度70℃、コイル型の電極に投入するRF(13.56MHz)電力150W、下部電極(バイアス側)に投入する電力40W、エッチング時間25sec〜27secとし、単結晶半導体層115を50nm乃至60nm程度にまで薄膜化する。エッチングガスには、塩素、塩化硼素、塩化珪素または四塩化炭素などの塩素系ガス、四フッ化炭素、フッ化硫黄またはフッ化窒素などのフッ素系ガス、酸素などを適宜用いることができる。
【0128】
また、レーザビーム照射の前に単結晶半導体層115のエッチングをしても良い。レーザビームの照射後に単結晶半導体層116の表面をエッチングする場合は、必ずしもレーザビームの照射を行う前に単結晶半導体層115の表面をエッチングする必要はない。また、レーザビームの照射を行う前に単結晶半導体層115の表面をエッチングした場合は、必ずしもレーザビームの照射後に単結晶半導体層116の表面をエッチングする必要はない。また、レーザビームの照射前と照射後の両方のタイミングでエッチングを行っても良い。
【0129】
上記エッチングにより、後に形成される半導体素子にとって最適となる膜厚まで単結晶半導体層116を薄膜化できるのみならず、単結晶半導体層116の表面を平坦化することができる。
【0130】
以上の工程より、単結晶シリコン基板よりも大面積な基板に、均一な質を有する複数の単結晶半導体層が形成されたSOI基板を提供することができる。また、本実施の形態に示すSOI基板を用いることで、例えば、半導体集積回路等の半導体装置の生産性を向上させることができる。
【0131】
本実施の形態では、単結晶半導体基板111の分離熱処理の際に、貼り合わせに用いた第1のトレイ10より凹部の深い第2のトレイ20を用いることによって、単結晶半導体基板111と第2のトレイ20を接触させることなく、熱処理を行うことができる。これにより、各単結晶半導体基板111の熱分布を均一にして、単結晶半導体層115の分離を行うことができ、均一な質を有する単結晶半導体層115をベース基板101上に形成することができる。
【0132】
また、本実施の形態では、単結晶半導体基板111の分離熱処理の際に、凹部21のサイズが、単結晶半導体基板111が収まり、凹部21の底面の面積が、単結晶半導体基板の底面の面積の1.1倍以下となる第2のトレイ20を用いることによって、単結晶半導体基板117の凸部130が単結晶半導体層115と重なる位置に配置されることを防ぐことができる。これにより、分離した単結晶半導体基板117の残存した脆化層133の破裂による単結晶半導体層115への異物の付着や傷を防ぐことができる。
【0133】
また、本実施の形態では、絶縁層112の形成、脆化層113の形成および接合層114の形成を、複数の単結晶半導体基板111を第1のトレイ10に載置して行うため、複数の単結晶半導体基板111を一括処理できるため、スループット良く、SOI基板100を形成することができる。なお、第1のトレイ10に単結晶半導体基板111を載置せずに、絶縁層112の形成、脆化層113の形成および接合層114の形成を行うこともできる。
【0134】
また、第1のトレイ10に単結晶半導体基板111載置した状態で、ベース基板101を貼り合わせているため、複数の単結晶半導体基板111をスループット良く、かつ容易に所望の位置でベース基板101に貼り合わせることができる。
【0135】
図7(A)から図10(B)までの工程を700℃以下の温度で行うことができるため、ベース基板101に耐熱温度が700℃以下のガラス基板を用いることが可能である。よって、安価なガラス基板を使用できるため、SOI基板100の材料コストを低減することができる。また、マザーガラス基板のような大面積基板(500mm×500mm以上、好ましくは、600mm×700mm以上、より好ましくは700mm×900mm以上)をベース基板に使用することができるため、単結晶半導体層を有する大面積なSOI基板を提供することができる。
【0136】
なお、図7(A)から図7(C)までの工程では、単結晶半導体基板111を別の第1のトレイ10に移動することなく行ったが、図7(A)から図7(C)の工程毎にその工程で使用する装置の専用の第1のトレイ10に単結晶半導体基板111を移しかえてもよい。例えば、図7(A)の絶縁層112の形成工程では、PECVD装置専用の第1のトレイ10を使用し、図7(B)の工程ではドーピング装置専用の第1のトレイ10を使用してもよい。
【0137】
また、図7(A)の絶縁層112の形成工程の後、絶縁層112が形成された単結晶半導体基板111を第1のトレイ10から取り出し、この単結晶半導体基板111を超音波洗浄などの洗浄処理を行い、洗浄処理後、清浄な別の第1のトレイ10に単結晶半導体基板111を配置することもできる。
【0138】
また、図7(B)の脆化層113の形成工程の後、脆化層113が形成された単結晶半導体基板111を第1のトレイ10から取り出し、この単結晶半導体基板111を超音波洗浄などの洗浄処理を行い、洗浄処理後、清浄な別の第1のトレイ10に単結晶半導体基板111を配置することもできる。
【0139】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成を適宜組み合わせて用いることができることとする。
【0140】
(実施の形態2)
本実施の形態では、単結晶半導体基板の分離の熱処理時に、実施の形態1とは異なるトレイを用いる場合の、複数の単結晶半導体層が基板上に設けられたSOI基板の作製方法について説明する。
【0141】
まず、実施の形態1と同様の方法で、図8(A)に示すように、ベース基板101に単結晶半導体基板111を貼り合わせる。
【0142】
次に、図12(A)に示すように、単結晶半導体基板111の貼り合わせに用いた第1のトレイ10を、単結晶半導体基板111及びベース基板101の下から外し、第3のトレイ30を配置する。なお、本実施の形態では、実施の形態1で用いた第2のトレイ20と区別するために、第1のトレイの次に用いるトレイを第3のトレイ30とよぶ。
【0143】
第3のトレイ30の外観図及び断面図を図13(A)及び図13(B)に示す。図13(B)は、図13(A)の直線ABに対応する断面図である。第3のトレイ30は、板状の部材であり、後の工程で分離される単結晶半導体基板117を保持するための複数の凹部31が形成されており、各々の凹部31の間に支持部32が形成されており、ここでは3行3列に凹部31が形成されている。また、支持部32は、図13に示すように、複数の凹部31全体を囲むように枠状に形成される部分を有していてもよい。ただし、必ずしも複数の凹部31全体を囲むように枠状に形成される部分は必要ではない。また、図13に示す支持部32は、格子状に連続して形成されているが、支持部32は、必ずしもこの形状をとる必要はない。例えば、支持部32が断続的に形成されていてもよい。また、凹部31の形状は、単結晶半導体基板111に合わせて矩形であることが好ましい。なお、特段の断りが無い限り、矩形には正方形が含まれることとする。
【0144】
図13(B)に示すように、凹部31の深さをD3a、支持部32の高さをD3bとし、D3aとD3bの和が単結晶半導体基板111の厚さより大きくなるようにする。また、図13(B)に示すように、各々の凹部31の間の幅をD4aとし、支持部32の幅をD4bとし、D4a>D4bとなるようにする。
【0145】
ここで、第3のトレイ30の厚さは、1.7mm以上2.9mm以下とすることが好ましい。凹部31の深さD3aは、0.2mm以上0.6mm以下とすることが好ましく、支持部32の高さD3bは、0.6mm以上0.9mm以下とすることが好ましい。また、各凹部31の間の幅D4aは、支持部32の幅D4bの1.5倍以上とすることが好ましい。
【0146】
なお、第3のトレイ30のサイズは、第1のトレイ10と同様にするのが好ましい。つまり、第3のトレイ30のサイズは、ベース基板101と同じサイズとすることが好ましい。また、凹部31のサイズは、単結晶半導体基板111(単結晶半導体基板117)が収まるサイズとし、凹部31の底面の面積は、単結晶半導体基板111(単結晶半導体基板117)の底面の面積の1.1倍以下とする。また、単結晶半導体基板111(単結晶半導体基板117)を凹部31に収める際の単結晶半導体基板111(単結晶半導体基板117)の縁と凹部31の縁との間の距離は1mm以下とするのが好ましい。また、第1のトレイ10と同様に第3のトレイ30の構成例も図5及び図6で示されるものと同様である。なお、凹部31の底面とは、図13(B)に示す、各々の凹部31の上方向に開かれた面のことを指すものであり第3のトレイ30全体の底面を指すものではない。
【0147】
第3のトレイ30は、SOI基板100の基板の作製工程での熱処理で変質、変形しない材料で作製される。特に、熱処理での熱膨張が少ない材料を選択することが好ましい。例えば、石英ガラス、シリコンやシリコンカーバイド等の半導体材料、または無アルカリガラス等で第3のトレイ30を作製することができる。
【0148】
このような第3のトレイ30を、図12(A)に示すように、凹部31と単結晶半導体基板111が重なるように配置して、単結晶半導体基板111が貼り合わせられたベース基板101を支持部32で支持する。ここで、第3のトレイ30は、支持部32の幅D4bが各凹部31の間の幅D4aより小さいので、第3のトレイ30の支持部とベース基板101とが接触する面積が低減され、さらに、第3のトレイ30の支持部32と単結晶半導体基板111との距離が大きくなる。
【0149】
トレイは、ベース基板101と同程度の大きさであるため、場所により熱分布が異なりやすく、図8(A)のように単結晶半導体基板111及びベース基板101がトレイと接触していると、その熱分布の影響を受けやすい。しかし、第3のトレイ30を用いることにより、加熱処理の際に第3のトレイ30の支持部32とベース基板101との接触面積を低減し、第3のトレイ30の支持部32と単結晶半導体基板111との距離を大きくすることができるので、ベース基板101及び単結晶半導体基板111に対する第3のトレイ30の熱分布の影響を低減することができる。よって、各単結晶半導体基板111の熱分布を均一にして、単結晶半導体層115の分離を行うことができ、質的に均一な単結晶半導体層115をベース基板101上に形成することができる。
【0150】
また、実施の形態1と同様に、単結晶半導体基板111と第3のトレイ30を接触させることなく、熱処理を行うことができるので、各単結晶半導体基板111の熱分布を均一にして、単結晶半導体層115の分離を行うことができ、均一な質を有する単結晶半導体層115をベース基板101上に形成することができる。
【0151】
また、実施の形態1と同様に、第3のトレイ30の支持部32でベース基板101を支持することによって、ベース基板の周辺端部だけでなく、ベース基板101の中央部でもベース基板を支持することができる。よって、加熱処理の際に大きくベース基板が撓むことを防ぐことができるので、均一な単結晶半導体層をベース基板101上に形成することができる。
【0152】
また、実施の形態1と同様に、第3のトレイ30を配置した後、ベース基板101と接合層114との接合界面での結合力を増加させるための加熱処理を行うことが好ましい。この処理温度は、脆化層113に亀裂を発生させない温度とし、200℃以上450℃以下の温度範囲で処理することができる。また、この温度範囲で加熱しながら、ベース基板101に単結晶半導体基板111を貼り合わせることで、ベース基板101と接合層114との接合界面での結合力を強固にすることができる。
【0153】
次いで、実施の形態1と同様に、加熱処理を行い、脆化層113で剥離を生じさせて、単結晶半導体基板111から単結晶半導体層115を分離する。図12(B)は、単結晶半導体基板111から単結晶半導体層115を分離する分離工程を説明する図である。単結晶半導体基板117は単結晶半導体層115が分離された単結晶半導体基板111を示している。
【0154】
実施の形態1と同様に、加熱処理を行うことで、脆化層113に沿って単結晶半導体基板111が、単結晶半導体層115と単結晶半導体基板117に分離される。このとき、加熱処理によって、単結晶半導体層115を分離した単結晶半導体基板117は、第3のトレイ30に設けられた凹部31で保持される。単結晶半導体基板117の周囲には凸部130が形成される。凸部130は、ベース基板101に貼り付けられないで、残存した脆化層133、残存した単結晶半導体層135、残存した絶縁層132(残存した絶縁膜132b、残存した絶縁膜132a)および残存した接合層134からなる。
【0155】
ここで、第3のトレイ30には、支持部32の間隔より底面の幅が狭い凹部31が設けてあり、凹部31のサイズは、単結晶半導体基板111が収まるサイズとし、凹部31の底面の面積は、単結晶半導体基板の底面の面積の1.1倍以下とするため、分離した単結晶半導体基板117が単結晶半導体層115に対して基板平面と平行方向に動ける空間的余裕はとても少ない。これにより、単結晶半導体基板117は、凸部130が単結晶半導体層115と重ならないような位置に配置されるため、単結晶半導体層115に異物が付着すること、または傷が付くことを防ぎ、質的に均一な単結晶半導体層をベース基板101上に形成することができる。
【0156】
以下、加熱処理工程の詳細及び以降の工程については、実施の形態1で示したものと同様なので、そちらを参照されたい。
【0157】
以上の工程より、単結晶シリコン基板よりも大面積な基板に、均一な質を有する複数の単結晶半導体層が形成されたSOI基板を提供することができる。また、本実施の形態に示すSOI基板を用いることで、例えば、半導体集積回路等の半導体装置の生産性を向上させることができる。
【0158】
本実施の形態では、単結晶半導体基板111の分離熱処理の際に、各凹部31の間に支持部32を有する第3のトレイ30を用いることにより、加熱処理の際に第3のトレイ30の支持部32とベース基板101との接触面積を低減し、第3のトレイ30の支持部32と単結晶半導体基板111との距離を大きくすることができる。これにより、ベース基板101及び単結晶半導体基板111に対する第3のトレイ30の熱分布の影響を低減することができるので、各単結晶半導体基板111の熱分布を均一にして、単結晶半導体層115の分離を行うことができ、質的に均一な単結晶半導体層115をベース基板101上に形成することができる。
【0159】
また実施の形態1と同様に、単結晶半導体基板111と第3のトレイ30を接触させることなく、熱処理を行うことができる。これにより、各単結晶半導体基板111の熱分布を均一にして、単結晶半導体層115の分離を行うことができ、均一な質を有する単結晶半導体層115をベース基板101上に形成することができる。
【0160】
また実施の形態1と同様に、単結晶半導体基板117の凸部130が単結晶半導体層115と重なる位置に配置されることを防ぐことができる。これにより、分離した単結晶半導体基板117の残存した脆化層133の破裂による単結晶半導体層115への異物の付着や傷を防ぐことができる。
【0161】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成を適宜組み合わせて用いることができることとする。
【0162】
(実施の形態3)
本実施の形態では、単結晶半導体基板の再生処理について説明する。図8(C)及び図12(B)に示す単結晶半導体層115が分離された単結晶半導体基板117を再生処理する。図14を用いて、単結晶半導体基板の再生処理を説明する。
【0163】
図8(C)及び図12(B)の工程の後、図14(A)に示すように、単結晶半導体基板117の周囲には凸部130が形成され、凸部130は、ベース基板101に貼り付けられないで、残存した脆化層133、残存した単結晶半導体層135、残存した絶縁層132(残存した絶縁膜132b、残存した絶縁膜132a)および残存した接合層134からなる。
【0164】
まず、残存した絶縁膜132b、残存した絶縁膜132aおよび残存した接合層134を除去するエッチング処理を行う。これらの膜が、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコンで形成されている場合、フッ酸を用いたウエットエッチング処理を行う。このエッチング処理により、図14(B)に示すように、単結晶半導体基板117が得られる。図14(C)は、図14(B)の鎖線XYによる断面図である。
【0165】
次に、図14(B)および図14(C)に示す単結晶半導体基板117をエッチング処理して、残存した単結晶半導体層135及び残存した脆化層133を除去する。このエッチングにより、単結晶半導体基板117の残存した脆化層133のような水素を過剰に含んでいる領域を除去する。単結晶半導体基板117のエッチング処理はウエットエッチング処理が好ましく、エッチング液には、水酸化テトラメチルアンモニウム(tetramethylammonium hydroxide、略称;TMAH)溶液を用いることができる。
【0166】
単結晶半導体基板117をエッチング処理して、図14(C)に示す残存した単結晶半導体層135、残存した脆化層133を除去した後、その表面を研磨し、図14(D)に示すような平滑な表面を有する単結晶半導体基板118を形成する。この単結晶半導体基板118を図2に示す単結晶半導体基板111として再利用することができる。
【0167】
研磨処理には、化学機械研磨(Chemical Mechanical Polishing、略称:CMP)を用いることができる。単結晶半導体基板118の表面を平滑にするため、1μm〜10μm程度研磨することが望ましい。研磨後は、単結晶半導体基板118表面に研磨粒子などが残るため、フッ酸洗浄やRCA洗浄を行う。なお、RCA洗浄とは、米RCA社が開発した半導体基板用の洗浄方法で、過酸化水素をベースに、アルカリや酸を加えた薬液を高温で用いる洗浄方法である。
【0168】
単結晶半導体基板118を再利用することで、SOI基板100の材料コストを削減することができる。
【0169】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成を適宜組み合わせて用いることができることとする。
【0170】
(実施の形態4)
本実施の形態では、実施の形態1または実施の形態2で示したSOI基板を用いた半導体装置の作製方法の一例として、半導体素子の一つである薄膜トランジスタを作製する方法を説明する。複数の薄膜トランジスタを組み合わせることで、各種の半導体装置が形成される。本実施の形態では、実施の形態1及び実施の形態2に示す作製方法で作製したSOI基板100を用いることにする。
【0171】
まず、図15(A)に示すように、ベース基板101上の単結晶半導体層をエッチングにより所望の形状に加工(パターニング)することで、半導体膜603と半導体膜604とを形成する。
【0172】
半導体膜603と半導体膜604には、閾値電圧を制御するために、ボロン、アルミニウム、ガリウムなどのp型不純物、若しくはリン、砒素などのn型不純物が添加されていても良い。例えば、p型を付与する不純物としてボロンを添加する場合、5×1016cm−3以上1×1017cm−3以下の濃度で添加すれば良い。閾値電圧を制御するための不純物の添加は、エッチングが行われる前の単結晶半導体層に対して行っても良いし、エッチング後の半導体膜603と半導体膜604に対して行っても良い。また、閾値電圧を制御するための不純物の添加を、単結晶半導体層を形成するための単結晶半導体基板に対して行っても良い。若しくは、不純物の添加を、閾値電圧を大まかに調整するために、単結晶半導体層を形成するための単結晶半導体基板に対して行った上で、閾値電圧を微調整するために、単結晶半導体層に対してまたは半導体膜603及び半導体膜604に対しても行うようにしても良い。
【0173】
また、半導体膜603と半導体膜604を形成した後、ゲート絶縁膜606を形成する前に水素化処理を行っても良い。水素化処理は、例えば、水素雰囲気中において350℃、2時間程度行う。
【0174】
次に、図15(B)に示すように、半導体膜603と半導体膜604を覆うように、ゲート絶縁膜606を形成する。ゲート絶縁膜606は、高密度プラズマ処理を行うことにより半導体膜603と半導体膜604の表面を酸化または窒化することで形成することができる。高密度プラズマ処理は、例えばHe、Ar、Kr、Xeなどの希ガスと酸素、酸化窒素、アンモニア、窒素、水素などの混合ガスとを用いて行う。この場合プラズマの励起をマイクロ波の導入により行うことで、低電子温度で高密度のプラズマを生成することができる。このような高密度のプラズマで生成された酸素ラジカル(OHラジカルを含む場合もある)や窒素ラジカル(NHラジカルを含む場合もある)によって、半導体膜の表面を酸化または窒化することにより、1〜20nm、望ましくは5〜10nmの絶縁膜が半導体膜に接するように形成される。この5〜10nmの絶縁膜をゲート絶縁膜606として用いる。
【0175】
上述した高密度プラズマ処理による半導体膜の酸化または窒化は固相反応で進むため、ゲート絶縁膜606と半導体膜603及び半導体膜604との界面準位密度をきわめて低くすることができる。また高密度プラズマ処理により半導体膜603及び半導体膜604を直接酸化または窒化することで、形成される絶縁膜の厚さのばらつきを抑えることが出来る。また半導体膜603及び半導体膜604が結晶性を有する場合、高密度プラズマ処理を用いて半導体膜603及び半導体膜604の表面を固相反応で酸化させることにより、結晶粒界においてのみ酸化反応が早く生じるのを抑え、均一性が良く、界面準位密度の低いゲート絶縁膜を形成することができる。高密度プラズマ処理により形成された絶縁膜を、ゲート絶縁膜の一部または全部に含んで形成されるトランジスタは、特性のばらつきを抑えることができる。
【0176】
または、半導体膜603と半導体膜604を熱酸化させることで、ゲート絶縁膜606を形成するようにしても良い。また、プラズマCVD法またはスパッタリング法などを用い、酸化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ハフニウム、酸化アルミニウムまたは酸化タンタルを含む膜を、単層で、または積層で形成することで、ゲート絶縁膜606を形成しても良い。
【0177】
または、水素を含んだゲート絶縁膜606を形成した後、350℃以上450℃以下の温度による加熱処理を行うことで、ゲート絶縁膜606中に含まれる水素を半導体膜603及び半導体膜604中に拡散させるようにしても良い。この場合、ゲート絶縁膜606は、プロセス温度を350℃以下で、プラズマCVD法で窒化シリコン又は窒化酸化シリコンを堆積することで、形成すれば良い。半導体膜603及び半導体膜604に水素を供給することで、半導体膜603及び半導体膜604中、及びゲート絶縁膜606と半導体膜603及び半導体膜604の界面での、捕獲中心となるような欠陥を効果的に低減することができる。
【0178】
次に、図15(C)に示すように、ゲート絶縁膜606上に導電膜を形成した後、該導電膜を所定の形状に加工(パターニング)することで、半導体膜603と半導体膜604の上方に電極607を形成する。導電膜の形成にはCVD法、スパッタリング法等を用いることが出来る。導電膜は、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、クロム(Cr)、ニオブ(Nb)等を用いることが出来る。また、上記金属を主成分とする合金を用いても良いし、上記金属を含む化合物を用いても良い。または、半導体膜に導電性を付与するリン等の不純物元素をドーピングした、多結晶シリコンなどの半導体を用いて形成しても良い。
【0179】
また、本実施の形態では電極607を単層の導電膜で形成しているが、本実施の形態はこの構成に限定されない。電極607は積層された複数の導電膜で形成されていても良い。2つの導電膜の組み合わせとして、1層目に窒化タンタルまたはタンタル(Ta)を、2層目にタングステン(W)を用いることが出来る。上記例の他に、窒化タングステンとタングステン、窒化モリブデンとモリブデン、アルミニウムとタンタル、アルミニウムとチタン等が挙げられる。タングステンや窒化タンタルは、耐熱性が高いため、2層の導電膜を形成した後の工程において、熱活性化を目的とした加熱処理を行うことができる。また、2層の導電膜の組み合わせとして、例えば、n型を付与する不純物がドーピングされたシリコンとニッケルシリサイド、n型を付与する不純物がドーピングされたシリコンとタングステンシリサイド等も用いることが出来る。
【0180】
3つ以上の導電膜を積層する3層構造の場合は、モリブデン膜とアルミニウム膜とモリブデン膜の積層構造を採用するとよい。
【0181】
なお、電極607を形成する際に用いるマスクとして、レジストの代わりに酸化シリコン、窒化酸化シリコン等をマスクとして用いてもよい。この場合、パターニングして酸化シリコン、窒化酸化シリコン等のマスクを形成する工程が加わるが、エッチング時におけるマスクの膜減りがレジストよりも少ないため、所望の幅を有する電極607を形成することができる。またマスクを用いずに、液滴吐出法を用いて選択的に電極607を形成しても良い。
【0182】
なお、液滴吐出法とは、所定の組成物を含む液滴を細孔から吐出または噴出することで所定のパターンを形成する方法を意味し、インクジェット法などがその範疇に含まれる。
【0183】
また、電極607は、導電膜を形成後、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合型プラズマ)エッチング法を用い、エッチング条件(コイル型の電極層に印加される電力量、基板側の電極層に印加される電力量、基板側の電極温度等)を適宜調節することにより、所望のテーパー形状を有するようにエッチングすることができる。また、テーパー形状は、マスクの形状によっても角度等を制御することができる。なお、エッチング用ガスとしては、塩素、塩化硼素、塩化シリコンもしくは四塩化炭素などの塩素系ガス、四フッ化炭素、フッ化硫黄もしくはフッ化窒素などのフッ素系ガス又は酸素を適宜用いることができる。
【0184】
次に、図15(D)に示すように、電極607をマスクとして一導電型を付与する不純物元素を半導体膜603、半導体膜604に添加する。本実施の形態では、半導体膜604にp型を付与する不純物元素(例えばボロン)を、半導体膜603にn型を付与する不純物元素(例えばリンまたはヒ素)を添加する。なお、p型を付与する不純物元素を半導体膜604に添加する際、n型の不純物が添加される半導体膜603はマスク等で覆い、p型を付与する不純物元素の添加が選択的に行われるようにする。逆にn型を付与する不純物元素を半導体膜603に添加する際、p型の不純物が添加される半導体膜604はマスク等で覆い、n型を付与する不純物元素の添加が選択的に行われるようにする。または、先に半導体膜603及び半導体膜604にp型もしくはn型のいずれか一方を付与する不純物元素を添加した後、一方の半導体膜のみに選択的により高い濃度でp型もしくはn型のうちの他方を付与する不純物元素のいずれか一方を添加するようにしても良い。上記不純物の添加により、半導体膜603に不純物領域608、半導体膜604に不純物領域609が形成される。
【0185】
次に、図16(A)に示すように、電極607の側面にサイドウォール610を形成する。サイドウォール610は、例えば、ゲート絶縁膜606及び電極607を覆うように新たに絶縁膜を形成し、垂直方向を主体とした異方性エッチングにより、新たに形成された該絶縁膜を部分的にエッチングすることで、形成することが出来る。上記異方性エッチングにより、新たに形成された絶縁膜が部分的にエッチングされて、電極607の側面にサイドウォール610が形成される。なお上記異方性エッチングにより、ゲート絶縁膜606も部分的にエッチングしても良い。サイドウォール610を形成するための絶縁膜は、プラズマCVD法やスパッタリング法等により、シリコン膜、酸化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜や、有機樹脂などの有機材料を含む膜を、単層または積層で形成することができる。本実施の形態では、膜厚100nmの酸化シリコン膜をプラズマCVD法によって形成する。またエッチングガスとしては、CHFとヘリウムの混合ガスを用いることができる。なお、サイドウォール610を形成する工程は、これらに限定されるものではない。
【0186】
次に、図16(B)に示すように、電極607及びサイドウォール610をマスクとして、半導体膜603の不純物領域608、半導体膜604の不純物領域609に一導電型を付与する不純物元素を添加する。なお、半導体膜603の不純物領域608、半導体膜604の不純物領域609には、それぞれ先の工程で添加した不純物元素と同じ導電型の不純物元素をより高い濃度で添加する。また、p型を付与する不純物元素を半導体膜604の不純物領域609に添加する際、n型の不純物が添加される半導体膜603はマスク等で覆い、p型を付与する不純物元素の添加が選択的に行われるようにする。逆にn型を付与する不純物元素を半導体膜603の不純物領域608に添加する際、p型の不純物が添加される半導体膜604はマスク等で覆い、n型を付与する不純物元素の添加が選択的に行われるようにする。
【0187】
上記不純物元素の添加により、半導体膜603に、一対の高濃度不純物領域611と、一対の低濃度不純物領域612と、チャネル形成領域613とが形成される。また上記不純物元素の添加により、半導体膜604に、一対の高濃度不純物領域614と、一対の低濃度不純物領域615と、チャネル形成領域616とが形成される。高濃度不純物領域611、614はソース又はドレインとして機能し、低濃度不純物領域612、615はLDD(Lightly Doped Drain)領域として機能する。
【0188】
なお、半導体膜604上に形成されたサイドウォール610と、半導体膜603上に形成されたサイドウォール610は、キャリアが移動する方向における幅が同じになるように形成しても良いが、該幅が異なるように形成しても良い。p型トランジスタとなる半導体膜604上のサイドウォール610の幅は、n型トランジスタとなる半導体膜603上のサイドウォール610の幅よりも長くすると良い。なぜならば、p型トランジスタにおいてソース及びドレインを形成するために注入されるボロンは拡散しやすく、短チャネル効果を誘起しやすいためである。p型トランジスタにおいて、サイドウォール610の幅をより長くすることで、ソース及びドレインに高濃度のボロンを添加することが可能となり、ソース及びドレインを低抵抗化することができる。
【0189】
次に、ソース及びドレインをさらに低抵抗化するために、半導体膜603、半導体膜604をシリサイド化することで、シリサイド層を形成しても良い。シリサイド化は、半導体膜に金属を接触させ、加熱処理、GRTA法、LRTA法等により、半導体層中のシリコンと金属とを反応させて行う。シリサイド層としては、コバルトシリサイド若しくはニッケルシリサイドを用いれば良い。半導体膜603、半導体膜604の厚さが薄い場合には、この領域の半導体膜603、半導体膜604の底部までシリサイド反応を進めても良い。シリサイド化に用いる金属の材料として、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、コバルト(Co)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、バナジウム(V)、ネオジム(Nd)、クロム(Cr)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)等を用いることができる。また、レーザ照射やランプなどの光照射によってシリサイドを形成しても良い。
【0190】
上述した一連の工程により、nチャネル型トランジスタ617と、pチャネル型トランジスタ618とが形成される。
【0191】
次に図16(C)に示すように、トランジスタ617、トランジスタ618を覆うように絶縁膜619を形成する。絶縁膜619は必ずしも設ける必要はないが、絶縁膜619を形成することで、アルカリ金属やアルカリ土類金属などの不純物がトランジスタ617、トランジスタ618へ侵入するのを防ぐことが出来る。具体的には絶縁膜619として、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化シリコンなどを用いるのが望ましい。本実施の形態では、膜厚600nm程度の窒化酸化シリコン膜を、絶縁膜619として用いる。この場合、上記水素化の工程は、該窒化酸化シリコン膜形成後に行っても良い。
【0192】
次に、トランジスタ617、トランジスタ618を覆うように、絶縁膜619上に絶縁膜620を形成する。絶縁膜620は、ポリイミド、アクリル、ベンゾシクロブテン、ポリアミド、エポキシ等の、耐熱性を有する有機材料を用いることができる。また上記有機材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)、シロキサン系樹脂、酸化シリコン、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス)、アルミナ等を用いることができる。シロキサン系樹脂は、置換基に水素の他、フッ素、アルキル基、または芳香族炭化水素のうち少なくとも1種を有していても良い。なお、これらの材料で形成される絶縁膜を複数積層させることで、絶縁膜620を形成しても良い。絶縁膜620は、その表面をCMP(化学機械研磨)法などにより平坦化させても良い。
【0193】
なお、シロキサン系樹脂とは、シロキサン系材料を出発材料として形成されたSi−O−Si結合を含む樹脂に相当する。シロキサン系樹脂は、置換基に水素の他、フッ素、アルキル基、または芳香族炭化水素のうち、少なくとも1種を有していても良い。
【0194】
絶縁膜620の形成には、その材料に応じて、CVD法、スパッタ法、SOG法、スピンコート、ディップ、スプレー塗布、液滴吐出法(インクジェット法、スクリーン印刷、オフセット印刷等)、ドクターナイフ、ロールコーター、カーテンコーター、ナイフコーター等を用いることができる。
【0195】
次に、図17に示すように、半導体膜603と半導体膜604がそれぞれ一部露出するように絶縁膜619及び絶縁膜620にコンタクトホールを形成する。そして、該コンタクトホールを介して半導体膜603と半導体膜604に接する導電膜621、622を形成する。コンタクトホール開口時のエッチングに用いられるガスは、CHFとHeの混合ガスを用いたが、これに限定されるものではない。
【0196】
導電膜621、622は、CVD法やスパッタリング法等により形成することができる。具体的に導電膜621、622として、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、マンガン(Mn)、ネオジム(Nd)、炭素(C)、シリコン(Si)等を用いることが出来る。また上記金属を主成分とする合金を用いても良いし、上記金属を含む化合物を用いても良い。導電膜621、622は、上記金属が用いられた膜を単層または複数積層させて形成することが出来る。
【0197】
アルミニウムを主成分とする合金の例として、アルミニウムを主成分としニッケルを含むものが挙げられる。また、アルミニウムを主成分とし、ニッケルと、炭素またはシリコンの一方または両方とを含むものも例として挙げることが出来る。アルミニウムやアルミニウムシリコンは抵抗値が低く、安価であるため、導電膜621、622を形成する材料として最適である。特にアルミニウムシリコン(Al−Si)膜は、導電膜621、622をパターニングで形成するとき、レジストベークにおけるヒロックの発生をアルミニウム膜に比べて防止することができる。また、シリコン(Si)の代わりに、アルミニウム膜に0.5%程度のCuを混入させても良い。
【0198】
導電膜621、622は、例えば、バリア膜とアルミニウムシリコン(Al−Si)膜とバリア膜の積層構造、バリア膜とアルミニウムシリコン(Al−Si)膜と窒化チタン膜とバリア膜の積層構造を採用するとよい。なお、バリア膜とは、チタン、チタンの窒化物、モリブデンまたはモリブデンの窒化物を用いて形成された膜である。アルミニウムシリコン(Al−Si)膜を間に挟むようにバリア膜を形成すると、アルミニウムやアルミニウムシリコンのヒロックの発生をより防止することができる。また、還元性の高い元素であるチタンを用いてバリア膜を形成すると、半導体膜603と半導体膜604上に薄い酸化膜ができていたとしても、バリア膜に含まれるチタンがこの酸化膜を還元し、導電膜621、622と、半導体膜603及び半導体膜604とがそれぞれ良好なコンタクトをとることができる。またバリア膜を複数積層するようにして用いても良い。その場合、例えば、導電膜621、622を下層からチタン(Ti)、窒化チタン、アルミニウムシリコン(Al−Si)、チタン(Ti)、窒化チタンの5層構造とすることが出来る。
【0199】
また、導電膜621、622として、WFガスとSiHガスから化学気相成長法で形成したタングステンシリサイドを用いても良い。また、WFを水素還元して形成したタングステンを、導電膜621、622として用いても良い。
【0200】
なお、導電膜621はnチャネル型トランジスタ617の高濃度不純物領域611に接続されている。導電膜622はpチャネル型トランジスタ618の高濃度不純物領域614に接続されている。
【0201】
図17には、nチャネル型トランジスタ617及びpチャネル型トランジスタ618の上面図が示されている。ただしこの上面図では導電膜621、622、絶縁膜619、絶縁膜620を省略した図を示している。
【0202】
また、本実施の形態では、nチャネル型トランジスタ617とpチャネル型トランジスタ618が、それぞれゲートとして機能する電極607を1つずつ有する場合を例示しているが、本実施の形態はこの構成に限定されない。本実施の形態で作製されるトランジスタは、ゲートとして機能する電極を複数有し、なおかつ該複数の電極が電気的に接続されているマルチゲート構造を有していても良い。
【0203】
また、本実施の形態で作製される半導体装置が有するトランジスタは、ゲートプレナー構造を有していても良い。
【0204】
なお、SOI基板が有する半導体膜は、ほぼ単結晶に近いものが得られる。そのため、多結晶の半導体膜と比べて、配向のばらつきが小さいのでトランジスタの閾値電圧のばらつきを小さくすることができる。また、多結晶の半導体膜とは異なり結晶粒界が殆ど見られないので、結晶粒界に起因するリーク電流を抑え、半導体装置の省電力化を実現することができる。そしてレーザ結晶化により得られる多結晶の半導体膜では、ビームスポット内のエネルギー密度の分布に起因して、半導体膜の表面に突起(リッジ)が現れやすい。しかし、SOI基板が有する半導体膜は、貼り合わせにより生じた半導体膜内の欠陥を修復できる程度に、低いエネルギー密度で照射すれば良い。よって、SOI基板が有する半導体膜の表面の平坦性は、レーザ結晶化により得られる多結晶の半導体膜に比べて飛躍的に高いため、SOI基板が有する半導体膜上に形成されるゲート絶縁膜の膜厚を5nm乃至50nm程度まで薄くすることが可能である。よって、ゲート電圧を抑えつつも高いオン電流を得ることができる。また、レーザ結晶化により得られる多結晶の半導体膜を用いる場合、高い移動度を得るために、レーザ光の走査方向に沿ってトランジスタが有する半導体膜の配置を決める必要があったが、SOI基板が有する半導体膜ではその必要がないため、半導体装置の設計における制約が少なくなる。
【0205】
(実施の形態5)
本実施の形態では、実施の形態1または実施の形態2で示したSOI基板を用いた半導体装置が有する各種回路の具体的な構成について、インバータを例に挙げて説明する。インバータの回路図を図18(A)に、また図18(A)に示すインバータの上面図を図18(B)に、一例として示す。
【0206】
図18(A)に示すインバータは、pチャネル型のトランジスタ2001と、nチャネル型のトランジスタ2002とを有する。トランジスタ2001とトランジスタ2002は直列に接続されている。具体的には、トランジスタ2001のドレインとトランジスタ2002のドレインが接続されている。そして、トランジスタ2001のドレイン及びトランジスタ2002のドレインの電位は、出力端子OUTに与えられる。
【0207】
また、トランジスタ2001のゲートとトランジスタ2002のゲートは接続されている。そして、入力端子INに入力された信号の電位は、トランジスタ2001のゲート及びトランジスタ2002のゲートに与えられる。トランジスタ2001のソースにはハイレベルの電圧VDDが与えられ、トランジスタ2002のソースにはローレベルの電圧VSSが与えられる。
【0208】
図18(B)に示すインバータでは、トランジスタ2001は半導体膜2010を有し、トランジスタ2002は半導体膜2008を有する。また、トランジスタ2001のドレインと、トランジスタ2002のドレインは、配線2003を介して電気的に接続されている。そして配線2003は配線2004に接続されている。よって、トランジスタ2001のドレイン及びトランジスタ2002のドレインの電位は、配線2003及び配線2004を介して、出力端子OUTの電位として後段の回路に与えられる。
【0209】
また、図18(B)に示すインバータでは、配線2005の一部がトランジスタ2001のゲート及びトランジスタ2002のゲートとして機能している。そして配線2005に与えられた電位が、入力端子INの電位としてトランジスタ2001のゲート及びトランジスタ2002のゲートに与えられる。そしてトランジスタ2001のソースには、配線2006を介して電圧VDDが与えられ、トランジスタ2002のソースには、配線2007を介して電圧VSSが与えられている。
【0210】
本実施の形態は、上記実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0211】
(実施の形態6)
本実施の形態では、実施の形態1または実施の形態2で示したSOI基板を用いた半導体装置が有する各種回路の具体的な構成について、NAND回路を例に挙げて説明する。NAND回路の回路図を図19(A)に、また図19(A)に示すNAND回路の上面図を図19(B)に、一例として示す。
【0212】
図19(A)に示すNAND回路は、pチャネル型のトランジスタ3001と、pチャネル型のトランジスタ3002と、nチャネル型のトランジスタ3003と、nチャネル型のトランジスタ3004とを有する。トランジスタ3001と、トランジスタ3003と、トランジスタ3004とは、順に直列に接続されている。またトランジスタ3001と、トランジスタ3002とは並列に接続されている。
【0213】
具体的には、トランジスタ3001のソースとドレインは、一方にはハイレベルの電圧VDDが与えられ、他方は出力端子OUTに接続されている。トランジスタ3002のソースとドレインは、一方にはハイレベルの電圧VDDが与えられ、他方は出力端子OUTに接続されている。トランジスタ3004のソースとドレインは、一方にはローレベルの電圧VSSが与えられている。トランジスタ3003のソースとドレインは、一方は出力端子OUTに接続されている。そして、トランジスタ3003のソースとドレインの他方と、トランジスタ3004のソースとドレインの他方とが接続されている。トランジスタ3001のゲートと、トランジスタ3003のゲートには、入力端子IN1の電位が与えられる。またトランジスタ3002のゲートと、トランジスタ3004のゲートには、入力端子IN2の電位が与えられる。
【0214】
図19(B)に示すNAND回路では、並列に接続されているトランジスタ3001とトランジスタ3002とが、半導体膜3005を共有している。また直列に接続されているトランジスタ3003とトランジスタ3004とが、半導体膜3006を共有している。また配線3007の一部はトランジスタ3001のゲート及びトランジスタ3003のゲートとして機能している。そして配線3007に与えられた電位が、入力端子IN1の電位としてトランジスタ3001のゲート及びトランジスタ3003のゲートに与えられる。配線3008の一部はトランジスタ3002のゲート及びトランジスタ3004のゲートとして機能している。そして配線3008に与えられた電位が、入力端子IN2の電位としてトランジスタ3002のゲート及びトランジスタ3004のゲートに与えられる。
【0215】
ハイレベルの電圧VDDは、配線3009を介してトランジスタ3001のソースとドレインの一方、及びトランジスタ3002のソースとドレインの一方に与えられる。またローレベルの電圧VSSは、配線3010を介してトランジスタ3004のソースとドレインの一方に与えられる。トランジスタ3001のソースとドレインの他方、トランジスタ3002のソースとドレインの他方、及びトランジスタ3003のソースとドレインの一方は、その電位が配線3011及び配線3012を介して出力端子OUTの電位として後段の回路に与えられる。
【0216】
本実施の形態は、上記実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0217】
(実施の形態7)
本実施の形態では、実施の形態1または実施の形態2で示したSOI基板を用いた半導体装置の一つであるRFタグの構成について説明する。図20(A)は該RFタグの一形態を示すブロック図である。図20(A)においてRFタグ500は、アンテナ501と、集積回路502とを有している。集積回路502は、電源回路503、復調回路504、変調回路505、レギュレータ506、制御回路507、メモリ509を有している。
【0218】
質問器から電波が送られてくると、アンテナ501において該電波が交流電圧に変換される。電源回路503では、アンテナ501からの交流電圧を整流し、電源用の電圧を生成する。電源回路503において生成された電源用の電圧は、制御回路507とレギュレータ506に与えられる。レギュレータ506は、電源回路503からの電源用の電圧を安定化させるか、またはその高さを調整した後、集積回路502内の復調回路504、変調回路505、制御回路507またはメモリ509などの各種回路に供給する。
【0219】
復調回路504は、アンテナ501からの交流電圧を復調して信号を生成し、後段の制御回路507に出力する。制御回路507は復調回路504から入力された信号に従って演算処理を行い、別途信号を生成する。上記演算処理を行う際に、メモリ509は一次キャッシュメモリまたは二次キャッシュメモリとして用いることが出来る。また、制御回路507は、復調回路504から入力された信号を解析し、質問器から送られてきた命令の内容に従って、メモリ509内の情報の出力、またはメモリ509内における命令の内容の保存を行う。制御回路507から出力される信号は符号化され、変調回路505に送られる。変調回路505は該信号に従ってアンテナ501が受信している電波を変調する。アンテナ501において変調された電波は質問器で受け取られる。そしてRFタグ500から出力された情報を知ることができる。
【0220】
このようにRFタグ500と質問器との通信は、キャリア(搬送波)として用いる電波を変調することで行われる。キャリアは、125kHz、13.56MHz、950MHzなど規格により様々である。また変調の方式も規格により振幅変調、周波数変調、位相変調など様々な方式があるが、規格に即した変調方式であればどの変調方式を用いても良い。
【0221】
信号の伝送方式は、キャリアの波長によって電磁結合方式、電磁誘導方式、マイクロ波方式など様々な種類に分類することが出来る。
【0222】
メモリ509は不揮発性メモリであっても揮発性メモリであってもどちらでも良い。メモリ509として、例えばSRAM、DRAM、フラッシュメモリ、EEPROM、FeRAMなどを用いることが出来る。
【0223】
本実施の形態では、アンテナ501を有するRFタグ500の構成について説明しているが、本実施の形態のRFタグは必ずしもアンテナを有していなくとも良い。また図20(A)に示したRFタグに、発振回路または二次電池を設けても良い。
【0224】
また、図20(A)では、アンテナを1つだけ有するRFタグの構成について説明したが、本実施の形態はこの構成に限定されない。電力を受信するためのアンテナと、信号を受信するためのアンテナとの、2つのアンテナを有していても良い。アンテナが1つだと、例えば950MHzの電波で電力の供給と信号の伝送を両方行う場合、遠方まで大電力が伝送され、他の無線機器の受信妨害を起こす可能性がある。そのため、電力の供給は電波の周波数を下げて近距離にて行う方が望ましいが、この場合通信距離は必然的に短くなってしまう。しかしアンテナが2つあると、電力を供給する電波の周波数と、信号を送るための電波の周波数とを使い分けることができる。例えば電力を送る際は電波の周波数を13.56MHzとして磁界を用い、信号を送る際は電波の周波数を950MHzとして電界を用いることができる。このように機能に合わせてアンテナを使い分けることによって、電力の供給は近距離のみの通信とし、信号の伝送は遠距離も可能なものとすることができる。
【0225】
SOI基板100を用いた半導体装置の一つであるRFタグは、絶縁表面を有する基板もしくは絶縁基板上に接合された単結晶半導体層(SOI層)によって集積回路502を形成できるので、処理速度の高速化のみならず低消費電力化を図ることができる。また、SOI基板100を用いた半導体装置ではベース基板を大型化しながら生産性を高めることができるので、RFタグ一つあたりの価格を抑えることが可能となる。
【0226】
本実施の形態は、上記実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0227】
次に、SOI基板100を用いた半導体装置の一つであるCPU(central processing unit)の構成について説明する。
【0228】
図20(B)に、本実施の形態のCPUの構成をブロック図で示す。図20(B)に示すCPUは、基板800上に、演算回路(ALU:Arithmetic logic unit)801、演算回路用制御部(ALU Controller)802、命令解析部(Instruction Decoder)803、割り込み制御部(Interrupt Controller)804、タイミング制御部(Timing Controller)805、レジスタ(Register)806、レジスタ制御部(Register Controller)807、バスインターフェース(Bus I/F)808、メモリ809、メモリ用インターフェース820を主に有している。メモリ809及びメモリ用インターフェース820は、別チップに設けても良い。勿論、図20(B)に示すCPUは、その構成を簡略化して示した一例にすぎず、実際のCPUはその用途によって多種多様な構成を有している。
【0229】
バスインターフェース808を介してCPUに入力された命令は、命令解析部803においてデコードされた後、演算回路用制御部802、割り込み制御部804、レジスタ制御部807、タイミング制御部805に入力される。演算回路用制御部802、割り込み制御部804、レジスタ制御部807、タイミング制御部805は、デコードされた命令にもとづき、各種制御を行なう。具体的には演算回路用制御部802は、演算回路801の動作を制御するための信号を生成する。また、割り込み制御部804は、CPUのプログラム実行中に、外部の入出力装置や、周辺回路からの割り込み要求を、その優先度やマスク状態から判断し、処理する。レジスタ制御部807は、レジスタ806のアドレスを生成し、CPUの状態に応じてレジスタ806の読み出しや書き込みを行なう。
【0230】
また、タイミング制御部805は、演算回路801、演算回路用制御部802、命令解析部803、割り込み制御部804、レジスタ制御部807の動作のタイミングを制御する信号を生成する。例えばタイミング制御部805は、基準クロック信号をもとに、内部クロック信号を生成する内部クロック生成部を備えており、内部クロック信号を上記各種回路に供給する。
【0231】
SOI基板100を用いた半導体装置の一つであるCPUは、絶縁表面を有する基板もしくは絶縁基板上に接合された単結晶半導体層(SOI層)によって集積回路を形成できるので、処理速度の高速化のみならず低消費電力化を図ることができる。また、SOI基板100を用いた半導体装置ではベース基板を大型化しながら生産性を高めることができるので、CPU一つあたりの価格を抑えることが可能となる。
【0232】
本実施の形態は、上記実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0233】
(実施の形態8)
本実施の形態では、実施の形態1または実施の形態2で示したSOI基板を用いた半導体装置の一つである、アクティブマトリクス型の半導体表示装置の構成について説明する。
【0234】
アクティブマトリクス型の発光装置は、各画素に表示素子に相当する発光素子が設けられている。発光素子は自ら発光するため視認性が高く、液晶表示装置で必要なバックライトが要らず薄型化に最適であると共に、視野角にも制限が無い。本実施の形態では、発光素子の1つである有機発光素子(OLED:Organic Light Emitting Diode)を用いた発光装置について説明するが、本実施の形態で作製される半導体表示装置は、他の発光素子を用いた発光装置であっても良い。
【0235】
OLEDは、電場を加えることで発生するルミネッセンス(Electroluminescence)が得られる材料を含む層(以下、電界発光層と記す)と、陽極層と、陰極層とを有している。エレクトロルミネッセンスには、一重項励起状態から基底状態に戻る際の発光(蛍光)と三重項励起状態から基底状態に戻る際の発光(リン光)とがあるが、本実施の形態で作製される発光装置は、上述した発光のうちの、いずれか一方の発光を用いていても良いし、または両方の発光を用いていても良い。
【0236】
図21(A)に、本実施の形態の発光装置の断面図を示す。図21(A)に示す発光装置は、駆動回路に用いられるトランジスタ1601、トランジスタ1602と、画素に用いられる駆動用トランジスタ1604、スイッチング用トランジスタ1603とを素子基板1600上に有している。また、図21(A)に示す発光装置は、素子基板1600上において、画素に発光素子1605を有している。
【0237】
発光素子1605は、画素電極1606と、電界発光層1607と、対向電極1608とを有している。画素電極1606と対向電極1608は、いずれか一方が陽極であり、他方が陰極である。
【0238】
陽極は、酸化シリコンを含むインジウム錫酸化物(ITSO)、インジウム錫酸化物(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、ガリウムを添加した酸化亜鉛(GZO)などの透光性酸化物導電材料を用いることができる。また、陽極は、透光性酸化物導電材料の他に、例えば窒化チタン、窒化ジルコニウム、Ti、W、Ni、Pt、Cr、Ag、Al等の1つまたは複数からなる単層膜の他、窒化チタンとアルミニウムを主成分とする膜との積層、窒化チタン膜とアルミニウムを主成分とする膜と窒化チタン膜との三層構造等を用いることができる。ただし透光性酸化物導電材料以外の材料で陽極側から光を取り出す場合、光が透過する程度の膜厚(好ましくは、5nm〜30nm程度)で形成する。
【0239】
なお、陽極として導電性高分子(導電性ポリマーともいう)を含む導電性組成物を用いることもできる。導電性組成物は、陽極となる導電膜のシート抵抗が10000Ω/□以下、波長550nmにおける透光率が70%以上であることが好ましい。また、含まれる導電性高分子の抵抗率が0.1Ω・cm以下であることが好ましい。
【0240】
導電性高分子としては、いわゆるπ電子共役系導電性高分子を用いることができる。例えばπ電子共役系導電性高分子として、ポリアニリン及びまたはその誘導体、ポリピロール及びまたはその誘導体、ポリチオフェン及びまたはその誘導体、これらの2種以上の共重合体などがあげられる。
【0241】
共役導電性高分子の具体例としては、ポリピロ−ル、ポリ(3−メチルピロ−ル)、ポリ(3−ブチルピロ−ル)、ポリ(3−オクチルピロ−ル)、ポリ(3−デシルピロ−ル)、ポリ(3,4−ジメチルピロ−ル)、ポリ(3,4−ジブチルピロ−ル)、ポリ(3−ヒドロキシピロ−ル)、ポリ(3−メチル−4−ヒドロキシピロ−ル)、ポリ(3−メトキシピロ−ル)、ポリ(3−エトキシピロ−ル)、ポリ(3−オクトキシピロ−ル)、ポリ(3−カルボキシルピロ−ル)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシルピロ−ル)、ポリ(N−メチルピロール)、ポリチオフェン、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−ブチルチオフェン)、ポリ(3−オクチルチオフェン)、ポリ(3−デシルチオフェン)、ポリ(3−ドデシルチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3−エトキシチオフェン)、ポリ(3−オクトキシチオフェン)、ポリ(3−カルボキシルチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシルチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリアニリン、ポリ(2−メチルアニリン)、ポリ(2−オクチルアニリン)、ポリ(2−イソブチルアニリン)、ポリ(3−イソブチルアニリン)、ポリ(2−アニリンスルホン酸)、ポリ(3−アニリンスルホン酸)等が挙げられる。
【0242】
上記導電性高分子を、単独で導電性組成物として陽極に使用してもよいし、導電性組成物の膜の厚さの均一性、膜強度等の膜特性を調整するために有機樹脂を添加して使用することができる。
【0243】
有機樹脂としては、導電性高分子と相溶または混合分散可能であれば熱硬化性樹脂であってもよく、熱可塑性樹脂であってもよく、光硬化性樹脂であってもよい。例えば、ポリエチレンテレフタレ−ト、ポリブチレンテレフタレ−ト、ポリエチレンナフタレ−ト等のポリエステル系樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等のポリイミド系樹脂、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド12、ポリアミド11等のポリアミド樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマ−、ポリクロロトリフルオロエチレン等のフッ素樹脂、ポリビニルアルコ−ル、ポリビニルエ−テル、ポリビニルブチラ−ル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル等のビニル樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、アラミド樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリウレア系樹脂、メラミン樹脂、フェノ−ル系樹脂、ポリエ−テル、アクリル系樹脂及びこれらの共重合体等が挙げられる。
【0244】
さらに、導電性組成物の電気伝導度を調整するために、導電性組成物にアクセプタ性またはドナー性ド−パントをド−ピングすることにより、共役導電性高分子の共役電子の酸化還元電位を変化させてもよい。
【0245】
アクセプタ性ド−パントとしては、ハロゲン化合物、ルイス酸、プロトン酸、有機シアノ化合物、有機金属化合物等を使用することができる。ハロゲン化合物としては、塩素、臭素、ヨウ素、塩化ヨウ素、臭化ヨウ素、フッ化ヨウ素等が挙げられる。ルイス酸としては五フッ化燐、五フッ化ヒ素、五フッ化アンチモン、三フッ化硼素、三塩化硼素、三臭化硼素等が挙げられる。プロトン酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウフッ化水素酸、フッ化水素酸、過塩素酸等の無機酸と、有機カルボン酸、有機スルホン酸等の有機酸を挙げることができる。有機カルボン酸及び有機スルホン酸としては、前記カルボン酸化合物及びスルホン酸化合物を使用することができる。有機シアノ化合物としては、共役結合に二つ以上のシアノ基を含む化合物が使用できる。例えば、テトラシアノエチレン、テトラシアノエチレンオキサイド、テトラシアノベンゼン、テトラシアノキノジメタン、テトラシアノアザナフタレン等を挙げられる。
【0246】
ドナー性ドーパントとしては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、4級アンモニウム化合物等を挙げることができる。
【0247】
導電性組成物を、水または有機溶剤(アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、炭化水素系溶剤、芳香族系溶剤など)に溶解させて、湿式法により陽極となる薄膜を形成することができる。
【0248】
導電性組成物を溶解する溶媒としては、特に限定することはなく、上記した導電性高分子及び有機樹脂などの高分子樹脂化合物を溶解するものを用いればよく、例えば、水、メタノール、エタノール、プロピレンカーボネート、N‐メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、シクロヘキサノン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエンなどの単独もしくは混合溶剤に溶解すればよい。
【0249】
導電性組成物の成膜は上述のように溶媒に溶解した後、塗布法、コーティング法、液滴吐出法(インクジェット法ともいう)、印刷法等の湿式法を用いて成膜することができる。溶媒の乾燥は、熱処理を行ってもよいし、減圧下で行ってもよい。また、有機樹脂が熱硬化性の場合は、さらに加熱処理を行い、光硬化性の場合は、光照射処理を行えばよい。
【0250】
陰極は、一般的に仕事関数の小さい金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることができる。具体的には、LiやCs等のアルカリ金属、およびMg、Ca、Sr等のアルカリ土類金属、およびこれらを含む合金(Mg:Ag、Al:Liなど)の他、YbやEr等の希土類金属を用いて形成することもできる。また、電子注入性の高い材料を含む層を陰極に接するように形成することで、アルミニウムや、透光性酸化物導電材料等を用いた、通常の導電膜も用いることができる。
【0251】
電界発光層1607は、単数の層で構成されていても、複数の層が積層されるように構成されていてもどちらでも良く、各層には有機材料のみならず無機材料が含まれていても良い。電界発光層1607におけるルミネッセンスには、一重項励起状態から基底状態に戻る際の発光(蛍光)と三重項励起状態から基底状態に戻る際の発光(リン光)とが含まれる。複数の層で構成されている場合、画素電極1606が陰極だとすると、画素電極1606上に電子注入層、電子輸送層、発光層、ホール輸送層、ホール注入層の順に積層する。なお画素電極1606が陽極に相当する場合は、電界発光層1607を、ホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層の順に積層して形成する。
【0252】
また電界発光層1607は、高分子系有機化合物、中分子系有機化合物(昇華性を有さず、連鎖する分子の長さが10μm以下の有機化合物)、低分子系有機化合物、無機化合物のいずれを用いていても、液滴吐出法で形成することが可能である。また中分子系有機化合物、低分子系有機化合物、無機化合物は蒸着法で形成しても良い。
【0253】
なお、スイッチング用トランジスタ1603、駆動用トランジスタ1604は、シングルゲート構造ではなく、ダブルゲート構造、やトリプルゲート構造などのマルチゲート構造を有していても良い。
【0254】
次に、図21(B)に、本実施の形態の液晶表示装置の断面図を示す。図21(B)に示す液晶表示装置は、駆動回路に用いられるトランジスタ1611、トランジスタ1612と、画素においてスイッチング素子として機能するトランジスタ1613とを素子基板1610上に有している。また、図21(B)に示す液晶表示装置は、素子基板1610と対向基板1614の間に液晶セル1615を有している。
【0255】
液晶セル1615は、素子基板1610に形成された画素電極1616と、対向基板1614に形成された対向電極1617と、画素電極1616と対向電極1617の間に設けられた液晶1618とを有している。画素電極1616には、例えば酸化インジウムスズ(ITSO)、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、ガリウムを添加した酸化亜鉛(GZO)などを用いることができる。
【0256】
本実施の形態は、上記実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0257】
(実施の形態9)
実施の形態1または実施の形態2で示したSOI基板を用いた半導体装置を用いることができる電子機器として、携帯電話、携帯型ゲーム機または電子書籍、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ等のカメラ、ゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、オーディオコンポ等)、ノート型パーソナルコンピュータ、記録媒体を備えた画像再生装置(代表的にはDVD:Digital Versatile Disc等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうるディスプレイを有する装置)などが挙げられる。これら電子機器の具体例を図22に示す。
【0258】
図22(A)は携帯電話であり、本体2101、表示部2102、音声入力部2103、音声出力部2104、操作キー2105を有する。表示部2102またはその他の信号処理回路に実施の形態1又は実施の形態2に示す作製方法で形成された半導体装置を用いることで、コストを抑えた携帯電話が得られる。
【0259】
図22(B)はビデオカメラであり、本体2601、表示部2602、筐体2603、外部接続ポート2604、リモコン受信部2605、受像部2606、バッテリー2607、音声入力部2608、操作キー2609、接眼部2610等を有する。表示部2602またはその他の信号処理回路に実施の形態1又は実施の形態2に示す作製方法で形成された半導体装置を用いることで、コストを抑えたビデオカメラが得られる。
【0260】
図22(C)は映像表示装置であり、筐体2401、表示部2402、スピーカー部2403等を有する。表示部2402またはその他の信号処理回路に実施の形態1又は実施の形態2に示す作製方法で形成された半導体装置を用いることで、コストを抑えた映像表示装置が得られる。なお、映像表示装置には、パーソナルコンピュータ用、TV放送受信用、広告表示用などの、映像を表示するための全ての映像表示装置が含まれる。
【0261】
以上の様に、実施の形態1又は実施の形態2に示す作製方法で形成された半導体装置の適用範囲は極めて広く、あらゆる分野の電子機器に用いることが可能である。
【0262】
本実施の形態は、上記実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0263】
10 第1のトレイ
11 凹部
20 第2のトレイ
21 凹部
30 第3のトレイ
31 凹部
32 支持部
100 SOI基板
101 ベース基板
102 絶縁層
111 単結晶半導体基板
115 単結晶半導体層
116 単結晶半導体層
117 単結晶半導体基板
118 単結晶半導体基板
112 絶縁層
113 脆化層
114 接合層
121 イオンビーム
122 レーザビーム
130 凸部
132 残存した絶縁層
133 残存した脆化層
134 残存した接合層
135 残存した単結晶半導体層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に接合層が形成され、所望の深さに脆化層が形成された複数の単結晶半導体基板と、ベース基板と、複数の凹部が設けられた第1のトレイと、複数の凹部が設けられた第2のトレイとを用意し、
複数の前記単結晶半導体基板を、前記第1のトレイの複数の前記凹部に配置し、
前記第1のトレイの複数の前記凹部に配置された複数の前記単結晶半導体基板を、前記接合層を介して、前記ベース基板に密接させることで、前記接合層の表面と前記ベース基板表面とを接合させて、前記ベース基板と複数の前記単結晶半導体基板を貼り合わせ、
前記第1のトレイを複数の前記単結晶半導体基板から外し、
複数の前記単結晶半導体基板と前記第2のトレイに設けられた複数の前記凹部が重なるように、前記第2のトレイを配置し、
前記第2のトレイに配置された複数の前記単結晶半導体基板の加熱処理によって前記脆化層に亀裂を生じさせ、各単結晶半導体基板から分離された複数の単結晶半導体層が密着されたベース基板を形成し、
前記第1のトレイに設けられた複数の前記凹部の深さは、前記単結晶半導体基板の厚さより小さく、
前記第2のトレイに設けられた複数の前記凹部の深さは、前記単結晶半導体基板の厚さより大きいことを特徴とするSOI基板の作製方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記第2のトレイは、複数の前記単結晶半導体基板の底面と接触することなく配置することを特徴とするSOI基板の作製方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
前記単結晶半導体層と分離した前記単結晶半導体基板は、前記第2のトレイに設けられた複数の前記凹部に保持されることを特徴とするSOI基板の作製方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項において、
前記第2のトレイに設けられた複数の前記凹部の底面の面積は、前記単結晶半導体基板の底面の面積の1.1倍以下とすることを特徴とするSOI基板の作製方法。
【請求項5】
上面に接合層が形成され、所望の深さに脆化層が形成された複数の単結晶半導体基板と、ベース基板と、複数の凹部が設けられた第1のトレイと、複数の凹部と各々の前記凹部の間に支持部とが設けられた第2のトレイとを用意し、
複数の前記単結晶半導体基板を、前記第1のトレイの複数の前記凹部に配置し、
前記第1のトレイの複数の前記凹部に配置された複数の前記単結晶半導体基板を、前記接合層を介して、前記ベース基板に密接させることで、前記接合層の表面と前記ベース基板表面とを接合させて、前記ベース基板と複数の前記単結晶半導体基板を貼り合わせ、
前記前記第1のトレイを複数の前記単結晶半導体基板から外し、
複数の前記単結晶半導体基板と前記第2のトレイに設けられた複数の前記凹部が重なるように、前記第2のトレイを配置し、
前記第2のトレイに配置された複数の前記単結晶半導体基板の加熱処理によって前記脆化層に亀裂を生じさせ、各単結晶半導体基板から分離された複数の単結晶半導体層が密着されたベース基板を形成し、
前記第1のトレイに設けられた複数の前記凹部の深さは、前記単結晶半導体基板の厚さより小さく、
前記第2のトレイに設けられた複数の前記凹部の深さと前記支持部の高さの和は、前記単結晶半導体基板の厚さより大きく、
前記第2のトレイに設けられた各々の前記凹部の間の幅は、前記支持部の幅より大きいことを特徴とするSOI基板の作製方法。
【請求項6】
請求項5において、
前記第2のトレイは、複数の前記単結晶半導体基板と接触することなく配置することを特徴とするSOI基板の作製方法。
【請求項7】
請求項5又は請求項6において、
前記単結晶半導体層と分離した前記単結晶半導体基板は、前記第2のトレイに設けられた複数の前記凹部に保持されることを特徴とするSOI基板の作製方法。
【請求項8】
請求項5乃至請求項7のいずれか一項において、
前記第2のトレイに設けられた複数の前記凹部の底面の面積は、前記単結晶半導体基板の底面の面積の1.1倍以下とすることを特徴とするSOI基板の作製方法。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか一項において、
前記接合層は、前記単結晶半導体基板に接して形成された絶縁層上に形成されていることを特徴とするSOI基板の作製方法。
【請求項10】
請求項9において、
前記絶縁層は、複数の絶縁膜からなる積層構造であることを特徴とするSOI基板の作製方法。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれか一項において、
前記脆化層の形成のためのソースガスに水素ガスを用い、
前記水素ガスを励起して、Hを含むプラズマを生成し、前記プラズマに含まれるイオン種を加速して、前記単結晶半導体基板にドープすることで、前記脆化層を形成することを特徴とするSOI基板の作製方法。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11のいずれか一項において、
前記ベース基板は、ガラス基板であることを特徴とするSOI基板の作製方法。
【請求項13】
請求項1乃至請求項12のいずれか一項において、
前記第2のトレイは、石英ガラス、シリコン、シリコンカーバイド、または無アルカリガラスであることを特徴とするSOI基板の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2011−9723(P2011−9723A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−119101(P2010−119101)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】